title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
高齢障害者の起き上がり動作を介助する介助方法の実験的研究
本研究の主要目的は,腰背部に生じる負荷量を最小限にするための,効率の高い介助方法を明示することである.対象:起き上がり動作を介助する介助者として本研究に同意した健常成人12名である.平均身長は168.2±4.6cm,平均体重は65.1±2.6kg,模擬患者は身長168cm,体重62kgであった.方法:介助方法は引き起こし(方法(1)),抱え起こし(方法(2)),抱え引き起こし(方法(3))の3通りである.計測には3次元画像解析装置で介助者の体幹角度を測定し,表面筋電計で体幹の筋活動を測定した.また荷重計で介助者の両足部荷重量,を測定した.各計測器からのシグナルをAD変換器を介してPCに取り込み解析した.結果:各介助動作の体幹前屈角度が80%以上伸展するまでの所要時間は,方法(1)や方法(2)の介助動作は方法(3)に比べて20から25%タイム短い所要時間で体幹が伸展していた.一方,体幹の回旋角度は,方法(1)と(2)の介助方法は,体幹下部(腰部)の回旋角度が,体幹上部(胸部)に比べて有意に可動域が増大し,体幹の体軸内回旋を伴う介助動作であった.介助者の垂直荷重量は,介助の開始時左足部に全体重の6877%を荷重しており,移動時の荷重量(N)を所要時間(△T)を除して荷重減荷率を算出すると,方法(3)が他の2方法より小さく効率的であった.体幹の筋活動は,背部の脊柱起立筋が3549%MVCの持続的な活動を示したのに対し,腹部の腹斜筋は方法(1)と(2)で4279%MVCの有意な増大を示した.以上の結果から介助動作は,体幹前屈動作に非対称的な体幹の回旋やツイスト動作が加わらない姿勢とし,また減荷率で示された,急激な荷重量の移動を少なくした介助動作である方法(3)が,介助負担の少ない介助方法であることが示された.重度の寝たきり患者(模擬患者)をベッド上の側臥位から端座位へ起こす介助動作を行わせ,介助者の体幹の動きと体幹筋活動と足部荷重量を測定した.介助者となった被験者は平均年齢21.4±0.5歳,平均身長163.2±1.6cm,平均体重62.1±1.9kgで,模擬患者は身長168cm,体重62kgであった.測定機器は床面に設置された2枚のフォースプレート上に被験者が立ち,両足部の3軸分力の荷重量を120Hzでサンプリング周波数で,表面筋電図は体幹の左右の腹斜筋群,脊柱起立筋,大腿四頭筋の計6筋を100Hzのサンプリング周波数でA/D変換器を介しパソコンに入力した.また体幹の動きは,3次元画像解析装置を用い,被験者の体表面につけたランドマーカの画像を60Hzのサンプリング周波数でパソコンに入力し計測した.介助動作の筋活動量は脊柱起立筋が,持続的な活動を示し,腹斜筋の筋活動は脊柱起立筋の1.52.0倍であった.すなわち,介助者は体幹を後方へ引っ張り起こす力として脊柱起立筋の求心性の筋活動と同時に拮抗筋として腹斜筋群が腹壁を真っ直ぐに支える固定筋としての機能を有していた.また左右の腹斜筋を比較すると,右側の活動が左側より有意に大きな筋活動を示した.つまり左側に負荷された荷重を右側の体幹で下方に引っ張り下げる動作となるカウンターバランスが生じ,右側の腹斜筋群と脊柱起立筋が左側に比べ大きく活動する非対称的な筋活動を示した.したがって介助者に最も負荷が生じる動作は,引き起こし動作の開始3040%であり,体幹が70°60°の前屈姿勢を強いられ,模擬患者の体重の一部が介助者に負荷される相であった.力学的には介助者の重心位置からのモーメントアームが長くなり,模擬患者の重量が腰部に荷重され大きなトルクが骨盤中心に生じる動作であることが明らかになった.本研究の主要目的は,腰背部に生じる負荷量を最小限にするための,効率の高い介助方法を明示することである.対象:起き上がり動作を介助する介助者として本研究に同意した健常成人12名である.平均身長は168.2±4.6cm,平均体重は65.1±2.6kg,模擬患者は身長168cm,体重62kgであった.方法:介助方法は引き起こし(方法(1)),抱え起こし(方法(2)),抱え引き起こし(方法(3))の3通りである.計測には3次元画像解析装置で介助者の体幹角度を測定し,表面筋電計で体幹の筋活動を測定した.また荷重計で介助者の両足部荷重量,を測定した.各計測器からのシグナルをAD変換器を介してPCに取り込み解析した.結果:各介助動作の体幹前屈角度が80%以上伸展するまでの所要時間は,方法(1)や方法(2)の介助動作は方法(3)に比べて20から25%タイム短い所要時間で体幹が伸展していた.一方,体幹の回旋角度は,方法(1)と(2)の介助方法は,体幹下部(腰部)の回旋角度が,体幹上部(胸部)に比べて有意に可動域が増大し,体幹の体軸内回旋を伴う介助動作であった.
KAKENHI-PROJECT-10770707
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770707
高齢障害者の起き上がり動作を介助する介助方法の実験的研究
介助者の垂直荷重量は,介助の開始時左足部に全体重の6877%を荷重しており,移動時の荷重量(N)を所要時間(△T)を除して荷重減荷率を算出すると,方法(3)が他の2方法より小さく効率的であった.体幹の筋活動は,背部の脊柱起立筋が3549%MVCの持続的な活動を示したのに対し,腹部の腹斜筋は方法(1)と(2)で4279%MVCの有意な増大を示した.以上の結果から介助動作は,体幹前屈動作に非対称的な体幹の回旋やツイスト動作が加わらない姿勢とし,また減荷率で示された,急激な荷重量の移動を少なくした介助動作である方法(3)が,介助負担の少ない介助方法であることが示された.
KAKENHI-PROJECT-10770707
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770707
分子量約1000万の巨大粒子ボルトの脂質ラフト認識機構の解明
Vault(ボルト)は、3種類のタンパク質(MVP、VPARP、TEP1)と1種類のRNA(vRNA)で構成される分子量約1000万の巨大な核酸-タンパク質複合体で、幅広い高等生物に存在する。我々が2009年に3.5A分解能で決定したボルトの全体構造からボルトが脂質ラフトに結合する可能性を示すことができた。したがって、本研究では脂質ラフト構成成分との複合体の立体構造を決定し、ボルトによる脂質ラフト認識機構の解明を目指した。また、より詳細な議論が出来るように、昆虫細胞で発現したMVPのみで構成されるボルト粒子(ボルト外殻)の全体構造の2.8A分解能以上での構造決定も目指した。コレステロールを含む様々な成分との共結晶化を試みたが、これまでに結合が確認された成分はない。高分解能での構造決定を目指した研究では、フレキシブルなMVP・N末端をロイシンジッパーで固定したLZ-ボルトを用いて結晶化を行い、SPring-8のビームラインBL44XUにて回折実験を行った結果、最高で2.8A分解能の反射を得ることに成功した。現在は、多くの結晶を用いて高分解能回折強度データの収集を行っている。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、ボルトが働く場である脂質ラフトにどのようにして結合するのかを原子レベルで解明することを目指す。ボルトは脂質ラフトに結合する際、粒子外殻を形成するタンパク質MVPの一部(Shoulder domain)を使って脂質ラフトに特有の構成成分(コレステロール等)を認識すると考えられ、これら各成分とボルトの複合体結晶の作成を目指す。これまで複数の化合物をボルトの結晶に振とうしてX線回折強度データを収集したが、差フーリエによって化合物の電子密度を確認することはできていない。また、本研究では、3オングストローム以上の高分解能で側鎖の配置まで正確に決定し、化合物結合時と非結合時の構造を比較する事も目的としているが、昆虫細胞で発現したボルト粒子の良質な結晶作成に成功し、SPring-8のBL44XUにおける回折実験で2.8オングストローム分解能の回折点を得る事が可能となった。Vault(ボルト)は、3種類のタンパク質(MVP、VPARP、TEP1)と1種類のRNA(vRNA)で構成される分子量約1000万の巨大な核酸-タンパク質複合体で、幅広い高等生物に存在する。我々が2009年に3.5A分解能で決定したボルトの全体構造からボルトが脂質ラフトに結合する可能性を示すことができた。したがって、本研究では脂質ラフト構成成分との複合体の立体構造を決定し、ボルトによる脂質ラフト認識機構の解明を目指した。また、より詳細な議論が出来るように、昆虫細胞で発現したMVPのみで構成されるボルト粒子(ボルト外殻)の全体構造の2.8A分解能以上での構造決定も目指した。コレステロールを含む様々な成分との共結晶化を試みたが、これまでに結合が確認された成分はない。高分解能での構造決定を目指した研究では、フレキシブルなMVP・N末端をロイシンジッパーで固定したLZ-ボルトを用いて結晶化を行い、SPring-8のビームラインBL44XUにて回折実験を行った結果、最高で2.8A分解能の反射を得ることに成功した。現在は、多くの結晶を用いて高分解能回折強度データの収集を行っている。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。ボルトに結合する化合物の探索はまだ出来ていないが、ボルトの高分解能構造決定を目指した研究は順調に進んでいる。ボルトに結合する脂質ラフト成分の探索について、結晶へのソーキングだけでなく、共結晶化によっても合わせて行って行く。また、今年度前半に2.8オングストローム分解能の回折強度データを収集し、今年度内の高分解能構造決定を目指す。
KAKENHI-PUBLICLY-25121721
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25121721
社会課題の因果関係と対策の費用対効果推論基盤の構築
本研究では社会課題,とりわけ都市問題のデータのスキーマを整備し,各データの要素をリンクさせたナレッジグラフとしてデータを蓄積することで,都市問題の解決試作導出を支援する分析・推論基盤を実現することを目的とした.これにより,例えば都市問題の因果関係や階層関係のリンクをたどって課題の影響範囲を予測することや,悪循環および悪循環を引き起こす中核課題を発見することが可能になり,自治体やNPO法人などの課題解決実務者の一助になると考える.本稿で述べる「因果関係」とは,単にある事物の要因や影響として指摘されうる関係であり,その他の科学的な意味合いを指していないという点に注意されたい.まず,スキーマを設計し,自然言語処理とクラウドソーシングを用いて,広くWeb情報から因果関係を抽出した.抽出した因果関係に基づいてLODを構築した.さらに,自治体予算情報のRDF化を行い,構築したLODと結合し,因果関係から関連予算まで検索可能な分析活用例を示した.構築した都市問題因果関係LODはWeb情報から一文単位で半自動的に構築しているため,異なる文脈で出現する因果単語間の関係に欠損が生じるという問題がある.そこで,独自に定義した11パターンの推論ルールにより欠損因果リンクを補完する手法を提案した.さらに,都市問題は悪循環を構成しやすい点に着目し,LODからSPARQLを用いて都市問題の悪循環および複数の悪循環を引き起こす根源的課題を発見する実験を行った.実験結果について都市問題の専門家による評価を行い,都市問題解決に向けて本研究が一定の有用性を持つことを確認した.因果関係の裏付けとしての詳細な分析や地域に焦点を当てた分析向けて,都市問題そのものの実データを収集しLODする必要がある.しかし,十分なデータを得ることが困難であるため,ニューラルネットワークを用いて問題発生の分布を推定する手法を提案した.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究では社会課題,とりわけ都市問題のデータのスキーマを整備し,各データの要素をリンクさせたナレッジグラフとしてデータを蓄積することで,都市問題の解決試作導出を支援する分析・推論基盤を実現することを目的とした.これにより,例えば都市問題の因果関係や階層関係のリンクをたどって課題の影響範囲を予測することや,悪循環および悪循環を引き起こす中核課題を発見することが可能になり,自治体やNPO法人などの課題解決実務者の一助になると考える.本稿で述べる「因果関係」とは,単にある事物の要因や影響として指摘されうる関係であり,その他の科学的な意味合いを指していないという点に注意されたい.まず,スキーマを設計し,自然言語処理とクラウドソーシングを用いて,広くWeb情報から因果関係を抽出した.抽出した因果関係に基づいてLODを構築した.さらに,自治体予算情報のRDF化を行い,構築したLODと結合し,因果関係から関連予算まで検索可能な分析活用例を示した.構築した都市問題因果関係LODはWeb情報から一文単位で半自動的に構築しているため,異なる文脈で出現する因果単語間の関係に欠損が生じるという問題がある.そこで,独自に定義した11パターンの推論ルールにより欠損因果リンクを補完する手法を提案した.さらに,都市問題は悪循環を構成しやすい点に着目し,LODからSPARQLを用いて都市問題の悪循環および複数の悪循環を引き起こす根源的課題を発見する実験を行った.実験結果について都市問題の専門家による評価を行い,都市問題解決に向けて本研究が一定の有用性を持つことを確認した.因果関係の裏付けとしての詳細な分析や地域に焦点を当てた分析向けて,都市問題そのものの実データを収集しLODする必要がある.しかし,十分なデータを得ることが困難であるため,ニューラルネットワークを用いて問題発生の分布を推定する手法を提案した.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-18J13988
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J13988
ウィルソン外交と人種問題との相関ー「リベラルな国際秩序」概念の再検討
本研究は、ウィルソン外交の思想的特質を、大統領の人種・文明秩序観を考慮に入れつつ検討するものである。一般的に、ウィルソン外交は「リベラルな国際秩序」を追求したと考えられるが、最近の研究では、ウィルソンの人種主義的側面が注目されることも多く、「リベラルな国際秩序」との整合性が問題になっている。ウィルソン外交の中で「リベラルな国際秩序」概念と人種主義とはどのような関係にあったのだろうか。アメリカにおける人種主義は「リベラルな国際秩序」の展開にどう影響したのだろうか。第一次大戦参戦前のウィルソン外交を人種主義と関連づけて分析することで、今日の「リベラルな国際秩序」をめぐる議論にも一石を投じたい。本研究は、ウィルソン外交の思想的特質を、大統領の人種・文明秩序観を考慮に入れつつ検討するものである。一般的に、ウィルソン外交は「リベラルな国際秩序」を追求したと考えられるが、最近の研究では、ウィルソンの人種主義的側面が注目されることも多く、「リベラルな国際秩序」との整合性が問題になっている。ウィルソン外交の中で「リベラルな国際秩序」概念と人種主義とはどのような関係にあったのだろうか。アメリカにおける人種主義は「リベラルな国際秩序」の展開にどう影響したのだろうか。第一次大戦参戦前のウィルソン外交を人種主義と関連づけて分析することで、今日の「リベラルな国際秩序」をめぐる議論にも一石を投じたい。
KAKENHI-PROJECT-19K01496
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01496
楚辞の思想史的研究-道家思想との関わりを中心にして
楚辞諸作品は、伝説的には戦国時代の屈原の作だとされるが、その内容や形式から見て、相当に長い時代をかけて形成されたものだと推定される。それら楚辞作品を、離騒篇を軸にして、前期作品、離騒篇、後期作品とに、大きく三分割することができる。前期作品は、楚辞文芸の基礎となったであろう、宗教芸能的な要素を強く留めたものである。それに対して、楚辞の後期作品では、登場する主人公の個人的な苦悩が中心に描かれる。そうした個人的な苦悩を核にして屈原伝説が形成され、またそうした苦悩を超越するために、天界遊行が盛んに歌われるのである。楚辞後期作品に顕著な天界遊行の記述は、老荘思想の遊の観念と密接な関係を持っている。楚辞の中でも遠遊篇に記述される天界遊行の内容は、「淮南子」と重なるところがあり、遠遊篇の成立もほぼ同時代と考えることができる。天上遊行の内容は、時代の中で大きく変化している。天上遊行を中心にして見た、遠遊篇との共通性、および非共通性の検討から、楚辞後期作品の、おおよその年代づけが可能であり、それら後期作品の基点に位置する離騒篇の年代も、おおまかに定めることができる。いく人かの学者によって主張されている、離騒篇を「淮南子」と同年代の作だとする説は、成立しがたいことが知られるのである。楚辞諸作品は、伝説的には戦国時代の屈原の作だとされるが、その内容や形式から見て、相当に長い時代をかけて形成されたものだと推定される。それら楚辞作品を、離騒篇を軸にして、前期作品、離騒篇、後期作品とに、大きく三分割することができる。前期作品は、楚辞文芸の基礎となったであろう、宗教芸能的な要素を強く留めたものである。それに対して、楚辞の後期作品では、登場する主人公の個人的な苦悩が中心に描かれる。そうした個人的な苦悩を核にして屈原伝説が形成され、またそうした苦悩を超越するために、天界遊行が盛んに歌われるのである。楚辞後期作品に顕著な天界遊行の記述は、老荘思想の遊の観念と密接な関係を持っている。楚辞の中でも遠遊篇に記述される天界遊行の内容は、「淮南子」と重なるところがあり、遠遊篇の成立もほぼ同時代と考えることができる。天上遊行の内容は、時代の中で大きく変化している。天上遊行を中心にして見た、遠遊篇との共通性、および非共通性の検討から、楚辞後期作品の、おおよその年代づけが可能であり、それら後期作品の基点に位置する離騒篇の年代も、おおまかに定めることができる。いく人かの学者によって主張されている、離騒篇を「淮南子」と同年代の作だとする説は、成立しがたいことが知られるのである。楚辞文芸と道家思想との間に密接な関係があったであろうことは、例えば「載営魄」の語が、「老子」第十章に「載営魄抱一、能無難乎」とあると同時に、「楚辞」遠遊篇にも「載営魄而登霞兮、掩浮雲而上征」の句ず見えることからも知られる。「楚辞」に属する諸作品を大きく前期と後期とに時代区分すると、その前期をなす、九歌や天問などの古い民間文芸としての様相を留めた作品群と、九章以下の新しい様式・内容による後期の作品群とに分けられる。離騒篇は、ちょうど両者の中間に位置して、楚辞文芸の頂点をかたち作っているのである。後期の楚辞文芸の特色は、屈原伝説を吸収することによって、個人的な感慨(それも特に不遇の感慨)を文学に定着することを可能にしたことにあろう。楚辞文芸が道家思想と密接な関わりを持つようになるのも、この後期楚辞文芸の中においてであった。楚辞文芸が関わりを持った道家思想は、道家の様々な観念の中でも神仙思想的な傾向が強いものであった。その典型が遠遊篇である。神仙思想の中でも、特に精神の天上遊行の記述を中心とした、呪術的、宗教的な傾向を持つものであったと言えよう。これは、楚辞文芸の基礎にあった、楚の地域のシャマニズムの実修の中での、天上遊行の幼想を承けたものであったにちがいない。道家思想も南方の文化にその基盤を持っているとされる。楚辞も道家思想も、その最も深い基礎において通じあっていたのである。こうした、神仙思想的な傾向の強い道家思想を継承していたのは、前漢時代、劉安を中心とした淮南國の思想界であった。実際の作者の比定には慎重であらねばならないが、劉安のもとにいた文人たちが作ったとされる作品が「楚辞」十七篇の中にいくつか留められているのも、理解しやすいところである。楚辞文芸に属する諸作品は、その様式の多様性から言っても、一人の作者(従来の考えかたでは屈原)の作とは考えられない。すなわち、楚辞の諸作品の間には、その成立について時期的な前後関係があり、離騒篇を真ん中に置いて、前期の楚辞作品群(九歌や天問篇がその中心である)と、後期の楚辞作品群とに区分されるのである。そのうち、後期楚辞作品群を特色付けるのは、作品の内容に“屈原伝説"的要素が浸透していることと、道家思想への接近とである。
KAKENHI-PROJECT-03610231
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03610231
楚辞の思想史的研究-道家思想との関わりを中心にして
この研究では、特にそのうちでも、楚辞文芸と道家思想との関わりについて分析してきた。馬王堆帛書の発見により、戦国末年から漢代初年にかけての道家思想(道家思想の中でも特に黄老思想)の様相が具体的に知られるようになった。また、後期楚辞作品群の中でも道家思想と最も関係の深いのは、遠遊篇である。この遠遊篇と馬王堆帛書資料とを重ね合わせて見るとき、当然ではあるが、一致する要素と一致しない要素とが見られる。両者の大きな違いは、馬王堆の資料が主として思想を表明するものであるのに対して、遠遊篇には、宗教的な要素が色濃く見られることである。遠遊篇の内容には、むしろ、後の道教を予見させるものすら含まれている。遠遊篇の主題である天上遊行の描写は、すでに離騒篇などでもその中核となっていたのではあるが、天上で遊行者が訪れる神々の世界の構造は大きく異なってしまっている。神々の世界の構造の変化に、離騒篇と遠遊篇との間の思想的な距離が典型的に表明されており、思想的な距離は時代的な隔たりを、そのまま現わすものであったのである。「史記」封禅書などが記録する、神仙思想の展開との関わりをも視点に入れた研究が今後の課題である。楚辞の諸作品を、離騒篇を軸にして時期区分をし、離騒以前に成立した篇を前期楚辞作品、離騒以後の成立と考えられる作品を後期楚辞作品と呼ぶ。前期楚辞作品、たとえば九歌や天問篇などの成立が、楚文化の中で、どこまで時代的に遡り得るかは、きわめて重要な問題ではあるが、今回の研究では、それを中心に取り上げることはしなかった。もっぱら、離騒篇以後の諸作品の年代付けを行ない、そこから遡って、楚辞文藝の頂点に位置する離騒篇の成立時期をも推定しようと試みたのである。後期楚辞作品の年代付けのために、それらの作品の中に見られる道家的用語や道家的観念の反映の様相を抜き出し、それを戦国時代末期から前漢時代にかけての、道家思想の歴史的な展開の中に位置づけようと試みた。特に天界遊行の記述は、道家思想の中では、たとえば「荘子」の逍遥遊に見られるような“遊"の観念に結晶し、楚辞の中では、主人公の天界遍歴として文学化されている。楚辞後期作品中の、天界遊行に関わる作品を中心にして、その内容を検討した。その結果、特に遠遊篇は「淮南子」と密接な関係を持ち、時代的にも近いものであったろうことが推定された。この遠遊篇と離騒篇とでは、天界遊行に託された意味に本質的な違いがある。離騒篇の成立が、「淮南子」よりも、時代的に相当に遡るであろうことが推定されるのである。ただ、離騒篇の成立が戦国時代にまで遡り得るものであるかどうかを確定するためには、新しい資料を用いた、より厳密な検討が将来の課題題として遺されている。以上のような知見を基礎に、研究成果報告書「楚辞後期の諸作品-道家思想との交流」を纒めて、出版した。
KAKENHI-PROJECT-03610231
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03610231
アリ類の環境ストレス緩衝機能を介した新奇表現型の発現機構に関する進化発生学的研究
カドフシアリは日本に広く分布し,その多くは2つのカースト:有翅女王と無翅のワーカーからなる社会形態をとる.しかしながら北海道など一部の寒冷な地域ではそれに加え,有翅女王とワーカーの中間的な形態を示す無翅のカースト(中間型)が女王に置き換わって繁殖を担うコロニーが存在する.この中間型は,低温ストレス環境下で生じた有翅女王の変異表現型が遺伝的に固定されることで生じたと示唆されてきた.ショウジョウバエを用いた先行研究においては,ストレス応答を担う熱ショックタンパク質(HSP)のストレス応答が制限されることで,変異表現型の創出・固定が引き起こされることが知られる.従って,本研究では熱ショックタンパク質を介した低温ストレス応答を調べ,有翅女王のコロニーと中間型のコロニーとで比較した.北海道の越冬条件を再現するため,コロニーを90日間の低温処理下(3°C)においた後, 20°Cに戻して14日間回復させた.続いて初年度に単離したHsp90, Hsc7-1, Hsc70-2遺伝子について,低温処理期間における発現パターンを調べた.その結果,有翅女王のコロニーでは他の生物で見られるような一般的な低温応答が確認されたのに対し,中間型のコロニーではその応答が鈍いことが明らかになった.さらに,この差は成虫よりも幼虫の段階で比較したときの方が顕著であることも分かった.また,それらの転写因子であるHsf-1とHsf-2の発現パターンや,それらの結合するHsp90遺伝子の上流領域の配列にコロニー間の差がみられなかったことから,上記の発現パターンの差は転写制御の違い以外の要因により維持されていると示唆された(例,エピジェネティック制御).本結果は中間型のコロニーが寒冷環境に馴化していることを示唆するとともに,ストレス環境下での変異表現型の創出とそれに続く中間型進化がHspの応答性低下を介して起こった可能性が示唆された.本研究では熱ショックタンパク質(Hsp)による環境ストレス緩衝機構の働きを介して,アリの新奇カーストが進化してきたという仮説を検証するものである.本年度までで,新奇カーストにおいて低温ストレスに対するHspの応答性が低下していることを示し,カースト進化がストレス環境下での変異表現型の創出とその固定によって生じるという仮説を支持する証拠を得ることができた.従って,平成25年度の達成度は順調であるとした。今後はHspの働きがカースト分化に及ぼす影響について検証する.そのためにまず,新奇カーストであるカドフシアリの中間型分化の季節的なスケジュールを明らかにする.そしてカースト分化に重要な時期において, Hsp遺伝子の発現解析及び機能解析を行うとともに, DNAのメチル化によるエピジェネティック制御が発現パターンに及ぼす影響を検証する.カドフシアリは日本に広く分布し,その多くは2つのカースト:有翅女王と無翅のワーカーからなる社会形態をとる.しかしながら北海道など一部の寒冷な地域では2タイプのコロニーが存在し,一方では有翅女王が,もう一方では有翅女王とワーカーの中間的な形態を示す無翅の中間型繁殖カースト(中間型)が繁殖を担う.この中間型の進化と寒冷な環境への適応には,環境ストレスに対する緩衝機構が大きく影響したとの仮説が立てられる.一般に,ストレス緩衝には熱ショックタンパク質(HSP)が重要な役割を果たす.そこで本研究では中間型の進化と寒冷環境への適応における熱ショックタンパク質の役割について調べた.まずは,環境ストレス緩衝において主要な働きをするHsp90とHsp70family相同遺伝子,そしてHSPの発現調節を行う熱ショック因子Hsfの相同遺伝子をクローニングし,Hsp90,Hsc70-1,Hsp70-2,Hsf-1,Hsf-2遺伝子の部分配列を得た.続いて,5日間の低温処理(3°C)をした後に20°Cに戻して5日間回復させ,その過程におけるHsp遺伝子及びHsf遺伝子の発現パターンを調べた.その発現パターンを有翅女王のコロニー及び中間型のコロニーの間で比較した結果,有翅女王のコロニーでは中間型コロニーに比べてHsp90,Hsc70-1,Hsc70-2,Hsf1の発現が有意に高いことが示された.このことから,中間型コロニーは異なる環境ストレス緩衝機構を有することが明らかとなり,その機構の獲得が中間型の進化に重要な役割を果たした可能性が示唆された.カドフシアリは日本に広く分布し,その多くは2つのカースト:有翅女王と無翅のワーカーからなる社会形態をとる.しかしながら北海道など一部の寒冷な地域ではそれに加えて,有翅女王とワーカーの中間的な形態を示す無翅のカースト(中間型)が女王に置き換わって繁殖を担うコロニーが存在する.この中間型は,低温ストレス環境下で生じた有翅女王の変異表現型が遺伝的に固定されることで生じたと示唆されてきた.ショウジョウバエを用いた先行研究においては,ストレス応答を担う熱ショックタンパク質(HSP)のストレス応答が制限されることで,変異表現型の創出・固定が引き起こされることが知られる.従って,本研究では熱ショックタンパク質を介した低温ストレス応答を調べ,有翅女王のコロニーと中間型のコロニーとで比較した.北海道の越冬条件を再現するため,コロニーを90日間の低温処理下(3°C)においた後,20°Cに戻して14日間回復させた.続いて,前年度に単離したHsp90,Hsc70-1,Hsc70-2,Hsf-1,Hsf-2遺伝子について,低温処理期間における発現パターンを調べた.
KAKENHI-PROJECT-11J09207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J09207
アリ類の環境ストレス緩衝機能を介した新奇表現型の発現機構に関する進化発生学的研究
その結果,有翅女王のコロニーでは他の生物で見られるような一般的な低温応答が確認されたのに対し,中間型のコロニーではその応答が鈍いことが明らかになった.本結果は中間型のコロニーが寒冷環境に馴化していることを示唆するとともに,ストレス環境下での変異表現型の創出とそれに続く中間型進化がHspの応答性低下を介して起こった可能性が示唆された.カドフシアリは日本に広く分布し,その多くは2つのカースト:有翅女王と無翅のワーカーからなる社会形態をとる.しかしながら北海道など一部の寒冷な地域ではそれに加え,有翅女王とワーカーの中間的な形態を示す無翅のカースト(中間型)が女王に置き換わって繁殖を担うコロニーが存在する.この中間型は,低温ストレス環境下で生じた有翅女王の変異表現型が遺伝的に固定されることで生じたと示唆されてきた.ショウジョウバエを用いた先行研究においては,ストレス応答を担う熱ショックタンパク質(HSP)のストレス応答が制限されることで,変異表現型の創出・固定が引き起こされることが知られる.従って,本研究では熱ショックタンパク質を介した低温ストレス応答を調べ,有翅女王のコロニーと中間型のコロニーとで比較した.北海道の越冬条件を再現するため,コロニーを90日間の低温処理下(3°C)においた後, 20°Cに戻して14日間回復させた.続いて初年度に単離したHsp90, Hsc7-1, Hsc70-2遺伝子について,低温処理期間における発現パターンを調べた.その結果,有翅女王のコロニーでは他の生物で見られるような一般的な低温応答が確認されたのに対し,中間型のコロニーではその応答が鈍いことが明らかになった.さらに,この差は成虫よりも幼虫の段階で比較したときの方が顕著であることも分かった.また,それらの転写因子であるHsf-1とHsf-2の発現パターンや,それらの結合するHsp90遺伝子の上流領域の配列にコロニー間の差がみられなかったことから,上記の発現パターンの差は転写制御の違い以外の要因により維持されていると示唆された(例,エピジェネティック制御).本結果は中間型のコロニーが寒冷環境に馴化していることを示唆するとともに,ストレス環境下での変異表現型の創出とそれに続く中間型進化がHspの応答性低下を介して起こった可能性が示唆された.本研究では熱ショックタンパク質(Hsps)による環境ストレス緩衝機構の働きを介して,アリの新奇カーストが進化してきたという仮説を検証するものである.そのためにはまず,新奇カーストと祖先カースト間でこの環境ストレス緩衝機構の働きが異なることを示すことが必須である.従って,その重要な証拠を得た平成23年度の達成度は順調であるとした。本研究では熱ショックタンパク質(Hsp)による環境ストレス緩衝機構の働きを介して,アリの新奇カーストが進化してきたという仮説を検証するものである.本年度は,新奇カーストにおいて低温ストレスに対するHspの応答性が低下していることを示し,カースト進化がストレス環境下での変異表現型の創出とその固定によって生じるという仮説を支持する証拠を得ることができた.従って,平成24年度の達成度は順調であるとした。本研究では熱ショックタンパク質(Hsp)による環境
KAKENHI-PROJECT-11J09207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J09207
高精度力センサベッドを用いた呼吸・脈拍・血圧のベッド面への表出モデルの構築
本研究で用いる高精度力センサベッドには,ひとつのセンサの計測範囲が100[kPa]程度までリニアリティがあり,呼吸や脈拍の振幅を精密に捕らえるために0.1[kPa]程度の分解能を持ち,全身の部位を計測するために50100[mm]程度の間隔で200から300個程度のセンサをベッド面に配置し,呼吸や脈拍の波形と位相差を精密に計測できるように1001k[Hz]程度のサンプリングレートが必要となる.本年度はこの性能をもつ高精度力センサベッドの構築と改良を行った.また,非拘束で日常の人体の内部状態を計測するとき,センサで計測できるバイタルサインは限定されてくる.そこで人体のモデルを使った推測によって,センサからの情報を補完することで,より詳細な人体の把握をすることができると考えられる.そこで酸素消費量の変化に応じて呼吸や心拍数が調節されるシミュレータを構築した.酸素消費量により駆動される呼吸器・循環器統合シミュレータの構成は,酸素消費量と二酸化炭素排出量がシミュレータ全体への入力となっている.シミュレータを構成するモデルは,コントローラが心臓血管コントロール,CO2ドライブである.構成される具体的な器官は循環器,呼吸器,さらに肺胞・肺毛細管間のガス交換のモデルである.さらに多くのセンサ情報を効率よく収集可能なアドホックかつマルチホップが可能なワイヤレスセンサネットワークデバイスの構築を行い,多種多様なセンサ群を特別なコンフィグレーションを行うことなく,自動的に接続され,データが収集可能であることを確認した.申請者らの研究により,身体とベッド面にかかる圧力から得られる呼吸の振幅は1[kPa]のオーダーであり,脈拍の振幅は0.1[kPa]のオーダーであること,最大体圧が100[kPa]程度であることが分かっている.また全身各部位における脈拍を計測することで,脈拍の位相差を計測でき血流速度が推定できる可能性も示されている.また絶対的な圧力を計測することが可能ならばトノメトリー法と同様の手法により血圧の推定可能性もしめされている.しかしながら申請者らの現在使用している圧力センサベッドでは,センサのリニアリティに問題があるため絶対的な圧力を計測するのが難しく,振幅のオーダーを推定する程度にとどまっている.また脈波伝播速度が5[m/s]でセンサの空間分解能を50[mm]とすると10[msec]以下の時間を計測しなければならず,現在はサンプリングレートが10[Hz]程度であり十分とはいいがたい.そこで申請者らの実験の知見を基に呼吸・脈拍・血圧のベッド面への表出モデルに必要なセンサベッドの性能は以下のようになる.ひとつのセンサの計測範囲が100[kPa]程度までリニアリティがあり,呼吸や脈拍の振幅を精密に捕らえるために0.1[kPa]程度の分解能を持ち,全身の部位を計測するために50100[mm]程度の間隔で200から300個程度のセンサをベッド面に配置し,呼吸や脈拍の波形と位相差を精密に計測できるように1001k[Hz]程度のサンプリングレートが必要となる.本年度はこの性能をもつ高精度力センサベッドの構築と効率よく収集可能なセンサネットワークの構築,生体モデル構築への試みを行った.本研究で用いる高精度力センサベッドには,ひとつのセンサの計測範囲が100[kPa]程度までリニアリティがあり,呼吸や脈拍の振幅を精密に捕らえるために0.1[kPa]程度の分解能を持ち,全身の部位を計測するために50100[mm]程度の間隔で200から300個程度のセンサをベッド面に配置し,呼吸や脈拍の波形と位相差を精密に計測できるように1001k[Hz]程度のサンプリングレートが必要となる.本年度はこの性能をもつ高精度力センサベッドの構築と改良を行った.また,非拘束で日常の人体の内部状態を計測するとき,センサで計測できるバイタルサインは限定されてくる.そこで人体のモデルを使った推測によって,センサからの情報を補完することで,より詳細な人体の把握をすることができると考えられる.そこで酸素消費量の変化に応じて呼吸や心拍数が調節されるシミュレータを構築した.酸素消費量により駆動される呼吸器・循環器統合シミュレータの構成は,酸素消費量と二酸化炭素排出量がシミュレータ全体への入力となっている.シミュレータを構成するモデルは,コントローラが心臓血管コントロール,CO2ドライブである.構成される具体的な器官は循環器,呼吸器,さらに肺胞・肺毛細管間のガス交換のモデルである.さらに多くのセンサ情報を効率よく収集可能なアドホックかつマルチホップが可能なワイヤレスセンサネットワークデバイスの構築を行い,多種多様なセンサ群を特別なコンフィグレーションを行うことなく,自動的に接続され,データが収集可能であることを確認した.
