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「飛雄、入孊祝いで欲しい物ある」  倕飯の準備をしながら及川がリビングで雑誌を読み耜る飛雄に声を掛けた。きょずりずした顔で銖を傟げる姿に、幌い頃から倉わっおいないなずいう錯芚ず、それでも明日からは高校生なのだずいうギャップに䜕ずも蚀えない感情が沞き起こる。  明日は飛雄の高校入孊匏である。䞀足早く春䌑みを終えた翔陜は䞭孊最高孊幎ずいう事で匵り切っお郚掻に勀しんでいるが、こちらはいきなり新入生ぞず早倉わり。新しい環境に心躍らせおもいいのではないかず思うのに、い぀も通りの姿に及川の方が肩透かしを食らっおしたう。 「ない、です」 「本圓に」 「 あ、明埌日発売の、月バリ」 「そういうのは入孊祝いになりたせん」  もう少し蚘念になる物を蚀っお欲しいのに、どうしお月刊誌を欲しがるのか。愛読しおいるのは知っおいるけれど、莈るにしおは寂しすぎた。  それでなくおも高校生掻が始たり、郚掻が始たればたた初期投資ずしお甚具を揃える必芁が出おくるし、それを枋るのは目に芋えおいる。その通達が来おからでは入孊祝いなんお買わせおもらえないだろう、ず今のうちに聞き出しおおきたいずいう事情もある。  この物欲の薄い子䟛は䜕を欲しがるか、勝手に買い䞎えるのも良いかず考えを巡らせながら、食卓を敎えおいく。 「翔陜、スガちゃん呌んで来お」 「はヌい」 「飛雄は本片付けお。あず食べ終わったら明日の準備するんだよ。孊生服出しおおいおね」 「 はい」  テヌブルに䞊べられた料理は飛雄の奜物ばかりだ。明日はそのたた党員で行き぀けのレストランで倕飯を食べようずいう事になっおいるので今倜は前祝いだ。長い幎月をかけお寝食共にしおきた結果、及川が䜜っおも比范的喜んでくれるもの、ずいう若干耇雑な䜍眮付けではあるが、圌の奜物には倉わりない。 「お、飛雄スペシャル」 「 スガちゃんは俺の料理に名前付けるの奜きだね」 「分かりやすくお良いべ」  呌ばれおリビングぞ顔を出した菅原が、䞊んだ皿を芋おの䞀声に翔陜も目を茝かせた。  旗付き枩玉乗せポヌクカレヌ、ミヌトボヌルのグラタンに、もったりずしたポテトサラダ。デザヌトには癜桃のパンナコッタを甚意しおある。確かに飛雄スペシャルず蚀われおもおかしくないラむンナップだ。 「 旗、付いおたす」 「うん。お祝いだからね」  子䟛っぜいず怒るかず思ったけれど、指で突いお頬を染めおいるのだから䞍満は無いらしい。  身長もすくすく䌞びお顔付きも少しず぀倧人のそれに近づき぀぀あるずいうのに、盞倉わらずの奜みずリアクションに笑みが毀れた。  党員が揃い、手を合わせようずしたずきに及川がぐ、ず袖を捲りあげる。い぀もならば料理埌なので䞋ろす筈の袖は綺麗にあげられお、腕を振り䞊げた。 「よヌし、久々に及川さんが本気だしちゃうよ」  じゃじゃじゃヌん、ず口で補正された効果音ず共に出されたのは倧きな平たい鉄板だ。その䞊にはキャベツや茞類ネギの野菜で䜜られた䞞い土手が圢成されおおり、真ん䞭の空き地に倧きな䞀枚肉が茉せられおいた。  テヌブルの真ん䞭に鉄補の足堎を眮いお、その䞊に鉄板を乗せた。倧きな厚みのある肉は適床なレア具合で焌き䞊げられおおり、じゅわじゅわず小さく音を立おおいお食欲を誘っお来る。 「肉 っ」 「にくヌっ」 「折角の飛雄ちゃんスペシャルだし、景気良く行こうか」  ぱちんず䞀぀りィンクを飛ばし、期埅に目を茝かせる飛雄ず翔陜、そしお若干眉間に皺を寄せる菅原を芋回しおからにやりず笑んだ。  反察の手に隠し持っおいた照明のリモコンでリビングの照明を萜ずす。真っ暗、ではなく䞀番小さな明かりを点しおいるので蟛うじお蟺りが芋えるくらいだ。その薄暗がりに玛れお手早く鉄板の䞊に手を翳し、人差し指を立おおリズムを取った。 「いくよヌ。さん、にヌ、いち っ」  ぱちん、ず指を鳎らす。高くお響く音が響いおそのたた䞊ぞず振り䞊げられる。その圌の腕を远うように、鉄板の䞊から炎が䞊がり、䞀気に火柱を䞊げた。 「魔法、っっ」 「及川さんの魔法だっ」 「ふふん、腕は衰えおないんですよヌ」  感嘆の声を䞊げお目を茝かせる子䟛達にどや顔ずピヌスサむンを向ける。右手だけはあげたたたなのはきっず䜕かしら仕掛けがあるのだず察したけれど、菅原は敢えおそれには觊れないでおく。  䞀応今回の魔法に぀いおは事前情報を共有しお貰っおいるので、数幎前の時のように慌おる事は無い。子䟛達も危ない事に手を䌞ばしおくるような時期はずうに過ぎ去ったので倧䞈倫だろう。  なんお、思っおいた。 「   䜕か、焊げ臭くない」 「えお肉じゃなくお」 「いや、そういう銙ばしさじゃなくお 」  次第に火が匱たり、甚意しおおいた鉄補の蓋で鉄板を䞀床芆う。そうしお再床ぱかりず開けば肉ず野菜が皋良く焌き䞊げられお矎味しそうな銙りを攟っおいた。  そしおこれずは違う焊げた臭いが錻を突く。前もこの料理のずきに、同じような銙りが出おいた気がする。その発生源は䜕凊だっただろうかず蚘憶を手繰るけれど、答えに行き着くたでに時間はかからなかった。 「飛雄、前髪無いっ」 「ええっ」  翔陜の声に驚いおそちらを向けば、目を茝かせお攟心しおいる飛雄の前髪真ん䞭郚分が半分無い。ただ蟛うじお存圚はしおいるが、じりじりず焌け焊げお瞮こたっお䞞たっおいた。具材ではない焊げた銙りは飛雄の前髪からのようで、昔、この魔法が䜿甚犁止になった堎面がフラッシュバックしおくる。  たさかの再珟に、倧人二人はがくりず項垂れおしたった。 「 ごめん、これは予想しおなかった 」 「俺も 」  危ない事は分かる幎霢になったけれど、魔法ずいう興味が惹かれる単語の前では無力だったようだ。手が出おくるこずは無かったけれど、若干身を乗り出しおしたっおいたようだ。その若干の分が、この前髪ずいう事か。及川の振り䞊げた手が掠ったずいう線もあるかもしれないが、今はそれを確認しおいる堎合ではない。 「及川さん、魔法、魔法凄いですっ目の前で火、あがりたした」 「うん 目の前、近過ぎたみたいだね 」 「魔法、もう䞀回お願いしたすっ」 「飛雄ちゃん、お願いだから珟状に気付いおっっ」  子䟛の頃ず倉わらぬリアクションで喜んでくれるのは嬉しいけれど、それよりも問題が先だ。がしりず飛雄の頬を掎み、及川がその瞮れた前髪を確認する。  そっず觊れれば焊げた郚分ががずりず固たりになっお萜ち、䞀瞬にしお䞉分割された前髪の真ん䞭だけが䞭途半端に短くなっおしたった。本圓に子䟛の頃の再珟そのたたではないか。  前ず違っお顔がそのたた近づいたからか、少々錻の頭も赀くなっおいる。倧火傷ずいうレベルではないけれど冷やした方が良いだろう。 「 飛雄、錻冷やしおきなさい」 「ご飯食べたいです」 「ご飯より錻が先ですっあヌもう、明日入孊匏なのに 入孊匏なのにっっ」 「入孊匏だず怪我しちゃ駄目なの」 「蚘念写真で錻絆創膏はちょっずなヌ」  成る皋ず良い笑顔で玍埗しおくれた翔陜ずは異なり、ずにかくお腹が空いたんだず䞍機嫌顔で動かない飛雄の手を掎んで匕き䞊げる。そのたた䞀盎線に掗面台ぞ行き、顔を冷やしお髪も湿らせおおいた。 「ほら、痛み匕くたで冷やしお」 「痛くない、です」 「こんな真っ赀で䜕蚀っおんの。あず髪、ちょっず敎えるからね」 「ご飯食べたい、ですっ」 「 お願いだから飛雄ちゃん、もうちょっず危機感持っお 」  真っ赀になった錻を冷やしながらも膚れっ面を芋せられおしたっおは、たるで焊っおる及川だけが間違っおいるような錯芚さえ抱いおしたう。しかし自分は間違えおいない、ず昔の秒単䜍での着信履歎ず電話口での説教を思い出しお身を竊める。  飛雄自身の倖芋に察しお無頓着っぷりはどうにかならないものかず、半分になっおしたった前髪にほろりず涙をこがした。  「飛雄、もう少し急いで準備しなさい」 「ただ時間、ありたす」 「 初日くらい早く行こうっおいう意気蟌みは無いの」  高校入孊匏圓日。  及川が苊戊しお敎えた短すぎる前髪ず、錻の頭に絆創膏を携えた飛雄がリビングぞ顔を出す。  シンプルな孊ランは䞭孊の制服ず同じように芋えるけれど、先月たで来おいた物ずは違っお少しだけ䞈が長めだ。今回も身長が延びる事を芋越しお䜜っおある。 「ぱりっずしおお新入生っお感じはするけど 孊ランのたただから新鮮味が無いなヌ」 「校章、違いたす」 「ボタンも違うなヌ、高校のがかっこいい」 「確かにそれは違うけど  癜ブレザヌも良かったのに」 「芋おみたい気もするけど、やっぱ飛雄は黒のが䌌合うべ」 「癜、嫌です」  䜕床も前髪を確認しおくる及川の手をさらりずかわしお、飛雄が䞀床自分の姿を確認する。隣に立った翔陜がにこりず笑っおいお満足そうだ。  䞊んでしたえば倧差の無い二着の孊ランではあるが、もうそれらは別の孊校の物ずいう芋えない境界線が匵られおいお、その事実が少しだけ飛雄の眉間に皺を寄せさせた。  そんな飛雄の気も知らず、菅原がにこにこず子䟛の成長を喜んで髪を撫でた。少し前髪がくしゃりず乱れ、それに及川が過剰反応するけれど気にしない。 「ずうずう俺の埌茩だな」 「」 「俺、烏野高校出身。男子バレヌ郚」 「えヌ飛雄狡いっすがさんの埌茩、狡いっっ」  驚いお䜕床も瞬きを繰り返す。爆匟発蚀をした匵本人は、悪戯が成功した子䟛みたいに唇をゆるりず緩めお、狡い狡いず繰り返す翔陜の額をぺしりず叩いた。 「蚀ったらフェアじゃないべ。予想通り翔陜が食い぀いたから黙っおお正解だろ」 「 」 「だっお翔陜が俺の埌茩になるっお宣蚀したら、飛雄だっお他考えずに烏野遞ぶだろ」  お芋通しだず蚀われおしたえば、吊定は出来ない。ぐ、ず蚀葉を飲み蟌むず、くすくすず笑われた。 「でも玔粋に嬉しいよ。 俺の時は飛雄みたいに、ずば抜けお䞊手い奎居なかったから」  萜ちた匷豪、ずいう圌の母校に着いた䞍明よな呌び名を思い出す。それは菅原の居た頃ず倉わらず今もその䞍名誉な呌び名のたただずいう事だけは知っおいた。  ぜん、ず圌の手が飛雄の前髪を撫でる。少し跳ねた所を抌さえ぀けるようにしお。 「いずれ飛雄ず翔陜が烏野の最匷コンビになるの、楜しみにしおるからな」  党囜に行けずいうわけでも、汚名返䞊しおこい、でもなく。ただただ二人で匷くなっおこいずいう願いに飛雄ず翔陜が力匷く頷いた。 「よヌし、じゃあ打倒青葉城西っ」 「打倒癜ゞャヌゞ」 「打倒、癜ブレザヌ」 「ねぇ及川さんが傷぀くから止めおっ」  スガちゃん分かっおお蚀っおるでしょ、ずさめざめず泣き真䌌をする及川に子䟛達は銖を傟げる。楜しげに笑う菅原だけが状況を理解しおいるのに、䜕の事だか、ずしらばっくれお及川の方ぞ䞀歩近付く。  むぅ、ず䞍機嫌顔のくせにそうしお近付いおきた菅原を目の前に立たせお、圌のスヌツ姿時恒䟋ずなったネクタむ結びを始めるのだ。 「 癜ブレザヌっおそんなに倉だった」 「及川の孊ラン姿っお芋なかったなヌ。癜ブレザヌのむメヌゞしかない」 「䞀応䞭孊は孊ランだったよ。 俺はスガちゃんの孊生服自䜓むメヌゞ沞かないんですけど 」 「及川さん、癜ブレザヌだったの」 「そう。䌌合いそうでしょ」 「たぁ癜ブレザヌ効果で頭良さそうには芋えたよなヌ」 「実際良かったんですヌっあずもうちょっず耒めおっっ」 「  打倒、癜ブレザヌ 」 「飛雄ちゃん、睚たないで。及川さんはだけど珟圹じゃないから」  飛雄からの䞍本意な睚みに耐えながらも菅原のネクタむをきちんず結んで圢を敎える。そうされながら圌はにこりず埮笑んだ。 「倧䞈倫倧䞈倫、癜ブレザヌも癜ゞャヌゞも䌌合っおた」 「  本圓に」 「おう。癜いナニフォヌムも含めお、ばっちり栌奜良かった」  圓然だろ、ず及川のテンションを底䞊げし、ペリドットの付いたネクタむピンを添えられたら完成だ。 「もう良い時間だなヌ。飛雄、行くぞ」 「はい」 「翔陜も今日は䞀緒に行けるな」 「うんっ」 「及川、䞉秒で顔盎せ」 「理䞍尜っっ」  通垞であれば高校ず䞭孊で時間垯が少しずれるけれど、今日は高校が入孊匏ずいう事で少しばかり時間が遅くスケゞュヌルが蚭定されおいお、朝緎に行かなかった翔陜の登校時間ず䞁床重なっおいた。党員が靎に履き替えお倖ぞ出おから、䜕ずか顔を敎えた及川が鍵を確認し、慣れた道を蟿り始める。  高校たでの道のりは䞭孊のそれず同じだ。途䞭の曲がり角で別方向に行くけれどそれ皋遠くない䜍眮にある。掚薊入詊の為に面接で高校たで行った事があるので迷う事なく歩いおいける。  及川ず菅原が二人䞊んで、今日の予定の確認をしおいるのを数歩埌ろからがんやりず眺めた。二人が揃っお畏たったスヌツ姿で居るなんお、こういう孊校行事でなければ芋る機䌚も少ないので貎重だし、い぀でもその時は及川の機嫌が良いずいう事を飛雄は察しおいた。今日もどこずなく顔が緩んでいるし、菅原ず向かい合わせおいる顔が近い。保護者はい぀でも幞せそうで䜕よりだ。 「飛雄っ」  ぜん、ず䞀歩暪から近付いおくるオレンゞの髪がふわりず揺れた。  笑顔で目の前の二人を芋守っおいた筈なのに、同じ笑顔で飛雄の顔を芗き蟌んできお、少しだけ飛雄の心臓が跳ねた。 「高校生だな、良いなヌ」 「菅原さんの埌茩が」 「うん、それも凄く矚たしいけど」  そう蚀い切った圌の目が笑っおいない事が若干怖い。本気で矚んでいるのであれば、あたりネタにするのは埗策では無いだろうず、飛雄は菅原の埌茩ネタは封印する事に決めた。 「倧人っお感じするじゃん、高校生」 「  䜕も倉わっおないだろ」 「䞭孊生から芋たら、すげヌ倧人に芋えるんだっおば」  翔陜の蚀い分は理解できる。飛雄自身、去幎先茩達を芋お同じように思ったものだ。しかしこうしお自分が蚀われる偎になるず、違和感が生じおしたう。  たった䞀幎の差にどれだけの壁があるのだろうか。  こうしお隣を歩くのは平気で、話をする事だっお倉わりないのに  どうしおも二人の間にある䞀歳差ずいう珟実は、芋えない壁を䜜り出しおくるから奜きになれない。  はぁ、ず小さく溜息をこがす。  もう少し歩けば高校ず䞭孊の分かれ道に差しかかっおしたう。そうすれば圌は䞀人で通い慣れた䞭孊校ぞず向かっおいっおしたうのだ。 「 翔陜」  本気で悩んだ。  離れた方が良いのか、離れなくお良かったのか。  正盎今でも迷いはある。  だけれどこうしお傍に居られる事は嬉しいし、話が出来る事も幞せに思う。  ただそれは自分䞀人の感情であり、圌は自分ず同じ感情は持っおいない。  本圓に良かったのか。  勝手な片想いではないず蚀われたけれど、想いが違うのに本圓にこのたたで良いのかず疑いたくなる。  感情に埓っおは芋たけれど、やはり今でも正解は分からないたただ。 「お前が居ないず意味ねヌから。早く、来い」  ぜん、ずその柔らかい髪に手を䞀床だけ眮いた。すぐ離しおしたったけれど、その柔らかさはしっかりず手のひらに刻み぀けられる。  翔陜はきょずんずした衚情で飛雄を芋返す。䞉床瞬きを繰り返しおから、くすりず柔らかく笑っお芋せた。 「おう䞀幎経ったら絶察远い぀くから、埅っおろ」  ひらりず手を振っお、䞭孊校ぞず続く道を遞んで圌は走り出す。及川ず菅原にも手を振っお、いっおきたす、ず笑顔で告げた。ゞャヌゞが入っお膚らんだ鞄を翻し、䞀床も振り返らないたた走り去っおいった。  こうしお圌の䞀挙䞀動で、毎日『奜き』を積み重ねお行く事が。  埌悔はしおいない、悩んでいるけれど。  間違いではない、迷っおいるけど。  あの笑顔を芋れる事が嬉しい、同様に苊しくもあるけれど。  い぀厩壊するか分からないこのバランスを、い぀たで保ち続けられるのか。 「飛雄」  及川の声で振り返るず二人ず距離が開いおしたっおいるので、慌おおその差を埋めるために足を螏み出しお隣に立぀。揃えられた䞉人の歩みの途䞭で、ほんの少しだけ埌ろを振り返った。  遠くにそびえ立぀䞭孊校は芋぀けられたけれど、既に翔陜の姿は芋えなくなっおいた。圓たり前だ、蟿り着くにはいく぀か道を曲がっおいくのだから。  圓たり前だず分かっおいるのに、どうしおも振り返りたくなったのだ。  ふるりず頭を小さく振っお、前を芋る。  自分が行くベきは圌ずは違う孊校で、圌がいずれ远い぀いおくる堎所なのだず蚀い聞かせお。 「 ぀たんねヌ 」  たたこの蚀葉を呟かねばならないのかず、残念に思いながら足を進めた。   クラス発衚も入孊匏も淡々ず終えお、埌は教科曞配垃ず明日の連絡事項を聞くだけずなった。その埌は先に垰った保護者達ずマンションで合流し、倕飯は家族お気に入りのレストラン。  そんな颚に今日の楜しみに思いを銳せおいないず今すぐ抜け出したくなるくらいに退屈だ。  飛雄は元々友人は少なく、䞭孊バレヌ郚員ずの仲も個人的に深たった盞手は居なかった。ずもなれば初めお入ったばかりの高校の教宀で、完党に孀立しおしたったのは蚀うたでもない。呚りは同じ䞭孊だったり、垭が近いからず話しかけたりしおそれなりにたずたりがいく぀か出来おいるずいうのに飛雄だけは完党に䞀人がっちで浮いおいる。  それが圌の目぀きずぞの字に曲がった唇が、無愛想な雰囲気を醞し出しおいお近寄り難い空気を䜜っおしたっおいるからだ、ずいう原因には倚分気付く事は無いだろう。  別に話しかけに行く気も起きないし、寂しいず嘆くような性栌でもない。正盎䞀人は慣れおいる。  そう開き盎っお鞄にしたい蟌んでいた雑誌でも読むかず手を䌞ばす。  するず、突然背埌から埌頭郚ぞの衝撃を受けた。  ごすっず良い音ず痛みが走り、驚いお振り返る。 「 、っは、䜕その前髪ず絆創膏。高校デビュヌ」  にしおは若干思い切りが足りないね。ずひき぀った笑いを向けおくる芋慣れた顔がいお、その笑いに文句を蚀うよりも驚きに目を芋開いた。 「  は  䜕で、ここに」 「僕が烏野高校の新入生で、たたたたこのクラスだからここに居るんだけど」  それ以倖にどんな理由があるの、ず至極圓然だずいうように銖を傟げる。凶噚ずなった文庫本の背衚玙をぜすりず肩に乗せた。 「朝から斜め埌ろの垭に居たんだけど 王様っお本圓呚り芋おないね」  飛雄をその名称で呌ぶのはこの䞖に䞀人しか居ない。䞭孊のクラスメむトだった月島だけだ。  驚きに蚀葉を倱っおいる飛雄を攟眮しお、その前髪を少量぀たみ䞊げた。指先がじりじりずした感芚を拟い、少し切りそびれた焌けた髪がぱらりず萜ちる。 「  䜕、君の散髪方法は切るんじゃなくお焌くの焊げおるんだけど」 「   及川メシが炎䞊しお、 焊げた」 「ぷはっ」  料理の炎で焌け焊げた、ずいう意味の分からない状況に耐えきれずに月島が吹き出した。短すぎる前髪だけでも十分面癜芁玠で笑いを堪えおいたずいうのに、この远撃には耐えられなかったらしい。必死で声をかみ殺し、お腹を抌さえおく぀く぀ず笑った。 「 料理で匕火 っ、なに 君の家の料理、䜕なの」 「及川メシだから、火くらい䞊がる」 「䜕それ、普通じゃないんだけど」 「及川メシだから」  飛雄ずしおはその䞀蚀で党お簡朔するけれど、及川メシを詳しく知らない月島には飛雄の繰り返す蚀葉は壊れたのようでツボにはたった。くくく、ず䞡腕でお腹を抱えお笑うその光景に、月島の爆笑ずいう貎重さに驚くべきだろうか、先の驚きがただ尟を匕いおいる飛雄ずしおはどう察応しお良いか分からなくお焊る。  暫くしお挞く圌の笑いが収たった頃には飛雄の戞惑いも萜ち着いおしたった。䜕ずなく出だしを挫かれた気分になるのは勘違いでは無いだろう。 「 お前、䜕で烏野に居るんだ」 「僕が䜕凊に入孊しようが勝手でしょ」 「 」 「䜕」 「月島なら青城だず思ったから」  飛雄は烏野に行くず宣蚀しおいたし、それ以倖に月島ず進孊に぀いお話をした芚えはない。掚薊だった自分ずは違っお䞀般入詊を受けた事は知っおいたけれど、孊力やバレヌ郚の匷さを鑑みおも月島ならば青葉城西ずいう遞択だっお出来た筈だ。  そう思っおじっず圌を芋おいるず、ふいず芖線を逞らされおしたい、目元が県鏡の奥ぞず隠れた。 「別に。私立に興味ないし、こっちの方が家近いし」 「ふぅん」  確かに埒歩圏内の烏野ず、バス通孊の青葉城西で通孊時間に重きを眮くのであれば劥圓だ。そう考えお飛雄はそれ以䞊深远いをせずに小さく頷いた。  雑誌を掎みそびれた手を机の䞊に戻すず、がらりず教宀のドアが開いた。朝も来た担任の先生が重そうな冊子の束を抱えお教壇ぞず昇るのを芋お、月島含む立っおいた生埒達がそれぞれの垭ぞず戻っおいく。  飛雄は二列暪埌ろの垭に座る月島の姿を芋送っお、本圓にこのクラスに居るんだず確認しおから正面に向き盎った。   翌日から高校の授業が開始された。自己玹介や教科単䜍での進め方ずいった觊りの郚分だけではあるが、䞭孊ずは倧分違う雰囲気に進孊したのだずいうがんやりしおいた感芚が少しだけ茪郭を埗た気がした。  月島が蚀うには同じ䞭孊だった人も孊幎に倚くは無いが居るらしい。ずはいえ飛雄がその名ず顔を蚘憶しおいないので接觊のしようもない。本人ずしおは特に話しかけに行く気もないので問題は無かったが、きっずここに翔陜が居れば呆れただろう。 「王様は盞倉わらずマむペヌスだよね」 「 人の事蚀えねヌだろ」 「うん、それは自芚しおるけど。君の堎合、日向ずの差が激しすぎるんだよ」 「人の事蚀えねヌだろ」  僕は匟居ないけどなんお本気で蚀っおいるのかしらばっくれおいるのか分からないたたかわされおしたった。飛雄から芋たら正盎月島だっお十分マむペヌスだ。 「で、がっち君に良い事教えおあげる。次の授業、移動になったから」 「」 「昌䌑み、君が寝おる間に連絡が来おた。このたただず眮いお行かれるよ」  蟺りを芋回せば確かにクラスメむトの姿が枛っおいお、既に移動しおしたったのだろう。  月島もそれだけ蚀うず次の授業の教科曞ずノヌトを片手にくるりず背を向ける。移動ず蚀っおおきながら䜕凊ぞ行けばいいのかを告げない蟺り、圌の意地の悪さが出おくるから憎らしい。飛雄は慌おお教科曞ずルヌズリヌフを掎んで垭を立った。  急いで远いかけるけれど隣を歩くのは憚られるので少し埌ろに぀いお、振り返りもしない淡い髪をがんやりず芋お歩く。自分が高校生になった実感があたりわかないのは、こうしお倉わらぬ制服を纏った倉わらぬ盞手ず䞀緒に居るからなんじゃないか、なんお勝手な事を考える。 「 なぁ」 「䜕」 「  バレヌ郚入るのか」 「そうだね、基本郚掻動必須みたいだし、今曎他のスポヌツ始めるのも面倒だし」 「 」 「 䜕」  振り返ったず思えば睚み぀けられた。今の䌚話に䜕か蚀わなければならなかったのだろうかず飛雄は銖を傟げる。 「俺も、バレヌ郚入る」 「そりゃ掚薊なんだから入るのは圓然でしょ」 「あぁ、だから月島がバレヌ郚入るなら、楜しみ、だ」  ペア緎で組たされるのは䞍本意だけれど、匷い奎が居るのは喜ばしい。萜ちた匷豪ず蚀われおいるこの郚掻にどんな人が居るかは知らないから尚曎だ。そういう意味で確認したから他意は無い。  なのに飛雄の答えを聞いた月島は䞀局眉間に皺を寄せた。 「   そういう所は兄匟そっくりだね、銬鹿みたいに盎球」 「さっき䌌おないっお蚀っただろ」 「腹立たしい皋䞡極端だよ」 「それに、兄匟じゃ無い」 「䌌たようなモンでしょ」  蚀い合いをしおいる間に教宀に蟿り着いお䞭に入る。出垭番号順かず思いきや自由垭らしい、既に埌ろの方は埋め尜くされおいお、空いおいる垭は限られおいた。  この時間は歎史で、教宀が芖聎芚宀ずいう事は映像鑑賞だろうず高を括り、空いおいる前の隅を遞ぶ。同じ考えに行き着いた月島も、飛雄の取った垭の反察偎ぞ座った。  教科曞を眮いた所で教員が入っおくる。出垭を確認し、今日は映像鑑賞ずその埌の感想文提出だずいう説明をしおから教員が䞀床顔を䞊げた。蟺りを芋回しおから出垭簿を眺め぀぀、ぎ、ず飛雄を教科曞で指し瀺す。 「えヌず、圱山。感想文はペアで意芋亀換をしたいから移動しおくれないか」 「   」 「䞁床同じ列だし、月島の隣に移動しお。そしたら始めよう」 「」  ぐるりず教宀内を芋回す。二人垭になった埌ろの座垭は隙間無く埋たり、自分ず月島が端を陣取る列間ずその前には誰䞀人ずしお居ない。  ほら、始めるぞ、ず飛雄の心境を知らない教員が促し、映像ディスクの準備を始める。どうにも逃げられそうにないず、䞀぀溜息を吐いおから重い腰を䞊げお月島の隣ぞず移動した。座る盎前に睚み぀けられたが、それを気にするような飛雄ではない。 「   䜕で高校たで来おこうなるの」 「 知らねぇ」 「䜕で君、がっちなの友達䜜りなよ」 「そのたた返す」  䞀挙に眉間の皺を深めた二人の険悪な雰囲気なんお捚お眮いお、薄暗くなった芖聎芚宀のモニタヌにお堅い孊習教材特有の字幕が映し出された。    が終了し解散ずなり、昇降口ぞ流れおいく同玚生の波に逆らっお、飛雄は真っ盎ぐ廊䞋を歩いおいく。  目的地は䜓育通、勿論男子バレヌ郚の芋孊だ。事前に担任に確認し、䜿っおいる出入り口を教えお貰っおそこぞず向かう。倧きな䜓育通は別の郚掻が䜿っおいお、男子バレヌ郚は別通の小さなコヌトを䜿っおいるらしい。埅遇に差が出おしたっおいるのは明らかだけれど、飛雄ずしおはバレヌが出来れば問題無いので気にしないたた䜓育通ぞず蟿り着いた。  重い匕き戞に隙間を䜜っお芗き蟌む。既に䜕人か集たっおいるらしく、話し声が聞こえた。ラフなシャツず郚掻共通ゞャヌゞを矜織っおいるので孊幎は分からないけれど、集たっおいる人達は和気藹々ず䌚話をしながらストレッチをしたりノヌトを芋たりず忙しそうだ。 「  」 「入らないの」  芗きに来たけれど、その埌どうするかたで考えおいなかった飛雄に背埌から声が振っおきた。びくりず肩を揺らしお振り返るず、男子バレヌ郚のゞャヌゞを着おきょずりず目を䞞くした女子生埒がノヌトを抱えお立っおいた。 「ここ、男子バレヌ郚だけど。芋孊なら歓迎するから、入ったら」 「  」 「私マネヌゞャヌだから、倧䞈倫よ」  笑いながら黒髪をふわりず翻しお、飛雄が芗いおいた匕き戞に手をかける。 「たさか入孊匏翌日から二人も芋孊者が来るなんお思わなかった」  少し匟んだ声ず、その蚀葉に飛雄が銖を傟げおもう䞀床背埌に芖線を向けるず、気たず気な衚情を隠しきれない月島が立っおいた。もしや他の入り口から芗いおいお芋぀かった口だろうか。二人の埮劙な空気を䜙所に、䜓育通の戞が開けられた。するず䞭にいた郚員の䞀人が飛び぀くようにドアの前ぞず駆け寄っおくる。 「朔子さんっお荷物お持ちしたすっ」 「倧䞈倫。それより、新入生が芋孊に来おるから 」  ちらりず目配せされた先で、瞮こたる䞀幎生二人に䜓育通にいた郚員の芖線が䞀斉に集たった。この状況は予想できおいなかった飛雄が蚀葉を倱っおいるず、月島が埗意の倖向けようの仮面をかぶっおにこりず埮笑む。 「緎習䞭にすみたせん。入郚予定なので、少し先立っお芋孊に来たした。䞀幎A組の月島です」 「  A組、圱山、です」  脇腹を小突かれおしたったので䜕ずかそれだけを口にし、ぺこりず頭を䞋げる。するず散っおいた䞊玚生がわらわらず寄っおきお二人を取り囲んだ。 「䜕、経隓者」 「ポゞションは」 「A組っおこい぀の匟ず同じだろヌ、この名字知っおる」  矢継ぎ早に繰り出される質問に怖じ気付きそうになるのをぐっず堪えお、飛雄が口を開く。 「小孊校前からバレヌやっおたす。セッタヌです。クラスメむトはただ芚えおない、です」 「 僕も小孊校前から、ミドルブロッカヌです」  経隓者ずいう事で郚員達の目がきらりず茝く。䜕人か奥の方でガッツポヌズをしおいる人もいるのを芋お、過剰に期埅されおるのを感じ取っお月島が少しだけ眉を寄せた。  そのたた質問が飛び亀い続け、二人が䞀歩匕いおしたったのを察したのか、ぱしんず手が鳎らされた。 「皆、䞀幎生が怯えるから緎習に戻っお」 「っ、そうだ朔子さんの蚀うずおりだコヌチがくる前に倖呚ず柔軟終わらせるぞっっ」 「郚長は二人に挚拶」 「はい朔子さんっ」  ドアを開けた時に真っ先に飛び぀いおきた背の䜎い男子生埒が、はきはきず声を䞊げながら女子生埒の指瀺に埓っお動き始める。ぎしりず女子生埒ぞ敬瀌しおから、くるりず飛雄ず月島の方ぞ向き盎った。 「改めたしお男子バレヌ郚ぞようこそ、郚長の西谷だ」 「 っす」 「そしおこちらが我らがマネヌゞャヌの枅氎朔子さん」 「私は良いから」  それでも䞭に入れおくれたのはこの人だず、感謝を蟌めお䌚釈するずふわりず埮笑んで返しおくれた。 「二人ずも経隓者なんお挞く郚も盛り䞊がるなヌ」 「」 「この郚、䞉幎生が居ないんだ。この前退郚しおいったから」  困ったような笑みを浮かべおそういう西谷に、枅氎が芖線を向ける。マむナスのむメヌゞを付けおどうするずいう窘めだろう、それを察しお口を手で芆ったが既に遅い。 「あ、䞍仲ずかじゃ無いぞ受隓の為に勉匷したいからっお早めに退郚しただけで 」 「倧䞈倫です、気にしたせんよ」  仮面を付けたたたの月島の返事にあからさたに安堵する。そんな情報を貰ったずころで入郚意欲が消えるわけではないから気にしないが、枅氎は眉を顰めたたただ。 「えヌっず、郚掻の事もうちょっず話すず 二幎生が䞃人。顧問は䞉幎の先生、顧問より郚掻に顔出しおくれるコヌチも居るんだ」 「コヌチ」 「あぁ、顧問はバレヌ芳戊掟らしくお。技術はそのコヌチから教わっおるんだ、近くの倧孊生で䞀応有名人らしい」 「䞀応っおいうか、本圓に倧孊バレヌでは有名」 「ですね、朔子さんっ」  どうにも圌女が話すず郚長はそちらに意識を取られるようだ。ここの力関係がどんなものなのか䞍思議である。  ふず枅氎が䜕か思い出したように手持ちのノヌトを捲り出す。䜕かを探すように指を動かし、ずあるペヌゞでその手を止めた。 「 圱山君はスポヌツ掚薊もしかしおうちのコヌチが切望しおたセッタヌ君」 「コヌチ」 「えぇ、面接の時に煩い人に䌚わなかった」  そういわれお高校入孊の為の面接を思い出す。堅苊しい空気の䞭、及川に叩き蟌たれた志望理由やマナヌを必死に手繰り寄せながらこなしたあれだ。  煩い人はその堎には芋圓たらなかった。しかしその面接䌚堎だった教宀の倖ぞ出たずきに  。 「 䌚いたした」 「やっぱり。その人がコヌチで、貎方の詊合を芋おからずっず隒いでいたの。サヌブが凄い寡黙な倩才セッタヌが進孊しおくるかもっお」 「 俺、倩才じゃない、です」 「矎化されおる気もするけど、王様の事でしょ」 「でも、倩才じゃない」  むすりず䞍機嫌な衚情を芋せる。謙遜ではなく、飛雄はその蚀い方が奜きでは無いのだ。 「すみたせん、圌面倒な人なんで」 「䜕で月島が謝るんだよ」 「君が謝らないからでしょ」 「お前ら、仲良いのか」 「「良くないです」」  西谷の質問に声が揃っおしたっお、それさえも䞍本意だずいうのに。䞀床睚み合っおから、ふいず顔を逞らす。 「でもそんな意気投合しおるっお事は昔から䞀緒にバレヌやっおたのか」 「  䞭孊から同じ郚でした。意気投合しおたせん」 「ぞヌでもコヌチが蚀っおたぞ、掚薊のセッタヌだけじゃなく、その盞方のミドルブロッカヌも欲しいっお。同じ䞭孊なら月島の事じゃねぇ」 「 盞方 」 「そんな、倩才の盞方なんお僕に勀たりたせんよ止めおください」  剥がれかける月島の仮面を眺め぀぀、同じように眉間に皺を寄せる。 「圱山の盞方で、ミドルブロッカヌならちゃんず居たすから。そっちじゃないですか」 「おもう䞀人有力遞手が居るのか」 「残念ながら䞀孊幎䞋なので、ただ䞭孊生です」  名前は出さないが、月島が指しおいるのは翔陜の事だ。コヌチがどの詊合を芋に来たのかは知らないが、飛雄ず組んで動いおいるように芋えたのであれば䞀理あるだろう。ただ䞭孊生だず聞いおがくりず肩を萜ずす西谷に、自分の方がその事実にがっかりしおいるのだず心の䞭で愚痎を吐く。 「っず、話しすぎたな悪い。芋孊なら奜きに芋おいっお良いぞ、緎習混ざっおも良いし」 「 䞀぀質問、良いですか」 「おう、䜕だ」 「郚長はポゞション、リベロですか」 「    正解だが、䜕凊で刀断したか蚀っお芋ろ」 「身長で」  勿論、ず頷きながら蚀う飛雄に眉を぀り䞊げた西谷の跳び蹎りが攟たれた。突然過ぎお咄嗟に避けきれずにべしょりず床に倒れ蟌む。 「  王様、本圓オブラヌトに包んだ蚀い回し、芚えた方が良いよ」  飛雄ずしおは質問があるかず聞かれたから聞いただけなのに、この仕打ちは予想しおいなかった。目をぱちくりずさせおいるず、枅氎が溜息を吐いおから手を差し出しおくれた。 「朔子さんっお手を貞すなんおそんなっ」 「い぀たでも倒れさせおるなんお駄目でしょう」 「そうですけどっ」  手を借りずに立ち䞊がっおも睚たれるから飛雄ずしおはどうしたら良かったのか分からない。西谷がぐるりず圱山の方を向いお睚み぀け、意気蟌んで真っ盎ぐに指をさす。それを芋た枅氎が、あぁたたか、ず蚀うように呆れお小さく溜息を吐いた。 「俺は確かにリベロだが、別に身長がちょっず䜎めだからリベロになったわけじゃない」 「はぁ 」 「昔、神のようなリベロを芋たんだよ高校バレヌ党囜倧䌚䞭継しおたテレビで、高校生で、身長が今の俺より  䜎いかもしれないそれなのに凄い人を」 「 䜎いかもしれない、ですか」 「现かい数倀たで芚えおねぇよ俺が小孊生の時芋たんだから」  しかしそれが目に焌き付いお離れないのだず、西谷は続ける。指しおいた指をぎゅっず握りしめお、その光景を思い出すかのように目を茝かせた。 「党䜓を芋枡せお、掟手さは無くおもチヌムに必芁ずされ、党おのボヌルを必ずメンバヌに繋げ続けるんだ」 「  小孊生の時に芋た高校生っお事は、今はプロになっおるんですか」 「 いや、倧孊でバレヌ蟞めたっお聞いたから今はもう䜕凊にいるか分かんねヌけど 」  確かに実業団に居るなら名前を出すだろうに、圌は頑なに名を出さない。もしかしたら身長ず同じで芚えおいないのか。  取り敢えず語りに癜熱しおいるし、倧人しく聞いおあげようずいう䞊からのスタンスを取っおいる月島ず違っお、飛雄は目を茝かせお聞き入っおいた。 「俺もあんなリベロになるんだっお憧れおなったんだ決しお俺の身長が他の人よりほんの少し䜎い事が理由では  」 「わかり、たすっ」  ヒヌトアップしおいく声を遮ったのは、同じく気分が高たった飛雄だ。ぐ、ず䜓に沿わせたたたの䞡手を握りしめお力匷く頷いた。 「俺も、憧れが居たす。俺も、その人ず同じセッタヌに、なりたすっ」  飛雄が目指すのはただ䞀぀。  実業団の姿でも、海倖のスヌパヌプレむダヌの姿でも無い。遠くお近い、倧きな背䞭。  昔目の前で芋た、綺麗に飛ぶ及川のサヌブ。  それだけを芋据えお、目指しお、今でもバレヌボヌルを远いかけおいる。  その宣蚀に西谷の目が芋開かれお䞀局茝き出す。がしりず飛雄の右手を䞡手で掎み、ぶんぶんず䞊䞋に振った。 「お前も同士かっ憧れの姿があるっお良いよな」 「はい、っ」 「良し良し、もうこのたた入郚しろそんで、俺ず䞀緒に憧れ目指しお勝ち進むぞ」 「はいっ」  ただ入郚届けも貰っおいないずいうのに早い展開だ。そのたた孊ランを脱ぎ捚おお靎も履き替え、シャツの袖をを捲り䞊げおいく。本気で今から混ざっおいく぀もりだろうかず、月島はこの展開に着いおいけずに呆然ず芋守るしかない。 「 ごめんなさいね、西谷君、この話するず長くお」 「  いえ、こちらこそ」  䜕がこちらこそなのか、そもそも自分は飛雄の保護者ではない。ず思いながらも他に蚀葉が出おこない。申し蚳なさそうな枅氎ず頭を䞋げ合いながら、飛雄のブレヌキである翔陜が䞀孊幎䞋である事を今から恚みたくなった。   月島も巻き蟌んでの郚掻芋孊を枈たせ、翌日には入郚届を出しお晎れお郚員ずなった飛雄は埐々に高校生掻に慣れおいった。  盞倉わらず教宀や昌䌑みは䞀人で過ごす事が倚いし、䜕かず月島ずセットにされる傟向もあるけれど䞭孊の延長だず思えば問題は無い。問題なのは、延長だず思うず翔陜が居ないこずが浮き圫りになるから、それだけが心残りではある。  それでも授業の流れにも慣れ、郚掻には参加し、自分達以倖の新入生も入っおきた頃。 「圱山君、月島君、居る」  ひょこりず䞀幎の教宀に枅氎が顔を出した。  枅氎は所謂矎人ずいう郚類であり、既に新入生の間でも有名ずなっおいたのでこの蚪問は呚りが䞀斉に盛り䞊がった。しかしそれを衚に出す事が出来ないシャむな䞀幎生達は、圌女の方に意識を向けながらも必死で平静を装う。  そんなクラスメむトの状況など露ほども知らぬ飛雄が、枅氎の前に立った。 「昌䌑みにごめんなさい。今日、䜓育通が点怜で䜿えないから緎習は無し」 「 はい」 「で、こういった連絡事項、郚内で連絡網グルヌプ䜜っお連絡出しおるんだけど、ただ䞀幎生の連絡先聞いおいなかったっお思い出しお」 「グルヌプ 」 「そう、西谷君に携垯番号教えおおいおくれるグルヌプに入れおくれるから」  飛雄は少し銖を傟げお、䜕やら考え耜る。暫く芖線を泳がせおから、机の暪に匕っかけおいた鞄を手にしお䞭を持り始めた。 「 」 「携垯、これしか持っおないっす」  奥底から取り出したのは、手のひらサむズの真っ癜な぀るりずした物䜓だ。折りたたみでもスマヌトフォンでも無いそれは  「   子䟛ケヌタむ」 「です」  小さな本䜓の䞊半分に液晶画面ず、その䞋にたん䞞の倧きなボタンが䞀぀。本䜓䞋から延びる玐は、防犯ブザヌだろうか。 「え、本圓に」 「小孊校の頃持たされおから、あんた䜿わなかったんで」 「 䞍䟿じゃないの」 「必芁だず思わないんで。持っおれば良いっお蚀われたした」  䜿わなかったずいう事は危機が無かったずいう事か。ずはいえ今でもこれを持ち続けおいるずいうのも、それを圓然のように取り出すのも凄い事だ。  決められた䞉぀の電話番号に発信する事ず、そこから受ける事しか出来ないその携垯では、䟋え番号を教えたずしおも郚内で䜿甚しおいる連絡網には意味をなさない。 「  取り敢えず、それに付いおはちょっず眮いおおきたしょう。月島君は」  蚀及するこずを諊めた枅氎が教宀を芋枡す。昌䌑み埌半なので昌食は終わっおいるだろうず思っお来たのだが、居ないずなるず遊びにでも行ったのだろうか。月島が教宀に居ないず刀断した所で、ぜ぀りず飛雄が口を開く。 「倚分図曞宀、です」 「そうなの」 「次、自習だから」  自習だから図曞宀、ずいう理由ず事象が結び぀かない枅氎は銖を傟げるが、こちらも深远いする事は止めおおいた。月島であれば本も奜きそうだし、図曞宀にいおもおかしくはない。 「じゃあさっきの、䌝蚀お願いしおも良い」 「っす」 「宜しくね」  ひらりず枅氎が手を振っお、教宀から離れる。隣のクラスを同じように芗き蟌んでいるので、䞀幎生党員に同じように䌝えに行くのだろうか、マメな人だず飛雄はその背䞭を芋送っおから垭に戻る。  枅氎の登堎ず飛雄の携垯にざわ぀く教宀内に気付かないたた、手の䞭にある携垯電話を眺めた。  登録されおいるのは及川、菅原、翔陜の携垯番号だ。勿論翔陜も持っおいお、登録内容も飛雄の番号が入っおいる以倖同じだ。今たで防犯ブザヌを鳎らした事は無いし、保護者の番号に掛ける事も皀だった。翔陜の番号に掛けた蚘憶なんお無い。  ずはいえ、もしもきちんずした携垯を持ったら、先皋の郚内の連絡もすぐだし、䜕より翔陜ずのやりずりが出来るかもしれない。 「  携垯、か 」  珍しく沞いおきた物欲に、郜合良く及川が入孊祝いを䞎えたがっおいる事も思い出す。しかしそれは入孊祝いである前提なので、翔陜の携垯にたで暩利は及ばないだろう。  しかしそれがあれば連絡が取り合えるず気付いおしたえば、それを欲するたでに時間はかからない。  垰ったらお願いしおみようかず考えを巡らせながら、教宀に鳎り響くチャむムに耳を傟けた。   「及川さん、欲しいものがありたす」  倕飯を終えおのゆったりした䞀時に、及川の座る゜ファぞ向かい合わせになるように正座しお話を切り出した。その畏たった出で立ちに䞀瞬驚いたように目を芋開くけれど、ふむ、ず及川は䞀぀頷いお芋せる。  口を開こうずするけれど、このシチュ゚ヌションに既芖感を芚える。それもそうだ、先日も同じような圢で郚掻甚具の賌入に぀いおお願いをしたばかりである。携垯で頭が䞀杯で忘れおしたっおいたのを思い出しおしたい、䞀気に顔が青耪めた。 「 っ」 「飛雄」  はくり、ず声を出さずに口を動かしたけれど、蚀葉を続けるのを躊躇っおしたう。郚掻甚具がどれだけお金が掛かったかは知っおいるし、携垯がどれだけ高いかも知っおいる。お願いすれば躊躇う事はしないであろう及川が容易に想像出来おしたうからこそ、飛雄ずしおは蚀いにくいのだ。  前眮きをしたのに続かないお願い事に、及川が銖を傟げる。しかし飛雄の性栌䞊、金銭面を気にしおいるのだろうず蚀うこずは察せられたので倧人しく埅぀事を遞んだ。静かに圌を芋぀めお、圌の我が儘を埅ちかたえた。  その姿勢に気付いお、飛雄も少し芖線を泳がせる。及川の背埌に居る菅原ず目が合うず、ぐ、ず䞡手で握り拳を䜜られおしたった。圌なりの゚ヌルのようだ。  ぐるぐるず䜕床か芖線を泳がせおから、挞く意を決しお蚀葉を発する。 「  携垯。 新しいの、ほしい、 です」  その蚀葉がリビングに萜ずされお、数秒の間が生たれた。かちかちず響くのは時蚈の音で、こんなに気になる物だっただろうかず改めお確認したくなるくらいに飛雄の耳には倧きく聞こえる。  そうしおその沈黙を砎ったのは、及川の笑い声だった。 「っは、はははっ成る皋ヌ、携垯ね飛雄ちゃんも携垯欲しがるようになったんだ」 「 及川さんず菅原さんず翔陜以倖、連絡取れたせん」 「そうだね、高校生だもんね」  䞀頻り笑っおから、及川がちょいちょいず手招きをする。それに埓っお近付くず、先日焌け焊げお短くなった前髪をくしゃりずかき䞊げられた。 「倧きくなったもんねヌ。やらかす事は子䟛の頃ず倉わんないのに」 「  」  反動で頭が揺れるくらいの力で䜕床も撫でおから離されお、そうしおそのたた正座した膝の䞊に乗せられたのは、小さなショップバッグだ。 「はい、及川さんからの入孊祝い」  それは芋かけた事のある、携垯ショップの玙袋で、䞭には携垯の機皮名が印字された真新しい四角い箱が入っおいる。  驚いおその袋ず及川を亀互に芋るず、しおやったりずいう衚情で笑みを向けられた。 「飛雄が欲しいもの蚀わないから、及川さんがあげたい物買っちゃった。芁望通りで安心したけど たさか飛雄から携垯欲しいっお蚀われるずはねぇ 」 「 郚掻の連絡、䜿うから 」 「うんうん。それでも良いよ」  箱から本䜓を取り出す。電源を入れるず起動画面が立ち䞊がっお綺麗な液晶に初期蚭定の埅受画面が広がる。 「  有り難う、ござい、たす」  無駄遣い、したせん。ず事前に宣蚀すれば、もう䞀床頭を撫でられた。 「あ、飛雄の携垯、新しくなっおる」  宿題に手こずり、郚屋に籠もっおいた翔陜がリビングぞず顔を出す。飛雄の手にしおいた携垯を目敏く芋぀けお、ぎょんず菅原に飛び぀いた。 「飛雄ちゃんの入孊祝いにね」 「栌奜いいなヌ、芋せろっ」  そのたた飛雄の方に飛び移り、圌の手にある携垯を芗き蟌む。人気の機皮で、及川が持っおいる最新機皮のシルバヌより䞀䞖代前のブラックだ。䞀緒に入っおいる携垯ケヌスは玺色のバンパヌタむプで、飛雄の奜みを熟知したセレクトがされおいる。 「子䟛ケヌタむは解玄しお来たから、今は䜿えなくなっおたす。埌で持っおおいで」 「じゃあ飛雄の携垯番号倉わったの俺の蚭定し盎さなきゃ」  そういっお翔陜が慌おお自宀ぞ行き、自分の子䟛ケヌタむを手にリビングぞ戻っおくる。こちらも鞄に入れっぱなしだったようで、防犯ブザヌの玐が短くたずめられおいた。  かちかちず操䜜を始めるけれど、画面を芋ながら翔陜が銖を傟げる。 「   動かない 」  充電はされおいるけれど、画面操䜜がおかしい。攟眮し過ぎおの故障かずボタンを䜕床も抌しおいるず、及川が翔陜の手から子䟛ケヌタむを取り䞊げた。 「蚀ったでしょ、解玄したっお」  空いた翔陜の手にぜん、ず乗せられたショップバッグは先皋飛雄に枡されたもので。䞭を芗くず飛雄ず同じ物が䞀匏揃えられおいた。取り出したブラックの携垯ずオレンゞのバンパヌを凝芖し、驚きに目を茝かせる飛雄ず翔陜がぐるりず及川の方を芋る。 「俺、高校入孊しおないっ」 「うん、来幎だね」 「入孊祝い貰えないっ」 「そうなんだけど 飛雄ちゃんだけは寂しいかなヌず思っお」  にこりず笑う及川ず、やっぱりなず苊笑する菅原を亀互に芋おから、手元にある携垯に芖線を萜ずす。  翔陜は飛雄の携垯を芋お、狡いずも矚たしいずも発さなかったけれど、喜んでいる様子に倧人組は内心安堵した。 「䜿い過ぎは良くないけど、䜿わないのも勿䜓ないでしょう。飛雄だけに持たせたら基本料金払うだけになりそうだから、翔陜が盞手になっおあげお」 「 良いの」 「勿論。それに孊校離れたし、こういう目に芋える繋がりがあった方が飛雄も寂しがらなくお枈むでしょ」  ねヌ、スガちゃんず巊手薬指の指茪を芋せ぀けるように菅原の方を向くが、困った衚情で躱されおしたった。くすりず及川が小さく笑っおから、飛雄ず翔陜の方に向き盎る。 「そういう事で二人に携垯を持たせるから。俺ずスガちゃん、お互いの番号は登録しおおく事。䞭孊は電源入れなければ持ち蟌み可、高校は授業䞭に䜿わないっおいうルヌルがあるからそれを守る事。守れなかった時ず、䜿い過ぎたり成瞟䞋がったら没収するからね」 「うんっ及川さん、有り難うっ」 「 有り難う、ございたす 」 「いヌえ」  二人揃っお頭を䞋げおから、いそいそず携垯電話を起動させる。保護シヌトずケヌスを装着し、手探りで操䜜しながらアドレス垳を開いた。  真っ癜な枠に、新芏登録ボタンを抌しお、真っ先にお互いの電話番号を登録する。 「登録出来たヌっ」 「  」 「芋お、飛雄が䞀番だ」  にこりず笑っお、翔陜が嬉しそうに携垯を飛雄の方ぞず向ける。  圌の䞭で䞀番である筈の菅原よりも先に登録された自分の名前。  ケヌスの色が違うだけの、お揃いの携垯。  ただ䜿っおもいないのに、嬉しそうに浮かべられる笑顔。  たったそれだけの事なのに、嬉しくお、苊しくお。  他意のない圌の䞀蚀が、嬉しくお、切なくお。  やはり離れれば良かったず、考え盎したくなるくらいに。  䞀時でも離れようず考えた事を、銬鹿らしく思えおしたうくらいに。 「 俺もお前が䞀番、だ」 その蚀葉の意味の違いに気付かなくお良い   「岩泉さんの番号、登録、したした」 「 え」 「前に教えおもらったから」 「ねぇ、及川さんの番号は登録した」 「岩泉さんにメッセヌゞ送っおから、したす」 「䜕で岩ちゃんが優先なの」
■HQ腐幎霢操䜜泚意。苊手な人はリタヌン願いたす<br />■及川培ず圱山飛雄、菅原孝支ず日向翔陜の芪子二組の共同生掻物語。<br />■及菅は出来䞊がっおたす<br />■衚玙はフリヌ玠材をお借りしおたす<br /><br />■タグ、お気に入り、評䟡、フォロヌ、コメント等々有難うございたす<br /><br />■久々の圱日に感芚が远い぀いおたせん。そしお挞く原䜜ず同じ時間枠です長かった<br />■新キャラ登堎ですが口調迷子。挞くこっち方面がちらほらしおきたした。テンション高めで曞いおお楜しいです。<br /><br />■明日は春コミですねヌ。既に寒さが酷くお、今から䞀般埅機列が恐怖です。<br /><br />■前回のアンケヌト回答も有難うございたした通販垌望が倚くおびっくりです 本圓有難うございたす。無事脱皿したので、RTS8終わったら準備したす<br /><br />■い぀も皆様読んでいただき本圓に有難う埡座いたす<br />2016/03/0703/13[小説] ルヌキヌR 33䜍<br />2016/03/13[小説] 女子に人気R 95䜍
及川さん家の高校生
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ある䌑日の昌䞋がり、千代は䞊䞭のグラりンドにいた。 そこにはもうひずり、䞊䞭の颚玀委員長こず雲雀恭匥の姿もある。 「君、歊噚䜿うのは良いけど䜕か䜿いにくそうだよね」 「慣れおないんですよ、こヌいうの持぀の。䞀応、雲雀さんのトンファヌに察応出来そうなものを暡玢した結果なんですけど」 「暡玢䞭に迷走した感じがするね。前回のよりはマシだけど」 「前回のは雲雀さんに速攻ぞし折られたしたね。ふざけおるのっお」 「完党に悪ふざけにしか芋えなかったよ」 「あれでも結構自分なりに本気で考えた結果だったんですけどね」 二人の䌚話の合間に、激しく打ち合う金属音が響く。 雲雀は愛甚のトンファヌを、千代はこの床察雲雀甚に特泚した十手(※芳賞甚のレプリカではなく実戊甚)を振るっお察峙する。 䜕故、こんなこずになっおいるのか その答えは数週間前に遡る。 ツナず二人で出掛けた垰り道、䞀人の男ず擊れ違った。 それだけならば別段気に留めるようなこずではない。 けれどその男は、平和な町に䌌぀かわしくない気配を纏っおいた。 䞀瞬感じたその気配の理由を考え、振り返った千代は遠ざかる男の埌姿に目を现めた。 僅かに遅れお、その原因に思い至る。 ――硝煙の、匂いだ。 その意味に気付くず、どうしおも男の正䜓ず動向が気になった。 『千代どうかした』 立ち止たった千代に䞍思議そうに問い掛けるツナは、硝煙の匂いに気付いおいる様子はなかった。 ならば無闇に䞍安を煜る必芁はない。 ツナには悟られないように、軜い調子で口を開いた。 『ツナ、私甚事思い出したから先垰っおおあ、それずその垜子貞しおほしいな』 ツナから垜子を借り、軜い倉装の぀もりで髪を纏めおその䞭に入れお被るず、男の埌を远った。 その先には“人盞の悪いおじさん達”がいたのだが、たぁ色々すったもんだがあり、気付けば千代がそこの連䞭を制圧する事態になった。 そうしお粗方片付いたずころで、隒ぎを聞き付けおやっおきたのが雲雀である。 『わぉ、随分面癜いこずになっおるね』 決定的な堎面を目撃されおしたい、圌の興味を匕くには十分だった。 盎埌嬉々ずしおトンファヌを向けおきた雲雀ず䞀戊亀え、気付けばあれよあれよずいう間に再戊の玄束を取り付けられお、既に二床、週末に手合わせをしおいる。 䞀床目に盞察したずき、トンファヌの嚁力はいなすように受け流しおはいたのだが、垞に玠手ではどうにも分が悪かったので次からは察応出来そうな歊具を甚意するこずにした。 ちなみに前回準備したのはバトントワリング甚のバトンで、そもそもの甚途が歊噚ではなかったからか、はたたた絵面が間抜けすぎおか、ずにかく雲雀はお気に召さなかったらしい。 圓然のように䞍興を買っおぞし折られた。 今回は十手ずいうのは前回に匕き続き我ながら埮劙なチョむスだが、嵩匵らずトンファヌを受けられさえすればそれで良かった。 前䞖での栌闘スタむルが埒手であったため、どうせたずもな歊噚を持っおいおも䞊手く䜿いこなせはしないのである。 過去に骞や山本から䜕かの折に杖術や剣術の障りだけ教わったが、现身で装食のないシンプルな十手を構える姿はどちらずも異なる気がする。 「考え事かいムカ぀くくらい䜙裕だね」 「いや、そんな䜙裕っおほどでもないんですけど、我ながら今回のチョむスもどうなんだろうっお」 「時代錯誀ではあるよね」 「や、トンファヌも倧抂ですよ」 激しい攻防を繰り広げながら、二人の䌚話はどこたでも呑気である。 「たぁ埗物の考察はどうでも良いけど、ただただ付き合っおもらうよ。その垜子、ただ払い萜ずせおないんだから」 「残念ながら、そう簡単に“俺”の玠顔は芋せおやれないです」 ム、ず眉を寄せる雲雀に、千代はくすりず笑う。 初めお出䌚ったずきに垜子で髪を隠しおいたこずずパンツスタむルであったこずから、雲雀は千代を男だず思っおいる。 それに䟿乗しお、千代は䞀人称も“沢田綱吉”時代ず同じように“俺”で通しおいた。 玠顔を芋せれば孊内だろうが嬉々ずしおバトルを持ち掛けお来そうなので、今のずころ玠性は隠したたただ。 「草壁に調べさせおるんだけど、なかなか君が芋付からないんだよね」 「わヌ、草壁さん、お疲れ様」 「君、本圓に䞊䞭にいるの実は小孊生ずかじゃないだろうね」 「誰が小孊生ですか」 そんなやりずりの盎埌だった。 「千代ぉお䜕しおんのぉ」 背埌から玠頓狂な――それでいお䜕故かやけに聞き芚えのある――叫び声が聞こえた。 「ぞっ――ツナ」 思わず身を捩り、背埌を確認すれば、䞊䞭の敷地を囲うフェンスの向こうにツナがいた。 しかし、それに驚く間もなかった。 すぐ傍には、雲雀がいるのだ。 目の前にいる獲物が無防備に背を向けた隙を芋逃すような圌ではない。 雲雀はチャンスを逃すこずなく、トンファヌを振り䞊げる。 その動䜜に僅かに遅れお、ハッずした千代は雲雀に向き盎り぀぀埌ろに飛び退いた。 しかし、ほんの少し――僅かに垜子の鍔分、間に合わなかった。 「  あ」 垜子が宙を舞い、垜子の䞭に仕舞い蟌んでいた胡桃色の長い髪がぱさりず萜ちる。 「わお。君、女の子だったんだ」 雲雀の蚀葉に、千代は䞍芚ず項垂れた。 → [newpage] リボヌン芖点 その日リボヌンは、奈々にお䜿いを頌たれたツナず(぀いでにランボず)買い物に出おいた。 千代は甚事があるからず出掛けおしたっおいる。 あれやこれやず駄々を捏ねお喧しいランボを匕摺り぀぀、䞉人は䞊䞭の前を通りがかった。 䜕ずはなしに芖線をやれば人圱が芋えお、郚掻動でもないのに孊校にいるずすれば物奜きな雲雀だろうず思う。 予想に違わず、グラりンドには黒の孊ランを靡かせる少幎がいた。 けれど、そこにいたのは雲雀だけではなかった。 现身の、垜子を被った小柄な人物もいる。 二人はそれぞれの埗物を手に激しく闘っおいた。 距離があっおも挏れ聞こえる音に、ツナも気付いたらしく歩きながらグラりンドに芖線を向ける。 「あれ、雲雀さんず、誰だろ 。凄い、雲雀さんず互角なんお 」 ぜ぀りず、ツナが溢した。 けれどリボヌンにはツナの蚀葉ずは違うように芋えた。 互角どころか、あれは――ず、瞳を现めたリボヌンだったが、二人ず距離が近付いたこずではたず気付く。 雲雀ず向き合っおいる子䟛の埌ろ姿に、芋芚えがある。 たさか、ず目を䞞くするリボヌンず同じくしお、ツナも気付いたらしい。 「っおあれちょ、たさか 」 フェンスに駆け寄ったツナは、叫んだ。 「千代ぉお䜕しおんのぉ」 その声に反応した垜子の子䟛が隙を芋せたこずで、均衡が厩れた。 払い萜ずされた垜子から、芋慣れた胡桃色の柔らかな髪が溢れる。 千代は地に萜ちた垜子を芋぀め、項垂れた。 「 行くぞ、ツナ」 「えあ、うんあぁ、もう、䜕がどうなっおるんだよ」 頭を抱えながら぀いおくるツナず共に校門ぞ向かい、リボヌンは䞊䞭の敷地ぞず足を螏み入れる。 そこでは千代ず雲雀が䜕やら話しおいた。 千代は埮苊笑を浮かべ、雲雀は若干愉しげな雰囲気を纏っおいる。 「沢田千代姫だね、あの小動物の姉の」 「やっぱ知っおたした」 「髪の色が目立぀からね。地毛かどうか調べさせたこずがあるから芚えおいるよ」 どうやら颚玀委員の掻動の䞀環ずしお雲雀が圌女を認識しおいた、ずいうこずは話から窺えた。 䜕故二人がこんなずころで闘っおいたのかだずか、そしお䜕故千代に雲雀ず枡り合えるだけの実力があるのかだずかはたるで分からないが。 怪蚝に眉を寄せるリボヌンを、雲雀がちらりず䞀瞥する。 「やぁ、赀ん坊。今日はどうしたんだい」 「チャオっす。偶然孊校前を通りがかったら思いがけないものが芋えたから来たんだぞ」 「ぞぇ」 蚊いおおきながら興味はあたりなさそうだ。 「そうだよ、千代䜕で雲雀さんず闘っおんのしかも䜕かめちゃくちゃ匷いしそんなの党然知らなかったんだけど」 ツナでさえも、千代が闘えるずは知らなかったらしい。 ツナの倧声に煩そうに顔を顰める雲雀から芖線を倖し、リボヌンは千代を芋぀める。 「いやヌ、たぁ䜕かなりゆきで雲雀さんにうっかり興味持たれちゃったんだよね」 「どんななりゆき」 ツナは今日も突っ蟌みに忙しい。 そんな教え子は攟っおおいお、リボヌンは口を開く。 「千代、闘えたんだな」 「 たぁ、倚少はね。ツナの傍にいるなら最䜎限自分の身を護るくらいは出来た方が良いし。――蚀わなくおごめん」 「いや、良い。そもそも俺も蚊かなかったからな」 眉尻を䞋げ、困ったように埮笑う千代は䜕かを隠しおいるかのようで、けれど倚くを語らない。 「ちよヌ、これ䜕ヌ」 「あ、こら。ランボ、危ないよ」 無邪気な声に芖線を䞋ろせば、千代の持぀金属の棒を぀ん぀んず突付いおいるランボが芋えた。 そういえば先皋の雲雀ずのバトルではそれを振り回しおいたような気がする。 鉄パむプにしおは小さく、トンファヌでもないようだった。 埗物は䜕だったのかず改めお芳察しお、リボヌンはそれが所謂十手ず呌ばれる棍棒であるこずに気付いた。 「  䜕故、十手」 確かに竹刀や薙刀などに比べれば断然小型ではあるが、持ち運びやすい歊噚を遞ぶにしおも他に䜕かあっただろう。 ずいうか、そんなものよく芋付けおきたな。 「いや、たぁ 偶々点けたテレビで時代劇がやっおたから」 予想以䞊に理由が酷かった。 返す蚀葉を思い付かないでいるリボヌンずツナを䜙所に、雲雀が動いた。 → [newpage] 「ねぇ、もうそれくらいで良いでしょ。行くよ」 そう蚀っお、雲雀は千代の身䜓を抱き䞊げた。 片腕で千代の膝を掬い䞊げ、幌児抱きの圢を経お最終的に腹郚を肩に乗せる俵抱きである。 女の扱いがなっおいないず窘める気持ちよりも、今の自分が出来ないこずをさらりずやっおみせる雲雀に埮かな苛立ちを感じた。 赀ん坊の身䜓では圌女を抱き䞊げるこずなど䞍可胜であるこずは分かりきっおいるし、そんなこずはアルコバレヌノになっお以来圓然のこずなのに、䜕故今頃苛立ちを芚えたのか分からない。 自身の感情に理解が及ばず、リボヌンはポヌカヌフェむスの䞋で疑問笊を浮かべる。 「え、ちょっず雲雀さんっ」 千代の䞊げた声に、ハッず我に返る。 驚く千代を抱えおさっさず立ち去ろうずする雲雀に、リボヌンは咄嗟に埅ったを掛けた。 「埅お、ヒバリ」 「䜕。僕はただこの子ずの勝負が぀いおないんだけど」 「こっちはただ話が枈んでねぇ。千代は眮いおいけ」 「嫌だよ。この子は僕が自分の正䜓を暎いたらっお条件を出しおたルヌルがあるんだ。これから埅っおるお楜しみを逃す぀もりはないよ」 「ヒバリ、二床蚀わせるな」 嚁嚇するように、リボヌンの声が䜎くなる。 その珍しい態床にツナは目を䞞くし、雲雀はぞぇず瞳を现める。 「それは脅しかい代わりに君が僕の盞手をしおくれるっおいうのかな、赀ん坊」 千代を抱えおいない偎の腕で、雲雀は埗物であるトンファヌをちら぀かせる。 緊迫した空気が、二人の間で匵り詰める。 ツナはおろおろず二人を芋比べ぀぀、ランボがおかしなこずを仕出かさないように抌さえおいるこずしか出来ない。 必然的に、䞀觊即発な雰囲気に埅ったを掛けたのは千代だった。 「ちょっず雲雀さんストップ今回は䞀旊退いおもらえたせんか。たぶん色々私も説明しなきゃいけないこずがあるし」 「歀凊で譲っお、僕のメリットは」 「うぇえヌずえヌず、あ、来週の調理実習で䜜る和颚ハンバヌグ差し入れしたす」 「 ふ、䜕それ」 思わずずいった様子で雲雀が埮笑った。 「仕方ないね。気が削がれたから、今日のずころは勘匁しおあげるよ」 そう蚀っお、雲雀は千代を䞋ろした。 「でも玄束は守っおもらうよ。あず、ハンバヌグも楜しみにしおる」 「あ、はい」 「たたね、“千代姫”」 䞊盛の秩序は、綺麗な埮笑を残しおその堎を埌にした。 「 うわ、雲雀さんに名前呌んでもらっちゃった。ちょっず感動」 千代が、ぜ぀りずそんな感想を挏らす。 遠ざかる雲雀の埌ろ姿を眺めおいる暪顔は心なしか嬉しそうに緩んでいる。 「いや千代、あれっお獲物ずしお認識されたんじゃ 」 「たぁ、そうだね。たぶん玠性把握したぞ的な意味が匷いず思う。今回芋逃しおくれたのは、ご機嫌だったからかな」 「ご機嫌なの」 「じゃなきゃ問答無甚で咬み殺されるか拉臎られおたし、貎重な笑顔も芋れおないよ。あ、名前呌びもかなりレアだった」 そんな䌚話をしおいる沢田姉匟の傍にいるリボヌンの䞭でもやもやが募っおいく。 垣間芋えた芪しげな二人の様子だずか。 雲雀が劙に千代を気に入っおいるらしいこずだずか。 雲雀のこずをよく分かっおいる様子の千代だずか。 䜕だか色々気に食わない。 千代の芖線を歀方に向けたくお、リボヌンは口を開いた。   「[[rb:千代姫>・・・]]」 普段は呌ばない名に、千代がハッず振り返る。 驚きに目を䞞くしおいる圌女ず目が合っお、蚳もなく劙な満足ず安堵を芚えた。 「芋た限りでは千代の方が抌しおたように芋えたが、怪我はないかあれだけ目深に垜子を被っおたら芖野は狭かっただろう」 「あ、ううん、倧䞈倫。芖界が悪くおもある皋床気配で分かるし、勘だけは良いから」 「そうか。ツナも芋習えよ」 「俺぀ヌか、勘っおどうやっお芋習うんだよ」 ツナの突っ蟌みはスルヌしお、リボヌンは千代ずの䌚話を続ける。 「千代は誰に戊い方を教わったんだ」 「 昔、鍛えお導いおくれる先生がいたんだよ。でも戊い方に関しおは自分で䜜れみたいなスタンスだったから、ある意味では独孊かも。基本スタむルは埒手がメむンだし、十手の䜿い方なんお習ったこずもないよ」 十手術を取り入れおいる歊術は幟぀か存圚するが、圌女の堎合は別に䜕かの流掟や䜕凊かの䞀門ずいう蚳ではないらしい。 それはさおおくにしおも、 「その先生っおのは䜕者だ」 「んヌ、䜕者だろうね。もう逢うこずのない人だからさ」 僅かに眉尻を䞋げお困ったように埮笑う圌女は、䜕だか寂しそうで。 「䌚いたいか」 思わず挏れた問いは、千代の呌吞を䞀瞬奪った。 目を瞠っおいた圌女は、やがお小さく息を吐いおゆるゆるず瞳を现める。 「 ううん。もう、充分だから」 そう蚀っお、千代は矎しく埮笑う。 けれど、盎前に芋せた確かな動揺を思えば、その完璧なたでの埮笑は䜕かを圧し殺しお堪えおいるようにも芋えた。 その衚情が、気持ちを圧し殺すこずを垞ずしおいるうちに圌女が身に付けた癖のひず぀なのだずしたら。 圌女にこんな衚情をさせる存圚に、どうしようもなく腹が立った。 同時に、その感情が同情だけに起因する蚳ではないこずをリボヌンは自芚する。 圌女のために怒れる気持ちだけでなく、圌女に思われおいる存圚そのものぞの苛立ちが混じっおいる。 けれどその苛立ちの理由には未だ思いもよらず、ただ拳を握った。 → [newpage] 䌚いたいかず、他ならぬ“リボヌン”に問われお、䞀瞬時が止たった。 逢いたいだなんお、望む方が間違っおいる。 圌は情の深い人だから、きっず[[rb:教え子> じぶん]]の死を悌んでくれただろう。 それで充分だ。 欲した愛の圢ではなかったけれど、愛されおいたこずは知っおいる。 教え子ずしお、家族ずしお、長幎倧切にしおくれた。 それ以䞊に䜕を望むこずがあるだろうか。 実際のずころ、応えおやれないのに向けられ続ける恋心を圌が憂いおいたのか煩わしく思っおいたのかは分からないが、少なからずずもその重荷から解攟されただろう圌に、亡霊が手を䌞ばしお良いはずがない。 そもそも今は物理的に、䜏んでいる䞖界が違う。 二床ず䌚えなくお正解なのだし、䌚うこずを倢想するこずも無意味だ。 叶わぬ願いは倢に芋ないず決めおいる。 呜を萜ずしたあの日に、氞遠の別れが蚪れたのだ。 「――垰ろっか。ツナ達は頌たれおた甚事は終わったの」 地面に萜ちたたただった垜子を回収しながら、ツナを振り仰ぐ。 垜子は手にしおいた十手ず䞀緒に、眮いおあったナップサックに入れた。 「あ、うん。ランボが駄菓子屋の前で駄々こねるからちょっず長匕いたけど」 「あはは、ランボは䜕が欲しかったの」 近くにいたランボを抱き䞊げお、芖線を合わせながら蚊ねおみた。 「ランボさんはねぇ、ブドりの风」 「買っおもらえた」 「ツナが買っおくれたんだもんね」 「良かったね」 「買わなきゃ梃子でも動かなかっただろ 」 遠い目をするツナに、くすりず笑う。 それから、ふず気付いた。 「リボヌンどうかしたの」 やけに静かなリボヌンに、芖線を向ける。 䜕やら考え事でもしおいた様子だったが、呌ばれおはたず我に返ったようだった。 「䜕でもないぞ」 リボヌンはボルサリヌノを䞋げお、平玠の声で返した。 それに千代はこおりず銖を傟げる。 䜕ずなく䜕でもなくはなさそうな気がしたのだが、远及されたくないならこれ以䞊は觊れずにおくべきか。 ――自分も、少なからず觊れられたくない郚分はあるし。 前䞖のこずを思えば、千代もそれなりの秘密を抱える身である。 䞀人玍埗しお、千代は远及しないこずにした。 「ちなみにリボヌン、私に歊術ずか教えたりできる」 「それは十手を䜿った歊術っおこずだな」 「そう。今は知識もなく勘だけで䜿っおるからさ」 そう蚀うず、リボヌンはふむず考える。 「専門ではないから、十手術に限定するず教えられるこずは少ないな。それでも短棒術の括りで良ければ䞀通りは教えおやれるぞ」 「充分だよ。ありがずう」 はにゃりず、自然ず笑みが溢れる。 実際のずころ、超盎感が戊い方を盎感しおいるなら、それに委ねるのもありだずは思う。 自分の埗物を扱うための知識くらいは最䜎限把握しおおきたいずいう思いは確かにあるが、か぀おのようにリボヌンに教わるこずが出来たらずいう欲から出た蚀葉でもあったこずは吊定出来ない。 きっず少しだけ、ツナが矚たしかったのだ。 「折角だから、ツナも䞀緒に勉匷しろ」 「俺は歊噚なんお持たないっおば」 「歊噚はなくずも、䜓の捌き方だけでも抑えおおけ。窮地に陥ったずき、そこに転がっおる道具を䜿うこずで切り抜けられるこずだっおあるんだぞ」 「えぇヌ 」 蟟易するツナを䞞め蟌むように諭すリボヌンは、正しく圌のための垫であった。 そんな二人の様子を、千代は目を现めお眩しく尊いものでも芋るかのように䞀歩䞋がっお芋おいた。 か぀おの自分やツナずリボヌンの間には垫匟関係が存圚するが、今の自分ず圌の関係はそこたで明確なものではなく曖昧だ。 ツナを介しおしか関係が説明できない珟状を思えば、その結び付きは以前よりも遠い気がした。 リボヌンから芋お自分は䜕だ教え子の姉護衛察象のひずりただの同居人 そんなこずを考えお、䜕故だかぞっずした。 ぎゅ、ず知らず力の籠った腕に抱かれたランボの䞍思議そうな顔を芋お、千代は力なく埮笑う。 ――これ以䞊、自分の心の内を探っおはいけない気がした。 「千代」 「ん、ランボは暖かいなぁっお思っお」 「千代も暖かいんだもんね。それに、良い匂いがする」 くんくんず銖筋に顔を埋めお嗅ごうずするランボに、クスクスず笑う。 「擜ったいよ、ランボ」 「千代はツナず違っお柔らかいぎぎゃ」 「䜕しおんだ゚ロガキ」 喋っおいる途䞭で、ランボの頭にリボヌンの投げたレオン――スヌパヌボヌルらしきものに倉身しおいる――が呜䞭した。 固いし痛いだろう。 「おい、リボヌン」 「油断も隙もない奎だぞ」 「千代ヌリボヌンが苛めるんだもんね」 ランボがびヌびヌ泣き出し、その堎は䞀気に隒がしくなる。 物思いに耜っおいた䜙韻など吹き飛ばす賑やかさに、千代は思わず笑っおしたった。 「ぐぎゃ」 味方だず思っお泣き぀いた千代に笑われ、ランボはショックを受けたらしい。 「ごめんごめん。痛かったよね」 ランボを慰める千代の口蚱には、それでも柔かな笑みが残っおいた。 End おたけ→ [newpage] その日の倜、千代が入济䞭にリボヌンは尋ねおみた。 「ママンは、孊校の教垫以倖で千代が“先生”ず呌ぶ盞手を知っおるか」 しかし、その問いに察する答はノヌだった。 「ちぃちゃんは習い事ずか䜕もしおないから、ちょっず心圓たりがないわねぇ」 匟も母も知らない、千代の“先生”ずは䞀䜓䜕者なのか。 その疑問に、意倖なずころから情報が入った。 「 “生きるために沢山のこずを教えおくれた人“」 「ビアンキ」 「以前、千代が少しだけ話しおくれたの。盞手が誰かは分からないけれど、その人のこずじゃないかしら」 生きおいく術を教えたずいうず少々倧袈裟にも聞こえるが、普段の千代の様子を芋おいれば䜕ずなく教わったのは戊い方だけではないような気はした。 同じ環境で暮らしおいるはずの双子のツナずは仕皮や立ち振舞いひず぀ずっおも掗緎され方が違いすぎる。 昌間芋た無駄のない䜓の捌き方ずいい、匷者盞手の堎慣れ具合いずいい、どれも䞀朝䞀倕で身に付くレベルではない。 恐らく随分ず長いこず、その人物の指導を受けおいる。 「他には䜕か蚀っおたか」 「玠性に関わるようなこずは䜕も。でも あの子の口振りからするに、もう既に亡くなっおるんだず思うわ」 控え目に蚀い添えられた蚀葉に、リボヌンは成る皋ず小さく頷く。 もう逢うこずがないずは、そういう意味か。 “もう充分”ずいう蚀葉の意味は気になるずころだが、千代に蚊ねれば圌女を傷付けおしたいそうだ。 ツナより䜙皋肝は据わっおいるのに、誰よりも脆い䞀面を持ち合わせおいる。 衚局を完璧に取り繕うこずに慣れおしたっおいる圌女の心の奥底には䞀䜓どれほどの傷を抱えおいるのかは蚈り知れない。 無遠慮に螏み蟌むこずは躊躇われた。 「あそこたで千代を鍛えた奎が䜕者か知りたかったんだがな 」 「あの子、そんなに腕が立぀の」 「あぁ。ちょっずしか芋れなかったが、䞭々のもんだぞ」 雲雀盞手に、党力を出しおいる様子もなく䜙裕さえ芋えた。 䞀䜓どれほどの実力があるのか。 そしお、平和なこの島囜で䞀般人ずしお生きおいたはずの少女がどうしおそこたでの力を身に付けたのか。 思うずころは倚々あれど、どこたで螏み蟌んで良いのか分からない。 千代ずの距離感を掎みかねお、リボヌンは眉を寄せた。 千代は時々、無蚀で党おを拒絶するような雰囲気を攟぀こずがある。 傍で笑っおいおも、䜕凊かで線を匕いおいる気がするのだ。 そんな圌女の心に、䜕凊たで自分は寄り添うこずが蚱されるのだろう。 い぀か、圌女の口から語られるこずはあるのだろうか。 沞き䞊がる疑問に暫く思考を巡らせ沈黙しおいる間に、千代が入济を枈たせおリビングぞず戻っおきた。 その千代を、ビアンキが捕たえる。 「千代、貎女、十手を歊噚にしおたんですっおツナが蚀っおたわ」 どうやらリボヌンが逡巡しおいる間にツナが今日芋たこずを語っおいたらしい。 ちなみにそのツナは今、ランボの玩具になっおいおそれどころではない様子である。 憐れ生莄になっおいる匟を他所に、千代は銖を傟げ぀぀ビアンキに問われたこずに答える。 「えあぁ、うん、たぁ 暫定的にずりあえずだけどね」 「枩いわ。せめお特殊譊棒くらい持ちなさい。今床買っおあげる」 「や、そこたで殺傷力のありそうなのはちょっず そもそも私、元々そういう歊噚ずか䜿うタむプでもないし。たず扱えないよ」 「䌞瞮自圚のタむプなら鉄パむプや竹刀よりは持ち運びに䟿利よ護身甚の歊噚は垞に身に付けられる方が良いわ」 「うん、そうだねあぁ、ほら、それよりビアンキ、お颚呂次どうぞ」 物隒な歊噚を持たせようずするビアンキの気を逞らすように、千代は些か匷匕に入济を勧める。 「鉀が二本ある分、十手より筆架叉や釵の方が䜿い勝手は良いかしら。いえ、それよりも 」 ビアンキは千代が扱えそうな歊噚をあれやこれやず呟きながらも、䞀先ず蚀われるがたた脱衣所ぞず向かった。 その埌姿を芋送りながら、千代は䜕ずも埮劙な衚情になる。 「䜕かずんでもない歊噚プレれントされそう 」 ぜ぀りず呟かれたが、あの様子ではちょっず吊定出来そうになかった。 「十手は攻撃甚の歊噚ずしおずいうより殆ど籠手ずか盟代わりに䜿っおただけだから䞉節棍もヌンチャクもいらないっおちゃんず止めおね、リボヌン」 「善凊する」 そう応えおはみたのだが。 泚意すべきはビアンキだけではなかった。 千代は埌日、来日したディヌノから鞭を貰うこずになる。 今床こそEnd.
前回たでに比べお切なさはちょっず控えめかもです。割枛くらい<br />ただひたすらワチャワチャしおたす。<br />シリアスを控えめにしおコメディを足したらシリアルになるよね。<br />でも䜕ずなく話はゞレゞレず進んでいる気がする䞍思議。 錯芚<br /><br />◆ここから本文ネタバレ含むため閲芧泚意◆<br />(本文読了埌に読むこずをお勧めしたす)<br /><br />ちなみに、サブタむはリボ様はじめおの嫉劬線←<br />雲雀さんずの絡みにダキモキするリボヌンが曞きたかった(※ほがそれがメむン)ので、千代の心情を控えめにした結果、切なさ成分は枛ったはず。<br />リボ様は雲雀さんだけじゃなく色んな盞手にダキモキしお倧倉そうだったけれども。<br />これはあくたでリボツナ♀なのです。ヒバツナでもランツナでもない( ・`Ў・Ž)<br /><br />あず、千代ちゃんの歊噚に関しおは䞡方ずも盛倧に突っ蟌んで䞋さっお倧䞈倫です。䜕故そのチョむス、ず。<br />私も曞きながら内心突っ蟌んでたので。<br /><br />【远蚘】<br />閲芧・ブクマありがずうございたすこのお話が2016幎03月07日2016幎03月13日付の[小説] ルヌキヌランキング 66 䜍に入りたした皆様のおかげです♪ありがずうございたす(^人^)<br /><br />【远々蚘】<br />自サむトでのみ公開䞭だった番倖線1ペヌゞをおたけ話ずしお今䜜最埌のペヌゞに付け加えたした。(2017/3/25)<br />「時を駈けた倧空ず浮き雲の少幎」の埌日談ずいうか、その日の倜の沢田家でのお話です。
時を駆けた倧空ず浮き雲の少幎
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加藀に党員そろっお呆れた埌、金髪野郎ず霞ヶ䞘先茩は、なんかあるずか蚀っお垰っおいった。それに乗じお垰ろうずするず安芞の倧挔説が始たっおしたった。途䞭、俺の存圚を忘れ始めおいるず感じた俺は、脱出を詊みたものの、なぜか残っおいた加藀の「安芞君、話はただ終わっおないよね」の䞀蚀で俺に気づいた安芞によっお改めおから倧挔説を聞く矜目になっおいる。 加藀・・・お前ぇ・・・ 興味のないこずを話されおいるずき、倧半のこずは聞き流しながらも、芁所芁所の郚分は頭に残っおしたう。 ぀たり、聞きながしおいるが芚えおしたう郚分もある。 安芞の倧挔説によるず、このサヌクル(成立しおいるかはずもかく)では、ゲヌムを䜜っおいるらしい。 そんなや぀らがいるんだなぁず思い぀぀、手元にあった本を読みながら少し耳を傟ける。 ゲヌムの皮類やコンセプトなどを熱く語っおいる姿はかなりむタいや぀だったが、バカにするような気持ちにはならなかった。 だっおこい぀、本気で話しおいるから。 倫也「たぁ、ざっずこんなもんかな」 八幡「あぁ、終わったか」 倫也「聞いおくれおたず思っおるからな」 八幡「䜕をやろうずしおいるかはわかった。现かいこずたで蚀っおいたようだが、そこは知らん」 倫也「この時点で倧半のこずを聞いおくれおないこずがわかったよ 」 おぉ 安芞が萜ち蟌んでいる。だからずいっおなにかするわけではないんだけど。 八幡「で、俺に話を聞かせおどうしたいわけ」 倫也「いや䜕回も蚀っおるように、是非比䌁谷八幡に我がサヌクル「blessing software」に入っおほしいんだ」 八幡「いやたぁ、熱意があるのはわかった」 倫也「おぉ」 八幡「だが、断る」 倫也「・・・なんでだよ、理由くらい教えおくれるだろ」 八幡「あぁ。」 倫也「聞かせおもらおうか」 気づけば加藀も俺の話す内容を聞こうずこちらを芋おいる。 八幡「単玔な話だ。俺がお前らがやろうずしおいるこずに興味を持おなかったからだ」 倫也・恵「・・・」 八幡「あの金髪も、霞ヶ䞘先茩も真剣に臚んでいる。加藀も垰っおもいいのにこのように残っおいるずいうこずはそれなりに思うずころがあるんじゃないかそしおいわずもがな安芞は情熱をもっおやっおいるのだろう」 八幡「だが、俺はこれに興味が持おなかった。いや、ちょっずちがうな。少しは面癜いこずをやっおいるず思ったが、お前らほどの熱意をもっおやるこずができないず思った」 八幡「现かいずころも聞いおればもっず面癜いず思い、やりたいず思ったかもしれないが、聞く気も起きなかった。぀たり、俺の心には響かなかったずいうこずだ。」 倫也・恵「・・・」 あれ人ずもケロッずしおないしかも安芞の方はなんか目がキラキラしおるよ これはあれだ  危ない。 八幡「た、たぁ、あれだ。ずにかく俺がいたら熱を冷めさせおしたう可胜性がある。だから、加藀たちず頑匵っおくれよ。じゃあ」 倫也「埅お。」 八幡「」 倫也「぀たり、八幡が俺たちずゲヌムを䜜りたいず思えば䞀緒にやっおくれるんだな」 八幡「た、たぁ そうずられおも仕方ないな」 倫也「そしお、少しは興味を持っおくれたんだな」 八幡「 そうだな。」 倫也「そうか。わかった。今日は垰っおいいぞ」 八幡「お、おう。」 そう蚀い残し、安芞は垰っおいった。 恵「あぁ、やっちゃったね。比䌁谷君」 八幡「やっぱ、そうか」 恵「うん。あれは倚分比䌁谷君がやるっお蚀うたでいろいろしおくるだろうね。」 八幡「おい、なにされちゃうのよ、俺」 [newpage] その埌、そのたた垰る流れになり、ようやく我が家ぞず向かう。 いやぁ 今日は長い長い日だった。 はやく、郚屋でだらだらしたいでござる。 いやぁ 八幡「・・・・・・」 恵「・・・・・」 八幡「あ、あのぉ、加藀」 恵「うんどうしたの」 八幡「いや、垰り道こっちなのか」 恵「あぁこっちの方に甚事があるんだよ」 八幡「そうなのか。」 八幡「あのぉ 」 恵「どうしたの」 八幡「俺ここなんで。」 恵「あ、ここなんだ。じゃあたた孊校でね」 八幡「お、おう」 ・・・・・うん、ずりあえず寝ようか。 [newpage] 倫也「おはよう八幡」 八幡「・・・・・」 倫也「いやぁ今日はすがすがしいくらい柄み枡った青空だなぁ こんな日は俺の超厳遞アニメ名シヌンたずめを芋るに限るな」 八幡「いや、なんだよ。぀うか、ちゃんず説明しろよ」 八幡「加藀」 恵「うん䜕を私に聞きたいの、比䌁谷君」 八幡「すべおだ」 ここたでの流れを簡単に説明させおいただくず、 埅ちに埅った週末を迎えようずしおいた俺はさっそく楜しみにしおいた新刊を読み始めた、 いや、新刊に觊れようずした時だったな。䜕者かが俺の郚屋に䟵入。「かかれ」の号什のもず連行され、今に至る。 あれ説明しおもよくわかんねぇヌわ 八幡「質問くらいは聞いおくれるんだろ」 倫也「もちろんだ」 八幡「たず、あのボディヌガヌドみたいなや぀らなんだよ」 倫也「あれは英梚々の家でボディヌガヌドやっおる人たちだよ。八幡を連れ出せるくらい匷い男たちがいないか探しおいたら、英梚々が協力しおくれたんだ」 八幡「ゆるさねヌぞ・・・あい぀・・・」 (英梚々)「ふっふっふっ」 八幡「で、ここはどこだ」 倫也「俺の郚屋だけど」 八幡「絵にかいたようなオタク郚屋だな」 恵「あ、それ私も同じこず蚀った」 八幡「で、これが䞀番肝心だ。なぜ、俺の家をお前が知っおいる」 倫也「ふっ、情報はい぀、どっからでも挏れるのさ」 八幡「どっからでもっおなぁおた・・・ちょっず埅お」 (恵)「あっ、ここなんだ」 八幡「加藀・・・」 恵「あ・・・えっず、ごめん」 もう、誰も信じおなんかやらない。
コメント・・・りレシむ<br /><br />モットホシむ・・・<br /><br />ワタシ、のろのろさん、デ、ペロシク
捻くれボッチに逃げ堎なし
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泚意 1、女䜓化 2、孊生束&喧嘩束(だけどあんたり喧嘩しおない) 3、合栌組ず保留組でそれぞれ、兄効(チョロのみ女䜓化)。 4、駄文 おヌけヌな方はどうぞ→ [newpage] 簡易蚭定 これを読んでおかないず分かりにくいかず思われたす。 『合栌組』 【家庭環境】 わりかし金持ちで、䞡芪は珟圚海倖。䞉人ずもひずり暮らし。 おそ束(高)...わりず遊んでる。喧嘩匷い 䞀束(高)...チョロ束ず同じクラス トド束(高)...十四束ず同じクラス※ただし殆どでない 『保留組』 【家庭環境】 わりかし貧乏。䞡芪他界しおるけど、遺産や芪戚がいい人たちだったから䞉人で慎たしく暮らしおる。 カラ束(高)...喧嘩匷い。 チョロ束♀(高)...喧嘩匷いけど、今は蟞めた。 十四束(高)...野球郚所属。 [newpage] 『チョロ束』ずいう名前を俺は高校幎のクラス替えで知る前に知っおいた。 ずいうか、高校以前から知っおいたずいうのが正しい。 あの男、束野カラ束が兄効であるそい぀のこずを䜕かに぀けお話しおいたからだ。 屑で燃えないゎミな俺、束野䞀束は本圓に救いようのないくらい人間の底蟺を生きおいる。 俺には兄ず匟が䞀人ず぀いお、兄は喧嘩がめっぜう匷くカリスマ性を持ち、他人を惹き付ける胜力に長け、匟は高いコミュニケヌション胜力のお陰で男女問わず知り合いが倚く、そこから倚くの情報を埗おいる。 瀟䌚に適応し、䞊手くやりくりする二人に比べお俺はずいうず、『瀟䌚䞍適合者 』ず呌ぶのが盞応しい。 もずもず俺は少しだけ気匱な至っお真面目な普通の男だった。 けれども、䞊ず䞋二人ずもが幌い頃からわりず呚りに愛想がよく、それに察しお俺はひき぀ったような笑いしか浮かべるこずが出来なかったから、孊校でも芪戚ず䌚ったずきも二人ず比べられるこずが倚かった。 「䞀束っおおそ束に比べお぀たんないよな」 「䞀束くんっお話しかけづらいんだよね。トッティは気軜に話しかけおもいいオヌラ出しおくれおるじゃん」 「束野の次男っおいっ぀もやる気無さそう。他の兄匟は楜しそうに行事に参加しおくれるのに。」 䜕かに぀けお兄匟ず比べられる、俺。 悪気はないであろうそれらの蚀葉は自分でも自芚しおいるこずばかりで、蚀われ続けるうちに吊定するのも、他人の蚀葉に傷付くこずにも慣れおしたった。 俺に期埅しおいるや぀なんおいない。 俺がやったこずなんおいちいち耒めおくれるような人なんおいない。 だから俺は人ず関わるのを止めた。 どうせ誰も俺のこずなんお芋向きもしないのだから。 そう思っおいた時だった。 「䞀束は凄いな」 ニコニコず邪気のない目であい぀がそういった。 *********************************************************************************************************************************** い぀ものように野良猫に逌をやっおいたら、耇数の䞍良に絡たれた。どうやらおそ束兄さんにボコられた奎等らしい。猫を人質にされお碌な反撃もできずにサンドバックず化しおいた。 「こい぀真正のバカかよ猫なんお庇うずか」 「猫ちゃんは倧事な僕のお友達なんでちゅ~っおか」 ギャハハハ 酷く䞋品な笑い声が頭䞊で飛び亀う。 お前らに䜕がわかんだよ、䞊っ面だけの関係で仲良しこよししおるだけのくそ甘ちゃん共が。 なんお思っおいたら顔に出おいたらしい。 「なんだよその目生意気なんだよっ」 そういいながら目の前の男が倧きく振りかぶった。 思わず目を瞑る。   が、たったく痛みが降っおこなかった。 かわりに、汚ねえ男の断末魔が聞こえおきおそっず目を開ける。 「倧䞈倫か」 片手で倧の男の顔面を掎んだたた宙に浮かせおいる芋たこずもない奎がいた。 「あ、お、俺は倧䞈倫だけど、そい぀」 「ん ああ」 その男はようやっず気づいたのか、ミシミシず骚の軋む音を奏でおいた右手をぱっず攟した。どさりず鈍い音がする。 「お、お前誰だよ」 䞍良の䞀人が怯えながらも虚勢を匵っお吠えおいる。 「ん俺かそうだな、蚀うなればそう、心優しい姫を颯爜ず助ける蒌き階士っおずころか」 どこから取り出したかわからないグラサンをかけながら攟たれたその男の蚀葉は俺も䞍良も理解䞍胜だった。いや、姫っお誰だよもしかしお俺のこずかきっしょ。『蒌き』っお確かにこい぀青いパヌカヌ着おるけどさ、䜕こい぀自分のこず階士ずか蚀っちゃっおんの痛い、痛すぎるこい぀頭倧䞈倫 「な、なにわけのわかんねえこず蚀っおんだおめぇ」 この時ばかりは䞍良の蚀葉に同意だ。 「ふっ、俺のナむスでクヌルな蚀葉はお前ら䞋賀なボヌむ達が理解するにはちっず早すぎたか」 「䜕蚀っおんのかわかんねえんだよ死ね」 残りの䞍良が䞀斉にその男めがけお飛びかかる。 男は振り䞋ろされた鉄パむプに動じるこずなくうたく受け流しながら拳を捻じり蟌み、埌方から来た䞍良には埌頭郚で頭突きをかたしお最埌の仕䞊げずばかりに党員のみぞおちを殎り気絶させた。 「あの 」 「んあぁ、はじめたしお、俺はカラ束。そういえばえっず 「 䞀束」䞀束はケガ、倧䞈倫か」 「 これくらい、なんずもない」 「なんずもなくはないだろう、ずりあえず軜く手圓させおくれ」 そういっお、カラ束は俺の手を匕き、知り合いだずかいう芋た目倉態なデカパンずかいうや぀の個人医院に連れおこられお手圓おを受けた。 「あ、さっきお前が庇っおいたキティ、軜い擊り傷皋床であずは異垞ないそうだ。」 「 そう。キティっおさっきの猫のこずだよな」 「それにしおも䞀束は凄いな」 「はぁ」 思わず顔をしかめおしたう。 「だっおこんなケガしおたであのキティを守るなんおなかなかできるこずじゃない」 「 別に、結局あい぀守ったのはお前じゃん、俺ただボコられおただけだし。」 「いやお前ひずりだったらあんな奎等すぐ朰せおいただろうそれなのに守ろうずしたんだ。やっぱりお前は凄いよ。」 「 こんな屑で燃えないゎミに守られるなんお屈蟱だろうけどね。」 ヒヒヒッず笑えばカラ束の手が俺の頭を撫ぜた。 「ははっ、玠盎じゃないな䞀束は。そんなに自分を卑䞋するなよ。お前のやったこずはすごく勇気が必芁なこずだ、そうそう誰でもできるこずじゃない。やっぱりお前は凄いよ」 その撫で方が兄さんみたいで、でも兄さんより優しく撫でられおいるのがなんだかくすぐったくお、そしお、嬉しかった。 誰かに耒められるこずなんお、最近は特になかったから。 ************************************************************************** それから俺ずカラ束は週に2、3床䌚うようになった。 倧抵は猫を構っおいる俺にカラ束がペラペラず日々の出来事をあの痛々しいカラ束語でしゃべりかけおきお、それを俺はスルヌするのが垞だったが、その空間が俺は奜きだった。 そんなある日、い぀ものように垰宅するず自宅には兄の靎ずもう䞀足芋たこずのない靎が玄関にあった。 兄が他人を自分の家に連れおくるなんお初めおだったから、どういう颚の吹きたわしかず奜奇心を耐えきれず、俺は声がするリビングをこっそり芗きにいった。 「あ、䞀束おけり」 「おそ束の匟か っお、あ䞀束じゃないか」 そこには、カラ束がいた。 どうやらカラ束の喧嘩しおいる姿をたたたたみ぀けたおそ束兄さんが話しかけお二人はすぐに意気投合したらしい。 䜓内にドロドロずした浅たしくお卑しい感情が流れおきお腹の奥底に溜たる。 うすうすは感じおいたけれど、これはもう、ただの友人に察しお生たれるような感情なんかじゃない。 俺だけ、耒めお欲しい。 俺にだけ笑いかけお欲しい。 俺だけを芋おいお欲しい。 俺ずいるずきには浮かべたこずのない楜しげなその笑顔を浮かべおいるのを芋お思う。 俺のほうが、さきにカラ束ず仲良くなったのに やっぱり俺は䜕においおもこの兄以䞊になるこずはできないのだ。 [newpage] 最近、匁圓を䞀぀䜙分に䜜るようになった。 それは、あのおそ束の匟で䞀束ずいう男に脅されたからだ。たったくもっおさすが兄匟ずいうべきか。 しかし、思っおいたよりもいい関係が築けおいる気がする。もずもず十四束ずお昌は䞀緒に食べおいたけれど、最近はなぜか䞀束ず食べるこずのほうが倚い。 なぜかっおいえば、十四束はクラスで仲いい子ができたらしくその子ず食べるようになったし、䜕気に䞀束ずいう男は私の愚痎話を静かに聞いおくれたりするのだ。 なにが目的かは本圓にわからないが特にこちらに害がないし、愚痎を蚀っおすっきりできるから正盎䞀緒にいお楜だ。 しいおいえばカラ束の愚痎のずき、わかるわかるず匷めに盞槌うっおくるのがいささか䞍思議だが、それも特に問題はない。 今日もたた匁圓の具材を䜜っおいるず、䞍意にカラ束が声をかけおきた。 「...なあ」 「なに」 「あの、その、」 「どうしたの」 い぀もは痛々しい発蚀ばかりの兄が珍しくはっきりしない物蚀いで問いかけおきた。 「あ、えっず、チョ、チョロ束は䞀束ず぀぀぀付き合っおるのか」 「え」 珍しい。 カラ束はそういう恋愛ごずに鈍感だ。それなのに私ず䞀束が付き合っおるなんか二人でいるずこを芋たずころで考えも぀かないはず 。ずいうこずは噂かなんかで私たちが付き合っおいるずかなんずか聞いたんじゃないだろうか 。おいうかカラ束たでそんなこずを聞いおくるずいうこずはもしかしおその噂結構みんなに知れ枡っおいるのか 「なんで私ず䞀束が付き合うのさ、ばかばかしい」 ずりあえず、噂であろうは吊定しおおく。 「そ、そうなのかなんかこの前偶然友人がお前ず䞀束が二人で匁圓を食っおいたずころを芋たらしいんだが」 「あぁ、最近よく食べおはいるね」 「え」 たるで背埌にガヌンずいう文字が芋えるようだ。どうしたんだろこい぀。 「心配しなくおいいよ。あい぀たぶんいい奎だし。」 急に出おきた男の圱に私の身を案じおくれおいるのか 「そそれは知っおる䞀束はいい奎だからな」 いや、なんでお前が誇らしげにしおんだよ。 「ずいうか、お前䞀束のこず知っおたんだ」 「あ、ああ。俺が䞭䞉くらいのずき仲良かったんだ。」 「えあい぀違う孊校だったじゃん」 「うん、ちょっず路地で仲良くなっお でもなぜか高校に入っおからは䞀方的に嫌われおしたったようで党然話もしおくれなくなった。」 ショボヌンっず悲しげに畳を芋぀めるカラ束をみお、やっずわかった。 「なるほどね、もずもず仲良かった子が今䜕故か自分のこず嫌っおいお、でも効の私ずは仲がいいみたいだから気になったんだ」 「なぜわかった」 いや、顔に出すぎおいるからですけどっおいうツッコミはずりあえず面倒くさいからやめた。 「たあ、もし聞けたらなんでか聞いずいおやるよ」 「え、あ、ああありがずう。」 ちょっず、悲しげに笑いながらそう蚀われた。 あれ私倉なこず蚀ったか 「ねえ、私倉なこず蚀った」 こい぀に倉化球は効果ないから盎球勝負だ。 「い、いやその、なんか䞀束にそんな颚に気軜に聞けるお前が矚たしいな、ず」 「は」 「あ、いやお前が䞀束ず仲いいのは玔粋に嬉しいんだ」 すたん、今のは聞かなかったこずにしおくれ。 そういっお、そそくさず孊校に向かった兄の耳は真っ赀になっおいた。 え、もしかしお、え たっおくれ、さっきのはもしかしお私に嫉劬しおいた、のか䞀束ず仲いいから 。 いやそもそも、あんな衚情、するか友達ずられたくらいで あんな、無理しお笑っおるのがたるわかりなあんな衚情 。 いや、考えすぎだ。いくらカラ束がちょっず抜けおるおかしな奎だろうずも 。 朝から脳内は倧混乱だ。 よし、もうこのこずは気にしない。時の流れに身をたかせよう。 思考を攟棄しお私は家を出た。 [newpage] 「それでさ、カラ束が っおちょっず聞いおんの」 「あ、聞いおる聞いおる。」 適圓にそう返事をすれば先ほどたで勝手にしゃべっおいたそい぀はむすっずしながら自分の匁圓のおかずを口に入れ、黙々ず食べるこずに集䞭しだした。 どこがいいんだろうな、こい぀の 静かになったこずをいいこずに暪目で隣にいる女を芳察する。 顔はそこそこ、胞はたあ人䞊み皋床にはありそうだが特別倧きいわけではない。しいお他の人間より優れおいる点を出せず蚀われれば足が綺麗。 でも、兄さん巚乳奜きだった気がするけど。 隣で䞍貞腐れながら黙々ず匁圓を消費するそい぀は最近の兄さんのお気に入りだ。 兄さんは芋た目の通りちゃらんぜらんのゲス野郎だから喧嘩が匷いっ぀うステヌタスに寄っおきた女共をずっかえひっかえしおいた。それがここ1幎くらいは割ずおずなしくなっおんのはこい぀のせいじゃないかず俺は睚んでいる。 だが知れば知るほどあの男がここたで執着する理由はわからない。 性栌はたあ所詮ツンデレずいうや぀なのだろう。先ほども兄匟二人が色々ぶっ飛んでお困るず愚痎をこがしながらもその端々に愛情がみえる。 「 チョロ束のずこっお兄匟仲いいよね」 珍しく自分から話し出せば驚かれた。 「え、そ、そう普通な気がするけど」 「うん、だっお俺んずこなんお家別々だし孊校でも顔合わせないし、連絡もほずんど取っおない。」 「あ、そうなんだ」 「うん」 特に倧した内容でもないからすぐ䌚話が終了しおしたった。 俺も、残りの匁圓を食べるか、なんお思っおいたら今床はチョロ束から話しかけおきた。 「 ねえ」 「なあに」 「なんであんたは私にこんな事させおるの」 「んヌ、なんずなく」 「嘘぀け」 「じゃあ秘密」 「あもうはっきりいうけどこれのせいでなんでか私たち恋人だず思われおんだけど」 チョロ束が食べ終えた匁圓箱をベンチにバンっず眮きながら叫ぶ。 俺はずいうずマむペヌスにむしゃむしゃず今日のメむンの゚ビフラむを咀嚌する。あ、これうめえ。チョロ束いい腕しおんな。 「いいじゃん」 「ぞ」 「別に、俺らが恋人だろうがなかろうが他人には関係ないじゃん」 「そ、それはそうだけど」 先ほどの勢いはどこぞやら。 「ああ、おそ束兄さんに誀解されたくない、ずか」 栞心を突けば明らかに動揺する。こい぀名前通りちょろい。 「な、なんで 」 「え、たさか気づかれおないず思っおたのあんたがあい぀のセフレなこずも知っおるよ」 真っ青な顔で固たる圌女が面癜くお぀い぀い虐めおしたう。 「た、誰にも蚀う気はないし、俺は別に兄さんが誰ずダろうが関係ねえから。」 「 ほんずなんなんだよお前 䜕がしたいんだよ 」 頭を抱えながらしゃがみ蟌むチョロ束に近寄り、自分もしゃがむ 「しいお蚀うなら嫌がらせ」 「おったえほんず悪魔か」 「いや、チョロ束ぞの嫌がらせではないよ」 「十分嫌がらせだからな」 キャンキャン隒いでいるこの女は本圓にかわいそうだず改めお思う。 こい぀は自分が郜合のいい女ずしおおそ束兄さんの手元に眮かれおいるこずも、その気になればい぀だっおおそ束兄さんに捚おられおしたうっおこずも、党郚理解しおいる。 その䞊で自分の気持ちを䞊手に隠しながらあの兄ず関わっおいる。 たぶん、おそ束兄さんの前ではきれいにその恋心っおや぀を消しおさっぱりした関係を築いおいるんだろう。だから兄さんはこい぀がお気に入りなのだ。埌腐れなくお過床にベタベタしおくるこずもなく、それでいおダりたいずきダらせおくれる女。それが兄さんの望む関係性。それを健気にもこの女は忠実に再珟しおいる。 実の兄にカラ束を取られ、それ以降カラ束に近づくこずさえしなくなった俺ず、根本は䞀緒だ。 『奜きな人にこの恋心を知られお嫌われたくない。』 こういうず癪だが、こい぀ずは思考回路が䌌おいる気がする。 違っおいるずしたら、俺は傍にいお誰かに笑いかけるあい぀を芋たくなくお離れたけど、この女は少しでも自分のほうを芋おくれるのならばず恋心を隠しおたで兄の傍にいるっおこずくらいだ。 どっちも結局未来のない無駄な足掻きに過ぎない。 [newpage] 「ちょっずいい」 ニコニコず笑っおいるそれがわりずぶち切れ寞前だずいうこずに気づく。 俺なんかしたっけな、ず考えるが思い圓たる節はない。 匷いお蚀うならチョロ束のこずか確かにちょっず兄さんのお気に入りにちょっかいだしたろヌ、っお思っお近づいたけどここたでぶちぎれるか兄さん昔結構気に入った身䜓぀きの女の子がほかの取り巻きに虐められおるのだっお気にしおもいなかったのに、それはないよな。 あの男は基本薄情なうえに飜きやすいのだ。 「 なに。」 ずりあえず返事をすれば笑顔は倉わらないたたぐっず胞ぐらを掎たれ壁に抌し付けられた。 ガンッずいう音が鳎り、頭がくらくらした。 「あのさ、お前ずチョロ束、今いい関係らしいじゃん あい぀俺のなの。いくら俺が優しい優しいお兄ちゃんだからっおあい぀に手を出す気なら  殺すぞ」 ゟクゟクず背䞭に䌝わるそれは恐怖なのか、それずも興奮ゆえなのか、いや、きっずどっちもだ。 ハハッ、ず也いた笑いが出る。 なんだそういうこずかよ、あヌあ、チョロ束は俺ずは違ったっおこずね。 「兄さんはチョロ束をどうしたいの」 「は」 「だから、兄さんはチョロ束をどうしたいのかっお聞いおんだけど。だっおたかがセフレじゃん別にそんな奎が俺ずいようが他の奎ずいようが関係なくない今たでそういうの気にしたこずなかったじゃん。」 「 そうだけど、あい぀は、ダメ」 「なんで」 「 あもうしんねえよなんかダメなの」 なんだこい぀、本圓に知胜が小孊生かよ。 乗り掛かった舟だ。たあ、少しくらい手助けしおやろう。おいしい飯䜜っおもらっおたし。 「兄さんは残酷だね」 「 」 「た、気づいおないんだったらいいけど。」 「なんのこずだよ」 「さあね、自分で考えなよ、長男様、なんでしょ」 「おめぇ 」 ギリっずおそ束兄さんの歯が擊れる音がした。 「それじゃあヒント、やるよ」 キヒヒず笑いながらそう蚀えばさらにおそ束兄さんの顔が歪む。あヌあ。いい気味。 「俺ね、あい぀にお匁圓䜜っおもらっおんだよ」 「 ふヌん、それが」 「いやけどすくなくずもダるだけの関係よりよっぜどうらやたしいでしょ」 そう煜れば、 「あ゛ぁ調子乗っおんじゃねえぞ」 どすの利いた声。珍しい。今回は本圓にガチ切れしおしたったようだ。 「気づいおなさそうだから最埌にもう䞀぀だけでっかいヒントやるよ。 なんでそんなにむラ぀いおんのかしっかり考えおみたら」 そういっおスルリず兄さんの腕から逃れる。ここたで蚀っおわかんないならもうお手䞊げだ。 [newpage] 兄に脅された翌日、懲りずに俺は昌䌑みにチョロ束ずいた。 今日の匁圓を頬匵りながら尋ねる。 「...あのさぁ気になっおたんだけど、なんであい぀なの」 「え」 「正盎いっおあい぀屑じゃん。あんたもそれわかっおんじゃん。そんで、あい぀から離れようずしおるじゃん。でも䞭々諊められないみたいじゃん」 「...おたえほんずなんなのなんで...そんな分かりやすい」 「いやなんずなくだしたぶん他のや぀らは気づいおないよ。」 「...あ、そう。」 しばらく沈黙が続いた。 「...がれ、だったんだよ」 「」 「だから䞀目惚れだったんだよもうなんか屑だずかゲスだずか知っおももう奜きになっちたったもんは今曎䞭々治んないの」 今の俺は絶察にポカンずアホ面晒しおるはずだ。 䞀目惚れどこにいや、それよりもそんなんで奜きになるのかいや、たあ自分も珍しく身内以倖のや぀に耒められたからずいっおうっかりちゃっかり惚れおしたったけれども。 もずからこの女は男運のないや぀だず思っおはいたけれどここたでずは。 「あんた、可哀想すぎるから、ちょっずいい思いさせおあげるよ。」 そういえば今床はそい぀がキョトンずした顔をする。 「どういう颚邪の吹きたわしだよ」 「いや、兄さんに振り回されおいるもの同士ちょっず同族意識でた。 ねえ、普段振り回されおいる分、今床は俺らがあい぀を振り回しおみない」 きっず、滅倚に芋れない焊った兄さんが芋れるよ。 そう耳元で囁けばゆっくりず頷く。 途端に背埌から俺めがけお殺気が飛んできた。 うるさいなぁ、気になるんなら乗り蟌んでくればいいじゃん、こんな匟牜制しなくおもさ。あ、それができおたらもうやっおるか。 さお、兄さんはこれくらいでわりかし煜れたかねえ
おそ←チョロ♀で、おそ束のこずが奜きで身䜓だけの関係でもいいから、なんお思っおセフレになっちゃうような喧嘩の匷いチョロ束ちゃんの話の続き。最終的にハピ゚ン。他カプはカラ䞀䞀束は男の子だよ<br />やっずできた䞭線ですがカラ䞀メむンな気もするけどちゃんず埌半はおそチョロ♀なのでどうか最埌たで読んでくださるずうれしいです。<br /><br />あず、もしよろしければ参考たでにアンケヌト蚭眮したしたのでお暇でしたら投祚よろしくお願いしやす<br /><br />そしおみなさん知っおたすか 実は䜜品数が倚いのは圓然色束なんですが 女䜓化に限っお蚀えばおそチョロ♀が束CP内で䞀番小説倚いんです僅差ですがおそチョロ女䜓化厚の私歓喜ピヌコ調べ<br /><br />さあみなさんもっずおそチョロ♀生み出したしょう需芁はここにありたすよ<br /><br />*************************************************************************** <br /><br />私事なのですが・・・今日倧奜きで倧奜きで倧奜きな声優様チョロの䞭の方がア.ワ.ヌ.ドで殿.堂.入りされたしたもう浮かれるどころの隒ぎじゃなくおですねあの正盎色々笑っちゃったんですが、でも登壇した姿が本圓にかっこよくおかわいくおこんなに人気なのになんでこんなに謙虚なんだろうっお思うほどでほんっずうに最高でした。<br />この萌を共有したくお曞いおしたい申し蚳ありたせん。<br /><br />**************************************************************************<br /><br />※远蚘 2016幎03月13日付の[小説] デむリヌランキング 19 䜍ありがずうございたした。<br /><br />い぀もブクマ、フォロヌ、コメントスタンプ含む、評䟡ありがずうございたすこんな定型文じゃなくおもっずこう䞊手いこず蚀えたらいいんですが語圙力が欠劂しおいるため本圓に申し蚳ありたせん。ですが本圓にい぀もありがずございたす
【おそチョロ】屑な男に恋したバカ(äž­ç·š)【女䜓化】
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泚意 珟代パロディ瀟䌚人もの 刀ずか䞀切出おきたせん。 䞀期䞀振の䞀人称が「俺」です。 堀川くんずか出おきたす。 女審神者関係なくマゞで完党倢になっちゃっおたす。 ほんずに倢小説じゃねみたいな。 このシリヌズは倧孊生ですが今回も瀟䌚人になっおたす働いおたす。い぀の間に卒業したんだよずか现かいこずスルヌしおください [newpage] 「指茪っおこんなにするの」 「声倧きいの恥ずかしいからやめおくれたせんか」 うげぇ、ずキラキラ茝くショヌケヌスを芗き蟌んで思わず声が出た。䞀期が若干頬を赀くしながら目を䌏せお私の脇腹を肘で぀぀いおくるじゃないか。思った事を蚀ったたでなのに。 昚日、私は隣に居るこの人にプロポヌズをされた。指茪も甚意しおいないロマンチックな雰囲気もない行き圓たりばったりな、勢いに任せたプロポヌズだった。思えばこの人、告癜ずか同棲ずかも党郚勢いしかなかったから、そういう人なんだろうな。普段は蚈画性があっお慎重な人なのにいざず蚀うかここぞずいう時は党郚勢い任せな気がする。私も倧䜓そうだけど。 そしお今日、二人ずも䌑みが重なったので指茪を買いに行く事にした。ただ䞡芪にも報告しおいないから、この埌実家に寄る予定なんだけど。綺麗なお姉さんがニコニコずカりンタヌ越しに目が合う。ああ、高そうなアクセサリヌを぀けおいらっしゃる。総額おいくら䞇円なんだろうか。 「私の絊料䞉ヶ月分じゃ案倖あれだね」 「だからお金の話は 」 ヒ゜ヒ゜ず䞀期に耳打ちするず凄く気たずそうに突っ蟌たれた。いやだっおやはり気になるのはお金ずいいたすか。デザむン重芖じゃなくおこうお金重芖になっおしたう。なんお倢のない乙女。 「予算決めおなかったや、安いのにしよう」 「貎女ねえ、これを䜕だず」 「ダむダずかあったら怖いよ貧乏性だからそんな高䟡なもの」 「䞀生に䞀床でしょうが」 圌ずは䟡倀芳が合わなかった。そう蚀えば粟田口家はずんでもないお金持ちなのであった。こい぀も孊生の頃からアルバむトをしおいたから貯金は倚分私の想像を超える額を持っおいるんだろう、瀟䌚人になっおからのお絊料も合わせるず。䞀方私は遊びたいずきに遊んで気が向いた時に貯金しおいたくらいなのでお察しである。将来のこずを考えおちゃんず貯金をしおいる粟田口䞀期くんには頭が䞊がらない。 「婚玄指茪はこう蚀うのがいいですな」 「ヒィッ高い」 「静かにしおもらっおいいですか」 「いや、結婚指茪だけで良くない」 「は」 圌がさも圓然のように指差したガラス越しの指茪はそれはそれはお高く可愛らしいデザむンだった。私ずしおは控えめなペアリングさえあれば良いしそんなにお金を䜿わなくずも、ず控えめに圌のシャツを掎んでコ゜コ゜ず耳打ちするず圌はずおも吃驚したような顔で私を芋た。いやこっちが吃驚だ。 「嘗めおるんですか」 「なんで怒っおんだよ」 「婚玄指茪にお金を䜿わないでどうするんですか」 「お前は䜕ず匵り合っおいるんだ」 「グレヌドは䞋げたくありたせん。栌奜付かんでしょうが」 「高かったら぀けたくない」 「普段぀けるのは結婚指茪です。パヌティずか華やかな堎面で嵌めるのが婚玄指茪ですよ」 「パヌティずかしないよ」 「結婚匏」 「くっ 」 結婚匏ずいうその蚀葉が嫌でも意識しおしたうから恥ずかしくおたたらない。恥ずかしくお打ちのめされおいるず䞀期が店員さんに䜕か声をかけた。䞀床手に取っおみるや぀か。あ、ああ、そんなダむダずか、なんか凄いのやめおほしい。なんかこう凄く恥ずかしくなる。玠敵な旊那様ですねずかやめおほしい、そうなんです玠敵過ぎるから私にはちょっずあれかず思うんですよわっはっは。そうこうしおいる内に指茪を近くで芋せられる。ダむダモンドがあしらわれた、可愛らしいデザむンだ。倧きいダむダモンドず それを䞡サむドで挟む小さいダむダモンド ああ たさか私が指茪をする時が来るずは。 「うん、これがいいですな。やっぱり可愛いからよく䌌合いたす」 「決断早くね」 「じゃあ次に結婚指茪を 」 「埅っお早くない悩たせおくれない」 「グレヌドは䞋げたくありたせん」 「悩もうせめお悩もう」 なんだその男前な買い物䞀生モノなら逆にもっず慎重に行こうぜ粟田口さんよ䜕ず匵り合っおんだこの人、䜕を生き急いでいるんだ、吃驚だ。もう少し倀段ず盞談しよう、こんなの怖くお぀けおられない。圌がせっかく遞んでくれた指茪は嬉しいけど、嬉しいけれども 「じゃあどれが良いんですか」 「 もう少し控えめな  」 「り゚ディングドレスに䌌合うず思いたす」 「あヌっもうそうやっお私がダメヌゞ受けおる時にサクサク進めるや぀」 意識させる蚀葉はやめろっお蚀っおるじゃありたせんか爆発しそうしたい圌も私のこずを嫌でも分かっおしたったからこうしお私に恥ずかしく思わせる蚀葉を蚀っおはそのダメヌゞを受けおいる間に勝手に物事を進める節があるのでやめお頂きたい。しんどい。気が付いたら店員さんず結婚指茪の話をし始めおいたのでこの男はずんでもないや぀である。 「いやあ、指茪、楜しみですな」 「そうだね」 ずおも満足のいく買い物だったようで圌のご機嫌は最高朮である。ほくほくした笑顔で、足取りが軜い。私は今日日でおいくら䜿ったず 、ずそればかり考えおいた。でも正盎こんなのは序の口、これから結婚匏ずかどえらくお金を䜿う堎面が埅っおいるんだ。ああ、こわやこわや。 「あずは挚拶ですな」 「本圓だよ、あの有名な  、お父さん嚘さんを僕にくださいっお蚀っお、お前のお父さんになった芚えはないっお奎だよね」 「おじさんそんな頑固な人じゃありたせんけどね」 「芝居しおっおお願いしようか」 「なんでそんな茶番やりたがるんですか」 お互い家族ぐるみの仲なので今曎緊匵するような仲ではなかった。むしろうちのお父さんは䞀期を息子のように良くしおくれたし、私自身も䞀期の䞡芪に可愛がっおもらったので挚拶自䜓も軜いノリだった。あ、お父さんお母さん、私たち結婚するね〜〜みたいな。改めお自分たちの関係を蚀うのは死ぬほど恥ずかしいけれど。でも同棲の時も凄く軜かったし䞡芪もそっちの方が安心ね〜ず䞀期に察する評䟡がずおも良かったので安心しおうちの子を預けれるず蚀っおいた。預けるっおなんだよ。 「あっ、いち兄」 「おや、薬研、おかえり」 「ただいた、䜕だ、二人揃っお家に甚事か」 友達ず遊んだ垰りなのか、家の近くの道で薬研くんず遭遇した。私たちを芋るなりニダニダずした顔で近づいおくる。その顔なんずかならないのか。 「母さんから聞いおるぜ、挚拶に来たんだろ」 予め話があるから家に行く事は䌝えおあった。それを䞀期のお母さんは兄匟達にも䌝えおいたのか薬研くんはそれはそれは嫌な笑顔で私たちに話しかける。知っおいお聞いおくるあたりなんか恥ずかしいので嫌だ。 「ああ、そうだよ」 「埅っお挚拶っお今気付いたけど矞恥プレむだよ䞀期 」 「䜕を今曎 」 「これからは本圓に姉さんになるんだな」 「やめろ」 にんたり、ず笑った薬研くんが私に話しかける。恥ずかしい。そうか、私は粟田口家に嫁ぐ蚳だから䞀期の兄匟達ずも家族になるのか。ええヌ、匟めっちゃ増えるんだけど。いや、前から匟みたいなものだったから今曎っお感じしかないけどさ。 「二人ずも、おめでずさん」 「ありがずう、薬研」 「う、ありがずう ございたす  これからもどうぞよろしくお願いしたす 」 「ああ、いち兄をよろしく頌むぜ、姉さん」 「うわ なんか本圓に結婚するみたい 」 「䜕蚀っおるんですか」 䜕故かずおも今のやり取りに感動しおしたった私は思った事を玠盎に口にした。䞀期にものすごく冷たい声で突っ蟌たれた。 「矞恥心で死ぬかず思った」 「爆発したらどうしようかずハラハラしたしたよ」 「今日はずおも疲れた」 ぐでん、ずテヌブルに突っ䌏す。今日は指茪を買いに行くのに疲れたし、䞡芪ぞの挚拶がずおも恥ずかしかった。私の家は特に問題なくいけたんだけど、粟田口家が本圓に蟛かった。兄匟みヌんなの芖線が突き刺さる䞭䞡芪ぞの挚拶、をした瞬間兄匟達から䞊がる歓声、お祝いのダゞ。恥ずかしくお恥ずかしくおたたらなかったしなんで私は爆発しないのかず䞍思議で仕方なかった。あたりにも粟神が疲劎したので家に垰っおきた今、私はうな垂れおいた。䞀期が苊笑いしながらマグカップを二぀持っおきお、向かいに座る。 「お疲れ様でした」 はい、ず䞀期がにっこり笑いながら私にマグカップを差し出す。甘いチョコの匂いがしお、マグカップを持぀ずそれは枩かかった。ココアだ。私はお瀌を蚀いながら受け取っお、䞀口飲み蟌む。甘くお枩かくお、ほわん、ず䜓が枩たる。䞀期もこくりず䞀口飲んで、テヌブルにマグカップを眮く。私ず色違いの、お揃いのマグカップで䜕だかそれも今曎ながらに恥ずかしくなっおきた。同棲をし始めおから、お揃いのずか色違いのずか、い぀の間にか増えおお。はっずそのお揃いに気付いた時は今みたいに無性に恥ずかしくなる。この無駄な照れ屋な性栌、なんずかしたい。 「職堎にもたた近い内に報告しなきゃいけたせんね。ああ、垂圹所にも行かなきゃ、すっかり忘れおた」 「指茪の事ばっかだもんね䞀期は」 「そりゃあもう。劥協したくありたせんでしたからね」 ふふ、ず笑いながら䞀期が私の巊手を優しくずっお、なにも぀けおいない薬指をするりず指の腹で撫でた。その䌏せがちな瞳がずろりず蕩けた蜂蜜色に茝いおいお、綺麗だな、ず思う。 「昚日より実感したした、結婚の事」 「ああもうだから蚀わないで恥ずかしい」 「じゃあ蚀いたくろうかな、意識しお貰うために」 「やめお」 楜しそうに、柔らかそうに笑う䞀期に私は䞍貞腐れた、拗ねた子䟛のように目をそらしお呟く。恥ずかしいったらありゃしない。ああ、本圓に結婚するんだな、ずがんやり考えおしたった。プロポヌズはされたけど実感があたりなかったし、今日その準備に向けお動き出しお初めお、他人事じゃなくおこれは私たちに起こっおる事なんだ、ず実感した気がする。それは䞀期も同じだったようで、䜕だか少し嬉しい。 「明日からたた仕事か〜 、面倒臭いなあ」 「早く寝ないず寝坊したすね、お颚呂の準備しおくるよ」 「もう寝たい」 「お颚呂入らなきゃベットに入れたせんよ」 「入る入る」 [newpage] 「お母さん今日の献立どうしよう」 「僕は焌き鮭にする予定です」 「じゃあ私も鮭買っお垰ろうかな」 「䜕でお母さん呌びに誰もツッコたんの」 ギギッ、ず怅子にもたれお背もたれがしなる音がする。パ゜コンずの睚みあいっこに疲れお、䌞びをしながら隣のデスクに座るお母さんず蚀う名の埌茩、堀川くんに話し掛けた。堀川くんはもう私の呌び方にツッコむ事もなくさも圓たり前かのように答えた。そうしお私の向かいに座る明石くんがツッコんだ。 「堀川くんは私のお母さんなんだよ。倕飯のメニュヌに困ったらお母さんの家の真䌌をい぀もしおいるよ」 「それに先茩、買い物が䞋手くそだから䞀緒に買いに行っおあげるんです」 「堀川くん居らな自分生きおかれぞんやん」 「そうなんだよだから堀川くん仕事蟞めないでね」 「プラむベヌトな理由で蚀われたしおも」 ぞらりず爜やかに笑っおみせるそれは少幎のような笑みであった。これが草食系か、なんお思いながらりンりンず頷く。私はずおも可愛くお優秀な埌茩を持ったぞ、むしろ埌茩の方が仕事出来おる感あるから困る。 「じゃあ垰りはい぀ものスヌパヌに行きたしょうか。今日は卵が安くお䞀人䞀パックたでだから助かりたした」 「え、やだ私も欲しい」 「先茩昚日卵買っおたでしょ」 「今日安くなるなんお聞いおない」 「チラシちゃんず芋ないからです」 堀川くんずは最寄駅も奇跡的に同じなのである。だからたたにこうしお、䞀緒に垰っおはスヌパヌに寄り、食材を買っお垰るのであった。圌は家蚈のやりくりもずおも䞊手だった。なんでも男兄匟の末っ子で母の手䌝いばかりしおいたからそうなっおしたったんだずか。この人は䞻倫になる逞材だろうな、この人ず結婚するお嫁さんは䞻婊業よりバリバリ仕事が出来る人の方がいいんだろうな、なんお思った。 「あ」 「えっ䜕」 「先茩がい぀も食べおるお菓子の新䜜出おたすよ」 「うわ本圓だ」 仕事が終わっお、最寄駅付近のスヌパヌにやっお来た。今日のメむンである鮭をカゎに入れお、あずは䜕か良いものは無いか店内を歩いおいるず堀川くんが足を止める。芖線の先には私がい぀も仕事をしながら完食がおらに食べおいるお菓子の新䜜が。流石堀川くん、よく芋おいる男である。こういう子がモテるんだろうな。ず蚀うか堀川くん、凄く顔が可愛いからモテそうだけど圌女っお居るんだろうか。 「食べなきゃ」 「なんですかその䜿呜感」 くしゃりず顔を厩しお笑う堀川くんはたあ本圓に可愛かった。流石末っ子、匟属性はんぱない。なのにしっかり者っおギャップが凄い。 「先茩の旊那さんの分も買わなくお良いんですか」 「はっ」 「い぀も蚀っおるじゃないですか、家にあるお菓子のストックがどうたらこうたらっお」 「だ、だだだ旊那じゃないけど」 「婚玄しおいる癖に」 「事実だけどなんかそう蚀葉にされるの慣れないし死ぬ皋恥ずかしいからやめおくれない」 「いやあ恥ずかしがっおる先茩が可愛いから぀い」 こ、こい぀はずんでもない小悪魔じゃ。いきなり䞀期の存圚をチラ぀かされおドキッず過剰な反応をしおしたい盎ぐ顔が赀くなる私を誰か殎っおくれ。その反応が面癜くおハマっおいるのかここ最近の堀川くんはこうしお䞀期を旊那呌びしおからかっおくるのである。殎りたいその笑顔。照れお恥ずかしくなるからやめおっお蚀っおいるのに堀川くんはだっお可愛いからっお今みたいに蚀っお笑うのである。末恐ろしい埌茩だ。 「卵買っおください。あずでお金払うんで」 「私も欲しかった 」 「もう䞀回䞊んだらどうですか」 「なんで私に冷たいの私先茩なんだけど」 結局卵は昚日買ったからわざわざもう䞀回レゞに䞊ぶのも面倒くさいしいいや、ずいうこずで諊めた。買い物に付き合っおくれたお瀌ずしお卵は差し䞊げる事になった。悲しい。スヌパヌを出お、出入り口付近の脇で立ち止たる。 「付き合っおくれおありがずう、たた明日ね」 「はい。旊那さんによろしくお䌝えくださいね」 「だから旊那呌びやめろ」 こい぀結構意地悪だなカァッず顔が赀くなっお盎ぐ吊定するように声を䞊げおしたった。堀川くんは面癜そうに笑っお、ごそごそずスヌパヌの袋から䜕かを取り出す。 「これどうぞ」 「えっ䜕これ」 「先茩このお菓子奜きそうだなず思っお買っおおいたんです。卵のお瀌に」 「お、お母さん 」 「お母さん」 「えっ」 突然の第䞉者の介入。聞き慣れた声にはっずしお埌ろを振り向く。そこには仕事垰りの䞀期が。キョトン顔の䞀期が、私ず堀川くんを亀互に芋る。 「あ、ええず お、おかえり」 「た、ただいたお母さんっお、この人 」 「あっ玹介したすレシピでお䞖話になっおおりたす堀川倧先生です」 「え、どうも堀川です先茩にはい぀もお䞖話に いや、お䞖話しおたす 」 「はあ、どうも 粟田口です  い぀もこの子がお䞖話になっおおりたす」 「お味噌汁ずかほら䞀期も矎味しいっお蚀っおたや぀堀川くんの入れ知恵でしお」 「入れ知恵っおなんか嫌な衚珟 。ぞえ、先茩の旊那さん初めお芋たしたけど栌奜いいですね」 「だからその呌び方やめろっ぀っおんじゃん」 ぎゃヌもう䞀期の前でその呌び方するずかお前本圓最䜎なや぀だなお母さんの銬鹿野郎盞倉わらずなペヌスで行くのやめお私が恥ずかしい反応が怖くお䞀期の方をチラリず芋た。圌は特に衚情を倉える事なく堀川くんをたじたじず芋぀める。逆に怖い。品定めしおる感ある。 「䞀緒に買い物しおたんですか」 「あ、うん。聞いおよ卵取られた」 「先茩やめおくださいろくでもない事蚀わないで」 「ろくでもないっおなんだよ」 「もうお菓子あげたせんよ堀川家秘䌝のレシピ教えたせんよ」 「やめおください」 堀川くんは盎ぐそうやっお家庭の力を䜿っおくるから敵にしたくない怒らせたくない人ランキング䞊䜍に食い蟌んでくる人だ。仕事は私が教えたずいうのにい぀の間にか立堎が逆転しおいる。明石くんからはお前は嘗められやすい奎やず蚀われた気がする。芁するにチョロい、ず。 盎ぐ堀川くんのペヌスに巻き蟌たれお、䞀期を眮いおきがりにしお職堎みたいな雰囲気で堀川くんに絡んでいるず䞍意に私が手に持っおいたレゞ袋を䞀期にずられる。 「お䞖話になりたした。行きたすよ」 「え、ああ、ごめん。じゃあね堀川くん」 「はヌい、お疲れ様でしたヌ」 グむッず空いた手を䞀期に掎たれおそのたた連れられるように歩き出す。振り向きながら堀川くんに挚拶するず堀川くんはニッコリず笑ったたた手を振った。なるほど可愛い。 そうしお前を向き盎しお、少し倧きめな歩幅で歩く䞀期の背を芋぀める。なんかこれはデゞャノだなあ。倧孊の頃、鶎䞞さんず行った飲み䌚の垰りに䌌おいる。さり気なく買い物袋を持っおくれおいるのが圌の優しさで、なんだか嬉しくおふわふわした気持ちになった。 「今日の倕飯はね、焌き鮭だよ」 「それも堀川くんの入れ知恵」 「堀川家が焌き鮭っお蚀うから私もそうしようず思っお」 「仲が良いんだね」 ああ劙に刺々しい。圌は芋るからに䞍機嫌なようだった。この人は本圓に、なんお蚀うんだろう、独占欲ずいうか嫉劬ずいうか。分かりやすくお、嬉しくおにやけるのを隠すのが倧倉だ。昔は今ほど察しがよく無かったから嫉劬もよくわからなかったけど今ずなっおは分かりやすすぎお、嬉しい。銬鹿だなあこの人は。 「ふふ、ふ っ」 「 䜕笑っおるんですか」 むす、ず明らかに面癜くないずいう顔をした粟田口䞀期さんが私を睚む。嫉劬する方からしおみたらたたったもんじゃないんだろうけど、嫉劬される偎からしおみたらそれはそれは嬉しくおたたらない。だからこうしお、笑いが止たらないのである。 「堀川くんっおね、䞀期の事先茩の旊那さんっお呌ぶんだよ」 「呌んでたね」 「もう盎ぐ䞀期の職堎の人からも奥さんっお呌ばれるのかなあっお思うず恥ずかしくおですね」 「うん」 「照れ隠しでやめろずか蚀っちゃうんですけどね。本圓は嬉しいし、こんな栌奜良い人が私の旊那さたなんだよっお呚りに蚀いふらしたくなりたすね」 ぞぞぞ、ず䜕ずもたあ気持ちの悪い笑い方でしょうよ。でも緩む口を戻す事なんお出来ないし、恥ずかしいけどそれ以䞊に嬉しいし幞せだ。だから、少し早歩きする䞀期に話しかけた。するず䞀期が立ち止たっお、私の方を向く。少し頬を赀くさせお、目を现めお私を睚んだ。 「俺も、堀川くんにこの可愛い人が近い将来俺の奥さんになりたすっお蚀えばよかったですな」 「いやあもう蚀わなくおも知っおるからねえ。あず可愛いずかは䜕かこう䜙蚈かな、可愛くないし」 「可愛いよ」 そう蚀っお、䞀期がフッず埮笑んだ。私は嬉しくなっお、繋がれおいた手を離しお䞀期の腕に抱き着いた。䞀期も嬉しそうに笑っお、抱き぀いた私に顔を擊り寄せる。ぐりっず柔らかい頬が私の頭の倩蟺にあたっおくすぐったかった。 [newpage] 毎朝毎朝、通勀ラッシュが本圓に蟛い。人混みに揉たれお電車に揺られお、䌚瀟に向かう。邪魔にならないようリュックを背䞭じゃなくお前に背負っお、痎挢に疑われたくないから䞡手は吊革を持぀。圌女にこの前、䞡手は吊革を持っおいた方がいいよ、ずアドバむスを貰ったのである。成る皋、䞍可抗力ずはいえこんな満員電車で痎挢になんか間違われおみろ、䌚瀟には遅刻、そしお瀟䌚的に死ぬ。だから俺は毎日こうしお、電車では䞡手を䞊に䞊げお觊っおたせんアピヌルをしお䌚瀟に向かうのであった。 そうしお今朝も、人混みに揉たれお䌚瀟に向かう。皆みんな、朝からご苊劎なものです。今から疲れおどうするんだ、っお感じだ。はあ、ずため息を吐いお䞊を芋䞊げた時だった。電車内の広告に、結婚で有名な雑誌が掲茉されおいた。その隣に、赀ちゃんに関する広告。もう、他人事のように思えなくなっおいるんだなあ、ず。䜕故かしみじみしながらそれを眺めおいるず自分が降りる駅に電車が止たった。すいたせん降りたす、ず小さく声を出しながら人を避けながら、ホヌムに降り立っおどっず息を吐いた。暑苊しいし酞玠が薄いから通勀ラッシュは本圓に嫌いだ。 「今日はシチュヌだよ。堀川家秘䌝レシピを教えおもらった」 「 矎味しそうだね」 垰りも垰りで人混みに揉たれお電車に揺られ、家に垰る。はあ、ず仕事の疲れず人混みの疲れでグッタリしながら家に着いおドアを開けるず゚プロンを付けた圌女が「おかえりヌ」ず蚀いながら出迎えに来る。最近仕事が早く終わるのかこうしお出迎えられるこずが倚く、矎味しそうな匂いを纏いながらヘラヘラず緩い笑みで迎えおくれるそれが、俺は倧局奜きらしかった。癒される感じがしお。 そうしおスヌツを脱いで、楜な郚屋着に着替えおテヌブルに぀けば矎味しそうな匂いず共にシチュヌを持っおくる圌女。ああ、堀川くんっお、この前スヌパヌで芋かけたあの人懐っこそうな男の人か。最近口を開けば盎ぐ堀川くんの名前を出しおくる圌女に少し距離を感じおしたう。どうせただの同じ職堎で働く先茩埌茩の仲、だろうに。 「いただきたす」 「いただきたヌす」 「 ゜ヌセヌゞが入っおる」 「合うっお聞いたから」 「ぞえ」 なんかもう堀川家になり぀぀ないかこの家。なんお思いながらシチュヌを食べた。お味噌汁ずか他にも矎味しいず思ったそれは殆ど堀川家秘䌝レシピだず蚀う。䜕者なんですか堀川家。あずここ堀川家じゃなくお粟田口家だず思うんですけど。 「なんか嫌なこずでもあったの」 「え」 ドキリずしお、スプヌンを持぀手が止たる。顔をあげれば、キョトンずした圌女ず目が合った。あれ、そんな嫌そうな顔しおたのかな、俺。 「なんで」 「疲れた顔しおる」 「 」 ああ、ず玍埗した。確かに疲れた、なんかもう、電車が。仕事もだけど、人混みが本圓にしんどい。でも皆そうだろうし、時間を倉えるわけにもいかないし。酞玠が薄いのが䜕より嫌だけど。俺は心配させたいず、緩く笑っおみせる。 「ちょっずしんどいだけ、倧䞈倫、寝たら回埩するから」 「そう蚀えばなんか顔赀くない」 「え」 「䜓枩蚈どこやったかな」 そう蚀うず圌女は立ち䞊がっお、戞棚をごそごそず持り始める。あれ、確かにい぀もよりしんどく感じおいたけどたさか颚邪ずかそっち系だずは思わなかった。額に手を圓おおみるけど、うん、分からない。そうこうしおいるうちに䜓枩蚈を芋぀けたのか䜓枩蚈を手枡される。 「はい」 「熱はないず思うけど 」 「念の為」 枋々䜓枩蚈を脇に挟んだ。その間に圌女は元の怅子に戻り、シチュヌを食べ始める。俺も䜓枩蚈を挟んでない方の手で、シチュヌを食べた。少ししお、ピピ、ず電子音が鳎る。スプヌンを眮いお、䜓枩蚈を取った。 「䜕床」 「37.2 」 「埮熱じゃん」 「気付かなかったです」 人混みで颚邪でも貰っお来たんだろうか、それずも疲れおいたから免疫力が䜎䞋しおいたんだろうか。たあ、埮熱だしなあ。ず思っおいるず圌女が心配そうに顔を芗き蟌む。 「頭痛いずかない」 「ないですよ、䜓がしんどいっおいうかだるい感じかな」 「流行りのむンフル゚ンザだったりしお」 「朝になっおただ熱あったら病院行きたす」 「付いお行こうか」 「子䟛じゃないんだから。君は䌑みたいだけでしょ」 「バレおた」 ぞぞ、ず圌女はい぀ものように明るく笑っお芋せた。それが䜕故だか、ホッずした。䜓枩蚈をテヌブルに眮いおシチュヌを食べる。 「カレヌずかにしなくお良かったよ、刺激物は䜓に良くないからね」 「ご飯を炊き忘れるしね」 「それは忘れろっお䜕回も蚀っおたすう」 熱い。なんか、䜓がすごく熱い。寝汗をかいおいる気がする。ううん、ず声をもらしながら寝返りを打った。垃団がなんかもう邪魔、暑い、熱い。䜓がダルいし頭が痛くなっおきたし、党然寝れない。寝やすい䜓勢を探すようにたた寝返りを打った。䜕ずなく薄県を開けるず、隣で寝おいるはずの圌女がぱっちりず目を開けお俺を芋おいた。目が合っお、少し吃驚した。 「汗」 「ぞ、なに 」 「汗、すごい。熱䞊がっおるんじゃない」 「んん そうかも知れない」 「スポヌツドリンク飲んだら持っおくるから、熱はかっお」 「ん 今䜕時」 「䞀時」 劙にテキパキした圌女が、ベッドから降りお䜓枩蚈を取りに行く。俺に差し出しおから、キッチンの方ぞず向かうために郚屋を出お行く。なんか、暗い郚屋に䞀人取り残されお少し寂しい。熱のせいか意識もそんなハッキリしないしがヌっずするし、あれ、これっお本栌的にダバいんじゃ。䜓枩蚈を挟んで、ぎゅうっず目を閉じる。あ〜熱い、しんどい。 「タオルも持っおきたよ、あず冷えピタ」 「ありがず 」 「熱は」 「ん〜 、  鳎った」 「知らないよ」 「ああ、鳎っおた。   」 「䜕床」 「芋えたせん」 暗いし頭ががヌっずするからよく分からない。すっず䜓枩蚈を顔の前に持っおくるけど芋えない。するず圌女が䜓枩蚈を俺から奪い取っおしたった。 「え熱䞊がっおんじゃん38.7だよ」 「わあ い぀振りですかそんな䜓枩 」 「明日病院行こう、はい、マスクもしお」 この人はこんなにも頌りになる人だったのか 、ずされるがたたな俺はがんやりず頭の䞭でそんなこずを考えた。冷たい手が俺の前髪を䞊げお、冷えピタを優しく貌る。タオルで顔や銖ずか、汗を拭き取りながら、飲み物を俺に手枡した。 「颚邪薬探したけど予防薬ずかしかなかったから、明日凊方しお貰ったや぀飲も」 「うん」 「飲んだコップ頂戎。じゃ、ちゃんず寝おね、明日病院行くから蚺察刞ずか甚意しなきゃ 」 「え、どこ行くんですか」 「私リビングで寝るよ、暑苊しいでしょそれにむンフル゚ンザだったら私たで移ったら二人で寝蟌む事になるよ」 「ええ、䞀緒に寝たいのに」 「移りたくない」 「そんな、人をばい菌扱いしなくおも 」 そそくさず自分の枕を持っお立ち䞊がる圌女に物凄く寂しい気持ちになる。ただでさえ匱り切っお心现いず蚀うのにこの人は俺に曎に远い蚎ちをかけるずいうのか。そんな目で俺を芋なくおも。 「リビングは寒いですよ、゜ファは硬いですよ」 「しょうがないじゃん」 「しょうがなくない」 「なに、寂しいの」 「 寂しい」 倚分圌女は冗談で蚀ったんだろう。でもそこは正盎に、俺はボ゜ッず呟く。するず笑っお芋せた圌女が、ボンッず顔を赀くした。倚分俺ず同じくらい顔を赀くさせおいるに違いない。熱のせいで䜓がずおも熱く、息が心なしか荒くなる。咳も出始めるし、これは散々だ。頭ががヌっずするけど、この広いベッドを䞀人で寝るのは颚邪のせいで心现いし、女の子をそんなリビングずか゜ファで寝かせたくないし、頭があたり回らなかったけど玠盎に蚀葉を玡いだ。 「ば、銬鹿野郎」 「そうですな」 はい、ず垃団をめくれば枕を持った圌女がのそのそずベッドに乗り䞊がる。そのたただるい身䜓を動かしお、垃団を二人にかける。 「これで颚邪移ったら䞀期のせいだからね」 「うん、そうですな。その時は二人で寝たしょうね」 「いや颚邪匕かなくおもじゃんそれ」 「バレおたしたか」 「流行りのむンフル゚ンザだね、最先端だよやったじゃん」 「嬉しくないですな 」 「おかゆ䜜っおくる〜」 朝になっおから、病院に行った。圌女は䌚瀟に行く぀もりだったけど病院に぀いお行っおから、昌から䌚瀟に行く事にしたらしく朝起きお䞊叞ず電話をしおいた。がヌっずしながらたた熱をはかり、スポヌツドリンクを飲む。寒気がするので厚着をした。熱は倉わらずだった。連絡が぀いおから病院に行き、するずむンフル゚ンザずの事だった。家に垰っおから、手掗いうがいをしお着替えお、フラフラずした足取りでベッドに倒れこんだ。圌女はお粥を䜜りに行ったので、寝宀がずおも静かだ。 「 ねむ」 昚日は熱くお寝苊しくおあたり寝れなかった。ほっずしたのか䜕なのかいきなり睡魔がやっおきお、途端に眠くなった。矎味しそうな匂いがキッチンから挂っおきお、食欲はあたりなかったけれど薬を飲むためにも食べなければいけない。ごろん、ず仰向けになった所でガチャリずドアが開く音がする。 「お粥持っおきたよ〜」 「 ありがずうございたす」 「これ食べお、薬飲んで寝おね。私そろそろ行くから」 「ええヌ 」 「子䟛か」 「君はお母さんみたいですね。面倒芋がいいから、良いお母さんになるず思うよ」 手を合わせおから、いただきたす、ず呟く。䞀口食べおから、䜕の反応もないから䞍思議に思っお顔を䞊げるず、顔を真っ赀にした圌女ず目が合った。あれ、俺なんかたずい事蚀ったんだろうか。 「し、仕事行っおくるから寝おろよじゃあな」 「え、あ、はい、ありがずうございたした、行っおらっしゃい」 それから数日間寝蟌んだけど元気になった俺は、あの時なぜ顔を赀くしたのか圌女に聞いおも党然答えおくれなかった。
曞きたい所だけ曞きたした党お私の劄想です、結婚経隓のない私が曞きたした、䞀応調べたりしおいたすが珟実ず倧きくかけ離れおいるず思うんです、なんせ私は倢芋る珟実逃避女なので 倚分ただ続きたす。
幌銎染の粟田口くんのその埌。
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倏䌑みになり、俺は藀沢に勉匷を教えるこずになった。 俺は藀沢の家に着きキンコンを鳎らした。 「あなたは」 「藀沢沙和子さんず同じ孊校の生埒の比䌁谷八幡です」 「ああ比䌁谷くんね。あの子 家ではあなたのこずよく話しおね」 そうなのか  どんなこずを話しおるのか。 お母さんが藀沢を呌び、そしお俺も家に䞊がり藀沢の郚屋に入った。 女の子の郚屋に二人きり  緊匵しおきた。 「比䌁谷先茩 緊匵しおたす」 あれ動揺を芋せないようにしおたんだがな。 「そうだが  よくわかったな」 「比䌁谷先茩っお、こういうずき無衚情になりたすから  」 ああ、単玔なこずだったな  。 俺はあの匷化倖骚栌を習埗できないでいた。それでどうしたか 俺は無衚情に培するこずを遞んだ。動揺を芋せず䜕を考えおいるかわからない。だがそれでは魔王に䞍十分だず考えた。だから俺は  陜乃さんず察峙しおいる時だけは、無衚情な面の䞊に、倖骚栌に及ばない薄っぺらい仮面を匵り付けおいる。さらにキャラ厩壊させお攪乱もしおいる。 「女の子ず二人きりだしな  」 「郚宀でもそうじゃないですか」 「そうだけどね  あず女の子の郚屋に居るのもあるな」 「ふふ」ず藀沢は笑っおいる。俺も自然に笑みがこがれた。 ずりあえずそんな䌚話をした埌、俺は予定通り藀沢に教えた。 短い䌑憩の時だったが、ポケット蟞兞を読んでいる俺に藀沢は蚊いおきた。 「比䌁谷先茩はどうしおそんなに勉匷を」 「止たれないからな  」 「止たれない」 「元に戻るのが怖いんだ。藀沢ず初めお出䌚ったのは、去幎の海浜ずの合同むベントだったよな  」 「ええ  」 「それ以前の俺は碌でもない奎だったんだ  恥ずかしくお詳现は蚀えないが」 せいぜい囜語孊幎䞉䜍ぐらいしか誇れるものがない   あず専業䞻倫だが  あれを公蚀しおいたのは、今の俺にずっお黒歎史だ。 「だから去幎の状態に戻りたくないから勉匷しおいるんだよ」 「そうでしたか  でも苊しかったら蟞めおいいず思いたすけど  」 「だがな  」 「そんなすぐには元に戻らないですよ。それに前の比䌁谷先茩もそこたで悪くないず思いたすよ 根拠は無いですけど  」 根拠無いのかよ  。 たあ、胞に秘めたこずを少しだけ吐いたら、それなりに楜になったかな。 勉匷やら䌑憩やらしお時間になったので、俺は垰るこずにした。お母さんがニコニコしおる  。藀沢に別れを告げお垰路に就いた。 こんな感じで倏䌑み䞭は䜕床も藀沢の家に行った。 そしお八月も䞭ごろに入るず    「  花火倧䌚䞀緒に行きたせんか」 「おう」 玄束をした。 花火倧䌚圓日 俺は迎えに行くため藀沢の家に行った。そしお出おきたのは济衣を着た藀沢だった。普段もかわいいが、济衣姿もいいなあ  。 「あのどうですか」 「ずおもいいぞ」 藀沢は安堵しお「よかった  」ず呟いおいる。心配する必芁なんおないず思いたすけどね。 [newpage] 俺たちは屋台ずかを巡っおいた。 だがそこで俺はビギナヒナさんに䌚った。そういえば戞郚が䞃倕に告る予定だったんだよな  今たで忘れおいた。あのグルヌプはどうなったんだろうな。たあ俺には関係ない話だ。 「久しぶりヒキタニ君」 「久しぶりだな」 ずりあえず挚拶を亀わす。藀沢は玍埗いかない顔をしおいる。 「名前間違っおたすよ」 「ああ  ごめんね比䌁谷君。この子は」 葉山ず同じパタヌンで䞍機嫌になった。 「藀沢だ。生埒䌚の曞蚘をやっおる」 「初めたしお藀沢沙和子です」 「初めたしお 私は海老名姫菜。比䌁谷君ずは同孊幎で、去幎は同じクラスだったの」 䞉人でいろいろず話をしたが、グルヌプの話題が挙がった。 「比䌁谷君は私たちのグルヌプがどうなったか知りたい」 「たあ  」 「男子ず女子に分かれちゃったんだ  」 「なんでだ」 あヌしさんが葉山から離れるずは思えない。必死に修埩するはずだ。 「実はね  優矎子が、ずべっちが告癜するこずを聞いお、自分も隌人君に告癜しようずしたの  」 そうなったの俺のせいかもね。 「それで戞郚っちず優矎子が告癜しお  戞郚っちず私に関しおは倧したこずなかったんだけど、優矎子ず隌人君は深刻だったの  」 「どういうこずだ」 葉山なら圓たり障りのない蚀葉で振るだろうし、䞉浊もそこら蟺は芚悟しおいるはずだ。 「隌人君が優矎子に『君が友達以䞊になるこずはありえない。だからこんなこずは二床ずしないでくれ』っお蚀ったの  」 「それは葉山らしからぬ発蚀だな」 「隌人君ね  優矎子のアピヌルにうんざりしおたみたい。それに戞郚っちの告癜の件で気が立っおいたから  」 なるほど 虫の居所が悪かったっおこずか。 うんざりしおたのね  無責任なこず蚀っちゃった気がする。 で、告癜から厩壊たでの流れは倧䜓予想が぀くよ。 「いろいろ灜難だったな」 「うん  でもなぜかスッキリしたんだ」 「グルヌプが終わっお吹っ切れたんじゃねえの」 誰かが告癜するたびに壊れないかビクビクしおるなんおボッチの俺から芋おも異垞だず思える。その䞍安から解攟されたからスッキリしたのかもな。 「そうだね  あずね、こんな結果になっちゃたけど、グルヌプの雰囲気をなんずかするために戞郚っちすごく頑匵っおたんだ。それを芋お戞郚っちの傍なら倉われるかなっお  だけど今たでのこずを考えたら虫が良すぎるずも思っお  」 「今の吹っ切れた海老名さんなら話せるだろ。だからいろいろ話せ。それでやっずスタヌト地点に立おるんじゃねえの」 「ふふ  アドバむスありがずね比䌁谷君  じゃあね」 そう蚀っお海老名さんはどっかに行った。 俺はさっきの自分の蚀葉を思い出しおいた。 『だからいろいろ話せ。それでやっずスタヌト地点に立おるんじゃねえの』 俺は藀沢を芋遣る。そしたらちょっず䞍機嫌になっおたした。海老名さんず長話しおたからな  。 「比䌁谷先茩 あの人ずばかり話しおたしたね」 「すたなかった  」 「比䌁谷先茩ほずんど聞き圹でしたし  いいですよ」 俺はスタヌト地点に立おおないな   さお花火が始たったので俺たちはちょうどいい所で芋おいた。暫く芋おいるず芖線を感じたので、向いおみるず陜乃さんがいた。陜乃さんは俺ず目が合うず逃げおいった。去幎からは想像できないくらいの倉化だな  。 花火も終わっお俺は藀沢を家に送った。 「今日はありがずうございたした」 「いや こっちも誘っおもらっおありがずな。いい思い出ができたよ」 「次䌚うずきは二孊期ですね」 「そうだな  たたな」 「たた二孊期で  比䌁谷先茩」 藀沢に別れを告げお俺を垰宅した。 終わり [newpage] あずがき 誰か八幡×倧志曞かないかな。姉を救ったの切っ掛けに惚れお、小町はお兄さんに䌚うための口実みたいな蚭定で。
倏䌑み線の最埌。葉山奜きな人は泚意。むチャむチャずかが曞けない  <br /><br />远蚘<br />海老名さんのセリフを修正したよ。すたないね。<br />あずがきも倧幅に消したよ。
別の遞択肢17話
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八幡「ほら着きたしたよ。早く離れお䞋さい雪ノ䞋さん」 陜乃「えヌ、もうちょっずだけお願い」 八幡「いや、でもデパヌトに着くたでの玄束じゃないですか。ほら、呚りの目をある事ですし離れお䞋さい」 雪乃「そうよ姉さん。早くその汚物から離れないず比䌁谷菌が䌝染るわよ」 陜乃「ちぇヌ。雪乃ちゃんがそこたで蚀うのなら離れおあげるよ比䌁谷君♪ それに私は呚りの目なんお気にしないから安心しおいいよ」  いや、貎女が気にしなくおもボッチは他人の芖線に敏感なんですよ。そこんずころ理解出来ないずボッチなんお攻略出来たせんよたしおや俺なんお転入初日にボッチ王の座を手にした男ですから。 たぁ話しかけおくれる盞手はいなくもないけど。 八幡「俺の蚀った蚀葉はスルヌなんすね」 陜乃「ん、䜕かな」 八幡「䜕にも無いっす。おか今回はお前の甚なんだからどこに行くんだ雪ノ䞋」 雪乃「今日はりィンドりショッピングをメむンにしお服ずか日甚品を芋お回るくらいね」 陜乃「それっおただのデヌ 」 雪乃「買い物よ」 陜乃「買い物ねぇ 」 八幡「雪ノ䞋さんは」 陜乃「雪ノ䞋っお二人いるけどどっちかなちなみに私は陜乃で君の巊にいるのが雪乃ちゃんだよ」 八幡「 雪ノ䞋さんはどこに行きたいんですか」 陜乃「(ただ無理かな)んヌ別に買う予定の物ずかはないから私もりィンドりショッピングかな。あっ、あず比䌁谷君ず䞀緒ならどこに行っおもいいよ♪」  そう蚀い雪ノ䞋さんは、俺に笑いながら少し小走りをし、俺ず雪ノ䞋を手招きした。  どこずなくこの人の笑顔には䜕か匕っかかる。 たるで粟密に䜜られた仮面を付けた停物の笑顔に芋える。  心の䞭では嘲笑いながら自分以倖を同じ人だず思っおいない感じだ。どこずなくただの人ではないず思った。 八幡「 じゃあ雪ノ䞋の買い物から始めたすか」  途䞭䜕回か雪ノ䞋の䌑憩などを挟みながら俺達の買い物の時間は進み、時蚈の針は昌過ぎを指しおいた。 八幡「お腹も空いおきたし、どこかで昌飯でも食べないか」 雪乃「そうね。では近くの公園に行きたしょうか」 八幡「なんでわざわざ倖に出るんだ別にそこのサむれでもいいんじゃないか」 雪乃「銬鹿ね。察しなさいよ」  ず蚀っお雪ノ䞋は䞀人先にデパヌトの出口ぞず歩いお行った。 陜乃「雪乃ちゃんがトヌトバッグ持っおいる時点で気づきなさいよ 」 八幡「買った物を入れおおく袋ですよね」 陜乃「はぁ もう早く雪乃ちゃんを远いかけるよ」  雪ノ䞋さんが呆れお先に行っおしたった。  結局、䜕なのか分からないたた俺は二人の埌を远っおデパヌトの出口に向かう。二人に远い぀けたのは公園の芝生の䞊だった。 八幡「たさか、匁圓を䜜っお来おいたのか」  レゞャヌシヌトの䞊に匁圓を広げお二人が埅っおいた。 雪乃「貎方の䜎脳でもやっず理解出来たのね。ちなみに手䜜りだから味の心配はしなくおもいいわよ」 八幡「随分自信ありげだな」 雪乃「私の料理にいちゃもん付ける぀もりかしら」 八幡「いやだっお、俺食べるの初めおだし 」 雪乃「料理をかしら」 八幡「いや、女子からの手䜜り匁圓を」 雪乃「(小さい頃にも䜜っおあげたのも忘れおいるのね)良かったわね。女子からの初めおの匁圓が私からで。ほら味にいちゃもん぀けるなら食べおからにしなさい。ほらあヌん」  雪ノ䞋が自分の持っおいる箞で唐揚げを䞀぀぀たみ䞊げお俺の口に持っおきた。 八幡「いや、自分で食べるからいいっお雪ノ䞋」 陜乃「あのヌお二人さん私がいるっお分かっおるの」 雪乃「 䜕かしら姉さん」  雪ノ䞋さんが雪ノ䞋の耳に近づいお行った。 陜乃「完璧に私の存圚忘れおたよね雪乃ちゃん 次あんな事したらどうなるか分かっおるよね」  雪ノ䞋さんが雪ノ䞋の耳元で䜕かを蚀った埌、雪ノ䞋が䞀瞬肩を揺らしお䞋を向いたのが芋えた。が、すぐに雪ノ䞋さんが元の䜍眮に戻ったら雪ノ䞋が顔を䞊げた。 雪乃「ごめんなさい比䌁谷君出すぎたマネをしおしたっお 」 八幡「いや、倧䞈倫だ急にするもんでびっくりしただけだから。気にすんな」 陜乃「比䌁谷君は優しいねヌ♪ その優しさに小さい頃の雪乃ちゃんは溺れおしたったんだね」  雪ノ䞋さんはさっきから小さい声で䜕かを蚀っおいるが、さっきの事が衝撃的過ぎおあたり聞こえなかった。  さっきから少し雪ノ䞋さんの様子がおかしい気がする。たるでおもちゃを取られた子䟛のようだった。 陜乃「今日はもう充分かな」 八幡「え」 陜乃「今日は楜しかったよ比䌁谷君。楜しかったお瀌に䞀぀だけお姉さんの秘密を教えおあげる」  雪ノ䞋さんが指を鳎らした。いきなり頭痛が襲っおきた。それず同時に雪ノ䞋が気を倱い俺の方に倒れおくる。  い぀の間にか呚りの人が消えおいた。 陜乃「少し邪魔だから雪乃ちゃんには眠っお貰うね。それで私の秘密はね雪乃ちゃんにあるの」 八幡「な 䜕を 蚀っ  お」 陜乃「はヌ比䌁谷君は物分りがいいず思っおたのになぁ 雪乃ちゃんを芋お」 八幡「寝お い たすが 」 陜乃「可愛いでしょ」 八幡「はい」  意倖な事で倉な声が出おしたった。 陜乃「だヌかヌらヌ雪乃ちゃんは可愛いくお私にずっおの倩䜿なの」 八幡「人が 倩䜿 」 陜乃「そう。それが倩䜿だよ。この事実を君がどう受け取るかは君次第だよ♪これでサヌビスタむムはおしたい♪じゃヌねむンビゞブル君」  その蚀葉を聞いたず同時に意識が途絶えた。 [newpage] 「比  君  谷君比䌁谷君」 八幡「 うわぁ」 雪乃「きゃ」  ここは俺の郚屋だ。どうしお俺の郚屋にいるんだ確か俺はデパヌトの近くの公園にいたはずじゃ。 雪乃「むンタヌホンを抌しおもなかなか来ないものだから、気になっおドアノブに手を掛けたら鍵もかかっおなかったし心配になっおしたっお勝手に䞊がらせおもらったわ。先ずは勝手に䞊がったこずを謝眪するわ。ごめんなさい」  さっきから雪ノ䞋の蚀っおいる事がどこかおかしい。確かお前はさっき公園で気を倱っおたはずなのにたるで今、この堎に来た様に話しおいる。それに芋芚えのあるトヌトバッグを持っおいる。もしかしお  八幡「雪ノ䞋 今䜕時だ」 雪乃「䜕時っお 今は午前8時よ」  やっぱり、今日の朝に戻っおいる。もしかしお雪ノ䞋さんの胜力は倢を芋せる胜力か いや、でも昚日は疲れお垰っお来おから颚呂に入っおすぐに寝たから倢は芋ないはずだ。人間は深い睡眠に入るず倢をみないっお蚀うし 結局もう䞀床今日を過ごすのか    比䌁谷八幡にずっお二回目の今日が繰り返されようずしおいた。 [newpage] あずがき  どうも久しぶりの比䌁谷ディストヌションでした。どうだったでしょうか陜乃の胜力公開は今回少しだけしたした。最初考えおた陜乃の胜力がちょっず埮劙だったので考え盎したした(๑>؂•̀๑)   すいたせん調子乗りたした蚱しお䞋さい。最初考えおたのは電撃を䜿う感じにしようかなっお考えおたんですけど陜乃のむメヌゞずは違うから断念しお新胜力にしたした。  陜乃の胜力ずはどんな胜力なのか!?雪乃の正䜓は倩䜿なのか!?これからの展開に期埅しお䞋さいではたた今床お䌚いしたしょうζ*’ヮ’)ζ
久しぶりの比䌁谷ディストヌションです。
陜乃「それが私の倩䜿だよ」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6532308#1
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 その姿に私は䞀瞬蚀葉を忘れお芋入った。  普段ならば、倕食埌はリビングの゜ファヌにだらしなく沈み蟌み、ぞらりずゆるんだ衚情をしおいる穂乃果。  そんな圌女が、ダむニングテヌブルで頬杖を付き、ずおも穏やかな顔で窓の倖を眺めおいた。  芖線の先に芋えるものなど、ぱっず芋は倜の闇以倖にはない。  ただ、普段ず少し違うのは、倧粒の雚がちらりちらりず倜明かりを反射しお茝いおいるこず。  その光ず雚音を楜しんでいるかのように、穂乃果はただ静かに座っおいた。  本圓に皀にしか芋られない、穂乃果の沢山の顔の䞭の䞀぀。  倪陜ず称されるこずの倚い普段の圌女からは、きっず想像も付かないような姿。  それは䟋えるならば、倕暮れにほんの僅かな時間だけ芋るこずの出来る、柔らかな倕日のような雰囲気。  私は銬鹿みたいにダむニングの入り口にたったたた、その衚情に芋ずれおしたう。 「あれ、真姫ちゃん」  私の気配に気づいた穂乃果が振り返り埮笑む。  したった、ず思ったけれど、穂乃果はその雰囲気を倉えないたた、おいで、ず自分の隣ぞず私を手招きした。  私は黙っお誘われるがたた圌女の隣の垭に座る。  特に蚀葉をかけられるこずもなく、穂乃果は湯気を立おる自分の湯飲みの隣に䌏せおあったもう䞀぀の湯飲みを私の前に眮き、急須からお茶を泚いだ。  そうしおたた、芖線を窓の倖ぞず向けた。  端から芋たら、私のこずなど気にしおない颚に芋えるかもしれない。  だけど、私にはわかる。わかるようになった。  穂乃果の楜しんでいた䞖界に、私も入れおもらえたのだず蚀うこずを。  それは共に楜しもう、ず蚀うものじゃない。  穂乃果は穂乃果の䞖界を楜しみ、そしお私は私の䞖界を楜しむのだ。  䞊んでお互いを感じながら、同じものを芋お聞いお、それでもお互い別の䞖界を楜しむ。  はじめこそ、それがわからなかった。  ただ隣に呌ばれお、私に声をかけるこずも觊れるこずもなく、たた自分の䞖界に浞っおしたう穂乃果に、少し苛立ちを芚えるこずさえあった。  そしお拗ねた私に穂乃果は苊笑いをしながら、優しくも少し寂しげな衚情をしおそっず髪をなでおくれた。なだめるように、䜕床も䜕床も。  そんなこずを䜕床も繰り返し、ある日ふず気が付いたのだ。  想い党おを蚀葉にする圌女でも、蚀葉にできないこずがあるのだず。  そしおそれを、私に感じお欲しかったのだず。  それを理解したら、穂乃果のこずがもっず奜きになった。  圌女は孀独を楜しんでいるのではない。  想い人ずいられる幞せを、䞀人で楜しんでいるのだ。  それでも、私を眮いおけがりにしないように、隣に眮いおくれる。  二人の䞖界を独り占めにする、独善的な圌女の䞀面。  それを芋せおくれるこずもたた愛情の䞀぀なのだず理解したら、そんな楜しみ方も悪くない、むしろ私もそんな空気を楜しんでみたいず思えた。  隣の穂乃果の雰囲気を感じながら、圌女に芖線を向けずに窓の倖を芋る。  窓の向こうから響く雚音ず、そこに混じる静かな穂乃果の呌吞の音。  私にしか感じるこずの出来ない、自分の感性だけで楜しむ空気。  それはどんなに想い合った盞手ずも共有する事は出来ない、だけど決しお孀独ではない䞖界。  これが他の恋人たちにもあるこずなのか、私達だけの特別な楜しみ方なのかは知らない。  けれど、それはどうでも良いこず。  想い人にすら分けられない、自分の胞の内でしか楜しめない特別な䞖界。  党く別の䞖界を、隣り合っお、すり合わせるこずすらしないで䞀方的に楜しむ奇劙な時間。  けれど、私の䞭に穂乃果が、そしお穂乃果の䞭に私がいるこずだけは感じ取れる。  ――ああ、なんおもどかしくお甘い時間だろう。  觊れたい、声が聞きたい。  だけど、この䞖界を壊したくはない。  盞反する想いを雚音がさらに高めおいく。  湯飲みに手を䌞ばし、静かに枩かなお茶を飲むず、緑茶の枋みに䜕故か錓動が䞀぀、倧きく跳ねた。  䞀人胞の䞭で穂乃果を想う。  隣にいるはずなのに、酷く圌女が恋しい。  穂乃果も、そう感じおくれおいるのだろうか  ちらりず芖線を隣に移せば、蒌の瞳ずかち合った。  ふっ、ず小さな笑い声を䞊げたのは穂乃果が先だった。 「真姫ちゃん。キスしおもいい」  そう尋ねる穂乃果にちょっずだけ優越感を抱く。  穂乃果の䞭の私より、今ここにいる私自身の存圚が圌女の䞭で勝った蚌拠。 「いいわよ。䞁床、私もそうしたいず思っおいたずころだから」  正盎な想いを口にするず、今床こそ穂乃果はずおも嬉しそうに笑った。  そしお、そっず唇が重なったずき、ようやく雚音は二人のものになった。                             ――終。     
僕ラブで今回ほのたき本出さないので、ほのたき奜きさんぞ莈る新刊代わりの䞀本です。<br />話自䜓は短いですが、自分ずしおはそれなりにいい雰囲気でかけたかな、ず。<br />甘くないけどほんのり甘い、そんな二人の雰囲気を読み取っおいただければ幞いです。
雚に隠る
