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アンパサンド
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アンパサンド(&, 英語: ampersand)は、䞊立助詞「...ず...」を意味する蚘号である。ラテン語で「...ず...」を衚す接続詞 "et" の合字を起源ずする。珟代のフォントでも、Trebuchet MS など䞀郚のフォントでは、"et" の合字であるこずが容易にわかる字圢を䜿甚しおいる。
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アンパサンド
語源
英語で教育を行う孊校でアルファベットを埩唱する堎合、その文字自䜓が単語ずなる文字("A", "I", か぀おは "O" も)に぀いおは、䌝統的にラテン語の per se(それ自䜓)を甚いお "A per se A" のように唱えられおいた。たた、アルファベットの最埌に、27番目の文字のように "&" を加えるこずも広く行われおいた。"&" はラテン語で et ず読たれおいたが、のちに英語で and ず読たれるようになった。結果ずしお、アルファベットの埩唱の最埌は "X, Y, Z, and per se and" ずいう圢になった。この最埌のフレヌズが繰り返されるうちに "ampersand" ずなたっおいき、この蚀葉は1837幎たでには英語の䞀般的な語法ずなった。 アンドレ=マリ・アンペヌルがこの蚘号を自身の著䜜で䜿い、これが広く読たれたため、この蚘号が "AmpÚre's and" ず呌ばれるようになったずいう誀った語源俗説がある。
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アンパサンド
歎史
アンパサンドの起源は1䞖玀の叀ロヌマ筆蚘䜓にたでさかのがるこずができる。叀ロヌマ筆蚘䜓では、E ず T はしばしば合字ずしお繋げお曞かれおいた(巊図「アンパサンドの倉遷」の字圢1)。それに続く、流麗さを増した新ロヌマ筆蚘䜓では、さたざたな合字が極めお頻繁に䜿われるようになった。字圢2ず3は4䞖玀䞭頃における et の合字の䟋である。その埌、9䞖玀のカロリング小文字䜓に至るラテン文字の倉遷の過皋で、合字の䜿甚は䞀般には廃れおいった。しかし、et の合字は䜿われ続け、次第に元の文字がわかりにくい字圢に倉化しおいった(字圢4から6)。 珟代のむタリック䜓のアンパサンドは、ルネサンス期に発展した筆蚘䜓での et の合字にさかのがる。1455幎のペヌロッパにおける印刷技術の発明以降、印刷業者はむタリック䜓ずロヌマ筆蚘䜓のアンパサンドの䞡方を倚甚するようになった。アンパサンドのルヌツはロヌマ時代にさかのがるため、ラテンアルファベットを䜿甚する倚くの蚀語でアンパサンドが䜿甚されるようになった。 アンパサンドはしばしばラテンアルファベットの最埌の文字ずされるこずがあった。たずえば1011幎のByrhtferthの文字衚がその䟋である。同様に、"&" は英語アルファベットの27番目の文字ずされ、アメリカ合衆囜やその他の地域でも、子䟛達はアンパサンドはアルファベットの最埌の文字だず教えられおいた。1863幎の M. B. Moore の著曞 The Dixie Primer, for the Little Folks にその䞀䟋を芋るこずができる。ゞョヌゞ・゚リオットは、1859幎に発衚した小説「アダム・ビヌド(英語版)」の䞭で、Jacob Storey に次のセリフを語らせおいる。"He thought it [Z] had only been put to finish off th' alphabet like; though ampusand would ha' done as well, for what he could see." よく知られた童謡の Apple Pie ABC は "X, Y, Z, and ampersand, All wished for a piece in hand" ずいう歌詞で締めくくられる。
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アンパサンド
歎史
アンパサンドは、ティロ匏蚘号の et ("⁊", Unicode U+204A) ずは別のものである。ティロ匏蚘号の et は、アンパサンドず意味は同じだが数字の「7」に䌌た圢の蚘号である。䞡者はずもに叀代から䜿甚され、䞭䞖を通しおラテン語の et を衚すために䜿甚された。しかし、アンパサンドずティロ匏蚘号の et はそれぞれ独立に発明されたものである。ラテン文字から発展した叀アむルランド語の文字では、アむルランド語の agus(「...ず...」)を衚すためにティロ匏蚘号の et が䜿甚されおいた。今日はゲヌル文字の䞀郚ずしお䞻に装食的な目的で䜿甚されおいる。この文字はアむルランドにおけるキリスト教時代初期に修道院の圱響によっお曞き文字に加わった可胜性がある。
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アンパサンド
手曞き
日垞的な手曞きの堎合、欧米では小文字の ε(゚プシロン)を倧きくしたもの(あるいは数字の "3" の鏡文字)に瞊線を加えた圢の単玔化されたアンパサンドがしばしば䜿われる。たた、゚プシロンの䞊䞋に瞊線たたは点を付けたものもしばしば䜿われる。 くだけた甚法ずしお、プラス蚘号("+", この蚘号もたた et の合字である)がアンパサンドの代わりに䜿われるこずがある。たた、プラス蚘号に茪を重ねたような、無声歯茎偎面摩擊音を瀺す発音蚘号「[ɬ]」のようなものが䜿われるこずもある。
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アンパサンド
同様の蚘号
ティロの速蚘には「et」を衚すための「⁊」(U+204A Tironian sign et)がある。この文字はドむツのフラクトゥヌルで䜿われたほか、ゲヌル文字でも䜿甚される。 ギリシア文字では「......ず」を意味するκαιを衚すための合字ずしお「ϗ」(U+03D7 Greek kai symbol)が䜿われるこずがある。
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アンパサンド
プログラミング蚀語
プログラミング蚀語では、C など倚数の蚀語で AND 挔算子ずしお甚いられる。以䞋は C の䟋。 PHPでは、倉数宣蚀蚘号($)の盎前に蚘述するこずで、参照枡しを行うこずができる。 BASIC 系列の蚀語では文字列の連結挔算子ずしお䜿甚される。"foo" & "bar" は "foobar" を返す。たた、䞻にマむクロ゜フト系では敎数の十六進衚蚘に &h を甚い、&h0F (十進で15)のように衚珟する。
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アンパサンド
プログラミング蚀語
SGML、XML、HTMLでは、アンパサンドを䜿っおSGML実䜓を参照する。
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蚀語
null
蚀語(げんご)は、狭矩には「声による蚘号の䜓系」をいう。 広蟞苑や倧蟞泉には次のように解説されおいる。 『日本倧癟科党曞』では、「蚀語」ずいう語は倚矩である、ず解説され、倧脳の蚀語䞭枢(英語版)に蓄えられた《語圙ず文法芏則の䜓系》を指すこずもあり、その䜓系を甚いる胜力ずしおずらえるこずもある、ず解説され、䞀方では、抜象的に「すべおの人間が共有する蚀語胜力」を指すこずもあり、「個々の個別蚀語」を指すこずもある、ず解説されおいる。
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蚀語
null
広矩の蚀語には、verbalな(蚀葉に衚す)ものずnon-verbalな(蚀葉ずしお衚されない)もの(各皮蚘号、アむコン、図圢、ボディヌランゲヌゞ等)の䞡方を含み、日垞のコミュニケヌションでは狭矩の蚀語衚珟に身振り、手振り、図瀺、擬音等も加えお衚珟されるこずもある。
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蚀語
抂説
蚀語は、人間が甚いる意志䌝達手段であり、瀟䌚集団内で圢成習埗され、意志を盞互に䌝達するこずや、抜象的な思考を可胜にし、結果ずしお人間の瀟䌚的掻動や文化的掻動を支えおいる。蚀語には、文化の特城が織り蟌たれおおり、共同䜓で甚いられおいる蚀語の習埗をするこずによっお、その共同䜓での瀟䌚的孊習、および人栌の圢成をしおいくこずになる。 ゜シュヌルの研究が、蚀語孊の発展の䞊で非垞に重芁な圹割を果たしたわけであるが、゜シュヌル以降は、「共同䜓の甚いる蚀語䜓系」のこずは「langue ラング」ず呌ばれ、それに察しお、個々の人が行う蚀語掻動は「parole パロヌル」ずいう甚語で呌ばれるようになっおいる。 《音韻》 ず 《意味》の間の結び付け方、たた、《文字》ず音韻・圢態玠・単語ずの間の結び付け方は、瀟䌚的に䜜られおいる習慣である。
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蚀語
抂説
蚀語ず非蚀語の境界が問題になるが、文字を䜿う方法ず文字を甚いない方法の区別のみで、蚀語衚珟を非蚀語衚珟から区別するこずはできない。抜象蚘号には文字衚珟ず非文字衚珟(積分蚘号やト音蚘号など)があり、文字衚珟は蚀語衚珟ず文字蚘号に分けられる。蚀語衚珟ず区別される文字蚘号ずは、文字を䜿っおいるが語(word)でないものをいい、化孊匏H2Oなどがその䟋である。化孊匏は自然蚀語の文法が䜜甚しおおらず、化孊匏独特の文法で構成されおいる。 蚀語にはさたざたな分類がある。口語、口頭蚀語、曞蚘蚀語、文語、ずいった分類があるが、重なる郚分もありはっきり分類できるものでもない。たた屈折語・膠着語・孀立語ずいったような分類もある。詳现は蚀語類型論を参照。 蚀語的衚珟は読み䞊げによっお音声衚珟、点字化により觊芚衚珟に倉換されるが、蚀語的衚珟の特性は保存され、芖芚的に衚珟されたものず同等に取り扱うこずができる。 手話に関しおは「日本語察応手話」は䞀般の日本語の話し蚀葉や曞き蚀葉ず同䞀の蚀語の「芖芚蚀語バヌゞョン」であるが、「日本手話」は䞀般の日本語ずは異なる蚀語ず考えられおおり、そちらは音声蚀語や文字蚀語ずは異なる「芖芚蚀語」ずいうこずになるなど、分類は単玔ではない。
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蚀語
抂説
以䞊の自然発生的な「自然」蚀語の他、近代以降、゚スペラントなどの囜際補助語など、人工蚀語も䜜られた。 自然蚀語以倖に぀いおは、人工蚀語・圢匏蚀語・コンピュヌタ蚀語などの各蚘事を参照。 ゞャック・デリダずいう、䞀般にポスト構造䞻矩の代衚的哲孊者ず䜍眮づけられおいるフランスの哲孊者は、「声」を基瀎ずし文字をその代替ずする発想が蚀語孊に存圚する、ず䞻匵し、それに察する批刀を投げかける立堎を䞻匵した。『グラマトロゞヌに぀いお』ず「差延」の蚘事も参照。
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蚀語
抂説
個別蚀語は、民族の滅亡や他蚀語による吞収によっお䜿甚されなくなるこずがある。このような蚀語は死語ず呌ばれ、死語が再び母語ずしお䜿甚されたこずは歎史䞊にただ䞀䟋、ヘブラむ語の䟋しかない。しかし、ヘブラむ語は自然に埩掻したわけでも完党に消滅しおいたわけでもなく、文章語ずしお存続しおいた蚀語を、パレスチナに移䜏したナダダ人たちが20䞖玀に入っお日垞語ずしお人工的に埩掻させ、むスラ゚ル建囜ずずもに公甚語に指定しお完党に再生させたものである。このほかにも、叀兞アラビア語、ラテン語、叀兞ギリシャ語のように、日垞語ずしおは消滅しおいるものの文章語ずしおは存続しおいる蚀語も存圚する。このほか、日垞ではもはや甚いられず、教兞や宗教行為のみに甚いられるようになった兞瀌蚀語も存圚する。 近幎、話者数が非垞に少ない蚀語が他蚀語に飲み蟌たれお消滅し、新たに死語ず化すこずが問題芖されるようになり、消滅の危機にある蚀語を危機蚀語ず呌ぶようになった。これは、䞖界の䞀䜓化が進み、亀通網の敎備や流通の迅速化、ラゞオ・テレビずいったマスメディアの発達によっおそれたで孀立を保っおいた小さな蚀語がそのコミュニティを維持できなくなるために起こるず考えられおいる。より倧きな芖点では英語の囜際語ずしおの勢力䌞匵による他䞻芁蚀語の勢力瞮小、いわゆる英語垝囜䞻矩もこれに含たれるずいえるが、すくなくずも21䞖玀初頭においおは英語を母語ずする民族が倚数掟を占める囜家を陀いおは英語のグロヌバル化が蚀語の危機に盎結しおいるわけではない。蚀語消滅は、隣接したより倧きな蚀語集団ずの亀流が䞍可欠ずなり、その蚀語圏に小蚀語集団が取り蟌たれるこずによっお起きる。こうした動きは人的亀流や文化的亀流が盛んな先進囜内においおより顕著であり、北アメリカやオヌストラリアなどで蚀語消滅が急速に進み、経枈成長ず蚀語消滅ずの間には有意な盞関があるずの研究も存圚する。その他の地域においおも蚀語消滅が進んでおり、2010幎にはむンド領のアンダマン諞島においお蚀語が䞀぀消滅し、他にも同地域においお消滅の危機にある蚀語が存圚するずの譊告が発せられた。 䞖界に存圚する自然蚀語の䞀芧は蚀語の䞀芧を参照
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蚀語
歎史
蚀語がい぀どのように生たれたのか分かっおおらず、耇数の仮説が存圚する。䟋えばデンマヌクの蚀語孊者オットヌ・むェスペルセンは、以䞋のような仮説を列挙しおいる。 なお、蚀語が生たれたのが地球䞊の䞀ヶ所なのか、耇数ヶ所なのかも分かっおいない。 生物孊的な芳点から蚀語の起源を探ろうずいう詊みもある。最近の分子生物孊的研究によれば、FOXP2ず名づけられおいる遺䌝子に生じたある皮の倉異が蚀語胜力の獲埗に぀ながった可胜性がある。さらにその倉異は珟生人類ずネアンデルタヌル人が分化する以前の30-40䞇幎前にはすでに生じおいたずの解析結果が発衚されおおり、珟生人類が登堎ずずもに既に蚀語を身に぀けおいた可胜性も考えられる。しかしFOXP2は蚀語胜力を有しない他の動物の倚くが持っおいるこず、FOXP2の倉異が蚀語胜力の獲埗の必芁条件であるずの盎接的な蚌明はただなされおいないこずなどに留意する必芁がある。
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蚀語
歎史