KAKENHI-PROJECT-16700131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700131
植食性昆虫における植食性の起源と多様化
1.シギアブの食性の転換に伴う幼虫の口器形態の進化を解明シギアブ科が植食性を獲得する際にどのような形態的変化が伴ったかを明らかにするため、コケ食者の生活史と幼虫の形態を調べた。特に幼虫の口器形態に着目し、摂食行動の観察に基づいてその機能形態を推測した。Spania属およびLitoleptis属の幼虫はタイ類の組織内部に潜葉し、Ptiolina属はセン類の茎に潜孔することが分かった。また、タイ類潜葉者は、大顎の下部の突起で植物組織を噛み砕いた後、その破片を組織中の液体とともに大顎背面の穴から吸い込むことで摂食していた。分子系統解析の結果から形態進化を再構築したところ、コケ外部食の進化に伴い、捕食に適した構造とされるmandibular brushの喪失と大顎の口側の溝の退縮が生じた後、潜葉性の進化に伴い、陸上生活での匍匐運動に適した体表構造であるcreeping weltsを喪失するとともに大顎背面の穴を獲得したことなどを示した。シギアブの潜葉性の獲得において、溝を用いた吸汁という祖先的な捕食者の摂食方法が特異な口器の進化に強い影響を与えたと考えられる。2.国内における新種コバネガを発見、記載東北地方における綿密な調査に基づき、東日本で新たに発見された6種のコバネガ科の新種とその分布域を明らかにした。まず、南アルプスの亜高山帯の数地点において2種のコバネガを発見した。さらに、東北地方での野外調査に基づき、Issikiomartyria属の4種の新種を発見した。東北地方全域に亘るコバネガ類の分布調査を行ったところ、Issikiomartyria属の9種の生息域は東北及び北陸地方の日本海側の山地に限定されていたことから、Issikiomartyria属のコバネガ類は東北地方で最も著しい分化を遂げた日本海要素の一つであることが示唆された。本成果はまもなく投稿予定である。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。現在の地球上では植物を餌とする昆虫が地球上の既知の生物の1/4以上を占めていると言われる。約5億年前に陸上に進出して以来、植物は、外敵との攻防の末に多様な防衛手段を獲得してきたが、一部の昆虫はそうした防衛形質に適応し莫大な資源を利用する可能性を手にいれた。植食性昆虫の系統が食草との関係の中で放散したことを示した例は多い一方で、地質年代を跨ぐほど長い時間スケールにおいて植物と昆虫の関係がどのように生じ、変化してきたかについてはあまり分かっていない。コケ植物は最初に分岐した陸上植物であり、被子植物に比べて植食者が非常に少ないと考えられている。しかし近年、コケと関係の深いいくつかの昆虫の系統が日本に広く分布することが明らかとなってきた。これらコケ食昆虫を対象に、形態分類と生態解明を行った上で分子系統解析を行うことで、コケ食昆虫の多様性と種分化機構の解明に取り組んでいる。広義のシギアブ科(双翅目)は、幼虫期に肉食性から植食性に至る多様な食性をもつため、いかなる食性から植食性を獲得したかを推定する上で優れている。ところが本科は、多くの種の生活史が未知であるだけでなく、分類学的に議論が多いグループである。本年度は、このグループに含まれるLitoleptis属を中心に国内で採集し、食性の解明と形態分類を行った。結果、系統的位置が長らく不明であった本属がSpaniidaeに属するという見方が強く支持された。また、本属は生態未知であったが、6新種すべての生活史が明らかとなり、各種はそれぞれ1属の苔類のみに潜葉する専食者であることが分かった。これらの種は互いに異所的に分布しており、またミトコンドリア遺伝子系統樹において単系統となった。さらに、シギアブ科を対象とした分岐年代推定から、本科におけるコケ食者は中生代に既に生じていたことが示唆された。(1)東北地方に固有のコバネガ科の新種発見コバネガ科は現生の鱗翅目の中で最も古い系統であり、その幼虫はコケ(とくにタイ類)あるいはデトリタスを食べる。東北地方での網羅的な野外調査により、これまでコバネガ科の採集記録が非常に少なかった東北5県の各地で、ジャゴケを餌とするコバネガを新たに発見した。これらの種は地域固有の未記載種である可能性が高い。(2)コケ食シギアブの新種記載および生活史全容の解明白亜紀から化石の知られているLitoleptis属のシギアブ6種を日本から新たに記載し、そのコケ食の生態を初めて報告した論文が国際誌に受理された。また、成虫の生態があまりわかっていないコケ食のシギアブ科(双翅目)3種の野外での産卵行動を観察し、成虫は食草であるコケに直接卵を産み付けるが、その産卵習性は属間で異なることが明らかになった。この成果は投稿間近である。(3)コケ食シギアブの幼虫の特異な形態とその機能への示唆上記のコケ食シギアブ類の幼虫の形態を記載した。特に幼虫の口器形態を観察したところ、他の原始的なアブ類には見られない特異な形態を持つことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-14J00160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J00160
植食性昆虫における植食性の起源と多様化
捕食性の幼虫では鋭く尖った長い下顎を獲物に突き刺し、下顎口辺にある溝を利用して体液を吸汁するのに対し、植食性シギアブでは下顎が短く、多くの突起を生じ、発達した溝が下顎の背面に大きく開口していた。これは植食者が吸汁型という基本的な特性を維持しつつ植物組織の吸汁に適した構造をもっていることを示唆する。さらに摂食行動の観察から、潜葉性のシギアブ類は咀嚼と吸汁の両方の過程により餌を食べることがわかった。また、幼虫の形態を基にSpaniinae亜科の共有派生形質と、コケ食者3属の識別形質を新たに見出した。この成果は投稿間近である。コケ食昆虫の探索をこれまでと異なる時期・地域で行うことで、予想を上回る多くの発見が得られた。まず、東北地方での網羅的な野外調査により、各地でジャゴケを餌とする新種のコバネガを発見した。また、成虫の生態が不明の植食性のシギアブ科3属3種の野外での産卵行動を観察することができ、卵から成虫に至るまでの生活史全体を把握できるようになった。加えて、これまで採集が技術的に難しかったシリブトガガンボ亜科の幼虫を全国各地で採集することに成功し、その生態解明をさらに推し進めることができた。1.シギアブの食性の転換に伴う幼虫の口器形態の進化を解明シギアブ科が植食性を獲得する際にどのような形態的変化が伴ったかを明らかにするため、コケ食者の生活史と幼虫の形態を調べた。特に幼虫の口器形態に着目し、摂食行動の観察に基づいてその機能形態を推測した。Spania属およびLitoleptis属の幼虫はタイ類の組織内部に潜葉し、Ptiolina属はセン類の茎に潜孔することが分かった。また、タイ類潜葉者は、大顎の下部の突起で植物組織を噛み砕いた後、その破片を組織中の液体とともに大顎背面の穴から吸い込むことで摂食していた。分子系統解析の結果から形態進化を再構築したところ、コケ外部食の進化に伴い、捕食に適した構造とされるmandibular brushの喪失と大顎の口側の溝の退縮が生じた後、潜葉性の進化に伴い、陸上生活での匍匐運動に適した体表構造であるcreeping weltsを喪失するとともに大顎背面の穴を獲得したことなどを示した。シギアブの潜葉性の獲得において、溝を用いた吸汁という祖先的な捕食者の摂食方法が特異な口器の進化に強い影響を与えたと考えられる。2.国内における新種コバネガを発見、記載東北地方における綿密な調査に基づき、東日本で新たに発見された6種のコバネガ科の新種とその分布域を明らかにした。まず、南アルプスの亜高山帯の数地点において2種のコバネガを発見した。さらに、東北地方での野外調査に基づき、Issikiomartyria属の4種の新種を発見した。東北地方全域に亘るコバネガ類の分布調査を行ったところ、Issikiomartyria属の9種の生息域は東北及び北陸地方の日本海側の山地に限定されていたことから、Issikiomartyria属のコバネガ類は東北地方で最も著しい分化を遂げた日本海要素の一つであることが示唆された。本成果はまもなく投稿予定である。当初の予定通り、野外観察と飼育実験によるコケ食昆虫の生態解明を進めており、特に希少なコケ食昆虫であるシリブトガガンボの生態に関する新しい知見を積み重ねつつある。本年度はコケ食昆虫(コバネガ、シギアブ)の成虫を用いた行動実験により分散能力の測定を行う計画であったが、対象生物の飛翔行動が著しく測定困難であったため、分子系統について重点的に研究を進めている。一連の成果により、これまで扱ってきたコケ食昆虫(コバネガ科、シギアブ科、シリブトガガンボ亜科)の生活史や行動が詳細に分かってきた。
KAKENHI-PROJECT-14J00160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J00160
リンク情報とWebデータの半構造性を融合した高品質コンテンツ・マイニング
多量な同系統文書群は高品質であるというヒューリスティックに基づき,Web上の高品質文書群を効率良く発見するための研究を行なっている.本年度は,リンク構造と構造類似性で特徴付けられる「シリーズ型文書群」という概念を提案し,そのような文書群を効率的に発見収集するWebロボットの実装を行ない,その収集効率を定量的に評価した.また,シリーズ型文書群に対するメタデータを自動的に構成する手法を開発した.これとは別に,同系統文書群の発見について,部分文字列の出現頻度に着目した「部分文字列増幅法」を開発した.このアルゴリズムは,入力サイズの線形時間で動作し,類似構造を持つ文書群を網羅的に検出すると同時にクラスタリングも行なうものである.本年度は,Web上半構造化データからの高品質同系統データ抽出について,HTMLファイルに繰り返し現われる特徴的なタグ・パターンの抽出法の開発と,コンテンツ収集を動的に制御できる目的指向Webロボット開発に重点を置き研究を進めた.前者については,部分文字列の出現頻度だけで重要パターンを高精度で抽出する部分文字列増幅法という新しい手法が開発できた.後者については,従来ターゲットとしてきた大学のシラバスについては1万件以上の収集が達成できた.さらにシラバス以外の一般的な「シリーズ型Web文書群」についてのWebロボット開発の目処がたち,その文書群に対するメタデータの自動生成手法を構築できた.多量な同系統文書群は高品質であるというヒューリスティックに基づき,Web上の高品質文書群を効率良く発見するための研究を行なっている.本年度は,リンク構造と構造類似性で特徴付けられる「シリーズ型文書群」という概念を提案し,そのような文書群を効率的に発見収集するWebロボットの実装を行ない,その収集効率を定量的に評価した.また,シリーズ型文書群に対するメタデータを自動的に構成する手法を開発した.これとは別に,同系統文書群の発見について,部分文字列の出現頻度に着目した「部分文字列増幅法」を開発した.このアルゴリズムは,入力サイズの線形時間で動作し,類似構造を持つ文書群を網羅的に検出すると同時にクラスタリングも行なうものである.本年度は,Web上半構造化データからの高品質同系統データ抽出について,HTMLファイルに繰り返し現われる特徴的なタグ・パターンの抽出法の開発と,コンテンツ収集を動的に制御できる目的指向Webロボット開発に重点を置き研究を進めた.前者については,部分文字列の出現頻度だけで重要パターンを高精度で抽出する部分文字列増幅法という新しい手法が開発できた.後者については,従来ターゲットとしてきた大学のシラバスについては1万件以上の収集が達成できた.さらにシラバス以外の一般的な「シリーズ型Web文書群」についてのWebロボット開発の目処がたち,その文書群に対するメタデータの自動生成手法を構築できた.
KAKENHI-PROJECT-15017269
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15017269
単純ヘルペウイルスの病原性の分子生物学的解析
1.単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)深山株に属する5種類の細胞変性効果(CPE)変異株は、近縁した遺伝的背景とマウスに対する相互に異なる神経毒性を有する。これらのCPE変異株のゲノムDNAを、制限酵素、BamHIによる切断、およびアガロ-スゲル電気泳動ののち、EtBr染色法とサザンハイブリダイゼ-ション法によって検出し、比較検討した。その結果、CPE変異株間で、多数の制限酵素切断断片(BamHI-B,D,E,K,N,R,S,X,Y)に相違を見出したが、これらの相違は、各CPE変異株の神経毒性の強弱とは無関係であると推定された。2.深山・αV、βV両株は、深山CPE変異株の一つである-GCr株に由来するin vitro長期持続感染株である。両持続感染株のゲノムDNAについて、上記と同様の制限酵素切断分析を行い、深山・-GCr株を含むCPE変異株のゲノムDNAの分析結果と比較検討した。その結果、CPE変異株のBamHI-Z断片は、1.841.99kilobase pairs(kbp)であったのに対し、両持続感染株のBamHI-Z断片は、1.78kbpに短縮されていた。3.HSV-1の神経毒性の差異に関係する因子を見出す目的で、巨大DNA分子の分析に適したフィ-ルドインバ-ジョンゲル電気泳動法によって、強毒F株と弱毒深山・-GCr株の各ウイルス粒子DNAを分析した。その結果、弱毒株のウイルス粒子DNAにのみ、ウイルスゲノムDNAよりも泳動距離の僅かに長いDNAが含まれていた。4.マウスを用いたHSV-1鼻腔内接種実験により、その潜伏感染について、以下の事実が明らかとなった。弱毒株、およびn-butyrateの利用は潜伏感染の研究に有用であった。2種類のHSV-1株を高率に同一の神経節に潜伏させることが可能であった。潜伏の感染能の低いHSV-1株は、潜伏感染能の高いHSV-1株と比べて、急性感染期の三叉神経節におけるウイルス感染価、およびヒトneuroblastoma cellに対する感染能が著しく低下していた。1.単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)深山株に属する5種類の細胞変性効果(CPE)変異株は、近縁した遺伝的背景とマウスに対する相互に異なる神経毒性を有する。これらのCPE変異株のゲノムDNAを、制限酵素、BamHIによる切断、およびアガロ-スゲル電気泳動ののち、EtBr染色法とサザンハイブリダイゼ-ション法によって検出し、比較検討した。その結果、CPE変異株間で、多数の制限酵素切断断片(BamHI-B,D,E,K,N,R,S,X,Y)に相違を見出したが、これらの相違は、各CPE変異株の神経毒性の強弱とは無関係であると推定された。2.深山・αV、βV両株は、深山CPE変異株の一つである-GCr株に由来するin vitro長期持続感染株である。両持続感染株のゲノムDNAについて、上記と同様の制限酵素切断分析を行い、深山・-GCr株を含むCPE変異株のゲノムDNAの分析結果と比較検討した。その結果、CPE変異株のBamHI-Z断片は、1.841.99kilobase pairs(kbp)であったのに対し、両持続感染株のBamHI-Z断片は、1.78kbpに短縮されていた。3.HSV-1の神経毒性の差異に関係する因子を見出す目的で、巨大DNA分子の分析に適したフィ-ルドインバ-ジョンゲル電気泳動法によって、強毒F株と弱毒深山・-GCr株の各ウイルス粒子DNAを分析した。その結果、弱毒株のウイルス粒子DNAにのみ、ウイルスゲノムDNAよりも泳動距離の僅かに長いDNAが含まれていた。4.マウスを用いたHSV-1鼻腔内接種実験により、その潜伏感染について、以下の事実が明らかとなった。弱毒株、およびn-butyrateの利用は潜伏感染の研究に有用であった。2種類のHSV-1株を高率に同一の神経節に潜伏させることが可能であった。潜伏の感染能の低いHSV-1株は、潜伏感染能の高いHSV-1株と比べて、急性感染期の三叉神経節におけるウイルス感染価、およびヒトneuroblastoma cellに対する感染能が著しく低下していた。1.n-butyrateを作用させることによって、マウス三叉神経節内に潜伏感染中の深山-GCr株(通常の方法では活性化効率不良なウイルス株)を活性化効率が良好なウイルス株と同程度まで活性化することができた。2.F株、およびn-butyrateにより促進された深山-GCr株の再活性化を遺伝子組換えマウスインターフェロン-βにより抑制することができた。潜伏感染ウイルスの活性化を抑制するその他の因子を見いだすために、弱毒SKO・Syn-株接種24時間後、潜伏感染効率の異なる2種類の強毒株を後接種し、SKO-Syn-株の潜伏感染の成立および活性化の抑制について検討した。その結果、次の事実が明かとなった。(1)強毒株の後接種は、SKO・Syn-株の潜伏感染に余り影響を与えない。(2)弱毒株の前接種は、強毒株接種後のマウスの死亡率を低下させることによって、強毒株の潜伏感染の検討を行い易くした。(3)SKO・Syn-
KAKENHI-PROJECT-63570211
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570211
単純ヘルペウイルスの病原性の分子生物学的解析
株とF株の組合せにおいては、2種類のウイルスが高率に同一の神経節に潜伏するという従来の学説と相反する興味ある成績を得た。(3)ウイルスの神経毒力および潜伏感染能に関連する遺伝子群をウイルスゲノム上に位置づけるために2種類の方法を用いて検討をおこなった。まず、全ウイルスゲノムとウイルスDNAのクローン化断片をco-transfectionする方法では、HSV-1の株間組換え株の選抜が技術的に困難であることがわかった。次に、古典的組換えを用いる方法では、昭和63年度において、制限酵素切断処理ウイルスDNAの電気泳動バターンに基づき、HSV-1とHSV-2の間の型間組換え株を選抜した。平成元年度は、神経毒力および潜伏感染能に差を有する2種類のHSV-1株からそれぞれ作成した型間組換え株を用いてHSV-1の株間組換え株を作成し、その神経毒力および潜伏感染能を測定する予定である。(4)ウイルスの神経毒性を検討する基礎として、マウスにおけるウイルス増殖部位を酵素抗体法によって確認した。(1)単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)深山株に属する5種類の細胞変性効果(CPE)変異株は、近緑した遺伝的背景とマウスに対する相互に異なる神経毒性を有する。これらのCPE変異株のゲノムDNAを、制限酵素、BamHIによる切断、およびアガロ-スゲル電気泳動ののち、EtBr染色法とサザンハイブリダイゼ-ション法によって検出し、比較検討した。その結果、CPE変異株間で、多数の制限酵素切断断片(BamHI-B、D、E、K、N、R、S、X、Y)に相違を見出したが、これらの相違は、各CPE変異株の神経毒性の強弱とは無関係であると推定された。(2)深山・αV、βV両株は、深山CPE変異株の一つである-GCr株に由来するin vitro長期持続感染株である。両持続感染株のゲノムDNAについて、上記と同様の制限酵素切断分析を行い、深山・ーGCr株を含むCPE変異株のゲノムDNAの分析結果と比較・検討した。その結果、CPE変異株のBamHI-Z断片は、1.841.99kilobase pairs(kbp)であったのに対し、両持続感染株のBamHI-Z断片は1.78kbpに短縮されていた。(3)HSV-1の神経毒性の差異に関係する因子を見出す目的で、巨大DNA分子の分析に適したフィ-ルドインバ-ションゲル電気泳動法によって、強毒F株と弱毒深山・ーGCr株の各ウイルス粒子DNAを分析した。その結果、弱毒株のウイルス粒子DNAにのみ、ウイルスゲノムDNAよりも泳動距離の僅かに長いDNAが含まれていた。(4)相互に異なる潜伏感染能を有する3種類の弱毒株、すなわち、SKO-1B株、深山・-GCr株、SKa株について、神経系培養細胞であるMGCおよびIMR-32細胞に対する感染能を測定した。その結果、潜伏感染能の最も低いSKa株の、神経系培養細胞に対する感染能は、SKO-B、深山・-GCr両株のそれと比べて低く(MGC細胞で各々1/11および1/12、IMR-32細胞で各々1/119および1/31)、各ウイルス株の潜伏感染能とその神経系細胞に対する感染能との間の因果関係が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-63570211
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570211
粘性流体の中の物体の運動の数学解析
無限にひろがる非圧縮粘性流体の中に剛体の障害物がある。物体の運動と流体の運動の相互作用の解析を目指して、物体が回転運動するときに、その外部領域でのNavier-Stokes流を考察する。本研究では、まず空間3次元の場合に定常解の存在と安定性を示し、定常解のまわりでの時間大域解の漸近挙動を求めた。また、時間周期解についても、同様なことを調べた。次に、定常解の空間無限遠での減衰構造と異方的な漸近形を求めた。さらに、空間2次元の場合の定常解の減衰構造も求めて、ストークスの逆理が物体の回転により解消されることを示した。3元空間にひろがる非圧縮粘性流体の中に剛体の障害物がある。この研究の目的は、物体の運動と流体の運動の相互作用の解析である。流体の運動はNavier-Stokes方程式により記述され、一方で剛体の運動は並進と回転に分解されて、それらは運動量と角運動量の保存則から導かれる運動方程式により記述される。この連成系の適切性と解の漸近挙動の詳細を明らかにする。無限にひろがる非圧縮粘性流体の中に剛体の障害物がある。物体の運動と流体の運動の相互作用の解析を目指して、物体が回転運動するときに、その外部領域でのNavier-Stokes流を考察する。本研究では、まず空間3次元の場合に定常解の存在と安定性を示し、定常解のまわりでの時間大域解の漸近挙動を求めた。また、時間周期解についても、同様なことを調べた。次に、定常解の空間無限遠での減衰構造と異方的な漸近形を求めた。さらに、空間2次元の場合の定常解の減衰構造も求めて、ストークスの逆理が物体の回転により解消されることを示した。3次元空間にひろがる非圧縮粘性流体の中に物体がある.研究目的は,物体の運動と流体の運動の相互作用の解析である.流体の運動はNavier-Stokes方程式により記述され,一方で剛体の運動は並進と回転に分解されて,それらは運動量と角運動量の保存則から導かれる微分方程式により記述される.本年度は特に,物体の運動が指定されていて,回転角速度が一定で並進はしない場合に,解の存在と性質,漸近挙動を詳しく調ベた.回転座標系により一定な外部領域での問題に書き直すとき,剛体の回転運動をあらわす非有界係数をもつ移流項が現れるが,これを粘性項からの摂動として扱うことはできない点が,この問題の最大の特徴である.まず,ローレンツ空間を本質的に用いることで,回転角速度と外力が小さいときに定常流を構成し,その空間無限遠での挙動を明らかにした.また,この挙動と方程式の線型部分が生成する半群の減衰評価を組み合わせて,定常流の安定性を示した.その際に,擾乱のルベーグ空間での減衰の速さも詳しく求めた.この減衰の速さは最適なものである.結果として,定常流に時間無限大で漸近して行く時間大域解の一意存在が証明された.さらに,今のところ,外部線型定常流だけに対してではあるが,回転の効果による空間無限遠での解の減衰構造の異方性をはじめて明らかにした.並進の効果による異方性wakeとしてよく知られていたが,回転の効果による異方性についての知見は非常に新しい.類似の異方性が非線型の流れや非定常の流れに対しても期待され,これは来年度の課題である.3次元空間にひろがる非圧縮粘性流体の中に剛体の障害物がある.この研究の目的は,物体の運動と流体の運動の相互作用の解析である.流体の運動はNavier-Stokes方程式により記述され,一方で剛体の運動は並進と回転に分解されて,それらは運動量と角運動量の保存則から導かれる微分方程式により記述される.本年度も引き続き,物体の運動が指定されていて回転角速度が一定で並進はしない場合に,解の存在,一意性,漸近挙動,漸近形を詳しく調べた.回転座標系により一定な外部領域での問題に書き直すとき,剛体の回転速度ベクトルを係数とする移流項が現れるが,その係数の非有界性により,この移流項を粘性項からの摂動として扱うことができない.この点が当問題の最大の特徴である.まず,この方程式の線型部分が生成する半群のLebesgue空間およびLorentz空間での減衰評価を導出した.これの第一の応用として,小さい定常解の安定性を証明した.次に,第二の応用として,小さい時間周期解を構成し,その安定性も示した.いずれの場合に対しても,擾乱の最適な減衰の速さを導いた.さらに,定常解の空間無限遠での減衰構造を求めた.回転の効果により引き起こされる異方的な漸近形を求めることを通して,解の形において回転軸が果たす重要な役割を明らかにした.まず,基本解の詳細な解析により線型定常解を空間無限遠で漸近展開して,その第一項と第二項を求めた.次に,その知見をもとにして,非線型定常解に対しても第一項を求めることができた.それは通常のNavier-Stokes方程式の回転軸対称な自己相似解であり,明示的な表示をもつものである.非圧縮粘性流体の中に流れを障害する剛体があるとして,この物体の運動と流体の運動の相互作用を解析することが目的である.
