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シソーラスの整備・拡張のための分類基準の作成と活用
本研究は,日本語研究でもっとも活用されているシソーラスである『分類語彙表増補改訂版』(以下,『分類語彙表』)を将来にわたって効率的に整備・拡張できるように,現在,「暗黙知」の状態になっている分類基準を明示的に記述した「分類基準」を作成し,それに基づいて『分類語彙表』に未収録の新語や新用法等を増補した『分類彙表ver.2.0』作成することを目的とする。併せて,各見出し語に対して文体情報や頻度情報等の情報も付与し,日本語研究でのより一層の活用を目指す。「分類基準」および『分類語彙表ver.2.0』は誰でも自由に利用できるオープンデータとして公開する。本研究は,日本語研究でもっとも活用されているシソーラスである『分類語彙表増補改訂版』(以下,『分類語彙表』)を将来にわたって効率的に整備・拡張できるように,現在,「暗黙知」の状態になっている分類基準を明示的に記述した「分類基準」を作成し,それに基づいて『分類語彙表』に未収録の新語や新用法等を増補した『分類彙表ver.2.0』作成することを目的とする。併せて,各見出し語に対して文体情報や頻度情報等の情報も付与し,日本語研究でのより一層の活用を目指す。「分類基準」および『分類語彙表ver.2.0』は誰でも自由に利用できるオープンデータとして公開する。
KAKENHI-PROJECT-19K00655
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00655
縄文人・アイヌ頭蓋の形態学的特異性とその由来-現生人類の変異・分化過程から探る-
縄文人・アイヌの形態学的特異性を近隣諸集団との比較だけから考察することは、数学で言えば不定形の解を与えてしまう恐れのあることは、むしろ今日までの研究成果かもしれない。そこで、本研究では、東アジア集団の分化過程を現生人類集団の拡散とその適応戦略という視点からもう一度洗いなおし、その中で、縄文人・アイヌの形態学的特徴がどのように位置づけられるのかを検討した。具体的には、世界のほぼ全域、172集団を比較対象とし、集団間の形態学的類縁関係を探ってみた。その結果、歯の非計測的特徴では縄文人・アイヌは東南アジア集団に類似するものの、頭蓋形態、特に非計測的形態小変異の分析では、アメリカ先住民や極北集団に類似性を示す。このことは、縄文人・アイヌが今日の北東アジア集団に認められる特殊形態が確立される以前のより一般的な北東アジア集団の形態を今日までととめている可能性を示唆する。そこで、最終氷期が終わるにつれて、東アジア各地で次々に認められる古人骨形態の現代化と、それとは対照的な縄文時代人、さらにはアイヌの後期旧石器時代人骨的特徴の残存を、日本列島の孤立化と合わせて考察できるか否かを検討した。分析法は、従来のmodel-free法に対して、model-bound法ともよばれる、一種のシミュレーション的な分析法、すなわち、集団の大きさ(人口)や移動、混血、あるいは形態の遺伝率を考慮した新しい分析法である。その結果、東南アジア、東アジア、北東アジアの3地域は過去の人口規模がほぼ同じと考えられ、北東アジア集団と東南アジア集団はその系統を異にする可能性がでてきた。この結果は従来形態学的に示唆されていた縄文人の起源が東南アジアということを根本的に見直す必要性を示唆する。縄文人・アイヌの形態学的特異性を近隣諸集団との比較だけから考察することは、数学で言えば不定形の解を与えてしまう恐れのあることは、むしろ今日までの研究成果かもしれない。そこで、本研究では、東アジア集団の分化過程を現生人類集団の拡散とその適応戦略という視点からもう一度洗いなおし、その中で、縄文人・アイヌの形態学的特徴がどのように位置づけられるのかを検討した。具体的には、世界のほぼ全域、172集団を比較対象とし、集団間の形態学的類縁関係を探ってみた。その結果、歯の非計測的特徴では縄文人・アイヌは東南アジア集団に類似するものの、頭蓋形態、特に非計測的形態小変異の分析では、アメリカ先住民や極北集団に類似性を示す。このことは、縄文人・アイヌが今日の北東アジア集団に認められる特殊形態が確立される以前のより一般的な北東アジア集団の形態を今日までととめている可能性を示唆する。そこで、最終氷期が終わるにつれて、東アジア各地で次々に認められる古人骨形態の現代化と、それとは対照的な縄文時代人、さらにはアイヌの後期旧石器時代人骨的特徴の残存を、日本列島の孤立化と合わせて考察できるか否かを検討した。分析法は、従来のmodel-free法に対して、model-bound法ともよばれる、一種のシミュレーション的な分析法、すなわち、集団の大きさ(人口)や移動、混血、あるいは形態の遺伝率を考慮した新しい分析法である。その結果、東南アジア、東アジア、北東アジアの3地域は過去の人口規模がほぼ同じと考えられ、北東アジア集団と東南アジア集団はその系統を異にする可能性がでてきた。この結果は従来形態学的に示唆されていた縄文人の起源が東南アジアということを根本的に見直す必要性を示唆する。縄文人・アイヌの形態学的特異性を近隣諸集団との比較だけから考察することは、数学で言えば不定形の解を与えてしまう恐れのあることは、むしろ今日までの研究成果かもしれない。そこで、本研究では、東アジア集団の分化過程を現生人類集団の拡散とその適応戦略という視点からもう一度洗いなおし、その中で、縄文人・アイヌの形態学的特徴がどのように位置づけられるのかを検討した。具体的には、世界のほぼ全域、158集団を比較対象とし、集団間の形態学的類縁関係を探ってみた。その結果、頭蓋の計測的特徴では縄文人・アイヌは東南アジア集団に類似するものの、非計測的特徴(頭蓋形態小変異)では、北東アジア集団に類似性を示す。さらに、わずかながら、オーストラリア集団、アメリカ先住民、さらにはアフリカ集団にも類似点が見出される。このことは、縄文人・アイヌが形態学的にかなり古い特徴を今日までととめている可能性を示唆する。そこで、最終氷期が終わるにつれて、東アジア各地で次々に認められる古人骨形態の現代化と、それとは対照的な縄文時代人、さらにはアイヌの後期旧石器時代人骨的特徴の残存を、日本列島の孤立化と合わせて考察できるか否かを検討した。この分析法は従来のmodel-free法に対して、model-bound法とも呼ばれる、一種のシミュレーション的な分析法、すなわち、集団の大きさ(人口)や移動、混血、あるいは形態の遺伝率を考慮した新しい分析法である。もし、大陸部と日本列島の過去における集団数(人口)が同じと仮定すれば、縄文人、アイヌという集団はアジア、太平洋地域に分布する集団とは大きく異なった形態を示すが、大陸部のほうが人口が多かったであろうことは容易に想像がつく。これを考慮して分析すると、縄文人やアイヌは中石器・新石器時代の東南アジア集団に近くなる。この結果は必ずしも縄文人の起源が東南アジアということを示しているのではないであろうが、彼が後期旧石器時代人的特徴を今日までとどめていることを示唆する。縄文人・アイヌの形態学的特異性を近隣諸集団との比較だけから考察することは、数学で言えば不定形の解を与えてしまう恐れのあることは、むしろ今日までの研究成果かもしれない。
KAKENHI-PROJECT-14540659
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540659
縄文人・アイヌ頭蓋の形態学的特異性とその由来-現生人類の変異・分化過程から探る-
そこで、本研究では、東アジア集団の分化過程を現生人類集団の拡散とその適応戦略という視点からもう一度洗いなおし、その中で、縄文人・アイヌの形態学的特徴がどのように位置づけられるのかを検討した。具体的には、世界のほぼ全域、158集団を比較対象とし、集団間の形態学的類縁関係を探ってみた。その結果、歯の非計測的特徴では縄文人・アイヌは東南アジア集団に類似するものの、頭蓋形態、特に非計測的形態小変異の分析では、アメリカ先住民や極北集団に類似性を示す。このことは、縄文人・アイヌが今日の北東アジア集団に認められる特殊形態が確立される以前のより一般的な北東アジア集団の形態を今日までととめている可能性を示唆する。そこで、最終氷期が終わるにつれて、東アジア各地で次々に認められる古人骨形態の現代化と、それとは対照的な縄文時代人、さらにはアイヌの後期旧石器時代人骨的特徴の残存を、日本列島の孤立化と合わせて考察できるか否かを検討した。分析法は、従来のmodel-free法に対して、model-bound法ともよばれる、一種のシミュレーション的な分析法、すなわち、集団の大きさ(人口)や移動、混血、あるいは形態の遺伝率を考慮した新しい分析法である。その結果、東南アジア、東アジア、北東アジアの3地域は過去の人口規模がほぼ同じと考えられ、北東アジア集団と東南アジア集団はその系統を異にする可能性がでてきた。この結果は従来形態学的に示唆されていた縄文人の起源が東南アジアということを根本的に見直す必要性を示唆する。縄文人・アイヌの形態学的特異性を近隣諸集団との比較だけから考察することは、数学で言えば不定形の解を与えてしまう恐れのあることは、むしろ今日までの研究成果かもしれない。そこで、本研究では、東アジア集団の分化過程を現生人類集団の拡散とその適応戦略という視点からもう一度洗いなおし、その中で、縄文人・アイヌの形態学的特徴がどのように位置づけられるのかを検討した。具体的には、世界のほぼ全域、158集団を比較対象とし、集団間の形態学的類縁関係を探ってみた。その結果、歯の非計測的特徴では縄文人・アイヌは東南アジア集団に類似するものの、頭蓋形態、特に非計測的形態小変異の分析では、アメリカ先住民や極北集団に類似性を示す。このことは、縄文人・アイヌが今日の北東アジア集団に認められる特殊形態が確立される以前のより一般的な北東アジア集団の形態を今日までとどめている可能性を示唆する。そこで、最終氷期が終わるにつれて、東アジア各地で次々に認められる古人骨形態の現代化と、それとは対照的な縄文時代人、さらにはアイヌの後期旧石器時代人骨的特徴の残存を、日本列島の孤立化と合わせて考察できるか否かを検討した。分析法は、従来のmodel-free法に対して、model-bound法ともよばれる、一種のシミュレーション的な分析法、すなわち、集団の大きさ(人口)や移動、混血、あるいは形態の遺伝率を考慮した新しい分析法である。その結果、東南アジア、東アジア、北東アジアの3地域は過去の人口規模がほぼ同じと考えられ、北東アジア集団と東南アジア集団はその系統を異にする可能性がでてきた。この結果は従来形態学的に示唆されていた縄文人の起源が東南アジアということを根本的に見直す必要性を示唆する。
KAKENHI-PROJECT-14540659
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540659
近代のバルト海貿易に関する統計的研究
本年度の業績としては、18世紀のイギリスの対バルト海貿易を扱った「18世紀イギリスのバルト海貿易をめぐって」がある。これは18世紀イギリスの対バルト海貿易に関するこれまでの動向をまとめ、この分野のこれからの私の研究の方向についてまとめたものである。バルト海貿易に関する最大の統計史料である「ズンド海峡通行税台帳」のデータ入力に関しては、1661-1780年の部分はほとんど終了した。より正確に表現すれば、この史料集は、バルト海地方を出入りする船舶の船籍、その船舶の出港地と到着予定港、船舶に積載されている商品が記されており、そのうち、船舶の出港地と到着予定港については、すべてのデータをパソコンに入力した。船舶に積載されている商品については、西航船(バルト海地方から西欧に向かう船舶)、東航船(西欧からバルト海地方に向かう船舶)ともに、1771-80年のデータを除いて、データ入力が完成した状態にある。この史料について、ヨーロッパではこれまでいくつか研究があるものの、私が今回データ入力した以上に細かなデータに基づいた研究は存在していない。今後、できるだけ早く、東航船、西航船に積載された商品のデータ入力を行い、その成果を公表したいと考えている。それは、ヨーロッパにもない、新たな知見を提供することとなるはずである。さらにできればそれを英訳して、日本のみならず、ヨーロッパの学界に対する貢献をしたいと考える次第である。今年度の業績としては、和文の論文が1本,英文の論文が1本ある。ただし,英文の論文はもともと和文のものを英訳したものなので,実質的な業績は論文が1本ということになる。具体的には,18世紀のハンブルクの貿易史を,中継貿易という観点から論じた論文を書いた。この時代のハンブルクはアムステルダムに次いでヨーロッパ第2の貿易港であり,しかも,バルト海貿易においても重要な都市であったにもかかわらず,その研究は日本ではまったく存在していない。日本の西洋史研究においては,都市はいわば自律的な存在として捉えられ,都市間のネットワークに関する研究は,近年に至るまで,ほとんど進展していなかったからである。18世紀のヨーロッパ経済の特徴は,新大陸アメリカとの貿易量が飛躍的に増大した点にあった。その中心となったのは英仏である。そしてイギリスの大西洋貿易はロンドンを機軸として拡大したのに対し,フランスのそれはハンブルクを機軸として発展したのである。バルト海貿易に関していうならば,イギリスはロンドンを中心としていたのだが,フランスはハンブルクを中心としていた。新大陸からフランスに運ばれた物産は,やがてハンブルクに再輸出され,そこからまた,陸路を通ってリューベクまで輸送され,リューベクから,バルト海地方に輸出された。新大陸の商品は,大西洋・フランスの港ハンブルク・リューベク・バルト海というルートで新大陸の物産がバルト海地方に送られ,ハンブルクを通して,大西洋とバルト海が結合されたのである。本年度の業績としては、18世紀のイギリスの対バルト海貿易を扱った「18世紀イギリスのバルト海貿易をめぐって」がある。これは18世紀イギリスの対バルト海貿易に関するこれまでの動向をまとめ、この分野のこれからの私の研究の方向についてまとめたものである。バルト海貿易に関する最大の統計史料である「ズンド海峡通行税台帳」のデータ入力に関しては、1661-1780年の部分はほとんど終了した。より正確に表現すれば、この史料集は、バルト海地方を出入りする船舶の船籍、その船舶の出港地と到着予定港、船舶に積載されている商品が記されており、そのうち、船舶の出港地と到着予定港については、すべてのデータをパソコンに入力した。船舶に積載されている商品については、西航船(バルト海地方から西欧に向かう船舶)、東航船(西欧からバルト海地方に向かう船舶)ともに、1771-80年のデータを除いて、データ入力が完成した状態にある。この史料について、ヨーロッパではこれまでいくつか研究があるものの、私が今回データ入力した以上に細かなデータに基づいた研究は存在していない。今後、できるだけ早く、東航船、西航船に積載された商品のデータ入力を行い、その成果を公表したいと考えている。それは、ヨーロッパにもない、新たな知見を提供することとなるはずである。さらにできればそれを英訳して、日本のみならず、ヨーロッパの学界に対する貢献をしたいと考える次第である。
KAKENHI-PROJECT-09730056
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09730056
鼻咽腔関連リンパ組織の組織形成メカニズムの解明
昨年度までの本研究によりNALT組織形成誘導細胞(NALT inducer cell : NALTi)によるNALT組織形成誘導にはリンフォトキシンβレセプター(lymphotoxin βreceptor : LTβR)シグナルを必要せず、さらにNALTiのNALT原基への遊走はCXCL13などのリンフォイドケモカインに非依存性であることを明らかにした。そこで、NALT形成メカニズムに特異的な遺伝子を同定するためにNALTiとパイエル板組織形成誘導細胞(Peyer's patch inducercell :PPi)の遺伝子発現パターンについてサブトラクション法を用いて比較した。NALTiに強く発現していた数多くの遺伝子群の中からinterferon regulatoryfactor 1(IRF1)に注目し、IRF1^<-/->マウスのNALT形成を検討した。驚くべきことに、パイエル板やリンパ節の形成は正常であったが、NALT形成はほとんど認められなかった。さらに我々の検討によって、RORγ^<-/->マウスはパイエル板やリンパ節が欠損するにもかかわらず、NALT組織形成は正常であることが明らかとなった。FACSや組織学的解析により、RORγ^<-/->マウスではPPiは欠損しているが、NALT原基へのNALTiの集積は障害されていなかった。さらに我々はNALTiはPPiと比較してCD4の発現が低レベルである事も見いだした。したがって、CD3^-CD4^<high>CD45^+細胞であるPPiとは対照的に、CD3^-CD4^<low>CD45^+細胞として識別されるNALTiはRORγ非依存的に分化し機能する。初年度はNALT形成メカニズムのユニーク性を解明するという目的達成の為に特にケモカインのNALT組織形成ならびに構築における役割を検討した。CXCL13,CCL19,CCL21は二次リンパ組織の初期形成や構造維持に必須なケモカインとして知られている。これらのケモカイン遺伝子欠損マウスを用いてNALT組織形成におけるCXCL13,CCL19,CCL21の役割について検討した。CXCL13欠損マウスを用いた解析によると胎生期の腸管にはCD3^-CD4^+CD45^+細胞の集積を認めず、その結果、パイエル板は形成されなかった。ところがCXCL13欠損マウスのNALT原基にはCD3^-CD4^+CD45^+細胞の集積が確認された。CCL19及びCCL21の発現不全マウスであるpltマウスのNALT原基にはコントロールマウスと同等のCD3^-CD4^+CD45^+細胞の集積を認めた。以上の結果からこれらのケモカインはNALT初期形成に関与しないことが明かとなった。ケモカイン群CXCL13、CCL19、CCL21は恒常的に二次リンパ組織で産生が認められ、リンパ組織構築の成熟化に重要な役割を果たしている。そこで我々はNALT組織構築への関与について検討した。CXCL13欠損マウスでは特にB細胞の遊走が傷害されており、B細胞領域がほとんど認められなかった。コレラトキシンを用いた経鼻免疫により正常マウスのNALTには胚中心が形成されるが、CXCL13欠損マウスのNALTには胚中心は認められなかった。一方でpltマウスのNALTはT細胞領域の形成不全を認めた。以上の結果から胚中心形成やT/B細胞領域などNALT組織構築の成熟化にはCXCL13、CCL19、CCL21が必須であることが明らかとなった。これらの結果を総合するとNALT形成過程におけるケモカイン群(CXCL13、CCL19、CCL21)の役割について明らかにすることが出来、現在NALT形成特異的なケモカインおよびサイトカインシグナルについて次年度に向けて検討を開始している。昨年度に引き続き鼻咽腔関連リンパ組織(NALT)形成メカニズムのユニーク性を解明するという目的達成の為にリンフォイドケモカイン(CXCL13,CCL19,CCL21)のNALT組織形成ならびに構築における役割を検討した。リンフォイドケモカインは二次リンパ組織の初期形成に必須なケモカインとして知られている。これらのケモカイン遺伝子欠損マウスを用いた解析によるとバイエル板と異なりこれらのケモカインはNALT初期形成に関与しないことが明らかとなった。一方で、リンフォイドケモカインは恒常的に二次リンパ組織で産生が認められ、リンパ組織構築の成熟化に重要な役割を果たしている。NALTにおいても胚中心形成やT/B細胞領域などNALT組織構築の成熟化にはリンフォイドケモカインが必須であることが明らかとなった。次にNALT形成不全マウスであるCXCL13^<-/->マウスに卵白アルブミン(OVA)などの抗原と粘膜アジュバントとしてコレラ毒素を同時に経鼻投与すると、抗原特異的な免疫応答が認められた。この現象はNALT非依存的な免疫誘導機構の存在を示唆すると考えられる。そこで、マウスの鼻腔粘膜組織を組織学的に詳細に観察したところM細胞特異的マーカーであるUEA-1陽性の上皮がNALTに関連しない鼻腔上皮の一部に存在することを明らかにした。UEA-1陽性上皮の抗原取り込み能を検討するために野生型マウスに蛍光標識した卵白アルブミン(DQ^<TM> ovalbumin)やrSalmonella-GFPを経鼻投与し、FACS解析および組織学的解析をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-05J10792
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J10792
鼻咽腔関連リンパ組織の組織形成メカニズムの解明
その結果、鼻粘膜UEA-1陽性細胞に高頻度で経鼻投与した抗原由来に蛍光シグナルを認めた。以上の結果から、上気道粘膜にはNALT非依存性のM細胞様の抗原取り込み上皮細胞が存在し、気道由来の抗原に対する特異的免疫応答に関与している事が示唆された。昨年度までの本研究によりNALT組織形成誘導細胞(NALT inducer cell : NALTi)によるNALT組織形成誘導にはリンフォトキシンβレセプター(lymphotoxin βreceptor : LTβR)シグナルを必要せず、さらにNALTiのNALT原基への遊走はCXCL13などのリンフォイドケモカインに非依存性であることを明らかにした。そこで、NALT形成メカニズムに特異的な遺伝子を同定するためにNALTiとパイエル板組織形成誘導細胞(Peyer's patch inducercell :PPi)の遺伝子発現パターンについてサブトラクション法を用いて比較した。NALTiに強く発現していた数多くの遺伝子群の中からinterferon regulatoryfactor 1(IRF1)に注目し、IRF1^<-/->マウスのNALT形成を検討した。驚くべきことに、パイエル板やリンパ節の形成は正常であったが、NALT形成はほとんど認められなかった。さらに我々の検討によって、RORγ^<-/->マウスはパイエル板やリンパ節が欠損するにもかかわらず、NALT組織形成は正常であることが明らかとなった。FACSや組織学的解析により、RORγ^<-/->マウスではPPiは欠損しているが、NALT原基へのNALTiの集積は障害されていなかった。さらに我々はNALTiはPPiと比較してCD4の発現が低レベルである事も見いだした。したがって、CD3^-CD4^<high>CD45^+細胞であるPPiとは対照的に、CD3^-CD4^<low>CD45^+細胞として識別されるNALTiはRORγ非依存的に分化し機能する。
KAKENHI-PROJECT-05J10792
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J10792
役務型契約の再構成
今年度はサービス取引において従来からそして近年特に問題になってきている不当な契約条項に焦点を当てて、日仏比較の観点から研究を行った。まず日本法の不当条項規制の現状を把握することに努めた。そのため、特に消費者契約法制定以降の裁判例を数多く収集し、消費者契約法による不当条項規制の現状と問題点につきまとめた。また、消費者契約法につき論じた論稿を法律雑誌はもちろん、「月刊国民生活」等の消費者関連雑誌や消費者団体、弁護士会など各種団体による報告書にもあたった。それらの資料は国民生活センターにて収集した。一方で、そのような消費者契約法制定以後の状況を生み出した背景にある議論として、学説や国民生活審議会の議論を検討した。フランスにおける不当条項規制については、最初の不当条項規制立法である1978年法から最新の立法である1995年法までの立法、その間の裁判例など、フランスの不当条項規制を全体的に把握しまとめたのはもちろん、特にこれまであまり研究がなされていない1995年法以降の動きにつき、頻繁になされている学会シンポジウムや裁判例、近年の学説を収集して検討した。これらの資料は最新のものが多く、東京大学に所蔵されていないこともあったため、国内他大学、さらにはフランスにおいて資料収集を行った。一方で、近年のフランス契約法全体の動きの特徴である「契約法における連帯主義」、「契約法における衡平の概念」、「ヨーロッパ契約法への動き」等に関するフランス法の動向にも目を配り、これらに関する学説、コロックを多数収集した。このような動きとフランスの不当条項規制論との関係を突き詰めて研究を行うことによりく契約法全体から不当条項規制論をとらえることができ、さらには不当条項の規制方法に示唆を得て、サービス契約全体の規制方法を検討することができた。本年度はまず、「役務型契約の再構成」という課題の序章である修士論文の見直しを行い、字数を縮減した上で拙稿「役務提供者の責任に関する一考察」(本郷法政紀要第12号43項以下、2003年)として公表した。本論文は従来の役務提供契約論に多角的な視野を持たせるべく、「事業者」という役務提供主体の観点からの役務提供契約の再構成を試みたものである。次に本年度には、前述した論文に残された課題として提示した「契約類型論(委任契約・請負契約)・債務分類論(手段債務・結果債務)と役務提供契約論との関係」のうち、債務分類論(手段債務・結果債務)の詳細な研究に着手した。具体的には、手段債務・結果債務論の発祥の地であるフランスの議論を参考にするべく、最近の博士論文である「Jean Belissent, Contribution a l'analyse de ladistinctiondesobligations de moyens etdes obligations de resultat :a propos del'evolution des ordres de responsabilitecivile,pref RemyCabrillac, Bibliotheque de Droit Prive, t.354, Paris,2001」を読解し、書評を執筆した。その結果、「誤った契約請負任」論など近時のフランスの民事責任論との関係が問題になったが、詳しい研究は次年度の課題としたい。なお本書評は国家学会雑誌の「学界展望・フランス法」欄に掲載予定である。本年度はまず、6月に東京大学民事判例研究会において「平成15年11月14日第2小法定判決民集57巻10号1561頁建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をした一級建築士が建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置した行為が当該建築士から瑕疵のある建物を購入した者に対する不法行為となるとされた事例」について評釈した。「建築士」という専門家に課せられる責任、および建築業法などの公法的規定と民法との関係を研究することで、「役務提供者の責任」に関する考察に資するものであった。その成果については現在法学協会雑誌に掲載すべく原稿を執筆しているところである。次に内閣府での消費者問題に関する調査補助の一環として、および大学院でのゼミにおいて、フランスにおける不当条項規制につき、消費法典の規定、消費者団体による団体訴訟、不当条項委員会の活動といった観点を中心に調査を行った。この調査により、「役務提供者の責任」を、事業者が自己の責任をあらかじめ定めるものである「契約条項」の規制という点から考察できないか、さらに契約規制を法的、行政的など様々な観点から行う制度設計につき、現在引き続き研究中である。この研究については次年度も継続する。また、東京地裁裁判官との医療訴訟に関する勉強会(非公式)において、説明義務につき不動産取引、金融取引などあらゆる観点からの裁判判例分析を行った。最後に、今年度は昨年度に執筆・調査した書評、立法紹介、文献リストが相次いで雑誌に掲載されたことを付言しておく。今年度はサービス取引において従来からそして近年特に問題になってきている不当な契約条項に焦点を当てて、日仏比較の観点から研究を行った。まず日本法の不当条項規制の現状を把握することに努めた。そのため、特に消費者契約法制定以降の裁判例を数多く収集し、消費者契約法による不当条項規制の現状と問題点につきまとめた。また、消費者契約法につき論じた論稿を法律雑誌はもちろん、「月刊国民生活」等の消費者関連雑誌や消費者団体、弁護士会など各種団体による報告書にもあたった。それらの資料は国民生活センターにて収集した。
KAKENHI-PROJECT-03J11475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J11475
役務型契約の再構成
一方で、そのような消費者契約法制定以後の状況を生み出した背景にある議論として、学説や国民生活審議会の議論を検討した。フランスにおける不当条項規制については、最初の不当条項規制立法である1978年法から最新の立法である1995年法までの立法、その間の裁判例など、フランスの不当条項規制を全体的に把握しまとめたのはもちろん、特にこれまであまり研究がなされていない1995年法以降の動きにつき、頻繁になされている学会シンポジウムや裁判例、近年の学説を収集して検討した。これらの資料は最新のものが多く、東京大学に所蔵されていないこともあったため、国内他大学、さらにはフランスにおいて資料収集を行った。一方で、近年のフランス契約法全体の動きの特徴である「契約法における連帯主義」、「契約法における衡平の概念」、「ヨーロッパ契約法への動き」等に関するフランス法の動向にも目を配り、これらに関する学説、コロックを多数収集した。このような動きとフランスの不当条項規制論との関係を突き詰めて研究を行うことによりく契約法全体から不当条項規制論をとらえることができ、さらには不当条項の規制方法に示唆を得て、サービス契約全体の規制方法を検討することができた。
KAKENHI-PROJECT-03J11475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J11475
骨系統疾患モデルマウス候補Lbrトラップマウスの表現型解析
Lamin B Receptor(LBR)の変異は重篤な骨系統疾患であるGreenberg骨異形成症を引き起こすことが知られている。そこでLbrトラップマウスの表現型解析、および骨軟骨代謝におけるLbrの機能解析を行った。Lbrトラップマウスは成長障害を認め、発毛の低下、魚鱗癬様の皮膚所見を認めた。骨格系の表現型として癒合指が観察された。Greenberg骨異形成症でみられる明らかな短肢症は観察されなかった。骨表現型解析では骨強度、骨密度の低下を認めた。Lamin B Receptorは骨代謝に関与していると考えられ、またLbrトラップマウスは合趾症のモデルマウスとなる可能性がある。Lamin B receptor(Lbr)の発現解析を行った。野生型マウスの骨軟骨組織標本にて抗Lbr抗体の免疫染色を行ったところ骨芽細胞、軟骨細胞、骨髄細胞、脂肪細胞の核にLbrの発現を認めた。また、骨組織からmRNAを抽出しRT-PCRにて発現解析を行ったところ、ホモマウスではLbr遺伝子の発現欠損を認めた。骨組織からmRNAを抽出し、逆転写後骨軟骨代謝関連遺伝子の発現解析を行った。ホモマウスでは骨芽細胞機能に重要なBMP2, Runx2, Osterix, Col1a1, ALP, Osteocalcinの発現レベルが有意に低下していた。ヘテロマウスでは有意な差を認めなかった。一方Col2a1, TRAP, NFATc1についてはヘテロマウス、ホモマウスともに有意な差は認めず軟骨形成、骨吸収の異常よりも骨形成低下が示唆された。P4マウス頭蓋骨から骨芽細胞を分離培養した。3Wから6W培養を行ったが、野生型由来培養細胞とホモマウス由来培養細胞で増殖に明らかな差は認められなかった。また、ALP染色、アリザリンレッド染色を施行したが、いずれも明らかな差は認められなかった。破骨細胞の培養については骨芽細胞との共培養系の確立を目指した。培養した骨芽細胞と8W齢マウスの骨髄細胞で共培養を行ったところ、TRAP陽性多核細胞が観察された。骨軟骨組織の組織標本を作製した。ホモマウスの成長板軟骨細胞(増殖細胞)では核周囲のエオジン好性領域が野生型より少なかった。さらに肥大軟骨細胞層から石灰化層にかけてホモマウスの方が厚かった。I型コラーゲンの免疫染色を行ったところ、ホモマウスの骨組織ではシグナルが低下していた。Lbrトラップマウスは体格が小さく骨強度の低下も認める。我々の実験でもLbrは多くの細胞で発現しているが、今年度の研究においてコラーゲン等骨基質タンパクや骨芽細胞分化に重要なRunx2やOsterixの発現低下を認め、骨芽細胞の機能低下が示唆された。LBR遺伝子異常が原因とされるGreenberg骨異形成症では四肢短縮型のanomalyを呈すため、成長軟骨の障害が予想される。Lbrトラップホモマウスでは組織像での骨端線の観察において軟骨細胞内での軟骨基質産生が低下している可能性が示唆された。一方II型コラーゲンのmRNA発現では有意な変化はみられない点には注目している。Lbrトラップマウスの表現型解析では成長障害について体重を指標に評価を行った。自由な摂餌環境下で、野生型マウスと比較して60-80%程度の体重比でで推移しており、成長障害を認めた。また、発毛の低下、魚鱗癬様の皮膚所見等皮膚の異常を認めていたが、特徴的な表現型として軟部組織性の癒合による癒合指が多くみられることが観察された。また短命であり、Lbrトラップマウスの平均生存期間はオス58.3日、メス46.0日で、中央値はオス23日、メス25日であった。骨組織からmRNAを抽出してマイクロアレイを行った。マイクロアレイの解析からは筋小胞体、拡張型心筋症、イオンチャネル、ミオシンなど筋関連遺伝子に関するタームが多数含まれていた。一方骨関連遺伝子の変動はみられなかった。Developmentalprotein, cell differentiationというタームについても関連遺伝子の変動が多数含まれていた。4日齢マウスの頭蓋冠から骨芽細胞の分離培養を行った。アスコルビン酸、β-グリセロリン酸添加骨芽細胞用培地にて培養を行った。mRNAを回収し骨芽細胞マーカー遺伝子の発現量比較を行った。mRNAの発現はRunx2、オステオカルシンの発現が高い傾向がみられ、Col1a1については発現量に明らかな差は認めなかった。ALPについては6W培養後のALP活性はLbrトラップマウスの方が低い印象だが、ALPの発現解析では明らかな差は認めなかった。軟骨の免疫染色ではII型コラーゲン、X型コラーゲンの発現はWTとLbrトラップマウスで明らかな差は認めなかったが、さらに解析を加えたい。Lbrトラップマウスの表現型解析では骨格の成長障害、癒合指などの表現型が得られた。骨折モデルマウスの作製には生体での実験が必須であるが、試験に供するまで生存できない個体がほとんどであり、断念した。骨強度低下の要因として骨代謝関連の因子、特に骨芽細胞に注力して解析を進めたが、骨芽細胞機能、分化については分離した培養細胞ではin vivoの表現型を説明できるほどの差は認めなかった。方法:Lbrトラップマウスを自由な摂餌環境下で飼育した。マイクロCT、骨強度試験、骨形態計測、遺伝子発現解析、また骨芽細胞の分離培養実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-15K10485
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骨系統疾患モデルマウス候補Lbrトラップマウスの表現型解析
結果:野生型マウスと比較して体重比60-80%の成長障害を認めた。また、発毛の低下、魚鱗癬様の皮膚所見を認めた。骨格系の表現型として皮膚性、骨性の癒合指が観察された。Lbrトラップマウスの生存期間中央値はオス23日、メス25日であった。ただし、Greenberg骨異形成症でみられる明らかな短肢症は観察されなかった。骨表現型解析では骨強度がLbrトラップマウスで低下、骨形態計測でも骨密度の低下を認めた。骨芽細胞の培養実験ではアルカリフォスファターゼ活性、石灰化能が低下していた。胚組織から抽出したmRNAのマイクロアレイ解析では補体、凝固系、ステロイド生合成、脂質代謝などの遺伝子群に発現の変動がみられた。また、肢芽の発生で必須とされるHOXA10以降のHOX遺伝子の発現をみると、Lbrトラップマウス胚ではHOXA11以降HOXD13まで上昇がみられた。この発現変動は胎生期の成長や癒合指の原因にLbrの発現が関与している可能性が示唆された。分離培養した骨芽細胞とマウス骨髄の共培養実験を行い破骨細胞様細胞の誘導、分化実験を行った。野生型由来骨芽細胞-野生型由来骨髄の共培養群と変異型マウス由来骨芽細胞-変異型マウス由来骨髄の共培養群でTRAP陽性多核巨細胞数に有意な差はみられなかった。Lbrの欠損で骨芽細胞の破骨細胞誘導能や破骨細胞の分化には影響を与えないことが示唆された。Lamin B Receptor(LBR)の変異は重篤な骨系統疾患であるGreenberg骨異形成症を引き起こすことが知られている。そこでLbrトラップマウスの表現型解析、および骨軟骨代謝におけるLbrの機能解析を行った。Lbrトラップマウスは成長障害を認め、発毛の低下、魚鱗癬様の皮膚所見を認めた。骨格系の表現型として癒合指が観察された。Greenberg骨異形成症でみられる明らかな短肢症は観察されなかった。骨表現型解析では骨強度、骨密度の低下を認めた。Lamin B Receptorは骨代謝に関与していると考えられ、またLbrトラップマウスは合趾症のモデルマウスとなる可能性がある。今年度の研究結果からLbr遺伝子は骨芽細胞の骨形成に影響を与えている可能性が高いと考える。組織標本を作製し各種染色法にて骨形成、骨芽細胞機能の解析をさらに進める。軟骨基質産生については低下している可能性が示唆されmRNA発現解析では相反する結果たため、免疫染色などで軟骨基質、軟骨細胞の分化を評価する予定である。またマウス個体の解析では2次的影響の可能性があるため、培養骨芽細胞を使って解析を進め、in vivoと同様の骨基質産生低下がみられるか検討を行う予定である。また、網羅的な遺伝子機能解析のためマイクロアレイ検査も行う予定である。マイクロアレイの結果や骨芽細胞培養の結果から骨芽細胞機能や分化、また、骨そのものの評価だけではLbrトラップマウスの骨形成能の低下、成長障害を説明するのは困難である。そこで成長ホルモンの発現解析や、培養細胞を使用する実験においても骨芽細胞と破骨細胞の共
KAKENHI-PROJECT-15K10485
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Agrobacteriumの感染による腫瘍の形成とオーキシン特異遺伝子の発現
植物ホルモンの一つであるオーキシンは、植物の様々な生理現象に関与しておりきわめて重要な生理活性物質である。本研究課題は、エンドウ芽生えより得られたオーキシン特異遺伝子のcDNAクローンを用いて、その発現とアグロバクテリウム感染の相関を調べる目的で行なわれ以下の結果が得られた。1.アグロバクテリウム、トゥメファシエンスおよびA.リゾジェネスの11種の菌株をエンドウ芽生えの第3節間に感染させ腫瘍の形成を3週間にわたって観察した。その結果、Tiまたは、Riプラスミド上のIAA合成に関与する遺伝子領域を欠落したもの、もしくは、その領域にトランスポゾンが挿入された菌株は、腫瘍形成能力をもたないことが明らかになった。2.腫瘍を形成するものは、その成育に伴ってRNA量も増加する。3.オーキシンによる特異的に誘導されるmRNA(pIAA4/5)は、菌の接種に無関係に接種後1日目にわずかに増加する。これは、傷害の影響と思われる。4.その後、このmRNAは腫瘍の成長とともに増加するが、1週間後あたりを頂点に減少して行く。以上のことから、アグロバクテリウムのエンドウ胚軸への感染による腫瘍の形成には、バクテリアプラスミドの発現によるIAA合成が必須であり、しかも、ここで生成されるIAAが宿主であるエンドウのIAA特異遺伝子の発現を促進することが明白になった。しかし、この遺伝子の発現は、形態的に腫瘍が大きくなる時には低下していることから、腫瘍形成の初期において何らかの役割を果すものと思われる。今後、この遺伝子が、どのようなタンパク質をコードし、どのような働きをもっているのかを明らかにして行くことが必要である。植物ホルモンの一つであるオーキシンは、植物の様々な生理現象に関与しておりきわめて重要な生理活性物質である。本研究課題は、エンドウ芽生えより得られたオーキシン特異遺伝子のcDNAクローンを用いて、その発現とアグロバクテリウム感染の相関を調べる目的で行なわれ以下の結果が得られた。1.アグロバクテリウム、トゥメファシエンスおよびA.リゾジェネスの11種の菌株をエンドウ芽生えの第3節間に感染させ腫瘍の形成を3週間にわたって観察した。その結果、Tiまたは、Riプラスミド上のIAA合成に関与する遺伝子領域を欠落したもの、もしくは、その領域にトランスポゾンが挿入された菌株は、腫瘍形成能力をもたないことが明らかになった。2.腫瘍を形成するものは、その成育に伴ってRNA量も増加する。3.オーキシンによる特異的に誘導されるmRNA(pIAA4/5)は、菌の接種に無関係に接種後1日目にわずかに増加する。これは、傷害の影響と思われる。4.その後、このmRNAは腫瘍の成長とともに増加するが、1週間後あたりを頂点に減少して行く。以上のことから、アグロバクテリウムのエンドウ胚軸への感染による腫瘍の形成には、バクテリアプラスミドの発現によるIAA合成が必須であり、しかも、ここで生成されるIAAが宿主であるエンドウのIAA特異遺伝子の発現を促進することが明白になった。しかし、この遺伝子の発現は、形態的に腫瘍が大きくなる時には低下していることから、腫瘍形成の初期において何らかの役割を果すものと思われる。今後、この遺伝子が、どのようなタンパク質をコードし、どのような働きをもっているのかを明らかにして行くことが必要である。
KAKENHI-PROJECT-63540537
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職業生涯と医療福祉問題との関連性に関する社会学的研究
「退職建設労働者の人生と健康福祉に関するアンケート調査」の集計と分析作業2001年1月に大分県南海部郡蒲江町において実施した、標記アンケート回答結果について集計と分析作業を行った。特徴的な傾向として、以下の諸点が判明した。(1)トンネル掘削工事に従事して国土建設に貢献した人生に誇りをもっている半面、じん肺病に罹患した職場環境や処遇の面では、企業に対してかなり厳しい見方をしている。中には、自分の人生に悔いを残している人も、少なくない。(2)療養生活において医療機関に対する信頼の念は非常に厚く、介護面でも緊急の場合に備えて、医療系の老人保健施設に入所したいという希望が強い。(3)同居は大半が配偶者との2人世帯であり、その分、近未来の介護面での負担が女性にかかってくる構造がある半面、出稼ぎ中の家庭維持の労苦に対する感謝の念から、配偶者の将来生活を確かなものにしたいという願望が強い。(4)じん肺補償を受けている関係上、地域社会においてある意味で特権的な存在と受け止められているという自覚があり、地域介護システムから浮き上がっているのではないかという危惧が窺われる。(5)運動団体への信頼は強いが、趣味同好会や地域との交流を求める意見もある。10月末に追加採択を受けてから、限られた期間内で次のような研究を展開しえた。(1)トンネル掘削工事に従事した退職生活者たちの医療福祉調査への段取り主要フィールドである、大分県南海部郡蒲江町におけるじん肺病等認定退職者の「職業病友の会」理事会にて、会員の職業経歴、療養・介護状況、生活意識に関するアンケート調査の来年度実施について諒承を得た。併わせて、長年じん肺病に関わってきた長門記念病院の三浦研究所長から患者の現況について聞き取りをした。さらに東京都労働資料センターにて、労働災害・職業病関係の文献資料を収集した。(2)保線工事の下請け構造と労働災害・職業病の発生メカニズムの解明への着手前項の出稼ぎ専業労働者の場合に対し、下請け事業所への全面委託から成る保線作業の労働実態と労働災害・職業病の発生との関連性について、国鉄労働組合大阪新幹線支部を通じて元保線関係労働者からの聞取り・資料調査により理解を深めた。(3)日雇労働者・野宿者の滞在地・大阪「あいりん地区」における医療福祉問題の検討この部門の調査研究は、日稼ぎ労働者と野宿者のケースと位置付けることができる。大阪社会医療センターおよび大阪自彊館更正施設「自彊寮」や同救護施設「三徳寮」を見学し、「あいりん地区」医療福祉問題の関係資料を収集した。(4)斎場業務に対する差別問題と労働災害・職業病との関連性についての考察前項の場合よりも、斎場業務従事者はなお一層深刻な差別に直面している。大阪市立瓜破斎場にて、主任クラスの現業職員からこの作業に付随する視力障害などの健康不安と差別によるその潜在化について聞き取り調査を実施した。文献調査も行った。「退職建設労働者の人生と健康福祉に関するアンケート調査」の集計と分析作業2001年1月に大分県南海部郡蒲江町において実施した、標記アンケート回答結果について集計と分析作業を行った。特徴的な傾向として、以下の諸点が判明した。(1)トンネル掘削工事に従事して国土建設に貢献した人生に誇りをもっている半面、じん肺病に罹患した職場環境や処遇の面では、企業に対してかなり厳しい見方をしている。中には、自分の人生に悔いを残している人も、少なくない。(2)療養生活において医療機関に対する信頼の念は非常に厚く、介護面でも緊急の場合に備えて、医療系の老人保健施設に入所したいという希望が強い。(3)同居は大半が配偶者との2人世帯であり、その分、近未来の介護面での負担が女性にかかってくる構造がある半面、出稼ぎ中の家庭維持の労苦に対する感謝の念から、配偶者の将来生活を確かなものにしたいという願望が強い。(4)じん肺補償を受けている関係上、地域社会においてある意味で特権的な存在と受け止められているという自覚があり、地域介護システムから浮き上がっているのではないかという危惧が窺われる。(5)運動団体への信頼は強いが、趣味同好会や地域との交流を求める意見もある。(1)トンネル掘削工事に従事してきた退職出稼ぎ請負労働者のケースの解明大分県南海部郡蒲江町において、「退職建設労働者の人生と健康福祉に関するアンケート調査」を実施した(2001年1月)。この調査は、じん肺病等の認定を受けている当地の「職業病友の会」正会員を対象に、今ではかなりの高齢に達している退職者たちの療養および福祉介護状況の現況と意識、およびこれまでの職業人生の軌跡に対する自己評価や今後の医療福祉への要望、家族など近親者の将来への配慮などについて明らかにすることを目的としている。(2)保線工事に従事してきた下請け労働者のケースの解明保線作業の下請け構造と労働災害・職業病の発生との関連メカニズムの解明をめざしたが、たまたま本年は当時の親労組である国鉄労組の運動転換期に当たったため、裏付け資料を得ることができなかった。それに代わり、国会図書館で保線労働者に関する文献資料を探索することができた。(3)建設日稼ぎ労働者および野宿者のケースの解明