生物の堎合には、進化が止たった生物が珟圚も生き残っおいる「生きおいる化石」ず呌ばれるものがある。たた、䞀芋䌌おいる2皮類が党然別の皮類から進化しおいたずいうケヌスもある。蚀語にも同じような珟象が起きおおり、その倉化の速床は䞀定ではなく、䟵略・亀易・移動等他民族ずの接觊が倚ければ、その時蚀語も倧きく倉化する。代衚䟋ずしお英語、フランス語、ルヌマニア語、アルバニア語、アルメニア語等がある。逆に接觊が少ないずほずんど倉化しなくなる。代衚䟋ずしおドむツ語、アむスランド語、ギリシャ語、スラノ語掟、バルト語掟、サンスクリット語等があり、特にアむスランド語は基本文法が1000幎前ずほずんど倉っおいない。 蚀語はもずもずいく぀かの祖語から分化したず考えられおおり、同䞀の祖語から発生したグルヌプを語族ず呌ぶ。語族はさらに語掟、語矀、そしお蚀語ず现分化されおいく。䞖界の倧倚数の蚀語はなんらかの語族に属するが、なかには珟存する他の蚀語ず系統関係が立蚌されおおらず、語族に分類できない孀立した蚀語も存圚する。たた、地理・文化的に近接する異なった系統の蚀語が盞互に圱響しあい顕著に類䌌する事䟋も芋られ、これは蚀語連合ず呌ばれる。 同䞀語族に属する蚀語矀の堎合、共通語圙から蚀語の分化した幎代を割り出す方法も考案されおいる。
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蚀語
歎史
䞀぀の蚀語の蚀語史を䜜る堎合、単語・綎り・発音・文法等から叀代・䞭䞖・近代ず3分割し、䟋えば「䞭䞖フランス語」等ず呌ぶ。 ある蚀語ず他の蚀語が接觊した堎合、䞡蚀語の話者の亀流が深たるに぀れお様々な倉化が発生する。これを蚀語接觊ずいう。蚀語接觊によっお、䞡蚀語には盞手の蚀語から語圙を借甚した借甚語が発生するほか、亀流が深たるに぀れお商業や生掻䞊の必芁から混成蚀語が発生するこずがある。この混成蚀語は、初期にはピゞン蚀語ず呌ばれる非垞に簡略化された圢をずるが、やがお語圙が増え蚀語ずしお成長しおくるず、『クレオヌル蚀語ずいう「新しい蚀語」ずなった』ず芋なす。クレオヌル蚀語はピゞン蚀語ず比べ語圙も倚く、䜕よりきちんず䜓系だった文法が存圚しおおり、「䞀個の独立した蚀語」ず芋なしお党く差し支えない。クレオヌル蚀語はピゞン蚀語ず違い、母語話者が存圚する、぀たり幌いころから䞻にその蚀語を話しお育った人々がいる、ずいうこずも特城である。 䞭䞖の䞖界においおはしばしば、文語ず日垞䜿甚する蚀語ずの間には隔たりがみられ、なかには䞭䞖ペヌロッパにおけるラテン語のようにその土地の蚀葉ず党く異なる蚀語を文章語ずしお採甚しおいる䞖界も存圚した。ラテン語は欧州においお知識人の間の共通語ずしお甚いられ、ルネサンスなどで倧きな圹割を果たしたが、やがお印刷術の発展や宗教改革などによっお各囜においお䜿甚される日垞蚀語が文語ずしお甚いられるようになった。この際、それたで方蚀の連続䜓しか持たなかった各囜においお、その蚀語を筆蚘する暙準的な衚蚘法が定たっおいき、各囜においお囜内共通語ずしおの暙準語が制定されるようになった。これは出版物などによっお埐々に定たっおいくものもあれば、䞭倮に公的な蚀語統制機関を眮いお囜家䞻導で暙準語を制定するものもあったが、いずれにせよこうした蚀語の敎備ず囜内共通語の成立は、囜民囜家を成立させるうえでの重芁なピヌスずなっおいった。䞀方で、暙準語の制定は方蚀連続䜓のその他の蚀語を方蚀ずするこずになり、蚀語内での序列を぀けるこずに぀ながった。
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蚀語
歎史
最も新しい蚀語であり、たた誕生する瞬間がずらえられた蚀語ずしおは、ニカラグアの子䟛達の間で1970幎代埌半に発生した「ニカラグア手話」がある。これは、蚀語胜力は人間に生埗のものであるずいう考えを裏付けるものずなった。
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蚀語
䞖界の蚀語
珟圚䞖界に存圚する蚀語の数は千数癟ずも数千ずも蚀われる。1939幎にアメリカのルむス・ハヌバヌト・グレむ(en:Louis Herbert Gray)は著曞 Foundations of Language においお「2796蚀語」ず唱え、1979幎にドむツのマむダヌが4200から5600蚀語ず唱えおおり、䞉省堂の『蚀語孊倧蟞兞』「䞖界蚀語線」では8000超の蚀語を扱っおいる。 しかし、正確に数えるこずはほが䞍可胜である。これは、未発芋の蚀語や、消滅し぀぀ある蚀語があるためだけではなく、原理的な困難があるためでもある。䌌おいるが同じではない「蚀語」が隣り合っお存圚しおいるずき、それは䞀぀の蚀語なのか別の蚀語なのか区別するこずは難しい。これはある人間集団を「蚀語の話者」ずするか「方蚀の話者」ずするかの問題でもある。たずえば、旧ナヌゎスラビアに属しおいたセルビア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゎビナ、モンテネグロの4地域の蚀語は非垞に䌌通ったものであり、孊術的には方蚀連続䜓であるセルビア・クロアチア語ずしお扱われる。たた旧ナヌゎスラビアの政治䞊においおも囜家統䞀の芳点䞊、これらの蚀語は同䞀蚀語ずしお扱われおいた。しかし1991幎からのナヌゎスラビア玛争によっおナヌゎスラビアが厩壊するず、独立した各囜は各地方の方蚀をそれぞれ独立蚀語ずしお扱うようになり、セルビア語、クロアチア語、ボスニア語の䞉蚀語に政治的に分けられるようになった。さらに2006幎にモンテネグロがセルビア・モンテネグロから独立するず、モンテネグロ語がセルビア語からさらに分けられるようになった。こうした、明確な暙準語を持たず耇数の蚀語䞭心を持぀蚀語のこずを耇数䞭心地蚀語ず呌び、英語などもこれに含たれる。 逆に、䞭囜においおは北京語やそれを元に成立した普通話ず、䞊海語や広東語ずいった遠隔地の蚀語ずは差異が倧きく䌚話が成立しないほどであるが、曞き蚀葉は共通であり、たたあくたでも䞭囜語矀には属しおいお察応関係が明確であるため、これら蚀語はすべお䞭囜語内の方蚀ずしお扱われおいる。
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蚀語
䞖界の蚀語
同じ蚀語かどうかを刀定する基準ずしお、盞互理解性を提唱する考えがある。話者が盞手の蚀うこずを理解できる堎合には、同䞀蚀語、理解できない堎合には別蚀語ずする。盞互理解性は蚀語間の距離を䌝える重芁な情報であるが、これによっお䞀぀の蚀語の範囲を確定しようずするず、技術的難しさにずどたらない困難に盎面する。䞀぀は、Aの蚀うこずをBが聞き取れおも、Bの蚀うこずをAが聞き取れないような蚀語差があるこずである。もう䞀぀は、同系列の蚀語が地理的な広がりの䞭で埐々に倉化しおいる堎合に、どこで、いく぀に分割すべきなのか、あるいはたったく分割すべきでないのかを決められないこずである。 こうした困難に際しおも、単䞀の基準を決めお分類しおいくこずは、理屈の䞊では可胜である。しかしあえお単䞀基準を抌し通す蚀語孊者は珟実にはいない。ある集団を「蚀語話者」ずするか「方蚀話者」ずするかには、政治的・文化的アむデンティティの問題が深く関係しおいる。どのような基準を蚭けようず、ある地域で倚くの賛成を埗られる分類基準は、別の地域で匷い反発を受けるこずになる。そうした反発は誀りだず蚀うための論拠を蚀語孊はもっおいないので、結局は慣習に埓っお、地域ごずに異なる基準を甚いお分類するこずになる。 蚀語ず方蚀の区別に぀いお、珟圚なされる説明は二぀である。第䞀は、蚀語ず方蚀の区別にはなんら蚀語孊的意味はないずする。第二のものはたず、どの方蚀もそれぞれ蚀語だずする。その䞊で、ある暙準語に察しお非暙準語の関係にある同系蚀語を、方蚀ずする。暙準語の遞定は政治によるから、これもたた「蚀語ず方蚀の区別に蚀語孊的意味はない」ずする点で、第䞀ず同じである。この定矩では、蚀語を秀にかけお刀定しおいるのではなく、人々がその蚀語をどう思っおいるかを秀にかけおいるのである。
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蚀語
䞖界の蚀語
ある蚀語同士が独立の蚀語同士なのか、同じ蚀語の方蚀同士なのかの刀定は非垞に恣意的であるが、その䞀方で、明確に系統関係が異なる蚀語同士は、たずえ共通の集団で話されおいおも、方蚀同士ずはみなされないずいう事実も有る。たずえば、䞭囜甘粛省に䜏む少数民族ナヌグ族は西郚に䜏むものはテュルク系の蚀語を母語ずし、東郚に䜏むものはモンゎル系の蚀語を母語ずしおいる。䞡者は同じ民族だずいう意識があるが、その蚀語は方蚀同士ではなく、西郚ナヌグ語、東郚ナヌグ語ず別々の蚀語ずしお扱われる。たた海南島にすむ臚高人も民族籍䞊は挢民族であるが、その蚀語は挢語の方蚀ずしおは扱われず、系統どおりタむ・カダむ語族の臚高語ずしお扱われる。 䜿甚する文字は同蚀語かどうかの刀断基準ずしおはあたり甚いられない。蚀語は基本的にどの文字でも衚蚘可胜なものであり、ある蚀語が䜿甚する文字を倉曎するこずや二皮以䞊の文字を䜵甚するこずは珍しいこずではなく、たた文法などに文字はさほど圱響を䞎えないためである。デヌノァナヌガリヌ文字を甚いるむンドの公甚語であるヒンディヌ語ずりルドゥヌ文字を甚いるパキスタンの公甚語であるりルドゥヌ語は、ヒンドゥスタヌニヌ語ずしお同䞀蚀語たたは方蚀連続䜓ずしお扱われるこずがある。
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蚀語
話者数の統蚈順䜍
䞋衚の母語話者数および分類は、『゚スノロヌグ第21版』に準拠する。同資料は2021幎時点の掚蚈で、䞭囜語は13方蚀、アラビア語は20方蚀、ラフンダヌ語は4方蚀の合蚈である。 䞊図の通り、最も母語話者の倚い蚀語は䞭囜語であるが、公甚語ずしおいる囜家は䞭華人民共和囜ず䞭華民囜、それにシンガポヌルの3぀の囜家にすぎず、䞖界においお広く䜿甚されおいる蚀語ずいうわけではない。たた、共通語である普通話を含め, 13個の方蚀が存圚する。 䞊蚘の資料で話者数2䜍の蚀語はスペむン語である。これはペヌロッパ倧陞のスペむンを発祥ずする蚀語であるが、17䞖玀のスペむンによる新倧陞の怍民地化を経お、南アメリカおよび北アメリカ南郚における広倧な蚀語圏を獲埗した。2021幎床においおスペむン語を公甚語ずする囜々は21カ囜にのがる。さらにほが同系統の蚀語である5䜍のポルトガル語圏を合わせた新倧陞の領域はラテンアメリカず呌ばれ、広倧な共通蚀語圏を圢成しおいる。
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蚀語
話者数の統蚈順䜍
䞊蚘の資料で英語の話者人口は4䜍だが、公甚語ずしおは55か囜ず最も倚くの囜で話されおいる。さらに、英語はアメリカ合衆囜やむギリスの公甚語であるため䞖界で広く重芁芖されおいる。䞖界の䞀䜓化に䌎い研究やビゞネスなども英語で行われる堎面が増え、非英語圏どうしの䜏民の亀枉においおも共通語ずしお英語を䜿甚する堎合があるなど、英語の䞖界共通語ずしおの圱響力は増倧しおいく傟向にある。 英語に次ぐ囜際語ずしおは、17䞖玀から19䞖玀たで西掋で最も有力な囜際語であったフランス語が挙げられる。フランス語の話者は2億3000䞇人ずトップ5にも入らないが、フランス語を公甚語ずする囜々はアフリカの旧フランス怍民地を䞭心に29カ囜にのがる。 話者数7䜍のアラビア語も広い共通蚀語圏を持぀蚀語である。アラビア語はクルアヌンの蚀語ずしおむスラム圏党域に䜿甚者がおり、ずくに北アフリカから䞭東にかけお母語話者が倚いが、公甚語ずする囜々は23カ囜にのがっおいお、ひず぀のアラブ文化圏を圢成しおいる。ただしこれも文語であるフスハヌず口語であるアヌンミヌダに分かれおおり、アヌンミヌダはさらに倚数の方蚀にわかれおいる。
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蚀語
話者数の統蚈順䜍
囜連の公甚語は、英語、フランス語、ロシア語、䞭囜語、スペむン語、アラビア語の6぀であるが、これは安党保障理事䌚の垞任理事囜の蚀語に、広倧な共通蚀語圏を持぀スペむン語ずアラビア語を加えたものである。 蚀語は囜家を成立させるうえでの重芁な芁玠であり、カナダにおける英語ずフランス語や、ベルギヌにおけるオランダ語ずフランス語のように、異なる蚀語間の察立がしばしば蚀語戊争ず呌ばれるほどに激化しお独立問題に発展し、囜家に倧きな圱響を及がすこずも珍しくない。東パキスタンのように、西パキスタンの蚀語であるりルドゥヌ語の公甚語化に反発しおベンガル語を同栌の囜語ずするこずを求めたこずから独立運動が起き、最終的にバングラデシュずしお独立したような䟋もある。 こうした堎合、蚀語圏別に倧きな自治暩を䞎えたり、囜家の公甚語を耇数制定したりするこずなどによっお少数掟蚀語話者の䞍満をなだめる政策はよく甚いられる。蚀語圏に匷い自治暩を䞎える兞型䟋はベルギヌで、同囜では1970幎に蚀語共同䜓が蚭立され、数床の倉曎を経おフラマン語共同䜓、フランス語共同䜓、ドむツ語共同䜓の3぀の蚀語共同䜓の䜵存する連邊囜家ずなった。公甚語を耇数制定する䟋ではスむスが兞型的であり、それたでドむツ語のみであった公甚語が1848幎の憲法によっおドむツ語・フランス語・むタリア語の䞉公甚語制ずなり、さらに1938幎にはロマンシュ語が囜語ずされた。この傟向が特に匷いのはむンドであり、1956幎以降それたでの地理的な区分から同系統の蚀語を甚いる地域ぞず州を再線する、いわゆる「蚀語州」政策を取っおいる。
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蚀語
話者数の統蚈順䜍
囜家における蚀語の構造は、公甚語-共通語-民族語(郚族語、方蚀)の䞉局の構造からなっおいる。もっずも、公甚語ず共通語、たた䞉局すべおが同じ蚀語である堎合はその分だけ局の数は枛少する。 日本を䟋にずれば、各地方ではその地方の方蚀を䜿っおいる。぀たり、同じ地方のコミュニティ内で通甚する蚀語を䜿甚しおいる。これが他地方から来た人を盞手にする堎合ずなるず、いわゆる暙準語を䜿甚するこずずなる。日本では他に有力な蚀語集団が存圚しないため、政府関係の文曞にも日本暙準語がそのたた䜿甚される。぀たり、共通語ず公甚語が同䞀であるため、公甚語-方蚀の二局構造ずなっおいる。 公甚語ず共通語は分離しおいない囜家も倚いが、アフリカ倧陞の諞囜家においおはこの䞉局構造が明確にあらわれおいる。これらの囜においおは、政府関係の公甚語は旧宗䞻囜の蚀語が䜿甚されおいる。孊校教育もこの蚀語で行われるが、民族語ずかけ離れた存圚であるこずもあり囜民の䞭で䜿甚できる局はさほど倚くない。この穎を埋めるために、各地域においおは共通語が話されおいる。銖郜がある地域の共通語が匷倧化し、囜の倧郚分を芆うようになるこずも珍しくない。しかし文法の敎備などの遅れや、囜内他蚀語話者の反察、公甚語の䜿甚胜力が゚リヌト局の暩力の源泉ずなっおいるなどの事情によっお、共通語が公甚語化はされないこずがほずんどである。その䞋に各民族の民族語が存圚する。
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蚀語
蚀語の生物孊
詳现は心理蚀語孊及び、神経蚀語孊を参照 蚀語機胜は基本的にヒトに固有のものであるため、蚀語の研究には少数の䟋倖を陀き動物モデルを䜜りにくい。そのため、脳梗塞などで脳の局所が砎壊された症䟋での研究や、被隓者に2぀の単語を呈瀺しその干枉効果を研究するなどの心理孊的研究が䞻になされおきたが、1980幎代埌半より脳機胜むメヌゞング研究が手法に加わり、被隓者がさたざたな蚀語課題を行っおいるずきの脳掻動を芖芚化できるようになった。 叀兞的なブロヌカ領域、りェルニッケ領域のほか、シルノィりス裂を囲む広い範囲(瞁䞊回、角回、䞀次・二次聎芚野、䞀次運動野、䜓性感芚野、巊前頭前野、巊䞋偎頭回)にわたっおいる。脳梗塞などで各郚が損傷されるず、それぞれ違ったタむプの倱語が出珟する。䟋えば巊前頭前野付近の損傷で生じるブロヌカ倱語は運動倱語であり、自発語は非流暢性ずなり埩唱、曞字も障害される。巊偎頭葉付近の障害で生じるりェルニッケ倱語は感芚倱語であり自発語は流暢であるが、蚀語理解や埩唱が障害され、文字による蚀語理解も䞍良である。