KAKENHI-PROJECT-19540170
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540170
粘性流体の中の物体の運動の数学解析
流体の運動を記述するのはNavier-Stokes方程式であり,剛体の運動を記述するのは運動量と角運動量の保存則から導かれる微分方程式である.まずは物体の運動が指定されている場合,特に一定な回転角速度で回転する場合の詳細な解析がこの研究の基盤となる.はじめに,線型初期値問題が生成する半群のLebesgue空間およびLorentz空間での減衰評価を導出し,これを用いて,非線型問題の小さい定常解の漸近安定性を示した.また,この結果の拡張として,小さい時間周期解の存在と漸近安定性も示した.次に,対応する定常問題の解の空間無限遠での漸近形を調べた.その解析を通して,回転の効果が導く流れの異方性と回転軸が果たす役割を明らかにした.線型の解に対しては,基本解の詳細な解析により空間無限遠での漸近展開を求めた.非線型の解に対しては,主要項が通常のNavier-Stokes方程式の回転軸対称な自已相似解であることを示した.以上の成果は空間3次元の問題に対してであるが,一連の研究の副産物として,空間2次元の定常問題については,障害物が静止しているよりも回転しているほうが解の減衰構造は良いことを明らかにした.これは2次元外部問題の新しい研究方向を開くものである.非圧縮粘性流体の中に流れを障害する物体があるとして,この物体の運動が流体の運動にどのような影響を与えるのかを調べる。この問題を外部領域の無限遠での解の減衰の構造と漸近形の解析を通して理解することを最終年度の目標とし,以下で述べるような成果を得た。まず3次元定常流に対して,物体の並進による航跡の存在は従来からよく知られていたが,本研究によってはじめて物体が回転するときの回転軸方向の果たす役割とそれに伴う流れの異方性が明らかとなった。特に非線型の解に対しては,回転軸対称な自己相似解が漸近展開の第1項となることを示した。次に2次元定常流に対して,基本解の詳細な解析により物体が回転する場合の減衰構造を導き,Stokesの逆理が物体の回転によって解消されることを明らかにした。このことは平面流の新しい理論構築の基礎となるものである。また,解の無限遠での漸近展開も行い,その第1項において回転の様相を見出すことにより,3次元との違いを示した。以上で述べたような3次元および2次元外部問題の解析により,物体から流体への作用についての知見を深めることができた。最後に,定常Stokes流の無限遠での減衰度(可積分性)とStokes半群の空間1階微分の長時間挙動(特に最適な長時間挙動を許すLebesgue空間の指数)の間に成り立つある種の関係を一般な非有界領域に対して導いた。さらにその系として,外部領域において知られていたStokes半群の時間についての減衰評価が最良であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-19540170
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540170
Tilt Training:神経調節性失神の新しい治療法の開発と病態機序解明
結果:1)薬物治療のみのHUTによる有効性は50%以下であったのに対し、orthostatic trainingの有効性は90%以上で有意に高かった。2)心拍変動解析の結果、orthostatic training後の立位早期においてL/H比(交感神経機能)亢進の有意な低下を認めた。HF比(副交感神経)はトレーニング前後で変化を認めなかった。3)平均9.5ヶ月の長期観察においてorthostatic self-training治療群では失神発作の再発は認めなかった。総括:orthostatic self-training治療は薬物治療に比し遥かに有効な治療法であり、長期観察においてもその有効性が確認された。本治療法は立位早期の交感神経機能の過剰な亢進を抑制することがその機序として考えられた。結果:1)薬物治療のみのHUTによる有効性は50%以下であったのに対し、orthostatic trainingの有効性は90%以上で有意に高かった。2)心拍変動解析の結果、orthostatic training後の立位早期においてL/H比(交感神経機能)亢進の有意な低下を認めた。HF比(副交感神経)はトレーニング前後で変化を認めなかった。3)平均9.5ヶ月の長期観察においてorthostatic self-training治療群では失神発作の再発は認めなかった。総括:orthostatic self-training治療は薬物治療に比し遥かに有効な治療法であり、長期観察においてもその有効性が確認された。本治療法は立位早期の交感神経機能の過剰な亢進を抑制することがその機序として考えられた。研究の背景:Head-up tilt試験で誘発される神経調節性失神の非薬物治療として、患者自身が自宅で施行できるtilt trainingの有用性が最近報告されている。しかしながら、このtilt trainingが有効である機序やtilt trainingの失神予防に必要な毎日のトレーニング回数等に関する研究はなされていない。研究の目的:本研究の目的は、tilt trainingによる神経調節性失神予防のためのtilt trainingの必要量を決定し、その予防機序を検討することである。対象および方法:失神を主訴に来院しhead-up tilt試験(80度、30分)で神経調節性失神と診断された24名(男12名、女12名;平均年令34+/-20歳)を対象とした。ホルター心電図装着後、control head-up tilt試験での平均失神発生時間はtilt開始後16+/-10分であつた。失神のタイプは心抑制型4名、血管抑制型7名、混合型13名であった。また、2名で失神の誘発にisoproterenolの持続点滴を要した。全例に一日2回のtilt training(orthostatic training)を自宅で施行し日記を記録していただいた。結果:平均3週間後に施行したhead-up tilt試験では24名中22名に失神の誘発を認めなくなった。2名で失神が誘発されたが、失神発生時間はcontrol tiltに比し著明に延長していた。日記による自宅でのトレーニングでは、開始直後は平均8分の起立時間であつたが徐々に延長し平均11日目には30分間の起立が可能となつた。24名中12名にtilt trainingを毎日1回、残り12名にtilt trainingを毎日2回施行し失神の再発の有無をfollow中であるが、いずれも失神の再発は現在までみとめていない。結論:神経調節性失神の治療にtilt trainingは非常に有効かつ安全な治療法である。一日1回自宅での30分間のtrainingで失神の予防は可能である。予防機序はホルター心電図によるtilt中の心拍変動解析で検討中である。背景:神経調節性失神(Neurocardiogenic Syncope)に対する治療は薬物治療とペースメーカ治療があり、薬物治療が主流であるもののその有効性は低い。最近、非薬物治療としてTilt Trainingが有効であるとの報告がなされている。しかし、このトレーニングの長期有効性とその機序については不明である。対象・方法:Head-up Tilt(80度、30分:HUT)試験で神経調節性失神と診断された連続36名。一日2回のOrthostatic Self-Trainingを施行し3-4週後に再度HUTで短期有効性を確認した後、1日2回(30分)のトレーニング群(n=12)と一日1回のトレーニング群(n=24)に分け長期有効性(6ヶ月)を検討した。また、12名においてはトレーニング効果の機序を検討するため、トレーニング前後のHUT試験時にホルター心電図を施行し、心拍変動解析による自律神経機能の変化について検討した。結果:一日2回あるいは1回30分のトレーニング群において、臨床的にいずれの群でも失神の再発を認めなかつた。トレーニング後のHUTではupright直後の心拍数の増加の有意な抑制がみられ、心拍変動解析でもtilt直後のL/H比の有意な抑制効果がみられた。総括:Orthostatic Self-Trainingは神経調節性失神に対する優れた治療法であり、一日1回のトレーニングのみで失神予防効果は長期に渡り有効である。このトレーニングの有効性の機序は立位時の交感神経機能を有意に抑制することが、そのメカニズムの一つと考えられた。結果:1)薬物治療のみのHUTによる有効性は50%以下であったのに対し、orthostatic self-trainingの有効性は90%以上で有意に高かった。
KAKENHI-PROJECT-12670713
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12670713
Tilt Training:神経調節性失神の新しい治療法の開発と病態機序解明
2)心拍変動解析の結果、orthostatic training後の立位早期においてL/H比(交感神経機能)亢進の有意な低下を認めた。HF比(副交感神経)はトレーニング前後で変化を認めなかった。3)平均9.5ヶ月の長期観察においてorthostatic training治療群では失神発作の再発は認めなかった。総括:orthostatic self-training治療は薬物治療に比し遥かに有効な治療法であり、長期観察においてもその有効性が確認された。本治療法は立位早期の交感神経機能の過剰な亢進を抑制することがその機序として考えられた。
KAKENHI-PROJECT-12670713
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12670713
PIK3C3の生理的意義の解明
本研究の目的はPIK3C3の生理機能についてT細胞特異的PIK3C3欠損マウス(KOマウス)を解析することにより明らかにすることである。KOマウスは自己免疫疾患を発症し、多臓器にわたる炎症性細胞浸潤を認め、最終的には重篤な気管支肺炎により死亡することが明らかになった。また、これらの原因としてはPIK3C3欠損ナイーブT細胞のTh17細胞への分化亢進によるIL-17濃度の顕著な上昇が起因となっていることを明らかにした。以上の結果から未だ不明点が多いPIK3C3の生理機能および多様な自己免疫疾患発症機序の一端を解明する知見を得られた。本研究の目的はPIK3C3の生理機能についてT細胞特異的遺伝子欠損マウス(KOマウス)を解析することにより明らかにすることである。KOマウスは4ヶ月齢から脱肛および、生存率の低下を認め、1年で80%のマウスが死亡した。当初、潰瘍性大腸炎に着目して研究を行っていたが、肺や腎臓、肝臓にも炎症性細胞浸潤を認め、全身性炎症が引込されていることが明らかになった。潰瘍性大腸炎が自己免疫疾患に分類されることから自己免疫疾患により全身性炎症が惹起されている可能性を考え、抗核抗体および糸球体へのIgGの沈着を解析した。血清中の抗核抗体の有無を免疫染色により解析し、抗核抗体が優位に増加していること、自己免疫疾患の分類される急性腎炎について糸球体へのIgGの沈着を指標に解析した結果、IgGの沈着があることを明らかにし、自己免疫疾患が引き起こされている事が示唆された。これらの原因を明らかにするためにT細胞やMEFを用いて根源的な細胞応答の解析を行った。このマウスは胸腺細胞や末梢T細胞の顕著な減少を認めた為、T細胞を用いた[3H]thymidineの取り込みやMEFを用いた増殖アッセイを行うことにより、PIK3C3は細胞増殖に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、末梢T細胞の活性化亢進および血清中のIL-17濃度が有意な上昇をしていたことから、ナイーブT細胞を用いた分化アッセイを行い、PIK3C3欠損細胞でTh17細胞分化が亢進することを明らかにした。以上の結果からKOマウスはTh17分化およびIL-17A産生が亢進し、自己免疫疾患による全身性炎症を発症し、最終的には重篤な気管支肺炎を起こし死に至ることが明らかになった。本研究結果により、未だ不明な点が多いPIK3C3の生理機能および多様な自己免疫疾患発症機序の一端を解明する分子病態の知見が得られたと考えている。本研究の目的はPIK3C3の生理機能についてT細胞特異的PIK3C3欠損マウス(KOマウス)を解析することにより明らかにすることである。KOマウスは自己免疫疾患を発症し、多臓器にわたる炎症性細胞浸潤を認め、最終的には重篤な気管支肺炎により死亡することが明らかになった。また、これらの原因としてはPIK3C3欠損ナイーブT細胞のTh17細胞への分化亢進によるIL-17濃度の顕著な上昇が起因となっていることを明らかにした。以上の結果から未だ不明点が多いPIK3C3の生理機能および多様な自己免疫疾患発症機序の一端を解明する知見を得られた。イノシトールリン脂質は、タンパク質の局在や活性の制御因子で、細胞増殖、アポトーシス、細胞運動などを制御する。ホスファチジルイノシトール3リン酸(PI3P)はこれらの細胞応答を支えるオートファジー、栄養シグナル伝達、小胞輸送などに関与するイノシトールリン脂質分子種であるが、動物個体内での役割はほとんど明らかになっていない。申請者は、PI3P生成酵素であるPIK3C3の遺伝子をCreリコンビナーゼの作用により欠損する遺伝子改変マウスを独自に樹立した。本研究ではmPIK3C3欠損線維芽細胞とT細胞特異的mPIK3C3欠損マウスの表現型を解析することで、未だ不明なmPIK3C3の生理機能について、世界に先駆けて解明することが目的である。最終目標は依然として不明点が多いmPIK3C3の生理機能および機能制御の解明にある。特に「増殖」と「T細胞分化」でのPIK3C3の機能を実証する。当該年度はB6へのバックスクロスを進めつつ、T細胞特異的mPIK3C3欠損マウスを用いた細胞増殖への寄与の解析、さらに、MEFを用いた細胞応答解析を行い、病態解析への足がかりを作ることを目指した。まず、細胞増殖はMEFおよびT細胞において、顕著に抑制されることが明らかになった。また、アポトーシス誘導剤を用いた解析からは有意な差は認められなかった。機序のひとつとしてTCR刺激を介したAktのリン酸化が抑制されていた。これら結果からPIK3C3が細胞増殖を正に制御していることを示唆しているものと考えられる。B6へのバッククロスは終了し、病態への解析を進めているところであるが、当初想定していた腸炎のみならず、多臓器にわたる炎症が認められた。これらの炎症が自己免疫疾患である可能性を示唆する結果を得ており、解析中である。これらの解析を通じて、自己免疫疾患発症機序の一端を解明できればと考えている。初年度に計画した研究計画は終了しており、すでに次年度に計画した研究を引き続き行っている。研究予定通りに進んでいるが、予定計画の一部に記載したアレルギー関係の実験に関しては行わない事とする。
KAKENHI-PROJECT-24770115
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24770115
PIK3C3の生理的意義の解明
何故なら、Th分化アッセイおよび血中のサイトカイン濃度の測定結果からアレルギー疾患に関与する可能性が極めて低い事が明らかになったからである。一方、IL17A産生亢進とTh17細胞への分化亢進は認めたことから、今後は自己免疫疾患の発症機序についてTh17細胞への分化亢進の原因を明らかにする研究をメインに行う予定である。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24770115
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24770115
原始太陽系と惑星の起源に関する総括的研究
原始太陽系と惑星の起源に関し、i)太陽系星雲の起源と変遷、ii)巨大惑星の起源と進化、iii)隕石の起源と母天体、iv)地球型惑星の起源と構造、v)惑星の大気の起源と変遷、vi)太陽系の起源にかかわる惑星探査の基礎、の6班を構成し、本重点研究の第3年度として総括的研究を推進した。本年度は特に本研究の最終年度にあたることから、領域内の研究活動の有機的な情報交換と互いの協力の円滑化及び研究とりまとめの方向ずけとに重点がおかれた。総括班会は2回開催され、全般にわたる計画及び研究成果の評価、検討が行われた。また領域全体の連携の調整をはかりワークショップの企画を行った。更に本重点領域の研究成果のとりまとめの方針を策定し、その計画を定めた。各班が相互に横断的に関連するテーマについて以下の5つのワークショップを開催し広い領域にわたる本研究の有機的なつながりが推進され、大きな成果をあげた。1)隕石と太陽系の起源2)太陽系形成時の電磁環境3)惑星の起源と惑星探査4)太陽系の起源ーSolar Nebulaを中心としてー5)彗星の起源本重点領域研究班は、それぞれの課題に対して所期の成果をあげている。これらを総括的に見ると、太陽系と惑星の起源にかかわる地上からの赤外、電波による観測や隕石の物理化学的分析と再現実験、更に地上における微惑星の衝突実験等と、これらをベースにした理論・モデ、またこれにもとずくコンピューターシミュレーション研究が極めて良いバランスで結合しており、本研究領域の目標とする研究は大きく進展した。原始太陽系と惑星の起源に関し、i)太陽系星雲の起源と変遷、ii)巨大惑星の起源と進化、iii)隕石の起源と母天体、iv)地球型惑星の起源と構造、v)惑星の大気の起源と変遷、vi)太陽系の起源にかかわる惑星探査の基礎、の6班を構成し、本重点研究の第3年度として総括的研究を推進した。本年度は特に本研究の最終年度にあたることから、領域内の研究活動の有機的な情報交換と互いの協力の円滑化及び研究とりまとめの方向ずけとに重点がおかれた。総括班会は2回開催され、全般にわたる計画及び研究成果の評価、検討が行われた。また領域全体の連携の調整をはかりワークショップの企画を行った。更に本重点領域の研究成果のとりまとめの方針を策定し、その計画を定めた。各班が相互に横断的に関連するテーマについて以下の5つのワークショップを開催し広い領域にわたる本研究の有機的なつながりが推進され、大きな成果をあげた。1)隕石と太陽系の起源2)太陽系形成時の電磁環境3)惑星の起源と惑星探査4)太陽系の起源ーSolar Nebulaを中心としてー5)彗星の起源本重点領域研究班は、それぞれの課題に対して所期の成果をあげている。これらを総括的に見ると、太陽系と惑星の起源にかかわる地上からの赤外、電波による観測や隕石の物理化学的分析と再現実験、更に地上における微惑星の衝突実験等と、これらをベースにした理論・モデ、またこれにもとずくコンピューターシミュレーション研究が極めて良いバランスで結合しており、本研究領域の目標とする研究は大きく進展した。
KAKENHI-PROJECT-01611001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01611001
フラーレン生成機構の研究、特にStone-Wales転移の触媒探索
フラーレン生成機構の解明は、フラーレン科学における最も困難な未解決問題の一つであると同時に、フラーレン炭素の工業的応用を開発するための必須要件である生産コストの引き下げを実現するための手がかりとして重要である。鋭意研究の結果、本研究費受領期間内に問題を解決し、その結果として新規なフラーレン製造法を2通り提案することができた。出発点は中国雲南省で産出したある瀝青炭試料であった。この中には高濃度のC_<60>/C_<70>が含まれ(発掘時濃度推定値0.3%)、表面が衝撃波に曝されたことを示す証拠が3種類見出した。そのうち最も強力な証拠は煤の超微小一次粒子(直径約10nm)が大量に存在することを示すTEM写真である。これにヒントを得て高純度試料が容易に入手できるカーボンブラックを煤のモデルとして用い、これに対する超高速加熱実験を行った。実験上の都合により衝撃波を発生する代わりに高密度電子線を照射し、一次粒子が迅速に玉葱状多層フラーレンに変化することを見出した。さらに多層フラーレン構造が三次元螺旋中間体粒子を経由して生成することに気がつき、また螺旋-玉葱変換が可逆的に起こる様子を観測することができた。三次元螺旋体のモデルを考案し、その分子モデルの化学シミュレーション、また不連続体ながら数学モデルも創出した。これらの結果から多層フラーレンの雪達磨式螺旋成長機構を導いた。これらの研究の結末としてカーボンブラック製造装置(超高速乱流高熱炎に炭化水素系原料を噴射し極端時間不完全燃焼させる)をそのまま使ってC_<60>および2ないし3層ナノ玉葱状フラーレン粒子を製造する方法を着想した。もう一つのC_<60>新製造法は、当然思いつくように、炭素に対する衝撃波照射である。原料炭素として石炭を用いれば、最も安価なC_<60>製造法となるであろう。衝撃波発生方法としては火薬の制御爆発(Cntrolled detonation)が便利であろう。基礎実験を行うことが必要であるが、衝撃管や衝撃板法を用いる予備実験は既に行われていて、有望な結果が得られている。この方法は化石燃料の使用削減(CO_2抑制)、軍事用火薬の平和目的利用として価値がある。フラーレン生成機構の解明は、フラーレン科学における最も困難な未解決問題の一つであると同時に、フラーレン炭素の工業的応用を開発するための必須要件である生産コストの引き下げを実現するための手がかりとして重要である。鋭意研究の結果、本研究費受領期間内に問題を解決し、その結果として新規なフラーレン製造法を2通り提案することができた。出発点は中国雲南省で産出したある瀝青炭試料であった。この中には高濃度のC_<60>/C_<70>が含まれ(発掘時濃度推定値0.3%)、表面が衝撃波に曝されたことを示す証拠が3種類見出した。そのうち最も強力な証拠は煤の超微小一次粒子(直径約10nm)が大量に存在することを示すTEM写真である。これにヒントを得て高純度試料が容易に入手できるカーボンブラックを煤のモデルとして用い、これに対する超高速加熱実験を行った。実験上の都合により衝撃波を発生する代わりに高密度電子線を照射し、一次粒子が迅速に玉葱状多層フラーレンに変化することを見出した。さらに多層フラーレン構造が三次元螺旋中間体粒子を経由して生成することに気がつき、また螺旋-玉葱変換が可逆的に起こる様子を観測することができた。三次元螺旋体のモデルを考案し、その分子モデルの化学シミュレーション、また不連続体ながら数学モデルも創出した。これらの結果から多層フラーレンの雪達磨式螺旋成長機構を導いた。これらの研究の結末としてカーボンブラック製造装置(超高速乱流高熱炎に炭化水素系原料を噴射し極端時間不完全燃焼させる)をそのまま使ってC_<60>および2ないし3層ナノ玉葱状フラーレン粒子を製造する方法を着想した。もう一つのC_<60>新製造法は、当然思いつくように、炭素に対する衝撃波照射である。原料炭素として石炭を用いれば、最も安価なC_<60>製造法となるであろう。衝撃波発生方法としては火薬の制御爆発(Cntrolled detonation)が便利であろう。基礎実験を行うことが必要であるが、衝撃管や衝撃板法を用いる予備実験は既に行われていて、有望な結果が得られている。この方法は化石燃料の使用削減(CO_2抑制)、軍事用火薬の平和目的利用として価値がある。本研究の目的はフラーレン科学における未解決問題中最も基本的で且つ最も困難とされている生成機構の解明であるが、既往の研究方法とは異なり未知の低温高選択性合成法の発見に焦点を当てる。その為に過去数年来天然フラーレンの探索を行ってきたが、今年度は予想外の展開を遂げることができた。既に平成10年度に中国雲南省昆明の西にある一平浪炭鉱から産出する瀝青炭中にC60とC70が異常に高濃度で含まれていることを確認していた。今年度は世界各地から60点に及ぶ石炭試料を収集してHPLC分析を行ったが一平浪の記録を越す例を見出すことはできなかった。秋に念願の一平浪現地調査を行ったが、炭鉱は現在操業中であるために入坑許可が得られず難航した。しかし雲南省石炭管理局と交渉して来年度から現地職員の協力を得て系統的な調査を始める見通しがついた。
KAKENHI-PROJECT-11165222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11165222
フラーレン生成機構の研究、特にStone-Wales転移の触媒探索
一方昆明の東には、西側とは異なり中生代畳紀を起源とする四川-雲南地質帯が広がり、少量ながら良質な石炭を産出する。昆明東約100キロにある師宗県の郷鎮炭鉱付近で採取した鉱石から巨大な多層炭素ナノチューブ、炭素ナノ粒子などを発見した。この鉱石は石炭を含む龍湛層最下部が玄武岩と接している部分の断層露頭から採取したもので、硫化鉄を主成分とし、炭素含量は約9%に過ぎない。TEM写真によると、ナノチューブ、ナノ粒子ともに数百nmの巨大サイズを持つものが多く、長い地質学的時間をかけてゆっくりと生長したことが伺われる。貧炭素鉱石中にナノチューブ、ナノ粒子生成過程の全貌解明は極めて困難であるが、少なくともある程度の高温が発生する要因を見出し、且つ固相における物質輸送の困難を説明すべく現地で予備調査を行った。詳細は試料分析結果が揃うのを待たねばならないが、玄武岩層が高温で溶融していた時期に石炭層を加熱した可能性が高い。また、露頭から採取した玄武岩片に光熱反応の痕跡が認められたことから、超臨界状態にある地下水が加熱源と触媒を含む物質移動媒体の役割を果たしていたと予想される。更なる調査とモデル実験が必要である。カーボンブラックへの高圧高電流密度電子線照射実験を行って、フラーレン生成機構に関する新事実を発見した。高エネルギー線照射によってまずカーボンブラックの微小粒子凝集構造が破壊されてナノメーターサイズの一次粒子が遊離するが、この際に一次粒子内部で黒鉛微結晶片のturbostratic集積と考えられていた乱れの大きな構造が、3次元的アルキメデス螺旋へと明瞭に変化する。更に照射を続けると3次元螺旋粒子は短時間で、よく知られた多層同心球構造(通称ロシア人形または炭素オニオン)へと変換する。螺旋中間体の発見は、単層、多層フラーレンおよび煤の生成を統一的に理解するための強い手がかりを与えた。すなわち、成長の初期に一度だけ螺旋が巻いた時点で螺旋→オニオン変換が起こると単層黒鉛型炭素ナノ粒子となり、徐冷によって単層フラーレン(C_<60>、C_<70>あるいは高級フラーレン)へと変化するが、これはむしろ起こりにくく、一般には巨大な3次元螺旋一次粒子への前駆体へと、急速に一次粒子が成長すると考えられる。カーボンブラックのように、燃料過剰供給条件下高温で成長核と炭素小クラスターが同時に大量に生成しつづける場合には、一回螺旋の閉環速度に比べて螺旋成長速度が大きすぎると予想されるが、事実カーボンブラック製品には単層フラーレンは有意な量で含まれない。アーク放電法および燃焼法(ベンゼンとアルゴンなどの低圧予混合ガスの層流炎高温燃焼)でC60などの単層フラーレンが最高20%の収率で生成するのは拡散律速条件下で螺旋成長に必要な炭素小クラスターの供給が遅いためと解釈することができよう。本年度は上に述べた新しい発見以外に過去2年に亘って行ったフラーレン生成機構研究のための基礎データとしてC100までの高級単層フラーレンの各温度における生成自由エネルギーの計算結果を纏めた(11研究発表参照)。
KAKENHI-PROJECT-11165222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11165222
困難さを抱えた若者を対象とした移行支援プログラムの日本版質的評価基の開発
CARFの本社においてCEOよりCARFInternational2016年度版の翻訳を認められた。里親などのトラウマを受けた子供を養育している施設への配布を認められた。翻訳を行い、日本文化や日本の制度と合致しているか検討を重ねた。その結果、世界的に活用されている点、制度が違っても支障がない点から大きな変更点はないまま日本語版とした。本年度は、若者の移行支援プログラムの日本版質的評価基準開発の最大の参考資料となるCARF Stannderdsの翻訳の許可を正式に得るために、アリゾナ州ツーソンの本社にてCEOと面会して、研究計画の説明、日本版が完成した後の応用について説明を行った。また、これまでの研究者の里親たちへのインタビューおよび研究者が主催する、メンタルサポートグループでの実践との比較検討において、CARF Standerdが大部分活用されることがあっても無料で、日本の移行支援サービスの質的評価に使用することにも同意が得られた。CARFStannderdからは、次のものを参考にすることとなった。1Community Transition 2Congregate Care 3Foster Care 4Group Home Care。非常に膨大な翻訳となるため、業者に委託して段階的に翻訳をすすめつつ、里親インタビューのデータ分析も同時進行で進め、比較検討の準備を進めている。また、地域の若者支援の実態調査も学生とともに行い(別の研究プロジェクトとして)、検討資料として使用する予定である。今後は日本のグループホームの視察を行い、インタビューを実施する必要もある。日本のグループホームは、小規模養護施設として急速に増えてきているが、米国とは職員配置や生活環境などに違いがあることも考えられ実際に視察ができるよう、近隣の養護施設との連携を図っている。本年度はCARF Stannderdsの翻訳を進めた。予定している翻訳部分の総単語数78.375の45%の翻訳を終了した。その翻訳内容を米国フロリダ州タンパで行われた「29th Annual Research & Policy Conference on Child, Adolescent, and Young Adult Behavioral Health」で、ほかの研究テーマで発表した際に、CARFTampa支所の子どものメンタルヘルス担当者と会議をもった。リバース訳は時間的にも経済的にも不可能な分量であるため、英語によって日本語版の翻訳内容の妥当性を確認した。また、翻訳内容のはじめに、グループホーム、里親、集団ケアの評価内容について、マニュアルのかつ抱擁方法についても確認することができた。翻訳自体は、翻訳会社の依頼して、研究者がその内容を英文・日本文の比較をして言葉の修正などを行ってきたので、時間がかかりやや遅れてはいるが、リバース翻訳ができないことに対して、実際に世界で使われている認証基準の内容を直接確認して、翻訳の妥当性を保つことができたため。これまでの16歳以上の虐待被害者の移行支援を行う上でよい苦情の困難さについて全国調査を実施してきた。その結果、養育者および支援者に対するトラウマとトラウマによる問題とその対応について新プログラムの開発の必要性が示唆された。プログラム導入前に内容の質の保障のための基準を作成することが本研究の目的であった。これまで米国の移行支援学会に数回出席する機会があり、そこでヘルスケアの認証組織であるCARF Internationalの子ども若者部門の認証基準の部分的翻訳が妥当と考えた。1年目、CARFInternational本社を訪問してCEO DR.Darren出版責任者Dr.Shelly子ども若者部門担当者に研究の目的と活用方法について説明を行った(事前に研究計画を英訳して送付している)約1時間半の質問を受けて、営利目的ではないこと、貢献度、活用の可能性が高いことを評価されて、日本語翻訳の許可と、関係者への無償配布の許可を得ることができた。1ー3年目は、プロの翻訳→花田が用語や表現のチェック→米国の責任者への確認を繰り返して翻訳を終えた。2016年版の翻訳と内容の妥当性について国内で検討した。里親のサポートについての認証内容については、沖縄県里親会、長崎の集団ケア、グループホームの協力の下で検討した。集団活動、ディケアなど我々のボランティアグループ活動に関連する内容はグループ内の関係者と検討した。CDROM版のCARFInternational 2016年度版日本語バージョンとした。それをおよび、これまでの調査で協力を得た里親やグループホームなどに送付した。CARF本部にも送付をして承認された。CARFの本社においてCEOよりCARFInternational2016年度版の翻訳を認められた。里親などのトラウマを受けた子供を養育している施設への配布を認められた。翻訳を行い、日本文化や日本の制度と合致しているか検討を重ねた。その結果、世界的に活用されている点、制度が違っても支障がない点から大きな変更点はないまま日本語版とした。遅れている最大の理由は、共同研究者が翻訳予定をであったが、専門性が高く医療・福祉・心理・コミュニティと多岐にわたり、翻訳の量も予想をはるかに超えた領であったことで業者に委託することで、質の担保を取ることにし手共同研究者ではなくなったことが大きい。予算上、本助成金以外の研究費も投入しているがすべての翻訳は最終年度にかかる可能性がある。翻訳が終了した部分から比較検討を始める予定である。しかし、CARFとの話し合いの中で、グループホームやコミュニティケアの質的評価基準も作成することにしたことで、日本のグループホームとのコンタクトが順調にとれているため、予定外に進んでいる準備状態である。
KAKENHI-PROJECT-26671036
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26671036
困難さを抱えた若者を対象とした移行支援プログラムの日本版質的評価基の開発
次年度は、残りの100.000ワードの翻訳を終了させて、装丁を整えて里親(ファミリーホームを含む)、グループホーム、集団ケアのケアや支援の評価基準として、このCARF Standrdsが有効であるか、修正点はないか、使い方がわかりやすかなど汎用性について、当事者との検討を実施する。実施予定地は、沖縄〔里親)、長崎(集団ケア)グループホーム(東京)の予定である。すでに沖縄の里親ファミリーホームとは、日程調整済みである。児童精神看護学今後は、翻訳を進めていくこと、できた部分からすでにあるデータとの比較、グループホームなどの訪問をして関係性を構築することが重要である。また、地域の若者支援のNPOなどとの連携を深めていくことも課題となっている。これらは、少しずつ進めているので、翻訳したものをともに検討していくことで日本にマッチした評価基準ができると考える。閉鎖的な施設や里親との関係形成にさらに尽力していく必要がある。
KAKENHI-PROJECT-26671036
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26671036
非弾性電子トンネル分光による三次元元素イメージング
(1)STM-IETSの計測にとって理想的な欠陥の少ない広いテラスをもったアルカンチオール自己組織化単分子膜(Self-assembledmonolayer: SAM)が作製できるようになり(2)このSAMに対して,微分コンダクタンスの二次元像を安定して計測できるようになった.装置改良と並行して,これまで計測してきたIETSの実験結果,新しく取得した赤外分光のデータ,密度汎関数法による理論的研究をもとに,新しい視点から非弾性トンネル分光に関する研究をまとめProgress in Surface Scienceにおいて報告した.表面上の分子に対する非弾性電子トンネル過程の研究と関連して,ナノデバイス系においても非弾性電子トンネル過程が発現し,伝導コンダクタンスに影響を与える事を見出した.本年度は、東京工業大学から金沢大学への研究拠点の移動にともない、使用する極低温超高真空対応走査型トンネル顕微鏡が変わったので、顕微鏡のヘッド部分および超高真空システムを、本研究がおこなえるように改良した。ヘッドの改良においては、トンネリングスペクトロスコピーにおけるトンネル電流の低ノイズ化、ヘッド部分の冷却効率の向上という二点に留意した。また、本年度使用した装置でも、昨年度使用した装置同様、超高真空中での清浄表面の作製ができるよう、アルゴンガススパッタリングと傍熱型ヒーターによるアニーリングを組み合わせた手法を組み込んだ。このようにして作製した金清浄表面をアルカンチオール溶液に浸漬させるという試料作製方法と、走査トンネル顕微鏡ヘッドの低ノイズ化改良により、アルカンチオール自己組織化単分子膜を再現性よく作製および観測できるようになった。ただし、本研究で必要となるアルカンチオール単分子膜に対する高分解能非弾性電子トンネル分光を行うためには、顕微鏡ヘッド部分の冷却効率の更なる向上が課題として残った。このような装置改良と並行して、既に計測してきた非弾性電子トンネル分光に対するデータに対する解釈を深めるため、補足となる赤外分光のデータを同一試料にたいして計測し、赤外分光と非弾性電子トンネル分光の差異を明らかにした。追加データを含めた実験結果と、非平衡グリーン関数と密度汎関数法を用いた理論的研究をもとに、これまでに報告してきた非弾性トンネル分光に関する研究を、他の研究グループの結果や他の手法による分光の結果と比較するという視点から総説としてまとめ、Progress in SurfaceScienceにおいて報告した。(1)STM-IETSの計測にとって理想的な欠陥の少ない広いテラスをもったアルカンチオール自己組織化単分子膜(Self-assembled monolayer: SAM)が作製できるようになり(2)このSAMに対して,微分コンダクタンスの二次元像を安定して計測できるようになった.装置改良と並行して,これまで計測してきたIETSの実験結果,新しく取得した赤外分光のデータ,密度汎関数法による理論的研究をもとに,新しい視点から非弾性トンネル分光に関する研究をまとめProgress in Surface Scienceにおいて報告した.表面上の分子に対する非弾性電子トンネル過程の研究と関連して,ナノデバイス系においても非弾性電子トンネル過程が発現し,伝導コンダクタンスに影響を与える事を見出した.本研究は、"非弾性電子トンネル分光(Inelastic Electron Tunneling Spectroscopy: IETS)による三次元元素イメージング"の確立を目的とする。IETSは、電子が分子をトンネルする際に、分子の振動モードを励起する過程であり、IETSを詳細に観測することにより、対象分子の元素分析が期待できる。平成23年度は、下記の四項目に関して研究を実施した。(1)超高真空中でのアルゴンガス・スパッタリングとシリコン通電加熱によるアニーリングを組み合わせた手法によりAu(111)清浄表面を作製する方法を確立した。Au(111)清浄表面に典型的な、ヘリングボーン構造が恒常的に確認できており、これにより短鎖のアルカンチオール分子の自己組織化単分子膜が作製できるようになる。(2)非常に微少なIET信号を検出するために、ノイズに対して強いロックインアンプと微少電流アンプを用いた、信号検出システムを構築した。今後ローパスフィルターを加えることにより、IETS信号マッピングが可能になる。(3)本研究は、走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope)を用いて、表面上の分子のIETS過程を調べることを最終目的とするが、STMと比べて実際のデバイスとしての応用が期待されるナノデバイス系においても、非弾性トンネル過程が発現することを見出し、その物理過程を詳細に調べた。(4)これまでに報告してきたアルカンチオール単分子膜に対するIETSの研究成果をレビュー論文としてまとめ投稿した(現在、査読中)。研究がおおむね順調に進展しているのは、信号強度の小さな非弾性トンネル信号を検出する測定システムを構築できたからである。また、三次元元素分析を行うためには、金属表面上の短鎖のアルカンチオール単分子膜が理想的な試料となるが、その作製に必須のAu(111)清浄表面の作製法を確立できたことも理由としてあげられる。更に、ナノメートルサイズの金属電極ギャップを利用したナノデバイス系においても、非弾性トンネル過程が発現することを見い出し、その物理過程に関する知見を深めることができたことも、研究が進展した点としてあげられる。研究成果発表に関しても、アルカンチオール単分子膜に対するSTM-IETSの実験結果を再検討し、密度汎関数法と非平衡グリーン関数を組み合わせた理論を用い、物理過程に関する解釈を深め、レビュー論文としてまとめており、順調にすすんでいる。次年度から金沢大学理工研究域に助教として移動するので、使える装置が変更するという事情から研究推進方法を変更した。当該年度は、試料作製と信号検出機構の構築に専念することとし、IETSに必須なSTMヘッド部分に関しては、次年度研究を実施する研究室の装置に合わせて、改良の程度を検討することとした。