KAKENHI-PROJECT-11610225
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職業生涯と医療福祉問題との関連性に関する社会学的研究
「全国地域・寄せ場交流会」に参加し、主として野宿者の生活保護と医療の実際、および公園からの強制排除問題に関する運動論的立場からのアプローチに接し、野宿者の健康福祉問題に直接関わる生々しい行政との緊張関係状況について理解を深めることができた。(4)斎場および屠場における被差別職業従事者のケースの解明斎場業務については、この業務に対する「穢れ」という深刻な差別問題の背景を成す、死生観や葬制の領域にまで踏み込んで文献を渉猟し、理論的な考察を深めた。この問題は、屠場労働と共に、被差別部落問題とも連動する。屠場労働については、前回受けた科学研究費補助金の研究テーマからの連続であるが、奈良県や三重県など近畿圏において健康福祉の観点からこの分野に再接近する糸口を得ることができた。[1]「退職建設労働者の人生と健康福祉に関するアンケート調査」の集計と分析作業2001年1月に大分県南海部郡蒲江町において実施した、標記アンケート回答結果について集計と分析作業を行った。特徴的な傾向として、以下の諸点が判明した。(1)トンネル掘削工事に従事して国土建設に貢献した人生に誇りをもっている半面、じん肺病に罹患した職場環境や処遇の面では、企業に対してかなり厳しい見方をしている。中には、自分の人生に悔いを残している人も、少なくない。(2)療養生活において医療機関に対する信頼の念は非常に厚く、介護面でも緊急の場合に備えて、医療系の老人保健施設に入所したいという希望が強い。(3)同居は大半が配偶者との2人世帯であり、その分、近未来の介護面での負担が女性にかかってくる構造がある半面、出稼ぎ中の家庭維持の労苦に対する感謝の念から、配偶者の将来生活を確かなものにしたいという願望が強い。(4)じん肺補償を受けている関係上、地域社会においてある意味で特権的な存在と受け止められているという自覚があり、地域介護システムから浮き上がっているのではないかという危惧が窺われる。(5)運動団体への信頼は強いが、趣味同好会や地域との交流を求める意見もある。[2]「人権福祉フィールドワーク」方法論の提唱長年にわたり実施してきた「社会学的労働調査」を回顧しながら、そのそれぞれについて方法論的な検討を加え、さらに人権確立の観点から「人間福祉調査法」への転換を図る視点を提唱する報告を日本労働社会学会研究会で行った。[3]その他のフィールド研究不況による野宿者の激増と支援活動、BSE(狂牛病)問題で揺れる食肉業界の部門で異なる被害の実態を視察した。
KAKENHI-PROJECT-11610225
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近赤外線分光法を用いた新しい心肺脳蘇生-Tailor-made CPR-
本研究はブタ脳蘇生モデルを用いて、近赤外線分光法を用いたNIRO-Pulse/CCR1による新しい心肺脳蘇生を、臨床データと比較し確立することを目的とした。<実験計画1:(臨床)NIRO-Pulse/CCR1による病院前救護からの心肺脳蘇生の検証とTOI・波形評価>つくば市消防と連携したNIRO-CCR1を使用した症例は計40例のデータが収集できた。TOIが良値であれば心拍再開することができた。またNIRO-Pulse波形と動脈圧・静脈圧波形が観察は計35例のデータが収集できた。動脈圧が静脈圧を上回る場合は、心拍再開する可能性があるが、静脈圧が上回る場合は心拍再開できなかった。<実験計画2、3:(動物:心原性モデル)>呼吸原性心停止4分は窒息後約4分でTOIが最低値となり窒息後約14分でCPAとなる。TOIが同様の経過をとるか検証するため、心原性心停止から14分後に心肺蘇生を開始するモデルを開発した。心拍再開が40%、脳蘇生が0%であった。心原性心停止4分のほうが、心原性心停止14分よりも有意に脳蘇生ができた。呼吸原性心停止4分と心原性心停止14分は同等の心拍再開率であった。心原性心停止14分は、心原性心停止4分と同様に約4分でTOIが最低値となり、呼吸原性心停止4分と同等のTOI経過をたどった。予算不足により、TOI上昇してからの除細動を行う検討はできなかった。<実験計画2、4:(動物:呼吸原性モデル)>予算不足により、呼吸原性モデルでの検討はできなかった。本研究はブタ脳蘇生モデルを用いて、近赤外線分光法を用いたNIRO-Pulse/CCR1による新しい心肺脳蘇生を、臨床データと比較し確立することを目的とする。<実験計画1:(臨床)NIRO-Pulse/CCR1による病院前救護からの心肺脳蘇生の検証とTOI・波形評価>つくば市消防と連携したNIRO-CCR1を使用した症例は計23例のデータが収集できた。TOIが良値であれば心拍再開することができた。またNIRO-Pulse波形と動脈圧・静脈圧波形が観察は計20例のデータが収集できた。動脈圧が静脈圧を上回る場合は、心拍再開することができた。<実験計画2:(動物:心原性モデル)心停止時間とTOI・心筋変化、TOIと除細動成功の関係、標準蘇生方法とTOI上昇してから除細動を行う方法との比較>本年度は動物の心原性モデル作成の研究の情報収集を行うにとどまった。<実験計画3:(動物)NIRO-Pulseによる脳酸素化の評価>実験計画2を行うことができていないため、実験計画3も行うことができていない。<実験計画2:(動物:心原性モデル)心停止時間とTOI・心筋変化、TOIと除細動成功の関係、標準蘇生方法とTOI上昇してから除細動を行う方法との比較>本年度は動物の心原性モデル作成の研究の情報収集を行うにとどまった。<実験計画3:(動物)NIRO-Pulseによる脳酸素化の評価>実験計画2を行うことができていないため、実験計画3も行うことができていない。本研究はブタ脳蘇生モデルを用いて、近赤外線分光法を用いたNIRO-Pulse/CCR1による新しい心肺脳蘇生を、臨床データと比較し確立することを目的とした。<実験計画1:(臨床)NIRO-Pulse/CCR1による病院前救護からの心肺脳蘇生の検証とTOI・波形評価>つくば市消防と連携したNIRO-CCR1を使用した症例は計40例のデータが収集できた。TOIが良値であれば心拍再開することができた。またNIRO-Pulse波形と動脈圧・静脈圧波形が観察は計35例のデータが収集できた。動脈圧が静脈圧を上回る場合は、心拍再開する可能性があるが、静脈圧が上回る場合は心拍再開できなかった。<実験計画2、3:(動物:心原性モデル)>呼吸原性心停止4分は窒息後約4分でTOIが最低値となり窒息後約14分でCPAとなる。TOIが同様の経過をとるか検証するため、心原性心停止から14分後に心肺蘇生を開始するモデルを開発した。心拍再開が40%、脳蘇生が0%であった。心原性心停止4分のほうが、心原性心停止14分よりも有意に脳蘇生ができた。呼吸原性心停止4分と心原性心停止14分は同等の心拍再開率であった。心原性心停止14分は、心原性心停止4分と同様に約4分でTOIが最低値となり、呼吸原性心停止4分と同等のTOI経過をたどった。予算不足により、TOI上昇してからの除細動を行う検討はできなかった。<実験計画2、4:(動物:呼吸原性モデル)>予算不足により、呼吸原性モデルでの検討はできなかった。<実験計画1:(臨床)NIRO-Pulse/CCR1による病院前救護からの心肺脳蘇生の検証とTOI・波形評価>引き続きデータ収集を行う。
KAKENHI-PROJECT-17K17623
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17623
近赤外線分光法を用いた新しい心肺脳蘇生-Tailor-made CPR-
<実験計画2:(動物:心原性モデル)心停止時間とTOI・心筋変化、TOIと除細動成功の関係、標準蘇生方法とTOI上昇してから除細動を行う方法との比較><実験計画3:(動物)NIRO-Pulseによる脳酸素化の評価><実験計画4:(動物:呼吸原性モデル)心停止時間とTOIの変化、標準蘇生方法とTOI上昇する方法との比較>上記3計画を平成30年度通して施行する。(理由)動物購入に対して、平成29年度中に多く施行する予定であったが、平成30年度に行う予定となったため、購入が遅延した。そのために次年度使用額が大きくなった。(使用計画)次年度に動物実験に対して、動物購入を行い実験を完結する。
KAKENHI-PROJECT-17K17623
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p53下流遺伝子の発現調節機構の解析と、それを応用した癌の分子標的予防法の開発
p53は約半数の悪性腫瘍で変異がみられる重要な癌抑制遺伝子である。p53下流遺伝子の発現を調節することは、失活したp53の機能を相補し効果的な癌予防につながると考えられる。そこで、p53下流遺伝子の一つであるDeath Receptor 5(DR5)に着目し、DR5発現誘導剤の探索を行った。1)プロテアソーム阻害剤によるDR5発現誘導プロテアソーム阻害剤は抗腫瘍活性を持ち、その一部は米国において抗癌剤として認可されている。プロテアソーム阻害剤の一つであるMG132によるDR5発現誘導メカニズムを解析し、転写因子CHOPがDR5遺伝子のプロモーターに直接結合して、転写レベルで制御していることを見出した。MG132とDR5のリガンドTRAILとの併用は、p53非依存的にホルモン抵抗性前立腺癌細胞にアポトーシスを誘導できることを見出した(Cancer Res, Yoshida et al.)。2)食品由来フラボノイドによるDR5発現誘導カモミールやシソに含まれるフラボノイドの一つであるアピゲニンがT細胞白血病株であるJurkat細胞においてDR5の発現を誘導することを見出した。アピゲニンはDR5タンパクの安定化を引き起こしていると考えられた。また、アピゲニンはTRAILによるアポトーシスをJurkat細胞で増強したが、健常人から採取した末梢血単核球では増強せず、癌細胞特異的に細胞死を誘導できる可能性が示唆された(Mol Cancer Ther, Horinaka et al.)。この様に抗癌剤候補物質や発癌予防効果を有する食品成分などがp53非依存的にDR5発現を誘導し、TRAILとの併用により抗癌効果を示すことを明らかにできた。これらの結果は、DR5を標的とした分子標的予防法の確立につながると考えられる。p53は約半数の悪性腫瘍で変異の見られる重要な癌抑制遺伝子である。p53下流遺伝子の発現を調節することはp53の機能失活を相補し、効果的な癌予防につながると考えられる。そこで、p53下流遺伝子のひとつであるDR5の発現をp53非依存的に調節する薬剤を探索し、その調節機構の解析を行った。食物繊維の代謝産物である酪酸が、DR5の発現を誘導することを見い出した。この発現誘導効果は、p53が変異した白血病細胞でも見られたことから、p53非依存的であると考えられた。この発現誘導はタンパクレベルおよびmRNAレベルで起こっていることを、ウェスタンブロット法とノザンプロット法で確認した。また、ルシフェラ-ゼアッセイの結果から酪酸はプロモーターを介して、転写レベルでDR5発現を誘導していることを明らかにした。DR5のリガンドであるTRAILと酪酸を併用すると、白血病細胞に相乗的にアポトーシスを誘導した。しかしながら、この併用は末梢血中の正常細胞に対してはほとんどダメージがなかった。この結果から、酪酸とTRAILの併用が腫瘍選択的にアポトーシスを誘導できるという可能性が示唆された。酪酸はピストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)の作用を有する。他のHDACIであるTSAおよびSAHAでもDR5の発現を誘導することを見い出した。他にも、フラボノイド類や力ロテノイド類がDR5の発現を誘導することを見い出しており、今後これらの薬剤によるDR5発現誘導の調節機構を解析する予定である。p53は約半数の悪性腫瘍で変異がみられる重要な癌抑制遺伝子である。p53下流遺伝子の発現を調節することは、失活したp53の機能を相補し効果的な癌予防につながると考えられる。そこで、p53下流遺伝子の一つであるDeath Receptor 5(DR5)に着目し、DR5発現誘導剤の探索を行った。1)プロテアソーム阻害剤によるDR5発現誘導プロテアソーム阻害剤は抗腫瘍活性を持ち、その一部は米国において抗癌剤として認可されている。プロテアソーム阻害剤の一つであるMG132によるDR5発現誘導メカニズムを解析し、転写因子CHOPがDR5遺伝子のプロモーターに直接結合して、転写レベルで制御していることを見出した。MG132とDR5のリガンドTRAILとの併用は、p53非依存的にホルモン抵抗性前立腺癌細胞にアポトーシスを誘導できることを見出した(Cancer Res, Yoshida et al.)。2)食品由来フラボノイドによるDR5発現誘導カモミールやシソに含まれるフラボノイドの一つであるアピゲニンがT細胞白血病株であるJurkat細胞においてDR5の発現を誘導することを見出した。アピゲニンはDR5タンパクの安定化を引き起こしていると考えられた。また、アピゲニンはTRAILによるアポトーシスをJurkat細胞で増強したが、健常人から採取した末梢血単核球では増強せず、癌細胞特異的に細胞死を誘導できる可能性が示唆された(Mol Cancer Ther, Horinaka et al.)。この様に抗癌剤候補物質や発癌予防効果を有する食品成分などがp53非依存的にDR5発現を誘導し、TRAILとの併用により抗癌効果を示すことを明らかにできた。これらの結果は、DR5を標的とした分子標的予防法の確立につながると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-16790326
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790326
がん細胞浸潤突起の形成と退縮の分子機構
癌細胞が高い運動能を持つ上で重要な役割を果たしていると考えられている膜構造である"浸潤突起"の形成と退縮を制御する分子機構を、シェディングと呼ばれる膜蛋白質のプロセシングとの関係に注目して解析した。極めて残念ながらHeLa癌培養細胞での浸潤突起の形成と退縮にはシェディングが関与しない事が示唆されたが、浸潤突起と良く似た構造体であるpodosomeの融合や細胞自身の融合にシェディングが関与する事を示唆する結果をRaw 264.7マクロファージ細胞を用いて得る事ができた。癌細胞が高い運動能を持つ上で重要な役割を果たしていると考えられている膜構造である"浸潤突起"の形成と退縮を制御する分子機構を、シェディングと呼ばれる膜蛋白質のプロセシングとの関係に注目して解析した。極めて残念ながらHeLa癌培養細胞での浸潤突起の形成と退縮にはシェディングが関与しない事が示唆されたが、浸潤突起と良く似た構造体であるpodosomeの融合や細胞自身の融合にシェディングが関与する事を示唆する結果をRaw 264.7マクロファージ細胞を用いて得る事ができた。がん細胞が高い運動能を持つ上で重要であると考えられている"浸潤突起"の形成と退縮に関わる分子機構を、"シェディング"と呼ばれる膜蛋白質の選択的なプロセシングに注目して明らかにすることを目的として研究を進めている。当該年度は、シェディングと浸潤突起を同時に解析するのに適したがん培養細胞を特定する為に、浸潤突起の観察が可能ながん培養細胞が正常なシェディング能を有するか検討した。シェディング標的蛋白質を強制発現させ、そのシェディング標的蛋白質の細胞外領域がメタロプロテアーゼ活性依存的に培養上清に放出されるか検討した結果、上皮性のがん培養細胞であるHeLa細胞において効率的で選択的なシェディングが観察される事が明らかとなった。HeLa細胞は蛍光ゼラチン上で培養する事で、ゼラチンの分解とアクチンの凝集が一致する浸潤突起を観察できる事が知られているので、蛍光ゼラチンとアクチン染色試薬を準備して浸潤突起の観察を試みている。また蛍光顕微鏡下で浸潤突起のリアルタイム観察を行う為に、HeLa細胞の蛍光顕微鏡観察条件についても詳細な検討を行った。更に外来遺伝子を発現したHeLa細胞を用いて浸潤突起のリアルタイム観察を行うには、免疫染色なしで外来遺伝子を発現した細胞を特定できる事が必要不可欠である。そこで蛍光蛋白質と目的の外来遺伝子とを同時に発現する事ができるベクターの構築を行い、HeLa細胞において同ベクターが外来遺伝子を発現しうる事を確認した。がん細胞が高い運動能を持つ上で重要であると考えられている"浸潤突起"の形成と退縮に関わる分子機構を、"シェディング"と呼ばれる膜蛋白質の選択的なプロセシングに注目して明らかにすることを目的として研究を進めている。まず、昨年度の研究から高いシェディング能を有する事が確認された上皮がん細胞であるHeLa細胞における浸潤突起の形成と退縮が、シェディングの影響を受けるかどうか確認する実験を行った。シェディングを阻害するメタロプロテアーゼ阻害剤の添加の有無でHeLa細胞の浸潤突起形成を比較した所、極めて残念ながら大きな違いが見られない事がわかった。そこで浸潤突起と良く似た突起構造であるpodosomeを形成するRaw264.7細胞を用いた解析を試みる事にした。Raw264.7細胞はRANKL存在下で破骨細胞に分化させると多数の個別のpodosomeを形成するとともにリング状のpodosome融合体をも形成する。この分化の過程でメタロプロテアーゼ阻害剤を添加した所、個々のpodosomeが消失しとても大きなリング状のpodosome融合体が観察された。このpodosome融合体は破骨細胞に分化したRaw264.7細胞同士の細胞融合に関わる事が知られているので細胞融合能を詳細に解析した結果、メタロプロテアーゼ阻害剤の添加によりとても大きな細胞体が観察されるようになる事がわかった。これらの結果はシェディングの阻害がpodosomeのリング状融合体の形成や細胞融合自身に重要な役割を果たしている事を示唆しており極めて興味深い。がん細胞の浸潤突起の形成に注目してスタートした研究ではあったが、細胞融合に関する新しい知見を得る事ができたと考えている。
KAKENHI-PROJECT-21790328
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21790328
差螢光ラベリング法によるミオシン頭部の三つのドメインの構造変化の検出
筋収縮に関与するタンパク質であるミオシンは一方の端に球状の頭部をもつ棒状分子である。筋収縮時のエネルギー源となるアデノシン-5′-三リン酸(ATP)が結合して分解される部位や、ミオシンのパートナーとなるタンパク質アクチンを結合する部位はミオシン頭部に存在する。現在ミオシンは、20K、50K、26Kと呼ばれる三つの"ドメイン"に分けて研究されている。筋収縮のメカニズムを考える上で、これら三つのドメイン間の相互作用がどの様にしてミオシン頭部の機能に関連しているかが、当面最も重点的に研究されなければならない。ミオシン頭部の三つのドメインを差螢光ラベリング法により特異的にラベルして、結合している蛍光ラベルのスペクトル変化から各々のドメインで起きる構造変化を検出することはこのような研究に不可欠な実験である。ウサギ骨格筋ミオシンからその頭部(S-1)をキモトリプシン消化により調製し、これにセリン残基と特異的に反応する螢光試薬である9-アントロイルニトリル(ANN)を作用させた。この反応でS-1重鎖が特異的に標識されたが、この標識はATPまたはADP存在下でしか起きなかった。標識S-1について調べたところ、26Kドメインにある1モルのセリン残基に螢光試薬が結合していた。この標識によりS-1のATP加水分解活性は70%も減少した。一方、ミオシンに特異的に結合することがわかっている阻害剤ペプチドを沖縄産の海綿より抽出して、これをS-1に加えてANNを作用させると26Kドメインの標識のされ方は減少した。以上の結果から、ミオシン分子頭部にATPやADPが結合すると26Kドメインに構造変化が起きて1モルのセリン残基の反応性が高くなること、海綿由来の阻害剤ペプチドはこのセリン残基の付近に結合することが明らかになった。筋収縮に関与するタンパク質であるミオシンは一方の端に球状の頭部をもつ棒状分子である。筋収縮時のエネルギー源となるアデノシン-5′-三リン酸(ATP)が結合して分解される部位や、ミオシンのパートナーとなるタンパク質アクチンを結合する部位はミオシン頭部に存在する。現在ミオシンは、20K、50K、26Kと呼ばれる三つの"ドメイン"に分けて研究されている。筋収縮のメカニズムを考える上で、これら三つのドメイン間の相互作用がどの様にしてミオシン頭部の機能に関連しているかが、当面最も重点的に研究されなければならない。ミオシン頭部の三つのドメインを差螢光ラベリング法により特異的にラベルして、結合している蛍光ラベルのスペクトル変化から各々のドメインで起きる構造変化を検出することはこのような研究に不可欠な実験である。ウサギ骨格筋ミオシンからその頭部(S-1)をキモトリプシン消化により調製し、これにセリン残基と特異的に反応する螢光試薬である9-アントロイルニトリル(ANN)を作用させた。この反応でS-1重鎖が特異的に標識されたが、この標識はATPまたはADP存在下でしか起きなかった。標識S-1について調べたところ、26Kドメインにある1モルのセリン残基に螢光試薬が結合していた。この標識によりS-1のATP加水分解活性は70%も減少した。一方、ミオシンに特異的に結合することがわかっている阻害剤ペプチドを沖縄産の海綿より抽出して、これをS-1に加えてANNを作用させると26Kドメインの標識のされ方は減少した。以上の結果から、ミオシン分子頭部にATPやADPが結合すると26Kドメインに構造変化が起きて1モルのセリン残基の反応性が高くなること、海綿由来の阻害剤ペプチドはこのセリン残基の付近に結合することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-63580110
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臨床看護師の看護実践能力の獲得順序性に準拠した能力育成プログラムの開発
臨床看護師の看護実践能力獲得状況の自己評価について横断的に調査し、臨床看護師に対するキャリア支援方略を検討することを目的としている。鳥取大学医学部附属病院病棟に勤務する看護師717名を対象とした。回収した調査票418件(回収率58.3%)のうち、無効回答のある調査票を除き、363件(有効回答率87.8%)を分析した。看護実践能力は、看護実践能力評価尺度(CNCSS: Clinical Nursing Competence Self-Assessment Scale)を使用し測定した。CNCSSは13概念64項目からなり、達成の程度について4件法で回答を求めた。対象者は、臨床看護師としての経験年数により5グループに分け、それぞれのグループの看護実践能力自己評価について分散分析を用いて比較した。臨床経験2年目看護師は、自立して看護を実践することが求められているが、今回の調査結果からは、自信のなさが表れていた。そのため、実践状況において、自立した看護を実践しつつも先輩看護師の細やかな支援を必要としている。臨床経験610年目看護師は、専門性を高める重要な時期であり、自らの看護の実践に意味を見出すことで成長実感を得ることができる支援を必要としている。看護実践能力の獲得順序性分析については、CNCSSデータ(363名分)を基にNurse-Skillチャートを作成し、コンピテンス項目別の達成度から達成難易度を確認した。そして、達成度と達成難易度の関連を精査し、不適切な項目を削除し、64項目から39項目を選択した。各能力の特性を算出し、看護実践能力の修得予測年数を算出した。今後は、コンピテンス項目の修得に係る先行順を影響経路図で表し、看護実践能力の獲得順序性を考慮した教育プログラムを作成する。臨床看護師の看護実践能力の獲得状況について、2017年度に行った調査の分析を予定通り実施した。また、看護実践能力の獲得順序性を予測するために、各能力の達成内度の確認と項目精査、経験年数別実践能力得点の算出、能力習得機関の予測式を作成した。看護実践能力の獲得順序性分析について、階層構造化モデルによる能力間の影響経路図を作成し、看護実践能力の獲得順序性を明らかにする。明らかにした臨床経験年数と看護実践能力の関連を基に、効果的な看護実践能力獲得プログラムを作成する。本研究は、臨床看護師の看護実践のためのコンピテンス獲得過程を明らかにし、看護実践能力の効果的な育成プログラムを作成し、その効果を検証することを目的とする。1.鳥取大学医学部附属病院に勤務する看護師長以上の管理職を除く看護師を対象とし、横断的実態調査を実施した。調査内容は次の通りである。1)研究対象者背景:年齢、性別、取得免許、業務、学歴、経験年数、勤務年数、職位、転職経験、専門資格、雇用形態、勤務形態、職場環境についての認識、勤務継続意思2)看護実践能力自己評価:中山らが開発した「看護実践能力自己評価尺度(Clinical Nursing Competence Self-assessment Scale : CNCSS )」を用いた。本調査票は、4つの看護実践能力の概念のもと13のコンピテンス項目それぞれに対応する64の質問項目から構成されている。コンピテンスは行動を起こしうる能力であり、そのコンピテンスを反映したパフォーマンス(行動)レベルで表現されている。各質問項目に対して、「実施の頻度」「達成の程度」の2つの側面から、それぞれ4段階のリッカート式で回答を求めた。396人の協力が得られ、データ確認、記述統計を算出した。2.看護実践能力の獲得に関する国内文献の検討を行い、総説としてまとめ発表した。看護実践能力は、看護師としての役割をはたすために必要な中核となる能力である。そのため、看護実践能力の定義を明確にすることは、看護学教育のカリキュラム基盤を明確にするために重要である。しかし、看護の質の向上に重要な看護実践能力の概念は、いまだ発展過程にあり、今後、その定義や構造、看護専門職として獲得すべき能力レベル、育成方法など課題も多い。日本における看護実践能力の定義と属性、要素と構造、評価に関する研究を概観し、看護実践能力の育成方法について検討した。調査を予定通り実施し、データ分析を行っている。臨床看護師の看護実践能力獲得状況の自己評価について横断的に調査し、臨床看護師に対するキャリア支援方略を検討することを目的としている。鳥取大学医学部附属病院病棟に勤務する看護師717名を対象とした。回収した調査票418件(回収率58.3%)のうち、無効回答のある調査票を除き、363件(有効回答率87.8%)を分析した。看護実践能力は、看護実践能力評価尺度(CNCSS: Clinical Nursing Competence Self-Assessment Scale)を使用し測定した。CNCSSは13概念64項目からなり、達成の程度について4件法で回答を求めた。対象者は、臨床看護師としての経験年数により5グループに分け、それぞれのグループの看護実践能力自己評価について分散分析を用いて比較した。臨床経験2年目看護師は、自立して看護を実践することが求められているが、今回の調査結果からは、自信のなさが表れていた。そのため、実践状況において、自立した看護を実践しつつも先輩看護師の細やかな支援を必要としている。臨床経験610年目看護師は、専門性を高める重要な時期であり、自らの看護の実践に意味を見出すことで成長実感を得ることができる支援を必要としている。
KAKENHI-PROJECT-17K12117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12117
臨床看護師の看護実践能力の獲得順序性に準拠した能力育成プログラムの開発
看護実践能力の獲得順序性分析については、CNCSSデータ(363名分)を基にNurse-Skillチャートを作成し、コンピテンス項目別の達成度から達成難易度を確認した。そして、達成度と達成難易度の関連を精査し、不適切な項目を削除し、64項目から39項目を選択した。各能力の特性を算出し、看護実践能力の修得予測年数を算出した。今後は、コンピテンス項目の修得に係る先行順を影響経路図で表し、看護実践能力の獲得順序性を考慮した教育プログラムを作成する。臨床看護師の看護実践能力の獲得状況について、2017年度に行った調査の分析を予定通り実施した。また、看護実践能力の獲得順序性を予測するために、各能力の達成内度の確認と項目精査、経験年数別実践能力得点の算出、能力習得機関の予測式を作成した。さらに、各コンピテンスの獲得状況を確認し、経験年数別に算出した平均得点と回帰式により修得期間の予測を行う。具体的には、各コンピテンスについて50、70、90の各パーセンタイル値に到達する経験年数を予測する。また、階層構造化分析プログラム8,9)を用いて、各コンピテンスの他のコンピテンスへの影響度と各コンピテンスの独立性を算出する。分析結果をもとに、看護実践能力の獲得順序性を考慮した看護師教育プログラムの開発を行う。看護実践能力の獲得順序性分析について、階層構造化モデルによる能力間の影響経路図を作成し、看護実践能力の獲得順序性を明らかにする。明らかにした臨床経験年数と看護実践能力の関連を基に、効果的な看護実践能力獲得プログラムを作成する。平成29年度に予備テストデータを用いて階層構造化モデル分析プログラムを作成する予定であったが、分析プログラム作成方法の目途がついたため、予備テストデータの取得は行わず、本調査を行った。平成30年度に分析プログラムの作成を行う。資料整理のための人件費を計上していたが、研究協力者に依頼した。分析データの印刷についてもデジタルデータのままで処理したため、使用しなかった。研究成果発表旅費を4名で計画していたが、2名分のみ支出した。以上の理由により、次年度使用が生じた。2019年度は、最終年度であり、成果発表のための旅費、報告書作成に使用する。
KAKENHI-PROJECT-17K12117
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社会的養護における当事者参画のシステム化:アクションリサーチのための予備的研究
社会的養護制度の領域において、当事者の参画は依然として萌芽期にある。現在、日本では約10団体が活動しているとされるが、その体系化は進んでおらず、国際的な状況から遅れをとっている。本研究の目的は、社会的養護領域における当事者参画推進に向けた組織化およびアクションリサーチの要件を整理することである。そのために、以下の3つの研究課題を設定し、明らかにする。研究課題1:先進国における当事者参画システムを明らかにする:社会的養護領域における当事者参画の先進諸国において実施されている当事者参画のシステムについて、制度的レベルから具体的に整理する。1年目である2017年度には、アメリカ合衆国ワシントン州において近年制定された制度の成立過程について、エキスパートにヒアリング調査を実施し、政策決定の4つの時点で当事者参画が行われていることが明らかになった。2018年度は、明らかとなった内容について、学会で報告するなどの方法で、成果を報告した。研究課題2:先進国における当事者参画のためのプログラムを明らかにする:先に把握した各国の当事者参画の制度的システムにおいて、実施されているプログラムやトレーニング・ツールの内容を収集し、明らかにする。初年度に把握した当事者の安全性確保についてのトレーニング「ストラテジック・シェアリング」について、2018年度はより具体的な内容を整理し、明らかとなった内容を学会等で報告し、安全性確保のための取り組みを広めるよう努めた。研究課題3:日本国内における当事者参画・組織化に向けた要件を明らかにする:実際に日本において当事者参画を組織化するにあたって、どのような運営方法が適するか明らかにする。2018年度、米国で初めて当事者団体を立ちあげた団体のエキスパートに聞き取りを行い、団体の成り立ちと困難を乗り越えた方策についてディスカッションを行なった。2018年度に所属先が変更となり、業務の状況から予定していた海外調査を行うことが難しくなった。次年度には、計画している海外調査を実施し、取りまとめを行う予定である。最終年度となる2019年度には、イギリスおよびオーストラリアの状況を把握するため、訪問調査もしくは、現地研究者・実践者に対するヒアリング調査を実施し、研究課題1「先進国における当事者参画システムを明らかにする(制度的レベル)」および研究課題2「先進国における当事者参画のためのプログラムを明らかにする(実践レベル)」について、さらに検討を深める。さらに、研究課題3「日本国内における当事者参画・組織化に向けた要件を明らかにする」ために、先進各国のシステムと日本国内での当事者参画組織化の要件をまとめ、アクションリサーチのための条件を整理し、考察する。社会的養護制度の領域において、当事者の参画は依然として萌芽期にある。現在、日本では約10団体が活動しているとされるが、その体系化は進んでおらず、国際的な状況から遅れをとっている。本研究の目的は、社会的養護領域における当事者参画推進に向けた組織化およびアクションリサーチの要件を整理することである。そのために、以下の3つの研究課題を設定し、明らかにする。研究課題1:先進国における当事者参画システムを明らかにする:第一に、社会的養護領域における当事者参画の先進諸国において実施されている当事者参画のシステムについて、制度的レベルから具体的に整理する。1年目である本年度には、アメリカ合衆国ワシントン州において近年制定された制度の成立過程について、現地で当事者として活動するエキスパートにヒアリング調査を実施し、これまで把握していた内容を精緻化させた。この過程において、4箇所のプロセスで当事者参画が行われていることが明らかになった。研究課題2:先進国における当事者参画のためのプログラムを明らかにする:第二の課題として、先に把握した各国の当事者参画の制度的システムにおいて、実施されているプログラムやトレーニング・ツールの内容を収集し、明らかにする。上記のヒアリング調査から、米国の連邦レベルで活動する当事者団体によって、当事者の安全性確保についてのトレーニング「ストラテジック・シェアリング」が実施されていることが明らかとなった。研究課題3:日本国内における当事者参画・組織化に向けた要件を明らかにする:第三に、実際に日本において当事者参画を組織化するにあたって、どのような運営方法が適するか明らかにする。そのために、国内で活動する当事者団体の構成員を招聘し、グループインタビューを行うことで、アクションリサーチに向けた要件を分析し、提示する。研究課題3については、次年度に実施する。初年度に、社会的養護における当事者参画について、先進の取り組みが実施されているアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアの制度的および実践的システムを明らかにするため、オーストラリアおよびイギリスの団体を訪問し、訪問によるヒアリング調査の実施する予定であったが、アメリカでの取り組みについてのヒアリング調査を実施したことから、訪問調査を次年度に実施することとした。社会的養護制度の領域において、当事者の参画は依然として萌芽期にある。現在、日本では約10団体が活動しているとされるが、その体系化は進んでおらず、国際的な状況から遅れをとっている。本研究の目的は、社会的養護領域における当事者参画推進に向けた組織化およびアクションリサーチの要件を整理することである。そのために、以下の3つの研究課題を設定し、明らかにする。研究課題1:先進国における当事者参画システムを明らかにする:社会的養護領域における当事者参画の先進諸国において実施されている当事者参画のシステムについて、制度的レベルから具体的に整理する。1年目である2017年度には、アメリカ合衆国ワシントン州において近年制定された制度の成立過程について、エキスパートにヒアリング調査を実施し、政策決定の4つの時点で当事者参画が行われていることが明らかになった。2018年度は、明らかとなった内容について、学会で報告するなどの方法で、成果を報告した。研究課題
KAKENHI-PROJECT-17K13886
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社会的養護における当事者参画のシステム化:アクションリサーチのための予備的研究
2:先進国における当事者参画のためのプログラムを明らかにする:先に把握した各国の当事者参画の制度的システムにおいて、実施されているプログラムやトレーニング・ツールの内容を収集し、明らかにする。初年度に把握した当事者の安全性確保についてのトレーニング「ストラテジック・シェアリング」について、2018年度はより具体的な内容を整理し、明らかとなった内容を学会等で報告し、安全性確保のための取り組みを広めるよう努めた。研究課題3:日本国内における当事者参画・組織化に向けた要件を明らかにする:実際に日本において当事者参画を組織化するにあたって、どのような運営方法が適するか明らかにする。2018年度、米国で初めて当事者団体を立ちあげた団体のエキスパートに聞き取りを行い、団体の成り立ちと困難を乗り越えた方策についてディスカッションを行なった。2018年度に所属先が変更となり、業務の状況から予定していた海外調査を行うことが難しくなった。次年度には、計画している海外調査を実施し、取りまとめを行う予定である。次年度には、イギリスおよびオーストラリアの状況を把握するため、訪問調査もしくは、現地研究者・実践者に対するヒアリング調査を実施し、研究課題1「先進国における当事者参画システムを明らかにする(制度的レベル)」および研究課題2「先進国における当事者参画のためのプログラムを明らかにする(実践レベル)」について、さらに検討を深める。さらに、研究課題3「日本国内における当事者参画・組織化に向けた要件を明らかにする」ために、フォーカス・グループインタビューの実施する。具体的には、日本国内のアクションリサーチに向けて、当事者団体の構成員や代表を招聘し、当事者参画の全国的な組織化に必要な事項についてグループインタビューを継続実施する(3回を予定)。対象となる団体は、日本国内で活動をする当事者団体約10団体のち、政策等への参画を志向する団体(5団体を想定)である。調査依頼を実施し、同意が得られた団体の構成員およびメンバーに対し、フォーカス・グループインタビューの方法で調査を行い、得られたデータを質的分析法によって分析する。※各団体が一同に会することが難しい場合には、複数回の調査に分割し、実施する。以上の3つの研究課題を達成することにより、先進各国のシステムと日本国内での当事者参画組織化の要件をまとめ、アクションリサーチのための条件を整理し、考察する。最終年度となる2019年度には、イギリスおよびオーストラリアの状況を把握するため、訪問調査もしくは、現地研究者・実践者に対するヒアリング調査を実施し、研究課題
KAKENHI-PROJECT-17K13886
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13886
ミクロフロンタル法による血清中低分子キャリヤー蛋白質群の高精密機能測定
本研究では、タンパク質と低分子有機化合物との相互作用を微量の試料で精密測定する方法の開発を目指した。その結果、ミクロフロンタルゲルろ過法(mFGC)を確立することに成功し、微量の血液で血清タンパク質(アルブミンなど)の代謝産物や薬物に対する結合機能を定量化できるようになった。今後、本方法を自動化し、血清タンパク質の熱力学的結合パラメーターという新しい診断項目が糖尿病や高脂血症などに対する有用な診断情報になるかどうかを検証する。以下に主要な成果を示す。1.50μL-スケールでの超微量FGCを実現。内径0.5mm、長さ10cmのキャピラリーカラムに高性能ゲルろ過樹脂を充填、高圧ナノシリンジポンプによる無脈流送液、流路容積の微量化などにより、50μLの試料で正確な結合データが得られるようになった。2.mFGC理論の確立。実態に即したmFGCのモデル化を行い、厳密な計算機シミュレーションのアルゴリズムを作成・実行して、FGCがキャピラリーカラムでも可能なことを理論的に示した。また、実測データの信頼性を評価する手順を確立した。3.ヒト血清アルブミンの精密結合データベースの構築を開始。X線結晶構造から主結合部位が原子レベルで分かっているリガンドに対する精密結合曲線をmFGCで系統的に測定し、結合データベースの構築を開始した。すでに、抗凝固剤のワーファリンなどで新しい情報が得られている。4.個体別ラット血清アルブミンの精密結合機能測定に成功。100μLのラット血清から2ステップでのアルブミン精製を行い、そのS-ワーファリン結合曲線を測定することに成功した。これにより、mFGCが臨床検査への応用できることが明らかになった。本研究では、タンパク質と低分子有機化合物との相互作用を微量の試料で精密測定する方法の開発を目指した。その結果、ミクロフロンタルゲルろ過法(mFGC)を確立することに成功し、微量の血液で血清タンパク質(アルブミンなど)の代謝産物や薬物に対する結合機能を定量化できるようになった。今後、本方法を自動化し、血清タンパク質の熱力学的結合パラメーターという新しい診断項目が糖尿病や高脂血症などに対する有用な診断情報になるかどうかを検証する。以下に主要な成果を示す。1.50μL-スケールでの超微量FGCを実現。内径0.5mm、長さ10cmのキャピラリーカラムに高性能ゲルろ過樹脂を充填、高圧ナノシリンジポンプによる無脈流送液、流路容積の微量化などにより、50μLの試料で正確な結合データが得られるようになった。2.mFGC理論の確立。実態に即したmFGCのモデル化を行い、厳密な計算機シミュレーションのアルゴリズムを作成・実行して、FGCがキャピラリーカラムでも可能なことを理論的に示した。また、実測データの信頼性を評価する手順を確立した。3.ヒト血清アルブミンの精密結合データベースの構築を開始。X線結晶構造から主結合部位が原子レベルで分かっているリガンドに対する精密結合曲線をmFGCで系統的に測定し、結合データベースの構築を開始した。すでに、抗凝固剤のワーファリンなどで新しい情報が得られている。4.個体別ラット血清アルブミンの精密結合機能測定に成功。100μLのラット血清から2ステップでのアルブミン精製を行い、そのS-ワーファリン結合曲線を測定することに成功した。これにより、mFGCが臨床検査への応用できることが明らかになった。本研究は、蛋白質と低分子有機化合物(リガンドと総称する)との相互作用を微量で精密測定する方法の開発を目指している。微量フロンタルゲルろ過法が実現すると、臨床で入手可能な少量の血清から、アルブミンをはじめとするキャリヤー蛋白質群のリガンド結合機能を精密測定できるようになる。病気や年齢による各種血清蛋白質の機能変化を定量化することで、新しい診断情報の探索ができる。平成18年度は、以下の成果を得た。1.100μL-スケールでの微量フロンタルゲルろ過法を実現。内径1mのミクロカラムに高性能ゲルろ過樹脂を充填、試料注入方法の改良、ポストカラム希釈法の採用、送液ポンプの脈圧対策などにより、リガンド濃度を1000倍変えて、ノイズの少ないフロンタルクロマトグラムが得られるようになった(論文作成中)。2.嫌気的フロンタルゲルろ過法によるredox依存性蛋白質一蛋白質相互作用の定量解析に成功。本研究では、血清を嫌気下で扱い、人為的な活性酸素の生成などによる血清蛋白質の障害や酸化還元状態の修飾を避けて、機能解析することを目指している。モデル系としてフェレドキシン還元酵素とフェレドキシンとの酸化/還元条件下での相互作用に着目し、両者の結合の強さがredox依存性に10倍以上変化することをはじめて示した(論文投稿中)。3.微量フロンタルゲルろ過法をメタピロカテーゼ(酸素添加酵素)とその基質や阻害剤との結合解析で検証。本科研費で導入した嫌気チャンバー内に、紫外可視分光器・脱塩用カラム・微量フロンタルゲルろ過システムを設置し、本方法と滴定法の比較検討を行なった(結果の一部は専門書に掲載予定)。4.フロンタルゲルろ過法の酵素反応機構解明への展開。基礎研究においても、本方法でしか得られないデータがある。D-アスパラギン酸酸化酵素の基質活性化を説明する鍵である還元型酵常-
KAKENHI-PROJECT-18590528
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590528
ミクロフロンタル法による血清中低分子キャリヤー蛋白質群の高精密機能測定
