Erabo-2B-c035

日本語の業務文書を読んで、選択肢から判断を1つ選ぶ小型モデルです。 判断用モデル Mapika/decider-2b をもとに、日本語と英語の実務判断に絞って追加学習しました。文章は書かず、「このメールの目的はどれか」「このルールなら実行していいか」といった問いに、選んだ選択肢と各選択肢の確率で答えます。

Eraboの考え方

Erabo-2Bは、単体で何でも決める万能モデルとしては作っていません。業務の流れの手前に置いて、「この判断はここで決めてよいか、人や上位のLLMに委ねるべきか」を振り分ける前処理の担当です。

技術としてはLoRAによる追加学習で、手法自体に目新しさはありません。工夫したのは、何を学ばせ、どの重みを選ぶかの基準です。ベンチマークの正解率だけを追うことはせず、わからないものを「わからない(要確認)」と返せることを最も重視しました。

振り分け役の失敗には2つの方向があります。何でも「要確認」にするモデルは安全ですが、仕分けの役に立ちません。何でも決めてしまうモデルは便利ですが、決めてはいけない案件まで通してしまいます。元のモデルは前者寄りで、確認の要らない規則判断160問のうち101問を「要確認」にしていました。Erabo-2Bはこれを29問まで減らしつつ、「要確認」が正解の80問のうち70問では保留を残しています。

重みの選び方も、この考え方に合わせました。42回の実験サイクルで候補を作り、「保留すべき問題で『要確認』を選べる数が減らないこと」を学習前に条件として決めて比べています。正解率が上がっても、この条件を満たさなかった候補は公開していません。

こんなときに使えます

  • 問い合わせや社内メールの仕分け(依頼・断り・通知・問い合わせ・謝罪など、メールの目的の分類)
  • 「両方の確認が済んだら実行」のような社内ルールに沿った、実行・見送り・要確認の判断
  • 大きなLLMに渡す前の一次振り分け。2Bと小さく、自分のデバイス上で動かせます

なぜ2Bか

汎用LLMとして見ると2Bは小さく、賢さでは大きなモデルにかないません。ただ、選択肢から選ぶ判断に用途を絞れば、2Bでも一次仕分けを任せられる水準になります。個人のPCのGPUでも動かせる大きさで、業務ルールが変わっても手元で追加学習し直せます。Deciderシリーズ(0.8B〜35B)の中でも、ダウンロード数は2B版が突出して多く、直近1か月で約33万回、4B版の約11倍です(2026年10月19日時点、Hugging Face)。

元のモデルから何が変わったか

元の decider-2b は、多言語の Qwen3.5-2B をもとにした汎用の判断モデルです。Erabo-2B はここに日本語の業務メールや社内ルールの判断を学習させ、日本語と英語の判断に寄せました。日本語・英語以外の言語の性能は、維持を目標にしていません。

学習前 Erabo-2B
社内ルールに沿った判断(3択) 55.6% 75.3%
メールの目的を当てる(8択) 52.0% 72.5%
日本語の常識問題(JGLUE) 82.5% 84.0%

向いていないこと

文章の生成・要約・チャット、出力確率をそのまま信じた自動実行、法務・医療・金銭に関わる最終判断には向きません。人が最後に確認する前提で使ってください。

このモデルの位置づけ

Erabo-2B-c035 は、Mapika/decider-2b(Qwen3.5-2B-Base をもとにした判断用モデル)を LoRA で追加学習し、その結果をベースに統合した、日本語および英語向けの選択肢(Choice)判断モデルです。テキストの自由生成は行わず、context、question、rubric、options を入力として受け取り、選択肢IDとその確率を出力します。

ゼロから事前学習を行ったモデルではなく、既存の 2B 判断用モデルに日本語の業務文書を学習させ、判断時の出力形式や振る舞いを整えた適応モデル(振る舞いの矯正)に位置づけられます。学習規模は約 1,397 問・88 ステップ(更新)にとどまり、一般的な日本語 LLM と比べて 3〜4 桁ほど小さくなっています。そのため、特定の限定的な判断タスクにおける精度改善は確認できるものの、日本語能力全般が向上したと主張するものではありません。

