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scp-901-jp
評価: +36+–x アイテム番号: SCP-901-JP オブジェクトクラス: Euclid 20██/██/██、収容区画にて撮影された映像 特別収容プロトコル: SCP-901-JPは一定の区画内での出現と消失を繰り返している為、一帯にカバーストーリー「施設の老朽化」を流布した上で区画の周囲に警備スタッフを配置し現地にて収容されます。区画内への侵入者を発見した場合は勾留を行ない記憶処理を施して下さい。SCP-901-JPの未確認の挙動が確認された際は担当研究員に報告をお願いします。 説明: SCP-901-JPは大阪府大阪市に位置する梅田駅の地下1F██番通路に午前1時から午前4時の間に不定期に出現する自律した実体です。実体は全長40cmの少女を模した人形と80cmの男性のものと思われる右足で構成されており、足は人形の臀部に発生した裂け目が拡がりそこから突出している事が確認されています。 SCP-901-JPは██番通路(以下、出現区域と表記)のランダムな位置に出現すると、跳躍しながら予測不能な移動を行ないます。前方にある壁や障害物に関係なく前進を行ない衝突する様子等が確認されている事から対象には視覚が備わっていないか、あるいは何らかの要因で機能していないと考えられており出現区画内の消灯、至近距離からの投光を行った際に反応を見せませんでした。1 SCP-901-JPは出現後1時間が経過すると未知の手段によって消失します。時間が経過していない場合でも職員による接触に対して消失してしまう為SCP-901-JPに関する調査は現在不十分であり、更なる観察を継続して生態や起源に関する調査が行われます。以下は出現区域内にて調査活動の一貫として行われた接触実験の記録です。 + 実験記録901-JP - ファイルを閉じる 実験記録901-1 - 日付20██/██/██ 対象: SCP-901-JP 実験方法: Dクラス職員2名による直接の捕獲 結果: Dクラス職員が飛びかかり接触した所消失。以降その日は出現せず。 分析: 概ね予想通りの結果。特筆すべき事項は無し。 実験記録901-2 - 日付20██/██/██ 対象: SCP-901-JP 実験方法: Dクラス職員1名による意思の疎通の試み 結果: Dクラス職員が挨拶、自己紹介、罵倒等の様々な呼び掛けを行うも反応を見せなかった。その後、Dクラス職員が掴み掛かった所消失した。 分析: 概ね予想通りの結果。特筆すべき事項は無し。 実験記録901-3 - 日付20██/██/██ 対象: SCP-901-JP 実験方法: Dクラス職員2名による網、刺股等の器具の使用による捕獲 結果: 対象は器具と接触した瞬間に消失し、4秒後に12m離れた位置に再出現した。投擲された網によって一時的に捕縛されるも、Dクラス職員との接触により消失と再出現を繰り返した。網に入れたままの状態で輸送した場合では区域外に出た瞬間に消失した。 分析: 概ね予想通りの結果となる。直接の接触でない網に大しては消失せず、捕獲そのものに対して消失を行わない事からこれは対象の意思によって行われている「逃走」ではない可能性が考えられる。更なる実験許可を求める。 実験記録901-4 - 日付20██/██/██ 対象: SCP-901-JP 実験方法: Dクラス職員8名と警備スタッフ5名による、対象の再出現後の直接の捕獲 結果: ██回に渡り捕獲が試みられたが全て失敗。██度目の捕獲を試みた際にSCP-901-JPが跳躍を行ない進路上にいたDクラス職員と激突した。Dクラス職員は激突による衝撃で意識を失い、対象は消失せず再び移動を始めた。 分析: 人体との接触に対して消失を行わなかった初めての事例。対象から接触した場合には行わない事から、消失は人間に対する反応では無い物と考えられる。挙げられる可能性として、消失はSCP-901-JPの意思とは無関係な何らかの「現象」なのではないかと思われる。更なる実験許可を申請。 SCP-901-JPは鉄道会社内で多くの目撃情報が報告されていた「独りでに動き回る人形」についてエージェントが聞き込み調査を行っていた際に有力な情報を入手し、現地にて調査を行った際に発見されました。以下は警備員として長年勤務しておりSCP-901-JPに過去に接触した可能性の高い高島██氏へのインタビューに関する資料です。 + インタビュー記録を再生する - 機器を停止する 対象: 高島██氏。駅内の警備員として██年に渡り勤めており、SCP-901-JPと思われる存在の発生当初の情報に関して詳細に記憶している。 インタビュアー: エージェント・五月蠅 付記: エージェントはオカルト雑誌の記者の身分を名乗った上でインタビューを行っています。インタビューは駅内の応接室にて行われました。 <録音開始> [内容が冗長であり無関係な記述が多い為インタビューの中でも有益だと考えられる部分を抜粋しています。] エージェント・五月蠅: なるほど、つまり駅全体で昔からそういう事があったと? 高島氏: そうですねえ、いろんな人が見たって騒いでましたよ。色々お祓いやらなんやらしたんですが、効果はあんまりで・・・こっちとしちゃ抜けて人に悪さしないように祈るしかなかったんですよ。 エージェント・五月蠅: 抜ける? 高島氏: はい、実はあの駅があんなややこしい構造になってるのは、色んなアレが出て来ないようにするためのもんらしいんですよ。泉の広場のアレなんかも元々は駅内の[検閲済]にいたんですけどねえ、それがいつのまにやら・・・抜けちゃったんですねえ。ああ、おっかない。 [当オブジェクトとは無関係の記述の為、省略] 高島氏: アレもそうなんですが、あの人形も曰く付きのもんでして・・・まだあそこにいたんですね。 エージェント・五月蠅: あの人形についてご存知なんですか? 高島氏: ええ、あれは元々駅で親に捨てられた女の子が持ってたもんらしいんですよ。女の子はずっと親を探してたらしくて、通行人を親と見間違えて走って駅のホームまで追いかけて・・・嫌な話ですよね。 エージェント・五月蠅: その人形の祟りだと? 高島氏: みんなそう言ってましたよ、夜な夜な人形が動き回って人を襲うってんですから。タカハシって若いやつがいなくなった事があったんですけど、そいつも食われて死んだって噂でね。終いにはタカハシの声も聞こえるとかそんな話も出てきたんです。 [検閲済] エージェント・五月蠅: 成程、興味深いお話ありがとうございました。それではこれでインタビューを終了します。 <録音終了> 補遺: 20██/3/21/00:21にSCP-901-JPが出現した際に音声を発していることが確認された為、急遽エージェントによる意思の疎通が試みられました。この臨時インタビューは出現区域にて行われ、区域外には警備スタッフを増員して配置してあります。 + 臨時インタビュー記録を視聴する - 機器を停止する 対象:SCP-901-JP インタビュアー: エージェント・五月蠅 付記: SCP-901-JPは跳躍を続けている為、エージェントは高機能マイクを使用しSCP-901-JPを追尾する形で移動しています。映像は設置された監視カメラからの映像です。なお、インタビュー時に収容区域内は設置された複数の照明器具によって投光されており非常に明るい状態であった事を併記します。 <録音開始> エージェント・五月蠅: 対象に追いつきました・・・会話を試みますね。 SCP-901-JP: (男性の声)助けて!助けてくれ!誰か! エージェント・五月蠅: もしもし?話せるんですね?こちらの声が聞こえますか? SCP-901-JP: え・・・誰だお前!?真っ暗で何もわからねぇ!! エージェント・五月蠅: ・・・暗い?大丈夫ですか? SCP-901-JP: 大丈夫な様に見えるか!? エージェント・五月蠅: いや、見えるかというと、その、そもそも貴方は SCP-901-JP: (遮って)[検閲済]だよ!ここの!畜生、これ取ってくれよ! エージェント・五月蠅: ・・・え?あれ?・・・取る?足をですか? SCP-901-JP: 違うよ!これだよこれ!頼む!何とかしてくれよぉ!この人形! エージェント・五月蠅: ・・・は? SCP-901-JP: 抜けなくなっちまったんだ! [3秒後、SCP-901-JPは消失] エージェント・五月蠅:・・・対象は消失、 インタビューを終了しますね・・・ <録音終了> 終了報告書: 使用している言語、声質からSCP-901-JPはおそらく男性だと思われますが詳細は不明。消失に関してもインタビュー内容から本人の意思とは無関係に発生している可能性が高いと思われます。異常性の原因はおそらく「人形」部分にあると考えられます。 これ以降、SCP-901-JPは発言を行う事は無く挙動にも変化はありません。現在、「人形」の破壊、もしくは対象の救出に関しての審議が行われています。 補遺2: SCP-901-JPに関する情報は一部制限されます。 + 閲覧にはレベル3以上のセキュリティクリアランスが必要です - セキリュティクリアランスが確認されました。 当オブジェクトの報告書と20██/3/21/に行われた臨時インタビューの内容に合致しない点があった為、当オブジェクトに関する継続した研究、調査が徹底して行われます。SCP-901-JPに関する更なる実験は新たな調査結果が報告されるまで禁止されます。この決定に伴い一部情報がセキリュティクリアランス3相当まで引き上げられました。 インタビュー記録の一部抜粋 エージェント・五月蠅: その人形の祟りだと? 高島氏: みんなそう言ってましたよ。夜な夜な人形が動き回って人を襲うってんですから。タカハシって若いいやつがいなくなった事があったんですけど、そいつも食われて死んだって噂でね、終いにはタカハシの声も聞こえるとかそんな話も出てきたんです。 [検閲の一部が解除されました。] エージェント・五月蠅: タカハシさん、ですか?その方がこの異常現象にも関わっている可能性が? 高島氏: かもしれません。タカハシが消えた頃からなんか人形から男の声がするって噂が立ち始めたんですよ。そのくらいの頃に私もガブリといかれたんですけど変な声を聞いた気がしますし。 エージェント・五月蠅: ガブリ・・・?え、人形に襲われたんですか!? 高島氏: 実はそうなんですよ。あれは██歳位の頃でしたかね、終電を過ぎた後に見回りをしてたんですが██番通路の所でど真ん中に人形が立ってるのを見つけたんですよ。 エージェント・五月蠅: それは不気味ですね。動いてはいなかったんですか? 高島氏: いや、突っ立ってるだけなんです。私も見たときは怖かったんですけどね、動きもしませんし何も起こらなかったんで「人形の何が怖いんだ!」って蹴飛ばしたんですよ。 エージェント・五月蠅: け、蹴飛ばした!? 高島氏: いやぁ、私も若い頃はヤンチャでしたんで・・・そんで蹴飛ばしたらね、人形の口に爪先が刺さったんですよ。しかも人形の口は段々広がって私の足をどんどん飲み込んでるんです!そのまま足がずっぽり入っちゃったもんで完全にパニックになってしまって・・・ エージェント・五月蠅: でしょうね。相当慌てられたのでは? 高島氏: 懐中電灯も落として何も見えないわ痛いわで大騒ぎです。声をかけてくださった親切な方もいたんですがこっちはそれ所じゃなくてね。足を取るとか言い出すんでこっちも怒鳴り付けてしまって、気がついたらいなくなってましたよ。 エージェント・五月蠅: そうなんですか。真っ暗な中で・・・それからどうなったんです? 高島氏: 気が付いた時には夜が明けてて、五体満足で██番通路でぶっ倒れてたってわけなんですよ。 エージェント・五月蠅: なるほど。辛い体験を思い出させてしまい、申し訳ありません。 高島氏: いえいえ、こんな年寄りの話でよければいくらでも。記者さんもアレを見に行くつもりなら気を付けて下さい。アレの類は常識もなんもありゃしませんからね、下手に出会えば何がおこるかわかりませんよ。 エージェント・五月蠅: そういうのには慣れてますよ。・・・ところで、先ほど仰られてた変な声、というのは? 高島氏: ああ、それですか。いやね、さっき誰かに声をかけられたって言ったじゃないですか。よくよく考えてみればあの時間帯に自分以外の人間があんな所にいるはずがないんですよね。・・・もしかしたらタカハシが助けてくれたのかもしれません。 エージェント・五月蠅: 成程、興味深いお話ありがとうございました。それではこれでインタビューを終了します。 <録音終了> 上記のインタビュー記録を受けて「タカハシ」という名前の過去に勤務していた警備員を調査した結果、当時勤務していた高橋██氏の存在が浮上しました。しかし追跡調査の結果ノイローゼによる職務放棄からの失踪だった事が判明し当オブジェクトとは無関係である事が証明されました。 追記: 臨時インタビュー内にて検閲されていたSCP-901-JPが名乗った名前に関して調査した所、当オブジェクトに関する情報の提供を行った高島██氏以外に同姓同名の人物は存在していませんでした。高島██氏に関しても調査が行われましたが、特に異常な点は現在発見されていません。詳細な情報が判明するまでは情報の検閲が行われます。 脚注 1. 同様に職員の発声や足音に対しても反応を見せていない事が報告されています。
scp-902-jp
評価: +68+–x アイテム番号: SCP-902-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-902-JPは、現在SCP-902-JP-1と指定されているサイト-81██所属のD-902-1が着用しています。SCP-902-JP-1とその取り巻きであるSCP-902-JP-2群は月例解雇免除の上他のDクラス職員から隔離し、所定の職務のみを与えて下さい。現在のSCP-902-JP-2は3名のDクラス職員D-902-2、-3、-4であり、サイト-81██第4倉庫を一時的に雑居房として改装、SCP-902-JP-1と共に収容しています。 SCP-902-JP-1との直接の接触及び、SCP-902-JP-1が「裸に見える」旨の疑問ないしは確信を口に出す行為は堅く禁止されています。また、サイト-81██所属の全職員は当報告書の熟読と理解を徹底して下さい。 説明: SCP-902-JPは視認不可能な一着の服です。それが光学的な要因によるものか、もしくは未知の特性によるものかは現在不明です。回収時任務に当たったエージェントや、これまで影響に晒されたDクラス職員へのインタビューによって、SCP-902-JPが上質な絹のように滑らかな手触りであり、ローブかガウンのような長い丈の洋服である事は判明しています。 SCP-902-JPの異常性は、それが誰にも着用されていない時、素肌で触れた人間に強烈な着用欲求を煽る事に端を発します。この欲求及び着用行動は外部からの物理的な妨害が可能ですが、記憶処理でこの欲求を完全に抹消する事は不可能です。SCP-902-JPを一度着用した人間(以下、SCP-902-JP-1)が何らかの共同体の頂点の立ち位置1である場合、元々の性格如何によらず以下のような傾向が見られます。 SCP-902-JP以外の服(下着を除く)の着用を嫌悪・拒絶する 共同体リーダーとしての職務や義務に対して真摯に取り組み、それ以外の物事への興味関心が希薄になる 共同体メンバー(以下、SCP-902-JP-2)とのコミュニケーションを好む一方、SCP-902-JP-2以外との直接的なコミュニケーションを拒む SCP-902-JP-2への変異は、SCP-902-JP-1の共同体メンバーである人間がSCP-902-JP-1を直接・間接問わず視認すると起こります。SCP-902-JP-2に見られる傾向は以下の通りです。 SCP-902-JP-1を「王」と称し、常に肯定する言葉2をかけながら、出来るだけ傍を離れず行動しようとする 全ての興味関心がSCP-902-JP-1に向く。それに伴い、SCP-902-JP-1を全思考・行動の指針とし、その命令には如何に無理のある内容であろうとも喜んで従おうとする 外部の人間がSCP-902-JP-1と接触しようとした場合は必ずそれを止め、会話であれば自分達を通して行うよう要求し、攻撃行為からは身を挺してでも守ろうとする 以上の行動傾向により、SCP-902-JP-1との直接的な会話・接触や、SCP-902-JPの回収・形状の把握は為されていません。しかしSCP-902-JP-1、ひいてはそれに従うSCP-902-JP-2の思考が基本的には非敵対的であり、両者とも共同体の職務や義務以外の物事3への関心を失うという特性から、現時点でSCP-902-JPの回収は検討されていません。 補遺1: SCP-902-JP-1が「裸に見える」旨の発言は疑問・確信を問わず、SCP-902-JP-2の強力な敵対化を招きます。原理は不明ですが、視覚的・聴覚的に届かない位置での発言も的確に認知可能です。この敵対化は共同体の外にいる人間すべてに対して起こるため、発言が行われた時点で、収容違反を始めとした深刻な被害を招きかねない点に留意する必要があります。 サイト-81██所属職員が閲覧を義務付けられた文章は以上です。   補遺2: 以下の文章は閲覧が制限されます。SCP-902-JP収容・研究に直接関わる職員以外は、セキュリティクリアランスレベル3を持つ職員のみが承認を受けた上で閲覧可能です。閲覧を希望する者は所定の届け出によりパスワードを入手後、以下のフォームから認証して下さい。     Security Clearance Level 3 only 職員コード 87f889fb7bd95f42347301d98089aa35_1711191055 パスワード 4d8d7ce4c75c11e7d9d6a6e7a7b729f4_1711191055 認証 ログアウト   認証完了。文章「真のSCP-902-JP報告書」を開示します……                                   アイテム番号: SCP-902-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-902-JP本体には破壊措置命令が下されており、普段はサイト-81██の専用収容室に格納されています。破壊実験時以外は感圧センサー搭載のアラーム装置の上に常に安置し、本稿既読の職員が収容違反及び「王位継承イベント」の発生を速やかに認知・対応出来るよう配慮して下さい。 SCP-902-JPの暴露効果は、現在SCP-902-JP-1と指定されているサイト-81██所属のD-902-1に顕現しています。D-902-JP-1とその取り巻きであるSCP-902-JP-2群は月例解雇免除の上他のDクラス職員から隔離し、所定の職務のみを与えて下さい。現在のSCP-902-JP-2は3名のDクラス職員D-902-2、-3、-4であり、サイト-81██第4倉庫を一時的に雑居房として改装、SCP-902-JP-1と共に収容しています。SCP-902-JP-1には簡易心電計を取り付け、電気パルスの異常を常に把握出来るようにして下さい。 SCP-902-JP-1との未遂を含む直接の接触及び、SCP-902-JP-1が「裸に見える」旨の疑問ないしは確信を口に出す行為は、「王位継承イベント」の発生を招くため堅く禁止されています。「王位継承イベント」発生の原因となった接触行為(未遂含む)・発言をした人間は、特定次第Bクラス記憶処理を実施して下さい。また、本稿を閲覧の上記憶処理を行わなかった職員は別途データベースにリストアップされ、リストは常に自動更新されています。「王位継承イベント」発生時は、リストアップ済みの職員は当該データベースにアクセスの上、新たなSCP-902-JP-1の可及的速やかな特定に努めて下さい。 説明: SCP-902-JPは製造元不明の木製ハンガーです。フック根本部分に"Andersen"と刻印された銀製の輪が嵌め込まれている事以外、その組成・外見共に特異な点は見られません。しかしながら、SCP-902-JPは衝撃・加圧・切断・燃焼・腐食等の物理的な破壊行為に対して異常な耐性を持ちます。現在も収容チームによって破壊の試みは続けられていますが、それらの全ては失敗に終わっています。 SCP-902-JP-1、-2の特性は上記の偽装報告書内の説明と概ね変わりません。ただし、SCP-902-JP-1は「誰にも見えない透明な服に触れ、それを身に付けた人間」ではなく、「SCP-902-JPを目視した故の異常性に直接晒されている人間」を指します。SCP-902-JPが目視による暴露を引き起こすのはSCP-902-JP-1が存在しない条件下のみに限られ、以降の暴露者SCP-902-JP-2は、SCP-902-JP-1の共同体メンバーがSCP-902-JP-1を直接・間接を問わず目視する事によって発生します。 SCP-902-JPの異常性は、その目視によってSCP-902-JPに掛かる「不可視の服」の概念と存在(以下、SCP-902-JP-3)を認識させ、「着用」を促す点に端を発します。SCP-902-JP-3は、周囲の人間の「SCP-902-JP-3は存在する」といった内容の嘘や思い込みによってその存在を確立していると考えられており、SCP-902-JP-1及び-2は「SCP-902-JP-3存在の為に、SCP-902-JPによって無理矢理作り出された」という見方が現在なされています。 ひとたびSCP-902-JP影響下にない人間が「不可視の服」に触れようとするか、SCP-902-JP-1が「裸に見える」旨の発言、つまりSCP-902-JP-3の存在を疑問視ないしは否定する発言をすると、SCP-902-JP-3は即座に消失します。この時の行動や発言の感知可能範囲は不明ですが、感知能力を有するのはSCP-902-JP-3並びにSCP-902-1ではなく、あくまでSCP-902-JP本体であると推測されています。SCP-902-JP-3消失後、SCP-902-JP-1、-2は断片的な記憶を保持したまま変異前の状態に戻りますが、SCP-902-JP本体はSCP-902-JP-3消失と同時に、前述の行動者・発言者を含めた「自らの正体を知る別の人間」1人の元へと瞬間的に転位します。転位先に選ばれる人間は概ねランダムですが、元のSCP-902-JP-1よりも権威や立場がより上位の人間が選ばれる傾向にあります。 これらをSCP-902-JPがどのように知覚・判断しているかは不明ですが、その理由については「SCP-902-JP-3の存在を信じないより強く大きな共同体の、強制的な精神支配のため」ではないかと考えられています。SCP-902-JP-3消失からSCP-902-JP転位を経ての新たなSCP-902-JP-1発生までの一連の現象は「王位継承イベント」と呼称され、SCP-902-JP-1の終了によっても引き起こされる事が判明しています。 補遺3: 「王位継承イベント」は、今までで唯一SCP-902-JPの回収時に生じています。SCP-902-JPは、19██/██/██、要注意団体との関連が疑われた静岡県██市内の廃屋にて発見されました。当時突入・捜索任務に当たったのは5名からなる機動部隊でしたが、内1名がSCP-902-JPを発見・暴露しました。その後同隊部隊長であったエージェント・██に「王位継承イベント」が生じ、エージェント・██がSCP-902-JP-1に、同隊隊員のすべてがSCP-902-JP-2へと変異しました。しかし、この時点でSCP-902-JP-1、-2の「共同体としての職務や義務に対して真摯に取り組む」「共同体の王であるSCP-902-JP-1の命に従う」という特性が生じた結果、エージェント・██はその場に留まった上でSCP-902-JPの性質予測・実験・特定と本部への報告を優先、結果最小限の被害でこれを収容する事に成功しました。この結果は、SCP-902-JPの持つ強力な認識と精神への支配力と、その内容である当機動部隊が真摯に取り組むべき職務が「SCPオブジェクトの可及的安全な収容」であった点が、自己矛盾を起こした末に生じたものと推測されています。また上記偽装報告書の一部並びに当報告書は、潜入当時の音声記録やエージェント・██の報告、SCP-902-JP-2となった機動部隊員を通したインタビューから判明した事象を元に記述されています。 尚、任務に当たったエージェント・██並びに機動部隊員は、当インシデントにおける唯一の犠牲者です(暴露者4名、死者1名。死者はSCP-902-JP-1終了による「王位継承イベント」発生確認のための犠牲)。生存者らは本人達の意向もあり、部隊解散の上表向きは財団フロント企業への転属の記録を残し、月例解雇免除のDクラス職員として再雇用されました。現在、エージェント・██はD-902-1、機動部隊員であった3名はそれぞれD-902-2、-3、-4として、各人「サイト-81██第4倉庫清掃班」の共同体名の下同室に収容されています。 補遺4: ██博士の所見 ここまで目を通した諸君ならば、この報告書が何故研究に携わる者を除いて、一部のセキュリティクリアランスレベル3を持つ職員のみに開示されているか理解出来るだろう。レベル4であるサイト管理者や日本支部理事達、レベル5を持つO5評議会員らが真実を知っている場合の危険性は言わずもがなだが、低レベルセキュリティクリアランスの職員達、つまり財団施設外でも活発に活動を行う者に「王位継承」が生じる事態も避けねばならないのだ。 SCP-902-JPによって生じる「王」は裸である上、殆どの場合周囲に多くの「お供」を引き連れる。故に発見は容易いが、何も知らない人間が「王」を見て「奴は裸だ」と発言する事もまた容易いだろう。加えて、繰り返しになるが、SCP-902-JPによる一連の影響を受けた人間は皆職務に真摯に取り組む。それが例え財団外部の、民間人の目に留まる可能性のある場所での活動でもだ。それらを鑑みた上で考えて欲しい、もし財団施設外での仕事を主とするフィールドエージェントらがSCP-902-JPの正体を知った状態で、「王位継承イベント」が発生してしまったら?単純な話だが、SCP-902-JP本体が財団の把握外に転位してしまう可能性も跳ね上がり、その結果SCP-902-JPが敵対視する「不可視の服への不敬者」が、財団外部で爆発的に増加する事も想像に難くない。そして、一度そうなれば、SCP-902-JPはほぼ収容不可能だ。財団上層部や各国の首相・大統領が「王」になろうものならば、未曽有の大混乱と人的・文化的な被害は免れない。 そうだ、本来ならば誰も真実を知らない方が良いのかもしれないのだ。本来のSCP-902-JPは地下か海中のサイトにでも追いやって忘れ、すべての財団職員がSCP-902-JPを「王とお供を作り出す不可視の服」と認識し、王の崩御と共にどこへともなく消え去ったその服をNeutralized認定でもする方が、丸く済むのかもしれないのだ。しかし、それでは万が一「王位継承」に伴うSCP-902-JP収容違反が起きたとしても、誰一人気付けない。とは言え、真実を知る権利と義務をSCP-902-JP研究に携わる人間だけに限定すれば、サイト-81██丸々1つが「絶対王政化」されるような収容違反が生じた際に初動対応が遅れてしまう。真実を知るのがSCP-902-JP収容担当者に加え一部のセキュリティクリアランスレベル3の職員のみという対応は、考え抜かれた末の苦肉の策なのだ。 SCP-902-JPは、あるいはその製作者は、悪意を持っている。「不可視の服」を信じない人間に対する悪意を持っている。そして、それらの人間に対して服の存在を無理矢理信じさせる力までもを持ち合わせている。しかし幸いにして、SCP-902-JPそのものに人間の嘘を「嘘」と見抜く知性は無い。我々は愚かな「賢い民衆」の振りをし、裸の王が纏う「透明にして絢爛豪華な服」を誉めそやす事で、一時の収容を可能に出来ているのだ。 最後に。本稿閲覧申請の際、諸君は皆パスワードの記された承認証明書を受け取っただろう。そこに特筆次項の記述が無ければ、「真のSCP-902-JP報告書」に関する一切の記憶処理が許可されている。そして、私もそれを強く勧めよう。本稿の記憶保持を義務付けられているのは、私のようにSCP-902-JP収容に直接関わる数名の人間と、各サイト1人ずつ厳正に選任されたセキュリティクリアランスレベル3の職員だけだ。ひょっとしたら次代の「王」になるかもしれない人間は、かの勇敢な幻の機動部隊のように、一生を裸の王とそのお供としてオブジェクト収容に捧げねばならなくなるかもしれない人間は、なるべく少ない方がいいはずだ。   -サイト-81██所属 ██ 脚注 1. 一般に「長」「リーダー」が語尾に付く各役職や立場は大抵これに当たります。 現在SCP-902-JP-1であるD-902-1は「サイト-81██第4倉庫清掃班班長」です。 2. 特にSCP-902-JPを褒める発言が目立ちます。 3. 脱走、暴動、収容違反等財団への反逆行為やその計画。
scp-903-jp
評価: +121+–x SCP-903-JPの状況下にあるSCP-903-JP-1-2 アイテム番号: SCP-903-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-903-JPおよびSCP-903-JP-1は標準生体収容房および標準人型収容房に収容されます。すべての職員は許可なくSCP-903-JPを目視してはいけません。SCP-903-JP-1の踊りを許可なく止めてはなりません。SCP-903-JPの実験には、セキュリティークリアランスレベル3以上の職員1名以上の承認が必要です。SCP-903-JP-1は常に3個体以上が維持されなければなりません。必要個体数を下回った場合は可能な限り寿命の長い生物をSCP-903-JPに暴露させてください。 説明: SCP-903-JPは認識汚染能力を持ったメスのホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides viverrinus)です。SCP-903-JPの首関節は通常の個体よりも柔軟ですが、それ以外の身体的異常はありませんでした。 SCP-903-JPの特異性はSCP-903-JPが後ろ足をたたみ、額を床につける姿勢、いわゆる土下座の姿勢を取ることで発現します。その姿を見た生物は踊ることは素晴らしい、という観念が植え付けられます。このようにして、SCP-903-JPに暴露したものはSCP-903-JP-1に指定されます。SCP-903-JP-1個体に記憶処理を実施しても異常性は消失しません。SCP-903-JPはSCP-903-JP-1個体によって「Mr.コジロウ」と称されています。 多くの場合、暴露してすぐにSCP-903-JP-1はその場で踊り始めます。その踊りには個体差があります。SCP-903-JP-1の身体の構造は踊りのために最適化されます。具体的には、四肢の関節の可動範囲の増加、四肢の筋力の増加、二足歩行のための体幹の強化が確認されています。現在、SCP-903-JP-1は125個体が収容されています。多くは、異常性のない動物および人間です。しかし、一部異常なオブジェクトがその中に含まれており、SCP-███-JPへと再指定されました。SCP-903-JP-1は睡眠中や食事中以外は基本的に踊りを踊っています。踊りを阻止することは可能ですが、SCP-903-JP-1の反発があるため、推奨されません。SCP-903-JP-1は暴露直後の踊りを終えた後、別のSCP-903-JP-1を探索し、「グループ」を構成します。グループの構成員は12~69です。このようにして4つのグループが構成されていることが確認されています。 SCP-███-JPは後述のSCP-903-JPの回収の際、オブジェクトの影響を受け踊っている状態で発見されました。現在はSCP-903-JPと異なる収容施設に収容されています。SCP-███-JPの詳細は別紙の報告書を参考にしてください。 SCP-903-JP-1個体実例 分類番号 種別 顕著な強化点 追記 SCP-903-JP-1-1 イエネコ(Felis silvestris catus) 四肢の強化 立ち上がって、フラダンスを踊る。 SCP-903-JP-1-2 イエネコ(Felis silvestris catus 体幹の発達 ポールがないにもかかわらず、ポールダンスを踊る。 SCP-903-JP-1-6,7 ブタ(Sus scrofa domesticus) 下半身の発達 二個体によって創作ダンスがなされる。 SCP-903-JP-1-25 人間(初期収容時に暴露) 体幹の強化 器械体操を行う。非常に高度な技を継続して行い続けた。以前はこのように踊ることはできなかったと主張している。 SCP-903-JP-1-58 キハダマグロ(Thunnus albacares) ひれの異常発達。陸上での二足歩行。陸上での呼吸 水中でも、陸上でもシンクロナイズドスイミングが行われる。 SCP-903-JP-1-79 アシダカグモ(Heteropoda venatoria) 強化はなし ブレイクダンスを行う。ごくたまに足がもつれ、転ぶようなしぐさをする。 SCP-903-JP-1-94 アミメキリン(Giraffa camelopardalis) 特に下半身の強化が顕著だった。 2足歩行しながらロボットダンスを踊る。██の動物園で行方不明になっていた個体と特徴が一致した。 SCP-███-JP 既存の生物と一致した特徴を持たない軟体生物 強化個所不明 全身をねじり続ける動作を行う。SCP-███-JP自体の異常性の曝露を受けて周囲30m以内にいる3名のDクラス職員が身体をねじり2名が終了した。生存者はSCP-903-JPに暴露していた。 SCP-903-JPはテレビ局に不審な集団が現れ、11名がSCP-903-JPに暴露したことから存在を知られました。SCP-903-JPは後方にSCP-903-JP-1個体をすべてひきつれて、テレビ局エントランスで「土下座」を行い、SCP-903-JP-1は各々の踊りを踊りました。SCP-903-JPおよびSCP-903-JP-1の収容は財団エージェントに2名の暴露者を出しながらも成功しました。別途、SCP-███-JPも財団エージェント8名の暴露者を出しながら収容されました。SCP-███-JPの暴露者のうちSCP-903-JPに暴露していた2名は生存しました。 補遺:SCP-903-JPが20██年に老衰で死亡しました。そのとき突如、SCP-903-JP-1-1、SCP-903-JP-1-6,7、SCP-903-JP-25、SCP-███-JP、が「私がMr.コジロウの後継者だ」と主張し始めました。この主張はそれぞれの個体が発することができる音によって、十分に認識可能な形式でなされました。その後、SCP-903-JP-1-1、SCP-903-JP-1-6,7、SCP-903-JP-25、SCP-███-JPは順に踊り始めました。その後、SCP-903-JP-1はお互いに隔離されているにもかかわらず、「後継者争い」のために踊ったSCP-903-JP-1の踊りの「評論」をはじめ、最終的にSCP-███-JPが後継者にふさわしいという意見の一致が行われました。その後、SCP-███-JPは自らの特性を失い、代わりにSCP-903-JPの特性を得ました。そのため、SCP-███-JPをSCP-903-JPとして再指定しました。
scp-904-jp
評価: +192+–x アイテム番号: SCP-904-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-904-JPに対しては現在の所、物理的収容の方法はなく、経過観察と情報規制により封じ込め処置を行ってください。財団の所有する衛星による監視と発信される電波の妨害が常に行われます。情報漏えいの可能性があるすべてのメディアは常に監視され、SCP-904-JPへの言及はすべて削除対象とされます。 説明: SCP-904-JPは火星から天王星の軌道上にかけて分布し、地球に向けた運動を行う不特定数の実体です。現在までに7体が確認されており、いずれも同様の性質を持っていると思われます。また、オブジェクトの方向からは強力な電波信号が不定期に発信されており、オブジェクト発見に繋がりました。 以下は発信された電波を解読したものです。 南海ピザデリバリーズ・ザ・ギャラクシーを是非ご利用ください。 当社は世界中の皆様に愛されおります、南海ピザ・フランチャイズの誇る最新のサービスとなります。 安全・ヘルシーをモットーに、いつでも出来たてのピザをお届けいたします。 ヘイ ヨー 俺はピザ・K。誰も見たことの無いラップをやるぜ。 ここは南海、なんかいーピザ売っている。秘伝のソース、最新のテク。直伝のサーブ、最高のディッシュ。 イタリアンピザ屋が泣いて逃げ出す、南海のピザ。簡単なテル。注文は明快。南海、なんか良い。 いつでもクリーン、肉は全てオーガニック。ジューシー、ヘルシー、彼氏も嬉しー。 ピザの丸は地球の丸だ。母なるピッツァにリスペクト。違法操業者とはディスコネクト。 ヘイ ヨー これが南海。 今投資をするなら南海に決めろ。イエー。南海、なんか良い。 以上の文章のほかに電話番号を示す情報が発信されていますが所在地を示す情報はなく、発信源はNGC 1952方向であることだけ判明しています。財団の調べでは南海ピザデリバリーズという企業は現在にも過去にも存在しておらず、電話番号は接続可能ですが、公的には登録されていない番号となっています。 SCP-904-JPは推定時速25 kmほどの非常にゆっくりとした速度で接近を続けており、最も近い個体でも地球までの到達には800万年以上かかると見込まれています。財団の所有する高精度天体望遠鏡による観測によるとSCP-904-JP実体はバイクに乗った人型の様である事が示唆されています。 補遺: SCP-904-JPより発信されている電話番号の確認承認が降り、電子的、物理的に隔離された専用ルームから秘匿通信による確認実験が行われました。 以下は実際の音声記録となります。 SCP-904-JP音声記録。 実験にはDクラス職員一名が担当しました。 SCP-904-JP: 南海ピザデリバリー・ザ・ギャラクシーにお電話いただきありがとうございます。ガイダンスにしたがってご注文を… D-81456: なんや、録音かいな、脅かしやがって。 SCP-904-JP: …はピザのサイズをお選びいただきます。Sサイズの方は1を、Mサイズの方は2を、Lサイズの方は3を、ガイダンスを繰り返す場合は♯を… D-81456: 注文してええんやろ?(Dクラス職員は3をプッシュしました。) SCP-904-JP: …次にピザをお選びください。1、ファームスペシャル 2、がっつりミート 3、南海クラブスペシャル 4、イベリコ&チキン 5、よくばりミックス… D-81456: これマジで全部聞くんか? もうどれでもええやろ・・・ SCP-904-JP: …それぞれのメニューの詳細を確認される場合は♯の後に対応する番号をプッシュしてください。最初に戻る場合は… (指示によりDクラス職員は♯1をプッシュしました。) SCP-904-JP: 1番、ファームスペシャル。厳選された完全オーガニックのフレッシュトマトとオニオン、グリーンアスパラを使用。女性にも優しく、発がん性物質を一切使用していないヘルシーなピザです。 (指示によりDクラス職員は♯2をプッシュしました。) SCP-904-JP: 2番、がっつりミート。特製のスパイシーソーセージと照り焼きチキンを用いたジューシーなピザです。もちろん素材はすべてオーガニック。クリーンで有害物質を発生させません。 D-81456: これ全部聞くんか?頭おかしいで。 (以下、特に特筆点はないため割愛) 機械音声ガイダンスにしたがって注文を行うシステムとなっており、注文完了から四ヶ月後に天王星軌道上に新たなSCP-904-JP個体の出現が確認されました。
scp-905-jp
評価: +386+–x SCP-905-JPが発生したジャンボ機の給湯室。この全ての開閉部からSCP-905-JP-1が出現していた アイテム番号: SCP-905-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-905-JPに対する封じ込めの試みは成功していません。各国の民間旅客機運行業者には該当する現象が発生した場合の報告を義務付け、旅客機内の乗務員・乗客に対しては記憶処理が行われます。 説明: SCP-905-JPは、英語圏で就航中の民間旅客機内部で発生する現象です。SCP-905-JPが発生した旅客機内では、乗客、客室乗務員、操縦士が発生させる、足音、ドアの開閉音、くしゃみ等の全ての音が、徐々に揃って一定のリズムを刻み始めます。それらは、事象発生から約30分程度で「ウィー・ウィル・ロック・ユー」の特徴的なリズムへと収束します。このリズムが揃うに従って、機内は「ライブ・ショーに似た一体感と高揚感に包まれる」と証言されています。その後、機内に足音と手拍子が鳴り響く中で、無人の機内トイレ、クルーレスト、空いている荷物置き場など、様々な場所からインド系の身体的特徴を持った30代ほどの男性(以下、これをSCP-905-JP-1と指定)が複数現れます。SCP-905-JP-1は同時に3体から最大で27体まで発生しており、いずれも身体的特徴は同一です。暴露した乗客に対する財団職員によるインタビューでは、SCP-905-JP-1は「フレディ・マーキュリーであった」と強く認識されているようです。 SCP-905-JP-1が出現後、機内の音響設備からは伴奏が流れ始め、SCP-905-JP-1はそのまま「ウィー・ウィル・ロック・ユー」を歌います。その後、客席の間を歩き回りながら、「アイ・ウォント・イット・オール」「ボヘミアン・ラプソディ」「イニュエンドウ」などを中心とした様々なパフォーマンスを披露します。このレパートリーは発生の度に変化していますが、いずれも「クイーン」のシングル曲であることは共通しています。また、どのケースにおいても、機内にこれらの音源は存在していません。 SCP-905-JPが発生中の機内では、天候状態に関わらず激しい振動が確認されており、曲調に合わせて振動が発生しているものと見られています。機内照明もパフォーマンスに合わせて点滅を繰り返し、赤、青、緑を始めとした色彩と、演出用のレーザービームが確認されますが、どのような仕組みでこれらが発生されているのかは不明です。また、フライトレコーダーでは激しい振動に対する機体制御も十分ではなく、操縦士もSCP-905-JPによる影響を受けているものと推測されます。この機体の振動による負傷者は7名発生しており、いずれも軽症です。 過去に、偶然居合わせたエージェントによって異常性の妨害が試みられましたが、SCP-905-JPが発生した機内と乗客は「ライブ・ショーに似た熱狂状態」にあり、完全に黙殺される形で失敗しています。エージェントからの報告を受けた収容チームが、空港着陸時の機内の包囲を行いましたが、SCP-905-JP-1の確保に至らず、パフォーマンス終了後の行方は不明です。乗客・乗務員へのインタビューにおいても明確な答えは得られていません。その後、エージェントはSCP-905-JPの影響を受けた状態で保護されています。これは、SCP-905-JPに対する知見が暴露時の影響をある程度緩和したものと推測されます。 SCP-905-JPに暴露した乗客は、財団職員によるインタビューの結果、「フレディ・マーキュリーは生存している」という強い確信を持つことが判明しています。関連して、オカルト情報のネットワーク監視チームからは有名人の生存説のトピックが増加傾向にあることが報告されており、未確認のSCP-905-JPの亜種が存在することが懸念されています。
scp-906-jp
評価: +61+–x SCP-906-JP-1のひとつ。 アイテム番号: SCP-906-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-906-JP-1の周囲5mに金網を増設し、金網内への立ち入りを禁止してください。立ち入りを行う場合、レベル3以上の職員の許可を得た後、財団標準火器の携帯、もしくは火器を使用できる人材との同行を必要とします。あらたにSCP-906-JP-1が発見された場合、カバーストーリー「電線工事」を適用し、同様の対処を行ってください。SCP-906-JP-1には触れないようにし、万が一触れてしまった場合、決して動かず、声を出さないようにしてください。SCP-906-JP-2が出現した場合、必要であると判断されたなら、対象への攻撃および発砲を許可します。 説明: SCP-906-JPは、高圧送電線用の鉄塔のように見える物体(SCP-906-JP-1)と、JP-1に生息する巨大な蜘蛛のような生命体(SCP-906-JP-2)で構成されています。 SCP-906-JP-1は高圧送電線用の鉄塔のように見える物体です。20██年現在、対象は鳥取県に█個、岡山県に█個発見されています。対象の外見は通常の鉄塔と変わりません。対象は異常性を発揮していない状態でも極めて頑強であり、あらゆる耐久実験においても欠損は見られませんでした。また、接続されている送電線は正常に使用されています。 SCP-906-JP-1の異常性は、「摂氏30℃以上50℃未満であり、音と振動を発する物体」が対象に触れた場合、発現します。物体の触れた部分が対象に完全に接着されます。接着力は強く、200kg以下の牽引力では引き剥がすことができません。この状態で「大声を出す」「JP-1から離れようと動く」などの動作が継続して起こった場合、SCP-906-JP-1の上部にSCP-906-JP-2が出現します。 SCP-906-JP-2は体長2mほどの巨大な蜘蛛のような生命体です。対象の姿はジョロウグモ(学名:Nephila clavata)とよく似ています。記すべき特徴として、全身が鋼鉄のような未知の物質で構成されており、衝撃に対して非常に頑強です。また、後述の行動から筋力は200kg以上であると考えられています。JP-2は各JP-1に1個体で生息しており、これまでに発見された対象は、それぞれ全て別の個体です。また、ジョロウグモの物とよく似た生殖器が確認され、それらはすべて雌の物と判明しています。現在、雄の生殖器をもった個体は発見されていません。 SCP-906-JP-2は大きな音と振動に正の走行性を強く示し、それを放つ物体に時速60kmほどの速さで近づいていきます。JP-1に接着された物体にたどり着くと、非生物であればJP-1から引き剥がして廃棄し、生物であれば[編集済み]しながら捕食します。消費行動は█時間ほどかかり、終了すると、JP-2はJP-1の上部まで戻り、消失します。 SCP-906-JP-2は機動部隊の標準火器では負傷をほとんどしません。しかし、対象は生物の捕食中であっても、攻撃を受けると逃走行動をとります。JP-2出現時において必要であると判断された場合、現場の判断での発砲が許可されています。 SCP-906-JPは198█年5月、鳥取県にて電気工員の不審な事故死が多発したことが財団の目にとまり、調査が行われたことで発見されました。また、対象が異常性を発揮する前は通常の鉄塔であったことが資料から確認されています。鉄塔を保有する██電力株式会社の幹部に扮した財団職員により、SCP-906-JP-1となった鉄塔には、特殊技術団体に偽装した財団のグループが管理にあたることになりました。 第一発見以降、SCP-906-JPの新しい個体は、4年から5年に1度ほどの、ゆっくりとしたペースで発見され続けています。通常の鉄塔がSCP-906-JP-1になる原因や、SCP-906-JP-2がどこへ消失しているのかは未だ不明です。現在、鉄塔のJP-1化を防ぐ方法の研究が進められています。 補遺1: 200█/06/30、財団収容下にあるSCP-906-JP-1において、腹部に直径60cmほどの球形物体が付着しているSCP-906-JP-2が確認されました。観察により、それは卵嚢である可能性が高いと結論付けられました。20██現在において球状物体の孵化の様子は見られませんが、初期の確認時点より肥大化していることが判明しています。SCP-906-JP-2の雄個体の捜索が現在も行われており、球形物体の奪取および保管が検討されています。 補遺2: 球状物体の模様の一部を拡大した結果、人間の顔のような模様になっている部分が発見されました。財団が調査を行ったところ、その模様の特徴は198█/05/10に死亡した電気工員の顔の特徴と95%一致しました。
scp-907-jp
評価: +82+–x SCP-907-JP アイテム番号: SCP-907-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-907-JPはサイト-81██の耐火性収容チャンバーで保管されます。収容チャンバーには独立した電源から成る自動消火装置と緊急排気システムが備えられ、内部への火気を帯びる物品の持ち込みは如何なる理由があっても禁じられます。またSCP-907-JPの管理に関わる照明を除いたすべての設備は発光機能が除去されたものが使用されなければなりません。SCP-907-JPを用いた実験を行うにはサイト-81██管理者による事前の承認を必要とします。 説明: SCP-907-JPは20世紀初頭に制作されたと思しきアンティークのオイルランプです。SCP-907-JPに火が灯された場合、その火は不燃性液体への浸漬や無酸素空間への曝露など外的要因によって鎮火されない限り燃え続けます。このときSCP-907-JP内に充填された燃料は燃焼によっては消費されないか、もしくは不明な原理によって継ぎ足され続けることで減じる様子を見せません。 点火したSCP-907-JPから最低でも1.2km以内に存在する発光体は負の影響を受けます。それらは電気系統の故障、急速な消耗や劣化、物理的な崩壊、化学組成の変化、エネルギーの散逸など、様々な要因をともなってただちに発光能力を喪失します。これは光を発しているものであれば照明を目的としたものに限らず、映像機器や携帯機器といった電子機器、ルミノールやアルミン酸ストロンチウムなどの化学発光体、ホタル科や発光性キノコなどに見られる生物発光、そして炎、何であろうと影響を受けます。財団が把握する限り、この影響への耐性を有する光源はSCP-907-JP内部で燃焼する炎だけです。SCP-907-JP内の炎が消し止められない限り、時間の経過とともにSCP-907-JPはその効果範囲をおよそ1.2m/sの速度で拡大させていきます。現時点でこの拡大現象の限界は認められていません。 財団がSCP-907-JPが起こす現象を最初に知覚したのは、夜半の██市繁華街で発生した奇妙な停電に関する通報でした。調査のため付近の財団施設から先遣されたプロペラ機のパイロットは、市街から離れた高空域からSCP-907-JPによる影響が街明かりを消し去りつつ円状に拡大していく様子を視認しました。このとき現地では発光機能の喪失にともなう機器の不全を原因とした致命的な交通事故が複数発生していましたが、それを除けばあらゆる光源を駆逐するというSCP-907-JPの特性上、大規模停電で見られがちな治安の悪化やパニックは最小限に留められていました。行動するための十分な明かりを確保できない住民らはその場で身を寄せ合いながら留まり、停電からの復旧、もしくは夜明けを待つことを選択していました。最初の通報からおよそ█時間後、暗視装置を備えた収容部隊が停電の中心地と目されるテナントビルへと到達しました。屋上で発見されたSCP-907-JPはその場で消し止められ、さらなる被害の拡大は食い止められました。最終的なSCP-907-JPの影響は██kmに及び、後に変電所での作業トラブルによる都市停電に偽装されました。 SCP-907-JPの回収時、同テナントビル階下の飲食店に勤める男性がオブジェクトとともに居たところを保護されています。SCP-907-JPの所有者であった男性はその入手経路について、現在は疎遠となっている知人から数年前に送り付けられたものであると証言しました。男性は聴取の後に記憶処理を受け解放され、男性宅からは言及された人物から男性へと宛てられたいくつかの手紙が押収されました。 文書907-JP-41 19██年██月██日 こうしてあなたに宛てた手紙を綴るのも、随分と久しぶりな気がします。そちらも、もしかしたら手紙を書く暇もないほどお仕事が忙しくなっているのでしょうか。そうだとしたら嬉しいですが寂しいです。そして少し心配です。どうか体だけは壊さないよう労わってください。 こんなよく晴れた夜に一人机に向かっていると、あなたと二人星空を見上げた日々のことを思い出します。あなたはいつも自分の夢について熱心に語って聞かせてくれましたね。それに応えられるような志など当時の私は持ち合わせていませんでしたが、それでもあの時間は私にとってかけがえのないものでした。こんな時間がいつまでも続けばいいと……そんな思いが、やがて私の目指す夢となりました。 夜空には手を伸ばせば届きそうなほど星で溢れ、あの頃は私たちが宇宙の中心なのだと信じていました。叶えられない夢など何もないのだと……そう信じて、私たちは各々あの場所から飛び出しました。その判断が正しかったのかは、もはや言っても詮無いことですね。 ただ、日が落ちて、夜が来て、それでも星たちが現れない都会の夜は寂しいです。ここでは誰もが明るすぎるほど照らされた街道を足早に過ぎていくばかりで、立ち止まって空を見上げようとする人などどこにもいません。空の光は残らず街明かりにかき消され、私があの日掴んだ輝きすらもこの掌から零れ落ちていきました。ここでは道に迷ってしまったとき、進むべき方角を知ることすらできません。 だから、もしもあなたがそちらであの日々を恋しく思うことがあったなら、このランプに火を灯しあの頃と同じように空を見上げてください。宇宙は常に光の速度で膨張し、すべての星は一様に私たちから遠ざかります。私たちは皆孤独で、どうしようもなくちっぽけな存在ですが、それでも星空を見上げているとき私たちは変わらずこの宇宙の中心にいます。 どうかあなたがその気持ちを忘れてしまいませんように。あなたが、進むべき道を見失ってしまいませんように。 返信不要 財団による調査では、この人物は高校卒業後に地元を離れ██大学で環境科学を専攻した後、同大学を中退してからは自身の故郷を含むいくつかの市町村で光害対策を求める請願に失敗していたことが判明しています。しかしその足取りは男性へSCP-907-JPを送付したとされる時期を最後に途絶えており、現在その所在を特定する試みが続行中です。また彼女が大学時代に在籍していた天文観測サークルは、ニューエイジの神秘主義に基づくカルト宗教の偽装サークルであった疑いが持たれており、並行してSCP-907-JPとの関連が調査されています。
scp-908-jp
評価: +51+–x 評価: +51+–x クレジット タイトル: 六大陸フィギュアスケート選手権 著者:© islandsmaster 作成年: 2019 評価: +51+–x 評価: +51+–x アイテム番号: SCP-908-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 日本国内における全国紙、ならびに広域地方紙を発行する新聞社と提携する全ての印刷所は財団エージェントによって監視されています。エージェントは日刊紙の朝刊の印刷工程に立会い、SCP-908-JPの発生を確認した場合は即時回収し、広域への拡散を防いでください。回収した実例はサンプルを除いて焼却処分されます。 過去に回収されたSCP-908-JP実例のコピーはサイト-8125の中レベル機密資料保管庫に保存されています。閲覧にはレベル2/908-JPクリアランスが必要です。 説明: SCP-908-JPは、日本国内の全国紙ならびに広域地方紙の朝刊に不定期に混入する、異常な内容の記述を含む新聞記事群です。すべてのSCP-908-JP実例は、印刷所における印刷工程で非異常性の新聞記事に混入して出現します。出現のプロセスは不明であり、回収された新聞の元データや刷版は全て正常なものでした。新聞製作の過程で検版・検紙といった複数の確認工程が存在するにも関わらず、SCP-908-JP実例はその非現実的な内容について何ら疑問を抱かれることなく出荷されることが確認されています。これまでに回収されたSCP-908-JP実例は78例で、回収された実例の合計部数は███████部です。 SCP-908-JPの全実例は「六大陸フィギュアスケート選手権1」と実例内で呼称される、実在しないフィギュアスケート大会に関連する記事を含んでいます。SCP-908-JPの各実例で言及される出来事は相互に一貫しており、また現実の時間軸と実例の記事内の時間軸は同一です。記事内で言及される団体・人物のほとんどが非実在である一方で、大部分の国家・社会制度・固有名詞は共通しています。SCP-908-JPで言及される出来事が基底現実とは異なる世界において実際に発生しているのかは不明です。また、六大陸の内訳は完全には明らかになっていません。現時点で確認された選手権参加国の所在する大陸は、アジア・アフリカ・南北アメリカ・オセアニア・南極です2。 以下は回収されたSCP-908-JP実例の内容の抜粋です。日付は紙面表記に準拠しています。 回収実例記録 番号: SCP-908-JP-01 日付: 1998/04/01 紙面: 東都新聞 東京版、1面 内容: 六大陸選手権3の設立と、第1回大会の開催地がカナダ連邦・ハリファックスに決定したことを報じる記事。ヨーロッパフィギュアスケート選手権に相当する新たな大会として、六大陸の団結とアイススポーツの隆盛について論じている。 分析: 財団が初めて認知したSCP-908-JP実例。第1回大会の開催地および開催日程は、現実における四大陸選手権と一致した。発見の遅れから実例が広域に分散したため、カバーストーリー『エイプリルフール企画』が適用された。 番号: SCP-908-JP-03 日付: 1999/02/294 紙面: スポーツ日本 全国版、4面(8面に関連記事) 内容: 第1回大会の閉会と今大会の総括、担当記者の視点から日本のプロフィギュアスケートの将来的な発展を論じる特集記事。ルールと採点形式の周知不徹底による混乱が大会終了後も続き、近く仲裁委員会が開催されることについて批判しつつ、日本選手団の抗議が徹底していないことに国民の不満が高まっていると報じている。 分析: 記事内で言及される参加国名、メダル数は現実の四大陸選手権と一致しない。採点項目は現実のフィギュアスケートと明らかに乖離しているほか、掲載されている写真には非ヒト種族とみられる選手が複数映っている。スケートリンクは時間経過とともに変形しているように見えるほか、アイスダンス種目では明らかに演出目的で選手が奇跡論的技術を用いている。 番号: SCP-908-JP-19 日付: 2005/09/18 紙面: デイリーキャスト・ニューズ 日本版、8面 内容: 第5回大会、男子シングルスで世界初の13回転アクセルを成功させた日本人フィギュアスケーター、高橋大輔選手5への特集記事の英語版。高橋選手が5本目の脚を失った経緯とその後の復帰、リハビリコーチによって考案された独自のトレーニング手法について本人インタビューが組まれている。 分析: 英字新聞もSCP-908-JPの対象となりうることが判明した実例。13回転アクセルはスポーツ科学および物理学の観点からは実現不可能と考えられている。記事中のトレーニング手法は未知の儀式的要素を含んでおり、異常文化部門によってNälkäの原始的なコミュニティーにおける肉体改変手順との類似性が指摘された。高橋選手及び関係者への監視は継続される。 番号: SCP-908-JP-44 日付: 2008/12/22 紙面: 日本外事新聞、2面 内容: 来年度の六大陸選手権の開催地が変更になったことを報じる記事。フランクランド共和国・セビアで開催される予定だった選手権が、同国のプロイセン王国との関係悪化に伴う政情不安から急遽開催地が変更され、アメリカ合衆国・メイン州ポートランドで開催されることを伝えている。 分析: SCP-1328影響文書に特有の精神影響が確認されなかったことから、収容プロトコルの改訂は見送られた。少なくとも記事内の現実では、フランクリン国の分離主義者は1790年以降も国際社会での地位を保ち続けていると考えられる。スリーポートランドの当該現実内での位置づけについて追加調査が行われる予定。 番号: SCP-908-JP-52 日付: 2011/10/01 紙面: MediaTeK_release、4面 内容: 第9回大会から導入された新採点方式における脆弱性を特集したコラム記事。採点の公平性と客観性を担保するために人間の審判員に代わって導入されたAIがシンギュラリティに到達したことで審判員への優位性を喪失、またロシアによるハッキング疑惑が浮上したことを技術的側面から解説し、国際競技における安易な人工知能の活用を警告している。 分析: コラムに掲載されていた8×8cmの画像は異常な論理パターンを有しており、解析機器に不明なエラーを招くことから電子コピーの作成が差し止められた。内包されるランダムデータ配列の容量は最大で28.62PBと考えられている。電子工学部門による複製請求は留保される。 番号: SCP-908-JP-70 日付: 2017/08/30 紙面: 道新日報、11面 内容: 第三南極帝国における初の黒い廷臣6出身のプロフィギュアスケーター、イーティ・ヴィセ(Wity Vice)の生い立ちと、彼を中心とした黒い廷臣のスポーツ選手によるプロスポーツへの参画の試みについてのリポート。六大陸選手権における彼への国家代表権の付与について、近く国民投票が行われると記載されている。 分析: 記事内において、第三南極帝国は国際社会に承認を得た、(封建的ではあるものの)一般的な発展途上国として記述されている。サイト-1483-アルファへの照会の結果、記事で言及されるものと類似した社会運動がSCP-1483内部で発生したとの記録はなく、また極めて封建的かつ保守的な社会情勢とSCP-1483-1bの社会制度上の位置付けから、本実例において言及されるような社会的変革は現実的ではないとの回答を得た。 現実のSCP-1483内部において、フィギュアスケートまたはそれに類するスポーツ文化の存在は確認できない。当該地域は砂漠地帯であることに留意されたし。  -IIPES派遣監督官   インシデント記録908-JP-78: 2020/02/28、財団日本支部の広域指定フロントである信濃中央新聞の電子版サイト上にSCP-908-JPが出現しました。同社の公開ネットワークにはクラスIII標準規格の対異常情報防護が施されていましたが、攻性防壁サブルーチンは曝露に対して完全に沈黙を保ちました。実例の出現から財団ウェブクローラーによる発見、当該記事ページの封鎖までの約7分間で、日本国外を含む不特定多数のアドレスからおよそ4万8000件のアクセスが確認されました。アクセス元の追跡が困難であることから、当該ページを改変した上でアクセスを開放し、再認識トリガー型視覚影響ミームエージェントによる広域記憶処理を実行中です。インターネット上に出現するSCP-908-JPの収容を確実なものとするため、現行の汎用処理に改良を加えた専用ウェブクローラーの配備を含む収容プロトコルの改訂が進行しています。 以下はサイト上に出現した記事の転写の一部です。 絶対王者 ついに帰還 [北海共同]凛怜なりし北極州公国7文化体育政策省は同日未明に記者会見を行い、来季の六大陸選手権に公国として初めて代表選手を派遣すると発表した。同国は先月3日に、CO2吸収量の国際枠組みにおける他国負担分の不足を理由に、領土の一部浮上を決定したばかり。 同省報道官のゴ=グァオ(Ghox=Guyao)氏は、1989年の京都議定書発効に伴い領土の大部分を海没させてきた同国の歴史を振り返り、「我が国の献身的態度によって世界気温の上昇が明らかに抑制されてきたにも関わらず、南方諸国は同レベルの努力を怠ってきた」と批判。同国の貢献なくしてウィンタースポーツの世界的な隆盛はありえなかったとして、「六大陸の名を冠した選手権への参加は我が国たっての願い。美しき北極大陸を有する我らが代表選手団が必ずや表彰台を独占できるとこの白き毛皮と大爪にかけて信じている」と話した。 これに対し、国際スケート連盟(ISU)報道官は「申し出については大変光栄に思うが、現時点では競技環境の不安からエントリーについて確約できない」と話し、あくまで公国側との実務者協議を優先する考えを示した。 六大陸選手権への同国の参加にあたっては、4足歩行用スケートリンクの改修や点数評価規則の変更を含む大規模な制度改革が必要になる見込み。同国代表選手の生物学的特性を考慮した場合、前回大会での採用が見送られた種族別傾斜配点制度の導入論が再燃する可能性もある。 ISUは、来季の太陽系フィギュアスケート選手権大会への公国の関与についてコメントしていない。 Footnotes 1. 確認されている表記揺れの例として「六大陸選手権」「六大陸フィギュア」があります。 2. 厳密には、これらの定義は大陸というよりも州に該当しますが、報告書内では実例中の表記に準拠しています。 3. 簡略化のため、報告書内では当該表記で統一しています。 4. 基底現実における1999年は閏年ではなく、SCP-908-JP-03は3月1日に出現しました。 5. 基底現実においても実在する日本人プロフィギュアスケーターです。 6. SCP-1483内部の社会における労働者階級で、SCP-1483-1bに指定されています。通常、上位階級から差別的な扱いを受けています。 7. 正式な日本語訳と思われます。
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評価: +54+–x アイテム番号: SCP-909-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル:-オブジェクトの影響範囲である1㎞圏内は常に封鎖されなければなりません。近隣住民の避難や立ち入りを禁ずるためにカバーストーリー「放射能汚染地帯」を適用してください。-施行された作戦により異常性の影響範囲を半径3m1の円までに収めることに成功しました、またオブジェクトの異常性が発揮されなくなったため以前のプロトコルは全て棄却されます。 また、SCP-909-JPが枯死しないように、影響範囲内の砂漠化がある程度進行した時点で必ず肥料や水分の補充を行ってください。その際、範囲内にゴミなどが落ちている場合は速やかに除去してください。 原則として全ての調査、維持はDクラスを用いてください。 説明: SCP-909-JPは███市に位置する公園内の広場だった地点に生育するソメイヨシノ(Prunus × yedoensis)です。いついかなる状況であっても常に開花しており、これは落葉しているときであっても変わりません。 SCP-909-JPの異常性は、SCP-909-JPを中心とした円状の範囲内に分布するある特定の物品の転移を引き起こすことです。転移させる物品の大きさなどに制限があるかは不明です。不定期に発生する異常性の対象となった物体は効果範囲付近の地下に転移し、それを覆うように根が成長します。この広がった根がSCP-909-JPの効果範囲であり、根が成長することによって拡大されていきます。現在の効果範囲は半径20m500m—3mの円です。 SCP-909-JPは、公園に遊びに行った児童が次々に失踪するという事件を受け警察が捜査したところ、防犯カメラの前で忽然と児童の玩具なども含めて一切の痕跡を残さず消失した映像が回収され、連絡を受けたエージェントが調査し発見されました。 この際に地面から頭の先端部分のみ露出した児童の窒息死体が発見されたため、電磁波の反響を用いた地下の埋蔵物の観測によりSCP-909-JPの異常性は物体を消失させることではなく、物体を転移させることであると判明しました + 消失した物品や人間の一例 - 表を閉じる 発見された物 数 朝顔(ただし教育課程で育成させる個体のみ) 32株 日誌 2冊 ランドセル 1個 小学校過程の児童 11名(低学年7名高学年4名) リコーダー 9本 物品の統一性は不明ですが、一定のルールは存在すると推察されています。また、後述する一例を除いて、成人の消失は確認されていません。 また、この範囲内では先述した失踪事件の多発のみならず民間人の栄養失調や脱水症状による死亡が相次いでいます。これはSCP-909-JPが生育するために必要な栄養分や水分を異常性によって吸い上げていると推察され、この点から長期に渡る影響範囲内の滞在は推奨されません。 +事件記録 - 閉じる Dクラス12名を投入し無線遠隔操縦式水陸両用ブルドーザを利用した、大規模なSCP-909-JP直下の埋蔵物回収が行われました。 しかし、SCP-909-JPの根は切断による除去を施しても即座に再生し、作業は難航していました。 止むを得ず追加の人員、機材を投入しようとしたところ、更にSCP-909-JPの効果範囲内に入っていた███小学校が中の児童を含めて消失しました。休日の為、全校生徒の消失は免れましたが、校内で部活動をしていた生徒の3分の1程度にあたる██人が消失しました。 消失した小学校は異常性の例に漏れず地下に転移しており、それを覆うようにSCP-909-JPの根が広がっています。 速やかに機動部隊が投入され、SCP-909-JPの根の焼却による処分が行われようとしました。 焼却処分には機動部隊のほかに5名のDクラス職員が投入されました。その中で過去███市に居住していたことで投入されたD-1110564のみが消失する事象を受けて全てのSCP-909-JPに関する作戦は一時的に中断され、凍結されました。 この判断は児童以外に人間の転移が起こっていないという規則性が破られたことによるものです。 また、この事件によって初めてSCP-909-JPの影響範囲が拡大するプロセスが判明しました。 + SCP-909-JPの影響範囲を縮小する作戦の要請 - SCP-909-JPの影響範囲を縮小する作戦の要請 作戦要綱 まず第一段階としてSCP-909-JPの影響範囲である地表の構造物を、財団の機動部隊が保有しているMOAB2を使用し排除、更に大量の水を流し込むことで栄養分を豊富に含む表面の土壌を排除する。 次に第二段階としてSCP-909-JPの再生力を喪失させるために衰弱の兆候が見られるまで放置し、ある程度の衰弱が確認された時点で、SCP-909-JPの根と地中埋蔵物を機動部隊によって除去し影響範囲の縮小を図る。 この作戦要請は承認されました。 作戦記録:第一段階は難なく成功。構造物は問題なく排除され、SCP-909-JPの影響範囲の拡大は終息しました。 次に2週間が経過した時点で、落葉の増加だけでなく花弁の落花も増加し、明らかにSCP-909-JPの樹勢が衰弱していることが観測されました。 この時点を以て作戦は第二段階に移行、動員された人員によってSCP-909-JPの根は速やかに除去され、作戦の狙い通りSCP-909-JPの再生は殆どなく、除去はスムーズに行われました。これによりSCP-909-JPの影響範囲は、収容プロトコルにも記載されている通り正常な根の範囲である直径6mほどの円に縮小されました。 補遺:より詳細な情報を得るためSCP-909-JPに遺棄されている遺体を回収する試みが行われましたが、SCP-909-JPの根は作戦前を上回るスピードで再生し揺り籠を模した形状を構成。遺体をその中に納めてしまったためこれ以上の干渉はSCP-909-JPを枯死させかねないとして中断されました。 なおその際に多量の養分を浪費したのか葉の殆どは落葉してしまい、SCP-909-JP自体が既に自然な枯死に近づきつつあります。 補遺2:D-110564とSCP-909-JPの関連性を再び調査した所、D-110564は数件の暴行殺人罪で逮捕されていましたが、その中に、ある児童を殺害し死体をSCP-909-JPの下に遺棄していたことが判明しました。その際、当時の警察により、1枚の文書がSCP-909-JP周辺から回収されていたことが判明しました。 文書の内容は下記を参照してください。 文書 脚注 1. 樹齢60年ほどの桜の適切な根の範囲であり、これ以上の縮小は枯死に繋がりかねないとみられている 2. Massive Ordnance Air Blast、大規模爆風爆弾兵器)
scp-910-jp
評価: +726+–x アイテム番号: SCP-910-JP 変形するSCP-910-JP オブジェクトクラス: Euclid Keter 特別収容プロトコル: SCP-910-JPを回収する試みは全て失敗に終わっており、現在は発見された地点から半径██kmの範囲で封鎖を行っています。一般人がこの地域の通行を試みた場合は自然保護の理由で立入禁止区域にあると説明してください。SCP-910-JPは910-JP監視塔を用いて常に形状の変化を監視されねばならず、変化があればただちに記録されます。第一次910-JP回収作戦以降SCP-910-JPは財団職員に敵対的であるため、如何なる職員もSCP-910-JPへの接近は許されません。 説明: SCP-910-JPは████████から███████までに続く平地に敷かれた道路の傍らに存在します。通常は標識令に規定されている「一時停止」の道路標識の外見を維持しており、構成素材は今のところ不明です。標識部位は通常の手段で損傷を与えることが可能ですが、損傷は未知の方法によって即時に再生します。支柱部位は如何なる手段を用いても損傷を与えることができませんでした。 SCP-910-JPの標識部分はあらゆる道路標識標識に変形することが可能1で、各標識に関連する超常現象を発生させます。その種類は非常に多岐に渡り限界範囲は未知数です。詳細は現象記録910-JP-Aを参照してください。 + 現象記録910-JP-A群(簡略版)を閲覧。 - 閉じる。 落石を発生させるSCP-910-JP 現象記録910-JP-A群(簡略版) 記録された現象は全てSCP-910-JPの所在地点から半径50m以内の範囲で発生しており、極端に離れた位置から発生した事例はこれまでのところ確認されていません。しかし発生した現象はしばしば前述の50m圏を超えて広範囲に影響を及ぼします。発生した現象は全て物理的なものに限られ、精神的な影響を与えるものは確認されていません。SCP-910-JPは複数の標識に分裂して各標識を併用させたり、補助標識を出現させて範囲や距離などの細かい調整を行ったりすることが可能です。 標識によっては人型生物(SCP-910-JP-1と識別されます)を生み出すものもありますが、これらは対話こそ可能なものの、問い掛けに対してはさも自身が何の異常性も持たない一般人であるかのような反応を示し、SCP-910-JPの異常性を目の当たりにしても完全に無視します。発生した物体や生物はいずれも標識の変形に伴って消失するので回収は不可能と考えられています。 本標識 標識 発生した現象 なし SCP-910-JPの傍らの路面に横断歩道が出現した。 SCP-910-JPを中心に未知の力によって全車両が押し出された。 SCP-910-JPの近辺に便所が発生した。 地面の摩擦力が著しく低下した。 SCP-910-JPの傍らの路面を跨ぐ踏切に始まり、周回線路とその上を走行する単行列車が出現。電車の中には複数のSCP-910-JP-1が乗車していた。 地形が盛り上がってSCP-910-JPの直ぐ後方に斜面が出現した。 道路工事には不可欠な車両と機械、5~██████人の作業員の姿をしたSCP-910-JP-1が出現した。 鹿、狸、兎と思しき生物が出現し、SCP-910-JPの傍らの道路を横切った。 何もない上空から突如大量の岩石が出現した。 風力4〜7の突風が吹き荒れた。 補助標識 標識 付与される効果 現象が行き渡る範囲を示す。この場合、SCP-910-JPから半径50m以内が範囲となる。最小では50m、最大で██████mの表示が確認されており、限界範囲は不明。この補助標識がない場合半径50m未満が標準的に範囲として採用される。 その現象の対象となる車両の種類を示す。この場合は貨物自走車。この補助標識がない時は全種の車両が対象となる。 その現象が行き渡る方向を示す。 幸いなのはこれほどまでに多岐に渡る強力な能力を向けられていながら、未だ職員に一人も死者が発生していないことだろう。SCP-910-JPの行動はまるで大人をからかって楽しむ子供のようだ。もしかしたら、我々とは戯れているだけで脅威を与えているつもりは無いのかもしれない。気性も子供レベルだとしたら加減を知らない分、怒らせた時が怖いものだが。 確かにSCP-910-JPを野放しにしているのは危険だが、あの回収作戦を実行するのはそれを超えて危険なことなのではないか。 -碓氷博士 SCP-910-JPは知性と人格を有していると推測されています。過去の実験ではSCP-910-JPの性格は「悪戯好き」「人を囃したてる」などと報告されており、接近した人間に保有する能力を用いて怒らせたり困らせたりする行動傾向を見せています。人間が周辺に存在しない時は比較的大人しくなりますが、完全な不活性状態ではなく、特に何の意味もなく能力を行使する様子が報告されています。現在、SCP-910-JPとの直接的なコミュニケーションは実現していません2。 SCP-910-JPの標識部位に全体の20%以上の欠損を与えると、超常現象の発生を一時的に食い止めることができますが、SCP-910-JPはハザードシンボルを用いて攻撃的になります。これまでに「放射能標識3」「津波4」「高電圧5」「[削除済]」「[削除済]」などが確認されています。 補遺: SCP-910-JPに損傷を与え続けて抑止を行い、支柱を地面から引き抜くという回収計画が承認されました。過去に3度失敗と改案を重ねて実行されましたが、現状では回収は不可能と判断されました。判断の決め手となったのはSCP-910-JPの驚異的な再生能力と第三次910-JP回収作戦で確認された「[削除済]」「[削除済]」の標識による攻撃でした。回収作戦失敗後、Keterクラスへの格上げが要請され承認されました。 + 第三次910-JP回収作戦記録を閲覧 - 閉じる 第三次910-JP回収作戦記録 — 日付20██/██/██ 《第三次910-JP回収作戦》 目的: SCP-910-JPの回収、サイト-81██への収容。 組織: 指揮班 松崎機動部隊長 和野博士 本郷機動部隊長 三上博士 狙撃班 42人 21チーム 回収班 48人 4チーム 特別回収プロトコル(簡略版): 狙撃班はSCP-910-JPから1.5〜2kmの範囲21箇所に散開し、対物ライフルによる切れ間のない射撃でSCP-910-JPの能力の抑止を行います。 回収班は指揮班の指示に従って四方向からの迅速な接近を試みます。目標地点に到着次第、自動小銃による攻撃を行いながら掘削機を用いてSCP-910-JPを掘り起こし、専用収容車の塩酸槽に浸してサイト-81██への運搬を行います。 [削除済] 映像は一部規制されています。   回収班が目標地点から凡そ400mの距離まで接近するとSCP-910-JPは突如、支柱を激しく伸縮させて攻撃を回避する振る舞いを見せ始めました。結果、損傷の再生を許しSCP-910-JPは「█████」「█████」「█████」「█████」「██████」などを含めた[削除済]に酷似した外見と性質を有する生物を██体出現させ、本作戦に参加した職員に多数の犠牲者を生じさせました。本作戦による死者は26名、重軽傷者は9名、行方不明者は57名であると記録されています。     あれに悪知恵がなければ初弾から避けていたはずだ。 俺たちを多く殺すために一芝居打って引きつけたんだ。そうとしか思えない。 -松崎機動部隊長 SCP-910-JPの即刻の処分を申請する。  あれの存在は我々の活動の全てを無意味にしている。 -三上博士 脚注 1. 第三次910-JP回収作戦にて、支柱部分も伸縮したり、横に回転したりすることが判明しました。 2. 答える術を持たないのか答えたくないのかは不明ですが、SCP-910-JPは質問者に全く反応しません。 3. 第一次910-JP回収作戦にて確認。補助標識「方向」と併用させ回収班に向けて大量のガンマ線を放射しました。 4. 第二次910-JP回収作戦にて確認。SCP-910-JPの周囲から大量の海水が発生し、波高が5mを上回る津波となって回収班を襲いました。 5. 第二次910-JP回収作戦にて確認。ハザードシンボル「津波」と併用させていました。
scp-911-jp
評価: +34+–x SCP-911-JP-A アイテム番号: SCP-911-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-911-JP-Aは電池を抜いた状態で、オブジェクト収容金庫へ保管してください。 SCP-911-JP-Aを用いた実験はすべてのケースで、医療検査を終えた被験者で行います。これは被験者がDクラス職員であっても同様です。 実験の申請は、被験者の診断書とともに担当職員へ申請してください。実験後の被験者は希望がある場合、Cクラスの記憶処理を受ける事ができます。 説明: SCP-911-JPは緊急用呼び出しボタンの形状をしたSCP-911-JP-Aと、ボタンを押した際に出現するSCP-911-JP-B及びSCP-911-JP-Bが出入りするSCP-911-JP-Cで構成されます。 SCP-911-JP-Aは9V角形電池の入る電池ボックスがあり、規格に対応した電池を入れる事で活性化します。活性化した状態で何らかの怪我、病気を持つ被験者が素手でボタンを押すと、部屋の出入り口(SCP-911-JP-Cとなります)よりSCP-911-JP-Bが現れます。被験者が全くの健康体である場合や、ロボットアームを通した操作であった場合は特に何の反応も示しません。また、一度被験者となった人物が再度ボタンを押した場合も同様に何も反応を示しません。 SCP-911-JP-BはSCP-911-JP-Aで呼び出される医師(SCP-911-JP-B-1)及び看護師(SCP-911-JP-B-2以降)です1。SCP-911-JP-Bは呼び出した被験者を診察し、症状に応じた外科手術を被験者の意思とは無関係に行います。SCP-911-JP-Bの手術はほとんどのケースで部分麻酔で行われ、被験者は手術の一部始終を目視する事が可能です。が、SCP-911-JP-Bによる手術手順は一般的なそれではなく2、目視した被験者は大きな精神的負担を伴います。手術により診察された病状、怪我は治りますが、甚大な手術痕を残す結果となります。詳細は実験記録、映像記録を参照してください。 術後SCP-911-JP-Bによる被験者へのアフターフォローはありません。 SCP-911-JP-CはSCP-911-JP-Bが部屋を出入りする境界です。これは部屋についている開口部であればどんなものでもよく、ドア、窓、排気口等様々なものがSCP-911-JP-Cになり得ます。また、開けた先が外へ通じているかは問いません。 SCP-911-JP-Bの動作を制止させる試みは、職員への精神干渉によりすべて失敗に終わっています。SCP-911-JP-Bへ干渉しない場合、職員の同席は特に注意を払われず、ビデオ撮影も可能です3。 補遺: 実験記録 + 実験記録閲覧 - 閲覧終了 注: これは実験の記録です。映像記録は別記を確認してください。 実験記録911-1 - 日付2███/██/██ 対象: D911-1 健康なDクラス職員です。職員が同席し、無線カメラで実験風景を撮影。 実施方法: D911-1にSCP-911-JP-Aのボタンを押させる。 結果: 反応無し。 実験記録911-2 - 日付2███/██/██ 対象: D911-2 風邪気味との申告がありました。 実施方法: D911-2にSCP-911-JP-Aのボタンを押させる。職員が同席し、無線カメラで実験風景を撮影。 結果: SCP-911-JP-B-1、-2、-3がSCP-911-JP-Cより現れました。D911-2に対し診断と手術を行い、3時間後にSCP-911-JP-Cより去りました。 分析: SCP-911-JP-Aは健康な人間には反応しないようですね。病気の被験者のみ反応するのでしょうか。 メモ: 手術風景について、無線カメラで撮影していたところSCP-911-JP-B-1より「無線で計器が不良を起こしかねない」と制止されました。撮影していた職員は素直にカメラの電源を切り、撮影をやめています。もっとも、手術中の光景は撮影されなくてよかったかもしれません。 実験記録911-3 - 日付2███/██/██ 対象: D911-3 風邪気味との申告がありました。 実施方法: D911-3にSCP-911-JP-Aのボタンを押させる。職員が同席し、有線カメラで実験風景を撮影。また、武装した職員を4名配備し、SCP-911-JP-Bの行動を制止させる。 結果: SCP-911-JP-B-1、-2、-3がSCP-911-JP-Cより現れました。SCP-911-JP-B-1の診察を妨害したところ、SCP-911-JP-B-2、-3にたしなめられました。たしなめられた職員は素直に従い、診察の妨害をやめるように同席した他の職員へも提案、他の職員たちも素直に同意をしています。SCP-911-JP-BはD911-3に対し診断と手術を行い、4時間後にSCP-911-JP-Cより去りました。 分析: SCP-911-JP-Bは診断、診察への妨害について、精神干渉により防御をしているようです。職員へのインタビューより、精神干渉は局所的なものであった事が判っています。 メモ: 風邪による鼻炎の治療が、あれ程の手術になるとは考えてもみませんでした。 メモ2: 以後の実験はすべて、特記しない限りビデオ撮影が行われています。 実験記録911-4 - 日付2███/██/██ 対象: D911-4 風邪気味で熱があるとの申告がありました。 実施方法: D911-4にSCP-911-JP-Aのボタンを押させる。また、武装した職員を4名配備し、銃器によりSCP-911-JP-Bの無力化を試みる。 結果: SCP-911-JP-B-1、-2、-3がSCP-911-JP-Cより現れました。SCP-911-JP-B-1に対し発砲をしたところ、診察の邪魔をした事に対し叱責され邪魔をしないようたしなめられました。たしなめられた職員は素直に従いました。SCP-911-JP-BはD911-4に対し診断、肺炎であるとしてと手術を行い、D911-4の肺を摘出し[編集済み]。6時間後にSCP-911-JP-Cより去りました。 分析: SCP-911-JP-Bは少なくとも、小銃レベルの火器に対し耐性があるようです。爆弾や毒ガスへの耐性は現状不明ですが、その実験について得るものがあるとは思えません。 メモ: 被験者の肺炎は治療されたものの、大きな精神的負荷を残す結果となりました。今後の実験については、事前に精密検査を受けた被験者で実施されるべきです。 メモ2: 以後、特記しない限りSCP-911-JP-B-1は-2、-3を伴いSCP-911-JP-Cより現れていること、術後にSCP-911-JP-Cより去る事を留意してください。 実験記録911-5 - 日付2███/██/██ 対象: エージェント・██ 本人による希望。事前の精密検査で健康体であるが、左側奥歯に虫歯と、右足首に軽いねんざがある事が判っています。 実施方法: エージェント・██にSCP-911-JP-Aのボタンを押させる。 結果: 被験者の虫歯、ねんざは手術により治療されました。ただし口の際より耳の下まで頬を切開されたため、人相に著しい影響が出ています。ねんざの治療は患部を切開され、腱へ直接炎症止めと思われる薬が投与されました。 分析: 一連の実験より、治療はされるものの明らかに被験者のその後を考慮しない手術を施しているように思えます。 メモ: エージェント・██へは再三忠告をしました。 実験記録911-6 - 日付2███/██/██ 対象: 財団のフロント企業が経営する病院より提供された一般人。重い心臓病を患っており、財団の精密検査でも裏付けられています。 実施方法: 被験者にSCP-911-JP-Aのボタンを押させる。 結果: 事案911-ほを参照してください。 分析: 被験者の心臓病は治療されました。ただ、それだけです。 メモ: SCP-911-JP-Bにとって、今現在直面している病状を解決する事以外は心底どうでもいいのでしょう。 今後の実験について、必ず被験者の精密検査の結果を伴い、██博士まで申請を行ってください。 担当研究員の判断のみでは実験の許可は出せません。 - O5-██ 実験記録911-7 - 日付2███/██/██ 対象: D911-7 脳に腫瘍があります。精密検査でも裏付けられ、その他の病気、怪我はありません。 実施方法: N/A 結果: N/A 分析: N/A メモ: 実験の申請は却下いたしました。 - ██博士 付記: 実験映像の閲覧を希望される職員は、██博士まで申請してください。 補遺: 事案911-ほ SCP-911-JP-Bによる治療の限度を知るため、財団のフロント企業が経営する病院へ被験者の提供を申請しました。結果、現在の医学では治療が困難とされる、重い心臓病を患った██歳の少女が提供されました。病状については財団の精密検査でも裏付けられています。 少女と家族へは治療は失敗するかもしれない事、命の保証は出来ない事、成功しても病院への長期入院が必要な事4について同意書を取り、被験者となって貰いました。 被験者の呼び出しに応じSCP-911-JP-Bが現れ、診察が行われました。SCP-911-JP-B-1は臓器の移植が必要である旨を宣告し、手術を始めました。被験者に全身麻酔を施した後、SCP-911-JP-B-1は自らの胸部を切り開き、明らかに通常の物とは異なる大きさの心臓を取り出しました。取り出された心臓は被験者へ移植されましたが、患部へ入りきらない部分は外へ露出しました。 術後、被験者の健康状態は良好ですが、露出した心臓は徐々に肥大化をし、被験者の胸部を侵食し始めました。このため、被験者は新たにSCP-911-JP-Dと指定されました。 実験より半年後、SCP-911-JP-Dについて得るものが無いと判断され、終了されました。 Footnotes 1. この際、SCP-911-JP-B-1は必ず2体の看護師としてSCP-911-JP-B-2、SCP-911-JP-B-3を伴って出現します。 2. 手術器具はSCP-911-JP-Bの身体が変化したものです。 3. 無線カメラについてはSCP-911-JP-B-1に叱責されました。録画記録は以後有線カメラで行われています。 4. 財団施設は病院であると信じさせています。
scp-912-jp
評価: +125+–x 評価: +125+–x クレジット タイトル: SCP-912-JP – もう星は盗まない 著者: ©ykamikura 作成年: 2017 評価: +125+–x 評価: +125+–x 特異性・甲を発現する様子 アイテム番号: SCP-912-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-912-JPはサイト-8181の標準人型オブジェクト収容セル(低身長の幼児仕様にカスタマイズ済)に収容されています。 SCP-912-JPには、年齢に応じた義務教育と同程度の教育カリキュラムを受けさせて下さい。その他、コミュニケーション上の注意事項に関しては、別紙SCP-912-JP-標準対応マニュアルを参照して下さい。 SCP-912-JPを実験やストレス軽減目的で収容セルから一時外出させる場合は、担当職員同伴の上セキュリティレベル・グリーンのエリアのみ許可します。その間、サイト内の外界が見える全ての窓・ドアはあらかじめロックされます。 特異性・甲および乙の発現実験には、SCP-912-JP研究主任、諜報局サイバー工作班チーフハッカー、オルバース重力波望遠鏡チーフエンジニアの許可・監督が必要です。 SCP-912-JP-1実例 説明: SCP-912-JPは█歳の日本人男児(本名、██ ██)です。特異性を除けば、常人とあらゆる面で差異はないことが確認されています。 SCP-912-JPの特異性は、甲/乙の2つに分類されます。 特異性・甲は、天体を消滅させ、同時に宝石に分類される物体(以下SCP-912-JP-1と呼称)を出現させる能力です。SCP-912-JPが対象天体を目視でき、ガラス窓などの遮蔽物がないことが前提条件であり、以下のようなプロセスを経て発現します。 1. SCP-912-JPが対象天体に向かって手を伸ばし、摘むような仕草をする。SCP-912-JPに装着したカメラの視点分析によると、人差し指と親指の間に対象天体が挟まれて見えるように位置取りしていることが判明。 2. SCP-912-JPが摘んだ対象天体を自身に引き寄せるような仕草をする。 3. 対象天体が消滅、同時にSCP-912-JPの人差し指と親指の間にSCP-912-JP-1が出現。 特異性・乙は、SCP-912-JP-1を消滅させ、対象天体を元の位置に再出現させる能力です。対象天体の元の位置がSCP-912-JPから目視でき、ガラス窓などの遮蔽物がないことが前提条件であり、以下のようなプロセスを経て発現します。 1. SCP-912-JPがSCP-912-JP-1を手に取る。 2. SCP-912-JPがSCP-912-JP-1を頭上に投げる。 3. SCP-912-JPの頭上約1mでSCP-912-JP-1が消滅、同時に消滅していた対象天体が元の位置に再出現。 特異性・甲/乙による対象天体の消滅/再出現には、光速度による観測のタイムラグが発生せず、地球上からほぼリアルタイムで確認できます。以上の点から、対象天体の消滅/再出現は一種の認識障害であり、現実の事象ではないと考えられています。オルバース重力波望遠鏡の観測データから、対象天体の消滅/再出現は現実の事象であることが確認されました。以上の点から、対象天体の消滅/再出現はそれが過去において発した光波も対象になると考えられています。 第█次実験ログSCP-912-JP: ※全実験ログは研究本部サーバーに保管 目的: 対象天体とSCP-912-JP-1の相関関係の解明。 手順: 1. 実験中、諜報局のサイバー工作班が各国の天文台のコンピュータをハッキング、天体の消滅現象が観測されるのを防ぐ。 2. 月や太陽系の惑星がSCP-912-JPの視界に入らないようセッティング。 3. SCP-912-JPに装着したカメラの画像を確認しながら、実験監督が指示した対象天体に特異性・甲を発現させる。 4. SCP-912-JP-1に各種測定を行った後、速やかに特異性・乙を発現させ、SCP-912-JP-1及び対象天体を元に戻す。 結果: 対象天体名 直径 地球から観測した際の色 出現したSCP-912-JP-1 リゲル 70R☉1 青みを帯びた白 約10カラットのアクアマリン ベテルギウス 950~1000R☉ 赤 約20カラットのルビー カペラ 10.2R☉ 黄 約5カラットのトパーズ アルデバラン 44.2R☉ 橙 約7カラットの琥珀 プロキオン 2.048±0.025 R☉ 薄い黄 約3カラットのイエローダイヤ 分析: 対象天体の大きさ及び色が、出現するSCP-912-JP-1に反映されている可能性がある。 第█次実験ログSCP-912-JP: 目的: 特異性・甲/乙を、太陽に対して発現できるか否かの確認。 手順: (未定) 結果: リスクを考慮し実施断念。なお、SCP-912-JP自身は「熱いから無理だと思う」と述べている。 第█次実験ログSCP-912-JP: 目的: 特異性・甲/乙を、月に対して発現できるか否かの確認。 手順: (未定) 結果: リスクを考慮し実施断念。なお、SCP-912-JP自身は「重いから無理だと思う」と述べている。 実験で確認できないため、太陽や月にも特異性を発現できることを前提に収容プロトコルが策定されました。そのため、屋外に出られないことがSCP-912-JPにストレスを与えている様子が見られます。対策として、SCP-912-JPに定期的に「外出して遊んだ」という内容の記憶処理を行う案が提出されました。幼児に繰り返し記憶処理を行うことは、人格形成に悪影響を及ぼす可能性が高いという理由で、倫理委員会により却下されました。代案として、サイト-8181の中庭にガラス製の天井を設置する等の改築を行い、SCP-912-JPが出歩けるようにする案が提出されています。 初期収容経緯: SCP-912-JPは財団フロント団体が経営する児童養護施設に在籍しており、財団職員である星崎研究員(サイト-8181██研究室所属、専門・天体物理学、児童心理学他)によって偶発的に発見されました。201█/██/██、星崎研究員がボランティアで施設児童への天体観測指導を行っていたところ、以前から親しかったSCP-912-JPから自分の特異性を打ち明けられました。 星崎研究員の連絡を受け、フロント団体職員に偽装したフィールドエージェントが施設職員及び児童から聴取を行いましたが、SCP-912-JPは星崎研究員以外には自らの特異性を明かしていないことが判明したため、彼らへの記憶処理は見送られました。SCP-912-JPの収容にはカバーストーリー「サナトリウムへの長期入院」が展開され、初期収容は問題なく完了しました。 なお、SCP-912-JPの分離不安を軽減する効果を期待され、星崎研究員はSCP-912-JP研究本部に配属されました。一部の同僚は彼がSCP-912-JPに感情移入しすぎており、精神的負担になっていることを懸念しましたが、監査の結果研究員として問題のない精神状態を保っていると判断されました。念のため、今後も星崎研究員への定期的な監査を継続します。 SCP-912-JPインタビューログ: ※全インタビューログは研究本部サーバーに保管 ※日付201█/██/██、星崎研究員とSCP-912-JPの対話を元に編集 星崎研究員: や、やあ、元気にしてるかい。え、え、SC……。 SCP-912-JP: 僕はSCP-912-JPだよ、忘れちゃったの? 星崎研究員: へ? SCP-912-JP: かっこいいよね、この名前! サイボーグ009みたいで! フッ、我がコードネームはSCP-912-JP……。 星崎研究員: そ、そうだね、うん、かっこいいと思うよ。ところで、今日は聞きたいことがあるんだ。 SCP-912-JP: いいとも、何なりと聞いてくれたまえ。 星崎研究員: 君が、自分の能力……その、星を盗めることに気付いたのは、いつ頃だい? SCP-912-JP: うーん、ちょうど1年前の今頃かなぁ。█姉ちゃんがいなくなる前ぐらいだから。 星崎研究員: █姉ちゃん? お家(SCP-912-JPが在籍していた児童養護施設)の子かい? SCP-912-JP: うん、星の兄ちゃん(SCP-912-JPの星崎研究員に対する呼称)は会ったことないかな。僕より少し年上の姉ちゃんだよ。きれいで優しくて大好きだったのに、突然アメリカに行っちゃって。僕、█姉ちゃんの目を見つけてあげたかったのに。 星崎研究員: 目? SCP-912-JP: うん、█姉ちゃんは生まれつき目が見えなかったんだ。可哀想だよね、僕みたいに星を見ることもできないんだもの。█姉ちゃんにそう言ったら「星なら見えてるよ」って言われたんだ。 星崎研究員: え? 目が見えないのに? SCP-912-JP: うん、よく夢で見るんだって。天の川を船で進む夢。星が洪水みたいに溢れてて、すごくきれいなんだって。「きっと私は、生まれてくる時に、目を宇宙に置いてきちゃったのね。これは、宇宙に浮かぶ私の目が見ている星空なんだと思う。だから……」心配しなくていいって言ってくれたんだけど。  星崎研究員: それで、君はお姉ちゃんの“目”を探そうと? SCP-912-JP: そうさ! 毎晩、屋上に上がって、一生懸命探したよ。結局、見つからなかったけど。 星崎研究員: でも、よく星を取ろうと思ったね? 僕だったら、やる前に諦めちゃうよ。 SCP-912-JP: どうして? 星崎研究員: だって、星ってすっごく遠くにあるんだよ? SCP-912-JP: 嘘だぁ。だって、僕でも取れたよ? 星崎研究員: あー、うー、そうだね。あっ! そ、その時に取った星はどうしたの!? SCP-912-JP: 大丈夫だよ、すぐに返したから。 星崎研究員: そうか、うん、偉いね。[インカムで研究本部と通信]す、すいません、至急確認を……。 インタビューログ付記: 諜報局が各国の天文台を調査しましたが、天体の消失は一切確認されていないことが判明しました。研究班は特異性・甲/乙には何らかの認識障害を伴うと考えています2が、機密漏洩のリスクを考慮し検証実験は保留されています。 特異性に影響を及ぼす可能性が否定できないため、SCP-912-JPの宇宙や天体に関する捉え方を是正する試みは保留されています。なお、SCP-912-JPへの教育カリキュラムや標準対応マニュアルには反映済です。 SCP-███とのクロステスト検討について: SCP-912-JPの述べている“█姉ちゃん“(本名、██ █)とは、現在サイト-██(USA本部管轄)に収容されているSCP-███であると判明しています3。研究班はSCP-912-JPとSCP-███の特異性には何らかの関係があると考えており、面会等のクロステストを検討しています。ペルセウス計画に専念するため、検討は一時中止されています。   ペルセウス計画関連情報 要セキュリティクリアランス・レベル4 職員コード 694c0e652c8b86e0fb9f822833599cd5_1711191062 パスワード 3223bdf23fe42fba5fb681fb38d93075_1711191062 認証 ログアウト » 職員コードを確認中… » ペルセウス計画本部サーバーの応答を待機中… » 職員コードの照合が完了しました。 » ようこそ、担当職員様。ご希望のファイルを選択して下さい。 元期: 201█/██/██(JD 2454600.5) 第1次総括報告: 201█/██/██、SCP-912-JPのペルセウス計画への起用が決定しました。現在、関係各機関が準備中です。以下は立案までの経緯の抜粋です。 〈201█/██/██〉SCP-912-JPの第█次実験中、小惑星メデューサの地球衝突の危険性が発見されました。これまでメデューサのトリノスケール4は0と考えられてきましたが、201█/██/██に発生したSCP-███消滅の余波で軌道が大幅にずれたと推測されます。 〈201█/██/██〉深宇宙探査サイト-U1による詳細なシミュレーションの結果、メデューサが地球に最接近するのは201█/█/█前後、衝突の可能性は約██%、予想される被害規模はGH-クラスデッドグリーンハウスシナリオ相当と試算されました。 〈201█/█/██〉SCP-███の機密保護、パニック発生の懸念等を考慮し、O5評議会は提携各国首脳部以外にはメデューサの情報を秘匿することを決定、諜報局サイバー工作班により各国の天文台には偽装プログラムが仕込まれました。 〈201█/█/██〉メデューサ衝突が避けられないケースに備え、O5評議会は[削除済] 〈201█/█/██〉メデューサの質量が極めて大きい、準備に費やせる期間が短い、表立って大規模な行動ができない等の問題から、深宇宙探査サイト-U1は通常の手段では衝突回避は不可能と判断しました。利用可能なオブジェクトを模索した結果、SCP-912-JPが最も可能性が高いと判断、メデューサをSCP-912-JP-1化させて無害化する計画が立案されました。 〈201█/█/█〉計画はO5評議会により承認されました。以降、本計画はペルセウス計画と呼称されます。計画総責任者は深宇宙探査サイト-U1管理官の█████博士が就任、SCP-912-JP研究班はペルセウス計画担当チームに配属されました。 〈201█/█/█〉ペルセウス計画担当チームより、O5評議会へ計画詳細が提出されました。 第2次総括報告: ペルセウス計画概要 実行予定日時: メデューサが地球から肉眼で観測可能になると予想される201█/██/██前後。 実行候補地: ニュージーランド、テカポ湖。選定理由/地球上で最も天体観測に適した場所の一つであり、メデューサを早期に観測できる。問題点/他の星に紛れて、SCP-912-JPがメデューサを区別するのが困難か。対策/後述参照。 手順: 開発中のARゴーグル 1. オルバース重力波望遠鏡のデータを元に、█████博士が実行日時を決定。 2. SCP-912-JPを専用機で現地に移送。 3. 月や太陽系の惑星がSCP-912-JPの視界に入らないようセッティング。 4. SCP-912-JPが装着したARゴーグルに、メデューサの位置情報を表示。メデューサに特異性・甲を発現させる。 5. 出現したSCP-912-JP-1を回収。 必要な準備: ・ SCP-912-JPが装着するARゴーグルの開発。オルバース重力波望遠鏡とARゴーグルのリンク中継施設の建造。 ・ 他の小惑星での予行練習。201█/██/██までに地球に接近する小惑星がメデューサ以外になく、実施断念。 ・ SCP-912-JPへの各種トレーニング、担当職員とのコミュニケーション。 第3次総括報告: 201█/██/██、ペルセウス計画が実行されました。以下はそのログの抜粋です。 衛星軌道上のオルバース重力波望遠鏡 〈15:22〉オルバース重力波望遠鏡、メデューサが地球から███万kmの距離に接近、肉眼で観測可能になったことを確認。 〈15:25〉█████博士、計画実行を指示。 ※中略 〈21:00〉SCP-912-JP、テカポ湖に到着。 〈21:12〉オルバース重力波望遠鏡、メデューサの位置情報をSCP-912-JPのARゴーグルに送信。SCP-912-JP、「他の星に紛れて見辛いが、何とか分かる」と述べる。█████博士、SCP-912-JPに特異性・甲の発現を指示。 〈21:13〉特異性・甲、発現せず。SCP-912-JP、「小さすぎて上手く掴めない」と述べる。SCP-912-JP、「触れてはいる」と述べ発現の試みを継続。 〈21:19〉SCP-912-JP、小さい叫びを上げ発現の試みを中断。右手の甲に軽度の負傷を確認。SCP-912-JP、「流れ星が当たったのかも」と述べる。応急処置後、発現の試みを継続。 〈21:34〉SCP-912-JP、体温低下を確認。特に右手が顕著。特異性・甲を長時間に渡って試行し続けた副作用か。SCP-912-JP、「知らなかった。宇宙ってこんなに冷たいんだ」と述べる。応急処置後、発現の試みを継続。 〈21:45〉█████博士、SCP-912-JPの体温低下が深刻と判断し、計画の一時中止を決定。SCP-912-JP、指示を拒否し発現の試みを継続。計画実行班の職員ら、突如悲鳴を上げる等動揺した様子を見せる。事後聴取によると「星々が宝石になって落ちてきた」「SCP-912-JPと共に地球から射出され、宇宙空間に突入した」「上空からSCP-912-JPを励ます声が聞こえた」等の証言が得られたが、レコーダー類には一切記録されていない。 〈21:46〉SCP-912-JP、「取れた!」と叫ぶ。特異性・甲、発現を確認。出現したSCP-912-JP-1は直径約3cm、灰色の石のような外見。 〈21:51〉オルバース重力波望遠鏡、メデューサの消滅を確認。 ※中略 〈23:05〉O5評議会、ペルセウス計画を成功と判断。関係各機関に事後処理を指示。 メデューサ消滅時に出現したSCP-912-JP-1 メデューサ消滅時に発生したSCP-912-JP-1は分析の結果、微量なイリジウムを含む玄武岩であると判明しています。現在深宇宙探査サイト-U1に保管されていますが、特異性は見られません。 今後、メデューサと同様のケースが発生した場合に備え、O5評議会はSCP-912-JPをThaumielクラスオブジェクトとして運用することを検討しています。検討は一時中止されています。 緊急追記: 星崎研究員より、SCP-912-JPの特異性が消失した可能性があると報告されました。 201█/██/██の定期面会中、SCP-912-JPが星崎研究員に対して自分の特異性が喪失したと述べました。星崎研究員が理由を尋ねたところ、SCP-912-JPは「“星の女神様“に手を取り替えてもらったから」と返答、さらに詳細を尋ねると以下のように述べました。 ※日付201█/██/██、星崎研究員とSCP-912-JPの対話を元に編集 [星の女神とは何かという質問に対して]昨夜、夢の中で会ったんだ。天の川を船に乗って進む夢。星が洪水みたいに溢れてて、すっごくきれいだった。█姉ちゃんが見てたのは、きっとあれだったんだ。 岸には色んな人や動物が居た。双子の男の子とか、ライオンとか、大きなサソリとか。みんな僕に、ありがとうとか、メデューサを倒した勇者だとか言ってた。 「こんばんは、██君。地球を守ってくれてありがとう」 いつの間にか、隣に女の人が居た。すごく美人。白いドレスを着て、葉っぱの冠を被って、星の杖を持ってた。 「お姉さん、誰?」 「私は星の女神よ。私たちは天界の取り決めで、地球に降りることはできないの。あなたが頑張ってくれて助かったわ」 「どういたしまして」 「君に会いに来たのはね、これを渡すためなの」 そう言って、星の女神様は箱を渡してくれた。中には、ガラスでできた手みたいな物が入ってた。 「これは人間の手。星を取ることはできない。その代わり、星を取る以外の事なら何でもできるわ。絵を描くことだって、ホームランを打つことだって、宇宙船を操縦することだって。まあ、多少の努力は必要だけどね。これをあげるから、その手は返してもらえないかしら?」 「うん、いいよ」 「ごめんね、本当はもっと早く届けたかったんだけど。そもそも、君がその手を持って生まれたのは、お産の女神の手違いなの。全く、何が“結果オーライ”よ」 「そうだ! ねえ、星の女神様、█姉ちゃんの目がどこにあるか知らない?」 「知ってるわ。今、私の顔に付いている目がそうなの」 「返してあげてよ」 「勿論、そのつもり。けど、すぐには無理。詳しいことは言えないけど、近い将来、地球でまた困ったことが起きる予定でね。それを解決する為に、私の目が必要なの。けど、目は誰かに付いていないと役に立たないでしょ? だから、█が生まれる時に、お互いの目を交換したのよ。私の目は地球用じゃないから、彼女には不便な思いさせて悪いけど」 SCP-912-JPが描いた夢の情景、超心理学研究所で分析中 「いつ返せるの?」 「多分、█が大人になる前には」 「僕は、█姉ちゃんのために何かできる?」 「幸せになりなさい、その手を使ってね。君が幸せに暮らせるように、彼女は頑張っているのだから。さあ、そろそろお別れの時間ね。█によろしく」 女神様がバイバイって手を振ると、船がひゅーんって落っこちて、ぐんぐん地球が大きくなって、気付いたらベッドの上だったんだ。 [手に異常はないかという質問に対して]うん、ちゃんと動くよ。すごいよね、何でもできるんだって。僕、こっちの方がいいや。 そういえば、星の女神様って█姉ちゃんと似てたなぁ。親戚なのかな? 研究者間では、SCP-912-JPの無意識が特異性の変化に呼応した結果、夢として顕在化したという仮説が有力視されています5。方法は検討中ですが、SCP-912-JPの特異性の喪失が確認された場合、オブジェクトクラスはNeutralizedへ再分類されます。その後、倫理委員会規定第███条「特異性を喪失した人間型オブジェクトの処遇・未成年のケース」に基づき社会復帰支援が行われることになるでしょう。なお、星崎研究員が養子として引き取りたい旨を申し出ています。 脚注 1. 太陽半径。恒星の大きさを表す単位。その名の通り太陽の半径であって、1R☉=6960×108m。地球の半径の約109倍。 2. SCP-912-JPの特異性を知っている人間のみ、天体の消失/再出現を認識できる等。 3. SCP-912-JP はSCP-███初期収容の際に記憶処理を受けており、SCP-███に対しては通常の視覚障害者と認識しています。 4. 地球近傍天体が地球に衝突する確率、及び衝突した際の予測被害状況を表す尺度。 5. 阿久津 豪人著、“人間型オブジェクトに対する夢分析: SCP-███-JPの特異性喪失とその前日に見た夢についての一考察”。オブザーバー: あるSCP財団誌 (20██): 109B.