基質複合体の存在を本法で証明できる可能性を示した。本研究は,タンパク質と低分子有機化合物(代謝産物や薬物)との相互作用を微量の試料で精密測定する方法の開発を目指している。本方法(微量FGC)が実現すると,100マイクロリットル程度の血清で各個人の血清タンパク質(アルブミンなど)の機能を定量化でき,糖尿病や高脂血症などに対する新しい診断情報の入手が可能になる。平成19年度は,以下の成果を得た。1.50μL-スケールでの超微量FGCを実現。内径0.5mm,長さ10cmのキャピラリーカラムに高性能ゲルろ過樹脂を充填,高圧ナノシリンジポンプによる無脈流送液,流路容積の微量化などにより,50μLの試料で良好なフロンタルパターンが得られるようになった。2.微量FGC理論の確立。微量FGCシステムの実態に基づくモデル化を行い,厳密な計算機シミュレーションを実施して,FGCが微量スケールでも理論的に保証されることを示した。理論的予測パターンと実測パターンはよく一致し,微量FGCの信頼性を証明できた。3.ヒト血清アルブミンと結合部位マーカーリガンドとの結合曲線の精密測定。X線結晶構造から主結合部位が明らかになっているリガンド(ワーファリンやトリヨード安息香酸など)に対する結合曲線を微量FGCで広いリガンド濃度範囲で測定し,溶液中での結合パラメーターをはじめて系統的に測定した。現在,ヒト血清アルブミンの結合データベースの構築を進めている(従来のデータは測定条件がまちまちな上、結合曲線の一部しか測定していないので,利用価値が低い)。4.個体別ラット血清アルブミンの精密結合機能測定。100マイクロリットルの個体別ラット血清から2ステップでアルブミンを精製し,そのS-ワーファリン結合曲線を測定することに成功した。これにより,微量FGCの臨床検査への応用の道が開けた。
KAKENHI-PROJECT-18590528
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590528
EBV感染がん細胞増殖を促進するウイルス遺伝子発現の分子機構とその制御
本研究ではEBV陽性がん細胞維持に重要なLMP1及びBZLF1の遺伝子発現機構を明らかにすることを目的とした。(1)潜伏感染II型におけるLMP1遺伝子の発現を調節する因子の同定:潜伏感染II型におけるウイルス癌遺伝子LMP1の発現の分子機構の一端を明らかにした。LMP1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に同定するために、cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、新規転写因子としてC/EBPεを同定した。LMP1には近位(ED-L1)、遠位(TR-L1)の二つのプロモーターが存在するが、近位のプロモーター上の特定部位にC/EBPが結合することで近位と遠位の両プロモーターを活性化することが分かった。C/EBP結合部位に変異を加えた組換えウイルスではLMP1の発現量が減少し、さらに、shRNAを用いてC/EBPをノックダウンさせると、LMP1タンパク質の発現量が減少することが分かった。(2)EBV潜伏感染の維持に関与する転写因子の同定: BZLF1プロモターの発現制御がEBVの潜伏感染の維持とウイルス産生感染への再活性化の鍵を握っている。BZLF1プロモター(Zp)を活性化する新規宿主転写因子を同定する為にcDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、MEF2B, KLF、b-zip因子等を見いだしている。これらの結合部位に変異を導入した組替えEBV BACDNAをそれぞれ作成し、HEK293細胞にトランスフェクションすることによりそれぞれの組替えEBウイルスが潜伏感染する細胞株を樹立した。b-zip因子の結合部位に変異を持つEBV潜伏感染細胞ではBZLF1の発現量が顕著に低下したが、KLFの結合部位変異株ではあまり影響しなかった。MEF2の結合部位変異株ではBZLF1の発現量は顕著に低下した。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では(1)LMP遺伝子発現調節機構と(2)EBV潜伏感染からの再活性化の分子機構の解明を目的としている.(1)潜伏感染LMP1遺伝子の発現を調節する因子の同定:LMP1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に同定するために、cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、LMP1プロモーターを活性化する宿主因子の探索を行った。これまでに2万個以上のクローンを精査した結果、新規転写因子としてC/EBPεを同定した。C/EBPα,β,γ,ε,ζのうちC/EBPα,β,εが特に強力にLMP1プロモーターを活性化することを明らかにした。また、LMP1には近位(ED-L1)、遠位(TR-L1)の二つのプロモーターが存在するが、近位のプロモーター上の特定部位にC/EBPが結合することで近位と遠位の両プロモーターを活性化することが分かった。C/EBP結合部位に変異を加えた組換えウイルスではLMP1の発現量が減少し、さらに、shRNAを用いてC/EBPをノックダウンさせると、LMP1タンパク質の発現量が減少することが分かった。LMP1の発現を制御する薬剤探索ではHSP90の阻害剤がLMP1の発現を減少させることを見いだした。(2)EBV潜伏感染からの再活性化に関与する転写因子の同定:潜伏感染からウイルス産生感染への切替えに必須なBZLF1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に同定するために、cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行した。その中でb-Zip型転写抑制因子c-Jun dimerization protein 2(JDP2)が、BZLF1プロモーターに結合し、BZLF1の転写を抑制することでウイルスの再活性化を抑制し、潜伏感染の維持に貢献していることを見いだした。JDP2を過剰発現するとEBウイルス再活性化は抑制され、逆にsiRNAによりJDP2をノックダウンすると再活性化が促進された。JDP2はBZLF1プロモーター上のZIIと呼ばれるシスエレメントに結合し、ヒストン脱アセチル化酵素のひとつであるHDAC3をプロモーター上にリクルートすることでBZLF1の発現を抑制していることを確認した。本研究ではEBV陽性がん細胞維持に重要なLMP1及びBZLF1の遺伝子発現機構を明らかにすることを目的とした。(1)潜伏感染II型におけるLMP1遺伝子の発現を調節する因子の同定:潜伏感染II型におけるウイルス癌遺伝子LMP1の発現の分子機構の一端を明らかにした。LMP1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に同定するために、cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、新規転写因子としてC/EBPεを同定した。LMP1には近位(ED-L1)、遠位(TR-L1)の二つのプロモーターが存在するが、近位のプロモーター上の特定部位にC/EBPが結合することで近位と遠位の両プロモーターを活性化することが分かった。C/EBP結合部位に変異を加えた組換えウイルスではLMP1の発現量が減少し、さらに、shRNAを用いてC/EBPをノックダウンさせると、LMP1タンパク質の発現量が減少することが分かった。(2)EBV潜伏感染の維持に関与する転写因子の同定: BZLF1プロモターの発現制御がEBVの潜伏感染の維持とウイルス産生感染への再活性化の鍵を握っている。BZLF1プロモター(Zp)を活性化する新規宿主転写因子を同定する為にcDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、MEF2B, KLF、b-zip因子等を見いだしている。
KAKENHI-PUBLICLY-23114512
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23114512
EBV感染がん細胞増殖を促進するウイルス遺伝子発現の分子機構とその制御
これらの結合部位に変異を導入した組替えEBV BACDNAをそれぞれ作成し、HEK293細胞にトランスフェクションすることによりそれぞれの組替えEBウイルスが潜伏感染する細胞株を樹立した。b-zip因子の結合部位に変異を持つEBV潜伏感染細胞ではBZLF1の発現量が顕著に低下したが、KLFの結合部位変異株ではあまり影響しなかった。MEF2の結合部位変異株ではBZLF1の発現量は顕著に低下した。24年度が最終年度であるため、記入しない。LMP1及びBZLF1の発現調節を行う新規の転写因子を同定し、その解析を遂行し、publishすることができ、おおむね目的を達成した。24年度が最終年度であるため、記入しない。LMP1プロモーター及びBZLF1プロモーター上にあるこれまで報告のある転写調節因子の結合部位に変異を導入した組替えウイルスを作成し、感染のレベルで表現系がどのように変わるのかを検討する。
KAKENHI-PUBLICLY-23114512
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アーカイブズの特性を反映した記述規則の開発に向けた研究
古文書から現代の電子文書に至る大量で多様なアーカイブズ資料を的確に検索できる目録やデータベースを作るには、これらの資料の特性を十分に考慮した記述のルールを予め定める必要がある。本研究では、図書館界の目録規則との比較や、国内外の記述標準及び記述実態の調査に基づき、アーカイブズ記述において特に重要なのは、資料を個別的にではなく複数資料から構成される集合体として把握し表現する「集合的記述法」の開発であることを明らかにした。古文書から現代の電子文書に至る大量で多様なアーカイブズ資料を的確に検索できる目録やデータベースを作るには、これらの資料の特性を十分に考慮した記述のルールを予め定める必要がある。本研究では、図書館界の目録規則との比較や、国内外の記述標準及び記述実態の調査に基づき、アーカイブズ記述において特に重要なのは、資料を個別的にではなく複数資料から構成される集合体として把握し表現する「集合的記述法」の開発であることを明らかにした。本研究は、アーカイブズ資料の記述を制御する諸規則の整備によって、検索性能の向上、コストの削減を図るため、日本のアーカイブズに適した記述規則の要件について検討するものである。現用記録とアーカイブズを一体的に把握する立場から、国内外のアーカイブズ学及び文書管理論の成果の統合を志向する。関連分野における記述規則の研究も参照しつつ、日本における記録記述の実態を踏まえた理論と技法を提示する。本年度はまず、アーカイブズ記述研究の世界的動向についての情報を収集すべく、マレーシアで開催された国際アーカイブズ評議会(ICA)の大会に参加した。国際的な記述標準の開発、各国におけるメタデータ研究の進展等について最新の状況を把握するとともに、多くのアーカイブズ学研究者との交流を進めた。また、諸外国及び関連分野における記述規則関連の文献等を収集した。その上で本年度は、北米のアーカイブズ記述規則の分析に重点を置いた。これらは先行して制定されていた図書館界の目録規則をベースにしており、両者の比較によって、アーカイブズの特性やアーカイブズ学の理論・原則が記述規則にどう反映されているのかが明確になる。具体的には、米国のDescribing Archives : A Content Standard(DACS)とカナダのRules for Archival Description(RAD)2008年改訂版を、図書館界の目録規則として英米目録規則第2版(AACR2)をそれぞれ取り上げた。各規則の全体的な構成と記述項目の構成について比較した後、「タイトル」「日付」「数量」の各項目に関する個々の規定内容について分析した。その成果を「研究発表」に記した論文において発表した。本研究は、アーカイブズ資料の記述を制御する諸規則の整備によって、検索性能の向上、記述コストの削減を図るため、日本のアーカイブズに適した記述規則の要件について検討するものである。関連分野における記述規則の研究も参照しつつ、日本における記録記述の実態を踏まえた理論と技法を提示する。1.国内のアーカイブズ記述実態の調査膨大かつ多様なアーカイブズ資料を効率的に検索するためには、フォンドやシリーズのレベルを単位とする「集合的記述」を基本とする方式が有効であるとされる。この方式の日本における適用状況と今後の展開についての検討材料を得るために、国内の都道府県文書館の公文書検索手段(30機関、約82,000件分)を対象に、その記述レベル、記述要素およびタイトル記述についての調査を実施した。その成果として、2010年8月、米国テキサス州で開催された米国アーキビスト協会・米国州文書館長会議の合同年次大会において口頭発表を行った。2.アーカイブズ記述実態の国際比較上記の実態調査の結果に基づき、アーカイブズ記述の理論と原則をめぐる欧米と日本の相違点を明確化した上で、それを生み出す要因と背景について考察した。その成果として、2010年3月、中国人民大学(中国・北京市)で行われた同大学情報資源管理学院との研究交流会において口頭発表を行った。3.米国のアーカイブズ検索手段の実態調査上記の調査等から、日本には集合的記述の方式を用いたアーカイブズ検索手段の実例が少なく、その特徴や意義も十分に理解されているとはいい難いことが判明した。そのような日本の状況との対比を図るべく、この方式が発達した米国において開発されている現代公文書の検索手段の実際について調査を実施した。その成果として執筆した論考が、『国文学研究資料館紀要アーカイブズ研究篇』に掲載された。
KAKENHI-PROJECT-20700232
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造血調節因子とそのレセプターによるシグナル伝達機構
新井らはGM-CSF受容体bc鎖の細胞内領域の全てのチロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異体はGM-CSF依存性の細胞増殖シグナルの伝達、STAT5,MAPKの活性化を誘導することはできないがJak2を活性化することができ、しかもJak2特異的阻害剤AG-490によって阻害される抗アポトーシス効果をもつことを示した。宮島らは、IL-3/GM-CSFなどで活性化されるSTAT5の標的遺伝子をを検索する過程でマウスOncostatinM(OSM)遺伝子をクローニングし、その受容体の解析から、ヒトとは異なり、マウスではOSMとLIFは受容体を共有しないことを明らかにした。OSMは生体の骨髄で強く発現しているが、骨髄由来の血球には作用しない。一方、OSMは胎生期のAGM領域での発現が認められ、AGMでの造血発生を強く促進することを明らかにした。高津らは、ヒトIL-5受容体a鎖にはJak2が、b鎖にはJak1が構成的に会合しており、IL-5刺激によって初めて両鎖の会合およびJak2の活性化が誘導され、さらにJak1、Shc、Vav、PI3kinaseの活性化が惹起されることを示した。長田らは、好中球に特異的に発現するZn-figerをもつ転写因子mMZF-2のcDNAを単離し、その構造解析によりこの因子はは814アミノ酸からなりN-末端部位には転写抑制部位、中央部には骨髄細胞特異的に作用する転写誘導部位、C-末端部位にはZn-fingerが13個からなるDNA結合部位があることを同定した。杉山らはWT1遺伝子を導入したマウス32Dc13細胞では、野生型では分化を誘導するG-CSFに反応して分化せずに増殖を始めること、さらにこの際Stat3a,Stat3bの活性化がみられたことによりWT1遺伝子の造血細胞におけるoncogenicな機能を検証した。富田らは、マウス骨髄性白血病細胞で発現させたGM-CSF受容体とLIF受容体のキメラ分子を解析し、LIF受容体細胞内領域のホモダイマーが細胞増殖停止と分化誘導のシグナルを伝達できること、及びSTAT3の活性化と分化誘導とに相関があることを示した。松島らは、ヒトCD34陽性、マウスLin陰性c-kit陽性造血幹細胞はCCR1を発現するが、IL8Rを発現しないこと、CCR1は赤芽球系前駆細胞にも発現し、MIP-laがBFU-Eを抑制することを示し、in vitroでのマウス造血幹細胞からケモカイン受容体を発現する樹状突起細胞の分化誘導に成功し、さらにマウスLin陰性c-kit陽性造血幹細胞にそれぞれ独立に樹状突起細胞に分化するCD11b_-/dullCD11_<c+>とCD11_<+hi>CD11_<c+>の2つの樹状突起前駆細胞のサブセットがあることを示した。溝口らは彼らが樹立したヒト巨核球系細胞株Meg-Jにインドロカルバゾール系化合物であるK-252aを添加すると、著明に多倍体化するとともに成熟巨核球への分化傾向を示し、この多倍体化過程において、cdc2、サイクリンB1の発現およびcdc2活性は一過性の上昇が認められたのちに急速に減少したことを見い出し、M期を完遂しない巨核球の多倍体化過程においてcdc2キナーゼ活性は一過性に発現し、その特異的変動が多倍体化に関連していることを示した。新井らはGM-CSF受容体bc鎖の細胞内領域の全てのチロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異体はGM-CSF依存性の細胞増殖シグナルの伝達、STAT5,MAPKの活性化を誘導することはできないがJak2を活性化することができ、しかもJak2特異的阻害剤AG-490によって阻害される抗アポトーシス効果をもつことを示した。宮島らは、IL-3/GM-CSFなどで活性化されるSTAT5の標的遺伝子をを検索する過程でマウスOncostatinM(OSM)遺伝子をクローニングし、その受容体の解析から、ヒトとは異なり、マウスではOSMとLIFは受容体を共有しないことを明らかにした。OSMは生体の骨髄で強く発現しているが、骨髄由来の血球には作用しない。一方、OSMは胎生期のAGM領域での発現が認められ、AGMでの造血発生を強く促進することを明らかにした。高津らは、ヒトIL-5受容体a鎖にはJak2が、b鎖にはJak1が構成的に会合しており、IL-5刺激によって初めて両鎖の会合およびJak2の活性化が誘導され、さらにJak1、Shc、Vav、PI3kinaseの活性化が惹起されることを示した。長田らは、好中球に特異的に発現するZn-figerをもつ転写因子mMZF-2のcDNAを単離し、その構造解析によりこの因子はは814アミノ酸からなりN-末端部位には転写抑制部位、中央部には骨髄細胞特異的に作用する転写誘導部位、C-末端部位にはZn-fingerが13個からなるDNA結合部位があることを同定した。杉山らはWT1遺伝子を導入したマウス32Dc13細胞では、野生型では分化を誘導するG-CSFに反応して分化せずに増殖を始めること、さらにこの際Stat3a,Stat3bの活性化がみられたことによりWT1遺伝子の造血細胞におけるoncogenicな機能を検証した。
KAKENHI-PROJECT-06277101
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造血調節因子とそのレセプターによるシグナル伝達機構
富田らは、マウス骨髄性白血病細胞で発現させたGM-CSF受容体とLIF受容体のキメラ分子を解析し、LIF受容体細胞内領域のホモダイマーが細胞増殖停止と分化誘導のシグナルを伝達できること、及びSTAT3の活性化と分化誘導とに相関があることを示した。松島らは、ヒトCD34陽性、マウスLin陰性c-kit陽性造血幹細胞はCCR1を発現するが、IL8Rを発現しないこと、CCR1は赤芽球系前駆細胞にも発現し、MIP-laがBFU-Eを抑制することを示し、in vitroでのマウス造血幹細胞からケモカイン受容体を発現する樹状突起細胞の分化誘導に成功し、さらにマウスLin陰性c-kit陽性造血幹細胞にそれぞれ独立に樹状突起細胞に分化するCD11b_-/dullCD11_<c+>とCD11_<+hi>CD11_<c+>の2つの樹状突起前駆細胞のサブセットがあることを示した。溝口らは彼らが樹立したヒト巨核球系細胞株Meg-Jにインドロカルバゾール系化合物であるK-252aを添加すると、著明に多倍体化するとともに成熟巨核球への分化傾向を示し、この多倍体化過程において、cdc2、サイクリンB1の発現およびcdc2活性は一過性の上昇が認められたのちに急速に減少したことを見い出し、M期を完遂しない巨核球の多倍体化過程においてcdc2キナーゼ活性は一過性に発現し、その特異的変動が多倍体化に関連していることを示した。1.新井等はGM-CSF,IL-3,IL-5のレセプターに共通のβ鎖の遺伝子破壊マウスを作製した。このマウスは好酸球の異常が見られたが大きな造血障害はなく、そのかわり肺胞蛋白症が認められた。GM-CSF遺伝子破壊マウスでも造血異常はなく、肺胞蛋白症を生じる。このことによりGM-CSF,IL-3が恒常的造血には必須ではないことが明らかとなった。またhGM-CSFレセプターα,β両鎖を発現するトランスジェニックマウスを作製した。その結果、機能的hGM-CSFレセプターからのシグナルはほとんど全ての血液前駆細胞の増殖を引き起こしうる明らかとなった。2.高津等はIL-5刺激後、Vav,Shc,PI-3 kinase,HS1などのチロシンリン酸化およびBtk,JAK2などのチロシンキナーゼの活性化が起こることを明らかにし、IL-5レセプターの下流においてMAPキナーゼ経路、PI-3キナーゼシグナル伝達系やJAKキナーゼ経路などの複数のシグナル経路が連動していることを証明した。3.長田等はG-CSFによって好中球で特異的に誘導されるミエロペルオキシダーゼ(MPO)遺伝子の発現を制御するcis-elementを転写開始点の約1kb上流に同定した。4.杉山等は急性骨髄生白血病(AML)細胞が機能的なIL-6レセプターを有していることを明らかにし、AML発症進展にIL-6が関与している可能性を示唆した。5.溝口等は血小板産生に関するIL-11の関与を検討し、純化したヒト巨核球にはIL-11mRNAが認められずIL-11によるオートクリン機構の存在が否定的であることを示した。新井等はhGM-CSFレセプターシグナルの下流でJAKキナーゼの活性化が必須であることをdominant negative JAKを用いて明らかにした。またβ鎖の複数のチロシン残基がリン酸化されことを示し、各々により伝達されるシグナル分子を解析した。高津等はIL-5レセプターα鎖欠損マウスを作製した。このマウスは正常に発育し、巨視的な異常は認められなかったが、IL-5の広東糞線虫感染による好酸球増多が障害されていた。長田等はG-CSFレセプターのアミノ酸置換
KAKENHI-PROJECT-06277101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06277101
代数的性質を用いた新しい統計解析手法の開発
代数的な統計モデルに対する,全く新しい代数的な推定量を提案し,その推定法手式とその解(推定値)を計算する方法を実際に示した.この推定量は漸近有効性と尤度方程式の低次性の両方を実現する.これは,「統計学的な有効性と代数計算の簡便性のトレードオフの解析」という全く新しい研究の可能性を示したという点でも重要である.一方,デンドログラムデータの幾何学的な特徴を用いた新しい検定手法を提案し,その理論的妥当性を示した.また,それを用いて,被験者群間の英単語心内辞書の差異の有無を検定した.本研究は,複数の国際会議や論文で発表された.計算機代数学とは,グラブナー基底に代表される代数学的手法や多項式計算アルゴリズム等の研究分野であり,近年ソフトウェアの開発と普及が進んでいる.本研究ではこれを用いて統計学的に有効な推定量を計算することが目的である.具体的には,ポアソン分布や多項分布などの分割表モデルや,ガウス分布で共分散行列に多項式制約がつく場合など,モデルが多項式を用いて表される場合を考える.この場合において,まずフィッシャー情報量やアファイン接続,埋め込み曲率などの情報幾何学的量を代数的に計算し,二次漸近有効性の十分条件をこれらを用いて表した.次に,この二次漸近有効な推定量のクラスの推定方程式は代数的に単純な形をしていることを利用し,その中に2次以下の連立多項式方程式で表されるようなものが存在することが示される.また,尤度方程式からグレブナー基底による剰余を行うことにより,その連立多項式方程式を導出することができる.多項式の次数が下がると,ホモトピー連続化法などの数値計算手法を用いた推定値の計算の計算量を大幅に削減できるという利点がある.この他,代数統計学の分野との共通点も多いTree Spaceという木のグラフの集合に関する理論とアルゴリズムを応用した,デンドログラムデータに関するデータ解析手法とその理論についてTechnical Report(arXiv)に公表し,雑誌に投稿した.さらに,データ空間の距離を変換し,クラスタリングや判別分析に応用する新たな手法を提案し,arXivに公表した.本年度はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのHenry Wynn教授のもとに一ヶ月滞在し,交付申請書の研究実施計画のプロトタイプの一つであった,代数的計算手法を用いた統計的漸近推定理論とアルゴリズムを,幾何学的統計,情報に関する国際学会GSI2013に投稿し,審査員からの高い評価で受理された.(審査員3人の平均が5点満点で4.7)また,この研究とは別に,ロンドン・スクールオブ・エコノミクス滞在中にWynn教授と,データの複雑な構造に基づく新しい距離規準についての研究を開始した.これは,代数学を用いた新しいデータ構造の記述,解析手法の提案であり,次年度の研究課題となった.また,データが木構造を持つような英単語心内辞書データの並べ替え検定の改良,木グラフの集合がなす単体的扇上の測地距離を用いた検定手法の改良を行った.また共同研究者の折田充教授(熊本大学)を始めとする英語学習研究者グループによる新たな実験により採取されたデータを用いての解析を行い,それらについて行動計量学会でセッション講演を行った.さらに,同じ尤度関数とサンプルを用いてベイズ解析した際の,2つの事後分布間の「遠さ」は,その規準をうまく設定してやると,(具体的にはDe Robertis分離度とよばれる手法を用いて両者の分離度を測ると)事前分布の関数のみで上から抑えられることを研究代表者は既に発表している.この内容をDe Robertis分離度以外に拡張する際に,凸性やダイバージェンス理論が重要な役割を果たすことを示し,国際学会IMS2013や統計関連学会連合大会などで発表した.本研究の内容は,大規模ランダム行列への応用が期待される.本研究では,代数的な計算手法やアルゴリズムを用いて既存の統計的解析手法を,統計的有効性や計算量の観点から改良することを目指している.本年度は,これまで研究してきた(1)1次,2次の漸近有効性をもつ推定量の代数的な特徴付け,(2)その特徴付けを用いた,グレブナー基底による推定方程式の次数減少の実現,(3)次元減少後の推定方程式のホモトビー連続法での推定値の計算量削減について論文としてまとめたものをGeometric Theory of Information (Signals and Communication Technology)において発表した.また,代数統計の一分野としても注目されているデータ空間の曲率やCAT(k)特性に注目したデータ解析についても,新しい手法を提案し,その理論づけを行った.具体的には,データの分布と,その分布のサポートの空間の距離を経験グラフとよばれる距離グラフ構造で近似し,その辺の長さを指数的に変化させることによりデータ空間の曲率を変化させる.これにより,データ解析や特徴抽出に最適なデータ空間の曲率を選ぶことが可能となる.本成果は国際学会MaxEnt2014で発表され,ProceedingがAIPによって出版された.本研究のようなデータ空間の距離グラフによる近似は,その代数的な特徴を定義付け,評価する上でも重要であり,今後はより代数的な理論や手法の発展が期待される.本研究の目標は代数学を用いた統計学の新しい理論と解析手法を提案することである.特に最終年度である本年は,代数統計の一分野としても注目されている,データ空間の曲率やCAT(k)特性に注目したデータ解析についての新しい手法の提案とその妥当性の理論評価について,より詳細な議論を行いその成果の公表を行った.
KAKENHI-PROJECT-24700288
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代数的性質を用いた新しい統計解析手法の開発
また本研究のもう一つの研究対象であった大規模ランダム行列理論の応用として,生産管理,特にフローショップ型スケジューリングに関する問題に対して,パーコレーションの手法を導入する新しい解析手法を提案した.具体的には,統計物理や確率論で研究されているサイトパーコレーションの理論を用いてフローショップの総処理時間(メイクスパン)の漸近的な分布を評価した.特に,フォワード法,バックワード法のメイクスパン関数は漸近的に,shape functionとよばれる関数と一致し,ハイブリッド法とよばれるスケジューリング手法では,二つのshape functionを足し合わせたものとなった.本成果は国際会議で発表された.また,本科研費研究全体を通しての大きな成果の一つは,(1)1次,2次の漸近有効性をもつ推定量の代数的な特徴づけ,(2)その特徴づけを用いた,グレブナー基底を用いた代数計算による推定方程式の次数減少の実現,(3)次元減少後の推定方程式のホモトピー連続法での推定値の計算量削減についての結果をまとめて,論文,国際学会で発表したことである.この手法は,統計学的な有効さを保証しつつ,推定方程式の次数が抑えられ計算が容易な新しい推定量を作る.これは,最尤推定法などの既存の推定量の推定方程式の次数を計算機代数を用いて評価するといったこれまでの代数統計学のアプローチとは全く異なり,その新規性は論文査読者から高い評価を得た.代数的な統計モデルに対する,全く新しい代数的な推定量を提案し,その推定法手式とその解(推定値)を計算する方法を実際に示した.この推定量は漸近有効性と尤度方程式の低次性の両方を実現する.これは,「統計学的な有効性と代数計算の簡便性のトレードオフの解析」という全く新しい研究の可能性を示したという点でも重要である.一方,デンドログラムデータの幾何学的な特徴を用いた新しい検定手法を提案し,その理論的妥当性を示した.また,それを用いて,被験者群間の英単語心内辞書の差異の有無を検定した.本研究は,複数の国際会議や論文で発表された.本年度はこれまでの成果を論文として発表し,多くの研究者から本研究の独創性について評価的なフィードバックをうけた.予定していた大規模ランダム行列の研究については,スケジューリング問題への応用に関する共同研究を開始したが,成果の発表は次年度となる予定である.一方,データ空間の距離グラフ近似への代数学の応用についての研究を新たに開始した.統計科学次年度は本科研費の最終年度となるため,成果のまとめと公表をさらに進める.特に,Algebaraic Statistics Conference 2015に参加,発表する.また,主たる共同研究者のHenry Wynn教授(London School of Economics)を招待し,研究のまとめと今後の方針についての研究打ち合わせを行う.さらに,大規模ランダム行列の応用,データ空間の距離グラフ近似に関する研究についても,共同研究者との打ち合わせと成果の公表を行う.
KAKENHI-PROJECT-24700288
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700288
会計基準のコンバージェンスにおける基準開発の作用因・要点の解明
国際会計基準審議会が進めている単一の高品質な会計基準の開発においては,企業の意図を捨象して,取引の経済的現象面だけに焦点を当てる方向性が確認されるとともに,その経済的現象に関する具体的な会計基準の開発が,概念フレームワークとの演繹的な関係に加えて,個々の会計基準間の整合性という観点も取り入れらたマトリックス構造の様相を呈している。さらに,そこでは,演繹性と整合性の比重の置き方に揺らぎが見出される。国際会計基準審議会が進めている単一の高品質な会計基準の開発においては,企業の意図を捨象して,取引の経済的現象面だけに焦点を当てる方向性が確認されるとともに,その経済的現象に関する具体的な会計基準の開発が,概念フレームワークとの演繹的な関係に加えて,個々の会計基準間の整合性という観点も取り入れらたマトリックス構造の様相を呈している。さらに,そこでは,演繹性と整合性の比重の置き方に揺らぎが見出される。会計基準のコンバージェンスとともに,いわゆる概念フレームワークのコンバージェンスも進められている。国際会計基準審議会(IASB)/米国財務会計基準審議会(FASB)は,整合性を備えた原則に明確に基づいた会計基準を共通の目標とするとともに,この整合性を備えた原則は,慣習の集合でなく基礎概念に基づいたものでなければならないという考えを共有し,原則ベースの収斂した基準を開発するための基礎概念を提示するとともに,市場,実務や経済環境の変化を反映するべく,現行の概念フレームワークをアップデートし,かつ精巧なものにするよう進められている。本年度は,会計基準の開発の基礎となる概念フレームワークに関するIASB/FASBの共同プロジェクトのうち,IASBが2010年9月に公表した『財務報告のための概念フレームワーク2010』(『2010FW』)について考察を行った。すなわち,『2010FW』が,IASBの会計基準の開発に対して有する含意を明らかにすることを目的として,まず,『財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク』における目的適合性と信頼性の意義ならびにその関係を確認した。次いで,『2010FW』の質的特性について,質的特性に関する信頼性から忠実な表現への変更,階層構造および基本的質的特性の適用を考察し,『2010FW』がIASBの会計基準の開発に対して有する含意を抽出した。それは,『2010FW』は,IASBの会計基準が,実体の意図に基づいた取引を分析し,これを表現するというよりも,実体の意図から切り離された現象を表現することを示唆している。すなわち,会計基準が,現象からの推論に基づいたものとして開発されることをも含意しているということである。前年度に実施した研究では,国際会計基準審議会(IASB)が2010年9月に公表した『財務報告のための概念フレームワーク2010』(『概念フレームワーク』)の考察を通じて,IASBの開発する会計基準が,実体の意図に基づいた取引を分析し,これを表現するというよりも,実体の意図から切り離された現象を表現することを示唆している点を明らかにした。そこで,本年度は,『概念フレームワーク』と国際財務報告基準(IFRS)との関係を整理し,金融商品,法人所得税およびリースに関する会計基準の開発を検討することを通じて,IASBによるIFRS開発の特徴の抽出を図っている。まず,『概念フレームワーク』と原則主義に基づく会計基準はともに,単一の会計モデルを志向していると捉え,このような志向に沿って原則主義に基づく会計基準の開発を行うならば,有用となる可能性のある経済現象の定義に基づいて,最も目的適合性が高いと判断する規準,あるいは,その測定属性を決定する規準が,原則主義において核となる原則になるとの整理を行った。次いで,金融商品,法人所得税,およびリースに関するIFRSの開発にみられた事業モデルという考え方の検討を行った。ここでは,事業モデルが『概念フレームワーク』と原則主義に基づく会計基準とを接合する機能を果たし得る可能性に着目していたが,この考え方は,会計上の分類が測定属性あるいは利益計算に関係している場合に,分類されたカテゴリー間の変更を抑制するものとして導入されたものに過ぎないと言わざるを得ないものであった。したがって,IFRSの開発においては,『概念フレームワーク』と原則主義に基づく会計基準との演繹的な関係がピールミール化しており,これに加えて,IFRS相互間の整合性という観点も存在しおり,いわばマトリックス構造の様相を呈しており,かつ,それらの比重の置き方に揺らぎが見いだされる。
KAKENHI-PROJECT-22730375
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22730375
食品成分の分離・除去への磁性化技術の活用
磁性化技術を用いて性状の異なる2種類の食品中の成分の分離・除去を試験した。茶抽出液中のカテキン類とカフェインの分離,エステル型カテキンと非エステル型カテキンの分離,及び卵黄中のコレステロールの効率的な除去方法を試験した。Fe2+とFe3+イオンのアルカリ共沈により調製したマグネタイトにより各々の吸着剤の磁性化を行った。茶抽出液中のカフェイン,エステル型カテキンの分離は磁性化-活性白土,-PVPP,-コラーゲンにより〓過,遠心分離を行うことなく簡易に行うことができた。卵黄中のコレステロールの除去はβ-CDとコレステロールとの包接体をあらかじめ作成し調製した磁性化(鋳型)β-CDにより行った。磁性化技術を用いて性状の異なる2種類の食品中の成分の分離・除去を試験した。茶抽出液中のカテキン類とカフェインの分離,エステル型カテキンと非エステル型カテキンの分離,及び卵黄中のコレステロールの効率的な除去方法を試験した。Fe2+とFe3+イオンのアルカリ共沈により調製したマグネタイトにより各々の吸着剤の磁性化を行った。茶抽出液中のカフェイン,エステル型カテキンの分離は磁性化-活性白土,-PVPP,-コラーゲンにより〓過,遠心分離を行うことなく簡易に行うことができた。卵黄中のコレステロールの除去はβ-CDとコレステロールとの包接体をあらかじめ作成し調製した磁性化(鋳型)β-CDにより行った。通常,食品中から特定成分を除去,抽出するには,溶媒抽出,カラム操作,ろ過や遠心分離工程を必要とし,大規模で煩雑な操作が必要である。特に粘性の高い食品では水で希釈後に,カラム操作や濾過工程を行う必要があり,懸濁状食品ではこれらの操作は不可能である。本研究では,これらの操作を行わず,磁性粒子とそれを付着する磁石を利用した簡易な方法により可溶化食品,懸濁液状食品などに含まれる微量成分や不要成分を除去,分離する技術の確立を目的とする。本年度は可溶化液状食品である茶抽出液中のポリフェノール類とカフェインの分別分離を磁性粒子を用いて試験した。分離の評価は茶ポリフェノール類中,最も含有量の多いエピガロカテキンガレート(EGCg)とカフェインの含有量の比較によった。磁性粒子の調製の第1段階は,Fe^(2+)とFe^(3+)の水溶液でのアルカリ共沈によりマグネタイト(Fe_3O_4)粒子を調製した。次いでカフェイン除去に適した担体として活性白土を選択し,第2段階としてマグネタイト(Fe_3O_4)とカフェイン除去能を有する担体(活性白土)との複合体を酸性条件下で調製した。粒径はマグネタイトが約1.2μm,磁性化活性白土が約9.6μmであった。磁性化活性白土で緑茶抽出液を処理した結果(50mg/ml添加),残存率はEGCgが91.7%,カフェインは10.2%でありカフェインの約90%が除去されることが確認された。磁性化活性白土の添加量を増やすことによりカフェイン除去率は更に向上した。本年度の試験により,磁性化活性白土を用いることにより,茶抽出液中のポリフェノール類とカフェインの簡易な分別分離が可能であることが確認された。本研究では,カラム操作,ろ過や遠心分離などの煩雑な工程を必要とせずに磁性粒子とそれを付着する磁石を利用した簡易な方法により可溶化食品,懸濁液状食品に含まれる微量成分や不要成分を除去,分離する技術の確立を目的とする。本年度は,緑茶抽出液中のポリフェノール化合物を選択的に吸着するポリビニルポリピロリドン(PVPP)を磁性化することにより,磁石を用いた分離技術によるカフェインとポリフェノール化合物との分離を試験した。磁性粒子の調製は,Fe^<2+>とFe^<3+>の水溶液のアルカリ共沈によりマグネタイト(Fe_3O_4)粒子を調製後,マグネタイトとPVPPとの磁性化複合体を作製した。磁性化PVPPで緑茶抽出液を処理した結果(40mg/ml添加),残存率はエピガロカテキンガレートが6.2%,カフェインは88.7%であった。磁性化PVPPを用いることにより,ろ過や遠心分離の操作を行うこと無く,磁石を用いた簡易操作によりカフェインとポリフェノール化合物の選択的な分離が可能であった。ゾル状食品である卵黄中のコレステロールの除去は,これまでコレステロール除去効果が報告されているβ-シクロデキストリン(β-CD),サポニン,卵黄タンパク質など数種の素材で試験した。β-CDの20%添加で94.1%のコレステロールが除去され,最も除去率が高かった。同様に試験したβ-CDのポリマーであるβ-CDPでは30%添加で除去率は約10%であり,モノマーとポリマーで除去率に大きな差異が見られた。β-CD,β-CDPの磁性化をマグネタイトとの複合体形成により試みたが,モノマーでは十分な複合体が作成できず,今後磁性化調製法を検討する必要がある。β-CDPの磁性化は磁性化流体とβ-CDP懸濁液との反応により複合体の調製が可能であった。調製した磁性化β-CDPによるコレステロール除去を引き続き試験する予定である。
KAKENHI-PROJECT-22500741
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500741
食品成分の分離・除去への磁性化技術の活用
本研究は磁性化粒子とそれを付着する永久磁石を用いて簡易に可溶化液状食品や懸濁状食品に含まれる特定の成分を分離,除去する方法に関するものである。本年度は,緑茶抽出液中のポリフェノール類のうちエステル型(ガレート型)カテキンの選択的分離について吸着剤としてコラーゲンとカゼインを磁性化し,磁石を用いた分離技術による方法を試験した。磁性化粒子の調製は前年度の方法に従い,マグネタイトとコラーゲン,カゼインとの複合体形成により磁性化吸着剤を調製した。吸着剤処理後の緑茶抽出液をHPLC分析した結果,磁性化コラーゲンではエステル型カテキン(EGCg, ECg)の吸着が大きく,EGCgの残存率とカフェインや非エステル型カテキン(EC, EGC)の残存率との間に有意な差が認められ,両者の分離が可能であることが明らかとなった。ゾル状食品である卵黄中のコレステロールの除去は,これまでの試験でβ-シクロデキストリン(β-CD)添加でコレステロールが除去されることを確認した。コレステロール1分子をβ-CD 2分子で包接し除去すると考えられ,従来法のマグネタイトとβ-CD1分子の複合体形成では除去効果はほとんどみられなかった。新たな磁性化調製法としてβ-CD水溶液とコレステロール溶液からβ-CD-コレステロール包接体を調製し,この包接体を核にして周囲にマグネタイトを沈着させた磁性化β-CD-コレステロール包接体を得た。次に磁性化β-CD-コレステロール包接体からコレステロールのみを溶剤洗浄により除去した鋳型の磁性化β-CDを調製した。磁性化(鋳型)β-CDは磁石により卵黄液中より容易に回収でき,磁性化β-CDポリマーや鋳型なしの磁性化β-CDよりも卵黄中のコレステロールを効果的に除去することができた。今後は磁性化(鋳型)β-CDのより安定な調製法の検討を行う。茶抽出液中のカフェインとポリフェノール化合物の分離は,カフェインを選択的に吸着する活性白土の磁性化方法の確立とカフェインの選択的除去が可能であることを明らかにした。次いでポリフェノール化合物を選択的に吸着するポリビニルポリピロリドンについても磁性化と分離試験を実施し,有効性を明らかにした。卵黄中のコレステロールの除去は,β-CD,β-CDPを中心に試験し,現在,β-CDPの磁性化方法を確立し,コレステロール除去効果を試験中であり,ほぼ計画通り達成している。24年度が最終年度であるため、記入しない。茶抽出液では,ポリフェノール化合物中,EGCgなどガレート型カテキンを選択的に吸着する吸着剤の磁性化を行い,ガレート型カテキンとカフェインとの選択的分離方法を試験する。卵黄中のコレステロール除去は,β-CDPの磁性化前後の除去効率及び他のポリマーであるα-やγ-CDPとの比較,β-CDモノマーの簡易な磁性化方法の検討とポリマーとの除去効率の比較を試験する。以上の試験を通して食品分野への磁性化技術の応用を進める上での基礎的知見の集積を行う。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22500741
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輸送現象の光制御によるレーザー同位体分離