公開した重みは、42回の実験サイクルで作った候補の中で、最も業務に適していると判断したものです。候補は学習前に決めた同じ条件で比べ、正解率が高くても条件を満たさなかった8つは採用していません。

使い方

このリポジトリを1つダウンロードすれば動きます。ベースモデルとアダプタを組み合わせる作業は要りません。

pip install torch transformers==5.17.0 accelerate==1.15.0 huggingface_hub==1.31.0
hf download tanakaisworking/Erabo-2B --local-dir Erabo-2B
cd Erabo-2B
python erabo_predict.py --input requests.jsonl --output predictions.json

NVIDIA GPU、Apple Silicon の Mac、CPU のどれでも動き、使える環境を自動で選びます(--device cuda / mps / cpu で指定もできます)。重みは bf16 で約3.8GB です。メモリ8GBの M1 Mac でも動作を確認しました(1問あたり1〜2秒)。

このモデルは文章を生成せず、選択肢の答えの位置の logits を読んで確率を出します。そのため LM Studio や Ollama のチャット画面では使えません。推論には同梱の erabo_predict.py と erabo_inference/ を使ってください。通常の対話・チャット生成での品質は評価していません。

入力データは JSONL 形式とし、各行には以下の 4 項目のみを記述します。

  • context: 判断対象となる本文

  • question: 判断を求める問い

  • rubric: 判断の基準

  • options: 2〜10件の {"id", "text"} を格納したリスト

    {"context": "件名:打ち合わせ日程の件\n\n先日ご提案いただいた打ち合わせですが、社内の調整がつかず、今回は見送らせていただきたく存じます。またの機会にぜひよろしくお願いいたします。", "question": "このメールの主な目的はどれですか。", "rubric": "本文全体から送り手が最も求めていることを選びます。", "options": [{"id": "request", "text": "依頼"}, {"id": "refusal", "text": "断り"}, {"id": "thanks", "text": "感謝"}, {"id": "apology", "text": "謝罪"}, {"id": "invite", "text": "勧誘"}, {"id": "cheer", "text": "激励"}, {"id": "notice", "text": "通知"}, {"id": "inquiry", "text": "問い合わせ"}]}

丁寧に書かれた断りのメールを「断り」と判定した出力です。選んだ選択肢IDと、各選択肢の確率が返ります。

[{"input_index": 0, "choice_id": "refusal", "probabilities": {"request": 0.011, "refusal": 0.956, "thanks": 0.011, "apology": 0.010, "invite": 0.004, "cheer": 0.002, "notice": 0.004, "inquiry": 0.002}}]

出力確率は較正されていないため、確率の閾値をもとに処理を自動実行するような用途では、事前に別途キャリブレーションを実施する必要があります。 1入力あたりの最大長は 2048 token で、上限を超えた場合はテキストを切り詰めずにエラーを返します。

このページの数値は、NVIDIA T4 上でベースモデルを 4bit NF4 で読み込み、統合前の adapter(adapter/)を重ねた構成で測りました。この構成は --adapter で再現できます(NVIDIA GPU と、追加で peft==0.21.0 bitsandbytes==0.50.2 が必要です)。統合モデルは量子化しないぶん確率が少し変わります。同じ問題を通常の並び順で比べた正解数は、メールの目的・発話行為 400問で 221→210問、規則判断 240問で 179→183問、英語 MultiNLI 503問で 436→432問でした(左が測定構成、右が M1 Mac 上の統合モデル)。

公開ベースモデルとの比較(JGLUE)

JGLUE 公開ベース Erabo-2B
JNLI dev 2順平均 64.7% 65.3%
JNLI dev 通常順 76.9% 67.2%
JNLI dev 逆順 52.5% 63.3%
JNLI dev 並び順を変えても同じ答えの割合 67.1% 95.3%
JCommonsenseQA valid 2順平均 82.5% 84.0%
JCommonsenseQA valid 通常順 82.4% 83.8%
JCommonsenseQA valid 逆順 82.6% 84.1%
JCommonsenseQA valid 並び順を変えても同じ答えの割合 90.1% 91.6%