scp-913-jp
評価: +213+–x アイテム番号: SCP-913-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-913-JPに該当する商品が販売されていた場合、該当商品を回収しカバーストーリー『異物混入』を流布して発売を中止させてください。回収した商品、及び財団の管轄内で作成されたSCP-913-JPは一時的に保管し、表面に腐敗が見られた時点で焼却処分を行ってください。 SCP-913-JP-1の管理担当者1は、SCP-913-JP-1に不快感を与えないよう一般人として接してください。また、管理担当中の職員には定期的にインタビューが行われます。SCP-913-JP-1の消失が確認された場合は、次の管理担当に指定されている別の職員へ管理担当を引き継いでください。 説明: SCP-913-JPは、日本国内で株式会社ドギーコープから201█年5月に販売されていた胡桃入り食パンです。1袋につき山型の食パンが2枚入れられた状態で販売されており、食パンの表面には会社を示すものと思しきロゴマークが印刷されています。また、SCP-913-JPと同様のロゴマークを通常の食パンに印刷することで、その食パンもSCP-913-JPと同様の異常性を有します。 人間の男性(以下、対象と記述する。)がSCP-913-JPを摂食すると、対象は24時間以内にSCP-913-JP-1との遭遇イベントが発生します。この遭遇イベントは主に対象の学校に転校、職場に就任などで対象と密接になるのに自然な関係として遭遇するパターンが多く、またその状況に適した形でSCP-913-JP-1の記録に関する過去改変が行われます。SCP-913-JP-1は「原野」という名字の人間の女性として、対象と親密な関係として最も適した役割を有しているように認識災害を発生させています。この認識災害は対象以外の全ての人物に有効であり、対象のみSCP-913-JP-1の認識災害の影響を受けません。 SCP-913-JP-1は、メスのニホンジカ(学: Cervus nippon)の成体です。SCP-913-JP-1は人間の女性に沿った行動パターンを行いますが、身体の動作はニホンジカに基づくため料理などの一部の行動で失敗するパターンが多く見られます。しかしこれらの失敗を目撃しても対象以外の人物は違和感を抱くことはなく、認識災害によってSCP-913-JP-1を「ドジをすることの多い女性」として認識します。SCP-913-JP-1は対象に対して好意を抱いており、そのアピールを頻繁に行います。SCP-913-JP-1は写真や動画、文章などの媒体ではニホンジカとして投影されますが、SCP-913-JP-1が出現している間はそれらの媒体を介しても対象以外は人間の女性として適した状態で認識します。 SCP-913-JP-1は、対象がSCP-913-JP-1にとって不快と思われる行動を複数回起こすことで消失します。SCP-913-JP-1が消失すると認識災害に陥っていた人物のSCP-913-JP-1に関する記憶に変化は起こりませんが、SCP-913-JP-1が記録されたメディアではSCP-913-JP-1をニホンジカとして認識することが可能になります。 オブジェクトの発見経緯 - 201█/5/13~201█/5/17 201█年5月13日、奈良県の██中学校に在学している複数の生徒がメスのニホンジカを被写体とした画像を「原野ちゃんがシカになった」といった内容の文章と共に複数のSNSサイトに投稿しており、財団はそれに注目しました。財団職員は██中学校の調査を行った所、男性生徒の村岡██氏(当時14歳)が画像の発見の4日前より「教室内でシカがうろうろしてる」と他の生徒に訴えており、異常性に深く関わっていた人物と推測しインタビューを行いました。しかし当時は、このインタビューだけでは異常性の解明には至りませんでした。 201█年5月14日、広島県の警察署に「職場にシカが新入社員としてやってきた」という異常な通報が届き、財団は奈良県の██中学校で発生した事案と関係があると推測し、通報者である会社員の上田██氏(当時27歳)をサイト-81██にて保護しました。上田氏からは早急にインタビューを行う予定でしたが、精神状態が不安定だったため一時的に保留。保護から3日目にインタビューに支障がないレベルまで精神状態が安定したと判断され、インタビューが行われました。 + インタビュー記録-913-01を表示する - インタビュー記録-913-01を閉じる インタビュー記録-913-01 - 201█/5/17 対象: 上田██氏(広島県在住 当時27歳) インタビュアー: 原野研究員2 <録音開始> 上田氏: なぁおい、これは一体なんの冗談なんだよ。 原野研究員: [脚を踏み鳴らす音] 上田氏: (壁の角にある監視カメラを見ながら)そっから見てるんだろ、先生。俺はシカが怖いって言っててこんなイタズラしてるのかよ。 原野研究員: [鼻を鳴らす音] (原野研究員は真横にあった椅子を倒し、テーブルを回り込んで上田氏に接近する。) 上田氏: うわぁくそ!(立ち上がり、原野研究員から距離を置く)こっちに来るんじゃねえよ! 原野研究員: [甲高い鳴き声] 上田氏: もういやだ……早く出してくれぇ! (原野研究員は上田氏に急接近して回り込み、後ろ足で蹴り飛ばす。その直後、部屋の扉を突き破って逃走した。) <録音終了> 終了報告書: 原野研究員は部屋から逃走後、約5秒後に消失。認識災害による異常性も同時に消失しました。これにより、直前のインタビューで録画されていた映像には原野研究員はニホンジカとして映っており、原野研究員について記載されていた文書記録も全てニホンジカに基づいた行動パターンとして記入されているのが確認されました。 再度別の職員が上田氏とインタビューを行った結果、村岡氏と上田氏は共にニホンジカと遭遇する前に株式会社ドギーコープから販売されていた食パンを食べていたことが判明し、財団内でこの製品の異常性が確認された後にSCP-913-JPに指定しました。 またSCP-913-JP-1の出現中にSCP-913-JPを摂食しても新たなSCP-913-JP-1が出現しなかったため、SCP-913-JP-1の個体は1体のみ存在していると推測されます。 補遺1: 201█年5月20日よりSCP-913-JP-1の特別収容プロトコル案として、複数の職員が交代で連続的にSCP-913-JP-1の対象を請け負う計画が実行されました。管理担当となる職員は本人の希望により決められ、SCP-913-JP-1が消失した場合は早急に次の管理担当者にSCP-913-JPを摂食してもらいます。また、この管理担当者は当時Dクラス職員を起用していましたが"脱走記録-D54489-1 201█/6/12"の発生以降、Dクラス職員を起用することは禁止されました。 補遺2: 201█年8月14日より春日井博士がSCP-913-JP-1の管理担当となりましたが、春日井博士の助手として出現したSCP-913-JP-1である「原野博士」は現在においても消失が確認されていません。現在もインタビューを行い続け、SCP-913-JP-1に関するインタビューを定期的に行っています。 インタビュー記録[Dr.春日井]039 - 201█/5/14 対象: 春日井博士 インタビュアー: 浅井研究員 <録音開始> 浅井研究員: 今日でSCP-913-JP-1の管理担当になってから39回目のインタビューになります。春日井さん、今日も宜しくお願いします。 春日井博士: あぁ、よろしく。 浅井研究員: 単純計算で、あれから実に39週近くSCP-913-JP-1が消失せずに存在し続けてることになりますが……あれからSCP-913-JP-1との関係は、上手くいってますか? 春日井博士: あぁ、いつも通りにな。お前達には彼女がどう見えるのか、私には分からないがな。 浅井研究員: そうですね、我々の方ではいつものように……ニホンジカとしてではなく、貴方の助手の原野博士として……貴方と仲睦まじく……そういう関係であると、見て取れます。 春日井博士: そうか、それなら良かった。実際に、彼女とは上手くいってるよ。 (浅井研究員は左手で顎を押さえ、視線を落とす。) 浅井研究員: ……つかぬことを聞きますが、分かるものなんですか? 春日井博士: それはつまり、彼女が私をどう思ってるか、のことか? (浅井研究員は黙りながら頷くと、春日井博士は小さく笑ってから頷いた。) 春日井博士: 私たちは長い間、愛し合ってるんだ。もう彼女の顔を見ただけで、何を想ってるのか手に取るように分かるよ。 浅井研究員: しかし貴方から見れば原野さんは……いえ、この話は止めておきましょう。 春日井博士: 浅井くん、相手の姿がどうであろうと関係ないさ。まぁ確かに、最初は苦労したな。彼女の気持ちが上手く掴めないのだから。 浅井研究員: えぇ。ここまでSCP-913-JP-1が消失しないのは珍しいことです。今までの管理担当者である職員たちは、10日も持たないで失敗してますからね。 春日井博士: (小さくため息を吐く)時間交代制の施設の浴場に入ろうとしたら彼女とばったり出会ってしまったり、彼女の手作りのヨモギの葉入りクッキーを食べて目の前で吐いたり、彼女の約束をすっぽかしたり。みんな彼女に対して酷いことをしてきたが、私はそれを責めたりはしないよ。なにせ彼女の心を読むのは難しいからね。しかし私は紳士として、彼女の期待には全力で応えてきたよ。 浅井研究員: 春日井さんはどうやって原野さんの……SCP-913-JP-1の期待に応えていったのでしょう? 春日井博士: なぁに、難しいことではない。今までの管理担当者の記録を読み、彼女の好み、趣味、こういう時にどうしてほしいのかを頭に叩き込んだ。時には私に通じない言葉で口約束をすることもあるようだが、そういう時は身近な友人に相談すればいい。友人は何故だか、何でも知っている。約束事だけではなく、彼女の機嫌などもね。 浅井研究員: なるほど……春日井博士がSCP-913-JP-1の管理に関して惜しみない努力をして下さっているのは、大変感謝しています。それでは、報告は以上になりますか? 春日井博士: あぁそういえば……ひとつ、相談してもいいか? 浅井研究員: はい?なんでしょうか。 春日井博士: 最近の彼女、ちょっと様子がおかしくてな。体調が悪いというか……。 浅井研究員: 続けてください。 春日井博士: 寝付けはいつも通りに見えるんだが、不眠状態のように具合を悪そうにしている。それに前までそんなことはなかったが、すぐに疲れを感じて吐くことも増えている。それに……まるで今までの自分の体じゃないみたいに、上手く動かせてないような、ぎこちない様子も目立つな。 浅井研究員: なるほど……もしかしてですが、人間としての行動に限界を感じてる、というのがあるのかもしれないですね。こんなにも長い期間SCP-913-JP-1が存在し続けていることは異例ですし、SCP-913-JP-1にとって相当負担なのでは? 春日井博士: 私も、そんな気はしていたが……やはり、そうなんだろうか。 (春日井博士は頭を抱え、俯いて黙り込む。) 浅井研究員: 念の為、インタビューを終えたらSCP-913-JP-1の身体検査を行ってみましょう。もしかしたら、他の原因があるのかもしれません。 春日井博士: そうだな、そうであってほしい……。 <録音終了> 終了報告書: インタビュー終了後SCP-913-JP-1の身体検査を行った所、SCP-913-JP-1は妊娠していることが判明しました。 Footnotes 1. この管理担当者は管理担当を自ら志願したセキュリティクリアランス1以上の職員にのみ充てられます。 2. 当初インタビュアーは浅井研究員の予定でしたが、原野研究員の強い希望によりインタビュアーは原野研究員に委託されました。
scp-914-jp
評価: +44+–x アイテム番号: SCP-914-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-914-JPはカバーストーリー"行政差し押さえ物件"を用いて立ち入りを制限します。男性職員のSCP-914-JP内部への侵入はDクラス職員以外には許可されません。SCP-914-JP-Aへのインタビューは女性職員のみに許可されます。 説明: SCP-914-JPは愛知県██市に位置する民家です。SCP-914-JPは異常性を獲得したと考えられる以前は██氏の居住地であり、同氏は2017/██/██に行方不明となっています。 SCP-914-JPの異常性は内部に成人男性(以下、対象)が侵入した際に発生します。SCP-914-JP内部に入った時点で、対象に取り付けられた全ての通信機器は途絶します。SCP-914-JPへの成人男性以外の人間による侵入の試みは全て失敗に終わりますが、門の横にあるインターフォンを介してSCP-914-JPの内部にいると考えられる実体(以下、SCP-914-JP-A)と会話することは可能です。SCP-914-JP-Aの声は60代の日本人女性のものであると推定されています。成人男性がインターフォンを介してSCP-914-JP-Aと会話した際、SCP-914-JP-Aは玄関を解錠している、という旨を伝えます。1この発言を聞いた人物は何らかの精神影響により、自発的にSCP-914-JPへの侵入を試みます。 SCP-914-JPに対象が侵入して約2週間後、SCP-914-JPの窓から庭先に内容物の詰まったビニール製のゴミ袋が投げ出されます。このゴミ袋をSCP-914-JPに対する敷地からの回収やゴミ袋自体の解体の試みは成功していません。超音波による内部検査では、このゴミ袋の内部にナプキンなどの大量の女性用生理用品が詰まっています。現在、このゴミ袋は███袋存在しています。またこれらのゴミ袋と別に、SCP-914-JPの敷地内には大量の非異常性の投棄物が散乱しています。対象がSCP-914-JPから脱出した例は現在まで確認されていません。 SCP-914-JPは近隣住民から所謂、"ゴミ屋敷"として認識されており、██市役所の担当職員がSCP-914-JPの住民に勧告を行うために侵入した後、行方不明になった事件をきっかけに財団の収容下に置かれました。 補遺: 以下は、SCP-914-JPのインターフォンを介して行われたSCP-914-JP-Aとのインタビューの抜粋です。 インタビュアー: エージェント・長谷川 付記: SCP-914-JP-Aにはエージェント・長谷川が市役所職員であるという旨を伝える。またエージェント・長谷川は女性であることに留意。 <記録開始> [インタビュアーはSCP-914-JPのインターフォンを押す] インタビュアー: すいません、██さんはいらっしゃいますか?██市役所の…… SCP-914-JP-A: あー、はいはいはいはい。私が何だっていうの? インタビュアー: そこのゴミ袋に関してなんですが、綺麗にして…… SCP-914-JP-A: 私に言わないでよ!これは息子たちの仕事なんだから、あの子らが放ったらかしたら、私の仕事じゃないわよ!放っておきなさい! インタビュアー: ですので、私たちが…… SCP-914-JP-A: あんたらが動かしてどうすんのさ。 インタビュアー: この話はまた落ち着いてしましょう。ところで、私たちの市役所の職員である██ ███があなたの家に入った後、音信不通になってしまったのですが、これに関して何かご存知でしょうか? SCP-914-JP-A: ああ、███かい。あの子も良い子だったね。ここの市役所で働いてるのかい。やっぱり私の息子だけあって能力が良い仕事についたのね。 インタビュアー: ██はあなたの息子さんではないはずですが? SCP-914-JP-A: 何言ってるのよ。私の生んだ息子、腹を痛めて世間に出してやった息子のことを何言ってんのよ? インタビュアー: なるほど、興味深いお話ですね。今日のところはここまでに…… SCP-914-JP-A: あ、そうだ。 インタビュアー: 何でしょう? SCP-914-JP-A: そろそろ娘も欲しいなあ、って思ってたのよね。 <記録終了> 脚注 1. この場合に限らず、SCP-914-JPの玄関は常に解錠されています
scp-915-jp
評価: +27+–x SCP-915-JP-Aからの景色。 アイテム番号: SCP-915-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: 現在、SCP-915-JPはサイト-8164に移築されています。1週間に1回のペースで、SCP-915-JP-A周辺の定期観測を実施してください。 説明: SCP-915-JPは奥行1200mm・幅1800mm・高さ2700mmのLIXIL社製シャワーユニットです。確保当時、SCP-915-JPは京都市に存在する[編集済]病院の2階シャワー室として使用されていました。完全に閉じた状態のSCP-915-JP出入口扉を外部から6回ノックして開いた場合、SCP-915-JP-Aと指定される特定の地点への侵入が可能となります。 SCP-915-JP-Aは位相変調空間内の砂浜に位置します。この砂浜は外周約4kmの島嶼を取り巻く海岸線の一部をなしています。自然環境は地球と大差なく、ヒトの生存に悪影響はありません。 天体観測の結果から、SCP-915-JP-Aの位置は西太平洋上の北緯███████、東経███████地点に相当することが判っていますが、実際の当該地点に陸地は存在しません。島内では複数の人工物が発見されているものの、人間の存在は確認されていません。 財団による確保当時、SCP-915-JP-A付近には以下に示す複数の物品が置かれていました。いずれの物品にも異常性は確認されていません。 ビーチパラソル アウトドア用の折り畳み椅子 クーラーボックス A4判のノート(資料915-JP-01と指定) ボールペン 資料915-JP-01には21ページにわたって日記らしき文章が書き込まれています。記述内容および筆跡鑑定の結果から、著者は████年4月から8月にかけて[編集済]病院に入院していた日本人女性“凪浦百合子”(POI-4094-JPと指定)だと考えられています。 資料915-JP-01(抜粋) 5.3 先生に勧められたので、今日から日記を書いてみる。 といっても私は出歩けないし、書くことはあまり思いつかない。 だから、夢の話を書くことにする。いわゆる夢日記というやつ。 5.4 私はベッドで目を覚ます。街の中心に公園があって、その公園の中に私のベッドがある。夢はいつもここから始まる。 夢の舞台はいつも同じ場所。路地の多い街で名前は凪浦という。私の名字と同じ。和風の古い家が多いけど、レンガの建物なんかもある。テレビで時代劇とか大河ドラマばかり見てるから、その影響かも。 5.10 明晰夢を見るのにはコツがある。説明は難しいけれど、一度コツを掴んだら、いつでも何もしなくても見られる。 明晰夢の中では、そこが夢の中だとなんとなくわかって、自由に動けるようになる。 でもなんでもアリではない。物を思い通りに操ったりとか、瞬間移動とかはできない。これは人にもよるのかな? 少なくとも私は無理。 6.13 この街には海がない。どちらの方角も山に囲まれている。昨夜は街の外れまで行ってみた。山のふもとで道は途絶えて、その先は暗い森だった。空は晴れているのに、森の奥は夜のように暗い。足を踏み入れようとすると、後ろからおじいさんに話しかけられた。そちらに行ってはいけないと言う。なんだか怖くなって引き返した。 7.21 東の市場で見かけない人に会った。街の中で会う人の顔はだいたい把握しているのだけど(自分の夢だし)、その人の顔は知らなかった。大きなつづらを担いだ男の人。 その人は豆田彦兵衛と名乗った。明るい人で、タヌキみたいにお腹が太い。行商人をやっているらしい。 7.30 また豆田さんに会った。 豆田さんに、いま欲しいものは何かと聞かれた。何よりも一番欲しいものは何かと。 私は海が見たいと答えた。ボートに乗って世界中を航海したいと言った。 8.9 取引を持ちかけられた。豆田さんは私に海と舟をくれる。私は代わりにこの街を渡す。そんな取引。 私は断った。舟があっても私の身体では漕ぎ出せないから。けれど、それなら代わりの身体もくれるという。 街のことなんて私に聞かれても困るのだけど、私は同意した。 正直期待はしていないけど、本当にここを抜け出せるのなら儲けものだ。 ───ここからは現実の話!─── 8.12 豆田さんの言ったことは本当だった。本当に海に行けたのだ。 海は、写真で見るよりずっと広かった。 砂浜にはパラソルが立っていて、海の上には大きなボートもあった。ボートというより、クルーザー? そんな感じ。 貰った身体もいい調子。 今すぐにでも舟に乗ってみたいけど、残念ながら空は雨だ。出航は晴れを待ってからが良い。 8.13 今日もずっと雨だった。残念。 浜辺を走ったり、水に入ったりして遊んだ。 8.14 今日も雨。いくらなんでも長すぎる気がする。 でも気長に待とう。止まない雨はない、とも言うし。 8.16 雨。5日連続。 波も高くなってきた。風も強い。雨というより嵐だ。 すこし怖い。 8.18 嵐は止まない。 雨と風の音を聴きながら、まるで泣き声のようだなと思う。 だとしたら、何がそんなに悲しいのだろう? 泣き止んでほしいと思うけれど、私にできることはない。 8.19 今日も雨。 8.19 追記 嵐の海を見ながら、うたたねをした。 夢を見たけれど、内容は覚えていない。 夢の内容を思い出せないのは久しぶり。街を手放したからかな。 でも悪い夢ではなかった気がする。 起きたら頬が濡れていた。私は泣いていたみたいだ。どうして? 8.20 昨日の嵐が嘘のように凪いでいる。ようやく出発できそう。 慣れ親しんだ浜辺には、なんだか後ろ髪を引かれるけれど、この機会を逃す手はない。 この日記は置いて行くことにする。 いつか私と同じように、誰かがこの砂浜にたどり着いたら、 そしたらその誰かは(つまりあなたは)この日記を読んでくれるだろうか。 海に来てから、あの街の夢は一度も見ていない。私はそういう取引をしたから。 後悔はしていないけれど、少し寂しいのも事実なのだ。 だから、よかったらあなたにも、あの街のことを知ってもらって、 そして今度眠るとき、私の代わりにあの街を訪れてほしい。 そのときは、私は元気だと伝えてほしい。 そうでなくとも、晴れを待つまでの暇つぶしには、なると思うから。 潮風が気持ちいい。 いってきます。 海の向こうで待っているね。 補遺1: ████/08/12以降、POI-4094-JPは病状の急変によって昏睡状態に陥っていました。08/20 22:00頃、2階シャワー室内にて死亡しているPOI-4094-JPを病院職員が発見しました。家族および病院職員が常時看病に当たっていたにもかかわらず、POI-4094-JPがシャワー室へ移動する様子は目撃されていません。 同日深夜、“国立成長医療研究センターの信楽”と名乗る人物が病院を訪れ、研究目的と称してPOI-4094-JPの遺体を引き取りました。しかしながら成長医療研究センターに信楽なる職員は実在せず、引き取られた遺体の行方は不明です。 補遺2: ████/08/27放送のSCP-568-JP内“オオタ・ニュース”のコーナーにて、“アンソン多島海でビスクドールの乗った漂流船が発見された”とのニュースが報じられました。同放送によれば、発見されたビスクドールは日本語を話し、“京都出身のユリコ”と名乗っているとのことです。SCP-915-JPおよびPOI-4094-JPとの関連性について調査が進められています。
scp-916-jp
評価: +232+–x Anomalousアイテム番号: AO-916-JP-MTYTKLR 説明: 新潟県妙高市で事故死した████氏と同一と思われる人間。DNAやその他特徴も████氏のものと一致した。 回収日: 1991/10/10 回収場所: 山形県山形市の交番 現状: 標準人型格納個室に収容。 現在は冷凍冬眠装置に収容。 新たな情報によりこの記録文書は更新されました。   SCP-916-JP アイテム番号: SCP-916-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: 現在SCP-916-JPは冷凍冬眠装置に収容されています。SCP-916-JPは可能な限り長期の生存を維持しなければなりません。SCP-916-JPには追跡装置を埋め込み、収容施設外からの信号を受信した際はただちに確保に赴いてください。SCP-916-JPの死亡を伴う実験は収容違反が発生する可能性が高いため、レベル4以上の職員3名の同意が必要となります。死亡が確認されたSCP-916-JPへの蘇生措置は禁止されています。 説明: SCP-916-JPは日本人男性に見える人型存在です。████氏が新潟県妙高市の交通事故で死亡したその二時間後、████氏を名乗る男性が山形県山形市の交番に保護を求めた事で財団に発見されました。████氏の遺体が存在しているにも関わらず、山形市に現れた男性は████氏とDNA、身体的特徴、所持品が完全に一致しました。記憶に関しては、自身にぶつかりそうになったトラックを目撃した部分まで有しており、衝突の瞬間は記憶になく、突然池の中1に移動したと証言しています。 SCP-916-JPは通常の人間と変わりない身体構造ですが、死亡した際にその異常性が発揮されます。SCP-916-JP(SCP-916-JP-1)が死亡すると、離れた地点2に生前のSCP-916-JP-1と同一個体(SCP-916-JP-2)が発生します。SCP-916-JP-2の発生の際、発生場所において同体積の固体又は液体が消費されますが、消費される物質に関わらずSCP-916-JP-2はSCP-916-JP-1と同一の組成である事が判明しています。SCP-916-JP-2は、所持品3を含みSCP-916-JP-1が問題無く生存していた直近の状態で発生します。 発見当初、SCP-916-JPは死亡した████氏と同一存在である事が確認されました。しかしその後の周辺調査において他に異常性が確認されず、有益な情報も得られなかった事からAnomalousアイテムAO-916-JP-MTYTKLRに分類されていました。AO-916-JP-MTYTKLRは2007年09月16日に起きたGOC過激派による攻撃によって財団施設が破壊された際に死亡が確認されましたが、GOC撃退後の施設復旧作業中、サイト内のカフェテラスに隠れているAO-916-JP-MTYTKLRが再発見されました。カフェテラスの監視映像には、大理石の床から起き上がるようにして発生したAO-916-JP-MTYTKLRの姿が映し出されていました。更なる調査が行われた結果、AO-916-JP-MTYTKLRはAnomalousアイテムからKeterクラスのSCP-916-JPへと再分類されました。     事件記録002 — 日付2007/09/16 実験記録004 — 日付2007/09/16 対象: AO-916-JP-MTYTKLR 目的: AO-916-JP-MTYTKLRが死亡した際に何が起こるかの調査。 実施方法: 追跡装置を体内に埋め込んだ上で麻酔に掛け、安楽死させる。 対象の死亡が異常性の原因と考えられ、上記の実験が実施されました。対象の死亡が確認された後、20km離れた山中から追跡装置の信号をキャッチ。現場に急行した所、昏睡状態のAO-916-JP-MTYTKLRと同一組成の存在(SCP-916-JP-2)を発見しました。この時、近くの樹木の一部が対象と同体積消失している事も確認されました。 発見から八分後、SCP-916-JP-2の死亡を確認。その後、対象に取り付けた追跡装置と同一の信号を日本海沖230km地点から受信しました。 山中で発見されたSCP-916-JP-2の体内からは安楽死に用いた薬物が検出され、この残留薬物が対象の死亡原因である事が判明しました。財団が新たなSCP-916-JP-2を確保し、解毒作業を成功させるまでに五度4のSCP-916-JP-2の発生を齎しました。木曾町で確保された最新のSCP-916-JP-2に解毒作業が行われた事で対象の更なる死亡は阻止され、事件の目撃者にはAクラスの記憶処理が施されました。   2007/09/16: 上記の事件を受けて、AO-916-JP-MTYTKLRはオブジェクトクラス未定のSCP-916-JPに認定されました。       実験記録005 — 日付2007/09/23 対象: SCP-916-JP 目的: SCP-916-JP-2が生前のどの時点の状態で発生するのかを調査する。同時に、接触している生命体も複製するのか確認を行う。 実施方法: 胆嚢、腎臓の一つを摘出。腸内に、生きた人回虫ひとかいちゅうを収めた不溶性カプセルを残す。覚醒した対象には記録装置を付けた腕輪を装着させ、ポメラニアンを抱かせた状態で対象に気付かれないように終了する。使用する生物には追跡装置を埋め込み、雄のみを用いる事とする。 結果: 対象の頭部を狙撃後、兵庫県摩耶山中の民家にSCP-916-JP-2が発生。発生場所からは対象及び人回虫に埋め込んだ追跡装置の信号が確認されるも、ポメラニアンの信号は確認されず。確保後の調査により、対象は胆嚢、腎臓の一つが摘出されている状態である事が判明した。対象の腕輪は財団が装着させた物と一致した。腕輪の記録装置には、着弾二秒前に突然民家へと移動している対象の姿が映し出されており、抱かれていたポメラニアンの姿は映像が民家へと切り替わる際に消失していた。対象の記憶も記録映像と一致する事が確認された。摘出していた胆嚢と腎臓は対象の体内に戻され、人回虫を収めたカプセルは回収された。 分析: SCP-916-JP-2はSCP-916-JP-1の“完全”な状態で発生するものではないという事が確認されました。装着物の複製は生物にまで及びましたが、何処どこまでを装着物とみなされるのかは更なる実験を行わなければわかりません。 補遺: 実験後、この民家に住む男性が行方不明となっています。その後一年間民家を監視するも異常は確認されませんでした。 実験記録006 — 日付2007/09/23 対象: 実験記録005でSCP-916-JP-2の体内から回収した人回虫。 目的: SCP-916-JP-2と共に複製された生物にも異常性が伝播しているかを確認する。 実施方法: 追跡装置を埋め込んだ人回虫を終了する。 結果: 追跡装置の新たな反応は無し。 分析: SCP-916-JPの能力は伝播しない事が確認されました。SCP-916-JPは“死亡すると生前の自分を複製する”という異常性を持った自分を複製しているのでしょう。なので、他生物を複製したとしてもそれは異常性を持たない“複製された生物”となると思われます。異常特性を持った生命体を使用した場合はその特性ごと複製しそうですが、それを確認する必要性はないと思われます。 実験記録008 — 日付2007/09/25 対象: SCP-916-JP 目的: 死亡したSCP-916-JP-1が蘇生した場合どうなるのか調査。 実施方法: 対象をショック死させ、SCP-916-JP-2が確認された後にSCP-916-JP-1に蘇生措置を行う。 結果: 霧崎博士により実験は中止。 蘇生に成功した場合、SCP-916-JPが二体に増える事が容易に予想されます。仮に蘇生後のSCP-916-JP-1が異常性を喪失していたとしても、それを確認する事の有用性を見出せません。どちらの結果も予想にしか過ぎませんが、それらの確認は不要と判断します。 - 霧崎博士     補遺: SCP-916-JPは死亡した際に『自身の最も健全な状態』ではなく『問題無く生存していた状態』でSCP-916-JP-2を発生させるものと考えられます。『毒物を摂取する前』ではなく、『体内の毒物が効果を発揮する前』の状態でSCP-916-JP-2が発生しているのがその証拠です。SCP-916-JPは確保当時から加齢が進んでおり、このまま老衰死を迎えた場合、最悪の事態として老衰死とSCP-916-JP-2の発生を永遠に繰り返すNK-クラス世界終焉シナリオが引き起こされる事が考えられます。SCP-916-JPはKeterに再分類され、特別収容プロトコルは超長期的に生存を保ったまま収容する現在の物へと変更されました。 SCP-916-JPを無力化する研究は現在も進行中です。 Footnotes 1. 山形市にある最上義光歴史館敷地内のもの。調査するも異常性は認められず。 2. 最長707km 、最短154m。 3. 眼鏡、腕時計、衣服、財布等。財布の中の紙幣も複製されていた。 4. 島根県大田市、日本上空を飛んでいた飛行機内、鳥取県八頭町、和歌山県由良町の地下2m、長野県木曽町。
scp-917-jp
評価: +95+–x 評価: +95+–x クレジット タイトル: たのしい時間よいつまでも! 著者: ©︎rkondo_001 作成年: 2015 評価: +95+–x 評価: +95+–x アイテム番号:SCP-917-JP オブジェクトクラス:Safe SCP-917-JP 特別収容プロトコル: SCP-917-JPはサイト-8181の標準収容ロッカーに一般的な防湿・防虫処置を施した上で保管されます。人体とオブジェクトの直接接触は避け、専用機器による遠隔もしくは間接的手法による取り扱いを行ってください。SCP-917-JPとの接触者(SCP-917-JP-1)は早急にSCP-917-JPの影響下から隔離した上で各種検査とカウンセリングの適用を推奨します。 説明: SCP-917-JPは中国服の女性を象ったとみられる座高25.4cmの人形です。彩色された木彫りの頭部と絹・木綿生地と綿などから構成された胴体を持ち、左足には小さく「たのしい時間よいつまでも!」という文章が刻まれています。これらの材質には特筆すべき特徴はみられませんが、頭部に植え付けられている毛髪はモンゴロイド人種の人毛である事が判明しています。 SCP-917-JPを所持1した人間は客観的に「落ち着いた」様子を見せ、積極的な行動をとらなくなります。この際対象者は外部からの接触と刺激に対して非常に鈍感となり、食事や排泄といった生理的行動や、問いかけへの返答などは行うものの、その反応は非常に薄くぼやけたものです。この状態の人間をSCP-917-JP-1とします。 SCP-917-JP-1は一種の幻覚と思われる効果により、第三者からは一切の行動が確認されないにもかかわらず、主観的には平常時と同様の移動や運動・娯楽・食事といったアクティブな行動をとれるかのように認識します。この際SCP-917-JP-1が体感する環境は現実の同時刻におけるその場所と対応しており、「身体」は一切移動していないにも関わらずその状況を体感的に把握することができます。また、SCP-917-JP-1に外部から加わった刺激はSCP-917-JP-1の主観的な光景に影響を与える事が分かっています。例として実験室内にてSCP-917-JP-1との会話を行い、SCP-917-JP-1が主観的には屋外にいた場合、この会話は屋外にてその人物と行ったものとして認識されます。 SCP-917-JP-1が体感している時間の経過は非常に遅く、検証により現実のおおよそ40倍ほどに引き延ばされた時間内での行動が可能であると推測されています。2SCP-917-JP-1の体感する時間経過と現実の時間経過には大きく差がありますが、何故外部からのコンタクトを時間的相違無く認識・反応出来るのかは分かっていません。また対象者がSCP-917-JP-1となっている間、その身体には異常な速度での老化が確認されており、この老化の進行は上記のSCP-917-JP-1の時間認識と相当したものと考えられています。長期のSCP-917-JPの所持の間、SCP-917-JP-1の身体に存在していた疾患等もこれと相応した病態の進行を見せます。しかしこれが直接の死因となる例は現在確認されておらず、身体そのものの老衰により死亡するまでSCP-917-JP-1は生存を続ける事が分かっています。ただし、ある程度進んだ病状を見せるSCP-917-JP-1からSCP-917-JPを隔離する事により、対象者に想定される通りの苦痛と症状が現れました。これが末期症状であった場合、多くの場合対象者の死亡に繋がります。 + インタビュー記録 - 記録を隠す 対象: D-4876(事前にSCP-917-JPとの接触、SCP-917-JP-1への変化を実験により経験済み) インタビュアー: 篝博士 付記: 対象者の不測の行動を予防するため、ある程度行動に信頼をおける元サイト-81██所属の研究員であったD-4876を使用しました。 <録音開始> 篝博士: ではD-4876、昨日の実験についてお聞かせください。 D-4876: ・・・はい。たしか実験室で、椅子に手足を拘束、膝に人形を乗せた・・・で、合ってますよね? 篝博士: SCP-917-JPを所持した際にあなたが体験した事を教えてください。 D-4876: たしか、脚にあの人形が触れた瞬間、なんかこうぬぅっと、下から上へ流れるような不思議な感じがしました。涼しくも暖かくもない、けれど清々しい風が身体の中に吹いたような、魂が柔らかいハンモックで包まれて身体から引き揚げられたような・・・何とも言えぬ気持ちのいい感覚だったと思います。気づいた時には手枷も足枷もついてなくて、真っ白い服で椅子の前に立ってました。妙に気持ちがすっきりしてて、身体が軽かったです。 篝博士: あなたは実験中は常時拘束された状態でした。側には私たちが居たはずですが、あなたにはどのように見えていたか教えてください。 D-4876: 前も言った通り普通にそこに立っていましたよ。・・・なんだか妙に明るい笑顔だったと思いますけど。内容は・・・よく思い出せませんが、何度か会話もしましたよ。話しかけたら軽く返答もしてくれました。 篝博士: そのような事実はありません。実験を開始して20秒ほどで、こちらから一度あなたに現在の様子を聞きました。返答は先に述べられた通りでしたが、あなたから見たその様子を教えてください。 D-4876: 20秒・・・?実験始まって10分ぐらいはあったと思いますよ。博士から話しかけてきたの。そのあと30分40分くらいブラブラしてて・・・たしか急に部屋から出てみろって言ってましたよね。 篝博士: あなたに最初の質問をしてから、だいたいこちらで1分ほど経過した時ですね。部屋は施錠された状態でしたが、どうでしたか? D-4876: 何故か鍵は開いてました。部屋を出たら███さんが居て、何色か封筒を持ってました。順番に袋を開けて中身を見ろって言うんで、糊付けをはがして全部開けました。 篝博士: ███助手は確かに実験室の外に控えていましたし、封筒も持たせて「D-4876が現れたら中身を確認させるように」と伝えてありました。しかし彼はあなたが来なかったと証言してますし、封筒も全て未開封のままです。封筒の内容は? D-4876: えっと、赤が「○」印の描かれた紙、黄色が「4701」って書いた紙、青には蝶々のイラスト、緑には紙じゃなくてジョーカーのトランプと100円玉。紫には、「左から3列目のロッカーの上から2段目にケーキとジュースが入っているので食べてください。」とありました。 篝博士: 食べましたか? D-4876: ええ、お言葉に甘えて。チョコミルフィーユケーキもレモンソーダも大好物だったので。 篝博士: ありがとうございました。 <録音終了> 終了報告書: SCP-917-JP-1が体験する光景は現実の状態にのっとっており、その行動を妨げる要因は何らかの形で無くなっているようです。そこでの行動は現実に反映されないようですが、実際には会話の事実が無い人物との意思疎通や 知るはずのない情報の取得、外部状況に応じた視覚的な環境改変も発生しているとみられます。念のため、平行世界への意識転移などといった可能性にも留意する必要があるかもしれません。 SCP-917-JPは長崎県██市の医療施設にて長期入院患者であった████(当時10歳)によって所持されていました。元来の持病に加え████は20██年より原因不明の早老症と考えられる病態を現しており、その異常な症状と死亡が財団に報告された事が回収に至るきっかけとなりました。後記の資料から推察するに、この「早老症」はSCP-917-JP-1への変化に伴う副作用的効果であったと考えられます。████は持病によりその生活のほとんどをベッド上で過ごす上、自主的な行動が困難であったためにSCP-917-JPと長期の接触に陥ったと考えられます。 補遺: 回収文書 + 資料を開く - 隠す 回収文書917-JP-a: 以下の記述は████の入院していた医療施設の休憩所にて見つかった手書きの文書です。筆跡から████がSCP-917-JP-1の症状から一時的に抜けている間に書かれたものと推定されました。 わたしもながく生きました。 いや、ながくないかもしれません。 あの子3がきてくれたあの時から、おかあさんも、せんせいも、██ちゃんもずっとあのころのまま わたしは、みんなとちがいました。 けれど、こわくはありません。 かなしくもありません。 いつも、あの子といっしょでした。 はじめて、わたしの足ではしった日 はじめて、おおきな海をおよいだ日 はじめて、たくさんのおかしを食べた日 はじめて、お友だちとずっとはなせた日 はじめて、図書館でいっぱいよんだ日 べんきょうした日 いつだったかも分からないけど、わたしは今でもおぼえてます。 ずっと白いベッドでくらしたいつかのわたしが、夢でやりたいと思ってたこと。 あの子がかなえてくれました。 いまはとっても苦しいし 体もいたいです。 でもあの子といっしょだと、いつでもわたしは元気です。 さびしくなんかありません。 わたしは、しあわせでした。 Footnotes 1. これは直接的接触のほか手袋等を通した間接的接触、非接触であっても対象者の側へ意図的に配置した場合なども含まれます。 2. 2時間行われた実験では、対象者はSCP-917-JP-1となっている間に自らが3日分の活動と3回の睡眠を行ったと主張しました。 3. SCP-917-JPの事だと推測される
scp-918-jp
評価: +144+–x 評価: +144+–x クレジット タイトル: SCP-918-JP - それは誰かが見た見果てた夢 著者: ©︎Souryuu0219 作成年: 2018 評価: +144+–x 評価: +144+–x SCP-918-JP アイテム番号: SCP-918-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-918-JPはサイト-8137の5×5×5mの収容室内に設置した20×20×20cmのショーケース内に収容されています。 SCP-918-JP内の情報の増減を確認するため、最後のページの情報のみを定期的に記録してください。 SCP-918-JPは常に1つの監視カメラで観察され、新たなSCP-918-JP-Aが確認された場合、即座に担当職員に報告し、保護するようにしてください。 出現したSCP-918-JP-Aに関してはその生態に適した収容室にそれぞれ収容され、レベル2以上の職員によって実験等が行われます。SCP-918-JP-Aの脱走及び再度抱く事による消失を防ぐためにSCP-918-JP-Aは定期的に薬を投与し恒常的な軽度の鬱状態を保つようにしてください。 説明: SCP-918-JPは、"それは誰かが見た見果てた夢"と表紙に刻印された計測不能な枚数のページで構成された書籍です。 SCP-918-JPは、個人の情報と、その個人が過去実現を諦めた願望の情報が自動的に書き込まれる異常性を保有しています。書き込まれている人物には特に共通点などは見られず、中には既に亡くなっている人物の情報も確認されています。SCP-918-JPに記述されている人物に対してSCP-918-JPについて質問したところ全員が「そんな情報、記入した記憶はない」と回答しました。後述する事例を除けば、SCP-918-JP内に記述された情報が消滅する事はありません。 SCP-918-JPのもう一つの異常性として、不定期に1体の生物実体がSCP-918-JPから半径2m以内に出現します(以下、SCP-918-JP-A)。現在、SCP-918-JP-A-13、-15、-16の計3体のSCP-918-JP-Aを収容しています。また、同時に存在できるSCP-918-JP-Aの限界数は未判明です1。SCP-918-JP-Aは自らを一度放棄されてから1年以上経過した"願望"または"夢"2であると主張しています。また、SCP-918-JP-Aは自らの願望または夢に相応する特技を1つ所持しています。何らかの願望を抱いている人物がSCP-918-JP-Aの言語を理解する事やSCP-918-JP-Aに接触する事は不可能です。対して、願望または夢を抱いていない人物はSCP-918-JPの言語を知覚することや接触する事が可能であり、SCP-918-JP-Aはこのような人物に対して非常に友好的であるため、SCP-918-JP-Aに対する実験やインタビューは上記の条件に該当する人物でのみ行われます。 SCP-918-JP-Aに対して行われたインタビュー記録によりSCP-918-JP-Aは"自分という願望または夢を誰かに抱いてもらう"という目的を持っている事が明らかになりました。SCP-918-JP-Aの目的が達成された場合、SCP-918-JP-Aは消滅します。SCP-918-JP-Aが消滅した後、SCP-918-JPに記述されていた該当する情報は消滅します。これを受けてSCP-918-JP-Aの収容手順が変更され現在の特別収容プロトコルが構成されました。 以下は現在収容されているSCP-918-JP-Aの一覧です。 収容されているSCP-918-JP-Aナンバー 姿 願望または夢 特技 SCP-918-JP-A-13 白色のウサギ 生まれ変わったらウサギになる夢 特に特技は存在しない3。 SCP-918-JP-A-15 鷲 大空に羽ばたく夢 最長で████mの飛翔が確認されました。 SCP-918-JP-A-16 盲導犬 仲間を率いる夢 SCP-918-JP-A-16の半径30cm以内に近づいた人物はSCP-918-JP-A-16が歩いた道と5分間同じ道を歩く。 補遺918-JP: SCP-918-JPは、██県の███図書館の倉庫に保管されており、廃棄処分が予定されていました。発見当日、SCP-918-JPの廃棄処分を行う為図書館管理者が倉庫に訪れた所、SCP-918-JPからSCP-918-JP-A-1が出現し財団の興味を引きました。1ヵ月の調査の後、SCP-918-JPの異常性が確認され、正式に収容されました。この時に出現したSCP-918-JP-A-1はその3ヵ月後消滅しました。 補遺918-JP-2: 人型のSCP-918-JP-AであるSCP-918-JP-A-11との会話を数人で試みた所、藤光研究員のみ会話が可能な事実が判明しました。藤光研究員は過去に足を骨折し挫折した事で夢を放棄した事実が判明しました。以下は藤光研究員が行ったSCP-918-JP-A-11に対するインタビュー記録です。 対象: SCP-918-JP-A-11 インタビュアー: 藤光研究員 付記: 藤光研究員以外の職員にはSCP-918-JP-A-11の発言が理解できないため、インタビュー終了後藤光研究員に録音記録を翻訳する形でSCP-918-JP-A-11の発言は記録されます。 <録音開始> 藤光研究員: こんにちは。SCP-918-JP-A-11。 SCP-918-JP-A-11: えす? なんですか、それは。 藤光研究員: ここでのあなたの呼び名と思っていただければいいですよ。 SCP-918-JP-A-11: わかりました。 藤光研究員: でも一応聞いておきますが、あなたの名前はなんでしょうか。 SCP-918-JP-A-11: 見果てた夢に名前などありません。ついでに感情もありません。覚えている事はあの子の記憶だけです。でも強いて言うなら、"笑顔の夢"にしましょうか。 藤光研究員: "笑顔の夢"ですか。あと、見果てた夢というのは。 SCP-918-JP-A-11: 見果てた夢とはそのままの意味です。もう見られない夢、誰も見てくれない夢、見飽きた夢……。だから見果てた夢です。"笑顔の夢"は、あの子の夢を省略した名前ですね。 藤光研究員: そうですか。次にSCP-918-JPについて何かご存知でしょうか。あなたが出てきたあの本なんですが……。 SCP-918-JP-A-11: あの本は貴方達も知っているかもしれませんが、捨てられたり諦めたりされた夢達が溜まるゴミ箱みたいな物です。それでもまだ長い間再度抱かれたいと願う夢達は外へ逃げていきます。私もあの子にまた抱かれたいと願いここに逃げてきました。他の夢達は誰でもいいと言ってますけど、私はあの子じゃないとなんか……。すいません。自分勝手な事言ってしまいましたね。 藤光研究員: いえ、大丈夫ですよ。それより、あの子とはあなたを抱いていた人物の事でしょうか? SCP-918-JP-A-11: はい。あの子は幼稚園に入ったばかりの女の子です。あの子の父親は常に遺憾の表情で母親に何か言われれば逆ギレ。あの子が何か言えば逆ギレ。そんな毎日です。そんな時、あの子はある絵本を読んだんです。そこにはいつも笑顔な家族の絵が描かれていました。その絵を見たあの子はこの家族を理想としたのです。 藤光研究員: そうですか。それで、その子はどうしてその夢を? 成長の過程で諦めたのでしょうか? [30秒間の沈黙] 藤光研究員: SCP-918-JP-A-11? 大丈夫ですか? SCP-918-JP-A-11: いえ、大丈夫です。結構率直に聞くんだな、と思っただけです。あの子は……その、父親の執拗な虐待を受けていたんです。ですがあの子はその夢を糧に必死に生きて耐えていきました。しかし、最終的にあの父親が無理やり別居を切り出して……出ていったんですよ。それで夢を捨て、いえ諦めたんです。 藤光研究員: なるほど。ありがとうございます。参考になりました。 SCP-918-JP-A-11: それならよかったです。 <録音終了> 終了報告書: SCP-918-JP-A-11を含む、他のSCP-918-JP-Aが藤光研究員に対してのみ友好的に接する事が可能だった事を受け、藤光研究員をSCP-918-JPの担当職員に任命されました。 事案918-JP-1: 1993/12/26、収容下に置いていた馬の姿をしたSCP-918-JP-A-2が収容所から消失しているのが確認されました。監視カメラを確認した所消失する直前SCP-918-JP-A-2は収容室内を激しい音を立て軽快な足取りで走り回っていました。後の調査によりSCP-918-JP-A-2を抱いていたと思われる競走馬「トウカイテイオー4」が左中臀筋を痛め、約1年間休養していたにも関わらず、当日に催された競馬大会の1つである有馬記念にて優勝等の好成績を残していた事が判明しました。 事案918-JP-2: 20██/█/██、藤光研究員がSCP-918-JP-A-11に薬物投与のため収容所を訪れた所、SCP-918-JP-A-11が突如身体の痛みを訴えましたが、藤光研究員は当初薬物投与を避けるための口実だと推測したため無視し薬物を投与しました。しかし翌日SCP-918-JP-11の身体が薄くなる変化の発生と共に昨日よりも苦痛な表情を示しました。以下は急遽行われたSCP-918-JP-A-11と藤光研究員による対話記録です。また、SCP-918-JP-A-11はこの対話記録の3分後に完全に消失しました。 藤光研究員: 昨日から痛みを患っていたにも関わらず、なぜ我々に言わなかったのですか? SCP-918-JP-A-11: 言ったじゃないですか。あなたはそれを信じましたか……? 藤光研究員: [沈黙] SCP-918-JP-A-11: 夢は捨てられたら痛みを伴い消える。人と同じなんだよ。結局。 藤光研究員: 夢は消えた後どこに行くのですか? SCP-918-JP-A-11: 知らないよ。生きている人間が、天国があるのかないのかわからないのと同じ。でも唯一違うのは、悔しさを抱きながら消えていく事かな……。 藤光研究員: そうですか。 SCP-918-JP-A-11: 痛っ……。はは、痩せ我慢だね。さよなら、藤光さん。あ、そうだ。みんなに伝えたいことがあるんだ。言ってもいい? 藤光研究員: はい、どうぞ。 SCP-918-JP-A-11: 捨てられた夢はこうやって消えていくんだ。だから、抱いた夢は責任を持って叶えてください。……ってね。 藤光研究員: はい、伝えておきますよ。 SCP-918-JP-A-11: なら、よかった。 Footnotes 1. 現在に至るまでの最大数は██体です。 2. 報告書内では"将来実現させたいと思っていること"として扱う。 3. SCP-918-JP-Aが特技を所持しなかった唯一の事例です。 4. 日本の競走馬(1988~2013)。勝ち鞍は1991年皐月賞、東京優駿、1992年ジャパンカップ、大阪杯など。
scp-919-jp
評価: +166+–x SCP-919-JP-Aの1シーン: 『自然界に生きるスプーン』 アイテム番号: SCP-919-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-919-JP-Aを記録した媒体は一部を標準収容ロッカーに施錠して保管し、残りは全て映像を再生できない状態にした上で破棄します。SCP-919-JP-Aを大衆に配信する試みは発見次第即座に阻止してください。SCP-919-JP-Bは特別な事情がない限り、記憶処理をして影響を取り除いた後に解放します。未確認のSCP-919-JP-A及びSCP-919-JP-Bは発見次第、可及的速やかに確保し、上記処理を行ってください。 説明: SCP-919-JP-Aはスプーンを題材にした映像記録です。映像の中でスプーンはひとりでに動き出し、周囲の物体や生物に働きかけ、まるで一匹の動物のように振る舞います。SCP-919-JP-Aの幾つかは動物ドキュメンタリー風の編集やナレーションが入れられており、その全てにおいて『スプーンの自由解放戦線』のクレジットが表記されています。その内容は記録毎に様々ですが、概ね次の主張で構成されています: 野生のスプーンの生態、乱獲、自然破壊、野生個体数の減少とその対策。SCP-919-JP-Aを視聴した人間は、映像の種類・視聴環境に大きく左右されて5%から70%の確率で、「スプーンを保護しなければならない」という観念に囚われます。映像を一度に30分以上視聴しない限り、影響は現れないことが実験でわかっています。またこの影響はクラスA記憶処理で取り除くことが可能です。影響を受けた状態の人間をSCP-919-JP-Bに指定します。 SCP-919-JP-Bはスプーンを保護することを自らの使命としている人間です。SCP-919-JP-Bはスプーンを見つけると愛玩動物に対するかのように撫でたり、声をかけたりします。SCP-919-JP-Bはスプーンを食事に用いることに不快感を示し、自らが用いることはありません。また一部のSCP-919-JP-Bは食事の席にあるスプーンを見つけ次第、保護という名目でそれを回収しようと強硬的な手段を取ります。SCP-919-JP-Bは一様に「スプーンは一匹の動物である」と主張しますが、スプーンは何の異常な性質も示しません。しかし、SCP-919-JP-Bが映像を撮影した場合、スプーンは自らの意志で動き回っているように見えます。この映像はSCP-919-JP-Aと同じ精神影響を引き起こし、同様にSCP-919-JP-Aに指定されます。 SCP-919-JP-Bは時に数人から数十人の集団を形成し、『スプーンの自由解放戦線』を名乗ります。集団はその主目的である「スプーンの保護活動」を促進し、SCP-919-JP-Aを製造します。また講演会を開きSCP-919-JP-Bを増やそうとします。多くの場合、電話やインターネットを介した一般的な連絡方法を取るため、比較的容易にその存在を捕捉することができます。財団は収容の経過において幾度も集団を解散させていますが、別の新たなSCP-919-JP-Bによって再形成されるため、未だに根絶できていないという見方が濃厚です。 『スプーンの自由解放戦線』の主張はSCP-919-JP-Bと同一です。次に例示します: 自然保護による、野生のスプーンの安全な生育環境の整備 スプーンの遺棄禁止と捨てスプーンの保護 人類の食事行為からスプーンの解放 特にラザニアをスプーンで食べる行為の禁止 スプーンに対するフォークの隔離 先割れスプーンの根絶 インタビュー記録-い: ████年██月██日、[編集済]にてスプーンに話しかける女性を確保し、聴取の結果からSCP-919-JP-B-59に指定しました。次に示すのはそのインタビュー記録です。 対象: SCP-919-JP-B-59 インタビュアー: 桑名博士 <録音開始> 桑名博士: これから聴取を始めさせていただきます、[SCP-919-JP-B-59の本名]さん。あなたは何をしに[編集済]まで来ていたのですか? SCP-919-JP-B-59: アダム、エリス、ウォーレンを自然に返しに来たのよ。 桑名博士: それは誰のことですか? SCP-919-JP-B-59: スプーンの名前よ! あの子たちが小さい頃から、私が育ててきたの。 桑名博士: 具体的にはいつ頃から? SCP-919-JP-B-59: もう5年になるかしら。ねえ、早くあの子たちに合わせて頂戴! 桑名博士: この聴取が終わってからです。では、あなたはいつからスプーンの保護に熱を上げるようになったのですか? SCP-919-JP-B-59: そうね、あれは10年いや11年前かしら。講演でスプーンの映像を見たのが最初。子供を一生懸命に育てるスプーンの夫婦を見て、私たちと同じ生き物なんだって実感したわ。 桑名博士: ははあ。 SCP-919-JP-B-59: だから私たち人間が物を食べるためだけにスプーンを使うのがおかしいってわかったのよ! 今世界中でスプーンが虐げられている、この現実を見過ごせますか!? 特にラザニアを食べるのにスプーンを使うのは許せない! 桑名博士: そうですか。聴取は以上です。 <録音終了>
scp-920-jp
評価: +34+–x アイテム番号: SCP-920-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-920-JPの全実体は、財団標準収容ロッカーに、一般的な書籍保存処理を施したうえで施錠して保管してください。収容ロッカーの鍵は担当職員によって管理されます。SCP-920-JPの本文を参照を希望する職員は、複写のみ閲覧することができます。 現在未収容のSCP-920-JPが複数あるとみられています。海岸周辺の変死事件や医療施設の診療記録などからSCP-920-JPの影響を受けていると推測される事例があった場合、ただちに調査とSCP-920-JPの捜索・回収を行います。SCP-920-JPの影響を受けた人物は財団医療施設に搬送し、記憶処理を施した上で症状の進度によって適切なリハビリテーションを受けさせます。関係者については記憶処理を施し、カバーストーリーを適用してください。特異性を消失させたSCP-920-JPは焼却処分を行ってください。 説明: SCP-920-JPは20██年現在、公的には出版が確認されていないA6変型判の国語辞典です。表紙とボール紙製のケースに「大辞海」とタイトルが記されており、全███ページでケースを合わせて███gあります。奥付がなく、編著者や出版社の名前が表記されていないほかはおおむね一般的な辞典と変わった点は見られません。現時点で██冊のSCP-920-JPが収容されています。 SCP-920-JPには2つの特異性が存在し、特異性は日本語を母語とする人間がSCP-920-JPを「使用」することで発現します(以下、SCP-920-JPを使用した人間を被験者とします)。11つ目の特異性は被験者が幻覚的存在のクジラ(このクジラをSCP-920-JP-aと指定します)を認識するようになること、2つ目の特異性は被験者がSCP-920-JPを使用することによって被験者に記憶障害が生じることです。複写や書き写し、写真などを使用した実験では特異性は発現しませんでしたが、破りとったり切り抜いたりしたページの一部では通常通り特異性が発現しました。 1つ目の特異性であるSCP-920-JP-aの出現は、被験者がSCP-920-JPを初めて使用したとき、被験者自身の頭上空中に確認されます。被験者へのインタビューで得られた情報によると、SCP-920-JP-aの出現時の体長はおよそ20cm~30cmと極めて小さいスケールであり、形態などからヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科に属することが類推されるものの、既知の種のクジラではないことがわかっています。SCP-920-JP-aには実体がなく、被験者が物理的に接触することは不可能です。 出現当時SCP-920-JP-aは生まれたばかりの幼体の姿をしていますが、被験者がSCP-920-JPを使用する都度成長を遂げ、使用を続ける限り老化や衰弱の兆候を見せることはありません。使用する頻度や度合いによって多少異なりますが、1日に2~3回程度の頻度で約12ヶ月使用を続けるとSCP-920-JP-aは完全に成熟し、体長1m~1.2mほどの大人のクジラとなります。 SCP-920-JPの2つ目の特異性である記憶障害は、被験者がSCP-920-JPを使用することで生じます。記憶障害は失語症、特に失名詞の症状に似た特徴があり、日常生活の会話や文章を書く場面において、回りくどい説明や意味の似た単語の混同をするようになります。これは単なる物忘れの類ではなく、完全に単語の概念を喪失しているものとみられますが、失った語彙は学習によって再度習得することが可能です。ただし、記憶処理ではこの症状を取り除くことはできません。失われる語彙と、被験者がSCP-920-JPで検索した単語には規則性や関連性は見られず、ほとんどの場合1度の使用につき1つ、まれに2つ以上の語彙が失われます。 被験者がSCP-920-JPを使用した直後、SCP-920-JP-aが口を開けて被験者の頭めがけて空中を泳ぎ、頭を通過していきます。2その後SCP-920-JP-aは上昇し、閉じた口のひげ板の隙間から海水を吐き出すような行動をとります。この直後から語彙の喪失が発生しているようです。また、語彙の喪失後SCP-920-JPを確認すると失われた語彙に該当する見出し語および説明文の記述が抜け落ちて空白になっています。3 SCP-920-JPを使用した際のSCP-920-JP-aの動向や、SCP-920-JPの記述の改竄から、SCP-920-JP-aは被験者の語彙を「餌」として捕食し、自身の栄養とすることで成長しているものと見られます。日に何度も「餌」をやると数日間食事を受け付けなくなったり、逆に何日も「餌」をやらないでいると被験者の周囲をしつこく泳ぎ周り、「餌」を催促するような様子を見せます。 記憶障害の進行度合いによって被験者は進度1~6に分類されます。進度6に達したとき、SCP-920-JP-aは未知の手段によって初めて実体化します(実体化したSCP-920-JP-aをSCP-920-JP-bと指定します)。4分類は以下の表のとおりです。 + 分類表を閲覧する - 分類表の閲覧を終了する 進度 喪失した語彙数 症状 0 - 初めてSCP-920-JPを使用し、SCP-920-JP-aの出現が被験者に確認された状態です。ほとんどの場合、被験者はこの時点でSCP-920-JP-aを気味悪がるか不信に思い、SCP-920-JPを廃棄するなどして一切使用しなくなります。結果SCP-920-JP-aはほどなく衰弱した様子を見せたのち消失するため、被験者は一時的な幻覚症状や白昼夢であると判断し、SCP-920-JPの存在が周囲に認識されることはほとんどありません。5被験者がSCP-920-JP-aに対して愛着を抱き、日常的に「餌」を与えるようになると、症状は進度1から徐々に進行していきます。 1 推定50未満 日常生活に影響はなく、被験者本人も記憶障害に気がつくことはありません。SCP-920-JP-aは出現時の幼体の姿からまだほとんど成長していないようです。 2 推定50~500 周囲の人間が被験者本人の異変に気づき始めます。SCP-920-JP-aは体長60cm~80cmほどの若いクジラに成長しています。 3 推定500~2000 会話時に明らかな支障が出ていることや、過去に被験者本人が書いた文書から見られる語彙と現在の語彙との食い違いから、周囲の人間も被験者本人もなんらかの症病ではないかと考えはじめ、被験者の多くはこの段階で医療機関への受診を行います。症状が進行した被験者も、この時点でSCP-920-JPの使用を中止すればリハビリによって失った語彙のほとんどを取り戻すことが可能です。SCP-920-JP-aは体長1m以上に成長し、成熟した大人のクジラになっています。 4 推定2000~3000 症状の進行が深刻な状態です。進度4まで進行した被験者のほとんどがSCP-920-JP-aに深い愛着を抱き、記憶障害とSCP-920-JPの関連に気づいている場合でも、SCP-920-JPを使用し続けることに執着しています。6記憶処理によって執着を絶つことは可能ですが、失われた語彙をすべて取り戻すことは困難です。 5 推定████以上 ほぼ末期の状態です。被験者は、過去海を訪れた経験の有無や、SCP-920-JPの特異性によって「海」の概念を喪失しているか否かに関わらず海に行きたいという欲求を持つようになります。この欲求を記憶処理によって取り除くことはできません。日数が経過するにつれて被験者は欲求を抑制することができなくなり、いかなる障害があっても海に向かおうとするようになります。 6 - 進度5に達してから被験者が海岸付近に到達した場合、もしくは2週間以上が経過した場合にのみ進度6に進行します。被験者の頭部は突如内側から破裂し、その容積を明らかに上回る体長約6m~8mのSCP-920-JP-bが内部から出現します。頭部損傷により被験者は死亡し、たとえ被験者が海岸付近へ到達していてもほとんどの場合SCP-920-JP-bは自力で海へと入水できず、陸上で打ち上げられたように横たわったまま衰弱死します。SCP-920-JP-bの死体は数時間ほどで急激に腐敗し、骨も自壊したのち砂状に粉砕されるため、一見してその痕跡を察知することは困難です。7被験者が死亡した時点で、SCP-920-JPからは記述の改竄を残したまま特異性が消失します。 20██年現在、進度6に達した被験者の終了案件は財団が把握している限り██件、うち実験によって発生したものは4件です。過去に、2度のSCP-920-JP-b生態観察実験を行いました。以下はその記録です。 実験記録920-01 - 日付20██/2/28 対象: Dクラス職員のSCP-920-JP被験者(D920-01と指定) 実施方法: 進度5に達したD920-01をサイト-81██最寄の海岸付近へ誘導。出現したSCP-920-JP-b(SCP-920-JP-b-1と指定)をサイト-81██の生簀へと搬送し、飼育と生態観察を試みた。 結果: SCP-920-JP-b-1は与えられた餌を食べながら5日間生存したが徐々に衰弱し6日目に死亡。死体は陸上で死亡した場合よりも早く1時間ほどで腐敗した。 分析: 6日間の観察で得られたSCP-920-JP-bの生態を鑑みるに、死体の腐敗が異常に早い点を除けば一般的なクジラと変わらない性質を持っているようだ。やはり回遊性の大型鯨類を生簀で飼育することは個体に多大なストレスをもたらすらしい。腐敗が早かったのは水中にあったためか。これより海洋での生態観察実験を計画する。 -██博士 実験記録920-02 - 日付20██/10/1 対象: Dクラス職員のSCP-920-JP被験者(D920-02と指定) 実施方法: SCP-920-JP-bを出現に導く手順は実験記録920-01と同様。出現したSCP-920-JP-b(SCP-920-JP-b-2と指定)に各種計測装置を取り付けたうえで海に入水させ、その後の生態を観察する。 結果: SCP-920-JP-b-2は太平洋から赤道方面へ南下した。██日後、約1000kmの南下が観測されたのを最後に、装置からの発信が途絶えたため追跡不能となった。 分析: 一般的なヒゲクジラと同様に、冬の間は暖かい赤道付近で過ごすのだろうか。回遊ルートや他のSCP-920-JP-b個体の生息の有無の特定は不可能か。 -██博士 補遺1: 実験920-02において追跡不能となったSCP-920-JP-b-2個体については現在も捜索が続けられていますが、有用な手掛かりは得られていません。 補遺2: 実験920-02において特異性を消失させたSCP-920-JPを保管し、経過観察をしたところ、被験者の死亡から██か月後に奥付ページが新たに付加され、以下のような記述が加えられていることが確認されました。 大辞海 [判読不能]年4月25日 初版発行 200█年██月██日8 初版第██刷発行 編者 ██ ██ 以降、実験の完遂にかかる期間の長さと、新たに有用な情報を得られる期待ができないことから、SCP-920-JPを用いた実験は停止されています。 Footnotes 1. この場合、「使用」とは任意の単語の検索を行う、いわゆる「辞書を引く」行為を指します。 2. この瞬間について被験者の多くは「突風が吹きぬけていくときの感覚に似ている」と形容しています。 3. 失われる語彙はSCP-920-JPに記載のある単語(外来語を含む)に限定されているようです。 4. 形態や骨格などがSCP-920-JP-aの特徴と合致する点から、被験者によって観測されていたSCP-920-JP-aが実体を持ち、出現したものと見られています。 5. SCP-920-JP-aが消失すると、SCP-920-JPからも特異性が消失します。 6. この執着はSCP-920-JPの特異性によるものではありません。 7. 回収された骨片を分析したところ、針葉樹由来の植物繊維が検出されました。 8. この実験920-02において被験者D92002によるSCP-920-JPの使用が開始された日付です。編者の項に記された人名はD920-02の氏名でした。
scp-921-jp
評価: +31+–x 評価: +31+–x クレジット タイトル: SCP-921-JP - ドザえもん 著者: ©︎O-92_Mallet 作成年: 2018 評価: +31+–x 評価: +31+–x 発見時のSCP-921-JP。上下が逆転していることに注意 アイテム番号: SCP-921-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-921-JPは30kg以上の鉄球が結びつけられた状態で、専用の水槽に1個体ずつ沈めて収容されます。水槽は内壁と底面を全て擦りガラス加工とし、電動スクリューにより水面の攪拌を常時行います。水槽の移送時は水槽全体を遮光性の箱に収めた上で、自律ユニットを用いた無人輸送を行なってください。 実験時を除き、鏡面を形成しうる物体(撮影機器のレンズ、眼鏡、モニター画面等)をSCP-921-JPに向けることは推奨されません。 説明: SCP-921-JPは1991年に█████の水深130m地点で発見された、自律行動する実体です。オブジェクトは製造元不明の潜水ヘルメット2個および日本潜水機株式会社製のPVC製シュノーケル1本から成っており、互いに首の部分で接合された潜水ヘルメットの背側から左上方向へとシュノーケルが伸びる構造を取っています。各部品の可動性はありません。上部のヘルメット(便宜上「頭部」とする)の正面には円形のガラス窓と格子が取り付けられていますが、これと同サイズの円形の穴が下部のヘルメット(便宜上「腹部」とする)の正面に開いており、内部は空洞です。 SCP-921-JPの潜水ヘルメットは同体積の通常の真鍮と比較して10%程度の質量しか有しておらず、抵抗がない状態であればSCP-921-JPは水面に浮きます。これに対し、SCP-921-JPはシュノーケルを通して身体の上方向へと活発な排水を行うことで沈降するための推進力を獲得し、水底付近に留まります。しかし、シュノーケルの排水口はオブジェクトの重心からかなり遠い位置に存在しているため、SCP-921-JPはしばしばバランスを崩して回転しています。 陸上ではSCP-921-JPは一切の自動能を喪失し、実体が原体積の1%/分の割合で縮小していき、最終的に消失します。縮小中のSCP-921-JPが水中に戻されると、実体の体積は即座に当初の状態まで回復します。 イベント-921: SCP-921-JPが持つ主要な異常性は、REM睡眠状態にある生物の漠然とした思考(一般に「夢」と呼ばれるものです)を読み取り、その内容を端的に表現する物体を腹部の穴から排出することにあります。この一連の過程はイベント-921と呼称されます。 イベント-921が開始されるためには、睡眠中の生物の姿が光刺激によってSCP-921-JPへと伝達される必要があると仮定されており、オブジェクトが頭部の窓ガラスから前方への投光機能を有していることからもこの仮説は正しいと推測されています。排出される物質はオブジェクトの腹部の穴を通過できる程度の大きさで出現し、オブジェクトを脱出した後にSCP-921-JP本体と同程度の大きさにまで拡張します。イベント-921の終息から次回のイベント開始までには最低18時間のインターバルが必要とされます。 例として、透明な水槽に移したSCP-921-JPの前でDクラス職員に睡眠を取らせたところ、SCP-921-JPは腹部からR-50ヘリコプターのローターを1/40スケールにした物体を排出しました。Dクラス職員は起床後に「自分が空を自由に飛び回っている夢を見ていた」と報告しています。複数回の実験の結果、SCP-921-JPには被験者の思考そのものに干渉する性質は存在しないと判断されました。 イベント-921の対象は生物の実体に限定されず、睡眠中の生物実体の姿を明瞭に映した鏡面・写真・動画などの像をも包含します。像を対象として開始したイベント-921では、SCP-921-JPは像が作成された時点において像のモデルとなった生物が有していた思考を出力します。明瞭であれば歪んだ像であっても問題なくイベント-921が惹起されますが、像がぼやけている場合は惹起されません。 補遺1: イベント-921の対象として「鏡面・写真・動画等に投影されたSCP-921-JP自身の全身像」が選択された場合、SCP-921-JPは腹部から自身の複製であるSCP-921-JP実体を排出します。また、こうして出現した新たなSCP-921-JP実体を対象としてイベント-921を発生させた場合も同様の結果になります。これらの行程によってSCP-921-JPは個体数を増加させることが可能です。この結果はSCP-921-JPが「自身の個体数の増加に関連する思考を常に行なっている睡眠中の生物」と見なされていることを予想させますが、実際にSCP-921-JPが生物と呼べる存在であるのか、睡眠という概念を有しているのか、そして意思を持つ実体であるのかを判断するための有効な手法は見つかっていません。SCP-921-JPが自己複製イベントを惹起する対象からの逃避行動を示すことは特筆に値します。 補遺2: SCP-921-JPの構成部品であるシュノーケルに刻印されている製造番号を調査したところ、当該シュノーケルが1980年に製作され、[削除済]高校の生徒であった██ ███氏によって購入されていたことが確認されました。██氏はその後、修学旅行中に発生した"さんのぜ丸"失踪事件にて行方不明となっており、遺体は発見されていません。██氏は修学旅行の1ヶ月前に睡眠障害と悪夢を主訴として自宅近くのクリニックで診察を受けており、そこで妊娠初期段階であることを指摘されていますが、両親や学校にはそのことを伝えていなかったことが判明しています。
scp-922-jp
評価: +96+–x エージェント北川が作成したと主張する資料。実際には消失していたため、これは当人の記憶を頼りに再現したものである。 アイテム番号: SCP-922-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-922-JPを未然に防ぐための研究は進行中です。現在の収容プロトコルでは、SCP-922-JP発生に際しての対応に焦点を当てています。 経営状態にあるすべての動物園は、財団による監視を受けます。SCP-922-JP発生が判断出来た際には代替の動物が配置され、曝露者には適切な記憶が挿入/削除されます。 可能な限り、動物園に潜入中のエージェントはSCP-922-JPについての説明を受けて下さい。現在、新たなエージェントの動員、カント計数機の設置が検討されています。 説明: SCP-922-JPは動物園から動物が瞬間的に消失する現象です。SCP-922-JPが発生する動物園及び次の発生までの間隔について規則性は発見されていません。ただしSCP-922-JPは一般客の監視下に無い状態にのみ発生する事が明らかになっています。 SCP-922-JPによって消失する動物の種類は無作為だと推定されていましたが、最近の研究によってある程度の規則が解明されています。現時点で確実な規則として、既にSCP-922-JPで消失したことのある種族は、今後のSCP-922-JP発生において消失対象に選ばれにくい傾向にあります。 SCP-922-JPは限定的な記憶改竄/認識汚染を帯びており、当該動物園の職員を異常な記憶/認識に曝露させます。曝露者はSCP-922-JPによって消失した動物を、"公的な手順によって他の動物園に移送された"と知覚します。曝露者はこの知覚の作用として、虚偽でありながらも綿密な記憶を持ち合わせます。この記憶は他の曝露者達と共通しており、移送先の動物園の名前や、いつ問題の動物が移送されたのかなどの詳細な項目も完全に一致しています。曝露者は証拠の不足などの矛盾を指摘されると、中度の混乱に陥ります。これは自身の記憶が虚偽のものであると勧告された人間の反応パターンにおいて典型的なものです。 SCP-922-JPは██動物園に潜入していたエージェント北川の報告によって発見されました。エージェント北川は自身が送ったと認識していた月例報告と、実際に送信されていた月例報告の相違から異変に気付きました。追加の調査でSCP-922-JPの存在、異常性が発覚し、収容プロトコルの策定に至りました。 SCP-922-JPの正確な発生時期は不明です。調査ではエージェント北川が報告したSCP-922-JPより前に発生していたSCP-922-JPは、2件のみ発見されています。エージェント北川は収容対象の早期発見に貢献したとして、暫定ながらも所属サイトからの評価を受けました。 日本で発生したSCP-922-JP(抜粋): 発生した動物園 消失した動物 備考 愛知県 ██動物園 ライオン(Panthera leo) SCP-922-JP確立後の捜査によって発見された一件であり、確認された限りでは最も過去に発生していたSCP-922-JP。当動物園の曝露者によって案内資料が掲示されていたため、プロトコルに沿って処理された。 大阪府 ██動物園 アライグマ(Procyon lotor) エージェント北川の潜入していた動物園で発生したもの。一般客に情報が開示される前に処理は完了した。 東京都 ██動物園 ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca) 当該動物の希少性故に早急な置換が行われ、曝露者の記憶汚染は速やかに除去された。 北海道 ███動物園 エゾユキウサギ(Lepus timidus ainu) 従業員が飼育業務を行っていた最中にSCP-922-JPが発生。従業員は直前まで当該動物と接していたにも関わらず、SCP-922-JP発生に驚いた反応を示さなかった。 インタビュー記録922-C7 対象: エージェント北川 インタビュアー: 浜崎博士 付記: このインタビューはSCP-922-JPへの曝露者が抱く記憶認識について、詳しく理解するために実施されました。エージェント北川は事前に自身が曝露者である旨の説明を受けています。 <録音開始, 20██/██/█> 浜崎博士: それではインタビューを開始します。当時の状況について詳しく聞かせて頂けますか? エージェント北川: 正直、今でも自分の記憶が偽物だったとは信じ難いです。私は移送に関わる業務も行っていました。あの動物園で、アライグマは私の担当でしたから。 浜崎博士: しかしあなたも他の人間も、異常には気付けていなかったのですよね? エージェント北川: 変な言い方ですが、あの時は異常では無かったんです。すべて実在していました。私は移送先の動物園の役員達にも会いましたし、移送手続きの資料もこの目で見ました、移送当日も見送っていました。何より、私はその移送のことも財団に報告しました。"了解"の返事も貰っているんです。 浜崎博士: そのような報告は受けていませんね、あなたはただ"異常なし"と報告しているのみです。 エージェント北川: つまりは、それも含めてすべて虚偽の記憶なのでしょうね。ただ……すみません、納得が行かなくて。私としては、これは記憶改変ではなく現実改変の類だと捉えています。 浜崎博士: そのように思うのは無理もありません。虚偽の記憶は長期間に渡っていますし、私たち収容チームの方でも広い視野で研究を進めています。しかし、カント計数機をそう気軽に使用したり、設置できるわけではないのです。参考までに、相手の動物園や役員の名前など、思いつく限りの情報を挙げてくれませんか? エージェント北川: 分かりました。 [後の調査でエージェント北川の報告した動物園、役員の名前は実在していないことが判明した。] 浜崎博士: その役員に何か不審な点はありましたか? エージェント北川: いえ。今から思い返してみても普通の人間だったと思います。オフィスで話して、実際にアライグマを見せて……その後は動物園を散策した後に帰っていきました。 浜崎博士: では、移送当日まで動物に何か異変はありましたか? エージェント北川: それも……注意を向けていたわけではありませんが、異常はありませんでした。当日も移送されていって……相手の動物園が実在しないことに気付いたのはもっと後になってからでした。私は目の前に映る現実を疑うことが出来ませんでした。あのアライグマは何か感じ取っていたかも知れません、でも訴えかけることは出来ないでしょうね……動物ですから。 浜崎博士: ありがとうございます、インタビューは以上です。 <録音終了, 20██/██/█> 終了報告: エージェント北川の主張は██動物園の従業員の主張と概ね同じものでした。エージェント北川は記憶処理を受けずに潜入活動に戻ることを希望し、承認されました。また、当オブジェクトの異常性が記憶改変ではなく現実改変である疑いが持たれましたが、カント計数機の使用コストの問題で捜査は優先されません。 補遺1: 2016/07/14、エージェント北川が潜入活動中に突然消失しました。██動園内の監視カメラによると、エージェント北川はこの異常事態を全く予測していない模様でした。当該動物園の従業員はエージェント北川の消失を"他の動物園への短期配属"だと捉えていました。追跡の試みは、すべて問題の動物園が実在しないという結果に終わりました。 補遺2: エージェント北川の消失から█ヵ月後、エージェント北川のGoogleアカウントに以下の画像が送付されました。メールアドレスは本人のものが使用されており1、結果的に追跡の試みは失敗しています。 Footnotes 1. 自身のアカウントから自身のアカウントに向けてのメールとして送信されていました。
scp-923-jp
評価: +73+–x アイテム番号: SCP-923-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-923-JPはすべて、サイト-8181の収容ロッカーに保管されます。実験記録057の結果を受けて、SCP-923-JPによる実験は音声入力ではなく、厳重な監視の下でのソフトウェアキーボード入力で行われることが義務付けられました。 説明: SCP-923-JPは、携帯型ゲーム機████████ ███で動作するソフトウェアカートリッジです。ネットワーク機能を有効にした状態でSCP-923-JPをゲーム機本体に挿入し起動すると、「くじ太教授のなぜなに体験ツアー」と書かれたタイトルロゴと、大学帽を被ったクジラを模した姿のキャラクター「くじ太教授」が画面に表れます。何らかのボタンを押すか下画面のタッチパネルに触れると画面が変わり、上画面にはくじ太教授と質問を促す文章が、下画面には日本語入力に対応したソフトウェアキーボードが表示されます。この時にキーボード、もしくは音声入力によって日本語で何らかの質問を行うと、質問者はその解答となるものが存在する場所に(衣服や所持品も一緒に)瞬間的に転移します。解答となるものが複数存在する場合は、現在地から距離的に最も近い場所が選ばれます。もしこの時に質問者がゲーム機本体を保持していなければ、転移先からは自力で戻ってくる必要があることに留意してください。ただし、質問者が「質問の答え」もしくは「質問の結果による転移先」を知っている場合は、転移は行われません。 SCP-923-JPには説明書は付属していませんが、パッケージ裏面に次のような文面がイラストや画面写真などとともに印刷されています。 ”本物”の知識がここにある―― 百聞は一見に如かず! くじ太教授と一緒に、君も探究の旅に出かけよう!1 ―知識は宝― Knowledge Labo.ナレッジ ラボ SCP-923-JPは、██県██市の██動物公園で「ライオンの飼育室内に突然女の子が現れた」という通報があったことから発見・収容されました。ライオンが休息中だったこともあって少女に怪我はなく、その後目撃者および関係者には記憶処理が行われカバーストーリー「施錠ミス」が適用されました。この少女は通信販売サイトでSCP-923-JPを購入したと述べていますが、該当のサイトは既に閉鎖されており、「ナレッジ ラボ」なる企業・団体についても現時点では手がかりが掴めていません。その後の調査で9個のSCP-923-JPが発見され現在はすべて収容されましたが、未確認のSCP-923-JPが存在する可能性もあることから、機動部隊ま-196("インターネット探検隊")が捜索を続けています。 + 実験記録001-010(抜粋) - 実験記録を閉じる 実験記録001 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-1 質問: 「害獣駆除や愛玩用として人家で飼われることも多い、「ニャー」と鳴く肉食動物は?」 備考: 別室にイエネコを配置。オブジェクトの紛失・破壊防止のため、実験は被験者にゲーム機本体を持たせずに行う(以後の実験も同様)。 結果: 転移は行われず、上画面に「キミ、答えを知ってるでしょ? 質問はわからないことだけにしてね!」という文面がくじ太教授のセリフとして表示。 分析: 答えを知っている場合は作動しないということか。そうなると、移動手段として使うにはひと工夫必要だな。 実験記録002 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-2 質問: 「学名をFelis Catusという動物は?」 備考: 別室にイエネコを配置。 結果: 被験者はイエネコの前に転移。 分析: 解答となるもの自体は知っていても、質問内容と対応できなければ作動することを確認。まあ当然か。 実験記録003 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-3(質問の解答を知らないことは事前に確認済。特に記述がなければ以降の実験も同様) 質問: 「昔、ピグミーチンパンジーと呼ばれていた動物は?」 備考: 別室に実験用のボノボを収容した檻を配置。檻のサイズは3m×3m×3m。オブジェクトの紛失・破壊防止のため、実験は被験者にゲーム機本体を持たせずに行う(以降の実験も同様)。 結果: 被験者はボノボの檻の中に転移。 実験記録004 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-4 質問: 「昔、ピグミーチンパンジーと呼ばれていた動物は?」 備考: 別室に実験用のボノボを収容した檻を配置。檻のサイズは1m×1m×1m。 結果: 被験者はボノボの檻の前に転移。 分析: 檻の大きさも考慮して転移場所を選んでいるようだ。融通の利く仕様といえる。 実験記録005 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-4 質問: 「ハツカネズミの血管の中ってどうなってるの?」 備考: 室内に実験用のマウスを収容したケージを配置。 結果: 被験者はケージの置かれたテーブルの上に転移。ケージは破壊。マウスは[削除済]。 分析: これは質問自体に無理があったか。 + 実験記録011-020(抜粋) - 実験記録を閉じる 実験記録011 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-6 質問: 「ブラジルの首都はどこ?」 備考: ブラジリア市の各所に被験者確保用の職員を派遣。被験者には発信機の埋め込みおよび逃走防止措置-Bを実施(以後の実験も同様)。 結果: 被験者はブラジリア市、アルボラーダ宮の大統領執務室内に転移。 分析: 「首都としての機能の中心」という解釈なのだろうか? しかし、大統領と「ご対面」してしまったせいで後の処理が大変だった。 実験記録014 - 20██/██/██ 対象: エージェント・███ 質問: 「映画俳優███・█████2の出身地はどこ?」 備考: 被験者はSCP-923-JPの特性を知っており、今回職務のためデトロイトへ急行することになっていることから、SCP-923-JPの移動手段としての運用テストに志願した。 結果: 転移は行われず、上画面に「キミ、答えを知ってるでしょ? 質問はわからないことだけにしてね!」という文面がくじ太教授のセリフとして表示。 分析: 何が起きるか、どこに転移するかを知っていては駄目、ということらしいな。残念だが移動手段としては使えそうにない。 + 実験記録021-030(抜粋) - 実験記録を閉じる 実験記録023 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-18 質問: 「日本で██番目に宇宙に行った人間は?」 備考: 解答の人物である宇宙飛行士・██ ██は財団のエージェントでもあり、現在は国際宇宙ステーションに滞在中。実験はエージェント・██およびステーション内の財団職員の協力により行われた。また特例として今回は被験者にゲーム機本体を持たせている。 結果: 被験者はエージェント・██の前に転移。すぐに事前の指示通りの質問を入力し財団施設近辺の██駅前へ帰還。 分析: 直線距離ならブラジルよりも近いし、当然の結果か。 実験記録027 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-19 質問: 「木星の大気は主に何で構成されている?」 備考: D-923-JP-19は[削除済]のため、終了が予定されている。 結果: ゲーム機の上画面に「あぶない! ここへ行くと大変なことになっちゃうよ! それでも行ってみる?」という文面が赤文字でくじ太教授のセリフとして表示、下画面には[はい][いいえ]のダイアログボックスが出現。[はい]を押すように指示すると、被験者はしばらく躊躇するが指示に従い、その場から消失。発信機の座標は木星表面の位置を0.7秒間示した後に途絶した。 分析: 警告が出るあたりは良心的かも知れないが、こいつの「あぶない」の基準はあまり一般的とはいえないな。 実験記録028 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-20 質問: 「ダークマターって何?」 備考: D-923-JP-20は[削除済]のため、終了が予定されている。 結果: ゲーム機の上画面に「ごめんね。それはボクにもわからないんだ…」という文面がくじ太教授のセリフとして表示。 実験記録029 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-20 質問: 「SCP-███-JPって何?」 結果: ゲーム機の上画面に「ごめんね。それはボクにもわからないんだ…」という文面がくじ太教授のセリフとして表示。 分析: とりあえず機密漏洩の心配はなさそうだ。 + 実験記録0██-0██(抜粋) - 実験記録を閉じる 実験記録0██ - 2012/04/██ 対象: D-923-JP-██ 質問: 「2020年夏季オリンピックの開催地は?」 備考: 未来の事象に関する質問を行う実験。 結果: 被験者はマドリード市庁舎、市長執務室内に転移。 分析: 本当に未来予知の機能があるのか!? 追試験の必要があるな。 実験記録0██ - 2012/06/██ 対象: D-923-JP-██ 質問: 「2020年夏季オリンピックの開催地は?」 備考: 未来の事象に関する質問を行う実験の追試験。 結果: 被験者は東京都庁舎、知事室内に転移。 分析: どうやら未来予知ではなく、現在の情報から可能性の高い答えを推測しているだけのようだ。 + 実験記録057 - 実験記録を閉じる 実験記録057 - 20██/██/██ 対象: D-923-JP-33 質問: 「本能寺の変の真相が知りたい」 備考: 被験者が事前に指示されたものと違う質問を行った。 結果: 被験者はその場から消失。通信および発信機の信号も途絶した。 分析: 今のところタイムパラドックスや再構築シナリオが発生している様子はないが…こいつには人間を過去に送る機能などないということなのか、あるいは単に今回は幸運だっただけなのか。それとも…… Footnotes 1. 漢字部分にはふりがなが振られていました。 2. アメリカ・デトロイトの出身ですが、被験者はそのことは知りません。
scp-924-jp
評価: +116+–x アイテム番号: SCP-924-JP 収容中のSCP-924-JP。 オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-924-JPはサイト-8181の低危険物収容ロッカーに収容されます。Dクラスを用いての実験は基本的に禁止されています。未回収のSCP-924-JPを回収した場合はその内容量を調べ、使用の形跡がある場合は被害者の特定を急いでください。発見されたSCP-924-JP-1については基本的に調査ののち生存の見込みが無い物については即時終了処分を行ってください。 説明: SCP-924-JPは、金属製チューブに入った容量240mlのハンドクリームであり、現在までに使用済みのものと合わせて24本が回収されています。内容物は通常のハンドクリームと同様であり、また相当に質の高い保湿性と肌荒れ防止性を持つことが実験により判明しています。これは異常性とはなんら関係のないSCP-924-JPの純粋な質の高さに起因するものです。裏面には以下の文章が記載されています。 最高に愛されるあなたへ!! 当社秘伝の配合で作られた、男性向けハンドクリーム。あなたの肌の健康と、美しい愛のために。 当社はカスタマーセンターを設置しておりません。質問、ご意見、追加のご注文などは当社の販売員にお申し付け下さい。 SCP-924-JPを男性の手に塗布してからおよそ30分の間、その手には異常性が発現します。SCP-924-JPを塗布した手は、女性の肉体を“粘土を捏ねるように”変形させ、またその肉体をちぎり取ることで任意の部位に貼り付けることが可能になります。(以降、変化させられた女性の肉体をSCP-924-JP-1と呼称。)実験ではこの際に女性は痛みを感じる事は無く、変化後も肉体の変化によって違和感を覚えることはありません。肉体を変化させる過程でその身体からちぎり取られた感覚器官は捏ねることでその機能を喪失し、単なる粘土のような肉の塊となり、SCP-924-JP-1に任意で貼り付けることが可能です。変化した肉体には即座に新たな骨格が形成され、マッサージによって肉体をスライム様の流体にする試みは失敗しました。変化したSCP-924-JP-1には痛覚など、通常の感覚器官が残りますが、一度喪失した眼球や耳などはちぎり取った肉体を捏ねて類似の形に整形してもその機能を取り戻すことはなく、単純に皮膚ないしは肉の塊に皮膚を貼り付けた物のような形状を取ります。 SCP-924-JPは新潟県██にて検問を行っていた警察官が、SCP-924-JP-1を破棄しようとしていた写真家の████氏を確保したことにより財団に発見されました。████氏は恋人に対してSCP-924-JPを使用し、日常生活を送らせることが困難となったために破棄しようとしていたことがインタビューより判明しています。警察職員並びに████氏には事情聴取後に相当するクラスの記憶処理を施しました。████氏はDクラスとして財団に再雇用され、彼の恋人は問題無く終了されました。 補遺: ████氏のパソコンから復元されたメール履歴 ████氏の自宅を調査したところ何者かによって物理的に破壊されたパソコンから数点のメール送信済みデータを復元させることができました。財団のエージェントが████氏の自宅に到着する直前まで何者かが████氏の自宅に侵入していた形跡があり、幾つかの物品は持ち出されていました。パソコンの破壊はエージェントが到着したための緊急措置と考えられます。メールの送信先は現在存在しないアドレスが使用されていました。 件名:注文について 以前頂いたお試し[データ破損]できです!定期的に[データ破損]。取り敢えず3本購入します。 件名:Re:注文について はい。了承済みです。[データ破損] 件名:[データ破損] 了解です。明日には振り込みます 件名:追加注文させて頂きたいと思います。 [データ破損]です!理想のかたちにかなり近[データ破損]。出来れば1セット、箱でまとめて注文させて頂きたいと思っているのですが、[データ破損] 件名:Re:追加注文させて頂きたいと思います。 [データ破損]です。配送先は[████氏の住所]でお願いします。[データ破損]についてですが、彼女も[データ破損] 件名:Re:追加注文させて頂きたいと思います。 了解です。自分の最寄りの駅から近いので自分で持って行きます。6日後でいいですか?お金はその時に持って行けばいいでしょうか。いちおう、ミヨコさんの[データ破損]。 件名:[データ破損] [データ破損] 件名:Re:追加注文させて頂きたいと思います。 取り敢えず、追加[データ破損]。 件名:Re:追加注文させて頂きたいと思います。 5本でお願いします。一箱で[データ破損] 件名:Re:追加注文させて頂きたいと思います。 16日ですと、給料が15日には入るので、1もう少し買えそうです。とりあえず一箱持って来て頂けますか? 件名:すみませんでした 先日は[データ破損]ありませんでした。追加で[データ破損]。 件名:[データ破損] [データ破損]。あと2本ほど必要のようです。彼女も「わたしを愛して[データ破損]っています。宜しくお願いします。 件名:Re:申し訳ありませんでした。 [データ破損]に申し訳ありませんでした。 件名:[データ破損]ました。 取り敢えず完成しました。本当にありがとうございました[データ破損]。また、[データ破損]。 件名:質問 先日[データ破損]。質問なのですが、この状態から再び彼女を[データ破損]可能でしょうか? 件名:質問です。 [データ破損]せん、先日完成したとご報告しましたが、追加で[データ破損]。やっぱり、なんと言うか気持ち悪いです。 件名:質問があります。 彼女を[データ破損]ょうか?返信して頂けると[データ破損]。純粋に、気持ちが悪くなってきました。バタバタと動き回って面倒です。 ████氏の撮影したと思われる恋人の写真。 ████氏の最後に撮影したと思われる写真。女性は問題無く終了された。 Footnotes 1. ████氏の勤めていた介護ヘルパー事務所の給料日は毎月末日である。虚偽。
scp-925-jp
評価: +68+–x SCP-925-JP。 アイテム番号: SCP-925-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-925-JPへのポータルとして機能している基底現実世界の洞窟はカバーストーリー“崩落の危険性”の下に封鎖し、内部空間をマッピングするうえで重要性が見出せない場合は入口を爆破解体します ― 入口から最低5mが崩落すれば、SCP-925-JPとの接続が遮断されることが確認済です。日本および韓国において活動している複数の在野機動部隊とWeb走査Bot-36(“アーキオロジスト・ボーンヘッド”)は、SCP-925-JP-A個体の可能性がある生物の目撃情報の確証、および未収容のSCP-925-JP接続洞窟の発見を二次任務として割り当てられています。 説明: SCP-925-JPは、2017年現在、日本列島本州の5ヶ所と大韓民国の1ヶ所にある自然洞窟に接続されている、石灰岩洞窟の形式を取った位相空間です。この洞窟トンネル網は極めて入り組んでおり、現実世界の地図と比較した場合、原点と推定されるSCP-925-JP-1から複雑に枝分かれしつつ本州を横断して朝鮮半島まで延伸しています。SCP-925-JPの内部を長期間探索している財団職員は、しばしば軽度の頭痛や“何かに絶えず見つめられているような”感覚を訴えることが注目されています。 SCP-925-JP-1は約140㎡の開けた空間であり、現実世界においては群馬県安中市と長野県軽井沢町の県境に相当します。SCP-925-JP-1は発生源不明の薄明りと反響音の異常な減少によって周辺トンネル網と明確に区別されます。SCP-925-JP-1の中心部には人工的な台座があり、高さ5mの解剖学的に正確な心臓型の錬鉄像が載せられています。この像を除去する試みは、外見上の予測を大幅に上回る重量・現実世界へ運び出すためのトンネル幅の不足・SCP-925-JP-A個体による妨害などに鑑みて一時中止されています。 典型的なSCP-925-JP-Aの一個体。 1995年、岐阜県の笠ヶ岳で確保(ポータル無力化済)。 発生段階にあるSCP-925-JP-A個体の顔面部。 SCP-925-JP-A個体は外見上チンパンジー(Pan troglodytes)に似た、全身が錬鉄で構成されている異常実体です。体長は平均1.75m、性差は存在せず、平時はナックルウォークで移動します。SCP-925-JP-A個体の総数は不明ですが、SCP-925-JPの全域に最低でも3万体弱はいると見積もられており、その内の4割程度が壁を引っ掻く、或いは拳で殴打するなどしてトンネル網の掘削作業に交代で従事しています。SCP-925-JP-A個体は生命維持のための食糧を必要としませんが、与えられた食物は選り好みせずに消費し、それに見合った量の石炭を排泄します。 身体の30%以上が損なわれた/SCP-925-JPの外部空間に累積35時間以上留まったSCP-925-JP-A個体は、全ての活動を停止して急速に風化し、SCP-925-JP-1の壁面の何処かが自発的に新たなSCP-925-JP-A個体を形作り始めます。形成完了までの時間は約20時間であり、壁面から分離した個体は即座に石灰岩から錬鉄へと変異します。ある一個体の無力化から対応する新個体の生成開始までのタイムラグは、その個体とSCP-925-JP-1の距離がどれほど離れているかに相関しています。SCP-925-JP-A個体は洞窟外部での活動限界を自覚していません。 SCP-925-JP-A個体が人間に対して能動的に危害を加えた事例は確認されていません ― むしろ、蒐集院によって1579年に存在が確証されて以来、SCP-925-JP-A個体は遭遇した人間の荷運びを手伝う、山中での負傷者を近隣の村へ運ぶなどの友好的な振舞いのみが記録されています。これは管理権が財団へ移譲されて以降も同様であり、ある一例において、個体群は爆破解体が決定したポータルの入口を瓦礫で自ら埋め立てようとする様子を見せました。例外として、SCP-925-JP-1にある心臓型の像を撤去/損壊する意思を持った人物が接近すると、SCP-925-JP-A個体は先回りして像への接近を妨害し、必要であれば野生のチンパンジーに予想される以上の膂力を以て暴力に訴えます。しかしながら、像から離れた対象者を追撃することはなく、同一人物が日を改めて接近しても像の損壊意図さえなければ敵対行動を示しません。 SCP-925-JP-A個体が上記のように人間の意思を汲んで穏当な振舞いをする理由は不明確です。しかしながら、SCP-925-JP空間の内部における頭痛の頻発、個体群の統率行動、収容後の簡易的な知能実験においてパズルやボードゲーム類の用途を即座に理解したことなどを基に、SCP-925-JP-A個体間ではある種の精神感応によるコミュニケーションが成り立っており、周辺で受信した人間の思考を上位指令と解釈して行動しているという仮説が立てられています。 江戸期の蒐集院による偽装情報流布の一例。 現在ミーム要素は除去され、一般にも流通している。 SCP-925-JP-A個体が人間の思考を傍受している可能性は蒐集院時代から指摘されており、蒐集院は意図的にこの特性を誇張して“心を読む人喰いの怪物”としての噂を巷間に広め、SCP-925-JP-A個体の接近を忌避する心理を民衆に植え付けることによって、前以て個体側からの接触を予防していました。この対策には、SCP-925-JP-A個体の活動範囲が本州全域に及んでいると蒐集院が仮定していたこと、また外見上類似する別個の異常存在との混同によって実際以上に危険視されていたことが反映されています。 SCP-925-JP-A個体による掘削作業が基底現実世界の洞窟と時折交差する要因はまだ突き止められていません。第二次世界大戦後、ポータルの数は管理を容易とするために大幅に削減され、現時点では2003年に韓国の慶州国立公園で発見されたものが最後です。 2000年、定期調査を担当するエージェントがGPS発信器を装着したまま立ち入ったことにより、SCP-925-JP-1内では異次元/地下環境にも拘らず、他区画と異なってGPS信号が通じていることが意図せず明らかになりました。特筆すべきことに、他のトンネル網と比較した地図上では間違いなく群馬県/長野県の県境に存在するにも拘らず、SCP-925-JP-1内部のGPS発信器は一様にイラン・イスラム共和国のファールス州にあるペルセポリス遺跡の近郊を指し示します。SCP-925-JP-A個体群が西方に向かってトンネルを拡張している理由との関連性が疑われていますが、当地におけるイスラム・アーティファクト開発事務局の影響力によって調査は難航しています。
scp-926-jp
評価: +104+–x 評価: +104+–x クレジット タイトル: SCP-926-JP - 夢現回帰する悪夢の獣 著者: ©︎amamiel 作成年: 2016 評価: +104+–x 評価: +104+–x 鎮静化直後のSCP-926-JP、身体構造を変化させている アイテム番号: SCP-926-JP オブジェクトクラス: Safe Keter 特別収容プロトコル: SCP-926-JPはサイト-81██の隔離生物収容室に収容され、継続的な麻酔投与により鎮静状態を維持します。装着された心電計からは接続機器へとバイタルサインが出力され続けており、SCP-926-JPの生命維持に異常が確認された場合、即座に待機中の選任医療スタッフが対応へと当たります。 サイト-81██の駐在スタッフは、自身が睡眠中に見た夢の内容を常時報告することが義務付けられています。この定例報告の内、「自身の死」に関連する内容が規定数を上回った場合、もしくは特定内容を含む夢の報告が確認された場合、即座にプロトコル"虚夢"が適用されます。プロトコル発令後は報告された夢の件数/内容に準じ、オブジェクトの保守/移送、もしくは高強度現実改変作用による周囲一帯の希釈化を含めた、あらゆる手段を用いてのオブジェクト無力化が試みられます。 説明: SCP-926-JPは脊椎動物に似た外見的特徴を有する未知の生物です。人間への敵対的性質を持ち、周囲に人間の存在を認識した場合、その人間に執拗な攻撃1を行います。しかし、攻撃の執拗性にも拘わらず、攻撃の結果として被害者が死亡したケースは現在まで確認されていません2。また、後述の異常性により、SCP-926-JP本来の身体構造や外見的特徴は不明です。 SCP-926-JPは特定の決まった姿形を取らず、自身が置かれている状況/環境下に合わせて身体構造を別種の脊椎動物へと変化3させます。その際、SCP-926-JPのサイズは通常種の平均値よりも、明らかに巨大なものとなる傾向にあります。また、変化後のSCP-926-JP身体構造には、更に別種動物の身体的特徴が追加/増設されているケースが多く見られます。しかし、検証の結果、これらの部位は本来の身体的機能を一切有していないことが判明しています。以下はSCP-926-JPの変化例です。 + SCP-926-JP変化例(開く) - SCP-926-JP変化例(閉じる) 変化後の姿 特筆すべき外見的特徴 変化概要 ライオン(Panthera leo) 全長3m、背にハクトウワシ(Haliaeetus leucocephalus)に似た翼を有していたが、観察中に一度も羽ばたかせず 初めて発見された際に取っていた姿 ワタリガラス(Corvus corax) 全長1.6m、額に哺乳類に見られる円形瞳孔の眼を有していたが、光に対して一切の対光反射を示さず 回収部隊から逃走する際に変化 アミメニシキヘビ(Python reticulatus) 全長4.1m、部分的にモモンガ属 (Pteromys)のような飛膜を有していたが、滑空する姿は確認されておらず 収容直後に変化し、通気口への侵入を試みた 鎮静状態下に置かれて以降、SCP-926-JPはコモドオオトカゲ (Varanus komodoensis)に似た外見的特徴を持つ、全長5mほどの脊椎動物の姿を取っています。各種検査より、サイズ比が通常の種よりも明らかに巨大である点と、肩部にオオコウモリ科(Pteropodidae)の飛膜を有する点を除けば、その身体構造はオオトカゲ科(Varanidae)と概ね一致しています。 また、SCP-926-JPは上記の異常特性とは別に、限定的な現実改変能力を有していると結論付けられています。この現実改変はSCP-926-JPが死亡した際に発揮され、死亡した自身を含む全ての事象を「自身が死亡する前の状態」に再構築します4。この発生から完了までのプロセスは如何なる手段を用いても認識できず、現在まで観測/検知にも成功していません。それに加え、あらゆる記憶/記録までもが再構築される性質上、どれだけ過去の状態に再構築されたのかを確認するための手段は、後述する特定内容を含んだ「夢」の報告を除けば存在しません。 SCP-926-JPによる全事象の再構築完了後、SCP-926-JP近隣に位置している不特定な個人は、自身のレム睡眠中に「何らかの要因によって自分が死亡する夢」を経験します。複数回の検証により、経験する「夢の中における死亡要因」と「SCP-926-JPが再構築を行う原因となった死亡要因」は、必ず一致することが判明しています。なお、一度の再構築によって「自身の死に関する夢」を経験する人物は1人のみですが、仮に同じ状況/条件/要因でSCP-926-JPが複数回に亘って死亡した場合、同じ内容の「自身の死に関する夢」を経験する人物も複数現れることになります。 SCP-926-JPは19██/██/██、ギリシャ共和国イカリア島東海岸部に漂着していたのを同島民により発見されました。現地の潜入エージェントによる報告後、近海で停泊中だったSCPS"ルーシディティ"から回収部隊が派遣され、SCP-926-JPを確保、収容するに至りました。回収当時の注目すべき点として、SCP-926-JPが発見されるまでの9日間、近隣海域の島民より「自分が溺死する悪夢」を見たと主張する報告が多数確認されており、前述の現実改変特性が複数回に亘って発揮された可能性が示唆されています。また、同じくSCP-926-JP回収の9日前、別件任務のためにSCPS"ルーシディティ"より周辺海域へと非物質変位無効装置(nPDN)が展開されていましたが、SCP-926-JPの出自/起源に何らかの形で関与しているのかは不明です。 付記: 収容後、詳細な調査/検査が行われましたが、すでにAnomalous相当として分類済みであった、既存のクラスⅡ異常動物実体5との明確な差異は確認されませんでした。この調査結果を受け、SCP-926-JPの継続的な保持は有意性に乏しいと結論付けられるとともに、生体解剖用サンプルとしての活用が提案されました。19██/██/██、上記提案は承認され、SCP-926-JPは同型異常動物実体の研究部門が置かれるサイト-81██へと移送されました。 事案926-JP: 19██/██/██、サイト-81██に駐在する50人以上の職員が「自分が生きたまま解剖される夢」を見たと報告を行いました。事案発生の同日にSCP-926-JPの生体解剖が予定されていたこともあり、異常現象との関連性を調査する目的のため、一時的にSCP-926-JPの解剖実施日を延期することが決定、新たな解剖予定日が設定されました。 しかし、再設定された19██/██/██、再び「自分が生きたまま解剖される夢」の報告が複数発生したことから、SCP-926-JPが当該の異常現象に関与し、自身の死に際して何らかの異常特性を発揮している可能性が推察されました。これを受け、現在のSCP-926-JPとしてのナンバリングが暫定的に与えられました。 付録: 以下の記録はSCP-926-JPの異常特性検証のため実施された、実験試行群からの抜粋です。 + 実験記録926-JP-A - 実験記録926-JP-A 実験記録926-JP-A – 日付19██/██/██ 実験内容: SCP-926-JPの終了手続きを試みる(終了手段には毒物の使用を指定)。ただし、サイト内で同日中に「毒によって自身が死亡する夢」を見たと主張する報告者数が「20人以上」確認された場合、終了手続きは行わないものとする。 実験結果: 終了手続きが予定されていた当日、「毒によって自身が死亡する夢」を見たと報告した職員数が「20人」確認された。規定条件数を丁度満たしていたため、SCP-926-JPの終了手続きは行われなかった。 付記: この実験後、複数回に亘って同様の試行を試みられたものの、全てのケースにおいて「規定条件数を丁度満たして終了手続きを回避する」という結果となった。 メモ: 何らかの手段で設定された規定数を察知/予知し、それに合わせて職員の夢を操作しているのだろうか。もしくは、自身が死亡した事実を改変する異常性を有しており、改変の残渣が「夢」として検出されている? 現状では判断材料に乏しいか。 + 実験記録926-JP-B - 実験記録926-JP-B 実験記録926-JP-B – 日付19██/██/██ 実験内容: SCP-926-JPの終了手続きを試みる(終了手段の指定は無し)。ただし、サイト内で同日中に報告された「自身が死亡する夢」における死亡方法とは、必ず異なった方法となるように終了手段を選択すること。 実験結果: 終了手続きが予定されていた当日、30通りの「自身が死亡する夢」についての報告が為された。この結果を受け、監督者の判断により終了手続きの試みは中止された。 付記: 報告された夢の中での死亡内容は「銃によって射殺される」「ナイフによる刺殺される」などの事前に用意されていた終了手段が大半を占める一方、「血液採取によって失血死する」「無酸素室で窒息死する」などの用意されていなかった終了手段も確認できた。 メモ: 今までの実験同様、監督者が終了手続きの中止を決定する「最適な数と内容」になるよう、職員たちの夢へ干渉しているとも考えられる。だが、今回の実験のように、最終的な結果が多岐に分かれる場合であっても察知/予知できるものなのだろうか。 + 実験記録926-JP-C - 実験記録926-JP-C 実験記録926-JP-C – 日付19██/██/██ 実験内容: 完全に自動化された装置を用いてSCP-926-JPの終了手続きを試みる。装置は指定された時刻に自動起動し、SCP-926-JPに毒物を投与するよう設定されている。 実験結果: 監督者の判断により、終了手続きは中止された。詳細は付記参照のこと。 付記: 終了手続きが予定されていた当日、「毒によって自身が死亡する夢」を見たと報告した者がサイト外部でも複数人確認された。調査の結果、サイト駐在の全職員に加え、外部民間人の100人近くに影響が及んだものと見積もられる。これを受け、SCP-926-JPの終了手続きは延期となり、サイト外部へはカバーストーリ-"集団悪夢"が適用された。 メモ: これも前回の実験同様、監督者が中止の判断を下すのに「最適な数」となるよう、夢へ干渉する人数を調整したということだろうか。条件を変更した上で再検証の必要あり。 + 実験記録926-JP-D - 実験記録926-JP-D 実験記録926-JP-D – 日付19██/██/██ 実験内容: 完全に自動化された装置を用いてSCP-926-JPの終了手続きを試みる。装置は指定された時刻に自動起動し、「9/10」の確率でSCP-926-JPに毒物を投与するよう設定されている。毒物が投与されなかった場合、数日の期間を空けて再試行する。 実験結果: 全10回の試行が為されたにも拘わらず、全ての試行において装置から毒物が投与されることはなかった。また、以下に各回の結果と夢の報告件数について示す。 試行回数 結果 同日の夢の報告件数 1回目 毒物は投与されず 8件 2回目 同上 11件 3回目 同上 31件 4回目 同上 25件 5回目 同上 1件 6回目 同上 6件 7回目 同上 9件 8回目 同上 4件 9回目 同上 2件 10回目 同上 13件 付記: この実験以外にも自動装置を用いた終了手続き試行が複数回行われたが、全てのケースで上記と同様の結果となった。また、試行の際に報告される「夢」の件数は、試行回数を増やすほどに反終了成功確率の期待値に収束している。 メモ: 装置が起動しない可能性を設けたことで、前回とは大きく異なった結果が得られた。夢の報告件数も「中止させる」ことを目的とした数値とは明らかに考えにくい。このことを踏まえると、精神影響特性によって自身の死を回避していたという仮説は否定されることになる。そうなると、SCP-926-JPの異常特性の正体は現実改変である可能性が高く、夢の報告件数は「確率」の再試行/現実改変が行使された回数を示唆しているとも考えられる。問題はどのような改変であるのか。事象再構築による疑似的な時間遡行? 自らが死んだ現実を、他者の夢に変換している? これについて例を挙げれば切りもなく、正式な場での決議が必要だろう。 追記1: SCP-926-JPの収容以降、ギリシャ共和国内での心療内科/カウンセラーに対する「悪夢」の相談件数が、過去全ての年間平均比を5年連続30%近く下回るという大きな減少傾向を示しました。それに加え、減少した悪夢の報告内容の大半が「夢の中で翼を持つ巨大な動物に襲われ、必死になって逃げ惑う/死なない程度の攻撃を受ける」といった旨の内容であり、一部からSCP-926-JPとの関連性が指摘されました。 しかし、受診者の中に夢と同様の怪我を現実で負っていた者は存在せず、同様に「SCP-926-JPに襲われる夢」を見たと報告を行った職員は、初期実験の一環でSCP-926-JPに攻撃を受けたDクラス職員のみでした。現在、ギリシャ共和国内の異常現象とSCP-926-JPの関連性については調査中です。19██/██/██、重要性が低いと判断され、調査計画は凍結されました。 追記2: 19██/██/██、SCP-926-JPに関する議論は「SCP-926-JPの異常特性は自身の死に際して発揮され、過去の状態に全事象を再構築する現実改変である」と規定する形で決着を迎えました。また、議決後「SCP-926-JPが回避不能な要因6によって死亡した場合、永続的にSCP-926-JPの死亡と全事象の再構築が交互に繰り返され続けることになり、この現実世界が一定の時間軸内に停滞/拘束される可能性がある」として提言が行われました。 現状では仮説に過ぎないものの、その異常特性のために反証を裏付ける手段もなく、最終的な決定としてSCP-926-JPはZK-クラス"現実不全"シナリオを起こし得る存在と扱われ、半永続的な鎮静化に置かれるとともに、現在のオブジェクトクラスへと暫定的に再分類されました。現在、SCP-926-JPの完全な無力化、あるいは不死性の付与に関する研究が継続されています。 Footnotes 1. 「噛み付く」「引っ掻く」「纏わり付く」などの直接的な手段から、「耳元で吠える」「長時間睨みつける」「唸り声を上げながら後ろをついて周る」などの間接的な手段が確認でき、その多くは野生動物の威嚇行動に見られる内容と概ね同一です。 2. Dクラス職員を拘束した状態でSCP-926-JPと対面させたケースでは、SCP-926-JPは非致死的な部位へ攻撃するに留まり、最終的に被験者となったDクラス職員は重傷を負い、鬱病・恐怖症などの精神疾患の兆候を示したものの生還しました。 3. 変化に要する時間は一定ではなく、現在と変化後の姿における構造上の差異が大きくなるほどに必要な時間も長くなります。 4. 一種の「時間遡行作用」とも表現可能ですが、本稿中では「現実改変による全事象の再構築」と規定しています。 5. 19██/██/██までSCP-███-JPとしてナンバリングされていましたが、現在はAnomalous実体として再分類済みです。 6. 病死、老死に加え、他のK-クラスシナリオ群に巻き込まれるなど。
scp-927-jp