1.気体が高分子膜を透過するには、気体分子の膜内への溶解と膜内での拡散の2つの過程を経なければならない。気体の高分子膜透過は、高分子膜が緻密なものであればレーザー照射により促進され、一方、膨張させた膜では透過が抑制される。このような透過流量の変化が、レーザー照射により、溶解と拡散の2つの過程がどのように変化することよるものであるのかを調べるためには、レーザー照射下での透過総流量の非定常測定(Time Lag測定)を行なった。Time-Lag測定を行なうと拡散係数が求まり、別に測定した透過係数と合わせることにより溶解度も求まる。実験の結果、レーザー照射により透過が促進されるのは、主として、膜内での拡散の活性化エネルギーが減少するためであることが分かった。2.同位体選択性については、膨張させたポリエチレン膜にSF_6を透過させ、炭酸ガスレーザー光で^<32>SF_6あるいは^<34>SF_6を振動励起させることにより、僅かながら同位体間に透過流量の相違を生じさせることが出来た。得られた分離係数の値1.05は、レーザー照射なしにSF_6を透過させる場合の理論値1.007より数倍大きい。この分離の効果は、適当な無機多孔質膜を用いることにより向上させることが出来ると思われるので、新たに研究班を組織して、分離に適した無機多孔質膜の開発に着手した(試験研究(1)、61880020)。1.気体が高分子膜を透過するには、気体分子の膜内への溶解と膜内での拡散の2つの過程を経なければならない。気体の高分子膜透過は、高分子膜が緻密なものであればレーザー照射により促進され、一方、膨張させた膜では透過が抑制される。このような透過流量の変化が、レーザー照射により、溶解と拡散の2つの過程がどのように変化することよるものであるのかを調べるためには、レーザー照射下での透過総流量の非定常測定(Time Lag測定)を行なった。Time-Lag測定を行なうと拡散係数が求まり、別に測定した透過係数と合わせることにより溶解度も求まる。実験の結果、レーザー照射により透過が促進されるのは、主として、膜内での拡散の活性化エネルギーが減少するためであることが分かった。2.同位体選択性については、膨張させたポリエチレン膜にSF_6を透過させ、炭酸ガスレーザー光で^<32>SF_6あるいは^<34>SF_6を振動励起させることにより、僅かながら同位体間に透過流量の相違を生じさせることが出来た。得られた分離係数の値1.05は、レーザー照射なしにSF_6を透過させる場合の理論値1.007より数倍大きい。この分離の効果は、適当な無機多孔質膜を用いることにより向上させることが出来ると思われるので、新たに研究班を組織して、分離に適した無機多孔質膜の開発に着手した(試験研究(1)、61880020)。研究期間中に得られた研究結果から、膜を透過する気体の流量をレーザー光で制御して同位体分離を行なうには、(1)膜内の空隙あるいは空孔の寸法・形状が透過気体の分子直径の尺度でそろっていること、(2)照射に用いるレーザー光に関して膜が透明であること、の少なくとも2つの条件を分離膜が具えていることが必要であり、さらに、(3)レーザー照射による気体透過の抑制効果を用いて同位体分離を行なうには、膜の孔径が透過気体の分子直径より僅かに大きくかつ出来るだけ分子直径に近いこと、が分離効果を大きくするのに必要であると考えられる。炭酸ガスレーザー光を殆んど吸収しないポリエチレン膜で1.05程度の分離係数は得られた。膜を膨張させることで膜内の高分子鎖間隔が確かに透過気体分子の直径程度の大きさにはなっているが、その大きさがそろっていないことと、高分子鎖のセグメント運動を介して振動励起された同位体から他の同位体へのエネルギー移乗が可成り容易に起こることから、膜を用いるレーザー同位体分離には、高分子膜より無機多孔質膜の方が適していると思われるに到った。陽極酸化法で作られた多孔質アルミナ膜の孔は直管状で孔密度が高く、孔径も10nmと小さいので、この膜をもとに孔径を1桁小さくする開発研究に新たに着手した(試験研究(1),61880020)。
KAKENHI-PROJECT-60580178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60580178
史料形態の検討を通じた日朝越比較史研究の基盤形成
本研究は、前近代の日朝越三国における修史(歴史記述)および公文書様式の比較、各言語での成果発表などを通じて、本格的な日朝越三国の、三国及び世界の学界と結びついた比較史研究をおこなうための、方法的な土台作りを図るものである。それは対象の設定や使用言語の面で、従来の「東アジア史」を大きく変え、グローバルヒストリーにも新しい視座を提供できる可能性をもつ。2年間で計4回の研究会(最終回は国際シンポ)を開催して各自の成果を共有したほか、ハノイでの朝越比較史シンポ(2017年3月)でも成果を紹介するなど、多言語による成果発信も進められた。本研究は、前近代の日朝越三国における修史(歴史記述)および公文書様式の比較、英語・中国語を加えた5言語での成果発表などを通じて、本格的な日朝越三国の、三国及び世界の学界と結びついたかたちでの比較史研究をおこなうための、方法的な土台作りを図るものである。それは、研究対象の設定や使用言語の点で、従来の「東アジア世界論」や比較史一般を大きく変えようとしている。計画初年度に当たる本年は、事前のメール等による打ち合わせにもとづき、各自が自己の分担領域での資料収集・分析を進めるとともに、7月に大阪、3月に新潟で研究会を開催した。大阪では各自の専門領域と研究の方向性の紹介を行い、新潟では蓮田(ベトナム)、川西(朝鮮)、井上(日本)がそれぞれ公文書を対象にした研究の進捗状況について報告を行った。比較という点では、井上が日本とベトナムの祭祀関係資料の比較を試みた点が特に新しい。また桃木はベトナムで中世ベトナム(大越)と朝鮮半島(高麗)の制度史の比較に関する雑誌論文掲載と学会発表を行ったが、どちらも歴史書を含む記録のありかたへの検討を背景としている。大阪・新潟の研究会で、問題点の共有ができ、個々の分担にもとづく研究の進展も確認できた。一部で試みられた日越・朝越などの比較と合わせ、ほぼ期待通りの成果と評価できる。ベトナムでの井上の資料収集など、現地での資料収集もまずますの成果があった。修史の研究はやや不十分だったかもしれないが、他方で年度末にハノイで開催されたベトナム史・朝鮮史比較シンポ(学会報告欄参照。オランダの国際アジア研究所主催)に桃木が出席して多くの知見を得るなど、計画スタート時点で予想できなかった収穫もあり、2年目の展開に向けた準備状況としても、トータルで合格点がつけられるであろう。本研究は、前近代の日朝越三国における修史(歴史記述)および公文書様式の比較、各言語での成果発表などを通じて、本格的な日朝越三国の、三国及び世界の学界と結びついた比較史研究をおこなうための、方法的な土台作りを図るものである。それは対象の設定や使用言語の面で、従来の「東アジア史」を大きく変え、グローバルヒストリーにも新しい視座を提供できる可能性をもつ。計画最終年度に当たる今年度は、事前にメール等で打ち合わせた通りにメンバーが研究を進めたほか、8月に大阪大学、2月に新潟大学でそれぞれ研究会を開き、各自の研究成果を報告した。2月の会には韓国(ソウル大学の文淑子教授)・ベトナム(ハノイ国家大学のファム・レー・フイ講師)の研究者や、国内の中国史専門家の参加をえて、財産相続文書の形式・残存状況や都城に関する史書の記述を手がかりに、身分制、政治権力などのあり方や中国モデルのローカライズの様態などについて活発な討論をおこなった。以上の成果をもとに数点の論文等を発表した。他方、計画していた多言語による成果発表がやや遅れているが、ベトナムの修史についての桃木論文の中国語・韓国語訳、日本の文書に関する連携研究者佐藤の論文の英訳(いずれも既発表論文とは別原稿)などがすでに終了している。進行中のその他の論文もまとめて、1冊の報告書として刊行する作業を急ぎたい。また7月に中国で開催される第4回アジア世界史学会(AAWH)大会で、連携研究者3人と中国の研究者による文書研究のパネルが組まれる予定である。これを含め、今後のより本格的な共同研究や人材育成の話し合いも始まっている。本研究は、前近代の日朝越三国における修史(歴史記述)および公文書様式の比較、各言語での成果発表などを通じて、本格的な日朝越三国の、三国及び世界の学界と結びついた比較史研究をおこなうための、方法的な土台作りを図るものである。それは対象の設定や使用言語の面で、従来の「東アジア史」を大きく変え、グローバルヒストリーにも新しい視座を提供できる可能性をもつ。2年間で計4回の研究会(最終回は国際シンポ)を開催して各自の成果を共有したほか、ハノイでの朝越比較史シンポ(2017年3月)でも成果を紹介するなど、多言語による成果発信も進められた。前年度の作業を各自継続するとともに、それぞれの対象に関する三国比較や、中国の原型との比較作業をより意識的に進める。当初の予定通り夏季に大阪、冬季に新潟でそれぞれ研究会を開催し、研究発表・討論をおこなう予定であるが、それ以外でも、「現在までの進捗状況」欄でふれたベトナム史・朝鮮史比較シンポの知見やそこで形成された研究者のネットワークなどを利用して、より幅広い研究・討議を展開したい。また成果発表は多言語による報告書のほか、2018年6月にソウルで開催予定の、第2回ベトナム史・朝鮮史比較シンポでもぜひパネル発表を実現したい。
KAKENHI-PROJECT-16K13278
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13278
史料形態の検討を通じた日朝越比較史研究の基盤形成
東洋史学研究そのものはほぼ順調に進展したが、当初想定していた研究管理のための恒常的なアルバイト雇用をとりやめその謝金が不要になったこと、現段階で必要な朝鮮史料が国内で十分入手でき、韓国渡航が不要になったことなどから、総額で余りが生じた。朝越比較史の国際シンポなど次年度以降に成果報告をすべき場所が増えたため、そちらの論文校閲などの旅費・謝金として使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-16K13278
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3次元物体への高速テクスチャマッピングと文化財のデジタル復元への応用
CGは映画、テレビ番組、ゲームなど応用範囲が拡大している。その基本である幾何学モデルの取得には多大の労力を必要とする。本研究では、3次元物体が実在する場合、形状自体はレーザスキャナーやCTを用いて計測することを前提とした。リアリティのある物体を作り上げるには物体表面の光特性(テクスチャーと光反射)を計測する必要がある。本研究では、デジタルカメラのみを用いる方法を提案する。まずテクスチャーを貼り付ける問題を取り扱った。高速処理するために、階層的マッチング方法を考案した。まず物体のシルエット(外周)を抽出し、1段目:中心からの距離のヒストグラム、2段目:外周距離プロファイル、3段目:低解像度シルエット、4段目:高解像度シルエットの順にマッチングを行い、高速化した。1つの画像で約2030秒、6,1物体では3分程度でテクスチャ取得が完成する。以上の方法は、物体のシルエットを用いてカメラ位置の推定を行っているが、カメラ位置の推定誤差が生ずると、テクスチャが2つの画像で重なる場合、1条の線が2条に見えたりすることがある。テクスチャ画像を用いて、テクスチャをより正確に重ねる方法を提案した。次いで、1枚の画像を用いて、自由曲面を持つ物体の光反射率を測定する方法を提案した。物体表面を色により分類し、(同じ色の領域は同一の反射率を仮定する)、1つの領域では、カメラをハイライトが含まれるようにカメラ位置を設定する。カメラ位置、光源をシルエットより推定して、反射特性の各パラメータを取得することができた。最後に、こうした技術を駆使して、文化財保存のために、実測した。まず豊橋市美術博物館所蔵の三次人形(高さ30cm程度)2個について、テクスチャと光特性を測定した。次いで国重要文化財である豊橋市東観音寺所蔵の多聞天像(高さ約1メートル)と阿弥陀如来座像の手を手持ちレーザスキャナにより取得し、カメラ画像を用いてデジタル保存を行い、提案方法の実用性を実験的に示した.CGは映画、テレビ番組、ゲームなど応用範囲が拡大している。その基本である幾何学モデルの取得には多大の労力を必要とする。本研究では、3次元物体が実在する場合、形状自体はレーザスキャナーやCTを用いて計測することを前提とした。リアリティのある物体を作り上げるには物体表面の光特性(テクスチャーと光反射)を計測する必要がある。本研究では、デジタルカメラのみを用いる方法を提案する。まずテクスチャーを貼り付ける問題を取り扱った。高速処理するために、階層的マッチング方法を考案した。まず物体のシルエット(外周)を抽出し、1段目:中心からの距離のヒストグラム、2段目:外周距離プロファイル、3段目:低解像度シルエット、4段目:高解像度シルエットの順にマッチングを行い、高速化した。1つの画像で約2030秒、6,1物体では3分程度でテクスチャ取得が完成する。以上の方法は、物体のシルエットを用いてカメラ位置の推定を行っているが、カメラ位置の推定誤差が生ずると、テクスチャが2つの画像で重なる場合、1条の線が2条に見えたりすることがある。テクスチャ画像を用いて、テクスチャをより正確に重ねる方法を提案した。次いで、1枚の画像を用いて、自由曲面を持つ物体の光反射率を測定する方法を提案した。物体表面を色により分類し、(同じ色の領域は同一の反射率を仮定する)、1つの領域では、カメラをハイライトが含まれるようにカメラ位置を設定する。カメラ位置、光源をシルエットより推定して、反射特性の各パラメータを取得することができた。最後に、こうした技術を駆使して、文化財保存のために、実測した。まず豊橋市美術博物館所蔵の三次人形(高さ30cm程度)2個について、テクスチャと光特性を測定した。次いで国重要文化財である豊橋市東観音寺所蔵の多聞天像(高さ約1メートル)と阿弥陀如来座像の手を手持ちレーザスキャナにより取得し、カメラ画像を用いてデジタル保存を行い、提案方法の実用性を実験的に示した.平成14年度の研究実績は以下の通りである。1)3次元物体の光反射率の高速測定光反射率の実時間または高速計測法を開発している。これは3次元物体表面に対して,カメラ位置を円弧上に移動させ,角度の異なる10個ほどの画像を取得し同一の場所の画像値の角度依存性からテクスチャの輝度値と(鏡面)反射率を分離する方法である。従来のデジタルカメラでは,連続撮影が出来ないために,工業用モニターカメラを使うことにした。Ikeuchi and Satoによる方法を既にプログラム終了した。現在カメラ位置の同定の精度を上げる努力をしている。2)文化財(木製仏像)のデジタル復元のためのチームワークづくり豊橋市美術博物館と共同で重要文化財のデジタル復元を行うことをスタートする。美術館を訪問し,共同研究を立ち上げた。はじめのステップとして,市販されている瀬戸物の置物3個を豊橋市市民病院のCTスキャナーにより3次元形状を取り終えた。上記の仕事が完成した後,次のステップは美術館が所有する泥人形(東三河工芸品)を同様にCTスキャナーにより形状取得する予定である。平成15年度の研究実績は以下の通りである。1)自由形状3次元物体の取得自由形状物体として,地域医療機関の協力の下に瀬戸物の招き猫と小人(Dwarf)の3次元CT画像を得た。2)美術館所蔵品の3次元形状計測本年度の購入備品の中で大部分を占めるPolhemus社FastScanを購入し,3次元物体の3次元形状を取り込めるようになった。
KAKENHI-PROJECT-14380143
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380143
3次元物体への高速テクスチャマッピングと文化財のデジタル復元への応用
豊橋市市立美術館の協力を得て,所蔵品の中から粘土人形像:天神立像と天神座像の3次元形状測定を行った。3)高速テクスチャマッピングとリフレクタンスの測定1)と2)で得られた3次元物体の写真を撮り,写真を撮った位置を推定して,撮影画像を正確にテクスチャーをマップした。2度ずつ位置をずらせた約30枚の撮影を行い,リフレクタンスを測定した。撮影所要時間は約5分,計算時間は30分程度である。計算時間の殆どは撮影位置推定の計算時間である。測定したリフレクタンスにより,Torrance-Sparrowモデルによりレンダリングを行い,リフレクタンスも考慮した極めてリアルなモデルを作り上げることが出来た。4)3次元物体のWeb表示システム市立博物館用のWeb表示システムを試作した。5)発表国際会議に,論文1編を提出した。CGは映画、テレビ番組、ゲームなど応用範囲が拡大している。その基本である幾何学モデルの取得には多大の労力を必要とする。本研究では、3次元物体が実在する場合、形状自体はレーザスキャナーやCTを用いて計測することを前提とした。リアリティのある物体を作り上げるには物体表面の光特性(テクスチャーと光反射)を計測する必要がある。本研究では、デジタルカメラのみを用いる方法を提案する。まずテクスチャーを貼り付ける問題を取り扱った。高速処理するために、階層的マッチング方法を考案した。まず物体のシルエット(外周)を抽出し、1段目:中心からの距離のヒストグラム、2段目:外周距離プロファイル、3段目:低解像度シルエット、4段目:高解像度シルエットの順にマッチングを行い、高速化した。1つの画像で約2030秒、6,1物体では3分程度でテクスチャ取得が完成する。以上の方法は、物体のシルエットを用いてカメラ位置の推定を行っているが、カメフ位置の推定誤差が生ずると、テクスチャが2つの画像で重なる場合、1条の線が2条に見えたりすることがある。テクスチャ画像を用いて、テクスチャをより正確に重ねる方法を提案した。次いで、1枚の画像を用いて、自由曲面を持つ物体の光反射率を測定する方法を提案した。物体表面を色により分類し、(同じ色の領域は同一の反射率を仮定する)、1つの領域では、カメラをハイライトが含まれるようにカメラ位置を設定する。カメラ位置、光源をシルエットより推定して、反射特性の各パラメータを取得することができた。最後に、こうした技術を駆使して、文化財保存のために、実測した。まず豊橋市美術博物館所蔵の三次人形(高さ30cm程度)2個について、テクスチャと光特性を測定した。次いで国重要文化財である豊橋市東観音寺所蔵の多聞天像(高さ約1メートル)と阿弥陀如来座像の手を手持ちレーザスキャナにより取得し、カメラ画像を用いてデジタル保存を行い、提案方法の実用性を実験的に示した。
KAKENHI-PROJECT-14380143
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脳腫瘍化学療法における多剤耐性現象の克服
99mTc-MIBIは、心筋血流測定用に開発されたトレーサーであり急速相(early image)は血流の要素を反映する。P糖蛋白発現を介した腫瘍細胞への集積は緩徐相(delay image)として出現すると考えられ、臨床例を用いた経時的な撮像の結果early imageはトレーサー静脈内投与15分後、delay imageは3時間後に撮像するのが適切と考えられた。2)99mTc-MIBIトレーサーを用いた脳腫瘍臨床例の検討(201Tl-SPECTとの比較);99mTc-MIBIトレーサーを用いた核医学イメージングにおいて、腫瘍部はheterogeneousな集積像を示し、同一腫瘍内でも腫瘍細胞、腫瘍血管に発現するP糖蛋白に量的あるいは質的差異が存在する可能性が示唆された。腫瘍細胞膜のNa-K channelの活性を反映する201Tl-SPECT像との比較では、両者の画像所見に相関は見られず、99mTc-MIBI集積像は従来悪性度の指標とされる201Tl-SPECT像とは独立した現象を見ていることが確認された。3)P糖蛋白関連薬剤(VCR)による99mTc-MIBI核医学イメージの変化;VCR投与症例の99mTc-MIBI像は経時的に集積性が若干変化する傾向が認められた。全体としては集積が低下する傾向が認められ、P糖蛋白高発現の腫瘍細胞クローンのselectionまたは発現の誘導が起こった可能性が考えられた。VCRを併用した化学療法の治療成績は症例数、観察期間の不足より充分な結論を得ていないが観察期間内においてprogressive diseaseとなった例はなかった。まとめ;これまで脳腫瘍領域では必ずしも高い治療成績を示さなかった既存の強力な抗癌剤のなかにも、その抵抗性機序を理解し正しい適応を決定することで治療成績の向上を望めるものが存在する。現在我々はこのイメージングを導入時の抗癌剤の選択だけでなく、維持療法中の抗癌剤変更時期の早期決定にも役立つものとして検討を進めている。99mTc-MIBIは、心筋血流測定用に開発されたトレーサーであり急速相(early image)は血流の要素を反映する。P糖蛋白発現を介した腫瘍細胞への集積は緩徐相(delay image)として出現すると考えられ、臨床例を用いた経時的な撮像の結果early imageはトレーサー静脈内投与15分後、delay imageは3時間後に撮像するのが適切と考えられた。2)99mTc-MIBIトレーサーを用いた脳腫瘍臨床例の検討(201Tl-SPECTとの比較);99mTc-MIBIトレーサーを用いた核医学イメージングにおいて、腫瘍部はheterogeneousな集積像を示し、同一腫瘍内でも腫瘍細胞、腫瘍血管に発現するP糖蛋白に量的あるいは質的差異が存在する可能性が示唆された。腫瘍細胞膜のNa-K channelの活性を反映する201Tl-SPECT像との比較では、両者の画像所見に相関は見られず、99mTc-MIBI集積像は従来悪性度の指標とされる201Tl-SPECT像とは独立した現象を見ていることが確認された。3)P糖蛋白関連薬剤(VCR)による99mTc-MIBI核医学イメージの変化;VCR投与症例の99mTc-MIBI像は経時的に集積性が若干変化する傾向が認められた。全体としては集積が低下する傾向が認められ、P糖蛋白高発現の腫瘍細胞クローンのselectionまたは発現の誘導が起こった可能性が考えられた。VCRを併用した化学療法の治療成績は症例数、観察期間の不足より充分な結論を得ていないが観察期間内においてprogressive diseaseとなった例はなかった。まとめ;これまで脳腫瘍領域では必ずしも高い治療成績を示さなかった既存の強力な抗癌剤のなかにも、その抵抗性機序を理解し正しい適応を決定することで治療成績の向上を望めるものが存在する。現在我々はこのイメージングを導入時の抗癌剤の選択だけでなく、維持療法中の抗癌剤変更時期の早期決定にも役立つものとして検討を進めている。
KAKENHI-PROJECT-08771093
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アルカリ土類硫化物の薄膜成長と多色エレクトロルミネッセンス素子の基礎的研究
フルカラーエレクトロルミネッセンス(EL)パネル実現のためには, 3原色(赤緑青)発光を得ることが必要不可欠である.本研究では,新しいカラー薄膜EL材料の可能性としてCaS, SrSをとりあげ,薄膜成長法の確立と薄膜EL素子の多色化について検討した.得られた知見を以下に記す.1.CaS, SrS薄膜を電子線蒸着法により作製した.蒸着時の基板温度を400600°Cにあげることにより膜の結晶性は改善された.また,イオウの共蒸着を行うことにより化学量論的組成比からのずれも小さくなった.2.二重絶縁構造を有するCaS:Eu(赤色発光), CaS:Ce(緑色発光), SrS:Ce, K(青色発光)薄膜EL素子を作製し, 3原色のELを得ることに成功した.発光輝度は60Hz駆動のとき,各々15, 15, 36cd/m^2であった.3.CaS:Eu, SrS:Ce, K薄膜EL素子においてメモリー効果を見いだした.これらのEL素子のメモリー効果は,母体の固有格子欠陥が原因になっているものと考えられる.4.CaS:Eu, SrS:Ce, K薄膜EL素子の発光機構を検討するために,パルス励起による波形を測定した.その結果1回の励起期間に3回の発光が観測された.第1ピークと第3ピークは直接衝突励起に必要なホットエレクトロン生成には低すぎる電圧のもとで観測された.従って,これらのEL素子の励起機構は次のように考えられる.電界によってイオン化した発光中心が伝導電子を捕獲後,内殻電子の励起状態を生じ,その後発光を生じる.5.フルカラーELパネルを試作し,その特性を評価した.パネルは, SrS:Ce, K薄膜EL素子とCaS:Eu薄膜EL素子の間に短波長および長波長透過フィルターを挿入した構造をもつ.パネルの発光輝度は白色レベルで7.5cd/m^2(60Hz)と低いが,赤緑青の輝度の比は3:10:2であり,カラーCRTの場合に一致した.フルカラーエレクトロルミネッセンス(EL)パネル実現のためには, 3原色(赤緑青)発光を得ることが必要不可欠である.本研究では,新しいカラー薄膜EL材料の可能性としてCaS, SrSをとりあげ,薄膜成長法の確立と薄膜EL素子の多色化について検討した.得られた知見を以下に記す.1.CaS, SrS薄膜を電子線蒸着法により作製した.蒸着時の基板温度を400600°Cにあげることにより膜の結晶性は改善された.また,イオウの共蒸着を行うことにより化学量論的組成比からのずれも小さくなった.2.二重絶縁構造を有するCaS:Eu(赤色発光), CaS:Ce(緑色発光), SrS:Ce, K(青色発光)薄膜EL素子を作製し, 3原色のELを得ることに成功した.発光輝度は60Hz駆動のとき,各々15, 15, 36cd/m^2であった.3.CaS:Eu, SrS:Ce, K薄膜EL素子においてメモリー効果を見いだした.これらのEL素子のメモリー効果は,母体の固有格子欠陥が原因になっているものと考えられる.4.CaS:Eu, SrS:Ce, K薄膜EL素子の発光機構を検討するために,パルス励起による波形を測定した.その結果1回の励起期間に3回の発光が観測された.第1ピークと第3ピークは直接衝突励起に必要なホットエレクトロン生成には低すぎる電圧のもとで観測された.従って,これらのEL素子の励起機構は次のように考えられる.電界によってイオン化した発光中心が伝導電子を捕獲後,内殻電子の励起状態を生じ,その後発光を生じる.5.フルカラーELパネルを試作し,その特性を評価した.パネルは, SrS:Ce, K薄膜EL素子とCaS:Eu薄膜EL素子の間に短波長および長波長透過フィルターを挿入した構造をもつ.パネルの発光輝度は白色レベルで7.5cd/m^2(60Hz)と低いが,赤緑青の輝度の比は3:10:2であり,カラーCRTの場合に一致した.フルカラーエレクトロルミネッセンス(EL)パネル実現のためには、三原色(赤,緑,青)発光を得ることが必要不可欠である。緑色ELについては、すでに実用化に十分な輝度が得られているが、赤色,青色については問題点が多い。本研究では、赤色,青色EL発光を得るため、新しい発光母体材料としてCaS,SrSをとりあげ、EL薄膜作製条件,EL特性について検討した。得られた知見を以下に記す。1.CaS,SrS薄膜を電子線蒸着法により作製した。蒸着時の基板温度を400600°Cにあげることにより膜の結晶性は改善され、またイオウの共蒸着を行うことにより化学量論的組成比からのずれも少なくなった。2.CaS:Eu(赤色)およびSrS:Ce,K(青色)EL素子を電子線蒸着法により作製した。CaS:Eu素子は、650nm付近にピークを持った【Eu^(2+)】イオン固有の許容遷移による発光を示した。得られた輝度は170cd/【m^2】(1KHz)であった。SrS:Ce,K素子は475nm付近にメインピークを、530nm付近にサブピークを持つ【Ce^(3+)】
KAKENHI-PROJECT-61460067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61460067
アルカリ土類硫化物の薄膜成長と多色エレクトロルミネッセンス素子の基礎的研究
イオン固有の許容選移による発光を示した。得られた輝度は650cd/【m^2】(1KHz)であった。また、SrS:Ce,K素子はヒステリシス特性(メモリー効果)を示した。3.青色発光SrS:Ce,K薄膜EL素子の励起機構を検討するため、パルス励起(パルス幅100μs,繰り返し周波数1KHz)によるEL発光波形を測定した。その結果、1回の励起期間に3回の発光が観察された。第1ピークは電圧が立ち上がらないうちに、第2ピークは電圧の立ち上がり直後に、また第3ピークは電圧の立ち下がり直後に観測された。第1ピークと第3ピークは電界が発光中心を直接衝突励起するにはあまりに低すぎる時見られるため、直接衝突励起によるものとは考え難く、むしろエネルギートランスファーによるものと思われる。
KAKENHI-PROJECT-61460067
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高性能二次電池に適した有機正極活物質の検討
本研究では現在主流のリチウムイオン電池を凌駕する次世代高性能二次電池の開発をめざして、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行った。その結果、フェナジン5,10-ジオキシドやジチオオキサミド誘導体は多電子型充放電反応を起こし、初回の容量において、リチウムイオン電池の実効容量(150Ah/kg)を超えることが明らかとなった。これらの化合物はサイクル特性の改善などを行うことにより、次世代高性能二次電池材料として期待できる。本研究では現在主流のリチウムイオン電池を凌駕する次世代高性能二次電池の開発をめざして、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行った。その結果、フェナジン5,10-ジオキシドやジチオオキサミド誘導体は多電子型充放電反応を起こし、初回の容量において、リチウムイオン電池の実効容量(150Ah/kg)を超えることが明らかとなった。これらの化合物はサイクル特性の改善などを行うことにより、次世代高性能二次電池材料として期待できる。エネルギーを必要に応じて貯蔵し、使用することの出来る二次電池は今日の情報社会において重要なものである。そこで本研究では次世代高性能二次電池の開発をめざして、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行った。より充放電容量の大きい有機電池材料の候補としてフェナジン5,10-ジオキシド(1)の合成を行い、充放電測定を行った結果、充放電容量はリチウムイオン電池の理論容量(150Ah/kg)を遥かに超え(250Ah/kg)、300回充放電を繰り返しても減少ることなく、維持するという結果を得た。また、その充放電速度はリチウムイオン電池に比べて10倍以上速いことを明らかにした。加えて、興味深いことに高温下(45°C)で繰り返し充放電試験を行った際、500回以上充放電を繰り返しても容量減少は見られず、むしろサイクル数の増加とともに容量は増加し、・理論容量(252.6Ah/kg)に比べて遥かに高い容量(仕込み1当たり>800Ah/kg)を示すことを明らかにした。そこで、充放電後のセルを分析した結果、充放電初期のセルからはフェナジン(2)が定量的に得られ、さらに充放電を繰り返したセルからは2とともにN,N'-ビス(エトキシカルボニル)-5,10-ジヒドロフェナジン(3)が得られた。このことから、充放電過程において1は2へと還元を受け、この2はさらなる還元を受け、5,10-ジヒドロフェナジン(4)を経由後、4が電解液であるジエチルカーボネートと反応して、3を与えたと考えられる。また、充放電を繰り返したセルを分析した結果、一部ポリマーらしき化合物の生成を確認しているが、3が充放電反応中にポリマー化し、オキサミド型ポリマー5が生成していると考えられる。そこで、4を別途合成し、塩化オキサリルとの反応により、オキサミド型ポリマー5の合成を行い、合成したポリマーの充放電測定を行った。その結果、放電容量が約200Ah/kgであり、ポリマー5は目的としていた高容量密度化合物ではないと考えられる。しかし、200Ah/kgという放電容量は1が初期の充放電で変化した化合物の放電容量の値と一致しており、もし高温条件下での充放電の繰り返しにより容量の増加が見られれば、ポリマー5は高容量化のはじまる前の中間体である可能性が高いと考えられる。エネルギーを必要に応じて貯蔵し、使用することの出来る二次電池は今日の情報社会において重要なものである。そこで本研究では次世代高性能二次電池の開発を目指して、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行っている。これまでの研究により、フェナジン5,10-ジオキシド(1)を用いた電池は、リチウムイオン電池の実効容量(150Ah/kg)を超え(250Ah/kg)、300回充放電を繰り返しても減少することなく、維持するという結果を得ている。そこで、5,10-ジヒドロフェナジン(2)を用い、オキサミド型ポリマー3を合成し、充放電測定を行ったが、その容量は250AM(gであり、高容量を示す真の活物質ではないことがわかった。また、オキサミド構造を持たない5,10-ジヒドロフェナジン誘導体であるN,N'-ジアセチル-5,10-ジヒドロフェナジン(4)、N,N'-ジベンゾイル-5,10-ジヒドロフェナジン(5)およびN,N'-ビス(エトキシカルボニル)-5,10-ジヒドロフェナジン(6)を合成し、それらの電池特性を検討したが、いずれの場合もリチウムイオン電池の実効容量を超える容量は示さなかった。以上の結果より、フェナジン系正極活物質の高容量化において、オキサミド構造が有効であることが明らかとなった。また正極活物質の1分子あたりの理論容量は「理論容量=n・F/3.6・Mw」(n:1分子中の官能基数,F:ファラデー定数,Mw:分子量)で算出される。そのため、反応に関与する電子数が等しければ、分子量のより小さい分子を活物質として用いることで、さらなる容量増加が期待できるため、より分子量の小さいジアジン系化合物であるキノキサリン1,4-ジオキシド(7)および2,3-ジメチルキノキサリン1,4-ジオキシド(8)を合成し、その電池特性を検討した結果、7を正極活物質として用いた電池では初回の放電容量が800Ah/kgを超えるという興味深い結果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-22750134
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高性能二次電池に適した有機正極活物質の検討
また、Sを用いた場合も1回目の放電容量が500Ah/kgと大きい値を示すことを明らかにした。しかし、どちらの場合も充放電サイクルの増加とともに、急激な容量減少が見られた。サイクル特性の改善が今後の検討課題である。エネルギーを必要に応じて貯蔵し、使用することの出来る二次電池は今日の情報社会において重要なものである。そこで本研究では次世代高性能二次電池の開発を目指して、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行っている。これまでの研究で分子内にオキサミド構造を持つポリマー1を合成し、その充放電挙動を調査した結果、反応に多電子が関与すること、また充放電容量が約200 Ah/kgであることを明らかにした。そこで今年度はジチオオキサミド骨格に着目し、ジチオオキサミド誘導体2の正極活物質としての評価を行った。この化合物は還元体において、負電荷が硫黄上に存在すると考えられ、酸素上に存在するポリマー1と比べて、ジアニオンが安定であるため、より安定な充放電反応が期待できる。ジチオオキサミド(2a)の充放電測定をおこなった結果、初回の放電でリチウムイオン電池の実効容量(150 Ah/kg)を上回る容量密度(446.0 Ah/kg)を示すことが明らかとなった。しかしサイクル数の増加とともに容量密度も大きく低下し、可逆性は見られなかった。続いて、N,N'-ジメチル誘導体2bの充放電測定を行った結果、初回放電時に2電子反応の理論容量(361.5 Ah/kg)を超える420 Ah/kgを示すことがわかった。しかし、この場合もサイクル特性が悪く、可逆性は見られなかった。以上のようにジチオオキサミド誘導体2は多電子型充放電反応を起こすことを明らかにした。また、初回放電容量密度は現行のリチウムイオン電池の実効容量(150 Ah/kg)を超える容量を示すことを明らかにした。このことから、ジチオオキサミド誘導体は次世代高容量二次電池の活物質として期待できる。しかし、サイクル数の増加とともに容量も減少していくことがわかった。今後の課題としては、いかにサイクル特性を上げていくかが挙げられる。本研究の目的は、現在主流のリチウムイオン電池を凌駕する次世代高性能二次電池の開発を目指して、正極活物質として優れた性質をもつ有機正極活物質の創成である。これまで数種類の有機化合物を合成し、それらの電池特性を検討してきた結果、初回の放電容量はリチウムイオン電池の実効容量を遥かに超える電池の作成に成功している。サイクル特性の改善は必要であるが、おおむね目標を達成していると考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。これまで研究により、初回放電容量はリチウムイオン電池の実効容量を遥かに超える電池の作成に成功している。しかし、サイクル特性に問題があった。そこでサイクル特性の改善に向けて、今後は電解質の選定を考えている。これまではリチウムイオン電池で使用されているLiPF_6/エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート系電解質を使用してきたが、今後はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミデート/オリゴエチレンエーテル系電解質を用いて、現在までに合成した活物質の電池特性を再検討する予定である。またこれまでの研究により、オキサミド構造が高容量化に有効であることを明らかにした。今後はジオキサミドの酸素を硫黄に置換したジチオオキサミド構造を有する化合物を合成し、それらの電池特性を検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-22750134
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トリチウムが社会に受け入れられるための学際的研究体制の構築
福島第一原子力発電所の事故で生じたトリチウム汚染水の処分法として、海洋に希釈放出することが最も現実的であるが、社会的理解が得られないために実現していない。そこで海洋放出に対して社会的理解を得るために学際的な検討チームを立ち上げ、問題点の確認と研究者として何ができるか検討をした。汚染水処理が理解されるための行動計画を立て、これを元に予算申請を行った。トリチウムの生物影響に関して、平成29年度科研費基盤研究(B)に応募した結果、基盤研究(B)(16H04629)が採択された。また環境トリチウム計測の問題点を明確化し、平成30年度の科研費挑戦的研究(萌芽)を申請中である。福島第一原子力発電所の事故では、トリチウムの含んだ汚染水が大量に発生しつづけているが、処分法がないため、現在は一時保管しているのみである。事故により発生したトリチウム汚染水は、科学的に判断すれば希釈後に海洋放出することが可能であるが、現時点では社会が海洋放出に理解しないため、海洋放出は実行不可能である。そこで本研究では、トリチウム理工学、環境学、生物・医学を専門とする放射線の研究者が集まり、トリチウム汚染水の海洋放出の問題点を明らかにすると共に、その問題点を解決するための研究者の学際的なコミュニティー形成を行う。海洋放出の利点、問題点の明確化と情報発信を行い、汚染水処理に関する信頼の獲得を目指す。これにより国難といえる福島第一原子力発電所事故で発生したトリチウム汚染水の問題を解決する。この目的に対し平成27年度は、トリチウム汚染水の海洋放出を検討するのに必要な知識を有する人材のピックアップと研究会・意見交換会を開催を開催した。その結果、トリチウム理工学の専門家、放射線の生物影響の専門家、放射線の専門家がグループを組み、トリチウムの生物影響研究を行うことが合意された。そこで、これらのグループを代表して申請者が、基盤研究(B) “トリチウム汚染水の海洋放出処分に向けた社会的合意形成のためのトリチウム生物影響研究"を提案するに至った。これとは別に、トリチウムの専門家、環境放射線の専門家、海洋の専門家が集まり、トリチウム汚染水を海洋に放出処分したときの人体への到達経路を明らかにするための検討会を立ち上げている。これについては、別途予算の申請を健闘している。これらの方策により一日でも早い福島の復興を目指している。平成27年度は、トリチウム取扱の専門家である申請者が中心となり、富山大学内に在籍する、放射線生物学の専門家、放射性物質取扱の専門家と研究会を開催し、トリチウムが社会に受け入れられるために必要な生物影響研究がどの様にあるべきか検討した。その中で、現状のトリチウム生物影響の現状が報告され、福島第一原子力発電所の事故で放出されたトリチウムの濃度程度では人体に影響がないことが確認された。しかし、どの程度まで安全、どの程度から危険という比較的高い線量の研究が研究施設の関係で行われておらず、トリチウム汚染水の海洋放出処分を行うにはデータが不十分であると判断した。そこで、富山大学内のトリチウムの専門家、放射性生物影響の専門家、放射性物質取扱の専門家がグループを組み、上記問題解決のために基盤研究(B) “トリチウム汚染水の海洋放出処分に向けた社会的合意形成のためのトリチウム生物影響研究"を申請した。その結果、申請は採択され平成28年度から5年間かけてトリチウム汚染水の海洋放出を見据えたトリチウムの生物影響研究を行うこととなった。以上のように、平成27年度の活動により、トリチウムが社会に受け入れられるための学生的な協力体制が、放射線生物影響という切り口の中で作成された。平成27年度は、トリチウム取扱の専門家、放射線生物学の専門家、放射性物質取扱の専門家と研究会を開催し、福島第一原子力発電所の事故で放出されたトリチウムの濃度では人体に影響がないことが確認された。しかしながら、研究者が安全だと主張しても、一般市民にとっては安心できる状況にはなく、一般市民にも分かりやすいトリチウムの安全性について明らかにする必要が指摘された。そのような中、トリチウムの専門家、放射性生物影響の専門家、放射性物質取扱の専門家がグループを組み、基盤研究(B) “トリチウム汚染水の海洋放出処分に向けた社会的合意形成のためのトリチウム生物影響研究"を申請した。その結果、申請は採択され平成28年度から5年間かけてトリチウム汚染水の海洋放出を見据えたトリチウムの生物影響研究を行うこととなった。平成28年度は、環境放射線に関する研究会を開催し、環境放射能研究者の現状とトリチウム汚染水の海洋放出に向けた問題点を確認した。その結果、モニタリング体制の確立や環境トリチウム測定法の規格化、簡素化、迅速化など、海洋放出までに確立しなければいけない技術的問題点が指摘された。そこで、この問題解決のため、挑戦的研究(萌芽)“トリチウム汚染水処理のための環境トリチウム測定法の簡素化・迅速化と標準化・一般化"をグループで申請した。また、日本国内の研究者が安全と発言しても一般市民の安心には繋がらないため、国外の環境放射能研究者と連携体制を構築し、国外から支援を得られる体制を構築した。ドイツやアメリカの環境放射能研究者に、福島の現状を説明しトリチウム汚染水の処分法について論議したが、海洋放出が最も安全且つリスクの少ない処分法であることが理解されると共に、海洋放出に向けて協力していただけることが確認できた。
KAKENHI-PROJECT-15K14289
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トリチウムが社会に受け入れられるための学際的研究体制の構築
福島第一原子力発電所の事故で生じたトリチウム汚染水の処分法として、海洋に希釈放出することが最も現実的であるが、社会的理解が得られないために実現していない。そこで海洋放出に対して社会的理解を得るために学際的な検討チームを立ち上げ、問題点の確認と研究者として何ができるか検討をした。汚染水処理が理解されるための行動計画を立て、これを元に予算申請を行った。トリチウムの生物影響に関して、平成29年度科研費基盤研究(B)に応募した結果、基盤研究(B)(16H04629)が採択された。また環境トリチウム計測の問題点を明確化し、平成30年度の科研費挑戦的研究(萌芽)を申請中である。平成27年度の活動により放射線生物影響研究分野で学際的な研究体制の構築が行われたが、トリチウムが社会に受け入れたれるためには、環境に放出されたトリチウムがどの様な経路をたどり人体に到達するか、人体に到達するまでの間に希釈や濃縮によりどれだけの濃度のトリチウムが人体に到達するかを明らかにする必要がある。これを明らかにするためには、トリチウムの専門家と、環境の専門家、環境放射能の専門家、環境瀬宇仏学の専門家、海洋の専門家、農学の専門家等、幅広い知識を結集する必要がある。そこで、これら環境動態の知識を持つ研究者と研究会や意見交換会を開催し、新しい学際的研究協力体制の構築を目指す。最終的には、放射線生物影響と環境動態を取りまとめ、トリチウム汚染水の適切に処理に向けた提言を行う予定である。トリチウム理工学申請者は富山大学水素同位体科学研究センターに勤務していたが、平成28年より茨城大学大学院理工学研究科に移動することが決まり、計画に一部変更が余儀なくされた。それに伴い予算に執行計画にも変更が生じた。茨城大学に移動したために、一部計画に遅れが出ている部分もあるが、計画達成に向けた行動は行っており、平成27年度に行えなかったことは、平成28年度に行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K14289
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14289
前方後円墳築造の境界域における古墳時代埋葬形態の多様性に関する研究