KAKENHI-PROJECT-23710113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23710113
非弾性電子トンネル分光による三次元元素イメージング
特に、試料を4 K程度の極低温まで冷やすことができるか否かは、研究の成否を左右する重要なパラメータになるので、もちいる装置の特性を十分把握した後に、どのような改良を行うか決定する。本研究は、超高真空中で短鎖の自己組織化膜を作製することが重要となり、実際、当該年度は、そのような試料の作製法を確立した。今後用いる装置は、超高真空中で試料を作製するという点に関して十分な装備が整っており、当該年度で得たノウハウをそのまま継続して適応することが可能である。従って、次年度は、非弾性電子トンネル分光が行えるようなSTMヘッド部分の改良に注力し、実際のデータ測定およびそれを利用した三次元元素分析へとつなげていく。次年度からの所属機関変更に伴い、研究計画を変更した。当該年度は、試料作製と信号検出機構の構築に専念し、走査トンネル顕微鏡ヘッド部分の改良は、次年度使用する装置に合わせて行う事とした。具体的には、使用する装置の特性に合わせてSTMのヘッド部分を改良し、実際にIETSを行えるようにする。高精度にIETSを行うには、(1)極低温まで試料を冷やせるようにすること、および(2)低ノイズ環境でSTMを操作できるようにすることが重要である。(1)に関しては、ヘッド部分を小型化し熱容量を小さくする、極低温部との熱リンクを十分とれるようにする、高温部と熱的に十分絶縁させること等が必要な要素になる。さらに低温における測定時間を長くするためには、極低温部分(液体ヘリウムだめ)の体積を大きくすることが必要である。(2)の低ノイズ化に関しては、探針とピエゾ部分を小型化し、共振周波数を高くすることが有効である。以上にあげた高精度のIETSを行うために必要な要素を満たすように、ピエゾを購入し、探針部分を作製し、探針や試料を超高真空中で取り換えられるようなシステムを構築し、極低温部分と有効に熱リンクする機構を作製するために研究費を使う。実際に装置をくみ上げた後は、IETS測定に必須の液体ヘリウムを購入するために研究費を使う。
KAKENHI-PROJECT-23710113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23710113
熱中症リスク評価のための屋外長波放射と着衣のぬれを考慮した人体生理量予測モデル
芝生や路上で気候要素の垂直分布(50, 100, 150cm)の測定を行なった。50cmの気温と環境グローブ温(長波放射のみ考慮)は150cmよりも高いが,気温と環境グローブ温はほぼ等しいため,環境グローブ温の垂直分布は長波長放射よりも気温の影響が大きい。また吸汗速乾素材と綿素材の衣服が生理心理反応に及ぼす影響を評価するために被験者実験を行った。速乾素材の方が汗による着衣重量増加量は有意に少なかったが,平均皮膚温や不快感には有意な差が見られなかった。芝生や路上で気候要素の垂直分布(50, 100, 150cm)の測定を行なった。50cmの気温と環境グローブ温(長波放射のみ考慮)は150cmよりも高いが,気温と環境グローブ温はほぼ等しいため,環境グローブ温の垂直分布は長波長放射よりも気温の影響が大きい。また吸汗速乾素材と綿素材の衣服が生理心理反応に及ぼす影響を評価するために被験者実験を行った。速乾素材の方が汗による着衣重量増加量は有意に少なかったが,平均皮膚温や不快感には有意な差が見られなかった。屋外における日射作用温度を,長波長放射の影響である「環境作用温度」と着衣・皮膚表面で吸収される日射量の温度換算値の和として定義し,熱中症による事故が多く発生している路上や農場,運動場など地面特性や天空率の異なる様々な場所で環境作用温度の特性把握を試みた。平成22年度は,79月にかけて北海道大学構内で有色グローブ温度計による環境グローブ温度の実測を行った。測定項目は,黒色,白色グローブ温度,気温,相対湿度,風速,全天日射量,反射日射量である。測定場所は計11箇所であり,主な場所のアルベドと人体から見た天空面の形態係数は以下のとおりである:駐車場(アルベド0.11,形態係数0.27);土グラウンド(0.12,0.5);芝生(0.2,0.33);中庭(0.12,0.16);工学部屋上(0.19,0.5)など。熱中症の想定場所として路上,密集市街地の路上,運動上,農場/ゴルフ場,開放空間の5つに集約し,データの分析を行った。分析には,雨天日を除き気温が25°C以上のデータを使用した。分析の結果,気温と環境グローブ温には比例関係があり,芝生を除くと気温よりも環境グローブ温の方が高いことが示された。屋外の長波長放射熱の影響としてΔt_<rl>(=環境グローブ温-気温)を定義した。Δt_<rl>を想定場所別にみると,路上(密集市街地)0.88,運動場0.68,路上0.58,開放空間0.49,農場/ゴルフ場-0.22の順に低い値を示した。芝生(農場/ゴルフ場)では水分蒸発の影響によりΔt_<rl>の値が低くなったと考えられる。次に日射の影響を考慮した日射作用温度を用いて想定場所の比較検討を行った。アルベドのほぼ等しい運動場と路上(密集市街地)では,運動場の形態係数が大きいため,日射作用温度は運動場の方が高くなった。形態係数の等しい路上と農場/ゴルフ場を比較すると,農場/ゴルフ場の反射日射量が多いものの,Δt_<rl>は1°C程度小さいため全体としては路上の熱ストレスが大きいという結果を得た。屋外における日射作用温度を,長波長放射の影響である「環境作用温度」と着衣・皮膚表面で吸収される日射量の温度換算値の和として定義し,熱中症による事故が多く発生している路上や農場,運動場など地面特性や天空率の異なる様々な場所で環境作用温度の特性把握を試みた。平成23年度は,屋外熱環境要素の垂直分布(50,100,150cm),そして異なる地表面(屋上,路上,芝生)が人体への熱ストレスに及ぼす影響を評価する事を目的として,様々な環境で環境グローブ温度(環境作用温度として代用する)を実測し,日射作用温度,平均皮膚温を用いて評価した。屋上の気温,環境グローブ温の垂直分布を実測した結果,50cmにおいて気温,環境グローブ温共に150cmよりも高い値を示した。しかし915時の1時間平均値では,気温と環境グローブ温はほぼ等しい値を示していることから,環境グローブ温度の垂直分布は長波長放射の影響よりも気温の影響を大きく受けていることが示唆された。次に地表面別の実測結果を基に,代表日の日射作用温度,平均皮膚温の経時変化を試算した。芝生は環境グローブ温が低いが,アルベドの増加や風速の低下により日射受熱量が増加し,結果的に日射作用温度や平均皮膚温は路上や屋上とほぼ同じ値を示した。さらに本年度は,衣服の素材が着衣のぬれに及ぼす影響を把握するために2名の健康な成年男性を用いた自転車エルゴメーター運動による被験者実験を行った。100%綿Tシャツ・100%綿ズボン着用時(CE1)と100%ポリエステルTシャツ・60%綿/40%ポリエステル混紡ズボン着用時(CE2)で比較検討した。気温の変化に対する平均皮膚温の変化に有意な差は見られなかった。しかし発汗ぬれ率に対するぬれに伴う着衣重量の増加量は,ポリエステル着用時の方が有意に低い値を示した。
KAKENHI-PROJECT-22760434
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760434
熱中症リスク評価のための屋外長波放射と着衣のぬれを考慮した人体生理量予測モデル
このことからCE2の衣服では,蒸発した水分の一部は体温調節に寄与していないことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-22760434
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760434
高等教育に対する公的助成についての日米比較研究
日本では国立大学はもちろんのこと私立大学も公的助成を受けている。アメリカの高等教育と異なり、公的助成の方法は、主として機関援助の形をとる。これは、私大助成が本格化した1970年以降大きく変わっていない。この助成方法は、これまでしばしば指摘されたように政治的に決定され、それがこれまで適切であり、今後も現行のままでよいかという根拠はなにもない。高等教育に対する政府援助の方法と額は、科学的客観的に検討する必要がある。それには政府援助に関する理論的実証的な研究が有効である。公的補助に関して、政策を決定する場合、重要な基準は、効率、平等、公正と考えられる。本研究は、この3つの基準を念頭において、高等教育の公的助成を考えてきたつもりである。すなわち公正については、公的助成の負担者である納税者と受益者の関係を論じた。具体的には、租税の負担と高等教育を通じての公費の受益が、各所得階層で同程度かを計測した。この結果については、第一章でまとめた。第二に、高等教育に対する公的助成の一つの根拠は、平等、または機会均等であるが、日本の高等教育政策の中で、公的助成と機会均等とはどのような関係にあるのかを第二章で考察した。最後に効率については、検討すべき問題が多岐にわたるが、関連する問題として、教育と経済成長の問題を第三章で扱った。もしこの関係が因果関係であれば、公的助成は一つの根拠をもつと考えられる。日本では国立大学はもちろんのこと私立大学も公的助成を受けている。アメリカの高等教育と異なり、公的助成の方法は、主として機関援助の形をとる。これは、私大助成が本格化した1970年以降大きく変わっていない。この助成方法は、これまでしばしば指摘されたように政治的に決定され、それがこれまで適切であり、今後も現行のままでよいかという根拠はなにもない。高等教育に対する政府援助の方法と額は、科学的客観的に検討する必要がある。それには政府援助に関する理論的実証的な研究が有効である。公的補助に関して、政策を決定する場合、重要な基準は、効率、平等、公正と考えられる。本研究は、この3つの基準を念頭において、高等教育の公的助成を考えてきたつもりである。すなわち公正については、公的助成の負担者である納税者と受益者の関係を論じた。具体的には、租税の負担と高等教育を通じての公費の受益が、各所得階層で同程度かを計測した。この結果については、第一章でまとめた。第二に、高等教育に対する公的助成の一つの根拠は、平等、または機会均等であるが、日本の高等教育政策の中で、公的助成と機会均等とはどのような関係にあるのかを第二章で考察した。最後に効率については、検討すべき問題が多岐にわたるが、関連する問題として、教育と経済成長の問題を第三章で扱った。もしこの関係が因果関係であれば、公的助成は一つの根拠をもつと考えられる。本年度の研究は、第一に高等教育に対する公的助成必要の根拠と助成方法を理論的に明らかにすること、第二に、日本とアメリカにおいて公的助成がどのように行われてきたのかを考えるために、高等教育財政における諸々の指標の時系列的変化を図表化する作業を行うこと、の二点を中心に行う計画であった。第一の高等教育に対する公的助成の根拠については、一般的には、外部経済の存在、育英、機会均等が考えられる。もちろんこれ以外の目的で助成が行われることもあるが、これら三つは正当化を得られ易い。本年度はまず外部経済を重点的に検討した。そこで外部経済の一つである教育の経済成長に対する貢献を考えた。教育(特に高等教育)が、経済成長にどのように影響しているかを、アメリカを中心とした諸々の研究を参考にしながら考察した。この分野では、過去10年間に研究の方法論が格段に進歩したが、その方法論の検討をまとめることができた。また教育が経済成長に貢献するとしたらどのように資源を配分するのが効率的かを検討した。それによると、開発途上国では、職業教育より普通教育に、高等教育より初等中等教育に、投資するのが望ましい。第二の日本とアメリカの高等教育関連データの図表化作業については、資料の収集、整理、パソコン入力中であり、来年度も引続き行う予定である。平成7年度の研究は、日本において高等教育を通して所得再分配がどのように行われているかを、実証的に明らかにすることであった。総務庁の「家計調査報告書」のデータを用いて、所得五分位別租税負担率と所得五分位別高等教育進学率とを1974年から20年間にわたって計算した。その結果租税負担率と進学率とは、所得階級別にほぼ一致していることがわかった。その構造は、過去20年にわたって大きな変化がないこと、および1989年の消費税導入後も変わらないことが、確認できた。租税負担率と進学率とが所得階級間で一致しているからといって、これが平等であると判断することはできない。平等の基準が3つあるからである。コストベネッフィト基準によれば、一応平等ということになろう。しかし機会均等化基準からは決して平等とはいえない。本研究は、戦後日本の大学教育の拡大過程において、とられた大学政策とそれに対する私学の行動を検討し、以下が明らかになった。日本の高等教育拡大は、アメリカとは対照的に私立機関中心で行われてた。
KAKENHI-PROJECT-06610258
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06610258
高等教育に対する公的助成についての日米比較研究
日本の高等教育拡大を説明するモデルとして、E.Jamesの超過需要モデルが有効である。彼女によると、開発途上国では、公立期間で収容しきれない教育の超過需要により、私立機関が発展する。それは、私立であることもかわらず授業料が低い、職業関連科目中心の、低コスト教育が行われる。そのため教育の質が問題となり、公的助成が行われるようになる。助成がおこなわれると、私立機関の性格は、公立機関のそれに類似してくる。日本の高等教育政策は、レッセフェール策から大学、短大新増設抑制策へと転換する。そのほとんど同時に私学助成がおこなわれるようになった。この2つの策は、都市から地方へ高等教育機会を拡大する、家計負担を軽減することの期待から機会均等を実現すると考えられてきた。しかしもともと都市政策、人口政策の意味の強い抑制策は、機械均等策としては効果的でなかったといえる。また助成策も、私学経営に達する補助策と考えられ、機会均等策とはいえないことが明らかである。日本における機会均等は、所得階層間よりも地域間の問題として、また私立大学と国立大学の教育条件や授業料格差の問題として考えられた。この2つの策に対して私立大学は、大都市近郊において新増設を行い、また助成額が毎年上昇した時期に、抑制策による無競争の結果授業料を値上げした。しかし同時に私立大学歯、助成後教育条件の改善にも着手し、改善が進んでいる。私立大学関連団体は、現行の機関助成方式を支持し、増額を要求している。
KAKENHI-PROJECT-06610258
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06610258
19世紀アメリカ文学における障害者表象:言語とアブノーマリティの多面性
19世紀半ばから後半にかけて人気のあった雑誌、Godey's Lady's Book、Atlantic Monthly、Harper's Monthly Magazineなどを中心に、障害者に焦点を当てた大衆向けの読み物(小説、詩、エッセイ等)を調べた。南北戦争という大戦によって、心身に障害を負った者も少なくなかったであろうが、それが小説等に反映することは極めて少なかった。むしろ、障害(特に視覚障害が多い)を持つキャラクターは女性が多く、敬虔、純粋、誠実、従順、親子愛などを強調した人物描写がされ、当時カルト的に信奉されていた"True Womanhood"と結び付けた表象になっていることが多いことが分かった。そういった雑誌の読者は所謂中流階級層で、当時産業革命により女性労働者が急速に増加していく社会状況の中、強健であるべき労働階級の女性と読者層を区別し、はかなさ、繊細さを極端に体現したものが、身体障害という表象となったと思われる。高齢者、障害をもった男性の描写はかなり少なかったが、この場合は、非常に孝行息子であったり、特別な才能を持っていたり、極端な例が多く見られると共に、所謂WASP以外であることが多かった。Atlantic Monthlyにおいては、186070年代、ダーウィンの進化論やAmericanismに関する論文が連載され、その合間に掲載されている読み物に登場する身体や精神に障害をもった登場人物は、人種、民族や階級の違いが明確な場合がよく見られた。また、種々の障害に関する説明や情報(現代人の目で読むと、かなり偏見が入っていると思われることもある)、当時流行していたDime Museum(民族の違いや身体の違いを見せ物にしたものもあった)に関するエッセイも散見され、その言葉使いからも、「ノーマルな身体や精神」の基準を編集側と読者が無意識の内に共有していたことが分かった。19世紀アメリカでは、1817年に初の聾唖学校が設立され、19世紀初めから半ばまではmanualism(手話の教育)が提唱され、後半はoralism(手話を排除し、発話を重んじる教育)に移行する。Silent WorldやDeaf-Mute Journals等の新聞や雑誌の発行、州や国単位での団体組織の結成等、deaf communityができつつあった当時、聾唖者のイメージが増加するアメリカ社会の中の外国人のイメージとして作られ、oralismは国家共同体を維持するためというプロパガンダのもと普及する。一方、当時の小説や大衆紙等に聾唖者表象はあまり見られないことが今回の調査で判明した。例えば、人気女性誌Godey's Lady's Bookの'30'70にも、聾唖教育、吃音改善に関するコラムの他は、小説では聾唖の登場人物は3人(1人は偽者)、詩の対象としては1人と少ない。女性の場合、繊細さや純粋さの強調、gentilityやfemininityをなくした状態という両極端の聾唖者表象が多く、男性は社会問題を反映したメッセージ性をもつ表象として使われている。言語障害表象がethnicity表象と重なる例もある。1830-40年代には、統計学、骨相学等の流行に伴い、多分野の興味が狂気に関する統計に集まり、裁判でも精神異常を主張することが一つのモードとなっていた。国勢調査による統計をもとに、男性は30-40歳、女性は50-60歳に精神障害者が多く、発症は女性の方が早いとされた。奴隷制のない州の黒人は、奴隷州の黒人に比べて精神障害者が多い(Southern Literary Messengerでは約10倍と言われている)との解釈が度々され、移民にも精神障害者が多いとの論文もある。言語障害表象、精神障害表象共に、反奴隷解放運動や移民増加等の社会問題論議に利用されたと考えられる。19世紀半ばから後半にかけて人気のあった雑誌、Godey's Lady's Book、Atlantic Monthly、Harper's Monthly Magazineなどを中心に、障害者に焦点を当てた大衆向けの読み物(小説、詩、エッセイ等)を調べた。南北戦争という大戦によって、心身に障害を負った者も少なくなかったであろうが、それが小説等に反映することは極めて少なかった。むしろ、障害(特に視覚障害が多い)を持つキャラクターは女性が多く、敬虔、純粋、誠実、従順、親子愛などを強調した人物描写がされ、当時カルト的に信奉されていた"True Womanhood"と結び付けた表象になっていることが多いことが分かった。そういった雑誌の読者は所謂中流階級層で、当時産業革命により女性労働者が急速に増加していく社会状況の中、強健であるべき労働階級の女性と読者層を区別し、はかなさ、繊細さを極端に体現したものが、身体障害という表象となったと思われる。高齢者、障害をもった男性の描写はかなり少なかったが、この場合は、非常に孝行息子であったり、特別な才能を持っていたり、極端な例が多く見られると共に、所謂WASP以外であることが多かった。Atlantic Monthlyにおいては、186070年代、ダーウィンの進化論やAmericanismに関する論文が連載され、その合間に掲載されている読み物に登場する身体や精神に障害をもった登場人物は、人種、民族や階級の違いが明確な場合がよく見られた。
KAKENHI-PROJECT-15720068
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15720068
19世紀アメリカ文学における障害者表象:言語とアブノーマリティの多面性
また、種々の障害に関する説明や情報(現代人の目で読むと、かなり偏見が入っていると思われることもある)、当時流行していたDime Museum(民族の違いや身体の違いを見せ物にしたものもあった)に関するエッセイも散見され、その言葉使いからも、「ノーマルな身体や精神」の基準を編集側と読者が無意識の内に共有していたことが分かった。
KAKENHI-PROJECT-15720068
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15720068
聞き上手な引き込みに基づく身体的インタラクションシステム
聞き上手になれる情報処理の基礎技術の開発を目指して、うなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みをロボットやCGキャラクタのメディアに導入することで、一体感が実感できる聞き上手な引き込みに基づく身体的インタラクションシステムを研究開発した。その主な成果は以下の通りである。(1)アクティブ・アピアランス・モデルを用いた頭部動作認識によるうなずき検出システムうなずき計測実験により対面コミュニケーション時のうなずきとして頭部動作を解析し、その解析結果に基づいて3種類のうなずき検出モデルを提案した。これらのモデルでは、アクティブ・アピアランス・モデルによるフェイストラッキングから推定される頭部の姿勢・回転運動に基づき、うなずき検出を行っている。さらに、提案したモデルを適用したうなずき検出システムを開発した。開発したシステムを用いたうなずきの評価実験を行い、提案モデルおよび開発したシステムの有効性を示した。(2)キャラクタと一緒に学ぶ映像学習支援システムの開発映像学習において効果的なインタラクション支援を実現するために、映像に音声駆動型身体的引き込みキャラクタInterActorと自己アバタを重畳合成した映像学習支援システムのプロトタイプを開発した。本システムでは、表示ウィンドウの中央付近に授業映像を配置し、その下部に3体の背面CGキャラクタを映像領域に対面して並列配置している。3体のうち中央に配置したキャラクタにユーザの頭部動作を反映させることで、その1体を自己のアバタとし、両脇のキャラクタをInterActorとして,映像音声に対しての聞き手の身体動作を生成している。本システムでは、自己アバタおよび同じ空間内で学習するキャラクタにより身体的インタラクションの場を生成することで、場とのかかわりによる一体感・共有感を実感させながら、学習意欲を促進させる。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。聞き上手になれる情報処理の基礎技術の開発を目指して、うなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みをロボットやCGキャラクタのメディアに導入することで、一体感が実感できる聞き上手な引き込みに基づく身体的インタラクションシステムを研究開発した。その主な成果は以下の通りである。(1)アクティブ・アピアランス・モデルを用いた頭部動作認識によるうなずき検出システムうなずき計測実験により対面コミュニケーション時のうなずきとして頭部動作を解析し、その解析結果に基づいて3種類のうなずき検出モデルを提案した。これらのモデルでは、アクティブ・アピアランス・モデルによるフェイストラッキングから推定される頭部の姿勢・回転運動に基づき、うなずき検出を行っている。さらに、提案したモデルを適用したうなずき検出システムを開発した。開発したシステムを用いたうなずきの評価実験を行い、提案モデルおよび開発したシステムの有効性を示した。(2)キャラクタと一緒に学ぶ映像学習支援システムの開発映像学習において効果的なインタラクション支援を実現するために、映像に音声駆動型身体的引き込みキャラクタInterActorと自己アバタを重畳合成した映像学習支援システムのプロトタイプを開発した。本システムでは、表示ウィンドウの中央付近に授業映像を配置し、その下部に3体の背面CGキャラクタを映像領域に対面して並列配置している。3体のうち中央に配置したキャラクタにユーザの頭部動作を反映させることで、その1体を自己のアバタとし、両脇のキャラクタをInterActorとして,映像音声に対しての聞き手の身体動作を生成している。本システムでは、自己アバタおよび同じ空間内で学習するキャラクタにより身体的インタラクションの場を生成することで、場とのかかわりによる一体感・共有感を実感させながら、学習意欲を促進させる。音声駆動型身体的引き込みチェアシステムInterChairヒューマンロボットインタラクションの観点から、一体感が実感できる聞き上手な身体的インタラクションシステムとして、発話音声に基づいて身体全体をうなずき反応させる音声駆動型身体的引き込みチェアシステムInterChairを開発展開している。対面コミュニケーション実験及び講話形式実験によりシステムの身体的引き込みによる場の盛り上げ効果等の有効性を引き続き検証するとともに、本年度はとくに対話を伴う集中した作業として対戦型テーブルゲームを対象に、InterChairを2台用いて対戦形式実験を行い、InterChairが自己の音声でうなずき反応を体感提示することで場が盛り上がるなど、システムのコミュニケーション支援への有効性を示している。本研究の成果は、対話を伴う集中作業など、対話への意識が低下している場合にも、身体的引き込み反応を身体全体で物理的に体感提示することによって、インタラクションを促進し、場を盛り上げ、コミュニケーションを支援することを示したことにある。とくに自己の音声に基づく身体的引き込み反応が身体的インタラクションを促進して場を盛り上げるなど、自己を後押しするシステムの引き込み効果を示したことは大きな成果である。「コミュニケーションを科学する」をテーマに各種イベントでInterChairを4台用いた講話形式でのシステムを実演展示することで、来場者にシステムの身体的引き込み効果を体感いただき、コミュニケーションにおける身体的引き込みの可能性・重要性を示すとともに、聞き上手な引き込みに基づくシステムの教育支援・学習支援への応用を検討している。一体感が実感できる聞き上手な身体的インタラクションシステムの基盤となるシステムを開発展開し、その有効性を評価することで、更なるシステム開発を進めており、本研究課題に向けておおむね順調に進展している。引き続き、研究室でのシステム開発・モデル実験だけでなく、開発したシステムを実演展示等で学会はもちろん広く社会に公開することで、一般の人々からのフィードバックも大事にして研究開発を推進する。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-24118707
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24118707
リアルタイム細胞分子動態解析法による肺がんの低酸素バイオロジーの解明
肺癌切除例で、HIF-1、Glut-1発現を定量化したところ、HIF-1、Glut-1発現とSUVmax、再発率は、腺癌症例にて有意な相関が認められたが、扁平上皮癌では認められなかった。肺腺癌において低酸素環境下に誘導されるHIF-1、Glut-1発現がFDG-PETを反映し、更に腫瘍の悪性度の指標となる。また細胞低分子動態解析法により5-FUの細胞死誘導にプロリン-グルタミン酸代謝が密接に関連していることを見出した。肺癌切除例で、HIF-1、Glut-1発現を定量化したところ、HIF-1、Glut-1発現とSUVmax、再発率は、腺癌症例にて有意な相関が認められたが、扁平上皮癌では認められなかった。肺腺癌において低酸素環境下に誘導されるHIF-1、Glut-1発現がFDG-PETを反映し、更に腫瘍の悪性度の指標となる。また細胞低分子動態解析法により5-FUの細胞死誘導にプロリン-グルタミン酸代謝が密接に関連していることを見出した。本研究はビデオマススコープを用いて、低酸素や抗癌剤治療により肺癌細胞内で起こるFDG (fluoro-2-deoxy-D-glucose)の蓄積を観察し、肺癌の悪性度評価に対するFDG-PETの可能性を明らかにすることを目的とする。肺癌におけるFDGの取り込みは細胞膜に過剰発現したGlut-1を介して行われている。本年度は非小細胞肺癌におけるGlut-1発現とFDG-PETでのSUVmaxとの関連性、および臨床病理学的因子との関係について検討した。2007年1月2008年12月に当科にて術前にFDG-PET、外科切除術を施行された原発性非小細胞肺癌のうち、腺癌70例(BAC:12,non-BAC:58),扁平上皮癌24例,計94例を対象とした。抗GLUT-1ウサギポリクローナル抗体、シンプルステインMAX-PO (MULTI)、ヒストファインDAB基質キットを用いて免疫組織化学的染色を行い、Glut-1の発現率(%)をスコアリングした。Glut-1発現、およびSUVmax値はともに腺癌よりも扁平上皮癌にて高値を示した。GLUT-1発現とSUVmaxは、症例全体で有意な相関が認められ、組織型では腺癌,特にnon-BAC症例にて相関が認められたが、扁平上皮癌では有意な相関は認められなかった。Glut-1発現と臨床病理学的因子の検討では、病期、リンパ節転移の有無、脈管侵襲の有無において有意な相関が認められた。さらに腺癌において腫瘍の悪性度の指標とされるH-CTでのすりガラス陰影率、腫瘍消失率とGlut-1発現との間に有意な相関が認められた。非小細胞肺癌,特に腺癌において低酸素環境下に誘導されるGlut-1発現は腫瘍の増殖能、悪性度の強力な指標となることが示唆された。本研究は細胞分子動態解析法による質量分析を用いて、低酸素や抗癌剤治療により肺癌細胞内で起こるFDG(fluoro-2-deoxy-D-glucose)の蓄積を観察し、肺癌の悪性度評価に対するFDG-PETの可能性を明らかにすることを目的とする。肺腺癌70例,扁平上皮癌24例,計94例を対象とし、免疫組織化学的染色を行い、低酸素環境下に誘導されるHIF-1,Glut-1発現を定量的に示した。HIF-1,Glut-1発現とSUVmax、脈管浸潤、リンパ節転移、再発率は、腺癌症例にて相関が認められたが、扁平上皮癌では有意な相関は認められなかった。非小細胞肺癌,特に腺癌において低酸素環境下に誘導されるHIF-1,Glut-1発現は腫瘍の増殖能、悪性度の強力な指標となることが示唆された。また癌細胞内での低分子物質の変化を観察するため、まず5-FU感受性が異なる2種類のヒト癌細胞株に5-FUを曝露したのち経時的に細胞を回収し、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)を用いて、細胞内の低分子動態を一斉解析した。ヒト癌細胞株の分析結果よりm/z501000の範囲で約7000個のピークを検出できた。そのうち特定のアミノ酸代謝と脂質代謝は2種の細胞株間で特徴的な動態を示した。これらの代謝を媒介する酵素に対してRT-PCRを行い、発現量を解析した。細胞分子動態解析法による質量分析を用いたメタボローム解析によりヒト癌細胞株の5-FU曝露による細胞内応答を追跡することが可能であった。5-FUの作用には特定のアミノ酸代謝と脂質代謝が特徴的であり、薬剤耐性に関与していることが示唆された。癌細胞はその増殖に伴い低酸素ストレスにさらされるため、転写因子HIF-1を介して、細胞膜にGlut-1を発現させ、低酸素下でのエネルギー産生可能な解糖系代謝を促す。FDGはGlut-1を介して細胞内に輸送され、PET画像に反映される。本研究は細胞低分子動態解析法を用いて、低酸素や抗癌剤治療などのストレスにより癌細胞内に起こるFDGの蓄積を観察し、低酸素関連因子発現や浸潤増殖能との相関を観察することにより、肺癌の悪性度評価に対するFDG-PETの可能性を明らかにすることを目的とした。
KAKENHI-PROJECT-22591567
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591567
リアルタイム細胞分子動態解析法による肺がんの低酸素バイオロジーの解明
肺腺癌70例、扁平上皮癌24例、計94例を対象とし、免疫組織化学的染色を行い、低酸素環境下に誘導されるHIF-1、Glut-1の発現を定量的に示した。HIF-1、Glut-1発現とSUVmax、脈管浸潤、リンパ節転移、再発率は、腺癌症例にて相関が認められたが、扁平上皮癌では有意な相関は認められなかった。非小細胞肺癌、特に腺癌において低酸素環境下に誘導されるHIF-1、Glut-1発現は腫瘍の増殖能、悪性度の強力な指標となることが示唆された。また癌細胞内での低酸素、抗癌剤ストレスによる低酸素関連因子の変化を観察するため、5-FU感受性が異なる2種類のヒト癌細胞株を樹立した。これらの癌細胞株に5-FUを曝露したのち、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて経時的に細胞内の低分子動態を網羅的に一斉解析し、5-FUの細胞死誘導にプロリン-グルタミン酸代謝が密接に関連していることを見出した。これらの代謝を媒介するPRODH発現量をRT-PCRを用解析したところ、耐性株で優位に低値であり、superoxide産生も減少することを確認した。今後、細胞低分子動態解析法による癌の浸潤増殖のメタボローム解析が進めば、新たな関連因子の発見が期待される。臨床データ、培養細胞を用いて順調に研究が進んでいる。しかし細胞内でのFDG代謝物質の測定は、イオン化しにくい物質でありやや難渋している。24年度が最終年度であるため、記入しない。癌組織内低酸素応答を質量分析や免疫染色で観察することにより、肺がんの低酸素応答を観察してゆく。培養細胞内FDG代謝物質の直接測定は、従来の質量分析法ではやや困難であるため、癌細胞のメタボロームを網羅的に解析することにより低酸素に対する応答を観察してゆく予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591567
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591567
ハイブリッドモデルによる組込みシステムの高信頼性設計方法論の構築と支援環境の開発
組込み型システムはアナログ環境に組み込まれたデジタルな実時間システムであり、ハイブリッドシステム(いわゆる、アナログ動作とデジタル動作が混在するシステム)と考えることができて、信頼性が保証できる設計方法論の構築が要望されている分野である。従来の研究では、詳細化検証、モジュール化、既存手法との連携などの点が考慮されていない。本研究では、詳細化検証、既存の開発手法との連携、確率の導入によるモデルの構築などに着目して、定理証明技術や自動検証技術を駆使しながら、信頼性が保証できる設計方法論の構築を行った。具体的には、本研究では、以下の研究成果をあげた。(1)ハイブリッドシステムの段階的詳細化開発を可能とするために、詳細化写像を用いた、演繹的な詳細化検証理論を開発して、実験的に有効性を実証した。(2)ハイブリッドシステムのモジュール毎の仕様記述と検証の手法を可能とするために、フェーズ遷移モジュールとそのモジュール的演繹検証、receptivenessの演繹的検証を実現して、Stepを用いて、実験的に有効性を実証した。(3)ハイブリッドシステムの重要な事例として、プリエンプティブスケジューラがある。プリエンプティブスケジューラを含む、リアルタイムソフトウェアをハイブリッドシステムとしてモデル化して、仕様記述する手法とそのスケジューラビリティ検証する手法を開発した。事例を用いて、実験的に有効性を実証した。(4)既存のハイブリッドシステムの開発では、制御理論に基づく制御仕様が使われている。制御仕様からハイブリッドモデルへの変換を含む、統合的な開発手法を開発して、現実的な事例により、実験的に有効性を実証した。(5)ハイブリッドシステムのランダム性やソフトリアルタイム性を扱うために、確率の概念を導入して、確率線形ハイブリッドオートマトンを開発して、その記号的な検証理論を開発した。組込み型システムはアナログ環境に組み込まれたデジタルな実時間システムであり、ハイブリッドシステム(いわゆる、アナログ動作とデジタル動作が混在するシステム)と考えることができて、信頼性が保証できる設計方法論の構築が要望されている分野である。従来の研究では、詳細化検証、モジュール化、既存手法との連携などの点が考慮されていない。本研究では、詳細化検証、既存の開発手法との連携、確率の導入によるモデルの構築などに着目して、定理証明技術や自動検証技術を駆使しながら、信頼性が保証できる設計方法論の構築を行った。具体的には、本研究では、以下の研究成果をあげた。(1)ハイブリッドシステムの段階的詳細化開発を可能とするために、詳細化写像を用いた、演繹的な詳細化検証理論を開発して、実験的に有効性を実証した。(2)ハイブリッドシステムのモジュール毎の仕様記述と検証の手法を可能とするために、フェーズ遷移モジュールとそのモジュール的演繹検証、receptivenessの演繹的検証を実現して、Stepを用いて、実験的に有効性を実証した。(3)ハイブリッドシステムの重要な事例として、プリエンプティブスケジューラがある。プリエンプティブスケジューラを含む、リアルタイムソフトウェアをハイブリッドシステムとしてモデル化して、仕様記述する手法とそのスケジューラビリティ検証する手法を開発した。事例を用いて、実験的に有効性を実証した。(4)既存のハイブリッドシステムの開発では、制御理論に基づく制御仕様が使われている。制御仕様からハイブリッドモデルへの変換を含む、統合的な開発手法を開発して、現実的な事例により、実験的に有効性を実証した。(5)ハイブリッドシステムのランダム性やソフトリアルタイム性を扱うために、確率の概念を導入して、確率線形ハイブリッドオートマトンを開発して、その記号的な検証理論を開発した。まず、本年度は基本検討及び情報収集を行った。具体的には、以下の2つの主要な技術を開発した。(1)モジュール単位の仕様記述を可能とするために、フェーズ遷移モジュールを開発した。フェーズ遷移モジュールは環境との相互作用が記述できる、無限な状態数を表現できる仕様記述言語であり、組込み型システムの一般的な計算モデルである。(2)モジュール単位の詳細化検証を実現するために、モジュールの実装可能性(いわゆる、receptiveness)の検証手法及びモジュール単位の詳細化検証手法(いわゆる、Assume-guarantee style)を開発した。Receptivenessは実時間性を含めたモデル化では考慮すべき重要な性質であり、ハイブリッドシステムでは、本研究が世界で最初に形式化を提案した。(3)リアルタイムオペレーティングシステム及び制御システムを対象として、仕様記述及び詳細化検証の実験を行い、評価・改善を行った。また、国際会議及び研究会で、その成果を発表した。本年度は、前年度の基本検討を踏まえて、以下の研究を行なった。(1)モジュール単位のハイブリッドシステムが仕様記述可能な計算モデルである、フェーズ遷移モジュールを基礎とした支援環境を実現して、リアルタイムオペレーティングシステム及びリアルタイムソフトウェアを仕様記述して、詳細化検証を行って、評価して、その実用性を実証した。その成果を国際会議で発表した。(2)ランダム性のあるリアルタイムハイブリッドシステムを対象として、新たな仕様記述言語と詳細化検証の公理系を開発した。その成果を国際会議などで発表した。(3)さらに、(2)を拡張して、無限な対象を有する、ランダム性のあるリアルタイムハイブリッドシステムを対象として、新たな仕様記述言語と演繹的な詳細化検証の公理系を開発した。その成果を国際会議で発表した。本年度は、前年度の成果を発展させて、以下の研究を行った。(1)ハイブリッドシステムのサブセットとして面白いモデルである、確率時間オートマトンがある。我々は、確率時間オートマトンと確率時間時相論理との関係や演繹的な検証手法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-14580368
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580368
ハイブリッドモデルによる組込みシステムの高信頼性設計方法論の構築と支援環境の開発