JGLUE による評価は、学習・調整・較正には一切使用せず、評価設定を固定した後に一度だけ実施したものです。JNLI の通常順では公開ベースモデルのスコアが最も高くなっていますが、これは選択肢の並び順に引きずられた結果であり、逆順にするとスコアは大きく低下します。そのため、モデルの比較にあたっては 2 順の平均値や、選択肢の並び順を変えた際の一致率に着目してください。

開発用データでの測定(選択肢3通りの並び順の平均)

評価セット 問数 公開ベース Erabo-2B
メールの目的 8択(学習に使っていない200通) 200 52.0% 72.5%
メールの発話行為 4択(同じ200通) 200 34.7% 37.8%
メール4判断(作業・返信・応諾・期限) 37 64.9% 65.8%
メール4判断(別場面の対照メール) 192 88.5% 88.0%
規則判断 3択 240 55.6% 75.3%
規則判断(別形式) 81 56.8% 65.8%
MASSIVE 意図分類(8種) 293 87.5% 95.1%
MASSIVE 意図分類(別の9種) 99 96.0% 97.6%
意図分類の難問(言い換え・訂正入り) 48 100.0% 97.2%
英語 MultiNLI(英語力の維持確認) 503 83.4% 86.5%

限界

  • 学習データの正解ラベルは、公開データセットが持つ既存の上流ラベル、あるいは当プロジェクトが機械生成した正解(oracle)に基づいています。第三者の人間が個別に精査・作成した業務向けの正解データは含まれていません。
  • 上記の表に示した測定結果は、いずれも開発中に参照していた開発用データでの値であり、未知のデータに対する汎化性能は実証されていません。
  • 出力確率は未較正です。公表値は 4bit NF4+adapter 構成での測定で、統合モデル(bf16)の全評価セットでの再測定はしていません。
  • 業務に導入する際は、人間による最終確認(Human-in-the-Loop)を前提として運用してください。法務・医療・財務などに関わる重大な最終判断には利用できません。

学習でモデルから借りたもの/借りていないもの

  • 借りていないもの(正解ラベルなど): 他の教師モデルの判断を蒸留したデータは一切含んでいません。正解ラベルの内訳として、メールの目的や発話行為には上流データセットの生成条件を用い、英語タスクおよび MASSIVE には上流の人手ラベルを採用しています。また、規則系タスクは当プロジェクトが開発した実行可能 oracle による機械計算結果であり、メール4判断は当プロジェクトが独自に再注釈を付与したデータです。
  • 借りているもの(テキスト本文): Japanese-Mail-Bench のメール本文は Preferred Networks(PFN)の公開データを利用しており、当プロジェクトが独自生成したものではありません。一方、規則系データは当プロジェクトが企画・設計した上で、プログラムによって組み合わせて生成・拡張したテキストです(正解ラベルもプログラム側で算出しています)。いずれのデータにおいても、教師モデルの判断や回答そのものは学習に使用していません。
  • Japanese-Mail-Bench の test split を学習データに含めているため、同ベンチマークを本モデルの公平な性能評価に使うことはできません。

モデルの詳細

項目 内容
ベースモデル Mapika/decider-2b(revision 533964dae8be954c5b5e19fa4948e48408094c1e)。もとは Qwen/Qwen3.5-2B-Base
配布物 adapter をベースに統合した重み(bf16、約3.8GB)と、統合前の LoRA adapter(adapter/、約67MB)
LoRA 設定 rank 16 / alpha 32 / dropout 0。attention と MLP の全線形層が対象
推論時の読み込み 統合モデルは bf16。公表値の測定は 4bit NF4(double quant)のベースに adapter を重ね、計算は bf16。出力の温度は上流の Choice 設定 1.164
出力 選択肢ごとの確率(未較正)と、最も確率の高い選択肢ID
対応言語 日本語・英語
ライセンス Apache-2.0(ベースモデルと同じ)