本研究では、平成14年度から平成15年度に渡って前方後円墳築造の南限域である鹿児島県大隅地域において古墳の調査を実施してきた。本年度はその成果を整理し、総括することを中心に作業を進めた。これまでの調査では、古墳築造の境界域として古墳築造の本質的な意義を追求し得る重要な位置づけにありながら、学術調査事例のなかった大隅地域において、岡崎古墳群というフィールドを選びその古墳時代墓制の実態解明を進めてきた。その結果、次のような成果を得た。1.新たに岡崎20号墳という粘土槨を主体部とする前方後円墳を発見し、また古墳時代前期後半に位置づけられる土器を確認した。2.岡崎15号墳の測量調査を実施し、新たに帆立貝式前方後円墳である可能性が高いことを確認した。3.岡崎18号墳において古墳に従属する初期の大型地下式横穴墓2基を発見し、発掘調査した。4.岡崎18号墳において初期須恵器・朝鮮半島系鉄器・南海産貝輪など広域流通材が多数出土した。そのほか、前方後円墳周辺で地下式横穴墓・土壙墓・石棺墓などが最近検出された宮崎県高城町牧ノ原古墳群や良好な鉄器が出土した同町石山高取原の初期地下式横穴墓出土遺物などの分析を行った。その成果は高城町教育委員会の調査報告書として発行される予定である。本年度はこれらの成果の分析を総合し、その評価について研究を進めた。その成果は日本考古学協会総会での研究発表や発掘調査概報の出版などを通して公表している。研究は今年度で一区切りとなるが、日本列島の国家形成を地域側の視点で再構築することや広域交流の視点からの分析などにおいて、今後とも継続的な調査研究が必要な問題提起をなしえたと考えている。本研究では、まず鹿児島県大隅半島における古墳の調査を開始した。古墳の調査を通したこの地域の実体解明は、古墳築造の本質的な意義、日本列島における国家形成過程あるいは各地域性の発現など、さまざまな歴史動態とその背景を考察する鍵を握る。1.平成14年度はまず大隅半島において古墳の踏査から開始した。その結果、肝属郡串良町岡崎古墳群に保存状況の良好でかつこの地域の古墳時代研究に重要な位置づけをもつ可能性のある古墳を確認した。また唐仁100号墳では従来墳丘の外側であるとみられていた場所で葺石を確認し、現状よりもさらに大型の前方後円墳であることなどを確認した。2.踏査の成果を受け、岡崎古墳群中の一古墳を18号墳とし、平成14年8月28日9月18日と平成15年2月4日2月25日の2次にわたり学術発掘調査を実施した。その結果、古墳は20m級の円墳で本古墳群中では盟主的な存在であること、さらに墳丘裾部分での土器を用いた祭祀空間を検出した。祭祀は古墳時代中期のきわめて稀少な初期須恵器を用いたものであり、今後土器の流通・製作技術、祭祀実態等の分析は古墳時代研究の重要な課題となる。3.岡崎18号墳の北に存在する古墳の草木伐開作業を行った結果、この古墳が前方後円墳である可能性が極めて高いことが判明した。新たにこれを岡崎20号墳とした。古墳南限地域での前方後円墳の新たな発見はこの地域の古墳時代社会の分析において重要な資料となる。4.県内に収蔵されている古墳時代資料の調査を進めるとともに、東京国立博物館に収蔵される重要な鹿児島の古墳時代資料などの資料調査を行い、データ化を進行している。また日本列島等の比較の上で重要な韓国の古墳時代資料との比較検討など進めている。本研究では、古墳築造南限域である鹿児島県大隅半島において古墳の調査を実施している。本地域は古墳築造の境界域として古墳築造の本質的な意義を研究しうる重要な位置にある。しかし、この地域の古墳調査事例は少なく、その実体解明は現在、地域側の視点から見直しが必要である古墳時代研究・国家形成過程研究の上に重要な鍵を握ると考える。1.昨年度からの継続で鹿児島県肝属郡串良町岡崎18号墳において発掘調査を実施した。本年度は、墳丘裾部に取り付く地下式横穴墓3基を検出し、2基は玄室内を含む全体調査を実施した(1号・2号)。1基は竪坑部のみの調査である(3号)。本地下式横穴墓は上部から出土した土器によって年代を確定できる稀少な例となった。その年代は5世紀前半で地下式横穴墓の中では最古段階に位置づけられる。規模は大隅で最大規模であった。さらに1号・2号とも玄室内ではこの地域の有力首長墳にしか採用されていない花崗岩製の石棺を地下式横穴墓内で初めて確認した。2号地下式横穴墓は玄室内・石棺内全体を赤色顔料で真っ赤に彩る初めての事例であった。また、朝鮮半島製・系鉄製品である鉄〓やU字形鍬鋤先、奄美以南の南海産イモガイ製貝輪といった広域交流を資料が出土した。これらの成果から古墳築造南限域の首長層の社会構造・地域間交流などの研究が可能となった。2.新たに岡崎20号墳の発掘調査に着手した。その結果、本墳が46m級の前方後円墳であること。古墳時代前期後半に位置づけられることなどが判明した。また、埋葬施設として粘土槨を確認し、その上部から二重口縁壺などを確認した。
KAKENHI-PROJECT-14701009
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前方後円墳築造の境界域における古墳時代埋葬形態の多様性に関する研究
前期古墳を鹿児島で初めて確したことにより、南限域の古墳の出現と展開の研究に関する重要な資料を入手することができた。3.県内に収蔵されている古墳時代資料の調査を行い、データ化を進行している。本研究では、平成14年度から平成15年度に渡って前方後円墳築造の南限域である鹿児島県大隅地域において古墳の調査を実施してきた。本年度はその成果を整理し、総括することを中心に作業を進めた。これまでの調査では、古墳築造の境界域として古墳築造の本質的な意義を追求し得る重要な位置づけにありながら、学術調査事例のなかった大隅地域において、岡崎古墳群というフィールドを選びその古墳時代墓制の実態解明を進めてきた。その結果、次のような成果を得た。1.新たに岡崎20号墳という粘土槨を主体部とする前方後円墳を発見し、また古墳時代前期後半に位置づけられる土器を確認した。2.岡崎15号墳の測量調査を実施し、新たに帆立貝式前方後円墳である可能性が高いことを確認した。3.岡崎18号墳において古墳に従属する初期の大型地下式横穴墓2基を発見し、発掘調査した。4.岡崎18号墳において初期須恵器・朝鮮半島系鉄器・南海産貝輪など広域流通材が多数出土した。そのほか、前方後円墳周辺で地下式横穴墓・土壙墓・石棺墓などが最近検出された宮崎県高城町牧ノ原古墳群や良好な鉄器が出土した同町石山高取原の初期地下式横穴墓出土遺物などの分析を行った。その成果は高城町教育委員会の調査報告書として発行される予定である。本年度はこれらの成果の分析を総合し、その評価について研究を進めた。その成果は日本考古学協会総会での研究発表や発掘調査概報の出版などを通して公表している。研究は今年度で一区切りとなるが、日本列島の国家形成を地域側の視点で再構築することや広域交流の視点からの分析などにおいて、今後とも継続的な調査研究が必要な問題提起をなしえたと考えている。
KAKENHI-PROJECT-14701009
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再生可能エネルギーの革新的普及制度のあり方についての経済学的研究
本研究では、再生可能エネルギーの普及政策について次の成果が得られた。1)アメリカ・テキサス州において実施されている固定枠制の経済的評価また実現性に関する評価。2)EUおよびドイツで進められている再生可能エネルギー普及政策についての詳細ルールに関する評価。3)再生可能エネルギー普及政策の経済学的な基礎に関する考察。これらによって、再生可能エネルギー政策の経済的な基礎的研究を行うことができた。アメリカ、EU各国(ドイツ、スペイン、デンマーク、イギリス等)で実施されている再生可能エネルギー普及施策を効率性と実行可能性の観点から比較検討し、効果的制度に必要な要素を抽出する。加えて、新しい環境経済政策手段として再生可能エネルギー普及政策を位置づけ理論化する。具体的には、第1に、米国各州で1990年代から実施されているRenewable Portfolio Standard(RPS :再生可能エネルギー基準)の実施状況を検討し、効率性と実行可能性の観点から評価する。第2に、EU各国のうち特に先進的な取り組みとして知られるドイツを中心に、再生可能エネルギー普及政策の詳細ルールの内容を検討し、効率性と実行可能性の観点から、再生可能エネルギー普及政策を評価する。第3に、第1、第2の検討結果を踏まえ、再生可能エネルギー普及政策を新しい環境経済政策手段として位置づけ、その基礎理論を開発する。本研究では、再生可能エネルギーの普及政策について次の成果が得られた。1)アメリカ・テキサス州において実施されている固定枠制の経済的評価また実現性に関する評価。2)EUおよびドイツで進められている再生可能エネルギー普及政策についての詳細ルールに関する評価。3)再生可能エネルギー普及政策の経済学的な基礎に関する考察。これらによって、再生可能エネルギー政策の経済的な基礎的研究を行うことができた。本年度の研究において、次の2点について研究を行った。1)ヨーロッパ各国の再生可能エネルギー普及政策、特にドイツ、イギリスの制度についての調査を行った。ドイツは電力買い取り補償制、イギリスは競争入札制の典型事例である。インターネットおよび電話での資料収集により、実施状況については把握することができた。この結果は、論文として公表した。その内容を簡単に述べれば、ドイツの電力買い取り補償制が成功したのは、制度設定以後、実態に合わせて頻繁な制度変更を行ったためであるといえる。またイギリスの競争入札制では、契約量に比して実績が伴わなかったが、これは再生可能電力事業者が非現実的な価格付けを行ったことによるものと考えられる。2)アメリカ各州のRPS制についての資料収集を行った。特に、テキサス州の最新の実施状況について詳しい資料を得た。次年度以降の研究につなげることとしたい。本年度の研究において、次の4点について研究を行った。1)日本とイギリスの再生可能エネルギー普及政策の比較に関する論文を国際誌に発表した。その内容を簡単は次の通りである。すなわち、イギリスと日本ともにRPSという同じ制度を使っているものの、イギリスに比べて目標値が小さく、ペナルティーも緩やかであるため、普及が進んでいない。2)アメリカ各州のRPSの実施状況について、文献・資料調査を行った。カルフォルニアはRPSを導入しているが、テキサス州と異なり、複雑なシステムになっている。評価にはより詳しい調査が必要である。3)ヨーロッパ各国の電力買い取り補償制の実施状況、およびEUの電力自由化・再生可能エネルギー普及政策について調査研究を行い、関係者、研究者に必要なヒアリングをおこなった。特にドイツでは、電力供給法、再生可能エネルギー法等の再生可能エネルギー普及政策の維持が、ポジティブな経路依存性とでもいうべき状況のもとでなされているという評価をドイツの研究者が行っている。これは日本のエネルギー環境政策とは対照的である。4)再生可能エネルギー普及政策に関する基礎理論についての研究を行った。同じ効果をもつとされている電力買い取り補償制とRPSであるが、新規参入者に対する効果が違うのではないかと考えられる。2)4)の成果は、論文または書籍にて次年度以降に発表する予定である。本年度の研究において、次の3点について研究を行った。1.アメリカのうち最も成功しているのはテキサス州であるので、テキサス州での近年(特に2005年以降)の政策展開、及び、連邦レベルでの生産税控除(Production Tax Credit)についてについて詳しく文献資料調査を行った。テキサス州では、とりわけ風力資源の大きい地域において、風力発電単価が大幅に下がっていることがあきらかになった。また、テキサス州の普及目標も普及ペースに追いつかず、拡大させてきている。2.ヨーロッパ各国の固定価格制の実施状況、およびEUにおける再生可能エネルギー政策について文献、ヒアリング調査をおこなった。特にドイツでは、再生可能エネルギー法(2004年)のもとで再生可能エネルギー普及の効果がより一層あがるとともに、経済的側面でも利益がもたらされている実態が明らかになった。そのため、新しい再生可能エネルギー法(2009年)ではより一層の目標拡大が行われ、普及制度も効果的なものへ変更されている。こうした制度は、経済団体を含めて受け入れられている。3.再生可能エネルギー普及政策に関する基礎理論についての研究を行った。RPS、固定価格制、競争入札制の政策上の位置付けと効果の違いについて整理を行った。固定価格制は、RPS制度に比べて普及効果がある他、制度それ自体の終了をも組み込める制度として優れている。以上、1、3、の成果およびこれまでの研究成果は、今年度中にとりまとめ、書籍として出版する予定である。本年度の研究においては、次の3点について研究活動を実施した。1)アメリカ各州のRPS、ヨーロッパ各国の固定価格買取制の実施状況、およびEUの電力自由化・再生可能エネルギー普及政策に関し、ドイツ及びデンマークにおいて現地調査を行った。
KAKENHI-PROJECT-18510038
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再生可能エネルギーの革新的普及制度のあり方についての経済学的研究
特にドイツについては、研究者、電力事業者、系統管理者、政府関係者を中心に詳細なインタビュー調査を実施した。その結果、ドイツにおいては、再生可能電力の普及政策による直接的影響は系統管理者が受けていること、具体的には電気の配分、費用負担の配分に関する影響がでていることが判明した。ドイツにおいては、その影響を緩和するための制度的枠組が形成され、2009年より開始される予定であることがわかった。2)電力自由化が再生可能エネルギー普及政策に与える影響、EUETSが再生可能エネルギー普及政策に与える諸影響について文献を収集して検討を行った。その結果、EUETSの中に再生可能エネルギー設備への投資を促す制度が組み込まれていることがわかった。3)1)2)の実証研究を基礎に、再生可能エネルギー普及政策に関する基礎理論について検討し、研究成果をまとめた。具体的には、これまで研究してきた、アメリカで実施されているRPS制度、イギリスで実施されている競争入札制、ドイツで実施されている固定価格制それぞれの理論的考察を行った。また、再生可能エネルギー普及に関する諸政策について整理し、それぞれの理論的意味づけを行った。この内容の一部を書籍にまとめて出版した。
KAKENHI-PROJECT-18510038
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肝細胞ガンの進展に関わる遺伝子の同定及びその機能解析からの新規診断・治療薬開発
平成19年度までの研究によって、Inhibitor of DNA binding 2(ID2)がVEGFの発現を調節することで、肝細胞ガンの細胞運動能・浸潤能を改変し、肝細胞ガン進展機構に寄与していることを明らかとした。平成20年度では、ID2自身の発現制御機構としてID2プロモーター領域のDNAメチル化による制御について研究を進めた。平成19年度までの研究では、肝細胞ガン細胞株における脱メチル化剤によるID2発現の誘導は確認されていたが、ID2プロモーター領域におけるDNAメチル化を見いだせていなかった。平成20年度では探索領域を広げた結果、メチル化特異的PCR(MSP)によって検出されるID2のメチル化領域を見いだした。これを基に肝細胞ガンの臨床サンプルについてMSPを行った結果、UICC2002に基づくステージIに対してステージII-IVではよりID2がメチル化されていることが判明した。これにより、既にID2発現は肝細胞ガンの進展に沿って発現が低下することを明らかとしていたが、これがDNAメチル化によるものであることが示唆された。また、ID2レベルが抗がん剤による抗増殖活性に影響するかどうかについても解析を行った。ID2レべルの上昇によって、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の抗増殖活性が抑制された。一方、ID2レベルの減少によって、HDAC阻害剤の抗増殖活性が高められた。HDAC阻害剤以外ではID2レベルによる影響は見られなかった。肝細胞ガン細胞株において、ID2レベルがHDAC阻害剤の抗増殖活性に影響を及ぼすことが示され、ID2レベルはHDAC阻害剤感受性のマーカーとなる可能性が示唆される。上述の研究成果を学会にて発表し、現在、投稿論文を作成中である。肝細胞ガン細胞株でのID2強制発現やノックダウンによる表現型への影響を解析ID2発現の変動(ID2発現ベクターやID2に特異的なsiRNAの細胞移入)による細胞運動能・浸潤能への影響をInvasion assay等により解析した。その結果,当初の予想通りID2レベルは細胞運動能・浸潤能と逆相関していることが確認された。つまり,ID2の増加によって細胞運動能・浸潤能が低下し,逆にID2の減少によって細胞運動能・浸潤能は高まった。増殖因子や抗ガン剤とID2発現との関連を細胞増殖能やアポトーシス感受性の観点から解析した。その結果,ID2発現の増減によってある抗ガン剤に対する肝細胞ガン細胞株の感受性が変わることを見いだした。ID2は転写因子であることから,ID2制御下の肝細胞ガン表現型に影響する遺伝子・遺伝子産物をDNAマイクロアレイ解析にて網羅的に行った。現在のところ,ID2を強制発現した際に変動する遺伝子をリストすることができた。今後,同様にID2をノックダウンした際に変動する遺伝子をリストし,ID2が細胞運動能・浸潤能などに影響する際に働く下流遺伝子の同定を行っていく。また,ID2発現をリアルタイムRT-PCRにより定量解析し,臨床病理学的因子との関連を調べた。外科的に摘出した92例の肝細胞ガンサンプルにおけるID2発現量をリアルタイムRT-PCR法にて定量し,臨床因子との相関を統計学的に解析した。その結果,新たにID2発現レベルは門脈浸潤だけでなく腫瘍サイズやステージといったガンの進行度との逆相関関係が認められた。さらに興味深いことには,低レベルのID2発現は早期肝内再発における独立した危険因子であり,予後にも影響していることを見いだした。上述の研究成果を論文および学会で発表した。ID2による肝細胞ガン表現型への作用機序の解析平成18年度での研究から,ID2レベルは細胞運動能・浸潤能と逆相関していることが確認された。つまり,ID2の増加によって細胞運動能・浸潤能が低下し,逆にID2の減少によって細胞運動能・浸潤能は高まった。そこで平成19年度では,その作用機序について解析を行った。解析にはgene-targeting(ID2強制発現およびID2ノックダウン)を施した肝細胞癌株を用いて,細胞運動能・浸潤能に強く関連する遺伝子の変動をmRNAレベルおよびproteinレベルで解析した。その結果,ID2強制発現株では細胞運動能・浸潤能に関係するマトリックスメタロプロテネース-1(MMP-1)と血管新生因子(VEGF)の発現が低下していることを明らかとした。また,ID2ノックダウン株ではVEGFの発現亢進は認められたが,MMP-1の発現変動は見られなかった。さらに,ID2強制発現株に組み換えVEGFを添加すると,細胞運動能・浸潤能が回復し,ID2ノックダウン株において、さらにVEGFもノックダウンすると細胞運動能・浸潤能の亢進が抑えられることを見いだした。これらの結果から,ID2による細胞運動能・浸潤能の改変といった表現型は,VEGFの発現調節を介することによって行われていると明らかにした。また,肝細胞癌株を脱メチル化剤処理するとID2発現が上昇することから、ID2自身の発現がメチル化によって制御されるのではないかと示唆された。そこで,肝細胞癌株でのメチル化をBisulfite sequencing法にて解析したが,ID2プロモーター領域にはメチル化は検出されなかった。以上の結果から,ID2自身の発現調節は,メチル化によって制御されている何らかの因子を介して行われていると推察された。上述の研究成果を論文および学会で発表した。
KAKENHI-PROJECT-06J07616
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J07616
肝細胞ガンの進展に関わる遺伝子の同定及びその機能解析からの新規診断・治療薬開発
平成19年度までの研究によって、Inhibitor of DNA binding 2(ID2)がVEGFの発現を調節することで、肝細胞ガンの細胞運動能・浸潤能を改変し、肝細胞ガン進展機構に寄与していることを明らかとした。平成20年度では、ID2自身の発現制御機構としてID2プロモーター領域のDNAメチル化による制御について研究を進めた。平成19年度までの研究では、肝細胞ガン細胞株における脱メチル化剤によるID2発現の誘導は確認されていたが、ID2プロモーター領域におけるDNAメチル化を見いだせていなかった。平成20年度では探索領域を広げた結果、メチル化特異的PCR(MSP)によって検出されるID2のメチル化領域を見いだした。これを基に肝細胞ガンの臨床サンプルについてMSPを行った結果、UICC2002に基づくステージIに対してステージII-IVではよりID2がメチル化されていることが判明した。これにより、既にID2発現は肝細胞ガンの進展に沿って発現が低下することを明らかとしていたが、これがDNAメチル化によるものであることが示唆された。また、ID2レベルが抗がん剤による抗増殖活性に影響するかどうかについても解析を行った。ID2レべルの上昇によって、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の抗増殖活性が抑制された。一方、ID2レベルの減少によって、HDAC阻害剤の抗増殖活性が高められた。HDAC阻害剤以外ではID2レベルによる影響は見られなかった。肝細胞ガン細胞株において、ID2レベルがHDAC阻害剤の抗増殖活性に影響を及ぼすことが示され、ID2レベルはHDAC阻害剤感受性のマーカーとなる可能性が示唆される。上述の研究成果を学会にて発表し、現在、投稿論文を作成中である。
KAKENHI-PROJECT-06J07616
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虚血性心疾患発症における精神的ストレスの役割:β-エンドルフィンを媒介にして
1.アポEノックアウトマウスの動脈硬化進展過程に対する精神的ストレスの影響遺伝性動脈硬化発症アポEノックアウトマウス雄雌4ペアをジャクソンラボから購入し、掛け合わせて継代した。6週齢の雄を高コレステロール食で飼育し、精神的ストレスをかけ、動脈硬化進展過程に対する影響を経時的に観察した。体動不可能なケージに6時間閉じ込める拘束ストレス群(n=8)と、氷水の中を4分泳がせる強制水泳ストレス群(n=16)を作成した。いずれのストレスも隔日に与え、3ヶ月続けた。終了後、胸部および腹部大動脈を単離、固定、HE染色し、組織学的に検索した。内膜に脂質を取り込んだ動脈硬化プラークはストレスをかけない対照群(n=8)において大動脈ツリーにおける分岐部を中心に3.1±0.8(平均±標準偏差)個存在した。拘束ストレス群では3.5±1.1個存在し、対照群と有意差を認めなかった。一方、強制水泳ストレス群は実験開始1ヶ月後から計9匹が突然死した(5匹は水泳中)。生存した7匹と組織を採取できた水泳中死5匹の計12匹では、プラークは4.6±2.2個存在した。対照群に比べやや増加傾向があるものの、有意差は認められなかった。突然死した個体でも、心筋組織の壊死や大動脈プラークの有意な増加は認められなかった。今後は動脈硬化を促進させると報告されている炎症性サイトカインやホルモンが実際に放出されるストレスを探し、長期間負荷する実験が必要である。2.ヒト虚血性心疾患の発症進展とμ-オピオイド受容体遺伝子多型との関係ストレス反応を形成する視床下部-下垂体系の神経伝達機構の制御を行う重要なシナプス受容体であるμ-オピオイド受容体の、エクソン1の第118塩基の多型をリアルタイムPCRにて増幅して検索しようとした。しかし、成功していない段階で年度末となりました。結果はまだ得られておりません。(目的)中枢神経および末消動脈組織におけるβ-エンドルフィン・μ-オピオイド受容体系が精神的ストレスに対する反応を媒介し、動脈硬化進展に影響を与えることを明らかにする。(方法および現在までの結果)1.ラット大動脈内膜リモデリングに対する精神的ストレスの影響:ウイスターラットを麻酔開腹し、頚動脈からバルーンカテーテルを挿入、腹部大動脈に到達させ、バルーンを膨張させて内膜擦過した。その後の内膜線維筋性増殖の経過を、急性期での中膜平滑筋細胞におけるPCNA発現数および慢性期での新生内膜形成量で測定した。この過程に及ぼす拘束ストレスの影響を検討した。擦過後のPCNA陽性核数および新生内膜形成量は、いづれも拘束により有意に減少、抑制された(-37%および-61%)。オピオイド受容体拮抗薬ナルトレキソン投与下での拘束ではこの抑制は認められなかった。またナルトレキソン投与のみでは有意差はなかった。したがって、拘束ストレスの作用はμ-オピオイド受容体を介するものであったことがわかった。さらに、拘束により血中β-エンドルフィンが増加したが、この血中濃度を達成する量のβ-エンドルフィンを腹腔内に投与することにより、急性期-79%、慢性期-72%の抑制が認められ、ナルトレキソン投与によりこの抑制が打ち消された。αおよびβ-交感神経遮断によっても抑制が認められたが、拘束ストレスを重ねたところ、さらに抑制された。以上より、拘束ストレスは血中β-エンドルフィンを増加させ、これが血管平滑筋のμ-オピオイド受容体に働き内膜線維筋性増殖過程を抑制したと考えられる。2.ヒト虚血性心疾患発症とμ-オピオイド受容体遺伝子型との関係:本年度は、金沢医科大学遺伝子倫理委員会の許可に基づき、患者に承諾を得て、血液サンプルを供与してもらう作業を進めている。1.アポEノックアウトマウスの動脈硬化進展過程に対する精神的ストレスの影響遺伝性動脈硬化発症アポEノックアウトマウス雄雌4ペアをジャクソンラボから購入し、掛け合わせて継代した。6週齢の雄を高コレステロール食で飼育し、精神的ストレスをかけ、動脈硬化進展過程に対する影響を経時的に観察した。体動不可能なケージに6時間閉じ込める拘束ストレス群(n=8)と、氷水の中を4分泳がせる強制水泳ストレス群(n=16)を作成した。いずれのストレスも隔日に与え、3ヶ月続けた。終了後、胸部および腹部大動脈を単離、固定、HE染色し、組織学的に検索した。内膜に脂質を取り込んだ動脈硬化プラークはストレスをかけない対照群(n=8)において大動脈ツリーにおける分岐部を中心に3.1±0.8(平均±標準偏差)個存在した。拘束ストレス群では3.5±1.1個存在し、対照群と有意差を認めなかった。一方、強制水泳ストレス群は実験開始1ヶ月後から計9匹が突然死した(5匹は水泳中)。生存した7匹と組織を採取できた水泳中死5匹の計12匹では、プラークは4.6±2.2個存在した。対照群に比べやや増加傾向があるものの、有意差は認められなかった。突然死した個体でも、心筋組織の壊死や大動脈プラークの有意な増加は認められなかった。今後は動脈硬化を促進させると報告されている炎症性サイトカインやホルモンが実際に放出されるストレスを探し、長期間負荷する実験が必要である。2.ヒト虚血性心疾患の発症進展とμ-オピオイド受容体遺伝子多型との関係
KAKENHI-PROJECT-15659162
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虚血性心疾患発症における精神的ストレスの役割:β-エンドルフィンを媒介にして
ストレス反応を形成する視床下部-下垂体系の神経伝達機構の制御を行う重要なシナプス受容体であるμ-オピオイド受容体の、エクソン1の第118塩基の多型をリアルタイムPCRにて増幅して検索しようとした。しかし、成功していない段階で年度末となりました。結果はまだ得られておりません。
KAKENHI-PROJECT-15659162
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15659162
特徴量空間の局所分布の多様性に着目した大規模マルチメディア情報の効率的な処理手法
高次元特徴量空間は、時系列データ、画像データ、映像データなどのマルチメディア情報を照合・解析・検索するための手法として従来から使われている手法であるが、近年、その量的な大規模化が目覚しく、かつてのパターン認識システムでは考えられなかった規模のデータを蓄積可能になっている。そして、そのような大規模なデータに対しては、従来からの処理手法をそのまま適用したのでは、十分な性能が発揮されなかったり、データ本来の能力を十分に活かし切れない場合がある。そのため、データの大規模化に適合した新しい処理手法の必要性が高まっている。データの大規模化の影響が端的に現われる現象として、局所分布の多様性があり、大規模なデータの場合には、ひとつの特徴量空間の中であっても、局所的な領域ごとに多様な分布を持つことが明らかになっている。本研究の目的は、この局所分布の多様性という新たな視点に立つことにより、データの大規模化に適合した新しい処理手法を実現することにある。平成17年度は、平成16年度に構築した実験用データベースを用いて、以下のアプローチにより研究を行った。(1)示差性感応型最近接点探索法による局所分布の多様性の解明:構築された実験用データベースに対して、研究代表者らが考案した示差性感応型最近接点探索法を適用し、高次元特徴量空間における局所分布の多様性について解析した。(2)局所分布の多様性を活用した新しいマルチメディア情報処理手法の開拓:実験用データベースに対する解析結果に基づいて、最近接点探索法の効率化・高精度化法を考案した。(3)提案手法についての包括的な評価実験の実施:本研究では、実践的なマルチメディア情報処理手法の確立を目指していることから、実験用データベースを活用することにより、実応用を意識した包括的な評価実験を行った。平成16年度には、高次元特徴量空間の局所分布にどのような多様性ならびに特徴が見られるのか解析を進めるため、放送映像をコンテンツとする実験用データベースの構築ならびに実験環境の整備を行った。そして、構築した実験用データベースに対して、どのような解析が重要か、またそのための主要課題は何かという視点に立って研究を進めた。その結果、以下の四つの項目が中心的な研究課題であることが明らかとなった。(1)映像セグメント間の関連付け、(2)複数メディアの効果的な統合、(3)有用だが希少な関連の発掘、(4)スケーラビリティとオンライン処理の実現。これらのうち本研究と特に関連が深いのは(3)の有用だが希少な関連を発掘するという問題と(4)のスケーラビリティの問題である。これらの問題に対しては、データベースシステム分野の既存技術が有用であると考えられるが、現在急速に大規模化しているマルチメディアアプリケーションのニーズにまだ十分に対応できていないと考えられる。データベースシステム技術の骨格は、最適化による処理コストの削減にあり、実問題の中から効率化可能な部分を見つけ、効率的なデータ構造やアルゴリズムを構築することにある。現在の規模での取り組みは始まったばかりであり、効率化の余地はまだ多く残されている。本研究の目的は、特徴量空間の局所分布の多様性にそのような効率化の鍵を見出すことにあり、今年度の成果に基づき、来年度には、処理手法の具体化を進める計画である。高次元特徴量空間は、時系列データ、画像データ、映像データなどのマルチメディア情報を照合・解析・検索するための手法として従来から使われている手法であるが、近年、その量的な大規模化が目覚しく、かつてのパターン認識システムでは考えられなかった規模のデータを蓄積可能になっている。そして、そのような大規模なデータに対しては、従来からの処理手法をそのまま適用したのでは、十分な性能が発揮されなかったり、データ本来の能力を十分に活かし切れない場合がある。そのため、データの大規模化に適合した新しい処理手法の必要性が高まっている。データの大規模化の影響が端的に現われる現象として、局所分布の多様性があり、大規模なデータの場合には、ひとつの特徴量空間の中であっても、局所的な領域ごとに多様な分布を持つことが明らかになっている。本研究の目的は、この局所分布の多様性という新たな視点に立つことにより、データの大規模化に適合した新しい処理手法を実現することにある。平成17年度は、平成16年度に構築した実験用データベースを用いて、以下のアプローチにより研究を行った。(1)示差性感応型最近接点探索法による局所分布の多様性の解明:構築された実験用データベースに対して、研究代表者らが考案した示差性感応型最近接点探索法を適用し、高次元特徴量空間における局所分布の多様性について解析した。(2)局所分布の多様性を活用した新しいマルチメディア情報処理手法の開拓:実験用データベースに対する解析結果に基づいて、最近接点探索法の効率化・高精度化法を考案した。(3)提案手法についての包括的な評価実験の実施:本研究では、実践的なマルチメディア情報処理手法の確立を目指していることから、実験用データベースを活用することにより、実応用を意識した包括的な評価実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-16700124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700124
ブラーフマナ研究-ヴェーダ散文文献の翻訳と注解-
本研究は,紀元前1000年紀の前半を中心に編集された,古インドアーリヤ語最古の散文文献から適切な部分を選んで翻訳し,詳細で多面的な注記・文法の説明・語彙集と共に,日本語で発表することを目指している。2年間に準備できた原稿は約10篇ほどについてであり,中5篇については,原典テキスト・翻訳・注解を入力し終え,ほぼ完成原稿の形になっている:(1)シュナハシェーパの物語,(2)プルーラヴァスとウルヴァシー,(3)マールターンダの物語-人と死の起源-,(4)マヌを巡る神話群(:マヌと洪水,マヌと娘イダー,マヌの妻とアスラたちの祭官),(5)ブリグの異界巡り。完了した部分は印刷して約80頁分に当たり,原典の校訂・注記,その他の付属篇を合わせて,計120頁程に相当するものと思われる。今後さらに2年程で,計約20篇を取り上げて原稿を完成させ,最終的には500頁程の出版を目指したい。予想以上に詳細な注記が必要であることがわかり,また,作業の進展に伴って,文献全体の位置と,原典の個々の個所についての理解が深まり,その分,文法・語彙・内容等に亙る調査・研究も,当初考えた以上に必要となってきた。その成果も挙がりつつあるが,できれば全てを,完成した際の出版中に組み入れたい。特に,古代インドの実生活,生活文化の中身に対する理解は文献理解の基本でありながら,これまでの研究に見るべきものが比較的少なく,牧畜移動生活,農耕,植民活動などに焦点を当てた章を設け,適切な文献個所を抜粋して紹介したい。特殊文字・記号の処理方法には未だやや不満な点が残っている。古いファイルや欧米で入力された資料の利用は,Word2000の出現によって大幅に推進されることとなった。二次文献の整備(購入,コピー),従って,その検討については,未だ不十分な点が残る。三つの説話群(1.シュナハシェーパの物語,2.プルーラヴァスとウルヴァシー,3.マールターンダ)について,原典テキスト,翻訳,註解を入力し,原稿として完成させた。2.と3.とについて時代と学派を異とする複数の伝承が伝えられているが,代表的なものを紹介するのではなく,それらすべてを対照の上検討・呈示する方法を採り有意義な成果が得られた。また,この両物語の古く重要な伝承を含む一学派の写本が京大人文研の井狩教授によって発見され出版の準備がなされているが,同氏の好意によりその原稿の提供を受け,他に先駆けて検討を加え翻訳を準備することができた。この部分についてはその重要性と緊急性とからドイツの雑誌に論文を寄稿し,目下印刷中である。本年度中に完了した部分の翻訳と注釈とは印刷した場合に換算して約55頁分に当たり,原典の校訂版その他を合わせて,計80頁程に相当する。上記の作業の為に,コンピューター二組を購入し,学生諸氏(主たる作業には2名)の協力を得た(→謝礼)。これらの成果を基に,全体の計画の細部について検討を加え,次年度の作業の見通しを立てることができた。結果として,予想以上に詳細な注記や,文法・語彙・内容に亙る個別の研究成果の呈示が必要であることが解ったが,個々に発表する余裕はないので全てをこの研究計画が完成した際の出版の中で発表することとしたい。取り上げる対象数は当初の予定より絞り込み,より深い知見の呈示を目指すこととする。物語的な素材を中心としつつも,祭式,生活,文化,思想哲学などの諸点に亙って重要と思われる原典箇所を選び,計20程度の題材の収録を目指したい。特殊記号の処理方法は未だ十分に解決できていないが,できるだけ理想に近づけたい。本研究は,紀元前1000年紀の前半を中心に編集された,古インドアーリヤ語最古の散文文献から適切な部分を選んで翻訳し,詳細で多面的な注記・文法の説明・語彙集と共に,日本語で発表することを目指している。2年間に準備できた原稿は約10篇ほどについてであり,中5篇については,原典テキスト・翻訳・注解を入力し終え,ほぼ完成原稿の形になっている:(1)シュナハシェーパの物語,(2)プルーラヴァスとウルヴァシー,(3)マールターンダの物語-人と死の起源-,(4)マヌを巡る神話群(:マヌと洪水,マヌと娘イダー,マヌの妻とアスラたちの祭官),(5)ブリグの異界巡り。完了した部分は印刷して約80頁分に当たり,原典の校訂・注記,その他の付属篇を合わせて,計120頁程に相当するものと思われる。今後さらに2年程で,計約20篇を取り上げて原稿を完成させ,最終的には500頁程の出版を目指したい。予想以上に詳細な注記が必要であることがわかり,また,作業の進展に伴って,文献全体の位置と,原典の個々の個所についての理解が深まり,その分,文法・語彙・内容等に亙る調査・研究も,当初考えた以上に必要となってきた。その成果も挙がりつつあるが,できれば全てを,完成した際の出版中に組み入れたい。
KAKENHI-PROJECT-11164202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11164202
ブラーフマナ研究-ヴェーダ散文文献の翻訳と注解-
特に,古代インドの実生活,生活文化の中身に対する理解は文献理解の基本でありながら,これまでの研究に見るべきものが比較的少なく,牧畜移動生活,農耕,植民活動などに焦点を当てた章を設け,適切な文献個所を抜粋して紹介したい。特殊文字・記号の処理方法には未だやや不満な点が残っている。古いファイルや欧米で入力された資料の利用は,Word2000の出現によって大幅に推進されることとなった。二次文献の整備(購入,コピー),従って,その検討については,未だ不十分な点が残る。
KAKENHI-PROJECT-11164202
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低密度パリティ検査符号の有歪み圧縮への応用に関する研究
低密度パリティ検査符号(LDPC符号)は、1962年Gallagerにより提案された誤り訂正符号であるが、最近の計算機パワーの急激な増加により、BP(Belief Propagation)アルゴリズムなどの繰り返し復号法が適用可能となり、高性能な誤り訂正能力を実現できるようになっている。これに対し、本研究そはLDPC符号を、誤り訂正ではなく、有歪みデータ圧縮符号化に利用すことを考え、その性能評価を行った。14年度は、低密度パリティ検査符号を用いて有歪み圧縮を行うための符号化アルゴリズムを与え、さらに、LDPC符号に対するMac Kayのランダムアンサンブルにおいて、符号語長が大きくなるに連れて漸近的に圧縮限界であるレート歪み関数を達成するLDPC符号が存在するという符号化定理の証明手法を考案した。15年度は、その証明における暖昧な部分を修正し、完全な証明を与えると共に、その結果を英文論文としてまとめ、学術論文誌(IEEE Transactions on Information Theory)に発表した。その符号化定理では、符号長nに対して、パリテイ検査行列の列ハミング重みtがt=O(log n)のとき、nと共に漸近的にレート歪み関数が達成でき、t=O(n)のときは、nと共に指数関数的にレート歪み関数に収束することを証明している。さらに、シミュレーションにより、有歪み圧縮の場合は、BPアルゴリズムをLDPC符号にそのまま適用するのでは、レート歪み関数をうまく実現できないことも示した。低密度パリティ検査符号(LDPC符号)は、1962年Gallagerにより提案された誤り訂正符号であるが、最近の計算機パワーの急激な増加により、BP(Belief Propagation)アルゴリズムなどの繰り返し復号法が適用可能となり、高性能な誤り訂正能力を実現できるようになっている。これに対し、本研究そはLDPC符号を、誤り訂正ではなく、有歪みデータ圧縮符号化に利用すことを考え、その性能評価を行った。14年度は、低密度パリティ検査符号を用いて有歪み圧縮を行うための符号化アルゴリズムを与え、さらに、LDPC符号に対するMac Kayのランダムアンサンブルにおいて、符号語長が大きくなるに連れて漸近的に圧縮限界であるレート歪み関数を達成するLDPC符号が存在するという符号化定理の証明手法を考案した。15年度は、その証明における暖昧な部分を修正し、完全な証明を与えると共に、その結果を英文論文としてまとめ、学術論文誌(IEEE Transactions on Information Theory)に発表した。その符号化定理では、符号長nに対して、パリテイ検査行列の列ハミング重みtがt=O(log n)のとき、nと共に漸近的にレート歪み関数が達成でき、t=O(n)のときは、nと共に指数関数的にレート歪み関数に収束することを証明している。さらに、シミュレーションにより、有歪み圧縮の場合は、BPアルゴリズムをLDPC符号にそのまま適用するのでは、レート歪み関数をうまく実現できないことも示した。低密度パリティ検査符号は,1962年Gallagerにより提案された誤り訂正符号であるが,最近の計算機パワーの急激な増加により,BP(Belief Propagation)アルゴリズムなどの繰り返し復号法が適用可能となり,高性能な誤り訂正能力を実現できるようになった.他方,歪みを許して高い圧縮率を実現する有歪み情報源符号化(データ圧縮符号化)は,誤り訂正符号化と双対な関係にあり,性能のよい誤り訂正符号を有歪み圧縮に利用することで高い圧縮率を実現できる可能性がある.本研究では,理論および数値実験により,その可能性を明らかにすることを研究目的としている.本年度は,主に理論的な研究を行った.具体的には,低密度パリティ検査符号を用いて有歪み圧縮を行うための符号化アルゴリズムを与え,さらに,MacKayが誤り訂正符号化定理の証明に用いたランダムアンサンブルを,その符号化アルゴリズムに適応することにより,符号語長が大きくなるに連れて漸近的に圧縮限界であるレート歪み関数が達成できることを証明した.また,レート歪み関数への漸近的な収束の速さを求め,漸近的にレート歪み関数が達成できるために,パリティ検査行列の密度がどの程度小さければよいかを明らかにした.低密度パリティ検査符号(LDPC符号)は,1962年Gallagerにより提案された誤り訂正符号であるが,最近の計算機パワーの急激な増加により,BP (Belief Propagation)アルゴリズムなどの繰り返し復号法が適用可能となり,高性能な誤り訂正能力を実現できるようになっている.これに対し,本研究ではLDPC符号を,誤り訂正ではなく,有歪みデータ圧縮符号化に利用することを考え,その性能評価を行った.昨年度,低密度パリティ検査符号を用いて有歪み圧縮を行うための符号化アルゴリズムを与え,さらに,LDPC符号に対するMacKayのランダムアンサンブルにおいて,符号語長が大きくなるに連れて漸近的に圧縮限界であるレート歪み関数を達成するLDPC符号が存在するという符号化定理の証明手法を考案した.本年度は,その証明における暖昧な部分を修正し,完全な証明を与えると共に,その結果を英文論文としてまとめ,学術論文誌(IEEE Transactions on Information Theory)に発表した.その符号化定理では,符号長nに対して,パリティ検査行列の列ハミング重みtがt=O(log n)のとき,nと共に漸近的にレート歪み関数が達成でき,t=O(n)のときは,nと共に指数関数的にレート歪み関数に収束することを証明している.さらに,シミュレーションにより,有歪み圧縮の場合は,BPアルゴリズムをLDPC符号にそのまま適用するのでは,レート歪み関数をうまく実現できないことも示した.
KAKENHI-PROJECT-14550347
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550347
ソフトウェア開発の形式的な発展手法
本プロジェクトの目的は、品質と信頼性の高いソフトウェアを開発するための実用的及び形式的な発展手法(evolution approach)に関する研究を行なうことである。当初の研究計画の実現に向けて,平成10年度は,以下の研究を遂行した.1.形式的仕様を求精する既存なルールを検討し、ソフトウェア発展のためのルールを提案した。このルールでソフトウェアを漸増的に発展することの検証ができる。さらに、このルールと既存な求精のルールの関係も検討して確立した。本研究に関して,以下の論文を発表した.2. SOFLという形式的仕様言語で鉄道の踏切制御システムの仕様書を作成した.このシステムは,直接,人命に係るために,絶対的な信頼性を要求される安全性が必須な(Safety Critical)システムである.これらの応用事例に適用した結果に基づき,SOFL言語及び,SOFL方法論のソフトウェア発展に関する部分を改良し、実用的な方法論を確立した。本研究に関して,以下の論文を発表した.3.ソフトウェア発展の一つ有効な方法は部品に基ずく(component-based)開発方法である。部品を使ってより複雑な部品を構成する手法及び作成した新しい部品の正しさを検証するルールを研究した。本研究に関して,以下の論文を発表した.4.ソフトウェア発展の一つ重要なことは、発展した仕様又は設計の無矛盾及び有効性の検証である。形式的証明とプログラムテストの技術を結合し、仕様又は設計の以上の二つ性質を検証する有効的な「仕様テスト」という方法を提案した。本研究に関して,以下の論文を投稿した.本プロジェクトの目的は、品質と信頼性の高いソフトウェアを開発するための実用的及び形式的な発展手法(evolution approach)に関する研究を行なうことである。当初の研究計画の実現に向けて,平成10年度は,以下の研究を遂行した.1.形式的仕様を求精する既存なルールを検討し、ソフトウェア発展のためのルールを提案した。このルールでソフトウェアを漸増的に発展することの検証ができる。さらに、このルールと既存な求精のルールの関係も検討して確立した。本研究に関して,以下の論文を発表した.2. SOFLという形式的仕様言語で鉄道の踏切制御システムの仕様書を作成した.このシステムは,直接,人命に係るために,絶対的な信頼性を要求される安全性が必須な(Safety Critical)システムである.これらの応用事例に適用した結果に基づき,SOFL言語及び,SOFL方法論のソフトウェア発展に関する部分を改良し、実用的な方法論を確立した。本研究に関して,以下の論文を発表した.3.ソフトウェア発展の一つ有効な方法は部品に基ずく(component-based)開発方法である。部品を使ってより複雑な部品を構成する手法及び作成した新しい部品の正しさを検証するルールを研究した。本研究に関して,以下の論文を発表した.4.ソフトウェア発展の一つ重要なことは、発展した仕様又は設計の無矛盾及び有効性の検証である。形式的証明とプログラムテストの技術を結合し、仕様又は設計の以上の二つ性質を検証する有効的な「仕様テスト」という方法を提案した。本研究に関して,以下の論文を投稿した.