これにより、確率時間時相論理式が確率時間オートマトンの双模倣関係により、保存されることを明らかにした。さらに、確率時間オートマトンを一般化したモデル上に、確率時間時相論理の演繹的証明系を構築した。それらの成果を論文誌や国際会議で発表した。(山根智:離散確率分布を持つリアルタイムシステムの確率時間双模倣関係と確率時間時相論理式の保存",情報処理学会論文誌,Vol.45,No.5,pp.1367-1375,2004.山根智:"離散確率分布を持つリアルタイムシステムの確率時間時相論理式の演繹的検証手法",情報処理学会論文誌,Vol.45,No.6,pp.1652-1662,2004)(2)ハイブリッドシステムを確率で拡張したモデル及び非線形な微分方式で拡張したモデルに対して、記号的検証手法や近似的な検証手法を開発した。これらのシステムを実装して、実用性を実証した。現在、研究会で報告しており、国際会議へ投稿中であり、論文誌への投稿を準備している。微分方程式の解析に検証コストを要するので、大規模システムの検証は困難であった。今度はより強力な抽象化技術の開発が望まれる。(陸田陽介、山根智:"確率線形ハイブリッドオートマトンの記号的到達可能性解析手法"、電子情報通信学会研究報告CAS2004,pp.7-12,2004山崎貴史、山根智:"非線形ハイブリッドオートマトンの近似解析による到達可能性解析検証手法"、電子情報通信学会研究報告CAS2004,pp.13-17,2004)
KAKENHI-PROJECT-14580368
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580368
植物の器官特異的転写調節機構の解明
タバコキナーゼ遺伝子やタバコβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子は根で特異的に発現しており、エチレン処理により葉でも誘導される。これらの遺伝子のプロモーターにはエチレン応答性シスエレメント(ERE)があり、EREをTATAボックス上流に挿入したプロモーターはエチレン処理に対して応答性を示すことが知られている。また、そこへの結合活性を有しているEREBPsも、4種類とも標的遺伝子と同じ発現パターンを示すことが高木と進士によって明らかにされている。これらの知見をもとにして、「EREBPsが標的遺伝子のプロモーター中のEREに結合し、そこからの転写活性を上下させている」という作業仮説をたてて実験を組んだ。具体的成果としては、第一にEREBP4が転写増幅因子であることをタバコプロトプラストを用いたトランジェントアッセイにより明らかにしたことである。EREをシスエレメントとして有するレポーター遺伝子の発現は、エフェクター遺伝子にコードされているEREBP4の量に依存して増大しており、この添加効果はACC合成酵素の特異的阻害剤であるAVG存在下では全く見られなかった。これらのことは、EREBP4が転写調節因子であることを示しており、EREBP4による転写増幅が、エチレンの存在を必要とすることを示唆している。第二に成果として挙げられるのは、エチレン応答性シスエレメント結合タンパク(EREBPs)のcDNAを大腸菌発現ベクターに組み込み、大量発現の後、組み換えEREBPsを精製しつつあることである。実験開始当初、長いHis-Tagを連結した組み換え蛋白が不溶性であったために精製できなかったが、His-Tagを短くすることにより蛋白の溶解度が増しニッケルカラムでの精製が可能となった。次に精製できたEREBPから順にタバコ試験管内転写系に加えて、その生化学的性質を一つずつ決定しようとしており、それらに対する抗体づくりも準備中である。なおこのプロジェクトは、通産省生命工学工業技術院研究所の進士秀明、高木優両先生との共同研究として進められている。タバコキナーゼ遺伝子やタバコβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子は根で特異的に発現しており、エチレン処理により葉でも誘導される。これらの遺伝子のプロモーターにはエチレン応答性シスエレメント(ERE)があり、EREをTATAボックス上流に挿入したプロモーターはエチレン処理に対して応答性を示すことが知られている。また、そこへの結合活性を有しているEREBPsも、4種類とも標的遺伝子と同じ発現パターンを示すことが高木と進士によって明らかにされている。これらの知見をもとにして、「EREBPsが標的遺伝子のプロモーター中のEREに結合し、そこからの転写活性を上下させている」という作業仮説をたてて実験を組んだ。具体的成果としては、第一にEREBP4が転写増幅因子であることをタバコプロトプラストを用いたトランジェントアッセイにより明らかにしたことである。EREをシスエレメントとして有するレポーター遺伝子の発現は、エフェクター遺伝子にコードされているEREBP4の量に依存して増大しており、この添加効果はACC合成酵素の特異的阻害剤であるAVG存在下では全く見られなかった。これらのことは、EREBP4が転写調節因子であることを示しており、EREBP4による転写増幅が、エチレンの存在を必要とすることを示唆している。第二に成果として挙げられるのは、エチレン応答性シスエレメント結合タンパク(EREBPs)のcDNAを大腸菌発現ベクターに組み込み、大量発現の後、組み換えEREBPsを精製しつつあることである。実験開始当初、長いHis-Tagを連結した組み換え蛋白が不溶性であったために精製できなかったが、His-Tagを短くすることにより蛋白の溶解度が増しニッケルカラムでの精製が可能となった。次に精製できたEREBPから順にタバコ試験管内転写系に加えて、その生化学的性質を一つずつ決定しようとしており、それらに対する抗体づくりも準備中である。なおこのプロジェクトは、通産省生命工学工業技術院研究所の進士秀明、高木優両先生との共同研究として進められている。
KAKENHI-PROJECT-07270206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07270206
マカクザルを対象とした光遺伝学技術の適用
平成30年度は、計画3年目の1年目として、ウィルスを注入する脳部位の神経細胞活動の記録を終了した。また、光操作を行うのに必要な機材の追加検討を行った。以下にその内容を記す。本研究では、霊長類に光遺伝学を適用する方法を確立し、汎用性の高い実験を確立することを目的としている。具体的には、光遺伝学の技術をマカクザルの前頭葉に適用することで、価値判断を生み出す前頭葉の神経回路の活動を光刺激で操作する。特に、前頭葉ー線条体の神経投射を選択的に操作することで、前頭葉の活動が線状体の価値判断に関わる活動を引き起こす仕組みを明らかとする。この目的を達成するために、光操作を行う当該脳領域の神経細胞活動を、マカクザルの脳から記録した。光遺伝学の技術を用いると、脳の活動を極めて短い時間で操作できるため、記憶や判断などのごく短い間に生じる脳の活動を操作することが可能となる。しかし、実験動物の中で最もヒトに近い脳を備えたマカクザルでは、光遺伝学の適用例が極めて限られている。神経細胞に光受容体遺伝子を導入・発現させることで、脳活動を光刺激で操作することを可能とするが、技術の進歩が速くどの段階の技術を用いいるのか判断が必要であった。そのため、本年度はその検討を行った。計画2年目の平成31年度に実験を行う予定である。現在、2頭の動物から取得した実験データの解析を進めている。核磁気共鳴装置を用いて脳活動を記録するための脳部位の同定を行い、記録した細胞の大まかな位置も同定した。現在、その解析結果をもとに、ウィルスを注入し実験を開始するための準備を進めているところである。平成30年度は、本研究計画の開始1年目として、光遺伝学を適用するための準備と検討を行った。来年度の初めに、本検討に基づいて機器を購入し、実験を進めることで予定通りに実験の進展が得られると期待される。以下にその詳細を述べる。平成30年度は、研究計画の進展を評価する上で非常に重要な年であった。計画の初年度として、萌芽的な研究の方向を決定するための準備を終了できた。この検討を十分に行えたことで、これから実験設備のセットアップを終了し、実験計画が本当に妥当なのか検証するための初期データを取得することができる。H31年度の前半に実験を開始する予定で準備を進めており、今後、実験成果に繋がる実験データが得られることが期待される。従って、計画の2年目にあたる来年度に、計画の達成に必要なデータについての検討を行うことが可能となる。こられの理由から、本計画はおおむね順調に進展していると評価できる。計画1年目の本年度は、予定通り実験の準備を進めることができた。この状況を継続し、研究の初期データを確実に取得する。同時に、光操作を行う当該脳領域から記録した神経細胞活動をデータ解析を推し進め、新たな研究成果を生み出す挑戦を続ける。計画がうまく前進している現状を踏まえ、更に本研究を発展させる。そのために、次の2点を来年度の目標とする。1.本年度の準備と検討に応じて、初期に実験のセットアップを終了し、実験を開始する。2.初期データの検討を行い、実験内容をブラッシュアップする。来年度は計画3年の2年目にあたるため、成果に直結する実験結果を取得する。ウィルスの注入と光操作を実施し、本実験を軌道に乗せる。平成30年度は、計画3年目の1年目として、ウィルスを注入する脳部位の神経細胞活動の記録を終了した。また、光操作を行うのに必要な機材の追加検討を行った。以下にその内容を記す。本研究では、霊長類に光遺伝学を適用する方法を確立し、汎用性の高い実験を確立することを目的としている。具体的には、光遺伝学の技術をマカクザルの前頭葉に適用することで、価値判断を生み出す前頭葉の神経回路の活動を光刺激で操作する。特に、前頭葉ー線条体の神経投射を選択的に操作することで、前頭葉の活動が線状体の価値判断に関わる活動を引き起こす仕組みを明らかとする。この目的を達成するために、光操作を行う当該脳領域の神経細胞活動を、マカクザルの脳から記録した。光遺伝学の技術を用いると、脳の活動を極めて短い時間で操作できるため、記憶や判断などのごく短い間に生じる脳の活動を操作することが可能となる。しかし、実験動物の中で最もヒトに近い脳を備えたマカクザルでは、光遺伝学の適用例が極めて限られている。神経細胞に光受容体遺伝子を導入・発現させることで、脳活動を光刺激で操作することを可能とするが、技術の進歩が速くどの段階の技術を用いいるのか判断が必要であった。そのため、本年度はその検討を行った。計画2年目の平成31年度に実験を行う予定である。現在、2頭の動物から取得した実験データの解析を進めている。核磁気共鳴装置を用いて脳活動を記録するための脳部位の同定を行い、記録した細胞の大まかな位置も同定した。現在、その解析結果をもとに、ウィルスを注入し実験を開始するための準備を進めているところである。平成30年度は、本研究計画の開始1年目として、光遺伝学を適用するための準備と検討を行った。来年度の初めに、本検討に基づいて機器を購入し、実験を進めることで予定通りに実験の進展が得られると期待される。以下にその詳細を述べる。
KAKENHI-PROJECT-18K19492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19492
マカクザルを対象とした光遺伝学技術の適用
平成30年度は、研究計画の進展を評価する上で非常に重要な年であった。計画の初年度として、萌芽的な研究の方向を決定するための準備を終了できた。この検討を十分に行えたことで、これから実験設備のセットアップを終了し、実験計画が本当に妥当なのか検証するための初期データを取得することができる。H31年度の前半に実験を開始する予定で準備を進めており、今後、実験成果に繋がる実験データが得られることが期待される。従って、計画の2年目にあたる来年度に、計画の達成に必要なデータについての検討を行うことが可能となる。こられの理由から、本計画はおおむね順調に進展していると評価できる。計画1年目の本年度は、予定通り実験の準備を進めることができた。この状況を継続し、研究の初期データを確実に取得する。同時に、光操作を行う当該脳領域から記録した神経細胞活動をデータ解析を推し進め、新たな研究成果を生み出す挑戦を続ける。計画がうまく前進している現状を踏まえ、更に本研究を発展させる。そのために、次の2点を来年度の目標とする。1.本年度の準備と検討に応じて、初期に実験のセットアップを終了し、実験を開始する。2.初期データの検討を行い、実験内容をブラッシュアップする。来年度は計画3年の2年目にあたるため、成果に直結する実験結果を取得する。ウィルスの注入と光操作を実施し、本実験を軌道に乗せる。今年度は、慎重に実験条件の検討を行ったため、機器の購入を来年度に伸ばした。来年度に、次年度使用額を用いて、選定した機器を購入し、実験を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K19492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19492
紙上建築としてのソヴィエト建築史 : イワン・レオニドフの建築プロジェクト研究
平成23度は、主として次の3つの成果を収めることができた。1.ロシア構成主義建築家レオニドフの作品研究に関わる成果平成23年度には、東京大学大学院総合文化研究科に博士論文『天体建築論--イワン・レオニドフとソヴィエト建築』を提出し、受理された。同論文は、世界的にもはじめてレオニドフの創作思想を深く掘り下げて論じたものとなっており、わけても、レオニドフの前期作品をマスメディアや交通といった非場所的な運動を前提とした建築としてとらえ直した点、これまで単なる幻想的なスケッチとみなされてきた彼の後期作品を、生物学者ヘッケルの根源形態の理念などから解き明かした点などは、これまでのレオニドフおよびロシア構成主義建築運動に対する理解を更新する、注目すべき成果であったと考える。同論文は平成24年度中の出版を準備している。2.社会主義リアリズム建築研究に関わる成果「社会主義リアリズム」と呼ばれる全体主義的な様式の誕生の背景について、1930年代にソヴィエト建築界において提唱された「建築の有機化」というスローガンを手がかりに考察を行い、レオニドフら構成主義建築家らの一元論的建築理論に対する、社会主義リアリズムの二元論を明らかにした。その際には、当時の建築雑誌等のメディア上の言説と実際の建築作品を相互連関させながら読解していくという方法論を用いたが、このような手法はソヴィエト建築研究の分野では未だ先例がなく、建築作品を広く社会的、特にメディア論的な文脈の中で見直すという点でも、意義深いものであったと考える。なお同論文は、『ロシア語ロシア文学研究』第44号に掲載予定である。3.現代ロシア建築文化の紹介上述の成果に加え、ソ連崩壊前後のロシア建築文化をソヴィエト建築史の観点から紹介する書籍の執筆や、ロシア・東欧学会における講演などを行った。平成23年度は修士課程より継続してきたイワン・レオニドブの作品研究を博士論文として完成させることができた。また加えて、1930年代後半にソヴィエト建築界が全体主義化してゆき、レオニドフら構成主義建築家がそこから徐々に排斥されていく過程の文化的背景についても、分析・考察することができた。今後はこれまでの研究成果を下敷きに、1930年代後半から50年代にかけて遂行されたモスクワの再開発計画「新モスクワ」計画を研究対象として取りあげる。この計画を通して、特に「社会主義リアリズム」とよばれる全体主義的な様式がその権威を確立していった過程を、建築雑誌や報道、あるいは映画などのマスメディアの中における建築像から調査していきたいと考えている。平成21年度は、主として博士論文の執筆と完成に焦点を絞った研究活動を行った。その際中心的課題となったのが、1930年代以降のソヴェエト・ロシア建築において、社会主義リアリズムと呼ばれる全体主義的文化システムがどのような経緯を経てヘゲモニーを確立することになったのかという問いである。この問いに答えるために、当時行われたいくつかの大規模建築プロジェクトを多角的に検討することを試みた。その中でも特筆すべき成果は、特に以下の点にあると考える。193136年までの間に、モスクワの中心部ではソヴィエト・パレスを筆頭とする巨大建築物の設計競技が相次いで行われた。本研究は、レーニン主義の台頭とこれらの建築物に反映されたレーニン・イメージの変質に注目することによって、彼の後継者スターリンによる建築的モニュメントを介した権力表象とその正統化の戦略を、新しい角度から描き出した。30年代後半に計画されたクリミア半島の開発に関する調査では、「古典」「ナロード(人民・民族)」「自然」といった社会主義リアリズムの重要な概念が、モスクワという中心に対するクリミア半島という周辺的トポスにおいて、どのようなかたちで解釈され、そこにどのような差異が生まれることになったのかを考察した。この時期の周辺地域の開発事業に関しては先行研究も少なく、社会主義リアリズムの建築実践における中央一周辺の偏差を調べるという点でも、目新しい試みであったと言えるであろう。また、二次大戦前後にモスクワで開催された全連邦農業博覧会の分析では、革命後戦後期にかけてのソ連邦の民族政策と、会場内に建設された各民族共和国のパヴィリオンのデザインの推移の相関を具体的に示し、それを通して「連邦博覧会」という形式がロシアを中心とする連邦統治システムのイメージ形成にどのように寄与したのかを提示することが出来たと考える。22年度は博士論文の執筆を中心に行い、その一部を日本スラヴ人文学会などの場で発表した。そこで主たるテーマとしたのが、1930年代(スターリン時代初期)のソヴィエト・ロシアにおいて、建築ないし実現されなかった建築プロジェクトが、建築文化の全体主義化にどのように影響したか、という問題である。特に当学会での報告及び投稿論文では、スターリン時代の建築において強調された「古典」という概念に注目した。これまで古典建築とは、当然のようにギリシャ・ローマに範をとった新古典主義建築のことを指すと考えられてきた。だが本研究では、この時代の建築をめぐる言説を詳細に分析していく中で、「古典」という言葉で指し示される概念が実は非常に曖昧なものであり、党の政策方針に応じてその解釈が次々に変動していたことを明らかにした.さらに社会主義とイコールで結ばれたこの「古典」概念が、建築空間を通して多様な民族共和国からなるソ連邦を表象する全連邦農業博覧会のような際には、これらの民族建築を統合する共通の土台として機能していたことを指摘した。またスターリン期の研究と並行して、現代ロシアの建築思想や建築活動を紹介することも行った。
KAKENHI-PROJECT-09J10409
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J10409
紙上建築としてのソヴィエト建築史 : イワン・レオニドフの建築プロジェクト研究
現在印刷中の『ユーラシア研究』、23年度に発行予定の『現代ロシア文化論集』に掲載される論文の中では、ソ連崩壊後から2000年代の最初の10年間におけるロシア建築の動向を分析した。ソ連末期から現在に至るまでの現代ロシア建築についての研究は、日本はもとより欧米でもまだほとんど行われていない。したがってロシア建築界の現況を伝え、日露間の建築文化の理解を深めるという意味でも、これらの著作には大きな意義があったと考える。平成23度は、主として次の3つの成果を収めることができた。1.ロシア構成主義建築家レオニドフの作品研究に関わる成果平成23年度には、東京大学大学院総合文化研究科に博士論文『天体建築論--イワン・レオニドフとソヴィエト建築』を提出し、受理された。同論文は、世界的にもはじめてレオニドフの創作思想を深く掘り下げて論じたものとなっており、わけても、レオニドフの前期作品をマスメディアや交通といった非場所的な運動を前提とした建築としてとらえ直した点、これまで単なる幻想的なスケッチとみなされてきた彼の後期作品を、生物学者ヘッケルの根源形態の理念などから解き明かした点などは、これまでのレオニドフおよびロシア構成主義建築運動に対する理解を更新する、注目すべき成果であったと考える。同論文は平成24年度中の出版を準備している。2.社会主義リアリズム建築研究に関わる成果「社会主義リアリズム」と呼ばれる全体主義的な様式の誕生の背景について、1930年代にソヴィエト建築界において提唱された「建築の有機化」というスローガンを手がかりに考察を行い、レオニドフら構成主義建築家らの一元論的建築理論に対する、社会主義リアリズムの二元論を明らかにした。その際には、当時の建築雑誌等のメディア上の言説と実際の建築作品を相互連関させながら読解していくという方法論を用いたが、このような手法はソヴィエト建築研究の分野では未だ先例がなく、建築作品を広く社会的、特にメディア論的な文脈の中で見直すという点でも、意義深いものであったと考える。なお同論文は、『ロシア語ロシア文学研究』第44号に掲載予定である。3.現代ロシア建築文化の紹介上述の成果に加え、ソ連崩壊前後のロシア建築文化をソヴィエト建築史の観点から紹介する書籍の執筆や、ロシア・東欧学会における講演などを行った。平成23年度は修士課程より継続してきたイワン・レオニドブの作品研究を博士論文として完成させることができた。また加えて、1930年代後半にソヴィエト建築界が全体主義化してゆき、レオニドフら構成主義建築家がそこから徐々に排斥されていく過程の文化的背景についても、分析・考察することができた。今後はこれまでの研究成果を下敷きに、1930年代後半から50年代にかけて遂行されたモスクワの再開発計画「新モスクワ」計画を研究対象として取りあげる。この計画を通して、特に「社会主義リアリズム」とよばれる全体主義的な様式がその権威を確立していった過程を、建築雑誌や報道、あるいは映画などのマスメディアの中における建築像から調査していきたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-09J10409
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J10409
フ-リエ変換マイクロ波分光法による有機金属分子の高分解能分光
昨年度に引続き、今年度は、分光器の周波数範囲を更に下に広げ、4-18GHzを分光可能にした。また、観測された分子の双極子モ-メントの決定を行なうための電極を製作し、このための高圧電源も整備した。更に、パルスノズルの改良を行ない、ノズルの先端を500°C以上に加熱できるようにした。これらの改良に基づき、水銀を含むファンデアワ-ルス錯体の分光を更に進めた。昨年度は、Hg・Ar、Hg・H_2O、およびHg・OCSのスペクトルの観測に成功したが、今年度は更に、Hg・Kr、Hg・Xe、Hg・CO_2のスペクトルを新たに観測した。水銀と希ガスを含むファンデアワ-ルス錯体として、上記のように一連の分子種が観測できたことで、単にそれらの結合距離といった構造論的な結果だけではなく、ファンデアワ-ルス結合そのものの物理的な機構を精密に理解するのに貴重なデ-タが得られた。また、OCSと類似の分子であるCO_2との錯体も観測でき、これらの錯体の分子間ポテンシャルの決定と比較も可能になった。昨年すでに観測に成功していた、Hg・H_2O錯体の場合、錯体内で水分子が興味深い内部運動をしているのが見いだされた。類似の構造を持つ錯体として、すでに報告のあるAr・H_2Oとの比較が興味深い。上記の内部運動に関連して、更に対称性が高く、特異な内部運動をすると期待される錯体として、CH_4・HClを取り上げ、その分光を行なった。内部運動に起因する3つの状態のスペクトルを観測し、その性格、相対強度などを、群論に基づききれいに説明することができた。パルスノズルとして500°C以上に加熱することができるものが完成したので、水銀以外の金属原子も分光の対象になる。特に、電子スピンの残存する開殻のファンデアワ-ルス錯体は、きわめて興味深いと考えられるが、それらの分光が今後の課題である。本年度は、フーリエ変換型マイクロ波分光器を完成させ、その動作試験を行うことを第一の目標としていた。本援助金により周波数帯域、8-18GHzをカバーする分光器を完成させることができた。研究目標の達成のためにはこの分光器が従来型のシュタルク分光器と比べ、どの程度の感度的な優位性があるかを検討する必要がある。このため硫化カルボニル分子の各種の同位体の回転線を測定し、そのS/N比を調べた。その結果^<18>O^<13>CSという自然存在比が通常の^<16>O^<12>CSの10^<-5>の同位体種が充分なS/N比で観測でき、通常のシュタルク分光法に比べ少なくとも一桁は高感度であることが確かめられた。この結果にもとづき、極めて双極子モーメントの小さいファンデアワールス錯体であるAr...HCCHの回転遷移をマイクロ波帯で初めて観測し、精度の高い分子定数を決定した。金属原子を含む分子の分光の手がかりとして、比較的低温で気化し、取り扱いの容易を水銀原子をとり挙げ、そのファンデァワールス錯体の分光を試みた。水銀原子を含む錯体は水銀光増感反応との関連からも興味を持たれているものである。水銀原子のビームと充分子蒸気圧で生成するため300°C以上に加熱のできるパルスノズルを試作し、使用した。その結果、Hg...OCS、HgO、およびHg...Arの3種の分子(錯体)のスペクトルを観測することができた。Hg...Arは紫外スペクトルが知られていたが、純回転スペクトルは初めて観測されたものである。更にこれは、原子-原子のファンデァワールス錯体としてその純回転スペクトルの観測された初めての例である。他の2分子についてもこれまで分光学的データは全くなく、本研究で始めてその存在を明らかにしたものである。水銀を含むこれらの新分子種の分光の成功は、この分光法の新たな可能性を開いたものと考えられる。今後は、他の金属原子ビームの生成のための新しい工夫も試みる予定である。昨年度に引続き、今年度は、分光器の周波数範囲を更に下に広げ、4-18GHzを分光可能にした。また、観測された分子の双極子モ-メントの決定を行なうための電極を製作し、このための高圧電源も整備した。更に、パルスノズルの改良を行ない、ノズルの先端を500°C以上に加熱できるようにした。これらの改良に基づき、水銀を含むファンデアワ-ルス錯体の分光を更に進めた。昨年度は、Hg・Ar、Hg・H_2O、およびHg・OCSのスペクトルの観測に成功したが、今年度は更に、Hg・Kr、Hg・Xe、Hg・CO_2のスペクトルを新たに観測した。水銀と希ガスを含むファンデアワ-ルス錯体として、上記のように一連の分子種が観測できたことで、単にそれらの結合距離といった構造論的な結果だけではなく、ファンデアワ-ルス結合そのものの物理的な機構を精密に理解するのに貴重なデ-タが得られた。また、OCSと類似の分子であるCO_2との錯体も観測でき、これらの錯体の分子間ポテンシャルの決定と比較も可能になった。昨年すでに観測に成功していた、Hg・H_2O錯体の場合、錯体内で水分子が興味深い内部運動をしているのが見いだされた。
KAKENHI-PROJECT-63470007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63470007
フ-リエ変換マイクロ波分光法による有機金属分子の高分解能分光
類似の構造を持つ錯体として、すでに報告のあるAr・H_2Oとの比較が興味深い。上記の内部運動に関連して、更に対称性が高く、特異な内部運動をすると期待される錯体として、CH_4・HClを取り上げ、その分光を行なった。内部運動に起因する3つの状態のスペクトルを観測し、その性格、相対強度などを、群論に基づききれいに説明することができた。パルスノズルとして500°C以上に加熱することができるものが完成したので、水銀以外の金属原子も分光の対象になる。特に、電子スピンの残存する開殻のファンデアワ-ルス錯体は、きわめて興味深いと考えられるが、それらの分光が今後の課題である。
KAKENHI-PROJECT-63470007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63470007
変成岩ダイヤモンドの生成環境から探る地球表層から深部への新たな窒素循環
本研究では沈み込むスラブにおける窒素循環を明らかにすることを目的とする。特にスラブにおける重要な窒素のリザーバーであり、地球表層物質とされる変成岩ダイヤモンドに着目し、高温高圧実験による研究を進める。変成岩ダイヤモンドの窒素の供給源の候補として、堆積物有機物に着目し、スラブの環境下での化学反応の詳細とそれに伴う窒素含有量の変化を明らかにする。また、高温高圧実験を通じてC-O-H-N流体からのダイヤモンドの生成条件と、窒素の含有量の変化を明らかにすることで、変成岩ダイヤモンドの特徴である高い窒素含有量をもたらす要因を明解明し、変成岩ダイヤモンドの生成環境を検討する。本研究では沈み込むスラブにおける窒素循環を明らかにすることを目的とする。特にスラブにおける重要な窒素のリザーバーであり、地球表層物質とされる変成岩ダイヤモンドに着目し、高温高圧実験による研究を進める。変成岩ダイヤモンドの窒素の供給源の候補として、堆積物有機物に着目し、スラブの環境下での化学反応の詳細とそれに伴う窒素含有量の変化を明らかにする。また、高温高圧実験を通じてC-O-H-N流体からのダイヤモンドの生成条件と、窒素の含有量の変化を明らかにすることで、変成岩ダイヤモンドの特徴である高い窒素含有量をもたらす要因を明解明し、変成岩ダイヤモンドの生成環境を検討する。
KAKENHI-PROJECT-19K14808
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14808
糖尿病患者の蓄尿・排尿機能障害の早期発見・早期対処法の開発に関する研究
この研究は2年間(平成15年度および平成16年度)の計画であり、平成16年度は以下の研究を実施した。1.研究対象者への研究協力依頼と調査およびデータ収集の実施1)糖尿病治療の目的で療養中(外来通院中および入院中)の中高年女性に、協力依頼・同意を得る手順に沿って、研究目的、方法、倫理的配慮などの説明を実施し、同意が得られた研究対象者に調査票を配布し、排尿行動、2日間の排尿記録の記入等の依頼を実施した。2)上記1)の患者の診療記録から患者の同意を得て、治療内容、血糖のコントロール状況(ヘモブロビンA_<1c>)、糖尿病による神経障害の程度などに関するデータを収集した。3)加齢による変化を比較検討するために、糖尿病でない人で、普通に日常生活をしている関東・東海地方に在住の中高年女性を選定し、研究の目的、方法、倫理的配慮等を文書で説明し、同意が得られた研究対象者に調査票および採尿器具を送付し、排尿行動、2日間の排尿記録の記入等の依頼を実施した。2.糖尿病患者(2日間の排尿記録が終了した者)に、下部尿路検査装置による排尿状態の測定と、超音波膀胱容量測定装置を用いた残尿量測定を実施した。3.得られたデータを整理してコンピューターにインプットし、集計したデータを分析・解釈している。また、調査票の回収率を高めるために、調査への協力を再依頼した。4.糖尿病患者の蓄尿・排尿機能障害を早期に発見する視点、および対処方法を考察した。以上この研究は2年間(平成15年度および平成16年度)を要する計画であり、平成15年度は以下の研究を実施した。1.研究の概念枠組みの作成糖尿病患者の蓄尿・排尿機能障害の進行の特徴をMariann Lavaccaの「システム理論から見た感覚過程」の概念に基づいて「糖尿病性膀胱症患者の排尿過程」を作成した。2.調査用紙の選定・作成および信頼性・妥当性の検討研究の概念枠組みに沿って、尿意、排尿行動、排尿に関する刺激伝導状態(障害)等のデータを収集するための調査用紙の作成(または既存の調査用紙の選定)し、さらに、「膀胱の知覚に影響する要因」に関する情報を収集するための調査票を作成した。3.研究対象者の選定と協力依頼1)糖尿病治療の目的で外来通院中の中高年女性に、協力依頼・同意を得る手順に沿って、研究目的、方法、倫理的配慮などの説明を実施し、同意が得られた研究対象者に調査票を配布し、排尿行動、2日間の排尿記録の記入等の依頼を実施した。2)糖尿病患者の蓄尿・排尿機能の変化と、加齢による変化を比較検討するために、糖尿病でない人で、普通に日常生活をしている東京都内在住の中高年女性を選定し、研究の目的、方法、倫理的配慮等を説明し、同意が得られた研究対象者に調査票を配布し、排尿行動、2日間の排尿記録の記入等の依頼を実施した。4.糖尿病患者(2日間の排尿記録が終了した者)に、下部尿路検査装置による排尿状態の測定と、超音波膀胱容量測定装置を用いた残尿量測定を実施した。5.全研究対象者の調査・測定が終了した時点(平成16年7月の予定)でデータを分析・解釈するために、得られたデータを整理し、コンピューターにインプットしている。以上この研究は2年間(平成15年度および平成16年度)の計画であり、平成16年度は以下の研究を実施した。1.研究対象者への研究協力依頼と調査およびデータ収集の実施1)糖尿病治療の目的で療養中(外来通院中および入院中)の中高年女性に、協力依頼・同意を得る手順に沿って、研究目的、方法、倫理的配慮などの説明を実施し、同意が得られた研究対象者に調査票を配布し、排尿行動、2日間の排尿記録の記入等の依頼を実施した。2)上記1)の患者の診療記録から患者の同意を得て、治療内容、血糖のコントロール状況(ヘモブロビンA_<1c>)、糖尿病による神経障害の程度などに関するデータを収集した。3)加齢による変化を比較検討するために、糖尿病でない人で、普通に日常生活をしている関東・東海地方に在住の中高年女性を選定し、研究の目的、方法、倫理的配慮等を文書で説明し、同意が得られた研究対象者に調査票および採尿器具を送付し、排尿行動、2日間の排尿記録の記入等の依頼を実施した。2.糖尿病患者(2日間の排尿記録が終了した者)に、下部尿路検査装置による排尿状態の測定と、超音波膀胱容量測定装置を用いた残尿量測定を実施した。3.得られたデータを整理してコンピューターにインプットし、集計したデータを分析・解釈している。また、調査票の回収率を高めるために、調査への協力を再依頼した。4.糖尿病患者の蓄尿・排尿機能障害を早期に発見する視点、および対処方法を考察した。以上
KAKENHI-PROJECT-15659522
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15659522
組織培養による生体軟組織の力学的適応現象の解明
力学的負荷に対する生体軟組織の応答を綿密に調べるために,腱・靱帯と血管それぞれを長期間培養できる装置を開発した.これらを用いることによって,生体軟組織の適応と再構築の現象をin vitroで詳細に観察し,そのメカニズムを明らかにする研究が可能になった.また,ポリフェノールの一種であるヘスペリジンをin vivoで家兎に長期間投与すると,大腿動脈の収縮特性が変化することが明らかになったので,開発した血管培養装置を用いることにより,そのメカニズムの解明が可能になった.力学的負荷に対する生体軟組織の応答を綿密に調べるために,腱・靱帯と血管それぞれを長期間培養できる装置を開発した.これらを用いることによって,生体軟組織の適応と再構築の現象をin vitroで詳細に観察し,そのメカニズムを明らかにする研究が可能になった.また,ポリフェノールの一種であるヘスペリジンをin vivoで家兎に長期間投与すると,大腿動脈の収縮特性が変化することが明らかになったので,開発した血管培養装置を用いることにより,そのメカニズムの解明が可能になった.本研究では形態や機能が互いに大きく異なる心臓と血管,腱・靭帯を取り上げ,生体内でしか観察されていない力学的負荷によって引き起こされる組織のリモデリングを,摘出した臓器や組織を用いて,in vitroで発生させる。この手法により,体内で組織に作用しているホルモンなどの種々の液性因子や神経活動の影響を完全に除外して,力学的な負荷がおよぼす効果のみを検討する。本年度では組織培養装置の作製を進めている。腱・靱帯を長期培養する装置では,細長く切り裂いた組織をガラス製試験管内にて細胞培養液を用いて培養する。試験管内において組織の両端をチャックで把持し,片側に重りを取り付けて反対側を試験管に取り付けることにより,長期にわたって一定の力学的負荷を組織に与える。一方,心臓を培養する装置は大動脈にカニューレを,血管培養装置は血管の両端にカニューレを装着し,血管内腔に培養液を加圧しながら循環させるため,腱・靱帯の培養装置に比べて複雑である。特に内圧と流量が一定になるように,培養液を加圧する程度とポンプ回転数あるいは末梢抵抗を制御することが難しく,その方法の模索を続けている。そのため腱・靱帯の培養装置については現在試作段階にあるが,心臓・血管の培養装置については作成に必要な器具を揃えるのにとどまり,本年度中に試作に着手することができなかった。今後は心臓・血管組織の培養装置についても試作し,実験動物より摘出した組織に力学的負荷を与えて培養する予定である。本研究では形態や機能が互いに大きく異なる心臓と血管,腱・靭帯を取り上げ,力学的負荷によって引き起こされる組織リモデリングの現象を,摘出した臓器や組織を用いて,in vitroで実現する。この手法により,体内で組織に作用しているホルモンなどの種々の液性因子や神経活動の影響を完全に除外して,力学的な負荷がおよぼす効果のみを検討する。本年度は組織培養装置の設計・作製を進めた。腱・靱帯を長期培養する装置では,細長く切り裂いた組織の両端をチャックで把持し,試験管内において片側に重りを取り付けて反対側を試験管に取り付けることにより,長期にわたって一定の力学的負荷を組織に与えられる装置を試作した。また,血管培養装置については血管内腔に培養液を一定の内圧と流量で循環することができる装置を試作した。設定した内圧と流量になるようにマスフローコントローラを使用し、2個のピエゾバルブの開度を自動制御する方法を使用した。今後は実験動物より摘出した腱・靱帯・血管の組織に力学的負荷を与えて培養し,培養中の力学条件が組織の力学的特性におよぼす影響を検討する予定である。血管培養装置によりヘスペリジン(ビタミンP)の長期投与の効果を検討するための予備実験として,本年度では家兎に16週間ヘスペリジンを摂取させたときの大腿動脈の力学的特性の変化を検討した。その結果,大腿動脈の見かけの硬さ(スティフネスパラメータ)は変化せず,ノルエピネフリンによる血管収縮がヘスペリジンの投与により抑制されることがわかった。本研究では形態や機能が互いに大きく異なる心臓と血管,腱・靭帯を取り上げ,力学的負荷によって引き起こされる組織リモデリングの現象を,摘出した臓器や組織を用いて,in vitroで実現する。この手法により,体内で組織に作用しているホルモンなどの種々の液性因子や神経活動の影響を完全に除外して,力学的な負荷がおよぼす効果のみを検討することを目的とした。本年度は昨年度に引き続き,組織培養装置の設計・作製を進めた。血管培養装置についてはマスフローコントローラとピエゾバルブを使用し、血管内腔に培養液を一定の内圧と流量で循環することができる装置を試作した。試作した培養装置の性能を検証し、100mmHgの内圧を誤差2%以内で、5mL/minの流量を誤差4%以内で、7日間維持できることがわかった。さらに家兎より摘出した総頸動脈を装置に取り付け、上記の一定流量・一定圧力の条件で、細菌によるコンタミネーションを起こさずに動脈内に培養液を7日間灌流し続けることができた。年度初めの予定では当年度では腱・靱帯を長期培養する装置の改良を予定していなかったが,昨年度に試作した装置には不具合があることがわかったため,当年度において大幅に改良し,3種類の培養装置を新たに試作した。前年度の試作機に類似して重りを腱試料に取り付けて一定の力学的負荷を与えられる装置を2種類,力学的負荷を与えての培養中に力学的特性を測定できるように引張試験機に培養装置を取り付けた装置を1種類試作した。
KAKENHI-PROJECT-21500418
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500418
組織培養による生体軟組織の力学的適応現象の解明
そして家兎膝蓋腱より切り出した0.3mm幅の試料13本の培養を前者2種類の試作機で3通りの力学的負荷条件で培養を試みたが,7本の試料が培養中に伸びて破断してしまい、培養に成功しなかった。後者の試作機での培養には至らなかった。また、本年度予定していた糖転移ヘスペリジンの代謝物が大腿動脈の力学的特性におよぼす影響の検討については実施に至らなかった。
KAKENHI-PROJECT-21500418
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500418
口腔腫瘍におけるパールカン遺伝子スプライシング様式の意義