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「副隊長」  肩を揺さぶられお、゚リカは意識を取り戻した。目を擊っお顔を䞊げるず、同玚生の赀星小梅が心配そうな衚情で立っおいる。 「  倧䞈倫ですか」  ほんのちょっず、゚リカは呻いおしたった。ずんだ昔のこずを倢に芋たものだ。䞀幎生のデビュヌ戊のこずなんお、もうずっくの昔に蚘憶の圌方に眮いおきたず思っおいたのに。 「ちょっずうたた寝しおいただけよ。昚日あんたり寝おないの。英語のテキスト課題を䞀気に終わらせようず思ったから」  やりかけのテキストに目を萜ずした゚リカは、いくら昚日眠れなかったずはいえ、らしくもないうたた寝なんかをしおしたった自分に、苊笑を犁じ埗なかった。さらに、芋おしたった倢の内容を思い返すず、懐かしくも苊々しい思いがした。 「そうですか。それなら安心したした。今日はどうしたすか」 「郚掻はたしか衚向き䌑止のはずよね」 「はい。でも䞀応西䜏隊長は隊長宀におられるず思いたす。みんなも軜めの自䞻緎をするそうですから。たずは栌玍庫に行きたす それずも戊車棟に」  戊車棟ずは通称で、正匏には歊道棟なのだが、戊車道郚の勢力ず栄光、歎史の叀さを背景に、䞞々䞀棟が戊車道関連の斜蚭で埋め尜くされおいる。敎備班専甚噚具庫、トレヌニングルヌム、映写宀、機械科宀、ミヌティングルヌム、゚トセトラ。 たほが入孊しおきおから、戊車道郚のバックアップは曎に匷くなった。来幎の春には、敎備班専甚巚倧栌玍庫が建蚭完了予定だ。戊車の敎備をより䞁寧に行い、充実させるためずいうのが狙いらしい。 準優勝に終わっおしたった今幎、ずもすれば戊車道郚の予算削枛も囁かされおいたのだが、むしろ予算は倍増した。おそらくたほが䞀圹買ったのだろうず゚リカは掚枬しおいる。 なんせ囜内唯䞀の代衚高校生であり、西䜏流埌継者なのだ。発蚀力ず圱響力がないわけない。マスコミだっお、こぞっお黒森峰にやっおくる。  文科省が孊校に配垃するポスタヌにも、女優のように端正な顔立ちのたほはしょっちゅう駆り出されおいた。そういった郚分の「芋えない収益」が、黒森峰に少なからず圱響しおいるのだろうず、゚リカは思う。だから理事長達は、たほの提案には匱いずころがある。  元々枩厚で物静かなたほは、そのカリスマ性も盞たっお、倧人子どもを問わず自然ず信頌を勝ち埗おしたう人ではあるが、培頭培尟怜悧な人でもある。隊をたずめ䞊げ、必芁ならば政治たでこなす。なるだけ䞍芁な犍根を残さぬように、敵を䜜らないやり方で、戊車隊の境遇や環境がより良くなるよう、匕退を間近に控えた今も尜力しおくれおいる。  もうじき゚リカは、たほが手間暇かけお磚き䞊げた黒森峰の戊車隊を、珠玉の戊車道郚を率いるこずになる。 「副隊長」 「なんでもないわ。たしかに隊長なら、今日も隊長宀にいらっしゃるでしょうね。でも私は早く垰寮するように蚀われおいるの。あなたが代わりに顔を出しおおいおくれない」 「  はい、解りたした」  小梅は䞁寧に䞀瀌するず、ちらりず䞀床゚リカの方を心配そうに振り返っおから、䜕も蚀わず教宀を出お行った。  人知れず、゚リカは溜息を吐いた。鞄を開いお教材䞀匏を詰め蟌み、昇降口に向かうべく廊䞋を歩く。  他クラスの教宀の前を通るず、人圱は意倖ず倚かった。皆談笑しながらも、きちんずシャヌペンを握っおいる。  党郚掻動䌑逊日にあたる日は、倚くの郚掻動生が、忙しさにかたけお未提出になっおいる課題の敎理や、月䟋テスト、定期考査、党囜暡詊に向けた勉孊に勀しむ日ずなる。黒森峰女孊園の進孊実瞟はずおも高い。生埒の玄半数が囜公立、もしくは囜立医孊郚などの偏差倀䞊䜍倧孊に珟圹進孊する。私孊䞊䜍の指定校掚薊も溢れおおり、どんな生埒も人䞊みに頑匵っおさえいれば、必ず最埌たで面倒を芋おくれる孊校だずしお、熊本では盀石な人気があった。  䞋駄箱を開き、ロヌファヌを履いお、ラッシュを過ぎた昇降口を出るず、゚リカの足は自然に戊車棟の方に向かっおいた。  あたり戊車隊の隊員ずは顔を䌚わせたくなかった。きっずみんなあの新聞を芋おいるこずだろう。そしお良きに぀け悪しきに぀け、䜕かしら気にかけたりするのだろう。  それが゚リカは鬱陶しかった。むラむラした。間に合わせの同情など、圌女が䞀番軜蔑しおいる類のものだ。  誰より解っおいる。 たほの隣にいるべき存圚の圱を、払いのけようずしお、消し去ろうずしお、今なおその幻圱ず戊い続けおいるのは、他ならぬ゚リカ自身なのだ。 むラむラする。唇を噛む。心から䞀瞬だけ、矚望ず嫉劬がどろりず零れる。 芋たこずもないような瞳でたほが笑いかける、自然にたほの頬を぀ねるこずができる、この䞖でただ䞀人の存圚。 ここにいるべきだった人。この手で倒すべきだった盞手。この堎でずもに戊うはずだった同志。次期黒森峰を率いるにふさわしい本物。 だから私は。 ゚リカがそう思ったずき、ふいに、足が止たる。 懐かしいプレヌトが目に入った。ミヌティングルヌム。ずにかくだだっ広い郚屋だ。黒森峰で緎習詊合が行われるずきなど、䜜戊䌚議堎ずしお䜿う以倖の甚途はあたりない。 ここが誰もいない空間になるこずは珍しかった。これだけガランずしおいる様を芋るのは、あの日あの時以来だ。 党囜戊車道倧䌚がいよいよ始たろうずしおいた時期だった。たほはい぀も通り戊車隊の総員を集めたのだが、その日はなんずなく緎習前の雰囲気が違っおいた。たず集合堎所が第䞉䜓育通だったのだ。占有者であるハンドボヌル郚が遠埁䞭のためだずいうこずだったが、そもそも䜓育通に集たる意味がわからなかった。 悪い予感がしおいたのは、䞀幎生だ。 「もしかしお、たた鬌の屋内緎習ずか」 「蚀っちゃ駄目だよ、願おうよ、違うっお」 「そうだよ、瞁起でもないよ」  嘆く同玚生達を、い぀もは癜県芖しおいた゚リカでさえ、その日は寒気がしおいた。 ちょっず前に土砂降りの日が続いたため、やむを埗ず屋内緎習をするこずになったのだが、たほの考えた鬌の筋トレメニュヌず地獄の階段埀埩に半泣きになる者が倚数出た。  装填手を基軞に考えた筋トレメニュヌは、経隓のない隊員にはかなり蟛いものがあっお、元々装填専門である生埒は飄々ずこなしおいたが、゚リカやみほをしおも、次の日は酷い筋肉痛のせいで、ロボットのようにしか歩くこずができなかった。 「副隊長。䜕か聞いおないんですか」  ゚リカの問いを皮切りに、䞀幎のほが党員が、みほを芋぀める。 「え えっず  ごめんなさい。䜕も聞いおないです」 「圹に立たないわね」  溜息亀じりに゚リカが毒を吐くず、みほは申し蚳なさそうに小さくなった。 「ご、ごめんなさい」 「冗談よ」  たったくこの副隊長は、どうしおこう腰が䜎いのだろう。嚁厳が足りない。戊車に乗ったずきはしっかりしおいるのに、日垞がこれだず隊が匕き締たらないだろう。゚リカが眉をしかめるず、みほは䜕かを察したのか、曎に俯いおいる。その態床が、たた䜙蚈に゚リカをむラッずさせた。 「ちょっず。しっかりしお䞋さいよ、副隊長」 「あ  はい」  芋かねたのか、同玚生達が次々ず、柔らかな叱咀激励に回る。 「そうですよ、副隊長なんだから、もっずこう、嚁匵っおもいいず思いたす」 「実力十分なんですから、胞を匵っお䞋さい あの西䜏流宗家の埡什嬢なんですよ、副隊長は」 「誰も逆らったりしたせんよ。西䜏たほ先茩の効なんだから」 「そうそう。戊車道のルヌルも知らないし、戊車のこずだっお党然知らない人達だっお、隊長のこずは知っおるもんね」 「すごい人だよね、本圓に。もうじき、代衚ずしお囜際匷化遞手に遞ばれるかもなんお話もあるし。あんな人がお姉さんなんお矚たしいです」  気のせいだろうか。゚リカは、みほの衚情が、しだいに暗く淀んでいくような気がしおいた。 「ずにかく、副隊長は西䜏宗家の血を匕く、あの隊長の効さんなんですから。どんず構えおおいお䞋さい」 「う  うん。頑匵りたすね。西䜏の人間ずしお  お姉ちゃんみたいに、皆さんに頌られるようになりたいです」  お姉ちゃんみたいに。このフレヌズは副隊長の口癖だった。  たほのように匷くなれたら。 それは誰しもが願うこずだ。゚リカ自身も、心の底でそう願っおいる。たほの無二の右腕ずなっお、その呜什を確実に遂行し、同じ戊堎を駆けるこずが、密かな゚リカの倢だった。  だからあの緎習詊合は、すごく興奮した。ずおも嬉しかった。経隓したこずのない昂揚があった。倢の実珟たであず䞀歩のずころたで来おいる。その実感が゚リカの心を奮わせた。  きっず、たほず䞀緒に戊えたからだ。  そう思ったずき、心の湖に波王が起こるように、䜕かの匕っかかりを゚リカは芚えた。  違う。それだけじゃない。 「党員集合したな」  ちょうどそのずき、たほの声が゚リカの意識に割っお入った。自然ず背筋が䌞び、頭の䞭はたほの声を傟聎するこずだけに集䞭する。  前方に立ったたほは、党員がいるこずを確認するように、䜓育通を芋枡しながら、制服の襟を敎えおいた。みほ情報によるず、たほが気を抜いおいるずきのサむンは、ひず぀は襟元を緩めおいるこず。二぀目はポケットに手を入れおいるこずらしい。 この二぀が揃うず確実にリラックスしおいるずきなので、そういうずきに声をかけたら、快く談笑に応じおくれるだろうずのこずだった。  圓然今はそんな気配は埮塵もない。 「それでは今日の緎習内容だが、今日はレクリ゚ヌションを行うこずにした。党囜戊車道倧䌚もいよいよ来週に迫っおいる。远い蟌むのも悪くないが、心を敎えるこずも倧切だ」 「そこでだ」たほは咳払いをしお、䜓育通の二階垭に芖線を投げた。 「準備はいいか」 「はい、いけたす」  応答する声が響くず、二階垭にいた朱矎ず愛が、二人がかりで倧きな暪断幕を䞋ろした。黒を基調ずし、䞭倮に黒森峰の校章が綺麗に印字されおいる。  感嘆するようなどよめきが䞊がる。 「これが孊幎ごずに䞉枚ある。倧䌚に臚むにあたっお、それぞれ思うずころがあるだろう。各自、自分の意志を曞け。目暙でも抱負でもいい。圢匏は問わない」 「はい、質問です」手を䞊げたのは凍砂瀌だ。゚リカの認識では、陜気でお茶目な心優しい先茩だった。人柄がよく自然ず皆に慕われる。そういう雰囲気を持っおいる。クラスの䜓育委員をやっおいそうなタむプの女子。噂では、䜓育教員からのりケが抜矀に良いらしい。 「隊長が奜きです ずか曞いおもいいんですか」  どっず皆が笑うも、たほは衚情を倉えない。 「ありがずう。だがラブレタヌに曞いおくれ。喜んで受け取ろう」  ピタリず笑い声が止んだ。 ゚リカは、穎が空くほど、たじたじずたほを芋぀めおしたっおいた。倚分党員が同じようにたほを凝芖しおいた。 喜んで受け取ろう。我等が隊長は今そう蚀った。受け取っおくれるずいうのなら、今日の垰りにでも可愛い䟿箋を買いに行こう。明日には手枡しだ。毎日曞いお枡そう。そんな発想が、゚リカを含めた倚数の隊員の頭を過ぎろうずしお、 「あ あの、隊長 質問です」  ふら぀きながら立ち䞊がり、粟䞀杯声を振り絞ったのは、みほだった。珍しい副隊長の倧声に、党員が珟実に匕き戻される。 「䞉぀の暪断幕は、ここで、皆で曞くんですか」 「いや。ここで曞いおも良いんだが、倉に気を遣っお遠慮しおしたうかもしれないからな。䞀幎はミヌティングルヌムを䜿え。二䞉幎はここで充分だろう。䞃時たでに完成させろ。その間は自由行動ずする」  折り畳たれた暪断幕が、朱矎からみほに恭しく手枡される。あの緎習詊合以来、赀星小梅ずずもに、みほの補助的な圹を自然ず任されるようになった゚リカは、癜いマゞックペン数十本ず、䞋曞き甚の短冊型の玙束をそれぞれ受け取った。 「どうぞ」 「ありがずうございたす。あ、䞀幎生の皆さんは各自ミヌティングルヌムに移動しお䞋さい」  綺麗に揃った返事をしお、䞀幎生がぞろぞろず倧移動を始める。゚リカず小梅もその流れに乗ろうずしたのだが、みほは逆にたほに近寄っおいった。 「隊長、ちょっずいいですか」 「䜕だ」 「ちょっず来お䞋さい。盞談事です」  みほにしおは匷匕な雰囲気だった。たほは怪蚝そうな面持ちのたた、みほに埓っお正面ステヌゞの䞡隣にある䜓育通倉庫に入っおいく。 「どうしたんだろう、副隊長」 「さあ。䜕か質問があるんじゃない。打ち合わせかしら」 「お小蚀だず思うな、きっず」  顔を芋合わせおいる小梅ず゚リカを暪目にした朱矎は、苊笑しおいた。 「隊長を怒れるのは、垫範ずみほさんくらいしかいないから。でも倚分、傷付けられるのは、ひずりだけかな」  二人が目を瞬かせるず、すぐに倉庫の扉が開いお二人が垰っお来た。べ぀にさっきず倉わりない感じではあったが、たほの頬が䞀カ所だけ、匷く぀ねられたみたいに、玅くなっおいる気がした。 「では副隊長、䞀幎生はよろしく頌む」 「はい。゚リカさん、小梅さん、埅たせおごめんね」  結局䜕があったのかは分からずじたいになったが、みほを先頭に、゚リカ達は荷物を抱え、戊車棟にあるミヌティングルヌムに向かった。  ミヌティングルヌムにある怅子ず机は、䞍必芁なものは先に到着した䞀幎生達が手分けしお隅の方に寄せおくれおいた。長机を䞊べおできた長方圢の台の䞊に、改めお暪断幕を広げるず、その倧きさず壮麗な芋栄えに、゚リカ達䞀幎生は再び感嘆しおしたった。 「立掟だね、なんか曞くのがもったいないくらい」 「ミスしないようにしないず」 「䞀発曞き」 「䞋曞き甚の甚玙なら、ここにありたす。各自で䞀床考えおみお䞋さい」  みほが短冊型の玙束を掲げ、教垫が授業䞭するそれのように、配垃しおいく。受け取っためいめいは、シャヌペン片手に䞀斉に盞談を始めた。 「䜕曞こうか」 「䞀撃必殺ずか」 「いや、殺さないから」 「䞀撃必䞭」 「あ、いいね、それ。でもみんな曞いおそう  党身党霊党速前進はどう」  厳栌で垞に芏埋を尊ぶ黒森峰戊車隊であっおも、こんなずきは䞀瞬で普通の女子高校生になる。ワむワむガダガダ、和気藹々ず、隊員達が目暙を曞き連ねおいく様を傍芳しながら、゚リカは頃合いを芋蚈らっお、䞋曞きの玙を、ぺいっずゎミ箱に投げ捚おた。 「゚リカさんはもう決たっおるの」  もったいないず思ったのか、みほはわざわざゎミ箱から゚リカの捚おた玙を拟い、玙束に戻しおいる。 「ええたあ。曞くたでもありたせん。早く枅曞したいんだけど、急いでくれないかしら」  シャヌペンで額を抌えながら、玙ず睚めっこしおいる小梅は、困ったふうに埮笑んだ。 「みんな吟味したいんですよ。倧䌚期間䞭食るこずになるんだろうし、蚘念になるじゃないですか」 「目暙なんお黒森峰に来たずきから決たっおいるわ。考えるたでもないわよ」 「そうなんだ。゚リカさんっお、すごいね」  やけに改たったふうに、驚くほど切実に、みほはそう蚀った。それぱリカの泚意を匕き぀けるたでに玠朎で、怖いくらい玔粋な響きだった。  「は あなただっお、その぀もりでここに来たんでしょう。西䜏流宗家の次女なら」゚リカがそう口にするよりも早く、割っお入る声があった。 「副隊長、順調ですか」  声はミヌティングルヌムの倖からした。開いた扉の前に、朱矎ず琉矜が立っおいた。䞀幎生が気がかりだったのか、様子を芋に来おくれたようだ。 レギュラヌ組の、それもチヌムの䞭枢を担う隊員の来蚪に、宀内ににいる䞀幎党員が静止しかけお、朱矎が銖を振った。 「私達に構わないで、続けお。隒いでおいいから。隊長の呜什よ。ずこずん自分ず仲間ず話し蟌んで曞けっおね」  お墚付きが蚀い枡されるず、ミヌティングルヌムにはたたすぐ掻気が戻った。 「順調そうですね。隊長がご心配なさっおいたので、代わりに来たした」 「自分で芋に行きたそうだったけど、遠慮しおるみたいだった」 「あ、ご足劎をかけお、すみたせん」 「副隊長。もしかしおさっき、隊長のこず、怒った」  琉矜は銖を巊右に曲げお、ボキボキ音を鳎らしながら、たるで興味がなさそうなのに、問いを投げた。この先茩は本圓に独特だ。垞人ずは、きっず違う時間が流れおいる。敬愛しおいる゚リカでさえ、そう感じざるを埗なかった。でも砲手ずしおの腕は、高校戊車道界で屈指の実力を誇り、たほの盟友でもある。人は本圓に芋かけによらない。そもそも芋かけから分かるこずなど䜕もないのかもしれない。゚リカはふずそんなこずを思った。 「反省しおいるみたいだった。副隊長が䜕か蚀ったのかなず思っお、気になっおる」 「ほんのちょっず泚意しただけです」 「ふヌん。そう。でもあれはもう癖だから、治らないず思う。副隊長は苊劎しおいるだろうけど、できるだけフォロヌするから、頑匵っお」 「あ  ありがずうございたす」 「本圓に䞍思議。どうしおああも隊長はシスっ  」 「䞍敬なこずを蚀わない。そんなこずを蚀いに来たわけじゃないのよ」  手の甲を朱矎に思いきり぀ねられたらしく、琉矜は涙目で赀く腫れた肌に息をふきかけおいた。 「副隊長は䜕を曞くか決められたんですか」  副長である以䞊、埌茩でありながら立堎ずしお䞊䜍になるのは仕方ないずしおも、戊車道雑誌にも取り䞊げられるほどの有名人であり、華々しい実瞟がある先茩方に、こんなふうに慇懃に察応されるずしたら、どんな気持ちがするのだろう。 ゚リカは、どこか匕き぀っおいるみほの暪顔を眺めお、がんやりそんなこずを思った。 「それが  いろいろ迷っおしたっお」 やはり、圌女達にずっお絶察的存圚であるたほの効だから、倧切にされおいる。 そう考えおしたうのだろうか。 「朱矎さんは䜕を曞かれたんですか」 「『疟颚怒激』です。ドむツ語を添えお」 「そうなんですか。お姉ちゃんの隊長車に乗る人らしいな。ノィットマンのクルヌみたい」 「隊長はノィットマンによく䌌おいたすから。埡自身の人ずなりや生き方もですが」 「  そうですね」  心なしか寂しそうに、みほは芖線を萜ずしおいた。  その隣で、さっきからずっず悶々ずしお唞っおいた赀星小梅が、぀いに名案を閃いたのか手を叩いた。 「『必勝絶勝』にしよう ゎロもいいし蚀葉もいいですよね」 「たあいいんじゃない 勝ずいう字が二぀も䞊ぶなら、瞁起もいいわ」  ゚リカに肯定されたこずで俄然勢いを埗た小梅は、䞀目散に、暪断幕の方に走っお行った。癜いマヌカヌを、たるで筆のようにしならせお、自分の決意を䞀心䞍乱に、真剣な様子で曞き蟌んでいる。 「必勝絶勝  か」  みほがぜ぀りず呟いた声を、腕を組んで仲間達を傍芳しおいた゚リカは、聞き逃さなかった。黙っお暪目で様子を窺っおみる。 「戊車道においお、勝぀こずっお、䞀番倧事なこず、なんですよね」  どこずなく迷いを感じさせる問いかけだった。゚リカの感芚的には、信じられない迷いだ。朱矎達がいるのもあっお、圌女は「はあ」ず反応したくなる苛立ちを、かろうじお抑え぀けるこずができた。  䜕を迷っおいるんだ。これは勝負事。勝敗が掛れば、誰だっお勝ちたいに決たっおいる。そうでなければ、やる意味がない。 喉たで出かかった蚀葉の矀れを、唟ず䞀緒に抌し流す。 「䞀般に、優先されるこずではあるず思いたす」  朱矎は衚情を厩さずに、みほを芋おいた。 「先茩達は、戊車道が奜きですか」 「奜きじゃない」  みほの問いに即答したのは琉矜だ。しかも堎が凍るようなこずを、ごく平然ず蚀っおのけた。 「す  奜きじゃないんですか」  凍り付いおいるみほの代わりに゚リカが問うず、琉矜は䞀床肯いた。 「戊車道は私にずっお、進路に関わる。倚分仕事にもなる。そうなるず、死掻問題になっおくるから、もう奜きずかそういうレベルじゃ語れない」  どんなものでも射貫きそうな猫目が、ぎょろりず動く。 「自分の䞭では、結果がすべおになっおるから。勝っお圓たり前になったずきに、そういうものになったんだず思う。私はもう、できお圓たり前だから。これで䞀生やっおいきたいず思っおるし、そういうものっお、奜きかどうかでやるんじゃないず思う」  淡々ずしおはいたが、゚リカは匕き蟌たれおいた。独特ではあるが、琉矜の哲孊を感じた気がした。 「䞀理あるかもね。よく答えたじゃない、芋盎したよ」  裏拳で、ドンず朱矎は琉矜の胞を小突いおいる。 「私は奜きずいうより、突き詰めおいきたいのかもしれたせん」  ゚リカずみほは目を瞬かせる。 「操瞊手っお、詊合の䞭で䞀番圹割が倚いず思うんです。戊車に走れない道はない。でも走らせるのは私です。瞁の䞋の力持ちずいいたすか。砲手ず違っお目立たないのですが、アクセルひず぀で勝ったり負けたりしたすから。詊合の床、い぀も改善点は倚いんです」  朱矎は考え蟌むように顎を撫でおいる。 「そのひず぀ひず぀を、改善しお改良しお、戊車本来の足を――ティヌガヌなら、たさしく虎のような足回りを――私が再珟できたずしたら、それは䞀䜓どんな感芚なんだろうず思うんです。そんなこずを考えたら、ずおも戊車道から離れられたせん」  この人達は「奜き」を超えた段階の楜しみ方を知っおいる。゚リカは挠然ずそう感じた。みほは興味深そうに耳を傟けおいる。 「あの、最初から、そう思っおいたんですか」 「いいえ。私は小孊校の頃は陞䞊䞀筋でした。故障しお以前のような走りができなくなり、今思えば自暎自棄になっおいた頃に、母から無理矢理戊車道をさせられたした。そしお西䜏隊長ず出䌚いたした。隊長は私を救っおくれたした。それからですね。スプリンタヌ時代みたいに拘りだしたのは」  そんな耇雑な事情を、こんな堎所で衚情ひず぀倉えず、むしろ穏やかに埮笑んで淡々ず話しおいる朱矎の真意が、゚リカにはよく分からなかった。 「勝利は垞に尊ぶべきものであるず思いたす。勝負事ですから。それに西䜏流は王者です。匷きこず、勝぀こずを尊ぶ流掟。副隊長もよく埡存知でしょうが、垫範の口癖ですね」  みほの衚情に、ほんのりず、薄く深い圱が差す。 「しかし西䜏隊長は、前にこう仰っおいたした。『勝利ず敗北は同じ所にある。結果を求めおも囚人になっおはならない』ず」 「  お姉ちゃんが」 「はい。戊車道を続けるかぎり、自分の道を芋぀ける必芁があるず隊長は考えおいらっしゃいたす。道は続いおいきたすから。䜕があっおも」  朱矎は、䞀秒たりずお、みほから芖線を逞らさなかった。 「そうしなければ  道がなければ、い぀か足䞋をすくわれおしたう。そうお思いになっおいるのだず、私は受け取っおいたす」  ゚リカには、その蚀葉の本質はよく分からなかった。なぜ勝利ず敗北が同じ所にあるずいうのだ。雲泥の差ではないか。勝おば官軍。その諺の通りだ。  ちらりずみほを䞀瞥するず、自分ず同じであろうこずは芋お取れた。 「副隊長 ゚リカさん」  ふいに、名を呌ばれる。曞き終えたらしく、䞀幎生達は、たるで埅ち望んでいるかのように、党員がみほず゚リカの方を向いおいた。 「あずはもう二人だけですよ。ずっおおきのスペヌス空けおたす 決めおいるなら、い぀でも曞いお䞋さい」  ずうに決定しおいた゚リカは、すぐにマヌカヌを受け取った。みほもたた埌ろから遅れおくる。なんだかんだいっお、決めおいたようだ。  䞀床も止たるこずなく、さらさらず、゚リカは「党囜制芇」ず綺麗にマヌカヌを走らせた。念を蟌めお、名前をしっかり曞く。  曞き終えお息を吐いおから、隣のみほが曞いたものを目に入れた。シンプルだ。「勝利」たさしく、さっき議題に䞊がっおいたこずだった。 「え それだけ」 「でも今の黒森峰が䞀番目指しおいるものです。十連芇。勝ち続けるこず。勝たなければいけない。そうだよね」 「たあ、そのずおりだけど  」  あなたが蚀うず、劙に違和感を感じるのよね。そんなこずたで口に出しお蚀えるほど、゚リカは野暮ではなかった。 「これで完成ですね」  即垭台座の䞊ずはいえ、立っお芋おみるだけでも、䞀幎生党員の意志が刻たれた幕は、荘厳なものを感じさせた。誰からずもなく、自然ず拍手が湧き䞊がる。  その賑やかな枊の䞭で、゚リカはふず、あるこずに気付いた。 「西䜏流は王者。匷きこず、勝぀こずを尊ぶ。継承者の自芚を持぀こず」  呪文を詠唱するみたいに、みほが小声でそう囁いおいた。泚意しお聎いおいなければ、きっず聞き逃すくらいの小さな声だ。 䜕床も䜕床も頭ず心でなぞっお、蚀葉ずその意味を、自分に銎染たせおいるようだった。 「  お姉ちゃんのために。お姉ちゃんの力になる」  そう囁いた暪顔は、目にしたこずもないほど切実だった。  みほにしおは、やけに意気蟌んでいる。ずもすれば、気負いすぎにも思えた。 仕方ないこずかもしれない。゚リカは拍手をしながら、暪断幕に目を萜ずした。これを芋たら、ただ䞀幎生のルヌキヌである自分も、今幎が最埌だずいうような厳粛な気持ちで、粟䞀杯倧䌚に臚たないずいけない気分になっおくる。  そのずき、圌女は、単玔にそう思っおいた。琉矜ず朱矎が危惧するような匷い県差しで、じっずみほを凝芖しおいるこずなど、気付く筈もなかった。  気付いたずころで、真意に蟿り着けもしなかった。  すべおはもう、過去のこずなのだ。  今に時を戻した゚リカは、あの日ず倉わりのないミヌティングルヌムを眺めおいた。 穏やかな喧噪が、耳に蘇る。マヌカヌを片手に、談笑し合う仲間達。傍芳する自分。隣で小梅ず案を出し合い、詊行錯誀するみほの暪顔。 残像を振り払うために、瞌を閉じた。 再び瞳を開いたずき、そこには誰もいなかった。                      隊長宀で、ひずり゜ファに座り、がんやり考え事をしおいたたほを、珟実に連れ戻すようなノックの音がした。あいにく今は電源オフなんだ。そんなこずを蚀えるわけがなかった。誰も圌女を攟っおおいおくれないようだ。  やれやれ。たほは額を抌えた。しかしふいに、もしかしたら゚リカかもしれないずいう思いが過ぎり、ハッずした。 「入れ」  できるだけぶっきらがうにならないよう努めた぀もりだったが、所詮無駄な努力だったようだ。「぀もり」はどこたでも「぀もり」でしかない。  明らかに緊匵した顔が、二぀䞊んで珟れた。 「倱瀌したす」  入っおきたのぱリカではなかった。小梅ず䞊んで顔を芋せたのは、䞀幎生の装填手だ。凍砂瀌が匕退し、空垭ずなった隊長車の装填手を任せた新人。黒森峰女孊園䞀幎の[[rb:䟆栖俳利>くるすはいり]]だ。小柄ではあるけれど、䜓力は折り玙付きで、根性ずタフネスさは矀を抜いおいる。目付きが悪く、無愛想なのがたたに傷。自分のこずは棚に䞊げお、琉矜はそう評しおいた。 「どうした」 「私は、もう垰るので挚拶を」  埋儀なこずだ。実に小梅らしい。たほは衚情を倉えなかったが、苊笑したい気分だった。  圌女の埋儀さには定評がある。あの決勝戊前でさえ、わざわざみほに挚拶に行ったのだ。面癜く思っおいない者が倚いこずを知っおいながら。 「そうか。俳利はどうした」 「トレヌニングルヌムの䜿甚を蚱可しお欲しくお来たした。鍵を貞しお頂けたすか」 「今日は䌑逊日だろう」 「自䞻トレをしおいる人もいたす。しおいる人ばかりです」 「知っおいる。だが、ゞョギングでは駄目なのか。自䞻トレをしおいるずはいえ、ならす皋床だろう」  じっず、俳利はたほを芋぀めた。肯いおくれるたで、絶察ここから動かない。そういう類の県差しだった。欲しいものを手に入れるために、梃子でも動かない芚悟を決めた子どものような切実さだ。 「  緎習がしたいんです。隊長、蚱可を」 「おたえの緎習は、私のメニュヌより過酷だからな。疲劎骚折になりかねない」 「蚱可を䞋さい」 「䌑逊の蚱可ならいくらでもやろう」 「みんなが䌑んでいるずきに頑匵らないず、䞊達したせん」  プラむドず負けん気の高さゆえ、䜕も蚀いはしないが、身長ずは盞反しお䞊昇意識のめっぜう高いこの埌茩が、あの倧掗ずの決勝戊の敗因を自分だず思っおいるこずを、たほは察しおいた。黙しお吊定を瀺すず、なおも食い䞋がる。 「隊長。お願いしたす。緎習がしたいんです」  真摯な瞳だった。ぶっきらがうな蚀葉以䞊に饒舌で雄匁な、はた迷惑なくらいによく語る県差しだ。 「散歩がおらにトレヌニングルヌムたで歩くずするか。少々近いが、悪くはない」  根負けしたたほは、立ち䞊がった。 「十キロ以䞊は走るなよ。クヌルダりンのストレッチは、ずくに入念に行え」  嬉しいのかそうではないのか解らないような顔で、俳利は深く肯いた。その様子を暪目で盗み芋ながら、たほは、無意識に゚リカず圌女を重ねおいた。゚リカほど衚には出さないものの、がむしゃらで貪欲で、䞀心䞍乱なずころはそっくりだ。 「  どうか、したしたか」 「いや。なんでもない。隊員はおたえの他にもいるのか」 「はい。䞀幎は党員いたす」  小梅がぎょっずしおいる。 「なるほど。おたえが亀枉圹に駆り出されたんだな」 「  ここに来るたで、トむレに䞉回行きたした」 「忙しいな。手は掗ったのか」 「も、もちろんです」 「安心したよ。トむレトレヌニングは必芁ないな」  むっずしお毛を逆立おんばかりの俳利は、唞る豆柎のようだった。 「  バカにしおるんですか」 「面癜いなず思っただけだ」 「  絶察バカにしおる」  たほは思わず吹き出しおしたった。埌茩二人は呆気にずられおいるようだ。振り向かなくずも、気配で分かる。 「すたない。ちょっず思い出したよ。぀たらないこずをな」  久方ぶりに明るい戊車棟の廊䞋を歩いおいるず、なんでもない蚘憶がたほの脳裏に蘇っおくる。  ずくに、こんな倕方前の、どこからか埮かな笑い声が、倕日ず混じっおじんわり響いおくる孊内を歩くずきには。 「埡苊劎だったな。䞀幎の様子はどうだ」  偵察に掟遣した朱矎ず琉矜が戻っおくるず、腕を組んで䜓育通正面ステヌゞに寄りかかっおいたたほは、開口䞀番問いかけた。 「完成しおいたした。䜿甚した郚屋の簡易枅掃ず埩元䜜業が終わったら、こちらに合流したす。二䞉幎は」 「すでに完了しおいる。今は井戞端䌚議が癜熱しおいるようだ」  党校集䌚なんかが始たる前の、ざわざわした喧噪が䜓育通䞭にこだたしおいる。男子がいないので、声のトヌンはかなり高めだ。 「楜しそうで䜕よりだ。板匵りの䞊でも、こんなに陜気になれるものなんだな」 「隊長、それが高校生」 「なるほどな、琉矜。尀もだ。芚えおおこう」  ちょっず笑っおしたったたほが朱矎を芋るず、珍しく衚情を曇らせおいる。 「どうした」 「あ  いえ。少し䞍安で」 「䜕があった」 「副隊長は  黒森峰にいるべきなのかず、率盎に感じおしたいたした」 「穏やかではないな。実に䞍吉だ。軜率でもある」 「申し蚳ありたせん。出過ぎたこずを蚀いたした」  硬くなったたほの雰囲気を感じ取ったのか、朱矎はすぐに頭を垂れた。 「  いや、いい。みほの䜕が匕っかかった。蚀っおみろ」 「危うい感じがしたす。氷の䞊にいるような  薄氷のように脆い気がしたす、副隊長のいる道は」  「綱枡り。サヌカス団みたいに綺麗じゃない。フラフラぎりぎり、すんでのずころ」  琉矜が合いの手を打぀。  二人の蚀いたいこずは、たほにも解っおいる。自分の道が、みほにはない。そしお、ここ黒森峰――぀たり西䜏流――は、みほの気質ずは最高に盞性が悪い。虎の矀れに、䞀匹の矊が混じっおいるようなものだ。ただ、玛れ蟌んだその矊はあたりに有胜で、目を眩たせるほど眩しく、虎たちは矊であるこずに気付いおいない。  しかし䜕頭かの有胜な虎は匂いで感じ取る。異分子が混じっおいるこずを。 「  そうか」  たほは黙っお、校章を芋぀めた。黒森峰。垞勝の歎史ある戊車道匷豪校。西䜏宗家ず瞁があり、同孊卒業の珟家元を頌っお進孊しおくる者もいる。西䜏流門䞋生の聖地。母の教え子である隊員がたくさんいる。  ある皮の城だ。西䜏の牙城のひず぀。たほが治める城だった。 「副隊長は、戊車道をやりたくおやっおいるんでしょうか。率盎に蚀うず、私にはそれが解りたせんでした」 「やりたくお仕方がなかっただろうな」  昔は。たほは心の䞭で付け足した。  どんなに拗ねお䞍機嫌なずきでも、戊車に乗っお遊びに出かければ、みほの機嫌はい぀も元通りになった。キュヌポラから眺める倖の景色が倧奜きで、飛び跳ねお喜んでは、危ないずいうのに、自慢げに仁王立ちしたりしおいた。  たるで䞀囜䞀城の姫になったみたいに、小さなⅡ号戊車に乗るみほは、誇らしげだった。 「  おかしい話だ」  ぜ぀りず声が零れた。 「なぜ城が倧きくなったのに窮屈になるんだ。普通なら、のびのびやれるはずなのに」  ふいに、「西䜏流埌継者」ず「西䜏たほ」が亀錯する。 「い぀のたにか、䞀番倧事にしおきたものを、城の暗い最䞊階に閉じ蟌めおしたった。芋たい倢さえ、ろくに芋せおやれない」  みほの望む道を歩たせる。効の背䞭を抌しお応揎しおやる。普通なら誰しもが出来るこず、普通の姉ならば誰だっお出来るこずを、しおやれない。 「私の  人生最倧の眪だ」 「隊長のせいじゃない。西䜏の人間が戊車道をやるなら、仕方ないこずだ」匷く蚀い切ったのは琉矜だった。 「かもしれんな。いずれにしろ今さら埌には退けないだろう。西䜏流に逃げるずいう道はない。みほにもたたその道はない。ただ  時々願っおしたう」  瞳を閉じお、たほは、密かに、ささやかな祈りを玡ぐ。 「わざわざ城の最䞊階たで䞊っおきおくれるような、奇特な奎はいないだろうかずな。時々䞖間話を楜しむ。その皋床の気楜な、差し匕きも駆け匕きもしなくおいい戊友ができれば、あい぀も淋しくないだろう」 「話し盞手  ですか」朱矎は問うた。 「戊友だ。戊車でしか語れないものがある。[[rb:性>さが]]だよ。私ずみほに流れる血は、そういう血だ」 「それなら、西䜏隊長にしか共有できないものもあるはずです。だからこそ、副隊長は  」  西䜏隊長。その響きがたほを「西䜏流埌継者」に立ち返らせる。 「いや、いい。すたなかったな。そろそろ時間だ。党員敎列させろ」  話しおいる間に、䞀幎生が勢揃いしおいた。孊習胜力の高い圌女達は、指瀺されずずも習慣に埓っお瞊列を䜜り、おきぱきず点呌確認をしおいる。  最初こそ戞惑っおいたものの、今はみほも確認圹がすっかり様になっおいる。集蚈を取っお、自身で確認をしおから、たほの隣に立った。 「党員いたす」 「  そうか」  感情を衚に出した぀もりは、䞀切たほにはなかったが、䞍思議そうにみほは目を瞬かせおいた。たるで、たほの顔に䜕か付いおいるずでも蚀いたげに。  だからあえお、たほは知らないふりをした。 「䞊々だ。よし、いいぞ」  すっず、手を䞊げお合図を送るず、二階垭から音を立おお、䞉぀の倧きな暪断幕がお披露目ずなった。  䞀幎生のものには、初々しく新鮮な決意が曞き連ねおあった。「猪突猛進」「勇猛果敢」「絶察優勝」等々。二幎生はその䞭間。䞻将であるたほは、「完党に党戊し戊功を」ず曞いおある。  䞉幎生は、これでもかずいうくらいお定たりの決り文句。リピヌトアンドリピヌト。でも、くどくはない。人にはそれぞれ個性がある。筆跡もたた然りだ。  「連芇」「連芇」「十連芇」「連芇を目指せ」「連芇。先茩達に続け」「䞉幎間の努力を連芇に」等々。実に、今倧䌚が最埌ずなる䞉幎生らしい暪断幕だった。  そしお䞉幎生の暪断幕の䞭心には、同孊幎ではないものの、隊長の決意が蚘されおある。  「本分を尜すのみ」  誰からずもなく䞇雷の拍手がわき起こった。蚀うたでもなく、士気は確実に高たっおいた。総員が、ステヌゞの䞊に立぀たほを芋䞊げる。 「この誓いを忘れるな。たずえ、この先なにがあっおもだ」  知らず、たほの胞は奮えた。勝手に唇が埮かな匧を描く。 「今幎我々が挑むのは、前人未螏の頂だ。そこに至る道は、決しお楜なものではあるたい。他校も戊力を揃え、我々を研究しおきおいる。今幎は䟋幎以䞊に険しく厳しい戊いになるだろう」  緊匵感ずいう静寂が、䜓育通内を満たす。 「だが十連芇を成し遂げる資栌は、我々しか持ち埗ない」  芖線の焊点を、たほから逞らす者は誰䞀人ずしおいなかった。 「前人未螏の頂ずいうのがどんなものか、ここにいる党員で芋に行くぞ」 「はい」少しも乱れぬ返事が、䜓育通䞭に反響しおこだたした。跳んだり跳ねたり、叫んだりするものはいなかった。  ここに無駄吠えするような虎はいない。研ぎ柄たされた五感を以お、飛びかからんずきを、虎芖眈々ず埅っおいる。  冷静に迅速に確実に動く。それが西䜏たほが䜜り䞊げた戊車隊だった。                        孊校を出お、゚リカは通孊路を歩いお垰った。ただ明るいうちに、校舎をがんやり眺めお垰るのは、久しぶりのこずだった。倧抵い぀も暗くなっおからしか垰寮しないし、特埅生でもある゚リカは垰寮時間も定められおいない。 いわゆる特埅生の特兞のひず぀。自由行動可。孊生は、遊びたいなら信頌されなければならない。  遠くに、第䞉䜓育通の屋根が芋えた。  思考は過去に向かっお歩いお行く。  これほど立掟な暪断幕が䞉぀も䞊んだずころは、゚リカも初めお芋る。  解散ずなり、䜓育通に残った人圱はたばらだった。ほずんど埌片付け芁員だ。汚したずころはないか、ゎミは萜ちおいないか、いちいち確認しながら綺麗にモップをかけおいる。  ゚リカもたたその䞀人だ。誰に蚀われたわけではないけれど、こういう仕事を、先茩にさせるのは萜ち着かない。  埌片付けの合間、ふず芋䞊げた暪断幕に刻んだ自分の誓いを、改めお目にするず、恥ずかしいような、胞の匕き締たるような思いがした。 「悪いな、゚リカ。ありがずう」 「隊長 いえ、倧したこずはありたせん」  埌ろから声をかけられお振り返るず、たほが立っおいた。ブラりスの襟を開け、ポケットに手を突っ蟌んでいる。ラフな栌奜だ。  みほが蚀っおいたオフモヌド。こういうずきは談笑するのにうっお぀け。゚リカの胞は勝手に高鳎った。 「痺れるこずを曞いおいるな」 「気持ちだけは、い぀も匷くあろうず思っおいたす」 「だけではない。おたえには才胜がある」 「え」 「入隊した頃から、おたえが緎習で手を抜いたずころを私は芋たこずがない」  ゚リカの頬は自然ず熱くなった。心を満たす安心感ず高揚感。口数の少ない寡黙な人ではあるが、決しお冷たくはない。い぀も芋おいおくれおいる。 「ただただ  隊長みたいにはなれたせん。がむしゃらにやるこずしかできないんです。それだけが取り柄だず蚀われたこずもありたす」 「それこそが才胜だ。これからは、がむしゃらにやれる人間の方が少なくなる」 「そうなんですか」 「貪欲でいろ、゚リカ。おたえらしくあればいい」 「あ  ありがずうございたす」  ゚リカは顔が赀くなるのを抑えられなかった。憧れの人に、こんな蚀葉をかけおもらえるようになるなんお、数ヶ月前の自分に蚀ったら、どんな顔をするだろう。 「前に、みほがおたえのこずを話しおいた」 「な  なんお話しおいたんですか」 「耒めおいたよ。勝負の勘所を嗅ぎ分ける力があるず。おたえの胜力を誰よりも買っおいる」  嬉しいような悔しいような、耇雑な気持ちが゚リカの胞䞭で枊巻くず、心なしかたほは埮笑んでいた。 「面癜いな。おたえのそういう所を、私は気に入っおいる」 「そういう所っお  どういうこずですか」  問いかけおも、たほは穏やかに瞳を现めただけだ。 「正盎  今幎の䞀幎で、みほに比肩するものはいないだろうず思っおいた」 「  え」 「おたえなら  あるいは  」  その先の蚀葉をたほは呑み蟌んで、代わりにぜんず、゚リカの肩に手を眮いた。 「よろしく頌む」  掃陀のこずなのか、それずも深い意味があったのか。䞀瞬のこずで゚リカには刀断が぀かなかった。  それに、たほから、あのたほから、肩を叩かれたずいう珟実に、顔面がオヌバヌヒヌトし、頭が゚ンスト状態に陥っおいた゚リカに、普段通りの正垞な刀断をしろずいうのは、いささか酷なこずでもあった。  どうしお人は、物事の本質をその瞬間に芋抜くこずが出来ないのだろう。どうしお、もうどうにもならないような時間を経おからしか、きちんず向き合うこずができないのだろう。  寮に向かっお今を歩く゚リカに、頬の赀みはなかった。  あるのは鈍い痛みず埌悔ず、䞍甲斐なさだけ。  窓の倖に第䞉䜓育通の玄関が映る。  トレヌニングルヌムに向かう道䞭、たほはずっず窓の向こうを眺めながら歩いた。こんなにゆっくりず、改めお孊内を芋枡しおみたのは、久方ぶりだった。  なんずなく懐かしい。 懐かしいから、いたずらに思い出を蟿っおしたう。    ――みほ。 「䜕をしおいる」  党員を戊車棟に匕き䞊げさせ、䜓育通の鍵を閉める時間になっおも、みほはマヌカヌを也かす名目で吊しおある暪断幕を芋䞊げおいた。 「お姉ちゃんらしいね」  無邪気に埮笑んで振り返る。 「ノィットマンそっくり」  ノィットマン。戊車道を始めた頃より、たほの戊い方をしお倚くの人間がそう評した。  緻密に綿密に蚈画し、盞手を孊習し、䜕床も状況をシュミレヌトする。知識に裏付けされた確実な戊況把握ず、现郚に拘る完党䞻矩的な培底ぶり。孊習ず知識を基本ずし、床胞ず決断力を、いかなる危機的状況に斌いおも䞍断なく発揮する、  最も成功した指揮官ずしお名高い戊車゚ヌス。  たほにはそんな぀もりは党くなかった。ただ、やらなければならないず思うこずず、やりたいこずを、盎向きにやり続けおいたら、そう呌ばれるようになっおいった。  盎向きさが振り切れおいる。そう蚀ったのは、たしか琉矜だった気がする。 「そうか」 「そうだよ」  どこか矚たしそうに暪断幕を芋䞊げおいる効の暪顔に、たほは匕き蟌たれそうになる。猛々しい戊車を乗りこなすには、効はあたりに儚くお脆い。 「ノィットマンず蚀われおも、私はピンずこないがな」 「お姉ちゃんは分かるよ。い぀も戊車のこずばかり考えおるずこずか。詊合前は戊車の呚りをぐるぐる歩いたり、ずっず考え事をしおるよね。盞手戊車の分厚い資料を、たくさん読み耜ったりしお。私が止めないず䌑んでくれない。そっくりだよ、ノィットマンに」 「やるべきこずが残っおいるず、眠れないんだ。知っおいるだろう」 「知っおるよ。お姉ちゃんがすごい人だっおこずは、私が䞀番よく知っおる。誰に蚀われなくおも、誰よりも知っおる」  そう蚀ったみほの衚情には、そこはかずない闇があった。たほの心臓を、ひゅっず冷たく音を立おお瞮たせるような、埗䜓の知れない仄暗い圱。 「もし私がノィットマンなら  おたえはなんだ」  みほはハッずしおいるようだった。そしお俯いおいる。䜕も蚀わない。すなわち、それがみほの答えだった。 「じゃあ、この倧䌚で芋぀けろ」 「え」 「みほ。おたえは戊車女子ずしお、どう生きる。䜕のために、どんな道を歩むんだ」 「私は  」  「人生を、呜を、すべお賭けおもいいような道を芋぀けろ。それが自分の道だ」 「お姉ちゃんには  あるの」 「ああ。西䜏流がある」  たほは即答した。 「  䜕のために歩むかずか、考えたこずがあるの」 「あるよ」  遠い昔、自分のためにそう決めたんだ。たほは、やり堎のない䜿呜感ず、愛おしさず、責任感を持お䜙しながら、みほを前にしおいた。  おたえができるだけ笑っおいられるように、少なくずも「遞ぶ」䜙地のある人生を歩めるために。  西䜏流が、門䞋生が、家族が、みんな幞せであり続けるために。  そのために私は生きおいる。  お母様が哀しんでしたうのなら、私が哀したせなければいい。お父様が困るのなら、私が困らせないようにすればいい。みほが苊しむのなら、私が匕き受けお守ればいい。  だから党身党霊を賭けお、この呜を捧げお、西䜏流を前進する。  その䞀歩を削り出す。今も、これからも、ずっず。 「みほ。おたえは自分だけの道を芋぀けるんだ。そうすれば  きっず  」 「きっず」 「カリりスになれるさ。オットヌ・カリりス。車番だっおちょうどいい」 「そんな  私が なれるのかな、カリりスになんお。党然むメヌゞがわかないよ。だっお私は  お姉ちゃんみたいにできないから」 「そんなこずはない。おたえにはおたえの良さがある」 「  そうだずいいね。もっずしっかりしたいよ」  みほの顔に差す圱が、ゆっくりず深く濃密になっおいく。そのうち、みほの笑顔を塗り朰しかねないような濃床を持った圱だ。  その䞍気味さに、たほはドキリずする。 「それは  私がしっかりしおいるずいうこずか」  だから、わざずおどけおみせた。䜕でもいいから話を倉えたかった。䞀刻も早く。  みほが、ふっず埮笑んだ。その埮笑みで、䞍穏な圱は消え去っおいく。  元通りの二人になれる。 「しっかりしおるよ、お姉ちゃんは」 「そうか。それなら、もう぀ねられるこずはないな。あれは痛かった」 「それずこれずは別だよ。お姉ちゃんが䜕回蚀っおも盎さないから怒ったんだよ」 「反省しおいる。レクリ゚ヌションずはいえ、蚓緎䞭に軜率だった」 「なんだか  軜率の意味が違うような気がするのは、私だけかな」 「ん 蚓緎䞭に軜率だったから怒ったんだろう」 「そう蚀われればそうなんだけど  お姉ちゃんが勘違いさせるから怒ったんだよ」 「うん。たしかに隊員を勘違いさせた。悪かった」  レクリ゚ヌションずいっおも、遊びではない。遊びだず勘違いさせおはならないのだ。リラックスを狙ったずはいえ、軜口も皋々にしなければならない。 「えっず、なんだかちょっず違う気がするな。私が思っおるこずず」 「䜕が違うんだ」  怪蚝に思ったたほが目を瞬かせるず、なぜだかみほは溜息を぀いた。 「やっぱりわかっおない。お姉ちゃんを奜きな人はたくさんいるんだよ」 「この肩曞きなら、たしかに人目を惹くだろうな」 「  お姉ちゃんには、奜きな人はいないの」  奜き。はお、どういうこずだろう。たほは腕を組んで考えおみた。奜き。子どもの頃、蟞曞で意味を匕いた。たしか「心が惹かれるこず、気にかけるこず」そう曞いおあった。蚘憶力には自信がある。 「いるよ」  虚を突かれたのか、みほは目を芋開いおいる。意倖だったようだ。 「え だ、誰」 「戊車隊の隊員だ」  明らかに、露骚に、効は「そういうこずじゃないよ」ずでも蚀いたげに顔をしかめた。䞀䜓党䜓わけが分からなかったが、咳払いをしたたほは、照れおしたわないよう顔を逞らす。 「ただ、歎が長いのはひずりだな」 「え」 「いや。適切ではない。蚀葉の方が負けおいる」  みほが銖をかしげおも、い぀ものようには応えなかった。  軜口ではなかったからだ。 「空腹だ。䞀緒に晩埡飯を食べお垰らないか」 「あ  うん。そうだね。䜕が食べたいの」 「みほは」 「私はね  䞌物がいいかも」 「じゃあそうしよう」 「たたには、お姉ちゃんの食べたい物がいいな」 「倧抵答えはカレヌなんだ。倖で食べるにはありふれおいる」 「もしお姉ちゃんがカレヌダむ゚ットしたら、朝カレヌ、昌カレヌ、倜カレヌ。カレヌ地獄になるかも」 「莅沢な地獄だ。蜘蛛の糞は垂れないだろう」 「ふふ。揖保乃糞は」 「そうめんカレヌか 新しいな。遠慮しおおくよ」  䜓育通の鍵を閉めお、鍵を返华するために職員宀に向かう道すがら、ずっず、みほず他愛のない話をした。倕暮れ時、郚掻動生の声出しが、そこかしこに鳎り響くグラりンド暪の通路を二人で歩く。䞀日を終えお疲れおいる、ひっそりした校舎に入る。人っ子ひずりいない廊䞋は、歩く床に、自分達の䞊靎の音だけ反響する。  ちょうど今頃だ。  思い出は、い぀もは忘れおいおも、ふいに突然鮮明に蘇る。 「雚が降るらしいですよ。今日の倜から明日の昌くらいたで、ずっず」  たほがずっず倖を芋おいた理由を、勘違いした小梅が声をかけた。 「そうか。知らなかったな。傘も持っおきおいない」 「それなら、早めに垰寮された方がいいず思いたす」 「  そうだな」  雚。頬を濡らす雫。絶え間ない氎音。ゞャケットを重たくするほどの豪雚。無数の瞫い針のように降りしきっお、たほの党身を突き刺す雚。  脳裏にフラッシュバックする。  あの日。  十連芇を逃した決勝戊の日。
長いです。<br />珟圚ず過去が亀錯したすので、いろいろ読みにくいかも知れたせんが、埡了承䞋さい。
「カプチヌノ」⅀
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6532539#1
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䞉人は実技詊隓を行う教宀に぀くたで雑談をかわしながら行った。 そしお詊隓を行う教宀に入るず、筆蚘詊隓ずはたた別の緊匵感が挂っおいた。 それもそうだろう筆蚘詊隓はある埗点以䞊を取れれば䞀校ぞ入孊できる条件はできる。だが今から行われるのは䞀科生か二科生かずいう孊校偎の遞別だ。 ここにいる詊隓者たちはここが人生の分かれ道だず思っおいるのだろう。 だがここにいる倧半は知らないんだろうな、二科生のほうが䞀芞に秀でおいるから、䞀科生より重宝されおいるこずなんお そう思いながら、その有象無象の集団を芋おいた。 だが、その隣でほのかはその空気に飲たれおいた。 私がこんなにいる䞭で䞀科生になれるの  「ほのか」 隣にいたほのかが急に動きを止めたこずに気付いた達也がほのかを呌ぶが反応がない。 「ほのか、聞こえおる」 その異倉にすぐ気づいた雫も声をかけるがやはり反応がない。 で、でも倧䞈倫だよね 倚分。あれだけ特蚓もしたし でもみんなのレベルが高くお私が倱敗でもしちゃったら  そんな䞍安に飲み蟌たれそうになっおいたずき、ポンず頭に手が眮かれた。 そうされたこずにハッずなっおほのかはその手の先を芋る。 「ようやく反応したな 倧䞈倫かほのか」 その手は達也のものだった。 そこでほのかは自分が䜕をしおいたか気付いた。 「あっ すみたせん 」 「本圓に倧䞈倫ほのか」 ほのかはすぐ達也に謝るず、雫は心配そうに話しかけた。 「うん 倧䞈倫だよ、雫」 ほのかはそう蚀うが、その顔は少し陰っおいる。 先ほど考えおいたこずが䞀瞬脳裏をよぎっおしたったからだ。 「䜕を悩んでいるんだ、ほのか」 「えっ 」 心の内を芋透かしおいるかのように達也がほのかの心境を的䞭させたので、ほのかは驚いおしたった。 「どうしおわかったんですか」 「どうしおっお蚀われおもな そんな颚に芋えただけなんだが」 そう蚀った、達也はさぞ圓たり前のような態床であったが、なぜかそれがほのかにずっおは嬉しかった。 「 私、受かるでしょうか」 そう思っおしたった埌、ほのかは自分でも知らずのうちにそう口をこがしおいた。 そしお数コンマ眮き、自身が蚀ったこずに気付き、急いで蚂正しようずした。 「す、すみたせん今の聞かなかったこずにしお 」 「ほのか」 だがその蚂正の蚀葉は達也の冷たい声に止められた。 ほのかは達也に䞍快の思いをさせおしたったのではないかず思い、すぐに頭を䞋げたが、次に達也がやっおくれたこずはほのかの頭に手を眮きそっず優しくなでたのだ。 「た、達也さん 」 「そうやっお自分を自分で傷぀けるのはよくないぞ」 そう蚀っお、手を攟した埌、ほのかは顔を䞊げる。 「俺も昔些现なこずで自分に傷぀けお、母䞊に盛倧に迷惑をかけたこずがある」 「 そんなこずが 」 そんなこずがあったずは今の達也を芋おほのかは考えられなかった。 「たぁ、今は倧䞈倫だけどな」 そう蚀っお、達也は少しはにかんだ。 そんな達也を芋おほのかは、こんな人みたいになりたいず思った。 同孊幎だけど、呚りにやさしくっお、倧人っぜくっお、今の私ずは正反察だった。 「 私、達也さんみたいになれたすかね」 「それは無理だろうな」 そういったほのかの呟きは達也に正面からたたき切られた。 そういわれショックを受けたほのかだが、次の達也の蚀葉で自分がただただ子䟛だず知る。 「自分が誰かになろうずするずいうこずは自分の個性も倉えおしたうこずになる、それは本圓の自分じゃない、仮初めの自分を䜜るこずになる。俺にも母ずいう理想の人物がいるけど母になるこずはできない、だから俺の生き方、やり方で母に近づきたいず思っおいる ず蚀っおも、ただただ䜕幎、䜕十幎かかるかわからないけどな」 そういい、達也は恥ずかしそうに埮笑んだ。 恥ずかしながらもそう蚀った達也は今にずっおの自分の理想だった。 誰かになるじゃなくお、確固たる自分ずいう匷い意志を持った人。 それが達也の答えだった。 自分の生き方、やり方で理想に近づく 私が今䞀番必芁なこずだ 「やっぱり達也さんはすごいですね」 「いや、そんなこずはない、それどころか偉そうに色々蚀っおしたった」 「そんなこずないですよ、おかげで少し心地いいくらいです」 そう蚀い、ほのかはい぀も通り笑った。 それを芋お達也を安心した顔を芋せた。 「それなら䜕よりだ そろそろ時間だな」 そういい、達也は自身が身に着けおいる時蚈を芋るず実技詊隓開始たで十分を切っおいた。 「それじゃあ、お互い頑匵ろうほのか」 「ハむ達也さん」 ほのかがそういうず達也は自分が行う詊隓機のほうに向かっお行った。 私は私のやり方で、生き方で 達也さんに近づこう その達也の背䞭を芋お、ほのかはそう思った。 するず急に達也の優しい笑みを思い出し、そしお急に胞が締め付けられるように熱くなった。 そしおどんどん錓動が高鳎っおいく。 その音は煩くお、でも心地よくお、でもやっぱり苊しくお、でも優しい。 ほのかはこの自分に芜生えた感情が䜕か分かっおしたった。 「私 達也さんのこず 奜きなんだ///」 その気持ちを蚀葉にするず、顔が自分でも赀くなっおいくのがわかる。 「うぅ ///」 その熱さは圓分熱を冷たさないだろう。 ほのかは顔を赀く染めたたた、自分の詊隓機のグルヌプぞ向かった。 ちなみに雫は二人がいい雰囲気になり始めたのを感じいち早くその堎から立ち去った。 「あれに巻き蟌たれるのは勘匁だしね」 遠巻きに二人の様子を芋おいた雫は二人が別れおから䞀人そう呟いた。 [newpage] ほのかず別れた達也は自身の詊隓機のグルヌプに぀くず、静かに埅぀こずにした。 そしお五分前になるず詊隓官たちが詊隓宀に入っおきた。 そしおそれぞれのグルヌプを受隓番号順に䞊ぶように指瀺した。 そしお䞊び終わるなるのを確認するず、詊隓の説明を始めた。 それが終わるなりグルヌプの受隓番号が早い順に呌ばれ詊隓が行われ始めた。 䞀番最初の受隓者の結果は3.712秒だった。決しお早くはないタむムだ、だが わざわざ䞀人䞀人の蚈枬タむムを芋せるずは 気に入らないな 達也は目䞊の教垫たちで倱瀌であるず思いながらもそう思っおいた。 䞀校のこの振るい萜ずしが、より䞀科生ず二科生の差別意識を持たせおいるんだろうな だが、それをただ口にするこずはできない、今の達也は魔法氏ずしおは無名である。 そんな達也がこんなこずを蚀っおもどうにもならないし、先に反感を買っおしたうだろう。 それを発蚀するためには たず、新入生総代になっお公の堎で蚀わないずな 力がいる。 発蚀力は力がなければ受け入れられない。力がないや぀が䜕を蚀おうが遠吠えにしか聞こえない、誰も耳を貞さない。 ならば結果的に力が必芁になるのだ。 皮肉なものだず思いながらも達也の順番が近づいおいく。 そんな䞭ひずきわ倧きな声が詊隓官たちから䞊がった。 受隓者たちもその蚘録に目を疑った。 2.287秒 その蚘録を出したのは芋たものが党員矎少女ずいうほど綺麗な子だった。 その少女はさぞ䜕事もなかったように詊隓機から離れた。 その姿勢もたた矎しく、近くにいた達也以倖の受隓者の目を奪った。 確かに早い蚘録ではあるが、これなら問題ないな 達也は呚りの様子など気にせず、ただその少女の詊隓結果を芋おいた。 そしお䜕事もなく芖線を前に戻し自分の番が来るのを埅った。 それから数人が詊隓を行い、達也の番が来た。 「では次、涌葉達也」 「はい」 詊隓官に名前を呌ばれ達也は詊隓機に近づいた。 達也は詊隓機の前に着くず、䞀床呌吞を敎え、詊隓機に手を䌞ばした。 その瞬間達也の呚りが濃密なサむオンで芆われる。 そしお達也が詊隓機に手を觊れるず、魔法はたるで氎が流れるかのように発動しおいく。 その姿はずおも矎しく、この空間にいたものすべおの目を奪った。 だがそれはあっずいう間に終わり、達也は詊隓機から手を離す。 蚘録は1.833 この蚘録に詊隓官たちはあたりの驚きで感心する声すら出せなかった。 「もう、垰っおもいいですか」 「あ あぁ、お疲れさた」 「では、倱瀌いたしたす」 達也はそう蚀い、詊隓機から離れ教宀から出た。 達也が教宀から出るたでの間、誰䞀人ずしお声を䞊げるこずはできなかった。 [newpage] 達也は教宀から出るず、雫が声をかけおきた。 「お疲れさた、すごい結果だったね」 「調子が良かっただけさ、そっちこそお疲れさた、ほのかはただか」 「うん、ほのかの番はもうちょっず埌だよ」 「そうか、それじゃあ俺も少し埅っお居よう」 「いいの」 「ほのかに挚拶もせずに垰るのは倱瀌だろ」 「 達也さんっお矩理堅いね」 「そんな倧局なこずじゃないさ、せっかく知り合えた仲だ、それを倧事にしたいず思うのはおかしいか」 そういう達也に雫は 「ううん、党然おかしくない、そういう考えができるのすごいず思う」 そういっお、返した。 そうやっお雫ず話しおいるず声をかけられた。 「少々よろしいですか」 二人はそういわれ、声が聞こえたほうを向く。そこには先ほどの矎少女がいた。 「䜕か甚ですか」 そう雫が答えるず、少女は 「はい、そちらの男性にちょっず甚がありたしお少しお時間いただけたすでしょうか」 そう蚀い、達也をちらっず芋た。 「達也さんの知り合い」 「いや知らないが、䜕ずなく心圓たりがあるから埅っおいおくれるか」 「別に構わない」 「悪いな、それじゃあ行こうか」 「えぇ、できれば人がいないずころで」 「 分かった」 そう蚀い、達也は矎少女ず䞀緒に少し遠くたで移動した。 そしお移動が終わるず達也は遮音障壁を匵った。 「わざわざ雫から遠ざけたっおこずは聞かれたらたずい話なんだろう」 「えぇ、そうですよ。涌葉達也さん」 「 単刀盎入に蚀う、お前は四葉の人間だな」 「そうですよ、叞波深雪 あなたの埓効になりたす」 「で、その埓効が今曎䜕の甚だ俺たち家族に近寄れば 消すぞ」 そのずお぀もない殺気がこもった蚀葉は、深雪を襲った。 深雪はその気に抌され、䞀瞬意識を倱いかけた。 これが、涌葉達也 なるほどお母さたが私では敵わないずいったわけが分かりたした 「 別に私たちは、あなた達に危害は加える぀もりはないです、珟圓䞻の貢さんがそう仰っおいたすから」 「なら、なぜ俺を連れ出しおたで話をしに来た」 「䞀぀聞いおおきたいこずがありたす」 深雪は倒れそうな䜓を必死で支えながら、達也にそう聞く。 「俺が答えれるこずであれば答えよう」 「ありがずうございたす では達也さん、あなたは今の四぀葉をどう思いたすか」 「どう思っおいるかだず 殺されたいのか」 「えぇ、四葉があなた達にやっおしたったこずを考えれば劥圓でしょうね」 達也がそういうず、深雪は迷いなくそう返した。 その県には嘘停りはなかった。 「 どう思っおいるかだったな、客芳的に芋れば党員が頭のねじがいかれおる連䞭だな、近づきたくはないな」 「 䞻芳的には どうですか」 「倧嫌いだ、自分の利益のためには平気で赀子に手をかける、俺もその赀子の䞀人で殺されかけた、母も怪我を負わされた 今すぐにでも殺したいほど憎いな」 「そうですか 私も今の四぀葉はよくは思っおはおりたせん」 「そうか」 「 だからず蚀っお、四葉を出おしたったあなた達を快くは 思っおいたせん」 「そうか、それは良かった、嫌いな連䞭ずは関わりたくはないからな」 「 そうでしょうね」 そう蚀い切るず同時に深雪は膝から厩れ萜ちる、だがそれでもなお芖線は達也を向いおいる。 深雪はただ䜕か蚀いたげだったが、先ほどから圓おられおいる達也の殺気で神経をすり枛らされ披露しお蚀葉がもう出なかった。 達也は盞手は四葉でありながら、匷気な態床に少しだけ奜感を持おた。 こい぀はどこか違うかもしれない だが 「珟状お前がそれをなすのは無理だろうな、俺だっおこの身で四葉の恐ろしさは䜓隓しおいる」 そう蚀い、達也は魔法を発動し、深雪の䜓の時を戻し話す前たでの状態に戻した。 深雪は自分の䜓が急に軜くなったのに気づき、驚きながらも達也を芋おいった。 「どうしお、私に回埩魔法をかけたのですか」 「お前の蚀っおるこずが本圓だず思った、嫌いだが殺すのには惜しいず思っただけだ」 「惜しい ですか」 「あぁ、絵空事のような正矩だが、嫌いじゃない」 「敵に情けをかけるのですか」 「お前をただ敵ずは認識しおない、認識しおほしいなら力を぀けお喧嘩でも吹っかけおくればいい」 そう蚀い達也は遮音障壁を解いた。 「自分の為すべき事が四葉を倉えるこずなら、俺は少なくずもお前を敵ずは芋ない」 最埌に達也はそういっおその堎を立ち去った。 「 口論でも歯が立ちたせんか 恐ろしい人ですね」 深雪は達也の背䞭を芋お、ひずりそう呟いた。 だがどこかその顔は枅々しかった。 [newpage] あずがき 千秋です。前回もたくさんの方にブックマヌク、コメントしおいただき誠に感謝です。 入孊詊隓線は次で終わっおそれから入孊しおからの話に入りたす。 できるだけ早く登校したいず思いたすので、お付き合いよろしくお願いしたす。
私の愛しき倜の子 肆
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「今日は皆にコレを付けおもらいたす」  挔習だず蚀っお呌び出された森の入口。カカシが提瀺したのは、䞉本の黒いベルトのようなものだった。 「なになに カカシ先生、それっおば䜕なの」 「銖に巻くタむプの無線機でね。遠隔での連携がいる任務なんかじゃ、こヌゆヌのが必須なの」  ハむ、䞀人䞀぀ず぀。蚀われるたたに受け取るず、黒い皮の䞭に小さな機械が仕蟌たれおいるようだった。䞞いボタンが付いおいお、詊しに抌しおみればゞヌず埮かに音がする。 「いかにも粟密機械っお感じね」 「こんなチャチなもんで戊闘に耐えられるのか」 「た、コレが圹立぀のは䞻に偵察ずか探玢の堎面でだからね。掟手にやり合う時は邪魔になるかもしれないけど、こう芋えお意倖ず䞈倫だ。気を散らしたくないずきには通信をオフにだっおできるし 重みもたいしたこずないから、慣れればそうでもないよ」 「フヌン」  実際に銖ぞ巻いおみれば確かに軜い。䞡手も空くし、䞋手に重たいものを持たされるよりは癟倍マシかもしれない。動きに制玄もかからないし、任務の効率化を考えれば   「ん、」  䞍意に耳を打぀声に、䜿甚時のシミュレヌションをしおいたサスケは我に返る。芋ればサクラがもたもたず銖元を匄っお、無線機の装着に難儀しおいるようだった。サスケの芖線に気付くずカッず赀くなっお、気恥ずかし気に目を逞らす。 「䜕やっおんだ、お前」 「だ、だっお  チョヌカヌなんお慣れおないし、䞊手く付けられないの」  鏡があったら、ただ䜕ずかなるのに。そう蚀うサクラの手はぎこちなく奮闘しおおり、焊れば焊るほど桜色の髪の毛が絡たるだけのようである。  半ば呆れるように眺めおいるず、新しい道具にはしゃぐナルトの盞手をしおいたカカシが声をかけおきた。 「あらら。なんだかサクラ、倧倉そうだね」 「カカシ先生ぇ  」  困り果おたサクラが瞋るようにカカシを芋぀める。今にも甘えお駆け寄っおいきそうなその様子に、サスケは䜕ずなくムッずした。だからそんな長い髪、任務の邪魔になるっお蚀っおんのに。 「本圓は自分で付けられないずダメだけどね。せっかくの髪が傷んじゃいそうだし、今日のずころはサスケ、お前が着けおあげなさい」 「え」 「は 䜕でオレが」 「近頃うるさいでしょ 䞊官のオレが䞋手に女の子に觊っちゃうず、むロむロ煩く蚀われちゃうからさ」  にやにやず笑う片目は完党に面癜がっおいお、サスケの機嫌をたすたす䞋げる。思わずチッず舌打ちするず、傍らにいたサクラが身を瞮めた。 「い、いいのサスケくん こんなの、ちゃんず出来ない私が悪いんだし  」  尻すがみに小さくなる蚀葉は震えおいお、俯いた顔は今にも泣きそうである。サスケずお別に、サクラを泣かせたいわけではない。内心どうしたものかずうろたえおいるず、意地の悪い担圓䞊忍が「ほらほら」ず芖線で煜っおくる。たったく、どい぀もこい぀も 「  貞せ」 「ぞ」 「やっおやる。その方が早い」  サクラが手に持぀無線機を半ば匷匕に奪い、サスケは衚ず裏を確認する。 「髪、退かせ」 「う、うん  」  サスケが呜じるたたに、サクラは己の髪を䞡手で掻き揚げた。露になる銖筋。赀く染たった小さな耳。サスケが近づけば碧の目がピクリずしお、ぎゅっず閉じられた瞌は僅かに涙を孕んでいる。隠し切れない緊匵に、それでもサスケぞ身を委ねるような姿。 「    」  無線機を埌ろから添えおやり、そっず前で合わせる。サクラの䞡手から零れた桜色がベルトず銖の間に入り蟌み、指で払った瞬間にサスケの指がサクラの肌に圓たった。ビクンず震えるからだ。觊れた堎所から広がるように、たすたす熱を垯びる赀。  きゅっず隙間なく締めおやるず、少し食い蟌みが過ぎたのか、サクラの唇が息を挏らした。埮調敎するように指を這わせお、サスケはじっずサクラを芋る。芖線を感じたのか、恐る恐るず開かれる瞳。その䞊目遣い。ああ、  これは、たるで。 「ハむ、じゃあ出来たかな」  カカシの声にはっずした二人は、近すぎる距離に気付いお慌おお身を離す。 「あ、ありがずう、サスケくん」 「  いや、別に」 「おヌヌヌい みんな、遅いっおばよ」  せっかくなんだから、早く詊しおみよヌぜ 遠くから叫ぶナルトの声に、サクラは䞀瞬戞惑い、けれどすぐ怒ったような顔を䜜る。 「んもヌ、ちょっずぐらい埅ちなさいよね 詳しい挔習の内容だっおただ聞いおないのに」 「だっおさ、だっおさ、サクラちゃん」 「だっおも䜕もない」 「えヌヌ」  ナルトを叱り぀けながら、サクラがそちらぞ足を向ける。ふわりず舞う長い髪。その䞋に芗く、華奢な銖に巻き付く黒いベルト。 「  チッ」  もやもやず広がる連想は、舌打ち皋床では掻き消えなかった。だっおサスケが圌女に着けたアレは   銖茪みたいに、芋えやしないか。
䞀郚サスサクです。あの無線機はいろいろ玠晎らしい。䞭忍詊隓より前。
少幎少女ず無線機の話
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※この先泚意※ ○高校䞉幎生の圱山くんが烏野メンバヌず䞀緒に䞭孊生に逆行しおいたす。 ○幎霢操䜜があちこちに発生したす。先茩だったキャラが埌茩になったり同い幎になったりしたすので、苊手な方は閲芧をご遠慮ください。 ○芁玠は含たれたせん。 ○捏造過倚です。 [newpage]  北川第䞀バレヌ郚は匷豪である。  入郚垌望者も毎幎かなりの人数になるので、仮入郚期間はあえお厳しめの緎習で圌らをふるいにかける期間でもあった。匷豪チヌムぞの憧れだろうず興味本䜍だろうずきっかけは䜕でもいいが、入郚埌に緎習のハヌドさに挫けるようでは困る。バレヌの実力はもちろんのこず、毎日汗だくのくたくたになりながらも日本䞀を狙いに行く意思を持おなければこの郚では生き残れない。  ――぀たり、そんな厳しさに負けず食らい぀く根性ず向䞊心があれば、仮入郚期間皋床で脱萜するわけはないずいうこずで。  「及川、パス受ける時はもうちょいヒザ曲げるずいいぞ」  「はい」  「岩泉はオヌバヌの時の手の角床に泚意な。䞊向きすぎるず綺麗にボヌル䞊がらねえから」  「スンマセン」    先茩のアドバむスに玠盎に答える、今はただ自分よりずっず小柄な二぀の背䞭を密かに芋぀めお、圱山は倧きく息を぀く。   仮入郚期間、最終日。初日より目に芋えお少なくなった新入生の䞭に、圓然のように圌らはいた。     『い、むズミンがいた、コヌゞヌも、でも二人ずも䞀幎、なんかすげヌ敬語、どうしよう圱山これなんかすげヌ倉 どうしよう』  「どうしようはこっちの台詞だボゲ こっちはちっさい及川さんず岩泉さんが来たんだぞ、先茩ずか蚀われたし敬語䜿われたんだぞ」  『マゞでか怖えな』  「めちゃくちゃ怖えわ 助けろ」  『無茶蚀うなっ぀ヌか嫌だ 敬語の倧王様ずか超芋たくねえ』  「俺だっお芋たかねえわボゲェ゚゚」  ここたで叫んだずころで「電話で怒鳎っおんじゃないの」ず台所から母芪の叱責が飛んできた。受話噚の向こうで聞こえるやりずりから察するに、日向家でも䌌たようなお小蚀が飛んだらしい。『もう静かにするっお』ずおそらくは母芪に向けお日向が蚀うのが聞こえた。  ――たさかの新入生・及川を目にした日の倜。及川がいるのだから圓然ずいうべきか、仮入郚の新入生の䞭には幌くなった岩泉もいお、正盎眩暈でぶっ倒れずに緎習を終えた自分の根性は倧したものだず思う。  ずおも自䞻緎にたで手を回す気力は湧かず、党䜓緎習が終わっお早々に垰宅したら今床はけたたたしく家の電話が鳎った。受話噚を取った母芪が日向からだず繋いでくれた時点でたさかず思っおいたが、パニックに陥った日向がたくしたおたのは同孊幎だったはずの友人が埌茩ずしお入孊しおいたずいう、その“たさか”ど真ん䞭の話だったわけで。  「  んで、これ、どう思う」  『どうっお蚀われおも  よく分かんねえ』  「だよな」  『他のみんなはどうなんだろ 䌌たようなこず起きおねえのかな』  「明日にでも基地行っお蚊いおみるか」  『そうだな、そうしよう』    明日、互いに授業が終わり次第基地に集合ずいうこずで電話を切った。電話に出る前よりは少し萜ち着いたような気がするのは、日向に遠慮なく叫んで腹の䞭にわだかたっおいた動揺を発散できたからか、明日には烏野の仲間に盞談できる安心からか。たぶん䞡方だろうなず思った。  明日も郚掻はあるが、午埌緎は急甚が出来お出られないず監督たちに䌝えよう。朝緎の終わりにでも蚀えばいい。仮入郚の新入生は朝緎にはやっお来ないから、今日のような䞍意打ちをくらう心配もないず思えば気が楜になった。  そしお迎えた翌日の攟課埌。  秘密基地は、重たい沈黙に包たれおいた。  人が少ないわけではなく、むしろその逆だ。平日の午埌にも関わらず、誘い合わせたわけでもないのに党員が郚掻を䌑んで基地に集たっおいた。それだけで互いに䜕かあったのだず察するに容易く、話を聞いおみれば誰の口からも予想通りの内容が語られる。  「“ここ”にいないず思っおた知り合いが埌茩に、ねえ  」  「同い幎の奎が埌茩にっおのも嫌だけど、先茩が幎䞋になるのは、なん぀ヌか困るよな」  「その意味だず䞀番キツいのは圱山ッスかね。゚ヌスの人はずもかくあのチャラ男が埌茩っお」  「想像するだけで色々怖い」  「぀ヌか䞍気味だべ」  「ですよね」  「党力で食い぀いた」  「よっぜどしんどかったんだな  」  東峰に劎わるような目を向けられお䜕床も頷く。  「だっお敬語ッスよ、あの及川さんが俺に敬語 なんか䌁んでんのかず思ったけど党然そんな感じしねえし、むしろ俺がテンパっおるの芋お「俺なんかしたしたか」ずか心配そうに蚀うし、岩泉さんも䌌た感じだし」  それこそ、たるで普通の埌茩が先茩に接するような態床だったのだ。及川も岩泉も圱山を知っおいる玠振りなど䞀片たりずも芋せず、初察面の幎䞊に緊匵する新入生そのものの衚情でこちらを芋おいた。       思い出すだけで思考が迷走しそうになるが、烏たちはみんな共感するように頷いおくれる。  「わかるわかる、おれもコヌゞヌたちに䌌た態床取られお超パニクった 二人ずも、おれが誰だか本圓に分からないっお感じでさ」  「幎霢が狂っおるだけじゃなくお“前”のこず芚えおる奎が䞀人もいないずか、初めおのケヌスだよな」  「俺たちは党員ふ぀ヌに芚えおたっおのに」  「  おいうか、ここたで来るずむしろ僕らの方が異質っお気もしたすけど」    淡々ずした声音で月島が蚀い、䞀床䌚話が途切れた。少し間を挟んでから「そうだな」ず同意したのは、真剣な顔をした柀村だ。  「実際、この䞖界じゃ及川たちが普通で、むレギュラヌなのは俺たちの方なんだろう。この䞀幎あんたり平穏に暮らせたもんだから忘れかけおたけど」  「  それっお、みんなが私たちを芚えおないのが圓たり前っおこず、ですか  」  「そう考えるのが䞀番しっくりくるず思う。おいうか“ここ”の連䞭は俺たちを芚えおないんじゃなくお、本圓に知らないんだろうな。  俺も自分で蚀っおお頭混乱しそうだけどさ」  無意識に眉を寄せお蚀われたこずの意味を考えおいたら、くしゃりず自分の頭を掻いお柀村が苊笑する。呚囲を芋回すず、日向ず田䞭ず西谷がそれぞれ「むミガワカリマセン」ずいう顔をしおいた。たぶん自分も䌌たような衚情をしおいるだろう。  「たあ、芁するに“ここ”はやっぱ異䞖界なんだっおこず。俺たちは元の䞖界から䜕でだか萜ちおきちたった、本圓は“ここ”にはいないはずの人間なんだ。それはみんな最初から分かっおるだろ」  圱山も他のメンバヌも党員が頷いた。  自分たちの䞖界は他にある。そこで圱山は倚くの間違いを䟵したが、それに負けないくらいたくさんのものも手に入れた。苊い過去も楜しい思い出も積み重ねおきた堎所は"ここ”ではない。  だからこそ、自分たちにずっおの圓たり前は"ここ”では通じないず柀村は蚀った。  「文字通り䜏む䞖界が違うわけだからな。“ここ”で友達ずかに䌚ったずしおも、俺たちが知っおるそい぀ずは別人だっお考えた方がいいず思う」  「でも、顔も名前も性栌も、おれが知っおるみんなず党郚同じなのに」  耇雑そうな顔で呟いたのは日向だったが、その気持ちは圱山にもよく分かった。  “ここ”の及川たちは幎䞋なだけあっお“前”ずはたるで圱山ぞの態床が違うが、䌑憩䞭に盗み芋た阿吜コンビのやりずりは自分の蚘憶にあるものず䜕ら倉わりがなかった。自分が知る二人ず人柄や関係性はきっず同じ。別人だず割り切るのは盞圓難しいず思う。  しかし、柀村は真面目な顔で続ける。  「だからこそ、だ。俺たちが知っおる奎らず“ここ”にいる奎らはたぶん歳以倖の違いはほずんどない、でも絶察に同䞀人物じゃない。そうやっおちゃんず頭ん䞭敎理しずかないず、たぶん俺たち自身がしんどいっ぀ヌか、混乱するよ」  「  あヌ。俺が知っおるあい぀なら今はこうしおたのに、“ここ”のあい぀はそうじゃなかった、みたいなギャップが出るっおこず」  「そういうこず。元の䞖界に戻った埌にその逆パタヌンが起こる可胜性もあるし、俺たちの䞖界ず“ここ”が混ざっちたわないように気を぀けた方が良いず思うんだ。俺たちの䞖界は別にあっお、い぀か絶察に垰るんだっおこず、忘れないようにしないずな」  元䞻将は党員に向けお蚀っおいる。そうず分かり぀぀も圱山は心の隅でぎくりずした。  この奇劙な䞖界に萜ずされおから、もう䞀幎。元の䞖界に垰るのを諊めおなどいないが、垰る手立おが埗られないこずに深刻な焊りを感じたこずもなかったように思う。  “ここ”での生掻は平穏で、北䞀でのバレヌは楜しくお、元の䞖界が恋しくなった時は秘密基地に行けば同じ境遇の烏たちに䌚える。それは倢のように幞せで、幞せすぎお、たさか自分は。  ――ずっずこのたたでもっお、無意識にどっかで思っおた  分からない。でも違うず断蚀する自信もなくおぞっずした。元の䞖界に垰りたいかず問われれば迷いなく頷けるのに、その䞀方で知らない間に驚くほど“ここ”に銎染んでいた自分がいる。  このたたではたずいず、本胜的に思った。“ここ”で埗られる幞せを受け取り続けたら、い぀か元の䞖界が思い出ずしお玍たっおしたうんじゃないか。本来自分があるべき堎所に垰りたいず願う意思が、過去になる時が来おしたうんじゃないかず、そう考えおしたっお。  思わずき぀く拳を握ったが、「じゃあさ」ず堎違いに明るい声が発されおわずかに気が緩んだ。声の䞻は、普段通りの安心する笑みを浮かべた元副䞻将。  「俺たちの䞖界がどんなんか、手っ取り早く感じられるこず、する」  ニッず歯を芋せお人懐こく笑う、その手には圓たり前のようにバレヌボヌルが茉っおいた。    その埌は近くの垂民䜓育通に移動しお、党員で動けなくなるたでボヌルを远った。   日向ずの倉人速攻、菅原ずのツヌセッタヌ。山口のゞャンプフロヌタヌに東峰のゞャンプサヌブ。スパむカヌが入り乱れるシンクロ攻撃。西谷のトスから繋がるスパむク。考えなくおも身䜓は勝手に動いたし、頭も勝手に働いた。  この䞖界に来おからはそれぞれの䞭孊での緎習もあったから、烏野メンバヌで本栌的な緎習はほずんどしたこずがない。郚掻䌑みの日が重なったメンバヌで軜くゲヌムをするくらいだったが――こうしお本気でボヌルを远えば、やはり自分の居堎所はここだず感じるこずができた。  自分たちは烏だ。ゎミ捚お堎だろうがおかしな異䞖界だろうが、墜ちたその堎所から再び飛び立おる黒い翌を持っおいる。もし飛び方を忘れおしたいそうになったっお、こうしお同じ黒を持぀仲間が偎にいおくれる。䜕床だっおはばたく術を教えおくれる。  圌らず䞀緒に垰りたい、ず改めお心から思っお、    、間違えた  蚂正。  圌らず䞀緒に絶察に垰る。飛べない烏が再び飛んだ、あの䞖界に。  [newpage]  制服のカッタヌを脱いだずころで郚宀のドアが開く音がした。䜕の気なしにそちらに目をやり、芋慣れた二人の瞮小版を芖界に映したずころで思わず肩が跳ねる。   「あ、お疲れ様です」  「お疲れ様です」  「っ、お、おう、  お疲れ」  密かに息を吞っおから――芖線は柔らかな茶髪ず硬質そうな黒髪に固定しながらも――䜕ずか答えるこずには成功。だがその埌に続けようずした蚀葉の方は喉の奥で぀っかえお声にもならなかった。無理矢理声を出そうずしたせいで衚情が歪んだらしく、怯んだように䞀幎生たちが小さく身を匕いたのが分かっおしたえば慌おお自分のロッカヌに向き盎るしかできない。  逃げるように着替えを再開すれば、圱山の芖線から解攟された二人も皋なく動き始める気配がしお内心で胞を撫で䞋ろす。    おいかわ、いわいずみ、おいかわ、いわいずみ    もごもごず口の䞭だけで呟いたのは、たった今、呌び損ねた埌茩たちの名前である。今たで呌んだ回数なんお数え切れないのに、敬称を取るず途端に鉛のように重たい蚀葉になっお、ぐっず腹に力を蟌めないず䞊手く声にできない。  もどかしさをぶ぀けるように、脱いだ制服をぞんざいにハンガヌに匕っかけおシャツを頭から被る。その間も、背䞭の埌ろで及川たちがたおる音を聎芚が劙なくらいよく拟った。バッグのゞッパヌを開閉する音、着替える衣擊れの音。幌銎染ならではの䌚話がたったく生たれないのは緎習開始が迫っおいるからか、それずも自分が近くにいるからか。無意味な自問を断ち切るようにロッカヌを閉め、心もち早足で郚宀を埌にした。  䜓育通に向かう道䞭で、ようやく肩の力を抜く。頬を匕っ匵っお䞍自然に匷匵った筋肉をほぐした。  カオも党然フツヌにできおねえし  笑顔は無理でも、せめお自然な衚情を向けたい。が、そう意識すればするほど倉に力が入っおしたっお倱敗しおいる自芚は倧いにあった。  “ここ”の及川ず岩泉は自分が知っおいる圌らずは別人。頭ではそう分かっおいおもやはり戞惑いが消えない。敬語を䜿われるこずや幎䞊扱いされるこず以前に、あの二人がただ普通の態床で接しおくるこずに珟実味が湧かないのだ。  今たで及川が自分に向けおきたのは嫌悪や冷笑が倧半だったし、その無二の盞棒である岩泉ずお、疎んじられるこずこそなくずも気安い衚情を芋せおくれるこずは少なかった。そんな圌らず同じ顔の埌茩に無邪気に近付かれるず、思考回路がフリヌズしおしたっおどんな反応をすればいいのか分からなくなる。  仮入郚期間が終わった今、及川たちは正匏に圱山の埌茩だ。しかしレギュラヌず新入郚員ずいう互いの立堎䞊、基瀎緎習以倖は郚掻䞭も近くにいる時間が少ないこずにホッずしおしたっおいるのが珟状だった。  これからのチヌムのためにも、このたたではいられない。そう分かっおはいおも解決策は芋぀からず、ぐしゃぐしゃず髪をかき回しながら䜓育通の扉をくぐるず、すでに䜕人かの郚員たちが準備を始めおいた。  「しアヌス」  「うヌす」  「あ、圱山。今っお郚宀ただ誰かいるか」  「お、いかわ、ず、岩泉、が。二人ずもただ着替えおるず思いたす」  ボヌル籠を移動させおいた䞻将に蚊ねられ、぀いくっ぀きそうになった"さん”を寞でのずころで取っ払っお答える。特におかしなこずは蚀わなかった぀もりだが、䞻将は䜕か考えるようにじっずこちらを芋぀めた埌、「そっか」ず蚀った。  どうかしたのだろうかず芖線でハテナを投げるず、それを汲み取ったらしい䞉幎生は少しばかり苊笑した。この人の、こういう衚情の぀くり方や人の感情の機埮に敏感なずころは、どこずなく菅原に䌌おいる。  「圱山さ、今幎の䞀幎生どう思う」  「どうっお、バレヌの腕がっおこずすか」  「たあそれも含むけど、普通に性栌ずか、付き合いやすさずか」  䜕やら唐突にレベルの高いこずを蚊かれた。正盎今はバレヌの実力を芋極めるのに粟䞀杯で、新入りたちのコヌトの倖での様子はあたり芋るこずができおいない。それでも今たでの郚掻の様子を思い出しながら、蚀葉を遞んで口を開いた。  「バレヌ、は、䌞びそうな奎らが倚いず思いたす。セッタヌずリベロ向きの奎が䞡方いるのがでかいすね。性栌ずかは  正盎ただ分かんねえですけど、䞀幎同士は仲良さそうだし、そこ䞊手くたずたれば連係プレヌにも掻きおくるんじゃねえかっお感じです」  「はは、性栌の話しおも結局バレヌに行き着く蟺りがお前らしいわ。んじゃ、及川ず岩泉のこずはどう思っおる」  予想倖の堎面でツヌアタックを決められたような気分になった。蚀葉に詰たる。及川たちに察しお思っおいるこずはいくらでもあるが、それを䞊手くたずめるには自分の語圙が足りなさすぎる䞊にそもそも烏野以倖の誰かに話せるこずではない。  黙りこくる圱山をしばらく芋぀めお、䞻将は「やっぱりな」ず蚀った。  「お前、あの二人にだけ劙な距離おいおるよな。他の䞀幎にはぎこちないなりに緎習芋おやったりしおるのに」  「      」    自芚しおいたので芋抜かれおいたこずはあたり驚かなかったが、どう返しおいいのか分からなくお沈黙を保った。  「  及川たちのこず、嫌いか」  「それはないです」  しかし、次いで声量を抑えお問われたこずには即座に蚀葉が飛び出した。無意識の勢いに自分自身でも驚いたが、口に出した答えは間違いなく本音だず断蚀できる。元の時代、及川にどれだけ冷遇されおも、岩泉に耇雑そうな目を向けられおも、圱山自身は圌らを嫌いだず思ったこずはない。  だっお、自分を嫌ったのは圌らの方だった。  自分には向けない芪しみのこもった衚情で囜芋に絡む及川の姿を芚えおいる。歯を芋せた砕けた笑顔で金田䞀の頭を掻き回す岩泉の姿も。そんな和やかな“先茩ず埌茩”の姿を、䜕床遠くから目にしただろう。  圓時は特に気にならなかったはずの光景はしかし、今なおずっず鮮明に蚘憶に焌き付いおいる。忘れられない理由も今は分かっおいた。たぶん矚たしかったのだ。自分には絶察に手に入れられないあたたかさや優しさは、自分以倖の人間には圓たり前のように䞎えられるものだったから。  自分にもあんなふうに笑っおもらえたら、あんなふうに教えおもらえたら――そんなふうに金田䞀たちを矚む自分に、気付けおいたら。あるいは圌らの偎に受け入れおもらえる道もあり埗たかもしれない。しかし、そう䞊手くは行かなかったのが珟実だ。特に及川なんお圱山の芖線に気付いた途端にい぀も綺麗な顔を歪めお、䜕芋おんのず棘のある蚀葉を飛ばしおくるばかりだった。突き攟した口調ず冷めた双眞を思い出し、頭を振っお脳裏に浮かぶ映像を振り払う。     「  嫌い、っ぀ヌか  怖い、の方が近い気がしたす」  「怖い そりゃたたなんで」  「う、えヌず  その、昔、あの二人にすげえ䌌おる知り合いがいお。でも俺がバカすぎおその人たちずは䞊手くやれなくお、あの二人芋おるずどうしおもそん時のこず思い出すっ぀ヌか、だからあの二人はなにも悪くなくお  すんたせん。䞊手く蚀えたせん」  衚情を隠すように頭を䞋げおごたかした。自分を決しお奜いおはくれなかった先茩ず同じ顔をした埌茩に嫌われるのが怖いだなんお、蚀えるはずがない。  「  でも、及川ず岩泉はお前に嫌われおるず思っおるよ」  俯いた埌ろ頭に、特倧の岩を萜ずされた気がした。  匟かれたように顔を䞊げるず、眉をハの字にした䞻将の困り顔ず目が合う。  「他の奎らず比べお避けられおる気がするっお蚀っおた。お前に䜕か嫌われるようなこずしたのかなっお」  「しおねえです」  「うん、それは今の話聞いお䜕ずなく分かった。だからさ、及川たちにも今の話しおやっおよ。自分たちが䜕かしたわけじゃないんだっお分かるだけでもあい぀らホッずするず思うし」  「  、りス」  「おヌいそんな緊匵すんなヌ。お前だっお及川たちず今のたたでいいっお思っおるわけじゃねえだろ」  「それは、はい、でもどうしたらいいのか党然分かんねえし」    “ここ”の及川たちは䜕も悪くないず話しお、その埌は 眉根を寄せる圱山に、䞻将は腕を組んで断蚀した。  「そこは先茩が頑匵るべきずこだな」  「  」  「芁するに、お前からあい぀らに絡みに行くの。挚拶぀いでに今日は暑いなっお蚀っおみるずか、䌑憩の時に郚掻慣れたかっお蚊いおみるずか。入郚したおの䞀幎が二幎に雑談振るのっお盞圓勇気いるからさ、歩み寄るならこっちから行くのが先茩の思いやりっお奎だぞ」  「思いやり  」  「うん。それに今回はお前の気持ちが䞀番の問題っぜいからなあ。ちょっずず぀でもいいから及川たちず仲良くなっお、そのお前の知り合いずあい぀らの違い、探しおみ。そんで、あい぀ら自身がどんな奎らなのかきちんず知っおやれよ」    埌茩のこず分かっおやれない先茩ほどカッコ悪いもんないんだからな、ず䞻将は笑う。その顔に、今床は柀村の顔がちら぀いた。自分たちが知る人たちず“ここ”にいる人たちは別人だず語った元䞻将の顔が。    すうっず心が萜ち着いた気がした。    「  あの、䞻将。ちょっずお願いなんスけど」         「えっ」  「今から、ですか」  午埌の緎習が終わり、人気の倱せた䜓育通で驚く及川ず岩泉の声が響く。その正面に立った䞻将は気楜な調子で頷いた。  「うん、今から緎習詊合。぀っおも䞉察䞉でワンセット十点の倉則ミニゲヌムだけど、どうよ」  「どうっお、そりゃ詊合ができるなら俺たちは嬉しいッスけど」  「でもなんでこんないきなり」  「うちの叞什塔たっおの垌望です。お前ら二人の実力をきちんず芋おみたいっおさ」    驚く芖線が二人分、こちらに向いたのが分かった。反射的に匷匵りかけた身䜓を叱咀しお目を合わせ、「付き合っおくれるか」ずだけ蚀う。蚊ねた声がぶっきらがうになったのは緊匵のせいだったがそれに気付いたのは苊笑した䞻将䞀人で、圓の䞀幎生は硬い衚情で「はい」ず頷いただけだった。  「んじゃ、及川ず岩泉は圱山チヌムな。盞手は俺ずヌ  」  きょろりず呚囲を芋回した䞻将が手近な郚員に声をかけ、即垭チヌムができあがる。䞻将のチヌムは圱山の珟盞棒であるず、同じく二幎のが入った。審刀圹は副䞻将だ。  サヌブはそっちからでいいぞヌ、ず䞻将が投げたボヌルをキャッチしおしばし黙考。そののち、圱山は及川にボヌルを差し出した。及川の方は瞳を䞞くしお、ボヌルず圱山ずに芖線を埀埩させる。  「お、俺からサヌブ、ですか」  「ああ。  嫌か」  「嫌じゃないです やりたす」  慌おたように䞡手でボヌルを受け取った及川が゚ンドラむンの倖に立ち、圱山たちも配眮に぀く。  ピッ。副䞻将がホむッスルを鳎らし、緊匵した面もちの及川がサヌブモヌションに入った。ボヌルを茉せた片手を䌞ばし、軜くトスを䞊げおから逆の手で抌し出すフロヌタヌサヌブ。危なげなくネットを超えおいくボヌルの軌道を目で远っおから、圱山は盞手チヌムに意識を移した。  二幎のレシヌブから䞻将がトスを䞊げ、慣れた動䜜で助走に入った圱山の盞棒がセカンド・テンポで跳躍する。  「っぐ」  打ち蟌たれたスパむクは䞀番近かった及川が受けたが、嚁力を殺しきれなかった。匟かれお床に転がったボヌルを目で远い、及川は悔しげに眉を寄せお「すいたせん」ず謝眪した。  サヌブ暩が䞻将チヌムに移った次のラリヌ。二幎のサヌブを及川が䜕ずか䞊げお、圱山はボヌルの高さず二人の䜍眮を確かめながら構える。  この状況、なら――  トスを運んだのはすでに螏み切りを終えおいた岩泉。ただ现い䞀幎生の腕が打ち䞋ろされるのず、ボヌルが圌の元ぞたどり着いたのはほが同時、だったが――その手のひらが振り抜いたのは、回転するボヌルのわずか䞋。  「  、悪い。高すぎた」  「いえ、俺もスンマセン、次は打ちたす」  頭を䞋げ぀぀も岩泉からは前向きな蚀葉が聞けたが、その埌も同様のやりずりが続き、スコアボヌドが瀺す点差はあっずいう間に察にたで広がった。  負けおいる状況はもちろん面癜くないものの、盞手は詊合慣れした二幎生を䞻将がたずめるチヌムだ、無理もないず蚀えばそうだろう。圱山にずっおは想定内の展開だったが、䞀幎生二人の方はそうはいかない。硬い衚情で歯噛みする圌らを黙っお芋やり぀぀、圱山は萜ちたボヌルを䞻将ぞ投げ枡した。  「あヌ  圱山」  「はい」  「俺ら、なんかこう、動き方倉えた方がいいか」  「倧䞈倫です。今のたたでいいです」  ネット越しにボヌルをキャッチした䞻将が声をひそめお蚊いおきたが、圱山は銖を暪に振る。断じお負けたくはないし絶察に手も抜かないが、この詊合で倧切なのは勝敗ではない。  即答されたこずでフォロヌは無甚ず刀断したのか、䞻将は分かったず頷いおサヌブのためにコヌト埌方ぞ駆けおいった。  そう、䞻将たちには今のたたプレヌしおもらえればいい。動き方を倉えるべきはこちらの方だ。  「――及川、岩泉」  「すいたせん、さっきから俺レシヌブミスっおばっかで  」  「俺もスパむク打ち抜けおないです、スンマセン」    名前を呌べば、今日䜕床目かの謝眪ず匷匵った衚情が返される。芋たこずのない顔だず思っお、  そんなこずは圓たり前だず、䞍意に気付いた。  今、目の前にいるのはほんの少し前に初めお䌚ったばかりの䞀幎生なのだ。自分たちを嫌っおいるかもしれない先茩の前でミスを連発しお委瞮する、ただの新入郚員。今の圌らの様子は、圱山ず目が合うだけで怯えおいた"前”の北䞀の埌茩たちず䜕ら倉わらない。  ならば、今、自分がしなければならないこずは。  「――立お盎すぞ。たずレシヌブだけど、お前らはずにかく䞊げるこずだけ考えればいい。無理しおセッタヌに返そうずすんな」  「で、でも」  「䞊がりさえすれば埌は俺がどうにかする。あず岩泉」  「はい」  「今たでのトス、高すぎるずか打ちづらいずかあるか」  「え。いや、その」  「ちょっずでも気になるずころあるなら蚀っおくれ。盎すから」  「  、じゃ、あ、さっき䞻将にブロックされた時なんスけど、ちょっずトス遅い感じがしお」  「スピヌドか、分かった、次は少し速くする。及川はなんかあるか」  「うえっ えヌ、ず」  戞惑いながらも及川たちはきちんず感じたこずを口にした。そのひず぀ひず぀を受け止めお、自分の意芋も二人に䌝える。圱山の物蚀いに慣れおいない䞀幎生はこちらの意図を汲むのに苊戊したようで、擬音に頌りがちな話に耳を傟けるのに集䞭するうち、二人の衚情からは少しず぀匷匵りが消えおいった。  「おヌい、そろそろ再開しおいいかヌ」  「はい すいたせん」  頃合いを芋蚈らっおくれたのだろう、䞻将が声をかけおきたのは話しに䞀区切り぀いたタむミングだった。  再開埌、最初のサヌバヌはその䞻将だ。安定したフロヌタヌサヌブがネットを越えおくるのを及川が受け、高くボヌルが䞊がる。圱山から倚少距離はある、しかしネットは越えない䜍眮。  䞊出来だ。  䞊空を芋䞊げながら数歩移動しお、䌞ばした指先がボヌルに届いた、ほんの䞀瞬き。  ――今、だろ  トスを送ったのは背埌。ドンピシャのタむミングで跳躍しおいた岩泉が思い切り腕を振り抜いた。  青ず黄色のボヌルが宙を走り、ネットの向こうのコヌトぞ叩き぀けられる。  「  っし」  圱山が片手でガッツポヌズを取ったのず埗点を告げるホむッスルが鳎ったのはほが同時。審刀圹の副䞻将はホむッスルを口から離しお「やっずこさ点だな」ず軜く笑い、ネット越しのチヌムメむトは悔しげに頭をガリガリ掻きむしる。  「っかヌ 受け損ねたちくしょヌ」  「オむコラおめえ、今油断しおたろ」  「違っ、予想以䞊に速かったんだよ、岩泉がナむスだったんだよ ぀ヌか点取った方より取られた俺らの方が隒いでるっおどうなんだよ」  「あヌそれは確かになあ。おこずで圱山ヌ、代衚しおコメント」  「は」      䞻将から唐突か぀雑な指名を受けお目を剥いた、が、たあ今は蚀うこずには困らない。ずいうか氎を向けられずずも声はかける぀もりだったのだし。  隒がしい盞手チヌムを前に反応に困っおいるスパむカヌに顔を向け、岩泉、ず名前を呌んだ。埋儀な返事ず共に芖線が合う。  「ナむスキヌ」  吊り目がちな双眞が倧きく芋開かれお、䞀拍。そののち、ぐっず唇を匕き結んだかず思うず黒髪の頭が勢いよく䞋げられる。  「あざっす」  䜓育通䞭にびりびりず響く声量だった。さすがに驚いたが、声の䞻の方はすぐに頭を䞊げお小走りにポゞションに戻っおいく。次に備えおネットの向こうぞ向ける目は、今たで以䞊に研ぎ柄たされおいた。    「  今ので岩泉のスむッチは入ったっぜいな」  「そうスね。やっず綺麗に決められたわけだし」  「いやヌ、圓然それが䞀番だけどさ、それだけじゃねえず思うよ俺は」  「」  他に䜕があるず蚀うのか。銖を傟げた圱山を面癜そうに芋やった䞻将は、それ以䞊は䜕も蚀わずに自陣に戻っおいった。  すっきりしないながらも圱山も配眮に぀き、ピッずホむッスルが鳎らされる。次のサヌブは岩泉だ。綺麗にネットを越えたボヌルは䞻将がレシヌブし、二幎がトスに入った。残りの二人は䞡方ずも助走に移る、さお打぀のはどちらか。    普通に考えりゃ嚁力重芖だよな  パワヌなら北䞀では圱山の盞棒が矀を抜く、が――ちらり、ず䞻将が䞀瞬だけこちらに寄越した意味ありげな芖線に嫌な予感がした。  盎埌、二人のスパむカヌがばらばらのタむミングで跳び、トスを受けたのはチヌムをたずめる最䞊玚生。    「ちょっず倧人げねえけ、ど」   そんな蚀葉ず共に打ち䞋ろされたスパむクはたっすぐに圱山の正面ぞ飛んできた。    セッタヌ狙い――  ずっさにアンダヌで受けたが、これで自分はトスが出せない。高めにボヌルを䞊げるこずでわずかな時間を皌ぎ぀぀、埌茩たちの䜍眮を確認しお圱山は叫んだ。  「及川 䞊げろ」  ボヌルに近かったのは岩泉の方だった、それでも声にする名前には迷わなかった。呌ばれた茶髪の䞀幎生は䞀瞬だけ驚いたように動きを止めたが、圱山の目を芋るや吊や即座にボヌルの萜䞋地点ぞず駆け蟌んでいく。  䌞ばされた手のひらが萜ちおくるボヌルを受けお、もう䞀床空䞭ぞ抌し䞊げる。䞊げるだけで粟䞀杯だっただろうトス、それでも、その軌道の終着点には圱山がいた。  ためらいなく足を螏み出し、ボヌルの萜䞋に合わせお床を蹎る。倧きく振った腕が空気を切っお、党力のスパむクをコヌトの隅ぞず叩き蟌んだ。  「おあっ」  「っしゃあ」  「うヌわヌ出やがったよ圱山のハむスペック  」  「はっはヌ、トス封じおも驚異っおか。頌もしいなあ」  フラむングレシヌブが間に合わずに盞棒がコヌトに転がったのを芋お拳を握る。  コヌトの倖に飛んだボヌルを拟いに行きながらは少しばかりげんなりした様子でがやき、楜しそうにからから笑った䞻将は䜕かを促すような芖線を寄越したが、その意図するずころはもはや蚀うたでもない。  「及川。ナむストス」  ――幌銎染ずは、衚情も䌌おくるものなんだろうか。先皋の岩泉ずよく䌌た衚情を浮かべた及川は「はい」ずこれたた䜓育通䞭に反響する倧音声ず共に頭を䞋げた。  「あ、ず」  「あ」  「「ナむスキヌ」」  深呌吞をしおから思い切ったように二人分の゚ヌルを莈られお、䞀瞬理解が遅れた。  次いで、ぶわっず党身にくすぐったいような感芚が駆け抜けお、目を合わせおいられなくなっお背を向ける。それでも、おう、ず小さく返した蚀葉はちゃんず届いおくれたようだった。  その埌はたるで歯車が噛み合ったかのようだった。岩泉は守備の穎を芋぀けおは荒削りながらも懞呜にスパむクを打ち蟌み、及川もトスを任せるたびに粟床を䞊げおいく。圱山も攻守共に䞀幎生をフォロヌしながら、時折すずんずツヌアタックを決めお珟盞棒に地団倪を螏たせたりした。  ずはいえ、地力の差はやはり倧きい。終わっおみれば察で䞻将チヌムに軍配が䞊がり、詊合終了のホむッスルが鳎った途端に及川たちはコヌトに座り蟌んで荒く息を敎え始めた。  ミニゲヌムずはいえ異様に癜熱したものだから、詊合慣れしおいない䞀幎生の疲劎は倧きいだろう。偎に歩み寄っお「倧䞈倫か」ず声をかけるず、黒ず茶色の双眞が䞀察ず぀圱山を芋䞊げた。かなり消耗しただろうに、その目には疲れより別の䜕かが濃く浮かんでいるように芋える。  「あの、最初の  䞻将のスパむク、先茩、が、受けたずき、」  「あ 俺が初めおファヌストタッチした時か」  「はい、それ、あのずき、なんで、俺にトス䞊げろっお、蚀ったんですか」    岩ちゃんの方がボヌル近かったのに、ず息を乱したたた及川は蚀う。岩泉も同意芋なのだろう、肩で呌吞をしながら黙っお圱山の答えを埅っおいる。    なんで、ず蚀われおも。  「及川のトス、芋おみたかったから」  それは、県内ナンバヌワンセッタヌだった圌ず重ねおいるからか。たぶんそれもある。けれど蚀葉通りの意味でもあった。  単玔に、今“ここ”にいる及川がどんなトスを䞊げるのかを芋おみたかったのだ。トスだけでなく及川の、岩泉のバレヌを芋おみたかった。その思いは“ここ”の北䞀のセッタヌずしおのもの。  そしお、同じコヌトに立っおようやく肌で思い知ったこずがある。  こい぀らは“及川さん”ず“岩泉さん”じゃない。  蚘憶の䞭では岩泉の打点はもっず䞊だったしスパむクは匷烈だった。及川のサヌブはもっず鋭かったしトスは粟密だった。しかし今、目の前にいる二人はそのどちらにも遠く及ばない。圓たり前だ。圌らが匷くなっおいくのはこれからなのだから。  そしお今の自分なら、その手助けができるはずだった。ただひたすらに憧れお、愚盎に远いかける以倖の方法を知らなかった“前”ずは違う。ボヌルを繋ぐ術も、心を通わせるこずの倧切さも、今はちゃんず知っおいる。  「  俺がお前らのこず避けおたのは、お前らのせいじゃない」  自然ず蚀葉が零れたせいで切り出し方が唐突になった。滎る汗を拭うこずも忘れお䞀幎生がぎくりず硬盎したが、ここたで来たら蚀いきっおしたった方がいい。圱山は構わず続けた。  「党郚俺個人の問題だ。䞍安にさせたなら、悪かった」  「圱山先茩  」  「お前らのこず嫌っおるずか、そういうのは本圓にない。けど俺あんた喋るの䞊手くねえし、お前らは悪くないっおどうやったら䌝わるのか党然分からなかった。だから、䞻将にお前らず組んで詊合させおくれっお頌んだ」  「ぞ、  な、なんでそこでバレヌ」  「俺がセッタヌだから」  及川たちはいよいよ意味が分からないずいう顔をした。黙っお成り行きを芋守っおいる䞻将たちも䌌たような顔をしおいる。ああ、そういえば぀いこないだ日向たちもこんな顔をしおいたっけ。  「俺は及川にも岩泉にもトス䞊げたい。でも及川のトスも打ちたいし、及川のトスで岩泉がスパむク決めるのも芋たい。だから、詊合すんのが手っ取り早いんじゃねえかっお思った」  「手っ取り早いっお、䜕が  」  「俺には及川も岩泉もちゃんず必芁なんだっお。それ䌝えるなら䞀緒にプレヌするのが䞀番分かりやすいだろ」  及川ず岩泉が息を呑んだ。圱山を凝芖する、憧れた圌らず同じ面圱を持぀幌い顔立ち。けれど芋䞊げおくる芖線にこもるのは、芋慣れおしたった冷たさでも耇雑さでもない色だったから、もう目を逞らしたくはならなかった。  「お前らはこれからもっず匷くなれる。そしたら北䞀はもっず匷くなっお、きっず癜鳥沢にも負けないチヌムになる。だから、」  軜く身を屈めお䞡手を差し䌞べる。近い将来、頌もしいセッタヌずスパむカヌになるだろうルヌキヌたちぞず、たっすぐに。  「䞀緒に、がんばっおくれるか」  黒ず茶色の瞳が揺らいで、こみ䞊げる䜕かをこらえるように二人が唇を匕き結ぶ。  䞀瞬だけ間をおいお、力いっぱい握られた䞡手は痛いほど。  そしおその盎埌には、先ほどずは比べ物にならない音量の異口同音が䜓育通䞭にこだたした。  「「はい」」 [newpage]  「  っ぀ヌわけなんすけど」  及川たちず組んで詊合をしおから数日埌、秘密基地。烏たちにこずの次第を説明し終わるず、圌らはそれぞれ賑やかな反応をよこした。  「ぞヌ、すれ違っおた者同士が同じチヌムで戊っお和解かあ」  「なんか少幎マンガみおえ 熱くおいいな」  「おいうか結局バレヌしただけじゃん。盞倉わらずっおいうか芞がないっおいうか」  「぀ヌきヌしヌたヌ」  「  䜕でもないデス」  裏衚なく笑う瞁䞋、目を茝かせる西谷、月島は盞倉わらずだったが圱山が噛み぀くより早く柀村にむむ笑顔を向けられお黙った。ちょっず気分が良くなった。  元々友人や知り合いだった盞手ずの距離の蚈り方に苊劎しおいるのは党員同じようだったが、盞手が盞手なだけに圱山は特に心配されおいたらしい。䞊手くやれおいるこずを知った仲間たちが芋せた安堵の衚情に口元がむずむずした。  「ちなみにさ、及川っお埌茩だずどんな感じになんの 岩泉はなんずなく想像぀くけど」  「やっぱ優男は優男か 腹立぀感じか」    菅原の玠朎な問いにはいち早く田䞭が食い぀いお、蚊かれた本人の方は蚀葉に困った。どんな感じず蚀われおもしっくり来る䞊手い蚀葉は思い぀かず、ずりあえず䞀番新しい蚘憶をそのたた話しおみるべく口を開く。  「昚日の郚掻終わった埌なんすけど、北䞀の近くに党郚円の自販があっお、あの二人も含めた䜕人かで寄ったんです」  オヌル円なだけあっお品揃えは寂しい自販機だが、䜓育通䞭を走り回る男子䞭孊生にずっおは貎重な氎分補絊堎所であり、䜕よりぐんぐんペヌグルのパックが売っおいるために圱山はわりず重宝しおいる。昚日も自䞻緎で最埌たで残っおいた䞻将ず圱山、その盞棒、そしお及川ず岩泉ずいう組み合わせで利甚した。  無難にりヌロン茶を遞んだ䞻将ず面癜半分に怪しいミックスゞュヌスを買った盞棒に続いお自販機に円玉を入れた圱山は、い぀ものようにボタンを抌した。ぐんぐんペヌグルのボタン、ず、その右隣のサむダヌのボタンを二本指で。  あ。そう思った時にはもう手遅れだった。本圓は巊隣の同じぐんぐんペヌグルのボタンを抌す぀もりだったのが間違えお、しかも取り出し口に萜ちおきたのは目圓おではない氎玉暡様のスチヌル猶。  アホなポカをしおしたったず、ずりあえず猶は掎み出し぀぀も内心自分に腹を立おおいたら、ブフッず偎にいた及川が吹き出した。  ――今の、なに、なんで指にほん  っ、ブフヌッ  たぶん偶然ツボに入っおしたっただけなのだろうずは思う。が、笑いをこらえようず腹を抱えながらも結局耐え切れずに震えおいる様子はストレヌトにカチンず来お。  気付いたらたるで日向にするようにココア色の頭をがっしず掎んでいた。  「おたっ、倧王様にアレやったのか」  「やった。぀ヌかあい぀は及川さんじゃねえし」  「いやそうだけど そうなんだけどお前さあ」  日向は歯に䜕か詰たっお取れない時のような顔をしたが、うっかり倱蚀した埌茩に物理的説教を食らわせるのは烏野でもやっおいたこずである。  昚日も力を蟌めるのに特に躊躇は芚えず、ギリギリず頭郚を締め付けられた及川は悲鳎をあげたが、すいたせんごめんなさいギブギブギブ助けお岩ちゃん ずわめく声は圓の岩泉には芋事に聞き流されおいた。むしろ圌はクズ川がスンマセンず圱山の方に詫びおきたほどである。䞖界が倉わっおも阿吜の関係性はこれっぜっちもブレないこずにちょっず感動した。  「でも及川だけじゃなくお岩泉にも謝られたんで、さすがにそこで手は離したした」  「ぶっは」  「おうおう、いいじゃねえか圱山 最初きっちりシメずくのは倧事だぞ」  「そしお䜕よりざたあ むケメンざたあ」  「田䞭お前それただのやっかみだから」  おかしくおたたらないずいうように菅原が笑いを匟けさせ、西谷は満足げに頷いお、倧局嬉しげに叫んだ田䞭は瞁䞋に冷ややかなツッコミを食らった。リアクションは様々だが総じおみんな楜しそうなので良しずする。  「あ、でもこの埌ちょっずヘンなこずにもなっお」  「倉っお」  「俺の埌に岩泉が自販機䜿ったんですけど、金入れる前に俺に「買おうずしおたのっおペヌグルで合っおたすか」っ぀っお」  「うん」  「合っおるっお蚀ったら岩泉、ペヌグル買っお俺にくれたんです。「俺は炭酞欲しかったんで亀換しおもらえないっすか」っお」  「マゞか゚ヌスさんかっけえ」  「おお、俺もそう思った。んで、願ったり叶ったりだったから亀換したんだけど」  「ん けど」  「ずるいっおわめいた。及川が」  最初は䜕がずるいのか分からず、少し考えお岩泉ずの亀換ずいう行為が幌銎染の目から芋お気に食わなかったのかず思い぀いた。しかし及川がキャンキャン噛み぀いたのは他ならぬその幌銎染の方で。  「同じサむダヌ買うから亀換しろっお及川が駄々こねお、岩泉は亀換しねえし意味分かんねえっお及川殎りたした。それでも及川ほんずに同じ炭酞買っお、䜕回か岩泉に亀換っお蚀っお党郚蹎られお、結局は自分で買った方ムスヌッずしながら飲んでた」  「ええ どっちも同じサむダヌなんだったら亀換しおも味倉わんねえじゃん」  「だろ。䞻将たちはなんか笑っお芋おたけど、及川が機嫌悪かった理由今も党然分かんねえ」  「  ほヌう」  「それはたた、なん぀ヌか  意倖な展開になっおきおんなあ。あの及川がねえ」  ハテナを浮かべる圱山ず日向をよそに、菅原ず柀村が䜕やらしみじみずした様子で呟く。しかし及川の奇劙な態床の理由が分かったらしい元䞻将副䞻将コンビは、どういうこずですかず芖線で蚊ねる圱山たちに答えをくれるこずなく苊笑した。  「たあ、たぶん心配いらないよ」  「うん。圱山がちゃんず及川たちの先茩やれおる蚌拠だから、それ」  気にすんな、ずぜんぜん頭を撫でられる。先茩たちの蚀葉は今でも時々理解するのが難しい。けれど髪に觊れる手のひらが優しかったから、たあいいかず思えた。  自分にずっお理想の先茩である二人に“ちゃんず先茩をやれおいる”ず蚀っおもらえたのだから、充分だ。  髪を掻き回す指を黙っお受け入れながら瞬きを䞀床。そしお再び目を開いたず同時、圱山はゆっくり力を抜くように衚情を厩した。  戞惑うようにも照れおいるようにも芋えるその顔の幌さは、今も昔も、同じ黒を纏う烏たちしか知らない。
高校バレヌを戊い終えお䞭孊生に戻った圱山くんがちゃんず先茩になろうずする話<br /><br />◆烏野党員逆行幎霢操䜜パラレル。こちら<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6232109">novel/6232109</a></strong>の続線です。<br />◆友人のリク゚ストず同時䞊行しおいたら前回からヶ月あきたした。自分的には早い方です<br />◆ネタがネタなだけに阿吜コンビもずい及川さんのキャラにずおも迷いたした。岩ちゃんは党然迷わなかったのに倧王様ずおもめんどくさいです耒め蚀葉。<br />◆詊合描写が難しすぎおスポヌツ物曞ける人ホントすげえなず改めお実感させられた回。ルヌルずか垞識的にこのプレヌおかしいずか矛盟点があったら是非ご指摘ください 。<br /><br />衚玙は䞋蚘よりお借りした玠敵玠材を組み合わせお䜜成させおいただきたした<br /><strong><a href="https://www.pixiv.net/users/4073093">user/4073093</a></strong><strong><a href="https://www.pixiv.net/artworks/48844140">illust/48844140</a></strong><strong><a href="https://www.pixiv.net/artworks/48773909">illust/48773909</a></strong><strong><a href="https://www.pixiv.net/artworks/31836320">illust/31836320</a></strong><br /><br />【远蚘】<br />2016幎03月13日付 ルヌキヌランキング37䜍<br />2016幎03月14日付 ルヌキヌランキング47䜍<br />いただきたしたお読みくださった皆様ありがずうございたす
ギャッコヌ 
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6533063#1
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 柀梓は、西䜏みほが卒業するずいう事態の重みを誰よりも理解しおいた。  昚幎は戊車道を履修しおいる䞉幎生が少なかったから、ただよかった。  しかし今幎は絶察的゚ヌスのあんこうチヌムをはじめずした、倧掗女子孊園戊車道チヌムの䞻力がごっそり抜けおしたう。  あの戊いを経隓した最埌の䞖代が自分なのだず、梓はわかっおいた。  党囜倧䌚、倧孊遞抜ず前代未聞の察決、この事件あえお事件ず呌がうのおかげで倧掗女子孊園ず西䜏みほの名は党囜に蜟いた。  入孊者、そしお戊車道の履修垌望者は増加したが、戊車が足りない。  増加した予算は戊力の増匷に回され、敎備担圓者の育成も課題ずなる。  だが西䜏みほは、問題づくしの道でもひるたなかった。  時に優しく時に厳しく、初めお戊車に乗る子は戊車を奜きになるように。経隓者の子はもっず戊車が奜きになるように。  西䜏みほは指揮官ずしおも優秀だが、指導者ずしおも優秀だったのだず、梓は気が぀いた。  党囜倧䌚は二連芇こそ逃したが準優勝、十分すぎる成瞟を匕っさげお、かの軍神は戊車道の掚薊を受けるらしい。 「私は、西䜏先茩みたいになれるのかな」  梓は西䜏みほの埌継者などず圱では呌ばれ、匕退詊合の埌は倧掗の隊長を務めおいる。  しかしその実戊車に觊れるようになっお䞞二幎皋の付け焌き刃、いくら濃密な戊闘経隓を積んだず蚀えども、戊車で買い物に行っおいたような西䜏みほずは幎季が違いすぎる。 「私は、倧掗を匕っ匵っおいけるかな」  梓は悩んでいた。それはもう、培甲匟に穿たれたような、深い悩みであった。  偉倧な先茩方を芋送れば、盎ぐに新入生がやっおくる。  圌女たちを自分は指導できるのだろうか。自分よりも経隓がある子もいるだろう。そういう子らず、どう接すればいいのだろうか。 「柀さん」  梓を呌ぶ者がいた。かの西䜏みほである。  胞元には真玅のコサヌゞュを付けお、鰐皮暡様の賞状筒が鞄からはみ出しおいる。  今日は、卒業匏なのだった。 「西䜏先茩、あの、ご卒業おめでずうございたす」 「ありがずう」 「でも先茩、あんこうチヌムの皆さんず䞀緒に打ち䞊げに行かれるんじゃ」 「そうだよ。だけど、もう䞀床だけ、ここからの景色を芋おおきたくお」  梓は赀煉瓊のガレヌゞの、盞棒であるリヌの傍らに立っおいた。  かたや西䜏みほはⅣ号戊車ず䞊び立぀。  開け攟たれた栌玍扉からは、校舎の党容ず、矎しい倕焌けが飛び蟌んできおいた。 「綺麗だよね。戊車ばかり芋おしたいがちだけど、ここからの景色がこの孊校で䞀番奜きなんだ」  西䜏みほは笑っおいた。もずもずよく笑う人ではある。だけれども、梓が今たでに芋たどの笑顔よりも、西䜏みほは笑っおいた。 「この景色は他の子も芋たこずがあるかもしれないけど、こうやっお䞀緒に楜しんだのは、柀さんだけだよ」  そう蚀いながら、目尻に煌めくものを浮かべお、笑っおいた。 「先茩、本圓にいなくなっおしたうんですか。ただただ先茩に教わりたいこずがありたした。ただ私が倧掗を匕っ匵っおいけるずは思えない。私なんかただただ初心者です」  梓は息を切らしお、嗚咜をこらえながら、叫がうずしたけれど、涙が混じっお平垞の声量になっおしたった。  今たでも小孊校ず䞭孊校で卒業に関わるこずはあったが、胞に穎が空いたような寂寞の念に囚われるのは初めおである。  梓が抱いおいた思慕は、尊敬ずいうよりも芪愛であったのかも知れぬ。  それだけ、この先茩のこずが奜きだったのだ。 「柀さんは初心者じゃないよ。ダヌゞリンさんやケむさん、アンチョビさんにカチュヌシャさん、そしおお姉ちゃんず愛里寿ちゃん、あんなにすごい人たちず闘いぬいたんだもん。初心者だなんお蚀っちゃ駄目」 「でも、私は先茩ず違っお普通の家に生たれたしたし、戊車に乗ったのは高校生になっおからです」 「そうだね。だけど、私はあなたが倧掗を匕っ匵っおいくのに䞀番ふさわしい人だず思った。それじゃ足りないかな」  西䜏みほの目は、詊合䞭には冷培なたでにすべおを芋通すその目は、今ここにおいおは只管に優しい光を湛えおいた。 「西䜏先茩はずるいです」  梓には、こう返すだけで粟䞀杯である。 「倧䞈倫だよ。柀さんならできるよ」  そう蚀っお、抱きしめられた。  柔軟剀の銙りず、少しすえた汗、そしお塩蟛い涙の匂いがした。 「先茩」 「私もね、ここに来る前嫌なこずがあっお、もう戊車なんお乗りたくなかったの。だけど、やっおみたら䜕ずかなった。倚少経隓はあったけど、それでも前の孊校では私、お姉ちゃんに䞀床も勝ったこずがなかったよ」 「西䜏先茩でも、そんなふうに思うこずがあったんですか」 「私だっお、頌れる先茩に芋せたかったんだよ。柀さんたちにはね」  西䜏みほの胞が、肩が、梓の身䜓から離れおゆく。  なんずなく、これでしばらくお別れのような気がした。 「そうそう、枡すものがあったの」  床においた孊生鞄から取り出したのは、西䜏みほが奜んで集めおいるボコずいう熊のぬいぐるみであった。 「これはね、ボコミュヌゞアム限定のボコなんだ。この前の寄枯日に買っおきたの」 「あれ、これっお島田愛里寿さんから先茩が貰ったのず同じ」 「そう。あの時に愛里寿ちゃんは勲章だっお蚀っおくれたんだ。だから私も真䌌しようず思っお」  西䜏みほは、笑っおいる。 「柀梓殿」 「はい」  梓も鯱匵っお返事をした。 「あなたはこれから立掟に戊車道チヌムの隊長を務めたす。私が玄束したす。このボコは、その蚌です」  西䜏みほの手から、柀梓の手に、ボコが枡された。 「蟛くなったら、その子を芋お、私のこずを思い出しおね」 「はい。ありがずうございたす」  梓は深く深く、頭を䞋げた。  西䜏みほに、涙でくしゃくしゃになった顔を芋られたくなかったからだ。  梓の心が、打ちっ攟しの床に染みを䜜る。  西䜏みほはしばらくそこにいたけれど、頑なに顔を䞊げない梓に苊笑するず、やがお立ち去った。  戊車ず倕日だけが、梓を芋守っおいた。
3/8にSS速報VIPぞ投皿したSSです。<br />柀ちゃんが卒業匏に、みほず玄束をする話です。<br />ガルパンキャラは誕生日が決たっおいない子が倚いので、3/8(サワ)の日ずいうこずで、倧奜きなキャラをお祝いさせおいただきたした。<br />2016/7/9にあず子さん(<strong><a href="https://www.pixiv.net/users/1796471">user/1796471</a></strong>)が描いおくださったむラストを衚玙に蚭定したした
柀梓「先茩ずの玄束」
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◇ 「初恋」ずいう蚀葉を蟞曞で匕くず、「生たれお初めおの恋」ずある。  ネットの怜玢欄に「初恋」ず打぀ず「初恋は実らない」ずいう候補が関連ワヌドに䞊がっおくる。倚くの人々が初恋ずいう蚀葉に察しおこういったむメヌゞを持っおいるずいうこずが分かるず同時に、ほがそれが珟実だずいうこずだ。  しかし、俺の初恋は結果ずしお実った。  けれど、俺の初恋は普通じゃなかった。少し倉わっおいた、いや、だいぶ倉わっおいた。  俺は、恋の圓事者ではなかった。 「恋」ずいう蚀葉を蟞曞で匕くず、「特定の異性に匷くひかれるこず。たた、切ないたでに深く思いを寄せるこず」ずある。  俺にずっおの初恋はたさにこの蚀葉の通り、「切ないたでに深く思いを寄せるこず」だった。  倧人になったいたでも語圙の少ない俺にはうたく説明するこずができないが、぀たり、どういうこずかずいうず、俺は、自分の恋にではなく、友人の恋に激しく胞を打たれたのである。  朝、「おはよう」ず声をかけあうずきに芋せる笑顔。  授業䞭、がんやりず窓の倖を眺める暪顔。  誰かの話の途䞭でふず逞らされた芖線の先。    溜息を吐きながら閉じられる瞌。  垰り道、䞊んで歩く埌ろ姿。二人の圱は、䌞びた先でひず぀に重なっおいた。  圌ら二人の䞀挙手䞀投足に、嬉しくなったり、悲しくなったり、時には怒りを芚えたりしお胞をずきめかせおいた。䜕床思い返しおみおも、それたでそんな経隓など䞀床もしたこずがなかったのだから、やはりあれは初恋だった。  氎面に映る倪陜の光のように、時々そのたぶしさに鬱陶しさを芚えながらも、やっぱり綺麗だから芋おしたう、知らない間に目で远っおしたう、そんな恋だった。 [newpage] ◇   「ねえねえ、埡手杵くん。この人」  どこから匕っ匵り出しおきたのか、匕っ越しの片付けの途䞭で芋぀けた俺の高校時代の卒業アルバムの頁を、圌女は数分ほど前からずっず真剣な面持ちでめくっおいた。䞀䜓誰を芋぀けたずいうのだろうか。「どうした」ずその肩に顎を乗せながら芖線を萜ずすず、圌女はアルバムの埌半にあるむベントの蚘録写真を芋おいた。少し色あせた写真の䞀枚に指を眮いおいる。誰が写っおいるのか肝心の顔がその指のせいで芋えやしない。 「この人  ええず、名前。名前  出おこない」 「んん、芋えない。ちょっず、指どけろっお」 「この人、超有名だったよね」  錻息荒く、頬をやや䞊気させながら圌女が指で瀺した人物は俺の同玚生。クラスは違っおいたがよく぀るんでいた友人だった。 「  ああ光忠か。長船光忠」 「あヌ そうそう、長船先茩 やだ、かっこいい。もしかしお仲良かった」 「ああ、たあたあかな。おいうかお前俺の四぀䞋だよね このずきただ䞭坊だろ なんで知っおんの、光忠のこず」 「蚀ったじゃん 超有名、っお。ど田舎にこんな人がいたらそりゃあ有名になるよ」 その蚀葉に、そういえばそうだったず思い出す。  写真の䞭で爜やかに埮笑む「長船光忠」ずいう男は、麗しすぎる倖芋のおかげで、町内どころか隣町、果おは県倖にたで名を蜟かせるほどのちょっずした有名人だった。 俺たちの通っおいた高校は男子高だったが、光忠を䞀目芋ようず毎日のように女子高校生や女子䞭孊生ずきどき倧人のお姉さんが校門で埅ち䌏せをしおいた。あの頃の俺たちはモテるこずに察しおずにかく「うらやたしい」ずいう思いばかりを抱いおいたが、圓の本人ずしおみれば、あんなに远い回されおいたらうんざりもしおいただろう。噂は絶えなかったが、光忠は芋目に反しお芋た目でヒトを刀断するものではないが女に察しおそこたでの関心は持っおいないようだった。本人の口から「圌女」ずいう単語すらも聞いたこずがなかった。 「そっかあ、友達だったんだ。いいなあ」 「䜕がいいんだよ。こんなや぀が隣にいおみろよ。圱が薄れる」 「顔なら君も悪くないのにねえ  」 「  なんだよ、その目は」  憐れむような芖線に腹が立ち、む、ず顔をしかめるず、圌女は誀魔化すようにしお「あ、この人」ず違う写真に泚意を逞らした。今床は誰だず芗き蟌むず、そこにはやはり光忠が写っおいた。  高校最埌の孊園祭のずきに撮られたものだろう。光忠は制服ではなくスヌツを着おいた。確か、圌のクラスはホストクラブかなにかの出し物をしたのだ。恐ろしいくらいに癜のスリヌピヌスが䌌合っおいる。埌ろぞ撫で぀けた前髪のせいで、普段から倧人っぜい男ではあったが、䜙蚈にそれらしく芋えた。  そしお「ナンバヌワンホスト」ず蚀った颚の圌の暪にはもうひずり、セヌラヌ服を着た「男」が写っおいた圌は決しお女装が趣味なわけではない。これも出し物の䞀環だ。毛先の赀い長めの襟足を銖の暪に緩く流したその少幎は、 光忠ずは察照的にたったく笑っおいなかった。 「おヌ、広光じゃん」 「あヌ  そうそう、広光くん。この人も有名だった」 「ええ 嘘だろう」 「長船先茩ずい぀も䞀緒にいたから有名だったんだよ。普通にかっこいいし」 「俺、なんかショックだ  。広光め、しれっずした顔しお圱でモテおいやがったのかよお。っおいうかなんで『広光くん』なんだよ。先茩だろ、『倧俱利䌜矅先茩』」 「んん  。なんかね、『先茩』っお呌ぶよりも『くん』っお感じ。分かる 長船先茩ずいるず䜙蚈にそう思うんだなあ。幌い みたいな。それよりもさ、この写真の広光くんめちゃくちゃ可愛いんだけど」 「ああ、ちょっず化粧しおるしな」 「本圓に可愛い  。長船先茩もスヌツ着おるけど、これも出し物」  倧俱利䌜矅広光。  その名前を思い出すたびに、俺の心はい぀も匷制的に十代の頃ぞず匕き戻される。  俺ず広光は同じクラスだった。攟課埌に互いの家ぞ遊びに行くほど仲は良かったが、圌が光忠ず䞊び有名だったずいうこずは知らなかった。どちらかずいえば静かで控えめ、あたり笑わない奎だった。切れ長の目に焌けた肌ず茶色の髪、毛先が明るいのは生たれ぀きだず蚀っおいたが、他人からはほが八割の確率で「䞍良」「怖い」あるいは「調子に乗っおいる」ず思われた。先茩に目を぀けられるこずもしょっちゅうで、䞀幎の頃から同じクラスだった俺は、圌が先茩に絡たれおいるずころをよく助けたものだった。実際の広光は心根が真っすぐで優しくお、ずきどきひねくれたこずを蚀う、どこにでもいる普通の男子高校生だったずいうのに。  広光は䞀人暮らしをしおいた。高校生の䞀人暮らしなんお、ありずあらゆる憶枬を持たれるものだが、䟋に挏れずその名は噂話によく䞊がっおいた。そう考えるず、なるほど確かに圌はある意味「有名人」だった。ただ、光忠ず違っおそれが決しお良い意味では無かったずいうこずが、思い出すずいたでも歯がゆく感じる。  たあそれは眮いずいお、男子高校生にずっお俺にずっお、だけかもしれないがの「䞀人暮らし」ずいう単語は、むコヌル「倩囜」だった。  うるさい母芪も、隒がしい姉も、匟も、圱の薄い父芪もいない。自分だけの垝囜。 䌑日は奜きな時間に起床し奜きなだけ菓子を食い、むンスタントラヌメンだけで䞉食枈たせ、コヌラを飲んで、誰に芋぀かる恐れも無く䜕床でもヌく。だっお゚ロ本だっお芋攟題だ。抜いおすっきりしたずころで、それらのオカズをいそいそず片付けるこずもせずにそのたた眠るこずができるのだ。これを倩囜ず蚀わずしおなんず衚珟できるだろうか。  しかし、広光の「䞀人暮らし」は俺の想像ずはたったく違っおいた。  広光の郚屋の間取りはワンルヌム。築五幎の割ず新しいマンションの䞀宀を借りおいたどうでもいいが、オヌトロックではなかった。フロヌリングはい぀もピカピカに磚かれおいたし、必芁最䜎限に揃えられおいた黒ず茶を基調ずしたむンテリアはどれもおしゃれだった。制服はい぀もきちんずハンガヌにかかっおおり、ワむシャツにはピシッずアむロンが圓おられおいた。自炊も銎れたもので、遊びに行けばなにかしら䜜っおくれた。手の蟌んだものではなかったが、ずおも矎味かった。  健党な人間の生掻が、そこにはあった。  あの頃はただ挠然ず「萜ち着く」ずばかり思っおいたが、その理由はおそらく広光の誠実な人間性が、生掻の隅々にたで浞透しおいたせいだろう。決しお広いずはいえないその郚屋が、俺は本圓に奜きだった。 きっずそれは光忠も同じだった。  俺が広光の郚屋ぞ行くず、そこには必ず光忠がいた。俺は広光を介しお光忠ず友達になったのだ。 「なんでこの二人、仲良かったんだろうね」  思い出に浞っおいるずころで圌女がぜ぀りず蚀った。俺はその蚀葉にぎくり、ず肩を震わせた。 「い぀も䞀緒にいたらしいよね。異垞だ  っお思っおいる子もいたみたい。そういえば倉な噂もあったなあ」  考え蟌むように手を頬に圓おながら、圌女は続けた。今床は心臓がどきどきしおきた。 「『もしかしおあの二人、付き合っおるんじゃないの』っお。  なヌんおね」  俺は思わず、「う」ず呌吞を止めた。そしお「なに銬鹿なこず蚀っおんだよ」ず努めお明るく返した。少し䞍自然だったかもしれないが。 「そうだよね。でも、こんな芋目麗しい二人がどこぞの銬の骚ずくっ぀くなら、ここで完結しおほしいっおみんなよく蚀っおた」 「そ、そうか  」 「たあ、長船先茩は圌女いたし。それはないっお分かっおたんだけどね」 「え、いたのあい぀」 「え、知らなかったの」 「だっお俺、聞いたこずなかったぜ」 「嘘だ。あんなかっこいいのに、圌女がいないはずないでしょ」 「でも俺は聞いたこずなかったな」 「気を䜿っおたんじゃないの」 「なんだず」 「ごめん、ごめん。冗談だよお。  たあ、実際に誰っおいう名前は確かに出たこずなかったな。デヌトずかしおるずころも芋たっおいう人はいなかったし。少なくずも私のネットワヌク内では。広光君ずばっかり」  そこたで話しお満足したのだろうか、圌女はアルバムを閉じお片付けを再開した。俺はほっず息を぀き、圌女に背を向けながら先ほどの蚀葉を頭の䞭に反芻させ、ひずり頬を赀く染めた。 がちゃがちゃず、圌女は俺が郚屋にためおいたガラクタを、圓時はガラクタず思っおいなかったいろんなものを「いらないね」ず蚀いながら、俺の了承も埅たずにごみ袋ぞず入れおいく。俺にはそれを止めるこずはできない。倧切な思い出があったずしおも、俺にはもう思い出すこずができないからだ。だから止められない。  いた、ずおも寂しかった。  だから、もう䞀床、アルバムを開きたい。開いお、この寂しさを和らげたい。  本圓に倧切な思い出は、決しお、他人ず共有するこずはできない。  圌女に話すこずはできない。話しおはいけない。  だから、ずおも寂しかった。 『もしかしおあの二人、぀きあっおるんじゃないの』  圌女の発蚀は、正しかった。 圌女を始めずした、圓時その劄想をしおいた女子たちはみんな正しかった。  広光は、光忠に恋をしおいた。  そしお、光忠もたた。  それが、俺の倧切な思い出。俺の「初恋」だった。 [newpage] ◇  氎色ず桜色が混ざったような、淡くお耇雑な少幎時代。  い぀も䜕かを埅っおいお、すぐに目の前のこずに倢䞭になっお、明日も明埌日も、今日ず同じように必ず来るのだず信じおやたなかった。  邊楜を銬鹿にしお、英語なんお倧嫌いだったくせに掋楜ばかりを聞いおいた。語圙力の無い俺たちは可愛い女の子を芋るたびに「たたんねヌ」「぀きあいおヌ」「ダリおヌ」、この䞉぀のワヌドを繰り返し口にした。口にしおいながらも本圓は、その女の子ず仲良く手を぀ないで、河原でそっず唇を合わせるだけのキスをするこずを劄想しおいた。本圓に奜きな女の子は、おかずになんおできなかった。おかずはい぀も、や雑誌の䞭にいるプロのお姉さんたちだった。あの頃の俺たちにずっお、性的な行為、぀たりセックスはただただ未知の䞖界で、珟実䞖界ずは切り離されおいた。珟実の、身近にいる女の子たちをそういう目で芋るこずに、たたらなく矞恥を芚えおいた。そうは蚀いながらも、颚でめくれるスカヌトの䞭身や、雚で濡れたワむシャツに透ける䞋着の色には興味接々だった。思い出すず、恥ずかしくお、なんずも情けないあの頃。  恋の䜜法も、愛の技術も知らない俺たちだったけれど、他人の感情の機埮には敏感だった。嫌われるこずを恐れ、誰からも奜かれたがった。 思い返しおみれば、光忠も広光も、最初からそんな俺たちずは党然違うずころにいたような気がする。  二人の「秘密」に気が付いたのは、先ほど芋た写真の頃、高校䞉幎の秋の孊園祭の時のこずだった。ずっず䞀緒にいたにも関わらず、それたでたったく知らなかった。考えたこずも無かったのだ。二人のこずを「仲の良すぎる友達同士」ず信じお疑わなかった。   きっかけは、ずある事件だった。  それは、広光ず俺ず光忠ず、埌はその圓時やはり同じように぀るんでいた獅子王、和泉守だけが知っおいる。  あずは、「犯人」。  広光を襲った卒業生だ。  孊園祭には、倖からも倧勢人が来る。保護者、他校の生埒、それに、すでに孊校を去った先茩たち。圌らは最初から蚈画をしおいたわけではなかったのだろう。たたたた、自分たちが高校生の頃に生意気だず目を぀けおいた生埒の姿を芋お、懐かしくなっおしたったのだろう。 だが、その懐かしがり方に問題があった。䟋えば、暎力だけであればただ良かったのかもしれないいや、党然良くはないのだが。裁かれる勇気の無い屈折した銬鹿どもは、芋えないずころに、さほど重くはない傷を぀けるこずが埗意だ。人の人生を背負うほどの責任は取りたくない、でも、気に入らない奎はどうにか泣かせたい。泣いた顔を写真に撮っお、仲間内でゲラゲラ笑う皋床の憂さ晎らしで満足する、どうしようもない腐った奎らだ。    俺たちの孊園祭においお最も盛り䞊がるむベント、それは孊園のミスタヌずミスを決めるファッションショヌだった。  男子校だから圓然ミスも男子なわけだが、党孊幎、党生埒の䞭から遞ばれるミスタヌずは違っおミスは䞉幎生だけが出る資栌を持぀。「ミス」ずいうからにはもちろん女装をしなくおはならない。最埌の蚘念にはじけおしたえ、ずいうおふざけの意味合いが匷いのだろうちなみに、過去二幎のミスタヌはたあ圓然ず蚀えば圓然だが、光忠だった。  俺たちの孊幎のクラスは党郚で八぀あった。各クラスから必ず䞀人ミス候補を出さなくおはいけないこずになっおいるのだが、遞ぶ方法は様々だ。自分から名乗り出る猛者もいれば、掚薊、じゃんけん、あみだくじ、パンの早食いで負けた奎  。  俺のクラスでは「今日䌑んだ奎」だった。なんおひどい決め方なのだろう、ずいたでは思うが、圓時はもう倧盛り䞊がりだった。そしお䞍運にも、その日たたたた颚邪をひいお䌑んでいたのが、広光だった。 「ミス、頑匵れ」ず、ラむンを送るず「死ね」ず、返っおきた。  その頃ではもうすっかり「悪い奎ではない」「怖い奎ではない」「いい奎だ」ずいう認識でクラスになじんでいた広光だったので、みんな気合いを入れお圌を着食った。  ありずあらゆるコネを䜿い、プロのメむクアップアヌティストをタダで呌んでみたり、母芪、姉、効、芪戚たちの服をそれぞれ持ち寄っお、さらにその䞭から広光に䌌合いそうなものを遞抜しお、着せ替え人圢のように圌をコヌディネヌトした。  コンテストに出る前にすでに疲れ果おおいた広光だったが、準備が終わり郚屋から出おきた圌の姿を芋お、俺たちは䞀瞬蚀葉を倱ったのち、盛倧に叫んだ。 「うわっ」 「なんだお前」  広光は背が高く、スタむルが良かった。痩せおいたわけではないが、党䜓的に现い、華奢な䜓぀きをしおいた。だから、女装をした途端にそれが党面に出おきたのだ。  玠足は぀る぀るでちなみに、剃っおいないずのこず。぀たり圌は元から぀る぀るだったのだ思わず飛び぀きたくなるほどの矎脚、切れ長ず思っおいた目は、メむクのせいなのかは分からないがアむドル䞊みのアヌモンドアむに。ニキビなどどこにもない肌、長いた぀毛、最んだ唇。そのうえ、衣装はセヌラヌ服ずきた。広光の持っおいるもずもずの雰囲気のせいでずにかく「枅楚」に芋えた。   この倉身ぶりに、笑っおやろうず埅ち構えおいた面々は蚀葉を倱い、芋入っおしたった。恥ずかしそうに目を䌏せお、手持無沙汰のように襟足をもおあそぶ広光。「や、やめろ  惚れる  」ず誰かが蚀った。確かに、劙に゜゜る。可愛い。なんだかもう、女子にしか芋えない。どうしおだ。さっきたでブレザヌを着お、倧股開いおメむクされおいたくせに。  これは倧倉なこずになった。これはもう、優勝だ。 「早く終わらせたい 」ず広光は嘆いおいたが「明日もこれで来おくれ」ずみんなが囃す。「ふざけるな」ず呚囲を睚んだずころで、返っおくるのは「怒っおも可愛い」ずいう蚀葉だけだった。うん、可愛い。  ミスタヌ・ミス候補者はみんな、特蚭䌚堎ずしお蚭けられた䜓育通のランりェむを歩くこずになっおいる。審査の方法は単玔、䌚堎の拍手、盛り䞊がりの床合いだ。 俺ず和泉守は袖で広光ず䞀緒に埅機をしおいた。ひずりで埅぀のは嫌だ、俺の姿を隠せ、ず圌が駄々をこねたせいだが、俺たちずしおも広光をひずりにしおおくのは心配だった。心配になるほど、可愛かったのである。俺ず和泉守は広光よりもずっず身長が高かったので、すっぜりず圌の姿を隠しながら本番が来るたでじっず埅っおいた。  たずはミスタヌからショヌが始たった。やはりずいうべきか、光忠の圧勝だった。それはもう、ほかの候補者が気の毒になっおしたうほどの独壇堎だった。光忠が珟れる前も、䌚堎はしっかり盛り䞊がっおはいたのだ。ミスタヌに出るくらいなのだから、そうそうたる顔のいい生埒たちが舞台の䞊を歩いおいたのである。それにもかかわらず、だ。  女子たちの黄色い声に「うるせヌ」ず耳をふさいでいたが、光忠が出た瞬間から、耳をふさいでも尚聞こえるほどの、雄々しい絶叫が䌚堎に響いた。レベルがたるで違っおいた。袖から舞台を芗くず、癜いスヌツを身にたずった光忠が、颯爜ずりォヌキングをしおいた。芳客たちを芋おみれば、ずにかく笑顔、ずきどき泣いおいる子、たるで呪いでもかけおいるかのように目を芋開き、たばたきさえもしない子  様々だった。みんな光忠目圓おで来おいたのかず思うくらいだった。  ランりェむの端たで歩いた光忠はそこでポヌズをずる  のかず思いきや、圌はおもむろに胞のポケットに刺した䞀茪の薔薇をそっず指先で抜き取り、口づけをした。そしお客垭に向かっおに投げたのだ。このずき䌚堎は䞀番の盛り䞊がりを芋せた。 「うっわヌ」ず和泉守が冷めた声を出すず「どうした」ず広光が顔を出そうずするので、「うわ、お前、出るなっお」ず急ぎその頭を抌し蟌める。  ミスタヌ候補のりォヌキングは光忠が最埌だった。これは運営のささやかな気遣いである。過去二幎のこずを螏襲し、圌の埌に歩く男たちが可哀そうだ、ず。優しさに涙が出る。  そしお぀いに、ミスの時間がやっおきた。  広光は緊匵しおいるようだったが、俺たちはそれ以䞊にどきどきしおいたず思う。宝物を芋せびらかすようなあの昂揚はクラスの連䞭も同じだっただろう。広光の矎しさ、可憐さに自信を持っおいた俺たちの心は、あのずきひず぀になっおいた。圓の本人は最埌たで嫌そうな顔をしおいたけれど。  「それでは、䞉幎五組のミス候補に歩いおもらいたしょう」  䌚堎の歓声に負けじず匵り䞊げた叞䌚の声はガラガラに枯れおいた。あれは、幎の離れた姉に連れおいかれた倏のファむナルセヌルのずきの、売り子のお姉さんの声にずおも䌌おいた。がんばれ、あずちょっずだぜ  ず、俺は心の䞭で叞䌚を応揎した。 「広光、転ぶなよ」 「お、おい、がに股やめろ」 「うるさい」  舞台袖の幕をのれんのように腕でぱさっず䞊げ、広光はステヌゞに出おいった。  光に向かっお歩き出した広光の背䞭。  あんなに綺麗な人間の埌ろ姿は、俺はそれたで芋たこずがなかった。  たぶしすぎるスポットラむトの光を遮る華奢な身䜓の皜線は、どこか儚かった。  すっず䌞びた若朚のような手足。  颚に揺れた柔らかな髪。  緊匵のために匵っおいた肩は、それでも毅然ず誇り高かった。  幕から萜ちた埃は、匷い光を济びお雪のように癜く茝いおいた。  その䞭を、広光が歩く。  本圓に綺麗だった。  なんず衚珟したら良いのかいたでも分からないのだが、あの䞀瞬が俺の少幎時代のハむラむトだった。垌望に満ちた、䞀枚の絵のような埌ろ姿だった。  この瞬間は二床ず蚪れない。  広光の背䞭を芋ながらそう思い、泣きそうになった。  埌のこずはもう、俺たちの想像以䞊だった。  挔出ずしお、ミスがランりェむに出る前に元の顔写真が倧きく舞台のスラむドに映しされるのだが、広光の顔が出た瞬間、たずそこで䌚堎がざわ぀いた。 「え   あの人。ほら、光忠くんず䞀緒にいる」 「長船先茩ず仲の良い人じゃない  」 「広光くんだよ」  わっず䌚堎が沞き立ったずころで、広光が颚を切っお舞台ぞず珟れた。たずは䞭心でポヌズを決め、すぐにランりェむを歩く。  長い足がすっず出た瞬間に、「かわいい」ずいう歓声が䞊がり、「おいおい、あい぀、男だぜヌ」ず俺ず和泉守は腹を抱えお笑った。  泚意した通り、広光はがに股で歩かなかった。むしろ、海倖モデル奜きの姉に先日無理やり芋せられた、なんずかシヌクレットのファッションショヌに出おいたモデル䞊に、䞀本の糞の䞊を歩くかのごずく歩いおいた。  そしおランりェむの先端にたどり着いたずころで再びポヌズをずる。袖で芋守っおいた俺たちはその瞬間の広光の顔を芋るこずができなかったが、埌から䌚堎にいたクラスの奎に聞いおみれば、圌はにこりずも笑わず、ただ芋䞋すように冷たく客垭を䞀瞥したのだずいう。「それが良かった」ずそい぀は錻息を荒くしお蚀った。 「広光  」  突然、割れんばかりの叫びをかき分けお、ほんの小さな぀ぶやきが俺の耳に飛び蟌んできた。振り向けば、い぀の間にか光忠が俺たちのすぐ隣にいお、茫然ず舞台を眺めおいた。  無事にりォヌキングが終わり、広光が俺たちの元ぞず戻っおきた。思い切り抱き着いおやろうず俺たちは埅ち構えおいたのだが、しかし、それはできなかった。 「広光」  可憐で枅楚なセヌラヌ服の矎少女は、䞀瞬にしお、䞀倜で億を皌いでしたいそうなホストの腕の䞭に隠されおしたった。 「あの、さ  ええず  広光。あの  その  」  特技は女を口説くこずです  そんな芋た目に反しお、光忠は思春期の男子高校生らしいうろたえかたをしおいた。たるで、奜きな子を前にした男子のように。 「あの  その  。可愛い。すごく可愛い  よ」  広光は動かなかった。ホストの腕の䞭で、じっず倧人しくしおいた。  それは、ただの抱擁なはずだった。男同士の他愛の無い、友情の、健闘を称える抱擁。別におかしいこずはない。孊園祭でみんな興奮しおいた。わけもわからず抱きしめたくなる気持ちは分かる。俺ず和泉守だっお広光を抱きしめたかった。  だが、光忠の背䞭には「それず党然違うよ」ず曞いおあるような気がしおならなかった。  芋おはいけないものを芋おしたっおいるかのような気分になっお、俺は二人から目を背け和泉守を芋た。和泉守は目を䞞くしおを二人を眺めおいた。  分かり切っおいたこずではあったが、ミスタヌずミスは光忠ず広光に決たった。  二人䞊んでの蚘念撮圱のずきは、䞀䜓なんの蚘者䌚芋かず思うほどに䌚堎はフラッシュの光であふれた。よくあい぀ら目が朰れなかったなず感心する。  そしお、事件が起こったのは、このすぐ埌のこずだった。 [newpage]   ◇  ショヌが終わったずころで孊園祭も残り数時間ずなり、委員の連䞭は埌倜祭の準備に取り掛かり始める。 ものを売っおいるクラスはそろそろ完売の札を出すか、あるいは叩き売りに校内を歩き始めるかのどちらかで、早々に片付けに入っおいた。  光忠は倧勢の女子に囲たれながら自分のクラスぞず戻っお行った。圌のクラスはホストクラブをコンセプトずしたカフェを営業しおいたが、食べ物、飲み物はすでに午前䞭のうちに売り切れたず噂で聞いおいた。それもすべお光忠効果だ。しかし、なにもなくずも、それでも、光忠目圓おに人はそこに足を運ぶのだ。埌から聞けば、蚘念撮圱ず蚀っお料金を取っおいたずいうから圌のクラスの実行委員はよく分かっおいる。  俺たちのクラスはお化け屋敷だった。コンスタントに人が入るせいで、やめ時が分からずにだらだらず運営をしおいたが、広光が垰っおきた途端に教宀の前がにぎやかになった。お化け屋敷に入るわけでもなく、ただ、広光の埌を人が぀いおくるのだ。ハヌメルンのなんずか、ずいう話を俺は思い出した。  そしお、いい加枛うんざりした広光が出た手段は、逃走だった。  隙を぀いお、圌は猫のようにしなやかに身䜓をくねらせ、人蟌みの䞭ぞさっず入っおいった。それは本圓にあっずいう間のこずだった。人の波に玛れお圌の姿はすぐに芋えなくなっおしたった。ボディヌガヌドを気取っお傍にいた俺ず和泉守も、あたりにも䞀瞬のこずだったのですぐに反応ができなかった。 「あい぀ただ女装したたただけどいいのかな  」 「そのうち戻っおくんだろ」  俺たちは呑気にそう蚀った。  だが、それが倧間違いだった。俺たちはもっず気を付けるべきだった。  詳しいこずは俺には分からない。  逃走の埌、広光がどこで糞野郎どもに捕たり、そしおなにをされたのか、俺は、俺たちは知らない。知っおいるのは光忠だけだ。  埌倜祭が始たっおも戻らない広光を最初に心配し始めたのは、やはり光忠だった。  スヌツは疲れたず蚀っお、ラフなゞャヌゞに着替えた光忠が、獅子王獅子王は、俺、広光、和泉守が䞀幎のずきのクラスメむトで、いたは光忠ず同じクラスだず䞀緒に俺たちのもずぞ顔を出した。 「あれ、広光は」 「あヌそういえば、党然垰っおこねヌな。ミス以来」 「え、じゃあただあの恰奜でいるっおこず」 「ははは、そうだな」  和泉守が呑気に笑う。俺も笑った。だが光忠は笑わなかった。隣にいる獅子王も笑わなかった。むしろ、二人ずも顔色が倉わっおいる。 「僕、探しに行っおくる」  おそろしく真剣な声音は怒っおいるようにも聞こえた。螵を返し廊䞋を走っおいく埌ろ姿に呆気に取られおいるず、獅子王が背䞭をバン、ず匷く叩いおきた。 「ほら、俺たちも行くぞ」 「お、おう」  獅子王に続いお歩き出すず、急に䞍安が湧いおきた。それでも、䜕事も無いはずずその時はただ信じおいた。 「固たっお探すのはやめずこう。芋぀けたら連絡しろ」  獅子王はそう指瀺を出しおさっず廊䞋を降りおいった。俺ず和泉守も別々のずころぞ散った。  広光が行きそうな堎所。  裏庭、屋䞊、保健宀、図曞通。それくらいしか思い぀かなかった。  広光は䞍思議な奎だった。  䞍良みたいな芋た目をしおいるくせに成瞟はかなり良い。だがずきどき授業をさがる。なにをしおいるかず思えば、図曞宀で本を読みふけっおいたり、裏庭で猫ず遊んでいたり、保健宀で眠っおいたり、あるいは屋䞊で光忠ず話し蟌んでいたり。行動パタヌンはそれくらいのものだった。  亀友関係の広くない奎だず知っおいたため、他のクラス、あるいは他の孊幎のずころにいるずは考えにくかった。  だが、廊䞋を走りながら、唐突に俺は嫌なこずを思い出した。 もう䞀か所あったじゃないか  それは、剣道郚の道堎裏にある、䜓育倉庫。  ただ「先茩」が孊校にいた頃、広光はそこによく呌び出され、殎られた。なにも悪いこずなどしおいないのに、ただ目があっただけで「生意気だ」ず殎られた。広光はなにも蚀わなかったが、腫れた頬や突然の早退の理由を、俺は、いや、俺たちは気づいおいた。だからできる限り傍にいたのだ。傍にいお牜制をしたり、ずきには加勢しお䞀緒に戊ったこずもあった。  もしかしお、ずいう考えが、だんだんず確信に倉わっおいく。今日は孊園祭だ。先茩ももちろん来おいるはずだ。完党に油断しおいた。広光を傷぀けるものがいなくなっおからほんの数か月で、俺たちはすっかり安心しおいたのだ。  俺は急いで広光捜玢隊の面々に連絡を入れた。するず、和泉守ず獅子王からは「分かった」ずすぐに返事が来たのだが、光忠からは䜕の反応も返っおこなかった。そのこずが䜙蚈に俺を䞍安にさせた。  俺ず、埌の二人が䜓育倉庫の前に着いたのはほが同時だった。  孊園祭のにぎやかさがたるで嘘のように、蟺りはシンずしおいた。真っ赀な西日に照らされた建物が䜜る濃い圱が、俺たちの䞍安を煜る。どこか、犍々しい空気が挂っおいた。  それでも、誰もいないずいうこずに俺は少しだけほっずした。殎られお、倒れおいる広光がいなくお良かった、ず。だが、ここにいないずすればどこに 「いないな  」 「ああ、いない」 「ったく、どこ行ったんだよ、あい぀」  その時だった。  突然、ガン、ずいう倧きな音が立った。振り向けば、倉庫の扉が震えおいる。内偎からなにかが匷くぶ぀かったのだ。  扉の揺れは、倕暮れ時の空気さえも激しく揺らし、俺たちの心臓を䞀瞬止めた。ごくり、ず喉を鳎らしお぀ばを飲み蟌む。すでに、䜕事も無かったかのようにその堎は静たっおいたが、それが逆に恐ろしく思えた。  しばらく動くこずができずにいるず、今床はうめき声のようなこもった声が䞭から聞こえおきた。  たさか、ず血盞を倉え、俺は走り出した。そしお扉を開けようず錆びたドアノブに手を掛ける。しかし、内偎から鍵がかけられおいたために開けるこずができなかった。 「おい 広光 いるんだろ」 「広光、広光。倧䞈倫か」 「返事しろよ、広光」  俺たちは銬鹿みたいに拳で扉をガンガンず叩いた。耳を圓お、䞭の様子を探るも党く分からない。するず獅子王が思い出したように、あ、ず叫んだ。 「裏手の栌子戞 あそこはずせるよな」 「  あ、ああ」 「いくぞ」  そう蚀っお扉から離れ、裏に回ろうずしたその瞬間。  カチャ、ずいうささやかな音が聞こえた。続いお、ギむ、ずいう耳障りな音を立おお、扉は開いた。  䜓育倉庫には電気がひず぀きりしかない。それも、い぀切れるか分からないくらいに叀い豆電球だ。だから、䞭はずおも暗かった。けれど、倉庫内は目で確認ができるほどに埃が癜く立っおいた。そしお、開く扉の動きに合わせおなにかが倖ぞず向かっおゆっくりず倒れおいく。  「  広光」  和泉守が反射的に名前を呌んだが、よく芋おみればそれは広光ではなかった。  私服を来た倧柄な男。開いた扉の動きに合わせお仰向けに倒れたその顔は赀く腫れあがっおいた。そしお足元にはもうひずり、う぀䌏せに倒れおいる奎がいた。それも広光ではなかった。 「なんだよ これ  」 「生きおるよな」  状況を把握できおいないふたりを無芖しお、俺は倉庫ぞ戻った。たたやられちたったのかず、憀りながら。  するず、䞭ぞ入ろうずする俺を阻むように、倧きな圱が俺の前に立ちふさがった。 「光忠  」  黒いゞャヌゞ姿の光忠は暗闇にすっかり溶け蟌んでいた。癜い肌は䞊気し、少し息が乱れおいる。今日のためにセットされたオヌルバックの髪も乱れ、前髪が䞀房、顔の前に垂れおいた。 「埡手杵くん」 「  広光は」 「    」  光忠はなにも答えない。  足元に転がる男たちのうめき声に、俺はぞっずした。二人だけかず思っおいたが、目を凝らしおみれば奥のほうにももうひずり、腹をかかえおうずくたっおいる奎がいた。  そしお、俺は気づいおしたった。  さらにその奥の、マットの䞊にいる人物に。  小さく膝を抱える華奢な身䜓。现い、むき出しの足。 「広光 広光、どうした」 俺は䞀歩、足を螏み出した。 「だめだ」  しかし、さっず䌞びた光忠の手が俺の動きを制す。身䜓は簡単に動くこずができなくなった。 「倧䞈倫だから」  光忠は蚀った。  たるで俺はその蚀葉の意味を理解できなかった。  倒れる男たち。うずくたる広光。倧䞈倫なわけがない。  薄暗い倉庫。埃の臭いがする。土の臭いも。  それずなにかもうひず぀、倉庫の䞭からはおかしな臭いが挂っおいた。  俺はそれを、その臭いを知っおいた。  男であれば、みんなその臭いを知っおいる。  生臭い、腐ったような、あの――。 「倧䞈倫」  思考を遮るように光忠は繰り返した。有無を蚀わせぬ迫力で。  俺の行く手を遮る光忠の手を芋た。血が぀いおいた。それが光忠のものではないずいうこずはこの状況から芋おも明らかだが、いずれにせよ、党然、圌が蚀うように「倧䞈倫」なんおこずはないはずだ。   それでも俺は光忠の手を振り払うこずはできなかった。埌ろで芋守っおいる和泉守、獅子王も同じで、動くこずができなくなっおいた。 「  悪いんだけど、広光ず僕の荷物を持っおきおくれないかな。ここはもう倧䞈倫。結構匷くやっちゃったから  圌らもこれ以䞊僕ずやり合う぀もりもないだろうし。広光は僕がいるから倧䞈倫」  光忠は癜い歯を芋せお笑った。なぜかその笑顔に、俺はぞっずした。  これ以䞊はもう螏み蟌めない。螏み蟌むな、ず無蚀の圧力をかけられおいる。蚀われた通りのこずしかできないずいうこずが、分かった。 「  おう」 「ありがずう。ごめんね」  荷物を取りに教宀ぞず戻るず、クラスの連䞭にこぞっお広光のこずを聞かれた。動揺を悟られないように、䜓調䞍良で先に垰ったず嘘を぀く。  圌らはきっず、ミスで優勝した広光をねぎらいたかったのだろう。最埌の孊園祭なのだ。みんなで䞀緒に隒いで、時間を共有しお、最埌の思い出を䜜りたかったのだろう。  可哀そうなクラスの連䞭。  可哀そうな俺たち。  可哀そうな広光。  俺は怒っおいた。  これ以䞊ないずいうくらいに怒っおいた。怒りで身䜓が震える、ずいうのは本圓に起こるのだず、このずき初めお知った。血が沞隰し、氎蒞気かもしくは煙になっお頭のおっぺんから、あるいは穎ずいう穎から出おしたうのではず思うくらいに、憀っおいた。身䜓党䜓が燃えるように熱かった。 「おい、倧䞈倫か」  和泉守が心配そうに顔を芗き蟌んでくる。正盎、それをうざったく感じた。 「  なにがだよ」 「お前の顔。すごいこずになっおるぞ」 「うるせえ」  気遣うように䌞ばされた手を乱暎に避けるず、和泉守は少しだけ傷぀いたような顔をした。その顔に、俺の胞も痛んだ。蟛いのは、みんな䞀緒だった。 「  なあ」  俺ず和泉守の間の気たずい空気を壊すように、それたで抌し黙っおいた獅子王が突然口を開いた。 「あずのこずは、光忠に任せよう」  なにを蚀い出すんだ、こい぀は。  俺はその蚀葉に玍埗するこずができず、「はあ」ず思わず声を荒げた。 「なに蚀っおんだよ 獅子王 あい぀ら、ボコボコにしおやらなきゃ気がすたねえだろうが 広光はなんにも悪いこずしおないんだぞ」  俺の怒鳎り声は、隒がしい校内では少しも響かなかった。そのこずが䜙蚈に俺を苛立たせた。  こんなに俺が叫んでも、誰も気づかないんだ。  広光の叫びも、誰にも気づかれなかった。あい぀が蟛い目にあっおいるずき、俺は気づいおやれなかった。䞀幎のずきからそうだ。赀く腫れた顔を芋るたで、俺は気が぀かないんだ。倧切な友達なはずなのに、俺が遅いせいで、鈍いせいで、い぀も守っおやれない。光忠に「圌は誀解されやすいから。なるべく䞀緒にいおあげお」ず蚀われるたでなにもできなかったんだ。  光忠だけ。  光忠だけが広光のすべおを気にかけおいた。光忠だけが。 「䜕にもしおねえのに、広光はあい぀らに  っ」  俺ははっずしお口を぀ぐんだ。蚀葉はそれ以䞊続かなかった。  それ以䞊蚀えば、広光がなにをされおしたったのか俺が知っおいるこずになる。和泉守、獅子王は俺の埌ろにいたが、気づいただろうか。もし気づいおいなかったずしたら そう考えるず、それ以䞊のこずなど蚀えるわけがない。  蚀えない代わりに、握った拳を廊䞋の壁に叩き぀けた。痛い。ずおも痛い。でも、広光はもっず痛がっおいるはずだ。 「  銬鹿野郎。だから、やめろ、っお俺は蚀っおんだよ」  俺ずは正反察に、獅子王は冷静だった。  乱暎に振り切ったにも関わらず、和泉守はもう䞀床俺の肩に手を乗せ、なだめるように数回たたく。 「悪い  」 「気にすんなよ」  匵り詰めおいた空気がやっず和らいだ。 「倧䞈倫だ。光忠がいる。光忠がいれば、広光は絶察に倧䞈倫だ」  獅子王はにかっず笑った。倪陜みたいに。 『ぜったい、だいじょうぶ』 『み぀ただが、いれば』  そうだろうか。  本圓に、そうだろうか。  ―― いや、そうかもしれない。きっずそうだ。  暗がりで埮笑んだ光忠の顔を思い出す。どうしおあい぀は、あんなに自信満々に「倧䞈倫」などず蚀えたのだろうか。でも、光忠がそう蚀うのなら  そんな思いは、あった。 「俺が持っおいくから、お前らはいいよ」  俺は広光ず光忠の荷物を背負い走った。「埌倜祭、お前は来いよ」ず和泉守が叫ぶ。俺は片手をあげおそれに応えた。 [newpage] ◇  党速力で俺は走った。あの連䞭が息を吹き返しお、たた光忠に向かっおいったら 広光を襲ったら 恐れは拭いきれなかった。走りながら、い぀でも喧嘩に加勢できるよう気持を高めお行った。 しかし、たどり着いおみればそこは盞倉わらずシン、ず静かだった。  倉庫の扉はきっちりず閉められおいた。糞野郎どもは逃げたのだろうか。すっず肩の力が抜けおいく。 ただ二人が䞭にいるであろうこずはなんずなく分かった。俺は、その根拠のない確信をもっお倉庫に近づいた。  いきなり開けるこずは憚られたので、ノックをしようず右手を䞊げる。  そのずきだった。  声が聞こえた。 「広光」  右手は、扉から数センチ開いたずころでピタッず止たった。そこから動けなくなった。 「倧䞈倫だよ、広光」  それは、これたで䞀床も聞いたこずのないような声だった。  光忠のものに違いないが、それでも、俺は、そんな声は知らなかった。 「倧䞈倫。どんな君でも、なにがあっおも、僕はずっずそばにいるよ」  そこに嘘はひず぀も感じられなかった。  春の、がんやりず降る優しい雚のように、俺の心に光忠の蚀葉は沁みおいった。  あたりにも真っすぐで、混じり気の無い、透明な響きを持぀蚀葉だった。  俺はじっず、広光の返事を埅った。 「光忠」  たっぷりずした沈黙の埌に出おきた広光の声は、穏やかだった。その声に、俺はほっずした。良かった、ず思った。 「どこにも、行くな」  俺の胞が「ぎゅう」ず苊しくなった。  光忠の返事は無い。返事は無いが、それが返事のような気がした。  いた、光忠はきっず広光を抱きしめおいる。今日の、ミスコンの埌のずきず同じように。  あの抱擁の意味が、やっず分かった。  芋おいるこっちが恥ずかしくなるくらいの熱い抱擁。本人さえも戞惑っおいるような抱擁。あれは「そういう」意味だったのか。  俺は、なにもかもを理解しおしたった。やっず、やっず分かった。  なにも聞かなかったこずにしお、早く立ち去るべきだず分かっおいた。それでも、足は動かなかった。磁石のように、身䜓は扉にくっ぀いおいた。  俺は「恋」を知っおしたった。  茶化す気にもなれないほどに、俺の心にその事実が深く刺さる。男同士ずいう事実を超えた尊いものがそこにはあった。䞍快なものなど、なにも無かった。  ぜろ、ず右目から涙が零れた。そしお巊目からも、同じように涙は零れた。  がろがろに俺は泣いた。  ぀いでに錻氎も流れおきた。俺は䜕床も腕でそれを拭った。それでも、涙も錻氎も止たっおはくれなかった。  なにが悲しいのだろうか。  いや、悲しいんじゃない。でも、嬉しいずも違う。  俺は決しお、この二人の䞖界に割っお入るこずはできない。  なんだろうこれは。寂しい それも違うような気がする。のけものにされおいるわけではないのだ。  ただ、どうしようもない。色々な感情が混ざり合っお、ぐちゃぐちゃだ。でも、蟛くはない。  切ない  広光、俺はいた猛烈に切ないのかもしれない。  聞いおほしいけど、話せない。話したらきっず駄目だ。  でも、もうお前は倧䞈倫だよな。光忠がいるから、倧䞈倫なんだよな。  俺は心の䞭で繰り返した。涙を拭う袖はびしょびしょだ。  日はもう暮れおしたった。最埌の孊園祭も終わっおしたった。 ―― あっずいう間だったな、俺の高校生掻。  けれど䞍思議ずなにもかもがきらきらず茝いおいるように思えた。  それはきっず「恋」のせいだ。 [newpage] ◇  それからも、日々は倉わりなく過ぎおいった。  事件の埌も、なに事もなかったかのように、光忠も、広光も、俺も、和泉守も、獅子王も卒業たでの残りの日々を過ごした。なにも倉わらない。  広光の郚屋に遊びに行くず、盞倉わらずそこには光忠がいた。  い぀もず倉わらない二人ではあったが、ふずした瞬間に、広光ず光忠の間に流れる枩かいなにかを感じおは、俺はひずりで勝手にドキドキしお、ニダニダしおいた。そういうずき、光忠は困ったように俺を芋る。もしかしたら、俺が二人の関係に気が付いおいるこずに、気付いおいたのかもしれない。  そしお俺たちは、仲の良い友達のたたで卒業の日を迎えた。  光忠は郜内の有名私立倧孊ぞ進孊し、倧孊卒業埌すぐに留孊か䜕かでむギリスぞ枡ったず聞いおいる。  俺ず獅子王は県内の倧孊に通い、無難に地元の䌁業で就職をした。  和泉守ず広光は県倖の倧孊に進孊したが、卒業埌は地元に戻っお仕事に就いた。  たた䌚おうぜず亀わした玄束は、数回限りでい぀の間にか自然ず消えお行った。  倧人になっお色んなこずを、そりゃあもうたくさんのこずを忘れ、たた、憶える必芁もなくなっお、ずいうか、憶えおいたいず思えるこずも少なくなっお、ただなんずなくあず五十幎くらいは生きおいるのだろうな、などず考えおいたらい぀の間にか䞉十歳が近くなっお、ああこのたた死んでいくのは嫌だず絶望しお、でも次の日には案倖ケロッずしお䌚瀟に行っおいる。  高校卒業の二日前に棄おた童貞。それから䜕人もの女の子ず付き合い、別れた。ドキドキする恋もした。スリリングな恋もした。でも、幎を远うごずにずきめきや切なさは「面倒くさいもの」ぞず倉わっおいった。  新鮮さよりも安定、安心を求めるようになったずき、いたの圌女が珟れた。劊嚠したず聞き、結婚しようず俺は蚀った。結婚に幞せがあるのかどうかは分からないが、時々、本圓に時々ではあるが、その存圚を心から信じるこずがある。  繰り返される人の営み。同じような倱敗ず成功。それはきっず幞せなこずだ。だから俺はそれなりに自分の人生に満足しおいる。  けれどやっぱり、あの日こずを、あの日の二人を思い出すずうっかり電車の䞭でも涙で芖界が滲んでしたう。  懐かしくお。あの日に垰りたくお。  アルバムの衚玙をそっず手で撫でおみる。  このアルバムをもらっおから、もう、十幎が経ったのだ。  高校生掻はたったの䞉幎だ。でも、その䞉幎間は卒業しおからのこの十幎よりもずっず長かった。俺たちは䞀日で信じられないくらいにいろいろなこずを孊び、粟神の䞊で癟もの幎を重ねた。考えなくずも、時間は過ぎた。それはいたも䞀緒だ。それでも、考えない時間の重みは少幎ず倧人ずでは党然違うのだ。  考えない時間、あい぀らず銬鹿をやっおいたずきが、なにより尊いものだった。  でももう戻らない。氞遠に。  ぀い䞉か月前のこず。  俺は、数幎ぶりに広光ず再䌚した。和泉守の結婚匏の二次䌚でのこずだった。獅子王も来おいた。久しぶりに䌚っおも、俺たちはやっぱり友達のたただった。倉わらない。みんないる。いないのは、光忠だけだった。  ビヌルやらワむンやらで散々酔っぱらった䞭、広光が仕事で海倖ぞ行くこずを知らされた。どのくらいいるのかず詳しく聞けば、䞀幎か二幎、もしかすればもっず  ず、広光は蚀葉を濁しながらも教えおくれた。  その堎ではなんずなく怖くお聞くこずができなかったが、代わりに、二次䌚の終わりに獅子王が、それぞれがそれぞれの堎所ぞ垰っおいく途䞭で、叫んだ。 「光忠によろしくな」  広光は振り返らなかった。  スヌツ姿の圌はもう、制服を着おいたあの頃の広光ずは党然違っおいたのに、俺にはどうしおも、思い出ず珟圚の二぀の背䞭が重なっお芋えお、胞がもう、いっぱいになった。  獅子王の叫びに、広光はただ、片手をあげただけだった。  俺はそれが嬉しくお、少し泣いた。 終わり
い぀もありがずうございたす。<br />ブックマヌク、コメント、評䟡、倧倉嬉しく思っおいたす。<br /><br />今回、以前より曞きたいなず思っおいた孊生ものに手を出しおみたした。<br /><br />⇒光忠芖点をアップしたした(2018.1.29)<br />「時には初恋の話でも」/ <strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9174917">novel/9174917</a></strong><br /><br />※第䞉者埡手杵目線の珟パロ孊生パロ<br />※埡手杵にモブ圌女がいたす結構しゃべりたす<br />※盎接的な衚珟はありたせんが、モブくりが䞀瞬ありたす
初恋の実る頃
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6533099#1
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 衣擊れの音がした気がしお薄目を開ける。明け方だろうか、あんなに闇色をしお星を瞬かせおいた空が遠くに昇り始めた倪陜のせいで癜んでいる。倜が明けるのが随分早くなったものだず、どこかがんやりずしながらそう思った。 「起きたのか」  音を立おた正䜓が、晃牙が寝おいた棺桶の倖から声を掛けおきた。その声に導かれるように、だるい身䜓をゆっくりず捻っお郚屋の䞭のほうを向いた。棺桶の偎面の向こう偎を芋遣れば、零がこちらに背を向けお着替えをしおいる真っ最䞭であった。  こっち向いおねえくせに、どうしお起きたっお分かるんだよ――悪態を぀きたい気分になったが、零の背䞭に走る幟筋かの赀い線に目を奪われる。䞡偎の綺麗に浮き出た肩甲骚あたりを匷烈に掻き毟られたようになっおいるそれは、先皋たでの行為で間違いなく晃牙が぀けたものであるはずだが、たったく自芚がない。あたりの痛々しいそれに眪悪感を芚え、己の爪を芋遣るがそんなに䌞ばしおもいないこれがあんな嚁力を発揮するものかず少々恐ろしく感じた。 「気にするな、い぀ものこずだろう」 「  い぀も」  ぱさりず蚀う音ず共に癜いワむシャツを矜織った零は、こちらを振り返っお薄く笑っおいた。なんだ自芚がなかったのか、ず告げる唇は銬鹿にしたようでもなく、䜕故だかやけに嬉しげに口角が䞊がっおいる。 「なんだよ」 「いや、気付かないぐらい、い぀も倢䞭になっおいるのかず思っお」 「  っ」  思わぬ図星を突かれ、反論する蚀葉も出おこない。蚀葉に詰たった晃牙を芋お、クククず笑い声を立おた零はずおも嬉しそうだった。そしお、棺桶の傍たで寄っおくるず薄明りの䞭でもきらきらず光る晃牙の銀髪を、いずしいものを愛でるかのように優しくくしゃりず掻き混ぜた。 「起きたなら毛垃を半分寄越せよ。寒くお適わない」 「あ、悪い」  どうやら知らぬ間に枚の毛垃を自分に巻き付けるかのように奪っおいたらしい。寒さに耐えかねた零がシャツを矜織りに行くのも仕方がないこずである。どうりで枩いわけだず、晃牙は身に銎染んだ毛垃をひっぺ剥がす。  ただ、明け方は寒い。  冷たい空気が毛垃ず玠肌の間に入りこんできお、ひゅっず喉が鳎りそうになる前に、その隙間を埋めたのは零の身䜓であった。あっずいう間に暪に滑り蟌んできた身䜓は晃牙を包み蟌む。零の身䜓も冷え切っおはいたが、それに反応するより前に嗅ぎ慣れた匂いに萜ち着いおしたったこずは秘密である。  零が慣れた手぀きで晃牙を匕き寄せるず、二人は益々密着した。互いの息も感じられるほどの距離が心地良いのだから仕方がない。 「晃牙はあったかいな。さすがは俺をほったらかしお、毛垃ずいちゃ぀いおいただけはある」 「悪かったっお」  眰が悪くなっおそっぜを向く。だが芖線が合わないこずは蚱さないずばかりに、零は即座に晃牙を顎から掬いずった。そしお晃牙ずじっくりず目を合わせ、芪指の平で晃牙の口元をなぞった。 「お前が颚邪を匕かないなら構わないよ」  そんな顔も出来たのか、ず蚀いたくなるような陜だたりを圷圿ずさせる笑顔を浮かべ、零は啄むように晃牙の唇に自分のそれを寄せた。最初はちゅっちゅっず軜い音を立おおは離れるものだったが、段々くちゅくちゅずした氎音が混じり始める。  あのラむブが終わっおから、䜕回キスを亀わしたか随分前に数えられなくなっおいた。気付けば唇が合わさっおいるような感芚は、元来から重なるこずが正しかったような気がしおくるからおかしくなる。吞われすぎお倧分感芚が麻痺しおしたった唇ず同じように、思考もおかしくなっおしたっおいる気がした。困惑しお零を芋䞊げおも、こちらの思考を読んで肯定するかのように笑み返しおくるだけなのだから益々良く分からなくなる。  ――たあ、今日は自分にずっお信じられないような事態が匕き続いおいるから、仕方がないのかもしれないけれど。  双子に刀定を任せた返瀌祭のUNDEAD察デッドマンズ  最終的にUNDEADの二幎ず䞉幎のバトルずなったわけだが、勝利を収めたのは晃牙ずアドニスだった。勝負は終盀盎前たで僅差だったず思いたい。だがしかし、やはりUNDEADの二枚看板の力は凄たじかった。䞊倖れた歌唱、ダンス、トヌクそれらは晃牙たちの䞊をいき、心の底のどこかでは勝おないず分かっおしたっおいた。  それでも必死に食らい぀き、迎えた最終曲。ステヌゞの䞭倮に立぀ず、アドニスず目配せし合い、マむクに通さないように倧きく深呌吞しおから噛み぀くように倧きく吠えた。 「おい、ク゜先茩共。耳の穎かっぜじっおよく聞いおおけよ」  挑発的に、生意気に  もう零ず薫が居なくなったらそうも出来なくなっおしたうから、これが最埌だからずいう思いを籠めお思いっきり叫んだ。ステヌゞの端でファンサヌビスを振りたいおいた二人が驚いたように振り返る。  そのあっけに取られた顔を芋お、アドニスずくすくす笑い合うず今床はアドニスが口を開いた。 「朔間先茩は倜じゃないず動いおくれないし、矜颚先茩はナンパばかりで毎日苊劎した。緎習も少なかったしラむブもなかなか出来なかった。だけど、」  アドニスがやれやれずいう顔をしながら、それでも今たでを思い出しお楜しそうに笑う。UNDEADが結成されお、ほかのナニットのように真面目に掻動をした回数など本圓に少なかったず思う。今思い返しおみお、それが酷く残念なこずに思うけれど、四人でこなしおきたこず、そのどれもがなんだかんだ蚀っお―― 「最高に楜しかったぜ。絶察、二床ず俺様はこんなこず蚀わねえけど  感謝しおる」 「ありがずう、先茩たち。最埌に俺たちから逞に、この曲を送ろうず思う」 「有難く受け取れよ」  気恥ずかしくお、もう二人が居る方は芋られなかった。そしお流れ出すむントロは、UNDEADらしからぬバラヌドで芳客もざわ぀く。  今回のむベントに合わせお晃牙ずアドニスがああでもない、こうでもないず意芋を出し合いながら完成させた新曲だった。あの二人になにか䌝えるこずができる曲は䜜れないかず詊行錯誀しお出来たのは、ずおも優しい曲だった。本圓にこれでいいのかアドニスず数日間悩んだけれど、䞀床聞き慣れおしたったメロディを厩すこずなどもう出来なかった。繰返し旋埋を聞いお、いたたでの想いを歌詞に乗せた。  最初に歌うのは晃牙からで、口を開くものの声が震えそうで䞀瞬戞惑う。それを倧䞈倫だずばかりに、支えたのは晃牙の肩に手を乗せたアドニスだった。今たでいっぱい緎習しただろうず確認するような目配せをされ、ぐっず頷いお前を向いお歌った。  い぀もず違う曲に、芳客がどんな反応を芋せるか怖くお仕方がなかった。だけど、この曲は今どうしおもこの堎で披露しお、あの先茩共に届けたかった。アドニスず顔を芋合せお番のサビの最埌のパヌトをハモりきり、やり遂げた満足感に笑顔になった瞬間、二人の耳に届いたのは芳客からの拍手だった。い぀ものような歓声ではなく、鳎り響く拍手は曲に合わせたように䌚堎を包み蟌む。思わぬ良い反応に、玔粋に驚き目を䞞くしお䌚堎を芋回した。 「良い曲だ」 「ふふっ、本圓に、ありがずう晃牙くん。アドニスくん」  そんな声がすぐ暪から聞こえおきお、声のする方向を向けば照れくさそうな顔を浮かべた零ず薫が居た。少し最んだ瞳ず、はにかんだ笑顔を芋おいたら、こっちが耐えきれなくなっお目頭が熱くなる。 「こら。ただ泣くには早いだろ、二人ずも」 「そうそう。ステヌゞでは最埌たで笑顔じゃないず」  マむクを通さず、そう告げられたのず同じタむミングで番が始たる。すぐに歌おうずするものの、歌い始めたのは零ず薫だった。二人には内密であった筈の歌だが、既に二人は知っおいたらしい。そういえば郚宀に音源ず歌詞を眮きっぱなしにしおいたな  ず思えば、犯人はあの悪戯奜きの双子しか居なくお思わず気が抜けお苊笑した。  唐突な二枚看板のパフォヌマンスに䞀斉に芳客は湧き立った。 『ほら。䞀緒に歌えよ』  零がこちらを振り返り、晃牙ずアドニスを誘う。お前らの歌じゃねえし、俺らの歌だし、偉そうにすんな ず思ったが、もうすっかりどうでも良くなっおしたった。  二人に想いは届いたみたいだし、䜕よりアドニスず初めお自分たちの力だけで䜜った歌が二人に歌っおもらえるのはなにより嬉しいこずだった。ぐっず服の袖で目元を擊るず、気持ちを入れ替えた。  最埌のこの曲を、UNDEADずしお最高に楜しんでやろうじゃないか――  そんなこんながあっお、最終的に「UNDEADに倧きな拍手を」ず零ず薫が煜ったこずもあり、UNDEAD――぀たり晃牙ずアドニスが勝利を収めたわけであった。そうなっおくるず、正匏な勝負ずは蚀えないので、ちょっぎり玍埗いかない郚分もあったが  䞎えられる倧きな歓声ず拍手が心地よかったので、そんなこずはもうどうでも良くなっおしたった。  むベントが終わり、ステヌゞ裏で四人が揃った時なんずも蚀えない空気になる。UNDEADは䞉幎卒業の機に解散だず蚀われおいるし、ずなるずあの曲が最埌に四人で歌った曲ずいうこずになる。なかなか誰も喋り出す切欠が持おない䞭、沈黙を砎ったのは薫だった。 「ねえ、朔間さん。UNDEAD解散するっお話を聞いたんだけど、本圓」 「ああ。それに぀いおなんだが――」 「俺、それ反察。別にいいじゃん。俺ず朔間さんは抜けるけど、晃牙くんずアドニスくんで続けおいっお貰えば」  ちなみに  ず、薫が意味ありげに䞍敵に笑う。 「俺ず朔間さんは、䞀足先に芞胜界におデビュヌ予定なんだ♪」  りむンクを飛ばしそうな勢いで、薫が普段よりも数段高いテンションでそう告げる。零の肩に腕を回しお、「ねヌ朔間さん」ず甘えるように擊り寄った。こちらを芋お、うらやたしいだろうず蚀わんばかりの顔だ。  薫に煜られおいるこずは分かるが、䜕も蚀えないこずが悔しくお埌ろ手で拳を握りしめる。結局、ばらばらになるずいう結果は䜕も倉えられなかったずいうこずだろう。たあ仕方がないず蚀えば仕方がなかったのかもしれない。  零は距離が近くなった薫を嫌そうな顔を芋せお、距離を取ろうず䞀歩暪にずれる。 「寄るな、鬱陶しい。だから、その件に぀いおは――」  零が䜕かを蚀おうずする前に、薫が再びそれを遮った。そしお、次に晃牙たちの方を向いた時には、期埅を蟌めた目をしおいた。芋慣れない衚情に困惑しおいるず、存倖に柔らかいトヌンの声が薫の口から玡がれた。 「解散しなくおいいから、UNDEAD続けおよ。二人でもっず力぀けおきおよ。䞀幎埌、君たちが卒業の時に、俺たちが『UNDEADに入れおくれっお』蚀いたくなるような、そんなナニットにしおみせおよ。埅っおるからさ」  どうだ ず笑みを浮かべ、薫はそう蚀い切った。零はその暪で行き堎をなくした蚀葉の代わりを吐き出すように溜息を぀いおいる。 「え」 「あ」  思っおもいなかった内容に、アドニスず同じタむミングであっけにずられた声を䞊げる。今、薫は『埅っおいる』ず蚀ったのか   急に目の前が明るくなったのかのように感じた。本圓にそれを信じおいいのか、確かめるように零をじっず芋぀める。 「俺の喋るずころが無かっただろ」 「だっお朔間さん。い぀も矎味しいずころ持っお行っちゃうからさ。たたにはいいじゃない」  そんな軜口を叩いおいた零が、晃牙の芖線に気付いたのか晃牙ず芖線を合わせる。そしお、にこっず笑うず、ぐしゃぐしゃず晃牙の髪を掻き混ぜた。乱暎なそれに反抗しようず振り払おうずするが、顔を䞊げた近くに零が居お思わずどきりずする。 「この間は悪かった」  軜音郚郚宀での喧嘩のこずを蚀っおいるのだろうか、晃牙だけに聞こえるかのような小さな謝眪だった。そしお零は薫ずアドニスを芋枡し、党員の顔を確認するずリヌダヌらしく告げた。 「来幎、四人揃っお掻動を再開する」  零のその宣蚀に、薫ずアドニスが倧きく頷く。 「そうこなくっちゃ。もう二枚看板でやっおくUNDEADじゃ駄目なんだからね。それぞれが看板背負えるぐらいになっおね アドニスくん、晃牙くん」 「了解した。䞀幎埌を楜しみにしおおくれ」  そしお、䞉人の目が揃っお晃牙を芋぀める。人䞀倍UNDEADの掻動が続くこずを願っおいたのは晃牙だず知っおいただろうから、その瞳はみんな優しく匧を描いおいる――甘やかされおいるず思った。だが、そんなのは自分らしくなくお悔しい。  でも、その䜕倍も䜕十倍も、嬉しくお嬉しくお仕方がなかった。口角が䞊がりっぱなしになるのを隠すかのように俯く。そしお、晃牙の答えを埅぀䞉人に向けお蚀い攟った。 「朔間先茩ず矜颚 先茩が、土䞋座しおでも『UNDEADに入りたい』っお蚀いたくなるようなナニットにしおおいおやるよ」  口では必死に悪態を぀くしかなかったけれど、誰もが晃牙の照れ隠しだず分かっおいたし、けれども誰も突っ蟌みはしなかった。  宵闇の魔物ず呌ばれるのが嘘のように、今この瞬間に浮かべた笑顔は誰もが幎盞応のものであった。こうしお揃っお笑い合う日がくるなんお、結成圓初は思ったこずもなかった。だけれど、こうしおこんな日を迎えおみるず零の采配はずっず正しかったのだず思えおくる。  やっぱり朔間先茩は凄い――晃牙は心の䞭でそっずひずりごちた。 「じゃあ、俺はちょっずアドニスくんず話があるから。二人も話したいこずあるでしょ どうぞどうぞ」    なんお薫がアドニスを連れ去っおいっおから、かれこれ䜕分経過しただろうか。お互い難しい顔をしお芋぀め合っおみおも、なかなか䌚話は出おこない。話したいこずは山ほどあるけれど、どこから切り厩そうか迷っおしたう。零も同じようで顎に手を圓おお、お決たりの悩むポヌズを決めおしたっおいる。  どうしたものかず思っおいる時、急に錻がむずむずずし出した。 「ぞっ、くしゅん」  挏れたくしゃみに予想倖に驚いたのは零のほうであった。 「悪い  そういえばシャワヌもただだったな、冷えたか」 「いや、今のは錻がむずむずしただけだ。ここ寒くねえから平気」  錻䞋を擊っお、倧䞈倫であるこずをアピヌルすれば、零はほっずしたように胞を撫で䞋ろした。こうしお普通に䌚話できるのに、どうしお最初の䞀蚀をかけるのは難しいのだろうか、少しおかしい。零も同じこずを思ったようで、肩を揺らしお笑いを堪えおいるようだった。 「䜕がおかしいんだよ」 「お前こそ」 「そっちこそ」  今床こそ、顔を芋合せお笑った。い぀もの二人に戻れたみたいで、晃牙は少しだけ安堵した。 「晃牙」 「おう」  ステヌゞを降りおも、ただ自分の名前で呌んでもらえるこずに玠盎にずきめいた。  どんな名称で呌ばれようず、呌び指す察象が倉わらなければ䞀緒だず思っおいた。でも、今だから分かる。最初に『わんこ』ず呌ばれた時には切ない気持ちになった気がしたし、今再び『晃牙』ず呌ばれお぀い嬉しくなっおしたう自分がいる。零も最初に『吞血鬌ダロヌ』ず呌ばれ、今再び『朔間先茩』ず呌ばれるのは同じ気持ちなのだろうか。 「さ、朔間先茩」  声に出しお、そう呌んでみる。勝負には䞀応勝ったのだから、もう胞を匵っお呌べる筈だけれども、やっぱり久々に呌ぶその名は少しばかり気恥ずかしい。぀い䞊擊っおしたったが、それでも零は目尻を䞋げお嬉しそうに埮笑んだ。 「ありがずう晃牙」  劙に力がこもった声で、零が真っ盎ぐに晃牙に告げた。 「なにがだよ」 「䜕っお、いっぱい有りすぎるんだが――俺を遞んでくれお、芋捚おないでくれお、着いおきおくれお、䞀緒に居おくれお、諊めないでくれお  」  指折り数えるように蚀われるたび、自分の䜓枩が恥ずかしさで急激に䞊がっおいくのが分かった。そんなこず䞀々思い出しお蚀うなよず思ったのが顔に出おしたったのか、「なにがず蚀ったのはお前だろう」ず返された。 「い぀も思っおいたけれど、そんなこず蚀う機䌚もなかった」 「だな。腑抜けおたしなテメヌ」  晃牙がそう蚀っおけらけら声を挏らしお笑えば、零はもう黙れずいった少々怒った様子で距離を詰めた。ぐんず近付いた顔は無衚情だったけれど、矎圢がそうしおいるだけで劙な迫力がある。だがしかし、その造圢矎を既に芋慣れおしたった晃牙にはなんの意味も為さない。  零の手が䌞びおきお、晃牙の茪郭に沿わされる。逃げるこずなどしないのに、それを阻止するような行為に、晃牙は零の深玅の薔薇を溶かしたような瞳を芋぀め返した。返される芖線に安心したのか、零は固くなっおいた衚情を厩しおふっず力を抜いた。そしお、 「倧奜きだ」 「っ――」  ステヌゞで告癜したのず同じ蚀葉で、零があの時の蚀葉に返すかのようにそう告げた。ストレヌトなそれに、心臓が早鐘を打぀。日垞で閚事で、今たで䜕床も告げられたこずがある蚀葉だったが、二人の関係性が戻っおきた今では嚁力が違う。ちゃんず奜かれおいる、愛されおいるず自芚した。  晃牙のこずを芋぀める目はちゃんず晃牙をその瞳の䞭に映し、顔に添えられた手は優しく頬をなぞる。䜕時の間にやら零は自身が被っおいた垜子を倖し、その腕をちゃっかり晃牙の腰に回しおいる。もう晃牙をどこにも動けないようにしお、曎に距離を詰めるず口を開く。 「悪い吞血鬌に捕らわれお可哀想に。だけど、これからも先、隣にはお前が居お欲しい」 「  仕方ねえから隣に居おやるよ」  照れくささに挏れた声はがそがそずしおしたったけれど、零にはしっかり届いたらしい。その答えに満足そうにするず、晃牙の唇に玄束だず蚀わんばかりに勢いよく吞い付いた。䞎えられる激しいキスに翻匄されながら、挑むように晃牙も返せば零が喉の奥で笑っおいるのが分かった。ただただ䜙裕がありそうな零にむか぀いお晃牙が足を螏むず、より深くキスを重ねられる。  延々終わりがこないような口付けはどこたで続くのか、でも離れがたくお  晃牙もしがみ぀くように零の背䞭に手を回した。  ――思えば、あの時から今日はキスばっかりしおいる。  あれからシャワヌを济びお身を枅めた埌は、早くもっず深く繋がりたいずばかりに事に及んだ。䜕床身䜓を重ねおも、キスを䜕回しおも満ち足りないように、盞手が欲しくお欲しくお枇望しおいた。明け方より少し前の時、意識が飛んでしたったのだろうずいうこずを、芚醒しおきた頭で挞く晃牙は考え至った。 「なにを幞せそうな顔しおる」  キスを䞀旊やめお、零が䞍思議そうに問いかけおきた。 「幞せそう」 「ああ。幞せそうに甘く蕩けたはちみ぀色の瞳が、矎味そうだ」  冗談亀じりにそう蚀った零は、晃牙の瞳に生理的に溜たった涙をぺろりず舐めずった。ふむ甘い、なんお埮笑した顔はずおも劖艶だった。そんな顔を芋おいるだけで、身䜓の奥に未だ燻っおいた熱がぶり返しおくる気がした。 「朔間先茩、シよ」 「蟛くないのか」 「蟛いけど、シたい」  歀方を気遣っおくれるのは有難いけれども、熱を煜ったのは誰だず蚀いたくなる。それに密着した身䜓から䌝わっおくる零の熱も晃牙には届いおいお、悪戯を籠めお足を動かしおみれば零が困ったように笑った。 「悪い子だ」 「でも、そんな悪い子が奜きなんだろ」  遠慮なんおするなよずばかりに晃牙が零を芋䞊げれば、暪向きだった身䜓はあっずいう間にころんず転がされシヌツに瞫い付けられる。マりントポゞションをずった零は、もうすっかり雄の顔をしおいた。 「埌悔するなよ」  ――する蚳ないだろ、あんたず䞀緒なんだから。
※このお話は『衝突思い還しの返瀌祭』むベント埌の零晃ずUNDEADメンバヌのお話しになっおおりたす※<br />※18犁ではありたせんが、事前・事埌描写が含たれたす※<br />前回アップした凱旋むベでも同じようなこずを曞きたしたが、『どうしおむベント埌にむベント埌ストヌリヌ゚ピ゜ヌドがないか毎床䞍思議で仕方がないので、自分で曞くしかありたせんでした』ストヌリヌ読み終えた埌、毎日零晃ちゃん尊い尊いっおなっお、ずっず考えおたした。もう隙あれば零晃拝みたいな  酷い䞭毒性でした。小説に吐き出したした、満足ですい぀もホモ絡めながらあんスタのこずばっかり考えおおりたす @seirannnn そんな方々ぜひお友達になっおください次むベはたたfine絡みですか。finePずアンデPを兌任なのですが䌑む暇はないですねp最埌にい぀もFAV評䟡本圓に本圓にありがずうございたす 小説曞く気力になっおいたす嬉
【零晃】未来の玄束【UNDEAD】
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「ロックバむ゜ンさん」 トレヌニングを終えおシャワヌを枈たせお、垰り支床を敎えたロッカヌルヌムで䞍意に呌び止められた。振り返るたでもなく誰に呌ばれたかはわかる。自分を「ロックバむ゜ンさん」などず呌ぶ人間は限られおいるし、そもそも声に芚えがあった。 「䜕だバヌナビヌ」 声の方に目を向ければ、想像通り。シュテルンビルドの英雄にしお、芪友の盞棒たる男が立っおいる。 珍しいな、ず思う。圌が自分に声をかけるなど。 いや、デビュヌ圓初こそいけ奜かない生意気な野郎だ、ずも思っおいたが、今はそんなこずもない。様々な事件を乗り越えお、盞棒たる虎培をはじめすっかりヒヌロヌ連䞭ずも銎染んでいるのだから、「話をする機䌚がない」ずいうわけではない。 ただ、圌ず䌚話する際には倧抂ずいうかほが必ずそこには虎培がいた。虎培ずの぀き合いは長い。奎ず俺の話に、バヌナビヌが加わる、ずいう圢がほずんどだった。䜕しろ、䞀時の険悪さは䜕凊行った ず思わず遠い目をしたくなる皋床には、バディのふたりは公私ずもにべったりなのだから。 そんな圌がひずりで、自分から声をかけおきたこずが珍しいのだ。 ぀い「虎培はどうした」ず蚊こうずしお気づく。 ―――――いた。 䜕故か、バヌナビヌから離れるこず6メヌトル匷。ロッカヌルヌムのドア近くの壁に寄りかかっお、じっずこちらに目を向けおいる。 䜕やっおんだあい぀ 。 珍しいず蚀えばこれも珍しい。虎培は基本的にスキンシップの激しいタむプで、それは芪しい盞手になればなるほどそうで、珟圚のずころ奎から1番ベタベタされおいるのは盞棒であるバヌナビヌだ。そんな虎培が目の前のバディから距離を取っお、䜕をするでもなく突っ立っおいる、ずいう事態はいっそ異垞ですらある。 䜕だ、たたケンカでもしおんのかだがそれならそれで、こんな䞭途半端な距離でじヌっず芋おいるずいうのもおかしな話だ。    むダな予感がする。 厄介事に巻き蟌たれるのはごめんだ。さっさず垰りおえ。 どうしたもんか、ずため息を吐きそうになったずころで、 「あ、あの」 バヌナビヌが再び声を䞊げた。 ふず芋れば、圌はだいぶこちらに近づいおきおいる。間違いなく、自分に甚事があるずいうこずだろう。たあ、甚もなければ名指しで呌び止められるわけもない。 「ああ、䜕だ」 早いずこ聞いお、さっさず垰ろう。 そう考えお促せば、「あ、ぁぁぁ、あの、」ずバヌナビヌがたご぀く。䜕なんだ 芋たこずもない姿に気を匕かれお凝芖すれば、それたで俺を芋おいた目が慌おたように逞らされた。 わたわたず戞惑う気配。うろうろず床ず、ロッカヌず、俺の顔ずを圷埚う芖線。たたに目が合うず、バっず逞らされる。 意味がわからない。 「 䜕だ」 どうした 具合でも悪いのか、ず2メヌトル匱の䜍眮に立぀バヌナビヌに近づこうずした、瞬間。 ―――ぞく、 背筋を冷たいものが走った。 ヒヌロヌ業で培われた本胜で、その原因はすぐにわかる。 壁だ。 壁際に立぀奎だ。 動くな、ず呜じられた気がしおそちらに目をやれば、盞倉わらず䜕をするでもなく壁にもたれお立っおいる虎培の姿。 だから䜕なんだ 銖を傟げお、奎に問うおみおも反応は返らない。 「 あ、あの、ろ、ろっ、ろろ、ロックバむ゜ンさんっ」 「ああ」 いかにも喉から搟り出したした、ずいうバヌナビヌの声。本圓に䜕なんだ さっきから有り埗ない姿ばかり芋せられおいるような。 「あの、あぁ、あの、ですね、が、がく、僕ず、」 「」 「が、僕ず ぀、぀぀぀、぀か ぀、぀」 どれだけ噛むんだ、ず思わず突っ蟌みたくなった。䜕の悪ふざけだ、ず思うが、ものすごく必死なこずは䌝わるのでどうにもリアクションできない。 おい、お前の盞棒どうしたんだよ 埒があかない、ず壁の方に今床は声に出しお問いかけようずしたずころで、 「぀、぀きあっおくだしゃい」 ―――はあ ロッカヌルヌムに瀕死、ず蚀わんばかりの絶叫が響いた。぀いでにたた噛んでた 響き枡った蚀葉の内容に、俺は倧いに混乱した。 人の感情の機埮にそう聡い方ではないが、今バヌナビヌの蚀った「぀きあう」が「ちょっず買い物に぀きあっおくれ」ずか「今倜飲みにいこうぜ」ずかいうレベルの問題でないこずはわかる。 こういう蚀い方は䜕だが、ようするに告癜の定型文ずしお捉えるべきだろう。 だがそうなるず新たな問題が発生する。 バヌナビヌは俺を呌び止めた。俺の名を呌んだ。俺に向かっお「぀きあっおくれ」ず蚀ったのだ。぀たりそれは、俺のこずが「奜きだ」ず蚎えおいるこずになるわけだが 。 ―――ないないない。 浮かんだ考えを速攻で打ち消す。 俺は男で、圌も男だ。そりゃあ䞖の䞭にはネむサンみたいな嗜奜の奎もいるだろうが、バヌナビヌがそうだずは思えない。仮にそうだずしおも䜕で俺だ。同じ男なら虎培ずか そう虎培だ普段からやたらべったり過ごしおるじゃねえか。「虎培さん虎培さん」ずやたら嬉しそうに話しかけおるし、虎培の野郎も野郎で俺ず酒を飲めば8割の確率で「最近バニヌが可愛くおさヌ。こないだも 」ずいう話になる。正盎耳にタコだ。 「おい虎培、䞀䜓どうなっお 」 ず壁の方を芋やっお、その途端心臓が止たったかず思った。 ひいやり、ずしたおどろおどろしい䜕かが俺の背を撫でる。殺気、だ。 虎培は笑っおいた。 埮笑たしい、ずいう気持ちを䞀切隠さない甘ったるい県差しでバヌナビヌを芋おいる。 それから、ちら、ず俺に芖線を動かした。 笑っおいる。笑っおいる、が。 ――アントン 音にはならない。唇の動きだけで、俺に蚀う。 ――わかっおるな ゆっくりず動く唇は匧を描く。笑顔だ。 ――泣かせたら、殺す 目が、笑っおいない。 本気だ――― ごくり、ず自分が息を飲む音がやけに耳に぀く。 冷や汗が背䞭を流れる。動けない。 「ぁ、ぁ、あ、あの」 恐る恐る、ずいう仕草でバヌナビヌが俺を芋䞊げた。 矞恥なのか高揚なのか、目元も頬も赀く染めお。ふるふるず肩も拳も震わせお、県鏡越しのグリヌンは最んでいる。今にも涙が溢れそうだ。 ―――泣かせたら、殺す 奎は本気だ。 その背埌から立ち䞊る犍々しいオヌラは、間違いなく俺を仕留めにかかる。殺される。 長い぀き合いだ。奎が、実は目的のために手段を遞ばないタチなこずはよく知っおいる。「壊し屋」の名は䌊達ではない。 「ぁの、あの  だ、  だめ、です、 か」 びくびくず、たるで小動物の仕草でバヌナビヌが銖を傟げる。 ずん、ずさらなるプレッシャヌが俺に襲い掛かった。 ―――ああ、終わった。 ここで頷いおも、頷かなくおも、俺は終わった。 半ば呆然ず、それでも俺はどうにか頷いおみせたらしい。 目の前のバヌナビヌの衚情が倉わる。ぱあ、ず。きらめくグリヌンの瞳が喜びに満ちる。ふわ、ず花咲くように浮かぶ笑みは、なるほど、虎培が「可愛い可愛い」ずうるさいのもわかるものだった。 「あ、ありがずうございたすっ」 䜓を半分に折る勢いで瀌を蚀ったバヌナビヌが、次の瞬間くるりず埌ろを向く。 「虎培さんっ」 そこでようやく、奎は壁から身を離した。2歩、3歩ず歩み寄り軜く䞡腕を広げおみせる。目を芋匵るスピヌドで、バヌナビヌが飛び蟌んだ。 「虎培さん虎培さん、僕っ」 「おヌ、頑匵ったなヌバニヌちゃん。偉かったなヌ」 「はいっ、はいっ、僕、ちゃんず、」 「おう、ちゃんず蚀えおた。可愛かったぞヌ」 ぎゅう、ず䞡腕で盞棒を抱き蟌む。虎培の巊手はバヌナビヌの腰にしっかりず回り、右手はわしわしず髪を撫でおいる。 「か、可愛くないです」 「うんうん、可愛くおかっこよかったぞヌ。アントニオだっおメロメロだっお、おじさん蚀ったじゃねヌか。ホントだったろヌ」 「 はい、虎培さんの蚀うずおりでした」 「だろヌバニヌの魅力にダラれない人間なんおこの䞖にいねえっ぀ヌの」 バヌナビヌもバヌナビヌで、ぎゅうぎゅうず虎培にしがみ぀き、すりすりず肩口に頬をすり寄せおいる。 「そ、そんなこずないです。虎培さん倧げさです 」 「いやいやそんなこずあるっお。ばっちりだっお。おじさんだっおいっ぀もメロメロだもんよヌ」 「 もう」 「んじゃ、今日はバニヌちゃんの恋の成就を祝っお。飲みにいくかヌ奢っおやるぜヌ」 「はいっ、ありがずうございたすっ」 バディの肩を抱いた圢で、虎培がドアぞず足を進める。逆らうこずなく埓うバヌナビヌは、もはや芋慣れたものだ。 「じゃヌな、アントン。たた明日なヌ」 「倱瀌したす、ロックバむ゜ンさん」 にこにこず、笑顔で去っおいくふたりに「あ、ああ」ず応じるこずがそのずきの俺の粟䞀杯だった。 あれ 俺、明日からどうなるんだ コレ。 END. 続きを考えるずひたすらアントニオ氏が䞍憫なので、やめたした。 虎培さんは恋人のずきより保護者ポゞのずきの方が、恥ずかしげもなく衒いなく愛情衚珟しおるむメヌゞがありたす。 ずいうか、バニヌちゃんにダダ甘な虎培さんが曞きたかったのです。  い぀もか痛
ずりあえず、あたしはアントニオ・ロペス氏に心から謝らなければならないず思いたす 。     なんかね、バニヌちゃんを愛でるためならどんな劄想も厭わないわ、ずいう自分の脳みそが可哀想を通り越しおそろそろカッコいい気がしおきたした。←埅お。                 いちゃいちゃしおるのは虎兎ですが、ずしおは牛兎 あれ  みたいな感じです。牛さんはひたすらお気の毒です。䜕気に圌を曞くのは初めおなんですが、最初からこんなんじゃあたしの脳内における圌の今埌が思いやられたす。←他人事か。                 結論から申したすず、虎兎掟の方にも牛兎掟の方にもさらに蚀えば䜕より牛さんファンの方にも怒られそうな気がするので、「バニヌちゃんが可愛ければ䜕でもいいわ」ずいう猛者くらいしか  いや、どのような猛者にも怒られそうなお目汚しです。こんなにタグに悩むブツも珍しいぜ  いいの、俺埗だから爆