KAKENHI-PROJECT-10139236
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10139236
高靭性型セメント系複合材料を用いたエネルギー吸収デバイスの開発に関する研究
1.デバイス試験体の静的加力実験1.1実験目的:モルタル中にビニロン繊維を体積比で1.5%混入した高靭性型セメント系複合材料(PVA-HPFRCC)を用いて,エネルギー吸収デバイスを想定した壁柱を製作し,曲げ・せん断実験を行った。実験の目的は,エネルギー吸収能力,剛性コントロールの可能性,および,せん断応力度レベルの違いによる損傷制御の可能性を把握することである。1.2実験概要:試験体形状は,柱幅200mm,柱せい450mmで一定とし,柱高さを900,600,450mmと変化させた。試験体数は,柱せん断スパンと主筋の強度の組み合わせにより剛性のコントロールを把握するための試験体3体,せん断応力度レベルを変化させた試験体2体,比較用のRC試験体1体の合計6体とした。1.3実験結果:(1)PVA-HPFRCC試験体は,RC試験体に比べて,エネルギー吸収能力および靭性能に優れており,また,せん断ひび割れの分散およびひび割れ幅の抑制効果が顕著であったことから,エネルギー吸収材および損傷制御材としての利用が可能であることが把握できた。(2)せん断スパン比および主筋強度を変化させることにより,曲げ耐力および剛性をコントロールすることが可能であることが確認できた。これは,コンクリート系構造の高い剛性を生かし,比較的小さな変形からエネルギー吸収を行うエネルギー吸収デバイスの実現が可能であることを示している。2.デバイス材の実構造物への利用静的加力実験で得られた構造性能特性より,部材の復元力特性をモデル化し,これを制振デバイスとして建物に組み込んだ構造解析を行った。1質点系モデルによる地震応答解析を行い,その制振効果を検討するとともに,耐震補強部材としての効果を検討した。結果として,本研究で対象とした無機質材によるエネルギー吸収デバイス材を建物に組み込むことにより,そのコンクリート系構造の高い剛性を生かし,エネルギー吸収デバイスとしての実現が可能であることを確認した。1.デバイス試験体の静的加力実験1.1実験目的:モルタル中にビニロン繊維を体積比で1.5%混入した高靭性型セメント系複合材料(PVA-HPFRCC)を用いて,エネルギー吸収デバイスを想定した壁柱を製作し,曲げ・せん断実験を行った。実験の目的は,エネルギー吸収能力,剛性コントロールの可能性,および,せん断応力度レベルの違いによる損傷制御の可能性を把握することである。1.2実験概要:試験体形状は,柱幅200mm,柱せい450mmで一定とし,柱高さを900,600,450mmと変化させた。試験体数は,柱せん断スパンと主筋の強度の組み合わせにより剛性のコントロールを把握するための試験体3体,せん断応力度レベルを変化させた試験体2体,比較用のRC試験体1体の合計6体とした。1.3実験結果:(1)PVA-HPFRCC試験体は,RC試験体に比べて,エネルギー吸収能力および靭性能に優れており,また,せん断ひび割れの分散およびひび割れ幅の抑制効果が顕著であったことから,エネルギー吸収材および損傷制御材としての利用が可能であることが把握できた。(2)せん断スパン比および主筋強度を変化させることにより,曲げ耐力および剛性をコントロールすることが可能であることが確認できた。これは,コンクリート系構造の高い剛性を生かし,比較的小さな変形からエネルギー吸収を行うエネルギー吸収デバイスの実現が可能であることを示している。2.デバイス材の実構造物への利用静的加力実験で得られた構造性能特性より,部材の復元力特性をモデル化し,これを制振デバイスとして建物に組み込んだ構造解析を行った。1質点系モデルによる地震応答解析を行い,その制振効果を検討するとともに,耐震補強部材としての効果を検討した。結果として,本研究で対象とした無機質材によるエネルギー吸収デバイス材を建物に組み込むことにより,そのコンクリート系構造の高い剛性を生かし,エネルギー吸収デバイスとしての実現が可能であることを確認した。1.モルタル中にビニロン繊維を体積比で1.5%混入した高靭性型セメント系複合材料を用いて,エネルギー吸収デバイスを想定した壁柱を製作し、曲げ・せん断実験を行った。実験の目的は,エネルギー吸収能力,剛性コントロールの可能性,および,せん断応力度レベルの違いによる損傷制御の可能性を把握することである。2.試験体形状は,柱幅2000mm,柱せい450mmで一定とし,柱高さを900,600,450mmと変化させた。試験体数は,柱せん断スパンと主筋の強度の組み合わせにより剛性のコントロールを把握するための試験体3体,せん断応力度レベルを変化させた試験体2体,比較用の鉄筋コンクリート造試験体1体の合計6体とした。また,壁柱の上端・下端でのズレを防ぐためのシヤキーの設置、およびスタブコンクリートからの主筋の抜け出し量を防ぐためのスリーブの設置等の工夫を施した。3.実験結果より,以下の点を把握した。(1)高靭性型セメント系複合材料を用いた試験体は,鉄筋コンクリート造試験体に比べて,エネルギー吸収能力および靭性能に優れており,また,せん断ひび割れの分散およびひび割れ幅の抑制効果が顕著であったことから,エネルギー吸収材および損傷制御材としての利用が可能であることが把握できた。(2)せん断スパン比および主筋強度を変化させることにより,曲げ耐力および剛性をコントロールすることが可能であることが確認できた。これは,コンクリート系構造の高い剛性を生かし,比較的小さな変形からエネルギー吸収を行うエネルギー吸収デバイスの実現が可能であることを示している。
KAKENHI-PROJECT-12650587
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650587
高靭性型セメント系複合材料を用いたエネルギー吸収デバイスの開発に関する研究
4.平成13年度は,本実験で得られた構造性能特性をモデル化し,建物に組み込んだ構造解析を行うことにより,無機質材による高エネルギー吸収部材を組み込んだ構造システムの有効性や構造性能の可能性を明らかにすることとしたい。1.平成12年度の実験結果より,以下の点を把握した。(1)高靭性型セメント系複合材料を用いた試験体は,鉄筋コンクリート造試験体に比べて,エネルギー吸収能力および靭性能に優れており,また,せん断ひび割れの分散およびひび割れ幅の抑制効果が顕著であったことから,エネルギー吸収材および損傷制御材としての利用が可能であることが把握できた。(2)せん断スパン比および主筋強度を変化させることにより,曲げ耐力および剛性をコントロールすることが可能であることが確認できた。これは,コンクリート系構造の高い剛性を生かし,比較的小さな変形からエネルギー吸収を行うエネルギー吸収デバイスの実現が可能であることを示している。2.平成12年度の実験で得られた構造性能特性より,部材の復元力特性をモデル化し,これを制振デバイスとして建物に組み込んだ構造解析を行った。1質点系モデルによる地震応答解析を行い,その制振効果を検討するとともに,耐震補強部材としての効果を検討した。結果として,本研究で対象とした無機質材によるエネルギー吸収デバイス材を建物に組み込むことにより,そのコンクリート系構造の高い剛性を生かし,エネルギー吸収デバイスとしての実現が可能であることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-12650587
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650587
自己由来分子による炎症・免疫応答系の制御機構の解明
本研究は、自己由来分子による炎症・免疫応答の調節機構を解明し、その破綻としての各種疾患の発症についての理解を深め、炎症・免疫疾患発症機構における新たなパラダイムの創出を目指すものである。細胞が様々な刺激を受けるとタンパク、核酸などの多様な成分が放出され、それらが炎症・免疫系を調節することが注目されつつある。このような細胞応答シグナルのバランスが破綻することが種々の疾患の発症に繋がると考えられるが、自己由来成分の本態や作用機構には未知の点が多い。我々は既に、代表的な自己細胞由来炎症誘発タンパクであるHMGB1(High-mobility group box 1)の機能解析を推進するとともに、新たな炎症誘発性低分子RNAや抑制性脂質成分等を同定し、それらの作用機序の解明を目指すべく、検討を開始した。一方で、本研究内容を含んだ新たな研究計画(基盤研究S)が採択されたことにより、本研究内容を新たな研究計画に組み込んだ形で推進を行うため、本研究計画を廃止するに至った。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、自己由来分子による炎症・免疫応答の調節機構を解明し、その破綻としての各種疾患の発症についての理解を深め、炎症・免疫疾患発症機構における新たなパラダイムの創出を目指すものである。細胞が様々な刺激を受けるとタンパク、核酸などの多様な成分が放出され、それらが炎症・免疫系を調節することが注目されつつある。このような細胞応答シグナルのバランスが破綻することが種々の疾患の発症に繋がると考えられるが、自己由来成分の本態や作用機構には未知の点が多い。我々は既に、代表的な自己細胞由来炎症誘発タンパクであるHMGB1(High-mobility group box 1)の機能解析を推進するとともに、新たな炎症誘発性低分子RNAや抑制性脂質成分等を同定し、それらの作用機序の解明を目指すべく、検討を開始した。一方で、本研究内容を含んだ新たな研究計画(基盤研究S)が採択されたことにより、本研究内容を新たな研究計画に組み込んだ形で推進を行うため、本研究計画を廃止するに至った。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H02514
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02514
有限オートマトンの新しいモデルに基づくハイブリッドシステム制御論
本研究課題では,ハイブリッドシステムの制御における計算の効率化に取り組んだ.成果として,有限オートマトンの安定化に基づくモデル予測制御手法,およびオフライン計算とオンライン計算の両方を用いた精度保証付き近似解法を提案した.また,数値実験により計算の効率化が実現されたことを確認した.さらに応用として,ブーリアンネットワークモデルで表現される遺伝子ネットワークの解析と制御にも取り組んだ.本研究課題では,ハイブリッドシステムの制御における計算の効率化に取り組んだ.成果として,有限オートマトンの安定化に基づくモデル予測制御手法,およびオフライン計算とオンライン計算の両方を用いた精度保証付き近似解法を提案した.また,数値実験により計算の効率化が実現されたことを確認した.さらに応用として,ブーリアンネットワークモデルで表現される遺伝子ネットワークの解析と制御にも取り組んだ.本年度は初年度ということで,基礎研究を実施した.具体的には以下の通りである.(1)ブーリアンネットワークモデルの可制御性解析:ブーリアンネットワークモデルは遺伝子ネットワークのモデルの一つであり,離散ダイナミクスの一種である.ブーリアンネットワークモデルの可制御性判定条件は一般にNP困難であることから,多項式時間アルゴリズムにより判定可能な十分条件を提案した.(2)有向グラフで表現される離散ダイナミクスのモデリング:与えられた有向グラフを複数の有向グラフに分割し,切り替えにより離散ダイナミクスを表現する方法を提案した.(3)オンラインおよびオフライン計算を用いたハイブリッドシステムのモデル予測制御の近似解法:モデル予測制御ではオンライン計算またはオフライン計算のみに基づく解法が多いが,計算時間の観点からは両方を用いることが望ましい.また実用上,近似解法は重要である.提案手法では,オフライン計算で問題が可解となるモード系列を抽出し,オンライン計算では簡単な計算でモード系列を決定し,二次計画問題を解くものである.したがって,計算負荷を分散することが可能となる.(4)不確かなパラメータを含むハイブリッドシステムの解析・制御への区間法の適用:区間法は精度保証付き数値計算手法として広く用いられているが,制御系設計への応用は少ないことから適用を検討した.区間法を用いることで,不確かなパラメータを含むハイブリッドシステムは混合論理動的システムとして表現可能であり,既存のさまざまな手法が適用可能となる.以上の成果は,雑誌論文や国際会議に投稿中である.本年度は,これまでに取り組んだハイブリッドシステムの制御に関する結果を,確率システムへ拡張することを検討した.具体的には以下の研究に取り組んだ.(1)確率ハイブリッドシステムの制御一般的な確率ハイブリッドシステムの場合,連続ダイナミクスは非線形確率微分方程式,離散ダイナミクスは確率有限オートマトンで表現される.しかしながら,解析や設計の計算が煩雑となることから,本研究では連続ダイナミクスを離散時間線形システムに限定し,モデル予測制御則の導出を行った.この場合においても,システムの故障を考慮した制御などさまざまな応用が考えられる.提案する制御則では,離散状態(モード)の時系列に着目してモデリングすることで,計算の効率化を図っている.(2)確率ブーリアンネットワークの制御確率ブーリアンネットワークは遺伝子ネットワークのモデルの一つであり,確率的な離散ダイナミクスの一種である.また,確定的なブーリアンネットワークでは考慮できない雑音の影響を扱うことが可能である.最適制御問題の従来解法においては,確率ブーリアンネットワークを離散時間マルコフ連鎖に変換する必要がある.しかしながら,この変換は遺伝子数に関して指数時間の計算量を必要とすることから,大規模な遺伝子ネットワークへの適用が困難である.この問題を解決するために,本研究では整数計画法を用いた解法を提案した.提案手法では,離散時間マルコフ連鎖への変換が不要であり,大規模な遺伝子ネットワークへの適用が可能である.実際に,従来手法では計算が困難な規模のシステムに対して計算が可能であることを,計算機実験により示した.以上の成果は,雑誌論文や国際会議に投稿中である.本年度は本研究課題の最終年度として,実用的な視点から以下の課題に取り組んだ1.確率ハイブリッドシステムの確率的拘束付き制御確率システムの制御において,確率的拘束(拘束を満足する確率をある値以上にする)は重要である.しかしながら,確率ハイブリッドシステムにおいては確率的拘束を考慮した最適制御手法は提案されていなかった.そこで本研究では,可到達性解析を用いた最適制御手法を提案した.提案手法は2つの手順((1)可到達性グラフの作成,(2)最適制御入力の計算)からなる。(1)可到達性グラフの作成では,頂点に状態の領域,有向辺に状態,制御入力および遷移確率が割り当てられた可到達性グラフを作成する.可到達性グララを計算することで,ある状態から他の状態へ遷移させる制御入力の存在性およびその実現確率を求めることが可能となる.(2)最適制御入力の計算では,可到達性グラフから確率的拘束を満足する状態および制御入力を列挙し,そのなかから最適制御入力を求める.本研究課題のこれまでの成果を利用すると,この問題は混合整数計画問題に帰着される.2.モデル検査を用いた確率ブーリアンネットワークの解析確率ブーリアンネットワークは遺伝子ネットワークの代表的なモデルの一つであり,確率的な離散ダイナミクスの一種である.確率ブーリアンネットワークの解析や制御の従来手法では,離散時間マルコフ連鎖に変換する必要がある.しかしながら,この変換は遺伝子数に関して指数時間の計算量を必要であり,より簡便な手法が求められている本研究では,モデル検査を用いた簡便な解析方法を提案した.提案手法は,確率ブーリアンネットワークにおけるブール関数を直接,モデル検査ツール上で実装する方法であり,可到達性や安全性を検証することができる.最後に,本研究の総括を行い,実用化に向けた課題や理論面からの課題を整理した.
KAKENHI-PROJECT-20760278
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20760278
発達障害児の心の理解とその障害に関する研究
発達障害児の心の理解についての検討を行った。Baron-Cohenら(1985)とHappe(1994)を参考に,心の理解課題を作成し(花熊ら,2002),健常児(小学校1-3年生)や軽度発達障害児(小学校1年生-中学校3年生)に実施した。課題の物語を聞かせ登場人物の行動予測や言動の真偽を判断させ,なぜそう思うかの理由を回答させた。行動予測や言動の真偽の判断のような択一的な課題については健常児と軽度発達障害児との間には差は見られなかった。しかし,行動予測や真偽判断の理由については健常児と軽度発達障害児との間で差が見られた。特に高機能広汎性発達障害(以下,高機能PDD)児においては,健常児とは異なる回答が見られた。一方,知的障害養護学校中学部に在籍する軽度知的障害を伴う自閉性障害児の社会的行動と心の理解の発達について縦断的な検討を行った。授業の中で劇指導を行った。劇の中では,他者の視線を意識する活動,感情表現を豊かにする活動を行った。他者の視線を意識した行動がみられるようになっただけでなく,パートナーに対する自発的な援助行動もみられるようになった。また,状況による表情の弁別をさせたり,感情表現の上手な生徒の演技を注目させたりすることによって,対象児の感情表現が豊かになっていった。日常生活場面においても自発的な社会的行動・向社会的行動が観察されるようになった。1次の誤信念課題を3課題5試行を行ったところ,1課題で通過した。さらに課題内容の確認を行ったところ,もう1課題でも正解した。以上のように社会的行動と心の理解に発達がみられた。発達障害児の心の理解についての検討を行った。Baron-Cohenら(1985)とHappe(1994)を参考に,心の理解課題を作成し(花熊ら,2002),健常児(小学校1-3年生)や軽度発達障害児(小学校1年生-中学校3年生)に実施した。課題の物語を聞かせ登場人物の行動予測や言動の真偽を判断させ,なぜそう思うかの理由を回答させた。行動予測や言動の真偽の判断のような択一的な課題については健常児と軽度発達障害児との間には差は見られなかった。しかし,行動予測や真偽判断の理由については健常児と軽度発達障害児との間で差が見られた。特に高機能広汎性発達障害(以下,高機能PDD)児においては,健常児とは異なる回答が見られた。一方,知的障害養護学校中学部に在籍する軽度知的障害を伴う自閉性障害児の社会的行動と心の理解の発達について縦断的な検討を行った。授業の中で劇指導を行った。劇の中では,他者の視線を意識する活動,感情表現を豊かにする活動を行った。他者の視線を意識した行動がみられるようになっただけでなく,パートナーに対する自発的な援助行動もみられるようになった。また,状況による表情の弁別をさせたり,感情表現の上手な生徒の演技を注目させたりすることによって,対象児の感情表現が豊かになっていった。日常生活場面においても自発的な社会的行動・向社会的行動が観察されるようになった。1次の誤信念課題を3課題5試行を行ったところ,1課題で通過した。さらに課題内容の確認を行ったところ,もう1課題でも正解した。以上のように社会的行動と心の理解に発達がみられた。高機能PDD(広汎性発達障害)と判断された子どもに対し学校全体における指導全体についてコンサルテーションと指導を行った。特に通級指導教室においては、他者の感情の読み取り、間接発話の理解、語用を中心とした会話理解の指導を行った。その結果、心の理論課題を通過できるようになった一方で、クラス内の友人関係も改善した。一方、知的障害養護学校中学部に在籍する自閉性障害児に心の理解に関する課題を実施した。さらに劇を用いた支援を行った。その中で、他者の視線を意識する活動や他者を援助する活動、自己や他者の演技に言及する活動を行った。はじめ、他者の視線を意識することができなかったが、しだいに意識するようになった。また、他者を援助する場面では、名前を呼ぶだけであったり力任せに手をひくだけであったりした対象児が、しだいにことばかけをしながら手をひくような働きかけが見られるようになり、力加減をして手をひくようになった。一方、自己や他者の演技についての言及では当初、行動レベルの言及にとどまっていたが、しだいに身体感覚や心の状態への言及をするようになった。そこで、心の理解に関する課題を実施したところ、いくつかの一次の誤信念課題を通過するようになった。また、日常生活においても、他児の遊びに入れてもらうための発話や転んだ人に「大丈夫?」と尋ねるなどの自発的な社会的・向社会的行動がが見られるようになった。小・中学校期の高機能広汎性発達障害(以下,高機能PDD)児11名の心の理解について分析を行った。高機能PDD児は1次の誤信念課題(Baron-Cohenら,1985等)は通過した。「見る」-「知る」関係を正しく理解し,課題中の物語の登場人物の行動を正しく予測した。さらに,ほとんどの子どもが登場人物の行動予測の理由を正しく言及していた。しかし,1名だけ正しく言及できないものがいた。
KAKENHI-PROJECT-14510149
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510149
発達障害児の心の理解とその障害に関する研究
これまで,多くの研究が1次の誤信念課題についてなされてきたが,被験者の回答の質的分析はあまりなされてきていない。本研究から,被験者の回答の質的な分析の必要性が明らかとなった。また,Happe (1994)の心の理解課題(比喩・嘘・配慮・冗談・皮肉)についても,多くの子どもが課題中の物語の登場人物の言動の真偽を正しく判断できた。しかし,その真偽の判断は,事実と言動が異なっていることのみに言及したものが多かった。事実と言動が異なっている理由についての回答も小学校1-3年生の健常児の結果(花熊ら,2002)とは異なり,登場人物の心情を正しく推論できた者は中学生の1名のみであった。登場人物の言動の真偽の判断における健常児との違いが,発達的未熟性によるものか,高機能PDDに特異的なもであるかは,今回の研究では明かではない。しかし,多くの者が登場人物の言動の真偽を正しく判断できる一方で,判断の理由を心的なものに帰属できなかったり,誤って帰属することが高機能PDD児の社会適応の困難と関連していると思われた。
KAKENHI-PROJECT-14510149
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遺伝性脊髄小脳変性症遺伝子の単離と診断法の樹立
遺伝性脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)とは、おもに小脳系の変性を中心とする複数の疾患群の総称である。30代後半になって発症し、小脳失調、歩行困難、痴呆など多彩な症状が徐々に進行する悲惨な疾患で、北海道には500人を超す患者が知られている。遺伝形式から常染色体上の1個の遺伝子の異常がSCDの原因を成すと推定でき、各疾患(病型)には各々特異的な原因遺伝子が想定されている。これまでの連鎖解析によってその原因遺伝子の局在が次々と決定され、現在SCA1SCA7の7型が明らかとなっている。うちSCA1、SCA2、SCA3(Machado-Joseph病;MJD)については原因遺伝子が既に同定され、中に含まれるCAG3塩基反復配列の異常増幅に基づくことが明らかにされている。一方このいずれにも属さない疾患も残されている。特に日本人のSCDの約30%を占めるHolmes失調症については遺伝子座位さえ不明であった。本研究によって我が国のHolmes型失調症の半数はSpinocerebellar ataxia type6(SCA6)であることが明らかにされ、その責任遺伝子は19p13に存在するα1A-電位依存性カルシウムチャンネル遺伝子(CACNLlA4)である事が分かった。SCA1、SCA2、SCA3など世代を重ねるに連れ重症化する、所謂遺伝的促進現象の見られる神経筋疾患では共通して不安定性3塩基反復配列の異常増幅が見られるが、Holmes失調症においても、患者ではCACNLlA4遺伝子の翻訳領域内にあるCAG反復配列が伸長していた。本研究により、日本人のSCDの殆どはSCA1、SCA2、SCA3およびSCA6のいづれかであり、その遺伝子診断法が確立できた。これらの疾患の遺伝子異常の本態は全てCAG反復配列の異常増幅を原因としていた。CAG3反復配列はpoly-glutamine鎖となり、神経系にubiquitousに発現されている。今後はpoly-glutamine鎖がどのような機序で選択的神経細胞死を起こすかを明らかにする必要がある。遺伝性脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)とは、おもに小脳系の変性を中心とする複数の疾患群の総称である。30代後半になって発症し、小脳失調、歩行困難、痴呆など多彩な症状が徐々に進行する悲惨な疾患で、北海道には500人を超す患者が知られている。遺伝形式から常染色体上の1個の遺伝子の異常がSCDの原因を成すと推定でき、各疾患(病型)には各々特異的な原因遺伝子が想定されている。これまでの連鎖解析によってその原因遺伝子の局在が次々と決定され、現在SCA1SCA7の7型が明らかとなっている。うちSCA1、SCA2、SCA3(Machado-Joseph病;MJD)については原因遺伝子が既に同定され、中に含まれるCAG3塩基反復配列の異常増幅に基づくことが明らかにされている。一方このいずれにも属さない疾患も残されている。特に日本人のSCDの約30%を占めるHolmes失調症については遺伝子座位さえ不明であった。本研究によって我が国のHolmes型失調症の半数はSpinocerebellar ataxia type6(SCA6)であることが明らかにされ、その責任遺伝子は19p13に存在するα1A-電位依存性カルシウムチャンネル遺伝子(CACNLlA4)である事が分かった。SCA1、SCA2、SCA3など世代を重ねるに連れ重症化する、所謂遺伝的促進現象の見られる神経筋疾患では共通して不安定性3塩基反復配列の異常増幅が見られるが、Holmes失調症においても、患者ではCACNLlA4遺伝子の翻訳領域内にあるCAG反復配列が伸長していた。本研究により、日本人のSCDの殆どはSCA1、SCA2、SCA3およびSCA6のいづれかであり、その遺伝子診断法が確立できた。これらの疾患の遺伝子異常の本態は全てCAG反復配列の異常増幅を原因としていた。CAG3反復配列はpoly-glutamine鎖となり、神経系にubiquitousに発現されている。今後はpoly-glutamine鎖がどのような機序で選択的神経細胞死を起こすかを明らかにする必要がある。この研究は、日本人遺伝性脊髄小脳変性症(SCD)の遺伝子解析、特にHolmes失調症について、1)その責任遺伝子座位を決定し、遺伝子異常を明らかにする、2)その神経病理学的、臨床症候学的診断基準を確立すること、を目的に行われた。Holmes失調症は壮年期発症、緩慢進行性の小脳失調を主張とする疾患で日本人SCDの約30%を占める重要な病気である。我々は先ず、SCDの遺伝子について既にSCA1SCA5の5型が知られていたが、Holmes失調症はそのいづれでもない事を明らかにした。この研究の最中SCDの新たな亜型SCA6が報告された。SCA6は19p13に存在する。α_<1A>電位依存性Ca^<2+>チャンネル遺伝子(CACNL1A4)の異常を原因とする。我々は日本人Holmes失調症患者について検索し、直ちに本症がSCA6と同一である事を確認した。すなわちHolmes失調症患者ではCACNL1A4遺伝子内に存在するCAG反復配列が、健常人に比し著しく伸展していた。またCAG反復配列数と発症年齢、症状の重症度には逆相関が確認された。
KAKENHI-PROJECT-09557020
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遺伝性脊髄小脳変性症遺伝子の単離と診断法の樹立
Holmes失調症はSCA1、SCA2、SCA3と同じくポリグルタミン鎖病に属するものであることが判ったが、これら3者に比し患者のCAG反復配列が際立って少ない。この事はHolmes失調症の発症年齢が高齢に偏る原因と推察された。また検索したHolmes失調症12家系全てにおいてCACNL1A4遺伝子エクソン部に存在する多型標識(D19S1150)が同一である事から日本人Holmes失調症患者は共通の祖先より派生した可能性が示唆された。この研究により日本人には少なくともSCA1、SCA2、SCA3、SCA6の4病型が存在し、その鑑別診断が可能となった。遺伝性脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)とは、おもに小脳系の変性を中心とする複数の疾患群の総称である。本研究では日本人のSCDの中で解析の遅れていた遺伝性小脳皮質変性症(Holmes型)を対象に遺伝的解析を行い以下の点を明らかにした。1) Holmes型失調症は成年期に発症し、緩慢進行性の小脳失調を主徴とする疾患で、他の神経徴候を伴うことは稀である。3) SCA6患者では19p13に存在するα1A-電位依存性カルシウムチャンネル遺伝子(CACNL1A4)翻訳領域内にあるCAG反復配列が伸長していた。4) CACNL1A4は小脳プルキニエ細胞および顆粒細胞に発現している。5) SCA6のCAG反復配列数は、健常人では418回、患者では2123回で、両者には重なりは無かった。7) CACNL1A4遺伝子内に存在するD19S1150は患者全員が同一遺伝子型を有し、SCA6は一人の祖先から由来すると想定された。8) SCA6のCAG反復配列数は、他の遺伝性小脳変性症と比して少なくSCA1、SCA2、SCA3では健常人にも見られる範囲であった。これはHolmes型失調症が他と比べて発症年齢が高く、症然が穏かで有る事と関連するものと思われた。
KAKENHI-PROJECT-09557020
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InAlAs酸化膜によるIII-V-OI MOS構造の作製および界面準位に関する研究
InAlAsのウェット酸化を利用したIII-V MOS界面の研究を行った。XPS分析、エリプソメトリー、TEM像解析等により、InAlAsの酸化機構を明らかにし、良好な界面特性を持つInAlAs/InP MOS界面を実現することに成功した。またInP酸化防止層を配した構造において、InAlAs層の自然酸化を抑制することで、良好なMOS界面が再現性良く得られることを明らかにした。これにより既存のSiトランジスタの性能を上回るIII-Vトランジスタを実現するための基盤技術を確立した。InAlAsのウェット酸化を利用したIII-V MOS界面の研究を行った。XPS分析、エリプソメトリー、TEM像解析等により、InAlAsの酸化機構を明らかにし、良好な界面特性を持つInAlAs/InP MOS界面を実現することに成功した。またInP酸化防止層を配した構造において、InAlAs層の自然酸化を抑制することで、良好なMOS界面が再現性良く得られることを明らかにした。これにより既存のSiトランジスタの性能を上回るIII-Vトランジスタを実現するための基盤技術を確立した。平成19年度においては、MOS構造を作製するためのInAlAs/InP構造の結晶成長技術およびInAlAs酸化手法の確立を目指した研究開発を行った。InAlAs酸化物/InP構造において良好なMOS界面を得るために最適な層構造を見出すために、MOVPEおよびMBEを用いて、InP基板の種類、InPバッファ層およびInAlAs層の厚みが異なる試料を作製して、結晶成長技術の最適化を行った。またInAlAs層を選択的に酸化するためのウェット酸化炉装置を作製した。これにより、成長したInAlAs酸化物/InP構造の作製に成功した。作製したInAlAs酸化物/InP構造の電流-電圧特性より、ゲートリーク電流を測定することで、InAlAs酸化物の絶縁性を評価した。これにより、InAlAsの酸化条件の最適化を行った。InAlAsが10nmの試料においては、525度での酸化が最適であり、60分の酸化時間において、ゲートリーク電流が6桁程度低減可能であることがわかった。また、作製したInAlAs酸化物をエリプソメトリー、段差計、XPSで分析した。この結果、ウェット酸化によるInAlAsの膜厚はほとんど増加せず、InAlAs層のAs原子が酸素に置換されて酸化が進行していることが分かった。最適な酸化条件で作製したInAlAs酸化物/InP構造のC-V特性を評価した結果、ゲート電圧によりゲート容量が変化するMOSキャパシタ構造が実現できていることを確認することに成功した。またコンダクタンス法による界面準位の評価も行った。測定されてたコンダクタンスピークから界面準位密度が2E12cm-3程度のMOS界面が得られることが分かった。得られたキャリア時定数から界面準位の捕獲断面積を評価した結果、InAlAs酸化物/InP MOS構造においてはクーロン誘引散乱が支配的要因であることが分かった。平成20年度においては、ウェット酸化を利用したInAlAs/InP MOS界面の特性改善を目指した研究開発を行った。これまで試作作製においてはMOVPEとMBEでの結晶成長を用いてきたが、MOVPEで成長した試料ではC-V特性が劣化することが判明した。様々な酸化条件や試料構造を検討した結果、酸化前におけるInAlAs膜中の酸素原子量によって、ウェット酸化後の絶縁特性やMOS界面特性が大きな影響を受けることを見出した。ウェット酸化前にInAlAsが自然酸化されてしまうことにより、リーク電流や界面準位が増大することが分かった。そこでInAlAsに薄膜InPキャップ層をつけることで、ウェット酸化後において大幅な特性改善が得られることを見出した。これによりMOVPEにおいても良好なInAlAs/InP MOS界面を再現性よく作製することに成功した。またウェット酸化機構を明らかにするため、ドライ酸化を利用したInAlAs/InP MOS構造の作製も行った。作製したInAlAs酸化膜をXPS等で詳細に分析した結果、ウェット酸化においてはAs原子がほとんどないのに対して、ドライ酸化においてはAs原子はそのまま膜中に存在していることが明らかとなった。ウェット酸化においては、単にInAlAsを酸化するだけではなくAsを脱理させる機構が働いており、これによりMOS界面特性が向上した可能性があることを明らかにした。ウェット酸化によるInAlAs/InP MOSのさらなるEOT低減やリーク電流の抑制を実現するため、酸化後SiO2薄膜でキャップしたMOS構造の作製も行った。キャップすることにより周波数分散が小さく、ヒステリシスもほとんどない良好なMOSキャパシタ特性が得られることが分かった。これらの研究により、ウェット酸化を用いたInAlAs/InP MOS構造の物理的特性、電気的特性を明らかにすることができた。
KAKENHI-PROJECT-19860024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19860024
構造用高分子複合材料の疲労機構と寿命予測
本研究は、熱可塑性樹脂をマトリックスとしてガラス短繊維を含む高分子複合材料の疲労寿命のデータを集積するとともに、高分子複合材料の疲労のメカニズムを明らかにし、信頼性に富み、迅速な判断が可能な耐久寿命評価方法を確立することを目的とした。以下に、本研究で得られた主な成果をまとめた。1.疲労挙動は以下の3段階に分けられた。1)初期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度が低下する。2)中期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度は変化のない定常状態となる。3)後期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度が増加する。2.上記1.の挙動は負荷応力レベルにより変化した。すなわち、負荷応力が低くなるほど、tanδおよびAE発生頻度は減少するとともに、全寿命にしめる後期段階の割合は著しく減少した。3.疲労進行中での平均音速変化においても上記1.の挙動と対応した。とくに、負荷応力が高いとき、平均音速は初期から低下し、後期段階に変わるとともにその減少度が著しくなった。それに対し、後期段階が少ない低負荷レベルになると、初期に音速が増加し一定値となり、後期段階の出現とともに音速は低下するようになる。4.上記3.の試験片空間中での音速分布は、負荷応力レベルにより異なる。すなわち、高負荷応力レベルでは、音速低下は、試験片中央部に局在化するのに対して、負荷応力レベルが低下すると、音速変化は小さくなるとともに、その分布は一様化した。5.上記1.から4.よりN66/SGF疲労破壊には下記に示すような二種類の機構が存在することを明らかにした。1)疲労損傷が局所化され破壊に至るTypeA型(負荷応力レベルの高い低寿命において現れる)2)疲労損傷が局所化されず、試験片全体に分散した後、破壊に至るTypeB型(負荷応力レベルの低い高寿命において現れる)本研究は、熱可塑性樹脂をマトリックスとしてガラス短繊維を含む高分子複合材料の疲労寿命のデータを集積するとともに、高分子複合材料の疲労のメカニズムを明らかにし、信頼性に富み、迅速な判断が可能な耐久寿命評価方法を確立することを目的とした。以下に、本研究で得られた主な成果をまとめた。1.疲労挙動は以下の3段階に分けられた。1)初期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度が低下する。2)中期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度は変化のない定常状態となる。3)後期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度が増加する。2.上記1.の挙動は負荷応力レベルにより変化した。すなわち、負荷応力が低くなるほど、tanδおよびAE発生頻度は減少するとともに、全寿命にしめる後期段階の割合は著しく減少した。3.疲労進行中での平均音速変化においても上記1.の挙動と対応した。とくに、負荷応力が高いとき、平均音速は初期から低下し、後期段階に変わるとともにその減少度が著しくなった。それに対し、後期段階が少ない低負荷レベルになると、初期に音速が増加し一定値となり、後期段階の出現とともに音速は低下するようになる。4.上記3.の試験片空間中での音速分布は、負荷応力レベルにより異なる。すなわち、高負荷応力レベルでは、音速低下は、試験片中央部に局在化するのに対して、負荷応力レベルが低下すると、音速変化は小さくなるとともに、その分布は一様化した。5.上記1.から4.よりN66/SGF疲労破壊には下記に示すような二種類の機構が存在することを明らかにした。1)疲労損傷が局所化され破壊に至るTypeA型(負荷応力レベルの高い低寿命において現れる)2)疲労損傷が局所化されず、試験片全体に分散した後、破壊に至るTypeB型(負荷応力レベルの低い高寿命において現れる)短繊維ガラスで補強した熱可塑性高分子は軽構造用材料として用いられる。そのために疲労特性が重要な力学特性のひとつとなるが、材料の構造が複雑なこともあって疲労破壊機構も不明であり、また寿命評価方法についても未だ確立されていない。本研究では、ナイロン66に33wt%ガラス繊維を充填した射出成形品をモデル試料として、超音波を用いて疲労破壊機構の解明と疲労寿命の予測を行うことを試みた。一般に射出成形された繊維強化材料では、中心部で繊維が流動方向に対して平行に配向し表面では繊維が厚さ方向に配向する、いわゆる配向が異なるスキン・コア構造をとる。疲労過程ではコンプライアンス疲労初期に低下しその後徐々に増加し、AEの活動は疲労初期と破壊直前に大きく増加することが分かった。超音波による音速測定の結果では、疲労前の試験片の音速は中心部より表面部での音速が大きかった。また疲労破壊後の音速が最も小さく、疲労前の試験片に見られた中央部と表面部の音速の差は小さくなったが、疲労破壊直前の試験片では、流動配向層にクラック、また試験片端部に繊維の破損が確認でき、また、疲労破壊後の試験片では、クラックや繊維の破損が多数確認でき、音速の低下との相関を明らかにすることができた。音速がこのような材料の疲労損傷のインデックスになる可能性がある。本研究は、熱可塑性樹脂をマトリックスとしてガラス短繊維を含む高分子複合材料の疲労寿命のデータを集積するとともに,高分子複合材料の疲労のメカニズムを明らかにし,信頼性に富み,迅速な判断が可能な耐久寿命評価方法を確立することを目的とした。以下に本研究で得られた主な成果をまとめた。(1)疲労過程におけるアコースティック・エミッション(AE)のモニタリングにより、疲労初期段階および疲労破壊直前にAEが発生していることが明らかとなった。(2)疲労
KAKENHI-PROJECT-09650742
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650742
構造用高分子複合材料の疲労機構と寿命予測
途中段階の試験片の光学顕微鏡観察より、疲労初期段階で試験片端部において繊維破断およぴ樹脂クラックを生じ、疲労進行とともに樹脂クラックが試験片内部でも発生していくことが明らかとなった。(3)疲労途中段階における試験片厚さ方向の超音波を用いた音速測定により、(2)で述べたクラック発生に対応した音速低下がみられた。すなわち、超音波を用いた音速測定が疲労寿命予測手法として適用できることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-09650742
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650742
農村女性ネットワークにおけるSNSの導入に係るファシリティ手法の検討
女性は地域活動を行いたいが、家事、育児を担当するために家を離れることが出来ない、集まる時間が取れないということがネットワーク形成の支障となっている。インターネットのうち、特定の者のみが使用できるSNS(Social Networking Service)を活用し、農村女性のネットワーク構築を行い、その手法と問題点を導き出すとともに、農村における女性ネットワーク作りのためのマニュアルを作成することを目的とした。研究経過1女性の活動グループを選定するにあたり農業改良普及センター、農協等を通じてインターネット利用状況を把握するためアンケート調査を行った。2活動グループに対しての指導状況を農業改良普及センターから聞き取りを行った。3ファシリテータ育成のため、ゲーミング手法の検討を行った。成果の概要1インターネットの導入は、都市部(札幌圏(当別町・新篠津村を除く石狩管内))と郡部(札幌圏以外)で差異はなかった。2インターネット利用の多くは、物品の購入(ネット販売)である。3情報伝達手段として携帯メールが発生している。4自ら情報発信を行う活動グループ内では、情報量の多さから携帯ではなくインターネットメールが主たる通信手段であった。5ファシリテーター育成のための講習会を一般公募したところ、参加者に高齢者が多く、若年層はわずかであった。(2007、北海道農政部食品政策課)6ファシリテータの育成のためのゲームツールは、細部にこだわらなければ、集中させることが難しい。また、ファシリテーターの相当の力量がなければ感情移入が難しい。7ゲームツールは、地域活動を推進するにあたり障害となる事項を解決できるよう設問を精査する必要があり、安直な対応ではかえって活動の阻害要因となる。8 SNSを利用する際のインフラ(高速インターネット回線)が確保されていないことが普及上の課題であった。女性は地域活動を行いたいが、家事、育児を担当するために家を離れることが出来ない、集まる時間が取れないということがネットワーク形成の支障となっている。インターネットのうち、特定の者のみが使用できるSNS(Social Networking Service)を活用し、農村女性のネットワーク構築を行い、その手法と問題点を導き出すとともに、農村における女性ネットワーク作りのためのマニュアルを作成することを目的とした。研究経過1女性の活動グループを選定するにあたり農業改良普及センター、農協等を通じてインターネット利用状況を把握するためアンケート調査を行った。2活動グループに対しての指導状況を農業改良普及センターから聞き取りを行った。3ファシリテータ育成のため、ゲーミング手法の検討を行った。成果の概要1インターネットの導入は、都市部(札幌圏(当別町・新篠津村を除く石狩管内))と郡部(札幌圏以外)で差異はなかった。2インターネット利用の多くは、物品の購入(ネット販売)である。3情報伝達手段として携帯メールが発生している。4自ら情報発信を行う活動グループ内では、情報量の多さから携帯ではなくインターネットメールが主たる通信手段であった。5ファシリテーター育成のための講習会を一般公募したところ、参加者に高齢者が多く、若年層はわずかであった。(2007、北海道農政部食品政策課)6ファシリテータの育成のためのゲームツールは、細部にこだわらなければ、集中させることが難しい。また、ファシリテーターの相当の力量がなければ感情移入が難しい。7ゲームツールは、地域活動を推進するにあたり障害となる事項を解決できるよう設問を精査する必要があり、安直な対応ではかえって活動の阻害要因となる。8 SNSを利用する際のインフラ(高速インターネット回線)が確保されていないことが普及上の課題であった。
KAKENHI-PROJECT-19922034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19922034
日本産ユリ科植物の種子発芽習性に関する研究
日本産ユリ科植物のうち,Hemerocallis (ワスレグサ)属から,地理的分布とその生育地の環境が著しく異なるゼンテイカ(H.dumortieri var. esculenta)とハマカンゾウ(H.fulva var. littorea)を選び,種子発芽習性について究明した。ゼンテイカは,樺太,北海道,本州(中部,北部)の山地や亜高山帯の積雪地域に多く生育する。一方,ハマカンゾウは,本州(関東以西)から九州の日当たりの良い乾燥しやすい海岸斜面に多く生育する。したがって,当初,ゼンテイカの種子は,散布後,積雪による低温湿潤条件下におかれて後熟性がすすみ発芽すると予測した。逆にハマカンゾウの種子は積雪のない乾きやすい環境に多く散布されて,後熟性はないと予測した。後熟性とは,胚の未熟な状態であるのが視覚的にも判断できる状態であることから判断した。そして,種子採取後,異なる水分条件下に貯蔵し,定期的に取り出して行う発芽実験と,胚と胚乳の大きさの変化の観察によって後熟性の有無を決定した。この結果,ゼンテイカとハマカンゾウのいずれの種子も,予測に反して後熟性が有り,しかもその後熟性は低温湿潤条件下に置かれた時にすすむという共通点があった。ゼンテイカの種子は,散布後,積雪下におかれて種子の後熟性がすすむと考えられる。一方,ハマカンゾウの種子は,本州の関東以西の海岸地で,積雪が少なく周囲は乾燥しやすい場所に散布(重力散布)されるようであるが,実際は,他の草本(イネ科等)が生育している場所や岩の割れ目等の湿った場所に散布された種子のみ発芽生育しているのではないかと考えられる。そして,ハマカンゾウの場合は,湿った場所に散布された種子のみ,冬季の低温に曝されて後熟し,発芽,生育するのではないかと考える。さらに,本研究の結果と他研究者による同属異種に関する種子後熟性の結果から,Hemerocallis属では,地理的分布の違いに係りなく,多くが種子後熟性をもつと考えられる。本研究では,造園・緑化に用いることのできる新たな植物材料の生産や,自然保護地域における保護のために,日本産ユリ科植物の繁殖習性,特に種子発芽習性について明らかにする実験を行った。本年は特に,今まで続けてきたギボウシ,ゼンテイカ,ウバユリ,サルトリイバラに加えてカタクリ,アオヤギソウ,ハマカンゾウを実験対象種として選び,発芽所用期間(結実から発芽までの時間)や,種子の休眠(後熟性,発芽阻害物質の有無,硬実),地上子葉・地下子葉の別等の種子発芽習性について求めた。その結果,発芽所用期間について,ウバユリ,カタクリ,サルトリイバラは約1年,アオヤギソウは12ヶ月,ギボウシ,ゼンテイカ,ハマカンゾウは半年であることがわかった。また,(1)ゼンテイカ,ハマカンゾウは種子後熟性があり,しかもその後熟性がすすんだあとの発芽温度条件がゼンテイカは低温(10°C),ハマカンゾウは高温(25°C)内外であること,(2)ギボウシ種子は,極端な乾燥や湿潤条件で発芽力を失うこと,(3)ゼンテイカ種子は乾燥によって発芽力を失うこと等が,発芽実験や胚と胚乳の発達の様子の観察によってわかった。日本産ユリ科植物のうち,Hemerocallis (ワスレグサ)属から,地理的分布とその生育地の環境が著しく異なるゼンテイカ(H.dumortieri var. esculenta)とハマカンゾウ(H.fulva var. littorea)を選び,種子発芽習性について究明した。ゼンテイカは,樺太,北海道,本州(中部,北部)の山地や亜高山帯の積雪地域に多く生育する。一方,ハマカンゾウは,本州(関東以西)から九州の日当たりの良い乾燥しやすい海岸斜面に多く生育する。したがって,当初,ゼンテイカの種子は,散布後,積雪による低温湿潤条件下におかれて後熟性がすすみ発芽すると予測した。逆にハマカンゾウの種子は積雪のない乾きやすい環境に多く散布されて,後熟性はないと予測した。後熟性とは,胚の未熟な状態であるのが視覚的にも判断できる状態であることから判断した。そして,種子採取後,異なる水分条件下に貯蔵し,定期的に取り出して行う発芽実験と,胚と胚乳の大きさの変化の観察によって後熟性の有無を決定した。この結果,ゼンテイカとハマカンゾウのいずれの種子も,予測に反して後熟性が有り,しかもその後熟性は低温湿潤条件下に置かれた時にすすむという共通点があった。ゼンテイカの種子は,散布後,積雪下におかれて種子の後熟性がすすむと考えられる。一方,ハマカンゾウの種子は,本州の関東以西の海岸地で,積雪が少なく周囲は乾燥しやすい場所に散布(重力散布)されるようであるが,実際は,他の草本(イネ科等)が生育している場所や岩の割れ目等の湿った場所に散布された種子のみ発芽生育しているのではないかと考えられる。そして,ハマカンゾウの場合は,湿った場所に散布された種子のみ,冬季の低温に曝されて後熟し,発芽,生育するのではないかと考える。さらに,本研究の結果と他研究者による同属異種に関する種子後熟性の結果から,Hemerocallis属では,地理的分布の違いに係りなく,多くが種子後熟性をもつと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-13760029
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膠原病におけるtoll-like receptorシグナル抑制分子群の寄与の解明
自然免疫系が膠原病の病態においても重要な役割を果たすことが示唆されている。本研究では、TLRシグナル抑制遺伝子および関連遺伝子の膠原病の疾患感受性への寄与を検討した。平成24年度は、IRF4およびIRF4の機能に関連する遺伝子を対象とした疾患関連研究を行った。IRF4は、TLRシグナルのアダプター分子であるMyD88とIRF5の結合に拮抗し、TLRシグナルを阻害する。IRF5は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、全身性強皮症に共通の感受性遺伝子であり、I型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生に関わる。SLE 102例、対照健常群102例を用いた先行研究により、IRF4遺伝子のイントロンに位置する3つのSNPとSLEの関連を示唆する知見を得た。先行研究で検出された関連の確認を行うために、3つのイントロンSNPについて、SLE 289例、健常群475例を対象とした疾患関連研究を施行したが、統計学的に有意な関連は検出されなかった。近年、ゲノムワイド関連研究(GWAS)により、隣接するPRDM1、ATG5遺伝子領域とSLEの関連が報告された。IRF4は、PRDM1の形質細胞分化誘導にも関わることが報告されている。PRDM1-ATG5遺伝子領域のSLEへの関連を検討するために、PRDM1、ATG5遺伝子領域をカバーするタグSNPについて、SLE 502例、対照健常群451例を対象とした関連解析を施行した。SLE全群との比較では強い関連は認められなかったが、腎症合併SLE群と比較したときに、GWASにおいて関連の報告されているPRDM1下流のrs548234と有意な関連が検出され、PRDM1がSLE腎症発症に寄与する可能性が示唆された。近年、自然免疫系が膠原病の発症や病態に関与することが明らかになってきた。なかでも、膠原病の病態上重要なI型インターフェロン(IFN)を誘導するtoll-like receptor (TLR) 7、TLR9の関与が強く示唆されている。TLR7およびTLR9シグナルに対して抑制的に働く遺伝子群の発現低下や機能不全が膠原病の発症や病態に関与する可能性が考えられることから、TLRシグナル抑制遺伝子群の膠原病の疾患感受性への寄与を検討することを目的として疾患関連研究を施行した。LILRA4はleukocyte immunoglobulin-like receptor(LILR)ファミリーに属する分子で、形質細胞様樹状細胞(pDC)に特異的に発現している。TLR7およびTLR9を介したI型IFN、炎症性サイトカイン産生を抑制する。LAIR1もpDCに強発現しており、I型IFN産生を抑制することが報告されている。LILRA4およびLAIR1遺伝子は19q13.4に隣接して存在している。データベースに登録されている日本人集団におけるアリル頻度および連鎖不平衡をもとにLILRA4-LAIR1領域のタグSNPを選択した。タグSNPについて、SLE 502例、健常対照群550例を対象とした関連解析を行い、4SNPの関連(P<0.01)を検出した。4SNP間には連鎖不平衡は認められず、ロジスティック回帰分析を用いて互いの関連を調整した後も有意な関連が残ることから、それぞれのSNPが独立にSLEに寄与することが示唆された。当初の計画から遅れている大きな理由としては、東日本大震災の影響により実験の開始時期がおくれたことや、節電の影響により実験機器の稼働時間が大幅に制限されたこと、また、予定された研究費の全額が交付されるか否かが10月まで確定しなかったことから、それまでの期間、実験計画を縮小せざるを得なかったことなどがあげられる。また、交付申請書提出時の計画ではLILRA4, CLEC4C, IRF4遺伝子について解析を行う予定であったが、LILRA4に隣接するLAIR1も機能的に重要な遺伝子と考えられることから解析対象に加えた。そのためCLEC4C, IRF4の解析に遅れが生じている。LILRA4およびLAIR1はファミリー遺伝子間の相同性が非常に高く、LILRA4-LAIR1領域を特異的に解析する方法を確立するのに時間を要したことも原因となっている。1タグSNPを用いたLILRA4-LAIR1領域の関連解析により、LILRA4-LAIR1領域に存在する4SNPとSLEの有意な関連を見出したので、遺伝子の機能に影響を与え得るSNPの検出を試みる。次世代シークエンサーを用いて関連SNP周辺のリシークエンシングを行い、関連SNPと強い連鎖不平衡にあるSNPを探索する。検出されたSNPについて、SLE505例、対照健常群550例を対象とした関連解析を行いSLEとの関連を調べる。2関連SNPの遺伝子発現への影響を調べるために、リアルタイムPCR法を用いて遺伝子の定量を行い遺伝子型と発現量の関連を調べる。また、SNPの転写活性への影響を検討するためにレポーターアッセイを行う。3継続してCLEC4C、IRF4の関連解析を行う。4SLEとの関連が認められたSNPについて、RA(600例)、SSc(160例)を対象とした関連研究を行う。1当該研究費が生じた状況東日本大震災の影響により、研究費が全額交付されるかどうかが秋まで確定しなかった。
KAKENHI-PROJECT-23791101
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膠原病におけるtoll-like receptorシグナル抑制分子群の寄与の解明
また、節電の影響により、年度の前半は、実験計画を縮小せざるを得なかった。予定していたTaqMan genotyping assay法のかわりにDigiTag2法を用いて遺伝子型決定を行ったため、当初よりも低コストでの解析が可能となった。2翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画次世代シークエンサーを用いて関連が検出されたSNP周辺のリシークエンシングを行う。DigiTag2法の利用により節減が可能であった研究費を、次世代シークエンサー使用料および試薬購入費に充当する。リシークエンシングで見つかったSNPおよびほかの候補SNPの関連解析を行うために、試薬購入費およびプラスチック器具代として80万円を使用する。関連SNPの機能解析(発現解析、レポーターアッセイなど)の施行を目的に、試薬購入費、プラスチック器具代として60万円を使用する。そのほか論文掲載料として10万円を使用する。
KAKENHI-PROJECT-23791101
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灰重石型酸化物イオン伝導体の酸化物イオン伝導機構の解明
灰重石型構造を示すPbWO4は,Pb(1-x)La(x)WO(4+x/2)のようにPbサイトの一部をLaで置換すると格子間酸化物イオンを形成し,高温で高い酸化物イオン伝導性を発現する.これまで主として室温における中性子構造解析から,酸化物イオンの導電パスは格子間サイトを経由して正規の酸化物イオン間を結ぶものと考えてきた.しかし結晶内の詳細な経路については不明であり,高温のデータに基づいた研究は行っていない.また欠陥構造の異なるPb(1-x)La(2x/3)WO4や,酸化物イオン空孔をもつ同構造のCa(1-x)K(x)WO(4-x/2)でも高温で酸化物イオン伝導性を示すことも明らかになってきた.いずれも母体ではイオン伝導が生じないことから異なる欠陥構造がイオン伝導を引き起こしていることは疑いない.そこで本研究はこれらの灰重石型酸化物の欠陥構造とイオン伝導特性について,組成による欠陥構造制御や高温での構造解析から新たな知見を得ることにした.本研究の概要としては,(1)異なる灰重石型酸化物(PbWO4およびCaWO4)に価数の異なるイオンを共ドープして欠陥構造を制御し,イオン伝導率の変化を調べる,(2)高温中性子回折データをマキシマムエントロピー法で解析して導電パスをこれらの系の間で比較する,(3)さらにこのイオン伝導導電パスと結合原子価計算から予想されるパスとを比較して欠陥構造が及ぼす影響を考察するという3つの研究を行う.最終的にはこれらをまとめて灰重石型構造において欠陥構造が酸化物イオン伝導に果たす役割について議論する.これまでの研究結果から,CaWO4にKあるいはCsを置換した系の電気化学的測定および高温X線回折実験については完了し,Materials誌で報告している.また共ドープ試料の電気化学的性質についても実験は完了し,欠陥構造がイオン伝導にほぼリニアに影響を及ぼすことをつきとめ,現在このまとめを行っている.Pb(1-x)La(x)WO(4+x/2)系では格子間サイトに核密度分布を見いだし,これがab-面内およびc軸方向に伸びる導電経路を明らかにした.一方格子間酸化物イオンを含まないPb(1-x)La(2x/3)WO4系およびCa(1-x)K(x)WO(4-x/2)系では,核密度分布はc軸方向にのみ伸び,等核密度表面の密度を低くしても,Pb(1-x)La(x)WO(4+x/2)系で見られたような明瞭なa-b面内の連続的な分布は見られなかった.このことがイオン伝導率にも大きく影響を与えていると推定した.一方結合原子価計算の結果では,推定された導電パスは母体の構造に大きく支配されるため,欠陥構造が及ぼす影響を見積もることは困難であった.一昨年度および昨年度の研究期間内に当初予定した欠陥構造を制御したPbWO4およびCaWO4の導電率の欠陥濃度依存性,および前述の系の高温中性子回折にかんする実験については完了した.今年度はこれまでの結果の整合性をチェックしながら欠陥構造とイオン伝導に関してまとめてゆく予定である.さらにPbMoO4系やCsを置換したCaWO4系の高温中性子回折実験も予定しており,これらも合わせて欠陥構造がイオン伝導発現におよぼす影響について議論してゆく予定である.さらに第一原理計算等も含めて今後の研究の方向を明らかにしてゆこうと考えている.正方晶灰重石型構造をもつPbWO4のPbの一部をLaで置換すると格子間酸化物イオンを形成し、高温で高い酸化物イオン伝導性を示す。灰重石型構造はホタル石型から導かれるが、安定化ジルコニアや高温型の酸化ビスマスなどホタル石型構造を示す多くの酸化物イオン伝導体は、酸化物イオン空孔がイオン伝導に寄与することが知られている。このため、格子間酸化物イオンをもつPbWO4系酸化物イオン伝導体の導電機構はホタル石型のものから予想できないと考えられた。一方、近年我々のグループはCaWO4のCaの一部をアルカリイオンで置換したCa1-xAxWO4-d (A = K, Rb, Cs)が酸化物イオン伝導性を示すことを見いだし、灰重石型酸化物でも酸化物イオン空孔がイオン伝導に関与するすることを明らかにした。本研究では灰重石型酸化物の欠陥構造とイオン伝導機構に着目し、(1) PbWO4およびCaWO4にLaとKを共ドープしてイオン伝導率の欠陥濃度の依存性を調べる。(2)高温中性子回折データをマキシマムエントロピー法により導電パスを明らかにする。(3)得られた導電パスについて結合原子価計算を用いたモデルと比較する。という3つの研究を行い、最終的にこれらの結果から欠陥構造とイオン伝導パスの相間を明らかにすることにした。進捗状況で述べるように、現在までの研究で高温における導電率は欠陥濃度と強い相関をもち、高温中性子回折から推定された導電パスは、格子間酸化物イオンをもつ系と酸化物イオン空孔をもつ系では異なるものと考えられた。現在までにK添加CaWO4については包括的な電気化学的測定を行い、高温では輸率がほぼ1の酸化物イオン伝導体であることを明らかにした。高温X線回折の結果と合わせてEnergy and MaterialsScience and Engineering Symposiumでまとめて発表し、現在論文を作成中である。また共ドープ試料についてはイオン伝導率を測定しており、現在は密度測定により欠陥構造を調べている。
KAKENHI-PROJECT-17K06016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06016
灰重石型酸化物イオン伝導体の酸化物イオン伝導機構の解明
高温中性子回折実験はPb1-xLaxWO4+x/2系、Pb1-xLa2x/3WO4系およびCa1-xKxWO4-x/2系について800°Cに至る温度領域で測定した。このうちPb1-xLaxWO4+x/2系はElectrochemical Societyおよび電池討論会で、Pb1-xLa2x/3WO4系は固体イオニクス討論会で発表し、現在データをまとめている。Ca1-xKxWO4-x/2系については一部を上記学会で報告しており、現在は組成を変えるなどして再実験を行っている。Pb1-xLaxWO4+x/2系の格子間酸化物イオンは室温中性子回折で推定されたサイトに近いサイトに存在し、これをつかって2次元的な導電ネットワークが存在することがわかった。さらに高温でのみ存在する第2の格子間サイトも見いだした。一方結合原子価計算から予想される導電パスは格子間サイトを再現していないことがわかった。これは欠陥構造が構造全体で平均化されるためと考えられた。灰重石型構造を示すPbWO4は,Pb(1-x)La(x)WO(4+x/2)のようにPbサイトの一部をLaで置換すると格子間酸化物イオンを形成し,高温で高い酸化物イオン伝導性を発現する.これまで主として室温における中性子構造解析から,酸化物イオンの導電パスは格子間サイトを経由して正規の酸化物イオン間を結ぶものと考えてきた.しかし結晶内の詳細な経路については不明であり,高温のデータに基づいた研究は行っていない.また欠陥構造の異なるPb(1-x)La(2x/3)WO4や,酸化物イオン空孔をもつ同構造のCa(1-x)K(x)WO(4-x/2)でも高温で酸化物イオン伝導性を示すことも明らかになってきた.いずれも母体ではイオン伝導が生じないことから異なる欠陥構造がイオン伝導を引き起こしていることは疑いない.そこで本研究はこれらの灰重石型酸化物の欠陥構造とイオン伝導特性について,組成による欠陥構造制御や高温での構造解析から新たな知見を得ることにした.本研究の概要としては,(1)異なる灰重石型酸化物(PbWO4およびCaWO4)に価数の異なるイオンを共ドープして欠陥構造を制御し,イオン伝導率の変化を調べる,(2)高温中性子回折データをマキシマムエントロピー法で解析して導電パスをこれらの系の間で比較する,(3)さらにこのイオン伝導導電パスと結合原子価計算から予想されるパスとを比較して欠陥構造が及ぼす影響を考察するという3つの研究を行う.最終的にはこれらをまとめて灰重石型構造において欠陥構造が酸化物イオン伝導に果たす役割について議論する.これまでの研究結果から,CaWO4にKあるいはCsを置換した系の電気化学的測定および高温X線回折実験については完了し,Materials誌で報告している.また共ドープ試料の電気化学的性質についても実験は完了し,欠陥構造がイオン伝導にほぼリニアに影響を及ぼすことをつきとめ,現在このまとめを行っている.Pb(1-x)La(x)WO(4+x/2)系では格子間サイトに核密度分布を見いだし,これがab-面内およびc軸方向に伸びる導電経路を明らかにした.一方格子間酸化物イオンを含まないPb(1-x)La(2x/3)WO4系およびCa(1-x)K(x)WO(4-x/2)系では,核密度分布はc軸方向にのみ伸び,等核密度表面の密度を低くしても,Pb(1-x)La(x)WO(4+x/2)系で見られたような明瞭なa-b面内の連続的な分布は見られなかった.