本研究課題は、申請者が発見した二つのパールカン・スプライシング亜型の細胞特異的、細胞増殖過程特異的に発現する可能性を探り、生体内での生理学的ならびに病理学的意義の解明につなげるものである。パールカンドメインIとIIの間に新規エクソンが挿入される第一スプライシング亜型では、そのエクソン部分の17アミノ酸の配列においてヒトとマウスで二つのアミノ酸が異なっている、今回、新たにヒトとマウスの新規エクソン部分のポリペプチド鎖全長を合成し、それぞれ二羽のウサギに免疫しポリクローナル抗体を作製した。これらの抗体をもちいて、スプライシング亜型の組織および細胞内局在様式を免疫組織化学的に解析するとともに、免疫沈降法とウェスタンブロット法を組み合わせ生化学的にスプライシング亜型の発現を解析した。以前に作製した抗体で得られた染色結果と同様に主に基底膜に認められる野生型とは異なり、第一亜型では毛細血管に特異的な染色パタンが確認された。また、軟骨組織では軟骨小腔に特異的な染色が認められた。さらに、これらの抗体をもちいたマウス各臓器における第一亜型のタンパク質発現の解析では、400kDa以上の分子量をもち野生型と同じ挙動を示すバンドが確認され、その発現量がRT-PCRによるmRNA発現の解析結果とよく一致することが示された。また、軟骨組織をもちいてスプライシング亜型のin-situハイブリダイゼーションを行った。結果は免疫組織化学的解析の結果と一致し、スプライシング亜型のmRNAは軟骨細胞に特異的に発現することが示された。本研究課題は、申請者が発見した二つのパールカン・スプライシング亜型の細胞特異的、細胞増殖過程特異的に発現する可能性を探り、生体内での生理学的ならびに病理学的意義の解明につなげるものである。パールカンドメインIとIIの間に新規エクソンが挿入される第一スプライシング亜型では、そのエクソン部分の17アミノ酸の配列においてヒトとマウスで二つのアミノ酸が異なっている、今回、新たにヒトとマウスの新規エクソン部分のポリペプチド鎖全長を合成し、それぞれ二羽のウサギに免疫しポリクローナル抗体を作製した。これらの抗体をもちいて、スプライシング亜型の組織および細胞内局在様式を免疫組織化学的に解析するとともに、免疫沈降法とウェスタンブロット法を組み合わせ生化学的にスプライシング亜型の発現を解析した。以前に作製した抗体で得られた染色結果と同様に主に基底膜に認められる野生型とは異なり、第一亜型では毛細血管に特異的な染色パタンが確認された。また、軟骨組織では軟骨小腔に特異的な染色が認められた。さらに、これらの抗体をもちいたマウス各臓器における第一亜型のタンパク質発現の解析では、400kDa以上の分子量をもち野生型と同じ挙動を示すバンドが確認され、その発現量がRT-PCRによるmRNA発現の解析結果とよく一致することが示された。また、軟骨組織をもちいてスプライシング亜型のin-situハイブリダイゼーションを行った。結果は免疫組織化学的解析の結果と一致し、スプライシング亜型のmRNAは軟骨細胞に特異的に発現することが示された。
KAKENHI-PROJECT-15791039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15791039
血流速度ベクトル空間分布計測のための超音波三次元ドプラ法の開発
現在、医療計測に幅広く用いられているドプラ血流計は、プローブ方向の成分しか表示できないため、実際とは異なる見かけ速度分布を示し、誤解を招く恐れがある、本研究ではこの様な状態のブレークスルーとして三次元速度ベクトルを実時間で測定可能とする手法を提案した。1.本手法は、近い将来、実用化が期待される二次元アレイプローブの活用を想定し、ドプラ法の原理を三次元に拡張し、対称に配置された複数の受信振動からの信号を並列に処理することで、空間内の任意の点における速度ベクトルの直交する三成分を得ることができる。また、現在の装置で用いられている技術の拡張として、実用化が容易という利点がある。2.本手法を装置として実現する際に制約条件として考えられる、開口面の大きさ、送受信点の配置などが、測定感度や精度に及ぼす影響を理論的考察と音場のシミュレーションにより評価した。また、円形プローブを組み合わせ、二次元アレイプローブに等価的な送受信系を用いた基礎実験装置により、ゴム管内を流れる水流の速度を測定し、設定値との誤差を評価した。3.さらに、空間内の三次元的な流れを、術者が把握し易い形で表示する手法を提案し、流れの分布モデルを用いて視認性の高さを検証した以上により、提案した三次元血流速度ベクトルの計測法を実現化する場合の標準的な仕様と、考慮すべき問題点、さらに実用化の可能性について示すことができた。現在、医療計測に幅広く用いられているドプラ血流計は、プローブ方向の成分しか表示できないため、実際とは異なる見かけ速度分布を示し、誤解を招く恐れがある、本研究ではこの様な状態のブレークスルーとして三次元速度ベクトルを実時間で測定可能とする手法を提案した。1.本手法は、近い将来、実用化が期待される二次元アレイプローブの活用を想定し、ドプラ法の原理を三次元に拡張し、対称に配置された複数の受信振動からの信号を並列に処理することで、空間内の任意の点における速度ベクトルの直交する三成分を得ることができる。また、現在の装置で用いられている技術の拡張として、実用化が容易という利点がある。2.本手法を装置として実現する際に制約条件として考えられる、開口面の大きさ、送受信点の配置などが、測定感度や精度に及ぼす影響を理論的考察と音場のシミュレーションにより評価した。また、円形プローブを組み合わせ、二次元アレイプローブに等価的な送受信系を用いた基礎実験装置により、ゴム管内を流れる水流の速度を測定し、設定値との誤差を評価した。3.さらに、空間内の三次元的な流れを、術者が把握し易い形で表示する手法を提案し、流れの分布モデルを用いて視認性の高さを検証した以上により、提案した三次元血流速度ベクトルの計測法を実現化する場合の標準的な仕様と、考慮すべき問題点、さらに実用化の可能性について示すことができた。現在、血流計測で用いられているドプラ断層法が、一断面内での視線方向の血流速度を表示するのに対し、本研究では三次元空間内の任意の点において、血流の三次元速度ベクトルをリアルタイムで測定し、その分布状態を医師が認識容易な形式で表示するシステムの開発を目的としている。このため、初年度においては以下のような項目について検討した。1.三次元速度ベクトル計測法の基礎理論の検討超音波計測の利点である実時間性を保ち、臨床用装置としての実用化が容易となることを重視した。このため、超音波送受信のプローブとしては格子状に細分割された二次元アレイ状の振動子を想定した。さらに電子スキャンと電子フォーカス機能により、アレイ上での送信点および受信点の選択、および焦点の方向と距離は任意に設定できるものとした。次に、この二次元アレイ送受信系の特徴を生かしてドプラ法の原理を三次元に拡張し、リアルタイムで速度ベクトルの直交する3成分の測定が実現できる手法を考案した。2.測定システムにおける各パラメータ等が測定精度に及ぼす影響の検討アレイ素子のピッチ、送受信の開口面の大きさ、送受信点の配置など測定システムの各パラメータおよび減衰によるS/N比の低下などが、測定点の空間分解能や速度の測定誤差に及ぼす影響を、理論的考察およびシミュレーションにより評価した。これらは概ね当初の計画に沿っており、初年度の研究目標は達成できたものと考える。本年度は、前年度行った測定法に関する理論的な検討結果をもとに、以下の事項について検討した。1.速度ベクトル空間分布の表示法の検討血流の測定結果は、速度ベクトルの3成分を、測定点に対応する三次元空間内の分布として表示する必要がある。このため、流れの状態を医師などが把握し易い形で表示することも、臨床応用の際は重要になる。ここでは、三次元空間内に指定された任意の断面について、断面上の成分を図形的にまた、断面に垂直な成分を色で表現する手法を考案した。さらに幾つかの模擬的な流れパターンに対して、視認性の高さを検証した。2.基礎実験システムによる検討本研究で提案した手法は、二次元アレイ状の超音波振動子を用いることを前提としている。しかし、現状ではまだ二次元アレイ振動子の市販品はなく、新たに製作する場合、その駆動系も併せると、予想よりも多くの時間と費用を必要とすることが判明した。このため、固定焦点の単一円板からなる超音波プローブを5つ組み合わせて、送受信系を構成した。これは、測定点が与えられた場合の、アレイ面内における送信および受信の振動子素子の組合せに対応している。また、水中や組織ファントム内に置かれたシリコンチューブ内に微小気泡を含む水を環流させ、疑似血流を作成した。
KAKENHI-PROJECT-05680755
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680755
血流速度ベクトル空間分布計測のための超音波三次元ドプラ法の開発
数MHzの振動子を用い、流速や送受信用振動子の位置関係を様々に変えて、気泡からの散乱波を受信し、速度ベクトルの算出を試みた。その結果、高いS/N比が得られる場合、十分な精度で血流ベクトルの計測が可能で、分解能などの実験値は論的解析結果に対応すること、また測定精度は振動子面から血管までの介在組織による減衰に依存することが示された。以上により、当初の研究目的は概ね達成されたと思われる。
KAKENHI-PROJECT-05680755
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680755
有界領域の値分布論
代数的極小曲面のガウス写像の除外値及び全分岐値数の評価の新しい手法に取り組み1.基本領域上でのガウス写像の次数と曲面の位相量の比Rという不変量を発見し,周期条件を反映すると,Rが1より真に大きくなることがわかり,全分岐値数に対する最良の結果を得た.除外値数の評価には至っていない.2.そこで普遍被覆曲面を考え,円板上のネバンリンナ理論の開発に挑戦した.二つの大きな問題の一つ目であるコーンフォッセン不等式の評価につながる量κの評価を行い,候補数を見出した.3.極小曲面の特殊性からガウス写像のジェット空間での接近関数,個数関数を考え,対数微分の補題を適用することにより,次のステップに進んだ.代数的極小曲面のガウス写像の除外値の最大個数が2である事の証明を進めている.従来の基本領域に限った議論では進展が望めないので,双曲円板にすべてをリフトし,超越的な方法で議論している.現在まで得られているのは次の成果である.1.閉じた双曲型リーマン面上に拡張できる穴あきリーマン面上の有理形関数を,単位円板にリフトする.rを1に十分近い数とするとき,半径rの円板に対して,個数関数N(r),接近関数m(r),そしてこれらの和で与えられる高さ関数T(r)を考える.ここまでは複素平面上の従来のNebanlinna理論と同様である.高さ関数のrに伴う増大度の評価はNevanlinna理論でもっとも重要な箇所であるが,円板上でこれを行う際には,この増大度のある意味での上限を与える定数κを求めねばならない.穴あき双曲型完備リーマン面を円板にリフトすると,その基本領域を基本群で変換した無限個のコピーが現れ,rによりカスプ部分が切り取られるが,その面積変化の評価を双曲計量とFubini-Study計量の比で行う事が必要となる.これは古典的なCohn-Vossenの不等式の集合版であるが,種数と穴の数が任意の穴あきリーマン面に対するユニバーサルな評価が必要であり,通常の議論では不可能である.それを可能にするための議論に多くの労力をさいている所である.2.これを解決したあと,LLDと呼ばれる対数微分不等式の分解を用いて,任意に与えられたディバイザへの接近の度合いを対数微分を用いて評価する.3.最終的にもっとも困難な部分は,極小曲面を実現する周期条件を使う箇所に現れる.ここでは周期を指数関数の肩にのせ,実周期が消える事をフルに用いる事が必須となる.1,2,3のステップはいずれも概要が出来ているが,細部をつめる課題が残っており,これを解決するのが目的である.目標である「有限全曲率をもつ完備極小曲面Mのガウス写像の除外値数が2でおさえられる」という予想の証明を進めている.穴あきリーマン面上で定義されるMの普遍被覆が複素円板Dである場合が本質的であり,D上でのNevanlinna理論の構築が必要である.しかし,Mの被覆変換群は双曲等長群であり,ユークリッド計量との相性は非常に悪い.円板の半径をユークリッド距離tで表して,t→1とするとき,双曲面積の増大度と,ガウス写像から誘導されるFubini-Study計量面積比の増大度の比を評価しなければならない.そこで基本領域が半径tの円板で切り取られる部分の両面積を比較し,t→1のときにこの比をドミネイトする量を計算すると,自然対数の底eに近い値が得られる.これをもとに高さ関数の計数変換を行って,複素平面上のNevanlinna理論と同様の「有限除外集合」の概念を確立し,その外での評価を得る事ができる.最終的にはに極小曲面の周期条件を反映させて,除外値数の評価につながるNevanlinnaの第2基本定理を導くことになる.ここでは対数微分の補題を有効に使い,Wierstrass表現に現れる正則形式も活用して,接近関数と個数関数の評価を行う.以上に述べたいずれのステップも非常に難解であるが,1993年に構成した除外値数2の様々な極小曲面の実例を手がかりとして,また,2005年に得た基本領域での面積比Rの評価をヒントにして研究を進めている.代数的極小曲面のガウス写像の除外値及び全分岐値数の評価の新しい手法に取り組み1.基本領域上でのガウス写像の次数と曲面の位相量の比Rという不変量を発見し,周期条件を反映すると,Rが1より真に大きくなることがわかり,全分岐値数に対する最良の結果を得た.除外値数の評価には至っていない.2.そこで普遍被覆曲面を考え,円板上のネバンリンナ理論の開発に挑戦した.二つの大きな問題の一つ目であるコーンフォッセン不等式の評価につながる量κの評価を行い,候補数を見出した.3.極小曲面の特殊性からガウス写像のジェット空間での接近関数,個数関数を考え,対数微分の補題を適用することにより,次のステップに進んだ.Ossermanは,完備だが有限全曲率をもつ極小曲面(代数的極小曲面という=穴明きリーマン面上で定義される)のガウス写像の除外値集合が3点以下であることを代数的に示したが,除外値が3の代数的極小曲面は見つかっておらず,除外値は高々2点であろうという予想があり,本研究課題ではこの問題への挑戦を行っている.
KAKENHI-PROJECT-23654021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23654021
有界領域の値分布論
代数的極小曲面のガウス写像の値分布についての代数的議論を擬代数的極小曲面に拡張したKawakami-Kobayashi-Miyaoka: "The Gauss map of pseudo algebraic minimal surfaces" (2006, Forum Mathmaticum)において,我々は値分布論における分岐点,分岐値の果たす役割の大きさを明らかにした.ここからの示唆として,代数的議論をネバンリンナ理論に拡張する際,分岐点,分岐値の果たす役割に着目しなければならない.座標変換の影響をどう評価するかなどの大きな問題があるが,上記論文の手法をモデルとして,普遍被覆上の議論を推進している.難点は,被覆円板上の自然な複素座標と,曲面の穴の回りの複素座標は全く異なるという認識をしなければならないことである.実際被覆円板上の自然な複素座標は穴が理想境界に対応しているため,穴の回りで曲面を無限回覆っていて,通常の曲面の座標ではない.こうした困難を取り除くには指数関数や対数関数を用いるアイディアが必要となり,まだ決定的な結果には至っていない.双曲幾何でよく知られているtessellationのグラフィックはこうした議論をする際の大きな手助けになる.こうしたいわば実験的手法,観点からも問題に取り組むことを試みている.より理論的に,我々はまだ1次のジェット空間しか考えていないが,より高次のジェット空間を用い,その幾何学的な意味も考えているところである.代数的極小曲面のガウス写像の除外値問題に取り組んできた.基本領域における代数的議論によりある不変量を発見し,これを用いることによりOssermanの従来の結果に加え,未知の全分岐値数の評価を得て,本研究課題へのきっかけとなる主要論文を発表している.ここでは基本領域の面積をガウス写像の引き戻しによる特異Fubini-Stud計量で測ったものA(FS)と,双曲計量で測ったオイラー数の絶対値で与えられるものA(hyp)との比Rが重要な役割をはたしている.全分岐値数という除外値数よりも精密な数νは上から2+2/Rで抑えられ,かつ周期条件からR>1がわかるので,結局ν<4を得て,代数的極小曲面のガウス写像の除外値数が3以下であること,さらに全分岐値数が4より小さい数で抑えられることがわかった.また,宮岡-佐藤曲面で,ν=2.5を与えるものが存在するので,全分岐値数は整数になるとは限らず,従って除外値数の評価とは異なる評価が必要なことが新たにわかっている.以上のことをふまえ,極小曲面個別の評価でなく,種数や穴の数によらない評価を与えるため,現在すべてのデータを普遍被覆面上の考察に拡張することによる,除外知数の最終評価を目指している.微分幾何学代数的極小曲面のガウス写像の除外値の個数が2である事の証明が進んでいる.非常に難解なため,緻密な議論が必要であり,関数論,曲面論,積分論,双曲型等長群作用など多くの知識とアイディアを要するが,おおむねの道筋は既にかきあげている.これを一つ一つ確認する作業を遂行中である.執筆中の論文は100ページを越えているが,細部の詰めが必要なので,まだ時間がかかりそうである.共同研究者の小林亮一氏と頻繁にやり取りするよう心がけている.具体的に構成された宮岡-佐藤曲面の検証は大きなヒントを与えている.ガウス写像の次数,オイラー数,さらに被覆法で構成される場合の不変量が明示的に与えられているので,基本領域での情報が十分把握できる.これを普遍被覆上の議論と対応付け,基本群作用の影響を配慮しつつ論じている.本課題に対する先行研究である小林亮一氏の議論でつめるべき箇所は,特性関数の有限性の上界を与えるκの評価を基本領域が円板で切り取られる部分の面積評価ではかること,そして,これらを用いるディフェクトの評価,最後に周期条件をどう使うか,と問題点が明らかになっている.
KAKENHI-PROJECT-23654021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23654021
男子サッカー選手におけるGroin Pain発生要因の多角的検討
本研究の目的は、男子サッカー選手に発生率が高いとされる鼠径周辺部痛(GP)発生の原因について、発育に伴う骨の器質的変化および特徴、股関節筋力、股関節可動域、キック動作のキネマティクスおよびキネティクスから明らかにすることである。2018年度は、社会人男子サッカー選手および大学男子サッカー選手20名を対象に、放射状MRI撮影によるα角の計測および股関節MRI撮影・大腿骨顆部MRI撮影による大腿骨前捻角・寛骨臼前捻角の計測を行った。また、本年度はHAGOSを用いたアンケート、等速性筋力測定装置を用いた180°・300°/secそれぞれの股関節筋力(内・外旋、内・外転)、股関節関節可動域測定、3次元動作解析装置を用いたキック動作の測定を行った。特にキック動作においては、先行研究で散見される正面へのキックだけではなく、フリーキックやセンタリングなどで多く使われる、左右の的を狙ったインフロントキックの計測も実施した。このデータを解析することにより、GPの既往の有・無両群におけるキック動作の特徴やインパクト時の重心位置の特徴、骨形態との関連性などあらたな知見が得られることが期待できる。また、第44回日本整形外科スポーツ医学会学術大会にて社会人サッカー選手におけるGP既往有無とMRI撮影による大腿骨前捻角の関係について成果を発表した。さらに、大腿骨前捻角に加え、寛骨臼前捻角およびα角の知見を加えた成果を第45回日本整形外科スポーツ医学会へ演題登録を行った。社会人男子サッカー選手に加え、大学男子サッカー選手50名から研究への参加に同意が得られたが、チーム関係者と選手との連絡・調整ミスもあり、研究設定日に研究を実施できなかったことが大きな原因の一つである。また、加えて高校男子サッカー選手30名からも研究参加の同意が得られたが、日程が合わず研究が実施できなかったことも理由として挙げられる。さらに、研究への参加条件として別施設でのMRI撮影を挙げており、MRI撮影可能な日程も診療等の都合によりかなり限局されたことも要因として考えられる。2019年度は、早期から対象チームへの研究協力要請を行い、日程調整等の問題が生じないよう努める。また、ユース年代(中学生)の対象者の確保が未だ行えていないため、県内外問わず広く研究への協力要請を進めていき少しでも多くのデータ蓄積を目指す。また、成果報告については、現段階で得られたデータを早急に解析し、学会発表・論文作成へと繋げる。鼠径周辺部痛(GP)は、男子サッカー選手の1018%に発生し、治療に難渋するスポーツ傷害の一つである。近年ではアスリートに発生するGPの原因の一つとして、大腿臼蓋インピンジメント(FAI)が注目され、サッカー選手はFAIの罹患率が非常に高いことが報告されている。しかし、男子サッカー選手のGP発生の原因については、未だ不明な点が多く、ゴールドスタンダードな診断や治療の確立には至っていない。本研究の目的は、男子サッカー選手のGP発生の原因について筋力・可動域などの身体機能、発育・競技動作に伴う骨の器質的変化、そしてキック動作時の股関節周囲の筋活動および関節モーメントに着目し、明らかにすることである。これにより、男子サッカー選手をはじめとした多くのアスリートに発生するGPの治療法や予防法を確立する一助となることが期待できる。平成29年度は、社会人サッカー選手10名を対象に研究を実施した。測定項目は、アンケートによる情報収集、股関節可動域測定、股関節の放射状MRI撮影(α角、大腿骨前捻角、関節唇損傷の有無、恥骨結合炎の有無)とした。GPの既往有無による2群において、大腿骨前捻角に特徴的な傾向がみられた。この研究成果を第44回日本整形外科スポーツ医学会学術大会へ演題登録を行った。また、キック動作の解析に必要なビデオ式3次元動作解析装置を購入し、測定結果の信頼性・妥当性を向上させることを目的に予備実験を繰り返し実施し、詳細な測定方法および解析方法の検討を行った。予備実験および研究計画の再検討、倫理審査委員会の承認等に時間を要したため、研究開始が遅れた。また、それに加えて研究開始時期が、対象チームの試合や練習の日程および退団・入団等の時期と重なったため、研究日程の調整も困難となりデータ数の減少に繋がった。また、ビデオ式3次元動作解析装置の納品時期が遅れたため、それに伴い予備実験等の開始が遅れたことも原因として挙げられる。本研究の目的は、男子サッカー選手に発生率が高いとされる鼠径周辺部痛(GP)発生の原因について、発育に伴う骨の器質的変化および特徴、股関節筋力、股関節可動域、キック動作のキネマティクスおよびキネティクスから明らかにすることである。2018年度は、社会人男子サッカー選手および大学男子サッカー選手20名を対象に、放射状MRI撮影によるα角の計測および股関節MRI撮影・大腿骨顆部MRI撮影による大腿骨前捻角・寛骨臼前捻角の計測を行った。また、本年度はHAGOSを用いたアンケート、等速性筋力測定装置を用いた180°・300°/secそれぞれの股関節筋力(内・外旋、内・外転)、股関節関節可動域測定、3次元動作解析装置を用いたキック動作の測定を行った。特にキック動作においては、先行研究で散見される正面へのキックだけではなく、フリーキックやセンタリングなどで多く使われる、左右の的を狙ったインフロントキックの計測も実施した。
KAKENHI-PROJECT-17K18312
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18312
男子サッカー選手におけるGroin Pain発生要因の多角的検討
このデータを解析することにより、GPの既往の有・無両群におけるキック動作の特徴やインパクト時の重心位置の特徴、骨形態との関連性などあらたな知見が得られることが期待できる。また、第44回日本整形外科スポーツ医学会学術大会にて社会人サッカー選手におけるGP既往有無とMRI撮影による大腿骨前捻角の関係について成果を発表した。さらに、大腿骨前捻角に加え、寛骨臼前捻角およびα角の知見を加えた成果を第45回日本整形外科スポーツ医学会へ演題登録を行った。社会人男子サッカー選手に加え、大学男子サッカー選手50名から研究への参加に同意が得られたが、チーム関係者と選手との連絡・調整ミスもあり、研究設定日に研究を実施できなかったことが大きな原因の一つである。また、加えて高校男子サッカー選手30名からも研究参加の同意が得られたが、日程が合わず研究が実施できなかったことも理由として挙げられる。さらに、研究への参加条件として別施設でのMRI撮影を挙げており、MRI撮影可能な日程も診療等の都合によりかなり限局されたことも要因として考えられる。研究方法等については平成29年度に確立できたため、平成30年度は早期から研究を開始し、社会人男子サッカー選手の対象者数を増加し、データを蓄積する。また、昨年度の測定項目に加え、股関節筋力、キック動作の解析を行い多角的な検討を行う。同時に昨年度から蓄積したデータを用いて比較検討を行い、社会人男子サッカー選手のGPの原因について学会への演題登録を行う。また、本年度は、中学・高校年代の選手についても同様にデータを蓄積するため、各学校やクラブチームへの研究協力要請を積極的に実施し、日程調整等を十分に行った上で、データを蓄積する。2019年度は、早期から対象チームへの研究協力要請を行い、日程調整等の問題が生じないよう努める。また、ユース年代(中学生)の対象者の確保が未だ行えていないため、県内外問わず広く研究への協力要請を進めていき少しでも多くのデータ蓄積を目指す。また、成果報告については、現段階で得られたデータを早急に解析し、学会発表・論文作成へと繋げる。平成29年度は予定していた対象者数に満たなかったため、人件費・謝金、MRI撮影料等が予定を下回り、次年度使用額が発生した。次年度は、対象者に対する謝金、測定に伴う人件費、MRI撮影料に使用する計画である。2018年度は予定していた対象数に満たなかったため、人件費・謝金・MRI撮影料等が予定を下回り、当該年度使用額に満たなかった。2019年度は、対象者数の更なる蓄積を目指し、人件費、謝金、MRI撮影料に使用する予定である。また、研究に関わる消耗品や国際学会への演題登録の際の英語抄録のネイティブチェックに使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K18312
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18312
脈波伝搬速度を用いた心室エラスタンスの推定
左心室容積の正確な測定や負荷条件を大きく変える必要のない全く新しい心室エラスタンスの測定法として心室内脈波伝搬速度を用いる方法が可能であるかどうかを動物実験で調べた。心室エラスタンスが正確に評価でき脈波伝搬速度による推定との比較対照ができるイヌ摘出交叉血液潅流心で等容収縮下で実験した。心室基部より小容積パルスを導入しこれによる左心室圧の変化を左心室内に挿入したカテ先血圧計の2ヶ所のセンサーで測定した。心室内脈波伝搬速度は両センサー間の左室圧変化の立ち上がり時間差とセンサー間距離(既知)から求めた。パルス導入の時期を変えることにより心周期の各時点での伝搬速度を求めた。この方法を用い(1)拡張期から収縮期に至る心室エラスタンス野変化を反映する伝搬速度の変化が得られるか、(2)収縮末期の伝搬速度が心収縮性の増加(ドブタミン冠注)・減少(プロプラノロール冠注)を反映して変化するか、(3)左心室容積(前負荷)を変化させた時の影響を評価した。その結果、(1)収縮末期での伝搬速度は拡張期に比べ10倍近く変化した(n=8)。拡張期は左室圧変化の変化が少なく伝搬速度測定の精度が低下した。(2)心収縮性の変化に伴う収縮末期エラスタンスと収縮末期での伝搬速度の2乗(理論的にはエラスタンスと速度の2乗が比例する)は直線相関した(r^2=0.731.00,n=8)。この直線と心周期内瞬時エラスタンス-伝搬速度(2乗)関係(1)はほぼ一致した。全データをプールしたときの相関係数はr^2=0.81であった。(3)同じ収縮末期エラスタンスで心室容積を増加(平均25%)させても伝搬速度(2乗)はほぼ変化しなかった(NS,-0.60%)。以上のように心室内脈波伝搬速度によって心室エラスタンスを簡便に評価することができた。理論的には前負荷の影響を考慮する必要があるが、これを最小限にするために心室の壁厚内径比などによる補正が必要かさらに検討を継続する。左心室容積の正確な測定や負荷条件を大きく変える必要のない全く新しい心室エラスタンスの測定法として心室内脈波伝搬速度を用いる方法が可能であるかどうかを動物実験で調べた。心室エラスタンスが正確に評価でき脈波伝搬速度による推定との比較対照ができるイヌ摘出交叉血液潅流心で等容収縮下で実験した。心室基部より小容積パルスを導入しこれによる左心室圧の変化を左心室内に挿入したカテ先血圧計の2ヶ所のセンサーで測定した。心室内脈波伝搬速度は両センサー間の左室圧変化の立ち上がり時間差とセンサー間距離(既知)から求めた。パルス導入の時期を変えることにより心周期の各時点での伝搬速度を求めた。この方法を用い(1)拡張期から収縮期に至る心室エラスタンス野変化を反映する伝搬速度の変化が得られるか、(2)収縮末期の伝搬速度が心収縮性の増加(ドブタミン冠注)・減少(プロプラノロール冠注)を反映して変化するか、(3)左心室容積(前負荷)を変化させた時の影響を評価した。その結果、(1)収縮末期での伝搬速度は拡張期に比べ10倍近く変化した(n=8)。拡張期は左室圧変化の変化が少なく伝搬速度測定の精度が低下した。(2)心収縮性の変化に伴う収縮末期エラスタンスと収縮末期での伝搬速度の2乗(理論的にはエラスタンスと速度の2乗が比例する)は直線相関した(r^2=0.731.00,n=8)。この直線と心周期内瞬時エラスタンス-伝搬速度(2乗)関係(1)はほぼ一致した。全データをプールしたときの相関係数はr^2=0.81であった。(3)同じ収縮末期エラスタンスで心室容積を増加(平均25%)させても伝搬速度(2乗)はほぼ変化しなかった(NS,-0.60%)。以上のように心室内脈波伝搬速度によって心室エラスタンスを簡便に評価することができた。理論的には前負荷の影響を考慮する必要があるが、これを最小限にするために心室の壁厚内径比などによる補正が必要かさらに検討を継続する。
KAKENHI-PROJECT-06770533
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770533
ジアリールエテン単結晶のフォトメカニカル機能
フォトメカニカル機能を有するジアリールエテン分子結晶材料を創製し、その光誘起変形機構を明らかにするとともに、これまでにない新しい機能をもつジアリールエテン誘導体の開発をすすめた。結晶の光誘起変形は、フォトクロミック反応に伴う分子の幾何構造変化と結晶中の分子配列により一義的に決まることを明らかにした。また、ペリレンビスイミドを有するジアリールエテン誘導体を合成し、その蛍光の光スイッチを電子移動機構により行わせることに成功した。フォトメカニカル機能を有する分子結晶材料を創製するとともに、新しい機能をもつジアリールエテン誘導体の開発をすすめる。ジアリールエテン誘導体の多くは、単結晶状態においてもフォトクロミック反応する。これらのジアリールエテン単結晶の中から光誘起形状変形するものを探索し、それらの光応答挙動を計測するとともに、結晶構造と形状変形との相関を明らかにし、光誘起形状変形機構を解明する。さらに、これら分子結晶の光誘起力学物性を計測する。これらの研究により、フォトメカニカル機能というこれまでの有機分子材料が持ちえなかった特異な機能の基盤を確立する。フォトメカニカル機能を有するジアリールエテン分子結晶材料を創製し、その光誘起変形機構を明らかにするとともに、これまでにない新しい機能をもつジアリールエテン誘導体の開発をすすめた。結晶の光誘起変形は、フォトクロミック反応に伴う分子の幾何構造変化と結晶中の分子配列により一義的に決まることを明らかにした。また、ペリレンビスイミドを有するジアリールエテン誘導体を合成し、その蛍光の光スイッチを電子移動機構により行わせることに成功した。フォトメカニカル機能を有するジアリールエテン分子結晶材料を創製し、その光誘起変形機構を明らかにすること、およびこれまでにない新しい機能をもつジアリールエテン誘導体を開発することを目的として研究をすすめている。分子レベルにおける分子一つ一つの幾何構造の光変化を材料の形状変化に拡張するには、適切に組織化された集積体の構築が必須である。分子が特定の方向に規則正しく配置した単結晶は、その集積体になりうる。ここでは、種々のジアリールエテン単結晶について、その結晶構造と光誘起変形との相関を明らかにし、光誘起形状変形機構の解明をめざした。具体的成果は以下のとおりである。2. 1,2-bis (2-methyl-5-naphthyl・3-thienyl)perfluorocyclopenteneとperfluoronaphthaleneの1:1混晶の長方形の板状結晶が、紫外光照射により屈曲することを見出した。この屈曲方向はこれまでの結晶と異なり、照射方向に対して遠ざかる方向に変形した。X線構造解析により混晶中の分子配列を明らかにし、屈曲挙動との相関を検討した。フォトメカニカル機能を有するジアリールエテン分子結晶材料を創製すること、およびこれまでにない新しい機能をもつジアリールエテン誘導体を開発することを目的として研究をすすめている。具体的成果は以下のとおりである。1. 1, 2-bis(2-ethy1-5-phenyl-3-thienyl)perfluorocyclopenteneのphenyl基のpara位にメチル基を導入した誘導体(2つのフェニル基ともにメチル基をもつ対称体および1つのフェニル基にのみメチル基をもつ非対称体)を合成し、その光誘起変形を検討した。非対称体では、顕著な光誘起変形が認められたが、対称型では変形はほとんど認められなかった。この違いは、分子パッキングの違いにより説明することができた。1. 1.2-bis(2-methyl-5-naphthyl-3-thienyl)perfluorocyclopenとperfluoronaphthaleneとの1:1混晶の長方形板状結晶が、紫外光照射により屈曲することを、昨年、見出した。この混晶に関して、その光誘起変形の機構解明をすすめた。再結晶により得られた数mmサイズの板状結晶においても光誘起屈曲が認められ、結晶構造解析により、ジアリールエテン分子個々の形の変化を反映して結晶の変形が誘起されていることが示唆された。また、この分子結晶の弾性率を測定すると、10GPaと非常に大きいことが明らかとなった。2.紫外域でのみ吸収スペクトル変化する、すなわち、不可視フォトクロミズムを示すss-ジオキシド基を有するジアリールエテンの合成に成功した。フォトメカニカル機能を有するジアリールテン分子結晶材料を創製するとともに、これまでにない新しい機能をもつジアリールエテン誘導体を開発することを目的として研究をすすめている。具体的成果は以下のとおりである。1. 1,2-bis(2-methyl-5-naphthyl-3-thienyl)perfluorocyclopenteneとperfluoronaphthaleneとのmmサイズの長方形板状co-crystalの力学物性を測定した。この結晶を用い、光照射により金属球を持ち上げることを試みた。0.18mgの板状結晶を用いて、110.45mgの金属球を持ち上げることができた。この結果は、1.1mN以上の力が光発生していることを示している。なお、光誘起屈曲の応答速度を、高速カメラで測定したところ、295Kと4.7Kのいずれの温度においても、5μ秒より早く光誘起変形応答することが認められた。また、最大発生応力を測定したところ、44MPaの値が得られた。この値は、生体筋肉の約100倍の値であり、PZTピエゾ素子(50MPa)に匹敵する発生応力である。
KAKENHI-PLANNED-19050008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-19050008
ジアリールエテン単結晶のフォトメカニカル機能
2. 1,2-bis (5-methyl-2-phenyl-4-thiazolyl)perfluorocyclopenteneの側鎖のフェニル基のpara位にメチル基を対称あるいは非対称に導入した誘導体を合成し、それらの混晶を作製し、両者の組成比が光誘起変形にどのような影響をおよぼすかを調べた。両者をほぼ1:1含むmmサイズの棒状混晶において最大の光誘起変形が認められ、耐久性のある可逆な光誘起屈曲を示した。屈曲は、照射する光源に向かって変形し、光源の位置を変えることにより、自在に変形させることができた。この棒状結晶は、自重の900倍の重りを持ち上げることができた。3.ペリレンビスイミドを有するジアリールエテン誘導体を合成し、そのフォトクロミック反応挙動を評価したところ、可視部のペリレンビスイミドの光励起によっても光閉環反応の誘起されることが認められた。フォトメカニカル機能を有するジアリールテン分子結晶材料を創製するとともに、新しい機能をもつジアリールエテン誘導体を開発することを目的として研究をすすめた。具体的成果は以下のとおりである。1.1,2-bis(5-methyl-2-phenyl-4-thiazolyl)perfluorocyclopenteneの側鎖のフェニル基のpara位にメチル基を対称あるいは非対称に導入した誘導体を合成し、それらをほぼ1:1含むmmサイズの棒状混晶を作製し、その光屈曲挙動を観測した。この棒状結晶は、照射する方向に屈曲し、そのヤング率、最大発生応力を測定したところ、それぞれ8.5GPaと56MPaが得られた。この発生応力は、生体筋肉の約180倍であり、ピエゾ素子に匹敵する値である。2.2種の置換位置の異なる1-(2-methyl-5-phenyl-3-thienyl)-2-(2-methyl-5-naphthyl-3-thenyl)perfluorocyclopenteneを合成し、それらの微小結晶を昇華法により作製し、光誘起変形挙動を観測した。ナフタレンの1位で置換したものは、結晶の対角線方向に拡張し、2位で置換したものは、収縮することが認められた。それぞれの開環体結晶のX線構造解析を行い、これらの変形が、結晶を構成するジアリールエテン分子の幾何構造変化によることを明らかにした。ジアリールエテン結晶の光誘起変形は、分子レベルでの分子の幾何構造変化により解釈することが可能と言える。3.ペリレンビスイミドを有するジアリールエテン誘導体を合成し、その蛍光スイッチを電子移動機構により行わせることに成功した。このことにより、蛍光の非破壊読み出しが可能となった。
KAKENHI-PLANNED-19050008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-19050008
中脳黒質網様部GABA作動性ニューロンの代謝依存的自発発火制御機構の解明