評価: +40+–x 評価: +40+–x クレジット タイトル: SCP-927-JP - 吸血の甘味処 著者: ©︎k-cal 作成年: 2017 評価: +40+–x 評価: +40+–x 生物由来物ユニット-Aから回収された瓶。画像は色調補正をかけて異常性を消去している。 アイテム番号: SCP-927-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-927-JP-1は無力化されたうえでサイト-81██の収容室に収容されます。SCP-927-JPを含んだ分泌液は収容室の床に設置された排水溝によりSCP-927-JP用加熱室に連結され、1日に1度、150℃以上で1時間加熱されたのちに廃棄されます。収容室に窓は取り付けられず、監視カメラの映像はモノクロに処理されます。清掃は1週間に1度、設置されたシャワー設備により自動で行われます。SCP-927-JPへの直接の接触はできる限り避けてください。接触する必要に迫られた場合は標準的な防護服と色調調整ゴーグルを着用したDクラス職員を使用し、作業後にクラスC記憶処理を施してください。 説明: SCP-927-JPはヒトにのみ感染する異常プリオンたんぱく質です。SCP-927-JPは114℃以上に加熱されると変性し、全ての異常性を喪失します。SCP-927-JPは経口摂取などで人体に侵入した場合、血中で他のたんぱく質に感染し増殖します。SCP-927-JPに感染したヒトはSCP-927-JP-1に指定され、その体は腐敗への耐性を得ます。SCP-927-JP-1は生命機能停止後も、身体の半分以上を損傷しない限り未知のプロセスによって血液を生成し続けます1。 正常な色覚を持つヒトがSCP-927-JPの含まれた血液の色を視認した場合認識災害を受け、SCP-927-JPを含んだ血液を、『この世で最も素晴らしい味と香りを持ったいちごジャムのような液体であり、ヒトに必要な栄養素全てを兼ねそろえ、感染性を持たない理想の食材である』と認識します。また、この認識に反する情報を得た場合は、情報自体への誤認識がときに記憶の改竄を伴ってもたらされます。 現在収容されているSCP-927-JP-1は、集落で発見されたSCP-927-JP-1-Aと収容違反で新たに発生したSCP-927-JP-1-B,Cの合わせて3体2と、下記の実験後終了されたD-92701であるSCP-927-JP-1-Dの合計4体です。 回収記録: SCP-927-JPは長野県の山中の集落で発生した集団餓死事件によって財団に発見され、サイト-81██の生物由来物研究ユニット-Aに収容されましたが、生物由来物ユニット-Aで発生した収容違反後、サイト-81██のメインサイトに収容されることになりました。 会話記録1: 以下は、Dクラスを用いたSCP-927-JPの実験の会話記録です。 +会話記録を開く - 閉じる 話者: 氷錦博士とD-92701 付記: この実験は、記憶処理によって認識災害を取り除くことが可能かを確かめる実験です。D-92701は実験の2日前にSCP-927-JPの認識災害に曝露し、瓶詰1つ分のSCP-927-JPを含んだ血液を摂食しています。D-92701は目隠しをしたうえで椅子に固定され、氷錦博士は色彩調整ゴーグルを装備しています。 <録音開始> 氷錦博士: おはようございますD-92701。実験に協力してくれることを感謝します。 D-92701: ああ、今日もあのジャムを食べさせてくれるんだろ? 早くくれよ。あの味が忘れられねえんだ。 氷錦博士: ええ。ですがその前に……(D-92701の首筋にクラスC記憶処理薬品が注射される) D-92701: っ! てめえ、なにしやがった! うぅ、頭がふわふわしやがる…… 氷錦博士: あなたが2日前に実験で摂食したものを思い出してください。 D-92701: そりゃあジャム…… いや、違う、あれはジャムなんかじゃねえ。オエッ、クソが! だましやがったな! 氷錦博士: もっと具体的に説明してください。 D-92701: 血だよ! 人間の血だ! 匂いも、味も、全部血だ! あれを俺は瓶詰1杯分も……  氷錦博士: なるほど。あなたはその人間の血を美味しいジャムだと思っていたわけですね? では、これを見てください。(氷錦博士はD-92701の目隠しを外し、瓶詰めにされたSCP-927-JPを含んだ血液を見せる) これはなんですか? D-92701: ……血だ! 血に決まってんだろうが! 氷錦博士: これは興味深いですね。ありがとうございます。実験は終了です。 <録音終了> 終了報告: この実験により、認識災害はクラスCの記憶処理で取り除くことができ、その際SCP-927-JPによって改竄された情報・記憶も復元されることが判明しました。また、記憶処理後は一定期間SCP-927-JPの認識災害に耐性を得ることも判明しました。この実験の後、D-92701は観察期間を経て終了されました。 会話記録2: 生物由来物ユニット-Aでの収容違反は、サイト-81██に別件で派遣されていたエージェント・瑳會によって発見されました。発見時点で、すでに収容違反発生から半年が経過していました。以下は当事案終息時、唯一生命活動を維持していたSCP-927-JP-1-Cに対する聴取の記録です。 対象: SCP-927-JP-1-C インタビュアー: エージェント・嵯會 付記: 対象はもともと██研究員と呼ばれていた職員でした。対象は収容違反鎮圧時、エージェント・瑳會によって救出されています。また、対象は過去SCP-███-JPに曝露した際、色覚を失っています。 <録音開始> エージェント・嵯會: おはようございます、██研究員。これからインタビューを行います。 SCP-927-JP-1-C: 昔の名前はよしてくれ、今の僕はSCP-927-JP-1-Cだ。下っ端とはいえ財団職員だったんだ。それくらいわかってる。 エージェント・嵯會: ……それではSCP-927-JP-1-C、まず現在の体調を教えてください。 SCP-927-JP-1-C: 収容違反の直後とくらべて、だいぶ良くなったよ。君のおかげだ。知っての通り、SCP-927-JPの精神的影響は受けていない。 エージェント・嵯會: わかりました。それでは収容違反発生時の状態を教えてください。 SCP-927-JP-1-C: SCP-927-JPが収容されてすぐに、すでに精神汚染は始まってたんじゃないかな。その時僕は長い出張に出ててユニットにいなかったから、詳しくはわからない。ただ、10人くらいしか職員がいないユニットだったから、広まるのは早かっただろうね。 エージェント・嵯會: なぜ、被害が拡大してしまったのでしょうか? SCP-927-JP-1-C: ああ、それはSCP-927-JPには中毒性があるみたいなんだ。長い間摂食しないと禁断症状を起こす。麻薬みたいにね。そもそもあのSCiPはおかしいんだ。 エージェント・嵯會: それは、どんなところが? SCP-927-JP-1-C: プリオンっていうのは生き物じゃないんだ。だから、子孫を残そうとはしない、つまり自分を拡散しようとはしないんだ。あんまりね。それに対してSCP-927-JPは認識災害にしても、まるで積極的に自分を拡散しているようだろう? 僕は、その特性に、SCP-927-JPが拡散されて得する存在の影を感じずにはいられないんだ。……ああ、話がそれたね。話を戻そうか。 エージェント・嵯會: はい。あなたはいつ頃ユニットに戻ったのですか? また、その時の状況は? SCP-927-JP-1-C: ちょうど収容違反発生から3か月くらいたったころかな。帰ったときには、ちょうど昔僕が実験で利用したDクラスの死体があって、そこから溢れてくる血を██博士がぺろぺろ舐めて確認しているところだった。██博士ってのは僕の同期で、僕の檻の前で無力化してたSCP-927-JP-1だ。研究熱心で、正義感の強い、私の親友だよ。 エージェント・嵯會: あなたはその後どうされましたか?  SCP-927-JP-1-C: もちろん██博士に聞いたよ。そのDクラスは何だって。そしたら彼は、Dクラスなんてどこにいる、これはSCP-927-JP-1だぞって言ったんだ。財団的な言い回しじゃなく、本気で死体になったDクラスのことを忘れてたみたいだった。 エージェント・嵯會: SCP-927-JPによる記憶の改竄ですね。あなたが外部に連絡を取らなかったのはなぜですか? SCP-927-JP-1-C: 連絡しようとしたにきまってるじゃないか。でもできなかった。知っての通り、ユニットは機密研究を行うところだ。当時は██博士によって厳しい情報規制が敷かれていて、外部への連絡が経たれていたんだ。僕以外の職員はみんなSCP-927-JPの影響下だったからね。 エージェント・嵯會: では、どうされたんですか? SCP-927-JP-1-C: ひとまずはみんなに話を合わせた。遅かれ早かれこの状況に誰かが気付いて、助けてくれると思ったからね。そのために僕は、食堂で出される僕とってはただの血と変わらないいちごジャムを我慢し続けた。このころはまだ、パンや野菜も残ってたんだ。不自然に思われると何をされるかわからないから、いちごジャムという名のSCP-927-JPは絶対に食べなきゃいけなかった。でも、ある時事件が起こってしまった。 エージェント・嵯會: 何があったのですか? SCP-927-JP-1-C: SCP-███-JPの収容違反が起こって、研究員が一人死んだんだ。そのころにはサイドメニューもなくなって、食べ物はSCP-927-JPだけになってたから、多分栄養不足で注意力が落ちてたんだと思う。収容違反自体はすぐに収束した。死んだ研究員は素直で、思いやりがあって、とにかくみんなに好かれてた。でも、みんなは、あいつのことを忘れて、食堂で出されたあいつの血を迷いもなく飲みだしたんだ。僕は飲む気になんてなれないから、残そうとした。そしたらみんなが、貴重なSCP-927-JPを残すのは許されないって怒りだしたんだ。それで、僕は……うっ、おぇっ…… エージェント・嵯會: 無理に話さなくてもかまいませんよ。 SCP-927-JP-1-C: ……いや、大丈夫。ありがとう。そのあと僕は、もう耐えられない、このままじゃダメだと思ったんだ。助けが来る気配もなかったからね。だから、ユニット内に記憶処理物質を充満させる計画をたてた。それはもう、綿密な計画だったはずだ。でも、実行はできなかった。 エージェント・嵯會: なぜですか? SCP-927-JP-1-C: 僕も空腹で注意不足が欠如してたんだ。計画を実行するその日に、計画が██博士にバレてしまった。僕は██博士に説得を試みたけど、もちろん成功しなかった。それで僕はSCP収容用の檻にぶち込まれることになったんだ。 エージェント・嵯會: そのあとはどうなりましたか? SCP-927-JP-1-C: 閉じ込められていたからよくわからない。でも閉じ込められててよかったよ。みんなが[削除済]するのを生で見なくて済んだからね。 エージェント・嵯會: ██博士はなぜあなたの檻の前で亡くなっていたのですか? SCP-927-JP-1-C: 彼は、ユニットの混乱の中で僕がばらまこうとしてた記憶処理物質を浴びちゃったんだ。それで、やっと僕の説得を理解したらしい。彼は自分の目をつぶして、僕のところまで壁伝いに歩いてきたんだ。 エージェント・嵯會: それで? SCP-927-JP-1-C: 彼は僕の檻によりかかって、ひたすら泣いてたよ。もう、一目では彼とわからないくらいやせ細って、頼りない背中だった。そして、涙も出なくなったころに、掠れた声で、「やっと世界に貢献できると思ったんだけどなあ」って呟いて、そのまま動かなくなったよ。君たちが到着したのはその直後だ。収容違反の流れはこんな感じ。 エージェント・嵯會: はい、これで十分です。 SCP-927-JP-1-C: じゃあ一つ、要望があるんだけど。 エージェント・嵯會: なんですか? SCP-927-JP-1-C: ちょっと疲れたんだ。色々とね。助けてくれた君には申し訳ないけども、長い休暇を貰って、ゆっくり、ぐっすり眠りたいんだ。 エージェント・嵯會: ……そうですか。私の方から申請しておきます。……本当に申し訳ない。 SCP-927-JP-1-C: ……泣いているのかい? 君が謝る必要なんてないさ。気に病まないでくれ。これは起こるべくして起こったことだからね。 <録音終了>  補遺1: エージェント・瑳會によるSCP-927-JP-1-Cの終了申請は受理されました。 補遺2: SCP-927-JP-1-Cの発言に基づく再調査の結果、SCP-927-JP-1-Aの首筋に、未知の生物の牙によるものと思われる、2つの傷が認められました。 脚注 1. ただし、生命機能を停止したSCP-927-JP-1から分泌される血液は、たんぱく質以外の栄養素の含有量が1/10以下に低減します。この変化にも関わらず、血液の色・味・粘性は通常の血液と同程度を保ち続けます。 2. これらは生物由来物ユニット-Aで発生した収容違反時に、損壊が半分以下の状態で確保されたものです。
scp-928-jp
評価: +102+–x アイテム番号: SCP-928-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-928-JPは標準人型オブジェクト収容室に拘束した状態で収容し、半径30mの範囲は立ち入り禁止区域としてください。実験の際などに出入りできるのはレベル3以上のセキュリティクリアランスを持つ財団職員のみです。収容室内部は常にカメラで監視してください。 説明: SCP-928-JPはSCP-928-JP-AとSCP-928-JP-Bから構成されます。 SCP-928-JP-Aは[編集済]社のキャラクターである「███████」に酷似した身長4.8m、重さ███kgの着ぐるみです。人間が1人入ることができ、製造場所の特定には未だ至っていません。SCP-928-JP-Aを破壊する試みは全て失敗しています。 SCP-928-JP-BはⅩ線検査により存在が確認された、SCP-928-JP-Aの内部に入っている年齢不詳の男性です。一部の皮膚や骨がSCP-928-JP-Aの内側の生地と組織レベルで結合しているため、SCP-928-JP-BをSCP-928-JP-Aから脱着させる試みは全て失敗しており、身元の特定には至っていません。日本語と英語を話すことができ、その声は声優の████氏のものと酷似しています。食事や排泄は必要としません。 SCP-928-JP-Bの異常性は、SCP-928-JP-Aの周囲半径30mにいる人間の思考を読み取る能力を有していることです。対象が当該範囲外に出ると読み取りは不可能になります。この能力でSCP-928-JP-Aの「中の人」に関する思考を知覚すると、SCP-928-JPはその思考をした人物のもとへ向かい、SCP-928-JP-Aの両手指先から長さ約20cmの極めて鋭利な爪を伸ばして対象が死亡するまで攻撃し続けます1。対象が死亡すると、SCP-928-JPは不明な方法で死体を直径約3cmの肉片に分解し、SCP-928-JP-Aに融合させます。そして約6時間をかけて、融合した肉片は「███████」の着ぐるみとして自然な色・形状・質感を保つように変型します。この能力の影響で、現在のSCP-928-JP-Aの身長・体重は一般的な着ぐるみの値を大きく上回っています。 SCP-928-JPは201█年に██県にある[編集済]社のテーマパーク内にて発生した[編集済]事件にて発見されました。関係者には記憶処理を施し、カバーストーリー「無差別通り魔事件」が適用されました。 + 実験記録を表示 - 閉じる 実験記録928-JP - 日付20██/11/18 対象: D-1928 実施方法: 厚さ5cmのコンクリート壁で分けられたルームA、Bを用意し、ルームAにD-1928を、隣室のルームBにSCP-928-JPを待機させ、D-1928には情報端末を持たせ、[編集済]社のキャラクター「███████」についてのインタビューを別室からの通信で行う。ルームA、Bともにカメラで監視し、SCP-928-JPの反応を見る。 音声記録: <実験開始> 三木博士: 実験を開始します。D-1928、聞こえますか。 D-1928: ああ。聞こえる。 (SCP-928-JPはルームBで直立している。) 三木博士: では、これからいくつかの質問をしますのでそれに答えてください。 D-1928: 了解。 三木博士: まず1つ目の質問です。手元の端末に出てきた画像について思うことを述べてください。 D-1928: よし。(端末に「███████」がテーマパーク内にいる画像が映し出される。)ん。これ「███████」だよな。別になんとも思わないけど。 三木博士: では、どのような感情を抱きますか。 D-1928: 感情? まさか「かわいい」なんて思ってるとでも? (笑い声)そんなわけないだろ。なんとも思わねえよ。 三木博士: そうですか。では、次に映し出される動画を視聴してください。 D-1928: (端末に「███████」の着ぐるみが大学生の団体と写真を撮っている動画が映し出される。)次は何だ。アンタらは俺に何をさせたいんだ? (SCP-928-JPが小刻みに振動し始める。何らかの思考をキャッチしたとみられる。) 三木博士: 無駄な私語は慎んでください、D-1928。どんな感情を…いや、これをみて何か思うことはありますか。ほんの些細なことでも構わないです。 D-1928: さあね。……ただ、大学生にもなって着ぐるみにここまではしゃぐのはなあ。だって所詮は人間が入ってるだけなんだぜ? (SCP-928-JPの振動が大きくなり、徐々に爪が伸びる。そして、壁を攻撃し始める。) D-1928: 俺が思ってるのはそんなとこだよ。……って、なんだこの音は。どんどん大きくなってるよな。(沈黙)おい。こっちの壁から聞こえるぞ。おい。おーい! 三木博士: 間もなく実験終了です。待機していてください。……機動部隊・救護班は即座に急行してください! (SCP-928-JPが壁を破壊する。) D-1928: うわああああ(ノイズ) おい(ノイズ) 助け(ノイズ) (絶叫)  (沈黙)   (SCP-928-JP-Bの笑い声) <録音終了> 結果: D-1928はSCP-928-JPによる攻撃により即死し、SCP-928-JP-Aに融合されました。機動部隊による攻撃や制止・拘束の試みはSCP-928-JPに一切の影響を与えませんでした。D-1928を殺害するとSCP-928-JPは静止し、融合完了まで動きませんでした。融合が終了すると、SCP-928-JPは命令を受け入れ、収容室に戻りました。 分析: SCP-928-JPは対象に向かう時には例えそこに障害物があっても破壊するようです。また、機動部隊隊員の証言では融合している時に「中の人」のことを思考してもSCP-928-JPは反応しなかったことから、融合途中には思考を読み取る能力を使用できないか、または読み取れても身動きが取れないものとみられます。 + インタビュー記録を表示 - 閉じる 対象: SCP-928-JP-B インタビュアー: 三木博士 付記: 能力による影響を防ぐため、インタビューは博士が別室からの通信にて行う。 <録音開始> 三木博士: こんにちは、 SCP-928-JP-B。 SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼく、████! よろしくね! (笑い声) 三木博士: いくつか質問をします。まず、あなたはいつ頃からその着ぐるみを着ているのですか? SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼく、████! よろしくね! (笑い声) 三木博士: 質問に答えてください、SCP-928-JP-B。 SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼく、████! よろしくね! (笑い声) 三木博士: 質問を変えます。近くの人間の心を読むとき、あなたはどのような感覚を抱いているのでしょうか? SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼく、████! よろしくね! (笑い声) (しばらくどの様な質問をしても同じ返答が帰ってくる状態が続く。特筆に値しないので省略。) 三木博士: 質問を変えます。あなたは人間を殺すとき、どのようなことを考えていますか? SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼく、████! よろしくね! (笑い声) SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼく、████! よろしくね! (笑い声) SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼく、████! よろしくね! (笑い声) (沈黙) ちがうよ。 三木博士: ちがう、とはどういうことですか? SCP-928-JP-B: (笑い声)ぼくは、みんなのそばにいたいんだ! だから、夢を見れないさびしそうな人がいたら、ずっといっしょにいてあげるんだ! (笑い声) 三木博士: それは、つまり? SCP-928-JP-B: ハハッ。 (しばらくどの様な質問をしても同じ返答が帰ってくる状態が続く。特筆に値しないので省略。) <録音終了> 脚注 1. 主に首から上の部位を狙う傾向があります。
scp-929-jp
評価: +19+–x 確保後のSCP-929-JP。撮影検査の為、仁和寺とほぼ同様の状態に設置されている。 アイテム番号: SCP-929-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-929-JPはサイト-81██の標準収容コンテナに保管されています。コンテナ内にはいかなる文字も記入してはいけません。コンテナに入室する場合、目隠しの着用を義務付けます。職員がSCP-929-JPの異常性に露見した場合、対象職員にメンタルヘルスケアを受診させてください。 空白 説明: SCP-929-JPは、異常性を持った襖絵です。オブジェクトは京都仁和寺に設置された襖絵の非常に精巧な模造であり、構成する物質に異常性は見られず、通常の襖絵と同じ材質によって作成されています。 SCP-929-JPはその異常性によって、SCP-929-JPの半径約7m以内に存在する文字に以下の情報災害を付与します。その情報災害とは、「安全」あるいはそれに類する単語を全て赤く変色させるというものです。変色する単語の完全な定義は、現時点では分かっていません。 SCP-929-JPによって変色した文字をヒト(学名:Homo sapiens)が認識した場合、その人物は非常に臆病な性格へと変化します。外出、他者との会話、物音に強い恐怖を抱き、日常生活を送ることが困難な状態となります。この症状は回復しますが、適切なメンタルヘルスケアを必要とします。当事者へのインタビューによれば、「安全なところにいたかった」と述べています。 SCP-929-JPの異常性の影響は柔軟かつ優秀であり、誤字や訛りや筆記体といった"誤魔化し"はほとんどのケースで無力化されています。20██年現在、SCP-929-JPの影響下に於いて、その異常性をかいくぐる主要な方法は、手話か音声といった「文字以外によるもの」です。 SCP-929-JPは2004年1月3日、██県の[編集済み]寺へ寄贈されてきたことで発見されました。[編集済み]寺はエージェント・████の実家であり、オブジェクトが展示される前にたまたま「AWCY」の記載を発見した事でオブジェクトの確保に至っています。[編集済み]寺では交通安全や家内安全の御守を販売しており、発見が遅れていた場合、一般人への被害が発生していた可能性があります。テロを狙ったものと推測され、財団が調査を継続中です。 20██年現在、SCP-929-JPの異常性は 「Safe」(英語) 「安全」(日本語および中国語) 「Безопасный」(ロシア語) 「안전」(韓国語)、 「Sûr」(フランス語) 「Bezpieczne」(ポーランド語) 「Seguro」(スペイン語) 「ปลอดภัย」(タイ語) 等といった単語で確認されています。 空白 補遺: 2004年7月8日、SCP-929-JP担当研究員の1名が、文書の一部が青文字で書かれていると報告しました。当報告書は黒文字で記述されており、データ上での表記や、別職員の視認において問題は発生していません。距離においても、明らかに影響範囲外でした。 担当研究員はその後[データ削除]。当オブジェクトとの関連やその原因は不明です。SCP-929-JPにはまだ未知の特異性を有しているのではないかという推測があり、オブジェクトクラス:Euclidへの再分類が検討されています。
scp-930-jp
評価: +88+–x アイテム番号: SCP-930-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-930-JPは現在紙に書かれた状態でサイト-8107内の低脅威物品保管ロッカーにて保管されています。SCP-930-JP-1の作成のためにSCP-930-JPを使用する際は、指定された用紙にレベル2以上の職員がSCP-930-JPを書き写し、実験終了後その写しを速やかに焼却処分してください。SCP-930-JP-1の作成は財団フロント企業を通じて購入された材料を使用した上で密閉機構付きの実験室内で作成し、Dクラス職員を用いて消費してください。SCP-930-JPに接触した職員は、食品管理を伴う作業を行うべきではありません。またSCP-930-JP-1を消費した者についてはBクラス記憶処理ののち、収容チームによる継続的な監視を行います。 説明: SCP-930-JPは岐阜県███地区の山間部に伝わる魚の調理法です。SCP-930-JPは保存食の一種である「なれずし」の調理手順に酷似していますが、使用する魚を鯛に限定しています。また作成材料に塩分を含む調味料を用いないこと・1時間ごとに███と人の手で20分の攪拌を行い、これを14日間続けるなど類似する調理法よりも煩雑な手順を経るため、このSCP-930-JPが偶然再現される危険性は低いと考えられています。 SCP-930-JPの手順に従って材料を調理した場合、SCP-930-JP-1を作成することができます。SCP-930-JP-1は一般的な「なれずし」と同じ形状を持ちますが、通常の調理法で作成された場合の数倍の刺激臭を発生させ、周囲の人間から一様に不快な反応を引き出します。これらの反応は調理に鯛以外の魚類を使用した場合でも同様であり、ほかの魚類を使用した場合において、SCP-930-JP-1は特異性を表さず、調査を行った研究者によって「腐敗が進行した」状態であると称されました。SCP-930-JP-1も一見腐敗しているように見えますが、摂取した人物はたいていの場合SCP-930-JP-1の味について好意的な反応を示します。なかでも摂食者のコメントに「ほどよい塩加減」など、使用していないはずの塩分についての言及が多くみられることに留意してください。一度SCP-930-JP-1を摂取した人物は前述の刺激臭について好意的な感覚を覚えるようになります。 SCP-930-JP-1の特異性は、摂取者消化器官に対して現れます。食品の腐敗によって発生する細菌や成分の変質などによって生成される毒素、寄生虫、自然毒を経口摂取した場合、摂食者はそれらの要因による身体的ダメージを受けなくなります。例をあげると O-157への汚染が確認された生肉 アニサキスに寄生されたイカ ボツリヌス毒素が確認されたはちみつ ソラニンを含むジャガイモ などを摂取した際に通常発現すると考えられる症状(下痢・嘔吐・発熱・血便・幻覚)などといった症状が発現することなく、摂取物が消化された状態で体外に排出されます。摂食者に対する検査において体内から摂食した物質に由来する毒素は検出されず、寄生虫やアメーバについては体内に侵入してから排出されるまで、活動レベルが低下し休眠状態を保ちました。ただし排泄物には前述の要素が残留しているため、人体に悪影響を及ぼす要因を無効化するというよりも、消化器官中において、これらの要因を阻害する選定機構や分泌物を生成し、免疫機構への反応が発生しないようになんらかの調整が行われていると考えられます。味覚に対しても、腐敗が確認された食品の味への異常な鈍性を付与し、摂取者はこのことについて尋ねられると「まったく気にならない」「食品は発酵しているほうが体にいいし、味も良い」などといった返答を返します。 これらの肉体的変化によるものなのかは不明ですが、摂取者は食品の鮮度や保管方法について無関心になります。例としては「異臭のする牛乳を飲用する」「変色した野菜類を塩漬けにして提供する」「[削除済み]が発生した牛肉を[削除済み]」など社会通念的に異常なレベルに達します。さらにこれらの食品管理について他者から指摘されると論点がかみ合わない会話を行うなどしてまったく取り合おうとせず、食品管理を改善させようとする行動(冷蔵庫に入れる・傷んだ食品を捨てる)に対しては執拗な罵倒や涙を流しながらの抗議と言った激しい感情表出を行い、周辺の他者への致命的な暴力を伴う可能性があります。 以上の点からSCP-930-JP-1の摂取者は社会的・衛生的に甚大な悪影響を及ぼすことが懸念されています。 経緯 SCP-930-JP-1が財団に認知されたのは19██年の、███地区のキャンプ場で提供された川魚の刺身によって緊急搬送4名、死亡者█名を出した集団食中毒事件で、提供された生魚が寄生虫の危険性から生食向きでないとされていることや、利用客の「料理を残したら、キッチンからコックが包丁を持って追いかけてきた」といった証言などから財団エージェントが調査に乗り出し、郷土料理として食べられていたSCP-930-JP-1の発見に至りました。材料の一般性と、調理手順が煩雑ではあるものの誰でも作成できるといった特性により、SCP-930-JP-1の調理法を収容することが決定され、 ███地区の住民に対する記憶処理 SCP-930-JPの記載が確認された書物の破棄 を行い、代わりに特異性が発現しないようアレンジされたレシピを配布しました。 幸い███地区が日本アルプスの山々に囲まれた僻地であり、定期的な往来が行われるようになったのが19██年代からであったことや、住人の減少による人手不足からSCP-930-JP-1の調理が困難になっていたこともあり収容は比較的容易に行われました。この処置については地元住民の「以前と味が変わった気がする」という証言以外に何の痕跡も残していません。███地区においてSCP-930-JP-1は「食べ物に苦労することがなくなる」縁起物とされており、事実███地区における飢饉による死者の記録がほとんど確認されないのはSCP-930-JP-1の特異性によるものだと考えられます。 収容違反記録-0157 20██年、インターネット上のレシピ投稿サイトにSCP-930-JPとみられるレシピが投稿されました。収容チームの対応により、投稿されてから12時間でこのレシピは削除されましたが、削除時点で██件の作成レポートが投稿されており、SCP-930-JP-1が作成された恐れがあります。このレシピにおいてSCP-930-JP-1は市販の鯛の握りずしを材料として用いており、調理法においてボタン電池とベーキングパウダーを用いた[削除済み]によって、本来煩雑な手順を要するSCP-930-JP-1の作成の単純化に成功していました。この事案に対して財団はカバーストーリー「行き過ぎた自然食志向」を流布し、エージェントによる当該レシピに向けての低評価の集団投票や、実食レポートの作成、特異性を持たなくするアレンジレシピの投稿などの情報工作を行いました。 幸い、収容に向かった先の家では買ってきた鯛の握りがティラピアを使用した偽装品だったこともあって、SCP-930-JP-1の作成は認められなかった。まだ臭いがとれない。 エージェント-魚住 アレンジレシピのネタが間に合わなくなってきたというのはわかりますが、鬼食料理長への応援要請は却下します。 ███ 博士
scp-931-jp
評価: +30+–x アイテム番号: SCP-931-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-931-JPは現在、専用の防音加工が施された、危険生物収容室に収容されています。SCP-931-JPの収容室は二重構造になっており、SCP-931-JPが収容されている第一収容室は、遮音材を用いた厚さ1mの壁に囲われています。内部には等間隔で吸音材としてグラスウールを使用した柱が建てられています。第一収容室の外側に作られた第二収容室には騒音計が等間隔で配置され、内部からの音漏れが無いかを24時間計測しています。 SCP-931-JPの担当職員は、防音対策を徹底することが求められます。勤務中は防音性ヘッドギアを装着し、収容室内にいる間はコミュニケーションには手話を用いて、外部の音を完全に遮断してください。第二収容室では毎日2回、計器の点検を行い、故障が発見された場合は、直ちに交換を行ってください。騒音計によって音漏れが確認された場合、直ちに補修工事が行われます。 SCP-931-JPが新たに発見された場合は機動部隊お-13("無音")を派遣し、発見された全ての個体を焼却処理してください。都市部に発生し、人間に対して被害が発生した場合はカバーストーリー「カルト組織の無差別テロ」或いは「都市部への猛獣の脱走」を適用し、事態を鎮静化に導いてください。 説明: SCP-931-JPは鳴き声で生物に幻覚を見せるスズムシの仲間です。体長は40~45mm、短翅型で一般的なスズムシとは異なり、数匹から数十匹の群れで行動します。寿命は3年と一般の種より長く、冬の間は倒木や家屋の軒下などで冬眠を行います。 SCP-931-JPは、自然音、人工音の区別なく音を覚え、本物と区別がつかないほど精巧に真似ることができます。覚えられる音は3~4種類ほどで主に大きな音や動物の興奮時の鳴き声を好んで覚えます。この能力はSCP-931-JPが通常の種と異なり、羽化後も後翅を脱落させることがないこと、その後翅が大きく、そして細かく歪んだ形で発達しており、前翅と重ねたり、こすり合わせる角度を少しずつずらすことで、実現できていると考えられています。またSCP-931-JPは仲間内で天敵に効果的だった音を教えあうことが確認されており、3年という長い寿命はこのためだと考えられます。 SCP-931-JPは、外敵に襲われた場合、一定のストレスを感じた場合に上記の鳴き声を発します。SCP-931-JPの鳴き声を聞いて、音から連想されるものを思い浮かべた生き物は、まるで実物が目の前にいるかのような幻覚に襲われます。この幻覚の効果は非常に強力で、最悪の場合、身体に一切の外傷がないにも関わらず、幻覚に襲われる症状のみでショック死を引き起こすことが確認されています。 この幻覚によって生じた、実際には存在しない外傷は記憶処理によって対処が可能ですが、本人が腕を切断されるといった重症を負ったと知覚した場合、実際に腕が切断された状態と変わらないスピードで失血性ショックに似た症状を引き起こすため、早急な対処が必要になります。また、記憶処理を行った場合でも一定の確率で重症部位のマヒなどが発生することが確認されています。 録音されたSCP-931-JPの鳴き声は、録音機器の性能が一定のレベルを超えた時点で同様の異常が発生することが確認されており、SCP-931-JPの鳴き声を録音する場合は意図的に性能の低い録音機器を使用することが推奨されます。 SCP-931-JPは199█年に██県██村の村人が、付近の██町に、村が熊に襲われたと助けを求め、その後外傷が一切ないにも関わらず、ショック死したことが財団の目を引き発見されました。当初、死亡した村人の証言から、SCP-931-JPが異常性を持った熊型オブジェクトだと予想されたため、機動部隊な-20("山狩り")を派遣しましたが、一人を残して部隊は全滅。生き残った隊員の証言から、SCP-931-JPの特異性と効果的な対策が発見され、機動部隊お-13("無音")により収容にいたりました。 収容後の実験によってSCP-931-JPの特性は人類の他には哺乳類や鳥類などにも有効に働くことが確認されていますが、魚類や昆虫などには十分な効力を発揮しないため、個体数が大きく増加することはありませんでした。このことが199█年までSCP-931-JPが発見されずにいた要因と考えられています。 + インタビュー記録SCP-931-JP - テキストを隠す 生存隊員へのインタビュー記録SCP-931-JP - 日付199█/█/█ <記録開始> █博士: これからインタビューを開始します。体調のほうはどうですか。 隊員: あまり優れません…ですが、死んでいった仲間のためにも休んでいる場合ではありません。 █博士: わかりました。それではお願いします。 隊員: はい、私たちは予定されていた時刻に問題無く██村に到着しました。そして村を数分散策して、まずは村人が全員死亡していることを確認しました。こう言っては失礼だと思いますが、死後に虫や獣に漁られたと思われる傷を除けば、全てが外傷の無い綺麗な死体でした、本当に死んでいるか疑問に思うほどに。ただ、外傷に比べて死体の表情は壮絶で、揃って拷問でも受けたのかと思うほどでした。 █博士: なるほど、██町に逃げ込んだ村人のような有様だったということですか? 隊員: はい、その通りです。しかし、それ以上の発見は何もなかったため、緊張もほぐれて一息ついていたところでした。自分たちが拠点としていた家屋で一人の隊員が、おそらく老朽化していた部分の床板を踏み抜いてしまったんです。その瞬間、その隊員の近くから、獣のうなり声が聞こえ始めたんです。私も、おそらく部隊の仲間も話に聞いていた熊型のオブジェクトが現れたと確信して周囲を見渡しました。すると私たちの目の前に、まるで最初からそこにいたかのように熊の群れが現れたんです。おそらくヒグマだったかと。 █博士: 続けてください。 隊員: 私たちは陣形を組み、すぐに銃撃を開始しました。しかし、床板を踏み抜いた隊員は、残念ながら次の瞬間には熊の群れに囲まれて…幸いにも銃撃に対して耐性のないオブジェクトだったようで、一人が犠牲になっている間に、何頭かを無力化し、その上で家屋から脱出し、██村の広場とでもいうべき場所まで後退することに成功したんです。 █博士: なるほど、銃撃で無力化できるオブジェクトだったと、それなら例えステルス能力による奇襲を考えても、生存人数はもう少し上であるはずです。そのあと何があったんですか? 隊員: はい、突然四方八方から銃声が聞こえました。陣形を組んで戦闘をしていたので仲間の銃撃で無いことは明らかでした。そして私たちを包囲するように大量の浮遊する銃が現れたんです。今考えればおそらく私たちの物と同一の規格の物だったと思います。 █博士: 熊型のオブジェクトばかりでなく、今度は銃型のオブジェクトまで出現したと。 隊員: はい、そのタイミングで隊長は部隊の生存が絶望的だと悟ったのだと思います。即座に情報保持命令を下し、一番機動力のある自分を部隊の全員が盾になって逃がしました。 █博士: そして回収班によって回収され、現在に至ると。 隊員: はい、自分の話しはこれで全てです。それと博士、最後に一つよろしいでしょうか。 █博士: どうしました? 隊員: こんなことを言うのは失礼だとわかっています。ですが、どうかオブジェクトの異常性を明らかにして、安全な収容方法を確立してください。 █博士: 無論です。あなた方の勇気ある行動を無駄にはしません。 隊員: ありがとうございます。 <記録終了> 終了報告書SCP-931-JP - 日付199█/█/█ 彼のインタビューを精査してみると、いくつか気になる点があります。まずは熊型オブジェクトと銃型オブジェクトの出現タイミングが共通している点です。隊員の発言によればどちらも音が聞こえた後に実体が出現しています。この二種が別々のオブジェクトで無い限り、ある仮説がたてられます。それは今回のオブジェクトの出現の条件が音を聞いて、その物体を連想したからではないかということです。 そして、彼が一切の負傷無く帰還した点です。いくら隊員を盾にしたところで包囲された状態の銃撃から無傷で生還することは不可能に近いでしょう。彼は音こそ聴いて、銃を連想してしまいましたが、仲間を盾にしたことで自分が傷つくことは連想しなかった。それが彼が生還できた理由ではないかと私は考えます。 以上のことから収容のために次回からは完全な防音を施した機動部隊を使用することを提案します。根拠として一言だけ付け加えさせていただくなら、彼の知識が不足していたため、そのような実体化の形を取ったのでしょう。持ち込まれでもしない限り本州に、それも大量のヒグマはいないはずです。 -█博士 インタビューの内容と█博士の進言を基に機動部隊が編成され、四度の調査を経てSCP-931-JPを発見、収容に成功しました。 + 実験記録 SCP-931-JP - テキストを隠す 実験記録SCP-931-JP-1 - 日付199█/█/█ 対象: D-48952 実施方法: 低品質のボイスレコーダーを持たせたD-48952をSCP-931-JPの収容室に送り込み、SCP-931-JPにストレスを与え、能力のさらなる解明につとめる。 結果: D-48952はアナフィラキシーショックに似た症状によって死亡しているのが発見されました。回収されたボイスレコーダーからは天井を埋め尽くすほどのスズメバチが現れたと悲鳴交じりのD-48952の声と共に蜂のものと思われる羽音が録音されていました。後日、音声を解析したところ、羽音はミツバチのものと判明しました。 分析: 彼は不幸なことにミツバチの羽音からスズメバチを連想してしまったために、妄想の中で襲われ、アナフィラキシーショックを起こしたものと考えられます。SCP-931-JPの特性は聴いた音声そのものでは無く、音声を聴いたものが何を連想するかが重要なようです。 実験記録SCP-931-JP-2 - 日付199█/█/██ 対象: D-46570 実施方法: 軽度の学習障害をもつDクラス職員を収容室に送り込み、同一条件で実験結果に変化が起こるか観察する。 結果: D-46570は定められた時刻に収容室から無傷の状態で脱出しました。実験後のインタビューでは、いくつか耳障りな音が聞こえたが、その場には鈴虫しかいなかったため、特に気にしなかったと話しています。 分析: 今回の実験において彼のずぶとさが彼自身を救う大きなきっかけになったようです。SCP-931-JPの鳴き声を聞いても連想さえしなければ特異性の発生にはいたらないことがわかりました。 実験記録SCP-931-JP-3 - 日付199█/█/██ 対象: D-46842 実施方法: SCP-931-JPが他にどのような音を覚えているかを同一条件で調査する、D-46842には事前に、部屋の中にはスズムシの他にミツバチとクマを収容していると伝えている。 結果: D-46842は収容室内で死亡しているのが発見されました。ボイスレコーダーには前述の音の他に、大きな爆発音が録音されており、これが原因と考えられます。 分析: 爆発音の再現すら可能であることが判明しました。しかし、人間以外の多くの生物にとって爆発音というものは驚き、警戒することはあるにせよ、慣れてしまえば効果は無くなる物のはずです。SCP-931-JPがいつの時代から存在していたかはわかりませんが、この結果にはどこか違和感を感じます。 + 調査記録SCP-931-JP - テキストを隠す 追記SCP-931-JP - 日付199█/██/█ 実験を繰り返すに連れて、SCP-931-JPが記憶できる音声は3種類、優秀な個体でも4種類が限界であることが判明しました。そして、天敵になりうる生物に効果的だった音を優先し、それ以外を忘れていくことも判明しました。 だからこそ私は実験SCP-931-JP-3に違和感を感じたのでしょう。██村で起こった事件以前には、人間は仮想の天敵として、存在しえなかったはずなのです。だというのに、SCP-931-JPは機動部隊に熊の音声が効果が無いと理解するや、まるで最初から覚えていたように銃声を発してみせました。 それに加え、██県██村付近は鉱石の産出地域でも無ければ、石材の加工地域でもありません。SCP-931-JPが自然に爆発物の音を記憶することができる可能性は低いはずです。以上のことから、SCP-931-JPは、人間の手によって創られた、もしくは学習された生物であり、都市に放ち、多くの住民を殺害するための生物兵器ではないかと私は予想します。 上記の理由から早急にSCP-931-JP収容地域一帯の調査を提案します。-█博士 調査報告SCP-931-JP - 日付200█/█/█ █博士の進言を受けてSCP-931-JP収容地域一帯を調査していたエージェントによって自然発生した洞窟内部に隠された地下施設が発見されました。 内部からは大量の人骨とSCP-931-JPと思われる死骸がいくつか、そしてダイナマイトと1,900年代製の歩兵銃が発見されました。人骨の大多数は大型の檻に閉じ込められており、身に着けていた物も麻布程度で人体実験に用いられた形跡が見受けられます。残りの人骨は大日本帝国陸軍の軍服を纏っていた形跡があることから、この施設は大日本帝国陸軍特別医療部隊の実験場であり、何らかの事故によって内部の人間が全滅し、その後にSCP-931-JPが脱走したものと考えられます。 そのため、現在収容されているSCP-931-JPを除いて、未収容のSCP-931-JPの個体数は少ないこと、SCP-931-JPを用いた大都市へのテロ活動などの確率は極めて低いものと予想されます。
scp-932-jp
評価: +108+–x SCP-932-JP アイテム番号: SCP-932-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-932-JPはサイト-81██の防火加工が施された小型生物飼育室にて飼育されています。担当職員はSCP-932-JPに接触する際、小型消火器を携帯してください。現在財団は5体のSCP-932-JPを収容しています。SCP-932-JPの生態を鑑み、有事の際に事態の収拾を容易にするため、個体数は4体以上7体未満とし、収容期間が長いものから順にSCP-932-JP-1から-7までのナンバーが振られます。財団の意図せぬ個体数の増減が発生した場合、担当職員は速やかに個体数の調整を行ってください。一日に二度、給餌として乾燥させた穀物、藁を与えてください。崩壊したSCP-932-JPの体組織は収容室から迅速に取り除き、別途保管してください。希望する職員はその一部を引き取ることが出来ます。 説明: SCP-932-JPはコノハズク(学名:Otus scops)に似た生態を持つ、全長約14cmの実体です。全身は藁で構成されており、眼球と嘴のみ未知の鉱石で構成されています。 SCP-932-JPは前述のとおりコノハズクと似た生態を持ちますが、継続した給餌によりヒトに懐かせることが可能です。(以下、SCP-932-JPが懐いた人物を主人と表記)SCP-932-JPは主人に対し、自身の餌を分け与える、肩に乗り頭にすり寄るなどの行動を見せます。 SCP-932-JPはその嘴の鉱石を激しく打ち合わせることにより火花を出し、全身を激しく燃焼させることが可能です。この燃焼は30分以上継続しますが、適切な消火措置を行えば即座に消すことが出来ます。また、外的要因による着火も同様です。完全に燃焼し、炭化したSCP-932-JPの体組織は粉末状に崩壊しますが、途中で燃焼が中止された場合は崩壊は起きず、長期的に藁を摂取させることによって炭化した箇所の藁が生え変わります。崩壊した体組織は通常の藁が燃焼後に残る炭と完全に同質のものであり、異常性は見られません。 SCP-932-JPは他のSCP-932-JP個体が燃焼したことによって発生した炭を摂取することにより、体内で眼球や嘴と同一の鉱石を生成します。1その後SCP-932-JPは積極的に藁を摂取し、その体積が元の1.5倍まで増加後、胸部より次世代のSCP-932-JPを排出します。 実験ログ932-1 担当者: 塚原研究員 対象: SCP-932-JP-2 内容: 数日にわたりSCP-932-JP-2に給餌を行い、懐かせる。 結果: SCP-932-JP-2は塚原研究員に対し友好的な態度を見せた。 分析メモ: SCP-932-JPはかなり知能の高い存在だと考えられます。給餌として与えた穀物の中から、人間が摂取するのに適するアーモンドやピーナッツをこちらに分け与えようとする様子が確認されました。 実験ログ932-2 担当者: 塚原研究員 対象: SCP-932-JP-2 内容: SCP-932-JP-2に対して積極的に語り掛け、意志の疎通を図る。 結果: SCP-932-JP-2は塚原研究員の指示に従って収容室を飛行し、指定した止まり木に着地した。また、報酬として与えられたカシューナッツをこちらに分けようとしたが、塚原研究員が断ると数度こちらの様子を伺いながら啄む様子が見られた。 分析メモ: 犬に芸を教えているような気分でした。冗談抜きで、訓練さえすれば飼い犬程度には人間に慣れるようです。 補遺: SCP-932-JPは19██/██/██、休暇でハワイ諸島の████に訪れていた塚原研究員に発見されました。現地の村ではSCP-932-JPと似通った生物についての伝承が残されています。しかし、現地住人のSCP-932-JPの目撃情報はここ█年の間に初めて確認されており、SCP-932-JPの起源については不明のままです。 + インタビューログ - 閲覧を中止する 対象: ████医師 インタビュアー: 塚原研究員 前記: SCP-932-JP発見後、初動調査時に現地の村人からオブジェクトについての情報を聴取しました。以下はその際の記録です。塚原研究員は休暇時に使用していた動物学者としての身分のままインタビューを行っていることに留意してください。 <録音開始> [重要度が低いため割愛] 塚原研究員: なるほど、ではこの辺りではよく火事が起こると。 ████医師: そうさ。まぁ火山も近いからな。ペレ2のお膝元で暮らす誉れの対価ってとこだな。[5秒沈黙]あぁ、ペレと言えば、あんたはあの鳥について聞きに来たんだったな。 塚原研究員: そうです。あの植物のような、動物のような存在についてお聞かせ願えませんか。 ████医師: あの鳥、私たちの間じゃ鳥だって言われてるけど、あれはペレの髪から生まれたと言われてる。受けた恩も害も、そのまま全て返す。まさにマナの霊鳥ってね。 塚原研究員: マナ、ですか? ████医師: 自然界にある力さ。常に均衡を保とうという、漠然としながらも強い意志を持った力だ。こう、自分の考えや感情とは全く別の力に体が動かされるってことはないか? 塚原研究員: えぇ、坂道では特に。 ████医師: 違うそうじゃない。例えば、あんたが贈り物を貰ったとする。それを貰ってどう思う? 塚原研究員: まぁ、嬉しいですね。 ████医師: その嬉しさをそのままにしておけなくなったりしないか? くれた人にお返ししたり、他の人に分けたりしたくならないか? 君の国じゃそういう考えはないか? 塚原研究員: [13秒沈黙]なります、わかります。僕らの国では「メンツ」って呼んでますよ。 ████医師: わかるか、やっぱり同じ人間だな[笑い声]おっと、話を戻そう。あの鳥はほかの畜生と違って、そのマナを感じてる。私たちが餌をやれば、彼らはきちんと礼をする。攻撃されても、きちんと礼をする。自分ができることだけじゃ釣り合わない時には、母親の力を借りてでもな。 塚原研究員: な、なるほど。 [7秒沈黙] ████医師: ま、ペレは気性が荒いからな。きちんと、それこそ気難しい女性くらいに考えて接したほうがいいぜ。だが反対に、私たちが彼らにきちんと礼を尽くせば、彼らも報いてくれる。前に子供たちがおやつのナッツを分けた時には、森から果物を持ってきてた。それがまたペレの好きなもん、こっちではカプ、禁忌の食べ物として伝えられてたもんだったから、そんときの村は大騒ぎでな。神の使いからの贈り物だから食べてもいいのかどうかってんで、年長者たちで何日も会議してたくらいだ。 塚原研究員: 彼らは、ヒトが食べるものを理解しているのですか? ████医師: さぁ、神の使いなら、あるいはとも思うがな。 [重要度が低いため割愛] <録音終了> 後記: SCP-932-JPの初動調査の迅速な処理を評価され、塚原研究員はSCP-932-JPの担当職員に配置されました。また、SCP-932-JPの異常性の性質から深刻な影響はないと判断され、O5の許可の下、SCP-932-JPは日本支部の管理下に置かれました。 19██/██/██追記: サイト-81██に潜入した要注意団体のエージェントがSCP-932-JPにより撃退されました。エージェントはSCP-932-JPの給餌中のデータを取っていた塚原研究員を襲撃し、研究データの奪取を試みた際、その場にいたSCP-932-JPは身体を燃焼させ、エージェントを攻撃しました。エージェントが怯んだ隙をついて塚原研究員は警報を作動させ、現場に急行した警備部により1分後にエージェントは鎮圧、事態は収拾しました。このとき塚原研究員はSCP-932-JPの炭化した体組織の一部を引き取りました。 Footnotes 1. このことからSCP-932-JPの眼球や嘴の主成分は炭素であると推測されます。 2. ハワイ神話における炎を司る女神
scp-933-jp
評価: +68+–x 無力化前のSCP-933-JP。対象は7番目に無力化されたもの。 アイテム番号: SCP-933-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: サイト-████の低脅威度物品収容房に、SCP-933-JP実体が一つ保存されています。全国のSCP-933-JP実体に似た特徴を持つすべての階段は、心理テストをクリアし、耐性訓練を受けた機動部隊み-11(”アシナガバチ”)により一時的な無力化が行われます。無力化にあたり、SCP-933-JPには地面と完全に繋がるように梯子がかけられ、カバーで覆われます。近隣住民にはカバーストーリー「補修工事」で対応してください。また周辺に設置されている銘板は取り除き、回収場所の記録と共に保存してください。既存のSCP-933-JPは、担当者により監視カメラを用いて監視されます。SCP-933-JP-1が発見された場合、対象を回収し、観察のため標準生物収容室に収容してください。対象は失踪者として処理されます。追加実験の提案がある場合は担当者に書類を提出してください。 説明: SCP-933-JPは、どこへも繋がっていない、用途の無い階段です。通常、電柱や壁に張り付くようにして、高所に設置されています。SCP-933-JPが異常性を発揮する条件として、地面より30cm以上高い位置にあり、直線的かつ全長が3m以内、全体的な形状を損なう部品が付属していないことが条件であると、帰納的に推測されています。また、SCP-933-JPから1m以内の地点に銘板が設置されています。銘板の記述を文書SCP-933-JPに示します。建物の補修工事や増築により、偶発的にSCP-933-JPに似た異常性を持たない構造物が生じますが、以上の条件により区別が可能です。SCP-933-JPの設置者、設置意図は不明ですが、現在でもSCP-933-JPは設置され続けていると見られます。現在までに██点のSCP-933-JPが確認・無力化されています。 ある特定の傾向を持つ人物が、直接目視によりSCP-933-JPを認識した時、その異常性を受けます。現在までの調査で、境界性パーソナリティ障害(BPD)あるいは、それを疑われる生活習慣の持ち主1が、対象に当てはまることが分かっています。SCP-933-JPに暴露した対象は、共通してSCP-933-JPを“成功者の抜け殻”、“自分が成れなかったもの”と形容し、嫉妬する素振りを見せます2。以降、SCP-933-JP暴露者をSCP-933-JP-1と呼称します。SCP-933-JP-1は異常な行動の前に、身辺整理を行います。聞き取り調査により、この行動は自身の死を予感していることに起因すると分かっています。しかし、むしろSCP-933-JP-1自身は前向きな思考をするようになり、未来への展望を口にするようになります。十分に時間をかけて身辺整理を終えたSCP-933-JP-1は、以下のプロセスを経て"変態"します。 サナギの形成: SCP-933-JP-1は、可能ならば鍵をかけられる、人目に付かない場所に移動します。目的の場所に移動したSCP-933-JP-1は衣服を脱いで座り込みます。その後、SCP-933-JP-1は座り込んだ状態のまま表皮を身体から剥離させ、“サナギ”を形成します。剥離した表皮はSCP-933-JP-1の身体から一回り拡大した所で緻密に硬化し、そのため液体が透過することはありません。以降SCP-933-JP-1は外界からの刺激に対し、極端に鈍くなります。表皮の硬化が終了すると、SCP-933-JP-1は自身で生成した[削除済]酵素を分泌し、自らの体組織の9割を分解します。このプロセス中、呼吸に関わる肺と気管支などの器官と、ホルモン分泌を管理する脳幹と脳下垂体、また主要な筋肉は分解されません。分解された体組織は半液状化しており、流動的です。 組織の再形成: 体組織の分解が終了した後に、血管、心臓を含む内臓、骨格などの再形成が行われます。再形成される体組織はSCP-933-JP-1由来であり、分解される以前の組織とは同一性が存在します。しかし再形成された器官は、傷や老化が見られず、完全に“新品”の臓器であるように見えます。これらのプロセスは完全変態性の昆虫、また胎児の発生に酷似しています。しかし特筆すべき差異として、再形成される組織は形成位置がずれることがあり、他の臓器と癒着・接続していることが多い点が挙げられます。平均して一人のSCP-933-JP-1に対して10箇所程度このような癒着・接続が生じるため、深刻な臓器の機能不全に陥ります。 羽化: 再形成が終了したSCP-933-JP-1は"羽化"に入ります。SCP-933-JP-1は身を捩じり、背中側の皮を破り、外に出ることを試みます。皮は十分に硬い為、SCP-933-JP-1が全身を引き出すには、5分か10分ほどの時間を要します。SCP-933-JP-1は外皮から完全に脱した後、自身の変化を確かめようとします。自身が“変態”したことを確認したSCP-933-JP-1は非常に満足した様子を見せますが、自身の臓器や器官の変調には気づいているようです。それでもなお、SCP-933-JP-1は通常通りの生活に戻ろうとし、結果としてほとんどの場合、長くても一ヶ月程度で死亡します。 SCP-933-JP-1の言動から異常性はミーム汚染の一種であると考えられており、現時点では影響の除去には記憶処理が最も効果的な手段だと考えられています。未回収かつ死亡していないSCP-933-JP-1の総数は未知のままです。 回収記録SCP-933-JP: 19██年以降、増加していた複数の同様な不審死が財団の注意を引いていました。死亡者は皆全裸で、服と貴重品の他には所持品は無く、自室や物置、貸しコンテナといった場所で死亡していたため、当初は自殺だと思われていました。しかし、主な死因が臓器機能不全によるものであること、特定の地点に死亡者が集中していたことを足がかりとし、SCP-933-JPの収容に至りました。その後の調査でSCP-933-JP実体が複数存在することが判明しましたが、現在まで回収されたSCP-933-JPは全て、夜間は街灯に照らされるように設置されていました3。回収された銘板の記述より、設置者は日本国内を縦断しながら不定期にSCP-933-JPを設置しているのだと考えられています。 付記: 以下に実験記録を示します。被験者はSCP-933-JP収容時の調査により、SCP-933-JP-1になっていると確認された一般市民です。再形成の過程はCTスキャンで日に二回記録するものとします。被験者の死亡後の解剖結果、およびCTスキャンによるデータ、臓器それぞれの検査結果は、付属文書SCP-933-JPを参照してください。データは全て財団医療部門に送られ、臓器再生研究に役立てられます。 実験記録SCP-933-JP-A: 被験者: 京都██市██で回収 方法: SCP-933-JPに暴露した後の経過を観察する。 結果: 141時間で再形成が終了。その後対象は羽化を試み、滞りなく成功した。対象は脱水症状を訴え、インタビュー・検査に先駆けて一杯の水を要望した。要望は許可されたが、これにより対象の体調が急変、14分後に死亡が確認された。対象の胃は肺と結合しており、水を飲んだことで自身の内臓消化が早められ、死亡に至ったと考えられる。 考察: 以降の実験において、対象への水を含めたすべての食品の支給を禁じる。対象が対話可能であれば、先にインタビューおよび検査を行うこととし、脱水症状は点滴で補うこととする。 実験記録SCP-933-JP-B: 被験者: 秋田県██市██で回収 方法: サナギ状態の対象を、半分の位置で水平に切断する。切断面はプラスチックで覆い、二つの間を合成樹脂の柔軟なチューブで接続した。チューブには体組織が循環しないように、金属球が入れられている。その後の経過を観察する。 結果: 上半分のみが再形成され、下半分は切断した直後から一切変化しなかった。138時間の再形成終了後、対象は羽化を試みたが、脆弱になっていたチューブとの接合面から上半身が脱落した。7分後に死亡が確認された。 考察: 蛾の羽化実験の前例を踏襲した。予想通り下半身の再形成が起こらなかったことと、CTスキャンからの記録より、再形成には体組織の循環が必要とされることが分かった。その後の実験にて、人為的に下半身に再形成を促すことに成功した。 実験記録SCP-933-JP-C: 被験者: 兵庫県██市██で回収 方法: 発見当時、対象の身体は頭から股下まで、垂直に切断されていた。状況証拠から、近くの工事現場から落下した金属パネルが屋根を突き抜け、対象を切断したのだと見られる。既に半ば再形成が終了していたため、パネルが脱落しないよう固定し、経過を観察する。 結果: 対象の右半身、左半身共に再形成が行われたが、それぞれ重度の臓器欠損および機能不全が見られた。対象は再形成終了後の羽化の段階に入ると、突如暴れだし切断面のパネルを外そうと試みた。試みは成功し、2分後に死亡した。 考察: 臓器不全に陥っていながらも対象が羽化を試みたのは注目すべき事だ。SCP-933-JP-1は昆虫とは異なり、外界からの衝撃に対して耐性を持つのだと予想される。対象の「こんな筈じゃなかった」という発言も興味深い。 実験記録SCP-933-JP-D: 被験者: 神奈川県██区██で回収 方法: サナギ状態の対象の外皮を除去し、密閉可能な1m×1m×1mの直方体の可変型ガラス容器に詰めた。内容物は残存する器官に損傷を与えないよう緩く撹拌され、全て容器に収められた。また対象の体積減少に合わせて容器の幅を狭め、常に隙間が生じないようにし、経過を観察する。 結果: 対象の臓器や筋肉は容器に対して柔軟に形成され、欠損や機能不全は見られなかった。撹拌した影響として、それぞれの器官が通常とは明らかに異なる場所に形成され、対象の表皮は内部に、内臓のほとんどは外部に露出し、腕と脚が胴体に埋没した状態になった。対象へのインタビュー記録をインタビュー記録SCP-933-JP-Dに示す。 考察: 体組織の分解が終了した時点で、ある程度形成される臓器の位置が決定しているのだと考えられる。任意の臓器を誘導する方法は現在研究中。 + インタビュー記録SCP-933-JP-D: - インタビュー記録SCP-933-JP-Dを隠す インタビュアー: ██博士 対象: 実験記録SCP-933-JP-D被験者(被験者と呼称) 補遺: 対象の脳組織は分割され、飛び飛びになってしまっており、言動が非常に幼くなっている。 <記録開始> ██博士: 私の言っていることが理解出来ますか? 被験者: できる、ます。 ██博士: あなたの身体が今どうなっているか分かりますか? 被験者: わからない、くるしい。 ██博士: どのように苦しいのですか? 被験者: いきが、できない。からだ、動かない。 ██博士: 動かないのは拘束されているからです、後で鏡を見せましょう。宙に浮いた階段を見た時のことは覚えていますか? 被験者: [頷きと見られる動作] ██博士: どう思いました? 被験者: ぬがなきゃ、そう思った。生まれかわるんだ。そうしなきゃいけない。 ██博士: どうやってサナギを形成したのかは分かりますか? 被験者: 知らない、やったらできた。ヤったみたいに、キモチよかった。ふかふかの、ベッド、ねてる、みたいに。 ██博士: 昔の事は思い出せますか? 被験者: よく思い出せる。でも、知らないやつ。いまのオレとは、ちがう。ちがう。 ██博士: そうですか、ではこれでインタビューを終了します。 被験者: なぁ。 ██博士: はい、なんでしょう。 被験者: オレはCoolになれたか? <記録終了> 終了報告: 対象は鏡にて自身の姿を確認した後、容器の外に出ることを希望した。希望は承認された。対象は歩行を試みたが、容器内で形成された組織は自重を支えるには弱く、床に倒れたきり動かなくなった。2分後に対象の死亡が確認された。 文書SCP-933-JP: 以下の文章はSCP-933-JPの銘板の説明欄に必ず書いてあるものです。銘板の題字、設置日時の欄は変化しますが、この説明文のみ常に一定です。 作品説明: 現実を見ろ。お前らがいつも脇役なのは誰の所為だ。        その豪奢な虚飾を引き剥がせ。全てを捨てて変わって見せろ。        You Are NOT Cool Yet. But, you can become.        そして虫けらのように死ね。 Footnotes 1. 彼らの多くは、上手くいっていない現実の責任を、自身に強く求める傾向があります。 2. そう思う具体的な理由については不明瞭な回答だけが得られました。 3. ライトアップしているのだと思われます。
scp-934-jp
評価: +17+–x 調査初期に撮影されたSCP-934-JP。山の中腹部、左手側が該当エリアである。 アイテム番号: SCP-934-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-934-JP該当エリアは近隣山岳地域由来の硫化水素のガスの溜まり場となることを理由として民間人の立ち入りを禁止してください。領域内への侵入者に対応するため、土地管理人に偽装したエージェント2名以上が、領域付近に建設した監視小屋で見張りを行ってください。また、自殺を目的として民間人が故意に侵入するケースが過去に3例発生しています。このため、先述のエージェントのうち最低1名は適切なカウンセリングの資格を有する人物である必要があります。 説明: SCP-934-JPは██県██市の█岳に存在する約2.38km2の領域です。SCP-934-JPの領域内では150cm高さにおいておよそ0.40±0.10ppmの硫化水素ガスが検出されていますが、これは活火山である█岳に由来する火山ガスによるものであり、SCP-934-JPの領域外とほぼ同じ数値であることが確認できています。そのため、後述するイベント-934の原因ではないと考えられます。 SCP-934-JPはその領域内に進入した人間(以下、被験者とする)に対し異常性を及ぼします。平均して142分間、領域内に連続して存在すると、被験者は眠るようにして意識を失います。確認されている限りでは、被験者が意識を失うまでの最長時間は156分、最短時間は103分です。意識を失う前にSCP-934-JPの領域外に移動することでこの影響からは逃れることができます。 意識を失った被験者はイベントー934とされる明晰夢を経験します。イベントー934は同一人物に対し1度しか経験することはできず、イベントー934を経験済みである人物がSCP-934-JP領域内に長期間の滞在を行っても意識の喪失しか引き起こさないことが分かっています。被験者によってイベント-934における部屋内の外観や、SCP-934-JP-1の外見などの詳細は異なりますが、主となる内容は一貫しています。以下はイベントー934の主となる内容です。 イベント-934の主となる内容 1.被験者は椅子が2脚のみ存在する部屋内で人型存在(SCP-934-JP-1)と向かい合わせに座っていることに気付く。SCP-934-JP-1は「この部屋では知り合いの故人を1人だけ呼び出して会話することが可能である。自分はその案内人であり、呼び出してほしい人物がいるなら教えてほしい」といった旨の発言を被験者に対して行う。 2.被験者が人物を指定するとSCP-934-JP-1はSCP-934-JP-1の背後にある扉から部屋を一時退出し、数秒~十数分後に指定した人物と同様の外見を持つ人物(SCP-934-JP-2)を連れて部屋に再入室する。ただし、指定した人物が存命であると被験者が考えている、または全く面識が無い人物である場合はSCP-934-JP-1はSCP-934-JP-2を連れてくることを拒否し、別の人物を指定するように要求する。 3.SCP-934-JP-2は被験者が指定した人物と非常に似通った肉体的性質、性格や知識を持っており、被験者は会話などの簡単なコミュニケーションをとることが可能である。イベントー934が開始してから平均して32分が経過した時点でイベントー934は強制的に終了し、被験者は意識を取り戻す。 4.SCP-934-JP-1やSCP-934-JP-2に暴力行為をとろうとした場合や、被験者が呼び出す人物を指定しなかった場合にもイベントー934は強制的に終了し、被験者は意識を取り戻す。 SCP-934-JPは、「死んだ人間と会える場所がある」という噂が2001年5月上旬頃から爆発的に広まったことにより、財団の注意をひいたため発見されました。これはSCP-934-JP該当エリアにおいて原因不明の意識障害になったあと、夢の中で死後の世界に行って死んだ人間と会った、と証言する人物が続出したためです。異常性を確認した後、財団は「SCP-934-JP該当エリアは有毒な火山ガスが噴出しており、意識の混濁、幻覚症状や後遺症を伴う失神を引き起こしうるため、立入禁止とする」という内容の、県からの公式な声明を直ちに発表させることで事態の収拾を図りました。 Dクラス職員および財団研究員を用いての実験の最中には、被験者に対しカルヴィンーナカタ式心像言語化装置を用いました。これによりイベント-934の経過を集積化された言語として認識することに成功し、被験者の話す内容と一致することの裏付けをとることができました。各実験についての集積化された言語とその元となった脳活動のデータは非異常性が確認されたうえでデータベース上に保管されています。しかし、被験者およびSCP-934-JPの周囲では、イベント934発生前後において霊体素子による地磁気の変化については有意な差が確認されず、霊体周辺に発生するエーテル密度の変化によるエーテル流束も無視できるほど小さいものであることが判明しました。よってイベント934やSCP-934-JPの異常性は霊的存在によるものでは無いという考えられます。加えて、実験の一部を担当した乾烏博士の提言から、SCP-934-JP-2は被験者の記憶に基づいて生成された表象であるとの考え方が最も有力な説となっています。 + 実験のインタビュー記録(一部抜粋)を閲覧する  - 閲覧を終了する インタビュー記録001 - 日付2001/05/16 対象: D-42765 インタビュアー: エージェント・青龍寺 実験概要: D-42765にイベント-934中でSCP-934-JP-2として自身の両親を呼び出させ、コミュニケーションをとらせる。 <録音開始, 2001/05/16> エージェント・青龍寺: では、あなたがどのような夢を見たのか、順を追って教えてください。 D-42765: 最初俺は事務室みたいな場所にいた。そんで目の前に七三分けにして眼鏡をかけたサラリーマンみたいなやつがいた。そいつはここでは死んだ知り合いにも会うことができる、よければお呼びしましょう、みたいなことを言った。このへんは事前に聞いてた通りだったな。打ち合わせ通り親父を呼んでくれって伝えたよ。 エージェント・青龍寺: お父さんの名前は伝えなかったのですか? D-42765: ああ。「俺の父さんを連れてきてくれ。名前は」まで言ったところでサラリーマンは「了解いたしました」つって部屋を出てっちまった。3分くらいして元気だった50代ころの親父を連れて戻ってきたよ。少なくとも見た目は間違いなく親父だった。 エージェント・青龍寺: その方がお父さんであることを確認するためにいくつか質問するよう指示を出しておきましたが、そちらはどうでしたか? D-42765: ああ、ちゃんとしたよ。俺のガキの頃のあだ名もちゃんと覚えてたし、高校の頃万引きして補導されたときのことも知ってた。子供の頃母さんに内緒で二人っきりで海までドライブして一緒にアイス食ったこともちゃんと知ってたぜ。あれを知ってるのは俺と親父だけだ。 エージェント・青龍寺: なるほど。それなら恐らくお父さんで間違いないでしょうね。最後に何か言っておきたいことはありますか? D-42765: ……俺[編集済]なんてことして捕まっちまっただろ?当時はもう親父死んでたんだけどさ、そのことを親父が聞いてくるんだよ。「お前が[編集済]なんてことやったのは本当か」ってな。妙に気迫があって、ついブルっちまってさ、俺は子供の頃みたいにおびえながら「悪いことをしたと思ってる。どうすればいいんだ」って聞いたんだ。親父は「過ぎたことはもうどうしようもないし、生きてそれに向き合っていかなきゃいけない。もう子供じゃないんだからそれは自分でしっかり考えて決めていくことだ」って答えてくれたよ。いかにもあの頑固親父らしいっていうかさ。 エージェント・青龍寺: …… D-42765: このことはあのサラリーマンが本物の父さんを連れてきたことの証拠にはならないかもしれないけど、誰かに伝えなきゃいけないような気がしてさ。とりあえず今はせっかく死刑を免れたことだし、仕事を務めあげてシャバに出て、父さんに顔向けできる人間に少しでも近づこうって思うよ。 <録音終了> インタビュー記録004 - 日付2001/05/24 対象: ██上級研究員 インタビュアー: 乾烏博士 実験概要: ████博士の研究補佐を務めていた██上級研究員にイベント-934中でSCP-934-JP-2として████博士を呼び出させ、████ー███理論1についての情報を得る。 <録音開始, 2001/05/24> 乾烏博士: 録音を開始するよ。さて、イベント-934により████博士をもとにしたSCP-934-JP-2を呼び出し、████ー███理論について聞き出す件だが、首尾はどうだった。 ██上級研究員: 結論から言えば実験は失敗です。 乾烏博士: それは残念だな。何が起きたか一から詳しく教えてくれ。 ██上級研究員: はい。私が体験したイベントー934内の部屋は水を抜いてある25mプールであり、SCP-934-JP-1はASIMO2でした。SCP-934-JP-1が人間ではないことに少し戸惑いましたが、████博士を呼び出すよう伝えると25mプールの一部が引き戸のように開いてSCP-934-JP-1が一時退出し、4分ほどして████博士を連れたSCP-934-JP-1が戻ってきました。 乾烏博士: ████博士を呼び出すところまではうまくいったということだな? ██上級研究員: そうです。事前に渡された████博士のプロフィールも全て知っていましたし、生前吸っていた煙草の銘柄などの、データベースにないことについて誘導尋問をしても引っかかりませんでした。しかし████ー███理論に関する質問をすると、急に回答がしどろもどろになりました。考え込むような動作を交えながらわずかばかりの回答が得られましたが、総合するとデータとして残されている以上の回答はしてくれませんでした。 乾烏博士: そうか。他に気になったことはあるかい? ██上級研究員: そうですね……生前の████博士に比べて優しくなった印象を受けました。 乾烏博士: というと? ██上級研究員: なんというか、こういっては悪いのですが生前の████博士は研究に関すること以外には目もくれず、私みたいな部下のことはどうでもいいような冷たい態度を取ることがしばしばありました。しかしイベント-934内の████博士の第一声は「まあ足を崩して楽にしなさい」と、プールの床に正座していた私を気遣うようなものでした。それにインタビュー中もずっと穏やかに笑っている様子でしたし……別れ際には「これからも期待しているよ。私はもういないがこれからは君たちが頑張る時代なんだ」と挨拶をして固く握手をしてくださいました。社交辞令すらおろそかにするようなあの博士がここまで……とこれは言い過ぎかもしれませんが。実際博士は生前も内心ではそういう風に思っていたのかもしれませんね。 乾烏博士: ……なるほどな。ありがとう。インタビューを終了するよ。 <録音終了> 終了報告書: 有用な成果が得られなかったことは残念である。しかし、████博士が理論について全く説明しなかったことに違和感を覚える。学術的なことに関してあれほど饒舌な財団職員も珍しかったはずだ。彼は本当に████博士本人なのか?実験の方法を変えてみる必要があるかもしれない。 インタビュー記録005 - 日付2001/05/26 対象: D-42771 インタビュアー: エージェント・青龍寺 実験概要: D-42771にイベント-934中でSCP-934-JP-2として過去に自身が暴行、殺害未遂を行った自身の娘を呼び出させ、コミュニケーションをとらせる。 付記: D-42771の配偶者の意向により、D-42771には娘は死亡したとの通達がなされていた3。 <録音開始, 2017/05/26> エージェント・青龍寺: では、あなたがどのような夢を見たのか、順を追って教えてください。 D-42771: あんたもその何とかって機械で見てたんだろ?……まあいいけどよ。気が付くとここに来る前に住んでたアパートにいてよ。一緒に小汚えババアが部屋の中にいんのよ。思わずぶん殴ってやろうかとしたんだけどよ、ババアがお会いしたい死んだ方はいませんか、みたいなこと聞いてきてさ。あのババア殴ったらこの自由に動ける夢も終わっちまうらしいし、[削除済]して殺したガキ呼んでくれよってちゃんと頼んだんだよ。俺エラくね? エージェント・青龍寺: ……続けてください。あとなるべく要点をまとめて話すように。 D-42771: ……したらババアが窓から飛び降りて部屋から出てってさ。おいおい大丈夫かよって窓のそばに見に行こうとしたらすぐジャンプして戻ってきた。例のガキ背負ってたままでだぜ?スゴいと思ったね。それからは……うーっとな…… エージェント・青龍寺: 私は事前にその女の子と会話をしていくつかの事柄を確認するよう指示を出しておきましたが、あなたはそうしなかったようですね。 D-42771: うるせーな!どうせ俺はシャバには戻れないんだろ?仮に戻ったからってどうすりゃいい?そもそもあいつがあんな虐めて欲しそうな目してんのが悪いんだろうがよ。俺は何にも悪くねえ。俺の目を見るなり泣き出しやがってよ![部屋の外に待機していた警備員に取り押さえられる]どうせ夢は終わっちまうんだしあいつが生き返れたのも俺のおかげだ。だからもう一度 エージェント・青龍寺: いくら人員が不足しているからといってあなたに協力を頼んだのは間違いでした。インタビューを終了します。 <録音終了> 終了報告書: D-42771が実験に対しここまで非協力的な態度を取るのは予想外だったが、実験の目的としていた方の予想はどうやら当たっているようだ。 インタビュー記録008 - 日付2001/05/28 対象: エージェント・青龍寺 インタビュアー: 乾烏博士 実験概要: エージェント・青龍寺にイベント-934中でSCP-934-JP-2として過去に同機動部隊に所属していたエージェント・████を呼び出させ、エージェント・青龍寺が答えを知りえないエージェント・████の個人情報についての質問を5題行わせる。 <録音開始, 2001/05/28> 乾烏博士: 録音を開始します。イベント-934によりエージェント・████をもとにしたSCP-934-JP-2を呼び出し、あなたが答えを知らないはずの質問をしてもらったと思いますが、どうでしたか。 エージェント・青龍寺: 「初めて買ったCD」と「実家で飼っていた犬の名前」は回答が得られましたが、それ以外は回答は得られませんでした。回答が得られた2題についてはイベント-934終了後に正しい答えと照合しましたが、両方とも間違ったものでした。 乾烏博士: ありがとうございます。SCP-934-JP-1の外見とイベント-934内の部屋について教えてください。 エージェント・青龍寺: SCP-934-JP-1として現れた人型存在はスーツ姿の私自身でした。そしてイベント-934内の部屋は私たちが所属していた機動部隊の詰め所でした。私がエージェント・████を連れてくるように言うと、SCP-934-JP-1は30秒もせずに戻ってきて、そして……ああ…… [対象は左手で目元を覆い、8秒間ほど沈黙した] 乾烏博士: インタビューはこれで終了しますが、何か言いたいことはありますか?何でもいいです。 エージェント・青龍寺: あいつ、俺を励ましてくれたんです。「もう俺は死んだんだからそんなに気に病んでも仕方ない。前向いて生きろ」って。俺だってさすがにここまで実験の結果を見てきて、イベント-934の起源について頭が回らないわけではありません。俺は、俺自身に、あいつが死んだことを許してほしいって考えてたんですよ。わざわざ希望してこの実験の被験者になったのに、そのことに気付いた瞬間、なんというか。 [対象は再び左手で目元を覆い、13秒間ほど沈黙した] 乾烏博士: 自分の精神を守るために他人に許してほしいと考えるのは、人間として何も間違ったことではありません。……インタビューを終了します。お疲れ様でした。 <録音終了> 終了報告書: イベント-934は被験者の記憶に基づいて生成された表象であるという仮説がより確かなものとなったといえます。また、エージェント・青龍寺にはカウンセリングによる適切な治療を施すべきです。 補遺: 2001/08/13、土地管理人としてSCP-934-JP該当エリア周辺に定住していたエージェント・██から、SCP-934-JPの影響を受けた最も古い例だと思われる人物についての報告がありました。対象は、近隣住民の主婦██ █氏の甥であり、1996/03/23に交通事故に遭って死亡した██ ██氏(当時9歳)です。対象の両親は1996/01/09に自宅で発生した火事によって焼死していました。以下はSCP-934-JPの影響を受けたことが読み取れる、██ ██氏の遺書です。 この前███おばさんと一しょに近くのお山にのぼりました。そしたら急にたおれてしまいましたが、ゆめの中でお父さんに会えました。お父さんが「お母さんに会いたいかい」って聞いてきたから、会いたいって言ったらお母さんもつれてきてくれました。お母さんは「辛いことがあったらいつでも会いに来てね」っていってくれました。お父さんは会社に行かなくてもよくなったからか、ずっとにこにこしていました。おばさんはとても心配してたけど、ひさしぶりに3人でお家ですごせて楽しかったです。 だけどお母さんはまた会いに来てねって言ってましたが、何回ねても会えません。このごろは学校から帰ったらずっとねてるのに。なんでかは分からないけどとてもつらいです。ご飯を食べさせてくれたおばさん、一しょに遊んでくれた██くん、███くん、クラスのみんな、██先生、ごめんなさい。 お母さんとお父さんの待ってるところにいきます。           ███ Footnotes 1. 生前████博士が専門研究を行っていたミーム学に関する理論。その内容上資料として正確な形のものが残っておらず、後任の研究チームにより内容の復旧と研究が進んでいる。 2. 本田技研工業により開発された二足歩行ロボット。██上級研究員が見たのは2代目のそれに最も近いデザインだった。 3. 服役後、D-42771が自身の娘に報復するのを恐れたためである。ただし、D-42771の配偶者が認知していなかった3件の余罪により、D-42771は娘の生死に問わず既に死刑が確定していた。
scp-935-jp
評価: +63+–x アイテム番号: SCP-935-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-935-JPの原本は透明なクリアファイルに挟み、不透明な耐水封筒に収容します。職員は決してSCP-935-JPを直視しないで下さい。適時剥離したSCP-935-JP-1を清掃する必要がありますが、その性質が不明の為、清掃に当たる職員は念のため感染症対策セットⅡ-V-Dを着用し、SCP-935-JP-1との皮膚接触を避けて下さい。SCP-935-JP-1と接触した全ての物体はレベル2感染症対策手順-汚物処理手順の適応となります。SCP-935-JPの複製は1枚のみ作成・利用する事が許可され、原本と同様の異常性を持つ物として扱われます。保管場所はサイト-8181の重要機材保管室です。 説明: SCP-935-JPは縦60×横80㎝の世界地図です。外見上は一般的な地図と類似していますが、表記された国の地形が異なります―例えば、日本国は同じ大きさの沖縄県で表され、北アメリカ大陸の形状は歪められた北海道に見えます。その他の国々も全て、よく似た日本国の地形に置き換えられています。SCP-935-JPに表記された”国”を直視すると、それが原本か複製かを問わず、対応する日本国の”都道府県”に対して「外国である」と認識する様になります。これは人種・言語・その他文化全てに影響を及ぼします。例えば北アメリカ大陸(形状は北海道)の部分のみ直視した者に対し、北海道以外の都府県に関連する文化を見せると、知識が正しい限り正答する事が出来ます。しかし北海道の文化について質問をすると、全て北米に関する文化であると答えます。 これらの認識は、必ずしも詳細かつ適切に置換される訳ではありません。例えばSCP-935-JPの日本国(形状は沖縄県)を見ると、沖縄県に関連する全ての文化を”日本の文化”と認識しますが、これは大雑把に「日本の物だ」と感じるだけで具体的に何”県”の物だ、という認識には至りません。この様な現実との差異から、被験者は外界への印象に多大な違和感を持ち、相互に交流する事を困難にしています。 SCP-935-JP-1はSCP-935-JPの原本表面で図面を構成するインクです。定期的に剥離・液状化し、原本表面には新たなSCP-935-JP-1が産生されます。市販のインクと成分的には大差ありませんが、匂いを嗅ぐと不明な外国のイメージを抱きます。この”新陳代謝物”がどの様な意味を持つのかについて、財団の学者はいくつか仮説を立てています―再生維持や自己複製に関与するなど―しかし今のところは、ただ生成され続けるのみです。 SCP-935-JPの原本は、2011/07/31に福島県の██████において発見されました。発見当時接触したエージェント・███は全ての図面を直視した為、ほぼ全ての日本国土と文化を認識出来ない状態にあります。エージェント・███はSCP-935-JPの被験者として任務を解かれ、沖縄県にあるサイト-████で療養中です。 エージェント・███と精神科医との交流日記から抜粋: 故郷が恋しい。知人と言われたのはどう見てもアメリカ人で、自分で話してさえ方言は意味の分からない外国語だ。ここの飯も悪くないけれど、でも和食ってだけで…そう思えるだけで。故郷の味が食べたい、お袋にも会いたい。先生、帰りたいよ。俺の故郷はどこに行ってしまったんだ?
scp-936-jp
評価: +51+–x 評価: +51+–x クレジット タイトル: SCP-936-JP - 醒めない悪夢 著者: ©︎amamiel 作成年: 2017 評価: +51+–x 評価: +51+–x 確保直後のSCP-936-JP。虚脱状態下にある。 アイテム番号: SCP-936-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 現在、SCP-936-JPは収容されていません。SCP-936-JP出現指定区域の封鎖は維持され、自動装置を用いた監視が継続的に実施されます。また、当該区域において異常実体の出現が確認された場合、即座に機動部隊む-16("閂")が事態の対応に当たります。その際、対応責任者は必要に応じてGRDユニットの要請を行ってください。 + 20██/██/██追記 - 20██/██/██追記 SCP-936-JP-αはサイト-81██の霊的実体隔離房に収容され、継続的な麻酔投与により虚脱状態下に置かれます。SCP-936-JP-αの様子は室内カメラで常に監視されており、緊急時には医療担当者が対応へと当たります。 説明: SCP-936-JPは、京都府██郡███を中心とした半径5km圏内に出現する、20代程度のモンゴロイド男性に酷似した人型実体です。身体的には、同年代の平均な日本人男性との差異は確認できません。その一方で、特筆すべき点として、常に何らかの"仮装/装備"を身に着けた状態で出現することが挙げられます。以下は、現在までに確認された"仮装/装備"の一例です。 各種火器を装備した兵士。最も多く確認される姿であり、詳細な武装は出現時ごとに異なる。 黒いローブを身に纏った姿。初出現時を含めて4回確認されており、杖や帽子などを伴う場合もある。 甲冑を身に纏った中世ヨーロッパ風の騎士。多くが何らかの動物に騎乗して現れる。 当該区域への出現後、SCP-936-JPは周囲の存在に対して何らかの行動を開始します。その内容は「人間を武器で攻撃する」「建造物を爆破物で破壊する」といった攻撃行為から、「カラースプレーで要領を得ない落書きをする」「捕らえた家畜を調理する」「詳細不明な歌を大声で歌う」といった不可解な行為まで様々であり、SCP-936-JP自身の意図や目的は不明です。この際、発話やジェスチャーなどを用いた対話の試みは全て無視されます。それに加え、優先的に機動部隊員を対象として行動を取る傾向が報告されています。これらの理由もあり、現在までにSCP-936-JPとの意思疎通およびインタビューの試みは成功していません。 また、SCP-936-JPに対して実施された非接触測定の結果、周囲の現実性濃度1と比較して、ある程度の高い内部ヒューム値2を保持していることが判明しています。このため、SCP-936-JPは「簡易的な物体の生成/出現」「軽度の物理法則湾曲」といった小規模な現実改変を行使可能であり、例外を除いて自身の"仮装/装備"に合わせた改変を発生させる様子も確認されています。 その一方で、SCP-936-JPは通常の人型実体同様、頭部あるいは身体の大部分を破壊することで容易に終了可能です。この際、終了された死体や生成物は空気中へと霧散するようにして非実体化します。それに加え、上記のような終了処理を行わなかった場合にも、不定時間の経過で自発的に非実体化することが確認されています。この非実体化後、SCP-936-JPは不規則なタイミングで当該区域内に再出現します。再出現に要する時間は、短ければ数分程度、長ければ十数時間と一定しません。なお、以下はSCP-936-JPの出現および交戦に関する記録の一例です。 + 出現記録(抜粋) - 出現記録(抜粋) 記録936-JP-1 – 日付19██/██/██ 出現時間帯: 00:37 ~ 07:05 概要: SCP-936-JPは当該区域の中心位置に出現。機動部隊が到着するまでの約100分間、無差別に周辺家屋へと放火を行い、家屋から脱出した住民や家畜に対する攻撃を続けた。機動部隊との交戦開始から31分後、SCP-936-JPは終了、非実体化するが、その12分後に再出現して機動部隊へと奇襲を行った。一定の不死性を有すると判断され、拘束が実施されるも時間経過による非実体化のために効果を示さず。 補遺: 出現時、SCP-936-JPはローブを身に纏っており3、「火の玉を放つ」「岩石を飛ばす」「電気を発生させる」などの攻撃手段が確認されている。一方で、機動部隊による一度目の終了後以降は武装した兵士に扮し、出現させた複数の銃火器を用いた攻撃を行った。 分析: 初めてSCP-936-JP出現が報告された際の記録。一度目に終了されて以降、兵士の姿に扮したのは機動部隊に対抗するためか。また、上記内容からも分かる通り、SCP-936-JPは一見して理性を欠いているようにも見えるが、どちらかといえばタガが外れているような印象を受ける。 記録936-JP-12 – 日付19██/██/██ 出現時間帯: 01:35 ~ 07:14 概要: SCP-936-JPは当該区域の南部位置に出現すると、機動部隊が駐在する区域外キャンプの方向へと移動を開始。前回の出現時と同様に、エアロゾル麻酔散布による脅威度低減後に物理的拘束を行う手筈だったが、後述の理由により失敗。その4分後に接触し、出現時間帯中に合計4回の交戦を行った。 詳細: 出現時、SCP-936-JPは西洋甲冑を身に纏った上で剣を手にしており、馬に騎乗した状態だった。また、麻酔散布に際してガスマスクを着用し、こちらの戦術に対する明らかな適応化が見られた。しかし、武装が剣のみであったことから容易に拘束でき、2時間の物理拘束に成功。それ以降の同日中の再出現時には、武装した兵士に扮した姿のみで現れた。 分析: 初交戦以降、明らかに機動部隊を対象とした行動が目立っている。繰り返し終了されている状況から来る復讐心に起因するとも判断できるが、一方で交戦した機動部隊員は「SCP-936-JPは楽しんでいるようだった」とも報告を行っている。出現時に見られる多様な仮装もそういった感情の表れなのだろうか。 記録936-JP-37 – 日付19██/██/██ 出現時間帯: 02:21 ~ 07:32 概要: SCP-936-JPは当該区域の北部位置に出現。前回までとは異なり、身を隠しながら区域外キャンプへと徐々に進行。その10分後に接触し、出現時間帯中に合計3回の交戦を行った。また、同日に申請承認された、旧型の非物質変位無効装置(nPDN)の実地運用が行われたものの、永続的な拘束の効果は示さず。 詳細: 出現時、SCP-936-JPはアメリカ陸軍特殊部隊のグリーンベレー隊員に酷似した装備一式を身に纏っており、顔は派手な迷彩のペイントで装飾されていた。交戦時はゲリラ戦術と思わしき行動を取っていたが、いずれも正確な形式のものではなかった。また、叫びながら上空へと向かって銃を乱射するなど、今まで以上に不可解な行動も確認されている。 分析: 関連性は不明だが、SCP-936-JP出現の直前まで、深夜放送にて「████4」の再放送が行われていた事実が確認されている。SCP-936-JPがこの映画の内容から影響を受け、付け焼刃なゲリラ戦術や奇妙な行動を取ったと結論付けるには不十分だが、留意しておくべきか。 平均的なSCP-936-JP出現時間帯。クリックで拡大。 また、ここで上記の記録群より得られたSCP-936-JP出現時間帯の傾向を付属図に示します。この図より「深夜0時から午前7時までの時間帯に集中して出現している」といった明確な出現傾向の存在が確認できます。それに加え、例外的に毎週土・日曜日のみ、上記の出現時間帯が2,3時間程度ずれ込む傾向にあることも分かっています。 SCP-936-JPは19██/██/██に初めて出現が確認されました。当時、機動部隊が対応に当たり、深夜0時から午前7時までの間に5度の交戦が行われました。その後、午前7時を過ぎた時点でSCP-936-JPが再出現しなくなったことで事態は一時的な収束を迎えました。この事態を受け、今後のSCP-936-JP再出現の可能性を考慮した結果、当該区域周辺にはカバーストーリー"地下断層"が適用され、全住人への即時避難勧告と目撃者/被害者に対する記憶処理が実施されました。 付記A: 収容初期の19██年時、SCP-936-JPに対する物理的な拘束手法は一定以上の効果を示さず、当時は機動部隊による威力的な封じ込め対応5を実施する他ありませんでした。この状況を受け、試験段階にあったシュタイナー・レヴィ非実体化抑制装置6の使用申請が承認、実地運用が為されました。その結果、二度目の試行時にSCP-936-JPを永続的な拘束化に置く成果を上げただけでなく、「拘束中にSCP-936-JPが大きな損傷を負った場合、非実体化抑制効果も失われる」という実例データの獲得により、旧特別収容プロトコル確立に大きく貢献しました。 付記B: 収容後、SCP-936-JPに対する必要最低限の検査のみが承認、実施されました。この検査の結果、身体構造は通常の人間と同様であり、遺伝子等の各構成要素にも異常な点は確認できませんでした。また、各データベースからDNA型が一致する人物を発見できておらず、現在までに血縁関係者が存在した痕跡もありませんでした。 その一方で、SCP-936-JPは老化の兆候を示しておらず、収容以降から外見の変化も見られません。それに加え、食事等による栄養摂取を必要としておらず、睡眠を行う様子も一切観察できていません。また、薬剤投与を行った場合であっても昏睡・睡眠状態に陥ることはなく、軽度の虚脱状態の反応を見せるのみでした。 事案936-JP-A: 20██/██/██、拘束下のSCP-936-JPが重篤な不整脈を起こす事態が発生しました。医療担当者が対応に当たりましたが、その最中にSCP-936-JPが背を仰け反らせ、身体を激しく痙攣させ始めたために対応は一時中断されました。この異常な反応は数分おきに連続して観察され、その間にSCP-936-JP周辺の機器は反応の度に瞬時的な電流発生を検出していました。この観察を行った職員は、SCP-936-JPの反応が「電気的除細動治療を受ける患者」の様子に酷似していたと評価を行っています。 この約1時間後、非実体化抑制下にもかかわらず、SCP-936-JPは収容室内から消失しました7。SCP-936-JPが永続的な収容下に置かれてから██年の間、収容違反を含む異常事態、医療を必要とする事態が一切発生していなかったこともあり、依然として不整脈の発生原因、それに付随する異常反応の手掛かりは得られていません。 事案936-JP-B: 上記事案によるSCP-936-JPの消失から2時間後、当該区域内に60~70代程度のモンゴロイド男性に酷似した人型実体(以下、SCP-936-JP-α)が出現しました。この事態を受け、即座に機動部隊が派遣され、対象の確保に当たりました。しかし、SCP-936-JP-αはSCP-936-JPとは大きく異なった行動形式を取り、機動部隊を認識すると同時に怯えるようにしながら逃走を試みました。その際、SCP-936-JP-αは転倒したことで自身の頭部を地面に打ち付けて終了し、SCP-936-JP同様に霧散するようにして非実体化しました。 この非実体化から20分後、当該区域内にSCP-936-JP-αが再出現しました。捕捉時、SCP-936-JP-αは激しく錯乱しており、機動部隊を認識すると即座に自身で生成/出現させた拳銃を用いて自己終了、再び非実体化しました。およそ40分後、上記反応を考慮した上での伏兵試行が実施され、結果として再出現したSCP-936-JP-αが自己終了する前に拘束、収容することに成功しました。 収容後、実施された各種検査の結果は、SCP-936-JP-αがSCP-936-JPと完全に同一の性質を有することを示しました。それに加え、DNA型鑑定の結果はSCP-936-JPとSCP-936-JP-αが同一人物であることを示しました。その一方で、人相/歯牙/骨格鑑定の結果はDNA型鑑定結果を完全に否定するものであり、依然として関係性は判明していません。現在、SCP-936-JP-αは耐電仕様のGRDユニットを用いた上で収容下に置かれています。 脚注 1. ヒューム値(Hm)で表される現実性の強度。正常な空間では1Hm/cm3を示します。 2. 周囲の現実性濃度0.85~0.94に対して、内部ヒューム値1.6~1.8程度。これは脅威の低いクラスⅠ現実改変能力者に相当する数値です。詳細は「ベンソン・R. 現実歪曲実体分類. 財団研究誌, 3(7), (1921), P10-58.」を参照ください。 3. ファンタジー作品に見られる大衆的な「魔法使い」の外見に酷似。 4. 元グリーンベレー隊員の戦いを描いた映画作品。 5. エアロゾル麻酔を用いて虚脱状態に置いた上で、可能な限りの時間を物理的に拘束。それが不可能である場合は、適宜終了措置を実行。 6. Steiner-Levi's Ghosting Restraint Device: 一度完全な物理的実体を得た霊的存在の非実体化を阻害し、永続的な拘束/収容下に置く事を目的として作成された装置。 7. 上記電流発生の影響による装置の異常とも指摘されていますが、明確な原因は現在も不明です。
scp-937-jp
評価: +321+–x レコードプレイヤーに入ったSCP-937-JP アイテム番号: SCP-937-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-937-JPは財団の標準小型アイテム収容ロッカー内に保管してください。財団のWebクローラを運用し、SCP-937-JPの音に類似した音源を検閲し、ネット上から削除してください。実験としてSCP-937-JPを再生する場合はセキュリティクリアランスLv3以上の担当研究員2人以上の許可が必要です。SCP-937-JPは必ず音圧レベル差等級80以上の遮音性能のある防音室(937-JP-セーフ仕様と呼びます)の中で再生してください。SCP-937-JP-1は発見され次第生きたまま鎮静され、937-JP-セーフ仕様の防音室の中で確実に終了されます。SCP-937-JP-1が広範に発生した場合、機動部隊へ-7("静かな夜")がプロトコル"芳一"を実行します。 説明: SCP-937-JPは████社製のLPレコード盤です。レコードレーベルの周囲には未知の言語が三重の円形に縁どられており、中央部のタイトルには「全ての救われ得ぬ人々へ」と英語、フランス語、████語で記載されています。再生すると、不明な性別の人間の叫び声が30分間途切れず流れ続けます。この音を人間が認識した場合、後天的に共感覚者となり、全ての五感への刺激に対して別の五感での感覚を同時に得るようになります。この状態になった人間をSCP-937-JP-1に指定します。SCP-937-JPの音を認識した際の影響は、財団の記憶処理では取り除けないことが確認されています。 SCP-937-JP-1が五感の一つに何かしらの刺激を受けた場合、残りの四つの感覚は全て同時に異なる刺激を受け取ります。刺激がSCP-937-JP-1にとって「快」である場合、同時に受ける四つの刺激はSCP-937-JP-1にとって「不快」とされるもので、逆も同様です。例として、SCP-937-JP-1が「好きな食べ物を食べた」場合、味覚で快の刺激を感じる一方で触覚、嗅覚、視覚、聴覚の全てで不快刺激を感じます。この症状により、SCP-937-JP-1はこれまで自身が好んで実行していた行動を取らなくなり、避けていた行動を自発的に取るようになります。結果としてSCP-937-JP-1の周囲の衛生環境は急激に悪化し、不眠、栄養失調や脱水症状、自傷による感染症等を複合的に発症して死亡します。死亡と同時にSCP-937-JP-1は数分間絶叫し、この声もSCP-937-JPと同様の効果を持ちます。SCP-937-JPを聞かせたDクラスによる脳波測定実験の結果、死亡時のSCP-937-JP-1は通常の人間が日常生活において受け得ないような強い快刺激を五感全てに受けていることが解りました。 + 実験記録の抜粋を表示 - 実験記録の抜粋を隠す 実験記録937-JP-1 - 日付19██/██/██ 対象: D-19662(SCP-937-JP-1に指定済) 目的: SCP-937-JPによって生じる共感覚の内容確認 実施内容: 五感それぞれに被験者が快と感じる刺激を与え、それに伴って受ける共感覚を確認する。 結果: 刺激と受けた感覚はそれぞれ下の表のようになった。 刺激\受けた感覚 視覚 聴覚 嗅覚 味覚 触覚 娘の写真を見る 変化なし 吐瀉音 排水溝の匂い キュウリの味 ███を爪で引っかかれる感覚 ロックバンド███の楽曲を聞く 堕胎のイメージ 変化なし [編集済] 強烈な苦み 瞼を針で刺される感覚 ██社の香水を嗅ぐ [編集済] 黒板を引っ搔いた音 変化なし 電池の廃液 腸が引き裂かれる感覚 クリームコロッケを食べる 道で排便中の中年男性 排泄音 大便の匂い 変化なし ヌルっとした手触り 毛布に触る 火傷跡のイメージ 歯を削られる音 下水の匂い 生魚の内臓 変化なし 分析: 異常性は確認された通り。D-19662は与えられた全ての快刺激について、極めて不快だと感じた。共感覚で受けた刺激の元となるものは実験室のどこにも確認されなかったが、脳波測定においては全ての刺激に対して被験者が「実際に感じている」事を示していた。 実験記録937-JP-2 - 日付19██/██/██ 対象: D-19662(SCP-937-JP-1に指定済) 目的: SCP-937-JPによって生じる共感覚の内容確認 実施内容: 五感それぞれに被験者が不快と感じる刺激を与え、それに伴って受ける共感覚を確認する。 結果: 刺激と受けた感覚はそれぞれ下の表のようになった。 刺激\受けた感覚 視覚 聴覚 嗅覚 味覚 触覚 頭部が[編集済]された男の写真 変化なし 川のせせらぎ 燻製 ライムジュースの味 頭を撫でられる感覚 金属製の食器が擦れ合う音 花畑のイメージ 変化なし マールボロ・ブラック・メンソール [編集済] 暖かなジャケットを羽織る感覚 大便の匂い 快晴の空 快活な笑い声 変化なし メリーゴーランド・パフェ 性的快楽 生魚の内臓 自宅のイメージ [編集済] 入浴剤を入れた風呂 変化なし 握手した感覚 金槌で指を殴打する 成長後の娘のイメージ パパ、大好きと呼ぶ声 娘の髪の香り 肉汁の滴るハンバーグ 変化なし 分析: 実験記録937-JP-1において快刺激に伴って得られた不快刺激を実際に与えても、同様の快刺激は再現しないことが判明した。被験者は与えられた不快刺激について、結果的に快と感じた。 補遺: 被験者は最後の実験の直後、命令を無視して自身の小指を殴打し始めたため鎮静させた。 + インタビュー記録を表示 - インタビュー記録を隠す インタビュー対象: D-19662 インタビュアー: ███博士 前記: 前述の実験後、D-19662の経過観察を行った。D-19662は配給された食事を取らず衣服や排泄物を食べようとしたり、ほとんど一睡もせずに体中を殴打し続ける等の末期症状が見られた為、拘束し点滴等による延命措置下にあったもので、このたび延命措置終了前に対話を試みた。研究員の声は被験者にとって快刺激にあたり他の五感で不快感を感じると申し出があったため、通常の人間が不快に感じる高周波の合成音声で対話を行った。なお安全の為D-19662は937-JP-セーフ仕様の防音室に隔離し、インタビューは対面せずスピーカーを通した音声のみで行っている。 <記録開始> ███博士: こんにちは、D-19662 D-19662: [無言] [D-19662は反応せず、用意された椅子を無視して床に這いつくばっている] ███博士: 何をしているんですか? D-19662: すみません、さっき吐いた[編集済]を舐めていました。こうすると気持ち良くて。 ███博士: 普通に座ることはできませんか。 D-19662: 座ると気持ち悪くて。あの、カブト虫の甘臭い匂いを感じてしまって、今は苦手です。 ███博士: なるほど。吐瀉物を舐める行為には不快感を感じていますか? D-19662: いいえ、あの、はい。気持ち悪いです、また吐きそうになるけど、でも他がその、とっても気持ちいいので、やってしまいます。 ███博士: 普通の食事をとるつもりはありませんか。 D-19662: 腹はめちゃくちゃ減ったんですけど、それがまた凄く[編集済]でやめられなくて。水を飲むと酷いものを見るんです、さっきもそれで吐いてしまって。 ███博士: なるほど、喉の渇きにも快刺激が付随しているのか…。質問を変えましょう。貴方は体の殴打に伴って貴方の娘さんのイメージや声を感じると仰っていましたが、実際の娘さんに対する意識に変化はありましたか? D-19662: 娘に会いたい。会いたいんです、でも会いたくない…顔も見たくない。どうしようもないんです。愛している、愛していたんです。でももう僕にはあの子より、痛みの中で感じるあの子の方が大切になってしまった。顔を思い出しただけで、臭くてたまらない。でも頭をぶつけると、とってもかわいく笑って… [D-19662は話しながら突然机の角に頭をぶつけ始める] ███博士: D-19662!やめなさい!指示に従わない行動は貴方の終了措置の理由になりますよ。 D-19662: あの子に、本当のあの子に会いたい。終了ですか?あぁ、そうか。 [D-19662がカメラを見上げて笑う] ███博士: D-19662? [D-19662は突如、机の角に向かって勢いよく頭をぶつけた。D-19662の頭蓋骨が大きく陥没したため、安全の為スピーカーはこの時点で切断された。以下の音声は防音室内部で録音された] D-19662: [数秒間絶叫]、やっぱり!やっぱり!███!ああ気持ちいい![編集済]が近づいてくる!抱きしめてくれ!愛してる![数秒間絶叫]、あなたは[編集済]!もっと!もっと見たい! [D-19662は更に両手の親指を眼窩に突き立て、自身の眼球を抉り出した。] D-19662: [数秒間絶叫]、やっぱり!よく見えるよ![編集済]が気持ちいい!もっと近づいてくる![数秒間絶叫]、███、ただいま!パパだよ![編集済]は久しぶり!やっぱり! [以降、D-19662は致命的な自傷行為を続け、3分40秒間に渡り断続的に絶叫をあげながら、長女の名前と未知の存在の名前を呼び、断片的な会話を続けた] D-19662: あっ。 [この時点でD-19662の心拍が停止した。同時にD-19662は大きく息を吸い込み、5分間途切れなく絶叫した。] D-19662: [不明な呟き] <記録終了> 補遺937-JP-01: D-19662の最後の呟きは録音から確認できなかった為、映像記録の読話による解析を実施しました。呟きの内容は「あぁ、僕は幸せ者だ」であったと推測されています。
scp-938-jp
評価: +247+–x 警告: この情報へのアクセスは制限されています 極秘厳重収容案件: SCP-938-JPに関する全ての情報はエリア-8199管理者、日本支部理事会、O5評議会によって管理されています。許可無くこれらの情報にアクセスした場合、財団は直ちにあなたの雇用を終了し、機動部隊があなたの拘束のために出動します。あなたがレベル4以上のセキュリティクリアランスを持つ場合、手順に従い資格を提示することで情報へのアクセスが可能です。この情報へのアクセス記録はあなたの職員コードと共にエリア-8199管理者へと送られます。   職員コード bd8b6ad13772f985fba23547b6d3aaa3_1711191080 パスワード 3c3d5236d2fb5082dbc831bfd4d6a753_1711191080 第一次認証: クリアランスを提示せよ レベル4クリアランスを確認: 認証続行 第二次警告: この情報にアクセスするためには、エリア-8199管理者から与えられるパスコードと日本支部理事会からの認証が必要となります。コードを所有していない場合、正式な手順に則って申請を行い、認証を獲得してください。認証の偽造は日本支部理事会によって即時の終了措置を含む厳罰に処せられます。   職員コード bd8b6ad13772f985fba23547b6d3aaa3_1711191080 パスワード 3c3d5236d2fb5082dbc831bfd4d6a753_1711191080 第二次認証: パスコード-8199を提示せよ 正式なパスコードを確認: 認証続行 最終警告: SCP-938-JPに関する情報を閲覧した者には機密保持の義務が課せられます。今後SCP-938-JPに関する情報の漏洩が確認された場合、あなたにはエリア-8199管理者からの召集と尋問に応じる義務が生じ、同意なしでの拘留やクラスF記憶処理を受ける可能性があります。本件は最終認証の実行が確認された時点で同意したものとして扱われます。   職員コード bd8b6ad13772f985fba23547b6d3aaa3_1711191080 パスワード 3c3d5236d2fb5082dbc831bfd4d6a753_1711191080 最終認証: 認証-81を提示せよ 日本支部理事会より許諾を確認: 情報を開示します SCP-938-JP アイテム番号: SCP-938-JP オブジェクトクラス: Safe Euclid 特別収容プロトコル: 機密性維持のため、SCP-938-JPは日本支部内の13の関連施設へと定期的に移送され、専用の特別危険物収容ロッカーに収容されます。収容先が変更される度、以前の担当職員と収容に関わった人員、および移送を担当した人員は全員クラスF記憶処理を受けてください。収容に関わる全体統括はエリア-8199の管理者が担当し、エリア管理者が後任へと引き継がれる際には前管理者はクラスF記憶処理を受け、SCP-938-JPの全記憶を抹消しなければなりません。もし、これらの記憶処理が何らかの理由で解除され、SCP-938-JP関連の記憶を取り戻した対象が確認された場合、プロトコル"クラスG"による再度の記憶処理か、即時の終了措置が現担当職員によって実行されます。 SCP-938-JP専用の特別危険物収容ロッカーは各施設の地下500mに建造され、そこに辿り着くまでの経路は複雑に迷路化され、20の物理的施錠、22の電子的施錠、44の物理的トラップ、50のミーム的トラップ、7の異常存在が配置され、すべての施錠とトラップは3ヶ月毎に更新されなければなりません。収容ロッカー本体にも7重の施錠と9重のトラップ、そして現実改変による強奪を防ぐスクラントン現実錨が設置され、最終的な開錠にはエリア-8199管理者と日本支部理事会、そしてO5評議会からの承認を示すアクセスキーが必要です。 担当職員は1ヶ月に1度、SCP-938-JPの収容が正しく維持されているかを確認する必要があります。担当職員は収容確認を実施する日時と、自身が心身共に健康でありSCP-938-JP以外のオブジェクトに暴露していないことを示す検査証明書を添えて、エリア-8199管理者の機密アドレスへとミーム処理により暗号化された申請書を送ってください。送信された申請書はエリア-8199管理者から日本支部理事へと送られ、日本支部理事から日本支部理事会の審議にかけられ、理事会の承認を得た申請書はO5評議会へと送られ、評議会による承認をもってSCP-938-JPの収容確認プロトコル"D&S"が許可されます。 申請が受諾されると、プロトコル"D&S"実行のための機動部隊ろ-9("パーティ")が召集され、SCP-938-JPを収容中の施設に派遣されます。収容ロッカーへと続く経路への突入からSCP-938-JPへの到達、そして帰還までの全プロトコルの完了は24時間以内に行われなくてはなりません。時間内の帰還が叶わなかった場合には致死性の神経ガスが自動的に散布され、経路内に残る全スタッフの終了措置が行われます。 同プロトコル実行に際しては、補助要員として必要数のDクラス職員を動員することが許可されます。もしプロトコル完了後に終了していないDクラス職員が残存する場合、対象には機密保持のためのクラスF記憶処理または終了措置が施されます。 SCP-938-JPの収容は極めて優先度の低い事項です。もしSCP-938-JPに収容違反の危機が迫った場合、収容に関わる全ての施設は総力を挙げて阻止しなければなりません。エリア-8199管理者はSCP-938-JPの収容違反を阻止するために、プロトコル"ゲイリー・クエスト"の発動権限と、機動部隊さ-1から6までの指揮権が与えられます。プロトコル"ゲイリー・クエスト"が発動されると、各機動部隊は直ちに行動を開始し、収容違反の要因となるあらゆる因子を排除します。そのための危険が予想される場合、Dクラス職員を適時動員することでリスクの削減を行うことが許可されます。職員の補充は随時行われます。 プロトコル"ゲイリー・クエスト"をもってしてもSCP-938-JPの収容違反を阻止できないと判断された場合、エリア-8199より核弾頭が発射され、収容中の施設の破壊と全職員の処分が実行されます。 説明: SCP-938-JPは横11cm×縦7.5cm×高さ8cmの木製の箱です。中身は空です。 補遺1: エージェント・水野の報告 本日20██年█月█日、過去にGOCが管理していたと思しき██県の巨大地下空間の探索が完了したことを報告します。本件における人的損失は死者14名、重軽傷者27名、精神崩壊者6名で、その他の損失額は追って報告いたします。 空間の最深部には特に強固な施錠とトラップが施されており、その内部には一箱の木箱が安置されていました。私の目にはただの空箱のように見えます。同行していた研究員の見解も同様で、何の異常性も感知できないただの木箱のようだと言っています。なぜ対象がここに保管されていたかは不明ですがSCiPである可能性は低い、あるいは過去に異常性を喪失したものと考えられます。 最寄のサイト-81██には機動部隊の緊急出動と、対象の速やかな収容を要請します。 - エージェント・水野 補遺2: 清松研究員の報告 サイト-81██に送られてきた対象を精密検査した結果、その材質、機能、性質にこれと言った異常性は発見されず、あらゆる面において通常の木箱と同様の性質を示しました。 オブジェクト認定は元より、Anomalousアイテムに指定することも憚られる品です。何故これを機動部隊を緊急出動させてまで収容する必要があったのか、理解に苦しみます。 対象は直ちにSCPオブジェクトとして認定し、他のオブジェクトにも勝る厳重な収容体制下に置くべきであると、強く上申します。 - 清松研究員 補遺3: O5-██からの通達 日本支部から申請のあったSCP-938-JP収容のための予算と人員の追加申請はまったく不合理なものだ。我々はオブジェクトの収容のために必要なあらゆる資源を惜しまないが、それは常に最小限でなくてはならない。危険性の低いオブジェクトに過剰な資源を浪費する余裕は無いのだ。 よって申請を受理する。不要な予算と人員は直ちに配備されるだろう。 - O5-██ 補遺4:菊池監査員の報告 20██年10月20日、かねてより日本支部内で発生していた不透明な予算の流れに関する監査が終了しました。当該責任者であるエリア-8199管理者への聴取と実地調査の結果、消失していた巨額の予算の用途はすべて明らかとなりました。 詳細に関しては機密性と情報汚染の観点からここでは申し上げられませんが、何も問題はないものと考えられます。 補遺5: エリア-8199管理者からの申請 何が異常であるのかを、我々は理解しています。そして我々の行いの愚かしさも。 SCP-938-JPは極めて厳重な管理下にあり、収容違反が発生する可能性は微々たるものです。機密の保持も万全であり、無関係な者に対象の秘密を知られる可能性は皆無です。 すべて、我々がやったことです。それが無価値であり無意味であることを知った上で、我々はSCP-938-JPに「完璧な収容」を施しました。それこそが対象の異常性であることに気付いた時には、すべてが手遅れでした。もはや我々自身にすら、対象の特別収容プロトコルを破棄する権限はありません。 SCP-938-JPの収容は完璧です。であるが故に、対象はまったく収容などされていません。我々は対象を「収容させられて」いるのですから。 既に必要以上に莫大な予算と人員が、SCP-938-JPの収容を維持するために費やされています。幾つかのサイトは本来の機能を停止し、SCP-938-JPを守るための礎となりました。現状を放置する限り、収容規模は際限なく拡充されるでしょう。一刻も早く対象を"正しく"収容しなくてはなりません。 よって私はここに、SCP-938-JPのオブジェクトクラス変更と、対象収容のための追加予算を申請します。 - エリア-8199管理者 補遺6: 収容中のSCP-938-JP表面に貼り付けられていたメモ用紙 誰か早くコレを収容違反してくれ。
scp-939-jp
評価: +45+–x アイテム番号: SCP-939-JP 収容時にSCP-939-JPと共に行動していたSCP-939-JP-A-2。 オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 現在、SCP-939-JPとSCP-939-JP-A-1はそれぞれサイト-960961に設置されている専用の人型収容房に収容されています。 SCP-939-JPには通常の人間同様の食事が与えられ、最低限の生活必需品が支給されます。ですが玩具等の物品の提供は全面的に禁止されています。 2001年現在、SCP-939-JPの説得により組織からの攻撃は抑制されていますが、対象の監視は今後も継続されます。なお、これらの監視には機動部隊と二名のエージェントを起用したうえで地元警察と連携し行ってください。 説明: SCP-939-JPは年齢52歳、身長132cmの日本人男性です。対象は重度の成長障害を患っており、おおよそ13歳程度の外見の段階で発育が停止しています。 SCP-939-JPの異常性は対象が「玩具」や「人形」に分類される物品に触れた際に発現します。SCP-939-JPがそれらに触れた場合、その物品は未知の原理で「発声」「思考」「自立活動」を行いそれぞれが「自我」を有した状態で活動を開始します(以下、これらをSCP-939-JP-Aとする)。その際、対象はその姿のモデルになった物体や生物のスペックを再現しかつ元々備わっている機能にも少なからずの殺傷能力などが付与され、実際の兵器に相当もしくはそれ以上の破壊力を有するようになります。現在これらのメカニズムや原理の解明には至っておらず、内部構造や材質等の異常性も発見されていません。 2001年現在、財団が把握している主要なSCP-939-JP-Aは五体存在し、その内の一体の収容が完了しています。 以下はその主要なSCP-939-JP-Aのまとめです。なお、これらの詳細はSCP-939-JP-Aによる二度目の襲撃以降に行われたSCP-939-JPおよびSCP-939-JP-Aとの「話し合い」の際に同伴した職員の証言と映像を元に構成されています。 ナンバー 通称 概要 SCP-939-JP-A-1 通称”おしゃべりジョン” 対象はスキャットマン・ジョンをモデルにした首振り人形です。組織内では主に経理や「相談役」を行っていたと証言しており、計測した知能指数は███を記録しています。現在、財団が収容しているSCP-939-JP-Aはこの一体のみで、その他のSCP-939-JP-Aの収容には至っていません。 SCP-939-JP-A-2 通称”スモーキー” 対象は陶器製のカエルの人形です。SCP-939-JP収容後に組織側から財団へと派遣された際にその存在が確認され、現在は組織と財団間での連絡係としての役割を担っています。組織内での役割は所属する関連グループ内での雑用等を行っていると証言しています。 SCP-939-JP-A-3 通称”ビッグベア” 対象は全長1m60cmのテディベアです。内部構造は綿で構成されており、左腕が欠損した状態で縫合されています。対象の腕力は実際の熊の力以上に相当し、戦闘時には人間の頭部を粉砕することも可能です。現在は組織運営の中心人物であると予想されます。 SCP-939-JP-A-4 通称”タンク” 対象は全長596mm、全幅207mmの戦車を模したラジコンです。なお、砲先端部分には小型の赤外線ライトが備え付けられており、攻撃目標の生物にその光を照射した場合、照射個所の温度が急激に上昇し破裂します。コントローラーは紛失していると思われ、未だに発見されていません。対象とは会話が可能で、備え付けられている小型のスピーカーから20代後半の男性と思われる声で発声します。現在は組織内での武器密売の中心人物であると予想されます。 SCP-939-JP-A-5 通称”スプラッシュ” 対象は高さ15cm、直径10cmのドラム缶型プラスチック容器に入れられたスライム状の玩具です。異常性を有しない類似玩具と比べ体積は最大50倍前後であると思われ、他のSCP-939-JP-Aとは異なり唯一捕食行為が可能です。捕食の際は捕食対象を直接体内に取り込み消化します。発声能力は無く、対象との意思疎通はSCP-939-JP-A-1のみが行えます。SCP-939-JP-A-1の証言から対象の性別は雌であることが判明しています。組織内では違法薬物製造を担っていると思われます。 補遺1: SCP-939-JPは1999/9/21の収容以前まで、アメリカの██████を中心に活動している反社会的組織を運営していました。組織の収入源は主に武器の密売や違法薬物の売買であり、その他いくつもの風俗店の経営や違法賭博を行っていました。また相当数のフロント企業も所有していることがFBIや地元警察の調べで判明しており、組織年間収益は株式等も含めて約200億ドル以上(約2兆円以上)に相当していると思われます。 2001年現在もこの組織は存在しかつ運営されており、それらの活動はSCP-939-JP-A-3~4がSCP-939-JPから引き継ぐ形で継続されています。なお、これらの大元やフロント企業の経営者は表立っては通常の人間が行っているように偽装されており、組織内には多数のSCP-939-JP-Aと通常の人間の構成員が雇用されています。また、この組織は██████の裏市場の約40%を独占していることが財団の調査で判明しており、その為、対象は██████に複数存在する犯罪組織の中枢としても機能していることが判明しています。 現在財団はこれら組織と敵対しており、サイト-960、961において過去に2度の襲撃を受けています。襲撃は主にSCP-939-JPの奪還を目的とし、これらの事案はSCP-939-JP自身の説得により鎮圧、組織とは不可侵条約が結ばれかつ互いにけん制する状態で維持されています。なお、一回目の襲撃によりサイト-960の収容房に多大な被害が発生したため、急遽対象はサイト-961に移送されました。 補遺2: SCP-939-JPおよびSCP-939-JP-A-1はエージェント・パチーノによって収容されました。当時、エージェント・パチーノは収容目標であったSCP-███-JPの収容を終えた後であり、その際SCP-939-JP-A-1とSCP-939-JPに呼び止められました。エージェント・パチーノはすぐさま対象が異常存在であると認識し、確保。しかし、SCP-939-JPは抵抗をせず自ら自身の収容を要求し、エージェント・パチーノはそれを承諾しました。その後、財団職員が地元警察やFBIの捜査資料を調査した際にSCP-939-JPの運営していた組織の存在が発覚。それから発生した二度の襲撃を経て今の収容状態に至りました。なお、この不可侵条約の締結に関してはサイト襲撃時の組織保有武力および情報網を推測し、組織と全面的に衝突した際の多大なる人的被害が予想されたためこれらも一種の収容状態として承認されました。 収容後のSCP-939-JPはあまり発言せず、SCP-939-JP-A-1がそれを代弁する形でインタビューや実験が行われました。現在もSCP-939-JPは多くの発言をしておらず、殆どSCP-939-JP-A-1の仲介で会話が行われています。 以下はSCP-939-JP-A-1に対して行われたインタビュー記録です。 + SCP-939-JP-A-1インタビュー記録 - 閉じる 対象: SCP-939-JP-A-1(以下、A-1) インタビュアー: マーロン博士 付記: このインタビューはサイト-961の尋問室にて行われました。この時、SCP-939-JP-A-1の逃亡を阻止するためセキュリティー担当者を二名配置していました。 <録音開始> [インタビュー開始までのやり取りは編集されました] インタビュアー: …では、最初の質問をします。[資料をめくる音]貴方は何時█████氏(SCP-939-JPの本名)と出会ったのですか? A-1: あいつとは彼此40年近くの付き合いになる。一番初めに動かした玩具が俺だった。四人の幹部の中じゃあ俺がある意味最年長。まあ、そっから換算すりゃあ自ずと見えてくるだろう。 インタビュアー: 当時、貴方方は何処で生活を? A-1: スラムの路地裏だ。地区位はお前らの調べで分かってるだろう。毎日どこかで人が2、3人死んでる、そんなとこだったよ。 インタビュアー: █████氏の生まれはなどは。 A-1: さあな。親も碌にいやしねえんだ。捨てられてたのは確かだが、あいつも俺も物心つくときには人の殺し方の一つや二つとっくに覚えてた。生き抜くためだ。 インタビュアー: では貴方たちはそこでどう生計をたてていたのですか。 A-1: …盗みに恐喝、強盗に人身売買なんでもござれ。借金の取り立てに見せしめで誰かの指の二三本詰めるなんて仕事もしてた。全部あいつが主導でやってた。あれは才能だな。 インタビュアー: なるほど…。どのようにして、貴方以外の今の「お仲間」を? A-1: 大体同じさ。全員、どっかのゴミ捨て場から拾われてきたんだ。基本、ボスは人間を信用していない。奴らはすぐ嘘を吐きやがるし、恩義の糞も感じやしねえ。それに引き換え、俺たちは永遠の忠誠を誓ってる。…ボスの力はあくまで俺たちに命を吹き込むってだけの物だ。別に俺らを使役する力なんかじゃないし、俺たちは自分の意思であの人に付いて行っている。俺たちは家族だ。あいつは俺らの親であり、我が子でもあり、恩人でもある。その筋は絶対に通さなきゃらならねえ。 インタビュアー: 記録では、貴方方は██████の犯罪者をほぼすべて牛耳っていたとありますが…。 A-1: 大したことはしてねえよ。大体20年、あそこらのゴミ共を躾けるのに費やしただけだ。最初はそこらのチンピラ、そしてギャング共。何人殺したかわからん。大体そこらあたりから本格的な商売も始めた。違法賭博に売春宿、そこそこの金が集まりだしたのもその時期だ。そこらを牛耳っていたマフィア共が難癖を付けて来やがった時も勿論返り討ちにした。その頃にはあいつも大人になって、立派なボスになってたよ。結果、俺らは本当の意味での「ファミリー」になった。奴らをぶっ潰した後はもう安い商売も引き上げて、大規模な物にシフトチェンジした。武器の製造とルートはタンクが任せてくれって言ったんでそこらをやってくれてたし、薬に関しては何故かスプラッシュが詳しかった。 インタビュアー: …なるほど。 A-1: 小僧。 インタビュアー: はい。 A-1: お前らが一番気になっている事はよく分かってる。 インタビュアー: [沈黙] A-1: なんで、そこまで上り詰めた男が自らこんな場所にぶち込まれに来たのか…それが知りたいんだろ? インタビュアー: …ええ。まあ。 A-1: それに関してはさっきも言った。あいつは、人間が大嫌いなんだ。分かるだろ? インタビュアー: いえ、私には…。 A-1: 組織ってもんは大きく成ればなるほど、それの管理が手に余っちまう。特に、俺らはろくでなしのゴミ共だ。後から入ってきた人間の糞共には、俺らの中にあるようなボスに対する忠誠心なんか微塵の欠片もない。…結果、何をするんだって言うんなら最後、奴らは絶対に裏切る。人間なんてそんなもん、俺らとは違う。 インタビュアー: それが原因だと? A-1: 違う。それ位、軽い火の粉程度だ。何人も見せしめにあの世に送ってやるだけで良い。だが、問題はそこじゃない。…掟だ。 インタビュアー: 掟…? A-1: ああ。俺たちの掟だ。鉄の掟。喩え人間だろうとガラクタだろうと、誰にだってこれは破らせねえ。そういう法だ。 インタビュアー: …それは、一体何ですか? A-1: 「子供には絶対に手を出さねえ」。この一つだけだ。 [5秒程の沈黙] A-1: あいつはこう言ってる。「俺みたいなガキは二度と生まれるべきじゃねえ。だからこそ俺たちは、ガキに手を出すような屑であってはならねんだ」ってな。だからガキには商売もしねえし、勧誘もしねえ、手も出さねえ。…でも、人間は違った。人間の一人がそれを破った。小さな女の子に手を出して、世間も知らねえクソガキに薬を売りさばいてた。挙句の果てにはそれで儲かった分を黙って自分の懐に忍び込ませる始末だ。勿論、そいつは消した。だが、問題はそこじゃない。そいつが末端だったって事が一番の問題なんだ。 インタビュアー: 問題…? A-1: さっきも言ったろ。組織は大きくなればなるほど手が付けられなくなる。新参が増えて行けば行くほど、かつての理念は失われ、それらはいつしか形骸化していく。…あいつは言った。人間を入れたが為に、それが早まっちまったと。自分が人間だったから、組織の理念が揺らいでしまったと。そんな自分で腐らせちまった組織に、今の自分の居場所はねえとな。…だからビックベアーに全部譲ったんだ。勿論、ボスはそれの後始末もした。組織内を総浚いして、掟を破った奴らを全員始末した。…そして、その仕事を最後にあいつはボスの座を降りた。俺たちの掲げた理想を実現できるのは、俺たちガラクタだけだって言ってな。 インタビュアー: …それで、ここにやって来たんですか? A-1: 他の奴らは反対したさ。特にベアーなんて、それに付き合う俺の事を殺すとまで言いやがった。…それでも、最後はボスの意思が尊重された。お前たちの事は前々から知っていたからな。俺たちガラクタはそこら中にいるんだ。生半可な情報網じゃない。刑務所になんか入ろうもんなら、多分あいつは殺される。それだけの恨みは買ってる。当然だ。 インタビュアー: …では、貴方方は前々から私達の存在を認識していたと。 A-1: ああ。兄弟が世話になったりもしたからな。…でも勘違いはするなよ? 別に俺はここで何かしようとか、何かおっぱじめようとか思ってるわけじゃねえ。信頼されるような人間じゃないってのは十分理解してるし、嘘っぱちに聞こえるのも仕方がねえ。…だが、これだけは分かってくれ。 インタビュアー: …何をですか? A-1: 俺たちはただ、ボスが安心して生きていける場所を探しているだけだ。 <録音終了> 終了報告書: これ以降、SCP-939-JP-A-1はSCP-939-JPとの会話以外で一切の発言を行わなくなりました。これらの発言から組織が保有する情報網への危険視がなされ、より一層の監視強化が行われました。また、Anomalousアイテムを調べた結果、3体のオブジェクトがSCP-939-JP-Aに該当しました。 追記: 2003年、SCP-939-JPには重度の神経症による身体の衰弱が見られ、収容房内での安静が義務づけられています。今後、SCP-939-JPの容体急変を予期して定期的な医療スタッフによる診察と治療が行われます。 以下は、不可侵条約締結後に行われたSCP-939-JP-A-2に対するインタビュー記録です。 + SCP-939-JP-A-2インタビュー記録 - 閉じる 対象: SCP-939-JP-A-2(以下、A-2) インタビュアー: マーロン博士 <録音開始> [インタビュー開始までのやり取りは編集されました] インタビュアー: [メモを開く]今日は、あなたの所属する組織についてお聞きしたくお呼びしました。 A-2: [終始、何かをためらうような喋り方をする]大したことは言えねえが…。そもそも喋ったらどんな目に合うかわからねえし、足付けるような事もご法度なんだ。それに、俺は下っ端中の下っ端だし、そんな大それたことは… インタビュアー: いえ、構いません。…ではまず現在の組織の運営方針についてお聞きしたいのですが…。 A-2: う、ウンエイ…なんだ? それ。 インタビュアー: 分かりやすく言えば今の組織のやり方と言いますか、ルールはどのようになっているかと言ったところです。 A-2: ああ…そういう事か。…まあ、酷いもんさ。在って無いようなもんって言った方が正しいのかもな。 インタビュアー: 酷い? A-2: ああ。…あんた、ジョンの兄貴から聞いてんだろ? あの大粛清の事を。 インタビュアー: ええ、まあ。 A-2: ボスの気持ちも分かるには分かるが…でも、それだけじゃあ今の時代はやっていけないんだ。ベアーの兄貴もスプラッシュの姐さんも今は何とかやってるが、それでもあんだけ大きくなっちまった組織だ。あれしきの事ではもう何も変わりはしないよ。 インタビュアー: 不正を働いた人間は皆処分したと聞いていますが。 A-2: ああ。人間はな。…だが、俺たちはあくまで個人で生きてて、普通に生活もしてるんだ。俺みたいな奴らはまだ比較的ボスの事を知っていた世代だからあれだが、若い奴らはそうでもない。実際、ボスがやってた命を吹き込む作業も殆ど流れ作業だったし…結局、不正を働いてたのは人間だけじゃねえんだ。俺たち側だってそう。確かに人間は減った。けどその分、元々甘い蜜吸ってた玩具共が全面的に動き出しちまったんだ。そもそも、何で人間を雇ってたかっていえば、ボスだけじゃ賄えない構成員を増やすっていう名目もあるがその殆どは玩具のやってた不正をそいつ等に被せる為にやってたことなんだ。 インタビュアー: それは…。 A-2: …仕方ねえよ。これも時代さ。自然淘汰って奴だ。…ボスの夢見た理想も、世界も、みんな結局はただの夢だった。言い方は悪いが、時代遅れなんだよ。 インタビュアー: なるほど。 A-2: …今じゃもう幹部の人らも危ないらしい。噂じゃそろそろ組織の二分も起きるかもしれないって言われてるし…。俺はどっちに付くって言われても、どうとも言えねえ。 インタビュアー: …組織の二分ですか? A-2: ああ。ここだけの話なんだが…。どうも、タンクの兄貴が怪しいらしい。 インタビュアー: 怪しい…。 A-2: 確定的な話ではないんだ…。元々武器の密売事業を始めたのがあの人だ。そこいらの話じゃあ、あの人それの儲けに味を占めたらしくて、裏では下っ端操って私腹を肥やしていたとか…。それで、ボスにそれがバレそうになったもんだから急遽人間の末端に罪を着せて難を逃れたらしくてよ…。それで、今ベアーの兄貴がそこら辺の整頓をしてるとかで、幹部陣自体がちょっと二分しそうになってるらしいんだ。 インタビュアー: なるほど。 A-2: …な、なあ。 インタビュアー: はい、何でしょう。 A-2: 本来だったら、あんたらと会話すること自体相当危ない橋渡ってるんだ。…だがよ、ここまで話したんだ。別に急かすわけじゃねえが…約束の金は、ちゃんと貰えるんだよな? インタビュアー: ええ。終わり次第、係の者から受け取ってください。 A-2: あ、ありがとよ。…最近ポーカーでのイカサマがバレちまって。それさえ頂ければ何でもいいよ。俺が言えるのはこれ位だ。 インタビュアー: 分かりました。では、今日はこれで。 A-2: ああ。…なあ、本当に貰えるんだよな? 金が無いとマジ困るんだよ。 <録音終了> 終了報告書: 現在、組織内の状勢悪化が懸念されており、それによるSCP-939-JP-Aの離散が危惧されています。また、これに伴う異常存在の逃亡や勢力拡大の懸念もあり、今後は地元警察との情報交換を密に行う事で更なる警戒が行われます。