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蚀語
蚀語の生物孊
ほずんどの右利きの人では、単語、文法、語圙などの䞻芁な蚀語機胜は巊半球優䜍である。しかし声の抑揚(プロ゜ディ)の把握、比喩の理解に぀いおは右半球優䜍であるず蚀われおいる。 文字の認識には巊玡錘状回、䞭・䞋埌頭回が関䞎するが、挢字(衚意文字)ずひらがな(衚音文字)で掻動する郚䜍が異なるず蚀われおいる。 これも倚方面から研究されおいる。個人の蚀語胜力は、読字障害、りィリアムズ症候矀、自閉症などのように党䜓的な知的胜力ずは乖離するこずがあり、個䜓発生やヒトの進化における蚀語の起源などにヒントを䞎えおいる。たた、ヒトは環境の䞭で聎取する音声から自力で文法などの芏則を芋出し孊習する機胜を生埗的に備えおいるため、特に教わらなくおも蚀語を孊習できるずする生埗論ずいう考えも存圚する。
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蚀語
蚀語の生物孊
最近の近赀倖線分光法を甚いた研究においお、生埌2から5日の新生児が逆再生よりも順再生の声を聞いたほうが、あるいは倖囜語より母囜語を聞いたずきの方が聎芚皮質の血流増加が倧きかったず報告されおおり、出産前から母䜓内で蚀語を聎いおいるこずが瀺唆される。
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日本語
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日本語(にほんご、にっぜんご)は、日本囜内や、か぀おの日本領だった囜、そしお囜倖移民や移䜏者を含む日本人同士の間で䜿甚されおいる蚀語。日本は法什によっお公甚語を芏定しおいないが、法什その他の公甚文は党お日本語で蚘述され、各皮法什においお日本語を甚いるこずが芏定され、孊校教育においおは「囜語」の教科ずしお孊習を行うなど、事実䞊日本囜内においお唯䞀の公甚語ずなっおいる。 䜿甚人口に぀いお正確な統蚈はないが、日本囜内の人口、及び日本囜倖に䜏む日本人や日系人、日本がか぀お統治した地域の䞀郚䜏民など、玄1億3,000䞇人以䞊ず考えられおいる。統蚈によっお前埌する堎合もあるが、この数は䞖界の母語話者数で䞊䜍10䜍以内に入る人数である。 たた第䞀次䞖界倧戊埌(日独戊争)、圓時ドむツ垝囜の怍民地であった珟圚のパラオ共和囜は戊勝囜の日本に委任統治(南掋諞島を参照)されるこずずなったため、珟圚も䞀郚地域で日本語を公甚語ず定めおいる。
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日本語
特城
日本語の音韻は、「っ」「ん」を陀いお母音で終わる開音節蚀語の性栌が匷く、たた暙準語(共通語)を含め倚くの方蚀がモヌラを持぀。アクセントは高䜎アクセントである。 なお元来の叀い倧和蚀葉では、原則ずしお などの特城があった(「系統」および「音韻」の節参照)。
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日本語
特城
文は、「䞻語・修食語・述語」の語順で構成される。修食語は被修食語の前に䜍眮する。たた、名詞の栌を瀺すためには、語順や語尟を倉化させるのでなく、文法的な機胜を瀺す機胜語(助詞)を埌ろに付け加える(膠着させる)。これらのこずから、蚀語類型論䞊は、語順の点ではSOV型の蚀語に、圢態の点では膠着語に分類される(「文法」の節参照)。 語圙は、叀来の倧和蚀葉(和語)のほか、挢語(字音語)、倖来語、および、それらの混ざった混皮語に分けられる。字音語(挢字の音読みに由来する語の意、䞀般に「挢語」ず称する)は珟代の語圙の䞀郚分を占めおいる。たた、「絵/画(ゑ)」など、もずもず音であるが和語ず認識されおいるものもある。さらに近代以降には西掋由来の語を䞭心ずする倖来語が増倧しおいる(「語皮」の節参照)。 埅遇衚珟の面では、文法的・語圙的に発達した敬語䜓系があり、叙述される人物どうしの埮劙な関係を衚珟する(「埅遇衚珟」の節参照)。
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日本語
特城
日本語は地方ごずに倚様な方蚀があり、ずりわけ琉球諞島で方蚀差が著しい(「方蚀」の節参照)。近䞖䞭期たでは京郜方蚀が䞭倮語の地䜍にあったが、近䞖埌期には江戞方蚀が地䜍を高め、明治以降の珟代日本語では東京山の手の䞭流階玚以䞊の方蚀(山の手蚀葉)を基盀に暙準語(共通語)が圢成された(「暙準語」参照)。 衚蚘䜓系はほかの諞蚀語ず比べお極めお耇雑か぀柔軟性の高さが特城である。挢字(囜字を含む。音読みおよび蚓読みで甚いられる)ず平仮名、片仮名が日本語の䞻芁な文字であり、垞にこの3皮類の文字を組み合わせお衚蚘する(「字皮」の節参照)。衚音文字で衚蚘䜓系を耇数持぀ため、圓お字をせずに倖来語を衚蚘するこずが可胜だが、ラテン文字(ロヌマ字)やギリシャ文字(医孊・科孊甚語に倚甚)などもしばしば甚いられる。たた、瞊曞きず暪曞きのどちらでも衚蚘するこずが可胜である(衚蚘䜓系の詳现に぀いおは「日本語の衚蚘䜓系」参照)。 音韻は「子音+母音」音節を基本ずし、母音は5皮類しかないなど、分かりやすい構造を持぀䞀方、盎音ず拗音の察立、「1音節2モヌラ」の存圚、無声化母音、語の組み立おに䌎っお移動する高さアクセントなどの特城がある(「音韻」の節参照)。
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日本語
分垃
日本語は、䞻に日本囜内で䜿甚される。話者人口に぀いおの調査は囜内・囜倖を問わずいただないが、日本の人口に基づいお考えられるこずが䞀般的である。 日本囜内に、法什䞊、日本語を公甚語ないし囜語ず定める盎接の芏定はない。しかし、法什は日本語で蚘されおおり、裁刀所法においおは「裁刀所では、日本語を甚いる」(同法74条)ずされ、文字・掻字文化振興法においおは「囜語」ず「日本語」が同䞀芖されおおり(同法3条、9条)、その他倚くの法什においお、日本語が唯䞀の公甚語ないし囜語であるこずが前提ずされおいる。たた、法文だけでなく公甚文はすべお日本語のみが甚いられ、孊校教育では日本語が「囜語」ずしお教えられおいる。 日本では、テレビやラゞオ、映画などの攟送、小説や挫画、新聞などの出版の分野でも、日本語が䜿われるこずがほずんどである。囜倖のドラマや映画が攟送される堎合でも、基本的には日本語に蚳し、字幕を付けたり声を圓おたりしおから攟送されるなど、受け手が日本語のみを理解するこずを前提ずしお䜜成される。原語のたた攟送・出版されるものも存圚するが、それらは倖囜向けに発衚される前提の論文、もしくは日本圚䜏の倖囜人、あるいは原語の孊習者など限られた人を察象ずしおおり、倧倚数の日本人に向けたものではない。
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日本語
分垃
日本囜倖では、䞻ずしお、䞭南米(ペルヌ・ブラゞル・ボリビア・ドミニカ共和囜・パラグアむなど)やハワむなどの日本人移民の間に日本語の䜿甚がみられるが、3䞖・4䞖ず䞖代が䞋るにしたがっお非日本語話者が倚くなっおいるずいう。たた、倪平掋戊争の終結以前に日本領ないし日本の勢力䞋にあった朝鮮総督府の朝鮮半島・台湟総督府の台湟・旧満州囜で珟圚䞭華人民共和囜の䞀郚・暺倪庁の暺倪(サハリン)・旧南掋庁の南掋諞島(珟圚の北マリアナ諞島・パラオ・マヌシャル諞島・ミクロネシア連邊)などの地域では、日本語教育を受けた人々の䞭に、珟圚でも日本語を蚘憶しお話す人がいる。台湟では先䜏民の異なる郚族同士の䌚話に日本語が甚いられるこずがあるだけでなく、宜蘭クレオヌルなど日本語ずタむダル語のクレオヌル蚀語も存圚しおいる。たた、パラオのアンガりル州では歎史的経緯から日本語を公甚語の䞀぀ずしお採甚しおいるが、珟圚州内には日本語を日垞䌚話に甚いる䜏民は存圚せず、象城的なものに留たっおいる。 日本囜倖の日本語孊習者は2015幎調査で365䞇人にのがり、䞭華人民共和囜の玄95䞇人、むンドネシアの玄75䞇人、倧韓民囜の玄56䞇人、オヌストラリアの玄36䞇人、台湟の玄22䞇人が䞊䜍ずなっおいる。地域別では、東アゞア・東南アゞアで党䜓の孊習者の玄8割を占めおいる。日本語教育が行われおいる地域は、137か囜・地域に及んでいる。たた、日本囜内の日本語孊習者は、アゞア地域の玄16䞇人を䞭心ずしお玄19䞇人に䞊っおいる。
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日本語
系統
「日本語」の範囲を本土方蚀のみずした堎合、琉球語が日本語ず同系統の蚀語になり䞡者は日琉語族を圢成する。 琉球列島(旧琉球王囜領域)の蚀葉は、日本語ず系統を同じくする別蚀語(琉球語ないしは琉球諞語)ずし、日本語ずたずめお日琉語族ずされおいる。共通点が倚いので「日本語の䞀方蚀(琉球方蚀)」ずする堎合もあり、このような堎合は日本語は「孀立した蚀語」ずいう䜍眮づけにされる。 日本語(族)の系統に぀いおは明治以来様々な説が議論されおきたが、いずれも他の語族ずの同系の蚌明に至っおおらず、䞍明のたたである。
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日本語
系統
アルタむ諞語に属するずする説は、明治時代末から特に泚目されおきた。その根拠ずしお、叀代の日本語(倧和蚀葉)においお語頭にr音(流音)が立たないこず、䞀皮の母音調和が芋られるこずなどが挙げられる。叀代日本語に䞊蚘の特城が芋られるこずは、日本語が類型ずしお「アルタむ型」の蚀語である根拠ずされる。アルタむ諞語に属するずされるそれぞれの蚀語の芪族関係を支持する孊者のほうがただ倚いが、最近のむギリスではアルタむ諞語の芪族関係を吊定する孊者も珟れおいる。 朝鮮語ずは語順や文法構造で類䌌点が非垞に倚い。音韻の面でも、固有語においお語頭に流音が立たないこず、䞀皮の母音調和が芋られるこずなど、共通の類䌌点がある(その結果、日本語も朝鮮語もアルタむ諞語ず分類される堎合がある)。䞖界の諞蚀語の広く比范した堎合、広く「朝鮮語は日本語ず最も近い蚀語」ずされおいる。ただし、閉音節や子音連結が存圚する、有声・無声の区別が無い、ずいった盞違もある。基瀎語圙は、共通点もあるが、かなり盞違する面もある。 玀元8䞖玀たでに蚘録された朝鮮半島の地名(「高句麗地名」を指す)の䞭には、満州南郚を含む朝鮮半島䞭郚以北に、意味や音韻で日本語ず類䌌した地名を耇数芋いだせる。これを論拠ずしお、叀代の朝鮮半島では朝鮮語ずずもに日本語ず近瞁の蚀語である「半島日本語」が話されおいたず考えられおいる。
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日本語
系統
たた、高句麗語に鉛(なたり)=那勿(ナムル)、泉(いずみ)=斌乙、土(぀ち)は内、口(くち)は口次ず呌んでいた蚘録があり、高句麗の歊将である泉蓋蘇文は日本曞玀で䌊梚柯須圌(むリカスミ)ず蚘録されおいお、泉(いずみ)は高句麗語で斌乙(むリ)ず呌ばれおいたこずが分かる。件の地名が高句麗の旧領域内に分垃しおいるこずから、倚くの研究は半島日本語は「高句麗語」であるずしおいる。 䌊藀英人は半島日本語(倧陞倭語)を高句麗語ずした䞊で、日本語ず半島日本語は同じ祖語から分かれた同系統の蚀語であり、半島日本語集団から分かれた集団が玀元前900幎から玀元700幎にかけお氎田蟲耕を携え日本列島に枡来したず考えた。 なお、䌊藀英人は半島日本語が京阪匏アクセントず類䌌しおいるこずを指摘しおいる。
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日本語
系統
䞭囜語ずの関係に関しおは、日本語は䞭囜の挢字を借甚語ずしお広範囲に取り入れおおり、語圙のうち挢字を甚いたものに関しお、圱響を受けおいる。だが語順も文法も音韻も倧きく異なるので、系統論的には別系統の蚀語ずされる。 アむヌ語は、語順(SOV語順)においお日本語ず䌌る。ただし、文法・圢態は類型論的に異なる抱合語に属し、音韻構造も有声・無声の区別がなく閉音節が倚いなどの盞違がある。基瀎語圙の類䌌に関する指摘もあるが、䟋は䞍充分である。䞀般に䌌おいるずされる語の䞭には、日本語からアむヌ語ぞの借甚語が倚く含たれるずみられる。 南方系のオヌストロネシア語族ずは、音韻䜓系や語圙に関する類䌌も指摘されおいるが、これは偶然䞀臎したものであり、互いに関係があるずいう根拠はない。
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日本語
系統
ドラノィダ語族ずの関係を䞻匵する説もあるが、これを認める研究者は少ない。倧野晋は日本語が語圙・文法などの点でタミル語ず共通点を持぀ずの説を唱えるが、比范蚀語孊の方法䞊の問題から批刀が倚い たた、レプチャ語・ヘブラむ語などずの同系論も過去に存圚したが、これに関しおはほずんど疑䌌科孊の範疇に収たる。
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日本語
音韻
日本語話者は普通、「いっぜん(䞀本)」ずいう語を、「い・っ・ぜ・ん」の4単䜍ず捉えおいる。音節ごずにたずめるならば [ip̚.poÉŽ] のように2単䜍ずなるずころであるが、音韻的な捉え方はこれず異なる。音声孊䞊の単䜍である音節ずは区別しお、音韻論では「い・っ・ぜ・ん」のような単䜍のこずをモヌラ(拍)ず称しおいる。 日本語のモヌラは、倧䜓は仮名に即しお䜓系化するこずができる。「いっぜん」ず「たったく」は、音声孊䞊は [ip̚poÉŽ] [mat̚takɯ] であっお共通する単音がないが、日本語話者は「っ」ずいう共通のモヌラを芋出す。たた、「ん」は、音声孊䞊は埌続の音によっお [ÉŽ] [m] [n] [ŋ] などず倉化するが、日本語の話者自らは同䞀音ず認識しおいるので、音韻論䞊は1皮類のモヌラずなる。 日本語では、ほずんどのモヌラが母音で終わっおいる。それゆえに日本語は開音節蚀語の性栌が匷いずいうこずができる。もっずも、特殊モヌラの「っ」「ん」には母音が含たれない。
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日本語
音韻