学習の手順

学習は2段階で行いました。どちらも各問題を1回ずつ使う1周(1 epoch)です。

第1段階 第2段階(Erabo-2B)
出発点 公開ベース 第1段階の結果
データ MASSIVE 日本語 8意図 1,000問 下表の5種類 1,397問
更新回数 63 88
学習率 1e-4 2e-5
その他 batch 16、AdamW、weight decay 0.01、勾配クリップ 1.0、seed 42 batch 16、AdamW、weight decay 0.01、勾配クリップ 1.0、seed 24009
損失 正解選択肢の cross entropy 正解選択肢の cross entropy

第2段階は Tesla T4 1枚で約39分、GPU メモリのピークは約3.76GB でした。環境は torch 2.11.0、transformers 5.17.0、peft 0.21.0、bitsandbytes 0.50.2 です。選択肢の並び順は学習中も問題ごとに入れ替えています。

学習データ

第2段階で使った1,397問の内訳です。

出典 問数 内容 ライセンス
Japanese-Mail-Bench(PFN) 500 未使用の250通それぞれに「目的」と「発話行為」の2問 Apache 2.0
Japanese-Mail-Bench(PFN) 173 40通に「作業が必要か・返信が必要か・応諾か・期限はどれか」の判断を付け直した153問と、期限の言い回しを変えた20問 Apache 2.0
MultiNLI 1.0 204 英語の含意判定(含意・中立・矛盾の3択)。government / slate / telephone / travel の4ジャンルから各51問 原論文の条件
MASSIVE 1.1 ja-JP 160 日本語の意図分類8択から各20問(第1段階の性能を保つため) CC BY 4.0
Erabo-jp 規則判断データ 360 社内ルールに沿って「実行・見送り・要確認」を選ぶ3択。10種類の論理(AND、OR、例外、停止指定、訂正、3つのうち2つ、数値の範囲、文字の条件など)から各36問 Apache 2.0(本モデルと同じ)

各データの中身は次のとおりです。

  • メールの目的(8択): 依頼・断り・感謝・謝罪・勧誘・激励・通知・問い合わせ。正解はメールを生成したときの設定値です。
  • メールの発話行為(4択): お願い・説明・質問・指示。
  • MASSIVE の8意図: アラームの設定・確認・解除、カレンダーの登録・確認・削除、音楽の再生、天気の質問。
  • 規則判断データ: 倉庫の搬入や店舗の受付など6つの場面を、説明文・受付記録・対話の3つの書き方で表したものです。条件には「成立・不成立・未確認」があり、「未確認があっても結論が出る問題」と「確認しないと決められない問題」の両方を含みます。

評価データ

開発用の評価データは、選択肢を通常の順・逆順・ランダム順の3通りに並べた正解率の平均で比べています。JGLUE は通常の順と逆順の2通りです。比べるモデル同士は、同じ入力・同じ読み込み条件で測りました。

評価セット 問数 内容 学習との関係
JGLUE JNLI dev 1,199 日本語の含意判定 学習・調整に未使用。設定を固定した後に一度だけ測定
JGLUE JCommonsenseQA valid 1,090 日本語の常識5択 同上
メールの目的・発話行為 200通(400問) 学習に使っていない Japanese-Mail-Bench のメール 学習メールと重複なし
メール4判断 37 学習とは別のメールに同じ4判断を付けたもの 学習メールと重複なし
別場面の対照メール 192 1か所だけ条件を変えたメールの対(48通×4判断) 評価専用
規則判断 3択 240 学習とは別の場面(展示会・図書室・備品配布)と書き方 評価専用
規則判断(別形式) 81 文面の形式が異なる規則問題 評価専用
MASSIVE 意図分類 293 / 99 8種の意図、別の9種の意図 評価専用
意図分類の難問 48 言い換えや訂正を含む依頼 評価専用
英語 MultiNLI 503 英語の含意判定 評価専用

上流データの帰属表示については NOTICE.md をご確認ください。本モデルのライセンスは Apache-2.0 です。なお、ベースモデルおよび各学習データの利用条件は、それぞれの提供元の規約・ライセンスに準拠します。

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