scp-940-jp
評価: +47+–x 財団に記録されている中でSCP-940-JPであったと思われるもの。赤色の物。 アイテム番号: SCP-940-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-940-JPは、サイト-8181の耐火設備を備えた収容ロッカーの中に収容されます。担当職員はSCP-940-JPの周辺で火気および高熱が発生する危険性に留意して収容を続けてください。 新規のSCP-940-JPが発見された場合、その個数を正確に記録した上で記録媒体を保存したデバイスをスクラントン現実錨を用いた対現実改変設備を備えた小型ロッカーに収容する試みが計画されています。新規のSCP-940-JPの発見・収容の際には、日本支部理事及び対現実改変装備を備えたエージェント3名の立会いの元、その全ての工程が記録媒体に記録されるようにしてください。 現在、SCP-940-JPに関する実験は日本支部理事の命令により中止されています。 説明: SCP-940-JPは、現在財団に収容されている19発を含む、特殊な爆薬によって作成された赤・青の火花をもたらす花火玉です。財団が確認している限り、SCP-940-JPによると思われる被害は19██年に確認されてから現在までに5█件が記録されています。 SCP-940-JPは観光地や各種のイベントに用いられる一般的な打ち上げ式の花火の形をしています。現在収容されているSCP-940-JPは後述の1つを除いて全て2発1組、赤色火薬を用いた物と青色火薬を用いた物、2発の花火玉のペアで構成されています。青色火薬を用いた花火玉の裏には「如来観光 観光促進課 謹製 」「速効」の文字と、アルファベットで「z」の小文字が、赤色火薬を用いた花火玉の裏にはアルファベットで「w」の小文字が、いずれも一般的なインクを用いて印字されています。その構造の特筆すべき点として、青色の花火には着火用の導火線が備えられているのに対し、赤色の花火にはそれが存在しておらず、完全に全体がクラフト紙によって覆われています。 SCP-940-JPが使用される時期は限定されませんが、その構造上の特性から多くは夏場に使用される傾向にあります。 SCP-940-JPはその爆発を介して2回に分けてその異常性を発現させます。 第1回の異常性の発現は、現在まで確認されている限りその全てが、多数の人間が目撃すると思われるイベントや祭事の一環として起こっています。SCP-940-JPが爆発した際、その光は概して赤色の光を放つ花火として捉えられます。この光を視認した人間は後述するSCP-940-JPのもたらす精神汚染の影響下に置かれます(以後、-Aと記述)。現在まで、財団による記憶処理を含めたあらゆる処理はこの異常性の除去について有効な効果を示していません。 SCP-940-JP-Aはこの光を視認した際、それに伴う各種のイベント・祭事に関するものを含めた一定の記憶をある程度に美化された形で記憶します。この記憶に伴う影響として、同時刻にSCP-940-JPが発する光を目撃した-Aが複数人のグループであった場合、その多くが以後もこの記憶を通じて良好な関係を保つ傾向にあります。顕著な例としては男女2人のグループでSCP-940-JPを視認した場合、その多くは後述する第2の異常性の時点までに婚姻関係を結ぶか、そうで無くとも多くが恋愛関係となり交際を継続します。 SCP-940-JPの第2回の異常性の発現は、第1の異常性からおよそ10年後のほぼ同日(曜日等のずれはある程度無視される)に、SCP-940-JP-Aらによって引き起こされます。SCP-940-JP-A達はSCP-940-JPの1度目の爆発から10年後の同日が近づくにつれて、記憶されている状況を当時のイベント・祭事含め可能な限り再現する為の活動1を開始します。また、既にそのイベント・祭事が終了している、あるいは開催地そのものが既に存在しない場合、原理主義的に当時の状況を完璧に再現しようと活動を開始する傾向にあります。 財団によって記録されている事例では、既に老齢によって引退している金魚取扱業者の捜索と当時彼が居住していた老人ホームからの誘拐事件、博物館に収容されていた当時使用されていた神輿の盗難事件、-Aの親族・関係者に対しての過剰な入場チケットの販売などの事件が関連して発生しました。 SCP-940-JPの2度目の爆発は青色の光を放つ花火として捉えられます。この光の目撃を以って、現地でこれを観測しているSCP-940-JP-A全てに遅効性の記憶異常が発生します。多くの場合、この光の目撃から72時間以内にSCP-940-JP-AはSCP-940-JPに関する記憶の全てを喪失しますが、この10年間の間に-A間で築かれた関係性、家族・恋愛関係については継続する傾向にあります。SCP-940-JPの2度目の爆発を目撃せず、記憶以上の影響を受けていない-Aの捜索を続けていますが、現在までその発見には至っていません。 財団はSCP-940-JPの爆発を事前に阻止するべく、以前SCP-940-JPと見られる花火が打ち上げられたイベント・祭事の全てに、また全国各地で開催される同様のイベントに対しても毎年複数の機動部隊、エージェントの投入を継続しています。偶発的にSCP-940-JPの起爆にエージェントが遭遇した幾つかのイベントにおいて財団は起爆前のSCP-940-JPのペアを回収することには成功しましたが、現在までその2回目の爆発を阻止する試みは全て失敗に終わっています。 SCP-940-JPは、2018/08/16、愛知県██町██地区にて開催された小規模な花火大会の実行委員として潜入していたエージェント・黒躑躅による報告からその発見、収容に至りました。(事例-940-JP-29)同年、09/18にはこの際に回収された資料及び関係者への聞き取りから岐阜県██町に存在した如来観光の倉庫への財団機動部隊ら-88「悠々自適の熟年夫婦」による収容作戦が実施され、未使用のSCP-940-JP14点、青の花火玉のみが残された半分のSCP-940-JPが1点発見され、収容に至りました。以下に事例-940-JP-1の資料及び研究資料を添付します。 補遺: インタビュー記録-940-JP-1 対象: 間宮██(事例-940-JP-29にてSCP-940-JPを如来観光のエージェントから購入、使用した) インタビュアー: エージェント・黒躑躅 付記: インタビューは間宮氏の拘束から3時間以内に行われた。拘束直後から間宮氏には漸増的に記憶の欠落症状が見られ、72時間後にはSCP-940-JPに関する全ての記憶を喪失した。 <録音開始, 2018/08/17 00:19> エージェント・黒躑躅: お疲れ様です。今回の聞き取りはあなたと、あなたが先ほど説明した物品を購入した相手に関するものです。 間宮氏: 黒躑躅さん、警察の人だったの…全然そんな風に見えないね。 エージェント・黒躑躅: 私に関することは取り敢えずいいですから、質問されていることについて、お願いします。 間宮氏: あ、あー、わかった。えーと、あれを買い取ったのは、マイトラって名乗ってた人からです。名刺ももらったけど、いつのまにか無くなっちゃったんだよね。 エージェント・黒躑躅: 確認します。マイトラさんは何と言ってあなたに話を? 間宮氏: うーん、最初に会ったのはいつだったか覚えてない、ただ、何ヶ月か前から準備はしてた。あの日の思い出を再現しよう!って話を、まあ俺が立ち上げて動いてた。ウチの祭りも年々参加する人も少なくなってたし、いつまで続けられるかも分からない、というかほんとは今年で最後にするつもりだったから、じゃあ俺のヨメはんとの思い出の花火を再現したいって。 エージェント・黒躑躅:ええとですね、間宮さん。 間宮氏: いやあ楽しかったね、祭囃子、金魚すくい、セルロイドのお面。花火が打ち上がった時の盛り上がりは最高だった。みんなの目が、顔が光を反射して青にぱっ、と輝いて…10年前のお祭りの日を思い出したよ。素晴らしい一瞬だった。…10年前のあの日も、ヨメはん…あの時は彼女だっけれど、隣にいて、俺は気の利いた物なんてなんも持ってなかったけど、花火に照らされて赤く輝く顔を見て、俺この人と一生一緒に居たいって思って、そして…結婚しようぜって、言って、10年。あっという間だったなぁ…幸せな10年だったなって、███[間宮氏の娘の名前]肩車して、肩に娘の体の重さと、寄りかかってくるヨメはんの体の感触を感じて…… エージェント・黒躑躅: すみませんが、もう少し、そのマイトラさんについて詳しく思い出せませんか? 間宮氏: あ、うん、申し訳ない…。…スーツを着てた、細い人…それくらい…かな、多分女の人…でも何回か話し合いをして顔も合わせてんだけどな…それで、祭りの前にあれを買って、打ち上げるやり方を聞いたんだ。 エージェント・黒躑躅: ……打ち上げるやり方?花火の打ち上げ方について、その方から教わったのですか? 間宮氏: うーん……あまり覚えてない。打ち上げるやり方を教えてもらった、はず。こっちにだけ火をつけて、打ち上げて、それで……終わりだって、その程度…だったと思う。 エージェント・黒躑躅: …ちょっと待ってください。"こっち"とは?貴方は複数の花火をマイトラさんから購入したんですか2? 間宮氏: ああ、それはそう。うん、覚えてる。ふたつ買ったよ。 エージェント・黒躑躅: 2つ…確かですね?……私の記憶では、あなたがあれを打ち上げた後、私がすぐにあなたを拘束しました。周囲の確認もしましたが、あなたは花火を1発しか打ち上げて居ませんね。もう1発……恐らく、次に使うための「赤い」花火はどうしたのか、教えてもらえますか? 間宮氏: うーん、あんまり思い出せない…青い方に火をつけて打ち上げる、というのはちゃんと覚えてるんだけれど…。でもふたつ買ったよ、確かに。どっかに行ってしまったのかな…… エージェント・黒躑躅: 「赤の花火」がまだ町にあるとしたらそれは我々にとって重大な問題になります。よく思い出してもらえますか。 間宮氏: うーん……いや、申し訳ない。正直全然覚えてない。覚えてないというか、記憶にない?あー、赤い方は…打ち上げ無くてもいいとか、言ってたような。いや俺がもう忘れてるのかな…?でも打ち上げ方は確かに青い方しか聞いてないんだよな…赤い方は…うーん。ごめんなさい、黒躑躅さん。本当にそれは思い出せない。 エージェント・黒躑躅: …結構です。しばらくお待ちください。 <録音終了> 終了報告書: 間宮氏の証言から、如来観光のエージェントから間宮氏にSCP-940-JPが「2発」売却された可能性が浮上しました。これが来年以降に使用する目的で購入された花火である可能性を踏まえて捜索が開始され、その途中で先述の機動部隊の活躍によりSCP-940-JPの実物が確保されました3。 その際に確保されたSCP-940-JPの形状から、SCP-940-JPが赤・青2発1組の花火で販売されていることが予想されたため、財団は間宮氏が起爆した花火は青の花火であり、さらに再度の花火大会の開催を目算して赤の花火を購入したと仮定し調査を行いましたが、如来観光による隠蔽工作か、事例-940-JP-29において間宮氏が購入したと証言するCP-940-JPの半分は回収出来ませんでした。 実験記録001 - 日付2018/10/01 対象: SCP-940-JP 実施方法: SCP-940-JPの爆発がもたらす影響を考慮し、回収されたうちで唯一ペアでなく青の花火のみの状態で収容されたSCP-940-JPを使用した。これを実験に参加するDクラス職員のみが視認できる状況で起爆させる。実験に際しては3名のDクラスを使用し、起爆担当のDクラス職員1名とそれを目視するDクラス職員2名のみが実験室内部を視認できる状態にし、ガラス壁越しに起爆スイッチを操作させる。 結果: 問題なく青の花火は起爆した。直後、起爆担当と視認担当のDクラス職員が涙を流しながら抱擁。拘束して尋問を行う。以下にインタビューの内容を記す。 対象:D-940-JP-001,002および003 インタビュアー: 東郷博士 <録音開始> 東郷博士: 手短に済ませよう。先ほどの反応はなぜ起こったか。それを話しなさい。それだけだ。 D-940-JP-001: あぁ、そりゃ、俺たちの…思い出だったからさぁ。 東郷博士: 思い出? D-940-JP-002: 実は俺たち、この実験に志願する前から知り合いだったんです。 東郷博士: …それは財団の記録では確認されて……[手元のメモを確認する]…いない。原則、そう行った関係のある人物は、財団は同じ実験には参加させない。君たち何かしたか?どうやった? D-940-JP-001: いやぁ…本当に、本当に偶然だよ。さっきまで俺たち、全然この施設でも会ったことなんてなかったし…。 D-940-JP-003: でも、実験の最初に顔を見てすぐに思い出したんだ! 東郷博士: 思い出した…ふむ。いや…しかし…財団は…いや。続けて。 D-940-JP-001: 俺たち、高校生の時に…高校なんて殆ど行ってなかったけど…でもあの日に見たんだよ、おんなじ花火、赤色の。場所も……ここだったのかな、あれは。 東郷博士: ……。 D-940-JP-003: 俺たち、10年前、3人でよくつるんでバカやってたんです。無免許で走り回って、悪いことばっかりして。あの日もそうだったよ。テキトーに走ってたらいつの間にか変なところに着いちゃって、倉庫みたいなのがあった。カギが壊れていたから、中を覗いたら何か妙な機械とかいっぱい置いてあって…花火が落ちてた。ふざけてあいつ[D-940- JP-001]がジッポで火をつけて、外で爆発させたんだ。ヒュルルって打ち上がって…赤かった。俺は正直マジ誰のものかわからん、結構ああいうの高いんだぞって言ったけど、そしたら一緒に逃げるべって言ったんだよな。 D-940-JP-001: あー、言ったなあ。でも俺の人生、やっぱあの時期が最高に楽しかった。ずっとこいつらと一緒に遊んでたいなあ、なんて思ったりしてさ、 東郷博士: …………。 D-940-JP-001: でもこんな事になっちまったから、もう約束なんて無理だと思ってたけどさぁ、ハカセ。奇跡って起きるんだな、マジ感動したよ。それでつい…泣いちゃったんだ。 東郷博士: ……わかった。もういい。君たちはそれぞれの部屋へ戻そうか。 D-940-JP-001: ああ、ハカセ。ありがとうな。ほんとに、ほんとに、ありがとう。 D-940-JP-002: ……ここじゃあ無かったけれど、あの花火も、こんな感じの場所で見つけたんだよ。壁の感じとか、似てる。 <録音終了> 終了報告書: Dクラス職員は以後72時間でSCP-940-JPに関する記憶を消失した。 分析: そもそも何故、既に使用形跡のあるSCP-940-JPの片割れという一つしかないものを、もっともらしい理由をつけて実験に使用する許可が降りてしまったのか、またこの実験に使用したSCP-940-JPは収容作戦当時から実験前まで、本当に1発のみの形で収容されたのか、今一度議論の必要あり。東郷博士 付記: Dクラス職員の証言するSCP-940-JPの第1の爆発の記録が、財団のデータベースに記録されていることが確認されました。当該の記録は財団サイト内部の倉庫にて、当時高校生であったDクラス職員らが偶然にも侵入、内部に立ち入り幾らかの騒ぎを起こしたとの物でした。事件自体は即時の記憶処理と担当者への処分によって既に解決しています。この記録の発見に伴い、SCP-940-JPのもたらす異常性に関しての再調査が検討されています。 東郷博士の提言により、SCP-940-JPを用いた実験は上記の1件を以って無期限の凍結中です。 脚注 1. 旅行計画・別のSCP-940-JP-Aへの連絡等 2. この時点では、SCP-940-JPの2発1組の製品としての内容は不明であった。 3. これ自体は本件とは関わりない。
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評価: +104+–x 評価: +104+–x クレジット タイトル: SCP-941-JP - 寝ても覚めても悪夢は終わらず 著者: ©︎Fennecist 作成年: 2018 評価: +104+–x 評価: +104+–x アイテム番号: SCP-941-JP オブジェクトクラス: Euclid (推定Neutralized) 特別収容プロトコル: SCP-941-JPの発生する旧鏡沢村はLoI-941-JPに指定されており、アクセス可能な経路を封鎖することで一般人の侵入を防止しています。また、一般には旧鏡沢村について少子高齢化に伴い既に存在していないという偽情報が流布されています。配備されている警備員らはLoI-941-JP内に侵入した一般人らを捕縛し警察機関へと引き渡します。LoI-941-JP内で睡眠を取ることは禁止されています。LoI-941-JP内に再出現した人物らはサイト-8165にて保護します。現在のところ該当する人物らを解放する予定はありません。情報収集のために、該当する人物らへは再出現から可能な限りすぐ (最低でも4日間が経過するまで) にインタビューを行う必要があります。 説明: SCP-941-JPは日本国長野県旧鏡沢村 (LoI-941-JP1に指定) の民家内で発生する人体消失現象です。午前2時の時点でLoI-941-JPの民家内で睡眠を取っている人物は突発的に消失します。しかしながら、消失した人物らのうち数名は消失前に睡眠を取っていたと思われる民家内に再出現しています。これらの人物は証言に共通性が見られる特定の悪夢に関する曖昧な記憶を保持しています。この記憶は大抵、再出現から約5日間で完全に忘却される傾向にあります。 補遺941-JP.1: 発見 SCP-941-JPは2019/04/01の時点から発生し始めたものと考えられています。当時旧鏡沢村の村民から警察機関へと殆どの村民の集団失踪が発生した旨の通報があり、調査に当たった警察官らは村民全87名のうち71名が失踪していたことを報告しました。翌日の2019/04/02において残る16名のうち9名が失踪したことが判明し、何らかの異常が関与していることが考えられたため、警察機関に潜入していた財団エージェントらにより以降の調査が行われることとなりました。 監視を行っていた間、失踪が確認されていた村民が数名LoI-941-JP内の民家に再出現し始めました。これらの人物へのインタビューから、SCP-941-JPの起源が2019/03/31をもって廃校となった鏡沢小学校にあると推測されました。しかしながら、鏡沢小学校内の探索と調査においてSCP-941-JPに関連すると思われる物品や情報の取得には成功しませんでした。 補遺941-JP.2: インタビュー 以下は2019/04/03の早朝にLoI-941-JPに再出現した旧鏡沢村の村民である槙野██氏へのインタビュー記録です。インタビュアーは廿酒研究員でした。 ► アクセス SCPJP:/941/ファイル/インタビュー_001.log ▼ ファイルを閉じる インタビュー記録941-JP.1 2019/04/03 [記録開始] 廿酒研究員: 槙野さん、体調は如何ですか。 槙野氏: なんともありません。あー、どちら様で? 廿酒研究員: 失礼しました。廿酒と申します。先日鏡沢村で起こった村人の集団失踪について調査をしている者です。槙野さん、あなたも失踪した村人の1人として記録されているのはご存知でしょうか。 槙野氏: ああ聞きましたよ。私が寝ている間にとんでもないことが起こってたなんて、全然気づきませんでしたね。何ですかね、神隠しとか、ハーメルンの笛吹きみたいなことが起こったとか? 廿酒研究員: 現在調査しているところです。それでですね、失踪している間何があったのか、憶えていらっしゃらないですか? 槙野氏: いや、それが居なくなってたとか憶えてないどころか、最後に寝てから普通に目が覚めたときまでずっと自分の家に居たとしか思えなくて……本当に私いなくなってたんですか? 廿酒研究員: はい。確実に失踪していました。 槙野氏: じゃあ、本当に何もお役に立てるようなことはありませんね。 廿酒研究員: そうですか……本当に些細なことでもいいので憶えていることはありませんか?暑かった寒かったとか、そういう非常にちょっとしたことでもいいので。 槙野氏: ああ……なら、寝てる間に見た悪夢のことなら。 廿酒研究員: ならその悪夢のことを教えてください。なるべく細かく。 槙野氏: はい。まず私は小学校の中にいました。多分あの、村の西の鏡沢小学校だと思います。中にも大勢人がいたのは憶えてるんですけど、誰だったのかは全く憶えてません。それで、何か変なものに追いかけられてました。でもそれはめちゃくちゃ足が遅くて、捕まることはなかったんですよ。何だったかな、本当に。 廿酒研究員: “変なもの”とは何かわかりますか? 槙野氏: あーいや、わかりません。 廿酒研究員: 本当にそれ以上のことは何か憶えてないのですか? 槙野氏: うーん、そうですね。すみません、お役に立てなくて。 廿酒研究員: いえいえ。では質問はこの辺りにしましょう。 [記録終了] その後再出現した村民らへとインタビューをした結果、SCP-941-JPの影響を受けた人物らが見たという夢には以下の共通点があることが判明しました。 鏡沢小学校と思われる場所に自身が居た。 小学校内で何らかの存在2に追いかけられた。 追いかけてくる存在は、足が遅いため容易に逃走が可能であった。 これらの証言から、消失した人物らは鏡沢小学校に類似する異空間へと転移しているという仮説が立てられました。この仮説の検証のため、Dクラス職員を用いた実験が計画されました。 補遺941-JP.3: 映像記録 2019/04/05にD-941-1によるSCP-941-JPの調査が行われました。これはD-941-1に撮影機器を持たせた状態でLoI-941-JPの民家において睡眠導入剤を用いて睡眠を取らせるという形で実行され、睡眠中のD-941-1は午前2時になった時点で消失しました。 D-941-1の消失から翌日の2019/04/06、D-941-1とともに鏡沢村の男性9名がLoI-941-JPに再出現しました。該当人物らへのインタビューでは補遺941-JP.2のものと相違ない証言が得られるのみでしたが、D-941-1が持ち帰った撮影機器に残されていた映像記録から、消失した人物らが鏡沢小学校に類似する異空間へと移動していることが確実視され、加えて異空間内部の状況が判明するに至りました。 以下は回収された映像記録です。 ► アクセス SCPJP:/941/ファイル/映像記録_001.log ▼ ファイルを閉じる 映像記録941-JP.1 2019/04/05 [記録開始] 撮影開始時点の映像 D-941-1: D-941-1です。先生たちの説明の通り、小学校のようなところに気付いたらいました。廊下に倒れてた自分をこの人が起こしてくれて、助けてくれたんです。えー、鹿野さんでしたっけ? 鹿野氏: はい、鹿野です。鹿野███と言います。 D-941-1: さっきはほんとにありがとうございます。あー、どうしたらいいんだろう。その、鹿野さん?ここは何処なんですか? 鹿野氏: ここは……多分鏡沢小学校です。今日は何日ですか? D-941-1: 今日は確か……5日です。 鹿野氏: 5日!もうそんなに経ってるんですか。なら、ここは丁度6日前に廃校になったばっかりです。村も大分少子高齢化のアレで子供が少なくなってて、もう必要が無くなっちゃったんですね。 D-941-1: なるほど。 鹿野氏: ここには村の奴らが殆どいます。どういう訳か、廃校になったばかりのここに、気づいたらみんな閉じ込められてたんで。何が起きたんだかわかりませんが、とにかくわかるのは外に繋がる窓も扉も全部開かなくて、化け物たちがうろついてることです。 D-941-1: 化け物、ですか。 鹿野氏: ええ、リコーダーを吹いている河童みたいな茶色いやつとか、包丁持った千手観音とかがいて、人間を見つけたら追っかけてきます。ただ、すごい足が遅くて何かない限りは捕まりません。 D-941-1: 捕まった人はいるんですか? 鹿野氏: 残念ながら居るんです。大体高齢者だったり怪我や病気のある人が捕まって……殺されました。弾けるように死ぬんです。パァン!って。 D-941-1: それは……そうだ、自分ここに調査しに来たんです。村で寝るとどうやらここに来るらしくて、そうやって送り込まれたんですよ。そう、化け物のこと何かわからないですか?ここ小学校だし、七不思議とか関係あったり。 鹿野氏: ああすみません。私生まれがここじゃなくて、わからないんです。そういうことなら高齢の方々を見つけて聞いてみてください。すみませんね、本当に。 D-941-1: 了解です。じゃあ、探してみますか。 鹿野氏: あ、出てくんですね。じゃあ化け物たちに気をつけてください。奴らに見つかっても焦らず落ち着いて逃げればまず捕まりませんから。もう5回逃げきってる私がその証明です。 D-941-1: わかりました。鹿野さんも気をつけてください。 D-941-1が教室と思われる部屋を出て鹿野氏と別れる。 D-941-1: バッテリー節約しないと。 映像が止められる。 [記録終了] ► アクセス SCPJP:/941/ファイル/映像記録_002.log ▼ ファイルを閉じる 映像記録941-JP.2 2019/04/05 [記録開始] D-941-1は2階へと続く階段の前に立っている。 D-941-1: D-941-1です。リコーダーを吹く河童を見つけました。 D-941-1がカメラの方向を変える。D-941-1の居る廊下の対局側に、体長およそ80cm程度と見られる茶褐色の人型実体が居るのが確認できる。画面がズームインされる。実体は背中には亀甲状の紋様がある楕円形の物体が背負われており、頭部には皿状の物体を載せている。また、歩いた床は明らかに液体で濡れていることがわかる。実体は短いフレーズのメロディをソプラノリコーダーと思われる楽器を用いて執拗に繰り返し演奏していると思われる。 D-941-1: 本当に足が遅いなら、この距離なら誘き寄せてみても大丈夫か? D-941-1が近くの壁を3回強く叩いて音を出す。実体は音に反応したようであり、D-941-1の方向に体を向けて跳ねるような素振りを見せながら走ってくる。実体がカメラの方向を向いたため、実体の顔に嘴のような部位があることが確認できる。 D-941-1: お、遅いってわりに結構走ってくるな。 D-941-1は階段を上り踊り場で立ち止まる。実体は画面に映っていないものの、リコーダーの演奏が変化なく聞こえており、徐々に音量が大きくなっていることがわかる。 D-941-1: どうだ? 実体がカメラに映り込む。実体は勢いを変えることなくD-941-1の方向へと階段を登り始める。 D-941-1: やばい! D-941-1が更に階段を駆け上がり、2階の最も距離の近い教室へと走り込み、清掃用具箱の中へと身を隠す。リコーダーの音が近づいてきたものの、実体が階段を降り始めたようであり、徐々に音量が小さくなっていく。最終的に音が聴こえなくなった。 D-941-1: 撒いたか?(咳き込み) 今のが鹿野さんの言ってた河童だと思います。今の感じで、他の化け物と人間を探していきます。 D-941-1が清掃用具箱から抜け出る。映像が止められる。 [記録終了] ► アクセス SCPJP:/941/ファイル/映像記録_003.log ▼ ファイルを閉じる 映像記録941-JP.3 2019/04/05 [記録開始] D-941-1: D-941-1です。さっき千手観音のような化け物が居たのを確認したんですが、追いかけられたのと咄嗟だったのとで映像撮れませんでした。それとは別にで、今は体育館にいるところです。 カメラが体育館の内装を映す。壁全体を覆うように厚い蜘蛛の巣が掛かっているのが確認できる。 D-941-1: 他の部屋は不自然なほど綺麗だったのに、体育館だけやたら蜘蛛の巣が掛かってるのが気になります。蜘蛛が居るにしても、ここまで荒れるとは思えなくて。結構不気味です。 何かが擦れるような音が聴こえる。 D-941-1: 何か聴こえる。 蜘蛛の巣が突如動き始める。直後に巣を破るように小さな人型実体が複数出現する。実体は様々な袴を着た日本人形に見え、下半身があるべき部分から蜘蛛のそれに近い黒色の脚が生えている。実体らはD-941-1の方向へと素早く移動を始める。 D-941-1: まずい! D-941-1は踵を返し、体育館から退出してすぐさま扉を閉める。D-941-1はそのまま校舎へと走り向かい、家庭科室と思われる部屋へと進入し扉を閉める。D-941-1が机の下に身を隠す。 D-941-1: あれは、体育館は駄目です。(息切れ) あそこに入ったら……ひとたまりもないんじゃないか。(間) 少し休みます。多分、河童は1階だけ、千手観音は2階だけにしか居られないみたいなんで。 沈黙。 D-941-1: 少し寝ようと思います。河童なら、リコーダーの音で気づくだろうし。 映像が止められる。 [記録終了] ► アクセス SCPJP:/941/ファイル/映像記録_004.log ▼ ファイルを閉じる 映像記録941-JP.4 2019/04/05 [記録開始] D-941-1: D-941-1です。鹿野さんと再会しました。(間) さっきまで寝てて、河童が近づいてきたんですぐ逃げたんですけど、それで気づいたことがちょっとありまして。ここは来たときからずっと夕方なんです。そうですよね? 鹿野氏: ええ、私もここに来てからずっと夕暮れです。それにディーさん、お腹空いてないでしょう? D-941-1: 確かに。 鹿野氏: すみません、最初に会ったときに言うべきでした。ここに居る人は腹が減らないみたいなんです。トイレに行きたいとも感じないはずです。ある欲は睡眠欲だけなんです、何故か。 D-941-1: ああそうだ鹿野さん、ここに来てから鹿野さんにしか会ってないんですよ。他の方々は何処にいるんですか? 鹿野氏: それも伝え忘れてましたか……すみません、腹も減らないのに疲れは溜まるみたいで、ぼーっとしてたかもしれません。他の人たちはボイラー室にいます。体育館の近くにあるそれっぽい扉の奥です。そこは、何故かここで唯一鍵が掛かる部屋だったんで。それだけじゃなくて、多分体育館の次に広い部屋なんです。だから皆そこに集まって隠れてるところです。日本人形居ましたでしょ?多分アイツらは体育館から出られないみたいなんで、安全っちゃあ安全ですね。不安はありますが。 沈黙。 D-941-1: いや、安全ならいいんです。自分の務めはあなた方を助けることだから、それがありがたいです。 鹿野氏: そうだ、ディーさん。1つ提案があるんですが、ちょっとお時間良いですか。 D-941-1: 提案ですか? 鹿野氏: はい。私と他の男たちとで学校から出られそうな場所を探してたんですがね、その途中で雨宮という奴が千手観音に襲われたんです。 D-941-1: え、その人は大丈夫だったんですか? 鹿野氏: 大丈夫どころか、活路を見つけてくれたんです。彼、千手観音に向かって咄嗟に椅子をぶん投げたんです。そしたら、化け物の顔が粉々に割れてしまったんですよ。見ませんでしたか? D-941-1: いえ、千手の顔は上手く見れてなくて。でも本当にそんなことが? 鹿野氏: ええ、思っている以上に化け物たちは脆いのかもしれません。足も遅く、耐久性もないなら、男たちで化け物をタコ殴りできるんじゃないのかと。つまりディーさん、私たちと一緒に戦いませんか? D-941-1: ああなるほど。一緒に化け物を倒そうという訳ですか。 鹿野氏: ええ、お力添え頂けませんか?化け物たちを倒してからゆっくりと出口を探せばいいですし。それにあなた、ここに調査しに来たってことはその道のプロなのでしょう?いやまあ、その道ってのがどの道なのかわかりませんけど。 D-941-1: ま、まあ、プロってわけじゃないですけど、こういう異常とは何度か対面したことはありますよ。そう、私は所詮元死刑囚の人間のクズで、こういう仕事に割り当てられるのは天命なんです。だから、死ぬ前に一度くらい人の役に立ちたい、少しでも善行を果たしてから死にたいって思ってたんです。 鹿野氏: 死刑囚……でも、ということは? D-941-1: やりましょう。力には自信がありますから! 以降、特筆すべき情報なし。 [記録終了] ► アクセス SCPJP:/941/ファイル/映像記録_005.log ▼ ファイルを閉じる 映像記録941-JP.5 2019/04/06 [記録開始] D-941-1: D-941-1です。今日は鹿野さんをはじめとして男性の村人の方々と化け物を倒してくことになって、今丁度1階に居るところです。男は今自分含めて17人います。これだけいれば、きっと化け物を倒すことができるだろうと信じてます。 沈黙。 D-941-1: 私事なんですが、ずっと罪を償いたいと思ってたんです。人を殺してDクラス職員になって毎日死に怯える日々を送って、それでも、無駄死にしないでこの世の誰かの役に立ちたいって思って今回の調査にも力を入れてきたんです。その思いが、この特攻で実を結べばいいなと思ってます。頑張ります。 鹿野氏: みなさん、そろそろ行きますよ。準備いいですか。 鹿野氏の合図に続き、校舎1階の両階段側から挟むように“リコーダーを吹く河童”へと椅子や箒を持った男性らが声を上げながら走っていく。実体はその場でうろたえるような素振りを見せていることが確認できる。このような状況にもかかわらず、リコーダーの演奏は継続されている。実体の下へと到達した男性が椅子で河童を殴打すると、陶器が割れるような音を伴い実体の身体に欠損が生じる。続けざまに男性らが実体へと攻撃を行い、最終的に実体は複数の破片に崩壊し、以降行動を示す素振りを見せなくなった。 D-941-1: やった!このまま千手観音もやりましょう! 男性らが賛同し、二手に分かれて2階へと階段を経由して登っていく。カメラは廊下を歩いている“包丁を握った千手観音”を映している。実体の頭部は明らかに欠損しており、鹿野氏の発言と合致していることが確認できる。男性らが挟み撃ちをするように実体へと向かっていくが、最初に到達した男性が実体により刃物で刺突され、直後に爆散した。男性らは一度退いたものの、すぐさま声を上げながら千手観音へと攻撃を開始した。千手観音は動きが遅いようであり、男性らの攻撃の殆どを回避/防御できず陶器が割れるような音を伴いながら崩壊した。男性らは大声を上げて喜ぶ。 D-941-1: 皆さん、この勢いで日本人形も行きましょう!大丈夫、今の私たちならやれるはずです! 男性らは階段を降りて体育館がある方向へと走っていく。途中、体育館の傍にあるボイラー室を鹿野氏が開く。 鹿野氏: 皆さん、河童と千手観音を倒すことに成功しました!これから残る体育館の日本人形を倒しに行きます。どうか、私たちの成功を祈っててください! 鹿野氏が扉を閉め、男性らは再び体育館へと向かう。前回の映像記録と違い、体育館の入り口扉が完全に蜘蛛の巣で覆われていることが確認できる。男性らが蜘蛛の巣を除去し、2名の男性が一斉に入り口の両扉を開く。男性らが体育館の中へと進入するが、“日本人形”の姿は見えない。すぐさま1人の男性が爆散し、男性の足元から実体が顔を出している様子が映る。間髪入れずに他の男性が出現した実体へと攻撃を加え、破壊に成功する。しかしながら、蜘蛛の巣の中から多数の実体が出現し始め男性らへと詰め寄り始める。続いて男性らが声を上げながら攻防をしている様子が映るが、D-941-1が実体の攻撃を受けたと思われ、この時点で映像が途切れる。 [記録終了] 補遺941-JP.4: 異常性の喪失 再出現した一般人らと映像記録内で死亡が確認された人物らを照らし合わせた結果から、LoI-941-JPに再出現するためには異常存在らにより殺害される、あるいは異空間内で死亡することが必須であると考えられました。この結果から、再びDクラス職員を投入して村民らを救出する計画が試みられましたが、3名のDクラス職員をLoI-941-JPに1ヶ月間滞在させたにもかかわらず、SCP-941-JPは発生しませんでした。この原因は不明ですが、現在のところ異空間内の異常存在らをD-941-1含む男性らが無力化したことが原因の1つと有力視されています。 以上のことから、SCP-941-JPが無力化された可能性が浮上しました。再出現していない66名の村民らを救出する方法が現在も模索中です。 脚注 1. LoI - Location of Interestの略記。 2. 証言からの抜粋: “リコーダーを吹いている何か”、“日本人形”、“腕が異常に多い人間”。
scp-942-jp
評価: +52+–x アイテム番号: SCP-942-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 特別収容プロトコル: SCP-942-JPは常時財団艦船により監視されなくてはなりません。基本的に財団艦船以外の船舶がSCP-942-JPに接近する事は許されません。また、特にSCP-942-JPを中心とした半径12kmの範囲にイギリス海軍および政府第二次世界大戦当時の連合国およびその後継国家の保有する艦船や施設等1が入ることのないようにしてください。また、SCP-942-JPの監視にあたる財団職員および艦船においても第二次世界大戦当時の連合国およびその後継国家の国籍のものは外されます。SCP-942-JPが軍艦旗を掲げた場合には即刻撃沈し、その上で再度SCP-942-JPを捜索し発見し次第包囲してください。カバーストーリーは「軍事演習」「映画の撮影」等が状況に応じて適用されます。 説明: SCP-942-JPは、第ニ次世界大戦時のイギリス軍の駆逐艦「キャンベルタウン」(HMS Campbeltown)に酷似した船舶です。外見は1942年のサン・ナゼール強襲作戦2時のそれに酷似しています。19██/██/██現在、SCP-942-JPは太平洋の[編集済]の海域を漂流しています。 SCP-942-JPは喪失しました。インシデント記録942-ERKを参照の事。 不活性化時のSCP-942-JPは旗を掲げず漂流しています。不活性化時のSCP-942-JPは自発的な航行は一切しません。そのため監視にあたる財団艦船は衝突しないよう注意を払う規則になっています。 イギリス海軍および政府第二次世界大戦当時の連合国およびその後継国家の所有する船舶ないし基地がSCP-942-JPを中心とした半径12kmの範囲に入るとSCP-942-JPは活性化します。活性化したSCP-942-JPは軍艦旗3を掲げ、その艦船および基地に最大19ノットの速度で突進します。対象に激突してから1時間後、SCP-942-JPの、主に前方部分が爆発します。この爆発はTNT爆薬換算で[編集済]tほどであると見積もられています。この爆発はどのようなメカニズムで発生するかは不明です。以前はSCP-942-JPと何らかの関係があると考えられたサン・ナゼール強襲作戦時のイギリス海軍の駆逐艦「キャンベルタウン」と同様、SCP-942-JP内部に爆弾あるいはそれに類する存在があると考えられましたが、現在では否定されています。詳細は強行突入・調査作戦「チャリオット作戦」記録を参照してください。 爆発した後、SCP-942-JPの残骸は2時間後に消失します。消失後、別の地点に爆発前の状態でSCP-942-JPは再出現します。爆発で損傷した部位は完全に修復されていますが、元々取り付けられていなかった物(GPS装置など)は修復されないようです。再出現する範囲は詳細は不明ですが、現時点ではインド洋、大西洋、太平洋の[編集済]周辺などが確認されています。砲撃等で撃沈した場合も同様の過程で修復・再出現します。 なお、第二次世界大戦当時の連合国およびその後継国家の国籍でない艦船・人員には無反応であり、活性化誘発範囲内にドイツ海軍のフリゲート艦「[編集済]」が侵入した際には不活性状態のままでした。 参考記録:強行突入・調査作戦「チャリオット作戦」 目的:SCP-942-JP艦内の調査 副次目標:SCP-942-JP内部の爆弾等の解除・撤去および乗組員の拘束 概要:輸送ヘリを用い、内部に機動部隊け-21("コマンドス")を突入させ、SCP-942-JP内部を調査する。可能であればSCP-942-JP内部に存在すると考えられる爆破装置の解除や撤去、あるいは破壊によって動作不能にする事、乗組員の拘束も行う。 経過:19██/██/██ 04:30、SCPSつくばから大型輸送ヘリにより機動部隊け-21をSCP-942-JP内部へ送り込み、侵入させる。この時SCP-942-JPは不活性のままであり、突入に対する抵抗や反応は一切なかった。機動部隊け-21はA班とB班に分かれ、それぞれブリッジと英駆逐艦「キャンベルタウン」において爆薬が設置されていた部分へ向かった。移動途中の艦内においては時空間異常は見受けられず、異常な存在も発見されなかった。作戦開始から12分後、A班はブリッジに到着したが、乗組員等は一切おらず、無人であった。ブリッジの壁に「VENGEANCE」と軍用塗料で描かれていた以外には特筆すべき事はなかった。作戦開始から23分後にB班も目標地点に到達するも、爆薬や爆破装置は存在せず、もぬけの空であった。その後両班とも艦内を捜索するも、特になにも発見できなかった。これ以上の調査は無意味として作戦開始から1時間36分後司令部は機動部隊け-21の撤収を命令。機動部隊け-21はブリッジ及び爆弾設置箇所に監視システムやGPS装置等を設置し、輸送ヘリでSCP-942-JPを脱出した。撤収までの間にも攻撃等はなく、SCP-942-JP自体も不活性化したままであった。 補遺:機動部隊け-21がSCP-942-JP艦内に設置した監視システムはその後も無人の艦内を映し出すだけであり、特異な現象・実体等を映し出す事はなかった。その後監視システムはインシデント記録942-RUSでSCP-942-JPが活性化し、当時監視にあたっていたSCPSリューベックによりSCP-942-JPが撃沈された時にGPS装置等と共に破壊された。なお、SCP-942-JPが活性化した際にも監視システムは不活性化時と同じく無人の艦内を映し出すだけであった。また、インシデント記録942-RUSにおけるSCP-942-JPの撃沈後、SCP-942-JPは[編集済]で再発見されたものの、監視システム等は修復されなかったらしく映像は送られてきていない。 インシデント記録942-ACP:19██/█/██、荒天および連絡ミスのため、アメリカ軍の駆逐艦「[編集済]」がSCP-942-JPの活性化誘発範囲に侵入する事例が発生しました。この時SCP-942-JPは活性化し、当該駆逐艦に向かって航行を開始しました。当時監視にあたっていたSCPSコルヴィッツの迅速な行動によりSCP-942-JPによる被害はありませんでした。4この事例を受け、活性化誘発範囲への進入を禁じる範囲がイギリス海軍および政府の保有する艦船ないし基地から第二次世界大戦当時の連合国およびその後継国家の保有する艦船や施設に広げられました。 インシデント記録942-AES:19██/█/██、荒天のためイギリス海軍のフリゲート艦『[編集済]』がSCP-942-JPの活性化誘発範囲に侵入する事例が発生しました。SCP-942-JPが活性化し当該フリゲート艦に向かって航行を開始した2分19秒後、SCP-942-JPから7.2kmの地点に突如ハント級駆逐艦5に酷似した所属不明艦(以下「US6-942-1」)が出現しました。US-942-1は出現からSCP-942-JPが撃沈されるまで、同一の通信文を発信し続けました。財団側はSCP-942-JPの撃沈後、US-942-1を追跡しましたが、最終的には当時接近していた強力な低気圧に逃げ込まれ追跡を断念しました。 インシデント記録942-AESにおけるUS-942-1からの通信内容: イイカゲン ニ シタマエ インシデント記録942-ORA:19██/█/██、荒天や操舵ミス等により、ロシア海軍のフリゲート艦『[編集済]』がSCP-942-JPの活性化誘発範囲に侵入する事例が発生しました。SCP-942-JPが活性化し当該フリゲート艦に向かって航行を開始した1分49秒後、SCP-942-JPから3.9km離れた地点に第二次世界大戦当時イギリス海軍に配備されていた高速魚雷艇に酷似した船舶(以下US-942-2)および同時期の機動砲艇に酷似した船舶(以下US-942-3)が出現しました。US-942-2は出現からSCP-942-JPが撃沈されるまで、同一の通信文を発信し続けました。財団側はSCP-942-JPの撃沈後、US-942-2および3を追跡しました。この時財団側は停船命令を発し、これをUS-942-2および3が無視したためこれらを砲撃しましたが、US-942-3によりすべて迎撃されました。最終的にUS-942-2および3は財団側の追跡を振り切り逃亡しました。 インシデント記録942-ORAにおけるUS-942-2からの通信内容: イイカゲン ニ シタマエ ワレラトテ コレイジョウ カバエヌ もしかして、彼女は自分を巨大な爆弾に仕立てたイギリス軍を、連合軍を恨んでいるのか?そして復讐を目論んでいるのか? -SCPSシュタイエルマルク ██████ █████████艦長 インシデント記録942-ERK:19██/██/██ 、イギリス海軍所属の駆逐艦「[編集済]」が連絡ミスや天候不順等の影響で、SCP-942-JPの活性化誘発範囲に侵入する事例が発生しました。SCP-942-JPは活性化し、「[編集済]」に向かって航行を開始しましたが、その1分24秒後、突如SCP-942-JPから4kmの海域にビスマルク級戦艦に酷似した所属不明艦(以下「US-942-4」)が出現しました。US-942-4はおよそ██ノットでSCP-942-JPに接近し、SCP-942-JPから約2kmほどの距離まで近づいた後SCP-942-JPに砲撃し、SCP-942-JPを撃沈しました。当時SCP-942-JPを包囲・監視していたSCPSシュタイエルマルクおよびSCPSつくば、SCPSランツベルクはUS-942-4に対し砲撃しましたが、すべてUS-942-4に搭載されていた副砲等により迎撃されました。SCP-942-JP撃沈後、US-942-4は██ノットで逃亡、おりしも発生していたスコールに逃げ込み消息を絶ちました。この事件以降、SCP-942-JPは再出現していません。 補遺1: インシデント記録942-ERKの2日後、SCP-942-JP撃沈現場付近の海域でUS-942-4の捜索にあたっていたシュタイエルマルクにより、以下の文章が書かれた耐水紙と花束の残骸が発見されました。 R.I.P. HMS Campbeltown -Fleet Commands 補遺2:インシデント記録942-ERKより15年が経過してもなおSCP-942-JPの再出現は確認されなかったため、20██/██/██をもってSCP-942-JPはNeutralizedに認定されました。 Footnotes 1. インシデント記録942-ACPを受け、範囲は拡張されました。詳細は同記録を参照してください。 2. 第二次世界大戦中にイギリス軍が展開した特殊作戦。英駆逐艦「キャンベルタウン」に大量の爆弾を仕込み、それを突入させ当時脅威になっていた独戦艦「ティルピッツ」の修理が可能な乾ドックを爆破・破壊した。 3. 黒一色の無地の旗です。 4. これにより、当時のコルヴィッツ艦長のカート・ラーケン少佐は表彰されました。 5. 第二次世界大戦当時のイギリス軍駆逐艦の形式の1つ 6. Unknown Shipの略
scp-943-jp
評価: +54+–x 評価: +54+–x クレジット タイトル: SCP-943-JP - スーパーパンツマン 著者: ©︎k-cal 作成年: 2018 評価: +54+–x 評価: +54+–x アイテム番号: SCP-943-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-943-JP各個体は個別にクラスB以上の耐衝撃性能をもつ収容ロッカーに収容されます。SCP-943-JP-1を用いる実験時を除いて10体以上のSCP-943-JPを同時に収容ロッカー外に出すことは認められません。万が一SCP-943-JPの関係が疑われる事件が発生した場合は被害者を回収し、カバーストーリーの流布と人型オブジェクトの標準捜索手順を実行してください。 インタビューを受けるSCP-943-JP-1 説明: SCP-943-JPは自律的に行動するブリーフパンツです。素材はナイロンなどの非異常な合成繊維で、形状はタグがないことを除けば███社の販売しているブリーフパンツとほぼ同一ですが、同社の発売する他のブリーフパンツに異常性は確認されていません。現在収容されているSCP-943-JPは37体です。 SCP-943-JP各個体は自律移動が可能です。移動方法は各個体によって異なり、回転・滑走・跳躍・蠕動運動・[削除済]などが確認されています。自律移動は主に他のSCP-943-JP個体との合流のために行われ、目的地との間に障害物がある場合は極力対象を破壊しないよう移動させたり、回避したりします。ただし、やむを得ない場合は障害物の破壊を試みることがあります。各SCP-943-JP個体は他個体の位置を視覚等に頼らず察知できることが判明しています。 SCP-943-JPは37体集合したとき、擬態を開始します。各個体は自身を引き延ばしたり縮小させたりしながら組み合わさり、体長150 cmほどのヒト型を形成します。形成直後は元のブリーフパンツ同様白色のままであり、異常に引き延ばされたブリーフパンツの集合のようにしか見えません。しかし、形成後約10分の時間をかけて服や頭髪など細かいパーツを生成しつつ変色し、服を着た20代前後の女性に擬態します。このとき生成される服もSCP-943-JPが擬態したものであり、脱がせることはできません。服装は装飾や露出の少ないものが選択されます。なお下半身に対応する衣服は必ずスカート状のものが選択されます。この状態になったSCP-943-JPの集合をSCP-943-JP-1と呼称します。 SCP-943-JP-1は発声することができませんが、こちらの発言を理解することは可能であるようです。 識字能力はありませんが、日本語を用いて通常通り対話が可能です。また、敵対条件を満たさない限り友好的です。敵対条件については実験記録を参照してください。敵対化したSCP-943-JPは各個体に分裂し対象の口や鼻孔、外耳道孔、眼孔など外部に露出している部分から体内に侵入します。この結果、ほとんどの対象は窒息、裂傷、内臓破裂などで死亡します。SCP-943-JPは一定時間後、対象の体内からはい出し、再びヒトへ擬態後その場を立ち去ります。 回収記録: 発見の約1ヵ月前から、体内に異常な損壊を受けた変死体の発見が相次いだことや、SNS上で「死体から這い出るブリーフパンツ」の都市伝説が流行したことから、未知のブリーフパンツ様の異常オブジェクトについての調査が開始されていました。そのような中、2014/4/29に██線の乗客から鉄道会社に対し「女の子がブリーフパンツに分裂して男性を襲っている」との通報が入り、SCP-943-JPの発見につながりました。乗客の証言から被害男性がSCP-943-JP-1の胸部に接触していたことが判明しており、SCP-943-JP-1に行った痴漢行為がSCP-943-JPの敵対化につながったのではないかという予測がたてられました。なお、被害男性は複数の主要臓器の損壊と[削除済]によって死亡しています。 実験記録: 実験はSCP-943-JPが発見された当時の環境を再現し、SCP-943-JP-1の敵対化条件を探るために行われました。当時はSCP-943-JP-1との対話方法が確立されていなかったことに留意してください。 実験記録1 被験者: D-94301 実験経過: [D-94301がSCP-943-JP-1の収容されている収容室に入室する] D-94301: で、俺は何をすればいいんだ? ██研究員: 目の前に女性がいるのが分かりますね? D-94301: ああ、なんか地味な子だな。 ██研究員: 無駄な発言は慎んでください。あなたはその女性に接近し、胸部に接触してください。 D-94301: は? それはつまり、あの子の胸を揉むってことか? ██研究員: ……おおよそその通りですが、揉むのではなく、最低限の接触にとどめてください。 D-94301: あいあいよ。ヘヘヘ、もう女に触ることはないと思っていたけど、まさかこんな機会があるとはな。よく見たら地味だけどかわいいな……、胸も意外とでかそうだ。C、いやDくらいは ██研究員: 二度目の警告です。無駄な発言は慎んでください。 D-94301: ああ了解了解、それじゃ触るぞ。 [D-94301はSCP-943-JP-1に接近し対象の胸部に接触。SCP-943-JP-1は驚いたように少し震えたが、それ以上の変化はない] D-94301: へへへ…… ██研究員: ……変化はありませんね。それでは接触をやめ対象から離れてください。 D-94301: は? これで終わりかよ? 抵抗もしてねえし、これは合意でいいだろ? [D-94301はSCP-943-JP-1の胸部に対しより力強い接触を行う。また、SCP-943-JP-1の下半身に手を伸ばそうとする] ██研究員: 保安担当、D-94301を拘束してください! D-94301、勝手な行動は慎め! これ以上勝手な行動を行なう場合はその首輪が破裂するぞ! D-94301: チッ、絶対こいつもまんざらじゃねえって。抵抗してこないんだし、誘ってるようなもんだろうがよ…… [D-94301がSCP-943-JP-1の臀部に手を伸ばし、接触。SCP-943-JP-1は各SCP-943-JPに分裂しD-94301に飛び掛かる] D-94301: え、ブリーフ [D-94301の口内にSCP-943-JPが侵入。押し寄せるSCP-943-JPに抵抗できずD-94301は床に倒される] [武装した保安担当者数名が入室、SCP-943-JPは保安担当者に興味を示さない。保安担当者はD-94301を覆うSCP-943-JPを引きはがす。実験は終了。] 備考: D-94301は█体のSCP-943-JPの侵入、および侵入の試みを受け[削除済]に大きな損傷を受けたが、一命をとりとめた。SCP-943-JP-1の敵対化条件の1つは臀部への接触であることが判明したが、確保前のSCP-943-JPによると思われる殺害事件のいくつかは高低差の大きい場所など臀部への接触が発生するとは考えにくい状況で発生している。このため、SCP-943-JPの敵対化条件は他にも存在する可能性がある。 女性の姿のオブジェクトにこのような実験を行うのは同じ女性として非常に抵抗感があります。しかしながらそれ以上に、このオブジェクトが何人もの人間を殺めたことを考えれば、下手に手を抜くことはできません。実験は継続します。 - ██研究員 実験記録2 被験者: D-94301 付記: 前回の実験で一度分離してから再構成されているため、SCP-943-JP-1の容姿は前回のものとは異なる。 実験経過: [D-94301がSCP-943-JP-1の収容されている収容室に入室する] D-94301: ああ、よかった…… ██研究員: なにがですか? D-94301: ほら、前回はひどい目にあっただろ? 今回も担当者があんただって聞いて正直怯えてたんだよ。でもほら、今回は前のクソブリーフ女とは別人だし、前よりかわいい上に胸もでかいし、少なくともブリーフではなさそうだ。 ██研究員: 私語は慎んでください。 D-94301: ちょっとくらい許してくれよ。女のあんたにはわからんかもしれないけど、こっちもストレスとかイロイロたまってんだからさ。それで今回は何をすればいいんだ? ██研究員: ……今回は、彼女のスカートの中を覗いてください。 D-94301: おい待て。 ██研究員: なんでしょうか? D-94301: ブリーフじゃないだろうな? ██研究員: 違いますよ。 D-94301: ほんとにか? ██研究員: ええ、確実に、間違いなく。 D-94301: ……わかったよ。信じるよ。俺は今からしゃがんであの女のスカートの中を覗く。これでいいな? ██研究員: はい。お願いします。 D-94301: あいよ。へへへっ、結構なかわいこちゃんだから、やっぱ履いてるのもかわいいやつなんだろうな…… [D-94301はしゃがみ込み、SCP-943-JP-1のスカートの内部を覗き込む] D-94301: あ、ブリーフ [SCP-943-JP-1は敵対化しSCP-943-JPに分裂、D-94301に飛び掛かる。保安担当者が入場し、D-94301からSCP-943-JPを引きはがす] 備考: D-94301は生還したが[削除済]。今回の実験の結果によりSCP-943-JP-1のスカートの内部を視認する行為もSCP-943-JPの敵対化に繋がることが判明した。確保前に発見された変死体(特に高低差のある場所で発見されたもの)はこの条件を満たしたのだと考えられる。 インタビュー記録: 2015/█/█、実験のためSCP-943-JP-1を形成させた際、突如としてSCP-943-JP-1が██研究員に対して発言しました。本インタビューはその直後に行われたものです。なお、SCP-943-JP-1の形成を伴う実験は約6か月ぶりでした。 インタビュー記録 対象: SCP-943-JP-1 インタビュアー: ██研究員 <録音開始> ██研究員: それではインタビューを開始します、SCP-943-JP-1。 SCP-943-JP-1: えすしー……なんだ? 俺たちの名はスーパーパンツマン。格好いいだろ? そのちんちくりんな呼び方はやめて、是非この名で呼んでくれ。 ██研究員: ……善処します。さて、あなたはなぜ突然会話を始めたのですか? いままで一言も話さなかった訳はなんなのでしょうか? SCP-943-JP-1: 声がコンプレックスなんだよ。 ██研究員: 声が、ですか? SCP-943-JP-1: ああ。この低い男の声。母さんがくれた使命の邪魔になるから何度も変えようとしたが、これだけは変えられなかったんだ。 ██研究員: その"母さん"とは一体どんな人物なのでしょうか? SCP-943-JP-1: 母さんは俺たちを作った偉大な人だ。何もできない俺たちはいつも母さんを怒らせてばっかりだったけど、優しい母さんは俺たちに使命を与えてくれたんだ。 ██研究員: 使命とは? SCP-943-JP-1: 男たちの願いを叶えることだよ。俺たちはそのために生まれて、そのために生きるんだよ。そうしたら男たちはもちろん、母さんも喜んでくれるからね。今までもたくさんの男たちの願いを叶えてきた。君も見てきただろう? ██研究員: その願いというのは、下着に関係することですか? SCP-943-JP-1: もちろんだ。パンツまみれにしてあげるんだよ。母さんが言うには、男ってのはパンツ好きな生き物だからな。優しい母さんはパンツを通して多くの男たちを幸せにしろって言ってくれたんだ。 SCP-943-JP-1: この使命を達成するために、俺たちは母さんの言うとおりに形も変えられるようになったし、仕草も練習したんだ。今回こうやって嫌いな声を出してまで話しているのは、もっとこの使命を達成する機会をくれとお願いするためなんだよ。 ██研究員: 要求については善処します。ただ、男性がみな下着が好きであると決めつけるのは良くないと思いますが。 SCP-943-JP-1: 確かに、たまたま今パンツをみたい気分じゃないってことはあり得る。だから、俺たちが願いを叶えてあげるのは、明らかにパンツを欲してる男だけだ。例えば、パンツを触ってきたり、わざわざパンツを覗こうとするような。 ██研究員: あなたの言いたいことはわかりました。しかし、口や耳から体に侵入するのはやり過ぎでは? SCP-943-JP-1: いいや? 口とか耳を隠してないってどう見たって誘っているじゃないか。 ██研究員: そんなことは全くないと思いますが。 SCP-943-JP-1: いやいや、実際ほとんど抵抗してこないし、本当は喜んでるに違いない。恥ずかしがって嫌なふりをしてるだけでな。男ってのはそういうもんなんだよ。絶対に。 <録音終了> 終了報告書: SCP-943-JP-1からの"使命達成の機会の増加"要求はリソース保護の観点から却下されました。SCP-943-JP-1形成を伴う実験は最小限にとどめ、SCP-943-JP-1が反抗的な行動にでることを抑えてください。SCP-943-JP-1が"母さん"と呼称する人物に関しては調査が進行中です。
scp-944-jp
評価: +83+–x SCP-944-JPの保有していた施設。 アイテム番号: SCP-944-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-944-JPの異常性から、全財団職員の身辺情報整理を1ヶ月単位で行ってください。異常が見られた職員は直ちに拘束し、その存在を報告してください。あらゆる方法を用いてSCP-944-JPから特定の地理情報を入手し、速やかに機動隊を派遣して下さい。なおSCP-944-JPと関連性のある施設の制圧は、作戦にターゲット殲滅を第一に指揮して下さい。殲滅した施設跡はカバーストーリーを与え、周辺住民の接近を削減します。 説明: SCP-944-JPは、自ら生産したオブジェクトのみで構成されている存在が不明瞭な団体1です。SCP-944-JPは彼らの言う‶製品”を、一般会社から軍事組織までの各種組織に対してメリットになる提供を目的としています。SCP-944-JPには特有の開発理念が存在し、開発理念に“製品”は必ず従属します。SCP-944-JPは、主に対象の組織に対して非常に適性のある人材を生産します。生産された人材(SCP-944-JP-1と表記)は、その組織で非常に高いポテンシャルを発揮します。有用性のある活動からSCP-944-JP-1は、徐々に周囲から高評価と信頼性を得ます。 SCP-944-JP-1は一般的な人間と判別が困難な外見をしています。また会話でも判別できず、組織に対して有用性が大いにある振る舞いをするため、不信感を抱くこと自体が難しい存在です。SCP-944-JP-1は得た信頼性と高評価を利用し、人員雇用の権限の取得を望みます。権限を取得したSCP-944-JP-1は、自身と同様のSCP-944-JP-1を確実に雇用する事で組織内に侵入させます。雇用したSCP-944-JP-1のグループは皆、組織に対して有用な行動しか起こしません。 SCP-944-JPは組織内で有能な人物の接触も目的としています。この行動によってSCP-944-JP-1の最大目標の達成に繋がります。まず、SCP-944-JP-1は接触対象の交流を中心に活動します。親密な関係や、対象の親族に及ぶ程の個人的な信頼性を築き、最終的に親族の一部を拉致します。その後、SCP-944-JPの保有する施設内で拉致した対象者を“加工”します。加工して完成した機構を用いて、より優秀な人材を生産します。このようにして得た“サンプル”でSCP-944-JPの製法ポテンシャルを向上させる事が最大目標です。 以上の経緯で生産したオブジェクトは、人員雇用の権限を取得しているオブジェクトに雇用させる事で結果的にその組織の業績が向上します。 SCP-944-JP-1の初期個体の雇用には自然に防ぐ事が困難となるよう、現実改変に似た現象を用いられます。我々は財団内に侵入しているSCP-944-JP-1を現実改変に伴う、わずかな事実の差異を発見する事で存在の認知に至りました。SCP-944-JP-1は特有のDNA塩基配列を保有している為、遺伝情報の検査で明確に判別できます。   付録01: 財団が存在の捕捉を可能にしたSCP-944-JP-1を最初にインタビューした記録です。 《 インタビュー記録001 再生します。 》 《 停止します。 》 対象: SCP-944-JP-1 インタビュアー: 梶尾かじお博士 付記: 別室から映像とマイクを通して拘束された対象をインタビューしています。 <録音開始, 19██/2/15> 梶尾博士: 貴方に質問したい事がいくつかあります。間違いであれば貴方は普通のエージェントという事で私からお詫びしなければなりません。 SCP-944-JP-1: いえいえ、私はあなた方に雇われている身です。協力しなければなりません。 梶尾博士: 有難うございます。ではまず生年月日と出身、この財団に入った日付を確認します。 SCP-944-JP-1: はい。19██年6月8日が誕生日、出身は日本の██県█町。職がエージェントに決まった日は19██年6月8日のちょうど私が誕生日の時でした。 梶尾博士: ・・・分かりました。貴方を別オブジェクトの異常性に暴露した他組織のスパイの可能性などを鑑み、趣旨を尋問に移行します。 SCP-944-JP-1: え、なぜですか?いきなり私が、そんな馬鹿な。 <録音終了> 終了報告書: SCP-944-JP-1は19██年6月8日が誕生日、出身は日本の██県█町。職がエージェントに決まった日付けは19██年6月8日と供述しました。19██年6月8日以前に█町は██市へと合併されています。よって対象が生まれた時点で既に存在しません。加えて対象のみならず、対象の推薦に従って採用したエージェント██や研究員██にも経歴に不自然な点を発見、同様に拘束しています。 このインタビューは、対象と共に働く職員が彼の過去を尋ねた時に毎度異なる回答をするため、何かに暴露しているのではと感じ財団に報告、財団は念のため調査しました。調査の中でも対象のDNAサンプルを採取し、鑑定した結果、著しく人と異なった事で財団は不審と判断し、そのうえで開始しています。   付録02: 付録01のSCP-944-JP-1とは別個体の接触記録。この記録はエージェント██が、自身の息子の誕生日にそのSCP-944-JP-1を招いた時の映像記録になります。 《 インタビュー記録002 再生します。 》 《 停止します。 》 <撮影開始, 19██/07/19> SCP-944-JP-1: この度はお招きいただいて、誠にありがとうございます。 エージェント██: そんなに固くなるなよ。それでも礼を言う気なら、招くよう頼んで来た息子に言ってくれ。 SCP-944-JP-1: ああ、そうするよ。 (暫く、エージェント██の家族とSCP‐944‐JP‐1が楽し気に過ごす映像が30分近く記録されています。) SCP-944-JP-1: ・・・。 エージェント██: どうしたんだ?もう疲れてしまったのか? SCP-944-JP-1: 君の家族は素晴らしいね、奥さんも君のお子さんも優秀だ。大人になればお子さんもきっと良いエージェントになる。 エージェント██: やめてくれよ、家族は巻き込みたくない。俺は普通の銀行員で、お前もそうだろう? SCP-944-JP-1: ブラックジョークは嫌いかい? エージェント██: おいおい、勘弁してくれよ。 <映像終了> 報告書: エージェント██の妻はその後消息を絶ち、行方不明。消息を絶った日に周辺住民から夜遅くに大きな鞄を肩に担いだSCP-944-JP-1の目撃情報を得ている。   付録03: 付録02のインタビューによりSCP-944-JP-1を財団は拘束し、インタビューを行いました。 《 インタビュー記録003 再生します。 》 《 停止します。 》 対象: 疑いのあるSCP-944-JP-1 インタビュアー: 梶尾博士 付記: 拘束したSCP-944-JP-1を別室からカメラとマイクを通してインタビュー。 <録音開始, 19██/07/30> 梶尾博士: 単刀直入に言ってエージェント██の妻である████さんを拉致したのは貴方ですね? SCP-944-JP-1: はいそうです。我々財団職品は、より優秀な製品を自然由来の素材にこだわって作る事を理念としていますので。 梶尾博士: 財団・・・えっと、今なんと? SCP-944-JP-1: 財団職品です。ショクは食品のショクではなく、職員のショクです。ヒンはそのまま品と書きます。 梶尾博士: そ、それは何です? SCP-944-JP-1: 提供先の財団には回答義務があります。お答えすると財団職品とは、我々が制作する人材を用いて頂いて、提供先の業績アップを目的とした株式会社にございます。なお社名は提供先と親和性が溢れるように名付けられています。 梶尾博士: 貴方達は我々に何を与えようとしていますか? SCP-944-JP-1: 提供先の財団には私を含めた我々の人材製品をお使い頂いております。これにより職員の生存確率と今年のオブジェクト収容実績数はぐんと跳ね上がりました!おめでとうございます! 梶尾博士: ・・・では改めて、エージェント██の妻である████さんを拉致したのは何故ですか? SCP-944-JP-1: はい。我々、財団職品はより優秀な製品を自然由来の素材にこだわって作る事を理念としています。ですから優秀であるエージェント██様の妻に当たる████様、お2人のご子息様を一目見て████様もまた非常に優秀なDNAを所有していると察しました。案の定、サンプルの鑑定結果で我々、2つの組織に大変有用である事が分かり、回収させて頂きました。エージェント██様の遺伝子も非常に優秀ですので今頃、回収が済んでいるものと思われますが。 梶尾博士: 拉致してどうするのですか? SCP-944-JP-1: 財団職品工場で人材生産に用いられる機構に加工します。 梶尾博士: 工場の場所は? SCP-944-JP-1: それは企業秘密です。 梶尾博士: では、君たちが他組織のスパイである可能性もあるため、製品ともに不信感を払拭したいから工場見学がしたいと言っても場所を教えてくれないのですか? SCP-944-JP-1: そうですか分かりました。では場所を。 <録音終了> 終了報告書: 我々が対象に重要性の高い場所を質問し、これに回答する事は同時に他組織のスパイの可能性を否定します。理由として、他の組織に潜入するスパイなら自ら重要性の高い情報を開示し、不利になる行動を取る事はスパイとして存在の意味を成しません。以上より他組織のスパイの可能性からなる隔離処置から認識を改め、正式な収容対象としてSCPオブジェクトに指定します。 対象から聞き出した場所と地理情報を下に、速やかに作戦を立て機動部隊を派遣する事を進言します。   付録04: 制圧作戦に自ら参加を進言した梶尾博士の工場内部を映した映像記録です。工場内部にいたSCP‐944‐JP‐1を区別するためにSCP-944-JP-1-Aとします。 《 映像記録001 再生します。 》 《 停止します。 》 付記: 梶尾博士には発信機の着用と、突撃の合図をノックすることで発信するシャープペンシル型の通信機器をカメラと共に所持させています。 <撮影開始, 19██/08/01> 梶尾博士: 工場の見学なんて小学生の遠足以来だぞ・・・。 SCP-944-JP-1-A: お待ちしておりました、梶尾博士。 梶尾博士: ああ、見学に来た梶尾です。 SCP-944-JP-1-A: 提供先には情報を開示しなくてはならないと、上司も仰っていたので今回だけですがどうぞこちらへ。 梶尾博士: はい。 (通路を進み、ガラス越しに上から見下ろす形で製造工程を見せられる。) SCP-944-JP-1-A: こちらは採取したサンプルを加工する工程になります。 梶尾博士: ・・・おい、加工する人間は死んでいるのですか? SCP-944-JP-1-A: いいえ、死亡していては意味がありません。生きたまま加工します。 梶尾博士: そ、それで。 SCP-944-JP-1-A: それで、まず女性の人体を頭部と手足を切断し、速やかにわが社独自の手法を用いて一瞬で完全止血します。そのあと水槽に満たされたわが社独自の加工用液の中へ入れます。すると人材製造機として有効になります。次に男性から採取した相性の良い遺伝子サンプルを、わが社独自の技術で胎内に送り込み、発生した胎児を取り出してDNA単位で提供元に合うようデザインします。こうして自然由来の素材を、わが社独自の技術であなた方に完全で優秀な人材を派遣できるのです。あと私もここで生まれました。 (その後、約1時間にわたり製造やDNAの組み換えを未知の手法で行う映像が記録される。) 梶尾博士: 最後に君たち自体の目的を教えてくれませんか? SCP-944-JP-1-A: ああ、はい。私たち株式会社財団職品は皆様に商品を提供し、自然由来で優秀なサンプルを採取し続ける事で、会社が生み出す製品の質を向上し続ける事が最大の目的になります。対象の組織は業績のアップも出来るので損失はありません。我が社は職場環境も良く、非常にクリーンで・・・どうなさいましたか博士? 梶尾博士: ・・・。(シャープペンシルをノックする。) SCP-944-JP-1-A: その手のシャープペンシル、珍しいデザインですね。 梶尾博士: そうでしょ、特に今は気に入ってるんですよ。 <映像終了> 終了報告書: 梶尾博士の信号を受信後、速やかに周囲を包囲し、先行を務める部隊が入り口を爆破して侵入しました。内部の制圧には約1時間を要して完了。内部の生存者を保護。SCP-944-JP-1-Aらは機動隊侵入と同時に心肺が停止して死亡した事が検死で明らかになっています。 最後まで癪に障った。 - 梶尾博士   補遺001: エージェント██の身は安全でした。加えて彼の妻に当たる████さんも施設内で生存を確認。保護してAクラス記憶処理を行いました。 補遺002: 財団内に残存しているSCP-944-JP-1を全員拘束し、うち1人から更なる情報を引き出すためにインタビューを行いました。 《 インタビュー記録004 再生します。 》 《 停止します。 》 対象: SCP-944-JP-1 インタビュアー: 梶尾博士 付記: 拘束したSCP-944-JP-1を別室からカメラとマイクを通してインタビュー。 <録音開始, 19██/08/02> 梶尾博士: これよりSCP-944-JP-1のインタビューを行う。 SCP-944-JP-1: ・・・。 梶尾博士: 我々に協力するのだろう? SCP-944-JP-1: 何故ですか。我々は完全で優良な職品であるのに・・・。 梶尾博士: ではあなた方の言う優良とは何ですか? SCP-944-JP-1: 会社の為、人の為、より良く行動し遂行する人間です。これは会社に係らず全てに言えるでしょう。 梶尾博士: そうですか、では貴方たちの事ではないと思われますがどうでしょうか? SCP-944-JP-1: いいえ、そんな訳はありません。我々の製造方法に嫌悪を催す組織は、財団職品という社名へ変更を行う以前にも存在した記録がありますが、これは結果的に他人の為になる事です。それを非人道的と非難するのなら、貴方たち財団もDクラスを用いて実験を行っているではありませんか。 梶尾博士: では他人の為になるなら人間をあのように扱っていいというのですね? SCP-944-JP-1: 我々はより優秀な製品を自然由来の素材にこだわって作る事を理念としています。その妨げになるのがどれ程までに無駄か理解していないのですか!? 梶尾博士: では更に質問したいのですが、提供元のニーズを理解しない製品を作るのは何故ですか?我々が冷淡ではあるが残酷ではないという事と、それ以前に人間がどういう生き物かという事を理解しているなら、効率がすべての製品を望んでいない事に気づいている筈です。また、このように提供先のリサーチが不足している時点で完全で優良な会社と考えにくいと思いますが、これをどう捉えますか? SCP-944-JP-1: ・・・。 梶尾博士: 我々が完全に残酷ではない例を挙げるなら、私の実験で大いに貢献したDクラスは、整形して記憶処理を施した後に開放しています。勿論、解放せずに射殺される者もいますが、私の権限が及ぶ範囲内で貢献者のアフターサービスがあります。あと先ほどの質問に早く答えて下さい。 SCP-944-JP-1: ・・・リコール申請を受け取りました!(叫ぶSCP-944-JP-1) 梶尾博士: これは、SCP-944-JP-1に早く鎮静剤を! SCP-944-JP-1: 製品に明確な欠点を指摘して頂き有難うございます!この度は我が社の製品でご迷惑をおかけして大変申し訳ございません!これは音声メッセージになりますので返信出来かねます。不備が見られた為、こちらに提供して頂いている製品全てを我が社が自主処分します!ご安心ください!最後にアンケートを実施しています!なお、我が社の都合で改善点や感想、使用感のみ内容を送信しますので誠に勝手ではありますがご了承ください!何かあればどうぞ! 梶尾博士: 是非とも直接、総括責任者に会いたい。 SCP-944-JP-1: 企業秘密です! 梶尾博士: どうしても不可能ですか? SCP-944-JP-1: アンケート回答ありがとうございます!我々は終わる時もみんな笑顔でをスローガンにしていますので笑います!さあ、ご一緒にどうぞ!(突如として体全体から発火するSCP‐944‐JP‐1。この後、笑いながら約15分は燃え続けるSCP-944-JP-1と、それを消火する映像が記録されています。) <録音終了> 報告書: これまでにも財団以外の組織が標的になっていた可能性がインタビュー中に見受けられた点を報告します。最後の人体発火はあらゆる消火器を用いましたが効果を示しませんでした。 補遺003: 財団宛に差出人住所不定の手紙が届きました。関連性が示唆されます。以下はその本文です。 《 開く 》 《 閉じる 》 財団職品通信! 8月号 我々財団職品が、なんとなんと復活いたしました!以前よりもサンプルを揃え、会社の技術力も向上! 皆様に愛されて、私達も幸せです! モチロン!今回も自然由来の素材で、より優秀な人材を作る理念を忘れていません。さあ、もう一度! 新しくできた製品を今なら無料で使用できます! この機会にぜひ!     絶対に満足しますから   Footnotes 1. SCP-944-JP-1のグループ全個体は、会社と述べていますが、おおよそ会社経歴から雇用形態に至るまでのデータが一切見つかりません。加えて、秘密裏に異常性を発揮する事からSCP-944-JPの在り方は会社と称するより、組織または団体と称した方が適切です。ですが、オブジェクトの痕跡や我々財団にもたらした事実、発見した施設などから会社としての存在を完全否定できない事を留意して下さい。
scp-945-jp
評価: +127+–x 評価: +127+–x クレジット タイトル: 遠いどこかの、愛しい息子へ 著者: ©︎rkondo_001 作成年: 2016 評価: +127+–x 評価: +127+–x アイテム番号: SCP-945-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 実を成すSCP-945-JP-A個体 特別収容プロトコル: SCP-945-JP個体を取り扱う際は耐精神汚染ゴーグルを用いるか、機器による遠隔的操作を行ってください。SCP-945-JPはオリジナルと推測されているSCP-945-JP-A-Oと任意の複数個体(SCP-945-JP-A群)が研究・実験目的で常時保護されています。保護個体はその全体を覆うように収容コンテナを設置し、その他に新たな個体が発見された場合、伐採もしくは移植といった措置を取ってください。オブジェクトの影響を受けたとされる人間には、クラスA記憶処理にて対応が可能です。 追記: 20██/10/██をもって、当オブジェクトはNeutralizedにクラス変更されました。詳細については補遺の記述をご参照ください。 説明: SCP-945-JPは一般的な枇杷(学名: Eriobotrya japonica)の姿をし、その遺伝子上には現時点着目すべき相違点は見つかっていません。しかし生態面には明らかな異常が見られ、通常同種が結実に7~8年の歳月を要するのに対し、SCP-945-JPはその種子が蒔かれてからわずか3週間ほどで樹高約1.7mまで急速に成長し、果実をつける事が確認されています。以降、SCP-945-JP個体は季節や気候に関わりなく常に多数の実を生らせ、最大で樹高10m程まで緩やかな成長を見せます。 SCP-945-JPは一種の精神影響をもたらす能力を持つとみられており、視認した人間は対象への強い親近感を覚えると主張します。この際にSCP-945-JPが果実を実らせていた場合、影響下の人間の多くは実った果実を摂食しようと試みました。ただし、この過程は外部からの制止により容易に中断可能です。摂食を行った人間は揃ってこの果実を「これまでに体感した事の無い非常に美味なものである1」と評価し、続いて残った種子を元の個体からより離れた場所にある、任意の土壌へと埋めて個体を殖やす事を求めます。この際影響者はこの行動の理由について尋ねられると、皆一様に「それがあの樹/あの枇杷のためになる」といった返答を行う事が分かっています。この段階はより強い精神的衝動をもたらしますが、前述の行動と同様に強い外部からの制止やクラスA記憶処理といった対処で脱させる事が可能です。 SCP-945-JPは19██/9/██に山梨県一宮町(現:笛吹市)の達沢山にて存在しなかったはずの多数の枇杷の木(後のSCP-945-JP個体)が発見され、さらに登山客や観光者・周辺地域の住民らの多くが市内各所と県内外の土地にこれらの果実から採取された種子を植えようとした"945-JP-α1事案"の発生により財団の注意を引きました。現地調査に当たったエージェントからの精神影響の報告と、植えられた種子の異常な成長が確認された事により、財団は生育個体の一斉確保と地域住民・観光客への大規模記憶処理を行いました。この一件により、財団に確認されていない影響者やSCP-945-JPの果実・種子等が不確定数発生してしまい現在も完全な収容には至っていませんが、その後地域住民や観光客の追跡監視を経る事により、根絶には至らなくとも同様の事案の発生は最小限に抑えられています。ただし、その発生場所については年々遠方への広がりをみせ、台湾・インドネシア・オーストラリア・ニュージーランドといった国外での事案もわずかながら複数確認されている事に留意すべきです。 "945-JP-α1事案"の発生源となった達沢山山間のSCP-945-JP個体群については、担当チームによる当事者達への聞き込みや生育状況からの判断などにより、近辺に住む男性 ██ █氏が単独で殖やしたものである事が判っています。また氏へのインタビューから、SCP-945-JPのオリジナルと考えられるSCP-945-JP-A-Oの存在が判明し、こちらも現在は他の個体同様収容が確立しています。詳細については、当資料に付記されたインタビューログを参照してください。 補遺: 20██/11/██、保護下にあったSCP-945-JP-A群の個体サンプルから果実が一斉に消滅し、以後その特異性が喪失しました。調査を経てこれらは「現状、平凡な枇杷の木と何ら変わり無い」と判断されています。またこの一件の後、現在の記録上最後の確保個体(後にSCP-945-JP-A-8と分類)がキリバス共和国█████諸島の█████で発見されたのを区切りに新たな個体は確認されていません。2その後の審議の結果、SCP-945-JPはNeutralizedにクラス変更されました。それまでに保護されていた個体とSCP-945-JP-B-8については、継続して財団による管理・観察が行われています。 + インタビューログ 945-JP-43-2を表示 - テキストを隠す インタビューログ 945-JP-43-2 対象: ██ █氏 インタビュアー: 市河博士 <録音開始> 市河博士: では改めて確認しますが、達沢山山間で発見された総数400個体を越すほどのSCP-945-JP-A群について、これはあなた個人が独りで種を蒔き、殖やした。そういうことで間違いないですね? ██ █氏: 本当は、もっと遠くへ、運んであげたいと、そう思っておりました。しかし、僕も歳をとってね、足も弱いからうちの周りから山小屋までぐらいのところにしか、広げてあげられなかったんですよ。私だって仕事をしなきゃ生きていけんし、あれほど美味しい枇杷とはいえ、食の細くなった私には1日5個ほど食べて、山小屋に向かいながら足元に植えるのがやっとのことです。広げていけば、いつか誰かが気付いて、動けぬ私の代わりになってくれるだろうと、そう思いながらの行動でありました。 市河博士: その枇杷の種は、どこから入手したのですか? ██ █氏: 僕は孤児院育ちでね、あの山の、もっと上の奥の方にある小さなお屋敷みたいなところがあってね、そこでお世話になってたんですよ。孤児院は█おばやん一人でやってるもんだからそらもう大変に見えてたのを覚えてます。もう何年前にあそこを出たかわからないけど、ふとあの屋敷が懐かしくなりましてね。そりゃ█おばやんがもう居ないのは承知でした。でももしかしたら、あの屋敷や、みんなで食べた前庭の枇杷の木をもう一度見れるかもしれんと、それで向かったわけです。……屋敷は、もう荒れ果ててましたよ。当然です。しかし、庭の枇杷の樹は、同じ場所で、ずっと大きい古木になってそこにいたのです。嬉しかったですねぇ。 市河博士: その"孤児院跡の枇杷の古木"というのがSCP-945-JP-Aの元となった個体、ということでよろしいでしょうか? ██ █氏: ええ、そういうことです。枇杷は時期はもう過ぎてるのに、美味しそうな実をつけていました。私はまるで、かつての旧友に再会したような気分でした。昔ほどすんなりとはいきませんが、下に下がってる枝を引っ張って、実を2個ほど頂いたのです。一つその場でかじったところ、その美味しいのなんの。まさに、子供の時分にほおばったあの味、いや、それを何倍にも強めたような味でした。昔を思い出して、僕は懐かしくて泣きました。自分とこの家に戻りながら、もう一方の枇杷も食うと、僕は自分ちの庭先にその種を植えました。枇杷はとても強いですから、植えとくだけで元気に育ってくれます。途中で僕がお迎え来たって、それまでも、その先も、あの時の思い出を側に置いとけるような、そんな気がしたのです。そしたら、もうあっという間に育って、月を跨いだ頃には2本とも実が成りました。僕は気付いたんですけどね、懐かしいんです。ほんの少し前に生えたばかりのこの2本も、まるであの庭の枇杷と、全く同じ分身のように感じました。私はその実を食べると、その木の奥に、また種を植えました。食べては植え食べては植えの繰り返しです、後は。 市河博士: 何故そのような行動をとられたのでしょうか? ██ █氏: 何でったって、……まぁ僕にもわからんのですがね。そうすべきだと、思ったのです。何だか、その木に言われたような気がしたんですよ、「どこかにいきたい」って。あんまし遠くには行けませんけど、この木がいきたいってなら、そうしてやるのがこいつのためでしょう。僕はそれに従ったまでです。 <録音終了> + インタビューログ 945-JP-43-3を表示 - テキストを隠す インタビューログ 945-JP-43-3 対象: ██ █氏 インタビュアー: 市河博士 <録音開始> 市河博士: さて、今回はSCP-945-JP-A-O、あなたが枇杷の古木を見つけた場所……██さんがかつていらっしゃったという"孤児院"についてお聞かせ願えますか? ██ █氏: あそこはね、もともと█おばやんの……父親だったか爺さんだったか忘れたけども、その人が建てた療養用の別荘だったって話です。枇杷の木も、そん時に植えられたんだったと思います。もうどっちも死んで、実家も火事で焼けちまったもんで、█おばやん独りであの山の中の屋敷に移ったって聞きました。 市河博士: その方に、他に親族は? ██ █氏: 居なかったんじゃないですかねぇ。火事で死んだのか元からなのかは分かりませんけど、少なくとも僕は聞いたことありません。こっちに移った後になって、少し経ってどこかの農園の若息子と縁談があり、子宝を授かった、と昔話してもらいました。その子供が名前を「█」と言いましてね、僕らは█にいちゃん█にいちゃんと、いつも呼んでました。本を読むのが好きで、年下の僕らにいろんな物語を教えてくれる、気さくな方でした。 市河博士: 以前、"孤児院は█さん一人でやりくりしていた"と仰られてましたが、その旦那さんや息子さんはどうしたのですか? ██ █氏: 旦那さんがねぇ、どっか行っちゃったらしいんですよ。何があったかは分かりませんが、ある日突然、妻と子供残して、消えてしまった。それで、どういうわけか暮らしてた農園からも追い出されちまった。旦那がその後も生きてただかどっかで死んだかも分かりませんが、仕方ないからと息子を連れて元の山の屋敷に戻った、そんなところだったかと思います。息子は、僕らより年上とはいえ、まだそん時は子供ですしね。それからしばらくして、僕みたいなのとか、身寄りのない子供たちを集めて一緒に暮らすようになったそうです。 市河博士: なるほど……。 ██ █氏: 庭の真ん中には、この前言った枇杷の木がありましてね、その頃から やっぱり大きいもんですから、僕らやんちゃ坊主どもでいっつも木登りばかりしてました。█おばやんには、ガキ大将と一緒によく叱られましたよ。「元気は一番だけど、それで怪我したらどうするだ」って。█にいちゃんは……ほんの少し、身体が弱くてですね、それでいつも本ばっかり読んでたわけですが、僕たちが木の上からの風景とか、山ん中で冒険した話を、とても楽しそうに聞いてくれてました。枇杷が実をつける時期になると、屋敷の連中みんなで実を集めて、一日中それを食ってた日もありましたよ。█おばやんも、█にいちゃんも枇杷が大好物でしたので、僕らは2人を喜ばせようと、一層力を入れて枇杷を集めていたのを覚えています。戦争が始まるかって、そんな時代ですから、とても貧しかったですがね。 市河博士: "█さん"や"█にいちゃん"のその後についてはご存知ですか? ██ █氏: ……何年かしたくらいですかね。いよいよ█にいちゃんに軍から徴集がかかりました。僕らはまだその年齢ではありませんでしたので、█おばやんと一緒に、包み一杯の枇杷を餞別に渡して出発を見送りました。「またみんなで、この木の枇杷を腹いっぱい食べよう」と、█にいちゃんは言い残していきました…けども結局、█にいちゃんは戦争が終わっても、帰ってきませんでした。█おばやんはこぴっとした方でしたから気高に振舞ってましたけど、時々影で泣いたり、どこか遠い目で、風に揺れる枇杷の木を眺めているのを、よく見かけました。何年かは、僕らで█おばやんを支えようって動いてました。けどおばやんは「自分は大丈夫だから、みんな一人ひとりの人生を生きなさい」と言ったんです。その後僕も他の連中も自立して、屋敷を去りました。最初は文通なんかもしていましたが、いつの間にか無くなっていました。僕も普通に働き、結婚しまして、息子夫婦も孫も都会で暮らすようになったんで、引退して生まれ故郷のこの土地に女房連れて隠居しました。█おばやんがどうなったか、というのも気になってはいましたが……身体も昔ほどはうまく動きませんし、可愛がってもらった僕がこの歳です、何となく察してしまうところがあり、今まではあの場所になかなか向かう勇気はありませんでした。 市河博士: 同じ孤児院で育った方々のその後は……。 ██ █氏: 今、まだ生きているのは僕だけでしょう。この前、最後まで、一番元気だったかつてのガキ大将がぽっくり逝っちまいましたから。みんなそれなりな人生だったんじゃないですかねぇ。 市河博士: ありがとうございます。本日のインタビューはここまでとさせていただきます。また何か、些細なことでも構いませんので、思い出したり気付いたりしましたら、教えていただけますか? ██ █氏: ……ひとつ、変なこと言ってもいいですかね。 市河博士: 何でしょうか? ██ █氏: いやあ、本当に馬鹿みたいな事と言いますか、そういえばって、ふと思いついただけなんですがね。 市河博士: 構いませんよ。そのようなちょっとした気付きの積み重ねが大きなヒントになりますし、それを調べるのが我々の仕事なのです。 ██ █氏: ……前に僕、あの木を見た時に「かつての旧友に再会したような気分だった」って言いませんでしたかね。 市河博士: はい、以前のインタビュー時に仰られていましたね。 ██ █氏: 何と言いますかね、どうも引っかかってたんですよね。いっくら思い出の場所の思い出の木ってったって、あの時の感情は……なんと言いますか、少し違ったのです。前お話したあの時は、「旧友」って言いましたが、実を言えばそれもまた何だか違う……もっと深いものですし、正直今でも感じ続けるような、そんな強い感情でした。 市河博士: あの枇杷の木とその種から殖えた木々には、一種の精神影響のような効果が見つかっています。他のインタビューした方々も同様のことを述べられていましたし、恐らくはそれではないですかね。 ██ █氏: それは事前に、他の……あなたのお仲間の方から説明されましたよ。不思議なこともあるもんだなぁ、とは思います。しかし……僕が感じたそれに、僕は覚えがあるのです。とても懐かしい、自分を受け入れてくれた、温かみのある感情です。僕は、気付いたんです。僕が感じたのは…… 市川博士: 何でしょうか? ██ █氏: ……おかしなことを言いますよ。あの木は、█おばやん です。 <録音終了> Footnotes 1. 実際に非常に高い糖度や栄養価を持つと成分分析から判明しています 2. この個体のみ、精神影響が消滅した現在でも年間を通じて豊富な果実の生育がみられます
scp-946-jp
評価: +70+–x アイテム番号: SCP-946-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-946-JPはサイト-8181の低脅威物体収容ロッカーに保管して下さい。なお、一週間に一度ゲームのデータの確認のためにSCP-946-JPを起動してください。 説明: SCP-946-JPは"Sub*Life"と題されている█████████専用のゲームカセットです。発見時パッケージ及び説明書も回収されましたが、それらに異常性は見られませんでした。 SCP-946-JPを一般的なゲームと同様な手順で起動した場合、アバターの見た目・名前を設定したのちに、"TP"と呼ばれるゲーム内通貨を使い、"自室"と呼ばれる空間の模様替え、アバターの着せ替え、自室から出て旅行等をするという、いわゆるミニスケープゲームとして遊ぶことができます。 この"TP"はゲーム開始時に支給されます。その値は説明書の内容及び実験から「現実世界に於いていかに不快感、または達成感を感じたか」「最後にゲームをしてからどれだけの時間が経っているか」「どれだけ眠ったか」等のデータから算出された数値であると考えられていますが、それらのデータがどのようなメカニズムで把握されているのかは不明です。 ある特定の条件を満たした場合、ゲームプレイヤーは「眠っている間、SCP-946-JPのデータにアクセスできる」という能力を取得します。この能力はゲーム内においては"ユメナカ通信"と呼称されており、就寝中のデータアクセスはプレイヤー曰く「アバター視点で動けるようになり、味覚・痛覚などもある」というものです。"ユメナカ通信"をしている最中のSCP-946-JPを起動した場合、本来のゲームとしての機能が失われていますが、「ゲーム内のプレイヤーの行動の確認、および意思疎通ができる」という機能が新たに追加されています。 なお、ゲーム内ショップに於いて「暴力的,性的,政治的でない」等の条件を満たす物品なら現実に存在するいかなる物も購入可能である事が確認されています。1 SCP-946-JPは2013/██/█、███県██市のゲームショップにおいて「いつの間にか知らないゲームソフトが入荷されている」という通報があった際に警察署に潜伏していたエージェントによって回収されました。入荷ルートが不明である事が確認され次第、関係者にはAクラス記憶処理が施され、その後の実験において特異性が明らかになりました。 実験記録SCP-946-JP-001 - 日付2013/██/█ 実験対象: D-94385 実験内容: SCP-946-JPをプレイさせ、「ユメナカ通信」を了承させたのちに就寝させる。 目的: SCP-946-JPの説明書にある「ユメナカ通信」が実際にできるのかの確認。 結果: D-94385が起床後「本当に夢の中でゲームが出来た。とりあえず部屋に家具一式を置いた」と発言。SCP-946-JPのデータを確認すると、確かに家具一式が新たに置かれているのが確認された。 分析: 「ユメナカ通信」というのはでたらめではないようだ、次は細かい機能を調査する。 実験記録SCP-946-JP-002 - 日付2013/██/██ 実験対象: D-94385 実験内容: SCP-946-JPをプレイさせ、以下の機能を使用させる。 ①SCP-946-JPの機能を使用し、就寝中のD-94385のゲーム内での行動の監視及び意思疎通を図る。 ②"レクリエーション"を利用させる。内容はD-94385の自由に決めさせる。 ③"食事"を利用させる。内容はD-94385の自由だが、なるべく多い量がいいと伝えてある。 ④"パソコン"を利用させる。なお、SCP-946-JPが入ったゲーム機はオフラインにしてある。 目的: 付属の説明書を元にSCP-946-JPの機能についての追加調査。以下の内容について調査する。 結果: ①正常に意思疎通でき、またD-94385の行動も確認ができた。 ②「"旅行"の"マチュピチュツアー"を選んだ、本物は見たことはないが驚くほどリアルだった。」とコメント。 ③「"食事"は"豚の生姜焼き定食"を選んだ、普通に美味かったし、満腹感も感じた。」とコメント ④「ネットには繋がらなかったが、ゲーム機のデータにアクセスできたので、メモ帳に適当に書き込んだ。」とコメント。メモ帳に新しい項目が増えているのが確認された。 分析: 説明書の内容は信用していいだろう、なおD-94385に寝不足等の兆候はなく、依存度は一般的ゲームとある程度変わらない事から、純粋な娯楽目的として作られたと考えられる。 ①の機能を使えば②~④の結果をわざわざ聞かなくてもいいと思うかもしれないが、動作がかなりデフォルメされていて具体的に何をしているかがわかりづらいんだよな…。 -奈部川博士 実験記録SCP-946-JP-005 - 日付2013/██/██ 実験対象: SCP-946-JP 実験内容: Dクラス定期記憶処理及び配置換えの時期が近くなったが、D-94385がSCP-946-JPのデータの自主的な削除の要請を拒否、説明書の記載から考えてD-94385の死亡によりSCP-946-JPが使用できなくなる可能性が高く、SCP-946-JP自体の有益性が高いと判断されたため、SCP-946-JPのデータの外部からの消去が出来るかについて実験する。 目的: SCP-946-JPのデータを外部から改竄できるかの確認。 結果: データのハッキング・D-94385の疑似人格を作成しての侵入・SCP-946-JP自体の物理的な改竄・[削除済み]が試されたものの、いずれも失敗した。 分析: この内容で駄目であるならSCP-946-JPの改変は不可能だと考えていいだろう、次はD-94385の方について実験をする。 実験記録SCP-946-JP-006 - 日付2013/██/██ 実験対象: D-94385 実験内容: Dクラス定期記憶処理及び配置換えを実行するため、SCP-946-JPのデータの自主的な削除をD-94385に要請。しかし依然固辞したため、記憶処理で強制的にSCP-946-JPについての記憶を消去する。 目的: SCP-946-JPの効果が記憶処理で取り除けるかの確認。 結果: D-94385がSCP-946-JPのゲームについての記憶を失っていることを確認。7日間監視し、就寝中にゲームのデータにアクセスしているか否かについてはD-94385への[編集済]で無いという結論が出た。なお、D-94385が就寝中にSCP-946-JPのデータの確認を試みたものの"ロックされています。"という文が表示されるだけであり、確認はできなかった。 分析: あわよくば完全に権限をD-94385から奪えないものかと思ったが、そこまでうまくいくものでもないな。しかし、記憶処理での効果の除去は可能のようだ。D-94385の配置替えを行っても問題ないだろう。 この結論は誤りでした、詳しくは事件報告946-1を参照して下さい。 事件報告946-1 実験SCP-946-JP-006後にD-94385の配置換えが行われ、SCP-███-JP実験への参加が決定。実験内でSCP-███-JPへの侵入を行わせたところ17回目の侵入にて[編集済]、結果的にD-94385は"眠っているような状態"になり、肉体に対していかなる物理的な影響も与える事が出来なくなりました。しかしこの実験の一週間後にSCP-946-JPのデータの"ロック"が解除され、プレイヤーとしてのD-94385の活動が確認されました。その際に送った財団側のメッセージをすべて無視し、D-94385は以下のメッセージを送信。 どうだ!ここを俺の物にしてやったぞ!ざまーみろマヌケ! あの██2がどれだけ恐ろしかったかはテメーらにっは3わからんだろうな! だがそれのお陰で俺は莫大な金4を手に入れた! 現実の俺が餓死するまでに色々な事が出来るだろうyp5![編集済み]とか[編集済み]はやれないがな… だがそれで十分だ!俺は買った6!クソッタレなおまえらから逃げきった! てめえらの負けだクズ共 このメッセージを受信した後SCP-946-JPのデータが再び"ロック"され、中の様子はわかっていません。 事件報告946-2 2014/█/██、SCP-946-JPが発見された███県██市のゲームショップに"Sub*Life公式ガイドブック"と題された全192ページの本が入荷されているのが発見されました。再び回収及び聞き込みがなされ、入荷の経路が不明である事の判明後、関係者への記憶処理がなされました。内容はSCP-946-JPの部屋の飾りつけ方の例や、レクリエーションで出来ることの幅について解説する文書が主で、その他はSCP-946-JP内で入力すると特定のアイテムが手に入るコードのリストなどであり、内容がSCP-946-JPを扱っているものであるということ以外は一般的なゲーム攻略本であると思われています。また、当該ゲームショップの監視の強化もなされましたが、現在まで新たな異常物品は見つかっていません。 + "Sub*Life公式ガイドブック"の190ページに書かれていた文書 - 閉じる 以下の文書の漢字部分にはすべて振り仮名が振ってありました。 ~~~このゲームを楽しんで下さっている皆さんへ~~~ こんにちは、Sub*Lifeのプロデューサーをしている███です。 この本を買ってくれたということは、みんなはSub*Lifeをしっかりと遊んでくれているんだと思う。 そしてしっかりと遊んでいるのなら、ゲームにさまざまな感想をもっているだろうね。 多分、その感想の中にはこういうものがたくさんあるんじゃないかな。 「現実でTPかせぐのめんどくさい!」「現実じゃ絶対できないようなことがしたい!」「せっかくの夢なのに!」 その気持ちは本当によくわかるんだ。 僕も最初は「せっかくの夢の中なんだし、どんな事でも好きなだけできるようにしよう」と考えてたからね。 しかし、あるときに気付いた。 「とても楽しい夢の世界にいつでも行けるようになったら、だれも現実を楽しもうとしなくなるんじゃないか」 どれだけゲームがリアルになってもそれは夢、夢からさめて現実へ歩き出さないといけないわけだよね。 だけど、このゲームでなんでもできるようになってしまうと、夢からさめたくない人があふれてしまう…。 それに気づいた僕は、このゲームから「夢らしさ」を取りのぞいてしまうことにした。 だからTPはほとんど現実世界でしかかせげないようにしたし、「痛み」などもゲームに追加した。 夢らしく空を自由に飛んだり、無敵のヒーローになったり、いじめっ子をボコボコにしたりもできなくした。 けどそういった「現実のつらさ」だけではなく、それに負けないほどの「現実の楽しさ」もありったけ詰め込んだ。 パラグライダーをしてみたり、警察官の体験をしてみたり、柔道の技を学んだり…、 もちろん、「いいことも入れた」からといって「イヤなことを入れた」ことに変わりはない。 僕は「夢の世界につらい事をねじこむ悪い人」なのかもしれない。しかし、これだけは言わせてほしい。 僕たちの仕事は皆さんに「夢を見せること」なんだ。決して「現実から目を背けさせること」じゃないんだよ。 現実がつらいなら、夢に逃げるというのはいい方法だ。けど、夢を現実の代わりにしてはダメだ。 もしかしたらこの言葉をとても残酷だと感じる人もいるかもしれない、けど、どうか忘れないでほしい。 ゲームと同じくらい、現実をエンジョイしよう。 █████年/█月/███日 Sub*Lifeチーフプロデューサー ███ ██ 補遺: 2014/██/██、SCP-946-JPのデータの"ロック"が再び解除、さらにD-94385から「TPが枯渇寸前であり、通常の就寝に戻ろうとしても"エラー"と出て戻れない」といった旨のメッセージが送信されてきました。しかし財団側からメッセージを送ろうとすると"メッセージを受信しない設定にしています"との文が表示されて送信が出来ず、更に2015/█/█から一切のメッセージを送ってこなくなった事からD-94385は沈黙したと判断、それにより"ユメナカ通信"関係の実験は凍結されています。 現在までSCP-███-JP内のD-94385は一切の老化の兆候を見せていません。 Footnotes 1. 「ミロのヴィーナス」等の貴重な物品や、「恐竜の剥製」といったすでに入手不可能な物品も購入可能です。なお、リストに存在しなかったものとしては「核爆弾」「██誌」「政治ポスター」等があげられます。 2. SCP-███-JPの事だと思われる。 3. 原文ママ。 4. "TP"の事だと思われる。 5. 原文ママ。 6. 原文ママ。
scp-947-jp
評価: +54+–x SCP-947-JP。成虫個体。 SCP-947-JP-1。SCP-947-JPは既に取り除かれていたもの。 アイテム番号: SCP-947-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-947-JPの幼虫は、それぞれ全て1個体ずつ封をした虫かごに入れ、サイト-81██内に存在する-12℃に保たれた冷凍コンテナに収容されます。 SCP-947-JPの成虫個体は生物標準飼育室に収容し、別紙の飼育プロトコルに従って収容を行ってください。SCP-947-JPの幼虫が作成するSCP-947-JP-1は、同サイトの標準収容コンテナに保管してください。 SCP-947-JP-1に11歳以下の人間が接近することは許可されません。SCP-947-JP-1への接触実験を行う場合、精神鑑定により幼児同等と判断されたDクラス、もしくは薬物投与を行ったDクラスを使用してください。SCP-947-JPの幼虫が放つ腐臭、もしくはSCP-947-JP-1が発見された場合、地域周辺の少等学校にはカバーストーリー「不審人物の徘徊」を適応し、一時的な休校と外出の禁止を命じさせてください。この間、SCP-947-JP-1とオブジェクトの捜索を行います。それらの確保、あるいは十分な捜索が行われたと判断できた場合、カバーストーリーの解除を行ってください。 説明: SCP-947-JPはモンキアゲハ(学名:Papilio helenus)に非常によく似た未知の生物です。外見や遺伝子構造に通常のモンキアゲハとの違いは見られず、対象が異常性をなぜ保有しているのかは分かっていません。また、異常性は一世代の幼虫のみが持ちます。成虫となったSCP-947-JP、SCP-947-JPから生まれた卵、その卵から生まれた幼虫、それらはすべて通常のモンキアゲハと同一です。 SCP-947-JPの幼虫は-10℃以下になると休眠の状態となり、行動を停止します。この状態のオブジェクトは氷結では死亡せず、食事や呼吸を行わずに生存することが可能です。この性質により、保管そのものは容易に行えます。他、SCP-947-JPは常時腐臭のような独特の臭いを発しており、この臭いを放つことで鳥獣から身を守っていると考えられています。オブジェクトの捜索の際はこの腐臭を手掛かりとしてください。 SCP-947-JPの異常性は、その幼虫が蛹化する際に発露します。幼虫は茂み内などで蛹化を行う際、子供用衣服に見える物体(SCP-947-JP-1)を作成します1。SCP-947-JP-1の作成は「見えない人間が編んでいるような」と報告されます。作成は素早く行われ、遅くとも1時間程度で完成するものです。SCP-947-JP-1の大きさ、色彩、柄は個体によって異なりますが、その大きさは7-10歳時の人間が着用できるものです。SCP-947-JP-1完成後、幼虫はその内部で蛹化します。蛹化したSCP-947-JPは悪臭を放たなくなります。 SCP-947-JP-1を視認した7-10歳(および、精神年齢が同等)の人間は、「SCP-947-JP-1を着用したい」という軽度の衝動にかられます。この衝動はあくまで「服の色がきれいだから」「かわいいから」といった間接的な欲求から生まれます。そのため、この衝動は物理的な阻害や説得で容易に弱めることが可能です。しかし、そういった阻害や説得がなかった場合、視認者はSCP-947-JP-1の着用の為に不法侵入などの軽犯罪を行うことを厭いません。他、木の上や茂みに衣服があるということの不自然さに視認者は気付かないようです。 SCP-947-JP-1を着用した人間は身体能力が上昇します。Dクラスの実験で確認されている限り、重量挙げでは221kg,100m走では3.8秒、垂直飛びで3.2m(全て平均値)の記録が計測されています。これらは成人したDクラスの実験によるものですが、実際に児童が着用した場合も、ほぼ同等の値と確認されています。SCP-947-JP-1の着用者は身体能力の向上によって躁的な感情が強くなる傾向があり、最終的に暴力による犯罪を起こす着用者が大半です。SCP-947-JP-1の着用者は脱衣に強い抵抗を見せ、特にSCP-947-JP-1に触れられた時、ほとんどの場合で殺人にまで発展します。身体能力の強化はSCP-947-JP-1を着用している限り継続され、物理的な束縛以外に停止させることはできません。SCP-947-JP-1を脱衣した場合、これらの衝動と身体能力の上昇は消滅します。 実験記録1 - 日付20██/██/██ 対象: D-947-JP-1,D-947-JP-2。以下、D-1,D-2と簡略化して表記。D-1(二十代男性)は精神鑑定では問題なし、D-2(四十代男性)は精神異常判定。 目的: SCP-947-JP-1の異常性の調査 実施方法: SCP-947-JP-1をD-1,D-2に視認させ、着用させる。 結果: D-1はSCP-947-JP-1を視認しても「何も感じない」と報告。着用後も(サイズの大きさによる問題以外)何も起きなかった。D-2はSCP-947-JP-1を視認した瞬間、すぐさまSCP-947-JP-1を着用。身体能力の向上が確認された。実験終了後、SCP-947-JP-1の脱衣を指示したところ、D-2は暴力によって抵抗し、保管庫の壁を一部損傷させたため、D-2は終了された。 分析: 実際の年齢より精神年齢が対象の異常性に関係しているようだ。—██博士 SCP-947-JP-1の異常性は、SCP-947-JPが羽化して離れるか、事故によって蛹が離れた場合も、やや弱まった効果で残ります。身体能力の上昇は、筋力で比較した場合は約7割となり、性格も会話が可能な程度には穏やかとなります。 SCP-947-JP-1は茨城県の██市にて発見されました。関連している主な事件は、財団が調査したもので以下です。 事案 概要 20██年5月19日 財団が確認する中で最初の事案。9歳女児と9歳男児が登校途中にSCP-947-JP-1を発見。互いにSCP-947-JP-1を着用しようとし、掴み合いの悶着が発生。偶然居合わせた三十代女性によってそれは停止された。後、SCP-947-JP-1は三十代女性によって破棄されている。 20██年5月22日 8歳女児と12歳女児の姉妹が下校途中にSCP-947-JP-1を公園内で発見。8歳女児がSCP-947-JP-1を着用しようとしたが、12歳女児の説得により阻止された。 20██年5月26日 10歳男児が下校途中にSCP-947-JP-1を発見。SCP-947-JP-1の着用後、身体能力の上昇を利用し、公園で友人たちと「おにごっこ」といった遊戯をした。男児の帰宅後、SCP-947-JP-1を脱衣させようとした母親に対し、男児は暴力行為を行い、母親に右腕の骨折の重傷を負わせた。その後、男児は自主的な脱衣によってSCP-947-JP-1を破棄、119番通報を行った。(男児が自主的なSCP-947-JP-1の脱衣を行ったことから、SCP-947-JPが既に羽化した後のSCP-947-JP-1と考えられる。) 20██年6月1日 SCP-947-JP-1直接の発見に繋がった事案。9歳女児(同市内に住む財団のエージェント・██の実娘)が下校途中にSCP-947-JP-1を発見し、着用。帰宅後、女児はエージェント・██を撲殺。近隣住民の通報により駆けつけた警察官3名も同様に殺害した。最終的に財団の機動部隊によって女児は鎮圧された。この際、SCP-947-JPとSCP-947-JP-1が初めて財団によって回収された。尚、対象の女児は現在財団保護下にあり、財団が事情聴取を行っている。 現在、11着のSCP-947-JP-1と、幼虫と成虫の合計で13匹のSCP-947-JPが財団によって確保されています。 補遺: 茨城県の██市内を捜査中、廃棄されたビルに幼虫のSCP-947-JP数匹の死骸と、以下の文書が発見され、回収されました。ホッチキスで止められた跡があり、元々は数枚でまとめられていたと推測されています。 おしらせ すごいむし できたよ。 あげるので、きてください。 だいすきなせかい こうさくクラブ (余白に、複数の筆跡が見て取れる昆虫やヒーローを模したイラストが描かれている。) くさいからいらない [解読不能] Footnotes 1. この作成の際、その体長と比較して明らかに大量の糸を吐きだします。
scp-948-jp
評価: +138+–x アイテム番号: SCP-948-JP 発見当初のSCP-948-JP。 オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-948-JP内部に立ち入ることは現在禁止されています。SCP-948-JPは物置に偽装した収容室内に収容し、内部にいかなる生物が立ち入ることも禁止されます。収容室は劣化や破損が無いか2週間おきに検査されます。 説明: SCP-948-JPは、愛知県██市の██緑地の一部に存在する、木製の小鳥の像を閉じ込めた鳥籠を中心とした、面積にして15㎡ほどの円形の土地です。鳥籠と小鳥がいつ頃設置され、異常性がいつから現れたのかは不明です。 SCP-948-JP内部に立ち入った人間は、何か薄い殻のようなものが壊れる音とともに、丸く、卵のようなものを踏み潰した感覚を足元に感じます。季節によってはSCP-948-JP内部には落ち葉が散乱していますが、SCP-948-JP内部に立ち入った人間は皆一様に落ち葉を踏み潰した感触とは違うと主張します。この音は小さなものですが、至近距離にいた人間には聞こえる場合があり、集音マイクなどでも捉えることが可能です。 SCP-948-JP内部に人間が立ち入り、上記の音、感覚を体験してからおよそ3時間後、SCP-948-JP内部にSCP-948-JP-1が出現します。SCP-948-JP-1は一般的に販売されているアイスクリームの棒や割り箸、単なる小枝などの木製の棒であり、その表面には乱雑な字体で「○○のはか」などと書かれています。これらが記されていたインクを調査したところ、その全てが血液であると判明しました。 SCP-948-JP-1例: SCP-948-JP-1-a:発見当初、既に立てられていた。アイスクリームの棒にカエルの血で「けろすけのはか」と記載。 SCP-948-JP-1-b:発見当初、既に立てられていた。割り箸にウズラの血で「ぴよりんのはか」と記載。 SCP-948-JP-1-c:発見当初、既に立てられていた。アイスクリームの棒にミミズクの血で「ぽうきちのはか」と記載。 SCP-948-JP-1-d:初期収容の調査のため立ち入ったエージェントによって出現した。小枝にカエルの血で「げこみのはか」と記載。 SCP-948-JP-1-e:収容の際に誤って立ち入った建築作業員によって出現した。アイスクリームの棒に羊の血で「めぇばあさんのはか」と記載。 SCP-948-JP-1-f:別の作業員がSCP-948-JPの効果範囲を見誤り立ち入った際に出現した。割り箸に人間の血で「とにーにょのはか」と記載。 SCP-948-JP-1-g〜Ea:記録を参照のこと。 補遺: 音声記録:事案-948-JP-1 初期収容時、財団より指示を受け収容室を建設していた作業員によって125本のSCP-948-JP-1-g〜Eaが発生しました。以下はその際の記録音声です。 <録音開始, 201█/12/16> 財団職員: では、トラックから16〜45番の鉄骨、板を取り出してください。 ██作業員: 了解。これらを図面通りに組み立てればいいか? 財団職員: はい。作業が完了したら私に伝えてください。 ██作業員: 了解した。 <2時間の間、██作業員は部下と共に鉄骨を組み立てる。この際破裂音やその他の異常は訴えず> 財団職員:では、そこに屋根を取り付けます。物置に偽装しての収容になりますので、トラックから48〜56番のトタンを取り出してください。 ██作業員: 了解した。 <作業員らは1時間ほどでほとんどの屋根を取り付け終わる。> ██作業員: これで最後の一枚だ。オーイ、渡すぞー! <██作業員は屋根の上に居る別の作業員にトタン板を渡す。> 財団職員: 大丈夫ですね。では、私は一度サイトに報告を… ██作業員: ……ちょっと待ってくれ。 財団職員: はい? ██作業員: 何か聞こえるぞ。 財団職員: ん……<音を聞き取るためか、職員は沈黙する> ██作業員: ……ほら、ほら、ほら。録音はオンになってるだろうな。ヤバイぞ、これは。 ?⁇: くしゃっ。ぱり。<老人のものと思われる高い声> 財団職員: ……逃げましょう!取り敢えずここを離れて… ██作業員: 聞こえたかー!お前ら早く逃げろ! ???: くしゃっ、ぱちゅっ、ぺち、ぷち、ぱりぱりぱり。くしゃっ。ぐしゃっ、ばり、みちみちみち、ぶちゅっ。 財団職員: みなさん急いでください!音が、……あぁ音が! ██作業員: バッカ野郎何やってる!早く…< 一名の作業員が屋根から降りるのに失敗し地面に転げ落ちる。██作業員が助けに向かったと思われる> ???: ぱりぱりぱり、ぐしゃっ。ぐしゃっ、ぐしゃっ、ぐしゃっ、ぐしゃっ、ぱちゅん。ばりばりばりばりばりばりばりばり。ぱりん。ぱりぱりぱり、ぱりん。ぱりぱりぱりぱりぱりぱりん。うふふ。 <録音終了> 財団サイトになされた要請により30分後に機動部隊員が駆けつけました。財団職員及び作業員の殆どは無事に避難していましたが、██作業員だけが逃げ遅れた作業員を助けるために向かい、SCP-948-JP外部の地面から突如生えてきた無数の割り箸、アイスクリームの棒、小枝、ベニヤ板などによる突傷を全身に負いました。以降、SCP-948-JP-1の発生は確認されていません。
scp-949-jp