KAKENHI-PROJECT-17K06016
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温度応答性界面への細胞接着力の定量評価と細胞分離システムへの応用
温度変化に応答し低温で親水性、高温で疎水性を示すポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)誘導体を固体表面に導入し、この表面を用いた新規な疎水性細胞クロマトグラフィーの確立を目指した。今年度は、生理条件下で負荷電を有する細胞と静電相互作用するアミノ基をIPAAmとともに導入した表面を作製し、この表面とリンパ球との相互作用を作用場流動分画法により解析した。IPAAmとN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)をその混合比を変化させて50w/w%イソプロピルアルコール溶液とし、この所定量を組織培養用ボリスチレン表面に塗布後、直ちに電子線(150kV.0.3MGy)を照射することでポリマーの重合と表面への固定を同時(こ行った。表面へのポリマーの導入はESCAとFT-IR/ATRにより確認し、その導入量は約1.5μg/cm^2であった。表面電位測定から、PIPAAmの導入により表面の負荷電が中和され、さらにDMAPAAを導入することで正に転じた。さらに、低温で親水性、高温側で疎水性となることを接触角測定から明らかとした。この表面とラット腸間膜リンパ節リンパ球との相互作用を作用場流動分画法を用いて解析した。いずれの表面でも剪断応力の増大につれてリンパ球の回収率は増加し、かつ、37°Cよりも4°Cで高い回収率を示した。これは、低温側でより親水性の表面とリンパ球とが弱い相互作用をすることを示している。興味深いことに、DMAPAAを5mol%仕込んだ表面では37°Cでも著しく弱い相互作用を示し、60-80%のリンパ球が回収された。さらなるDMAPAAの導入でリンパ球と表面との静電相互作用が強く発現し、4°Cでも回収率が減少した。少量のアミノ基を導入した表面は、正荷電を有するにも関わらず水和構造が著しく変化するために37°Cでもリンパ球ときわめて弱い相互作用をしたと考えられた。以上から、温度変化とアミノ基の導入量を変化させることでリンパ球との相互作用を任意に制御できることが示された。温度に応答して32°Cを境により高温で水溶性から不溶性に変化するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)を固定表面に導入するとこの表面は温度に応答して低温で親水性、32°Cより高温で疎水性になる。このような表面を用いて我々は既に酵素を用いることなく培養細胞を回収するシステムを構築している。本研究ではこのPIPAAm修飾表面を用いて、この表面上での細胞の接着力を作用場流動分画法を利用して定量的に評価することを目的とした。メルカプトプロピオン酸を連鎖移動剤としてIPAAmのラジカル重合を行うことにより片未端にカルボキシル基を有するPIPAAmを合成した。分子量はGPC、末端基滴定により定量し、約10000のものを実験に用いた。PIPAAmの末端カルボキシル基を用いてアミノ化スライドガラスにアミド結合を介して導入した。PIPAAmの導入は表面のESCAを用いた解析により確認した。さらに、Wilhelmy平板法を用いた動的接触角の測定からPIPAAm修飾表面が低温で親水性、高温側で疎水性を示す温度応答性表面であることを確認した。このスライドガラスと2つの小孔を有するガラス板を用いて厚さ0.3mmのテフロンスペーサーを挟んだリボン型チャンネルを作製した。このチャンネル内にラット腸間膜リンパ節より採取したリンパ球を注入し所定時間静置することによりPIPAAm修飾表面と相互作用させたのち、所定流速で緩衝液を流すことにより脱着してくる細胞数を計数した。温度を4°Cと37°Cとで実験を行った結果、4°Cでは剪断応力が2.7dyne/cm^2で80%以上のリンパ球が回収できるのに対し、37°Cでは50%程度しか回収できず、さらに静置時間を延長すると回収率が低下することも判明した。以上のことからPIPAAmの水和により親水性になった表面で細胞はきわめて弱い力で接着していることが明らかとなった。温度変化に応答し低温で親水性、高温で疎水性を示すポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)誘導体を固体表面に導入し、この表面を用いた新規な疎水性細胞クロマトグラフィーの確立を目指した。今年度は、生理条件下で負荷電を有する細胞と静電相互作用するアミノ基をIPAAmとともに導入した表面を作製し、この表面とリンパ球との相互作用を作用場流動分画法により解析した。IPAAmとN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)をその混合比を変化させて50w/w%イソプロピルアルコール溶液とし、この所定量を組織培養用ボリスチレン表面に塗布後、直ちに電子線(150kV.0.3MGy)を照射することでポリマーの重合と表面への固定を同時(こ行った。表面へのポリマーの導入はESCAとFT-IR/ATRにより確認し、その導入量は約1.5μg/cm^2であった。表面電位測定から、PIPAAmの導入により表面の負荷電が中和され、さらにDMAPAAを導入することで正に転じた。さらに、低温で親水性、高温側で疎水性となることを接触角測定から明らかとした。この表面とラット腸間膜リンパ節リンパ球との相互作用を作用場流動分画法を用いて解析した。
KAKENHI-PROJECT-09780813
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09780813
温度応答性界面への細胞接着力の定量評価と細胞分離システムへの応用
いずれの表面でも剪断応力の増大につれてリンパ球の回収率は増加し、かつ、37°Cよりも4°Cで高い回収率を示した。これは、低温側でより親水性の表面とリンパ球とが弱い相互作用をすることを示している。興味深いことに、DMAPAAを5mol%仕込んだ表面では37°Cでも著しく弱い相互作用を示し、60-80%のリンパ球が回収された。さらなるDMAPAAの導入でリンパ球と表面との静電相互作用が強く発現し、4°Cでも回収率が減少した。少量のアミノ基を導入した表面は、正荷電を有するにも関わらず水和構造が著しく変化するために37°Cでもリンパ球ときわめて弱い相互作用をしたと考えられた。以上から、温度変化とアミノ基の導入量を変化させることでリンパ球との相互作用を任意に制御できることが示された。
KAKENHI-PROJECT-09780813
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09780813
免疫能、炎症、老化に関する制御機構の解析と運動・栄養による予防医学的介入研究
前年度に引き続き、免疫能、炎症、老化に関する機序の解析と運動・栄養による予防医学的介入研究を進めた。前年度は極端な激運動について検討を行ったが、本年度は運動処方を念頭に置いた健康増進運動についても検討を進めた。健常若年者を対象とした歩行運動の介入研究(1日30分、週6日、3週間)では、トレーニングによって白血球・リンパ球サブセット、NK細胞活性、Tリンパ球幼弱化反応に有意な変化は認められなかったが、血漿インターロイキン12p40濃度に有意な減少が認められ、細胞性免疫が活性化されやすい状態になる可能性が示唆された。高齢者を対象とした12週間の低強度筋力トレーニングでは、CRP、SSA、HSP70に有意な低下が認められ、筋肥厚とCRP、TNF-αの変化率に逆相関が認められたことから炎症の軽減が筋肥大にも関わる可能性が示唆された。前立腺癌がん患者を対象とした筋力トレーニングの介入研究では、インスリン濃度が低下した以外にはホルモン、サイトカインに顕著な影響は認められなかったものの、筋力改善によるADLの改善効果が示され、運動トレーニングががん患者においても有用であることを示した。なお、運動・トレーニングの影響を評価するためのバイオマーカーの検索も試みたが、現状では実用化に値するような研究結果を得ることはできなかっだ。今後も引き続き研究を行う予定である。筋の損傷・炎症を誘導する伸張性運動負荷、鉄人トライアスロン、暑熱環境下での持久性運動負荷の実験を行い、血液・尿サンプルの臨床生化学検査値やサイトカイン濃度の変動を解析した。その結果、一般的な臨床生化学検査項目と比較し、激運動によって抗炎症性サイトカイン(IL-1ra、IL-6、IL-10など)、熱ショック蛋白70、血清アミロイド蛋白Aが激変し、ストレスの評価指標となりうることが示された。介入研究としては、糖質と水分の摂取が運動時の炎症反応、サイトカインの変動に及ぼす影響を評価し、IL-6の反応を制御できることを示した。国際共同研究としては、オーストラリアのEdith Cowan University、Queensland University、Australian Institute of Sportと上記の運動関係の研究が軌道に乗り、今後も共同研究を進めていくこととなった。また韓国啓明大学とも、寒冷環境下での持久性運動時の免疫変動の実験を行い、サンプルを解析しつつある。デンマークのRibe CountryHospitalとは高齢者の運動に対するアミノ酸摂取の介入研究を行い、炎症反応を解析していくこととなった。一方、運動による筋損傷と炎症に関して、先行研究の知見を文献的に整理したが、血中のサイトカインの関与は少なく、むしろ白血球の産生する活性酸素の関与の重要性が示唆され、その方向で今後の研究を進める必要性が考えられた。前年度にシステム構築した免疫学的測定系(酵素免疫測定法、好中球の遊走能・貧食能・活性酸素産生能、リンパ球の増殖能、ナチュラルキラー細胞活性、フローサイトメーターによる細胞表面分子の解析、PCRによる遺伝子発現)を応用し、炎症、老化に関する機序の解析と運動・栄養による予防医学的介入研究に着手した。具体的には、筋炎を誘導する伸張性運動負荷と鉄人トライアスロンのような激しい持久性運動負荷によって血中で変動する免疫指標、サイトカイン・炎症マーカーについて検討し成果を論文として発表するとともに、さらにこれらの指標は筋損傷でなくエネルギー代謝に関連して変動すること、物質によって変動ピークが経時的に異なること、運動処方レベルの中等度運動ではほとんど変動しないことを追加実験にて特徴づけた。これらの結果をふまえ、熱中症、筋損傷予防のための水分・糖質補給法の基礎検討を進め、浸透圧調節性の水分・糖質補給によりストレスホルモンや免疫抑制性のサイトカインの応答を制御できる可能性を認めた。また運動の継続で生じる適応、すなわちトレーニング効果についても免疫学的側面から検討を進め、高齢者・がん患者を対象とした筋力トレーニングの介入研究を行い、高血圧や貧血、高脂血症等が改善したほか、炎症マーカーの血清アミロイド蛋白Aが低下することを見出し、筋肥厚との関連を検討している。また、スポーツ選手の強化鍛錬期には感染抵抗力が低下することを免疫学的に評価し、免疫活性化サプリメントである牛乳の初乳(bohne colostum)を用いた介入研究を行い、スポーツ選手のコンディショニングに有益な知見を得た。以上の研究成果は、米国生理学会、米国スポーツ医学会、国際運動免疫学会等の国際的学術雑誌に掲載された。前年度に引き続き、免疫能、炎症、老化に関する機序の解析と運動・栄養による予防医学的介入研究を進めた。前年度は極端な激運動について検討を行ったが、本年度は運動処方を念頭に置いた健康増進運動についても検討を進めた。健常若年者を対象とした歩行運動の介入研究(1日30分、週6日、3週間)では、トレーニングによって白血球・リンパ球サブセット、NK細胞活性、Tリンパ球幼弱化反応に有意な変化は認められなかったが、血漿インターロイキン12p40濃度に有意な減少が認められ、細胞性免疫が活性化されやすい状態になる可能性が示唆された。高齢者を対象とした12週間の低強度筋力トレーニングでは、CRP、SSA、HSP70に有意な低下が認められ、筋肥厚とCRP、TNF-αの変化率に逆相関が認められたことから炎症の軽減が筋肥大にも関わる可能性が示唆された。前立腺癌がん患者を対象とした筋力トレーニングの介入研究では、インスリン濃度が低下した以外にはホルモン、サイトカインに顕著な影響は認められなかったものの、筋力改善によるADLの改善効果が示され、運動トレーニングががん患者においても有用であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-17680047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17680047
免疫能、炎症、老化に関する制御機構の解析と運動・栄養による予防医学的介入研究
なお、運動・トレーニングの影響を評価するためのバイオマーカーの検索も試みたが、現状では実用化に値するような研究結果を得ることはできなかっだ。今後も引き続き研究を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-17680047
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Rett症候群における自閉性障害の本態解明とその教育効果に関する研究
本年度は、Rett症候群と自閉症の自閉性について、対人関係、コミュニケーション手段、対物関係を中心に検討を行った。結果として対人関係については、Rett症候群は、欲求に対する意志表現能力が低く、瞬発性および持続性において自閉性のそれに劣るが、欲求対象が明らかに人である。これに対して、自閉症は特定の物や事への瞬発性、持続性は強いが、人への欲求は少なく、ある程度の発達段階(恐らく23才以上:今後明らかにする必要はあるが)を越えなければ人への関心はみられない。コミュニケーション手段としての提示行為は、Rett症候群においては牽引行為の初期段階のものが、自閉症においては牽引行為や提示行動が多くみられた。また言語については、Rett症候群も自閉症も表出言語を持たないものが多いが、それぞれを較べてみると以下のようなことがわかった。Rett症候群は、言語の数は少ないが、名詞とともに動詞も多くみられるが、自閉症においては名詞の数が動詞に較べ多く、特に非クニック型ではこの傾向が顕著である。対物関係については、Rett症候群は特定の物への関心が強いものもみられるが、多くは、人への関心の強さと物への関心の強さに正の相関がみられ、これに対して自閉症においては、人と物への関心の強さは、負の相関がみられる傾向がある。これらを、身体的な問題とともに総合的に考え合わせると、Rett症候群の自閉性は発達の退行現象としての精神活動であり、自閉症の自閉性は、退行現象ではなく彼らの精神活動の特異性と推測できる。以上のことから、それぞれの教育的アプローチは、別の観点からなされるべきことが示唆され、現在、具体的なアプローチを試行中である。本年度は、Rett症候群の疫学的調査のために、アンケ-ト用紙の作製発送及びその回収を行い、以下の結果と問題点が明らかになった。まず、現在のところ回収率が低いので結論はでていないが、内外の文献にくらべ発病率が低いように思われる。この結果は、調査項目に含まれる診断基準及び調査対象(主に精神薄弱及び肢体不自由児の養護学校・障害児学級)が適正であったかどうかについての検討が必要であることを示している。特に診断基準においては、生育歴及び既往歴に対する未回答が多いため、出生前および周産期が正常であったという確認が得られていない(これは、今後親との面接調査で明らかにする)。また、自閉症の折れ線型との鑑別についても、運動機能の退行の有無により判断できると考えていたが、アンケ-ト用紙でみる限りでは、その判定が困難な場合がある。また、単に診断基準を一元的に採用するのではなく米国のワ-キング・グル-プの提唱するように、発症後の年令による経過(各stage)別診断が必要であることがわかった。というのは、このことは単にRett症候群であるかどうかの診断的意義だけでなく、その後の対象児への療育および教育的アプロ-チの方法を考える際にも重要なファクタ-となるからである。また、現在の診断基準では、対象児は女児のみということになっているが、症状でみる限り男児にも似たような経過をとる者があることがわかった。今後、これらの者に対する他の疾患との鑑別診断が必要である。次年度以後は、これらの対象児に対して、訪問調査と医学的諸検査による確定診断を行い、診断が確定された者に対して、本研究費において改良されたV.T.R.記録解析装置による行動分析を行い、Rett症候群における自閉性障害の本態解明と教育的アプロ-チのあり方についての研究を続ける。前年度の疫学的調査により得られた結果よりRett症候群と診断された者に対して以下のような観点から分析を行なった。Rett症候群における自閉性障害と自閉症にみられる自閉性障害の行動分析から、両者の本質的な差異を明らかにし、あわせて教育的アプローチのあり方を検討する。結果として、Rett症候群にみられる自閉性障害は、対象児の発達段階における変化が著しく、B.Hagbergらのいうstage23においてその重篤度が強い(多くの者はstage2において最も重篤であった)。またこの時期は、彼らの運動機能においても以前獲得していたskillが失われるなど退行現象が著しい。この時期は同時に、視覚・聴覚などの遠受容器能力の退行も推察される。そして、この時期が過ぎると、Rett症候群における自閉性障害は軽減される傾向にある。これに対して、自閉症児にみられる自閉性障害は、彼らの発達階段における変化は乏しく加齢とともに極めて徐々にではあるが改善される。また、運動機能や視覚・聴覚などの遠受容器能力も退行現象もほとんどみられず、むしろ運動機能の発達は、彼らの獲得する能力のうちで最も優れている場合が多い。これらのことを比較検討すると、Rett症候群における自閉性障害は運動能力などの身体機能の退行期にみられる一時的な精神活動の自閉化傾向と考えられる。これに対して自閉症における自閉性障害は、彼らの精神活動にのみ見られる固有の特徴である。以上のことから、Rett症候群に対してその自閉性障害を改善させるためには、身体機能の改善を含めた教育的アプローチが必要であり、次年度はこれらの課題に取り組んでいきたい。本年度は、Rett症候群と自閉症の自閉性について、対人関係、コミュニケーション手段、対物関係を中心に検討を行った。結果として対人関係については、Rett症候群は、欲求に対する意志表現能力が低く、瞬発性および持続性において自閉性のそれに劣るが、欲求対象が明らかに人である。
KAKENHI-PROJECT-03451045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03451045
Rett症候群における自閉性障害の本態解明とその教育効果に関する研究
これに対して、自閉症は特定の物や事への瞬発性、持続性は強いが、人への欲求は少なく、ある程度の発達段階(恐らく23才以上:今後明らかにする必要はあるが)を越えなければ人への関心はみられない。コミュニケーション手段としての提示行為は、Rett症候群においては牽引行為の初期段階のものが、自閉症においては牽引行為や提示行動が多くみられた。また言語については、Rett症候群も自閉症も表出言語を持たないものが多いが、それぞれを較べてみると以下のようなことがわかった。Rett症候群は、言語の数は少ないが、名詞とともに動詞も多くみられるが、自閉症においては名詞の数が動詞に較べ多く、特に非クニック型ではこの傾向が顕著である。対物関係については、Rett症候群は特定の物への関心が強いものもみられるが、多くは、人への関心の強さと物への関心の強さに正の相関がみられ、これに対して自閉症においては、人と物への関心の強さは、負の相関がみられる傾向がある。これらを、身体的な問題とともに総合的に考え合わせると、Rett症候群の自閉性は発達の退行現象としての精神活動であり、自閉症の自閉性は、退行現象ではなく彼らの精神活動の特異性と推測できる。以上のことから、それぞれの教育的アプローチは、別の観点からなされるべきことが示唆され、現在、具体的なアプローチを試行中である。
KAKENHI-PROJECT-03451045
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学習の定着を支える神経メカニズムの解明
本研究では、訓練によって学習された内容を定着させるための神経メカニズムについて検討を行った。特に、視覚における見分けの学習(知覚学習)を題材とし、「脳視覚野における興奮性・抑制性神経修飾物質のバランスが知覚学習の定着を決める」という仮説の実験的検証を目的にした。この目的のために、第一に、知覚学習の定着を促進するための課題訓練法(オーバーラーニング)を確立し、さまざまな交絡要因の棄却するための統制実験と合わせ、知覚学習の定着を検討するための心理実験系を確立した。第二に、この課題訓練法と神経修飾物質をヒトの脳から非侵襲的に測定する唯一の計測技術(磁気共鳴分光法)を組み合わせ、視覚野における興奮・抑制バランスと視覚学習の定着の関係を検討した。その結果、学習内容が不安定でうまく定着しない場合、視覚野における興奮・抑制バランスが興奮側に偏ることがわかった。一方、学習内容がうまく定着する場合、すなわちオーバーラーニングのあとは、このバランスが抑制側に偏ることが明らかになった。以上のことから、脳は学習内容をうまく定着させるために特定領域における神経修飾物質のバランスを巧みに調整するというメカニズムの存在が示唆された。本研究によって得られた成果は、学習に関わる脳機能、すなわち脳の可塑性メカニズムの解明に大きく寄与するとともに、今後より効率的な学習・訓練方法の開発に応用可能であると考えられる。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究では、訓練によって学習された内容を定着させるための神経メカニズムについて検討を行った。特に、視覚における見分けの学習(知覚学習)を題材とし、「脳視覚野における興奮性・抑制性神経修飾物質のバランスが知覚学習の定着を決める」という仮説の実験的検証を目的にした。この目的のために、第一に、知覚学習の定着を促進するための課題訓練法(オーバーラーニング)を確立し、さまざまな交絡要因の棄却するための統制実験と合わせ、知覚学習の定着を検討するための心理実験系を確立した。第二に、この課題訓練法と神経修飾物質をヒトの脳から非侵襲的に測定する唯一の計測技術(磁気共鳴分光法)を組み合わせ、視覚野における興奮・抑制バランスと視覚学習の定着の関係を検討した。その結果、学習内容が不安定でうまく定着しない場合、視覚野における興奮・抑制バランスが興奮側に偏ることがわかった。一方、学習内容がうまく定着する場合、すなわちオーバーラーニングのあとは、このバランスが抑制側に偏ることが明らかになった。以上のことから、脳は学習内容をうまく定着させるために特定領域における神経修飾物質のバランスを巧みに調整するというメカニズムの存在が示唆された。本研究によって得られた成果は、学習に関わる脳機能、すなわち脳の可塑性メカニズムの解明に大きく寄与するとともに、今後より効率的な学習・訓練方法の開発に応用可能であると考えられる。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H06857
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H06857
レーザドップラ振動計と顕微鏡の組み合わせによる基底板振動様式測定システムの開発
会話領域では、鼓膜の振幅は、数ナノメータにすぎない。それにもかかわらず、ヒトの聴覚は、鋭敏な判別機能を示している。これは、内耳蝸牛において、何らかの増幅機構の存在しているためではないかと推察されているが、そのメカニズムはまだ、明らかにされていない。また、耳から音が出てくるという現象、耳音響放射(Otoacoustic Emissions:OAEs)は、この増幅機構の副産物であると考えられている。本研究では、レーザドップラ振動計と複合顕微鏡を組み合わせた計測システムを構築し、モルモットの内耳蝸牛内基底板の振動を直接計測した。また、OAEsの中でも、動物でよく検出されるDistortion-products otoacoustic emissions(DPOAE)と呼ばれるOAEがあり、これは、非線形に起因すると言われている。そこで、DPOAEと基底板振動を同時に計測し、DPOAE発生時の基底板振動について検討した。その結果以下のことが明らかとなった。1.基底板振動はモルモットの生きている状態と、死後で振幅が大きく異なる。これより、生きているときには、蝸牛内に増幅機構が存在するといえる。2.基底板振動は、刺激入力音圧が小さいときほど、感度がよい。これより、蝸牛内増幅機構は、刺激音圧が小さいほど、強く働くと考える。3.DPOAEと基底板振動を同時計測した結果、DPOAE発生時、基底板もその非線形成分の周波数で、振動することが、認められた。また、DPOAEが、もっとも大きく検出される入力音周波数比のとき、基底板振動の非線形成分も大きく検出された。これより、基底板振動の非線形成分は、DPOAEと同じ、発生機序によって生じていると考えられ、基底板の非線形的な増幅機構が、DPOAE発生に寄与していると示唆される。会話領域では、鼓膜の振幅は、数ナノメータにすぎない。それにもかかわらず、ヒトの聴覚は、鋭敏な判別機能を示している。これは、内耳蝸牛において、何らかの増幅機構の存在しているためではないかと推察されているが、そのメカニズムはまだ、明らかにされていない。また、耳から音が出てくるという現象、耳音響放射(Otoacoustic Emissions:OAEs)は、この増幅機構の副産物であると考えられている。本研究では、レーザドップラ振動計と複合顕微鏡を組み合わせた計測システムを構築し、モルモットの内耳蝸牛内基底板の振動を直接計測した。また、OAEsの中でも、動物でよく検出されるDistortion-products otoacoustic emissions(DPOAE)と呼ばれるOAEがあり、これは、非線形に起因すると言われている。そこで、DPOAEと基底板振動を同時に計測し、DPOAE発生時の基底板振動について検討した。その結果以下のことが明らかとなった。1.基底板振動はモルモットの生きている状態と、死後で振幅が大きく異なる。これより、生きているときには、蝸牛内に増幅機構が存在するといえる。2.基底板振動は、刺激入力音圧が小さいときほど、感度がよい。これより、蝸牛内増幅機構は、刺激音圧が小さいほど、強く働くと考える。3.DPOAEと基底板振動を同時計測した結果、DPOAE発生時、基底板もその非線形成分の周波数で、振動することが、認められた。また、DPOAEが、もっとも大きく検出される入力音周波数比のとき、基底板振動の非線形成分も大きく検出された。これより、基底板振動の非線形成分は、DPOAEと同じ、発生機序によって生じていると考えられ、基底板の非線形的な増幅機構が、DPOAE発生に寄与していると示唆される。“耳から音が出てくる"という興味ある現象、すなわち耳音響放射(OAE)は、蝸牛内外有毛細胞のアクティブな機械微小振動の外耳道への放射とする説が最も有力であるが、OAEについては不明な点が多い。その最大の原因は、外耳道に挿入されたプローブでOAEが検出され、OAE測定手法では蝸牛内を直視できないからである。そこで本研究では、数ナノメータ(10^<-9>m)の変位まで測定できる最新の世界最小レーザドップラ振動計と顕微鏡を組み合わせ、蝸牛内基底板の振動を直接測定するシステムを構築する。そして、研究室に現有するOAE測定システムと上述のシステムを用い、モルモットのOAEと基底板の振動様式の同時測定を行い、OAE発生時の基底板の振動挙動を明らかにすることを試みる。これまでに1.レーザドップラ振動計と顕微鏡の組み合わせからなる、基底板振動様式測定システムを製作し、微小振動体の計測を行いながら、測定システムの調整を行ってきた。2.蝸牛内外有毛細胞でのアクティブな働きを組み込んだ基底板の運動方程式を導出し、耳音響放射発生時の基底板の動きについて数値計算を行ってきた。"耳から音がでてくる"という興味ある現象、耳音響放射(otoacoustic emissions:OAE)は、蝸牛内外有毛細胞のアクティブな機械微小振動の、外耳道への放射とする説が最も有力であるが、OAEに付いては不明な点が多い。その最大の原因は、外耳道に挿入されたプローブでOAEが検出され、OAE計測手法では蝸牛内を直視できないからである。
KAKENHI-PROJECT-04557074
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04557074
レーザドップラ振動計と顕微鏡の組み合わせによる基底板振動様式測定システムの開発
そこで本研究では、数ナノメータ(10^<-9>m)の変位まで計測できる最新のレーザドップラ振動計と複合顕微鏡を組み合わせ、蝸牛内基底板の振動を直接計測するシステムを構築し、モルモットの基底板の振動を直接計測した。その結果、以下のことが明らかとなった。2.基底板の振動は、刺激音の入力音圧の増加に対し圧縮的な非線形性を有し、上述1.の性質は入力音圧が小さいほど鋭くなる。3.モルモットの死後、基底板の振動は小さくなる。またそれは、CFの周波数の刺激音に対して顕著に見られ、CFも低くなる。今後の計画として、研究室に現有するOAE計測システムと上述のシステムを用い、OAEと基底板の振動の同時計測を行い、OAE発生時の基底板の振動挙動を明らかにすることを試みる予定を立てている。
KAKENHI-PROJECT-04557074
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04557074
液晶反応場による特異的反応制御:新規方法論創出への展開
反応分子との構造類似性に主眼を置き設計合成した液晶を反応場として用い、その液晶構造の特異性により二分子熱化学反応を立体化学的に高度に制御するという、新しいコンセプトに基づく高選択的反応系の確立を目的とした。モデル反応系として、(1)150°C前後で惹起されるフマル酸エステルと2,6-ジアルコキシアントラセンとの[4+2]環化付加反応と(2)100°C前後で信仰するニトロンと桂皮酸エステルとの[3+2]環化反応を取り上げ、液晶相下と等方性相下における立体選択性を比較検討した。以下に示すように、効率よい液晶制御系の構築に成功し、今後の進展に明るい展望が得られた。(1)液晶中でも結晶相に近く規則性の最も高いスメクチック液晶媒体下の反応において、反応温度140°Cの高温下でも異性体比24:1という驚異的な高い位置選択性を達成した。一方、コレステリック液晶媒体の不斉環境を利用した不斉制御については、極めて低い光学収率(2%ee.)しか得られず、再検討が必要となった。(2)1,3-双極子[3+2]環化付加反応についてもスメクチック液晶媒体による高度制御が可能であることを明らかにした。遅々として進展が見られなかった本分野も本研究により得られた萌芽的成果により、急速な進展が期待できる段階に達した。反応分子との構造類似性に主眼を置き設計合成した液晶を反応場として用い、その液晶構造の特異性により二分子熱化学反応を立体化学的に高度に制御するという、新しいコンセプトに基づく高選択的反応系の確立を目的とした。モデル反応系として、(1)150°C前後で惹起されるフマル酸エステルと2,6-ジアルコキシアントラセンとの[4+2]環化付加反応と(2)100°C前後で信仰するニトロンと桂皮酸エステルとの[3+2]環化反応を取り上げ、液晶相下と等方性相下における立体選択性を比較検討した。以下に示すように、効率よい液晶制御系の構築に成功し、今後の進展に明るい展望が得られた。(1)液晶中でも結晶相に近く規則性の最も高いスメクチック液晶媒体下の反応において、反応温度140°Cの高温下でも異性体比24:1という驚異的な高い位置選択性を達成した。一方、コレステリック液晶媒体の不斉環境を利用した不斉制御については、極めて低い光学収率(2%ee.)しか得られず、再検討が必要となった。(2)1,3-双極子[3+2]環化付加反応についてもスメクチック液晶媒体による高度制御が可能であることを明らかにした。遅々として進展が見られなかった本分野も本研究により得られた萌芽的成果により、急速な進展が期待できる段階に達した。
KAKENHI-PROJECT-08877316
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08877316
NBTIの解明のため超薄膜金属を用いたMOS構造内の元素拡散のその場観察
スパッタおよび50eVイオン照射を用い、厚さ3nmの均一金属膜を作製した。その後、ERDAの手法を用いCMOS用の汎用Si基板にHが含まれることを見いだし、従来のNBTI理論に関する1つの仮説を実験証明ができた。また、260°C以上の設定温度で、HがSi基板外に拡散することを観測し、拡散律速論と呼ばれるモデルがNBTIに適用できることを証明した。この結果を受け、CMOSの製造パラメータを最適化するモデルの構築が可能になると考えられる。スパッタおよび50eVイオン照射を用い、厚さ3nmの均一金属膜を作製した。その後、ERDAの手法を用いCMOS用の汎用Si基板にHが含まれることを見いだし、従来のNBTI理論に関する1つの仮説を実験証明ができた。また、260°C以上の設定温度で、HがSi基板外に拡散することを観測し、拡散律速論と呼ばれるモデルがNBTIに適用できることを証明した。この結果を受け、CMOSの製造パラメータを最適化するモデルの構築が可能になると考えられる。H22年度に電子ビーム蒸着法及び低エネルギー(500eV)イオンビームエッチングを用い金属薄膜の作製を行った。しかし、高精度のRBS実験結果によると、膜厚均一性が不十分であり、ERDAで測定したH分布の均一性も十分でないことが分かった。不均一性の原因として、ビームのエネルギーがこの試験に高すぎることを解明した。実験結果を解析し、様々なビームのエネルギーを試した結果、50eVおよびそれ以下のエネルギーでは膜の均一性が保証されることが分かった。その結果に基づき、スパッタおよび50eVイオン照射を用い、厚さ3nmの均一金属膜を作製した。また、スパッタ蒸着法により適切な化学量論組成をもつ3nm厚さのHfO_2ゲート膜の作製を行った。H22年度に以下のような成果が得られた。1.超薄型連続金属膜の作製NBTI解明のため、電子デバイスの構造の一部である絶縁層の上に均一な電位を提供する金属薄膜の作製を完了した。特に、スパッタ蒸着法を用い厚さ3nmの金属膜を基均一に蒸着するため、60°の入射角度の50eVのAr+イオン照射が行えるよう装置を改造し、薄膜の均一性の向上を達成することができた。また、この間に、電界放射走査電子顕微鏡(FE-SEM)による観察および電気抵抗測定により、イオン照射のパラメータの最適化を行った。現在、市販の電子デバイスでは高誘電率層high-kを主に使用している。高温耐性を向上するため、SiO2ゲート絶縁膜の代替品としてHfO_2が主に考えられている。本研究では、スパッタ蒸着法を用いて作製したHfO_2ゲート絶縁膜層に対し、High-k材料とSiの界面のストレスの影響に関して測定実験を行った。RBS実験結果から、スパッタ蒸着法を用いて均一な3mm厚のHfO2ゲート膜を調製することが出来ることを示した。H23年度にERDAの手法を用いCMOS用の汎用Si基板にH含まれることを見いだし、従来のNBTI理論に関するの1つ未実証の仮説の実験証明ができた。また、260°C以上の設定温度で、HがSi基板外に拡散することを観測し、拡散律速論と呼ばれるモデルがNBTIに適用できることを証明した。この結果を受け、CMOSの製造パラメータを最適化するモデルの構築が可能となると考えられる。H23年度における3つ計画に関して、以下のような成果が得られた。1.超薄型連続金属膜の作製NBTI解明のため、電子デバイスの構造の一部である絶縁層の上に均一な電位を提供する金属薄膜の作製を完成した。昨年度に引き続き、薄膜の均一性の向上を達成できた。また、金属膜の蒸着により、Si基板中のH濃度が増加することを観測した。昨年度に引き続きHfO2膜の均一性の向上を行った。3.NBTIストレス・テストでhigh-k CMOSの要素の拡散を解明NBTIがCMOSの主な劣化原因であると考え、その解明のため、前述した1と2の薄膜を用いてCMOSの構造と同じhigh-kスタックを試作した。ERDAで、複数の薄膜に対し、スタック中のHの分布を検討した。PdとAuの2種類の膜において、Si基板にHが導入されることが分かった。CMOSの特性に影響を及ぼす要因としてHの拡散があるが、それが制御できることを示した。3.2 RBSとERDAによるHの拡散性を探索。3. 1のhigh-k薄膜をに、Hを導入したCMOSと同じ構造のhigh-kスタックの高温ストレス・テストを行った。260°C以上の設定温度で、Si基板のHの濃度が減少することを観測した。この結果から、拡散律速論と呼ばれる仮説がNBTI発生原因に適用できることを証明した。
KAKENHI-PROJECT-22760222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760222
出芽酵母による無機水銀の還元機構の解明
水銀(Hg)は有毒な元素であり、様々な化学形態をとる。水銀の化学形態変化を理解することは、地球における水銀循環の理解をする上で重要となる。本研究で着目したのは、溶液中のHg(II)がHg(0)へ還元され、生じたHg(0)が空気中へ放出される現象である。夾雑物を極限まで減らしたHg(II)溶液中でもこの反応が起こる事を見出し、その際に副産物として過酸化水素が生じている事が明らかになった。この発見より、水分子が還元剤としてはたらき、Hg(II)と反応している可能性が示唆された。また、出芽酵母の鉄還元酵素Fre1とFre2が水銀の還元を行っていることを見出した。本研究は出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeによるHg(II)の還元機構を解明することを目指したものである。出芽酵母培養時にHg(II)の還元が観察されたが、酵母を含まない条件においても、わずかなHg(II)の還元が観察された。微量分析においてベースラインの変化は大きな影響を与えるため、この現象の解明を行った。酸化水銀(II)を過塩素酸に溶解したHg(II)溶液(2, 10, 100, 400 ppb)において、Hg(II)が経時的にHg(0)へ還元され、生じたHg(0)が空気中へ蒸発することが観察された。この還元はシステインを溶液に添加することにより完全に阻害され、塩化ナトリウムを溶液に添加することで部分的に阻害された。これらはHg(II)を安定化させる物質であり、従って溶液中の還元剤がHg(II)を還元していると考えられた。しかしこの実験においては還元剤として機能しうる物質は含まれておらず、Hg(II)へ電子を与えうるのは水分子しか考えられない。水分子が還元剤として機能するならば、過酸化水素が発生すると考えられる。そこで溶液中の過酸化水素を測定した。その結果、Hg(II)の減少に伴って過酸化水素が経時的に生じていることが明らかになった。すなわち、微量なHg(II)水溶液においては、水が還元剤として機能してHg(0)を生じ、自身は酸化されて過酸化水素を生じるという還元機構が示唆された。検出された生成過酸化水素の物質量は減少したHg(II)の5割程度であったが、これは過酸化水素の自己酸化還元反応が生じている、もしくは容器壁面にHg(II)が吸着したため見かけの還元量が高く見積もられたなどの理由が考えられる。本研究は出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeによるHg(II)の還元機構を解明することを目指したものである。実験を行うにあたり、ネガティブコントロールとして酵母を含まない条件においても、Hg(II)の挙動を観察したが、この実験においてもわずかなHg(II)の還元が観察された。本研究は微量な水銀を分析する必要があるため、ベースラインの変化は大きな影響を与える。そのためこの現象の解明を先に行った。その結果、上記のように新規水銀還元機構を解明することができた。この成果は環境水銀循環を考える上で重要な知見となるので、意義深いものと考えられる。しかし、当初予定していた酵母を用いた実験は十分に行う事ができなかった。水銀(Hg)は有毒な元素であり、様々な化学形態をとる。これらは生物を介したプロセス、あるいは生物を介さない化学反応により、環境中で相互に変換されている。水銀の化学形態変化を理解することは、地球における水銀循環の理解をする上で重要となる。本研究では、酵母を用いてこの変化の機構を明らかにしようと試みたが、その中でベースラインが変化していること、すなわち生物に非依存的に水銀の形態変化が起こっていることを発見した。着目したのは、溶液中のHg(II)がHg(0)へ還元され、生じたHg(0)が空気中へ放出される現象である。本研究ではHg(II)と過塩素酸のみを用いた実験系にて、この反応を理解しようと試みた。水銀の測定は冷蒸気原子吸光法で行った。バブリングすることで生成したHg(0)を溶液から気化させ、原子吸光法により水銀濃度の測定を行った。続いて溶液に還元剤を加えることで、残存しているHg(II)をHg(0)へ還元し、同様に濃度測定を行った。過酸化水素の測定はp-ヒドロキシフェニル酢酸の二量体化により行った。3日のインキュベートで残存Hg(II)が消失し、溶液中のHg(0)はインキュベートにより初期値よりも増加した。減少したHg(II)と生成したHg(0)の量は一致しなかったが、これは生成したHg(0)の一部が気化して空気中へ放出されたことが原因だと考えられる。また、500 nMの水銀溶液において、3日のインキュベートで17 nMの過酸化水素が発生した。これは低濃度の水銀溶液での過酸化水素発生量と比較して有意に高かった。本実験系は水とHg(II)および反応性の低い過塩素酸だけからなる。本研究の結果から、水がHg(II)をHg(0)へ還元し、水は酸化されて過酸化水素が発生することが示唆された。水銀(Hg)は有毒な元素であり、様々な化学形態をとる。水銀の化学形態変化を理解することは、地球における水銀循環の理解をする上で重要となる。
KAKENHI-PROJECT-15K18666
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18666