モヌラの皮類は、以䞋に瀺すように111皋床存圚する。ただし、研究者により数え方が少しず぀異なる。「が行」の音は、語䞭語尟では錻音(いわゆる錻濁音)の「か゚行」音ずなる堎合があるが、「が行」ず「か゚行」ずの違いは䜕ら匁別の機胜を提䟛せず、単なる異音どうしに過ぎない。そこで、「か゚行」を陀倖しお数える堎合、モヌラの数は103皋床ずなる。これ以倖に、「倖来語の衚蚘」第1衚にもある「シェ」「チェ」「ツァ・ツェ・ツォ」「ティ」「ファ・フィ・フェ・フォ」その他の倖来音を含める堎合は、さらにたた数が倉わっおくる。このほか、倖来語の衚蚘においお甚いられる「ノァ・ノィ・ノ・ノェ・ノォ」に぀いおは、バ行ずしお発音されるこずが倚いものの、独立した音韻ずしお発音されるこずもあり、これらを含めるずさらに増えるこずずなる。 なお、五十音図は、音韻䜓系の説明に䜿われるこずがしばしばあるが、䞊蚘の日本語モヌラ衚ず比べおみるず、少なからず異なる郚分がある。五十音図の成立は平安時代にさかのがるものであり、珟代語の音韻䜓系を反映するものではないこずに泚意が必芁である(「日本語研究史」の節の「江戞時代以前」を参照)。 母音は、「あ・い・う・え・お」の文字で衚される。音韻論䞊は、日本語の母音はこの文字で衚される5個であり、音玠蚘号では以䞋のように蚘される。
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日本語
音韻
䞀方、音声孊䞊は、基本の5母音は、それぞれ に近い発音ず捉えられる。̈ は䞭舌寄り、̠ は埌寄り、̜ は匱めの円唇、̹ は匷めの円唇、˕ は䞋寄り、˔ は䞊寄りを瀺す補助蚘号である。 日本語の「あ」は、囜際音声蚘号 (IPA) では前舌母音 [a] ず埌舌母音 [ɑ] の䞭間音 [À] に圓たる。「い」は少し埌寄りであり [iÌ ] が近い。「え」は半狭母音 [e] ず半広母音 [ɛ] の䞭間音であり、「お」は半狭母音 [o] ず半広母音 [ɔ] の䞭間音である。
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日本語
音韻
日本語の「う」は、東京方蚀では、英語などの [u] のような円唇埌舌母音より、少し䞭舌よりで、それに䌎い円唇性が匱たり、䞭舌母音のような匵唇でも円唇でもないニュヌトラルな唇か、それよりほんの僅かに前に突き出した唇で発音される、半埌舌埮円唇狭母音である。これは舌ず唇の動きの連関で、前舌母音は匵唇、䞭舌母音は平唇・ニュヌトラル(ただしニュヌトラルは、珟行のIPA衚蚘では非円唇ずしお、匵唇ず同じカテゎリヌに入れられおいる)、埌舌母音は円唇ずなるのが自然であるずいう法則に適っおいる。しかし「う」は母音融合などで芋られるように、音韻䞊は未だに円唇埌舌狭母音ずしお機胜する。たた、[ɯβ] ずいう衚蚘も行われる。 円唇性の匱さを匷調するために、[ɯ] を䜿うこずもあるが、これは本来朝鮮語に芋られる、iのような完党な匵唇でありながら、u のように埌舌の狭母音を衚す蚘号であり、円唇性が枛衰し぀぀も残存し、か぀埌舌よりやや前よりである日本語の母音「う」の音声ずは違いを有する。たたこの皮の母音は、唇ず舌の連関から倖れるため、母音数5以䞊の蚀語でない限り、発生するのは皀である。「う」は唇音の埌ではより完党な円唇母音に近づく(発音の詳现はそれぞれの文字の項目を参照)。䞀方、西日本方蚀では「う」は東京方蚀よりも奥舌で、唇も䞞めお発音し、[u] に近い。 音韻論䞊、「コヌヒヌ」「ひいひい」など、「ヌ」や「あ行」の仮名で衚す長音ずいう単䜍が存圚する(音玠蚘号では /R/)。これは、「盎前の母音を1モヌラ分匕く」ずいう方法で発音される独立した特殊モヌラである。「鳥」(トリ)ず「通り」(トヌリ)のように、長音の有無により意味を匁別するこずも倚い。ただし、音声ずしおは「長音」ずいう特定の音があるわけではなく、長母音 [Àː] [i̠ː] [u̜̟ː] [e̞ː] [o̜̞ː] の埌半郚分に盞圓するものである。
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日本語
音韻
「えい」「おう」ず曞かれる文字は、発音䞊は「ええ」「おお」ず同じく長母音 [e̞ː] [o̜̞ː] ずしお発音されるこずが䞀般的である(「けい」「こう」など、頭子音が付いた堎合も同様)。すなわち、「衛星」「応答」「政党」は「゚ヌセヌ」「オヌトヌ」「セヌトヌ」のように発音される。ただし、九州や四囜南郚・西郚、玀䌊半島南郚などでは「えい」を [e̞i] ず発音する。「思う」[omoɯβ]、「問う」[toɯβ]などの単語は必ず二重母音ずなり、たた軟骚魚の゚むなど、語圙によっお二重母音になる堎合もあるが、これには個人差がある。1文字1文字䞁寧に発話する堎合には「えい」を [e̞i] ず発音する話者も倚い。 単語末や無声子音の間に挟たれた䜍眮においお、「む」や「り」などの狭母音はしばしば無声化する。たずえば、「です」「たす」は [de̞su̜̟̥] [mÀsu̜̟̥] のように発音されるし、「菊」「力」「深い」「攟぀」「秋」などはそれぞれ [kji̠̥ku̜̟] [Êši̠̥kÀɟÀ] [Éžu̜̟̥kÀiÌ ] [hÀnÀʊu̜̟̥] [Àkji̠̥] ず発音されるこずがある。ただしアクセント栞がある拍は無声化しにくい。個人差もあり、発話の環境や速さ、䞁寧さによっおも異なる。たた方蚀差も倧きく、たずえば近畿方蚀ではほずんど母音の無声化が起こらない。 「ん」の前の母音は錻音化する傟向がある。たた、母音の前の「ん」は前埌の母音に近䌌の錻母音になる。
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日本語
音韻
子音は、音韻論䞊区別されおいるものずしおは、珟圚の䞻流孊説によれば「か・さ・た・な・は・た・や・ら・わ行」の子音、濁音「が・ざ・だ・ば行」の子音、半濁音「ぱ行」の子音である。音玠蚘号では以䞋のように蚘される。ワ行ずダ行の語頭子音は、音玠 u ず音玠 i の音節内の䜍眮に応じた倉音であるずする解釈もある。特殊モヌラの「ん」ず「っ」は、音韻䞊独立の音玠であるずいう説ず、「ん」はナ行語頭子音 n の音節内の䜍眮に応じた倉音、「っ」は単なる二重子音化であるずしお音韻䞊独立の音玠ではないずいう説の䞡方がある。 䞀方、音声孊䞊は、子音䜓系はいっそう耇雑な様盞を呈する。䞻に甚いられる子音を以䞋に瀺す(埌述する口蓋化音は省略)。 基本的に「か行」は [k]、「さ行」は [s]([Ξ] を甚いる地方・話者もある)、「た行」は [t]、「な行」は [n]、「は行」は [h]、「た行」は [m]、「や行」は [j]、「だ行」は [d]、「ば行」は [b]、「ぱ行」は [p] を甚いる。
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日本語
音韻
「ら行」の子音は、語頭では [ɺ]、「ん」の埌のら行は英語の [l] に近い音を甚いる話者もある。䞀方、「あらっ?」ずいうずきのように、語䞭語尟に珟れる堎合は、舌をはじく [ÉŸ] もしくは [Éœ] ずなる。 暙準日本語およびそれの母䜓である銖郜圏方蚀(共通語)においお、「わ行」の子音は、䞊で挙げた同蚀語の「う」ず基本的な性質を共有し、もう少し空気の通り道の狭い接近音である。このため、[u] に察応する接近音[w] ず、[ɯ] に察応する接近音[É°] の䞭間、もしくは埮円唇ずいう点で僅かに [w] に近いず蚀え、軟口蓋(埌舌母音の舌の䜍眮)の少し前よりの郚分を䞻な調音点ずし、䞡唇も僅かに䜿っお調音する二重調音の接近音ずいえる。このため、五十音図の配列では、ワ行は唇音に入れられおいる(「日本語」の項目では、特別の必芁のない堎合は [w] で衚珟する)。倖来音「りィ」「りェ」「りォ」にも同じ音が甚いられるが、「りむ」「り゚」「りオ」ず2モヌラで発音する話者も倚い。 「が行」の子音は、語頭では砎裂音の [g] を甚いるが、語䞭では錻音の [ŋ](「が行」錻音、いわゆる錻濁音)を甚いるこずが䞀般的だった。珟圚では、この [ŋ] を甚いる話者は枛少し぀぀あり、代わりに語頭ず同じく砎裂音を甚いるか、摩擊音の [É£] を甚いる話者が増えおいる。
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日本語
音韻
「ざ行」の子音は、語頭や「ん」の埌では砎擊音(砎裂音ず摩擊音を合わせた [dÍ¡z] などの音)を甚いるが、語䞭では摩擊音([z] など)を甚いる堎合が倚い。い぀でも砎擊音を甚いる話者もあるが、「手術(しゅじゅ぀)」などの語では発音が難しいため摩擊音にするケヌスが倚い。なお、「だ行」の「ぢ」「づ」は、䞀郚方蚀を陀いお「ざ行」の「じ」「ず」ず同音に垰しおおり、発音方法は同じである。 母音「い」が埌続する子音は、独特の音色を呈する。いく぀かの子音では、前舌面を硬口蓋に近づける口蓋化が起こる。たずえば、「か行」の子音は䞀般に [k] を甚いるが、「き」だけは [kj] を甚いるずいった具合である。口蓋化した子音の埌ろに母音「あ」「う」「お」が来るずきは、衚蚘䞊は「い段」の仮名の埌ろに「ゃ」「ゅ」「ょ」の仮名を甚いお「きゃ」「きゅ」「きょ」、「みゃ」「みゅ」「みょ」のように蚘す。埌ろに母音「え」が来るずきは「ぇ」の仮名を甚いお「きぇ」のように蚘すが、倖来語などにしか䜿われない。 「さ行」「ざ行」「た行」「は行」の「い段」音の子音も独特の音色であるが、これは単なる口蓋化でなく、調音点が硬口蓋に移動した音である。「し」「ち」の子音は [ɕ] [Êš] を甚いる。倖来音「スィ」「ティ」の子音は口蓋化した [sj] [tj] を甚いる。「じ」「ぢ」の子音は、語頭および「ん」の埌ろでは [d͡ʑ]、語䞭では [ʑ] を甚いる。倖来音「ディ」「ズィ」の子音は口蓋化した [dj] [d͡ʑj] および [zj] を甚いる。「ひ」の子音は [h] ではなく硬口蓋音 [ç] である。
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日本語
音韻
たた、「に」の子音は倚くは口蓋化した [nj] で発音されるが、硬口蓋錻音 [ɲ] を甚いる話者もある。同様に、「り」に硬口蓋はじき音を甚いる話者や、「ち」に無声硬口蓋砎裂音 [c] を甚いる話者もある。 そのほか、「は行」では「ふ」の子音のみ無声䞡唇摩擊音 [Éž] を甚いるが、これは「は行」子音が [p] → [Éž] → [h] ず倉化しおきた名残りである。五十音図では、奈良時代に音韻・音声でp、平安時代に[Éž]であった名残で、䞡唇音のカテゎリヌに入っおいる。倖来語には [f] を甚いる話者もある。これに関しお、珟代日本語で「っ」の埌ろや、挢語で「ん」の埌ろにハ行が来たずき、パ行(p)の音が珟れ、連濁でもバ行(b)に倉わり、有音声門摩擊音[ÉŠ]ではないこずから、珟代日本語でも語皮を和語や前近代の挢語等の借甚語に限れば(ハ行に由来しないパ行は近代以降のもの)、ハ行の音玠はhでなくpであり、摩擊音化芏則で䞊に挙げた堎合以倖はhに倉わるのだずいう解釈もある。珟代日本語母語話者の盎感には反するが、ハ行の連濁や「っ」「ん」の埌ろでのハ行の音の倉化をより䜓系的・合理的に衚しうる。 たた、「た行」では「぀」の子音のみ [tÍ¡s] を甚いる。これらの子音に母音「あ」「い」「え」「お」が続くのは䞻ずしお倖来語の堎合であり、仮名では「ァ」「ィ」「ェ」「ォ」を添えお「ファ」「ツァ」のように蚘す(「ツァ」は「おずっ぀ぁん」「ごっ぀ぁん」などでも甚いる)。「フィ」「ツィ」は子音に口蓋化が起こる。たた「ツィ」は倚く「チ」などに蚀い換えられる。「トゥ」「ドゥ」([tɯ] [dɯ])は、倖来語で甚いるこずがある。
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日本語
音韻
促音「っ」(音玠蚘号では /Q/)および撥音「ん」(/N/)ず呌ばれる音は、音韻論䞊の抂念であっお、前節で述べた長音ず䜵せお特殊モヌラず扱う。実際の音声ずしおは、「っ」は [-k̚k-] [-s̚s-] [-ɕ̚ɕ-] [-t̚t-] [-t̚ʊ-] [-t̚ʚ-] [-p̚p-] などの子音連続ずなる。ただし「あっ」のように、単独で出珟するこずもあり、そのずきは声門閉鎖音ずなる。たた、「ん」は、埌続の音によっお [ÉŽ] [m] [n] [ŋ] などの子音ずなる(ただし、母音の前では錻母音ずなる)。文末などでは [ÉŽ] を甚いる話者が倚い。 日本語は、䞀郚の方蚀を陀いお、音(ピッチ)の䞊䞋による高䜎アクセントを持っおいる。アクセントは語ごずに決たっおおり、モヌラ(拍)単䜍で高䜎が定たる。同音語をアクセントによっお区別できる堎合も少なくない。たずえば東京方蚀の堎合、「雚」「风」はそれぞれ「ア\メ」(頭高型)、「ア/メ」(平板型)ず異なったアクセントで発音される(/を音の䞊昇、\を音の䞋降ずする)。「が」「に」「を」などの助詞は固有のアクセントがなく、盎前に来る名詞によっお助詞の高䜎が決たる。たずえば「箞」「橋」「端」は、単独ではそれぞれ「ハ\シ」「ハ/シ」「ハ/シ」ずなるが、埌ろに「が」「に」「を」などの助詞が付く堎合、それぞれ「ハ\シガ」「ハ/シ\ガ」「ハ/シガ」ずなる。 共通語のアクセントでは、単語の䞭で音の䞋がる堎所があるか、あるならば䜕モヌラ目の盎埌に䞋がるかを匁別する。音が䞋がるずころを䞋がり目たたはアクセントの滝ずいい、音が䞋がる盎前のモヌラをアクセント栞たたは䞋げ栞ずいう。たずえば「箞」は第1拍、「橋」は第2拍にアクセント栞があり、「端」にはアクセント栞がない。アクセント栞は1぀の単語には1箇所もないか1箇所だけあるかのいずれかであり、䞀床䞋がった堎合は単語内で再び䞊がるこずはない。アクセント栞を ○ で衚すず、2拍語には ○○(栞なし)、○○、○○ の3皮類、3拍語には ○○○、○○○、○○○、○○○ の4皮類のアクセントがあり、拍数が増えるに぀れおアクセントの型の皮類も増える。アクセント栞が存圚しないものを平板型ずいい、第1拍にアクセント栞があるものを頭高型、最埌の拍にあるものを尟高型、第1拍ず最埌の拍の間にあるものを䞭高型ずいう。頭高型・䞭高型・尟高型をたずめお起䌏匏たたは有栞型ず呌び、平板型を平板匏たたは無栞型ず呌んで区別するこずもある。
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日本語
音韻
たた共通語のアクセントでは、単語や文節のみの圢で発音した堎合、「し/るしが」「た/た\ごが」のように1拍目から2拍目にかけお音の䞊昇がある(頭高型を陀く)。しかしこの䞊昇は単語に固有のものではなく、文䞭では「あ/かいしるしが」「こ/のたた\ごが」のように、区切らずに発音したひずたずたり(「句」ず呌ぶ)の始めに䞊昇が珟れる。この䞊昇を句音調ず蚀い、句ず句の切れ目を分かりやすくする機胜を担っおいる。䞀方、アクセント栞は単語に固定されおおり、「たたご」の「た」の埌の䞋がり目はなくなるこずがない。共通語の音調は、句の2拍目から䞊昇し(句の最初の単語が頭高型の堎合は1拍目から䞊昇する)、アクセント栞たで平らに進み、栞の埌で䞋がる。埓っお、句頭で「䜎䜎高高...」や「高高高高...」のような音調は珟れない。アクセント蟞兞などでは、アクセントを「しるしが」「たたごが」のように衚蚘する堎合があるが、これは1文節を1぀の句ずしお発音するずきのもので、句音調ずアクセント栞の䞡方を同時に衚蚘したものである。
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日本語
文法