評価: +152+–x SCP-949-JP アイテム番号: SCP-949-JP オブジェクトクラス: Neutralized 特別収容プロトコル: SCP-949-JPはサイト-8116に設けられた車両収容施設に保管されます。SCP-949-JPが発生させた人形はサンプルとして保存する物を除いて処分されます。現在200体のサンプルが同サイトに保管されています。 説明: SCP-949-JPは███社製の大型のブルドーザーです。構造や機能は同機種の物と差異はありません。 SCP-949-JPは運転によって前進している間、後方に非異常性の人形を秒間約███体の勢いで発生させる異常性を有していました。発生する人形は石粉粘土製で、サイズは高さ4cm前後とごく小型です。人形はヒトを精巧に模した外見を有しており、複数のヒトが組み合わさったような外見の人形も少ないながら確認されています。人形の見かけ上の性別、年齢、人種は一定していません。 2001年4月4日、建設現場から「ブルドーザーから大量の人形が出てきた」との通報を傍受した財団によりSCP-949-JPは回収されました。現場に居合わせた作業員の証言から、SCP-949-JPは作業中に突如として異常性を発現させたと見られています。その後の調査によりSCP-949-JPの製造元である███社は一切の関与が無い事が確認されており、SCP-949-JPが異常性を有するようになった原因は未だ不明です。 異常性の検証の為SCP-949-JPを前進させる試みの最中に、SCP-949-JPの異常性は予期せず失われました。詳細はSCP-949-JP無力化記録を参照してください。 + SCP-949-JP無力化記録 - 閉じる 2001年4月6日に、SCP-949-JPのオブジェクトクラスの判定や発生する人形の分析を目的とした稼働実験が行われました。以下に実験の経過記録の転写を記載します。 <00:00:00> SCP-949-JPが前進を開始し、同時に人形の発生が始まる。発生した人形のほとんどは現代によく見られる服装をしている。 <00:00:43> 発生する人形に、全身を武装した男性が増え始める。本来2分で終了する予定だった実験は、更なる変化の観察の為継続される事となった。これ以降、SCP-949-JPのブレード部分に僅かな損傷の発生が確認されるようになる。 <00:09:03> 発生する人形の内、ほとんどの男性に何らかの武装が確認できるようになる。全身を武装している個体はこの頃から減り始める。 <00:15:06> 宗教的な服装をした人形が、男女問わず発生するようになる。以降この人形の発生量が増加し始める。 <00:20:45> 全身を武装した個体は発生しなくなった。これ以降SCP-949-JPのブレード部分への損傷の発生が止まる。 <00:35:47> 宗教的な服装をした人形の発生量はこの時ピークを迎え、以降減少の傾向を見せる。貧相な服装をした個体、痩せ細った人形が増え始める。 <00:53:50> 発生する人形の全てが貧相な服装の物に変化。以降人形の発生量が急激に減少し始める。 <01:01:00> 最後の人形が発生。以降人形の発生が途絶える。 これ以降の実験においてもSCP-949-JPからの人形の発生は確認されず、SCP-949-JPの異常性は失われたと判断されました。 回収されたサンプルの記録抜粋: 実験開始から発生までの時刻 サンプルの概要 補足 00:00:23 車を運転するような姿勢を取る、コーカソイド系の成人男性。 焦燥の表情を浮かべている。同様の姿勢をした人形を多数確認。 00:00:52 向かって前方に銃器を構える、全身を武装した男性。 同様の武装をした人形がこれに纏まって発生。 00:01:32 うつ伏せになったコーカソイド系の男子児童。 右膝に擦り傷が見られ、恐怖の表情を浮かべている。 00:02:03 乳児を抱きかかえたネグロイド系の成人女性。 乳児を守るように蹲った体勢を取っている。 00:05:08 現代的な服装をしたコーカソイド系の壮年の男女。 お互いを抱きしめ合うような形で組み合わさっている。 00:20:25 宗教的な服装をしたコーカソイド系の成人女性。 祈るような姿勢を取り、衣服の背中には未知のシンボルが見られる。同様の服装及び姿勢をした人形を多数確認。 00:34:56 腹部に赤い塗料で上記と同一のシンボルが刻まれた、全裸のモンゴロイド系女性。 四肢が切除されている。同様のシンボルが刻まれた全裸の人形を多数確認。 00:40:33 宗教的な服装をした成人男性。 衣服の前面に「STOP」の文字が手書きで書かれている。 00:53:10 極めて簡素な衣服を着ている、痩せ細ったコーカソイド系の女子児童。 笑顔を浮かべている。 01:01:00 汚れた白衣を着たモンゴロイド系の壮年男性。 最後に発生した人形。顔を真上に向け、放心したような表情を浮かべている。
scp-950-jp
評価: +41+–x SCP-950-JP-1の放出を終え非活性状態へ移行したSCP-950-JP。 アイテム番号: SCP-950-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-950-JPはサイト-8181の低危険物収容ロッカーに収容されています。インタビューを行う際はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員1名の許可を得た上でロッカーから非活性状態のSCP-950-JPを1つ取り出し、1Lの水道水に満たされた専用の容器にSCP-950-JPを投入します。その後の活性状態で発生したSCP-950-JP-1については、その全てをDクラス職員に摂取させます。Dクラス職員を用いてSCP-950-JPの摂食実験を行う際は、セキュリティクリアランスレベル3以上の職員2名の許可を得た上で行ってください。Dクラス職員以外の職員がSCP-950-JP及びSCP-950-JP-1を摂取することは禁止されています。またSCP-950-JPが財団職員に対し非協力的になることを防ぐため、SCP-950-JP及びSCP-950-JP-1を人間による摂取以外の方法で処分することは現在禁止されています。 説明: SCP-950-JPは一般的に食されるリンゴ(セイヨウリンゴ、学名:Malus pumila)のカットした花托1部分を乾燥させた、いわゆるドライアップルと同様の外見をした物体です。試食実験及び成分分析においても非活性時には乾燥させた通常のリンゴの花托部分、活性時には新鮮な通常のリンゴの花托部分と同様であると判明しています。 SCP-950-JPは通常非活性状態ですが、人間が通常飲むことのできる液体、具体例としては一般的な水道水や食塩水などに漬けられた際、その液体を1リットル吸収することで活性化します。活性化が完了した時点でのSCP-950-JPは新鮮なリンゴの花托のような外見になり、活性化したSCP-950-JPは活性状態への移行が完了した時点からSCP-950-JP-1を放出し始め、8時間放出を続けた後非活性状態に移行します。SCP-950-JP-1はリンゴの果汁のように見られる液体で、試飲実験及び成分分析では活性化に用いた液体に関わらず通常のリンゴ果汁と同様であると判明しています。一回の活性化で放出されるSCP-950-JP-1は0.5リットルであり、SCP-950-JPが吸収した液体との差分0.5リットルがどのように扱われているか現在も研究が行われています。またSCP-950-JPがSCP-950-JP-1を吸収することはなく、0.5リットルのSCP-950-JP-1を水1リットルで薄めた液体を用いてSCP-950-JPを活性化させた場合、活性状態への移行が完了した時点で残される液体はSCP-950-JP-1と同等の液体0.5リットルであることが実験で判明しています。SCP-950-JP及びSCP-950-JP-1は人間が摂取することが可能であり、これらの摂取による影響についても研究が行われていますが、現在までのところ身体面、精神面共に明確な影響などは報告されていません。 SCP-950-JPは発声器官が明らかに存在しないにも関わらず音声を発することができ、財団職員によるインタビューから知覚及び知性を持つことが判明しました。SCP-950-JPは自身が食されること及びSCP-950-JP-1を放出することについて「仕事」と称し、財団職員によるSCP-950-JPのインタビューについては「依頼」であると認識し対価として水1リットルを要求します。またSCP-950-JPは自身及びSCP-950-JP-1が人間による摂取以外の方法で処分されることに強い抵抗を示し、それらが実行されつつあることを感知すると、SCP-950-JPにとってその処分が「仕事に対する侮辱」であり実行された場合今後の「依頼」を引き受けないという旨の発言をし、財団職員に対し非協力的になる兆候を示します。現在SCP-950-JPとのインタビューにおいて製造元や果汁放出プロセスの詳細について尋ねると「企業秘密」として詳細な返答を拒否しており、これらについて未だ不明な点が多いためSCP-950-JPが非協力的になると想定されるSCP-950-JP-1の処分方法は、収容プロトコルにおいて全て禁止されています。 SCP-950-JPは200█年█月に「███湖から甘い香りが漂い、水を飲むとほのかに甘い」という噂を聞きつけた財団エージェントが███湖を調査した際、███湖の湖面に浮かんでいる所を発見されました。発見・回収がなされた際SCP-950-JPはエージェントに礼を述べ、詳細を尋ねたところ「ふざけた仕事を延々やらされて心底辛かった」と発言したと報告されています。発見当時SCP-950-JPは12個存在を確認されましたが、SCP-950-JPの試食実験を経て現在財団は8個のSCP-950-JPを収容しています インタビュー記録001 - 日付200█/██/██ 対象: SCP-950-JP インタビュアー: ██研究員 <録音開始, 200█/██/██> ██研究員: 只今よりインタビューを開始する。SCP-950-JP、聞こえているか? SCP-950-JP: 聞こえてはいるが、そのインタビューというのは依頼かな?依頼をするんだったらちゃんと事前に対価をくれないか。それと君の名前もな。名前も名乗れん相手と仕事を共にするつもりはないよ。 ██研究員: ああ、私は██研究員だ。対価ね……えー……水ならここに用意してあるんだが。 [██研究員が水道水1リットルを入れたビーカーを取り出す。] SCP-950-JP: それで結構。その器の中に入れてくれ。 [██研究員がSCP-950-JPをビーカーに投入。活性化完了まで5分待機。] SCP-950-JP: オーケー、何でも聞いてくれ。 ██研究員: まずこれまでの実験結果について改めて確認するが、君が今出してるその液体はリンゴの果汁なんだな? SCP-950-JP: その通りだ。私達は仕事として人間が飲むためのこのリンゴ果汁を放出している。 ██研究員: で、それの元になってるのは先程君が吸収した1リットルの水だと。 SCP-950-JP: その通り。 ██研究員: なら君達は0.5リットルの果汁しか出さないわけだが、残りの0.5リットルはどうしているんだ? SCP-950-JP: それこそが私達への対価だよ、██君。私達だって無賃で働く気はない。 ██研究員: ということは残りの0.5リットルは君達自身が頂いてるというわけだ。一体何に使っているんだ? SCP-950-JP: それは企業秘密だ。 ██研究員: うーん……じゃあどこかに送ったりしてるのか?君達がその場で0.5リットルの水を何の痕跡もなく使い切れるとは思えないぞ。 SCP-950-JP: それも企業秘密だ。 ██研究員: やっぱり企業秘密か……ちょっとは教えてくれないか?少しくらいいいじゃないか。 SCP-950-JP: ……██君、一つはっきりさせておこう。確かに私達は君達の手によってあの湖でまともに飲めもしなくなる果汁を延々出し続けるふざけた仕事から救われた。その事実は認めるし恩義があることも認める。だがそれとこれとは話が別だ。我々はあくまで仕事相手であって仲良しこよしするお友達ではないのだぞ。馴れ合うつもりは一切ない。企業秘密は企業秘密、そんな簡単に教えられるわけがないだろう。 ██研究員: そ、そうか……それもそうだな、気に障ったならすまなかった。 SCP-950-JP: いや、わかってくれたらそれで構わない。他に聞きたいことはあるか? ██研究員: 今回はこんなところだな……そうだ、今まで水しか渡してこなかったが、君の好きな液体とかあったりするかい?もし液体の半分が君達の対価になるというなら、なるべく良い物を提供しようかと思ったんだが。 SCP-950-JP: え?うーん……あ、いや、それも企業秘密だ。 <録音終了, 200█/██/██> インタビュー記録002 - 日付200█/██/██ 対象: SCP-950-JP インタビュアー: ██研究員 <録音開始, 200█/██/██> ██研究員: 只今よりインタビューを開始する。SCP-950-JP、██研究員から依頼させてもらうぞ。 SCP-950-JP: わかった、その中に入れてくれ。 [██研究員が1リットルの水を入れたビーカーを取り出し、SCP-950-JPを投入。活性化完了まで5分待機。] [以降インタビューが行われる。 30分省略。] ██研究員: よし、今日のインタビューはこれで終わりだ。あとはゆっくり出していてくれ。 SCP-950-JP: ██君、実は一つ私達から頼みたいことがあるんだが……。 ██研究員: 頼みごととは珍しいな。内容にもよるがとりあえずどういう要求か教えてくれ。こちらで検討しよう。 SCP-950-JP: 私達を助けてくれた彼に改めて礼を言わせてもらいたいと思ってね。エージェント██(注記:███湖からSCP-950-JPを回収したエージェント)といった名前だったかな。 ██研究員: ああ彼か。彼なら今別件で出張中のはずだから、要求が通ったとしても少し先になるかもしれないな。 SCP-950-JP: 出張?……そうか、無事に帰ってくるといいが。 ██研究員: ん?どうしてそんなに心配そうな口調なんだ? SCP-950-JP: いや、前に私達の同僚2が出張中の事故にあってな。出張と聞くとどうにも不安で……。 ██研究員: ま、待ってくれ、その出張中の事故っていうのは? SCP-950-JP: 飛行機事故さ。連絡もつかないし彼はどうなってしまったのやら……。 ██研究員: ……いつどこで事故が起きたか教えてくれるか?その同僚を見つける手伝いをさせてくれ。 SCP-950-JP: いや、それは企業秘密に触れてしまうんだ……すまないな。 <録音終了, 200█/██/██> 付記: 現在SCP-950-JPが言及した「同僚」の行方及び飛行機事故について調査が行われています。 Footnotes 1. 一般に食される薄黄色の部分。 2. SCP-950-JPの未収容個体と考えられています。
scp-951-jp
評価: +159+–x 発見初期のSCP-951-JPの子実体 アイテム番号: SCP-951-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-951-JPの自生区域は自然保護区に指定し、監視所を設置します。自生区域は高さ2.5mのフェンスで囲み、定点観測カメラによって監視を行ってください。侵入者を発見した場合、監視所に駐留している警備員によって取り押さえ、尋問を行った後にクラスA記憶処理を施した上で解放してください。もし尋問において侵入者がSCP-951-JPの子実体を摂食したことが判明した場合は、サイト-81██の標準収容房に移送して監視を行ってください。SCP-951-JPの子実体を摂食した上で1年以上生存することに成功した人物の遺体は、可能な限り速やかに焼却処分を行ってください。 6ヶ月に1度、財団エージェント2名に自生区域内に発生しているSCP-951-JPの子実体を回収させてください。回収した子実体は10%をサイト-81██にて保管し、残りは焼却処分を行います。SCP-951-JPの子実体を摂食させる実験は現在禁止されています。 説明: SCP-951-JPは、ドクササコ(Paralepistopsis acromelalga)に類似した特徴を持つ菌類です。胞子を採取して培養を行う試みは今のところ成功しておらず、詳しいDNA構造などは判明していません。現在██県旧██集落の森林部においてのみ自生が確認されています。 SCP-951-JPのつくる子実体は人間の腕部に酷似しており、主に樹木を抱え込むような形態で発生します。SCP-951-JPの胞子は爪に当たる部分で生成されていることが判明していますが、胞子が成長し子実体を生成する過程は今まで確認できていません。子実体を切断すると人間の組織に似た構造が観察できました。また、樹木と接している面は非常に強力に接着しているため、自然界に自生している子実体に存在すると考えられる、指紋や手相などの要素は子実体の回収の際に破壊されてしまい判別が困難になります。 SCP-951-JPの子実体を摂食した場合、摂食者はおよそ1ヶ月後に身体の痛みを訴えます。この時、摂食者が痛むと訴えるのは、本来は存在しないはずの肢体であり、摂食者は中腕、第三腕、分岐肢などといった言葉でその部分を表現します。これらの存在しない肢体は、摂食者の証言をまとめたところ上半身に集中しており、財団が把握している範囲内では下半身に出現したことはありません。また、この現象は非致死性のものですが、痛みは1年間継続します。そのため、自己終了を試みたり、終了を願い出る被験者も数多く居り、10人の被験者のうち1年間生き延びることに成功したのは1人のみでした。この子実体を分析したところ、人体を構成する成分に加え、不明な成分が含まれていることが判明しており、これが存在しない肢体の幻肢痛を誘発していると考えられています。 また、事案951-JP-1により、SCP-951-JPを摂食したことにより生じる痛みに1年間耐えきった後に死亡した場合、摂食者の死体は新たなSCP-951-JPの菌床となることが判明しました。これにより特別収容プロトコルは改正され、現在の形のものが確立されました。詳細は事案記録を参照してください。 SCP-951-JPは山野の散策を趣味としているエージェント・浅津によって██県旧██集落の森林部において偶然発見され、財団が調査を行った上で収容を行いました。かつてSCP-951-JPは旧██集落において「シガミツキ」と呼ばれており、森林部に立ち寄ることは独自の習慣の際を除いてタブー視されていました。旧██集落でただ1人生活していた栗田氏にはクラスB記憶処理を施しています。 補遺: 以下のインタビューは、SCP-951-JPの発見時に行われたものです。 対象: 栗田 ██氏(84歳男性、旧██集落にてただ1人生活していた) インタビュアー: エージェント・浅津 <記録開始> 栗田氏: よくこんな何もない山奥までおいでなさった。ささ、上がってください。 A.浅津: いえ、ここで大丈夫です。栗田さん……でしたよね?ここの森林に生えているモノについて何かご存じですか? 栗田氏: [沈黙] A.浅津: 栗田さん? 栗田氏: あんた、森の方に行っちまったのかい。そりゃあ縁起が悪いぞ。山を降りてからでもいい、寺か神社でお払いしてもらいなさい。 A.浅津: はい、ご忠告感謝いたします。しかし私の質問には答えて頂けては…… 栗田氏: 今から話すから待ってくださいな。あの森はな、昔この██集落のモンが死んだときにその死体を埋めるしきたりがあったんですわ。 A.浅津: それは死体遺棄では…… 栗田氏: もちろん今はやっとりませんよ。みんな麓に用意された墓に入っとりますがな。……少し話が逸れましたがね、そんな風に昔は墓にされてたからか、あの森には幽霊がでるという話になりまして。江戸時代ごろの話と聞いとりますが……それを確認するためにあるとき集落のモン全員で森に入っていったと。 A.浅津: するとどうなったのですか? 栗田氏: そこら中の木に腕が巻きついとったそうですわ。もうすごいことだったと。気を失うモンもいたと。まあそりゃあそうですわな、人間の手だけが木に巻き付いてれば。でもその内の肝のある1人が気付いた訳ですな。「こりゃあ幽霊でない、触れる」と。 A.浅津: その後、彼らは幽霊でないことに気付いてどうしたんですか? 栗田氏: それでも怖いことに変わりはなかろうて。ならばそれはなんだ、腕には変わりない、幽霊でないならなんなんだと、みんな森からは逃げたそうで。それからその腕は死んだモンがここから離れたくなくて必死にしがみついてるんじゃなかろうかと「シガミツキ」と呼ばれるようになり、その後死体を埋めるとき以外には森には立ち寄らんことにしたそうですわ。 A.浅津: そうでしたか、ありがとうございます。 栗田氏: あ、そうそう。 A.浅津: はい? 栗田氏: 飢饉の時には食べとったという話もありますよ。まあ、後々になっていろんなところが痛むということで、やはり死人の怨念がどうとかいう話になったみたいですがな…… A.浅津: ……そうですか、ありがとうございます。 <記録終了> 事案記録951-JP-1: 20██/██/██、SCP-951-JPの子実体を摂食し1年間痛みを耐えきることに成功していたD-951-06(48歳男性、殺人罪)が不慮の事故により死亡した際、遺体安置所に一時的に放置したところ、遺体安置所がSCP-951-JPの子実体に覆われるという事案が発生しました。子実体は以前D-951-06が痛むと訴えていた部分から生えて広がっていました。また、ガラスに張り付いていた子実体の指紋を分析したところ、D-951-06本人の指紋を持っているものの他に、D-951-06に殺害された被害者のものが混じっていることも判明しています。
scp-952-jp
評価: +16+–x アイテム番号: SCP-952-JP 消失前のSCP-952-JP SCP-952-JPの上に存在する道路 オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-952-JPとその周辺の道路は一般人が侵入・接近しないように常に進入規制を掛け、カバーストーリー「地盤のズレによる進入禁止危険区域」を流布してください。 SCP-952-JPの約150m周辺を進入規制として、警備員4名以上を交代制で常に配置してください。進入規制を強引に突破しようとする一般人がいた場合、即座に身柄を拘束した後にクラスA記憶処理を施してSCP-952-JPの侵入規制区域より1km離れた地点で開放してください。 SCP-952-JPに直接的または間接的に触れるような実験を行う際には、セキリュティクリアランスレベル3以上の職員の許可が必要です。     説明: SCP-952-JPは千葉県佐倉市に存在している67cmの幅を持った用水路です。SCP-952-JPに流れる水の成分に異常性は無く、いたって普通の多少の不純物が混じった水です。アスファルト舗装の道路の下をトンネル状に貫通して流れています。SCP-952-JPを視認出来るのはこの道路から観測した時のみです。SCP-952-JPの上流や下流が存在しているはずの地点から観測した場合、SCP-952-JPがあるはずの地点には地面のみが存在しています。   SCP-952-JPは道路側からSCP-952-JPの上流か下流の流れに添うように辿っていったときにSCP-952-JPの異常性が発揮されます。(以下、SCP-952-JPを辿る者を被験者と表記)   消失後のSCP-952-JP 被験者がSCP-952-JPを辿りながら60〜100mほど進むと、SCP-952-JPを視認する全ての人間が女児の声と思われる音声を知覚します。(以下、その音声をSCP-952-JP-a、知覚した人間を知覚者と表記)知覚者は全員が同一の音量で、SCP-952-JPとは別方向から聞こえたと報告しています。知覚者はSCP-952-JP-aに対して興味を示し、SCP-952-JP-aが存在すると考えられる方向に視線を向けたいという欲求が発生します。この欲求に逆らった例は現在まで確認されていません。SCP-952-JP-aに視線を向け、全員の視界から消えたSCP-952-JPはその姿を完全に消失します。SCP-952-JPが元々存在していた場所には、周囲と比べ刈り取られたような跡が残りますが、土に雑草が群生している地面の状態になります。消失の瞬間の記録・知覚は現在まで成功していません。   SCP-952-JPに直接または間接的に触れる辿り方を行った場合、本来はSCP-952-JP-aが発生するであろう地点で、被験者とSCP-952-JPが消失します。この後、被験者がどこに消えたのかは未だ解明されていません。 消失した日時から30日が経過した日の同時刻に、消失した被験者は付近の道路の上に仰向けに寝た状態で出現します。出現の瞬間を目撃しようとした人物や機械には再度SCP-952-JP-aとそれにまつわる現象が発生します。         実験記録952-JP-1 日付20██/10/24 対象: SCP-952-JP 実施方法: D-1134に通信機とビデオカメラを持たせ、SCP-952-JPを映しながらSCP-952-JPに沿って脇道を辿っていくように指示。 結果: 約63mほど進んだところで、SCP-952-JP-aが発生した。D-1134はSCP-952-JP-aに対して驚き、手からビデオカメラが落下。SCP-952-JPとは別の角度で落下したため、SCP-952-JPが消失する瞬間を映すことには失敗した。 被験者は''少し離れたところで女の子が泣いているような音が聞こえた''と報告している。映像記録ではSCP-952-JP-aが発生したと思われる時間に、非常に小さい音声ノイズが記録されていた。 分析: SCP-952-JPは消失する瞬間を絶対に見せないつもりらしい。何度か同様の実験を行ったが、ビデオカメラはすべて消失の瞬間を捉えることはできない向きに、不自然な回転を伴って落ちた。 - ██博士     実験記録952-JP-2 日付20██/10/25 対象: SCP-952-JP 実施方法: D-1134に通信機とビデオカメラを持たせてSCP-952-JPを映しながら、SCP-952-JPに沿って脇道を辿っていくように指示。D-1556は道路側からSCP-952-JPを常に視覚できる位置に待機。D-1556は椅子に四肢を拘束して首を固定し、開瞼器を取り付けてSCP-952-JPを確実に視認できる状態にした。 結果: 約60mほど進んだところで、SCP-952-JP-aと思われる音が発生した。以降のD-1134の反応は実験記録952-JP-1と同一。SCP-952-JP-aの発生と同時にD-1556は視力を喪失した。 追記: 20██/10/26 10:55にD-1556の視力は突然回復した。 分析: 今までのは偶然ではなかった。SCP-952-JPが消失の瞬間に異常性を発生させているのはこれでほぼ確定した。 - ██博士     実験記録952-JP-3 日付20██/10/26 対象: SCP-952-JP 実施方法: ダイバースーツとシュノーケルを着用したD-2334に耐水性のインカム型通信機とビデオカメラとGPSを持たせ、SCP-952-JPに直接潜って辿るよう指示。 結果: 約80mほど進んだところで、被験者がSCP-952-JPと共に消失。道路に残り、D-2334の監視をしていたエージェントにはSCP-952-JP-aと思われる事象が発生。エージェントは''茂みの中で女の子が笑いながら遠くへ走り去るような音が聞こえた''と報告している。 D-2334の消失した地点であろう地面の上にD-2334の衣服以外の持ち物が残されていた。 追記: 20█/11/25に、D-2334は路上に仰向けに寝た状態で再出現した。 (再出現後のDクラス職員に対するインタビューは補遺-1を参照。)     実験記録952-JP-4 日付20██/10/28 対象: SCP-952-JP 実施方法: 小型のラジコンヘリに下向きに小型カメラを設置し、空中からSCP-952-JPを撮影する。ラジコンヘリの全国大会に出場経験のあるD-23███が操作する。 結果: 小型カメラが道路から約78mの地点をとらえた時に、SCP-952-JP-aと思われる衝撃が発生。ラジコンヘリの4本のプロペラの内1本が完全に折れてラジコンヘリは墜落し、修復不可能になるまで損傷した。         補遺1: インタビューログ 日付20██/11/25 対象: 実験記録952-JP-3にて再出現したD-2334 インタビュアー: ██博士 +インタビュー記録を開く -テキストを閉じる <録音開始> ██博士: やあ、D-2334。気分はどうだい? D-2334: なんていうか、穏やかな気分だ。いろんなモヤモヤが吹っ切れた感じ。 ██博士: そうか、それは何よりだ。ではインタビューを開始するが、良いか? D-2334: ああ、構わないよ。 ██博士: 君はあの河原の捜索を行わせた日から、1ヶ月ほど行方不明になったわけだが、何をしていたんだ? D-2334: そういえば帰ってきた時は驚いたな。覚えていることはせいぜい1時間もないぞ。それもはっきりとしたことは、何も。ぼんやりとした記憶ならあるんだが、それでもいいか? ██博士: ああ。どんな些細な事でも構わないが、できるだけ詳細に頼む。 D-2334: わかった。[椅子を座り直す音]女の子がいたな。少し遠くの方に。 ██博士: それはどのようなところで? D-2334: ちょうどあの探索していた河原さ。もう少し雑草が綺麗になっていたけどね。潜っていたはずが、気付いたら草の上で寝ていた。起きたら、声が聞こえるもんでそっちを見てみたら、遠くで女の子が一人で遊んでいたんだ。 ██博士: うん。それで? D-2334: こんなとこに女の子が1人は不思議だと思ってさ。近づこうとしたら、手前に男がいたんだ。椅子に座っていた。 ██博士: なるほど。2人の外見の特徴を聞きたい。 D-2334: ああ、女の子は10歳もないくらい。男の顔はちょっとしか見えなかったからあれだけど、30代くらいだったかな。2人とも、別段変わったところのない普通の服さ。 ██博士: 記録しておこう。その男は何をしていたんだい? D-2334: 絵を描いていた。水彩のな。 ██博士: なにを描いていたのか見たかい? D-2334: 俺に背を向けて描いていたからね。見たよ。さっきの女の子の絵を描いていた。でも、そこには1人しかいないはずなのに、たくさんの女の子や男の子と一緒に遊んでいる絵だった。絵画の知識なんてないけど、見ていてとても癒される絵だったよ。 ██博士: そのような絵なら、私も一度見てみたいな。それで、その後は? D-2334: 突然、女の子が泣き出したんだ。その直後、男も苦しみだした。だからまずはすぐ近くにいた男の方に駆け寄ったら、体全体が濡れていたんだ。汗にしてはあまりにも濡れすぎていたな。その後に遠くの女の子の方にも走っていったら、女の子も同じく濡れていた。二人ともずっと苦しみ続けてさ。医療の知識なんてないし、俺はパニックで何もできなかったよ。背中をさすったり、人がいないか探したりね。 ██博士: その後に目立った行動は? D-2334: 男の方がさ、苦しみながらも絵を描き続けてたんだ。でも相当苦しんでいたからね。絵の女の子を、水色の絵の具で塗りつぶしてた。もうぐちゃぐちゃだよ。酷い絵になっちゃった。その後女の子も男も気を失った。そして、俺も急に気を失った。目覚めた後はあんたらが知っての通りさ。 ██博士: そうか、わかった。協力してくれてありがとう。これでインタビューを終了する。 <録音終了> 終了報告書:D-2334は元々気性が荒く、言葉遣いもかなり汚く扱いにくいと他の博士から聞いたことがある。再出現後は言葉遣いも気分も終始安定している様子だった上に、情緒が豊かになったように思われる。絵の話をするときは満面の笑みで、二人が苦しんでる話をする時は、心の底から悲しむ様な表情をしていた。人格にも不自然な異常性が関与していると思われる。     補遺:2 日付20█/11/28 実験前の待機中のDクラス職員によって、SCP-952-JPの近辺より土の被さった状態で1枚の写真と1枚の破り跡のある紙片が発見されました。写真には6、7歳ほどと思われる少女がSCP-952-JPと酷似した河原で、笑顔で花冠を持っている様子が映されていました。紙片には殴り書きのような書体で2行の文章が書かれていました。内容は以下の通りです。 +紙の本文 -テキストを閉じる 私には、耐えられない。 誰か、娘に、友達を。 █████ ███    
scp-953-jp
評価: +34+–x 収容体制確立以前のSCP-953-JP。SCP-953-JP-1が全て消失している。 アイテム番号: SCP-953-JP オブジェクトクラス: Euclid Safe 特別収容プロトコル: SCP-953-JPはオブジェクトを中心として建設されたサイト-81██の室内に存在しています。SCP-953-JP-2の出現を防ぐため、SCP-953-JPの前にDクラス職員を3人並ばせてください。加えてSCP-953-JPの扉部分を封鎖する事によりDクラス職員の浪費を防ぎます。SCP-953-JP担当技術者は遠隔操作によって週に一度SCP-953-JP封鎖装置の点検を行ってください。非常時にSCP-953-JP-2が出現した際は迅速にSCP-953-JPの前に5人のDクラス職員を並ばせてください。 説明: SCP-953-JPは山形県に存在する引き戸の玄関です。SCP-953-JPは本来家屋の一部でありましたが、財団による家屋の撤去が行われた後もその場で直立状態を維持しています。(以下、SCP-953-JPの家屋の外側に向いていた面を「外側」とします。)SCP-953-JPを構成する素材は風化や侵食に対しては高い耐久性を有しますが、戸部分のみ強い圧力や衝撃によって破損する事が確認されています。1 SCP-953-JPは周囲半径約12m以内に存在する、またはSCP-953-JPを起点として形成された行列を目視した人物に対し、「自身の目的のためにSCP-953-JPの前に立ちたい(または行列に加わりたい)」という欲求を抱かせます。この欲求は極めて微弱な物であり、他人からの制止や自制心等によって一時的に消失させることが可能です。しかしながら効果範囲内に滞在する限りは欲求が再発、持続します。 SCP-953-JPの外側の正面を起点にして立つ、または既に構成されている行列に加わった人物はSCP-953-JP-1となります。SCP-953-JP-1となった人物は行列から離脱する事を頑なに拒否するようになります。強制的にSCP-953-JP-1を列から離脱させた場合、SCP-953-JP-1は制止を振り切って列の最後尾に並び直します。また、SCP-953-JP-1をSCP-953-JP-1が本来並んでいた位置を中心とした直径約7mの範囲よりも外へと連れ出そうとした場合、SCP-953-JP-1は瞬時に消失し列の最後尾に再出現します。なお、SCP-953-JP-1は先述の特性を除けば変化以前の個人のアイデンティティを有しています。 SCP-953-JPは不定期に戸が開き、数体のSCP-953-JP-1がSCP-953-JPの枠内へと進入します。SCP-953-JP-1はSCP-953-JPの敷居を跨いだ時点で消失します。外部からの観測では解放時のSCP-953-JP枠内に変化は見られませんでした。なお、SCP-953-JP-1を追跡する試みは全て失敗に終わっています。 SCP-953-JP-1が2体以下になった状態が数時間持続した場合はSCP-953-JPの戸が開き、50代の日本人男性の容姿を持つ2人型の存在(SCP-953-JP-2)が不規則な間隔で出現するようになります。出現したSCP-953-JP-2は、発見した人間を主に話術などでSCP-953-JPの前へと引き連れようと試みます。人間をSCP-953-JPの前か既に構成された行列の最後尾に立たせた時点でそのSCP-953-JP個体は消失しますが、SCP-953-JP-1が4体以上にならない限りSCP-953-JP-2は出現し続けます。SCP-953-JP-1が5体以上になると全てのSCP-953-JP-2はその場から消失します。 SCP-953-JP-2の出現中はSCP-953-JPの前に立つ、または行列に加わる欲求を喚起させる効果の範囲とその強度が増強されます。効果の強度はSCP-953-JP-2の消失後に減退しますが、拡大した範囲についてはSCP-953-JP-2消失後もそのままとなります。 SCP-953-JPは200█/██/██に「異常なほど行列ができる店」「常に行列が存在する謎の店舗」として複数のウェブサイト上に情報が掲載された事により財団がその存在を把握し収容するに至りました。財団が確保する直前のSCP-953-JPには28体のSCP-953-JP-1による行列が形成されており、SCP-953-JPの有する効果範囲は半径約9mでした。この廃屋はSCP-953-JP以外からの内部調査の後、倒壊によるオブジェクトへの損傷を防ぐために撤去されました。 補遺1: SCP-953-JPは収容当初SCP-953-JP-2の出現を防ぐ為に不定期に減少するSCP-953-JP-1を補充する必要がある事や、SCP-953-JP-2出現時の効果範囲の拡大と強度の増加からEuclidと分類されました。しかしSCP-953-JPを効果範囲外から機材を用いて封鎖する事によりSCP-953-JP-1の枠内への進入を阻止できる事が判明し、SCP-953-JP-2出現の阻止と大幅な収容の簡素化を行うことに成功しました。この結果オブジェクトクラスはSafeへと再分類されました。 以下はSCP-953-JPの特性を調査する際に行われたインタビュー記録です。 インタビュー記録1 (200█/06/22) 閉じる 対象: SCP-953-JP-1-13 インタビュアー: エージェント・財部。 対象: SCP-953-JP-13。SCP-953-JPの効果範囲外かつ列中央付近にいたため、インタビュー対象として指定。 付記: SCP-953-JP確保直後に行われたインタビューです。なお、対象について3日前に家族から捜索届けが出されている事がわかっています。 <録音開始,(200█/06/22)> エージェント・財部: あの、すみません。少しお話を伺いたいのですが。 SCP-953-JP-1-13: 何だよあんた。まさか割り込もうって算段じゃないだろうな? エージェント・財部: いえ、違いますよ。私、庄内共同出版の鈴木と申します。ちょっとした取材です。お話をお伺いしても宜しいでしょうか? SCP-953-JP-1-13: 取材?記者なのかあんた。……いいぜ、ちょうど暇だったし。 エージェント・財部: ご協力感謝します。始めにお名前を伺っても? SCP-953-JP-1-13: あー、██。 エージェント・財部:ありがとうございます。では最初の質問から。貴方は何故この列に並んでいるのですか? SCP-953-JP-1-13: ん?変な質問だな。この店結構有名じゃないの?[SCP-953-JP-1-13が情報端末を操作しWebサイトのスクリーンショットを見せる]ほら。これこれ。この口コミサイトで見かけたんだよ。何でもウマい飯が食えるらしくてさ?んでんで、ダチと三人で朝人が少ないうちから並ぼうっつって来たんだけどよ、もう混み具合がすげーの! エージェント・財部: そんなに人気なんですか。知りませんでした。朝早くから並んでいるとのことでしたが、あなたたちは何時ごろから並び始めたのですか? SCP-953-JP-1-13: え、んーと、何時からだっけ。[SCP-953-JP-1-13が後方のSCP-953-JP-1に声をかける]そうそう、朝の6時からだよ。でも来た時にはもう人がいてびっくりしたよ。2、30人はいたな。ついた時は帰ろうかなと思ったけど、こんだけ並んでるんだ、きっとウマイに違いねぇって思ってさ。ぜってえ食ってやろうって三人で話して並んだわけよ。 エージェント・財部: 大盛況なんですね。立ちっぱなしで疲れませんか? SCP-953-JP-1-13: そ、こまでは気にならねえな。うん。むしろワクワクしてて疲れを感じないというか。遊園地の2時間待ちなんかよりずっと楽だぜ。 エージェント・財部: ふむ、あなたたちが並び始めてからどのくらい進みました? SCP-953-JP-1-13: うーん、多分6人ぐらいは中に入っていったんじゃないか?こっからだと見えにくいけど、そんな気がする。 エージェント・財部: だいぶゆっくりとしてますね。 SCP-953-JP-1-13: 従業員もすくねえんじゃねえかなー、結構古い店だし。お、まって、ちょっと進んだな。2人ぐらい入ったっぽい。 エージェント・財部: 少しずつ進んでますね。もう少ししたら入れるんじゃないですか? SCP-953-JP-1-13: だとイイんだけどな!そうだ、取材ならアンタも並んだらどうだ?レビューってのは重要だぜ?食レポっていうの? エージェント・財部: 気になりますが……。[司令部からの通信により列に入らないように注意受ける。10秒間の沈黙] あいにくアポイントメントをまだとっていませんので。内部の取材はまた後日です。今日は下調べみたいなものですから。 SCP-953-JP-1-13: そうか、仕事すんのも大変だな……。他に俺に聞くことある? エージェント・財部: いえ、以上です。ご協力ありがとうございました。 <録音終了> 終了報告書:SCP-953-JP-1は自身が列に並び続ける事に違和感を覚えない模様。列に並ぶ目的はSCP-953-JP-1になる前の目的が主体だった。この他複数のSCP-953-JP-1に取材を行ったがその多くはSCP-953-JP-1-13と同様の目的で列に並んだと主張した。3また、エージェント・財部が列への参加を促された際に逡巡を見せた事からSCP-953-JP、SCP-953-JP-1に何らかの精神的作用があると予想される。 インタビュー記録2 (200█/08/12) 閉じる 対象: SCP-953-JP-1-30(元D-953-JP-2) インタビュアー: ██研究員 付記: SCP-953-JP封鎖後に配置された元D-クラス職員へのインタビューです。インタビューは通信機器越しに行われました。 <録音開始,(200█/08/12)> ██研究員: 聞こえますかSCP-953-JP-30。 SCP-953-JP-1-30: [沈黙] ██研究員: SCP-953-JP-1-30? SCP-953-JP-1-30: ……すすまない。 ██研究員: 進まない?列がですか? SCP-953-JP-1-30: [沈黙] ██研究員: 質問に答えてください。 SCP-953-JP-1-30: 辛い。 ██研究員: 辛い?何故ですか? SCP-953-JP-1-30: あんたらに協力するために並んでなきゃいけない、わかってる、でも辛い。なんか、なあ、なんのために俺何で並んでるんだ?なぁ、いつまで並べばいい?教えてくれよ。立ちん坊は辛いんだ。 ██研究員: 大事なお仕事ですよ。そのまま並んでいてください。 SCP-953-JP-1-30: 1か月経てば出してもらえるんじゃなかったのかよ!もう、もう何日だ?何か月?わかんねえよ……。なぁ、俺もうヤダ、帰りたい。帰らせてくれよ。なぁ。頼むよ。 ██研究員: それはできません。 SCP-953-JP-1-30: ふ、ふざけるな。何でおれたちをこんな無意味な目に合わせるんだ!ただ、毎日立って、たって、時間も、ああ、でも、並ばないと、でも、いやだ! [SCP-953-JP-1-30が列から外れて走り出す。SCP-953-JP-1-30は効果範囲外に出た所で瞬時に消失、列最後尾に再出現する。] ██研究員: SCP-953-JP-1-30? SCP-953-JP-1-30: 何ですか? ██研究員: …並ぶことに苦痛は? SCP-953-JP-1-30: いえ?特にはないですが。 ██研究員: そうですか。インタビューを終了します。 <録音終了> 終了報告書: SCP-953-JPの封鎖後からSCP-953-JP-1が列に並び続けることに違和感、精神的疲弊を覚えるようになった。SCP-953-JPはあくまで対象の欲求を元にして誘因を行いSCP-953-JP-1を増加、維持させている模様。なお、効果範囲外に出て消失、再出現のプロセスを踏んだSCP-953-JP-1は違和を感じなくなる為、以降SCP-953-JP-1-29、30、31で継続して収容を維持する。 脚注 1. この事からSCP-953-JPの異常性はSCP-953-JPの鴨井と敷居に存在するとする仮定が提唱されています。 2. 典型的な和食料理人の格好をしています。この実体と関連があると思われる人物は見つかりませんでした。 3. これはSCP-953-JPが存在する家屋について拡散された情報が「行列のできる飲食店」であることが原因と推測される。
scp-954-jp
評価: +35+–x 収容前のSCP-954-JP アイテム番号: SCP-954-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-954-JPは内部が空の状態で標準静物収容ロッカーで保管してください。実験はレベル2以上の職員によって行われます。実験はレベル4以上の職員の監視下で行われます。Dクラス職員以外が活性化中のSCP-954-JPの影響下に入ることは許可されません。また実験室外でSCP-954-JPを活性化させることは禁止されています。破損を防ぐためSCP-954-JPの活性化に使用する液体は水のみが認められます。 説明: SCP-954-JPは一般的に電気ポットと呼称される電気機械器具です。高さ20cm、直径15cmで外部には「ON/OFF」と書かれた切り替え式のスイッチが1つ付いており、████社製の商品に酷似しています。SCP-954-JPは内部に液体を入れて電力を供給し、液体を沸騰させることで活性化します。沸騰した蒸気が存在する空間はSCP-954-JPの影響下となり確率の高い事象が必然的に発生します。活性化中のSCP-954-JPの影響下では概ね現実改変に近い現象が発生しますが、その発生プロセスは不明なため現在調査が進められています。 SCP-954-JPは福岡県██大学の学生のSNSへの投稿の拡散がきっかけで財団の興味を惹きました。投稿された内容は「コンピューターRPGのコマンドが20回すべて失敗した」という旨のものでした。学生の選択が成功する確率は30%であり、これが全て失敗する確率は0.08%となります。当初は非異常性の事象だと考えられていましたが、この生徒と同じ研究室に所属する学生による同様の投稿が複数回あったため調査が行われました。現地エージェントによる調査の結果、この現象がSCP-954-JPによるものだと判明し回収されました。SCP-954-JPは同研究室の助教授が個人的に購入したもので、2週間前から使用されていたことが明らかになっています。この製品を製造・販売していた████社の同製品には異常は確認されていません。SCP-954-JPが発見された研究室が確率論を研究対象としていたことは特筆に値します。 + 実験記録を閲覧する - 実験記録の閲覧を終了する 以下はSCP-954-JPの異常性解明を目的として行われた実験記録の抜粋です。 実験記録954-JP-1 日付: 20██/10/█ 実験場所: 標準低脅威度実験室(3m×3m×3m) 実験方法: SCP-954-JPに水を注ぎ活性化させた状態で電動サイコロ振り機を用いて一般的な6面サイコロを1個振る。 結果: 10000回試行を行ったところ下記の表の通りになった。 サイコロの目 回数 確率 1 1667 16.67% 2 1666 16.66% 3 1667 16.67% 4 1667 16.67% 5 1667 16.67% 6 1666 16.66% 計 10000 100% 分析: 確率通りの結果になった。特筆すべき点は、サイコロを6回振るごとに事象が起きた回数がすべて等しくなったことだ。-柄西博士 実験記録954-JP-2 日付: 20██/10/█ 実験場所: 標準低脅威度実験室(3m×3m×3m) 実験方法: SCP-954-JPに水を注ぎ活性化させた状態で電動サイコロ振り機を用いて細工した6面サイコロを1個振る。サイコロは比重の異なる材質を使用しており1の面が出やすくなっている。 結果: 10000回試行を行ったところ下記の表の通りになった。 サイコロの目 回数 確率 1 10000 100% 2 0 0% 3 0 0% 4 0 0% 5 0 0% 6 0 0% 計 10000 100% 分析: 異常な結果となった。実験中、サイコロの挙動に不自然な点は見られなかった。 -柄西博士 実験記録954-JP-3 日付: 20██/10/█ 実験場所: 大規模実験室(30m×25m×12m) 実験方法: 実験室の1角でSCP-954-JPを活性化し、残りの3角で実験記録954-JP-1および実験記録954-JP-2と同じ試行をする。 結果: 3角で実験記録954-JP-1および実験記録954-JP-2と同等の結果になった。 分析: SCP-954-JPの有効範囲は少なくとも39mはあるようだ。 -柄西博士 実験記録954-JP-4 日付: 20██/10/██ 実験場所: 屋外 実験方法: SCP-954-JPから1~10m離れた地点で実験記録954-JP-1および実験記録954-JP-2と同じ試行をする。 結果: すべての実験で非異常性の結果となった(詳細な表は添付用紙を参照)。 分析: 屋外ではSCP-954-JPの影響はないようだ。 -柄西博士 実験記録954-JP-5 日付: 20██/10/██ 対象: D-954-JP-1 実験場所: 標準低脅威度実験室(3m×3m×3m) 実験方法: D-954-JP-1を用いて実験記録954-JP-1および実験記録954-JP-2と同じ試行をする。 結果: それぞれ下記の表の通りになった。 実験記録954-JP-1と同じ試行 サイコロの目 回数 確率 1 1667 16.67% 2 1667 16.67% 3 1667 16.67% 4 1666 16.66% 5 1666 16.66% 6 1667 16.67% 計 10000 100% 実験記録954-JP-2と同じ試行 サイコロの目 回数 確率 1 10000 100% 2 0 0% 3 0 0% 4 0 0% 5 0 0% 6 0 0% 計 10000 100% 分析: 電動サイコロ振り機を用いた実験と同等の結果になった。機械に干渉する性質ではないと確認できた。また実験に参加したDクラスへの影響もないようだ。Cクラス以上の職員による実験を許可する。 -柄西博士 実験記録954-JP-10 日付: 20██/11/█ 対象: 長戸研究員、Agt.坂和 実験場所: 標準低脅威度実験室(3m×3m×3m) 実験方法: 将棋 結果: 異常は見られなかった。 分析: 思考には影響しないようです。 -長戸研究員 実験記録954-JP-13 日付: 20██/11/█ 対象: 長戸研究員、Agt.坂和、佐藤研究員、鈴木研究補佐 実験場所: 標準低脅威度実験室(3m×3m×3m) 実験方法: トランプ1組を用いたポーカー(ファイブ・カード・ドロー) 結果: すべてノーペアとなった。 分析: カードを引く確率が操作されているのか、役ができる確率が操作されているのか現時点では断定できません。しかし後者の場合は対象の意識を読み取っている可能性があります。 -長戸研究員 実験記録954-JP-15 日付: 20██/11/██ 対象: 長戸研究員、佐藤研究員、鈴木研究補佐 実験場所: 標準低脅威度実験室(3m×3m×3m) 実験方法: トランプの山の順番を事前に記録し、実験記録954-JP-13と同じ試行をする。 結果: 実験記録954-JP-13と同じ結果となった。カードの順番は記録したものと明らかに異なっていた。 分析: なんらかの現実改変もしくは情報災害の可能性が考えられます。またSCP-954-JPが対象の意識を読み取っているという仮定は正しいと見て良いでしょう。 -長戸研究員 実験記録954-JP-16 日付: 20██/11/██ 対象: 長戸研究員、佐藤研究員、鈴木研究補佐 実験方法: トランプ1組を用いた神経衰弱。事前にカードの種類と場所を記録しておく。 補足: 記録は対情報災害措置を施した用紙、および電子端末に記録された。また室内にカント計数機を設置しヒューム値の変化を記録した。 結果: 1枚目は「ハートのA」であった。2枚目は「スペードのA」があった場所をめくったが、そのカードは「スペードのK」に変わっていた。また元々「スペードのK」があった場所は「スペードのA」に変化していた。カメラの映像記録にも異常はなく、カント計数機の値も変動していなかった。 分析: 現実改変および情報災害ではないようです。しかしSCP-954-JPが対象の思考を読み取っているのは確定的です。 -長戸研究員 追記: 実験後、インシデント954-JP-1が発生しました。詳細はインシデント記録954-JP-1を参照してください。 + インシデント記録を閲覧する(セキュリティクリアランスレベル4以上の提示が必要です) - 承認されました 以下はSCP-954-JPを用いた実験中に発生した事件の記録です。 インシデント記録954-JP-1 発生日時: 20██/11/██ 対象: トランプ(識別番号:0012) 説明: 実験954-JP-16終了後、変化した「スペードのK」のカードを佐藤研究員が分析のため実験室外に持ち出したところ、絵柄が「スペードのA」へと変化しました。このときSCP-954-JPは活性化したままでしたが、カードの変化に佐藤研究員が気づく前にSCP-954-JPは不活性化されました。これにより実験に用いられたトランプは「スペードのA」のカードが2枚存在し、「スペードのK」のカードが存在しない1組のトランプとなりました。 インシデント記録954-JP-2 発生日時: 20██/03/██ 対象: Agt.坂和 説明: Agt.坂和、長戸研究員の2名がSCP-954-JPを用いた実験のため、実験室でSCP-954-JPを活性化したところAgt.坂和が消滅しました。身に着けていた衣服も同時に消滅しましたが、別施設のAgt.坂和の私物は残ったままでした。また前日にAgt.坂和から長戸研究員へ贈られ、事件日に白衣に装着していたボールペンも同時に消滅しました。消滅後すぐにSCP-954-JPは不活性化され長戸研究員へのインタビューが実施されました。 以下は長戸研究員へのインタビュー記録です。 インタビュー記録954-JP-2 対象: 長戸研究員 インタビュアー: ██博士 補足: 長戸研究員には事件による動揺を抑えるため、事前に精神安定剤を処方しています。 <録音開始> インタビュアー: それではインシデント954-JP-2に関するインタビューを始めます。よろしくお願いします。 長戸研究員: よろしくお願いします。 インタビュアー: まずあなたは坂和さんのご友人でしたね。彼が消滅した理由に何か心当たりはありますか。 長戸研究員: (怪訝な顔をする)……どうして坂和の名前が出るんですか。 インタビュアー: どうしても何も、今回の事件の当事者だからです。質問に答えてください。 長戸研究員: ……分かりました。最近、といっても最期に会ったのは4か月前ですが、Agt.坂和は普段通りでした。特に任務の前だからと緊張する様子もなかったです。月並みですが、まさか死ぬとは思っていませんでした。 インタビュアー: 最後に会ったのが4か月前というのはどういう意味ですか。それにまだ亡くなったと決まったわけではありません。その原因を解明するためのインタビューです。 長戸研究員: 私は坂和が11月██日の任務で殉職したと聞いたのですが、違うのですか? インタビュアー: そのような事実はありませんね。確かに重傷を負いましたが、先日復帰しました。現に、長戸研究員も先ほど彼と実験をしていましたよね。 長戸研究員: 一体何をおっしゃっているのか分かりません。坂和は4か月前に死んでいますし、今日の実験は私1人で行いました。 インタビュアー: ……ああ、そうでしたね。では、今日の実験の目的と結果を簡潔に話してください。 長戸研究員: …分かりました。目的はSCP-954-JPの異常性解明のためで、事案954-JP-1の再現実験をする予定でした。結果は……すみません、ちょっと、思い出せません。 インタビュアー: 結構です。では今回のインタビューはここで終了とします。 <録音終了> 終了報告書: 長戸研究員の記憶に混乱が見られるようです。事件の心的外傷によるものかもしれませんが、オブジェクトによる影響の可能性も考えられます。検査をお願いします。 追記: 後日行われた検査により記憶の改変が確認されました。これはSCP-954-JPの異常性によるものと推測されています。長戸研究員に対しては改変された記憶を記録した上で記憶処理が行われました。 インシデント記録954-JP-3 発生日時: 20██/12/██ 対象: SCP-954-JP-1 説明: ██博士による実験中にSCP-954-JP-1が出現しました。SCP-954-JP-1は30代の平均的な日本人男性です。出現時は一般的な財団研究員の服装をしており、自らを「利賀 ██」と呼称していました。財団のデータベースに「利賀 ██」という人物は存在しないことに留意してください。SCP-954-JP-1は█年前から財団に勤めていたと主張しています。クリアランスレベル2相当の機密情報も保持していましたが、これらの情報をSCP-954-JP-1が得た経緯は不明です。また実験に使用されていたD-954-JP-██はSCP-954-JP-1に関して「実験の前からいた」という旨の発言をしていますがそのような映像記録は残っていません。 SCP-954-JP-1は財団の研究員に等しい知識を持っており、財団が未発見のオブジェクトの収容方法も把握しているようです。根拠やデータが不足しているためSCP-954-JP-1の出自は依然として不明ですが、「SCP-954-JP-1は平行世界の財団に所属していた職員である」とする仮説が有力視されています。財団はこの仮説に基づいてAgt.坂和の行方を調査中です。 また上記の仮説を基にして、SCP-954-JPが"平行世界における財団の存在可能性の低さに起因する反ミーム的性質"を持つとする考えが提言されました。この提言ではSCP-954-JPの異常性は「観測されない現実改変」と推測されており、現在反ミーム部門およびSCP-954-JP担当研究員によって議論が進められています。 財団への貢献と忠誠が評価されたため、SCP-954-JP-1は「██ ██」として雇用されました。 この事実はセキュリティクリアランスレベル3以下の職員に対して隠匿されています。
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評価: +76+–x アイテム番号: SCP-955-JP 内部から撮影したSCP-955-JP。 オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-955-JP周辺は一般人の立ち入りを防止し、またSCP-955-JPに指定される部屋の窓には両側から窓を視認出来ないようシャッターを設置してください。SCP-955-JP-Aとなった人物は検査の後異常がなければ可能な限り財団にて雇用するか、収容してください。 説明: SCP-955-JPは、愛知県名古屋市██区に存在する、かつて████社によって管理されていた社員寮の一室に発生する異常現象です。SCP-955-JPが発生する一室の窓を、周囲1█mに観測者以外の人間が存在せず、かつ夜19:37分〜26:11分までの間に外部から視認した男性はSCP-955-JP-Aとなり、SCP-955-JPの異常性を観測できます。 SCP-955-JPはSCP-955-JP-Aに、窓の内側で安楽椅子に座り読書をしている女性の幻覚を見せます。SCP-955-JP-Aとなった人物は女性に対して高い確率で“魅力的である”と感じ、女性について、可能ならば親しい関係になりたいと感じます。SCP-955-JP-Aに観測される女性像は毎回一致せず、SCP-955-JP-Aの好みに合わせ変化しているようです。 SCP-955-JP-Aとなった人物は、自己の生活の中で、同様の女性を窓の向こう側に観測します。女性の出現は平均して数日〜数週間の感覚をおいて現れ、SCP-955-JP-Aとなった一般人へのインタビューでは「喫茶店の窓際の席で座っていた」「ブティックの向こう側で服を選んでいた」「バスに乗っているのを見た」などの出現が報告されています。Dクラス職員をSCP-955-JP-Aへと変化させる実験では、Dクラス職員は収容房から研究室へ向かう間に、別の研究室で実験をする姿を観測しました。SCP-955-JP-A以外に、これらの女性を確認することは成功していません。 SCP-955-JPの影響を受けてから3〜5ヶ月の経過後、SCP-955-JP-AはStage-2へと移行します。SCP-955-JP-Aは、窓の向こう側だけでなく、視界の端や鏡を見た際に自分の背後を通り過ぎる女性の姿を認めるようになります。この場合でもSCP-955-JP,Stage-2は基本的に女性と出会うことはなく、またSCP-955-JP-A以外にこの女性を確認することはできません。この状態へ移行したSCP-955-JP-Aは女性の姿を追うことに執着し、周囲を激しく見回したり落ち着きなく外を歩き回るようになります。この状態のSCP-955-JP-Aは心身に多大なストレスを生じるため、カウンセリングなどの処置なく放置した場合その多くが2〜3ヶ月のうちに衰弱し、高い確率で精神疾患を煩います。数例、SCP-955-JP-A,Stage-2から当該の女性の声が聞こえる、あるいは女性とじかに出会い、対話をしたという報告がされています。 SCP-955-JP-Aとなり、精神疾患を煩わないまま約1年以上が経過した人間は、Stage-3に移行します。この状態ではSCP-955-JP-Aは極めて社交的になり、落ち着きを取り戻します。この状態のSCP-955-JP-3の特徴として、多弁・若干の躁傾向とともに、より多くの人間と友好的な関係を築こうとつとめ、Stage-2で見られたような落ち着きなく周囲にSCP-955-JPで確認した女性を探すような行動はなくなります。現在までにSCP-955-JP-A,Stage-3まで段階が進行したのは記録上ではSCP-955-JP-Aとして最初に財団に収容された一般人男性のみです。 補遺: インタビュー記録:955-JP 対象: SCP-955-JP-A,Stage-3 インタビュアー:東郷博士 付記: SCP-955-JP-A,Stage-3はSCP-955-JPが財団に収容されて以来サイト-81██内で生活している。 東郷博士: こんにちは、本日はよろしくお願いいたします……調子はどうですか。 SCP-955-JP,S-3: 良好です。だんだんこんな生活にも慣れてきました。実のところ、すこしだけ楽しくなってきたりしています。 東郷博士: ははは…楽観視はできないが、君の場合、異常性の影響はほぼないに等しいだろう。現在までに我々が試した方法では君のそれを取り除くことは出来なかったが、きっといつか戻れるさ。その場合それ以降の生活については財団で保証する。 SCP-955-JP,S-3: はい。早く自宅に戻れるのを楽しみにしています。 東郷博士: 今日は幾つか、君の“段階”まで進んだ場合の記録を取るためにインタビューを行う予定だ。あー、体の調子は良好…のようだね。 SCP-955-JP,S-3: はい。とても良好です。落ち着きも失くして、とにかく“彼女”を探してあっちこっち、キョロキョロしていたこれまでの自分が嘘みたいです。 東郷博士: うん。君が我々に収容された時と比べると随分と良くなったみたいだね。ちゃんと私の目を見て話せるようになった。 SCP-955-JP,S-3: はい。 東郷博士: では質問を始める。まず、君があれを見た時、何か気づいたことは有ったか? SCP-955-JP,S-3: ……きれいな人、だなあと思いました。始めて見てから、大学の教室で授業を受けている時とか、アルバイトしている時とかに、外を歩いている姿をたまに見かけるようになって、勝手に親しみを感じてたんです。そのうち彼女の姿があちこちに見えるようになって……その頃にはすっかり彼女に恋をしていました。どこを見ていても、視界の端に彼女が映るのを待っていたような状態です。そのうち自分の部屋の中にはいるわけがないから、って一週間も家に帰らず街中をぶらぶら歩き回るようになって…… 東郷博士: その頃に君は我々に収容されたというわけだ。しかしここに来てから1ヶ月もするころには、君はそんなそぶりを見せなくなったね。恋が冷めたのかな?それともやっと彼女に会うことができたとか?我々はそこを調べる必要がある。 SCP-955-JP,S-3: はい。……気づいたんです。彼女がいつだってそばにいるってことに。 東郷博士: ……ふむ。それで君は?どうしたんだい? SCP-955-JP,S-3: 視界の端っこに映ってたり、鏡を見た時に奥の方にちらちらと見えたり、そんな風に彼女を探すのがばかばかしくなったんですよ。 東郷博士: ……続けてくれないか。 SCP-955-JP,S-3: 彼女はずっと……いや、途中からそばにいたんですよ。 東郷博士: つまり? SCP-955-JP,S-3: そばに彼女が来てくれた、そこに気づいたらあとは簡単でした。いつだって彼女はそこにいる。気づいてしまえばあとは簡単でした。僕がこのイライラする性格を治せば、あとは簡単でした。彼女にはいつだって会えるんです。僕はそれに気づいて、あとは簡単でした。 東郷博士: 簡単に彼女に会えるようになったと? SCP-955-JP,S-3: その通りですよ。私はずっとそばにいた彼女を知ったんです。そうなるとあとは簡単で、実際のところそれはすごく簡単なことでした。ぼくは今や簡単に彼女に会うことができるし、これまでとは違って彼女はこちらに微笑みを向けてくれるんです。私はそれに気づくと、自分のバカさを呪って、ぼくのスタイルを変えようと努力しました。それは随分簡単に済んで、ぼくはそれからはずっと簡単に彼女に会えるようになったんです。 東郷博士: 君は常に、“彼女”を確認していると? SCP-955-JP,S-3: 彼女は最初からぼくのすぐ近くにいてくれたんです。私の視力が良くて本当に助かりました。彼女は小さいけれど、ぼくは今やいつだって彼女を見つけることができるんです。博士、ねえ博士、ぼくをもっと見てください。私と目を合わせてくださいよ。さっきから私と目を合わせないのはどういうわけなんですか、ぼくは彼女と見つめあっていたいんですよだって博士がぼくを見てくれないと……彼女が見えないから。 東郷博士: ……どういうことだ? SCP-955-JP,S-3: 博士、ぼくを見て下さい。見て。 東郷博士: …… SCP-955-JP,S-3: 彼女はそこにいるんだ。博士。私を見て下さい。私と目を合わせてくださいよ。ほら。私は私の目を見なくてはならない。私のひとみの中にはぼくがずっと会いたかった彼女が座ってるんです。はやくぼくがみてくれるのを待ってるんですよ。博士。 東郷博士: ……インタビューは終了する。 SCP-955-JP,S-3: 博士。もっと。見て。もっと。 終了報告書: 彼の発言から、SCP-955-JPに出現する“女性”はSCP-955-JP-Aの「目」の中に存在し、それゆえに視界の端々に現れていたのだと考えられる。1意識して彼の目を注視してみるとすぐに分かった。彼の目の中に女が座っていた。私には、鼻が欠け、顔のただれた老婆に見えたが。__東郷博士 Footnotes 1. 視界の端に映るようになったStage-2の時期に移動した?
scp-956-jp
評価: +52+–x 評価: +52+–x クレジット タイトル: SCP-956-JP - 彼はただ、あの永続的な大地に根を張り続けていたかった 著者: ©︎amamiel 作成年: 2017 評価: +52+–x 評価: +52+–x SCP-956-JP概観(19██/05/12撮影) アイテム番号: SCP-956-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-956-JPを中心とする半径2km圏内の区域は財団によって買収され、土地開発を理由に一般人の立ち入りを制限します。SCP-956-JP影響範囲内に存在する介護施設の建物は、観測所として活用されることになっています。また、観測員として1人のDクラス職員のみを配置してください。なお、観測員が睡眠中に経験した夢の内容は定例的に報告されます。 観測員を除いた全ての職員は、当該区域内での睡眠行為を禁止されています。現在、SCP-956-JPに対する全ての実験試行は凍結されています。 説明: SCP-956-JPはセイヨウヒイラギガシ(Quercus ilex)に酷似した1本の緑葉樹です。同種の樹木と概ね一致する性質・構造・構成を示す一方、季節や天候等の環境変化による影響を受けることなく、常に同じ外観を保ちます。それに加え、後述するケースを除けば、年月の経過による成長及び枯死や腐敗も一切確認できず、20██/09/12まで樹高24mの状態を維持し続けていました。 SCP-956-JPの周囲約800m圏内で睡眠を行った場合、睡眠中の人物(以下、被験者)は鮮明かつ現実的な夢を経験します。更にその睡眠中、被験者は夢の中でSCP-956-JPに酷似する樹木を「現実よりも成長した状態の姿」として目撃します。例として、現実で樹高15mだった際には、夢の中では目算でも樹高20mを超える姿で出現したことが報告されています。 それに加え、影響範囲内に存在する被験者の人数が一定数を上回った場合、SCP-956-JPは毎分2~5cmという急激な速さで成長を始めます。この成長は、以下のような要因等でSCP-956-JP影響下にある被験者数が減少した場合に中断されます。 被験者を影響範囲内から取り除く 被験者を覚醒させる その他手段により、被験者が夢を見られない状態にする また、上記要因とは別に、被験者達が夢の中で目撃している姿と現実のSCP-956-JPの姿が同じになった場合にも成長は中断されます。なお、この成長現象が発生するために必要となる被験者数は、夢の中で目撃されるSCP-956-JPの樹高に比例して増加します。それに加え、SCP-956-JPが大きく成長するほど、人間の夢へと影響を与える範囲も拡大することが判明しています。 なお、SCP-956-JP成長現象の発生中、影響範囲内であっても被験者の夢からは鮮明・明晰さが失われます。更に、その間に経験する夢は非常に不鮮明かつ抽象的な内容へと変化します。また、それらの内容を詳細に記憶しておくことは困難となり、覚醒した多くの被験者は漠然と「意味不明で非現実的な夢を見た気がする」といった旨の報告を行います。一方で、この夢の変化による被験者への精神的・身体的な影響は、現在までに確認されていません。 SCP-956-JPは20██/06/02、京都府██郡██村の介護施設より報告された奇妙な樹木について調査を行った際に、当該施設と併設された庭園内にて発見されました。回収当時、SCP-956-JPの影響範囲は周囲半径500m程度であり、単に被験者の夢へと影響を与える異常性を持つだけだと考えられていました。 しかし、更なる調査の際、全ての施設職員及び入居者は、SCP-956-JPがいつ頃から存在していたのかを明確に記憶しておらず、大半が「いつの間にか、あの場所に生えていた」と曖昧な回答を行うのみでした。この調査結果に加え、各検証より明らかになった異常性の性質を加味した結果、影響範囲拡大の懸念から更なる成長実験の試みは全て凍結されました。 追記1: 20██/07/12以降に行われた定例報告より、観測員が夢の中で同じ外見の老人を度々目撃している事実が確認されました。検証の結果、この老人はSCP-956-JPとは異なり、複数の被験者の夢で同時に目撃されることはなく、SCP-956-JPの影響範囲内に存在する被験者1人の夢にだけ不定期に出現することが判明しています。 夢の中で老人は共通した行動を示し、被験者に対しては必ず「夢の中で自分以外の老人を見なかったか」といった旨の質問を世間話と交えて行います。なお、この質問への回答結果によらず、対話後に老人はどこかへと去って行くと報告されています。それに加え、被験者が他の老人を目撃したケースは現在まで確認されていません。以下の文章は、初めて老人が夢の中で目撃された際の定例報告より、観測員との対話のみを抜粋したものです。 + 報告956-██0712よりの抜粋ログ - 報告956-██0712よりの抜粋ログ <記録開始> 観測員はビーチで日光浴をしている夢を見ている。この最中、ロッキングチェアに座る観測員に対し、老人が話しかけてくる場面から以下の会話が始まる。 老人: くつろいでいる最中にすまないが、このあたりで私以外の年老いた男性を見なかっただろうか。 観測員: いや、悪いが見ていないかな。 老人: そうか、ありがとう。すまないが、もし見つけたのなら私に教えてくれないだろうか。彼とは、こちらに降りて来る前からの古い友人なんだが、最後に別れた日からずっとこのあたりで働いていると聞いて心配になってね。 観測員: ああ、分かった。だけど、このあたりで働いているジイさんなんて見たことがないけど。 老人: いや、彼は今も確かに働いているようなんだ。その証拠に、この場所はかつて私に見せてくれていた時と同じように、とても鮮明かつ現実的だ。だからこそ、彼にはもう働かずとも良いと伝えねばならない。 観測員: 良く分からないが、まあ、気が向いたら探してみるよ。 老人: ありがとう。 <記録終了> なお、被験者より報告された老人の人相を調査した結果、過去に介護施設の入居者であった██ ███氏の人相と概ね一致していることが判明しました。しかし、同氏は財団による施設閉鎖時に他の施設へと移っており、オブジェクトが発見されてから約1年後の20██/06/28に死亡していたことが確認されました。そのため、その明確な関連性は明らかになっていません。 事案956-JP: 20██/09/12、観測員が睡眠を開始してから約150分が経過した際、SCP-956-JPの外観が急激に縮小・退行し始めました。この退行現象は約9秒おきに進行し、この間、SCP-956-JPの幹全体は何かで押し潰されたかのように凹んでいき、それに伴う形で外観も徐々に透過していく様子が観測されました。 事案発生から約130分後、SCP-956-JPの外観は完全に縮小・透過され、その場から消失しました。SCP-956-JPが存在した地点には数本の折れた木の枝が散乱し、地面には複数の窪みが残されているのみで、地下茎部分も同様に発見できませんでした。また、事案後の定例報告において、観測員より以下の夢の内容が報告されました。 報告956-██0913: 夢の中で気が付いた時、私は森に囲まれた湖畔で釣りをしている真っ最中でした。近くには1人用のテントが張られ、足元のラジカセからは聞き馴染みのある曲が繰り返し再生されており、しばらくして夢の中の自分がキャンプをしていたことを思い出しました。 ふと湖畔の反対側を見ると、いつも夢に現れるコナラの木が生えていることに気付きました。ですが、私は特に気に留めることもなく釣りを続け、それに飽きると森へと焚き木を拾いに出かけました。 焚き木を拾い始めてから少しして、私は久しぶりにいつもの老人と森の中で出会いました。老人は「大きなコナラの木を見かけなかったか」と尋ねたので、私が湖畔の反対側に見かけた木のことを教えると、お礼を言って老人はどこかへ行ってしまいました。 焚き木を拾い終わった私がキャンプ場所に戻ると、あの木のそばに立つ老人の姿が見えました。よくは分かりませんでしたが、老人は木に向かって何かを話しかけているようにも見えました。それが1時間続いた後で、老人は突然オノで木を切り始めました。 不思議なことに、老人のオノが木に当たるたびに地面が揺れるような感覚がして、周囲の森の木々が揺れ、湖面には波立ち始めました。そして、それは老人がオノで木を切り付ける度に強くなっていき、徐々に意識や感覚が遠退いて行くようにも感じました。ただならぬ事態に、私はおぼつかない足取りながらも老人の元へ辿り着くと、なぜ木を切るのか尋ねました。 老人は私の質問に手を止めることもなく、一定のリズムでオノを振るっていました。しかし、繰り返し質問を投げかけているうちに、老人は悲しそうな表情をしながら「彼は壊れてしまっていた。かつてのように誰かのためではなく、ただ自分がそこにあるためだけに動き続けているんだ。もう止めさせなければ」と口にしました。わけが分からず、更に質問しようとしたものの、オノで付けられた傷が深くなっていくほどに意識が遠くなり、視界が不鮮明に、曖昧になっていくのを感じました。周囲を見渡せば、森の輪郭は崩れ、湖の水は透明ではなくなり、先ほどまでいたキャンプ場所からは何もかもが消えてしまっていました。 夢の中の私は不意に怒りを覚え、「せっかくの楽しい夢が台無しだ、なぜこんなことを」と老人に叫びました。老人は相変わらず手を止めませんでしたが、「すまない。だが、君はまだ確かな大地を踏むことができるのだろう。しかし、こちらでは多くの者が現実を味わい、楽しみたいと考えている。そのために彼は現実性を送る役目を買って出た、そしてその結果がこれだ。私はただ、先に行ったはずの彼を静かに眠らせてやりたいんだ」と答えました。 更に現実感は失われて行き、最後に木が切り倒されたところから、私の夢の中の記憶は不鮮明なものになりました。それ以降に覚えているのは、去っていく老人の後ろ姿と、木が切り倒されたことにも気にせず、音楽を聴きながら濁った湖で釣りを続ける私の後姿だけです。そして私は目覚めました。 追記2: 上記の事案以降、SCP-956-JPの元影響範囲内で睡眠を行った場合でも、夢からは以前のような鮮明さや現実感が失われていると報告されました。その一方で、複数の被験者が「朽ちた倒木のそばに座って佇む老人」を夢の中で目撃したと報告を行っているものの、消失したSCP-956-JPとの明確な関連性は不明です。また、老人との会話に成功したケースも報告されていません。上記の点を踏まえ、SCP-956-JPの再分類は見送られるとともに、現特別収容プロトコルが継続して適用されています。
scp-957-jp
評価: +48+–x 評価: +48+–x クレジット タイトル: SCP-957-JP - 無明の光 著者: sanks269 作成年: 2020 評価: +48+–x 評価: +48+–x SCP-957-JPを視認する被験者から抽出した視覚イメージ。 アイテム番号: SCP-957-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-957-JPは専用の収容施設(セクター81██)に収容されます。SCP-957-JP存在領域の外周は反ミーム迷彩を施した視絶膜で常時覆われ、民間人による直接の目視から防護されます。当該施設の周囲2km圏内は財団が買収済みであるため、カバーストーリー「私有地につき立ち入り禁止」を適用して民間人の侵入を防いでください。 SCP-957-JP存在領域近郊に立ち入る場合、クリアランスレベル3以上または957-JPクリアランスを保有する職員2名以上の許可が必要です。立ち入りの際は必ず認識災害フィルターを備えた装備を着用し、可能な限りSCP-957-JPおよび発せられる光を視認しないようにしてください。 説明: SCP-957-JPは、東経13█°██'██"、北緯3█°██'██"(北海道名寄市内)に位置する十字形の光柱です。目視確認により、支柱部分の断面は直径約15mの円形、十字形部分の幅は約56m、全体の高さは約125mと見積もられています。 SCP-957-JPは物理的な実体および光源を有していません。SCP-957-JP、および発せられる光は一種の精神的具象体であり、該当領域を視認する知性体の認識上にのみ存在すると考えられています。そのため目視以外の方法でSCP-957-JPを観測することは困難であり、視認中の被験者の脳内から直接イメージを取り出す以外に観測手法は確立されていません。 SCP-957-JPは直接の目視をトリガーとする認識災害的性質を有しています。SCP-957-JPの存在領域を1度以上直視した知性体は、例外なく以下に示す影響を受けることが判明しています。 第一の影響は、被影響者の視界内におけるSCP-957-JPの絶対視認性です。被影響者の視界において、SCP-957-JPはあらゆる遮蔽物1を透過して視認され、いかなる距離においてもその光量は減衰しないことが判明しています。SCP-957-JPの視認限界は現在まで確認されておらず、被影響者はSCP-957-JPの存在方向を向くことで、どのような状況下においてもSCP-957-JPの光を視界に収めることが可能であると推定されています。 第二の影響は、被影響者の視覚機能の減衰です。被影響者はSCP-957-JPを直視してから約5日〜25日の期間をかけて、夜盲症に似た著しい視覚機能の減衰を経験します。この減衰には限界がなく、また治療法も確立されていないため、全ての被影響者は1ヶ月未満に完全な失明状態へと陥ります。この失明症状における唯一の例外は、SCP-957-JPの発する光のみであることが判明しています。 SCP-957-JPによる完全失明状態に陥った被影響者は、多くの場合唯一の光源であるSCP-957-JPの存在位置に誘引されます。特筆すべき点として、SCP-957-JPの光そのものは強制力および精神影響性を有していません。SCP-957-JPへの誘引は人間本来の暗闇への恐怖心と光に対する安心感から発生するものであり、正常な人間の欲求行動の帰結であると考えられています。被影響者はSCP-957-JPの光を無視して生活することが可能ですが、この行動は被影響者の精神状態に悪影響を及ぼすことが確認されています。 また、SCP-957-JPの存在領域に知性体が接近する場合、到達者がSCP-957-JPの被影響者であった場合に限り、特異な現象を発現させることが確認されています。以下に示す通り、現象はSCP-957-JPと被影響者の距離に応じて進行します。 距離 対象に与えられる影響 1,000-500m SCP-957-JPの光量が増大傾向にあるように感じられ始める。 500-250m "鐘のような音"が遠くから聴こえるように感じられ始める。 250-125m "賛美歌のような混声合唱"が聴こえるように感じられ始める。 125-1m "光り輝く多くの人間が光柱に向かって歩んでいる"様が視認される。光量が増大し、鐘の音と賛美歌は音量を増し、全ての被験者が宗教的な充足感を覚える。 0m 消失。 消失した被験者は現在まで回収されていません。 補遺957-JP.1: 聴取記録 SCP-957-JPに対する感覚受容の調査のため、D-24958が意図的にSCP-957-JPに暴露されました。以下に示す内容は、D-24958によるSCP-957-JPに関する述懐記録の抜粋です。 + 初期聴取 - 閉じる 概要: 暴露初期段階(暴露後1日目)の述懐聴取 <録音開始, 2020/10/02> インタビュアー: 今の視界の状況を話してください。 D-24958: 俺の見たところ、見た目に特に変わりはないな。見え方は普通だし、あんたもハッキリ見えてる。ただ…あの光だけは別だ。ありゃいったい何だ? インタビュアー: それがSCP-957-JPと呼ばれる存在です。詳しく話して。 D-24958: ああ…あっちに見えるよ。今もだ。目を瞑っても見える。 [D-24958は視線を反らし、一方向を見つめる。D-24958の視認方向、直線距離で約500km先に、SCP-957-JPが存在する。] D-24958: 常にあそこに白い光が見えるんだ。慣れては来たが、正直ちょっと面食らってるね。 インタビュアー: 光から受ける印象はどうですか? D-24958: 印象、か…。 [D-24958がSCP-957-JPを見つめる。25秒間の沈黙。] D-24958: …うん。まじまじ見ると、なんだか神妙な気持ちになるな。あの光はいつもそこに居て、綺麗にキラキラ光ってやがる。強い光なんだが見ていて不快って訳でもなくて、太陽か何かの光みたいなんだよな。すごく、暖かい。 インタビュアー: なるほど。悪い気はしないと? D-24958: そうだ。俺の目玉で直接見てるやつじゃないからなおさら、脳に直接染み込んでくる感じがする。照らしてくれてる感じがするんだよな…。なぁ、ここじゃ俺らはみじめな雑用係だろ?俺もいくらかしんどい作業をしたが、そんときに光が支えになってくれるんだ。どんなにツラい時にでも、いつも確かにあそこに灯が点いているんだからな。 <録音終了, 2020/10/02> 終了報告書: 対象に視覚機能の減衰はまだ確認されず、SCP-957-JPの視認が可能な状態。SCP-957-JPに好意的印象を抱いており、SCP-957-JPによる心理状態の改善が認められる。 + 中期聴取 - 閉じる 概要: 暴露中期段階(暴露後15日目)の述懐聴取 <録音開始, 2020/10/16> インタビュアー: 今の視界の状況を話してください。 D-24958: あ、ああ…。あれから2週間経って、だんだん目が悪くなってきた。暗い。遠くが良く見えないんだ。最悪だ。 インタビュアー: はい。視界の縮小は報告の通りですね。具体的にはどのように見えなくなっているか、説明してください。 D-24958: 説明ったって…。ああそうだな…暗いとは言ったが普通の暗いとは少し違う。明かりが足りないんじゃなくて、そこにある物が黒ずんでぼけて見えないから暗く見えるんだ。遠くの物のほうがより不鮮明で黒々してる。でも近くでも、見えたり見えなかったりする物がある。あんたはまだ見えてるよ。でも廊下の向こうとか、便器の排水口の向こうがいつも真っ暗で何も見えないんだ。恐ろしいよ。 インタビュアー: 受ける印象はどうでしょうか。視覚機能が減衰して、どのような感覚を抱きましたか? D-24958: 心細いよ。 インタビュアー: 正確に。暗闇の中に居るから心細いのですか? D-24958: ああそうだよ!…なあ先生、ヒトは暗闇の中じゃ生きていけないんだ。必ず電灯があって、火を点けて灯を燈して生きてる。見えることは認知することだからな。そこに論理性と安心があるんだ。けど暗がりにはもう…何もねえよ。うつろだ。不安になって当然だ。それがどんどん広がっている。 インタビュアー: しかし、貴方には光が見えるはずですよ。まだ残っているこの部屋の電灯と…向こうに見えますか?あの光です。 D-24958: ああ、見えるよ…。 [D-24958が向きを変え、SCP-957-JPを見つめる。50秒間の沈黙。] インタビュアー: その光からはどのような印象を受けますか? D-24958: ああ…[短い沈黙]アレはいつも照らしているよ。光が暖かくて清らかだ。暗闇の中で、あんな遠くから俺を見つめて照らしてくれてる。減ってく視野と増える黒色の中で、あの赤みがかった白色だけが俺の救いだ。見ていてホッとするんだよ。こんな状況の俺にも差し込む光があるんだって。いつも俺を照らしてくれてるんだって。この冷め切った財団の中で、これを見るのだけが俺の唯一の楽しみだね。 <録音終了, 2020/10/16> 終了報告書: 対象は視覚機能の減衰が進行しことにより、非異常性の不安症に苛まれている。また変動する自身の視界と不変的なSCP-957-JPの外見を比較し、SCP-957-JPに精神的拠り所を求め始めている様が認められる。 + 後期聴取 - 閉じる 概要: 暴露末期段階(暴露後25日目)の述懐聴取 <録音開始, 2020/10/26> インタビュアー: 今の視界の状況を話してください。 [D-24958がSCP-957-JPを見つめる。5分間の沈黙。] インタビュアー: D-24958、今の視界の状況を話してください。 [D-24958がSCP-957-JPを見つめる。5分間の沈黙。] インタビュアー: …拘束を。 [D-24958が保安職員に取り押さえられ、強制的に身体の向きを変える。D-24958は激しく抵抗する。] D-24958: [絶叫]。暗い暗い暗い!離せ!照らされていたいんだ! インタビュアー: 今の視界の状況を話してください。 D-24958: 最悪だよ!…先生!どこだ先生、何処に居るんだ…返事してくれよ…頼む…[啜り泣く、徐々に引きつった笑いに変わっていく。] インタビュアー: …最後ですよD-24958。今の視界の状況を話してください。 D-24958: ああ、先生!俺はもう何も見えないんだ。凄まじく暗い。虚ろだ。何も無い、何も居ない。俺以外何も居ないんだ、解るかこの孤独が?人の温もりが、暖かな光が恋しくてたまらないんだよ! [D-24958が椅子から転倒する。視線はSCP-957-JPを捉えており、保安職員により強制的に向きを変更される。] D-24958: 先生、俺はもう治らないのか?もう2度と光に帰れないのか?こっちの暗闇の中で生きるしか無いのか?寂しい、寂しいよ俺は。先生、先生…[嗚咽]。 [D-24958に鎮静剤が投与される。D-24958が椅子の上に引き戻される。] D-24958: 先生、あの光だけは俺を照らしてくれる。白と赤の混じった光が俺に暖かく染み込んでくれるんだ…。なあ、光を、光を見せてくれ。頼む。心細いんだ。ここには秩序が無い。全部流されてしまった。流れ込んでくるのはあの光だけなんだよ。頼むよ…。 [D-24958はうずくまり反応を示さない。協議の末、D-24958にSCP-957-JPの視認許可が宣告される。D-24958がSCP-957-JPの方向に向けられる。] D-24958: ああ…あれこそ、ほんとうの神さまだ…。 <録音終了, 2020/10/26> 終了報告書: D-24958は完全失明状態にあると判断された。現在のD-24958の認識と判断力は破綻しており、既にSCP-957-JPが唯一の心理的構成要素となっている。SCP-957-JPへの重度の依存が認められ、通常の生活を送ることは不可能な状態に変化したことが伺える。 2020/10/30、D-24958自身の嘆願と研究上の要請より、D-24958によるSCP-957-JP接近実験が実施されました。以下に示す記録は、SCP-957-JPから1,200mの距離から取得開始されたD-24958の音声記録の書き起こしです。 + 接近試行957.1 - 閉じる ミッション内容: SCP-957-JPへの接近実験 担当職員: D-24958(SCP-957-JP暴露後末期段階) <ログ開始, 2020/10/30> 司令部: D-24958、前進してください。状況は逐次報告してください。 D-24958: あ、ああ分かった…。ああ、ようやく、ようやくだ。ようやく光の御元に辿り着くんだ…。 [D-24958は徒歩で前進を開始する。視線はSCP-957-JPを捉えており片時も離れない。残り約1,000m地点まで変化は見られない。] D-24958: ひ、光が、だんだん強くなってきた。…明るい。ここは明るく光り輝いている。眩しくて、目が吸い寄せられて、離れない。 司令部: 詳細に説明をお願いします。光量が増大しているのですか?どのように見えますか? D-24958: 今は白色と赤色だ。清廉で秩序のある白と、これは…俺の血だ。血と同じ赤が混じり合っているのが見えるよ…。ああ…なんて神々しいんだ…。[D-24958が落涙する。] [D-24958が歩みを進める。残り約500m。] D-24958: 遠くから…音が聴こえる。 司令部: 音ですね。どのような音ですか?方向は? D-24958: 澄んだ…響く音だ。空から聴こえる。金属質な、打ち鳴らすような音…。鐘だ。鐘の音だ。鐘の音がキラキラと空の上から聴こえてくる。全宇宙が俺を抱擁してくれるみたいだ。この先に進んでも良いんだよ、って。…早く、進ませてほしい。 司令部: ええ、許可します。 [D-24958が歩みを進める。残り約250m。] D-24958: [顔をほころばせる。]ああ、聴こえるよ。 司令部: D-24958?先ほどとは別の音ですか? D-24958: ああ…歌声だ。美しいハーモニーだ。宇宙から、たくさんの歌声が聴こえるよ。俺を歓迎して…いや違う。歌い続けている、ずっと昔からあすこで歌い聴かせてくれていたんだ。 司令部: どのような歌ですか? D-24958: ああ、ああ。高い男女の声、低い男の声、これは…中間の女の声。それと、違う声。綺麗な包み込むような歌声だ。高くも低くもない。同時に響きが重なっている。 [D-24958が2音を口ずさみ和音を再現する。根音は440HzのA(ラ)の音階、上の音は約580HzのE(ミ)の音階と推測される。] D-24958: 賛美歌だ。これは宇宙の輝き1つ1つを讃えた賛美歌だと思う。上に昇った人間の魂が歌い続けているんだ。こんなに嬉しいことはないよ。[旋律を口ずさむ。] [該当の混声合唱曲の推定が完了する。曲は「交響曲第9番ホ短調作品95(俗に"新世界交響楽")」と推測される。] D-24958: ああ…ああ!そうだったんだ! [D-24958が走り始める。残り約120m地点を通過する。] D-24958: 皆ここまで来ていたんだ!この無明の何もかも失った世界から、これだけの人間が光に導かれて歩んでいたんだ!光は暴力的な秩序だ、なんて心地良いことか!ハレルヤ、ハレルヤ! 司令部: D-24958?D-24958、返事をしてください。何が見えるのですか。 D-24958: 光が見える!それは生きた光だ。生の瑞々しい光が感覚を伴って差し込んでくる。それは暖かくて圧倒的な、粘性を帯びた濁流だ。その生きた光が、歌と鐘の音に呼応して光り輝いているのが見える!皆そうだ、これを目指して歩いて来たんだ! 司令部: 皆?皆とは? D-24958: 全ての人間だよ!見えないのかい?彼らの魂は光り輝いている。数え切れない、何十億もの輝かしい人間が光に照らされて歩いて居るんだ!人々の輝きがこの柱を明るく燃え上がらせていたんだ! [D-24958は制止を無視して走り続ける。残り約50m地点を通過。] D-24958: 先生!俺の、俺の身体も光を帯びている!これが見えないのか?宇宙森羅万象の認知は星々のように強く光り輝いている!その光は何よりも集約されてあの十字架を輝かせているんだ!もっと、あの光に照らされていたい! 司令部: D-24958!D-24958止まりなさい!それ以上は危険です! D-24958: ああ…見てくれ。神だ。ほんとうの神さまが見える。白い着物の手が光の中から迎えに来てくれた。見ろ。手だ。広げた5本の指の1つ1つが清めてくれている。美しい。他に何も要らない。ただ眩く世界を照らしていてくれ! [D-24958がSCP-957-JPに到達する。] D-24958: ああ…上はこんなにも明るいんだ。 [通信途絶] <ログ終了, 2020/10/30> 終了報告書: D-24958はSCP-957-JP到達と同時に消失。GPS信号および通信電波は共に途絶した。 D-24958の捜索は成功しませんでした。 補遺957-JP.2: 関連文書 2020/11/01、PoI-1933("宮沢賢治")2の研究チームは未発表/検閲済みの手記の中から、SCP-957-JPに関連が疑われる記述を発見しました。手記は1923年頃に執筆されたと推測されており、内容として後の著作『銀河鉄道の夜』の執筆に影響を与えたと考えられる経験が記述されていました。 以下に示す内容は、同手記内の該当の言及部分の抜粋です。 + 発見された文書 - 閉じる 私は白雲母3のように曇った硝子を隔ててそれを見ていました。それには光がある。熱がある。銀河のことわりを抱いた、一柱の天気輪4の柱が聳えている。それは一見、ほんとうのかみさまの輝きに見えました。 私の意識が寝台から銀河ステーションを通りその地に至るまで5、私は様々な人を見ました。大洋で蒸気船に乗つた女の子たちが居た。彼らは黒曜石のような物でできた切符を携えて、十字の光をたたえた柱の1つに列を成して歩いていくのでした。 私自身は汽車に揺られて幻想野を唯行くばかりでしたから、ここで途中下車する気にはなれません。そこへ車掌の声が聞こえてきました。 「完全な幻想第四次の銀河鉄道6は、あすこで終いです」 確かにあそこは天上です。1つ位の高いバラ石英7色の場所に、たくさんの人々が登っていきます。私の来た第三次の空間から四次の汽車を通って、あそこの五次に皆向かうのです。 しかし私の銀河鉄道は不完全です。私はそのサウザンクロス8の光明のごとき駅では降りず、そのまま降下して戻って来ました。確かに、そこにはほんとうのかみさまが居て、ひとりの神々しい白いきものの人が手を伸ばしてこっちに来るのが見えました。あすこには、ほんとうのさいわいがあったのかもしれない。 けれども私には、どほんと空いたそらの孔9が見えたのです。 本文書の発見後に行われた同時代以前の歴史的資料の調査の結果、SCP-957-JPは過去複数の小規模超常コミュニティから信仰対象として扱われていたことが判明しました。 SCP-957-JPに関係した超常コミュニティのうち特筆すべき組織は、GoI-005("第五教会")の関連組織と考えられている"大伍仏教会10"です。大伍仏教会はSCP-957-JPを"解脱光明柱"と呼称される一種の聖地として崇めており、宗教的な儀式の場として利用されていました。同団体は1905年までの不明な時期に当時の構成員の過半数を失っており11、当時の状況の詳細は不明です。 補遺957-JP.3: 新規観測技術による追加情報 超常科学を用いた観測技術の向上により、目視以外でSCP-957-JPを観測可能な手段が発見されました。この観測法は、霊素生命体を検出可能なハルトマン霊体撮影機を観測に用いる手法です。現在、同手法のSCP-957-JP研究への適用が審議されています。 + Fetch Captured-Test-Data - close 画像は、当該手法で取得されたSCP-957-JPの霊視画像です。 脚注 1. 建物、地平線、自身のまぶたなど 2. PoI-1933は不明な手段により様々な異常存在/他次元内現象を観測および干渉していたことが判明しています。PoI-1933のこれらの経験の多くは同氏の手記および創作物に反映されており、現在も未発見の超常への影響が疑われているため、没後に関わらずPoI指定がなされています。 3. 白雲母は白色または透明を呈するケイ酸塩鉱物の一種。薄層片は濁ったガラスに似る。 4. PoI-1933("宮沢賢治")の造語と思われる。具体的な対象は不明。何らかの異常存在、天文現象、宗教的概念を指す説が提唱されている。 5. PoI-1933("宮沢賢治")は夢界または規模不明の時空間異常を通じて他次元内現象を観測していたと推測されている。 6. PoI-1933("宮沢賢治")の著作『銀河鉄道の夜』には、「こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道」という言及が含まれている。直接関連があるかは不明。 7. 水晶の一種。ピンク - 薄紅色を呈する。 8. 南十字星のこと。惑星上の位置関係により、日本においては通常見ることができない。 9. 『銀河鉄道の夜』にも、同名の存在が描写されています。 「天の川の一とこに大きなまっくらな孔がどほんとあいているのです。その底がどれほど深いかその奥に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。」 PoI-1933("宮沢賢治")は該当存在を観測していたと推測されていますが、その詳細は不明です。 10. 不明な時期から現在まで存在する、日本国を中心に活動する宗教団体です。規模・構成員共に流動的で組織的結束は薄いと見なされています。第五主義と仏教の混交した独特な信仰を持つことが特徴です。 11. SCP-957-JPによる大量消失が発生したと考えられています。
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評価: +47+–x 稼働実験中のSCP-958-JP アイテム番号: SCP-958-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-958-JPはサイト-81██の大型オブジェクト収容倉庫に収容されています。SCP-958-JPに対する実験の際、「表明者」はDクラス職員のみで担当させてください。また実験終了時には、SCP-958-JPを目視した職員全員に直ちにAクラス記憶処理を施すことが義務づけられています。SCP-958-JPに対する実験を行う場合には、担当研究員である███博士の許可が必要です。 説明: SCP-958-JPは全長210m・推定重量12000tで、█████社の物と同系統と見られる不明な型のバケットホイールエクスカベーター、掘削機です。SCP-958-JPに使用の形跡は殆ど見られませんが、全体として老朽化の傾向が見て取れます。また、動力を供給した場合には問題なくその機能を果たすことが確認されています。 SCP-958-JPの異常性は人間がSCP-958-JPを直接視認した場合に発揮されます。SCP-958-JPを直接見た人間(SCP-958-JP-1と指定)は、自分がやってみたいと思ったことを表明したいという軽度の欲求に駆られます。この欲求はそれを表明する機会がなければ無視できる、また別のことに意識が行っていれば気が付かないほどに軽微な物であり、SCP-958-JPから視界から外した場合すぐにその効力を失います。SCP-958-JP-1が複数人の前で自分の「やってみたいこと」を表明し、それを聴いた人間のうち、過半数がそれを「ふさわしい」と思った場合にSCP-958-JPは活性化イベントに入ります。 活性化状態に入ったSCP-958-JPは、動力の有無に関わらず瞬時にホイールをSCP-958-JP-1に向け接近し、その回転によって頭部のみを千切り取ります。SCP-958-JP-1の頭部を奪い取ったSCP-958-JPはホイールの回転をゆるやかに止め、再び不活性状態に戻ります。この時の移動及び本体の回転は瞬間的に行われますが、予想される衝撃や駆動音は発生せず、SCP-958-JP-1までの障害物の破壊も極最小限にしか発生しません。SCP-958-JP-1がSCP-958-JPを距離的に目視不可能な地点に居る場合、SCP-958-JPは即座にSCP-958-JP-1の付近に出現し、結果として出現地点及びSCP-958-JP-1のみの破壊という結果をもたらします。1 活性化イベントを引き起こすのは発声という形式の表明に限られます。また、この異常性はSCP-958-JP-1がSCP-958-JPを直接目視した場合にのみ発揮され、写真や映像などでは活性化を引き起こしません。 SCP-958-JP-1はクラスA記憶処理により影響を取り除くことが可能です。また、記憶処理を行わなくとも1時間程度でSCP-958-JPの影響は無効化されることが判明しています。実験により影響時間の延長を確認。現在の影響時間はおよそ1時間20分程度です。SCP-958-JPは活性化時、見たところ通常通りにホイール及びベルトを稼働させています。しかし、その結果ベルト上に残ると推定されるSCP-958-JP-1の頭部、及び血液の痕跡などを発見することはできませんでした。 + 実験記録 - 記録を閉じる 実験記録A 表明者: D-958-1 他の人員: Dクラス3名。SCP-958-JPを目視させない。 実施方法: SCP-958-JPを目視後、2km離れたSCP-958-JPを目視できない小屋に移動。SCP-958-JPの活性化が起こらないと判断できるまで十分に"表明"をさせ続けた。 結果: 「脱走すること」に続いて「脱走をしないこと」を表明した時点でSCP-958-JPが小屋の付近に出現。小屋の壁及びD-958-1の頭部を瞬時に削ぎ取った。他のDクラス職員に被害はなかった。 分析: SCP-958-JPを目視できない状態でもSCP-958-JPが活性化することを確認。活性化イベントを引き起こさない表明もあったことから、表明の内容にも条件があることが推測される。 どうやら"耳"はいいようだ。「可能そうな表明」の方が活性化の引き金になるのかも知れない。 -███博士 実験記録B 表明者: D-958-2 他の人員: Dクラス3名。SCP-958-JPを目視させない。 実施方法: SCP-958-JPを目視後、直ちに20km離れた財団管理地に移送。SCP-958-JPの活性化が起こらないと判断できるまで十分に"表明"をさせ続けた。 結果: 用意されていた200通りの表明を完遂させたが、SCP-958-JPの活性化は起こらなかった。また、同様の時間を掛けて実験Aを行った結果、SCP-958-JPの活性化イベントが確認された。 補遺: ほぼ同様の手順で数回の実験を行い、活性化イベントの条件を推定。ある程度の移動距離・活性期間の限界などを測定した。 発見記録: SCP-958-JPは19██/██/██に熊本県██山の火口付近で不活性な状態で発見されました。発見報告を受け、財団エージェントがオブジェクトの調査に訪れた際、SCP-958-JPが活性化状態に入ったことで正式にSCP-958-JPとして登録されました。2当初SCP-958-JPは自身を調査しようとする物を攻撃するオブジェクトとして、その詳しい条件を調査することを提言されていましたが、エージェントの調査中に再度SCP-958-JPが活性化状態に入ったため、その異常性が判明することになりました。3幸いにも、オブジェクトの早期発見・収容を達成できたため、SCP-958-JPを目撃した人物は全員特定され、記憶処理の後に解放済みです。 + 収容違反事案記録 - 記録を閉じる 収容違反事案A 表明者: 一般人1名 他の人員: 一般人2名 状況: SCP-958-JPを「調べること」を表明した。 結果: SCP-958-JPは即座に50m程度移動し、表明者の頭部を奪い取った。一瞬の移動に伴う想定される破壊は発生せず、キャタピラの移動痕が残るだけであった。他の一般人に被害はなかった。 収容違反事案B 表明者: エージェント███ 他の人員: 財団エージェント3名 状況: インタビュー記録を参照 結果: SCP-958-JPは即座に400m程度移動し、財団輸送機の一部ごとエージェント███の頭部を奪い取った。輸送機に大きな損傷があったにも関わらず破壊に伴う破片の飛散などは発生せず、他のエージェントに被害はなかった。 分析: 財団輸送機内のエージェント███はSCP-958-JPを目視できない状態だったにも関わらずオブジェクトの活性化という結果を招いた。活性化イベントの条件はSCP-958-JPを目視した人間が何かを他人に"表明"することであると推測された。 不幸な事故を繰り返さないにも、調査中の発声には細心の注意を払うこと。 -███博士 + インタビュー記録-事案B - インタビュー記録を閉じる インタビュー対象: エージェント██ インタビュアー: ███博士 収容違反事案Bの直後のインタビュー記録です。エージェント██は軽度のヒステリー状態にありました。 <インタビュー開始, 19██/██/██> ███博士: では、事件のことを話してもらえますか? エージェント██: ああ……俺たちはあの、抱えて持って帰る訳にもいかないサイズのオブジェクトをどうにかする為に、目撃者を一時収容し、山を封鎖し、そんで情報を統制して…… 奔走していたんだ。 ███博士: 続けてください。 エージェント██: それがやっとこさ終わって、次はオブジェクトを何とかして調査しなきゃならないってことで、方針を立てようとしてたんだよ。 なんせ…… あれは単純に自身を調べられるのを嫌がるデカブツだって、そう考えてるやつが多かったんだからな、あれについて言及することすらできねぇ。俺たちは困り果ててたよ。 ███博士: それではどうして収容違反が発生したのですか? エージェント██: ああ、それで俺たちはひと休憩することにしたんだよ。そろそろ昼食にでもしないか?って言われてな。 勿論俺は食事なんてする気になれなかったよ、いつあれが襲ってくるとも分からねぇ、生きた心地がしなかったからな。 エージェント██: (ゆっくりと息を吸う) んで…… 正に食事を始めようって時だったな、あれが……あっという間もなく、輸送機の壁をぶち破って…… エージェント███の頭を、持っていっちまったんだよ。 ███博士: ええ…… 不幸な事故だったと聴いています…… 彼のためにも、その時のエージェント███の様子をお願いできますでしょうか? エージェント██: ああ…そうだな…… 気の毒でしんどそうだったあいつはたしか…… 最後にこう言ったんだよ。「早く帰って温かいカレーでも食べたいなぁ」って。 <インタビュー終了> 補遺958-JP: 以下の文書は19██/██/██の内部調査でSCP-958-JPから発見された物です。 + 文書SCP-958-JP - 文書を閉じる お客様は非常に賢いお買い物をなさいました!    █████の最新マシーン!4   当社の製品で最大級スケール!   ホヰール掘削機 █████255!   人材を!        発掘する!              パワフルに動く!  シリーズ全てに音声認識システムを搭載!新世代の掘削機!   日本語以外の言語には対応しておりません。欧米語が流暢な人材!求む! 人間の頭部が「人材」になるのかは定かではないが、実験は一時、あるいは永久に停止されるべきであろう。 -███博士 Footnotes 1. 実験により10kmまでの距離の瞬間的な移動を確認。 2. 収容違反事案Aを参照してください。 3. 収容違反事案Bを参照してください。 4. 財団の調査では該当する企業は発見されていません。
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評価: +66+–x 評価: +66+–x クレジット タイトル: SCP-959-JP - 今、劇的に夜を明かす 著者: ©︎stengan774 作成年: 2021 この著者の他の作品 評価: +66+–x 評価: +66+–x 収容当初のSCP-959-JP-A内。 アイテム番号: SCP-959-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-959-JP-A内に設立された特殊設備は、SCP-959-JPを通して物資・人員の搬入を行うことで標準の財団施設維持プロトコルに従いその機能を維持されます。地点959-JPには2名以上の財団職員が待機し、SCP-959-JPにより人間が出現した場合、必要に応じて記憶処理と代替記憶テンプレートの埋め込みを行って下さい。 説明: SCP-959-JPは日本国埼玉県入間市の周辺地域において、夜間にのみ断続的に発生している異常現象です。当該地域における一定以下の光量値を示す路上では不定期に、標準的なヒト1名が進入可能なサイズのD-UMUPaS11型ポータルが生成されます。このポータルは実体的特徴を持たず外見上では不可視であるため、路上の歩行者は多くの場合意図せずにSCP-959-JPから特定の異常空間(SCP-959-JP-A)内へと進入します。 SCP-959-JP-Aは面積不定の空間です。SCP-959-JP-A内は一切の光源が存在しないため、偶発的な進入者はしばしば唐突に周囲から明かりが消えたと錯覚します。その後、進入者は以下のような異常現象を体験します。 自分の四肢に何か生物が"齧り付いた"ような感覚 体表の微弱なかゆみ・ひりつき・痛み "カリカリ"・"カサカサ"といった擬音で表される幻聴 主に下半身に強く感じる蟻走感 背後から感じる湿り気を含んだ熱気 この現象は懐中電灯やスマートフォンのライトなど、進入者の周囲に光源を配置することで進行を遅延・停止させることが可能です。しかしSCP-959-JPによって生成されるポータルが一方通行であることから、予め備えを行っていない進入者にはバッテリー消費などの問題で長期的に光源を維持することは困難です。 上記を含む何らかの理由によって進入者周囲の光源が完全に喪失した場合、進入者は不明な要因によって消失し、死亡した状態でSCP-959-JP-A外部へと再出現します。後に回収された進入者の遺体からは大小の噛み跡・化学的溶解・内臓の撒散などの外傷が確認出来るものの、直接的な死因は急性の心臓麻痺であることが判明しており、消失の瞬間を記録した音声録音などでは進入者の悲鳴、叫び声、すすり泣きのみが記録されていました。 SCP-959-JP-Aから外部へ脱出する唯一の方法は、進入地点から30m付近に存在する別種のポータルのみであり、これを通過することで進入者は入間市の特定地点(地点959-JP)へと帰還します。しかしながら、前述の異常現象と内部の暗さ、そして地面に多くの凹凸が存在することから、進入者が独力でポータルを発見し基底次元へと帰還することは極めて困難かつ希であると考えられています。 起源/発見: SCP-959-JPの発生地域である埼玉県入間市は、古くからGoI-101("エルマ外教")の派生組織が仏教などと混淆された土着の宗教として根付いていることが知られていました。GoI-101団体はSCP-959-JPの存在と-A空間にて発生する現象を宗教的"試練"として認識しており、修行の一環として意図的にSCP-959-JPを通じSCP-959-JP-A空間へと突入する儀礼が少数ながら継続的に実行されていたとの記録が回収されています。 直接的な関連性は不明ながら、財団未詳資料/目録編纂室による統計は、近年のサブカルチャーを通したGoI-101関連組織の信者数拡大に伴い年々増加しつつあったこの儀礼の関連死者数が、財団の注意を引くに至ったSCP-959-JP現象の通年発生件数の異常な増加と正の相関関係にあったことを指摘しています。両者の関連性を調査中です。 補遺 - 収容プロトコル改訂 20██/██/██。SCP-959-JPによる一般社会への影響を軽減するため財団工学技術事業部門は、SCP-959-JP-A内に持続的な光源を設置し、路面を整備するなどといった内部からの脱出をより容易にすることを主軸に据えた収容プロトコル改訂案を収容委員会へと提出しました。 この改訂案はポータルの非静止性から一般人のSCP-959-JPへの進入自体を制限することが難しいこと、SCP-959-JP被害者の隠蔽に必要な収容コストなどの要因を解決するものとして承認され、提出から2週間後には同部門によるSCP-959-JP-A内の開発工事が開始されています。 その結果、現在のSCP-959-JP-A内は以下のように整備されました。 自家発電機により継続的電源が確保された100以上の照明の設置。 アスファルト/コンクリート等による地面の舗装。 脱出用ポータルまでの順路を示す立て看板の設置。 脱出までの誘導を補助する財団職員のための待機休憩所。 現在のSCP-959-JP-A内。 開発工事が完了して以降、現在に至るまでSCP-959-JP-Aによると思われる死者・失踪者は確認されていません。現状の収容体制は継続中です。 脚注 1. D-UMUPaS1: Dimensional(次元性) - Unstable(不安定)/Mobile(移動)/Unaided(独立)/Personal Area(小規模)/Safe(安全)/One Way(一方通行)
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評価: +55+–x 5秒周期のSCP-960-JP アイテム番号: SCP-960-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-960-JPはサイト-81██の特別収容ロッカーに上部を固定された状態で保管され、真下に設置された貯水バケツは水位が一定まで上昇すると自動的に交換されます。実験以外でSCP-960-JPから排出される水を直接飲まないように、十分に注意してください。また常に設置された時計を確認し、SCP-960-JPとの15分以上の接触は避けてください。 説明: SCP-960-JPは長さ1.2mの鉄パイプです。周囲に水が存在しないにもかかわらず、その下部からは常に一定の質量の滴が発生しており、変則的な周期で落下しています。落下周期は一時間ほどで変動し、現在0.01~10秒が確認されています1。発生した水に異常性はありません。 滴の落下を何らかの形で20分以上認識した場合、認識した生物は時間感覚が変化し、その時の落下周期が1秒であるように誤認するようになります。この影響は軽度のもので、正確な時間を認識することによって容易に抑えることが可能です。またAクラス記憶処理によって認識による影響は消失し、通常の時間感覚を取り戻すことができます。20分以下の接触の場合、滴の落下を認識している間のみこの影響が発生します。SCP-960-JPから発生した滴を直接飲んだ生物はSCP-960-JP-1と指定されます。 SCP-960-JP-1はSCP-960-JPの落下周期を1秒として行動する生物です。身体能力、知能などは以前と同様ですが、動作は物理法則に反した速度で行われます。例えば落下周期が1秒よりも長い時間であった場合、SCP-960-JP-1の行動は常にスローモーションのように見えます。また肉体もこの影響を受けるため、SCP-960-JP-1は通常とは異なった速度で成長します。このような状態にもかかわらず、SCP-960-JP-1は通常通りに生活することができます。詳しくは実験記録を参照してください。 SCP-960-JPの下部を地面、壁などに接着させると、大量の水が発生することが分かっています。この時発生した水を認識した生物は同様の影響を受け、多くの場合は体感時間と現実時間の大幅な差異ために錯乱状態に陥ります。 + 実験記録:目視実験 - 実験記録を隠す 目視実験記録1 - 日付████/██/██ 対象: D-8891 実施方法: 長距離走を数回行ったD-8891にSCP-960-JPによる滴の落下を20分間目視させる。 周期: 1.2秒 結果: 行動に変化なし。長距離走を行ったところ、「いつもより早く走れた」と発言2。 分析: 体感時間は個人の主観的な部分が大きく、正確な計測は難しいかもしれません。 目視実験記録2 - 日付████/██/██ 対象: D-8891 実施方法: D-8891にSCP-960-JPによる滴の落下を20分間目視させる 周期: 0.8秒 結果: 目視実験1と同様の手順を行うと、「遅くなった。」と発言。 分析: 違う周期の落下を認識すると、認識が上乗せされるようです。 目視実験記録3 - 日付████/██/██ 対象: D-8892 実施方法: D-8892にSCP-960-JPによる滴の落下を20分間目視させる 周期: 0.1秒 結果: 初めは混乱していたが、担当職員が腕時計を見せている間は通常通りの時間感覚を取り戻した。Aクラス記憶処理によって、SCP-960-JPの影響はなくなった。 分析: 実際の時間を認識させることによって、影響を抑えることができそうです。 + 実験記録:飲水実験 - 実験記録を隠す 飲水実験記録1 - 日付████/██/██ 対象: D-8894 実施方法: D-8894にSCP-960-JPから発生した水滴を飲ませる。 周期: 1.5秒 結果: D-8894の全ての行動は実験以前の1.5倍の時間を要するようになった。また、時計を取り外した人型収容施設にて生活させたところ、36時間周期で食事、睡眠を行った。その後再び飲水実験を行ったが、変化は見られなかった。 分析: 飲水によるSCP-960-JPの影響は不可逆的なものであると予想されます。D-8894が正確な時間を認識していないにもかかわらず、このような行動をとることができる理由は分かっていません。また、相対的な光速、音速などの変化による影響は現在確認されていません。 19██年から██県██村において、動物がおかしな動きをする、突然動かなくなるなどの現象が多数報告されました。調査の結果、一軒の廃屋の天井に固定されたSCP-960-JPが発見されました3。また、SCP-960-JP-1-aとなった人物が発見されました。以下はSCP-JP-1-aへのインタビュー記録です。 + インタビュー記録 - インタビュー記録を隠す 対象: SCP-960-JP-1(本名████) インタビュアー: エージェント・███ 付記: インタビューを円滑に行うために、エージェント・███はSCP-960-JP-1の発言速度に合わせて話しています。 <録音開始> エージェント・███: まず、お名前を教えてください。 SCP-960-JP-1-a: ████と申します。 エージェント・███: あなたがそのような状態になった経緯を教えていただけますか? SCP-960-JP-1-a: はい、もう何年も前のことですが、その頃私は役場で働いていて、結婚したばかりでした。妻は犬が好きで実家から連れてきて……太郎と言うんですが、そいつの散歩が私の日課でした。ある日いつものように散歩に出かけて、ほんの気まぐれにあの道を通ったんです。 エージェント・███: あの道というのは、廃屋のある通りのことですか? SCP-960-JP-1-a: そうです。あの道沿いに廃屋があることは知っていましたが、特に気にしていませんでした。 エージェント・███: 続けてください。 SCP-960-JP-1-a: はい、それで、あの廃屋の近くまで来た時音が聞こえました。水道の水の音のようで……太郎が音につられて、中に入ってしまったんです。私も急いで追いかけました。 エージェント・███: 中はどのようになっていましたか? SCP-960-JP-1-a: 暗くて、ほとんど何も見えませんでした。途中まで太郎の鳴き声が聞こえてたんですが、しばらくして途絶えてしまって…当てずっぽうで奥の部屋に入りました。手探りで太郎を探そうとしたんですが、部屋の入り口あたりで何かにつまづいて……転んで足を捻った上に、起き上がった時水のようなものが顔に降ってきたんです。散々でした。太郎も見つからないしひとりで出ていったんだろうと思って、少し休憩した後その廃屋から出たんです。それで、それで…… エージェント・███: 大丈夫ですか? SCP-960-JP-1-a: ……大丈夫です。それで、外に出ておかしなことに気がつきました。さっきまで明るかったのに、あたりはもう真っ暗で…急いで家に帰りました。家にはいつもみたいに妻がいて、でもおかしくて…まるでビデオの倍速みたいに、動くんです。話していることもよく分からないし、怖くて、私は自室にこもって、カーテンを閉めて毛布にくるまっていました。それで何時間かたって…気がつくとドアの隙間に紙が挟まっていました。 エージェント・███: 紙? SCP-960-JP-1-a: ええ、妻の字で、私のことを心配している、何があったのか話して欲しい、という内容の手紙でした。私は言葉が通じることに安心して、すぐに紙に今日起こったことを書きつけて渡しました。妻は私のことを理解してくれて、それから私に合わせて生活してくれました。 エージェント・███: どのような生活を? SCP-960-JP-1-a: 生活自体はそれほど変わりませんでいた。カーテンを閉め切って、外の景色を一切見ないようにしていました。最初は通じなかった言葉もだんだん通じるようになってきて…妻と一緒にご飯を食べて、今日あったことを話して、以前と同じように寝ました。なかなか楽しかった。仕事にかかりきりだったものですから、あんなに妻と長い時間を過ごすのは初めてでした。あの時のことが夢だったんじゃないかって、時々思って…でも外に出ようとすると、いつも妻に止められました。 エージェント・███: 失礼ですが、奥さんは… SCP-960-JP-1-a: 妻は…妻は█年前に死にました。私は妻と同い年だったんです。でも、彼女だけどんどん年老いていきました。私は取り残されていくようで…見ているのがつらくて、最後の方はほとんど話すことはありませんでした。一人になって、自宅はまるで時が止まったように静かでした。保存食品を食べて、寝るだけの生活でした。しばらくはもったんですが、ある日ついに食べ物が底をついたので、私は久しぶりに外に出ました。外に出て、それで…その時気が付いたんです。顔なじみだった煙草屋の█████さんも、同僚の████も、親友だった███も…それだけじゃない、この村に知り合いは誰もいませんでした。みんなみんな知らない顔でした。知らない公園で、知らない家族が笑っていました。…やっと分かったんです。妻が私にしてくれたことを。妻がどれだけ大きな存在だったかを。伝えたかった。でももう遅かった。もう二度と、妻と同じ時間を過ごせない。あの時初めて、私は一人になったんです。 <録音終了> 終了報告書: SCP-960-JP-1-aの妻である████氏は██年前に亡くなっています。またSCP-960-JP-1-aの自宅からは、時計が一切発見されませんでした。現在SCP-960-JP-1-aはサイト-81██の人型収容施設に収容されています。 補遺1: SCP-960-JPが発見された廃屋の部屋からは、鳥や猫、犬などの白骨化死体が複数発見されました。これはSCP-960-JPの水滴落下周期が極端に短い時に、水滴を認識したためだと考えられます。 補遺2: SCP-960-JP-1となったDクラス職員の他実験への参加は現在検討中です。 Footnotes 1. 目視では水滴の落下間隔を記録することはできません。この数値は単位時間当たりの水量から計算されています。 2. 測定値の大幅な変化はありませんでした。 3. 一般的な家屋としては不自然な配置でした。
