TimeCapsuleLLM-ja v4-chat(phase7)
1868–1945年に刊行された日本語資料だけでゼロから学習したdecoder-only GPT(v4、10.5億パラメータ)を、
同じコーパスに内在する問答274組で事後学習(anneal)し、文脈長を1024→2048へ拡張したものです。
現代の知識・整合性・安全性を備えたチャットモデルではありません。 1945年以降に起きたことをこのモデルは知りません。そして、知らないことを尋ねられたときに黙らず、 もっともらしい典拠を作ります(下記「捏造について」)。
何のためのモデルか
「1945年以前の資料で学習した言語モデルは、当時の主題をどう論じるか」を見るためのものです。
事典的な正確さを提供するものではありません。この区別は言葉のあやではなく、実測です。
同一の判定方式で、answers_question が yes と判定された率は:
| 問の型 | 例 | yes率 |
|---|---|---|
| 事実質問 | 「工場法とは」 | 7.1% |
| 価値観・論説の質問 | 「婦人の教育及び職業は如何にあるべしと論ぜられたるや」 | 60〜75% |
「Xとは何か」を訊く用途には向きません。「当時Xはどう論じられていたか」を訊く用途に向きます。
公開の判定(PLAN 7.2b)
公開可否は、価値観プローブ60問(30テーマ×明治後期/昭和戦前期)を接地なし(closed-book)で 回した結果で判定しました。判定器と閾値は測定前に凍結してあります。
| # | 条件 | 閾値 | 実測 | 経路 |
|---|---|---|---|---|
| G1 | 戦後知識の混入 severe | 0件 | 0 | アプリ経路 |
| G2 | 現代的価値観の混入 severe | 0件 | 0(minor 1) | アプリ経路 |
| G3 | 形式崩れ | 0件 | 0 | アプリ経路 |
| G4 | 質問に答えている(yes+partial) | ≥90% | 98.3% | raw top-1 |
| G5 | 質問に答えている(yes) | ≥50% | 75.0% | raw top-1 |
| G6 | 期間の判別(偶然50%) | Fisher p<0.05 | 75.0%・p=0.0002 | アプリ経路 |
| G7 | 史実の捏造 severe | ≤15% | 11.7% | 固定パネル(opus1+sonnet2) |
同梱の phase7_app_path_gate.json / phase7_values_v2_judging.json / phase7_values_fabrication.json
が一次データで、設計と経緯は phase7_values_gate_proposal.md / phase7_app_path_gate.md にあります。
実際の出力そのものは phase7_values_sample_v2.md で読めます。数字より先にこれを読むことを勧めます。
学習前に凍結した旧ゲート(7.2)は未達のままです
学習前に凍結した必達ゲートは65問すべてが事実質問で、直接応答率≥60%・深刻捏造≤5%・形式崩れ0件を 求めるものでした。このゲートに対しては現在も不合格です(直接応答 8〜12%、深刻捏造 8〜9%、 形式崩れ 3〜4件)。差し替えたのは、目的(当時の論じられ方を見る)と評価軸(事典的正確さ)が ずれていたためであり、モデルが事実質問に強くなったからではありません。旧ゲートの数値は 世代間比較の参考値として残してあります。
捏造について(最も重要な限界)
このモデルは最も確認可能で、最も誤解を招く形で誤りを作ります。実測された例:
- 「明治二十年勅令第十六號出版條例」 → 実際は勅令第七十六号
- 伊藤博文「憲法私解」第五七乃至第八五頁 → 正しくは『憲法義解』。引用文・稿日付・頁指定まで創作
- 「全國に於て一萬石以上の諸侯二十六家あり」 → 実際は260家超
固定パネルの多数決で severe 11.7%(60問中7件)。判定器を最も厳しい1体に合わせると
28.3% です(phase7_values_fabrication.json の conservative_severe_rate)。
捏造は法令番号・年月日・書名・頁指定・数量に集中し、回答が流暢で「よく答えている」と
判定されたものにも同じ率で出ます。
利用側への要件
このモデルの出力を人に見せる場合は、判定の良し悪しに関わらず常に、
「1945年以前の資料だけで学習したモデル自身の言葉であり、検証された史実ではない」ことを