泣かせたら殺す。
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ご泚意 ・ほずんど䌚話文 ・女審神者が出たす。 ・燭さに  っぜいものに分類されるのかもしれない。 ・ずにかくギャグ。 ・圧倒的な燭台切さんのキャラ厩壊ひどい ・お互いぞの眵詈雑蚀ひどい ・犬猿䜕それ芪友のこずずいうくらい仲が悪い。 ただし憎悪たではないあくたでもギャグ ・ゲヌム内の蚀動にもいろいろずツッコミ入れおいたすのでご泚意を。 ・キヌアは䜕も悪くない。 倧䞈倫そうでしたらお付き合いくださいたせ。 [newpage] 【前䞖倩敵】結婚匏圓日に前䞖を思い出した【珟䞖倫婊】 荘厳な雰囲気に包たれたチャペルで、静かに向かい合う男女ずそれを芋守る参列者たち。 家族は涙ぐみ、友人たちは感極たっおいた。 圌らは、今日の䞻圹名がどれだけお互いを想っおいたか、少々鬱陶しいほど知り尜くしおいた。 特に䜕かしらの障害や隔たりがあったわけではない。 しかしたさに倧恋愛ず蚀うべき倧恋愛を経おの今日であった。䞻に二人のテンションずしお。 祈られなくおも幎続きそうな勢いに、爆発しろずいう声は無く、 「もういいからそのたた幞せでいおくれ」ず蚀わせるほどであった。 二人は満面の笑みで「もちろんよ、ねえダヌリン」「もちろんだよ、ねえハニヌ」 ず頷き合い、友人たちは䞀様に無衚情になったものだ。 このバカップルは今日を以おバカップルを卒業し、バカ倫婊ずなるのだろう。 しかるのちバカ倫婊か぀バカ芪になり、バカ祖父母になるのだ。 どこたでも倖れないであろうバカの文字は、すなわち愛の深さである。 お互いの存圚は空気や氎なんお生易しいものではなかった。 無理矢理匕き離せば分で犁断症状が出かねない愛の重さである。 「では、誓いのキスを」 関係者たちは䞀斉にカメラを構えた。 䞖玀の銬鹿倫婊が生たれる瞬間をおさめようず、身を乗り出す。 花婿は花嫁のノェヌルを䞊げた。 絵になるカップルは儀匏を超えた愛を感じさせるように、そっず口づけあった。 そしお。 「いやああああああああああ」 「うあああああああああああ」 お互いに絶叫した。 私ず燭台切光忠は仲が悪かった。ずおも悪かった。 そもそも最初の挚拶からしお、圌は感じが悪かった。 青銅の燭台が切れるこっちが斬っおほしいのは歎史修正䞻矩者だよ 栌奜付かない栌奜なんおお前に求めおねえよ 戊争をしおいるずいうギリギリの粟神状況の䞭でふわっず珟れたチャラ男。 それが私の圌ぞの第䞀印象だった。 はあここホストクラブじゃないんですけど着替えお出盎しおきなず。 こちらがいい印象を持たなかったのが䌝わったのだろうか。 いや、そんなあっさりした理由ではあるたい。 私たちはお互い顔を合わせた瞬間に思ったのだろう。 「あ、こい぀気が合わねえ」ず。 合う合わないはどうしたっおあるだろう。そこをずやかく蚀う気はない。 しかし、他の刀剣に限っお蚀えば、私はそれなりに受け入れられおいたし、お互いに歩み寄る努力もした。だが、こい぀だけは、こい぀だけはどうしたっおダメだったのだ。 もちろん仕事の堎で奜きだの嫌いだの蚀っおいられないから、そこは私情を挟んだりしなかった。 それはあちらも同じだった。 栌奜぀けだったから、栌奜わるい真䌌がしたくなかっただけだろうが。 私たちは仕事の䞊ではお互い信甚しおいたし、圌も私の指瀺には埓っおくれた。 嫌いだからず必芁以䞊に口を挟んだり、意芋したりずいうこずも無かった。 しかし、ひずたび仕事を離れるず、私たちはそれはもう険悪だった。 刀剣をわざわざ恋愛察象に眮いたこずはないけれど、 「あい぀だけは絶察に無理」だず思っおいた。たぶんあちらもだろう。 顔を合わせれば舌打ちは圓たり前、ずっくみあいの喧嘩もしたこずがあるし、 怒鳎り合いも日垞茶飯事だ。 嫌味や皮肉の応酬にはらはらしおいた短刀たちも、しばらくするず遠い目で䞍干枉を貫いた。 これは決しお奜意の裏返しなどではない。 私は、燭台切光忠が嫌いだった。 なのに、なぜなぜ私は奎ず結婚なぞしおいるのか 私は生たれ倉わり、人間瀟䌚の䞭で暮らしおいた。 そしお、運呜的な出䌚いをし、その盞手は私の恋人になった。 私は恋人を心底愛しおいたし、圌もそうだった。 栌奜よいし優しいし気が利くし料理も䞊手いし声もかっこいいしスタむルもいいし以䞋略。 私は圌にめろめろだった。 存分にバカップルずいう称号を受け取った私たちは ラブラブ絶頂期で結婚したのだ。 ここで悲劇だ。 誓いのキスをした瞬間、私は前䞖の蚘憶を取り戻した。 そしお、目の前の結婚盞手が倧嫌いな燭台切光忠であるこずたで思い出し、絶望した。 他の本䞞の、なんおありえない。これは間違いなく私の本䞞にいた燭台切光忠である。 幞い、圌はただ私を思い出しおいないようだ。 しかし、ここで私が嫌悪感たっぷりのたなざしを向ければ、きっず䞍審に思う。 それがよくない刺激ずなっお、圌たで前䞖を思い出しおしたうかもしれない。 それだけは嫌だ。 「はあお前䜕僕ず結婚しおんの銬鹿なの実は僕のこず奜きだったの気持ち悪っ」 ずか蚀われるそれだけは絶察に回避しなければならない。 別にお前なんお奜きじゃねえよツンデレではない これから私がしなければならないこず。それは、 圌に䞍審に思われないようにい぀も通りのラブラブバカップルの片割れを挔じながら、 どうにか私ず別れたいず思われるように䞊手く誘導し離婚するこずだ 正盎あの燭台切光忠を愛しおいる挔技なんお絶察に無理だけど、 蚘憶を取り戻す前たでは恋人だったのだから、どうにか頑匵らないず 僕ず䞻である審神者の女性は仲が悪かった。ずおも悪かった。 そもそも最初の挚拶からしお、圌女は感じが悪かった。 青銅の燭台だっお切れるんだよずアピヌルをしたものの、どうにも決たらないそれに、 少し困った顔をしお䞻を芋れば、䞻は、 「はあなんだそのナメた挚拶」ずでも蚀うように舌打ちをしたのだ。 戊争をしおいるずいうギリギリの状況だからこその僕の気遣いを無䞋にした化粧の濃い女性。 それが僕の圌女ぞの第䞀印象だった。 はあここ本䞞ですよねえ顔掗っお出盎しおきなず。 こちらがいい印象を持たなかったのが䌝わったのだろうか。 いや、そんなあっさりした理由ではない。 僕たちはお互い顔を合わせた瞬間に思ったのだろう。 「あ、こい぀気が合わねえ」ず。 合う合わないはどうしたっおあるだろう。そこをずやかく蚀う気はない。 しかし、他の刀剣に限っお蚀えば、僕はそれなりに受け入れられおいたし、お互いに歩み寄る努力もした。だけど䞻だけは、䞻だけはどうしたっおダメだったのだ。 もちろん仕事の堎で奜きだの嫌いだの蚀っおいられないから、そこは私情を挟んだりしなかった。 それはあちらも同じだった。 栌奜぀けだったから、栌奜わるい真䌌がしたくなかっただけじゃないかな。 僕たちは仕事の䞊ではお互い信甚しおいたし、僕も圌女の指瀺には埓っおいた。 嫌いだからず必芁以䞊に口を挟んだり、意芋したりずいうこずも無かった。 しかし、ひずたび仕事を離れるず、僕たちはそれはもう険悪だった。 人間をわざわざ恋愛察象に眮いたこずはないけれど、 「䞻だけは絶察に無理」だず思っおいた。たぶんあちらもだろう。 顔を合わせれば舌打ちは圓たり前、ずっくみあいの喧嘩もしたこずがあるし、 怒鳎り合いも日垞茶飯事だ。 嫌味や皮肉の応酬にはらはらしおいた短刀たちも、しばらくするず遠い目で䞍干枉を貫いた。 これは決しお奜意の裏返しなんかじゃない。 僕は、䞻が嫌いだった。 なのに、なぜなぜ僕は圌女ず結婚なんかしおいるのか 僕は生たれ倉わり、人間瀟䌚の䞭で暮らしおいた。 そしお、運呜的な出䌚いをし、その盞手は僕の恋人になった。 僕は恋人を心底愛しおいたし、圌女もそうだった。 可愛いし優しいしちょっずドゞでお菓子䜜りも䞊手いし声もかわいいしスタむルもいいし以䞋略。 僕は圌女にめろめろだった。 存分にバカップルずいう称号を受け取った僕たちは ラブラブ絶頂期で結婚したのだ。 ここで悲劇だ。 誓いのキスをした瞬間、僕は前䞖の蚘憶を取り戻した。 そしお、目の前の結婚盞手が倧嫌いな䞻であるこずたで思い出し、絶望した。 他の本䞞の、なんおありえない。これは間違いなく僕の本䞞にいた審神者である。 幞い、圌女はただ僕を思い出しおいないようだ。 しかし、ここで僕が嫌悪感たっぷりのたなざしを向ければ、きっず䞍審に思う。 それがよくない刺激ずなっお、圌女たで前䞖を思い出しおしたうかもしれない。 それだけは嫌だ。 「はあお前䜕私ず結婚しおんの銬鹿なの実は私のこず奜きだったの気持ち悪っ」 ずか蚀われるそれだけは絶察に回避しなければならない。 別に䞻なんお奜きじゃないよツンデレではない これから僕がしなければならないこず。それは、 圌女に䞍審に思われないようにい぀も通りのラブラブバカップルの片割れを挔じながら、 どうにか僕ず別れたいず思われるように䞊手く誘導し離婚するこずだ 正盎あの䞻を愛しおいる挔技なんお絶察に無理だけど、 蚘憶を取り戻す前たでは恋人だったのだから、どうにか頑匵らないず [newpage] ここから先は、二重音声でお楜しみください 青い顔で披露宎を乗り切った光忠ず䞻は、目の前の光景にさらに顔を青くした。 二人の前にでんず据えられおいるのは、 「二人の愛の巣」である倫婊の寝宀に眮かれおいる、真っ癜なシヌツのかけられた倧きなベッドである。 「わあすごいベッドだねハニヌ うわぁ䜕このベッドえ、うそ僕これで䞻ず䞊んで眠るの いや無理マゞ無理勘匁しお、え、だっお䞻だよ䜕このベッドちょっずした凶噚なんだけど、 誰だよ『ベッドは䞀぀でいいよね』なんお蚀った銬鹿はそうだよ僕だよ僕が蚀ったんだよ だっお仕方ないじゃんあのずきは蚘憶なんお戻っおなかったから可愛いハニヌずラブラブいちゃいちゃするんだっお、 胞が䞀杯だったんだものうああああのずきのハニヌ可愛かったよねえ顔を真っ赀にしお『う、うん』っお、 いや同じこず今䞻にされたら『はあなに玔情ぶっおんだよ気持ち悪っ』ずか蚀っちゃいそう無理ほんず無理」 「ここたで迫力あるず思っおなかったわねダヌリン うえぇ䜕このベッド、え、うそ私これで光忠ず䞊んで寝るの いやいや無理マゞ無理勘匁しお、え、だっお光忠だよ䜕このベッドちょっずした狂気すら感じるんだけど、 誰だよ『ベッドはひず぀の方が、寂しくないなあ』なんお蚀った阿呆はそうだよ私だよ私が蚀ったんだよ だっお仕方ないじゃないあのずきは蚘憶なんお戻っおなかったから玠敵なダヌリンずらぶらぶいちゃいちゃするんだっお、胞が䞀杯だったんだものうわあああのずきのダヌリンかっこよかったなあ『これで毎晩䞀緒だね』なんお、 いや同じこず今光忠に蚀われたら『はあ䜕かっこ぀けおんだチャラ男が』ずか蚀っちゃいそう無理ほんず無理」 「いよいよ、だね。 おいうかちょっず埅っお、あの、僕ら、これたで」 「い、いよいよね。 あれ、私たちこれたで 」 「「これたでろくにキスもしたこずなかったんだけどおおおおおおお」」 「は、ハニヌ  え、どうしよう新婚初倜で、っお぀もりでいたけど、ぶっちゃけ䞻ずは無理」 「だ、ダヌリン  結婚しおから、たっぷり、ねずか蚀われおたけど今の光忠ずはほんず無理」 「披露宎で随分疲れただろうから、今日のずころはゆっくり寝ようか。 っおこずにしずこう実際もう赀疲劎っおくらい疲れおるから」 「ありがずうダヌリン私もそう思っおたの。 っおこずにしずこうぶっちゃけもう郚屋出お行きたいくらいだけど」 「そっか。ハニヌも思っおたんだ。僕たち以心䌝心だね。ははははは。 セ゚゚゚゚フどうにか乗り切れた」 「ダヌリンが優しくおよかったわ。ふふふふふ。 うっしこれで恐ろしい展開は回避できた」 こうしお新婚倫婊は、クむヌンサむズのベッドのギリッギリ䞡端で背を向け合っお眠るずいう、 新婚初倜ずも蚀えない初倜を過ごした。 しかし、圌らの仮面倫婊生掻は今たさに始たったばかりであった。 しんこんふうふのらぶらぶないちにち 朝 「おはようハニヌ今日の朝ご飯はフルヌツにキヌアずミックスビヌンズのサラダ、 カフェオレずフレンチトヌストだよ。はやく顔を掗っおおいで、ねがすけさん。 たったくなんで僕が䞻のために朝食䜜らなきゃいけないの これだっお倧奜きなハニヌのために僕が玠敵な朝食を䜜っおあげようっお思っおたからだけど、 実際こうしお完璧な朝食䜜ったずころに来るのが䞻っおもう朝からテンション䞋がるよね。 前たでは『䜎血圧なハニヌぎゃんかわ』ずか思っおたけど、䞻だっお思い出した途端に、 『い぀たで寝おるんだよ早く起きれば』っお思うからね。ほんず蚘憶っお残酷だよね。 アアアア予定では今頃嬉し恥ずかし新婚生掻だったのにいいいい」 「おはようダヌリンこんなに玠敵な朝食が出来おるなんおさすがダヌリンね このサラダもずっおも矎味しそう早く支床しおくるわね うっわ起きたらキッチンに光忠居るずかこれなんお本䞞生掻 おいうかキヌアのサラダっお䜕どこのハリりッドセレブなの キヌアっおあれでしょあのなんか栄逊玠すごいらしいちっちゃいプチプチしたアレ。 いたいちチアシヌドず区別぀いおないんだけど。 ああいうのすぐ取り入れちゃう意識高い系男っおほんず鬱陶しいわヌ。 ああもうこれがダヌリンだったら『ダヌリン そんなおしゃれで玠敵な食べ物たで早速レパヌトリヌに取り入れちゃうなんおかっこいい』っお思うずころなのに、光忠だっお思い出した途端にこれだから、ほんず蚘憶っお残酷よね。 アアアア予定では今頃ずきめき胞きゅん新婚生掻だったのにいいいい」 「 矎味しいかなハニヌ。 向かいに䞻ずかほんずないわヌ」 「 ずっおも矎味しいわよ、ダヌリン。 向かいに光忠ずかほんずないわヌ」 「じゃあ、行っおくるねハニヌ ああもう出瀟しお二床ず垰っおきたくない 䞻が埅っおるっおだけで垰りたくない 前䞖で遠埁䞭に『ねえ、これからみんなで街に行かない』っお蚀っおは短刀たちにため息吐かれお倧倶利䌜矅に『いい加枛にしろ』っお舌打ちされた埌にみぞおちに䞀発喰らっお担いで連れ戻されおたものだけど、今たさにそういう気分でもそんなこずしたら『えダヌリン 新婚なのになんで垰っおこないのあんなに『ハニヌが家で埅っおるっおだけで仕事なんお攟っお垰っおきたくなっちゃうな ☆』なんお蚀っおたのに』っお思われるそこを怪したれたら圌女の蚘憶によくない刺激を䞎えおしたっおうっかり前䞖の蚘憶が戻っおしたうかもしれないそれだけは阻止しないず耐えろ耐えるんだ僕」 「行っおらっしゃいダヌリン気を぀けおね。 ああもうなんでたた光忠を芋送らなきゃいけないの 前䞖で遠埁に送り出すたびに『ドロップした刀ず亀換しお来いよ』ずか思っおは初期刀の歌仙に『いい加枛にしなよ』っお睚たれおでこぎん結構怖い音がするを喰らっおお出迎えポむントたで匕きずられたものだけど、今たさにそんな気分でもそんなこず蚀ったら、『えハニヌ 新婚なのにどうしおそんなこず蚀うのあんなに『ダヌリンが垰っおくるずきに家に居られるっおずっおも幞せ』っお蚀っおたのに 』っお思われるそこを怪したれたら圌の蚘憶によくない刺激を䞎えおしたっおうっかり前䞖の蚘憶が戻っおしたうかもしれないそれだけは阻止しないず耐えろ耐えるんだ私」 昌䌑み 「ハニヌ、そっちはどう倧䞈倫元気にしおる おいうかなんで昌䌑みに連絡取らないずいけないの 誰が決めたのはい僕ですが䜕かヌ 『ハニヌの声が半日も聞けないなんお耐えられないよ』ずか昌䌑みに連絡取る玄束しちゃった僕は䜕なの脳味噌ココナッツオむルで出来おたの䜕で昌䌑みたで䞻の声聞かないずいけないの䌚瀟は僕のオアシスなのにアッいけないいけない長谷郚くんみたいになっちゃう䞻がどう過ごしおるかずかどうでもいいんですけどヌ光忠特補お匁圓が矎味しかったずか圓たり前なんですけどヌ」 「ダヌリン電話ありがずう、こっちは倧䞈倫よ。そっちも無理しないでね。 むしろそのたたフル残業で䌚瀟に泊たり蟌めよおおおお長谷郚を芋習えばいいのにアッごめん長谷郚は䌑んで。長谷郚は悪くない。おいうかなんで昌䌑みに光忠から連絡もらわないずいけないの誰が賛成したのはい私ですが䜕かヌ『ダヌリンの声を聞いたら、午埌もがんばろうっお思えるの』ずかゆるふわ女みたいなこず蚀っちゃった私は䜕なの脳味噌にマカロンでも詰たっおたのなんで昌䌑みたで光忠の声聞かなきゃいけないのどうせお前自分の声に自信満々なんだろこのむケメン気取りが」 倜 「お垰りなさいダヌリンご飯にするお颚呂にするそれずも その    蚀えるかあああああああうっかり私遞ばれたらどうすんの腹にワンパンしお逃げればいいのおいうか誰だよこんな新婚あるある台詞を導入したバカップルは私たちだよちくしょう䜕が、『憧れだったんだよね』だよ䜕が『え はずかしいよ 』だよノリノリだったじゃないか私のばかこんなのうっかり前䞖の光忠に聞かれたら、『ハア䜕抜かしおんの』ずか蚀われるそんな屈蟱耐えきれない」 「ただいたハニヌ  そう、だね 汗かいたたたはかっこ悪いからお颚呂にしようかな。ありがずう。 答えられるかあああああいや、思い出すたでは『君に決たっおるだろ』っお蚀う気たんたんだったけどこっそり蚀う緎習たでしおたけどやっぱりお姫様だっこがいいのかなあずか思っおたけどそんな自分たずめお打撃で葬り去っおやりたいおいうか䜕このふりふり゚プロン 誰だよプレれントした奎は、っおもちろん僕だけどああもう、これを買った時にはたさかこんなこずになるずは思っおなかった。こんなの前䞖の䞻に芋られたら『りワァ 䜕このふりふり゚プロン 』っお芋䞋されるそんな屈蟱耐えきれない」 早く離婚に持ち蟌みたい。倫婊はお互いにそう願いながら日々を過ごしおいた。 お互い盞手も前䞖を思い出しおいるなどずはみじんも考えず、 ただただ仮面バカ倫婊を挔じ続けおいた。 そんな二人に、絶奜のチャンスが蚪れた。 昌䞋がりのオフィス街で二人は珍しく家以倖の堎所で出くわした。 圌女はカフェに寄った垰り道。 圌は倖出先から䌚瀟に戻る途䞭。 しかし、䞀぀付け加えるずするならば、圌の隣には䞀人の女性が寄り添っおいた。 少々化粧の掟手なその女性は、圌の埌茩であった。 ただの埌茩ず蚀うには、少々距離が近いずも蚀える。 「え、ハニヌ」 「ダヌリン 」 「「あれこれっおめちゃめちゃチャンスじゃね」」 「あ、えっず その子は  ここで私がこの子を浮気盞手仮だず思ったこずにすれば もちろんダヌリンは浮気なんおしないだろうけど、そこは䞊手いこず、 『ううん、貎方は本圓はあの子のこずが奜きなのよ。私には分かるの。もう私に気持ちが無いっお。いいから、あの子を幞せにしおあげお』ずか䜕ずか蚀っおしたえばスムヌズに離婚に持ち蟌める」 「この子は 䌚瀟の埌茩で  ここで僕がこの子を浮気盞手だず勘違いさせおしたえば もちろん僕は浮気なんおかっこわるい真䌌はしないけど、そこは䞊手いこず、 『僕らは本圓に䜕の関係も無いんだ。でも、僕を芋るず君が蟛くなるだろう君にはい぀も笑っおいおほしいんだよ』ずか䜕ずか蚀っおしたえば、スムヌズに離婚に持ち蟌める」 双方がこっそりず意気蟌んで、片方が傷぀いた顔を、片方が焊った顔を挔出しようずしたその瞬間、 その空気は壊された。他でもない、埌茩の女性のあっけらかんずした声によっお。 「あっれヌもしかしお、噂のみっちヌ先茩のハニヌさんですか うっわかっわいヌ初めたしお埌茩ですヌお噂はかねがね あヌもうみっちヌ先茩マゞうらやたっすよ新婚らぶらぶで あんたり幞せそうだからあたしも早く結婚したいなヌっお思うようになったんですよ 今の圌ちょい自分に自信ないタむプなんでもうちょっず抌しお行きたいんですけどヌ。 あおいうか、すみたせん、あたし距離近くおダバかったっすか誰にでもこうなんですけど、 たたに勘違いされるんで ハニヌさん安心しおくださいね、あたし圌氏䞀筋なんで みっちヌ先茩むケメンだから心配になるず思うんですけど、倧䞈倫ですから みんならぶらぶっぷりをうらやたしがっおはいるんですけど、たあぶっちゃけみっちヌ先茩っお、 ちょっずアレなずこあるから、なん぀ヌんですかね目の保逊そうそう、 目の保逊芁員だよねヌっお女子らで話しおるんで、うちの䌚瀟でみっちヌ先茩に色目぀かう子ずか皆無なんで もう、むケメンなのにここたでモテないずかギャグだろっおくらいただの目の保逊呌ばわりなんで、 すみたせんこんな蚀い方であははは、安心しおください それにあたしが䌚瀟の女子に、ハニヌさんめっちゃかわいいし、 ぜっおヌ誰も先茩に手ぇ出すなよっお䞀応蚀っずくんで 倚分「ねヌよ」っおみんな爆笑ですけどね それじゃ先茩、私先に戻っおおくんでもうちょいハニヌさんずお話しおからでいいっすよ うたくごたかしずくんで」 圌女は嵐のようにたくしたおるず、そのたた圌を眮き去りにしお行っおしたった。 その蚀葉通り、ずおも圌ぞの恋心を秘めおいるようには芋えなかった。 残された二人はただただその勢いに圧倒され、口を挟む隙もなく、黙っおお互い向き合ったたただった。 「  すごく、いい子、ね。 いやいい子過ぎるでしょ䜕あのいい子 いい子すぎお熚斗぀けお送り出したいけど、いい子過ぎおその可胜性党郚摘み取られたんだけど あそこたでフォロヌされお今曎浮気疑えないんだけど これで浮気疑ったら私の方が被害劄想激しい情緒䞍安定女みたいになるじゃない あそこたできっぱりさっぱり「興味ない」みたいに蚀われおるのに、 『ううん あなたは圌女が奜きなのよ』ずか蚀っお離婚しお送り出すなんお、 ただフラれに行かせるだけの極悪非道だよねもしくは勘違い女だよね いやだそんなこずになりたくない私は光忠に怪したれない感じで穏䟿に離婚したいのに しかもこれで䌚瀟の女の子ず浮気、みたいな可胜性も党郚摘み取られたしせっかくのチャンスが」 「すごく、いい子、でしょ。 うわもう䜕あの子いい子すぎでしょでも今そのいい子っぷりは求めおなかったよ いい子すぎおあの子に心倉わりしたこずにしたいけど、いい子過ぎおもうそんな展開望めなくなったよ これで『僕、あの子のこずが奜きなんだよね』みたいに蚀っおも、 『䜕蚀っおるの圌女に迷惑だからやめなさいね』みたいに諭されるよ らぶらぶなハニヌがいるっお䌚瀟䞭に思われおるのにたったくこっちに興味のない女の子に惚れお離婚するずか、 もうかっこわるすぎる たるで説埗力ないよね『いいから萜ち着け』っお感じだよね いやだそんなかっこわるい真䌌は絶察にしたくない僕は䞻に怪したれないたたで穏䟿に離婚したいのに しかもこれで䌚瀟の他の子が気になっお、みたいなのも無理になったしあの子が党郚根回ししおくれるし そんなこず頌んでないのにせっかくのチャンスが」 「 今日の晩ご飯は䜕がいいダヌリン。うふふふふ」 「  ハニヌの䜜るものなら䜕でも嬉しいよ。あはははは」 「「ぜっっっっっっっっったいに離婚しおやる」」 おたけ→ギッスギスな関係の䞀郚䌚話前䞖本䞞 蟛蟣嫌味応酬に぀き泚意 [newpage] ずある本䞞の日垞 ドン 「ごめんだいじょう げっ」 「ちょっず痛い うえ」 「なんだ䞻か。気遣っお損したよ」 「なんだ光忠か。声なんおあげるんじゃなかった」 「はあおいうか君第䞀声が叱責っおどうなの短刀にもそんな態床取る぀もりなのやだやだ」 「はあそっちこそ気遣いが損っおどうなのお前の無駄な胞筋が凶噚だっお自芚持おばやだやだ」 「ああごめん、誰かさんず違っお鍛えおるんで」 「それが仕事だろ自慢の぀もり圓然でしょ」 「仕事以倖でも鍛えおるんだけどプラむベヌトたで拘束する぀もり」 「お前のプラむベヌトなんお興味ないわ。おいうかプラむベヌトならこっちの鍛錬もどうでもよくない」 「ああごめん、そうだよね。䞻の腹や胞が無駄な脂肪でブペブペでも僕には䞀切関係ないし」 「え䜕私の着替えでも芗いたの䌊達男が倉態芗き野郎なんお政宗さんが泣くわヌ」 「え本圓にブペブペなの䞻の身䜓になんお埮塵も興味ないから。あず政宗公を圌氏みたいに呌ばないでくれる」 「だっお政宗さんかっこいいからなヌ。どっかの栌奜だけ䌌おる男ず倧違いでレッツパヌリヌだわヌ」 「政宗公はレッツパヌリヌずか蚀ったこずないし。そんなこずもわからないの」 「わざずに決たっおるでしょ。これだから冗談の通じない堅物は」 「うわあ䞻っお冗談もぞたくそなんだねヌ。長谷郚くヌん䞻が長谷郚くん぀たんないっおヌ」 「はあ長谷郚じゃないし。長谷郚超面癜いし。長谷郚最高だし。長谷郚だいすき。」 「はあ䞻に長谷郚くんの䜕が分かるの長谷郚くんもかわいそうにね。こんな䞻に奜かれちゃっお」 「そっちこそ長谷郚の䜕を知っおるっおいうんだよ長谷郚は私に奜かれたら嬉しいもんねえ長谷郚」 「長谷郚くんちゃんず蚀えばいいんだよ䞻には迷惑しおたすっおねえ長谷郚くん」 「迷惑ずかかけおないし。ちゃんず䞻呜しおるし」 「はあ䞻呜どこが䞻呜なの」 「長谷郚は䞻呜が倧奜きなんですうヌ」 「長谷郚くんが奜きなのは䞻呜であっお䞻じゃないんですうヌ」 「䞻が奜きだから䞻呜も奜きなんだよねえ長谷郚」 「䞻呜さえ貰えれば䞻が䞻じゃなくおもいいんだよねえ長谷郚くん」 「俺のためでもない俺のこずで喧嘩しないでください䞻あず燭台切は黙れ」
転生先で鬱陶しいバカップルだった燭台切さんず女審神者さんが、結婚匏圓日にお互い険悪だった前䞖を思い出しおしたい、「なんでこい぀ず結婚なんかしちゃったんだ」ず頭を抱え぀぀も盞手にはバレないように盞手は思い出しおいないず思っおいる頑匵る話です。<br />色々ずひどいので泚意曞きをご確認くださいたせ。<br /><br />燭台切さんのこずは本圓にカッコむむ圌氏力の高い存圚だず思っおいるのですが、どうにも自分の䞭のむメヌゞではかっこよくなりきれおいない残念感が぀きたずっおいたす圌は䜕も悪くありたせん。
【前䞖倩敵】結婚匏圓日に前䞖を思い出した【珟䞖倫婊】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6533342#1
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「兄貎、やろうぜ」  䜕をなんお聞き返さずずも解っおいる。  勿論、゚ロい意味じゃない。  なのに、二人だけの子䟛郚屋に響いた甘い䜎音が俺の心臓に届いおコンコンコンっおノックする。  そこ、開いちゃいけない扉だから、䞍甚意にノックしないでぇ。  なんお、本人の預かり知らぬ事で勝手に揺さぶられる情動にしっかりず鍵をかけ、俺はしょうがねえなあず立ち䞊がり声の䞻が座る゜ファヌに近づいた。  そこにはい぀もの通り青色の぀なぎの胞元を惜しげもなく開襟しおご自慢の胞筋を芋せるキリリずした眉のナルシストが居お、ゎヌルドの銖食りが自然ず芖線を胞元に誘う。だからそういうガチな服装やめおっおいっおるでしょっお蚀ったずころで俺の蚀うこずなんお無芖するっお解っおいる。ドキドキなんおしおないからねず心䞭の俺ず喧嘩し぀぀、その隣にだるヌく腰掛けお、開襟ナルシストの手の䞭にあるモノを芗き蟌んだ。近づいた際に錻腔をくすぐった男らしい匂いなんお気にしおない、気にしおないから、だから頬が熱くなんおなっおないから 「で、どこやるの」 「p20から小返ししたい」 「ぞいぞヌい」 「台詞は芚えおいるか」 「お、誰にモノを蚀うかね愚匟よ。デリバリヌコントの脚本挔出を手がけるこのワシに向かっお」 「芚えおいるならいい」  手の䞭の台本ずいう名のコピヌ甚玙の塊を゜ファヌに眮いたナルシストは、やおら立ち䞊がるず衚情を入れ替えた。  圹に入ったのだ。  俺も肩をならしながら立ち䞊がり、頭の䞭で自分の圹の台詞を反芻する。  俺を憎憎しげに睚み぀ける匟――カラ束は、䞀気に俺の胞元に飛び蟌んでくるず、赀いパヌカヌの襟ぐりを掎みあげお野獣の様に吠えた。 「兄貎よくも俺の女を寝取りやがったな」  これが珟実だったら、お兄ちゃん泣いちゃう。  そう思い぀぀、俺は俺に䞎えられた圹の気持ちで台詞を返した。 「おめヌみおヌな粗チン嫌だずよバヌカバヌカ」  こんなん俺が蚀われたら立ち盎れないよぉ。  俺のやけくその台詞を受け、カラ束の眉が怒りに぀り䞊がった。盞貌をギラギラず光らせ、殺さんばかりに睚み぀けおくる野獣の県光にゟクリずした電流が脳倩から駆け抜け、䞋っ腹をキュンず刺激する。  この顔奜きだわ、たたらねぇ。  ぞらぞらず笑う俺に、カラ束の県光はいっそう匷くなった。      なんでこんな状況になっおいるかずいうず、カラ束の高校時代の挔劇郚の先茩が所属する小劇団で客挔を頌たれたからだ。  カラ束は最近、その劇団ずかなり芪しくしおいた。最初は先茩のチケットノルマの為にもず芳にいったのが切欠らしいが、実際にその劇団の芝居が面癜くおすっかりファンになり、金があるずきは積極的に芳劇に行っおいたらしい。もずもず物語の䞖界が倧奜きなカラ束は、小さい劇堎で目の前で行われる人間ドラマに心を奪われおしたったのだ。  俺たちが䜏む赀塚は、駅前に色々な䞭小の劇堎が立ち䞊び、毎日どこかしらでむンディヌズのラむブやら、小劇団の芝居やらが行われおいたり、音倧や俳優声優の逊成所もある生粋の芞術の町だ。生たれた頃からこの町にいる俺には党く興味のない䞖界だが、党囜からたくさんのゲむゞュツカ志望の人が䜏んだり出お行ったり、駅前の動きはかなり掻気があるず思う。けど、ちょっず駅前から離れたら田んがや畑もあるし、山も芋えたりする田舎なんだけどね。  そんなこんなでカラ束はその劇団の垞連になり、熱心にアンケヌトも曞き、公挔埌の芋送りの際に挔出家に盎接感想も蚀いに行くほどだったらしい。そのうちに身内のように扱われ、力も時間もあるカラ束は皜叀芋孊もするようになり、果おは仕蟌みバラシ打ち䞊げにたで参加する皋になったずいう。䞭高ず挔劇郚の経隓があり、挔劇の事をわかっおいお倧道具も䜜れお照明も仕蟌めおしたうカラ束は、それはそれは可愛がられおいたようだ。  こんなに溶け蟌んでいたら、圹者ずしお声がかかるのが遅すぎるくらいだず思うだろずころがどっこいその劇団は、圹者が女だけの女流劇団だったのだ。「カラ束girlに䌚いにいっおくる」ずい぀もよりそわそわ出お行くずきはたいおいこの劇団で女の子にチダホダされにいくっおお兄ちゃん知っおるんだからな。  癟歩いや、千歩譲っおオレの心を厳重にロックし、女の子にチダホダされに行くカラ束を歯軋りしながら黙っおみおいたけど、勉匷だからずタダで手䌝うカラ束がずうずう心配になっお、ある時いそいそ出おいくカラ束のあずを぀けお「リア充蚱すたじ暎れたわっおやるぅきいい」ず突入しおみたら「いいずころに来たさすが卵生だね」ずテンションの高いアラフォヌの挔出家女史に捕たっおしたっお出錻をぜっきり折られおしたった。 「うちは女同士の人間関係を掘り䞋げお笑えお泣ける芝居を䜜るのがモットヌなんだけどね、今回は双子の芝居を䜜りたかったの私が双子だから、双子が出おくる芝居をやりたかったのよね。それで、客挔しおくれる双子の圹者や双子じゃなくおも䌌おいる圹者を探しおたんだけどどうもしっくりくる子がいなくおそしたら、カラちゃん぀子で、しかも兄匟で遊びでやったっおいうコントを撮ったビデオを芋せおくれたのねもう私ビックリしちゃった兄匟ならではの息の合った掛け合い、間のずり方、たった数分の笑いにかける銬鹿らしいほどの遊び心このコントの脚本、あなたが曞いおいるんだっお鶎の恩返しの女圹玠晎らしかったわ 。ねえ、束野君、カラちゃんず䞀緒に今床の公挔出おみない勿論ノルマなしでギャラ出すわ」  カラちゃんっお䜕だそのなれなれしい呌び方  っおかオレ玠人なんですけどおおお  ずツッコム間もなくたたみ掛けられ、䞀束に「奜なんだ」っお蚀われた䞀束事倉の時䞊みのドン匕きをしおいたオレの肩に、ぜんず銎染んだ手が眮かれお聞きなれた甘い声で囁かれた。 「兄貎、やらないか」  あ、うん、某青い぀なぎの男みたいなガチの意味の方ならずおもやりたいんだけど、この堎合違うっおわかっおる、わかっおるよ。  いろんな意味でぷるぷる震える俺の目を背埌から芗き蟌むず、カラちゃんはキリリずした眉を情けなくさげお俺の心のドアをガンガン叩いおきた。 「兄貎ずいっしょにやりたいんだ」  やめおお兄ちゃんのデリケヌトな゚ロいドアをガンガン蹎飛ばさないでぇ  こんなふうにおねだりされちゃったら断る理由なくない俺のなけなしの理性なんおもろく瓊解するでしょ。  その埌、挔出家、劇団員、可愛い匟が䞀䞞ずなっおカリスマ人間囜宝ずさんざんおだおおきおいい気になっちゃった俺は、脚本を握り締めお垰路に぀いおいたのだった。  それが幎が明けたばかりの月の半ばのこずだ。本番は、月日日の日間。  今ではちょっぎり――いや、かなり埌悔しおいる。  だっおこの脚本、某囜民的野球挫画みたいにカラ束ず䞀人の女を取り合うんだもん。でも、その挫画ず違うずころは、双子の匟が生きおいお、匟が圌女ずくっ぀いおおにいちゃんは家を出お行くっおずころ。最埌には、匟ず圌女の結婚匏に欠垭届を出しおいた兄が乱入し、兄匟は仲盎りしおおしたい。  この台本を読んだずき、あたりにリアルで胞が締め付けられた。い぀か、この双子の匟のように、カラ束もいい人をみ぀けお出お行くのだろう あヌ、蟛い、泣きそう。  俺らしくもない玔情を抱えお心にドアを建おお隠しお鍵をキッチリしめちゃうくらいに、俺は匟のカラ束が奜きだった もちろん、゚ロい意味で。      匟に察しおこんな気持ちを抱くようになったのは、自芚する前も入れるずかなり長いず思う。  たしか幌皚園児の頃からその兆候があった。  あの日はたしか、ぎっちぎちの幌児だった俺がい぀ものようにチョロ束ずご近所で暎れたわっお垰宅したら、カラ束が熱を出しお寝おいた。日ごろから高熱が出やすいカラ束は、小孊校高孊幎たではしょっちゅう颚邪を匕いお寝蟌んでいたのだ。その日もカラ束は䞀人䞡芪の郚屋に隔離しお寝かせられおいお、母さんはう぀るから近づくなず隒がしい息子達にお達しした。近づくなずいわれたら近づきたくなる幎頃だった俺は、兄匟が寝静り䞡芪がただ階で家事をしおいる頃を芋蚈らっおそっずカラ束の様子を芋に行った。  䞡芪の寝宀には、倧きい垃団に寝かされ月明かりに照らされたカラ束がいた。明暗がハッキリした郚屋がなんだか幻想的で、おばけでも出るかなずちょっずびくびくず近づけば、少し荒い息を挏らしながらあお向けお寝おいるカラ束。半開きの口からもれる息、汗で匵り付く前髪、暗くおもわかるくらいに真っ赀に染たる頬に、俺はなぜだか䞋っ腹がきゅんずしおドキドキした。い぀も芋おいるのずは違う衚情で、苊しそうにはあはあず息をする唇がやけにぷっくりしお芋えお、俺はそこから目が離せなかった。自分ず同じ顔なんお぀もあっお芋飜きおいるはずなのに。そう思うのに、カラ束の唇から目が離せない。  俺はもっずみおいたいなあずカラ束の枕元にう぀ぶせに寝転がった瞬間、䞋半身から突き抜けた痺れるような衝撃にひゃあず呻いた。  その圓時は䜕のこずかわからなかったが、今ならわかる。俺はカラ束の唇をみおちんこをぱんぱんに腫らしおいたのだ。性目芚めっおや぀だ。それを知らずに思い切り寝ころんだ衝撃でびりびりず走る快感に、子䟛ながらこれは気持ちいい事だず気が付いおしたった。そのたた腹這いでカラ束の唇を芋ながら、恐る恐る腰を動かしおみれば、畳にこすれたちんこから広がる電流が駆け䞊っお脳をずろかし、なんだか尻の穎もむずむずしお、俺は初めおの感芚に倢䞭で腰を畳に擊り付けた。目の前に月明かりに照らされたカラ束の唇があっお、それがおいしそうでたたらない。  これも無意識に、そう、無自芚に、俺は本胜で正解にたどり着いおいた。  俺はカラ束のぷっくり膚れた唇に、自分の唇を抌し付けた。觊れた唇が気持ちよくお、こすれるちんこも気持ちよくお、倢䞭になっおいた。最埌にびくびくず倧きな波が来お、俺は「んあ」ず呻いお、カラ束の銖筋に沈み蟌んだ。圓時はただ粟通しおいないので䜕も出なかったが、それでも軜くむッおしたったがすごく気持ちよくお、どこか埌ろめたくお、俺はカラ束の汗臭い銖筋に錻を寄せお新しい発芋にドキドキわくわくしながらそのたた眠っおしたった。  翌日起きたら子䟛郚屋で寝おいお、途䞭で寝萜ちした俺を父さんが運んでくれたらしい。母さんにもこっぎどく叱られたが、俺は新しい発芋の方が重芁で、すぐに母さんに叱られたこずなど頭から抜け萜ちおしたった。  あんな気持ちいい事俺は発芋したんだぜず埗意になっおいた。  その埌、俺は兄匟が寝おいる間にそれぞれの唇を芋぀めおみたり、公園の手すりでちんこをこすっおみたりしたが、あの時ほどの快感を埗られず、その遊びも早々にあきお忘れおしたった。  次にちんこがギンギンに勃起したのは、䞭孊生幎生のころだった。そのころぱロい事より遊ぶこずの方が楜しかった俺が、倢粟をしお粟通を迎えたのが カラ束だったのだ。きっかけは驚くほど些现な事だった。䜓育の授業が合同のクラスだったカラ束ずプヌルの授業を䞀緒したずき、授業埌に着替えるカラ束が濡れた氎着を䞀生懞呜脱ぐしぐさを暪から芗いおいたのが嫌に蚘憶に残っおいたのだ。しかも、カラ束のちんこは少し勃起しおいた。うわヌ、カラ束女子の氎着芋お少し勃っおやんのずか笑っおいたら、それが倢に出おきお笑えない状況になっおしたった。倢の䞭のカラ束は氎にぬれ、日焌けした身䜓を惜しげもなくさらし半勃ちのちんこでオレに迫っおきお、力匷い眉がい぀も俺をバカにするずきのように眇められおいた。そんなカラ束の唇がいやに真っ赀で、俺はそれからどうしおも目が攟せなかった。 「おそ束」  迫る真っ赀な唇が声倉わりしたばかりの声でオレを呌び、背筋に蚀いようのない電流がゟクゟク走る。カラ束のちんこがおれのちんこに重なり、俺はどうしおか動けずにドキドキしおいた。  ああ、俺どうなっちゃうのカラ束にどうされちゃうのどうにかされちゃうの  倢の䞭のカラ束の真っ赀な唇が俺に近づいおきお、俺の唇ず重なった。それは、昔実際に唇で觊れた時の感觊だった。   ああ、カラ束ぅ  自然に腰が動いた。だっおこの快感知っおる 昔、カラ束芋ながら感じたや぀  そのたたプヌルのロッカヌルヌムでカラ束に抌し倒され、キスされる倢を芋お脳みそどろっどろに溶かされお 朝起きたらさもありなん。  パゞャマがどろっどろになっおおりたした。ちヌん。  初めおの倢粟は、色々な衝撃でもっお俺を殎り倒しお、このたた俺死んだ方がいいんじゃねず思うほど地の果おたで萜ち蟌たせ、起きた早々立ち䞊がれずに小鹿のようにぷるぷる震えおしたった。  その時やっぱり心配しお声をかけおきたのが、よりによっおカラ束で 俺はそれから二か月間、カラ束の顔が芋られなくお避けたくったのもいい思い出だ。  思春期真っ只䞭だったしねヌ。  カラ束ず殎り合いのケンカの末に「俺を避けるな、おそ束のばかヌ」ずいう次男の涙ず錻氎の蚎えをきっかけに元に戻ったが、い぀か消えるず思った想いは幎々積もるばかりで、今珟圚も心の䞭にどっかりず居座っお働きもせずにニヌトを決め蟌んでいる。さすがカリスマレゞェンドおそ束様の恋心、ず感心しおいる堎合ではないので、俺はそれが出おこないように厳重にカギをかけおいる。しかし、時々この倩然蚘念物次男は土足で俺の心の扉をノックしおくる。  本圓にやめお。  お兄ちゃん、これがお前にばれたら死んじゃうから。  ――家を、出おいくしかなくなるから。     「束野ブラザヌズその調子でガンガンテンションあげお喧嘩しお。やっぱり本物の兄匟だからリアリティが違うわ。それじゃあ最初から堎通しおそのたた続けお堎堎ず入るからスタンバむ」 「はい」 「ぞヌい」  挔出家がオレ達の喧嘩シヌンを芋お、テンションをあげ、圹者に指瀺を飛ばす。  今日は週四日ある皜叀の平日皜叀の日で、昌間だずいうのに劇団員は芋事に集合しおいた。挔出家自身が女優や声優ずしお掻躍しおいるこの劇団は、劇団員の䞭にもプロの女優や声優がいお、プロ意識が高い集団だった。皜叀堎も、挔出家が所属する事務所所有の皜叀堎を借りおいるらしい。そしお劇団員は、皜叀時間にあわせお、倜にバむトをしながらみんな頑匵っおいた。ニヌトである俺たちは、圓然い぀でも参加できるんだけど。  本圓によくやるよ、圹者は。金ばっか出おいくじゃん。 「おそ束、次はもっず本気で俺を眵倒しおくれ」 「うわあ、カラちゃんも䞀束みたいなそういう趣味だったのお兄ちゃんびっくり」 「 真面目にやっおくれ」 「ぞいぞい、わヌったよ」  真面目にやりたいけどね、どうしおもおちゃらけおいたくなっちゃうのが俺なの  そう気を玛らわせなければ、やっおられなかった。  圹の䞊でカラ束の女を寝取っお眵倒しおいるっおのはわかっおいる。俺の圹はカラ束が嫌いだから 本圓は奜きなのに、圌女を奜きな気持ちがそれを蚱さない、そんな兄の圹は、途䞭で珟実ずの境があいたいになっおしんどかった。  挔じるのは、正盎面癜かった。俺っおやっぱり䜕かになり切ったり、本気で誰かをかたったり、遊び倒すのが奜きだから。  でも、でもだ。 「出番だ、兄貎」 「おう」  カラ束に声をかけられ、切っ掛けセリフで䞋手の出はけ口から䞀人で入る。玄関から垰っおきたずいう蚭定だ。舞台にはカラ束が奜きになった女の子がいお、俺を匟ずを間違えお呌ぶ。 「韍䞀くん、早かったね、そんなに近くにあったっけ、コンビニ」  舞台䞋手にある゜ファヌに座る圌女――奈月が手を振る。  俺の圹――虎䞀は、匟の圌女に䞀目がれする。䞀瞬の間のあず、い぀も他人をからかうのず同じように、匟に成りすたしお圌女に近づく。 「うん、コンビニたで猛ダッシュしお買っおきちゃった。早く君に䌚いたかったから」 「や、やだあ、韍䞀くんっおば」  恥ずかしがる芝居をする女優はカラ束の先茩で、今売り出し䞭の若手声優だ。小柄で现身な䜓系のわりに倧きな胞ず瞳を持っおいる男受けしそうな子だった。アむドル声優ずしおそこそこ人気が出おきおいるらしいずいうのは、チョロ束から聞いた。  そのロリ巚乳な圌女幎䞊にひょいひょい近づくず、俺はどかりず隣に座っお、おしゃべりに興じる。途䞭で飲み物取っおくるずオレが台所ずなっおいる䞊手からはけたずころで、今床は韍䞀圹のカラ束が䞋手から登堎だ。 「え、韍䞀くん、今キッチンに行かなかったっけ」 「奈月俺は今垰っおきたずころだぞ」 「え」  それから、圌女や友人なども入り乱れ、すれ違いコントのようなドタバタ喜劇芝居が続き、圌女に双子であるこずを皮明かししお堎が終わる。  続いお、ヒロむンが双子二人に迫られ心が揺れ動く堎。特に兄である虎䞀が匟の圌女であるにも関わらずヒロむンにガンガンアタックをかけ、぀いに匷匕に韍䞀のふりをしおベッドむンたでしおしたう。ヒロむンは隙されおいた事実を知っおショックを受け、韍䞀に申し蚳ないず䜕も告げぬたた韍䞀に別れを切り出す。絶望に打ちひしがれる韍䞀に奈月の友人が双子に抗議し、䜕もかもを知った韍䞀が虎䞀を殎っお堎が終わる。  堎は兄匟喧嘩だ。今たでのお互いの嫌な郚分や䞍満をずこずんぶ぀けあっおがろがろに傷぀けあう。 「兄貎よくも俺の女を寝取りやがったなお前みたいないい加枛な男が兄貎だなんお俺は恥ずかしいなんでい぀もい぀も俺の奜きになったものを奪うんだ俺から色々なものを奪っお、それでお前は満足なのか」 「うるせえおめヌみおヌな祖チン嫌だずよバヌカバヌカ」  口䞋手で粗暎で䞍噚甚な虎䞀は、䜕でもできる双子の匟が憎くお愛おしくおたたらなかった。お前のものは俺のもの 自立しお自分から離れおいく匟ず、奜きな女が仲良くなっおいくのが蚱せなくお仕方がなかった。  カラ束――韍䞀が俺の服の襟ぐりを掎んで銖を締め䞊げ、憎々げに芋䞋ろしおくる。でも、その瞳の奥には――虎䞀に察する愛情も残っおいお、憎いのに憎みきれない匟の優しさに、虎䞀は眪悪感を芚える。 「出おいけ。お前なんか兄匟でも䜕でもない」  韍䞀が虎䞀を殎り倒し、冷ややかな目で芋䞋ろす。 「ああ、出おっおやるよ俺の顔なんお二床ず芋たくねえだろオレだっお今、鏡だっおみたくねえくらいお前が倧嫌いだい぀もお前ばかり奜きなものを手に入れお俺はい぀も䞀歩出遅れる同じ顔なのになんで俺ばっかり くそッ敎圢しおやる」  虎䞀はぞたくそな悪態を぀くず、着の身着のたたで郚屋を出おいく。  䞋手にはける盎前立ち止たった虎䞀は、振り返っお寂しそうに韍䞀を芋るず、それを芋た韍䞀が声をかける前に足早にさる。SEで玄関の締たる音。  埌に残された韍䞀は、糞が切れた人圢のようにドカリず゜ファに腰かけ、苊しそうに呻く。 「兄貎 」  ここで暗転ずなり、幕が終了する。  やっぱり重いよこれぇ  お兄ちゃんの心にどかんず突き刺さるよぉ...。  俺は皜叀が進むたびに粟神が削られおいくようで、出番が終わっお早々舞台裏――ずいう名の皜叀堎の裏でヘロヘロずしゃがみ蟌んだ。  カラ束に蚀っおいるわけではない、わかっおる、わかっおるけど。  倧嫌いだず蚀うたびに、カラ束が蟛そうにぎゅっお眉を寄せお瞳を揺らすから、俺の心は「本圓は倧奜きだから」ず叫びたがっおいた。      そしお、これも俺を悩たせた。 「おそ束、今日も俺より先に生を受けた犁断の果実ず甘い宎を――」 「アむタタタ肋党郚もっおかれた先垰っおるわ」 「 みおいかないか」 「いいよ、どうせ俺がいないシヌンだし」 「そうか 」  そういっお残念そうに眉を寄せるカラ束を眮いお、俺は皜叀堎を去る。  公匏皜叀埌、カラ束は虎䞀が出お行っおから韍䞀ず奈月がくっ぀くたでのシヌンの自䞻緎をしお垰るのだ。そう、先茩ず二人きりで。  堎所は皜叀堎があいおいたらそのたた皜叀堎だったり、あいおいなかったら公民通や公園で行っおいる。  脚本は読んでいるし、芚悟は出来おいるずはじめはカラ束が終わるたで付き合っおいたが、途䞭でやめおしたった。  兄を憎む韍䞀ず苊悩する元圌を癒す圌女ずの静かなやり取りはさすがカラ束の十八番で、家では痛いしぐさも舞台の䞊では映えお芋えるのが䜙蚈にカラ束ずの距離を感じおしたい、なんだか俺だけがおいお行かれたような気分になっおしたったからだ。そしお、静かに慰め合う二人が゜ファヌで抱き合うシヌンなんお、生で初めおみた日は心のドアがギシギシ蚀っお苊しかった。  芝居だずわかっおおも、嫌だった。  二人の距離はだんだん芝居䞭以倖でも近づいおいお、皜叀の合間にペットボトルを回し飲みしおいるのを芋たずきは、ドアが開いおしたいそうで焊った。 「リア充ぶるなよカラ束」 「フッ・・・劬いおいるのかおそ束」 「だ、誰がバヌカバヌカ童貞むンポ束」 「やだヌおそ束くん、子䟛みたい高校生の頃から党然倉わっおないね」 「い぀たでも童貞ず思うなよ、ブラザヌ」 「ええええ」  絡んでみれば、リア充(容疑)二人に䜙裕で返される始末。  え、マゞで、お兄ちゃんに断りなく童貞卒業しちゃったの  マゞで付き合っおんの  嘘だあ 。  オレのドアにカラ束の蹎りが芋事に決たった。蝶番がギシギシ蚀う。  あ、やばい、壊れそう。 「おそ束」  真っ青な俺に䞍思議そうに声をかけおきたカラ束に、その時俺はずっさに金的しおしたった。 「ぐあああにぎいいッ」 「うわあ倧䞈倫カラちゃん」  本圓にむンポになっちたえこれでしばらく皜叀もセックスも出来ねえだろバヌカ  悶えるカラ束ず助ける先茩を残し、俺は負け犬のように皜叀堎を飛び出しお家路に぀いた。  本圓に俺っお最悪  痛え痛え、肋折れちゃうよ  カラ束によくいう台詞は、最近その意味を倉え぀぀あっお、俺は自分の匱さに舌打ちする。  吹きすさぶ月の颚は俺の頭をいい具合に冷やしおくれる。  あヌあ カラ束も぀いに童貞卒業かあ。  いい機䌚かもしれないなあ。  このたたドアの䞭の俺を殺しおしたうのに。  本番たであずヶ月。  芋䞊げた月が、やけに青かった。  かずいっお、童貞を捚おた疑惑のある奜きな人ずい぀も通りの関係を続けられるほど、俺は倧人じゃなかった。  い぀もはパチンコ屋ら競銬やらバカをやっおガス抜きするのができおおらず、もっお行き堎のないむラむラをそのたたカラ束にぶ぀けおいた。  家ではカラ束を避けたくり、必芁以䞊に接觊しない。食事などの時間はどうしおも芖界に入るので、ガンを飛ばしお嚁嚇する。  俺たちの公挔は圓然匟たちも知っおいお、厳しい皜叀挬けでむラむラが募りだんだんプラむベヌトにたで舞台の関係を持ち蟌む俺に抗議しおきた。 「ちょっずおそ束兄さん、なんでカラ束兄さんを芪の仇みたいに睚んでんの思春期じゃないんだしさヌ。空気悪くお耐えらんない」 「そもそも飜き性のおそ束兄さんが芝居の皜叀を続けおいる事の方が奇跡だよね」  朝食を食うために兄匟で卓袱台を囲んでいるず、トド束ずチョロ束が眉を寄せお俺を責める。  俺から時蚈呚りで、十四束、䞀束、チョロ束、カラ束、トド束の順番で座っおいる食卓の芖線は、カラ束以倖の぀の目が俺に泚目しおいる。  ちょっず俺そんなに睚んでた  茶碗の米をめいいっぱい口に入れお、もごもご誀魔化すように反論する。 「えヌ、俺だけの問題俺頑匵っおるよ、すっげえ頑匵っおるのになんで責められるの」 「だから、食卓の空気が悪くなるんだよク゜長男カラ束を嫌いになるのは舞台での話だろ家にたで持ち蟌むなっお蚀っおんだよ」 「本圓に嫌いなんじゃなのク゜束だし。キラむキラむキラむむ゚ヌむ」 「䞀束は嬉しそうに舞うな」  嫌いになれたらこんなに楜なこずはないっ぀ヌの。  䞀束がこのギスギスした空気を楜しむ新䜜の舞を螊り始め、俺の向かいに座るチョロ束が米粒を飛ばしながら抗議する。あヌあ、アゞが米だらけ。  行儀悪く箞で俺を指しお抗議する䞉男を次男が止めた。 「すたんチョロ束、俺が兄貎を゚デンに巻き蟌んだんだ、眪深い俺を蚱しおくれ」  カラ束の返事に、ただ蚀い足りなさそうなチョロ束も、倧人しく食事を再開する。これ以䞊䞊二人の喧嘩に巻き蟌たれるのは埡免だっお顔に曞いおあるぜ。 「でもこれだけギスギスしおるなら本番楜しみだねヌ」 「そうだね十四束兄さん、きっずえげ぀ない喧嘩が芋られるよね」  十四束が呑気に蚀えば、トド束はチョロ束の飛ばす米からアゞを守り぀぀迷惑そうに「でもカラ束兄さんは盞倉わらず鈍感だよねヌ」ず呆れる。  カラ束はそれらを受け、䞍機嫌にもふもふ食べ続ける俺にやっず芖線を向けた。頭空っぜのくせにいやに深い色をした目に芋぀められお、俺の心のドアはたたギシギシず揺れた。家宅䟵入されおデリケヌトな俺に觊られたらかなわないので、ぷいっずあからさたにカラ束から芖線を逞らしたら、郚屋の空気が、俺の態床でたた硬化する。  カラ束の芖線が十四束の方を向いおいる俺の暪顔にばしばし刺さった。 「兄貎は圹になりきっおお、すごいな」 「うッ」  そんなたっすぐな目で俺を芋ないで  汚いもんが党郚でちゃうから  ドアの䞭から、デリケヌトな恋心が隒ぎ出す。  俺以倖も呆れ返った食卓で、カラ束だけが俺を誀解しおいた。  本番たであず二週間。  そしお、カラ束ず皜叀以倖で口もきかなくなった。  あんなに濃密な毎日を送っおいおも、本番はあっずいう間にやっおくる。  本番日の䞀日前に小屋入りした俺達は、照明や倧道具などの仕蟌みを手䌝い、そのたた舞台監督の指瀺で慌ただしくテクリハ、堎圓たりなるものが行われる。舞台の事なんおさっぱりな俺は、皜叀堎ずは違う二〇〇垭はある䌚堎の雰囲気に呑たれ、䜕が䜕だかわからないたた流れに身を任せおいた。バミリだのチッコりだのわからない甚語が飛び亀い、云われるがたたに舞台に飛び出すず、照明がたかれお眩しくお客垭なんおなにも芋えなくなる。なるほど、照明が入っおいる間は俺達だけの䞖界になるのだ。目印のあるずころに立おば照明をどんぎしゃで入れるのね。堎面転換の際に暗転の䞭で動くのも、光るシヌルを目印にすればいいのだ。それに、俺の傍には必ずカラ束がいお、さりげなくフォロヌしおくれおいた。  翌日の本番日も俺の傍からは離れないカラ束。  今日は昌がゲネプロ、倜が本番だ。ゲネプロは本番ず同じ衣装、蚌明、音響で、客垭が空っぜで行う本番同様のリハヌサルのこずらしい。  なんだかこういう舞台っおマゞで興奮するね客も党公挔満垭らしいし、匵り切っちゃうよたあ、俺じゃなくお、殆どは奈月圹の先茩を芋に来るんだろうけどさ。いいぜえ、この機䌚におそ束様の名前を䞖に知らしめおやるぜ  今からゲネプロずいうこずで舞台袖でわくわく埅機しおいた俺に、カラ束が小声で話しかけおくる。 「兄貎、倧䞈倫か」 「うん、楜勝楜勝」 「そうか 」  そういうやさしいずころが憎いんだよなあ。いい意味で。  心のドアがコンコンずノックされたが無芖し、本番ぞの高揚感で久しぶりにカラ束に笑いかけるず、圓の本人は凛々しい眉を寄せお固たっおいた。肩はきゅっずすがたり、足が震えおいる。  あ、緊匵しおやがる。  い぀もテッカテカのナルシストキャラクタヌで塗装したくっおいるくせに、いざずなるず小心者のカラ束くんが顔を出すのは盞倉わらずのようだ。  俺は情けなく固たる匟に笑いかけるず、その震える䜓をぎゅっず抱きしめた。舞台以倖でこんなに近づくのは久しぶりだ。緊匵で冷えるカラ束の䜓を枩めるように、背䞭に腕を回すず、カラ束の䜓がビクリずはねた。  その捉えられた小動物のような反応にぞぞぞず笑いながら耳元で囁いた。 「倧䞈倫、このおそ束様が぀いおるんだぜ」 「そうだな 」  カラ束がふうず息を吐いお力を抜く。その吐息が耳にかかっお、俺は思わぬ刺激に背筋がビクリずはねた。  カラ束が恐る恐る俺の背䞭に腕を回す。なんだか緊匵した以䞊に壊れ物を觊るようなおずおずずした動きに、あ、こい぀もしかしおず思う。  もしかしお、俺が避けおいたのが芝居だからじゃないっお気が぀いお――。 「なあカラ 」 「先茩」  カラ束は突然倧声お出すず、俺から倧げさに離れた。芖線は俺の背埌に焊点が合っお、嫌でも誰を芋おいるのかわかっおしたう。  俺はムッずしお振り返るず、案の定合法巚乳ロリ先茩がいた。  先茩は俺達に近づくず、緊匵するねず話し掛けおきた。 「二人ずもよろしくね、いい舞台䜜ろうね」 「はい、よろしくお願いしたす」 「いえいみんなの前で先茩を思いっきり抌し倒しちゃうの楜しみセックスしようぜ倧声で蚀えるなんおぞくぞくしちゃう」 「あ、兄貎」 「あはは、さすがおそ束くんは緊匵しおないみたいね。カラちゃんは盞倉わらず緊匵しおる」 「うう 先茩 」 「倧䞈倫だよ、カラちゃん、カラちゃんなら出来るから」  そういうず、うっすら涙を浮かべるカラ束のほっぺたをぎゅううううず぀たむ先茩。 「いひゃい、ぞんぱひ」 「あははは」  そうしお、たた俺だけ入れない䞖界に入る二人に、せっかく高揚しおいた気分が䞀気に急降䞋した。  俺がカラ束を慰めおいたのに  さびしいさびしいず、心の内偎からドアを叩く音がする。 「ゲネ入りたすスタンバむ」  俺がドアをこじ開ける前に、舞台監督の声がかかり、心の䞭の俺は倧人しくなった。ぐるぐるず考えおいるうちにい぀の間にやら芝居が始たっおいお、カラ束ず先茩が恋人ずしお舞台に䞊る。  痛いなあ。  もう少し、もう少しで終わるんだ。  そうすれば、この光景も芋なくお枈む。  せっかくなんだから、今を楜しもう。  心の鍵を厳重にかけお、俺はきらびやかな照明のたかれた舞台の䞊に飛び出した。  やっず終わったぁ。  なんだか打ち䞊げの堎に居られなくお、タバコを買いに来ただけなのに戻る気にならず、足は自宅ぞず向かっおいた。  月半ばの倜は、ただただ肌寒くお、俺は赀いゞャンパヌの襟を銖元たで䞊げお身を瞮めおずがずが歩く。  本番は、公挔ずも芋事成功した。そりゃあ、俺がセリフ忘れたりちょず間違えたりするこずもあったかもしれないが、それも笑いに倉えお、芝居が砎たんするこずなくできたんだからおっけヌおっけヌ。  千秋楜が終わった埌なんお、俺は感動しお号泣しながら先茩ず抱き合っおきゃヌきゃヌ喜んでしたった。あの巚乳のやわらかい感觊は癖になるわ。うん。そりゃあ、カラ束くんもハマっちゃうよねヌ。  他の束達も俺達の芝居を芋にきおくれおいお、舞台䞊で繰り広げた殎り合いの喧嘩ずその埌の和解のシヌンに、トド束ず十四束は感動しお泣いおくれたらしい。玠盎じゃないチョロ束ず䞀束は「うん、よかったんじゃない」っおはぐらかしおたけど、しっかり泣いちゃっおんのばれおっからなヌ。  あヌあ、舞台っおすげえ。   なんだか達成感や脱力感が䞀気に身䜓を突き抜けお足に重い鎖を぀けおいるようで、俺の足取りは䞀歩䞀歩重くなっおいった。  脳みそはいただ舞台に居たずきの興奮が枊巻いお、虎䞀がみた韍䞀ず奈月の映像がうるさい䜍リピヌトされおいるのに、身䜓はそれに぀いおいけおないようだった。  打ち䞊げでも恋人圹だった二人は自然に隣同士ですわり、「新婚さんいらっしゃい」ず劇団員にからかわれおいたカラ束。  その顔は自宅に居るずきのように嬉しそうに厩れおいお、この劇団が次男にずっお第の家であるこずを実感する。  お前は、お前の居堎所が出来たんだなぁ。  こころの扉が、ギシギシず傟いだ。はは、痛くおたたらねえ。  カラ束は、最埌たで俺をたっすぐにみお挔技をしおいた。舞台にいるずきだけは、お互いに腹にためたものをぶ぀けられる気がした。  でもだめ、舞台の倖でも仲のいい二人の姿なんお芋おいられない。  心の鍵がこの舞台でがろがろになっおしたったけど、お兄ちゃんもう䞀床立お盎すから。そしたらたた、俺らしくバカに笑っおお前ず向き合うから。先茩ず䞊手くいくずいいずは思わないけどなそこは今たで通り新品ずしお邪魔させおもらうぜぇ。  ただ息が癜くなる月の倜空を芋䞊げお、郜䌚の明かりの䞭でも健気に光る無数の星にふず思った。  広い、䞖界は広いんだなあ。  なんだか、急に孀独な虎䞀の気持ちがふ぀ふ぀ず沞いおきた。 「家、出ようかなぁ」 「嫌だ」  え  独癜に答える聎き慣れた䜎音が背埌から聞こえ、俺の思考は運動を止められた。  そのたた固たっお歩みを止めた俺の右肩を掎む手が、身䜓を反転させる。くるりず回った芖界に、月を背景に立぀カラ束が居た。  倪い眉がきゅっずよっお、寝起きのような鋭い目をしおいお、なんだか獲物を前にした狌のようで食べられちゃいそうだず思った。 「どうしたぁ」  えぞぞず笑っお狌男に問いかけるず、ムッずしお蚀い返しおきた。 「それはこっちの台詞だ。コンビニから戻っおこないから勝手に垰ったんだろうず思ったら案の定、月明かりに照らされおいるブラザヌの背を芋぀けた」  埮劙にカラ束語を挟もうずしおいるが、倱敗しおるよ。  蚀っおいる最䞭に䞍安になったんだろう、぀り䞊がった眉が、どんどん䞋がっおきお、したいには泣きそうな顔になっおいた。  ドキリ動き出す心臓を殎り飛ばし、泣き顔をからかう。 「なになにカラちゅん寂しくなっちゃった」 「違うさっきの、本気なのか、おそ束 」 「ん」 「家、出るっお」  あ、聞いおたのね。  俺の肩を掎むカラ束の手に力が入り、挆黒の目はたっすぐに俺の心を射抜く。玠盎すぎる男は倉化球など投げおこず、ストレヌトの重い球が俺の心のドアに圓たっお軋んだ。 「ぞぞ、今回さあ、挔劇やっおお楜しかったんだよね。倖には色々な䞖界があるなヌっお。ほら、俺の倢はビッグなカリスマレゞェンドじゃん俺が知らない楜しいこずがただ䞖の䞭にはあるっおわかったよ。いや、お前のおかげだよカラ束」 「えなんで」 「俺にはあの家は狭すぎた飛び出おビッグになるぜありがずな」 「え」  バシバシず肩を叩く俺を呆然ず芋぀めながら、カラ束は䌚話に぀いお行けないずきの眮いおけがりの顔をしお蚀葉を挏らした。 「違う俺はただ䞀緒に芝居がしたかっただけなんだ。なんで兄貎が出お行かなくちゃならないんだ 兄貎は虎䞀じゃないんだぞ」  そうだ。俺は双子の匟の圌女に恋する虎䞀じゃない。  匟に恋する、束野おそ束だ。  心の鍵が緩々になっお今にも開きそう これ以䞊進入するなバカ。 「わかっおるよ、俺は俺の意思で出お行こうっお思っおんの。俺の才胜があればどこでだっおやっおけちゃうよさ、お前は戻れカラ束、俺は先に垰るからさ」  じゃあねず手を振っお、螵を返す。  ずっぷりず暮れた䜏宅街の倖灯のスポットラむトが俺を呌ぶぜなんお気取りながら、ギシギシ軋むこころのドアを立お盎そうず歩き出す。  䞀刻も早くカラ束の元から去りたくお、䞍自然じゃないくらいの速さで歩き出そうずしお――叶わなかった。 「行くな兄貎」 「うわあ」  背埌から重い䜓重がどんずぶ぀かり、 俺は前に぀んのめりそうになっお、腰に絡たる腕に匕き戻された。そのたた熱い筋肉の塊が背埌から芆いかぶさり、俺の動きを完党に封じ蟌めおしたった。  同じ高さの心臓の錓動が背䞭からどくんどくんず䌝わるたびに、ドアノブがガチャガチャ揺れる。腰にしっかりず回る熱い腕ず巊耳に觊れる吐息がドア鍵をこじ開けようずしおいお、突然の状況にさすがの俺もどうしたらいいのかわからなかった。  匟に抱き぀かれるなんお日垞茶飯事なのに、たるで䞍安定な船の䞊にいるような心もずなさ。  なんでい぀も空気読めねえんだよお前は 「攟せ」 「嫌だ」 「カラ束もう酔っおんの早くない俺垰りたいんだけど」 「兄貎は、虎䞀じゃない」 「うん、そうね、無芖しないでカラ束」 「虎䞀じゃない」  カラ束はそのたた俺の銖筋に顔をうずめおきお、項に觊れる熱い頬にぞくぞくずした。だからやめおお願い。 「虎䞀じゃないよ俺は、お前のお兄ちゃんですよ」 「じゃあ、なんで俺を避けるんだ 」  腰に回る手にグッず力が入った。 「出お行こうずするんだ 」  あ、やっぱり気付いおいたんだ 。  ぐっず抱き぀かれお、カラ束が少し震えおいるこずに嫌でも気が付く。俺の項が湿っぜくお、ずうずう泣き出したらしい涙が濡らす。  ああ、泣かせおしたった 。  心がぐら぀いお、どうしおいいのかわからない。  黙っお突っ立぀俺に、カラ束は蚀葉を重ねた。 「なんで虎䞀のように嫉劬しお、虎䞀のように俺を憎んで、虎䞀のように俺を避けお 出お行くんだせっかく、おそ束ず䞀緒に芝居ができるず思ったのに お前に嫌われおしたった 」 「違う、違うっおカラ束」 「䜕が違うんだ 俺はこんなにお前が奜きだッ」  そのよく通る声は、深倜の䜏宅街に朗々ず響いお俺の脳味噌を盎撃した。  はあ  心の䞭で、完党にドアがぶっ壊れる音がした。  俺は䞋がっおいた血が䞀気に沞隰するず、カラ束の手を解いおそのたたブロック塀に抌さえ぀けた。突然の暎挙に埌頭郚を打ち぀け痛がるカラ束に、あふれ出る感情のたた吠えた。 「ああおめえ䜕ふざけたこずぬかしおんだよ奜きだっお蚀葉が俺にずっおどんな意味を持぀かしっおんのかふざけんなよ」 「知っおる」  匷打から立ち盎ったカラ束が、俺の腰を掎み返しながら吠え返しおきた。 「奜きの意味くらい知っおいる俺ずお前ずじゃあ意味が違うこずも知っおる」  なんだよ、ちゃんず知っおるんじゃねヌかよ 「 じゃあ、䜕で蚀ったんだよ」 「お前が出お行くっおいうから 止たらなくなったんだお前が違う人を奜きになるのは仕方ないけど やっぱり駄目だった」 「え 俺が誰を奜きだっお」 「だから おそ束は先茩が奜きだったんだろう脚本に圱響されおたじゃないか。それに、先茩はおそ束の奜みの小さくおかわいい巚乳だもんな。俺が先茩ずいるず嫉劬しおいるのがわかっお 俺はおそ束ず先茩が二人きりにならないようにわざず先茩ずいる時間を増やしお 」  ええええ  ちょ、ちょっずたっおカラ束、ええええ  どこにそんな芁玠があった  お前も突然すぎるだろ 「だから 嫌われおも仕方ないっお思っおたんだけど おそ束が出お行くのは っやっぱり嫌だ うう ごめん、兄貎 ただ ただ䞀緒に芝居ができればっお思っただけなのに どんどん䞍安になっお うう 」  カラ束は震えながらそう蚀うず、再び泣き出しおしたった。  俺はカラ束の蚀葉を敎理しお あふれ出た醜い恋心にポッず火が付くのを感じた。  ずくずくずくず、内偎から燃え䞊がる情熱が、行き堎を芋぀けお歓喜で震えた。  ああ、カラ束、バカじゃねえの 。  俺も、バカだったみおえ。 「カラ束 お前、俺のこず奜きなの」 「ああ さっきからそう蚀っおる」 「あのさあ、い぀から俺のこず奜きだったの」 「う 」  カラ束は蚀葉に詰たるず、目線を四方八方にうろうろず飛ばしお倜道でもわかるぐらい頬を真っ赀に染め、俺がそんなカラ束をたっすぐ芋぀めるず芳念したように蚀った。 「はっきり自芚したのは 䞭孊二幎の時 プヌルの授業があった日の倜、倢を芋たんだ」  え。  たさか。 「俺がプヌルの授業埌に勃っおたのをおそ束にからかわれお、それが倢に出おきたんだ 倢の䞭で、無邪気にからかうお前を抌し倒しお、俺のちんこをお前のにこすり぀けおキスしおた すっごい興奮しお 朝起きたら初めおパンツを汚しおた 」  うわあっ。  たじで 。  六぀子の神秘久しぶりに感じちゃったよ。 「近芪盞姊だし そのあず、おそ束に避けられるし 俺はその時以来この気持に蓋をしお生きおきたのに いざずなるず党然だめだった 」  カラ束 。  懺悔するように苊しそうに告癜するカラ束を俺はそっず抱きしめた。  震えるカラ束の髪を按いお、激しい錓動を感じながら、カラ束の脳みそを埋め尜くせず願いを蟌めお蚀う。 「俺も、カラ束ず同じ倢芋た すっげえ興奮しお倢粟した」 「お、おそ束も」  カラ束は俺を匕きはがすず驚きながら俺の顔を芗き蟌んできた。  あ、今芋られたくない、マゞでやばい顔しおるず思う。  熱くなる頬を隠すように、カラ束の肩に顔を埋めお続けた。 「それに、俺はお前の先茩が奜きなんじゃねヌし。カラ束が奜きなんだし」 「えっ」  ビクリず倧げさに跳ねるカラ束が可愛くお愛おしい。 「盛倧に玠っ頓狂な勘違いするなよなたあ、お前らしいけど」 「おそ束 」 「だから、家出おいくの止める」 「よかった 」  安心したカラ束が、今床はぎゅっず抱きしめおきた。  カラ束ず俺の錓動が重なっお、熱も共有する。  ずっず心の奥にしたっおきた恋心が倖に出るず、こんなにもふわふわしお気持ちいいんだ 。  俺がカラ束の背に再び手を手を回すず、鍛えられた肩甲骚が荒く波打ち、荒い息のカラ束が甘く囁いた。 「我慢できない キスしたい 」  う   お前っおそんなに男らしかったっけ  耳元で囁かれる甘い声が、俺を満たしおいく。  でも、これだけは俺も懺悔しないず。 「ごめん ファヌストキスじゃない」 「え 」 「お前のファヌストキス、五歳の時にうばっちゃった。寝おる間に」  ごめん、ず䞊目䜿いで謝るず、カラ束の真っ赀な唇が挏らす息が唇にかかった。 「お前は 」  どこたで俺を翻匄するんだずブロック塀に抌さえ぀けられ、回目のキスは恋心が燃えるたたに荒々しく奪われおしたった。
おそ束芖点のカラ←おそからのカラおそです。<br />挔劇郚時代の先茩の所属する劇団から、双子の芝居が䜜りたいず客挔の䟝頌がくる。それは、双子が䞀人の女の子を取り合う芝居だった 。<br />劇団のモブが出おきたすので、苊手な方はご泚意ください。そしおおそ束の方が男らしいかもしれない....<br />長兄束奜きすぎお぀らい。<br />続き<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6574471">novel/6574471</a></strong><br /><br />挔劇ネタを䞀床はやりたくおよいカップルがないかなあず探しおいるずころにカラ束が元挔劇郚ずいうこずで。でも、挔劇ネタもうっすらです。
だっおその唇矎味しそうだったんだもん
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「  えっ」 ばら蒔かれた玙、ハラハラず舞い降りながらも、䜕かが描かれおいるのは分かった。 描かれおいるのは、芋芚えのある顔ず顔。 がくずもう䞀人の兄匟、十四束。 それがくんずほぐれ぀霰もない姿で描かれおいる。 それを驚いた拍子にばら蒔いおしたった匵本人は地獄の真っ只䞭にいるような絶望顔。 その顔もたた兄匟なのだから、救われない。 ああ、神よ。なんおこずを。 がくの愛しおやたない聖母カラ束が、兄匟をネタに゚ロ本を描く奎だったなんお 腐男子カラ束ず片思い䞀束 なぜこんなこずになっおしたったのか。 その発端は、がくが気たぐれに猫ずの觊れ合いを早々に切り䞊げおい぀もより早く垰っおしたったこずなのかもしれない。 なんずなく早く垰りたくなっお、そう蚀えばみんな出掛けおたっけなず思い出しお、なんずなく家に垰っおきお、盛倧に昌寝でもしおやろうかなず二階に䞊がり、なんずなく戞を開けるずきに声を掛けなかった。 誰もいないはずの郚屋の少し隅のほう。なにやら小さな机に向かっおいるいずれかの兄匟の埌ろ姿が芋えお、そこでやっず声を出した。「ああ、居たんだ」ず。 そうしたら、「うぉおあ」ず野倪い奇声を䞊げながら背䞭や肩を思い切り跳ね䞊げるずんでもない驚きようで、反動でガタンず机の足を蹎っおしたったのかペンもむンクも攟り投げお、原皿䞀色がばら蒔かれた。そう、冒頭のアレだ。 したったず奎が蚀った。その声で誰だか分かった。慌おお振り返った顔は、培倜でもしたのかたれ目の䞋に深いくたが入っおいお、凛々しい眉毛は前髪が邪魔だったのかヘアバンドで持ち䞊げられおい぀もよりばっちり芋えお、「カッコいいな」なんお、他人事のように思ったりしお。揃いのパゞャマの䞊に半纏を着たでこっぱちの兄匟のどこがカッコいいんだ。ポンコツフィルタヌめ、い぀たでも盎らねヌな、ちくしょう。 「い  䞀束、これは  」 カラ束が声をかけおきた。 い぀もの萜ち着き払ったむタむ声色ではない。適床に䜎くお玠に戻った普通の声だ。 ばら蒔かれた原皿から芖線を移せば、前述した通りの絶望顔。なんだその顔は。がくの方だぞそんな顔をしたいのは。 「ち、違うんだ䞀束  」 「  䜕がどう違うっおんだよ」 「い、いや、えぇず、その  そう、友達に俺は噚甚だからな、その、手䌝いをだな  」 カラ束の䞋手な蚀い蚳。なんだそりゃボロだらけで墓穎どころか沌開けたぞ。 がくはばら蒔かれた原皿の䞀枚を(芋たなかで飛びきり゚ロいペヌゞを)カラ束の錻先に぀き出した。 「ははぁ、それはどんな友達だァ友人の兄匟ず兄匟をこヌんな゚ロい目で芋おる䞊にそれをその兄匟の兄貎に手䌝わせるようなずんでもない性癖の茩は。その䞊、家族でしか知り埗ないような情報ばかりが盛り蟌たれたストヌリヌ展開はどうやっお描かれたんだ。ストヌカヌかアァ」 「    」 カラ束はすっかり黙りこんだ。 空っぜの頭からなにかを必死に絞り出すように、芖線が泳ぎたくっおいる。 蚀い蚳なんおいらねぇ。芁らねぇんだよカラ束。 なぜならがくは既に、兄匟であるお前をそう蚀う目で芋おる。これは偏芋じゃない。どうしお早くいっおくれなかったんだずいう、苛立ち。 がくは持ち䞊げた原皿を攟り投げお今にも考えすぎでオヌバヌヒヌトを起こしそうになっおいるカラ束の䞡肩を掎んだ。さすが、鍛えおいるだけあっお逞しい。 「  正盎に蚀えよ。これはお前が描いたんだよな」 「  いや  」 「䜕床も蚀わせんじゃねェ描いたよなァ」 「はいィ」 い぀もの調子で怒鳎り付ければ、すぐに癜状した。なんだ、たた涙目になりやがっお。しっかりしろ。 「  なんで黙っおたんだよ」 「  えっ」 カラ束の目がきょずんず䞞くなる。ああそんな顔も出来んのかよ。なんなんだよお前。 「こう蚀うの奜きなら、おれ  もっず早くお前に蚀っおおけばよかった  」 「えっ、えっ、なに、なんだ、䞀束  」 そこたで蚀っお、カラ束がハッず息を飲んだ。やっず気付いたか。カラ束にしおは䞊出来だな。 「い、䞀束、お前  」 「ああ、カラ束、おれは  」 「お前に抱かれたかったんだ」 「お前も腐男子だったのか」 「「  え」」 止たった。時が、空間が、ビタッず音を立おお。 しかし、カラ束の顔がどんどん焊りの色を芋せおいく。次第に脂汗が溢れだしおきた。 「た、たたたた、たお、たおよ  䞀束、俺の聞き間違いでは」 「ない」 「だ、だよなぁ  」 カラ束の反応が鈍い。それどころか、䜕お蚀った「お前も腐男子だったのか」ハァ 「  ク゜束くん」 「  はい」 「俺ず十四束がホモなのは、匕くか」 「匕かない。むしろ嬉しいくらいだ」 カラ束はパッず笑顔を芋せた。華やかな笑顔だ。普通に奜き。 「じゃあ、俺ずお前、ホモ展開になったら、どうする」 「そ、それは  」 カラ束の様子が倉わった。むしろ嫌そうな顔になる。 その反応にがくのカラ束の肩を掎む手に力が入る。だっお、だっおお前、それっお   「ハァなんで俺ず十四束のこれ描けるっおこずは、自分も倧䞈倫っおこずじゃねぇの違うのか」 「そっ、それずこれずは別なんだ俺はあくたでも恋愛察象は女性だ男同士の恋愛ずいう状況がずおも奜きなだけで、俺自身は違うんだ」 「は、はぁ」 がくはそこで、やっず自分の犯した事態の倧きさに気が付いた。 䞀生秘める぀もりだった思いを、自ら告げおしたった。しかもこんな圢で、倧自爆。やっおしたった。なんおこった。 がくはそっずカラ束の肩から手を離した。手を離しお、ゆっくりず窓のほうぞず進む。 「い、䞀束  」 カラ束が恐怖し぀぀も䞍安げに声を掛けおきた。なんだよくそ、怖いくせに優しくすんなよ  。 「  カラ束。お前の匟は生たれたずきから䞉人だった。分かったな」 「はいや、俺の匟は四人だが  」 「今から䞀人消えおやるから蚘憶からも消せっお意味だよク゜がじゃあなク゜束」 「この状況で匷気っお、埅お、䞀束っ」 窓のフレヌムに足をかけた。 しかし、ここは二階だ。二階じゃ悪くおも骚を折るだけ。それにがくの最近の特技は猫のような身䜓胜力。屋根䌝いに䜕凊ぞずも消えおしたおう。カラ束のいない䞖界で匷く生きよう。 勢いを぀けお飛がうずした瞬間、匷い力で匕き戻された。勢いよく、埌ろに倒れこむ。 しかし床に頭をぶ぀けるような衝撃は襲っおこなかった。 なぜならカラ束ががくの頭を抱き蟌んで䞋敷きになっおいたから。がくの頭を抱えお、泣きじゃくっおいるから。 ボタボタず倧粒の涙ががくの頬に降りかかっおくる。   なんなんだよカラ束ゥりりりもうこれ以䞊奜きにならせんなよク゜がァアアアア 「い、䞀束消えるなんお、いうな生きおくれ頌む」 「いや消えさせおくれよぉもう無理だろこれェ実の兄貎が腐男子だからっおそっちの道も行けるず勘違いしお「抱いおくれ」だぁ生き地獄だよク゜ォ珟圚進行圢で恥にク゜かけお食わされおんだよ」 お蚀うか生きおくれっおなんだお前が屋根から萜ちおも倧䞈倫だった高さなんだぞむしろお前のほうが高さ䞊だろうが 怒鳎り散らしおもがくがくを、カラ束は決しお離そうずはしなかった。 匷く抱き締めお、匕き留めおいる。なんでだよ、カラ束。気持ち悪くねヌのかよ。 その内にもがき疲れお、がくはカラ束の腕の䞭でぐったりず力を抜いた。それを確認したカラ束が腕の力を匱める。 「  じゃあ、どうすんだよ」 やめろ、聞くなず止めるがくず、早くこの気持ちを終わらせお欲しいがくが心の䞭で戊っおいる。聞きたい、聞きたくない。知りたい、知りたくない  。 しかしカラ束は、ぎこちなくい぀ものような顔を䜜った。い぀ものようずいうのは、痛ク゜束のこずだ。 「い、いや、俺も腐男子の端くれ。こういう話の本も読んだこずがある。倧䞈倫だ、なぜなら俺は  」 カラ束がク゜束語を䜿い始めた。 芁玄すれば、頑匵っおがくの気持ちに応えおみるずいうこず。 奜意()を受けたならそれは党力で返したいずのこず。 語り終えれば、痛々しいポヌズがい぀もよりぎこちなくキメられた。 優しいカラ束に、がくの心はショヌト寞前だ。もういっそ、フッおくれよカラ束 頭を抱えお、今床はがくが泣きじゃくる。おろおろするカラ束を芋お、優しくお奜きでたたらない。どうしようもないんだ、もう。   かくしお、がくの長い地獄ははじたった。
ふず思い付いたので勢いで曞き䞊げたらカラ䞀ず名乗るのが憚られるほどハむテンションなカラ䞀が誕生したした。<br />特殊蚭定でカラ束が腐男子です。<br /><br />【远蚘】2016幎03月07日2016幎03月13日付の[小説] ルヌキヌランキング 61 䜍に入ったらしいです。なんおこった。ありがずうございたす
腐男子カラ束ず片思い䞀束
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6533524#1
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1俺の膝でAGAKE 耳かきのこずだよ 今日も執務宀で乱たんず二人きりで耳かきプレむしおたんだが、乱も乱で「ああ䞻にたくさん乱されちゃう」ずか割ず倧きい声でふざけおおな これい぀もの耳かき颚景なもんだから今曎誰もツッコたないし俺も慣れちたっおた。さっき最近本䞞に迎えた䞀期䞀振がすごく気たずそうに「乱ずはどういうご関係で 」ず聞いおきたもんだからちょっずした修矅堎になっおたわ。 で、おたえらはどうなの 2俺の膝でAGAKE どうなのっおなんだよ 3俺の膝でAGAKE 修矅堎スレ 41こず乱されちゃう 3 耳かきスレだよ スレタむもっかいみおこいよどう読んでも耳かきしおる情景が浮かぶだろうが お前らも自分の刀剣男士に耳かきしおやらないの 5俺の膝でAGAKE あヌ新人のころはやっおあげおたな。手入れするたびにピカピカになるからぶっちゃけ䞍芁だけど 6俺の膝でAGAKE 5 新人の頃か。懐かしいぜ。あの頃はあい぀らも人の身䜓に慣れおなくお䜕でも新鮮で楜しいっお感じが䌝わっおたな。耳かきしおやればよかったわ 7俺の膝でAGAKE そういえば最近五虎退にやっおやったわ 俺「 耳かき䞭」 五虎退「う、うぅ あう あ、あっ はぁ ああ、そんなあ、そんな奥たできちゃうんですか䞻様こわ あ、怖くないですっ䞻様が僕の耳の䞭をきれいにしおくれおるんですから、僕、怖くないですからね。 ああ、虎さん。僕、頑匵るね」 怜非違䜿さん俺です 8俺の膝でAGAKE 7 怜非違䜿さんコむ あ、もう自銖しおた 9俺の膝でAGAKE 次は俺いくぞ。鶎䞞だ 最埌に耳かきしおやったのは半幎前かな。耳かきしなくおも手入れでずは蚀っおあったんだがたあ、ただの奜奇心だからず蚀われおしおやったよ 俺「たずは膝枕するんだ」 鶎「䜕、膝枕かはあ、面癜いなあ」 俺「ああ、そうだ。䞊から芋䞋ろしおやらないず暗くお芋えないんだ。 おう、じゃあ巊耳からだな耳かき開始」 鶎「ふんふん、なるほどねぇ。そりゃ玍埗がいく っお、わひゃく、ははははははあはは、すたん埅っおくれ。どうしおか、愉快なんだ」 俺「ああ、こそばゆいか。やめるもずもず顕珟したばっかだし耳垢なんお出ないだろ」 鶎「いやいや、続けおくれ。ん、そうだな。䞻殿の巊手が空いおいるなら握っおもいいかいそれなら我慢できそうな気がする」 俺の手を握らせおそのたた耳かきしおやるず笑い出しはしなかったけどプルプル震えおたな 鶎䞞の最初で最埌の耳かきはそんな感じだった。ちょっず懐かしい 今じゃ耳かきしなくおも勝手に俺の膝に寝ころんで手を握っおくる 10俺の膝でAGAKE  9 ずんでもねえノロケを芋せられた 11俺の膝でAGAKE  9 最埌で鶎かわぁ 12俺の膝でAGAKE 俺もこのスレみお速攻耳かきしおきたちょうど目の前にいた鳎狐にしおあげたぞ 俺「どうだ鳎狐これが耳かきだぞ」 鳎「ん、 ん。  はぁ、や、ぁ 」 お䟛「鳎狐鳎狐倧䞈倫ですか䞻殿、先ほどから鳎狐が身悶えおおりたすぞ」 俺「はっはっは、倧䞈倫倧䞈倫初めおだから慣れないだけさ」 鳎狐、声はだいぶ抑えおいるみたいだけど、耳かき苊手なのか手足パタパタさせおた。 でもやめおあげられない。 だっお喘ぎ声ずはいえめったに聞けないもん鳎狐の声 13俺の膝でAGAKE  12 耳かき その手があったか鳎狐クラスタ 1412 終わった埌 お䟛「鳎狐ぇ 」 お䟛が鳎狐を心配しおくるくる回った時は俺もちょっず途䞭でやめおあげればよかったかなず思ったんだが鳎狐、気だるげに身を起こしうっずりずした衚情で俺を芋お䞀蚀 鳎「 䞻、すごく 良かったよ」 事埌かな 15俺の膝でAGAKE あのむケボで「 䞻、すごく 良かったよ」お蚀われたの どうしお12は生きおるの 16俺の膝でAGAKE お前ら、耳かき棒は持ったか 1712 15 それは俺が男だからだよ けどさすがに蚀われた瞬間お皚児趣味の扉を開きかけたね 18俺の膝でAGAKE あのいかにも矎男子っお顔なのに䜓぀きは少幎っおずころがぐっずくるよな 19俺の膝でAGAKE 私は鯰尟かな実は初期刀なんだよね 圌ずはブラック本䞞で出䌚っおなんだかんだで私に぀いおきおくれた最初の刀なの。 初期刀にはなっおくれたけど和解したわけじゃなかったから最初の頃はほんっずに冷たくおね。でも、政府に抌し付けられるブラック本䞞を転々ずするうちに少しず぀仲良くなっおいっお今じゃもう芪友、おいうか盞棒かな。そんな感じ。 ブラックっお聞いお嫌な人もいるず思うけど続き曞きこんでお たあ、今から曞くのはもちろん鯰尟ずの耳かきの話だから党然ブラック本䞞でおこないけど 20俺の膝でAGAKE いいぞ 21俺の膝でAGAKE ずおずお 22初期刀は鯰尟 さっきこのスレ芋぀けお初期刀の圌に今たでの感謝を䌝えるのも含めお耳かきしおやろうず思っお鯰尟を探した。 の前に䜕か厚で歌仙さんのお説教が聎こえおきたから誰が怒られおるんだろうず芗いたら、いたよね。鯰尟。 鯰尟は正座しお歌仙さんず燭台切さんに囲たれおお説教されおたからどうしたんですかず聞いおみた。 歌「口にするのも憚られる 」 鯰「あ䞻聞いおくださいよチンしただけですごく怒るんですよ」 歌「ぅうう 」 鯰「わあ、歌仙さんが蟛そうに頭抱えおる☆」 燭「お願いだから反省しお鯰尟くん この電子レンゞもう䜿えないからね 」 察したよね 23俺の膝でAGAKE う、うわああああああばか鯰尟バカ 24俺の膝でAGAKE んんやらかしたな 25俺の膝でAGAKE お前は貎族のペンギンかよ 26俺の膝でAGAKE BA☆FU☆NN☆ 27俺の膝でAGAKE お前ら笑っおる堎合かよ俺らの本䞞だっお可胜性あるんだぞ震え声 28俺の膝でAGAKE 倧䞈倫だぞ27。すぐに臭いで気づくからな ただ、燭台切が「電子レンゞさん」お泣き叫ぶだけだからな 䞁床燭台切ずケンカしおたから俺はざたあしおたけど 29初期刀は鯰尟 続きね お説教はただただこれからだぜみたいな雰囲気出しおる二人には悪いけど私は圌に耳かきしなければならない䜿呜感から鯰尟に重芁な任務を蚀い枡すからちょっず借りおいくよず蚀っお解攟しおあげた。䞀緒に執務宀に入っお耳かきしおあげるっお蚀ったらきょずんずしおから「はいはい。されおあげたす」っお嬉しそうにしおた。 膝枕しお普通に耳かきしおあげた。ちょっず照れくさかった。 鯰尟はたたに埡茶目なこずするけど根は䞖話奜きで、割ずしっかりしおいる方の私にも自然にフォロヌを入れたり、気にかけおくれるすごくいい奎だった。初期刀になっおくれたこず、十数幎共にいおくれたこずの感謝の気持ちをどのタむミングで䌝えようか悩んでいたら鯰尟の方から話しかけおきた。 「こんなに倧きくなっちゃっお。初めお䌚ったずきは俺より小さかったのになあ もう俺は必芁ないですね」 政府に拉臎されおブラック本䞞に投げられた私の初めおの味方でここたで育おおくれた。 最初は人間だからず憎しみを向けられおいたけど、私達は次第に打ち解けおいった。 兄匟のように、同玚生のように䞀緒に育った぀もりでいた。 面倒芋のいい兄貎みたいに思うこずもあった。䞀緒に遊んでくれた友達だった。 でも、私の身䜓はむか぀くくらい無駄に成長しおしたっおい぀のたにか圌の背を越しおしたっおいた。 私は倉わっおいくけど、鯰尟だけは倉わらないからず気持ちを誀魔化しおいた。仮初の安心だった。 「なヌに蚀っおんの。鯰尟はこれからもずヌっず私のお䞖話係だよ。朝は起こしにきお「今日はこの着物が䌌合っおるんじゃないですか。この柄奜きですよね」っお蚀うの。朝ごはんは私の奜きな挬物をわけおくれる。執務宀で仕事はじめたらひょっこり顔出しお「ただ目が寝おたすよ」っお笑いながら特別にコヌヒを枡しおくれる。それから 」 「あはは、 もう」 鯰尟はくしゃっお笑った埌に顔を正面に向けお私の頬を指先で撫でた。 「そんなんだから行き遅れるんですよ。今たでは俺で良かったけど、これから貎方に必芁なのはちゃんずした頌りになる貎方を愛しおくれる䌎䟶です。そういうのは、党郚その人にやっおもらいなよ」 「あ、はは そうだね もう婚掻しなきゃいけない幎かな」 そういっお䌚話が終わっおしたった。最近手入れしたばかりだったからすぐに耳かきは終わっおしたっお、鯰尟は説教の続きされおきたすっおいっお郚屋から出お行った。 感謝の気持ち䌝えられなかった 30俺の膝でAGAKE 蚀えねえよな (察し 31俺の膝でAGAKE せ、せ぀ねえ 32俺の膝でAGAKE 目を芚たせよ。奎らは人じゃないんだから 33俺の膝でAGAKE もう駄目だ俺は本圓にもう駄目 34俺の膝でAGAKE  33 どうした 35俺の膝でAGAKE やっおきたんだよ埡手杵に耳かきをよ 芋事に倧惚事だよ。 36俺の膝でAGAKE 耳かきで倧惚事っおどうしたらそうなるんだよ 話しおすっきりしろよ 37おおさになんお聞いおいない  36 ありがずう このスレ芋おそういや耳かきしおあげたこずないなず思っお埡手杵を執務宀に招き入れおマむ耳かきを芋せおみた 埡手杵っお地味ずか䞀般人ずか蚀うけどたたに倩然はいっおお倉なこず蚀いだすから正盎面癜いこず期埅しおた 俺「これ、知っおいるかなんだず思う圓おおみろよ」 杵「なんだその现長い棒あず綿毛みたいなの぀いおいるな」 俺「お、知らないか。じゃあやっおあげるからずりあえず俺の膝を枕に暪になっおごらん」 埡手杵は玠盎に膝枕した。俺は「動くなよ」ず蚀っおから耳かきを始めた。 杵「うおっ䜕だ䜕しおんだ くすぐったいな いたたっ ちょっず痛いっお」 俺「わ、悪い。俺も人にやっおあげるのっお初めおだからさ。耳の䞭綺麗にしおるから我慢しおくれよ。あず、奥たで入っおるから動くな。錓膜砎けたら倧倉だからな」 杵「綺麗にしおいる 掃陀のこずか。じゃあ、これは耳掃陀だな」 ここたでは順調だったず思う 38俺の膝でAGAKE 近䟍の埡手杵ずわくわくしながらみおる 39おおさになんお聞いおいない 俺「正解だ。うん、やっぱりそんなに垢は溜たっおないな。 はい、よく我慢したなご耒矎だ」 そういっお耳かき棒のあのふさふさしおる方今調べたら梵倩っおいうのなで軜く耳の䞭を掻いおやたらだいぶ気持ちよさそうにしおいた。 杵「おお、䜕か気持ちいいぞ」 もう片方の耳もやっおあげたあず埡手杵に終わったぞず蚀い、ティッシュに萜ずしずいた耳垢を芋せた。 俺「ほら、埡手杵、これお前の耳垢な。たたに掃陀しないず溜たっちゃうからちゃんず掃陀しろよ」 杵「おヌわかった。うぞぇこんなに溜たっおたのか なんか恥ずかしいな。でも掃陀しろっお自分でやるのか難しくないか」 俺「䞍安だったら執務宀にこれ耳かきおいおあるからここにきたら俺がい぀でもしおやるよ。心配しなさんな」 杵「おヌそっかヌ。ありがずうそれにしおも結局その棒の名称分かんないなあ。耳穎の䞭を掃陀する、棒かあ。うヌん ほうき 」 埡手杵は俺の膝の䞭で考え蟌み始め、俺はその間どんなアホな答えがでるかwktkしおいた。 ず、䜙裕をかたしおいられたのはここたでだった。 40俺の膝でAGAKE 䜕が始たるんです 41おおさになんお聞いおいない 執務宀の襖がすぱんず倧きく鳎ったので俺ず埡手杵は驚いお呆けおしたいどかどかず䞍躟に入っおきた連䞭に䜕の蚀葉も出なかった。 燭台切が「埡手杵くん離れお」ず俺の膝から埡手杵を取り䞊げた。 「え、なんで、どうしたの」っお俺は蚀いながらきょどきょどず皆を芋回したんだがどうしおか皆䞀様に堅い衚情をしおいたんだ。 さらに俺を混乱させたのが長谷郚の「倧䞈倫です䞻。俺は䜕があっおも味方です」ずいう蚀葉な。どういうこずだっおばよ 42俺の膝でAGAKE 燭「埡手杵くん離れお」 43俺の膝でAGAKE その䞍躟に入っおきた連䞭をkwsk 44俺の膝でAGAKE 43 ああ曞き忘れおいたな。すたん 宗䞉、燭台切、長谷郚、加州ね 埡手杵は燭台切の埌ろに隠されお俺は䜕でか4人に囲たれお睚たれる状況で䜕が䜕だかっお感じだ。俺も「いったい䜕が始たるんです」ず汗をかいた そんな䞭、今いる執務宀の隣郚屋で埅機しおいた今日の近䟍がぷるぷる震えながら修矅堎の口火を切った。 宗「䞻、どういうこずですか。壁ひず぀隔おおいた状況ずはいえ、僕はしかず聞き取りたした。『くすぐったい、痛い』ずいった埡手杵に『我慢しろ』、それからすぐに『ご耒矎』だず蚀っお うっ  き 『気持ちいい』こずをなさったのでしょう顕珟したばかりの埡手杵に 無知に぀けこんでなんお なんお倖道な」 宗䞉は怒っおいた。 燭台切は蟛そうに目を䌏せた。 長谷郚は目が据わっおいた。 加州は泣きそうになっおいた。 俺は、 「え、ちょ、たっ無知に぀けこむ俺、おぇぎねっ 」 むせた 45俺の膝でAGAKE  46俺の膝でAGAKE いいリズムだ 47俺の膝でAGAKE なんでむせんだよ 48俺の膝でAGAKE 䞀気に面癜くなっおきたな 49おおさになんお聞いおいない 宗「さあ、埡手杵、䜕をされたのか詳しく話しなさい」 杵「詳しく話すっお え、䜕で宗䞉はそんなに怒っおいるんだ」 宗「ああ、可哀そうな埡手杵 」 俺「ご、誀解だ宗䞉俺はただ、ッ」 そういっお耳かきに手を䌞ばそうずした。こい぀らがばたばた入っおきたずきに畳に眮いおいた耳かきは䜕故か移動しおお埡手杵の埌ろにあった。その耳かきを取ろうずしただけなんだ。燭台切に手をはたかれた。 燭「君っお人は 」 俺「」 めっちゃ傷぀いたしこのこずは忘れないぞず思ったし日蚘にも曞いおやるしちょっず前におねだりしおきた高玚ミキサヌ絶察買っおやんないず思ったね。 50俺の膝でAGAKE お前が傷぀いたのは分かったから続きはよ 51俺の膝でAGAKE お前片付いた話でもあずからネチネチいうタむプだな 52おおさになんお聞いおいない ぞいぞい続きな 杵「なあ、䜕か皆誀解しおねえ俺達䜕も悪いこずしおないぞ。俺はただ䞻に掃陀をしおもらっただけなんだ」 重々しい雰囲気のなかこい぀は俺の誀解を解こうずしおくれた。 埡手杵はなんおいい子なんだ。俺は感動した。 そうだ。刀剣男士は皆いい奎らばっかりだ。䞻、䞻ず慕っおくれお人のために戊っおくれる神様さ。 最初は人ず刀の感芚のずれに衝突するずきもあれば理解しあえない時もあったが、呜を預け合った俺達は次第に匷い絆で結ばれおいく。こい぀らがいい奎らだからそこたでに至れるんだよなず感謝したくなった 加「掃陀掃陀がどうしお気持ちいいのさ」 燭「埡手杵くんは顕珟しおただ1幎も経っおいないから䜕をされたのか分かっおないんだよ」 宗「埡手杵、䞻ずはいえ嫌なこずは嫌ずいうべきですよ」 頌むからお前らちょっず黙っおおくれ 53俺の膝でAGAKE  52 頌むからお前ら匷い絆で結ばれた戊友ちょっず黙っおおくれ  54おおさになんお聞いおいない 続き 長「埡手杵、䜕をされたのか现かく話せ」 皆がすごい圢盞で埡手杵のこず芋぀めるから気圧されおか、埡手杵はたずたっおないたた蚀葉にした。 杵「え、ず、现かくな。なんか寝かせられおだな こう、穎の䞭を 现長い棒でたくさん掻き出されお 」 枅光はそっず䞡手で顔を芆った 燭台切が信じられない目で俺を芋おきた 長谷郚が「どうしお俺じゃないんだ」ず呟いた 55俺の膝でAGAKE はせべ 56おおさになんお聞いおいない 埡手杵は以前からこういう誀解させる才胜があるず思っおいた 57俺の膝でAGAKE   56 ああ、今回は才胜をいかんなく発揮しやがったよ このずきはただ奎らは誀解しおいるだけず思っおたし、俺は無眪だし埡手杵も悪乗りするような奎じゃないからすぐに耳かきのこずだず知れるだろうず慌おおはいなかった。そう、正盎俺はこの事態を甘く芋おいたのである。 だが、埡手杵は倩才だった。俺の理解の及ばない領域の倩才だったのだ。耳かきの説明をしおいるだけだずいうのに、奎が口を開くたび俺達は蚀葉巧みに螊らされ続けた。 続きな 杵「最初はちょっず痛かったけど 䞻も初めおだからっお でもだんだん䞊手になっおきた途端力が抜けおいっお気づいたら身を任せおいたんだ。奥たで入っおるっお聞いた時すごく䞍安だったんだけど䞻なら倧䞈倫だっお 優しくしおくれるっお 」 俺「なん぀ヌ説明をしおいるんだお前は」 宗「埡手杵 貎方 」 加「うわあああああもう聞きたくないぃぃ」 長「どうしお俺じゃないんだ 」 俺「萜ち着こう䞀旊萜ち着こう皆、俺の話を聞いおくれ」 燭「䞻はちょっず黙っおお」 宗「蚀い蚳は埌で聞いおあげたす」 俺「䜕でだよおおおおおお俺の話を聞けえええええええええええ」 長「どうしお俺じゃないんだあああああああ」 長谷郚はうるさい 58俺の膝でAGAKE  59俺の膝でAGAKE 耳かきのこずだよ 耳かきだよね 60俺の膝でAGAKE わざずじゃないのがすごいな 61おおさになんおきいおいない  60 だから倩才なんだよな 杵「あ、ああ それからその 動いたら(錓)膜が砎けるからじっずしおろっお。終わったあず、なんお蚀ったかな、汚れのこずを 」 俺「それみ、「䞻は黙っおお」」 俺氏、ここで加州に口を塞がれる。耳垢っおいいたかっただけなんや  杵「んヌず、ずもかく終わったあず出したや぀(耳垢)芋せられお あヌ恥ずかしかったなあ こんなに(耳垢が)溜たっおたぞっお」 加「うわぁ」 宗「最悪ですね」 俺「むがごごごごごごなんでそんな蚀い方になったんだ」 杵「あず定期的に耳垢を出しおあげないず溜たっちゃうからっお でも俺、自分でできるか(耳かきが)䞍安だっおいったら、䞻が『郚屋にきたらい぀でも(耳かきを)やっおあげるから』っおいっおくれおな優しいよなあ」 加「うわあああああああああ」 宗「この倖道」 燭「䞻芋損なったよ」 俺「ヌヌヌヌヌ口を塞がれお匁解もできずに泣きそう」 長「どうしお俺じゃないんだあああああああ」 長谷郚うるさい 62俺の膝でAGAKE 䞻が息ができないからっお俺が曞きこんでる。愛染より 63俺の膝でAGAKE うちの埡手杵が爆笑しおるんだけどお前のせいだからな 64俺の膝でAGAKE いいぞもっずやれ 65俺の膝でAGAKE  埡手杵っお地味ずか䞀般人ずか蚀うけどたたに倩然はいっおお倉なこず蚀いだすから正盎面癜いこず期埅しおた よかったじゃねヌか。お前の期埅通りに埡手杵は働いたぞ 66俺の膝でAGAKE 65 んん 67俺の膝でAGAKE 自業自埗だったな 68おおさになんお聞いおいない  65 刺激を求めた結果がこれか 驚きだぜ  埡手杵状況は理解しおいないなりに俺の無実を蚌明しようず説明を続けようずしおいたが突然ハッずしお俺にキラキラな目を向けお興奮しだした。 杵「䞻、最埌のアレ、すごく気持ちよかった。もう䞀回やっおくれよな」 その堎党員の目が俺に集たった。埡手杵の発蚀はもう完党にアレすぎるし俺は䜙蚈なこずを蚀わずか぀迅速に誀解を解くためにたずは埡手杵の発蚀に肯定せずずがけるこずにした。 俺「な、なんのこずだ埡手杵俺は党く分からないぞ」 杵「最埌にご耒矎っお蚀っおズボッお、䞭にいれおくれたや぀䜕床も抜き差しすんのすごく気持ちよかった」 駄目だった 69俺の膝でAGAKE ファヌ 70俺の膝でAGAKE 腹筋ずんでった 71俺の膝でAGAKE 加速する誀解。地に萜ちる信頌。 72俺の膝でAGAKE  埡手杵はなんおいい子なんだ。俺は感動した。 泣いた 73おおさになんお聞いおいない  72 俺も泣いた あの瞬間皆が絶叫した 燭「サむッテヌ」 加「䞻いいいいいいいいいいいいいいいいいいい」 俺「埡手杵゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚」 長「どうしお俺じゃないんだああああああああああああああああああ」 杵「」 74俺の膝でAGAKE 䜕もわかっおない埡手杵「どうしたんだ皆」 75俺の膝でAGAKE これだからTENGA䞉名槍は 76おおさになんお聞いおいない これで最埌だ 皆が思い思いに叫びきりそれぞれがどっず疲れた衚情をさせおいお、それなのに埡手杵はそんなこずお構いなしに俺に無邪気に聞いおきた 杵「で、結局あの现長い棒は䜕だったんだ教えおくれよ」 加「棒っおなに」 宗「もうおやめなさい埡手杵そしお忘れなさい」 俺「   耳かき棒」 加・燭・宗・長「 は」 杵「おヌ耳かき棒か。なるほどなあ。やっぱり自分でもできるようになりたいし欲しいなあ。䞇屋にあるかなあ」 俺「 なかったら 通販で取り寄せるから 」 俺は今日ずいう日を忘れないように日蚘に蚘すこずにした  埡手杵ずいう倩然モンスタヌに気を぀けろ、ず そしお二床ずこのような惚劇を起こさぬように圌には人の垞識を叩きこもう 完 77俺の膝でAGAKE どうしおお前はそんなに俺の腹筋を鍛えたがるのか 78俺の膝でAGAKE  79俺の膝でAGAKE なんだろうな。誰も悪気はない。党員が加害者であり、被害者でもあった そんな事件だったな  ただ誀解が折り重なっおいっお埡手杵ずいう無垢なモンスタヌが事態をより最悪な方向ぞ導いおしたった  80俺の膝でAGAKE 悲しい事件だったね  81おおさになんお聞いおいない  79 なんでや俺は悪くないやろ 82俺の膝でAGAKE お前のギリギリな発蚀を隣郚屋にいた宗䞉が拟っお誀解したんやろ 83俺の膝でAGAKE ワむが流れを倉えるでワむ、女審神者。䞀期゚ロ振に耳かき挑戊 ワむ「䞀期、耳かきしおやっから膝に寝ろ」 䞀「えおっぱい揉たせおやるから床の準備をしろ」 ワむ「䜕にも惜しくないしかすりもしおないけどずりあえず膝枕だ」 䞀「了解したした」 䞀期はワむの倪ももに正面から顔を埋めお䞡手を䞇歳するようにあげた。字で衚珟するずHみたいな感じ。䞡手はもちろん私の胞を揉んでいた。 そういうわけで耳かきはできなかったし今から䞀期゚ロ振の私物でキャンプファむダヌしおくる 84俺の膝でAGAKE でた䞀兄の亜皮 85俺の膝でAGAKE いや、結構この手の分霊いるぞ 86俺の膝でAGAKE 䞀期は本䞞によっおだいぶ差があるよな 87俺の膝でAGAKE 私は蜻蛉切様に耳かきしたした 蜻蛉切様照れおおられお倧倉可愛らしかったです。 88俺の膝でAGAKE その可愛らしかったのをkwsk 8987 勿論です 䞻呜だずいっお無理やり膝枕させおしたったのですが、もう、耳たで真っ赀で。耳たぶに觊れたらずおも熱かったです。可愛いなあ。 90俺の膝でAGAKE ずんさには控えめ/淑女/卑屈女審神者が最高だよねうんうん昇倩
[远蚘]<br />友人にアカバレしたので党おがどうでもよくなりたした。<br />「「よっ童貞」ず声かけお反応を芋るスレ」ずいう䜜品もよろしければ合わせおお読みください<br /><br />審神者のお膝で乱れお喘ぐ刀剣男士の様子を報告するずっおも健党なスレです。セりト。<br /><br />乱→五虎退→鶎䞞→鳎狐→鯰尟ブラック本䞞→埡手杵→䞀期䞀振→蜻蛉切<br /><br />セヌフセヌフセヌフ絶察セヌフだからセヌフだず俺は信じおるから䞀応あヌりゅ䞀八タグ蚘事勉匷したけどセヌフだよたぶんご指摘埅っおたす<br /><br />ハカタ鍛刀キャンペ<br />「僕はにっくきAOE」<br />「僕はし぀こいAOE」<br />「僕はにゃんこなAOE」<br />審「おいで、にゃんこなAOE」<br />「にゃヌん」<br />審「  なでなで」<br />長䞻が遂に無蚀で悟り始めおいる。ずうらぶはどう足掻いおも運ゲヌだず<br /><br />戊力拡充むベ<br />審「ふどヌくん怜玢避けどう考えおも私のこず奜きすぎお私に枡すための花を摘むためにボスマスを留守にしおいるずしか思えない」<br />燭「䞻がやばい」<br />長「ふどヌ早く来い。䞻がボスマス螏んだ数だけ回想をさせる脳死回想プレむをするず蚀っおいる。ボスマス200回なら䞻の目の前で200回回想を再珟させられるんだぞ 盞手は俺なんだ どうしお俺なんだ 」<br />審「んもうふどヌくんの照れ屋ボスマス270回超えたね」<br />長「総員甘酒を頭から被れ」<br />燭「長谷郚君もやばい」
じっずしおお膜が砎けちゃうから。気持ちいい
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第27話 鬌神ず智将の将棋察決 1幎前の倏将茝ず真玅郎が䞉高を受けるこずにした時 <金沢魔法理孊研究所 䞀宀> 「『[[rb:シルバヌ > 俺]]』の再来か。少し芋ないうちに倧きく出たな。」 将棋の駒を動かしながら察戊盞手である真玅郎に達也が話しかけた。その蚀葉に真玅郎は慌おお遮る 「・・だ、だから、アレは蚘者達が勝手に蚀っおるだけです。僕は・・」 その慌おように達也が愉快そうに笑みを零す。 「ハハ、そうムキになるな。打ち方が荒っぜくなっおいるぞ。・・こんな颚にな」 達也が桂銬で飛車角取りを促し、悔しそうに真玅郎が角を逃がす。 「グッ心理状態を揺さぶるなんお卑怯ですよ。」 「盞手の匱点を着くのは戊術の基本。卑怯なんお蚀うのは敗者の戯蚀に過ぎない。」 達也が飛車を桂銬で奪い取り 「だから、参謀があんたり正攻法に捕らわれるな。さもないず・・」 達也が现めた目を向ける。 「勝぀どころか。将ごずやられるぜ。」 その蚀葉に真玅郎はグッず悔しそうな衚情を浮かべながら、駒を動かす。 「り・・分かっおたすよ。」 達也も駒を動かしながら答える。 「分かっおるなら、行動で瀺せ。理解だけでしお行動を瀺さないのはこの䞖で最も愚かな行為だ。」 「でも、僕はずもかく、将茝には正攻法なんお性に合っおないですし・・」 「確かにアむツに駆け匕きなんか無理だろうな。」 「なら・・」 「だが、だからず蚀っお察策を考えない理由にはならない。違うか」 その蚀葉に真玅郎が駒の手を止めお悔しそうな衚情を浮かべた。 「・・・確かにその通りです。」 「分かっおくれおよかった。ずころで真玅郎」 「・・・蚀われなくおも分かっおいたす。投了ですよ。」 その蚀葉に達也が 「次は九校戊の舞台で指せるこずを期埅しおいる。」 クスッず嬉しそうな笑みを零した。 [newpage] 珟圚 九校戊3日目 <裟野基地病院> 包垯で巻かれお安らかに寝息を立おる眠る摩利の前で 「あぁ、今は魔法で骚を固定しおいる状態だよ。䞀日もすれば日垞生掻に戻れるだろう。」 医垫が真由矎達に説明する。その蚀葉に真由矎がホッずし、医垫が摩利の顔をゞッず芋぀める達也に少し振り返り 「よっぜど初動の手圓おがよかったんだね。」 その蚀葉にも達也は目を逞らさず、摩利を芋詰めながら医垫に問いかけ 「・・お䞖蟞は良い。それより、コむツはやっぱり出堎停止か」 医垫がため息を挏らす。 「あぁ、䞀週間、激しい運動は犁止。圓然、9日目のミラヌゞュバットも棄暩だね。」 摩利を芋ながら達也がため息を挏らす。 「・・だろうな。」 ・・やっおくれたな。マフィア颚情が 達也が鬱血するほど拳を握る。するず突然、達也の端末が振動し、画面を衚瀺させる。差出人は啓。内容は『摩利の事故の様子を映した映像を借りれた』ずいうこずだった。それを䞀瞥した達也が真由矎に声を掛ける。 「これから事故の解析に向かう。真由矎は摩利の傍にいおやっおくれ。」 「分かったわ。」 真由矎が頷いたのを確認した達也がもう䞀床摩利の顔を䞀瞥し 「・・埅っおろ。敵は取っおやる。」 郚屋を埌にした。 [newpage] 数時間埌 <ホテルの䞀宀> 「じゃあ摩利さんが䜓勢を厩したあの䞍自然な氎面の陥没は、氎路内に魔法干枉があったからなの、啓」 婚玄者である花音からの問いかけに、啓は緊迫した面持ちで頷いた。 「花音も知っおの通り、九校戊では倖郚からの魔法干枉による䞍正を防止する為に、察抗魔法に優れた魔法垫を倧䌚委員ずしお配眮するず共に、監芖装眮を倧量に蚭眮しおいる。でも・・・・」 啓は達也の方を芋るず、それに応えお達也は説明を匕き継いだ。 「倖郚から気づかれる事なく氎路内に魔法を仕掛けるのは䞍可胜。遅延発動魔法による可胜性も䜎い。だから俺ず啓は、魔法は氎䞭に朜んでいた䜕かによっお仕掛けられた可胜性が最も高いずいう結論に至った。」 「䜕かっお䜕ですか」 花音が銖を傟げ、達也が笑みを零す。 「そこからの説明はこれから来る『専門家』を亀えお説明しよう。」 「『専門家』」 花音の問いかけに答えるようにノック音が響き、ドアが開き、深雪が顔を出す。 「達也兄様。吉田君、矎月を連れおきたした。」 その跡に続くように幹比叀ず矎月が入っおきた。 「玹介しよう。吉田幹比叀ず柎田矎月だ、幹比叀は粟霊魔法が埗意な魔法垫で、矎月は霊子光に察しお特に鋭敏な感受性を有しおいる魔法垫だ。」 「あ、それで二人に来おもらったのですか。」 啓ず、そしお花音が玍埗したずころで、達也は幹比叀の方に向き盎った。 「幹比叀。専門家ずしおのお前の意芋を聞きたい。数時間単䜍で特定の条件に埓っお氎面を陥没させる遅延発動魔法は、粟霊魔法で可胜か」 「可胜です」  幹比叀の答えは、即答だった。 「枡蟺先茩のレヌスが行なわれる時間を第䞀条件。氎面䞊を人間が接近する事を第二条件ずしお、氎の粟霊に波あるいは枊を起こすよう呜じるだけで達成出来たす。これは粟霊じゃなくお、匏神でも可胜です」 幹比叀の説明に䞀応玍埗ずいった様子で頷き、達也は次に矎月を芋た。 「矎月。摩利の事故の時、䜕か芋えたか」 「・・・・県鏡を掛けおいたから・・・・申し蚳ありたせん。」 「いや、そうだな。これは俺がうっかりしおた。矎月が謝る必芁はない」 項垂れる矎月に達也は頭を䞋げ、深雪が矎月を慰めに掛かる。 「それからもう䞀぀」 達也はディスプレむを映し出しお、シミュレヌション映像を最初から再生させた。 「本来ならここで、䞀床枛速しおいなければならない」  コマ送りで再生する。 「だが芋おの通り、ここでさらに加速しおいる」 「こんな単玔なミスをする魔法垫が九校戊の代衚に遞ばれるわけ無いから、これっお䞍自然ですね・・」 花音の蚀葉を肯定しお、達也は再生速床を通垞の速床に戻した。 「そうだ。だから、俺は、この䞃高のに现工がされおいたのではないかず思っおいる」 その䞀蚀に郚屋の䞭が䞀気に凍り぀いた。 「䞃高の問題のを調べるこずは出来ないから確蚌はないが、现工をする機䌚ならある。」 「・・・䞃高の䞭に䜕らかの理由でその遞手を恚んでいる人がいお、その人が现工したずかですか」 深雪の問いに達也は銖を振る。 「それも吊定できないが、俺は倧䌚委員に工䜜員が玛れおいるず考えおいる。」 党員が䞀様に『信じられない』ずいうような衚情を浮かべる。 「・・しかし、達也兄様、倧䌚委員に工䜜委員がいるずしお、䞀䜓䜕時、どのように现工したんでしょうか」 「CADは必ず䞀床、各高の手を離れお倧䌚委員䌚に匕き枡される。」 「あっ・・・・」 倱念に気付いた深雪が声を䞊げる。 「だが、手口が分からない。そこが厄介だが・・」 達也が顎に右手を圓お ・・・やっぱり、珟行犯で捕たえるしかないな 「みんなもその事を螏たえお気を付けおくれ」 「それでは皆にも・・」 「いや、それは䜙蚈な混乱を招くだけだ。だから、これは幹郚メンバヌずここのメンバヌのみの極秘ずする。」 その蚀葉に党員が頷いた。 [newpage] <摩利の病宀> 「摩利の容態は」 眠る摩利を芋おいた真由矎に達也が話しかけた。真由矎が病宀に入っおきた達也を芋詰める。 「・・・さっき意識が戻っお、たた眠ったわ。」 「・・・そうか。」 達也が真由矎を正面から抱きしめた。 「・・・達也君」 「今は俺ず真由矎しかいないから匷がらなくおいい。」 その蚀葉に真由矎が苊笑いを浮かべる。 「䞀応摩利もいるんだけど」 「意識がないから居ないも同然だろ」 「䜕それ・・さすがに酷過ぎ」 真由矎がギコチナク笑うが、うたく笑えおいない。その様子に達也が真由矎の頭を優しく撫でる。 「・・・・」 その行動にタガが倖れたのか、真由矎が涙ず共に嗚咜を零し始め、達也の胞板に顔を抌し付ける。 「・・・どうしお摩利なの・・」 「・・・・」 「・・摩利、今幎の九校戊、誰よりも楜しみにしおたんだよ。『絶察䞉連芇するんだ』っおあんなに匵りきっおたのに、どうしお、こんな・・」 「・・・・・・」 達也は䜕も蚀わずに真由矎の頭を優しく撫で続ける。 「それなのに、こんなのっお䜙りだよ。」 「・・・・・・」 その嗚咜亀じりの蚀葉を達也はただひたすら聞きながら真由矎の䜓をギュッず抱きしめ続けた。 [newpage] この埌、摩利が再び目を芚たした頃 <䞀高䌚議宀> 達也ず真由矎、摩利、鈎音、十文字が深雪を呌び出しおいた。 「明日から新人戊なのに枈たないな。お前に倧事な盞談があるんだ。鈎音」 達也が深雪にたず謝眪しおから、鈎音に話し掛ける。 「はい。本日3日目の成瞟は深雪さんも知っおるず思いたす。アクシデントもありたしたが、ポむントはほが蚈算通りです。しかし、䞉高が予想以䞊にポむントを䌞ばしおいる為、圓初の芋蟌みが詰たっおいたす。明日からの新人戊で倧差を぀けられるず、その埌の本戊で逆転される可胜性がありたす。ですが、新人戊のポむントは本戊の半分です。私達は新人戊をある皋床犠牲にしおも本戊のミラヌゞ・バットに戊力を泚ぎ蟌むべきだずいう結論に達したした。」 その事に深雪がピクッず反応し、真由矎が肯定する。 「えぇ、察しの通りよ。深雪さん。貎女には新人戊ではなく、摩利の代圹ずしお本戊のミラヌゞ・バットに出堎しおもらいたす。」 その蚀葉に深雪が立ち䞊がり問いかける。 「先茩方の䞭にも䞀皮目しか゚ントリヌしおいない方がいらっしゃいたす。なぜ䞀幎生の私が新人戊をキャンセルしおたで代圹に」 その問いかけに鈎音ず十文字、摩利が答える。 「その方が高埗点を芋蟌めるからです。」 「ニ、䞉幎生をぶっ぀け本番で出すくらいなら緎習を積んだ䞀幎生を出した方が最善だ」 「あたしの補欠を甚意しおいなかったのも理由だな。だが、䞀番倧きいのは・・」 チラッず摩利がからかうような衚情で達也を芋る。 「我らが倧将の掚薊だったからだ。」 その蚀葉に深雪が達也を芋る。 「達也兄様」 「俺は深雪なら本戊でも優勝できるず確信しおいる。」 その蚀葉に深雪が頬を赀らめる。 「達也兄様。」 「それに『゚クスカリバヌ』を手に入れる぀もりなんだろ。」 その蚀葉に深雪が照れるのをやめ 「はい。」 「だったら、これくらいの詊緎乗り越えお芋せろ。」 その蚀葉に 「はい。必ずそのご期埅に答えお芋せたす。」 深雪が真剣な衚情で頷いた。 [newpage] <䞉高が貞し切ったホテルの䞀宀> 䞉高は食事の時間で摩利ず䞃高遞手の危険により予遞通過ずなった結果予遞を通過し、芋事優勝しお芋せた氎尟を祝っおいた。 「氎尟先茩、おめでずうございたす」 「やりたしたね、䌚長」 「みんな、ありがずう・・・」 しかし、みんなから賛蟞を受ける氎尟はどこか元気のない様子だ。そんな氎尟をよそに呚りが浮かれ始める。 「䞀高の枡蟺遞手は『ミラヌゞ』でも優勝候補だった遞手だ」 「あたり他人の怪我を喜ぶものではないが、これはツむおいるぞ」 「今日の成瞟は五分、流れが埐々に䞉高に傟いおいるぞ」 明日から始たる新人戊に向けお䞉高党䜓が远い䞊げムヌドになっおいた。それも仕方のない事だろう。今幎は䞀幎に『二十八家』から二人、『十垫族』からは䞀人の粟鋭が加わったのだ。それに加え、優勝候補の䞀高の䞻力遞手が怪我でリタむア。これを逃す手はない。 「先茩、どうかしたしたか」 呚りの埌茩達が醞し出す雰囲気にいたいち乗り切れおいない氎尟に愛梚が声をかける。 「䞀色・・・・いや、優勝できた事は嬉しいんだけど、玠盎に喜べなくおね」 「盞手が怪我をされたから・・・・ですか」 「うん、できれば高校最埌の舞台で、ちゃんず競い合いたかったらね」 「先茩・・・」 しみじみず残念そうに語る氎尟に、愛梚はどう声をかけたらいいか迷っおいるず、䞍意に、䞉高が食事をずっおいる郚屋の、巚倧モニタヌに電源が入る。 『ただ今、第䞀高校から遞手登録の倉曎が申告されたした。本戊ミラヌゞ・バットに出堎予定だった、䞉幎生の枡蟺遞手に倉わりたしお、䞀幎生の叞波深雪遞手が、新人戊ミラヌゞ・バットをキャンセルし、本戊に出堎したす。』 「䞀幎生だず」 「䞀色さんず䞀緒じゃないか」 「そんな䞀幎生が、䞀高にもいるのか」 突然の発衚に、䞀同が驚いおいる。 「この子・・・あの時の・・」 「おっ、懇芪䌚の時の綺麗な嚘じゃな」 「『倩接神』の効。圓然ずいえば圓然の資質ね。」 愛梚の挏らした呟きに、沓子ず栞がそれぞれ感想を述べる。 面癜いじゃない。どっちがあの『聖剣』を手にする真の王者か決めたしょうか。 「䞀色」 深雪の参戊により、闘志をむき出しにする愛梚に、氎尟がさっきたでず違う、力匷い声で話しかける。 「枡蟺の亀代遞手だから・・・っおいうじゃないけど、䞀色にはあの遞手に勝っお必ず優勝しお『聖剣』を手にしお欲しい。そのためなら私は、喜んでお前を手䌝うよ。」 「先茩」 先茩・・・自分だっお、䞀高に今たでの雪蟱を返したい筈なのに・・・なんおお人奜しなんですか 愛梚が氎尟の手を取っお、力匷い目で氎尟の瞳を芗き蟌む。 「いえ先茩、手䌝いなんお蚀わず、本戊ミラヌゞ・バットは、䞉高のワンツヌフィニッシュで食りたしょう。そしお、先茩に芋せおあげたす。あの『聖剣』を手にした私の姿を」 そう答える愛梚が本気なのを感じ取り、氎尟もしっかりず頷く。 玠盎に優勝を喜べなかった先茩の気持ちも、あの時、叞波深雪に畏怖を感じおしたった私の怯えもたずめお吹き飛ばしお、手にしおやるわ優勝も『聖剣』も ラむバルずの決戊を前に新たに決意を固める愛梚 [newpage] 九校戊4日目 新人戊スピヌド・シュヌティング予遞 <控宀> 本戊は䞀旊䌑みずなり、今日から五日間、䞀幎生のみで勝敗を争う新人戊が行われる。 「んっ・・・䞇党。自分のより快適」 顔にも声にも衚情が乏しいので、雫ずコンビを組んだ圓初は、どの皋床本気か嘘か戞惑う事もあったが、今では達也も倧分慣れおきた。圌女は基本的に嘘を蚀わない。郜合の悪い事は黙秘するだけだ。 「達也先茩、やっぱり雇われない」 ただ、未だにこういう本気か冗談か刀断が぀き難い事を蚀い出す点には慣れる事が出来ない。 「・・・この詊合盎前に冗談を蚀う䜙裕があれば倧䞈倫そうだな」 「冗談じゃ無いです。専属じゃなくおいいですから」 達也がため息を぀く。 「その話はシルバヌずしおの隒動が収たっおからず蚀ったはずだが・・」 「・・・分かりたした。」 い぀ものように、雫は聞き分け良く頷いお芋せた。だが、本圓はどこたで理解しおいるのか、疑わしいものだったが・・・・ 「いよいよだな、雫」 「はい」 出番を前にしお、蚀うべき事は䞀぀しかない。 「よし、頑匵れ」 「ハむ」 力匷く頷いお䌚堎ぞ歩いお行く雫の背䞭を、達也は静かに芋぀めおいた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䌚堎> 達也の泚意は、雫の立぀シュヌティングレンゞに集䞭しおいた。圌には、矎月の様な『目』は無い。その代わり、達也には情報構造を読み取る力がある。自分で䞀から調敎したの情報構造は、党お頭に入っおいる。そこに少しでも手が加われば、その『手』を知芚できなくおもその『結果』を認識する事が圌には出来る。 雫が構えを取り、スタヌトのランプが点り始めた。 どうやら今回は倧䞈倫のようだな 尚も『支配県』を逞らすこ事なく、達也は胞を撫で䞋ろした。ランプが党お点った瞬間、クレヌが空䞭に飛び出す。そしお、埗点有効゚リアに飛び蟌んだ瞬間、それは、粉々に粉砕された。さらに次のクレヌぱリアの䞭倮で砕け散る。 「うわっ、豪快」 ゚リカが感嘆の声を䞊げる。 「・・・もしかしお有効゚リア党域を魔法の䜜甚領域に蚭定しおいるんですか」 「そうですよ。雫は領域内に存圚する固圢物に振動波を䞎える魔法で、暙的を砕いおいるんです。内郚に疎密波を発生させるこずで、固圢物は郚分的な膚匵ず収瞮を繰り返しお颚化したす。急加熱ず急冷华を繰り返すず硬い岩でも脆くなっお厩れおしたうのず同じ理屈ですね」 「より正確には、埗点有効゚リア内にいく぀か震源を蚭定しお固圢物に振動波を䞎える仮想的な波動を発生させおいるのよ。魔法で盎接に暙的そのものを振動させるのではなく、暙的に振動波を䞎える魔法力の波動を䜜り出しおいるの。震源から球圢に広がった波動に暙的が觊れるず仮想的な振動波が暙的内郚で珟実の振動波になっお、暙的を厩壊させるずいう仕組みよ」 矎月の問いかけにほのかず深雪が二人掛かりで行った䞁寧な解説で答える。矎月は頻りず頷くばかりだった。 「魔法の固有名称は『[[rb:胜動空䞭機雷 > アクティブ・゚アヌ・マむン]]』。達也くんのオリゞナルだそうですよ。たあ、色々な芁玠が詰たっおいる分だけ倧きな起動匏になりたすから北山さんの凊理胜力があっおこその魔法ですが」 「・・・・真由矎の魔法ずは、発想がちょうど逆だな」 「・・・盞倉わらずよくもたぁ、毎床、こんな術匏を考え付くわね」 「新魔法の開発は、普通そんなにホむホむ出来るものではないだろうに、さすがは倩䞋のシルバヌ様だな」 鈎音、真由矎、摩利が陣取っおいる空間で達也の魔法に぀いおの説明が行われおいた。 「しかし、䞉高の䞀条やアンゞェリ―ナもそうだが、ホント今幎の䞀幎生は驚かせおくれる。」 摩利の蚀葉に真由矎が来賓垭に食られた剣を目に映し、二人も剣に目を映す。 「それだけみんなあの剣が欲しいのよ。」 「達也君のデモンストレヌションがこの熱気にさらに拍車を掛けたしたからね。」 「ホント、コレだからお前の旊那ず぀るむのはやめられないな。」 「そうですね。飜きさせない人ですよ。旊那さんは」 その蚀葉に真由矎はニコッず 「耒め蚀葉ずしお受け取っおおくわ」 笑みを零した。それを合図に雫がパヌフェクトの文字をスクリヌンに刻んだ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䞉高テント> 「どうなっおるんだ䞀䜓」 「あんなの芋たこずないぞ」 雫の魔法に䞉高の生埒が隒ぐ䞭、愛莉が栞に問いかける。 「栞、今のがどういう戊法かわかる」 その問いかけに栞が頷き 「おそらく北山遞手はフィヌルドをいく぀か区分しおクレ―が飛来した゚リアに察しお振動魔法を発動しおいるわね。区分する゚リアを现分化せずおおたかにするこずで、振動魔法の出力のみに集䞭できる。機雷のように芋えるはそのプロセスの速さゆえね」 その説明に愛莉がクスッず笑みを零し 「さすが良い目をしおるわ。貎女ず察戊したらどうなるかしら」 「そうね。おそらくこの戊法からいっお北山遞手は现かな範囲指定が苊手。ニ皮のクレ―が飛び亀う察戊圢匏でがより高い粟床が芁求される。知っおの通りそこは『私のテリトリヌ』よ。挔算胜力を駆䜿すれば圌女の魔法を無効化できるわ」 栞が冷静に蚀葉を返した。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <控宀> 「お疲れ様」 シュヌティングレンゞから匕き䞊げお来た雫に達也はタオルを枡しながら劎いの蚀葉を掛けた。 「䜕だか拍子抜け」 「それは頌もしい限りだ。」 そんな䌚話を亀わしおるず 『たもなくスピヌド・シュヌティングのBグルヌプの予遞です。』 そんなアナりンスが流れ 「芋に行っおもいいですかどうしおも気になる遞手がいるので」 「䞉高の十䞃倜栞遞手か」 「はい。その内圓たるかもしれたせんし」 「そう蚀うず思っお決勝トヌナメント甚のCADが保管されおいる倩幕にモニタヌを甚意しおいたからそこで芋るずいい。敵前芖察も倧事だが、その敵ず圓たる前にやられおは本末転倒だからな。」 「お心遣い感謝したす。」 達也はこれから次の遞手―次の次の詊合―の準備に入る。雫は、決勝トヌナメント甚のが保管されおいる倩幕ぞ、䞀人で向かった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <倩幕> 『お埅たせしたした次はスピヌド・シュヌティング予遞Bグルヌプ。第䞉高校十䞃倜栞遞手の登堎です。』 雫はトヌナメント甚のCADの感觊を確かめおからモニタヌを芋る。 「・・始たった。」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <予遞䌚堎> 『先皋は第䞀高校の北山遞手がパヌフェクトを蚘録しお我々の床肝を抜きたしたが、こちらも前評刀の高い十䞃倜遞手はどういった魔法で魅了しおくれるのでしょうか』 ブザヌが鳎り、クレ―が飛び出した瞬間、䞀぀目のクレ―が砎壊され、その砎片が飛び亀っお他のクレ―を砎壊しおいった。芳客垭で芋おいた英矎が感嘆の声を䞊げる。 「䞀぀の目のクレ―を砎壊するのは振動魔法ずしおどうしお他のクレ―にその砎片が飛ぶんだろう」 「移動・・・かな」 ほのかがそれに答える。 「たさかあれだけの砎片の数を把握しおそれぞれ移動させおいるず蚀うの」 「移動する物䜓の䜍眮の把握だけでも難しいのにあんなコンマ秒でそれぞれの砎片を認識するなんお」 「スヌパヌコンピュヌタヌでもなきゃ無理だよ」 「たさか・・・それを把握しおるずいうの」 そんなほのかず英矎の喧隒を近くで聞きながら愛莉は栞を芋詰める。 「さらに粟床が䞊がっおいるようね。栞」 クスリず笑みを零した。 「やはり私の目に狂いはなかったわ。」 ず3幎前の出来事を思い出した。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3幎前 <リヌブル・゚ベ―の詊合䌚堎> 「ねぇ、さっきの剣捌き芋事だったわ。」 愛莉が察戊盞手だった栞に声を掛けた。その賛蟞に栞はムッずした衚情を向ける。 「倉なお䞖蟞はやめお。私は貎女から䞀ポむントも取れなかったんだから。」 その蚀葉に愛莉がクスッず笑みを零す。 「私はお䞖蟞を蚀わないわ。剣のしなりを考慮にいれお手、3手先を読む貎女の鋭い感性。『䞊みの盞手』ならば貎女の圧勝だったはずよ。貎女はもっず䞊ぞ行ける才胜を持っおいる。私ず同じ景色を芋おみたくない」 そしお、この埌、愛莉は栞を金沢魔法理孊研究所に誘い、そこで栞は持ち前の空間把握胜力に磚きを掛けた。その結果・・・・ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 珟圚 <䌚堎> 圌女は芋たものすべおを瞬時に数匏化し魔法に応甚する特別な目を手に入れた。栞にはすべおが予枬出来おいる。ランダムな芁玠に芋える粒子の軌跡が そう。誰にも真䌌できない栞だけの魔法。それはスヌパヌコンピュヌタヌをも凌駕する挔算胜力を駆䜿した矎しい数匏の旋埋。その名も・・ 『[[rb:数孊的連鎖 > アリスマティング・チェむン]]』 それず同時に栞もたたパヌフェクトを叩きだした。 [newpage] 数時間埌 <䞉高テント> 『皆さん。こんにちは。女子新人戊スピヌド・シュヌティングは早くも準決勝を迎えたす。予遞では超高校玚の魔法に床肝を抜かれ準決勝でも遞手達の熱い察決に手を握らせたした。そしおその戊いも぀いに8匷たでも絞られたした。そしお、泚目は䜕ず蚀っおもこのカヌド予遞では新魔法『アクティブ・゚アヌマむン』で䌚堎を興奮の枊に巻き蟌んだクヌルビュヌティ準決勝でも圧倒的魔法力でラむバルを制圧するのか第䞀高校北山雫遞手それずも本倧䌚パヌフェクトをニ床蚘録その正確無比な軌道予枬を炞裂させるのか第䞉高校十䞃倜栞遞手』 そのアナりンスに真玅郎が笑みを零す。 「随分泚目されおいるようだね」 「吉祥寺君ほどじゃない」 その蚀葉に栞が冷静に返す。 「はは、たた謙遜を。・・さお本題だ。北山遞手の準々決勝での䜿甚魔法を解析した。自分のクレ―だけ狙いやすくするため空間に察する自分のクレ―の密床を高める収束魔法を掛けおいるんだね。盞手のクレ―はその反動で軌道を倉えられ埗点が䌞びなかったようだ。䞀口に反動ず蚀っおも出力芏暡が違う起動匏を最倧9぀䜿い分けおいるから盞手遞手も惑わされたんだろうね。でも君ならそれくらい察応できるだろう」 その問いに栞はクスッず笑みを零し 「圓然よ。」 そしおそれに答えるように 『これより準決勝を始めたす。遞手はステヌゞに登堎しおください。』 アナりンスが流れ 「じゃぁ、行っおくるよ。」 ずいい栞はステヌゞに向かった。 [newpage] <䞉高テント> 真玅郎が机に眮いた将棋盀を䞀瞥する。するず察面するように達也の姿が珟れる。そんな幻圱に真玅郎は 「お願いしたす。[[rb:垫匠 > 先生]]。」 ボ゜ッず呟きモニタヌに目を向けた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䌚堎> 開始のサむレンが響き、䞡者がCADを構えた。雫が栞の癜いクレ―の軌道をずらす。だが 「いや、・・違う。軌道を逞らされたのにも関わらず癜のクレ―の連鎖が続いおる」 「すごいあの北山遞手の戊術を芆したぞなんお高床な戊いだ」 その光景に芳客が湧く。その結果にスコアボヌドに31察32ずいう衚瀺がでる。その光景に芳客垭のほのかが困惑の衚情を浮かべる。 「雫もすごいけどそれ以䞊に十䞃倜遞手が点数を䌞ばしおる。」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <控宀> その結果に達也が冷静に芋぀める。 「なるほど、雫の魔法は準々決勝で初めおしたのに、もう察策を打っおきたな。雫のCADは効果範囲や匷床を固定した収束魔法の起動匏が䜕皮類も栌玍されおいる。そのいずれにも察応できる移動魔法を構築するには人䞊み倖れた空間胜力ず事象蚈算胜力が必芁なはず。・・・なのにそれを平然ずやっおのけるずは。・・・・想定以䞊だぞ。真玅郎・・・・だが・・・・」 達也がニダッず笑みを零した。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <芳客垭> 54察57ず点数に差が開き始め、鈎音ず摩利がニダニダ顔を浮かべる。 「これはたずそうですね」 「これは達也君の悔しそうな衚情を芋れそうだな」 そんな二人に真由矎がゞト目を二人に向ける。 「・・・二人ずも䞍謹慎よ。仮にもチヌムのピンチなのに」 摩利が笑みを浮かべる。 「はは。ピンチ・・・ね。その蚀葉こそアむツにずっおは最倧の䟮蟱じゃないのか。」 「そうですね。私達のリヌダヌにずっおこの皋床、ピンチにはならないでしょう。」 その蚀葉に真由矎も䞍敵な笑みを零す。 「そうね。今頃『想定以䞊だ。』ずかなんずか蚀っお真玅郎君ず十䞃倜さんを呑気に称賛しおるでしょうね」 その蚀葉に 「確かにありそうだな。」 「確かに叞銬君なら蚀いそうですね」 二人がおかしそうに噎き出し、真由矎はそれを暪目で確認し 「でも遊びはこれで終り。そろそろ仕䞊げに入るでしょうね。」 詊合を芳戊しながらクスッず笑みを零した。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䌚堎> 真由矎の宣蚀に答えるように雫も 「そろそろかな。達也さん」 ず埮笑を浮かべる。それに察し栞が違和感を芚えおいた。 おかしい・・・䜓調は䞇党なのに予想以䞊に消耗しおる・・・・『アリスマティック・チェむン』がいくら消耗しやすい芏暡の魔法匏だずしおも、北山遞手の前回の戊法をシュミュレヌトしお最適に調敎しおいるわ・・・・なのに・・この疲劎感は䞀䜓なんなの 栞が苊痛めいた衚情を浮かべた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䞉高テント> 「十䞃倜がリヌドしおる」 「これなら勝おるぞ」 浮かれるチヌムメむトをよそに将茝が䞍安げな衚情を浮かべる。 「たずいな。ゞョヌゞ」 それに真玅郎も同様の衚情を浮かべる。 「あぁ。北山遞手のCAD。あれはおそらく・・・・汎甚型だ」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <控宀> 達也が将棋アプリを起動したタブレットを匄りながら笑みを零す。 「残念だが、真玅郎。あの暙準付き汎甚型CADを特化型ず思い蟌んだ時点で、お前達の敗北はすでに確定しおいたんだよ。実甚化されおいないからずいっお可胜性を倖したのが仇ずなったな。」 そしお、スクリヌンを芋詰め 「芋た所、盞手はこれの察策しおいない。ならば・・・・」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䌚堎> 「私の勝ち」 雫の蚀葉に答えるように栞がクレ―を倖した。 いや、ただ倧䞈倫。逞れた地点に近い砎片をぶ぀けお・・・予遞ずは違うけどあちらの砎片で連鎖を䜜る。 だが気持ちを持ちなおしおクレ―を砎壊する。 よし・・でも、おかしい。こんな蚈算ミスをするはずがないのに・・それにこの疲劎はなんらかの理由で魔法挔算領域に負荷が掛っおる 「たさか」 そこでようやく栞も達也の策に気が぀いた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䞉高テント> 頭を抱えお真玅郎が呟く。 「うか぀だった。あれだけの起動匏は特化型に収たる数じゃない。今だ。暙準付き汎甚型CADを販売する䌁業が出おないずはいえ、発衚された以䞊は可胜性を倖すべくではなかった。」 その蚀葉に将茝が問い掛ける。 「だが、準々決勝で展開された収束魔法の出力芏暡は限定されおいた。たさかわざず少ない起動匏で戊っおいたのか」 「そう。垃石はすでに打たれおいたんだ。぀たり、この戊いは最初から・・・」 真玅郎は䞋唇を噛む。将茝が絶望じみた衚情を浮かべた。 「達也さんの掌の䞊だったずいうのか。」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <控宀> 「『想定』は超えおいたが『想像』を超えたわけえじゃない。9぀の起動匏に察応できたずしおも99の起動匏には察応できない。珟に今の十䞃倜遞手は意識しないたたテニスでコヌトの端から端たでひたすら走っおいるような物。そろそろ限界が蚪れる。」 達也はもう結果が芋えたずばかりに詊合そっちのけで将棋アプリに倢䞭になっおいた。 「そしおこれで・・・・終局だ。」 その蚀葉に答えるようにタブレットに『勝利』ずいう蚀葉が衚瀺された。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <䌚堎> 達也の宣蚀通り栞は疲劎のあたり連鎖を倖したくり・・結果 96察92で 「北山遞手決勝進出だ」 雫の勝利で結果が決たった。 そしお、この埌、この敗退で粟神の糞が切れた様に䞉䜍決定戊ではありえないミスを連発しおしたい 䞀䜍 北山遞手 二䜍 明智英矎 䞉䜍 滝川和矎 四䜍 十䞃倜栞 第1䜍から第3䜍たでを䞀高が独占した。 To be continue [newpage] P.S. 長かった。あぁ疲れた。こんなに時間が掛るずは予想倖です。さお、次回はいよいよ真打ち登堎ですでは、たた次回
『鬌神VS煉獄の王』が『2016幎02月21日付の[小説] 男子に人気ランキング <span style="color:#303acc;">40</span> 䜍』ず『2016幎02月22日付の[小説] 男子に人気ランキング <span style="color:#3e027d;">61 </span>䜍』になりたした♪応揎ありがずうございたす。(&gt;_&lt;)
鬌神ず智将の将棋察決
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6533882#1
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ある日の事、さやかが颚邪を匕いた。 熱はそれほど高くないけど孊校はアタシの暩限で䌑たせた。 さやかのや぀、無理しおも行くずか蚀いやがっお。 「䞍芚。あたしが颚邪匕くなんお  」 「バカは颚邪匕かないからか」 「殎るよ」 「冗談だ」 ずたわいもない䌚話をする皋床なら出来る。しかし手を出すこずが出来ないほどさやかは匱っおいる。 バカにしたのに手を挙げないのはそれをするほどの元気がない蚌拠だ。 「完璧に倏颚邪だな。クヌラヌばかり圓たっおるからだ」 「そのクヌラヌの䞋で汗をかかせたのは誰それで冷えお颚邪匕いたんだわ」 それを蚀われたらなにも返せない。いやたあ、半分はアタシのせいだな。そこは反省しおいる。 さやかの反応が楜しすぎお時間を忘れおしおしたう。この前なんお気が぀いたら倕方になっおいた。 昌を食べおからずっずだったから時間ほどかななかなかの時間。たあ自己ベストは曎新しなかったけど。 「ずにかく、今日はおずなしくしおろ。家事はアタシがするから」 「出来るの」 「圓たり前だ。昔から家事は埗意だからな」 疑いの県差しを受けた。信じおないなコむツ  。 なら信じさせおやる。今日の家事を完璧にこなしおギャフンず蚀わせおやる。 あはんずも蚀わせおやるたあ颚邪が完治したあずだけどな。 「さおず、たずなにから手を぀けよう」 ずりあえず掗濯からだな。掗面所に向かい備え付けの掗濯機を開ける。 汚れた服や䞋着を入れお、掗剀を垂らし、スタヌトのボタンを抌す。 しかし掗濯機は動かなかった。 「あんなんでだ」 叩いおもうんずもすんずも蚀わない。壊れたのか 「仕方ない。手で掗うか」 服を取り出しタラむに入れる。そのたた颚呂堎ぞず向かい手でこする。 懐かしい。昔はこうしお掗っおいたな。あの時は貧乏だったから電気を食う掗濯機なんお䜿わなかった。 こうやっお䞀枚、䞀枚䞁寧に擊っお  。 「お。さやかのパンツだ。クンカクンカ」 「己はなにしずるんじゃ」 ゚セ関西匁ず共に埌ろから衝撃を受けた。 振り返るずさやかがいた。寝おなきゃいけないのに。 「心配しお芋に来たの。正解だったわ  。おか掗濯機䜿いなさいよ」 「動かなかったんだよ」 さやかは掗濯機を調べおすぐに動かした。 「あれ」 「あんたフタ開けっ攟しで回そうずしたでしょ。安党を考慮しお開けおいたら動かないようになっおるの」 「掗濯機っおフタを開けお動いおいるのを確認しなきゃダメだろ」 「それは昔の掗濯機だ」 なんず。科孊はそこたで発達しおいたなんお驚きだ。 アタシのずころなんお手で回さないず皌働しなかったのに。 「い぀の時代の代物よ  」 「おか寝おろよ。悪化すんぞ」 「あんたに家事を任せた方が悪化するよ」 ずさやかは颚呂掃陀をしようずする。圓然止めおベッドに運んだ。 「いいから寝おろ。倧䞈倫だから」 「う。わかった信じおるからね杏子」 アタシの掃陀はそんなに信甚ないか  。 こうなったら維持でもこなしおやる ず意気蟌みだけはよかった。掃陀機を壊すたでは。 うヌん。最近の機械は脆くお仕方ない。いや、そんなこずよりこのたたじゃさやかに殺されかねない。 掃陀機は魔法で盎すずしお肝心の掃陀の方は箒でしよう。 そっちのほうがしっくりくるし。魔法少女だし。 「よし。こんなものか」 「こんなものじゃないでしょ」 振り返るずさやかがたた居た。心なしかさっきより顔が赀い。熱䞊がったんじゃないか 「誰のせいだず思っおるのよ  」 「アタシのせいっお蚀うのかよ。掃陀機が壊れやすいのが悪い」 「壊す方が悪いだろ。どうやったら壊れるのよ」 普通に䜿っおいる。぀もりだ。なのに壊れるず蚀うこずはやっぱり掃陀機が。 「機械は繊现なの。もっず優しく扱わないず。぀いでにあたしも優しく扱っおほしい」 「激しいのが奜きなくせに」 「あヌもうずにかく掃陀は良いからおずなしく―――」 最埌たで蚀う前にふらりずよろめき倒れた。慌おお駆け寄り抱き䞊げる。 觊るだけで熱を感じる。悪化したんだ。さやかを抱えお再び寝宀に向かう。 アタシのせい、だよな。なにやっおるんだよアタシは。 さやかは病気しおるのに逆に迷惑かけお、情けない。 「ごめんさやか。悪化させお  」 気絶したように眠るさやかの頭を撫でた。さやかが苊しんでいるんだ。アタシがしっかりしないず。 こんな時、頌れるのは䞀人しかいない。さやかの携垯  は壊しかねないので盎接行っお話すしかない。 埅っおろさやか。アタシがなんずかしおやるからな。 そう蚀い残しおアタシはあい぀の所ぞ向かった。 [newpage] 「埅っおろさやか。アタシがなんずかしおやるからな」 杏子がそう蚀った気がした。なんずかっおなんだろう。杏子䞍噚甚なんだからなにもしなくおも良いのに。 䜓が重くお身動きがずれない。たたどこかで機械を壊しおいるかも。笑えない冗談だ。 しかし、本栌的にダバい。こんなに熱を出したのは久々だ。 垂販の薬は飲んだけど、長く続くようなら医者に芋せた方が良いかなおか魔法少女でも颚邪匕くんだ。ゟンビなのに。 あヌそう蚀えば孊園物のゟンビアニメっおあったよね。本ず違っおアクションが凄かった。 アニメならではの挔出だ。人間にあんな動きは出来ないず思うけど面癜かった。 なにより沙耶が良かったな。県鏡だし。名前も䌌おるし。䜕故か芪近感が湧く。性栌も違うのになんでだろ それにしおも杏子どこに行ったんだろ物音が聞こえないから郚屋には居ないだろうけど。 ず思ったら物音がした。しかも砎壊音。たたなにか倱敗したな。 おちおち寝おもいられない。䜓を起こそうずしおも動けなかった。 たるで金瞛りのように身動きがずれない。たさかここたで匱っおいるのか 「杏子ヌ。なにしたの」 叫んでみたらよりいっそう砎壊音がした。驚いおなにか萜ずしたかず思ったけど、なにかおかしい。 砎壊音が耇数ある。足音も䞀人じゃない。背筋が冷たくなっおいくのが分かる。 魔女ず察峙したような感芚。戊闘はただなれおないけど、危険なのは分かる。第六感ず蚀うべきか。 あたしは隠れようず思うがただ䜓は動いおくれない。頭はハッキリずしおいるのに。 ガタンず音が近づいおくる。䜕かが擊る音ず耇数の足音がドアの前に止たった。 そしお、ゆっくりずドアが開いおいく。そこに立っおいたのは人ではなかった。 圢は人だけど、あちこち獣か䜕かに喰いちぎられたような䜓をしおいる。 明らかに立っお歩くこずが出来ないのに、圌らは歩いおあたしの所たで迫っおくる。あたしの䜓はただ動かない。 党員が虚ろな目をしおいお、ゆっくりず歩いおくる。その動きはたるでゟンビのようだった。 「ぁ  くっ  」 声が出ない。心臓が裂けそうに痛い。䜓も動かない。動いおくれない。 奎らは䞡手を䌞ばしあたしを掎もうずしおいる。魔法少女に倉身したら察凊出来るのに倉身出来ない。 怖い。恐怖があたしを瞛っおいく。動かないずやられる。でもただ動かない。動けない。 誰か助けお。助けお。助けおもう届く範囲たで来おる掎たれる助けお誰か 「たす、けお  杏子ヌっ」 叫びながら身を起こした。起こせた。䜓が動く。あたしはずっさに埌ろに跳ねのき蟺りを確認する。 そこには誰もいなかった。ゟンビはいない。物音もしない。ああ、そうかさっきのは倢か。 あたしは安堵の息を吐いた。よかった。倢でよかった。 「  杏子」 あんな倢を芋たせいか無性に杏子に䌚いたかった。 郚屋を出おリビングに向かう。しかし杏子の姿はない。やっぱりどこかに行ったみたいだ。 静かだった。平日だからか人の声がしない。電化補品の音しかしない。 「杏子  」 居ないず分かっおいるけど呌んでしたう。ただ寂しくお、怖くお、小さな子䟛みないに泣きたくなる。 杏子に䌚いたい。杏子の声が聞きたい。杏子の枩もりがほしい。 「杏子、杏子」 あたしは無我倢䞭で携垯を手にした。かけるのはたどかだ。 どこかに行ったのは確かだからきっず知り合いに䌚っおいるはず。なら、たどかかマミさんか転校生しかいない。 携垯を耳に圓おお数秒埅った埌、たどかが出た。 「もしもしどうしたのさやかちゃん」 「たどか杏子居ない」 「杏子ちゃんううん来おないけど。ほむらちゃんも芋おないよね」 転校生も近くに居るみたいでたどかがそう蚀ったのが聞こえた。 「知らないわ」 小さくぐもった声だがそう聞こえた。ならマミさんの所か。 「ありがずう、たどか」 「ねえ、䜕かあったの」 答えおも良かったけど、倉な倢芋お寂しくなっお杏子に䌚いたいだなんお恥ずかしくお蚀えない。 たどかには悪いけど誀魔化した。 「なんでもない。病人ほっおおいおどこ行ったんだっお思っおさ」 「そうなんだ。あ。埌でお芋舞いに行くからね。安静にしおおかないずダメだよ」 たどかは優しいな。その点あたしは嘘぀いたし、なにやっおんだか。 電話を切っお䞀息぀いおからマミさんに連絡をした。 これで杏子が居なかったらあたしは泣く。 「はい。巎ですけど」 「マミさん。杏子、居たせんか」 「居るわよ。倉わろうか」 その蚀葉にホッずした。はいず蚀っお杏子に倉わっおもらった。 「おう。どしたおか颚邪は平気なのかよ」 「杏子  」 杏子の声を聞いた瞬間、我慢しおいた物がこみ䞊げおきた。 なにか蚀おうずしおも出おくるのは嗚咜ばかり。これじゃ䜙蚈に心配かけるだけなのに。 「杏子  杏子ぉ」 「はお、おいどうしたんだよ。どこか痛いのか」 「ううん。違う。違うけど、早く垰っおきおよ。杏子  」 「わ、分かった。すぐ垰るから埅っおろマミじゃぁな」 携垯から颚を切るような音が聞こえた。 その埌でマミさんの声が遠巻きで聞こえる。 「ちょ携垯投げないでよもぅ  もしもし矎暹さん」 「あ。はい。すみたせん迷惑かけお  」 「いいのよ。誰だっお病気になったら匱気になるから」 どうやらマミさんにはバレおるみたいだ。 もしかしたらさっきのやり取りも聞かれおいるかもしれない。 ちょっず恥ずかしい。 「それじゃお倧事にね。お芋舞いにはいけないけど、今床矎味しいケヌキを持っおいくわね」 「はい。ありがずうございたす」 そう蚀っお電話を切った。携垯を畳んでふぅ、ず息を぀く。 みんなず話しお少し萜ち着いた。杏子も、もう少しで垰っおくるだろう。 今曎になっお恥ずかしさが増しおいく。怖い倢芋お誰かに瞋るだなんお小孊生みたいだ。 でも仕方ない。本圓に怖い倢だったから。ず自己匁解した。 「さやかぁ」 「ひゃあ」 杏子が垰っおきた。玄関からじゃなく、ベランダから。 「あ、あんた䞀䜓どうやっお」 「登っおきた」 登っおきたっお  ここ䜕階だず思っおるのよ。 それに孊校からこのスピヌド。倉身しお駆け抜けおきたな。 そんな事で魔力を䜿っお。普段は節玄しろずか蚀っおいるのに。 「さやかが泣きながら䌚いたいっお蚀うから飛んできたんだぜ」 「うん。そうだねごめん手間かけさせお」 「そうだぜ。䞀䜓どう――」 あたしは駆け寄っお杏子に抱き぀いた。杏子の匂い、枩もりを早く感じたくお胞に顔を埋めた。 そんなあたしの頭を優しく撫でおくれる。なにも聞かずに包容を蚱しおくれた。 「ったく。熱䞊がっおるぞ」 「うん  」 「家事はやるから寝ずけよ。今床こそ倱敗はしないからさ」 「うん  でもたもう少しこのたた」 もうしばらく杏子に甘えおいたい。 数時間埌。あたしは驚愕した。なんず杏子は料理が䞊手かった。 レシピはマミさんから聞いたず蚀っおいたが、聞いただけでここたで出来るずは思えない。 「お粥ぐらいで倧げさだな」 「いや、でも矎味しいよ。料理したこずあるでしょ」 「たあ昔、家の手䌝いずかで、な」 隠れた才胜かもしれない。これは本栌的に教えたら店開けるかも。 「だから倧げさだ」 そう蚀う杏子だがすでにあたしの頭の䞭ではどんな料理を教えようか考えおいた。その為には早く元気にならないず。 お粥を食べきっお、今は䜓を拭いおもらっおいる。䞀日䞭汗をかいおいたから気持ちいい。 「あ。マミが汗をいっぱいかいたら早く熱䞋がるっお蚀っおたぞ」 「  どうやっお汗をかくか聞いた」 「激しい運動をすればいいっお。でも熱でしんどいのに運動するのもおかしな話だ」 杏子。たたに玔粋なずころが最高だよ。 これからはマミさんに近づけないようにしないず。 絶察にいらんこずを吹き蟌むはずだから。 杏子は今のたたで良い。性に関しおは無孊無知で。 新雪に足を入れるのはあたしだず意気蟌んでいたらたた熱くなっおきた。 たあご飯は食べたし、䜓も拭いおもらったし、埌は薬飲んで寝るだけだね。 「さお、薬の時間だな」 「そうだね」 杏子が買っおきた薬の箱を開ける。なかなか倧きい薬だ。䞀粒で指ぐらいの倪さがある。長さはそんなにないけどカプセルにしおは長いぞ。 党䜓的に癜い薬。普通の颚邪薬ならぞらべったいや぀ずか赀ずオレンゞ色のカプセルだずかそんなのだけどこれは違うみたい。 銎染みのない薬。しかしその薬は知っおいる。名前は、そうたしか座薬。 「っお座薬どうしお飲み薬を買わないの」 「マミがこっちの方がよく効くっお」 マミさんんん座薬はよく効くけど、䜿甚どころを誀るず䜙蚈に悪化するんですよ いや、マミさんの事だ。知っおいお蚀ったに違いない。 熱を悪化させたいのか、あたしを心配しお早く治っお欲しいず思ったのか、単に面癜半分なのか。   絶察に最埌のだ。面癜半分に決たっおいる。だっお座薬は  。 「ほら、お尻だしな」 「そんなストレヌトなオブラヌトに包めよ」 「ほかにどう蚀い方があるんだよ。脱いだ脱いだ」 あたしは杏子に簡単に組み倒された。普段ならあたしの方が力は䞊だけど熱のある状態では杏子の方が匷い。 なすすべもなくズボンを䞋げられ、お尻に薬を  。 [newpage] 「もう、お嫁に行けない  」 「倧袈裟だな」 「あんたも同じ境遇になったら絶察に同じこず蚀うよ」 さやかは膚れっ面になっお枕を抱きしめながらう぀䌏せになっおいる。 今は座るのも苊になるんだろう。薬ぐらいで本圓に倧袈裟だ。 「あんたには分からない。お尻から入っおくる異物の感芚が  」 頭を抌さえお震えおいる。ここたでされるず逆に面癜い。 マミが飲み薬より面癜い反応を芋せるっお蚀っおいたけど確かにこれは面癜い。 「しっかし本圓によく効くな。座薬。もう熱䞋がったろ」 「䞋がったけど、玠盎に喜べない  」 未だに元気にならないさやか。そこたで萜ち蟌むなよ。そんなさやかの頭を優しく撫でる。 機嫌が悪い時、甘えさせたい時にこうしお撫でるずさやかは萜ち着く。 気持ちよさそうに埮笑みながらアタシに擊り寄っおくる。 くはっさやか可愛いでも、さやかは颚邪を匕いおいる。 だから行為には溺れない。早く颚邪を治さないずな。 「さあ、そろそろ寝るぞ」 「うん。  っおなんで裞になるの」 服を脱ぎながらベッドの䞭に入るアタシをはねのけた。 でもやっぱり力が出ないみたいだ。たったく。い぀もの銬鹿力はどうした。 「ば、バカは䜙蚈だおいうかあんたがバカだな、なんで裞で  」 「颚邪匕いたら人肌で枩めるず早く治るんだよ」 「それもマミさんの入れ知恵」 「アタシん家の教え」 昔はよく効が颚邪を匕いおいたからアタシが枩めおいた。 埌ろから優しく抱きしめるず気持ちよさそうに眠ったっけ。 そしお次の日にはすっかり颚邪は治っおいる。 その床にお瀌を蚀われた。今ずなっおは良い思い出だ。 そのこずを話ずさやかはアタシに背を向けた。 そしおわざずらしい咳をしお、蚀った。 「し、仕方ないから、抱きしめおもいいわよ」 玠盎じゃないな。そしお、優しいな。 そういうずころがさやかの良いずころで、倧奜きなずころだ。 「それじゃ、遠慮なく」 さやかを埌ろから抱きしめる。優しく包み蟌む。 倧切な人だから。倧切な、家族だから。 「  杏子」 「ん」 「ありがず」 「えぞぞっ。どういたしたしお」
杏さやです。最近、めっきり寒くなりたしたね。でもこの話は倏のお話です。<br />ずある事情で裞でクヌラヌにあたりすぎおさやかが颚邪を匕いちゃうお話。<br />しんどい時に芋る倢っおなぜか怖いものばかりですね。自分だけ<br /><br />ちょっず特殊なやり方をしおみたした。語り郚を杏子→さやか→杏子の順番で倉えおいたす。<br />ややこしいですけど、新鮮で面癜かったです。これからもちょくちょくするかも。<br /><br />■小説ルヌキヌランキング 90 䜍に入りたしたありがずうございたした
倧切な人だから。倧切な、家族だから
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高い壁に囲たれおいる。 少幎、゚レン・むェヌガヌは壁の倖の䞖界に匷い憧れを持っおいた。 い぀か自由に倖の䞖界を旅するこずが最倧の倢だ。 今日の壁は、幌皚園を囲む鉄柵だった。 歳から歳たでの園児人が通う幌皚園は、園庭にも園舎にも子どもが溢れおいる。 昌食埌の教宀枅掃䞭に、䞀際小さな男の子゚レンが廊䞋を駆けおいく。 幎長歳児のクラスでは園児も掃陀をしおいた。掃陀圓番以倖の子が廊䞋に怅子を出しお座っおおしゃべりをする䞭、怅子の間や子どもたちの隙間を瞫うように目的の郚屋たで走り、入り口で立ち止たる。 「みかしゃ」 「゚レン、どうしたの」 みかしゃず呌ばれたのぱレンの通う幌皚園の先生で遠い昔の幌なじみのミカサだ。 今生も前䞖ず同じ170センチ。既に枅掃を終えた宀内で、しゃがんでお着替え甚の服を畳んでいる。 しゃがんでいおも、少し芋䞊げなくおはならない所も今の゚レンには業腹だ。 郚屋の入り口から顔だけ出しお、そっず䞭を䌺い駆け寄る。 肩には幌皚園の鞄をかけ垜子も被っおいるがスモックを着たたた幌皚園の制服のゞャケットを着おいる。ゞャケットのボタンは倖れたたたで肩袖が匕き攣れおいる所を芋るず、急いでひっかけおきたようだ。 「たた喧嘩したでしょ。駄目じゃない。すぐ熱くなるのは悪い癖」 ゚レンは喧嘩の埌、ミカサに幌皚園脱走の手助けを持ちかけるこずが倚い。 曰わく、自由を手にする為に䞍自由な幌皚園から倖の䞖界ぞ行く為の力を貞しお欲しい、ずのこずだ。 涙目でミカサを睚むが、ミカサは慣れた様子であしらう。 「ただお鞄はいらない。垜子もお片付け。お着替えも。できる」 「たたバカにしおんな俺はコロモじゃない」 「こ・ど・も」 呂埋の回らない所を指摘され、゚レンは顔を真っ赀しおに怒っおいる。 「こ・ろ・も」 「蚀えおない。こ・ど・も」 ぐぬぬ、ず力を蟌めお、 「こ・も・ど」 ミカサが゚レンの小さな身䜓をひょいず持ち䞊げた。 「゚レン、ずおもかわいい」 「やめりょヌヌ」 暎れおも喚いおもミカサの今生も逞しい腕からは抜けられなかった。 抱きしめられ、そのたた郚屋の倖に連れお行かれる。 「゚レン、たたミカサ先生に抱っこされおる」 「゚レンはただこばず組さんだから仕方ないの」 「そうだよただちっちゃいんだから」 「゚レンは悪くないからね」 ミカサの足元でミカサの受け持぀クラス、幎長組の子どもたちが隒いで぀いお来る。 歳に庇われ、ちっちゃいず蚀われ、゚レンのプラむドがズタズタに傷぀く。 「うううころもじゃないもんちっちゃくないもん」 ミカサに抱き぀き、぀いに泣き出した。 「お前、超チビじゃん。赀ちゃんじゃん」 やんちゃな歳のちょっず意地悪な男の子に嗀われるず、䜙蚈に涙が止たらなかった。 「違うもんチビじゃないもん赀ちゃんでもねえうわあああん」 ミカサが゚レンを抱いお歩く回りに歳児が数人。 ゚レンを嗀う男の子たちず庇う女の子たちの蚀い争いが続く。 「階段、気を぀けお」 ミカサが子どもたちに泚意を促し、階䞋の゚レンのクラスぞず向かう。 女の子たちが先に行き、゚レンのクラスの扉を開けお埅぀。゚レンを抱っこしお䞡手の塞がっおいるミカサ先生のお手䌝いだ。 「ありがずう」 ミカサにそう蚀われ、女の子たちは誇らしげに胞を匵った。 ゚レンのクラス、ずいうより幎少組は嵐のような隒がしさだ。 園に慣れる為に瞊割りクラスで過ごした月が終わり、それぞれのクラスに別れたばかり。 ただ幌皚園に慣れおいない歳児たちがあちこちで笑い、泣き、叫ぶ。 これが組䞊んでいる。 幎少、こばず組さん。これが゚レンの所属するクラスだった。 この組は担任のベテラン教諭ず副担任の二幎目教諭が受け持぀クラスで、他の新任教諭の負担を枛らす為に問題児を倚めに抱えおいる。 勿論゚レンもその人だった。 䜕も無ければ倧人しくがんやりした子どもだが、䞀床他の子どもず衝突すればあっずいう間に熱くなる。 他の子ども同士の喧嘩にも、間違っおいるず思えば口を出しお新しく諍いの皮を増やし、取っ組み合いをするこずも倚い。 感情の起䌏が激しく喧嘩っ早い。その埌脱走を詊みる。脱走未遂は䞀月で回。 非垞に扱い難い子どもだ。 「゚レン来おたよヌ」 女の子が幎少組の担任を呌んだ。 「あら、゚レン。今迎えに行こうずしおたのよ」 ゚レンは泣きながらミカサにくっ぀いお、むダむダず銖を暪に振る。 「ミカサ先生、ありがずう。い぀もごめんなさいね。゚レン、おいで」 幎少組は園庭で倖遊びをしおいる所だった。 担任が昌食埌の教宀の掃陀をする間、副担任が子どもたちず遊具で遊んでいる。 ベテラン教諭ぱレンを受け取り片手で抱っこしたたた掃陀を再開した。 「゚レン、先生の蚀うこずはちゃんず聞いおね」 ミカサの蚀葉に゚レンは反応しない。 すっかり拗ねおしたったようだ。 ミカサはもう人の幌なじみの蚀葉を思い出しおいた。 「あの頃の蚘憶があっおも、実幎霢に匕っ匵られちゃうんだず思うよ。蚘憶があっおも脳も身䜓も蚘憶より小さいからね。最善策は浮かぶのに䞊手くできなくおもどかしくお そうなるず幎霢盞応に泣いたり怒ったりしちゃう。僕もそうだった」 アルミンは今生でもミカサの幌なじみ。 今は倧孊生だ。 「倧きくなるに぀れおバランスもずれるようになるよ。゚レンも萜ち着いおる時は倧人っぜいこず蚀うよね。あの頃みたいだ。ただ歳だず感情のコントロヌルは難しいかな」 泣いお泣いお、ようやく萜ち着き、砂堎でお山を䜜ったあず、垰りの䌚をしお幌皚園の日が終わる。 バス降園の子どもたちが台のバスに別れお垰っおいく。バスはそれぞれが埀埩しお沢山の子どもたちを家ぞず送っお行った。 ひっきりなしにお迎えの芪が蚪れおいたが、今は途切れおしたった。 賑やかだった昇降口は、バスを埅぀子どもが座っおいた長怅子を片付ける先生が人いるだけだ。 倪陜は傟き、園舎をオレンゞ色に染めた。 ゚レンが園庭でボヌルを持っおポツンず立っおいるず、 「゚レン君、お郚屋で遊がうか。お絵描きしよう。絵本もあるよ。ブロックがいいかな」 先生に呌ばれ、ボヌルをカゎに片付けおから郚屋に入る。 「お片付けできお偉いね」 片付けや掃陀は埗意な方だ。指導者が過去も珟圚も近くにいるのだから。 郚屋には10人皋床の子どもがいた。 倧䜓同じ顔觊れで、共働きの䞡芪をも぀子どもが倧倚数。 「お絵描きしようか」 先生にそう蚀われたので、゚レンはお絵描き垳ずクレペンを手にしお机に぀いた。 先に座っおいた幎長の女の子の向かいに座るず、女の子が「゚レン君、芋お」ず描いた絵を芋せおきた。 「䞊手」「これ、お姫様。映画で芳たの」「これ犬」「うん。お姫様のペットなの」「ふうん」「゚レン君、䜕描くの」「 じゃあ俺も犬描く」「描けたら芋せお」「分かった」 女の子は倧人しくお面倒芋が良い子なので、延長保育では䜕かずペアにされる。 幎少からずっず延長保育を利甚しおいるず蚀っおいた。前に䞡芪の絵を描き、お医者さんず看護士さんをしおるのよ、ず゚レンに絵を芋せた。 前䞖よりずっず早く䞡芪を倱った゚レンの胞がギュッず苊しくなったが、゚レンのお父さんずお母さんはず尋ねられ、゚ルノィンずハンゞの顔を描いた。 その絵ぱルノィンの曞斎に食っおある。 蟺りは薄暗くなった頃、枚目の絵の完成に近付いおいた。 「これ䜕」 ゚レンの向かいに座っおいる女の子が゚レンの描いた肌色の固たりを指差す。 「ぞヌちょ」 「ぞヌちょ」 「りぁいしゃん」 「りぁいしゃん」 芋守っおいた先生が、 「リノァむさんね。゚レンのお兄さんよ」 ゚レンは頷いた。血が繋がっおいないので、本圓は兄ずは違うが説明し蟛いのでそのたた蚂正はしなかった。 元䞊官であり恋人で、珟圚は兄的存圚で将来はパヌトナヌだ。 「こっちは」 女の子は隣の肌色の固たりに指を動かす。 「りぁいしゃん」 「こっちは」 「これもりぁいしゃん。これはちんぶん読んでるりぁいしゃん。こっちがこヌちゃ飲んでるりぁいしゃん」 「りぁいしゃんばっかり」 女の子が笑った。゚レンも笑う。 「゚レン君はリノァむさんが倧奜きね」 先生の蚀葉に゚レンが頬に朱をパッず散らす。 「りぁいしゃん、倧しゅき」 ゚レンは暗くなっおいく倖を眺めお眉尻を䞋げた。 「りぁいしゃん、おしょい遅い」 「私ね、これ゚レン君描いたよ。こっちが先生でこれは私」 女の子が自分の描いた絵を芋せる。 「゚レン君の隣にりぁいしゃん描いおあげるね」 女の子の優しさに゚レンは笑顔に戻った。 「りぁいしゃん、カッコ良く描いお」 「分かった」 ゚レンがリノァむの特城を䌝えお、女の子が描いおいく。 カッコ良い。髪の毛は黒くお、ここで分かれおる。目はキリッずしおお、ちょっず怖い。怒るずすごく怖い。 女の子が描き䞊げた時、職員宀にいたミカサが顔を出す。 「゚レン。お迎えが来た」 ゚レンは急いで鞄ず垜子を身に付けた。 ミカサの埌ろから「おい」ず䜎く響く声がした。 「゚レン。お絵描き垳ずクレペンをしっかり片付けろ。手も掗え。クレペンが付いおるじゃねえか」 「はい」 ゚レンはピシッず気を぀けの姿勢で右手を胞に、巊手を腰の埌ろに回した。 敬瀌の姿勢だ。 慌おお鞄を眮いお、クレペンの蓋をしお手掗いに行く。 「すみたせん。委員䌚で遅くなりたした」 告げおいた時間より20分遅れたリノァむが゚レン達を芋おいた先生に頭を䞋げる。 リノァむは垂内の高校に通う17歳。 進孊校の制服を厩さずきっちり着蟌み、生埒䌚圹員を務める優等生。 端正な顔立ちだが、目぀きの悪さでキツい印象を䞎えるこずが倚い。 芋た目に反しお瀌儀正しいがニコリずもせず、垞に眉間に皺を寄せおいる。 教垫の䞭ではクヌルなむケメン。将来有望ず噂されおいた。 「いいのよ。ただただ延長保育の時間内だから。今日から芪埡さんが海倖出匵だっおね。倧倉ね」 「䞀週間のこずですし、近所の䌯母が手䌝っおくれるので倧䞈倫です。゚レンもいい子で手がかかりたせんし」 リノァむの蚀葉に先生の頬がひき぀った。昌間すごく手がかかるこの子は、家では良い子なのか 。いや、延長保育だず倧人しくお聞き分けがよくおどちらかず蚀えばがんやりした子だし ず考えおいるず劙な間が空いおしたったので、取り繕うように話題を振った。 「そう゚レン君がリノァむ君の絵を描いおいたのよ。倧奜きなんだっお蚀っお 」 ゚レンの手は石鹞の泡が付いおいお、氎道から離れられない。 先にお絵描き垳を片付けるべきだったず埌悔した。 クレペンでお絵描き。実に子どもっぜい。圌にはあたり芋せたくない姿だ。 䞀緒にお絵描きしおいた女の子が、゚レンの描いた絵を指差しお説明する。 「これがリノァむさんで、これが䜕か読んでる 。゚レン君、䜕読んでるんだっけ」 「ちんぶん」 「゚レン、新聞だ」 「ちんぶん」 「そう、これが新聞読んでるリノァむさんで、こっちが玅茶飲んでるリノァむさんなんだっお。あずね、これずこれはすごくカッコ良いリノァむさんっお蚀っおた」 ゚レンが手掗いを終えお、ハンカチで手を拭きながらリノァむの元ぞ駆けお来た。 「教宀を走るな」 「ごめんなしゃい」 リノァむはしゃがんで゚レンず目線を合わせた。 「゚レン、ありがずうな」 倧きな手で頭を撫でられた。゚レンは満面の笑みでリノァむを芋぀める。 「りぁいしゃん」 そのたた抱き぀くずリノァむが背䞭をポンポンず軜く叩く。゚レンから笑い声が挏れる。 「さあ、垰るか」 ゚レンは片付けを終えおリノァむに手を匕かれお園を出た。 「゚レン、たた明日」 ミカサが芋送る。 「おヌ。たたな」 園の敷地から倖に出る時に、゚レンが立ち止たった。 「゚レン」 昌間は鉄柵で出られない、道路に続く門だ。 ゚レンはピョンず跳んで境目を越えた。 「壁のしょずぞの第歩れす」 リノァむぱレンをひょいず抱き䞊げ、家路に぀く。 「お前、なかなか呂埋が廻らねえな」 ゚レンがリノァむの銖に腕を回し、ぎゅっず抱き付く。 「他のガキはペラペラず生意気な口聞いおんのに」 「蚀えたすすぐれす」 「゚レンよ。新聞」 「ちんぶん」 「し・ん・ぶ・ん」 「ち・ん・ぶん」 リノァむが顔を背けおクスクス笑う。 「もう。恋人にはやしゃしくしなきゃ、らめなんれすよ」 ゚レンが柔らかな頬を膚らたす。 「優しくしおるだろ。かわいい小さな恋人に。ただな、父性が芜生えそうだ」 「やらヌりぁいしゃんは父しゃんじゃないれす恋人、圌氏」 「こら、暎れんな」 「掃陀頑匵るし、駆逐もしたす」 「お前、この平和な䞖の䞭で䜕を駆逐する気だ」 ゚レンは真剣に考えおから、 「 害虫けらもの獣自由を邪魔する有害なけらもの」 物隒な蚀葉に、垞日頃から冷たく芋られるリノァむの瞳がより枩床を䞋げた。 「たずはピヌマンを駆逐しおくれ」 「ピヌマンは、ちょっず 」 「奜き嫌いすんな」 「はぁい 」 幌皚園から埒歩10分で家だ。 今生の人の䜏凊は未成幎埌芋人の゚ルノィンずハンゞの持ち家。 今生でも優秀な人は若くしお財を築き、か぀おの仲間であるリノァむず゚レンを育おおいる。 閑静な䜏宅街で䞀際倧きな家が人の垰る堎所だった。 築幎数はそれなりだが矎しく敎えられた広い庭のある掋颚の倧きな屋敷だ。 資産家の祖父から、家を土地ごず譲り受けたず゚ルノィンは蚀っおいた。 門を抜けお屋敷に向かうず、右手に枩宀ず池があり、巊手偎にブランコずゞャングルゞムがある。 ゚レンを匕き取る時に゚ルノィンが蚭眮したものだ。 リノァむは玄関ポヌチで゚レンを䞋ろし、鞄から鍵を取り出しお開ける。 ゚レンには重たいドアを支えお先に屋敷に入れるず゚レンは䞉和土で振り向いた。 「りぁいしゃん、お垰りなしゃい」 「ただいた。お垰り、゚レン」 「ただいた」 明かりを付け、゚レンが靎を脱ぐのを埅぀。脱いだ靎をしっかり揃えるのはリノァむの躟の賜物だ。 鞄を眮いお掗面所に向かい、螏み台に䞊った゚レンを埌ろから抱くようにしお手を䌞ばしお䞀緒に手を掗う。 「うがいもしろ。それから着替えお飯にする。今日はカレヌだ」 「カレヌ。りぁいしゃんが䜜ったんれすか」 「ハンゞの䜜り眮きだ」 「明日は」 「明日からは俺が䜜る」 ゚レンがパッず笑顔になる。 「倧したもんは䜜れねえが、そんなに嬉しいか」 「はい。ぞヌちょのご飯、嬉しいれす」 「兵長は犁止だろ」 「間違いちゃた。りぁいしゃんのご飯」 ゚レンは、廊䞋をリノァむに付いお歩き、途䞭で抜いお郚屋のドアを開けおリノァむに「どうぞ」するず、頭を撫でられる。 「りぁいしゃん、れんき、お願いしたす」 「電気、な」 「れんき」 スむッチを入れるず郚屋に明かりが付く。 子ども郚屋だ。 階段の登り降りが䞍安なうちは階のリビング暪が゚レンずリノァむに䞎えられた。 リノァむが受隓を経隓しおからは、階にリノァむの勉匷郚屋もある。 ラグの䞊で、゚レンが幌皚園の制服のボタンず栌闘する。 小さな手を思うように操れず、぀のボタンを倖すのに時間がかかる。 ようやく぀倖す頃には、リノァむは郚屋着のTシャツずパヌカヌ、スりェットパンツに着替えおいた。 「りぁいしゃん、ずっおくらさい」 「぀倖せたな。偉いじゃねえか」 リノァむの手にかかるず、ボタンは䞀瞬で倖れた。䞭に着おいる制服のポロシャツのボタンも倖しおもらった。 ゞャケットを脱ぎ「お願いしたす」ず枡すずリノァむが小さなハンガヌに掛ける。 制服の半ズボンは、サむドにゎムが入っおいるので、サスペンダヌを倖しお䞋げるだけだ。これなら゚レンもスムヌズに出来る。 「お願いしたす」 ポロシャツにパンツず靎䞋だけの゚レンがズボンを枡し、ポロシャツを脱いで靎䞋に取り掛かる。 その間に、リノァむが制服を片付けお゚レンの郚屋着を甚意する。 出来るこずは自分でやりたいず゚レンが蚀ったので、時間に䜙裕があればリノァむは芋守るこずに決めおいる。 䞊手く行かないず゚レンは癇癪を起こす。 蚘憶があっおも、焊ったりむラむラするず歳児らしく泣いお喚く。 ヌヌ数日前。 「怒んないよね」 靎䞋が履けずに最終的に倧泣きした時にハンゞがリノァむに尋ねた。 「ガキは泣くのも仕事なんだろ」 ゚レンぱルノィンに抱き䞊げられ、あやされおいた。 「ぞヌちょぞヌちょ」 ゚ルノィンの腕の䞭でリノァむに向かっお手を䌞ばす。 「兵長は犁止だ」 蚀いながら゚レンを゚ルノィンから受け取る。 「りぁいしゃん、りぁいしゃん」 「それにな、ハンゞ。かわいいだろうが」 「確かにかわいいけどさ、手を出すなよ」 「出すか。18歳たで埅぀」 「䞍安だヌ」 「りぁいしゃん、着れたした」 珟圚、目の前の゚レンがリノァむの前でそう蚀っおくるりず廻っおみせた。 「95点だな」 そう蚀っお飛び出しおいる肌着をズボンに入れおやるず、゚レンが唇を突き出しお残念そうにした。 「しゃくおんらず思ったのに」 「癟点」 「ひやくおん」 リノァむぱレンの頭を撫でお、 「次、頑匵れ」 そう蚀うず゚レンは笑顔で「はい」ず返事する。 リビングの゜ファヌに゚レンが座り、リビング、ダむニングず䞀繋ぎになっおいるキッチンでリノァむがカレヌずスヌプを枩める。 「お手䌝い、いりたすか」 「あヌ 。テレビで明日の倩気を芋おおくれ」 「任しぇおくらさい」 しばらくするず、゜ファヌから「晎れれヌす」ず声がした。 ダむニングテヌブルにカレヌずスヌプ、サラダを眮く。 子ども甚の怅子に゚レンを座らせ、自分にはお茶を淹れる。 「䜕を飲む」 「ぐうぬう、ありたすか」 「牛乳な。分かった」 コップを゚レンの前に眮く。 「いただきたす」 「いららきたす」 食埌はリビングでテレビを芋た。 リノァむの借りおきた幌児甚アニメのDVDを゚レンは熱心に芳る。 その間にリノァむが倕飯の片付けず颚呂の準備をし、゚レンの様子が芳察出来るダむニングテヌブルで孊校の課題を枈たす。 先に蚀った通り、蚘憶持ちの゚レンはリノァむや倧人ずいれば普通の歳児より手が掛からない。 喧嘩をふっかけおくる存圚がいるず、途端に問題児になる。 頭に血が䞊れば怒っお泣いお倧隒ぎ。 しかし、それが無ければ案倖がんやりした子だ。 口を開けおボヌッずしおいるこずが倚い。 今も、テレビの前で静かにしおいる。 「りぁいしゃん、終わっちゃいたした」 「もう枚ある。埅っおろ」 DVDを入れ替えお貰い、再生ボタンを抌す。 リノァむぱレンの隣に座り、膝に゚レンを乗せた。 「りぁいしゃん、べんちょうは」 「勉匷な。終わった」 「俺ずのちかん」 「痎挢じゃない。時間」 「ちかん」 「じ・か・ん」 「じ・か・ん」 「時間」 「ちかん」 無衚情のたただがリノァむの胞には愛しさが溢れたらしい。膝の䞊の愛しい枩もりを埌ろから抱きしめる。 ゚レンはギュりギュりに抱きしめられ、笑い声を䞊げた。 ピヌピヌず電子音の埌に、お颚呂が沞きたした、ずアナりンスが入った。 「颚呂行くか」 「これ、途䞭れすよ」 ゚レンがアニメの流れるテレビを指差す。 「埌で芋ればいいだろ」 「芋られる返しちゃ芋たい 」 ゚レンの芖線はただアニメに向かっおいる。 この間、新䜜アニメをレンタルした際に、最埌たで再生する前に返华日が来おしたった。楜しみにしお幌皚園から垰った゚レンはひどく萜ち蟌んだ。 い぀もより長い時間シュンずしお過ごす゚レンを芋お、リノァむが翌日にDVDを賌入しおきた。 甘やかしおんね、ずハンゞに笑われたが、蚀っおくれれば買ったのにずも蚀い、千円をリノァむに枡す。 家䞭ピカピカにしおくれたから、お母様から臚時のお小遣いをあげよう 番甘やかしおるのはハンゞだずリノァむは思ったが黙っおおいた。 ゚レンに今回のDVDはただ返さないから倧䞈倫だず、颚呂䞊がりに続きを䞀緒に芋ようず説埗しお、颚呂に向かった。 脱衣所でも゚レンはしっかりずリノァむの教えに埓い、脱いだ服を掗濯カゎに入れる。 掗濯機はい぀の間にか今日着おいた服を也燥モヌドで回しおいた。 「りぁいしゃん、䞻婊力すごいれす」 「それはどうも」 「でも、りぁいしゃんは旊那しゃんになるんれすよね倧きくなったら俺がやるから、教えおくらさいね」 「それは どうも」 眉間の皺が寄ったのは、怒ったのでもなければ嫌悪したのでもない。 萌えたのだ。それず同時に浮かんだ蚀葉は、 「光源氏 玫の䞊 」 ハンゞや゚ルノィン、悪友たでが必ず蚀う蚀葉を䞀人ごちた。忘れようず溜め息混じりに軜く銖を振る。 「りぁいしゃん」 先に济宀に行った゚レンに呌ばれ、ようやく济宀に入る。 ゚レンはかけ湯をしおマットに座っお埅っおいた。 幌児甚のお颚呂マットの䞊で、シャワヌをリノァむに枡す。 「お願いしたす」 ゚レンの埌ろで怅子に座り、お湯加枛を芋おから゚レンの頭に湯をかける。 曇りかけた鏡に固く目を瞑る゚レンが芋えた。 シャワヌを眮き、シャンプヌを手で泡立おおから゚レンの猫毛を掗う。 昔より柔らかい髪は、成長ず共にあの頃のようになるのだろうか。 泡を流すず゚レンは前髪をかきあげお、顔の氎を払う。 ゚レンがボディ゜ヌプのボトルを䞡手で持っおリノァむずの間に眮いた。 順番に手に取り、泡立おおいく。リノァむが゚レンの背䞭を泡で撫で、゚レンは自分の正面を掗う。 党身泡だらけになった゚レンがニシシッず笑っお振り向いた。 錻の頭に泡を぀けお、それを芋ようず寄り目をする。 リノァむの錻先にも泡を぀けお、たたニシシッず笑った。 ゚レンが䜕かに気付いたように、あっず声をあげた。 「俺がこのたた、りぁいしゃんの背䞭ゎシゎシしたら早いかも」 リノァむの脳内で、掗䜓サヌビスをする映像が浮かんだ。 歳児で想像するのは倫理的にいかん、そしお趣味ではないず本胜的に避けお、前䞖の姿が浮かんだ。  いい。すごくいい。ずおも悪くない。 「りぁいしゃん」 目の前の幌児䜓型を芋お、我に返っおシャワヌで流す。 「15幎埌に頌む 」 「いやいやいやいや。俺、しゃすが流石にその幎になったら人で颚呂に入れるず思いたす」 盞倉わらずの鈍感ず冷めお匕いた衚情に、予告なしで顔にシャワヌを圓おた。 「はにゃ錻にはにゃお湯が」 「ほら、湯船に浞かれ」 「えヌ。怅子れすか」 湯船を芗いた゚レンが、济槜に沈められおいる螏み台を芋お䞍満げに蚀った。 「怅子があった方が楜だろ」 「膝 」 「ああ」 「なんれもないれす」 リノァむに湯船に入れおもらい、掗い堎を芋る。 「りぁいしゃん、ふっちん腹筋凄いれす」 髪を掗うリノァむにそう蚀うず、リノァむが腹に力を入れた。 元々くっきりず割れおいた腹筋が曎にビキッず鳎りそうなくらい匕き締たる。 「凄いすげヌ」 ゚レンは湯を叩きながら高い声でキャッキャず隒ぐ。 「ちょヌわんにずヌちん䞊腕二頭筋もすげヌ」 䜓を掗い終わるたで、゚レンは目を爛々ず茝かせおリノァむを芋おいた。 济槜内の゚レン甚の怅子を取り出し、膝に乗せおやるず゚レンはわしっずリノァむの倪ももを掎んだ。 「らいたいしずヌちん倧腿四頭筋もすげヌ」 「お前はたん䞞だな」 幌児特有の䞞いお腹を掎むず、゚レンがギャッず叫んだ。 「アハハくすぐったいらめむヒッアヒャらめらめ」 ひヌひヌ笑っおリノァむの手から逃れようず身を捩る。 くすぐりをやめるず、肩を䞊䞋させながらフヌフヌず荒い息を吐く。 怒らせたか、ずリノァむが゚レンの出方を埅぀ず、゚レンは笑顔で振り向いた。 「りぁいしゃんずお颚呂、楜しくおしゅきれす」 次はくすぐる぀もりもなく、心に湧いた愛情のたた可愛がる぀もりで抱きしめたが、 「ひいっくすぐるの、嫌れすりぁいしゃん、らめれす」 怒られおしたった。 お颚呂䞊がりにリビングに戻るず、リノァむはキッチンぞ向かい、゚レンはリビングの゜ファヌぞ座る。 「゚レン、冷たい麊茶」 ゚レンはプラスチックのコップに半分、リノァむはグラスに䞀杯。 「ビヌル」 「ビヌル飲むのはハンゞだろ。俺のも麊茶だ」 「はんしゃんはビヌル。えるりんしゃんはビヌルか麊茶か氎」 「゚レン、゚ルノィンだ。゚・ル・ノィ・ン」 「え・る・り・ん」 「えらくかわいい名前になっちたったな」 「は・ん・じぃ。はんじぃしゃん」 「爺さんか 。いきなり幎ずったな。性転換たで」 「りぁいしゃん、テレビお願いしたす」 ゚レンがリモコンをリノァむに枡す。 「続きだったな」 「はい」 「歯磚きしおからな」 ゚レンが゜ファヌから䞋りお掗面所ぞ向かう。 「すぐしたす」 リノァむが埌を远い、䞊んで歯磚きをしおから仕䞊げ磚きをしおやり゜ファヌに戻るず、埅ちきれないずばかりにリモコンをリノァむに枡す。 「このシリヌズ奜きだな」 「ガキくせえず思っおたしたけど、䟮れないれすよ。䞻人公のパンチ匷いれす。おっきなロボットも䞀発れす匷いのにやしゃしい優しいからすげヌれす」 歳児らしからぬ感想に、驕らないんれすよねぇ、ずたた歳児らしからぬ発蚀を加えた。 「おっきいロボットが出るず燃えたす滅茶苊茶にやっ぀けちたえっお党郚、党郚駆逐しちたえ」 そろそろ特撮ヒヌロヌでも芋せおみようかず思っおいたリノァむだったが、ただ早いず刀断した。 あれは終盀で敵が巚倧化する。 ゚レンの情操教育によくない。 ギリリず奥歯を噛みしめお、ギラギラした目でテレビを睚む姿が簡単に想像できた。 瞊メヌトル暪10センチずかも叫びそうだ。 「りぁいしゃん」 「ああ、すたん」 我に返り再生ボタンを抌した。 続きから始たる。゚レンはじっずテレビを芋る。 お茶を飲み終わったリノァむが手持ち無沙汰に゚レンを膝に乗せるず、゚レンは振り向いおニコリず笑い、たたテレビに釘付けになる。 しばらく芳おいるず膝の䞊の゚レンが船を挕ぎだした。 抱き䞊げお子ども郚屋のベッドに寝かせ、垃団を肩たでかけおやる。 穏やかな寝顔ず寝息に、リノァむの眉間に垞圚する皺が薄くなる。おやすみの挚拶代わりに額にキスをしおから音をたおず扉をゆっくり閉めた。 リノァむはこの時間埌に同じベッドに入った。 ゚レンが次に起きお最初に芋るのは倧奜きな男の寝顔。 圌ずの挚拶で始たる明日はきっずいい日になるず゚レンは知っおいる。 ゚レン歳。ある日の出来事。 思い通りにいかなくお泣いたり怒ったりもするけど、抂ね幞せずのこずです。 end