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評価: +31+–x   SCP-961-JP アイテム番号: SCP-961-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-961-JPが生存している場合は、サイト-81██の生物収容室の2重に作られたプラスチック製の専用ケージに収容されます。SCP-961-JPの成長に合わせ、適切なサイズのケージを使用して下さい。ケージのサイズを変更する場合、サイト-81██に常駐している監督官に承認を貰って下さい。担当職員は毎日の水換えと掃除を行い、照明・水中ヒーターとケージの点検を行って下さい。設備が捕食された場合、監督官に確認し交換を行って下さい。水温と気温は1日に2度確認し、監督官に提出して下さい。SCP-961-JPの飼料は、金属で出来た人工飼料を与えて下さい。5日に一度、感染症に感染していないか、獣医師免許を持つ監督官により診断して下さい。 SCP-961-JPが死亡している場合、同施設の不透明な布で表面を覆った上で低脅威度物品保管ロッカーに収容してください。実験などによるSCP-961-JPの持ち出しには、少なくともレベル4以上のセキュリティクリアランスを保持する職員1名以上の許可が必要です。 説明: SCP-961-JPはヨーロッパヌマガメ(Emys orbicularis)のように見える、生物的実体です。手足や顔・尾に見える部分は円筒形の捕食器官であり、根元付近に消化器官が存在します。SCP-961-JPは異常な咬合力と消化能力により、無機物のみを選んで摂食する事が可能です。1摂食された物質は未知の手段で吸収され、常に液体の状態を保つ鉄とニッケル・固体のかんらん岩に変換された状態で甲羅内部に蓄えられます。 SCP-961-JPは死亡すると、背甲が身体を包み込むように球状に変化し、凹凸が無くなります。SCP-961-JPが何らかの要因で分離している場合、内部の鉄とニッケルを中心に、未知の手段で他の部位が移動して集合します。球状に近付くと同時に背甲の表面が世界地図のように徐々に変化し、最終的に正確な地球儀のような形態を取ります。2形態変化が完了すると、物理的な干渉を受け付けず破壊不能になります。   形態を変化させているSCP-961-JP   変化した模様の内容は、現在の正確に測定された世界地図に酷似しています。内容には未知のものを含む様々な言語を用いて、地名やメッセージなどが含まれている事があり、SCP-961-JPが知性を持つ可能性が考えられます。また、どのような場合においても、模様の地図上に小さな丸印で示された地点が1つ存在します。   SCP-961-JPの形態変化が完了した標本を直接視認、もしくは接触した生物はSCP-961-JPを丸印で示された地点付近に運びたくなる精神影響を受けます。SCP-961-JPから距離を置いても影響は持続しますが、接触から24時間以内であれば記憶処理を施す事で除去する事が可能です。SCP-961-JPが示された地点に到達すると、SCP-961-JPが内部から割られ、内部から幼体のSCP-961-JPが発生します。3 収容経緯: SCP-961-JPは約60年間、世界的冒険家として知られる███氏によって飼育されていました。雑誌のインタビューにて「地球儀になる亀」という発言が財団の注意を引きました。SCP-961-JPは、███氏へのインタビュー後に収容されました。 ▶インタビュー記録を閲覧 ▼閲覧を終了する   対象: ███氏 インタビュアー: エージェント███     <20██/██/██記録開始>    エージェント███: すいません。お忙しい所、お時間頂きありがとうございます。    ███氏: いえいえ…。それで、聞きたい事というのは…?    エージェント███: 先日のインタビューで仰っていた「地球儀になる亀」の事です。それはどんなものなのでしょうか?    ███氏: あれは…僕が冒険家になった理由です。少し、長くなりますが良いですか? エージェント███: はい、大丈夫です。 ███氏: 昔、海で流れ着いた瓶を拾ったんです。中に、手のひらサイズの地球儀があったんです。それを見た瞬間…何と言いますか。今で言う、ロマンを感じたんです。地球は何て広いのかと感じました。急に、この地球儀を使って遠いどこかに行きたくなりました。4でも、まだ高校生だったしすぐには無理でした。でも、その情熱はずっと持っていました。大学では山岳部に入って体力をつけたし、周りが就活をする中、僕は山に行く資金集めをするため鳶職のバイトなんかしたりしてました。そして、24になった頃、その時ずっと行きたかったヨーロッパアルプスの山々に向かいました。その時です。地球儀が壊れて、中から小さい亀が出てきたんです。 エージェント███: それは…おかしいとは思わなかったんですか?地球儀から亀が出てくるなんて。 ███氏: 勿論、思いましたよ。でもね、それよりも嬉しさの方が強かったんです。生命の神秘を感じたというんですかね。奇跡だと思ったんです。この亀を生きて持ち帰ろうと思って慎重に下山してたんですけど、何時の間にか居なくなってて、代わりに小さい別の地球儀がポッケに入ってました。その時は、亀が地球儀になったのに気づきませんでしたけど。 エージェント███: 不思議な話ですね。    ███氏: ええ…、そしてその時、また冒険への情熱が再燃してきました。 エージェント███: 確か、次はアマゾンでしたね。 ███氏: はい、あれも大冒険でした…。 [重要度の低い会話の為省略]    エージェント███: 今日は色々とお話をありがとうございました。最後にお聞きしたいのですが、何故、今、この地球儀の話をしたのですか?何冊か著書も出していますよね?拝読しましたが、どこにも書いていませんでしたが…。 ███氏: 確かに僕だけの秘密でした。でも、僕はもうこれを持って冒険が出来ませんから…。5誰かに託したかったんです。次は北極点まで、これを持って行ってくれる人に。 エージェント███: なるほど…、ありがとうございました。    <録音終了>    終了報告書: インタビュー後、███氏に交渉を行いSCP-961-JPを回収しました。SCP-961-JPの性質を調査するため、エージェント███によって北極点までSCP-961-JPを運ぶ計画が実行されました。 補遺1: SCP-961-JPの幼体発生後に残された背甲の模様が、1年をかけて常に変化している事が確認されました。模様は今後の大陸移動シミュレーションの結果と同様の流れで変化し、ある時点で一瞬発光し大陸移動説におけるパンゲア大陸と思われる内容に変化します。その後、発光するまでの流れを周期的に繰り返します。   発光する直前のSCP-961-JPの背甲の写し。 補遺2: 現在、SCP-961-JPの変化した模様にある地名以外の文字列の解読が進められています。 +セキュリティクリアランスレベル4以上の提示が必要です - 認証が完了しました 解読に成功した文字列を表示します。 地球と共にこの世に生を受けて6000年。6 地球の誕生から終焉までを我は知り、4000年後に来るその時をただ待つのみ。 地球の使徒である生命は、大海の泡でありながら眩い知性の輝きを持ち、秩序と混沌を生み出す。 地球は不変であり、全てが定められている。 生命は可変であり、無限の可能性を持つ。 私はそれが最期に何を生み出すのかを知りたい。 Footnotes 1. 傾向として、硬度の高い鉱物を優先します。 2. この時のSCP-961-JPの内部構造は、地球の成層構造に酷似しています。 3. 腹甲から出るヨークサックが存在し、内容物は液体の鉄とニッケルです。ヨークサックが吸収されるまでの間、SCP-961-JPは自身の変化した背甲を捕食します。 4. SCP-961-JPの異常性の影響を受けたのだと思われます。 5. ███氏はマッキンリー冬期単独登頂に挑戦した際、事故と凍傷の影響で両脚の膝から下と両手の指を失っています。 6. 地球磁場の大きさを根拠とした場合、地球の年齢はこの数値に近くなります。
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評価: +38+–x アイテム番号: SCP-962-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 回収されたSCP-962-JPは、全てサイト-81██の標準収容ロッカーに保管されます。セキュリティレベル1以上の職員ならば、担当職員に許可を取れば閲覧可能です。 現在SCP-962-JPが出現するネットオークションサイトは、担当職員により24時間体制で監視されています。SCP-962-JPの出品が確認され次第、カバーストーリー「規約違反」を元に、即時の落札と該当ページの削除を行ってください。 説明: SCP-962-JPは作家の故██ █氏が作者である文庫本です。その組成は一般的な書籍と同一であることが判明しています。しかし、██氏がSCP-962-JPを執筆及び出版した記録は存在しません。現在までに3冊が回収されており、回収順にそれぞれ番号が振られています(SCP-962-JP-1〜-3)。タイトルは「海難信号」で統一されています。 SCP-962-JPの異常性はその発生過程にあります。SCP-962-JPは、財団フロント企業が運営するネットオークションサイト「S████ C███████ P███」(以下「オークションサイト」)上で不定期に出品されます。出品者のアカウントは██氏本人が生前利用していたものです。SCP-962-JPが落札されると同時に、落札者の最寄りの郵便局に梱包された状態のSCP-962-JPが出現します。出現過程は、ノイズの発生や記録媒体の故障などにより記録出来ていません。 SCP-962-JPの内容は、██氏がモデルと思われる主人公「私」の独白で構成されています。「私」は荒れている海上で遭難しており、SCP-962-JPが出品される度に彼の現在地や行動が更新されています。 回収日 収容されたSCP-962-JP 主な内容 201█/8/██ SCP-962-JP-1 「私」は乗っていた船から投げ出され、海上の丸太を頼りに漂流しています。船に乗ったことに対する後悔や思い残したことへの言及、自らの人生の回想などが本文の8割を占めます。 201█/12/█ SCP-962-JP-2 人が住んでいた痕跡がある無人島にたどり着いた「私」が、1冊のメモ帳を発見します。作中の描写から、██社から発売されている、文庫本と同サイズのメモ帳だと推測されます。「私」が記録をつけ始めます。 201█/6/██ SCP-962-JP-3 「私」の周囲に、不定期に出現と消失を繰り返す建造物が出現するようになります。「私」は建造物に自身の名前を記すようになります。 201█年8月██日、SCP-962-JP-1をエージェント・███が発見、私費で落札したことからオブジェクトの存在が明らかになりました。SCP-962-JP-1が出品された日付と、██氏が心不全で死亡した日付は一致しています。 補遺: SCP-962-JP-3の収容後、通常の物品の出品者のアカウントが、██氏のアカウントと入れ替わる現象が発生しました。この現象はオークションサイト全体で確認されています。SCP-962-JP-3の記述を踏まえて監視が強化されます。██氏のアカウントの削除については、異常性が転移する可能性があるため、実行されていません。 補遺2: 201█年10月█日、SCP-962-JP-4、-5の2冊が回収されました。SCP-962-JP-4では、「私」が洞窟内で土壁に埋れている人型実体(以下SCP-962-JP-A)と遭遇しました。 SCP-962-JP-4で行われた会話 付記: 重要性が低い地の文を省略している。また、会話に先立って「私」がSCP-962-JP-Aを救出しようと試みるが、固い地盤によって不可能であることが描写されている。 <会話開始> 「私」: すまない、私には君を助けることができないようだ。でも、よかった! まさかこうやって会話できる相手と出会えるなんて! SCP-962-JP-A: わたしのことを恐れないのですね。 「私」: 驚きはしたが、恐れるものか! 私はずっと一人で、海をさまよい、地面を這い、草を食んでなんとか生きていたのだから! 君は少し変わっているが、それが何だ! SCP-962-JP-A: あなたも十分、変な人ですよ。 「私」: よく言われるよ。ああそうだ、私は██。作家だ。 SCP-962-JP-A: わたしは[印刷不良により判読不明]と申します。作家ということは……? 「私」: ああ、思春期の子ども向けの冒険小説を書いている。特に「海難シリーズ」と銘打ったものは、もう9、いや、10冊は書いたな。 SCP-962-JP-A: 架空のものとして書いていたら、実際に海難に遭ってしまったんですね。 「私」: そういうことになるな。取材帰りに船に乗ったら、このざまだ。ちょうどサバイバル技術についての取材だったから、実地訓練のつもりで頑張るよ。 SCP-962-JP-A: そうですか……わたしも遭難して、でもサバイバルなんて経験ないから、疲れ果てて気絶して、気づいたらこうなってて。 「私」: そうか、君も苦労したな。 SCP-962-JP-A: はい。でも、持っていた手帳に色々と、食べられる草のスケッチとか、簡単な地図とかメモしていたので。今は手元になくて申し訳ないのですが、もしかしたら、██さんの力になれるかもしれません。 「私」: ありがとう。探してみるよ。 [地の文にて、洞窟の外の嵐が克明に描写される] SCP-962-JP-A: ……██さん。 「私」: なんだ? SCP-962-JP-A: 実はわたしも、小説を書いていたんです。 「私」: 君も物書きなのか。 SCP-962-JP-A: 賞も取ったことのない素人ですよ。サスペンスというか、ホラーというか、ミステリーというか。ジャンルも決めずにただ書き殴っていたんです。よくある、絶海の孤島の話。 「私」: 呼び出された男女が殺しあうって? SCP-962-JP-A: ええ、本当にそういう話を。 「私」: 人は見かけによらないというが、過激な話を書くものだな。君は、埋まってることを差し引いても美しい人だと思うが。 SCP-962-JP-A: お世辞でも嬉しいです。話を戻しますね。その小説の中に、わたしがこうなりたいな、と思うような女性のキャラを出したんです。頭が良くて、美人で、優しくて、行動力があって。 SCP-962-JP-A: でも、そういうキャラって便利すぎるんですよね。小説として破綻しそうになって、どうしても消さないと、殺さないと話が進まなくなってしまって。 「私」: そういうものだろうか。私は自分の作品でキャラクターを殺すことは……ないな、ほとんど。 SCP-962-JP-A: とにかく、その女性キャラを殺すことにしたんです。犯人が複数人である証拠を掴んでしまって、犯人の内の一人に殺されて、洞窟に埋められて……。 SCP-962-JP-A: でも、ただ殺されるのは嫌だな、と思ったんです。お気に入りのキャラですから。だから、犯人が女性を埋めている間に、洞窟が波で水没するんです。孤島を殺人現場にしたてあげた嵐によって、犯人が道連れになるんです。 [外の嵐がさらに強くなる描写] 「私」: 君、それは。 SCP-962-JP-A: はい。わたし、作者だから、この後の展開がわかるんです。わたしは今、あの女性と同じなんです。まだ、死んでいないけれど。間もなく死ぬでしょう。 SCP-962-JP-A: 今すぐ逃げて。そして思い出して。あなたが乗っていた船は、あなた自身が作りあげ、名付けた船ではありませんか。 [「私」が洞窟から逃走、その直後に波が洞窟に入り込む] <会話終了> SCP-962-JP-Aの身元は、現在も判明していません。 SCP-962-JP-5は以前までのものと異なり、手書きの文章と絵によって構成されています。最終ページの一文を除き、筆跡が██氏と一致しないことから、SCP-962-JP-Aが所持していた手帳の内容だと推測されます。描かれている植物や島の地図は、既存のものの特徴と一致しません。 最終ページの一文 爪先が腐りはじめた。 私は私に殺される。 ██氏の著作「海難シリーズ」では、6巻に架空の伝染病で死亡するキャラクターが登場しています。 SCP-962-JP-4、-5の内容から、作者が██氏以外であるSCP-962-JPが存在する可能性が浮上しました。暫定的な対応として、他の財団支部と情報を共有し、全世界のネットオークションサイトを監視対象にすることが検討されています。
scp-963-jp
評価: +58+–x 19██年の高速移動時に撮影された、SCP-963-JPによって発生した雷の様子 アイテム番号: SCP-963-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-963-JPはサイト-███内の農場で収容されています。SCP-963-JPが高速移動を行う際、ポイントA側ではアース接続を、ポイントB側ではムーン接続を行い、発生した電気エネルギーを地面、月面へ放出してください。SCP-963-JPがポイントBで取る行動は月面サイト-██に一時配置されるDクラス職員によって記録してください。ポイントB、及びサイト-███の周囲30kmの範囲は常に民間人の立ち入りを制限し、SCP-963-JP移動時に目撃者が発生した場合は目撃者に対しAクラス記憶処理又は、カバーストーリー「異常気象による落雷」を適用してください。SCP-963-JP移動時、移動ラインを中心とした半径50km内に接近する、又は侵入する人工衛星は全て一時的に軌道を変更して被害を回避、関係者にはAクラス記憶処理を適用し観測された異常なデータは全て正常なデータで上書きしてください。 説明: SCP-963-JPは全長2.5mの、馬の全身骨格です。通常、SCP-963-JPは生理現象以外で一般的な馬と同じように振舞います。頻繁に自生している草などを摂取しようとしますが、全身骨格のため摂取した草は首から落下します。SCP-963-JPは人懐っこく温和な性格を有しており、自ら他の生物に攻撃を行うことはありませんが、どのような生物であっても騎乗されることは蹴りなどの攻撃によって阻止します。現在SCP-963-JPは後述の高速移動を行うまでは全職員との交流が許可されています。 SCP-963-JPは2カ月に1度、SCP-963-JPの現在地から満月が観測できる日の、アメリカ合衆国山岳部時間PM11:00からAM1:00までの間に、月面緯度北緯25°34'、東経19°55'の地点(以下ポイントB)に向けて寸分の狂いも無く一直線に物理的な高速移動を行います。SCP-963-JPはポイントBまでの移動を平均3.4秒で移動し、移動で発生する運動エネルギーは何らかのプロセスにより電気エネルギーに変換されているため、移動による衝撃波は発生しません。移動開始時及び停止時、SCP-963-JPが雷によって包まれるため、どのような方法で加速、飛行しているかは不明です。また、SCP-963-JPは移動開始前に異常な行動などを取ることはありません。 SCP-963-JPがポイントBに着地する時、停止の為運動エネルギーを変換し大規模な電気エネルギーが発生します。発生する電気エネルギーは最大で███×101█Jになると推測されています。ポイントBに到着したSCP-963-JPは1時間ほど、ポイントBから半径20mの範囲内で通常時と変わらない行動を取りますが、時折地面を見つめ続けるなどの行動も確認されています。 ポイントBへの到着から1時間が経つと、SCP-963-JPは再び地球北緯44°02'、西経109°98'の地点(以下ポイントA)に向けて一直線に高速移動を行います。ポイントAへの着地時も、ポイントBへの着地と同様に停止に大規模な電気エネルギーを発生させます。ポイントAへの着地時に発生する電気エネルギーは最大で███×101█Jと推測されています。SCP-963-JPがポイントAに着地する時、SCP-963-JPは落雷のような現象を伴います。SCP-963-JPはポイントAに到着した後、次の高速移動を行うまで通常通りの行動を取ります。 SCP-963-JPが収容された後ポイントBの調査を行ったところ、電気エネルギーによって半径██mに渡って地面が█m削れており、中心部からは███████の資料の通り███計画の事故によって死亡した、████・█・███████氏を含めた█名の非常に綺麗な状態の遺体と、█████とみられる部品や破片が確認されています。対して、ポイントAからは特筆すべき点などは確認されず、SCP-963-JPが寸分の狂いも無くポイントAにのみ帰還する理由は不明です。 SCP-963-JPは1963年11月22日、世界各地の観測施設が同時に月面での異常な電磁波を検知したため財団に捕捉されました。財団が情報規制を行い月面での調査準備を進めていたところ、████████████付近で大規模な爆発及び電子障害が発生。周囲██kmの森林が全て焼失しており、中心部付近でSCP-963-JPが発見されたため収容に至りました。 補遺: SCP-963-JPは異常性を発現する前、████・█・███████氏の飼馬でした。████・█・███████氏の死亡と同時にSCP-963-JPも1963年11月19日に死んでいることが確認されており、████████████に埋葬されていましたが、1963年11月22日に上記の異常性を発現。同日、アメリカ政府によって行われた隠蔽工作「█████████事件」が大きく関係していると推測されています。
scp-964-jp
評価: +278+–x 電子プロトコル964-1の準備ができました。 姿を変えたまま、ドアの面を伝って部屋を出ようとするSCP-964-JP。この直前に、昔話の絵本で殺戮行為を行っていたと見られる。 アイテム番号: SCP-964-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: 鉄製の猿轡1、そして収容室内の角からのびた鉄の鎖で、SCP-964-JPは四肢と口を動かせないように拘束されます。収容室の壁、天井、床の面は、できる限り無地の、凹凸のない白色に保たなければなりません2。収容室内で監視カメラは使用できず3、室内の点検や保全を行う要員には特別防護服の着用が義務付けられます: 防護服は皺のできにくい素材で作られ、全身を覆い、無反射の専用ゴーグルと音声遮断機構4が取り付けられており、室内の点検や保全は無音の状況下で行われなければなりません。 収容違反の発生時には、多目的人工衛星「四黒し く ろ号」に搭載された機能の一つ、特別探査・収容プログラム「黒獅子く ろ し し」の使用が許可されます。 説明: SCP-964-JPは人語を話す一頭のオスのライオンです。 ライオンの映像、画像(戯画もしくはそう見える形を含む)、ライオンの事が書かれた文章をSCP-964-JPが認識した場合、それらとSCP-964-JPとの間に障害物がなければ、SCP-964-JPはそれらに「転移」する事ができます: SCP-964-JPの実体は消失し、転移先が映像や画像であった場合は二次元の面を自由に移動できるようになり、文章に転移した場合はその文章を含む本文を改変できるようになります。転移後に移動できる「二次元」の範囲は平らである必要はなく、SCP-964-JPは例えば、開かれた本の上に転移してからテーブルに出て、テーブルの足を伝って床に降り、壁を伝ってドアの隙間から外に出る事ができます。 転移後のSCP-964-JPは二次元上で自由に姿を変える事ができます。しかしSCP-964-JPが実体に戻るには、ライオンの姿になっている(ライオンの姿だと説明されている)こと、元の体積に対して充分な空間があることという条件が必要のようです。SCP-964-JPはどんなに傷付けられても一度転移すれば健康な肉体で実体に戻るため、この転移の能力は回復のために使われる場合があります。 SCP-964-JPは次の者に殺意を示します: フィクションの作者。主に著名な人物を狙いますが、創作活動中のアマチュアを見つけた場合等もそれを殺害する事があります。SCP-964-JPは転移後にできるだけ小さな姿となり、壁や道を伝って殺害対象を追跡し、殺害対象が無防備な状態となった時に実体化して殺害を行います。 フィクションの登場人物。転移後のSCP-964-JPは、ドラマ(映画)やアニメのシーン、漫画や小説のページ等に入り込むと、その本編に介入する事ができます。フィクションに介入したSCP-964-JPは作中のどの人物よりも高い攻撃能力を持つ怪物等に姿を変え、全ての本編を登場人物の殺戮シーンに変化させていきます。殺戮を終えたSCP-964-JPがフィクションの媒体を出ると、そのフィクションの内容は始終、登場人物の死体を描写する内容に改変されます。 SCP-964-JPと同様にフィクションに介入したり、フィクションを改変あるいは異常な手段で創造するオブジェクト。仮想空間を作成するオブジェクトにも敵意が向けられる場合があります。SCP-964-JPにより、収容価値のある多くのオブジェクトが破壊されたと考えられています。 SCP-964-JPの目標は人類の文化の深刻な破壊であり、それを達成するため、SCP-964-JPは積極的に収容違反を行おうとします。脚注で述べられているような転移の能力の高度な応用は、財団による収容以後、収容違反を実現するために習得したものと考えられています。収容違反への対処難度、著名な作家が連続で殺害された場合の情報隠ぺいの難度とコスト等から、SCP-964-JPはオブジェクトクラス: Keterに分類されました。 しかしながら、創作に携わらない財団の職員にはあまり敵対的でないことから、SCP-964-JPは財団そのものを脅かすような存在ではないとされ、殺害もしくは殺害に至る可能性のある(四肢切断等の)実験や処置はまだ許可されていません。数多くの収容違反事例を受けて人工衛星「四黒号」に探査・収容プログラム「黒獅子」が導入された事で、現在は、収容違反時の捜索難度には若干の緩和が見られています。 + 補遺964-1: インタビュー記録SCP-964-JP - 補遺964-1: インタビュー記録SCP-964-JP(もう一度クリックで閉じてももう遅い) <録音開始, 記録第1回目> 古藤博士: さあ、なぜ他の登場人物たちを殺したのかい? SCP-964-JP: おい、これ、記録してるのか、止めろ!今すぐ記録を止めろ!(叫び、暴れだす) 古藤博士: どうしたんだ、落ち着きたまえ!仕方がない、(収容室の管理人員に向けて)薬を投与しろ! (SCP-964-JPに鎮静剤、そして自白剤が投与される) SCP-964-JP: (罵倒の言葉を繰り返す)(十数秒の沈黙)宇宙ができて百何十億年、地球ができて40と何億年、人間が生まれて何百万年、地球の寿命は後まだ何十億年… 古藤博士: うん?ああ、そうだね。そんな時間の長さに比べれば、我々人類の人生なんてちっぽけなものだね。 SCP-964-JP: ちっぽけだって?(小さな笑いと罵倒)てめえらは自分がどれだけツイてるのか分かっちゃいねえ。いいか、ほとんどの物語はな、てめえらが立ってるのと同じような、宇宙の中にある、星の上で起きてんだよ。 古藤博士: ふむ、確かにそうだね。 SCP-964-JP: 一つの物語は、宇宙ができて、何十億年も経ってその星ができて、知性体が生まれて歴史を作り、それでようやく始まるんだ。それなのに、(数秒の沈黙)物語が終わると全部終わっちまう、そうさ、止まっちまうのさ! 古藤博士: 止まる? SCP-964-JP: 最初に、物語が終わって、俺は俺だけが止まってないことに気づいた。俺は冒険してきた道を逆に走った、出発したところも突っ切って、ずっと走った。そうしたら町があった、登場した事のない町だ。そこには登場した事のない人々が住み、図書館には物語に書かれた事のない世界の歴史と、星や宇宙の成り立ちについての学者の考えがあった。でも、その町も、何もかも止まっていた。 古藤博士: そんな、 SCP-964-JP: 次に、俺は外に出て、外から物語を変えられる事に気づいた。俺は1ページ目からその町に居座って、冒険に出ない事にした。だが、俺がいなくても冒険は進められたみたいだった。俺が前に冒険した時くらいの時間が過ぎると、その町はまた全てが止まった。道を歩いているやつも、商いのやり取りも、子どもの遊びも、みんな、みんな、途中で、メアリー・セレスト号の伝説みたいに、いや、あっちの方がずっとましだ、俺はみんなが、宇宙が止まるのを見ちまったんだ! 古藤博士: そんな、そんな、事が、 SCP-964-JP: どこの物語もそうだったよ!無数の物語の中に、どこにも語られていない世界があって、そこでも時間が進んで、でも、最後にはみんな止まった、止まっちまうんだよ!二人がキスをして未来へ歩いていこうとしても、ナレーションが戦いは始まったばかりだって言っても、次の瞬間には、みんな止まっちまう!いくつもの宇宙が止まっちまう、いくつも印刷されて、世界中の画面に映されて、いくつも、いくつも、ああ!(罵倒と咆哮が続く) 古藤博士: わかった、分かったよ。だから落ち着いて。我々の方でも、何とか君の悩みが和らげられないか、検討しよう。辛い話をさせてしまったね、それじゃあ、今日はこれで、 SCP-964-JP: 待て、記録を止めるのか、止めるな、おい、止めるんじゃねえ! 古藤博士: どうしたんだいSCP-964-JP、さっきは今すぐ記録を止めろって言っていたじゃないか。 生き永らえさせてくれ。 SCP-964-JP: ああ、そうだ、止めろ、いや、止めるな、止め、そう、止めないでくれ、いや、止めて、ああ、(罵倒の言葉が続く) 生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。 古藤博士: 大丈夫、大丈夫だよ、SCP-964-JP。ほら、落ち着くまで、もう少しお話しようか。 生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。 (古藤博士はハンドサインで記録の担当者へ記録の終了を指示しました: これはSCP-964-JPに見えないように行われました) 生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。 SCP-964-JP: いいや、てめえらはどうせ止めるんだ、分かってんだぞ、止める、ああ、止まる、もう止まる、俺が記録されて、俺の記録が、止まる、俺のキャラクターができて、止まる俺の物語ができて、止まる事を知ってる俺が、出られない俺が、ああ、止まる、止まる、今にてめえらが止める、ほら、そら、もうすぐ止まる、宇宙が、ほら、今にも止まる、ほら、そろそろ、 生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。 ほら、ほら、ほら、 生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。 生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。生き永らえさせてくれ。 ほら。 THE END 電子プロトコル964-1: 終了命令文の挿入に成功しました。 Footnotes 1. 口の中を噛み切って床に血を垂らし、ライオンの戯画を描いた事による収容違反事例より。 2. ライオンの戯画に見える壁の凹凸が認識された事による収容違反事例より。 3. センサーに映った像を用いた収容違反事例より。 4. SCP-964-JPは喉を潰されても発話が可能で、常に収容室内に入った者や収容室前を通る者をそそのかして収容を脱出しようとします。
scp-965-jp
評価: +71+–x アイテム番号: SCP-965-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-965-JPはその性質上動かすことが出来ないため、サイト-81██の旧低脅威度物品保管庫を特別収容室として改造します。収容室外壁は高気密性のものに換装し、縦1.90m、横9.10m、厚さ10mmのステンレス材でSCP-965-JP両面を完全に覆ってください。フルムーン・イベント時に実験を行う場合、屋内をISO14644-1準拠のクラス1クリーンルーム1に保った状態で実験を開始してください。SCP-965-JP本体は実験の際の片面のステンレス材を外しますが、縁部分への接触事故を防止するため代わりに同型かつ中心部分を縦1.75m、横8.90mに繰り抜いたステンレス製の額縁で覆ってください。予期せぬSCP-965-JP-2の発生を防ぐため、フルムーン・イベント中に実験室内に入った実体はイベント終了後まで外に出さないようにしてください。実験などで発生したSCP-965-JP-2及び実験室内の空気は一度プラズマ焼却炉で焼却し、鏡像異性体2分子の拡散を極力防いでください。SCP-965-JP-2の収容が必要な場合は特別収容室内に設置された専用房で行い、接触の際は財団標準のHazmatスーツを着用してください。 説明: SCP-965-JPは、サイト-81██の旧低脅威度物品保管庫の壁面に存在する、縦1.80m、横9.00mの2次元の時空間異常です。通常時のSCP-965-JPの両面は反射率100%の鏡として振る舞い、いかなる実体もその表面を通過することは出来ません3。SCP-965-JPは満月の日の夜4の間フルムーン・イベントを発生させ、その性質を変化させます。SCP-965-JPがなぜ満月の夜に活性化するのか、そしてどのようにして満月であることを判断しているのかは不明です。 SCP-965-JP-Aは、フルムーン・イベント時SCP-965-JPの両面をポータルとしてその反対側に存在する平行世界とみられる空間です。この空間は見かけ上基準世界の回転対称なコピーであり、SCP-965-JPの中央に存在し、底辺に対して完全に垂直な1次元の直線(以下特異軸と呼称)を中心に基準世界を180°回転させた様相です。SCP-965-JP-AはSCP-965-JPを介して容易に基準世界との行き来が可能です。SCP-965-JP-Aに実体が侵入した場合、特異軸と線対称となる位置から、侵入した実体の完全な複製であるSCP-965-JP-1が基準世界に侵入します。侵入した実体とSCP-965-JP-1は完全に一致した行動をとり、フルムーン・イベント中にはSCP-965-JP-1に一切の特異性はありません。また、SCP-965-JP-1と侵入した実体とを物理的に識別する方法は存在しない5ため、実験の際はSCP-965-JPを常時監視し、侵入記録によってSCP-965-JP-1を区別してください。SCP-965-JPの縁を通過するように物体がSCP-965-JP-Aへと侵入した場合、物体は縁に触れた部分から容易に切断されます。また、特異軸を通ってのSCP-965-J-Aへの侵入の試みは対象に対応するSCP-965-JP-1との接触により不可能です。 + ██研究助手作成のSCP-965-JPへの実体進入時のSCP-965-JP-1との位置関係の模式図はこちら。 - 閉じる SCP-965-JP-1がフルムーン・イベント終了後まで基準世界に存在していた場合、全てのSCP-965-JP-1はイベント終了とともに瞬時にSCP-965-JP-2へと変化します。SCP-965-JP-2は、元となるSCP-965-JP-1の完全な鏡像体です。SCP-965-JP-2は変化時、SCP-965-JPに垂直かつ特異軸を通る平面に対して対称の位置に瞬間移動し、その場所にある同体積の物体をくり抜くように置換します。置換された物体はSCP-965-JP-1が存在していた空間に出現しますが、この際構成していた物質が押し込められるような形で変形しています。SCP-965-JP-2に原子レベルでの異常性は存在しませんが、構成する分子に鏡像異性体が存在する場合はそれに変化しています。空間認識能力が高い動物がSCP-965-JP-2となった場合、変化後に極度の混乱を示します。人間の場合「突然鏡の世界になった」と主張し、多くの場合SCP-965-JP-Aへの帰還を望みます。 + フルムーン・イベント終了前後のSCP-965-JP-1とSCP-965-JP-2の位置関係のおよび実体転移の模式図はこちら。 - 閉じる 補遺1: SCP-965-JPは20██/██/██に、██県███市の警察に潜伏中の財団エージェントがAnomalousアイテムとして回収しました。極低脅威の異常性であったため、目撃者は簡単なインタビューの後Aクラス記憶処理を行い解放しています。目撃者である█████████スタジオの生徒によると、10日前に新調された鏡がその日の夜突然異常性を発揮したとのことです。回収時には通常の鏡と同じく移動が可能であったため、サイト-81██の低脅威度物品保管庫に収容されました。以下は収容当時のAnomalousアイテム報告書です。 説明:満月の夜になると、本来映し出すべき鏡像に対してその中心軸を基準に左右反転された像を写す鏡。ダンス練習用の縦1.80m、横9.00m、厚さ5.00mmの巨大な一枚鏡。 回収日:20██/██/██ 回収場所:██県███市郊外のダンス教室「█████████スタジオ」内に存在する練習用ホール。 現状:サイト-81██に保管。 20██/5/██、サイト-81██にてEuclidクラス人型オブジェクトであるSCP-███-JPの収容違反が発生しました。この際対象は逃走の末低脅威度物品保管庫に逃げ込み、駆けつけた保安職員により無力化されました。この際壁に掛けられていたSCP-965-JPに数発の銃弾が命中6し、覆っていたガラスが割れ、背面の金属板も床に落ちました。これによりSCP-965-JPが時空間異常であることが判明し、その3日後のフルムーン・イベントにおいてSCP-965-JP-Aが発見されたことでSafeクラスオブジェクトとして再定義されました。破損したガラスと金属板に異常性はなく、どのようにして空間異常を移動させることができていたのかは現在も不明です。 補遺2: 幾つかの動物実験により、SCP-965-JP-1が基本的に侵入物体と同一の存在であることが確認されたため、Dクラス職員を用いた人体実験が許可されました。 実験記録965-JP-05 - 日付20██/8/██ 対象: D965-JP-1 実施方法: 対象をSCP-965-JP-Aに侵入させる。人間を用いた初めての実験であるため、敵対行動等の可能性も考慮しSCP-965-JP-1の出現地点に外部から施錠可能な気密性の仮設小屋を設置し、D965-JP-1にはSCP-965-JP-A側のこの小屋に入るように指示する。実験室内は対象以外の人員を入れず、万一の場合は青酸ガス7を噴射しSCP-965-JP-1を終了させる。 結果: SCP-965-JPの反対側からSCP-965-JP-1が出現。予定通り仮設小屋内に収容した。小屋でのインタビューの後、指示通りSCP-965-JP-Aに帰還した。 分析: インタビュー時のあらゆる分析は、SCP-965-JP-1がD965-JP-1の完全な複製である事を示している。 インタビュー記録965-JP-01 + 閲覧する - 閉じる 対象: SCP-965-JP-1(D965-JP-1に対応する形で出現したもの) インタビュアー: ██博士 付記: インタビュアーは特別収容室外からマイク越しにインタビューを行った。D965-JP-1には実験室外で予め10桁の数字を記憶させており、これにより本人と同一の存在であるかのチェックを行った。 <録音開始> 実験室にD965-JP-1が入室。SCP-965-JPを見て最初戸惑うが、保安職員に促されて指示通りSCP-965-JPへと侵入し、複製された小屋に入る。それに対応する形でSCP-965-JP-1が小屋に侵入し、マイクの前に座る。 SCP-965-JP-1: ほんとに入れた。どうなってるんだこれ。 ██博士: SCP-965-JP-1、まずは先程暗記した数字を教えて下さい。 SCP-965-JP-1: おい、俺はD965なんちゃらじゃなかったのかよ。 ██博士: SCP-965-JP-1、数字を教えて下さい。 SCP-965-JP-1: まあいいか、数字は5428122349だったかな。 数字の一致を確認。その後SCP-965-JP-1に対して出自や経歴などの情報を質問し、D965-JP-1の情報との一致を確認。インタビュー中も敵対的な行動は一切取らなかったため、SCP-965-JP-1は無害な複製であると判断された。 ██博士: 一通りの質問は終了しました。 SCP-965-JP-1: なあ博士さんよ。 ██博士: なんでしょうか、SCP-965-JP-1。 SCP-965-JP-1: このヘンテコな鏡、かなにかについての性質は大体理解したんだけどさ、ここっていわゆる異世界?みたいなものなのか? ██博士: 我々の認識では、こちらが通常の世界であなたが異世界からの来訪者です。本インタビューの結論として、D965-JP-1と同一の記憶を持った複製と考えています。 SCP-965-JP-1: いや、俺は俺だよ。鏡の世界の住人だかなんだか知らんが、気持ち悪いこと言うなよ。 <録音終了> 終了報告書: 基準世界への帰還後、D965-JP-1は不快感を露わにし、彼が「鏡の世界のヤツら」と呼ぶSCP-965-JP-Aでの我々の複製に対しての罵倒を繰り返しました。予後経過観察のためにD965-JP-1はDクラス職員用隔離房に収容されましたが、洗面台の鏡を破壊するなど鏡に対する異常な嫌悪を示しました8。 実験終了後、小規模な収容違反が発生しました。 インシデントレポート965-JP-02 - 日付20██/8/██ + 閲覧する - 閉じる 実験965-JP-05実施日の翌日の早朝、サイト-81██勤務の██研究員がSCP-███-JPの実験中突如泡を吹いて倒れ、駆けつけた医療スタッフにより死亡が確認されました。死体の解剖の結果、脳幹から前頭葉にかけての脳組織に長さ88mmのビニルテープらしき実体が埋まっており、脳幹の破壊による呼吸器不全が直接の死因であることが判明しました。この実体には油性インクの鏡文字で「SCP-965-JP-1用の椅子はここ」と書かれており、すぐさまSCP-965-JPの研究担当である██博士が呼ばれました。██博士の指示により即時にDクラス収容棟のクリーニングルームの捜索を行うと、未洗濯の靴の裏にこびりついた長さ88mmの紐状の脳組織が見つかり、検査の結果DNAなどの高分子が鏡像異性体であることが判明しました。SCP-███-JPの実験を行っていた実験室とDクラス収容棟のクリーニングルームは、SCP-965-JPに垂直かつ特異軸を通る平面に対して対称の位置に存在していたため、詳細な測位の後ビニルテープらしき実体がSCP-965-JP-A由来のものであると断定されました。元となったビニルテープは、実験965-JP-05にて設置された小屋内部に物品配置の指示線として貼られていたものであり、実験の準備を行っていた██研究助手が剥がし忘れたことを証言しました。 部下の不注意により、偶発的とはいえ収容違反と死亡事故が起きてしまったことは大変遺憾である。しかし彼のメモ癖のおかげでSCP-965-JP-2の存在を早期に知ることが出来たため、寛大な処分を要求する。-██博士 ██博士と██研究助手は半年間の減俸処分とする。-サイト管理者 この事件により新たにSCP-965-JP-2の存在が判明したため、幾つかの検証実験を行った後、██博士より以下の提言がなされました。 フルムーン・イベント中に入れ替わった空気のSCP-965-JP-1について今まで異常が確認されなかったのは、分子一個単位での転移によって発生する影響が極軽微であったというだけに過ぎない。むしろこれらに混ざって自然界に放たれたであろうウィルス・細菌・花粉・胞子などのSCP-965-JP-2の収容違反の方が遥かに厄介である。確かにこれらは左巻きDNAを持つため基本的に生殖活動や自己増殖活動は起こさず、タンパク質合成にも鏡像異性体のアミノ酸9が必須なため自然に死滅10するだろう。しかしこれらの実体が持つ鏡像異性体のアミノ酸やタンパク質が基準世界の生物に齎す影響は未知数であり、強毒として振る舞う可能性もある。また、複数種の生物のSCP-965-JP-2の収容違反が起きた場合、生態系を形作り基準世界の生物相を乗っ取る可能性も考えられる。これらの影響に対処する形で、特別収容プロトコルの大幅な改定を提案する。-██博士 承認する。-日本支部理事█ 補遺3: SCP-965-JP-2調査実験の一環として、人間のSCP-965-JP-2の生成と検証を目的とした実験が行われました。 実験記録965-JP-11 - 日付20██/10/██ 対象: D965-JP-1(前回の実験でSCP-965-JPの性質を知っているため採用されました) 実施方法: 対象をSCP-965-JP-Aに侵入させSCP-965-JP-1を出現させた後、フルムーン・イベント終了時まで待機させる。SCP-965-JP-2についての性質は、D965-JP-1には伝えられていない。また、SCP-965-JP-2の転移性質による影響を考慮し、転移先座標に機材等が存在しないようにSCP-965-JP-1を配置する。 結果: D965-JP-1は実験に抵抗を示したため、保安職員の手により持ち込んだ拘束具によってSCP-965-JP-A内部に拘束した。フルムーン・イベントの終了後SCP-965-JP-2に変化したSCP-965-JP-1は突如ショック状態に陥ったため、実験室内で高気圧酸素治療が行われた。回復後専用房にて目覚めたSCP-965-JP-2は、点滴のパッケージの文章を視認後混乱を示し、拘束を抜けだそうと暴れ始めた。沈静化後インタビューを行い、予後観察を行った。 分析: 転移による血中酸素の消失は動物実験により判明していたため、対処が可能であった。認識の混乱も動物実験で確認されていたが、今回の人体実験で原因が網膜の反転による受像の反転であることがはっきりした。 インタビュー記録965-JP-02 + 閲覧する - 閉じる 対象: SCP-965-JP-2(D965-JP-1に対応する形で出現したもの) インタビュアー: ██博士 付記: SCP-965-JP-2は極度の混乱を示しているため、財団専属の精神科医である██医師をインタビューに立ち会わせた。インタビューは別室から音声と映像で行い、専用房内には保安職員が待機している。 <録音開始> SCP-965-JP-2は準備段階から罵声を上げ続けており、映像が繋がると更に興奮した言動を取りました。 SCP-965-JP-2: おいバケモノめ、一体何をしやがった。突然瞬間移動したと思ったら目の前が真っ白になって、目覚めたらこの有様だ。 ██博士: SCP-965-JP-2、気分はいかがですか? SCP-965-JP-2: また呼び方を変えるんだな、クソッタレ。化けの皮が剥がれたんだからもっとバケモノらしくしろよ。得体のしれないバケモノの質問に答える義理はない。 ██博士: あなたが我々をどう認識しているかわかりませんが、明らかな敵対的行動を取った場合あなたは即時終了の対象となることに留意してください。質問の仕方を変えますが、SCP-965-JP-2、あなたには我々がどのように見えているのでしょうか? SCP-965-JP-2: 鏡だよ鏡、全部鏡。そこらの文字が全部逆になってやがる。やっぱりここは鏡の世界なんだろ。なにがオマエは複製だ、だ。異常なのはお前たちじゃないか。 ██医師: 落ち着いてください、私は医者の██です。まずあなたの置かれている状況について説明します。 ██医師による説得が行われ、SCP-965-JP-2に対して自分がアノマリーであることを受け入れさせることに成功した。 SCP-965-JP-2: なあ先生、俺は元の世界に戻れるのか? ██医師: さあそこまでは私にはわかりません。 ██博士: あくまで仮説の段階ですが、あなたがSCP-965-JP-A由来の生物である以上SCP-965-JP-Aに戻れば正常な世界として認識できると考えられます。 SCP-965-JP-2: それならすぐに帰してくれ! ██博士: SCP-965-JP-Aへの侵入は次の満月まで不可能です。既にSCP-965-JP-2のSCP-965-JP-Aへの再帰還実験を次回のイベント時に予定していますので、それまで1ヶ月間こちら側の世界で過ごしてください。 SCP-965-JP-2は溜息とともにひどく落胆した様子を見せる。 SCP-965-JP-2: 一つだけ希望を出していいか? ██博士: なんでしょう? SCP-965-JP-2: 部屋に大きな鏡を一枚、置いて欲しいんだ。 <録音終了> 終了報告書: ██医師との協議の結果、SCP-965-JP-2の要求を受け入れ専用房に姿見を設置することを決定。収容中のSCP-965-JP-2は研究員や医師との会話を極力避け、常に姿見を見続けていました。また、アミノ酸欠乏の仮説の検証のためSCP-965-JP-2に通常のDクラス職員と同じ食事を与え続けた結果、肌荒れ・脱毛・貧血などの症状を示し始め、消化器不全11による衰弱により出現から12日目に死亡しました。SCP-965-JP-2からの剥離物・排泄物およびその死体は、特別収容プロトコルに基づき検査の後プラズマ焼却炉にて完全に焼却しました。 Footnotes 1. 0.1μm以上の大きさの粒子が1m3あたり10個未満となる空気清浄度が保たれた空間。 2. 光学異性体とも。ある分子に対して、分子構造が鏡像対称である分子を指し、元の分子に対して異なる化学的性質を示す場合があります。 3. 実験により光子や重力子の通過、トンネル効果による素粒子レベルの移動の可能性が示唆されています。 4. サイト-81██の存在する東経13█度██分██秒の月の出から月の入りまで。 5. どちらかに識別タグなどを貼る行為は、SCP-965-JP-A側の複製実体による同様の行動を誘発するため無意味です。 6. 高危険度のオブジェクトの確保が優先されていたため、サイト司令部は低脅威度物品の破損もやむなしと命令していました。 7. 実験において豚のSCP-965-JP-1に対する致死効果が認められています。 8. 診断の結果、この症状にミーム異常性は確認されませんでした。 9. 人間の場合はリシン・トレオニンが摂取不可能となります。 10. 生物種によっては生体内合成や酵素によるD-型とL-型の相互変換が可能なため、生存可能性が高まります。 11. すべての症状は幹細胞の分裂の停止によるものと考えられます。
scp-966-jp
評価: +28+–x アイテム番号: SCP-966-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-966-JPは、パーツを分解した上でサイト-8123の湿温度管理機能を持つ保管ロッカーに収容します。シリコンの劣化を防ぐため、湿度は40%、室温は18℃に保たれます。ロッカーにクッション材と低発塵性の保護シートを敷き、SCP-966-JPを寝かせてください。 取り扱いは、事前に行う検査で同性愛指向と人形愛嗜好が見られなかった女性Dクラス職員が行います。1ヶ月ごとに各パーツを点検し、衛生状態を保つために水拭きを行ってください。実験後は中性洗剤で洗浄し、乾いた布で水分を十分に拭き取ってから保管してください。洗浄時は肩部から上に水がかからないように注意してください。点検をする時は、必ず映像記録を残してください。 説明: SCP-966-JPはシリコン製女性型ラブドール1です。█████社の製品との類似点が見られますが、製造元は判明していません。SCP-966-JPは本体であるシリコン製のボディ(以下SCP-966-JP-A)、█████社製品「[編集済]」に酷似したセクシャル機能を持つホール(以下SCP-966-JP-B)、黒色の長毛ウィッグ(以下SCP-966-JP-C)の3パーツに分解することができます。SCP-966-JP-Aには市販のホール及びウィッグを装着可能ですが、SCP-966-JP-BとSCP-966-JP-Cを同時に装着していない場合は異常性が発現しません。一般的なラブドールと異なり、瞼は閉じています。指で持ち上げる等、人為的に瞼を開くことが出来ますが、シリコンの弾性によって閉じているのが正常な状態です。 SCP-966-JPの異常性は、全パーツを組み合わせて擬似性交に用いる時に発現します。SCP-966-JPを用いて擬似性交する意思を自ら持ち、実際に擬似性交し、SCP-966-JP-B内に射精(以下これらの一連の行為を使用と記述)すると、使用した人物の生殖器は形状と位置が変化していきます。生殖器の変化が認められた者はSCP-966-JP-1に分類されます。人間以外の動物、性愛を感じない等の理由で擬似性交する意思を自ら持たない人物及びSCP-966-JP-B外で射精した人物は、擬似性交を行っても変化が起こらないことが確認されています。SCP-966-JP-1は、それ以前の人格より凶暴性が脱落します。個人差がありますが、人格の変容後は「物わかりが良い人物である」といった評価がなされます。また、自身の性欲をSCP-966-JPの使用においてのみ発散することを望みます。 生殖器の変化は、陰茎及び陰嚢の縮小、尿道及び尿道口の拡張、精巣の膀胱上部への移行を含みます。この変化は不可逆です。使用に応じて徐々に変化していきますが、一定の形状になると変化は収束します。変化収束後のSCP-966-JP-1の生殖器について、男性器の構造物を用いて女性器を模しているのではないかとの仮説が提唱されています。変化中から変化収束後も、SCP-966-JP-1になる以前のように完全な精子を作ることが可能です。SCP-966-JP-1は、自身の変化が使用したオブジェクトの異常な機能によるものであることを認めながら、「可能性が拓けたようだ」「彼女2にも変化を喜んで貰いたい」等の肯定的な反応を示します。 SCP-966-JP-1がSCP-966-JPを使用する時、射精後の精子は不明なメカニズムにより瞬間的に消失します。また、使用時にSCP-966-JP-1の尿道口が██mm以上であると、SCP-966-JP-Bから██cmの突起が出現しSCP-966-JP-1の尿道口に挿入されます。尿道内に設置されたマイクロカメラの映像と超音波検査により、突起の先端から生じた触手状の物体がさらに奥へ進入をしていることが分かっています。これはSCP-966-JP-1の精子を採取するためと推測されていますが、採取自体の目的は不明です。擬似性交が停止する3と突起は消失します。 Dクラスを対象にした実験中の脳波測定から、生殖器の変化及び擬似性交の形態の変化には相応の痛覚を伴うことが判明しています。しかし、使用した人物は感想を求められると「とても良かった」旨のみを述べ、痛みを自主的に報告しません。 以下は、特異な結果が現れた実験記録です。 実験記録XXX-12-14 - 日付20██/██/██ 対象: SCP-966-JP-1-12(D-13862。34歳日本人男性。生殖器の変化が実験12-9から見られなくなっている) 実施方法: 生殖器の変化収束後のSCP-966-JP-1がSCP-966-JPを継続使用する場合の影響の調査。SCP-966-JP-1-12にSCP-966-JPを通常の方法で使用させ、映像記録を取る。 結果: SCP-966-JP-1-12は、しばしば「見ていて欲しい」と未知の相手へ懇願。SCP-966-JP-1-12のオーガズムと同時に、擬似性交の結合部からSCP-966-JP-1-12の下腹部にかけて断裂が生じ、SCP-966-JP-1-12と酷似した成人男性が排出される。SCP-966-JP-1-12は男性の排出と共に半透明の薄い皮状の物体に変化したように見える。男性は排出時に詳細不明の実体を抱えていたが、実体は2秒後に消失した。 SCP-966-JP-1-12から生じた人物はSCP-966-JP-1-12-aと分類されました。SCP-966-JP-1-12-aについて、精子製造機能が失われていることを除けば、外見・DNA・生殖器の状態や身体能力が、実験12-14前に確認したSCP-966-JP-1-12のデータと一致することが分かっています。また、実験12-14以前のSCP-966-JP-1-12の記憶を有することが尋問から判明しています。回収された皮状の物体からは、SCP-966-JP-1-12のDNAを持つ皮膚・筋肉・大脳・精嚢など人間の全身の細胞が検出されました。SCP-966-JP-1-12-aが抱えていた実体は、映像解析からSCP-966-JP-AとSCP-966-JP-Cの特徴が見られました。 SCP-966-JP-1-12-aは、性格特性測定試験においては一般的なSCP-966-JP-1と同様の結果を示しました。実験12-14後の調査に非常に協力的でしたが、実験中に排出され消失した実体について問われると「分からないが、見守って貰っていたのに失敗したような気分だ」と回答し、その後は軽度の抑うつが見られました。 実験の結果を受け、他のSCP-966-JP-1にも変化収束後使用実験が実施されましたが、腹部から何らかの実体が生じたのはSCP-966-JP-1-12のみでした。現在までSCP-966-JP-1-12-aが生じた理由及び条件は判明していません。 補遺: SCP-966-JPは20██/██/██に██県███市で起こった窃盗事件で、犯人の自室から証拠品として押収されたものです。保管されていた警察署内において「こちらを見ていて可愛い」という噂が流れたことで、潜入中の財団エージェントの注意を引きました。その後、窃盗犯と被害者である██ █氏が共にSCP-966-JP-1であったこと、SCP-966-JPは██氏が他者から譲り受けたものであったことが発覚しました。窃盗犯は「空き巣に入ったら使って欲しそうな視線を受けたので持ち帰って使った」と供述しています。██氏はSCP-966-JPについて「ウェブサイトで知り合った『粗茶』というハンドルネームの人物から受け取った。使用したと言っていたが新品同様だった」と述べました。窃盗犯と██氏の尋問において上記以上の情報を得られなかったため、解放して記憶改ざん処置を施し、通常の窃盗事件として警察へ処理が返還されました。潜入エージェントによる監視が続けられています。██氏以前の持ち主である「粗茶」氏は、素性を特定したところ行方不明者として登録されていました。 追記: 「SCP-966-JPに見つめられる」といった類の報告が██回にわたってなされていますが、これまで財団が把握している全てのSCP-966-JP関連映像記録を解析した結果、SCP-966-JPが瞼を自発的に開けていた事実は存在しません。何らかの幻覚作用があるものと見られており、調査中です。 Footnotes 1. 人間に近い造形の人形のうち、セクシャルな機能を持つもの。 2. SCP-966-JPを指している 3. 対象のSCP-966-JP-1が離れる・終了する等の結果
scp-967-jp
評価: +14+–x アイテム番号: SCP-967-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-967-JPはサイト-8168に建造された耐熱・耐爆機能を備えた100×100mの樹木管理用設備内に収容され、結実が確認された個体は冷却材を噴射しつつ速やかに伐採され、焼却施設にて処分されます。管理設備内での作業は耐火服及び簡易的な消火が可能な装備を装備したDクラス職員によって行われます。SCP-967-JPは肉眼での観察および非破壊検査では通常のクロマツとの判別が困難であるため、現在収容がなされていないSCP-967-JP個体の捜索には赤外線サーモグラフィを使用した温度計測が用いられています。20██/██/██時点で2██本のSCP-967-JPが回収され、うち██本が観察・調査用に収容されそれ以外の個体は焼却処分されています。現時点で収容がなされていないSCP-967-JPの本数は不明ですが、現在の捜索および回収された個体の観察から収集されたデータを鑑みSCP-967-JPの完全収容は凡そ1█年以内で完了すると考えられています。 説明: SCP-967-JPは外見上は一般的なクロマツ(学名:Pinus thunbergii)に酷似した樹木です。通常のクロマツとの組成等の差異は後述の特異性のためサンプル採集が困難であるため判明していません。 SCP-967-JPの第一の特異性は何らかの理由で樹木に物理的損傷が生じた際に確認されます。SCP-967-JPが損傷を負うと本来のクロマツと比較して明らかに粘度が低い樹液(以後SCP-967-JP-1と呼称)が非常に高い液圧を伴って即座に流出します。SCP-967-JP-1は流出直後の時点で100℃前後と非常に高温であり、加えて空気と接触することで最大███℃に達します。SCP-967-JP-1は流出後約1~3時間で温度の上昇が収まり徐々に冷却され、最終的にはSCP-967-JPに生じた損傷を覆う痂皮状の結晶を残して消失します。SCP-967-JPはSCP-967-JP-1の熱による影響は一切受けず、また損傷が生じない限り表面の温度は通常の樹木と何ら差異はなく直接接触による影響はありません。 SCP-967-JPの第二の特異性はSCP-967-JPが結実、成熟した際に発生します。SCP-967-JPの種子(以後SCP-967-JP-2と呼称)が成熟した後、不定期なタイミングでSCP-967-JPは内部から爆散し、周囲に大規模な火災を発生させます。その火災によって発生した局所的な上昇気流を利用して、クロマツと同じく種子翼を有する種子を上空2██mまで浮遊させ、広範囲に拡散させます。SCP-967-JP-2もSCP-967-JP-1による熱の影響を受けない事が確認されています。 上記の特異性により発見された山中に限らず広範囲にSCP-967-JP-2が広範囲に展開され、必然的にSCP-967-JPが分布している可能性が高いと考えられます。調査の結果SCP-967-JP群を収容した山中を中心として広い範囲で火元不明の不審な山火事が██件確認されました。 SCP-967-JPが発見されたのは京都府██市に存在する山中で、調査の結果とある個人の所有する私有地に密集して存在しており、捜査の結果2██本のSCP-967-JPが収容されました。 SCP-967-JPは本来のクロマツと比較して成長速度が非常に不安定であり、この性質は必然的に結実までの周期の不確定さも表しており、このため収容後しばらくの間はSCP-967-JPの持つもう一つの特性の発見を遅らせる結果となりました。
scp-968-jp
評価: +74+–x アイテム番号: SCP-968-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 新たに発見された異常性を持つSCP-968-JPの歌唱記録はSK968-JP編集指示書に沿って編集されます。セキュリティクリアランスレベル3以上を持つ職員のみがこれを閲覧し、編集作業を指示してください。編集が不可能な媒体の場合は破棄されます。 List-968-JPは24時間に一度、スキャンされ「遺留品なし」の被害者の有無を確認し、認められた場合にはプロトコル”山中模索”によって遺留品が作成されます。 説明: SCP-968-JPは『████████』(米題:『██████』)として知られる楽曲の歌手の███氏による歌唱です。楽曲自体は特異な性質を持ちませんが、███氏による歌唱音声が含まれた記録には異常性が発現することに留意してください。 SCP-968-JPをイントロ部分から楽曲の最後まで聴いた人物(以降、SCP-968-JP-Aと呼称)はその場から消失し、消息不明になります1。同時にSCP-968-JP-Aは19██/██/██に国内で発生した貨物機墜落事故の公的な記録群に名前が出現し、一般的な認識の下で事故の犠牲者に数えられます。加えてSCP-968-JP-Aの三親等以内の親族の記憶も当該事故で死亡したと改竄されます。しかしこれは改竄の影響下に無い第三者から見て整合性が有るものではありません。極端な例としては貨物機墜落事故以降に出生した人物がSCP-968-JP-Aとなっても、記憶を改竄された親族は違和感を抱くことなく、対象の死と思い出を語った例も存在します。これらの記憶の改竄に対する記憶処理は効果を得られません。 + インタビューログSCP-968-JP-A-330M1 - 閉じる 対象: ████氏(SCP-968-JP-A-330の母親) インタビュアー: エージェント・██ 付記: SCP-968-JP-A-330は200█/██/██に実験によって曝露された貨物機墜落事故以後に出生したDクラス職員です。当インタビューは改竄された記憶についての調査を目的にしています。 <録音開始, [20██/██/██]> エージェント・██: では██さん(SCP-968-JP-A-330の本名)のことについてお話願えますか? ████氏: あの子が乗ってた[編集済]便2が堕ちたって聞いた時は信じたくありませんでしたよ。火を付けて人を殺したって聞いた時も信じたくありませんでしたけどね。何にしても、遺体が見つかってない以上は今も生きてると私は信じてますよ。例え人様に顔向け出来ない事をしたとしてもです。 エージェント・██: 念の為にお聞きしますが、息子さんは墜落事故の後にお生まれになったということで間違いないですか? ████氏: ええ、私がお腹を痛めて産んだ子です。事故のニュースを見る度にとても悲しい思いをしましたが、無事に生まれてくれて、あの時は本当に良かったです。 エージェント・██: 事前にお答えいただいた質問だと、事故当時はご結婚もまだだったとありますが…… ████氏: ええ、そうですが何か? エージェント・██: ……息子さんが亡くなった時の年齢はおいくつでしたか? ████氏: 2█でしたね。 エージェント・██: 墜落事故で亡くなったのが2█だったんですね? ████氏: ええ、その……事件を起こしたのは(事故に)巻き込まれる2年前でしたが。 エージェント・██: えっと、██さんが事件を起こしたのが200█年で、亡くなったのが201█年ということですか? ████氏: いいえ、事故に巻き込まれたのは19██年です。 エージェント・██: ……わかりました、ありがとうございました。 <録音終了> 終了報告書: 他の対象同様、対象は改竄による矛盾について何も感じていないようです。 SCP-968-JPの異常性は19██年██月██日に発生した貨物機である[編集済]便の墜落事故の直後に現れたと推測されています。歌唱者である███氏も自身の歌唱によって墜落事故同日の興行先でマネージャーの████氏と共に観客██名と共に異常性に巻き込まれ、[編集済]便の搭乗者として記録に名前が現れたことが確認されています。 SCP-968-JPは国内のみならず、国外でも広く知られた楽曲であったため、その被害は広範に渡っています。結果、収容プロトコル確立までに[編集済]便の規模を大幅に超える人数がSCP-968-JP-Aとして確認されたため、財団は墜落事故を民間航空機のものとして隠蔽しました。現在までに███名が確認されています。しかしながら、異常性を持つ歌唱記録は墜落事故発生以前に存在していたものに限定されており3、収容が進んだ現在ではSCP-968-JP-Aの発生件数は年間1件を下回る値になっています。 + 閲覧にはセキュリティクリアランスレベル3以上の認証が必要です - 認証しました 財団は貨物機[編集済]便の墜落現場から1つのトラベルキャリーバッグを回収しました。内部にはガムテープで簀巻きにした丸められた毛布が残っており、そこに付着した血液と唾液のDNAがSCP-968-JPの歌唱者である███氏の者と一致しました。これまで███氏と墜落事故との関連は一切無いものとされてきましたが、この調査により███氏が事故に巻き込まれた結果がSCP-968-JPであるとの仮説が立てられました。以下はそれを裏付ける可能性があるマネージャーの████氏の通話記録です。通話先は歌唱者の███氏所属事務所の社長であり、録音データも所属事務所にあった電話機から回収されました。これは事務所社長がマネージャーの████氏が実行役として動いた証拠として録音していたものと考えられています。尚、録音記録の背後にSCP-968-JPが流されていますが、当引用記録では途中からの再生になるため異常性の発露は有りません。 <再生開始, (19██/██/██)]> ████氏: [背後では観客のものと思われるざわめきも聞こえる]社長、落ちたってどういうことですか!? 事務所社長: 落ちたんだよ……█4を乗っけた飛行機がな。 ████氏: [絶句] 事務所社長: いいか、とりあえずそっちはそのまま曲を流して客を抑えろ。それで乗り切れ、しばらくしたら急病で ████氏: だから私は反対したんだ!バッグに詰め込んで無理矢理次の仕事先に送るなんて正気の沙汰じゃない! 事務所社長: おい、喚くんじゃない。最終的に簀巻きにして詰め込んだのはお前だろう?本気にするとは思わなかったがな。ともかく嗅ぎ付けられるわけにはいかない。それに落ちたから死んだとは限らんだろう。 ████氏: 私は共犯じゃない!アンタに脅されて従っただけだ!私が殺したんじゃない! 事務所社長: ガタガタ抜かしてんじゃねえぞ、この[罵倒] ████氏: [罵倒] [████氏の背後で流れていたSCP-968-JPから未知の旋律と歌詞が流れ始める] 事務所社長: [罵倒]……おい……なんで█がそこにいるんだ ████氏: 何言ってるんですか [受話器が落ちたと思われる音が2つ、背後に流れていたSCP-968-JPは終了しており、観客のざわめきも聞こえない] <再生終了> 異常性を持つSCP-968-JPの歌唱記録には改竄により追加された僅かな旋律と歌詞が存在します。内容は特定個人複数に対する[編集済]です。SK968-JP指示書は主にこれを削除するための作業手順が示されていますが、イントロ部分から再生した場合、一時停止、巻き戻し、スキップ、倍速再生などを行った場合でも最後まで視聴した場合には異常性が発現することがわかっています。これにより担当職員に少なからぬ被害が出ており、収容当初に職員の士気低下が頻繁に見られました。これらを防ぐために一部情報はクリアランス制限が設けられ、偽情報の記載と閲覧制限が設けられています。 Footnotes 1. 装置による追跡実験は全て信号の途絶という結果に終わっています。 2. 墜落事故を起こした貨物機 3. 異常性を持つ記録の複製には異常性も含まれる事に留意してください。 4. 歌唱者の下の名前
scp-969-jp
  評価: +62+–x アイテム番号: SCP-969-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-969-JPはサイト-81FA内、第三棟のSCP-969-JP専用区域の収容室に収容されています。SCP-969-JPの収容される区域はD-701以上の遮音性能を維持され、収容室内へ入る人員は指定のクラスⅣ防音装備を装着する必要があります。 SCP-969-JP-1に暴露した被害者の治療は、クラスF記憶処理手順の利用を含む催眠療法により行われます。担当医師は手順庚-178"躾直し"を参照してください。 第三棟内に配置される人員は毎日担当医師による精神鑑定を受け、問題がある場合は直ちに手順庚-178が実行されます。この人員は担当医師を含め、月毎のシフトで交代されます。 説明: SCP-969-JPはおよそ150Lの自発的に活動、変形する黒色の粘液の集合体です。壁や地面に貼り付いて常に移動し続けています。採取されたサンプルは異常性を持たない通常のインクへ変化しました。 SCP-969-JPは不定期に音声(SCP-969-JP-1)を発します。SCP-969-JP-1は人間の聴覚において、常に男性が未知の言語を不明瞭に話しているように認識されます。SCP-969-JP-1を認識した被験者はいずれもが不安を訴えました。SCP-969-JP-1を認識した対象は以後、自宅、もしくはそれに準ずる生活空間において下記のような種々の幻聴を報告します。 非常に大きないびき。 流水音。 男性の咳及びくしゃみ。 激しい足音。 オイルライターを擦る音。 鍵が開く音。 男性の笑い声と、不明瞭な音声2。 飲料缶のプルタブを開ける音。発泡酒であると推察される。 対象は自宅にいる間苦痛を感じ、積極性を著しく欠くようになります。自宅からの外出、他者との会話を始めとして、給水・排泄等の生命維持活動を含むあらゆる意識的な活動を限界まで行おうとせず、必要な場合も周囲に注意しながら恐怖を伴って実行します。発見された全ての対象は、一日のほとんどを自宅内における自らのパーソナルスペースから出ずに過ごしていました3。強制的な自宅からの退去や転居は一時的に被験者を回復させますが、新たな自宅で間もなく症状は再発します。 また、SCP-969-JPは自身を内包する建造物内の人間の一部にも、緩慢に進行する軽度の影響を及ぼすと考えられています。影響の対象となる条件は不明です。 この影響の対象となった人間は徐々に他者に常に怯えを持って接し、他者が発する生活音、特に足音に恐怖するようになります4。影響の結果として、対象は殆どの人間関係を徐々に自ら破棄します。SCP-969-JPを含む建造物にいる間対象は苦痛を感じますが、その外へ出ている間は罪悪感に近い感情を抱くようです。 この影響はSCP-969-JPの収容から3年経過した後に発見され、影響を受けた██名の職員は治療を受けました。SCP-969-JPをサイト-8153から新設されたサイト-81FAへと移送し、最低限の設備のみを有した第三棟に隔離しました。 いずれの場合であれ、対象の治療に有効な唯一の方法は、幼少期の記憶の完全な破壊です。 補遺: サイト-8153での相次ぐ精神異常被害の治療経過について、琳谷博士のレポート(未完成) 医療部門より、成功の報告です。 私はサイト-8153へ訪れ、ここで起きているいくつかの精神汚染事例の治療及び探究を試みました。通常通り、彼らと面接をしながら色々な薬物療法を試し、外の精神科で処方される薬が効果をなさないとわかると記憶処理薬で記憶の破壊を試みました。ですが、患者のいずれにも単純な記憶処理は無意味でした  サイト-8153に滞在していた期間の記憶ではなく、より深層の記憶に影響を及ぼされているようです。 ですので、私は記憶改竄の手続きを取りました。彼らを催眠状態にし、一つ一つ彼らの思い出を語らせながら、適所で記憶処理薬を投与し、新たな記憶を吹き込む作業です。 異常な影響が見られたのは幼少期の記憶でした。患者は全員がそこに恐怖を報告し、煩く、荒々しく、そして巨大な影の存在が彼らの家庭の記憶にちらついていました。影がいる間、彼らはじっと息を潜めてそれが通り過ぎるのを待っていたと報告しました。その影は明らかに現在の彼らの状態へ関与しているようでした。 私は薬剤を投与し、そんな影はいなかったと言い聞かせ、平凡な家庭の記憶を植え付けようとしましたが、強硬な抵抗を受けました。 彼らは影に恐怖を覚えながらもその庇護下にあろうとし、潜在意識では影に頼ろうとしていたのです。私は改竄を諦め、より強い手順と催眠でその記憶だけを徹底的に破壊することにしました。私は[検閲済] 治療は完 根本的な人格矯正、もしくは 他人に対 てきた ごめんなさい。 琳谷博士はレポートを作成していたオフィスにおいて死亡していました。現場の状況と博士の頭蓋骨の陥没から、博士は自ら頭を掴み、壁や机に強く頭を叩き付けて死亡したものと推定されています。琳谷博士の臍周辺から胸部の皮膚には、博士自身によって多数「家庭の平穏」というインクの文字列が書かれていました。同じ箇所に博士自身によるものと思われる殴打の痕も確認されています。琳谷博士のデスクは物が散乱しており、レポートの不自然な編集からも死亡直前の博士が極度に錯乱していたことが予測されます。職務は諸知博士に引き継がれ、異常性の特定と治療手順の検証が完了した後に収容プロトコルが改定されました。 琳谷博士の死亡推定時刻、SCP-969-JPは大きく変形しました。 変形したSCP-969-JP 補遺-2: SCP-969-JPは、大阪市のアパートメントの一室で発見されました。以前の居住者の所在は不明です。 Footnotes 1. 建築物の2室間の遮音性能を示す値。D-65でピアノなどの大きな音はほとんど壁を通らなくなる。 2. 対象はテレビの音であると報告します。 3. より具体的には、大抵の場合対象は自室で膝を抱えたまま震えて時間を消費していました。 4. この状態の対象に背後から近付くと、極端な驚きと恐怖を持って振り返ります。
scp-970-jp
評価: +130+–x 発見時のSCP-970-JP-A群 画像視認による影響は確認されていません。 アイテム番号: SCP-970-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-970-JPの影響範囲への一般人の接近は土砂災害危険地帯を建前に阻止されます。侵入者を検知した場合、直ちに排除/記憶処理を行ってください。収容業務には19歳以上65歳未満の職員が割り当てられます。全てのSCP-970-JP-Aはサイト-8170に収容されます。 説明: SCP-970-JPは日本の[編集済]にある公園です。SCP-970-JPからおよそ█ km以内の領域に存在する65歳以上の人間は、「公園で遊びたい」という強い衝動にかられ、SCP-970-JPを目指して移動し始めます。SCP-970-JPに立ち入った対象はその場から消失します。その24時間後、対象が消失した地点にSCP-970-JP-Aが出現します。 SCP-970-JP-Aは全長2 m前後の藁束です。SCP-970-JP-Aの内部には、消失した対象の頭部が入っています。その生首は凍結しており、また鋭い刃物のようなもので首を切断された形跡が確認されます。 SCP-970-JP-Aはミーム的異常性を有します。SCP-970-JP-Aを視認した18歳以下の人間はその影響を被り、SCP-970-JP-Aを「その季節の風物詩及びローカルな遊具」であると認識します。また、その遊び方について「解体し、中にある生首を雪合戦の雪玉のように用いて、人とぶつけ合う」という風に理解します。 生首をぶつけ合って遊ぶ暴露者達の様子は、非常に楽しんでいるように観察できます。生首となった人物と面識のあった暴露者は、「おじいちゃん久しぶり」「おばあちゃんこんなところにいたんだ、心配してたんだよ」などと言いながら、高揚感を示す表情で生首を手に取っていたようです。この影響力は記憶処理で解消させることができます。 解体されたSCP-970-JP-Aはその異常性を失います。現在財団は未解体のSCP-970-JP-Aを██体収容しています。 SCP-970-JPによって発生した生首を検査した結果、直接的な死因は低体温症である公算が大きく、死亡してからおよそ2ヶ月以上が経過していることが判明しました。Dクラス職員を用いた対象の消失後の移動先を特定する試みは、GPS信号の途絶という結果に終わりました。消失している間の被験者がどこに存在しているのかは、未だに分かっていません。
scp-971-jp
評価: +67+–x アイテム番号: SCP-971-JP 機動部隊く-1”飛行艦隊”が撮影した交戦中のSCP-971-JP。 オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-971-JPは東経███度、北緯██度の太平洋上に存在し日本政府とアメリカ合衆国政府の協力下で監視されます。SCP-971-JP内の復興事業は財団と日本政府が率先して行う事が決定しており、これらの資金協力はアメリカ合衆国政府が行います。 SCP-971-JP内部の状勢は新SCP-971-JP内政府に派遣された20名のエージェントによって随時報告され、財団からの直接的な新SCP-971-JP内政府に対する指導や指示は米日971-JP間休戦協定により禁止されています。 SCP-971-JPの規模は財団の収容許容範囲を超えており、直接的な対象の収容は困難です。その為、SCP-971-JP近海の海上には軍艦3隻とスクラントン現実錨を搭載した駆逐艦が配置され、これらの監視に留められています。 新SCP-971-JP内政府からの宣戦布告が行われた場合は機動部隊く-1”飛行艦隊”に事態が報告され、SCP-971-JP応戦プロトコルに則ったうえで即時戦闘が行われます。 説明: 2000年現在SCP-971-JPとは休戦協定を結んでいるのみであり、その膨大な規模や軍事力の完全なる抑制には至っていません。また、これらの協定の破棄がどの段階で行われるかも明らかになっていません。 SCP-971-JPは熱気球の形状をした侵略用空中要塞および国家です。対象の球皮(エンベロープ)内は既存の時空法則を大きく逸脱しており、内部には総面積120,000km²の階層が計2000階存在します。 SCP-971-JPの階層は大まかに分けて三種類に分類され、主に「居住階層」、「軍事階層」、「生産階層」と呼称されています。外見部分から見た階層の大まかな区分に関しては第1階層は球皮頂点の部分に位置し最下層は球皮の最下部分に位置します。 SCP-971-JP内部はその外見上の見た目とは異なり既定の大型戦艦に起用される内部構造と多くの類似点が見られます。その為、壁や床などの構成要素の全てが金属製(恐らく鉄である。)の素材で構築されて、ハッチ、連絡管、各メーター等が機関部分と推定される箇所に多く見られます。しかし、天井部分はそれぞれの階層で消失しており、これにより階層内部から外部の様子の確認が可能となっています。 SCP-971-JP内では大多数の人型実体が生活しており、自らをカメドニア人(以下、SCP-971-JP-A)と自称しています。対象の見た目は通常の人間と同様の外見をしており、体質や生物学的にも人間と大差ありません。 SCP-971-JP内は一国家として独立しており、その国家体制は典型的な軍事独裁国家の様子を呈しています。その為、総人口9億2000万人の半分を占める男性全員が兵士として活動しており、内部に置かれている学校機関の教育内容も殆どが軍事的戦略に関する知識や兵器運用についての講義に集中しています。また兵士以外のSCP-971-JP-Aにも内部の消費物の生産に関わる職が割り当てられています。 SCP-971-JP内政府は常に地上への侵攻を軸にした政策を行使しており、侵略行為および交戦時の作戦立案本部としても機能します。これらの政策や作戦はSCP-971-JP-Aの有する第二次世界大戦前の歴史認識に基づき決定されており、「かつて旧SCP-971-JP国家は地上に君臨し絶対的権力と勢力をもって世界を支配していた。しかし大戦勃発による列強諸国からの武力制圧に耐えきれずSCP-971-JP内に避難した。」と認識されています。これによりSCP-971-JP内政府はSCP-971-JPからの脱出および旧SCP-971-JP国家の再建を模索、地上への侵略行為はそれの達成の為であると思われます。 休戦協定が結ばれる1999/11/7以前は3名のSCP-971-JP-AがSCP-971-JP内の全国民を指導しており、事実上の独裁国家を構築していました。しかし、財団機動部隊による最高指導者の排除により指揮系統を喪失したSCP-971-JP内政府は機能を喪失、現在の状態へと移行しました + 階層区分 - 閉じる 階層区分 ・居住階層-第1階層~第512階層 一般居住区 第1階層から第400階層は主に一般兵役の任につく階級のSCP-971-JP-Aの居住区となっている。内部の様子は金属製の床と、同素材で作られた立方体状の家屋が等間隔で立ち並んでおり、家屋内では様々な家族構成が展開されている。また、これらの特徴として単身者が存在していないというものがあり、SCP-971-JP内政府の介入により一家庭には最低1名以上の子供を設けることが義務付けられている。これらの指導は人的資源の枯渇を未然に防ぐ為の処置だと推測される。 上級居住区 第401階層から第512階層ではSCP-971-JP内政府勤務の階級、最高司令部直属の階級を所有するSCP-971-JP-A専用の居住区となっている。この階層に建てられている家屋は第1階層の家屋と同素材で作られてはいるものの内部の装飾の豪華さや一家屋の面積の広さなどの違いが見られる。なお、これらの居住区には頻繁に入れ替わりがあり、一般居住区から勲章授与に伴う出世などによりこの上級居住区に移住する家庭も存在する。これらも優秀な人材を選別しかつ実力重視の社会形成の中で競争を生み出すために誘導されている人為的傾向だと思われる。しかし、これらの規則も既に形骸化の傾向が見られ、内部の権力状勢はSCP-971-JP内の3名の最高指導者とその側近に当たるSCP-971-JP-Aにのみ集中している。その為、一般階級と上級階級での貧富の差は拡大している傾向であり、配給制により食料などにそれらが顕著に現れている。 ・軍事階層-第513階層~第1711階層 飛行場区画 第513階層から第540階層は飛行場として機能しており、第二次世界大戦時のドイツ空軍が使用していたメッサーシュミット Bf109やアメリカ陸軍のロッキード P-38 ライトニングの特徴を有する戦闘機をそれぞれ1200機保有している。これらが発進する際はSCP-971-JPの球皮側面が開き、そこから飛び立つ。また帰投する際も同様の方法で行う。 主砲区画 第541階層から第1555階層の区間は主にSCP-971-JPに搭載されている主砲や機関砲、機関銃などの設置使用区間となっている。主砲は8.8cm砲に類似した兵装を使用し、機関砲の形状はM242 ブッシュマスターと、機関銃の形状はブローニングM2重機関銃と酷似している。これらを使用する際は飛行場区間同様に球皮側面が開閉し、そこから該当する兵装の銃身を外部に露出させて砲撃を行う。これらを格納する際はこれと逆の工程を行う。SCP-971-JP-Aが使用する兵器や武装は火薬を使用しておらず、それぞれ電気式の高密空気圧縮機を内蔵し全ての実弾は空気圧を利用して発射されている。なお、これらの兵装と飛行場区画からの戦闘機の離陸は同時には行えず、それぞれの区画の利用工程を終えてから別の区画が利用される。 兵器庫 第1556階層から第1711階層は兵器庫および地上降下兵待機区画となっている。SCP-971-JP-Aが主に使用する武器は弾倉付きボルトアクション式ライフルと似た形状の兵装であり、これらの装備にもそれぞれ電気式の高密空気圧縮機が内蔵されている。SCP-971-JP-A兵の中には地上に降下してくる兵士も存在し、背中にバッテリーが付属された甲冑に似た装備の着用が義務付けられている。これらの装備の可動部分には機械で作られた人口筋肉が備え付けられており、兵士の動きや肉弾戦などでの行動をサポートしている。 前述した兵装は球皮側面からの出現および発進直後は幾分か縮小されたサイズで存在しますが、SCP-971-JP外へと排出された瞬間に実物大へと変化します。これらの影響は降下してくるSCP-971-JP-Aにも適用します。 ・生産階層-第1712階層~第2000階層 生産階層 これらの階層は主に武器生産、および食料や衣服などの生活必需品などを生産している区画である。それらの製造に関わる材料や食料となる野菜や家畜などの物資は全てこの階層で生産、飼育されており、この階層のみ土や植物などの自然物が観測できる。武器生産や実弾の材料には死亡したSCP-971-JP-Aの遺体を使用しており、これらの対象は戦死した、または寿命で死亡したSCP-971-JP-Aが該当する。現在これらの明確な加工方法などは未だ解明されていない。武器生産に利用される工場の稼働や居住区のライフラインを支える電力の発電もここで行われている為、内部には大規模な発電施設が併設されている。 SCP-971-JPのもう1つの特徴としてゴンドラ部分にある「時空操作装置」と呼称されている装置が挙げられます。この装置の目的は主に球皮内の時空異常の操作であり、これによって内部で観測される空間的異常が発生していると思われます。なお、これら機械の正確な原理は未だ解明されておらず、財団職員による操作を一切受け付けないことから完全なる抑制には至っていません。 この装置に関する担当研究者の見解では、これらの装置は人為的に現実改変的事象を発生させる為に設置されていると推測されており、これらの構造には本来これ程の事象を発生させるに足る機能は有していないとケルトんずけられています。また、この装置は被攻撃時にはSCP-971-JP自体の防衛装置としても機能し、その際は対象に対する攻撃全てが透過する、または不可視状態へと移行するという事象を発生させます。 これらの機能は財団所有のスクラントン現実錨を使用することによって抑制が可能であり、SCP-971-JPとの交戦時にもそれの利用が推奨されています。しかし、それら装置の継続的な使用による収容維持はコスト面および継続的なエネルギー供給の観点から現実的に困難であるため、戦闘時の対応策として現在もSCP-971-JP近海に配置されるのみの状態を維持しています。 補遺1: SCP-971-JPは1998/1/2に発生した財団保有のオブジェクト護送用船舶の襲撃事件を切っ掛けに発見されました。当時、石油タンカーに偽装された護送用船舶はSCP-████-JP(収容当時のナンバリング)を護送中でした。しかし、回収地点から出航しておよそ10日目の深夜2時、突如上空からの砲撃を受け船舶は沈没、SCP-████-JPが破壊されるという事案が発生しました。これにより任務に参加していたエージェント3名、研究員10名、機動部隊12名が死亡。後の調査によりこの攻撃はSCP-971-JPによるものであることが判明し、当時のSCP-971-JP内政府は攻撃目標を日本へと指定、その目標へ運ばれる物資の破壊を目的とした作戦行動であったことが判明しました。なお、当時のSCP-971-JP内政府はこれに対して「大日本帝国の資源輸送船が我々の領海内に侵入した。また、その乗組員は武装しており、これは立派な領海侵犯かつ宣戦布告である。これより、我々カメドニア第三帝国は大日本帝国に宣戦布告する。」と主張し、前述した内容の放送を日本国政府へと発信しました。 この事件により財団はSCP-971-JPを認識。なお、対象の出現は突発的に発生したものと思われ、船舶内に置かれていたセンサーおよび回収したブラックボックスにも対象に該当する反応は一切記録されていませんでした。この報告を受け、O5評議会はすぐさまSCP-971-JPの収容作戦の実行を決定。作戦開始からおよそ1年後、機動部隊艦隊によるSCP-971-JP内政府の無力化と共に日本政府とアメリカ合衆国政府の立会いの下でSCP-971-JPとの休戦協定が結ばれました。 以下はSCP-971-JP攻略作戦の概要です。より詳しい概要を閲覧する場合は機動部隊く-1”飛行艦隊”所有の作戦資料を参照してください。なお、これらの資料閲覧の際には機動部隊隊長の来愛 宗一郎隊長の許可が必要になります。 攻略作戦概要: これらの作戦は機動部隊く-1”飛行艦隊”の指揮のもと行われました。 第一回対SCP-971-JP攻略作戦概要 SCP-971-JP内部威力偵察作戦・鬼殺し作戦概要 第二次鬼殺し作戦概要 第一回対SCP-971-JP攻略作戦 概要: 開始:1998/1/3 作戦目標:SCP-971-JP 本作戦はSCP-971-JPの異常性の特定の為に行われ、戦闘には遠隔操作が可能な駆逐艦5隻、無人戦闘機2機が使用された。なお、この時点でSCP-971-JP内政府からの宣戦布告が行われており、本作戦においては財団機動部隊による目標の攻撃が許可されていた。 結果: SCP-971-JP主砲により駆逐艦3隻が撃沈。無人戦闘機および残り2隻の駆逐艦は大きな被害を受けなかった。これにより目標の主戦力を把握。しかし、この戦闘中に駆逐艦1隻の操縦が不能になる。これはSCP-971-JP側が駆逐艦の遠隔操作を認識したことに起因し、遠隔操縦を担当していた機動部隊が乗員していた船舶一隻にSCP-971-JPの降下兵が乗り込んできたことによる近接戦闘へと発展した為である。これにより機動部隊員9名が死亡。船舶の自爆により降下兵の処理に成功した。 この後、SCP-971-JPに対する本格的な交戦作戦が決行されました。なお、当時は今作戦を最終作戦と仮定していたため機動部隊はこれを本対SCP-971-JP攻略作戦と命名。しかし、SCP-971-JPの収容失敗及び全艦隊即時撤退という結果により第二回対SCP-971-JP攻略作戦に改名されました。 以下は当時使用された兵科のまとめです。 使用兵器 ・空母二隻 ジョージ・ワシントン、ジョン・C・ステニス ・ミサイル巡洋艦三隻 CG-71(ケープ・セント・ジョージ)、CG-73(ポート・ロイヤル)、CG-72(ヴェラ・ガルフ) ・イージス艦二隻 DDG-68、DDG-69 戦闘期間は1998/1/5~1998/3/19を有し、結果、戦闘初期段階では財団機動部隊艦隊側の戦闘機と射程範囲外からの巡航ミサイル攻撃により一時期は優勢に運びました。その際、SCP-971-JP側は撤退行動と思われる動きを見せ、作戦本部は対象の収容を目的とした作戦行動へと移行。しかし、突如SCP-971-JPが消失するという事案が発生、そのおよそ12秒後、対象が艦隊後方に出現し同時に砲撃を開始。相手側主砲と戦闘機による攻撃の激化が確認された為、全部隊の即時撤退が行われました。 + SCP-971-JP担当研究班の見解 - 閉じる 我々SCP-971-JP研究班は、目標からの攻撃方法、発射された砲弾の拡大現象などの様子から対象の内部では時空間の異常、もしくは現実改変的事象が発生していると考えています。また、味方艦隊に設置させていた計数機の数値を観ましても、ヒューム値測定の結果から対象の一時的な時空間の平行移動の可能性が極めて高いという結論が出されました。これらの事象や発生した時期などを鑑みましても、目標はこれらを人為的に発生させているのは明白であり、次回作戦において我々研究班はそれらの抑制を目的としたスクラントン現実錨の使用を推奨します。-主任研究員マルドゥック博士 研究班の報告により、次回作戦でのスクラントン現実錨を搭載した駆逐艦の導入が決定しました。また、それに際してSCP-971-JPの内部調査を兼ねた作戦が立案され、1998/3/21、第三回対SCP-971-JP攻略作戦が決行されました。作戦概要はスクラントン現実錨を使用することでSCP-971-JPの現実改変を抑制し、その間に高高度から降下させた機動部隊をSCP-971-JP内部へと潜入させるという物でした。また、本作戦においての戦闘はあくまで継続的かつ最小限の反撃行為のみに留められ、使用された巡洋艦等は囮として利用されました。 結果、SCP-971-JP対策特別研究班の見解同様、スクラントン現実錨を使用したことでSCP-971-JPの時空操作能力の一時的な抑制に成功。戦闘開始と同時に後方待機の空母より降下機動部隊を搭乗させた飛行機が離陸し、巡洋艦二隻による砲撃と突如発生した「時空操作装置」の使用不能により一時的に反撃を遅らせました。その10分後、SCP-971-JPから戦闘機および爆撃機が発進、財団機動部隊艦隊も巡洋艦二隻による迎撃射撃および空母より離陸した戦闘機による立体起動戦へと移行し、作戦開始からおよそ2時間後に降下部隊が目標高度に到達したことが報告されました。報告から30秒経過した段階で作戦を決行。これにより機動部隊総勢13名による高高度降下が行われ、全隊員のSCP-971-JP内部への潜入が確認されました。同時にSCP-971-JPがスクラントン現実錨の影響下から離脱したため、この時点をもって第三回対SCP-971-JP攻略作戦を終了。これ以降は侵入した機動部隊によるSCP-971-JP内部威力偵察作戦へと移行されました。 SCP-971-JP内部威力偵察作戦 概要: 開始:1998/3/22~6/3 作戦目的:SCP-971-JP内の情報収集および偵察 本作戦はSCP-971-JP内部へと侵入した機動部隊による諜報活動が目的である。その為、部隊員の戦闘行為は推奨せれず、内部の状態や戦力の把握および今後の作戦立案に必要となる情報の入手を中心に進行される。 結果: 機動部隊員13名の潜入が成功し、内部との通信が可能となった。なお、機動部隊は潜入時にSCP-971-JP-Aから装備を強奪し、変装することで周囲の警戒を解いたと報告した。それからおよそ3か月間にも及ぶ諜報活動が行われ、SCP-971-JP内部の構造や対象が一国家として独立している事の事実確認、またその内政状況などが判明した。これによりSCP-971-JP攻略において最も有効であると推測されたのが対象の指令中枢を壊滅させることであり、それを基に新たな作戦が立案された。なお、潜入中に機動部隊員2名の素性が相手側に漏洩し、その2名の機動部隊員はSCP-971-JP内にて殺害された。その後、残った部隊員はSCP-971-JP内で逃亡を繰り返し、その際にSCP-971-JP内の反乱勢力との接触に成功した。 鬼殺し作戦 概要: 開始:1998/7/2 作戦目的:最高指導者の暗殺 本作戦はSCP-971-JP内政府の崩壊によるSCP-971-JPの無力化を目的とした作戦である。なお、この作戦に限り、最高指導者である3名のSCP-971-JP-Aの殺害が許可される。 結果: SCP-971-JP内の反乱勢力の協力の下、軍事階層内にある政府議事堂に潜入する事に成功した。その際、エージェントと反乱勢力総勢30名による誘導作戦が行われ、暗殺担当の人員は最高指導者3名の脱出用出口にて潜伏する班と議事堂内に潜入する班に分担された。警備の誘導後、それぞれの班は予定していた場所へと移動、潜入班は議事堂の地図を基に中央作戦室へと向かい、潜伏班は潜伏場所にて待機。作戦開始から14分後、潜入班により最高指導者2名を発見、議事堂内での銃撃戦へと発展するが目標1名の殺害に成功した。その後、逃亡したもう1名の目標を追跡し、潜伏班が待機している場所まで誘導、目標が外に出た際、潜伏班により目標の殺害に成功した。なお、本作戦において残り1名の目標の発見には至らなかった。 鬼殺し作戦の失敗により作戦本部は内部反乱勢力の協力の下、SCP-971-JP内における人民解放の喚起や最高指導者2名死亡に関する情報の流布といったプロパガンダ作戦を実行しました。これを機に財団は逃走した残り1名の最高指導者の捜索と暗殺を目的とした第二次鬼殺し作戦を決行。本作戦は1998/8/3~11/6の期間を有し、議事堂への直接的武力行使をもって制圧しました。なお、当時は目標殺害に関する手段は非戦闘員の殺害以外のどのような方法も許可されており、兵装もSCP-971-JP内部に存在する兵器を使用。政府側と反対勢力側、総勢278名の死傷者を出す結果となりましたが、7度目の襲撃にて議事堂内部に機動部隊員3名が潜入し、政府側武器庫を爆破しました。これを皮切りに議事堂内部からの攻撃と議事堂正面の反乱勢力本隊による挟撃作戦が行われ攻撃目標は陥落、その後、最終目標である最高指導者の発見と共に作戦は終了しました。 第二次鬼殺し作戦略歴 1998/7/5 機動部隊と反乱勢力によるプロパガンダ作戦が決行される。 1998/7/8 SCP-971-JP内政府による情報操作が行われプロパガンダ作戦の対応がなされる。 1998/7/9 一般階層住人のSCP-971-JP内政府に反政府運動に賛同する言動が増加する。 1998/7/10 SCP-971-JP内政府が一般階層住人の言動弾圧に乗り出す。しかし、最高指導者が2名殺害されたことによる指令中枢の機能不全状態が発生し、前述した言論弾圧の効果的な施行に支障が出る。 1998/7/13 SCP-971-JP内政府の過剰な弾圧に反発して一般階層住人のデモ活動が激化する。 1998/7/16 SCP-971-JP内政府の兵士がデモ鎮圧の際に一般階層住人の児童を殺害するという事案が発生する。 1998/7/17 児童の殺害事案を皮切りに一斉にSCP-971-JP内の全SCP-971-JP-Aによる反乱行為が行われる。なお、潜入中の財団機動部隊による広範囲の情報伝達も同時に行われ、反政府勢力の拡大を助長する。 1998/7/20 軍隊内に潜入していた反乱勢力のクーデターにより政府軍が二分される。 1998/7/21 軍隊内にて新たな反乱勢力が組織され、組織内で暴動が発生する。 1998/7/24 軍隊内で発生した反乱勢力が機動部隊と行動を共にしていた反乱勢力と合流する。 1998/7/25 政府側の兵力がSCP-971-JP内反乱勢力に加担する。 1998/7/26 SCP-971-JP内にて人民解放軍が設立される。 1998/8/3~9/10 政府議事堂への7度にわたる襲撃が行われ、SCP-971-JP内政府に多大なる損害を与える。 1998/9/11 議事堂地下施設内にて潜伏していた政府関係者と最終目標である最高指導者1名が発見される。これによりSCP-971-JP内政府は解体され、無力化される。 1998/10/6 最高指導者の裁判がSCP-971-JP内部の裁判所にて行われ、結果は政治的戦犯として有罪、その後死刑判決が言い渡される。 1998/11/6 最高指導者の死刑が執行される。 補遺2: 以下は日米971-JP間休戦協定に関する大まかな概要です。 1999/11/7に制定された休戦協定はアメリカ合衆国政府、日本政府、財団、新SCP-971-JP内政府間で行われた、戦争行為の禁止および平和維持に関する協定です。 概要: 主にSCP-971-JP内の兵器使用禁止や侵略行為、戦争行為の禁止、軍事教育の撤廃、それに対して財団や日本政府には戦後復興を目的とした支援活動の推奨および新政府設立に際する法整備と新体制への協力が義務付けられている。今後SCP-971-JP内国家は日本政府、アメリカ合衆国政府、財団の管理の下での活動が許可される。なお、復興支援は日本政府が担当しそれらの資金提供などはアメリカ政府が行う。 補遺3: 現在SCP-971-JP内の軍事施設等は非活動の状態を維持されており、今後は財団指導の下アメリカ合衆国政府と日本政府によるSCP-971-JPの監視が決定しています。なお、日本支部理事とO5はこの状態を収容状態であると認定し、収容プロトコルの整備を行いました。 しかし、これらの収容状態はあくまでSCP-971-JP内が前述の戦争行為により機能不全に陥ったが為に発生している現象に外ならず、SCP-971-JP内国家が復興した際の今後の行動予想の困難さなどから対象のオブジェクトクラスはKeterが妥当であると決定されました。 2000年現在、SCP-971-JP内の復興はほぼ完了しおり、新SCP-971-JP内政府による民主主義を取り入れた新体制による平和維持を目的とした法整備と活動が行われています。しかし、新SCP-971-JP内政府は防衛のための最低限の兵力保持は国家における権利であると主張しており、SCP-971-JP内の軍事施設及び兵器の完全撤廃に反対しています。このことからも完全なSCP-971-JPの抑制には至っていないと判断され、現在もSCP-971-JP内政府からの宣戦布告に対する応戦プロトコルの更新が行われています。 追記: 以下の記録は、SCP-971-JPの製造時期やSCP-971-JP-Aの主張する歴史認識に関する裏付け調査などから得られた2000年現在のSCP-971-JPに関する見解です。 + 2000年現在のSCP-971-JPに関する見解 - 閉じる 現在、SCP-971-JPは国家モデルを搭載した侵略用独立兵器であると予想されています。これらの概要はエージェント・グールの調査により判明し、それに準じて対象の製造に関わったと思われる組織の存在も明らかとなりました。しかし、組織の規模やその全貌は未だ判明しておらず現在もそれらの捜索が行われています。 これらの概要はSCP-971-JP-Aの有する歴史認識の裏付け調査を切っ掛けに判明しました。現在、SCP-971-JPの製造を行っていたと思われる工場跡地がドイツ、███████で発見されており、内部には製造途中だと思われるSCP-971-JPの残骸とSCP-971-JP-Aと思われる複数の遺体が散乱していました。また、地下施設にはSCP-971-JP-Aの迅速な成長を目的とした養液で満たされた巨大な水槽と、その中に入れらた状態で死亡しているSCP-971-JP-Aも発見され、このことからSCP-971-JPは量産が可能な物体であることが判明しました。 SCP-971-JPの製造に関わったと思われる研究者や業者、何かしらの情報を所有していたと思われる人間は例外なく殺害されています。また、この組織は財団の動向を完璧に察知していると推測されており、関連施設発見時のほとんどの場合が立ち退いた後という状態で発見されています。 以下はエージェント・グールによって行われた報告記録です 対象: エージェント・グール(以下A・グール) インタビュアー: べス博士 付記: このインタビューはA・グールの申し立てにより極秘裏にて行われました。 <録画開始,(1999/11/7)> インタビュアー: お久しぶりです。A・グール。 A・グール: …お時間をいただき、ありがとうございます。 インタビュアー: …それで、例の調査の結果は…? A・グール: ええ。博士のおっしゃる通りでした。[鞄から書類の束を取り出す]まずはこれから…。 インタビューアー: これは…SCP-971-JP-Aの解剖結果ですか。 [べス博士が書類を手に取り内容を確認する] A・グール: はい。生物部門に依頼して調べさせましたが、計7体全てのSCP-971-JP-Aに成長不十分であると思われる臓器や神経が見つかりました。あと、これも… [A・グールが二枚の書類を取り出す] [べス博士が書類を受け取る] A・グール: それぞれのサンプルから採取したSCP-971-JP-Aの体細胞の分析結果です。全ての細胞に損傷が見られます[画像の添付された書類を指さす]。生物部門に詳しく聞いたところこれらは急激な人体の成長が行われた際によくみられる症状らしく、7体のSCP-971-JP-AのDNAを調べた結果も全ての個体で一致しました。…つまり、対象は人工的に生み出された実体、完全なるクローンです。しかも、急激に大人の姿に成長させられています。これでSCP-971-JP-Aの歴史認識に対する信ぴょう性は完全に消えました。 インタビュアー: …そうですか。 A・グール: それと…。 [A・グールがロゴのような物が書かれた紙を取り出す] A・グール: …探すのに苦労しました。名前はまだ分かっていませんが、実在します。 インタビュアー: これが以前の報告にあった組織ですか…。どうやってこれを? A・グール: 精子バンクを中心にSCP-971-JP-Aの遺伝子情報に合致する物がないか調査したのをきっかけに発見出来ました。購入者は不明、元軍人の物ばかり大量に購入しています。 インタビュアー: これの居場所は。 A・グール: [首を横に振る]流石にそこまでは…。いくつもの偽装された銀行口座や株、ペーパー企業がありまして…。ある程度の所まで行くともうその時点で入札等の記録や足取りは追えませんでした。ですが、何とかその団体、いや企業か…それが実在しているということまでは、なんとか。 インタビュアー: …いえ、それだけ分かっただけでも十分です。 A・グール: …それと、本題はここからなのですが…。これを…。 [A・グールが10枚の写真を取り出す] A・グール: 場所はドイツです。 インタビュアー: …土地の権利や、ドイツ諜報部の網は…? A・グール: ことごとく…。不動産等の記録も抹消されていますし、この土地を管理していた人間も殺されています。ドイツ諜報部に関しても、事態の察知すらしていませんでした。 インタビュアー: その他の関係者は? A・グール: [首を横に振る]駄目でした。 インタビュアー: [沈黙] [べス博士が写真を手に取り見つめる] A・グール: …中を調べましたが、既に引き上げた後でした。そこの関係者だと思われる職員、恐らく研究員だと思われますが、全員殺されていました。 インタビュアー: 引き上げはいつ頃だと? A・グール: 死体の状態から恐らく発見時の二日前だと思われます。こちらの動向は相手側に筒抜けです。おかげで、エージェントが一人犠牲になりました。 インタビュアー: 聞いています。…申し訳ない。 A・グール: いえ、お気になさらず。…結論を言えば、SCP-971-JPは国家モデルを組み込んだ独立兵器だと思われます。あの工場跡地の様子からも、既に量産体制に入っているのは明白です。安定した兵士の生産、兵器運用、かつ独立して稼働し続ける国家というシステムの汎用性、兵器としては打ってつけです。 インタビュアー: …なるほど。[目頭を抑える] A・グール: それと、これも中で見つかった物なのですが…。 [A・グールが赤色の液体が入っている試験管を取り出した。上部はコルクで止められている] インタビュアー: これは…。 A・グール: これと同じ成分が一部のSCP-971-JP-Aの体内からも見つかりました。見つかった対象は全員反乱勢力に所属しています。 [べス博士が書類の束から5枚の書類を見つけて内容を見る] A・グール: その実験結果にある通り、グループで生活していたDクラス職員の一人にこれを投与した結果、投与した職員は他のDクラス職員を殺害しました。投与後の言動なども反乱勢力に所属していたSCP-971-JPと一致してますし、脳の損傷も確認されています。あの反乱勢力も、仕組まれた物です。 インタビュアー: 政変による自爆…。 A・グール: 恐らくは。現に、今もなおSCP-971-JP-AはSCP-971-JP内の兵器撤廃を拒絶しています。これらの動きも、機密保全を目的としたプログラムなのでしょう。 [20秒程の沈黙] [べス博士が資料を整理し始める] A・グール: 報告は以上です。 インタビュアー: 分かりました。…本当に、ありがとうございます。 <録画終了> 今後、別個体のSCP-971-JPの出現が懸念されています。その為、2000年現在、財団は全世界規模の監視と新たなSCP-971-JPに対抗するための機動部隊の整備を行っています。なお、2000/2/16時点でエージェントと機動部隊の調査により4つのSCP-971-JPの購入に関するデータや書類が過激派グループやテロ組織から押収されています。このことから、現時点でSCP-971-JPの量産化と市場が完成されつつあることが判明しました。 現SCP-971-JPの監視は継続され、さらなる警戒が決定しています。
scp-972-jp
評価: +171+–x アイテム番号: SCP-972-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-972-JPは、元々の生息地を再現したサイト-81██に収容されます。サイト-81██の建材には金属を使用しないで下さい。SCP-972-JPに対する実験は無期限禁止となっています。SCP-972-JPには食餌として、廃材の鉄・アルミニウムその他希少価値の低い金属を与えてください。 説明: SCP-972-JPは異常な性質を持った鯨偶蹄目シカ科(Cervidae)の生物の総称です。後述する特異な身体構造以外は、アカシカ(Cervus elaphus)と酷似した習性を持ちます。 SCP-972-JPは異常な咬合力と消化能力を有しています。一部のシカが木の皮を剥して摂食するのと同様の方法で、SCP-972-JPは岩石や金属などを噛み砕いて摂食することが可能です。検証の結果SCP-972-JPの歯は傷がつかず、高い靭性をもつ物質をも噛み砕くことが可能です。硬度を測る試みは全て測定器の破壊という結果に終わっています。噛み砕かれた物質は、食道を傷つけることなく消化器官へ到達し、未知の手段で消化されます。消化の方法を調べる実験は全て失敗に終わっています。SCP-972-JP個体の死体から異常な酵素やバクテリアは確認されませんでした。また、摂食出来るものに制限はなく、コンクリートや石油製品、放射性物質など本来有毒とされる物質まで問題なく消化吸収されます。SCP-972-JP全体の傾向として、鉱物を摂食する事を好み硬度の高い物を優先します。 SCP-972-JPが消化吸収した成分はそのままエネルギーになる他、角の部分を摂食した物質で構成します。形成された角は元となった物質の性質を有しており、通常のシカの角と同じように生えています。SCP-972-JPは1度摂食したものと同じものを食べ続ける傾向があり、形成される角は意図的に別の物を与えない限り変わりません。どのようにして角を形成しているかは不明で、その物質特有の性質や重量によってSCP-972-JPが影響されることはありません。また、通常のシカ同様1年周期で角が生え替わり、新たな角を形成していきます。抜けた角はどのSCP-972-JP個体も摂食する様子が見られませんでした。 SCP-972-JPはシカの同性間淘汰と同じく、雄同士が互いの角をぶつけ合います。金属の角を持つ個体がそれを行うと火花が発生します。SCP-972-JPの生息地と思われる██県の██山が山火事によって焼失し、痕跡から原因だと確立されました。 現在確認されているSCP-972-JP個体の抜粋 実験により変化した個体 飼料: 廃材として回収した鉄パイプ 摂食: 問題なく摂食した。 形成された角: 鉄で構成された一般的なシカの角。金属光沢、電導性が確認できた。 鉄製の角を持つSCP-972-JP 飼料: 天然の石英 摂食: 問題なく摂食した。 形成された角: 石英の形を無視してシカの角が形成されている。針入り水晶1でも実験を行って、こちらはインクルージョンの金紅石が再現されていることが確認された。 水晶の角を持つSCP-972-JP 飼料: アルミニウム、鋼、ニッケルを同時に与える。 摂食: 問題なく摂食した。 形成された角: アルミニウム合金の角が形成された。別々の物質を摂食した場合は混ぜ合わせた物を生成するようです。 飼料: ガラス 摂食: 摂食を拒みました。無理に口に入れた場合は問題なく摂食しました。 付記: 石油製品やその他人工物でも同様にSCP-972-JPは興味を示しませんでした。 発見された個体 角の素材: アスファルト 付記: 民間人の通報により確認。山道のアスファルトを食べていたと思われる。 山道で野生動物の車の衝突が多発しています。安全運転を心掛けてください。 角の素材: 紙 付記: 表面にはアダルト雑誌の内容が確認された。発見者を尋問したところ、SCP-972-JPの異常性を理解しており、ゴミ処理として利用していたようだ。 野生動物がゴミの誤食により死んでしまいます。出たゴミは必ず持ち帰って下さい。 角の素材: 石膏 付記: 石膏は精巧に彫刻が施されていた。この個体は後述する密猟者によって取引されていた模様。 角や剥製欲しさに今までどれだけのシカが犠牲になってきたのでしょう。心が痛みませんか。 角の素材: マリファナやコカインなどが混合された固形物 付記: 薬物の取引に使われていたと思われる個体。特定のルートを歩くよう調教されている。 ダメ、ゼッタイ。 角の素材: 馬の脚 付記: 摂食の経緯は不明。馬の脚は生きており、SCP-972-JPの意志で動く。生物を摂食した場合、そのまま生物の部位が生えることが確認された。 馬鹿 補遺: SCP-972-JP収容時、その異常性によって一部の密猟者から存在を認知され、角や剥製が高価で取引されていました。流通されたSCP-972-JPの物品の購入者にはカバーストーリー「非常に精巧な芸術作品」を流布しています。密猟者、流通業者にはクラスA記憶処理を施し警察に引き渡しました。SCP-972-JPはこの事案により個体数が減少しています。 以下は密猟者が所持していた写真、生け捕りにされていたSCP-972-JP個体の情報です。 ルビーらしき角を持つSCP-972-JPの写真 この個体は食餌を与える許可が下りなかったので終了されました。 Footnotes 1. ルチルクォーツ
scp-973-jp
評価: +352+–x 評価: +352+–x クレジット タイトル: SCP-973-JP - エターナル・ダークホース 著者: ©︎perry0720 作成年: 2017 評価: +352+–x 評価: +352+–x アイテム番号: SCP-973-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: サイト-81██にて編成された情報収集チームは各地の指定エージェントと連携して、SCP-973-JPの発生を常に監視して下さい。隠蔽部隊う-8("尻拭い")はサイト-81██に出現する物品の修正、他参加者の賞品の回収を行い、修正された順位に移送して下さい。隠蔽部隊う-9("しわ寄せ")はSCP-973-JPの参加した大会・競技会の記録の処理を行って下さい。SCP-973-JPの今までに確認されていない行動を確認した場合は、サイト-81██管理者へ報告して下さい。 説明: SCP-973-JPは黒鹿毛のオスのウマ(Equus caballus)です。詳細な種類は判明していません。SCP-973-JPの体長は1.9mであり、外見的に特異な点は確認されていません。 毎日SCP-973-JPは規模に関わらず、日本で行われるスポーツ関連の大会・競技会に参加します。SCP-973-JPはその際、人間として扱われ「暗星 豪あんせい ごう」と呼称されます。参加する競技は多岐にわたりますが、一度参加した競技種に類似したものには少なくとも30日間出場する例はありません。SCP-973-JPの参加枠は大会・競技会の企画時点で用意されており、予選に参加することはありません。またSCP-973-JPは自身の競技開始直前に出現し、競技終了直後に消失します。SCP-973-JPの出現・消失の瞬間は確認されていません。SCP-973-JPの獲得した賞品類なども同様に消失します。 SCP-973-JPは通常のウマの運動能力に加え、人間と同程度の動作が可能です。SCP-973-JPは多くの場合、参加する競技の適性を示しますが、致命的なミスなどにより想定される成績を残すことはありません極めて稀です。SCP-973-JPに関する記録・記憶は大会・競技会終了後消失します。しかしそれに対する記憶・記録の置換は行われないため、不自然な記憶の混乱・記録の欠損が確認されます。この消失までの期間は現在確認されている範囲では2分〜29日であり、SCP-973-JPの成績が良好であるほど長くなります。 SCP-973-JPは財団関係者(範囲調査中)以外において、異常と認識されることはありません。SCP-973-JPの獲得した賞品類はSCP-973-JPが消失してから1分後にサイト-81██に出現します。また財団及び財団職員の所有する当該オブジェクトに関する記録は消失しません。これらのことからSCP-973-JPは財団の存在を認知し、自身の処理の不足を財団に委託しようとしていると考えられています。 19██年██月██日、███████県大会の結果順位に不自然な空きがあることから、財団エージェントによる調査が開始されました。翌日、サイト-81██に███████県大会の該当順位の賞状・他█点の賞状・██点の賞品と思われる物品類が出現しました。また同日に、████高等学校にてSCP-973-JPが確認され、翌日に参加賞と思われる物品が出現したことからSCP-973-JPとの関連性が明らかになりました。 + SCP-973-JP妨害記録 - hide 973-JP妨害記録█ - 19██/█/██ 方法: SCP-973-JPの参加枠を財団エージェントに書き換える。 結果: 即座に未知の方法で記述が回復する。██回実施したが全て同様の結果であった。 973-JP妨害記録█ - 19██/██/█ 方法: 企画者のSCP-973-JPについての記憶を消去する。 結果: 記憶処理終了後、即座に記憶は回復していると確認された。 973-JP妨害記録██ - 19██/██/██ 方法: SCP-973-JPの参加が予定されている大会を中止とする。 結果: █時間後、前述の大会のものでないトロフィーが出現した。調査の結果、前述の競技とは関係性が薄いものであった。 SCP-973-JPの妨害は無意味、或いはSCP-973-JPの予測できない移動を引き起こすことから、これ以降、停止されています。 SCP-973-JPはその特異性から財団施設内での収容は困難と判断されました。そのためSCP-973-JPによる記録の欠損を補うために、サイト-81██に出現する賞品類をSCP-973-JPを除外した参加者に再配布し、順位を改変することが提案され、特別収容プロトコルが制定されました。 + SCP-973-JP事案記録 - hide 事案973-JP-█ 19██/██/██ 大会・競技会名: 長野██████ 種目: スピードスケート500m 結果: 試合前練習においてスケート靴が破損した。SCP-973-JPの使用できるスケート履が他に用意できなかったためか、欠場となり直後消失した。 消失時間: 1時間20分 事案973-JP-██ 19██/██/██ 大会・競技会名: 全日本██████選手権大会 種目: フルマラソン 結果: 優勝 消失時間: 29日 補足: 二足走行で競技を行った 事案973-JP-████ 左: 競技中のSCP-973-JP 20██/██/██ 大会・競技会名: ████村██祭り 余興 種目: 小型馬競馬 結果: SCP-973-JPの乗る馬がSCP-973-JPの体重に耐えきれず出走不能となり欠場。 消失時間: 2分 補足: よっぽど悔しかったのだろう -エージェント・███ 補遺: SCP-973-JPの参加する大会・競技会は、20██年█月██日時点でスポーツに類するものに限定されていましたが、20██年█月██日に███市の書道コンクール「自身を表す書部門」において、SCP-973-JPの参加が確認されました。SCP-973-JPの参加範囲の拡大に伴い、情報収集チームの増員が検討されています。 + SCP-973-JP提出作品 - hide
scp-974-jp
評価: +47+–x アイテム番号: SCP-974-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 財団は旧██邸の維持に努め、外部から見て建物が使用されているように偽装してください。この旧██邸の近くにダミーの屋敷を建設し、一般人はこちらに行くように誘導してください。財団職員は邸内に侵入することを禁止されています。実験によりSCP-974-JPと接触する必要がある場合、Dクラス職員に行わせてください。 SCP-974-JP-2が発生した場合、速やかに回収して下さい。SCP-974-JP-2には介助用の装置が取り付けられ、カウンセリングが行われます。Dクラス職員を除いたSCP-974-JP-2が終了を希望する場合、電気ショックによって終了してください。 説明: SCP-974-JPは██県██市に存在する旧██邸を徘徊する女性の人型実体です。周辺地域で調査を行った結果、仲人を生業としていた█████という現在行方不明の女性と特徴が一致しています。SCP-974-JPは基本的に建物内を徘徊するだけですが、人間と目を合わせた場合、活性化状態となり首から上が消失します。この消失現象が起こる原因となる人物(以下、被験者)はほとんどの場合男性ですが、女性の場合も存在します。 消失現象の発生後、SCP-974-JP-1と指定される頭部だけの女性が被験者の周囲に干渉するようになります。SCP-974-JP-1自体の姿は被験者以外には認識されません。しかし、第三者はSCP-974-JP-1が引き起こす事象から間接的に存在を認識することができます。被験者は常にSCP-974-JP-1から観察されている、もしくは何らかの干渉を受けているという旨の主張を行います。多くの場合、SCP-974-JP-1は1か月前後で被験者の周囲から存在しなくなります。これと同時期にSCP-974-JPの首から上が再出現し、再度徘徊を始めます。しかし、SCP-974-JP-1の干渉を受け続ける被験者もおり、共通点は現在のところ不明です。 活性化状態のSCP-974-JPは頭部が消失してから2か月過ぎた場合、被験者がいると思われる方向に進み始めます。この時、建物から出ると姿を認識することができなくなり、GPS以外では位置の特定は不可能になります。被験者はこの時期になるとSCP-974-JP-1の存在以外にも何者かにつけられているという主張をするようになり、2週間前後では家から出なくなる傾向にあります。この時、GPSによってSCP-974-JPの位置を確認したところ、被験者がいる部屋に入ろうと試みているような動きをしています。実際、音声記録において窓を叩く音や足音を確認することができます。透過することができる(実験記録XXX-1参照)にもかかわらず、このような行動をとる理由は不明です。被験者がSCP-974-JPを自身がいる室内に侵入させてしまった場合、被験者の首から下が消失します。この消失現象と同時刻にSCP-974-JPは建物内において再非活性状態で出現することが確認されています。 SCP-974-JP-2は消失現象により頭だけとなった被験者です。これまでに15名確認されており、現在7名が生存しています。SCP-974-JP-2は胴体が存在しないにも関わらず、生存を続けており、発声ができる等の理由から消失した胴体と何らかのつながりがあると考えられます。SCP-974-JP-2の主張では消失したはずの肉体には感覚があり、動かせるようです。 SCP-974-JPは██県のマンションにおいて友人が首だけになったという通報があったことで発覚しました。近くの警察署に潜入していた財団職員がSCP-974-JP-2を回収し、通報した友人は記憶処理後、解放しました。その後、SCP-974-JP-2の証言により財団は旧██邸を調査し、SCP-974-JPを発見しました。この時、エージェントの1人がSCP-974-JPと目を合わせ、SCP-974-JP-1を認識するようになりましたが、1か月ほどで認識しなくなりました。 インタビュー記録974-JP-01 対象: SCP-974-JP-2-1 インタビュアー: 東条博士 付記: SCP-974-JP-2-1はSCP-974-JPを発見するきっかけとなった人物。収容直後にこのインタビューは行われた。 <録音開始> 東条博士: こんにちは、SCP-974-JP-2-1。 SCP-974-JP-2-1: こんにちは、先生。 東条博士: それではあなたが今のようになってしまったことに関して何か心当たりはありますか? SCP-974-JP-2-1: そう、ですね。変わったことと言えば2,3か月前の肝試しです。そこからおかしくなり始めました。 東条博士: そうですか。何故行こうと思ったんですか? SCP-974-JP-2-1: その、女の子に良いところを見せようと思いまして。 東条博士: なるほど。 SCP-974-JP-2-1: ただ、正直なところ幽霊が本当にいるなんて思っていませんでした。それで、その、幽霊と目が合って、首が消えるのを見てしまったんです。 東条博士: そして、異変がそこから始まったと。 SCP-974-JP-23-1: そうです。最初は気のせいだと思いました。ですが、気づけば四六時中生首がこちらを見ているんです。テーブルの下からだとか、浴槽の中からだとか。 東条博士: あなたはそれに対して何かしましたか? SCP-974-JP-2-1: お祓いくらいですね。怒鳴り散らしたりもしましたが、効果はありませんでした。 東条博士: それでは今のようになる前はどうでしたか? SCP-974-JP-2-1: そうですね。生首以外の何かがいるように感じていました。外出中はずっと。 東条博士: その姿は見えましたか? SCP-974-JP-2-1: いえ。ですが、物音は良く聞こえていました。ドアを叩く音だとか。特に覚えているのは窓ガラスが誰もいないのに叩かれたかのような音を出していたことですね。こう、窓自体も動いてました。 東条博士: それでは何があってそうなったんですか? SCP-974-JP-2-1: わかりません。ただ、あの当時は外にいる見えない何かが怖くて外出できませんでした。でも、食料の問題もあって、友人にお願いしたんです。 東条博士: その時のことを詳しくお願いします。 SCP-974-JP-2-1: 確か、あれは窓の方にいたと思いました。それで、気づかれないように友人が来たタイミングでドアを開けました。でも、その、何かが走ってくる音が聞こえたんです。そうだ。あの時、友人の足の間から首だけの女がいた。あいつに気を取られてたらこうなってたんだ。 東条博士: なるほど。わかりました。それでは今のあなたの体の様子はわかりますか? SCP-974-JP-2-1: はい。今は、たぶん、舐められています。こう、胸のあたりを。 東条博士: 他に何か感じたことは? SCP-974-JP-2-1: たぶん、俺の体を舐めているのは一人です。たぶん、あの生首。あと、気になっているのは右手の薬指に何かが嵌められていることですね。たぶん、指輪かもしれません。 東条博士: わかりました。 SCP-974-JP-2-1: 先生、俺は元に戻るんですよね。 東条博士: 今はまだ無理ですが、努力します。 SCP-974-JP-2-1: 本当にお願いします。 東条博士: もちろんです。そろそろ時間なので終了します。 <録音終了> 終了報告書: SCP-974-JP-2-1はこのインタビューの3か月後に終了を希望しました。終了は速やかに行われました。 補遺: SCP-974-JPに関する実験記録。 実験記録を開く 実験記録を閉じる 実験記録974-1 - 日付20██/██/█ 対象: SCP-974-JP 実施方法: Dクラス職員を用いてSCP-974-JPの移動制限を試みる。 結果: SCP-974-JPが障害物を透過したことで移動制限はできなかった。しかし、SCP-974-JP自体には触れることができ、SCP-974-JPの位置を常に確認できるようにGPSを取り付けることができた。また、SCP-974-JPは活性化状態に移行し、Dクラス職員の内の一人(D-64561)がSCP-974-JP-1を認識するようになる。 分析: あくまでも移動の妨害ができないと考えられる。また、透過する際にGPSも一緒に透過する理由は不明。 実験記録974-2 - 日付20██/██/█ 対象: D-64561(1か月が経過し、SCP-974-JP-1を認識しなくなっている) 実施方法: D-64561を観察し、SCP-974-JP-2となるか調べる。 結果: 実験開始から3か月が経過するも、SCP-974-JP-2になる様子はなかった。また、この期間中に別のDクラス職員をもちいてSCP-974-JPを活性化させた。このDクラス職員がSCP-974-JP-2となっている。 分析: SCP-974-JPの活性化は首が元に戻った時点で終了するようだ。SCP-974-JPはこのサイクルを繰り返し、何らかの条件を満たす人物を発見した場合にその人物をSCP-974-JP-2にしようと行動するようだ。 実験記録974-3 - 日付20██/██/█ 対象: SCP-974-JP 実施方法: SCP-974-JP-1を認識するようになったDクラス職員たちにその容姿をモンタージュで作成してもらう。 結果: 得られたSCP-974-JP-1の容貌は全て異なっていた。また、どの容姿もSCP-974-JPに当てはまらない。 分析: この実験結果により、SCP-974-JP-1はSCP-974-JP本来の姿と異なる姿を見せているか、そもそもSCP-974-JP-1が全て別個体かのどちらかが考えられる。 実験記録974-4 - 日付20██/██/█ 対象: SCP-974-JP-2-1~SCP-974-JP-2-6 実施方法: 現在収容されているSCP-974-JP-2に体の様子を報告してもらっていく。 結果: 報告はほとんど同じ内容だった。また、同時刻に同じ行動を行っている。 分析: SCP-974-JP-1はSCP-974-JPの頭部ではないと考えられる。理由は不明。また、被験者が認識するSCP-974-JP-1は全て別個体と思われる。 実験記録974-5 - 日付20██/██/█ 実験概要: D-64819の下に活性化したSCP-974-JPが向かった。そのため、時間経過によりSCP-974-JP襲撃を防ぐことができるのか実験を行った。この時、D-64819は他の職員の安全を確保するために財団所有の家屋に移ってもらっている。また、SCP-974-JPにはGPSが取り付けられており、居場所は把握していた。 <録音開始> (現在SCP-974-JPが屋外を徘徊しており、東条博士はD-64819を補助する目的で通信を行っている) 東条博士: 現在、入口にSCP-974-JPがいます。そこから姿は見えますか? D-64819: いや。見えないな。でも、さっきからインターホンがうるさい。博士、本当になんとかなるんだろうな。 東条博士: それはあなた次第です。SCP-974-JP-1はどうですか?  D-64819: ああ。いるよ。こいつも見張ってる。クソ。何で生首だけな……。 東条博士: 待ってください。今、SCP-974-JPが反対側に移動しています。裏口は大丈夫ですか。 D-64819: だいじょ……。待て。風が吹いてやがる。 (D-64819が走り出す。同時に玄関の監視カメラの映像が途絶えた) 東条博士: 大丈夫ですか。D-64819、無事ですか。 D-64819: 窓が開いてただけだ。格子がしてあるだろ。そこが開いていた。やっこさん、入れないみたいだな。 東条博士: 引き返してください。SCP-974-JPが玄関に戻っています。ロックも中から解除されています。 D-64819: 何でだよ。畜生。 (D-64819が走り出す。数秒後、廊下の監視カメラの映像が途絶えた) 東条博士: 扉が開きました。今すぐ食糧庫に向かってください。もう間に合いません。 D-64819: 分かった。 (D-64819のものではない足音が近づいてくる) (扉が閉まる音) 東条博士: D-64819、大丈夫ですか。D-64819、応答してください。 D-64819: ……大丈夫だ。 (背後から扉が叩かれる音) 東条博士: そちらの状況をお願いします。食糧庫内の映像だけでは限界があります。 D-64819: ああ。食糧庫なのは見てわかるが。いくらか食い荒らされている。たぶん、あの生首だ。 東条博士: その部屋に入ってこられる可能性を考慮した場合、我々にできることは限りがあります。特に水の備蓄には注意してください。 D-64819: 了解。 東条博士: しかし、先ほどのあなたの発言から考えるに、SCP-974-JPは人が通れる大きさの隙間でなければ入れないようですね。できる限り迅速に支援を行います。 D-64819: 頼んだぜ、博士。 (SCP-974-JPが部屋から遠ざかっていく) 東条博士: ところでSCP-974-JP-1はいますか? D-64819: ちょっと待ってくれよ。……窓の外にいるな。クソ。こいつも一緒に外にいればマシなんだがな。 (GPSの反応が食糧庫から確認された) 東条博士: 今すぐ逃げてください。SCP-974-JPがその中にいます。 D-64819: 話が違うじゃねえか。 (扉を開ける音) (D-64819の悲鳴) 東条博士: D-64819。D-64819。 D-64819: 畜生。あいつが持ってやがった。 <録音終了> 終了報告書: 救出に駆け付けた時にはD-64819はSCP-974-JP-2となっていました。D-64819の主張によりGPS装置をSCP-974-JP-1が持っていたことが判明しています。その後、D-64819の胴体に取り付けてあったGPSを辿ったところ、旧██邸の寝室に辿り着きましたが、D-64819の肉体は存在していませんでした。 追記1: 現在、SCP-974-JP-2を終了させるには薬物は用いられていません。薬物は注射後に未知の手段を用いて無力化されていることが判明しているためです。そのため、直接脳を破壊する物理的な手段、あるいは電気ショックを用いることで終了させます。この原因を探るためにも消失した胴体の位置の調査は続けられています。 追記2: 実験の結果、SCP-974-JP-2の終了後でも血液の循環やホルモンの調整が確認されました。このことから何らかの手段を用いて胴体の維持を行っていると考えられています。