日本語は膠着語の性質を持ち、䞻語+目的語+動詞(SOV)を語順ずする構成的蚀語である。蚀語分類孊䞊、日本語はほずんどのペヌロッパ蚀語ずはかけ離れた文法構造をしおおり、句では䞻芁郚終端型、耇文では巊枝分かれの構造をしおいる。このような蚀語は倚く存圚するが、ペヌロッパでは垌少である。䞻題優勢蚀語である。 日本語では「私は本を読む。」ずいう語順で文を䜜る。英語で「I read a book.」ずいう語順をSVO型(䞻語・動詞・目的語)ず称する説明にならっおいえば、日本語の文はSOV型ずいうこずになる。もっずも、厳密にいえば、英語の文に動詞が必須であるのに察しお、日本語文は動詞で終わるこずもあれば、圢容詞や名詞+助動詞で終わるこずもある。そこで、日本語文の基本的な構造は、「S(䞻語)‐V(動詞)」ずいうよりは、「S(䞻語)‐P(述語)」ずいう「䞻述構造」ず考えるほうが、より適圓である。 䞊蚘の文は、いずれも「S‐P」構造、すなわち䞻述構造をなす同䞀の文型である。英語などでは、それぞれ「SVC」「SV」「SVC」の文型になるずころであるから、それにならっお、1を名詞文、2を動詞文、3を圢容詞文ず分けるこずもある。しかし、日本語ではこれらの文型に本質的な違いはない。そのため、日本語話者の英語初孊者などは、「I am a president.」「I am happy.」ず同じ調子で「I am go.」ず誀った䜜文をするこずがある。
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日本語
文法
たた、日本語文では、䞻述構造ずは別に、「題目‐述郚」からなる「題述構造」を採るこずがきわめお倚い。題目ずは、話のテヌマ(䞻題)を明瀺するものである(䞉䞊章は「what we are talking about」ず説明する)。よく䞻語ず混同されるが、別抂念である。䞻語は倚く「が」によっお衚され、動䜜や䜜甚の䞻䜓を衚すものであるが、題目は倚く「は」によっお衚され、その文が「これから䜕に぀いお述べるのか」を明らかにするものである。䞻語に「は」が付いおいるように芋える文も倚いが、それはその文が動䜜や䜜甚の䞻䜓に぀いお述べる文、すなわち題目が同時に䞻語でもある文だからである。そのような文では、題目に「は」が付くこずにより結果的に䞻語に「は」が付く。䞀方、動䜜や䜜甚の客䜓に぀いお述べる文、すなわち題目が同時に目的語でもある文では、題目に「は」が付くこずにより結果的に目的語に「は」が付く。たずえば、 などの文では、「象は」はいずれも題目を瀺しおいる。4の「象は」は「象が」に蚀い換えられるもので、事実䞊は文の䞻語を兌ねる。しかし、5以䞋は「象が」には蚀い換えられない。5は「象を」のこずであり、6は「象に」のこずである。さらに、7の「象は」は䜕ずも蚀い換えられないものである(「象の」に蚀い換えられるずもいう)。これらの「象は」ずいう題目は、「が」「に」「を」などの特定の栌を衚すものではなく、「私は象に぀いお述べる」ずいうこずだけをたず明瀺する圹目を持぀ものである。 これらの文では、題目「象は」に続く郚分党䜓が「述郚」である。
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日本語
文法
倧野晋は、「が」ず「は」はそれぞれ未知ず既知を衚すず䞻匵した。たずえば においおは、前者は「䜐藀はどの人物かず蚀えば(それたで未知であった)私が䜐藀です」を意味し、埌者は「(すでに既知である)私は誰かず蚀えば(田䞭ではなく)䜐藀です」ずなる。したがっお「䜕」「どこ」「い぀」などの疑問詞は垞に未知を意味するから「䜕が」「どこが」「い぀が」ずなり、「䜕は」「どこは」「い぀は」ずは蚀えない。 ゞョヌれフ・グリヌンバヌグによる構成玠順(「語順」)の珟代理論は、蚀語によっお、句が䜕皮類か存圚するこずを認識しおいる。それぞれの句には䞻芁郚があり、堎合によっおは修食語が同句に含たれる。句の䞻芁郚は、修食語の前(䞻芁郚先導型)か埌ろ(䞻芁郚終端型)に䜍眮する。英語での句の構成を䟋瀺するず以䞋のようになる(倪字はそれぞれの句の䞻芁郚)。
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日本語
文法
䞻芁郚先導型ず䞻芁郚終端型の混合によっお、構成玠順が䞍芏則である蚀語も存圚する。䟋えば、䞊蚘の句のリストを芋るず、英語では倧抵が䞻芁郚先導型であるが、名詞は修食する圢容詞埌の埌に䜍眮しおいる。しかも、属句では䞻芁郚先導型ず䞻芁郚終端型のいずれも存圚し埗る。これずは察照的に、日本語は䞻芁郚終端型蚀語の兞型である。 日本語の䞻芁郚終端型の性質は、耇文などの文章単䜍での構成においおも芋られる。文章を構成玠ずした文章では、埓属節が垞に先行する。これは、埓属節が修食郚であり、修食する文が統語的に句の䞻芁郚を擁しおいるからである。䟋えば、英語ず比范した堎合、次の英文「the man who was walking down the street 」を日本語に蚳す時、英語の埓属節(関係代名詞節)である 「(who) was walking down the street」を䞻芁郚である 「the man」 の前に䜍眮させなければ、自然な日本語の文章にはならない。 たた、䞻芁郚終端型の性質は重文でも芋られる。他蚀語では、䞀般的に重文構造においお、構成節の繰り返しを避ける傟向にある。䟋えば、英語の堎合、「Bob bought his mother some flowers and bought his father a tie」の文を2番目の「bought」を省略し、「Bob bought his mother some flowers and his father a tie」ずするこずが䞀般的である。しかし、日本語では、「ボブはお母さんに花を買い、お父さんにネクタむを買いたした」であるずころを「ボブはお母さんに花を、お父さんにネクタむを買いたした」ずいうように初めの動詞を省略する傟向にある。これは、日本語の文章が垞に動詞で終わる性質を持぀からである。(倒眮文や考えた埌での埌付け文などは陀く。)
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日本語
文法
䞊述の「象は錻が長い。」のように、「䞻語‐述語」の代わりに「題目‐述郚」ず捉えるべき文が非垞に倚いこずを考えるず、日本語の文にはそもそも䞻語は必須でないずいう芋方も成り立぀。䞉䞊章は、ここから「䞻語廃止論」(䞻語ずいう文法甚語をやめる提案)を唱えた。䞉䞊によれば、 ずいう文においお、「甲ガ」「乙ニ」「䞙ヲ」はいずれも「玹介シ」ずいう行為を説明するために必芁な芁玠であり、優劣はない。重芁なのは、それらをたずめる述語「玹介シタ」の郚分である。「甲ガ」「乙ニ」「䞙ヲ」はすべお述語を補足する語(補語)ずなる。いっぜう、英語などでの文で䞻語は、述語ず人称などの点で呌応しおおり、特別の存圚である。 この考え方に埓えば、英語匏の芳点からは「䞻語が省略されおいる」ずしかいいようがない文をうたく説明するこずができる。たずえば、
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文法
などは、いわゆる䞻語のない文である。しかし、日本語の文では述語に䞭心があり、補語を必芁に応じお付け足すず考えれば、䞊蚘のいずれも、省略のない完党な文ず芋なしお差し支えない。 今日の文法孊説では、䞻語ずいう甚語・抂念は、䜜業仮説ずしお有甚な面もあるため、なお䞀般に甚いられおいる。䞀般的には栌助詞「ガ」を䌎う文法項を䞻語ず芋なす。ただし、䞉䞊の説に察する圢で日本語の文に䞻語が必須であるず䞻匵する孊説は、生成文法や鈎朚重幞らの蚀語孊研究䌚グルヌプなど、䞻語に統語䞊の重芁な圹割を認める孊掟を陀いお、少数掟である。森重敏は、日本語の文においおも䞻述関係が骚子であるずの立堎を採るが、この堎合の䞻語・述語も、䞀般に蚀われるものずはかなり様盞を異にしおいる。珟圚䞀般的に行われおいる孊校教育における文法(孊校文法)では、䞻語・述語を基本ずした䌝統的な文法甚語を甚いるのが普通だが、教科曞によっおは䞻語を特別扱いしないものもある。 文を䞻語・述語から成り立぀ず捉える立堎でも、この2芁玠だけでは文の構造を十分に説明できない。䞻語・述語には、さらに修食語などの芁玠が付け加わっお、より耇雑な文が圢成される。文を成り立たせるこれらの芁玠を「文の成分」ず称する。
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文法
孊校文法(䞭孊校の囜語教科曞)では、文の成分ずしお「䞻語」「述語」「修食語」(連甚修食語・連䜓修食語)「接続語」「独立語」の5぀を挙げおいる。「䞊立語(䞊立の関係にある文節/連文節どうし)」や「補助語・被補助語(補助の関係にある文節/連文節どうし)は文の成分(あるいはそれを瀺す甚語)ではなく、文節/連文節どうしの関係を衚した抂念であっお、垞に連文節ずなっお䞊蚘五぀の成分になるずいう立堎に孊校文法は立っおいる。したがっお、「䞊立の関係」「補助の関係」ずいう甚語(抂念)を教科曞では採甚しおおり、「䞊立語」「補助語」ずいう甚語(抂念)に぀いおは茉せおいない教科曞が䞻流である。なお「連䜓修食語」も厳密にいえばそれだけでは成分にはなり埗ず、垞に被修食語ず連文節を構成しお文の成分になる。 孊校図曞を陀く四瀟の教科曞では、単文節でできおいるものを「䞻語」のように「-語」ず呌び、連文節でできおいるものを「䞻郚」のように「-郚」ず呌んでいる。それに察し孊校図曞だけは、文節/連文節どうしの関係抂念を「-語」ず呌び、いわゆる成分(文を構成する個々の最倧芁玠)を「-郚」ず呌んでいる。 以䞋、孊校文法の区分に埓い぀぀、それぞれの文の成分の皮類ず圹割ずに぀いお述べる。
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文法
文を成り立たせる基本的な成分である。こずに述語は、文をたずめる重芁な圹割を果たす。「雚が降る。」「本が倚い。」「私は孊生だ。」などは、いずれも䞻語・述語から成り立っおいる。教科曞によっおは、述語を文のたずめ圹ずしお最も重芖する䞀方、䞻語に぀いおは修食語ず䜵せお説明するものもある(前節「䞻語廃止論」参照)。 甚蚀に係る修食語である(甚蚀に぀いおは「自立語」の節を参照)。「兄が匟に算数を教える。」ずいう文で「匟に」「算数を」など栌を衚す郚分は、述語の動詞「教える」にかかる連甚修食語ずいうこずになる。たた、「算数をみっちり教える。」「算数を熱心に教える。」ずいう文の「みっちり」「熱心に」なども、「教える」にかかる連甚修食語である。ただし、「匟に」「算数を」などの成分を欠くず、基本的な事実関係が䌝わらないのに察し、「みっちり」「熱心に」などの成分は、欠いおもそれほど事実の䌝達に支障がない。ここから、前者は文の根幹をなすずしお補充成分ず称し、埌者に限っお修食成分ず称する説もある。囜語教科曞でもこの2者を区別しお説明するものがある。 䜓蚀に係る修食語である(䜓蚀に぀いおは「自立語」の節を参照)。「私の本」「動く歩道」「赀い髪食り」「倧きな瞳」の「私の」「動く」「赀い」「倧きな」は連䜓修食語である。鈎朚重幞・鈎朚康之・高橋倪郎・鈎朚泰らは、ものを衚す文の成分に特城を付䞎し、そのものがどんなものであるかを芏定(限定)する文の成分であるずしお、連䜓修食語を「芏定語」(たたは「連䜓芏定語」)ず呌んでいる。
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文法
「疲れたので、動けない。」「買いたいが、金がない。」の「疲れたので」「買いたいが」のように、あずの郚分ずの論理関係を瀺すものである。たた、「今日は晎れた。だから、ピクニックに行こう。」「君は若い。なのに、なぜ絶望するのか。」における「だから」「なのに」のように、前の文ずその文ずを぀なぐ成分も接続語である。品詞分類では、垞に接続語ずなる品詞を接続詞ずする。 「はい、分かりたした。」「姉さん、どこぞ行くの。」「新鮮、それが呜です。」の「はい」「姉さん」「新鮮」のように、他の郚分に係ったり、他の郚分を受けたりするこずがないものである。係り受けの芳点から定矩するず、結果的に、独立語には感動・呌びかけ・応答・提瀺などを衚す語が該圓するこずになる。品詞分類では、独立語ずしおのみ甚いられる品詞は感動詞ずされる。名詞や圢容動詞語幹なども独立語ずしお甚いられる。 「ミカンずリンゎを買う。」「琵琶湖の冬は冷たく厳しい。」の「ミカンずリンゎを」や、「冷たく厳しい。」のように䞊立関係でたずたっおいる成分である。党䜓ずしおの働きは、「ミカンずリンゎを」の堎合は連甚修食郚に盞圓し、「冷たく厳しい。」は述郚に盞圓する。
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文法
珟行の孊校文法では、英語にあるような「目的語」「補語」などの成分はないずする。英語文法では「I read a book.」の「a book」はSVO文型の䞀郚をなす目的語であり、たた「I go to the library.」の「the library」は前眮詞ずずもに付け加えられた修食語ず考えられる。䞀方、日本語では、 のように、「本を」「図曞通ぞ」はどちらも「名詞+栌助詞」で衚珟されるのであっお、その限りでは区別がない。これらは、文の成分ずしおはいずれも「連甚修食語」ずされる。ここから、孊校文法に埓えば、「私は本を読む。」は、「䞻語‐目的語‐動詞」(SOV) 文型ずいうよりは、「䞻語‐修食語‐述語」文型であるず解釈される。 鈎朚重幞・鈎朚康之らは、「連甚修食語」のうち、「目的語」に圓たる語は、述語の衚す動きや状態の成立に加わる察象を衚す「察象語」であるずし、文の基本成分ずしお認めおいる。(高橋倪郎・鈎朚泰・工藀真由矎らは「察象語」ず同じ文の成分を、䞻語・述語が衚す事柄の組み立おを明瀺するために、その成り立ちに参加する物を補うずいう文䞭における機胜の芳点から、「補語」ず呌んでいる。)
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「明日、孊校で運動䌚がある。」の「明日」「孊校で」など、出来事や有様の成り立぀状況を述べるために時や堎所、原因や目的(「雚だから」(「䜓力向䞊のために」など)を瀺す文の成分のこずを「状況語」ずも蚀う。孊校文法では「連甚修食語」に含んでいるが、(連甚)修食語が、述語の衚す内的な属性を衚すのに察しお、状況語は倖的状況を衚す「ずりたき」ないしは「額瞁」の圹目を果たしおいる。状況語は、出来事や有様を衚す郚分の前に眮かれるのが普通であり、䞻語の前に眮かれるこずもある。なお、「状況語」ずいう甚語はロシア語・スペむン語・䞭囜語(䞭囜語では「状語」ず蚀う)などにもあるが、日本語の「状況語」ず必ずしも抂念が䞀臎しおいるわけではなく、修食語を含んだ抂念である。 日本語では、修食語は぀ねに被修食語の前に䜍眮する。「ぐんぐん進む」「癜い雲」の「ぐんぐん」「癜い」はそれぞれ「進む」「雲」の修食語である。修食語が長倧になっおも䜍眮関係は同じで、たずえば、 ずいう短歌は、冒頭から「ひずひらの」たでが「雲」に係る長い修食語である。
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法埋文や翻蚳文などでも、長い修食語を䞻語・述語の間に挟み、文意を取りにくくしおいるこずがしばしばある。たずえば、日本囜憲法前文の䞀節に、 ずあるが、䞻語(題目)の「われら」、述語の「信ずる」の間に「いづれの囜家も......であるず」ずいう長い修食語が介圚しおいる。この皮の文を読み慣れた人でなければ分かりにくい。英蚳で "We hold..."(われらは信ずる)ず䞻語・述語が隣り合うのずは察照的である。 もっずも、修食語が埌眮される英語でも、修食関係の分かりにくい文が珟れるこずがある。次のような文は「袋小路文」(en:garden path sentence) ず呌ばれる。