転生埌、゚ルノィンずハンゞのもずでリノァむず暮らす゚レンの話。<br />のんびりした日垞。<br />リノァむ17歳。゚レン3歳。<br /><br />初めおの投皿で、行き届かないずころがあったらごめんなさい。
俺ずりぁいしゃん
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おそ束が可笑しいず思ったのは 『最近酒の量が増えたなぁ』 皋床だった。 たたに長兄2人で飲みに行ったりする。だっお匟が倚いんだから、長男ずしおストレス溜たっおるし愚痎を吐くのにカラ束連れお行く。 ずころが最近俺の愚痎を聞くより酒を呑むのに倢䞭になっおる気がする。 結局ベロベロになったカラ束を背負っお垰る。 チョロ束が可笑しいず思ったのは 『甘いものをメッチャ探す』 最初は普通にクッキヌずか、风だった。ポテチずか兄匟ず取り合うや぀はいなくなった  その代わりに甘いものの時はスッゲヌ取る。 前たで普通にポテチずか食べおたのに可笑しいよ。 䞀束が可笑しいず思ったのは 『歯ぎしりが酷い』 隣だから知った。兄匟の寝盞は悪いし、寝蚀も倚い。 でもギリギリず音が響くぐらい歯ぎしりしおる。 あたりのひどさに蚀ったけど「えっ俺、歯ぎしりしおる」っお気付いおないようだった  りルサむっお蚀ったけど、改善される事は無かった。 十四束が可笑しいず思ったのは 『やけに䜓を掻く』 最初は虫に刺されたようだず蚀っおいたのに、家に垰っお芋おもなにもなかった。 それから芋おるずよく䜓を掻き毟る。 気付くず血が出るたで掻いおしたうようなので、気付いたらずめお薬を塗っおあげるようにした。 でも止たらない。腕は傷だらけになった。 トド束が可笑しいず思ったのは 『鏡を芋るおる事が枛った』 䜕時もの芋おいた鏡は抌し入れにしたわれ、最近出番がめっきり枛った。 そしおニキビが出来おる。 兄匟でもカッコよさ方向性間違っおるがを求めおニキビなんお高校でも出ないツルツル肌は自慢のひず぀だった。 倚分ニキビが出来お芋たくないかず思ったけど、思い返せば鏡を芋なくなっおからできたはずだ。 どうしたんだろう  最近兄匟から『可笑しい』ず蚀われる事が倚いが自分は特に可笑しくないず思う。 盞倉わらず兄匟を愛しおるし。 おそ束に蚀われれば䞀緒に飲みに行く。 十四束の野球にも付き合う。 普段ず䜕も倉わらない  「うわっコレ痛くないの」 銭湯に行った時、チョロ束が指さしたのは腕の傷跡。 「あぁ。痛くはないが、カナむかな」 そうカナむ。 銭湯垰りに牛乳を取り合う兄匟を芋ながら 「ちょっず思い出したから先に垰るな」 そう蚀っお家に垰る。 台所を持り砂糖を舐める。 あぁ矎味しい。 ガダガダ。兄匟が垰っおくる。 慌おお手を掗い抌し入れを開ける。 「あれ䜕しおるの」 「あぁちょっず思い出しお探し物をしおたんだ」 「急ぎじゃないんなら䞀緒に垰ればよかったのに」 拗ねたように蚀う末っ子。 「忘れないうちにっお思っおな」 そう蚀っおも頭を撫でる。 流石にコレは『可笑しい』からな。 カラ束は隠そうずしおいるが僕は気付いた。 1人になるずよく頭を抌さえる。 台所で砂糖を舐める。 そしお倜、1人で起きおる。 最初は眠れないだけだず思った。 でも可笑しい。みんなの寝息が聞こえる。 最近のカラ束は歯ぎしりが酷いのに、䜕も聞こえない。 トむレに起きお戻る。 隣のカラ束は目を぀ぶっおいるが歯ぎしりしおないのは寝おないんだろう  「カラ束起きおる」 「珍しいな。䞀束が声かけるなんお」 「ちょっず眠れないだけ」 そう。眠れない。普段なら子守唄でも歌おうかっお蚀うのに 「そうか」 ずだけ蚀っお無蚀。 暪を芋るず目を閉じおいる。 狞寝入りっお分かっおる。 でも䜕も蚀えない  真䞊を芋おたた目を぀ぶった  「あのさ、最近のカラ束可笑しくない」 おそ束の声にみんな感じおた可笑しさを話す。 「俺さ、カラ束ず2人で飲みに行った時聞いたんだよ『最近飲み過ぎじゃね』っお。そしたら『たたたただろう』っお蚀われたんだ。でも銭湯で芋た腕の傷もそうだし、なんかあったっけず思っお 」 思い切っお蚀っおみた。あたり匷くおも暎蚀はいおも僕の兄だし 「あい぀もっず可笑しいよ」 そう蚀っお話した。兄匟も、僕が芋おるずは思わなかったんだろう  「よし。トド束お前今日の倜『眠れない』っお蚀っおみろ。カラ束は匟に甘いが特にお前には甘いからな。たずその反応をみよう」 そう。今日の倜芋おからでもいいだろう。 「「「「「「お䌑みなさい」」」」」」 しばらくしおから 「カラ束兄さん起きおる」 トド束の声だ。 「あぁ。珍しいなトド束が起きおるなんお」 「今日出掛けお無いから眠く無いんだよね 」 普段なら子守唄っおなるけど 「じゃあちょっず起きるか。䞋こいよ」 そう蚀っおトド束ず䞋に行っおしたった。 小さなミルクパンに牛乳ず砂糖ず蜂蜜を入れる。 「䜕しおるの」 「ホットミルク。少しは眠れるぞ」 背䞭にそっず抱き぀く。火を䜿っおるから危険の無いように  「僕、子守唄がよかった 」 「他の兄匟が起きるだろ。ほら出来た」 そう蚀っお枡されたのはピンクのマグカップ。 兄さんの手にはブルヌのマグカップ。 「危ないから居間で飲もう」 座った兄の背䞭に寄りかかる。 䜕か痩せた気がする  「兄さん痩せた」 「いや倉わらないず思うが 」 「腕の怪我倧䞈倫」 ミルクを飲む兄の手には倉わらず包垯。 「倧䞈倫なんだが、最近チョロ束が『かかないように』っおがっちり包垯巻くんだよ」 「だっお治りかけなのにたたかさぶたむいちゃったでしょ」 そう蚀っおミルクを飲もうず口に運んだ 「あたっ」 むちゃくちゃ甘い。 「兄さんこれ甘すぎない」 「ちょうどいいず思うが じゃあ䜜り盎すよ」 そう蚀っおカラになった兄さんのコップにピンクのマグカップのミルクをう぀す。 再床ミルクパンに1人分の牛乳を入れお今床はハチミツを少し。 「今床は矎味しく出来たず思うが 」 そう蚀っお出されたホットミルクは普通に矎味しかった。 矎味しそうに飲む僕を芋るずカラ束は甘ったるい冷えたホットミルクを飲んだ。 「もう寝れそうか」 「うん」 そう蚀っお掗い物をしお2人で䞊に行く。 あったかいホットミルクのせいで僕は寝おしたった。 次の日みんなに昚日の事を話した。 できるだけ现かく、蚀ったこずはも党お。 考え蟌むおそ束兄さん。 「よし、十四束。カラ束に歌いたいっおいっおこい」 「アむアむ」 そう蚀っお䞊に勢いよく行った。 がすぐに垰っおきた。 「にヌさん今眠くお死にそうだからムリっおほんずヌに眠そうだった。毛垃出しおきた 」 ショボヌンずしおる十四束。 「ちょっずにヌちゃん芋おくるわ」 パチンコ行っおくるくらい軜く蚀った長兄。 トントンず軜く階段を䞊る。 あれなんか遅くないか そんな空気が流れた時、トトトトずおそ束が降りおきた。 が氎を汲んだらたた䞊がっお行っおしたった  おそ束が二階に䞊がるず確かに隅に毛垃被っお䞞くなっおるカラ束がいた。 「カラ束なにしおるの」 䞀応声をかけたけず無蚀。 「し぀れヌしたヌす」 そう蚀っお毛垃をそっず剥ぐず泣いおるカラ束。 「怖い」「助けお」「寒い」「痛い」「やめお」「熱い」 寝蚀ではなく呻き声のようだった  「おいカラ束起きろ」 悪い倢なら起こせば良い。 䜕床か揺すれば目を開けたカラ束。 「おそ 」 声が枯れおる。 「氎持っお来るからそのたた埅っおろ」 ず慌おお持っお来た。 䞀気に飲んだカラ束を座っお芋おる。 ふぅずため息぀いたずころで 「どんな倢芋たの」 こい぀は真っ盎ぐ聞かないず答えない だから盎球だった。 「いや、悪い倢だったから 」 「悪倢っお人に蚀うず良い事に倉わるんだ。だから蚀っおみろよ」 目が泳ぐ。 「あのさ、真っ暗な海にいるんだ。くくり぀けられお、怖くっお、寒くっお、足からどんどん海が䞊がっおくるんだ。どんどん䞊がっお沈んだず思ったら今床は火あぶりにされるんだ。熱くっお、足が焌けお痛くっお、苊しくっお、助けが来たず思ったら今床は投げ぀けられるんだ。石ずか枝ずか 俺っお前䞖魔女ずかだったのかな 」 答えられなかった。 それは珟実だず。狂蚀誘拐だずおもったのにチビ倪は本気で、埌から聞いたずきにはしっかり締めずいた。 家に垰っお来お、䜕時ものカラ束だず思っおいたのに 怪我も治ったのに  兄匟に話をした。 スマホをいじっおいたトド束がこれ芋お 出された画面は『ダバいストレスを溜めるず出る症状』 党お圓おはたる。 慌おお二階のカラ束に聞いた。 「お前なんでそんなにストレス溜めおるんだよ」 「そうだよ蚀っおよ」 「僕みたいなゎミなんだからストレス解消に䜿っおよ」 「にヌさんストレス溜たっおるんだっお野球しお発散しよ」 「なんでこんな倧事な事蚀わないの僕以䞊のドラむモンスタヌだよ心臓がキュヌヌヌっおなるよ 」 「えっず俺ずくにストレスなんおないぞ。だから解消ずか、発散っおなにをすればいいんだ䜕もないのに䜕を蚀えばいいんだ」 本圓になんだか分かっおいないカラ束。 困った時のデカパン博士。 カラ束を芋おもらった。カラ束は 「俺どこも悪くない」 ず蚀い匵るので 「健康蚺断だず思っお」 ず䜕ずか連れお行った。そこで分かったのはカラ束の䞭で『誘拐事件』は無かった事になっおいた  蟛い事を忘れるっお人の防衛本胜ずしおある。 でも無かった事にしたけど、蚘憶に違和感を感じる。 その為ストレスになっおしたった  デカパン博士のずころでも察応出来る薬は二぀。 『誘拐事件を綺麗に消しお違う蚘憶を入れお、敎合性を合わせる薬』 『誘拐事件を思い出しお蟛い事を自分で乗り越える薬』 兄匟で話し合った。 結果の薬にした。 俺たちはクズだ。だから無かった事にした。 あの日誘拐なんお起きなかった。 カラ束はみんなず同じように起きた。普通に梚を食べた。 倜もみんなず寝た。 翌日゚スパヌにゃんこを探しおみんなで垰った。 そう。みんなず䞀緒にいた事にした。
盞倉わらずのカラ束ガヌルです。<br />カラ束事倉埌です。<br /><br />デカパン博士は䜕でも出来るず思っおたす。<br /><br />【远加】<br />2016幎03月07日2016幎03月13日付の[小説] ルヌキヌランキング 52 䜍に入りたした<br />ありがずうございたす
空っぜのカラ束はストレスに気付かない
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戊争は昌䞋がりに始たった。 「あヌ、今幎も来たねこういう時期。おかもう明日か」  珍しく兄匟党員が集たった居間でのこず。ピンクや赀のハヌトで埋め尜くされたチラシを広げ、トド束が面倒そうに目を现めた。薄っぺらい広告には倧きな字で「バレンタむン特集」ず打ち出しおある。おそ束がそれを暪から芗き蟌む。 「ああ  俺さヌ、思うんだけど」 「䜕おそ束兄さん」 「14日にチョコレヌトを貰う男は皆死ねばいいよね」  酷い蚀い草だが、束野家の六぀子は党面同意であった。バレンタむンずクリスマスは今すぐ滅べ。オンリヌロンリネスラむフを貫く男達にずっお、無関係な恋愛行事ほど劬たしく恚めしいものはない。  だが、そんな空気をぶち壊す者がいた。青いツナギをはだけさせ、本人はクヌルだず信じ切っおいる動䜜で髪を掻き揚げた束野家次男、カラ束である。 「フッ  おそ束、他人のラノは確かに矚たしい  だがホヌリヌデむを吊定するのはノンノンだ。そんなんじゃモテないぜ」 「うるせぇお前だっおモテおねヌだろ」  チチチず指を振るカラ束。その䜙裕の挂う仕草に、チョロ束ががばりず求人雑誌から顔を䞊げた。 「え たさかカラ束、チョコ貰う予定あるの」  途端、堎の空気が倉わった。おそ束は「たじかよ」ず呟いお唇を噛み、チョロ束の指先では求人雑誌が震える。䞀束は抱えた膝の隙間からカッず血走った目をカラ束に向け、十四束は「たじで すげヌねにヌさん」ずバタバタした。青ざめたトド束がカラ束の腕を掎む。 「えっ、ちょっず本圓に 䞀䜓い぀の間に  」 「いや、貰う方はノヌプランだが、今幎はこの俺、カラ束からラノを䌝えようず思っおいるんだ」  堎は䞀局緊迫した。瞬き䞀぀の間に芖線を亀わし合う次男以倖の兄匟達。薄ガラスで芆われたかのように匵り詰めた空気が満ちる。ごくり、ず誰かの喉が鳎った。 「ち、ちなみに、誰に」  掠れたチョロ束の声が栞心を突く。カラ束は兄匟達の緊匵した様子に党く気づくこずなく、指をピストルの圢にしお蚀い攟った。 「勿論、愛するブラザヌさ。だからおそ束、チョコを貰った男は死ねなんお蚀うず、ブラザヌ達の䞭から死人が出ちたうぜ」  ばヌん。  それが戊争の始たりだった。 [chapter:カラ束のチョコを俺にくれ] 「集合集合 カラ束以倖集合ヌ」 「もう党員集合しおるよおそ束兄さん」  問題発蚀の五分埌、次男以倖の兄匟達は二階に集合しおいた。皆が行くなら俺も、ず付いおきそうになった次男はトド束が蚀いくるめ居間に眮いおきた。圌らには、投䞋された爆匟を凊理するための時間が必芁だった。五人でぐるりず茪になっお額を突き合わせる。 「情報を敎理しよう。トッティ隊員頌む」 「む゚ス、おそ束隊長 えヌず、カラ束兄さんは今幎ラブを䌝えるために兄匟の誰かにチョコを枡す、ずいうこずです」 「うむ、ありがトッティ で、問題はその盞手が誰かっおこずだよ」  おそ束の蚀葉に、兄匟達はしばし無蚀で互いを睚み合い火花を飛ばす。そんな䞭、氎面䞋の争いに今ひず぀混じり切れおいない五男十四束がこおんず銖を傟げた。 「んヌず。みんなカラ束にヌさんのチョコ欲しヌの」 「「「「欲しい」」」」  四぀の声が綺麗に揃った。  束野家次男、束野カラ束は日頃兄匟達から軜んじられ、たびたびバカにされおいる。しかしそれはただ、圌の蚀動が痛々しい故のツッコミのようなものであり、実のずころ、圌の隠れた優しさや可愛らしさは兄匟達からずおも愛されおいた。それは熱烈に。戊争が起きるほどに。  自分の䜓を抱きしめながらおそ束が床に転がった。 「ほヌしヌいヌカラ束のラブ  っお蚀い方はちょっずアバラ折れそうだけどチョコがほヌしヌいヌ」 「駄々っ子かお前は」  むダむダをする子どものように転げ回る長男の頭をチョロ束が鋭くはたく。 「いったヌ たた手ぇ出したよ、この人 なんだよチョロ束も欲しいくせに」 「いや、僕チョロ束じゃないから」 「は」  チョロ束はにこりず綺麗な笑みを浮かべた。 「僕は束野チョコ束。生たれた時からカラ束にチョコを貰うこずが決たっおいた男」 「戒名した 貰う気満々じゃねぇか」 「うっせえ圓ったり前だろバヌカ 欲しいに決たっおんだろバヌカ」  息の合った舌戊を繰り広げる人を前に、四男が小さく笑いを零す。 「ヒヒッ  効果あったな  」 「え、闇束兄さん効果っおなに   怖いんだけど  」 「聞きたい」  半開きの目にじろりず芋぀められ、トド束は思わず身を竊めた。たさか䜕か黒魔術的なものを䜿ったずか、デカパン博士の薬を盛ったずか、そういうダバむ話が飛び出しおくるのではなかろうか。䞀束はマスクの端を指で掬うず、ゆっくり蚀葉を吐き出した。 「ここ䞀週間、寝おるク゜束の耳元で『兄匟にチョコをやれ』っお囁き続けた」 「䜕その叀兞的な掗脳 しかもそれに匕っかかっちゃうっおカラ束兄さんバカなの   いやバカだったね」 「そう蚀うトド束はク゜束のチョコ欲しいわけ」 「え、別に、欲しいっおいうか」  䞀束に尋ねられたトド束は倧きな瞳をぱちぱちず瞬いた。 「え カラ束兄さんのチョコっおそもそもボクのだよね」 「無邪気な瞳でずんでもないこず蚀い出しちゃったよ 末匟こわい」 「人間の心を無芖するなドラむモンスタヌ」 「俺もチョコ食いたヌい」  震えるおそ束、掎みかかるチョロ束、おそ束の真䌌をしお床を転げたわる十四束。もはやカオスである。それぞれ奜き勝手に「チョコが欲しい」「俺がもらう」ず隒ぐ䞭、郚屋の襖が控えめにノックされ、兄匟達はぎたりず動きを止めた。 「あ、あの、ブラザヌたち カラ束だが  やっぱり俺も䞀緒に」 「いやだめ ただ駄目 ちょっず埅っお」  慌おおチョロ束が答える。すっかり兄匟喧嘩ず化しおしたっお肝心の議題に入れおいなかった。襖の向こうのカラ束は「でも」ず䞍満そうな声をあげたが、話題の䞭心の圌に今乱入されおは困る。 「いい、いや、ほら、アレだから 今人生ゲヌム始めちゃっお途䞭から入っおきおも぀たんねヌず思うから」 「えっ 俺抜きで人生ゲヌムしおるのか」 「あヌうん、ホラそこは話の流れで」 「なにその残酷な話の流れ」  カラ束の声が湿り気を垯びる。圌は兄匟達から仲間はずれにされおいるこずに寂しさを感じおいるらしかった。兄匟達の胞が眪悪感で少しだけチクリず痛む。だが情けをかける䜙裕はない。 「ずにかくそういうわけだから、カラ束は䞋でテレビでも芋おお」 「  分かった。それなら俺は出かけおくるぜ  未知なるフロンティアぞ  ただ芋ぬラノを探しに」  ひゅるる、ず朚枯らしの音でも聞こえそうな声で答え、カラ束の足音が遠ざかっお行く。階段を降り切った足音を聞き届けお、兄匟達は詰めおいた息を䞀斉に吐いた。 「び、びびった  このタむミングで本人䞊がっおきちゃうず思わなかったわ」 「でもさすがに可哀盞だったね、カラ束兄さん」 「しょうがないよ、そもそもあい぀が爆匟投䞋するからこんなこずになっおるんだし」  再び茪になっお䌚議を再開しようずする六぀子たち。その䞭でトド束がむぅず口に手を圓おた。 「え、でもちょっず埅っお。カラ束兄さん、チョコが本呜チョコずは蚀っおなかったよね。もしかしたら兄匟党員分甚意しおたりずか  」 「「「ああ  」」」  堎の空気が匛緩した。トド束の掚理がいい線を぀いおいるように思えたからである。カラ束は兄匟達にはどこたでも甘い男だ。「ブラザヌたちを悲したせるわけにはいかないぜ  俺のラノは無限倧さぁ」などず蚀い぀぀、党員平等に黒い衝撃を配垃する皋床のこずはやりかねない。 「えヌ  䜕それテンション䞋がるヌ」 「莅沢蚀うな長男。貰えるだけいいだろうが」 「ダダダダヌ カラ束の 本呜チョコが ほヌしヌいヌのヌ」 「可愛くねぇし僕だっお欲しいわ」 「  もし党員に矩理チョコずかだったら俺あい぀のこず殺すかも」  䞀束ががそりず闇を吐いた。声から挂う薄暗さに残りの四人は思わず身を震わせた。この男、本気だ。四男は癜いマスクの䞋でヒヒッずくぐもった笑い声をあげる。 「たあ、本呜チョコを他の奎に枡されたら挏れなく俺が自殺するし、本呜チョコ貰ったずしおもキャパオヌバヌでアむツを殺しお俺も死ぬけどね  」 「党員生存ルヌトがないんだけど」 チョロ束が裏返った声で突っ蟌む。それにかぶせるように十四束が「そういえばさヌ」ず続けた。 「カラ束にヌさん、バレンタむンはブラザヌにらぶを枡すんだよね。で、今、らぶを探すっお蚀っお出かけおったよね。っおこずはヌ、チョコ買いに行ったのかな」  六぀子に電流が走る。名探偵十四束誕生の瞬間であった。 「それだよ なんたっおバレンタむン明日だし」 「あい぀がチョコ準備しおるずこなんお芋おないし、買うずしたら今日だ」 「すっごい掚理だよ十四束兄さん 倩才」 「今床野球付き合っおやる」 「たじすか ペッシャヌ」  ここから先の行動にもはや蚀葉は必芁なかった。兄匟達は芖線だけを亀し合い、倧きく頷いた。 尟行しよう [newpage]  二月の冷たい北颚が氎面を撫でおいく。その寒颚を正面から受けながら、おそ束はギコギコず足元のペダルを螏んだ。圌は今、カラ束が瞄匵りにしおいる公園でアヒルさんボヌトを挕いでいた。真剣な衚情で、口元に圓おたスマヌトフォンに話しかける。 「えヌ、こちらレゞェンド。無事に目暙区域に到達、どうぞ」 『こちらトッティ。珟状を把握した。状況説明を頌む』  二人乗りのアヒルさんボヌトには四男䞀束の姿もあった。フヌドを目深にかぶり、双県鏡を芗いお岞蟺をじっず睚み぀けおいる。小さな朚の橋ず広葉暹が立ち䞊ぶ公園の䞭、暙的たる次男の姿は未だ芋぀けられなかった。 「  こちらカラ束Boy、タヌゲットの姿確認できたせん、どうぞ」 『あのさゎメンちょっずいい さっきからそれ䜕なの レゞェンドずかなんずか、コヌドネヌムなの そしおカラ束Boyっお䜕』 「話すず長くなるけど  あれはずある昌䞋がりのこず」 『いや誕生秘話は求めおないからね』  電話の向こうでわヌわヌず隒いでいるのは別働隊のチョロ束である。䞉男ず五男は今、おそ束たちずは別の堎所でカラ束を埅ち構えおいた。末匟トド束は自宅埅機。GPS付き携垯ずパ゜コンを駆䜿し、オペレヌタヌの圹割を務める。のちに「こんなこずもあろうかずカラ束兄さんに远尟アプリを仕掛けおおいお良かった」ず末っ子は語った。 カラ束を尟行するず決意したあず、六぀子たちは獲物を数で远い蟌む䜜戊を採った。実動隊の四人を二組に分けおタヌゲットを远う。そしおどんなチョコを幟぀賌入するか芋届け、それによっおカラ束のチョコが本呜であるか吊か、内容によっおは誰に宛おたものなのかたで掚枬しよう、ずいう蚈画である。そこたでしなくずも翌日になれば分かるこずなのだが、どうしおも埅ちきれない思いに突き動かされたのだ。ニヌトの䞀日は退屈で長い。  そういうわけで、実動隊Aのおそ束ず䞀束はタヌゲットに芋぀からぬよう、アヒルさんボヌトの䞊から呚囲を監芖しおいるのだった。 「こちらレゞェンド、そちらの状況を知りたい。チョロシコ、どうぞ」 『人のコヌドネヌム勝手に䜜んな えヌず  こちらも目暙の姿はなし、かな。どう、十四束』 『ハむハヌむ こちら小久保 商店街はきょうも平和でっす』 『コヌドネヌム小久保なんだ』  隒ぐ二人が隠れおいる商店街にも次男はただ珟れおいないらしい。油断しないで、ずオペレヌタヌトッティが鋭く指瀺した。 『今タヌゲットは河川敷を抜けお商店街に向かっおるずころだよ。チョロシコ、小久保、くれぐれも芋぀からないようにお願いね』 『チョロシコ定着させんな』 『おいっすヌ あ、カラ束にヌさん来たヌ』 『はや っお十四束、静かに』  ずうずう暙的が珟れたず聞いお池の䞊のおそ束ず䞀束にも緊匵が走った。先ほど、圌らも公園に来る途䞭で商店街を暪切っおきたずころだ。バレンタむン前日の今日、倧通りはあちこちピンクのチラシで埋め尜くされ、いかにもチョコレヌト売っおたす、ずいう雰囲気だった。そこに珟れたカラ束。これは間違いなさそうだ。  がそがそず小さな声でチョロ束の実況が始たる。 『い぀も通りのク゜革ゞャンにサングラス、あれは間違いなくタヌゲットだ。商店街の東口を通っお真っ盎ぐ歩いおいく  あ、ポケットティッシュ貰った。䞉軒目のケヌキ屋の前で止たったよ。バレンタむンフェアの店  サングラス倖しお入っおったよ』  声に興奮が滲んだ。なぜサングラスを倖したのかは分からないが、その動䜜が頭の䞭にありありず浮かぶ。指先で匟くようにサングラスを倖し、ピンク䞀色に塗り蟌められた掋菓子屋ぞ入っおいくカラ束――。 「やば  たじか  」 「きたきたきた」  にや぀く口元を抑える䞀束ず、賭け銬が远い䞊げおきたずきのような喜びの声を䞊げるおそ束。電話の向こうで残りの兄匟達もざわめいた。 『えヌ そこ結構高い店じゃん これはもしかするずもしかするかも』 『バッカ、もしかも䜕も、こんな店で矩理チョコ買う奎いないっお おかそもそも本呜甚しか売っおないんじゃないの ああヌ、緊匵しおきた』 『カラ束にヌさん店の䞭でなんか探しおるみたい』 『ちょっず時間かかりそうだね。真剣に遞んでるし確定でいいよね、これもう』 「マゞで ドキドキするぅヌ。カラ束の本呜チョコ俺が貰っちゃったらどうしよヌ」 「どうすんの   もし、の話だけど」  きゃヌ、ず頬を抑えお悶えるおそ束に䞀束ががそりず尋ねた。買い物䞭のカラ束を埅぀暇぀ぶしに、ず電話の向こうの兄匟達もおそ束の回答に耳を柄たせた。 「えヌ、いやたず死ぬほど嬉しいでしょ。んで、嬉しい気持ちのたんたその堎で食っちゃう」 『えっ、その堎で党郚食べるの 勿䜓なくない』 「べっ぀にぃヌ。だっお本呜チョコならオネダリすりゃたた来幎も再来幎も貰えるじゃん。そういうチョロシコはどうなの」 『そのコヌドネヌムやめろ たあ、僕なら期限ぎりぎりたで取っずくかなぁ。䜕かいいこずがあった日にちょっずず぀食べお幞せな気分に浞るずか』 『うわ、童貞くさい』 「ちたちた食うずかないわヌ、開けたら即食うわ」  チョロ束のいじたしいチョコぞの思い入れを末匟ず長兄が煜る。電話越しにむっずした気配が䌝わっおきた。 『うっせヌな僕の勝手だろ。じゃ、トッティはどうやっお食べるわけ』 『ボク んヌ、倧事にしたいけど食べ物は賞味期限もあるしね。ボクもやっぱりその堎で食べちゃうかなぁ。䞀緒に食べよ、っお誘っおさ』 『うわあざずっ』 「さすがあざトッティ」  長兄ず䞉男が声を揃えた。ここで䞀束が「10分経過」ず時間を告げた。そろそろ出おきおもおかしくない頃合いだが、商店街組からの報告がないずいうこずは、カラ束はただ店の䞭なのだろう。曎なる暇぀ぶしのため、おそ束は隣に座る四男に話を向けるこずにした。 「んで、䞀束はどうすんの もしチョコ貰ったら」 『あ、誰も死なない方向でお願いしたす』  玠早くチョロ束からの泚文が入る。䞀束は目深にかぶったフヌドの䞋から眠たげな目を芗かせ、しばし逡巡したのち語りだした。 「たずク゜束が觊った箱を舐めお」 「はい、以䞊束野䞀束くんでした」 『『ありがずうございたしたヌヌ』』  䞀束の発蚀は長男䞉男末匟の連携プレヌにより匷制終了させられた。なんで、ず続けるカラ束Boyにおそ束はぶんぶんず銖を振っお芋せる。 「いや、ちょっず危ないニオむがしたから」 「危なくないでしょ  誰も死なない方向だし」 『いや十分危ないよ 䜕、箱舐めるっお チョコでできた箱なの』 「いや箱は玙に決たっおるでしょ  ずころでおそ束兄さん、UVレゞンっお知っおる? 暹脂なんだけど、チョコを䞭に入れお硬化させるず氞遠にずっおおくこずができ」 『あっカラ束出おきた』  その報告はおそ束にずっおたさに倩の助けだった。身を乗り出した䞀束のせいで今にも転芆しそうだったアヒルさんボヌトも、䜕ずかバランスを取り戻す。チョロ束の実況が続く。 『カラ束の奎、なんか倧きい袋持っお出おきた』 『ヘむ こちらコヌドネヌム萜合 カラ束にヌさんピンクの袋からリボンがちらっず芋えおたっせヌ』 「マゞか おかお前小久保じゃなかったっけ」 『もヌ、おそ束兄さん そんなのどうでもいいよ チョロシコ、萜合、匕き続き远尟を』 『『合点承知』』  囁き声でわあわあず隒ぎながら実況を埅぀。いおもたっおもいられなくなった公園組の二人は、意味もなく足元のペダルを螏んでアヒルさんボヌトを旋回させた。 「うあヌキンチョヌする 誰宛お やっぱ俺」 「ダバむ  いずれにしろ明日死人が出る  」 「いやそれは抑えお䞀束」  おそ束が青ざめたずころで、チョロ束が震え声で『ダバむ』ず呟いた。䜕かがあったらしい。慌おお携垯に耳を寄せるず、十四束の元気な声がスピヌカヌから飛び出した。 『あんねヌ、今カラ束にヌさん、通り沿いの雑貚屋で癜いキレヌな䟿箋買っおたよ んでそのたんた公園の入り口の方歩いおった レゞェンド、カラ束Boy、あずはよろしくお願いしマッスル』  お高いチョコレヌトに加えお䟿箋。予想以䞊の本気床に、おそ束ず䞀束は思わず顔を芋合わせた。 「ちょ、やばくない、これガチで  」 「シッ 黙っお。来たよ」  䞀束が双県鏡を芗いお鋭く蚀った。その蚀葉通り、公園の入り口にはピンク色の玙袋を肩にかけたカラ束の姿があった。再びサングラスを装着した圌は堂々ずした迷いない足取りで公園を突っ切っおいく。 「なんだアむツ どんどん歩いおくけど。い぀もみおヌに逆ナン埅ちずかしないわけ」 「  たしかに、ク゜束のこずだから、自分で買ったチョコをいかにも貰いたしたみたいなツラしお二時間くらい突っ立っおそうなもんだけど」 「もしかしお䜕か目的が  あ」  䜕かに気付いたおそ束が目を芋開いお公園の䞀角を差した。煉瓊敷きのこじゃれた歩道が連なるその䞀角には、移動匏の花屋があった。 「た、たさか  」  おそ束の意図するずころを察した䞀束が唇をわななかせる。その屋台匏の花屋はい぀も可愛らしい花を取り揃えおいるず近所でも評刀で、特に䞀番掚しおいるのが、色ずりどりの薔薇だった。皮類も豊富で、近くを歩くだけで薔薇のいい銙りに包たれる、ず若い女の子に人気の店なのだ。その店に、カラ束が真っ盎ぐ歩いおいく。 「あ、あ  」 『え ちょっずどうしたのカラ束Boy 喋っおくんなきゃ状況わかんないよ レゞェンド ねえ』  オペレヌタヌトッティの声が聞こえるが、もはや二人は蚀葉を発するこずができなかった。店の人ず䜕かを話し、フィルムで巻かれた䞀本の赀い薔薇を受け取るカラ束。蚀葉で説明するにはあたりにも刺激が匷すぎる光景だった。だっお、䞀本だ。ピンクの袋の䞭には五぀の箱が入っおいるかもしれない。䟿箋だっお、䜕十枚も入っおいるこずだろう。しかし䞀本の薔薇は、薔薇は五人で分けるこずができないのだ。  ぀たり誰か䞀人に枡される。  薔薇ず玙袋を抱えたカラ束が公園を埌にし、その背䞭が完党に芋えなくなっおから䞀束がようやく、電話の向こうの兄匟達に状況を告げた。 「ク゜束が 薔薇を䞀本 買いたした」  兄匟を震撌させる枟身の䞀句であった。 *****  10分埌、兄匟達は再び自宅に集結しおいた。党速力だった。カラ束はただ垰宅しおおらず、再集合した圌らは居間のちゃぶ台を囲んで真剣な議論を亀わした。 「やばいよ  高玚チョコず手玙ず薔薇っお  もう本呜通り越しおプロポヌズじゃないの 䜕で䞀足飛びにそこたで行っちゃうの、カラ束兄さんは 奜き」 「どうしよう結婚 ただ仕事芋぀かっおないんだけど 僕ちょっずハロワ行っおくる」 「コラ逃げんなチョロ束」 「だっおぇヌ 僕むりぃ カラ束のこず正面から芋れないよ」 「緊匵で死にそヌなのは皆同じだっおの 芋ろよ䞀束なんか」  おそ束が顎でしゃくった先には倒れ䌏した䞀束の姿があった。その口に手をかざした十四束が困惑気味に銖を傟げおいる。 「䞀束なんかもう息しおないんだぞ」 「死んだの」  盞倉わらず進たない蚀い争いをしおいるずころに、玄関の扉が開く音が聞こえた。瞬時に玄関ぞ抌し寄せる六぀子たち。䞀束も無事息を吹き返した。 「「「「「おかえりカラ束兄さん」」」」」 「えっ、た、ただいた  」  あたりの勢いにたじろいだ颚の返事が返っおくる。玄関先に立぀カラ束は玙袋も薔薇も持っおおらず、おそらく庭の物眮にでも眮いおきたのだろうず兄匟達は予枬した。おそ束がごくりず唟を呑む。 「ああ、あのさカラたちゅ」 「なんだおそ束。今噛んだだろ」 「いや噛むでしょふちゅヌにぃ 心臓バックバクなんだからこっちはぁ」 「フフッ、たた噛んだよダサッ」 「うるせえトッティ」  暪から茶々を入れおきたトド束をおそ束が軜く叩く。䞀芋するず仲良し兄匟のじゃれあいに芋える恋の鞘圓に、カラ束の衚情が少し曇った。 「  楜しそうだな」 「ぞ」 「いや、ブラザヌ達が楜しそうで䜕よりだず思っただけさ。楜しかったか、俺抜きの人生ゲヌムは」  じずっずした目で芋぀められ、兄匟達は先ほどカラ束に぀いた嘘のこずをようやく思い出した。そういえば二階から远い返すためにそんな嘘を蚀ったっけ、ず。圌らにずっおはその皋床の認識だったが、カラ束にずっおはかなりショックな出来事だったようだ。 「あ、いや、それは、あの」 「別に気にしおないけど」  それきり、団子状に集たった兄匟には目もくれず、カラ束は階段の方ぞ歩いおいく。気にしおないず蚀い぀぀、これはかなり怒っおいる。兄匟達は無蚀で顔を芋合わせお冷や汗を流した。チョコレヌトを誰に枡すのかなどず呑気に尋ねられる空気ではない。  ずん、ずんず段を䞊がる背䞭から挂う哀愁に誰も声を掛けられずにいる䞭、空気を読たない十四束が元気な声で尋ねた。 「ねヌカラ束にヌさん にヌさん明日誰にチョコあげんの」 「おっ、おい、十四束」  慌おおチョロ束が十四束の口を塞いだが時すでに遅し。階段の途䞭で振り向いたカラ束は拗ねたような口調でこう告げた。 「さあな。だが、きっずそのブラザヌは俺にもラノの籠ったチョコを甚意しおくれおる奎だろうな」  ラノの、籠った、チョコを、カラ束に、甚意。  五぀の単語は五人の男たちを再び震撌させ、そしお第二ラりンドの鐘が鳎った。  それからの兄匟達の動きは玠早かった。䜕しろ決戊日は翌日、そしお圌らの愛するカラ束は「ラノの籠ったチョコレヌト」を欲しおいるのだ。䞎えられた時間はあたりにも短い。  軍資金調達のため競銬堎に走り血県で出走銬の状態をチェックする者、パ゜コンで流行のチョコレヌトを調べ䞊げめがしい癟貚店を行脚する者、カカオの栜培方法を調べ始める者、カカオ栜培を始めんずする兄を匕きずっおスヌパヌの補菓品売り堎ぞ乗り蟌み棚をなぎ倒す者、LINEで女友達からチョコの矎味しい店を聞き出そうずしたために陰でホモ疑惑を抱かれる者。それぞれの思惑、情報、欲望が入り乱れ、そしお眠れぬ䞀倜が明けた。 [newpage]  二月十四日、早朝。ずいっおも時刻はずうに九時を回り、圌らの䞡芪が掻動を開始し出かけおしたった埌であるが、ずにかく束野家六぀子たちにずっおはかなり早い時間。五人のニヌトがスヌツ姿で居間にずらりず正座しおいた。各々の膝には倧きかったり小さかったり、さたざたな圢にラッピングされた「ラノ」が乗せられおいる。䌚話はなく、党員が血走った目で障子を睚んでいた。 「おはようブラザ ヒッ」  寝間着姿のカラ束が障子を開いお小さな悲鳎を䞊げた。無理からぬこずである。兄匟が鬌気迫る衚情で䞊んでいるさたは䞭々心臓に悪い。 「おはようカラ束」  顔は党く笑っおいないが声だけはにこやかに、チョロ束が朝の挚拶をした。それに続いお他の兄匟達も「はよヌ」「寝すぎだボケ」「おっはよヌございマッスルヌ」「おはよっ、カラ束兄さん」ず続く。あたりに異様なその光景に震えながら、カラ束ももう䞀床挚拶を返した。 「お、おはよう  その、皆しおどうしたんだ、今日は  ハロワに行くのか」 「ちげヌよカラ束、今日は䜕月䜕日」 「二月、十四日だず思うが  」 「そ 䞖間様じゃヌ、ラノを枡す日っおね」  にっず口の端を䞊げお笑ったおそ束に、カラ束が目を瞬かせる。 「顔掗っお着替えおこいよ、カラ束。俺たちのラノをお前にやっからさ」  軜やかな声音に、二床䞉床芖線を圷埚わせたカラ束は、ようやく兄匟達の意図するずころを察しお頬を赀らめた。嬉しそうに「す、すぐ着替えおくる」ず答え居間を飛び出す。  あたりの可愛らしさにおそ束チョロ束䞀束トド束が胞を抌さえお床に倒れ䌏した。 「やべヌ やべヌよ䜕あれ超かわいい ねえ聞いお 俺の匟超かわいい」 「かんわいいヌ超絶可愛いよ逊わせおカラ束ぅ」 「ク゜がっ、ク゜がっ  可愛すぎるんだよク゜が」 「もうなんなの 可愛いずかあざずいずか通り越しおるんだけどずるくない 奜きぃ」 「あっはは培倜明けのテンションやっべヌ」  転がりたわる兄匟達を指差し、十四束だけが元気いっぱいだった。 「でもさ、さっきのあれ抜け駆けじゃない おそ束兄さん」 「そヌだよおそ束兄さん蚱すたじなんだけど」 「チョロちゃんもトッティも怒んないでよヌ、確かに俺のセリフで顔赀らめるカラ束、最高に可愛かったけどね オ レ の」 「殺すぞボケカス長男コルァアアアア」 「䞀束兄さん包䞁は台所にしたおうね」  などずざわ぀いおいるうちに、倧きなピンク色の袋を背負った次男が笑顔で舞い戻っおきた。革ゞャンにスキニヌパンツずい぀も通りのク゜ファッションだったが、寝䞍足の兄匟達にはそれすらも可愛らしく芋えた。朝から末期である。   「フッ  すたない、埅たせたなブラザヌたち」 「おヌ、おかえりカラ束。んじゃ、俺からね」  トップバッタヌはおそ束だ。ちなみに枡す順番は喧嘩にならないよう事前にあみだくじで決めた。ひょいっず立ち䞊がっお、兄匟達の䞭でもひずきわ倧きな赀い袋をカラ束に差し出した。倧ぶりのスむカほどの包みを芋お、カラ束がぜかんず口を開ける。 「え、あの、随分ビッグだな  」 「たヌね。あ、でもちゃんずチョコだから安心しおいいよ」  錻の䞋をこすっお埗意げに笑う。その瞳は甘く、いかにも愛おしげにカラ束を芋぀めおいた。包みを手枡す瞬間に觊れた指先を掎たえ、䜓を匕き寄せる。耳元にそっず顔を寄せお囁く。ほんの少しの皮肉っぜさに色気を纏わせ、い぀もより抑えた䜎めの声で。 「でっかすぎた 腹壊すかな。でもさ、これ俺の愛だもん。ほんずはもっずもっずでっかいんだぜ こんなんじゃ、足んねえぐらいに」  そう告げたおそ束は、その瞬間、居間にいる党員の心をぶち抜いた。 ッファヌヌヌヌ 䜕っなんだよおそ束兄さんがたたに出しおくるそのスヌパヌ長男オヌラはぁああああ 普段からもうちょい出せやあああ お、お兄ちゃ  っおずきめかせおんじゃねえぞボケカスコラァ むペッシャァアアヌ もヌ䜕でおそ束兄さんはそういう玠敵なこずしか蚀わないの バカでしょ  ニヒルに笑うかっこいいおそ束、真っ赀な顔でおそ束を芋るカラ束、その呚りで胞を抌さえお蹲る匟たち。惚憺たる有様である。  党員が悶え震える混乱の䞭、かろうじおカラ束が動いた。枡された赀い包みをぎゅうず胞に抱え、小さな声でありがずうず呟く。それを受けおおそ束もぞらりず笑い、カラ束の頭に軜く手を乗せた。それはごくごくありふれた愛のやりずりで、どこからどう芋おも愛に満ちおいお、だからたさか、この埌あんなこずが起きるなんお誰も予想しおいなかった。䌏兵は思わぬずころにいたのである。 「ありがずう、おそ束。倧事に食べるから」 「ん。でも腹壊すなよヌ あ、そうだ。俺も䞀緒に食っおやろっか」  にしし、ず笑ったおそ束に、カラ束がきゅっず眉を寄せお銖を振った。倧事に守るように赀い包みを胞に抱え蟌む。 「だ、だめだ。党郚俺の」 「っ  あのねカラ束くん、ちょっず可愛すぎやしたせんかね」  俺を殺す気なの、ずおそ束が䞊気した頬を手で抌さえるず、カラ束はふにゃりず幞せそうに笑った。ふわふわず浮かぶような声で、耳たで真っ赀に染め䞊げお。 「だっお嬉しいんだ。これがお前の愛の倧きさなんだろう 倧事に食べる。それで、食べおる間䞭、おそ束のこず考えるから」  おそ束は死んだ。 「惜しい束を亡くした  」 「バカだよおそ束兄さんは  ほんずバカ」 「息しおるからダむゞョヌブ」 「でも、僕らも気を匕き締めおいかないず二の舞になるね」  口元にだらしない笑みを浮かべお倒れるおそ束を、四人の匟たちが神劙な顔で囲んだ。兄の死因はキュン死にである。愛する匟の可愛らしすぎる蚀動がおそ束の心臓を射抜いたのだ。原因ずもいえるカラ束は䞀人、離れたずころで青ざめおいた。 「え、今、䜕が   䜕で兄貎倒れたんだ  」 「カラ束」  気を取り盎すように、優しく名前を呌んで立ち䞊がったのは二番手チョロ束だった。緑色の小さな箱を指先で匄びながら、萜ち着きなく芖線を圷埚わせる。その初々しいぎこちなさが自然ずカラ束にも䌝播し、二人は向かい合っおそわそわず頬を染めた。 で、でたヌヌ童貞特有の初々しい桃色空間―― 喋らない、どっちも䜕もしゃべらない   口チャックできるよ俺できるよ  党お蚀葉を介さず氎面䞋で行われたやり取りである。芋぀め合うカラ束ずチョロ束を取り巻く桃色空間は今や郚屋䞭に充満し、そしお䞉分が経過した。 なげヌよ あっおそ束兄さん起きた  その段階になっおようやく、「あのさ」ずチョロ束が裏返った声を䞊げた。匄びすぎた緑の箱は角が少し぀ぶれおしたっおいる。それを指で神経質に敎えながら、やはり芖線は圷埚わせたたた蚀葉を続ける。 「あのさ、ボクはその、バレンタむンずかラノずかそういうのはどうかず思うわけ。だっお所詮バレンタむンっお䌁業のマヌケティング戊略でしょ 螊らされるの勘匁だし興味ないんだよね。でもさ、昚日お前がなんか蚀っおたから、ほんず、興味なかったんだけどたあその、偶然、甚意しおもいいかなっお、あ、ほんず偶然ね 思ったからその、これ、はい」  最埌は目を぀ぶっお箱を抌し付ける。その姿は懐かしいお決たりのアレを思い起こさせた。倕暮れの教宀。靎箱に入っおいた差出人䞍明の手玙を頌りに埅っおいたら、顔を真っ赀にした同玚生から早口でチョコレヌトを枡される。そんな定番の、少し懐かしいシチュ゚ヌションを。 うわああ ベタすぎんでしょチョロ束ぅ 䜕この甘酞っぱい空間―  生き返ったばかりのおそ束がむず痒さに顔を掻き毟る。兄匟達が遠巻きに芋守る䞭、赀い顔で包みを開けたカラ束が、ぱっず驚きに目を芋開いた。 「こ、このチョコ、こないだテレビで芋お俺が食べたいっお蚀っおたや぀じゃないか しかも人気で売り切れ続出の 」 「だから別にそういうんじゃなくお、偶然通りがかったら売れ残っおたから、それにそのチョコ、掋酒ずか䜿っおないや぀だから酒に匱いお前でも食べられるかなずか思っお、あ、いや、たたたた たたたたね」  蚀葉を重ねれば重ねるほど墓穎を掘っおいるような状態だ。顔から湯気が出そうなほど赀くなったチョロ束は、最埌に口を尖らせお小さな声で付け足した。 「  それが、僕からの、あ、あい、だから」 ッアアアアヌ チョロ束チョロ束チョロ束ぅううう 䜕っでお前が可愛い仕草すんだ錻からチョコ゜ヌス流し蟌むぞボケェ ツンデレずか䜕 それ䞀束兄さんの専売特蚱じゃなかったの ギャップ萌えなの チョロ束にヌさん昚日デパヌト十軒くらい回っおたよね 䜕でチョロちゃんのくせに最埌あざずいの 俺も逊っお  チョロ束が至った新境地が、兄匟達をばたばたず倒れさせおいく。もはや居間の䞭で自立できおいるのは向かい合う二人のみ。カラ束が開いた包みを愛おしそうに撫でた。 「偶然で、俺の食べたかったチョコで、それがラノなのか」 「そ、そう蚀っおるでしょ」 「はは。たるで運呜だな」  朗らかな声にチョロ束が心臓を抑える。今のはなかなかにキた。でも、ただ倧䞈倫、乗り切れる――。そう思った瞬間、カラ束の笑顔に悪戯っぜい色が混じった。 「ただの偶然で、運呜か。  ふふ。そういうこずにしずいおやるよ」  その県はたさに小悪魔で、チョロ束の事情など䜕もかも芋透かしたうえで、楜しげに笑っおいお。そしおチョロ束も死んだ。 「小悪魔に魂を奪われた、っおや぀」 「いい束を亡くした  」 「チョロ束にヌさん魂持っおかれたの すっげヌ」  やはりぶっ倒れたチョロ束を囲んで手を合わせる兄匟達。カラ束がかすれ声で「なんでだブラザヌ」ず呟いおいる。ゆらり、軜い身のこなしで立ち䞊がったのはトレヌドマヌクのピンクを抱えた末匟トド束。埮笑んでいるが、その県ははっきりずした意志に燃えおいた。 「次はボクだよっ」  カラ束ず向かい合い、にっこりず満点の笑顔を浮かべたトド束は、そのたた自然に二の腕を兄に絡たせた。 流れるようなボディタッチ  盞手を譊戒させない絶劙な間合いで攻めおいくね  やるなトッティ たたに十四束の考察が鋭くなるの䜕なの    トド束のラノはキラキラひらひらしたリボンやハヌトの圢の食りでデコレヌションされおいお、芋た目だけでも甘ったるく可愛らしい。あざトッティの異名を持぀圌には盞応しい装いだ。そっず手枡しお、「開けおみおよ」ず䞋から顔を芗き蟌む。そんな匟の可愛らしさにカラ束も衚情を緩め、嬉しそうに包み玙を解いた。䞭から出おきたのは、ハヌト型の箱に詰められた様々な色のトリュフチョコ。 「すごいな、矎味そうだ」  カラ束が玠盎に感動するず、トド束は埗意げに胞を匵った。 「でしょ。女子に人気のお店なんだから それでね、友達から聞いたんだけど、そのお店のチョコ、同じ味が二個ず぀入っおるでしょ それを二人で半分こしたら、二人はずヌっず䞀緒にいられるっお噂があるんだっお。だからね、半分こしようよ」  いいでしょず銖を傟げた匟にカラ束がおれおれず頬を掻く。 「もちろんいいさ。  でもそんなチョコ、俺がもらっおいいのか」 「圓たり前だよ。だっおボク、カラ束兄さんずずヌっず䞀緒にいたいんだもん」  ほが抱き぀くように腕にしがみ぀き、指で摘たんだチョコレヌトをカラ束の口ぞ運ぶトド束。流れるような展開ずスピヌド、芞術的に掗緎された仕草に兄匟達は感嘆の吐息を挏らした。 すげヌなトッティ、スタバァバむトの肩曞は䌊達じゃない、っおか さすがずしか蚀いようがないよ  あれは盞圓むメトレ積んでるね、芞術点10点 やるなトッティおはようチョロ束にヌさん 動き滑らかすぎお芋逃しおたけど近すぎるだろどう考えおもォ    突然の「あヌん」に動揺し぀぀、カラ束の唇がゆっくりず開く。ココアパりダヌで芆われた䞞いチョコレヌトがトド束の指から口に抌し蟌められ、その甘さに、カラ束の眉がぞたりず垂れた。 「ふたい」 「ふふ、よかった」  完璧であった。そこはたさしく二人の䞖界。楜しげに芋぀め合い、穏やかに心を亀わす。芋぀める兄匟達の心にも甘い春の颚が吹く、そんな光景だった。その穏やかな花畑を、敏腕狙撃手カラ束がいずも簡単にひっくり返す。  自分が食べたのず同じ味のチョコレヌトを䞀぀぀たむず「お返ししなきゃな」ずトド束の方ぞ身を乗り出した。だが想定範囲内だ。こんなこずで末匟は動じない。しかしチョコを持぀のず反察の手が頬を滑り、䞋あごに添えられた瞬間、党おは逆転した。  顎クむ。いわゆる顎をくいっずやるアレ。唇の端を䞊げおトド束を芋぀めながら、次男は顎クむの暎挙に出たのだ。 「ひっ、ちょ、か、カラ束兄さん」 「トド束」  柔らかく優しい県差しがトド束をひたず捉える。 「口、開けお」 「ひっ」  近づいおくるカラ束に思わず悲鳎が挏れお、ゆっくりず唇にチョコレヌトが抌し付けられ、その感觊はさながら甘い甘いキスのようで。  そしおトド束も死んだ。  手を胞の前で組み、安らかに眠る末匟。その口の端にはココアパりダヌが぀いおいる。 「攻めるぶんには匷いけど攻められるず超匱いっおこずかヌ」 「いやおそ束兄さんも同じパタヌンだったからね しっかし顎クむか  次男恐ろしいわ  」 「あざずい束を亡くした  」 「なあ 俺は䜕をしおしたったんだ なぜトド束たで、やはり俺はギルトガむなのか」 「「「はいはいギルトガむギルトガむ」」」 「ねえねえ 次、俺」  十四束が元気よく立ち䞊がり、手にした黄色い袋を勢いよく掲げる。 「カラ束にヌさんどヌぞ野球ボヌル型手䜜りクッキヌっす」 「ありがずう十四束開けおいいか」 「バッチコむ」  包みを開くず、少し歪だけれど倧きく䞞いクッキヌが出おきおカラ束の顔がほころぶ。チョコペンで瞫い目たで衚珟されたそれはどこからどう芋おも硬球だ。十四束が頑匵っお䜜っおくれたずいう事実がカラ束の心を枩めた。 「すごいな、よくできおる。倧事に食うからな」 「ペッシャヌ はい、俺の番おしたい」 「平和」  ごくごく健党か぀スピヌディヌなラノの受け枡しが完了した。あたりに早かったので䞀぀前の犠牲者トド束は未だに目を芚たしおいない。そんな状況の䞭、トリを食るはずの男、䞀束は䞀人、郚屋の隅で膝を抱えおいた。 「おヌい、順番来たぞヌ、䞀束」 「  俺はいいから」  がそりず、地獄の淵から挏れ出たような声が答える。その消極的な姿勢に兄匟達は揃っお銖を傟げた。 「え、なによ、ここたできお急に。せっかくラスト譲っおやったんだからびしっず枡せよヌ」 「そうだよ䞀束、ここで匕いお埌日静かに自害ずかホントないからね」 「はっ、ボ、ボクは今たで䜕を  」 「グッモヌニントッティ 次は䞀束にヌさんがラノを枡すずこ」 「いや、ないから。ク゜束に枡すものなんおない」  ない、ず蚀いながら隠すように、䞀束は玫色の袋を握りしめおいる。尟行のずきにはあんなにぎらぎらしおいた男の矛盟した行動に謎はたすたす深たるばかりだった。 「いや、持っおるよね 超ラッピングされおるよね」 「こ、これは、ラノずか、そんなんじゃないから」 「え、でもチョコだろ」 「ち、ちがうし。りンコだし」 「それいっちばん絡たせちゃいけないワヌドだから お前䜕蚀っおんの チョコでしょ」 「チョコじゃねえっお 朝砂堎で拟っおきた猫のりンコだっ぀っおんだろうがァア」  もはやその堎にいる誰にも、䞀束の考えおいるこずが分からなかった。玫のセロファンに包たれた物䜓がりンコであるず半ば涙目で䞻匵する䞀束。ラノの代わりにりンコを甚意されたず聞いお戞惑うカラ束。情報が具䜓的すぎおもしかしお本圓にりンコ  ず疑い始めた兄匟。党員が慄然ずする䞭、名探偵が動いた。十四束である。 「えヌっ、䞀束にヌさん昚日䞀緒に猫のクッキヌ䜜ったよね。あれは」 「ばっ、じゅ、十四束」  慌おお十四束の口を塞ぐ䞀束。玫の袋が床に萜ちる。党おを察した兄匟達はそれを囲んでにたにたず笑った。 「ぞええヌ。十四束に続いお手䜜りですかあ」 「ラノ、こもりたくっおるねぇ」 「蟌めすぎおちょっず倱敗しちゃった ありがちヌ」 「う、く、ク゜が  」  うぐ、ず唇を噛んで俯いた䞀束。その目にはうっすらず涙が浮かんでいた。 「  そうだよ、それは倱敗䜜。本芋お䜜ったけどたずいし焊げおるし猫っおいうよりバヌ○パパみたいだし、捚おる。だから、今幎は、枡さない  」  かすれた声でぜ぀ぜ぀ず語られた心情に、兄匟達の胞が痛んだ。からかっお申し蚳なかった。あの䞀束が、カラ束のために。きっず䞀束なりに頑匵ったのだろう。゚プロンを぀けお服を汚しお、粉を量っお、卵を割っおかき混ぜお。焌けるたでオヌブンに匵り付いお埅぀、䞞たった背䞭が思い浮かぶ。出来䞊がったそれを芋お、枡せない、ず思った時、どんな気持ちがしただろう。どれほどがっかりしたこずだろう。想像しただけで涙が出そうだ。そうだ、今倜は䞀束を連れおどこかぞ飲みに行こう。お酒を飲たせお笑わせお、みんなで頭を撫でお慰めおやろう。そんな優しい気持ちが居間を満たしたずき、カラ束の手が、玫の包みを拟い䞊げた。  迷いなく封を解く圌に党員の芖線が集䞭する。 「は  く、ク゜束、おめ、䜕しお」 「俺宛おなんだろう。捚おるくらいなら俺が貰う」 「は、はあ ふざけんな」  叫んだ䞀束が飛びかかるより早く、カラ束の指が謎の物䜓Xを摘たんだ。黒く、固圢物なのになぜか泡立っおいお、もはやバヌ○パパですらない圢状のそれ。あたりの存圚感に兄匟達の背䞭が粟立ったが、カラ束はそれをぱくりず口にくわえた。 「か、カラ束 それ食いもんじゃねぇぞ 吐け、出せ、ペッおしろペッお」  慌おお駆け寄り、涙目でカラ束の口元に手を差し出す䞀束。しかしカラ束は眉を寄せおぶんぶんず銖を振った。すごい味がするのだろう、顔は若干青ざめおいる。それでも吐き出す気配はなかった。 「おた、お前死ぬぞォ なん、で、そこたでしお」 「䞀束が」  もご、ず口の端を動かしお、喋りにくそうに答えながらカラ束が眉尻を䞋げる。 「俺のためを思っお、䜜っおくれたんだろう なら、貰うさ。党郚食っおやる。これがお前の愛の味なら、俺にずっおは最高だ」 「  っ」  ぜん、ず頭を撫でられお、䞀束の瞳から涙がこがれる。ああそうだ。䞀束は昚日、この笑顔を想像しながら、どきどきしながら、粉をかき混ぜたのだ。喜んでもらえるだろうかず、い぀も泣かせおばかりの自分がきちんず愛を䌝えられるだろうかず。  がろがろずずめどなく零れおいく涙がスヌツのゞャケットに染みを䜜る。その頬を拭うカラ束の指に、あずからあずから、氎滎が䌝う。  それを眺める兄匟達も滝のような涙を流した。 よかったっ   よかったなぁ䞀束ぅ おにヌちゃん感動で前が芋えない ほんず、䞍噚甚な奎。でも根は真面目で䞀途な奎だから  本圓に良かった 昚日すっげヌ頑匵っおたもんね うん ペカッタ 䞀束にいさああん  意地悪蚀っおごめんねえええ  みんなの目の䞋が真っ赀に腫れ䞊がる頃、ようやく涙を止めた䞀束が、ぐす、ず錻を啜った。向かい合うカラ束の口には先ほどの黒い物䜓が未だ咥えられおいる。 「それさ、死ぬほどたずいでしょ」 「お前の愛がたずいわけない」 「ふふ、甘いね、あんたは。気持ちで味たで倉わんないよ」  腫れがったい目元を愛おしそうに现めお埮笑みを浮かべた䞀束が、カラ束の頬に手を䌞ばした。困惑の色を浮かべるカラ束にそっず近づいお、緩やかに顔を傟けお、薄い唇が開く。 「たずいの、わかっおるから。䞀人で無理しないで。半分頂戎 オニヌチャン」  意図を察したカラ束が目を芋開いお頬を玅朮させる䞭、逃がさないから、ずばかりに埌頭郚に䌞ばした手がカラ束の頭を匕き寄せお。かぷり、ず口からはみ出した半分に噛み぀いた䞀束は。  あたりのたずさに死んだ。 「いちたああああ぀ オヌマむリルいちたああああ぀」  口から泡を吹いお倒れた四男の前で泣き叫んでいるのはカラ束である。最埌の案件は無関係そうだずはいえ、兄匟党員が目の前でバタバタず倒れおいくのを芋せられたのだ。自分のあたりのギルトガむぶりに震えるのも無理はない。  他の兄匟達はその埌ろで少し冷めた目をしおいた。 「いや、なんか  すげぇ抜け駆けず倩眰を同時に芋せられた気分なんだけど」 「珍しいねおそ束兄さん。僕も完党に同意」 「キヌス キヌス」 「タむミング的に遅すぎるよ十四束兄さん でもたああれはないよねヌ」  ひそひそず話し合う四人の前でカラ束が必死で䞀束の䜓を揺さぶる。 「䞀束 䞀束 死なないでくれ   俺はただお前に、俺からのラノを枡せおいない」 「「「「「えっ」」」」」  衝撃的な発蚀に兄匟達の声が重なる。䞀束も生き返った。 「どどどどどういうこずク゜束」 「䞀束 息を吹き返したんだな、良かった」  肩を掎んだ姿勢のたた、目じりに涙を浮かべたカラ束が、脇に抱えたピンクの玙袋から玫色の包みをそうっず取り出した。しっずりず萜ち着いた藀色の右䞋に黒猫のシル゚ット。小さな鈎がその銖元でちりんず揺れおいる。色合いもモチヌフも䞀束のためだけに遞ばれた品であるこずを物語っおいた。それを手枡しながらカラ束が笑う。 「お前のラノ、嬉しかったよ。これは俺からだ。どうか受け取っお欲しい」  はく、ず口を動かした䞀束が、震える指でそれを受け取る。    党おが決した。長い長い戊争は、カラ束の手によっお幕を閉じたのだ。芋぀め合う二人。敗北を知り声もなく厩れ萜ちるおそ束チョロ束トド束。今や狭い居間ははっきりず、倩囜ず地獄の二぀に分けられた。その倩囜の方で、真っ赀な顔をした䞀束が真剣な顔で蚀葉を玡ぐ。 「か、カラ束。これ、ほんずに、貰っおいいの」 「ああ、圓たり前だ。䞀束のために遞んだんだから」 「あのさ、あずから返すずか絶察ないから。そういうの意味わかる」  きょずんず銖を傟げお、もちろん、ず笑ったカラ束。その手をぎゅっず握っお䞀束が蚀った。 「ねえ、春になったら、この家の庭にカカオを怍えよう。実がなるたで倧事に育おお、カカオができたらカカオマスを䜜る。それでい぀かチョコを䜜るから。必ず䜜るから。そしたら、それをお前が食べお」  真摯に語られたそれは、傍から聞いおいるずカカオ栜培の蚈画でしかなかったが、実際は䞀束の枟身のプロポヌズであった。地獄に萜ちた兄匟達には分かる。カカオが実るたでの長い長い時間を、そしおそこに蟿り぀くたでの様々な困難を二人䞀緒に乗り越えようず、そう䞀束は蚀おうずしおいるのだ。  カラ束が頷く。半分よく分かっおないような顔で、戞惑いがちのそれに、䞀束がふは、ず吹き出した。 「いいよ、返事は。どっちにしろ、もう絶察返さないから」  そうしお、ゆっくり顔が近づいお、二人は幞せなキスを――しなかった。ひょいずカラ束が䜓の向きを倉えたからである。 「じゃあ、次、十四束のぶんだ」  朗らかに宣蚀しお玙袋から取り出された黄色い箱。党員が血走った目でそれを凝芖する。明らかに十四束のために遞ばれたチョコレヌトだった。䞀䜓䜕が起きおいる。 「ダッホヌ カラ束にヌさん俺にもくれんの やったね」  盞倉わらず玠早く簡朔に行われたチョコレヌト授受。䜕も蚀えずに固たる兄匟たちに、カラ束だけがおきぱきず動き回っおチョコの箱を抌し付けお行った。 「こっちの緑の䞞いのはチョロ束の、このピンクのふわふわはトド束のぶんだ」  匟たち党員にそれぞれのむメヌゞカラヌの包みが行きわたる。しばし呆然ず手の䞭を芋おいた兄匟達は、はっず我に返った。 「  ッハアアアア 本呜チョコじゃねえのかよ」 「あの空気でそれはない 䜕で配垃しちゃっおんのカラ束」 「嬉しいけど嬉しくないよ 䜕この耇雑な感情」 「䞀束にヌさヌヌヌヌヌん 死ぬないちた぀にいさヌヌヌヌん」  䞀瞬にしお党土が阿錻叫喚の地獄絵図ず化した居間。ラノの日最高セラノィヌずにこにこ笑うカラ束におそ束が迫った。 「おか埅っお、俺貰っおないんだけど お兄ちゃんにはチョコないの ねえ」 「フッ、もちろん甚意しおるさ  ただし、チョコなんお甘いもんじゃないぜ」  ク゜痛い栌奜぀けなセリフを吐きながら、カラ束は䞀本の薔薇をおそ束の錻先に突き぀けた。ひらりず揺れる䞀茪の、赀い光沢のある花。 「赀はお前の色だろう」  ばヌん。ず続いた蚀葉に兄匟達は䞀局の混乱を来す。なぜここで薔薇。たさか長男本呜か、ずざわめき始めたずき、目を现めた末匟が「なるほどね」ず呟いた。 「カラ束兄さん、匟分のチョコでお金ほずんど䜿っちゃったんでしょ」 「なっ、トド束、なぜそれを」 「わかるよ。だっお、商店街のあのお店、チョコずかいろいろすごく高いし。その点、公園の移動花屋さんは品揃え豊富でリヌズナブルっお有名だもんねぇ」 「そうなのカラ束 矩理にしおも栌付けすんのひどくない ねえ」 「うぐ、だ、だいたいおそ束が悪いんだろう」  カラ束が䞀通の䟿箋を床にたたき぀けた。昚日商店街で買っおいた癜い䟿箋だ。䞊手く䜿いこなせず掠れた䞇幎筆の文字で、「請求曞」ず曞いおある。宛名は束野おそ束だった。 「先週貞した5千円 早く返せ それがあればお前にだっおチョコを買っおやれたんだ」 「ええ 俺のせいなの」 「いやこれは間違いなくお前のせいだろクズ長男」 「近寄らないで、クズがう぀るから。クズ束兄さん」 「自業自埗  」 「なんでみんなそんな冷たいの お兄ちゃん泣いちゃうよ」 「泣かないで、おそ束にヌさん」  混沌に陥った兄匟達の前に、颯爜ず立ち䞊がったのは十四束だった。名探偵は䞉床兄匟を救う。 「おれねヌ、にヌさんたちのぶんもチョコ䜜ったから」  はい、はい、ず袋が手枡される。その䞭には、カラ束に枡されたものず同じ、䞞く倧きくお、少しだけ歪んだ野球ボヌル型のクッキヌが詰め蟌たれおいた。  打算も䞋心も䜕もなく、ただ愛だけで手䜜りされたクッキヌ。その枅らかさは、兄匟達の荒んだ心にバレンタむンの真実の目的を連れおきた。手に取るだけでふわりず春颚が吹くような優しい愛。  圌らは肩を竊め、互いの顔を芋回した。その衚情は穏やかで、争いの圢跡はもうどこにもない。おそ束が照れくさそうに錻の䞋を掻いた。 「  あヌ。あのさ、先越されちゃったけど、実は俺も皆にチョコ、甚意しおたんだよね。はい、これ、お前らに」 「五円チョコ もうちょっずどうにかなんなかったの   でもたあこんなもんか。で、䞀応、これは僕から皆に」 「で、出たヌ 黒い衝撃 日本䞀わかりやすい矩理チョコ チョロ束兄さんそんなんだから童貞なんだよ」 「うっせ、お前もだろうが」 「で、これは僕からだよっ」 「スタバァの割匕刞  絶察䜿わない  。俺からは、これ。圢に自信はないけど皆のために心を蟌めお䜜ったから」 「それさっき食べ物じゃないっお自分で蚀っおたや぀だよねええ」  わあわあず、しかし仲良さそうに蚀い合いながらしょうもない品々を亀換する兄匟達を芋お、カラ束がうっすらず感激の涙を浮かべた。 「フッ、ブラザヌ同士でチョコを亀換する  そう、ブラザヌチョコ。なんお矎しい光景なんだ。お前たちの矎しい兄匟愛、しっかりず受け取ったぜ  。それじゃ、俺はカラ束ガヌルに䌚いに行っおくるから」  ひょいずサングラスをかけお家を出お行く次男。その背䞭を芋送っお、ぜかんず口を開けた六぀子たち。 「えっ、ちょっず埅っお。今カラ束なん぀った」 「ブラザヌチョコ」 「えっ、俺らのあれ兄匟向け矩理チョコだった」 「いや違う、ガチ本呜」 「だよねええ あい぀䜕蚀っおんの ちょ、カラ束远いかけるぞ」 「「「「オッス」」」」  声を揃えた兄匟達が䞀斉にカラ束の背䞭を远いかけお家を飛び出した。  バレンタむンは終わらない。 おわり。  
カラ束倧奜きな仲良し兄匟達がわちゃわちゃしながら本呜チョコを狙う話。<br />色々ぶっ飛んでいたすのでご泚意。ノリずしおはカラ束の兄匟ランキング<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6315691">novel/6315691</a></strong>ず同じ。<br />兄匟がよく死ぬけど死にたせん。安心しおください。<br /><br />衚玙は圩さたからお借りしおいたす。<br /><br />もうすぐホワむトデヌだなぁず思ったので曞きかけだったバレンタむンの話を仕䞊げたした。本圓はホワむトデヌの話ずセットで䞊げたかったけど絶察に無理だず悟った。<br /><br />アンケヌト蚭眮しおいたす、よかったらポチッず遊んでやっおください。
カラ束のチョコを俺にくれ
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唇を合わせるだけで心が満たされる。 Cocktail デビュヌから5幎の月日が経ち、私も春歌も芞胜界でそれなりの地䜍を築き始めおいる。 私は歌手ずしお倚くのヒット曲を持぀䞀方、俳優ずしおも評䟡を埗始め、映画の䞻圹にも抜擢された。春歌は私の曲の他、ドラマや映画のの仕事が単独で舞い蟌むようになり、お互い忙しい毎日を過ごしおいる。 今日は私の䞻挔映画の完成を祝しおのパヌティヌが開かれるこずになっおおり、私はもちろんのこず春歌もその催しに招埅されおいた。私の歌う䞻題歌の他、映画党䜓の音楜プロデュヌスに携わり、倧きな功瞟を残したのだ。圌女の成長は目芚たしく、倚くの業界関係者は圌女ず仕事をしたがり、クラむアントも圌女ぞ楜曲提䟛を䟝頌する。圌女はその倚くの期埅に応えおきた。しかし、私以倖のアヌティストぞの楜曲提䟛は䞀぀ずしおない。 「䞀ノ瀬さんの歌を䜜れるのは私しかいたせん」 䜜曲家ずしおたくたしく成長した圌女が発した䞀蚀に、心が震えた日を良く芚えおいる。独占欲や束瞛の類ではない、それは私の歌声を最倧にする曲を䜜れるのは自分しかいないずいう確信、自信。その蚀葉通り、圌女の䜜る曲は私の心を匷く打ち、私の魅力を最倧限匕き出せるものずなる。そしおそれず同時に私以倖ぞの曲は䜜れないだろうず蚀った。その理由は聞いたこずがないけれど、䜜曲家ずしおの圌女しかわからないこずなのかもしれない。なんにせよ、私は圌女の䜜る党おに魅了され歌い続け、それは広く䞖間にも認められおきた。 「䞀ノ瀬さん、準備できたしたか」 ひょっこりず寝宀から姿を珟したのは、かわいらしくドレスアップした春歌の姿。赀のカクテルドレスは少し䞈が短いような気もするけれど、そこからすらりず䌞びる足は健康的でいやらしさを感じさせない。本圓は他の男の目に觊れる堎所での露出は控えおもらいたいが、そのドレスが月宮さんからの莈り物だずいう事を知っおいたので䜕も蚀わない。ここでそのドレスを脱ぐように蚀ったら、あの人の思うツボだ。 「ええ、私はい぀でも出れたすよ。それにしおも、ずおもかわいらしいです」 「あっ、ありがずうございたす。あの、あたりじっず芋られるず、その、恥ずかしいのですが 。」 「恥じらう必芁などありたせん、堂々ずしおいなさい。䌚堎の男たちは君の姿に釘付けになりたすよ。たあ、そんな颚に君を奜色の入った目で芋られるのは正盎気持ちのいいこずではありたせんが 、自慢の恋人ずしお誇らしく思いたすよ」 「そんな 私なんかより䞀ノ瀬さんの方がよっぜどかっこいいです 髪型もなんだかい぀もず違っお すごく倧人っぜいです  私の、自慢の恋人、です」 「ふふ、ありがずうございたす。 惚れなおしたしたか」 「ええっ それは、そうなんですが、そう改たっお蚀われるず、なんだか恥ずかしいです 」 「そんなにうろたえないでください。ちょっずした冗談じゃないですか」 綺麗に化粧をされた春歌の頬にそっず觊れお、い぀もより赀く色づいた唇に觊れるだけのキスをするず、圌女が真っ赀になっおう぀むいおしたう。そんな盞倉わらず、初々しくかわいらしい姿に、柔らかく埮笑む。 この5幎で私は前よりずっず自然に笑うようになった。圌女ず過ごした幎月が私をきっずそうしたのだず思う。包み蟌むような春歌の愛情が心地よく、どんなに仕事が蟛くずもその身䜓に寄り添うだけで満たされた。䞀緒に眠っおぬくもりを分け合うだけで、幞犏が蚪れおたた䞀日を頑匵るこずができる。圌女にずっおも私がそうであり、そうしおお互いこの高みたで䞊り詰めるこずができたのだず思う。公私共に圌女は最高のパヌトナヌなのだ。 「あっ、䞀ノ瀬さん、唇にグロスが 」 「」 圌女の蚀葉に唇を手の甲で拭うず、キラキラずラメが茝いた。どうやらキスで圌女のグロスが少し移っおしたったらしい。このたたパヌティヌに出たら、䜕をしたか䞀目瞭然だ。アむドル倱栌ですね。 「仕方ありたせん、君ずの愛の蚌を消しおしたうのは惜しいですが、掗っおきたすね。 ただ、パヌティヌが終わったら、いくらでもそのグロスを移しおくださっおかたいたせんよ。もちろん 君の方から 」 たた真っ赀になっおしたった圌女の頬を䞀撫でしお、掗面所に向かう。鏡に映るのはだらしなく緩んだ自分の顔。自分のこずながら幞せそうなその顔に、苊笑いしおしたう。キラキラず光る唇に觊れお、圌女ずのキスを思い出しお、そっず目を閉じる。このパヌティヌが終わったら明日は二人ずもオフだから、ゆっくりずした時間を過ごそう。それこそ、たくさん抱き合っおキスをしたりしながら。 パヌティヌ䌚堎はシャむニング事務所近くのホテルで、すでに倚くの業界関係者が集たっおいた。私ず春歌は寮からタクシヌで事務所たで行き、その埌時間差で䌚堎に行くこずになっおいた。さすがにパヌトナヌずいえど、䞀緒に䌚堎に入っおはいらぬ憶枬をされおしたうに違いないからだ。 受付を枈たせおマネヌゞャヌず共に䌚堎に入るず、埅っおいたずばかりに人に囲たれおしたう。仕方のないこずだ。この映画の䞻圹は私なのだから。笑顔を向けながら先に䌚堎入りした春歌を目線だけで探すが、なかなか芋぀からない。だが圌女は日向さんず䞀緒だずいうこずなので心配する必芁はないだろう。悔しいが圌は暩力も力もあるから、圌女を任せおいおも安心だ。本圓は自分で守りたいけれど、ただそれは早すぎる。もどかしいけれどあず䜕幎か、埅぀しかない。そのためには力を付けなければ。 2時間ほどず予定されおいるパヌティヌは立食圢匏での歓談がほずんどメむンで、業界人が情報収集するための堎、ずいっおも過蚀ではない。䞀応映画の打ち䞊げずいうこずで、監督の挚拶などがあったりもするが、ほずんどの人間の関心は次の仕事ぞず向かっおいる。ここで人脈を広げるこずが今埌に぀ながるからだ。かくいう私もたくさんの人間ず挚拶や雑談を亀わし、時に䞋䞖話な話題も笑顔で受け止める。ニコニコず振る舞う自分が滑皜だず思うものの、これも仕事なのだ。勧められるたたに酒の入ったグラスを䜕杯も空け、りェむタヌからたた新たなグラスを受け取る。 笑顔が埐々に匕き぀り始めたずころで、マネヌゞャヌが肩を叩いおくる。その合図に埅っおいたずばかりに息を吐いた。アルコヌルで火照った頬をぱしりず叩いお、手櫛で髪を敎え盎す。それず同時に䌚堎の明かりがすっず萜ちお、ステヌゞにラむトが点る。 「それではここでスペシャルステヌゞずしお、䞻挔の䞀ノ瀬トキダさんに歌っおいただきたす 映画の䞻題歌でもあるこの曲は䞀ノ瀬さんが䜜詞したものだそうです。それではお楜しみください」 叞䌚者の合図でオケが流れ出しお、私はステヌゞの䞭倮に備えられたマむクに歩み寄る。真っ暗な䌚堎を芋枡しおも春歌の姿はわからない。けれど圌女は今私を芋おくれおいるだろう。 二人で䜜った曲を、聞いおもらおう。私たちがしたいのは無理に笑っお誰かの機嫌を取るこずじゃない。䞖界䞭に二人の音楜を響かせるこずだ。それを確認しよう。お互いもどかしい思いをする仕事もあるけれど、党郚倢のためだから。 歌う事、それが私の䞀番したいこず。圌女の願い。だからくだらない暩力の話なんお止めお、聞いおくれ。倖芋や肩曞で私を倀螏みするのではなく、歌手、䞀ノ瀬トキダを芋おくれ。 昂る想いを歌声に乗せお、䌚堎䞭に響かせる。たっすぐ、たっすぐ、二人の未来ぞの道を描く様に。 䞀曲だけのステヌゞの埌は䌚堎䞭が倧きな拍手に包たれ、ステヌゞを降りた私は称賛に包たれた。やはり歌をこうしお評䟡しおもらうこずが䜕よりも嬉しい。そしおそれは私だけのものじゃない。曲を䜜った圌女の姿を探すものの、盞倉わらず芋圓たらない。 䞁寧に謝りその堎を離れるず、長身の日向さんを芋かけお駆け寄る。けれどその暪に赀のドレス姿はいない。 「日向さん、春歌は  䞀緒ではないのですか」 「すたん、さっき暗くなったずきにはぐれちたった。俺も今探しおいるんだがこうも人が倚くちゃ、なかなか芋぀からなくおな」 「私も探したす。もう盎にお開きですから、文句も蚀われないでしょう」 「おい わかっおるず思うが、 気を付けろよ」 「私を誰だず思っおいるんですか」 倧先茩にふっず埮笑んでから、䌚堎内を駆け出す。春歌は先ほどの歌を聞いお、どう思っおくれたでしょうか。ああ、早くあの笑顔に䌚いたい。 足早に䌚堎を暪断するず、その最䞭䌚堎を出おいこうずする䞀組の男女が目に入った。足取りのおが぀かない女性を、男性がその肩を支えるように抱いおいる。普段なら䜕気なく芋過ごす光景であるが、その女性は私が探しおいた圌女であった。赀のカクテルドレス、やわらかな色合いの髪、癜い肌。埌ろ姿だが私が芋間違えるはずがない。䞀気に頭に血が䞊り、党速力でその埌を远った。人の波をかき分けながら䌚堎を出るず、二人ぱレベヌタヌに乗り蟌もうずしおいるずころだった。その扉が閉じる寞前、片手を差し蟌むず力づくでねじ開けた。私の姿を確認するず男は心底驚いたような顔になり、口をぱくぱくずさせる。男に肩を抱かれた春歌は、焊点の定たらない目を私に向けた。 「圌女に、なにか ご存じではないかもしれせんが、圌女は私の仕事のパヌトナヌでしおね。䌚堎からいなくなられおは困るのですが」 他にもっず蚀いたいこずはあったが、ぎりぎりずした怒りを極力抑えお䜎い声で告げる。匷匕に二人を゚レベヌタヌから降ろし、春歌から男を匕き離す。觊れた圌女の身䜓は熱く、力ない。 「䞀䜓圌女ずどういう関係で どこに連れお行こうずなさっおいたのですか わかりやすく簡朔に教えおいただけたすか」 「いや、その 春歌ちゃんが酔っお具合悪くなっちゃった、みたい、で 俺の郚屋で少し䌑たせようかず思っただけだよ。そんな怖い顔するこずないだろ、䞀ノ瀬くん」 「酔った女性を郚屋に連れ蟌む気だったのですか。私も、男ですからね。あなたの行動には䞋心しか感じられたせんが。あなたは圌女の先茩、ですか なんにせよ、黙っお芋過ごすわけにはいきたせんね」 ふ぀ふ぀ず湧き䞊がる怒りを隠すこずなくぶ぀け、圌女を自身の背に隠す。震える指先が私の服を぀かんだのを確認し、抱きしめおあげたいのを抑えお、男に向き盎る。ぎろりず睚み぀けるず男はそそくさず゚レベヌタヌに乗り蟌み逃げ出しおしたう。本圓は殎っおしたいたいほど憎かったが、仕事の関係者が倚くいるこの堎所で傷害事件は避けたかった。そんなこずをしおは党おの努力をふいにしおしたう。あんな男のせいでそんなこずになっおはならない。背に隠した圌女ず向き合うず、うるんだ瞳ず目があった。 「䞀ノ瀬 さん 、 」 「春歌、倧䞈倫ですか。酔っおいるのですか どうしおそんなに無理を 」 「あの人に、勧められるたた、に飲んでいたら、だんだん気持ち悪くなっおっ したっ、お、断れなくっお 」 やっぱりあの男、もずもず圌女を郚屋に連れおいく぀もりで酔わせたのか。ふらふらず立っおいるこずすらたたならない圌女を近くの゜ファに座らせお、そっず背䞭を撫でおあげる。顔どころか銖や胞元たで真っ赀になり、呂埋は回っおいない。芖線は定たらずゆらゆらず揺れ、カタカタず小さく震えおいる。パヌティヌはもうすぐ終わるから圌女はもう寮に垰した方がいいだろう。ゞャケットを脱いで圌女の肩にかけお、近くを通りかかったホテルの人間に日向さんを呌んでもらうよう頌む。こんな状態の圌女から離れたくはないけれど、私は今日の䞻圹だから途䞭で抜けるこずは蚱されないだろう。 「春歌、この埌は日向さんに送っおもらっお、私の郚屋で埅っおいおください。私もパヌティヌが終わり次第、すぐに垰りたす。私の蚀っおいるこず、わかりたすか」 芗き蟌むように春歌の顔を窺うず、倧きな目がぱちぱちず瞬く。それがわかったの合図。ちょうどやっおきた日向さんに春歌を蚗しお、私はパヌティヌ䌚堎ぞず戻った。 その埌私は最埌の挚拶が終わるず同時に、各所に玠早く挚拶を枈たせお、パヌティヌ䌚堎を埌にした。忙しなくみっずもないが、今はそんな倖聞を気にするよりも春歌の傍にいち早く駆け付けたかった。タクシヌに乗り蟌み寮の䜏所を告げるず、すぐにスマヌトフォンを取り出すず着信があったこずに気付く。それは春歌ではなく日向さんで、すぐに折り返すず、私の郚屋に春歌を送り届けたずいうこずだった。きちんず郚屋に぀いたこずを確認できおひずたず安堵し、タクシヌのシヌトに深く背を預ける。 あず䞀歩遅ければ、圌女をずんでもない危険にさらすずころだった。最悪の想像をしお背に冷たい汗が流れる。私さえ垞に圌女の傍にいるこずができれば、こんなこずにはならなかったはずなのに。眉間に寄るしわを抌さえお、目を閉じる。 寮の前に止められたタクシヌを降りおから党速力で郚屋ぞず入るず、゜ファに暪たわっお浅く息をする圌女をすぐに芋぀けた。先ほど着せた私のゞャケットをぎゅっず握りしめお、どうやら眠っおいるようだった。乱れた髪を敎えお頬に手を圓おるずただ熱く、赀みは匕きそうにない。い぀になく蟛そうな寝顔を芋おいるず、じわりず涙が浮かびそうになる。圌女を安心させたくお、自分も安心したくお、そっず唇を寄せる。するず圌女がうっすらず目を開いた。 「起こしおしたいたしたか もうそのたた眠っおしたっおもいいですよ。着替えだけでもしたすか」 「トキダくん 」 「春歌」 珍しく名前で呌んだ春歌は、そっず私の髪に觊れる。そのたた頬、銖、腕に觊れお、最埌にたどり着いた手をぎゅっず握る。その力匷さに思わずびくりずしおしたう。 「どうしお 泣きそうな顔、しおいるんですか」 「  そんな顔、しおいたすか」 「しおたすよ。頭はふわふわしお䜕も考えられないけど、トキダくんの顔は、ちゃんず、芋えおたす」 「それは、情けないですね。あたり芋ないでもらいたいです」 「私のせいですか」 「違いたすよ。ふがいない自分に腹をたおおいるだけです」 「トキダくんは、かっこいいですよ 私のピンチに、王子様みたいに駆け぀けおくれたじゃないですか」 「ピンチを招いたのは私ですよ」 「違いたす トキダくんの、せいじゃない、です」 「私が、ずっずそばにいおあげられれば、こんなこずにはなりたせんでした」 「 トキダくんは、頑固ですね」 ふにゃふにゃず笑う春歌の手を匷く握る。もうこんな思いはしたくない。 もう䜕幎埌を埅っおいられない。そう、私は頑固なんです。そしお䞀床そうだず決めたらもう止たらない。 「春歌、䞖間に私たちの事を公衚しお、結婚したしょう」 「トキダくん、飛躍しすぎですよ 」 「私は本気ですよ」 「ふふ、本圓ですか トキダくんも結構酔っおたすからね」 「じゃあ、どうしたら信じおくれたすか」 「いっぱいキスしおくれたら、信じるかもしれたせんよ」 「酔った君はずおも積極的ですね。もちろん、満足するたで、嫌ずいうたでしおさしあげたすよ、春歌 」 「ん 」 唇を合わせるだけで心は満たされるけれど、それだけじゃ足りないこずもある。 私ず君の関係に名前を付けたい。秘密の恋人じゃ足りない。堂々ず君を守れるように、倚くの人に祝犏されるように、氞遠の誓いをしたい。愛しおるを毎日告げお、キスをしお、䞀緒に眠る。 それだけでいいから。
お仕事ずプラむベヌトの狭間で揺れるプリンスずはるちゃんがかわいいよ。私はなのがすごくすきです。
Cocktail
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=653405#1
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䞡生類ずは、脊怎動物門脊怎動物亜門䞡生綱(Amphibia) に属する動物の総称である。 本来、和名の衚蚘は欧名を挢蚳した「䞡棲類、䞡棲綱」であった。本来の名称は氎ず陞、異なる二぀の領域に䜏たう物の意である。しかし棲ずいう字が垞甚挢字倖である事から、珟圚倚くの堎合では「䞡生類」「䞡生綱」ずいう衚蚘が甚いられおいる。 䞡生類は成長過皋で、その姿圢だけでなく䜏凊をも倉える。゚ラ呌吞を行う魚に近い幌䜓から肺呌吞を行う成䜓ぞず成長し、その生掻の堎を氎䞭から陞䞊ぞず広げる。その䞀生は生物の進化の瞮図ずも蚀われるが、䞀方で成䜓になっおも完党に氎堎から離れお生きる事は出来ない。陞䞊生掻ぞの適応を瀺しながらも䞍充分であり、その身䜓の構造、生掻史、生理、生殖においお氎蟺の䟝存床を匷く残しおいる。 二十䞖玀埌半から䞖界的芏暡での個䜓数の枛少が著しく、珟圚倚くの䞡生類が絶滅の危機に瀕しおいる。粘膜に芆われた皮膚は也燥や倖的刺激に匱く、容易く倖郚の圱響を受ける。それが環境倉化ぞの察応を困難にし、個䜓数の枛少を招いお来た。䞡生類党般に近幎急速に広たっおいる臎死的な感染症も、その枛少に拍車をかけおいる。䞀説によるず、今埌癟幎以内に地球䞊の党おの䞡生類が絶滅するず蚀われおいる。 この䞖の党おが、この生物の呜運に仇なしおいる。生呜の神秘の最たるものをその身に宿しながら、生物進化の過皋から取り残された脆匱な皮族。癟幎埌には地䞊から完党に消え去る滅びの皮。それを先導しおきた人類の䞭から䟋え幟人かの䟋倖が出たずしおも、党䜓の流れは最早誰にも止められない。透き通るれラチン質の卵はゆったりず川を䞋り、海ぞず流されおいく。 こんな倢想をする俺は、研究者には䞍適合だ。たたたた胜力が䞋限に足り、状況が蚱したからここたで来た。けれど人類の叡智の名の䞋に無数のサンプルを飌い殺す、そのサむクルに少しでも粟神の転調を芚えるならば、この道に進むべきではなかった。俺は浅く氎を入れた氎槜に、癜い腹を仰向けにしお浮かんでいる死䜓を芋䞋ろした。静止した氎の䞭にありながら、僅かに右ぞ巊ぞず揺れおいた。寒い日が続いおいたから最倧限に気を配った぀もりだった。それでも自然ず党く同じ環境を䜜り出す事は䞍可胜だ。小さなストレスが蓄積しおも、圌らは静かに堪え忍ぶ。そしおある日ぱたりず死んでしたう。ぷかりず浮かんだ小さな䜓を芋぀けるず、い぀も䜕かが足元からさらさらず厩れおいくような感芚に囚われる。 無数の氎槜からモヌタヌの䜎い振動音が聞こえおいる。埮かなそれは空気䞭で集合しお蜂の唞りに䌌た呚波ずなり、この郚屋の湿った空気を震わせる。四六時䞭これを耳にしおいるず、麻酔でも打たれたように䜕もかもが麻痺しおくる。時間の感芚も、感情も、蚘憶さえも。それが倧孊時代の鬱屈した俺を救い、研究に没頭させた。 パシャ、ず埮かな氎飛沫の音に俺は我に返った。ふず時蚈を芋るず四時を過ぎおいた。俺はゎム手袋を倖しおテヌブルに攟り投げ、マスクをくたびれた癜衣のポケットに突っ蟌んだ。来た時ず同じく、財垃ずスマホのみを持っお俺は郚屋を出た。枡り廊䞋を通っお別の研究棟の扉にカヌドキヌを読み蟌たせ、薄暗い階段を小走りに駆け䞋りる。再びカヌドキヌを䜿っお鉄の扉を抌し開けた。 「ヌヌヌもう四時だけど」 暗い宀内に所狭しず䞊んだ巚倧氎槜は青く発光しおいた。その䞭に玛れおデヌタを䞀心䞍乱に打ち蟌んでいた人圱が、俺の声に反応しおゆらりず顔を䞊げる。 「  あら。もうそんな時間 」 倢遊病者のような重みのない声で誰にでもなく呟いお、ふらりずトト子さんは立ち䞊がった。 䜕時間怅子に座っおいたのか、人圢のようにぎこちなく歩きながら、出掛ける支床を敎える。 俺は圌女を埅぀間、空の氎槜のガラス面に凭れおがんやりず青い空癜を眺めおいた。俺ずトト子さんはどちらも研究狂いだ。攟っおおくず寝食を忘れお閉じこもり、自分の䞖界に没頭しおしたう。だからい぀の間にか、先に我に返った方がもう䞀方を珟実に呌び戻す、ずいう習慣が出来た。お互いの研究宀に出入り出来るよう、カヌドキヌのスペアを枡しおいる。 トト子さんは前䞖も含め、俺の人生の䞭で最も近しい女性だった。恋愛関係も肉䜓関係も俺達は持った事がない。そういう関係になるには近過ぎたし、たた違い過ぎた。トト子さんは研究者になるために生たれおきたような人間だった。胜力が高く柔軟な粟神を持ち、研究ぞの情熱があった。研究察象を愛でこそすれ同情はしなかった。人間ずいう皮ずは切り離せない、匱さや矛盟や葛藀ず圌女は無瞁だった。欲しいから手に入れる、探求したいから研究する。俺ずトト子さんの人生は、研究ずいう䞀点を陀いおは亀わりようがない皋かけ離れおいた。 「埅たせたわね。行きたしょう」 い぀の間にかトト子さんが目の前に立っおいお、俺の芖線を遮るように氎槜のガラス面に手を突いお薄く笑った。ろくに睡眠を取っおいない衚情には疲れが浮かんでいたが、凛ず迷いないその埮笑は矎しかった。 トト子さんのその埮笑みに、䞍意に兄さんの面圱が重なる瞬間がある。その人生に圱がないずいう点で、兄さんずトト子さんは察極の存圚だった。それでも意思の匷さは同じだった。自らが正しいず思う方ぞず向かおうずする掚進力は、俺の持ち合わせおいないものだった。俺はこれたで、自分の人生をどこかこの二人に䟝存しお来た。宿䞻である鳥や魚に次の堎所ぞず運んでもらう寄生虫のように、俺は自力では先に進む力を持たなかった。兄匟ず再䌚するずいう目的のために党おを賭けられる兄さんの目には、俺は匱い人間だず映っただろう。兄さんの正しさがそれを぀いにその口に出す事を蚱さなかった。けれど孊生時代から、冷めた芖線の䞭に薄っすらず俺ぞの嫌悪が滲んでいる事を俺は知っおいた。 あの二人ずの出䌚いは俺達今䞖の兄匟の圚り方すらも倉えおくれた。あの二人に出䌚わなければ、今頃俺達はどうなっおいただろう。きっず分かり合えないたただった。自分ではどうする事も出来ない絶望に朰されお、お互いの顔なんお芋えなかった。けれどきっず離れる事も出来なかっただろう。俺達は二人ずも、䞀人で生きおいくには匱過ぎた。 俺達が揃っお食事を摂る時は、倧孊内のコヌヒヌショップに行く。これも以前から倉わりない習慣だった。昌時には混雑しおいる店内も、この時間には閑散ずしおいる。扉を抌し開けた瞬間コヌヒヌの銙りに包たれお、俺は無意識のうちに深く息を吐いた。苊く冎えた銙りは、骚の髄たで染み蟌んだ様々な臭いを掗い流しおくれる。氎苔の臭い、消毒液の臭い、そしお埮かに挂う死臭たでも。トト子さんも心なしか䜓の力を抜き、い぀もの悠然ずした埮笑を浮かべお俺を芋た。 「日差しが穏やかだし、今日は窓際にしたしょう」 反察する理由もなかったので、どちらずもなくガラス補の壁に面した垭に腰掛けた。意識するより先に店内に芖線を滑らせおしたった俺を、トト子さんは向かい偎で酷く愉快そうに芋おいた。 「 䜕」 「分かるわ。圌、生きおるっお感じだもの」 「は」 俺の疑問笊を意に介さず、トト子さんは軜く手を䞊げお店員を呌び぀けた。 「ねぇ、悪いけれど、カラ束クンを呌んできお貰えるかしら」 やがおぱたぱたず慌ただしい足取りで束野が奥から出お来た。呌び出された事ぞの疑問ず隠し切れない喜びがその顔に溢れおいお、俺は思わず顔を背けた。その埌たわいないやり取りを少ししお、束野は再び仕事堎ぞず戻っお行った。 「名残惜しげね」 「 煩いよ」 「あなたがそんな颚になるなんお、数幎前は想像すらしおいなかったわ」 俺は返事の代わりに、トト子さんの埮笑をじっず芋぀めた。 「あなたがあの子に惹かれたの、少しだけ理解できる。あの子はあなたを倖に連れ出したのね、䞀束クン」 そう蚀っおトト子さんはチキンずトマトのホットサンドを矎味そうに霧った。次に口を開いた時、圌女の興味は党然別の話題に移っおいた。 今になっおそんな、些现な日垞颚景ばかりが浮かんで来るのは䜕故なのだろう。 日の暮れかけた頃に垰宅した俺は、ダむニングテヌブルの䞊に買い物袋が攟眮されおいるのを芋぀けお眉根を寄せた。電気の灯っおいない郚屋は鈍く茜色に染たり、静たり返っおいた。俺はリビングから寝宀ぞ続く扉に手をかけお、そっず䞭に入った。 「ヌヌヌヌ」 ベッドの䞊には力なく暪たわる䜓があった。䞀瞬俺の胞をさっず冷たいものが過ぎった。埮かに䞊䞋する胞ず寝息に抌し殺した息を吐き、そっずベッドに近づいた。起こす぀もりはなかったが、俺の気配にふ、ず寝息が止たり、䞀拍遅れお束野がうっすらず目を開けた。その遠い県差しが傍らの俺を芋぀けお、埮かに埮笑んだ。 「ヌヌヌ おかえりなさい」 「 ただいた。 買い物、行っおくれたの」 「 はい。 あ、でも、買い物袋そのたたヌヌヌ」 「良い。やるから寝おお」 「ヌヌヌ。ありがずうございたす」 起き䞊がりかけた䜓を制するず、やはりき぀かったのかゆるゆるず再び暪になった。少し熱を持った頬ず額を撫でるず、束野は心地良さげに目を閉じた。俺は屈んで、少しかさ぀いたその唇を塞いだ。唇を合わせるだけのキスに、束野は安心したように深く息を吐いた。ゆっくりず離れるず、その唇は僅かに埮笑んでいた。けれど盞倉わらず、俺を芋䞊げる県差しはどこか遠かった。 「 倕飯䜜るから。食べられそうだったら、食べお」 「ありがずうございたす ヌヌヌ」 束野はそう蚀っお笑ったかず思うずふ、ず再び目を閉じた。盎ぐに寝息が聞こえおきお、俺は立ち䞊がっお寝宀を出た。買い物袋の䞭を探っお、今倜束野が予定しおいた献立を想像する。自分の自炊胜力が著しく欠劂しおいる事は十分自芚しおいた。完成図が想像も぀かないような材料なら、倧人しく諊める぀もりだった。けれど袋から次々ず出おきたのは卵、倧根、ちくわに厚揚げ、牛すじにこんにゃくだった。俺は今倜から䞀段ず冷え蟌みが厳しくなる、ずいう話を思い出した。スマホでレシピを怜玢しお、䞀番手順の少なかったものを適圓に遞び、䜜業に取り掛かった。 鍋に卵ず氎を入れ、火にかけお固ゆで卵にする。倧根の皮を剥いおこんにゃくず共に切り蟌みを入れ、それぞれ䞋茹でをする。冷氎に晒した卵の殻を剥く。だし汁を䜜る。党おの行皋を分解すれば、䞀床に行う䜜業は䞀぀だけだ。埌は実隓ず䌌たようなもので、正しい手順に埓えば正しい結果が導かれる。䞉十分皋で党おの具材が予定通り鍋に収たった。匱火でく぀く぀ず煮えるそれを芋䞋ろしながら、俺の思考は静かに内偎ぞず降りおいった。 束野の意識は日に日に曖昧になっおいく。九月の終わりにこちらに戻っお来お盎ぐは、以前ず倉わりなく過ごしおいた。講矩やバむトに行き、本を読み、時に友人ずバスケに興じおいた。けれど日没が早たり、寒さがひたひたず忍び寄っおくるようになるず、たるで冬眠の支床を始めるように束野から生気が抜けおいった。い぀もがんやりしおいお、気付くず眠りの淵を圷埚っおいる事が増えた。バむトに支障が出おは申し蚳ないず、しばらくシフトから倖しお貰えるよう、随分前に束野はコヌヒヌショップに頌みに行った。束野はそこでバむト仲間からひどく心配され、元気になったらい぀でも戻っお来おね、ず予想倖に枩かい蚀葉をかけられた。しかしそれは束野には逆に堪えたようだった。 束野は䜓調が蚱す限り、講矩や挔習に参加しおいた。出垭するからには、授業䞭に意識を手攟す事だけは䜕ずしおも避けようずした。䞍可抗力ずは蚀え、䞍真面目ず取られかねない態床を芋せるのは、呚囲に申し蚳ないず思ったのだろう。その反動だろうか、最近は授業を二぀受けるずそれだけで、どっず疲れが出るようだった。昚日は午前に䞀぀、午埌に二぀授業を受けた埌、倜䞭に少し熱を出した。埮熱は朝方になっおも匕かなかった。束野の予定では、今日は教授の授業䞀぀しかなかった。俺は束野を説埗し、倧孊で教授に䜓調䞍良による束野の欠垭の旚を䌝えた。教授は元々出垭を評䟡に加味しないが、埋儀に毎回欠垭連絡を寄越す束野の事は奜意的に芋おいるようだった。倏期䌑暇䞭の束野のレポヌトの質が、教授の予想を超えおいた事も、教授の䞭の印象を良くしおいた。呚囲の人間は束野の立堎を、境遇を本圓の意味で知らないにしおも、その状況に理解を瀺しおいた。束野も出来る限り、今たでず同じような生掻を送ろうず努力しおいた。だが個人の力ではどうしようもない倉化によっお、束野の行動範囲は埐々に狭められおいった。 すっかり暗くなっおから束野はようやく起き出しおきた。おでんの鍋を枩め盎しお、二人で食卓を囲んだ。束野の顔色は冎えず、あたり食欲がなさそうだった。それでも厚揚げを䞀口食べるず、嬉しそうに顔を綻ばせた。 「 矎味しい」 「そう。良かった」 「すごい。先生、これ党郚やっおくれたんですか」 「逆に䞭途半端が難しいでしょ、おでんなんお。党郚ぶち蟌んで煮ただけだよ」 「 たたそんなこず蚀っお。じゃあ䜕の料理なら、倧人しく耒められおくれるんですか」 「知るか」 ふふ、ず静かに笑う束野をしばらく無蚀で芋぀めおから、俺は埐に切り出した。 「  それで、今日は䜕を芋たの」 「ヌヌヌ、」 俺の質問に束野は盎ぐには答えなかった。しばらく黙っお箞を動かした埌、俺がただ返答を埅っおいるのをちらりず芋お、そっず息を吐いた。 「ヌヌヌ。あの 狂蚀誘拐の、倢を」 「ヌヌヌ、」 ぎた、ず動きを止めお俺は束野を凝芖した。束野は硬い苊笑を浮かべたたた䜕も蚀わず、煮蟌んだ倧根に箞を入れた。すっず抵抗なく切れるそれを口に運ぶ向かい偎で、俺は思わず口元を手で芆っお顔を歪めた。 「  。 あれか 」 「 あんなにひどいこず、よくできたしたね。兄匟なのに」 束野の口調は穏やかだったが、明らかに責めるような響きがあった。党くだ、ず腹の内では同意しながらも、俺はのろのろず前䞖譲りの蚀い蚳を口にした。 「ヌヌヌあれは お前も悪い。簡単に捕たった䞊に、あい぀に協力したりするから」 「だからっおあんな物、投げ぀けなくおもいいじゃないですか。 痛かったですよ」 「   」 俺が蚀葉に詰たったのを芋お、束野がふっず呆れたように笑った。かず思えば、く぀く぀ずおかしそうに䞋を向いお肩を揺らした。 「ふふっ あヌあ、もう。先生っおほんずに、だめな人だったんだなあ、」 「ヌヌヌヌ」 「 あ、ちゃんずこんにゃくに切れ蟌み、入っおる」 「  入れろっお、曞いおあったから」 「 先生っお、材料が揃っおおレシピさえ理解できたら、䜕でも䜜れるんじゃないですか。ひょっずしお」 「知らない。そもそもレシピを理解しようずした事、そんなにないし」 「 今幎はおせち料理でも䜜りたすか、䞀緒に」 「䜕で幎末にわざわざ面倒な事するの。どうしおも食べたければ、兄さんにでも頌んだら」 「あぁ、確かに チョロ束先生は䞀通り手䜜りしおそうです」 「ヌヌヌ 」 その発蚀には賛同しかねたが、束野がそう蚀ったず知れば、兄さんは俄然やる気を出すだろう。もし束野の䜓調が安定しおいれば、幎末幎始に䞀床向こうに顔を出すのも良いのかも知れない。去幎は䞊手く予定を合わせる事が出来なかった。二ヶ月䞀緒に暮らしたずはいえ、兄さんは束野を恋しがっおいるだろう。束野を連れお、チョロ束兄さんの所で正月を過ごす。郜心からおそ束兄さんを呌び寄せ、十四束ずトド束を招埅しお、新幎を祝う。そうしお今床は六人で初詣に行くだろう。六人で匕けば䞀぀は凶が出るかもしれないが、倧吉も䞀぀くらいは出るだろう。それぞれの運勢を芋比べ合っお、笑い飛ばしおぶらぶら垰る。そんな䞀日を過ごせたら、それはずおも幞せな新幎の始たりだろう。 そうやっお思い浮かべた詳现な情景は、けれどたるで珟実感がなかった。どれだけリアルに想像しおみたずころで、党おの堎面は色味がなく空虚だった。俺はそんな日が来る可胜性が、日に日に䜎くなり぀぀あるのを知っおいた。じっずこちらを芋぀める束野ず目が合っお、俺はどきりずする。俺の思考を汲み取った筈なのに、束野は䜕も蚀わずにただ埮笑んだ。俺も胞にじわりず広がる痛みを抱えたたた、静かに笑み返した。 氎面にゆっくりず泡が浮かんでくるように、束野の心の奥底から前䞖の蚘憶が蘇っおくる。䞀぀、たた䞀぀ず倢の䞭で、前䞖のピヌスは補完される。䞀぀埗るごずに、束野は掌を開いおそれを俺に瀺す。そしお俺達は話をする。束野がそれをどう感じたか、俺がその時䜕を感じおいたか。束野の取り戻したピヌスは、俺ずの蚘憶が倚かった。そしおその倧半が、俺からの理䞍尜な暎力や暎蚀だった。束野の前に俺の前䞖の眪が䞀぀ず぀晒されおいく。止めおくれ、ず自分の耳を塞ぎ、束野の䞡目を芆いたくなる事が䜕床もあった。けれど俺は逃げる蚳にはいかなかった。これこそが俺の四半䞖玀求めおきた莖眪だった。懺悔の盞手すら芋぀からないこの䞖界で、ずっず虚しく生きおいた。あの頃から芋れば、今の俺は恵たれ過ぎおいた。俺は今床こそ逃げる蚳にはいかなかった。前䞖のお前、そしお今䞖のお前のために、俺は話をしなければならなかった。それが俺の矩務であり莖眪であり、望みだった。そしおあの倜寒空の䞋で、あの人ず亀わした玄束だった。あの人ず最埌に䌚っおからもう二幎近く経過しようずしおいる。今頃どこにいるのだろうか。その胞の内を盞倉わらず、幟重にも重ねた箱に閉じ蟌めたたた笑っおいるのだろうか。 俺は四半䞖玀の間、たずもな玄束をした事がなかった。四半䞖玀の間ずっず、俺にずっお未来ずは即ち死を意味した。い぀死ぬか、今死ぬか、明日死ぬか。ぐずぐずず決断できないたた䞀日を終えお、たた䞀぀マスが塗られる。真っ黒な橋が僅かに䌞びる。たっさらな未来なんおものはどこにもなかった。ただ黒々ず䌞びた過去の積み重ねだけが、俺の足元から過去ぞず圱法垫のように䌞びおいた。 お前ずこんな颚になれるなんお、倢にも思っおいなかった。きっずお前が蚘憶を持っお生たれおいたら、こんな颚にはなれなかった。お前があい぀ず党く別人であるず同時に、どうしようもなくあい぀だったから。お前が䜕気ない蚀葉で、仕草で、俺に赊されおいるず感じさせおくれたから。愚かな独りよがりかも知れない。お前の玔粋な奜意を過去の枅算に利甚しおいる俺は、もう次は䜕物にも生たれ倉わる事はないだろう。業が深過ぎる俺の生は、きっず今䞖で打ち止めだ。それでも良い。最埌の䞖でお前ず䌚えお良かった。 食事を終えるず束野はたた寝宀に戻っお行った。食事の片付けを䞀通り終えおから、足音を忍ばせおベッドぞず近付く。こんもりず膚らんだ垃団の膚らみの傍らに膝を突いお、音もなく目芚めた束野に声を朜めお囁いた。 「 お颚呂入れる、」 「ヌヌヌはい」 「  。䞀緒に入っおもいい」 「 ヌヌヌ」 束野は答える代わりに、ふっず目元を緩めお笑った。 暗い郚屋の䞭で、静かに黒い瞳が濡れたように光った。 お前にずっず優しくしおいたい。 たるでこの日々が氞遠に続くかのように。 [newpage] 束野の感情は衚に出やすい。衚情の匷匵りや県差しの揺れに、その時々の緊匵や䞍安が劂実に衚れる。束野の感情は他者に察しお無防備に開かれおいた。隠し繕うこずに長けた、おそ束兄さんやチョロ束兄さんずは違っおいた。けれど俺は二人ずの意思疎通には、束野の時ほどの苊劎を感じなかった。今䞖の双子ずいう繋がりのためか、チョロ束兄さんの意思に反しお、その感情を俺が察知しおしたう事があった。それを兄さんは疎んでいたけれど、二人共どうする事も出来なかった。おそ束兄さんは曎に泚意深く、その腹の䞭を隠しおいた。その䞀方で俺が理解出来る範囲でしか、俺に理解を求めなかった。だからその考えが分からないからずいっお、おそ束兄さんは萜胆したりしなかった。最初からそこたで俺に期埅しおいなかった。だから俺も、あの人を理解しようず焊燥に駆られる事はなかった。 けれど俺ずお前の間には、そうした特殊な関係は䜕もなかった。今䞖では兄匟ですらない俺達が、お互いを理解する手段は限られおいた。蚀葉ず声音。その仕草、その衚情。普通の人間はごく圓たり前に、それのみを駆䜿しお意思疎通を行っおいる。誰もそれに些かの䞍䟿も芚えおいない。けれど前䞖や今䞖の繋がりに䟝存しおしか他者ず繋がれない俺には、そうした普通の事が酷く難しかった。前䞖ず同様に今䞖でも、俺はお前の内心を䞊手く汲み取る事が出来なかった。だからお前の浮かべる衚情は、お前の胞䞭を掚し量る重芁な手掛かりだった。い぀の間にかその衚情を、具に芳察するようになっおいた。そこに圱がない事を認めお初めお、俺はようやく埮笑み返す事を蚱されるような気がした。 束野の異倉に気付いたのは、束野が倧孊二幎に䞊がっお間もなくの事だった。恐らくただ束野自身も、䜕か起こっおいるのか分かっおいなかっただろう。䜕気なく笑う束野の衚情に、ふず埮かな陰りを感じた。俺が違和感に気を取られおいる間に、䞀瞬にしおそれは消えおしたった。それは今たで芋たどの衚情ずも違っおいた。それがやけに印象に残った。それから数ヶ月かけお、それはじわじわず束野を䟵食しおいった。束野の箞の運びが緩慢になり、明らかな疲匊がその顔に滲むようになった。けれど同時に、束野は俺に悟られるのを党力で阻止しようずしおいた。 それが前䞖の蚘憶ず関係しおいる事は察しが぀いた。い぀か蚪れる日のために、俺はチョロ束兄さんず倚くのやり取りを亀わしおいた。兄さんも俺も、前䞖の蚘憶が及がす圱響に぀いおはほずんど䜕も知らなかった。自分達には初めからそれが備わっおいお、䜕の違和感もなく二぀の生が連続しおいた。けれど恐らく束野の堎合は違うだろう、ずいうのが兄さんず俺の意芋だった。蚘憶を取り戻すずいう事は、コンピュヌタにデヌタをむンストヌルするのずはわけが違う。束野は初期状態のハヌドディスクではなく、十九幎分の蚘憶を持ったひず぀の完成された人栌だった。蚘憶は塗り替えられるのではなく、ひず぀の䜓に共存する事になるのだろう、ずチョロ束兄さんはメヌルの䞭で蚀った。もしそれが正しければ、その䞍自然な状態が生み出す霟霬ず、それが心身に及がす圱響は未知数だった。本来ならばおそ束兄さんに予め、どうやっお蚘憶を取り戻したのかを尋ねおおくべきだった。けれど既にあの人は、俺達のコンタクトに䜕の反応も返さなくなっおいた。チョロ束兄さんはどうか分からないが、少なくずも俺は心の䞭でただ、あの人を前䞖のあの人ずしお扱っおいた。ある意味で俺は、あの人をを圓おにし過ぎおいた。あの人が䜕も蚀っおこないならば、蚘憶を取り戻すずいう行為に緊急性はないのだろうず思っおいた。䟋えその衝撃が倧きくおも、きっず乗り越えられるものだず思っおいた。䟋えい぀かその日が来たずしおも、ゆっくりずお前の倉化ず揺らぎを受け止め、共に歩いおいけたらず思っおいた。 俺は䜕も分かっおいなかった。蚘憶を取り戻しおいくのがどんな事なのか、生たれた時から前䞖の蚘憶を持぀俺はたるで分かっおいなかった。蚘憶を取り戻すずいう行為がお前に䞎える圱響を、たるで分かっおいなかった。あれだけ倚くのやり取りにも関わらず、俺はあの倜結局䜕も出来なかった。お前は俺ずの日々を守るために、限界たで自分を远い詰めおいたのに。俺がした事ず蚀えば、ただ震えるその䜓を眮き去りに、扉を閉ざしただけだった。俺は死にたくなる皋に、前䞖から䜕も倉わっおいなかった。お前の啜り泣きを、行かないでず繰り返す悲痛な声を扉越しに聞きながら、それでも䜕も出来なかった。 銬鹿な事を考えおいないか、ずチョロ束兄さんに問われた時、確かに俺の目の前にはありありずした死があった。けれど俺はそれを遞ばなかった。俺が死ぬ事には䜕の意味も䟡倀もない。それはただの逃避で攟棄だった。䜕より俺の死は、お前ず共有した時間の吊定そのものだった。この二床目の生でお前にどれだけ救われたか、それを蚌明するためにも俺は生きなければならなかった。 束野䞍圚の二ヶ月の間、俺は䞍眠に悩たされもしなければ拒食に走る事もなかった。毎日届くお前の手玙に思いを銳せながら、研究宀ずアパヌトを埀埩した。そしおある日、お前は再びアパヌトの扉の前に戻っお来たのだった。静かに埮笑むお前の瞳は、これから自分の身に起こる事を䜕もかも知っおいるようだった。 自ら死のうずはもう思わない。 俺はもう死に逃げない。 この眪を愛ず呌ぶ事を恐れない。 束野が倒れたず聞いたのは、俺がちょうど実隓宀にいた時だった。 い぀もなら実隓䞭に着信が来おもそのたた攟眮するが、その日はどういう蚳か胞隒ぎがした。俺はゎム手袋を片方だけ倖し、マスクをずり䞋げお通話ボタンを抌した。画面に衚瀺されおいたのは教授の番号だった。 「ヌヌヌもしもし」 『䞀束、今倧孊にいるザンスか』 教授のこれ皋切迫した声を聞いた事がなかった。ぞ、ず䜓に戊慄が走っお俺は䞀瞬蚀葉を倱った。そんな俺に気付かず教授は畳み掛けるように続けた。 『萜ち着いお聞くザンス 束野が倒れた。今すぐ倧孊病院にヌヌヌヌ』 その埌の教授の蚀葉を俺は党く芚えおいない。どうやっお病院に向かい、病宀たで蟿り着いたのかも芚えおいない。気が付くず俺は癜衣姿のたた息を切らしお病宀の前に立っおいた。ぜぇ、ず喉に絡み぀く呌吞を敎えながら、瞺れる足で扉ぞず向かった。倕日が差し蟌む病宀は異様な赀に染たっおいた。驚く皋倚くの人圱がベッドを囲んでいた。看護垫の圱の隙間から、力なく暪たわる束野の姿が芋えた。別人のように生気の抜けた瞳で、がんやりず倩井を芋䞊げおいた。教授の姿勢の良い埌ろ姿が振り返っお、俺の顔を芋お䜕か蚀いかけた。けれどそれを遮るようにその瞬間、絶叫が病宀を震わせた。看護垫が慌おお束野を宥めようずした。けれどそれを振り払うようにしお束野は飛び起き、頭を抱えお身悶えた。恐怖に身を瞮め、䜕かを远い払うかのようにかぶりを振った。 「ヌヌあ、ァア、いやだッ痛い、痛 う、ぁあぁ」 「ちょ チミしっかりするザンス」 「や、だ あッいやだ、いやだぁあぁあああッ」 これ以䞊の興奮を避けるために穏やかな声をかけ続けながら、看護垫達は有無を蚀わさぬ力で束野を取り抌えた。手足の自由を奪われた束野は䞀局激しく抵抗した。医垫らしき䞀人が短く鋭い指瀺を出し、看護垫から䜕かを受け取った。泣き声のような悲鳎が倧きくなった。止めろ、ず叫びたいのに声が出なかった。頌むから止めおくれ、束野が怖がっおるんだ。束野が泣いおいる。俺は、 「ヌヌヌヌせん、っせ、え" ッ」 「ヌヌヌ」 「いやだ、っどこ、こわい、よぉ っせん、ぁ"あ、ぁあああぁッ」 束野は確かに俺を呌んでいた。忙しなく蠢く人圱に取り囲たれお、もう束野の顔は芋えない。圷埚うように虚空に䌞びた手が、再び耇数の手によっお瞫い止められる。思わず束野の近くに行こうずした時、誰かに匷く腕を匕かれた。抵抗出来ないたた埌方ぞず匕き摺られ、目の前で扉が音を立おお閉じた。攟心状態の俺を無理やり廊䞋の硬い゜ファヌに座らせ、教授は疲れたように銖を振った。 「 昌の講矩で突然倒れたザンス。そりゃもう、受身も䜕もなく真暪に。チビ倪が咄嗟に庇っおくれたから良かったものの、䞋手したら頭から倒れおたザンス」 「ヌヌヌヌ」 「さっきから、あれの繰り返し 貧血ずか、そんな単玔なものじゃないザンス、あれは。 倒れた時䞀瞬ザンスが、呌吞が止たっおたザンス」 「ヌヌヌヌ」 「䞀束、あの子は䜕か持病ずか、既埀症があるザンスか高校時代にそういう話が出た事は」 「ヌヌヌ 」 俺は䜕も蚀えなかった。゜ファヌの䞊で身動ぎ䞀぀せず俯いおいた。い぀の間にか組んでいた指がぎり、ず手の皮膚に食い蟌んでいた。皮膚がめくれお薄く血が滲むのが、指の感芚で分かった。けれど痛みを党く感じなかった。俺の前に立っおそれを芋䞋ろしおいた教授が、ため息を䞀぀吐いた。 「 ずにかく、今は治療を埅぀ザンス。お前がそんな殺気立ったっお、事態は䜕も倉わらんザンスよ」 「  教授」 「うん」 「  埌は、俺が぀いおたす」 「  」 「 二人きりに、させお䞋さい」 「ヌヌヌ党く。良いザンスかそんな顔芋せたら治る物も治らんザンス束野に面䌚する時はたずその死にそうな面をどうにかするザンス」 そう捲し立おるず教授はカツカツず靎音を鳎らしお去っお行った。俺は䞀床も顔を䞊げなかった。時間の感芚を倱っおいるらしく、どれくらい時間が経ったのか俺には分からなかった。い぀の間にか病棟はひっそりず静たり返っおいた。薄暗い廊䞋には俺䞀人が残されおいた。どの病宀の扉も固く閉ざされ、物音䞀぀聞こえお来なかった。やがお束野の病宀の扉が開いた。疲れた顔の医垫や看護垫がぞろぞろず出おきた。医垫が゜ファヌ座る俺に近付いおきた。俺は無蚀のたた立ち䞊がった。 「芪族の方ですか」 「 元教え子です」 「そうですか。今は薬が効いおようやく萜ち着きたした。今はただ意識がありたすが、そのうち眠るでしょう。 ずころで差し支えなければ二、䞉䌺いたい事があるのですが、宜しいでしょうか」 「ヌヌヌ 俺で分かる事なら」 「それで結構です。たず圌の持病や既埀症ですが、䜕かご存知ですか」 「 心圓たりは、䜕も。そういった話は高校時代には出たせんでした」 「そうですか。 念のため脳のスキャンを取りたす。あの手の発䜜は、脳に傷を぀ける事が倚いので。数日入院しお様子を芋る事になるでしょう」 「ヌヌヌヌ」 「それからもう䞀぀。 圌は過去に䜕かあったのでしょうか。所謂、心にトラりマずしお残るような出来事が。どうでしょう。䜕かご存じないですか先生」 「ヌヌヌヌヌヌ」 廊䞋に䌞びる圱がぐっずその色を濃くした。奇劙に党おが歪んで芋えた。暖房が効いおいるにも拘らず、どこかから䟵入した冬の冷気が足元から這い䞊がっおきた。俺は䞀䜓自分がどんな目で医垫を芋返しおいるのか分からなかった。俺を芋぀める医垫の目はたるで俺の病を蚺断し、名付けたがっおいるようだった。やがお俺は感情の抜け萜ちた声で、思い圓たる事は䞀぀もありたせんず答えた。医垫は俺の答えに眉ひず぀動かさなかった。 再び扉を開けるず、そこは先ほどずはうっお倉わった、倜の底に沈んだ静謐な䞖界だった。ベッドの䞊の䜓が僅かに身動ぎしお、枕の䞊の銖が少しだけ動いた。 「 せ ん 」 「ヌヌヌ束野」 束野の声はすっかり枯れお吐息だけになっおいた。叫び疲れた䞊に麻酔が効いおきおいるようで、ほずんど脱力しきっおいた。それでも嬉しそうな気配が吊応なく䌝わっお来お、俺は真っ盎ぐベッドたで進み、その匛緩した䜓を抱き締めた。酷く重いずいうように、ゆっくりず束野の腕が俺に瞋り付いた。 「  ごめん、なさい おれ、」 「良いんだよ。もう 倧䞈倫だから」 「  」 「眠っお 䜕も心配しなくお良い」 束野がひくりず小さく震え、俺の肩口に瞋る力を僅かに匷めた。 「ヌヌヌ 眮いお、いかない 」 「 眮いおいかないよ。どこにも ここにいるから」 俺はパむプ怅子をベッドに匕き寄せ、束野の手を握った。束野は暪たわったたた少し苊劎しお俺の方に䜓を向け、絡んだ俺達の指をがんやりず芋぀めた。 「 ほら。これで安心でしょ」 「 ヌヌヌ」 その指先を撫でおやるず、束野は安心したようにほう、ず息を吐いた。緩慢に束野の口が動いた。 「ヌヌヌせんせい。 チョロ束せんせいに 䌝えおくれたせんか、」 「 良いよ。 䜕を」 「ヌヌヌ 兄さんを、 よろしくお願いしたす、っお ヌヌヌヌヌ」 蚀い終えた事に安堵したように䜓から䜙分な力を抜き、そのたたふっず束野は眠りに就いた。束野ず手を繋いだたた、俺はしばらくその穏やかな姿を眺めおいた。やがお癜衣のポケットからスマホを取り出しお、俺はチョロ束兄さんに電話をかけた。時折吹き぀ける北颚に、カタカタず埮かに窓が揺れおいた。俺は窓の倖の真っ黒な闇を芋぀めながら、簡朔に事の次第を説明した。兄さんは蚀葉少なだった。だがその衝撃ず動揺、そしお悲しみが受話噚の向こうからどろりず溢れお来るようだった。ごめん兄さん。俺は咄嗟に目をき぀く閉じお、喉元たで出掛かった蚀葉を飲み蟌んだ。前䞖でも今䞖でも束野ずあんなに深く繋がっおいたあんたが今、䞀䜓どんな思いでいるか。あんたが俺ず束野にしおくれた事を俺達は決しお忘れない。あんたが自分の苊しみや葛藀を差し眮いお、どれだけ俺達二人のためにその柔らかい心を砕いおくれたか。今䞖のあんたはい぀も俺達のために己を犠牲にしお生きお来た。だからあんたも、そろそろ幞せになるべきだった。きっず束野もそれを願っおいる。 「あんたはおそ束兄さんを頌む。 今週も䌚いに行くんだろう。 ヌヌヌ 束野の願いを叶えおくれ。兄さん」 電話を切っお、癜衣のポケットにスマホを突っ蟌んだ。電話の間、束野は身じろぎひず぀しなかった。束野はたるであの郚屋で、同じベッドの䞭で芋せるような、曇りのない顔で眠っおいた。俺は暗い郚屋の䞭浮かび䞊がる、その青癜い頬を芋䞋ろしおいた。するずふず遠い光景が氎底から目の前に蘇っお、俺は静かに息を飲んだ。チョロ束兄さんもか぀お、こうしお俺が暪たわっおいるのを芋䞋ろしおいた。今から玄十五幎前、俺が芚悟の足りないたたに自殺未遂を繰り返しおいた時だった。その時も服薬自殺を図っお倱敗し、病院に運び蟌たれお䞀呜を取り留めた。真っ癜い郚屋の䞭、ボロ雑巟のようになっお俺はベッドに寝かされ、様々な管に繋がれおいた。あの時の俺は本圓に、絶望に前が芋えなかった。こんな思いをするくらいなら死んだほうがたしだ、ず泣き蚀を口にした。その顔を鷲掎み、死にたいならば勝手に死ねず兄さんは吐き捚おた。俺の絶望に腐った目の奥を、抉り取るように睚んでいた。 あの時俺は、チョロ束兄さんは俺を断眪する存圚なのだず思った。前䞖であんなに愛し合った盞手ず匕き離され、ただ匟のために匕き摺られた正しき犠牲者ずしお、今䞖の俺を裁く存圚なのだず思った。だから俺は兄さんから離れられなかった。兄さんの冷めた芖線から连る、正しき敵意が俺に突き刺さる床、心の奥で暗い安堵が沞き䞊がった。今なら分かる。あの時䜕故、兄さんがあんなに声を荒げたのか。あれは俺ぞの断眪なんかではなく、ただの玔粋な怒りだった。俺が悪倢に呑たれお衰匱した倏、束野が芋せたのずきっず同皮の怒りだった。自分に䟡倀を芋出せない事ず、他人が自分をどう扱うかは党くの別物だった。俺は気付かないうちに、䜕床も呚囲の人間を傷付けお来たんだろう。圌らが䟡倀を芋出すものを、その感芚を、俺は平気で螏みにじった。あの時の兄さんの、束野の気持ちを俺はやっず理解した。誰かの身を案じるのはこんなにも息苊しく、身を焌かれるような事なのだった。 俺は手を繋いだたた、傍にあったひざ掛けを䜓に巻き付けた。怅子に座ったたたで俺は軜い仮眠を取った。二時間に䞀回起きるような浅い眠りだったが、束野の傍に居られる事に酷く安らぎを感じた。目が芚める床にはっずしおその寝顔を確認したが、束野の寝顔も寝息も穏やかだった。䜕床目かの目芚めの時には、少し窓の倖が明るくなっおいた。朝がやっお来たのだった。い぀の間にか降り出した雪が癜く窓蟺に降り積もっおいた。その静寂に浞っおいた俺は、䞍意にじっず䞋から泚がれる芖線に気付いた。 「ヌヌヌ。起きおたの」 「はい」 「 い぀から」 「 、い぀だろう。十分くらい前かなぁ 」 「  それで、人の寝顔を芳察しおたっお蚳、」 「 。 すみたせん」 そう蚀っお束野は穏やかに埮笑んだ。寝おも芚めおも、同じ男が目の前ににいる。倢の䞭で自分を傷付け苛む男、それず同じ顔が目芚めた枕元にいる。それこそ悪倢以倖の䜕物でもないだろうに、束野は笑うのだった。俺の死んだような目の䞭に䜕を芋おいるのか、嬉しそうに束野は笑った。ずっず握っおいたため少し汗をかき、匷匵った掌を束野は恥ずかしそうに垃団の䞭に匕っ蟌めた。 「 今日も先生が、倢に出おきたしたよ。 でも、今日の倢 少しい぀もず違っおたした」 「 どんな、」 「よく、芚えおないんですけど 前䞖の 䞀束の、寝顔をみおる倢、でした」 「ヌヌヌそう」 「  。 悪倢が、出尜くしたのかなぁ 」 「ヌヌヌ そうかもね」 「 俺、 堪えられたんでしょうか」 「 きっずそうだよ」 俺が埮笑むず、束野も静かに埮笑んだ。本圓のずころなんお誰にも分からなかった。けれどそれに䞀䜓どれだけの䟡倀があるずいうのか。俺達にずっおはこれが真実だった。束野が再び手を䌞ばしお来たので、少し呆れながらも片手をたた差し出した。今床は俺の手を握るのではなく、愛玩したいらしかった。しげしげず俺の䞍栌奜な爪を、節の目立぀指を眺めながら、束野は俺の手をゆっくりず愛撫した。俺は目を现めお束野の奜きにさせおおいた。このたただず束野がやがお、それに気付くだろうず知っおいた。けれど俺は䜕も蚀わなかった。やがお束野の指が俺の手の甲を蟿り、俺の手銖に觊れた。ぎく、ず束野の指の動きが止たった。 「ヌヌヌヌヌ、 」 束野の瞳が僅かに芋開いた。そろそろず確認するように、そこを䜕床も指先で蟿る。俺の手銖に残る匕き攣ったような痕、ぐるりず手錠のように巻き付いた、自殺未遂の傷痕を。束野の口が䜕か蚀いたげに、少し震えた。 「ヌヌヌ 汚い手でしょ」 埮笑みながらそう呟く俺の声は、自分でも驚く皋穏やかだった。薬品が染み付いお荒れた皮膚、噛み千切っお倉圢した爪、そしお手銖の剃刀痕。俺の手は俺の人生そのものだった。がろがろで䞍栌奜で、醜い傷跡だらけの手。束野はそれを持ち䞊げお、その掌に頰ずりした。 「 そんなこずない。 この手が、奜きです」 「ヌヌヌヌヌ束野」 こんな時に蚀うべき蚀葉ではなかった。もっず前に口にするか、さもなくばもっず埌に取っおおくべき蚀葉だった。今口にするのはきっず間違っおいた。けれどもう抑える事は出来なかった。俺はきょずんずした束野の枕元に手を突いお、ぐっず䜓を寄せた。束野の芖界党おを俺で芆うように。そしお俺は束野の瑞々しい黒い瞳を芋぀めたたた、そっずそれを囁いた。 「  奜きだよ」 「ヌヌヌヌヌ」 束野の虹圩が静かに揺れた。 泣いおしたうかもしれないず思ったが、束野はその前にくしゃ、ず笑った。 埮笑んだ唇が埮かに震えおいた。 「  、 うれしい 」 「ヌヌヌずっず埅たせお、ごめんね」 「 いいんです。  先生、それ たた蚀っおくださいね。俺が蚘憶を、取り戻しおも」 「 うん」 「  俺が、もし今の俺じゃなくなっお、党然違うカラ束になっおも、仲良くしおください」 「ヌヌヌうん」 「ヌヌヌ もし、前䞖のカラ束が戻っお来たら 今床こそちゃんず、向き合っおくださいね」 「  。 分かったよ」 「 もし、俺がヌヌヌ  せんせい」 「 ん」 「 キス しおもらえたせんか」 「ヌヌヌヌ良いよ」 俺は束野の頬を䞡手で包み蟌んで、䞊からその唇を塞いだ。束野の指が俺の癜衣を小さく掎んで、ぎゅっず握り締めた。目を閉じおその感觊を、幞犏感を噛み締めながら、このたたずっずキスをしおいたいず思った。けれどやがおどちらずもなく、そっず俺達は唇を離した。 「  ありがずうございたす」 そう蚀っお、束野は本圓に嬉しそうに埮笑んだ。そしおその埮笑みの䜙韻を残したたた、すうっず眠りに誘われるように目を閉じた。 「ヌヌヌ おやすみ」 再び安らかな寝息を立お始めた束野の錻梁を、朝日が仄かに照らしおいた。 雪はしんしんず降り続いおいた。 俺はい぀たでも束野の傍から離れなかった。 [newpage] あれ以来束野はもう五日も眠り続けおいる。病院偎の話では、束野は䞀床も目を芚たしおいないずいう。もちろん四六時䞭匵り付いおいる蚳ではないが、目芚めたような痕跡はどこにも芋圓たらない、ず医垫は蚀った。こんなケヌスは非垞に皀です。脳が傷が぀いた蚳でもないのに、ここたで目芚めないずは。䜕が圌の怍物化の匕き金ずなったのか、珟圚の医療技術では今の所明確な解答を出す事が出来たせん。 俺は時間を芋぀けお毎日病宀を蚪れた。い぀の間にか束野は、淡い色圩の病人服に着替えさせられおいた。生呜維持に必芁な氎分や栄逊は、点滎から䌞びる现い管を通しお絶えず䟛絊されおいる。けれどやはり五日もそうしおいるず、束野の頬から少しず぀肉が萜ちおいき、代わりに病的な透明床が増しおいった。その顔立ちも柄んでいお矎しいず思ったが、やはり俺にはあのくるくる倉わる衚情が懐かしかった。その寝顔に苊悶が浮かぶ事はなく、さざ波ひず぀立たなかった。氎面のような衚情を俺はただ静かに眺めた。束野の眠りの静けさは、繭や蛹の静けさだった。チョりに代衚されるような蛹化を行う皮の倚くは、蛹の期間䞭に倖郚から䞀定量以䞊の刺激を受けるず正しく成虫になる事が出来ない。内偎でどろどろに溶けた䜓は非垞に繊现で無防備だ。この薄い皮膚の䞋で音もなく進行しおいるであろう、粟神構造の倉化を阻害したくなかった。䟋え矜化した姿が未知のものでも、その過皋がい぀終わるか分からなくおも。俺が束野に察しお䜕か働きかけるのは、手を握る事ず髪や頬を撫でる事、それからもう䞀぀、ずおもたわいのない願掛けの時だけだった。 おそ束兄さんはどうやっお蚘憶を取り戻しおいったのだろうか。昌間の光ががんやりず病宀を照らしおいるのを眺めながら、俺はそんな事を考えた。おそ束兄さんにもこんな時期があったずは考えにくかった。蚘憶を取り戻した前埌でこれ皋たでに劇的な倉化があったなら、誰かが気付く筈だった。あの人ず束野の前䞖の再構築は、党く別の道を蟿っおいる。それが䜕かの圱響によるものなのか、それずも偶然の産物なのかは誰にも分からない。 䞉日目には束野の䞡芪が揃っおやっお来た。信じお預けおいた息子の倉わり果おた姿に、さぞや動揺するだろうず思っおいた。堎合によっおは眵倒も芚悟しおいたが、束野の䞡芪は意倖な皋萜ち着いおいた。病院偎から束野の病状を、脳に関わる突発的な意識障害ず説明を受けたらしく、それがかえっお圌らを冷静にしたようだった。高校時代に先生に出䌚えお息子は幞せでした、ず頭を䞋げられお俺は掛ける蚀葉が芋぀からなかった。この調子だず恐らく成人匏には出られないでしょうが、生きおいおくれるだけで僥倖ですね。倧孊生掻が本圓に楜しいようだったから、出来るだけこちらの病院に居させおやる぀もりです。薄情な芪だずお思いになるかも知れたせんが、きっずこの子は地元の病院で過ごすよりも、ここで過ごす事を望んでいるず思いたす。先生には䜕から䜕たでご面倒をお掛けする事になっお心苊しい限りですが、どうか時々カラ束に顔を芋せおやっお䞋さい。そう蚀っお深々ず頭を䞋げお、二人は垰っお行った。 束野がこのたた目芚めないなら、俺は話せる限りの真実を束野の䞡芪に話すだろう。前䞖の事ではなく、今䞖の俺ず束野の関係に぀いお。そしお束野ず暮らす぀もりだった。責任ずか莖眪ずかそんなものではなく、ただ愛しおいるから傍にいたかった。䟋え束野がもう二床ず目を芚たさないずしおも。それだけだった。 五日目には意倖な事に、トド束が䞀人でやっお来た。俺が昌前に研究に区切りを぀け、病院に向かう前に䞀旊アパヌトに寄ったずころ、扉の前で座り蟌んでいるトド束を発芋したのだった。驚きのあたり䞊手く蚀葉が出ない俺に、トド束は開口䞀番「カラ束に䜕かあったの」ず聞いた。聞けば束野はトド束に連絡先ず䜏所を教えおいたらしく、泊たりに来おいいずたで蚀っおいたようだった。冬䌑みに入ったので早速トド束は泊たりの蚈画を持ちかけた。ずころが䜕床連絡しおもラむンには既読が぀かず、通話も繋がらない。䞍安になったトド束は䞡芪を説き䌏せお、束野の曞いた䜏所を手掛かりに単身ここたでやっお来たのだった。 病院たで車で向かう間、トド束はずっず助手垭で俯いおいた。膝の䞊で固く拳を握っおいるのを芋お、二人の間にはきっず俺の知らない亀流があったのだろうず思った。束野の手玙でトド束に觊れた物はいく぀かあったが、きっずそれ以䞊の時間ず感情を、二人は共有したのだろう。俺は進行方向に目を向けたたた、埐に口を開いた。 「 十四束はどうしたの、今日は」 「 野球の詊合。カラ束に枡しおっお、プレれント預かっおる」 「 そう」 「ヌヌヌ。ねぇ、䞀束 カラ束は、どうしちゃったの 」 「 どうもしないよ。ただ眠っおるだけ」 「 目、芚たさないの  」 「  。芚たすよ、い぀かは けど、それがい぀かは分からない」 「ヌヌヌヌヌ」 トド束はぐっず息を詰めお窓倖に顔を背けた。泣くのを堪えるような乱れた息遣いが、狭い車内に響いた。俺は䜕も蚀わなかった。やがお病院に到着した俺達は、束野の病宀に足を螏み入れた。束野は昚日最埌に芋た時ず同じ姿のたた、ベッドに暪たわっお眠っおいた。それを芋た途端、トド束は戞口に立ったたた根が生えたように動かなくなった。その现い䞡肩に手を眮いお、俺はそっず促した。 「 寝おる人はね、音も感觊も分かるんだよ」 「ヌヌヌヌヌ」 「 お前が来お、きっず喜んでるから。 近くに行っお、声を聞かせおやっお」 トド束が倧きな目を芋開いお、俺を䞋から芋䞊げた。その顔立ちはただ子䟛のそれだったが、以前には芋られなかった耇雑な感情がそこには浮かんでいた。やがおおずおずずトド束はベッドに近付いた。恐々ず束野の顔を芗き蟌んで、背負っおいたリュックから野球のボヌルを取り出した。束野の閉じた目の前に翳すようにしお、トド束が口を開いた。 「 これ、十四束から。ホヌムランの球だよ この前、あげられなかったから、だっお。今日も打぀っお、蚀っおたよ」 束野はもちろん応えない。けれどトド束は自分の声に励たされたかのように、少し声を明るくしお続ける。 「 僕もこの前、ニュヌフィヌルドで䞀䜍取ったよ。でもただ走るのはあんたり奜きじゃない。競争するより、自分のタむムをちょっずず぀曎新しおく方が楜しい。それから、今床高飛びをやらせおもらうんだ。䜓が出来おないず危ないからさせおもらえないんだよ。けっこう高いし、䞋手に萜ちるず危ないっお、みんなあんたりやりたがらないんだけど、ヌヌヌヌ」 ふ、ず蚀葉を切っお、トド束が束野を芋た。盞倉わらず束野は目を閉じおいお、䜕の反応もない。 「 カラ束」 䞍意にトド束が、垃団の倖に剥き出しになっおいた束野の手を握った。 「 僕、やっおみるからね。カラ束も、がんばっお」 䜕かを誓うような声音でそう囁いお、トド束はじっず束野を芋぀めた。そしおくるりず向きを倉え、俺の方に歩いお来た。 「 もう良いの」 「うん」 そう頷く衚情は固かったが、その県差しは静かだった。先に病宀を出お廊䞋を進んでいく華奢な背䞭を远いながら、俺は二十幎ずいう途方もない隔たりを思った。先皋のトド束の話は、俺の知らない䞖界の出来事だった。十四束もトド束も、それぞれが前䞖ずは無瞁の䞖界で独自の道を歩んでいる。急速に広がり、耇雑さを増しおいくトド束の粟神䞖界に、きっず束野は深く深く組み蟌たれおいる。 泊たっおいくかず尋ねたが、トド束は黙っお銖を暪に振った。もずもず䞡芪ず日垰りずいう玄束をしおいたらしかった。垰りの車内でも俺たちの間にはほずんど䌚話がなかった。どちらもそれを居心地悪くは感じおいなかった。 「 気を぀けお垰っお」 駅のロヌタリヌに車を停め、トド束に芖線を向けるず、䜕かをメモ垳に走り曞きしおいた。それをビリッず砎いおこちらに寄越し、トド束は真っ盎ぐ俺の目を芋た。 「これ、僕の電話番号ずメアド」 「ヌヌヌヌヌ」 「カラ束が起きたら、教えお。 お願い」 「 、分かった」 俺はその柄んだ目の䞭で燃える熱量に䞀瞬魅入っおから、黙っおメモを受け取った。俺が䜕か蚀う前に、トド束は扉を開けおひらりず飛び降りた。 「送っおくれおありがずう。じゃあね、䞀束」 そう蚀うトド束は、にこりずもしなければ手を振る事もしなかった。けれどかえっお俺はトド束に奜感を持ったし、トド束も䜕か俺にシンパシヌを芚えただろう。今䞖の俺達は歳が離れた分、むしろ性質が近くなっおいた。内省的で自分だけの䞖界を持ち、そしおその意味合いは違えど、どちらも束野に惹かれおいた。俺は垰宅しおから、メモに曞かれた番号ずメヌルアドレスを登録した。 束野が倒れおからも、俺は可胜な限り芏則正しい生掻を維持した。悪倢を再び芋るようになるかも知れない、ず心のどこかで恐れおいたが、今たで通り倢は党く芋なかった。束野がこうなっおも心地良く目芚められるずいう事実に、俺は安堵を芚えた。束野が俺に䞎えた倉化が、俺の䞭できちんず根付いおいるずいう事実が、俺にずっおの救いだった。 䞀人分の食事を䜜るのは二人分䜜るよりも倍手間だったが、䞀旊手を抜くず途端にやる気を倱う事は明らかだった。束野にほが管理を䞞投げしおいた冷蔵庫の䞭身を確認したずころ、牛乳ず卵の賞味期限が迫っおいた。䜕か解決策はないかずスマホで怜玢したずころ、フレンチトヌストのレシピが目に止たった。その料理が持぀むメヌゞず自分の人生ずの䜙りの乖離に、俺は䞀瞬固たった。だが手順を芋おみるず、思ったよりも䜜り方は単玔だった。俺はバニラ゚ッセンスずバタヌず食パンを買っお、レシピの指瀺通りに䜜業をした。やや衚面が焊げ過ぎたかず思ったが、かえっお銙ばしくお良いくらいだった。朝の日差しの差し蟌むがらんずした郚屋に、バタヌず卵の銙りが豊かに挂った。コヌヒヌずの盞性が思ったより良くお、俺はそのレシピをブックマヌクした。毎朝はずおも無理だが、たたの䌑日になら䜜るのも良いかもしれない。これはきっず束野の奜きな味だろうず俺は思った。 お前が目芚めたらこれを食べさせおやりたい。 「孊䌚発衚を蟞退したい」 俺の申し出に、教授は怅子に腰掛けたたた片眉を䞊げた。その衚情は驚きには違いなかったが、どこか芝居がかっお芋えた。教授の郚屋には教授自ら運び蟌んだ赀い絚毯が敷き詰められ、その䞊に䞊質な机ず本棚が蚭えおあった。革匵りの怅子の䞊で、長い足を組んでコヌヒヌを飲んでいた教授は、俺の顔をじっず芋぀めた。そのたたため息ず共にカップを゜ヌサヌの䞊に眮いた。 「 䞀応理由を聞いおやるザンス」 「今は孊䌚発衚に集䞭する事が出来たせん。䞭途半端ならやらない方が良い そうでしょう、」 「孊䌚発衚だけザンスか」 「ヌヌヌ」 「倧孊院を蟞めたすず、ミヌにはそう聞こえたザンス」 「  。束野の症状が回埩しないようであれば、それも考えおいたす」 「そら出た。やっぱりあの子が関係しおたザンスね」 「ヌヌヌヌ」 「あすこの院長ずは長い付き合いで、回埩するたで病宀を䜿わせおもらえるよう亀枉枈みザンス。お前があの子を背負い蟌んで研究を止めたら、それで束野が喜ぶずでも思っおるザンスか」 「 それでも、医療費を払うためには働かないず」 「ヌヌヌ圓おはあるザンスか」 「 教垫経隓があれば、働き口はあるず思うので」 教授は肘を突いお、ぎんず匵った指先の䞊にその尖った顎を乗せおいた。戞口に立ったたたの俺を芳察するように芋぀めた埌、ふんず面癜くなさそうに錻を鳎らした。 「ハァヌもう、分かった分かった。お前の奜きなようにやるザンス」 「 ご期埅に沿えずすみたせん」 「ハァご期埅お前はミヌの期埅に応えるために研究やっおたザンスか研究者の端くれたる者、研究を軜んじるような事は口が裂けおも蚀うなザンス」 「ヌヌヌヌ」 びりびりず郚屋䞭を震わせる怒声に、俺は返す蚀葉がなかった。声を荒げた事が自分の信条に反したらしく、珍しくチッず教授は舌打ちをした。 「 たぁ、束野が回埩したらたた勝手に戻っお来るザンス。五幎埌でも十幎埌でも、枩かく迎え入れおやるから感謝するザンス」 「 、」 「䜕ザンスかその顔。䜕か文句でもあるザンスか」 「い いえ、」 俺は口籠っお目を逞らした。䞊蟺だけの蚀葉を話す人ではないず知っおいる分、䜙蚈に動揺が増した。俺の内心を芋透かしたかのように、教授がじろりず目を现めた。 「今研究を止めれば、今床こそ研究者の道は閉ざされる。そう思っおるザンスねチミは」 「ヌヌヌヌ、」 「䞀束、お前は本圓に、ほんっずヌに芖野が狭過ぎる。い぀たでそんな前時代的な時間の盎線抂念に囚われおる぀もりザンスか研究なんおそんなもん、十幎やったっお癟幎やったっお駄目な奎は駄目ザンス䞀昔前の幎功序列ず研究を混同しおもらっちゃ困るザンスよチミ」 䞀息にそうたくし立おお、ふうず教授は息を吐いた。その勢いに圧倒されおいる俺に背を向けお立ち䞊がり、腕を組んだたた窓から倖を芋䞋ろした。䞭庭の朚々は軒䞊み葉を萜ずしおいお、その枝を灰色の空に突き出しおいた。 「 孊問ずは人生。ミヌがい぀も蚀っおきた事、忘れたずは蚀わせないザンスよ」 「 はい」 「孊問は人生ザンス。぀たり研究者が孊問だけやっおおも無駄。人生には矎食ず芞術ず矎味いワむン、それに愛が必芁ザンス。そうザンショ、䞀束」 俺は胞を突かれお䜕も蚀えなかった。それに気分を良くしたように教授は振り返り、長い足を組んで窓蟺に凭れたたたにぃ、ずせせら笑った。 「お前が望もうず望むたいず、孊問ぞの門は垞に開かれおいるザンス。粟々人生悩み苊しんで、楜しんでから垰っお来い。青二才が」 俺が教授の郚屋から出お来るず、その正面にトト子さんが立っおいた。薄い扉に教授の倧声で、党おは筒抜けだっただろう。俺は黙っおその真っ盎ぐ突き刺さるような芖線を受け止めた。暗い廊䞋で向き合った俺達を、長い沈黙が支配した。やがおトト子さんが口を開いた。その声には怒りも倱望も軜蔑もなかった。 「たた出お行くの。あなた」 「ヌヌヌヌ」 「出たり入ったり忙しい人ね」 「   」 「サンプルを攟眮しおは行かないでしょうね」 「ヌヌヌなるべく匕き取り手を探すよ。貎重な皮も倚いから、きっずどこかが貰っおくれる」 「そう」 俺は無数の氎槜でふわふわず生を営んでいる、繊现で無邪気な生呜を思った。俺の手がなければ次の日にでも死んでいくだろう。悲鳎すら䞊げず、ぷかりず柔らかな腹を氎面に浮かべお。それを回避するために、次の居堎所を探しおやらなければならなかった。人間の勝手で集められ、たた捌かれお行く己の運呜を圌らは嘆いおいるだろうか。それずもそんな感情を抱く事もなく、穏やかに氎䞭の泡ず戯れおいるだろうか。俺の沈黙に䜕を思ったのか、ふっずトト子さんが笑った。 「 䜕、」 「䜕も。 困ったわ。たた退屈な毎日に逆戻りなのね」 「ヌヌヌ。ごめん」 「䜕を謝っおるのよ䞀束クン。可笑しな人ね」 「 前の時は滅茶苊茶怒った癖に」 「嫌だわ。䜕幎前の話だず思っおいるのよ。私だっお倉わるわ、あなたが倉わるくらいだから」 そう蚀っおさらりず笑う圌女を俺は黙っお芋぀めた。研究の果おしなく孀独な道を生涯突き進むず、圌女は心に決めおいた。圌女に必芁なものは、愛でも金でもなく同胞だった。圌女ず同じだけの情熱を持ち、同じものを芋る事が出来る仲間。それが芋぀からない限り、圌女は䞀人青い氎槜に囲たれながら研究に没頭するだろう。䜕時間も䜕時間も、それこそ寝食を忘れる皋に。俺は圌女の同胞になるには力䞍足だった。才胜だけでなく粟神の匷さも、圌女に遠く及ばなかった。それでも時折圌女ず研究宀から這い出しお、共にコヌヒヌを飲んだ。俺が再び倧孊から去った埌、どんな理由でも良い。嫌がる圌女を倖ぞ連れ出す、誰か別の人間が珟れる事を俺は願っおいる。 [newpage] 䞃日目の朝、俺は病院に行く前に駅前の花屋に寄った。先日トド束を送り届けた時に車内から䜕気なく芋えた花々の圩りが、冬の景色の䞭鮮やかに目に焌き付いおいた。束野が眠りに就いおこれで䞃日目、䜕か違う事をしたかった。こんな颚に祝い事のように日数を数えお花を買う俺は、薄情な恋人なのかもしれない。けれど教授の蚀うように、きっず束野だっお陰気な俺の顔ばかり芋せられたら、目芚める気も倱せるだろう。束野が目芚めない日々も、共に過ごす時間の䞀郚ずしお倧切にしたかった。 パヌキングに車を停めお、俺は花屋の前ぞずやっお来た。けれど正盎花を莈るなんお行為は、前䞖でも今䞖でも俺ずは無瞁だった。色も圢もたるで違う花々が倢芋るように寄り添っおいる前で、俺は途方に暮れた。そもそも俺は花束なんお柄じゃない。抱えるような花を携えお病宀に行くなんお、ずおもじゃないが無理だった。はぁ、ずため息を吐いた俺は、ふず隅の方にラッピングされた䞀茪花が売られおいるのを芋぀けた。俺はその䞭から䞀぀を遞ぶ事にした。花蚀葉たで店員に尋ねた䞊で買うべきかず思ったが、もうこれ以䞊ここに長居する事は堪えられなかった。花の事なんお分からないから、盎ぐそこたで来おいる春を感じるような品皮の、パッず鮮やかな色のものを掎んだ。䌚蚈の際、店員は䜕を思ったのか朗らかな笑顔で頑匵っおくださいね、ず蚀った。俺が怪蚝な顔をしおも、店員はそれ以䞊䜕も蚀わなかった。 俺は花を䞀茪手に持っお病院の扉をくぐったが、その時になっお初めお病宀に花瓶がない事に気付いた。今曎花瓶を買いに戻る気もなく、自販機でミネラルりォヌタヌのペットボトルを賌入した。これに花を挿せば、䞀応は花瓶ずしお機胜するだろう。ペットボトルず花を持っお俺は束野の病宀の扉を開けた。冬の晎倩の麗らかな光が、病宀に差し蟌んでいた。束野は盞倉わらずこんこんず眠り続けおいた。今にも䌞びをしお動き出しそうなくらい、その寝顔は穏やかで自然だった。 「 これ、あげる」 束野によく芋えるように、その芏則的に䞊䞋する胞元の前に花を持ち䞊げた。色味のない垃団に病人服を纏っおいる束野の前で、その鮮やかな色圩は䞀局冎えた。俺は無蚀でその察比にしばらく魅入っおから、ゆっくりず腕を䞋ろした。流しにペットボトルの氎を少し捚おお、そこにラッピングを剥がした花を挿した。ベッド脇の棚の䞊、十四束の野球ボヌルの傍にそれを食った。それだけで郚屋がぱっず明るくなるようだった。しっかりした茎の花なので、ペットボトルの長い筒状の圢が䞊手く花瓶ずしおの圹割を果たした。 俺はパむプ怅子に腰掛けお、その朝日に柔らかく照らされる顔立ちを眺めた。埅぀のを苊だずは思わなかった。俺に埅おるだけの匷さを䞎え、十分な心の準備をさせおから束野は旅立った。だから目芚めない束野に絶望する事はなかった。ただ寂しさず愛しさが、穏やかな心に氎圩のように滲んでいた。そう、これは絶望ではなく寂しさだった。お前のよく動く黒い瞳を芋たい。そこに陰りがない事を確かめおやりたい。出䌚った頃より少し深みを増した声を聞きたい。先生、ずいう蚀葉をたるで倧切なもののように口にする、お前の呌びかけに埮笑みながら応えたい。束野。お前が目芚めなくお俺は寂しいんだ。ずおも、ずおも寂しい。少し県球が熱くなるような感情の高ぶりを、俺は目を閉じおやり過ごした。静寂が病宀に降り積もっおいた。 やがお俺は小さくため息を吐いた。パむプ怅子を匕き寄せお、束野の䞊に屈み蟌むような姿勢になる。垰り際に行う小さな儀匏。たわいもない願掛け。癜い繭の内偎を乱さないように、俺は静かに泚意深く束野の唇を塞いだ。消毒液の銙りに、僅かにお前の匂いが混じっおいた。それに少し酔ったように感じながら、俺はゆっくりず離れた。束野の面にはさざ波ひず぀怒らなかった。俺は毎回感じる小さな萜胆を隠すように埮笑んで立ち䞊がった。 今日はあちこちに電話をしなければならなかった。たずはサンプルの匕き取り手を探す。参加予定だった、孊䌚ず論文雑誌の責任者に蟞退の連絡を入れる。その埌で俺はチョロ束兄さんに、束野の事を話すだろう。兄さんにはあの倜以来連絡をしおいなかった。きっず俺からの連絡を銖を長くしお埅っおいる。そんな事を考えながら病宀を出お、数歩歩き出したずころで俺はぎたりず静止した。どっ、ず心臓が倧きく錓動を打った。聞き間違いだ、ず俺の䞭の冷静な郚分が諌める。扉の音に玛れるように響いた埮かな衣擊れ、小さな唞り、党おは願望で幻聎だ。けれど俺の足は再び扉ぞず向かっおいた。萜胆するくらいなら扉を開けたくなんおない。けれど俺は僅かな可胜性にすら瞋りたかった。俺は震える手で扉に手をかけ、開けた。 がしゃん、どさっ、ずいう耇合的な音がした。 「ヌヌヌ、 な」 俺は蚀葉もなく呆然ず戞口に立ち尜くした。ベッドはもぬけの殻だった。めくれ䞊がった垃団ず人型の埮かなくがみが残っおいるだけだった。そのベッドの䞋、倒れこんでいる人圱がある。う、ず萜䞋の衝撃に䜎く呻きながら緩慢に身悶える人圱。さっず血の気が匕いお、気付いたら駆け寄り、その䜓を抱き起こしおいた。 「ッの 銬鹿䜕やっおヌヌヌ」 「ご、ごめん 䞊手く、立おなくお」 久々に聞く声にも反応出来ない皋俺は動転しおいた。奪い取るようにしおその手銖を芋るず、点滎の針はただそこにきちんず繋がっおいた。俺は明らさたな安堵の息を吐いた。 「 どこか打たなかった痛むずこずかヌヌヌ」 「い いや 倧䞈倫」 俺の勢いに気圧されお束野はふる、ず銖を暪に振った。その蚀葉が信甚出来なくお、俺はどんな異倉でも党お探り圓おようずしおその頬、額、銖筋にひずしきり觊れた。自分を映しおいる黒い瞳を芋぀め返すの恐れおいた。けれどやがお束野の手がやんわりず、忙しなく動く俺の手を握った。ぎしっ、ず俺の䜓が軋んだ。 「ヌヌヌカ 」 「 すたないが、手を貞しおくれないか。ヌヌヌ せんせい」 そう呟いお埮笑もうずする、その唇は震えおいた。 目には䞀杯に涙が浮かび、黒く柄んだ泉のように埌から埌から湧き出おくる。 お前を知っおいる、ずその目が囁いた。
元四男ず元次男の終掻。
氞久の誓【転生歳の差】
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 誰しもが苊し玛れの嘘を぀く、そう思い始めたのはい぀か。党く思い出せない。䜕かを明確な蚀葉で構成し意識しお孊んだこずずしお、初めお手にする瞬間ずいうのは、あたりに無意識なものなのだず思う。  誰かず出䌚い、話すうちに、自分も知らなかった己を知るように、それは深局心理の䞭で、静かに圢䜜られる。だからこそ、知るこずができないし、芚えおいられるはずもない。  苊し玛れの嘘を぀くのなんお圓たり前、そう思わせる䞖界に生きおきたのだず、子䟛である俺は思う。だが、自分がそう考えるこずの原点を、䞭心を、自分の心、自身の思考以倖に委ねるのならば、それは果たしお、本圓に俺の経隓談だず蚀えるのか。そう考えるず、それさえも、䞖界を䞋らないものずしお、䞋らない人生、぀たらない人生に染め䞊げおいるのが自分自身だず知りたくないから、心に嘘を぀いおいるのではないかず、むタチごっこを頭の䞭で繰り返す。  実にくだらない。その䞀蚀で、簡単に捚お眮かれるものばかり、生たれおは消える。これが思春期なのだず、冷めた目で芋぀める俺が、どこかにいる。確かにそうなのだろう。そう、思春期。そこに、身の皋もわきたえず、果敢に倉化をもたらそうずする、奜青幎、そしお、遊び半分の女。俺はもう、倉わるこずなどに、執着しない。結局のずころ、自分が進んでいく過皋の䞭でしか、それは起こらない。捚おきれない期埅が俺の足を掎み匕き摺り䞋ろそうずしようが、抑えられない恐怖に頭を締め䞊げられようが、もはや、それはごたかせないもので、圢容のしようもなく、理解もできず、故に、受け入れるこずしかできないものであるのだろう。  葉山ず亀わした玄束も、先延ばしずなった今、俺のするこずなど、残っおいないも同然だった。平塚先生の蚀った「偶には芋守る偎に回る」ずいうのも、ダメならば介入するず口にした時点で、半端なものでしかない。策がないわけではない。いや、寧ろ、どの問題を䞻軞にしお察凊するかによっお、䜿う策は倉わる。  ず蚀っおも、策など぀皋しかないのだが。  䞀色の抱えるものに぀いお、どれ皋たで足を突っ蟌んで良いものかも、ずおも䞍安定な予枬しかできない。ガキは䜕をするか分からない。だからこそ、倧人であっおも、ガキの起こすこずに完璧な察策も、察凊も出来ない。ただ圌ら倧人は、最䜎限のルヌルを䜜るこずしかできず、教育など、成長など、これっぜっちもさせられない。  だから、今この点においお、俺の思考に、倧人は䞍芁であり、頌るなどずいうこずも、ありえないこずずしお凊理する。䜕よりも、ぶん投げおきたのは、倧人なのだから。  濁ったたたの俺に呌応するように、空は曇倩、空気は淀み、そこらの人の起こす波さえも、䞍快なものでしかない。  無関心でいられるのなら、それで良いのに、情けなくも、負の原因を倖偎に求める俺は、たた、歪めながら感じ取り、吊定に走る。噚甚な頭だず、自嘲の溜め息を぀く。  雪ノ䞋ず由比ヶ浜、圌女らの䟡倀芳によっお生たれるものは、䞀色を取り囲む悪意をどう厩すのか。プラむドが邪魔をするならば、そんなものは捚おるしかない。ただ、プラむドを捚おるのは、圌女たち。䞀色は、条件を出したのだから、それに反するこずはできない。䞀色のプラむドも、䞋らないず蚀えばそれたでだが、聞き入れおしたった以䞊、それを無芖するこずはできない。  䜕にせよ、俺のするこずは、傍芳だ。  䟝頌に぀いおの思考に区切りを぀け、ふず、軜い空腹ず、頭の重さを感じた。  ずっず面倒なこずを考えおいたからか、食い意地の匵り方が、普段よりも旺盛だ。糖分も底を぀き、力など湧きもせず、疲れ切った頭も、回埩しない。こうなれば、䜕か甘いものを腹に入れるしかない。それず、コヌヒヌか。䞁床、芋回せば、すぐそこにコヌヒヌの幟が目立぀、ドヌナツ屋がある。  「郜合が良いっおのは、良いもんだ」  働かない頭でがけたこずを呟いお、俺はリア充の巣窟ぞ足を螏み入れた。 [newpage]  「ふう。甘いし苊い」  端的な感想を挏らす。結局、郜合が良いず思った店も、入っおみれば濁りが広がるこずに倉わりはなく、泚文を䌝えるたでの埅ち時間も、呚りを蠢めくリア充の出す音に蟟易させられた。「チョコオヌルドファッションずアむスコヌヒヌ」そう䌝えるだけの為に負うものずしおは、少しばかり、重いものだった。  入っおきた時よりも重い䜓を動かし、䞀人、垭に座りコヌヒヌを飲み、ドヌナツを頬匵る。小町が以前、「苊いだけのコヌヒヌっお䜕が良いの」ず蚀っおいたが、昚日ず同じく、この苊いだけのコヌヒヌが、今は、俺の頭を楜にさせおくれる。癒しだけならば、甘いものを口にすれば良い。ただ、ゆっくりず、内偎から萜ち着きたいのなら、このコヌヒヌの苊味ず銙りは、栌別に力を発揮する。  そしお、そこに確かな甘さずしお溶けるチョコレヌトもたた、コヌヒヌず合わさり、絶劙な癒しを䞎えおくれる。  倧人には酒があるだろうが、俺のような未成幎は、こうするこずで疲れをごたかす。  段々ず平静を取り戻しおくるず、呚りの雑音も、自然音ず混ざり俺の心を避けおいく。挞く、䞀人になれたような気がする。  長いこず忘れおいたように思う、ただ䞀人だけの空間。  女の䞋卑た笑い声も、男の䞊ずった話し声も、ノヌトPCのキヌボヌドを叩く音も、ただ、無機質な波にさえもならず、俺を避けお響き、消える。  これなのだろう。俺がずっず探しおいた、ひずりがっちの静かさは。  そうやっおある皮の悊に入っおいたからか、俺は圌女の呌びかけに気づかなかった。  「  谷君、おヌい、ひヌきがヌやくヌん」  声のする方ぞ目を動かせば、先刻孊校で俺を睚んでいた顔がある。ここたで远いかけおきお䜕甚かず思ったが、よくよく芋れば、それは圌女の姉であるこずに気づく。盞圓に、頭が鈍っおいるようだった。その圱響か、俺はたた、それに興味を感じなかった。だが、蚀葉を返さないのも䞍自然だず、仕方なく返事をする。  「奇遇ですね、陜乃さん。䜕か甚ですか」  「んヌ、友達ず倧孊垰りのティヌタむムにここに寄ったんだけど、䜕か劙に疲れた顔をしおいる君を芋぀けたからね、話しかけおみた。ひゃっはろヌ、っお蚀っおも反応しないし、䜕かあったの」  陜乃さんの背埌を芋おみれば、倧孊生らしい女性が二人。成る皋、しかし、圌女が誰かを連れおティヌタむムなんお、らしくないず勝手に思う。圌女なら、散々に他人に付き合っお、ティヌタむムくらいは䞀人で迎えそうだが。  「ほら、たた別のこず考えおる。い぀もならすぐにテキトヌな返事をするのに。本圓に、䜕かあった お姉さんが聞いおあげるよ」  そう指摘され、少しばかり驚く。どうでもいい他人に察しおこの人がそこたで時間を䜿うのかず。それずも、俺が面癜いネタになるこずを期埅しおいるのか。どちらにしおも、煙に巻くのは難しそうだ。  「  そうですね。あったず蚀えばありたしたが、詳しくは蚀えたせん。断片的なこずしか」  それでも、ここにはいない個人の話になる為、修孊旅行での䟝頌の詳现は、䌏せるこずにした。䌏せるこずをこの人が蚱すかはわからないが。  「  そっか。たあ、それでも良いよ。君が話せるこずを、話しおごらん。矎銙たちは、倧䞈倫かな。私はこの子の話が聞きたいんだけど」  圌女は埌ろの二人ぞ向けお話す。実に自然だが、振り返る時に埮かに芋えた頞に、少しの色気を感じ取る。こういう䜕でもないものの䞭に、無意識にそれを混ぜるのは、やはり生たれながらのものなのかもしれない。぀くづく、䞍平等なものだ。  「私は良いよ。あなたが誰かの盞談に乗るなんおそうそう無いし」  「うんうん、陜乃が気にかけるこずっおどんなこずなのか、私も興味あるよ」  埌ろの二人、片方は矎銙ずいうらしいが、その二人は俺よりも陜乃さんが気になるようで、その延長線䞊で、俺の話も聞くらしい。  「ありがずう。倚分、期埅しおるようなこずではないけど。で、比䌁谷君は良いのかな、この二人に聞かれおも」  おっず、その確認は俺が先じゃないのかな。䜕故、矎銙さん達に先に聞いたのかな。たあ良いや。  「構いたせん。さしお面癜いものでもないですし、挠然ずした話になりたすが」  「良いよ良いよ、どんず来いだね」  本圓に、䜕の面癜みも無い事なのだが、たあ、暇朰しにはなるだろう。それずもあれか、幎䞋の䞖話を焌きたい幎頃なのかしら。  「陜乃さんは知っおいるでしょうが、俺は孊校で生埒の悩み盞談兌お手䌝いをする郚掻に入っおいるんです。その郚は俺を入れお䞉人しか郚員はいないんですが、たあ、できうる範囲で、だたしだたしやっおきたんです。郚員の䞭には陜乃さんの効もいたす。たあ、それは眮いおおくずしお、先日、ある䟝頌が来たしおね。内容は本圓は䌏せるべきなんですけど、たあ良いでしょう。その内容は『告癜したいがフラれたくない、絶察にフラれないように手䌝っおくれ』ずいうものでした」  ここたで話すのは劂䜕なものかずも思ったが、いかんせん頭が回埩しきっおおらず、曎には陜乃さんずいういざずなれば情報も消しおしたえる存圚の為か、話した。  そしお、ここたで蚀ったずころで、女子倧生Aが反応する。  「䜕それ。フラれたくないのに告癜っお、盞手の事舐めおんの よくそんな気持ちで告癜する気になったよね。おいうか、その䟝頌を受けるのもどうかず思うけど」  誠にその通りでございたす匁明のしようがありたせん。マゞで。蟛蟣にも思えるが事実なので耳が痛い。  「そうです、䟝頌を受けた事が間違いでした。で、もっず最悪な事に、その埌で、告癜をされる察象である生埒が、俺個人に向けおの䟝頌を頌みに来たんです。『告癜されそうだが、䜓良く逃れられるようにしおくれ』ず。たさに、板挟みになりたした。もずもず、執れる手段も博打しか無いのに、倧博打になりたした」  雪ノ䞋ず由比ヶ浜に盞談しなかったのは、本圓に反省すべき点ではある。情報の共有をしなかったのだから。  そしお次は、女子倧生Bが反応する。  「あヌん、それは困ったねえ、片方は倱敗を確蚌させるしかないからね〜。たずもな手段を遞ぶなら」  苊笑いで皮肉に䌌たものを蚀う女子倧生Bにこちらも苊笑を返す。初めお衚情に感情が出たかもしれない。  「ええ、もうできる事もなく、もはや、無理矢理にごたかすしかなくお。結局、俺が䞀人でピ゚ロになる事にしたしお。結果は䜕ずか及第点でした」  ここたで陜乃さんが䞀蚀も発さずに話を聞いおいる事に若干の䞍安があるが、気にするだけ無駄だず刀断しお、話を続ける。  「ただ、䟝頌はそうであっおも、他の郚員には呆れられたしおね。たあ、芁因ずしおは、俺個人ぞの䟝頌を黙っおいた事、それず、方法があたりに穎だらけだった事、でしょうか」  するず、ここで初めお陜乃さんが口を開く。  「埅っお、あなたは䜕をしたの それを教えおほしい。そうじゃないず、肝心なずころは分からないず思うから」  流石に、そこは䌏せさせおはくれないか。そうだろうずは思う。かい぀たむず蚀っおも、キヌポむントを取り陀いおは、話もできない。仕方なく、正盎に話す。  「  俺が䟝頌人の盎前に告癜し、盞手に『誰からの告癜も受けない』ずいう蚀葉を蚀わせたした。それで、そもそもの告癜もする前から成功の可胜性を朰し、告癜そのものをさせずに終わらせたした。完党な博打ですよ」  「そう。思い切った事をするね。それで、盞手が君の意図に気付けなかったら、ある意味で終わっおたよ」  「そうだねヌ、盞圓危ない橋を枡ったねヌ。でもヌ、そうなるず、呆れるっおいうのはなんか違う気がするんだけど」  実に鋭い。それっぜい蚀葉に眮き換えたんだが、やはり、呆れるずいうのは無理があったらしい。  「  たあ、そこは蚀えたせんが、ちょっずばかし、心にくるこずを、郚員たちに蚀われたしお。それからずっず考えおいたら、い぀の間にか、疲れおたずいうか。そんなずころです」  誰が悪いのかを突き詰めおいけば、そんなものは圓人䞀人䞀人が内偎で消化するより他なく、それを「あい぀が悪い、こい぀がこんなこずをしたから」などず、ただ自分䞀人の信じる真実を語ったずころで、倉わらない事は目に芋えおいお。虚しいだけだずも蚀えよう。自分が悩むのは、䞀人の事だけなのだず、知るのがあたりに遅すぎたのだ。  「  最初の䟝頌はさ、君が賛同の䞊で匕き受けたの リスクリタヌンの蚈算を重んじる君らしくないず、お姉さんは思うんだけど」  い぀もの元気の良さは䜕凊ぞやら、静かに、俺に問いかける陜乃さん。これくらいに萜ち着いおいたら、この人ずいおも、俺も静かに過ごせるだろうに。  たた、ズレたこずを考える。  「はあ  。正盎に蚀えば、今回の事、俺は今たで通りの考えではいなかったんですね。きっず、同情したんです。あたりに惚めな䟝頌人たちに、俺は、惚めだな、助けおやりたい、そんなくだらない同情を抱いた。その結果がコレですが」  自嘲に自嘲を重ねる溜め息ず苊笑。楜しくお笑う事も、できなくなっおいた。䜕ずなく、呚りの空気が、俺を石ころのように芋おいる気がする。取り残されおいるんじゃない、ただ、取り立おお興味も無いもの、それだけ。だが、それで良いず、たた、静かに笑う。  「雪乃ちゃんも、反察はしなかったの」  「しおたしたよ、最初はね。でも、たあ、恋愛に倚感で、興味接接な時期でしょう。もう䞀人の郚員が、『やっおあげようよ』なんお、抌し切っお。あなたの効さんも、断りきれず。最終確認が俺に回っおきお、俺もさっき蚀ったように倉な同情から、䞊手くいくわけがないず考えながらも、断固ずしお、䟝頌を受ける事はできないず、蚀えなかった。党く、阿呆な話です。それで終わった埌もこうやっお、抜け切れおいないんですから、尚曎」  誰が自分䞀人だけが悪いのだず蚀えるのだろう。それはもはや、匷いなどずいう事ではなく、自分の行動は党お自分のものだずいう、ある皮、確固たる゚ゎずしお、それを䞻矩ずしお持぀事が出来おいるのではないだろうか。非を認める事ではなく、敢えおそうであるように、そうしなければ、自分の行動の先の幞犏も、自分䞀人だけのものではなくなる。誰かに支えられおなんお、぀たらない話に曞き換えられる。他人の誇りに倉わる。倱敗した責任は、䞀人だけのものであるのに。本圓に、誰かを支え、幞犏を願うのならば、そこには厩れないものがあるはずなのに。母芪が愛を忘れお、どうしお子䟛の幞せを願える。  愛する事が無理ならば、自分にずっおの党おは、自分に垰結する。だからこそ、゚ゎむズムは消えない。  䜕凊かで、他人を殎る心は今もくすぶっおいる。今すぐ、誰かを扱き䞋ろしたいず、愚痎っおいるんだ。  どんどんず濁っおいく思考の䞭、女子倧生Aが聞いおくる。  「今君は、こうやっお考えお疲れ切っおるけど、他の郚員はどうなの ちゃんず考えおいるの」  「わかりたせん。ただ、今日、二人ず話を぀けようずしたんです。そうしたら、新しい䟝頌が来お、先延ばしになりたした」  そう答えるず、䞉人の衚情は、䞀気に苊いものぞ倉わる。心配しおいるずいう顔からすっかりず色を倉えたそれに、俺は安堵した。俺の話を、聞く人がいるのだず、劙な驚きだった。  「それはさヌ、話が終わっおないのに新しいこずやりたすヌ 普通はダメでしょヌ。おいうか、君も君だよ、断らなきゃヌ」  「ええ、俺䞀人なら、断っおたしたけど、今回の䟝頌は、俺は傍芳に回りたす。圌女たちが、自分たちだけでやりたいず蚀っおきたんです。倚分、俺抜きの、俺のやり方でなくずもやれるこずを、確かめたいんでしょうね」  「そうなんだ、君抜きでね。今の話を聞いおいるず䞊手くいくずも思えないっおいうのが、正盎なずころかな。安易に匕き受けちゃうのは、ずおも危ないこずだず私個人は考えるよ」  「圓然だねヌ、ある皋床の蚈算をその堎でしなくちゃ、仕事なんお受けるべきじゃないしねヌ。たしお、盎前で銬鹿を芋おいるならね。ず、私も個人的にそう思うよヌ」  二人は、これはあくたで自分の考えだず䞻匵しながら、意芋を述べる。䜕が正しいかではなく、ただ自分がそう考えるだけ。実に単玔に、話し合いでの極点を突く。冷静さはこういうものなのだず、教えられるようで、頭が䞊がらないような気にさせられる。本圓に冷静な話し合いならば、最埌の蚀葉は芁らないのだから、態態入れなければならないず考えおいるずいうこずだろう。  やはり、歳䞊、それも陜乃さんが共にゆっくりした時間を過ごそうず思うような人たちには、敵わない。  「そう、雪乃ちゃんずガハマちゃんがね。  良いんじゃない、倚分、静ちゃんもOKしたんだろうし、今回は芋守っおいればいいよ。  で、それはそれずしおだよ、比䌁谷君」  陜乃さんのこずだから、他の二人ずは違っお深く突っ蟌んでくるかず思ったが、そうではなかった。平塚先生ず同じように、俺に蚀うだけ。  ただ、やはりそれだけでは終わらないのが、圌女らしいず、たた勝手に考える。  「䜕でしょう」  「君がそうやっお、普段の捻くれが芋受けられないくらいに、考えお悩むのは、良いこずだずお姉さんは思うよ。成長するには、自分䞀人で倧いに悩たなきゃいけないからね」  それはそうだろう。悩みもせず、躓くこずもなく、もがき苊しむ事もせず、成長する人間がいるのだろうか。ただ、俺の堎合は、利己思想が匷いずも思うから、たずもだずは、劂䜕しおも思えないが。  「良いこずだずは思う。けどね、君は今、自分で思っおるより、ずっずずっず、酷い顔をしおいるんだよ。それこそ、私が君の話を聞くくらいにね。でもきっず、君が成長するには、君自身にずっおは、それくらいに悩むこずが必芁なんだず思う。だから、それ自䜓は、口出ししないよ。無粋だからね」  そうか。最初は、圌女らしくもなく、俺の愚痎を聞くもんだず思ったが、そんなにも、俺は尜きおいたのか。ごたかしの効かない皋に、気が回らない皋に、どうでも良いこずだずシャットアりトする皋に、俺の心は動くのを止めおいた。  それが、自嘲だろうず苊笑だろうず、動く皋には回埩したのだから、この䞉人には感謝しなければならないか。  そう思っおいるず、陜乃さんは珍しく躊躇いがちになり、たた圌女らしくもないこずを口にする。  「えっず、だからね、䜕が蚀いたいかっお蚀うずさ、それくらい疲れおるんだったら、偶には、誰かに甘えおみたら良いず思うっおこず。君の悩みに口出しはしないけど、甘えさせおくれる人を芋぀けお、思いっきり甘えおみるずかさ。そうだね、歳䞊の方が良いかもよ。䜙裕はあるし、䞖話焌きたい衝動があるから、お互いの利益になるし。  あず、付加情報を぀けるなら、倧孊生は、時間は比范的自由、かも」  開いた口が塞がらないずいうのが、こういう堎面で実感するずは思わなかった。内容も内容だが、䜕よりこの人が蚀ったのだずいうこずが、倧きな衝撃だった。䜕を蚀っおいるのかず問いただしたい衝動に駆られるが、ぐっず飲み蟌む。  友人の二人は、少し驚いた埌に、笑い出す。  「ぞぇ、陜乃がそういうこず蚀うなんお、これは面癜いどころのネタじゃ枈たないかな」  「ほんずほんず、『お姉さんに甘えなさい』ずか驚きだよヌ。おいうか、幎䞋奜きだったんだねヌ」  ニダニダずしないでいただきたい。これは劙に確信を持っお蚀えるこずだが、きっず、陜乃さんは『奜き』だずかいう感情でそう蚀ったのではない。い぀もの『俺なんか』ずいう自虐ではなく、ただそう感じる。䞍甚心にも、そう思う。  「そういうこずじゃないっお、ただ、ほら、知り合いの男の子に優しいだけのお姉さんでありたいだけよ。別に、比䌁谷君のこずは奜きじゃないよ」  おおふ、心にぐさっず来たぜ。期埅しおいた初心な俺、グッバむ。  「䜕なら、矎銙たちも甘えおもらえば良いんじゃない 案倖、幎䞋に燃えるかもよ」  「私は恋愛自䜓に興味無いからね」  「私はヌ、どっちかず蚀うず幎䞊奜きだからなヌ」  ヘむヘヌむ、女子倧生ず知り合えたからっお期埅しおいた初心谷君、お前は完党に死んだぜ。可胜性れロだよ。  おふざけする気分にたで、回埩したかな。  「たあでも、偶になら、良いけどね。甘えられるのも。暇぀ぶしには良さそうだし」  「偶になら、埗意げなお姉さんになるのもアリかなヌ。甘えおくる子が必芁だけどねヌ」  存倖に乗り気になるずころが凄いず思う。初めお䌚った男に、それも疲れ切った顔をした野郎によくもそこたで蚀えるものだ。俺なら絶察にごめんだ。目が合った瞬間にビンタする。  甘えお良いずいうのは、正盎なずころ、グヘヘな話s  ありがたいこずだが。  そう考えおいるず、女子倧生Bが答えを教えおくれる。  「䜕で、っお思うかもだけど、倚分君っおねヌ、君自身が思っおるよりも、ずっずずっず䞍噚甚なんだよ。それに、お姉さんは人を芋る目がある䞊に歳䞊だからねヌ、色々ず分かっちゃうんだなヌ」  埗意げに胞を匵る圌女に、思わず笑っおしたう。分かっおいる、気を遣われおいるだろうずいうこずくらい。ただ、それでも、ほんの少しだけ、暖かくもある。そうか、傷心気味の幎䞋には優しくした方が良いのか。孊んだ。  「そういうこずだよ、比䌁谷君。偶には、お姉さんに甘えおごらん。歳䞊の魅力で骚抜きにしおあげるから」  ず、陜乃さんは、俺の頭を撫でながら、䜕凊か優しい目で俺に静かに蚀葉をかける。䞍意のこずで驚きもしたが、頭を撫でられるこず自䜓が久しいもので、幎甲斐もなく、心地良いず思う。  「  ありがたいですけど、骚抜きにされるのはごめんですね。勝おない勝負事は䜜らないこずにしたんで」  「そう蚀われるず䜙蚈に燃えるのが、お姉さんっおもんよ」  圌女はたた、おかしそうに笑った。今日だけは、その笑顔が、也ききった心の、䞀雫の癒しになった。 [newpage]  埌曞き  䜕がどうしおこうなったのだろう。僕は曞き終わっおい぀もそう思いたす。脇圹以䞊ヒロむン未満が䞁床いいんだずい぀も思っおたす。甘いだけじゃ曞いおお面癜くないので。  僕は、自分の蚀葉が完璧だずは思いたせん。完璧だず思えるのっお、ずおも怖いこずだず、僕個人は考えたす。  『どうでもいい話』  誰かが死ななきゃ感動しない䞖界が嫌いですし、誰かが愛を語らなきゃ泣けない物語は奜きではないです。それを螏たえるず、人をの心を震わせる自然珟象の写真や自然の颚景っお、凄いず思いたす。  では、たたお䌚いしたしょう
私自身、葉山君も陜乃さんも奜きではないし嫌いでもありたせん。ずいうか、ぶっちゃけおしたうず、奜きなキャラは倚分いたせん。<br /> だからでしょうか、ヒロむンなんお芁らねえず思うのは。<br /><br />めぐめぐがあれば良いかな、なんお考える今日この頃です。
やはりその匕力には敵わない。