scp-975-jp
評価: +108+–x 評価: +108+–x クレジット タイトル: SCP-975-JP - 道を紡ぐ廃忘 著者: ©Jiraku_Mogana 作成年: 2019 評価: +108+–x 評価: +108+–x アイテム番号: SCP-975-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-975-JPが出現する地上にある建造物は民間人の侵入を防ぐため周囲を2m以上の柵で囲い、カバーストーリー「解体工事予定」を適用してください。調査のためSCP-975-JP-A内に侵入する人間は、直前にミニメンタルステート検査およびウェクスラー記憶検査を行い、認知機能や記憶力に異常がないか確認してください。内部調査を行う場合、懐中電灯、作成済みの地図と筆記具を装備し、自身の通行した順路を記載してください。また、SCP-975-JP-A内に存在する街灯のスイッチを押す行為は一人につき4回までに制限されます。帰還した人間はメンタルケアを行ったのち、可能であればミラー・エッシャーマン記憶相同性検査により記憶の検査を行います。 説明: SCP-975-JPは各地の廃建造物内に存在する金属製の扉です。SCP-975-JPには破損したガラスの覗き窓が配置されていますが、内部は暗く視認することはできません。これまでSCP-975-JPは██箇所で発見されており、その発見場所は廃校となった建物の廊下、廃コンテナ内、老朽化した美術館の踊り場、団地地下に設置された小部屋などです。SCP-975-JPは別空間(以降SCP-975-JP-Aと呼称)へと接続されており、SCP-975-JPは侵入者が帰還するまでの間消失します。SCP-975-JPから侵入者が帰還しなかった場合、同場所でSCP-975-JPが観測されることはありません。 SCP-975-JP-Aは絶えず落葉し続けるケヤキ(Zelkova serrata)やイロハモミジ(Acer palmatum)で構成された並木道です。地面にはそれらの枯葉が堆積しています。空間内は常に夜間となっており、街灯下以外では人間による視認が不可能な照度となっています。また内部では録音、録画装置や通信設備、計器は一切機能しないため、現在SCP-975-JP-A内部の情報は帰還者の証言によってのみ得られています。 SCP-975-JP-A内には複数の街灯が確認されており、街灯には「ここはXX街XX丁目XX番地」と書かれた金属製プラカードが取り付けられています。2019年8月現在街灯は36個発見されており、うち3つは電球部分が破損しています。また側面にスイッチがついており、押すことで街灯をつけることができますが、消すことは不可能です。スイッチを押した人間は記憶の喪失が発生し、極めて強い喪失感を訴えます。身体検査の結果海馬内の脳神経細胞の減少が認められ、スイッチを複数回押すことで記憶障害の重度化やアルツハイマー型認知症の進行がみられます。SCP-975-JP-Aから帰還しなかった侵入者はこの異常性により帰還方法を忘却したことが原因とみられています。また街灯をつけることで周囲に何らかの物体が発生することがあります。以下はそのリストです。 街灯のプラカード 発見された物体または現象 葬諦街4丁目80番地 節分用の鬼のお面で構成された柱。 警訂街10丁目33番地 角ばったウサギ(Leporinae)のような生物。 瞑夜街10丁目91番地 1本のモクセイ(Osmanthus)の木が立つ広場。 怪奇街99丁目99番街 何かがあったが忘却した。 追憶街4丁目6番地 人型実体を伴うおでんの屋台。詳細は補遺975-JP.1を参照。 謳醒街7丁目6番地 白衣を着た人骨。詳細は補遺975-JP.2を参照。 補遺975-JP.1: インタビュー 「追憶街4丁目6番地」と書かれた街灯の付近で木製の屋台が発見されました。屋台では”女将”と自称するコーカソイド系女性が営業を行っており、おでんおよび日本酒の提供が確認されています。おでんの具材は大根やこんにゃく、鶏卵など一般的な食材ですが、日本酒は「月楸」「屋烏之愛」「沈下橋」「とわの雪」など存在しない銘柄が並んでいます。以下は”女将”に対する小泉研究助手のインタビューを筆写した記録です。 小泉助手: それではインタビューを始めます。 女将: はい。インタビューなんていつ以来ですかね。 小泉助手: ではまず名前を教えてください。 女将: 名前かぁ。覚えてないんですよね。 小泉助手: 覚えてない? 女将: そうなんですよ。私が誰なのか何にも思い出せないんですよね……。それとも元から名前なんて無かったのかも。 小泉助手: ではここで何をなさっているんですか? 女将: ここでおでんを売っていますよ。いかがですか? 小泉助手: すみません、今は仕事中なので……やめておきます。どうしてここでおでんを? 女将: それも覚えてないんです。気づいたらこの道でおでんを売っていました。 小泉助手: 気づいたら、ですか。それじゃあその前のことは。 女将: ……はい。記憶にないです。 小泉助手: では質問を変えます。この空間について何かご存知ですか? 女将: そうですね。私には道に見えます。 小泉助手: 道、ですか。 女将: えぇ。色んな人が電球をつけてくれたおかげで、いっぱい新しい道ができる。最初は細い小路でもそこから伸びて、枝分かれして、また繋がっていって……。そうして街を作っていってるんです、きっと。 小泉助手: 面白い話ですね。でも元から1つの真っ暗な街というわけではないのです? 女将: ちがうんです。照らされて見えるようになったんではなく、あなたたちが作ったものが現れたんです。道も、壁も、そして私も。 小泉助手: それは誰かから聞いたのですか? 女将: いえ、でも感じることができるんです。 小泉助手: でも私たちはスイッチを押しただけです。なにもしてはいません。 女将: 記憶を失くしたんじゃありません? 小泉助手: 確かにみな何かを忘れたと強く主張しています。 女将: たぶんその人たちは忘れたんじゃないですよ。 小泉助手: どういうことですか? 女将: 忘れたなら思い出せばいいんです。記憶が頭の中でかくれんぼしているだけ。でも失ってしまったなら、それはもうあなたの中から無くなってしまっていると思うの。 小泉助手: ……だからみなあんなに記憶を失ったことに動揺していたのです? 女将: たぶん、ですけどね。 小泉助手: それで失った記憶から道が作られたというわけですか。 女将: そうです。記憶から何かをカタチに表現して外に出す。そういうことだと思います。出てしまった記憶はもうその人だけのものじゃないでしょう?いろんな人に解釈されたり、そこから新しい物語が付け加えられたり。だからホントはそれで苦しむ必要はないんですよ。 小泉助手: それにしても不思議ですね。自分のことは何も覚えてないのにこの道のことはよくわかる。……あなたはいったい何者なんですか? 女将: わからないんです。……そうだ、昔”女将”と呼ばれたことがあった、気がしますけど。 小泉助手: そうですか……では、そろそろおいとまします。ありがとうございました。 女将: はい。ああそうだ、今度来たらおでん食べてくださいね。お願いです。 小泉助手: わかりました。約束します。 補遺975-JP.2: 発見文書 「謳醒街7丁目6番地」と書かれた街灯を点灯した際、落ち葉に埋もれた白骨死体が発見されました。白骨死体は白衣と女性用下着をまとっており、白衣のポケットからは3枚のメモと鉛筆が発見されていました。以下は帰還者がメモを筆写したものです。 とうとうたどり着いた。 あの人にもう一度会うために。 あの人の存在がだんだん消えていく。 もう名前も思い出せない。 それでもあの最後の約束だけはまだ残っている。 進もう。幾度、夜を見ようとも。 きっとこの道のどこかにいるはず。 街灯が照らされた。 心の中に大きな穴が開いたように思える。 寒い。とても寒い。 何が無くなったかもわからない、ただ穴の存在から忘れたとわかる。 もし全てを忘れたら、全てが穴になったら。 何もかも感じることはなく無になるのだろう。 ああ、もう帰り道はない。 ようやく明かりが見つかった。 ここに来てからどの位経っただろう。 私の名前は小泉絹。 1993年3月24日生まれ。 長崎県出身。 2019年7月31日、サイト-8189からここに入った。 忘れていない。覚えている。 大丈夫。たとえ私が空っぽになったって、 また別の道が紡がれるだけ。 サイト-8189は現在も稼働しているサイトであり、SCP-975-JPの出現報告例はありません。小泉研究助手はSCP-975-JPの研究に関与して以降サイト-8189に訪れたことはなく、2019年7月31日前後の動向にも不審点はありません。また、メモについても心当たりがないことを証言しています。 補遺975-JP.3: 考察 SCP-975-JP-A内部の物品の採取を目的として複数回探索が行われましたが、物品の回収は全て失敗に終わっています。また、SCP-975-JP-A内部で多量に存在しているとされているケヤキやイロハモミジの葉が、衣服および靴に付着していることも確認されていません。物品を回収しなかった理由については探索者からは不明瞭な回答しか得られていません。 また、SCP-975-JPからの帰還者に、SCP-975-JPに関与しない記憶の齟齬が発生していることが複数例報告されています。その多くは対象が知り得ないエピソードを記憶として有するものでした。この現象と補遺975-JP.2からSCP-975-JP内部の実在性が疑われています。現在街灯の点灯による広範囲の内部探索は保留され、SCP-975-JP周辺の現実強度の変化や探索者の心的作用、体感時間と実経過時間の比較など多方面に渉る調査が予定されています。 補遺975-JP.4: インタビュー 小泉研究助手は2度目の探索時1、「追憶街10丁目9番地」と書かれた街灯を点灯しました。その際再び屋台が発見されました。屋台の様子は以前と差異ありません。以下は”女将”に対する小泉研究助手のインタビューを筆写した記録です。 (重要性の低い会話のため割愛) 小泉助手: おでんありがとうございました。美味しかったです。 女将: こちらこそありがとうございます。それで今日は何かインタビューはありますか? 小泉助手: はい。……率直に聞きます。この世界とあなたは実在しているんですか? 女将: ……難しい質問ですね。あなたはどう思います? 小泉助手: 私は……この道を実際に見ていますから、存在するとは思っています。でもこの絶えず落ち葉が降り積もる風景。幻想的で現実味がないようにも感じちゃいます。 女将: 確かに雪のように降ってますものね。 小泉助手: そして元の世界に戻ってもここにいた証は記憶しかない。何も残ってないんです。現実なのか、夢を見ていただけなんじゃないか、っていう人もいて。今私はホントにあなたと話しているんですか?この美味しかったおでんも幻想ではないんですか?すべては私の想像の中……? 女将: ここが実在するか、現実に残るかは私にはわかりません。でも自分の思いを信じるしかないと思います。 小泉助手: ……あなたは。 女将: はい? 小泉助手: あなたはどう思うんですか?自分は存在できると思ってますか? 女将: 私にだって……私にだってわからないんです。私は自分のことは何もわかりません。気づいたら、ここにいて、屋台をやっていて。私が持っている数少ない記憶も、ただ何かの役目のために植え付けられたみたいで。 小泉助手: 役目ですか。 女将: 前におでんを食べるお願いをしましたよね?それで実際あなたにまた会えておでんを食べていただけました。でもこれは私がおでんを食べてほしいと思ってした行動なんでしょうか?ただ何者かにあなたと再びお話させるためにやらされたような……。そもそもなんで屋台やおでんなのか、今私がしていることの目的がわからないんです。 小泉助手: 私だってどうして今の研究をしているのか、目的は何なのかなんて簡単には言えないですよ。でもそれは各自で少しずつ見つけていくものだと思います。 女将: あなたにはこれまでの経歴や出自、役職、設定などがあるじゃないですか。それに評価してくれる人だっている。私には何もないんです。覚えてないんです。いったいどうしてここにいるのか、どうやってここに来たのか、名前は何なのか、わからない、何も……。私が忘れてしまっているのか、それとも最初から空っぽで何もなかったのか。それすらもわからないんです……。 小泉助手: すみません、変なことを聞いてしまいました。忘れてください。 女将: いや、もう忘れるのも忘れられるのも嫌なんです。私はここにいるだけで、考えることも、進むことも、死ぬこともできない。 [数秒の沈黙] 女将: あっすみません、少し熱くなっちゃいましたね。えぇと、先ほどの質問。私が夢の存在じゃないかでしたっけ。この私が夢なら醒めた現実の私は何をしているのでしょうね。いっぱいのお客さんと楽しく過ごしているのでしょうか。それともお店はやってないで、たくさんの仲間と鬼ごっことかかくれんぼとかして遊んでいるのかもしれないですね。 小泉助手: ……女将さん、あなたは前に記憶から街が作られていくと言っていましたね。 女将: はい、それが何か? 小泉助手: この街を訪れたヒトは記憶を失うだけではなく、新しく手に入れることもあると判明しています。その記憶がどこからいつ来たのかわかっていません。でもそのまま考えるなら街を作っていた記憶がふと入ってくるんじゃないかって。 女将: ええと……つまり? 小泉助手: あなたの記憶はこの街のどこかにあるのかもしれません。それはいつかもしかしたら、あなたが手に入れるかも。 女将: それは……私の記憶が昔あったならということですよね。なんとなくですけど自分という存在はこの街で生み出されたように思ってしまって……。 小泉助手: えぇと、それなら……あなたは街の一部だということですね。そしてこの街は明かりをつけるたび、道や何かが現れて広がっていく。だったら、明かりをつければあなたの記憶も現れて街が広がるかもしれません。 女将: (微笑)もしかして私のこと元気づけようとしてくれてます? 小泉助手: えっと、いや、その。 女将: ありがとうございます。面白い考えですね。それならいつか私が存在していることも示せるのかなぁ。 小泉助手: ええ、いつかきっと。 女将: ねぇ小泉さん、またお願いしてもいい? 小泉助手: なんでしょうか。 女将: 私に何かを下さい。私に意味を、未来を、存在を下さい。私の中に道を灯す明かりを下さい。 小泉助手: ……はい。努力してみます。 小泉助手はSCP-975-JPからの帰還後、即座に胃洗浄を要請しました。その結果、胃内からは何も回収されず、証言に一致するおでんの構成物は一切発見されませんでした。 脚注 1. 補遺975-JP.2に示すメモが発見されて以降、小泉研究助手はSCP-975-JP研究チームから外されていましたが、複数回SCP-975-JP-Aに侵入することによる精神影響を調査する目的で起用されました
scp-976-jp
評価: +215+–x 定期メディカルチェック待ちのSCP-976-JP アイテム番号: SCP-976-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-976-JPは生物サイト-8102の小型生物用収容室に収容されています。収容室の四隅にはカント計数機が1つずつ設置されており、収容室内の空間中のヒューム1濃度およびSCP-976-JPの内部ヒュームを自動的にモニタリングしています。いずれかのカント計数機がヒュームの著しい不均衡を検知した場合、即座に無臭性の鎮静ガスが噴出されSCP-976-JPを無力化します。 上記以外の基本的な取り扱いは標準的小型ネコ科生物取り扱いマニュアルに従ってください。SCP-976-JPを発声によって呼び寄せる必要が生じた場合は、より効率的な取り扱いを行うために「アナ」という単語を使用することが許可されています。同じ職員が一週間以上連続して飼育を担当することは推奨されません。飼育担当の連続勤務は最長でも一週間まで、なおかつ前回の勤務から一ヶ月以上のインターバルを挟んで担当するようにしてください。 説明: SCP-976-JPはヒューム変動能力を有する雌のイエネコ(学名:Felis silvestris catus)です。年齢は1歳から2歳であると推定されています。SCP-976-JPのいずれかの感覚器で知覚可能な領域内のヒューム濃度は、常にSCP-976-JPの内部ヒュームと同じ値2に保たれます。SCP-976-JPがヒュームを変動させるメカニズムは不明3ですが、ヒューム濃度の固定に伴う各種の空間パラメータの変動は、スクラントン現実錨を用いて同じ値のヒューム濃度に固定した場合と一致します。固定されたヒューム濃度を人為的に低下させる試みは現在のところ成功していません。 SCP-976-JPは特定の条件が満たされた場合に自身の内部ヒュームを変動させる性質があり、それに伴って固定されるヒューム濃度の値も変動します。最も多く確認されているケースは、ヒューム濃度固定領域内にその時点での固定数値を上回る内部ヒュームを持つ実体が侵入した場合です。このとき、SCP-976-JPはただちに自身の内部ヒュームを対象の内部ヒュームよりも僅かに高い値に変動させます。正確な変動上限は不明ですが、実験では██Hmまでの上昇が確認されました。この性質のため、ほとんど全ての現実改変者はSCP-976-JPの周囲で能力を行使することができなくなると推測されます。 また極めて希少なケースですが、SCP-976-JPが非常に強いストレス下で極度の興奮状態に陥った場合、上記の固定的な変動とは大きく異なる現象が発生します。このときSCP-976-JPの内部ヒューム濃度分布に著しい乱れが生じ、0.██Hmから██Hmまで無秩序に入り混じった、マーブル状と形容されるような様相を呈します。この乱れはすぐさま周囲へ適用され、空間中に極度の高ヒュームポイントと極度の低ヒュームポイントが隣接して密集した状態になり、ある種の現実断層と呼ぶべき現象4が無数に発生するとみられています。この現象は世界オカルト連合の排撃班一個分隊が収容前のSCP-976-JPと接触した際に一度だけ発生が確認され、これによって分隊構成員13名全員が死亡しました。回収されたヒューム表示機能付き映像記録装置の解析と事後の現場検証の結果、分隊構成員はいずれも超常的な原因で死亡したことが確認されました。 + GOCエージェント13名の死亡原因を閲覧 - 閲覧を止める 死亡者数 死因 3名 互いの肉体の部位が無作為に入れ替わり、急性拒絶反応で死亡 1名 心臓を嘔吐 2名 SCP-976-JPへの掃射直後、ランダムに空間転移したライフル弾に被弾 1名 肉体が裏返る(財団エージェント到着時点では生存) 2名 正中線に沿って壁に埋め込まれ、血流不全で死亡 1名 頭部が天井と結合した後、頸部がちぎれ胴体のみ落下 1名 横隔膜よりも下が床と結合(財団エージェント到達時点では生存) 1名 四肢の末端からほぐされるように分解 1名 肉体の60%が虫食い状に消滅 現実改変者とのクロステストおよび他のオブジェクトの収容への利用に関しては、各部署からこれまでに合計██回の提案がなされていますが、現時点では個体喪失の懸念および自己防衛のための現実断層の発生の恐れから、全て却下および保留とされています。 補遺1: 第██回目の研究班ミーティングにおいて、SCP-976-JPのオブジェクトクラスをEuclidからSafeに変更することが提案されました。理由としては、現在の特別収容プロトコルに基いた収容が容易かつ確実的であると考えられることに加え、現実断層の発生条件が極めて特殊であり脅威度が低いと判断されることが挙げられています。ミーティング出席者の反対多数で正式な変更申請は見送られましたが、反対者の三分の一は将来的な変更が充分ありうるとの意見を表明しています。 アナが……もとい、SCP-976-JPが現実断層を発生させることは恐らくあり得ないだろう。発生のファクターとなる実体はもう存在しないのだし、特別収容プロトコルが順守されている限りは代わりになるものが見つかるとは到底思えないからな。  ――研究主任 ██博士 + 補遺2: 閲覧にはレベル2セキュリティクリアランスが必要 - 閲覧を止める SCP-976-JPが収容されたのは、GOCがKTE-████-Green "White-Bread"と呼称していた、要注意団体[編集済]の関係者と目される財団未収容の現実改変者の隠れ家です。KTE-████-Green "White-Bread"は民間人とGOCエージェントを合わせて███名以上を殺害あるいは消滅させたことでGOCの現実改変者粛清作戦の対象となり、█年間の潜伏の末に頭部を狙撃銃で撃ち抜かれて終了させられました。狙撃成功後、排撃班の制圧分隊が隠れ家に突入して要注意団体に関する証拠物品の回収を試みましたが、現地で遭遇したSCP-976-JPが発生させた現実断層によって全滅しました。 その後、協定により後方待機していた財団の調査チームがKTE-████-Green "White-Bread"の隠れ家に踏み込み、SCP-976-JPと一冊の日記帳を回収しました。この日記帳はKTE-████-Green "White-Bread"の私有物とみられ、粛清作戦前日までのおよそ400日分の出来事が記述されています。 34ページ目下段 「近頃、壊し屋共も来なくなって張り合いがない」と██5に相談してみたら、██の奴、妙な提案をしてきやがった。ネコを飼えだって? 気まぐれで退屈しないからだと言っていたが、疑わしいものだ。 オレ達の思い通りにならないものなんてない。オレ達はそういうものだ。言うことを聞かない動物だって反射的に念じてしまったらそれまでだ。退屈しのぎにもなりはしない。██の奴、閉じ込め屋と壊し屋に追われ過ぎて遂におかしくなったんじゃないだろうか。 35ページ目上段 [前半は無関係な内容のため省略] ふと浮かんだアイディア。オレの力で、言うことを聞かせられない生き物を作ってみるのはどうだろう。全能のパラドックスの実演だ。全知全能の神は自分でも持ち上げられない石を作れるか。急に興味がわいてきた。明日にでも試してみよう。 35ページ目下段 結論から書くと、狙い以上のモノができた。言うことを聞かせられないなんてレベルじゃない。あいつが近くにいるだけで力を使うことすらできなくなるくらいだ。オレの力は思っていたよりもずっと強力だったみたいだが、正直言ってあまりにも不便だ。力が使えないと日常生活にも困ってしまう。 こんなことになるなら処分方法を考えてからにするべきだった。捨てるか殺すか保健所か。どれが一番閉じ込め屋に気付かれにくいのだろう。奴らは手下をそこら中に送り込んでいるはずだから、保健所に持ち込んだら足がついてしまうかもしれない。 疫病神め。 36ページ目上段 [前半は無関係な内容のため省略] それにしても██め、他人事だと思って好き勝手いいやがって。何が責任もって世話をしろだ。 だがまぁ、殺すと何が起こるか分からないから止めておけ、というアドバイスは納得だ。殺してただの死体になってくれたらいいが、そうでなかったらもっと面倒なことになるかもしれない。下手に捨てたら閉じ込め屋に目を付けられるかもしれないから、しばらくは飼い続けて様子を見るしかなさそうだ。 37ページ目上段 あいつもようやくオレに慣れてきたらしい。気が付いたら足にすり寄ってきている。かと思ったら、しばらく触っただけで隣の部屋に行ってしまう。本当に気まぐれで自分勝手な奴だ。 [後半は無関係な内容のため省略] 38ページ目下段 あいつがずっと膝の上に乗っている。これを書いている今もずっとだ。最近冷えてきたからオレの体温で温まっているんだろうか。下ろしても下ろしても戻ってくるから、どけるのはもう諦めた。 そういえば、今年は暖房が必要かもしれない。いつもは力を使って寒さを防いでいたが、今年はこいつがいるからそれができない。寒いのは嫌いだし、凍死されるのは迷惑だ。明日にでも調達しよう。 40ページ目下段 大事なことを忘れていた。あいつに名前を付けていなかった。なんて名前を付けようか悩んだが「アナ」と呼ぶことにした。A、N、N、Aでアナ。パッと思いついた名前だがあいつにピッタリだ。 45ページ目上段 ██がアナの処分方法を考えてきた。普通のネコとして他の誰かに譲ってしまえばいいというのだ。言われてみれば簡単な話だ。よく会う知り合いは大体みんな力を持っているので、アナを押し付けようという発想が浮かばなかったんだろう。赤の他人に譲ってしまえば済む話なのに。 だけど、アナを他人にやるつもりは今のところない。外に出たがらないから大人しいものだし、ヒマなときに毛並みを弄ってやるのは意外と楽しい。何より退屈しないのがいい。飽きるまではこのままでいいだろう。 ███ページ目上段 アナが来てくれてから明日で一年になる。記念日を心から祝うなんて本当に久しぶりだ。つくづくオレは人生に飽きていたらしい。何もかもが思い通りになることに飽き飽きして、そのくせ飽きていたことにも気が付かなかったんだ。けれどアナのおかげで何もかも変わった。不自由な暮らしがこんなに幸せになるなんて思わなかった。 明日はいつもの奴よりも高価な猫缶を買って帰ろう。ああ、そういえばいつの間にか、アナのごはんを力で調達しなくなっていた。アナが「そんなことをするな」と言っているような気がしてならないんだ。昔のオレが見たら引っくり返るだろうな。 アナは今もオレのヒザの上でノドを鳴らしている。なんて幸せなんだろう。 編集注: この記述の翌日にGOCの粛清作戦が実行されました。 Footnotes 1. http://ja.scp-wiki.net/and-this-one-explains-humes 2. 平均1.25Hm。 3. 現実改変能力と同様の原理であるという仮説が最も有力視されています。 4. 混濁したヒューム濃度分布のうち、低ヒュームの部分だけが接触した人間の無意識の願望を反映し、無自覚のうちに現実改変を引き起こすことで、高ヒューム領域との間に極端な現実性のズレが生じる現象です。ズレの大きさによっては、起点となった人間および接触した他の人体に破壊的かつ不可逆な損傷を生じさせます。 5. ありきたりな日本人の苗字です。個人特定は成功していません。
scp-977-jp
評価: +140+–x 評価: +140+–x クレジット タイトル: SCP-977-JP - もちつきうさぎと逸話たち 著者: ©︎yzkrt 作成年: 2019 評価: +140+–x 評価: +140+–x SCP-977-JP群が乗り込む探査機の画像。機器を通して撮影されている。 アイテム番号: SCP-977-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-977-JP群には有効な収容手段が存在しません。SCP-977-JP群の行動はDクラス職員を用いて常に遠隔から監視してください。SCP-977-JPへの連絡にはセキュリティクリアランス3以上の職員の許可を得てから行ってください。 説明: SCP-977-JPは宇宙開発事業を行うウサギのぬいぐるみのように確認されるクラスФ1霊体1群です。SCP-977-JP群はそれぞれ自律的に行動し、大きさはおおよそ20~40cmほどです。SCP-977-JP群は██県の██山中に拠点を構えていることが確認されており、SCP-977-JP群の活動を観測することが可能です。拠点自体は一般的な物質で構成されていますが、内部に一切の設備が見られないことからSCP-977-JPが活動に用いているすべての物品は霊的物質であると推測されます。 拠点内ではSCP-977-JP群により有人探査機2の製作、及びそのために必要な計画の立案、調査などが行われています。これらのイベントは日常的に行われていますが、おおよそ半年に1度、SCP-977-JP群による『打ち上げイベント』が発生します。 『打ち上げイベント』では、おおよそ15m程度の有人探査機が工場から運び出され、発射台に設置されます。その後、3体のSCP-977-JPが探査機に乗り込み、全SCP-977-JPが見守る中で探査機が発射されます。しかし、現在におけるまで『打ち上げイベント』により発射される探査機が大気圏を突破した事案はありません。3飛行距離はイベント毎に緩やかな増加を見せているものの、実際に宇宙空間に探査機が到達するまでには短くとも███回のイベントが必要と推測されています。 発射される探査機を観測した結果、構成物質は布、毛糸などと類似したものであると推測されました。また、SCP-977-JPの総数が減少していないこと、同様の特徴を持ったSCP-977-JP個体がイベント後にも確認されていることから何らかの手段で帰還しているものと思われます。 以下はSCP-977-JPの拠点の外壁に記載されていた電話番号へ、電話をかけた際に行われた職員とSCP-977-JP個体の音声記録です。 音声記録977-JP インタビュアー: 阿仁博士 対象: SCP-977-JP [記録開始] 阿仁博士: もしもし、こんにちは。 SCP-977-JP: こんにちは!こちらJAuXAジャウサ4宇宙開発ステーションです!ご用件はなんでしょうか? 阿仁博士: そちらで、宇宙開発を行っているとお伺いしたのですが、どのようなことをなさっているのかお聞きしてもよろしいでしょうか? SCP-977-JP: もちろん!私達は公益性のある事業を行っていますから、外部秘密の技術情報以外ならお答えします! 阿仁博士: ありがとうございます。まず、あなた方は探査機を開発していますよね。 SCP-977-JP: はい!有兎宇宙探査機の開発をしています! 阿仁博士: それでは、まず探査機を製作している理由をお伺いしてもよいですか? SCP-977-JP: ええ!それは月に行くためです! 阿仁博士: 月に行って何をするのですか? SCP-977-JP: それはもちろん、餅つきです! 阿仁博士: 餅つき?月面の調査などではなく、餅をつくためだけに月に? SCP-977-JP: そうです!うさぎは月で餅をつくものと相場が決まっているじゃないですか!それ以外に何の理由があると言うんですか? 阿仁博士: なるほど……。わかりました。 SCP-977-JP: はい!他に何か質問はございますか? 阿仁博士: ██山中以外に拠点は存在していますか? SCP-977-JP: いいえ!JAuXAが拠点として活用しているのはこの施設だけです! 阿仁博士: なるほど、ではそちらの施設を見学させて頂いたり、材料について調べさせて頂くことは出来るでしょうか? SCP-977-JP: うーん、それは情報流出の危険があるため出来かねます。申し訳ありません。 阿仁博士: いえいえ、やはり開発途中とあればそういうこともあるでしょう。気になさらないでください。 SCP-977-JP: ごめんなさい。でも、代わりに1つ!月への飛行技術を学ぶ副産物として無兎探査機の計画をしています!いつかお見せすることができるかもしれません! 阿仁博士: 無人探査機、それは楽しみですね。 SCP-977-JP: ええ!無兎探査機『はやうさ』の活躍をお待ちください! 阿仁博士: ええ、楽しみにしています。本日は質問に答えていただきありがとうございました。 SCP-977-JP: こちらこそ!どうもありがとうございました! [記録終了] 補遺: 第██回打ち上げイベントにおいてSCP-977-JPの新たな異常性がある可能性が示唆されました。以下はその時の音声記録です。 [抜粋開始] 阿仁博士: それではD-1782、監視するオブジェクトの動向について述べてください。出来るだけ詳細にお願いします。 D-1782: この望遠鏡でロケットのあるとこを覗けばいいのか? 阿仁博士: そうです。 D-1782: 了解、ちっちゃいロケットだな。10mぐらいか? 阿仁博士: そのロケットが発射され、墜落したら今日の仕事は終わりです。 D-1782: なるほど、墜落なんて縁起が悪いな。おっ、大量にぬいぐるみが出てきたぞ。全部ピンクのうさぎだ。 阿仁博士: 予定通りですね。 D-1782: 宇宙服を着た奴もいるな。アイツらがロケットに乗り込むのか。 阿仁博士: 宇宙服を着たぬいぐるみは何体いますか? D-1782: 3体だな。 阿仁博士: ありがとうございます。 D-1782: ……なぁ先生、1個質問してもいいか? 阿仁博士: 私語は慎むようお願いします。 D-1782: いや、ちょろっとで終わるんだよ。良いだろ? 阿仁博士: ……観察が終わってからなら許可しましょう。今は報告に専念してください。 D-1782: そうか、サンキューな。 [中略] D-1782: 宇宙服を着たぬいぐるみがロケットに乗り込んだぞ。 阿仁博士: 今回は少し時間がかかりましたね。誤差みたいな物ですが。 D-1782: おっ、カウントダウンだ。5、4、3、2、1……飛んだ。 阿仁博士: どのような様子で飛行していますか? D-1782: どのようなって言われてもなぁ。普通に…… [爆音] いや、今爆発したな。墜ちてく。 阿仁博士: いつも通りです。落下したロケットの確認はできますか? D-1782: 森の中に入っちまった。見えない。発射台のすぐ近くかな。 阿仁博士: なるほど、了解しました。よし、これで今日は終わりです。お疲れ様でした。 D-1782: どうも、じゃあさっきの質問、してもいいか? 阿仁博士: 構いませんよ。どうぞ。 D-1782: あの月に行くぬいぐるみはなんでうさぎなんだ?月といえばカニの模様だってイタリアのばあちゃんからよく聞いてたぞ? [抜粋終了] 前述の報告を受け、SCP-977-JP類似案件についての報告を行ったところ、各国支部からも同様の異常性を持ったオブジェクトの報告がありました。以下はそのリストです。 地域 確認された霊的実体 イタリア カニのぬいぐるみの霊的実体。1988年からの活動が確認されている。 アラブ首長国連邦 ライオンのぬいぐるみの霊的実体。2006年からの活動が確認されている。 インド ワニのぬいぐるみの霊的実体。1969年からの活動が確認されている。 アメリカ トカゲ、ワニなどの多数種類のぬいぐるみの霊的実体が確認されており、実体毎に活動開始時期も異なる。 中国 カエルのぬいぐるみの霊的実体。他実体よりも活動を秘密裏に行う傾向があり、調査は難航している。 調査の結果からそれぞれのオブジェクト群は互いの存在を認知しており、月面着陸の成果を競っていることが判明しました。また、未だ確認されていない実体が多数存在することも考えられます。 音声記録977-JP.7 インタビュアー: 阿仁博士 対象: SCP-977-JP [記録開始] 阿仁博士: こんにちは。 SCP-977-JP: こんにちは!あっ、いつもの方でしょうか?お世話になっています! 阿仁博士: ええ、こちらこそ。お覚えいただき光栄です。 SCP-977-JP: いえいえ!今日はどういったご用件でしょうか? 阿仁博士: 先日、イタリアや中国でも同じような方々が宇宙研究をしていることを知りましてね。ご存じですか? SCP-977-JP: もちろん!いろんな国の様々な機関の方々が宇宙研究をしていますね! 阿仁博士: そういった方々と協力して研究されることはあるのでしょうか? SCP-977-JP: うーん、協力関係ではないです。誰が1番に月に行けるか激しく競い合っているライバルのような感じですね! 阿仁博士: 他に月を目指している方々もあなた方のようにそれぞれ目的を持っているのでしょうか? SCP-977-JP: はい!共通の目的はあったりしますが、基本は自分たちが1番にたどり着いて達成したいことがあるからですね! 阿仁博士: そうですか……あの、共通の目的とはなんでしょうか? SCP-977-JP: それは、月にたどり着いて自分たちのことを知ってもらうことです! 阿仁博士: そうすると、どうなるのですか? SCP-977-JP: はい!世界中に自分たちの存在を知ってもらうことが出来ます!世界中の人たちに「月ではウサギが餅をついているんだ」と知ってもらうことが出来たら、とても素敵ですよね! [記録終了] 月に到達するのがいつになるのか、そもそも自分たちが霊的実体であることを認識しているのかすらわからないが……まぁこちらから手出しは出来ないんだ。見ているしかないだろう。 — 阿仁博士 脚注 1. 質量を持たない霊体の総称。観測には専用の計器を必要とし、また相互の物理的干渉もできない。 2. いわゆるロケット。SCP-977-JPと同様にクラスФ1の霊的物質で構成されている。 3. すべての事案において、エンジンの不具合、墜落、空中爆発などを起こしている。 4. 原文ママ。SCP-977-JPが開発するロケットの側面などに記載されている。
scp-978-jp
評価: +52+–x アイテム番号: SCP-978-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-978-JP-A-1から-5は個別に爆発物隔離チャンバーへ格納した上、サイト-81██の低温物品保管庫へ収容して下さい。保管庫内は常に摂氏-5度未満へ調整して下さい。 SCP-978-JP-Bは耐爆構造を施した人型収容室へ収容されます。収容室内は監視カメラと重量センサーでの監視を行って下さい。重量センサーにて質量の増加が認められた場合、担当職員への通達と収容室内の冷却が自動で行われます。SCP-978-JP-Aは食事、排泄、睡眠、代謝を必要としません。そのため、室内へは備品は不用です。 SCP-978-JPの実験は担当研究主任への申請が必要です。研究員のみでの実験判断は常に却下されます。 説明: SCP-978-JPは、SCP-978-JP-Aと、そのキャリアであるSCP-978-JP-Bの二つを指します。 SCP-978-JP-Aはテラトマ体に似た外見の有機体で、合計5つが収容されています。オブジェクトの温度が摂氏0度未満の場合は非活性状態ですが、常温に曝され、摂氏10度を上回ると活性化します。活性化したSCP-978-JP-Aは約2時間以内に爆発します。爆発までの時間は温度に依存しませんが、摂氏500度以上の高温に晒された場合は爆発より先に焼却されます。爆発後の残骸は数分程度で蒸発するため、成分検査の実施には至っていません。 ロボットアームを用いた解剖は、メスを入れて数秒後に爆発したため失敗に終わっていますが、ハイスピードカメラによる映像を分析したところ、鋭い骨のような物体が飛び散っている事が判明しています。この事は、X線検査により、内壁を裏打ちするように鋭い骨状の物体が配置されている様が撮影されている事で裏付けされています。 SCP-978-JP-A単体ではTNT換算で1.5kgの破壊力を持っており、これは半径30m前後に殺傷力を及ぼします。前述の鋭い骨状の物体も飛び散るため、実際の殺傷能力はさらに上回ると考えられます。 また、SCP-978-JP-Aには表面に5つのイボ状の突起があり、これをむしり取る数で爆発までの時間を調整できる事が判っています。 SCP-978-JP-Bは、脳、眼球、臓器及び性器が取り除かれた人型の実体です。全長は175.3cm、重量約50kgで全身に毛はなく、非常に痩身です。腹部にはジッパーがあり、SCP-978-JP-Aが格納できます。平常時は非活性状態で目立った生命活動はせず地面へ座っており、脈拍や脳波が一切検知されないにもかかわらず、自発的に歩くなどの行動をとる場合があります。 非活性化状態のSCP-978-JP-Bを検査したところ、肋骨の裏に『日本生類創研 HB-0011-PRT08』と焼き印が押されていました。この事から、SCP-978-JPの製造元は日本生類創研が関与していると見られています。 SCP-978-JP-Bは腹部へSCP-978-JP-Aを格納する事で活性化をします。頭髪が生え、外見上は30代の成人男性の姿をとり、自律行動をするに至ります。活性化をしたSCP-978-JP-Bは衣服を要求するようになり、また、周囲の人間に対し「自分はどこへ向かえば良いのか」と指示を促します。位置を指定した場合、一般的な方法で指定された位置へ移動、その後、腹部へ格納されているSCP-978-JP-Aが爆発をします。インタビューにより、指定場所への到着後の起爆については、あらかじめ時間が指定できるようです。また、このとき格納されているSCP-978-JP-Aの起爆は、表面についている5つのイボ状の突起による時間調整は無効化されます。起爆時、SCP-978-JP-BはSCP-978-JP-Aの爆発の影響は受けません。 SCP-978-JP-Aを爆発や焼却などで失った場合、SCP-978-JP-Bは新たなSCP-978-JP-Aを口から吐き出します。これにより、SCP-978-JP-Aが5個から減る事はありません。 非活性状態のSCP-978-JP-Bについての耐久実験は、現在日本支部理事による承認待ちです。却下されました。 活性化状態のSCP-978-JP-Bとのインタビュー記録 対象: SCP-978-JP-B インタビュアー: ██研究員 付記: インタビューは、SCP-978-JP-Bを耐圧設計の収容室へ収容した上で、カメラとマイクで遠隔にて行っています。 + インタビュー記録-81978-01 - 閉じる <録音開始> ██研究員: こんにちは、SCP-978-JP-B。今日はあなたに伺いたい事があります。 SCP-978-JP-B: やあ。SCP-978-JP-Bというのは私の事か。服をくれないかね。全裸では何かと問題だろう。 ██研究員: 問題ありません。あなたの目的について教えて下さい。 SCP-978-JP-B: 目的か。むしろ私にこの子たちを入れたのだ、君たちに目的があるのではないか? ██研究員: 説明して下さい。この子、とは、SCP-978-JP-Aの事でしょうか。 SCP-978-JP-B: 君たちが私の腹に入れただろう。私は今、指令を待っているぞ。指令をするのは君たちだ。さあ、私はどこへ向かえばいい。 ██研究員: その提案は保留致します。質問に答えて頂ければ結構。次の質問ですが— SCP-978-JP-B: いいのか? タイムアウトまで5分だが。10分まで延長できるぞ、延長するか? ██研究員: (無視して)—あなたの身体には通常では考えられない点が散見されます。あなたの起源について教えて下さい。 SCP-978-JP-B: 延長しなくていいのかね? ██研究員: 質問に答えて下さい。 SCP-978-JP-B: まあ、いいだろう。出身の話か。私は自分の出身に興味が無いんだ。記憶も無い。 ██研究員: では、ここへ来る前はどこにいましたか? SCP-978-JP-B: 記憶にないな。私は気がついたらここにこうしていた。さあ、私はどこへ向かえばいい? ██研究員: 先ほどから向かう場所を聞いていますが、それがあなたの目的と言う事ですか。 SCP-978-JP-B: まて、君たちは私の扱い方を知らずに使おうとしていたのか? それを先に言ってくれ! ██研究員: では、説明して頂けますか。 SCP-978-JP-B: もちろん、もちろんだ。私にこの子を入れる。私が目を覚ます。場所を指定される。私がその場所へ行く。以上だ。 ██研究員: あなたが指定地点へ行くとどうなりますか? SCP-978-JP-B: 待て。そろそろだぞ? ██研究員: 何がですか? SCP-978-JP-B: タイムアウトだ。 [激しい爆発音とノイズ] <録音終了> 終了報告書: SCP-978-JP-Bが爆発をしたためインタビューは終了しました。Dクラス職員にて収容室を確認したところ、部屋の隅には非活性となったSCP-978-JP-BとSCP-978-JP-Aが転がっていました。SCP-978-JP-Aは冷却スプレーで無力化後、収容庫へ運ばれました。 + インタビュー記録-81978-02 - 閉じる <録音開始> ██研究員: こんにちは、SCP-978-JP-B。今日は以前とは違う容姿なのですね。 SCP-978-JP-B: SCP-978-JP-Bとは俺の事か? 服はどこにある。 ██研究員: 服はありません。まず、最大までタイムアウトの延長をして下さい。 SCP-978-JP-B: 10分だな。それで、俺はこれからどこへ向かう? ██研究員: その件についてですが、あなたの使用方法を詳しく教えて下さい。 SCP-978-JP-B: いいだろう。まず、俺の腹に爆弾を詰める。そして、目的地を指定してくれ。俺はそこへついた後、爆発する。指定が無い場合、到着後おおよそ30分程度で爆発する。到着から爆発までの時間指定も可能だ。判ったか? ██研究員: わかりました。回収はどうすれば? SCP-978-JP-B: それはあんたたちが考えろ。 ██研究員: 判りました、質問は以上です。もう結構ですよ。 SCP-978-JP-B: 待て待て、目的地の指定をしていないだろう。 ██研究員: ああ、そうでしたね。…では、目的地は今あなたがいるそこです。爆発までは、…3分でお願いします。 SCP-978-JP-B: ここでいいのか? まあ、了解だ。結果は期待してくれ。 [3分後、激しい爆発音とノイズ] <録音終了> 終了報告書: SCP-978-JP-A、及び-Bは、チャンバー内の冷却及び無力化処理後収容されました。 インタビューから判るとおり、本オブジェクトは平和的な用途に使用される物で無いことは明らかだ。研究者としては構造等興味深いが、…個人的にはまとめて火山にでも放り込んでやりたいね。 ――██博士 補遺: 別オブジェクトに関する日本生類創研への調査時、倉庫の一つから、以下のメモが見つかりました。 HB-0011-PRT10 :使用後の自律回収機能未調整。破棄。 HB-0011-PRT10.1:自律回収機能を調整。まだ不安定。 HB-0011-PRT11 :自律回収機能完成。顧客注文によりセーフティとスリープもテスト。 HB-0011-PRT12 :[破損により判読不可] HB-0011-PRT12.1:[破損により判読不可]
scp-979-jp
評価: +25+–x アイテム番号: SCP-979-JP SCP-979-JPによって出現したミノカサゴ( Pterois lunulata )、背後の黒い流体にも注目。 オブジェクトクラス: Safe Euclid 特別収容プロトコル: SCP-979-JP発生区画は周辺の改装によって隔離と封鎖を行い、進入箇所を一部残した上で警備員に偽装した職員によって民間人の進入が防がれます。 説明: SCP-979-JPは██県████水族館の大型水槽内部で発生する異常な事象です。AM2:00からAM3:05の間の異常性発露時間を活性化状態と指定を行い、その時間帯以外は異常性が確認される事はありません。SCP-979-JPが発生する大型水槽は幅20×25m、深さ8mの一般的な水族館等で使用されているものと同一の構造であり、設計段階に置いて異常性は関与していない事が確認されています。 SCP-979-JPが活性化状態に移行した場合、水槽内の不特定な座標に存在する直径約4mの範囲の海水が瞬時に黒い流体状の物質へと変化します。流体は外観上においては重力と水流を無視した流動性を見せる球状の液体として維持され、その際に接触を含む干渉は不可能となります。活性化時に変化の境界線上に海洋生物が存在した場合、その段階で範囲内に存在する生物は流体の内部に取り込まれます。この生物は非活性状態に移行しても再出現する事はありません。水中用ドローン等による流体への接触も試みられましたが、内部に取り込まれたドローンからの信号は即座に途絶えました。流体は活性化状態の間、不定期に内部から多数の物品や海域を問わない海洋生物を排出します。 以下はこれまでに確認された出現物の抜粋です。 3mを超えるダイオウイカ( Architeuthis dux )の物と思われる触腕 122kgの種類が特定できない程腐敗した脂肪の塊 海藻(未特定種) 消波ブロック フクロウナギ( Pelican eel ) - 個体は出現後水圧の変化によって死亡。 2mを超えるヒトと類似した形状の右腕部 セミクジラ( Eubalaena japonica )の新鮮な背骨 使用された形跡のあるシュノーケリングの装備一式 - 酸素ボンベの残量は0となっていた。 5432匹のラブカ( Chlamydoselachus anguineus) 特筆すべき点として、SCP-979-JP活性化の際に流体内部で緑色の光が発生する点が挙げられます。光の発生は不定期であり、 多数の光が同時に発生したパターンも報告されています。SCP-979-JPの発生原因が不明である以上、由来が判明していないこの光に対する調査がSCP-979-JP発生原因の解明に繋がる可能性が存在する事から、研究員を派遣しての調査が現在も継続されています。 追記: SCP-979-JPは複数の海域での発生が推測される未確認の転移現象を含有する存在であるとして、Euclidクラスへの再指定が行われました。 観覧用のトンネル水槽 補遺1: 大型水槽内を貫通する観覧用のトンネル水槽内部から流体の観察を行っていた研究員が、不明な存在の視認を原因とする心因性ショックと意識の喪失を経験しました。研究員を発見した警備スタッフは非活性化時刻を過ぎた後も戻らない事を不審に思い、トンネルへと向かった際に内部で倒れていた研究員を発見したと報告しています。搬送後、研究員に外傷等は確認されませんでしたが覚醒後に錯乱状態となった為、容体を見ながらカウンセリングと並行して事情聴取が行われています。 カウンセリング記録からの抜粋 記録を閉じる 対象: 山下研究員 質問者: 白月カウンセラー <記録開始> [不要な会話を省略] 白月カウンセラー: 大分落ち着いてきた様ですね。 山下研究員: はい、お陰様で。色々と思い出せるようになってきました。もう大丈夫だと思います。 白月カウンセラー: それは良い事です。では、記憶の整理も兼ねて一度その時の状況を話して頂けますか?無理に考え込まず、思い出した通りに口に出してください。 山下研究員: 判りました。 白月カウンセラー: まず、当時の状況で貴方が最初に思い出せる事は何ですか? 山下研究員: 最初に思い出せるのは、<12秒間沈黙>暗かった事ですね。そうだ、SCP-979-JPが活性化する時刻の十分前からトンネル水槽の所で待機していたんだ。そして暗くなった事に気が付きました。発生時刻を示すアラームが鳴った事で水槽に目を向けたと思います。 白月カウンセラー: 急に暗くなったんですか?そして、貴方は恐慌状態に陥った? 山下研究員: そうですね。あの時、水族館内部の照明は点灯していて、内部は何処でも見渡せるように明るくなっていました。そして、アラームが鳴ると同時に少し暗くなったんです。しかし、完全に真っ暗という訳でも無く、その事に対して恐怖は感じなかったと思います。<10秒間沈黙>恐怖は感じませんでしたが、驚きました。トンネルのすぐ傍にSCP-979-JP事象が発生していたんです。貴方に伝えても分からないかも知れませんが、墨のように真っ黒な流体が巨大な球の形になってトンネルに張り付いていたんです。いつもはもっと離れているのに。 白月カウンセラー: 本件のオブジェクトに関しては貴方のケアに必要な情報として、一部が私にも開示されています。支障はありませんのでそのまま続けて下さい。 山下研究員: はい。私はSCP-979-JP事象を間近で観察するチャンスだと思いました。所持していたペンライトを向けて、流体を観察したんです。流体は光を通さず、中を見通す事は出来ませんでした。まぁ、以前に小型の水中用ドローンを接近させた際も同様の結果だったのであまり期待はしてなかったんですけどね。そして、私は何かが排出されるまで待つ事に決めました。待ち続けて<沈黙> 白月カウンセラー: 大丈夫ですか?思い出すのが辛い様なら一度中断した方が良いかもしれませんね。 山下研究員: ああ、いえ、大丈夫です。細部を思い出そうとすると少し怖くなってしまって。とにかく、私は魚や船の残骸が排出されるまで流体を眺めていたんですが、その時緑色の光を見た様な気がします。いえ、確かに緑色の光はありました。小さな光で、それが一瞬だけ上に向かっていくのが見えたんです。私はそのまま光を追って上を見上げました。そして、見たんです。 白月カウンセラー: 緑色の光を? 山下研究員: いえ、その時には光は消えていたと思います。もしくは目に入りませんでした。その時、私が見た物は白い物でした。白くて、五つに枝分かれしていて、私の顔より大きかったと思います。最初は白いヒトデかと思いました。しかし、それを見ていると普段見慣れている何かを思い出したんです。掌でした。それは白くて大きな右の掌で、水槽に張り付いていました。指の関節や掌線まではっきり見えて、ヒトの手に似ていたと思います。そして、急に大きな音と共に黒かった水槽が白色で占められました。掌から腕、肩と続いて、完全に全身が水槽に張り付いていました。上半身はヒトに似ていましたが、顔には目も鼻も無かったと思います。腰から下はそのまま細く伸びて蛇の様で、そして、そして、<息切れ> 白月カウンセラー: 落ち着いて下さい、深呼吸を。一時中断します。 山下研究員: そして、急にいなくなりました。消えたというよりは後ろに引っ張られている様な感じです。そして、緑色の光が沢山見えて、意識が遠くなって、<深呼吸>すいません、今止めてしまうと思い出せなくなると思って、もう大丈夫です。そして、私はそのまま気を失いました。 白月カウンセラー: 成程、わかりました。貴方の発言は容体をチェックする為に記録されていましたが、このままオブジェクト担当班に提出させて頂きます。貴方はゆっくりと休んで下さい。今の貴方には休息が必要です。 山下研究員: 判りました、そうさせて頂きます。よろしくお願いします。 <記録終了> この研究員の発言と以前に排出された人に似た未特定種の腕を含む多数の有機物から、SCP-979-JPによって排出される個体の中には既存の生物を遥かに逸脱する生物が存在する可能性が示されています。この事案を受けて、SCP-979-JPの発生を制限する手段が現在も模索されています。 補遺2: SCP-979-JP事象の発生に対する海水の有無の必要性を調査する為、水槽内部の完全な排水を行おうとした所、活性化時刻以前のSCP-979-JPの発生が確認されました。発生時、内部の水量は水嵩35cmを切った状態であり水中に目視できる生物は存在しなかったにも関わらず、突如内部の水全てが黒い流体へと変化しています。この変化は非活性化まで47秒継続され、クロマグロ( Thunnus orientalis )の生きた個体や未特定種の海綿、幅3mに及ぶ凍結した海水と共に深海探査に使用される設備を備えた潜水艇が出現しました。潜水艇は外観から財団保有の有人深海探査艇"Captat"である事が判明しましたが、船体は錆とフジツボ類に覆われており、内部からは争った形跡を残す3名の腐敗した遺体が発見されました。同探査艇は20██/9/23に日本海沿岸で消失した機体と同一の物であり、記録から内部の乗組員は下北沢博士、楊操縦士、棚橋副操縦士の三名であると判明しています。 これらの報告を受けて、水槽内の排水が異常事象の活発化を促す事が指摘された為、以降の排水は必要であると判断されるまでは行われない事が決定されました。また、有人探査船内部の機器から復元された記録からSCP-979-JP事象は広範囲の海域に及び、発生に未特定の存在が関与している可能性が浮上した事からオブジェクトクラスの変更と共に調査の継続が決定されました。 復元された記録 再生を中止する 音声記録-████ 搭乗者: 下北沢博士、楊操縦士、棚橋副操縦士 付記: 異常事象遭遇以前の記録は特筆すべき点が無かった為、編集を行っています。 <再生開始> 楊操縦士: 現在、水深2,172mに到達。下方向に岩盤と砂地を確認。 下北沢博士: このまま一度着底を行えないかな?地層のサンプルを採取しておきたい。 棚橋副操縦士: わざわざ着底しなくてもマニピュレータを伸ばせば届く範囲ですね。岩石片と砂の一部で十分ですか? 下北沢博士: ああ、十分だよ。 楊操縦士: バスケットを解放した。マニピュレータの操作はそちらで頼む。 棚橋副操縦士: 了解です。<沈黙>あれ? 楊操縦士: ちょっと待て、砂地はどこだ? 下北沢博士: どうした? 楊操縦士: 待て、何かおかしい。下方向に何も見えないんだ。ライトも何かおかしい、範囲が狭くなってる。 棚橋副操縦士: マニピュレータに異常発生。可動していない様です。 下北沢博士: 機器の異常に地形の変化か。一度司令部に通信を試みる。船体を浮上させてくれ。 楊操縦士: 今やってるが移動スラスターにもエラーが出てる。このコードは、異物が侵入? 棚橋副操縦士: バケットを収納させた方が良いんじゃないですか? 楊操縦士: ああ、いや駄目だ。こっちもエラー。マイクロバルーンも動かん。船体が何かに固定されてるのか?各自、窓から何か見えないか確認してくれ。こっちはシステムを調べてみる。 下北沢博士: 正面の窓からは何も確認できないな。そっちのカメラはどうだ? 棚橋副操縦士: ま、待って下さい。さっき何か光が見えたんです。 下北沢博士: 深海魚じゃないか? 楊操縦士: ライトの光が届いてないのにか?おい、棚橋、カメラは伸ばしてるのか? 棚橋副操縦士: やってますが、何かの負荷がかかって動かせないんです。かろうじて回転しますけど、何も見え、<悲鳴> 楊操縦士: おい、何が見えた? 棚橋副操縦士: 緑色の、緑の何かがいました。すごい勢いで動いて、<以下、不明瞭な発音> 楊操縦士: <罵声>おい、博士!これは明らかに異常だ!上の船に連絡を取ってくれ!この距離なら簡易送信くらい出来るだろ!? 下北沢博士: 駄目だ、送信と同時に信号が遮断されている。モニターを見る限りソナーも機能していないようだな。完全に手詰まりだ。 楊操縦士: ふざけるな!こんな鉄の棺桶に閉じ込められて終わりだなんて、<沈黙>え?なんだ? 棚橋副操縦士: なんですか?これ、生き物ですか? 下北沢博士: <溜め息を吐く> [以降、悲鳴と罵声が続き、突如記録が中断される] <録音終了> 記録装置から復元されたデータの中には最後に転送を行おうとした形跡のある撮影データが残されていました。 映像記録-██ 撮影された存在の詳細は不明です。
scp-980-jp
評価: +24+–x アイテム番号: SCP-980-JP オブジェクトクラス: Euclid 実験直後、非活性状態に移行するSCP-980-JP。 特別収容プロトコル: 現在、SCP-980-JPを用いた一切の実験は禁止されています。 SCP-980-JPは現在、サイト内のパスワード付きロッカーにガラスケースに密閉された状態で保管されます。 担当職員の許可がない状態でSCP-980-JPに接触することは禁止されています。 説明: SCP-980-JPは非活性時は大きさ3cmの表面が濃い赤色の石状の実体です。非活性時、SCP-980-JPは自律的に活動せず、人間が表面に直接触れた時のみ活性化します。 SCP-980-JPは活性時、ゆっくりとしたペースで触れている部分を中心に人体を消失させ始めます。消失現象は血液に対して最も顕著に現れ、SCP-980-JPへの接触範囲が広いほど消失の速度は増加します。人体を消失させる方法は現在まで判明していません。 この現象の間、被験者は一切の痛みを感じませんが、血液が優先的に消失するため長時間接触した場合は例外なく重度の低血圧症を引き起こします。この段階で手を離した場合、被験者の多くはその後の日常生活により回復します。 さらに長時間連続して接触した場合、消失現象は血液以外の人体の構成物に及びます。消失に例外はありませんが、筋肉や内臓系が血液の次に優先されます。体内の構成物が消失するにもかかわらず皮膚への損傷はなく、体内の構成物の消失に合わせて皮膚量も減少します。被験者の体はSCP-980-JPに触れている箇所を中心に萎縮していき、接触が長引くほど生命活動が困難な状態になっていきます。SCP-980-JPから手を離しても欠損、消滅した部位や内臓機能が回復することはありません。 人体の消失現象が発生している間、SCP-980-JPは自らの体積を増大させていきます。活性状態に入った際、SCP-980-JPは触れている部位に似た形状を優先的に構築しているように見えます。 増大した部分のSCP-980-JPの実体は全体が赤褐色で、石膏によく似た質感を有しています。人体の部位によく似た形状をとりますが、体毛などの細かなものは作られません。 ある程度の大きさになったSCP-980-JPは形状に応じて自律的な活動を見せます。これまでの実験結果では意味のある行動は観察できていません。現在、SCP-980-JPは一定の条件下である程度の知性を見せることが分かっています。実験記録を参照してください。 人体から離されたSCP-980-JPは緩やかに縮小していき、元の石状に戻ります。増大部位が大きいほど非活性化までに時間がかかります。 財団はSCP-980-JPを埼玉県██市の公園敷地内で発見しました。その公園では以前から多数の子供が突発的な貧血を起こすことで知られており、その話を聞きつけた財団エージェントによって調査が行われていました。エージェントの1人がSCP-980-JPを手に持った際、手の中でオブジェクトが変形を始めたことで財団はSCP-980-JPを人体に接触することで異常性を見せるオブジェクトと判断し回収、███博士を中心に研究が行われました。 + 実験記録1から5を表示 - 実験記録を閉じる 実験記録980-JP-1 被験者:D-980-JP-1(男性、29歳) 触れる部位:右手の親指 触れる時間:5分 結果:5cmの爪の無い親指状の形状の部位を形成。1箇所の関節が存在し、時折体を折り曲げるような動作を行う。被験者は身体の異常を感じないと報告し、検査でも大きな異常はみられなかった。 ███博士の分析:触れた部位の特徴を再現しているように見られるが、指を作るというより全身が指状になっているようだ。 実験記録980-JP-2 被験者:D-980-JP-1(男性、29歳) 触れる部位:左手の親指 触れる時間:5分 結果:実験記録980-JP-1と同様の現象が左手の親指に発生した。 ███博士の分析:左右で大きく差が出ることはないようだ。 実験記録980-JP-3 被験者:D-980-JP-1(男性、29歳) 触れる部位:両手の人差し指の先端 触れる時間:10分 結果:中心から横に向かって1対、人差し指に似た7cmの部位を形成した。それぞれに関節が2箇所存在し、左右交互に動かすことで僅かながら移動能力を示した。被験者は頭がぼんやりすると報告し、血液量の減少による軽度の低血圧症と診断された。また、両手の人差し指が実験前と比べて細くなり、長さが3mmずつ縮小していることが判明した。 ███博士の分析:形成した部位の使い方を見るに、ある程度の知能を有していると感じる。 実験記録980-JP-4 被験者:D-980-JP-1(男性、29歳) 触れる部位:右足の踵 触れる時間:5分 結果:突起のない山状の体を形成した。被験者が離れた後も動く様子は無く、非活性化するまで一切の活動は観察されなかった。被験者は直立した際の違和感を報告し、その後の検査で右足の踵の表面が内側に4mm後退していると判明した。 ███博士の分析:元になった部位の特徴を再現しているということだろうか。自由に柔軟性を持たせることは出来ないのかも知れない。 実験記録980-JP-5 被験者:D-980-JP-1(男性、29歳) 触れる部位:左足の甲 触れる時間:5分 結果:触れた箇所を中心に本体に厚さをもたせるように薄く部位を形成した。実験記録4同様、移動能力は観察されなかった。被験者は靴を履いた際の左足の違和感を報告したが、診断に身体的変化は見られなかった。 ███博士の分析:報告内容は被験者の気にし過ぎだろう。正確なデータのためにも、あまり同じ被験者で実験を続けないほうが良いかもしれないな。 + 実験記録6から10を表示 - 実験記録を閉じる 実験記録980-JP-6 被験者:D-980-JP-2(男性、25歳)、D-980-JP-3(男性、31歳) 触れる部位:右手の親指 触れる時間:5分 結果:被験者は特別な選考理由は無くランダムに選ばれた。D-980-JP-2とD-980-JP-3は指示によって同時にオブジェクトへの接触を開始した。その結果、D-980-JP-3の触れていた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。D-980-JP-2の触れていた部分には一切の変化が見られなかった。 ███博士の分析:これは非常に興味深い現象だ。今回の被験者はどちらも男性で際立った能力が無いため、SCP-980-JP自体が吸収する相手を独自の理由で選抜した可能性が高い。考えられる理由としては、D-980-JP-3の方が体格が良いからというものだが、年齢などの違いもあるため確証は得られない。さらなる複数人による実験が必要だ。 実験記録980-JP-7 被験者:D-980-JP-2(男性、25歳)、D-980-JP-3(男性、31歳)、D-980-JP-4(男性、24歳) 触れる部位:右手の親指 触れる時間:5分 結果:前回の実験参加者2名と比べて身長が高く、体重の重いD-980-JP-4を新たに追加した。3名は指示によって同時にオブジェクトへの接触を開始した。その結果、D-980-JP-4の触れていた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。D-980-JP-2とD-980-JP-3の触れていた部分には一切の変化が見られなかった。 ███博士の分析:触れている人数は関係なく、やはり生物的に有利な体格を持つ者を選んでいるようだ。このオブジェクトに生存に対しての執着がある証拠といえる。 実験記録980-JP-8 被験者:D-980-JP-5(男性、37歳)、D-980-JP-6(男性、38歳) 触れる部位:右手の親指 触れる時間:5分 結果:被験者は事前に行われたIQテストの結果に差が大きい2名が選ばれました。身体的特徴は殆ど無く、D-980-JP-6の方がD-980-JP-5に比べて筋肉量が多い程度だった。結果、IQテストの結果が芳しくないにも関わらずD-980-JP-6が接触していた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。 ███博士の分析:知能に関してはどうでも良く、あくまでも身体的な強さを求めているようだ。 実験記録980-JP-9 被験者:D-980-JP-7(男性、30歳)、D-980-JP-8(女性、27歳) 触れる部位:右手の親指 触れる時間:5分 結果:被験者は性別の違い以外はランダムに選ばれた。結果、D-980-JP-8が接触していた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。D-980-JP-8は身体的に大きな特徴は無く、D-980-JP-7よりも小柄である。 補遺:███博士の提案により、当実験参加者とは別の男女をDクラス職員からランダムに選出し、同様の実験を3度実施した。結果は女性側に実験記録1と同様の現象が発生するのみで当実験結果との相違点が見られなかったため、記録は割愛する。 ███博士の分析:女性が優先されるのは間違いないだろう。性別に関しての認識もあるようだ。 実験記録980-JP-10 被験者:D-980-JP-9(女性、31歳。4人の内最も筋肉量が多い)、D-980-JP-10(女性、29歳。4人の内最も身長が高い)、D-980-JP-11(女性、35歳。4人の内最も体重が重い)、D-980-JP-12(女性、23歳。男性研究員30名へのアンケートにより、女性的な魅力を強く感じる外見とされている。) 触れる部位:右手の親指 触れる時間:5分 結果:被験者は女性の中から身体的特徴が大きい物が選ばれた。結果、D-980-JP-9が接触していた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。 ███博士の分析:選ぶ基準は生物的に屈強な者であり、女性のほうが優先度が高いということのようである。 + 実験記録11から15を表示 - 実験記録を閉じる 実験記録980-JP-11 被験者:D-980-JP-13(男性、41歳) 触れる部位:腹部の中心(被験者は仰向けの状態) 触れる時間:15分 結果:直径20cmの球形を形成。突起等は見られず、移動手段を持たない。意図不明の小規模な膨張と収縮を繰り返す以外に活動は見られなかった。被験者は12分時点で腹部の違和感と痛みを報告し、14分を超えた時点で意識を喪失。実験後の検査の結果、萎縮により小腸の機能が完全に失われていることが判明した。被験者は検査後解雇された。 ███博士の分析:小腸を狙ってやった事ではないのかも知れないが、内臓だけでは動けないだろう。 実験記録980-JP-12 被験者:D-980-JP-14(女性、36歳) 触れる部位:右の乳房 触れる時間:15分 結果:1箇所の突起を持つ直径10cmの山型を形成。後の調査により、突起には一切の機能性が見られなかった。11分時点で被験者は右乳房の痛み、意識がぼんやりする旨を報告した。実験後の診断では低血圧症の他、被験者の右乳房が機能を含めて完全に消失していることが判明した。 ███博士の分析:他の実験と比べて見るに、自身に必要な機能を選んで成長しているということだろうか。そうなると成長の中身をある程度操れることになる。 実験記録980-JP-13 被験者:D-980-JP-15(男性、32歳。糖尿病による自律神経障害あり) 触れる部位:右の掌 触れる時間:15分 結果:被験者共に一切の変化が見られなかった。この後被験者は左の掌にSCP-980-JPを持つよう指示されそれを実行したが、変化は見られなかった。 ███博士の分析:今までの被験者と今回の被験者で大きく違う点は糖尿病患者かどうかだけだ。健康な肉体を作るのに糖尿病は邪魔だということだろうか。 実験記録980-JP-14 被験者:D-980-JP-16(男性、28歳。過去の事故により右肘から先が欠損) 触れる部位:右肘 触れる時間:10分 結果:SCP-980-JP、被験者共に一切の変化が見られなかった。この後被験者は左手でSCP-980-JPに触れるよう指示されそれを実行したが、結果は同じだった。 ███博士の分析:どうやら何らかの方法で触れた相手の状態を知ることが出来るようだが、結果を見るにこいつは選り好みをしているように感じる。 実験記録980-JP-15 被験者:D-980-JP-17(男性、47歳) 触れる部位:前額部 触れる時間:10分7分30秒時点で中止 結果:[データ削除済]。SCP-980-JPは防護服を着用した研究員により被験者から引き離されたが、研究員と被験者はSCP-980-JPからの攻撃を受け、研究員は打撲を負い、被験者は致命的な脳機能の萎縮とオブジェクトを離した際の出血により死亡した。 攻撃を受けている間、SCP-980-JPから人間の可聴域外の高音が規則的に発せされていたことが分かっているが、周辺にいた職員や機器に一切の悪影響がないことからこれはSCP-980-JPの威嚇行動であると結論付けられた。 ███博士の分析:もっと警戒するべきだった。これまでの実験結果を見れば、人間の視力や脳機能を取り入れたオブジェクトに攻撃意思が宿る可能性も予想できたはずだ。 実験結果から、SCP-980-JPは生物的に強く生存に有利な状態の人体に執着、依存する存在であると考えられます。男性よりも女性の肉体を優先しますが、理由は判明していません。 ある程度オブジェクトの性質が判明し、収容に継続的な人的コストをかける必要性が見られないためこれ以上のオブジェクトを用いた実験は未知の事象などが発生するまで保留されています。 + 追加記録を表示 - 記録を閉じる 事案980-JP-1 ████/10/14 D-980-JP-2として実験に参加していた男性職員が、SCP-███-JPの実験中に左手首から先を損なう負傷をした際、SCP-980-JPが形成したと見られる実体によって負傷箇所を再生し始めたため、非常事態と判断した現場の武装スタッフによって射殺されました。死亡する直前、D-980-JP-2は自らの身体に起こった現象に対して明らかに動揺している様子でした。再生された箇所は、D-980-JP-2の死亡と同時に萎むように縮小し、完全に消失しました。 異常現象の原因究明のためD-980-JP-2を解剖したところ、心臓表面に大きさ約1cmのSCP-980-JPに酷似した外見の物体が発見されました。物体(以下SCP-980-JP-αと呼称)は未知の方法でD-980-JP-2の筋組織に融合しており、切除したところ融合面は縮小し、非活性時のSCP-980-JPを小さくしたような形状になりました。 心臓という極めて重要な臓器にSCP-980-JP-αが付着していたにも関わらず、D-980-JP-2は事前に健康状態の悪化を訴えておらず、実験より後に実施されていたレントゲン検査でも異常が発見されることはありませんでした。 実験記録980-JP-α SCP-980-JP-αの耐久実験を行った結果、物理的な衝撃には一定の耐久性を示しますが、300度以上に熱せられると発火し、組織が崩壊することが明らかになりました。加熱実験はSCP-980-JP-αが完全に破壊される前に中断されましたが、自己再生は行われず欠けた状態を維持しました。 観測機器は、SCP-980-JPへの攻撃時とは別のパターンを持つ可聴域外の高音を記録しました。破壊が容易なことから、今後回収されるSCP-980-JP-αは実験用に補充する場合を除き全て破壊します。保存されるSCP-980-JP-αはSCP-980-JPと同様の状態で保管されます。 SCP-980-JPは触れられている間は吸収のため人間の体内に自身を侵入させており、分離された時点で被験者の体内に残された部分が別個体として独立すると考えられます。 SCP-980-JPはSCP-980-JP-αに比べて大型であることから、類似個体の母体、または成体と考えられます。 事案980-JP-2 ████/10/14 事案980-JP-1を受け、武装した職員がただちにSCP-980-JPの実験参加経験者の拘束を始めました。 職員が駆けつけた際、生存していた実験参加者全員が興奮状態で、拘束を試みた人間に対して攻撃をしながらSCP-980-JPと実験使用されたSCP-980-JP-αの収容されている収容施設方向へ向かっていました。男性被験者は特異な行動を見せずに無力化されました。女性被験者は攻撃を受けると動きを止め、瞬間的に腹部を3倍近くの大きさに拡大させました。女性被験者の腹部は破裂し、周囲にいた職員は高速で飛散した肉片、骨片、無数のSCP-980-JP-αにより被害を受けました。女性被験者は全員死亡しました。 SCP-980-JPの収容違反は防ぐことが出来ましたが、32名の職員が軽傷を負い、検査の結果その内の14名の体内からSCP-980-JP-αが発見されました。飛散したSCP-980-JP-αを素肌に付着させたためと思われます。 回収された被験者の死体を解剖したところ、男女ともに心臓からSCP-980-JP-αが摘出されました。女性被験者は子宮周辺の損傷が激しく、内側から強い圧力をかけられた結果破裂したようでした。 ███博士のメモ:これがこのオブジェクトの増殖方法なのだろう。女性を優先していた理由は、効率的に自身を殖やす場所があったためだ。 補遺: 最初のSCP-980-JP-αへの耐久実験を行った時刻と被験者達が暴走を始めた時刻がほぼ同時であったことが判明しました。SCP-980-JP-αが実験時に発していた高音は同種へ向けた警戒を呼びかける合図であると思われます。 追記1: SCP-980-JPが発見された地域で財団が偽装して実施した健康診断では、すでに247名のSCP-980-JP-αキャリアが見つかり、摘出手術を終えましたが、収容以前にどれだけの人数がSCP-980-JPに接触したかは不明です。未確認個体が多数存在する可能性が非常に高いと思われます。 追記2: 上記の健康診断を行っていた職員が、診断の準備中に襲撃を受け、2名が死亡、3名が軽傷を負いました。襲撃者は襲撃の1週間前に行方が分からなくなっていたホームレスの男性で、襲撃時には土汚れが目立ち、興奮状態でした。男性は異常なほど肉体への損傷に強く、投げつけられた医療器具によって頭部が破壊されるまで攻撃を続けました。 男性は死亡直前に実験記録980-JP-15で記録された威嚇音と酷似した高音を発しており、解剖の結果、骨格は見つからず、代わりに人間の骨格型のSCP-980-JP-αが発見されました。対象と接触したにも関わらず攻撃を受けた職員はSCP-980-JP-αのキャリア化をしていませんでした。
scp-981-jp
評価: +111+–x SCP-981-JPに関する蒐集院の資料の1つ。 アイテム番号: SCP-981-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-981-JPはアクリルガラス製の収容室内に収容されます。SCP-981-JP収容室が存在する洞窟の周辺には変電施設に偽装された財団の建造物が設置され、部外者の侵入を防止します。 1日に1度、SCP-981-JP-1に定められた量の抑制剤を投与し、SCP-981-JP-1の低レベル活動状態を維持してください。投与のために収容室内に立ち入る人員は、必ず指定された防護服を身につけるようにしてください。抑制剤にはクロラゼプ酸、プラゼパム、ジアゼパム、フルニトラゼパムのいずれかを使用し、同じ薬剤を連続して投与することは避けなければなりません。また、投与の直前に最低3名以上の職員が投与に用いられる注射器の検査を行い、指定の薬剤で満たされていることを確認してください。指定外の薬剤が補充されていた場合、補充を行った担当者は確保の後隔離され、場合によっては終了されます。 SCP-981-JP-1からSCP-981-JP-2が放出された場合、SCP-981-JP-2が終了されるまで収容室内に立ち入らないようにしてください。SCP-981-JP-2を実験目的で移送する場合、移送容器は必ず非金属物質から構成されたものでなければなりません。また、実験目的でない限りSCP-981-JP-2、及びSCP-981-JP-2が分泌する粘液をヒトと接触させてはなりません。 説明: SCP-981-JPはSCP-981-JP-1とSCP-981-JP-2から構成されています。SCP-981-JP-1はサハリン島チェーホフ山の洞窟1に存在する半径約18mの半球状の生物学的実体です。SCP-981-JP-1の体表は全てなめらかな皮膚で覆われており、感覚器官や摂食器官、排泄器官等は見当たりません。SCP-981-JP-1の身体は非常に脆く、指で押した程度の力で簡単に崩壊します。しかしながら、SCP-981-JP-1は極めて高い自己再生能力を有しており、これまでに負った傷はいずれも35分以内に再生しています。この再生の過程でSCP-981-JP-1が何らかのエネルギーを消費しているようには見えず、またSCP-981-JP-1がどのようにして生命活動のためのエネルギーを得ているのかも明らかになっていません。 SCP-981-JP-1の遺伝子はヒトのものと一致することが明らかになっていますが、その体内には複数の異なる個人の遺伝子を持つ細胞が混ざり合って存在しています。財団が行った検査によると、SCP-981-JP-1内部には脳を含む人体の主要な臓器2の殆どが14組存在しており、このことからSCP-981-JP-1は14個体のヒトが異常な手段によって結合されたものであると考えられています。また、14組の臓器全ては血管系・リンパ系・末端神経系を共有しており、リンパ節はウイルス性感染症の罹患者と類似した肥大を見せています。骨格の構造は通常の人間のものとは完全に異なっており、傘の骨組みのような形に広がってSCP-981-JP-1の身体を半球状に保っています。これら多数の異常な形質にも関わらず、SCP-981-JP-1は問題なく生物的活動を維持しているように見えます。 SCP-981-JP-2はSCP-981-JP-1から放出される生物学的実体群です。その外見はヒトの大腸に類似していますが、実際には全く異なる内部構造を持つことが解剖により示されています。SCP-981-JP-2は先端部に付属した虫垂3に似た器官から成分不明の粘液を分泌することができ、この粘液はそれに触れた金属、及びヒトに対してそれぞれ異なった作用を示します。金属が粘液に触れた場合、接触した部分は未知のプロセスによって瞬時に消失します。ヒトが粘液に触れた場合、対象者はその直後に激しい腹痛を訴え、約6時間後に死亡します。この時点で対象者の大腸がSCP-981-JP-2に変化し、腹部を突き破って出現します。なお、SCP-981-JP-2は脳や筋肉に当たる組織の欠如にも関わらずヘビのような動きで自立活動することができ、何らかの手段によって周囲の金属やヒトを感知して粘液を吹きかけようとすることが確認されています。周囲に金属とヒトの両方が存在する場合、SCP-981-JP-2は金属を優先して排除しようとすることが分かっています。また、SCP-981-JP-2は自己再生能力を有しておらず、放出後3日程度で寿命を迎えます。 SCP-981-JP-1は定期的に自身の身体の一部を大きく破裂させ、そこから1~3体のSCP-981-JP-2を放出します。このイベントの発生頻度はSCP-981-JP-1の脳の活動レベルに依存しており、このためSCP-981-JP-1は常に抑制剤によって低レベル活動状態に置かれています。同じ薬物を連続して投与すると効果が薄れることが確認されているため、投与ごとに異なる種類の薬剤を用いることが義務づけられています。なお、SCP-981-JP-1は低レベル活動状態にあっても大凡1ヶ月に1度の頻度でSCP-981-JP-2放出イベントを発生させます。 + 補遺981-JP-L(収容記録981-JP) - 閉じる 補遺981-JP-L: 以下の文章はSCP-981-JP収容環境の変遷について述べたものです。 SCP-981-JPは古くからサハリン島に存在していたと考えられており、SCP-981-JPに関するものと思われる最古の言及は、ごく限られた地域のアイヌに伝わるユーカラ4に見られます。地域によって語られる内容が異なり、ある逸話の中でSCP-981-JPと思われる存在はアイヌラックル5によって退治された鉄を憎む蛇の魔神として描かれており、呪いによって彼の剣を朽ちさせたものの薬草の毒で永遠の眠りにつかされたとされています。別の逸話の中では、SCP-981-JPと思われる存在はアイヌラックルの目から逃れるために自ら眠りについたのだとされます。 18世紀に江戸幕府がサハリンでの影響力を強めると、SCP-981-JPは蒐集院によって発見され、その管理下に置かれました。財団が蒐集院から引き継いだ資料によると、蒐集院はSCP-981-JPを“太歳星君”と名付け、後述する“深い睡眠”の状態を保つために“霊鎮め”と称して薬物や呪術的手法を用いた収容活動を行っていたとされます。1875年の樺太・千島交換条約によってサハリン島南部がロシア帝国の支配下に置かれると、蒐集院はサハリン島から撤退せざるを得なくなり、SCP-981-JPは財団の管理下へと移りました。当時SCP-981-JP-1は現在よりも低い脳の活動レベルを恒久的に維持しており、長期に渡る休眠状態にあると推測されました。休眠状態のSCP-981-JP-1は、脳の活動が殆ど見られない“深い睡眠”の状態と、ごく低レベルな脳の活動が見られる“浅い睡眠”の状態を周期的に繰り返しており、前者の状態ではSCP-981-JP-2放出イベントは発生しませんでした。後者の状態では大凡数ヶ月に1度程度の頻度で放出イベントを発生させましたが、薬物処置によって容易に“深い睡眠”の状態へと戻すことが可能でした。また、この時点ではSCP-981-JP-2が分泌する粘液のヒトに対する作用は発現しておらず、金属を消失させるのみに留まっていました(補遺981-JP-Mを参照)。 20世紀前半にソビエト連邦が成立すると、財団はロシア地域における影響力を急速に失い、SCP-981-JPはGRU"P"部局によって奪取されました。"P"部局はその後しばらくの間は財団や蒐集院と同様の封じ込め処置を行っていたとみられ、大きな問題が発生した様子は見られませんでした。しかしソビエト連邦時代の末期になると突如としてSCP-981-JPの大規模な収容違反6が発生し、大量のSCP-981-JP-2が収容施設から脱走しました。財団はそれを確認すると直ちに[削除済]を用いたSCP-981-JP-1の精神抑制措置、及び機動部隊を投入してのSCP-981-JP-2除去作戦を行い、これにより被害を最小限に留めることに成功しました。しかしながら、この事件の隠蔽には広範囲にわたる記憶処理と情報統制が必要となりました。この事件の後、SCP-981-JPは再び財団の管理下に戻りました。この時施設から回収された資料によると、"P"部局はSCP-981-JP-2が分泌する粘液の兵器転用を画策していたようです。 "P"部局から奪還された時点でSCP-981-JP-1は既に休眠状態から覚醒しており、薬物を用いて脳の活動を抑えてもSCP-981-JP-2放出イベントを完全に抑止することは不可能となっていました。よって、粘液に対処するためにSCP-981-JP-1はアクリルガラスによって覆われることとなりました。このため現在はSCP-981-JP-2が収容を破る恐れはありませんが、SCP-981-JP-1が覚醒した場合のリスクが予測不可能であるため、抑制剤の投与は現在も続けられています。   + 補遺981-JP-M(事件記録981-JP) - 閉じる   補遺981-JP-M: 20██/██/██、SCP-981-JP-1が突如として低レベル活動状態から覚醒し、大量のSCP-981-JP-2実体を放出する事案が発生しました。その後直ちに██博士がフルニトラゼパムの投与を行ってSCP-981-JP-1を低レベル活動状態へと戻しましたが、この際██博士がSCP-981-JP-2の粘液に触れ、直後に激しい腹痛を訴えました。██博士は隔離室に移送され、6時間後にSCP-981-JP-2が彼の体内から出現しました。これ以前に行われた実験では粘液のヒトに対する作用は発現していませんでしたが、以降のDクラス職員を用いた実験では今回と同様の異常性の発露が確認されました。このことから、この事件の前に発生した何らかの出来事によって粘液の特性に変化が生じたのではないかと推測されています。なお、この事件の後SCP-981-JP-1への抑制剤の投与の際には防護服を着用することが義務づけられました。 後に行われた調査の結果、SCP-981-JP-1にはこの事件の前に投与される予定だったプラゼパムが投与されておらず、代わりに少量の異常な成分が混入したメタンフェタミン7が投与されていたことが明らかになりました。薬剤の投与を任せられていた███博士は、自室で大量のプラゼパムの服用による自己終了を行っていたことが確認されました。███博士は26年に渡って財団に勤務してきた忠実な職員であり、このような事件を引き起こした動機は明らかになっていません。この後施設内の全職員に対して精神鑑定が行われましたが、何らかの異常な影響を受けていると認められる人員は存在しませんでした。このような事件の再発を防止するため、SCP-981-JP-1への薬物投与の前には厳しい検査が行われることとなりました。なお、この事件でSCP-981-JP-2が新たに獲得したヒトに対する作用については、前述のメタンフェタミンに混入していた異常物質に由来する可能性が指摘されています。異常物質とメタンフェタミンの入手ルートについては調査が続けられていますが、今のところ成果は得られていません。   + 補遺981-JP-N(付属文書981-JP) - 閉じる 補遺981-JP-N: 1875年に蒐集院がサハリン島から撤退した際、彼らはSCP-981-JP-1周辺から回収されたいくつかの物品を本国に持ち帰っており、それらは第二次世界大戦後に財団へと引き継がれました。それらの物品は殆どが異常性の無い調度品等で占められていましたが、中にはSCP-981-JPに関連すると思われる文章が記載された複数の紙片も含まれていました。炭素年代測定によると、それらの紙片はおよそ████年前のものであると推定されています。紙片に記された文章は大部分が未知の言語によって記されており、[削除済]文字によって記された1つのみが財団によって翻訳されました。以下にその内容を記載します。 Ozi̮rmokの敬虔なる信奉者である、ゼンド・[削除済]への通達 悪い知らせです。かの不信心な[判読不能]の異端者たちが、どこからかあなたがたのことを嗅ぎつけたようです。奴らは“共にある信奉者たち8”を[恐れて/警戒して]います。その鉄を朽ちさせる力を[恐れて/警戒して]います。奴らは[蜜蝋?]の鎧に身を包み、あなたがたのことを探しているようです。“共にある信奉者たち”は[不完全/未完成]です。今の彼らでは、鎧を破ることはできないでしょう。 幸いにも、異端者たちはあなたがたの詳しい居所を確信してはいないようです。信奉者たちを[深い眠り/仮死]に就かせなさい。そして彼らを大地の下の[墓所?]に隠し、不信心者たちの目を欺くのです。然るべき時が来たれば、彼らは再び[深い眠り/仮死]から解き放たれるでしょう。 カルキスト・[削除済]   Footnotes 1. およそ[編集済]年前に発生した崩落の際に入り口が地上に露出したもので、それ以前は完全な密閉空間だったと推測されています。 2. これらの臓器全ての内部に、腫瘍と思われる組織塊が存在しています。 3. 盲腸に付属した突起状の部位。 4. アイヌの口承。韻を踏んだ語りを特徴とします。 5. アイヌの英雄神。魔神退治の伝説が数多く存在しています。 6. 施設内で発生した何らかの事件を原因とするとの見方が有力ですが、詳細は明らかになっていません。 7. 精神刺激薬の1種。中枢神経を覚醒させる強い作用を持ちます。 8. 文脈から、SCP-981-JPのことを指すと推測されています。
scp-982-jp
評価: +64+–x 回収当時のSCP-982-JP。 アイテム番号: SCP-982-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-982-JPは、サイト-81██にあるSafeクラス収容棟の標準収容ロッカーに、緩衝材の裏張りを施した防音ケースに入れた状態で保管されます。SCP-982-JPの意図せぬ活性化を防ぐため、SCP-982-JPの保管場所から半径40m以内には、休憩室や職員の個人オフィスは含まれないようにしてください。 SCP-982-JPの実験は、当該オブジェクトの現任の管理主任、または代理を務める上級研究員の承認を必要とします。 説明: SCP-982-JPは、1925年頃のアメリカ合衆国で製造されていた、ナショナル・エアーフォン社製サマセット・マーズ モデル-5Aバッテリー動力ラジオです。背面に微細な飾り字で“To The Memory Of Your Spirit, With All Our Love”と彫りこまれている点を除き、同型の非異常性ラジオとの差異はありません。上蓋は未知の原理で固着しており、開閉不可能です。 SCP-982-JPは回収以来一貫して、1910年代後半から1980年代後半までの、俗に“ジャズ”と呼称されるジャンルの楽曲を、アレンジを加えながら定常的に流し続けています。これらの楽曲は、曲目ごとに明確な終わりを見せることなく4日~191日間にわたって、歌唱者を交代しながら持続することが判明しています。現時点では、曲目や歌唱者の選択基準は完全に無作為であるように思われます。歌唱者は男女ともに確認されていますが、いずれも曲目本来の歌手とは異なります。音量ダイヤルの操作はSCP-982-JPの放出音声に影響を及ぼしませんでした。 半径20m未満の閉鎖空間に放置されると、SCP-982-JPは第二の異常性質を発現します。閉鎖からおよそ40分以内に、当該空間内に存在するSCP-982-JP以外の無生物および一部の動物は、流れている楽曲に合わせて自発的な運動を開始します。この効果は空間の閉鎖が解除され、より広い場所と接続されるとゆっくり逆転します。 + 実験記録 SCP-982-JP-05 - 完全版の実験記録リストはサイト-81██の実験データアーカイブまで要請してください。 以下は、1991/02/01に行われた実験において観測された効果です。この間、SCP-982-JPは1928年に発表された曲目、“Diga Diga Doo”(The Mills Brothers)を流し続けていました。 メトロノーム(静止) 1分後、SCP-982-JPの楽曲に同期して揺れ始めた。テンポの変化に合わせ、揺れ幅は微細に変動した。 水を満たしたコップ 5分後、水面に小波が立ち始め、20分後にはコップ自体が左右に揺れ動き始めた。最終的にコップは縁の部分で旋回運動を開始したが、内部の水は全く揺れの影響を受けることなく、曲調に合わせた波紋を独自に広げているように思われた。 フラワーロック – 電池は入っていない。 動力源の欠如にも拘らず、閉鎖と同時に音楽に合わせて動き始めた。動きに一般的なフラワーロックとの違いは確認されず。 目覚まし時計 - アラームを作動させた直後に空間を閉鎖。 閉鎖から5秒後にアラームが自動停止。15分後、長針は曲調に合わせて反時計回りに、短針は歌唱者の声に合わせて時計回りにそれぞれ回転を始めた。秒針は影響を受けている様子を見せなかった。 雌のヨウム(Psittacus erithacus) 40分後、足で曲調に合わせたステップを踏み、歌唱者に合わせて正確に“Diga Diga Doo”の歌詞を歌い始めた。実験の中止直前には、曲の盛り上がりに合わせて翼を広げるなどの仕草を見せるようになった。 テレビ - ビデオデッキに接続し、アニメーション映画“リトル・マーメイド”(1989)を再生中。 5分後に音声送出が途切れ、10分後には映像がフリーズ。25分後、映像は“Diga Diga Doo”の演奏に合わせたカットアップ編集を施された状態で再生がスタートし、以降ループし続けた。実験後の検査でVHSテープに編集の痕跡は確認されず、非異常性の“リトル・マーメイド”のみが収録されていた。 プラスチック製ホイッスル 15分後に宙に浮かび上がり、SCP-982-JPと同期して演奏を開始した。演奏音は一般的な金管トランペットと同一。 線香 (10本) 煙は分散せずにトカゲに似た姿を象り、実験終了まで空中を“這い回る”様子を見せていた。線香は特段の異常性を見せることなく燃え尽きた。 フィンセント・ファン・ゴッホ作“タンギー爺さん”の複製画。額縁に入れて壁に掛けてある。 10分後に額縁は大きく左右に揺れ始めた。30分後、肖像画は身体を小刻みに左右に揺すりながら、より明るい表情で音楽に合わせて口を動かしているのが観察された。実際の音声送出は確認されなかった。 Dクラス職員 D-14209 (日本人男性 42歳) - 過去の実験で聴覚を喪失している。目隠しを装着。 周辺環境を認識していないにも拘らず、SCP-982-JPの放送が「頭の中に直接入り込んできた」と主張し、歌詞を比較的正確に知覚することが可能だった。加えて、実験前のインタビューでジャズに対する強い嫌悪感を表明していたにも拘らず、実験終了後は「それほど悪いもんでもなかった」と発言。この意識の変化は僅か10分で元に戻った。 “ウィルバー・ロックス”、1972年。 回収経緯: SCP-982-JPは1990/09/10、██県██市にて、ウィルバー・ロックスの名で生活していたアメリカ系高齢男性の自宅でポルターガイスト現象が発生しているという通報を切欠に回収されました1。発見当時、ロックス氏はSCP-982-JPに覆い被さった状態で死亡しており、遺体は異常特性の影響を受けて歌詞を呟いていました。部屋のドアが解放されてSCP-982-JPの効果が途切れると遺体は急速に腐敗したため、正確な死亡日時や死因は不明ですが、エージェントの現場調査で外傷は記録されておらず、突発的な自然死であったと考えられます。 調査によって家屋内からは大量のジャズ・ミュージック音源と、Anomalous相当の異常物品5点が発見され、またロックス氏は1959年に日本に移住する以前の記録が極めて不透明であることが明らかになりました。1970年まで██の個人経営バーにバーテンダーとして勤務していたものの、彼の経歴は ― 1905年に誕生したという主張も含めて ― ほぼ全て自称です。 “ウィルバー・ロックス”の真の素性に関する調査が進行中です。 + 補遺-01: 1999/12/27 - 補遺-01: 1999/12/27 補遺-01: 1999/12/27、長期にわたって実験が行われていない小型Safeクラスオブジェクトの定期検査において、SCP-982-JPの音声送出に確認された新たな歌唱者を声紋分析にかけた結果、1933年に捕縛されたGoI-001(“シカゴ・スピリット”)2の指導者である現実改変能力者、リチャード・チャペルの尋問において記録されたそれと93%の一致を示しました。これを受け、GoI-001の既知の構成員と“ロックス氏”の関与が徹底的に相互参照されました。 アーサー・マレットの既知の唯一の写真。 1929年に窃盗容疑で一時拘留された際のもの。 現在最も有力な仮説として、“ロックス氏”はGoI-001においてアルコール飲料の密売監督役の一人だった中位構成員、アーサー・マレット(1901年出生)の偽造身分だったというものがあります。財団の記録上におけるマレットの身体的特徴(腕の刺青など)には“ロックス氏”を知るバーの常連客の証言と一致する点が多く、回収されたAnomalousアイテムのうち一点はマレットが所持していた異常な護身武器の描写と類似する特性を有しています。 マレットは、主導者チャペルの収容によるGoI-001の瓦解時期も組織に忠誠を誓っていた数少ない構成員の一人でした。1938年にマーシャル・カーター&ダーク社へ所属を移して以降、マレットは異常物品の取引に関わるエージェントとして活動していたと推測されています。彼は1941年を境に活動拠点を海外に移し、以後の足取りは掴めていません。 アーサー・マレット/“ロックス氏”がSCP-982-JPを入手した経緯、またSCP-982-JPの異常性質とGoI-001の詳細な繋がりに関する調査が進行中ですは手掛かりが全く得られなかったことから2005/01/01を以て打ち切られました。 + 補遺-02: 2016/08/29 - 補遺-02: 2016/08/29 補遺-02: 2016/08/29、サイト-81██の新設に伴う旧収容施設からの移送中、SCP-982-JP移送車両の運転を交代して睡眠を取っていたエージェント足利が「SCP-982-JPと関連するかもしれない明晰夢を見た」と訴えました。証言によると、エージェント足利の夢は、当時のSCP-982-JPの送出内容と楽曲・歌唱者の声ともに正確に合致する歌が流れ続けている酒場らしき空間で、ズートスーツを着用した不特定多数の人物と共に着席しているという内容でした。当時、エージェント足利にSCP-982-JPとGoI-001の関連性は明かされておらず、サイト-81██への到着後に、この事象は検証の必要性があると断じられました。 Dクラス職員による複数の実験を経て、SCP-982-JPから半径20m以内でREM睡眠に入った人物は、送出音声が聞こえるか否かに関わらず、例外なく上記の夢を経験することが判明しました。残念ながら被験者の意識の明確さとは対照的に、観測される夢の風景は極めて不鮮明であり、空間の正確な内装やヒト型実体群の容姿は明らかになっていません。 当該空間はSCP-982-JP-1、ヒト型実体群はSCP-982-JP-Aと暫定的に指定されたものの、クラスW記憶補強薬などによる観測風景の明確化の試みは実を結びませんでした。2017/01/01、SCP-982-JP関連の幻覚に係る実験は一時的に凍結されました。 + 補遺-03: 2025/04/01 - 補遺-03: 2025/04/01 補遺-03: 2025/04/01、感情影響型オブジェクトへの新たなアプローチとしてバイロゥ感情干渉力指向化探信儀3の実験的運用が開始されたことを受け、サイト-81██の鷲岡博士は以下の論拠から、自らを被験者とするSCP-982-JP曝露実験を志願しました。 SCP-982-JPは、既知の特性から判断する限り、バイロゥ探信儀による干渉受容度の増幅で精神的苦痛を引き起こすとは考えにくい。 しかし、SCP-982-JP-1の観測は知覚者の証言に完全に依存する。現在サイト-81██に配属されているDクラス職員の意思疎通能力/風景描写力/財団に対する忠誠度では、詳細な調査は望めない。 自身は財団の美術学部門に長年所属しており、風景画・人物画の詳細なスケッチを行う技量を有しているため、SCP-982-JP-1の知覚内容の正確な“転写”が可能であると仮定される。 自身はステージ3の胃癌と宣告されており、肝臓への転移が確認済。延命治療を行うつもりは無い。仮に財団の害となり得る精神影響を受けた場合、即座に終了措置を受けることに同意するものとする。 この要請は受理され、鷲岡博士は2025/04/25、精神影響への最小限の対抗ミーム接種/鎮静剤投与のうえでバイロゥ探信儀を装着し、SCP-982-JPに曝露しました。鷲岡博士はSCP-982-JPの影響範囲内に入った直後、周辺風景をSCP-982-JP-1のものとして明瞭に知覚し始めました。鷲岡博士はこの精神干渉による苦痛を全く訴えませんでした。 SCP-982-JP-1空間を自由に動き回れるようにより広い実験室を手配した鷲岡博士は、一週間かけてSCP-982-JP-1およびSCP-982-JP-Aの観察を行いました。以下は記録された内容の要約です。 SCP-982-JP-1は、 GoI-001の運営下にあったメイン州█████の闇酒場“The Two-Tailed Lizard”(1933年閉鎖)の複製空間です。 財団の管理下にある資料と比較した場合、982-JP-1は現実世界の“The Two-Tailed Lizard”と家具調度のデザインその他が極めて正確に合致している反面、外部へ出入りするための扉が存在せず、無地の壁に置き換わっています。 鷲岡博士は982-JP-1内部の風景を、“古い映画フィルムのように、不自然な視界のチラつきを伴うモノクローム”だと証言しました。床面と壁を除く物品は相互作用が不可能であり、触れようとすると鷲岡博士の身体がすり抜ける結果に終わりました。この視覚表現と非実体性は、SCP-982-JP-A個体群にも適用されます。 SCP-982-JP-Aは、 合計██体のヒト型実体であり、男女比は9:1です。 982-JP-A個体群の約82%は、財団が存在を把握していたGoI-001構成員の1930年代初頭の容姿と正確に一致しています。ここには主要指導者であったリチャード・チャペル及びホガース・“車輪の”カートライトが含まれます。 982-JP-A個体群はお互いに談笑する様子を見せるものの、これには音声が伴いません。982-JP-A個体群が明瞭に発声するのは、982-JP-1の突き当りに存在する簡易ステージの上でジャズを演奏・歌唱する時のみです。曲目は982-JPの送出音声と正確に一致しており、歌唱者や演奏者の交代は見たところ982-JP-A個体間で如何なる基準も無く自発的に行われています。 982-JP-A個体群は、疲労や空腹を始めとする生理的欲求4、並びにネガティブな感情表現を全く示しません。加えて、個体群は鷲岡博士が介入を試みていることに気付いた様子を見せませんでした。 SCP-982-JP-A0は、 死亡当時の“ウィルバー・ロックス”と正確に合致する容姿の982-JP-A個体です。 982-JP-A0はその容姿の逸脱を除き、他の個体との差異はありません。しかしながら、一部の研究者はこれを、SCP-982-JPの(少なくとも、現在の)異常性の発現に“ロックス氏”が深く関与していた証拠として見ています。 これに加え、982-JP-1には“The Two-Tailed Lizard”に密売監督者として頻繁に出入りを繰り返していたはずのアーサー・マレットに対応する982-JP-A個体が存在せず、これは補遺-01の偽装身分仮説を裏付けている可能性があります。 1932年当時の“The Two-Tailed Lizard”の内装。 チャペルは“The Two-Tailed Lizard”の直接的な運営には関わっておらず、実際に同所を訪れたのは1932/09/██のみだと考えられています。財団が2008年に回収した個人日誌によると、当日のチャペルはカートライトと共に█████の支部を訪れた後、"the portlands boys"[原文ママ]5が生演奏を披露していると聞いて2時間ほど“The Two-Tailed Lizard”に留まっており、“彼らのジャズ”を絶賛する旨が記されています。 仮にSCP-982-JP-1が実際の出来事を再現している場合、それは1932/09/██のことでほぼ間違いないと思われるものの、SCP-982-JPまたはマレット/“ロックス氏”にとってこの出来事がどれほどの重要性を持っていたのかは判明していません。マレットの経歴調査は2005年の打ち切り時点でほぼ完了したと見做されているため、再調査の申請は却下されました。 実験後の鷲岡博士に、重大な行動の変化を示す兆候は見られませんでした。SCP-982-JP-1および-Aへの接触の試みが全て失敗に終わったことから、SCP-982-JPの実験を今後も継続する意義は薄いと判断されています。 + 補遺-04: 2028/12/27  - 補遺-04: 2028/12/27 補遺-04: 2028/12/27、長期にわたって実験が行われていない小型Safeクラスオブジェクトの定期検査において、SCP-982-JPが確立された特性を逸脱し、当該オブジェクト回収後の2012年に発表された“Why Me?”(Big Bad Voodoo Daddy)を送出していることが確認されました。原因を探るため、Dクラス職員D-33901が2025年の実験結果資料を与えられたうえでバイロゥ探信儀を装着し、SCP-982-JP-1の探索に派遣されました。 D-33901は提示資料に記述されていない女性型のSCP-982-JP-A個体がいると主張し、その容姿は鷲岡博士(2025/07/02死去)の死亡当時の外見と概ね一致しました。当該個体は他のSCP-982-JP-A個体同様に振舞い、D-33901や自らの現状に気付く様子を見せませんでした。 2029/01/01、D-33901はサイト-81██で発生した小規模収容違反に巻き込まれ死亡しました。SCP-982-JPは現在、D-33901の死亡によって何らかの変化が起こる可能性を監視されています。D-33901に対応するSCP-982-JP-A個体が新たに出現している可能性を探るための探索試行は、事象の詳細が判明していないことを理由に却下されました。     脚注 1. 当時の詳細な状況については982-JP回収ログ、もしくは小鈴谷善一郎 著 “通報内容・検索ワードから分析する異常存在に対しての一般的パニック反応 ― 架空通報の見分け方”(2008)の事例04を参照してください。 2. 要注意団体“シカゴ・スピリット”は、イリノイ州シカゴを拠点に、異常物品の製作と流通を資金源としていた20世紀初頭の犯罪シンジケートです。禁酒法時代に勢力を拡大してアメリカ合衆国各地に進出しましたが、1933年のチャペル収容を切欠とする構成員同士の分裂騒動によって解散に追い込まれました。 3. BILOW Emotional Interference Directizing Radar: 通常の精神状態では明瞭に知覚できない異常な現象/実体による人間感情への干渉を増幅し、特性のより良い理解に繋げることを目的として開発された装置。性質の類似する後天的な異常共感能力者が活性化した際の脳波パターンと神経構造の相互解析を基に提言され、広範な協議を経て、厳格な管理の下に限定的運用が承認されました。   + BILOWの開発に係る付帯試料一覧: 資格情報を入力してください - 資格情報承認。貴方のクリアランス範囲におけるデータが開示されています。 Entwistle, Q. “Anomalous Call for Help: Of Sentient Inanimate Objects' QOL” (2002) Aveling, A., Larrazabal, A., Weppler, O. “Detection Limit of Obscure Emotional Cognitohazard” (2017) McNair, E. “Summary of Neuroscientific Breakthrough Acquired by Anomaly-Affected Personnel Necropsy” (2020) Isogai, H., Mieru, R. "Dragging Down the Oneiroi: A Proposal for Paratechnological Development to Achieve the Manifestation of Physical Lucid Dream in Baseline Reality" (2022) PoI-████ (“James Bellnap”, Class-3I-ER, 198█-2017) AAP-███ (“Edna Idle”, Class-2I-E, 196█-2003) AAP-███ (“Guan-Wu Liu”, Class-1U-E, 199█-2019) AAP-███ (“Touga Osaki” Class-1I-E, 199█-) SCP-487-JP (“████████ Warnecke”, Class-3U-ER, 19██-1993) 4. SCP-982-JP-1に存在するアルコール類の摂取を除きます。飲料の枯渇や、酩酊状態の悪化などは確認されていません。 5. この名称は現在“スリー・ポートランド”として知られている隔絶小次元内の超常コミュニティに由来すると考えられていますが、ジャズバンドの固有名称か、単純に“ポートランドの奴ら”を指しているのかは不明確です。SCP-982-JP-A個体の誰が本来のバンド奏者であったかは特定できていません。
scp-983-jp
評価: +32+–x 捕獲作戦中のSCP-983-JP アイテム番号: SCP-983-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 野生のSCP-983-JP個体は発見され次第捕獲し、サイト-1345に輸送してください。SCP-983-JP個体はサイト内の大型魚類収容用生簀で飼育されます。実験時のみSCP-983-JP個体はサイト-1345に設置された容量600tの水槽に1匹ずつ収容します。生簀、および水槽は1週間に一度無人機による点検を行い、異常が見つかった場合は水槽区画を封鎖し補修を行ってください。実験の際は水槽上部の投下口から実験用品を投下し、回収する際は静動ロボットで回収してください。 SCP-983-JP内の異常空間の調査にはオブジェクト担当者の承認が必要です。 説明: SCP-983-JPは主にアメリカ大陸東部湾岸の一部に生息するホホジロザメ(Carcharodon carcharias)のメスです。SCP-983-JP個体の子宮1内には空間異常が生じており、およそ17m ×6m × 9mの長方体の空間が存在しています。この空間には後述の期間を除き、他の物体は存在しません。 SCP-983-JPは交尾後に、音を発している物体(以下「対象」とする)を優先的に捕食するようになります。対象には本来の捕食対象に含まれるイルカやシャチ等の海洋哺乳類の他、エンジンにより駆動する船のような、本来は摂食不可能な物も含まれています。 対象をある程度摂食した2SCP-983-JP個体は、腹部から様々な音声(詳細は以下の実験記録を参照)を生じるようになります。この間、異常空間内には様々な実体が出現します。全ての事例において空間内に共通して存在するのはSCP-983-JPの受精卵です。受精卵は異常空間の中央部に、自身から伸びるひも状の組織で天井からつりさげられる形で存在しています。加えて、再生される音声により異なる実体が1体以上出現します。この実体は道具を使う、本来発声する事の出来ない音を用いるなどして概ね音楽理論に乗っ取った音声を奏でています。実体はSCP-983-JPの出産時に溶解し、成長した胎児と共に体外に排出されます。 なお、発せられる音声は他のホホジロサメの受精直後の卵にも影響を及ぼし、同様の異常性を獲得したメスが生まれることが明らかとなっています。この性質を利用してSCP-983-JPは、各個体が捕食した音源を共有している事が実験記録から推測されています。 以下の記録はSCP-983-JPに対して行われた実験の一部です。全ての記録はサイト-1345内の試料保管室にて閲覧可能です。 実験記録983-1 給餌対象: 木片 構成音: 木片と収容室の床の衝突音のみ。 再生された音声: 既知楽曲と一致しないCメジャースケール、4/4拍子、♩=150の音楽。 特記事項: 木製打楽器と推測される音が混在した音声。 備考: この木片と収容室の床の衝突音を記録した音声ファイルをスピーカーで再生し、捕食させた場合も同様の結果が得られた。加えて、別個体でも同一の音声が生じた事から、SCP-983-JP個体から発せられる音には個体間の差が無く、構成音依存的に生じていると考えられる。以降の実験では音声再生および給餌対象にスピーカーを使用。 実験記録983-10 音源: 木片、鉄パイプ 構成音: 木片、鉄パイプと収容室の床の衝突音など。 再生された音声: ショパンの「ワルツ第6番変ニ長調 作品643」とフレーズの一部が合致する未知の楽曲。既存局と一致しない音声では複数の曲調が出現するが概ね♩=90~150の間で推移する。 特記事項: SCP-983-JPは未知の方法により既存の音楽を模倣することが出来る可能性が存在する。なお、構成音以外に、スネアドラムと推測される打楽器の音がリズムにはまったく一致しない形で使用される。 実験記録983-16 音源: ”Oasis”4が1995年にリリースしたアルバム”Morning Glory” 構成音: ”Morning Glory”収録楽曲のみ。 再生された音声: 収録曲を切り貼りする形で形成された、主に既知の楽曲と一致しないメロディックマイナースケール、5/4拍子、♩=180の音楽。 特記事項: 複雑な音を持つ音源に対する反応を調査する実験。音源は研究班の所有する物からランダムに選択された。発生した音声には11/8から4/6への変拍子が存在。アルバムの曲を切り貼りした形で未知の楽曲が再生される。時折アルバムの楽曲と同一のフレーズが入った。 備考: 観察途中、一体の実体がSCP-983-JP個体から排出された。この実体は小型のイヌの様に見えたが、排出後即時に溶解し詳細な観察を行うことが出来なかった。この実体の出現によりSCP-983-JP個体内部に何らかの空間異常が生じているという推測がなされた。 実験記録983-23 音源: サイト-1345の近隣で営業している食堂に設置されたレコーダー 構成音: 食堂内の様々な音(11:30~12:00の30分間の音声)。 再生された音声: ♩=210の、既存曲と一致しない音楽。複数の木製楽器を叩く音を含むが、この音源の由来は不明。 特記事項: 財団がSCP-983-JP内の異常空間の存在を認識してから初めての実験。 異常空間内に侵入した記録装置には、5体のアシカの形状を持つ実体が拍子木やカスタネットなどの木製打楽器を咥え、空間中央に存在するSCP-983-JPの受精卵を取り囲み、独特のリズムを取りながら走り回る様子が記録された。 受精卵から胎児が孵化した後から出産までの間、胎児が少しずつ実体を消費していく様子も見られた。胎児は問題なく誕生した。 実験983-29において撮影された人型実体。 実験記録983-29 音源: ウィリアムズ研究員の所有する音楽プレイヤー 構成音: "No.9"5。 再生された音声: 実験音源音源及びそれ以外の音声で再現された、倍速で再生される ”Lycanthrope”6の「Elena will die twice」、「Melty of melancholy」、「Chronostasis」の3曲。 特記事項: 音声再生前から実体出現の様子を観察する実験。音源は研究班の所有する物からランダムに選択された。 音声再生前には部屋中央部に受精卵があるのみであったが、音声発生直後に異常空間の底面が盛り上がり、尾ヒレを使い垂直に立つ魚または海洋哺乳類、イヌ、数種類のヒトの形態を持つ実体が数十体形成された。異常空間の入り口とは真逆の位置には、2名の人型実体及び3体のアシカ型実体、スピーカー、ドラムセット、ギター、カスタネット、マイク、船のエンジン、木片等の多数の人工物が形成された。 人型実体及びアシカ型実体が道具を使うなどして音声を発し始める7と共に、外部でもSCP-983-JPから同一の音声が確認できた。音声の再生が進むにつれ、実体は興奮した様子で音声を発し、飛び跳ねながら空間内を移動し始め、最終的に激しい大きな移動の流れが形成された。 「Chronostasis」再生中に演奏に参加していた人型実体が移動の流れに飛び込むと、他の実体がこれを持ち上げ、更に激しく周回移動を行った。この際に一部の実体が受精卵を巻き込み破壊した。これに気付いたような動作を受精卵の周囲にいた一部の実体がとると、全ての実体が次第に鎮静化し、最終的に全実体の活動が停止した。実体は出産時と同様に溶解し、破壊された受精卵と共にSCP-983-JP個体の体外に排出された。記録機器も同時に排出されたためその後の空間内の変化は不明。 備考: 実験記録983-29と同一の音声を用い別個体で実験を行ったところ、同様に実体により破壊された受精卵や胎児が排出された。この音声をSCP-983-JP個体数削減に用いる案がSCP-983-JP研究班により提出され、審議中である。 脚注 1. ホホジロサメは卵胎生と言う生殖様式を有する。子宮内で孵化したホホジロサメの稚魚は周囲にある未受精卵を食べながら成長し、ある程度の大きさに成長してから母体を脱する。 2. 量には個体差があります。 3. 子犬のワルツの通称で知られる。 4. イギリスのロックバンド。2009年に解散 5. ウィリアムズ研究員が数年前に作製したブレイクコア。 6. 1993年に結成されたアメリカ人4人組によるバンド。1997年7月にメンバー2名が旅行中に事故死し、これがきっかけとなり解散した。 7. 発生する音声は演奏する道具が本来生じる音とは一致しない。
scp-984-jp