出芽酵母による無機水銀の還元機構の解明
本研究で着目したのは、溶液中のHg(II)がHg(0)へ還元され、生じたHg(0)が空気中へ放出される現象である。夾雑物を極限まで減らしたHg(II)溶液中でもこの反応が起こる事を見出し、その際に副産物として過酸化水素が生じている事が明らかになった。この発見より、水分子が還元剤としてはたらき、Hg(II)と反応している可能性が示唆された。また、出芽酵母の鉄還元酵素Fre1とFre2が水銀の還元を行っていることを見出した。ベースライン問題が解決したため、本年度は計画通り酵母の還元機構の解明を行う予定である。分析化学生物を使用した実験の遂行が遅れたため、使用物品が比較的安価な化学薬品に限られた。生物を使用した実験を遂行するため、当初計画していた初年度と同等の金額を使用する。
KAKENHI-PROJECT-15K18666
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各種バイオマスから高分子タンニンの架橋反応を利用したエコ茶碗の製造技術の開発
木粉や竹粉に柿の渋み成分(カキタンニン)とタンパク質(ミルクカゼイン)を加えて、酵素類似触媒を利用して新規素材を作成して、それらを加熱、圧縮することによって、エコ茶碗等の成型品を作成することに成功した。更に、それら以外に現在の食品や飲料産業から産業廃棄物として排出されていた多量のバイオマスの利用を検討した。それらは各種の特性から4種類に分類することができ、相互にブレンドすることによって、タンパク質や酵素類似触媒を添加することなく、従来品に近い、天然物100%の成型品ができることを実証した。現在、鹿児島県の民間企業に試作委託をした半自動の成型装置を用いて、量産化の問題点を洗い出している。木粉や竹粉に柿の渋み成分(カキタンニン)とタンパク質(ミルクカゼイン)を加えて、酵素類似触媒を利用して新規素材を作成して、それらを加熱、圧縮することによって、エコ茶碗等の成型品を作成することに成功した。更に、それら以外に現在の食品や飲料産業から産業廃棄物として排出されていた多量のバイオマスの利用を検討した。それらは各種の特性から4種類に分類することができ、相互にブレンドすることによって、タンパク質や酵素類似触媒を添加することなく、従来品に近い、天然物100%の成型品ができることを実証した。現在、鹿児島県の民間企業に試作委託をした半自動の成型装置を用いて、量産化の問題点を洗い出している。本新規素材は、木粉や竹粉に加えて柿の渋み成分(カキタンニン)とタンパク質(ミルクカゼイン)および酵素類似触媒を利用して、作成し、それを加熱、圧縮することによって、エコ茶碗等の成型品を作成していた。予備実験では、それら以外に緑茶がら、ウーロン茶がら、コーヒーがら、豆乳残さ、柑橘ジュース残さ、サツマイモのデンプン滓、焼酎滓などが利用できることが示された。平成21年度の研究では、それらの残さを大雑把に分析すると、(1)セルロースなどの多糖類が主成分のもの(木粉、竹粉など)、(2)それに加えて、タンパク質を多く含むもの(緑茶がら、豆乳かすなど)、(3)それに加えて、クチクラや油脂を多く含むもの(コーヒー滓や豆乳かすなど)、(4)酸化酵素の活性が強く残っているもの(ウーロン茶がら、緑茶がらなど)に分類することができた。このことは、食品や飲料産業から排出される各種の植物残さを相互にブレンドすることによって、従来のように新ためて、タンパク質や酵素類似触媒を添加することなく、従来品に近い、天然物100%の成型品を作る可能性が見いだせた。このことは、廃棄された多様な植物残さを有効利用できることに加えて、この成型品のコストを大幅に下げることが可能となった。そして、それぞれのブレンド割合を検討し、新素材を有効的に作製するとともに、新しいミニプラントタイプの加熱圧縮成型試験機でエコ茶碗をより効率よく作製する条件を検討した。その結果、従来は凍結乾燥粉末を用いると、180°Cで80MPa20分間という高温熱圧縮で処理をしないと、望ましい成型品はできなかったが、本実験で、乾燥粉末に乾燥重当たり30%の水を加えることによって、95°Cで12MPa10分間という温和な条件で成型品ができることを新たに見いだした。これは製造コストと時間を大幅に削減できることにつながる。現在、両者の条件で作製したものの特性試験を行っている。それ以外に、市販の酸化酵素によるカキタンニンのゲル化モデル実験を行い、各種の最適な反応条件を明らかにした。本年度は特許出願を見越して、学会発表および論文等の公表はひかえている。本研究における初年度では新規素材は、木粉や竹粉に加えて柿の渋み成分(カキタンニン)とタンパク質(ミルクカゼイン)および酵素類似触媒を利用して作成し、それらを加熱、圧縮することによって、エコ茶碗等の成型品を作成していた。史に、それら以外に緑茶がら、ウーロン茶がら、コーヒーがら、豆乳残さ、柑橘ジュース残さ、サツマイモのデンフン滓、焼酎滓などが利用できることを実証した。平成22年度の研究では、それらの残さを大雑把に分析すると、(1)セルロースなどの多糖類が主成分のもの(木粉、竹粉など)、(2)それに加えて、タンパク質を多く含むもの(緑茶がら、豆乳かすなど)、(3)それに加えて、クチクラや油脂を多く含むもの(コーヒー滓や豆乳かすなど)、(4)酸化酵素の活性が強く残っているもの(ウーロン茶がら、緑茶がらなど)に分類することができ、現在の食品や飲料産業から排出される各種の植物残さを相互にブレンドすることによって、従来のように新ためて、タンパク質や酵素類似触媒を添加することなく、従来品に近い、天然物100%の成型品を作る可能性を実証した。特に、タンパク質の多い茶がらベースの成形品は、光沢、肌触り、強度とも優れたものを作ることに成功した。このことは、廃棄された多様な植物残さを有効利用できることに加えて、この成型品のコストを大幅に下げることが可能となった。そして、乾燥粉末に乾燥重当たり30%の水を加えることによって、95°Cで12MPa10分間という温和な条件で成型品ができることを新たに見いだし、製造コストと時間を大幅に削減できることにつながった。現在、鹿児島県の加治木産業に試作委託をした半自動の成型装置を用いて、量産化の問題点を洗い出している。成型時間が3分の1から4分の1に短縮している。別途、カキタンニンの増粘性やゲル化の基礎実験も平行して行い、更なる技術革新を目指している。
KAKENHI-PROJECT-21580038
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各種バイオマスから高分子タンニンの架橋反応を利用したエコ茶碗の製造技術の開発
本年度は特許出願を見越して、学会発表および論文等の公表はひかえている。初年度と2年度に得られた研究成果に基づいて、本年度では、鹿児島県の加治木産業で試作していただいた、半自動の連続成型装置を用いて、主に緑茶の茶がらをベースにしたエコ茶碗を製造して、その特性を検討した。2年度の研究成果から、緑茶の茶がらのような貯蔵もしくは構造タンパク質の含量の高い、バイオマスを原料として用いたときには粉末に粘りがでて、新たにタンパク質を添加せずとも成形品を作製することができた。特に、手動の熱圧縮装置による単体成型法では緑茶茶がらベースの成形品は、光沢、肌触り、強度とも優れたエコ茶碗を作製する事に成功したが、半自動の連続成型装置で同等の成形品が作れるかどうかは不明だった。結果として、前年度に見いだした条件(95°C、12MPa、10分間)で茶がら粉末に、カキタンニン30%と水を30%添加した原料を成型することによってエコ茶碗を作製することに成功した。この加治木産業の装置を使うことによって、労力と時間を三分の一に軽減できることが解った。しかし、30%の水の添加は原料に湿り気を与えて、ステンレス鋳型に粉末を供給するパイプ部分でしばしば固まりができてストップしてしまった。同様に、ステンレスの鋳型にこびりついた粉末の滓を4回に一度ぐらいの頻度で手動で除かないと、装置が動かなくなった。また、最大の問題は、装置のコンプレッサー部分の材料強度の関係で予想以上に熱圧縮時に圧力がかけられずに、成型品、エコ茶碗の強度に大きく影響した。
KAKENHI-PROJECT-21580038
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能の比較文学的研究-イェイツとパウンドの能受容を中心に-
本研究は、日本の古典演劇である能が、今世紀のはじめ、西洋でどのように紹介され、さらには、E・パウンドやW.B.イェイツといった現代の作家たちにどのような影響を与えたかを探ろうとしたものである。私は、能の比較文学的研究をこの数年間続けてきたが、それをまとめたのが、博士学位論文「能と欧米文学--イェイツとパウンドの能受容を中心に」(平成4年、東京大学)である。この論文を河出書房新社から単行本として出版することになり、現在その書き直しの作業を進めている。論文は全二部構成で、第一部では、主として「パウンドと能」を、そして第二部では「イェイツと能」を扱っているが、この一年間の研究実績としては、第一部の「パウンドと能」の書き直しの作業がほぼ完成したことを挙げることができる。特に、博士論文では十分取り上げることのできなかった、パウンドの能受容と日本の俳句及びイマジズム運動との関連について補うことができたことが大きな収穫であった。この論文のもう一つの重要な課題である能と現代演劇に関しては、実際劇場にしばしば足を運び、観劇体験を通して、能の様式及び主題が現代演劇に大きな影響を及ぼしていることを確認することができた。能の比較文学的研究を進めていく上で欠かすことができないのは、元来舞台芸術である能を広く見ることである。しかも能だけでなく、能を踏まえた実験劇をも広く視野に入れることによって、現代演劇と能との接点を探り、それを研究に生かしていくことであるが、この一年間、能のみならず、広く日本の演劇に触れることができたことも重要な研究成果の一つといえよう。本研究は、日本の古典演劇である能が、今世紀のはじめ、西洋でどのように紹介され、さらには、E・パウンドやW.B.イェイツといった現代の作家たちにどのような影響を与えたかを探ろうとしたものである。私は、能の比較文学的研究をこの数年間続けてきたが、それをまとめたのが、博士学位論文「能と欧米文学--イェイツとパウンドの能受容を中心に」(平成4年、東京大学)である。この論文を河出書房新社から単行本として出版することになり、現在その書き直しの作業を進めている。論文は全二部構成で、第一部では、主として「パウンドと能」を、そして第二部では「イェイツと能」を扱っているが、この一年間の研究実績としては、第一部の「パウンドと能」の書き直しの作業がほぼ完成したことを挙げることができる。特に、博士論文では十分取り上げることのできなかった、パウンドの能受容と日本の俳句及びイマジズム運動との関連について補うことができたことが大きな収穫であった。この論文のもう一つの重要な課題である能と現代演劇に関しては、実際劇場にしばしば足を運び、観劇体験を通して、能の様式及び主題が現代演劇に大きな影響を及ぼしていることを確認することができた。能の比較文学的研究を進めていく上で欠かすことができないのは、元来舞台芸術である能を広く見ることである。しかも能だけでなく、能を踏まえた実験劇をも広く視野に入れることによって、現代演劇と能との接点を探り、それを研究に生かしていくことであるが、この一年間、能のみならず、広く日本の演劇に触れることができたことも重要な研究成果の一つといえよう。
KAKENHI-PROJECT-06710325
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電子サイクロトロン第2高調波に対する加熱応答関数の構築と実験への適用
電子サイクロトロン第2高調波加熱は、ガンマ10において、サーマルバリア形成、アンカー部高ベータ加に用いられ、最近になってセントラル部電子加熱に利用されている。このため、第2高調波加熱の解析を容易に行える手段として、高調波に対する加熱応答関数を構築した。応答関数構築の第1段階として、不均一磁場における、右まわり円偏波に共鳴する電子の軌道・速度を解析的にもとめ、加熱によるエネルギー増分を計算した。多くの研究においては、エネルギー増分の見積りは、波による軌道のずれを考慮せず行っているが、これを考慮しないと、正しいエネルギー増加は得られない。結果は、n次高調波による1回の共鳴点通過でおきる電子の位相平均エネルギー増分は、軌道のずれを考慮しないで計算したときのn倍になる。波の振幅・振動数・波数、加熱共鳴点での粒子のエネルギー、磁場の特性長などの物理量に対するエネルギー増分の関数形を導出した。次にテスト粒子の軌道数値計算を行い、共鳴加熱によるエネルギー増加を計算し、解析的に得られた結果との比較を行った。波の振幅・波数、初期粒子エネルギーのいろいろな値に対して、共鳴点通過前後のエネルギー増分を計算した。数値計算によるエネルギーの物理量依存は、解析計算結果と非常によく一致した。従来までのエネルギー増分の表式は、磁場に垂直な波数とジャイロ半径の積(k⊥ρ)が小さい時にのみ、成り立つものであったが、今回解析的に得た表式は、k⊥ρが大きなときにも、正確に成り立つ。上で得たエネルギー増分と加熱の特性曲線とを組み合わせることで、加熱応答関数を導いた。この応答関数をガンマ10におけるセントラル部における電子加熱実験に適用した。1回の加熱で1個の電子は平均約10eVのエネルギーを得る。ガンマ10の加熱時間では、数十keVまで加速でき、実際に観測されている高エネルギー電子の生成を第2高調波加熱で説明できる。電子サイクロトロン第2高調波加熱は、ガンマ10において、サーマルバリア形成、アンカー部高ベータ加に用いられ、最近になってセントラル部電子加熱に利用されている。このため、第2高調波加熱の解析を容易に行える手段として、高調波に対する加熱応答関数を構築した。応答関数構築の第1段階として、不均一磁場における、右まわり円偏波に共鳴する電子の軌道・速度を解析的にもとめ、加熱によるエネルギー増分を計算した。多くの研究においては、エネルギー増分の見積りは、波による軌道のずれを考慮せず行っているが、これを考慮しないと、正しいエネルギー増加は得られない。結果は、n次高調波による1回の共鳴点通過でおきる電子の位相平均エネルギー増分は、軌道のずれを考慮しないで計算したときのn倍になる。波の振幅・振動数・波数、加熱共鳴点での粒子のエネルギー、磁場の特性長などの物理量に対するエネルギー増分の関数形を導出した。次にテスト粒子の軌道数値計算を行い、共鳴加熱によるエネルギー増加を計算し、解析的に得られた結果との比較を行った。波の振幅・波数、初期粒子エネルギーのいろいろな値に対して、共鳴点通過前後のエネルギー増分を計算した。数値計算によるエネルギーの物理量依存は、解析計算結果と非常によく一致した。従来までのエネルギー増分の表式は、磁場に垂直な波数とジャイロ半径の積(k⊥ρ)が小さい時にのみ、成り立つものであったが、今回解析的に得た表式は、k⊥ρが大きなときにも、正確に成り立つ。上で得たエネルギー増分と加熱の特性曲線とを組み合わせることで、加熱応答関数を導いた。この応答関数をガンマ10におけるセントラル部における電子加熱実験に適用した。1回の加熱で1個の電子は平均約10eVのエネルギーを得る。ガンマ10の加熱時間では、数十keVまで加速でき、実際に観測されている高エネルギー電子の生成を第2高調波加熱で説明できる。
KAKENHI-PROJECT-08780444
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乳がんの免疫チェックポイント活性化に関わる脂肪酸の同定とその分子機構の解明
本年度は、まず、乳がん細胞株を用いて、脂肪酸及び関連脂質をGC-MS, LC-MSによって分析する実験系の確立から開始した。特に脂肪酸に関しては、培養容器や環境中からのコンタミネーションが無視できない量で生じること、実験間での測定にかなりばらつきが生じる事などが判明し、その安定化と改善に時間を要した。その後、脂肪酸取り込みに関与する候補遺伝子Bに操作を加えた乳がん細胞株を用いて、脂肪酸解析を行った。結果、遺伝子Bにより選択的に取り込まれうる脂肪酸の構造を、概ね確認することができただけでなく、環境ストレス応答性の脂肪酸を同定することに成功した。また、脂肪酸の取り込みに関与する遺伝子の候補は当初Bの1種類であったが、さらに分析を重ねたところ、もう一種類の有力な候補遺伝子が同定された。このため、その遺伝子を標的にして、同様の実験を開始している。これらの実験は、これまでの所、順調に進行している。また、遺伝子Bをノックダウンした細胞株を用いてRNA-seqによる遺伝子発現解析を行った。現在、取得したデータを解析中であるが、ここでは当初の予想通り、遺伝子操作の前後で免疫チェックポイント経路の活性の変化が確認された。現在、複数の乳がん細胞株を用いて同様の実験を行い、細胞種を問わず、同様の現象か確認されるかを検証中である。これと並行して、RNAiの安定発現系の細胞株の準備に取り掛かった。これを用いて次年度以降予定している、マウスXenograftの実験を行う予定にしている。研究成果はCell Symposiaにて一部公表した。実験装置の調整や、脂肪酸測定・解析の実験系の安定化に予定より若干時間を要したため。時間を要する工程などは可能な限り外部委託し、実験の効率化を図る。また、共同研究のネットワークを活用し、実験系の組み立て・ダウンストリームの解析のスピードアップを図る予定にしている。動物実験に関しても、経験豊富な研究員に協力を要請する予定にしている。本年度は、まず、乳がん細胞株を用いて、脂肪酸及び関連脂質をGC-MS, LC-MSによって分析する実験系の確立から開始した。特に脂肪酸に関しては、培養容器や環境中からのコンタミネーションが無視できない量で生じること、実験間での測定にかなりばらつきが生じる事などが判明し、その安定化と改善に時間を要した。その後、脂肪酸取り込みに関与する候補遺伝子Bに操作を加えた乳がん細胞株を用いて、脂肪酸解析を行った。結果、遺伝子Bにより選択的に取り込まれうる脂肪酸の構造を、概ね確認することができただけでなく、環境ストレス応答性の脂肪酸を同定することに成功した。また、脂肪酸の取り込みに関与する遺伝子の候補は当初Bの1種類であったが、さらに分析を重ねたところ、もう一種類の有力な候補遺伝子が同定された。このため、その遺伝子を標的にして、同様の実験を開始している。これらの実験は、これまでの所、順調に進行している。また、遺伝子Bをノックダウンした細胞株を用いてRNA-seqによる遺伝子発現解析を行った。現在、取得したデータを解析中であるが、ここでは当初の予想通り、遺伝子操作の前後で免疫チェックポイント経路の活性の変化が確認された。現在、複数の乳がん細胞株を用いて同様の実験を行い、細胞種を問わず、同様の現象か確認されるかを検証中である。これと並行して、RNAiの安定発現系の細胞株の準備に取り掛かった。これを用いて次年度以降予定している、マウスXenograftの実験を行う予定にしている。研究成果はCell Symposiaにて一部公表した。実験装置の調整や、脂肪酸測定・解析の実験系の安定化に予定より若干時間を要したため。時間を要する工程などは可能な限り外部委託し、実験の効率化を図る。また、共同研究のネットワークを活用し、実験系の組み立て・ダウンストリームの解析のスピードアップを図る予定にしている。動物実験に関しても、経験豊富な研究員に協力を要請する予定にしている。今年度予定分の組換えDNA実験の一部が遅延したため次年度に繰り越しとなった。
KAKENHI-PROJECT-18K16254
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イギリスにおける資格制度改革と16-19歳層の教育・訓練の再編
本研究は、1980年代以降のイギリスにおける教育訓練資格制度改革の動向に注目し、1)教育政策的側面、2)制度的側面、3)教育内容的側面についての情報収集と分析を通じて、イギリスの教育・訓練と社会構造が資格制度を介して結合する様態のイギリス的特質とともに、日本の教育改革との比較を目的とし、そのための基礎作業として当該領域の文献・資料を収集し、分析作業をおこなった。現時点での成果の概要は以下のとおり。1)80年代以降、教育政策と雇用・訓練政策がさまざまな矛盾・屈折を内包しながらも、いわば国策的に連動の度合いを増しつつあり、国民全体の資格取得と労働力の底上げをめざす本格的な「資格社会」への転換がはかられている。この面で、これまでのイギリス理解にも一定の修正をせまるものである。また、そこにおいて特に産業界の要請する職業能力開発戦略が基本的イニシアティヴとなっていること、そうした国家基準化・規格化と並行していわゆる「自由化」ないし「民営化」が展開しつつあり、従来のイギリス的政策形成の特質とされた「パートナーシップ」が、この面でも変質したことも明らかになった。2)これまで、民間のさまざまな機関によって認定されていた各種の職業資格を整序し、一定の国家基準のもとに一元化することとあわせて、「1988年教育改革法」及び「1992年高等及び継続教育法」等の立法を含む一連の教育制度改革において、継続教育機関も特に16-19歳層に関して大きく様変わりしつつある。3)上記と関連して、中等教育及び継続教育のコースやカリキュラムに職業資格があらためて位置づけられた。なお、シックスス・フォーム、継続教育カレッジ、タ-シャリー・カレッジのカリキュラムなど具体的な教育内容についての一次資料を収集したが、その詳細な分析は当面の課題である。本研究は、1980年代以降のイギリスにおける教育訓練資格制度改革の動向に注目し、1)教育政策的側面、2)制度的側面、3)教育内容的側面についての情報収集と分析を通じて、イギリスの教育・訓練と社会構造が資格制度を介して結合する様態のイギリス的特質とともに、日本の教育改革との比較を目的とし、そのための基礎作業として当該領域の文献・資料を収集し、分析作業をおこなった。現時点での成果の概要は以下のとおり。1)80年代以降、教育政策と雇用・訓練政策がさまざまな矛盾・屈折を内包しながらも、いわば国策的に連動の度合いを増しつつあり、国民全体の資格取得と労働力の底上げをめざす本格的な「資格社会」への転換がはかられている。この面で、これまでのイギリス理解にも一定の修正をせまるものである。また、そこにおいて特に産業界の要請する職業能力開発戦略が基本的イニシアティヴとなっていること、そうした国家基準化・規格化と並行していわゆる「自由化」ないし「民営化」が展開しつつあり、従来のイギリス的政策形成の特質とされた「パートナーシップ」が、この面でも変質したことも明らかになった。2)これまで、民間のさまざまな機関によって認定されていた各種の職業資格を整序し、一定の国家基準のもとに一元化することとあわせて、「1988年教育改革法」及び「1992年高等及び継続教育法」等の立法を含む一連の教育制度改革において、継続教育機関も特に16-19歳層に関して大きく様変わりしつつある。3)上記と関連して、中等教育及び継続教育のコースやカリキュラムに職業資格があらためて位置づけられた。なお、シックスス・フォーム、継続教育カレッジ、タ-シャリー・カレッジのカリキュラムなど具体的な教育内容についての一次資料を収集したが、その詳細な分析は当面の課題である。
KAKENHI-PROJECT-08710200
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08710200
災禍の儀礼の比較社会学:インドネシアと日本における津波災害を事例として
昨年度までに実施した海外調査にもとづき、インドネシア・アチェの記念行事を事例とした研究報告を国内外で行なった。このうち、スイス・ローザンヌ大学で開かれた国際宗教社会学会での発表の際に、イスラームを専門とする社会学者から貴重なコメントをいただいた。さらにこの報告を聞いたほかの研究者から、平成30年6月に台湾で開催される東南アジアの宗教にかんする国際会議に招待されることとなった。これらの報告に対するコメントをふまえたうえで2本の論文を執筆した。このうち、苦難の神義論という社会学的観点からインドネシア・アチェの記念行事を分析した論文は、査読を経て、平成30年6月に学術雑誌に掲載されることとなった。東日本大震災とスマトラ島沖地震の記念行事を比較したもう一方の論文は、平成30年1月に刊行された論文集のなかの1章として収録された。これら研究成果の発表と並行して、平成29年度は6月と12月にインドネシア・アチェにて海外調査を実施した。6月の調査では、これまで調査に協力してくれたインタビュイーに、調査をもとに執筆し英語に翻訳した論文を確認してもらい、内容についてのコメントをいただいた。また12月の調査では、4年連続となるスマトラ島沖地震記念行事の参与観察調査を実施し、13年後の社会がいかに津波を記念しているのかを記録した。さらに現地のシアクアラ大学での講演会に招待され、これまでの研究成果を報告するとともに、現地の研究者や学生からコメントを受けた。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、(1)インドネシアと日本の津波災害をめぐる儀礼を比較分析するための枠組みを精緻化する作業を行い、そのうえで(2)これまで行ってきた東北地方沿岸部の慰霊・追悼をめぐる調査を継続しつつ、インドネシア・アチェの津波をめぐる記念式典の調査を遂行した。(1)については、複数の研究会において本研究計画にかんする報告を行い、その議論を踏まえたうえで、災禍のあとに行われる現代的な諸儀礼(「災禍の儀礼」)を考察対象とした先駆的研究(Post et al., 2003)の理論的可能性と限界を考察した。その結果、津波災害をめぐる儀礼行為や語りの一つ一つを詳細に記述し、比較・分析するという本研究計画の調査指針を改めて再定位するにいたった。(2)にかんしてはまず東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町を中心とした震災五年目における被災地域のフィールドワークを実施し、震災以前にさかのぼる民俗的諸実践との関連のなかで、東日本大震災の慰霊・追悼を理解することを試みた。またスマトラ島沖地震をめぐるインドネシア・アチェの調査にかんしては、11周年の記念式典の参与観察、および主催者や参加者への聞き取り調査を行った。その結果、研究計画前年(平成26年12月)に行った10周年記念式典の予備調査では見えてこなかった、津波の想起にかかわる日常的な方法や語りのパターンが見出された。以上を踏まえ、これらの調査研究によって得られたデータを整理し、比較分析する作業に着手した。当初の研究計画に沿った調査を行い、必要な資料やデータを得ることができた。これら収集されたデータの分析(すでに平成27年度末より着手している)を進める目処がたったという点で、3年計画の初年度時点における順調な進展であると思われる。平成27年度に実施した海外調査にもとづき、インドネシア・アチェの記念行事を事例とした研究報告を5月と7月に行った。これらの報告に対するコメントを踏まえたうえで、2本の論文を執筆した。このうちインドネシア・アチェの記念行事を苦難の神義論という観点から分析した論文は、査読付き学術論文として学術雑誌に投稿した。もう一本の論文は、インドネシア・アチェと宮城県石巻市の津波記念行事を比較した論文となっており、東北大学東北アジア研究センタープロジェクト研究「災害と地域文化遺産に関わる応用人文学研究ユニット」が編集する論集へ寄稿した。この論集は平成29年度に出版予定となっている。これらの研究発表と並行して、平成28年度は7月、9月、12月と3回のインドネシア・アチェ調査を行った。7月と9月はイスラム暦における重要な年中行事に参加しつつ、インタビューを行いアチェの文化や日常的な文脈について学んだ。また12月の調査ではスマトラ島沖地震の12周年記念行事の参与観察調査を実施した。またこれまでの調査で得られたデータについて、調査協力者とその内容の確認を行うとともに、データ使用にかんする許可を得た。また現地の研究機関から、国連制定の「世界津波の日」に合わせて発行するニュースレターへの寄稿依頼を受け、コラムを執筆した。インドネシア語に翻訳されたこのコラムは、地元新聞Serambiに同封され、多くのバンダ・アチェ市民に読まれている。平成27年度(研究計画1年目)に得られたデータを分析し、学術論文を2報執筆した。昨年度までに実施した海外調査にもとづき、インドネシア・アチェの記念行事を事例とした研究報告を国内外で行なった。このうち、スイス・ローザンヌ大学で開かれた国際宗教社会学会での発表の際に、イスラームを専門とする社会学者から貴重なコメントをいただいた。さらにこの報告を聞いたほかの研究者から、平成30年6月に台湾で開催される東南アジアの宗教にかんする国際会議に招待されることとなった。これらの報告に対するコメントをふまえたうえで2本の論文を執筆した。
KAKENHI-PROJECT-15J01697
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J01697
災禍の儀礼の比較社会学:インドネシアと日本における津波災害を事例として
このうち、苦難の神義論という社会学的観点からインドネシア・アチェの記念行事を分析した論文は、査読を経て、平成30年6月に学術雑誌に掲載されることとなった。東日本大震災とスマトラ島沖地震の記念行事を比較したもう一方の論文は、平成30年1月に刊行された論文集のなかの1章として収録された。これら研究成果の発表と並行して、平成29年度は6月と12月にインドネシア・アチェにて海外調査を実施した。6月の調査では、これまで調査に協力してくれたインタビュイーに、調査をもとに執筆し英語に翻訳した論文を確認してもらい、内容についてのコメントをいただいた。また12月の調査では、4年連続となるスマトラ島沖地震記念行事の参与観察調査を実施し、13年後の社会がいかに津波を記念しているのかを記録した。さらに現地のシアクアラ大学での講演会に招待され、これまでの研究成果を報告するとともに、現地の研究者や学生からコメントを受けた。収集した資料やデータの読解・分析作業を行いつつ、成果を発表していく。また必要に応じて適宜追加調査を行う。平成29年度(研究計画3年目)においては、平成28年度の研究成果をもとに研究報告を行っていく。先立っては平成29年3月に南オーストラリア大学における国際会議で研究報告を行っている。また平成29年7月にスイス・ローザンヌ大学で開かれる国際宗教社会学会の研究報告の申し込みがアクセプトされている。現在執筆中の英語論文は、この報告後、国際宗教社会学会が発行する学術誌Social Compassへ投稿する予定である。またこのほかにも国内学会での発表を6月に予定している。29年度が最終年度であるため、記入しない。発生から21年を迎え中止が相次ぐ阪神淡路大震災の慰霊祭について、それらを持続させるための課題と展望についてコメントした。「関東大震災90年、原爆投下70年慰霊式典地域に根付く」『神戸新聞』2016年1月8日朝刊27面29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J01697
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有機超伝導体の電子状態と超伝導機構の研究
κ型BEDT-TTF系の1量体、2量体、4量体の電子状態を非経験的分子軌道法に基づき計算し、その有効ハミルトニアンを求めた。まず、1量体については、制限付きハートリー・フォック法を用い、1量体イオン(電子を半分抜いた)については、制限付き開殻ハートリー・フォック法を用いて、構造最適化まで行い計算した。得られた構造は、κ-ET2Cu(NCS)2や、κ-ET2Cu[N(CN)2]Br、β-ET213等のX線の実験データと比較してよい一致を見た。次に-電子を抜いた最近接の二量体分子の電子状態を、制限付きハートリー・フォック法を用いて計算した。この計算結果から求められたトランスファー積分は、ヒュッケル法で求められた結果とよい一致を見た。ダイマー間のトランスファー積分を計算するため、さらに最近接、第二、第三近接の4量体の電子状態を、制限付きハートリー・フォック法で計算した。全軌道の軌道最適化を行い、そのうちHOMO1からHOMO4の軌道を用いて局在分子軌道を構成し、1電子、2電子積分を計算し、κ型BEDT-TTF系の有効ハミルトニアンの構築を行った。構成されたハミルトニアンのCI計算を行いて固有状態、固有値を求め、その基底状態、第一励起状態について調べた結果、ホールの励起状態が非常に相関が強い系である事が調べられた。κ型BEDT-TTF系の1量体、2量体、4量体の電子状態を非経験的分子軌道法に基づき計算し、その有効ハミルトニアンを求めた。まず、1量体については、制限付きハートリー・フォック法を用い、1量体イオン(電子を半分抜いた)については、制限付き開殻ハートリー・フォック法を用いて、構造最適化まで行い計算した。得られた構造は、κ-ET2Cu(NCS)2や、κ-ET2Cu[N(CN)2]Br、β-ET213等のX線の実験データと比較してよい一致を見た。次に-電子を抜いた最近接の二量体分子の電子状態を、制限付きハートリー・フォック法を用いて計算した。この計算結果から求められたトランスファー積分は、ヒュッケル法で求められた結果とよい一致を見た。ダイマー間のトランスファー積分を計算するため、さらに最近接、第二、第三近接の4量体の電子状態を、制限付きハートリー・フォック法で計算した。全軌道の軌道最適化を行い、そのうちHOMO1からHOMO4の軌道を用いて局在分子軌道を構成し、1電子、2電子積分を計算し、κ型BEDT-TTF系の有効ハミルトニアンの構築を行った。構成されたハミルトニアンのCI計算を行いて固有状態、固有値を求め、その基底状態、第一励起状態について調べた結果、ホールの励起状態が非常に相関が強い系である事が調べられた。
KAKENHI-PROJECT-07232227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07232227
自在に設計可能な分子ノギスによるグラフェンの層数に基づく分離
平成27年度は、グラフェンや六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどをヘキサヒドロキシトリフェニレンという平面状の分子をはく離剤として用いることによる2次元ナノシートの合成を行った。さらに、グラファイトをクロリンe6という平面性の光増感剤ではく離して、グラフェン上に担持し、これを細胞に混ぜ、光照射を行ったところ、ごく少量で強い抗がん作用がみられた。以上、平成27年度は、グラフェンのはく離とはく離されたグラフェンの分析に重きを置いて研究を行った。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。ホストーゲスト化学に立脚したグラフェンの層数に基づく分離が本研究の主題であり、その中心的役割を担うのは、我々が分子ノギスと呼ぶ、コア、コーナー、レセプターの3つの部分からなるホスト分子である。既に我々のグループでは、コアにアントラセン、コーナーにカルバゾール、レセプターにポルフィリンを配した分子ノギスを鈴木カップリング反応により合成しており(G. Liu, N. Komatsu, et. al., J. Am. Chem. Soc., 135, 4805, 2013)、それを用いた単層カーボンナノチューブ(SWNT)の選別を行った。その結果、これまでに行ってきた分子ピンセットを用いた分離から予想されるとおり、右巻き、左巻きと直径の選別がなされ、さらに、比較的大きな直径(1.0rm以上)を有する光学活性SWNTが得られた。一方、こ.れまでの結果からは予想できなかった金属的なSWNTが半導体的なものに比べ、優先的に得られた。以上のことから、この分子ノギスは、SWNTの巻き方、直径とともに金属的性質をも識別することが明らかとなった。この分子ノギスのレセプターのポルフィリンを市販のピレンに代えることで、分子ノギスをより高収率、簡便に合成できると考えられる。そして、平成25年度、予定通りにその合成を完了した。さらに、これを用いて、まず、単層カーボンナノチューブの分離を試みたところ、ピレンのパラ位にt-butyl基を導入することにより、直径0.90-0.99nmの金属型SWNTが選択的に抽出されることが明らかとなった。この成果は、Chem. Eur. J.に掲載されるとともに、そのイメージが表紙に取り上げられた。26年度には、大きな空孔を持つキラルな分子ノギスを用いた2層カーボンナノチューブ分離を行い、光学活性体を得るとともに、その外径を、1.5 nmに制御することに成功した。27年度の繰越分として、、二硫化モリブデンと二硫化タングステンのコール酸ナトリウム存在下でのボールミルによる剥離について検討を行った。得られた各ナノシートは、固体状態で凝集することなく、水を加え、手で振るだけで、容易に水に分散し、最低数ヶ月は保存でき、同一の品質の分散液が得られることが明らかとなった。この成果は、ごく最近、ChemNanoMatに受理された。2層カーボンナノチューブを包摂する大きな空孔を持つ分子ノギスの合成を含め、2次元ナノシートの厚みに対応する様々な空孔を持つホスト分子の合成が可能となった。一方、各種2次元化合物の剥離に関して検討を行い、それらの分析や扱いについてかなりのノウハウが蓄積されてきた。平成27年度は、グラフェンや六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどをヘキサヒドロキシトリフェニレンという平面状の分子をはく離剤として用いることによる2次元ナノシートの合成を行った。さらに、グラファイトをクロリンe6という平面性の光増感剤ではく離して、グラフェン上に担持し、これを細胞に混ぜ、光照射を行ったところ、ごく少量で強い抗がん作用がみられた。以上、平成27年度は、グラフェンのはく離とはく離されたグラフェンの分析に重きを置いて研究を行った。ホスト分子の合成とそれによる抽出、抽出された2次元化合物の評価について検討を行う。27年度が最終年度であるため、記入しない。2枚のピレンを有する分子ノギスの合成を完了し、それを用いた単層カーボンナノチューブの分離を試みたところ、ピレンのパラ位にt-butyl基を導入することにより、直径0.90-0.99nmの金属型SWNTが選択的に抽出されることが明らかとなった。この成果は、すでに論文発表を終えた。27年度が最終年度であるため、記入しない。申請書にある計画通り、今年度は、これまでに合成してきたポルフィリン、もしくはピレンを有する分子ノギスを用いたグラフェンの層数による分離を試みる。
KAKENHI-PROJECT-13F03339
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13F03339
HTLV-I重感染のC型原発性肝癌発症における役割
我々は、HTLV-I endemic areaにおけるC型慢性肝障害からの原発性肝癌の発症に、HTLV-Iの重感染が促進的な因子として働く可能性を考え、HCV陽性の慢性肝炎とHCC患者の末梢血液単核球における増殖型(マイナス鎖)HCV-RNAを測定し、その検出率とHTLV-I感染の有無との関係を検討した。C型慢性肝炎患者(HTLV-I陽性5例をふくむ)17名およびHCV陽性原発性肝癌患者(HTLV-I陽性10例をふくむ)20名の末梢血液より単核細胞を分離後、total RNAを抽出しRT-PCR法を用いてHCV RNAの検出を行った。慢性肝炎患者のHTLV-I抗体陽性者では、プラス鎖HCV RNA陽性率5/5(100%)、マイナス鎖HCV RNA陽性率4/5(80%)でHTLV-I抗体陰性患者の9/12(75%)、3/12(25%)に対して高頻度であり、特にマイナス鎖HCV RNA陽性率については有意差を認めた(p=0.036、カイ2乗検定)。原発性肝癌患者のHTLV-I抗体陽性者では、プラス鎖HCV RNA陽性率9/10(90%)、マイナス鎖HCV RNA陽性率4/10(40%)でHTLV-I抗体陰性患者の6/10(60%)、2/10(20%)に対してやはり高頻度であり、慢性肝炎と同様の傾向を示した。この結果より、HTLV-Iが重複感染しているC型肝炎、肝癌患者においては末梢血液単核細胞においてHCVの増殖が亢進していることが示された。また単核細胞を免疫学的方法により分画し、同様にRT-PCRを行なってどの分画にマイナス鎖HCVが検出されるか検討した結果、主にT-cell、B-cellに検出された。平成8年度の研究では、HCV陽性慢性肝疾患患者におけるHCVに対する抗原特異的キラーT細胞活性の測定に至らなかった。我々は、HTLV-I endemic areaにおけるC型慢性肝障害からの原発性肝癌の発症に、HTLV-Iの重感染が促進的な因子として働く可能性を考え、HCV陽性の慢性肝炎とHCC患者の末梢血液単核球における増殖型(マイナス鎖)HCV-RNAを測定し、その検出率とHTLV-I感染の有無との関係を検討した。C型慢性肝炎患者(HTLV-I陽性5例をふくむ)17名およびHCV陽性原発性肝癌患者(HTLV-I陽性10例をふくむ)20名の末梢血液より単核細胞を分離後、total RNAを抽出しRT-PCR法を用いてHCV RNAの検出を行った。慢性肝炎患者のHTLV-I抗体陽性者では、プラス鎖HCV RNA陽性率5/5(100%)、マイナス鎖HCV RNA陽性率4/5(80%)でHTLV-I抗体陰性患者の9/12(75%)、3/12(25%)に対して高頻度であり、特にマイナス鎖HCV RNA陽性率については有意差を認めた(p=0.036、カイ2乗検定)。原発性肝癌患者のHTLV-I抗体陽性者では、プラス鎖HCV RNA陽性率9/10(90%)、マイナス鎖HCV RNA陽性率4/10(40%)でHTLV-I抗体陰性患者の6/10(60%)、2/10(20%)に対してやはり高頻度であり、慢性肝炎と同様の傾向を示した。この結果より、HTLV-Iが重複感染しているC型肝炎、肝癌患者においては末梢血液単核細胞においてHCVの増殖が亢進していることが示された。また単核細胞を免疫学的方法により分画し、同様にRT-PCRを行なってどの分画にマイナス鎖HCVが検出されるか検討した結果、主にT-cell、B-cellに検出された。平成8年度の研究では、HCV陽性慢性肝疾患患者におけるHCVに対する抗原特異的キラーT細胞活性の測定に至らなかった。
KAKENHI-PROJECT-08670602
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670602