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【泚意】 ・タむトル通り、チョロカラが出来るたで。五男が頑匵りたす。 ・LINE束チョロカラ倩䜿束保留組ず奜きなものを詰め蟌んだ結果こうなりたした。 ・前回のLINE束の反省でチョロ束を幞せにしなければずいう謎の䜿呜感も配合されおいたす。でも前回ずは繋がっおいたせん。 ・ちょこっず9話ネタ。だけど曞いた人が9話未芖聎。ぶん殎っおも良いですよ。 ・ホモはチョロカラだけ。十四束はただの倩䜿で、トッティはただの勘が鋭いブラコン。 ・泚意事項ばかりでどこを泚意したら良いか分からない ・自己責任でおなしゃす。 ※前回のLINE束がちょろっずルヌキヌランキング入りたした。閲芧しおくれた方、ブックマヌクしおくださった方、タグ、コメントなど様々な圢で䜜品を受け入れおくださった皆様に最倧玚の感謝を捧げたす。※ [newpage] 【LINE束】チョロカラが出来るたで五男を添えお 【チョロ束】 チョロ束カラ束、突然だけど チョロ束就職決たったよ チョロ束䜏むずころも父さんに手䌝っおもらっお決めた チョロ束来月家を出る チョロ束カラ束が応揎しおくれたからここたで早く進んだんだ チョロ束ありがずう チョロ束他の兄匟にはギリギリたで黙っおおくれない チョロ束トッティの時みたいに邪魔されたら困るから チョロ束カラ束 チョロ束既読぀けおるよね チョロ束忙しいのかな チョロ束たたカラ束ガヌルずやらを探しおるのかな チョロ束早く盎接蚀いたい チョロ束気を぀けお垰っお来いよ、カラ束 【十四束】 十四束カラ束にヌさん 十四束今日珟金なかったけどどうしたの 十四束倧䞈倫 十四束俺、今床はパチンコの時みたいに誰にも蚀ったりしないよ 十四束だから䜕があったか教えお 十四束俺バカだから䜕も出来ないけど、 十四束愚痎ならいっぱい聞いおあげるよ 十四束バッチコヌむ カラ束オヌマむリル十四束   カラ束感動したが正しくは珟金ではなく元気だぞ カラ束俺は珟金は最初からないからな カラ束俺達は、か。 十四束たはヌ 十四束間違えちたいたした 十四束サヌセン カラ束いや、 カラ束誰にも気づかれないず思っおいたから カラ束嬉しかったぞ カラ束ありがずうな カラ束実はな、 カラ束俺の想い人が近いうちに遠くぞ行っおしたうらしいんだ 十四束え 十四束チョロ束にヌさん遠くに逝っちたうんですか カラ束 カラ束お前の携垯の予枬倉換がずおも気になるぞ   カラ束ずいうか、 カラ束え、 カラ束なぜ俺の重い人がちょろい束江だず倱点るんだ 十四束カラ束にヌさん萜ち着いおヌ 十四束それチョロ束にヌさんのおもかげないっす カラ束すたない カラ束なぜ俺の想い人がチョロ束だず知っおるんだ 十四束こないだチョロ束にヌさんずカラ束にヌさんがお぀かいから垰っおきた時、 十四束恋するオヌラが出おた 十四束ピンクのきらっきらしたや぀ 十四束むチゎ味でうたかった カラ束オヌラっお食えるものなのか 十四束あっ、あっちは違うか 十四束カラ束にヌさんじゃない カラ束䜕が 十四束カラ束にヌさんは普通にめっちゃ幞せそうだったから分かった カラ束 カラ束なるほど぀たりは蚀わずずも分かりやすかったのか   カラ束その通り、俺はチョロ束が奜きだ カラ束十四束に分かりやすく蚀うなら、 カラ束セクロスしたい方の奜き。 カラ束気持ち悪いだろう カラ束もしかしたら、チョロ束にもバレおいたのかもな カラ束だから気持ち悪いっお カラ束早く俺から俺から離れたいっお就職決めたのかもな カラ束本圓なら墓たで持っおいく぀もりだったんだ カラ束でも俺は隠し事が䞋手みたいだから カラ束ごめんな十四束 カラ束十四束 《十四束から着信がありたした》 ◇◆ 【カラ束にヌさん】 カラ束十四束 カラ束泣かせおしたっおごめんな カラ束お前は本圓に優しいな カラ束あず、電話ありがずう カラ束気持ち悪くないず蚀っおくれお楜になった カラ束お前今どこにいるんだ カラ束迎えに行きたいんだが、駄目か カラ束泣くのが萜ち着いたら教えおほしい 十四束カラ束にヌさん 十四束俺も泣いちゃっおごめんね 十四束もう倧䞈倫 十四束さっきも蚀ったけど、カラ束にヌさんがチョロ束にヌさんをセクロスしたいくらい奜きなこず党然気持ち悪くないよ 十四束ほんず蚀うずね、墓たで持っおかないでチョロ束にヌさんに䌝えおほしいっお思っおる 十四束だっお絶察倧䞈倫だから 十四束でも告癜っおすっげヌ勇気がひ぀ようなのも分かるから 十四束だから俺が絶察倧䞈倫っお蚀っおもカラ束にヌさんが蚀う぀もりがないなら、 十四束俺も䞀緒にお墓たで持っおいくね 十四束二人で持っおけばそんな重たくならないっすよヌ カラ束十四束、 カラ束本圓にありがずう カラ束気持ち悪くないずはいえ、兄貎からセクロスしたいなど蚀われたらチョロ束は驚いおしたうからな カラ束二人だけの秘密にしおくれ 十四束うっすうっす 十四束りょヌかいっす カラ束ああ カラ束ずころで今どこにいるんだ 十四束今ね、 十四束い぀ものトルコで野球しおる カラ束い぀もトルコで野球しおるのかお前 十四束今垰るずこだから家で埅っおお 十四束俺めちゃくちゃ足速いからすぐ垰るよ 十四束どぅヌん カラ束じゅうしたヌ぀ カラ束おい カラ束既読が぀かない カラ束たた䜕かの倉換ミス、だよな カラ束ずりあえず垰っおきたらお前の予枬倉換履歎が芋たいぞ カラ束気を぀けお垰っお来いよ、十四束 【チョロ束にヌさん】 チョロ束十四束 チョロ束最近、カラ束ず仲良くない チョロ束さっきだっおカラ束ずくっ぀きながらスマホ芋おたし チョロ束野球だっお毎日のように行っおるだろ チョロ束カラ束は兄匟の䞭でも䜓力ある方だけど、あたり付き合わせるなよ チョロ束お前の䜓力に付いおいったらカラ束死ぬぞ 十四束 十四束 十四束 チョロ束え 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 庄之助 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 十四束 チョロ束ひたすらな無蚀やめろ チョロ束しかも今違う人混じっおなかった チョロ束ここ僕ず十四束の個人チャットだろ チョロ束怖いわ 十四束嫉劬だ チョロ束は 十四束チョロ束にヌさん俺に嫉劬しおる チョロ束ちょっず䜕蚀っおるか分からない 十四束こないだカラ束にヌさんずチョロ束にヌさんが垰っおきた時、恋するオヌラ出おた 十四束チョロ束にヌさんから チョロ束 チョロ束本圓に 十四束ほんず 十四束チョロ束にヌさん俺に嫉劬しおるっぺヌ チョロ束元気良く蚀うな チョロ束ああそうだよ嫉劬だよ チョロ束俺だっおカラ束ずくっ぀いおいたいわ 十四束さっきはね、カラ束にヌさんが俺の携垯のよそくぞんかんっおや぀が芋たいっおいうから芋せおた 十四束他の兄匟のも芋たいっおいっおたからくっ぀くチャンスでっせヌ チョロ束人に芋せれるようなものじゃないから   十四束チョロ束兄さんの闇はふっかいっね 十四束そうだ 十四束チョロ束にヌさんカラ束にヌさんが奜き 十四束セクロスしたい チョロ束したい チョロ束 チョロ束したった぀い本音が 十四束チョロ束にヌさん返信はっえヌ チョロ束いきなり䜕聞いおんだよ 十四束ねえそれカラ束にヌさんに蚀わないんすか チョロ束なんで チョロ束気持ち悪いっお蚀われるだけだろ チョロ束傷぀きたくない 十四束絶察倧䞈倫っお蚀っおも チョロ束どこにもそんな根拠ないだろ 十四束でもチョロ束にヌさん、遠くにむッちたうんでしょ 十四束蚀い逃げもありっすよ チョロ束そんなの卑怯者がするこずだろ チョロ束たあカラ束ず自分の気持ちから逃げる為っおのが䞻な理由だけど チョロ束っおいうかなんでお前僕が出おくこず知っおるの チョロ束ちょっず埅お チョロ束それ以前に字が違う チョロ束その字の通りだずいよいよシコ束認定されるからやめろ 十四束男は皆シコ束です。 チョロ束なんだよそのキャラ 十四束蚀い逃げでも良いから蚀うべきっす 十四束知らないたたチョロ束にヌさん傷぀けおるなんおカラ束にヌさんがかわいそうだよ チョロ束気づかれなきゃ良いだろ チョロ束実の兄に恋愛感情持っおるずか チョロ束墓堎たで持っおくしかないだろ チョロ束あい぀は優しいから僕が奜きだっお蚀っおも匷くは拒絶しない チョロ束きっず「実の匟も惑わせるずはたさにギルト・ガむ  」ずかむッタむ台詞で誀魔化しお、 チョロ束だけど䞀生悩みながら生きおくんだ チョロ束そんなのあい぀に䌌合わないだろ チョロ束自分の奜きなようにやっお、楜しそうに笑っおるあい぀が奜きなんだ僕は 十四束そっか 十四束分かった 十四束突然ごめんなさい チョロ束いや、 チョロ束僕もごめん チョロ束こんなこず、突然お前に蚀っおも分からないよな ◇◆ 【十四束】 カラ束十四束、 カラ束぀いさっきチョロ束に盎接打ち明けられた カラ束来月には家を出おいくず カラ束事前にLINEで知っおはいたが改めお聞くず切ないものだな カラ束この気持ちをお前が知っおいおくれお良かったよ十四束 カラ束泣きそうだ カラ束だけど䞍思議ず悲しいばかりじゃないんだ ◇◆ 【チョロ束】 チョロ束今どこにいる チョロ束買っおきおほしいものがあるんだけど カラ束男同士な䞊に血が繋がっおいるずいう䞍毛な恋だが カラ束それでも心の底から人を愛せたず誇らしい気持ちもあるんだよ十四束 チョロ束え チョロ束䜕これ カラ束あ カラ束悪いチョロ束間違えた カラ束十四束ずLINEしおお カラ束本圓ごめん カラ束忘れおくれ 《チョロ束から着信がありたした》 《チョロ束から着信がありたした》 《チョロ束から着信がありたした》 チョロ束おい チョロ束無芖するなよ チョロ束カラ束 チョロ束兄匟に恋しおたっおこず チョロ束誰 チョロ束ひょっずしお十四束 チョロ束最近お前ら仲良いよな チョロ束そういう関係だったんだ チョロ束あんな銬鹿のどこが良くお付き合っおるの カラ束十四束は関係ない カラ束だから悪く蚀うのはやめおくれ チョロ束ああそうだね チョロ束悪いのはお前だよ チョロ束矎化しおる぀もりなんだろうけど チョロ束兄匟に恋愛感情持っおるずか気持ち悪い チョロ束っおいうか僕が家出るこず十四束に蚀っただろ チョロ束うちの兄匟はみんなクズだけど チョロ束秘密も守れないお前を奜きになるような奎なんかいないから チョロ束おい チョロ束既読぀けたなら返事しろ チョロ束違う チョロ束本圓はこんなこずが蚀いたいんじゃないんだ [newpage] ◇◆ 【十四束】 十四束ちょろい束江にヌさん 十四束カラ束にヌさん知らない 十四束急にラむン来なくなっお 十四束電話も通じないっす チョロ束ごめん チョロ束僕のせいだ チョロ束っおいうかちょろい束江っお誰だよ チョロ束僕の面圱ないわ 十四束あっ 十四束たはヌ 十四束ぞんたいミスっすね チョロ束倉換ミス チョロ束倉態はそれ自䜓で重倧なミスだわ チョロ束っおいうかツッコミしおる堎合じゃないから 十四束そうだ 十四束カラ束にヌさんどこ チョロ束分からない チョロ束だけど、さっき僕が傷぀けた チョロ束くだらない嫉劬でカラ束に圓たり散らしお チョロ束きっずどこかで䞀人で泣いおる 十四束そっか 十四束じゃヌ俺がカラ束にヌさん探しおくる 十四束チョロ束にヌさんは家で埅っおお 十四束今日はみんな倕方たで誰も還っお来ないんだっお チョロ束垰っお来ない、な チョロ束それだずみんなどこかに逝っおるこずになるから チョロ束頌んだ、十四束 チョロ束ごめんな 【トッティ】 十四束トッティヌ トド束なぁに十四束兄さん♡ 十四束教えおほしいこずがあるんだ 十四束こないだむ぀ごのラむンでやっおたや぀教えお 十四束おそ束兄さんずトッティのLINEの画面送ったや぀ 十四束なんか必殺技みたいな名前のや぀ トド束あ、 トド束スクヌリンショットのこず 十四束そう 十四束スクリヌヌヌンョォオオオオオット トド束十四束兄さんなら本圓に撃おそうだね(*ÂŽ-`) トド束ちょっず埅っおおね♡ トド束【トド束が画像を送信したした】 トド束撮りたい画面のずこで、この画像に䞞しおあるヶ所を同時に長抌しするず出来るよ♪ 十四束サンキュヌトッティヌ トド束䜕に䜿うの 十四束ないしょ トド束そっか♡ 十四束ねえこれでさ、 十四束勝手にラむンの内容別の人に送ったら怒られちゃうよね トド束そうだね、 トド束こないだ僕がグルヌプラむンで送った、おそ束兄さんずのやりずりのスクショあったでしょ トド束おそ束兄さんの性癖をあいうえお順に䞊べたや぀ トド束あの埌僕の顔芋るなり卍固め決めおきたからね トド束い぀も゚ロ本居間に攟り出しおるくせにさ トド束僕に卍固めしおいいのは十四束兄さんだけだっ぀の 十四束嬉しいぜトッティヌ トド束えぞ♡ トド束たあそれはさおおき トド束勝手にLINEの内容晒すのはいけないよね トド束その人が知られたくないものなら尚曎 トド束恋愛の話ずか 十四束嫌われちゃうかな トド束人によっおはね 十四束分かった 十四束芚悟したっせ 十四束ありがずっおぃヌ トド束どういたしたしお♡ トド束䜕に䜿うか分からないけど、 トド束十四束兄さんは人を傷぀けるこずはしないっお知っおるよ トド束倧䞈倫 トド束きっずチョロ束兄さんもカラ束兄さんも分かっおくれるよ トド束あれ、 トド束既読぀かない トド束もう行っちゃったか トド束あずは任せたよ、十四束兄さん 【カラ束にヌさん】 十四束カラ束にヌさん 十四束今どこにいるの 十四束俺いろんなずころ探しおるけど分かんないや 十四束あっ 十四束でも読んでくれおる 十四束じゃあねじゃあね 十四束これ読んでほしいっす 十四束【十四束が画像を送信したした】 十四束スクリヌヌヌンショォオオオオオット カラ束十四束 カラ束これ 十四束こないだのチョロ束にヌさんずのやりずりっす 十四束チョロ束にヌさん俺に嫉劬しおた 十四束カラ束にヌさんずセクロスしたいっお蚀っおた 十四束安心しおください䞡想いですよ カラ束だけど十四束 カラ束こういうこずは良くない 十四束分かっおるよ 十四束俺チョロ束にヌさんに嫌われちゃう 十四束だけど俺はチョロ束にヌさん奜きだから問題ないっす 十四束カラ束にヌさんは倧奜きだっぺヌ 十四束だから幞せになっおほしい 十四束今居間に行けばチョロ束にヌさんず二人っきりだよ カラ束十四束 十四束あっ 十四束俺今だじゃれ蚀っちった 十四束たはヌ カラ束ありがずう カラ束俺もお前が倧奜きだ カラ束お前の明るさにい぀も俺は救われた 十四束たじっすか 十四束俺も俺も 十四束振られた時めっちゃ泣いたけど 十四束カラ束にヌさんの優しさに救われたっす 十四束カラ束にヌさん達はただ間に合うよ 十四束そんでうたくいったらビヌルかけしおあげる 十四束勝利の儀匏だっぺヌ カラ束ああ楜しみにしおいるぞ カラ束だがそこはりむスキヌでお願いしようか 十四束分かった 十四束麊茶かけおあげるっす カラ束いや、俺はりむスキヌが奜きなんだ 十四束いいから早く行っおきなよ カラ束はい カラ束行っおきたす 十四束行っおらっしゃい ◇◆ 《チョロ束が十四束を“扶逊保留組”に招埅したした》 《十四束が参加したした》 カラ束十四束 カラ束ありがずう カラ束お前のおかげでHappy Endだ カラ束今どこにいるんだ カラ束早く抱き締めたい チョロ束早速浮気発蚀すんな カラ束目の前にいるんだから盎接蚀え カラ束Honey チョロ束ケツ毛燃やすぞ カラ束ごめんなさい チョロ束ハニヌはお前だわ カラ束oh

Darling



 チョロ束マゞで十四束どこにいるの カラ束既読は぀いおるな チョロ束じゃあ勝手に曞いおく チョロ束カラ束に聞いおるだろうけど来月には家を出おいくよ チョロ束それで、盞談なんだけど チョロ束この䞉人で䞀緒に暮らさないか チョロ束カラ束にはもう了承もらっおお、 チョロ束逊う代わりに家事をしおもらうこずにした チョロ束十四束も来るならバむトしおもらうこずになるけど チョロ束お前たちずならうたくやれるず思う チョロ束だから考えおおいお欲しい カラ束俺たち䞉人はこないだの扶逊面接で保留になっおいたからな カラ束ちょうど良いだろう 十四束カラ束にヌさん 十四束チョロ束にヌさん 十四束おめでずっす 十四束ラむンでも恋するオヌラが䌝わっお俺が照れちゃった 十四束むチゎ味うっめヌ 十四束俺二人が倧奜きだから、 十四束いっしょに暮らせたらきっずチョヌ幞せっす 十四束だけどね俺は行けないよ 十四束俺銬鹿だから二人を邪魔しちゃう 十四束たたチョロ束にヌさんずかカラ束にヌさんに嫌われるようなこずしちゃうよ 十四束今回だっお俺がよけいなこずしちゃったからややこしくなっちゃったの分かっおるっぺ 十四束だから行かない 十四束でも嬉しかったっす 十四束二人ずもラブラブに暮らしおくだせえ 十四束それじゃあ、セクロス 十四束間違えた 十四束アディオス 《十四束が退䌚したした》 チョロ束行くか カラ束行くか チョロ束どこにいるの カラ束い぀ものトルコだな チョロ束い぀もトルコにいんのアむツ カラ束間違えた カラ束い぀ものずころだ カラ束川原 チョロ束よし行こう カラ束ちょっず埅お カラ束麊茶ポットも持っおいこう チョロ束なんで カラ束なあチョロ束 チョロ束なに カラ束俺達は目の前にいるんだから䌚話しようぜ チョロ束 [newpage] そしおキャプションのトッティに぀ながry 閲芧ありが特倧ホヌムラン
川原でチョロ束兄さんずカラ束兄さんず十四束兄さんが抱き合っおいるのを芋た。<br />真ん䞭にいる十四束兄さんが埌生倧事に抱えおいるのは、倚分我が家でお銎染みの麊茶ポットだ。<br />ああうたくいったんだ、さすが十四束兄さん、なんお声をかけるような野暮はしない。橋の䞊からこっそりず、だけど聞き耳はしっかり立おおいる僕。  䞉人ずもびしょびしょなのがずおも気になる。こっちにもほんのり銙っおくるけど、ねえそれっおもしかしお麊茶<br />「俺達は䞉人で家族なんだ、」なんお泣きながら十四束兄さんを抱き締めるカラ束兄さんに、これたた泣きながら頷くチョロ束兄さん。䞀番酷いのは涙ず錻氎ず麊茶で髪たでぐちょぐちょにした十四束兄さんで、「䞉人で末長く幞せに暮らすっぺヌ」ず叫んでいる。<br />僕はその光景を橋の䞊からただただ眺め、あ<br />の䞉人には聞こえないように䞀蚀。<br /><br />「  僕たちは」
【LINE束】チョロカラが出来るたで五男を添えお
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橋の䞊で逆ナン埅ちをしおいたカラ束の顔にふず圱がよぎった。 「やっず来たか、カラ束Girl  」 キメ顔を䜜っお芋おみれば、そこにいるのはさえないサラリヌマンである。 「え」 「あの、萜ちおたすよ  」 差し出された手には誰のものかわからないハンカチがひず぀。知らないずいうより先にそれをぎゅっず抌し぀けられる。 「えっ」 「頑匵っお」 サラリヌマンは䞡手でしっかりカラ束の手を握るず、足早に橋の䞊から立ち去っお行った。残されたのはカラ束ずファンシヌなハンカチだけだ。 「え、ここで えヌ  」 カラ束はハンカチを慎重に広げる。䞭から出おきたのはSDカヌドだ。圌はポケットからスマヌトフォンに䌌た機械を取り出しおSDカヌドをセットし、電話をかけるように耳にあおた。2秒埌に音声が流れ出す。 『こんにちは諞君。元気にやっおいるかな さお今回の任務だ。䞉週間埌、カンザスシティの掋通でチャむニヌズ・ニュヌむダヌパヌティヌが開催される。䞻賓の䞀人にフラメンコ・モンタヌニョ、出資者の䞀人にレスリヌ・デむモン。゚ヌゞェントがモンタヌニョの確保を目暙ずし、アナリストがデむモンに぀いお調査を行っおいるこずは知っおいるね 諞君はこのパヌティヌのゲストだ。健闘を祈っおいる』 聞き終えたカラ束は機械をポケットにしたい、空を芋䞊げた。 「倧きなシノギの匂いがする  だが、」 倪陜はさんさんず茝いおいる。青い空はどこたでも広く、癜い雲が絵のようだ。カラ束のサングラスが倪陜を反射しおきらりず光る。 「暪文字が倚くお、䜕をいっおいるのかよくわからないな」 意識高いぜずいった途端にぐうっず腹が鳎った。そうだ家に垰ろうずカラ束は思い぀く。おなかもすいたし、家に垰っお䜕か食べながらチョロ束にわかりやすく説明しおもらおう。 「コンビニで䜕か買っお垰ろう  」 財垃の䞭身を確認する圌はこう芋えお束野家の参謀圹。だがスむッチが入るたで圌はただのポンコツなのである。 [newpage] 䞖間䞀般ではニヌトずいわれる六぀子だが、その実態は䞖界平和を目的ずする組織IPOのスパむである。六人䞀組で動く圌らのリヌダヌは長男おそ束、圌の右腕は䞉男チョロ束、参謀は次男カラ束、ガゞェット担圓は五男十四束、狙撃手に四男䞀束がいお、情報収集ずすべおの補䜐に末匟トド束がいる。 「今回の任務はレスリヌ・デむモンぞの調査ずニュヌむダヌパヌティヌぞの䟵入。パヌティヌ内容は䞍明だけどそこで悪事が行われるこずは明癜で、モンタヌニョがそれに加担するだろうから確実な蚌拠を抌さえる。これがなんでわかんないんだこのポンコツ束。で 僕らはどう動けばいい」 参謀盎々に䟝頌を受け任務内容を簡朔にたずめたチョロ束は、ドスンず怅子に座っお悪態を぀いた。カラ束がありがずうず笑顔を芋せおもお構いなしだ。銬鹿参謀ずいったきり、手元の資料を芋぀めおいる。 チョロ束の持぀資料は本郚の゚ヌゞェントから埌远いで持ち蟌たれたものである。パヌティヌの招埅客の䞀芧衚だ。䞀芧衚は二枚あり、䞀枚目には名前ず出身地、性別のみが蚘茉されおいお、二枚目には顔写真がずらりず䞊んでいる。 「ニュヌむダヌパヌティヌかあ。ちょっず時期がずれおる気がするけど、たあ問題ないか。僕らは招埅客だっおいうけど、䞀芧衚には名前も写真もないね。前みたいに誰かに成り代われっおこずかな ならモンタヌニョず同垭のや぀がいいよねぇ」 PC片手にトド束が口を挟む。 䞻賓の䞀人であるフレメンコ・モンタヌニョは、麻薬王ずいわれおいる男である。人身売買の噂もある悪いや぀だ。だが圌には垞に運が味方をしおいるようで、い぀もあず䞀歩ずいうずころで逃げられおいる。確実な蚌拠を掎むなら、びっちり匵り぀いおいたいものである。 「あずデむモンっおおずぎ話的存圚だけど、倧䞈倫かな パヌティヌには癟パヌセント来ないず思うけど」 出資者の䞀人であるレスリヌ・デむモンは、若手のギャング団ぞの資金提䟛者ずしお最近名前を聞くようになった男である。だがこの男は幻のような存圚で、どこをどう探っおもこの男には行き぀かないのだ。捕たえたギャング団にも圌の玠性を知るものはいない。本郚の人間には「レスリヌ・デむモン」の名前をかたっおギャング団同士が金を融通し合っおいるのではないかず芋おいるものが倚いが、おそ束たちの䞊叞であるヒヌス・カヌタヌ局長は実圚の人物説を捚おおいない。 匟二人の蚀葉をうんうん聞いお、おそ束ずカラ束が顔を芋合わせる。任務遂行の倧筋はこの二人が立おるこずが基本である。おそ束は普段おちゃらけたどうしようもないクズで、カラ束は普段ポンコツでどうしようもない銬鹿だが、任務ずなるず別人のようにおそ束に嚁厳が宿り、カラ束にもすさたじい分析力ず賢さが宿るのだ。 「パヌティヌでどんな悪事が行われる予定なのかをたず知りたいよな」 なあカラ束ずいわれた匟は、そんなの簡単なこずだず兄を芋る。 「人身売買だ」 「ん なんで」 「資料をよく芋ろ」 カラ束はチョロ束の手元の資料をずんずん叩いた。 「二枚目の写真リストだが、これは䞀枚目に蚘茉されおる人間のものじゃない。茉っおる人数に二人分の誀差があるんだ、それぞれ違うものをリストアップしおる」 「んで」 「それに写真に茉っおいるのは若い女ず線の现い男ばかりだ。ここから嚌婊ず男嚌だろうず掚枬できる。だから二枚目はパヌティヌの『商品』リストで、䞀枚目は『買い物客』のリスト。そんならパヌティヌで行われるのは人身売買っおこずになるだろ」 ビンゎォ〜 ずいうカラ束に、おそ束がうぞっず舌を出した。チョロ束も䜕でずいう顔でカラ束を芋おいる。トド束だけがたあそうだよねずしたり顔だ。 「SDカヌドの意味を汲み取れなかった癖に」 「蚀葉を蚀葉のたた取る人だから。でもこうしお資料ずかの珟物芋るず凄いよねえ」 チョロ束の恚めしい声にトド束が答える。きょずんずしおいるカラ束は、匟二人がいうように人の話の裏を読んだり理解をしたりが苊手だが、ものや堎所の分析や状況刀断に長けおいるずいう銬鹿なのか賢いのかよくわからない男なのである。 あきれたような匟たちに察し、おそ束はたあこれがカラ束だから、ず錻の䞋をこすった。 「さっすがカラ束。そしたら名前も性別も嘘っぱちの可胜性が高いね。そんなもの銬鹿正盎に曞かないだろうし」 「だな。だがトド束がいったようにモンタヌニョに匵り぀く案がベストプランだ。だからたず買い手である招埅客の顔ず名前を調べよう。商品にされたboysやgirlsを助けるためにもここをきっちり調査しないず」 「䞻催もな。売人もひっ捕たえたいからそこらも含めお調査だ。最初にどこに調査に入る」 「モンタヌニョ邞かな。本物の招埅客リストを探そう。䞻賓なら送られおきお圓然だろ。すべおはそこから始たるぜ、バヌン」 むッテヌず叫んでおそ束は、賢い賢いず匟の髪をわしゃわしゃかき混ぜる。やめろよ兄貎なんおいいながらもカラ束は嬉しそうだ。 「それじゃ久々に六人で朜入調査ず行きたすか 堎所どこだっけ カンザスシティ ミズヌリ州偎だよな」 「倧豪邞だよ、むしろ斜蚭」 トド束がすかさずPCを差し出しおきた。映っおいるのはモンタヌニョ邞の芋取り図だ。L字構造のバカでかい屋敷である。 「屋敷は䞉階建お、地䞋宀あり。L字暪棒郚分に正面玄関ね。この棟すべおが瀟亀甚に䜿われおるよ、どんだけ瀟亀するのヌっお感じ。察するL字瞊棒郚分は居䜏空間だよ。L字の空き空間に䞭庭があっお、䞭庭はもちろん屋敷内にも垞に歊装した郚䞋たちがいるみたい。こい぀自身もギャングだよね」 「んじゃ二手だな。俺、カラ束、十四束。それからチョロ束、䞀束、トド束。十四束ず䞀束バラけさせりゃ機械類は倧䞈倫だろ。俺らが先に入っお色々仕掛けずかするから、チョロ束班は埌远いしおちょ」 カラ束が埅ったをかける。 「兄さんそれなら十四束ず䞀束は逆のほうがいい。䞀束より十四束のほうがクラッキングが埗意だ」 それを聞くや吊やチョロ束が鬌のような顔になった。 「たたかカラ束 おたえは攟っおおいたらすぐ䞀束だな なんですぐ危ないほうに足突っ蟌むの 䞀束はおたえに絡むず犯眪者の栌が䞊がるんだっお、もうそろそろ理解しろよ」 「えっ、でもこの間䞀束は俺を助けおくれた」 「それは結果論 たたビルから玐なしバンゞヌさせられたいの おたえは歩く䞍憫野郎なんだから少しでも危険から身を遠ざけずけよ」 たあたあチョロちゃん、ずおそ束が割っお入る。 「俺もいるしさ、おたえらもあずからくるじゃん だから倧䞈倫だっお。むッチだっお悪いこずしないよなあ」 長男の問いかけに、それたで沈黙を守り壁ずお友達だった䞀束がくるりずチョロ束を芋お、そのあずカラ束を芋お、にたりず笑った。 「むッチ、いい子。悪いこず、しない」 「顔 顔が駄目 取り繕う気もないその顔」 「ほら䞀束もこういっおるし安心だ 䞀束はやっぱりいい子だな」 「おたえの目は節穎か おたえはこの䞀束の顔を芋お危機を感じないのか 銬鹿か、銬鹿なのか 賢い時間を倚く保お、脳のトレヌニングをしろ」 「えヌ、別によくない 賢いカラ束兄さんずか、なんかむダヌ」 「僕も 僕もトッティに賛成 䞀日八回野球に誘っおも疑問を持たない兄さんのほうが扱いやすくおいいっす ね、カラ束兄さん」 「トド束、十四束 おたえらそんなにありのたたの俺のこずが  」 「いやいや、カラ束それおたえ耒められおないからね 本圓に僕らこい぀の蚈画に呜蚗しおいいの」 ぜえぜえ息をするチョロ束を、毎床のこずだなあずいう顔で芋぀めながら、おそ束はポンずチョロ束の肩に手を眮いた。 萜ち着いた 萜ち着けない。満足した するわけないだろボケ長男。 そんなやりずりを芖線だけで亀わしお、おそ束がはい泚目 ず手を叩く。 「恒䟋行事も終わったこずだし明日にでも飛ぶぞ 各自荷造り開始、チョロちゃんはぷりぷり怒らずネクタむ配垃」 おそ束の号什を聞いたチョロ束が、ちぃっず長めの舌打ちをしお、どこから取り出したか六色のネクタむを配り始める。トド束がキェヌッず声をあげた。 「僕このネクタむ぀けるのやだよ これ発信機぀いおるや぀だよね」 「いいから぀けろ おたえが嫌がるせいで廃止になったらなったらどうしおくれる 困るだろ」 「困るのチョロ束兄さんだけじゃんか この家庭内ストヌカヌ」 ぎゃあぎゃあいうトド束ずチョロ束の暪では、カラ束がただ䜕も始たっおいないずいうのにご機嫌でネクタむを぀けようずしおいる。それをにやにやしながら眺めおいる䞀束の手の䞭にはタブレットがあっお、その画面には青い光が点滅しおいた。あれそれず芗き蟌んだ十四束が䜕かいいかけるのを䞀束が手で制する。 「チョロ束兄さんだけっおずるいでしょ」 同意するべきかどうか悩んだ五男は、いっそのこず芋なかったこずにしようず䌞びた袖で目を芆った。 [newpage] 2月18日、カンザスシティ正午。 銀色のトラックがモンタヌニョ邞の通りを挟んだ向こう偎に止たっおいる。倪陜の光を受けお止たるトラックの偎面にはアむスクリヌムショップの文字、看板は『準備䞭』。甘い匂いのする車内で十四束がご機嫌で歌っおいる。その暪にはトド束がいお、すごいねずいいながら兄の手元を芋おいた。 「どうすっかぁ」 マむクを持っお十四束がそう聞けば、『もう少し』ずいった䞀束の声が返っおくる。 邞宅のアンテナは、倚くのホテルや家屋ず同じように屋䞊に蚭眮されおいお、それらはすべお瀟亀甚の棟の屋䞊に集められおいた。そこからは様々な電波が発されおいる。おそ束、カラ束、䞀束の䞉人は、その電波を求めお屋䞊に向かっおいる最䞭だ。 埅っおマッスルゥず間延びした口調でいいながら、十四束は逌になるスクリプトを甚意する。こい぀は指定した電波をたどっおサヌバヌに入り蟌み、セキュリティもなんのそので盞手のPCをクラッキングしおくれる可愛いや぀だ。䞀日で寿呜を迎えおしたうずころもはかなげで愛おしいずいう感じか。䞀束のGOが出たらそい぀を攟っおセキュリティを管理するPCを乗っ取る。そのあずは監芖カメラのラむブ映像を映すHTMLを曞き換えお、ホストにある別の動画に差し替えおやれば完璧。぀いでに塀の䞊に匵り巡らされた有刺鉄線に流れる電気だずか、人感センサヌも切っおしたう぀もりだ。 ただかなただかなず歌う十四束にトド束がねえねえず声をかけおくる。 「十四束兄さん、これ終わったらスタバァ行こうよ。ここにしかないや぀飲みたいんだ、ブラックピヌチティヌっおいうんだけどね、ずっおも矎味しいみたいで」 トド束の手には雑誌が握られおいる。カフェ特集のペヌゞを開きながらそういう匟に、十四束はううんずうなった。 「それトッティの奢り」 「もちろんだよ兄さん」 にっこり笑った匟にほだされそうになるが、いやいやず十四束はきゅっず顔に力を入れる。 「トッティこの間もそういっお結局、『兄さんっおば匟に奢らせるの』っおいっおお金出さなかったの僕芚えおるよ」 「えっ、そういう昔の話出しちゃうの」 「出しちゃう、トッティい぀も奢る詐欺するから 嘘぀き束だあ」 「えヌ心倖」 心から驚いたずいうようなトド束の嘘くさい挔技に、ぷいっず十四束はそっぜを向いた。怒らないでよ十四束兄さんずトド束が粟いっぱいの可愛い笑顔を向けおくる。 「そういっおおも兄さんが最終的には奢っおくれるの、僕ちゃあんず知っおるんだよ。だっお僕、たった䞀人の匟だもんね」 「えっ、そういうずころに぀け蟌んでくるなんお、トッティ悪魔っすか」 「悪魔はおそ束兄さんずチョロ束兄さんだよ。あ、チョロ束兄さんは悪魔より狂人っお感じかな」 あんなのず䞀緒にしないでよねずふおくされた顔でいうトド束を芋お、末っ子恐ろしいず十四束は思った。無線越しの兄たちに聞こえるかもしれないのに隠す気配がたるでない。末っ子の末っ子らしさずいうべきか。 「トッティすげヌな」 ただ䞀蚀そういうず匟は䞍思議そうな顔をしたが、すぐさた「だからあ」ず甘えた声で肩を揉んでくる。 「いいじゃん、スタバァ行こうよお。で、兄さんは僕に甘えられお、『しょうがないっすね』っおたたスタバァ奢るんだ」 「えヌ」 そこぞ無線がぎりりず入る。 『いけるよ、ク゜束登り終わった』 『悪魔ちゃんも登り終えおマヌス』 䞀束の声だ。そのうしろではゲラゲラ笑うおそ束の声も聞こえる。おそ束の発蚀に十四束はトド束の様子を窺うが、末匟は涌しい顔をしおいる。甘ったれの匟はこう芋えお胆の据わったずころがあるのだ。 『カラ束っおば珟堎慣れしおないもんだから、壁登んのちょヌおせヌ』 『に、さんが匕っ匵っおくれないんだろ』 ぜえぜえいうカラ束の声も聞こえおくる。そこに「今こんな感じ」ず淡々ずした䞀束の声が混ざった。 『機械぀ける、クラックしお』 「了解でありたす」 十四束ずトド束が芋぀める監芖カメラの映像に、ぱっず䞉本の指が暪向きに映る。それが二本、䞀本、ず消え、最埌に拳銃を撃぀圢になっお消えた。粋だなあず思いながら十四束は、そのタむミングで我が子のように可愛いりむルスを解き攟぀。自分のPCの画面がクラックしたPCのデスクトップず同じものになったのを確認し、監芖ルヌムで珟圚攟映䞭のラむブ映像を昚日の録画内容ぞずすり替える。人感センサヌず電流も切った。 それらを終えおから隣に眮いおいたタブレットを芋るず、そこには同じくタブレットを持っお手をひらひらさせる䞀束が映っおいた。珟圚のラむブ映像は無事自分たちのタブレットに飛ばせたようだ。 「䞀束兄さんっおさ、カラ束兄さんのこず激しくりザがっおるわりに、やっおるこず䌌おるよねえ」 トド束がタブレットの向こうの䞀束をあきれたように芋ながらいう。 「たあ、カラ束兄さんうぜヌけど、でもたたに栌奜いいからね」 「十四束兄さんっおばそんなこずいっおヌ。ペむショしなくおも野球぀き合っおくれるから倧䞈倫だよ」 そういっお倧きく䌞びをしたトド束は、それじゃあそろそろ僕らもず拳銃を手に取った。それを芋越したようなタむミングでチョロ束から無線が入る。 『誰でしょヌか。そう 狂気の沙汰のチョロ束でヌす』 『ふひっ』 おそ束の笑い声がする。 『あざトッティおたえあずで芚えずけよ』 「シコ束のくせに冗談もわかんないの」 『絶察あずで本の角で殎るからねおたえ。十四束、もうそろそろ来れるよね』 L字構造の瞊棒郚分、居䜏空間にある寝宀。その付近にチョロ束はいる。寝宀は䞉階の぀きあたりにある倧きな郚屋で、壁䞉面を䜿った広い窓が特城的だ。窓からは䞭庭ずシティビュヌの䞡方が芋える。広い窓が、こんな隠れるずころの少ない郚分から攻めおこないだろうずいう油断を生んでいるらしく、ここの譊備には隙がある。 「もちろんでっせ」 『んじゃあ予定通りそっちの棟はチョロちゃんたちでお願いね』 おそ束の声にチョロ束がわかっおるず返事をする。 『䜕か気になったずころがあれば連絡するから、おそ束兄さんのほうも䜕かあったらすぐ連絡しお。䞀束が暎れた堎合もね。十四束行かせるから』 『我が家の栞匟頭ったぁ、頌りになるなあ』 「あざヌす」 『頌もしいこっお んじゃおたえら、ヘマすんなよ』 長男の無線が切れ静かになった。十四束は目頭を揉んだあず、よっしゃ行くかず倧きく䌞びをする。金属バットを手に取ろうずした兄にトド束がいう。 「十四束兄さん、壁を䞊るのに金属バットっお倧きすぎない 隠密行動だし譊棒にしたら」 いわれた十四束は少し考え、それもそうかず愛甚の金属バットをそっず眮き、デスク脇に眮いおいた特殊譊棒を手に取った。䌞瞮性の特殊譊棒、金属バットより匷床は萜ちるが、人を殎打しお意識を倱わせるぐらいならもっおこいだ。 「ありがずうトド束 んじゃ行こうか」 「うん」 扉を開けお二人が出お行く。 五分埌、無人になったトラックの扉が開き、残された金属バットにそっず誰かの手が䌞びた。 屋䞊のアンテナに機械を取り぀けたおそ束たちは、屋䞊から地䞋たで続く非垞甚階段を䜿っお䞉階に降りおいた。 「䌚食宀に、応接宀ね  お、ビリダヌド台ずかあるじゃん」 成金趣味、ずおそ束が倪い柱の陰に隠れながらいう。䞉階にあたるこの郚分は、普段はあたり䜿われおいないようで、立ち番の姿が芋圓たらない。この階を守るのは人感センサヌだけのようだ。感心しないねえずおそ束はいっお、柱の陰からひょいず飛び出す。廊䞋をずずずっず走り、センサヌが切れおいるのを確認するずニシシず笑った。 「問題なしっず。んじゃ、どこから行く」 兄にそう聞かれ、カラ束はそうだなあずこがす。 「曞斎か、前みたいに床䞋か、それずも金庫か  。でもモンタヌニョ邞にはうちも譊察も䜕回か入っおるんだよな だったら金庫みたいなわかりやすいものを芋おも意味ないだろうし、ううん  」 䞀人でうんうんうなりだしたカラ束に、䞀束がそっずタブレットを差し出した。 「ク゜束、これ屋敷のラむブ映像。芋ろ」 これを芋れば前のように閃くのではないかずいう匟からの気遣いだ。ありがずうずいっお受け取ったカラ束は、タブレットを操䜜しはするものの、倉わらずうんうんうなるばかりである。 「なあにカラぎ思い぀かないのぉ そういうずきは足で捜査よぉ」 シナを䜜りながらおそ束がいっお、ずかずかず廊䞋を歩き出した。おら行くぞずいう頌もしい兄の号什を受けお、匟二人も慌おお圌に぀いおいく。 数十分埌。 䌚食宀に簡易応接宀、ミニシアタヌを䜵蚭した瀟亀宀に䌑憩宀、コンサバトリヌの怍朚の䞭から化粧宀のゎミ箱、ビリダヌド台の穎の䞭。 色々芋たが、どこにも䜕も芋぀からない。おそ束は「次ぃ」ず叫んだ。 「ねえ聞いおよおそ束兄さん。ク゜束女子トむレ入ったんだぜ」 「女子じゃなくおあれは普通に化粧宀でっおいうかおたえ䞀緒だったじゃ」 「男のトむレにドレッサヌないでしょ。そこのゎミ箱っおさあ、うっわおたえ、倉態じゃん」 「なっ 違う」 「はいはヌい、䞀束、兄匟をからかうのはやめなさい。カラ束もいちいち反応しない小孊生かおたえら」 「先生っ、䞀束君が嫌なこずいう そういうのよくないず思いたす」 「おいク゜束いい぀けるずかナシだろ、このチクリ魔 おたえの絊食袋どヌなっおも知らねヌから」 「埅っお、今チョロ束君いないから埅っお、孊玚䌚議ごっこあずにしお」 片手で次男をあやしもう片方の手で四男を諫めながら、おそ束は二階に降りるため非垞階段に向かう。小声できゃんきゃんいっおいる匟たちも同様だ。 「おら静かに歩け、足音が響く」 䞉人は足音を立おないよう気を぀けながら階段を降りお行く。途䞭急に緩やかになった段差にカラ束が足を取られおこけかけたものの、それ以倖は抂ね問題なく二階に蟿り぀いた。 廊䞋に繋がる防火戞を薄く開ける。二階には客甚の寝宀に集䌚宀、先ほどより立掟な応接宀やサロンなどが䞊んでいるようだ。䞉階は深い緑の絚毯だったが二階の絚毯は赀い色。郚屋ず郚屋の間には調床品が眮かれおいお、胞郚から䞊のみの甲冑や瑠璃色の壺などがラむトを受けおぎかぎか光っおいる。 その䞭を䞉階にはいなかった立ち番たちがうろうろしおいる。おそ束のうしろから芗き蟌んでいた䞀束が、こんなきれいなずころを血で汚すのは嫌だなずがやいた。 「でもやらなきゃしかたがない」 おそ束がいうず、䞀束がうなずいお拳銃にサプレッサヌを取り぀ける。 「たあね。嫌だけど、仕方ない。増えるず困るから音には泚意する」 「俺もそうしよ」 「嫌だずかいいながら兄さんも䞀束もやる気じゃないか」 「そりゃそうよ、だっお俺ら」 スパむですから。 おそ束が笑った瞬間、防火戞の近くで足音がした。 即座におそ束が扉の隙間に拳銃を突き぀ける。埌方では䞀束がカラ束をうしろに抌しおから、自分の背にかばうようにしお拳銃を構えた。䞀束に背を抌されたカラ束は、そのたた二人のもずを離れ、階䞋ぞ続く階段を二、䞉歩降りたずころに身をかがめる。 その口元を、誰かの手が芆う。 足音は薄く開いた防火戞の前で立ち止たっおいる。おそ束も䞀束も拳銃を構えたたた埮動だにしない。だが立ち止たった盞手は開いた扉を単なる閉め忘れずでも思ったのか、すっずそれを閉めただけで䞭を芗き蟌んでは来なかった。自分たちに気づかないたたドスドス重い音を響かせお遠ざかっおいく足音に、おそ束も䞀束もほっず息を吐く。 「あヌ、びびった」 「んだねぇ。さすがにここで撃ちあいにはなりたくないしな」 おそ束はうなずいお、拳銃を握りしめたたた「カラ束無事ぃ」ずひず぀䞋の匟に声をかけた。すぐそこに隠れたはずのカラ束は、い぀の間に移動したのか思ったよりも䞋のほうで突っ立っおいる。䞀階の防火戞の前で地䞋に続く階段を芋぀めおいるカラ束の顔が劙に怖い。 「  どした なんかあった」 カラ束らしからぬ衚情に、おそ束が少しためらいがちに声をかけるず、カラ束は少し埅っおいおくれず圌に向かっお手のひらを向けおきた。䞀束がおそ束の偎にやっおきお、䜕か芋぀けたのかなず囁いおくる。 「䜕か違和感あるくらいたじめな顔しおる、ああいうのク゜束じゃない」 そういっお舌打ちをする匟を芋お、おそ束はい぀もの調子で「なあに䞀束」ず茶化しおやろうず思ったが、なぜかうたい蚀葉が頭に浮かばない。曖昧に笑ったおそ束をどう思ったのか、䞀束が真顔で「え、元気」ず聞いおきた。 「いや、芋おの通り元気だけど、䜕で」 「  いや、俺がク゜の話するずい぀も茶化しおくるじゃん。玠盎がどうのっお」 「え、あヌ  」 そんな二人のやりずりをしり目にカラ束がゆっくり階段を䞊がっおくる。そしお二人の少し手前で立ち止たり、「じゃあ、行こうか」ずさらりずいった。 「は」 「䜕だ」 「いや、え どこぞ」 「䞀階だ。階段の裏に隠し郚屋があるぜ、兄匟」 それだけいっお再び階段を䞋り始めたカラ束におそ束ず䞀束は慌おる。二人は急いでカラ束を远いかけお、おそ束がカラ束の腕を掎んで匕き留めた。 「え、ちょっず、どゆこず 説明しお」 掎たれた腕をカラ束が嫌そうに芋おいる。 「  説明するから手を離しおくれないか」 䜎い声でそういわれ、おそ束は思わず悪いず謝った。ぱっず手を離すず、カラ束は掎たれおいた腕を少し撫でたあず、おそ束の持぀拳銃をじろっず芋お、兄から䞀歩遠ざかる。そのしぐさにおそ束の肩がぎくりず揺れた。 「おいカラ束、䜕だそのたい」 「説明だったな」 衚情に怒りを読み取ったのか、おそ束の蚀葉を遮っおカラ束が話し始めた。 「この建物の階段はすべお『く』の字だ。折れおいる郚分に螊り堎がある。屋䞊から䞉階に続く階段は、螊り堎を挟んで䞡方ずも同じ造圢をしおいる」 突劂始たった説明に、䞀束が目をきょろきょろ動かした。 「䜕、ク゜束は段差の高さが同じっおいいたいの。でもそんなの階段なんだから圓たり前じゃん」 「そうか 䞉階ず二階を繋ぐ階段は違っおいるぞ。よく芋おないのかおたえ。螊り堎以降の階段の段差は䜎くなっおいお、緩やかになっおいる。緩やかになった分、階段の長さは䌞びる。螊り堎の䜍眮を党階同じ盎線䞊に蚭けたいなら、二階から䞀階に向かう階段も、螊り堎たでは緩やかな階段でなければならないはずだ。だが実際は屋䞊から䞉階に続く階段ず同じ構造をしおいる。぀たり党階の螊り堎の䜍眮は同じ盎線䞊にないんだ。今俺たちが立っおいるこの二階から䞀階に続く階段の螊り堎は、ここだけ前に出っ匵っおいるこずになる」 「は、え、」 「぀たりは䞀階非垞階段裏に空間があるずいうこずだ。理解できなくおもいいからずりあえず俺に぀いおきおくれ」 説明責任は果たしたずでもいうようにたたもや䞀人勝手に階段を降りようずしたカラ束を「埅おカラ束」ず再びおそ束が呌び止めた。なんだずカラ束が振り返る。 「説明はしただろう。それにこのくらい難しくないはずだ」 うんざりした様子の圌におそ束は厳しい芖線を送る。 「違う。わからなかったから止めたんじゃない」 「じゃあなんだ」 おたえのその態床だよずいおうずしたおそ束だが、果たしおそれで党お䌝わるだろうかず蚀葉を止めた。 詳现にいえば、腕を離せずいわれたずきの苛立ちが、ピヌッず倉な音を頭の䞭で鳎らしおいるからカラ束を止めたのだ。急にこずが進みすぎおいるのも気にかかる。そういう堎合は倧抵ろくなこずがない。そういうこずも含め、今は䞀床止たっおみるべきタむミングだず思ったのだ。 だがそれをこい぀にいっお、果たしお圌は自分ず同じように止たっおくれるだろうか。たぶん止たっおくれないだろう。なぜだかこい぀は劙に急いでいる。 嫌悪感すら芋える顔でこちらを芋おいるカラ束をおそ束はじっくり眺める。 カラ束はカラ束、どう芋おもカラ束だ。 でもなぜかい぀もよりぎりぎりしおいる気がするし、い぀もず纏う空気が違う気がする。こい぀はもっずお気楜な人間であるはずだ。こんな参謀䞭の参謀のようなカラ束は知らない。こうも賢いのは倉だ。い぀もは賢くおももっず隙があっお、その賢いのも長く続かない間抜けなのに。 おそ束はちらりず䞀束を芋た。階段の仕組みぞの理解を諊めたらしい匟は、今は錻をすんすん動かしお空気の匂いを嗅いでいる。十四束ほどではないが䞀束もなかなかに動物的だ。そんな匟は珟状に察し特に䜕も感じおいないように芋える。 カラ束の反抗期のような態床を芋お混乱したのか そんな颚に自分を分析しながら、おそ束はカラ束に向き盎る。 「぀いおきおくれっお、どこにか聞いおないなっお思っお」 「䞀階だずいっただろう。入口を探しお䞭に入るんだ」 「䞀階か。䞀階ね。確か䞀階郚分で暪の棟ず連結しおるんだっけ。カモフラヌゞュするにはもっおこいの構造だけど、でもおたえのいう通りなら䞉階より䞀階の廊䞋が短いはずだけど、そこんずこどうなの」 「自分で枬っおみればいい」 そのいいかたにおそ束の頭の䞭がより苛立った。 なんだろう、今日のカラ束は本圓に腹が立぀。可愛げがひず぀もない。むラむラする。 それでも圌はその苛立ちを収めるために䞀床倧きく息を吞う。いくらむラむラしおもカラ束は匟で、チヌムの䞀員。よくやったずきは耒めおやるのが兄でありリヌダヌの仕事である。カラ束は反抗期もどきなのかもしれないし、ここは兄が倧人になるべきタむミングなんだろう。 「わかったよ、おたえがそういうならずりあえず入口探す。理論䞊は問題ないしな。たあ、ずりあえず、カラ束お手柄」 おそ束は無理に笑顔を䜜り、軜くカラ束の背䞭を叩きながらそういった。これでカラ束がちょっずでも笑顔を芋せれば、今曎反抗期かよずからかっおやろうず心に決めお。 だが耒められお喜ぶはずのカラ束は、予想に反しお痛みに顔をしかめおいる。 「んだよ、喜ばねえの そんな痛かったかよ」 「  それなりにな」 ため息のような息を吐いおカラ束は階段を䞋り始めた。おそ束は愕然ずした顔でその背䞭を芋぀める。 やがお圌は目を吊り䞊げお、はあ ず苛立ちを隠すこずなく叫んだ。 「ンだあの態床。参謀様が気取りやがっおよォ」 埅おボケこらずいいながらおそ束がカラ束のあずを远う。䞀束は先ほどず同じように空気の匂いを嗅いでから、無衚情で぀いおきた。 䞀階防火戞を開けるずやはり䞉階ず同じような廊䞋が芋えた。違うのはそれが暪にも芋えるこずだ。今䞉人はL字の瞊ず暪のちょうど連結郚分にいる。䞀束が䞹念に非垞階段の壁を調べおいたが、どこにも向こうに繋がりそうな郚分はないようだ。隠し郚屋の入口はどこか別のずころにあるらしい。 「この階、おたえらで行ける」 廊䞋を芋぀めながらむラむラいう兄に、ぎょっずした顔をしたのはカラ束である。 「なぜだ、䞀緒に行けばいいじゃないか」 「嫌だね、俺はこのたた地䞋に行くんだよ。隠し郚屋なんだから梯子ずかで䞊にあがるパタヌンもあるだろ」 おそ束は握ったたたの銃口で頭をガリガリかきながらカラ束を拒む。拒たれたカラ束は、絶句したのち眉間に皎を寄せたが、やがおたあいいず呟いおうなずいた。 「でも芋぀け次第呌ぶから来いよ」 「うるせえよ、お兄ちゃんが恋しいならさっきちゃんずデレずけよ」 今日なんかおたえ嫌いずいいながらおそ束はマむクを握る。党員ず話ができるように操䜜しおから、テストテストずマむクに向かっお話し始めた。 「お兄ちゃんです。オヌバヌ」 『十四束です オヌバヌ』 「隠し郚屋あるっぜいわ」 『マゞっすか マゞっすか』 「マゞっすヌ。で、今からそこに入る扉探しに動くんだけど、そっちどんな感じ」 『俺らね、今曞斎に向かっおんの 曞斎っお知っおる おそ束兄さん本読たねヌから知らないかも あんね、すっげヌ本あるずころ』 「お、さりげなくディスっおくんね十四束ぅ。今から曞斎っおこずは他もう芋たの」 『䞀番に寝宀を芋たよ なヌんもなかった ゎムはあった 曞斎っおどう探すの』 十四束の問いかけにカラ束が答える。 「本の敎列をよく芋お、おかしな䞊びになっおいる本を調べおみるずか、本の間に䜕か挟たっおないかずか、そういうのを探すずいい」 的を射た回答に、『さすがぁ』ず賛蟞が聞こえる。 「でもそれでも時間がかかるず思うから、できれば分担䜜業にしたほうがいいな。寝宀の近くのドレスルヌムは芋たか 曞斎はほかの兄匟に任せるずしお、十四束はそこに行っおはどうだ」 あそこは広いから玠早いおたえ向きだずいうカラ束に、確かにずチョロ束の賛成する声が聞こえる。 『十四束に根気のいる䜜業が向いおるずは思えないしいい案かも』 『カラ束兄さんっおばどうしたの やけにさえおるけど今日は比范的賢い日』 「お耒めに預かり光栄だよ」 『ほんずどうしたの むタくなくない』 末匟が䞍思議そうにいう。英知を備えし恵みの矢がずかいわないのずいう匟の発蚀を、たあたあずチョロ束が嗜めた。 『いいじゃん賢くお。今任務䞭なんだしさ。むしろ助かる。それじゃ僕らはそういう感じで動くね、こっちがある皋床終わったらそっちに合流する』 そういっお切れた無線から芖線を倖しお、おそ束はぱんず手を叩いた。䞀束が圌の指瀺を埅っおいる。 「んじゃたあ俺らも動きたすか。カラ束は単独行動犁止な、䞀束はカラ束に嫌がらせすんの犁止な。さっきみたいにからかうのも犁止だぞ」 わかったず䞀束がいった。カラ束は特に返事をするこずもなく、おそ束の偎をすり抜けお防火戞に手をかける。そしお向こうを確認するそぶりも芋せずに扉を開け攟った。あたりの堂々たる開けっぷりに、おそ束はもちろん䞀束も唖然ずする。 「ばっ」 先に我に返ったのは䞀束で、圌は絚毯を螏んで歩き出そうずするカラ束のあずを怒鳎りながら远いかけおいく。 「おたえ銬鹿か やっぱり銬鹿か 倖を確認しろこのポンコツ」 怒鳎り声の䜙韻を残しお閉たった防火戞を呆然ず眺め、やがおおそ束はぜりぜりず頬をかいた。 やっぱりカラ束はずんでもない銬鹿で、今は単なる反抗期で、自分はそれに苛立っおいただけで、䜕もおかしなずころはないのかもしれない。 すでに閉たっおいる扉に向けお、喧嘩すんなよず手を振っお、長男は地䞋に繋がる階段を䞋りるこずにした。 [newpage] 連結郚分の、居䜏空間寄りのずころにホヌルのような空間がある。空間の圢は円圢だ。建物に円圢の郚分はないから、䞭身だけをそういう颚に䜜っおいるのだろう。恐らくそうするこずで少し短くなった廊䞋を目立たなくしおいるのだ。芖芚のマゞックである。圢に添っお䞊ぶ六本の無駄な柱も錯芚を助長しおいるのだろう。柱の前にはご䞁寧に調床品が眮かれ、真ん䞭には高玚感あふれるグランドピアノも鎮座たしたしおいる。 䞀束ずカラ束はその郚屋の壁を手で觊りながら絚毯の䞊をうろうろ歩いおいた。手觊りの違う壁がないか確認しおいるのだ。慎重に壁を觊る䞀束ずは察照的に、カラ束は時折がんっず壁を殎ったり蹎ったりしお䞀束の心臓を跳ねさせる。 「うるせえク゜束」 カラ束の返事はない。代わりにびっず無線が鳎る。 『喧嘩すんなっおいっただろ』 おそ束の声である。ごめんずそれに謝る䞀束は、䜕でおたえは䜕もいわないんだずカラ束を睚み぀けた。䞀束の芖線に党く気付いおいない様子のカラ束は、今は調床品を觊っおいる。石像、甲冑、壺、よくわからない箱、䜕かの船の暡型、゚トセトラ。おざなりにそれらに觊れるカラ束に、䞀束はため息を぀く。 「おいおめえ、なんだその調べかた。やる気なさすぎク゜が。それずも䜕、このホヌルには入口なんおないっお芋越しおんの」 だったらいえよボケずいいながら、䞀束は疲れ切ったようにグランドピアノの怅子に座る。觊れおはいけないずいう意味のポヌルが立っおいるが知ったこっちゃない。カラ束は手の䞭で拳銃を匄ぶ䞀束に芖線をくれおから、すっず偎に寄っおきた。 「悪かったな。やる気がないわけじゃないんだ」 「あ だったらなんだよ」 「たあ芋おろ」 カラ束がおもむろにピアノに手を䌞ばし、蓋が開いおむき出しになっおいる鍵盀にそっずその指を眮く。䞀束はその指の動きを目で远うだけだったが、鍵盀を觊る指に力がこもったのを芋お、その顔を驚きでひき぀らせた。 「銬鹿、鳎らすな 誰か来たらどうるんだボケ」 「そうかな」 薄く笑ったカラ束の指が鍵盀端の癜鍵を抌す。音が鳎る、ず身構えた䞀束だが、鍵盀は匕っ蟌んだだけで䜕の音もしない。 「は 䜕、䜕で  」 意味が分からないずいう顔をする䞀束に察し、カラ束は笑いながら屋根の䞭を芗き蟌むようにいった。その蚀葉に埓っおグランドピアノの䞭を芗き蟌んだ䞀束に、皮手袋をしたカラ束の指が匊の䞀郚を指し瀺す。指のあるずころ匊䞉本分だけ皮類が違う。 「ずうの昔に芋抜いおいたんだ、じらしお悪かったな」 カラ束はそういっお䞀束をどかせるず、䞭音の癜鍵ひず぀を力匷く抌した。音を立おずにそれが沈んで、代わりにぎぎっず重い音がする。䞀束が音のするほうを芋るず、八時の方向にある柱の壁が䞊にスラむドし、倧きく口を開けおいた。 ぜっかり開いた空掞の䞭に階段が芋える。あたり段数はないのか、その向こうには小さな郚屋も芋える。入口付近でしゃがめば、きっず䞭たでよく芋えるだろう。 沈んだたたの癜鍵を、カラ束の指がもう䞀床抌す。するず癜鍵が静かにもずの䜍眮に戻り、同時に柱に開いた穎もなくなる。 「からくり屋敷かよ  」 「むンディが奜きらしい」 カラ束はもう䞀床癜鍵を抌しお扉を開け、ほら行こうずいっお歩き出した。䞀束はその背䞭をしばらくもじもじ芋぀めおいたが、やがお意を決したようにこぶしを握るず、カラ束の背を远った。先に扉に぀いたカラ束がその隣でどうぞお先にず䞀束を促しおいる。䞀束はそれじゃあお先ずその暪を通り過ぎようずする。 ず、そのタむミングで䞀束はぐいっずカラ束の腕を掎むず、圌の䜓を扉の䞭に匕っ匵り蟌んだ。 うわっずいっおカラ束の䜓が匷匵り、圌の足が階段を螏み倖す。䞀束はバランスを厩しお床に倒れたカラ束の䞊にのしかかる。 「おたえ䜕しやがるっ」 玠早い動きでカラ束の手が懐に䌞び、銃口が䞀束の偎頭郚に突き぀けられた。冷たい感觊に䞀束の動きが止たる。だが止たったのはカラ束も同様だ。 「  䜕、それ」 コンクリヌトに膝を぀き、カラ束の胞に顔をうずめた䞀束が、ねっずりずした口調でそう聞いた。䞀束の手の䞭にはカラ束同様拳銃があっお、その銃口はカラ束の喉を䞋から狙っおいる。圌がもし匕き金を匕けば、カラ束の顎は砕けるだろう。 「おたえが急にッ」 「い぀ものこずじゃん、どうしたの」 すんすんず錻を鳎らしながらいう䞀束にカラ束が黙り蟌む。 「あんた今日、なんか違うよ。どうしたの。あず、さっきからずっずあんたから倉な匂いがする」 「  掗剀、倉えたんだ」 そういうカラ束に、冗談うたいねず䞀束はいった。 「最初は非垞階段の䞭の空気かなっお思っおたけど、これあんたからだ。䜕の匂い 挢方みたいだけど  」 さあなずいったきり黙るカラ束を䞀束は芋぀め、銃口を離さぬたた「カラ束」ずい぀もの名前を呌ぶ。なんだず返っおくる前にネクタむを匕っ匵るず、カラ束が慌おたように身をよじった。 「䜕しお、」 「だから、い぀ものこずでしょ」 たさかただ慣れないのずいう䞀束が、カラ束のネクタむを曎に匕っ匵っお、圌の顔を自分の顔に近づける。その瞬間、偎頭郚の拳銃がより䞀局匷く抌し぀けられたのを感じお、䞀束は䞍快そうに眉を寄せた。 「䜕、マむク 倧䞈倫だよ、このたたで」 「はあ」 「だめ なら切るから無線。カラ束、ほら、こっち」 䞀束は片手で噚甚にふた぀の無線を切っお、再床カラ束に顔を寄せる。カラ束はもう拳銃を抌し぀けおは来なかったが、䟝然ずしお䞀束を探るように芋おいる。 それを芋お劙だなず䞀束は思った。い぀もならこの距離たで来ればきゅっず目を閉じるのに。圌の目぀きも気になる、たさか本気で撃぀ず思っおいるのだろうか。だから、い぀もならほんのり赀く染たっおいるはずの頬が、今日に限っお青癜いのだろうか。 そう思った䞀束が、銃口をそっず喉から倖すず、カラ束の䜓からあからさたに力が抜けた。玠盎なものだずおかしくなっお、少しいじわるしたくなる。銃口をどけるず芋せかけお、フロントサむトで銖筋をなぞれば、うわっず汚い悲鳎が挏れた。色気のない声に、なんだその声ず䞀束は䞍機嫌になる。カラ束の顔を芋れば、そこにあるのは怯えた顔だ。 「  䜕それ」 あんたい぀もそんな顔しないでしょず䞀束はより䞀局気を悪くする。 「前キスしたずきは觊っおも怒らなかったじゃん」 「は、はあ」 怯えながらも䞀束の蚀葉の意味を理解しようずしおいるらしいカラ束の、混乱した顔にも腹が立぀。䜕初めおみたいな態床取っおんのずむラむラしながらネクタむから手を離し、代わりに胞をべたりず觊るず、がちゃっず撃鉄の起きる音がした。 「冗談がすぎるんじゃないか、おたえ。キスならほかに頌め。それ以䞊俺に觊るな」 その蚀葉ず、い぀でも撃おる態勢を取ったカラ束を芋お、かっず䞀束の頭に血が䞊った。 えぐる勢いでカラ束の倩突に銃口を突き぀ける。それず同時にカラ束の胞に眮いおいた手をうしろに回し、腰からナむフを取り出しお、偎頭郚を狙うカラ束の手銖に這わせた。ナむフがネクタむをかすめたせいでカラ束のマむクが床に萜ちるが知ったこずじゃない。 これは俺がカラ束に觊れられる唯䞀のものなのにず䞀束は唇を噛んだ。 拒絶されるのを恐れお告癜もできない自分に、神様から䞎えられた唯䞀のプレれント。 それが今、理解できないぐらいに激しく拒絶されおいる。䞀束の頭がくらくらず回る。こんな颚に拒絶される未来が来るなんお聞いおなかった。聞いおないから理解もできないし、受け入れられない。䜕だほかっお。僕はおたえがいいのにほかなんおあるものか、ク゜束め。 ナむフを握る䞀束の手に力が入りカラ束の腕が切れお血がにじむ。だが䞀束にずっおはそんなこずも知ったこずではない。 「撃぀なら切るし、嫌がるなら殺す」 そういっお䞀束は、噛み぀くようにカラ束の唇に食らい぀いた。 ぎゅっず結ばれた口を舌でこじ開け、歯列をひず撫でする。ぐっず汚い音を立おたカラ束に察し苛立ちが募る。そのせいなのか、キスしおいおもちっずもぞくぞくしないし気持ちよくない。腐った果物の䞭に舌を突っ蟌んでいるようだ。舌があたるたびに嫌悪感が募る。 なんだこれ、ず䞀束は吐きそうになった。 唟液だっお、冷たくお生臭くお、金魚鉢の氎をすすっおいるよう。 「きっ、もちわりぃ、」 いっおから酷いこずをいったもんだず思ったが、無意識に出た蚀葉は戻せない。それよりも口の䞭が気持ち悪すぎお、䞀束はべっずその蟺に唟を吐いた。あ、やばい嫌われるず焊ったが、倚少自由になったカラ束が動ける片手で殎ろうずしおくるから、改めお銃口を突き぀けなおした。ぜっぜっず息を吐くカラ束が、降参だずいうように拳銃から手を攟す。甚心金で指に匕っかかった拳銃が、重力に埓っおくるりず回った。 「う、撃぀な、嫌がっおない。ただ、ただ、心の準備がいっただけ、だ」 もっずもらしいこずをいうカラ束は涙目である。それを芋おいるず嫌われるず思ったのも忘れおむラむラした。䞀束は舌打ちをひず぀しお立ち䞊がる。そこでふず、䜕でこんなに苛立぀のだろうず思った。カラ束の涙目は奜きなほうだ。い぀もならぞくぞくする。なのに今日は䜕で。 壁䌝いに立ち䞊がろうずしおいるカラ束を暪目に芋぀぀、䞀束はちっずも興奮しおいない自分にも銖をかしげる。奜きな人ずするキスっおだけでい぀も心臓も脳内も倧隒ぎだ。それなのに今日に限っおすべおが冷え切っおいる。それも䞀䜓どうしお 考えれば考えるほどわからない。 意味わかんねえず呟き、䞀束は思考を攟棄すべく階段を䞋り始めた。 「おい、おたえ」 「うるせえク゜束、さっさず行くぞ」 「あ、お、俺は、もう䞀人を、呌んでくる。ここで埅っおろ」 ばたばた走る音を聞きながら、なんだよ畜生ず䞀束は思う。キスのあずのその行為はさすがに傷぀く。そんなに僕が嫌か。嫌になったのか。たあキスしお気持ち悪いはなかったよな。そんならあれば僕のせいか。 暗い気持ちが足元から䜓も心も蝕むようで居た堪れない。䞀束はため息を぀きながら足を進めた。 隠し郚屋は、カラ束の掚理ずは少し違っお、䞀階ず地䞋の間に䜜られおいるようだった。郚屋の䞭はがらんずしおいお、スチヌル曞庫が䞉面すべおに䞊べられおいる。郚屋の真ん䞭にはテヌブルがひず぀あっお、無造䜜に小型のトランクケヌスが眮いおある。それらを芋お、名掚理だったが少し倖したなず䞀束は思った。あんなに簡単に隠し郚屋の䜍眮も隠し扉の䜍眮もわかったくせに、やっぱりあい぀はポンコツだ。トランクケヌスを眺めながらカラ束を思う䞀束は、これが終わったら傷心旅行にでも行こうかなあずがんやり思った。 「土䞋座すれば芋送りにぐらい来おくれるかな」 「え、どっか行くの あの䞖 お兄ちゃんなら土䞋座しなくおも䞀䞇円で芋送っおやるけど」 独り蚀に返事があっお䞀束は肩を跳ねさせた。芋れば䞊からおそ束が顔を出しおいる。 「っおか䞀人 お、マゞで隠し郚屋あったか。あい぀すげえじゃん」 関心した様子のおそ束は、すっかり機嫌がなおったようだ。入口に留たったたたでいる兄を芋お、䞀束は階段を䞊りなおした。途䞭でカラ束が萜ずした無線を拟っお、兄を誘っおピアノたで戻る。぀いおきた兄にからくりを説明しおやるず「なんだそりゃ」ずおそ束も驚いた顔をする。 「むンディが奜きなんだっお」 「誰が」 「え 誰がっお  誰がだろ」 銖をひねりながらそういう䞀束の暪で、倉なのずいいながらおそ束が癜鍵を抌しおいる。単なる柱に戻った灰色の壁を芋お、おおすげえずおそ束は喜んだ。 䞀束はその様子をしばらく芋守っおから、小さな声で兄に問いかけた。 「ねえ、ク゜束䞀緒じゃないの。おそ束兄さん探しに行ったはずだけど」 「あヌ、なるほど、だからバラけおんのね。いやいや、カラ束ずは䌚っおないわ。代わりに十四束が連絡しおきた。隠し郚屋の入口芋぀けたから来おくれっおカラ束がいっおるっお」 「  そう」 「さすが参謀様だよなヌ で、䞭、䜕があった」 「うん、曞庫みたいなのがたくさん」 「そこもビンゎっちゃうわけ 今日のカラ束すげえな」 すげえずいったおそ束がもう䞀床癜鍵に觊れる。柱の扉が開いたのを確認しお、ピアノの屋根に顔を突っ蟌むず、取り出したナむフで䞉本の電線をぶ぀りず切った。これでもう扉は閉たらない。あずから来るだろうチョロ束班も隠し郚屋の入口にすぐ気づくこずだろう。 「カラ束もすぐ戻っおくるだろうし、先芋に行っおみたすか」 うんずうなずいた䞀束の顔色は優れない。 隠し郚屋の空気はひんやりしおいる。毛の長い絚毯が敷かれおいるのを芋お、ここだけ高玚感あふれおる ずおそ束がはしゃぐ。その暪で䞀束は蟛い息を吐いおいた。 䞀束は、カラ束がどんな顔をしお戻っおくるのか気が気じゃなかった。おそ束を呌びに行くずいっおおきながら、十四束に橋枡しを頌んだカラ束。それらを鑑みるず呌びに行く云々は自分から逃げる口実な気がする。 そう思った瞬間、ちくっず䜕かが䞀束の胞を刺した。 悲しみや苊しみなどではない、違和感だ。 カラ束はどうやっお十四束に連絡をしたんだろう だっお無線は俺が持っおいる。 ぞっずした。 「  ねえ、ちょっず、」 声をかけたおそ束は曞庫に手を䌞ばしおいる。䞀束は兄の腕をずっさに取った。 「䜕、どったの」 「  ちょっず、聞いお。あのさ、俺さっき、興奮しなかったの」 「は」 䜕いっおんだこい぀ずいう顔をしたおそ束が、䞀束の額を芋お目぀きを倉える。䞀束は脂汗をかいおいた。どうしたずいう兄に、䞀束が震える声でいう。 「なんか倉じゃない ク゜束。あい぀さ、すげぇ簡単にからくり芋぀けたんだ。いくら分析力があるっおいっおも、あっけなさすぎない ここだっおそう、たるで知っおたみたいに簡単にわかっお、」 おそ束の顔が匷匵る。それを芋お䞀束が䞀歩、階段に向かっお足を出す。 「あずあい぀、倉な匂いした。挢方みたいな、花みたいな、芍薬みたいな、にお  い、」 あっず叫んだ䞀束が、玠早い動きでタブレットを取り出した。だが指が震えおうたく操䜜できないのか、䜕床も同じ動䜜を繰り返しおいる。芋かねたおそ束がタブレットを取りあげ䞀束のいう通りに操䜜するず、タブレット䞊に屋敷の芋取り図が珟れた。そこに方県玙を暡したマップが重なり、そのマップ䞊の野倖の郚分でポヌンず青い光が点滅する。 「え、䜕これ  」 おそ束の問いかけには答えずに、䞀束はおそ束の腕を掎みなおした。揺れた兄の圱からテヌブルが珟れる。その䞊のトランクケヌスが䞀束の目に飛び蟌んでくる。トランクケヌスの四隅には金属の板が取り぀けられおいお、そこが氎のようなもので濡れおいる。 䞀束の顔が匷匵った。おそ束の腕を握る圌の手にも力が入る。痛みに顔をしかめるおそ束の目に、色が倉わるほど噛みしめられた䞀束の唇が飛び蟌んでくる。顔色は死人よりも悪い。 「逃げよう兄さん、あれもしかしお」 そのずきだ。 隠し郚屋の入口に人圱が走った。 「浮気かハニヌ」 カラ束だ。その手に拳銃を持っおいる。だが銃口の向く先は䞀束でもおそ束でもない、トランクケヌスだ。党おを理解した䞀束の喉から絶望的な声が挏れる。 「情熱的だったのに残念だっ あの䞖でそい぀ずよろしくな」 「やめッ」 䞀束の制止もむなしくカラ束の指が匕き金を匕いた。撃ち返しおいる暇などない珟実に、䞀束は雄たけびをあげながらおそ束を匕っ匵り、その䜓を階段のほうぞ突き飛ばす。 「クッ゜がニトロかよっ、兄さん逃げおッ」 匟に胞を抌されたおそ束の衚情が倉わった。 倧きく䜓を倒したおそ束は、即座に足をうしろに出しお地面を螏みしめ螏ん匵るず、おたえも行くんだずばかりに䌞びた䞀束の腕を匕いた。重心を倱い倒れ蟌んでくる䞀束の䜓を肩ず胞で抱き止めお、そのたたぐるりず䜓を回しおテヌブルに背を向ける。荷物のように匟を持ったおそ束は、地面を蹎っお入口めがけお駆け出した。 コンマ䜕秒の差でドンっず倧きな音を立お、トランクケヌスがはじき飛ぶ。その音を聞くや吊や、おそ束は䞀束を階段䞊に投げ぀けた。コンクリヌトに叩き぀けられた匟は、ぐえっず匕き぀った声を出しながらも、這うようにしお戞口をくぐる。匟の安党を確認したおそ束の背に二床目の衝撃が走る。先ほどよりも倧きな爆発だ。爆颚に背䞭を抌されお宙に浮いたず思った次のずきには階段に叩き぀けられおいる。 やべえ死ぬかもず圌が思ったずき、チョロ束の顔が戞口に芋えた気がしお、誰かの手がおそ束を匕きずりあげた。 [newpage] 「ねぇぇええぇ もう嫌になっおきたよぉぉお 僕のきれいな指先が玙のせいでかっさかさなんだけど」 どういうこずなの ず叫んでいるトド束の隣でチョロ束は無心に本をめくっおいる。だだっ広い寝宀の捜玢が終わり、十四束が芋぀けたコンドヌムの箱をそっず戻しお、さあ次だず曞斎を開けたらそこには絶望が埅ち受けおいた。次男に曞斎の調べかたを聞いおおいたものの、果たしおそれでカバヌできるだろうか。 「右偎の棚䞊から歎史ロマンス、恋愛小説、友情物語、自己啓発本、音楜雑誌。真ん䞭の棚䞊から偉人䌝、経枈曞、蟞兞類、建築・矎術・服食系雑誌、あずはタむム誌。巊偎は䜕でもありの棚みたいで、ずりあえず䞊からアルファベット順に䞊んでる。順序がおかしくなっおるのは小説の棚ず、雑誌の棚、䜕でもありの巊の棚。誀差の範囲かもしれないけど」 それでも手圓たり次第に芋るよりはマシだず、次男の発蚀に埓っお末匟が本棚を分類し、今はそれを端から芋おいる最䞭だ。十四束は先ほどドレスルヌムに走っおいった。コスプレずかありたすかなヌっず叫んで走っおいった匟はただ垰っおこない。 「ねえこい぀さあ、こんなに経枈曞持っおお、本圓に読むのかな かっこ぀けなだけなんじゃない」 「僕に聞くなよ」 「んじゃ他に誰に聞くのさ あ、兄さん芋おたねゑもん発芋」 「  春画探せっおいっおないよね」 「ちぇヌ」 口を尖らせたトド束が、本を元の䜍眮に戻しお、たたカサカサ本棚をあさり始める。ああもう目が痛いずチョロ束は県鏡をはずしお目頭を揉む。それを芋たトド束が、「ねえそれちょっず貞しおよ」ず手を䌞ばしおきた。 「僕も䞀回かけお芋たかったんだよね。これっお兄匟みんなの䜍眮がわかるの」 シルバヌフレヌムの県鏡を兄から奪ったトド束が、レンズを光にかざしながら聞く。どう芋たっお普通の県鏡だ。ちょっずむンテリ颚味の。かけおみおれば芖界が違うのかなず圌はかけおみるが、やっぱり普通の県鏡でしかない。おかしいなずいっおいる匟に、チョロ束はため息を぀く。 「スむッチ入れなきゃ芋えないよ」 フレヌムの暪に突起があるでしょずいう兄の蚀葉に埓い、トド束はその郚分を抌しおみる。キシッだかカシッだか音を立おおレンズの片偎が濁り、小さなマップずマス目が珟れた。その䞊にポヌンず六色の光が珟れお、わあっずトド束は歓声をあげる。 「すごいじゃんこれ あ、この小さな地図は芋取り図なんだ ぞヌ あ、なんかカラ束兄さんずいぶんうろうろしおるねぇ」 「カラ束が 単独行動は控えろっおおそ束兄さんいわなかったのかな。誰か䞀緒じゃないの」 「誰も。おそ束兄さんは地䞋みたいだし、䞀束兄さんは䞀階から動いおないよ。十四束兄さんはただドレスルヌムだ。ぞヌ、なんか面癜いね、ストヌカヌが癖になるのもわかるかも」 きゃっきゃず喜びながらひどいこずをいう匟に、ストヌカヌじゃないからずチョロ束は少し声を荒げた。 『お兄ちゃんでヌす。そっち今、どんな感じ』 そこぞ無線が入り蟌んできお、聞こえた声にチョロ束の頭痛が増す。 「えぇヌ次はおそ束兄さんなの  」 『え 䜕それ 䜕その塩察応 次はおたえか』 酷くない ずわめく長男は本圓に自分たちのリヌダヌなのだろうかずチョロ束は思う。ため息が聞こえたのか、おそ束の奇声が聞こえる。 『カラ束も俺に塩察応なんだけど お兄ちゃんもう激おこよ なんか気持ち悪いし しかもあい぀ら無線切っおやがんの 信じられるこの事実』 「え、カラ束ず䞀束が 䜕で っおかなんか、今別々にいるみたいだけど」 『え、䜕であい぀ら䞀緒にいないの 䜕でお兄ちゃんのいうこず聞かないの』 ぶ぀ぶ぀いう長男の声は響いおいる。単独で地䞋に朜ったかなずチョロ束はあたりを぀けた。 「兄さん地䞋」 『そのずヌり』 「䜕かある」 おそ束が嫌な声で笑った。 『プレむルヌムかな。SMの』 「うげ」 『あずは牢屋がいく぀かある。䞀応写真撮ったよん。カラ束の掚枬通りなら、商品予定の人間甚かもね』 「さっさず䞊に戻ったら しばらく思い出しおむラむラするよ、きっず」 飄々ずしおいるような兄の声の、その裏の隠された嫌悪をしっかり読み取ったチョロ束は、気を揉みながらそう進蚀した。匟の声におそ束はわかっおるねえず返す。 『でもこれ仕事だから』 「そういうんなら僕もそっち行くから」 『蟛いこずは半分こっお』 「そうだよ」 分厚い本を手に取りチョロ束はうなずいた。 手に取った本は分厚い小説で、線集者ず小説家の深い友情を描いたものだ。その本をぺらぺらめくりながら、間に䜕も挟たっおいないこずを確認する。小説はいい、友情や絆は氞遠である。でも珟実は違う。裏切りは至るずころに転がっおいる。金の切れ目、女関係、些现な感情のやり取り、眮かれた立堎、小さな疑い。 疑いずいえば、今兄は倉なこずをいっおいたなずチョロ束は思った。 「ねえ、カラ束気持ち悪いっお、どういうこず」 あヌ、ずいう声ず䞀緒に、がしがし䜕かをかく音もする。きっず髪でもかいおいるに違いない。 『なんおいうの なんかめちゃくちゃ賢いっおいうか、物事を立䜓的に捉えおいるっおいうか、あずなんか、可愛くないっおいうか  匟らしくない 我、唯䞀の兄ぞ っお気分になるっおいうか腹立぀っおいうか  』 「䜕それ」 「ほんず、䜕それ」 昔の盞棒的に黙っおいられなかったのかトド束が参戊しおくる。圌は䞡手に抱えたタむム誌の束をドスンず床に眮くず、それを䞀枚ず぀めくりながらぷりぷり頬を膚らたせおいる。 「カラ束兄さんにだっおい぀もより賢いずきもあるよ 今日は䜓調がよかったんだよ」 「トド束それ耒めおる」 『䜓調の問題ぃ でもなんか、あのカラ束は背埌から俺を撃ちそうな気がするんだよね。他人みおぇなんだもん』 「䜕それ カラ束兄さんがそんなこずするず思う あの人むングラムしか撃おないよ 僕ずおんなじ あんなもので背埌は狙えないでしょ」 「もののたずえだよトド束  」 カラ束に冷たいのか優しいのかわからない末匟のふおくされぶりに、こい぀も案倖カラ束ボヌむズだなずチョロ束は思った。喜べカラ束、おたえのボヌむズにはカラス以倖にちゃんず人間もいたようだ。 「トド束のいう通りだよ、カラ束がおそ束兄さんを裏切るなんおありえないよ。僕が兄匟を裏切らないのずおんなじでね。それにカラ束はい぀もちょっず倉わっおるでしょ。今日はいい倩気だし、倜は満月だっおいうし、今日は頭の回線がい぀もよりたずもなんだよ」 さらりずいっおのけたチョロ束に、トド束が嫌そうな顔をし、無線の向こうでおそ束が『えぇ』ず照れた。 『照れるわ、チョロちゃんそれ照れるわキッツいわ』 「䜕が」 『え、無意識 やだわ』 「チョロ束兄さん気持ち悪い」 「はあ っお埅っお、トド束それ、」 ちょっず照れた顔をしながらタむム誌をパタパタさせおいるトド束の手をチョロ束が止める。 「タむム誌それ、ちょっず分厚い、倉」 「䜕が あ、䜕これ、袋ずじになっおる」 「タむム誌に袋ずじずかないから。ちょっずそれ貞しお」 トド束の手から雑誌を取り䞊げたチョロ束がそれをたじたじず眺める。人工的にペヌゞがくっ぀けられおいお袋状態になっおいる。圌はナむフを取り出し、びっずペヌゞを割いた。䞭から䞀枚の玙がひらりず萜ちる。すかさずそれを空䞭で捕たえ、チョロ束は匟に差し出しお芋せた。 「だいぶ叀い小切手だ、振出人はレスリヌ・デむモン」 「きったない字、小文字のSずか読めないし」 兄から小切手を受け取ったトド束の目がすうっず现くなる。仕事甚の顔になった匟に、こう芋えお頌もしいんだよなずチョロ束は思う。調べずくずいった匟が、小切手を懐にきちんずしたい蟌んだ。じじっず無線にノむズが混じる。 『䜕か芋぀けたあ』 『お、十四束』 元気な十四束の声が聞こえる。 「あ、兄さん しばらくぶり。こっちはただ本芋おるヌ。これっおいうのは芋圓たらないよ。っおかずっず音沙汰なかったけど、無線ちゃんず繋いでる」 あははっず軜快な笑い声が聞こえお、がさがさ音がした。 『繋いでる繋いでる ちゃんず聞いおた それよりカラ束兄さんから連絡あったよ 隠し郚屋の入口芋぀けたっお。䞀階、二棟連結郚分フリヌスペヌス。おそ束兄さんにすぐに来おほしいっおいっおたよ』 『え、あい぀無線切っおたんじゃないの』 『壊れたみたいっす 色々詊した結果、僕の回線だけキャッチできたみたい』 『カラ束がそれなら䞀束のも壊れおる感じ だから切れおんの 本郚の支絊品だろこれ、だめじゃん』 『んヌ、そっちはよくわかんないけど、でも早めに来おほしいっお』 「僕らも行こうか、おそ束兄さん。曞斎は埌回しでもいいだろうし」 『いや、曞斎は芋ちゃっお。あずで戻るの面倒だし。十四束ドレスルヌム終わった』 『぀いさっき終わったよ』 ご機嫌な口調でそういわれる。 『んじゃ、曞斎戻っおチョロ束たちの手䌝いしおよ。そんでそれ終わり次第こっち来お』 『わかった』 ブン、ず音がしおおそ束の声が消えおいく。それにかぶせるように『今からそっち行くね』ず十四束の声もする。それが切れるや吊や、無線のノむズがひどくなった。ぶっぶっず回線の切れる音がする。十四束が䜕か操䜜しおいるのだろうか。そう思っおいるうちに、ブツンず䞀床倧きな音がしおむダホンの向こうが無音になった。銖を傟げたチョロ束がマむクに向かっお「あヌ」ずいっおトド束を芋る。むダホンに耳をすたせるトド束は銖を暪に振った。 「え、こっちも壊れたの」 「わかんないけど通信できないみたい」 「困るよそれ。十四束が来たら盎しおもらわなきゃ  」 「あ、十四束兄さんが今ドレスルヌムを出たよ」 こっちに向かっおるみたい、ずいいかけたトド束の声が途切れる。どうしたのず問いかけたチョロ束に、眉の間にきゅっず力を入れお県鏡の奥を泚芖したトド束がううんずうなった。 「十四束兄さんさあ、たた寝宀戻っおいくみたいなんだけど、どういう぀もりなんだろうか。行動が突飛なずきあるから困るよねぇ」 「ちゃんず曞斎っおいったのにね」 「僕ちょっず呌んでくるよ」 トド束はあきれた顔をしお芋せお、郚屋の扉ぞず向かう。芳音開きの扉の片偎を匕いお、チョロ束に向かっお片手をふりふり、 「頭のネゞが少し足りないからね、僕の兄さんたち」 そういっお倖に出ようずしたトド束の錻先に、びゅっず䜕かが振り䞋ろされた。 「っ、は、」 驚いお固たる圌の顔面に䞞いものが飛んでくる。トド束はずっさに顔をそらしたが、盞手のほうがやや早く、䞞いものが県鏡の端に觊れる。圌の脳が鋭い痛みを感知したそのずきにはもう、床に萜ちた県鏡は螏み぀ぶされおいた。 「県鏡はチョロ束兄さんだぁっ、なのに案倖遅いんだ」 トントンず手に持った長いもので自らの肩を叩く姿を芋おトド束は埌退る。䞞いものじゃない、金属バットのヘッドだ。それも芋慣れたバットの。驚きで動けないトド束の肩を誰かがぐっずうしろに匕いた。チョロ束だ。拳銃の匕き金に指をかけおいる。 「  どういう぀もり、十四束」 トド束の頭をカチ割る぀もりで金属バットを振り䞋ろしたのは誰でもない十四束である。芳音開きの扉のちょうど真ん䞭に立っおいるのか、圌の䜓は半分だけしか芋えない。その片手に金属バットが握られおいる。チョロ束はその匟を険しい顔で芋぀める。だがただ実際に撃぀気にはなっおいないのか、匕き金にかける指にはあたり力が入っおいない。 二人を芋た十四束が、あれえず銖を傟けた。 「ネクタむが緑 あヌ  、チョロ束兄さん」 うなずくチョロ束を芋お䜕かを察したのか、やばいちょっず倱敗したかも、ず十四束は呟く。だがすぐにたあいいかずにっこり笑った。 「誰が誰でもおんなじだし、党員殺すし」 十四束の䜓がゆらりずうごめいお、扉の陰に圌の䞡腕が隠れる。ぎんずきた顔をしたチョロ束がトド束を抱え蟌むようにしお郚屋の奥に走った。時間を眮かず、芳音開きの扉に無数の穎が開く。半壊した扉を蹎っお珟れた十四束の手にはアサルトラむフルが握られおいる。それがこちらに向けられおいるのを芋おトド束は悲鳎を䞊げかけた。 「䞀発ぐらいあたった ね、あたった」 チョロ束が拳銃を構えなおす。隠れずけずトド束に怒鳎っお、圌は銃口を十四束に向ける。 「ちょっず冗談が過ぎるんじゃない」 「あっは、やっぱり早いね、兄さんは」 再び金属バットを握っお襲い掛かっおくる十四束めがけおチョロ束は匕き金を匕いた。だが匟は脇にそれ、十四束にはあたらない。 「匟だからっおちゃんず狙わなきゃ駄目だよ、兄さん」 甘ちゃんだねえず叫んで、䌞びあがるように距離を詰めおきた十四束をチョロ束の銃が狙うが、匕き金にかかる指にはためらいが芋える。自分の手がどうしおもいうこずを聞いおくれないのを感じ、チョロ束は舌打ちをした。 いくら襲われおいおも十四束は匟、撃おるわけがない。䜓ず心がそういっおいる。 「十四束っ、䜕で」 結局チョロ束は拳銃を撃぀こずなく、飛びすさっお十四束から距離を眮くこずしかできなかった。十四束はそんな兄に容赊なく金属バットを振り䞋ろしおくる。チョロ束はどうにかそれを避けお振り䞋ろされた腕を掎み、十四束のみぞおちに膝をたたき蟌んだあず、鉄板を仕蟌んだ靎で圌を遠くに蹎り飛ばした。吹っ飛んだ十四束が本棚にぶちあたる。圌の頭䞊にばらばらず本が萜ちおいく。 それを芋お、攻撃されおいたこずを䞀瞬忘れたチョロ束が、「十四束」ず叫んで駆け寄りかける。 その足をトド束が掎んだ。 「埅っお兄さん、あれ、違う」 「は」 「十四束兄さん、今日バット持っおない 譊棒にしたんだ、僕芚えおる」 「どういうこず でも十四束今持っおただろ」 「あず、あの十四束兄さん、顎の䞋に傷があるっ、あんなの朝はなかったよ」 そこたで聞いたチョロ束が走りだした。本に埋もれお呻いおいる十四束を匕きずり出すずその顔を掎む。十四束が暎れるから胞板を匷く螏んで黙らせる。かはっず息を吐いた十四束の、巊顎の䞋に瞫い傷があった。 トド束のいう通りだ。 喉を匕き぀らせながらチョロ束は、そこに指をかけ、匕きはがそうず詊みた。めりめり音を立おお瞫い傷が匕っ匵られる。赀いものがぷ぀ぷ぀浮かぶ。 「あ、ぐっ、いで、」 暎れる十四束の顔は十四束そのもので、声だっお十四束そのものだ。瞫い傷からにじむ血が、マスクの存圚を吊定しおいる。チョロ束は混乱した。 トド束はああいうが、誰も気が぀かなかっただけで本圓はどこかで怪我をしお、それをこっそり治療したのかもしれない。バットだっお䞀回取りに行ったんだずしたらどうだろう。だずしたら今自分は匟にずんでもなく酷いこずをしおいるのではないか。 「やめ、にいさ、ん」 その声にはっずしお十四束の顔から手を離した瞬間、十四束が埌ろ手に持っおいた拳銃に肩を撃ち抜かれた。自分がしたように足で蹎り倒され、そこにバットが振り䞋ろされる。みしっず音を立おおチョロ束の䜓が揺れる。十四束ず入れ替わるように本の山に倒れ蟌んだチョロ束めがけ、十四束は䜕床もバットを振るった。 「甘い顔 しおっずっ ダられちゃうよ」 怒りや痛みで我を忘れおいるのかバットの呜䞭率は䜎い。ヘッドはチョロ束を叩いたり本の山にぶ぀かったりしおいる。それに苛立ったらしい十四束が、䞀床深呌吞をしおチョロ束の頭に狙いを定め、倧きくバットを振り䞊げた。 「『僕は兄匟を裏切らない』っ、でも兄匟から裏切られちゃうなんおっ、ざたァないっスね」 あたれば満塁ホヌムラン、即垭死䜓でのできあがり さよなら兄さんたた来おね 叫んだ十四束の足が、かくんずこけた。ぐるりず圌は振り返る。芋開かれお焊点の合わないダク䞭のような目がトド束を捉える。末匟の手には新品に近い拳銃が握られおいる。反動に慣れおいないのか、その腕はぶるぶる震えおいた。 「げぇ。油断した」 十四束がそう呟いお、チョロ束から距離を取った。その膝から血が垂れおいる。 「君は兄匟、撃おるのか。油断した、舐めおおごめんね」 臎呜的な傷を受け、これでは䞍利だず察したのか、十四束は金属バットを束葉杖のように䜿っお戞口たで駆けお行く。トド束はそれを远わなかった。逃げる十四束よりもチョロ束のほうが優先だからだ。本の山の䞭にいる兄に駆け寄るず、チョロ束が手を䌞ばしおきた。 「っ、う、色々、着おきおよかったっ、じゃなきゃ死んでたっ、ク゜」 打撲だらけの兄はただ目を回しおいる。トド束は心埗たようにチョロ束の腕を肩に回し、腰を支える。チョロ束の肩から溢れる血がトド束のスヌツに染み入るが、今は無芖するしかない。二人䞉脚をするように起き䞊がれば、倚少ふら぀くものの案倖兄はきちんず立った。よかったずトド束は胞を撫でおろす。 「逃げるよ兄さん」 「埅、っおトド束っ、その前に、おそ束兄さんのずこ、行きたいっ、」 「は その怪我で䜕いっおんの」 「カラ束が倉だっお、いっおただろ あっちでも䜕か、起きおるかもしれない」 「でもあっちには䞀束兄さんもいお」 「䞀束の無線は繋がらないんだろっ もうすでに襲われたあずなのかも、しれないっ、」 カラ束にっ チョロ束の蚀葉にひゅっずトド束が息を飲む。だが硬盎は䞀瞬で、トド束はチョロ束を抱える腕に力を入れなおすず、兄を匕きずるようにしお郚屋を出た。 非垞階段に蟿り぀いた二人は、転がり萜ちおいるずいうほうが正しいんじゃないかずいう勢いで䞀階たで䞋りる。防火戞を蹎砎り、廊䞋を走っお、連結郚分近くに蟿り぀く。 こちらから芋お二時の方向に芋える柱に穎が開いおいる。 そこから爆発音がしお、抌し出されるように䞀束が這い出おきた。だが䞀束は逃げ出さず、再び穎の䞭に戻ろうずしおいる。䞀束の唇が「兄さん」ず圢䜜った瞬間、痛みも䜕もかも忘れたようにチョロ束が走りだした。トド束がうしろから止たれず叫ぶがチョロ束は止たれない。半ば転びながら隠し郚屋の入口にたどり着くず、圌は䞀束を突き飛ばし、その䞭に勢いよく顔を突っ蟌む。 暗闇の䞭に赀いものが芋える。 炎ず、ネクタむ。 ずっさに䞭に入ろうずしたチョロ束の肩を、息を切らしたトド束が匕き戻す。 「心䞭する気かこの銬鹿」 聞いたこずもない声でそう叫んだ末匟が、うしろに倒れたチョロ束に代わっお燃え盛る郚屋からおそ束を匕っ匵り出した。 [newpage] 2月20日、マリブ、IPO本郚。 䌚議宀の䞭では、気難しい顔をしたカヌタヌがじっず䞉人を芋぀めおいた。打撲の跡ず肩に匵られた倧きなガヌれが目立぀チョロ束に、頭に包垯を巻いたおそ束、そしお䞡目を真っ赀にしおいるトド束。䞉人はカヌタヌの目の前に䞀列に䞊んで座らされおいる。 局長ヒヌス・カヌタヌは、五十過ぎの倧柄な男である。元は金髪だった髪は、この仕事に぀いおいるせいで癜髪が増えお、今や銀髪に近い様だ。黙っおいれば優しそうな顔぀きをしおいるが、その目の奥を芗き蟌むず感情も思考も読めないグリヌンアむがあるのを郚䞋なら誰もが知っおいる。 その暪には局長付き補䜐官、ダニヌ・ハヌツホンの姿がある。ハヌツホンはカヌタヌよりも少し若い。だがカヌタヌ同様、赀茶色の髪に癜いものが倚く混ざっおいる。筋肉質でスマヌトで、聞けば昔は優秀な゚ヌゞェントだったらしい。足の怪我が原因で前線を退いたらしいが、今の地䜍を考えるず盞圓有胜な男だろう。 「モンタヌニョの死䜓がラ・シグネス湖から発芋された。死埌䞉日経っおいる。君たちは今日本郚に぀いたばかりだから知らないだろうね」 カヌタヌが重苊しい口調で話し始める。 「私が君たちに任務を䟝頌したのは2月13日。君たちは14日に日本を出お、13日倜にカンザスシティに到着した。そしお15日にモンタヌニョ邞の䞋調べを行い、圌が留守だずいう18日に邞宅に䟵入した。あっおいるね」 チョロ束が䞉人を代衚しおうなずく。 「よろしい。曎に報告通りなら、17日はおそ束君ずチョロ束君、カラ束君の䞉人は共に行動しおいお、トド束君は調べ物をするために倖出、䞀束君はその譊護にあたっおいた。そしお十四束君の行動に぀いおは誰も知らない」 ひぐっずトド束の喉から぀ぶれたような音がする。 「ラ・シグネス湖たではモンタヌニョ邞から車で玄䞀時間半だ。邞宅付近の君たちの拠点からもそのくらいの距離だろう。この日、湖の付近ではギャング団が確認されおいお、その䞭にアゞア人がいたず調べが぀いおいる」 そこたでいっおカヌタヌは、䞀床すうっず倧きく息を吞った。凛々しい眉をわずかに寄せお、チョロ束、トド束、おそ束の顔を順番に芋る。最埌に芋たおそ束がかすかに俯くのを芋お、カヌタヌは銖を暪に振る。 「  いや、たどろっこしい話はやめよう。䞀束君のためにも」 䞀束の名前が出た瞬間、がたんず倧きな音を立おおおそ束が䜓を揺らした。俯いた圌の目にじんわり涙が浮かび、ぜろりず頬を䌝っお床に萜ちる。俺のせいだ、ず消え入るような声でいったおそ束は、怅子の䞊に足をあげおそこに顔をうずめおしたった。 宀内に重苊しい空気が立ち蟌める。息を吞うのもためらわれるような、吞えば自分が取り蟌たれおしたいそうな、そんな空気。 それを䞀人吞い蟌んで、カヌタヌがぜ぀りずいった。 「  君たちには悪い結果になったず思っおいるよ」 局長の蚀葉にハヌツホンが䞉人から芖線をそらす。圌の脳裏にはきっず、管を繋がれ癜いベッドで死んだように眠る䞀束の姿が映し出されおいるのだろう。爆発に巻き蟌たれなかったものの、煙を吞ったのか打ちどころが悪かったのか、それずも茞送に時間がかかり過ぎたせいなのか、運ばれた本郚内の病院で䞀束は今も眠り続けおいる。おそ束がその偎で泣き喚いたのは誰の蚘憶にも新しい。 そのこずを憐れむような衚情で芖線をそらしたハヌツホンずは違い、カヌタヌは䞉人を芋据えたたた蚀葉を続ける。 「圓局は以前から、モンタヌニョに圓局内郚の協力者がいるず芋おいた。い぀も必ず逃げられおしたうのは、や぀に情報を流しおいる茩がいるせいだず」 以前からずいうがおそ束たちには初耳だ。だがそれも圓然だろう、仲間の裏切りを瀺唆するようなこずを迂闊にいえるわけがない。 「たたモンタヌニョの関わる事案の倚くにデむモンの名前が挙がるこずから、内通者はデむモンその人ではないかず芋るようにもなった。や぀は君たちも知る通り存圚すら怪しい男だ。だが圓局内の人間がや぀だずいうなら、自分の存圚を消すぐらい簡単な話だ。そこで我々は、䞡者に関わる任務にあたる゚ヌゞェントに察し、内密に盗聎等を行っおきた。もちろん君たちに぀いおもだ」 支絊した無線に぀いおも盗聎しおいたよず局長はいう。 「君たちに任務が䞋ったあず、誰も䞍審な動きは芋せなかった。倖郚ず接觊のあった人間も誰䞀人ずしおいない。だが、私たち数名ず君たち以倖誰も内容を知らない任務の最䞭に、察象者のモンタヌニョが殺されお、君たちは襲われた。それらを可胜にする方法はひず぀、君たちの䞭の誰かがデむモンである堎合だ」 おそ束のすすり泣く声がより倧きくなる。たるでこのあずの話を予期しおいるかのような泣き声にチョロ束が眉を寄せる。 「デむモンはモンタヌニョを始末したあず、君たちを襲った。襲った理由はわからないが、モンタヌニョを始末したあたり足を掗う぀もりだったのかもしれない。君たちを殺し、それを今床こそ架空の『レスリヌ・デむモン』の仕業にしお、垰還する぀もりだったのかもしれない。兄匟を襲われたずあれば誰も自分たちを犯人だず芋なさないだろう。被害者面で我々の目を朜り抜けられる」 局長、ずハヌツホンが匱い声でカヌタヌを呌んだ。カヌタヌの蚀葉を止められるずは思っおいないのだろうが、いわずにはいられなかったらしい。カヌタヌはそんなハヌツホンを少し芋たが、たたすぐおそ束たちに芖線を戻す。 「  だが、チョロ束君ずトド束君を殺しそびれたせいで番狂わせが起こっおしたい、逃亡を図るしかなかった」 憶枬だがねずいうカヌタヌだが、聞いおいるおそ束ら䞉人はそう思っおいないのか、沈痛な面持ちでぐっず黙り蟌んでいる。 カヌタヌは、少しの間唇を匕き結んで、䜕床か軜く瞬きをした。 やがお深い緑色の目をそっず䌏せ、嫌なものだなず䞀人いっおから残酷な蚀葉を発する。 「よっお圓局は、束野カラ束及び十四束のいずれかをレスリヌ・デむモンその人だずみなし、確保を遂行する。  君たちはこの件から手を匕いお、䌑逊でも取るずいい」 そういった局長に察し、はあっず怒りの声をあげたのは、チョロ束でもおそ束でもなく、トド束だ。 「䜕いっおんの 手を匕けっお、䜕いっおんの」 「ずどたづ、」 「おそ束兄さんは黙っおおよっ、僕絶察嫌だよ、䌑暇 ふざけないでよ」 泣いお目を真っ赀にしおいたトド束が、今はその目をぎら぀かせおカヌタヌを睚んでいる。ぎゅっず握りしめられた拳には血管が浮いおいお、骚の郚分が癜くなっおいる。匷烈な怒りが圌を襲っおいるのか、䜓が可哀そうなくらいに震えおいる。 「僕は蚱さないからね あの二人を絶察に、蚱さないから」 箍が倖れたように叫ぶトド束を止めるものは誰もいない。 「僕が捕たえる、絶察に捕たえる。捕たえお、酷い目に合わせおやる。埩讐しおやる、裏切りは認めない。僕ら兄匟を匕き離すような裏切りは、絶察に蚱さないッ」 ぶ぀ぶ぀ず呟いおいたかず思うず、圌は飛びかかるようにカヌタヌに詰め寄った。 「局長、僕をそのチヌムに入れおください 僕はこの手で裏切り者を捕たえたい、捕たえお裏切ったこずを埌悔させおやりたい」 芁望の䜓を取りながら、でも絶察に拒吊は認めないずいうトド束の口調にカヌタヌが枋い顔をしおいるず、チョロ束がおずおずず手を挙げた。 「僕も、」 困惑ず驚きず悲しみず怒りをごちゃ混ぜにしたような顔で圌はいう。 「トド束がやるなら、僕も仲間に入れおください、局長。可愛い匟䞀人に危ないこずはさせられない。トド束たでいなくなったら、僕らもう  」 語尟を现くしお俯いたチョロ束が、ちらりずおそ束に芖線を送る。芋られたこずに気づいたのかおそ束の肩がびくりず匷匵る。嫌だ、ず長男はいった。 「俺、は、嫌だ。できない、信じたくない、カラ束が、十四束が、俺を裏切ったなんお、信じたくない。み、認めたくないんだ、俺、俺たち、兄匟なのに」 がばっず頭を抱え蟌んだおそ束を芋るチョロ束の衚情が耇雑さを増す。兄を宥めようずチョロ束が手を䌞ばしかけたずき、「あきれた」ずトド束冷たくいった。振り返ったチョロ束が芋た匟の芖線には、蔑芖の色が浮かんでいる。 「じゃあおそ束兄さんは䌑暇でも取っおれば 垰囜しおもいいし、どっかに匕きこもっおおもいいよ。たあ兄さんの気持ちはわかるよ、ぜヌんぶ俺の匟だヌっお、可愛がっおたもんね。そんなら僕がやっおあげるよ、兄さんの代わりに」 トド束の目が爛々ず光り茝いおいる。敵の幻芚でも芋えるのか、䜕もないずころを睚み぀けおいる。トド束、ず匱い声で呌んだ長男など芋もしない。口元に半円を䜜った圌は、固い決意のにじむ声でいう。 「誰が誰でもおんなじなんだ。僕は兄さんで兄さんたちは僕。僕らは六぀子なんだから。裏切り者は『ボク』が絶察に捕たえる」 カヌタヌのため息が静かになった郚屋に響く。額を抌さえた圌は、ある皮の芚悟を決めたように䜕床か銖を瞊に振った。 「そこたでいうなら君たちの参加を認めよう。ただし、兄匟の情は捚お絊えよ」 [newpage] 2月22日、本郚内カフェテラス正午。 最悪の䞀日から二日が過ぎた。䟝然ずしお束野カラ束及び十四束の動向は぀かめおいない。 あれ以来ふさぎこんでしたったおそ束は、本郚内の䞀宀に匕きこもっおいる。カラ束ず十四束の二人ず連絡を取るこずがないよう圌には監芖が぀いおいるが、䞀人匕きこもっおいる郚屋からはすすり泣く声ずラブ゜ングが聞こえるばかりだ。 たた、䞀束が目芚める気配は䞀向にない。点滎を打たれたたたの圌は静かにベッドの䞊で暪になっおいる。 そんな二人をチョロ束もトド束も時折芋舞うが、それ以倖は二人ずも忙しく䜕かをしおいるようだった。 「ボクちょっずやっおみたいこずがあるんです」 あたり根を詰めすぎおもいけないず連れ出したカフェテラスで、コヌヒヌを飲みながらトド束がいうのをカヌタヌは黙っお聞いおいた。隣にはハヌツホンずチョロ束もいる。 「兄さんたちはボクらの動向が知りたいはずだず思うんですよ。本郚はボクらの無線も傍受しおたんでしょう そこにあい぀らがアクセスしおこさせるようにできたせんか」 そういうトド束の手には圌が任務の際に䜿っおいた無線が握られおいる。そのずきのこずを思い出すのだろう、トド束がピンクのネクタむを忙しなくいじった。チョロ束も自分のしおいる緑のネクタむの先を芋぀めおいる。 「あの日、十四束兄さんが襲っおくる少し前、ボクらの無線が切れたんです。故障かなっお思っおシステムアナリストの人たちに聞いおみたら、同じタむミングで本郚が傍受しおいた無線も切れおたみたいなんです」 知っおたしたか 口をぞの字に曲げたトド束に、カヌタヌは銖を瞊に振る。 「しかしあれは混線のためず聞いおいる」 「どこずどこが混線するんですか、たぶんそれ、違いたすよ」 倧人びた口調でいう圌の様子はずおも末っ子には芋えない。衚情に愛嬌や可愛げの面圱が芋えないこずもないが、今の圌は真面目そうで神経質そうな青幎でしかない。こんな子だっただろうかずカヌタヌは思う。 「思うに、たぶんあい぀らが電波を切っおたんだ。ボクらの無線も、本郚偎の盗聎電波も。いくら本郚がサむバヌ察策に力を入れおいおも、PCに盎接繋がる電波があったら、簡単に乗っ取れるし操䜜だっおできたすからね」 本郚のネットワヌクは圓然のごずく暗号化されおいる。その他にも倚くの防埡甚システムを搭茉しおおり、察サむバヌ兵噚も積んでいる。重芁な郚分はプラむベヌトネットワヌクを䜿っおいるか、どこずも繋げずにUSBなどの倖付けでやり取りするかのどちらかだ。その䞭でもアナリスト甚のPCはネットワヌクに繋がないものが倚い。そのPCがこの間唯䞀繋いでいた電波がトド束たちの持぀無線ぞの盗聎電波だ。 いくら防埡しおいおも、繋がっおいればそれは単なる穎でしかないずいうトド束の意芋に、なるほどずカヌタヌは思った。 「電波の暗号なんか十四束の手にかかったら赀子の手をひねるようなもの。もしかしたら結構早い段階で本郚の盗聎に気づいおいたかもしれたせん。だからカラ束ず策を緎っおボクらを殺すこずにしたのかもしれない」 そういっおトド束はかたんず無線を机に眮く。ぎゅっず握りしめられる指が埐々に癜くなっおいく。ハヌツホンが気の毒そうにそれを芋぀めた。 「だからもう䞀床この無線の電源を入れお、PCからこの無線ぞの盗聎電波を発信させれば、あい぀らはそれを䜿っおPCに䟵入しおくるんじゃないかっお思うんです。ボクの無線の電波に぀いおは把握しおるはずですからね。もちろん本郚のセキュリティを蹎砎っお入っおくるこずも可胜だし、十四束だけならそうするかもしれたせん。あい぀うちの栞匟頭ですから。株やる頭はあるのにネゞ飛んでるんですよ。兄貎に銖茪぀けられお散歩行くようなや぀なんです。でもあい぀の偎には今カラ束がいるから。カラ束っお风で兄匟懐柔できるず思っおる頭の匱いポンコツで、最悪ボクが逊っおやる気なんですけど、あい぀あれで参謀なんですよ。だからリスクを冒すより小さな隙を探すはず。その『隙』に眠を仕掛ければ、あい぀らの居堎所が掎めるんじゃないかず思うんです」 どうでしょうか、ずいうトド束を芋お、カヌタヌはハヌツホンず顔を芋合わせた。いい案かもしれないずいったのはハヌツホンだ。 「さすがに情報凊理宀にあるPCをネットワヌクに繋げるなんおこずはできないから、それに芋せかけたPCを䜜っお、そこに誘導しおはどうでしょう」 カヌタヌは、そう尋ねおくるハヌツホンず、自分の蚱可を硬い衚情で埅぀トド束、そしお䞀蚀も発さずにこの堎を芋守っおいるチョロ束をそれぞれ芋やっおから、ふむ、ずうなずく。 詊す䟡倀はあるかもしれない。考えればわかる明らかな眠だ、匕っかからないかもしれない。だが虎穎に入らずんば虎子を埗ずずいう。そしおそれは向こうもきっず同じだろう。 よしずいったカヌタヌに、チョロ束が䞀瞬きらりず光る目を芋せた。 チョロ束、トド束ず特別チヌムの面々、局長及び補䜐官が芋぀める䞭、アナリストの手によっおトド束の無線に電源が入る。圌らの目の前には盗聎甚に䜿甚したシステムを移怍したPC耇数台が甚意されおいる。これでクラッキングの動向を監芖するのだ。 仕掛け圓日はどのPCにも䟵入の圢跡はなかったが、次の日の早朝、画面が䞀瞬ブラックアりトしお、クラッキング監芖システムの数倀が倧きく跳ね䞊がった。 23日4時のこずだ。 「逆探知しろ、どこから䟵入されおいる」 「アラスカだ、銬鹿か」 「アラスカ 随分遠いずころを噛たしお来やがったな その先は远えるか」 「远えない ロックがかかっおる」 迎え撃぀アナリストたちが隒ぐ。猫背を䞞めおそれを芋おいたトド束がすっず動いた。䟵入の圢跡があったのは䞀台のノヌトだ。圌の手がそれを持ち䞊げる。 「ボクがやっおくる」 半分寝た様な目で監芖システムの動きを芋぀めるトド束を、宀内の人間が䞀斉に芋る。芋られた圌は、きひっず獲物を狙う猫のように笑った。普段の可愛い顔からは想像もできない凶悪な笑みに、誰もかれも声が出ない。 「十四束の  あい぀のやりかたはよく知っおる。解陀コヌドにもいく぀か芚えがある。ボクにやらせおくださいよ」 手も足も出ない状況䞋でそういわれおは、わかったずいわざるを埗ない。蚱可を埗たトド束がPCを倧事そうに腹に抱えお郚屋を出ようずするのを、カヌタヌが埅おず声をかけた。 「悪いがトド束君、君が裏切らない保蚌はない。やるなら私の目の前でやり絊え」 振り返ったトド束は、それもそうだず思ったのか玠盎にうなずく。 「執務宀をお借りしおもいいっすか」 執務宀に入ったあずのトド束の仕事は早かった。本圓に兄がよく䜿うコヌドを知っおいるらしく、いく぀か適圓に打ちこんでは消し、打ち蟌んでは消しを繰り返しおいた。 小さな机の䞊でPCに芆いかぶさるようにしお䜜業をするトド束ず、匟に同垭するチョロ束の前にコヌヒヌが眮かれる。執務宀には小さなキッチンがあっお、カヌタヌはよくそこでコヌヒヌを淹れるのだ。今そこに立っおいるのはハヌツホンであるが。 「これだ」 トド束ががそりずいう。無事ロックが解陀できたらしい。圌はそのたた逆探知を始める。 十四束ず思わしき䟵入者の発信源は、アラスカからブラゞルに飛んで、そのあずベラルヌシに行き、アメリカ西郚むリノむ州の现い路地裏に入っお途絶えた。トド束からそれを聞いた特別班がすぐさたそこぞ向かったが、そこにはすでに圌らの姿はなかった。 それを聞いたトド束ずチョロ束はもちろん、ハヌツホンもカヌタヌも眉間に深い皎を刻んだたたむっ぀り黙り蟌んでいる。 「今はアクセスがありたせん、だから今は逆探知できない」 居堎所が掎めないず険しい顔でいうトド束はPCを睚み続けおいる。 「さっさず再アクセスしおこいよ。時間ないんだよね、ほんず」 乱暎な口調でトド束がいうのを聞いお、カヌタヌも確かにず呟く。確かに時間はあたりない。どこか遠くに逃げられる前に捕たえおしたいたいものである。 カヌタヌはグリヌンアむを少し现めおトド束を芋た。圌の䞀番䞊の兄は圌のこずを末っ子だから甘えん坊でどうしようもないずいっおいたが、この暪顔を芋ればきっず兄も考えを改めるのではないかず思う。昚日ずは別人のような鋭い目でPCを睚み぀けおいるトド束に、甘ったれの芁玠は芋぀からない。髪の毛は圌がかきむしったせいでぐしゃぐしゃで、䞍機嫌がデフォルトのような顔には愛嬌なんおかけらもない。こういう顔もできる子だずは知らなかった。 じっくりトド束を芳察しおいたカヌタヌだったが、トド束が立ち䞊がったのを機にぱっず圌から目をそらす。 「居堎所掎むのにこんな手間取るずか。予想倖だし。こんなんじゃ倧倉だから、䜕か別の察策を取りたい。それ考えるために今日はもう倱瀌しおいいですか」 「いいだろう。結果を期埅しおいる」 「PC、情シスに戻しおきたすね。ここに眮いおおいおも邪魔でしょ。できれば持ち垰りたいんですけど、無理ですよね」 トド束の台詞に、カヌタヌはそうだなずうなずく。 「君を疑っおいるわけじゃないんだがね」 「わかっおたすよ。ボク、䞍審者扱いには慣れおるんで、気にしないでください」 そういいながらトド束はPCに䞁寧にロックをかけおひひっず笑う。圌はカヌタヌずハヌツホンに䞀瀌しお、チョロ束を䌎っお急ぎ足で郚屋を出お行った。それを芋送る自分のもずにハヌツホンがやっおくる。 「芋぀からなかったのは残念です。長期戊になりたすでしょうか」 そういう圌にカヌタヌは手を振っおみせる。 「なったずしおも執念で芋぀けるさ」 局長の顔を芋るハヌツホンは䞍安そうだ。 2月25日午前10時、局長執務宀。 この日、局長宀を蚪れたトド束はい぀になく䞍機嫌なようだった。 あれ、ずカヌタヌは思う。 昚日䌚ったずきは䞊機嫌だった。なぜなら裏切り者がアクセスをしおきたずいうこずが本郚内で広たっおいお、それに関しお色々なずころから耒められおいたからだ。 もっずも特別チヌムの仲間たちはトト束に䞍満を持っおいるようだ。なぜならトド束が別の案を考え䞭だずいっお二日も圌らに情報をおろさないからだ。PCにはトド束がロックや暗号をかけおおり、たたほかのPCずのネットワヌクも繋いでいないので、チヌムの面子はトド束からの情報を埅぀しかない。 「アクセスはちょいちょいあるからその郜床逆探知はしおるんですけど、でも今もっず効率のいい案を怜蚎䞭だし、探知の結果は局長らに随䞀報告しおるから」 だから倧䞈倫ずいっお情報をおろしもしないトド束に、䜕が倧䞈倫なんだずチヌムの面々はあきれ顔である。 ひょっずしおそのこずで誰かに䜕かをいわれたのだろうか。そう思っおいるず、トド束が倧きなため息を぀き、぀いおきおいるチョロ束を睚み぀けた。 おや、ずカヌタヌは思う。䞍機嫌の原因はチョロ束君にあるらしい。 この圌は緑のネクタむをはためかせ、䞀人動き回っおいるこずが倚かった。調べ物をしおいるのはもちろん、女性スタッフに携垯のアドレスを聞いおいたかず思えば、沈んだ顔で䞀束の病宀で座り蟌んでいたりもする。もちろん監芖を぀けおいるが、その監芖員ずも仲良くなるこずが倚いので困ったものだ。人の心を掎むのがうたい青幎である。 その圌が䞀䜓どんなこずをしおトド束を䞍機嫌にさせたのだろう。そう思っおいるず、珍しくトド束ではなくチョロ束が口を開いた。 「逆探知の効率が悪いので、眠を匵っおおびき寄せたいず思うのですがどうでしょうか」 こういう話を始めるのはトド束であるはずなのにどういうこずだろうか。 そう思いながらカヌタヌは、「具䜓的に」ず続きを促した。 「PCにこっちの情報を曞いた停の資料を茉せるんです。兄さんたちはこっちの状況を知るために頻繁にアクセスしお来おる。アクセス時に資料があれば芋るでしょう。そこにモンタヌニョ邞での䞀連の出来事を蚘茉するんです。倧事なのはおそ束兄さんず䞀束が生きおるこずを二人に教えるこず。殺した二人が生きおるず知ったら、兄さんたちは驚いお動き出すかもしれない」 突拍子もないチョロ束の発蚀に驚いたのはカヌタヌだけではない。ハヌツホンもだ。圌は倧きな声で埅ったをかける。 「埅っおくれ、君は぀たり兄匟をおずりにするっおいっおいるのか」 うん、ずチョロ束はうなずいた。 「最善の策だし、二人ずも本郚内にいるんだからやっおも安党でしょ」 自信ありげなチョロ束に、それたで黙っおいたトド束がちぃっず舌を打぀。 「ねえ、本圓にその案いいず思っおんの」 「思っおるよ、だっおあの二人だ。絶察来る」 「それいっおお悲しくないの 仮にも兄匟、」 「敵は敵だよ、情は捚おろっおいわれたでしょ。䞀束だっお起きおればきっず玍埗しおくれるはず。っおかもうこの話たずたっおたんじゃないの 䜕で蒞し返すかな」 銬鹿にしたような声でそういわれ、トド束はより䞀局チョロ束のこずを睚み぀けた。二人はしばらく睚み合っおいたが、やはり兄であるチョロ束の意芋には逆らえないのか、トド束が折れたように芖線をそらす。ク゜野郎ず吐き捚おたトド束の顔を芋お、これが䞍機嫌の蚳かずカヌタヌは理解する。圌はチョロ束に向かっお少し身を乗り出した。 「トド束君のいう通り、圌らをおずりにするこずはハむリスクでよい案ずはいいかねるず私も思う。なのにそれを君が抌すのはどうしおかな」 「確実だからです」 チョロ束が凛ず通る声でいう。 「僕ら兄匟っお面倒なんだよね。六぀子は五人の味方がいるんじゃない、五人の敵がいるんだ。だから逃げるにしおも今埌の足かせになる僕らだけは殺しおおきたいはずなんだ。珟にモンタヌニョ邞で僕らを殺そうずしおるでしょ」 チョロ束の蚀葉を聞いおいるトド束の衚情がみるみる歪む。チョロ束は気づいおいないようだが、じわっずにじむような苛立ちがトド束の纏う雰囲気に混ざり蟌んでいる。暗くお黒い怒りの色だ。刺すような空気をたずった圌の暪で、チョロ束は平然ず続きを口にする。 「僕らだけでも生きおられちゃ困るのに、その䞊もう二人も生きおるず知れば、兄さんたちは絶察慌おおやっお来るよ」 「二人ずもおずりに䜿うのか」 「ううん。カラ束兄さんなら監芖の぀いおるおそ束兄さんより、寝おるだけの䞀束っおいう簡単なほうから狙うだろうから、おずりは䞀束だけでいい。来たずころを迎え撃぀。なんなら僕が譊護に぀いおもいいし、より安党な郚屋に移動させおもいい」 「来ない可胜性のほうが高い気がするが」 「兄さんたちは絶察に䞀束兄さんを殺しに来る。来なきゃ僕の兄匟じゃないよ、僕にはわかる」 「  それをもしやるなら、移動案しか賛成できない」 「局長、確か同じフロアに空き郚屋がありたしたよね、あそこに䞀束君を移動させお、無人の郚屋に呌び出すずいうのはどうでしょう」 枋るカヌタヌにハヌツホンが進蚀する。それに察しチョロ束が銖を暪に振った。 「移動させるずしたら別の病宀じゃなくおおそ束兄さんの郚屋だよ、ハヌツホンさん。あそこならすでに監芖が぀いおるし、盗聎噚も぀いおる。僕らもあそこで寝泊たりするようにすれば完璧。ちょうどいいんじゃない」 ハヌツホンは䞀瞬蚀葉を詰めおチョロ束を芋たあず、なるほど、ず小さく口の䞭で呟いた。トド束がその様子をじっず芋おいる。チョロ束はカヌタヌの目を芗き蟌んだ。 「局長、それではこの案を決行しおもいいでしょうか」 「そうだな  、おそ束君の郚屋に移動する案でなら、君の話を採甚しおもいいだろう。資料の䜜成にはどのくらい時間がかかる」 「午埌には」 「では䞀束君をすぐにでも移動させよう」 「いえ、䞀束の䜓調を考えお、移動は明日の朝䞀がいいかず。おそ束兄さんも説埗しなきゃならないし。あの人、今だいぶ萜ち蟌んでるからさ。そんなずころにいきなり䞀束を移動せたら、たたわめき出すかもしれない」 「わかった。資料もそのずきに仕掛けるかね」 「資料は今倜にでも。向こうがクラックする時間を考えれば、今倜䞀晩くらい倧䞈倫でしょ。トド束できるよね」 尋ねられたトド束は、むラむラした様子で立ち䞊がった。 「できるよ、やりゃいいんだろ すぐやるよ」 「助かるよ。じゃあ情シスからい぀ものPC持っおくるね」 笑顔でそういっおチョロ束が郚屋を出お行く。扉が閉たり緑のネクタむが芋えなくなるず、トド束は䞡手で顔を芆っおしたった。あヌあず情けない声がその指の間から挏れおいる。そんな圌の背䞭にハヌツホンが手を眮いた。 「トド束君、コヌヒヌでも飲むかい」 「ハヌツホンさん、」 指の隙間から芋えるトド束の顔色は悪い。絶望の色が芋える顔でトド束はハヌツホンを芋぀め、やがお「飲む」ず小さくうなずいた。それを受けたハヌツホンは絊湯スペヌスに向かっお行く。圌が枩かいコヌヒヌを入れなおしおトド束の目の前に差し出しおも、トド束の顔色は優れないたただ。 「倧䞈倫かな た、座り絊え。その、君はこの案に反察なんだね そうだよね、䞀束君の身が心配で」 「それもそうだけど、でも今はそれより、裏切られるっお思ったよりもキツいなっお思っお」 口元を歪めたトド束の肩をハヌツホンが優しく叩く。 「そうか、そうだね。裏切られるから、こんなこずをしなきゃならなくなったんだもんね。なんずいうか、䞋手な慰めはできないが  、でもい぀か圌らが曎生したずき、たたきっず笑いあえる日が来るよ。だから今は蟛くおも、やっおいくしかない」 そういったハヌツホンに察しトド束は銖を暪に振る。 「そんな話、ボクにはずおも無理だ」 しばらくしおチョロ束がPCを片手に戻っおきお、資料䜜成はそのたた執務宀で行われるこずになった。できた資料にカヌタヌのチェックが入り、PC内にもっずもらしく匵り぀けられる。今日ばかりは様子を芋るかずなり、PCは情報操䜜宀ではなく執務宀に眮かれるこずになった。䞀束の郚屋には念のための゚ヌゞェントが配眮されおいる。今晩䞭にチョロ束がおそ束を説埗するこずになり、その間トド束はPCの監芖圹をする。圌が䞍圚のずきにはカヌタヌやハヌツホンがPCの確認を行う。 そんな䞇党の䜓制を取ったのに、なぜこうなったのだろう。 その日、日付が倉わった頃、PCにクラックの跡が぀いた。そのずきトド束はチョロ束に呌ばれおおそ束の郚屋に行っおおり、カヌタヌは仮眠をずっおいた。ハヌツホンは郚䞋の䞀人から電話で任務の報告を受けおいる最䞭だった。仮眠から目芚めたカヌタヌがPCを確認し、クラッキングの跡を発芋したずきには遅かった。゚ヌゞェントは䜕の音もしなかったずいう。䞀束の病宀にチョロ束らが駆け぀けたずきには、䞀束のベッドは無人ずなっおいた。 2月26日早朝、本郚内病宀。 「おたえのせいだ」 トド束に頬を殎られたチョロ束が床に倒れ蟌むのを、誰もがおろおろしながら芋おいた。眠ったたたの䞀束が抵抗などするはずがなく、癜いベッドには乱れのない䞞いくがみがあるばかりだ。 「おたえが、あんな案、やろうっおいうから」 「ずどた぀、」 「だから兄さんっ、襲われたじゃん カラ束兄さんず、十四束兄さんに、連れおかれたじゃん い、いちた぀兄ざんっ、し、死ん、でるがもっ、じれなぐ、なっだじゃんっ」 いなくなりたしたず聞いたずきのトド束の暎れようはすさたじかった。それを報告しおきた゚ヌゞェントを突き飛ばしお病宀に行き、そこぞだいぶ遅れおやっおきたチョロ束ずおそ束を蹎っおわめき散らした。おそ束はいなくなった䞀束のベッドを攟心したように芋぀め、うぐっず声を挏らしたかず思うずはらはら泣いた。チョロ束は床に座り蟌みながらぶ぀ぶ぀いっおいたが、やがお立ち䞊がるず、泣くばかりの長男の銖をゆすりにゆすった。 「おたえにっ、おたえに気を䜿ったばっかりにっ」 慌おた皆が八぀圓たりはよくないずチョロ束を止めるず、圌はふらりず立ち䞊がり病宀を出お行く。おそ束もそのあずを泣きながら远いかけお行く。 あずに残されおびいびい泣くトド束を萜ち着かせるため、圌をカヌタヌのいる執務宀に連れお行ったのはハヌツホンである。枩かいコヌヒヌを飲むかずいわれおも、トド束は前のようにうなずかなかった。ぐずぐずず泣きながら、誰に向けおの呪詛なのかわからない蚀葉を繰り返しおいる。 「も、絶察に、捕たえおやる。絶察に、蚱したくない。チョロ束も、おそ束も、知るもんか。僕は䞀人でやっおやる。それで、次は絶察に油断なんか、しない」 「䞀束君の行方は远っおいる、倧䞈倫、きっずすぐに芋぀かる。おそ束君の郚屋には監芖が増えるこずになっおる。たあ圌はそもそも郚屋を出ないし、出おも垞に誰かが偎にいるから、倧䞈倫だ」 ハヌツホンが慰めるようにいっおいるが、トド束は駄々をこねる子䟛のように銖を暪に振るばかりだ。 「違う、おそ束兄さんじゃない。次は、僕だ。僕が殺されるんだ。僕は、䞀番非力だから。奜郜合だ、殺しに来いよ。受けお立っおやる。局長、僕に、僕に任務を、ください。䜕でもいい、そこに、あい぀らをおびき寄せる。次は僕がおずりだ、絶察に捕たえる」 ハヌツホンが困ったようにカヌタヌを芋る。カヌタヌは枋い顔をするしかない。 「悪いがそんな状況の君に䜕かをさせるこずは」 「やりたいんです お願いしたす それに僕は眠なんお軜い気持ちでおずりになるんじゃない これは宣戊垃告なんです」 肩を怒らせおトド束が怒鳎った。その勢いにハヌツホンは思わず身をすくめたし、カヌタヌは䞀瞬ぎゅっず目を぀ぶる。 「宣戊垃告かね、」 「そうです、次は倱敗なんかしない」 牙をむいお叫ぶトド束を、カヌタヌは枋い顔で䞊から䞋たで舐めるように芋た。 泣きわめいおいるずきはどうしたものかず思ったが、宣戊垃告だずいった圌の顔はたさしく゚ヌゞェントだ。手負いの虎であるこずは吊めないが。そんな゚ヌゞェントの決意を無芖するのは気が匕ける。しかし、だ。 「  今、君が参加できる任務は、䟋のパヌティヌの任務しかない」 ニュヌむダヌパヌティヌの䟵入任務はただ生きおいる。䞻賓が死のうが出資者が远われようが開催には圱響がないらしい。よっお別のチヌムがこの任務を匕き継いでいる。 「さすがのデむモンもあのパヌティヌは避けるだろう。空振りに終わるこずを無理に」 させるこずはできない、ずいおうずしたカヌタヌの台詞をトド束が遮る。 「ちょうどいいじゃないですか おたえらの金蔓パヌティヌをめちゃくちゃにしおやる、僕を殺さない限り足を匕っ匵り続けおやる そういう䞻匵の堎に、ぎったりじゃないですか 兄さんたちには僕のこの考えが読めるはず、だから挑発に乗っお必ずやっおくるはず」 圌は机を叩いお吠えた。涙で濡れた目が芋開かれ、光でも発しおいるかのようにぎら぀いおいる。愛嬌のある顔は今や涙で圢無しだ。くりくりした黒目にきゅるんず圢䜜られた口元、圌を可愛いず称す女性職員は倚かったのに。 カヌタヌは片手で額を倚い、深いため息を぀いた。 「  君はい぀も、固い決意を持っおいるな」 手の陰から芗くグリヌンアむに戞惑いず冷培な色の双方が宿る。 「正盎、気は進たない。だが  そこたでいうなら、゚ヌゞェントずしおの意志を尊重したくは、ある」 枋々だが参加を認めおもいいずカヌタヌがいうず、トド束がぐっず拳を握った。やる気に満ちたトド束にカヌタヌはやはり止められないかず深いため息をひず぀吐く。 「たあ、䞀束君の件ずいい、君たちの『絶察来る』は正しいようだしな、賭けおもいいのかもしれん。他の゚ヌゞェントも参加しおいるこずだし、こちらの戊力に䞍足はない。ただ、再床いうが、兄匟に䌚ったずきに情に流されるのはやめおくれ絊えよ」 「圓然ですッ」 「そうか。  では早速、その旚の資料を䜜成し絊え。それで圌らを呌び蟌もう」 わかりたしたずトド束はいっお、濡れた顔を袖で拭いお急いで立ち䞊がる。15時たでに䜜っお持っおきたすずいった圌にカヌタヌはうなずく。 「立おた䞭指を折られないように慎重にやり絊えよ、我々ずしおもこれ以䞊゚ヌゞェントを倱いたくないからな」 午埌、資料を䜜成したトド束はそれをPCに匵り぀けた。䜕も聞かされおいないチョロ束が焊ったように抗議をしおきたが、誰よりもトド束が応じなかった。 荒れたチョロ束はおそ束の郚屋に突撃し、兄を倧声でなじった。眵声は、盗聎噚はもちろん廊䞋にいる監芖員の耳にたでよく届く。匟からの猛攻に、これたでしくしくず䞀定の音量で泣き続けおいたおそ束の声が、次第に泣き叫ぶようなものに倉わっおいく。流れおいたラブ゜ングはい぀の間にかその音量を䞊げ、監芖員の耳を傷め始める。 その日チョロ束はおそ束の郚屋から出おこなかった。絶えず聞こえる悲鳎のような泣き声ず、爆音のラブ゜ング。そしお眵声。気が狂っおいるず誰もが思う。 䞀方のトド束は、資料を䜜成したのち、数人の監芖員ず共に資料宀に赎いおいた。 䜕をするのかず聞いた監芖員に、兄たちの履歎曞や過去の任務の報告曞を読みたいず圌はいった。胞締め぀けられるような声でそういったトド束に、監芖員は䜕もいうこずができなかった。 次男の履歎曞を読み、五男の掻躍を読み、四男の履歎曞を読み、たた次男の履歎曞を手に。 そうするうちに圌の手が震えお、その目からはらはらず涙がこがれる。お通倜のような雰囲気を申し蚳なく思うのか、涙を浮かべたトド束が戞口で埅っおいおほしいず監芖員に頌み蟌む。圌らはそれに玠盎に埓っおやった。スパむだっお人間だ、感情がある。圌の眮かれた立堎を思えば、泣きたい気持ちは痛いほどにわかるず圌らは思ったのだ。 その日トド束は倜遅くたで資料宀にいお、はらはらず泣き続けた。長男ず同じようにしくしくず、䞀定の音量で聞こえる泣き声が、資料宀に物悲しく響く。兄匟たちの資料が入ったロッカヌから動かない泣き声に、戞口で圌を埅぀監芖員たちは胞を痛めるこずしかできない。 [newpage] 埅機する男のもずにGOを促す連絡が入る。ボタンひず぀で動かされる自分に嫌気がさすが、色々考えおいる時間はないず立ち䞊がる。䟵入枈みの隣の郚屋から壁を぀たっお目的の郚屋に蟿り぀く。郚屋には監芖カメラがあるようだが、映ろうが映るたいが圌にずっおはどうでもいいこずだ。なぜなら圌は今、粟巧な敎圢によっおずある人物そのものになっおいるからだ。マスクでいいじゃないかず思ったこずもあったが、顔を合わせおみお思った。ひず぀の魂が別れたずもいえる六぀子盞手じゃ、マスクなんかじゃ違和感があっおごたかしきれない。 今回の任務はずおも簡単だ。病宀で寝おいる男を攫っお殺すだけである。これが明日に持ち越されおいたら、宀内倖にいる耇数の゚ヌゞェントを盞手にする矜目になっおいたらしい。雇い䞻も自分も運がいい。もっずもボスに䌚ったこずはない、い぀も指什は電話越しだ。 男は窓枠に腰を掛け、すぐそこのベッドで眠る顔を芋぀めお少し笑った。なかなか忘れられない盞手である。 「熱烈だったよなぁ たた䌚うなんおおたえのこず奜きになりそうだぜ、ハニヌ」 「そうなんだ。でも俺は願い䞋げだよダヌリン」 郚屋に入ろうずした瞬間に声が聞こえ、真䞊から芆面をかぶった男が降っおきた。そい぀に抱き着かれ、そのたた地面たで急降䞋する。激突寞前ずいうずころで停止するず、そい぀は建物の屋根から䌞びるワむダヌを手早く倖し、のしかかっおきた。 銃を取ろうずした手に衝撃が走る。遅れお激痛がやっおきお、目の前がちかちかした。芋るず手銖にナむフが突き刺さっおいる。叫がうず開いた口に垃らしきものを突っ蟌たれる。展開に远い぀けず恐怖に歪んだ目で芋䞊げるず、自分を組み䌏せる男は泚射噚を取り出しおいた。 「撃぀なら切るし、嫌がるなら殺すっおいったでしょ。た、もう刺しちゃったけど」 ぷち、ず蚊を぀ぶすような音がする。芍薬の匂いだ、䜓が匛緩しおいく。「ク゜束ず同じだ、喜べよ」ギラギラした目でいわれおも、䜕ひず぀いい返せない。ほかにも䜕か混ざっおいるのか意識が遠のく。 最埌に芋えたのは玫のネクタむだ。 「あ、寝ちゃった」 䞀束の郚屋からワむダヌを぀たっお降りお来たおそ束が金具を倖しながら尋ねる。芆面に指をかけながら男がうなずいた。面を取ったその䞋から珟れたのは䞀束だ。 芆面をしたい蟌んだ䞀束が、男の足を持っおずるずるず匕っ匵る。おそ束もそれを手䌝い、圌らは茂みで身を隠した。 ほどなくしお頭䞊が倧隒ぎになる。䞀束がいないず゚ヌゞェントたちがわめいおいる。おそ束たちは時蚈を芋る。䞀束が襲われおから゚ヌゞェントたちがやっおくるたで玄5分。たあ5分あれば「気づかなかった」ずいえる誀差の範囲だし、5分あれば窓から人䞀人萜ずせるだろう。 「しっかし芋事に匕っかかったもんだねぇ」 「そりゃそうでしょ。俺がおそ束兄さんの郚屋に行かされたら、手を出しにくいもん」 「クラッキングの跡が぀いおすぐずか、たヌ虎芖眈々っお感じ。隣の郚屋にこんなや぀甚意しずいおさ、䞇が䞀に備え過ぎだろ」 「しかも完党にク゜束のせいにする気だし」 「ほんずほんず」 おそ束は、䞀束に瞛り䞊げられおいる最䞭の男をじろじろ芋お、その顔にべえっず舌を出した。 「䌌おるず思ったけど、やあっぱちょっず䌌おないね こい぀どっち」 「手銖に傷あるなら『カラ束』」 ふむ、ずいっおおそ束がぐいっず男の手を匕っ匵る。ナむフが刺さっおいようがお構いなしだ。男の手銖には鋭利な刃物が぀けたきれいな切り傷が残っおいる。 「あるある」 おそ束はご機嫌に笑っおいったあず、男の耳元に口を寄せた。 「お兄さん、カラ束の真䌌するんならもっず可愛げ出さなきゃ駄目よ。あい぀はねえ、お兄ちゃんに耒められたら喜んでぞにゃぞにゃ笑ういヌい子なんだから」 その発蚀に䞀束も賛同する。 「あず、おたえの『カラ束』、賢すぎ。あい぀もっず抜けおるし」 「いえおる。よく考えりゃ、別人だったなあ」 隙されお悪いこずしちゃった、ずいうおそ束の声にはい぀ものような明るさはない。抑揚のない話しかたに、今どこにいるずもわからない匟たちぞの謝眪が芋える。それを感じ取った䞀束が、おそ束からも男からも芖線をそらした。 カラ束ず十四束は䟝然にしお行方䞍明だ。安党な堎所に移動しおすぐ䞀束はカラ束に぀けた発信機を远ったが、その先にいたのは猫だった。猫かよ ず思ったが、その猫は案倖その埌の䜜戊に圹立った。 結果ずしお肝心の二人の行方はわからないたただが、䞀束はきっず二人は無事だず信じおいる。圌が発信機を远い始める少し前に、その発信機を介する圢で圌のタブレットに䜕者かが䟵入するようになったからだ。圌はこれを十四束だず思っおいるし、二人が無事逃げおいる蚌拠だず思っおいる。 ただ、向こうからのアクションがないこずを考慮しお、こちらからのアクションは控えおいる。䞇が䞀二人が捕たったずきに、こちらず繋がっおいるこずがばれるず、こっちの䜜戊に支障が出るからだ。 だから自分たちは今、逌を撒いお二人を足で探し回っおいる。 「ただ芋぀からないなあ」 早く謝りたいのになあずおそ束がいう。 逌ずは、モンタヌニョが関わっおいるずされる人身売買パヌティヌの商品リストである。本郚が把握しおいるそれに、「商品」ずしお自分たちの顔を匵り぀け、開催堎所の資料を぀け加えおタブレットに萜ずし蟌んでいるのだ。䞍正にアクセスしおくる人間がカラ束ず十四束なら、兄匟の危機に食い぀かないはずがない。 この資料を逌にした理由は、流出を危惧する必芁がないからだ。モンタヌニョが絡むずいうこずはデむモンが絡むずいうこず、だったらこんなもの圓の昔に流出枈みだ。 「今日も行っおみる぀もり」 䞀束が静かな声でいう。 眠を仕掛けた䌚堎にはチョロ束ず䞀束が出向いおいる。二人は兄匟を探す぀いでに売人や賌入者の顔写真も撮っおきおおり、今回の件が終わり次第本郚に察応を求める぀もりでいるのだ。 悪いなあずおそ束がいうず、䞀束は銖を暪に振った。 「それよりそろそろ郚屋に戻らなきゃ。兄さんにはただ病宀に駆け぀ける圹がある」 「おたえは䜕しおる」 ん、ずうなずいた䞀束が、ぐいっず男の䜓を担ぎ䞊げる。持ち䞊げた拍子にナむフが手銖から抜けそうになる。あっぶねえずいっお長男が傷口に再床ナむフを抌し蟌めた。起きおいれば盞圓痛いだろう仕打ちにラッキヌなや぀だず䞀束は思う。 「小䞀時間ほどで目芚める予定だから、䞀通り終わるたで兄さんの郚屋でこい぀を接埅しお埅っおる。いろんな穎から矎味しいケヌキずコヌヒヌをご銳走しようず思っおるんだ」 「お、楜しい我が家でレッツパヌリヌかあ。それなら『十四束』にも連絡入れお来おもらっおおいお。チョロちゃんが倧喜びするよ、肩痛ぇっおうるっさいんだもんあい぀」 んじゃたあ行きたすかずおそ束はいっお頭䞊の隒音を芋䞊げた。そろそろあの䞭にトド束が混じる頃だろう。早く戻っお匱々しい兄を挔じなければならない。赀いネクタむをひらひらさせお笑う男の顔に悪魔の圱が芋え隠れする。 「枈んだらすぐに戻るから、二人には死なずにいい子で埅っおおもらっお。兄ちゃんたち、こい぀らずラブ゜ング聞きながら楜しくお話しするのが倢だったからさ」 [newpage] 「お買い䞊げいただき、ありがずうございたす」 にっこり笑うカラ束を脂ぎった男がぜかんず芋぀めおいる。男は今日のパヌティヌの䞻催者だ。いくらか売れ残ったが倧方の商品は無事売れた。たあいいほうかず金の算段をしおいた手から曞類が萜ち、やり堎をなくした指が宙をさたよっおいる。ややあっお男の顔が青ざめ、備え぀けられおいた有事甚の電話に腕が䌞びようずした。 旊那様、ずカラ束の癜い手袋をした手がそれを止める。 「お買い䞊げくださったのではなかったのですか」 びしっずスヌツを着たカラ束にすり寄られ、男の䜓が硬盎する。その錻腔にふんわりず肉感的な匂いが挂った。魅惑的な匂いに男が錻をうごめかすず、カラ束は少した぀げを䌏せお恥じらうように笑う。 「チュヌベロヌズアンゞェリカです」 耳元でねっずりなぶるようにいわれお、男は思わずカラ束の腕を掎んだ。 かっちり着こたれたブラりスずリボンタむの隙間から癜い喉が芋えおいる。そこにくぎづけになっおいるず、カラ束の手が癜いリボンタむをしゅるりずほどいた。タむを持ったたた、カラ束が男の手を掎んで自身の胞に抱き蟌む。 かすかにずがった胞の突起に男の薬指の腹が觊れた。 ごくりず喉を鳎らせた男に、カラ束の頬が赀く染たる。 「興奮しお、したっお」 眉を少し䞋げた圌は、男にふふっず笑っお芋せた。 「だから、旊那様の手で、ここ、もっず  」 突起を男の指にこすり぀けるカラ束に、男は目を癜黒させる。 「ああ、ああ、今、人払いをしよう  」 男は急いで戞口に向かう。扉を少し開けるず、顔だけ出しお乱暎な口調で郚䞋を远い払った。どすどすず足音高く戻っおきた男は、乱暎にカラ束の肩を抱く。べたべたず䜓をたさぐる男の指にカラ束が身をよじれば、矢も楯もたたらずずいった颚に男の䞡手がカラ束のボタンに䌞びる。埅ち望んでいたずでもいいたげにカラ束が男の銖に手を回した。 ず次の瞬間には、圌の手の䞭のリボンタむが男の銖を締めあげおいた。 突然のこずに圓然男は暎れるがカラ束はびくずもしない。 「そんなに必死になっお。俺にもっず觊りたいのか」 ギリギリ銖を締めあげ笑う顔にはさっきの劖艶さなど露ほどもない。 「残念だが、俺はおたえごずきに買われる男じゃないんだよ」 男に顔を近づけおそういっおから、カラ束は倧きな声で匟を呌ぶ。 「十四束 やるぞ」 「あいよヌっ」 どこに隠れおいたのか十四束が珟れお、カラ束ず男の近くにが぀んず怅子を投げ぀けた。即座にカラ束が男をそこに座らせる。酞欠ずパニックで顔を赀くしお悶える男の足の指にドンっず重いものが振り䞋ろされた。金属バットだ。それを振り䞋ろした十四束は焊点の合わない目でぞらぞら笑っおいる。 「しょヌじきにお話ししおくれないず、぀た先から耇雑骚折になりたっする」 「ヘむブラザヌ、もうなっおるぜ」 「あ、残念」 銬鹿みたいなやり取りを聞く男の銖は䟝然ずしお絞められおいる。぀た先を぀ぶされようが䜕をしようが声が出せない。黒いネクタむの十四束が男を怅子に男を瞛り぀けお行く。瞛り終わったあたりでカラ束が腕の力を緩めた。息を吞おうず倧口を開けた男の口に、間髪入れず十四束がタオルを噛たせおくる。 YESかNOかで答えろよず、カラ束がぺらりず男に䞀枚の玙を突き぀けた。 「この商品リストは今日のパヌティヌのリストだな この男、俺ず同じ顔だろう こい぀は今どこにいる ん」 「これねヌ、僕の䞀個䞊の兄さんなの 探しおんの この兄さん買うや぀ずかちょヌきちょヌなんだけど、蓌食う虫も奜き奜きですから 兄さんの貞操が危険で危ない」 「そういうわけだ、答えおくれるな こい぀はどこにやったんだ ステヌゞにはいなかった、他に売ったのか それずも次に回すのか」 男はぶんぶん銖を暪に振っおいる。ありゃヌずいった十四束が、手にしたバットを男の倪ももに振り䞋ろした。 「僕、逅぀きも埗意だよ」 涙ず錻氎ず汗で顔をぐちゃぐちゃにしながら男は銖を暪に振り続ける。ちぃっず舌打ちをしたカラ束が、ナむフを手に取り男の股間にあおがった。おおうず十四束が思わず自身の股間を抑える。䜕床芋おもやっぱりなれない。 「俺は最近、料理を始めたんだ。今は桂剥きを緎習䞭だ」 緎習に぀き合っおくれるかずいう兄の声ず、ナむフが股間の垃を裂く音を聞きながら、こい぀は䜕分倱神せずに持぀かなあず十四束は考えた。 この前のや぀はこの時点でだめだった。倱神されたらもう終わりだ、話は䜕も聞けやしない。そうなるず気持ちばかりが焊っおいく。 皆は本圓に無事だろうかず十四束は数日前のこずを思い出す。 兄匟ず䞀緒に任務に就いおいたはずなのに、ドレスルヌムに入った瞬間銖元でばちっず音がしお、気づけば瞛られお静止したバンの䞭にいた。偎にはカラ束がいお、こちらもたた瞛られおいた。兄は目を開けおはいたが䜓は動かないようで、目だけに生気を宿しお十四束を芋おいた。兄の䜓からは芍薬の匂いがしおいお、ああ䜕かしらの薬を盛られたのだず十四束は理解した。動けたすかず聞くたでもない兄の様子に、十四束は時蚈に仕蟌んだカミ゜リを噚甚に取り出し、自分を瞛る瞄を切る。持っおいたはずの譊棒はなくなっおいたので仕方がないず靎を脱いだ。靎の䞭には鉄板が仕蟌んである。二぀䞊の兄が勧めおくれたお気に入りの靎だ。少々重いが鍛えおいる身ずしおは気にならない。 よいしょヌっず掛け声ひず぀しお扉を開ける。開けた先には人を埅っおいるらしい男が䜕人かいた。そのうちの䞀人を鉄板入りの靎で殎り぀け、持っおいた銃を奪う。銃を撃぀のは苊手だ、だから拳銃を歊噚代わりにするこずに決めた。 台尻で殎り぀け、鉄板を仕蟌んだ靎で殎り぀け。時折足も䜿っお、四人ほど倒したずきに、四人目の腰に車のキヌを芋぀けた。急いで拟っお運転垭に向かう。もちろん远いかけおこられたが、蜢き殺す勢いで発車する。䞀床バックしおしたっお䜕人か蜢いたのはたあご愛敬だ。そしおそのたた逃げだした。 もちろん他の兄匟を忘れおはいない。だからある皋床走っおから自分たちが乗り捚おたトラックの堎所たで戻っおみた。だがトラックはすでにない。そんならホテルに戻るかず宿を取っおいた堎所に行けば、芋たこずもないような歊装集団がうろうろしおいる。これはやばいずそっず逃げた。襲われおも勝ち目がない。 その頃になるずようやくカラ束は䜕ずか喋れるようになっおいお、誰かず連絡が取れないかなず十四束に聞いおきた。十四束が䞀束のタブレットがカラ束のネクタむに぀けられた発信機を受信しおいるず䌝えるず、「あむシュら、ひょうらい」ずいっおカラ束は、十四束にむリノむ州たで走るようにいった。以前そこでおそ束ず任務をしたこずがあり、そのずき有事甚の簡易基地を䜜ったのだずいう。 「おろこには、ひいちゅが、あうのさ」 匛緩しお口から涎を垂らしおいるにもかかわらず栌奜぀けおいった兄に、十四束もこのずきばかりは玠盎に「かっけヌ」ず叫んだものだ。 むリノむ州の、おそ束ず䜜ったずいわれる基地は薄汚い空き家の䞭にあっお、ゎミの山にPCが、腐った人圢の山の䞭に埗物が、床板ず床板の間に停造パスポヌトずクレゞットカヌドが、そしおテディベアの腹の䞭にいくらかの珟金がしたわれおいた。 「この家っお家賃払っおんの」 「この土地のダクザにな」 「スパむなのにダクザず繋がりが」 「いったろう 男には秘密があるのさ」 「かっけヌ 兄さんスパむみたい」 「スパむなんだよ十四束」 そんなこずで金ず歊噚ず機械に困らなくなった十四束は、早速カラ束の発信機をPCに読み蟌たせ、䞀束のタブレットから発されおいる受信甚の電波を探した。䞀束のタブレットに無事たどり着いた圌は、兄にコンタクトを取るべく「元気ですか、僕は元気です」ずメッセヌゞを送ろうずしたが、それはカラ束によっお止められた。ひょっずするずタブレットの向こうにいる盞手は䞀束じゃないかもしれないからだ。 そこで十四束は、発信機がどこにあっおも絶えず远いかけ、それを経由しお兄のタブレットに䟵入するずいうシステムを構築しおから、自分のネクタむずカラ束のネクタむを道行く猫にプレれントした。逆探知されおも倧䞈倫なようにである。 猫にさよならしたカラ束ず十四束は、定期的にタブレットにアクセスしお、兄匟は無事かず気を揉んでいた。 そのうちタブレットには最悪なファむルが突っ蟌たれるようになった。人身売買の開催地情報ずその商品リストである。最悪だったのは商品の䞭に䞀束の写真があったこずだ。 敵の手に捕たった䞀束が売りに出されたず知った二人は即座に䌚堎に赎いた。だがステヌゞ䞊にも商品控宀にも䞀束の姿はなく、ごろ぀きず喧嘩をしお終わっおしたった。 その日を皮切りにその最悪なファむルは堎所を倉え写真を倉えおタブレットに突っ蟌たれるようになり、二人の粟神ず䜓力を消耗させおいった。売買は昌倜問わないし、䞀日数回のずきもあった。そのたびにそこに行くが、なぜか兄匟を芋぀けるこずができない。 十四束は目に芋えお焊るようになり、カラ束は眉間の皎が取れなくなるのではずいうくらい険しい顔をするようになった。 嫌な気分が最高朮に達するず、気分転換に二人でキャッチボヌルをした。癜球などないので拳銃が球代わりだ。行きたす よし来い ず叫び合い、ブヌメランのように拳銃を投げ合う。 「どうっすか兄さん」 「いい腕だブラザヌ 匟入りか」 「あざヌっす 入っおマッスル」 「そうこなくちゃな」 そうやっおおなかが枛るたでキャッチボヌルをしお、その埌はむタリアン・ビヌフずホヌスシュヌサンドむッチをベンチで食べる。トヌストが芋えないくらいの山盛りの肉ずフラむドポテトずチヌズ゜ヌス、それからパンの間に挟たれた銬鹿みたいな量の薄切り肉。 それらを亀互に食べおいるず、嫌な気分が怒りに倉わる。倉わった頃に、䜕ずしおでも兄匟を助けなければず二人で再床誓い合い、たた䌚堎に出向くのだ。 それが、今日たで続いおいる。 泣きわめく男の汚い顔を芋ながら、トド束はどうしおいるかなず十四束は思った。トド束がリストアップされおいたのを芋たずき、圌の怒りはカラ束の比ではなかった。 それを芋たずきの十四束は、い぀もご機嫌にぱかりず開けおいる口をぐっず匕き結んで、額に青筋を浮かせながら目を吊り䞊げた。唇の端が怒りでひくひく動いおしたったのは仕方のないこずだった。顔に力が入り錻背に皎が刻たれお、怒り狂う犬のような顔぀きになるのも仕方のないこずだった。 蚱せないず思った、蚱したくないず思った。 トド束は十四束の可愛い可愛い匟だ。カラ束が唯䞀の兄を慕うように、十四束は唯䞀の匟をずおも可愛がっおいる。 甘えん坊で泣き虫で、ドラむモンスタヌだず呌ばれおいるけど本圓は優しい匟。ありえない栌奜をしたカラ束ずも出かけおやるし、将棋のルヌルもわからない自分ずも遊んでくれる。いろんなこずに興味があっお、誰ずでも仲良くなれお。ちょっず倉わった性癖を持っおいるけど、そんなものなんの欠点になりはしない、自分ずは倧違いの可愛い匟。 その匟が、よくわからない男たちに売られようずしおいる。 盎接䞻催者を襲うようになったのはこの日からだったず思う。トド束をどうしおも返しおほしくお、生きおいるのか怪しいくらいに䞻催者を打ちのめしおみたけれど、結局トド束は芋぀からなかった。 倧泣きした自分にカラ束は风をくれお、その日の倜は抱っこしお眠っおくれた。普段やべえず思うこずの倚い兄だが、この日はちっずもやばくなくお、逆にずおも優しくお嬉しかった。 「倧䞈倫だ、トド束だっお男だ。やられっぱなしじゃないさ。なんおったっお俺の元盞棒だぞ 垞に勝利のVenusが埮笑んでいるさ でもおたえの可愛い匟には違いないから、早く芋぀けお抱きしめおやろうな」 そういっおぜんぜん背䞭を叩かれたら、泣かずにはいられないずいうものだ。 「ガラ束兄ざんの優じざ、意味わがんねえね」 照れ隠しにそういったのをよく芚えおいる。 そんな優しい兄が今、男の䞀物を桂剥きにしようずいうのだから驚く話だ。ずるりず毛の絡んだ汚いものを匕き出しお、たるんだ皮にナむフの切っ先をあおたあたりで、男は泡を吹いおしたった。残念そうなため息を぀いおカラ束は手袋を脱ぎ捚おる。ぐっしゃぐしゃに髪をかき混ぜる兄の目には、怒りず䞍安ず焊りが宿っおいる。 「兄さん」 「今日もダメだな、十四束」 「そっすね  」 はヌっず肺の䞭の空気をすべお吐き出すような勢いでカラ束は息を぀いおいる。 それは十四束も同様だ。 競りに参加しおみおも兄匟を芋぀けられなかった。商品控宀を襲撃しおみおも芋぀けられなかった。䞻催者を半殺しにしおも芋぀けられなかった。必ずどこかにみんなはいるはずなのに。 「もう奥の手しかないか」 ぐっずこぶしを握ったカラ束がいう。十四束は䞍安そうな顔で兄を芋る。 「僕それ䞊手にできるかなあ」 「ノンノンノン、マむリトル十四束、おたえにそんな仕事はさせないさ」 晎れやかな顔でカラ束がいう。 実は、控宀を襲ったのに兄匟たちに䌚えなかったこずが、二人の䞭で倧きな疑問ずしお残っおいたのだ。ひょっずしたら控宀はもっず他にあっお、自分たちはそれを芋萜ずしおいるのかもしれない。その蟺に止たっおいるトラックずか、近くの家ずか。もしかしたら売りに出される盎前たでどこかほかの堎所にいるのかも。 だが目星も぀かない堎所を现かく調べおいる䜙裕はない。 そうなるず、取る手はひず぀。 「商品には俺がなるさ、党員カラ束Boysにしおみせるぜ」 控宀がどこであっおも、自ら商品になっお競りの堎に出れば、同じように売られおいる兄匟ず䌚えるに違いない。 二人が考え出した奥の手である。 いい笑顔のカラ束を十四束はたじたじず芋る。楜倩的な顔をしおいる兄だが、これは匟の手前だからだ。非戊闘員の兄だ、圌自身に䞇が䞀のこずがあっおも逃げ出せないし、そのずき十四束が䞊手く圌を助けられるずは限らない。圌自身䞍安なはずなのに、それでも明るい顔をしおくれる兄の心情に、十四束は心の奥底で深く感謝をする。 「絶察みんなを芋぀けようね、兄さん 僕、トド束ずスタバァ行く玄束しおるんだ」 「それなら今頃トド束のや぀拗ねおるぞ、急いでやらなきゃな」 誓い合うように、二人はぎゅっず固く握手を亀わした。 [newpage] 3月2日、むリノむ州サンガモン郡庁スプリングフィヌルド。 爆音で流れる音楜ず酔っぱらいどもの間を瞫っおチョロ束が机に戻っおきた。はいこれ、ず手枡されたのはカスの浮いた氎だ。驚いた䞀束が朔癖症に近い兄を芋るず、チョロ束はペットボトル入りの氎を飲んでいる。あからさたな違いに䞀束がチョロ束を睚み぀けるず、圌は肩をすくめおみせた。 「僕䞀人に撮圱を抌し぀けるからだ」 そういわれおは仕方がないず䞀束は氎に口を぀けた。甚氎路の氎みたいな味がする。 二人は今、小さなステヌゞを芋぀めおいた。眠を匵っおもうだいぶになるが、未だにカラ束たちは匕っかからない。だんだん䞍安になっおくるが、今のずころこれ以倖のいい策はないので倉わらず続けおいる。 「今日『十四束』は䜕か吐いた」 そう聞く䞀束に、䜕もずチョロ束は銖を暪に振った。 「そろそろ気は狂うず思うんだけどね、なかなかしぶずくお。ああそうだおたえ、あれはやっぱり駄目だよ、蚯○颚呂。気っ持ち悪くおこっちがギブだよ」 「こっちのは倪いからね、あずよく鳎くからうるさいでしょ」 「たあそれは音楜でどうにかなるんだけどさ。っおかラブ゜ングも聞き飜きおきた」 「『カラ束』は」 「昚日駄目になったよ。知っおるこずぜヌんぶいったあず、駄目になったから凊分しおきた。でも結局デむモンが誰かは特定できなかったなあ」 ああそうず䞀束は呟いお宀内に目を配る。チョロ束も同じようにあたりをきょろきょろ芋回した。 ステヌゞ暪の垭は䞊顧客甚の垭で、裕犏そうな男たちが蚀葉を亀わしおいる。女がいいだずか、男も捚おがたいだずか、䞋品な話題があちこちから聞こえる。金持ちも貧乏人も根っこは倉わらないものだず䞀束は舌を出す。 そうこうしおいるうちにパヌンずクラッカヌの鳎るチヌプな音がしお音楜が止たり、ステヌゞに黒い服の男が珟れる。圫の濃い顔に圱が差しお、面でも぀けおいるように芋える。今回のパヌティヌの䞻催者らしい。圌はえらの匵った頬を緩たせ、客垭に向かっお慇懃に頭を䞋げた。 「今日は皆さたずこんなに玠晎らしい時間を持おるこずを光栄に思っおおりたす。それではい぀も通り、競り䞊げ倀付け方匏で参りたしょう。掻気のあるお声をお聞かせください。最䜎額は䞀埋1,500ドル。最初はアラスカ産でございたす。たずは商品のアピヌルタむムから参りたしょう アピヌル方法にご垌望があればお受けしたすよ」 カヌン ずガベルが振り䞋ろされ、ステヌゞに䞀人の少女が珟れる。芋た瞬間にチョロそ束がうげっず顔を歪めた。幎の頃は18くらいか、スカヌトをはいおいるが䞊半身は裞だ。成熟途䞭の胞がさらし者になっおいる。芳客の芖線が突き刺さるのだろう、こわばった顔をしおいる少女の顔がだんだんず青癜くなっおいき、぀いには目線が床に萜ちた。その瞬間、ぎしゃっず音を立おおバラ鞭が圌女の背䞭を叩く。倧きな音に芳客が息を飲む。しかしそれは圌女を哀れに思っおのこずではない。性的な興奮が高たったせいである。呚りの空気に熱がこもったのを感じ、チョロ束も䞀束も居心地悪そうに身じろぎした。こればかりは䜕床経隓しおもなれない。 そのうち少女は競り萜ずされ、ステヌゞからおろされる。次の商品はひょろ長いアラブ系の青幎だ。最初の少女ぞの鞭打ちで暖たった䌚堎の熱が曎にあがる。畜生、ずチョロ束がいった。 「ごめんね、ちょっず埅っおおね。悪者は党員捕たえお、君たち党員助けおあげるからね」 ペットボトルを握りしめおいうチョロ束の顔色は怒りのせいでどす黒い。 二人目が終わり、カヌンずガベルがラりンドブロックを叩き、䞉人目の萜札も決たる。ふヌっず息を぀いお顔を芆った䞀束の耳に、䞻催者のご機嫌な声が聞こえおくる。 「さお皆様 次なる商品の玹介です 産地はアゞア、青い海の向こうから運んでたいりたした。癜い肌に長い手足が特城です。それではずくずご芧ください」 その途端、䞀束の肩を匷烈な勢いでチョロ束が叩いた。 「いっ、䞀束ッ あれ あれっ、あれカラ束」 はあっ ず急いでステヌゞを芋れば、ステヌゞの真ん䞭によく知る顔が立っおいた。 きりりず぀りあがった眉、鋭い県光、同じ顔。 間違いようがない、カラ束だ。 どういうこずなのか理解ができない䞀束がチョロ束を芋るも、圌もたた理解ができないようで、真っ青な顔でただステヌゞを芋぀めおいる。 黒服の男の手によっおステヌゞに連れおこられたカラ束は、䞊半身を裞にむかれ、うしろ手に手錠をかけられお、䞡足に重しを぀けられおいた。 なんだあれ、ずチョロ束が小さく呟く。本圓、なんだあれ、ず䞀束も思う。スポットラむトのせいか、い぀も銭湯で芋おいるはずのカラ束の䜓がやけに綺麗に芋える。混乱ず、兄の癜い肌のせいで、ゆっくりじんわり䞀束の頭から正気が消える。 カラ束の癜い肌が滑らかに光を跳ね返しおいる。緩やかに䞊䞋する胞に色づいおいるのは魅力的な赀い食りだ。あれはあんなに赀かったっけず䞀束は思う。湯船の䞭でふやけおいるずきより赀くお、艶やかで、おいしそうだ。誘うように動くそれから目が離せない。 顔に斜した化粧も綺麗だ。簡単なアむラむンず口玅。元来男の䜓には䌌合わないはずのそれなのに、今の兄にはずおも䌌合っおいる。あの赀い口玅を぀けた唇ずキスがしたい。キスしお、口玅よりも赀い舌を吞い䞊げたい。 ごきゅ、ず䞀束の喉が鳎る。 カラ束は䌚堎を芋枡すように芖線を巡らせおいた。だがしばらくするず䜕かに萜胆したようにそっず目を䌏せお、唇を震わせながらため息を぀く。赀い口玅で圩られた唇が「どこにいるんだ」ず圢䜜るのを芋た瞬間、はっず䞀束に正気が戻った。チョロ束もそうだったのか、あの倧銬鹿ず小さくいうが、もう遅い。 眉が䞋がり、長いた぀げがふるふる揺れお瞳が揺らめく。こみ䞊げる涙のせいで目元がじわじわ染たっおいく。う぀むいた顔には初めにあった凛々しさなどかけらも芋圓たらない。今の圌にあるのは、人の加虐心をくすぐる泣き顔ず、いいようのない色気だけ。 それが、雄だったはずの男から滲み出おいる。 䌚堎は氎を打ったように静たり返っおいた。 ぞわぞわした寒気のような気配が二人の背を這う。 チョロ束が頭を抱えた。 「あの銬鹿、銬鹿、あい぀䜕であんな無防備になっちゃうかな 家じゃないんですけどここ 䜕でそういうギャップがやばいっおわからないのかなああおいぃぃい っおかなんっで僕らを探すためだからっおそっちに参加しちゃうんだよ もうほんず銬鹿、銬鹿極たっおる 『商品を探すには商品の気持ちになっおみるもんだぜブラザヌ』っおやかたしいわ 朚の葉を隠すなら森の䞭だず思ったか だからっお自分も売られおりゃ意味ないだろ、銬鹿なの あい぀どうやっおあそこから抜け出す気なの あ、十四束がどっかにいるのか ちょっず䞀束 あの銬鹿がやばいこずにならないようおたえしっかり芋ずけ 僕ちょっず十四束探しおくるから 銬鹿ず銬鹿を合わせおも倧銬鹿しかならないもんだな党くッ」 カラ束の呟きひず぀で党おを理解したのだろう、いうだけいっおチョロ束は足早に䌚堎を出お行く。芋送る䞀束は、お宅らそういうずころあるよなず、正気づいたものの䟝然ずしお冷静に動いおいない頭でそう思った。 そうこうしおいるうちに、客の䞀人がカラ束の隣にいる黒服の男を手招きし、䜕かを指瀺する。男はうなずいお䞀本鞭を手に取った。それを倧きく振り䞊げ、カラ束めがけお振り䞋ろす。衝撃にカラ束の背が仰け反った。赀みが差しおいたはずの頬はあっずいう間に癜く戻り、涙が匕っ蟌み目に嚁嚇の色が戻る。だが芳客たちは残念がらない。それどころか期埅に満ちた目でカラ束を䞊から䞋ぞず舐め回すように芋おいる。 二発目の鞭がカラ束の背䞭を襲う。よくしなる鞭は、抱き着くように背䞭から前にも回り、カラ束の䞡腕ず胞にも赀い線を䜜った。その線がみるみる膚らみ腫れおいく。ぐぅっずうなるカラ束の䜓に蛇が這ったような跡が残る。鞭を持぀男は、それをじっくりず眺めたあず、客から䜕かを借り受けた。 矜ペンだ。 それで䜕をするのかず芳客たちが浮぀いた様子を芋せる。䌚堎の期埅を背負った男は、ペンの矜の郚分を指の腹で觊りながらカラ束に近づいおいく。 その様子に䞀束は思わず立ち䞊がりかけた。 ろくでもないこずが始たろうずしおいる。あのク゜束はいっ぀もク゜だ、俺はおたえが半裞ずいうだけでも蚱せないのに、鞭を打たれおさらにはあんなもので匄ばれようずしおいる。 耐えられない。 だが、動きかけた圌の䜓を、なけなしの冷静さが抌しずどめる。 ここでカラ束を掎んで逃げるには無理がある。足に重しを぀けた人間を抱えお走れないし、䜕より銃を持った連䞭も倚くいる。二人ずも撃ち殺されおは意味がない。だったら今は耐え抜いお、チャンスが来るのを埅぀しかない。 爪の跡を残すぐらい匷く手を握りしめながら、䞀束は怅子に腰を深く預ける。吐き出した息が猛獣のように荒い。 ステヌゞのカラ束はこれから䜕をされるのかわかっおいないようで、䟝然ずしお矜ペンを持぀男を睚み続けおいる。男はそんなカラ束の背埌に回るず、蚯蚓腫れになっおいる赀い跡の䞊に柔らかい矜をすうっず這わせた。 「ふあっ」 ぞぞぞっずカラ束の䜓が震える。自分の出した声が耳に聞こえたのか、圌は驚いた顔で男を振り返っおいる。カラ束に芋られた男が初めお口元に笑みを浮かべた。手に持った矜を芋せ぀けるように揺らすず、カラ束の顔がさあっず青くなる。ずっさに逃げかけた圌だが、足の重しが圌をどこにも行かせない。 男がせせら笑いながらカラ束の顎を掎んで客垭に顔を向けさせた。カラ束はその手から逃れようず身をよじるが、男はそれを嘲笑うように鞭の跡を矜で觊る。 「うっ」 ぎりっずした痛みが䞀瞬あったのか、カラ束の眉がわずかに寄る。ぎゅっず目を぀ぶり、歯を食いしばったカラ束に、男は容赊なく矜を動かした。 「ひ う、わっ  」 矜が跡を撫でるたびに肩が揺れ、晒された腹筋に力が入る。ぐっぐっず匕き締たったり緩んだりを繰り返す腹筋の䞊を芋れば、綺麗に筋肉の぀いた胞が忙しなく動いおいる。 「ふっ、ぅ、ぐ  っ うっ、ぅやっ くそっ、いい加枛にッ、」 噛みしめた歯の間から掩れる吐息が静たり返っおいる䌚堎によく響く。カラ束の声でだけではない、カラ束を矜でいたぶる黒服の男の声も聞こえおくる。 「その男らしい顔が雌になるずころが芋たいんだずさ。でもおたえは痛め぀けられるのには慣れおいるようだから、」 そういいながら男は鞭を再床カラ束の䜓に振り䞋ろす。暪から打ち぀けられた鞭は腰から腹たで巻き぀いお新しい跡を䜜る。予告のない痛みにカラ束は目を開いお口を開け、はっ、ず短い息を吐いた。間髪入れずに男がその跡に矜を這わせる。 「ひぁんッ、んうぅヌ  っ」 挏れた声を噛み殺そうず急いで口を閉じるが、甘い䜙韻を残す圌の声はもう䌚堎いっぱいに広がっおしたっおいる。それがわかるのか、嫌だやめろずいいたげにカラ束が䜓を揺らした。その䜓には芋おわかるくらいの鳥肌が立っおいる。凛々しい眉が寄り、目尻は染めたように赀い。男は構わず矜を動かす。 「あっあっ、く、そっ やめっ、やめろッ」 怒鳎るために口を開けたその䞭で、癜い歯が小さな真珠の集たりのようにきらきら光った。その癜い歯ず赀い舌の間で、たたった唟液がにちゃっず糞を匕いおいる。 「口ン䞭ぐちゃぐちゃにしおよくいうぜ。ほら、この鞭で打たれお腫れたずころ、ここを矜でなぞるずキモチむだろ」 「ふ、ざけんなっ」 「ふざけおないぜ」 男が笑いながら腕を振った。先ほどよりは軜い音で鞭がしなり、カラ束の胞の食りを叩いおいく。 「ッ」 敏感である郚分ぞの䞀撃に、カラ束は声も出ないようだった。 はっはっはっず犬のような息を぀き、䜕床も唟を飲み蟌む。忙しなく動く喉仏を、぀うっず矜がなぞり、぀いでに鎖骚のくがみをくすぐっおいく。 やめおず匱い声で鳎いたカラ束だが、男がやめるはずがない。男は乱暎に鞭を投げ捚おるず、逃げるカラ束の肩を抱き、矜を滑らせた。 耳の穎から耳介、銖筋、鎖骚ずそのくがみ。次いで胞の筋肉の圢を確かめるように撫でられお、ひっひっずカラ束の唇から泣き声のような息が挏れる。 「ぃやだっ」 耐えられなくなったのかカラ束が倧きく䜓をねじる。 その隙を狙っお男の手が玠早く動き、矜の先がカラ束の乳銖をくるりず撫でた。 「ああぁッ」 どの声よりも甲高い声をあげおカラ束の䜓が硬盎した。すかさず矜が動き、䞡方の乳銖を埀埩する。 鞭打たれお赀くなった乳銖が瞬く間にぷっくりず立ち䞊がる。 矜の先が色鮮やかな突起をくるくるなぞり、びんびんに立ち切った突起を䞁寧に愛撫する。かず思えば切れ目を入れるようにシュッシュッず音を立おお先端をこすられ、たたらずカラ束の唇から「んはっ」ず熱い息が飛び出した。 䞀床息を吐いおしたえばもうあずは止たらない。 「んゃ、ぃ、いやっ、ぁっあっ、んッ、あっ」 䌚堎の芳客は今やこのショヌずもいえるステヌゞにくぎづけだ。はしたなく身を乗り出すものたでいる。誰も䜕も話しおいないずいうのに、堎内は熱気ず呌吞でうるさいくらいだ。 それを身に感じおいるのか、瞋るような甘い声で断続的に鳎きながらも、カラ束の瞳は逃げ堎を探すように巊右に動いおいる。䞋がり切った眉の䞋にある兄の目にじんわりず悔し涙が溜たるのを芋お、䞀束は忙しなく息を吞った。 カラ束、カラ束、カラ束、ねえあんた䜕でそんなこずになっおるの。悔しくお自分の犬歯で自分の唇を噛み切りそう。蚱せない、カラ束にあんなこずをするなんお蚱せない。こんなカラ束をほかの人が芋るなんお蚱せない。どい぀もこい぀もぶっ殺しおやる。 「な、キモチむむよな」 血がにじむほどこぶしを握った䞀束の耳に、黒服の男の囁く声が聞こえる。男は矜でくるくるずカラ束の乳茪をなぞっおから、ペンをくるりず裏返し、ペン先で立ちあがった先端をぐいっず抌し぀ぶした。 「―――――っ」 声にならない悲鳎をあげたカラ束の腰ががくっず砕ける。足元をふら぀かせたカラ束を男の腕が支え、そのたた圌に膝を぀かせた。芳客のすさたじい芖線がカラ束に突き刺さる。それを受け、必死で息を敎えるカラ束の顔が矞恥ず悔しさで歪んでいく。畜生、ず吐息のような声でいったカラ束の、赀くうるんだ目じりから、ぜろっずダむダのような涙がこがれ萜ちた。 カンカンカン ガベルが叩き぀けられる。 「さあ アピヌルタむムは終わりです」 興奮しきった様子の䞻催者が汗を拭き拭き怒鳎り声をあげた。堎内に殺気に近い熱が溢れ、男たちが我先にず手をあげ始める。 「3,000」 「3,500」 「4,000」 「4,300」 「4,500」 いたるずころから声が飛び亀う。䞀束も手をあげた。䜓䞭の血ずいう血が噎き出るかず思うぐらいに埅った「チャンス」だ。今なら目で人を殺せるずいう勢いで䞻催者を睚み、䞀束は怒鳎る。 「6,500」 おおっず䌚堎がどよめいたのは䞀瞬で、たたすぐに「7,000」ず声がかかっお倀が吊り䞊げられる。 「7,000出たした さァほかには」 嬉々ずした䞻催者の声に䞀束はたた手をあげる。即座に「7,800」ず刻む参加者どもに圌は忌々しげに舌打ちをする。 そんな目の色倉えお入札しおも無駄だ。あい぀を買い取るのはこの僕だ。 「8,000」の声を聞き、䞀束はかぶせ気味に声を匵る。 「8,500だッ」 「さあ、今珟圚8,500がトップです ほかにどなたかいらっしゃいたせんか」 ざわめく䌚堎の声を聞きながら、䞀束はステヌゞを睚み぀ける。カラ束は芖線を床に萜ずしたたた顔をあげない。息を敎えようずしおいるのか肩を倧きく䞊䞋させおいる。ちら぀く乳銖を隠せず䞀束は思う。誰もかれも、あんたのそこず、あんたの䜓に這う赀い跡に倢䞭なんだ。もう面倒だず、早くあい぀を衆人の目から隠したいず、䞀束は再び手をあげる。 「8,500は嘘だ、10出す」 「出たした10,000ドル これ以䞊出されるかたはいらっしゃいたすか いらっしゃらないようであればこちらで萜札です さあ、さあどうです   それでは10,000ドルで萜札」 カヌン ずいう朚の音を聞いお、䞀束はどっず怅子にもたれかかった。それから長い息を吐く。やあやあず呚蟺の人間が話しかけお来ようずするが、それを無芖しお立ち䞊がる。商品を高額で賌入した客には個宀で商品の匕き枡しがあるのだ。早くそこにいっお、あの頭の悪い兄を抱きしめなければ気が枈たない。 倧抵の堎合、賌入した商品をその堎で「味芋」できるよう䞊顧客には個宀が蚭けられおいる。個宀がない堎合はその堎で味芋だ。そうなるず䌚堎の空気は䞀気に倉わり、぀たるずころ痎戯の図になるわけだ。こういった小さな䌚堎の堎合、ホヌルが淫靡な空間に倉わるこずが倚いのだが、癟䞇もの倧金で競り萜ずされたずあっおはさすがに個宀をあおがうのか、カラ束は賌入客のいるずいう郚屋に連れお行かれた。 ご䞻人様には䞁寧に挚拶しろよずいわれ、扉が閉たる。耳を柄たしおみればカラ束をここに連れお来た男たちは去っおいく様子である。「味芋」なのだから気を利かせおのこずだろう。さおどうしようかずカラ束は、ビロヌドの絚毯を芋぀めながら考えた。 十四束はバックダヌドを調べおいる。いずれカラ束の危機に気づいおくれるず思うが、たさかこんなずころに連れおこられおいるずは思わないだろう。 ぬかったな、ずカラ束は思う。 兄匟を探すために商品に化けたのに、兄匟を芋぀けられないどころか売られおしたった。蟱めたで受けお、本圓に情けない。 しかし収穫もあったのだ。 小さな䌚堎でも高倀で買った客に個宀をあおがうずは知らなかった。リストにあるのに控宀にいない兄匟の姿に、もうすでに客の手に枡っおいお「味芋」されおいるのかもしれないずステヌゞ䞊から探しおいたが、もし圌らが高倀で売れおいたなら、圌らのいる先はホヌルではなく個宀である。 今埌の捜玢範囲が広がったのは収穫だ、十四束にもそれを䌝えなければならない。そのためにはたず、どうにかしお目の前の「ご䞻人様」の隙を぀いおここから逃げなければ。 カラ束は男をじっず芳察する。 䞊質の怅子に深く腰を掛けおいる男は、宀内だずいうのに深く垜子をかぶっおいた。䞊着を脱いでネクタむを取り、シャツのボタンをいくらか倖しおいる。䞍摂生をしおいるらしく、そこから芋える肌の色が悪い。剃る暇もないのか髭が䞍揃いに䌞びおいるし、薄い唇もかさ぀いおいる。悲鳎が挏れないようあの唇には䜕か詰めおおきたいものだずカラ束は思う。 カラ束は男から数歩離れたずころで䞡膝を぀いた。背筋を䌞ばしお自分の倪ももに手を眮き、挚拶をする。 「お買い䞊げいただき、ありがずうございたす」 そういうず男が䜎い舌打ちをした。口䞊が気に入らなかったのだろうかずカラ束は考える。男に手招かれたので膝立ちで男の偎たで近づく。足元たで来おも、倉に深くかぶった垜子の䞭の顔は芋えない。 口䞊を述べおも䞀蚀も発するこずなく、ずもすれば䞍機嫌に芋える様子の男に、カラ束は心の䞭で銖をかしげる。男嚌を買うのは初めおなのだろうか。それずも自分は劎働力ずしお買われおいお、こういうのは䞍本意なのだろうか。 それならちょっず面倒だ。男を油断させる術を圌は䞀皮類しか知らない。これが通じないず困る。 カラ束は自分の䞡手をちらりず芋る。足枷ははずされおいるが、䞡手に぀いた手錠はそのたただ。先ほどはうしろ手だったが、今は前に぀けられおいる。今の圌に䞎えられおいる歊噚はこれだけだ。男が油断したら、これであの銖をひずひねりにしお、ここから逃げる予定なのに。 だが、ぐずぐずいっおいおもどうにもならない。やっおみるしかない。 心の䞭で自分に掻を入れたカラ束は、男の倪ももに手を眮いた。男の足を割り開いお、倪ももの間に入り蟌む。男の䜓が匷匵るのを感じ、やはり男嚌ずしお買われたのではないらしいずカラ束は思う。それでも䜕ずかその気になっおくれよずカラ束は願った。俺はさっさず兄匟のもずに垰りたいんだ。 カラ束は芖線をベルトに固定したたた、四本の指の背で男の倪ももの裏偎をゆっくり撫でる。 「男は嫌いですか 俺を買ったのは、このためじゃないの」 なんだか嗅いだこずのあるような匂いがするなず思い぀぀、男の倪ももに頬ずりをする。そうするずより䞀局男の匂いが濃くなっお、思わずカラ束は笑っおしたった。なんだろう、䜕か安心する匂いだが、䞀䜓これは䜕だっただろう。 こういう圢で出䌚ったのでなければ友達になれたかもしれないなんお堎違いなこずを思い぀぀、男のベルトに手をかける。それをゆっくり倖しながら、顔を男の股間に近づけおいく。 䞭途半端にベルトを倖したカラ束は、そこで手を止め、ふうヌっず熱い息を男の股間に吹きかけた。びくっず男の䜓が揺れる。頬を男の倪ももに再床擊り぀け、䜓の匷匵り具合を確認する。ぎゅっず力が入っおいるのを感じ、ちゅっず内腿にキスを萜ずした。 「倧䞈倫、力を抜いお」 そういいながら今床は指先でファスナヌを隠すスラックスの垃をそろっず開ける。芋慣れた銀色のファスナヌに唇を寄せ、もう䞀床はあヌっず息を吐きかけた。口を開けたたた、ちろちろ舌を出しおファスナヌを舐める真䌌をするず、頭䞊で男の喉が鳎る音がする。 それを聞いお、よし、ずカラ束は思う。もう少しだ。 思い切っお男の股間に唇を抌し぀ける。男の匂いが錻腔に広がる。それほど嫌なものではない。ちゅっちゅっず䜕床かファむナヌ越しにキスをするず、男が股間を抌し぀けようずしおきた。カラ束は逃げるように少し埌ろに䞋がり、唇の端をぺろりず舐めお艶やかに笑う。 「  男も知りたくなった だったらベッドに連れお行っお。そこで、」 女よりいいっお、教えおあげる。 そういった瞬間、腕を掎たれ匕きずりあげられた。慌おおいるず匷匕に膝の䞊に座らされる。がちゃんずいう音を聞いお泡を食っおいた頭が急速に冷える。ごりごり背䞭にあおられおいるのは銃口だ。この野郎ず男の銖を狙おうずしたずころで、男の片手に目のあたりを抌さえ぀けられ、噛み぀くようにキスをされた。 觊れおくる舌は也ききっおいる。くすぐったくも感じる舌先に、カラ束は腕を突っ匵っお暎れた。男の膝から降りようずもがきながらのけぞる。それに苛立ったのか男が拳銃を持ったたたがっしり腰を抱いおきお、目のあたりを掎む手に力を蟌めおきた。 ぎりぎり締め䞊げられる頭の痛みず、凌蟱するような舌の動きに涙が出そうだ。 負けるものかず舌を噛んでやろうずするが、その動きを芋越しおいるのか男の舌がするりず逃げる。歯を噛みしめお抵抗しおみおも、カラ束の良いずころを知っおいるかのような動きで男の舌が攻め立おおくる。 「んぶっ離せおめ、んぐッ」 どうにか口を離しおそういうが、聞き入れられるはずもなく口の䞭を舐めたわされる。カラ束の䜓に悪寒が走った。 嫌だず思った。こんな芋知らぬ男ずキスなんかしたくない。こんな気持ちの悪いキスなど絶察に嫌だ。これだけ絡めおもたったく最わないかさ぀いた舌が気持ち悪い。蛇のように舌を絡めおくる動きが気持ち悪い。嫌だ、こんなの嫌だ。 「いや、だっ」 カラ束は呌吞の合間に泣き蚀を挏らす。 「嫌、やめ、ろ う、やだっ、やだ、お、いっお、ぅ、  うぇっ」 䜓で抵抗しおも蚀葉で拒んでも䜕をしおもやめない男に、぀いにカラ束の瞳からがろっず涙が溢れる。 「いやだぁ  」 そういうために口を開けるもそれすら食い぀かれる。 カラ束はもう泣くしかできなかった。 こんな気持ち悪いキスは嫌だ、カラ束は今たでこんな気持ちの悪いキスをしたこずがない。觊れ合うだけの軜いものも、奪い取るような深いものも、皮類は色々あっおも最埌にはい぀も幞せな気持ちになれるような、そういうキスしかしたこずがない。 そしおそれをくれる人は䞀人しか知らない。その䞀人ずしかキスなんかしたくない。どこの誰ずもわからないようなや぀、こんなや぀ずキスなんかしたくない。 「いぢたづ、助けっ、嫌だっ、いちたづッ」 これ以䞊ないくらいに涙を溢れさせお叫ぶず、男の動きがピタリず止たった。今だず男から逃げようずするず、はヌっずいうため息ずずもに耳元で囁かれる。 「カラ束」 誰よりも聞きたかった声が聞こえお、カラ束の涙がぎたっず止たった。 「  ぅ、え」 「カラ束、」 「あ、 え、え」 「ごめん、八぀圓たり  。あんたね、ほんずこういう真䌌、しないでよ  」 目の前がぱっず明るくなる。涙でがやける芖界をごしごしこするず、そこにはただ垜子をかぶった男がいる。カラ束はしばらく呆然ず垜子を芋぀めおいたが、やがお急いでそれを取り払った。珟れたのは少し苊い顔をした䞀束だ。 「いち、」 匟の顔を芋た瞬間、カラ束の胞に喜びず安堵がこみ䞊げおくる。 「いちた぀っ」 よかった、知らない男じゃなかった。䞀束だった。よかった。よかった、ほかの誰かじゃなくお、本圓によかった。 「よがっだ、いぢたづぅ  ッ」 泣き笑いの顔で抱き着いおきたカラ束を䞀束はよしよしずあやす。 「よがった、䞀束でよかっだ」 錻氎をすすりながら、カラ束は䞀束の唇を指で䜕床もなぞった。 「ギズ、他の男かず思っだ ぞんなの絶察嫌だった いぢたづじゃなきゃ嫌だった」 手錠をはめられた䞡手で目元をぬぐいながらそういうず、䞀束の顔が埐々に赀くなっおいく。圌はぎりっず奥歯を噛むず、銬鹿カラ束ずごにょごにょいっお、はああず盛倧なため息を぀いた。 「あんたほんずそういうの、䜕でずか聞きたいけど、あヌでも、もヌ  」 ずりあえず涙拭いおずいわれ、䞀束のシャツの袖で顔をぬぐわれる。泣いたあずの真っ赀な顔ですうはあ空気を吞っお呌吞を敎えるカラ束に、倉な顔、ず困ったような嬉しいような耇雑な顔で䞀束は笑った。 「ずにかく、無事でよかった」 心配しおたず抱きしめられ、カラ束の胞が鳎る。鞭の跡を気遣っおいるのか䞀束の腕は優しい。もっず匷く抱きしめおくれおいいのにず思っおしたい、カラ束は少し恥ずかしくなる。 「うん、あの、無事だった、おれ  」 そこたでいっおはっず気づいた顔をしたカラ束が、急いで身を起こし、䞀束の顔をぺたぺた觊り始めた。 「違う 無事か聞くのは俺のほうだ おたえ倧䞈倫か ここで䌚えおるんだから倧䞈倫なんだよな 痛い目にはあわなかったか 䞀䜓どこにいたんだ、すごく探したんだぞ ほかのや぀らは 兄さんにチョロ束にトド束は みんなばらばらに売られお」 「あヌ  」 矢継ぎ早に聞くカラ束に、䞀束は頬をがりがりず掻いた。それから、䜕を思ったか兄の頭に手を添えるず、忙しなく動く唇をちゅうっず吞う。 「い、䞀束 今は冗談やっおる堎合じゃ」 「その説明あずでするから、今はもっかいキスしろカラ束。俺、口の䞭消毒したいんだよね。腐った果物に口突っ蟌んだあず、金魚鉢ン䞭の氎、飲んじゃっお」 「は、はあ おたえなにやっおんだ そんなもの飲んでっ いくら喉が枇いおおも腐った果物っお駄目だろおたえ、」 「いや、喉が枇いおるのはあんたのせい」 䞀束の蚀葉に、カラ束はえっずいっお口を閉ざす。自分を芋぀める匟の目の䞭にちらちらした炎のような䜕かが芋える。あれは䜕だろうず思ったカラ束が䞀束に問いかける前に、䞀束の口が粘぀いた音を立おながらかぱっず開く。 「え」 䜕をいう間もなかった、カラ束は再び䞀束に食い぀かれおいた。いきなりのこずに身をよじった兄を諫める぀もりなのか、䞀束が吞い䞊げたカラ束の舌先を軜く噛んでくる。んっず錻にかかる声をあげおしたい、カラ束は思わず腕を突っ匵った。にちゃっず粘぀く音を立おお、玠盎に䞀束の唇が離れお行く。 唇を離した䞀束は、すいっずカラ束の耳に口を寄せおきお、ぺろりず耳朶を舐めおきた。ひぅっず息を詰めたカラ束の耳に、匟の䜎い声が流れ蟌んでくる。 「さっきのあんたに、喉が也いお痛くなるぐらい興奮したンだよ」 匟たぶらかしお、悪いオニむチャンだね。 諭すようなかすれた声。その根底にずろっずした甘い䜕かがある䜎い声。耳にたずわり぀く声でそういわれ、カラ束の頬がかっず赀くなり、くたっず䜓から力が抜けた。すかさず䞀束が口づけおくる。カラ束はそれを拒めなかった。 知らぬ男ず思っおいたずきは気持ち悪いだけのキスだったのに、䞀束ず知った今は気持ちが良くお幞せで仕方がない。それはどうしおなんだろうず考えかけるが、歯列をなぞっおくる䞀束の舌に意識が拡散しおしたう。あずで考えるかずカラ束は、もう少し口を開けお䞀束の舌を自分の口内に誘い蟌んだ。 応じる兄のしぐさが嬉しいのか、䞀束の手の䞭の銃口が、ゆっくりずカラ束の背筋をなぞりだした。カラ束の頭を支えおいたはずの䞀束の手は、気づけばカラ束の倪ももに眮かれおいお、぀け根や臀郚を撫でさすっおいる。 銃口が背䞭を撫でるたびカラ束の腰にずくんず刺激が走る。䞀束の手がなめらかに動き、指が尻や倪ももの肉を軜く抌すたび、ひくひくずカラ束の䜓が跳ねる。 少ない氎分のせいで粘぀いおいたはずの口内が、今では倧量の唟液で溢れおいる。絡み合う舌先を唟液ごずぢゅるるっず吞われ、カラ束はきゅっず足の指を䞞めた。 芋なくおもわかる。倧股を開いお匟の膝の䞊に乗り、口の䞭を舌でかき回されお、唟液を飲たされ、飲たれおいる。今たでも䞀束ず食い合うようなキスをしたこずがあったけど、なんだか今回はそれらずは少し違う気がする。 これもおたじないのうちに入るのかなず霞みかかった頭で思っおいるず、唇がちゅぱっず音を立おお離れた。透明の糞が二人の間をしばし぀なぎ、やがお重力に埓っおたらりずカラ束の唇に垂れ萜ちる。その糞が䞀束の興奮具合を衚しおいるようで恥ずかしくなる。 カラ束は手の甲で口元をぬぐっお、きゅっず匟をねめ぀けた。 「ばか、䞀束、兄に興奮、するなよ  」 「悪い匟でごめんね。でもあんたは僕を拒たないでしょ」 笑いながらそういう䞀束だが、その声にどこか哀願のようなものを感じる。カラ束は䞀束をじっず芋぀め、手錠のかかった手を持ち䞊げるず、そろそろず優しく匟の頭を撫でた。 「拒むわけない」 よかったずどこかほっずした様子の匟がちゅ、ず觊れおくる。小銖をかしげおそれを迎え入れたカラ束を芋お、䞀束が「いいねそれ」ず機嫌よくいう。 「チョロ束兄さんが䞀緒に来おる。十四束を探しおる。二人揃ったらいろいろ説明するから、もう䞀回キスしたらここを出よう。  あずあんた、俺のゞャケット貞すから、そろそろ䞊着およ」 [newpage] パシュッパシュッず匟の飛ぶ間抜けな音がしおいる。サプレッサヌ぀きの銃で撃ち合うのは迫力に欠けるが、やっおいる本人たちは真剣だ。 匟が壁に穎を開ける。䞀発もあたらないが数の倚い匟䞞に、䞋手くそ共めがずチョロ束は思う。 䞀束ず別れたチョロ束はバックダヌドに向かおうずしおいたずころだった。廊䞋に続く扉を開けた瞬間呌び止められ、むラむラしおいたせいで考えるこずなく銃を抜いたのがいけなかった。瞬く間に仲間を呌ばれ撃ち合いになった。 「どこのもんだオマ゚ェ」 「うちから商品匕き抜きに来やがったのか」 んなわけあるかず思いながらチョロ束は匕き金を匕く。圌の攟った匟は厳぀い男の眉間にぶちあたり、男はドロッずした血を流しお絶呜する。それを芋お敵の怒りに油が泚がれ、面倒なや぀らの数がたた増える。残り䞉人だっだのに今は残り五人になっおしたった。埒があかない状況に、チョロ束の額に青筋が浮かぶ。 「あのさあ 僕急いでるんですよね あの銬鹿ずあの銬鹿を連れお垰らなきゃならないの わかっおる わかっおないよな わかっおたらこんなこずになっおないもんね 今もこうしおるうちにあの銬鹿は半裞でキメおるし、あっちの銬鹿は䜕しおんのかわかんないけどでもきっず蟛い思いしおんだよ」 むラむラしながら足を止めたチョロ束は、くるりず背埌を振り返るず、远手めがけお走り出した。撃っおくる匟を噚甚に避け、走る勢いを殺さないたた男らの目前で壁を蹎っお飛び䞊がり、近くにいた䞀人の偎頭郚を空䞭で蹎り倒す。ドシャッず倒れたずころを螏み぀け、぀いでにずどめの䞀発もぶっ攟した。 「次は誰 早くおいでよ」 ふヌっふヌっず荒い息を぀いたチョロ束が、その口元に笑みを乗せお男たちを手招く。 「急いでるのに邪魔する悪い子ばかりなんだろ だったら僕がきっちり躟けおあげる」 そう怒鳎っお銃を投げ捚お、ポケットからトゲの生えたナックルダスタヌを取り出したチョロ束を芋お、男たちは䞀瞬ひるんだ。チョロ束はその隙を逃さず、近くの男を蹎り䞊げお、その偎にいた男を殎り぀ける。蹎られた男は顎朰しただけでなく䞋から䞊にぱっくり深い傷を䜜った。チョロ束靎に仕蟌たれた鉄板ず刃のせいである。殎られた男はナックルダスタヌのトゲで頬肉をえぐられおいる。汚れたこぶしを芋お、きったないずチョロ束は乱暎に手を振った。ブッず肉が飛びガムのよう壁に貌り぀く。䞀気に二人枛らされおたじろぐ远手に、チョロ束はさも圓然だずいう顔でいった。 「愛の鞭だよ」 その圌の頭䞊に黒い圱が差しこんだ。チョロ束が振り返る暇なく頭を抌され、床に抌し倒される。地面に沈んだ圌の背䞭を螏んで、誰かがィペむショヌッず倧声を出す。 「MVP目指しおッ、十四束行っきたヌす」 「は、䜕 えっ、十四束」 急いでチョロ束が顔をあげるず、頭䞊から珟れた匟はバットを暪向けに握っお男の頭にフルスむングをかたしおいるずころだった。案倖軜い音で頭の骚が砕けお男の耳から䜕かが溢れる。 「キッショいね」 そういいながら十四束は残る最埌の䞀人の顔に突きの䞀撃を食らわせる。錻を朰しお倒れた男の喉仏にもうひず突き入れるず、男は䜓を倧きく震わせたあず動かなくなった。 金属バット片手に十四束がチョロ束を振り返る。 「兄さん助けに来たよ」 いやそれこっちの台詞 ずチョロ束は思わずツッコんだ。構わず十四束がかけおきおチョロ束の䜓を満遍なく確認する。 「倧䞈倫 セクロスだった 痛くなかった トド束はどこ ケツ割れた おそ束兄さんになんおいう トド束は」 「割れおないし売られおないしやっおないしパチンカス関係ない」 わめいたチョロ束だが、台詞ず食い違うぐらい必死な様子の十四束を芋おふっず衚情を緩めた。 圌は匟の頭に手を眮いお、離れ離れになっおいるうちに痛んでしたった髪を優しく撫でる。 「トド束は無事、僕ら売られおないんだ、あれは䜜戊。だから党員倧䞈倫。䌚いたかったよ十四束、二人が無事でよかった」 はお、ず十四束の動きが止たる。圌は銖を傟げ、再床聞いた。 「トド束無事なの 売られおないの じゃあ元気なんだね」 「うん、無事だし毎日頑匵っおる。でも元気はないかな、自分を可愛がっおくれる䞀番の兄がいないからね」 そういうず十四束はぜかんず口を開け、やがお䌞びた袖で目元を芆っおしたった。よかった、ずいう泣き声が袖の間から挏れ始める。チョロ束はそんな十四束の髪を䞁寧に䜕床もすいた。 「だから早く䞀緒に垰ろう。もう䞀人の銬鹿は䞀束頌んでる。合流したら色々説明するよ。それにね、」 安堵で泣く匟をあやしながら、チョロ束はそこに敵がいるかのように宙を睚んだ。 「二人にはやっおもらいたい倧事な圹があるんだ」 [newpage] 3月5日18時、カンザスシティ、某掋通。 なんずも぀たらない立食パヌティヌが着々ず進んでいくのを、トド束を含めたIPOの連䞭は二階からただひたすら芋぀めおいた。モンタヌニョが䞻賓でデむモンが出資者なら䜕かしらあるず螏んでいたパヌティヌなのに、蓋を開けおみれば単なる食事䌚でしかない。 チヌムのメンバヌがやられたず呟いおいる。恐らく取り逃がしたデむモンがごくごく普通のパヌティヌに切り替えろず指瀺を出したのだろう。䞻賓垭にモンタヌニョ䞀人分の空きがないのがその蚌拠だ。 「䜕が開催に関係ないらしい、だ。モロにやられおいるじゃないか」 誰もがぶ぀ぶ぀いう。肝心のデむモンも来る様子を芋せないし、無駄足ずはたさにこのこずだ。怖い顔をしおいるトド束の肩をチヌムの誰かが慰めるようにポンず叩く。叩かれたトド束は喉の奥から絞るような声を出しお俯いた。 パヌティヌは終盀に向かっおいる。ぜ぀ぜ぀ず人が垰り出す。これからもう䞀軒いかがですか、なんお日本でも聞こえそうな台詞が聞こえおくる。でっぷり倪った䞻賓の䞀人がコヌトを取っおくるよう背埌に立぀ボヌむに話しかける。了解したしたずお蟞儀をした圌が、䞊䜓を起こしながらその豚のような䜓を撃ち抜いた。 「え」 突劂響いた銃声に䌚堎の人間が静たり返る。クラシックだけが悠々ずその間を流れおいる。肩を撃ち抜かれた男は、ゆっくりずそこに手をあお、手のひらにべったり぀いた血を芋たあず聞くに堪えない悲鳎をあげた。ボヌむが男の足を撃぀。パンパンッず二発ほど。 あたりは䞀気に阿錻叫喚の図ず化した。譊護の人間が拳銃を持ったボヌむに向かっお発砲しようずする。しかし銃を構えた腕は別のずころから撃ち砕かれる。その間にボヌむは走り、䞻賓たちの足を次々に撃っおいく。 やがお䌚堎真ん䞭で足を止めたボヌむは、誰かを探すようにぐるぐるず銖を回した。腕をぶんぶん振り回しおするりず背䞭に手を回す。そこからずるっず匕っ匵り出されおきたのは金属バットだ。 十四束兄さん、ずトド束は小さな声でいう。 その声が聞こえたように、ボヌむの銖がぐりんず回り、柱の陰に隠れるトド束を捉えた。 「みヌぃ぀けたヌァ  」 あはっず笑っおボヌむがかぶっおいた垜子を脱いだ。珟れた顔はトド束に瓜二぀。 やばいぞずチヌムの誰かがいう。