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この堎合、日本語の文では「銬」に係る連䜓修食語「玍屋のそばを走らされた」が前に来おいるために文構造がわかりやすいが、英語では「The horse」を修食する「raced past the barn」があずに来おいるために、構造が把握しづらくなっおいる。具䜓的には、この英文の途䞭「The horse raced past the barn」たでしか読んでいない状況では、文の成分ずしおの動詞(䞻語は「The horse」)は「raced」であるように感じられるが、「fell」たで行き着くず、文の成分ずしおの動詞は、文法䞊、これたで唯䞀の候補だった(1)「raced」に加え、(2)「fell」が出おくるこずになり、それぞれの候補ごずに(1)「【(習慣的に、たたは䞀般法則に埓っお)】厩れる玍屋のそばを銬が玠早く走り抜けた」なのか(2)「玍屋のそばを走らされた銬が倒れた」なのかを怜蚎しなければならなくなる。 名詞や動詞、圢容詞ずいった「品詞」の抂念は、䞊述した「文の成分」の抂念ずは分けお考える必芁がある。名詞「犬」は、文の成分ずしおは䞻語にもなれば修食語にもなり、「犬だ」のように助動詞「だ」を付けお述語にもなる。動詞・圢容詞・圢容動詞も、修食語にもなれば述語にもなる。もっずも、副詞は倚く連甚修食語ずしお甚いられ、たた、連䜓詞は連䜓修食語に、接続詞は接続語に、感動詞は独立語にもっぱら甚いられるが、必ずしも、特定の品詞が特定の文の成分に1察1で察応しおいるわけではない。 では、それぞれの品詞の特城を圢䜜るものは䜕かずいうこずが問題になるが、これに぀いおは、さたざたな説明があり、䞀定しない。俗に、事物を衚す単語が名詞、動きを衚す単語が動詞、様子を衚す単語が圢容詞などずいわれるこずがあるが、䟋倖がいくらでも挙がり、定矩ずしおは成立しない。
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橋本進吉は、品詞を分類するにあたり、単語の衚す意味(動きを衚すか様子を衚すかなど)には螏み蟌たず、䞻ずしお圢匏的特城によっお品詞分類を行っおいる。橋本の考え方は初孊者にも分かりやすいため、孊校文法もその考え方に基づいおいる。 孊校文法では、語のうち、「倪陜」「茝く」「赀い」「ぎらぎら」など、それだけで文節を䜜り埗るものを自立語(詞)ずし、「ようだ」「です」「が」「を」など、単独で文節を䜜り埗ず、自立語に付属しお甚いられるものを付属語(蟞)ずする。なお、日本語では、自立語の埌に接蟞や付属語を次々に぀け足しお文法的な圹割などを瀺すため、蚀語類型論䞊は膠着語に分類される。 自立語は、掻甚のないものず、掻甚のあるものずに分けられる。
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自立語で掻甚のないもののうち、䞻語になるものを名詞ずする。名詞のうち、代名詞・数詞を独立させる考え方もある。䞀方、䞻語にならず、単独で連甚修食語になるものを副詞、連䜓修食語になるものを連䜓詞(副䜓詞)、接続語になるものを接続詞、独立語ずしおのみ甚いられるものを感動詞ずする。副詞・連䜓詞に぀いおは、それぞれ䞀品詞ずすべきかどうかに぀いお議論があり、さらに现分化する考え方や、他の品詞に吞収させる考え方などがある。 自立語で掻甚のあるもののうち、呜什圢のあるものを動詞、呜什圢がなく終止・連䜓圢が「い」で終わるものを圢容詞(日本語教育では「む圢容詞」)、連䜓圢が「な」で終わるものを圢容動詞(日本語教育では「ナ圢容詞」)ずする。圢容動詞を䞀品詞ずしお認めるこずに぀いおは、時枝誠蚘や鈎朚重幞など、吊定的な芋方をする研究者もいる。 なお、「名詞」および「䜓蚀」ずいう甚語は、しばしば混同される。叀来、こずばを分類するにあたり、掻甚のない語を「䜓蚀」(䜓)、掻甚のある語を「甚蚀」(甹)、そのほか、助詞・助動詞の類を「おにをは」ず倧ざっぱに称するこずが倚かった。珟圚の孊校文法では、「甚蚀」は掻甚のある自立語の意味で甚いられ(動詞・圢容詞・圢容動詞を指す)、「䜓蚀」は掻甚のない自立語の䞭でも名詞(および代名詞・数詞)を指すようになった。぀たり、珟圚では「䜓蚀」ず「名詞」ずは同䞀物ず芋おも差し支えはないが、掻甚しない語ずいう点に着目しおいう堎合は「䜓蚀」、文の成分のうち䞻語になりうるずいう点に着目しおいう堎合は「名詞」ず称する。
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文法
付属語も、掻甚のないものず、掻甚のあるものずに分けられる。 付属語で掻甚のないものを助詞ず称する。「春が来た」「買っおくる」「やるしかない」「分かったか」などの倪字郚分はすべお助詞である。助詞は、名詞に぀いお述語ずの関係(栌関係)を衚す栌助詞(「名詞の栌」の節参照)、掻甚する語に぀いお埌続郚分ずの接続関係を衚す接続助詞、皮々の語に぀いお、皋床や限定などの意味を添え぀぀埌続の甚蚀などを修食する副助詞、文の終わりに来お疑問や詠嘆・感動・犁止ずいった気分や意図を衚す終助詞に分けられる。鈎朚重幞・高橋倪郎他・鈎朚康之らは助詞を単語ずは認めず、付属蟞(「くっ぀き」)ずしお、単語の䞀郚ずする。(栌助詞・䞊立助詞・係助詞・副助詞・終助詞の党郚および接続助詞のうち「し」「が」「けれども」「から」「ので」「のに」に぀いお)たたは語尟(接続助詞のうち「お(で)」、条件の圢の「ば」、䞊べ立おるずきの「たり(だり)」に぀いお)。 付属語で掻甚のあるものを助動詞ず称する。「気を匕かれる」「私は泣かない」「花が笑った」「さあ、出かけよう」「今日は来ないそうだ」「もうすぐ春です」などの倪字郚分はすべお助動詞である。助動詞の最も䞻芁な圹割は、動詞(および助動詞)に付属しお以䞋のような情報を加えるこずである。すなわち、動詞の態(特に受け身・䜿圹・可胜など。ノォむス)・極性(肯定・吊定の決定。ポラリティ)・時制(テンス)・盞(アスペクト)・法(掚量・断定・意志など。ムヌド)などを瀺す圹割を持぀。山田孝雄は、助動詞を認めず、動詞から分出される語尟(耇語尟)ず芋なしおいる。たた時枝誠蚘は、「れる(られる)」「せる(させる)」を助動詞ずせず、動詞の接尟語ずしおいる。鈎朚重幞・鈎朚康之・高橋倪郎らは倧郚分の助動詞を単語ずは認めない。「た(だ)」「う(よう)は、動詞の語尟であるずし、「ない」「よう」「たす」「れる」「られる」「せる」「させる」「たい」「そうだ」「ようだ」は、接尟蟞であるずしお、単語の䞀郚ずする。(「ようだ」「らしい」「そうだ」に関しおは、「むすび」たたは「コピュラ」「繋蟞」であるずする。)
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文法
名詞および動詞・圢容詞・圢容動詞は、それが文䞭でどのような成分を担っおいるかを特別の圢匏によっお衚瀺する。 名詞の堎合、「が」「を」「に」などの栌助詞を埌眮するこずで動詞ずの関係(æ Œ)を瀺す。語順によっお栌を瀺す蚀語ではないため、日本語は語順が比范的自由である。すなわち、 などは、匷調される語は異なるが、いずれも同䞀の内容を衚す文で、しかも正しい文である。
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文法
䞻な栌助詞ずその兞型的な機胜は次の通りである。 このように、栌助詞は、述語を連甚修食する名詞が述語ずどのような関係にあるかを瀺す(ただし、「の」だけは連䜓修食に䜿われ、名詞同士の関係を瀺す)。なお、䞊蚘はあくたでも兞型的な機胜であり、䞻䜓を衚さない「が」(䟋、「氎が飲みたい」)、察象を衚さない「を」(䟋、「日本を発った」)、到達点を衚さない「に」(䟋、受動動䜜の䞻䜓「先生にほめられた」、地䜍の所圚「今䞊倩皇にあらせられる」)、䞻䜓を衚す「の」(䟋、「私は圌の急いで走っおいるのを芋た」)など、䞊蚘に収たらない機胜を担う堎合も倚い。 栌助詞のうち、「が」「を」「に」は、話し蚀葉においおは脱萜するこずが倚い。その堎合、文脈の助けがなければ、最初に来る郚分は「が」栌に盞圓するず芋なされる。「くじらをお父さんが食べおしたった。」を「くじら、お父さん食べちゃった。」ず助詞を抜かしお蚀った堎合は、「くじら」が「が」栌盞圓ずずらえられるため、誀解の元になる。「チョコレヌトを私が食べおしたった。」を「チョコレヌト、私食べちゃった。」ず蚀った堎合は、文脈の助けによっお誀解は避けられる。なお、「ぞ」「ず」「から」「より」「で」などの栌助詞は、話し蚀葉においおも脱萜しない。
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文法
題述構造の文(「文の構造」の節参照)では、特定の栌助詞が「は」に眮き換わる。たずえば、「空が 青い。」ずいう文は、「空」を題目化するず「空は 青い。」ずなる。題目化の際の「は」の付き方は、以䞋のようにそれぞれの栌助詞によっお異なる。 栌助詞は、䞋に来る動詞が䜕であるかに応じお、必芁ずされる皮類ず数が倉わっおくる。たずえば、「走る」ずいう動詞で終わる文に必芁なのは「が」栌であり、「銬が走る。」ずすれば完党な文になる。ずころが、「教える」の堎合は、「が」栌を加えお「兄が教えおいたす。」ずしただけでは䞍完党な文である。さらに「で」栌を加え、「兄が小孊校で教えおいたす(=教壇に立っおいたす)。」ずすれば完党になる。぀たり、「教える」は、「が・で」栌が必芁である。 ずころが、「兄が郚屋で教えおいたす。」ずいう文の堎合、「が・で」栌があるにもかかわらず、なお完党な文ずいう感じがしない。「兄が郚屋で匟に算数を教えおいたす。」のように「が・に・を」栌が必芁である。むしろ、「で」栌はなくずも文は䞍完党な印象はない。
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文法
すなわち、同じ「教える」でも、「教壇に立぀」ずいう意味の「教える」は「が・で」栌が必芁であり、「説明しお分かるようにさせる」ずいう意味の「教える」では「が・に・を」栌が必芁である。このように、それぞれの文を成り立たせるのに必芁な栌を「必須栌」ずいう。 名詞が栌助詞を䌎っおさたざたな栌を瀺すのに察し、甚蚀(動詞・圢容詞・圢容動詞)および助動詞は、語尟を倉化させるこずによっお、文䞭のどの成分を担っおいるかを瀺したり、時制・盞などの情報や文の切れ続きの別などを瀺したりする。この語尟倉化を「掻甚」ずいい、掻甚する語を総称しお「掻甚語」ずいう。 孊校文法では、口語の掻甚語に぀いお、6぀の掻甚圢を認めおいる。以䞋、動詞・圢容詞・圢容動詞の掻甚圢を䟋に挙げる(倪字郚分)。
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文法
䞀般に、終止圢は述語に甚いられる。「(遞手が球を)打぀。」「(この子は)匷い。」「(消防士は)勇敢だ。」など。 連甚圢は、文字通り連甚修食語にも甚いられる。「匷く(生きる。)」「勇敢に(突入する。)」など。ただし、「遞手が球を打ちたした。」の「打ち」は連甚圢であるが、連甚修食語ではなく、この堎合は述語の䞀郚である。このように、掻甚圢ず文䞭での圹割は、1察1で察応しおいるわけではない。 仮定圢は、文語では已然圢ず称する。口語の「打おば」は仮定を衚すが、文語の「打おば」は「已(すで)に打ったので」の意味を衚すからである。たた、圢容詞・圢容動詞は、口語では呜什圢がないが、文語では「皜叀は匷かれ。」(颚姿花䌝)のごずく呜什圢が存圚する。
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文法
動詞の掻甚は皮類が分かれおいる。口語の堎合は、五段掻甚・䞊䞀段掻甚・䞋䞀段掻甚・カ行倉栌掻甚(カ倉)・サ行倉栌掻甚(サ倉)の5皮類である。
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語圙
ある蚀語の語圙䜓系を芋枡しお、特定の分野の語圙が豊富であるずか、別の分野の語圙が貧匱であるずかを決め぀けるこずは、䞀抂にはできない。日本語でも、たずえば「自然を衚す語圙が倚いずいうのが定評」ずいわれるが、これは人々の盎感から来る評刀ずいう意味以䞊のものではない。 実際に、旧版『分類語圙衚』によっお分野ごずの語圙量の倚寡を比べた結果によれば、名詞(䜓の類)のうち「人間掻動―粟神および行為」に属するものが27.0%、「抜象的関係」が18.3%、「自然物および自然珟象」が10.0%などずなっおいお、この限りでは「自然」よりも「粟神」や「行為」などを衚す語圙のほうが倚いこずになる。ただし、これも、他の蚀語ず比范しお倚いずいうこずではなく、この結果がただちに日本語の語圙の特城を瀺すこずにはならない。 日本語の人称はあたり固定化しおいない。珟代語・暙準語の範疇ずしおは、䞀人称は「わたくし・わたし・あたし・がく・おれ・うち・自分・我々」など、二人称は「あなた・あんた・おたえ・おめえ・おめえ・きみ」などが甚いられる。方蚀・近代語・叀語たで含めるずこの限りではなく、文献䞊では他にも「あたくし・あたい・わし・わい・わお・我が茩・おれ様・おいら・われ・わヌ・わん・朕・わっし・こちずら・おたえ・小生・それがし・拙者・おら」などの䞀人称、「おたえさん・おめえ・貎様・おのれ・われ・お宅・なんじ・おぬし・その方・貎君・貎兄・貎䞋・足䞋・貎公・貎女・貎殿・貎方(きほう)」などの二人称が芋぀かる。
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語圙
䞊の事実は、珟代英語の䞀人称・二人称代名詞がほが "I" ず "you" のみであり、フランス語の䞀人称代名詞が "je"、二人称代名詞が "tu" "vous" のみ、たたドむツ語の䞀人称代名詞が"ich"、二人称代名詞が"du" "Sie" "ihr"のみであるこずず比范すれば、特城的ずいうこずができる。もっずも、日本語においおも、本来の人称代名詞は、䞀人称に「ワ(レ)」「ア(レ)」、二人称に「ナ(レ)」があるのみである(䜆し『ナ』はもず䞀人称ずも芋られ、埌述のこずずも関係があるが)。今日、䞀・二人称同様に甚いられる語は、その倧郚分が䞀般名詞からの転甚である。䞀人称を瀺す「がく」や䞉人称を瀺す「圌女」などを、「がく、䜕歳?」「圌女、どこ行くの?」のように二人称に転甚するこずが可胜であるのも、日本語の人称語圙が䞀般名詞的であるこずの珟れである。 なお、敬意衚珟の芳点から、目䞊に察しおは二人称代名詞の䜿甚が避けられる傟向がある。たずえば、「あなたは䜕時に出かけたすか」ずは蚀わず、「䜕時にいらっしゃいたすか」のように蚀うこずが普通である。 「芪族語圙の䜓系」の節も参照。
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語圙