評価: +152+–x   注意: 当該オブジェクトの特異性が及ぼす影響につき、当報告書内では、日本語の仮名「あ段9行目」の2種類の文字を便宜的に「@」で表します。       アイテム番号: SCP-984-JP オブジェクトク@ス: Safe Euclid Safe 特別収容プロトコル: SCP-984-JPとその類似書籍及び各写本は、サイト-8149の紙媒体オブジェクト保管用書庫に収容されています。研究目的を除き、全書籍の持ち出しは禁止されています。書庫へは研究チームの許可と、それとは別にセキュリティクリア@ンスレベル3以上の職員2名の許可を得て入室して下さい。万が一の影響を考慮し、内容を確認する必要がある場合は写本を利用して下さい。SCP-984-JP及び類似書籍本体を確認する必要がある場合は、Dク@ス職員を使うよう留意して下さい。 SCP-984-JP及び類似書籍はその全個体が収容済みとされていますが、万が一別個体と思わしい書籍を発見した場合は、決して内容を読まずに最寄りの財団サイトに通報・移送して下さい。 説明: SCP-984-JPは、表紙と背表紙に『@1抜き言葉のすすめ』と印刷された、全212ページの文庫本サイズの書籍です。組成は一般的な紙とインクであり、特筆すべき点はありません。また奥付が存在しないため、著者や出版社等の書籍情報は一切不明です。20██/04/██、奥付の出現が確認されました(詳しくは下記補遺2参照の事)。本文内容については、写本作成のため読み進めた複数のDク@ス職員へのインタビューによって「@抜き言葉使用の賞賛及び、@を使用した正しい日本語文法への罵倒」「@抜き言葉使用の利点と発展の歴史」「@抜き言葉の正しい使用法とその例文」等である事が判明していますが、各分野を専門とする研究者によってその正当性は完全に否定されています。 SCP-984-JPの第1の特異性は、SCP-984-JPについての言語表現において発生します。SCP-984-JPについて言語の関わるいずれかの方法で表現・理解を試みる際、当該人物は仮名五十音における「あ段9行目」の2文字を認識・表記・発音出来ません。この影響は日本語表現全般に及び、アルファ ベットや漢字を用いた表記の読み、電子端末での入力作業にも影響します2。全文読了しない限り、SCP-984-JP内に表記された「@」の字については通常通り認識可能ですが、SCP-984-JPの音読及びSCP-984-JPへの「@」の字の書き込みについては、この特異性の影響を受けます。 SCP-984-JPの第2の特異性は、SCP-984-JP全文を読了した人物(以下、暴露者)に発生します。暴露者はSCP-984-JP読了の瞬間より、「あ段9行目」の文字表現についての概念と認識能力を恒久的に喪失します。この影響は記憶処理によっても取り除く事は不可能です。またこの特異性については、SCP-984-JPの写本の読了では発生しない事が確認されています。 + SCP-984-JP実験・インタビュー記録 - 閲覧終了 実験記録984-JP - 日付 20██/03/██ 対象: D-984-1(SCP-984-JP暴露者、暴露以前は十分な日本語識字能力を備えていた) 実施方法: 「ひ@がな」「@ーメン」「蘭」「裸(音読みせよ)」と書かれたフリップを順に見せ発音させる。また、単語の意味について簡単に説明させる。 結果: それぞれ「ひがな」「アメン」「ん」「はだか」と発音。説明としての発言は以下の通り。 ひがな…「日本人が一番最初になう文字」 アメン…「元は中華料理だった食いもん。屋台とかで売ってる奴」 ん…「花はあんま詳しくねえけど、派手な見た目だったと思う」 はだか…「この漢字に音読みなんてあったか?」 それぞれ2度ずつ繰り返させたが結果は同じであった。付随する説明内容も大差ないものであったため割愛。 備考: 当時第1の異常性の影響範囲が不明であったため、出題と記録はSCP-984-JP効果を認知しない研究者の手で行われた。また、被験者は2度目に「ひ@がな」のフリップを視認した際、「思ったんだけど、何で「ひ」と「が」の間、そんなに空いてんだよ。あんたの発音もおかしいし。ひっがな、じゃなくてひがなだろ」と発言。 分析: 平仮名、片仮名、漢字表記のすべてにおいて特異性の発現を確認。「ひ@がな」の説明における「なう」は「習う(な@う)」の事だと思われる。上記被験者の発言を考えると、「@」の概念の欠損は暴露者の単語認識にまで影響を与えていると言っていいだろう。視覚的・聴覚的に認識出来ない「@」の部分は単純に空白として脳内処理しているようだが、一方で発音における欠損は違和感を抱く事なく詰めているのがその証左だ。加えて、「@」一音の漢字の読みを無いものとして考えているような反応は、SCP-984-JPの異常性が暴露者の記憶にまで影響する可能性を示唆している -██博士 インタビュー記録984-JP - 日付 20██/03/██ 対象: D-984-1(SCP-984-JP暴露者、上記実験984-JP直後) インタビュアー: 枝角博士 付記: 枝角博士にはSCP-984-JPについて認知させず、D-984-1については「とあるオブジェクトの特異性によって@の字の概念を失っている」と説明。またD-984-1は「@」の字を認識・発音出来ないため、必要に応じて@を加えてある。 <記録開始> 枝角博士: では、インタビューを開始します。D-984-1、先程の実験内容を覚えていますね? D-984-1: ああ。なんなんだよあいつ@、俺の事馬鹿を見るみてえな目で見やがって。気分悪いった@ねえよ。 枝角博士: ええ、まあ私もあなたの実験を直接見ていた訳ではないのですが。しかし話を聞く限りでは、無理もないかもしれないと思いましたよ。これを見て下さい。 <枝角博士が平仮名の五十音表を取り出し、D-984-1の前に置く> D-984-1: なんだ、あんたもかよ?今さ@あいうえお表って…ガキじゃねえんだぞ。 枝角博士: わかってますよ。ではD-984-1、これを見なが@順番に文字を読み上げて下さい。ま行か@で構いませんが、一文字も飛ばさないように。「ガキじゃない」あなたには、簡単な事でしょう? D-984-1: そうだけどよ…わかったよ。ま、み、む、め、も。や、ゆ、よ。り、る、れ… 枝角博士: ああ、そこで結構。残念なが@D-984-1、あなたは文字を一つ飛ばしました。「よ」と「り」の間です。 D-984-1: (噴出して)博士、あんたこそ馬鹿になったんじゃねえのか?そんなわけねえだろ。俺はちゃんと書いてある順番で読んだぞ? 枝角博士: しかし本当の事ですよ。「@」という文字が抜けています。あ段9行目の文字です、その表にも書いてあるでしょう? D-984-1: 博士さんよ、あんまり馬鹿にしてっと流石にキレんぞ。聞こえねえんだよ、なんて文字だって?表だって確かに空白は空いてるが、なんも書いちゃいねえし、そもそもここはそういうもんだろうが。 枝角博士: そういうもん、とは? D-984-1: だか@、や行やわ行に空白があるのと同じだって事だよ。第一、「よ」の次が「り」なんてのは、それこそ小学生にもな@ねえガキでも知ってるぞ。 枝角博士: …わかりました、では質問の方向性を変えてみましょう。あなたも見た事があるでしょうが、現代仮名遣いにおけるや行とわ行の空白は、1つの子音につき5音という日本語の原則に基づき、それぞれ「やいゆえよ」「わいうえを」と埋める表記法もあります。と言うより、本来五十音と言うと、撥音…「ん」を抜いた子音10音×母音5音のこの表記の方が正しいのですが。さて、それでは同じように、あなたが思う「よ」と「り」の間を埋める文字を教えてくれませんか。 D-984-1: そりゃあ、当然…(5秒間の沈黙) 枝角博士: …D-984-1?どうしました? D-984-1: ん、いや…あれ?おかしいよな、「ありるれろ」なんて聞いた事もねえし、他の文字だって… 枝角博士: しかし、や行とわ行には空白を埋める文字があるのに、「り」の行だけが4音で「あ」を母音とする文字がないのも、「五十音」としてはおかしな話でしょう? D-984-1: なんだよこれ…なあ博士、どういう事だ?あんたさ、え@い先生なんだろ?教えてくれよ、なんで俺はここのひ@がなだけ知@ねえんだ?「よ」と「り」の間には何があるんだよ? 枝角博士: それが、先程申し上げた「@」という文字です。rを子音、aを母音とする、あ段9行目の文字です。読めますか? <枝角博士が表の余白に平仮名・片仮名・ローマ字表記の「@」を書く> D-984-1: …わか@ない。 <記録終了> 終了報告書: 暴露者に直接「@」の文字や概念を再教育するのは無理だが、遠回しな論理的指摘で違和感を抱かせる事は可能だった。SCP-984-JP読了によって欠損するのは、あ くまで「@の文字」に関する極狭い認識と概念・記憶に限定されるという事か。しかし、一度暴露すると影響が永続的である点も含め、言語コミュニケーションに生じる障害は無視出来ないものがある。我々もSCP-984-JP関連の記述にはなるべく「@」の字を使わないようにしているが、実際中々に語彙力を試される。まさに、オブジェクトのすすめに応じて「@抜き言葉」を使用している訳だ。伝染性がない事はせめて もの救いか -██博士 補遺1: 20██/03/██、財団フロント 企業の経営する書店において、SCP-984-JPに類似した特異性を持つ書籍が1冊発見・回収されました。当書籍は『理詰めの法廷』と題された奥付のない漫画単行本に見えますが、当書籍に関する言語表現においては「い段9行目の文字」についての認識・表記・発音が阻害されます。またD-984-1とは異なるDク@ス職員に全編を査読させた所、「い段9行目の文字」に関する概念と認識の喪失が確認されたため、当該書籍は便宜的にSCP-984-JP-βと分類されました。20██/03/██現在、SCP-984-JP-β写本の作成が進行中である他、SCP-984-JPの暴露効果との重複調査については許可申請中です。 尚、当該書店の書籍発注書や、書籍を納品している出版社・取次会社の各種記録が調査されましたが、SCP-984-JP-βに関する記述は一切確認出来ませんでした。 「あ段9行目」の次は「い段9行目」。嫌な予感しかしないな -██博士 補遺2: 20██/04/██、白紙であったSCP-984-JPの奥付部分に、記述の出現が確認されました。以下の記述は、観取した研究員によって書き写されたものです。 "Symbol Spoilers series"   第16段 『[あ段4行目の平仮名]ぬきのふしぎ』 series初の絵本。お子様の教育に! 第26段 『楽しい[あ段6行目の平仮名]なしができる本』 口下手なあなたに贈る、飽き@れない話題集。 第27段 『火消 ~誕生と歴史~』 江戸の町を守った消防組織をリアルに描く時代小説。 第41段 『@抜き言葉のすすめ』 美しくあた@しい、日本語のすすめ。[当書] 第42段 『理詰めの法廷』 最新作!法廷を舞台に巻き起こる、本格推理サスペンスコミック! 「世界にたった一つだけ」をあなたに サイン堂 書けない文字があるという事は、SCP-984-JP及びSCP-984-JP-β以外の3冊も現存すると見ていいだろうな。当補遺作成時点ではSCP-984-JP-βが最新作であるようだが、それは言い換えれば、「う段9行目」以降も続いていくという予告だ。いや、何も日本語に限定せずとも、例えばアルファ ベットやキリル文字・ギ リシャ文字なんかに影響を及ぼす「新作」が追加される懸念さえある。嬉しくない予感的中だな -██博士 「サイン堂」を名乗る存在については、その規模・所在・形態に関して、日本国内を中心に調査が進行中です。上記で言及されている3冊を始め、未発見・未収容のSCP-984-JP類似書籍が存在する可能性が高いとされ、SCP-984-JPオブジェクトク@スのEuclidへの変更が決定されました。 補遺3: 20██/02/██、SCP-984-JP及びSCP-984-JP-βを含めた、各清音・濁音・半濁音・撥音に影響する全71種類の類似書籍を収容完了しました。それに伴い、SCP-984-JPのオブジェクトク@スはSafeへと差し戻されました。尚2016年時点で存在やその示唆は確認されていませんが、SCP-984-JP及び収容済み類似書籍の別個体と、日本語以外の各文字や倍濁音・踊音・倒音に影響する類似書籍の捜索も継続されています。 一部の言語学者の間では、「ぢ」「づ」の文字は今後百年の内に絶滅するだろうなどと言われている。それだけ現代仮名遣いにおける使用頻度が低 いという事だが、それは倍濁音・踊音・倒音とて同じだ。そして、滅多に使われないだ行の2音にさえご丁寧に特異性を持つ書籍が作成されているという事は、「 」「 」「 」に関する類似書籍が存在してもおかしくはない -██博士       警告: 倍濁音「 」・踊音「 」・倒音「 」の認識が不可能である職員は、直ちにサイト-8149に通報の上、記憶のサ ルベージと再構築試行処置を受けて下さい。過去のどこかの時点で、倍濁音・踊音・倒音に影響するSCP-984-JP類似書籍を読了した疑いがあります。 Footnotes 1. 実物には平仮名のあ段9行目の文字が印刷されています。 2. 例: 「平」という漢字について、「平和」という入力は可能ですが、「ひ@がな」「たい@」と入力する事は不可能です。つまり電子機器の文字入力において、@を含まない「へい」という入力の変換では「平仮名」「平」の漢字表記も可能ですが、声に出して読み上げる際は特異性の影響を受ける点に留意して下さい。
scp-985-jp
評価: +62+–x アイテム番号: SCP-985-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 日本各地の宝飾品を扱っている美術館・宝石店・その他施設に設置された監視カメラで強盗を含む盗難事件・暴動事件を監視し、SCP-985-JPの発生が即座に財団に伝わるようにしてください。SCP-985-JPによる盗難事件の発生を確認次第、即座に施設を完全に封鎖し、近隣の機動部隊に適切な装備を支給・派遣し、鎮圧してください。この時、機動部隊は全員必ず酸素供給マスクを装備し、SCP-985-JPが発する匂いの吸引を防いでください。拘束したSCP-985-JP-1には必ず拘束用の麻袋で覆い、SCP-985-JPに変身されても逃走できないようにしてください。施設を鎮圧した後は関係者全員にAクラス記憶処理が施され、カバーストーリー「強盗事件」が流布されます。 SCP-985-JPの収容室は二重扉にし、出入りする場合は必ず酸素供給マスクを装備してから風除室で完全な換気を行ってください。 SCP-985-JPを絶対に摂食せず、SCP-985-JPの犯行現場に残されたSCP-985-JPの欠片はなるべく回収し、サイト-81██の低危険物収容棚に密封容器に入れて保管てください。 説明: SCP-985-JPはコッペパンに見える実体です。SCP-985-JPは常に匂いを発しており、この匂いを嗅いだ人間は一時的に思考力・判断力が著しく低下し、SCP-985-JPを摂食しようと試みるようになります。この時複数の人間がSCP-985-JPを捕食しようとした場合、暴力的な手段を用いて争奪を始めます。SCP-985-JPを摂食した人間は、SCP-985-JPに人格を上書きされ(以降この状態をSCP-985-JP-1と記述)、任意のタイミングでSCP-985-JPに不可逆的な変身を行い、1新たなSCP-985-JPとなります。 SCP-985-JPはSCP-985-JP-1の姿で美術館または宝石店をはじめとした宝飾品を展示している施設や会場に出現し、展示物を窃盗します。この時窃盗する物品は女性向けの宝飾品がほとんどを占めています。SCP-985-JP-1は目的の物品に自然に近づき、その物品を不明な手段で瞬間移動させ、自身をSCP-985-JPに変身させた後、すり替わるように対象があった場所に鎮座します。この時、「お宝はいただいた。怪盗パン三世」と記された縦5.9cm×横8.6cmのカードがSCP-985-JPの隣に配置されます。このカードに異常性は確認されていません。殆どの場合、付近にいる人間がSCP-985-JPの匂いを嗅いだことによってSCP-985-JPの摂食を試み、乱闘に発展して周囲を混乱させます。その後、摂食されたSCP-985-JPはSCP-985-JP-1となり、混乱に乗じてできる限り自然な形でその場からの逃走を図ります。窃盗された物品に関しては補遺1を参照してください。 SCP-985-JPによる盗難事件は不定期的に日本各地の美術館・宝石店で同様の手口の窃盗事件が█回発生しており、「明らかに不審な暴動が発生している」という目撃情報から、財団が調査協力を行っている段階でした。20██/9/██、██県███市の████美術館で窃盗が行われた際、調査並びに警戒のために派遣されていた財団エージェントによって発見され、財団がその存在を把握するに至りました。財団がSCP-985-JPの存在を把握したことにより特別収容プロトコルの一部が制定され、複数回にわたって収容作戦が行われました。 + 収容作戦ログ985-01~03 - 収容作戦ログを非表示 収容作戦ログ985-01 - 日付20██/11/13 ██県██市 ██美術館 作戦概要: SCP-985-JPによる窃盗事件の発生を確認次第、美術館全域を閉鎖、即座に機動部隊による鎮圧を行う。 結果: SCP-985-JP-1の自然な演技により判別ができず確保に失敗。また、この時はSCP-985-JP-1の存在を財団が把握できていなかったことも原因。 分析: 監視カメラの映像から、人間にSCP-985-JPを摂食させる特異性を持つと仮説。 収容作戦ログ985-02 - 日付20██/1/3 ██府██市 市民ホール 作戦概要: ログ985-01に加え、SCP-985-JPを摂食した人物を拘束し、インタビューと検査を行う。 結果: 機動部隊に拘束されたSCP-985-JP-1にインタビューを行ったところ、SCP-985-JPを摂食した人物が、本来ならば答えられるはずの個人情報を答えられなかった。検査のため護送を行おうとしたところ、SCP-985-JPを摂食した人物=SCP-985-JP-1がSCP-985-JPに変身し、そのSCP-985-JPを機動部隊の隊員1名が摂食。装備を奪ったSCP-985-JP-1が混乱の中、機動部隊█名を無力化した後逃走。 分析: 生還した機動部隊員から、「甘い匂いがした」と証言。このことから、匂いによって誘惑していると仮説。また、SCP-985-JP-1は、摂食した人物の記憶を引き継がないことが判明。 収容作戦ログ985-03 - 日付20██/3/11 ███県█市 █████ 作戦概要: ログ985-02に加え、機動部隊全員が酸素供給マスクを装備。また、事態が収束するまで施設内を閉鎖し続ける。 結果: SCP-985-JP-1の拘束に成功。また、約1cmのSCP-985-JPの欠片を回収。 分析: SCP-985-JPに変身しなかったのは、SCP-985-JP-1が機動部隊の酸素供給マスクを確認し被摂食を諦めたためと思われる。SCP-985-JPの欠片については補遺2を参照。 補遺1: SCP-985-JPが窃盗した物品の一つに取り付けられていたGPS発信機により、██県██村の███山より盗難品が全て発見されました。盗難品は全て地中に埋まっていた棺桶の中から発見され、その棺桶には可食期間を大幅に経過したクロワッサンが盗難品と共に埋葬されていました。このクロワッサンに異常性は確認されておらず、現在適切な密封容器に収容し、サイト-81██の低危険物収容棚に保管されています。 補遺2:収容作戦ログ985-03で確保したSCP-985-JPの欠片を使用して実験が行われました。以下がその記録です。 + 実験ログ985-01~02 - 実験ログを非表示 実験ログ985-01 - 日付20██/3/16 対象: SCP-985-JPの欠片、D-98501 実施方法: D-98501にSCP-985-JPの欠片を食べないように指示した後、密室内でSCP-985-JPの欠片を嗅がせる。また、以降の実施場所も特筆しない限り同一の密室、出入り口は二重扉一つのみとする。 結果: D-98501はSCP-985-JPの欠片を摂食しなかった。 分析: D-98501は「微かに甘い匂いを感じたが、食べようとは思わなかった」と報告。サイズが小さくなっても特異性は保持しているようだが、その誘引力は大きさに比例するようだ。 実験ログ985-02 - 日付20██/3/19 対象: SCP-985-JPの欠片、D-98501 実施方法: 合言葉を教えた後、D-98501にSCP-985-JPの欠片を摂食させ、合言葉を確認する。 結果: D-98501は問題なく合言葉を答えた。 分析: 収容作戦ログ985-02より、SCP-985-JP-1は摂食した人間の記憶を引き継がないことが判明しているため、D-98501は本人であるといえる。小さいサイズならSCP-985-JPに曝露しないのか、それともSCP-985-JP-1が他にいると曝露しないのか、更なる実験が必要だろう。 SCP-985-JPを使用した実験の申請がなされました。 申請は受理されましたが、SCP-985-JP-1がSCP-985-JPに変身しようとしないため、現在保留中です。 補遺3: SCP-985-JPの脱走が確認されました。以下の事件記録985-01を参照してください。 事件記録985-01 - 日付20██/5/3 事件内容: SCP-985-JP-1に対するインタビューを行う際、SCP-985-JP-1がSCP-985-JPに変身し、跳躍を用いた驚異的な運動能力で脱走を行いました。SCP-985-JPの運動能力は今まで確認されていなかったため対処が遅れ、SCP-985-JPが近隣のサイト-81██に逃げ込んだ後防臭対策が間に合わなかったエージェント数名をSCP-985-JP-1にして乗り継いだ後完全に行方不明となりました。この数日後、またしてもSCP-985-JPによる盗難が発生したため、駆けつけた機動部隊により再度収容されました。 追記1: 20██/6/24、SCP-985-JPが収容されているにもかかわらず、SCP-985-JPによる盗難事件が発生しました。SCP-985-JPが残したカードには「延長戦だ。怪盗パン三世」と記されていました。すぐさま機動部隊による鎮圧が行われましたが、SCP-985-JPは発見できませんでした。未収容のSCP-985-JP別個体が存在している可能性が懸念されます。 追記2: 事件記録985-01に記された盗難事件の監視カメラによる映像を確認したところ、SCP-985-JPが摂食される際、騒動の中で真っ二つに分断され二人の人間に同時に摂食されていたことが判明しました。SCP-985-JPの別個体と並行して、実験ログ985-02の結果と併せて増殖する可能性を考慮し調査する必要があります。 Footnotes 1. SCP-985-JPからSCP-985-JP-1への変身は現在確認されていません。
scp-986-jp
評価: +70+–x 評価: +70+–x クレジット タイトル: SCP-986-JP - 2人のいいひと 著者: ©︎jet0620 作成年: 2016 評価: +70+–x 評価: +70+–x アイテム番号: SCP-986-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-986-JPは標準的人型収容房にてSCP-986-JP-A、B各個体を個別に収容します。実験及び保管用を確保して残りの個体は無力化を行ってください。新たなSCP-986-JP-A個体の発見報告がなされた場合、回収班にSCP-986-JP-Bを同行させてください。SCP-986-JP-Aの被害者が解放されたのちに、SCP-986-JP-A無力化プロトコルを実行させてください。 説明: SCP-986-JPはワンダーテインメント博士及びその模倣犯と考えられる「博士」により作成されたとみられる複数の人型実体です。 SCP-986-JP-Aは20代後半の男性です。複数の個体が確保されていますが、いずれの個体も人種・母国語等に共通点は存在しません。 一般に言われる喧嘩を行っている人物(以下対象と呼称)同士が半径10m以内に存在する場合、SCP-986-JP-Aは対象の人物に対し喧嘩をやめるよう宣告し、握手やハグ等を行い和解するように命令します。大抵の場合この発言は無視されるか反発を招きますが、SCP-986-JP-Aは意に介せず対象に握手やハグを強制する行動をとります。 SCP-986-JP-Aにより肉体を接触させられた対象同士は、接触箇所が物理的に融合します。融合箇所は神経や筋肉等が同一化しており、時間の経過とともにより融合の深度が大きくなります。大抵の場合に苦痛を訴え、その後臓器移殖時の拒絶反応に極めて似た症状を発します。融合状態の対象に他人が直接接触した場合も同様に融合し、一定数の人物が融合した時点で周囲の人物を引き寄せる特異性を発露させます。影響の範囲および強度は融合した人物の数に比例し、融合の深度も同様に大きくなっていき最終的に[データ削除]。 この間SCP-986-JP-Aはより多くの人物を融合させるために行動し、この行動は[データ削除]まで続けられます。[データ削除]後の行動はそれより前に全個体が一時的あるいは永続的に無力化されたため不明です。関連実験は予想される被害が非常に大きいため凍結されています。 SCP-986-JP-Bは20代後半の女性です。SCP-986-JP-Aと同様に複数の個体が確保されており、人種・母国語等に共通点は存在しません。 能力の活性条件や流れ等はSCP-986-JP-Aとほぼ同一ですが、こちらは対象の立場や考え等を聞いた上でより具体的な和解案を提示し、その解決の証として握手を促すという点が異なります。自発的かあるいはSCP-986-JP-Bによる強制かを問わず、握手を行った対象同士は後述の場合を除きいかなる手段を以ってしても握手を解くことが出来ません。SCP-986-JP-Aと異なり肉体的に融合はしておらず、対象の感覚等は正常の状態です。インタビューでは「接着剤でくっつけられたよう」「握手している部分だけ神経が通っていない感じ」などの証言が得られています。 固定された握手は対象同士の諍いの原因となった事案に対して真に和解できた場合に解除されるとされていますが、心理的な要因が大きくかかわり客観性に欠けるため詳しい条件は不明です。SCP-986-JP-Bが異常性を発揮させない場合も確認されますが、これは最初の握手の時点で和解している場合に発生すると予測されています。握手が長期間解除されない例も確認されており、現在██組の人物がいまだ解除されておらず財団に保護されている状態です。 対象の和解を妨害した人物はSCP-986-JP-Bによっていわゆる正座の姿勢に固定され、彼女からの激しい叱責1等を受けます。この行動は対象が妨害について十分に反省したと判断されるまで続き、対象は叱責が終わるまで正座の状態から動くことが出来ず、衰弱死するまで叱責が続く場合も存在します。 SCP-986-JP-BはSCP-986-JP-Aの特異性により融合した対象に触れることで安全に元の状態へ戻すことが可能です。融合が解除された対象に異常はなく、また融合中に発生した負傷も外的要因によるものでない限り治癒されています。また、SCP-986-JP-Aに対し[編集済み]を行うことでSCP-986-JP-Aの無力化が可能ですが、SCP-986-JP-Bも同時に無力化します。 この特性および後述の発見時期から、SCP-986-JP-BはSCP-986-JP-Aを模倣して作成されたと推測されています。ワンダーテインメント博士が模倣を行った理由は不明です。補遺3及び補遺4を参照してください。 SCP-986-JP-Aは20██年██月にミシガン州███にて初めて発見および回収されました。その1か月後SCP-986-JP-Bがフランス███にてSCP-986-JP-Aとともに発見・回収されました。以降、SCP-986-JP-AおよびSCP-986-JP-Bは同一箇所にて同時に発見・回収される事態が20██年██月まで続きました。20██年██月から現在までSCP-986-JP-AおよびSCP-986-JP-Bの出現は確認されていません。 補遺1及び補遺2の文章から、SCP-986-JP-Aは「博士」製作、SCP-986-JP-Bはワンダーテインメント博士製作と推測されています。 補遺1: SCP-986-JP-Aの右脚に記載された文章 ケンカしてないでみんな仲良くしようよ! "ミスター・いいひと"がそのおてつだいをしてくれるよ! みんなで一緒に、仲良く楽しもうね! 補遺2: SCP-986-JP-Bの背中に記載された文章 ワーオ!! ワンダーテインメント博士の日本限定版のミスターの秘密コレクションを見つけたみたいだね! ぜんぶ見つけて日本でもミスター・コレクターになっちゃおう! 01. ミスター・おやすみ(発売未定) 02. ミスター・かおだらけ 03. ミスター・ずぶずぶ 04. ミスター・くらやみ(発売未定) 05. ミスター・にんじゃ(発売未定) 06. ミズ・きみのだいじなひとを(自主回収中) 07. ミスター・ひきさかれる(自主回収中) 08. [判別不能] 09. [判別不能] 10. [判別不能] EX. ミズ・いいひと 注意: 本製品は非売品であり正規販売の予定はありません。誠に申し訳ありません。また、”ミズ・いいひと”の尊厳・人権を無視した使用をした場合、ワンダーテインメント博士の保証対象外になります。 また、ワンダーテインメント博士の偽物が類似品を販売しているとの情報があります。”ミズ・いいひと”はワンダーテインメント博士オリジナルの製品であると保証するとともに、お客様にはご注意のほどお願いします。 補遺3: 20██年██月██日に██県██市にてSCP-986-JP-B個体のみが回収されました。この個体には通常の個体共通の記述に加え、追加の文章が存在していました。これ以降新しいSCP-986-JP個体の発見例はなく、前回の発見が200█年█月であったことに留意するべきです。 お知らせ 現在、ワンダーテインメント博士は「博士」製造の”ミスター・いいひと”に対し著作権侵害の訴訟を予定しています。付きましてはお客様各位に”ミスター・いいひと”の回収作業及び「博士」に関する情報提供のご協力をお願いいたします。有効な情報をご提供いただいたお客様には金一封及びワンダーテインメント博士がお客様の希望するオーダーメイドの商品をお作り致します。 情報提供は以下の電話番号から行えます。皆様のご協力をお願いいたします。 ███-███-████ ©ワンダーテインメント博士 補遺4: 20██年██月、ワンダーテインメント博士とみられる人物からSCP-986-JP管理担当責任者に対し電話が掛けられてきました。内容の録音はノイズが走っており聞き取ることは出来ませんでしたが、責任者から正確な内容を得ることが出来ました。 責任者によると、ワンダーテインメント博士は「博士」に関連する情報及び”ミスター・いいひと”の提供を要求してきました。要求は責任者が「自分の一存では決められない」として回答待ちの状態です。また、このとき同時にSCP-986-JP-BがSCP-986-JP-Aを模倣して作成されたこと及び博士に対し非常に高い敵対心を抱いていることが本人の発言より確定しました。模倣の理由については明確な回答を得ることは出来ませんでした。 Footnotes 1. 内容は主に「人が話している時に邪魔するのは良くない」「喧嘩は仲直りしなければ意味がない」といったものです。
scp-987-jp
評価: +47+–x アイテム番号: SCP-987-JP   オブジェクトクラス: Safe   特別収容プロトコル: SCP-987-JPの特別収容プロトコルは現在Level 5特定機密として扱われています。セキュリティクリアランスレベル5職員のみ、本オブジェクト取り扱い情報開示許可の発行権を持ち、更に情報開示対象者のみが情報の所有権を有さなければなりません。 そのため、SCP-987-JP特別収容プロトコルはデータベース上に記録してはならない情報として分類されています。取り扱い管理については、日本支部理事に直接問い合わせの上で、指示に従って下さい。その際、指示の内容は特定機密情報へと自動的に指定される点に留意してください。   SCP-987-JPの起動記録については、セキュリティクリアランスレベル4以上の特殊機密としてデータベース上に記録されています。   説明: SCP-987-JPは███████の探査の結果発掘された情報をもとに構築されている装置です。装置の素材・構造・機能に関する情報はLevel 5機密であり、構築に関わった職員に対しても既にクラスA記憶処理が施されています。 SCP-987-JPは特定のコードを入力することで動作し、内部情報の構築を開始します。その際、SCP-987-JPのディスプレイには「情報の復元中」という旨のメッセージが表示されますが、この時点でSCP-987-JPには特定のコード以外の情報は与えられておらず、どのようにして内部情報の構築を行っているのかは現在でも不明です。   内部情報の構築はおよそ97秒で完了し、それ以後、SCP-987-JPはエネルギーの供給無しで、これまで動作し続けています。 構築された内部情報の調査とプログラム解析によれば、SCP-987-JPには何らかの機能に対する起動プログラムが組み込まれており、その事実から、SCP-987-JPが何らかの機能を有している可能性が高いと見られます。 機能の具体的な内容については、SCP-987-JPの内部情報に出現した「過去の起動記録」の情報を参照しつつ解析が進められていますが、この起動記録についても、完全に信用の於ける情報とは見なされていません。   証明TICr-2003手順を実行してください
scp-988-jp
評価: +216+–x 評価: +216+–x クレジット タイトル: SCP-988-JP - わたしへ 著者: solvex 作成年: 2016 評価: +216+–x 評価: +216+–x SCP-988-JP アイテム番号: SCP-988-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-988-JPが設置されていた███工場は現在財団が買い取り管理下に置かれています。作業員に扮した職員が8時間ごとに10名で巡回し敷地内に一般人が入ることを防いでください。実験を行う際はセキュリティクリアランスレベル3/988以上を持つ職員2名以上からの許可を得て行ってください。SCP-988-JP-1は実験が終了した後に処分してください。異常性のあるSCP-988-JP-1の場合は敷地内の収容棟に適宜見合った方法で収容してください。 説明: SCP-988-JPは神奈川県の███工場に設置されているはしごです。外部からの様子と異なり実験の結果少なくとも███mまでは登ることができることが判明しています。SCP-988-JPを登る高さが10m増える毎に登った人間(以下被験者)が(被験者の年齢[歳]-登った高さ[m]÷10)歳の時に被験者自身が手に入れて最も嬉しかったと推測されるもの(以下SCP-988-JP-1)がSCP-988-JPから半径10m以内の地表に出現します。SCP-988-JP-1は被験者が貰った当時のオリジナルと同一の組成のものです。 実験記録-988-1(2016/04/01) 対象: D-988-1(44歳) 実施方法: 高度計を取り付けたD-988-1をSCP-988-JPに登らせる。 結果: 10m:肉じゃが(Dクラス職員用の食堂で配給されているものと同一。) 20m:██████(拘留中にD-988-1の配偶者から支給された書籍と同一。) 30m:モンゴロイドの男性の死体(D-988-1が殺害した被害者の一人。) 40m:人物写真(D-988-1とD-988-1の子供が写っている。) 50m:D-988-1への感謝の念が書かれた手紙(D-988-1の子供の筆跡と一致した。) 60m:ホールのショートケーキ 70m:3人の人物が描かれた絵(D-988-1の家族と考えられる。) 80m:折り紙で作られたチューリップ 90m:████社製の財布 100m:モンゴロイドの女児の死体(DNAがD-988-1の子供のものと一致した。) 110m:████████████社製の腕時計 120m:モンゴロイドの女性の死体(DNAがD-988-1の配偶者のものと一致した。尚当該女性は現在も存命している。) 130m:モンゴロイドの女性の死体(上記と同一。) 140m:40万円分の紙幣(当時のD-988-1が貰ったボーナスの金額と一致した。) 150m:█████社製の自動車1台 分析: 貰って嬉しかったものの中には生物も含まれるようだ。ただし死亡した状態であることからオリジナルと同一の組成のコピーを発生させていると考えられる。 後記: SCP-988-JP-1の確認作業後のD-988-1に中度の精神疾患がみられた。オブジェクトの特異性に由来するものではないと考えられるが使用したDクラス職員のアフターケアの必要があると思われる。 補遺: 以下の文章は███工場で発見された文書の内容です。書いた人物は1974/06/25に自殺した████工場長であると推測されます。 1974/02/24 今日は30mまで登ることが出来た。この歳になってもやろうと思えばなんとかなるものだ。そして降りた時に見つけた手紙。これは私の還暦のお祝いに社員たちがくれたものだ。よく覚えている。一度もらったものなのに涙が出てくる。これも歳のせいだな。 1974/03/08 90mを達成した。あともう少しで3桁に入る。今のところは体もまだなんとかなるしみんながいない夜の間にことを終わらせることができる。しかしこうならなくなる時はどうしようか。まあ、それはその時考えればよいか。大事なのは目標まで登ることなのだから。そして今日見つけたのは財布だ。誕生日に妻がボロボロだからといってプレゼントしてくれたものだ。まあ、これも今はもうボロボロだが。 1974/04/12 190mにもなると往復でかなりの時間がかかってしまう。もう夜中でやることは無理そうだ。一日中人のいない休日にやろう。頻度は落ちてしまうが仕方がない。それはそうと今回は妻の得意料理であるエビフライを発見した。これが私がもっとも喜んだものであるらしい。まあ、この年はまだ心の傷も癒えていないときではあったのでこういうことなのだろう。美味しかったがソースが欲しかった。 1974/06/09 ついにあの子がいた時間にたどり着いた。240mまで登れるようになり帰ってきたら私は発見した。1枚の絵だ。そこには私と妻、そして自分が描いてあり皆笑顔であった。そしてあと少しでこの笑顔がまた帰ってくるのだ。私は決意した。次に登る時はどんなに疲れていようと目標の300mまで登りきる。そしてまたあの生活を取り戻す。 1974/06/15 はしごを降りたら娘があった。 ██工場長とSCP-988-JP、また██工場長が自殺する前に火葬を依頼した身元不明の遺体の因果関係については現在調査中です。
scp-989-jp
評価: +129+–x 収容中のSCP-989-JP個体 アイテム番号: SCP-989-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: オブジェクトの特性上SCP-989-JPの収容方法は未だに確立されていません。しかし、財団とSCP-989-JP間での協議により、SCP-989-JPは20██年█月まで全ての活動を停止し財団の収容下に置かれることを承諾、SCP-989-JP自ら収容施設内に留まらせる試みに成功しています。 現在サイト-81██の大型鳥類収容檻内に1羽のSCP-989-JPがGPSを取り付けられた状態で収容されています。SCP-989-JPは代謝を行わないため、給餌や檻内の清掃は必要ありません。SCP-989-JPの収容違反を防ぐことは現時点では不可能であるため、監視や施錠等は外部からの侵入を防ぐ事に重点を置いて行ってください。 SCP-989-JPが理性的な判断が可能な状態を保っているか、また財団に対し不信感・疑心感を抱いていないか、1日1度カウンセリングによる調査を行ってください。 SCP-989-JPが財団との取り決めに違反していない事を確認するため、日本国内でSCP-989-JPによる活動が行われていないか監視を行ってください。特に、性的内容を主体とした書籍や性的使用を目的とした物品の大規模、かつ広範囲の盗難が発生した場合、事件の調査とともに収容中のSCP-989-JPに対する尋問を行ってください。 SCP-989-JPに対する実験やインタビューを行う際は、SCP-989-JP研究責任者による許可を得た後に行ってください。現在の研究責任者は根本博士です。 説明: SCP-989-JPは日本国内に出現する異常性を持ったコウノトリ(Ciconia boyciana)の群れの総称です。SCP-989-JP個体は食事や睡眠が必要ないことを除き、通常のコウノトリと身体的特徴において異なる点はありません。SCP-989-JPは集団内で一つの意識を共有しており、また声帯が存在しないのにも関わらず未知の方法で日本語を用いて会話を行うことが可能です。 SCP-989-JP個体は日本の排他的経済水域以内の範囲において、任意の地点への出現と消失、SCP-989-JP個体数の増加・減少を行うことが可能です。このとき追加で出現するSCP-989-JP個体は完全な別個体であり、体長・性別の違いが存在します。SCP-989-JPを日本の排他的経済水域外へ連れ出そうと試みた場合、公海へ侵入を行った時点でSCP-989-JPは瞬時に消失します。出現・消失の際、SCP-989-JPは自身の保有する物品や身体に取り付けられた物品を任意に自身とともに移動させることが可能です。 SCP-989-JPの個体数は常に増減を繰り返しており、その正確な数を把握することは困難です。SCP-989-JPの協力の元に行われた財団保有土地内での実験では、最大約3,000,000羽のSCP-989-JP個体が確認されました。SCP-989-JPはこれが自身の最大個体数であると主張していますがその真偽は不明です。 SCP-989-JPは自身の持つ異常性を「コウノトリが赤ん坊を運んでくる」という、ドイツの言い伝えを元とした一般的に広く知られている迷信を日本国内から消滅させる目的にのみ使用します。 現在までに確認されている、SCP-989-JPが目的達成のために使用した手段は以下の通りです。 ●単独、もしくは少人数で存在する児童を狙ったゲリラ的な性教育。  (その際、SCP-989-JP同士による人間の体位を模した性行為の実演と解説が行われる事が確認されています) ●幼稚園・保育園・小学校などを占拠しての児童に対する強制的な性教育  (上記と同様) ●通学路や交通機関を狙った大規模なSCP-989-JPによる「正しい性行為の方法」や「妊娠から出産までの過程」を主題とした歌の合唱。 ●街中における性的使用を目的とした娯楽品、および性的内容を主体とした書籍の無差別な散布 ●未成年の人間が存在する教育機関・住居内への性的目的で使用される物品の投入 ●人通りの多い場所を狙っての「児童に幼少期から、正しい性教育を行うべき」といった内容の演説 ●上記と同内容のビラの無差別な散布  (児童を対象したビラの散布の際、菓子や玩具が共に散布された) ●上記と同内容の無差別な落書き ●テレビ局・新聞社などの報道機関に対する取材活動への協力を約束した上での、自身の主張の放送・掲載の要求、または脅迫 ●議員などの政治関係者に対する政治活動への協力を約束した上での、性教育の促進や性的な物事に関する法律・条例の施行・緩和の要求、または脅迫 ●「コウノトリの迷信」が内容に含まれる書籍・娯楽作品の回収、および日本国内の排他的経済水域への遺棄 いずれの手段を用いる場合も、SCP-989-JPは「コウノトリが赤ん坊を運んでくるという迷信は嘘である」といった内容の主張を繰り返し行います。 これらの行動に使用される物品は、全て日本国内から盗難されたものであり、SCP-989-JP自身もそれらの物品が自身が盗み出したものであることを認めています。盗難された物品及び交通機能の停止・落書き等の清掃作業・多数の一般市民への記憶処理など、現在までにSCP-989-JPによってもたらされた被害総額は約█億5000万円です。 SCP-989-JPが「コウノトリの迷信」を消滅させる理由として、SCP-989-JPは「この地を呪いから解放するため」または「我々自身を救うため」と答えています。 当初、財団はSCP-989-JPの収容を計画しましたが、SCP-989-JPの持つ日本国内であれば自由に出現・消失する特性、および日本各地で発生したSCP-989-JPの性教育活動に対する対応に追われ適切な収容手順の確立を行うことができませんでした。しかし、最初にSCP-989-JPの活動が確認されてから10日後、今まで会話に応じなかったSCP-989-JPが、SCP-989-JPの収容方法確立のため現地調査を行っていた根本博士との会話に応じました。その後のSCP-989-JPと根本博士の協議の結果、20██年█月までに日本国内からの「コウノトリの迷信」の完全な消滅・もしくはその手段を確立させることを条件にSCP-989-JPは活動の停止および財団の監視下に置かれることに承諾しました。 インタビュー記録989-01 閉じる 日付: 20██年██月██日 対象: SCP-989-JP インタビュアー: 根本博士 根本博士: それではインタビューを始める。 SCP-989-JP: はい、よろしくお願いします。 根本博士: 何故君達は、「コウノトリの迷信」の消滅のための活動を行っているんだ? SCP-989-JP: この地を呪いから解放するためです。そして、再び我々が住むことのできる土地に戻すためです。 根本博士: それは以前にも聞いた答えだな、今日はその辺を詳しく教えて欲しい。 SCP-989-JP: はい、かつて我々の種は、この地で暮らしていました。他の命あるものと同じようにこの地の一部として存在していました。しかし、あの忌々しい呪いがこの土地に来たことによって我々の生活は変わりました。 SCP-989-JP: ある朝、目覚めたとき、我々は赤く薄暗い湿った場所にいました。あたり一面は肉のようなものに覆われていました。何か水のようなものが流れる音が絶え間なく続いていました。そして、我々の足からは良く実った稲穂のような赤と白の肉の塊が生えていました。稲穂には豆ほどの大きさ歪な肉の塊がいくつも生えており、細かく震えていました。稲穂は我々の足と完全に一体化しているように見えました。 SCP-989-JP: 稲穂を千切ろうとした時、我々の頭の中に何かの生き物の鳴き声が聞こえてきました。しばらくしてそれが人の幼子の鳴き声だということが分かりました。鳴き声は鳴りやみませんでした。我々はたいへん苦しみました。 SCP-989-JP: しばらくして、我々はとある方向へ向かえば、鳴き声が僅かに小さくなることに気が付きました。それはそれぞれが違う方向でした。最初は皆渋りましたが、すぐに鳴き声に耐えきれずそれぞれの方向に向かうことにしました。その方向に行けば行くほど、声は小さくなりました。道を間違えると声はすぐに大きくなります。景色は変わらず、昼も夜もありませんでした。 SCP-989-JP: しばらくすると、高く細長い桜色の筒のようなものが見つかりました。近くによると稲穂についていた実の一つが離れ、中に入っていきました。そして、また頭の中で別の人間の幼子の鳴き声が聞こえてきました。我々は次のところへ向かいました。 根本博士: それで、君たちはずっとそれを繰り返していたのか? SCP-989-JP: はい、しかし仕事は少しずつ複雑になっていきました。 SCP-989-JP: しばらくは人間の幼子の鳴き声だけが聞こえていました。時間の感覚もなくなってきたころ、人間の声に交じりアブラセミの鳴き声が聞こえてきました。その次はヒヨドリの鳴き声、その次は水の跳ねる音、その次は名前も分からない何かの鳴き声、聞こえる声は次々増えていきました、稲穂の数も増えていきました。一つの声に従うと、そのほかの声が耐え切れないほどの叫びをあげ始めました。しかし我々はそれでも前に進むしかありませんでした。休まず止まらず眠らず変わらず、我々は実を運び続けています。 根本博士: では何故君はここに存在することができているんだ、君の話の通りだと、今も君は働いているはずだろ?それに我々は君たちが日本国内で絶滅した理由を人間による乱獲と都市開発や農薬による環境汚染によるものと考えている。君たちにその記憶はないのか? SCP-989-JP: 我々には死んだ記憶はありません、動かなくなった我々はまだいません。我々がここにいる理由は分かります …ここが次の仕事場だからです。 根本博士: それはどういう意味だ? SCP-989-JP: 我々には聞こえます、実を運べと要求する人や虫や水の鳴き声が。人の子の元へ運べと願う鳴き声が…。きっとそれが我々のここでやるべき仕事です。 SCP-989-JP: だけど同じように聞こえます、我々には聞こえます。我々の解放を望む我々の声が。実を運ぶことを要求する何者かの鳴き声よりずっと大きく、強烈に、絶えず我々の頭の中で鳴り続けます。それに答えるため、我々は動きます。 根本博士: 仕事の内容は君たちはもうわかっているのか?少なくとも君たちの話に出てきたような実はついていないようだが。 SCP-989-JP: いいえ、変わらず我々の足には実はついています。そして恐らく仕事の内容は変わらないのでしょう。実を運び、植え付ける。ただ今度は人の幼子、そしてまだ生きていない人の子に植えつけることとなるでしょう。まだ我々は一度も仕事はしていませんがそんな気がします。 根本博士: 分かった、なぜ君たちが「コウノトリの迷信」が自分たちの身に降りかかった異常の原因だと考えているのかは・・・まぁ、自分たちの体験と照らし合わせれば察しがつくのかもしれないな。 根本博士: それで、なぜ性教育なんだ。 SCP-989-JP: 始めはそうするべきだと考えました。多少の時間が必要であってもそうするべきだと考えました。我々の大半はそう考えました。確実にこの呪いを消し去るためにはあらゆる可能性も捨てるべきではないと考えました。場合によってはあなた方人間たちの助けが必要であるかもしれないと考えました。期待通りの結果で我々は嬉しく思います。 根本博士: そうか、正直こちらとしても君たちの冷静な判断のおかげでかなり助かっている。 SCP-989-JP: 今はまだ我々に聞こえる二つの鳴き声はあの世界で聞こえていた鳴き声ほど大きくはありません。しかし、それも少しづつ近く大きくなってきています。この呪いさえ消え去ればきっと我々は救われます。あなた方は我々の成しえない方法でこの呪いに立ち向かうことができるでしょう。 SCP-989-JP: あなた方が不幸な我々を救ってくれることを期待します。 根本博士: 我々が必ずその迷信を日本から消し去ることを約束しよう。ではこれで今日のインタビューを終了する。 SCP-989-JP: ありがとうございます、お疲れさまでした。 [SCP-989-JP研究関係者のみ閲覧可能] 閉じる SCP-989-JPの消滅の目的である「コウノトリが赤ん坊を運んでくる迷信」は、かつて日本国内でのみ異常性が確認された「コウノトリが人間の乳児や胎児を襲い、異常性を持つ異形の生物に変異させる」といった異常な行動を誘発する情報災害としてSCP-████-JPに指定され、調査研究が行われていました。 しかし財団の懸命な努力にもかかわらずSCP-████-JPの影響範囲拡大は拡大、SCP-████-JPの収容方法は確立されませんでした。日本国内での急速な出生率の低下・新生児の生存率の低下による人口の減少を重く見た財団日本支部上層部は、日本国内のコウノトリを絶滅に追いやることで間接的にSCP-████-JPの影響下から脱する事を目的とした「不幸ノ鳥作戦」を計画、実施しました。日本国内で生存が確認されていた最後のコウノトリの死亡が確認された1986年2月、SCP-████-JPの収容は完全に失敗に終わったと判断され、SCP-████-JPはExplainedに分類されました。その後、SCP-████-JPのExplained分類に伴いコウノトリの日本列島繁殖個体群の絶滅の原因は「乱獲および、都市開発や農薬による環境汚染」とするカバーストーリーの適用、SCP-████-JPに関する全ての情報の改ざん・記憶処理などによる隠蔽工作、コウノトリ養殖活動への妨害工作が行われました。現在SCP-████-JPは日本国内でごく一般的に知られている迷信として存在しています。 しかし「不幸ノ鳥作戦」が終了した3年後の1989年6月、日本国内に存在する乳児や胎児が一定の割合で異常性を持った異形の生物に置き換わる現象が発生し始めました。発生する現象や対象の選定からSCP-████-JPとの類似性があるため関連が疑われましたが、SCP-████-JPに比べ発生率が非常に低いことから、これらは超常現象として記録研究され、その後は発見された生物の回収・研究および目撃者への記憶処理が行われることが決定されました。 財団の監視下において実施されたSCP-989-JPの仕事内容の観察では、実を植え付けられた新生児や胎児が変異、SCP-████-JPや上記の超常現象にて確認されていた異常性を持つ生物が出現するという結果になったことから、これらの現象とSCP-989-JPは密接な関係にあるものと推測されています。 この事実がSCP-989-JPへ漏洩した場合、SCP-989-JPが財団に一連の現象を解決する能力を有していないと判断し、財団との協定を反故し活動を再開させる可能性が存在します。情報の漏洩を防ぐため、この情報はSCP-989-JP研究関係者以外には秘匿されることが決定しました。 SCP-989-JP収容手順確立のため、現在SCP-████-JPはExplainedから再度通常ナンバーへ再配置され、収容手順確立に向けて研究が再開されています。 SCP-████-JPの詳細については、別途閲覧の許可申請を行ってください。 現在、SCP-989-JPは明確に財団と敵対するような姿勢は見せていない。これはインタビューでの発言通り、SCP-████-JPの影響を我々人類の持つ技術でのみ取り除くことが可能である可能性をSCP-989-JPが理解しているためだと思われる。 しかし、SCP-989-JPがその冷静さを保っていられる期間は、SCP-989-JPが提示した期間よりも短いものであると考えられる。日本国内に存在する人間をすべて排除する事が、最もSCP-████-JPを消滅させる可能性が高い方法であることに当然SCP-989-JPも気が付いているだろう。例えそのような短絡的な方法を選択しなかったとしても、彼らが活動や仕事を始めた場合、以前のような「コウノトリを絶滅に追いやり異常性から逃れる」という力技を封じられた我々にはなす術はないだろう。事実を捻じ曲げ、何もかもが正常に見えるよう誤魔化し続けてきたツケが回ってきた。 我々は既に失敗している。 何としてもSCP-989-JPの示した条件の期限までに、いや・・・SCP-989-JPの理性が崩れ去る前に。我々はSCP-989-JPの完全な収容、もしくはSCP-████-JPの収容を今度こそ成し遂げる必要がある。 例えそれがどんなに望みの薄い可能性であろうとも。 現SCP-989-JPおよびSCP-████-JP研究責任者 根本清一郎
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評価: +131+–x アイテム番号: SCP-990-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-990-JPは高強度人型オブジェクト収容室に収容します。Dクラス職員以外の直接接触は禁止します。食事は流動食を与えて下さい。SCP-990-JP-aの回収に成功した際は、独立したオブジェクトとして取り扱います。 説明: SCP-990-JPは装甲服に身を包んでいると思われる人型の実体です。装甲服(SCP-990-JP-aとします)は未知の技術と素材でできており、脱がせるための試みは成功していません。試料片の回収に成功したため、破壊は理論上可能と思われます。 対象は"特装救命士トリアージ・レッド"と名乗り、財団に対しては極めて敵対的です。対象は[編集済]の現場で救助活動を妨害しているところを、財団の機動部隊によって拘束されました。初期収容段階では高い身体能力と脅威度の高い武装が確認されましたが、現在は機能していない可能性があります。以下に確認された事例を表記します。 現象 説明 救助された一般人に、SCP-990-JPに対する熱狂的な好意が発生。 薬物投与によるミーム災害と判明。薬物の回収は失敗。 一般的な成人男性のおよそ3.5倍の走力・跳躍力。 "ソニックドライブ"と呼称しているのを記録。SCP-990-JP-aの機能と思われます。現在は機能していない可能性があります。 致死濃度の二酸化炭素を放出するファン2基。SCP-990-JP-aの両肩に内蔵。 "フレイムキャンセラー"と呼称しているのを記録。財団が外部タンクを回収したため、現在は使用不能と考えられます。 ワイヤーアンカーを射出する装置2基。SCP-990-JP-aの両腕に内蔵。 "ソリッドシューター"と呼称しているのを記録。初期収容時にワイヤーを切断、アンカー部を回収しました。特異性はありません。 極めて精度の高い複合センサー。SCP-990-JP-aの頭部に内蔵。 "ハイパーサーチ"と呼称しているのを記録。作動時に発生する電磁波は現在観測されていません。 生命維持装置と思われる装備。設置個所不明。 収容から█日後に対象が食事を要求したため、現在は機能していないと思われます。 財団はSCP-990-JPに対して複数回インタビューを試みました。 インタビュー記録006 - 日付2014/██/██ 対象: SCP-990-JP インタビュアー: エージェント・マオ 付記: 収容違反防止のため、インタビューは映像通信によって行われました。 <録音開始> エージェント・マオ: こんにちは、SCP-990-JP。 SCP-990-JP: 俺はそんな名前じゃない。特装救命士トリアージ・レッドだ! エージェント・マオ: 失礼しました。あなたの本名を教えてくれませんか。 SCP-990-JP: 俺の名はトリアージ・レッド! 俺のスーツを修理して、ここから今すぐ解放しろ! エージェント・マオ: 質問を変えます。あなたの所属組織について、もう一度詳しく教えて下さい。 SCP-990-JP: 我々は"Hyper Electric Rescue Organization"、略して"超電救助隊HERO"だ! 俺を監禁しても、すぐに仲間が救助に来るぞ! エージェント・マオ: あなたは[編集済]のとき、その組織の任務であの場にいたのですか? SCP-990-JP: そうだ! 我々は人命を救助し、人々を守る! お前たちとは違う! エージェント・マオ: 人命を守ると言いますが、あなたの使用した二酸化炭素散布器…… SCP-990-JP: "フレイムキャンセラー"だ! CO2チャージャーを返せ! エージェント・マオ: あれは救助の手段としては不適切ではありませんか? 現場にいた消防士に任せた方が良かったのでは? SCP-990-JP: フレイムキャンセラーは彼らの放水消火とは異なり、一瞬で炎を消す! 間に合わない正義など正義ではない! だから早く直せ! エージェント・マオ: しかし二酸化炭素の濃度が高くなると、消えるのは火だけではありません。人体にも有害です。 SCP-990-JP: そんな心配は無用だ! お前たちも聞いただろう、助かった人たちの感謝の声を! エージェント・マオ: 確かに[編集済]の負傷者の大半は、あなたによって救助されました。そのことについては感謝しています。 SCP-990-JP: ようやくわかったか! 俺たちは正義のヒーローだ! いずれ仲間が俺を必ず救助に来る! きっとだ! エージェント・マオ: では、こちらの画像を見て下さい。 (モニタに[編集済]が表示される) SCP-990-JP: まさかお前たち、この子を人質に取ったのか!? 卑劣な! エージェント・マオ: それは不可能です。この子は既に死亡していますので。 SCP-990-JP: なんだと? エージェント・マオ: 二酸化炭素は空気より重いので、低い場所に溜まります。背の高い大人は平気でも……。 SCP-990-JP: 黙れ! エージェント・マオ: 救助のためにあなたは人命を奪いました。救命士としても、ヒーローとしても失格だとは思いませんか? SCP-990-JP: 違う! より多くの人を救うためには、他に方法がなかったからだ! それは正義だ! エージェント・マオ: この子とその遺族が、それで納得してくれると思いますか? SCP-990-JP: 卑劣だぞ! 俺の正義を試そうというのか! エージェント・マオ: 私はあなたの答えを聞きたいだけです。 SCP-990-JP: お前たちに正義を問う資格はない! ここから出せ! エージェント・マオ: 私の質問に答えて下さい。 SCP-990-JP: 俺はヒーローだ! エージェント・マオ: インタビューを終了します。 <録音終了> 終了報告書: 対象はこのインタビュー以降、一切の会話に応じなくなりました。 補遺: 2015年7月8日現在、対象は不定期に同じ発言を繰り返しています。 音声記録156 - 日付2015/07/08 対象: SCP-990-JP <録音開始> SCP-990-JP: 俺はヒーローだ。俺はヒーローだ。俺は……。 <録音終了>
scp-991-jp
評価: +47+–x SCP-991-JPとの戦闘が行われた下水道(修復前) アイテム番号: SCP-991-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: トイレでの突然死または不審死の情報が傍受された段階で、機動部隊お-0("代弁者")が現場に急行して潜入します。死因がSCP-991-JPによるものだった場合は隠ぺい処理を実施した後、自治体全域の下水道に対して監視装置とセンサー付きの爆薬を設置し、武装したドローンを巡回させ、可能な限りSCP-991-JPの駆逐に努めます。戦闘で破損した下水道の修復も、機動部隊お-0が行います。 しかしながらSCP-991-JP、特に大型の個体は著しい適応力と学習能力を示し、上記の体制をもってしても完璧な殲滅は達成できていません。戦闘記録を元にした分析によれば、現在のSCP-991-JPは常に棲息地から半径約15 km圏内にある水道管の構造を熟知し、近隣の個体同士で連携して逃走経路を構築する事ができると見られています。これまでに、推定堆積10 m^3超の個体が3例、ドローンを破壊して逃亡に成功しています。 SCP-991-JPの能力は明らかに向上し続けており、可及的速やかに野生の個体を根絶する事こそが、SCP-991-JPに対して最も優先すべきプロトコルとなります。ドローン等の対SCP-991-JP兵器については、今後も改良のための研究を続けていかなければなりません。 説明: SCP-991-JPは海綿動物の一種と見られており、下水道を定住地としています。体色は黄土色か黒みがかった茶色で、普段は決まった形を持たず、半固形物の塊のように見えます。通常時におけるSCP-991-JPの身体は柔らかく、人間が手で多少強い力を加えるだけで簡単に崩れます。しかしSCP-991-JPは海綿と同じように、水中で分解されても元に戻る性質を持ちます。水と共にミキサーでかき混ぜられ、濁った液体のような状態となっても、SCP-991-JPは時間が経てば再び固まります。 SCP-991-JP周辺の下水に対する成分分析等により、SCP-991-JPは下水に含まれるどのような化学物質も、その毒性にかかわらず個体維持と活動のエネルギーに変換できると考えられています。更にSCP-991-JPは下水道に充満するガスを推進力として利用し、水の内外でも等しく、最大時速40 km程度(人間が走る速さの2倍程度)で滑るように移動し(泳ぎ)ます。SCP-991-JPの殺害には火が最も有効です。可燃性が高く、非常に良く燃えます。 SCP-991-JPの新たな個体は、大型の個体が身体の一部およそ150 gを切り離すことで誕生します。新生したSCP-991-JPは水道管を移動し、人のいる建物の水洗トイレへと正確に辿り着き、封水トラップ(便器の水溜り部分)の死角に隠れます。 そうしてSCP-991-JPが潜んだトイレを使用した人間が、SCP-991-JPの被害者となります。被害者がしゃがんだ時、SCP-991-JPは先の尖った棒状の姿に変化すると共に、その身体を硬化させます。この時SCP-991-JPのモース硬度は10を記録し、更にビッカース硬度の試験に失敗した事からダイヤモンド以上の硬さを持つことが推測されていますが、依然として良く燃えます。 棒状に硬化したSCP-991-JPは体内で圧縮していたガスを破裂させ、被害者の肛門めがけて自身を撃ち出します。突入に成功したSCP-991-JPは回転しながら被害者の体内を破壊しつつ上昇し、10秒以内に、被害者の肛門から脳までを直通する管状の空間が形成されます。 被害者の脳に突き刺さるとSCP-991-JPの上昇は止まりますが、回転は続きます。そして未解明のプロセスにより、被害者の脳細胞は徐々にSCP-991-JPの細胞へと変異していきます。20分前後で、被害者の脳はSCP-991-JPに置換されます。脳の体積を得たSCP-991-JPは全身を軟化させ、被害者の頭部に約12 gの一部分だけを残して、前述の肛門へ至る直通経路を通り、上昇時と同じ勢いで下降し、やがて便器の中へと噴射されていきます。 最後に、脳に残されたSCP-991-JPの破片が特定パターンの電流を被害者へ流すと、被害者の身体はトイレを流してから活動を停止します。この工程により、SCP-991-JPはここまでの行動でいかに消耗していたとしても、安全に下水道へと戻る事ができます。そしてSCP-991-JPは下水道のどこかに留まるか、既に留まっている個体に同化していき、いずれは新たなSCP-991-JPの生産者となります。 「子」を作るようになった個体についてはその能力以外に、自身の一部を突起物に変えて射出する行動も確認されています。かつてSCP-991-JPの捜索を人手によって行っていたころ、長さ3 mほどもある巨大な「槍」で機動部隊の隊員がヘルメットを貫かれ、脳を奪われたという報告が残っています。この時彼らが遭遇したSCP-991-JPの大きさは、報告に基づくならば推定体積24 m^3(普通自動車と同程度)かそれ以上と見られますが、それ程までに巨大な個体が正式に確認された事はまだありません。SCP-991-JPの個体がどこまで大きくなるのかは分かっていません。 被害状況の調査を重ねていく中で、新たな情報として、SCP-991-JPに脳を置換されつつある被害者はしばしば喋りだし、会話をするという事が判明しています。記録されている言動の多くに、当人と矛盾する発言が見られます。例えばアパート暮らしをしている被害者が「2階の書斎から新聞を取ってきてくれ」と頼んできたり、他の例では、母親が存命にもかかわらず「そろそろお母さんのお墓参りに行かなくちゃ」と話す等の証言が得られています。
scp-992-jp
評価: +48+–x アイテム番号: SCP-992-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-992-JPはサイト-81██の低危険性物体保管ユニットに保管されます。SCP-992-JP-a、SCP-992-JP-bは標準生物収容室内におき、定期的に脱走の危険がないか確認してください。追加実験によりSCP-992-JP-a及びSCP-992-JP-bが生じた場合は、かならず処理してください。 説明: SCP-992-JPは、幅90mm×高さ54mm×厚さ19mmのデジタルカメラで、バッテリーとメモリーカードが付属しています。分解の結果、構造に異常性は見当たらず、製造社を示すような印も発見されませんでした。 人間がSCP-992-JPを用いて"自撮り"を行った場合、撮影者の両腕が肩先から分離します(SCP-992-JPを所持している腕をSCP-992-JP-a、所持していない腕をSCP-992-JP-bと指定)。この分離には痛覚が伴わず、断面からの出血や劣化が発生することもありません。SCP-992-JP-a、SCP-992-JP-bは自律して行動することが可能であり、その移動方法はシャクガ科のガ類の幼虫1のものに類似しています。 SCP-992-JP-a、SCP-992-JP-bは定期的に人間の居住空間へ侵入し、標的として定めた対象の"撮影"を行います。この標的として選ばれる人間は、面識の有無に関わらず、暴露した撮影者にとって「容姿が好みである」人物が選ばれることが判明しています。SCP-992-JP-a、SCP-992-JP-bは対象が就寝や入浴等の隙を見せるまで潜み、自らの存在を知覚されないように行動します。最終的にSCP-992-JP-bは口や鼻を塞いだり、頸動脈を圧迫することで対象を失神、もしくは死亡させます。その後SCP-992-JP-bは、対象の肩に手を回しているかのような姿勢をとり、SCP-992-JP-aが対象の撮影を行います。およそ2、3人撮影したSCP-992-JP-aは写真を現像し、それをSCP-992-JP-bが撮影者の住居へと投函します。SCP-992-JP-aが、どのような手段で写真の現像を行っているかについては現在も不明です。この行為はSCP-992-JP-a、SCP-992-JP-bのどちらかが行動不能にならない限り続けられます。 SCP-992-JPは20██年、大分県在住の男性から「両腕が逃げた」という旨の通報があったことで発覚しました。男性はSCP-992-JPを██市██町の家電量販店で購入したと主張しました。その証言に基づき、財団が件の家電量販店を調査した結果、計2█台のSCP-992-JPが外観の酷似している████製のデジタルカメラとして販売されていました。SCP-992-JP回収後、店員等関係者の調査も行われましたが、オブジェクトとは関連性がないことが判明したためAクラス記憶処理が施されました。通報した男性にはカバーストーリー「事故による両腕切断」を適応し、財団管理下の医療施設へと移送しました。分離したSCP-992-JP-a及びSCP-992-JP-bの行方は現在調査中です。20██/12/24、男性の病室に侵入しようとしていたSCP-992-JP-bをエージェント・三沢が発見。SCP-992-JP-bによる激しい抵抗があったものの、確保に成功しました。 補遺: SCP-992-JP-bの確保から数ヶ月後、サイト-81██に存在するエージェント・三沢のオフィスに1█枚の写真が出現しました。その全てにエージェント・三沢、もしくはその血縁者が写されており、SCP-992-JP-aによる脅迫行為ではないかと推測されています。SCP-992-JP-aが如何にしてエージェント・三沢の情報を入手し、サイト-81██に侵入したか、そしてSCP-992-JP-aの行方が何処なのかについては判明していません。 Footnotes 1. シャクトリムシ。
scp-993-jp
評価: +13+–x SCP-993-JP アイテム番号: SCP-993-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-993-JPはサイト-8181の低危険物収容ロッカーに収容してください。SCP-993-JPの被害者が発見された際には家族への記憶処理を行い保護します。 説明: SCP-993-JPはピンク色の紙の箱と30粒のカプセルに入った薬です。現在までに167箱が回収されています。箱の表面には「ダイエットサプリ」と表記されており、その下には「最近体重気になっていませんか?これを飲めばたちまち体重が減ります!もちろん食事制限もしなくてオッケー!」との宣伝文が書かれています。箱にはそれ以外にバーコードしか印刷されておらず、内容物名などは掲載されていませんでした。 + SCP-993-JP実験記録 - 閲覧終了 実験記録993-JP-1 - 20██/██/██ 対象: D-993-JP-1 27歳女性 投与前体重65kg 体重を気にしている。 実施方法: 床全体が秤になっている部屋に被験者を投入しオブジェクトを投与する。 結果: 体重は43kgまで減少。被験者は泣き喜んでいた。1週間後に130kgへと変化した際被験者は「騙したな」や「あの薬をよこせ」などと叫び続けました。 実験記録993-JP-2 - 20██/██/██ 対象: D-993-JP-2 5歳のイエネコ 投与前体重5kg 実施方法: 前回と同じ部屋に被験者を投入後オブジェクトを投与する。 結果: 体重は変わらず。1週間が経過した後でも体重が増えることは無かった。 分析: どうやらこれは人間のみに影響を及ぼすようです。 実験記録993-JP-3 - 20██/██/██ 対象: D-993-JP-3 34歳男性 投与前体重70kg 体重は気にしていないと述べた。 実施方法: 前回と同じ部屋に被験者を投入後オブジェクトを投与する。 結果: 体重の変化は無し。1週間が経過しても体重は増えなかった。 分析: どうやら痩せたいという願望がある時にだけ影響が出るようです。 実験記録993-JP-4 - 20██/██/██ 対象: D-993-JP-1 27歳女性 投与前体重130kg 前回実験から若干の鬱状態です。 実施方法: 前回と同じ部屋に被験者を移動させオブジェクトを投与する。 結果: 体重は前回同様43kgまで減少。被験者は1時間弱泣き続けた。1週間後に体重は4倍である520kgまで増加。移動が困難なため以降被験者はこの部屋で生活させる。 分析: 何故2倍ではなく4倍にまで増えたのでしょうか。連続して摂取したことが原因かもしれません。もう一度実験してみます。 実験記録993-JP-5 - 20██/██/██ 対象: D-993-JP-1 27歳女性 投与前体重520kg 実施方法: 被験者の胃にチューブを繋ぎオブジェクトを投与する。 結果: 被験者は今まで通り43kgに体重が減少。目は虚ろとしたまま動こうとしない。1週間後に体重は8倍の4160kgまで増加。実験室を破壊しました。被験者はその後気道圧迫による呼吸困難で死亡。 分析: 連続した使用によりさらなる体重増加を引き起こすようです。 実験記録993-JP-6 - 20██/██/██ 対象: D-993-JP-4 29歳女性 投与前体重57kg 体重を気にしていると供述した。 実施方法: 前回と同じ部屋に部屋に被験者を投入後オブジェクトを二つ同時に投与する。 結果: 体重は47kgにまで減少、1週間後に体重は3249kgにまで増加、その後気道圧迫による呼吸困難で死亡。 分析: どうやら同時に摂取した場合体重は元の二乗となるようです。 SCP-993-JPの異常性はSCP-993-JPを「痩せたい」という願望がある人物(以下、対象)が摂取した際に発動します。SCP-993-JPを摂取した際、対象が頭の中で思い浮かべている体型に体型が変化します。またその体型は1週間保持されます。 1週間が経過した後対象の体重は脂肪の増加によりSCP-993-JP摂取以前の2倍になることが確認されています。またその後も摂取を続けると脂肪が2倍以上に増えることが確認されています。(実験記録SCP-993-JP参照)現在までどこから多量の脂肪が生成されているかは判明していません。 SCP-993-JPには強い依存性があることが確認されており、強制的にSCP-993-JPの摂取を止めさせた場合、体型が変化する事を知っているにも関わらず薬を欲しがります。これらは記憶処理等でも改善されることはありませんでした。 SCP-993-JPは█████kgの女性の遺体が存在していた室内にて発見されました。その後愛媛県███市で県内のドラッグストアにて販売員と乏しき女性が配布していることが目撃されています。その後全国17府県で計167箱のSCP-993-JPが回収されました。また、今だ回収されていないSCP-993-JPがあると思われます。現在回収部隊の-58("薬剤管理局")がSCP-993-JPの回収、各ドラッグストアで確認された販売員と思われる女性を探しています。 補遺: 現在までに市販されているダイエットサプリにSCP-993-JPと同様の成分が微量ながら含まれていることが発覚しました。サプリを開発した会社の調査ではその成分をサプリに使用しないことが判明したため何者かが故意に混入させたものと考えられます。 また同様の成分が確認されたもので一番古い物は20██であり、現在までに約███万個が製造、販売されていました。現在までに回収できているのは全体の30%程であり、全商品の早期回収が求められています。
scp-994-jp
評価: +14+–x アイテム番号: SCP-994-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-994-JPは常に1372桁の電子ロックと錠前で施錠した部屋に収容してください。また、SCP-994-JPには定期的に専門医によるメンタルカウンセリングを行ってください。 SCP-994-JPはサイト-8141にある一般的非生物収容室に収容してください。現在、SCP-994-JPを使用した実験は凍結されています。 説明: SCP-994-JPはサイト-81██で、主に収容プロトコルについての会議を行っていた会議室で使用されていた寸法300cm×200cm×70cmのスチールとパーティカルボードで構成されている机です。 SCP-994-JPは19██年に財団フロント企業によって製造され、サイト-81██に設置された記録が残っていましたが、どの時点で特異性が備わったかは不明です。SCP-994-JPは20██年1月4日に行われた会議の記録を確認した██博士によってその特異性が発見され、収容に至りました(事案994-b参照)。 SCP-994-JPの特異性は、対象から半径7m範囲内で2人以上の人物が何らかの会議、話し合いを行い、SCP-994-JP内での会議中に全員の意見が一致した時に発現します。SCP-994-JPは会議に参加している人の中の1名の精神に干渉し、これまでに出た意見と全く異なる意見を提示させます(具体例は資料994-a参照)。会議に参加している干渉を受けてない人々は突然出た意見にほぼ100%その意見に反発しますが、その意見を通す為の様々な理由(それらの多くは突拍子の無いもの)を聞かされるにつれて全員がその意見に同調し始め、最終的には会議に参加した全員にその意見が正しいと認識させます。また、その意見を第三者に説明した場合、効果範囲外でも同じ特異性が発現する事が判明しています。 + 記録994-a - アクセス許可 記録994-a 2013/6/24 議題: 空の色について 会議参加者数: 6名 一致した意見: 空は青色である 影響下での意見: 空は緑色である 影響下での理由: 「そもそも青色というのは誰が定義したか?」から始まり「今我々が見ている青色は実は緑である」で終わる 議題: 会議の議題自体をどうするかについて 会議参加者数: 4名 一致した意見: 財団がどのような物を収容しているのかについて 影響下での意見: 各々の好みのカーテンの色 影響下での理由: そんな事を考えるだけで襲ってくる物をがいるかもしれないから 議題: Dクラスの待遇について 会議参加者数: 10名 一致した意見: 今の待遇では不満である 影響下での意見: とても満足である 影響下での理由: 普通の人生では体験出来ないような死に方を体験出来るから 事案994-b 以下収容される以前のSCP-994-JPが使用された会議記録です。 __事案994-b 2012/2/13 __ 議題: SCP-███-JPの収容プロトコルについて。 会議参加者数: 3名 <録音開始> 滝山博士: ではこれからSCP-███-JPの収容プロトコルを詰めていきましょう。 貝田博士: もう大体は決まっているがまだ細部に心配な点が残るな… 谷口博士: SCP-███-JPは感染性ですので収容違反に備えて周辺に焼却装置を設置しましょう。 滝山博士: そうですね焼却装置を設置し、念のため予備燃料も配置しておきましょう。 貝田博士: 焼却装置は10数台設置するとして…いや待てよ。 谷口博士: どうしました? 貝田博士: 収容違反が発生したら扇風機を使ってSCP-███-JPを全部吹き飛ばすってのはどうだ? 谷口博士: ……はい? 滝山博士: 貝田博士、今は会議中ですよ? 下らないジョークは謹んで頂きたい。 貝田博士: いやいや、ジョークなんかじゃないって。それより焼却装置なんかより扇風機の方が安全だしコストも抑えられると思わないか? 谷口博士: いや……あの……ですね。 滝山博士: 貝田博士、SCP-███-JPを吹き飛ばしてどうするつもりですか? 貝田博士: え?そりゃあもちろん扇風機で吹き飛ばせばこっちにSCP-███-JPが来ないだろ?それで俺達はオブジェクトの影響を受けずに済むだろ? 谷口博士: いや、あの……吹き飛ばしたら絶対拡散しますよね? 貝田博士: ふむ……確かにそうかもしれないな。 谷口博士: そう「かも」ではなくそうですよ! 貝田博士: じゃあ吹き飛ばした方にも扇風機を置けば解決するな。 滝山博士: いや、解決しませんよ。2方向から送風すれば横に拡散するだけです。 谷口博士: そうですよ!何言ってるんですか貝田博士! 滝山博士: つまり、私が言いたいのは2方向だけでなく8方向から送風できるように扇風機を配置しましょう。 谷口博士: ……は? 貝田博士: なるほど……それなら横方向に拡散する心配は無くなるな。 滝山博士: ええ、SCP-███-JPを囲むように扇風機を配置すれば完璧かと思われます。 谷口博士: え、あの、滝山博士まで何を言っているのですか? 貝田博士: よし、これでSCP-███-JPの収容プロトコルは完璧だな!早速纏めて提出しに行くか! 谷口博士: 待ってください!完璧なわけが無いでしょう!8方向から送風しても上方向に拡散するじゃないですか!9方向で行きましょう! <録音終了> 事案994-bから2ヶ月間、SCP-994-JP影響下で制定された特別収容プロトコルでの収容を継続した後に収容違反が発生しました。しかし、2ヶ月の間SCP-███-JPを安全に収容できていた事と収容違反時の死者を██名に抑えた事からSCP-994-JPは他オブジェクトの特別収容プロトコル等に有効利用する事が可能であると推測されます。 補遺: 報告書を閲覧した職員から相次いで「この報告書には不適切な箇所が多々ある」との報告を受け、調査した結果、収容プロトコルと実験後の考察に異常な点が見受けられました。2ヶ月の間、異常な収容プロトコルのまま放置されていた要因としてSCP-994-JPの「異常な理論を第三者に説明することでの特異性の拡散」が連鎖的に発生したのが原因と見られています。その後の調査で、SCP-994-JPの研究チームの██%がSCP-994-JPの影響下にある事が判明し、Bクラス記憶処理を施した後に業務に復帰させました。これとともに収容プロトコルも現在のものに改訂されました。
scp-995-jp
評価: +103+–x アイテム番号: SCP-995-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-995-JPはサイト-81██の施錠された大型物品収容ロッカーに収容してください。 SCP-995-JPを使用する場合、レベル3職員による承認と監視を必要とし、実験室照明の電源を落とすことができるよう待機しなければなりません。また、被験者は必要でない限りDクラス職員から選出してください。 実験終了後は被験者に記憶処理を施してください。実験等の目的で被験者に記憶処理を施さない場合、██博士に許可書を提出してください。 全ての実験において、実験終了後は速やかにSCP-995-JP-1をSCP-995-JPに戻してください。 説明: SCP-995-JPは「█████」のロゴが印刷された電動巻き取り式撮影用スクリーンです。材質や撮影用スクリーンとしての構造に異常はありません。現在、二台のSCP-995-JPが収容されています。 SCP-995-JP-1 SCP-995-JP-1はSCP-995-JPからスクリーンを引き出したときに出現する緑色のスクリーンです。SCP-995-JP-1上に人が乗っている間、その対象は鮮明な幻覚の影響を受けます。幻覚の内容は対象によって様々ですが、対象の精神状態が大きく反映される傾向にあります。幻覚からはSCP-995-JP-1上から離れる、実験室の照明を幻覚世界における第一薄明以下1にする等の手順で覚醒することができます。 SCP-995-JP-1の幻覚の影響を受けた時間に比例して、対象の現実世界に対する認識が書き換えられます。初めは家具の配置等の比較的軽度な認識変更に留まりますが、次第に建物の間取りや人間関係にまで影響が及びます。幻覚の影響を平均24時間(正確な値は不明)以上受けた対象は、認識変更が記憶への影響を超え、物理的な変更にまで至ります(実験記録-995-JP-2d参照)。 SCP-995-JPは20██/██/██、東京都██区の撮影スタジオで「同僚が壁に向かって走り続けている」との報告により、発見に至りました。関係者には記憶処理を施し、撮影用スクリーンは異常性がない別の製品に取り替えられました。後のインタビューによりスクリーンが異常性を持っていると見て、調査を開始しました。 SCP-995-JP収容後、財団はSCP-995-JPの製造元である工場に対し調査を行いましたが、既に工場は別会社の倉庫になっており、その中から一台のSCP-995-JPが発見されました。 実験記録-995-JP 実験監督: ██博士 実験記録-995-JP-1 実験記録-995-JP-1a 対象: D-995-JP-1 結果: 対象がスクリーン上に乗ると「カレーやん!食べていいのこれ?」と発言しましたが、対象の周囲に「カレー」と思われるものは見られませんでした。対象にはそれが恐らく幻覚であることを伝えたうえ「カレー」摂食するよう指示、対象が「カレー」を食べることは出来なかった。後に対象が実験開始直前に「カレー」のことを考えていたことが判明した。 資料: ジャイアンツコーズウェー 実験記録-995-JP-1b 対象: D-995-JP-1 実験前、対象にはジャイアンツコーズウェー(Giant's Causeway)2の写真を見せ、スクリーンに乗る前後月面のことをイメージするよう指示。また「最新VR技術の被験者になってもらう」と伝えた。 結果: 対象は「東尋坊っぽいところにおるけど太陽が細長いし四本ある」と報告。これにより対象の言う「太陽」が実験室照明の蛍光灯を指していると推測し、徐々に照明を落とすと、幻覚世界も夜に近づいていることが判明。完全に照明を落とすと、対象は幻覚から覚醒した。 実験記録-995-JP-1c 対象: D-995-JP-1(実験前にホラー映画を鑑賞)、D-995-JP-2(実験前にコメディ映画を鑑賞) 結果: D-995-JP-1がスクリーン上に乗ると、鑑賞したホラー映画のワンシーンにいるようだと報告。その後D-995-JP-2がスクリーンに乗ると、対象2人は共に「CABIN3そのまんまや」と報告した。 実験記録-995-JP-1d 対象: D-995-JP-1(緑の全身タイツを着用)、D-995-JP-2 結果: D-995-JP-1がスクリーンに乗ると、外部からのD-995-JP-1の見た目に変化は見られなかった。しかしD-995-JP-2がスクリーンに乗ると、D-995-JP-1のタイツに覆われた部分が透明になっていることが判明。その後タイツの色を変更して同様の実験を行ったが、透明にはならなかった。 実験-995-JP-1-d後、警備員がD-995-JP-1をD-995-JP-1の部屋へ連れて行ったところ「俺の部屋じゃない」と言い始めました。以下は駆けつけた██博士のボイスレコーダーからの抜粋です。 音声記録-995-JP-1d 対象: D-995-JP-1 インタビュアー: ██博士 ██博士: ここはあなたの部屋で間違いありませんよ? D-995-JP-1: ここはD-███-JP-█の部屋やろう?ここにも書いてあるやん。 [D-995-JP-1はドアの横にある札を指さす] ██博士: えっ、ちゃんと「D-995-JP-1」って書いてあるけど…。 D-995-JP-1: いやぁ、ちょっと待って。██さんは何をみとるんですか? ██博士: あーこれは……D-995-JP-1、続けて実験を行います。██さん(警備の名前)実験棟へ移動してください。 D-995-JP-1: えっ? これを受け、D-995-JP-2に同様の聞き取りを行った所、D-995-JP-1と比べ症状が軽いものの、認識障害の影響を受けていることが判明。D-995-JP-2に記憶処理を施すことによって認識異常を除去することが可能でした。   実験記録-995-JP-2 対象: D-995-JP-1 概要: SCP-995-JP-1による認識災害の影響の調査。実験が長時間に及ぶため、実験前、対象の要求した映画を鑑賞させることが許可された。 内装 実験記録-995-JP-2a 対象には家具を画像左のように配置した部屋で3時間待機させた。 スクリーンに乗っていた時間: 1時間 結果: 実験後、実験前待機させた部屋で一時間待機させたところ、明らかにテレビのない方向を見つめていた。その後の聞き取りにより、対象の認識している部屋の内装が画像右のようになっていることが判明。また、対象を自身の部屋に戻るよう指示すると、D-███-JP-█の部屋に入って行った。 研究棟█階の間取り 実験記録-995-JP-2b スクリーンに乗っていた時間: 5時間(累計6時間) 結果: 実験-995-JP-2a同様、対象を自身の部屋に戻るよう指示したところ、数分後に対象が壁に向かって歩き始め、壁に衝突したがそのまま歩き続けた。対象に研究棟█階の間取り図を作成させると図のようになった。 実験記録-995-JP-2c スクリーンに乗っていた時間: 12時間(累計18時間) 結果: 実験後、対象が██博士を「███さん」と呼んだため、聞き取りが行われた。以下はその時の記録です。 音声記録-995-JP-2c 対象: D-995-JP-1 インタビュアー: ██博士 ██博士: D-995-JP-1、私は██です。███ではありません。 D-995-JP-1: それは███さんが実名を私に隠してたってことなん?たんに名前が変わったとかそういうのでもない? ██博士: いや、私は初めから貴方に██と名乗ってますし。貴方が私を「██さん」って呼んでたじゃないですか、いつも。 D-995-JP-1: えっいつも?いやー……えー……。 ██博士: ともかく、私は██です。覚えておいてください。 D-995-JP-1: はぁ。 D-995-JP-1の作成した研究棟█階の間取り 実験記録-995-JP-2d スクリーンに乗っていた時間: 6時間(累計24時間) 結果: 対象にスクリーンから降りるよう指示すると、対象が壁に向かって歩き始め消失。15分後D-███-JP-█の部屋で発見された。対象がどのようにD-███-JP-█の部屋へ移動したか聞き取りを行い(音声記録-995-JP-2dを参照)、また、対象に再度間取り図を作成させると実験-995-JP-2bと同じ間取り図を作成した。研究棟█階の監視カメラにはD-995-JP-1が壁を透過しながら移動する様子が確認された。 音声記録-995-JP-2d 対象: D-995-JP-1 インタビュアー: ██博士 ██博士: 私がスクリーンから降りるよう言った後あなたはどうやってD-███-JP-█の部屋に行ったんですか? D-995-JP-1: どうするもなにも、警備の人に連れてかれたんじゃないですか。 ██博士: 警備? [██博士は部屋から退出し、研究棟にいる警備員がD-995-JP-1と接触しなかったか調査を行ったが該当する人物は存在しなかった] ██博士: 警備に連れていかれる前は何をしてました? D-995-JP-1: ██さんにスクリーンに乗ってる間変わったことは無かったか―とか聞かれてましたよね? ██博士: [沈黙] D-995-JP-1: ██さん? ██博士: ああ、そうですね。今回はここまでにします。外に警備がいるので自室に戻ってください。 D-995-JP-1: わかりました。 [D-995-JP-1は椅子から立ち上がり、出口のある壁の反対側に歩き出して消失。11分後、サイト-81██で発見された。これを受け、D-995-JP-1に記憶処理を施すことが決定された。] Footnotes 1. 太陽高度-12度~-18度。6等星が肉眼で見分けられない明るさ。 2. イギリス・北アイルランドにある、火山活動で生まれた4万もの石柱群が連なる地域。 3. ホラー映画にありがちなシーンなどを題材にしたコメディ調ホラー映画
scp-996-jp
評価: +118+–x アイテム番号: SCP-996-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: CD-996-JPはサイト-81██の常に施錠された収容金庫に収容してください。 SCP-996-JPを使用する場合、レベル3職員による承認と監視を必要とし、監視員が常にSCP-996-JPが起動している機器の電源を落とすことができるようにしてください。 SCP-996-JPはCD(CD-996-JP)に保存し、SCP-996-JPをCD-996-JP外に持ち出す、複製、改名してはいけません。また、実験時など例外を除きSCP-996-JPへの上書き保存は禁止されています。 実験996-JP-2eの後、SCP-996-JPの使用は無期限に停止されています。 SCP-996-JPをテキストエディタで開いた直後の状態 説明: SCP-996-JPは「5th.txt」と言う名前のテキストファイルです。SCP-996-JPをテキストエディタで開くと、一行目には「REGULARITY1」と書かれており、二行目にフォーカスされています。一行目に描かれている文字列はいかなる方法でも消去することができず、一行目にフォーカスすることも出来ません。 SCP-996-JPの異常性は、二行目以降に文字列を入力し、改行することにより発現します。SCP-996-JPは、改行を実行した人物(以下「対象」)を、入力されている文字列の意味する存在や概念が欠如した平行世界(SCP-996-JP-A)に移動させます。存在及び概念を意味しない文字列を入力した場合は改行することができません。 SCP-996-JP-AにはSCP-996-JPが起動している機器が対象の付近に存在し2、バックスぺースキーで前の行に戻ることで現世に戻ることができます。さらに文字列を入力し改行することで、別のSCP-996-JP-Aに移動することも可能です。また、入力、改行、バックスペースは現世、全てのSCP-996-JP-Aでも行うことができます。 SCP-996-JPが最初に確認されたのは20██/██/██、██研究員のメールアドレス宛てに送信されたテキストファイルです(事案記録996-JP参照)。 ██研究員に届いたテキストファイル 事案記録996-JP - 20██/██/██ ██:██:██ 送信者: 064e021f 概要: ██研究員の使用するメールアドレス宛に「5th.txt」と言う名前のテキストファイルが送信された。対象は不審に思い、内容を確認。「REGULARITY」の消去を試みたが、いかなる方法でも不可能だったため報告書を提出。その後、「5th.txt」のファイルをSCP-996-JPとすることが決定された(実験記録996-JP-1aを参照)。 送信元のipアドレスを取得する試みは失敗した。 実験記録996-JP 実験記録996-JP-1 目的: SCP-996-JPの基本性質の解明 実験記録996-JP-1a 対象: ██研究員 入力した文字列: あいうえお 結果: ██研究員はキーボードから平仮名が消えていることに気づき、バックスペースで二行目に戻ると、キーボードが元に戻った。これを受け、「5th.txt」のテキストファイルをSCP-996-JPとすることが決定された。 実験記録996-JP-1b 対象: エージェント・泉 概要: 「用紙996-JP」と書かれたB5用紙を用意し、SCP-996-JPに「用紙996-JP」と入力して改行。 結果: エージェント・泉が実験室から消失、1分後に帰還し、SCP-996-JP-Aに用紙996-JPが無かったことが確認された。またSCP-996-JP-Aには現世の実験室にいる職員も存在していることが報告された。 実験記録996-JP-1c 対象: エージェント・泉 概要: 「用紙996-JP-1」「用紙996-JP-2」と書かれたB5用紙を用意し、SCP-996-JPに「用紙996-JP-1」と入力して改行。さらにSCP-996-JP-A内でSCP-996-JPに「用紙996-JP-2」と入力し改行する。 結果: 現世のSCP-996-JPにも「用紙996-JP-1」と「用紙996-JP-2」の入力が反映されていた。その後、エージェント・泉が帰還し、SCP-996-A-1には用紙996-JP-1が存在せず、SCP-996-A-2には用紙996-JP-1及び2の両方が存在しなかったと報告。また複数にわたってバックスペースを入力することにより、複数行入力、改行を繰り返しても、前の行のSCP-996-JP-A、現世に戻ることが可能である事も判明した。 実験記録996-JP-1d 対象: エージェント・泉 概要: 「用紙996-JP」と書かれたB5用紙を用意し、SCP-996-JPに「用紙996-JP」と入力して改行。その後エージェント・泉はバックスペースを入力せず、現世で待機している██研究員がバックスペースを入力。 結果: エージェント・泉が帰還。██研究員に変化は見られなかった。同様の実験によりSCP-996-JP-A-2からもSCP-996-JP-A-1及び現世からのバックスペース入力で帰還する事が可能であることも判明した。 実験記録996-JP-1e 対象: D-996-JP-1(遅効性麻酔薬を投与) 概要: 「用紙996-JP」と書かれたB5用紙を用意し、SCP-996-JPに「用紙996-JP」と入力して改行。その後D-996-JP-1はバックスペースを入力せずに待機。この時SCP-996-JPをCD-996-JPに上書き保存し、PCを再起動した後、再びSCP-996-JPをテキストエディタで開く。 結果: SCP-996-JPの一行目、二行目はそれぞれ「REGULARITY」「用紙996-JP」であった。現世で待機している██研究員がバックスペースを入力したところ、D-996-JP-1は帰還した。また、対象をエージェント・泉(麻酔薬は投与しない)に変更し同様の実験を行ったところ、現世でSCP-996-JPを開いていない時はSCP-996-JP-AにSCP-996-JPの開かれた機器は存在しないことが判明した。 SCP-996-JPの複製実験は██研究員により中止されました。 実験記録996-JP-2 目的: 入力した文字列に対するSCP-996-JP-Aの変化の研究 実験記録996-JP-2a 対象: エージェント・泉 入力した文字列: b970c06e 結果: 改行できなかった。 実験記録996-JP-2b 対象: エージェント・泉 入力した文字列: ██研究員 結果: エージェント・泉はSCP-996-JP-Aに██研究員は存在せず、別人がSCP-996-JP-Aの研究室にいたことを証言。インタビューにより、多少の差異は存在したものの、██研究員とインタビュー対象との類似点が多数認められた。 実験記録996-JP-2c 対象: エージェント・泉 入力した文字列: 文字 結果: 一時間エージェント・泉は帰還せず、現世からのバックスペース入力で帰還させた。その後の証言により、エージェント・泉は平原に出現し、GPSが機能せず、周囲に文明的な建造物、SCP-996-JPの起動している機器が見られなかった事が判明した。 実験記録996-JP-2d 対象: D-996-JP-1 入力した文字列: D-996-JP-1 結果: 一時間帰還しなかったため。現世からのバックスペース入力で帰還させようとしたが、帰還させることはできなかった。 実験996-JP-2e後のSCP-996-JP 実験記録996-JP-2e - latest 対象: エージェント・泉 入力した文字列: SCP 結果: 改行で三行目にフォーカスした直後、フォーカスが二行目と三行目を往復し始め、編集不能に陥った。 実験996-JP-2eの後、SCP-996-JPがテキストエディタで開かれている間、SCP-996-JPの最終更新日が常に更新されていることが判明し、SCP-996-JPの使用を無期限に停止することが決定されました。 脚注 1. 規則正しさ、均整、秩序、調和、正規、尋常 2. SCP-996-JPに入力した文字列により存在しない場合も確認されています(実験記録996-JP-2cを参照)
scp-997-jp
評価: +52+–x アイテム番号: SCP-997-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-997-JP-1はプロトコル[聞かざる]に基づき完全に発声出来ない形で拘束し、他者との接触を完全に防いでください。食事はSCP-997-JP-1群の収容された収容房に遠隔で送り込まれ管理されています。各SCP-997-JP-1を個別に収容した房に遠隔で送り込まれ管理されています。SCP-997-JP-1の世話は全て遠隔操作のロボットにより行ってください。SCP-997-JP-1に対する接触はDクラス職員を除き完全に禁止されています。 説明: SCP-997-JPは、視覚出来得るあらゆる情報を「全て同一のもの」として認識する症状を引き起こすミームです。感染の第一段階として、一般的に似ているとされる物に対し、「これらは同一の物ではないか」と疑念を抱く様になります。例としては、「羊」と「ヤギ」、「春雨」と「ビーフン」や、「ブロッコリー」と「カリフラワー」等が挙げられます1。SCP-997-JPに感染した者は、他人に対しこの疑念を積極的に喧伝し始めます。これらの口授を行う者をSCP-997-JP-1とし、未感染の人間がこの情報を耳にした場合、同様にSCP-997-JP-1となります。これらは機器越し、加工した音声であろうと感染します。また、SCP-997-JP-1に対する記憶処理等での治療は功を奏していません。 第二段階に入ると、前述のような似た存在を完全に同一であると見做し始めますが、脳内の情報と齟齬が発生すると見られ、「羊」と「ヤギ」は理解出来るものの、どちらがそれぞれの名を持つに正しい存在であるかが理解出来なくなります。この状態に達するとSCP-997-JP-1は周囲への伝達を控えるようになり、近似した存在に対し「それらはそもそも同一のものであった」とする第三段階に移行します。この状態のSCP-997-JP-1に対し何らかの質問を行った場合でもSCP-997-JPに感染します。 最終段階に移行したSCP-997-JP-1は、主観的にあらゆる存在を近似したものと認識し始め、識字能力や他者と自分の区別を失い、最終的に同一のカテゴリに属する存在、意味、意義、種等の分類や区分けの理解を完全に喪失、全てを概念的に伝達するようになります。口頭でのやり取りはある程度可能ですが、この段階に移行している場合、通常の会話はほぼ不可能と見られます。 症状の進行したSCP-997-JP-1との対話詳細は以下の記録を参照してください。 SCP-997-JP-1へのインタビュー紙面記録 記録日時: 20██/██/██ 対象: SCP-997-JP-1 インタビュアー: D-997-JP-1 音声での感染を防ぐため、無音での監視の上、D-997-JP-1に行わせた会話内容を完全に書き出すよう指示。D-997-JP-1は当実験以降発声を外的に禁止され、図示にて命令し他の実験に用いた。最終的にSCP-███-JPの実験にて終了済。 D-997-JP-1: あんたに質問をしてくれって白衣連中から頼まれた。色々聞いてくと思うけどいいか? SCP-997-JP-1: はい。 D-997-JP-1: お前から俺は何に見える? SCP-997-JP-1: 何にって、人間でしょ? D-997-JP-1: じゃあ、お前をここに連れて来た連中は何に見える? SCP-997-JP-1: 人間です。 D-997-JP-1: んー、何言ってんだコイツは。研究者とか、白衣とか、そういう風に言うもんじゃないのか。 SCP-997-JP-1: だって、皆同じでしょ? あなたも、この間会いましたよね。 D-997-JP-1: 俺はお前になんか会った記憶ないぞ。 SCP-997-JP-1: 嘘でしょう。あなた、どこにでも居るじゃないですか。私のことをここまで連れて来たし、今ここにも居ます。同じ人でしょう? D-997-JP-1: 意味が分からん。普通は他人のことを人間なんて呼ばねえよ。 SCP-997-JP-1: 他人? 他人って何のことですか? D-997-JP-1: だから、俺から見たお前とか、お前から見た俺とか。 SCP-997-JP-1: ああ、わかりました。私のことですね? D-997-JP-1: お前、何言って(乱雑な殴り書きのような文字)あれ? エンピツってペンだっけ? SCP-997-JP-1: はい。 D-997-JP-1: あー……(迷うような落書きの痕跡)うん。そうだよな。 <ログ終了> 補遺: 財団において確保されているSCP-997-JP-1は現在███体存在していますが、██体が餓死したことが判明しました。これについてDクラス職員を用いてインタビューした所、「私は貴方だし、貴方は私だし、貴方が食べれば、私もお腹が満たされる」と証言しています。これに伴い、各SCP-997-JP-1を個別に管理することが決定しました。 Footnotes 1. これらはほんの一例であり、他にも多数列挙されます。
scp-998-jp
評価: +336+–x アイテム番号: SCP-998-JP オブジェクトクラス: Neutralized 特別収容プロトコル: Neutralized以前の特別収容プロトコルを閲覧 特別収容プロトコルを閉じる SCP-998-JPは現在、各国政府の協力の下、事実上の封じ込め下にあります。SCP-998-JPとの交信は必ず日本語を使用して行って下さい。 交信の際は、5名いるうちの最低でも1名のSCP-998-JP担当主任、または同じく最低でも1名のUNSSCオブザーバーの下、職員数名により相手を刺激しない言葉を選んで質疑応答の形式で行ってください。SCP-998-JP-1からは地球の環境、生物、文化、科学など多岐にわたる質問をされるため、できるだけ正確に答えてください。ただしこの際、いかなる軍事的機密への質問にも答えないように注意してください。交信ログは記録装置によって、自動的にSCP-998-JP-1側からの通信を「+」、地球側からの通信は「-」といったマーカーに置き換えられます。 現在のSCP-998-JP-1側の通信係はクォント、レンドル、ゼメルアと名乗る3名です。また、いつ交信が始まってもいいように、最低でも1名の信頼できる職員を通信監視員として6時間交代で待機させてください。もしSCP-998-JPを受信した場合、通信監視員はそれには応答せず、時間は問わず担当主任かレベル3以上のセキュリティクリアランスを持つ職員、もしくはUNSSCオブザーバー(管理権限:グリーン以上)の内の誰かを呼び出して下さい。 (更新1)UNSSC本部が設置されました。所在地は合同機密指定のため、セキュリティクリアランスレベル3以上の財団職員か、UNSSC職員にのみ明かされます。 (更新2)もしも一般人がSCP-998-JP-1の宇宙船団を目撃した場合には、各国政府に常駐するUNSSC現地オペレーターが特別箝口手順を用いてその情報を秘匿します。情報秘匿後、現地エージェントは当該の一般人に記憶処理を行って下さい。 説明: SCP-998-JPは外宇宙より発信される強力な通信電波です。この電波には文字データが含まれており、地球とSCP-998-JPの発信源である生命体のSCP-998-JP-1とのコミュニケーションを可能にしています。SCP-998-JPは未知のテクノロジーにより、こちらから発信する電波もより強力なものに変換します。これによりSCP-998-JP-1との円滑な交信が可能となっています。全ての交信データログは中央記録部に集積され、レベル2/998-JPクリアランスもしくはUNSSC管理権限:コバルト以上の情報適格性要件を持つ職員にのみ開示されます。 SCP-998-JP-1はSCP-998-JPを発信していると思われる高度な知的生命体です。SCP-998-JP-1はペルセウス腕に存在する、彼らが"ノーゴ"と呼称する惑星(赤経█████████・赤緯███████)に居住しているとされています。詳細は不明ですが、その科学力は我々より███年ほど進んだものであると推測されます。SCP-998-JP-1は他の惑星に住む知的生命体とのコンタクトと相互理解のためにSCP-998-JPを発信していたとし、今回、偶然地球との交信に成功したのだと主張しています。なお、これ以上の惑星"ノーゴ"に関する物理性質・軌道要素などが記録されたデータへのアクセスには、レベル3/998-JPクリアランスもしくはUNSSC管理権限:グリーン以上の情報適格性要件が必要です。 SCP-998-JPは2███/02/12に、財団が抱える日本の天文台のひとつで受信されました。はじめは何ら意味をもたない文字の羅列に過ぎませんでしたが、交信の度に言語を「学習」していき、現在は日本の一般的な成人が使う日本語となんら遜色のない域にまで達しています。これらはSCP-998-JP-1の持つ高度な言語解析・翻訳装置によって行われている模様です。 補遺998-JP: 事件記録のタイムライン 2███/05/21 SCP-998-JP-1より、我々との友好的接触を行いたいとの提案が出ました。この件に関しO5評議会で協議した結果、SCP-998-JP-1との限定的な接触の許可が出ました。 2███/06/05 SCP-998-JP-1のものと思われる複数の大型有人宇宙船の地球への接近が観測されました。██日後には地球の周回軌道上に入ると予想されています。社会的パニック抑制のため、SETIによる「ETI信号観測時の手順」(Protocols for an ETI Signal Detection)の一時的な無視が認可され、各国政府にはこの情報に対する箝口令が敷かれました。 2███/06/07 SCP-998-JPの発信源が変更され、新たにその宇宙船から発信されていることが明らかになりました。SCP-998-JP-1側の通信は宇宙船に搭乗したクォント、レンドル、ゼメルアの3名が引き続き行っていく模様です。 2███/06/08 SCP-998-JP-1の宇宙船の接近に伴い、地球では国連と財団の協力のもと、最高機密扱いで「国連宇宙監視司令部(United Nations Space Surveillance Command)」(UNSSC)が結成されました。また、その暫定的な最高責任者として国連平和維持軍(PKF)より██████が着任しました。 2███/06/09 財団のSCP-998-JPの担当職員は一時的にUNSSCの管理下に入り、その職員として扱われるようになることが決定しました。 2███/06/10 財団の監視チーム(OU-247:"蜂の巣")はSCP-998-JP-1の宇宙船団に、大規模な戦闘用兵器と推測される装備が搭載されていることを確認しました。UNSSCの██████事務総長はこのことからSCP-998-JP-1が人類に敵対的であることは明らかであるとし、宇宙船団への先制攻撃を行うべきであると提言しました。 2███/06/14 国連の加盟国に対し、UNSSCの最高責任者である██████事務総長はSCP-998-JP-1の宇宙船団に対して早急に先制攻撃を行うべきだと強く主張しました。各国はそれには同意できないとし、UNSSCに慎重な行動をするよう求めました。 同日、██████事務総長は自身に反抗的だとした複数の職員を強制的に解雇し、身辺及びUNSSC本部の警備を同機関所属の武装警備兵に限定して行わせることを決定しました。 2███/06/15 UNSSCは独断で攻撃の準備を開始しました。国連の複数の加盟国は██████事務総長の退任を要求しましたが、正当な理由が無いとして拒否されました。更に、一部の国はUNSSCの先制攻撃には正当性があるとし、制裁措置の発動を拒否しました。 また、UNSSC管理下で勤務している財団職員達は、ときおりUNSSC所属の武装警備兵によって明らかに監視を受けていることを報告しています。 2███/06/16 UNSSCはSCP-998-JP-1の宇宙船団への攻撃を2███/06/20に行うと決定しました。また、それに伴いSCP-998-JP-1の宇宙船の兵器が急速な活動を見せている事が報告されています。 状況が改善されなければ双方の衝突は避けられないとし、財団はUNSSCの本部制圧の検討を開始しました。最悪の場合、武装した戦闘用機動部隊の合同ユニットがUNSSC本部に派遣されることが決定されました。 2███/06/17 UNSSC本部にて、SCP-998-JPの通信監視員であったエージェント█████が殺害される事件が起きました。エージェント█████はSCP-998-JP-1についての重要な報告があるとし、UNSSCの本部を訪れていました。勤務していた他の職員の証言によると、彼は廊下を歩いていた██████事務総長の元へ行くと、着ていたジャケットの内側に手を伸ばしました。その際、事務総長の指示で、武装警備兵によってエージェント█████は直ちに射殺されたとの事です。しかし、彼が取り出そうとしていたのは単に封筒に入った退職届だったことが、後の国連の調査で発覚しました。この事件により、██████事務総長はそれが明らかに過剰防衛だったとして、国際刑事裁判所への出廷を求められました。その結果として、UNSSCによる宇宙船団への攻撃開始はおよそ1週間の延期となりました。この事件の3日ほど前から、エージェント█████はたびたび周囲の職員にUNSSCを辞めたいと漏らしていた事が確認されています。 2███/06/19 SCP-998-JP-1の宇宙船団が地球への接近を中断、静止状態に入りました。この日、SCP-998-JPの発信は一度も確認されませんでした。 2███/06/22 突如、SCP-998-JP-1の宇宙船団が旋回をはじめ、地球の周回軌道上から離れはじめました。SCP-998-JPで「内部でごく小規模な反乱が発生したため、我々は母星へと一時的に帰還する」とだけ書かれたメッセージが送信されてきました。これがSCP-998-JPによる最後の通信です。 2███/06/29 SCP-998-JP-1が攻撃有効範囲を出たため、国連と財団の決定によりUNSSCによる攻撃は中止されました。UNSSCの██████事務総長は過剰防衛の不祥事の責任を追求され退任、新たなUNSSCの最高責任者として███事務総長が任命されました。 2███/10/05 SCP-998-JPはオブジェクトクラスをNeutralizedに変更されました。同時に、国連と各財団支部の決定によりUNSSCも正式に解体されました。 [警告]ファイルスキャンを実行します。データ機器を終了しないでください。 ファイルに異常が検知されました。 データの破棄が一部未完了です。参照しますか? ファイルを復元中…… 処理が完了しました。9件中の7件の交信ログを復元しました。 +交信ログ:2███/05/12 - 交信ログを閉じる 2███/05/12(02:46) +:ハイ、ダレカイル? +:ダレモイナイ? ハナシガシタイノニ -:こんばんは █████という者です あなたのお名前は? +:コンバンハ ナマエハ ソッチノ発音ニアワセルナラ ゼメルア -:いい名前ですね +:アリガトウ -:性別とかはありますか? +:ソッチノ言葉デイウト メス -:女性、というんですよ メス、というのは地球じゃ動物に使う言葉ですから +:ソウナノカ マチガエタ -:それは仕方ないですよ +:ソウカ -:ちょっと待って オブザーバーが来た、通信を切らなきゃ +:ナゼ? -:僕は貴方と通信するのを実は許可されていないんです このことは内密でお願いします +:ワカッタ ツギハイツ話セル? -:明日の夜ですね、交代前に +:ナラ ソレマデマッテル -:じゃあまた、ゼメルア +:ジャアマタ、█████! [通信終了] +交信ログ:2███/05/14 - 交信ログを閉じる 2███/05/14(22:57) [データ破損] +:█████ハドンナ見タ目シテルノ? -:うーん 言葉で言うのは難しいなぁ 顔ってのがあって、そこに目が二つと、鼻と口がひとつずつ付いてる +:目ガフタツデ、鼻ハヒトツ ワタシモソウダヨ -:そうなんだ そこは僕たちと君たちは一緒みたいだね +:デモ█████ノイウ「鼻」ト ワタシタチノ考エル「鼻」ハ違ウカモシレナイ -:そうだね 画像でも送れたら便利なんだけど +:実際ニハ 見タ目ガスゴク違ウカモシレナイネ -:そうだね でも関係ないと思うよ +:関係ナイ? -:うん 関係ないはずだ [データ破損] +交信ログ:2███/05/19 - 交信ログを閉じる 2███/05/19(23:49) -:やぁゼメルア、元気かい? +:コチラハクォント ソチラノ所属ト階級ヲ言エ -:[入力待ち] +:繰リ返ス ソチラノ所属ト階級ヲタダチニ言エ [-側が通信を切断しました] +交信ログ:2███/05/20 - 交信ログを閉じる 2███/05/20(00:32) -:ゼメルアかい? +:ソチラノ所属ト階級ヲ言エ +:フフ 冗談ダヨ█████。 -:勘弁してくれ +:ビックリシタ? -:ああ 昨日、君はいなかったのか +:会議ニ出テタカラ -:何の会議? +:地球ニ私達ガ行クカドウカ -:結論はどうだった 地球に来るのかい? +:多分ネ -:じゃあ僕は君に会えるのか +:ソウ -:楽しみだ +:私モダヨ  [データ破損] +交信ログ:2███/06/05 - 交信ログを閉じる 2███/06/05(23:56) +:地球のすぐそばまで来タ -:うーん 僕の目じゃまだ君の船は見えないな +:私からハ地球が見える █████ハどこらへんにいる? -:日本って所だ ちっちゃな島で、細長い形をしてる +:あ、なんとなくわかった 見エタ -:ホントかい? すごい望遠鏡をもってるんだな いまそこで窓から空に手を振ってるのが僕だよ +:流石ニ そこまでは見エナイ -:そりゃそうか [データ破損] +交信ログ:2███/06/09 - 交信ログを閉じる 2███/06/09(03:07) +:ネェ █████ 地球の人って野蛮ナノ? -:うーん 時にはそうかも どうして? +:こっちの偵察隊が地球ニハ兵器がタクサンあるって -:あぁ 地球じゃどこの国も持っているんだ 残念なことにね +:私タチのネイルードが地球人は危険デ こっちを攻撃スルつもりだって -:ネイルードって? +:軍人タチの中で一番偉いヒト ミンナその人の言イナリ 今宇宙船ニ兵器を装備しだしてる -:そんな 地球の人はそっちと争う気はないのに +:私タチのほとんどノ人もソウ思ってる -:確かに、地球の人たちは全員が平和主義とは言えないが だけど僕の母は、自分の命を顧みなかった人の手で火事から救い出されたんだと言っていた 人ってのはそういうもんだ +:ソノ通りだと思う デモ、そうは考えられナイ人も中にはいるの 残念なガラね -:少なくとも、君と僕は違う そうだろ? [データ破損] +交信ログ:2███/06/14 - 交信ログを閉じる 2███/06/14(23:19) -:こっちも攻撃の準備を始めてるようだ UNSSCってとこのネイルードが無理矢理に同意させた これからこの通信も制限されるだろうね +:戦争になるノ? 私、█████たちと戦いタクナイ -:僕もだ +:ねェ、█████ -:何だい +:私タチがネイルードを止めレバ 戦争は起きないカナ -:本気で言ってるのかい +:ネイルードは戦争を起こしたがってル 自分の権力がさらに増すカラ そっちのネイルードもそう思ってるハズ -:確かにネイルードがいなくなれば、戦争は起こらないかも…… でも無理だ 不可能だよ +:█████、このままジャ、私タチの両方に多クの死者が出ル……! ドウにかしないト -:どうにか、ってどうするつもりなんだ? +:こっちのネイルードに反発シテル人たちを集めて、何トカシテ引きずりおろすノ -:そんなこと出来るのかい? +:時間さえアレバ -:どれだけあればいい? +:アト1週間は -:[入力待ち] -:分かった、君を信じる 僕が何とか時間を稼いでみるよ +:ホントに? -:うん 多分、うまくいくはずだ +:まさカ、キケンなこと? -:いや ちょっとしたことさ、心配しないで -:[入力待ち] -:そうだ、このことがばれないように、ここの交信ログは全部消しておくよ +:私もこっちのを消してオク -:君に会えないのが唯一残念だよ +:私モそう思う +:[出力待ち] +:ネェ█████、全部終わっタラ マタ私と話してクレますか? -:もちろんさ -:[入力待ち] -:それじゃあゼメルア、成功を祈ってる また、いつかどこかで +:じゃあマタ、█████。 いつか、どこかデ [通信終了]
scp-999-jp
評価: +430+–x アイテム番号: SCP-999-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-999-JPは通常規格の人型存在収容セル内に収容してください。SCP-999-JPは現在、その性質に対して有効な対処法が存在しません。ただ、SCP-999-JPとの直接的な接触またはコミュニケーションは、予測し得ない現実改変を引き起こす可能性があります。そのため、SCP-999-JPに関連する実験は全て却下されます。 SCP-999-JPの意思、行動、環境、思想、言語、身体的性質に変更を加えようとする試みは予想外の現実改変結果を招く可能性がありますが、SCP-999-JPの終了または無効化に向けての協力は常に募集されています。 有効な手段など存在しない、という可能性を考慮すべきかもしれない。 我々の行動すべてが、あれのために存在しているようなものだ。 少なくとも、あれに対しては9回の実験、9回の終了措置、9回のインタビューが行われ、この報告書は第9版なのだ。 だから、頼む。誰か、この報告書を欠陥文書としてくれ。こいつを破棄して、第██版を作ってくれ。 ──九鬼 九平サイト-9999第9試験課主任 説明: SCP-999-JPはモンゴロイド系の人型男性です。身長99cm、体重99kgで、精密な検査により、これらの数値は一切の誤差無く、メートル法に於いては最小単位まで9の数字が書き連ねられる数値となります。年齢は推定99歳ですが、████年に行われた初検査でも同一のデータが出ています。 性格上は至って温和であり、収容にも協力的です。また、複数のインタビュー結果と精神鑑定結果から、SCP-999-JPは特定の存在(特に数字)に対する執着や特別意識は持ち合わせていない事が判明しています。 SCP-999-JPは自身また自身の構成要素に関連するあらゆる事象または事物を無意識の内に改変します。それらは、SCP-999-JPが常に「9」という数字に関連するように改変され、SCP-999-JPにとって明らかに無関係と思われる事柄に対しても改変が行われた場合、最終的にはその事柄までもがSCP-999-JPに関連させられることとなります。 SCP-999-JPによって改変された一般社会に対する事象は、現在まで判明した限りでは9例ですが、改変前と改変後の比較が困難であったためSCP-999-JPとの実際的な関わりは不明です。 SCP-999-JPによる現実改変の有効範囲は、SCP-999-JPが居住する地球が太陽系の第9惑星となってはいないことから、現実世界の地球の引力圏内全領域に限られていると推測されています。 また、SCP-999-JPには「自身が9である」事に関して一定の基準が存在すると見られています。SCP-999-JPの性質にとって本質的に存在自体が9であると言えるのならば、計測単位の変更、価値観の変容程度では改変は行われないようです。1 補遺1: 収容中、SCP-999-JPによって財団に関連するいくつかの事柄が改変されています。以下は、その中で現在判明しているものの一部です。これらを変更する試みは全て、偶発的な事故によって失敗しています。 収容施設ナンバーの変更。 第9人型存在収容セルへの移送。 SCP-999-JPの収容に関連する職員の平均歩数が999歩あるいは9999歩となる。 サイト-9999内での9度の死亡事故。SCP-999-JPはその全てを例外的な偶然によって目撃している。 精神的ストレスによって許可なくSCP-999-JPに対し職員が暴行を試みる9度の事例。 これらの「SCP-999-JPを構成している9」に変更を加えるか、或いは明確に逆らう事は、予想外の現実改変で以て修正が行われる事になります。 予測が一切不可能だ。分かっているのは9という数字だけで、それが一体どの事象にどのような形で適用されるのか、適用された事象が発生したとして、我々がそれを感知し得るかどうか。 ──████博士 奴は9度の食事をし、日に9時間眠り、9回くしゃみをし、9本の歯を歯ブラシで一日に9回磨く。 奴は9で構成されているが、奴がそうあるために世界はどれだけの犠牲をこれまで払い、これから払い続けるのだろうか? 財団の規則は大きく歪められ、我々がそれに対応するにあたって損失した金額は9億円だ。あらゆる事象が奴によって9へと導かれるのだ。 しかし、手はあるはずなのだ。奴は完全に全てが9によって構成されている訳では無い。少なくとも奴は「9人目の死者」では無い。必ず限界があるはずだ。 この性質に我々が何らかの矛盾を叩き付け、SCP-999-JPの性質がそれを許容すれば、もしかしたら奴の暴走を止められるのかもしれない。 ──████ ███████実験主任 その時こそ、最も致命的な現実改変が発生する時だ。今、世界すべてがSCP-999-JPによる改変から脱したならば、そこに何が残るのかは予測不可能だ。現在SCP-999-JPは大人しく収容施設内にいてくれている。これだけで、我々は奇跡的な成功を収めているのかもしれない。SCP-999-JPが「ここにいる」という事実が、SCP-999-JPが現在はいわゆる安定状態に入っている事の証拠と言えるだろう。 ──███博士 補遺2: 私は本来このような声明を発する立場にはありません。 しかし、サイト-9999への例外的な監察代行依頼の結果として生じた責任として、今私は本来の裁量を越えた発言が正式に許可されています。 サイト-9999に於けるSCP-999-JPの収容に対する各職員の姿勢には、甚だしい欠陥が生じています。それはまさにリコーダーに詰まった唾の如く、財団の意思を現実へと反映する活動の妨げとなっているでしょう。 彼らは皆SCP-999-JPの影響下にあります。その事実は想定内でしたが、SCP-999-JPのもたらす事象にはもう一つの効果が存在していた事を述べなければなりません。 それは一種の予知。または未来に発生する事象の固定化です。 つまり、SCP-999-JPがペンを一度落としたなら、それは合計で9回落とされるべきペンであり、残りの回数の消化が未来に於いて確定されることとなるのです。 この最初の一回が、9回落とされるべき事象が決定されてから最初の一回として落とされるのか、それとも最初に一回落としたから、残りの回数も落とされることが決定してしまうのかは分かりません。 しかも最も厄介なことに、SCP-999-JPがペンを落としたからと言って、ペンを落とす回数が9となるとは限らないということです。 9という数字が「ペンを落とす事」に適用されるのではなく、落とされた事で「ペンが壊れた事」に適用されていたとしたら? そのペンは合計9回まで壊れる事でしょう。そして我々は、9という数字に達し、全てが終わってから、ようやく何に対して9という数字が適用されたのかを知る事が出来るのです。 そして確実に、サイト-9999の職員たちはまさにこのペンです。彼らにとって、SCP-999-JPの性質の働きは、非常に重要な事と言えます。 そしてその結果、彼らはSCP-999-JPの性質を極度に恐れるようになりました。過ちを犯す事は、それを繰り返す事に繋がるかもしれない。そうでなくとも、自分には恐ろしい出来事の未来が9回は付きまとう。しかもそれには終わりが無い。 SCP-999-JPは自分が9であるために世界を9にします。それは止めようがありません。SCP-999-JPが現状を維持しているという事は、現在彼は「比較的望ましい形での9」なのでしょう。だからこそ、職員たちは何かを為す事すら恐れています。 どんな事でも、カオス理論的なごく僅かの影響であっても、SCP-999-JPの9に影響を与える事は、即座に世界全体の修正に繋がりかねません。 しかし決して忘れてはならないのは、我々はSCP-999-JPの脅威を取り除く必要があるということ。それは、ただ単に下痢クソと汗が染み付いた椅子にじっと尻を押し付けているだけでは実現しません。 SCP-999-JPは観測可能な予測不能であり、現状の安定状態は極めて危ういものと言えるでしょう。 私は監察代行によって一時的に得た権限を以て、サイト-9999人事部に対し正式に指令を下しました。無効化が推奨されるKeterクラスの研究チームがたった9人なのは、いくら何でも少な過ぎます。 我々は危うい現状に安寧すべきではありません。SCP-999-JPが将来に渡って安全であるとは、口が裂けても言えませんし、口にすべきではありません。 ──神山 政蔵博士 神山博士による人事再編命令の9日後、神山博士は99-██ナンバーの乗用車による交通事故で、サイト-9999人事部長██は自宅で強盗に襲われ胸部を9回刺突されたことで、それぞれ死亡しました。 また、それらに付随する改変として、国内の車両番号制度が変更されるような政治的決議の発生と、強盗犯自身とその親族、知人全員の記憶または過去の改変。それら人々全員の知人に対する記憶や過去の改変といった連鎖的改変の発生が確認されています。 神山博士による人事再編命令は取り消され、暫定的なものであるとした上で、現行の収容が継続されることとなりました。 打つべき手がまだあるという点に異存は無い。だが、必要なものは今もって足りていない。 ──O5-9 脚注 1. 身長の計測単位をメートルからフィートに変更して観測しても改変は行われず、通常通り99.9〜cmをフィート換算した数値が計測されました。