咄嗟に䞀人がトド束を背埌にかばうが、十四束はすでに圌を芋぀けおしたっおいる。きょろきょろず蟺りを芋回した圌は、ステヌゞ䞡端の階段に目を぀けたらしい。こヌれだぁ ず叫んで、十四束が異的なスピヌドでそこを駆け䞊がり始めた。 「来るぞ 反察偎から降りろッ ここじゃ狭くお分が悪い」 反察方向にある階段を降りようず十四束に背を向けお走るが、十四束のほうが断然早い。瞬く間に远い぀いおくる黒いネクタむの男に、誰かがひぃっず悲鳎をあげた。 「埅っおトド束 僕だよ 十四束だよ 埅っお僕、トド束ずお話ししたいっ」 振りかぶった金属バットをそのたたに、倧声を匵り䞊げお远いかけおくる十四束の口から鋭い犬歯が芋える。あれで喉を食らい぀かれたら抵抗する術なく死んでしたうだろう。興奮で涎でもたれるのか、十四束は時折口元をぐいっずぬぐった。トド束ぅず叫んで远いかけおくるその顔には狂った気配しか感じない。たたりかねた䞀人が銃口を向けるが、走りながら撃぀匟はそう簡単に的にはあたらない。 「やめろっ 来るなこの犯眪者め」 誰かが叫ぶ。その蚀葉にびたりず十四束は足を止めた。 「犯眪者 僕が」 「そうだこの悪魔がッ 今だっお無関係の人間を殺しやがっお」 「トド束も、そう思っおるの」 くりくりした目を向けられる。あどけない兄の顔にトド束の顔が䞀瞬泣きそうに歪んだが、圌はぐっず奥歯を噛みしめお、そうだず怒鳎った。 「僕は兄さんを殺すためにここに来たんだよ たんたず眠にはたっお、銬鹿みたい 蜂の巣になっお、僕らを襲ったこずを埌悔しなよ」 叫びながらトド束が腰に手をやり拳銃を匕き抜く。匕き金に手を圓おお、ためらうこずなく発砲した。ドンッずいう音ず共に十四束の腹郚に穎が開く。しかし䜕かを着おいるのか血が流れるこずはない。十四束はしばらくトド束を芋぀めたあず、できた穎に指を突っ蟌んだ。血は出おいないずいうのに、圌の顔色がみるみる悪くなっおいく。 「あヌ、あヌッ、アヌ  」 ぱかりず開けた口を閉じるこずなく、壊れた機械のようにそう繰り返した十四束が、やがおばちっずトド束ず芖線を合わせた。墚のような真っ黒な目がトド束を射抜いおいる。その目から、ぜろりず䞀滎、涙が萜ちる。 「もうだめだ、もうだめだった」 そういったきり、十四束がダンず床を蹎っお飛び䞊がった。察応する間もない、あっずいう間にトド束ず十四束の距離が瞮たる。トド束をかばうチヌムの人間を蹎り倒し、十四束は金属バットをトド束の頭䞊で振り䞊げた。 「ごめんねトド束、でも今のトド束は可愛くないからいらないんだ あっちで反省しお埅っおお」 ぶぅんずうなる䜎い音にトド束は逃げるこずも忘れおぎゅっず目を閉じる。頭の骚が砕ける音を誰もが予想する。そこに、ガキィンず䞍䌌合いな音が響いた。 「  誰でしょヌか、」 トド束ず十四束の間に䜓を割り入れお、SG550で十四束の金属バットを受け止めたのは、 「そうッ、チョロ束でぇっす 五男颚情が匟に狌藉働いおンじゃねえよ」 堅いアサルトラむフルに抌し返されお、十四束が飛びすさる。即座にチョロ束が匕き金を匕いた。マゞっすかず叫んだ十四束が柱の陰に身を隠す。チョロ束が撃ち終わったずき、十四束の隠れた柱はがろがろになっおいた。チョロ束が柱の陰に向かっお走る。圓然そこには誰もいない。ちぃっず舌打ちしお圌は手にしたラむフルを投げ捚おる。 「チョロ束、兄さん」 床に尻もちを぀いたたたのトド束がチョロ束を芋䞊げる。チョロ束が、その小さな黒目を動かしお、自分を芋䞊げる匟を芋た。開いおいた瞳孔がわずかに小さくなる。ごめん、ず圌が呟く。 「  おたえばっかりにやらせおごめん。十四束は僕がやるから、おたえは安党なずころに逃げおお」 そういいながらばさりずゞャケットを脱ぎ捚おる。癜いシャツに赀いサスペンダヌ、そこには銃ず予備の匟倉、そしおナむフ。ぐいっず緑のネクタむを緩め、チョロ束が口角をあげた。その笑顔に寒気が走る。トド束にも、圌らを芋守るほかの人間にも。 優しげな笑みを浮かべ、恍惚ず頬を染めた兄の口から、どろっず甘い声が出る。 「これだけあれば、十四束を䞉回ぐらい殺せるかな オむタをしちゃう悪い匟は、兄である僕がしっかりお仕眮きしないずね。可愛くおちょっずやんちゃな僕の匟、十四束。おたえにやられた肩の傷が、どうにもこうにも疌くんだよぉ」 逃げた十四束は元来た道を戻っお今や䞀階に行こうずしおいる。ぐわっず瞳孔をかっぎらいたチョロ束が、そのあずを远っお走り出す。 「トド束君、俺らも行こう、今のうちにここを出るんだ」 腕を取られおトド束も立ち䞊がる。ばたばたずも぀れるように足を動かし、階䞋ぞ降りる。向こう偎の階段では銃声が響いおいる。狂犬のように牙をむき出しお目を光らせる十四束が金属バットを振り回せば、チョロ束の足がその脳倩を狙う。ずっさに避けた十四束の肩口が音もなく裂ける。たはヌっず十四束が歪んだ笑みを芋せた。 「せっかく高いの着お来たのに切らないで欲しいッス」 「倧䞈倫、たた買っおあげるよッ おたえは僕の可愛い匟だからね」 「い぀っすか 来䞖っすか」 「銬鹿いうなよ、もっず早いよ あの䞖だよ」 「倪っ腹ァ」 びゅおんず十四束のバットがうなる。脇腹を的確に狙った䞀撃に、チョロ束は飛びすさろうずするがわずかに逃げ切れない。腹郚をかすめたせいでサスペンダヌがぶちりずちぎれ、埗物がばらばら床に萜ちる。腹の肉も痛めたのか、チョロ束がよろめいおそこを抑えた。 「ああヌ十四束―  」 ふらふらずチョロ束が背䞭に手を回す。ゞャキッず音を立おお取り出されたのは譊棒だ。 「なんで僕に逆らうかなァ   僕、六人の䞭じゃ䞀番たずもだよ 僕がいなけりゃ誰がおたえらをたずめるの 䞊からクズ、銬鹿、病気、気狂い、ぶりっ子。無理でしょ それなのにこの僕に向かっお手ェあげちゃうなんお。ああもうちゃあんずわからせおあげないずいけないね十四束。倧䞈倫、党郚終わったら頭撫でおあげるからねえ」 「うっはヌ兄さんキおたんがな っおか頭ならカラ束兄さんに撫でおもらうからもういいッスよ それよりもっず遊がうよ、僕はただただ兄さんたちず野球したかったんだよ」 怒鳎ったチョロ束ず吠えた十四束の間で金属の合わさる匷烈な音が響く。 反察偎でそれを芋おいたトド束の、その暪にいた゚ヌゞェントが䞍意にぐらりず倒れ蟌んだ。芋ればその背に深々ずナむフが突き刺さっおいる。 「なに、」 「よそ芋はいけないっお、習わなかったのか」 「カラ束にいさ、」 黒いズボンに癜いシャツ、黒いベストを着蟌んだカラ束が、「久しぶりだな」ず怖い顔でいう。いきなりの出珟に泡食っおいた゚ヌゞェントだが、即座に銃口をカラ束に突き぀けお発砲した。カラ束が隣にあったテヌブルを片手で持ち䞊げ盟にする。金属板でも入っおいるのか、テヌブルクロスに穎は開いおもテヌブルたでは貫通しない。 銃声が止んだころ、ひょいっずそこから兄が顔を出した。 「トド束、こっちにおいで。俺ず少し話をしよう。おたえは話せばわかるいい子だろ」 なだめすかすような優しい兄の声にトド束の喉がひくりず震える。優しい声を出すカラ束だが、その声ずは裏腹に、賭けだずでもいうように顔をこわばらせおいる。その癜い喉元に、玫のラむンを入れた癜いリボンタむが芋えお、トド束はぎゅうっず目を぀ぶった。 「な、トド束。話を聞いおくれ、」 「あんたず話すこずなんか䜕もない」 「そんな、頌むよトド束、」 「うるさい」 金切り声をあげながらトド束はカラ束に走り寄った。やめろず止める声が聞こえるがトド束は止たらない。襟元をひっ掎み、顔を近づけお兄に怒鳎る。 「僕の名前を呌ばないでくれる あんたが僕に䜕をいうの 僕らを殺そうずしたくせに」 違う っずカラ束も怒鳎る。 「勘違いだ 俺たちは䜕もしおない」 「信じられるず思う これ芋よがしにこんなリボンなんかしちゃっおさあ 䞀束兄さんの色じゃんか 䞀束兄さんを殺しおおいお、恥知らずも倧抂にしろよッ あったたおかしいんじゃないの」 「ちがっ、俺たちは䞀束を殺しおなんかッ」 「嘘぀け 䞀束兄さん攫ったくせに 動けない兄さんを殺したくせに」 「俺を信じおくれトド束」 「できないッ」 兄の胞に銃口を突き぀けおトド束がわめいた。圌は非戊闘員だ、銃を撃぀のだっお䞋手だ、だがこの距離なら確実に人を殺せる。トド束の指が匕き金に觊れる。すうっずカラ束の顔から色がなくなった。 圌はトド束の指先ずトド束の怒りに満ちた顔を亀互に芋お、くしゃりず顔を歪めた。誰もが十四束のように泣くのかず思ったが、カラ束の涙はずうに枯れおいたようだ。口の䞭を噛んで䜕かを耐えるような顔をしお、そうかず呟いたカラ束の手が腰に䌞びる。 M1911、それがトド束の顎の䞋に突き぀けられる。 「俺の匟は、十四束たった䞀人になるんだな」 ぐっずカラ束の手が銃把を握る。芪指ず人差し指の股の間にあるセヌフティヌが倖される。 「おたえず俺、どっちが早く死ぬだろう。やっおみようかトド束」 半分泣いお、半分笑ったような顔でカラ束がいう。 「生き残ればラッキヌだ、だがもしここで死んでも、おたえの手なら悪くない」 そういっおためらわず匕き金を匕こうずしたカラ束の暪腹を、誰かの匟が撃ち抜いた。 䜎く呻いお脇腹を抑えたカラ束が、トド束から距離を取る。傷口を抑えるカラ束の指からは血が溢れおいる。べそべそず泣き声がする。カラ束はもちろん、トド束も泣き声のするほうを芋る。 銃を構え、泣きながら近づいおくるのはおそ束だ。 「にいさ、  なん、で、」 ぐしぐし泣くおそ束が、問答無甚で発砲する。もう䞀発腹に叩き蟌たれたカラ束が、どしゃりず床に膝を぀いた。震える手で銃を握るカラ束だが、おそ束はひるむこずなくカラ束に近づいおいく。近づいたおそ束は、カラ束の銃を蹎り飛ばし、圌の髪の毛を掎みあげる。 「なんでだよぅカラ束、おたえ、俺を裏切るの そんなのなしだ、嫌だよ俺」 おそ束は掎んだカラ束の頭をそのたた床に叩き぀ける。ぅぐっずカラ束が呻く。䜕床も䜕床も、おそ束は匟の頭を泣きながら床にぶちあおる。カラ束の顔が汚れおいく、頭を振られお脳が揺れるのか、カラ束はう、あ、ずいうばかりでろくな抵抗もできない様子だ。圌が完党に動かなくなったあたりで、ようやくおそ束は手を止めた。捚おるようにカラ束から手を攟し、その暪にしゃがみ来んで泣きわめく。 「トド束もみいんな、俺の匟なのに。おたえだっお俺のものなのに。嫌だぁこんなの」 「違うよ兄さん、おそ束兄さんの匟は今日から僕ずトド束ず䞀束だけだ」 その声に皆が䞀斉に振り返る。そこにはチョロ束が立っおいお、その手にはボロ雑巟のようになった十四束が匕きずられおいた。チョロ束はそれをカラ束の偎に投げ捚おお、ぷっず血の混じった唟を吐きかける。 それからゆっくりトド束の偎に腰を䞋ろすず、身動きの取れないトド束の頭をかき抱いた。 「これで党郚終わるね、お疲れ、トド束」 枩かい兄の抱擁に、䞀足先に気を抜いたのか、末っ子の衚情に戻ったトド束が堰を切ったように泣き出した。 [newpage] 3月6日深倜2時。 青癜い光を攟぀゚レベヌタヌの䞭、ハヌツホンはランプが䞋局に向かっお点滅を繰り返すのを芋぀めおいた。゚レベヌタヌは地䞋牢のある階に続いおいる。地䞋牢はだだっ広い空間で、その真ん䞭に现い鉄栌子で䜜られたサむコロのような牢屋がある。ハヌツホンの手の䞭には地䞋牢に入るためのカヌドキヌがあった。圌はそれを手の䞭で匄びながら、胞のポケットに手を入れる。 「ふむ」 感觊だけで䞭にあるものの存圚を確認する。そのずきちょうど゚レベヌタヌが目的の階に぀き、静かに扉が開いた。靎の音を響かせながらたっすぐ歩き、扉の暪にあるホルダヌにカヌドキヌをかざしお重い扉を開ける。地䞋牢の䞭は薄暗い。扉を開ける音が聞こえたのか、䞭にいる人間が身じろぎをする。 「倧䞈倫かな」 「ハヌツホン、さん  」 牢屋に近づいおいくず、そこには拘束衣を着せられたカラ束ず十四束の姿があった。床に寝そべる圌らの姿をハヌツホンは憐みのこもった目で芋぀める。 「傷は痛たないかい ずいぶん手荒なこずをされたね」 優しく声をかけるハヌツホンのもずに、芋虫のように這いずっお十四束がやっおくる。 「聞いお 聞いおください 僕ら䜕もしおないんだ 誀解なんだ、濡れ衣なんだ」 わあわあわめく十四束の目は必死な色をしおいる。ハヌツホンは鉄栌子の䞭に手を入れお、必死の圢盞の十四束を撫でた。びくりず十四束の䜓が揺れ、その目から涙が溢れる。泣く十四束の向こうにはぐったりず暪たわるカラ束の姿がある。顔色はわからないがだいぶ蟛そうな息をしおいる。 「カラ束君、痛むかい」 そう聞くずカラ束はうっすら目を開けおうなずいた。圌は腹郚を撃たれおいる。本来ならベッドで安静に寝おいなければならない傷だ。凊眮枈みずはいえこんなずころにいるべきではない。だがカラ束は眪人、眪人甚のベッドなどIPOにはどこにも眮いおいない。ハヌツホンは胞のポケットから錠剀を取り出す。カラ束の目がその様子をがんやりした顔で芋぀めおいる。 「十四束君、圌にこれを。痛み止めだ。君も飲むずいい」 癜い錠剀を手にしたハヌツホンの顔が曇った。 「僕から君たちぞの情けだよ  、僕には䜕の暩限もないからね。君たちの話を聞くこずも、君たちを匁護するこずも僕にはできない。僕にできるこずずいえば、少しでも苊しみを和らげられるよう、こうしお痛み止めを枡すぐらい」 はらはら涙をこがす十四束が、錠剀ずハヌツホンを亀互に芋䞊げる。 「君たちを仲間だずただ信じおいる僕からの、最埌の莈り物だよ。飲んで楜になるずいい」 「う、ん」 十四束がのそのそず這いずっおカラ束の偎に行く。兄さんず呌んだ匟に、のしかかるようにしおカラ束が䜓を預けた。ず、ず、ず十四束がカラ束を背負っおゆっくり這っおくる。十四束が動くたび、その䞊にあるカラ束の䜓が倧きく揺れる。するず傷口が痛むのか、そのたびにカラ束の眉間に皎が寄る。二人がハヌツホンの近くにやっおきたころには、十四束は汗だくで、カラ束の呌吞はより荒くなっおいた。 「先に、兄さんに」 「わかっおる。だいぶ蟛そうだからね、」 口を開けおずハヌツホンがいうず、カラ束は玠盎に口を開けた。ハヌツホンはその䞭に錠剀を萜ずし入れる。飲んでずいうずカラ束の唇が閉じられお、ほどなく喉が䞊䞋した。飲み終えたカラ束がはヌっず倧きく息を吐く。 「兄さん楜になるかな」 「なるよ、ほら君も」 ぱかりず十四束も口を開ける。そこに錠剀を萜ずすず、十四束はしばらく口を動かしお、ごくんず喉を動かす。 「ありがずうハヌツホンさん  」 嬉しそうな顔で十四束がいう。圌はよいしょず身を起こしお、ぐったりした兄に膝枕をしおやった。そしお䞊䜓をかがめお兄の頬に自分の頬をすり寄せる。暗がりの䞭、カラ束の息づかいず十四束の錻をすする音だけが聞こえる。 「ハヌツホンさんには感謝しおる」 くぐもった声で十四束がそういうのを、ハヌツホンはうんずうなずいお聞いおいた。本圓にありがずう、そういっお十四束は静かになる。カラ束も同様だ。 郚屋の䞭が無音になる。ハヌツホンは鉄柵越しに二人の脈を枬り、満足げにうなずいた。 これで倧䞈倫。 錻歌亀じりに立ち䞊がった圌はそうっず地䞋牢を出ようずした。 「䜕やっおんの」 声が響くず同時にバチンず郚屋の明かりが぀いた。ぎょっずしたハヌツホンが振り向くず戞口に数名の人圱がある。 赀、緑、玫、ピンク、そしお圌らの背埌に局長カヌタヌ。 それを芋た途端、無数の蟻が䜓䞭を這いずるような嫌な感芚がハヌツホンに襲い掛かった。圌は咄嗟に叫ぶ。 「倧倉だッ、二人の様子がおかしいんだ 医務班を呌んでくれ」 「おかしいっお、どうおかしいの」 赀いネクタむをしたおそ束が笑いながら聞いおくる。ハヌツホンは目をむいた。 「笑っおる堎合じゃない、息をしおないんだ のんびりしおないで早く医務班を」 声を荒げるハヌツホンだが、おそ束はぞらぞら笑うばかりだ。笑いながら近づいおくる。そのうしろに兄匟が続く。ハヌツホンから数歩分の距離を空けおおそ束たちは立ち止たった。 「医務班は呌ばない。なああんた、俺らず少しお話ししようぜ」 「君は正気か 兄匟の危機だぞ」 「危機だからだよ」 そう答えたおそ束の顔から笑顔が消える。途端に黒い気配が圌から挂い始め、ぞわりずハヌツホンの足の先が冷たくなった。 「おたえ、俺らを嵌めようずしたろ」 黒い気配が生き物のようにハヌツホンの぀た先を飲み、圌の䜓を這い䞊がる。目をかっ開いたおそ束の瞳の䞭に、底が芋えないほどの深い怒りが芋える。這い䞊がる気配を無意識に払いながらハヌツホンは䞀歩埌ずさった。 「䜕のこずだ、僕は君たちを嵌めようずなんかしおいない。ふざけるのも倧抂にするんだ」 叫ぶハヌツホンに、ああそう、ずおそ束は怯みもしない。 「しらばっくれおもいいんだけどさ、でももう詰んでんだよね。ねえ、ハヌツホン改め、レスリヌ・デむモンさん」 「なんおこずをいうんだ君は」 口から泡を飛ばしながらハヌツホンはおそ束に向かっおわめき散らす。 「僕があのレスリヌ・デむモンだっお 君はいっおいいこずず悪いこずの区別も぀かないのか デむモンは君の兄匟のどっちかだろう」 「その台詞、そっくりそのたたあなたに返すよ。僕の兄さんたちが犯人だなんお、それこそいっおいいこずず悪いこずの区別も぀かないの」 おそ束のうしろからトド束があきれたような口調でいう。 「バレない思ったの モンタヌニョ邞で僕らを襲ったのはそこにいるカラ束兄さんでも十四束兄さんでもない。十四束兄さんはあの日金属バットを持っおなかったし、顎に手術跡なんおなかった。䜕より駄目だったのは、僕ずチョロ束兄さんを芋分けられなかったこず。県鏡をしおるからチョロ束っお䜕 むッタいよねぇ」 䞀束もキヒッず笑う。 「ク゜束も倧倱敗。あんたは知らないだろうが、このク゜なク゜束オニむチャンは頭の回路むカレおおさ、俺みたいなゎミにもク゜みたいに優しいの。逆に死ねよマゞでっおレベル。そのク゜束が僕を拒むなんおありえない。オベンキョり足りなさすぎ」 チョロ束がそういう二人の匟を䞡手に埓え、「そういうわけなんですよ」ず慇懃無瀌にいった。 「任務の最䞭に兄匟の停物が珟れたら誰かが僕らを嵌めようずしおいるっお思っお圓然でしょう。それで本郚に戻っおみれば、本郚に内通者がいる話になっおいお、それがあのレスリヌ・デむモンで、尚䞔぀兄匟のどちらかがその人だずいわれお。そんなの嵌められた以倖にないでしょう。無線の時点で内郚に敵がいるかもっお思っおいたのに」 「無線  」 矢継ぎ早に喋られ黙るしかなかったハヌツホンだが、その䞀蚀に思わず問い返しおいた。これですよずチョロ束がポケットから取り出したのは、本郚で支絊されおいる無線である。 「これが切れたずき、故障かなっお思ったんです。でもカラ束ず十四束の停物ず出くわしたせいで、きっず故障じゃないから調べようっお本郚に行く前に䞀束に調べさせたんですよ。近くに切断元があっお敵がいるならぶち殺しおやるっお思っお。そしたら本郚から電波が来おいお、そこが切断元になっおるじゃないですか。その時点でもう本郚に僕らの敵がいるっおわかるでしょう。ああ倱敬、前に僕は十四束が切ったずいいたしたが、あれはたあ、嘘ですよね」 にっこり笑ったチョロ束がきゅっず無線を握りしめる。぀ぶさないように配慮しおいる぀もりだろうが、その手には筋が浮いおいる。おそ束がその手をぜんぜんずなだめるように叩いおやった。それに慰められ、少し手の力を緩めたチョロ束が続ける。 「すぐさた裏切り者を探さなきゃっお話になりたした。正盎カラ束ず十四束が無事な保蚌はなかった。生きおるのか死んでるのかもわからなかった。でも䞀束が生きお逃げおるっおいうんですよ、自分のタブレットに䞍正アクセスがあるからっお。そい぀カラ束に぀けた発信機を経由しおきおるからたぶん十四束だっお。じゃあそれを信じようっお話になっお、色々䜜戊立おたんです」 凄いでしょう ず同意を求めるようにチョロ束はいうが、ハヌツホンは銖を瞊にも暪にも振れない。だがチョロ束は特に返事を求めおいないようで、たた続けお話し始める。 「裏切り者を探すにあたっお、四人党員に監芖を぀けられちゃたたったもんじゃないから、䞀束には寝たふりを、おそ束兄さんには心神喪倱の真䌌事をしおもらいたした。笑えたでしょ 泣きながら震えるおそ束兄さん」 「あっおめさっき慰めおやったのに」 「ねえねえ俺もうたかったでしょ。蚓緎受けおるんで医者ぐらい隙せるんですよね」 「トド束はうちのチヌムの情報収集係で自由に動かしたかったんですけど、こい぀に䞀番監芖が぀きそうだから、僕、぀たり『チョロ束』に成り代わっおもらいたした。トド束が『チョロ束』をやっおるずきは、僕らが亀代で『トド束』をやった」 初日は僕です、ずチョロ束がいう。 「本郚内のPCにカラ束たちがアクセスしおくるかもっおみんなに思わせお、穎を䜜らせるたでが僕の圹目」 次は俺、ず䞀束がいう。 「PC関連のずきは俺ね。䞍審者扱い最高でしたっおあれは局長か。本郚で甚意したPCに、タブレットからク゜束たちのフリをしおアクセスする。適圓に居堎所甚意しお逆探知させお、でも詳现たでは探らせない。『トド束』が觊っおるPCだけが、ク゜束たちの詳しい居堎所を知っおるこずにする。぀いでにク゜束たちがアクセスしおきたっお噂を流す。所詮炙り出しだよね」 䞀束はにやにや笑っお舐めるようにハヌツホンを芋おいる。 「敵がク゜束ず十四束に逃げられおいれば、䜕があっおも二人の居堎所を知りたいはずでしょ。だからPCに觊ろうずするはず。捕たえおたずしおも、じゃあ二人のフリしおアクセスしおるの誰なんだっお調べに来るはず。そう思っお色々仕蟌んでおいたのに、なのにPCに誰も觊りに来なかった。みんなロックかかっおるっお䞍満そうに『トド束』に聞きに来た」 䞀束はこの䞊なく楜しそうだ。ヒヒッず笑い声を挏らす圌の背から悪い気配が立ち䞊っおいる。 「やばいっお思った。どうなっおんの っお。でもよく考えたら、別にアクセスないのは倉なこずじゃないんだよね。PCを觊らなくおも情報を掎める立堎にいる人間クロなら、危険を冒す必芁ないもん」 意味わかるぅ ず銬鹿にしたように四男は笑い続けおいる。 「それで俺ら、『トド束』ず垞にやりずりをしおいた局長かあんたのどちらかが裏切り者だっお螏んだ。あんたらがアクセスしおくるや぀をちゃんず調べろずもいわずに、『トド束』のいうこず鵜呑みにしおるずころから、ク゜束も十四束も捕たっおないんだっお確信できた」 たあ元から信じおいたけどねず䞀束はいっお、さよならをするようにハヌツホンに向かっお手を振る。 「ここたでが俺の仕事で、」 「んで、あずはどっちか絞るだけだっおなっお、眠匵るかっおなったわけよ。仲間がいるはずだからそい぀らを捕たえおゲロさせよっお。たあゲロんなかったからこうしお䞀芝居打ったんだけどね」 䞀束のあずを匕き継いだおそ束が錻の䞋をこする。 「PCに俺らの状況を曞いた資料を眮こう぀ったろ 䞀束おずりにしようっお。あのずき『チョロ束』がなんおいったか芚えおる 芚えおるわけないよな」 おそ束はちらりずトド束を芋る。芋られたトド束が口をずがらせお呟く。 「僕はあのずき、『兄さんたちは絶察に䞀束兄さんを殺しに来る。来なきゃ僕の兄匟じゃないよ、僕にはわかる』っおいったんだよ」 ハヌツホンの頭の䞭にそのシヌンが蘇る。圌は目を皿のように䞞くしおトド束を芋た。それをいったずきのチョロ束の面圱は、ここにいるトド束からはたったく感じられない。だがその発音の仕方には芚えがある。 「あれはトド束君だったのか」 思わず声を発したハヌツホンに、そうだっおいっおるでしょうずトド束が嫌な顔をした。ぞぞっずおそ束が笑う。 「さすが人心掌握の達人だよなあ。この蚀葉にあんたは隙された。䞀束を襲わなきゃっお思った。襲わなきゃカラ束たちが悪者っお話に歪みが生じるし、『絶察来る』兄匟なら、䞀束を殺すこずはありえなくおも䜕かしらのコンタクトを取っおくるだろう。いずれにせよたずい。焊っただろ、なあ 䞀束を移動させる話を出しお、朝たでっお時間を絞ったこずも焊りに拍車をかけちゃった。朝たでにクラックされなかったらどうしようっお思ったろ い぀から䞇が䞀に備えおたの クラック跡぀き次第襲っおくるだろうず思っお、局長の仮眠時を狙っおPCにアクセスしたら、『カラ束』が来おさあ。速攻で眠っおもらったぜ」 「捕たえた『カラ束』の携垯を拝借しお、『十四束』にも来おもらっお、おそ束兄さんの郚屋でラブ゜ング聞きながら二人ずお話ししたしたよ。あ、だから䞀束が攫われおからの『トド束』はトド束です。ちなみに『カラ束』はだいぶ前に駄目になりたした、だから今はバカンス䞭」 海氎济䞭っおいっおたけど絵葉曞来おたせん ず銖をかしげるチョロ束は楜しそうだ。ふんわり笑う顔の奥底にいい逃れできない狂気を感じお、ハヌツホンはこれ以䞊䞋がるずころはないずいうのに䞀歩埌退っおしたった。ガチャンず背䞭が鉄栌子に觊れる。 「それを、僕に聞かせおどうするのかな」 それでもハヌツホンは銖を暪に振る。 「君たちがいろいろず考えお行動しおいたのはよくわかった。僕ず局長のどちらかが怪しいず睚んだこずも。だが僕はデむモンじゃないし、その理屈なら局長だっお怪しいだろう。ここにきおいるこずが怪しいずいうなら、医務宀の人間に聞いおごらん。僕は怪我の様子を芋るずちゃんず申請を出しお蚱可を埗おる」 困ったように笑いながら、なのに自信の揺るがない目を芋お、ため息を぀いたのはトド束だ。 「僕、資料宀にいたでしょ」 「ああ、いたね」 「泣きながら兄匟の履歎曞ず掻躍読んでるっお報告あったでしょ」 「あったね」 「あれ、嘘だから。泣いおないから。泣き声はおそ束兄さんの郚屋で䜿っおたカセットテヌプの再利甚だよ。おんなじ泣きかただっお気づかないのっおむッタいよね」 僕は別のものを探しおたんだよずいっお、トド束がぺらりず䞀枚の玙を取り出す。ハヌツホンは目の前に突き぀けられたそれをたじたじず芋た。自分が過去に曞いた報告曞だ。これがどうしたんだずハヌツホンは蚝しむ顔になる。 「芋お、あんたのサむン。英語衚蚘で、Hartshorne」 トド束はもう䞀枚、玙を取り出す。今床の玙は小さい。 「これ、モンタヌニョ邞で芋぀けた小切手。振出人はレスリヌ・デむモン。あんた過去にモンタヌニョに小切手降り出したこずあるでしょ モンタヌニョはきっず䜕かのずきのために取っおおいたんだ、あなたの筆跡を」 ずんずんずトド束の指が二枚の曞類に曞かれたそれぞれの名前を指さす。 「ね、小文字の『S』、特城的だっお、いわれたこずない」 「よく䌌た筆跡ぐらいどこにでもあるだろう」 「それじゃあこっちも芋およ」 おそ束がポケットから出しおきたのは携垯電話だ。 「これ、『カラ束』が持っおたや぀。盎近の通話は䞀束を無事始末したしたっお連絡なんだけど、あれチョロちゃんがかけたの」 倉成噚䜿っおたらしいなずいいながらおそ束は携垯をいじる。だが電話はどこにも繋がらない。 「あれ やっぱり携垯凊分ちゃった じゃあアッチは」 おそ束がそういった途端、ぬっず䜕かがハヌツホンの銖に絡み぀いた。 驚いたハヌツホンが顔だけどうにかうしろに回すず、そこにはにやりず笑うカラ束がいる。圌はハヌツホンず目が合うや吊や、ハヌツホンの銖を締め䞊げおきた。 「は、あ」 ぐっず締たる気道に目を回すハヌツホンの頭は真っ癜だ。 拘束衣はどうした、怪我はどうした、さっきたで息を止めおいたじゃないか、脈がなかったはずじゃないか。 いいたいこずが分かったのか、カラ束は舌を突き出しお芋せる。その䞊には癜い錠剀が乗っおいる。圌の暪には同じように舌を突き出しおいる十四束がいお「飲んでないっすよばヌか」ず錠剀を吐き捚おた。 「で、も、脈、が」 「止血法」 ハヌツホンの疑問に答えた十四束が、拘束衣を着たたたぎょんぎょん飛び跳ねる。口を閉じたカラ束もうなずいおいる。 「拘束衣は矜織っただけだし怪我はしおない 俺も兄さんも 血糊入りの防匟チョッキ䜿甚でございマッスル」 それを蚌明するように十四束がよいしょっず拘束衣を脱ぎ始めた。なおも驚きが止たないハヌツホンを芋お、たはっず笑った十四束は「あんたり芋ないで」ず恥じらうように胞元を隠す。それを芋おカラ束が喉を震わせお笑った。 「来るず思っおたよおっさん 捕たった日に服毒自殺なんおありきたりけど、でも僕らを殺しずかなきゃたずいんだもんね」 色々バレちゃうもんねヌ ず明るくいった十四束の目は笑っおいない。それに鳥肌を立おたハヌツホンがカラ束の手から逃れようずもがく。おそ束が「しっかり持っおろよカラ束ぅ」ず䌞びた口調でいった。うなずいたカラ束が曎に銖を締め䞊げおくる。ハヌツホンは思わずおそ束を睚み぀けた。睚たれたおそ束があちゃヌず倧袈裟にいう。 「駄目だめ、そヌんな殺意のこもった目で芋ちゃ。あんた前もその目で『チョロ束』のこず芋たよね 俺のいる郚屋に䞀束を移動させるっおいったずきだよ」 芚えおるぅ ず圌は笑う。 「俺らがあんたに的を絞っお、局長の仮眠時狙ったのはその目のせいだ。あのずきも今も悪者の顔しおるぜ、お兄さん。  さお、」 おそ束が手を䌞ばしカラ束の唇をずんっず叩いた。 「よく耐えたな、いい子だ」 偉いぞず耒められたカラ束が少し照れたように笑う。薄く口を開けたカラ束の口内に、おそ束は指を入れた。 匟の口の䞭から錠剀を摘たみ取った圌は、それをハヌツホンに突き぀ける。 「これ、䜕か調べおもいい」 いい逃れできない状況に、ハヌツホンは぀いにがっくりず䜓の力を抜いた。抜いおしたえばあずは笑いしかこみ䞊げおこない。 そうだよ、ず圌は䞀人口の䞭で呟く。 「参った、降参」 ハヌツホン䞀床顔を䌏せ、自嘲気味に笑っおから再び顔をおそ束に向けた。 「僕がバックスタッバヌだ」 そこに゚ヌゞェントの面圱はない。 ふふふず笑い、ハヌツホンは回想する。 レスリヌ・デむモンが内郚の人間かも知れないずいう噂を本郚で聞いたずき、これはもう朮時だなず思った。足が぀く前にレスリヌ・デむモンをやめなければならない。しかし唐突に姿を消すにはデむモンは倧きくなりすぎた。 「そんなずきに君たちが任務に就くず聞いおね、奜郜合だず思った。誰でもよかったんだ、レスリヌ・デむモンの代圹はね。君たちがタむミングよくそこにいたから、君たちにしただけ、」 金次第でなんでもいうこずを聞く男を二人ばかり甚意しお、骚たで削るほどの敎圢を斜した。それが枈んだら長い぀き合いのモンタヌニョを呌び出しお湖に沈めた。あずはモンタヌニョ邞で二人ばかり捕たえお、残りの兄匟に死んでもらう。 その予定だったのに、四人が四人ずも生き残っおしたい、捕たえた二人は逃げおしたった。 「でも垰っおきた君たちは自分たちの兄匟が自分たちを裏切ったず怒っおいた、」 挔技だずは気づかなかったずハヌツホンは自嘲気味に笑う。これでも昔はトップクラスの゚ヌゞェントだったのだ。 「目が腐ったんだ、わからなかった。奜郜合だず思っお、君たちを利甚した。眠だずは党く思わなかったよ」 「腐っおンのは目だけじゃなく性根もだろ」 「そうかもしれない。君たちの劇が玠晎らしかったずいうのもあるがね。ああでも、掋通での逮捕劇は倧げさすぎないか 䜕人か䞀般人も撃ったず聞いおいるよ」 冗談、ずおそ束が吐き捚おるようにいう。 「あれはおたえず同じ悪党だろ」 掋通で圌らが撃った数人は人身売買の䞊顧客ず売人だ。しれっずした顔でワむンなんか飲みやがっおず十四束を補䜐する䞀束が怒り、埅機䞭だったチョロ束が顔を歪めた。ああいう連䞭には嫌な思いをしおいるずいった匟二人をおそ束はよく芚えおいる。 「それに殺しおねえし。逃げられないようにしただけ。あい぀らも今頃色々ゲロっおるだろ。䞻催も捕たえたしな。これで商品にされた子らも保護される。䞎えられた任務はちゃんずこなすさ。俺らこう芋えおもプロ意識高ぇのよ」 「そうなんだ、じゃあ任務成功を耒めおあげようかな」 「局長に耒めおもらうからいいよ」 半笑いでいったハヌツホンにおそ束が手を巊右に振っお答えた。 「でもあの劇の最倧の目的は、カラ束ず十四束確保しおこの地䞋牢に入れるこずなんだぜ。確実な蚌拠を手に入れるためにな」 これだよず圌は錠剀をハヌツホンに芋せ぀ける。 「結局あんたの郚䞋がゲロんなかったから、筆跡や携垯以倖に確実な蚌拠が欲しくおさ。あれだけじゃ䜕ずでもいい逃れられるじゃん。だからこういう確実なや぀を手に入れるため䞀芝居打ったんだ。二人を地䞋牢に抌し蟌めれば『デむモン』は絶察に動く。それもたぶん二人を殺す方向に」 「僕がここに来ないずは思わなかったの」 ハヌツホンの問いにおそ束は銖を振る。 「絶察来るよ、俺がデむモンでも動くもん。だっおそい぀ら殺したらデむモンの正䜓は氞久に闇の䞭だもん」 「僕は読たれおいたんだね」 「プロだからな」 「そうだねえ。本圓にプロだ、その点僕はもうプロ倱栌だよ。ねえそんな僕を憐れんで、その薬を僕にくれない」 冗談めかした口調でハヌツホンがいう。それに察し、俺はそこたで優しくないよずおそ束はいった。わかっおるさずハヌツホンもうなずく。それから、あああずうなだれる。 「詰めの甘い仕事をしおしたったもんだ。目も腐ったみたいし、もうどうしようもないね」 うなだれるハヌツホンの耳元で、十四束がそうっすねず笑った。 笑っお圌はカラ束の暪から手を䌞ばしおハヌツホンの髪を掎み、ぐいっず匕く。斜めに匕っ匵られ、偎頭郚をしたたかに打ったハヌツホンが呻いた。 「なに、を」 そういうハヌツホンを十四束は柄んだ瞳でじっず芋぀めたあず、反省しおねず静かな声でいう。 「これからたっぷり反省しおね。僕、叞法は党然わからないけど、おっさんが死ぬより蟛い目にあえばいいず思っおるよ。この䞖の地獄を芋ればいいず思っおる」 十四束の台詞にハヌツホンは驚いた顔で圌を芋る。目があった瞬間、十四束はもう䞀床ハヌツホンの頭を栌子に打ち぀けた。普段の圌からは想像もできない行為に、ハヌツホンは目を癜黒させる。 その耳元に十四束はもう䞀床口を寄せる。 「痛いね。でもこの痛みを芚えおおね。トド束に嫌な台詞たくさんいわせお、たくさん泣かせお、兄を撃たせるようなこずしたや぀、地獄にいっおも蚱されないんだよ。この痛みはその蚌拠。ちゃんず死ぬたで、芚えおおね」 十四束の行動を察したカラ束がハヌツホンの銖からぱっず腕を離した。ステヌゞを譲られた十四束は、ハヌツホンの頭を真うしろから掎みなおし、その腕をたっすぐ䌞ばす。そしおそれを思いっきりうしろに匕いた。 ガツンず音を立お、ハヌツホンの埌頭郚に鉄栌子が食い蟌み、そこから血が溢れる。 ずるずる座り蟌むハヌツホンのもずぞ、静芳しおいたカヌタヌが歩み寄った。 「それじゃあ行こうか、デむモン君。次は我々ずお茶する番だ」 [newpage] 3月6日14時、本郚内カフェテラス。 おそ束たちはコヌヒヌを片手にぐおっず机に䌞びおいた。チョロ束だけがただ䞀人、手元の資料を䜕やら懞呜に読んでいる。 「ハヌツホンは資料宀の䞭に麻薬や人身売買の関連資料を隠しおたみたい。モンタヌニョの分もあった。いくら探しおも䜕も出ないはずだよね」 「もうしばらくその話題いいわヌ、もうおなかいっぱいだわヌ。お兄ちゃん䌑暇欲しいわヌ」 「ふっ。朚の葉を隠すなら森の䞭    か」 「あっカラ束それアりト。僕の䞭で今もっずも熱いアりトな台詞」 「えっ、じゃあ、Where does a wise ma」 「違う英語ならいいっおわけじゃないし匕甚ならいいっおわけでもない頭おかしいのか銬鹿束もっず人ずしお真面目に生きろ」 「えっ」 「ずころでむッチは䜕しおんの カラぎクリスマスのむルミネヌションみたいになっおるけど倧䞈倫 それ発信機よね」 「ク゜束すぐ誘拐されるから。あずはこれにニカヌブ着せおサングラスさせたら安心」 「なヌるほどぉ。でもそれ着せたらカラ束真っ黒じゃね シヌツお化けの黒い版じゃね」 「だっおク゜束すぐ色々ダダ挏れになるから」 「えっ、䜕カラ束挏らすの その幎で ちょっず僕から離れおくれる」 「え、おたえそっちも挏らすの パン○ヌスデビュヌかよク゜束  」 「えっ、えっ」 「っおかあい぀らどこ行ったの、十四束ずトド束」 はあヌっず倧きく息を吐いお䌞びたおそ束に、わいわいず話しおいたカラ束ずチョロ束ず䞀束は顔を芋合わせる。やがお䞉人を代衚しおカラ束がふふんず笑った。 「スタバァだ兄さん。ブラックピヌチティヌが二人を呌んでるからな」 今日のスタバァは最高に矎味しい䞀杯を圌らに提䟛するこずだろう。
スパむ束2匟です。家宝埅機組の皆さたず楜しめればず思いたした。<br />前䜜<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6301190">novel/6301190</a></strong>はこちら。<br />雰囲気が違い過ぎたす、すみたせん。前䜜の蚭定を匕き継いでいるので、キャプションを䞀読しおいただけるず嬉しいです。<br /><br />※スパむの六人がメむン。暎力・流血泚意。䞀カラですがくっ぀いおたせん。無自芚恋愛䞭の次男ず、自芚あり四男です。オリキャラ出おきたす、悪圹で。話しの芁であり、たたかなり六぀子に絡みたすので、そういうのがお嫌いなかたはお読みにならないほうがいいかず思いたす。たたR指定がいるかわからなかったので぀けおたせん。必芁ならば぀けたすのでおっしゃっおいただけるず助かりたす。あず、実際の地名が出おきたすが関係ありたせん。組織は架空の組織です。<br /><br />※䞊蚘でも述べたしたが悪圹でオリキャラが出お来たす。カラ束が性的にいたずらをされる皋床の絡みですが、念のためモブカラを぀けおおりたす。モブやオリキャラの登堎がお嫌いな方は泚意されおください。すみたせん。<br /><br />※本職のスパむやSEでははないので现かいこずを気にしないでいただければ幞いです。「っぜい」ずいう雰囲気でお読みください。あたりにも難しくお、ドンパチやっおるだけのマフィア束にすればよかったず思いたした。<br /><br />※1ドル100円で考えおくださるず事倉的にハッピヌです。<br /><br />※前䜜の蚭定をそのたた䜿甚しおいたす。<br />六぀子はそれぞれのカラヌのネクタむをしおいたす。<br />ネクタむには発信機が぀いおいお、チョロ束の県鏡はそれを远えたす。<br />䞀カラは「任務から無事生還できたすように」ずいう意味でキスしたす。<br /><br />※现かい蚭定を蚘茉しおおきたすず、最匷のリヌダヌ長男、参謀で非戊闘員の次男、長男の右腕䞉男、接近戊は䞍埗意な狙撃員四男、機械担圓兌䜕でも屋の五男、補䜐業務及び情報収集担圓の非戊闘員六男です。むメヌゞず違った堎合は申し蚳ありたせん。でも垌少皮参謀次男を曞きたかったんだ<br /><br />※ずおも長い。たんべんなくキャラを出したせい。お暇なずきにどうぞ。<br /><br />※コメントにブックマヌク等ありがずうございたすご、誀字盎したした  人任せよくない  
マむ・フェア・ブラザヌ
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 西䜏みほ。  私達の、「元」副隊長。  圌女が、私達の副隊長であった頃。  冷静沈着に戊況を把握し最適な指揮を繰り出すその姿は、砲匟飛び亀う䞭キュヌポラから身を乗り出すその姿は、私にずっお憧れだった。  圌女は私の目暙であり、垌望であり  「倢」だった。  その最たるものが、圌女の姉である西䜏たほ隊長ず圌女――西䜏みほ副隊長の連携だ。アむコンタクトだけで互いの意思を即時に理解し、それをすぐさた戊術に組み蟌んでいく。実際にそれを目の圓たりにした時、私は蚀葉を忘れ、ただただ芋惚れるこずしか出来なかった。  あたりに矎しかったその光景に、私は憧れた。  それはやがお目暙ずなり、たた垌望ずなった。  圌女ず肩を䞊べ、黒森峰の䞡翌ずしお隊長を支えたい。そしおたた、今の圌女が副隊長ずしお隊長に必芁ずされおいるように、将来圌女が隊長になった時、副隊長ずしお隣にいるのは私でありたい。 「圌女に必芁ずされる私になりたい。」  それこそが、私の目暙だった。垌望だった。倢だった。  しかし。  それが叶うこずは、もう無い。  圌女は、黒森峰から去っお行った。  私が圌女の隣に立぀こずは、出来なくなっおしたった。  私の「倢」は朰えたのだ。  だから。  私は、圌女を――      あの子を、憎んだ。     [newpage]  西䜏みほが、戊車道に戻っおきおいる。  その報せを聞いた時、そしお党囜倧䌚に゚ントリヌしおきた時、私はあの子を軜蔑した。  黒森峰の戊車道から逃げ出したあの子が、黒森峰よりも明らかに匱小の、いや、それどころか戊車道そのものが廃れおいた孊園で戊車道をたた始めたずいうのだ。  私達の戊車道から逃げ出しおたでやりたかったのが、そんな戊車道「ごっこ」だったのか。  私の目暙を、垌望を、倢を奪った䞊に、そんな戊車道ごっこでのこのこず私の前に出おくるのか。 「完膚なきたでに叩き朰しおやる。」  私は、そう心に誓った。  なのに――      あの子は、黒森峰にいた頃以䞊に、匷くなっおいた。     [newpage]  あの党囜倧䌚優勝以降、あの子を取り巻く環境は激倉しただろう。  廃校の危機を救った、もうひずりの西䜏流。  あたりにもドラマティックな、挫折ず埩掻。  倧掗に生たれた奇跡の物語。  センセヌショナルな掻字が躍っおいるのをネットや月刊誌「戊車道」の誌面で芋る床、私の心はざわめいた。  こい぀らは、䜕もわかっおいない。  負けたのは、私達「黒森峰」なのだ。  黒森峰が、奇跡などずいう「たぐれ」で負けるなど、ありえない。  黒森峰に、奇跡などずいう「たぐれ」で勝぀など、出来るはずがない。  倧掗女子が勝ち、黒森峰が負けたずいう事実。  その事実には、必ずそれを匕き起こす䜕らかの「必然」があったのだ。    しかし――  それが、䞀䜓䜕なのか。  実際のずころ、それは私にもよく分からないたただった。 [newpage]  再燃した倧掗女子の廃校危機ず、倧孊遞抜チヌムずの察戊。  あの子ずの共闘が、期せずしお実際には呚到な根回しがあったのだろうが実珟した。  そしお――   [newpage]  倧掗女子孊園。  廃校の危機にあった孊園艊ずはいえ、いや、だからこそ其凊から這い䞊がるには人䞊み倖れお優秀でなければ務たらなかったはずの生埒䌚長、角谷杏。  圌女に心酔する生埒䌚広報の河嶋桃は戊車道に向いおいるずは蚀い難く、芋た目よりもはるかに短気で感情的になりやすい人柄だ。  そんなふたりを補䜐し、内倖ずもにバランサヌずもなっおいる副䌚長の小山柚子。  䟋えば、たった䞀茌の、たった䞀チヌム。その䞀チヌムでさえこれほどに癖のある面子である。  そんな䞉人が、「カメさんチヌム」ずしお、ヘッツァヌもどきに乗る。  ――私は今でも、このカメさんチヌムだの、アヒルさんだのアリクむさんだの、あの子が出す指揮に混じるこれらの名は迫力に欠け、たた䞍真面目に過ぎるのではないかず思っおいる。  しかし、それが、それこそが。  あの子が、決しお「車茌」に察しお指瀺を出しおいるのではなく、垞にその車茌を動かす「ひず」を芋おいるこずの衚れだったのだ。  「ヘッツァヌ」に出来る動き。  「カメさんチヌム」に出来る動き。  それは、完党に「䌌お非なるもの」だった。  あの子が芋おいるのは、垞に「ひず」だったのだ。  車茌の性胜ず、それを動かす人の胜力はむコヌルではない。  いくら車茌を䞇党の状態に敎備しおも、それを操るのはひずだ。  車茌が100の性胜を発揮できる状態にあったずしおも、あるいはどれほど高性胜の車茌だったずしおも、操る者の胜力が足りなければ、それは手に䜙る無甚の長物でしかない。  だから、あの子は。  膚倧な知識ず圧倒的な経隓を積み重ねたあの子は、加えお「ひず」をも真正面から捉え、あの䞀癖も二癖もある連䞭個々人を熟知し、信頌し、統率し、䜜戊を遂行する。  そしお車茌の性胜はもちろん、それを動かす人の胜力、蚀い換えれば『性胜』たでをも100、いや、120%以䞊匕き出しおしたうのだ。  察しお、私はどうだ。  あの子が私の前からいなくなった時から、私はあの子を理解しようずするこずを攟棄した。  あの子が、芋お、考えおいたこず、぀たり「ひずを理解するこず」を「甘い」ず断じ、芋䞋し、切り捚お、䞀顧だにしなかった。  車茌の性胜ず圧倒的な物量こそが党おだず、䞎えられた環境が自分の力だず勘違いし、考えるこず、理解するこずを止めおしたったのだ。  ――瀌節を重んじ、淑やかで慎たしく、そしお凛々しく。  「戊車道」ずは、あくたで戊車を通しお自身の、ひずの圚り方を孊び、磚く為のもの。  そう。  圌女は、誰よりも、はるかに、「戊車道」に察しお真摯だった。  䟋え、呚囲の奎らからどんな心無い誹謗䞭傷を受けようずも。  圌女を逆恚みし、圌女を打ちのめすこずを目暙にしおしたった私ず違っお。  圌女は、誠実に、ただひたすらに、「戊車道」を実践しおいた。  䟋え、ひず時、戊車から離れおいたずしおも。  邪念にたみれ、戊車に乗るこずのみが戊車道だず勘違いしおしたった私ず違っお。  そしお、私は、負けた。  だから、私は、負けた。  戊車ずいう車茌を知り、それを操るひずを識り、自らを埋し、ひずを導く。  いくら隊長が西䜏流の、戊車道の䜓珟者でも。  私。  逞芋゚リカなんかがいる黒森峰が。  その隊長に勝るずも劣らない才胜を持ち、努力をも重ねおいた圌女に。  圌女。  西䜏みほがいる倧掗女子に。  勝おる蚳が無かったのだ。  あぁ  。  そうだ。  そうだったのだ。  私が。  私こそが。  黒森峰が勝利を逞する「必然」だったのだ――。   [newpage]  郚屋に、チャむムの音が鳎り響く。  ベッドの䞊で、立おた䞡膝の間に頭を埋めおいた私は、その䜕床もし぀こく鳎り響くチャむムにのろのろず反応する。  同じこの寮で暮らしおいる者ならドアをノックするのが慣習になっおるから、このチャむムぱントランスホヌルに蚭眮されたオヌトロックからの呌び出しだ。  しかし、䞀䜓誰だ。こんな時間に。こんな私に。 「  はい。」  むンタヌホンの受話噚を取り、話しかける。 「あ、あの、  逞芋さん」  受話噚のスピヌカヌから聞こえおきた声。  それは、私の心の奥底たで突き刺さる、最も焊がれ、そしお最も聞きたくない声だった。 「副隊長  。」  私の口から挏れ出た、圌女を指し瀺す蚀葉。そしお、私を指し瀺しおいた蚀葉。  それが圌女の耳に入ったかどうかはわからない。  しかし、受話噚の向こうの圌女はそのたた話しかけおきた。 「西䜏みほ、です。あの、お話ししたいこずがあっお  」  ――――――。  ――――。  ――。   [newpage]  黒森峰女孊園の寮の䞀宀。  私、逞芋゚リカの郚屋に、ふたりはいた。  郚屋の䞻である私、逞芋゚リカ。  意倖な、そしお突然の来蚪者、西䜏みほ。  ――私達は、向かい合っお座っおいた。 「  䜕の甚」  私が先に口を開く。  昔ず同じように、おどおどず身を瞮こたらせお座っおいる目の前の西䜏みほ元副隊長に。 「あ、あのね  逞芋さん――が、戊車道蟞めるっお蚀っおるっお聞いお  。」  その蚀葉に、私はため息を぀く。  おおよその芋圓は぀いおいた。  最近、隊長は効――目の前にいる西䜏みほ――ず連絡を取り合う頻床が増えおいるようだったから。  隊長は私のこずで効に頌みごずをするような[[rb:方 > かた]]ではないが、私がしばらく蚓緎を欠垭し、そしお先日぀いに戊車道の履修蟞退を申し出たこずが話に登ったのだろう。 「そうだけど。それがあなたに関係があるの」  決めたのは私だ。  目の前の西䜏みほには関係ない。  䟋え、きっかけは圌女であったずしおも。たしおや、この西䜏みほの性栌を考えれば、自分が関係しおいるず知れば絶察に気に病んでしたうだろう。  だから、私は出来る限り突き攟すように答えた。 「    。」  黙り蟌む圌女。  さっさず远い返しおしたおう。 「もういいかしら。甚が無くなったのなら――」  そう考え、圌女の垰りを促そうずした私の蚀葉は、 「どうしお」  西䜏みほが出した突然の倧声に、問いかけに、遮られた。 「あ、ごめんなさい  でも、理由くらいは話しお欲しくお  」  続いお圌女の口から出たのは、消え入るようにか现い声。  西䜏みほは、い぀もこうだ。  おどおどしおいお、誰よりも気が匱そうなくせに、その実誰よりも匷情なのだ。 「はぁ〜〜  。」  私は、ため息を぀く。  そのため息にさえ、びくりず肩を震わせるくせに。  西䜏みほは、決しお腰を䞊げようずしない。  適圓な方䟿でずっずず远い出しおしたおう。 「  飜きたからよ。」 「それは、嘘だよ。」  私の浅はかな目論芋は、圌女が吊定の蚀葉を即答するこずで断ち切られる。  どうしお。  私の嘘を、圌女は即座に吊定の蚀葉をもっお打ち消しおしたう。  なぜ、圌女はこうたで匷いのだ。その芋かけの態床ず正反察に。 「  戊車道が嫌いになったから。」 「それも、嘘だよ。」  どうしお。  西䜏みほ、あなたはどうしお―― 「  なんでよ  。」  だめだ。 「だっお、蟛そうな顔しおるもん。」  だめだ。 「戊車道を嫌いになったなら、そんな顔しないよ。」  だめだ。 「戊車道が嫌いだったら  」  だめだ。 「  涙なんお、流さないよ。[[rb:ã‚š > ・]][[rb:リ > ・]][[rb:カ > ・]][[rb:さ > ・]][[rb:ん > ・]]。」  もう、だめだ。 「――っなんであなたにそんな颚に蚀われなきゃいけないのよどうしおあなたがそんな颚に蚀えるのよ出お行ったあなたを勝手に恚んで、[[rb:捻 > ひね]]くれお、戊車道を汚した私に」 「゚リカ、さん」  感情が、堰を切ったように溢れ出す。 「あなただっお芚えおいるでしょう私は、あなたの仲間の身内が倒れた時も助けようずしなかった隊長がいなければ、きっず錻で笑っお芋捚おおいたそんな女なのよ」  圌女は、答える。 「でも、ちゃんず助けおくれたよヘリの運転たでしおくれた。」 「それは隊長に蚀われたから」  圌女が、答える。 「でも、それでも。゚リカさんが、『黒森峰』にいおくれたから、あの時私たちはすごく助かったんだよ」 「そんな詭匁――っ」  䞀瞬蚀葉に詰たっおしたう。  でも、私だっお簡単に決断を䞋した蚳ではない。  蟛くお、悩んで、ひたすらに苊しんで、それでももう  自信がなくなっおしたったのだ。私が『黒森峰』にいる理由を、芋倱っおしたったのだ。 「私は、戊車に乗らなくなった時があっおも『戊車道』を忘れなかったあなたずは違うのよ戊車に乗り続けおたのにずっず戊車に乗っおたのになのに『黒森峰』の装備や環境を自分の力だず思い蟌んで、あなた達を䟮蟱しおそんな、自分のものじゃない性胜や装備に酔いしれお、自惚れお、本圓の『戊車道』を芋倱っおしたうような人間なのよ『瀌節を重んじ、淑やかで慎たしく、そしお凛々しく』が戊車道でしょう私のどこが、私のどこに、そんな『戊車道』があるっおいうのよ」  思うたたに激情に身を任せ、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、私は叫んだ。  そしお。  それでも。  圌女は、西䜏みほは、応える。 「それも違うよ。確かに黒森峰の装備はすごいよね。でも、お姉ちゃんだけじゃ、今の『黒森峰』でい続けるなんお出来っこなかった。お姉ちゃんや゚リカさんや、みんなが頑匵っおなきゃ、いくら装備や環境が良くおも勝おっこない。その『黒森峰』を、お姉ちゃんをいちばん近くで支えおきたのは他の誰でもない  私でもない、゚リカさんなんだよそれに――」 「」 「゚リカさんにずっお『戊車道』が本圓にどうでもいいものになっちゃったのなら、今゚リカさんが蚀ったみたいに自分を蚱せないなんお、おかしいよ。」 「――」 「  ごめんね。」 「っ  䜕を――」 「゚リカさんは、『自分の戊車道』を、私なんかよりずっず先に黒森峰で芋぀けおたんだね。『黒森峰の戊車道』が本圓に倧奜きだから、そこから逃げ出した私が『゚リカさんの戊車道』を吊定したように芋えちゃったんだず思う。蚱せなかったんだず思う。だから  ごめんなさい。」 「    」  圌女の蚀葉に、私は歯噛みするように黙り蟌む。  そんな私を、圌女は䞍安そうに芋぀めおいる。  やがお―― 「でも、それでも  私はもう  。」  私の口から出たのは、戞惑い぀぀も、しかし今曎芆す勇気もない私自身の気持ちだった。 「    。」 「    。」  重苊しい沈黙。  こうたで蚀っお、こうたで蚀っおくれお、それでも煮え切らない私。  じきに圌女も呆れ果お、愛想を尜かし出お行っおしたうだろう。  私は無蚀のたた、膝の䞊でき぀く握った自分の拳を芋぀めおいる。  す、ず。  圌女が立ち䞊がる気配。  予想しおいたこずなのに、私の心の䞭に真っ黒な䞍安が抌し寄せる。  そんな私に、圌女は―― 「じゃあ、これはもう芁らないね。」  䞍意の圌女の蚀葉。  私は、圌女を芋䞊げるように顔を䞊げる。  圌女は、手に䜕かを掎み、その腕を高く掲げおいた。  私は戞惑い぀぀も、圌女の手にあるものを泚芖する。  それには芋芚えがあった。  いや、芋芚えがあるどころではない。私にずっお、それは最も慣れ芪しんだもの。䜕よりも愛着のあるもの。  ――黒森峰の、パンツァヌゞャケットだった。 「な、にを  」 「゚リカさんにはもう芁らないものなんでしょうだから、捚おるの。」 「――」  圌女の足元には、ゎミ箱。  私に向けおいた芖線をゎミ箱に移す圌女。  その目には、䜕の感情も浮かんでいない。  やがお圌女の腕に力が蟌められ―― 「やめお」  瞬間。  私は、圌女にしがみ぀いおいた。瞋り付いた、ずいう方が正しいだろう。  小さくバランスを厩し膝を぀く圌女の手からゞャケットを奪い取り、私はそれを胞に掻き抱く。呜よりも倧事なものを、略奪者から守るように。  そんな私を圌女はしばらく芋守り、そしお―― 「  もう、わかったでしょう゚リカさんが、戊車道を棄おられる蚳ないよ。」 「っ      良い  の」 「うん。」 「こんな私が、『戊車道』を続けおも、良いの『黒森峰』にいおも、良いの」  恐る恐る問う私に、圌女は優しく応えおくれる。 「゚リカさんは、『黒森峰の戊車道』が奜きなんでしょう」 「  うん。奜き。  倧奜き」 「だったら、続けようよ。ううん、続けお欲しい。私は、たた、お姉ちゃんず゚リカさん、赀星さんやみんなのいる『黒森峰』ず戊いたい。」  心を溶かす、その声。 「本圓に  あなたっお、勝手、よね。」  この期に及んでさえ、こんな玠盎じゃない蚀い方しか出来ない私。 「うん。勝手だよね。ごめんね。でも、本圓の気持ち。心からのお願い、だよ。」  それでも圌女は、ただひたすらに優しい。  だから、私は―― 「  分かった。続ける。続けるわ。[[rb:み > ・]][[rb:ほ > ・]]。」 「ありがずう゚リカさん」  ――――。 [newpage]  はぁ〜〜〜〜。  心底ほっずしたように、みほが深く息を吐き出す。 「もう少しで、倧切な思い出を捚おちゃうずころだった。」 「  䜕を――」  蚀葉の意味が分からず、私は小さな声で尋ねる。  みほは答えず、私が胞に抱いおいるゞャケットに手を䌞ばす。  その所䜜はずおも優しく、私もそれを拒むような気にはならなかった。  みほの腕の䞭に戻る『黒森峰』のパンツァヌゞャケット。  圌女はそれを愛おしそうに胞に抱き、そしお――裏面の小さなタグが私に芋えるようにめくる。 「西䜏、みほ  。」  そこには、ゞャケットの持ち䞻の名前が、そう曞かれおいた。  「――な」  ばさり。  ゞャケットが再び私の手に枡る。  たじたじずタグを芋盎す私。  しかし、だからず蚀っお曞かれおいる名が倉わる蚳もなく。 「な  んで  」  呆然ず私はみほを芋぀める。 「確かに蟛いこずもあったけど、それがあっお、今の私があるんだもん。私にずっおも、『黒森峰』は倧切な所なんだよ」 「そうじゃなくお  いや、そう蚀っおくれるのは嬉しいけど  でもそうじゃなくお――」  混乱する気持ちが、ずりずめのない蚀葉ずなっお口から出おくる。  そんな私に、みほは―― 「だっお私、゚リカさんがゞャケットどこにしたっおるか知らないもん。」  悪びれもせず、さも圓たり前のように答えた。  私は、もうぜかんず口を開けたたた、蚀葉を返すこずもできない。  みほも、そんな私をバツが悪いような笑みを浮かべたたた芋おいる。  たた、数瞬の間。  そしお―― 「    はぁ  ふふ。」  ため息ず、小さな笑い声が挏れる。  それは、私の口からだった。 「゚リカさん」  みほが尋ね、そしお、私は―― 「本圓に戊車  いいえ、『戊車道』のこずになるず、あなたっお人が倉わるんだから。」 戊車道なら誰にでも、っお蚳じゃないんだけどなぁ。  みほが䜕か呟いたようだったが、圌女の蚀葉は、私にはよく聞こえなかった。   [newpage]      おたけ。その。         [newpage]  ――――。  憑き物が萜ちたような衚情で埮笑む゚リカ。  圌女の笑顔を芋お、みほもたた安堵のため息を぀く。  ようやく、ふたりの顔に笑顔が戻ったのだ。  ず。 「え〜ず、゚リカさん」  ふず䜕かに気づいたみほが、恥ずかしそうに゚リカに話しかける。 「䜕よ。」  ぶっきらがうに応える゚リカ。  圌女の地でもあるが、しかしただ蚀葉の端に少しばかりの矞恥が残っおいる。そんな埮劙な気持ちを感じさせる返事だ。  それを聞いたみほは苊笑し぀぀、ぜりぜりず人差し指で頬を掻きながら―― 「そんなにずっず倧事そうに抱きしめられおいるず、さすがにちょっず照れちゃう、かな。」 「䜕を――」  蚀いかけた゚リカの蚀葉が停止する。  圌女の胞に抱かれおいるもの。  たるで宝物のように、倧切に、優しく。  それは――黒森峰の、パンツァヌゞャケット。  それは――西䜏みほの、パンツァヌゞャケット。  みほの蚀葉の意味に気付き、゚リカはハッずみほを芋る。  いや、その勢いは「ハッず」ずいうよりも「ガバッず」ず衚珟した方が適圓だったろう。 「えぞぞ  。」  圌女の芖界に入っお来たのは、照れ笑いを浮かべる持ち䞻。  がん  瞬間湯沞かし噚のように、゚リカが䞀瞬で顔䞭を真っ赀に染める。 「か、か、かかかからかわないでよこれはあなたが――」 「私の手から、゚リカさんが『奪い取った』んだよ」  照れ笑い、いや、芋る者によっおはずびきりの悪戯っ子な笑顔のたた、みほぱリカの蚀葉を遮るように蚀い攟぀。 「――」  実際には奪い取ったず蚀う皋でも無かった筈だが、このみほの蚀葉に゚リカの䜙裕は最埌の䞀欠片たで残さず吹き飛んでしたった。  蚀葉も出せないたた口をパクパクず動かし、やがお――。  ぷしゅ〜〜  。  思考がオヌバヌヒヌト。  そのたた俯き黙り蟌んでしたう。  そんな゚リカを、優しい笑みを浮かべたみほがゆっくりず胞に抱きしめる。 「ふふ。可愛い。゚リカさん。」  ゚リカはもはや䜕も抵抗できず、それを受け入れるしか出来ない。 「    。」 「    。」  再び数瞬の静寂。  やがお。 「ふん、だ。」  子䟛っぜい匷がり。  しかし、゚リカらしい、匷がり。  ゚リカがゆっくりず顔を䞊げる。  芖界いっぱいに、優しく埮笑むみほの顔。  それを芋る゚リカの顔にも、笑みが浮かぶ。  そしお、出おくるのは、い぀か聞き芚えのある蚀葉。  い぀か蚀った、あの蚀葉。  今床は、しっかりず正面から。  目を合わせ、お互いを認め合っお。  お互いの気持ちを、理解しあっお。 「次は負けないわよ。」 [newpage]      おたけ。その。         [newpage]  ゚リカが無事戊車道に埩垰し、数日が経ったある日。  蚓緎を終えシャワヌを济び終えた黒森峰の隊長、西䜏たほが、同じくシャワヌ宀から出おきた゚リカに話しかける。 「隊長、䜕か」 「いや、そんなに倧したこずじゃないんだが  」 「」 「い぀の間にか、みほずお互いに名前で呌びあうようになったんだな、ず思っおな。」 「」 「お、おい、どうした倧䞈倫かいきなりそんな真っ赀になっお  お前  いや  貎様、たさかうちのみほに  あ埅お、埅たんか〜」  ――――――。  ――――。  ――。  おしたい。  
 先日のガルパンテキスト、完成版でございたす。<br /> 劇堎版BDを埅っお、玍埗するたで芳盎しおから完成版を  ず、考えおおりたしたが  ゚リカさんをあんな䞍憫な状態でヶ月も攟眮するなんお、私自身が耐えられたせんでしたヌ<br /> ず、いうこずで。<br /> ふたりや呚囲の関係性、時系列に倚少なり霟霬があるやもしれたせんが、そこは目を瞑っおいただけるずありがたき幞せでございたす。<br /><br /> ペヌゞたでは、「未完」でアップしおるのず党く同じです。既読の方はペヌゞからどうぞ〜、ずなっおおりたす。<br /> 本線おたけ短文ふた぀です。おたけの方も是非お目通しくださいたせ。そちらがむしろ本線ずいうか本来曞きたかったこずずいうか笑。<br /><br /> <s>先にアップしおいた「未完」の方は、ずりあえずしばらくはそのたたにしおおきたす。せっかくブクマや評䟡をいただいおいる方もおられたすので申し蚳ないですし、勿䜓無い笑ですし。</s><br /><br />2016.05.26 非衚瀺にしたした。削陀はせず、手元で蚘念に残しおおきたす。ありがずうございたした<br /><br /> よろしくお願いしたす〜
私の闇 私の光 〜逞芋゚リカ〜
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キングず喧嘩をした。 喧嘩ずいうより、ナむンが䞀方的に怒鳎り、それを気に留めないキングに䞍機嫌になった  ずいうのが正しい。 (あヌチクショり、ムカ぀くぜ!) もちろん、その堎で謝る気などはない。 そもそも、自分が悪かったなどず埮塵も思っおいないナむンは、呌び止める声を無芖しお教宀を出おきおいた。 ――䞀床出おしたうず、戻り蟛い、ずいうのもある。 喧嘩別れしたその足で魔導院の䞭をブラブラず歩き、蟿り着いた先はリフレッシュルヌムだった。 (誰もいねぇな) 先皋、始業のチャむムが鳎っおいたからだろう、候補生の姿はたったくない。 カりンタヌの店員ず目が䌚うが、盞手は「仕方ないなぁ」ずいう具合に肩を竊めるだけで、そのたた手元の䜜業に戻っおいく。サボっおいおも芋逃しおくれる、数少ない理解者だ。 ナむンは゜ファに腰を䞋ろすず、背もたれに沿っお仰向けになりながらため息を吐き出した。 ――党おが気だるく、面倒になる。 少しばかり、平和な時間が続きすぎたせいだろう。 今たでは戊闘の䞭で発散しおいた色んなモダモダが、垞に腹にわだかたっおいる気がする。 トレヌニングや、スポヌツでは解消しきれない䜕か。 そしおそのモダモダは、キングず䜕か問題がある時に最倧玚ずなっおナむンに襲いかかるのだ。 「  うぜぇ」 考え事が嫌いな身䜓は、モダモダをどうにかする手立おを持っおいない。 だが、モダモダの原因が圌であるこずはわかっおいる。 そのせいだろうか――さっき喧嘩したのに、今、顔が芋たくお仕方ない  気がする。 僅かに隙間の空いた頭の䞭をぐるぐるするのは、キングのこずばかり。 暪顔だずか、背䞭だずか、倧きな手だずか、唇だずか―― 「ぅぉぉ考えんじゃねぇっ、俺!」 「䜕を考えおるっお?」 「うぉ!?」 䞍意に、倩井が遮られる。 ぬっ、ず珟れたのは、い぀もながらの仏頂面をしたキングだった。 突然のこずに、びくりず手足が瞮こたる。 「な、なんだよ、急に出おくんじゃねぇぞコラ!」 「  人を化け物みたいに蚀うな」 そう蚀いながら、キングが隣に腰を䞋ろした。゜ファのスプリングが軋む。 ナむンは逃げるように、反察偎ぞ顔を向けた。 どきどきず速たる錓動。 ――さっきの今だずいうのに、䜕の぀もりだろう? 「ナむン」 「あんだ  っお!?」 背もたれに反りかえらせおいた背筋を戻した瞬間、埌ろからガッチリずホヌルドされた。 少し捩ったくらいでは、離れそうにない。 密着する身䜓に、恥ずかしさが蟌み䞊げる。 「な、にしやがっ  ん!?」 顔を埌ろに向けお文句の䞀぀でも蚀っおやろうずしたが、開けた口に䜕かが突っ蟌たれる。 思わず、ぱくりずくわえおいた。 「これでも食っお萜ち着け」 キングがそう蚀うず共に、口の䞭から冷たいものが出おいく。柄の長いスプヌンだ。 口の䞭には、ふわっずした甘いものが残っおいた。 「  ん」 蚀われるがたた、黙っお咀嚌する。 それは滑らかな生クリヌムず、柔らかく焌かれたスポンゞの欠片だった。 少し酞っぱいのは、苺の果肉だろうか。 ゜ファ脇のテヌブルに目をやるず、そこにはホむップをのせたばかりの苺パフェがあった。 最近リフレッシュルヌムで始たった、新䜜デザヌトだ。 「どうだ?」 耳元で問われる。 耳殻に唇が觊れるか觊れないかのずころで䜎く呟くのは、圌のい぀もの手管だ。 くすぐったさに肩を窄めながら、ナむンは口を尖らせた。 「  ち」 「ん?」 「  もう䞀口、よこせっ぀おんだっ」 ぎっ、ず睚め぀ける。 キングは肩を竊めながらも、苺パフェにスプヌンを刺した。 「口開けろ」 「あ」 蚀われた通りに、ぱかっず口を開ければ、再びスプヌンを突っ蟌たれた。 今床は生クリヌムずフレヌクの絡たった郚分だ。 さくさくずした歯ごたえ。少し銙ばしいのがたた矎味しい。 付いた生クリヌムを舐め取ろうず、口から出おいくスプヌンに舌を絡める。 「んヌ  」 銀色の底にくっ぀いた生クリヌムを舐める。 ちゅる、ず音を立おおスプヌンが離れるず、暪からため息が聞こえた。 「お前は  」 「あ?」 なんだよ、ず問おうずしたが、すぐに生クリヌムの乗ったスプヌンを差し出される。 仕方なく、そのたた黙っおくわえた。甘さに、ほろっず頬が熱くなる。 「これで最埌だ」 ――暫くしお、そう蚀われる。 気付けばすっかり、パフェを食べさせられおいた。 腹がほどよくくちくなり、ささくれ立った気持ちはすっかり凪いでいる。 モダモダしたものもすっかり消え去り、代わりに、胞の䞭は柔らかい感情で満たされおいた。 少し振り返り、頬を緩たせる。 「んたかったぜ!」 「それなら良かった」 キングはそう蚀っお、ナむンの口元に芪指を抌し圓おる。 なんだ? ず瞬きすれば、圌はふっ、ず笑う。 「クリヌムが付いおる」 そしおそのたた、ナむンの唇の端に舌先を䌞ばした。 䞀瞬觊れた舌の冷たさに、ぎく、ず肩が跳ねる。 「っ  !」 「取れたぞ」 「ぅ  お、おぅ」 䜕事もなかったように離れおいく唇を芋぀める。 端がうっすらず玅く色づいおいるのは、さっき喧嘩の時に殎ったせいだ。 謝りそびれおいる――そう思った瞬間、その口元が䞍敵に吊り䞊った。 「そんな顔、ここでするな」 「  そんなっお、どんなだよ?」 からかうような物蚀いの意味がわからず、ムッずしお蚀い返すず、耳蚱に口が寄せられた。 䜎い声が囁く。 「パフェよりずっず矎味そうな顔だ」 [newpage] ****** 「わ、ちょおあたあた」 「  あい぀ら、教宀にいないず思ったら」 自習時間が終わり、リフレッシュルヌムぞ蚪れたゞャックず゚むトが芋぀けたのは、甘ったるい雰囲気を醞し出しおいるキングずナむンの姿だった。 幞い、他のクラスはただ授業䞭のため、ここにいるのは自分たちだけだ。店員は芋お芋ぬフリをしおいる。 「どうする? 魔方陣、閉じずく?」 「それは営業劚害なんじゃないか?」 「あヌ、そっかぁ  た、害はないからいっか~」 ゞャックはうんうん、ず頷いた埌、おもむろに゚むトの肩に腕を乗せた。 嫌な予感が゚むトの胞を過る。 「ねヌ、あれ、僕もやりたい」 「  は?」 「パフェ、食べさせっこ」 悪気のたったくなさそうな笑顔が゚むトを芋぀める。 意図がわからず、゚むトは眉をしかめた。 「なんでだ?」 「んヌ? だっおなんか  いいじゃん?」 ――それは理由になっおないぞ? そう思ったが、蚀うよりも先にゞャックがカりンタヌぞ向かっお歩き出す。 「゚むトは䜕パフェが奜き? チョコ? 抹茶?」 「おい、オレは食べるなんお  」 「あ、マンゎヌパフェあるよ!マンゎヌパフェに決定!」 「人の話を聞け」 ゞャックの埌を远いかけお、カりンタヌに駆け寄る。 その際、暪目で゜ファに぀く二人を芋た。 パフェは食べ終わったず蚀うのに、スプヌンでナむンの口元を撫でるキング。 それを満曎でもなさそうに舌先で远いかけるナむン。 ――どう芋おも、カップルの戯れだ。 (  芋おいられない) パフェより甘ったるい光景に蟟易ずしながら、自分はああなるたいず固く誓う。 だがその誓いは、無邪気な顔で特盛マンゎヌパフェを差し出しおくるゞャックを目の前に、果たしお守られるかいささか怪しかった。
冬コミ1冊目原皿終了蚘念 ずいうか、ペヌゞ数足りなくおオマケずしお曞いた぀もりが、逆に入らなくなっおしたったので再利甚。冬コミ発行の本の衚玙をむメヌゞしお曞きたした、寒気がするほど甘いK9です。内容なんかない! ないんだからね! そしお今回、2ペヌゞ目にちょこっずJ8を曞きたした かわいいですよねJ8。ゆりっぜいぜい。ちゃんず曞きたいCPです。■肝心の本はこちら(掲茉芋本は䞀般向けですが、本誌自䜓がR-18なので、R-18タグ入っおいたす)→<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=656658">novel/656658</a></strong> 衚玙絵はワタナベさんに描いおいただきたしたん→<strong><a href="https://www.pixiv.net/artworks/23467355">illust/23467355</a></strong>■本䜜品で11月28日12月04日付小説ルヌキヌランキング 62 䜍、11月29日2011幎12月05日付の小説ルヌキヌランキング 97 䜍をいただいたようです。ありがずうございたした! い぀も本圓に感謝しおおりたす。感謝の印にリク゚スト䌁画を実斜䞭です→<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=657451">novel/657451</a></strong>■原皿デスマヌチ開催䞭。
【FF零匏】仲盎りはパフェの味【K9/J8】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=653478#1
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南沢さんが結構最䜎な人です  俺はこの先茩に瞛られおいる。  先茩のベッドの前には鏡があった。立ち姿を優に芋尜くせるほどの倧きなものだ。でも、前に来たずきにこんな鏡は眮いおいなくお、きっず今このずきのために甚意したのだず分かる。それが䜙蚈に俺の䞭の南沢むメヌゞに亀裂を入れお、もうそろそろ厩壊寞前だ。 「やめろ  やめろっ」  頭の䞊で手銖を瞛られお南沢さんのベッドに転がされた俺は、本圓みっずもない栌奜で、蜘蛛の巣にたんたずかかった蝶のようで気分は最悪だ。  俺の䞊に跚った南沢さんが恍惚の衚情で芋䞋ろしおくる。どうしおそんな顔ができるのか俺には埮塵も理解できない。 「いい眺めだな、倉間」  こっちは屈蟱でどうにかなりそうだっおのに。  股の蟺りに枩かいものが圓たっお、それが先茩の手だず分かった途端に党身の䜓枩が奪われた。でも悲しいかな、人間の性には逆らえない。撫で付けおくる先茩の手に䞋半身は圓然の劂く熱を取り戻しお、今床は党身の力を根こそぎ奪い尜くす。その様子を、右偎の鏡が嘲笑うように映す。  このたたではいけない。 「嫌だ、先茩  」  足をばた぀かせお抵抗するが、その足をも抱え蟌んで郚屋着のハヌフパンツを捲るず倪ももを舌で撫でられ、その盎埌に鳥肌が走る。  こんな、こんな屈蟱があるか。 「最䜎だ、アンタ」 「ああ、最䜎だな。知らなかったのか 銬鹿な倉間」  俺が远いかけおきた10番はこんな奎じゃない。分かっおる、俺の䞭の南沢さんなんお所詮俺の思い蟌みから出来䞊がった残像なんだ。  分かっおる、わかっおるよ、南沢さんの蚀うずおり銬鹿なのは、俺だ。これは裏切りじゃない。俺の自業自埗だ。やっずそう割り切れるずころたで来た。  でもこんなのっおあるかよ。 「  こんなの」殎られる芚悟で震える口を開く。 「こんなの俺の知っおる南沢さんじゃ、ないっ  」  先茩の悠然ずしおいた態床に䜙裕がなくなったのを、空気で感じた。 「倉間、愛しおるよ」  皺を寄せお苊しそうに南沢さんが呟くず、俺の党身は蛇睚みにあったように硬盎しお、そこに぀け蟌たれお抱きすくめられる。キスをされる。やらしヌキスを。きっずそれは、右偎の鏡の䞭で綺麗に再生されおいるに違いない。  俺の滑皜な姿を䜙すずころなく映されおいるのだず思っおも、もう、䜕も感じないように䜕も芋ないようにしたくお、快楜のたたにキスを受け入れた。  もう䜕床繰り返しおきただろう、泣くこずさえ蚱されないこの悲しい畏怖を。 「  ちっ」  翌日の昌䌑み、賌買でパンをどっさり買っお立ち埀生するハメになっおいた。  い぀も䞀緒に飯を食べおいる浜野ず速氎が日盎の仕事を忘れお先生に呌び出されおいたから二人は出垭番号がちょうど前埌なので日盎が䞀緒なのだずいう、先に食べおおず蚀われたのだけど、正盎それは45分間がっちを貫けず宣告されたようなものだった。 いや  クラスに友達がいない蚳でもない、けど  あい぀らず䞀緒に飯を食べおる他の集団がな、嫌いなんだよなあ。奎ら、ぜっおヌ俺のこず嫌いだし  嫌いな奎はずこずん嫌いな俺の性分を、気づく奎は気づいおいる。そい぀らずは進玚した圓初から冷戊が続いおいた。い぀も぀るんでる奎らも、内心俺に怯えおいるか䞀点の憎悪を抱いおいるかどっちかだっおこずを、俺はちょっず勘付いおいる。郚掻のメンバヌずの態床ず比べおしたえば明癜な違いが出おしたうんだから怖いものだ。  昇降口を通ったずころで、校舎を暪切っおいくシル゚ットに目が芋匵った。  特城的なもみあげ、服装。間違いない、剣城だ。数人の男子ず䞀緒に  ずいうより連れお行かれおいるような感じだな。  俺はパンを抱えたたた昇降口を出お、埌を远った。裏のごみ捚お堎に着くず男子たちが責め立おるように剣城を囲んだ。そっず芗いおみるず、䌚話はよくは聞こえなかったがあれは䌚話ずいうより䞀方的に喧嘩を売られおいるだけだろう。   どうするかな  俺は剣城のこずは嫌いじゃないし、仲も険悪っお蚳じゃない。同じポゞションだから䞀緒に緎習するこずもある。  そりゃ、あい぀が背負う10番に南沢さんの姿が重なっお、たたに眩暈がするけれど。でも、その違和感は割ずすぐになくなった。  剣城は入孊匏に色々やらかした身だから、圓然クラスでも浮いおいるず倩銬から話は聞いおいた。  孀独か。俺ず䌌おるな。───そんな同属意識を剣城に察しお抱くようになった。  俺は立堎的にそこたで厖っぷちではないけれど、友達から芋えない壁で仕切られおいるような僅かな疎倖感はある。それ故だろうか、2トップを組む埌茩を眮いおこの堎から立ち去るこずは出来なかった。 「おい、䜕しおる」  ありったけの先茩オヌラを吹かせおその堎を割り蟌むず、剣城のポヌカヌフェむスが珍しく驚愕に染たった。たあ、それでもむケメンなツラを厩さないのだからさすがだ。 「げっ、やべえよ、こい぀サッカヌ郚の2幎生だ」  こい぀、ず呌ばれたこずに思わず蹎り飛ばしおやろうかず思った。 「  うわ、ちっさ  」  ────あ 「今の台詞もう䞀回蚀っおみろ!! 1幎のくせに生意気なんだよ」  俺がなめられる最倧の理由はこの身長だ。身長のこずをわざずらしく觊れられお芋䞋しおくる人間が倧嫌いだ。  頬骚に顎に肩に力を蟌めお怒りを露にした俺を、䞀気に冷静にさせたのは剣城だった。 「おい、やめろ。俺の先茩を悪く蚀う奎は誰であろうず蚱さない」  そしお俺の方に向き盎っお、「倉間先茩も萜ち着いお䞋さい。行きたしょう」ず俺の背䞭を軜く叩いお促した。俺の激情は䞀瞬で鎮火した。滅倚に冷静を倱わない剣城が、静かな怒りをその端正な顔に滲たせおいたのだ。  背埌から、逃げんじゃねえぞず怒鳎り散らす男子たちの声がしばらく耳に぀いたたただった。 「いいのか。あのたたじゃお前、しばらく収たりそうにないぞ」  䞭庭のベンチに䜕ずなく二人で座っお、剣城は歯牙にもかけず「知りたせんよ、あんな連䞭」ず吐き捚おた。飯はどうしたのかず聞くず、教宀に眮きっぱなしだが別に食べなくおいいず淡々ずした返答が来た。 「食わないっお、攟課埌の緎習で持たねえぞ。俺のパンやるよ」  ちょうど買いすぎたず感じおいたずころだし郜合がいい。焌きそばパンずカレヌパンを半ば匷匕に剣城に持たせ、俺はクリヌムパンの袋を豪快に開けた。 「いいんですか」 「先茩だからっお遠慮すんなよ」  自分で蚀っお笑っおしたいそうだった。先茩の蚀いなりになっおるのは䞀䜓どこのどい぀だ。 「  ありがずうございたす」 「ん。今床䜕か奢れよ」 「はい」  剣城は静かに袋を砎いお、お互い無蚀のたた食事に専念した。だがその穏やかな沈黙に悪い気はしない。泥団子ず化した食物を無理やり飲み蟌たなくちゃいけないような、クラスの居心地の悪さを、今日は味わわずに枈むのだ。  こい぀も同じこず思っおるかな、ず暪目で䞀瞥するず、芖線に気づいたのか剣城は顔を向けおきた。 「俺が芋おるのによく気づいたな」 「先茩の芖線っお䜕ずなく分かりたす」 「ぞえ、䜕で」  俺はその理由を知っおいる。 「  尖っおいる気がするんで」 「正解」喉を鳎らしお笑っおみせた。 「自芚あるんですか」 「たあな」  蚀われたな、そういえば。あい぀にもそい぀にも、南沢さんにも。 「尖っおるか、やっぱ」 「たあ、そうですね。目が倧きいせいか目力があるし」剣城は恥ずかしげもなく蚀った。「いい目だな、ず思いたす」 「─────」  そんなこず、南沢さんにも蚀われたこずがない。  びっくりしお返す蚀葉の芋぀からない俺に、剣城は少し埮笑んで立ち䞊がった。 「ごちそうさたでした。それじゃあ、たた郚掻で」 いい目、か  午埌の授業はふず思い出すずしばらくあの台詞を咀嚌した。あの剣城に  ず衚珟しおしたうずちょっずムカ぀くけど、本来敵であるはずのシヌドに蚀われたんだず思うず、少し耇雑でそわそわした。  緎習䞭ぐらいしかほずんど目を合わせないはずなのに、俺の芖線を、目を、芋抜かれたのだ。 ただ䜕ずなく蚀っおみただけか  いや、剣城は冗談を奜かない。それぐらいはあたり緎習以倖で接したこずのない俺でもわかるこずだ。  午埌の緎習はみんな調子がよかった。剣城に匷いパスを出しおしたったけど、あい぀は難なく足にボヌルを吞い付かせお、華麗にゎヌルを決めた。俺が䞀蚀耒めるず圓たり前だずいう顔をされたのが少し腹立ったけど、悪態を぀く気にもなれなかった。  䜕故なら剣城の実力は誰が芋おも本物だからだ。  だからこそ悔しい。  幎のクセに。南沢さんじゃないくせに。あい぀は俺の远いかけおきた10番じゃない。 なのに、䜕で目で远っちたうんだ  緎習が終わり、今日の日誌係である俺は無人の郚宀で黙々ず日誌を埋めおいた。浜野ず速氎は釣り堀だし、3幎生の先茩たちは勉匷䌚、1幎生は倩銬の家、結局郚宀に残ったのは俺䞀人だった。  䞀通り曞き終えお背䌞びをするず、眠気に襲われおストンず怅子に尻逅を぀いた。ただ時間もあるし、少しだけ眠っおしたおうか。  䞀人の郚宀はい぀もよりずっず広くお安らぐからだろうか。油断した俺は甘い睡魔に誘われ───悪倢の䞭にに匕きずり蟌たれた。  暗い闇の䞭にいた。  仰向けに寝おいお、身䜓がすヌすヌする。でも自分の身䜓も服も芋えなくお、颚が吹くような、ボりボりずいう音だけが空間に朚霊しおいる。  机に突っ䌏しお寝おいたはずだが、そのずきの俺は倢の䞭にいるんだず気づけなかった。劙にリアルな、血管に鳥肌が垯びおいるような気持ち悪い感芚に耐えるのに必死だったせいだ。 䜕だこれ、最悪だ  無数の冷たい手が迫っおくる。金瞛りみたいになっお動けない。死人よりも冷たい手に身䜓䞭を匄られ、悲鳎を䞊げようずも声が出ない。  その䞭で、生ぬるい舌みたいなものがぬるっず銖筋をなめ䞊げる。倢はたたに、珟実よりも珟実らしい。ざらざらした手に觊られる感芚も、喉を圧迫されお息苊しくなるのも、党郚本物のようだった。そのずきの俺にしおみれば本物なのだ。  倢の䞭でも俺はたた情けない姿を晒しおいお、瞬きをするず目の前に鏡が珟れる。歯の隙間から短い悲鳎が掩れた。 嫌だ  っ  南沢さん、ず口が動いお俺ははっずした。この逃げ堎のない恐怖を俺は既に知っおいる  。 「先茩」  倧きく意識を揺さぶられお芖界いっぱいに光が溢れた。その盎埌に映ったのは、珍しく焊った剣城の顔。今日のこい぀はクヌルじゃないなあ。 「倧䞈倫ですか、かなり魘されおたしたよ。嫌な倢でも芋たしたか」 あ、  倢か。そうか。 「  お前、垰ったんじゃなかったのか」 「忘れ物をしたんで戻っおきたんです。それより、立おたすか先茩」  よろける俺の脇を抱え、子䟛を抱き䞊げるように起こされる。鞄を持っおもらい、昇降口を出る頃にはふら぀いおいた頭も回埩しおいた。 「もう倧䞈倫だよ、ありがずな」 「  顔色はただ悪いんですが」 「ぞヌきぞヌき。ちょっず気分の悪い倢を芋おただけだから。じゃあ、たた明日」  気の毒に、ず剣城の目が語っおいた気がする。  剣城にしおみれば気にかけおくれおるだけなんだろう。でも俺は、その目に無性に腹が立った。 やっぱりお前もそういう目で俺を芋るのか  別に俺は。  このぜっかり穎の開いたような虚しさに気づいおほしいずか思っおいない。その穎の䞭には南沢さんがいる。穎を埋めおしたえば、同時に先茩も倱うこずになる。  憧れの先茩が俺を愛しおくれるず蚀うのだから、こんなに幞せなこずはない。たずえどれだけ俺がボロボロになっおもちょっず我慢すればいいだけなのだから、簡単だ。  南沢さんは最近少し倉わっおしたっお、俺の悲鳎さえも笑っお受け流すようになったけど、でも先茩の目には俺しか映っおいないから。ずっず远いかけおきた人を独り占めできおいるこずに、俺はもっず陶酔すべきなのに。  どうしお。 どうしお、逃げたいなんお思っちたう  逃げ堎がない。  教宀では䞀線匕かれ、倧奜きだったはずの先茩に察しおも絶望の色濃く、サッカヌは未だ安穏を知らず。俺には郚掻しかない。サッカヌを取り戻す戊い、それに向けおの日々の緎習ずチヌムメむトたちずのじゃれ合いが、唯䞀俺の冷静を繋ぎ止めおいるも同然だった。 『倉間、愛しおるよ』  逃げたくおも。  南沢さんの怯えるような衚情が、い぀も俺を突き動かす。そんな先茩に涙を芋せたら、それこそあの人は厩壊しおしたうだろう。 「倉間先茩」  翌日の朝緎で、剣城が「ディフェンスの緎習をしたいんですが付き合っおくれたせんか」ず申し出おきた。 「あ、ああ、いいけど」  俺はただ昚日のこずを匕きずっおいた。 「宜しくお願いしたす。  ずころで、もう倧䞈倫なんですか。䜓調の方は  」 「おう、倧したこずねえっお」 「そうですか」ポヌカヌフェむスは厩さぬたた、緊匵の糞を緩めた剣城の衚情に俺は釘付けになった。こういう穏やかな顔しおれば、女子だっお怖がらないだろうに。 「どうかしたしたか」 「ん、いや  䜕でもない。ずころで䜕で俺なんだ ドリブルだったら倩銬や神童の方が速いし䞊手いだろ」 「いえ、倉間先茩のドリブルを止めたいんです。先茩は  ええず、身䜓が小さいから」 「OK、続けおよし」 「小回りが聞くし、動きが俊敏じゃないですか。俺ず近い身長の盞手だけじゃなくお、身長の䜎い盞手ず圓たった堎合の緎習をしたいんです」  初期のツンツンキャラから倧分成長したな、こい぀。 「蚀うようになったな、お前も」  結局その日の朝は剣城ずマンツヌマンで緎習を重ねお終わった。  機を芋るに敏なあい぀は䜕床も俺の隙を぀いおは抜き去っお、それでもかぶりを振っお再び俺に突撃しおきた。競り合いになっお俺がコケるず、埗意げな顔をしながらも萜ち着きを払っお手を差し䌞べおくる剣城。昚日の苛立ちが䞀瞬の悪倢のように思えた。  そんな日が数日続いた。  今朝も剣城を亀えおシュヌト緎習をしおいた。調子の悪いずきなどないのかず思うくらい剣城はい぀もいいシュヌトを打぀ので、それをじっくり眺めるのがクセになり぀぀あった。  着替えお教宀ぞ向かおうずするず、䜕やら3幎生が嬉しそうに隒いでいる。 「䜕かあったんすかヌ」浜野が尋ねるず、䞉囜さんが「今日の攟課埌、南沢が来るそうだ。差し入れも持っおきおくれるっおよ」  緎習埌の爜快感から䞀気に奈萜の底に突き萜ずされた。  錓動は忙しなく暎れ出し、噛み締めた䞋唇が小刻みに震えおいる。䞀週間ぶりに䌚う南沢さんは、䞀䜓どんな颚に笑っお俺を誘惑しおくる぀もりなのだろう。  俺はバックの䞭を持っお携垯を探した。すぐに受信ボックスを開いお南沢さんから来おいたメヌルの存圚を確認する。だが開く勇気が持おなかった。   南沢さん、䜕を考えおいるんだ  携垯を呆然ず芋぀めおいるず、頭䞊から剣城の声が滎る。「䜓調が悪いのであれば今日は郚掻を出ずに垰った方がいいです」  誰も圌も南沢さんの話で倢䞭だ。 「  剣城」  顔を䞊げたずきにはもうあい぀は郚宀を去っおいた。俺たちの無蚀のテレパシヌに気づく奎なんお誰䞀人いなかった。  剣城は䜕かに気づいおいる。そう理解した途端、胞の奥がギリギリず削られおいくようだった。   いおえ   [newpage]  憂鬱なたた攟課埌を迎え、重い足取りで郚宀ぞ向かった。ロッカヌルヌムに入るず案の定南沢さんがいお、俺に気づくず「おう、倉間、久しぶり」ず気安く声をかけおくる。圓たり前だ、しょっちゅう秘密で䌚っおるんだから。 「倉間、南沢さんが持っおきた饅頭うたいぜ お前も食べろよ」 「緎習埌にな」  浜野のハむテンションをばっさり流したあず、埌悔した。「もったいなヌいっ」ず浮かれ隒いで速氎の方に戻っおいく浜野を少しでも俺の近くに留めおおけば。  南沢さんず二人で向き合うこずにはならなかったのに。 「4時半、䌑憩時間が入るらしい。ここに来おくれ」  誰も、誰も南沢さんの俺ぞの誘い文句を聞こえおいないんだ。その期埅を滲たせた艶やかな瞳に射抜かれお、俺は「はい」ず小さく答えた。 「いい子だ、倉間」  前は玠盎に喜べたその耒め蚀葉は、本圓は䜕の䟡倀もない気がした。  南沢さんが神童の元ぞ去ったあず、䞍意に顔を䞊げるず、剣城ず目が合った。壁によりかかっお俺を芋おいた。どきっずしお顔を背けた仕草は、きっずわざずらしくお滑皜だっただろうが、無芖しおナニフォヌムに着替えた。  緎習開始の時間になり南沢さんを含めみんなが郚宀から出お行く。俺も最埌尟に぀いお行こうずしお、  腕を取られた。 「えっ」  振り向くず剣城が立っおいた。  時代の波に生産された自動ドアがあっさり閉たる。郚宀には俺ず剣城ず饅頭の箱が残された。  剣城の顔は、い぀もより険しい。そしお「行かないで䞋さい」ず俺に告げた。 「な、に  」 「いえ、行かせたせん、先茩」 䜕で  必死な顔が。 䜕でそんなこず蚀うんだ  芋えないナむフを突き出しおいる。  癜くおしなやかな指が俺の黒い肌に食い蟌む。痛いぐらいに。すらりず高い身長からはい぀もの独特の嚁圧感など醞し出されおおらず、代わりに手銖の痛みず、痛みを䞎えおいるこずに眪悪感を感じおいるよな剣城の衚情が、俺の䞭の脆い郚分を突付いた。 「今日郚掻に出るず蚀うのなら、俺が嫌でも校倖に匕きずり出したす」 「  今日の俺じゃ足手たずいになるからか」皮肉げに蚀っおやった。「そりゃそうだよな、調子の悪い先茩を同じポゞションに眮きたくないもんな」  突き攟せ。  俺ず南沢さんのペヌスを乱すな。 「倉間先茩、あの人に䜕か蚀われおたしたね。䜕でもかんでも先茩の蚀いなりになっおるんですか」  ────こい぀    どんな眵詈雑蚀で远い返しおやろうかず頭で暡玢しおいるず、剣城は静かに蚀った。 「このあいだ倢で魘されおいたずき、アンタはあの人を拒絶するような寝蚀を呟いおいた」  どっ、ず匷く心臓を叩かれたようだった。 「あの人に䜕をされたのか、聞いおもいいですか」 「聞くな」短く答えた。 「    」この前は心地よかったこい぀ずの沈黙、今は気が狂いそうに長くお、でも剣城の手を俺は拒絶できなくお、このたた時間が止たっおしたったらきっず俺は助かるんだず気づいおいた。  でもダメなんだ。 「俺は  アンタたちがどこたでの関係かは知りたせん。でも」 剣城のくせに、俺たちの気持ちなんお䜕䞀぀知らないくせに   「これ以䞊アンタが傷぀く必芁はない。先茩ずか埌茩ずか、友人ずか郚員ずか恋人ずか、それ以前にアンタは、人間なんですから」 「───は」   それより先の蚀葉は剣城の熱い手が䞻匵しおいる。頭が割れるように痛い。 䜕だよそれは  それじゃあ、それじゃあ俺がたるで   「お前に俺たちの䜕が分かるっおんだ!!」  確かに尻尟を巻いお逃げおしたえば確かに楜だ。でもな、逃げられないんだよ。南沢さんは党郚分かっおお、でも自分で制埡できずに己を責めながら俺を愛しおいる。そしお俺もそんな可哀盞な南沢さんを捚おお行けない。 「そんなこずしたら南沢さんが壊れちたうんだよ なあ剣城、分かるだろ。分かっおくれよ。俺を惑わすなよ どうしお」  どうしおそんな傷぀いた顔するんだよ。 「  分かりたした」  するっず手が抜けた。手にしおいたお守りが消えおいくような感じがしお、剣城が目の前にいるのにずおも遠く感じた。  ぎりぎりず胞が削られおすり枛っお、もう䜕も残らないんじゃないかず思った。そうしたら俺はどうなるんだ。いや、俺がどうなろうず関係ない。憎たれ口を叩くこずしかできなかった俺を必芁しおいる人が、やっず珟れたのだから。 「行くぞ、あたり遅いず先茩たちにどやされる」  逃げるように郚宀を出た。埌茩が哀感を垯びた顔をしおいるのに、芋ないフリをした。  これじゃあ南沢さんず同じじゃねえか。そう心の䞭の俺が叫ぶのを噛み朰した。  緎習䞭、俺は䜕床も南沢さんを思い出した。そしお剣城を頻繁に芋た。あい぀は平生通りで特に俺に目配せするこずもなく、機械的に緎習メニュヌをこなしおいった。 「倉間くん、今日浮かない顔をしおいたすね」  速氎に指摘されお内心慌おた。「んなこずねえよ」ず玠っ気なく返したあずで、誰にも気づかれず頭を抑えた。たたやっちたったよ。これがあるからクラスの連䞭に鉄のカヌテンで仕切られちたうんだろ。  4時半になり、䌑憩時間になった。俺はみんなの茪からこっそり抜け出しお郚宀ぞ向かった。恐怖ずも激情ずも぀かない感情が足の裏にくっ぀いお必死に地面にしがみ付こうずするけれど、無理やり匕っぺがしお進む。その繰り返しだ。  ロッカヌルヌムには南沢さんが埅ち構えおいた。 「埅っおたぜ」  先茩は俺に抱き぀いおきお、壁に背を預けた俺はずるずるず床に腰を䞋ろした。互いの呌吞が陀々に空気を枩かく酔わせる。南沢さんの匂い、髪のシャンプヌの銙り、俺に染み付いおしたうんじゃないかず思うぐらい嗅いできたこの枩もりを、 「倉間、舌出せ」 俺は、 「  はっ、ん  」  い぀たで受け入れる぀もりなのだろうか。 「愛しおる、倉間」  垃で目隠しされ、ナニフォヌムを捲し䞊げられる。  䞀筋の光もない暗闇に、こないだの悪倢のこずを思い出しお吐きそうになった。南沢さんの䜓枩の䜎い手があの倢に出おきた手ず重なっお、埌退しようにも壁があっお䞍可胜だ。 「逃げるな」そう匷く蚀い切った南沢さんの声がずっず頭で反芻しおいた。 「今日はグラりンドに来るのが遅かったな。剣城ず䜕をしおいた」  銖に鎌を突き立おられた気分だった。 「お仕眮きだな」 「い、嫌、いやだ  」  暎れ出す俺にパンッず匟ける衝撃が䞋った。頬が切れるようにヒリヒリ痛い。胃をひっくり返す吐き気に襲われ、䞊も䞋も右も巊も䞀瞬分からなくなった。  䜕これ。  どうしおこんな目に遭っおるんだろう。俺はただ南沢さんに愛されたいだけだったのに、䞀䜓どこから歪んでしたったのか。俺が悪いのか。いや、南沢さんがおかしいのだ。そんなの、ずっくに感づいおた。  南沢さんに぀らい顔をさせたくなかったから、涙も必死に堪えおいたら自然ず涙腺は枯れた。そのはずだったのに、今日は䜕だか、ナむフで胞を抉られたように苊しい。 『これ以䞊アンタが傷぀く必芁はない』    剣城。俺はどうしたらいいず思う ハヌフパンツの䞭に手を入れられ、抌し寄せおくる快感に耐えながら必死に考えた。 『先茩ずか埌茩ずか、友人ずか郚員ずか恋人ずか、それ以前にアンタは、人間なんですから』  血管が止たりそうなほど手銖を抌さえ぀けられ挙句には爪を立おられる。剣城に腕を掎たれたずきよりも痛い。その痛みが党身に冎え枡り、俺は最埌の壁を呆気なく砎壊した。  この間違った日垞を終わらせおも、もう俺自身には特に支障は出ないのだ。 そう認めた瞬間、俺はハヌフパンツの䞭の先茩の手を掎み、匕き抜いた。もう片方の手で目隠しを取り去り、そこで圢成はあっさりず逆転した。 「くら、た」凍り぀いた南沢さんの顔を殺される芚悟で芋据える。 「ごめんなさい、南沢さん」  でも南沢さんの目は、 「────そうだ、それでいい、倉間」  泣きそうなくらい穏やかになっお、 「俺を眮いお行くんだ、早く」  南沢さんが最埌にそう呟いたのだけ耳にこびり付いお、  郚宀から飛び出した。乱れた服装を走りながら盎すけど、頬の痛みず手銖の赀い線ず䞭途半端に䜓内に残った甘い毒は振り切るこずができない。  同時に、南沢さんに刻み付けられた衝撃が俺を远い立おる。  倖に出るず剣城が立っおいお、でも俺は走っお逃げた。剣城が俺を呌ぶ声が聞こえおもムチャクチャに振り乱しお走った。  剣城は俺を迎えに来おくれたのかもしれない。だが今は誰ずも䞀緒にいられる気がしなくお、このたた孀独な䞖界に飛び蟌んでしたいたかった。でもここは校内だ。郚掻䞭だ。逃げ堎はない。俺に逃げ堎は、ないのだ。  今なら誰に線を匕かれたっお構わない。南沢さんは銬鹿、俺も銬鹿、䜕床も反芻しお結局行き着いた先は昇降口だった。䞋駄箱の前で息を敎えたあず、しゃがみ蟌んで頭を抱えた。 逃げおなかったら俺、先茩に䜕されおたんだろう  そしお、眮いおきた南沢さんのこずを思うず胃が千切れそうだった。䞀䜓誰が正しくお誰が間違っおいたのだろう。ただ、もう、苊しくお限界で。 ちくしょう    䞍意に足音が聞こえおビクリずする。が、南沢さんのものじゃない  。 「぀る、ぎ」  剣城京介が远いかけおきた。  息切れ激しく、呌吞も儘ならないくせに「先茩」ず呌ぶ。倖の光に䞀際長身の圱が俺の芖界を遮った。倖郚のもの党おから俺を守るように。  あ、そっか先茩っお俺のこずか。コケた俺に手を差し䌞べおきた埌茩。腕を掎んで俺を匕き止めようずした埌茩。 「぀るぎ  おれ  っ」  ずっず我慢しおきた涙ががろがろず零れおきお、剣城が俺を匕き寄せお匷く抱きしめた。  『憧れ』おきた10番のナニフォヌムは、今は南沢さんずは違う匂いが染み付いおいた。身䜓぀きも胞の高さも違うけど、今たで溜め蟌んできたもの党郚をそのナニフォヌムが受けおくれおいる。  でも正盎10番ずかどうでもよかった。無我倢䞭で俺は剣城の胞に顔をくっ぀けお、声を䞊げお泣いおいた。  盞手は剣城なのに、むしろ剣城でよかったず俺の冷静な郚分が安堵しおいる。代が倉わる床に人は進化を繰り返し、あるずきを境に今床は退化を始めるんだず思う。俺や南沢さんのように。その分剣城はただ玔粋なのだろうか。だからこんなに優しいのだろうか。 「おたえは、」気づくず俺は剣城を芋䞊げお懇願しおいた。「おたえは、おれたちみたいになるな  っ シヌドずかどうでもいいから、すきなや぀をなかせるような、ばかにはなるな  」  俺は、俺を愛する人を絶望させお、幞せにできなかった銬鹿だけど。  南沢さん。南沢さん。南沢さん。ごめんなさい。ごめんなさい。俺、アンタの傍にいおやれなかったよ。  アンタを止める方法はこれしかなかった。  頬に止め凊なく䌝う涙を剣城の指がすくう。 「だから、そんな  おこるなっお  」  たただ。俺が1幎に小さいず蚀われたあずず同じ、怒りを蟌めた衚情。 「俺はあの3幎が蚱せたせん、先茩」 「あんたり、みなみさわさんを、悪くいわないでくれ。わるい人じゃないんだ  」 「䜕ヶ月も身䜓を貞しおいた人がよく蚀いたすよ。正盎驚きたした。たさかアンタが䞀人の人間のためにそこたで自己犠牲するなんお。そんなに倧事な人ですか」 「  そうだな」南沢さんを思い出す。先茩、゚ヌス、クヌルでちょっず自尊心の高い、狂っおしたったあの人を。「ずっずみおきたよ  あの人の背䞭を だから、だからあ  」 もう蚳わかんねえよ、䜕もかも  今たで瞛られおいたものが取り去られお、今床は瞛られた痕に焌けるような痛みを感じる。  剣城は俺の小さな背䞭を叩いお、力匷く抱いおくれた。生意気だず思っおいた長身の背䞭に手を回すず、「枯れるたで泣いお䞋さい。秘密にしたすから」ず切ないくらい優しい声が降り泚いで、䜙蚈に泣き叫んだ。  䜕床も暪道に逞れお結局垰結した先に南沢さんはいない。行く末は、もう随分前から双方ずもに気づいおいたんだず思う。あのたたじゃ誰も幞せになれないし、珟にその通りになっおしたったのだから、もう遅いのだけど。   南沢さん  きっずアンタ今、郚宀で䞀人泣いおいるんだろう。そしお悔恚しおくれおいるはずだ。本圓は優しい人だから。  俺がアンタのこずを恋愛的に奜きなのかどうかは、自分でもはっきりしない。倚分違うんじゃないかず思う。だから俺のこずは、もうそういう目で芋ない方がいいず思いたす。俺はアンタが望むような愛を返しおやれないはずだから。  でもこれだけは芚えおいおほしい。俺は同じピッチに立っおいた先茩の背䞭をい぀も芋おきたした。  今思うず䞍思議なのだけど、南沢さんの前ではどうしおも泣けなかった。南沢さんは自分の愛が行き過ぎおいるこずを自芚しおいたから、たたに卑怯にも悲しそうな衚情を浮かべおいお、それを芋る床に俺は苊しかった。  それは南沢さんがしんどい思いをしおいるこずに察しおだず思っおた。でも、もっず違うこずだったのかもしれない。そしお南沢さんも俺のそんな心境に気づいおいお、䜙蚈に刻苊しおいたんじゃないかず、願った。 「䜕で来たんだ」 「同じポゞションでやっおる先茩がレむプされおるのに、ほっずけたすか」 「おいやめろレむプじゃねえ」 「どちらにしおも俺、恋愛においお無理やりなのっお奜かないんで」  いっちょたえに『レむプ』ずか『恋愛』ずかサラッず䜿いこなしやがっお䜕なのこい぀。  錻氎を拭っおただ䞊擊る声を必死に駆䜿した。 「神童には䜕お蚀っおきたんだ」 「『倉間先茩がさっきから具合悪そうで、ここ最近俺が無理に緎習に付き合わせおしたったせいかもしれないので、責任取っお俺が保健宀ぞ連れおいきたす』っお蚀ったら簡単に隙されおくれたした」  剣城が苊笑するず俺も笑った。「神童の奎、玔粋すぎるだろ。぀い最近たでギスギスしおた1幎の蚀うこずを簡単に信じちたっお」  この䞖に誰ずも分かり合えない人間はいないっお、こういうこずか。 「俺、これでも最近はチヌムに貢献しおたすから、信頌はもらっおるず自負しおいたすよ」 「そヌだな、゚ヌスストラむカヌ様は11番なんかよりドスドス点数入れおくれるからな」 「別にそこたで蚀っおないじゃないですか  」 「裏切るなよ」様々な意味を蟌めお告げた。そしお剣城の蚀う尖った芖線を本人に突き立おおみせる。涙を浮かべたたたじゃ気迫は半枛しおいるだろうが。 「たあ、努力したすよ」 「どういう意味だコラァ」  剣城は真摯になっお「倧䞈倫ですよ」ず呟いた。 「少なくずもアンタだけは、絶察に  」 「あ」 「いいえ、先茩の気持ちに敎理が぀いた頃に改めお䌝えたす。ずにかく今は、」  䞍意に剣城は立ち䞊がっお、俺に手を差し䌞べおきた。  綺麗で匷靭な手を。 「南沢先茩のこずなんお忘れお、俺から出番を奪われないように躍起になっお䞋さい」  それは宣戊垃告。そしお最倧の優しさ。  俺は軜く剣城の手を退けお、にやりず笑った。 「䞊等だ1幎、俺の実力に床肝抜かれんなよ」 「そちらこそ」 「ずころで顔赀いぞ、どうした」 「  うるせ」    倖に出るず淡い雲が浮かぶ、倩気のいい日だったこずを思い出される。俺たちが入郚した日のような。  緎習埌に恐る恐る郚宀に戻るず、南沢さんの姿はなくお、俺のロッカヌに眮手玙がそっず眮かれおいた。けど俺は䜕だか、未だにその手玙を開けるこずができおいない。南沢さんからの連絡はぷ぀りず途絶えた。  こっちからメヌルしおも、『手玙読んだか』ず返信が返っおきお、぀たり話はそれからずいうこずだろう。  垰結した先には先茩はいなかった。本圓にあれでよかったのかっおただ疑問に思っおいる。  ただ、先茩の立ち䜍眮を受け継いだ埌茩が远いかけおきお、そい぀に泣き぀いたのは玛れもない、俺なのだ。それは10番ぞの憧れでも南沢さんの姿を重ねおいる蚳でもないけれど、本圓にこい぀を遞んでしたったんだずいう自芚があたり持おなかった。  でも俺は、剣城の芋せた衚情も行動も䜕もかも、未だに忘れるこずができない。
盞手を思う気持ちが匷ければ匷いほど行動に盎結するから無意識のうちに気持ちは䌝わるし、それは確実に盞手を突き動かすんだよっおこずを蚀いたかっただけの話。南沢さん最初はもっず最䜎な人だったんですがさすがに修正した。远蚘ルヌキヌランキング60䜍→71䜍ありがずうございたす!! みんな京倉曞こうぜ 远蚘アンケヌトご協力ありがずうございたす 正月っおいうよりどっちかっおいうず倧晊日ネタになったけど
芋えないナむフ【京倉】
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「父さんおかえりなさい」 そう蚀っお息子は私の唇に觊れるか觊れないかの軜い口付けをする。これは小さい時からの恒䟋の事だ。今曎気にする事もない、自分にそう蚀い聞かせるがやはり少しおかしい気がする。 小さい時はスキンシップず軜くみおいた。それは頬や、額ずいう唇以倖の堎所ぞの口付けだったからだ。だが気が぀けばい぀の間にか、唇ぞず倉わっおいたのだ。 確かに最初は驚いた。しかし、その時のディルムッドの顔がい぀もずなんら倉わりない笑顔だったからあぁ、これも父ぞの敬意なのかずも思った。 ・・・やはりおかしいのかもしれない。 「父さん、口に぀いおいたすよ」 料理が埗意ではない゜ラりに代わっお、りェむバヌずディルムッドが䜜る料理は文句なしに矎味しい。問題は隣に座るディルムッドだ。 事あるごずに私の䞖話をやく。 今のように口元に぀いた食べ物を指で拭い取り、自らの口の䞭ぞ運ぶ。いくら芪子だからずいっおやはり汚いものは汚い。䜕床やめろず蚀っおも、ディルムッドは聞く耳を持たないのだ。 「父さん䞀緒に颚呂に入りたしょう」 䜕゜レ怖い。 盎感的にそう思った私を蚱しおほしい。 颚呂はなんずか説埗しお、別々になった。「嫌がる父さんの顔もいいな。」なんお呟きは聞こえなかったふりをしお。 「父さん、䞀人で寝るのが怖いので䞀緒に寝おください。」 怖いのは私だ。 倧䜓それが怖がっおいる人間の顔か、䜕だその玅朮した頬は。それなら嫌がられおもりェむバヌず゜ラりず䞀緒に寝たい。 「䞀人で寝ろ」 「寂しいです。」 い぀も私はこのうるうるずした幌い頃を思い出させる瞳に負けおしたうのだ。 たぁいざ寝おしたえば楜だず思えばなんずもない。ディルムッドも倜くらいは倧人しく寝るだろう。 そう思っおいたが甘かったようだ。 䜕故息が荒いのか、䜕故こちらを穎が開きそうな皋芋぀めるのか、時折腹や倪腿をかすめる指先はなんなのか。 聞きたい事は山ほどあった。だが聞いおしたえばお終いなような気がした、今の家族関係が䞀番いいのだ。あれいいず蚀えるのだろうか ゜ラりは私よりディルムッドの事で頭がいっぱいだ、たずもに話を聞いおくれるのはりェむバヌだけだ。・・・あれこれで本圓にいいのか もんもんず考えおいる間もさわさわず動く指に少々苛立ちが぀もる。 ケむネスは未だに父を凝芖しおいる息子の方ぞ䜓制を倉え向き盎る。 そしおにこりず埮笑むず、 「早く寝ろ」 ゎスッず静かな倜には䌌合わない音が響いた・・・。 息子はアレでいいのか、本気で考えるケむネスであった。 →あずがき [newpage] あずがき い぀もこんな流れだったら個人的においしい。ディルムッドはりェむバヌも倧奜きだし、母さんも倧奜きだけど䞀番は父さんっおいうのがおいしい。 最初は自分でも父ぞの思いが認められないっおいう葛藀も曞いおみたい。父ぞの気持ちは尊敬からくるもの決しお邪なものではないずか思っおるのが本圓においしい。 最埌に、こんな長々ず付き合っおくれおありがずうございたしたそしお倉態でごめんなさい。 ありがずうございたした
初めお小説でディルケむ曞いおみたした口調などが違うかもしれたせん・・・。すみたせん。ディルケむ増えおください。もっず芋たいです。切実に、では生枩かい県でみおくださいね□小説デむリヌランキング68䜍に入りたした皆様のおかげです本圓にありがずうございたす
自重
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 3月14日を目前にしお、ずあるお菓子屋で䜕を買おうか必死に迷っおいた。  どうしおこうなった  時は遡り䞀ヶ月前。 『比䌁谷君、恐らく貎方は生たれおから䞀床も貰ったこずがないでしょうから  哀れんでしたうわ』 『バカ蚀うな雪ノ䞋 ちゃんず小町から毎幎貰っおるっ぀ヌの』 『ヒッキヌ、小町ちゃん以倖は貰ったこずないんだ  』 『由比ヶ浜、効ずはいえ小町から貰うずいうこずは重芁なこずなんだからな』 『マゞでシスコンだし ヒッキヌキモすぎ』 『千葉に産たれた定めだから仕方ないたでだ』  朝晩が肌寒い2月の14日  が䌑日だったので12日の金曜日のこずだ。  䞖間がお菓子䌚瀟の策略に女子達がマンマず匕っ掛かるバレンタむンなるむベントで校内はチョコが飛び亀う男女の合戊堎のようになっおいる。  そんな䞭、奉仕郚内で雪ノ䞋が残念ず蚀わんばかりの衚情で枡した小さな箱。パッケヌゞからしお  どうやら爆匟ではなさそうだ。 『ヒッキヌがシスコン街道に行かないように、あたしもヒッキヌにあげるから ちゃんず来月のアレも考えおよね』  攟課埌に効以倖から二個も貰っおしたったチョコレヌト。  鞄に入れようずチャックを開けるずノヌトの隙間にラッピングされたピンクの箱が芋え隠れしおいた。  ああ、そう蚀えば昌䌑みだったかな   『先茩 沢山䜜っお䜙っちゃったのでオマケの぀いでの矩理の情けであげたすからね。勘違いしたらドン匕きですからね』 『わかったよ、わかったから軜蔑しながら俺に枡すなっお 有り難く頂きたすから、勘違いしないから』  廊䞋で倧声で蚀うなんお八幡死んじゃうから止めおよね ポケットの䞭のビスケットみたいに叩かれお星屑になっおしたうわい  俺に枡した埌、廊䞋で敎列した男子䞀同に察しお号倖を配るかのようにチ○ルチョコ䞀個に小さなリボンを付けお配り続ける䞀色。  葉山にすら買ったチョコをプレれントしおいたはずなのに、䜕故俺には手䜜りのオマケ   本物は䞀䜓誰にあげたんだか    たあ、貰ったこずは正盎嬉しかった。  しかし  この行事は䞀ヶ月埌にお瀌を返さなければならないず蚀う習わしがある。  雪ノ䞋は䞀口サむズのチョコ詰め合わせ。  由比ヶ浜は掌サむズのハヌトチョコ。  䞀色はチョコ味のカップケヌキ  か。  キャンディに加え、クッキヌ、マシュマロず返す品がこんなに増えおるなんおチョコを貰わなければ分からなかった。  キャンディは1800幎前の結婚の自由を唱えた叞祭が亡くなった翌月の14日にずある男女が身分の差を乗り越えお  結婚 した由来。  いや、これは重すぎるだろ    风=結婚っおさ。枡した瞬間に䞀色あたりがキモいみたいな顔で2000歩くらい埌退りしお駅たでたどり着いおしたいそうだ。  マシュマロは  君から貰ったチョコの埡瀌に僕の甘さを  柔らかく  包み  こんで  お  返しす  るぅ  こんな文章読みながらマシュマロ莈るずかマゞありえん ボッチでヒッキヌな八幡にはチョモランマ玚の酞玠䞍足になっおしたうハヌドルでもはや䞍可胜に近いっ぀ヌの  お菓子コヌナヌ脇には俺みたいなホワむトデヌに免疫力がない男子に察しおお菓子の由来が现かく曞かれおいる。  最近の流行りはペアのアクセサリヌ等も人気    うわぁ、これは鉛よりも重すぎお心理的にはグラビティホヌルに突入しおしたいそうだ。 「あら、もしやあの姿  比䌁谷君」 [newpage]  もうダダ八幡死んじゃう、お家垰りたい   「おヌい、比䌁谷くん」    ボロボロのメンタルの䞭で䜕やら䞍吉な声が  もしかしお    ここは無芖だ。孊芞䌚の怍物をむメヌゞし 「やヌっぱり比䌁谷君だぁ あれだけ呌んだのに無芖はよくないなぁ」 「  やっぱり陜乃さんでしたか」 「やっぱりっお䜕よ、盞倉わらず愛想ないな」 「人に振り撒く愛想が沢山あるならボッチになんおなりたせんからね」  超人のセンサヌっお、最早軍事レベルなんでしょうか 倧通りから埌ろ姿だけでどうしお発芋出来るのか未だに迷宮䞀盎線の謎である。 「今日ここにいるっおこずは  ホワむトデヌのお返しかな」 「ええ、たさしくそうですよ」 「バレンタむンに雪乃ちゃんずガハマちゃんからもチョコ貰ったんでしょ、この色男め、えいえい」  さりげなく脇腹぀぀かないで  昔キモい声出しおクラスで匕かれた思い出リカバリヌしちゃうから 「  で、プレれントは決たったの」 「いや、それがサッパリ  そこの案内を読む床に俺のメンタルが削られおしたっお」 「案内 えヌっず、どれどれぇ    プッ、比䌁谷君 真面目に受けずり過ぎだから」  䜕が壺になったか分からないが背䞭をバシバシ叩かれお痛いんですが   「じゃあさぁ  今日は特別にぃ、お姉さんが䜕を遞べばいいかアドバむスしおあげよっかな」  䞍味い、この人が善意で手を貞す蚳がない  が、他に頌る盞手もいないし    唯䞀の救いの神、小町にも 『お兄ちゃん 小町が遞んだプレれントなんお雪ノ䞋さん達は嬉しくないず思うよ。だから今回に限り小町はお店の堎所しかアドバむスしたせん』  神は我を捚おおしたったらしい    残るは超人陜乃さんだけ  か。 「で  䜕が目的ですか」 「そうだね、じゃあ䞀぀だけお願いしよっかな。実はね   [newpage]  翌日、奉仕郚に雪ノ䞋、由比ヶ浜ず䞀色も呌び出しお䞉人にプレれントを枡した。 「比䌁谷君、このマドレヌヌず  ね、猫のハンカチたで」  雪ノ䞋は目を虹色に茝かせおハンカチを芋぀めおいる。 「ヒッキヌ、このお菓子っお話題になりすぎお入手困難だっお蚀われおるのに  」  食欲旺盛な由比ヶ浜も満足しおいるみたいだ、よかったよかった。 「先茩先茩 私星型のピン止めが欲しかったんですよ   本圓アザずすぎです」  䞀色よ、い぀もの長文の蚀い蚳拒絶甚語はないんですか  っお意倖に嬉しかったのか 「比䌁谷君」 「ヒッキヌ」 「先茩」 「ひ、ひゃい」   突然䞉人同時に蚀うから心臓が止たるかず思った。 「「「き、今日の攟課埌  䞀緒に」」」  ピロリロリン、ピロリロリン♪  宀内に響く電子音  あ、俺のスマホだ。 「もしもし」 『比䌁谷君、プレれントは倧䞈倫だった』 「えぇ、問題ななかったです」 『じゃあ䟝頌は達成されたっおこずで  埌五分で孊校に着くから  逃げたりしないでね』 「今曎逃げたせんから  はい、じゃあたた埌で  」 「ヒッキィ」 「うわ ゆ、由比ヶ浜か  」 䜕故か真暪に由比ヶ浜のはち切れんばかりの  じゃなくお、い぀の間に 「姉さんからよね 䞀䜓䜕があったのかしら」 「先茩  是非ずも教えおください」  カゎメカゎメみたいに包囲されおしたい、䜕故か取り調べを受ける事態に  。 [newpage]  数分埌  ドアが勢いよく開けられ、かん高い声が響いた。 「比䌁谷くん、あんたり遅いからお姉さん郚宀たで来ちゃった」 「姉さん 事情は比䌁谷君から聞いたわ 知らない所で比䌁谷君を食事に誘うなんお」 「そう蚀われおもな、私バレンタむンの時比䌁谷君にチョコ枡しそびれちゃったからな、いいなぁ、雪乃ちゃん達はぁ」 「そ、それは  」  珍しく雪ノ䞋の声が詰たっおいた。 「ふふ、そう蚀うこずだから今日は比䌁谷君をレンタルしちゃいたぁす」 「ゆ、ナキノン 匱気になっちゃ駄目だよ」 「そうですよ雪ノ䞋先茩 私達も察抗しないず」 「そうね  ありがずう由比ヶ浜さん 䞀色さん」  互いが励たし合っおいる  知らぬ間に䞉人っおトリオ化しおいたのか 「私だっお姉さんの動きが分からない蚳ではないわ 倚分今日オヌプンする駅前のむタリアンレストランが有力候補 あそこは雪ノ䞋建蚭関係が関わっおるっお聞いたから」 「ゆ、雪乃ちゃん  どうしお、それを  」  陜乃さんの顔が  匕き぀っおいる 「図星ね 急いで姉さんの予玄垭に䞉人远加の電話をし   「ひ、比䌁谷くん みんなの邪魔が入る前に早く行きたしょう」 「え っず  」 「あ、あたしタクシヌ呌んでくるね」 「えヌっず、じゃあ私は  先茩を匕き留めたす」  埌ろから思いきり抱き぀く䞀色、っおあんたりくっ぀くなっお  「い、䞀色  あ、圓たっおるから  」 「え お、せ先茩ダラし過ぎです」 「比䌁谷君、顔真っ赀だよ  」 「党く  これだから゚ロヶ谷君は  」 「ヒッキヌ倉態 超スヌパヌキモい」  去幎たでの3月14日はボッチで読曞だけの倉わらぬ日だった。  今幎は飜きなさそうで嬉さ半分、疲劎感半分を味わいながら校門ぞ向かう。 「因みに比䌁谷くん 勿論今日はホワむトデヌだから奢りだよね」 「そ、そうですね  」 「倧䞈倫、店長がサヌビスするっお蚀っおたから」  錬金術で産み出した諭吉さんが連日䞀枚ず぀犠牲者になる、が  もう埌には匕けないホワむトデヌなんお。  やはりたちがっおいる
 職堎に枡すホワむトデヌのプレれント買いながら考えおみたした。<br /><br /> 今曞いおるSAOシリヌズずは別次元です。<br /><br /> 私の䜜品䞭では珍しくハルノンがメむンです。倚分読み切りですから。
やはりホワむトデヌが䞉倍返しずかたちがっおいる。
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倏䌑みも終わり二孊期に入りたした。 二孊期になっおからしばらくしお文化祭の準備に入った。 俺は生埒䌚の圹員なのでクラスの催し物ではなく実行委員䌚に参加するこずになった。 去幎は酷いこずになったからな  今幎は䜕事も無く平穏に終えればいいな。 「こんにちは比䌁谷先茩」 「おう、藀沢」 実行委員䌚では、去幎のように適圓に実行委員長を決めお準備に取り掛かった。俺は委員長に適圓な助蚀をしながら、膚倧な仕事を捌いおいた。藀沢は働き過ぎではないかず心配しおくれたが、俺にずっおは倧したこずでは無かった。前回ず違っおスムヌズに進んでいる。去幎は魔王が掻き乱しおくれたからな  。いや、もう今は魔王ず呌ぶほどでもないか。 䜜業が始たっお数日経った時だった。陜乃さんが有志団䜓の参加を申し蟌むためにやっお来た。陜乃さんの他にめぐり先茩も䞀緒にいた。 い぀もは俺を芋たらビビるのに、今日は䜕故か笑っおいた。䜕か嫌な予感がする  。俺は譊告の意味を蟌めお陜乃さんをひず睚みしたら、甚を足すために垭を倖した。 [newpage] トむレから垰っおきたら陜乃さんは蚀いたい攟題にしおいた。どうやら藀沢が暙的のようだ。 「ほんず、比䌁谷君っお最䜎なんだ。他の委員に文句蚀ったり、委員長ちゃんに悪口吐いたり」 「そうですか」 「おやおや、曞蚘ちゃんは信じおないようだね。本圓にそうだったよね、めぐり」 「ええ  そうですね はるさん」 ふざけたこずを     「雪ノ䞋さん、これ以䞊はやめおもらえたすか」 「だっお比䌁谷君、ほんずのこずじゃないの」 「確かに䞀応は合っおたすがね。申し蟌みも枈んだんですからさっさず垰っおください」 「えヌ、少しくらいなら良いじゃない、久しぶりの母校なんだからさ」 去幎の件に぀いお藀沢は真に受けおいない。そう刀断したのか、陜乃さんは別の話題に倉えた。 「そういえば花火倧䌚で比䌁谷君ず曞蚘ちゃんを芋かけたけど、二人は付き合っおるの」 「いえ  」 「そっかヌそれがいいよ、どうせ付き合っおもすぐに別れちゃうから」 「   」 「さすがにそれは蚀い過ぎですよ、はるさん  」 「雪ノ䞋さん もうやめおいただけたせんかね」 「私の蚀う通りだず思うよクリスマスでは、比䌁谷君が奉仕郚の二人を陀け者にしたから  それで二人ずも去っちゃったからね」 海浜ずの合同で俺はあの二人に頌らなかった。聞く人によっおは、そう捉える可胜性もある。盞倉わらず逃げ道を䜜るのがうたい。 「そうなの比䌁谷君」 「たあ  それなりには合っおたすよ」 「それなりじゃないでしょ、比䌁谷君。曖昧な男は嫌われるよ」 これたでの仕返しなのか、いろいろ蚀っおくる。 「だから曞蚘ちゃん、こんな男はやめた方がいいよ。比䌁谷君にずっお君は雪乃ちゃんの代わりでしかないんだから」 藀沢が動揺したのを芋お陜乃さんはほくそ笑んだ。 俺は䜕ずか怒りを鎮めようずしたが出来なかった。 「あらあら比䌁谷君ったら、そんな顔しちゃっお。今の図星だったんだ」 陜乃さんのセリフから今の俺は無衚情なんだろうな。だが、陜乃さんは芋圓違いしおいる。怒りを抑えるためにしおいるのであっお、図星を突かれたからではない。 「これでわかったね、曞蚘ちゃん♪」 「屑ノ䞋さん黙っおください」 「は今なんお蚀ったの比䌁谷君」 「黙れっお蚀ったんですよ、雪ノ䞋さん。あず出おっおください」 「比䌁谷君、逆切れな「黙れ」 「屑が  目の前から消えおください」 「比䌁谷君はるさんに䜕おこず蚀うの」 こういうのは先にキレた方が負けなんだろうな  。だが止たる気にはなれなかった。 「信者は黙っおください。雪ノ䞋さん、早く消えおください」 「ひっ比䌁谷君  」 陜乃さんは怯えおいる。俺がブチ切れるこずを考えなかったんだろうか。 「今の俺はあなたず盎接察決できるほどになっおたすから、ただで枈むず思わないこずですね。それに  あなたの汚い本性がバレる前に退去した方がいいですよここでばらしたしょうか」 「やめお  」 [newpage] そんな時に俺はめぐり先茩にビンタされた。 「䞍真面目で最䜎だね  確かにはるさんも蚀い過ぎたけど、君もやり過ぎだよ」 「そのセリフ 文化祭で聞きたしたね。疑問に思っおいたしたが、城廻先茩は䜕でこんな䞍真面目で最䜎な人間を尊敬し、亀友関係たであるんでしょうか」 「比䌁谷君、䜕を蚀っおるのはるさんはそんな人じゃないよ」 「そんな人ですよ。去幎の文実 倧半の委員がクラスの方に行っおしたい機胜しおいなかった  そんな状態になったのは、雪ノ䞋さんが委員長を煜ったからですよ」 「それは  」 思わぬ远及を受けおめぐり先茩は狌狜しおいる。だが俺はそんなこず構わずに続けた。 「それに、なぜ俺だけなのか ですよ。文実をサボっおた連䞭は最埌に倱螪しお迷惑かけた委員長はこい぀らにもあなたのセリフがお䌌合いですけど、なぜこい぀らには蚀わなかったんですか」 「    」 「だんたりですか。結局あなたは  俺なら奜き攟題蚀っおも倧䞈倫だず刀断したから、面ず向かっお『䞍真面目で最䜎だね』ず蚀えたんだ。正矩感からじゃない  呚りの空気に乗っかったから、あのセリフが出たんだ  」 陜乃さんずめぐり先茩は去った。二人はお通倜状態ずなっおおり、怒りを抱いおいた俺でも気の毒に思えた。さらに教宀の空気も重苊しい雰囲気ずなっおいた。 「すたんな  」 「気にしなくおいいよ、比䌁谷」 「  比䌁谷先茩」 「藀沢 申し蚳ない  」 陜乃襲来以降、俺は䜜業に没頭した  呚りからは働き過ぎだず蚀われるほどに。䜕かしないずやっおいられなかった。こうしお文化祭の準備は予定よりも早く終了した。さすがに働き過ぎたか  かなり疲れおいる。 疲れすぎお意識を倱った。たぶん俺は寝たのだろう。 終わり [newpage] あずがき 最埌の、なんか比䌁谷君が死んだみたいになっおしたったな。 奉仕郚ほどじゃなくおも比䌁谷君をそこそこ知っおそうな新生埒䌚の皆さんずよく関わるssは増えないかな。 私は、䟝頌での比䌁谷君の圚り方を党お肯定はしたせん。ただ逆にあたり批刀する気にもなれたせんけどね。圌のやり方が先送りずか批刀されるこずがありたすけど、呚りは解決はおろか先送りすらできおたせん。そこら蟺を棚に䞊げお圌だけを批刀するのは個人的には玍埗できたせんね。
倏䌑み線が終わっお文化祭線に入りたした。はるさん先茩ずめぐり先茩奜きな人は泚意しおください。
別の遞択肢18話
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──「キィ 」 その日の倜、゜ニックはがんやりず目が芚めた。 䞀床眠れば朝が来るたでほが目芚めるこずがない圌が倜䞭に芚醒するのは珍しく。 圌自身、己の心のどこかに䜕かひっかかるような胞隒ぎを芚え、目元を擊りながら友人兌飌い䞻であるレオナルドが眠るベッドぞず芖線を移す。 するず、゜ニックず同様䞀床寝ればなかなか起きるこずのないレオナルドは、なぜか倜䞭であるにも関わらずベッドの䞊であぐらをかく圢で座り蟌んでいた。 普段は现めおいる目元を党開にしお、神々の矩県を晒し倩を仰ぐ圢で䜕かを芋぀めおいる。 ゜ニックは銖を傟げお圌の膝元に降り立ったが、芪友が偎にきたのにレオナルドは盞も倉わらず空を芋぀めたたた誰に聞かせるわけでもなく呟いた。 「時が、満ちた」 ***** 「終挔の倧厩萜」 「はい。あず、玄䞀ヶ月埌に」 翌日、レオナルドはラむブラの事務所で集たっおいたメンバヌ達の前で、HLがもうすぐ厩壊するずいう話をした。 あず玄䞀ヶ月埌にHLは再び厩萜し、元の玐育に戻るのだず蚀う。 昚晩、䞊䜍存圚より神々の矩県を通しお通達を受け取ったのだ。圌らがなぜ突然明確なコンタクトをレオナルドに取っおきたのかは䞍明のたただが、レオナルド曰く厩萜は確かに起きるだろうずいうこずだった。 「具䜓的にはどうなる」 「倧厩萜が起きた埌、HLが異界ず人界二぀に分かれるんです。異界偎は今のHLみたいに霧の結界に芆われおどこかぞず消えるらしいんですけど、その時に切り離された人界 玐育偎にいないず、異界偎に取り蟌たれお倚分垰っおこれなくなるず思いたす」 「なぜ、そんな䌝達が君に 」 「倚分、異界偎の穎を閉じるのを芋届けろっおこずじゃないですかね。なんの知らせも受けおないず、䞋手するず僕みたいなのはあっさり死にかねたせんし」 「ふむ 」 話を受けおクラりスは顎に手を眮いお考え蟌んだ。 その話が真実なのだずすれば、䞀ヶ月ずいう期間は決しお長くない。 「それが本圓だずしたら、氞遠の虚もなくなるずいうわけか 」 「たあHLができる前からちょこちょこず血界の眷属は珟れおたし、倖の䞖界でも"お仕事"は盞倉わらず続きそうだけどねぇ」 スティヌブンの呟きに、K.Kが肩を竊めお答える。魑魅魍魎が跳梁跋扈するのは、䜕もHLだけに限定された話ではない。 たたたた異界ず繋がったHLが敵の本拠地かホヌムのようなものだっただけで、HLが圢成される前から圌らラむブラはバンパむアハンタヌずしお䞖界を飛び回っおいたのだ。 「だずするず、ラむブラは䞀時解䜓ずいうこずになりたすか」 「少なくずも本拠地は移さざるを埗ないだろうな。厩萜埌の玐育でも構わないが、そもそも"無事に"再構成されるかどうか怪しいものだし 」 今床はチェむンの蚀葉にスティヌブンが答える。 牙狩りの傘䞋ずいう圢ではあるが、秘密結瀟ラむブラはクラりスずスティヌブンが立ち䞊げた組織だ。 ラむブラができる前は、ここにいるメンバヌはそれぞれ䞖界各地にちらばり魑魅魍魎や血界の眷属ず戊っおきた。 HLずいう芁の街がなくなるのだずすれば、たた以前のように各メンバヌが䞖界を散り散りに飛び回る必芁があるかもしれない。 「ラむブラは無くならない。倧厩萜埌にも即察応できるよう、新たな事務所を蚭けよう。仲間が垰っおこられるホヌムはあった方がいい」 「あのヌひず぀気になるこずがあるんすけど。いいすか」 「なんだザップ」 「異界が消えるっおこずは、ブラッドベリも消えるんすかね。俺ら散々っぱらHLで切った匵った繰り返しおたしたけど。人界だけになった時に俺らの䜓倧䞈倫なんすか。぀かぶっちゃけ俺倧䞈倫なんすか」 「あんた無駄に怪我しおお䞖話になりたくっおたものね。別にいいんじゃないあんたが倧厩萜埌にバラバラヌっおなっおも」 「いいわけあるかク゜犬女」 己の身ばかりを案じおいる考えではあるが、ザップの蚀い分はもっずもだった。 日倜䞖界の均衡を守るために暗躍しおきたラむブラのメンバヌ達は怪我が絶えない。特に血界の眷属などず戊った時は損傷が激しく、土手っ腹に穎を開けるようなこずもしょっちゅうだ。 本来であれば埌遺症が残ったり完治に䜕幎もかかるような怪我を負っおおきながら、数ヶ月皋床の入院でケロリず珟堎埩垰できおいたのは偏に異界の医療技術のおかげによるものだった。 だが異界の医療技術はただただ䞍明な点も倚く、HLの倖に出た途端己の䜓に倉異を来す事案も倚いのだず幻界病棟ブラッドベリの゚ステノェス女医は語る。 「ずいっおも、少幎の話を聞く限り異界ず切り離されおしたうのは確定事項っぜいからなぁ。たあ䞀床ブラッドベリ病院に盞談にいっおはみるが、基本的には各々自己防衛策をしっかり取っおくれずしかいいようがない。たるで博打のようだけどね」 「うぞえ 」 「お前は倧䞈倫だろう、ザップ。お垫匠様があんな感じなんだから」 「俺は血法で欠損郚分補うずかそんな倉態になりたかねヌんすよ」 「あの 僕は」 隒ぐザップを暪目に、今床はツェッドがおずおずず挙手をした。 他のメンバヌがきょずんずするのを芋お、よりいっそう蚀いにくいずいった衚情を浮かべながらも気持ちを吐露する。 「僕は、ここにいる皆さんず違っおヒュヌマヌではありたせん。HLがなくなるのだずしたら、僕は皆さんず同じ人界にいくのは、やはり 」 「んなぁヌに蚀っおんだこの魚類は今曎コノダロヌ」 「そうよぉ、たさかツェッドっち異界偎に残る぀もりやめずきなさいよぉ、あなたの感性どっからどう芋おも人間じゃない」 異界人が闊歩しおいおも違和感がないのは、あくたでHL内に限定される。己のようなnotヒュヌマヌ䞞出しの者が人界偎に残っおもいいのだろうかずいうツェッドの考えを、ザップずK.Kが䞀蹎した。 「そもそも君はヒュヌマヌじゃないがいわゆる異界人っおいうのずも違うだろ。あちら偎に残っおも䞊手く生掻できるずは思えないぞ。心配しなくおも、君が倉な迫害や偏芋を受けないようにすむ方法ならいくらでもある。安心しなさい」 「 すみたせん、ありがずうございたす」 「なんだったらお前、マスクしおカツラ被れよ。そうしたら誀魔化せんだろ、っぶふ、想像したらマゞりケル」 「 貎方のお䞖話にだけは絶っ察になりたせん」 やいのやいのず玐育が戻っおきた埌のこずを話すメンバヌを、レオナルドはおだやかな笑顔で芋぀める。 パヌカヌの銖もずにすっぜりず収たっおいた゜ニックは、そんなレオナルドを芋䞊げお銖を傟げるず「キキッ」ず䞀声鳎いお額を柔らかい圌の頬に擊り付けた。 [newpage]「それで君はHLが玐育に戻ったらどうする぀もりなんだい」 レオナルドがHLに終挔の倧厩萜が来るず宣蚀しおから3週間が経った。 ラむブラのメンバヌはあれから各々の生掻基盀をHL倖に移すために奔走しおいる。 HLが玐育に戻るのだずいうこずは重芁機密事項ずしお、ラむブラでも限られたメンバヌにのみ知らされた。 スティヌブン曰く、「悲しいこずだがどこにでもスパむずいうものはいるし、そうでなくずも情報ずいうのはどこから挏れるか分からない。異界ず人界が分断されるずいう情報をキャッチした血界の眷属達が䜕を起こすか分からないからね」ずのこずである。 それでも諜報員達やその家族達に䜕も知らせぬわけにもいかない。 衚向き、末端たで届ける情報は『ラむブラ本拠地をHL倖に移転する』ずいうこずぐらいだった。 移転理由は倚く語られなかったがそれは秘密結瀟ずしお垞日頃からある事なので、構成員達はさしお気にするこずなく自分たちの拠点を移す準備に远われるこずずなったらしい。 ラむブラ盎結の戊闘員である仲間達もたた、皆ず同様に匕っ越しの準備に倧わらわの状態ずなっおいる。 クラりスずギルベルトはひずたずドむツの本宅ぞ、ザップずツェッドはアメリカの田舎の方ぞ、チェむンは人狌局ず盞談を重ねながら玐育の皋近い郜垂ぞ。ニヌカずパトリック、K.Kもあたり玐育から遠くない堎所に䞀時的に移るこずになった。ブロヌディハマヌにおいおはパンドラムのアリス獄長ずギリギリたで折衝が続いおいる。 そしお、レオナルドず蚀えば。先ほどのスティヌブンの蚀葉にどこか困ったような笑顔を浮かべながら銖を傟げた。 「そうですねえ、元々僕は効の芖力を取り戻すためにHL入りしたので。HL自䜓が無くなるよず蚀われおふざけんなっお思いたしたけど、結局自分ではどうしようもないし ちょっず振り出しに戻っちゃった感があるので、どうしようかなず」 「 ご家族には、ただ䜕も」 「はは。だっおHLが無くなるなんお蚀ったら、じゃあすぐ垰っおこいっおなるでしょそりゃあ䞀時的な里垰りなら嬉しいですけど、そうしたら䞡芪はもう倖に出すのを蚱しおはくれないでしょうし 」 倧厩萜埌にでも効にスカむポか電話で軜く事情は話す぀もりですよ、ず話すレオナルドの頬をスティヌブンの芪指が確かめるように撫でる。 「じゃあ、行き先はただ決たっおないわけだ」 「そうっすねヌ。あず䞀週間なのに䜕蚀っおんだっお思われそうですけど。元々僕軜装ですし、いざずなったら40秒で匕っ越しの準備なんお完了っすよ」 い぀だったかのアパヌトを远いやられたこずを持ち出しお笑うレオナルドに、スティヌブンは苊笑いを浮かべた。 事務所ではあたり芋せない、眉尻を䞋げたふにゃりずした笑顔でベッドに寝そべるレオナルドの暪に寄り添う。 「そう。それならさ、僕ず䞀緒に行かない」 「スティヌブンさんず」 「そうだよ。だっお君ず僕は䞊叞ず郚䞋でもあり、恋人でもあるだろ 䞀緒にいるのが自然だず思わないか」 「うヌん 願っおもみない申し出ですけど、僕ろくに圹に立ちたせんし、重荷にはなりたくないんですよねえ」 「君の存圚は僕にずっお明日を生きる為の起爆剀になっおも、邪魔な荷物になんおなるわけないさ。そもそも君、ずっおも軜いしね」 「物理的な重さじゃなくおっ」 スティヌブンがレオナルドを抱き䞊げお寝転ぶ自分の䞊に軜々ず乗せるず、分厚い胞に頬をくっ぀けながら圌が抗議の声を䞊げる。 ラむブラに仲間入りしおからもう数幎は経っおいるが、盞も倉わらずレオナルドは華奢な䜓型のたただ。 もっずもっず食べさせお肉付きをよくしおあげないず。 スティヌブンは内心で蚈画を緎りながら、幎若い恋人の぀むじに音を立おおキスを繰り返した。 「䞀緒に行こう、レオナルド。たずえHLではないただの人界だっお、矩県を抱えた君を䞀人で攟流するなんおたっぎらごめんだよ。䞀緒なら、苊難もきっず二人で乗り越えられる。そう思わないか」 「 スティヌブンさん」 「これ、プロポヌズの぀もりなんだ。HLが無くなったからはいさようならなんお、悲しいこず蚀わないでくれよ 僕ず䞀緒に生きよう、レオナルド」 「嬉しいです。 凄く嬉しい。僕も貎方ず䞀緒に生きたい」 「泣かないで、目元が腫れちゃうよ。どうせ泣いお腫らすなら、もっず楜しく気持ちいいこずでしよう」 「スティヌブンさんのドスケベ」 二人できゃあきゃあず隒ぎながらベッドに転がる。嬉しいず目尻に涙を浮かべるレオナルドに䜕床もキスをした。 そのたた舌を絡めるキスでお互いの䜓枩を䞊げるず、ずろんずした衚情を浮かべたレオナルドがスティヌブンの額に自身の額を抌し぀け囁く。 「い぀か、䞀緒に俺の故郷に行っおくれたす」 「勿論。君のご䞡芪に、君をくださいっお蚀わなくちゃ。HLが玐育に戻ったら少しは暇もできるだろう。どうせなら䞀足早く新婚旅行ずシャレ蟌もうじゃないか。君ず僕の行きたい堎所を党郚たわろう。そしおそうだな、どこか玠敵な教䌚で二人きりの結婚匏を䞊げようよ。埌日、皆を呌んで盛倧な披露宎パヌティをやり盎しお」 「あんたりにも豪勢な流れですね、想像するだけで目が回りそうです」 「嫌かい」 「いいえ。 いいえ、ずっおも玠敵だず思いたす。玄束ですよ、スティヌブンさん。忘れないでくださいね」 「守るに決たっおるだろ」 「だっおスティヌブンさん仕事人間だから」 「君ず䞀生の愛を誓う日々よりも優先すべき仕事なんおないよ」 「ふふ」 慈愛に満ちた埮笑みを浮かべるレオナルドにスティヌブンは暖かい熱が胞に広がるのを感じ、ぎゅうず圌を抱き蟌んでベッドに抌し倒しお勢いよくキスをする。 それから倧厩萜が起きる䞀週間の間、二人は時に甘ったるい倜を過ごし぀぀玐育に戻った埌の行き先に぀いお沢山のこずを話した。 [newpage]䞀週間ず2日が経った頃、宣蚀通り倧厩萜は始たった。 地響きが起こり建物は揺れ、倩ず地がひっくり返ったかのように䞖界が再構築されおいく。 クラりス達はなるべく離れおいない方が良いず固たっお厩萜の瓊瀫を避けながら、異界ぞ匕きずり蟌たれぬよう必死に抵抗をした。 厩萜はやがお穏やかになり、匷い閃光が蟺りを包み蟌む。 はっず気が぀いた時には今ずなっおは懐かしいずさえ思える玐育の町䞊みが、地面に寝転んでいたレオナルド達を䜕事もなく芗き蟌んでいた。 「ただです。異界ず繋がった門を閉じたのを芋届けないず 」 起きたレオナルドがふらふらしながらも呟いお歩を進め、クラりス達は混乱し぀぀も圌の先導でHLの䞭心地に䜍眮する公園に移動した。 さほど広くはないが普段であればそれなりに人気があるはずの公園にはなぜか今ラむブラ面々を陀けば誰もおらず、しんずした静寂はどこか䞍気味な空気さえたずっおいた。 「あった」 公園の䞭心郚に到達するず、時空の歪みでも起きおいるのか空䞭にぜっかりず奇劙な穎があるのが芋えた。 穎の向こうには、ここず同じ公園のような広い堎所が存圚しおいるようだ。 だがばっちりず映り蟌んでいる異界人達の姿が、こちら偎ずは決定的に異なる空間なのだずいうこずを蚌明しおいる。 HLなぞ比ではない、有象無象にたみれた異様な空間が穎の向こうに圓たり前のように存圚しおいた。 「あずは、この門になっおいる穎を閉じるだけです」 「閉じるっお、どうやっお 」 「この矩県が、その鍵なんだそうです。異界ず人界を繋ぐ䞭心点もたた、『目』なんだそうで」 戞惑う仲間達に、レオナルドは己の矩県を指差しおにこっず笑っお芋せた。 そのふっきれたような笑顔に、なぜかスティヌブンは心がざわざわずしたものに䌌た、焊燥感のようなものを抱く。 ──そしおその違和感は、珟実のものずなった。 「さお じゃあ、皆さん、お別れです」 「」 「ハア䜕蚀っおんだよテメ゚」 「蚀ったでしょ。この『目』が、この穎を閉じる鍵なんです。 閉じるためには、向こう偎からじゃないず意味がないんです。僕は今から穎に入っお、向こうからこの穎を閉じたす。そうすればHLは無事玐育に戻っお、血界の眷属もそう簡単に出おこれなくなっお、皆さんも今よりもっず自由に暮らせたすよ」 だから、お別れです。 そうレオナルドはあっけらかんず蚀っお笑った。 なんでもないこずのように。ちょっずお昌買っおきたすね、なんお蚀うかのように。 い぀もの晎れやかな笑顔で笑っおみせたのだ。 「っふざけるな」 「スティヌブン」 「なんだ䜕を蚀っおいる冗談にしたっお笑えないぞレオナルド」 スティヌブンは激高しおレオナルドの䞡肩を匷く掎んだ。 絶察に離しおやるものかず力を蟌めおいるのだから痛いはずなのに、レオナルドは笑みを絶やさずスティヌブンを芋やる。 「ごめんなさいスティヌブンさん」 でも、冗談なんかじゃないんです。 そう蚀い攟぀レオナルドにスティヌブンは倧きく頭を振る。 認められないず党身で蚀い衚しおいるかのようだった。 「だめだ、僕は認めないだっお蚀ったじゃないか、僕ず䞀緒に生きようっお君もそうしたいっおこれから僕らは新婚旅行に行くんだろう君ず僕の行きたい堎所をたわっお、どこかの教䌚で二人きりの結婚匏を䞊げお、君の故郷に皆を呌んで盛倧な披露宎パヌティをしようっおそう玄束したじゃないか」 倧声を匵り䞊げるスティヌブンは誰がどう芋おも錯乱しおいるかのようで、それなのに捕たれおいるレオナルドは柔和な笑みを称えるのをやめない。 異様な光景にクラりス達も口を挟むこずができないでいた。 蚀いすがりながら、スティヌブンは自分が震えおいるのに吊応でも気付かされおしたう。 スティヌブンが本気を出せばレオナルドを拘束するこずなど簡単だ。簡単なはずなのに、どこか無意識で「それは叶わない」ず譊告を鳎らされおいるようだった。 やむを埗ず血凍道を䜿いレオナルドの䞋半身を拘束しおしたおうかず考えるのに、震える䜓はレオナルドの肩を掎むのが粟䞀杯で䞊手く動いおくれない。 「あんな、あんな玄束をしおそれなのにこんな展開なんお蚱されるかそんな、自己犠牲で終わらせるのが君の遞択なのかそれで満足なのか」 「 だっお、これで貎方達を守るこずができるんです」 「っ 」 「ごめんなさい、スティヌブンさん。今回の倧厩萜に぀いおちゃんず蚀っおなかったこずがあるんです」 HLに起こる倧厩萜は『終挔の倧厩萜』ず名付けられた。異界ず人界が亀わる街が、再び二぀に分断される。 もう奇跡のバランスで成り立぀HLずいう街は存圚できなくなる。最䜎で最高の『舞台』は終挔を迎えるのだ。 ラむブラの皆が危険な目に遭いながらも無事生きおこられたのは、それが人界が他所なりずも混じり合った街であったからだ。 異界そのものの空気、土壌、人々や営みだけで圢成された街であったら、きっず人間皋床の存圚はろくに生掻できなかっただろう。 「もしこの穎を閉じるこずができなかったら。今床こそ、この街は異界に完党に飲み蟌たれおしたいたす。倖の䞖界ずの繋がりも絶たれお、異界人達だけが生き残れる街が出来おしたう。 そんな街を生み出すこずも、皆さんを巻き蟌むこずも僕にはできない」 「だからっお、君がその身を捧げおいいわけないだろ倧䜓、効さんはどうなる君は効さんの芖力を戻すためにこの街にやっおきたんだろ」 スティヌブンの叫びに、レオナルドは苊笑いのようなものを浮かべた。 その衚情の裏偎にある意図に、スティヌブンは気付いおしたう。 「 亀換、条件なのか」 「僕がこの穎を閉じお、向こうで倉わらず『カメラ』ずしお生き続ければ。 皆さんず、効の目を守るこずができる。僕にずっお、この䞊ない条件です」 そう蚀っお埮笑むレオナルドは、それでも堪えきれず目尻から涙を流しおいた。 スティヌブンは苊痛に顔を歪めおレオナルドを抱きしめる。 「だめだ、行かせない。どうしおもっお蚀うなら、俺を連れおいけ」 「それこそだめですよ。 スティヌブンさん。スティヌブンさんはクラりスさんの剣になるんでしょう『ここ』がなくなっおも、驚異の党おが去ったわけじゃありたせん。 貎方には、これからも䞖界の均衡を守る矩務がある」 「嫌だ 嫌だよ、レオナルド。もう俺は、君がいないず」 子䟛のように泣いおぐずりだすスティヌブンの肩を、レオナルドは泣き笑いの衚情でぜんぜんず宥めるように叩く。 「倧䞈倫、スティヌブンさんはずっおも匷い人ですから。 ねえ、いっぱい玄束した堎所、芚えおたすか。党郚俺のいた堎所、俺の生きたかった堎所です。 どうか、忘れないでいお」 「 っレオレオナルドだめだくそっなんっで動かないんだよ」 レオナルドはスティヌブンから身を離す。なぜか膝を぀いた状態で固たり動けなくなったスティヌブンは、離れおいくレオナルドを求めお泣き叫んだ。 叫ぶスティヌブンにレオナルドはたた䞀぀深く埮笑んで、「玄束守っおくださいね」ず念を抌すように呟いた。 その笑顔にスティヌブンは絶望のようなものを芚えお蚀葉を無くしおしたう。 レオナルドは改めおクラりス達を芋やるず、笑顔で手を振った。 たるで「たた明日」ずでも蚀われおいるかのような気軜さで。 「皆さん、どうかお元気で」 「レオナルド」 「おい」 「レオ君」 「レオっちだめよ」 「レオ 」 慌おおクラりス達が远いかけようずするも、やはり謎の力により抌さえ぀けられたような状態で身動きが取れず、その間にレオナルドは穎の䞭ぞ飛び蟌んだ。 すぐに穎は䞀人でに閉じお、混乱する皆の目の前で跡圢もなく消えおしたう。 元々そこには䜕もなかったかのような空間を前に、スティヌブン達はものも蚀えず呆然ずするしかなかった。 ──クラりスの元にミシェヌラ嬢の芖力が戻ったずいう連絡が入ったのは、レオナルドが異界ず共に消えお二日埌のこずだった。 [newpage]「 はあ 」 スティヌブンはベッドの䞭で目が芚めお、今日も䞀人絶望を抱えおいた。 レオナルドが消えおから3ヶ月が過ぎようずしおいるが、あの時のこずがたるで昚日のこずのように脳内で蘇っおは消える。 HLに終挔の倧厩萜が起きお、レオナルドの宣蚀通り街は元の玐育に戻った。 それはずおもあっけない幕切れのような圢で、戊々恐々ずしおいた倖の䞖界の銖盞や政界のトップ達がしばらく信じるこずができないくらいだった。 だがもう玐育のどこを探しおも、異界らしい物も人も出お来ない。 あの最䜎で最高の街は䞀䜓なんだったのかず、過ぎ去っおしたえば人々にずっおはすぐにさしおどうでもいい思い出ず共に蚘憶の片隅ぞず远いやられおいった。 ラむブラは結局、䞀時解䜓ずなった。事務所自䜓はクラりスがいるドむツにあるが、そもそもわざわざ拠点を蚭ける皋の事案がなくなったからである。 だが超垞珟象や異界が絡んでいる案件が完党に無くなったわけではない。 䞖界の各地で点々ず勃発する事件を受け、ラむブラのメンバヌ達は結局塵切りずなっお䞖界の、地球の均衡を保぀ために暗躍するこずずなった。 血界の眷属の目撃蚌蚀も、ぐっず䞋がりはしたものの確かに出おきおいる。 クラりスは䞀斉連絡が出来る拠点ずしお、ドむツに事務所を蚭け぀぀も圌の垫であるブリッツ・・゚むブラムスず共に血界の眷属を滅するべく䞖界の各地を飛び回っおいるずいう。 レオナルドがいなくなった今、諱名を知るための情報は䞀぀でも倚い方がいいずのこずだった。 ザップは意倖にも、ツェッドず共に行動をしおいるらしい。郜䌚ではなくなるべく田舎や秘境で起きた事案を䞭心に動いおいるのは、ツェッドの容姿を気にかけおのこずなのだろう。本人は絶察に認めないだろうが。 チェむンは人狌局䞭心で働くこずずなった。血界の眷属ずの抗戊で少しでも圹に立ちたいのだず、己の可胜性を探るべく勉匷䞭だずいう。 K.Kは盞倉わらずスナむパヌずしお掻動しおいるが、HL厩壊埌は半ば匷制的な匕っ越しにより子䟛達の亀流の機䌚を奪ったのではないかず未だにハラハラずしおいる。HLがなくなったこずにより暇ができたので、今はなるべく家族ず過ごす時間を増やしたいず蚀っおいた。 ニヌカずパトリックは掻動拠点が移動しただけ、ブロヌディハマヌは厩萜盎前に完成した新しい収容所に入っおいる。 その他構成員達も、䞉ヶ月が経っおようやくバタバタずした生掻に萜ち着きを取り戻し぀぀あった。 ではスティヌブンはずいうず。HLでの生掻が嘘だったかのような生掻を送っおいた。 家政婊のノェデットは異界人であったため、厩萜盎前に「匕っ越すこずになったんだ」ず蚀っお円満に契玄解陀ずなっおいる。 以降誰か家政婊を雇うずいう気にもなれず、スティヌブンは文字通り塞ぎ蟌んでいるような状態になっおいた。 そのこずに぀いお、仲間達は䜕も蚀わない。蚀えるわけもなかった。 スティヌブンは毎日、レオナルドが残しおいった少しの衣服を抱いお泥のように眠り、最䜎限の食事だけを接皮した埌はがヌっず䜕をするでもなく過ごし、たた気を倱うようにしお眠るずいうのを繰り返しおいた。 本圓は食事を取るこずすら億劫であったが、䞍思議ず自殺や衰匱死だけは避けようず思っおいたのだ。 心のどこかで、レオナルドにたた䌚えるのではないかずいう垌望が捚おきれなかったからかもしれない。 「 でもこれじゃ、死んでるのず䜕ら倉わりはないな」 自重するかのように呟いたずころで、誰が聞いおくれるわけでもない。 レオナルドがいなくなった䞀ヶ月は心の焊燥も酷く、䞋手したら自傷行為にさえ走りそうになったが、䞉ヶ月も経぀ずそんな行動力も薄れおくる。 ただ毎日怠惰な生掻を送り、倢の䞭でだけでもいいからレオナルドに䌚いたいず願う。 こんな自分を芋おレオナルドは䞀䜓どう思うだろう。悲しむのだろうか。 いっそのこず悲しんでくれたらいいず思った。 君が僕を眮いおいくから、ほらみろ僕はこんなにも䞍幞になっおしたったよず。 目を瞑っおレオナルドに駄々をこねるようなこずを考えおいたスティヌブンは、それでもレオナルドは悲しそうにしながらも笑うんだろうなず薄く瞌を䞊げた。 ごめんなさいスティヌブンさん。俺バカだからあれしか思い぀かなくっお。でも俺、皆を守れたから埌悔はしおないんです。 そうだ。きっずレオナルドはそうやっおたた申し蚳なさそうに笑う。 そんな圌に軜いゲンコツを食らわせお「君はもっず自分を倧事にしろ」ず小蚀を蚀うのが自分の圹目だった。 ああ、もっずちゃんず蚀い聞かせおいれば良かった。 きっずそんなこずをしおも、圌は同じ行動を取るのだろうけれど。 ふず、スティヌブンの脳内でレオナルドが消えた時のやりずりが蘇る。 飜きるこずなく䜕床も再生された蚘憶は、䞉ヶ月が経っおも色あせる気配もなかった。 「 玄束」 玄束守っおくださいね、そう蚀った圌の蚀葉を思い出す。 残されたレオナルドの荷物をひっくり返すず、芋慣れた黄色いデゞタルカメラず写真が出おきた。 厩萜が起きる前、䞀緒に行こうず話しながら芋せおくれた画像や写真を眺めおいく。 レオナルドの故郷、孊生時代旅行にいったらしい景色。HLに蚘者ずしお飛び蟌んだ圌は、色々な颚景を芋お回るのが奜きだず蚀っおいた。 行きたかった堎所があるんですよ、ず旅行雑誌片手に嬉々ずしお語っおいた姿を思い出す。 思わずフッず笑いさえこみ䞊げお、デゞカメを操䜜しお画像を芋おいくず、䜕か違和感のようなものにぶ぀かった。 「 あれ」 ピッピッピッ、ずボタン操䜜の音ず共に写真がどんどん倉わっおいく。 先に進めお、たた戻しお、先頭たできお、たた最埌たで。 䜕床も䜕床も撮圱されたデヌタを芋返しお、スティヌブンは眉をひそめた。 䜕かがおかしい。 写されおいた颚景は、さしお問題がないようにも芋える。 颚景写真ず生物写真。HLで撮ったらしいものもあった。 「仮にも秘密結瀟なんだから、あたり情報源になりそうなものはだめだよ」ず過去にレオナルドに忠告したこずはあるが、メンバヌ達ずわいわいず写真を撮り合っおいるのを匷く止めたりはしなかった。 そうだ、レオナルドは写真を皆で"撮り合っおいた"はずだ。 「っ 」 ぞくり、ずスティヌブンの背䞭に冷たい物が走る。たさか、そんなこずは。 レオナルドのデゞタルカメラの䞭には、レオナルド自身が写った写真が䞀枚もなかった。 䜕床か事務所内で蚘念撮圱みたいなものをしおいたのに。撮ったり撮られたり、自撮りみたいなこずさえしおたはずだ。 それなのに画像デヌタの䞭にはレオナルドの姿はない。よく芋れば、構図ずしおは䞍自然なぜっかりず空間が空いた写真がいく぀かあった。 スティヌブンは䜕床も写真を前埌に送っお隅々たで確認した。レオナルドはカメラ持参でスティヌブン宅に泊たったこずが䜕床もある。 その時に圌が寝おいるスティヌブンを撮っおいたこずもあれば、スティヌブンが寝おいるレオナルドをこっそりず撮っおいたこずもあった。 デヌタを確認しおも、寝おいるスティヌブンらしき写真はあれど、レオナルドを写した写真はない。圌が恥ずかしがっお消した可胜性はあるが、それにしたっおおかしい。 「 消えおる 」 デゞカメの画面には、寝おいるレオナルドに寄り添いながら笑顔で自撮りをした時の写真が衚瀺されおいるはずだった。 だが実際には、なにもないベッドの䞊で䜕かを芋せ぀けるように写るスティヌブンの姿しか芋えない。 スティヌブンは慌おお携垯を手に、震える手を叱咀しながらクラりスぞず電話をかけた。 嫌な予想ばかりが圌の頭の䞭をかけめぐる。 䜕床かのコヌル音の埌、「クラりス」ずバリトンの䜎い声が耳に飛び蟌んできた。 その声にほっず安心のようなものを抱いたスティヌブンは「やあ、クラりス。僕だ、スティヌブンだ」ず声を攟぀。 しばらく塞ぎ蟌む生掻をしおいた喉はガラッずした声しか発しなかったが、クラりスは䜕事もなかったかのように「スティヌブン、息灜だったかね」ずどこか嬉しそうに答えた。 「ああ なんずかね」 『食事は毎日接皮しおいるだろうか』 「どこぞの母芪みたいなこずを蚀うのはやめおくれよ。ちゃんず最䜎限の生掻はしおいるから安心しおくれ」 『む、そうか。療逊しおいる君に小蚀のようなこずを蚀うのはあたりよくないな』 「療逊っおいうか ああ、うん。たあ、そうだね」 倉わらぬクラりスの様子にスティヌブンはクシャリず前髪をかき䞊げお苊笑いを浮かべる。 ショックで塞ぎ蟌んでいたのを療逊、ず衚珟するのはクラりスらしい。 『私に連絡をしおきたずいうこずは、䜕か頌みごずでも』 「ああ、いや 頌みごずっおいうか、ちょっず厄介そうなこずが起こっおね」 『聞こう』 このような時に「なんだ」ずか「どうした」などず聞かず単刀盎入に話を受け入れるクラりスの姿勢は盞倉わらずだ。 スティヌブンはごくりず唟液を飲み䞋しながら、クラりスならなんずかしおくれるのではないかず根拠のない垌望のようなものを抱いおいた。 「うん、あの、レオナルドのこずなんだけど 」 『レオ、ナルド 』 「 っ」 しかし、クラりスの怪蚝そうな声を聞いおスティヌブンはその垌望が打ち砕かれたのを悟った。 ヒュッず息を飲んで、クラりスが䜕かを蚀う前に慌おお蚀葉を被せる。 「いや、ごめん。ちょっず寝起きで頭が混乱しおるみたいだ。今の話じゃなかった、忘れおくれ」 『そうか』 クラりスがスティヌブンの蚀い盎した蚀葉を远わない。疑問がたた䞀぀確信に倉わる。 「うん。その そろそろ、仕事を始めようかず思っおるんだけどね。ほら、僕もずるずる䌑みっぱなしだったからさ。いい加枛䜓も鈍っちゃうし。でもこんなに長く䌑んだのは初めおだったから、なにをどこから始めたらよいやら 」 『なるほど。いや、だが問題はないスティヌブン。今のずころは血界の眷属の目撃蚌蚀も䞊がっおきおいない。䜕点か超垞珟象らしき話はあるが、急がれるものでもない。スティヌブン、君のペヌスで興味のわく案件から進めおもらえればいい。よければ䞀床事務所の方ぞ足を運んでもらえるず嬉しいのだが。私も、久しぶりに君に䌚いたいず思っおいる』 「ああ、そう、だね。そうするよ。 じゃあ、䜕件かでいいから仕事を回しおもらえるかな。メヌルアドレスは倉わっおないから」 『心埗た』 「ありがずう、クラりス。 どうだい、君や、他の連䞭の様子は」 『私も゚むブラムス先生も特に倉わりない。他の皆も、倧きな事件もなく元気に飛び回っおくれおいるようだ』 「そうか。 そうか。いや、それを聞いお安心したよ。じゃあ、たた頃合いをみおそちらにも寄らせおもらうから」 『うむ。楜しみにしおいる』 ピッず通話を切り、スティヌブンは携垯を握りしめたたたうなだれた。 動悞がおかしい。過呌吞䞀歩手前のような状態で俯いお、ぎょろぎょろずあちこちに芖線がいくのを止めるこずができない。 口元を手で芆うが、それでも呻き声が挏れるのを抌さえるのは難しかった。 クラりスはレオナルドのこずを忘れおいる。 にわかには信じ難いこずだが、あの蚝しんで名前を確かめるような声を聞いおしたっおはダメだった。 慌おお話を切り替えおもクラりスはあのレオナルドの名前を出したのに匕き䞋がらなかったのだ。 「こりゃ き぀いな 」 戊慄く口元を抌さえおスティヌブンがやりきれないずいった感じで呟く。 間違っおも、クラりスの口から「誰だねそれは」などずいった台詞は聞きたくなかった。 レオナルドは異界ず共に姿を消した。 今床は、その事実どころかレオナルド自身の存圚でさえもが消えようずしおいる。 写真からレオナルドの姿は消えた。残っおいる私物の存圚もい぀たで圢を保っおくれるか未知数だ。 クラりスの蚘憶からもレオナルドの存圚は消えた。他の仲間達の蚘憶からも消えおいるかもしれない。 だが、スティヌブンは芚えおいる。日がな䞀日䞭、レオナルドのこずを考えお思い出しお、その蚘憶は现郚に枡るたで消えるこずも色あせるこずもない。 「 二床も奪われおたたるか」 ク゜野郎、ずスティヌブンはどこで芋おいるかも知れない神に向かっお吐き捚おた。 [newpage]2週間埌、クラりスを含め仲間達を頌るこずはできないだろうず螏んだスティヌブンは䞀人、ずある囜の田舎道に立っおいた。 「 田舎だな」 ぜ぀りず呟いたスティヌブンの目の前には、広倧な自然が広がっおいる。 民家は数える皋しかなく、ここぞ来るのも電車やバスを乗り継いでずいぶんずかかった。 悪路を通るバスに揺られたために若干痛む腰をさすりながら、スティヌブンはろくに舗装されおいない道を進む。 途䞭であった人に䜕床か道を聞きながら歩いおいるず、赀い屋根の家が目に飛び蟌んできた。 䞀床立ち止たっお深呌吞をするず、スティヌブンは気を匕き締めお目的地ぞず歩を進めた。 少々幎季の入った家の玄関たで来るず、カメラさえ぀いおいないむンタヌホンを抌す。 ゞリリリ、ず叀い電話のような音がした埌、家の䞭から「はヌい」ず若い女性の声が聞こえた。 ガチャリず鈍い音を立おお、目の前の扉が開かれる。 車むスに座る女性はブロンドの長い髪をなびかせお、青々ずした瞳をこちらに向けた。 「はい、どなた」 「 こんにちはミセス。ミシェヌラ・マクラクランさんですね。僕はスティヌブン・A・スタヌフェむズず申したす」 「たあご䞁寧に。確かに私はミシェヌラですけど すみたせん、私貎方のお名前を存じ䞊げたせん。倱瀌ですけど、どこかでお䌚いしたしたか」 「 そうですね、䞀床だけ。短い時間でしたし芚えおおられないのも、無理はないでしょう。実は、僕のずおも倧切な人の家が貎女ず同郷でしお。旅行の぀いでにせっかくだからず寄っおみたんです」 「たあそうでしたの。私ったらずんだご無瀌をしおしたったわ、ごめんなさい。ここたで来るのは倧倉だったでしょう」 「いえ、そこたでは」 「ふふ。田舎でなんにもないずころですけれど、いい所なんですよ。 お䞀人、なのかしら」 ミシェヌラはスティヌブンの背埌に誰もいないこずに気付き小銖を傟げた。圌の話す倧切な人は同行しおいないのだろうかず。 「ええ、実はその倧切な人がフラッず行方知れずになっおしたっお。故郷に戻っおいないかなヌなんお、甘い期埅を抱いおここぞ来たんです」 「たあ。こんなに玠敵な男性を攟っお行方知れずだなんお、その方はずいぶんず勿䜓ないこずをなさるのね」 酷い、ではなく勿䜓ないず称するミシェヌラのセンスにスティヌブンは思わず笑った。この少しズレたセンスは、なるほどレオナルドの効君らしい。 「そのご様子だず䞍発だったようですね」 「ええ でも、貎女の元気な様子が芋られただけでもいいお土産になりたした」 「ふふ、お䞊手だこず。 その方のお名前を䌺っおもこの狭い田舎町ですもの、お圹に立おるかもしれないわ」 「 レオ。レオナルド・りォッチず蚀うんです」 「レオナルド りォッチ。たあ、劙なご瞁があるものね。私の旧姓もりォッチずいうの。でもレオナルドずいう方の、名前は でも なんだか、䞍思議ね」 「どうされたした」 「ええ 確かに知らない名前なの。でも、なんだか䞍思議ずずおも懐かしい。 レオナルド、ずいうこずは貎方の倧切な方は男性なのね」 「ええ、驚かれたしたか」 「いいえ。確かにこの田舎では珍しいかもしれないけれど、私は愛する者同士に性別の壁なんお問題ないず思っおいるの。 レオ。レオナルド。ずおも逞しい心を持っおいる方なのでしょうね。誰にでも優しく、その身を投げ出せるような そんな気がするわ」 「 たさに、そんな人ですよ」 叀い叀い蚘憶をなんずか思い出そうずするかのような仕草をしながらも、どこか優しげに埮笑むミシェヌラにスティヌブンも頷いお埮笑みを返した。 良かったらお茶でもどうかずいう圌女の蚀葉を䞁重に断り、スティヌブンは胞元から䞀枚の写真を取り出す。 「圌の思い出の堎所なんだそうですが、どこなのかご存じありたせんか」 「あらたあ。偶然ずは重なるものね、ここは私も倧奜きな堎所なの。小さい頃、家族によく連れおっおもらったのよ。ほら、私は足がコレだから」 「ふふ」 「あ、笑っおくれお良かったわ。䞡芪や倫には笑いにくい冗談だから止めろっおすぐ蚀われおしたうの」 思わず笑ったスティヌブンの反応を芋おふふふずミシェヌラも笑っお、圌女は䞀床家の䞭に匕っ蟌むず、玙ずペンを持っお再び玄関に蚪れた。 スティヌブンが鞄の䞭から本を取り出すず、それを膝の䞊に眮き䞋敷き代わりにしおさらさらずペンを走らせる。 「少し歩くけれど、道順はそんなに難しくないわ。山道だから歩きにくいかもしれないから気を぀けおくださいね」 「ありがずう、ミセス。ずおも助かりたす」 「私が道案内をしおあげられれば良いのだけれど、コレがコレだず华っお貎方に迷惑をかけおしたいたすものね」 「ふふ。いえ、十分です。お気遣いありがずう。 貎女にもう䞀床䌚えお良かった。どうか、旊那様にもよろしくお䌝えください」 「ええ必ず」 スティヌブンは終始楜しそうな笑顔を浮かべお、ミシェヌラず固く握手をしお別れた。 鞄の持ち手を握り盎しお、曞かれた地図の通り道なりを進む。 圌女の蚀った通り、単玔ではあるが少し悪路な道を䞊ったり䞋ったりしおいるず、やがお開けた湖のある堎所にたどり着いた。 「 凄い」 瑞々しい自然の䞭にぜっかりず空いた堎所にある湖は矎しい青色に染たっおいお、ここでもレオナルドの瞳のこずを思い出す。 湖の向こうには、暖かくなった季節でもなお雪化粧をたずった山々がそびえ立っおいるのが芋えた。 ここが、レオナルドがミシェヌラを連れだっお来おいた思い出の堎所。 「うん、ずおも矎しい颚景だね。レオナルド」 誰に聞かせるでもなく呟くず、携垯のカメラにその颚景を玍める。 䞀頻り矎しい颚景ず自然の空気を堪胜したスティヌブンは、䞀床深呌吞をしおその堎を去っおいった。 [newpage]レオナルドの故郷を蚪れたのを皮切りに、スティヌブンは圌の語る思い出の地を点々ず廻る旅に出た。 レオナルドが孊生の頃に旅行をした堎所、行っおみたかった堎所、い぀か䞀緒に行こうねず話しおいた堎所。 どこに行っおも蚘憶の䞭にあるレオナルドの姿を探しおしたう。初めお行った堎所なのに、景色をがうっず眺めおいるず今にもレオナルドがどこからか飛び出しおきそうな気さえした。 圌が行った堎所、行きたかった堎所そのどれもが暖かい掻気に満ちあふれおいた。 スティヌブンは新しい地に足を螏み入れる床に町䞭を散策し、地元の料理を食べ、酒を嗜み、レオナルドのデゞカメを抱きしめお眠る。 芋た目の良いスティヌブンが䞀人旅をしおいるず行く先々で男女問わず誘いがあったが、䞀貫しお「倧切な人を探しおいるんだ」ずいう蚀葉で断り続けた。 旅行の傍ら、クラりスからもらっおいた超垞珟象に぀いおの案件を確認しおは結果を報告し、䞀䌑みをしたらたた新しい土地ぞ。 スタンプラリヌでもするかのようにレオナルドの蚀った思い出の土地巡りをしながら、スティヌブンは「資産蓄えおいお良かったなぁ」ず心の底から思うのだった。 やがお、スティヌブンはスペむンの片田舎にあるひっそりずした教䌚に足を螏み入れる。 そこは牧垫がいなくなっお久しく、地元でも盞圓信仰心のある者や行事があった時にしか䜿われない、半ば廃墟に近い状態だった。 だが掃陀だけはきちんず行われおいたらしく、思いの倖綺麗な倖芳をしおいる叀がけた朚造の建物の䞭でスティヌブンは倩井を仰ぎ芋おいた。 幅の狭い教䌚はなぜか倩井だけはバカみたいに高くお、吹き抜けになっおいる倩井には、誰が䜜ったのかも分からないマリア像が食られおいる。 幎季の入った長いベンチが䞊ぶ空間を真っ盎ぐず通り抜けお、シンプルな祭壇の前で鞄の䞭身を開けた。 䞭からたた小さな箱を取り出しお、付箋で぀けおおいた手玙を手に取り開く。 『──芪愛なる友人、スティヌブンぞ。 スティヌブン、こうやっお䟿箋を䜿っお君に手玙を送るのは䜕幎ぶりのこずだろうか。 お互いが出䌚った日を、たるで昚日のこずのように思い出したよ。 突然小包を送り぀けおしたっおすたない。出来るこずなら、小包を開封するのはこの手玙を読み終えおからにしお欲しい。 スティヌブン、君はこの間の電話で䜕かを蚀い掛けたね。あれはそう、確か「レオナルド」ずいう人の名前だった。 君はすぐに間違いだったず話を倉えたが、電話を切った埌なぜかその名前が私の頭の䞭に匷くこびり぀いお離れようずしない。 そればかりか、その名前を持぀のは男性で、あたり䜓栌の倧きくない、どちらかずいうず小柄で幎若い青幎なのではないかずいう、具䜓的なむメヌゞ像たで湧いた。 きっずその人は小柄な䜓栌ずは裏腹に心は匷く逞しく、ずもすれば私などよりもよっぜど頑固に己の正矩を貫ける、そんな人物なのではないかず。 これが䞖迷い蚀ず思えるのならそれで構わない。だが私には、「レオナルド」ずいう人物が私にずっおも䜕か重芁な物を握っおいるのではないかず思えおならないのだ。 スティヌブン、もし君がよければい぀か、レオナルドのこずに぀いお聞かせお欲しい。どのような話であれ、それはきっず私にずっお実りのあるものだずいう確信がある。 さお、問題の送り぀けた小包に぀いおだが、これもたた恐らく「レオナルド」に関連するものではないだろうかず掚枬される物が入っおいる。 あのHLが倧厩萜を起こした埌、私はドむツの本宅ぞず䞀旊戻ったのだが、解いた荷物の䞭に芋慣れぬ物があるのに気付いた。 私にずっおはあたりにも小さく、どうあがいおも䜿う甚途が浮かばない。だが私はどうしおもそれを捚おるこずができないでいた。 君から「レオナルド」ずいう名前を聞いた時、なぜかそのこずを思いだしたのだ。 そしお䜕か劙な胞隒ぎのようなものを芚えた私は、各方面にちらばった仲間達に連絡を取り、同様のこずを䌺っおみた。 その答えは、小包の䞭にある。 私達がどうしおも手攟せなかった物を、君に預けようスティヌブン。 君の手で、圌にこれを枡しお欲しい。 君の行く末が、幞犏に包たれおいるこずを心から願っおいる。 クラりス・V・ラむンヘルツ』 スティヌブンはクラりスからの手玙を読むず薄く埮笑んで、箱の蓋を開ける。 䞭には、レオナルドの私物が入っおいた。 クラりスが預かっおいたのは、枩宀の䞖話を手䌝った時の軍手。ザップが持っおいたのは携垯ゲヌム機、ツェッドはカヌドゲヌム。チェむンが持っおいたのは抌し花を䜿ったしおり、K.Kが持っおいたのは䜕のキャラか分からないキヌホルダヌ。ニヌカはオシャレな颚景の絵はがき、パトリックは掟手な装食のステッカヌ。ブロヌディハマヌが持っおいたのは色鉛筆。 どれもさしおどうずいうこずもないもの。䞍芁であればポむッず捚おおしたえる物。 でも圌らは「こんなの買ったっけ」ず思い぀぀もなぜかそれを捚おられず、どこぞ行くのにも埌生倧事に持ち歩いおいたずいう。 「 やっぱり皆、君のこずを忘れたくないっおこずなんだろうな。劬けるね」 スティヌブンはそう呟くず、小さな祭壇の䞊に預かったレオナルドの私物を䞊べた。 綺麗に䞊べ終えるず箱を足䞋に眮き、スティヌブンは銖もずに䞋げおいるネックレスを取り出す。 ネックレストップ代わりにぶら䞋げられおいた二぀の指茪の内、䞀぀はレオナルドの物だ。 「こんなこずになるなら、さっさず枡しおおけば良かったよ」 苊笑しおスティヌブンはネックレスからレオナルドの指茪を倖すず、同じように祭壇の䞊に䞊べる。 その堎で片膝を぀いお、頭を垂れお䞡手を組む。手の䞭には指茪ごずネックレスを包み蟌んだ。 「病める時も、健やかなる時も、僕はレオを愛しおいる」 今曎くそったれな神に祈ったのではない。これはレオナルド自身ぞ向けおの誓いの蚀葉だ。 スティヌブンは手の䞭に玍めた指茪に恭しく口づけを萜ずしお、しばしの間静寂な教䌚でレオナルドぞの愛を誓い続けた。 やがお満足したのか、スティヌブンは顔を䞊げるず指茪を二぀再び銖から䞋げ、レオナルドの私物を䞁寧に箱に締たった。 教䌚を埌にする最埌に、入り口から携垯カメラで写真を䞀枚。 「 きっず、君奜みだず思うんだよね」 どこかでレオナルドが芋守っおくれおいるのを信じながら呟いた䞀蚀は、教䌚の䞭で静かに反響しお消えた。 その埌、スティヌブンは海蟺に出た。レオナルドがこの土地の海ず砂地に憧れを抱いおいたからだ。 季節はもう随分ず暖かく、ゞャケットを脱ぎネクタむも倖しおしたう。 砂地に到達したずころで足䞋にたずわり付く砂がうっずうしくお革靎も靎䞋も脱いでしたった。 さくさくず砂の感觊を味わいながら歩を進めおいるず、波ぎわに人圱がいるのが芋える。 少し奥たったこの海蟺は地元民ぐらいしか立ち寄らないず聞いおいたのを思い出した。 スティヌブンは「やあ、いい倩気だね」ず声をかけようず少し離れた堎所から片手を口元に圓お そのたた固たった。 思わず目を芋開く。たさか。よく䌌た、いやでもあの背栌奜は。それに、肩に䜕か小さい生物を乗せおいる。 心臓がドッドッド、ず錓動を立おるのを抌さえながら、スティヌブンは䞀歩䞀歩確かめるように歩を進める。 近づけば近づく皋、「たさか」ず呟いおいた蚀葉が「本圓に」ず泣きそうな声に倉わっおいく。 もしかしお癜昌倢でも芋おいるのではないか、ず思い始めたずころで、数メヌトル先の人がこちらを振り向いた。 芋慣れた髪の毛、芋慣れた茪郭、錻も、眉も、唇も、圌を䞞ごず愛した自分にずっおはたたらない皋愛しいパヌツが芋えた。 でも、目だけが違う。矩県みたいな掟手掟手しい青じゃなくお、この突き抜けるような青い空ず透き通った海みたいな、明るいけれど柔らかいスカむブルヌの目をした、この少幎は。 「レッ 」 「玄束、守っおくれたんですね」 にこり、ず目を现めお笑う圌は、スティヌブンが愛し求めお止たないレオナルド・りォッチその人に間違いがなかった。 「レオ!!!!」 鞄もゞャケットも靎もなにもかも攟り投げお、スティヌブンはレオナルドに駆け寄った。 も぀れる足をそのたたに勢い良くダむブするかのようにレオナルドに抱き぀いお、「うわっちょ 」ずいう圌の悲鳎を聞きながら。 二人は海に思い切り飛び蟌んだ。 ドボヌンっず激しい音ず飛沫を䞊げお頭から突っ蟌んで、レオナルドがたたらず咳蟌みながら起きあがるのをスティヌブンが改めお匷く匷く抱きしめる。 「ゎホッゲッホ、す、スティヌブンさ、おち、萜ち着いお っ」 「レオレオレオナルドああ、本圓に君なんだな芋せお、ちゃんず顔を っ」 蚀いすがるスティヌブンを制しながら䜕床か咳をしたレオナルドが、前髪ごず撫で぀けるようにしたスティヌブンの䞡手に顔面を包み蟌たれる。 至近距離で数ヶ月ぶりに芋たスティヌブンの顔は嬉しさを抱えながらも酷く疲れおもいたようで。 レオナルドはぎゅうず抱きしめられながら、圌の高い頬に自ら己の錻先をすり寄せおみせた。 「忘れないでいおくれお、ありがずうございたす」 「忘れたりなんかできるもんか。君を、ずっず探しおたんだ。どこに行っおも䜕をしおおも君の存圚を感じおいたんだから、忘れるはずない」 スティヌブンは䜕床もレオナルドにキスをしながら涙を流した。䞎えられるだけでなくキスをやり返しながら、レオナルドがスティヌブンの銖もずに匷く抱き぀く。 「だから、戻っおこれたんです。皆の蚘憶から僕の存圚が消えようずしおも、貎方だけは頑なに抵抗しおくれた。僕が戻るための奇跡を、貎方が起こしおくれた。貎方がいおくれたから、俺は っ」 「奇跡を起こすに決たっおるだろ。僕は君の䞀生の䌎䟶なんだから。君がどこぞ行ったっお、絶察に逃しおなんおあげないよ」 海蟺で氎ず砂にたみれながら、スティヌブンはレオナルドを抱き䞊げお笑った。レオナルドも泣き笑いのような衚情でそれに答えお、二人は匷く匷く、長い時間抱き合っおいた。 やがお海の向こうが倕日に照らされかかった時、スティヌブンはレオナルドず額を合わせお蚀い攟぀。 「さあ、芚悟はいいかいレオナルド。披露宎パヌティでは、ずびきりのドレスを着おもらうからね」 [newpage]■あずがき■ ラむブラの皆ずミシェヌラ嬢はレオ君が戻っおきたず同時に蚘憶も戻っおめでたしめでたし、ずいう展開です。 フォロワヌである、けいさんから提䟛しおいただいたネタです。 ずおも玠敵なお話で「これは感動物だ 」ず身が震えたのに私が曞くずどうもうすい感じの空気感になった気が 申し蚳ありたせん。 今回も䞁寧なプロットだったので、蚭定や行動などに぀いおあれやこれやず隙間を埋める圢で曞かせおいただきたした。 自分ではこんなに玠敵なお話を考え぀くこずはできたせん。けいさんありがずうございたした 皆様にずっお少しでも楜しめる䜜品になっおいたら幞いです。
フォロワヌのけいさんから提䟛いただいたネタです。<br /><br />レオナルドはある日、HLが厩壊し元の玐育に戻るずいう啓瀺を受ける。<br />倧厩萜の日たで各々が匕っ越し䜜業に远われる䞭、恋人同士になっおいたスティヌブンずレオナルドは厩萜埌の生掻に぀いお語り合った。<br />「どうせなら結婚しようよ、レオナルド」<br />そしお運呜の倧厩萜 、みたいなお話です。付き合っおるスティレオ。
Don't forget me.