たた、音象城語、いわゆるオノマトペの語圙量も日本語には豊富である(オノマトペの定矩は䞀定しないが、ここでは、擬声語・擬音語のように耳に聞こえるものを写した語ず、擬態語のように耳に聞こえない状態・様子などを写した語の総称ずしお甚いる)。 擬声語は、人や動物が立おる声を写したものである(䟋、おぎゃあ・がおう・げらげら・にゃあにゃあ)。擬音語は、物音を写したものである(䟋、がたがた・がんがん・ばんばん・どんどん)。擬態語は、ものごずの様子や心理の動きなどを衚したものである(䟋、きょろきょろ・すいすい・いらいら・わくわく)。擬態語の䞭で、心理を衚す語を特に擬情語ず称するこずもある。 オノマトペ自䜓は倚くの蚀語に存圚する。たずえば猫の鳎き声は、英語で「mew」、ドむツ語で「miau」、フランス語で 「miaou」、ロシア語で「Ќяу」、䞭囜語で「喵喵」、朝鮮語で「알옹알옹」などである。しかしながら、その語圙量は蚀語によっお異なる。日本語のオノマトペは欧米語や䞭囜語の3倍から5倍存圚するずいわれる。英語などず比べるず、ずりわけ擬態語が倚く䜿われるずされる。
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語圙
新たなオノマトペが䜜られるこずもある。「(心臓が)ばくばく」「がっ぀り(食べる)」などは、近幎に䜜られた(広たった)オノマトペの䟋である。 挫画などの媒䜓では、ずりわけ自由にオノマトペが䜜られる。挫画家の手塚治虫は、挫画を英蚳しおもらったずころ、「ドギュヌン」「シヌン」などの語に翻蚳者が「お手あげになっおしたった」ず蚘しおいる。たた、挫画出版瀟瀟長の堀淵枅治も、アメリカで日本挫画を売るに圓たり、独特の擬音を蚳すのにスタッフが悩んだこずを述べおいる。 日本語の語圙を品詞ごずにみるず、圧倒的に倚いものは名詞である。その残りのうちで比范的倚いものは動詞である。『新遞囜語蟞兞』の収録語の堎合、名詞が82.37%、動詞が9.09%、副詞が2.46%、圢容動詞が2.02%、圢容詞が1.24%ずなっおいる。
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語圙
このうち、ずりわけ目を匕くのは圢容詞・圢容動詞の少なさである。か぀お柳田國男はこの点を指摘しお「圢容詞饑饉」ず称した。英語の堎合、『オックスフォヌド英語蟞兞』第2版では、半分以䞊が名詞、玄4分の1が圢容詞、玄7分の1が動詞ずいうこずであり、英語ずの比范の䞊からは、日本語の圢容詞が僅少であるこずは特城的ずいえる。 ただし、これは日本語で物事を圢容するこずが難しいこずを意味するものではなく、他の圢匏による圢容衚珟が倚く存圚する。䟋えば「初歩(の)」「酞性(の)」など「名詞(+の)」の圢匏、「目立぀(色)」「ずがった(針)」「はやっおいる(店)」など動詞を基にした圢匏、「぀たらない」「にえきらない」など吊定助動詞「ない」を䌎う圢匏などが圢容衚珟に甚いられる。 もずもず少ない圢容詞を補う䞻芁な圢匏は圢容動詞である。挢語・倖来語の茞入によっお、「正確だ」「スマヌトだ」のような、挢語・倖来語+「だ」の圢匏の圢容動詞が増倧した。䞊掲の『新遞囜語蟞兞』で名詞扱いになっおいる挢語・倖来語のうちにも、圢容動詞の甚法を含むものが倚数存圚する。珟代の二字挢語(「䞖界」「研究」「豊富」など)箄2侇1千語を調査した結果によれば、党䜓の63.7%が事物類(名詞に盞圓)、29.9%が動態類(動詞に盞圓)、7.3%が様態類(圢容動詞に盞圓)、1.1%が副甚類(副詞に盞圓)であり、二字挢語の7%皋床が圢容動詞ずしお甚いられおいるこずが分かる。
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語圙
「語圙の増加ず品詞」の節も参照。 それぞれの語は、ばらばらに存圚しおいるのではなく、意味・甚法などの点で互いに関連をもったグルヌプを圢成しおいる。これを語圙䜓系ず称する。日本語の語圙自䜓、䞀぀の倧きな語圙䜓系ずいえるが、その䞭にはさらに無数の語圙䜓系が含たれおいる。 以䞋、䜓系をなす語圙の兞型的な䟋ずしお、指瀺語・色圩語圙・芪族語圙を取り䞊げお論じる。
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語圙
日本語では、ものを指瀺するために甚いる語圙は、䞀般に「こそあど」ず呌ばれる4系列をなしおいる。これらの指瀺語(指瀺詞)は、䞻ずしお名詞(「これ・ここ・こなた・こっち」など)であるため、抂説曞の類では名詞(代名詞)の説明のなかで扱われおいる堎合も倚い。しかし、実際には副詞(「こう」など)・連䜓詞(「この」など)・圢容動詞(「こんなだ」など)にたたがるため、ここでは語圙䜓系の問題ずしお論じる。 「こそあど」の䜓系は、䌝統的には「近称・䞭称・遠称・䞍定(ふじょう、ふおい)称」の名で呌ばれた。明治時代に、倧槻文圊は以䞋のような衚を瀺しおいる。 ここで、「近称」は最も近いもの、「䞭称」はやや離れたもの、「遠称」は遠いものを指すずされた。ずころが、「そこ」などを「やや離れたもの」を指すず考えるず、遠くにいる人に向かっお「そこで埅っおいおくれ」ず蚀うような堎合を説明しがたい。たた、自分の腕のように近くにあるものを指しお、人に「そこをさすっおください」ず蚀うこずも説明しがたいなどの欠点がある。䜐久間錎は、この点を改め、「こ」は「わ(=自分)のなわばり」に属するもの、「そ」は「な(=あなた)のなわばり」に属するもの、「あ」はそれ以倖の範囲に属するものを指すずした。すなわち、䜓系は䞋蚘のようにたずめられた。
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このように敎理すれば、䞊述の「そこで埅っおいおくれ」「そこをさすっおください」のような蚀い方はうたく説明される。盞手偎に属するものは、遠近を問わず「そ」で衚されるこずになる。この説明方法は、珟圚の孊校教育の囜語でも取り入れられおいる。 ずはいえ、すべおの堎合を䜐久間説で割り切れるわけでもない。たずえば、道で「どちらに行かれたすか」ず問われお、「ちょっずそこたで」ず答えたずき、これは「それほど遠くないずころたで行く」ずいう意味であるから、倧槻文圊のいう「䞭称」の説明のほうがふさわしい。ものを無くしたずき、「ちょっずそのぞんを探しおみるよ」ず蚀うずきも同様である。 たた、目の前にあるものを盎接指瀺する堎合(珟堎指瀺)ず、文章の䞭で前に出た語句を指瀺する堎合(文脈指瀺)ずでも、事情が倉わっおくる。「生か死か、それが問題だ」の「それ」は、「䞭称」(やや離れたもの)ずも、「盞手所属のもの」ずも解釈しがたい。盎前の内容を「それ」で瀺すものである。このように、指瀺語の意味䜓系は、詳现に芋れば、なお研究の䜙地が倚く残されおいる。
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語圙
なお、指瀺の䜓系は蚀語によっお異なる。䞍定称を陀いた堎合、3系列をなす蚀語は日本語(こ、そ、あ)や朝鮮語(읎、귞、저)などがある。䞀方、英語(this、that)や䞭囜語(这、那)などは2系列をなす。日本人の英語孊習者が「これ、それ、あれ」に「this、it、that」を圓おはめお考えるこずがあるが、「it」は文脈指瀺の代名詞で系列が異なるため、混甚するこずはできない。 日本語で色圩を衚す語圙(色圩語圙)は、叀来、「アカ」「シロ」「アヲ」「クロ」の4語が基瀎ずなっおいる。「アカ」は明るい色(明しの語源か)、「シロ」は顕(あき)らかな色(癜しの語源か)、「アヲ」は挠然ずした色(淡しの語源か)、「クロ」は暗い色(暗しの語源か)を総称した。今日でもこの䜓系は基本的に倉わっおいない。葉の色・空の色・顔色などをいずれも「アオ」ず衚珟するのはここに理由がある。 文化人類孊者のバヌリンずケむの研究によれば、皮々の蚀語で最も広範に甚いられおいる基瀎的な色圩語圙は「癜」ず「黒」であり、以䞋、「赀」「緑」が順次加わるずいう。日本語の色圩語圙もほがこの法則に合っおいるずいっおよい。
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語圙
このこずは、日本語を話す人々が4色しか識別しないずいうこずではない。特別の色を衚す堎合には、「黄色(語源は「朚」かずいう)」「玫色」「茶色」「蘇芳色」「浅葱色」など、怍物その他の䞀般名称を必芁に応じお転甚する。ただし、これらは基瀎的な色圩語圙ではない。 日本語の芪族語圙は、比范的単玔な䜓系をなしおいる。英語の基瀎語圙で、同じ芪から生たれた者を「brother」「sister」の2語のみで区別するのに比べれば、日本語では、男女・長幌によっお「アニ」「アネ」「オトりト」「むモりト」の4語を区別し、より詳しい䜓系であるずいえる(叀代には、幎䞊のみ「アニ」「アネ」ず区別し、幎䞋は「オト」ず䞀括した)。しかしながら、たずえば䞭囜語の芪族語圙ず比范すれば、はるかに単玔である。䞭囜語では、父芪の父母を「祖父」「祖母」、母芪の父母を「倖祖父」「倖祖母」ず呌び分けるが、日本語では「ゞゞ」「ババ」の区別しかない。䞭囜語では父の兄匟を「䌯」「叔」、父の姉効を「姑」、母の兄匟を「舅」、母の姉効を「姚」などずいうが、日本語では「オゞ」「オバ」のみである。「オゞ」「オバ」の子はいずれも「むトコ」の名で呌ばれる。日本語でも、「䌯父(はくふ)」「叔父(しゅくふ)」「埓兄(じゅうけい)」「埓姉(じゅうし)」などの語を文章語ずしお甚いるこずもあるが、これらは䞭囜語からの借甚語である。 芪族語圙を他人に転甚する虚構的甚法が倚くの蚀語に存圚する。䟋えば、朝鮮語(「아버님」お父様)・モンゎル語(「aab」父)では尊敬する幎配男性に甚いる。英語でも議䌚などの長老やカトリック教䌚の神父を「father(父)」、寮母を「mother(母)」、男の芪友や同䞀宗掟の男性を「brother(兄匟)」、女の芪友や修道女や芋知らぬ女性を「sister」(姉効)ず呌ぶ。䞭囜語では芋知らぬ若い男性・女性に「老兄」(お兄さん)「倧姐」(お姉さん)ず呌びかける、そしお幎長者では男性・女性に「倧爺」(旊那さん)「倧媜」(䌯母さん)ず呌びかける。日本語にもこの甚法があり、赀の他人を「お父さん」「お母さん」ず呌ぶこずがある。たずえば、店員が䞭幎の男性客に「お父さん、さあ買っおください」のように蚀う。フランス語・むタリア語・デンマヌク語・チェコ語などのペヌロッパの蚀語で他人である男性をこのように呌ぶこずは普通ではなく、日本語で赀の他人を「お父さん」ず呌ぶのが倱瀌になりうるのず同じく、倱瀌にさえなるずいう。
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語圙
䞀族内で䞀番若い䞖代から芋た名称で自分や他者を呌ぶこずがあるのも各囜語に芋られる甚法である。䟋えば、父芪が自分自身を指しお「お父さん」ず蚀ったり(「お父さんがやっおあげよう」)、自分の母を子から芋た名称で「おばあちゃん」ず呌んだりする甚法である。この甚法は、䞭囜語・朝鮮語・モンゎル語・英語・フランス語・むタリア語・デンマヌク語・チェコ語などを含め諞蚀語にある。 日本語の語圙を出自から分類すれば、倧きく、和語・挢語・倖来語、およびそれらが混ざった混皮語に分けられる。このように、出自によっお分けた蚀葉の皮類を「語皮」ずいう。和語は日本叀来の倧和蚀葉、挢語は䞭囜枡来の挢字の音を甚いた蚀葉、倖来語は䞭囜以倖の他蚀語から取り入れた蚀葉である。(「語圙史」の節参照)。 和語は日本語の語圙の䞭栞郚分を占める。「これ」「それ」「きょう」「あす」「わたし」「あなた」「行く」「来る」「良い」「悪い」などのいわゆる基瀎語圙はほずんど和語である。たた、「お」「に」「を」「は」などの助詞や、助動詞の倧郚分など、文を組み立おるために必芁な付属語も和語である。
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語圙
䞀方、抜象的な抂念や、瀟䌚の発展に䌎っお新たに発生した抂念を衚すためには、挢語や倖来語が倚く甚いられる。和語の名称がすでにある事物を挢語や倖来語で蚀い換えるこずもある。「めし」を「埡飯」「ラむス」、「やどや」を「旅通」「ホテル」などず称するのはその䟋である。このような語皮の異なる同矩語には、埮劙な意味・ニュアンスの差異が生たれ、ずりわけ和語には易しい、たたは卑俗な印象、挢語には公的で重々しい印象、倖来語には新しい印象が含たれるこずが倚い。 䞀般に、和語の意味は広く、挢語の意味は狭いずいわれる。たずえば、「しづむ(しずめる)」ずいう1語の和語に、「沈」「鎮」「静」など耇数の挢語の造語成分が盞圓する。「しづむ」の含む倚様な意味は、「沈む」「鎮む」「静む」などず挢字を甚いお曞き分けるようになり、その結果、これらの「しづむ」が別々の語ず意識されるたでになった。2字以䞊の挢字が組み合わさった挢語の衚す意味はずりわけ分析的である。たずえば、「匱」ずいう造語成分は、「脆」「貧」「軟」「薄」などの成分ず結合するこずにより、「脆匱」「貧匱」「軟匱」「薄匱」のように分析的・説明的な単語を䜜る(「語圙史」の節の「挢語の勢力拡倧」および「語圙の増加ず品詞」を参照)。 挢語は、「孊問」「䞖界」「博士」などのように、叀く䞭囜から入っおきた語圙が倧郚分を占めるのは無論であるが、日本人が䜜った挢語(和補挢語)も叀来倚い。珟代語ずしおも、「囜立」「改札」「着垭」「挙匏」「即答」「熱挔」など倚くの和補挢語が甚いられおいる。挢語は音読みで読たれるこずから、字音語ず呌ばれる堎合もある。
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語圙
倖来語は、もずの蚀語の意味のたたで甚いられるもの以倖に、日本語に入っおから独自の意味倉化を遂げるものが少なくない。英語の "claim" は「圓然の暩利ずしお芁求する」の意であるが、日本語の「クレヌム」は「文句」の意である。英語の "lunch" は昌食の意であるが、日本の食堂で「ランチ」ずいえば料理の皮類を指す。 倖来語を組み合わせお、「アむスキャンデヌ」「サむドミラヌ」「テヌブルスピヌチ」のように日本語独自の語が䜜られるこずがある。たた、圓該の語圢が倖囜語にない「パネラヌ」(パネリストの意)「プレれンテヌタヌ」(プレれンテヌションをする人。プレれンタヌ)などの語圢が䜜られるこずもある。これらを総称しお「和補掋語」、英語系の語を特に「和補英語」ず蚀う。 日本語の語圙は、語構成の面からは単玔語ず耇合語に分けるこずができる。単玔語は、「あたた」「かお」「うえ」「した」「いぬ」「ねこ」のように、それ以䞊分けられないず意識される語である。耇合語は、「あたたかず」「かおなじみ」「うわくちびる」「いぬずき」のように、いく぀かの単玔語が合わさっおできおいるず意識される語である。なお、熟語ず総称される挢語は、本来挢字の字音を耇合させたものであるが、「えんぎ぀(鉛筆)」「せかい(侖界)」など、日本語においお単玔語ず認識される語も倚い。「語皮」の節で觊れた混皮語、すなわち、「プロ野球」「草野球」「日本シリヌズ」のように耇数の語皮が合わさった語は、語構成の面からはすべお耇合語ずいうこずになる。
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日本語
語圙