中脳黒質網様部GABAニューロンは、高頻度に自発発火をしている細胞の1つであるが、その持続的な自発発火を支える制御機構は明らかではない。本研究では、「代謝」という観点から、急性単離ニューロンを用いて、細胞外グルコース濃度および温度を変化させた時、自発発火頻度がどのように変動するのか解析した。以前報告した脳スライスの結果と異なる結果などが得られ、ニューロンの自発発火はニューロン周辺環境の何らかの因子によって調節されていると示唆された。中脳黒質網様部GABAニューロンは、高頻度に自発発火をしている細胞の1つであるが、その持続的な自発発火を支える制御機構は明らかではない。本研究では、「代謝」という観点から、急性単離ニューロンを用いて、細胞外グルコース濃度および温度を変化させた時、自発発火頻度がどのように変動するのか解析した。以前報告した脳スライスの結果と異なる結果などが得られ、ニューロンの自発発火はニューロン周辺環境の何らかの因子によって調節されていると示唆された。中脳黒質網様部GABA作動性ニューロンは、脳内で最も高頻度に自発発火をしている細胞の1つとして知られているが、その高い持続的な自発発火を支える制御機構は明らかになっていない。本研究では、「代謝」という観点から、急性単離ニューロンおよび脳スライスを用いて、細胞外グルコース濃度および温度を変化させた時、黒質網様部GABA作動性ニューロンの自発発火頻度がどのように変動するのか詳細に解析し、その分子基盤を解明することを目的とする。現在までのところ、急性単離した黒質網様部GABA作動性ニューロンを、グラミシジン穿孔パッチクランプ法によりHCN電流の有無でドパミン作動性ニューロンと区別し、室温条件で細胞外グルコース濃度を低下させた時の自発発火頻度の変化を検討した。細胞外グルコース濃度を10mMから8,6,5,4mMに低下させると21例中全例で膜電位が有意に上昇した。しかし自発発火頻度の変化は上昇するもの(14/21例)、変化しないもの(3/21例)、低下するもの(4/21例)があった。今回の結果は、以前、私達の研究グループが報告した脳スライスを用いた単一細胞記録の結果(一定温度条件下、33°Cで細胞外グルコース濃度を10mMから4mMに低下させると発火頻度が上昇する)とは異なるものとなった。この結果から、低グルコースにさらされたGABA作動性ニューロンの自発発火は、脳スライヌでは周辺環境にある何らかの因子により維持されて頻度が上昇するが、急性単離した状態ではその因子がないために上昇・無変化・低下の3種類のパターンを示したと考えられた。中脳黒質網様部GABA作動性ニューロンは、脳内で最も高頻度に自発発火をしている細胞の1つとして知られているが、その高い持続的な自発発火を支える制御機構は明らかになっていない。前年度の細胞外グルコース濃度低下による自発発火頻度の変化の検討に引き続き、本年度は急性単離した黒質網様部GABA作動性ニューロンを、通常のホールセルパッチクランプ法やグラミシジン穿孔パッチクランプ法を用い、HCN電流の有無でドパミン(DA)作動性ニューロンと区別し、細胞外グルコース濃度を一定値(10mM)に固定し、灌流細胞外液の温度を種々に変化させた時の自発発火頻度の変化を検討した。28°C付近の平均発火頻度が10.5Hzのニューロンでは、徐々に温度を上昇させていくと、34°C付近の平均発火頻度は18.2Hzになった。しかしおよそ1分後には平均膜電位が-43.6mVと浅くなり自発発火が観察できなくなった。自発発火が停止した状態から、温度を低下させると、徐々に膜電位が深くなり自発発火が復帰した(1.15Hz)。別のニューロンにおいても、温度上昇に伴い、32°C以上では1分以内に、徐々に膜電位が浅くなり、自発発火が観察されなくなった。逆に温度を31°C付近から低下させる実験では、およそ26°Cを境に自発発火が観察されなくなった。また現在の単離方法で取り出した細胞は、水温27.5±1°C(室温28±1°C)の一定温度環境下において、GABA作動性ニューロンの静止膜電位は-55.3±4.1mV(25.1±17.3Hz,n=14)となっており、自発発火が観察できるが、DA作動性ニューロンの静止膜電位は-73.5±3.5mV(n=13)となっており発火せず、脱分極させないと自発発火は観察できなかった(脱分極時のDA作動性ニューロンの発火頻度は1.29±0.39Hz)。急性単離したニューロンでは32°C以上で自発発火が持続しないことから、生体内では細胞内に流入するNa^+イオンなどが、アストロサイトなどの周辺細胞により調節されていると示唆された。
KAKENHI-PROJECT-21890007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21890007
多流路マイクロデバイスにおける二相スラグ流生成制御・モニタリング
マイクロデバイスの特徴は流路寸法を大きくすると失われるため,流路の並列化によりデバイスの処理量が増大される。本研究では,スラグ流を伴う多流路デバイスを対象に,スラグ生成周期・サイズの制御・モニタリングの方法論を開発する。スラグ流プロセスにおいて,流体分配状態,スラグ生成周期・サイズ,相間物質移動によりシフトするスラグサイズ,の計測・制御のし易さを考慮した装置・システムを提案し,流路抵抗とセンサ配置の最適設計を行い,開発する方法論を実験で検証する。マイクロデバイスの特徴は流路寸法を大きくすると失われるため,流路の並列化によりデバイスの処理量が増大される。本研究では,スラグ流を伴う多流路デバイスを対象に,スラグ生成周期・サイズの制御・モニタリングの方法論を開発する。スラグ流プロセスにおいて,流体分配状態,スラグ生成周期・サイズ,相間物質移動によりシフトするスラグサイズ,の計測・制御のし易さを考慮した装置・システムを提案し,流路抵抗とセンサ配置の最適設計を行い,開発する方法論を実験で検証する。
KAKENHI-PROJECT-19K05140
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05140
太陽系近傍のM型星を公転するトランジット地球型惑星の探索と特徴付け
本研究では、太陽系の近くにある低温度星(太陽より温度の低い恒星)のまわりに、地球に近いサイズの惑星を発見し、その惑星がどのような大気を持つのかを調べることを目的として、観測を実施した。そのために、まずそのような観測を実現するための高精度観測の方法論を確立し、その方法を用いて岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡を用いて新しい惑星の探索を行った。探索はまだ継続中だが、候補天体の約半分の観測を終え、初期成果を論文にまとめている。また、既知の低温度星まわりの惑星であるGJ1214bとGJ3470bという2つの惑星に対して高精度観測を行い、2つの惑星がどのような大気を持つのかについて論文にまとめた。本研究では、太陽系の近くにある低温度星(太陽より温度の低い恒星)のまわりに、地球に近いサイズの惑星を発見し、その惑星がどのような大気を持つのかを調べることを目的として、観測を実施した。そのために、まずそのような観測を実現するための高精度観測の方法論を確立し、その方法を用いて岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡を用いて新しい惑星の探索を行った。探索はまだ継続中だが、候補天体の約半分の観測を終え、初期成果を論文にまとめている。また、既知の低温度星まわりの惑星であるGJ1214bとGJ3470bという2つの惑星に対して高精度観測を行い、2つの惑星がどのような大気を持つのかについて論文にまとめた。平成23年度は、地上トランジットサーベイグループSuper-WASPのアーカイブから岡山天体物理観測所188cm望遠鏡のISLEによって高精度測光観測が可能なトランジット惑星候補を50個あまり選定した。さらにこれをもとに岡山での観測時間を獲得し、近赤外高精度測光観測によるトランジット惑星の確認観測を開始した。平成23年度には4つの候補について晴天夜の観測を行い、3つは惑星ではないことを確認して、1つで地球型あるいは海王星型惑星サイズと矛盾しない候補を発見した。これを受けて、次のステップとして平成24年度にすばる望遠鏡での視線速度測定を行うことを立案した。以上から当初計画したトランジット惑星探しの研究は順調に進んでおり、今後は岡山での高精度測光観測の時間をさらに獲得することで、惑星探しのスピードを加速させたいと考えている。一方、今後既に発見されている低温度星まわりのトランジット地球型惑星の観測を行うために、南アフリカ天文台のIRSF1.4m望遠鏡SLRIUSと、東京アタカマ天文台のminiTAo1m望遠鏡のANIRで近赤外高精度測光観測の試験を行った。この結果、目標通りどちらの望遠鏡でも0.2%程度の測光精度を達成することができた。特にIRSF1.4m望遠鏡では、トランジェットをする地球型惑星GJ1214bのJHKsバンドでの同時測光観測が成功し、惑星大気の多波長高精度測光を行うことができた。この結果については現在論文にまとめており、平成24年度も引き続き高精度測光観測を実施する予定である。これにより、平成23年度は当初平成24年度までに行うこと目指していた目標までをほぼ達成することができた。平成24年度は、平成23年度に引き続き地上トランジットサーベイグループSuper-WASPのアーカイブからトランジット惑星候補を50個あまり選定し、その候補が本物の惑星であるかどうかを判別するため、岡山天体物理観測所188cm望遠鏡のISLEによって高精度測光観測を実施した。今年度は岡山で30夜あまりの観測時間を公募によって獲得し、14天体の観測を実施することができた。その結果、この中には本物の惑星と考えられるものはないことがわかった。この結果は偽検出の確率が9割程度という過去のトランジットサーベイの結果と矛盾しない。この結果については、共同研究を行っているハワイ大学のグループと共に論文をまとめている。一方、既に発見されている低温度星まわりのトランジット惑星の観測として、2009年に発見されたスーパーアースGJ1214bの観測を南アフリカ天文台IRSF1.4m望遠鏡のSIRIUSと、すばる8.2m望遠鏡のSurprime-CamおよびFOCASで実施した。そのうち、2011年にIRSF/SIRIUSで観測した近赤外JHKsバンドの同時測光の結果を論文としてまとめ、受理された(Narita et al. 2013)。この結果では、この惑星のトランジットがJバンドよりKsバンドで有意に深いという先行研究の結果(Croll et al. 2011)を否定し、有意に深い兆候はないことを明らかにした。これは近年の他の研究とも一致した結果で、惑星が水蒸気を主成分とする大気か厚い雲に覆われた水素大気を持つというモデルを支持する。さらに2012年のIRSFでの追観測と、すばる望遠鏡での可視Bバンドの観測でも同様の結果を得ており、これは現在論文にまとめている。以上により、太陽系近傍の低温度星のトランジット惑星探しとその惑星の特徴付けの研究において、目標をほぼ達成することができたと考えている。平成23年度は当初の目的通りにトランジット惑星探索の候補を50個程度選定することができ、それに対する岡山天体物理観測所の観測時間も20夜程度確保することができた。それにより実際に惑星探しの観測を開始することができ、2012年2月には岡山の観測で惑星と矛盾しないトランジット減光を示す候補を1つ確認し、2012年夏のすばる望遠鏡での惑星候補の質量確認に進むことができた。また、獲得した研究費によって解析環境を整えることができた。
KAKENHI-PROJECT-23840046
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23840046
太陽系近傍のM型星を公転するトランジット地球型惑星の探索と特徴付け
一方、惑星大気の観測においては、南アフリカのIRSF1.4m望遠鏡での高精度測光観測が成功し、トランジットをする地球型惑星GJ1214bのJHKsバンドでの同時測光観測を実施して、論文にまとめている。以上から、2年間で行う目標としていた事柄が、ほぼ1年間で達成することができた。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究課題ではトランジット惑星探索を中心に研究を進めているが、研究計画は予定通り順調に進んでおり、引き続き岡山での観測を中心として観測を進めていく。観測の研究を遂行する上で問題となるのは天候だが、そのリスクを低減するために、岡山での観測夜数を増やすべく、観測提案をより充実させていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-23840046
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23840046
パイピングの発生メカニズムとその防止法の研究
パイピングの発生メカニズムとその防止法を明らかにするため、破壊理論の提案、安定解析、ケーススタディーと浸透破壊原因の究明、二次元矢板背後地盤の浸透破壊実験を行い次の事柄を明らかにした。次に、上述した3つの安定解析法を用いて3つの典型的な問題(等方性地盤、異方性地盤、二層地盤)について解析を行い、限界プリズムの形状、限界水頭差について考察した。次に、浸透破壊に関するケーススタディー(5例の解析、3例の記述)を行った。ここで取り扱った浸透破壊事例について破壊の原因を考えると次のようになった。(1)設計ミス、(2)対応ミス、(3)予想もしない事態の発生、(4)不均質地盤、(5)二次元的な浸透流の集中、(6)三次元的な浸透流の集中、(7)異方性地盤、(8)深礎における岩盤の風化、(9)施工中の境界条件の変化、(10)フィルターの目詰まり、(11)メタンガスの発生。大型二次元浸透破壊実験装置を用いて、琵琶湖砂2について、矢板の長さ、根入れ深さ、相対密度を変えたE0001E0047の実験を行った。まず、全ての実験に関して地盤の浸透流特性(均質性や異方性)を明らかにした:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状の変化、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。そして、実験結果が矢板の根入れ比と限界水頭差の無次元量を用いて無次元化できること、変形時水頭差が著者らの提案したPrismatic failureの考え方を用いて説明できることを示した。また、地盤の相対密度と浸透破壊特性について考察し、相対密度が破壊形態、変形時水頭差、破壊時水頭差に及ぼす影響について明らかにした。パイピングの発生メカニズムとその防止法を明らかにするため、破壊理論の提案、安定解析、ケーススタディーと浸透破壊原因の究明、二次元矢板背後地盤の浸透破壊実験を行い次の事柄を明らかにした。次に、上述した3つの安定解析法を用いて3つの典型的な問題(等方性地盤、異方性地盤、二層地盤)について解析を行い、限界プリズムの形状、限界水頭差について考察した。次に、浸透破壊に関するケーススタディー(5例の解析、3例の記述)を行った。ここで取り扱った浸透破壊事例について破壊の原因を考えると次のようになった。(1)設計ミス、(2)対応ミス、(3)予想もしない事態の発生、(4)不均質地盤、(5)二次元的な浸透流の集中、(6)三次元的な浸透流の集中、(7)異方性地盤、(8)深礎における岩盤の風化、(9)施工中の境界条件の変化、(10)フィルターの目詰まり、(11)メタンガスの発生。大型二次元浸透破壊実験装置を用いて、琵琶湖砂2について、矢板の長さ、根入れ深さ、相対密度を変えたE0001E0047の実験を行った。まず、全ての実験に関して地盤の浸透流特性(均質性や異方性)を明らかにした:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状の変化、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。そして、実験結果が矢板の根入れ比と限界水頭差の無次元量を用いて無次元化できること、変形時水頭差が著者らの提案したPrismatic failureの考え方を用いて説明できることを示した。また、地盤の相対密度と浸透破壊特性について考察し、相対密度が破壊形態、変形時水頭差、破壊時水頭差に及ぼす影響について明らかにした。土構造物や地盤のパイピングによる破壊(浸透破壊)は、古くからある問題であるが事例報告は限られている。パイピングの発生メカニズムを明らかにするためには、浸透破壊事例の収集・解析とそれに基づいた原因の究明がかかせない。ここでは、まずこれまでに報告されている浸透破壊事例について資料を収集し詳細に解析を行い、どのような所に原因があったかについて考察した。今後、論文等にまとめてゆく予定である。次に、2種類の浸透破壊実験装置を新たに試作した。軸対称パイピング実験装置は三次元的な浸透流の集中による効果を明らかにすることができ、(小型)二次元浸透破壊実験装置は二層問題やフィルターの効果を明らかにすることができる。琵琶湖砂2を用いて予備実験を行ったが、現在本実験を行うべく準備を進めているところである。また、現有の(中型)二次元浸透破壊実験装置を用いて、今回購入した微差圧測定装置と組み合わせて、矢板の根入れ比を変えた浸透破壊実験を7ケース行った。一回の実験で試料砂を約500kg程度使用するので、たくさんの実験はできないが着実にデータの蓄積を行っている。浸透破壊現象には、地盤の均質性や異方性等が影響することが知られている。したがって、地盤の浸透破壊現象を実験的に明らかにするためには、前もって作成地盤の特性を把握する必要がある。ここでは、次のような地盤内浸透流特性を把握するためのルーチンワークを考案した:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性の大きさ、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。
KAKENHI-PROJECT-07556053
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07556053
パイピングの発生メカニズムとその防止法の研究
今後、さらに実験を追加・補充し、ルーチンワークによって作成地盤の特性を明らかにし、パイピングの発生メカニズムを解明する予定である。実験地盤特性の把握手法については、本年度地盤工学シンポジウム等で発表したが、今後論文としてまとめる予定である。土構造物や地盤のパイピングによる破壊(浸透破壊)は、古くからある問題である事例報告は限られている。パイピングの発生メカニズムを明らかにするためには、浸透破壊事例の収集・解析とそれに基づいた原因の究明がかかせない。ここでは、これまでに報告されている精度の高い浸透破壊事例について解析を行い、状況の把握と原因の究明を行った。そして、雑誌報文等にまとめた。さらに新しい事例に関して解析を進めてゆく予定である。次に、中型二次元浸透破壊実験装置を用いて、琵琶湖砂2について、矢板の長さ、根入れ比を変えた浸透破壊実験を7ケース行った。一回の実験で試料砂を約500kg程度使用するので、たくさんの実験はできないが着実にデータの蓄積を行っている。浸透破壊現象には、地盤の均質性や異方性等が影響することが知られている。したがって、地盤の浸透破壊現象を実験的に明らかにするためには、前もって作成地盤の特性を把握する必要がある。本年度行った実験地盤についても、まず次のような地盤内浸透流特性を明らかにした:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性の大きさ、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。さらに、実験結果が矢板の根入れ比と限界水頭差の無次元量を用いて無次元化できることを示した。今後、さらに実験を追加・補充してゆく予定である。実験地盤の異方透水性を把握する手法(逆解析手法)について、平成9年度開催「地盤工学における逆解析の適用と施工管理に関するシンポジウム」で発表する予定である。近年、大規模掘削や大深度掘削においては三次元的な浸透破壊が問題となっており、このような三次元浸透破壊理論が望まれている。ここでは、新たに軸対称地盤の浸透破壊問題に著者らのPrismatic failureの考え方を適用し、新しい理論の構築を進めている。土構造物や地盤のパイピングによる浸透破壊は、古くから存在する問題であるが事例報告は限られている。パイピングの発生メカニズムを明らかにするためには、浸透破壊事例の収集・解析とそれに基づく原因の究明がかかせない。ここでは、これまでに報告されておりデータの整った浸透破壊事例について解析を行い、状況の把握と原因の究明を行い、雑誌報文等にまとめた。今後、さらに新しい事例に関して解析を進めてゆく予定である。次に、大型二次元浸透破壊実験装置を用いて、琵琶湖砂2について、矢板の長さ、根入れ比、相対密度を変えた浸透破壊実験を8ケース行った。これまでに47ケースの実験を行い本実験装置で予定していた実験はすべて終了した。浸透破壊現象には、地盤の均質性や異方性が影響することが知られている。したがって、地盤の浸透破壊現象を実験的に明らかにするためには作成地盤の特性を把握する必要がある。本年度行った全ての実験地盤について、まず次のような事象に関して浸透流特性を明らかにした:(1)地盤の均質性、(2)地盤の異方性、(3)水頭差の増加に伴う地盤形状の変化、等ポテンシャル線分布の変化、(4)変形時水頭差、破壊時水頭差、(5)水中安息角。
KAKENHI-PROJECT-07556053
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07556053
微分ゲ-ム理論に基づくロバスト推定器・制御器の構成法
制御入力を一方のプレ-ヤの方策とし、パラメ-タ変動や摂動、あるいは未知入力を他方のプレ-ヤの方策と考えて、ロバスト制御問題を利害の対立する2人のプレ-ヤの微分ゲ-ムとみなすのは、ロバスト制御問題へのひとつの自然な接近法である。本研究においては、このような観点から、微分ゲ-ム理論における従来の成果と、本研究の中で生まれた新たな微分ゲ-ム理論の展開に基づいて、新しいロバスト制御理論の提案を行った。近年、制御系の感度あるいは補感度を評価基準として、周波数領域における最適制御を構成することにより、ロバストな制御系を構成する理論、すなわちH-無限大理論の発展が著しい。本研究においては、まずこのH-無限大制御が微分ゲ-ムの鞍点対の一方として得られることを示し、同時に、鞍点対の他方である最悪外乱の具体的な形を決定した。つぎに、これらの結果に基づいて、微分ゲ-ム理論の観点からH-無限大制御理論の再構成を試み、H-無限大制御の本質的な構造を明らかにするとともに、見通しのよい構成法を与えることができた。以上の過程では、最悪外乱の具体的な形が求められたことが重要である。本研究で得られた以上のH-無限大制御構成法は、純粋に時間領域におけるものである。そこでこの構成法を、有限制御時間区間をもつ時変系のH-無限大制御へと一般化し、新しいロバスト制御理論を確立した。その結果、とくに、有限制御時間区間問題の固有の問題である、端点における状態の制御および初期外乱の制御が可能となった。以上は制御器の構成に関するものであるが、推定器に関しても、微分ゲ-ム理論とH-無限大制御理論を融合した新しいロバスト推定器の構成法を与えることができた。制御入力を一方のプレ-ヤの方策とし、パラメ-タ変動や摂動、あるいは未知入力を他方のプレ-ヤの方策と考えて、ロバスト制御問題を利害の対立する2人のプレ-ヤの微分ゲ-ムとみなすのは、ロバスト制御問題へのひとつの自然な接近法である。本研究においては、このような観点から、微分ゲ-ム理論における従来の成果と、本研究の中で生まれた新たな微分ゲ-ム理論の展開に基づいて、新しいロバスト制御理論の提案を行った。近年、制御系の感度あるいは補感度を評価基準として、周波数領域における最適制御を構成することにより、ロバストな制御系を構成する理論、すなわちH-無限大理論の発展が著しい。本研究においては、まずこのH-無限大制御が微分ゲ-ムの鞍点対の一方として得られることを示し、同時に、鞍点対の他方である最悪外乱の具体的な形を決定した。つぎに、これらの結果に基づいて、微分ゲ-ム理論の観点からH-無限大制御理論の再構成を試み、H-無限大制御の本質的な構造を明らかにするとともに、見通しのよい構成法を与えることができた。以上の過程では、最悪外乱の具体的な形が求められたことが重要である。本研究で得られた以上のH-無限大制御構成法は、純粋に時間領域におけるものである。そこでこの構成法を、有限制御時間区間をもつ時変系のH-無限大制御へと一般化し、新しいロバスト制御理論を確立した。その結果、とくに、有限制御時間区間問題の固有の問題である、端点における状態の制御および初期外乱の制御が可能となった。以上は制御器の構成に関するものであるが、推定器に関しても、微分ゲ-ム理論とH-無限大制御理論を融合した新しいロバスト推定器の構成法を与えることができた。
KAKENHI-PROJECT-01550343
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550343
投影型液晶ディスプレーを照明系に用いた空間コヒーレンス制御
顕微鏡などの結像系や回折系の特性は、結像レンズの点像関数のみならず、物体照明光の相互強度の影響を受ける。空間的に広がりのあるインコヒーレント光源によって物体を照明すると、物体上の空間コヒーレンスは、光源強度分布のフーリエ変換で与えられる。従って、光源強度分布を制御することにより、所望の空間コヒーレンスが得られる可能性がある。しかしながら現有の光源では、大きさを可変にする事は比較的容易だが、その強度分布を任意に変化させることは不可能に近かった。最近実用化された投影型液晶ディスプレーは、電子的に強度分布を制御できる光源と見なすことができる。本研究では、この液晶ディスプレーを回折系の照明部に組み込み、物体照明光の空間コヒーレンスが制御できるシステムを構築した。実験系の概要を以下に示す。投影型液晶ディスプレーを出射した光は、Kohler照明系を用いて物体を照明する。この物体を透過した光は、Fraunhofer回折系によりCCDカメラ上に回折像を形成する。液晶ディスプレー上に線光源を作りだし、コンピュータによりこれを走査しながら、各ステップ毎にCCDカメラから回折像を取り込む。そして、この像に光源強度分布に対応する重みを付加して、すべての像を加算する。この系により得られる回折像は、重み関数に相当する強度分布を持つ光源により物体を照明した場合と等価である。この場合、物体照明光の相互強度は重み関数のフーリエ変換で与えられるので、容易に変化させることができる。物体には単スリットを用いて実験を行った。2次関数のような非線形な強度分布や、非対称な強度分布をもつ光源について回折像を実験的に求めた。数値計算結果と比較したところ良い一致が得られた。これにより、液晶ディスプレーを結像系や回折系の照明光源に使えば、物体の透過率分布にあわせて回折特性を適応的に制御できることが示された。顕微鏡などの結像系や回折系の特性は、結像レンズの点像関数のみならず、物体照明光の相互強度の影響を受ける。空間的に広がりのあるインコヒーレント光源によって物体を照明すると、物体上の空間コヒーレンスは、光源強度分布のフーリエ変換で与えられる。従って、光源強度分布を制御することにより、所望の空間コヒーレンスが得られる可能性がある。しかしながら現有の光源では、大きさを可変にする事は比較的容易だが、その強度分布を任意に変化させることは不可能に近かった。最近実用化された投影型液晶ディスプレーは、電子的に強度分布を制御できる光源と見なすことができる。本研究では、この液晶ディスプレーを回折系の照明部に組み込み、物体照明光の空間コヒーレンスが制御できるシステムを構築した。実験系の概要を以下に示す。投影型液晶ディスプレーを出射した光は、Kohler照明系を用いて物体を照明する。この物体を透過した光は、Fraunhofer回折系によりCCDカメラ上に回折像を形成する。液晶ディスプレー上に線光源を作りだし、コンピュータによりこれを走査しながら、各ステップ毎にCCDカメラから回折像を取り込む。そして、この像に光源強度分布に対応する重みを付加して、すべての像を加算する。この系により得られる回折像は、重み関数に相当する強度分布を持つ光源により物体を照明した場合と等価である。この場合、物体照明光の相互強度は重み関数のフーリエ変換で与えられるので、容易に変化させることができる。物体には単スリットを用いて実験を行った。2次関数のような非線形な強度分布や、非対称な強度分布をもつ光源について回折像を実験的に求めた。数値計算結果と比較したところ良い一致が得られた。これにより、液晶ディスプレーを結像系や回折系の照明光源に使えば、物体の透過率分布にあわせて回折特性を適応的に制御できることが示された。
KAKENHI-PROJECT-05750032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750032
成体神経幹細胞における腫瘍抑制遺伝子APCの機能解析
研究代表者らは、家族性大腸ポリポージス症の原因分子であるAdenomatous Polyposis Coli(以下APC)に注目し、神経幹細胞の動態におけるその役割を詳細に解析することで、成体脳内における幹細胞能の維持や増殖・神経分化の調節メカニズムを解明しようとする研究を企図した。このため、Cre/loxPシステムを利用して成体神経幹細胞よりAPC遺伝子を欠失させたマウスモデルを樹立し、その表現型及び成体脳内における神経幹細胞動態の変化の解析を行った。結果、正常成体マウス脳内では神経新生領域に高いAPCの発現がみられ、成体神経幹細胞よりのAPCの欠失は神経新生領域におけるβcatenin蛋白質の蓄積を引き起こした。一方で、脳内アストロサイトよりのAPCの欠失では明らかなβcatenin蛋白質の蓄積は観察されなかった。このことから、成体脳内の特に神経新生領域においては、APCが細胞内βcatenin蛋白質量の調節に重要な役割を果たしていることが示された。一般にβcatenin蛋白質の蓄積は細胞増殖を促進すると考えられている。しかし、APCの欠失により神経幹細胞の増殖はむしろ抑制される傾向にあり、一方で未熟な前駆細胞からのニューロンへの正常な分化が阻害され、結果的に成体神経新生は著しく低下していた。また、このマウスモデルでは脳以外にも消化管・眼の異常が観察され、これらの臓器の発達・恒常性保持においてもAPCの重要性が示唆された。以上から、腫瘍抑制遺伝子APCは成体脳内における神経幹細胞よりの神経新生において、特に新生ニューロンの分化・成熟の過程で不可欠な役割を果たしていることが示された。研究代表者らは、家族性大腸ポリポージス症の原因分子であるAdenomatous Polyposis Coli(以下APC)に注目し、神経幹細胞の動態におけるその役割を詳細に解析することで、成体脳内における幹細胞能の維持や増殖・神経分化の調節メカニズムを解明しようとする研究を企図した。このため、Cre/loxPシステムを利用して成体神経幹細胞よりAPC遺伝子を欠失させたマウスモデルを樹立し、その表現型及び成体脳内における神経幹細胞動態の変化の解析を行った。結果、正常成体マウス脳内では神経新生領域に高いAPCの発現がみられ、成体神経幹細胞よりのAPCの欠失は神経新生領域におけるβcatenin蛋白質の蓄積を引き起こした。一方で、脳内アストロサイトよりのAPCの欠失では明らかなβcatenin蛋白質の蓄積は観察されなかった。このことから、成体脳内の特に神経新生領域においては、APCが細胞内βcatenin蛋白質量の調節に重要な役割を果たしていることが示された。一般にβcatenin蛋白質の蓄積は細胞増殖を促進すると考えられている。しかし、APCの欠失により神経幹細胞の増殖はむしろ抑制される傾向にあり、一方で未熟な前駆細胞からのニューロンへの正常な分化が阻害され、結果的に成体神経新生は著しく低下していた。また、このマウスモデルでは脳以外にも消化管・眼の異常が観察され、これらの臓器の発達・恒常性保持においてもAPCの重要性が示唆された。以上から、腫瘍抑制遺伝子APCは成体脳内における神経幹細胞よりの神経新生において、特に新生ニューロンの分化・成熟の過程で不可欠な役割を果たしていることが示された。研究代表者らは、家族性大腸ポリポージス症の原因分子であるAdenomatous Polyposis Coli(以下、APC)に注目し、神経幹細胞の動態におけるその役割を詳細に解析することで、成体脳内における幹細胞能の維持や増殖・神経分化の調節メカニズムを解明しようとする研究を企図した。平成18年度には、成体脳神経幹細胞におけるAPC及びWntシグナリングに関する諸分子の発現解析とWntシグナリング活性化に対する反応の検討を行った。さらに、成体神経幹細胞選択的にAPCを欠失させた動物モデルを確立した。in vivo成体脳幹細胞ニッチェならびにin vitro成体脳幹細胞でAPC及びそのホモログであるAPC2の発現がみられた。また幾つかのWntリガンドとそのレセプター、βcateninを初めとする細胞内情報伝達分子の発現も観察され、成体脳幹細胞におけるAPCおよびWntシグナリングの存在が示唆された。また、成体脳幹細胞を追跡する目的でGFAP-Cre-GFP-reporterマウスを作製した。in vivoおよびin vitroの両方でGEPが成体幹細胞系譜の細胞で発現していることを確認し、細胞ソーティングによる幹細胞の純化を行った。2)Wntシグナリング活性化が神経幹細胞の動態に与える影響。in vitro成体脳幹細胞を用いてWntシグナリング活性化の幹細胞動態に与える影響を検討した。Wntリガンドの1つであるWnt3aによりβcateninの核内移行がみられ、成体脳幹細胞でいわゆるcanonical pathwayの活性化が起こることが示された。一方、Wnt3aの投与により成体脳幹細胞の増殖能はごく軽度の増加がみられるのみであったが、神経分化は有意に増加することが観察された。4)成体神経幹細胞APC欠失マウスモデルの作製。GFAP-CreマウスとAPCコンディショナルマウス(がん研究所野田哲生氏より恵与)を掛け合わせ、成体神経幹細胞でAPCの欠失したマウスモデルを確立した。このマウスにおいて脳内におけるAPC遺伝子の組換えを確認した。形態的には嗅球と小脳の発育異常が示唆され、現在さらなる検討を行っている。
KAKENHI-PROJECT-18500245
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500245
成体神経幹細胞における腫瘍抑制遺伝子APCの機能解析
研究代表者らは、家族性大腸ポリポージス症の原因分子であるAdenomatous Polyposis Cohi(以下、APC)に注目し、神経幹細胞の動態におけるその役割を詳細に解析することで、成体脳内における幹細胞能の維持や増殖・神経分化の調節メカニズムを解明しようとする研究を企図した。平成19年度には、平成18年度に作製した成体神経幹細胞APC欠失マウスモデルを用いて、その表現型及び神経幹細胞動態の変化の解析を行った。GFAP-Cre-APCコンディショナルマウスでは、嗅球・海馬歯状回での成体神経幹細胞系譜の細胞系列でβcateninの著明な蓄積がみられ、脳内細胞のβcatenin量の調節におけるAPCの重要性が示された。しかし当初の仮説に反して、βcateninの蓄積にもかかわらず腫瘍源性の変化はみられず、逆に神経幹細胞の増殖は中等度抑制されていた。さらに、嗅球・海馬歯状回の神経新生は著明に減少しており、嗅球の萎縮が明らかであった。In vivo及びin vitroの系におけるさらなる解析からは、APCの欠失は神経幹細胞自体の生存や分化能には著明な変化をもたらさないが、神経への分化後に新生神経の形態変化と移動異常を引き起こし結果としてアポトーシスを誘導することが示された。また、APCの欠失は神経幹細胞以外にも興味深い変化を引き起こすことが明らかとなった。小脳においては、APCの欠失はバーグマングリアの形態異常を引き起こし、異所性顆粒細胞の出現が多数観察された。眼においても、APCがレンズの形成にとって必要であることが明らかとなった。以上の結果から、成体脳内神経幹細胞及びその系譜の細胞群においては、APCはいわゆる腫瘍抑制遺伝子としての働きではなく、新生神経の移動・生存に重要な役割を果たすことが示された。
KAKENHI-PROJECT-18500245
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500245
沖ノ島、壱岐島、対馬出土古代ガラスの化学組成から日本の古代ガラスの流通を考察する
本研究では壱岐,対馬,沖ノ島(宗像大社)に関係するガラスを対象とし,日本へのガラス流通について考察することを目的とした.ガラスの調査には,可搬型分析装置を用いて非破壊オンサイト分析を行い,化学的にアプローチした.平成29年度までに壱岐,対馬の調査を実施しており,平成30年度は宗像大社に収められているガラスの調査を実現することができた.分析した資料は以前行われた発掘調査によって発見されたものであり,今回はじめて化学的な調査を行うことができた.今回の調査では約60点のガラス玉を分析することができ,今後につなげる調査となった.宗像大社のガラスの調査結果は,本報告書執筆現在は解析中であるが,化学組成的に多様なガラスが存在し,アジア各地で製造されたガラスがもたらされていたことが明らかになった.宗像大社での調査の実現によって,当初から掲げていた本研究目標を達成することができた.さらに,今後につなげられる成果が得られたことは,当初の目標以上の発展があったといえる.具体的な成果について触れると,本研究で調査できた範囲で考察する限り,壱岐と対馬のガラスについては国内出土ガラスの組成変遷と同様な出土傾向があることがわかった.また,対馬では国内に類例があまりない,無色透明ガラス玉の分析データを得ることができ,ガラス流通を考察する重要なデータを得ることができた.本研究で,壱岐,対馬,沖ノ島(宗像大社)に関するガラス流通を概観することができた.今後さらに深めていくとするならば,宗像大社を取り巻く宗像地域などにも視野を広げる必要があると考えられる.これらの成果については,平成29年度報告書執筆時に解析中であった対馬のガラスデータの解析を終え,論考として発表した.現在解析中である宗像大社で測定したデータも解析を終え次第,同様に論考としてまとめていく予定である.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の根幹は日本ー大陸間の古代ガラス流通について考察すべく,朝鮮半島と北部九州の間に位置する壱岐,対馬の古代ガラスの化学組成分析を行うことである.このうち,壱岐の古代ガラスはすでに現地での化学組成分析を行っており,平成29年度は同様の方法で対馬の古代ガラスの分析調査を行うことが課題であった.対馬での調査では,弥生時代の遺跡から出土したガラス玉と古墳時代の副葬品のガラス玉を分析し,古代の日本でよく見られるカリガラス(K2O-SiO2),ソーダ石灰ガラス(Na2O-CaO-SiO2),アルミナソーダ石灰ガラス(Na2O-Al2O3-CaO-SiO2)が伝わっていたことがわかった.さらに弥生時代の資料(かがり松鼻遺跡出土資料)はすべてカリガラスであり,古墳時代の資料(コフノサエ遺跡出土資料)はソーダ石灰ガラスもしくはアルミナソーダ石灰ガラスであることもわかった.このことから出土傾向の時代的変遷も日本国内の研究成果と対応していることが明らかになった.得られた成果として報告者が最も注目していることは,無色透明のカリガラスの存在を明らかにしたことである.報告者が把握している限り,日本や海外で報告されているカリガラスは,まれに黄色や赤褐色も存在するが紺色や淡青色のものがほとんどである.本資料のように無色透明のカリガラスは希少な例と考えられる.以上挙げたように平成29年度中に対馬の調査を実現することができ,多数の成果を得ることができた.また,壱岐の調査成果は平成29年度の日本文化財科学会第34回大会にて口頭発表した.平成29年度は本研究の対象地域である対馬の調査を実現することができた.対馬の調査では多数の成果が得られ,本研究課題に対して重要な調査となった.年度末に行った調査であるため,本格的なデータの解析は次年度進めることになる.一方で,すでに調査を行っている壱岐の古代ガラスの分析データは日本文化財科学会第34回大会にて口頭で発表し,内容について高い評価を得た.解析が終了し次第,壱岐のデータと合わせて本研究課題をまとめていきたい.本研究では壱岐や対馬の古代ガラスを対象に流通を考察することを目的としているため,他地域の古代ガラスデータと比較することで研究を進めていく.自身の研究課題である壱岐や対馬以外にも,平成29年度では国内外の多数の調査に参加し,比較データとして豊富なデータを得ることができた.報告者が所属する研究グループでは,数年にわたって国内外の古代ガラスのデータを蓄積してきた.国外では,ガラスが伝来する過程で海や陸のシルクロードを辿ってきたとされている東南アジアや中央アジアで出土したガラスの調査を行ってきた.特に中央アジアは調査回数が少なかったことから,平成29年度ではロシア・モスクワにて中央アジアで出土したガラスを分析する調査を実現した.これにより,中央アジアの分析データを拡充することができた.国内では,本研究対象地域に比較的近い愛媛県今治市で出土した古代ガラスの分析調査にかかわり,多数のデータを得ることができた.平成29年度は自身の研究課題に直接かかわる地域(対馬)の調査だけでなく,比較資料として間接的に関わってくる国内外の古代ガラスのデータを拡充することができ,おおむね順調に進めることができたと評価している.本研究では壱岐,対馬,沖ノ島(宗像大社)に関係するガラスを対象とし,日本へのガラス流通について考察することを目的とした.ガラスの調査には,可搬型分析装置を用いて非破壊オンサイト分析を行い,化学的にアプローチした.