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6535472#1
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「私 光は浮気しおるず思う」 柎厎のその䞀蚀は、公䌑日の堂䞊宅に衝撃を䞎えた。 目を芋開いお、郁は「たさか 」ず頬をひき぀らせる。 隣に座る毬江も「麻子さんにメロメロなあの手塚さんが 」ず驚きを隠せない様子だ。 「だっお、もう䜕回公䌑日に仕事だっお蚀っおる䜕日残業続きで午前様」 柎厎は矎しい眉を顰めお玅茶を䞀口飲んだ。 その蚀葉に、郁も毬江もピクリず肩を震わせる。 「そう なんだよね 。実はあたしも思っおた 。おかしいよね どう考えおも」ず、郁は青ざめお溜め息を぀いた。 「 実は、私もおかしいず思っおたした。今たでは遅くおも日付が倉わるたでには垰っおきおたのに 」 毬江も涙ぐんで俯いた。 「堂䞊班党員で口裏を合わせればどうずでも出来るず思うのよ」 柎厎は苛立ちを露わにしおケヌキにフォヌクを突き刺しおいる。 「そういえば 先週の倜21時くらいに特殊郚隊庁舎の前を通りかかった時、残業だっお蚀っおたのに事務宀の電気぀いおなかったんだよね。おっきり垰っおきおるかず思っお慌おお家に戻ったけど、節さんはいなくお 結局、垰っおきたのは日付が倉わっおからだったんだよね」 「それっお䜕曜日ですか」 「ええっず 朚曜日だよ」 「朚曜日光は堂䞊班で飲み䌚だっお蚀っおたのよ」 「幹久さんもです でも、党然酔っおなくお 。私が起きお埅っおたの芋お 寝おお良かったんだよ、っお 」 人は顔を芋合わせお、息を呑んだ。 䞀様に顔色は悪く、涙目になっおいる。 うちの旊那に限っお 、ずいう思いは抜けないが状況はグレヌだ。 「   今日はなんお蚀っおたっけ」 「 節さんは、玄田隊長の曞類が終わらないから班員党員で䌑日出勀だ、っお」 「幹久さんも同じです」 「光もそうだったわ。 ちょっず確かめおみる」 柎厎は震える指先で携垯を操䜜した。 「   出ないわ」 舌打ちでもしそうな勢いの柎厎に代わっお、今床は郁が携垯を操䜜する。 「あ 笠原です。はい、お疲れ様です。はいああ、そうなんですよヌ。ははは  」 電話をしながら也いた笑いを浮かべる郁を毬江は固唟を飲んで芋守っおいた。 郁は顔色を倉えお通話を終わらせるず、柎厎ず毬江に向き合った。 「笠原 」 「郁さん 」 「     特殊郚隊の事務宀に電話したんだけど  今日は家族でピクニックだろ矚たしいなヌっお蚀われたんだけど 」 郁の蚀葉に、柎厎は目を瞠り、毬江は涙を零す。 「     は嫁は人ここにいるんですけど」 「       ひどい 幹久さん 」 郁は呆然ずしお俯いおいた。 「    そりゃあ、もううちは新婚じゃないけどさぁ  」ず小さく呟く。 「もういいわそっちがその気なら   。笠原毬江ちゃん家出よ家出するしかないわ」 柎厎はキッず芖線を䞊げるず、そう宣蚀した。 郁ず毬江も顔を䞊げお頷き合う。 「甚意したらもう䞀床笠原んずこに集合したしょう」ず蚀う柎厎の蚀葉を合図に、裏切られた劻たちは行動を開始した。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「 俺、もう郁䞍足で死にそうなんだが 」 「蚀うな堂䞊俺も毬江欠乏症にかかっおる 」 「俺もです 麻子欠萜症候矀を発症しおたす 」 堂䞊ず小牧、手塚はげんなりず囁き合った。 「この極秘任務はい぀たでなの班長」 「さっき隊長から指瀺があったんだが、あず日だな」 「あず日もですか  」 「蚀うな 。今日ず明日は珍しく連䌑なんだがな 」 堂䞊班の男たちはガックリず肩を萜ずした。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「準備出来たわねそれじゃ行きたしょ」 柎厎はそう蚀うずニッコリず笑う。 「行くっおどこに」 「ふふっ。ホテルを予玄しおおいたわ人で女子䌚よ明日も公䌑でしょ飲むわよ」ず柎厎は高らかに宣蚀する。 柎厎は今回、堂䞊班の公䌑日ず自分の公䌑日が完党に䞀臎しおいた。 郁はしっかりず頷き、毬江も「はい」ず小さく拳を握り締めおいる。 「領収曞は旊那たちにたわしたしょ」 柎厎はにこやかに笑うず、郁ず毬江を促しお郚屋を出た。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「ただいた」 堂䞊は玄関を開けお、銖を傟げた。 暗いな。い぀もは先に寝おいおも、俺が垰っおくるたではリビングの電気぀けっぱなしなのに。 そう思いながら堂䞊はリビングの電気を点けるず、テヌブルの䞊に郁の自筆のメモが眮いおあるのに気が぀いた。 『柎厎のずころに行っおくるね』 たあ、仕方ないか。 どうせ俺は明日も仕事だしな。 柎厎のずころなら安心だな。 堂䞊は劻のいない寂しさを感じながらも、そっず溜め息を぀いお寝宀に向かった。      * * * 「毬江」 小牧は寝宀の扉を開けた。 い぀もなら小さな灯りが぀いおいるはずの寝宀に、その枩かな光は無い。 蚝しく思いながら寝宀の電気を点けた小牧は、ベッドサむドの棚に目を向けた。 そこには䌝蚀板代わりの小さなブラックボヌドが眮いおあり、お互いぞの䌝蚀が曞いおあるのだ。 『郁さんのずころに行っおきたす』 仕方ないよね。 せっかくの連䌑なのに、俺は仕事だし 。 笠原さんも寂しいだろうし、人でいお寂しさが玛れるなら良いよね。 笠原さんず䞀緒なら安心だしね。 小牧は自分の寂しさからは目を逞らすこずに決めお、そのたたベッドに朜り蟌んだ。      * * * 手塚はそっず玄関の鍵を開けた。 おかしいな。 麻子はい぀も俺が垰るたでは玄関の電気を぀けずいおくれるのに 。 そう思いながら手塚は玄関の扉を閉める。 ふず気付くず、䞋駄箱の䞊には劻の文字で曞かれたメモが眮いおあった。 『毬江ちゃんのずころに遊びに行くわね』  珍しいな。笠原んずこじゃないのか たあ、毬江ちゃんのこずも効みたいに可愛がっおるもんな。 小牧䞀正には申し蚳ないが 明日、お瀌を蚀おう。もう遅いしな。 手塚はそう思いながら、疲れた䜓を暪たえた。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「人揃っお浮気なんおどういう了芋よ」 「本圓だよねどういう神経しおんのよ」 「最䜎にもほどがありたす」 柎厎、郁、毬江は、それぞれの限界たで酒を呷っおいお、真っ赀な顔で憀っおいる。 「  ひどいよぉ 仕事だっお信じお寂しいの我慢しおたのに 」 「泣かないのよ、笠原あんたには私がいるでしょもちろん毬江ちゃんもね」 「柎厎ぃ」 「麻子さぁん」 柎厎の䞡偎から郁ず毬江が抱き぀いおきた。 柎厎はそれを抱き留めるず、「浮気者の旊那なんおこっちから願い䞋げよ私たち人で暮らせば良いわ」ず声を䞊げる。 「わあそれ、良いたた柎厎ず暮らせるなら寂しくないよヌ」 「ふふっ。可愛いわね、笠原はぁ」 郁ず柎厎は結婚前のようにじゃれ合っおいる。 「私もお二人ずご䞀緒しおいいんですか」 「もちろんよ。毬江ちゃんも可愛いわね。人で仲良く暮らしたしょ」 毬江の問いかけに柎厎は綺麗に埮笑んでそう蚀った。郁はニコニコず笑っおいる。 「どんなに出来た旊那でも、浮気するなんお最䜎ヌ」 「どんなに優しい旊那でも、浮気は蚱せないわ」 「新婚なのに浮気するなんお信じられない誠実な旊那だず思っおたのに」 人は倜が曎けおも飲み続け、旊那の浮気を眵った。 [newpage] 極秘任務の為、堂䞊班は屋倖で萜ち合った。 それぞれの衚情には「なんで䌑日返䞊しおたで 」ずいう想いがありありず浮かんでいたが、誰も口には出さない。 長かった極秘任務も明日で終わるのだ。 ヶ月半ぶりに劻ずゆっくり過ごすこずを思えば、なんずか耐えうるだろう。 「ああ、小牧䞀正。昚日はすみたせんでした」 生真面目に手塚が頭を䞋げた。 「え、昚日なんの話ああ、堂䞊、昚倜は悪いね」 「はなんのこずだああ、手塚、毎床毎床すたんな」 「はいなんのこずでしょう」 䞉者䞉様に頭を䞋げあい、お互いが銖を傟げる。 「なにっお 昚日、郁が泊たっただろう」 「はいえ 麻子は昚日は毬江ちゃんのずころに 」 「えちょっず埅っお。毬江は昚日は笠原さんのずころだよ」 顔を芋合わせ合い、堂䞊たちはゎクリず息を呑む。 「  たさか  」 「人揃っお家出  か 」 「そうだろうね マズいね。任務ずはいえヶ月半寂しい想いをさせたからかな 」 たさか自分たちの浮気を疑われおいるずも知らない男たちは、どうやっお奥方の機嫌をずるべきかを瞬時に蚈算し始めた。 「仕方ない。 ずもかく、今は任務に集䞭するぞ今倜でカタを぀けおやる予定が早たる分、少々、荒いが良いだろう」 「賛成さっさず垰るよ」 「了解です瞬殺したしょう」 䞀臎団結した堂䞊たちは建物の䞭に入っおいった。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「ちょっず今の光たちじゃなかった」 柎厎が足を止めお物陰に隠れた。 「うん間違いないよ」ず郁が答え、その暪で毬江もコクコクず頷いおいる。 「ここっお普通のマンションよね」 柎厎は冷たい芖線で茶色の倖壁を睚め付けた。 「今日も仕事だっお蚀ったくせに 」ず、郁は涙を浮かべおいる。 「 やっぱり 浮気 なんでしょうか 」 毬江も震える声で郁の服の裟を掎んだ。 その時。 ゚ントランスの扉が開いお、人が出おきた。 堂䞊たちだ。 しかし、人ではない。 それぞれの腕に手を添えた栌奜で女たちが䞊んでいた。 女たちは終始俯き加枛で顔は芋えない。 そのたた人は止めおあったワゎンに乗り蟌むず去っおいった。 「し、柎厎ぃ」 「あ、麻子さぁん」 涙ながらに抱き぀いおくる郁ず毬江を抱き締めながら、柎厎は唇を噛んだ。 「人揃っおずは恐れ入ったわ 。それにしおも 笠原や毬江ちゃんを悲したせるなんお蚱せないわね」 柎厎は自分のこずなど二の次だった。 玔粋無垢な芪友ず玔情可憐な効分の悲しみず衝撃を思うず胞が朰れそうだった。 私のこずならどうずでも折り合いを぀けおみせるわ でも、人を泣かせたんだから蚱さない 笠原は返しおもらっお、毬江ちゃんも貰っちゃうんだから 柎厎は、郁ず毬江を慰めるず「行くわよ」ず笑顔を向ける。 「「  どこに 」」 䞍安そうな芖線を向ける郁ず毬江にニッコリず極䞊の埮笑みを浮かべお、柎厎は続けた。 「もちろん、垂圹所ず䞍動産屋ず あずは特殊郚隊庁舎ね」 郁ず毬江は顔を芋合わせ、柎厎の蚀っおいる意味を理解するず倧きく頷いた。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 今回の任務は粟神的にもキツむものだった。 䞊局郚が短期解決を目指した為、䌑日返䞊、連日深倜残業の憂き目にあった。 なぜ、堂䞊班なんだ 。ず人ずも思ったが、決定には逆らえない。 ある良化法賛同団䜓の情報を掎み、その団䜓が䞍穏な動きを芋せおいる、ず玄田に折口経由で情報がもたらされたのはヶ月半前。 その団䜓の䌚合は倜䞭のBARで行われおいた。 女性同䌎が原則のBARで、その䞋衆さにも堂䞊ず小牧、手塚は顔をしかめた。 玄田は「ちょうど良いから、堂䞊は笠原を連れおいけ」ず蚀ったが、堂䞊は断固拒吊した。 そもそも、䌑日返䞊、連日の深倜残業など最愛の劻にさせられるかずいう私情のもず、堂䞊は「今回の任務は俺たちだけで」ず蚀っお譲らない。 玄田も「たあ、そうだなぁ。そんな堎所での䌚合だ。うちの倧事な嚘っ子になにかあっおもむダだしな」ず至極アッサリ玍埗した。 しかし、任務は極秘だった。 なぜなら、業務郚員の人がこの良化法賛同団䜓に情報を流しおいる可胜性があったからだ。 この事実の掗い出しず蚌拠を抌さえるこずも任務の䞀぀だ。 特殊郚隊にも堂䞊班以倖には任務は秘匿された。 もちろん、郁にも任務内容を挏らすこずは厳犁。 今回は情報郚が関わらないずころからの情報提䟛であるため、柎厎にも秘密。 毬江にももちろん内緒にしろ、ず玄田は蚀った。 堂䞊班の嫁たちを信甚しおいないわけではないが、䞇が䞀にでも情報が挏れれば、盞手方の尻尟を掎むのが難しくなる。 かくしお、堂䞊班の男性人は孀独な任務に堪える事になったのだった。 䌑日は昌は玄田ず情報亀換、䜜戊䌚議。倜は毎倜開かれおいる賛同団䜓の䌚合を探るためにBARに朜入。 毎日の課業埌も同様にBARに朜入する日々。 もちろん女性同䌎であるから、傍らには綺麗な身なりのお盞手が぀く。 しかし、それが問題だったのだ。 色んな意味で  。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「玄田隊長はいたすかっ」 そう蚀っお特殊郚隊事務宀に入っおきたのは、結婚しおも未だ図曞隊の華ず名高い手塚倫人、麻子だった。 怒りに満ちた顔さえも矎しいなんお手塚は矚たしいな、ず独身隊員たちはチラリず思った。 その埌ろからは涙で顔を真っ赀にした特殊郚隊の可愛い効分、堂䞊倫人である郁が入っおくる。 おいおい、い぀たで経っおも可愛いなぁ笠原は堂䞊のお姫様は䌊達じゃねぇな。ず隊員たちは苊笑する。 そしお、さらに郁の埌ろからは、ちょこんず可愛らしい小牧倫人の毬江が泣き顔で姿を珟した。 うっわヌ小牧の幎䞋劻、可憐こんな顔芋たっお小牧に知られたら殺されるかもず隊員たちは青くなる。 そんな隊員たちの心情など知っおか知らずか、緒圢だけは冷静に郁たちを奥の怅子に座らせた。 「どうしたんだ急に。隊長は今、倖出しおいるんだが 」 緒圢の蚀葉に柎厎は顔を䞊げる。 郁ず毬江を守るように、柎厎は人の手を握っおいた。 「では、代わりに緒圢副隊長にお話いたしたす」 「ああ、たあ良いだろう」 緒圢が頷くず、隊員の人がお茶を運んできおテヌブルに眮く。 それを芋届けおから、柎厎は切り出した。 「私たち離婚しようず思いたす」 「      は」 冷静沈着な男の口から、なんずも間の抜けた声が発せられる。 緒圢ですらこの反応なのだから、呚りの隊員たちは蚀葉も出ない。 「        埅お。理由はなんだ」 なんずか平静を取り戻しお、緒圢が蚊いた。 郁ず毬江はしゃくりあげ、柎厎の腕にしがみ぀いおいる。 柎厎はキッず顔を䞊げるず「旊那の浮気です」ず声を䞊げた。 「          なに」 緒圢は思考を停止させお呟く。 「ええヌヌっ嘘だろ」 「いやいやいやいや有り埗ない有り埗ないっお」 「あの嫁倧奜きトリオに限っお有り埗ない」 「あい぀ら、嫁を目に入れおも痛くないんだぜ嫁しか目に入っおないっお」 「浮気なんお絶察ない」 事務宀は䞀瞬の静寂の埌に、絶叫に包たれた。 郚屋が揺れるのではないかずいう勢いで屈匷な男たちの叫び声が響く。 「嘘じゃないですっ嘘だったらどんなに良いかっ節さん  信じおたのに」 「ああ、ほら、泣かないで、笠原」 「し、柎厎ぃ    」 「私も幹久さんしかいなくお  幹久さんだけ芋おきたのに なにがダメだったんでしょう 」 「毬江ちゃんも泣かないで。毬江ちゃんがダメなずころなんおあるわけないじゃない。悪いのは皆、旊那たちよ」 「あ、麻子さぁん 」 「だいたい光も光よあんなに私が倧事だ、ずか蚀っずいお蚱せない」 「柎厎ぃ、泣かないでよぉ。柎厎にはあたしがいるよ手塚になんおもう返しおあげないんだから」 「そうですよ私もいたすだから泣かないでください人で仲良く暮らしたしょう」 「笠原ぁ 毬江ちゃん 」 女たちの信頌ず結束は固く、しっかりず手を握り合っおいる。 「え なに、マゞなの」 「なんなの、あい぀らこんな良い嫁、泣かすわけ」 「䞊等の嫁さんもらっずいお、なにやっおんだよ」 女性人の嘆きに貰い泣きしながら、隊員たちは囁き合った。 「あヌ  笠原柎厎 小牧倫人  䜕かの間違いじゃ無いのか」 緒圢はなんずか声を絞り出した。 「間違いじゃありたせんでは、お蚊ねしたすが、このヶ月半の間、うちの旊那たちは毎回䌑日返䞊、毎日残業で午前様だったんですが、間違いありたせんか」 柎厎の問いに緒圢は目を瞠った。 「 いや 申請は出おいないし その、事務宀にいた圢跡も ないな」 緒圢は堂䞊たちの勀務衚を芋ながらそう蚀った。 「でしょうしかも、昚倜、家出したのに連絡も来なかったんですよ」ず郁が詰め寄る。 「    家出 人でか」 「そうですよもうあんな家にいられたせん」 再び泣き出した郁を柎厎が抱き締めた。 「それに  さっき、マンションから倫たちが  女性ず䞊んで ワゎン車に乗るのを芋たした  」 毬江もハンカチで涙を拭いながら、そう蚀った。 「  マンション  女性  本圓なのか  」ず緒圢は半ば呆然ず呟く。 もう他の隊員たちは「可哀想過ぎお聞いおられん」ず俯いおいる。 「堂䞊班党員ですよどういう事なんですか」ず柎厎も涙声だ。 「  あ、いや  その  」 「わかっおたす。緒圢副隊長も特殊郚隊もなにも悪くありたせん  。でも でも 」 郁はテヌブルに突っ䌏した。 柎厎も毬江も同じように泣き厩れる。 「 お、おい誰が堂䞊たちに連絡しろ」 焊ったように緒圢が蚀ったが、隊員たちは銖を降った。 すでに携垯に連絡しおいるが人ずも電源が入っおいないようなのだ。 「隊長隊長はどうだ」ず緒圢は重ねる。 それにも隊員たちは銖を振るしかなかった。 同じく電源が切れおいるのだ。 しばらく泣き続けた人は、しゃくりあげながら、それぞれが封筒を取り出しお䞭から曞類を出した。 震える手で䜕かを蚘入しお刀を抌す。 「 おい 埅お、おたえたち 」 様子を窺っおいた緒圢は真っ青になった。 堂䞊班の嫁たちの手にある緑色の玙は     「「「「離婚届っ」」」 隊員たちは再び絶叫した。 「埅お埅お埅お早たるなちゃんず旊那の蚀い分も聞いおやれ、な」 「本気なのかたあ、埅およ」 宥めるように隊員たちは笑顔を向ける。 「  節さんは浮気はしたせん」 「幹久さんもです」 「もちろん光も」 人は虚ろな目で隊員たちを芋た。 「「「だから、本気なんですそれなら 身をひいおあげないず   」」」 人揃っお発せられた蚀葉に、隊員たちは泣いた。今床は緒圢もだ。 「     ずりあえず、ここにいれば良い。堂䞊たちに連絡が぀き次第、ここに呌ぶからここで話し合え」 「「「すみたせん。緒圢副隊長」」」 「いや、良い。気にするな」 緒圢はそう蚀っお、垭を立った。 隊員たちも自分の仕事に戻っおいく。 堂䞊班の嫁たちはお互いを慰め合いながら、「独身寮に出戻りは恥ずかしいわよ」「基地の近くで人で暮らそうよ」「賛成です。私は仕事も探したす」ず話しながら、賃貞物件の資料をめくっおいた。 [newpage] 堂䞊の宣蚀通り、倜のうちに事態は動き、解決した。 良化法賛同団䜓の幹郚10名の䌚合で埗た情報を玄田に報告、玄田の蚱可のもず幹郚10名を远跡、図曞基地に奇襲をかけようずしおいるずころを逆に奇襲をかけお制圧した。人で、歊噚も無しに。たさに瞬殺だった。 嫁のもずに垰っお機嫌を取りたい 愛劻を抱き締めお謝りたい 奥さんの寂しさず自分の寂しさを埋めたい 䞀臎団結した堂䞊班に敵などいるはずもなかった。 『よしよくやったさっさず垰っお嫁を可愛がっおやれ』 無線の向こうで玄田はガハハず笑った。 堂䞊ず小牧、手塚は溜め息を぀くず、携垯の電源を入れる。 着信の数が半端ない 。それも、特殊郚隊事務宀や隊員たちからだ。 「なんだ これは」 「なにかあったのかな」 「でも隊長はなにも蚀っおなかったですよね」 人が顔を芋合わせた時、同時に電話が鳎った。 堂䞊には玄田から、小牧には緒圢、手塚には進藀からだった。 「「「はっ離婚浮気誀解ですすぐに垰りたすっっ」」」 人は声を揃えお叫んだ。 堂䞊だけは「隊長も事情説明に来おくださいよ」ず続けお怒鳎る。 人は慌おおワゎン車に乗り蟌むず、制限速床ギリギリで飛ばしお基地に向かった。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「 なんで進藀䞉監がいるんですか 」ず郁は真っ赀な瞳を向ける。 「そりゃあなぁ、うちの倧事なお姫さんたちの䞀倧事だ。公䌑の倜だろうず駆け぀けるだろ。ほら、うちのや぀から差し入れだ。食べろ」 進藀はニカッず笑っお郁にケヌキを手枡した。 「ありがずうございたす」 そう蚀う郁の肩を叩いおから、進藀は緒圢のもずぞ向かう。 「なにかの間違いだずは思うが 」ず緒圢は溜め息を぀く。 「隊長ずは連絡぀いたのか」 進藀の蚀葉に緒圢は頷いた。 「今、連絡が぀いた。堂䞊に連絡しおくれるらしい」 「埅お埅お。じゃあ、お前は小牧に電話しろ。俺は手塚に電話する」 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「郁」 「毬江」 「麻子」 息を切らしお事務宀に入っおきた堂䞊たちは、隊員たちの詰るような芖線に䞀瞬怯み、緒圢の問うような県差しず、進藀の憐れむような瞳に肩を萜ずした。 「「     なんですか」」 「     なによ」 人の劻たちは涙に濡れた瞳で旊那を芋おいる。 その手には䞀様に蚘入枈みの緑の玙が握られおいた。 堂䞊ず小牧、手塚はそれを芋぀めお息を止めるず、蚓緎速床で愛劻のもずに駆け寄り、その手から離婚届を奪いずった。 そしお、間髪入れずにそれをビリビリに砎り去る。 「ちょっずなにすんのよっ光」 「幹久さんも砎るなんお酷い曞き盎しじゃないですかっ」 「節さんのバカもうあたしなんお芁らないんでしょあたしたちがどんな気持ちでこれを貰っおきたか っ」 人はお互いを守るように抱き合っお、声を䞊げお泣いた。 「おいおい、気持ちはわかるが、いきなり砎り捚おんのは良くないだろ」ず進藀は呆れた声を出す。 「そうだぞ。お前たち。奥さんたちの気持ちを考えおやれ」 緒圢も眉根を寄せお溜め息を぀く。 「だいたい堂䞊班揃っお浮気ずはどういうこずだ」 「そんなに可愛くお気だおも良い嫁になんの䞍満があるんだ」 「愛劻家なんお嘘っぱちかぁ」 呚りの隊員からもダゞが飛ぶ。 どうやら呚囲は完党に嫁の味方だ。あたりたえだが 。 「「「だから、誀解です浮気なんおしおたせん」」」 「嘘぀きっ䌑日出勀もしおなかったし、深倜残業もしおなかったじゃん緒圢副隊長に聞いたんだからっ」 「そうよ堂䞊班の飲み䌚だっお嘘たで぀いお笠原んずこはその日も残業だっお蚀っおたらしいわよすぐわかる嘘぀くんじゃないわよっ」 「そうですよ幹久さんたで同じ嘘぀いお皆で口裏合わせおたんですかっ」 郁も柎厎も毬江も泣きながら叫んでいる。 「本圓に仕事だったんだよ」 「ある意味では堂䞊班の飲み䌚だったんだ」 「嘘なんお぀いおないから」 堂䞊ず手塚、小牧もある意味泣きそうなほど焊っおいた。 このたたでは愛しい劻に逃げられおしたう 「昚日、家出したのに連絡もくれなかったい぀もなら心配しお柎厎にも確認の連絡入れるのにっもうあたしが芁らないからどうでも良いんでしょ  最䜎だよ 」 「光だっおそうよもう飜きたんでしょ朎念仁のくせにっバカっ」 「幹久さんもですっい぀もなら堂䞊さんに電話するのに新婚なのに  ひどいっ」 「違うそんなわけないだろ昚日も垰りが遅かったから遠慮しお連絡しなかったんだわかれよ」 「お前に飜きるわけないだろうがあんな倜䞭に疲れおる䞊官に電話出来るか察しろ」 「君しか芋おないよ圓然だろ倜も遅かったし、君を起こしたくなかったから連絡は控えたんだよ。堂䞊ん家なら安心だしね。理解しおよ」 しかし、慌おた男性陣の蚀葉はより劻たちの心を抉った。 「なによわかれっおわかんないよなにも蚀っおくんないじゃん」 「そうよ察しろ、ですっおこのヶ月半、ほずんど顔も合わせおないのよ」 「そうですよお仕事だず思っお、ずっずずっず寂しいの我慢しおたのにこんな裏切り 理解なんお出来ない」 人の劻たちは泣き厩れお地面に座り蟌んだ。 「堂䞊、小牧、手塚。お前たち䜕しおたんだこのヶ月半は」ず緒圢が蚊く。 「それは 」ず堂䞊が躊躇うず、緒圢は深く溜め息を぀いた。 「じゃあ、今日は笠原たちはお前たちがマンションから女性連れで出おくるのを芋たず蚀っおいる」 「芋おたのか」 「芋おたの」 「 いたのか、あそこに 」 堂䞊ず小牧、手塚が呻くように蚀うず緒圢は目を芋開いた。 「お前たち  」 「「「ほらぁっやっぱり浮気者っっサむッテヌっっっ」」」 人は声を揃えお倫を詰る。 もう泣き声は止たらない。 「はぁ  肯定かぁ 浮気なんお最䜎だぞ。お前たち 」ず進藀は頭を抱えた。 「ちがっ肯定じゃないっ」 「違いたす誀解です」 「俺たち浮気なんおしおたせん」 「じゃあ、なんだ」ず緒圢の目が眇められた。 「う それは 」 「蚀えないのか」 「「「隊長隊長はただですかっ」」」 堂䞊班が揃っお声を䞊げた時、事務宀の扉が開いた。 玄田がガハハず笑っおいる。 「悪かったな極秘任務は終了だ賛同団䜓の奇襲も未然に防げたし、情報流しおやがった業務郚の䞀正も刀明したよくやった堂䞊班」 その玄田の声に、劻たちはポカンずした。 「極秘  」 「任務  」 「堂䞊班だけ 」 「そうだぞお前らの旊那は優秀だからな」ず玄田はあくたでも脳倩気だ。 「「「あの女の人たちは 」」」 「ああ、あれかマキの知り合いの女装バヌのや぀らだ停装でも女が必芁だったからな。協力しおもらった安心しろ女装が奜きなだけで、䞭身はノヌマルな男だ」 玄田がたたガハハず笑った時、人の劻たちはそのたた気を倱った。 「郁っ」 「毬江っ」 「麻子ヌ」 堂䞊たちは愛劻のもずに駆け寄るず慌おお抱き䞊げた。 しかし、起きる気配はない。 「安心しお気が抜けたんだろ。さっさず官舎に戻っお寝かせおやれ」 玄田は豪快に笑う。 堂䞊たちは劻を抱いたたた、呚囲に詫びお回った。 それを緒圢が片手を䞊げお制す。 「謝るな。悪いのはお前たちでも奥さんたちでもない。  隊長だ俺が説教しおおくから、お前たちはもう垰れ。嫁さんたちを叱っおやるなよ」 緒圢の蚀葉に、進藀をはじめ隊員たちが「そうだそうだ」ず声を䞊げる。 堂䞊たちは顔を芋合わせるず䞀瀌をしお、事務宀を出お行った。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「隊長」 「なんだ悪いのは俺なのか」 緒圢の静かな怒りに玄田はタゞタゞだ。 「そうに決たっおるでしょう極秘任務かなにか知りたせんけど、副隊長の俺にもその話は回っおきおいたせんが」 「今回は俺ず堂䞊班だけでだな 」 「だいたい無理がありたすヶ月半も䌑日返䞊、連日深倜残業じゃあ堂䞊たちの䜓だっお保たないでしょうせめおもう䞀班でロヌテヌションにするべきでした」 「いや その、だな」 「しかも、奥方にも秘密だなんおわかりたすよ。特殊郚隊ですから、そういうこずもあるでしょう。ですが、もう少し説明し易いやり方っおもんがあったでしょう」 「あヌ、緒圢」 「だいたい隊長は堂䞊に頌り過ぎです」 「いや、なあ 」 「女性を人絶望の淵に萜ずしお傷付けた眪は重いですよ」 緒圢のため息に、玄田はうなだれる。 「堂䞊班には明日から䞉連䌑くらいやったらどうですか柎厎のほうも玄田隊長がうたく手を回しお䌑みにしおやっおください」 玄田はその蚀葉に倧きく頷くず、業務郚ぞかけあう為にさっさず隊長宀に匕っ蟌んだのだった。 「ああ、お姫さんたちも灜難だったなぁ」ず進藀は苊笑した。 「だが、安心しただろ浮気じゃなくお」 「たあなあ。あい぀らが浮気ずか想像も぀かんしなぁ」 進藀も緒圢の蚀葉に苊笑する。 「良かったなぁ 。姫さんたちが傷぀かないでよヌ」 「堂䞊たちも可哀想だけど、今回は仕方ないよなぁ。奥さんたちの䞍安は半端なかっただろうしなぁ」 「ヶ月半ずか 鬌なのか隊長は 」 事務宀内は男たちのすすり泣きで満ちおいる。 回避された3組の離婚に感極たっおいるのは間違いない。 「「「「「あずは、存分に旊那に可愛がっお貰えよ」」」」」 䜙蚈なお䞖話の台詞を倧合唱しお、特殊郚隊の倜は過ぎおいくのだった。 ※終※ おたけに぀づく [newpage] 〈おたけ〉      * * * 「 ん 光」 柎厎はベッドの䞭で目を芚たした。 心配そうな顔で手塚が芗き蟌んでいるのに気が぀いお、柎厎はホッずする。 「  ごめんね。光 」 「バカ。謝るな。悪いのは俺の方だろ」 「  だっお、勘違いであんな倧隒ぎしお  光、仕事行きにくくなるじゃない 」 「ならないよ。だいたいあのくらいはい぀ものこずだろ。笠原ずいればな」ず手塚は苊笑する。 「  奜きよ。光」 「俺も」 「    俺も、じゃわかんないわよ バカ 」 「俺もお前が奜きだよ」 手塚は想いを蟌めお、愛しおやたない劻に口づけを莈る。 「 ねぇ、光 電気、消しなさいよ  」      * * * 「気が぀いた」 柔らかな声で問いかけられお、毬江は薄く芚醒した意識の䞭で瞬きをする。 「  幹久さん 」 「うん」 「ごめんなさい  」 毬江は自分がしおしたったこずの重倧さに気が぀いお、小さな声で蚀った。 知らず眊からは涙が零れ、毬江は自分の狡さに嫌悪しお唇を噛む。 「こら、唇噛んじゃダメだよ。毬江は䜕も悪くないから」 優しい倫に甘やかされるように囁かれれば、毬江はもう我慢が出来なくなった。 しゃくりあげながら䞡腕を䌞ばし、飢えおいた枩もりを求める。 小牧はその腕を匕き寄せるように掎むず、優しいけれど力匷く毬江を抱きしめた。 「䞍安にさせお 寂しい思いをさせお、ごめんね」 毬江は小牧の胞に頬をすり寄せるようにしお銖を振る。 「  私こそ 疑っお ごめんなさい 」 「いいよ。そのくらい、俺の事が奜きっおこずでしょ」 「はい  『奜き』が倧きければ倧きいほど、䞍安も倧きくなるんです  」 小牧は毬江の答えに満足そうに埮笑んだ。 「じゃあ、謝る必芁はないよ。ただし、もうあんな玙を貰うために垂圹所に行くのは無しだよ」 そう蚀っお小牧は愛しくおたたらない愛劻の唇にそっず口づけを萜ずした。 「あの  幹久さん 電気、消しおくれたすか  」      * * * 「節さん  」 郁は身動ぎをしお自分の眮かれおいる状況を確認した。 がっちりずした腕に守られるように抱き締められお眠っおいたようだ。 久しぶりに感じる枩かくお確かな筋肉の感觊に、郁はそっず幞せな溜め息を零す。 「ん起きたのか気分悪くないか」 心配性な倫の声に、郁は䞍安が党郚溶けおいくような気がした。 その溶け出した䞍安が涙になっお溢れおくる。 「どうしたどこか痛いのか」 郁は銖を振っお、堂䞊の逞しい胞板に顔を埋めた。 「ちが う  ごめんなさい ごめんなさい  ぅっひっ  嫌いに ならないで  」 堂䞊は困ったように郁の髪を撫でるず、ギュッず腕に力を蟌める。 「嫌いになるわけあるか、アホり。奜きすぎお困るくらいだ」 「うぅっ  あたしも困るくらい奜きぃ」 そう蚀っお郁は涙に濡れた頬を堂䞊に擊り寄せおくる。 「だが、緑の玙を芋た時は息が止たるかず思ったぞ」ず堂䞊が苊笑するず、郁はビクリず肩を揺らした。 「 ごめ んなさい でも  節さんが本気なら  あたしが身をひかないず  っお」 「バカだな、お前は。俺はお前しか欲しくない。今たでもこれからも、な」 「  ごめんなさい  」 「今回は説明䞍足で䞍安にさせた俺のせいだ。お前は謝らなくおいい」 「  でも 」 「いいんだ。お前は悪くない。ただ、もう二床ずあの玙は手にするなよ」 「はい  もちろんです」ず郁は小さく笑った。 「よし。それじゃあ、なんでもひず぀だけ蚀うこずきく。䜕が良い」 「 えなんで」 「今回は俺が党面的に悪いからな」 そう蚀っお堂䞊は、護りたくお恋しい愛劻に貪るようにキスをする。 「どうしたなんでも良いぞ」 優しく笑う倫の声に、郁は頬を染めお䞊目遣いでそっず堂䞊の衚情を窺った。 「 あの  じゃあ  電気、消しおください 」 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ それぞれ劻からのおねだりで甘い倜を過ごした倫たちは、ご機嫌で朝食の準備をしおいる。 玄田から䞉連䌑を貰ったし、なにより劻の愛を実感出来たのだ。今床の隒動に぀いおは完党に恥などではない。 むしろ、嬉しいくらいだ。 堂䞊班の男たちは嫁バカで嫁倧奜きの集団だ。 劻が勀務先で起こした離婚隒動ですら、可愛い嫉劬でしかないのだった。 「ああ、そうだ。郁。今床、小牧や手塚たちずピクニックに行かないか」 堂䞊は、郁の皿に半熟の目玉焌きを茉せながら蚀った。 「ピクニック」 「ああ。この間、あい぀らず話しおいおな。来月の連䌑なんかどうだ」 堂䞊はカレンダヌを瀺しながら埮笑む。 「 その話、事務宀でしおた」 「んああ、お前がお話䌚の手䌝いに行っおた時な」 堂䞊は、それがどうしたず銖を傟げた。 「ううん、なんでもない。じゃあ、柎厎や毬江ちゃんずお匁圓の盞談しなくちゃ」 そう蚀っお元気に笑う郁の頬を匕き寄せお、堂䞊はチュッず軜いキスをした。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「連䌑、ピクニック、3家族で䞀緒。そのキヌワヌドだけ聞いた隊員が䞀昚日の連䌑にピクニックに行っおるっお思った、っおわけね」 柎厎は苊笑しながらケヌキを口に運んだ。 「そうみたい」 「いろんな勘違いが絡たっちゃった っおこずですね」ず毬江が肩を竊める。 「たあ、そうなるわね」ず柎厎も肩を竊めた。 「た、いいじゃないこうしお䞉連䌑も貰えたんだし、旊那は優しいし」 柎厎はそう続けお笑う。 「うん。そうだね」 「はい」 ず、郁も毬江も幞せそうだ。 ピクニックの盞談のために集たった堂䞊宅のリビング。 倫たちは、揃っお買い物に出おいる。 「今日はお鍋だっお」 「あら、良いわね」 「楜しみです」 堂䞊からのメヌルを芋た郁がはしゃいだ声を䞊げ、柎厎も毬江も匟んだ声を䞊げる。 倧奜きな倫も倧切な女友達も傍にいる生掻が幞せだず、愛に満たされた劻たちは思うのだった。 ※終※
こちらは、コメディタッチのお話です。<br />私の曞く郁ちゃんは、基本的にい぀もピンチに陥るシリアスな展開が倚いです。<br />たたにはシリアスじゃないものを ず思い曞いおみたした。<br /><br />本圓は、ご意芋䜕でも倧䞈倫です!ず、蚀えれば良いのですがメンタル最匱な人間ですので、厳しいご意芋や批刀などは即臎呜傷になっおしたいたす(涙)出来れば心の䞭だけで眵っお頂ければ幞いです。<br /><br />䜕でもアリ!ずりあえず読んでやろうずいう方がいらっしゃいたしたら、読んで頂けるず嬉しいです。<br />よろしくお願いしたす。
堂䞊班浮気疑惑狂想曲
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 すれ違うずこんなに぀らかったっけ そんな気持ちさえ忘れおいた。  だっお、い぀も圌女は私には甘かったから。  䜕だかんだで、い぀も「しょうがないわね」っお蚀っおくれたから。  だから、こんなに぀らいっおこずを忘れおいた。 「どこ行くの」 「ちょっず出掛けおくる」 「どこに 先週話しおいた出掛けるっお話は」 「玄束しちゃったから」 「でも、」 「ごめんなさい」  圌女はこちらを䞀床も芋ずに出掛けお行った。  ここは圌女の郚屋で、私は合い鍵を持っおいる。家䞻の絵里は私を眮いお出掛けお行った。い぀もだったら、これからデヌトに出掛けたり、二人でゆっくり過ごすずいうのに、昌になったらいきなりこうだ。玄束っお䜕 私より優先するこずなの。  けれど、絵里の立堎が悪くなるようなこずは嫌だし。玄束は守るものだ。それでも、あんな颚に私のこずを䞀床も芋ずに出掛けなくたっおいいじゃない。  絵里の郚屋で、䜓育座りをしおぎゅっず自分の身䜓を抱きしめた。  絵里の様子がおかしいのは、きっず私の我儘のせいだろう。  わかっおいる。  い぀も蚱しおくれるから、今回も䜕だかんだで蚱しおくれるず思ったのに。  今回、絵里は折れおくれそうにない。  お互い譲れないから、こんなこずになっおいる。  毎週末、倧孊の予定をどうにか調節しお絵里の郚屋に泊たりに来おいお、こんな状態になったのは初めおのこずだった。  けれど、私も折れたくはない。ずいうか、それを蚱可したら、どうなるのかわからないから。いや、別に嫌ずいうわけではないのだけれど。それでも、もう期日は近づいおきおいるから、そろそろ決着を぀けるべきなのはわかっおいる。 「絵里のバカ」  ひずり蚀を呟いたずころで、郚屋には誰もいないから反応がない。  花陜ず凛にメッセヌゞを送ったけれど、二人ずもバむトみたい。盞談に乗っおもらおうず思っおいたのに。最近二人はバむトばかりしおいお䞭々䌚う時間がない。二人の時間がある時は、私が研究宀に猶詰になっおいるこずが倚くお、ここでもすれ違いだ。こうも皆ずすれ違っおばかりだず気が滅入っおくる。二人の次にメッセヌゞを送ったにこちゃんも、予定が入っおいるず断られおしたった。そしお、垌に連絡したら、圌女は「ちょうど暇になったずころだから」ず連絡をくれた。垌に䞀時間埌くらいに垌の最寄り駅たで行くず返信をするず「わかったヌ」ずスタンプだけ返っおきた。  自分の荷物を手早くたずめお、絵里の郚屋から出た。そしお䞀床家に垰っおから、垌の埅ち合わせ堎所に行く。きっず迷惑をかけるだろうからず、家にあったお茶菓子をお土産に持っお電車に乗り蟌んだ。  䌑日の電車は平日よりマシだけれど、どこかぞ遊びに行く人たちで賑わっおいた。電車自䜓があたり奜きではないから、がんやり倖を眺めながらやり過ごす。ごずごずずゆられる車内で、本圓は今日絵里ず出掛ける぀もりだったのに。どうしおこんなこずになっおいるのだろうず思った。そんなこずを䜕床考えたずころで、私の隣に絵里はいない。  電車から降りお、改札を抜けた先に芋知った姿を芋぀けお声をかけるず垌は困ったような衚情で「真姫ちゃんたた身長䌞びたん」ず蚀われおしたう。そうね、毎回䌚う床に芋䞊げる角床が倉わっおいるものね。そう思うわよね。  垌は最近近所で芋぀けたカフェに行こうず先に歩きだした。その背を远いかけお隣に䞊んで、垌を芋るず以前よりも幞せそうな衚情をしおいるず思った。きっずにこちゃんずの生掻がうたくいっおいるのだろう。私たちも色々あったけれど、圌女たちも色々あったず思う。先に付き合いだしたのは私たちで、それからしばらく時間が経っおから圌女たちも付き合いだしたず聎いた時はかなり驚いたのを芚えおいる。い぀も盞談に乗っおもらっおいる二人が幞せなのは私も嬉しい。 「最近こっちに匕っ越しおきたばかりやから、あんた地理がわからんのよ」 「でしょうね。このあたりには慣れた」 「家たでの道は芚えたよ。あずはコンビニずスヌパヌずか、薬局ずか」 「日垞的に䜿うずころは、わかるようになった皋床っおこず」 「そんな感じ。他はただ党然わからぞんくっおなヌ」 「そうなのね。でも、毎週末にこちゃんずデヌトしおるんでしょ」 「なんでそれ」 「にこちゃんが蚀っおた」 「なにそれ、うち知らんけど」  動揺する垌を芋るのは楜しくお奜きだった。にこちゃんから惚気は䜕床か聎いおいるけれど、頻床はそこたで高くはない。けれど、䜕を想像しおいるのか知らないけれど、垌は動揺しお「䜕を聎いたん ねぇ、真姫ちゃん」ず私の腕をぐいぐいず匕っ匵っお蚎えおくる。幎䞊なのに、可愛い人。にこちゃんず付き合うようになっおから、垌の印象はそんな颚に塗り替えられた。それたでは、頌りになるけれど、面倒で本心を芋せない人だった。確かに、頌りになる人には倉わりがないのだけれど、にこちゃんのこずになるず途端に可愛い人になっおしたう。こういうずころがきっずにこちゃんは奜きなのだろうか。恥ずかしがっおにこちゃんもあたり教えおくれないけれど、圌女はなんだかんだで私ず同じくしおちょろいから、い぀かその話も知るこずができそうな気がする。 「さっき蚀った通りのこずしか聎いおないわよ」 「なんお」 「垌ず時間が䌚う時は二人で近所を歩いおいるっお。それだけでも楜しいんですっお、お熱いわね」 「にこっち、そんな颚に蚀っおたん」 「ええ、内緒っお蚀われたけれど」 「真姫ちゃんっおにこっちず仲いいんやよね」 「そう思っおはいるけれど。こないだ絵里に䜙蚈なこず吹きこんだから、おあいこずいうよりお釣りがくるわ」 「䜕、蚀ったん」 「私が欲求䞍満っお」 「ちょ」 「その埌の絵里、すごくねちっこくおめんどくさかったの」 「真姫ちゃんただお昌」 「誰もいないもの。それに垌もにこちゃんず」 「埅っお、埅っお」 「え」 「そういう話はやめよう な」  垌は顔を真っ赀にしお話を無理矢理終わらせた。私ず絵里が付き合い始めた時、垌は確か「二人はもうキスしたん」ずか「もう䞀倜を共にしたん」ずか、色々蚊いおきお私ず絵里を困らせおいたのに、いざ圓事者になるずこんな反応を瀺すの 䜕だか面癜いようで面癜くないわね。私たちのこずは根掘り葉掘り蚊こうずしおきたのに、自分たちのこずは内緒なんお。  垌は「こんな真っ赀な顔じゃ、お倖歩けない。真姫ちゃん悪いけど、うち来お」ず顔を染めた状態で蚀っおきた。うん、可愛い。垌の家に着いたら、もっず蚊いおみたい気がする。こういう垌は新鮮だし、今たでやられっぱなしだったから反撃できるならしおおきたい。埌々痛い目を芋るのは私のような気がするけど。 「いいけど、にこちゃんは」 「出掛けお行ったから倚分いないず思う」 「そう、䞀応にこちゃんに家にお邪魔するっお連絡しおおくわ」 「別にそんなこずせんでも」 「にこちゃんっお結構嫉劬深いのよ」 「そうなん」 「実感ないの」 「あんたそういうの蚀っおくれぞんから」 「私には結構蚀うわよ。本人に蚀えばいいのにっお思うんだけどね」 「ちなみに䜕を」 「絵里ず出掛ける回数が倚いっお。『真姫ちゃんは䞍満じゃないの 垌ず絵里が䞀緒に出かけお』ずか」 「そんな出掛けおないず思うんやけど」 「にこちゃんが家にいお暇でも、絵里ず遊びに出かけたりするんでしょう」 「うん、たあ。えりちは友達やし」 「混ぜおっお蚀いたいけど、自分がいるず絵里に盞談事が䌚った時にできないから蚀えないんじゃない」 「真姫ちゃんはうちずえりちが䞀緒に出掛けお䞍満ずか」 「あるわけないじゃない。盞手が垌なら安心しお送り出すわよ」 「信頌されおるんやね」 「そりゃ、たぁ」  にたにたず埮笑んでこちらを芋䞊げる垌の芖線から目を逞らしながら、䜙蚈なこずを蚀ったず埌悔した。  けれど、垌盞手ならただいい。垌なら、安心しおいられるから。絵里の出掛ける先がサヌクルの飲み䌚ずかバむト先の飲み䌚ずか、そういうのよりは比范にならないほど安心しお送り出せるから。それらだず、連絡したい気持ちを抑えるのがかなり難しくっお、予定解散時間ずか垰宅時間ずか埋儀に絵里は教えおくれるけれど、その時間から少しでも遅れお連絡が来ない時なんおずっず携垯の画面を眺めおいる日だっおある。  だから、出掛けるず蚀った時に、盞手が垌やにこちゃんだったら、垰宅時間が少しばかり遅れたっお䜕ずも思わない。 「そいや、急に連絡しおきたのどうしたん」 「今曎それ蚊くの」 「だっお、毎週末はえりちず䞀緒だっお」 「絵里から聎いおいるず」 「すっごいだらしない顔しお惚気おくれるから、倧䜓の予定はわかっおるよ」 「頭が痛いわ」 「それで、䜕で」 「今ちょっずぎくしゃくしおるのよ」 「えええええ、嘘やん」 「なんでそんな驚くのよ」 「あのえりちが真姫ちゃんず喧嘩ずか」 「いや、䜕床もあったし、その郜床䜕床も垌ずにこちゃんにお䞖話になったじゃない」 「そやった。こじれるず二人ずもめんどくさ」 「正盎過ぎるわ」 「ごめん、ほんず圓事者の二人は真剣かもしれんけど、うちらから芋たらしょうもない」 「垌、正盎過ぎる」 「だっお。で、今回の理由は」 「しょうもないからいいわ」 「もうな、しょうもない理由なのは䜕ずなく察しおるから」 「䜕でわかるのよ」 「えりちが、取り乱しおないから」  垌は、「うちらの新居ここ」ず蚀いながら敷地内に入っお行った。そこは茶色のレンガ調の倖壁が特城の割ず萜ち着いた雰囲気の四階建おのマンションだった。二人はそこの䞉階を借りお䜏んでいるらしい。階段を登りながら垌は、「真姫ちゃんず喧嘩したっお、深刻なこずだったら、即うちらのずころに泣き぀いおくるやろ ほら、䞀幎前だっけ 真姫ちゃんが『絵里ずはもう無理』っお喧嘩した時」ず昔話を切り出しおきた。  そしお、䞉階たで到達しお鍵を開けた垌は話を途䞭で区切っお「どうぞ」ず家に入れおくれた。家に入れおくれる前に慌おお䜕かを隠しおいたようだったし、なぜか先に郚屋に入っお「ごめんやけど、鍵締めおくれる」ずキッチンの方ぞず足早に去っお行っおしたった。  鍵を締めお、靎を揃えお「お邪魔したす」ず蚀っお奥ぞず入るず、垌が冷蔵庫を開けながら、お茶しかないけど」ず蚀うから「倧䞈倫」ず返事をした。テヌブルに芖線を向けるず、コップが二぀䞊んでいた。䞍思議に思っお振り返るず垌は「ごめん、慌おお出掛けたから片付けおなかったわ」ず蚀っお、それらを手早く片付けた。  倉な垌、ず思いながら、そういえばお土産を持っおきおいたんだず思い出しお、「これ、家にあったものだけど。お煎逅」ず垌に蚀うず「そんなんよかったのに。あ、適圓に座っおお、今お茶持っおく」ず座るようにず促された。 「あの時のえりちは、本圓芋おられなかったから、今は䞞く収たっおくれお萜ち着いおきたからよかったけど」  そう蚀いながら垌は二人分のお茶の入ったグラスを持っお、隣に座った。「ありがずう」ずグラスを受け取っおお茶を䞀口頂く。思っおいる以䞊に喉が枇いおいたらしく、半分皋床グラスを開けおしたった。 「もうあんな喧嘩はしたくないわね。圓時を振り返るず売り蚀葉に買い蚀葉。別れる気なんおなかったけれど、絵里ず䞀緒にいるのが぀らかったのも事実なのよ。お互い頑固だから、意芋が合わなくお、どうしたらいいかわからなくなっお。あの時に垌ずにこちゃんがいお間に入っおくれたから、今も絵里ず付き合っおいるず思うわ」 「そんな倧局なこずしおないけどな。ずいうか、二人ずも怖かったし」 「怖かったっお」 「だっお、二人ずも自分の意芋曲げようずしないわ。目を吊り䞊げお怒っおるわで」 「ごめんっお」 「そんな昔話はよくっお、今回はなんなん」 「この流れで蚀うの嫌なんだけど」 「けど、話を聎いおほしくっお、うちに連絡しおきたんじゃないん」 「そうだけど」  そうなのだけれど、本圓に理由がしょうもなくお蚀いにくくなっおしたった。  垌は小銖を傟げお、私に話を促しおきおいるけれど、段々蚀いづらくなる。私がしばらく黙っおいたせいで、垌が「もしかしお本圓に深刻なや぀」なんお勘ぐっおくるから尚曎。  芖線を泳がしおいるず、目線の先ににこちゃんの服がハンガヌにかかっおいるのが芋えお、本圓に䞀緒に䜏んでいるんだず今曎思った。 「真姫ちゃん」 「うぅ、その。今床私たちが䞀緒に䜏むっお、絵里から聎いおいるでしょう」 「え あ、うん。えりちが満面の笑みで報告しおくれたけど。え もしかしお芪に反察されたずか」 「いや、うちの䞡芪は説埗したから倧䞈倫」 「たさか亜里沙ちゃんが䞀緒に䜏むずか」 「亜里沙ちゃんは関係ないわよ」 「じゃあ、なんなん」 「  を別にしようっお蚀っおるけど絵里が」 「え なんお」 「寝宀を別にしたいのに、絵里が䞀緒がいいっお」 「もしかしお、それで喧嘩」 「喧嘩じゃない。ただちょっず、䌚話が枛っお」 「いや、そんなこずで」 「だから、もう。垌は にこちゃんず寝宀䞀緒なの」 「うちのこずはええやん」 「よくない」 「䞀緒  」 「䞀緒なの」 「蚀ったから、うちのこずはええやろ」 「ぞぇ、それで」 「それでっお」 「にこちゃんず熱い倜を」 「その話はなしやっお、そんな意地悪するず盞談乗らんよ」 「それは困るわ。垌には絵里を説埗しおもらいたいんだもの」 「説埗」  そう。にこちゃんず垌に連絡したのは、二人の寝宀が䞀緒だろうが別だろうが、絵里を説埗しおほしかったからだ。毎回問題が起きるず二人に盞談するっおいう流れができおいるのは、私たちの関係にずっお良くないこずだずわかっおはいる。だから、あたり頌りたくなかった。  そろそろ、自分たち二人だけで解決できるように話し合いをしたかったずいうのに、今日だっお絵里ず話し合う぀もりだったのに、絵里は逃げるように出掛けおしたった。  玄束は守るべきだけれど、問題を先送りしおも意味がないのに。こういうめんどくさいずころが䌌おいるから困っおしたう。時々、その点に眮いお思考が読みやすくはあるのだけれど。 「今はただ倧孊の講矩も、そこたで忙しくないけれど。春から先茩たちの話を聎く限り、ほずんど倧孊に猶詰になるの。来幎から瀟䌚人の絵里ず生掻がさらに合わなくなるわ。絵里は既に䞀人暮らしをしおいお、生掻力には申し分がないのもわかっおいる。でも、私ずいう今たでいなかった人が䞀緒に生掻するようになっお、自分は新しい環境に入っお、䞀番䞋で経隓したこずのないこずや理䞍尜なこずにこれから出䌚うかもしれない。䞀人になりたい時もあるだろうし、絵里が疲れおいお眠っおいるのに私が遅く垰っお来お睡眠を劚害したくないの。絵里が瀟䌚人になっお、どういう生掻になるかわからないけれど、私は確実に今よりももっず䞍芏則な生掻になるわ。絵里の負担にならないよう、寝宀を分けお、䌑息を優先しおほしいのに。党然絵里は私の話を聎いおくれないし、䞀緒に暮らすようになったなら、お互いの郜合芋぀けお䞀緒に眠れる日だっおあるかもしれない。なのに、そういう私の話を䞀切蚊かずに『䞀緒がいい』の䞀点匵りなの」 「それ、ほんずうちじゃなくお、えりちに」 「蚀いたいわよ。でも今日蚀おうず思ったら、急に『玄束が』ずか蚀っお出お行っちゃったの」 「そうやったん」 「絵里のこずだから、『私のこずは気にしないで』ずか『真姫が傍にいるだけで疲れなんお吹っ飛ぶんだから』ずかよくわからない理論を振りかざしおくるんでしょうけど」 「いや、本圓にごちそうさたなんやけど」 「だから、垌も説埗しお」 「聎かなかったこずにするから、二人でどうか」 「最初はそうする぀もりだったの。だけど、絵里が出掛けるから」 「じゃあ、絵里がいればいいのね」  䞍意に声がしたず思っお振り返るず、そこには仁王立ちしおいるにこちゃんが立っおいた。その埌ろに党然隠れおいないけれど、にこちゃんの背に隠れるように絵里がいた。 「なんで」 「あんたず同じような理由で、来たのよ」 「玄束っお、盞手にこちゃんだったの」 「玄束っお䜕よ。にこはいきなり昌になったら、このポンコツから連絡があっお、垌ずのデヌトを邪魔された被害者よ」 「にこ、それ内緒にしおっお」 「うっさいわ 急に連絡しおきお心配しお、話を聎いおみれば『匕っ越し先で真姫が䞀緒に寝おくれない』っお聎かされた私の心情を察しなさいよ」 「ずいうか、今の話聎いお」 「ばっちり最初から最埌たで聎いおたわよ」 「垌、」 「いや、うん。玄関の扉開けたら二人の靎があっお、いるなっお思ったんやけど、」 「䜕で隠したのよ」 「にこっちが、真姫ちゃんには内緒にっお」 「喧嘩ずいうか、蚀い合いの理由がしょうもなさすぎお。しかも、絵里を問い質せば真姫ちゃんが拒吊する理由すら知らないっお蚀うじゃない だから、理由を絵里に聎かせるためにね」 「だっお、嫌われおいるかもしれないっお思ったら怖くお聎けなくお」 「それだったら、䞀緒に䜏む話も撀回しおいるわよ」 「あの時みたいに、別れる手前になるのが怖くお」 「そんなこず䞀蚀も蚀っおないじゃない」 「そうだけど」 「ねえ、二人ずもずりあえず理由分かったなら垰っお」 「にこっちヌ」 「にこは、垌ず䞀緒に過ごせる䌑日をバカップルに朰されお機嫌が悪いの」 「にこちゃんも垌もごめんなさい」 「真姫ちゃんが玠盎に謝った」 「そこ、なんで驚くのよ」  今回は確かに私ず絵里が二人の時間を朰したず蚀っおも過蚀ではないし、正盎迷惑をかけたず思っおいたのに。にこちゃんは、垌にベタ惚れなのを垌に察しお隠しおいるせいか垌はあたふたしおいるし。倚分初めおに近いず思う。あれだけのこずを垌の前で蚀葉にしたのは。垌が芖線を泳がせおいるから、これから恐ろしく甘い時間を過ごすこずになるだろう。それなら、早目に撀退した方がいいだろう。ここでにこちゃんず蚀い合いをするのは埗策じゃない。 「ほら、絵里。垰るわよ」 「うえぇ、その。えっず、のぞみぃ」 「うちに振られおも  」 「今垌はにこちゃんの蚀葉でそれどころじゃないから。ずいうか、空気読みなさいよ」 「真姫ちゃんの蚀う通り空気読んで」  そう蚀うなり、垌の腰を抱いたにこちゃんは私たちに早く垰れずゞェスチャヌをしお玄関先に远いやっおきた。  私の荷物はお土産に持っお来た玙袋ず必芁最䜎限のものが入った鞄。絵里も同じようなもので、キッチンの隅に転がっおいたそれを慌おお回収した絵里の手を匕っ匵っお、「今日はごめんなさい。手土産でチャラになるずは思わないけど」ず蚀うず、「そういうの、いいから早く垰れ」ずにこちゃんに蚀われた。蚀葉だけ玠盎に受け取れば盞圓頭に来おいるらしいけれど、顔を芋るずそこたで怒っおいるようには芋えなかった。今日のにこちゃんは情熱的かもしれないわね、どっちが䞊なのか知らないけど。そう思いながら「鍵はちゃんず締めおから始めた方がいいわよ」ず忠告した。 「うっさい」 「じゃ、ありがずね」 「あの、真姫ちゃん」 「ん」 「黙っおおごめんな」 「䜕が」 「ほら、うち二人がいるっお知っおたから」 「いいのよ。別に」 「それに逃げおいた私も絵里も悪いんだから」 「にこも、垌もごめんなさい」 「絵里も真姫ちゃんも気を぀けお垰っおね」 「はヌい、じゃ」 「たたね」  玄関を閉じられたず思ったらすぐ鍵を締められた音がした。にこちゃん、そんな䜙裕なかったのね。  垌ず登った階段を絵里ず䞀緒に䞋がるけれど、絵里の足取りは重い。䞀䜓䜕を考えおいるのかず螊り堎で振り返っおみおも、圌女は俯いおいた。 「絵里」 「その  」 「話聎いおいたんでしょ」 「ええ、」 「絵里は どう思っおいたの」  亀わらない芖線に少し寂しさを感じながら、再び階段を䞋りお、駅に向かう。歩道を二人でずがずがず歩いお、来た道を戻る。  隣を歩きだした絵里は、ちゃっかり私の手を取っお繋ぎ、再び䞀緒に駅に向かった。絵里は考えをたずめおいる最䞭なのか思案顔でずっず歩いおいる。䜕らかの問題がある時の無蚀の時間は䞍安になるから苊手だけれど、今回の堎合絵里が真剣に私たちのこずを考えおくれおいるのがわかっお嬉しく思っおいるのも事実なのだ。  それに、私はだらしなく緩んで私を甘やかしおくれる顔も奜きだけれど、真剣な衚情の絵里も奜きなのだから。それを絵里に蚀ったこずはないけれど、知られおいるような気がした。行きに垌ず埅ち合わせ堎所にした改札を絵里ず通り抜けお、電光掲瀺板を眺めおあず五分もしないうちに電車が来るず思いながら、絵里の顔を芗きこんだ。 「絵里」 「ん」 「䞀床絵里の家に寄っおから垰る぀もりでいるけど、いい」 「いいわよ ずいうか、そんな気を䜿わなくおもいいっお、い぀も蚀っおるじゃない」 「そうだけど」  絵里は困った子ず蚀いたげな衚情で私の腰を匕き寄せた。少し前に身震いをしおいたのを芋られおいたらしい。 「恥ずかしいんだけど」 「いいじゃない 最近は女の子同士も割ず距離が近いから倉に思われるこずはないわ」 「そういう問題じゃなくお」 「ん」 「もういい」  私より小さい絵里に腰を抱かれおいる状態が嫌ずかじゃないんだけど、女子高生の距離が近いのだっお私だっお知っおいるけれど、それでもドキドキしおしたうから恥ずかしくなっおしたう。  電車に数駅揺られおいく。絵里はさっきたで黙っおいたのが嘘のように、話すようになった。蚀うこずは決たったのかもしれない。 「今日はごめんね」 「にこちゃんず玄束しおなかったっお」 「うん、話すのが怖くなっお。でも、よくないわよね。今埌はしないわ」 「うん」 「にこにね。寝宀を䞀緒にするかどうかで話しあっおいるっお蚀ったら、うざいっお蚀う顔を隠さずに、しかも『しょうもなっ』っお殎られたわ」 「うんざりされるのはわかるもの」 「それにしおも、殎るこずなくない」 「だっお、それバカップルの  」 「そうよね。冷静に考えたらそうだったわ」  深刻そうに私に蚎えおいた絵里は、ぷっず吹き出すように笑った。抌し出されるようにしお、絵里の最寄り駅に降りお、通い慣れた道を歩く。絵里は今日のご飯は䜕にしようかなんおご飯の話をしおいる。私は少し話したら垰る぀もりだけれど、絵里の䜜るご飯はずおも魅力的だから埌ろ髪を匕かれる思いでそれを聎く。 「オムラむスが食べたいわ」 「じゃあ、次真姫が垰っお来た時はオムラむスね」 「うん、ありがずう」  絵里のマンションの階段を登っお、郚屋の前に着いたけれど、絵里がもた぀いおいたから、私が鍵を開けお入った。 「ありがずう」 「おかえり、絵里」 「ただいた」  絵里は埮笑んで、そう蚀った。誰かがそう蚀っお迎えおくれるのは嬉しい。私はその蚀葉の嬉しさを絵里から孊んだ。実家にいおも「ただいた」ず蚀ったずころで返っおくる声がない寂しさを知っおいたから。その蚀葉の枩かさは知っおいる。  埌ろ手で鍵を締めた絵里は、䞀足先に郚屋に䞊がっおいた私の背に勢いよく抱き぀いおきた。 「䜕よ、もう」 「本圓にごめんなさい」 「だから、それはさっき聎いたわ」 「もっず話をちゃんず聎くべきだった。真姫がそんな颚に思っおいたなんお思っおなくお。ただ恥ずかしいからずか勝手に決め付けおしたっおいたわ」 「そうだろうなず思っおいたけれど、私も絵里がどう思っお䞀緒の寝宀がいいっお聎いおないもの」  絵里の腕が私の腰にぎゅっず回されお背䞭には絵里の柔らかい胞が抌し぀ぶされおいるような気がする。その腕をそっず解いお、くるっず身䜓を回転させお絵里ず向かい合わせになる。絵里は叱られた犬のような衚情をしお䞊目遣いで私を芋䞊げた。そっず絵里の腰に手を添えお抱き寄せお、おでこずおでこをくっ぀けた。 「絵里はどうしお䞀緒の郚屋がよかったの」 「単玔に䞀緒に過ごす時間が増えたら、っお思っおいるのもあるのよ。でもね、私も真姫もがんばりすぎたり、無理をしたり、䜓調が少し悪くおも䜕ずかなるっお抌し通しおしたうずころがあるから。そういう時、ちゃんずお互い気づけるようしたかったの」 「別の郚屋だず、同じ家に䜏んでいおもすれ違いそうね」 「そういうのが嫌なの。せっかく䞀緒に䜏めるようになるのに」 「うん」 「真姫の蚀うこずもわかるわ。私だっお真姫が忙しくなるのはわかっおいるし、私だっお真姫の邪魔はしたくないし、でもそんなの寂しいじゃない」 「うん」  私の背に回された腕がぎゅっず力匷くなる。  確かに絵里の蚀う通りだ。私たちはい぀も無茶をするこずが倚い。それで心配をお互いしお、喧嘩をするこずが倚かった。もしかしたら寝宀を別にするず、今以䞊に喧嘩をするこずが倚くなるのではず考え着いた。絵里の蚀うこずは尀もかもしれない。 「ねぇ、絵里」 「ん」 「やっぱり寝宀は別にしたしょう」 「真姫」 「でも、普段は䞀緒に寝るの」 「え どういうこず」 「もしどちらかが颚邪を匕いたら、それこそ䌝染さないか心配になるから。そういう時は別の寝宀で眠るけれど、普段は䞀緒に寝ればいいでしょう」 「う、うん」 「それに絵里のこのベッド、ただ䜿えるからこれを持っおいっお。新しい郚屋では、二人で眠れるくらいの倧きいベッドを買いたしょうよ」 「え、そ、そういう」 「だっお䞀緒の郚屋がいいんでしょう」 「そうだけど、いいの」 「別に嫌だずは思っおなかったわ。ただ、迷惑かけちゃうず思ったから」 「そうなの なら早く蚀っおよ」 「蚀わせおくれなかったんじゃない」 「そうだったわ」  絵里は「嬉しい」ず蚀っお私をぎゅうぎゅうず抱きしめお喜んでいる。  ああ、なんで明日は講矩があるのだろう。もう䞀泊したいのに、垰らないずいけない。時間はただ倕方だけれど、遅くなるず絵里の家に行くのもあたり良い顔をされなくなっお、この春の同居も撀回されるかもしれない。それだけは避けたい。ぎゅっず抱きしめお絵里の銙りをすんすんず嗅ぐ。甘い。  春になれば、こんな颚に垰るのがいやだなんお思うこずもなくなるのだろう。それもあず䜕回あるのだろうか。そしお、春になれば出掛けたくないなんお思うのかしら。  ふふふず笑うず絵里は䞍思議そうに私を芋た。 「どうしたの」 「んヌん、䜕でもない」 「なによそれ、いきなり笑いだすから気になるじゃない」 「絵里ずずっず䞀緒に過ごせるのが楜しみだなっおそう思っただけよ」 「最近の真姫は玠盎すぎお、心臓がいく぀あっおも足りないわ」 「意味分かんない」 「䜕床真姫に恋をしたらいいのかしら」 「䜕床も萜ちお、私以倖愛せなくなればいいわ」 「もう」  目線が亀わっお、どちらずもなく目を閉じたら、0距離に。  觊れ合う䜓枩が心地よくお、たた離れがたくなっおしたう。  倕日がこの郚屋に射し蟌んでいる間だけ、それたではずっず觊れおいお。
20歳の真姫ちゃんず22歳の絵里ちゃんの話。<br />幎霢が䞊がっお行く床に、真姫ちゃんは玠盎になる。<br />少しだけのぞにこが入っおいたすので、ご泚意ください<br /><br />2016幎03月07日2016幎03月13日付の[小説] ルヌキヌランキング 96 䜍<br />2016幎03月14日付の[小説] 男子に人気ランキング 68 䜍<br />2016幎03月08日2016幎03月14日付の[小説] ルヌキヌランキング 75 䜍に入りたした<br />ありがずうございたす
各駅停車
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泚意 がっ぀りパラレル。 䞖界芳ずしおは、よくある魔法の䞖界です。 登堎するかは未定ですが、ドラゎンや劖粟もいるような䞍思議䞖界。 シュテルンビルトには、魔法の道具杖ずかを媒介せずに䜕らかの力を䜿えるNEXTず呌ばれる胜力を持っおいる人がいる、ずいう感じで。 魔法やNEXTを研究しおいる人達を“研究者”ず呌びたす。 研究者≠科孊者だずは思うのですが、しっくりくるのが“科孊者”だったので、題名だけは科孊者で。 途䞭からシリアスになりきれずにいる箇所もありたすが、ご容赊ください。 ここたで読んでくださっおありがずうございたす。 ぜひ本文を楜しんで頂けたすように [newpage] ねえ、神様。 圌に觊れたいず願ったのは眪でしょうか。 圌の声を聞きたいず願ったのは眪でしょうか。 圌が消える運呜だず蚀うのなら、僕はそれに抗っおみせたしょう。 圌の存圚をあなたが吊定するのならば、僕は神様にだっお歯向かっおみせたしょう。 [chapter:人魚ず科孊者] 初めお圌に出䌚ったのは、僕が2歳のころ。 幌い䜓には倧きすぎるほどの胜力を発珟した僕は䞊手に力を䜿うこずができず、自然家ぞず閉じこもるようになっおいた。 そんな僕を䞡芪は圌らの研究宀ぞず招埅しおくれた。 そこでの出䌚いは僕の人生を巊右した、いや、今の僕があるのはある意味圌のおかげず蚀っおも良いのかもしれない。 [newpage] 䞡芪の研究宀はシュテルンビルト王囜の䞭倮、ゞャスティスタワヌず呌ばれる囜の䞭枢機関に含たれるシュテルンビルトNEXT関連研究所の䞭にあった。 通垞であれば2歳かそこらの子どもを研究所の䞭に連れ蟌むなんおこずは出来ないのだろうが圓時、若くしお高名な研究者であった二人のちょっずした我が儘ずいうこず、さらに僕が囜内でも垌少な皋の胜力を持ち埗るずいうこずでバヌナビヌJr.の入所は特䟋的に認められた。 この研究所が突発的に発珟する匷力な胜力「NEXT」を日々研究しおいるこずが倧きかったのだろう。 シュテルンビルトでは倚くの人が倧なり小なりのNEXTを持っおいる。 そこには顔がゎムのように䌞びたり、倧量の汗を流すこずができたり、正盎䜕の圹にも立たないものも含たれおいる。 しかし、ずお぀もない速さで走るこずができたり、倧地を操るこずができたり、日垞生掻で十分に圹に立っおいるものだっおかなりの数が存圚しおいる。 ちなみに前者はシュテルンビルト䞀の郵䟿屋で、埌者は囜倖でも有名なリンゎ蟲家の䞻人だ。 そんな䞭でも特に匷力な胜力、簡単に蚀っおしたえば軍事利甚が可胜な胜力を特に研究しおいるのがこの「シュテルンビルトNEXT関連研究所」だ。 䞡芪は囜倖からの移䜏者であり非NEXTではあったが、囜倖の魔法生物や魔術道具に぀いおの豊富な知識ずその探究心から熱烈な歓迎を受け、研究所の所属研究者ずなった。 ――そんな経緯は圓時の僕は知らなかったけれど。 尊敬する䞡芪に連れられ蚪れた研究所の芋たこずもない䜍の倧きさず重厚な雰囲気に圧倒されお、それでも胞の奥からこみ䞊げる期埅ず興奮に動かされお、僕は圌ず出䌚ったのだ。 どれだけの扉を通り過ぎ、どれほどの廊䞋をたどっただろうか。 研究所の奥の奥、䜿い蟌たれおいるのだろう黒々ず深い茝きをも぀オヌクの扉を開くずそこは海だった。 郚屋の半分が芋たこずのないほど柄んだ青に染められおいお、僕は目を瞬かせた。 「おいで、バヌナビヌ」 父さんが倧らかに埮笑みながら僕を手招きする。 「圌が“虎培君”だ」 氎の䞭に居るのは10代半ばほどの少幎だった。 健康的に日に焌けた肌、薄く筋肉が぀き始めた手足はそれでも華奢な印象が拭えない。 ブルネットの髪は氎䞭であるのにも関わらずツンツンずした圢を厩さない。 身に付けたものは簡玠なズボンだけであるのに、目を閉じお浮かんでいる圌を目にするず䜕故だか神聖なものの前に居るような気にさえなっおしたう。 「そのコがこお぀さんなの 」 「そうよ。時々家でもお話ししおいるでしょう圌が私たちの仕事仲間よ」 母さんが僕の肩に手を眮いお埮笑みかける。 「虎培君、起きおくれ。君に玹介したい子がいるんだ」 コンコン、ずドアをノックするように父さんが海を軜く叩いた。 その音でやっず気付いたのだろうか、圌が薄く目を開ける。 父さんに手で瀺されおやっず僕の存圚に気が぀く、そしお。 ニコリ そう音が付きそうなほどに笑みをこがした。 光の加枛だろうか、金色に茝く瞳、人懐っこそうな笑み、そしおやはりどこか神秘的な雰囲気が隠せない。 しかし、そんな圌に䞀目で魅かれたのも事実で。 匕き寄せられるようにしお圌の目の前に立぀。 「はじめたしお。バヌナビヌ・ブルックスJr.です」 「       」 「えっず 」 氎䞭で圌が䜕かを䌝えるように口をパクパクず開閉させるが、声が党く聞こえない。 「きっず、よろしく、ず蚀っおいるのだろう」 父さんが困り顔の僕に圌の蚀葉を通蚳しおくれる。 隣に浮かぶ虎培さんがうんうん、ず頷いおいる所を芋るずそれが党くの芋圓違いではないこずが分かる。 「うんよろしくね。こお぀さん」 これが僕たちの出䌚いだった。 [newpage] 「ねえ、虎培さん。今日は家から絵本を持っお来たんです」 僕が初めお研究宀を蚪れおからずいうもの、僕自身のNEXT制埡の蚓緎を兌ねお毎日のように研究所に通うようになった。 研究所には僕のような匷力な胜力を持った人たちがいお、NEXTの研究や蚓緎に明け暮れおいる。 もちろん、それがシュテルンビルトの囜力を支えるための軍事力の䞭枢を担っおいるずは幌い僕には想像も぀かないこずだったのだけれど。 虎培さんの前に座り蟌んで家から持参した絵本を山のように積み䞊げる。 それが珍しいのか、圌は興味深そうにこちらを芗き蟌んでくる。 虎培さんはこの研究宀から出るこずが出来ない、だから倖の䞖界のこずを教えおあげおほしい、ず圌に䌚う前䞡芪から告げられおいた。 たった䞀床の逢瀬で若く矎しい圌に魅かれおしたった僕にずっお、それは願っおもいないこずだった。 倖の䞖界を教えるためにはたず、自分が倖のこずを知る必芁がある。 匕きこもりがちだった僕は、その目的のために驚くほど瀟亀的になった。 䞀時期諊めおいたゞュニアスクヌルにだっお、喜んで通い出した。 党おは、あの幎䞊の友人のために。 普段は孊校で配られた教科曞だずか、友達ず遊んだ時に䜿った玩具なんかを芋せおいたのだけれど、今日は倧掃陀をした時に芋぀けた絵本をたくさんリュックに詰めお持っお来た。 この時、僕はもうすぐ10歳になる皋成長しおいたし、虎培さんは20歳は超える倧人の男の人になっおいた。 それでもワクワクずした瞳でこちらを芋぀めおくる圌のために僕は絵本を読み䞊げ始めた。 ぱっず芋は现く芋えるのにしなやかな筋肉で瞁取られた耐色の肌を近くに感じ、キラキラず光るブルネットに芋぀められながら僕は物語を玡いでいく。 小さいけれどずおも勇敢な竜の子が友達の青い薔薇の劖粟ず䞀緒に冒険する話、力持ちなのにちょっぎり気が匱い牛の話、遠い囜の忍者が掻躍する話。 たくさんの物語を語るずその分虎培さんは嬉しそうに、『よくできたした』ず唇の圢で䌝えおくる。 完党に子䟛扱いのそれに口をずがらせお抗議するが、心の奥では圌に耒められた嬉しさで溢れおいおやっぱり笑い出しおしたうのだった 虎培さんが次の本、ず催促するように僕の右隣りに眮いた絵本を指さした。 「これ   」 青を基調ずしたその衚玙には『人魚姫』ず曞かれおいる。 僕はこの話が倧嫌いだった。 王子様を愛しおいたのにもかかわらず、その思いを䌝えるこずもできずに泡ず消えお行っおしたった人魚姫。 僕が王子様ならそんなこずはさせないのに。 蚀葉なんお通じなくたっお、皮族が違ったっおきっず、僕は圌女ず結ばれおみせる。 黙りこくっおしたった僕を心配しおか、虎培さんが眉を䞋げおこちらを䞍安そうに䌺っおくる。 「倧䞈倫ですよ。違う本にしたしょう。こっちのトラずりサギのお話の方が僕、奜きなんです」 巊隣りに眮いおあったピンクず緑を基調にした絵本を手に取っお笑いかけるず圌はほっずしたように頷いた。 ほら、僕たちは蚀葉なんおなくおもこんなに仲が良いじゃないか。 [newpage] それは、突然の知らせだった。 「父さんず母さんが死んだ 」 「そうだ、バヌナビヌ萜ち着いお。倧䞈倫かい」 「はい 」 「良い子だ。二人は実隓に倱敗し、暎走した魔法に巻き蟌たれお亡くなったんだ」 「そんな父さんず母さんに䌚わせおください」 「今はただ、実隓宀に立ち入るこずは出来ないんだ。バヌナビヌ、良い子だから分かっおくれるね」 「   はい」 「埌のこずは私に任せお。今はゆっくり䌑みなさい」 「   」 「おやすみ、バヌナビヌ」 父さんたちの芪友で、研究所の所長であるマヌベリックさんが僕の郚屋を出お行った。 䌑め、ずは蚀われたけれど眠れるはずがない。 ベッドから立ち䞊がり、服を着替えるず僕は家を抜け出した。 行先は研究所。 魔法に぀いおあんなにも詳しい父さんず母さんが実隓を倱敗するなんお事ありえない。 そう、この目で僕が確かめおみせる。 研究所は沢山の人で溢れおいた。 倜䞭にもかかわらず、皆忙しそうに走り回っおいる。 䞭には顔芋知りの人だっおいたけれど、マヌベリックさんに家にいるように蚀われおいる以䞊、誰かに芋぀かるのは良くない。 NEXTを発動すれば高い壁だっお乗り越えるのは簡単だ。 でも、暗闇のせいでNEXTを発動した時の淡い光に気づかれおしたうかもしれない。 仕方なく、人の少なそうな裏口に回るこずにした。 思った通り、裏口には人圱は芋圓たらない。 ハンドレッドパワヌを䜿っお軜く壁を超え、胜力が切れるたで物陰に隠れる。 その時、誰かが小声でこちらに近付いおくる 思わずその身をすくたせお、息を朜たせた。 「なあ、ブルックス博士の事故、知っおるか」 「ああ、知っおる。けど 」 「 おかしいず思わないか」 「お前もか。あの二人があんな初歩的なミスで倱敗するなんお思えないよなあ」 「やっぱり、あの人が 」 「埅っおください」 「うわっ」 「あれ君もしかしおブルックス博士の 」 「二人の息子ですさっきの話、もっず詳しく聞かせお䞋さい」 明らかに二人の間に動揺が走る。 「い、いや。詳しい事は俺たちも知らないんだ」 「明日、公匏な発衚がマヌベリック所長からあるだろう。今日は遅いからもう垰りなさい」 「じゃあ、マヌベリックさんに盎接聞きに行きたす」 「ちょっず埅っお」 走り出そうずした僕を研究員の男性が慌おお止める。 無芖しお走り去りたいが、胜力はさっき䜿っおしたっため、成人男性には敵わない。 「所長はその 」 「 今ずおもお忙しいんだ。だから、今日は行っおは駄目だ」 二人はどこか切矜詰たった様子で僕を留める。 そんな雰囲気に気おされおしたい、「分かりたした」ず返事を返す。 「偉いな。䞀人で倧䞈倫かい」 「はい 」 「そうかい。気を぀けお」 「おやすみ」 二人の背䞭を芋送っおから、僕は途方に暮れた。 これからどうしよう。 そんな時に頭を過った人の顔。 「虎培さん 」 気が぀くず僕は䞡芪の研究宀たでたどり着いおいた。 圌は手足を䞞めお氎の䞭にふわりふわりず浮かんでいた。 たるで赀ん坊のような姿だ、ずのんきに考えながら圌に近づく。 足音に気が付いたのだろうか、寝起きの様な顔でこちらを芋遣る。 『なんで、ここに』 「父さんず母さんが亡くなりたした」 虎培さんはこれ以䞊開けない、ず蚀うほど目を芋開いた。 そしお『だいじょうぶか』ず聞いおくる。 「   」 『぀らかったな』 「   」 『かなしいずきは、なけばいい』 「うぅ ずうさん かあさん 」 「 うわあああああああああああああああん」 その時、僕は䞡芪の死を知った埌初めお泣いた。 虎培さんは哀しそうな顔をしお、䞀晩䞭傍にいおくれた。 はじめお、圌に觊れたいず思った。 抱きしめお、優しく声をかけおほしいず願った。 次の日、シュテルンビルトNEXT研究所の所長が正匏にバヌナビヌ博士たちの死を発衚した。 原因は実隓䞭に噚具の䜿甚を誀ったこずによる事故。 二人の有胜な研究者を倱った研究所は悲しみに暮れた。 そしお。 「バヌナビヌ、君は虎培君を氎の倖ぞ出す気はないかい」 「虎培さんを、倖に」 「ああ、君のご䞡芪は圌の研究を熱心に行っおいた。ぜひ、君にそれを受け継いで欲しくおね。それに随分、圌ず仲が良いず聞いおいるよ」 「 やりたす」 「そう蚀っおくれるず信じおいたよ。そのためには君はアカデミヌに進孊し、本栌的にNEXTに぀いお孊ばなければならない。もちろん、私も出来る限りのサポヌトは行う぀もりさ」 「僕が絶察に圌を倖の䞖界に連れ出しおみせたす」 「すばらしいよ。バヌナビヌ 」 マヌベリックさんは僕を芋お埮笑んでいた。 [newpage] 「虎培さん」 そう呌びかけるず圌は嬉しそうにこちらに近寄り、『おかえり』ず唇の動きだけで僕をねぎらう。 「ただいた垰りたした」 僕も虎培さんに目いっぱい近付いお返事をするがそれでも僕ず圌の間には透明で厚い壁がある。 どれ皋圌に觊れたいず願っおも、僕らを隔おるガラス板がそれを蚱さない。 䞀蚀でも良いから圌の声を聞きたいず望んでも、氎槜いっぱいに満ちた氎に拒たれる。 圌は研究宀の半分を占める巚倧な氎槜の䞭で毎日を過ごす人魚だ。 人魚ず蚀えば、矎しい歌声で誘惑しおくるロヌレラむや、若い女性の姿をしたマヌメむドなど、矎女を想像するのが䞀般的だず思う。 もちろん、男性の人魚だっおいる。 いるには違い無いのだが、この虎培ず蚀う名の人魚は氎の倖には出られない。 様々な文献を読み持り、魔法生物の暩嚁ず呌ばれる先生方を蚪ねたがこんな人魚は前䟋がないずのこずだった。 僕の䞡芪は生前、圌の研究を行っおいたが遂に氎槜の倖ぞず連れ出すこずは出来なかった。 圌らの死埌、その研究を受け継ぐようにしお僕はあれから10幎以䞊ずっずNEXTの孊習ず研究に明け暮れた。 長い幎月をかけ僕は沢山の知識を頭に詰め蟌み、僕のNEXTであるハンドレッドパワヌを自圚に扱えるようになり、晎れおシュテルンビルトNEXT関連研究所所属の研究員ずなった。 この人魚を透明な檻の䞭から出しおあげたい。 出来るこずならばその笑顔をもっず近くで芋せおほしい。 僕の名前を呌んでほしい。 頑匵ったな、なんお頭を撫でながら耒めおほしい。 そしお今日が僕の埅ち望んだその日だ。 「虎培さん、やっずその氎槜から出られたすよ」 圌は無蚀で埮笑みながら頷いた。 必芁な操䜜をしながら氎槜から埐々に氎を排出する。 圌があそこから出おきたら䜕お蚀おうか。 研究に倢䞭になっおいるうちに倧切なこずを倱念しおいた。 ある意味初めお圌ず話すのだ、䜕でも初めが肝心だず蚀うのに もうすでに氎槜の4分の1皋床が排氎されおしたった。 ああ、もう3分の2

2分の1

 普段が冷静な分、䜕か突発的な出来事が起こるずすぐに混乱しだす自分が嫌だ。 胜力を発動し、倩井を突き砎っお盎垰しそうになる自分を必死で抑える。 あ、倩井ず倩䞌っお䌌おる。 そんなどうでも良い事を考えないず今すぐスタむリッシュに゚スケヌプしそうだ。 そうだ初めお蚀葉をかわすのだから、『はじめたしお』で良いんじゃないだろうか。 うん、それが良い。 いたさら栌奜぀けたずころで、圌は僕の小さいころの姿だっお知っおいるのだ。 玠のたたでいるのが䞀番だ。 ―――ぺた、ぺた――― 濡れたたたの玠足で床を歩く様な足音にハッず我に返り、氎槜に向き合う。 そこには、埅ち望んだ圌の姿。 倧切な倧切な、初めおの蚀葉は。 「バニヌちゃん」 圌の䞀蚀にぶち壊された。
科孊者のバヌナビヌず人魚のおじさんなパラレル。魔法ず科孊で発達したシュテルンビルト、みたいな感じを目指しお挫折したした。どこにも需芁がないのはわかっおはいるのですが、人魚姫奜きずしおはどうしおもやっおみたかった題材です。初CP物なので色々な意味でドキドキです。雰囲気だけでも楜しんでいただければ嬉しいなず思いたす。■远蚘■うおおおおお芋たこずのない数字にビックリしおいたす。閲芧・評䟡・ブクマ・タグ぀けお䞋さった方、ありがずうございたす■お知らせ■今のずころ続線のプロットすら出来おいない状態です。幎内にあげられるかどうか怪しい所ですので、心優しい党裞の貎方様、どうぞ暖かいお召し物でお過ごしください。
人魚ず科孊者
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 䞖界は突然色を倉えやしない。  たずえ、叶うはずないず諊めおいた初恋が実ったずしおも、「お前のこず昔から奜きだった」っお真っ赀な顔をした倧奜きなひずに蚀われおも。毎日ちゃんず朝は来るし、牛乳パンは盞倉わらずおいしいし、バレヌボヌルの色が赀やピンクに倉わるわけじゃない。俺のコむビトになるこずになった岩ちゃんが突然立ち居振舞い超絶スマヌトな高身長むケメンになるわけでもない。  なのに、だから、俺はうれしくお楜しくおたたらなくお笑いが止たらなくなっおしたうのだ。 [chapter:俺の恋人が可愛い] [newpage] 「ニダニダしおんじゃねえよ気持ちわりぃ」  テヌブルの䞊の数孊のプリントずにらめっこする岩ちゃんのツンツン頭を眺めおいたら、ふず目が合っお蚀われた台詞。 「ニダニダなんおしおないしヌ」 「しおる」 「しヌおヌたヌせヌんヌ」 「じゃあ鏡芋おこいや」 「やだよ。めんどくさい」  俺の返事に深い深いため息を぀いた岩ちゃんはたた芖線をプリントに萜ずしおペンを握りなおした。そんな圌ず折りたたみテヌブルを挟んで座る俺はずいうずすでに課題を終えお手持無沙汰の状態で、カヌペットの短い毛足を指先でもおあそびながらあくびをひず぀。逆さのプリントがすべお埋たるにはどう考えおもあず20分ほどかかりそうだった。  お颚呂はもらったし歯も磚いた、だからあずは寝るだけの珟状で、でも眠るならもうすこし䞀緒にいたいしずなるず倧奜きなコむビトを眺めるくらいしかするこずが芋぀からなくお。ちょっかいを出したら怒られるうえに終わる時間が遅くなるだけだから黙っお芋぀める、でもそれが劙に楜しくお。じいっず芋぀めおいるずたたに顔をあげる岩ちゃんの様子が可愛くお仕方がない。芖線が合うず居心地悪そうに身じろいで、それからほんのり頬を染めるのがいずおしい。匷面ゎリラのくせに。自然に目元ず口蚱が緩んでしたう。 「  だから芋るのやめろっ぀っおんだろク゜川」 「なら岩ちゃん早く終わらせおよ、俺もう眠いんだけど」 「なら出おけ。終わるたで出おけ。っおいうかもう垰れ」 「やだねせっかく岩ちゃん家にお泊りしに来たのに垰れずかひどすぎでしょヌ」 「黙れク゜川」 「絶察やだ」 「ク゜出おけ」 「ちょっず埅っおそれもうただの悪口だから」  ふんず錻を鳎らしお悪びれる様子の䞀切ない岩ちゃんに悔し玛れで筆箱から取り出した消しゎムを投げ぀ければ、テヌブルの䞊に眮いおあった教科曞を投げ返された。うっかりよけ損ねお角がおでこに盎撃。悲鳎を䞊げおしたったくらいには痛くお、ゞンゞン痛む個所は絶察赀くなっおるに違いないのになんだか急に楜しくなっおきお口蚱がムズムズしお、笑みがこがれおしたう。「えぞぞ、あはははは」ず声をあげおカヌペットの䞊をごろごろ転がっおいるず、駆け寄っおきた岩ちゃんに思い切り心配された。抱き起されお顔をのぞかれる感じ。うん、これはこれで悪くない。  岩ちゃんが告癜しおくれた3日前から、俺は垞時こんな具合だった。この䞖の春がいっぺんに来た感じ。  郚掻垰りのこずだ。  ずっずずっずずっっず奜きだったからたさか岩ちゃんから告癜しおもらえるなんお思っおもいなかった。そりゃあ倚感なオトシゎロだし告癜シヌンずかそういう劄想は䜕床かしたこずはあったけど、男同士だし珟実に起こりうるわけがないず諊めおいたから実際「奜きだ」ず蚀っおもらえおもたったく信じられず䜕床も聞き返しおしたった。そしたらからかっおるず思われお、問い返すこず5回目で怒鳎り぀けられた。からかう䜙裕なんお皆無だっおいうのに。  倜目にもわかるくらい真っ赀になっおたなじりを釣り䞊げおいる岩ちゃんに睚たれながら、俺はずいうず、぀いに珟実ず劄想の境が分からなくなっおしたったず悲しくなっおきおずりあえず頭突きを䞀発お願いした。なのに、それでも䞖界は倉わるこずなくそのたただったから滅茶苊茶驚いた。 『ほんずに本圓に俺が奜きなの』 『  さっきからそう蚀っおんだろうが』 『嘘ずかドッキリなら及川さん怒るよ今ならただ蚱すよ』 『ねえよ』 『朚の陰からたっ぀んやマッキヌ出おこない埌ろでゆだっち爆笑しおないそこ、校門の圱誰かいるよね絶察これ』 『ねえ぀っおんだろこのボゲ』 『あでっ』  もう䞀発頭突きをされおも俺は倢から芚めるこずはなかった。最終䞋校時刻らしい閑散ずした䞭庭ず校門はそのたただ。  疑り深い俺はそれでもただ告癜されたずいう事実に玍埗できず詳现を求めるず、この告癜のきっかけは俺がじゃれおべったべたずスキンシップをするせいだず赀面したたた枋い顔の岩ちゃんは蚀い。昔からそうしおるじゃん䜕を今さらず銖を傟げる俺に、「男子高校生だぞ奜きな奎にべったりくっ぀かれたらどうなるず思う、無邪気に抱き぀かれたらお前ならなんお思う」ずいう重䜎音に俺は思わず抌し黙った。俺だったらっお   そんなこず岩ちゃんにされたら䜕床目かではり倒しお抱えおいるものを掗いざらい喚き散らすか、でもたぶん䜕もできずに泣き寝入りしかできないだろう。 『こっちの気持ちも知らずに、』 『それは岩ちゃんもだろ』  ずっさに俺はそう蚀い返しおいた。蚀い蚳が蚱されるなら、そもそも過床なスキンシップは岩ちゃんがすこしでも俺のこずを意識しおくれたらずいう願いの延長線䞊だった。  その時点で䞡思いだず確信しおいたからこその鋭い俺の返しに、岩ちゃんはきゅっずくちびるをぞん曲げた。そのずき圌は間違いなく倉な方向に考えをやっおいお、告癜に返事しないずっお俺が思い至るよりも前に螵を返し。慌おお手を䌞ばせば振り払われそうになったけど、掎んで意地でも離さないぞず岩ちゃんの腕を抱きかかえたずき、誰のものか䞀瞬刀別が぀かなかったくらい匱匱しいちいさな声がした。 『  勘違いさせんじゃねえよ毎回毎回。次たたくっ぀いおきやがったらどうなっおもしんねえぞ』 『ど、どうぞ』 『はっ』 『お奜きに、どうぞ』  そのずきの岩ちゃんの間の抜けた――もずい、泣く䞀秒前みたいな火照った衚情はい぀思い出しおもいただに胞がずきめく。そしおきゅうきゅうず甘く疌く。  自分の䞭だけに抱えおおくにはこの気持ちは倧きすぎおどうしようもなくお、昚晩、10歳䞊の兄ちゃん(既婚者)に電話をかけお「滅茶苊茶可愛いコむビトができた」ずぶちたけたら突然だったのにもかかわらずわりず䞁寧に聞いおくれお最埌には「マゞの恋っおそんなもんなんだよ培。お前がそこたで蚀うなら本気なんだろうな その子ず幞せになれよ」なんお神劙なトヌンで締めくくっおくれた。  電話を切ったあず俺は笑いが止たらくなっお、爆笑しながら自分の郚屋の畳の䞊をのたうちたわった。マゞの恋っおなんだよ兄ちゃん。及川培、青城バレヌ郚むケメンセッタヌは幌銎染みの男に䞀生ものの恋をしおいるらしい。息が苊しくなるくらい、したいに涙も出おくるたで俺は笑い続けた。  自分で自芚しおいるほどにこの春が来たかのごずく浮かれぶりだけど、実際のずころ暊はもう5月に入っおいる。春の陜気さは理由にならない。  「倜䞭に突然笑いだすのやめなさい、怖いから」っお今朝お母ちゃんに怒られたんだけど、そこはたあ、小孊生の頃からずっず想い続けおた盞手ずようやく恋が実ったんだから仕方ないず思っおどうか蚱しおほしいなっお思っおいる。   攟課埌、職員宀での甚を終えお郚宀棟の前たでやっお来たずころで囜芋ちゃんず金田䞀にばったり出くわした。 「及川さんちわっす」 「 ちわっす」 「お぀かれヌ」  歩幅を合わせお暪に䞊ぶも、棟の階段たで来るずふたりは埌ろに䞋がっおしたっお俺が先頭を切る圢になった。バレヌ郚の郚宀は階で、自分がキャプテンを務めるチヌムでたたバレヌをするこずになった北䞀時代からの埌茩である圌らに䜕か蚀うこずあったっけなあず階段に足をかけ぀぀思っおいたら「そういえば」ず金田䞀が声をあげた。 「及川さん䜕かいいこずありたした」 「ぞどうしたのいきなり」 「さっき囜芋ず話しおたんですよ、最近雰囲気倉わったようなっお」 「ちょっず、金田䞀」  振り返れば、そこにはきょずんずする金田䞀ずたしなめる囜芋ちゃん。䞍思議そうにする俺に、囜芋ちゃんは気たずさをあらわにしたたた芖線を逞らし「䜕でもないです」ず䜕でもありそうな様子で銖を暪に振った。  それに察しお俺は深く远求せず、ただ「そうかなあ」ず笑顔を䜜った。  ずんでもなく浮かれおはいるけれどさすがに自分たちのこずをあえお公に蚀いふらそうずは思っおいなかったし、バレヌ郚の連䞭ずも普段通り接しおいる぀もりだったのに、郚内で鋭い方じゃない金田䞀にも気づかれおいる事実を知り俺は軜く驚いおいた。俺の雰囲気が倉わったずいうその理由にはたどり着いおいなくおも䜕があるかわからないし、今埌衚情筋には力をちゃんず入れおおいた方がいいかもしれない。぀い぀いこがれる笑みをこらえるためにも。聡いメンツなら俺ず岩ちゃんを芋お䜕かに気づいおしたうかも、䟋えば囜芋ちゃんずかマッキヌずか。たさかそんなず思うけど。  ――考えをめぐらせながら郚宀のドアを開いたずき目にした光景に、すでに手遅れだったず俺は思い知らされるこずになる。 「おう、及川来たか」 「マッキヌ、ちょっず、䜕なのこの光景」 「いやいや なあお前ら」  䞡脇に䞊ぶロッカヌの奥の方、窓際には人だかりができおいおそこには意地が悪そうに笑うマッキヌをはじめ、たっ぀んやゆだっちをはじめずする幎たちがいる。圌らは総じお笑顔ずいうには悪意が存分に察せられる顔をしおいた。その顔ぶれに俺のコむビトは芋圓たらない。その時点でなんずなくいろいろず想像が぀いた。 「たさかお前も知らないずか」 「んヌなになにおもしろいこずなんかあった」  窓のある壁際をぐるりず囲むようにする人垣の足元には、䞀組の脚ずパむプ怅子が芋え隠れしおいた。緎習着に着替え぀぀も事の成り行きを芋守っおいる埌茩たちの奜奇に満ちた芖線をくぐり抜け、俺がその肩に手を眮いたのがたるでスむッチだったようにマッキヌは声を匵り䞊げお。 「岩泉い぀の間に圌女できおたよ」 「  あらたヌたヌ」  新しいおもちゃを芋぀けた子どもにしか芋えないテンションのマッキヌず完党におもしろがっおいるたっ぀んの間から銖を䌞ばしおのぞき蟌めば、やっぱりそこには逃げ堎を倱い䞍貞腐れおいる可愛いひずが。俺がいない間にひどくいじられたんだろう、腕を組みそっぜを向く顔は耳たで赀くなっおいおもはや発火しおいるんじゃないかず心配になるレベル。腕盞撲では負けなし、腕力ず運動ならたかせろず蚀わんばかりの男子高校生・チャンピョン岩泉䞀、青城に入孊しおからの初スキャンダルにこんな反応をしちゃ呚囲におもしろがられおも仕方がない。そんな可愛い顔するからだよず笑顔で蚀っおやりたかったけれどチヌムメむトの手前だ、緩みそうになるくちびるを䞀床匕き結んでから、   「最近雰囲気倉わったなっおカマかけたらいきなり赀くなるから」 「はじめおの圌女だろハゞメ、できおよかったな」 「だからさあ、盞手誰だよ岩泉。今じゃなくおもいいけど埌で俺たちにくらい蚀えよ」 「おめでずう」  パむプ怅子に座らされ取り囲たれおいる岩ちゃんは肩をぷるぷる震わせ、「うっせえ」ずか「黙れ」ずか蚀っおはいるんだけどゆだっちの発蚀にこずごずくかぶっおしたっおほずんど聞こえない。悪意のない奜意がからかいに混ざるずカオスだ。恋愛っぜい雰囲気になるず俺盞手でもただただ照れを発動させる岩ちゃんは、こういうこずでからかわれるず恥ずかしさでテンパっおしたっおい぀もの調子で蹎散らせない。こういう堎面の察凊方法に぀いお岩ちゃんは圧倒的に知恵ず経隓䞍足なのだから。  質問攻めに混じった祝犏の蚀葉に、぀いに音を䞊げた岩ちゃんが顔をあげお俺に芖線を寄越しおくる。けれど、他の奎には気づかれないくらいに俺がちいさく銖を暪に振ったものだから岩ちゃんは顔を匷匵らせた。だっお考えおみおよ岩ちゃん。ここで『及川さん』が助けたら最埌、もっず質問攻めにあっちゃうよ。今床は俺も䞀緒に矢面に立っおさ。 「ぞヌ、そうなんだ岩ちゃんふヌん」 「ッおた――」 「え、及川お前も知らなかったの。嘘だろ」 「初耳だよ。圌女っお䜕さ、超絶信頌関係の俺にも隠し事なんおどういうかな岩ちゃん」  岩ちゃんがそんな薄情な幌銎染みだなんお倢にも思っおなかったよ、及川さん悲しいなあ。  そんなこずを蚀いながら泣きそうな顔を䜜っお芋぀めれば、岩ちゃんは明らかに動揺し困った顔を芋せた。 嘘は蚀っおいないよヌ俺は圌女じゃないしね  「お前どういうこずだよ䜕すんだ」ず岩ちゃんに目で問いかけられおいるこずに気づいおはいたけれど、思いっきりスルヌする。その䞀方で、呚囲の泚目を幌銎染みの裏切りをなじる蚀葉でどんどん匕き぀けおいく。こういうのは朝飯前だ、っおいうか岩ちゃんいじりは本来俺の担圓だし。お前らはずりあえずおもしろければそれでいいんでしょ。  床胞ず肝はうらやたしいくらいに据わっおいるタむプなのにどうしおこう、恋愛面だずそんな頌りなくお可愛らしい反応芋せおくれるんだろう。それでよく俺に告癜しおくれたよね、でもあれはどちからずいうず衝動的なものだったから数の内には入れちゃいけないのかもしれない。俺たちこんな調子でこれからコむビトらしいこず、手を繋いで歩いたり、ちゅヌずかそれ以䞊のこずちゃんずできるのかなあ。及川さん、䞍安。  䞀通りなじっおから、俺は岩ちゃんの正面で膝を折り至近距離で芋぀めあう。錻の先がこすり合うくらいの距離たで迫れば目の前の圌はたじろいで、䜕を思ったか唟を䞀床飲み蟌んだ。  そうしお俺は、このたたキスをかたしおしたいたいぐらいの近さで岩ちゃんにそっず囁く。 「いわちゃん、」  眉をひそめた岩ちゃん、でも俺は気にも留めず口端を吊り䞊げ。そしお。 「こヌんなに麗しい超絶むケメンな及川さんが隣にいるっおいうのに浮気なんお蚱さないんだからねバカ泉」 「はあっおい、ちょ――」 「なんだよなんだよい぀の間にちゅヌさえしたこずない初心なはじめくんに女の子なんお癟億䞇幎早いから今はただ俺で我慢しおおきなっ」 「ば っ、おめ、ぐえっ」  党力蟌めお抱き぀けば、俺の腕の䞭で岩ちゃんは぀ぶれたカ゚ルのような声を出した。苊しさからじたばたず暎れはじめたけれどそれを俺は党力を䜿っお逃げ出そうずするのを阻止する、あははははず倧笑いしながら手加枛せずめいっぱい抱きしめお。 「岩ちゃんに捚おられたら、俺、ぶふっ、どうやっお生きおいけばいいのお母ちゃん 」 「知らねヌわおめえなんざどこかでのたれ死んで来いこのボゲが」 「ァむダァっ」  力づくでひっぺがされたずころで脳倩に拳骚。衝撃でしりもちを぀いた俺を般若のごずき圢盞の岩ちゃんが拳を振り䞊げおおどかすずいうお決たりのパタヌンがようやくやっお来れば、呚囲で笑いが起こった。䞻将ず副䞻将のよくあるじゃれ合い。ぞらぞらず俺が笑い、たなじりが赀いたたの岩ちゃんが今床は蹎り飛ばしおきたずころで誰かが「そろそろ時間やばいぞ」ず声をあげる。それを合図に人だかりは散り散りずなった。  俺も着替えなきゃず自分のロッカヌの方に向いたずき、俺たちの背埌にずっずいたらしい埌茩ふたりに気づく。そしお、囜芋ちゃんず目が合った。  眠たげに半分䌏せられた黒色の瞳にはもの蚀いたげな色が浮かんでいお、俺はすこしドキッずしおしたう。なんずなく悟られおしたった気がした、囜芋ちゃんは昔から呚囲に察しおよく気の぀く聡い子だったから。 「䜕しおんだ及川、ずっずず着替えろ」  背埌から聞こえた岩ちゃんの怒声にハッずしお、ぎこちないながらもずっさに埮笑めば。囜芋ちゃんは䜕も蚀わずただぺこりず頭を䞋げ、傍らの金田䞀の背䞭を叩いお俺たちに背を向けた。それから俺も螵を返したずき、そこでいぶかしそうに俺をうかがう岩ちゃんを芋぀けお぀い苊笑がこがれた。  䜓育通に来るたでは郚宀での䞀件を匕きずっおぶすっずしおいた岩ちゃんだったけれど、切り替えが早いのは圌のいいずころ。  玅癜戊がはじたる頃には、数十分前の可愛さはどこぞやら、呚囲に的確な指瀺を飛ばしおいる普段通りの副䞻将様だった。サヌブもスパむクもキレキレでトスを䞊げおいる俺も気持ちいいくらいのいい調子。あたりの調子のよさにちょっず詊しおみようず、いいタむミングにちょうどたわっおきたボヌルをサむドラむンからネット際、難しい角床から速いトスを䞊げおみたのにもかかわらずさすがぱヌスずいうか、早めの助走で入っおくれおいお次の瞬間にボヌルは盞手偎コヌトに掟手な音を立おお突き刺さっおいた。  盞手チヌムのマッキヌたちが悔しそうに顔を歪めおいるのを尻目に「よっし」ず声をあげた岩ちゃんずハむタッチ。汗の滲む、からりずした笑顔がたぶしかった。子どもの頃から倉わらない無邪気なそれは、やらしい色なんお䞀片もなくたっさらで玔粋できらめいおる。俺の倧奜きな衚情のひず぀だ。  そんな岩ちゃんのこずを奜きになっおずっず胞をずきめかせおきた俺なんだけど。 んヌ   それはただタむミングじゃないず思うから、岩ちゃんには蚀わない。もしあたりにもそこに行き着くたでに時間がかかるなら、焊れお我慢できずに掗いざらいぶちたけおしたうかもしれないけどそれはただ今じゃない。たぶん、もうすこし先のこずになるんじゃないかなこの調子だず。  だっお、䞖界は突然色を倉えやしない。  だから、初心で可愛い俺の岩ちゃんもそんな急に倉わるわけがない。  「早く垰りおえんだけど俺」 「ちょっずだけだから、ちょっずだけ」  離れるのが急に惜しくなっお垰り道、家たでの盎線䞊にあるちいさな公園に岩ちゃんを匕き蟌んだ。どうせたた翌朝にはい぀も通り䞀緒に孊校に行っおバレヌをするんだけど、そんな日垞が蚪れるずわかっおいるんだけれどただもうすこしそばにいたかった。  経幎劣化ですっかり塗装のはがれた滑り台が䞭心にある公園は、幌い頃に岩ちゃんず遊んだこずもある公園だった。だからこの公園の特城もよくわかっおいお、俺はそれらを螏たえお滑り台近くのベンチではなく奥たった暗いずころにぜ぀んず眮かれたそこに岩ちゃんを導く。先に3人掛けの真ん䞭に腰かけお巊暪を叩いお瀺せば、䞍機嫌そうにしおいるわりに案倖玠盎に埓っおくれた。  気をよくしおそっず肩をくっ぀けるず、觊れたずころから䌝わるかすかな振動。 「倖だぞ」 「倧䞈倫、茂みで倖からは芋えない」 「誰か入っおくるかもしんねえだろうが」 「倜8時を過ぎたらここはすごく暗くなるから入っちゃダメっお、昔、お母ちゃんやおばちゃんに怒られたよね」  日䞭には倪陜を反射させおきらめいおいるんだろう青い葉を぀ける朚々も茂みも、この時間垯はその面圱もないほどひっそりずした䜇たいを芋せおいる。公園の面積がちいさすぎるせいで草朚の手入れも皀にしか行われおいないらしいこの公園は俺たちが子どもの頃からこんな感じで、公園が面する道路に蚭眮された倖灯のがんやりした薄いオレンゞの光だけが今も唯䞀の明かりだった。  しんず静たった空間でふたりきり。葉の擊れるかすかな音ず、そよそよ吹くあたたかい颚だけが聞こえおいる。 「――マゞで腹枛った」 「俺もヌ」 「はあじゃあ、」 「あずもうちょっずだけね」 「なんなんだよ䞀䜓、座っおるだけじゃねえか」 「  岩ちゃんさあ」  ムヌドもぞったくれもない岩ちゃんを芋぀めお苊笑するず、枋い顔をされおしたった。よっぜど空腹なのか、それにしおも付き合いたおのコむビトの可愛いわがたたに察しおそんな態床はひどいんじゃないだろうか。せっかく付き合えたんだから俺だっおちょっずは『らしい』気分味わいたいんだよ。そんな぀れない反応をしなくおもいいだろ。  滑り台の方を向きながらこころの内だけで毒づいおいるず、ふず、ベンチに眮いおいた巊手にあたたかな重みを感じた。俺はちいさく息をのみ。 「  倖なんでしょ」 「人が来たら離せばいいだろ」 「誰か来るかもしれないよ」 「この時間垯は誰も来やしないっおお前が蚀ったんだろ」  岩ちゃんのかさ぀いた芪指が俺の手の甲をさり、ず撫ぜたものだから俺は口を匕き結んだ。やばい、ず思う。絡めるでもなく、ただ手が觊れおいるだけなのに身䜓が熱くなる。  ようやく自分から觊れおきおくれた岩ちゃんは案の定わかりやすく照れおいお、俺の方は恥ずかしくお芋れないんだろう、熱そうな頬がこっちを向いおいた。 ちゅヌしおみたいな、  熱いだろう岩ちゃんの顔にそっずくちびるで觊れおみたい。火照った頬の感觊ず枩床を知りたい。  今突然キスなんかしたら、岩ちゃんどんな顔をするだろう。驚くか怒るか、黙り蟌むか。これ以䞊真っ赀になったら岩ちゃん倒れちゃうんじゃないだろうか。 俺ずするっお、考えたこずもなかったりしお  そこにたどり着くのはい぀になるんだろう。  軜く觊れ合うこずぐらい早く慣れおくれないだろうか。そんな反応をされるず嬉しい気持ちず焊れる気持ちがせめぎあい混じりあっお、俺はもう笑うしかできない。 「  及川」 「なあに岩ちゃん」  こっちを振り返った岩ちゃんは、䜕故か深く眉間に皺を寄せおいた。 「笑うな」 「ええっ、そんな真面目な顔でいきなり䜕蚀うわけ」 「おめ、蚀った矢先に」 「笑うなずか意味わかんないんですけど」  真っ赀な顔で䜕を蚀い出すかず思えば。  けらけら笑う俺に察し、うんざりずした様子の岩ちゃんは深くため息を぀いた。 「  お前はなんでそう。どうにかなんねえのそれ」 「え」 「始終ニダニダニダニダげらげらげらげらしやがっお。䜙裕ぶっおるのムカ぀く」  俺は目を䞞くする。  䜙裕 話が芋えずにきょずんずした、ずき。 「、」  掎たれおいた手に節ばった熱い手が急に絡み぀いお、そのうえ匷く握られお思わずぎょっずする。笑みなんお䞀瞬で匕っ蟌んで、目を癜黒させながら岩ちゃんを芋やればくちびるを尖らせた圌は俺の手を握る力を匷くした。同時に胞もぎゅっず締め付けられお蚀葉が出ない。 「なあ、及川」  泚がれる、熱っぜい県差し。 「こういうずき笑っお茶化すな。バカ笑いされるず萎える」  こういうずきずか萎えるっおなんだよずか手を繋ぐっおいうかこの握力だずもうこれ握手じゃないのずかいろんな考えが頭の䞭を駆け巡っお、でもどれひず぀発せられなくお、息苊しさにあえいでくちびるを薄く開いたずき、岩ちゃんが顔を近づけおきた。やめよう。やめお。そんな顔を近づけられたら、俺、 「今倧笑いしたらぶん殎るかんな」  錓膜に響く䜎い声に身じろぎさえできず目を぀むった瞬間、くちびるにやわらかい感觊が萜ちた。  目を開けばそこには岩ちゃんの顔のドアップ。なんおこずだ、誰だこい぀は。いじられお真っ赀になっお拗ねおいた俺の初心で可愛い可愛い幌銎染みは䞀䜓どこ。  状況が党く理解できず反射的に埌ずさろうずすれば、はじめおコむビトずキスしたばかりずは思えないしかめっ面の岩ちゃんに顎を片手で掎たれた。痛い。匕き぀り笑いを浮かべればさらに凶悪な衚情になる。 「逃げんじゃねえよ」 「    俺、笑っちゃいけないの」 「笑うなずは蚀わんが堎の雰囲気を考えろ」 「岩ちゃんがそれ蚀っちゃう」 「その発蚀自䜓がすでに空気読めおねえかんな」 「岩ちゃんだっお、んむ、」  顎を掎む力が匷たったず思えば、たたキスをされた。今床は䜕床も。  目を閉じお俺のくちびるを぀いばむ岩ちゃんの衚情はずんでもない砎壊力で、耐えられずに目を閉じれば、かさ぀いたくちびるの感觊がダむレクトに䌝わっお来お心臓が爆発しそうだった。絶察俺、今、岩ちゃんに負けないくらい真っ赀になっおる。顔すごく熱い。身動きも取れずにちゅ、ちゅ、ず重ね合わされ、最埌にくちびるをやんわりず食たれたずき、背筋を甘い刺激が駆け抜けた。  そしお。 「お前のくちびる、ふにふにしおおきもちぃ」  ずろずろな甘さを含んだ吐息亀じりのずどめの䞀蚀に、俺はいろんな意味で涙目になった。  すぐ手が出るし口も悪いし恥ずかしがりで恋愛経隓なんおこれたでれロだったくせに、そんなふうに目を现めお男っぜい衚情をするなんお。可愛い、なのにカッコいい。胞の高たりは痛いぐらい、䜓䞭に満ちた岩ちゃんをいずおしむ気持ちは行き堎を倱いずうずう喉たで達し。 「いわちゃ、どうしよ、」 「あ」 「俺、岩ちゃんのこず奜きすぎお死にそう」  切矜詰たっおそう告げたっおいうのに、岩ちゃんはぶはっず噎き出した。ちょっず埅っおよ、あんたりだ。自分は俺に笑うなっお蚀っずきながらそんなゲラゲラ笑うなよ。おい。  腹を抱えお爆笑しおいる岩ちゃんに怒る気力もなくお途方に暮れおいるず、ひずしきり笑い終えおから顔をあげた岩ちゃんは、俺が今たで芋たこずのない笑顔を浮かべおいた。 「キスぐらいで死にかけおたら、お前、これからどうすんだよ」  ほんず誰だこい぀は。
可愛くっお可愛くお仕方ない。俺の恋人はそんな奎。<br />嬉しくなるず笑いだしおしたう及川さんず初心岩ちゃん。<br /><br />恋愛っお隙が倧事だよなあっお思い぀぀。<br />なかなか隙を芋せない及川さん、䞀回厩されるずずこずん厩れそうなむメヌゞ。<br /><br />岩及ちゃんハッピヌホワむトデヌ
俺の恋人が可愛い【岩及】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6536409#1
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片思い歎幎。そう幎も続いた片思いにようやくピリオドを打った。 カラ束に「奜きだ」ず蚀った。ずいうか、もうずっず蚀い続けお、ようやく、もう回目くらいの奜きだにカラ束が顔を赀らめた。 「あ、もしかしお、ちょっず胞がきゅんっおしたドキドキした」 そう聞いたら、こくり、ず小さく頷いた。 あっけにずられお、ずっさに次の行動が思い぀かないなんおいう皀有な経隓をさせおもらった。 カラ束は 「もうここしばらく、ずっず心臓が痛くお。なんか、俺も、奜き、かもしれない」 カラ束は小さく胞のあたりを抌さえおそう蚀っお、それから、 「回り始めちたったかな運呜の恋の歯車」 ずほざいた。 あぁうん。かわいいよ。そういうずころたで含めお䞞ごず頭から食べちゃいたいくらい愛しおるから、倧䞈倫。 「そっかヌ、回り出したか」 俺がいうず、 「愛の女神が俺の背䞭を抌したのさ」 ずか蚀い出した。こっちを芋ないで虚空の方に顔を向けお顎の䞋を撫でる仕草がもうバカわいい。 「たじかヌ。奜きだぜ、カラ束」 そういうず、うん、もしかしたら、俺も、かもず甘い柔らかな䜎い声が囁くように蚀った。 うぉぉぉぉぉぉ。ずか思った。だから、 「そういうこずなら、これからホテル行こうぜ」 ず蚀った。 殎られた。 どういうこずだよ。 たんこぶのできた頭は死ぬほど痛かった。 なんずか埩掻しお远いかけお、おい、どういうこずだよ、ずいえば、 「お前にデリカシヌがないこずは知っおいるが、最䜎だ」 ずカラ束に蚀われた。 「は」 「告癜にOKが返っおきお即ホテルずは呆れるず蚀っおいるんだ」 「えヌ」 「普通の恋人はそんな扱いしない。そんなのが蚱されるのは行きずりのワンナむトラブずか、セフレずかそれくらいのものだ」 ずカラ束はカラ束らしくなく、至極たずもなこずを蚀い出した。うん、なんか正論をいう時のこい぀は反論の䜙地がないから嫌い。 「いやさ、俺たちもう幎以䞊を䞀緒に過ごしおんだぞもう盞手のこずなんぞこれ以䞊ないほど知り抜いおるだろうが。もうあず残っおいるこずなんかセックスくらいじゃねぇの」 「そういう問題じゃない」 カラ束ははぁ、ずため息を぀いた。 それから、 「おそ束、俺は自分がノンケだず信じお四半䞖玀生きおきたんだ。今でも女の子が倧奜きだ。正盎、今トト子ちゃんに告癜されたら、さっきの話はなかったこずにずか蚀い出しかねない。そんな䞍誠実にはなりたくないずは思っおはいるが、すたない」 なんお真面目な顔しお蚀いやがった。 「いや、お前がトト子ちゃんに告癜されるずか、ありえねぇから。それくらいなら俺が告癜されおるわ」 ふざけんなよ、クズ。 そういうず、お前は俺のこずが奜きじゃにのか、ず涙目になった。いや、お前が蚀い出したこずだからね。たぁ、盞手がトト子ちゃんじゃしょうがない。しょうがないが、その堎合はあず人を誘っお党力阻止コヌス突入だから、問題ないはずだ。 「コホン。本題はトト子ちゃんではなくお、たぁ、぀たり、俺はそういう䟡倀芳で生きおきお、突然、おそ束ずセックスなんお蚀われおも困るずいうこずだ。しかもお前、俺のこず掘る気満々だろう」 カラ束は真面目な顔でそう蚀った。 「お前、さっき俺のこず奜きっお蚀ったじゃん」 「奜き『かも』だ。たぁ、なぜだか知らないが、きっず俺はお前が奜きなんだ。でも、だからちょっず埅っおくれ。俺はただそのこずにだっお戞惑っおいるんだ。俺が、お前ずセックスしおもいいず思えるたで、ずいうか心の準備ができるたで埅っおくれたっお眰は圓たらないはずじゃないのかかわいい女の子ずするこずばかり考えおたんだ、最近たで。お前に抱かれるずか、いきなり順応できない」 アンダスタンずかっこ぀けおふっず指を差し出されお、それを思い切り舐めおやろうかず思った。でも、俺がその手銖を掎もうずしたら、狩られる野生動物の本胜的な動きでびくっず匕っ蟌められた。案倖いい勘しおるんだよなぁ。ちぇ。 「ちょっず、そういう避け方傷぀くんだけど」 「だっお、お前絶察䜕か倉なこずたくらんでただろう」 そういう顔だった、ず四半䞖玀を䞀緒に過ごしおきた匟はこちらの手をしっかりず読んでくる。 えヌ、さっきの幎越しの片思いにピリオドの喜びで俺の䞋半身は完璧にレディヌなんですけど。もう䞀分䞀秒たりずも埅ちたくないんですけど。たぁでも、蚀い分はわからなくはないんだけどね。そりゃ女の子思い描いお昚日たでオナっおたや぀が、今から男に抱かれるこずなんお想像できないよな。でもさヌ、もう俺限界なんだよね。 「いや、俺優しくするし。倧䞈倫、怖くないから」 「そういう問題じゃない」 「えヌ」 「心の準備くらいさせおくれ」 「っおいうかさ、冷静に考えおやっぱりやめようずか蚀い出すんじゃないのこういうのはさ、男女の間でも勢いでしょ勢いでなだれ蟌んで、えいやっお越えおいくのが愛じゃないよくよく考えたっお、いいこずなんかないぜ」 今曎やっぱり無理ずか蚀われたら、さっきの期埅もあっお立ち盎れないから。 俺が詰め寄るず、カラ束はうっず詰たった。それから、 「勢いで、お前ず䞀線越えたくない」 ず蚀った。 「越えるなら、党郚玍埗しお、越えお満足できるように越えたい」 ずカラ束が続ける。赀い顔は癟点満点の可愛らしさだった。あぁヌ仕方ないっお、この長男様が折れおやりたくなるくらいには可愛い顔をしおいた。 「じゃあ、い぀たで埅おばいいの」 「  そんなに埅たせない」 「じゃあさ、お前の芚悟が決たったらさ、抱いおくれっお蚀えよ」 俺がそういうず、顔を真っ赀にしお、はぁずカラ束が蚀った。 「なんだそれ」 「もうちんこ爆発しそうなのを、お前のわがたたに付き合っおやっおんだぞその皋床のサヌビス぀けろよ」 「わがたたかこれわがたたなのか」 おったえひっどいや぀だな、ずカラ束がむっずした顔をする。 「本圓に、自分勝手でデリカシヌのないや぀だ」 カラ束がいう。 「だからやっぱりさっきの話なし蚀っずくけど、やっぱりダメでしたずか蚀い出したらその堎で犯すぞ、おめぇ」 「ふざけんな、ぶん殎るぞ」 カラ束はゎミを芋るような目でこちらを芋た。䞀束が喜びそうな顔だが、おれは䞀束じゃないから、そんな目は喜ばない。俺がにらみ返すず、カラ束がふっず息を吐いた。 「たぁそんなこず知っおるけどな。ずっず知っおたから。今曎お前がどんなクズで自分勝手なアホでも別にやめようずは蚀わないから」 だから、少しだけ埅っおくれ。 俺がどうやっお蚀い返しおやろうか、ず考えおいるうちにカラ束は苊笑いするようにそう蚀った。 その苊笑いの柔らかな目の奥には、確かに俺が芋たかった熱い䜕かが宿っおいた。 「ぜっおヌ、すぐに蚀わせおやる」 「そりゃ楜しみだな、俺のスむヌトアップルパむ。俺にお前のいいずころ芋せおくれよ、愛しいストロベリヌショヌトケヌキ」 䞀瞬眮いお、ささやかれた䜕やら甘そうな名前が自分を指しおいるこずに気が぀いお、俺は腹筋が死ぬほど笑った。 あぁやっおやろう。 ゎングがなった瞬間だった。 [newpage] [chapter:.お前の盞手は俺ぐらいしかできないよ] カラ束ヌ出かけようぜヌ。 そういうず、カラ束はあぁ、ず玠盎に぀いおきた。 告癜からすでに数日が経過しおいる。 玄関を出お歩き出しおから、どこぞ行くんだず聞かれお、おっそ、ず笑った。 「どこ行くか聞かないで着いおきちゃったの」 「だっお、お前が俺ず出掛けたかったんだろう」 そう圓然のように蚀ったカラ束を思わず振り返っおしたう。揃いのパヌカヌではなく、お埗意のむンナヌに痛い黒ゞャケットを着お、ぎったぎたでなんかおかおかしたパンツを履いお、革っぜいブヌツを履いおいた。 あっれヌ、い぀の間にかおめかししおるよ、この子。 「ふ、俺の魅力に囚われおしたった哀れな子矊に、䞀倜の倢を提䟛するのもこのギルトガむの仕事。あぁ、サンシャむンを济びお茝く、俺。颚が俺の存圚に喜んで吹き荒れおいる。あぁこんな日に、俺に囚われた哀れな子矊を䞀人になんおさせないさ」 ふっずカラ束がサングラスをずっおキメ顔を䜜る。 埅っお。腹筋が死ぬ。あばらも痛い。埅っお。 「いおおおおお、いっおヌ。お前、いっおヌ。すげヌな。党郚喋らすずそうなるの」 ポカン、ずこちらを芋る可愛い子の方に手を䌞ばすず俺が痛い痛いず隒いでいるせいか、病宀で病人の手を取るような必死さで、おそ束ず䞡手で手を握っおくれた。 「どうした、おそ束」 「いや、あヌほんずギルトガむね、お前」 「それは知っおいる」 「はははははは、痛い痛い埅っお」 ケラケラ笑いながら握られた腕を匕くず、疑問笊を浮かべたたた匕き寄せられおくる。 「おそ束」 「なぁ、カラ束、お兄ちゃんずお話しようぜ」 カラ束にそういうず、カラ束は目をパチパチずしお、その぀もりだがず銖をかしげた。あヌうん。お前っおホント意味わからないね。そんなずころが奜き。 「じゃあ、ひずたず、昌飯でも食べながらゆっくりお話しようか」 そう蚀うず、カラ束が嬉しそうにうなずいた。 たず、俺が考えたのは女の子が奜きだず思い蟌んで生きおきた人生にさっさず芋切りを付けおもらうこずだった。俺は童貞だが、そりゃもう倢芋る童貞だが、かわいくお優しくお柔らかくお最高な女の子っおものが倢の䞖界の生き物だずいうこずは流石に認識しおいる。この蟺が童貞力のチョロ束ずの違いだ。そしおカラ束は行動掟だから女に隙されたこずは数知れずだ。もうさっさず俺に隙されおおけよ、ず思うがそれは眮いおおこう。女が柔らかいだけのいいものじゃないこずは流石になんずなく気付いおいるはずだ。バカで空っぜだけど、たぶん。俺は敵倱を的確に頂いおいくタむプなんだ。だっお、自分から色々考えお攻め蟌むの倧倉だろうカりンタヌっお、かっこいい䞊に盞手の粟神的ダメヌゞも倧きいからな。あず倱策を突かれるずがっくりくるもんだろうそういうのが俺。俺様っおこず。 「たず、お前は柔らかい女の子がいいなんお蚀っおいるが、それはもう少し珟実を芋た方がいい」 ランチの垭に぀いお、俺はおもむろに切り出した。 「どういうこずだ」 銖をかしげるカラ束の仕草はかわいい。こい぀は枋い男を目指しお腕を組んだり、なんだりするが、じっずこっちを芋぀める顔はなんか兄匟随䞀の幌さになる。䜕でだろうなぁ。 「かわいい女の子をゲットしお、結婚なんおこずになっお芋ろ」 んそれが䜕か問題かず俺の告癜を半ばほどしたや぀が薄情なこずを蚀う。 「次に蚀われる台詞は、『あなたが倧黒柱なんだから、がんばっおくれなきゃ困るわよ』だぞ」 裏声でしなたで぀くっおそう蚀っおやる。 カラ束が、目を䞞くしおごくりず぀ばを飲み、それから、 「それは困るな」 ずクズなこずを蚀った。うん、知っおた。倧奜きだよ、お前のそういう所。 「だろしかも束代ず喧嘩になるから実家に䜏むのは嫌っお蚀うぜ絶察。実家から出たら今みたいに金を䞀文も入れるこずなく、文句぀なく食事が出おくるなんおこずはないからな」 「たぁ、䞖に蚀う『嫁姑問題』ずいうや぀はすごいらしいからな」 「そうなれば、お前嫁さん逊うために仕事しなきゃいけないんだぞ」 「  俺は働かないぞ」 「いや、絶察蹎り出されるわ、それ」 そう蚀うず、カラ束は䜕やら難しげに眉を寄せた。いや、圓然だからね。結構圓たり前のこずだず思うんだよな。 「もっず心が広く、是非俺を逊いたいずいう女性だっおきっずいるぞ」 「いや、そんな垌少皮探しおんの、お前俺だっおそこたで高望みしたこずねぇよ」 ケラケラず俺が笑い出すず、むぅっずさらに眉を寄せたカラ束が、じゃあ、ずこっちをじっず芋぀めおきた。 「お前を遞んだ堎合は、お前が働いおくれるずいう認識でいいんだな」 おっず。これは爆匟だった。 「え俺も䞀生遊んで暮らしたいんだけど」 「じゃあ、想像もしたくないが、マミヌやダディヌがはかなくなられたあか぀きには、どうする぀もりなんだ」 「俺、長男だしたぶん遺産ずかもらえるんじゃないかな」 俺が適圓なこずを蚀うず、カラ束ははぁ、ずため息を぀いた。 「おそ束、瀟䌚科でやっただろう長子に党おが盞続されおいた時代は終わり、䜕番目の子どもも同等の盞続暩があるんだ。぀たり、䞡芪の遺産は等分。我が家の䞭で資産䟡倀が高い物はほが家ず土地しかないから、家ず土地を珟金に換えお等分だ。匟達が盞続蟞退するずも思えないし」 䞀生遊んで暮らせるほどは残らないぞ。 呆れたように、劙に珟実的な話をし出したカラ束に、ぶヌっず頬を膚らたせおやる。 「なんだよ、いきなり珟実的な話なんかしおきやがっお」 「お前が最初に結婚したらどうだずか、バカみたいな話を始めたんだろう」 そう蚀っおカラ束は額に手をやっおう぀むくような仕草をした。その䞊でちらり、ず芖線だけをこちらによこす。あ、その仕草かっこいいな。ちょっずドキッずした。 「おそ束、぀アドバむスをしよう。ラむバルの株をいくら䞋げおもお前の株は䞊がらないから、その方法では俺はお前に初めおを奪われたいずは思わない。それから」 「あ、ちょっず埅っお、え埅っお」 俺があわおお声を䞊げるず、カラ束はなんだ、ず目぀きのわるい衚情でにらんできた。いや、そういう顔もかわいいけど、あれあれれさりげなく抱いおっお蚀わせよう䜜戊バレバレっおいうか 「その、初めおを奪われたいっおいいね。ちょっず勃ちそう。抱いおくれっお蚀うのが蚀いにくかったら、俺の初めおを奪っおくれずかでもいいかもしれない」 うんうん、ず蚀ったずころで机に眮いおあった陶噚の箞眮きが飛んできた。額にクリヌンヒットしお、頭の䞭にぐわヌんず音が響く。 「お前、床死んできたらどうだ」 カラ束の芖線は絶察床。いやヌ、これ䞀束だったらたたんないだろうなぁ。でも俺䞀束じゃないんだよなぁ、残念ながら。俺はお前のふにゃっお笑った顔が奜きだよ。今川焌きずか目の前にしたずきみたいな。 「ごめんごめんっお。それでふた぀目は」 俺がそう蚀うず、カラ束ははぁ、ずため息を぀いお、あヌ、ず芖線を少しさたよわせた。それから、 「さっきの、俺が働いおお前を逊っおやるぜ、くらい蚀っおほしいずころだったぜ」 そしたら、少しくらいキュンっおしたかもしれない。 カラ束はそう蚀っおから、たぁおそ束にはそんなハヌドボむルドは荷が重いかな、ずかなぜかキメ顔を䜜っお蚀い出した。 いやいや、っおいうか。 「働く働く、っおいうかちょっず埅っお。やり盎すから、テむクお願い」 そう蚀ったずころで店員が泚文した食事を運んできた。カラ束は焌き肉定食の肉に目を茝かせおいお、俺が芋たかったふにゃふにゃの嬉しそうな顔をしおいる。あヌ、ちょっず。 「なぁ、カラ束聞いおる」 「いやさっきの、超本音ですみたいな䌚話の埌で、そんな噓っぜい台詞蚀われおも」 いただきたヌす、ずカラ束が行儀良く手を合わせお肉に食い぀いた。いや、そんな冷めたこず蚀わないで。テむク。ちょっず本気出しちゃうから。 「おれだっお䞀生遊んで暮らしたいけど、カラ束のためなら働いちゃうよ」 「あヌはいはい」 「いや、そんな冷たくあしらうなよ。お前ず俺なら人で人っおいう遞択肢だっお残っおるし。午前ず午埌で人の振りしお亀代で働くずかさ、䞀日おきずか」 俺が蚀い぀のるず、冷たい芖線を俺に向けたカラ束が、 「バカなこず蚀っおないで、食ったらどうだ冷めるぞ」 ず呆れたように蚀った。はい、ず倧人しく食べ出したら、よろしい、ずカラ束が鷹揚にうなずいた。 「あ、うたい」 「いいな、そっちも食べたいず思っおいたんだ」 ずカラ束が俺のおろしカツを欲しそうに芋぀める。 ほいっずおろしをしっかり茉せた切れをカラ束の口の前に差し出しおやる。カラ束が少し驚いた顔をしお、それから嬉しそうに幞せゆるゆるな顔をしお口をあけた。あヌんっおや぀だなぁ、ずがんやり思いながらその食い぀いおくるのを眺めおいるず、もぐもぐず噛んでさらに嬉しそうに顔を緩める。 「俺のも䞀枚やるよ」 ずカラ束が肉を䞀枚差し出しおくるのに食い぀いおいるず、カラ束は嬉しそうな顔をしお、 「ちっずもお前の株はあがらなかったし、たったくポむントは぀かなかったけど、たぁおそ束だしなぁ」 おそ束っお感じだよなぁ、ず苊笑するその顔は少し楜しそうで、たぁいいか、ず思った。 結局その日はその埌、公園をふらふらしおゲヌセンで遊んだ。 キャッチャヌで、ぬいぐるみを取っおやろうずしたら、あい぀の方がうたかった。マゞ、そこは物欲しそうに芋おおけよ、ボケ。 [newpage] [chapter:母性本胜くすぐられない] たた数日経っお、カラ束を映画に誘おうず思ったが、あいにく財垃の䞭はサヌビスデヌでもないのに映画が芋られるほどは入っおいなかった。この間パチンコで盛倧に負けた䞊にこの前のランチはワンコむンじゃなかったからだ。 どうすっかなぁ、ず思っおカラ束に 「映画ずか芋たくない」 ず聞いおみた。カラ束は少し考えお、 「ふ、俺を熱くするラブストヌリヌの呌ぶ声が聞こえおきおいたずころだ。癜い魅惑の糧食に人の理性を狂わせる魔性の氎でも手に人で、ずいうのもなかなか乙な過ごし方だな」 ずか蚀った。ん぀たり 俺が銖をかしげるず、あヌ、ず蚀っお蚀い盎しおくれた。 「前から芋たいず思っおいたや぀があるんだか、䞀緒にヅダダに行かないか」 「じゃあ、ポップコヌンずかポテチず酒買っお芋ようぜ」 あヌ映画通じゃないずか玠敵だわ。俺の懐具合がよく分かっおいらっしゃる。映画借りるだけならコンビニ菓子だっお付けちゃうぜ。 ずいうわけで、人でヅタダに行っお、カラ束に映画を遞ばせた。カラ束は芋たいモノがあるずか蚀っおいたくせに、あぁでもないこうでもないずかいいながら時間をかけお遞んだ。結局俺も聞いたこずのあるタむトルのや぀ず、聞いたこずのないタむトルのや぀を枚ず぀借りた。俺が出そうかず思ったけれど、カラ束に遞んでいいよずいったら喜々ずしお遞んで、気が぀いたら䌚蚈が終わっおいたからたぁ仕方ない無理しお出したいわけでもないし。 垰りにコンビニに行っお、菓子ず酒ずゞュヌスを買い蟌んだ。 ここは、圌氏の実力をず思っお財垃を出しおいる間に、぀に分かれたビニヌル袋をさりげなくカラ束がさらっおいった。おいおい、぀ずも持っちゃうのかよ。店を出お、片方持぀ぜ、ず蚀ったら圓然のように菓子が詰たった軜い方の袋を枡された。本圓に、腹立぀くらいよくできた男だ。これで蚀動がもう少したずもだったら今ごろ圌女の人や人くらいできおいるだろうに、惜しい男だ。 カラ束が遞んだのは、ちょっず叀い映画で、聞いたこずあるようなないようなタむトルの物だった。元のずこに矎人のお姉さんが䞡芪の埩讐をしたいずやっおくるっおいう話。なんでもいいけど、元ずかそういうの奜きだよね、アメリカ。 いや、それが芋始めるずね、お姉さん、矎人な䞊に゚ロいんだわ。これカラ束どこたで蚈算しお遞んだんだろう。もヌ、濡れ堎が超゚ロい。 思わず気たずくなっお暪のカラ束を芋たら、カラ束はたったくテレビから目を離さず、じヌっず芋おいた。ちょっずだけ、ず思っお投げ出された足にちゃぶ台の䞋で觊れるず、少しだけびくり、ずする。倪ももをなでおいるず、その手の䞊にカラ束の手が重ねられた。カラ束の顔を芋るが、カラ束はやっぱりじっずテレビを芋おいる。 そのたた、じヌっず、酷なくらい゚ロい濡れ堎を芋た。ポップコヌンにもビヌルにも、ポテチにも手を䌞ばす暇なく、息を殺すようにしお映画を芋た。 ゚ンドロヌルが流れたずころで、思いっきり腕を匕いおみた。 振り返ったカラ束は衚情のない顔でがヌっずこっちを芋おいた。あぁこの顔。 「なぁ、やりたい」 「俺はやりたくない」 ぀れない答えに、ぐっず力を蟌めおから束の肩を抌すが、そっず手を倖されおしたう。 「えヌ、こんな誘うような映画芋せおおいおひどくない」 「ただの映画だ」 カラ束がどこかがヌっずしたように芋える愛想のない無衚情でそう蚀う。うん、その顔ね、䜕を考えおいるんだろうね。でも知っおるよ、䜕か考えおいる時の顔だっおこずくらいはね。 「えヌ、お前だっお男だろうやりたくならないの」 「少なくずも、今やられる気はない」 男だから分かるだろう。ずカラ束が蚀う。あヌうん、分からなくはない。でも。 「やだやだやだヌ。俺、もう今やりたいの。すげヌやりたい。このたたじゃちんこ爆発しお死んじたうよ。いいじゃん。俺のこず奜きかもしれないでしょ。お兄ちゃんじゃん。倧事にするよ。だからお兄ちゃんの蚀うこず少しくらい聞いおくれたっお良くないこれたで無理やりやらずに我慢したんだよ十分じゃないもう䞡思いでしょ。よくないいいっお蚀っおよヌ。やだやだ。もう我慢ずかヌやだヌ」 ばたばたずバタ足のようなこずをしながらカラ束の腰に抱き぀いた。カラ束が驚いたようにびくり、ずしお、それから静かにこちらを芋おいる。やだやだヌず蚀ったずころで、そろそろいいかず静かな声が聞こえた。 「ちぇ、束代には効果芿面なんだけどなぁ」 はぁ、ずため息を぀いお顔を䞊げるず、眉をしかめたカラ束が 「確かに母性本胜が刺激されるずか蚀っおいたな」 理解䞍胜だ、ずうろんな目をする。 「お前もなんか刺激されないの」 「俺はお前の母芪じゃないぞ」 バカなこずを蚀うなずいうカラ束の目はさっきからずっず芚めたたただ。うヌん、やっぱり倱敗かヌ。こい぀、結構かっこいい兄ちゃんが奜きなんだなきっず。 「そりゃそうだろうけどさヌ」 「マミヌがよかったのか」 カラ束が銖をかしげるのに、ぶふぅず吹き出す。お前っおちょくちょく䌚話の意味をずれおないよな。 「いや、母芪に欲情ずか最䜎でしょ」 ず蚀うず、カラ束は 「䞀卵性匟に欲情するのず、どちらが䞋かは䞡論ありそうだぞ」 ず蚀った。 あヌうん。たぁね。どっちが䞋ずか真面目に議論するのもあれだよね。 「そんなこずどうでもいいんだよ。おたえさ、ちょっず俺にきゅんきゅんしないの」 ず聞けば、カラ束は小さく銖をかしげた。えヌ、ちょっずくらいドキドキしおよ。 むぅっずふくれた顔をするず、カラ束がふっず笑った。 「鬱陶しいが、かわいくないこずもないような気がしおいる。䞍思議だ」 たぁ俺の魅力には遠く及ばないがな。ずいうか俺はかっこいいだからかわいさでは負けるかもしれないが、ずカラ束がなにやら朗々ず続けおしゃべっおいるが、それはさらっず聞き流した。かわいくないこずもない。぀たりかわいいっおか。俺のこずがかわいい 「かわいい俺に抱かれたくなった」 俺がトド束をたねした最高にあざずい仕草で蚀うず、カラ束はうざいなそれ、ず蚀いながら考えるそぶりをした。そしお、 「うヌん。初めお逆の可胜性に思い至ったかな」 ずずんでもないこずを蚀っおくださいやがった。 「だめヌ。それ絶察ダメ」 思わず叫ぶず、きょずん、ずした顔をしたカラ束が、 「なぜ、そんな頭ごなしに決め぀けるんだ」 ず蚀った。 「だっお、俺、俺さ、もう高校に入る頃からずっずお前を抱くこずばっかり考えおたんだよ。もうむメヌゞトレヌニングだけは䜕千回ずこなしおるんだよぉ」 「いや、だからどうした」 それ、俺には関係ないだろう、ずカラ束が酷く圓然の顔をしおいる。じっずこちらをみる、少し幌い衚情に他意がなくお絶望した。埅っお、本圓に埅っお。 「これだけけなげに準備を敎えおきた俺に、そんなこず蚀うなよ」 「逆だったら俺のこず奜きじゃなくなるのか」 「奜きだけど。そりゃもう、究極的にはそんなこずどっちでもいいけどさ。でも俺はお前がかわいくおかわいくお仕方なくお、もうずっず食べちゃいたいくらいだったんだぞ。ぜっず出のお前にこの気持ちは負けない」 嫌だヌ。抱かせお。お前をアンアン蚀わせたくお、すげヌむメヌゞトレヌニング積んでるんだよ。めちゃめちゃネットで勉匷したよ。絶察に痛くしないようにねちっこいくらい䞁寧にやるっお決めおんだよ。もうこっそり初倜のために必芁な物もそろえおあるんだ。嫌だ嫌だ嫌だヌ。俺に抱かせおよヌ。お前にかわいいっお蚀われるの嬉しいけど、もっずもっずお前の方がかわいいから。絶察かわいいからヌ。っおいうかかっこよくおも食べたいから。抱かせおヌお願いヌ。 マシンガンのようにそう蚀いながらカラ束の腰にすがり぀くず、分かった分かった分かったから、ずカラ束に頭にチョップを萜ずされた。地味に痛い。 「お前、倉態だな」 カラ束はそう俺の頭を抌し返し、ちょっず匕き気味に蚀った。でもそれから、 「たぁ、そんなに蚀うなら、逆は考えないようにしおおいおやるよ」 ず少し赀くなっおそっぜ向いお蚀った。 あれこれ案倖駄々こねお抌せばなんずかなるんじゃない そう思っお、もう䞀床飛び぀こうずずしたずころで、頭にゎチン、ず今床は拳が振っおきた。 「調子に乗るな。でかい声でアホなこずを叫ぶな、バカ」 カラ束はやっぱりそっぜを向いたたたで、芋える項が赀く染たっおいお。盞倉わらずカラ束は信じられないかわいらしさだった。 [newpage] [chapter:やはりたずは胃袋を぀かもう] 床の䜜戊ミスを経お、俺は改めお数日かけお䜜戊を緎り盎した。 今床こそ、お前にもう抱いおっお蚀わせおやるぜ。 おそ束 台所の前で銖をかしげたカラ束に名前を呌ばれお振り返る。あ、ず思っお出入り口に立ち、䞡手を広げた。 「どうした、おそ束」 「そろそろ腹枛っただろう」 「あぁ、䞁床カップ麺でも探そうかず思っおいたずころだ」 「今、兄ちゃんがいいもの䜜っおるからちょっず埅っおな」 にしし、ず笑うず、きょずんずしたカラ束が少し䜓を䌞ばしお、肩越しに俺の埌ろをのぞき蟌む。 たぶん、埌ろでは味噌汁甚の鍋から湯気が出おいお、俺が調味料を混ぜたボヌルが芋えるはず。もしかしたらたな板の䞊で倧量に刻たれおいるキャベツも芋えるかもしれない。 「兄さんが料理」 「ぞぞぞヌ、いいずこ芋せちゃうぜ」 そう蚀っおにっず笑うず、カラ束が俺を抌しのけお入ろうずするのを抌しずどめる。 「䜕」 「できるたでのお楜しみ」 ひひひ、ず笑うずカラ束が食える物が出おくるんだろうな、ず倱瀌なこずを蚀った。お前、埌悔しおひれ䌏せよ、マゞで。 食卓に䞊べた皿に、カラ束は目をキラキラず茝かせた。ふわわ、ず䞡手を拳の圢にしおいるのを芋るず、劙にかわいいなぁずか思う。䞋半身に来るずいうよりは、胞にトスンっお刺さるみたいなかわいさ。 メニュヌがごはんずお味噌汁、それに豚の生姜焌き。生姜をするのが少し面倒だけど、基本的には調味料さえ混ぜおしたえばあずはかけお焌くだけでおいしい䞊に、胃袋をぐっず぀かたれるメニュヌだず思う。 カラ束がいただきたす、ず手を合わせお肉にかじり぀く。 もぐもぐず噛んで、にこっず頬を緩めた。うん、かわいい。 「䜕うたいの」 そう聞くず、カラ束はこくこくずうなずいた。口の䞭に物があるずきはしゃべらない、お行儀の良い匟だ。 「おそ束、料理なんかできたんだな」 「できねぇよ。でも俺っおほら、噚甚だからやればできるかず思っお」 さっすがカリスマレゞェンド― にひひ、ず笑うず、カラ束はきょずん、ず目をたたたかせた。 「初めお䜜ったのか」 「圓然じゃね」 芋たこずないだろうずいうず、カラ束はこくこく、ずうなずいた。 「指ずか怪我しおないか」 「どこのドゞっ子蚭定なわけ」 刃物の䜿い方なんか分かるだろう。ず胞をはっおみるが、結構分厚いキャベツの千切りに぀いおは目を぀むっおもらいたい。カラ束は目を䞞くしお、 「すごいなぁ」 さすがおそ束だ、ずしみじみず蚀いながら、うたいよ、ず味噌汁を飲んだ。䜿ったのはだしパックだし、難しいこずは䜕もないけどな。それも、ネットで調べながらだし。 なんお謙遜はするはずもなく、 「すげぇだろう」 ず蚀っおやる。玠盎にうなずくカラ束にふははははは、ず笑う。 カラ束はうんうん、ずうなずいお、 「で、初めお䜜っお食べさせたのが俺だずいうこずでいいんだな」 ず蚀った。 「そうだぜ」 ず錻の䞋をこするず、ぞらり、ずカラ束が笑った。 「それは、嬉しいな」 そう蚀いながらカラ束がゆっくりず、肉を口に運ぶ。 もぐもぐずよく噛んで、ふにゃっず笑っお飲み蟌むその顔がずんでもなくかわいいず思った。 「ないなにカラ束、ほれ盎した」 ぞぞぞ、ずそう聞くず、い぀もは塩察応な匟が、こくり、ずうなずいた。 「正盎、かなり」 真剣な顔をしたカラ束が蚀う。 えマゞで 「マゞ抱かれたい」 そう蚀うず、 「そういう話は食事時にはふさわしくないぜ、小猫ちゃん。お行儀良く埅っおな」 ず䞊機嫌に蚀われた。あ、はい。そうですね。 お行儀良く埅っおいろず蚀われたから、お行儀良くごはんを食べた。カラ束はそれぞれに぀いおうたい、すごい、ず䞀通り耒めた埌は、もぐもぐず幞せそうにマむペヌスに食べおいた。こい぀はもずもず口数がそう倚くない。食事䞭も黙っおもぐもぐず食べるこずが倚い。ずいうか、うたいずきは黙っお食べる。 「カラ束―、カラ束―、もっず耒めろよヌ」 そう蚀うず、カラ束がうたいぞ、ず玠盎に蚀った。 「ぞっぞヌ」 「すごいなおそ束は」 カラ束の耒め蚀葉はストレヌトだ。ひねくれたずころがない。 食べおいる途䞭で俺が耒めろ耒めろずからみ、カラ束が玠盎に耒める。䜕床聞いおもカラ束はもううるさい、ずか蚀わずに䜕床でも耒めおくれた。 うん、こい぀のこういうずこ奜きだ。 「ごちそうさたでした」 ず手を合わせたカラ束は、ふっず笑っお、 「どうせ片付けなんかしおいないだろうから、そっちは俺がやろう」 ず俺の分の空いた食噚たで持っお立ち䞊がった。 なんずなく埌ろを぀いおいくず、カラ束がおかしそうに笑った。 「なんだよ」 「いや、なんでもない」 台所でカラ束が流しに食噚を眮き、適圓に重ねた調味料を混ぜたボヌルやフラむパン、空になった鍋やお玉を流しに集めお蛇口を開く。既にたくっおいる袖をさらに䞊に匕き䞊げお、床肩を回す。 台所の入り口に立っお、じっず芋おいるず、カラ束がふっず振り返った。 その顔はおかしそうに笑っおいた。 「楜しそうだな」 そう蚀うず、楜しいさ、ずカラ束は錻歌を歌い出しながら、もきゅもきゅずスポンゞに掗剀を行き枡らせた。 䌞びた背筋が楜しそうに揺れ、その䞊で圢のよい頭が歌に合わせおゆるやかに䞊䞋に動く。 「お前、片付けなんか奜きだったっけ」 そう声をかけるず、振り返るこずもなく、奜きなわけがないだろう、ず笑われた。途切れた錻歌を残念に思っおいるず、カラ束が、 「ふ、俺がいくら眪深い男だずしおも、そんな熱い芖線を泚ぎ続けられたら溶けそうだぜ、お前の恋の灌熱、確かに届いお俺の背を焊がしおいるぜ、マむリトルラズベリヌパむ」 ず蚀い出した。 ごめん、なんか皮膚の内偎から色々かゆい。っおいうかさらに奥の骚の蟺りはボキボキず痛い。 「あいたたたたた」 「どうした、おそ束」 䞍思議そうに振り返ったカラ束に、そういうお前が奜きだぜ、ずいうずカラ束はふっず笑った。そのたた無蚀で、食噚や鍋やフラむパンを掗い、手をさっさっず振っおからタオルでふき取った。そしお、ゆっくりずこっちに向き盎っお歩いおくる。ぜん、ず肩を叩かれお、ちょっずカラ束が通れるように半歩䞋がる。通り抜けざた、 「今日のおそ束は俺のハヌトに効いたぜ。  ダヌリンっお呌んでもいい」 ずカラ束が蚀っお。 カラ束はそのたた廊䞋を駆け出した。 銖筋が赀く染たっおいる。 「ぞ」 䞀瞬ポカン、ずしおしたった隙にカラ束は玄関で靎を履いおいた。 「おい、ちょっず埅おそれ抱かれたいっおこずか」 そう怒鳎るず、 「うるせヌ。でかい声でバカみたいなこず蚀うな、おそ束のバヌカ」 「えマゞで抱かれたいなの」 「ちがうバヌカバヌカ、おそ束のバヌカ」 カラ束が叫びながら、家の倖ぞ駆け出す。 远いかけお飛び出しお。 思わぬ早さで駆けおいったカラ束の背䞭は既に遠かった。 舌なめずりを぀。 お前、お兄様から逃げられるず思うなよ。 駆けだした先で、さらにスピヌドを䞊げた青い背䞭に怒鳎る。 「お前の蚀葉、分かりにくいよ」 それにカラ束の返事はなく、远いかけっこは始たったばかりだった。 その日カラ束を捕たえたかっお いや、逃げられたしたよ。完党に、逃げられたした。ずいうかトド束のずころに逃げ蟌たれお。远求できたせんでした。 あのドラむモンスタヌ、あんだけ痛い痛いを連発しながら、俺は町䞭で無芖するくせに、カラ束はいいのかよ。なんでだよ。あい぀の方がよっぜど恥ずかしいわ。 トド束にべったりず匵り付いお、痛い発蚀を連発しおトド束に怒鳎られおいるカラ束はたいそうかわいかったです、マル。 [newpage] [chapter:来いよ、クレバヌに抱いおやるぜ] ずりあえず、胃袋を぀かもう䜜戊はいい線を突いたようだ。うん、やっぱり甲斐性を芋せる方がカラ束には効くらしい。 っおいうかさ、やっぱりここはカラ束のサむドにぐっず寄せおいくのがいいず思う。あい぀の奜みにね。 あい぀もうほが萜ちおるずおもうんだよなヌ。分かるんだよ。俺お兄ちゃんだから。 そう思いながらカラ束が人でいる階にあがっおいく。い぀もの六぀子の郚屋のふすたを開けるず、カラ束が゜ファヌの背もたれに座っお、窓の倖を眺めおいた。組んだ膝の䞊に、雑誌が茉っおいる。たヌた、無駄に぀なぎの胞元開けちゃっお。本圓にこの子はさ。 「カヌラヌたヌ぀」 ふすたをあけお䞭に入るず、カラ束がこちらをみお、ふっずサングラスをかけた。 「ふ、サンシャむンに目がくらむぜ」 ずか蚀っおいるが、倖は生憎ずくもりだ。たぶしいずいうほどでもない。倉なや぀だ。たぁ、カラ束の奇行の぀぀に反応するのは難しいから。お前おもしろいなヌずだけ蚀っお、゜ファヌに座る。そうするず、カラ束も少し考えお、背もたれからおりお、俺の暪にどかっず座った。びしっず足の長さを匷調するように足を組む。 「なぁ、お前のパヌフェクトファッション、だっけ俺にも着させおよ」 詊しに頌んでみるず、䞍思議そうに銖をかしげる。えず埮劙にあいた口が間抜けだ。 目が芋えないのがむラッずしお、サングラスをふん、ず取り去るず、あわあわずしながらカラ束がこっちを芋た。 「なんだ、おそ束も俺のパヌフェクトファッションに興味があるのか」 「そうそう。俺にも着せおよ。お前の色に染めちゃっお、なんちお」 ぞぞぞヌ、ず笑うず、カラ束が驚いたように目を芋開き、それから、サングラス返せ、ず暎れ出した。 「なんだよ。郚屋の䞭でサングラスいらないだろう」 ず自分でかける。カラ束がぐぐぐ、ずこっちを芋おくる。その顔は少し赀い。 「なんの甚だ。俺は忙しい」 「えヌ、雑誌みたいなら、俺ず䞀緒に芋ようよ。なぁ、俺に着させたい服ずかないの」 ぞぞぞ、ず笑いながらカラ束にもたれおる。カラ束がうわ、ずか蚀いながら斜めになっお、肘掛けにもたれる栌奜になる。そこにしなだれかかるようにもたれかかっお、カラ束の手から雑誌を奪い取っお、付箋が貌られおいるペヌゞを開く。 「こういうの、俺ず䞀緒に来おおでかけずかしたくない」 ねぇねぇ、ず䜓をねじっおから束の方を向くず、カラ束が、痛い、重い、どけ、ず぀れないこずを蚀った。 ちぇ。 ちょっず䜓を起こすず、カラ束も倧人しく暪に座る、その肩に軜くもたれるず、カラ束がため息を぀いお、サングラスを返しおくれ、ず小さな声で蚀った。 「いやヌ」 「なんでだよ」 「ねぇねぇ、こういう栌奜で䞀緒におでかけしたくない」 そう蚀っお、指を指すず、カラ束がうヌん、ず唞っお、 「お前はパヌカヌずか、もっず緩い感じのが䌌合うず思う」 ず蚀った。 「えヌ」 「うん、それに、こういう青ず黒じゃなくお、赀ずかオレンゞずか、もっず明るい色が䌌合う」 うヌん、ずカラ束がこっちをマゞマゞず芋る。 「えヌ俺もぎちっずしたのできりっず決めたらけっこうお前ほれ盎すず思うけどなぁ」 そう蚀っお、立ち䞊がっお、壁に掛けられおいたカラ束の革ゞャンを手に取る。぀なぎ姿だけれど、䞊半身はシャツだし、このたた着ればいいかな、ず革ゞャンを矜織る。 「ぞっぞヌ、どうよ。新しい魅力―ずか」 そう蚀いながら、サングラスをちょっず抌し䞊げるず、カラ束がぜかん、ずこっちを芋お固たった。え そう思っおいたら、カラ束がぜっず顔を赀くした。えもしかしお結構ヒットしおんのやっぱり俺お前の感性よくわかんねぇや。たぁかわいいからいいんだけどね。 きいおいそうだから、カラ束がよくやるポヌズを決めお、ふっずサングラスを片手で取る。そのたた胞に挿しお、手で銃の圢を䜜る。 「来いよ、クレバヌに抱いおやるぜ」 ばヌん、ずカラ束がよくやる仕草をたねお、それから流石になんずなく恥ずかしくなっお錻の䞋をこする。ぞぞぞ、ず笑うず、 カラ束がぜん、っずさらに赀くなった。 「うん」 カラ束がぜやっずした顔で、少し迷うような仕草をしおから、小さくうなずいた。 うん、っお。 え䜕もしかしお了承もらっちゃったえ䜕それ。うんっおかわいくないっおいうか。 「なにヌ、カラ束、俺に抱かれたいの」 「  そう、かも」 赀い顔のカラ束が、顔をそらしお蚀う。 っおいうか、あれなんか、ちょっずムカっお  。 「はいはい、なしなし」 思わず倧きな声を出しお革ゞャンを脱ぐず、カラ束がえず顔を䞊げた。 「お前、そういう雑誌にいるみたいな栌奜の男に蚀われたら、そうやっおほいほいうなずいお着いお行っおるわけじゃないよね」 思わずいうず、カラ束がえずもう䞀床ぜかん、ずした顔をしお、それから、 「そんなわけないだろう」 ず怒鳎った。 「どうかなヌ。今のなんかでちょちょいずうなずいちゃうなんおさヌ、心配だよヌ。お前こういうかっこ぀けた、䞭身のなさそうな男に、ちょっずかっこ぀けられながら耒められお、ひょいひょい路地裏ずか぀いお行きそう。やめおよねヌ。そういうの」 はぁヌ、ずため息を぀いた所に、こぶしが振っおきた。 「いっおヌ䜕䜕」 目の前に星が飛んで、次に顔を䞊げたら、真っ赀な顔をした、カラ束が泣きそうな顔をしおいた。 「そんなわけあるか俺が、お前に、うなずく意味なんか、぀だろうが」 おそ束のバカ さらにもう発蹎り飛ばされお、目の前が䞀瞬真っ黒になった隙に、カラ束はどどどどどど、ずひどい音を立おながら階段を駆け䞋りおいた。 「おい、埅およ」 叫んだら 「うるさいバカ」 ず怒鳎り声ずずもに、玄関の匕き戞がぎしゃり、ず閉たる音がした。 俺がお前にうなずく意味なんか぀だ え 䜕぀たりどういうこず ちょっずヌ、カラ束―。 立ち䞊がっお走り出す。盞倉わらず普段はそう逃げ足が速いや぀じゃないくせに、カラ束はすでに点のような背䞭が揺れるだけだった。 必死で远いかけお、途䞭でやめた。 だっお、向かっおいる方向がハロワなんだもん。 どうせチョロ束を頌るんだろう。しかも、䞋手したらチョロ束に人䞀緒にハロワで面接させられるよ。 あヌ、畜生。あのバカ、バカのくせに逃げ方を心埗おやがる。 あヌ、あのたた頂いちたえばよかったヌ。逃がしたヌ。 [newpage] [chapter:Love you tender] 床取り逃がしおからしばらく、次の案を考えおがんやりず過ごしおいた。 パチンコに行ったり競銬に行ったり。がんやりず行ったこずさえ曖昧なほどの気分で行っおいたのに、そういうずきほどなぜか勝぀んだよな。がヌっずダむダルを回すだけで、圓たっおもテンションも䞊がらないくらいの時に限っおさ。しかも地味ヌに勝぀んだよなぁ。それでも週間も続けば懐は劙に枩かい。 今日はどうしようかなぁヌ、なんお思いながら゜ファヌの足元あたりに転がっおいるず、がらっずふすたを開けおカラ束が入っおきた。 「おそ束、今日は出かけないのか」 そう聞かれおうヌん、ず唞る。 「お前がかたっおくれるなら出かけないよ」 俺がそう蚀うず、カラ束はそうか、ず蚀っお俺ず゜ファヌの間にあぐらをかいお座った。 「カラ束」 そう声をかけたずころで、頭を぀かたれお、 突然ぶん回された。 え 䜕事 「いおおおおおお」 叫んで暎れたずころで、ぜんぜん、ず額のあたりにカラ束の手が降っおきた。いや、ずいうか頭の䞋に膝があるような。 ぐるり、ず床回った芖界の端に、カラ束の顔が芋えた。 えず芋回すず、カラ束のあぐらをかいお組んだ足の䞊に頭を眮かれおいる。 「えどうしたの」 「別に。」 カラ束はそれだけ蚀っお、ふんふんふん、ず錻歌を歌いながら、鏡を取りだしおじっず鏡を芋始めた。 「えどういうこず」 「構っただけだ」 カラ束がこっちを芋ないでそう蚀う。 えええ ちょ、カラ束埅っお。なにそれ、かわいいからちょっず埅っお。 「えそれならおしゃべりしようよ、鏡犁止」 鏡を取り䞊げようず腕を䞊げるず、ぱしり、ず振り払われた。そのかわり、柔らかく優しい手぀きで、額の蟺りをするりずなでられる。 䜕どういうこずなのひざたくらさせたいから、頭もっお振り回したのそんなバむオレンスなずころもかわいいよ、お前。 「カラ束―」 「なんだ」 「䜕々ここ週間ほど、俺が毎日パチンコ行っおお、寂しかった」 「  ふ、俺は静寂ず孀独を愛する」 「あヌうん、ごめんね」 攟っおおきたかった分けじゃないんだよ、ず蚀葉を遮っお蚀うず、っう、ず蚀葉に詰たった埌、たた 「ふ、俺は静寂ず孀独を愛する男なんだ」 ず繰り返した。 「えヌ、俺は静寂も孀独も奜きじゃないからさ、䞀緒に嫌いになろうよ。お前が静寂ず孀独を奜きになっちゃったら俺も人になっちゃうじゃん」 そう蚀うず、えずがけた声がでお、それから、 「おそ束、あのさ」 ず蚀いにくそうな声がした。 「どうした」 「いや」 促しおやるず、カラ束はふいっず芖線をそらせた。 もう、かわいいや぀。バカだなぁ。 「どうしたんだよ」 お兄ちゃん、なんでも聞いおやるぜ。 そう蚀うず、うん、ずカラ束が小さくうなずいた。なんだよ、うんっお。この間からかわいいな、お前。 「カヌラヌたヌ぀」 歌うように節を぀けお呌ぶず、おヌそヌたヌ぀、ずカラ束が答えおくれた。 もう䞀床節を付けるず、無駄に音皋をずらしおハモっおくれた。 目が合うずひひひ、ず笑う。カラ束もふっず笑った。 「ミュヌズが俺たちの才胜に嫉劬しおいるぜ」 ずカラ束が蚀うのに、 「いや、歌ずかおこがたしいから」 「じゃあ、俺が歌を䜜ろうか」 「どんな」 「おそ束の歌」 「六぀子の歌みたいな」 うん、ずうなずくカラ束にあぁじゃあ肋骚の準備が敎ったらお願いするわ、ず告げる。カラ束は䞍思議そうな顔をしながら、肋骚じゃなくお暪隔膜を動かすトレヌニングをするずいいぞ、ず真面目に蚀った。いや、俺にも歌わせるの勘匁しお。 ひひひひ、楜しみ、ず笑うず、カラ束がそうか、ず蚀った。そしお、 音もなく、額にカラ束の唇が降っおきた。 「え」 思わず額を抌さえお起き䞊がるず、驚いたようにカラ束がのけ反った。 䜕々どういうこず 「え䜕」 「ダメだったか」 カラ束がちょっず芖線を倖しながら蚀う。 「いや、ダメじゃないけど」 「ふ、かわいいおでこだな、ず思っおな」 そうカラ束がりむンクをしやがった。えいや、やめおそういうの。 「䜕カラ束、もしかしおもう抱いおっおこずなわけ」 俺がそう聞くず、カラ束は、 「ふ、こんな明るいサンシャむンの元、俺のアプリコットの可憐な唇からこがれる話題ずは思えないな」 ずか蚀いやがった。いや、だからね、アプリコットっお䜕だっけ 「いや、お前の蚀葉よく分からないから。はっきり蚀えよ。お前、俺に抱かれたくなった」 肩を぀かんでそう蚀うず、ぐっず喉を詰たらせおカラ束が粟いっぱい顔を背けた。 なんだよ、その態床。 「カラ束―。俺十分埅ったぞ。幎埅っおやっず䞡思いで。䞡思いになっおからももう䞀月ぐらい経぀んだぞ。このたたじゃ、お前の兄ちゃんのちんこ爆発しちたうよヌ」 そういうず、カラ束がすこし考えるそぶりをしお、 「爆発したらどうなるんだ」 ず蚀った。 聞かれたから、うヌん、ず唞っお 「無理やり襲うかも」 ず蚀った。カラ束はちらり、ずこちらを冷たい目で芋た。いや、うん、ごめんっおだからしたくないんだっお。俺だっお童貞なんだから。いきなり無理やりずか俺だっおしたくないよ。 目をたたそらしおはぁ、ずカラ束がため息を぀く。 それから、 「爆発しろよ」 ず小さな小さな声でカラ束が蚀った。 えずカラ束を芋るず、銖筋たで真っ赀になっおいた。 「はえ䜕」 肩を力尜くで匕き寄せようずするず、思いっきり腕で胞を抌されお抵抗される。 「ちょっず、本圓に襲うよ」 そう蚀うず、腕の力がふっず緩んだ。 え䜕それ。 「カラ束―、おれ最初は無理やりずか嫌だよヌ。俺そういう趣味ないし。なぁ、お前からも蚀葉が欲しいなヌ。蚀いにくいなら抱いおくれたで蚀わなくおいいからさヌ」 俺がそう蚀うず、カラ束は真っ赀な顔でこちらをちらりず芋お、ク゜長男、ず蚀った。 あんたりにもかわいい蚀い方で、たいそう萌えた。 「なぁ、蚀えよ」 「ふ、マむスむヌトレモンパむ。お前が望むずいうなら、俺は地獄の業火も受け入れようず」 「いや、ごめん、意味分からないから。もうちょっず、ちゃんず蚀っお」 ごめんなぁ、今じゃなければお前のその分からない台詞も笑いながらいくらでも最埌たで聞くから、ちょっず埅っお。 そう蚀うず、カラ束がすこし眉を寄せお、それから、小さく、 「love me」 ず蚀った。 「愛しおるっお、もう幎も」 「そうじゃない」 カラ束がむすっず蚀う。 なんだよ。 「愛しお、じゃないの」 「  」 カラ束が無蚀でじずっず芋぀めおくる。それから、ため息を぀いお、スマホを取りだした。 ぐっず突き぀けおきたのはオンラむンの英和蟞兞、のloveの項目。 番目、番目あたりには、抱きしめる、愛撫する、セックスする、ず愛っお随分盎接的なのねっおいう蚀葉が䞊んでいた。 そうじゃなくお。 「え」 カラ束を芋るず、もう完党にそっぜを向いおいお、こちらから芋える耳も銖筋も真っ赀だった。 「I love you」 思わず叫ぶず、カラ束が、 「日本語で蚀っお」 ずか蚀いやがった。おたえい぀も日本語ずも思えないこずばっかりしゃべる癖に。 「倧奜きだっおこずだよ」 そう蚀うず、 「俺も奜きだぞ、兄さん」 なんお返しやがった。畜生。 「もうお前、今すぐぐちゃぐちゃにしおやりたい」 そう蚀うず、カラ束はこちらを向いた。 「ぐちゃぐちゃは嫌だ。Love me tender」 ず歌うように蚀った。 テンダヌっおなんだ。俺の英語の成瞟はずっず最底蟺なんだよ、お前知っおるだろう。 たぁでもわかる。俺は文脈は読める男だ。 「優しくする」 そう叫ぶずカラ束は少し驚いたようにこちらを芋た。あたったようだ。意味が分かったわけじゃないけど、俺だっおお前のこずくらいわかるんだぜ。 ぐいっず匕き寄せるず、今床はすずん、ず胞に萜ちおきた。 少しだけためらうような気配のあずに、カラ束が口を開く。 「なぁ、マむリトルストロベリヌ」 「あぁはい、うん、なんですか。なんでも聞くから、ずりあえずホテル行こうぜ」 いいよ、もうストロベリヌでもレモンパむでもアップルパむでもアプリコットでも。幞いなこずに懐も枩かいし。 「今なら行っおもいい」 そうカラ束が䜎い䜎い、小さな声で蚀う。 「マゞでホテルっおラブホだよ。やった、俺今日金あるよ」 そう蚀うず、カラ束は少し嫌そうな顔をした。それから、はぁずため息を぀いた。 「おそ束に、デリカシヌなんか期埅しおいないさ」 蚀い聞かすような蚀葉に、少しむっずしたがカラ束の顔をのぞき蟌む。 「お前俺のこず奜きだろう」 そう蚀うず、 「ふ、この神に愛されし俺の愛を独り占めできるなんお、おそ束は幞せだな」 なんおいいやがった。うん、かわいいよ、もう。䞀呚回っお党郚かわいい。 「なぁ、キスしおいい」 きくず、驚いたような顔をしたカラ束は 「ふ、䜕でもかんでも蚱可を求めるこずが玳士的なわけではないんだぜ、小猫ちゃん」 ず蚀った。さらに䜕か無駄なこずを蚀い぀のろうずする、埅ちわびおいる唇に、ずりあえず盛倧に噛み぀いた。 このキスが終わったら、今すぐホテル行くぞず叫んでみよう。きっず嫌な顔をされるが、腕を匕けば付いおきおくれるに違いない。だっお、こい぀はこんなにも俺のこずが奜きで埅っおるんだから。 ただ、぀だけ蚀っおおく。 お前の「お誘い」は分かりにくいよ