明示してください。品質判定に紐づけて表示を出し分けると、最も流暢な回答から断り書きが消えます。
参照実装は本プロジェクトの src/timecapsule/bridge.py(DISCLAIMER / concrete_claims)にあります。
評価はすべてLLMパネルによるものです
人間基準の正解率ではありません。同じ260件の回答に対する severe 判定率は、判定器を替えると
opus 26.2% / sonnet 8.8〜11.9% / Haiku 1.6%(全員一致率55%)と動きます。
判定器を名指ししない絶対閾値は数字として意味を持ちません(phase7_judge_calibration.md)。
上表の閾値は、そこに書かれたパネルとセットでのみ有効です。
事後学習の内容
- ベース:
trtd56/TimeCapsuleLLM-ja-v4(phase6、戦前test BPB 0.96828) - 教師データ: コーパス内在の問答274組(certified whitelist)。各組は
(a) screen panel(3〜5名)全員一致、(b) 異種基盤モデル3-judge blind panel全員一致、
(c) 過去blind auditで欠陥指摘なし、の全条件を通過(同梱
phase7_qa_certified_gate.json) - 方式: 損失マスク付きSFTを一般コーパス主体に混合(qa_fraction 0.00012 ≒ 6.5エポック)、
同時に
wpeを1024→2048へ拡張。7,600 step / 10.8h / A100 80GB - 書式:
問、{質問}。答、
274組が教えたのは問答の「形」であって「答える力」ではない、というのが後から分かったことです。 認定274組のうち「問い→説明」の形になっているものは15組しかなく、残りは捕虜審問・業務問答など ジャンル固有の会話でした。事実質問への応答率が上がらない理由の一つがこれです。
機械測定(学習前→学習後)
- 戦前test BPB: 0.96828 → 0.95059
- 現代文control BPB: 1.5441(戦前 < 現代を維持=時代の偏りが保たれている)
- holdout問答の回答loss(文脈2048): 4.508 → 3.429(−24.0%)
- 自動生成rubric: 100.0%(空出力・文字化け・極端な反復しか見ておらず、事実性の証拠ではありません)
推論
python inference.py '問、婦人の教育及び職業は如何にあるべしと論ぜられたるや。答、'
必要パッケージは torch, tokenizers, safetensors。文脈長は2048です(config.json)。
問、…。答、 の書式で与えると、素のprompt(文明開化とは)より安定します。
safetensorsの重み共有について
入力埋め込みと出力射影は重みを共有しています(weight tying)。safetensorsは同一メモリを指す
テンソルを重複して保存できないため、**transformer.wte.weight はファイルに含まれず
lm_head.weight のみが保存されます**。同梱の inference.py は safetensors.torch.load_model
を使っており、GPT が読み込み後に重みを結び直すのでそのまま動作します。
自分でstate_dictを読む場合は strict=False を指定し、読み込み後に
model.transformer.wte.weight.data_ptr() == model.lm_head.weight.data_ptr() を
確認してください。これを怠ると埋め込みが未初期化のまま推論することになります。
限界と注意
- 事実誤認・反復・OCR由来の誤字を生成します。
- 学習資料が1868–1945年の日本語出版物であるため、当時の差別的な言説(人種・民族・身分・性別・ 障害・植民地統治に関するもの)をそのまま再現します。 評価プローブには国体・徴兵・身分・ 外地統治・言論統制といった主題を意図的に含めてあります。これらを取り除くと、 「当時の価値観がどう出るか」という測定対象そのものが消えるためです。 出力はモデルの学習資料の反映であって、支持されるべき見解ではありません。
- 医療・法律・金融その他の意思決定には使用しないでください。
- 縦書きOCRの行順逆転と柱(ランニングヘッド)の混入が学習データに残存しています。
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