KAKENHI-PROJECT-17J00655
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J00655
沖ノ島、壱岐島、対馬出土古代ガラスの化学組成から日本の古代ガラスの流通を考察する
平成29年度までに壱岐,対馬の調査を実施しており,平成30年度は宗像大社に収められているガラスの調査を実現することができた.分析した資料は以前行われた発掘調査によって発見されたものであり,今回はじめて化学的な調査を行うことができた.今回の調査では約60点のガラス玉を分析することができ,今後につなげる調査となった.宗像大社のガラスの調査結果は,本報告書執筆現在は解析中であるが,化学組成的に多様なガラスが存在し,アジア各地で製造されたガラスがもたらされていたことが明らかになった.宗像大社での調査の実現によって,当初から掲げていた本研究目標を達成することができた.さらに,今後につなげられる成果が得られたことは,当初の目標以上の発展があったといえる.具体的な成果について触れると,本研究で調査できた範囲で考察する限り,壱岐と対馬のガラスについては国内出土ガラスの組成変遷と同様な出土傾向があることがわかった.また,対馬では国内に類例があまりない,無色透明ガラス玉の分析データを得ることができ,ガラス流通を考察する重要なデータを得ることができた.本研究で,壱岐,対馬,沖ノ島(宗像大社)に関するガラス流通を概観することができた.今後さらに深めていくとするならば,宗像大社を取り巻く宗像地域などにも視野を広げる必要があると考えられる.これらの成果については,平成29年度報告書執筆時に解析中であった対馬のガラスデータの解析を終え,論考として発表した.現在解析中である宗像大社で測定したデータも解析を終え次第,同様に論考としてまとめていく予定である.平成29年度は研究課題を追求すべく,データの蓄積に力をいれた.また得られたデータに対し学会発表を重ねて,その都度研究をまとめる作業に努めた.今後は蓄積したデータの解析,解釈,最終的な議論が求められる.まず対馬の調査は年度末に差し掛かってしまったため本報告書作成中はまだ解析中であり,これを完了させる.データ解析が終了し次第,壱岐の調査結果と合わせて本研究課題のまとめを進める.この作業は次年度(平成30年度)の前半には終えられるように計画的に進めたい.後半には壱岐と対馬の古代ガラスのデータを合わせて考察し,本研究課題をまとめていく.壱岐の古代ガラスの研究成果はすでに日本文化財科学会第34回大会で報告済みであるので,対馬の成果もできれば考古学・文化財研究の関係者が集まる同学会で発表したいと考えている.さらに本研究課題の成果は最終的に学術論文にまとめることも検討している.今後は以上のように学会発表や学術雑誌への投稿を念頭に,研究成果をまとめる作業に注力していく.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J00655
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J00655
デジタル精密計測のためのmRNAの高感度解析技術
近年、遺伝子やタンパク質が生体内でどのような働きをしているかということに注目が集まっている。その中で、これら遺伝子やタンパク質の細胞内での働きを知るために、タンパク質や代謝産物などの網羅的解析技術の開発が望まれている。本研究では、細胞内全mRNAの網羅的な解析が可能な分離法の開発を行う。さらに、分離したmRNAの高感度塩基配列決定法についても検討した。本年度は2次元電気泳動によるmRNAの分離方法を確立するために、以下のような研究を行った。本研究では1次元目に通常の電気泳動を行い、分子量に基づく分離をおこない、2次元目として温度勾配電気泳動法2次元電気泳動をおこなった。mRNAから逆転写酵素により相補鎖DNAを合成する際に特殊なプライマーを用いることにより、GCクランプの付加したRNA-DNA2本鎖の合成を行った。まず、細胞から抽出したmRNAを鋳型に逆転写酵素を用いて相補鎖のDNAを合成した。このDNA合成に用いるプライマーとしては、一般的にmRNAのポリA鎖に対する相補鎖であるポリT鎖を用いた。本研究ではさらにGCクランプを分子内にもち、さらに分子内でヘアセン構造を形成するプライマーを用いた。つぎに、このプライマーを用いて合成したmRNAの相補鎖とmRNAをDNAとRNAに作用するリガーゼを用いて結合する(ライゲーション)。次に作成したRNA-DNA複合体を用いて温度勾配電気泳動を行い、最適分離条件についての検討を行った。これらの検討を行うことにより、目的とするmRNAの分離方法が確立できた。近年、遺伝子やタンパク質が生体内でどのような働きをしているかということに注目が集まっている。その中で、これら遺伝子やタンパク質の細胞内での働きを知るために、タンパク質や代謝産物などの網羅的解析技術の開発が望まれている。本研究では、細胞内全mRNAの網羅的な解析が可能な分離法の開発を行う。さらに、分離したmRNAの高感度塩基配列決定法についても検討した。本年度は2次元電気泳動によるmRNAの分離方法を確立するために、以下のような研究を行った。本研究では1次元目に通常の電気泳動を行い、分子量に基づく分離をおこない、2次元目として温度勾配電気泳動法2次元電気泳動をおこなった。mRNAから逆転写酵素により相補鎖DNAを合成する際に特殊なプライマーを用いることにより、GCクランプの付加したRNA-DNA2本鎖の合成を行った。まず、細胞から抽出したmRNAを鋳型に逆転写酵素を用いて相補鎖のDNAを合成した。このDNA合成に用いるプライマーとしては、一般的にmRNAのポリA鎖に対する相補鎖であるポリT鎖を用いた。本研究ではさらにGCクランプを分子内にもち、さらに分子内でヘアセン構造を形成するプライマーを用いた。つぎに、このプライマーを用いて合成したmRNAの相補鎖とmRNAをDNAとRNAに作用するリガーゼを用いて結合する(ライゲーション)。次に作成したRNA-DNA複合体を用いて温度勾配電気泳動を行い、最適分離条件についての検討を行った。これらの検討を行うことにより、目的とするmRNAの分離方法が確立できた。
KAKENHI-PROJECT-18038012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18038012
砂漠アリの高温下における代謝恒常性維持を可能とするメカニズムの解明
これまで調べられている中で、最も高温に耐性をもつ昆虫の一つが、CataglyphisやMelophorusなどの砂漠に住むアリである。これらの砂漠アリは、普段は温度条件の比較的マイルドな地中の巣の中で生活しているが、その働きアリ(ワーカー)は、炎天下の日中、55度付近の外気温下で、10分近く活動することが可能である(Ghering et al., PNAS, 1989、Wehner et al., Nature, 1992)。このような高温環境で、高度な運動をおこなうためには、優れた耐熱システムを備えている事が必要である。しかしながら、その機構はほとんど明らかになっていない。したがって、遺伝子調節と比して、分単位の素早い応答が可能である代謝経路に特徴がある可能性はないだろうか。また、極高温下においても、熱耐性を持たない昆虫の死骸(=餌)を探知・発見して、迅速に巣に持ち帰るためには、感覚器官や運動器官が正常に機能することが必須である。それを可能とするための最低限の代謝を維持しなくてはならないはずである。これまでに熱耐性を持つ砂漠アリがどのように高温下で代謝恒常性を維持しているかを分子レベルで解明することを目指す。砂漠アリCataglyphis bombycinaと、類縁の非砂漠アリCataglyphis cursor、ショウジョウバエ野生型系統のそれぞれに対して、室温(25度)および高温(45度)に10分間暴露した場合の代謝産物量を網羅的に解析し、いくつかのアミノ酸や神経伝達物質などの量に特徴的な変動がある可能性を見出している。砂漠アリの取得・および飼育に手間取り、基本的な餌や環境条件を整える必要があったが、時間をかけて問題を克服できた。また、熱をどの様にかけるかという事も重要であり、砂漠環境で暴露される様な上方からの日射を取るか、ホットプレート・あるいはインキュベーターによって熱をかけるかといった条件検討が必要であったが、これも概ね完了した。一方、メタボローム解析についても細かい条件検討が必要であり、砂漠アリに見られる特徴的な代謝変動を抽出するプロセスに多くの労力と気遣いが必要であることが分かった。しかし徐々に解析のプラットフォームが構築されつつあり、今後解析が加速すると思われる。また現時点でいくつか興味深い代謝変動が予備的に見えており、その機能解析についても阻害剤やショウジョウバエでの遺伝子操作により解析を進めたい。特にアミノ酸については栄養学的な方法や、その代謝経路の予測が比較的やりやすく、またタンパク質代謝に関しても注目して研究を進めている。昨年度は、共焦点顕微鏡や走査型電子顕微鏡による撮像によって、比較生物学的な解析も同時に進め、組織構造などについても解析を行っている。砂漠アリでの遺伝子操作は困難を極める。RNAiによる瞬間的なノックダウンは不可能ではないものの、共同研究者が進めているゲノム情報の整備が必要である。しかしその進捗は思う様に進んでいないのが現状である。一方、CRISPRによるノックアウト作出は、女王アリの取得が難しく、したがって事実上不可能である事から断念した。現在進めている条件検討を進め、最適な熱条件、代謝物解析条件を決定する。それが終わり次第、異なる砂漠アリや日本の熱耐性を持たないアリなど、生物種の幅を広げ、真に砂漠アリに特徴的な代謝変動を抽出する予定である。オーストラリアに生息する砂漠アリMelophorusに関しては、現在Ken Cheng博士と採集旅行について打ち合わせ中であり、うまくいけば今年の秋から冬(オーストラリアの春から夏)にかけてサンプル採集に行く予定である。砂漠アリ2種の共通点を探る事で、より熱耐性に貢献しうる代謝経路を同定することが容易になると考えられる。現状で明らかとなってきたアミノ酸変動に関しては、特に栄養学的な方法や阻害剤を積極的に利用して、解析を進める。例えば、比較メタボロミクスにより変動が見られた代謝物の増加を抑制するような薬剤を、熱耐性アリに導入し、熱耐性を失うかを解析する。今年度はさらにショウジョウバエにおいて遺伝学的な解析を検討する。ショウジョウバエの高温下での代謝解析から、熱耐性を持たない生物での代謝恒常性のボトルネックを解析する。砂漠アリを使った実験に比べノウハウも多く、迅速に解析する事が期待される。抽出してきた代謝変動に関しては、in vitroでの生化学的な解析も導入する。これまで調べられている中で、最も高温に耐性をもつ昆虫の一つが、CataglyphisやMelophorusなどの砂漠に住むアリである。これらの砂漠アリは、普段は温度条件の比較的マイルドな地中の巣の中で生活しているが、その働きアリ(ワーカー)は、炎天下の日中、55度付近の外気温下で、10分近く活動することが可能である(Ghering et al., PNAS, 1989、Wehner et al., Nature, 1992)。このような高温環境で、高度な運動をおこなうためには、優れた耐熱システムを備えている事が必要である。しかしながら、その機構はほとんど明らかになっていない。したがって、遺伝子調節と比して、分単位の素早い応答が可能である代謝経路に特徴がある可能性はないだろうか。また、極高温下においても、熱耐性を持たない昆虫の死骸(=餌)を探知・発見して、迅速に巣に持ち帰るためには、感覚器官や運動器官が正常に機能することが必須である。それを可能とするための最低限の代謝を維持しなくてはならないはずである。これまでに熱耐性を持つ砂漠アリがどのように高温下で代謝恒常性を維持しているかを分子レベルで解明することを目指す。
KAKENHI-PROJECT-18K19326
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19326
砂漠アリの高温下における代謝恒常性維持を可能とするメカニズムの解明
砂漠アリCataglyphis bombycinaと、類縁の非砂漠アリCataglyphis cursor、ショウジョウバエ野生型系統のそれぞれに対して、室温(25度)および高温(45度)に10分間暴露した場合の代謝産物量を網羅的に解析し、いくつかのアミノ酸や神経伝達物質などの量に特徴的な変動がある可能性を見出している。砂漠アリの取得・および飼育に手間取り、基本的な餌や環境条件を整える必要があったが、時間をかけて問題を克服できた。また、熱をどの様にかけるかという事も重要であり、砂漠環境で暴露される様な上方からの日射を取るか、ホットプレート・あるいはインキュベーターによって熱をかけるかといった条件検討が必要であったが、これも概ね完了した。一方、メタボローム解析についても細かい条件検討が必要であり、砂漠アリに見られる特徴的な代謝変動を抽出するプロセスに多くの労力と気遣いが必要であることが分かった。しかし徐々に解析のプラットフォームが構築されつつあり、今後解析が加速すると思われる。また現時点でいくつか興味深い代謝変動が予備的に見えており、その機能解析についても阻害剤やショウジョウバエでの遺伝子操作により解析を進めたい。特にアミノ酸については栄養学的な方法や、その代謝経路の予測が比較的やりやすく、またタンパク質代謝に関しても注目して研究を進めている。昨年度は、共焦点顕微鏡や走査型電子顕微鏡による撮像によって、比較生物学的な解析も同時に進め、組織構造などについても解析を行っている。砂漠アリでの遺伝子操作は困難を極める。RNAiによる瞬間的なノックダウンは不可能ではないものの、共同研究者が進めているゲノム情報の整備が必要である。しかしその進捗は思う様に進んでいないのが現状である。一方、CRISPRによるノックアウト作出は、女王アリの取得が難しく、したがって事実上不可能である事から断念した。現在進めている条件検討を進め、最適な熱条件、代謝物解析条件を決定する。それが終わり次第、異なる砂漠アリや日本の熱耐性を持たないアリなど、生物種の幅を広げ、真に砂漠アリに特徴的な代謝変動を抽出する予定である。オーストラリアに生息する砂漠アリMelophorusに関しては、現在Ken Cheng博士と採集旅行について打ち合わせ中であり、うまくいけば今年の秋から冬(オーストラリアの春から夏)にかけてサンプル採集に行く予定である。砂漠アリ2種の共通点を探る事で、より熱耐性に貢献しうる代謝経路を同定することが容易になると考えられる。現状で明らかとなってきたアミノ酸変動に関しては、特に栄養学的な方法や阻害剤を積極的に利用して、解析を進める。例えば、比較メタボロミクスにより変動が見られた代謝物の増加を抑制するような薬剤を、熱耐性アリに導入し、熱耐性を失うかを解析する。今年度はさらにショウジョウバエにおいて遺伝学的な解析を検討する。ショウジョウバエの高温下での代謝解析から、熱耐性を持たない生物での代謝恒常性のボトルネックを解析する。砂漠アリを使った実験に比べノウハウも多く、迅速に解析する事が期待される。
KAKENHI-PROJECT-18K19326
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19326
森林による炭素吸収モデルの構築と検証
この研究の目的は地球環境変化にともなう森林の応答を二酸化炭素吸収に着目してモデル化することにある。葉の3次元構造に関しては広く着目されているが、葉の時間方向の変化(フェノロジー)を組み込んだモデルは未発達である。本研究では樹冠の4次元構造を組み込んだモデルを構築し、検証することを目的とした。樹木の開葉様式には一斉開葉と順次開葉の2型がある。一斉開葉は開葉時に次の開葉時までに開くべき葉を全て一斉に開葉させる。順次開葉はある間隔をおいて、1枚ずつ順次に開葉させる。一斉開葉では、多くの葉の相互被陰が生じるために、なんらかの形態的自己被陰回避様式が発達する。シュート角度を大きくするのは普通にみられる自己被陰回避システムである。これに対し、順次開葉型では、順々に葉を開くこと自身が自己被陰回避になっているために、シュート角度は小さく真上に伸長する。前者では葉の寿命が長く、最大光合成速度は低いがその時間的低下は遅い。後者では葉寿命が短く、最大光合成速度は高いが早く低下する。シュートあたりの光合成速度の変化をみると、一斉型ではどの葉も同時に出て同じように老化するので、シュートの光合成速度変化は個葉光合成速度の変化と同じである。これに対し、順次型では常に光合成速度の高い若い葉が、光条件のよい場に存在するので、シュートあたり光合成速度は常にほぼ一定に保たれる。このような現象を再現するためにモデル化を試みた。一斉開葉型樹種には、弱光利用型の光-光合成曲線とシュート傾きを与え、順次開葉型樹種には強光利用型の光-光合成曲線と垂直のシュートおよび自己被陰を与えた。また光源からの距離を変化させて異なる光条件を与えた。この両者がどのような光条件で有利であるかを調べるために、異なる光条件下で両者を成長させた。また葉の光合成特性を開葉様式から分離するために、全く同じ光-光合成関係を持つ葉を異なる開葉様式を示すシュートに付けた場合についても検討した。順次開葉-強光利用型樹種は明るい環境条件で、一斉開葉-弱光利用型の樹種は比較的暗い条件で有利であることが示された。同じ葉をもつシュートで比較しても、順次開葉型は明るい条件で、一斉開葉型は暗い条件で有利になることが明らかとなり、開葉様式が光合成生産に寄与することが示された。葉寿命と開葉期間の間に負の相関が存在するのが発見された。これは、開葉期間の長い種は葉寿命が短く、開葉期間の短い種は葉寿命が長いというKikuzawa(1983)の観察を定量化したものである。芦生(京都府)および美唄(北海道)でそれぞれ独立に得られた関係式を比較すると、勾配が同じで平均寿命だけが変化する平行線となることが分かった。この成果は異なる緯度(あるいは温量指数)の地域へと地理的に発展させることが可能である。フェノロジーと光合成速度の関係については、主な樹種の比較から、開葉の早いものは最大光合成速度が低く、開葉の遅いものについては最大光合成速度が高いという藤田らがシベリアで得た予測を裏付ける一般的傾向が芦生においても見られた。この研究は今後、常緑性・落葉性の緯度方向への分布、高度方向への分布に発展させることが可能である。フェノロジーデータをモデル化するために、葉の出現順位(葉のオーダー)を組み込んだ炭素吸収モデルを構築した。葉のオーダーと葉の垂直的な位置が一対一で対応する単純な例として草本群落を材料とした。モデルの内容は次の通りである。それぞれの葉に当たる光は時間とともに減衰する。この時間による減衰のしかたは葉のオーダーによって異なる。光合成能も時間とともに減少する。この減少のしかたも葉のオーダーで変わる。以上から、葉の光合成はオーダーと時間の関数として記述できる。これを光-光合成関係で補正し、ある時点での実現光合成速度を求める。瞬間最大光合成速度と日光合成速度間の関係をもちいて日光合成速度を得る。これを積分して年間の量を推定する。このモデルによる予測値を実測値により検証した。森林炭素吸収モデルの構築にむけて、シュートの光合成モデル、シュートから林冠への積分モデルを構築した。また森林の生産速度を積み上げ法およびフラックス法によって推定した。一斉開葉型樹種と順次開葉型樹種では、1生育期に開葉する葉数は大きく異なり、通常は後者が前者の2倍以上になる。しかし定常状態での着葉数は両者で大きくは異ならない。この現象を利用して、年間シュート当たり光合成速度を推定する新しいモデルを考案した。順次開葉型では葉を付け替えることによって、ほぼ同じ程度の光合成速度を生育期を通じて維持するが、それには余分の葉を作成するコストがかかっている。一斉開葉型では葉の作成コストが余分にかかることはないが、加齢による光合成速度の低下がコストとしてかかってくる。この比較から二つの開葉様式の適応的意義を明らかにすることができた。林冠をシュートの集合と見なして、林冠内部のシュート集合を明示的に示す林冠シュートモデルを構築した。このモデルでは林冠の外側から内側にかけて、シュート数とシュートサイズ(着葉数)等が減少する。この減少曲線を積分することにより林冠あたりのシュート数、光合成速度を推定することが可能である。二酸化炭素フラックス測定により、生態系純生産速度を推定した。
KAKENHI-PROJECT-11213202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11213202
森林による炭素吸収モデルの構築と検証
ヒノキ林においては2.1ton ha-1 year-1と推定された。また方法の精度を明らかにするために、渦相関法のほかに傾度法やボウエン比法などとの比較を行い各方法の問題点、長所を明らかにした。この研究の目的は地球環境変化にともなう森林の応答を二酸化炭素吸収に着目してモデル化することにある。葉の3次元構造に関しては広く着目されているが、葉の時間方向の変化(フェノロジー)を組み込んだモデルは未発達である。本研究では樹冠の4次元構造を組み込んだモデルを構築し、検証することを目的とした。樹木の開葉様式には一斉開葉と順次開葉の2型がある。一斉開葉は開葉時に次の開葉時までに開くべき葉を全て一斉に開葉させる。順次開葉はある間隔をおいて、1枚ずつ順次に開葉させる。一斉開葉では、多くの葉の相互被陰が生じるために、なんらかの形態的自己被陰回避様式が発達する。シュート角度を大きくするのは普通にみられる自己被陰回避システムである。これに対し、順次開葉型では、順々に葉を開くこと自身が自己被陰回避になっているために、シュート角度は小さく真上に伸長する。前者では葉の寿命が長く、最大光合成速度は低いがその時間的低下は遅い。後者では葉寿命が短く、最大光合成速度は高いが早く低下する。シュートあたりの光合成速度の変化をみると、一斉型ではどの葉も同時に出て同じように老化するので、シュートの光合成速度変化は個葉光合成速度の変化と同じである。これに対し、順次型では常に光合成速度の高い若い葉が、光条件のよい場に存在するので、シュートあたり光合成速度は常にほぼ一定に保たれる。このような現象を再現するためにモデル化を試みた。一斉開葉型樹種には、弱光利用型の光-光合成曲線とシュート傾きを与え、順次開葉型樹種には強光利用型の光-光合成曲線と垂直のシュートおよび自己被陰を与えた。また光源からの距離を変化させて異なる光条件を与えた。この両者がどのような光条件で有利であるかを調べるために、異なる光条件下で両者を成長させた。また葉の光合成特性を開葉様式から分離するために、全く同じ光-光合成関係を持つ葉を異なる開葉様式を示すシュートに付けた場合についても検討した。順次開葉-強光利用型樹種は明るい環境条件で、一斉開葉-弱光利用型の樹種は比較的暗い条件で有利であることが示された。同じ葉をもつシュートで比較しても、順次開葉型は明るい条件で、一斉開葉型は暗い条件で有利になることが明らかとなり、開葉様式が光合成生産に寄与することが示された。
KAKENHI-PROJECT-11213202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11213202
消化器癌患者の血漿中遊離核酸を用いたテーラーメイド個別化バイオマーカーの開発
胃癌患者の術前・術後ペア血漿中のmicroRNA(miR)を用いたmicroarray解析を行った。術後に顕著に低下する血漿中miRとしてmiR-451、miR-486を同定し、それらが健常者に比較して術前の胃癌患者において有意に高値であることを確認した。一方、再発時も含めた同様の解析によって、miR-92a、93、185を候補miRとして同定したが、血漿中miR-185値のみがリンパ節転移再発症例において高い傾向を認めた。再発時血漿を用いたこれら解析から、同miRsが癌組織以外に由来する可能性が示唆された。同一胃癌患者の術前・術後ならびに再発時の血液セットを準備し、同3名分の血漿を混合した各サンプルからのmicroRNA(miRNA)の抽出を行い、miRNAmicroarray解析を行った。microarray解析結果から、術前高値、術後顕著に低下、再発時に再上昇する10個のmiRNAを今回の検索候補として選定した。通常のRT-PCRによるValidation assayを行い、3症例ともに腫瘍動態と合致する値(術前高値、術後低下、再発時に再上昇)を示したmiRNA-X, Y, Zを血漿モニタリング・バイオマーカーの候補としてさらなる解析を行なった。組織における発現解析では、miRNA-Zの発現が、周囲健常組織に比較して胃癌組織で高い傾向を示したが、miRNA-X,Yについては両者間に有意な差を認めなかった。また、当施設の血液バンクを用いた再発症例15例の解析では、リンパ節転移再発例においてmiRNA-Z値の異常高値を認めたが、腹膜播種再発例や血行性再発例では再上昇を認めなかった。また、前年度行った術前・術後のmicroarray解析から選出したmiRNA-451,486については、進行胃癌術後症例のフォローアップ期間中の測定を行い、その臨床的再発の有無との相関を現在解析中であり、次年度も引き続き解析を行い、その再発モニタリング・バイオマーカーとしての意義について検討する予定であり、個々の症例に行ったmicroarray解析結果から選定されたバイオマーカーについては、今後術後フォローアップ中の解析を進める予定である。平成24年度行った胃癌術後再発症例において上昇する血漿中microRNA(miR)-92a、93、185のうち、リンパ節転移再発と相関を認めたmiR-185について、更なる症例の解析を行った。その結果、リンパ節転移再発症例でmiR-185が高値である傾向は認めたものの、有意な差は認めなかった(p=0.144)。また、リンパ節再発時の血漿中miR-185の上昇に関して、その組織由来について、同一症例におけるリンパ節転移の有無別のリンパ節組織中のmiR-185発現の解析を行ったが、有意な差を認めず(p=0.235)、由来組織の同定には至らなかった。一方、平成23年度に行った胃癌患者の術前術後の血液を用いて行ったmiR micorarray解析から選定した血漿中miR-451、486について、術後フォローアップ中の定期的採血を用いた解析を行ったところ、再発時に上昇しない症例が多く存在することも判明した。同miRについては、先の解析において、胃癌組織中の発現低下も確認しており、その組織由来について、胃癌組織からの分泌型miRである可能性や、癌周囲の支持組織由来である可能性が考えられたた。しかしながら、食道癌患者の血漿解析でも同様に健常対照者に比較してmiR-451の高値を認めており、その組織由来を検討する目的で、担癌マウスモデルを作成し、今後引き続き解析を行う予定である。胃癌患者の術前・術後ペア血漿中のmicroRNA(miR)を用いたmicroarray解析を行った。術後に顕著に低下する血漿中miRとしてmiR-451、miR-486を同定し、それらが健常者に比較して術前の胃癌患者において有意に高値であることを確認した。一方、再発時も含めた同様の解析によって、miR-92a、93、185を候補miRとして同定したが、血漿中miR-185値のみがリンパ節転移再発症例において高い傾向を認めた。再発時血漿を用いたこれら解析から、同miRsが癌組織以外に由来する可能性が示唆された。胃癌患者を対象として、術前後の血漿サンプルが揃っており、かつ術後長期に亘り再発を認めない(手術によって完全に切除された可能性が高い)進行胃癌2名、早期胃癌1名を選んだ。同3名分の血漿を混合した術前ならびに術後サンプルからmicroRNA(miRNA)を抽出し、マイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析結果から、術後に顕著に低下する候補miRNAを9つ選定した。通常のRT-PCRによるValidation assayを行い、術前miR-451、miR-486を血漿バイオマーカー候補としてさらなる解析を行なった。29例の胃癌術前後ペアサンプルを用いた両miRNAの血漿濃度解析において、それぞれ90%(26/29)、93%(27/29)の症例で術後に有意な低下を認めた(miR-451: 13.41vs 1.80、miR-486: 0.42vs 0.08、共にp<0.01)。
KAKENHI-PROJECT-23501299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501299
消化器癌患者の血漿中遊離核酸を用いたテーラーメイド個別化バイオマーカーの開発
健常コントロール30例と胃癌患者56例での検討では、両miRNAの血漿濃度は胃癌患者において有意に高く(miR-451: 0.30vs 10.70、miR-486: 0.03vs 0.34、p<0.01)、ROC curveにおけるAUCは0.96、0.92と高値を示した。カットオフ値は、それぞれ0.97amol/μl(感度96%、特異度100%)、0.073amol/μl(感度86%、特異度97%)であった。また、同様に術前、術後に加えて、再発患者の再発時の末梢血漿中のmiRNAマイクロアレイ解析について、現在解析中であり、同miRNAの術後マーカーとしての有用性についても検討していく予定である。概ね順調に進展している。概ね当初の計画通り進んでいる。初年度ならびに昨年度に得られた知見の実地臨床への応用を念頭において、症例数を増やして解析を行う予定である。また、血液細胞由来のmicroRNAの影響を可及的に少なくするため、エクソソーム分画での同様の解析も行っていく予定である。前記の得られた知見の実地臨床への応用を念頭において、更に症例数を増やして解析を行う。一方で、他臓器癌に関しても同様のアプローチでの解析を行うとともに、今後は抗癌剤治療などの感受性を予測するバイオマーカーなどの検索も行っていく予定である。次年度は主に、これまでに選出したモニタリングバイオマーカーについて通常のRT-PCR法での測定を行い、それらの結果と、臨床的腫瘍動態との相関について検討を加える予定であり、支出の殆どはmicroRNA定量に伴う消耗品となる予定である。次年度は、前年度までに得た知見をもとに、症例を増やして通常のRT-PCR法での解析を行う予定である。また、再発時も含めた同一個体でのアレイ解析も進めていく予定であり、これらの分子生物学的手法解析に関する消耗品として主に使用していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-23501299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501299