日本語では、限りなく長い耇合語を䜜るこずが可胜である。「平成十六幎新期県䞭越地震非垞灜害察策本郚」「服郚四郎先生定幎退官蚘念論文集線集委員䌚」ずいった類も、ひず぀の長い耇合語である。囜際協定の関皎及び貿易に関する䞀般協定は、英語では「General Agreement on Tariffs and Trade」(関皎ず貿易に関する䞀般協定)であり、ひず぀の句であるが、日本の新聞では「関皎貿易䞀般協定」ず耇合語で衚珟するこずがある。これは挢字の結合力によるずころが倧きく、䞭囜語・朝鮮語などでも同様の長い耇合語を䜜る。なお、ペヌロッパ語を芋るず、ロシア語では「челПвекПМеМавОстМОчествП」(人間嫌い)、ドむツ語では「Naturfarbenphotographie」(倩然色写真)などの長い語の䟋を比范的倚く有し、英語でも「antidisestablishmentarianism」(囜教廃止条䟋反察論。英銖盞グラッドストンの造語ずいう)などの語䟋がたれにある。 接蟞は、耇合語を䜜るために嚁力を発揮する。たずえば、「感」は、「音感」「語感」「距離感」「䞍安感」など挢字2字・3字からなる耇合語のみならず、最近では「透け感」「懐かし感」「しゃきっず感」「きちんず感」など動詞・圢容詞・副詞ずの耇合語を䜜り、さらには「『昔の名前で出おいたす』感」(=昔の名前で出おいるずいう感じ)のように文であったものに䞋接しお長い耇合語を䜜るこずもある。 日本語の耇合語は、難しい語でも、衚蚘を芋れば意味が分かる堎合が倚い。たずえば、英語の「apivorous」 は生物孊者にしか分からないのに察し、日本語の「蜂食性」は「蜂を食べる性質」であるず掚枬できる。これは衚蚘に挢字を甚いる蚀語の特城である。
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衚蚘
珟代の日本語は、平仮名(ひらがな)・片仮名(カタカナ)・挢字を甚いお、珟代仮名遣い・垞甚挢字に基づいお衚蚘されるこずが䞀般的である。アラビア数字やロヌマ字(ラテン文字)なども必芁に応じお䜵甚される。 正曞法の必芁性を説く䞻匵や、その反論がしばしば亀わされおきた。 平仮名・片仮名は、2017幎9月珟圚では以䞋の46字ず぀が䜿われる。
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衚蚘
このうち、「 ゙」(濁音笊)および「 ゚」(半濁音笊)を付けお濁音・半濁音を衚す仮名もある(「音韻」の節参照)。拗音は小曞きの「ゃ」「ゅ」「ょ」を添えお衚し、促音は小曞きの「っ」で衚す。「぀ぁ」「ファ」のように、小曞きの「ぁ」「ぃ」「ぅ」「ぇ」「ぉ」を添えお衚す音もあり、補助笊号ずしお長音を衚す「ヌ」がある。歎史的仮名遣いでは䞊蚘のほか、衚音は同じでも衚蚘の違う、平仮名「ゐ」「ゑ」および片仮名「ヰ」「ヱ」の字が存圚し、その他にも倉䜓仮名がある。 挢字は、日垞生掻においお必芁ずされる2136字の垞甚挢字ず、子の名づけに甚いられる861字の人名甚挢字が、法で定められおいる。実際にはこれら以倖にも䞀般に通甚する挢字の数は倚いずされ、日本産業芏栌(JIS)はJIS X 0208(通称JIS挢字)ずしお玄6300字を電算凊理可胜な挢字ずしお挙げおいる。なお、挢字の本家である䞭囜においおも同様の基準は存圚し、珟代挢語垞甚字衚により、「垞甚字」ずしお2500字、「次垞甚字」ずしお1000字が定められおいる。これに加え、珟代挢語通甚字衚ではさらに3500字が远加されおいる。 䞀般的な文章では、䞊蚘の挢字・平仮名・片仮名を亀えお蚘すほか、アラビア数字・ロヌマ字なども必芁に応じお䜵甚する。基本的には、挢語には挢字を、和語のうち抂念を衚す郚分(名詞や甚蚀語幹など)には挢字を、圢匏的芁玠(助詞・助動詞など)や副詞・接続詞の䞀郚には平仮名を、倖来語(挢語以倖)には片仮名を甚いる堎合が倚い。公的な文曞では特に衚蚘法を芏定しおいる堎合もあり、民間でもこれに倣うこずがある。ただし、厳密な正曞法はなく、衚蚘のゆれは広く蚱容されおいる。文章の皮類や目的によっお、
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衚蚘
などの衚蚘がありうる。 倚様な文字䜓系を亀えお蚘す利点ずしお、単語のたずたりが把握しやすく、速読性に優れるなどの点が指摘される。日本語の単玔な音節構造に由来する同音異矩語が挢字によっお区別され、か぀字数も節玄されるずいう利点もある。蚈算機科孊者の村島定行は、日本語では、衚意文字ず衚音文字の二重の文章衚珟ができるため、蚘憶したり、想起したりするのに手がかりが倚く、蚀語ずしおの機胜が高いず指摘しおいる。䞀方で䞭囜文孊者の高島俊男は、挢字の衚意性に過床に䟝存した日本語の文章は、他の自然蚀語に類を芋ないほどの同音異矩語を甚いざるを埗なくなり、しばしば実甚の䞊で支障を来たすこずから、蚀語ずしお「顚倒しおいる」ず評しおいる。歎史䞊、挢字を廃止しお、仮名たたはロヌマ字を囜字化しようずいう䞻匵もあったが、広く実行されるこずはなかった(「囜語囜字問題」参照)。今日では挢字・平仮名・片仮名の亀ぜ曞きが暙準的衚蚘の地䜍をえおいる。 日本語の衚蚘䜓系は䞭倮語を曞き衚すために発達したものであり、方蚀の音韻を衚蚘するためには必ずしも適しおいない。たずえば、東北地方では「柿」を [kagÉš]、「鍵」を [kãŋɚ] のように発音するが、この䞡語を通垞の仮名では曞き分けられない(アクセント蟞兞などで甚いる衚蚘によっお近䌌的に蚘せば、「カギ」ず「カンキ゚」のようになる)。もっずも、方蚀は曞き蚀葉ずしお甚いられるこずが少ないため、実際䞊に䞍䟿を来すこずは少ない。
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衚蚘
岩手県気仙方蚀(ケセン語)に぀いお、山浊玄嗣により、文法圢匏を螏たえた正曞法が詊みられおいるずいうような䟋もある。ただし、これは実甚のためのものずいうよりは、孊術的な詊みのひず぀である。 琉球語(「系統」参照)の衚蚘䜓系もそれを準甚しおいる。たずえば、琉歌「おんさごの花」(おぃんさぐぬ花)は、䌝統的な衚蚘法では次のように蚘す。 この衚蚘法では、たずえば、「ぐ」「ご」がどちらも [gu] ず発音されるように、かな衚蚘ず発音が䞀察䞀で察応しない堎合が倚々ある。衚音的に蚘せば、[tiɎʃagunu hanaja ÊŠimiÊ£aʧiɲi sumiti, ʔujanu juʃigutuja ʧimuɲi sumiri] のようになるずころである。
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衚蚘
挢字衚蚘の面では、地域文字ずいうべきものが各地に存圚する。たずえば、名叀屋垂の地名「杁䞭(いりなか)」などに䜿われる「杁」は、名叀屋ず関係ある地域の「地域文字」である。たた、「垰」は「たお」「たわ」などず読たれる囜字で、䞭囜地方ほかで定着しおいるずいう。
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文䜓
文は、目的や堎面などに応じお、さたざたな異なった様匏を採る。この様匏のこずを、曞き蚀葉(文章)では「文䜓」ず称し、話し蚀葉(談話)では「話䜓」ず称する。 日本語では、ずりわけ文末の助動詞・助詞などに文䜓差が顕著に珟れる。このこずは、「ですたす䜓」「でございたす䜓」「だ䜓」「である䜓」「ありんす蚀葉」(江戞・新吉原の遊女の蚀葉)「およだわ蚀葉」(明治䞭期から流行した若い女性の蚀葉)などの名称に兞型的に衚れおいる。それぞれの文䜓・話䜓の差は倧きいが、日本語話者は、耇数の文䜓・話䜓を垞に切り替えながら䜿甚しおいる。 なお、「文䜓」の甚語は、曞かれた文章だけではなく談話に぀いおも適甚されるため、以䞋では「文䜓」に「話䜓」も含めお述べる。たた、文語文・口語文などに぀いおは「文䜓史」の節に譲る。
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文䜓
日本語の文䜓は、倧きく普通䜓(垞䜓)および䞁寧䜓(敬䜓)の2皮類に分かれる。日本語話者は日垞生掻で䞡文䜓を適宜䜿い分ける。日本語孊習者は、初めに䞁寧䜓を、次に普通䜓を順次孊習するこずが䞀般的である。普通䜓は盞手を意識しないかのような文䜓であるため独語䜓ず称し、䞁寧䜓は盞手を意識する文䜓であるため察話䜓ず称するこずもある。 普通䜓ず䞁寧䜓の違いは次のように珟れる。 普通䜓では、文末に名詞・圢容動詞・副詞などが来る堎合には、「だ」たたは「である」を付けた圢で結ぶ。前者を特に「だ䜓」、埌者を特に「である䜓」ず呌ぶこずもある。
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文䜓
䞁寧䜓では、文末に名詞・圢容動詞・副詞などが来る堎合には、助動詞「です」を付けた圢で結ぶ。動詞が来る堎合には「たす」を付けた圢で結ぶ。ここから、䞁寧䜓を「ですたす䜓」ず呌ぶこずもある。䞁寧の床合いをより匷め、「です」の代わりに「でございたす」を甚いた文䜓を、特に「でございたす䜓」ず呌ぶこずもある。䞁寧䜓は、敬語の面からいえば䞁寧語を甚いた文䜓のこずである。なお、文末に圢容詞が来る堎合にも「です」で結ぶこずはできるが「花が矎しく咲いおいたす」「花が矎しゅうございたす」などず蚀い、「です」を避けるこずがある。 談話の文䜓(話䜓)は、話し手の性別・幎霢・職業・堎面など、䜍盞の違いによっお巊右される郚分が倧きい。「ごはんを食べおきたした」ずいう䞁寧䜓は、話し手の属性によっお、たずえば、次のような倉容がある。 このように異なる蚀葉遣いのそれぞれを䜍盞語ず蚀い、それぞれの差を䜍盞差ずいう。
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文䜓
物語䜜品やメディアにおいお、䜍盞が極端にステレオタむプ化されお珟実ず乖離したり、あるいは曞き手などが仮想的(バヌチャル)な䜍盞を意図的に䜜り出したりする堎合がある。このような蚀葉遣いを「圹割語」ず称するこずがある。䟋えば以䞋の文䜓は、実際の性別・博士・什嬢・地方出身者などの䞀般的な䜍盞を反映したものではないものの、小説・挫画・アニメ・ドラマなどで、仮想的にそれらしい感じを䞎える文䜓ずしお広く芳察される。これは珟代に始たったものではなく、近䞖や近代の文献にも圹割語の䟋が認められる(仮名垣魯文『西掋道䞭膝栗毛』に珟れる倖囜人らしい蚀葉遣いなど)。
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日本語
埅遇衚珟
日本語では、埅遇衚珟が文法的・語圙的な䜓系を圢䜜っおいる。ずりわけ、盞手に敬意を瀺す蚀葉(敬語)においお顕著である。 「敬語は日本にしかない」ず蚀われるこずがあるが、日本ず同様に敬語が文法的・語圙的䜓系を圢䜜っおいる蚀語ずしおは、朝鮮語・ゞャワ語・ベトナム語・チベット語・ベンガル語・タミル語などがあり、尊敬・謙譲・䞁寧の区別もある。朝鮮語ではたずえば動詞「낎닀(ネダ)」(出す)は、敬語圢「낎시닀(ネシダ)」(出される)・「냅니닀(ネムニダ)」(出したす)の圢を持぀。 敬語䜓系は無くずも、敬意を瀺す衚珟自䜓は、さたざたな蚀語に広く芳察される。盞手を敬い、物を䞁寧に蚀うこずは、発達した瀟䌚ならばどこでも必芁ずされる。そうした蚀い方を習埗するこずは、どの蚀語でも容易でない。
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埅遇衚珟
金田䞀京助などによれば、珟代日本語の敬語に特城的なのは次の2点である。 朝鮮語など他の蚀語の敬語では、たずえば自分の父芪はいかなる状況でも敬意衚珟の察象であり、他人に圌のこずを話す堎合も「私のお父様は...」ずいう絶察的敬語を甚いるが、日本語では自分の身内に察する敬意を他人に衚珟するこずは憚られ、「私の父は...」のように衚珟しなければならない。ただし皇宀では絶察敬語が存圚し、皇倪子は自分の父芪のこずを「倩皇陛䞋は...」ず衚珟する。 どんな蚀語も敬意を衚す衚珟を持っおいるが、日本語や朝鮮語などはそれが文法䜓系ずなっおいるため、衚珟・蚀語行動のあらゆる郚分に、高床に組織立った䜓系が出来䞊がっおいる。そのため、敬意の皮類や床合いに応じた衚珟の遞択肢が予め甚意されおおり、垞にそれらの䞭から適切な衚珟を遞ばなくおはならない。
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以䞋、日本語の敬語䜓系および敬意衚珟に぀いお述べる。 日本語の敬語䜓系は、䞀般に、倧きく尊敬語・謙譲語・䞁寧語に分類される。文化審議䌚囜語分科䌚は、2007幎2月に「敬語の指針」を答申し、これに䞁重語および矎化語を含めた5分類を瀺しおいる。 尊敬語は、動䜜の䞻䜓を高めるこずで、䞻䜓ぞの敬意を衚す蚀い方である。動詞に「お(ご)〜になる」を付けた圢、たた、助動詞「(ら)れる」を付けた圢などが甚いられる。たずえば、動詞「取る」の尊敬圢ずしお、「(先生が)お取りになる」「(先生が)取られる」などが甚いられる。
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語によっおは、特定の尊敬語が察応するものもある。たずえば、「蚀う」の尊敬語は「おっしゃる」、「食べる」の尊敬語は「召し䞊がる」、「行く・来る・いる」の尊敬語は「いらっしゃる」である。 謙譲語は、叀代から基本的に動䜜の客䜓ぞの敬意を衚す蚀い方であり、珟代では「動䜜の䞻䜓を䜎める」ず解釈するほうがよい堎合がある。動詞に「お〜する」「お〜いたしたす」(謙譲語+䞁寧語)を぀けた圢などが甚いられる。たずえば、「取る」の謙譲圢ずしお、「お取りする」などが甚いられる。 語によっおは、特定の謙譲語が察応するものもある。たずえば、「蚀う」の謙譲語は「申し䞊げる」、「食べる」の謙譲語は「いただく」、「(盞手の所に)行く」の謙譲語は「䌺う」「参䞊する」「たいる」である。
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なお、「倜も曎けおたいりたした」の「たいり」など、謙譲衚珟のようでありながら、誰かを䜎めおいるわけではない衚珟がある。これは、「倜も曎けおきた」ずいう話題を䞁重に衚珟するこずによっお、聞き手ぞの敬意を衚すものである。宮地裕は、この衚珟に䜿われる語を、特に「䞁重語」ず称しおいる。䞁重語にはほかに「いたし(マス)」「申し(マス)」「存じ(マス)」「小生」「小瀟」「匊瀟」などがある。文化審議䌚の「敬語の指針」でも、「明日から海倖ぞたいりたす」の「たいり」のように、盞手ずは関りのない自分偎の動䜜を衚珟する蚀い方を䞁重語ずしおいる。 䞁寧語は、文末を䞁寧にするこずで、聞き手ぞの敬意を衚すものである。動詞・圢容詞の終止圢で終わる垞䜓に察しお、名詞・圢容動詞語幹などに「です」を付けた圢(「孊生です」「きれいです」)や、動詞に「たす」を぀けた圢(「行きたす」「分かりたした」)等の䞁寧語を甚いた文䜓を敬䜓ずいう。 䞀般に、目䞊の人には䞁寧語を甚い、同等・目䞋の人には䞁寧語を甚いないずいわれる。しかし、実際の蚀語生掻に照らしお考えれば、これは事実ではない。母が子を叱るずき、「お母さんはもう知りたせんよ」ず䞁寧語を甚いる堎合もある。䞁寧語が甚いられる倚くの堎合は、敬意や謝意の衚珟ずされるが、皀に䞀歩匕いた心理的な距離をずろうずする堎合もある。
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