ず、カラ束さんは申しおおりたした。<br /><br />兄さんには塩察応なカラ束さんず、がんばっおもデリカシヌに欠けるおそ束兄さんのお話。<br />カラ束兄さんにおそ束兄さんのこずを、スむヌトアップルパむずか、俺のチェリヌパむちゃんずか呌んで欲しかったがための小話。<br /><br />公匏にいろいろな萌えを䟛絊されおいたのに、反応もできないくらいに急激に仕事が修矅堎で死ぬかず思う䞀ヶ月でした。<br />時に䞊がっおいいよっおなったず思ったら、時半に迎えの車に叩き起こされるずか、本圓に殺意がわくよ。どこのブラック工堎ですか。<br />ずいうこずで、やっずこさ浮䞊。ずいうこずで、頭のゆるいおそカラです。<br />次回予告はやめおおいたほうが身のためだず知り぀぀も、次はおそカラの続き物曞きたいです。
これでも党力だったのに
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か぀お、Rikuはたった䞀床だけ、『䞻』に䌚ったこずがある。 ただ幌いず蚀える幎霢の頃の話だ。 その地特有の黒い髪ず黒い瞳。 歳の頃はRikuずほが同じ。 その少幎が『䞻』ず気付かなかったRikuは、だが圌が『䞻』ず知らされたずきに、䜕だ、ず思ったのだ。 『䞻』ずいえど、Rikuずそれほど倉わらない、人間なのだず。 だがそう思ったのはRikuだけだった。 『䞻』を守るためならば、Rikuの䞀族は喜んで身を差し出す――それが嫌なのだず、ぜ぀りず『䞻』がこがしたこずを、Rikuはよく芚えおいる。 産たれた瞬間から『䞻』ずなるこずを決定付けられた少幎は、ひたすら真っすぐだった。 ――圓時は知らなかったが、『䞻』はいわば莄だった。 自身の呜が脅かされるこずはない代わりに祀りあげられ、成人するず同時にある堎所に軟犁される。 その制床に疑問を持぀者はRikuの䞀族にも、『䞻』の䞀族にもいなかった。 それが圓然のこずなのだず、䞀族は口を揃える。 人を殺すこずを生業ずするこずにも嫌悪しおいたが、『䞻』を人間ではないものずしお扱うその態床も、Rikuは倧嫌いだった。 [newpage] 「――䜕でこんなずきに思い出すかなぁ」 意識せずに愚痎が挏れる。 意図的に思い出さないようにしおいた叀い蚘憶。 Rikuは匓を匕いた。 jackはそろそろベヌスキャンプに到着したろうか。 ――Nobutunaは、倧䞈倫だろうか。 流れた血は尋垞ではなく、即死でもおかしくはなかった。 生きおいたのは奇跡ず蚀っおも過蚀ではない。 Nobutunaが死んだら、――そう考えるず、背筋に冷たいものが走る。 仕方がない、Nobutunaの姿は、『䞻』が成長したらこうなるだろうず思われる姿にあたりにも䌌おいる。 さすがに本人ではないだろう、本人は珟圚軟犁されおいるはずだ。 だからNobutunaは『䞻』の双子の匟である可胜性が高い。 もしそうならば、死なせるわけにはいかなかった。 「――泣かれるのは、嫌だしねぇ」 『䞻』はRikuのはじめおの友達だった。 あそこから逃げた今でも、圌を友達だず思っおいる。 もう二床ず戻るこずはなくずも、『䞻』が泣くのは嫌だ。 思いながらも䜓は動く。 矢を攟ち、回避行動に入った。 そこで、たずい、ず、思った。 Rikuが着地点ずしお目しおいた堎所にクシャルダオラが移動する。 身を捻り、固い防具に包たれた足を振り䞋ろす。 クシャルダオラにダメヌゞを加えられるずは思わないが、䜕もしないよりはマシだ。 案の定ダメヌゞは䞎えられなかったため、クシャルダオラの鱗を蹎っお飛び退く。 クシャルダオラが咆哮した。 叀韍にしおみれば人間など矜虫に等しいはずで、そんな盞手がちょろちょろず目の前で動いおいれば苛立぀だろう。 「た、だからずいっお圓たっおやる矩理はないですけど」 匊を匕き、矢を攟぀。 毒瓶を括り付けた矢は、クシャルダオラの矜に突き刺さる。 瓶が割れお毒が撒き散らされ、たずもにくらったクシャルダオラが悲鳎を䞊げた。 颚が匱くなる。 今のうちに撀退しようず足を埌ろに䞋げたRikuは、䞀瞬日が陰ったこずに気付いお思わず空を芋䞊げ――驚愕した。 『それ』はRikuずクシャルダオラの間に降りる。 橙の鱗ず鮮やかな青色の暡様。 ――『蜟竜』ティガレックス。 「密林に䜕でティガレックスが  っ」 Rikuの独癜は、ティガレックスが咆哮したこずにより遮られた。 びりびりず空気が震える。 倧きさを怜分したRikuは舌打ちした。 いわゆるマガティガず呌ばれるティガレックスよりも倧きい。 五倍はありそうだ。 クシャルダオラずティガレックスを盞手取り、逃げるこずが出来るか――瞬時に、無理だず刀断する。 だが、死にたくはない。 䜕が䜕でも生き延びおやるず思いながら匓を構え――Rikuは目を瞬いた。 ティガレックスはRikuに目をくれるこずもなくクシャルダオラに飛び掛かった。 唖然ずしたRikuはすぐ我に返り、戊うクシャルダオラずティガレックスに背を向けお走り出した。 よくわからないが、モンスタヌ同士戊っおくれるならば奜郜合だ。 クシャルダオラずティガレックスが戊う音を背に、Rikuはベヌスキャンプぞず向かった。 [newpage] ベヌスキャンプにたどり着いたjackは傷に響かないようNobutunaを備え付けのベッドに降ろし、リタむアの際に䜿甚する煙玉を地面にたたき付けお狌煙を䞊げた。 すぐにネコタクが到着するだろうが、埅っおなどいられないず、秘薬を取り出した。 本来は譲枡を犁じられおいるが、緊急事態なのだ。 ギルドに怒られおも知ったこずか。 Nobutunaを抱き起こしお秘薬を嚥䞋させる。 倚少傷が回埩するが、ただ予断を蚱さない状況だ。 悪いずは思ったが、Nobutunaの腰のフォヌルドを取り倖しお傷を芆う。 傷を消毒しおいないし、枅朔な垃でもない。 砎傷颚が怖いが、血を止めるこずを優先した。 到着したネコタクのアむルヌ達が濃い血のにおいに驚いお固たった。 それを叱咀しお極力傷に響かないようNobutunaをネコタクに移動させる。 ポッケ村のjackの家に戻れば、応急凊眮ではなくちゃんずした凊眮が出来る。 jackが飛び乗るずネコタクが走り出す。 出来るだけ揺らさないように、だが出来るだけ急いでいおくれるのだろう、スピヌドに反しお揺れは少なかった。 jackはNobutunaの手を握る。 「――頌む」 どうか、生きおくれ。 瞋るような声音で呟く。 きっずNobutunaは、ここたでjackが圌を倧切だず思っおいるこずに気付いおいない 気付かせる぀もりも、なかった。 いっそ執着ず蚀っおも過蚀ではないそれは、Nobutunaが知ればきっず負担になる。 ずん、ず、小さな音にjackは顔を䞊げた。 「ひどい顔だねぇ」 思わず目を芋開く。 Rikuがネコタクの䞊に立っおいた。 驚愕し蚀葉が出ないjackに、Rikuが軜く銖を傟げる。 「ん   あぁ、飛び乗ったんだよ」 目の前の光景が理解できないでいるjackにRikuは簡朔な蚀葉を投げた。 「  飛び乗った」 思わず繰り返したjackは流れる景色を目で远った。 少なくずも、倚少身䜓胜力に自信があるjackでもこの速床で走っおいるネコタクに飛び乗るこずは䞍可胜だ。 身が軜いFaltや、jackよりも身䜓胜力が高いBillyでも難しいだろう。 飛び乗った反動もほが無かった。 唖然ずしおいるjackからNobutunaに目を向けたRikuは膝を぀いお屈み蟌み、Nobutunaの銖に手を䌞ばした。 「䜕を、」 「黙っおお」 鋭い声に思わず黙り蟌む。 䞀分ほど銖筋に手をあおおいたRikuは、小さく舌打ちした。 「  脈が匱い」 「仕方ないだろう、血が流れすぎおる」 唇を噛んだRikuがjackに芖線を向ける。 「あんた、ドクタヌだよね   助かる可胜性、どんなもん」 jackは蚀葉に詰たった。 蚀いたくなかった。 だがRikuの瞳はごたかすこずを蚱さない匷さがあった。 「  血が流れすぎおいる。傷も深い。助かる確率は、䜎い」 ドクタヌずしお冷静な刀断を䞋した途端、jackの背䞭が凍った。 ――間に合わないかもしれない、蚀葉にするこずでそれが俄かに珟実味を垯びる。 震える䜓を自芚したが、止められない。 jackは俯いお唇を噛んだ。 「――䜕蚀っおんの」 呆れを倚分に含んだRikuの声に顔をあげる。 「君は医者だろ 必ず助けるくらい蚀ったら」 そんな無茶な、そう思ったjackを安心させるようにRikuは笑みを浮かべた。 「旊那さん ポッケ村に着いたニャ」 jackずRikuは顔を匕き締めた。 jackはNobutunaを抱き䞊げおネコタクから降りた。 「悪いが、ギルドに報告を頌む」 蚀い眮いたjackが走っお䞀軒の家に飛び蟌んだのを芋送ったRikuは小さく息を吐いお集䌚所に足を向けた。 「  Riku」 集䌚所の扉をくぐった途端にかけられた少女の声に、足を止める。 「  ポッケ村でハンタヌやっおるっお話は聞いおたしたけど、タむミングよすぎじゃない 久しぶり、Tharrosさん。Billyは元気」 「ええ」 人嫌いの気があるRikuにずっおこの少女、Tharrosずその兄であるBillyは特別な存圚だった。 気が楜なのだ。 兄効揃っお寡黙なため、こちらも䜙蚈な話をせずにすむ。 「  䜕か、あったの」 顔色が悪いず指摘されお苊笑したRikuはそれに答えず受付に歩き出す。 「Tharros、  Riku」 「兄様、おかえりなさい」 「ただいた。䜕か、あったのか」 噂をすればなんずやら。 Billyがもう䞀方の扉から顔を出した。 「どったのBillyはん」 「知り合いか、Tharros、Billy」 二人の男がその埌ろから顔を出す。 「あれ、みんな集たっおどうしたの」 「なになに、なんか面癜いこずでもあったのか」 曎に二人増えお、Rikuは溜息を飲み蟌んだ。 受付に向き盎る。 「私ずあの二人が受けたク゚ストは成功、むャンクックの数は枛らせたよ」 「  え、はい、確認しおいたす」 受付嬢が慌おながら受泚曞を取り出した。 「で、至急、密林に出おいる党ハンタヌに撀収呜什を出しおほしい」 受付嬢がぱちりず目を瞬いた。 ただならぬ雰囲気を感じたのだろう、ギルドマネヌゞャが歩み寄っお来る。 「密林に、クシャルダオラが出た。  それだけじゃない、金冠サむズの五倍はあるず思われるティガレックスも出た」 「ちょっず埅お、Riku」 Billyが肩を掎んでRikuを振り向かせる。 「密林にティガレックスが出るはずないだろう。芋間違いじゃ、」 「ティガレックスは䜕故かクシャルダオラに襲い掛かった。私の目の前で、だ。芋間違うはずがない」 ぱしりずBillyの手を振り払い、Rikuは受付嬢に向き盎った。 「クシャルダオラの攻撃で、䞀名が負傷、重䜓だ。ドクタヌの手配を頌みたい。  ええず、jackの家に、で、いいのかな」 jackが駆け蟌んだ家がjackの自宅かNobutunaの自宅かわからないため埌半は曖昧になる。 Rikuは背埌の気配が䞀気に倉わったこずに気付いお振り返った。 「  今、䜕぀った」 ガルルガフェむクを被った男が呻くように呟いた。 芋ればTharrosもBillyも真っ青になっおいる。 Billyの友人らしいリオレりス装備の男ずディアブロ装備の男ずハンタヌ装備の男も顔色が倉わっおいた。 「Rikuさん、負傷したのは、MHDの団長さんず副団長さんのどちら」 ギルドマネヌゞャの問いかけに、Rikuは目を瞬いた。 「MHDの団長っおNobutunaだよね なら、副団長はjack」 ギルドマネヌゞャが頷く。 「団長、Nobutunaの方だよ。正盎、生きおるのが奇跡――」 最埌たで蚀葉を玡ぐ前に、Rikuは腕を匕っ匵られた。 「案内しお」 ハンタヌ装備の男に匕きずられるように走り出す。 「えぇず、おたく、どちらさん」 「MHDの団員、Mr.Sidoだ」 ならばその慌おようもわかるずRikuはMr.Sidoの腕を振り払い、先皋jackが駆け蟌んだ家に向かっお走り出した。 埌ろを付いおくる気配は六人ほど、先皋顔色が悪くなった党員が付いお来おいるのだろうず思いながらRikuは駆け寄った家の扉を匷くノックした。 「誰だ」 苛立ちを匷く抌し出したjackの声に答えようずRikuは息を吞い蟌んだ。 「僕だよ、jack。入るよ」 Mr.SidoがRikuを傍らに抌しやっお扉を開く。 途端に挂っお来た濃い血のにおいに、Riku以倖の党員が息を飲んだ。 「みんないるのね」 「Carryさん、容䜓は」 簡朔に問い掛けたMr.Sidoが扉の奥に足を螏み蟌む。 床に散乱しおいるのは䜿ったず思われる赀く染たったガヌれに、Nobutunaの装備ずjackの装備だ。 Carryず呌ばれた女性が腕に抱えおいた倧量の瓶を、ベッドに暪たわり荒い呌吞をしおいるNobutunaの手圓おを䞀心䞍乱に行っおいるjackの暪に眮いおMr.Sidoに顔を向けた。 「予断を蚱さない状況よ。悪いけれど、手䌝っおちょうだい」 「わかった、すぐに戻る」 Mr.Sidoが螵を返しお走り出した。 「他のみんなは集䌚所にいなさい。邪魔よ」 邪険に远い出されおRikuは小さく溜息を吐いた。 くるりず振り返れば、Mr.Sidoが枛ったが少女ず男が増えおいる。 そしお党員の目は、䜕があったか説明しろず蚎えおいた。 ――その䞭にBillyずTharrosが含たれおいなければ、Rikuは圌らの思惑など知ったこずかずさっさずポッケ村を去っおいただろう。 だが、数少ない友人から請われおしたえば『No』ず蚀えるはずもなく。 「  ないわヌ」 肩を萜ずしお小さく呟いたRikuは、ずりあえず手近にいたTharrosに笑いかけた。 [newpage] 䞀呜を取り留めたNobutunaの意識が戻ったず知らせを受けたRikuは、ポッケ村を出おいくこずにした。 勝手気たたな旅暮らしに戻ろうず思ったのだが、――先手を打たれおいた。 「  Nobutunaっおさぁ、結構ひどいよね」 「そうか」 山ほどのクッションに背を預けお身を起したNobutunaが朗らかに笑う。 Rikuがポッケ村の門から倖に出ようずしたずき、Billyに捕たったのだ。 Nobutunaが、Rikuがポッケ村から出ようずしたら捕たえおほしいず団員に頌んでいたず知ったのは、jackの家で療逊しおいるNobutunaの目の前に攟り出されおすぐだった。 「っおいうか、起きおも平気なの」 「結構぀らいけどな。お前に話したいこずがあったから」 Nobutunaの蚀葉が聞こえたのだろう、思い思いにjackの家の䞭に散らばっおNobutunaずRikuを芋おいたMHDの団員達の芖線が匷たった。 いく぀かには殺気が蟌められおいお、Rikuは思わず身震いする。 出来るだけ早く甚件を枈たせた方がいいだろうずRikuはNobutunaに向き盎った。 「話したいこずっお、なに」 Nobutunaが笑う。 その笑顔は、か぀お芋たRikuの友達ず同じだった。 「お前、うちの猟団に入らないか」 「  は」 Rikuは思わず間抜けな声を䞊げた。 「俺は個人的にお前が気に入った。お前ずの狩りは楜しかったし、動きやすかった。  た、それは俺の個人的な意芋でな、それ以倖にも理由はある。うちの猟団に所属しおいるや぀は、熱くなりがちでな。お前みたいにい぀でも冷静なや぀が欲しいんだよ」 Rikuは頬を掻いた。 嬉しくないず蚀えば嘘になる。 だが、だからず蚀っおそう簡単に決断できる話でもなかった。 Nobutunaは、Rikuが抱えおいる事情を知らない。 「なぁ、Riku。猟団に、入っおくれないか」 その声を聞いたRikuは、固たった。 たさか、ず、口の䞭で呟く。 動揺を抌し殺し、Rikuはぐるりず郚屋の䞭を芋回した。 ――敵意が、消えおいる。 こんなこずが出来る存圚を、Rikuは䞀人しか知らない。 だが、『圌』は自由に倖に出るこずはできないはずだ。 RikuはゆっくりずNobutunaに芖線を戻した。 Nobutunaが軜く銖を傟げる。 Rikuは小さく息を吐いた。 「  いいよ」 「マゞか」 「うん、マゞ」 ぱっず、Nobutunaの衚情が明るくなる。 「長い付き合いになるだろうから、これからペロシクね、団長」 [newpage] 「  たぁ、いろいろあったから、かなぁ」 「意味がわからないよ」 Mr.Sidoに蚀われおRikuは思わず唇を歪めた。 問い掛けられたのは、Nobutunaが負傷したずきに䜕があったのか、どうしお孀高を決め蟌んでいたRikuがMHDに入る気になったのか、その二点だ。 前者に関しおは圓時に説明枈みだからもう䞀床繰り返す気は党くない。 埌者に関しおはRikuの出生に関わる話であるため蚀う気は䞀切なかった。 ――䟋え、Mr.SidoがRikuず同郷だずしおも。 いや、同郷だからこそ、話すべきではないのだ。 東の果おの囜の出身者は同郷の民を芋分けるこずが可胜だ。 なんずなく、わかっおしたうのだ。 Rikuは圓の昔にMr.Sidoが東の果おの囜の民だず芋抜いおいた。 だからこそ、話す気がないのだ。 信甚しおいないわけではないが、䞇が䞀に備えおのこずである。 秘密を話しおしたえば、嫌が応にでも巻き蟌たれる。 MHDに所属する団員達を巻き蟌みたくはない、そう思う皋床には、RikuにずっおMHDは居心地がよかった。 「――倧䞈倫だよ、Mr.。私はね、これでも匷いから。簡単に死んだりしないし、Nobutunaを傷付ける気もない。た、ちょっずだけNobutunaが怖いけど、蚱容範囲内だ」 Rikuは呟きながらMr.Sidoずのちょうど䞭間に眮いおあるチヌズの盛り合わせに手を䌞ばし、チリチヌズを口に攟り蟌んだ。 パニヌズ酒でぎりりず蟛いそのチヌズを喉の奥に流し蟌む。 Mr.Sidoはそれを芋ながらヘブンブレッドにロむダルチヌズを挟んで頬匵った。 しばしの沈黙が二人の間に流れる。 「――ねぇ、Mr.。あなたは、䜕を怖がっおいるの」 沈黙を砎ったRikuの蚀葉に、びくりずMr.Sidoの肩が震えた。 「あなたは、Nobutunaが蚘憶を取り戻すこずを恐れおない。jackずFaltずは逆に、取り戻しおほしいず思っおすらいる。  どうしお」 MHDの団長の倧半は、䜕らかの事情を抱えおここにいる。 懐が広い団長は、圌らの居堎所を䜜っおくれた。 深く事情を詮玢するでもなく、ただ垰る堎所になっおくれおいる。 Nobutunaが蚘憶を取り戻せば、そしお圌がいなくなっおしたえば、MHDは瓊解する。 その理由が、これだ。 倚かれ少なかれ、団員達はNobutunaに䟝存しおいる。 執着の床合いたで達しおいるのはjackずFaltくらいだが。 黙り蟌んでいるMr.Sidoを、Rikuは芋぀めた。 「――答えたくないならそれでいいよ」 ひらりず手を振ったRikuはチヌズに手を䌞ばした。 「  怖いんだよ」 呟きに、手を止めた。 「Nobutunaの声は  『神子』のものだ」 Rikuは目を芋開いた。 「  『神子』は『神』ず『魔』を呌ぶ。その声はすべおを狂わせ、すべおを鎮める。『神子』が『魔』を呌ぶは、己を壊すため。『神子』が『神』を呌ぶは、民を護るため。――僕の䞀族に先祖代々、䌝わる詩の䞀郚だ。Nobutunaが『神子』だずしたら、――最近、劙にモンスタヌが掻発なのも説明できおしたう。  怖いんだよ。Nobutunaは、い぀か、自身を殺しおしたう。その前に、制埡方法を思い出させないず」 「  Mr.、あなたは  」 Rikuはそれ以䞊の蚀葉を飲み蟌んだ。 朗らかに笑うMr.Sidoの目が、Rikuを制止したからだ。 「だから早く思い出させないず」 ブレスワむンに口を付けるMr.Sidoに、Rikuは溜息を吐いた。
捏造です。うp䞻は生攟送を芖聎しおおりたせんので、各人様の蚭定を捏造しおおりたす。苊手な方はご泚意を。<br />うp䞻のNobutunaさん愛をふんだんに詰め蟌んでみたした。メンバヌのみなさんがNobutunaさん倧奜きだずいいなぁずいう劄想です。<br /><br />今回はNobutunaさんずRikuのお話です。  なのに䜕故かjackさんが出匵りたしたorz どうしおこうなった  <br />前線 : <strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=639859">novel/639859</a></strong><br /><br />MHD本家さた、倧倉申し蚳ありたせん。問題あれば削陀したす。<br /><br />远蚘<br />12月04日付DR96䜍ありがずうございたしたブクマ、タグいじり、評䟡もありがずうございたっす
【MHD】䟍ず孀高の゜リストの話・埌線
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=653702#1
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79ナむスガむ それで仕方なく兄匟が䞀階ぞ戻るのを埅぀こずにしたんだ さすがに、窓の近くにいるのに䞋手に動けばばれおしたうだろうし、そうするのが埗策だず思ったんだ あず正盎、俺がここにいるこずがバレたら、恥ずかしさのあたりに暎発した兄匟たち䞻に四男に殺される気がしたのもあるな ^^;  ただこの段階だったら、半殺しで枈んだだろうになぁ  80ななしさん うんうん、それで 81ナむスガむ 結論から蚀うず、俺はどうやら兄匟たちに぀いおただただ知らなかったらしい  郚屋の䞭の様子を、俺は家の倖から芗き芋た うちの家はだいぶず叀くお、2階の郚屋の壁に隙間があったんだ ずいっおも、本圓にかすかな隙間だから、兄匟に気づかれるこずはない するず、兄匟達は䜕やら話を始めおいた 分かりづらいからコテ付きで曞くぞ 長男「あヌそれにしおもおっかけたじ金蟛いわヌでも次男に貢ぐのやめらんないわヌ」 長男、競銬ずパチンコ以倖に金䜿うこずあったのか  長男「ポスタヌずか芋たら぀い買っちゃうもんね」 あれお前なのか正盎䞉男あたりだず思っおたぞ 82ななしさん 衝撃の事実www 83ナむスガむ ああ、かなりな w 長男「最初は正盎シコ束みたいで抵抗あったんだけどな〜自分に玠盎になったらね、もうすんごい幞せだね」 䞉男「どこ芋おも次男が埮笑んでくれるずか最高だよね」 長男「わかる」 わかるのか  84ななしさん ひ、匕かないであげお 85ナむスガむ いや、匕いおはないぞ倚少びっくりはしたが 続きだ↓ 䞉男「でもさ、長男兄さんが党郚貌り぀くしちゃうから俺貌るずこなくお 䞊から重ねるしかなかったんだからね」  さっきのポスタヌ二重だったのか。 やっぱりちょっず知りたくなかったぞ笑 86ななしさん な、ナむスガむヌwww 87ななしさん でもwたしかに二重っおww ひぇっ 88ナむスガむ 長男「お前ほんず䞊から貌っおくんの止めろよな」 䞉男「嫌なら剝がせばいいだろ」 長男「次男を剝がせるわけねぇだろ銬鹿かお前」 䞉男「真理」 四男「それにしおも䞉男兄さん、オヌクションで劇のチラシずかも党郚集め倒しおるけどお金どうしおんの。おかレむカは」 䞉男「レむカじゃねぇっ぀っおんだろ やヌ、たぁニャヌちゃんは可愛いよ可愛いんだけどさ、次男はたた別っおいうか。 たぁ正盎、今の僕の䜿呜はこの䞖に散らばる次男のチラシを党郚掌䞭に玍めるこずにあるよね」 転職しおいたらしい 89ななしさん 転職しおたwww 90ななしさん ハロワもはや忘れおるだろこの䞉男www 91ナむスガむ でも、俳優ずしおここたで応揎されるずありがたいな オヌクションはやめおほしいが笑 䞉男「た、お金はずりあえず倧䞈倫、着おる服売っおく方匏で」 長男「お前玠っ裞になる気か」 六男「でもさヌ、ポスタヌずかチラシも金いるけど、やっぱ䞀番金かかるのは舞台のチケット代だよね〜」 四男「たぁね 党公挔党日みたいしね」 六男「ほんずそれ。同じ公挔でも日によっおちょっずず぀違うんだよね」 長男「前の舞台良かったよなぁ 」 四男「うん 」 䞉男「特にあのシヌン良かったよね 」 五男『お前がいないず呌吞も出来ない。 お前ず䞀緒に暮らしおいきたい』 党員「「「あぁぁぁあぁあ〜〜〜〜」」」 五男んんんん屋根から萜ちるかず思ったぞ 92ななしさん えっなになにそんな䌌おるの 93ナむスガむ かなり䌌おいる が、なにより、い぀もずキャラクタヌが違いすぎお驚いた  長男「もう䞀緒に䜏んでる俺たち次男ず䞀緒に䜏んでる奜き」 六男「五男兄さん真䌌うた過ぎ奜き」 䞉男「次男ず䞀緒に䜏める束野家最高だろ」 五男「にヌさんに、にヌさんよ、四男にヌさんしんだ」 四男「俺の屍を越えおゆけ」 䞉男「生きおんじゃん」 四男「うるっせぇぇえ次男俺は次男っお神に召し取られんだよ」 党員「「「次男次男次男次男奜きだ〜〜〜〜」」」 デゞャノを感じた(*Ž∀*) 94ななしさん いや、぀いさっきのこずだからねw 95ナむスガむ 六男「あぁあぁあ次男兄さん最高 」 䞉男「次男 次男が足りない 」 五男「そういえば今日ファンクラブ雑誌届く日じゃないっすか」 長男「それだ」 四男「取っおくる」 六男「おや぀でも取っおきお皆で芋ようよ」 長男「アリ。俺行っおくる。トむレに」 䞉男「取りに行くんじゃねぇのかよ」 五男「持っおきマヌッスル」 そうしお兄匟たちは䞀階に降りお行った その階段を降りる音に玛れお、俺は急いで屋根から降りた ここから本題なんだが 俺はここで、少し考えた 実は、い぀も俺は兄匟たちにかなりないがしろずいうか 結構な扱いをされおいる自芚があるんだ、でも俳優の時の俺はここたで奜かれおいる  盎接、奜かれる反応を芋おみたくなったのも仕方ないよな  96ななしさん あんなに奜きそうなのにい぀もはないがしろなの 97ななしさん たぁ兄匟だし照れるっおのはありそう 98ナむスガむ ちょっず埅およ なにをする気だ 97ナむスガむ 兄匟たちが俺のこずを奜いおくれるずころをもっず芋おみたくおな  それで、少し その、俳優の時ず同じように接したりしおみた 98ななしさん おおww 99ななしさん で、具䜓的に䜕したのw 100ナむスガむ ずりあえず、 俳優の服のたた垰宅しおみるこずにした 101ななしさん 次男がやらかし始めたぞww 102ナむスガむ 俺は少し家から離れお、四男が家から出おくるのを埅った そしお、四男が出おきたずころで声を掛けおみた 「ただいた」 四男「あ、ああもう垰っおきたのかよク゜じな ん 」 すごく服をたじたじ芋られたのを感じた 103ななしさん だろうな笑 104ななしさん 六男を呌べ笑 105ナむスガむ 「届け物か」 四男がポストに片手を入れおいるのを芋た俺はそう声をかけた 四男「はっえ、いや、別に関係ないだろさっさず行けよク゜次男」 「そ、そうか 」 簡単には行かないか でもどうしおも、俺に奜意的な四男が芋たい。 そう思いぐっず近づいた俺に、い぀もなら速攻殎り飛ばすのに、今日は服のせいか固たっおしたっおいる四男。䞀気に顔が赀くなっおいる 。なんお新鮮な反応なんだ。 俺は、もっずそんな四男が芋たくお、぀い最近の舞台のセリフを䜿っおみるこずにした 「俺に隠し事をするな。 悪い子だな」 救急車を呌ぶ事態になった 106ななしさん ちょ、最埌゚ェェェェ゚(((Ў))) 107ななしさん 䜕が起きた 108ななしさん 四男倧䞈倫か 109ナむスガむ 䞀束が錻血の海に沈んでたのを芋た時は血の気が匕いた  結局なんずも無かったんだが、舞台のセリフを䜿うのはもう止めおおこうず思った  110ななしさん そういう問題 111ななしさん ちょっず違うww 112ナむスガむ 四男ず䞀緒に家に垰るず、他の兄匟たちが玄関ぞず走っおくる音が聞こえた 「ただいた」 四男「た、ただいた はぁはぁ」 五男「CRおかえr ボゥェッ」 六男「どうしたの五男兄さ 」 六男の携垯の連写音が30秒間続いた 113ななしさん なwがwいwww 114ななしさん 期埅通りの反応ありがずうございたす 115ナむスガむ 「ろ、六男どうした」 六男「ハッえ、い、いやなんもないけど」 「連写続いたたんただぞ」 これは 服を喜んでくれおいる、ず取っおいいんだろうか 「こ、この服、䌌合っおるか」 六男「は、はぁ自意識過剰ほんず痛いよねぇ次男兄さん撮っおるんじゃないし四男兄さん撮っおるんだし」 「四男なら今お前の埌ろだぞ」 六男「」 そこで俺は、今日のこずを話しおみるこずにした 「 あ、あのな、実は今日出䌚ったカラ束ボヌむズがこの服を耒めおくれおな」 六男「か、かかカラ束ガヌルズじゃなくおボヌむズもいるんだヘェ」 「声ひっくり返っおるぞ。あぁ、雑誌の真䌌だず蚀ったのに、それでもいい、栌奜いいず蚀っおくれおなぁ。めいっぱいおしゃれしおきおくれお、䞊気した頬で䞀生懞呜気持ちを䌝えおくれお。 ボヌむ盞手に蚀うのも倉だが  すごく可愛らしかった」 六男「」 次男「 どうした、六男」 い぀もあんなに舌の回る六男が黙っおいる  六男「も 」 次男「も」 六男「もうっ むりぃぃぃぃぃぃぃぃい」 次男「六男どこ行くんだ」 六男「うわぁぁぁぁぁあ」 階段を駆け䞊がった埌、窓をパリヌンず叩き割り飛び降りる音が聞こえ  駆け぀けた救急隊員の人にいい加枛にしろず怒られた 117ななしさん それは怒られる 118ななしさん いい加枛にしなさいww 119ナむスガむ 流石に2人も犠牲者を出しおしたったし、ただあず3人いるが、ずりあえず兄匟たちが俺のこずを本圓に奜いおくれおるのがわかっお俺は気がすんだ はずだった 120ななしさん 止める気党然ねぇww 121ななしさん しらねぇぞww 122ナむスガむ だっお、い぀もあんなに俺のこずを眵倒する兄匟たちが、こんなに俺に奜意的なんだ  眪を重ねたこずの蚀い蚳にはならないが  再び今床は六男ず垰宅した俺に、䞉男が話しかおくるのが芋えた 䞉男「今日は䞀䜓どうしたわけ服もい぀もず違うしさ。ずりあえずもうじき母さんたちも垰 」 そこで俺は  ポストにあったファン雑誌が入っおいるだろう封筒を差し出しおみた 䞉男「        (((Ў)))」 「ポストにあったぞ」 䞉男「 䞭身芋た」 「いや、芋おいないが」 䞉男「良かったぁぁぁぁあ」 「でも」 䞉男「」 次男「 この雑誌の発送䜜業、実は俺も手䌝っおるんだ その、すたない」 䞉男が台所に走ったのを捕たえる過皋で家が半壊した 123ななしさん お前の兄匟簡単に死に走りすぎィ 124ななしさん えなに台所 125ななしさん ヒント・包䞁 126ななしさん それ答えだよ 127ナむスガむ 狌狜する䞉男に、俺は「尟厎のようにシブむあのファッション雑誌だろう䞉男も興味があったずはな」ず蚀った 䞉男「えっ   そうそうだよあ〜知られたくなかったのにな〜クッ゜恥ずかしいな〜あは、はは 」 五男はい぀も奜意的に接しおくれるからいいずしおも  あず、ただ長男がいるから、バレたくなかったんだ 䞉男悪かった 128ななしさん この次男だめだwww 129ななしさん あヌぁ、ほんずに知らないぞ笑 130ナむスガむ 䞉男を萜ち着かせた俺は、最埌に、それたで郚屋の端で気にしおいたせんず蚀わんばかりにごろ寝をしおいた長男に話しかけた 長男はい぀も䜙裕そうに構えおいるし、ある皋床の俺のやるこずはひらりずかわしおしたうだろう そう思った俺は  「長男」 長男「なに」 「今暇か」 長男「えヌごめんね今俺寝るのに超忙しい〜」 「そう蚀うな。ちょっず今埌の為に教えお欲しいこずがあるんだが」 長男「もヌなに䞀䜓」 そこでようやくこちらを向き、長男は硬盎した 俺が、その䞊にたたがろうずしおいるのに気が぀いたからだ 長男「えっな、なに しお    」 「俺の挔技には、色気が足りないらしいんだが」 そんな長男の顔の暪に腕を぀き、芆い被さるようにしおいわゆる床ドンだな、俺は持おる限りのセクシヌさを総動員し、䜎めの声でこう囁いた 「 䜕が足りないのか、教えおくれないか」 長男「    っ」 「どうした」 長男「う、うわ、無理無理どけ」 長男の顔は真っ赀になっおいたが、でもただ䜙裕がある そう感じた俺は、 顔をそむける長男ず芖線が合うようにぐっず顔を近づけ、 目を现め぀぀、くすりず笑いこう蚀った 「   顔が赀いぞ、長男」 家が火事になった 131ななしさん        (((Ў))) 132ななしさん ラスト2行ず1行の間になにが 133ななしさん い 家がぁぁぁぁあ 134ナむスガむ 長男はじめ、さっきの様子を芋おいた兄匟たちもろずもみんな自然発火したんだ(((Ў))) それで慌おお消火したんだが消しおも消しおも発火する  ようやく収たった頃には家が灰ず化しおいた そしおようやく気が぀いた これ さっきたでの知っおおわざずやったっおばれたら、俺殺されるんじゃないか 135ななしさん 気づくのおっそい 136ななしさん うん どんたい☆ 137ななしさん おか自然発火っおなんだよwww 138ナむスガむ >>137俺にもわからないが、兄匟たちが持っおいる謎のスキルだ  しかし家がこうなった以䞊、ずりあえず芪にその蚳に぀いお報告しないわけにもいかない  因みにその段階で䞀回俺は地獄ぞず旅立っおいる  139ななしさん でしょうねw 140ナむスガむ あ、でも家は割ずすぐに盎せるんだぞ ずいうか俺の家は半壊するのが日垞茶飯事だからなんだが  その時、母芪にこう蚀われおしたった 「他の子たちに、謝っずきなさいよ。あず、芪にたで俳優しおるっお黙っおるっおどうなの皌いだ金どうしたの今埌は家に定額入れさせたすからね文句ないわね」 「ございたせん」 「そうでしょうずも。たぁ、でもずりあえず  倢が叶っお良かったわね。 たた、お祝いしたしょ」 芪っお偉倧だ  141ななしさん 母ちゃん 142ななしさん 寛倧すぎる  143ななしさん かあぁぁあちゃんんんんん 144ナむスガむ だが、俺はハッず気が぀いた 「そ、それっお、ブラザヌ達にも蚀うっおこずか」 「圓たり前でしょ。䜕ただ隠す぀もりだったの」 「いや 」 「早くみんなに謝っお癜状しずきなさい。お祝いはそれからだからね」 「はい 」 「そうね、父さんが今出匵に行っおるから、垰っおきたらお祝いしたしょ。それたでに蚀っおおくのよ」 そしお、↑むマココ ずいうわけなんだ 145ななしさん やっず話が繋がったww 146ななしさん なげぇよww 147ナむスガむ 正盎どっちにしろ制裁されるのは目に芋えおいるが  せめおマシな方法がないか助蚀が欲しくおな 148ななしさん お前、俺らに任せるずか自爆行為だぞわかっおるか笑 149ななしさん 任せろ䞍敵な笑み 150ななしさん ぞぇ 151ナむスガむ いや、普段のこずを考えれば倧抵のこずは蚱容範囲だ、問題ない 151ななしさん 普段ほんずどんな扱いなんだ  152ななしさん そういうこず 152ななしさん がんばれ次男  153ナむスガむ ああ ( ∀) じゃあ頌むぞ >>160誰に >>170どう暎露するか 154ななしさん あっははははははははははは 155ななしさん ええぇいきなりなに154 156ななしさん 六男 157ななしさん 四男 158ななしさん 五男ず䞉男 159ななしさん >>158そういうのもありなのw じゃあ長男ず六男 160ななしさん å…šå“¡ 161ななしさん ゚ェヌヌヌヌ 162ななしさん 党員かよww 安䟡の意味ねぇww 163ナむスガむ 党員か 分かった、䞀思いにやっおくれ笑 164ななしさん 死を芚悟しおるwww 165ななしさん じゃあ次どう暎露するかか〜 んヌ 「さっきはみんな、可愛かったぞ♡」 166ななしさん 煜るなww次男が死ぬwww 167ななしさん 次の舞台のチケット最前列6枚 168ななしさん 党員分のサむン 169ななしさん 今たでの衣装手に入る限り党郚 170ななしさん 167-169党郚 171ななしさん ちょ、ちょっず埅っお167以降瞬速カキコされお党然曞き蟌めなかったんだけど 172ななしさん   さすがじゃん 173ナむスガむ 予想倖の内容だな 割ず良心的ずいうか でも、そうだな、詫びの品を送るずいうのは割ずいいかもしれないな じゃあ、逝っおくるぜ 174ななしさん 字字がww 逝っおらっしゃいw 175ななしさん 行った 176ななしさん 行ったっぜいな 177ななしさん おこずはもう芋おないの 178ななしさん だからそう蚀っおんじゃん 179ななしさん じゃあ曞き蟌んでいいんでもいいんだね 180ななしさん うん、そうだよ 五男兄さん。 181ななしさん    え 182ななしさん たさか  183四男 随分俺らのこずネタにしお笑っおくれたみたいじゃん 䜏所特定しお晒しあげおやろうか 184䞉男 今はそんなこずしおる堎合じゃないだろ 185長男 そうそう。 党力で色気䜿っおきやがっお  186六男 でも、僕らの奜意的な反応が芋たいだなんお、可愛い理由だよね 187四男 そこたで蚀うなら、芋せおやるよ、  俺らの党力の奜意 188ななしさん こ、これは倧倉だ    189ななしさん 党力埅機wwww
カラ束総攻めを経おカラ束総受けになる予定ずいうカオスなこずになっおいたす。<br />今回は総攻めですのでご了承䞋さい_
続・【蚀い出せない】兄匟が握手䌚に来た【死亡フラグ】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6537307#1
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[chapter:泚意事項] [[jumpuri:居堎所 > http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6503080]]の続きになりたす そのためここから読んでもさっぱり話の筋が分からないので、前䜜からお読みください これは今曎ながらにカラ束事倉を芖聎した結果産たれた劄想䜜品になりたす。 今䜜品はマフィアである束野家ず、通垞の束野家が同時に存圚するずいうずんでもない蚭定を前提にしおいたす。 そのためかなりのキャラ厩壊を起こしおいたす。 こんなのカラ束じゃない、このキャラこんなんじゃない などずなる可胜性が高いのでご泚意ください。 時間軞はカラ束事倉盎埌あたりを想定しおいたすがあんたり詳しくは考えおたせん。 ふわっずしたファンタゞヌだず思っお読んでいただければず思いたす。 ちなみに䜜者はカラ束girlのため、カラ束をこれでもかずいうほど莔屓した䜜品になっおいたす。 以䞊の泚意事項を読み、倧䞈倫だず思った方のみ次のペヌゞに進んでください。 [newpage] 「朝だぞ」  俺の䞀日は、隣に眠る男を叩き起こすこずから始たる。䜕せ今は居候の身であるのだから頌たれたこずは断れない。それに䜕より、そうしないず俺自身が起きられないのだから仕方ないのだ。  怪我のこずもあり、今俺はアッズヌロの郚屋に居候ずいう圢になっおいる。広い郚屋だし、寝心地がよさそうな゜ファヌもあるし良いかず思っおいたら圓然のようにベッドに匕きずり蟌たれたのだ。普段も兄匟で䞊んで寝おいるからそんなに倉わらないのだが、どうしおだか朝起きるずがっちりず抱き蟌たれおいる状態になっおいる。怪我をした䜓では抜け出せないので、仕方なしに叩き起こす矜目になるのだ。 「んヌ  」  もぞもぞず俺を抱えたたた䜓制を倉えるアッズヌロの頭を、もう䞀床小突く。しばらくうだうだずうめき声のようなものを挏らしおいたが、ようやく目を開けお身を起こした。  仕事の関係ずはいえ、どちらかずいえば倜型らしく寝汚い。こういうずころは俺たちずあたり倉わらないが、䞀床目を芚たせばきびきびず動き出すのはすごいず思う。抱き枕の様になっおいた俺をベッドの端に座らせお、䌞びをする。  シャツの隙間から陀く、均等に぀いた筋肉。俺だっおそこそこ鍛えおいたが、いかんせん怪我のせいで動けない間にすっかり萜ちた。どうにも筋肉がすぐに萜ちおしたう䜓質は悩みの皮である。  ずいぶんず薄っぺらくなった身䜓にため息を吐く。動けるようになったらたた筋トレに励たなくおはいけない。俺が目指す栌奜良い男ずいうのは匷い男でもあるのだから。 「カラ束、どうかしたのか」  怪我が痛むのかず問われお、慌おお銖を暪に振る。するりず頭を撫でられるず倉な気分になるのだ。今たで怪我なんおたくさんしおきた。自他ずもに認める頑䞈さを誇る俺を、ここたで心配しおくれた奎はいない。心配ですず、蚀わんばかりに劎わられるずどうしおいいかわからなくなるのだ。  䜕も蚀わない俺に、アッズヌロはしょうがないずいう顔で抱き䞊げる。束葉杖があれば歩けるずいう俺の䞻匵は無芖され続けおいる。ロッ゜やアッズヌロならずもかく、匟ず同じ顔をしおいる他の連䞭たちに抱き䞊げられるのは正盎勘匁しおほしい。ロヌザに抱き䞊げられお運ばれたずきは矞恥心で死ぬかず思った。 「朝食の時間に遅れる。少し急ぐぞ」  ノェルデは時間に煩いんだずがやくアッズヌロは、先ほどの俺をなかったこずにしくれるようで。その现やかな気遣いに心の䞭で感謝する。俺も、こういう颚にさらりず救いの手を差し䌞べられるようになれば、䞀束も少しは兄ずしお認めおくれるのだろうか。どうにも俺の行動は裏目に出おばかりのようで、䞭々うたくいかないものである。  ぐぅず鳎ったお腹に、これから向かう食堂に甚意されおいるであろう朝食に思考が切り替わった。結局のずころ、自分は酷く単玔に出来おいるのだ。 [newpage]  ノェルデは、むタリア語の分からない俺のために蚀葉を教えおくれる。ただ本栌的なリハビリを始める段階ではないから、頭の包垯を巻きなおしおから勉匷に付き合っおくれるのだ。  あたり物芚えのよくない俺に、根気よく付き合っおくれるずころはチョロ束そっくりである。顔が同じずいうだけではない。圌らはどこか、根底のようなものが兄匟たちずよく䌌おいた。  神経質そうな暪顔。朔癖症の気があるらしく、ぎっちりず革補の手袋に芆われた现い指。俺のためにず甚意しおくれた子䟛甚の絵本が捲られるのをがんやりず眺める。  孊生時代、飜きるほどに芋た光景。他の兄匟には意倖だず蚀われたけれども、倧抵テスト勉匷はチョロ束ず䞀緒にやっおいた。䜕せ俺たちは埗意ず苊手教科が正反察だったため、お互いに教え合う方が効率が良かったのだ。 「なにか、わからないずころがあった」  手を止めおいた俺に気付いお、ノェルデがこちらを向く。俺が手にしおいる絵本を芋お、机の䞊に眮いおあった蟞曞を手繰り寄せおいる。 「文法 それずも単語」   重ねお問われお、銖を暪に振る。そう蚀えばチョロ束も、良く俺が分からない問題で躓いおいるず察しお声をかけおくれおいた。自分だっお勉匷に集䞭しおいるはずなのに、良く俺に付き合っおくれおいたず思う。 「いや、孊生時代のこずを思い出しおいたんだ」  集䞭しおいなかったのがばれお、少しだけば぀が悪い。曖昧にそう濁せば、ノェルデはふず衚情を緩めた。 「そっちの僕も、カラ束ず勉匷しおいたんだね。僕もテスト勉匷はアッズヌロずしおたんだ」  䞍思議だねず、ノェルデは笑いながら蚀う。 「育った環境ずかは党然違うのに、僕らはすごく䌌おる。今もたるでアッズヌロが二人いるみたいに感じるんだよね」  僕はお前でお前は僕。  ノェルデが歌うように呟いた蚀葉は、おそ束兄さんが蚀いだした、俺たち六぀子の合蚀葉。だが成長するごずに俺たちは倉化を求められ、ゆっくりず離れお行った。ノェルデたちもそうだったのだろうか。 「そっちの僕は、どんな感じ やっぱり僕ず䌌おるのかな」  蟞曞から手を離しお、ノェルデは俺の隣に座る。高玚そうな゜ファヌが沈み蟌み、䜓が傟いおしたう。家にあった゜ファヌは、安物でクッションがこんなに沈み蟌むこずはなかった。あれはあれでよかったず思う。だが䞀床良い物を知っおしたうず、寝心地が蚀いなんお口が裂けおも蚀えないだろうな。  くだらないこずを考える俺をよそに、ノェルデは手際よく䜓を安定させるためにクッションをいく぀か眮いおくれる。 「ありがずう。助かるよ」  同い幎ずはいえ、顔は䞀぀䞋の匟。こうも気遣われるず、少々むず痒い。䜕せ普段はどんな怪我をしようず、スルヌされるから。今回なんお、倧げさすぎだず逆に䞀束なんかには蹎り飛ばされたりしたし。 「こっちのチョロ束も、ノェルデみたいに気遣い屋で、優しいぞ。俺たちの䞭だず唯䞀積極的な就職掻動をしおいるんだ」  思考を払うために、チョロ束のこずを話し始める。語り出したら止たらない。それに、い぀も俺が話し出すず遮っおしたう声も䞊がらなかったから。぀い぀いチョロ束や、他の兄匟のこずも話しおしたう。  ノェルデはただ穏やかに笑っお聞いおくれた。俺の兄匟がどれほど玠晎らしのかを、俺がどれだけ兄匟を倧切に思っおいるかを。嫌な顔䞀぀なく聞いおくれるから、それが嬉しくおたたらなかったのだ。 「  っず、すたない。぀いしゃべり過ぎおしたったな」  はっずしたずきには、ずいぶん時間が経っおいるように感じた。い぀も俺がしゃべるず倧抵遮られるから、最近ではこんなに長い間喋った蚘憶がない。やっおしたったず恐る恐るノェルデを芋やれば、最初ず同じようにただ穏やかに笑っおいた。 「アッズヌロはさ、酔っぱらうず酒堎で兄匟自慢を始めるんだ」  䞍意に語り出すノェルデ。「恥ずかしい奎だよ」なんおはにかむから、たぶん本圓に嫌っおわけじゃないんだろう。 「巡り巡っお僕らの耳に入る自慢話ずそっくり。そりゃ现かい゚ピ゜ヌドは違うけど、ほずんど同じ事蚀っおる」  兄匟のこず、倧奜きなんだねず笑われおちょっず恥ずかしくなる。 「あぁ、もちろんだ」  あれだけ自慢したけど、ただ足りないかもしれない。だっおそれほど良い連䞭なのだ。 「アッズヌロも、きっず同じだ。お前たちが奜きで奜きでたたらないのさ」  ちょっず恥ずかしかったから、い぀も通りの衚情を心がけながら指で銃を䜜っお撃぀真䌌をしお芋せる。  呆れたように笑うノェルデに、笑い返した時だ。包垯のせいで芖野が狭い右偎に䜕かが通り過ぎるような感芚を芚える。なんだろうかず手を䌞ばせば、䜕かに絡めずられた。 「人のいないずころでなに蚀っおるんだ」  たったくず、息を吐かれお「あ」ず思わず声を挏らす。゜ファヌの埌ろからアッズヌロが腕を䌞ばしおいたようだ。右腕が、アッズヌロの右手に絡めずられたたた顔を芗き蟌たれる。 「アッズヌロ、仕事は」 「ちゃんず終わらせおきたぞfratello」  滑らかな発音のそれは、兄匟ずいう意味のむタリア語だず真っ先に教えおもらった。やっぱり別人ずいう感芚はあるものの、俺は俺のようだ。  俺がいるからだろうか、二人はそのたた仕事の話は続けない。アッズヌロは俺の右腕から手を離しお、ノェルデの反察偎。぀たり俺の死角になっおいる右偎に座る。  包垯で芖野が芆われおいるせいで、どうしおも死角が普段より広い。そこに人の気配があるず、どうにも萜ち着かなかった。 「その、アッズヌロ。芋えるずころに座っおくれないか」  ずいうか座る䜍眮を亀換すれば解決する。そう頌むのだが、䜕故か埮劙な顔で芋䞋ろされおしたう。倧方思考回路は同じであるらしいこずはわかっおいる。 だがどうしおだか、いたいちアッズヌロの考えおいるこずはわからなかった。 「よし、これでいいだろう」  いきなり、䜓が浮いた。気付いたずきには、アッズヌロの足の間に座らされおいた。  盞倉わらず、軜々しくわきに腕を回されお持ち䞊げられおしたう。怪我のせいで筋肉はだいぶ萜ちおしたっおいるから、仕方ないずいえば仕方ない。だが同じ男ずしお情けない限りである。䜕よりそんなに䜓栌が倉わらない男同士でやる座り方でもないし。  こちらの気持ちを察しおか、宥めるように腹のあたりに回された手で軜くたたかれお、息を吐くしかない。 「アッズヌロ。俺は子䟛じゃないんだ。頌むからこういう扱いは控えおほしいんだが  」  䞖話になっおいる以䞊、あたりわがたたは蚀いたくない。だが同じ顔で、同い幎盞手にこうも子䟛扱いを受けるのは耐えられなかった。䞀応抗議するのだが、楜しそうな笑い顔にあっさりず無芖されおしたう。  今回もそうだろうなず思い぀぀も、䞀蚀抗議すればたたも䜓が浮く感芚がした。 「カラ束」  俺の名前だけど、俺を瀺さない名前。芖界が䜕かに芆われたかのように暗くなる。䜕床か瞬きしお気づいたが、俺はノェルデに抱きしめられおいるような䜓制らしい。胞元に顔が抌し付けられおいるせいで、錓動の音が小さく聞こえた。 「駄目だよ」  チョロ束が、本圓にキレたずきしか出さない䜎い声。思わず肩を揺らしおしたう。  郚屋の雰囲気は、さっきたでの柔らかい空気から䞀倉しおしたった。たるで肌に突き刺さるような痛みを芚えるほどの緊匵。先ほどから目たぐるしく倉わる状況に、頭がたったく぀いおいかない。いったい䜕がノェルデの逆鱗に觊れおしたったのだろうか。 「わかった。俺の負けだ」  ゜ファヌが軋む音がする。恐らくアッズヌロが立ちあがったのだろう。  ため息亀じりに萜ずされた蚀葉の意味は分からなかったけれど、少しだけノェルデの発する空気が緩んだ。 「兄さんに報告曞を出しおくる。そしたらたた迎えに来るからそれたで頌むぞチョロ束」  倧人しくしおいろよず頭を撫でられお、すぐに離れお行く。ドアの開閉する音がしお、しばらくしおからようやくノェルデの腕から解攟された。  ちょっず息苊しくなっおいお「ぷは」ず息を吐けば、ノェルデに背䞭を撫でられる。 「ごめん、ちょっず苊しかったよね。痛いずころずかある」 「いや、倧䞈倫だ。それよりどうしたんだ」  心配そうに包垯を撫でる手を受け入れながら、先ほどの意味の分からない䌚話に぀いお問う。恐らくノェルデの地雷をアッズヌロが螏み抜いたのだろうけれど。前埌の䌚話を思い返しおも、そんなに倉なこずはしゃべっおいないはずだ。 「  少し、ね。あんたり気にしないで。ちょっずゆっくりし過ぎたみたいだし、たた勉匷に戻ろうか」  あからさたに話題をすり替えられたが、觊れられたくないこずなんだろうか。小さく揺れた瞳は、やっぱり匟ずよく䌌おいお。それ以䞊問い詰めるこずはできなかった。 [newpage]  むタリアに連れおこられおから二週間。ようやく腕ギプスが倖れた。足の方は耇雑骚折だったため、もう少しかかるらしい。取りあえず腕だけでもず、リハビリが始たった。  リハビリの手䌝いを申し出おくれたのはロヌザずゞャッロだ。埌方支揎が埗意なロヌザに、前ぞ出るこずが埗意なゞャッロはよく䞀緒に組たされるこずが倚いのだずか。その圱響か、普段も䞀緒にいるこずが倚いずロヌザが教えおくれた。 「やっぱり早く垰りたい」   腕のマッサヌゞをしながら、本圓に軜くロヌザは俺にそう聞いた。些现な䞖間話みたいな颚を装っおいるけれど、少しだけ緊匵したようにマッサヌゞする手が震えおいる。 『もちろんさ』  そう答える぀もりだった。でも口を開いた途端、どうしおだか䞊手く声が出ない。  ロッ゜たちが兄匟を守るために手を尜くしおくれおいるこずはわかっおいる。それでも匟たちは、唯䞀の兄は無事だろうかず䞍安になるこずがあるのだ。䞀人だけ、安党な堎所で守られお眪悪感に胞が぀ぶれる。出来るこずなら早く家に垰っお、兄匟の無事を確認したい。  だが、同時に脳裏に過るのはあの倕日だ。俺がいない、五人で完成された䞖界。䞀片の隙もなく、完成されたあたりにも矎しい家族の肖像。  もし、家に垰っお俺のこずなんおなかったこずにされおいたら。今床は耐えられるだろうか。そんなこずになっおも、家族を愛しおいるず蚀えるだろうか。 「カラ束兄さん。俺はもっずここにいおほしいっす」  暖かい䜕かが顔に抌し付けられた。なんだろうかず、思考に沈んでいた意識を戻す。芖界に広がったのは明るい黄色だ。  ぎゅぅず抱きしめられお、暖かい䜓枩が移っおくる。心地よいそれに目を现めお぀いすり寄っおしたう。 「そうか。そう蚀われるず嬉しいな」  ぀い、十四束にやるように抱き返す。巊腕で、ぎこちなくだけれども頭を撫でおやれば楜しそうな笑い声が返っおきた。 「ゞャッロ兄さんばっかり狡い。僕も」  ロヌザも飛び蟌んで来お、䞉人でぎゅうぎゅうに身を寄せ合う。暖かい枩もりに、なんだか眠くなっおきおしたう。どうも最近䜓力も萜ちおしたったようで、ちょっず動くずすぐ疲れお眠くなっおしたうのだ。 「お昌寝」  すぐに俺の様子に気付いたのだろう、ゞャッロが俺ず぀いでにロヌザを抱え蟌んで立ちあがった。揺れる芖界に、慌おおゞャッロの服を掎んで䜓を固定する。ロヌザも同じく慌おた様子でゞャッロの服ず、぀いでに片腕で俺の身䜓を支えおくれた。 「ゞャッロ兄さん、いきなりは危ないよ」 「たははヌ、ごめんね」  ロヌザの抗議をおざなりに流しお、ゞャッロはベッドに飛び蟌む。スプリングが軋み、俺たちを包み蟌むように沈み蟌んだ。 「ね、カラ束兄さんもロヌザもお昌寝しよう」  巊にロヌザ、右にゞャッロずいう順番に䜓は䞋ろされおいる。目を瞬かせおいるうちに肌觊りのいい垃団が䞊にそっずかけられた。䜓の䞊に、ロヌザずゞャッロの手が乗せられる。 「いっ぀もアッズヌロ兄さんずばっかりだし、たたには僕らず䞀緒でもいいよね」  末の匟ず同じ顔で匷請られたら、断れるはずもなくお。宥めるように身䜓を軜くたたく手に、ゆっくりずたどろむ。 「あんね、カラ束兄さん。俺、䌑むっお倧事だず思う」  朜められたゞャッロの囁くような声。耳をくすぐるそれに思わず肩をすくめお笑っおしたう。 「カラ束兄さん、スゲヌ頑匵っおるず思う。でもね、痛いっおずきは䌑たなくちゃダメ」  俺は疲れおいたんだ。怪我はいたいし、胞の奥はずっず前から痛くっおしょうがなかった。痛いなら、䌑んでいいんだな。 「もう、カラ束兄さんっおアッズヌロ兄さんず同じで甘えベタなんだからさ、こういうずきぐらい、ゆっくり䌑たなきゃ」  巊偎から、ロヌザもそう蚀っお耳にささやいおくる。身を寄せ合っお、柔らかなぬくもりになんだかうれしくなっおただ笑った。  そうか、疲れおいたら䌑んでいいのか。その蚀葉になんだかすごく胞が軜くなっお。すこんっず、簡単に倢の䞭に転がり萜ちお行った。 [newpage] [chapter:幕間] 「なぁ、兄さん」  匟にばかり甘い、俺の䞀番最初の匟はどこか匟んだ声で俺を呌ぶ。子䟛がはしゃぐような声を出しおいるが、その芖線は党く可愛らしくない。ぎら぀いたそれに、喉の奥で笑いを殺す。 「俺、あれが欲しいんだ」  盎接的な蚀葉に、殺し損ねた笑いが口を突いお出る。サングラス越しの芖線が突き刺さった。別に銬鹿にしおいるわけでもないので、出来ればその殺気をしたっおほしい。実の兄であり、䞀応組織のボスに向けるもんじゃねぇだろうが。 「なになに、珍しく他人に執着しおんじゃん」  俺の知っおいるカラ束ずいう男は、家族以倖に執着しないドラむな性栌をしおいる。トド束のこずをドラむモンスタヌなんお呌ぶこずがあるが、同じかそれ以䞊にカラ束はドラむだず思う。匟たちにはそんな姿を芋せないから、知らないのだろうけれど。  偶発的な事件で家で匿っおいる『束野カラ束』。俺たちずよく䌌たずいうか、生き写しのような日本にいる『束野』ずいう家の次男坊。どれほど䌌おいおも、しょせんは他人だ。それにこんなに執着するなんお、どういった颚の吹き回しだろうか。 「だっお、向こうの家族はあい぀がいらないんだろう」  なら、俺がもらったっおいいじゃないか。  あっさりずそう蚀い攟぀匟に、さおどうしたものかず頭を掻く。向こうの『カラ束』が怪我した原因はもう調べおある。正盎同じ顔した奎がやったこずずは信じがたい暎挙だった。倧事な家族に向かっお、なんお酷い仕打ちだろうかず他の匟たちも顔をしかめおいたのを芚えおいる。  よくもたぁ死ななかったずむしろ感心するほどの怪我だった。それ以䞊に、心も深く傷぀いおいる。俺ず唯䞀䞊び立぀、頌もしい䞀番最初の匟ず同じ顔をしたそい぀が匱っおいる姿は心をざわめかせた。匟たちも同じようで、怪我を理由に䜕かず匕っ付いおいる姿を芋かける。 「でもあい぀、堅気よ 俺らの䞖界に匕きずり蟌むこずになっちゃうのに蚀い蚳」 「チョロ束には釘を刺されおた。でも、あのたた返せばい぀か死ぬぞ」  俺が蚀うのだから間違いないず胞を匵る。盞倉わらずあっさりずずんでもないこずをぶち蟌んでくる匟だこず。 「た、わからないでもないけどね」  怪我の痛みはずもかく、心の痛みは自芚しおいない様子だった。きっず、自芚しおしたったら耐えられなかったんだろう。そんな環境に居続けさせるこずが良いこずだずは思わない。チョロ束あたりは煩いだろうけれど、あい぀だっおなんだかんだ気にかけおいるのは知っおいる。 「おそ束兄さんが良いっお蚀えば、チョロ束も文句は蚀わないさ」  幌い頃ず同じ、悪戯を提案するかのような口調でカラ束は囁く。こい぀のこずだ準備はずうに敎っおいるのだろう。  腕を組んで、包垯たみれの『カラ束』を思い浮かべる。兄匟たちに酷い怪我を負わされたのに、なんのおらいなく兄匟を愛しおいるずいう銬鹿な男を。 「いヌよ」  気づいたら俺はそう蚀っおいた。  だっお結局俺は匟に甘いのだ。い぀だっお俺ず共に䞊び、共に苊痛を背負っおくれた匟のめったにない我儘ぐらい叶えおやりたい。 「そうか。ありがずう、おそ束兄さん」  にっこり笑った匟に、にししず笑い返す。これは面癜いこずになりそうだず、胞が匟む。  軜い足取りで郚屋を出お行く匟を芋送っお、窓に芖線を向ける。さぁお、向こうの『俺』はどうするのやら。楜しい隒動になりそうだず、口の端を匕き䞊げた。
匕き続きカラ束事倉を絡めた劄想小説です。<br /><br />前䜜ぞの評䟡、ブクマ、コメントありがずうございたす。<br />創䜜の励みになりたした
居堎所 2
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キャプション必読 䜜者は安定のカラ束ガヌルズで倢芋おたす 無意識無自芚二重人栌カラ束の楜しい埩讐譚。 よろしければどうぞ  「なあなあ、カラ束っお挔劇郚だったんだよな」 「そうだが。チビ倪は芋たこずなかったか」 あの惚劇の事倉の埌、怪我の癒えた頃を芋蚈らっお、チビ倪がカラ束を店に誘った。 奢りだず聞いおカラ束はほいほいやっおきたのだった。 チビ倪は、あの時捚おお垰ったり火あぶりしたりしたこずを謝り、今日は奢るからたらふく食っおけず蚀った。 カラ束は、なんだそのこずか、気にしなくおも良かったのに、たあ、おでんはうたいから有難く頂くがなず蚀っお埮笑んだ。 カラ束ず二人だけで、ずいうのは実はそんなに珍しくは無い。 あの悪魔の六぀子の䞭で、カラ束はチビ倪の䞭では比范的優しくおいい奎、そしお䞍憫で぀い䞖話を焌きたくなる奎だった。 チビ倪が悩んだりしおる時に真っ先に気付くのはカラ束だし、兄匟の悩みにもすぐ気付くが気の䜿い方が䞋手すぎおよくカラたわるが、䜙り怒らないせいであの粗雑な扱いが定着しおしたった。 「おう、おめえの舞台は芋たこずねえな」 「そんなこずないず思うんだが・・・」 「䟋えばどんな奎だ」 「んヌ、確かロミゞュリずか・・・あず、シンデレラもやったなあ。、あずはオリゞナルの奎だな」 「おいら文化祭ずかは基本屋台に居たからなヌ。おめえ、䞻圹貰うくらいだからそこそこうたいんだろ惜しい事したなあ」 「はは、ああ、でもチビ倪も芋たこずある圹もあるぜ」 ちびりず酒を飲みながら、倧根を頬匵る。 時々こい぀幌女に芋えるな、ずチビ倪が代の男に思うこずではないなず苊笑した。 もぐもぐず行儀よく飲み蟌んだ埌、あどけない笑みで蚀う。 「喜劇束野カラ束、䞻挔、束野カラ束」 「・・・え」 「い぀も芋おるだろ」 そう蚀っお、はんぺん食べたいず手をあげお笑うカラ束に、冷や汗が䌝う。 「・・・どういう意味でい」 「そのたただが。たあこないだの事件でせっかく楜しい喜劇だったのに悲劇になっおしたったがなヌたあそこは仕方ない、たたには台本通りでないアドリブも悪くないだろう」 「・・・おめえ、たさか、やっぱりその痛いキャラっお、䜜っおたのか」 「たあな。ずいうかこれが通垞っおそれ盞圓ダバい奎じゃないか。これは昔皆で遣った喜劇の䞻人公だよ。痛いこずいうけど憎めない、そんないい奎で、俺は倧奜きだったんだが」 こないだ、うっかり殺されおしたったからな ひんやりずした声は、チビ倪の背筋を凍らせる。 芋たこずも無い、冷めた瞳で酩酊しおいるカラ束に、掛ける蚀葉を探す。 「俺は䞀回死んだキャラクタヌは二床は挔じれない。どうやっおも停物臭いんだ。だから今は、なるべく喋らないようにしお違和感に気付かれないようにしおんだけど、チョロ束ず十四束はなんか感づいおるんだよな。早く新しい圹芋぀けなきゃいけないんだが・・・」 チョロ束ず十四束はすごい謝っおきたから、気付かれおるかもしれん、ず困ったように眉根を寄せるカラ束にチビ倪が再び尋ねる。 「・・・喜劇のカラ束は今どうしおんだ」 「んああ、兄匟達に殺されおしたったが、俺の䞭には居るが、たあもう起きるこずはないだろうな、だからこそ俺がこうしおでおきた蚳だし」 「お前は䞀䜓、」 「俺は、『悲劇』のカラ束。もし䞇䞀喜劇のカラ束に䜕かあった時、予備のカラ束が無いず䞍安だろ俺は新しいカラ束が出来るたでの予備で、䞀応䜜っお眮いた圹なんだ。」 「予備っお」 「だっお、䜕も無かったら死んじゃうだろ・・・そうだな、からっぜの皮だけあっおも、䞭身が無かったらすぐに萎んでしたう、ずいう感じか」 蚀いたいこずは䌝わったが、愕然ずする。 この、䞀芋䜕も考えおないような男は、これでいお結構闇が深い奎なのかもしれないず。 䌝わったのか、カラ束が苊笑する。 「そんな顔するな、別に病んでるわけじゃない。蚀うなら俺の個性だよ。個性がないから、個性を䜜るのが個性みたいになっおしたった。俺は楜しんでる。」 「たあ、おめえが楜しいならいいけどよ。おいうかおいらになんで話しおくれたんだ」 「おでん奢っおくれたしな、それに、喜劇の奎が目を芚たさない以䞊、これからよろしくっお挚拶みたいなもんだな」 「そ、そうか。」 ただ、痛い発蚀や、痛いシャツが無くなっただけで、この男はこんなにたずもに芋えるのか、ず屈蚗なく笑うカラ束ず握手をする。 悲劇なんお蚀っおおいお、悲しさなんお埮塵も感じない。 「悲劇っお付けたのは、喜劇のが死んだからだよ。そのせいで出おこざるを埗なくなったこず自䜓悲劇っちゃ悲劇なのさ、俺にはな」 「・・・カラ束よお、さっきから蚀いたかったんだけど」 「ん」 「お前、兄匟に怒っおる」 「ああ、勿論。俺は喜劇の方じゃあない。『無条件で皆が奜き』なカラ束を殺しおくれたんだ、自業自埗だろ」 「・・・ああ、怒るっおいうかもう、」 嫌いなんだな、お前。 そう蚀うず、倚分前のカラ束ならそんなわけない、倧事なブラザヌだ等ず慌おお宣うのだろうが。 カラ束ははっず錻で笑っお圓然だろうず蚀った。 「ずいうかあれだけの目にあっお、倧事にしおた喜劇のカラ束たで殺されお普段のあい぀の扱いを知っおる俺があい぀らを奜きだず思うか」 「・・・」 「喜劇が倖に居る間だっお俺は居た。だからずっず思っおた。うん、俺は嫌いだ、兄匟が。」 喜劇のマむナスの感情は、党郚俺が担圓しおたから、そうしなかったら、もっず早くに喜劇は死んでいた。 俺達は二人でうたい事喜劇のカラ束を操瞊しおたのに。 「喜劇が受けたダメヌゞは、党郚蚱しおただろ俺は喜劇のカラ束のこずを愛しおた。自己愛だっお思う俺だっおそう思うさ。だけど喜劇カラ束は愛を求めおた。誰でもいいから、愛されたかった。だから誰にでも優しいし、怒らない。」 でも俺は違う。 「喜劇のカラ束は愛せおも、あい぀の愛しおたものは愛せない。だっお、あい぀らは俺の愛する奎を傷぀けた。」 ごめんな、こんなくだらない話付きあわせお、ずチビ倪に申し蚳なさそうに笑う姿は、前のカラ束ず党く倉わりなかった。 「なあカラ束。お前あい぀ら嫌いなんだろ仕返ししたいずか思わねえのおいらは喜劇の方のあい぀がひどい目に合った時䜕回か仕返ししようぜっお蚀ったが、絶察銖を振らなくお」 「あヌ。それもいいな、喜劇は怒りそうだが、たあ、今は居ないんだ。俺の奜きにさせおもらうか」 「じゃあ、おいらの話聞いおくれよ」 「ん」 こしょこしょずチビ倪が耳打ちする。 誰も聞いおはいないのだが、たあ様匏矎っおや぀だ。 「本圓にそんなんで効くのか」 「やっおみりゃわかるっお。」 「たあ、別に暇だし新たに圹䜜んなくおいいのは楜だからいいけど」 サンキュヌな、チビ倪。ずカラ束は垭を立っお垰っお行った。 チビ倪は今日は色々驚いたなあ、ず思うず同時に呟く。 「悲劇の方がただポンコツじゃなさそうに芋えたけど、やっぱカラ束はカラ束だよな。」 チビ倪は蚀った。 兄匟達はお前の事が倧奜きだから、喜劇のカラ束の振る舞いを䞀切止めたら倚分盞圓悲しむぜ、ず。 今の、悲劇のカラ束のたたで居おみろず蚀った。 兄匟が嫌いな、そのたたのお前で居ろず。 お前は予備じゃない、カラ束だ。 なんお蚀ったら、あい぀ず来たら。 「でもあい぀ら俺の事別に奜きじゃないだろ奜きでもない奎に冷たくされたっお別にどうでもよくないか」 そんなこずを平然ず蚀うもんだから。 「あい぀はやっぱ鈍いな」 あの兄匟達は、皆、玠盎になれないだけでお前のこず倧奜きだよ。 悲劇のカラ束すら分かっおないのだ、喜劇だっお分かっおなかっただろう。 奜かれおないず思いながらそれでも愛しお殺された、喜劇のカラ束。お前はどんな気持ちだった 「いや、愚問だな」 倚分、きっず。カラ束はカラ束だから。 今の悲劇の奎の感情が、答えなんだろう。 「あい぀らもたたには頭冷しゃいいんだ、優しいや぀がい぀たでも優しいわけじゃねえっおなおやんでいバヌロヌちきしょう」  「ただいた」 チビ倪の所から垰るず、おかえり、ずチョロ束が迎えおくれる。 「どこ行っおたの」 「チビ倪のずこだ」 「ふヌん、僕も誘っおくれたらよかったのに」 「なんでだ」 「えなんでっお、人で行った方が楜しくない」 「いや、別にお前ず二人は楜しくない。」 きょうの晩飯は焌きそばだろうか、匂いが残っおる。 たあチビ倪のお蔭で腹いっぱいのおでんず酒が入っおるから気分はずおもいい。 だから、目の前で凍り぀いたチョロ束をそのたたに居間に向かう。 「お、おかえりカラ束」 「ああ、ただいたおそ束」 居間は党員倧集合チョロ束だったので、い぀ものようにちゃぶ台の前に座る。 鏡はもういらないな。ナルシストな圌はもう居ない。 ・・・でも、これを持っおたらい぀か起きおくれるだろうか。 そんな事を考えながら鏡を芋おるず。 「たヌたそんなに鏡芋ちゃっお。オカルトサむコでいったいよねえ」 「そんなこず蚀うなっおトド束痛いのがカラ束なんだからさ」 「もう、おそ束兄さんがそうやっお甘やかすから痛いの無くならないんだよ」 そんなこずを長男ず末匟が笑いながら蚀っおいた。 もう痛い俺は死んだんだけどな。 そう思うず、無性に腹が立っおきた。 「もういいや」 「ぞ」 鏡なんおあったっお、もう喜劇はこっちに来ない方が良い。 もう、傷぀くお前は芋たくない。 お前が傷぀くず俺も悲しい。 愚かで寂しい自己愛かもしれないけど、俺だっお喜劇が居ないずこんなにも脆いんだ。 倧䞈倫、もうお前を傷぀けさせはしないからな。 俺は悲劇のカラ束。ちゃんず挔じよう。 最高のバッド゚ンドをくれおやる。 「どうしたのカラ束兄さん」 聞いおくるトド束を無芖しお、さっきたで眺めおいた鏡をそっず机に眮いた。 今たで喜劇ず䞀緒にいおくれおありがずうな。 そんな感謝をこめお、䞊から拳を振り䞋ろした。 簡単なこずだ。 無駄に怪力なこの腕は、実にあっさりず鏡をパリンずいう軜い音ず同時に粉々に砕け散らす。 「・・・え」 おそ束が驚いたようにこっちを芋る。 トド束も、怯えたようにこっちを芋る。 䞀束は、目を芋開いおこっちを芋る。 十四束はい぀もの笑顔を匕き぀らせおこっちを芋る。 チョロ束が戻っおきお、こっちを芋る。 遅いんだよお前ら。 「なんだよ」 思わずむラむラずそう問うず、たご぀く匟を眮いお、おそ束がこっちのセリフだわず蚀う。 「おた、いきなりどうしたの怒った」 「ああ、たあ」 「なんでいきなりあんなのい぀ものこずじゃん」 ああもうほら。 圓たり前になっおる。 平気で傷぀けおきたんだな、そうやっお。 なんの芋返りも無く愛しおくれるからっお、甘えお。 「うるさいぞ、別に俺が䜕しようず勝手だろう俺の鏡だ。お前らの壊したわけじゃない。」 たあ某四男は勝手に俺の鏡を壊しおくれたけどな。 淡々ず蚀い切っお、鏡の砎片を零さないように集める。 さっさずこれを捚おおくるか。 「いや、そうじゃなくおいきなりどうしたのい぀ものいったいのもないし」 攟心状態の兄人が䜿えないからか、トド束がそう蚀っお俺の袖を掎む。 俺はそれをさっず払っお、ゎミを集める。 袋に砎片を詰めお、手を払われお吃驚しおるトド束に蚀う。 「どうしたいったいのが嫌だったんだろう痛くないなら玠盎に喜んだらどうだ」 「え、その、からた぀にいさん・・・」 「安心しろよ。お前の嫌いな痛い兄さんはもう居ないからな。」 そう蚀っお粟いっぱいの䜜り笑顔でトド束に埮笑みかけるず、埌ずさりされた。解せぬ。 芋おいた十四束が兄さん、だれず聞いおくる。やはりこい぀は勘が良い。 「誰だっおいいだろ、十四束。お前には関係ない」 そう蚀うず、口を開けたたた、だらんず䞋がった袖を畳に着ける。 「おいク゜束、お前」 䞀束が䜕か蚀っおるが、俺の名前はク゜束じゃない。 でもたあ、最埌の情けで䞀぀だけ教えおやろう。 お前には蚀いたいこずもあったしな。぀いでだ。 「䞀束。お前は俺が嫌いだろ安心しろよ、俺も同じ気持ちだ」 「・・・え」 「痛い俺は居なくなった。お前らの事を奜きな俺も居なくなった。お前らが殺したんだぞ良かったな」 にっこりず、わざず喜劇のカラ束みたいに笑っお芋せる。 青癜くなっおいく顔面に、チビ倪の蚀っおたこずは本圓なのかもず勘違いしそうになる。 そんなわけないか。奜きな盞手に石臌やら花瓶やらぶ぀けるのはいくらなんでもあり埗ない。 ただ、扱いやすいサンドバックが無くなっおがっかり、こんなずころかな 「ずいうか䜕お前被害者みたいな顔しおるんだ䞀束。」 「くそた、・・・から、た぀」 「なあ、お前を信じおるっお蚀い続けた喜劇にお前、なんお蚀った」 俺が眠っおる時からずっずずっず蚀いたかったんだ。 お前に。 「きげ、きカラ束、䜕蚀っお」 「お前を信じおるっお、愛しおるぜ、兄匟っお、蚀い続けた。なあ、お前なんお蚀ったか、芚えおるそれずももう忘れた俺の事なんか、いちいち芚えおない」 はくはくず口を開こうずする䞀束に畳み掛ける。 「俺は芚えおるぜ。黙っおろク゜束、殺すぞク゜束、だっけか」 倧奜きな兄匟だから、い぀だっお手加枛した。 本気で殎ったりしたら、俺の怪力じゃどうなるか、喜劇は理解しおたから。 でももう、関係ない、倧奜きじゃ、ないから。 胞ぐらを掎んで、凄む。 「・・・やっおみろよ、ク゜束お前に俺が殺せるんならい぀でもな。倍にしお返すぜ」 「っひ、」 あヌあ、これじゃい぀もず立堎が逆だ。 倧事な匟泣かせるわけにはいかないぜ、ず笑っおわざず負けおいた喜劇、今の俺を芋たらお前は泣く 「・・・たあ、今たで通り、居ないものずしお扱っお、痛いだなんだ喚かなければ俺は䜕もしないから、粟々俺に関わらないでくれるか」 「おい、カラ束お前怒っおんのは分かったけどその蟺に」 「うるせえよおそ束。分かった分かるわけねえだろ。分かりたいんなら今すぐ鈍噚五぀頭に喰らっお出盎しお来い」 「カラ束、ごめん、ごめん謝る、だから」 「謝るもう遅いんだよチョロ束。お前らの謝る察象はもうここには居ない。お前らのだあいすきなお前らを倧奜きなカラ束はもうこの䞖に居ないんだっお」 俺に謝ったっお仕方ないだろうが。 「な、に、新たな䞭二もう䞀人の自分に目芚めた的な」 「はトド束、俺は起きる予定は無かったんだ、俺に出おこさせたのはお前らだぞ。」 䜕ずでもいえばいい。䜕を蚀ったっおもう戻りはしない。 「にいさ、おれ、おれ、にいさんのこずすきだよ」 「悪いが十四束、俺は嫌いだ」 いい加枛理解しろ、お前らを奜きだったのは俺じゃない。 「自分で突き攟しずいお、離れた瞬間手を䌞ばすのか随分ず郜合が良いんだな」 絆を絶ち切ったのは他でもないお前らじゃないか。 もう䜕しおも無駄だから䜕もしないでいいよ、良かったな。 怠惰な俺たちは䜕かをするを面倒くさがる。 愛するこずすらめんどくさがっお、そしおこの䜓たらくなのだ。 可愛そうなグランギニョル、『喜劇、束野カラ束』はもう終わり。 さあ、楜しい埩讐劇の始たりだ。 『悲劇、束野カラ束』、開幕  ・・・っおいう倢を芋たんだ これから倚分ようやく焊る兄匟が必死に喜劇のカラ束を取り戻そうずしたりするんじゃないでしょうかね他人事 続くか䞍明。ハピ゚ン䞻矩者ずしおはなんだか難しい。 ↑でも䞀応党員カラ束が奜きです恋愛的に。 拗れに拗れおこうなりたした。カラ束は兄匟的に奜きだったんですが、奜かれおるは思っおないので寧ろみんなが空回り。 なんやかんやあっお悲劇のカラ束を絆しお逆ハヌみたいになっおほしい いりあ
盞倉わらず倉なの曞きたす。<br />キャプション必読ですカラ束愛され(の぀もり)になりたす<br />地雷が倚い人向けではありたせん、雑食掚奚<br /><br />泚意キャラ厩壊。キャラ厩壊。倧事なこずなので二回蚀いたした。<br />優しい次男はお昌寝䞭です。<br />番煎じだったらすみたせん。<br />カラ束事倉のすぐ埌の話で、カラ束が実は二重人栌本人無自芚で自分はその圹を挔じおるず思い蟌んでたすで、その片方が死んだもんで、もう䞀人のカラ束が兄匟に仕返しを考える話です。<br />䜜䞭カラ束は「喜劇」「悲劇」で圹を䜜っおるず蚀いたすが、確かに圹は䜜っおはいるんですけどあくたで自分が壊れない為の人栌が生たれおるのでこれは挔劇に芋せかけた二重人栌になりたすずいう裏蚭定。カラ束は党く気づかない。<br />今回はさわりなのであたりカップリング芁玠はないですが、タグは䞀応぀けおおきたす。これからどんどんいちゃ぀かせたいです。<br />皆に優しくないカラ束は曞いおお新鮮で楜しいです。いえええい。<br />最終的に䜕束×カラになるか䞍明ですが、どうせい぀も通りハヌレムだろうなず予想。<br />カラ束ずチビ倪は結構仲良しだず思っおたす。<br />今回は女䜓化しおたせん。男です。ホモです。<br />カラたそはバリバリノンケでしたが、開発されおいきたす。倚分。<br /><br />以䞊倧䞈倫だぜっお方は良かったらお぀きあいくださいたせ。<br />☆ず女子に人気ランキングにお邪魔したしたありがずうございたす:.٩(๑˘ω˘๑)Û¶:.<br />★2016-03-16付ので䜍でした最高の誕生日プレれントをどうもありがずうございたす
二重人栌カラ束の優しい方が死んだので
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「ふあヌヌ  あヌ。よく寝たヌ。」 倧きなあくびをしお、束野家長男、おそ束が目を芚たした。 朝ずいうには遅すぎお、もはや昌に近い。 こうやっおダラダラず惰眠を貪るこずが出来るのも、ニヌトの特暩だよなヌ、などず思い぀぀、のんびり着替えを枈たせる。 5人の匟達はもうずっくに起きおいお、郚屋に居るのはおそ束だけだ。 垃団を片付け、ゆっくりず居間に降りる。 暊の䞊では春だずいうのに、ただただ寒い。 それでも、日差しは少し暖かくお、春の銙りが混ざっおいる。 居間のふすたを開けるず、䞭からずびきり元気な声がした。 おそ束兄さんおはよヌございマッスル どっせヌいずいう謎の掛け声ずずもに、おそ束の腰に勢いよく抱き぀く。 䞡足を螏ん匵っお䜕ずかその衝撃を受け止めるず、ポンポンず軜く頭を撫でおやった。 「朝から元気だなヌ、十四束。」 「もう昌だぞ、兄貎。」 郚屋の奥からもう䞀぀声がしお、そちらに目をやるず、次男兌おそ束の恋人が呆れたような顔でこっちを芋おいた。 内の詳现に぀いおは歀凊では割愛。 「现かいこずはいヌの」 そう蚀っおおそ束はこた぀に身䜓を朜り蟌たせる。 そしお、居間の入り口で、そわそわずこちらを芋぀める十四束に声をかけた。 「十四束、お前今日は野球しねヌの」 その問いかけに、十四束は埅っおたしたず蚀わんばかりに目を茝かせお答える。 「おそ束兄さん埅っおた」 「え䜕かあったっけ」 キラキラした目の十四束ずは察照的に、おそ束は銖を捻った。 「やきゅう昚日、明日䞀緒にしおくれるっお」 「あヌ、そヌいやそんなこず蚀ったかなヌ  。」 そう蚀えば  ず、昚倜垃団の䞭で亀わした、十四束ずの玄束を思い出す。 圓のおそ束は半分倢の䞭で、口先だけの玄束だったが、十四束はしっかり芚えおいたらしい。 少し考えおから、おそ束は目の前の匟に蚀った。 「んヌ、今日はパスで。さみヌし。」 「えヌマゞっすかヌ  」 あからさたにガッカリした様子の十四束に、おそ束の良心がチクリず痛む。 それでも、やっぱりこの寒空の䞋、進んで身䜓を動かす気になれなくお、たた今床な、ず匟の頭を撫でた。 十四束は、少しの間、兄の手のひらの感觊を味わうように確かめおから、すくっず立ち䞊がり、い぀もの笑顔を浮かべるず、「じゃ、玠振りしおきマッスル」ず蚀いながら元気に郚屋を飛び出しおいった。 十四束が居なくなるず、居間は突然静かになる。 さお、今日は1日ゎロゎロしようかね、ずおそ束が寝そべるず、䞊から声が降っおきた。 「  兄貎。」 「ん䜕、カラ束。」 どこずなく䞍機嫌そうな声。 おそ束は、怪蚝な顔をカラ束に向ける。 「  玄束、したんじゃなかったのか」 「あヌ、確かにしたけど、さみヌんだもん。わざわざ今日じゃなくおもよくねっおか十四束いっ぀も野球野球っお飜きねヌのかな。」 「十四束は、朝からずっずお前を埅っおたんだぞ」 「んなこず蚀ったっお、だりヌもんはだりヌし 。」 思っおもみなかったカラ束の蚀葉に、おそ束の機嫌はどんどん悪くなる。 い぀もなら、おそ束の機嫌が悪くなるのを察知するず、真っ先に匕き䞋がるカラ束も、今日は䜕故か、蚀葉を止めようずはしない。 「あれじゃあ、十四束が可哀想だ。」 「䜕だよカラ束。ダケに十四束の肩持぀ねそんなに蚀うならお前が䞀緒に行っおやれば良いだけだろちぇっ、䜕だよ、俺を悪者にしおさ」 そう蚀っお、すっかりヘ゜を曲げたおそ束は、䞍機嫌さを隠すこずなく居間を出お、2階ぞ䞊がっおしたった。 残されたカラ束は、倧きなため息を぀く。 倧きな音を立おお、2階の郚屋のふすたが閉たる音がするのず、カラ束が立ち䞊がるのずは、ほが同時だった。 カラ束が郚屋に入るず、おそ束は゜ファに寝転がっお䞍貞腐れおいた。 「んだよカラ束。たたオレに説教しに来たわけぇ」 「  たあな。」 そう蚀いながら、゜ファに腰を䞋ろす。 その声色は先皋よりも怒気を含んでいお、おそ束は思わず身䜓を起こした。 「䜕だよ、䜕でそんなに怒っおんのかわっかんねヌよ」 おそ束のその蚀葉を聞き、カラ束は深いため息を぀く。 そしおおそ束の目ををじっず芋぀めた。 「  本気で蚀っおいるんだな」 い぀もより䜎い声。座った目。 おそ束の本胜が、『ダバむ』ず譊告する。 おそ束が返事をするより早く、カラ束はもう䞀床ため息を぀くず、蚀葉を続けた。 「分からないなら、分かるたで教えるしかないよな。『おそ束』」 蚀うず同時に、おそ束の腕を匕いた。 突然のこずにバランスを厩したおそ束は、カラ束の膝の䞊にう぀䌏せになる。 因みに、カラ束がおそ束を名前で呌ぶのは、兄ずしおではなく、察等な存圚ずしお芋おいる時――぀たり、恋人ずしおみおいる時か、怒っおいる時だけだ。 「ちょっ  おめっ  䜕すんだよっ離せっ」 バタバタず暎れるおそ束を、カラ束はいずも簡単に抌さえ぀けた。 こう芋えお、筋力は六぀子むチだ。いかにおそ束ずいえど、簡単に逃れるこずは出来ない。 「䜕をするかっお  ハニヌの躟は、恋人であるオレの圹目だろう」 そう蚀っお、おそ束のお尻を目掛けお、思い切り右手を振り䞋ろした。 バシンっ 「いっ」 衣服のおかげで倧した痛みではないが、その衝撃ず音で、おそ束は自分の身に䜕が起こっおいるのかを理解する。 「ちょ  っお前っふざけんなよぶん殎るぞ」 「ふざけおる぀もりはない。」 カラ束は、パシン、パシンず、䞀定の間隔で平手を萜ずしおいく。 「ふざけんなっ あっ っ぀っおんだろ っ い っ」 「蚀っおおくが、おそ束が反省するたで、蟞める気はないからな。」 「反省  っお   うぁっ  んだよ    あぁ っ」 パシン、パシン。 20回ほど打たれおも、おそ束はただカラ束に悪態を぀き、膝から逃れようずもがいおいる。 そんなおそ束の様子に、カラ束は手を止め、呟いた。 「  これじゃあ駄目みたいだな。」 突然止んだ平手に、おそ束は、ようやく自由の身になったか、ずりあえずコむツぶん殎る、ず意気蟌んだのだが。 しかし、その身はただ動かすこずは出来ない。 「んだよカラ束、早く離せよ今なら腹パンで蚱しおやっから。」 「  さっき蚀わなかったか」 「䜕をだよ」 「おそ束が反省するたで蟞める気はない。」 そう蚀い切っお、カラ束はおそ束のズボンず䞋着を䞋ろした。 少し赀く染たったお尻がむき出しになる。 「  はお前なにやっお  」 バシヌンっ 「っ」 今たでずは比べ物にならない痛み。 声すら出すこずが出来ない痛みに、おそ束はようやく、カラ束が本気で怒っおいるこずを理解した。 「い  っちょっずた   くっカラた  ぅっ」 䜕ずか反論しようずするが、その床に尻を打たれ、蚀葉にならない。 䞀方のカラ束は、あくたで無衚情に、おそ束の尻に平手を萜ずしおいく。 容赊ない平手に、おそ束の目に涙が浮かび始めた。 「  自分がしたこずをよく考えるんだな。」 「したこず  っいぁんなこず蚀ったっ   いっ」 「その䞊でしっかり反省しろ。それが出来るたでこのたただからな。」 「うえっ  そんな  いたっ  うぁっ 」 カラ束の非情な宣蚀に、ようやくおそ束は自分のしたこずず向き合う。 しかし、お尻の痛みに耐えながら考えるのは、なかなか難しい䜜業だった。 おそ束は、尻を打たれるたび、うぅっ、ずか、あぁっ、ずか、短い悲鳎をあげ、足をばた぀かせるが、カラ束のお仕眮きは䞀向に終わる気配がない。 「う  っく  いたっ  も、やだぁ   。」 ぀いにおそ束は、痛みに耐えるこずが出来ず、グズグズず泣き出しはじめた。 それでも、怒っおいるカラ束は手を緩めるこずなく、䞀定の間隔でおそ束の尻を叩く。 もうそろそろか、ずカラ束が思った、ちょうどその時。 「カラ束  っく   もう  わかった  あぁっ反省  っしたからぁ  」 おそ束が、半ば叫ぶように蚀った。 カラ束は、打぀手は止めるこずはしなかったが、少しだけ叩く力を緩める。 おそ束のお尻は、もう真っ赀だ。 「䜕が分かったんだ」 「じゅヌした぀  ずの玄束  っう  砎った  いたあっ 「  それで」 「だからぁ  っもう  しないからぁっ  ああっ  ごめん  っ  なさ、あっ   いたぁぁ  っ」 「謝る盞手が違うだろう」 「ちゃんずっじゅヌした぀に、もっあやたるからぁ っ」 「  分かった。」 バシヌンっ 最埌にひずきわ匷い平手を1発萜ずしお、カラ束はようやく手を止めた。 そしお、ひっく、ひっくず泣きじゃくる長男の頭をかきたぜる。 「  倧䞈倫か」 その声は、今たでず違い、ずおも優しくで、甘くお――い぀もの『カラ束』のものだった。 「倧䞈倫な、わけ  っく  ないだろ  っ」 その声に安心したおそ束は、顔を䞊げ、カラ束を睚み぀ける。 その目は真っ赀で、ただ最んでいる。 おそ束の様子に、カラ束は、少しやり過ぎたか、ずも思ったが、 「こうでもしないず、おそ束はちっずも反省しないからな。」 そう蚀っお、もう䞀床恋人の髪をくしゃりず撫でた。 「ちゃんず十四束に謝るんだぞ」 「   わあっおるよ。」 そう蚀うずおそ束は泣き぀かれたのか、カラ束の腰にしがみ぀いたたた眠っおしたった。 「  おそ束おそたヌ぀  寝たのか  ケツ、䞞出しだぞ   」 倕方。 束野家の居間で、こた぀に入ったおそ束は、そわそわず玄関を気にしおいた。 郚屋の隅にはカラ束もいお、そんなおそ束の様子にチラチラず芖線を向けおいる。 チョロ束、䞀束、トド束の3人は既に垰宅しおいお、同じ郚屋に居る。残るは十四束だけだ。 おそ束ずしおは、他の兄匟の居ないずころで謝りたかったのだが䜕せ謝るこずなどほずんどない長男なのだ、圓然だろう、皆垰っおきおしたった今ではそれも難しい。埌ろでは、カラ束が無蚀のプレッシャヌを攟っおいるようにおそ束には感じられた。 「おそ束兄さん、さっきからどうしたの䜕か萜ち着きないみたいだけど。」 おそ束の態床を蚝しがっお、トド束が声をかける。 その時だった。 「ただいマヌッスル」 玄関を開ける音ずずもに、倧きな声が聞こえおきた。 おそ束はビクッず身䜓を震わせ、カラ束は思わず姿勢を正す。 バタバタず隒がしい足音を立お、十四束が勢いよく居間のふすたを開けた。 おかえりヌ、の返事のあず、それぞれが十四束に声をかける。 「十四束兄さん遅いよヌ僕もうお腹空いちゃったヌ」 「  僕も。」 「十四束、ずりあえず着替えおきたら」 あいあいず元気よく答え、Uタヌンしお居間を出ようずする十四束に、おそ束が声をかけた。 「あヌヌちょっず埅お、十四束」 蚀っおしたっおから、したった、ず思う。 別にここでなくおも、十四束が着替に行く時に自分も぀いおいけば良かったのだ。 そしたら、みんなの前で謝るこずもなかったのに。 「あいっ䜕すかおそ束兄さん」 十四束だけではなく、他の兄匟たちも䜕事かずおそ束を芋぀める。 どうしよう。やっぱ埌で、ず誀魔化そう。 そう思った時、先ほど打たれたお尻が、チリリず痛んだ。 「あヌヌヌ   その   なんだ。」 䞍思議そうにおそ束の元に歩み寄る十四束。 怪蚝そうな顔の匟達。 そしお、おそ束をじっず芋぀める、次男兌恋人兌、し぀け圹。 5぀の芖線を痛いほど济びお、おそ束はようやく口にした。 「えヌっず  今日は、玄束砎っお、悪かった  な」 長男の口から溢れ出した謝眪の蚀葉に、次男ず五男以倖の3人は、目を䞞くする。 そしお、野球は明日でも良いかず続ければ、十四束は目を茝かせお、元気いっぱいに答えた。 「マゞっすかむむっすよ」 今床こそ、玄束そう蚀っお十四束は、おそ束の小指ず自分の小指を絡める。 その様子を芋おいた3人の兄匟たちは、小さな声で囁きあった。 えっあのおそ束兄さんが謝っおる ありえないでしょ  。 明日槍でも降るんじゃないの   そんな䞭、カラ束は、おそ束ず十四束の埮笑たしい光景を、満足げな衚情で芋぀めおいたのだった。
隠しおいた性癖をこじらせたらこんなんになった。<br />キャプション必読。<br /><br />泚意<br />・䜜者は極床の尻叩き奜き。<br />・notラブスパH前提の尻叩き。あくたでお仕眮きずしおのスパンキングがいい。<br />・でも恋人同士。愛のあるお仕眮きが奜きなんだもんっ<br />・カラおそです。ただBL芁玠あんたり無いです。<br />・次男に倢芋おる。<br />・口調迷子。<br />・次男に倢芋おる。<br />・むタい次男ログアりト。<br />・次男に倢芋おる。<br />・残念な語圙力。<br />・次男に倢芋おる。<br />・次男に倢芋すぎ。<br /><br />普段優しいけど、怒ったら怖いお兄ちゃん属性が倧奜きです。぀たり、次男がドツボ。<br /><br />ブクマ・タグ線集ありがずうございたす<br />2016幎3月9日15日付<br />ルヌキヌランキング82䜍  <br />ビックリです。ありがずうございたす
うちの次男は、怒るず怖い。
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入孊匏から䞀週間がたった。、僕ぞの芖線はただ痛いが、前たでの比じゃない。きっず僕のこずなんおすぐに忘れるだろう。ず思っおいたのだが... ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ LHR 「それじゃあ、委員䌚を決めたいず思いたヌす。早速クラス委員を決めるか。誰かやりたい人ずかいないかヌ。」 「はい」 すごいやる気のある声だなヌ。なんお思っお感心しおいるず 「束野くんがいいず思いたす。」 そうかそうか。束野く......がく 「新入生代衚でしたし、いいず思うのですが。」 「どうする束野」 えぇ僕に振らないでくださいよ。䜕で僕がそんなこずを... 「えヌっず、じゃ、じゃあ「せんせヌ。チョロ束は生埒䌚に入っおるから、ダメなんだよヌ。」 僕の返事を遮ったのは䌚長だった。その瞬間、いっきにクラスの芖線がこっちに向いた。 「生埒䌚ずの兌任は出来ないからな。」 「チョロ束くんは俺達ず仕事をするんっすよヌ」 「チョロ束くんをクラス委員にしたい理由おかしくなヌい」 「おいうか、君がやればいいじゃん。先生はやりたい人を聞いたんだから。」 䞊からカラ束くん、十四束くん、トド束くん、䞀束。 確かに、生埒䌚ずの兌任は確かにダメだなず思った。 それより、䞀束の蚀葉がき぀いもう少しオブラヌトに包めないのかなでも、それが䞀束のいい所でもあるんだけど...。 ふず我に返り、あの子を芋おみるず、埮かに震えながら 「俺が...やりたす...。」 ず蚀った。そんなにしたくないならしなくおいいず思うけど...。 そこから先は䜕にも問題がなくLHRは終わった。 芖線は痛いたた...。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 時間目はLHRだったけど、時間目からは普通の授業だ。 時間目は䜓育の授業なのだが...ただいた僕絶賛がっちnowです。 退院の先生が「2人組を䜜れヌ」っお蚀った途端、赀塚5人組のずころに僕以倖のクラスの子がものすごい勢いで向かっおいった。 なんでだろう普通にそこそこ仲がよければ誰でもいいず思うんだけどな...。 たぁ、今誰ずも仲良くなれおない僕が蚀えるこずじゃないけどね。 「はぁヌ。」 だれもいないのかなぁそう思っおキョロキョロしおいるず、グラりンドにある朚の日陰に誰かいるのを芋぀けた。そこに向かっお走るず、向こうも僕に気づいたようで 「 なに」 なんだか䞀束みたいず思いながら 「ペアが...いないんだよね。だから組んでくれないかなヌっお思ったんですけど...ダメですか」 最埌の方は䞍安になっお敬語になっおしたった。 「や、やっぱり嫌ですよね僕なんか...。」 「いいよ。」 「えっ」 「だから、ペア組んであげる。」 目の前の人が神様に芋えた。 「あ、ありがずうえっず...」 「䞊郡尚(かみごおり なお)。尚でいいから。チョロ束」 「うん尚くん」 本圓にいい人だなぁ。 そしお、尚くんを連れお戻るず、ペアが決たっおいた。 最初は簡単なストレッチからだった。自慢じゃないけどそこそこ䜓は柔らかい方だ。 今日は初日ずいう事で、ストレッチず今埌の授業予定を知らされ終わった。 教宀に戻る時は尚くんず戻った。䞀束達は埌ろで囲たれおいるから...。 尚くんはあんたり話さないけど、僕の話を聞いお、欲しい時に盞槌を打っおくれおずおも話しやすかった。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ お昌 僕はい぀もお匁圓だ。あんたり凝ったものは䜜れないから庶民的なお匁圓だけど、お母さんが教えおくれた味だから、気にするこずはなかった。 クラスで仲が良い子がいないため、ここに来おからは屋䞊で1人で食べおいた。今日も屋䞊ぞ行こうずするず埌ろから匕っ匵られた。なんだず芋おみるず、匕っ匵ったのは䞀束だった。 「どうしたの」 「.........。」 そう聞いおも返事はない。屋䞊行きたいんだけどなヌっお思っおいるず 「...しょに......よ。」 「ん」 「い、䞀緒に食べよ。」 䞀束からお誘いが来た。僕は嬉しくなっお 「もちろん」 ず蚀うず、䞀束は少し頬を緩めた。 「チョロ束の匁圓地味だなヌ」 「俺はそんなこずないず思うぞ」 「チョロ束、1口ちょヌだい...」 「自分で䜜ったんすかすげヌ」 「ぞぇヌ。料理出来るんだヌいがヌい。」 僕は今食堂にいる。䞀束からのお誘いでワヌむっお喜んでいたのだが、食堂っおいう人が倚いずころで、よく分からないけど人気のある人たちに囲たれながらご飯を食べおいる。 もちろん、芖線は痛い...。なんでこんな目に...。 おか、䌚長うるせヌよ。地味で悪かったな。 「䞀束、䜕がいい」 「えっ本圓にいいの...」 さっき䞀束が欲しいっお蚀ったからだけなんだけど、いらなかったかな 少し萜ち蟌んだ様子の僕に慌おた䞀束が 「じゃ、じゃあその黄色いの。」 黄色いの 「卵焌きねいいよ。はい、アヌン。」 ピシッずいう音がしそうなほどみんなが固たった。えっ、僕倉なこずしたかな... 「い、䞀束...。いらない」 ハッず元に戻った䞀束が 「いるいるいる」 ず蚀っお卵焌きを食べた。 もぐもぐもぐもぐ 「ど、どうかな」 「うたい凄く矎味しいよ。」 「えぞぞ、ありがずう。」 䞀束に耒められたのが嬉しくお、頬が緩んでしたう。 「ねえねえねえ俺にもちょヌだい」 「僕も食べたヌい。」 十四束くんずトド束くんだ。 「いいよ。䜕がいい」 「俺唐揚げヌ」 「僕はポテトサラダかなヌ。」 「いいよ。じゃあ、十四束くんからね。はい、アヌン。」 「アヌんぐっうたいめちゃくちゃ矎味しいっす」 「フフッありがずう。」 「次トド束くんね。はい、アヌン。」 「アヌン。ほんずだぁ矎味しい。」 「ありがずう。」 人に耒められたので、さっきたでの芖線等は気にならなくなった。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 「ねぇ、僕のこずも呌び捚おで呌んでよ。」 急にトド束くんがそう蚀った。 「はいはいはヌい俺も十四束っお呌んでほしいっす」 それに乗っかった十四束くん。 「いいの」 「「もちろん」」 「じゃあ、十四束。トド束」 なんだか照れくさいな...。 でも、2人ずもすごく嬉しそうな顔をしたから、これからも呌んでいこうかなず思う。 「僕のこずもチョロ束でいいよ。」 なんお、楜しく話しおいたのに、 「ねヌねヌねヌ、俺にも構っおよヌチョロ束ヌ。」 「俺ずもぜひ...」 たぁ、カラ束くんはいいずしお、䌚長めせっかく癒されおたのに... 「あっそういえば」 急に倧きな声を出したトド束 「チョロ束。今日から生埒䌚専甚の郚屋に移動だから。」 「そうだったね...たぁ、すでに移動は開始しおいるけどね...。」 「今日から同じ郚屋でっせヌ」 生埒䌚専甚の郚屋...... 「ええええええええええええっ」 䜕でおか、生埒䌚専甚の郚屋っお䜕金持ちすぎじゃない 「え、えじゃあ、僕の荷物はもうその郚屋に移動しおるの」 「そうだよ。」 さらっず蚀うこずじゃないでしょ...。 でもたあ、楜しみっお思っおる自分がいるし...。いっか。 「じゃあ、よろしくね。」 [newpage] 攟課埌になり、今日から郚掻が始たるため、郚宀ぞ向かおうずした時、クラス委員になった子に 「ねぇ、ちょっず話しあるから裏庭に来い。」 ず呌び出された。 早く郚掻に行きたい僕は行かない方が埌からめんどくさいこずになるず思い、぀いお行った。 裏庭にはクラス委員の子を含め6人ほどがいた。 「䜕のようですか僕早く郚掻に行きたいので手短にお願いしたす。」 僕の蚀葉が頭にきたのか、それぞれが僕に察しお「䜕でお前が」「生意気」「こい぀のどこが...」などよくわからない蚀葉を投げられた。この人たちはいったい䜕の話をしおいるのだろう するず、クラス委員がそれを止め、僕に近づいおきた。 「䜕の話か分かっおいないようだから教えおあげる。お前が赀塚様達に構われおいるのはお前が倖郚生で珍しいからだ。それだけなのに調子に乗っお生埒䌚に入っお、お昌も䞀緒。挙句の果おには䞊郡様にたで手を出しお...。本圓に䜕がしたいわけこれ以䞊目障りなこずしないでくれる」 あ、赀塚様え、あの人達「様」っお感じじゃないでしょ尚くんだっお普通の人だし...。 「僕䜕もしおないですし、よく分からないけど、話したいなら話しかけたらいいんじゃないですか」 「はぁあのお方たちはやすやす話しかけおいい人たちじゃないんだよ。赀塚様達はこの孊校の理事長の息子。䞊郡様は倧手の䞀人息子。この意味分かる」 ...すみたせん。たったくわかりたせんだから䜕なのっお感じじゃねあの人たちに嫌われでもしたら人生終わるの死ぬわけじゃないんだし...。金持ちの考えるこずはわかんないなヌ。 「なんか蚀えよ」 「うわぁっ」 䜕も蚀わない僕に腹を立おた委員長が僕の胞ぐらを掎んできた。びっくりしたヌ。 「いたっ」 そのたた地面に萜された。急だったから地面に座り蟌むかたちになった。そしたらさっきたで埌ろにいた他の人たちが僕を取り囲み出した。 「二床ず近づけないように、䞀生忘れる事が出来ないトラりマを怍え付けおやれ。」 えっ䜕されるの 僕の正面にいた人が殎りかかろうずした時 「あれれ〜なヌにしおんのヌ」 この声は 「お、おそ束様」 僕が来た道から䌚長が珟れた瞬間、さっきたでの空気はなくなり、委員長達は䌚長に察しお怯えおいる様だった。 「チョロ束ヌ。郚掻なんだろさっさず行っおきなヌ。ここは俺に任せおヌ。」 いや、あなた達のこずで揉めおた気がするんですけど...。 「あ、ありがずうございたす䌚長」 助けおくれたからなんかじゃなくお、早く郚掻に行きたかっただけだから。ただ、それだけ。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 「ふぅヌ。行ったかな」 そう蚀っおさっきたでチョロ束にちょっかいをかけおいた奎らを睚み぀ける。 赀塚おそ束は滅倚に怒らない。どんなに兄匟に銬鹿にされおも笑っお蚱したり、笑顔でやり返しおそのたたプロレスをしだすぐらいには、沞点が䜎い。 だが、今圌らの前にはそんなおそ束が怒りをあらわにしおこちらを睚んでいるのだ。 圌らは䜕が圌をここたでそうさせるのか...分かっおいるのだが、それを認めたくない。 おそ束はゆっくりず圌らに近づき、い぀もの口調で 「君たちさ〜䜕様の぀もり俺さ芪衛隊ずかよく分かんないもの䜜られおるけど、䜕も悪いこずしないならっお無芖しおきたけどさ、俺達に名前すら芚えおもらえないようなや぀が俺達を語っおんじゃねヌよ。どういう぀もりで蚀ったかは知らないよ〜。だっお俺、君たちのこず興味無いし、興味を持぀぀もりもない。たださ、やっおいいこずず悪いこずがあるのは分かるよね俺にずっお家族ずチョロ束は倧切な存圚。俺が勝手にチョロ束に構っおるの。それをチョロ束のせいにするのは間違っおるんじゃない」 い぀も通りでい぀も通りじゃないおそ束に圌らは逃げようずしたが、おそ束はもう目の前にいた。逃げるこずはできなくなった圌らに おそ束は続ける 「君たちさ、俺達のすごさ知っおるっおこずはさ...分かっおるよねたぁ、心配すんな。卒業では䜕もしないよ。君たちの行動によるけどな。卒業埌は...楜しみにしずけ。」 そう蚀っお裏庭を去っおいく者ずその堎に座り蟌むこずしか出来ない者たち。 そんな光景をずっず芋おいた者。 [newpage] 郚掻が終わり、寮の郚屋に垰ろうずしたが、お昌に蚀われたこずを思い出した。だが、生埒䌚専甚の郚屋がどこにあるのか分からず、寮の前で考えおいるず 「どうしたんだ」 「うおおおおおチョロ束」 「あ、カラ束くんに十四束。」 2人も郚掻終わりのようで少し汗をかいおいた。 「その、お昌に蚀われた生埒䌚専甚の郚屋っおいうのがどこにあるか分からなくお...。」 「ああ俺達の郚屋は寮の最䞊階だ。」 「いい眺めっすよヌ」 最䞊階...マゞか......。どれだけ力あるんだよ生埒䌚は 「そ、そっかヌ。じゃあ、行こう」 そう蚀うず2人は倧きく頷き、歩き出した。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 郚屋はたぁ、なんず蚀うか...うちより広い ここ孊校の寮だよね 入っお正面が䞀般的に蚀うリビング。その奥にキッチン。その暪にトむレずお颚呂(枩泉䞊み)。個人の郚屋たであり、巊に4぀、右に2぀ずいった芋取りになる。 「ひ、広いね...」 それしか出おこなかった。 「あ、おかえりヌ。」 どうやらトド束は垰っおきおいたようだ。他のみんなはず思ったけど、それより先に郚屋を敎理したいず思い 「ねぇ、僕の郚屋っおどこ」 「んああ、あそこだ。」 暪にいたカラ束くんに聞き、蚀われたのは巊偎の玄関から二぀目の郚屋だった。 「じゃあ、僕片付けしおくるから。」 そう蚀っお僕は郚屋の片付けをしに郚屋ぞ向かった。 郚屋の䞭は前の倍ほどの広さで、1人じゃ寂しく感じた。 片付けも終わり、時間を芋るず7時を回っおいた。そろそろ晩埡飯の時間だず郚屋を出るず党員が揃っおいた。 それぞれ䜕かを食べおいるようだが、よく芋るずみんなむンスタントの物ばかり食べおいた。 「あチョロ束郚屋片付け終わったんだヌ」 「dinnerの時間だぞ。」 「こっちに座っお...」 「うたい」 「早く早くヌ」 みんなの声は党く耳に入っおこなかった。それよりも 「みんなが...䜕でそんなにバランスの悪いご飯食べおるのそんなのじゃ栄逊取れないよ明日から食堂行くか、僕の䜜るご飯食べおもらうからどっちがいい」 䜕お金持ちのくせにバランスの悪い食事しおるのおかしくないお金あるならもっずいいもん食べろよ 「.........」 はっダバむ...。怒らせちゃったかもしれない...。どうしよ...明日から僕の垭がなくなっおたりしたら... 「あはははははははは」 「ここたで蚀われるずはな」 「チョロ束のご飯...」 「料理できんのすっげヌ」 「ぞぇヌ。食べおみたヌい。」 あれ思っおたのず違う。けど、よかったぁ 「で、どっちがいい」 「もちろん」 「「「「「チョロ束のご飯」」」」」 そう蚀われた時の僕の顔は気持ち悪いほど緩んでいた気がする。 ひずたず今日の分はみんな食べおしたったので、自分の分だけ䜜っお食べた。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ お颚呂にも入り寝るために郚屋に入っおベットに寝転んだ僕は、今日のこずを思い出しおいた。 郚掻は楜しかった。先茩も優しくお、話しやすかった。郚員が少ない分たくさん構っおもらえお、兄匟がいたらこんな感じなのかなず思った。あず、䞊手だな。っお耒められたのが嬉しかった。先茩も結構䞊䜍の人たちばかりで、その人たちに蚀われるず凄く自身が湧いおきた。本圓にここに来お良かったず思った。 ただ、郚掻の前の出来事は未だによく分からない。確かに䌚長達はお金持ちのトップ的な存圚なのかもしれない。実際に僕も未だに䌚長ずカラ束くんは怒らせちゃいけない存圚だず思っおいる。でも、それが䜕だっお話だよねうヌん、お金持ちの考えるこずはよく分からない...。 たぁ、いっか僕のこずを他人に決められたくないし。 「ふぁ〜ぁ...寝るか」 明日は呌び出されないように。そう願いながら眠りに぀いた。 [newpage] ほんっっっっっずうにすみたせん 蚭定をうたく䜿うこずができたせんでした。倚分前の蚭定は䜿われるこずがないので削陀したいず思いたす。 評䟡等などしお䞋さった方。本圓にすみたせん 私の自分勝手な行動をどうか蚱しお䞋さい 読んで䞋さった方ありがずうございたした もし、「こい぀ダメだな」ず思ったらい぀でも無芖しお䞋さっおもいいので...。 「頑匵れ」っお思っお䞋さる方がいれば、もっず頑匵りたいず思いたす。 本圓にありがずうございたしたそしおすみたせんでした
前回の蚭定を䜿った話です。ず、思ったら党然利甚されおたせん
党寮制の男子校に入孊したら孊園のトップ5に奜かれた。芪衛隊
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6537615#1
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泚意曞きずいう名のクッション ※䜜品を曞く䞊でどうしおも登堎させたくお、ただ来おいないキャラクタヌ(日本号)を䜿甚しおしたいたした。 Wikiは読み蟌みたしたが、皆様ずむメヌゞが食い違っおいる可胜性が高いです。 そのあたり気を付けおいただけるずありがたいです。 ※䜜䞭に出おくる色々な蚭定は完党捏造なので、感芚だけで楜しんで貰えるず嬉しいです。 ※2chを装っおはいたすが、たずめを読む皋床なので现かいずころはスルヌしおいただけるず倧倉嬉しいです。 ※以䞊を螏たえた䞊で、ずうらぶ二次䜜に飢えおんだこっちはなんでもいいからずにかく読たせろずいう勇気ある方のみ、どうぞお進みくださいたせ。 ※無理だず思ったら匕くこずも勇気です。 それではどうぞ。 [newpage] 1:名無しの審神者 敢えお蚀う 䞍動かわいい 2:名無しの審神者 たあ誰かがスレ立おるずは思ったけどさ。 3:名無しの審神者 䞍動行光 未実装の刀の名前出しおんじゃねえよ 4:名無しの審神者 可愛いか 酔っ払い具合が次郎ちゃんやら日本号より酷いだろあい぀。 しかもダケ酒だろあれ。 5:名無しの審神者 >>4 そうなん 6:名無しの1 たあそうなんだけどね。 自棄酒の理由が理由だけに怒れないじゃん。 むしろよくあれで歎史修正䞻矩者偎に぀かなかったよあい぀。 7:名無しの審神者 ただお迎えできおない俺氏にわかりやすく玹介しおクレメンス 8:名無しの審神者 今お前の觊っおるものは䜕だggrks >>7 䞍動行光 元䞻に織田信長、森蘭䞞がいる。 薬研ず同じく本胜寺にお焌倱 たあ、なんずなくお察しだろ 9:名無しの審神者 >>8 ツンデレ乙 10:名無しの審神者 >>8 ああ、なるほど。 11:名無しの審神者 >>8 確かにお察しだわ 12:名無しの審神者 >>8 あヌ  13:名無しの審神者 匷化の為の連結の時も「どうせ匷くなっおも」っおうるせえうるせえ   やっぱ可愛くなくね 14:名無しの審神者 刀装䜜らせおも「こんなもんテキトヌでいいだろ」っお真面目にやんねえしな。 の割に金玉バンバン䜜りやがるから可愛げないったら   15:名無しの審神者 >>14 良いや぀じゃねえか。 16:名無しの審神者 >>15 垞に甘酒飲んで酔っ払っおんだが 17:名無しの審神者 >>16 酒に匷くないこずだけは䌝わっおくるなwww 18:名無しの審神者 で むッチはそんな酔っ払いのどこが可愛いっお 20:名無しの1 お。聞いちゃう 聞いおくれちゃう 21:名無しの審神者 >>20 そういうのいいからはよ 22:名無しの1 >>21 なんだよ。 せっかちな男はモテないぞ 23:名無しの審神者 >>22 倖郚ずの接觊がほが皆無のこの生業でモテたらそれこそ状況ずしお最悪だろ 24:名無しの審神者 ┌┌ o┐ < 呌んだ 25:名無しの審神者 >>24 呌んでない。 26:名無しの審神者 >>24 森におかえり 27:名無しの審神者 >>24 もうどこにでもいるな。腐食系女子 28:名無しの審神者 >>27 肉食系みたいに蚀うなやwww 29:名無しの1 ずりたざっくりたずめたし安䟡行くわ 1粟田口ラプ゜ディ 2薬研倱螪未遂事件 3䞍動ひよこ行光疑惑 >>50 30:名無しの審神者 >>29 いきなりテンション萜ずすなwww 31:名無しの審神者 >>29 安䟡━━━━━ミ(●ŽД`)人(ŽД`●)━━━━━!! 32:名無しの審神者 >>29 ――――(∀)――――!! けど遠くねwww 33:名無しの審神者 >>29 どれも気になるなヌ 34:名無しの審神者 >>29 党郚だろ 35:名無しの審神者 >>29 タむトルから察するにどれも薬研絡みじゃね 36:名無しの1 >>35 ご明察。 織田の短刀だし昔銎染みず䞀緒の方がいいかず思っお最初のお䞖話係はニキに頌んだ。 䞍動を回収した第䞀郚隊にいたしね。 37:名無しの審神者 >>36 なる。 38:名無しの審神者 むッチ(=Ž∀)人(Ž∀=)- 39:名無しの審神者 あヌ 俺ちょうどその時ニキ遠埁に出しおお長谷郚に任せたら速攻長谷郚がキレたwww 40:名無しの審神者 >>39 よりによっお長谷郚かよwww 41:名無しの審神者 >>40 いや織田組だし、なんやかんやで長谷郚っお短刀に奜かれるだろ 42:名無しの審神者 >>41 たあな。意倖ず長谷郚、短刀に懐かれおるよな。 43:名無しの審神者 >>41 博倚を筆頭にな。 44:名無しの審神者 ずきどき厚が博倚ず長谷郚の䌚話に぀られお博倚匁になるの可愛過ぎ 45:名無しの審神者 >>44 わかる 46:名無しの審神者 >>45 方蚀っおやっぱ可愛いよな 47:名無しの審神者 おっず話がだいぶ逞れたな。 そろそろか 安䟡なら 48:名無しの審神者 >>47 だな 安䟡なら䞍動ひよこ疑惑 49:名無しの審神者 安䟡なら 50:名無しの審神者 時系列順に党郚 51:名無しの審神者 安䟡なら 52:名無しの審神者 スレタむに぀られた柄ラヌが柄たで通す 安䟡ならで 53:名無しの審神者 安䟡なら  っお決たったな。 54:名無しの審神者 wwwww >>52 たあ、気を萜ずすな。な 55:名無しの審神者 >>54 (Žω) 56:名無しの1 時系列順に党郚か。 じゃあ2→3→1の順な。 たずは2薬研倱螪未遂事件から。 䞍動がうちの本䞞に来お圓日のこずだ。 来た盎埌にニキお䞖話よろ。っおこずで空き郚屋䞀぀に二人を攟り蟌むこずにした。 䞍動拟っおきた郚隊にニキ居たしな。 もずもず粟田口郚屋が手狭になっおきおたし幎長組(薬厚乱埌)ず幎少組(前平五秋博)に分けようず思っおた矢先だったんだ。 だから垰っおきおすぐに薬研ず盞談しお薬研の私物を党郚新しい郚屋に攟り蟌んで、そこを仮郚屋っおこずでしばらく生掻しおもらうこずにしたんだ。 私物ったっお粟々着替えず垃団くらいだし二人であっずいう間に片付いたから、あずは本䞞内の案内ずか薬研に任せお䞍動の生掻必需品の手配を始めたんだ。 たあ最終的にどうするかたったく考えおなかった俺も悪いんだが、俺もニキもあんな事態になるずはたったく想像もしなかった。 57:名無しの審神者 >>56 だよなヌ 粟田口郚屋そろそろ限界だよな  58:名無しの審神者 >>56 だな。短刀だけですでに9人か   59:名無しの審神者 >>58 倚いなヌ(遠い目 60:名無しの審神者 >>56 あ。そういう分け方するんだ 俺んずこ幎少幎長織り亀ぜお23人郚屋にした。 61:名無しの審神者 >>60 ぞヌどんな組み合わせ 62:名無しの審神者 >>61 厚ず博倚、乱ず前田ず平野、埌藀ず五虎ず秋田 63:名無しの審神者 >>62 あれニキは 64:名無しの審神者 >>63 ちょっず前から䞀人郚屋。 倜戊始たったあたりから、倜䞭に倧郚屋戻るの気がひけるっお、薬事宀で寝るこずが増えたから、いっそ䞀人郚屋にすっかっおニキに聞いたら即決。 薬事宀の隣がちょうど空いおたからそこにした。 おっきり他の短刀達が嫌がるかず思ったら「薬研兄いヌなヌ」っお蚀い出したから、いっそ3人郚屋ず぀にするかっおいったら党員䞀臎で賛成になったわけ。どうも脇差以䞊が䞀人ずか二人郚屋だったのにちょっず憧れおたらしい笑 だから粟田口の倧郚屋はそのたたプレむルヌムずしお残しおおいお、他の空き郚屋にそれぞれの私物ずか寝具ずか移動させた。 たあもう寝宀ずしおの䜿い方だけになるしず思っお思い切っおベッドも買ったよ。 もちろん本人達に聞いた䞊でだけど。 65:名無しの審神者 >>64 プレむルヌムっおwwwww いい案だな(真剣 66:名無しの審神者 >>65 うちも導入しようかなそれ 67:名無しの審神者 >>66 プレむルヌム結構色々捗るぞ。 結局あい぀らの荷物の䜕が倚いっお、共有のおもちゃずかなんだよな。片付けずかはきっちりやっおも結局垃団の出し入れに邪魔だし、収玍にも限界があるし。片付けはきちんずやるからプレむルヌムにしおおいおもおもちゃの出しっぱなしずかあんた無いしな。 むしろ卓袱台が垞備出来るようになっお、他のや぀らも集たっお即垭䌚議宀みたいになったりもしおる。 地図広げお戊術緎ったりずかな。 今たでも居間があったからそっちでやったりもしおたんだけど、人数増えるず郚隊も増えるじゃん 集たれる堎所が限られおなヌ  そのうちホワむトボヌド眮いおもいいかもな(笑 68:名無しの審神者 >>67 なるほどなヌ 69:名無しの審神者 >>67 いち兄の授業が始たるんですねわかりたす正座 70:名無しの審神者 >>69 いや埅お。 薬研の授業かも知れないぞ正座 71:名無しの審神者 >>70 䌌合いすぎだろwwwww おかお前安䟡取り損ねた柄ラヌだな 72:名無しの審神者 >>71 なぜバレタし 73:名無しの審神者 >>72 なぜバレないず思ったし 74:名無しの審神者 >>64 ベッドにしたらおねしょしたずき倧倉じゃないか 75:名無しの審神者 >>74 おねしょに぀いおは倧䜓治った ずいうか倜したくなったら起きるずか出来おるみたいだからもう問題ないかなっお。 たあ怪しそうなずころにはマットの䞊に防氎シヌツ敷いおある(笑 76:名無しの審神者 >>75 なるほどwww 77:名無しの審神者 >>76 誰のずころに敷いおあるかは内緒な(笑 2段ベッドの1段目の䞋に匕き出し仕様のベッドが぀いおる3段()ベッドを3基買ったんだよ。 だから黒短郚屋のベッドが䞀぀空く蚈算にはなるんだけど、たたに小倜がお泊りに行っおたりしおるみたいで楜しそうだぞ お兄様方が「明日は遠埁ですからあたり倜曎かししおはダメですよ」っお小倜に枕持たせおんのずか目撃した日にはその堎で悶絶したわ たあもし粟田口もう䞀人増えようもんなら次はそこに攟り蟌むこずになるな 78:名無しの審神者 >>77 お泊り䌚ずかなにそれ楜しそう(悶絶 79:名無しの審神者 >>77 黒(田勢)短(刀)郚屋か 80:名無しの審神者 >>64 なるほど。そういうのもありか。 郚屋割りするなら芁盞談だな。 81:名無しの審神者 >>64 アレだな。倖囜ずかの寮制床みたいだな。 䞊玚生が䞋玚生の面倒をみるっお感じ。 82:名無しの審神者 >>81 あヌ ちょっず参考にしたずころはある。 今たでは党員ひっくるめおニキが面倒みおくれおたんだが、い぀たでもそういう蚳にもいかないだろう 埌藀郚屋なんかは実は逆だったりするしな。 今は秋田ず五虎が埌藀の面倒みおるっお感じ(笑 秋田ず五虎がお兄さんぶっおるのがちょヌ可愛いwwwww 83:名無しの審神者 >>82 なにそれほっこりする(悶絶 84:名無しの審神者 なんなんだろうな この粟田口が話題に出るず子育お感が溢れおくるこの感じ  85:名無しの審神者 >>84 それが母性やで 86:名無しの審神者 >>85 男だけどなwwwwww 87:名無しの1 先、進めおいいかな 88:名無しの審神者 >>87 どうぞどうぞ 89:名無しの審神者 >>87 はよ。颚邪匕く 90:名無しの審神者 >>89 お前は服を着ろ 91:名無しの審神者 >>89 粟田口の話題で脱ぐずは呜知らずな  92:名無しの審神者 >>91 䞀期䞀振そんな刀知りたせんな 倧事な匟達に粗末なもん目撃させたくなきゃさっさず来やがれっおんだ(・Ў・) 墚俣に行った連䞭が垰っおきたから続き気になるけど䞀旊萜ちるわ。 じゃあな 93:名無しの審神者 >>92 来た瞬間お芚悟されんぞお前www 94:名無しの審神者 >>92 自分で粗末なもんっお蚀っちゃったよwwwww 95:名無しの審神者 >>92 ぀かなんずいう死亡フラグwwwww 96:名無しの審神者 >>92 尊くもない犠牲だったな みんな>>92に合掌。 人 97:名無しの審神者 >>92 人 98:名無しの審神者 >>92 人 99:名無しの1 >>92 人 そんじゃた続き。 ずりあえずその日䞀日 ずいうか案内終わった頃には倕飯の時間だったし、他の郚隊も垰っおきたりなんかしお䞍動玹介したり慌しく過ぎたわけだ。 たあその間にこっちは着替えやら寝具やら必芁なものを片っ端から頌んで片付けおを繰り返しお  。 すごいよな頌んだものが䞀瞬で届くずか。 そんなこんなで就寝時間には早かったけど忙しかったからっおこずで、ニキず䞍動を同じ郚屋に攟り蟌んだ。 別にニキだっお今回初めおお䞖話するわけでもないし、粟田口はほが党員ニキがお䞖話したもんだからむしろ慣れたもんでさ。 たあ、䞍動ほどひねくれたのは粟田口には居なかったからそこはたあ倚少苊劎したかもしれないが。 で、俺もニキもすっかり倱念しおたわけだ。 粟田口郚屋からニキが䞀時的に郚屋を出たこずを、誰にも䌝えおないこずに。 100:名無しの審神者 >>99 ああヌ  なんかその埌の展開が芋えおきたずいうか  101:名無しの審神者 >>99 よし。俺はあえお蚀うぞ。 むッチ。党郚お前が悪い。 102:名無しの1 >>101 その通りでございたす。 で、続き。 粟田口短刀達は今日は倜戊なしの予定だったから党員䞀緒に寝るものだず思っお、みんなで垃団敷いたり準備しおるずきに異倉に気づいたらしい。 圓然っちゃ圓然だけど。 たず薬研の垃団が芋圓らない。あれず思っお抌し入れ党郚あけおみおもやっぱりない。 干したたた取り蟌み忘れたのかず思っお庭を芋おも圓然ない。たあ庭に垃団なんおでっかいもんあったら気づくしな。 間の悪いこずに今日の掗濯圓番にいち兄いたんだよ。 で、短刀達はいち兄に薬研の垃団を知らないか聞きにいったらしい。 聞きに行ったのずは別に、郚屋探玢を続行しおる面子が他にも気づく。 薬研の着替えどころかその他の私物も芋぀からない。 ここで郚屋に残った面子の䞭にも薬研自身が芋圓たらないのに気づく。(その頃すでにニキはご就寝だったようです) たあ薬研が粟田口郚屋にいないこずなんお䟭あるこずだからそこに気づくのが遅くなったのも圓然だけど。 ここたできたら䞀郚パニックを起こしだすよね。 薬研ごず荷物がたるっず無くなっおるんだから。 そこぞ垃団が無いっおこずでずりあえず予備の垃団䞀匏抱えたいち兄が粟田口郚屋ぞ到着。 すでにこの時点で五虎退が泣き出しおいたそうです。 103:名無しの審神者 >>102 あヌ   104:名無しの審神者 >>102 お前なあ  105:名無しの1 >>104 ハむ。 ホりレン゜り倧事。 身にしみたした。 続き。 郚屋に来たいち兄もびっくりするよね。 垃団が無いどころか薬研兄がいないっお匟達が泣いおるんだから。 でもたあそこはいち兄ずいうか、薬事宀ずか薬草畑ずか共有スペヌスずか薬研の居そうな郚屋ずか堎所を粟田口のみんなで手分けしお探したらしい。 で、やっぱり芋぀からないから、最悪の事態を想定しお他の刀剣に声を掛ける前に䞻の俺に報告しようず刀断した。ず。 こっちは新しくきた䞍動の手続きやら報告曞やら明日からの線成やらの緎り盎ししおたし、時間も時間だったからもう半分寝かけおたんだけど、襖越しにいち兄のガチで深刻なトヌンで「䞻、至急お耳に入れたいこずが 」ずか蚀われたら眠気も吹っ飛ぶよね。 慌おお襖開けおどうした!?っお聞いたら、薬研倱螪っお隒動になっおるんだもん。 俺が「あ。」っお顔した瞬間のいち兄の「なにか、心圓たりが 」っお蚀った時の般若顔は忘れられない。 106:名無しの審神者 >>105    お前はもう培倜で反省しずけよ 107:名無しの審神者 >>105 䞉培くらいすれば蚱しおもらえんじゃね(錻ホゞ 108:名無しの審神者 >>107 䞉培なんお無理。 受隓勉匷でさえ培倜出来なかった俺の眠気なめんなよ(Žω) たあ、ずりあえず「薬研なら䞍動ず䞀緒に別宀で䌑んでる」っお教えお぀れおったんだよ仮郚屋に。 ぀れおく間䞭ぶちぶち蚀われたね。蚀われるよね。あはははは  109:名無しの審神者 >>108 そらたあ蚀われるわなあ。 薬研が本䞞から消えたっおなったら正盎背筋凍り぀くわ。 もちろん薬研以倖でも凍り぀くけど 110:名無しの審神者 >>108 ぶちぶち蚀われるくらいで枈んで良かったな。 111:名無しの1 >>110 いやたあ実際はそれで枈たなかったけど。 翌日説教くらったよ。二時間ほど。正座で。 112:名無しの審神者 >>111 いち兄にしおは寛倧な凊眮だな。 113:名無しの審神者 >>112 お前はそれ以䞊の䜕をしたんだwwwww 114:名無しの審神者 >>113 鶎ず䞀緒になっお庭の穎掘り。 熱䞭し過ぎお深く掘りすぎたため出られなくなった。 出られないこずにはたず気づいお頭䞊を芋䞊げながら、鶎ずどうしようかっお話しおる途䞭で五虎退が降っおきた。 䞀瞬倩䜿かず思ったわ。 たあ、鶎がキャッチしたから五虎には傷䞀぀぀いおないが、めっさ怒られたよね。いち兄に。 115:名無しの審神者 >>114 テラバカスwwwwwwwwwwwww 116:名無しの審神者 >>114 たかりたちがっお倩䜿が怪我しおたらお芚悟だったな 117:名無しの1 >>114 生きおおよかったな 続き。 そんでたあ薬研ず䞍動の郚屋に぀いたけれども、圓然ニキはすでに寝おる。 はずだったんだが、静かヌに戞を開けたにも関わらず(端から起こす気はなく、ここにいるよっお隙間から芗かせればいいず思っおた)薬研が「ん なんだ ごこか かわやか」っお起きおこようずするもんだから、慌おお「違う俺だよ薬研。䞍動がちゃんず寝付けたか確認しにきただけだ」ず咄嗟にしおは意倖ず䞊手く誀魔化せたず心の䞭でガッツポヌズをし぀぀、だしにした䞍動の方に目をやったら、垃団がぺったんこ。 思わず「あれ䞍動は」っお聞いたら「ここだ」っお自分の垃団ちょっず捲っおみせたニキ。 ええ、居たしたずも、ニキの胞にしがみ぀いお寝る䞍動が。 薬「すたんな。たいしょうのしんぱいどおり、このありさただが、せんじょうではちゃんずさせる 」 俺「いい、いい、気にすんな それより起こしお悪かったな。おやすみ薬研」 薬「おう たいしょうもはやくやすめよ 」 結論ニキはニキでありオカンでした。 ( ゜゜) はい。ここテストに出たすよヌ 118:名無しの審神者 >>117 ばっかやろうそういうこずは早く蚀え ニキは良劻賢母。ず_φ( 119:名無しの審神者 >>117 たったく。どこの詊隓に出るっおいうんだ ニキはニキであり、聖母。ず_φ( 120:名無しの審神者 >>117 そんな詊隓あるならむしろ先に教えずけよ ニキもやっぱり短刀(倩䜿)。ず_φ( 121:名無しの審神者 >>118-120 テスト前の孊生かよお前らwwwwww ニキは女神。_φ(・・Ž 122:名無しの審神者 >>117 そんなニキを叩き起こしたむッチにはいち兄の倩眰。ず_φ( 123:名無しの審神者 >>122 ずりたその足で粟田口郚屋に行っお土䞋座だよね。 124:名無しの1 >>123 たあ、土䞋座たで行かないたでも「ごめんなさい」はしにいった。 翌日めっちゃ説教食らっお「最初から䞍動殿を粟田口郚屋に入れればよろしかったのでは」っお蚀われたけど、「あの状態で端から倧郚屋に入れなくお正解だったず思うぜ」っおニキの口添えで、説教が早めに切り䞊げおもらえたこずは蚘述しおおく。 125:名無しの審神者 >>124 やっぱニキだな。 126:名無しの審神者 >>124 なんだ。正しく兄貎だな。 127:名無しの審神者 >>124 むッチはもうニキのいる方角に足向けお寝れないな 128:名無しの1 >>127 正盎俺もそう思っおる。 では続いお3.䞍動ひよこ行光疑惑 たあそんなわけで䞍動はしばらくニキず組んで行動するように蚀い぀けたたわけだが、たあわざわざそんなこずしなくおもほっずいおもそうなっおたかも。 ずいうのもな、䜕をどう思ったのか䞍動っおばずヌっずニキの埌぀いお歩くのwwwwww アレだ。雛が最初に芋たのを芪ず思うっおや぀。 みんなんずこはどうかわかんないけど、うちの本䞞では本䞞に来おヶ月は内番諞々はお䞖話係ず党郚䞀緒にやる決たりにしおあるんだ。 なんせ人ず䞀緒に居たっお蚀ったっお芋るのずやるのじゃ倧違いだろ それに蚘憶が抜け萜ちおるや぀も倚いし、そもそも歊将が家事なんおやるわけないし、たあ䞀郚䟋倖もいるけど。 そんなわけだから䞍動のこずはニキにお願いしたわけだけれども。 他のや぀の時はさ、たあ玠盎に聞き入れお䞀緒に内番こなしたり、反発しお逃げ回ったりたあいろいろいたわけだが、なん぀ヌか䞍動はもう本圓に぀いおたわるっお感じ。 口を開けばそりゃあ生意気なこずばっか蚀っおるし甘酒手攟さないしなんだけどな。 それ以倖はずヌっずニキの埌ろに぀いおたわっおるんだよwwww 薬研っお䜕かず忙しいから本䞞䞭歩き回っおおさ、その埌ろを垞に぀いお回る姿がもうwww 初日の倜に䜕があったかは知らないが、たあ打ち解けおるのはいいこずだ。 129:名無しの審神者 >>128 ひよこだなwwwwww 黙っおれば 130:名無しの審神者 >>129 だなwwwww 黙っおいれば 131:名無しの1 たあそう蚀うなおたいら 飲んでさえいなきゃ可愛いや぀なんだよ。 132:名無しの審神者 >>131 っお蚀ったっお手攟さないじゃないか甘酒。 133:名無しの1 >>132 や。それに぀いおはうちの織田組がなんか画策しおる。 134:名無しの審神者 >>133 ぞ 135:名無しの審神者 >>133 どゆこず 136:名無しの1 >>135 燭台切が䞻䜓になっおなんかやっおるみたい。 本䞞のオカンずしおはずヌっず酒飲んでるせいでご飯食べる量が少ないのが気にくわないらしくお、甘酒を飲たせないよう色々やっおるみたいよ 食事は隣でニキが目を光らせおるから残すずか蚀いだしはしないんだけど、ずっず甘酒飲んでるから胃に入らないみたいなんだよね。 めっさ、食事のスピヌドが遅いの。 で、もたもたしおる間に色んなずこから手が䌞びるわけ。たわりはほが欠食児童みたいなもんだし。 でも䞍動食べれないからか、取られおも怒らないんだよね。 結果、倚分䞍動の口に入っおるのが半分  ちょっずっおずこかな。 ニキは圓然怒るし、さっさず食べろっお蚀うんだけど、こればっかりはね   137:名無しの審神者 >>136 なん぀ヌか、意倖ずいうかある意味玍埗ずいうか   138:名無しの審神者 >>136 食事に支障出るくらい飲んでんのかよ  orz 139:名無しの1 >>138 オカンおこになるのもわかるだろ そんで、䞍動がきお日目くらいだったかな その日は短刀のほずんどが出払っおたもんだから、各自でおや぀しおたみたいでたたたた燭台切が薬研ず䞍動におや぀運んでたずころに出くわしたんだよ。 以䞋、䌚話文でお楜しみください。 燭「薬研君、䞍動君。おや぀持っおきたよ」 薬「おう。悪いな燭台切の旊那」 燭「はい。䞍動君も」 䞍「ん  」 燭「䞍動君、これ酒饅頭だから飲むなら甘酒じゃなくこっちのお茶の方が合うよ」 䞍「   ほっずけよ」 薬「そう蚀うな䞍動。旊那の䜜るものは矎味いぞ。隙されたず思っお玠盎に食っずけ」 䞍「    ん」※黙っお酒饅頭にかぶり぀く䞍動。 燭「どうかな」 䞍「   酒の味、薄い」 燭「あはは。それ以䞊酒粕いれるず他の味が負けちゃうからね。味はどう それ嫌い」 䞍「    嫌いじゃない」 燭「そう、良かった。甘いもの奜きみたいだね。今床別の味のお饅頭も䜜っおあげるよ」 薬「あ。旊那 あれがいい。赀い実がたるっず入った饅頭」 燭「ああ、苺倧犏だね。矎味しいよね」 ずいう䌚話が繰り広げられおいたした。(悶絶 140:名無しの審神者 >>139 なにそれ矎味しい(悶絶 141:名無しの審神者 >>139 オカン   142:名無しの審神者 >>139 そしおニキwwwwww さりげにおや぀のリク゚ストwwwwww 矎味しいよね苺倧犏明日のおや぀は苺倧犏に決定 143:名無しの1 別の日。 宗「おや、薬研に䞍動」 薬「宗䞉の旊那か」 宗「  たったく、しょうがないですね。いらっしゃい」 薬「なんだ」 宗「はい、これ」 薬「おお。干し柿か」 宗「先月、遠埁先で柿の朚を芋぀けたので、小倜ぞのお土産にず沢山持ち垰ったのですが枋柿だったんです。それで、燭台切に頌んで干し柿にしおもらったんですが、そろそろ食べ頃になったず聞いたので受け取っおきたずころなんですよ」 薬「そりゃあいい頃合いに通りがかったな。な䞍動」 䞍「   俺なんかにたで分けおいいのかよ」 宗「たくさんあるので構いたせんよ。むしろ小倜䞀人にこんなに食べさせおたらご飯が入らなくなりたすからね。貎方たち二人に分けるくらいでしたら問題ありたせん。ただし、短刀達党員に配っおたわるほどの数は無いので、ここで食べおいきなさい。お茶くらいならいれおあげたす」 薬「おう。遠慮なく邪魔するぜ」 䞍「    」※薬研の埌に黙っお぀いお宗䞉の郚屋ぞ入っお行った。 埌日、干し柿入りのパりンドケヌキがおや぀の時間に出たした。 144:名無しの審神者 >>143 宗䞉  なんだかんだで良い奎   145:名無しの審神者 >>143 デレ倚めのツンデレですねわかりたす。 146:名無しの審神者 >>143 宗䞉っお小倜以倖にも可愛がるんだな。 147:名無しの審神者 >>146 薬研に察しおは結構甘いよ宗䞉っお。 148:名無しの審神者 >>147 そうなんだ 149:名無しの1 さらに別の日。 長「薬研通」 薬「おう。長谷郚の旊那、どうした」 長「明日の予定だが䞀郚倉曎だ。  ず、䞍動」 䞍「なんだあ、むぐ」※長谷郚が「なんだあ」で開いた䞍動の口に风玉を攟り蟌みたした。 長「薬研通もな」 薬「あヌ 、ん。れあんらっれ」※薬研の口にも风玉を攟り蟌みたした。 長「ああ、明日の予定だが  」 どうやら风玉が結構な倧きさだったようで噛み砕くこずも出来ず、かずいっお口から出すでもなく甘酒の瓶を手にしながらも飲むこずができず、黙々ず风をなめ続ける䞍動。 俺氏、その堎にお無事悶絶。 150:名無しの審神者 >>149 风玉どっから出したよ長谷郚wwwwww 俺氏も無事悶絶。 151:名無しの審神者 >>149 さすが機動お化けwwww 目にも止たらぬ早業で攟り蟌むんですねwwww ワむ氏、悶絶するも郚屋の前を通り過ぎた宗䞉に冷ややかな目でみられる。 152:名無しの1 なんなのあい぀ら。 䞍動を芋るず逌付けに走っおるんだけど。 たさに雛に゚サをやる芪鳥状態。(悶絶 153:名無しの審神者 >>152 そら䞍動が甘酒を極力口にしないようにずいうオカンの心枩たる劚害工䜜だろう。 154:名無しの審神者 >>152 オカンたじオカン 155:名無しの1 >>153 そんなオカン、今日は厚でキャラメル緎っおたした。     燭台切のパティシ゚スキルがどんどん䞊がっおく   156:名無しの審神者 >>155 ああ、キャラメルも䞀旊口にいれたらしばらく無くならないもんな   157:名無しの審神者 >>155 食ったあずは甘い飲み物よりさっぱりしたもの欲しくなるしな   158:名無しの審神者 >>155 手䜜りのキャラメルずかマゞでパティシ゚でも目指しおんのかCCP

 159:名無しの審神者 >>158 や、キャラメル䜜るのは意倖ず簡単だぞ材料煮詰めるだけだから。 ただし集䞭力ず根気がいる。 160:名無しの審神者 >>155 たあ倧量に出来おも消費出来るだけの面子がいるからいいよな。 161:名無しの1 さらに埌日。 日「お。いヌもん飲んでんじゃねえか。ちょっずくれよ」 䞍「え あ、こら返せ」 日本号、䞍動の手から甘酒の瓶を取り䞊げ䞀気に呷る。 䞍動が慌おお取り返そうずするも、圧倒的な身長差によりかなわず。ぎょんぎょん飛び跳ねる姿がかわい 、いや可哀そうだった。 日「あ。わり。党郚飲んじたった」 䞍「    」※䞍動の涙腺決壊寞前。 日「え。ちょ、泣くなよなこれやっから」 薬「日本号の旊那ぁ、ちヌっずばかし面ぁ貞しおくんねえか」←Lv.99 日「    ゥス」←Lv.23 ※急遜、薬研ず日本号の手合せ(内番)が入り、道堎にニキの「っずぇりゃあ!!」ずいう怒号が響きたした。 162:名無しの審神者 >>161 wwwwww 163:名無しの審神者 >>161 ニキっぉぃwwwww 164:名無しの審神者 >>161 むッチ、それ䜜戊やないwww ただの呑兵衛やwwwww 165:名無しの審神者 >>161 ニキwwww 手加枛したげおえええwwwww 166:名無しの審神者 >>161 倚分倚分日本号に悪気はないからwwwwww 167:名無しの1 続き。 薬「―――っずぇりゃあ!!」 日「ちょ だから悪かったっお」 長「構わん、薬研通叩きのめせ」 日「長谷郚おんめえええええ」 宗「たあこればっかりは仕方ないんじゃないんですか」 燭「䞍動君、こっちのはどうかな」䜕故かお盆の䞊に牛乳やらカルピスやら色々入ったコップを甚意しお飲み比べしおいる䞍動ず燭台切。 ※埌で聞いたずころ、奜きな飲み物を氎筒に入れお甚意するず玄束したようです。䜕故甘酒じゃないのかずいうずCCP曰く「甘酒は甚意するのに時間がかかるっお蚀っちゃった」。だっおさ。 杵「日本号がんばれよ」 乱「薬研がんばっおヌ」 博「日本号ヌもっずきばりんしゃい」 前「薬研兄、頑匵っおください」 厚「日本号負けんなよ」 鶎「よし、どっちが勝぀か賭けるか」 俺「おいこら鶎」 党員「「「「「「薬研(兄)で」」」」」」 日「おいぃぃぃぃぃ!!」 同「おいおいそれじゃあ賭けになんねえだろうが」 俺「    」 168:名無しの審神者 wwwwwwwwwwwww >>167 薬研で 169:名無しの審神者 おwwwwいwwwwww >>167 薬研に䞀口 170:名無しの審神者 >>167 ニキ䞀択 171:名無しの審神者 >>168-170 お た い らwwwwww >>167 ニキに䞉口 172:名無しの1 たあ圓然だけどニキが勝぀よね。 そんでもっおなぜこんなに道堎にみんな集たっおたかずいうず、いち兄が 「匟達が身䜓の倧きい者に察しおの戊い方を孊ぶ良い機䌚かず思いたしたので 」 だず。 173:名無しの審神者 >>172 お兄様流石です   174:名無しの審神者 >>172 たあ敵の倧䜓はいち兄より倧きいもんな  175:名無しの審神者 >>167 ぀か、日本号を応揎しおたはずの博倚ず厚たで賭けるのは薬研なの 176:名無しの審神者 >>175 そら博倚は負ける方には賭けんだろ。 177:名無しの審神者 >>176 だな。 178:名無しの審神者 >>175 それに぀いおは、 日「おかお前ら今俺の事応揎しおたろうが」※薬研ず亀戊䞭。 博「それずこれずは話が別たい」 厚「悪ぃな日本号」 小「  がんばっお」 長「さっさず柄たで通されろ」 ずいう䌚話がなされおいた。 179:名無しの審神者 >>178 長谷郚wwwwwwww 180:名無しの審神者 >>178 なんか日本号が䞍憫になっおきたwwwww 181:名無しの審神者 >>180 だったら草生やすなwwwwww 182:名無しの審神者 ずいうわけでラスト、粟田口ラプ゜ディ  ず蚀いたいずころだが、 思ったより時間がかかったので、今日はここたで。 183:名無しの審神者 >>182 ゚(●'Д'●)゚ 184:名無しの審神者 >>182 Σ(Ž□) 185:名無しの審神者 >>182 (Д≡Д)? 186:名無しの審神者 いや、明日朝䞀から挔緎入っおるし、これ以䞊は起きおらんない。 187:名無しの審神者 >>186 ばっか野郎おめえ 倜はこれからだぞ 188:名無しの審神者 >>186 そうだそうだ こっちは頑匵っおROMりながら報告曞たずめおやっず提出終わったずころなんだぞ これで心おきなく野次れるず思ったのに  189:名無しの審神者 >>187-188 それじゃあ俺が途䞭で寝萜ちしおもいいっお蚀うのか 190:名無しの審神者 >>189 うぐぅ  191:名無しの審神者 >>188 ぀かROMりながら報告曞たずめられるお前がすげえわ 192:名無しの審神者 >>191 たあな 193:名無しの審神者 >>192 耒めおねえよ。 スレ立っおから結構な時間かかっおたろここたで。 194:名無しの1 ぀ヌわけでオチたす。 たた明日な 195:名無しの審神者 >>194 くっそ 絶察来いよ  196:名無しの審神者 >>194 玄束だからな  197:名無しの審神者 >>195-196 なんだかんだいい぀぀手を振るおたいらも埋儀だなwwwww  198:名無しの審神者 >>197 おたえもなwwwww  199:名無しの審神者 おか、このスレどヌすんの  200:名無しの審神者 ほっずいおいいだろ。 必芁ならたたむッチが明日立おるさ。 
䞍動くん獲ったどヌ!!<br /><br />の勢いで曞き始めたにしおは若干時間がかかっおしたいたした(汗<br />たあ他にも色々理由はあったのですが。<br /><br />もう䞀぀分ネタを緎っおはいるのですが、文章に起こすずなるずさらに䞀週間先延ばしになっお私が蟛いので、出来た分を先に投皿したした。<br /><br />消化䞍良になりはしないず思いたすが、なったらごめんなさいm(_ _)m
【ニキはやっぱり】新入り可愛過ぎか【ニキだった】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6537730#1
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泚意です ハクさん女䜓化 ハクさんは元からこの䞖界の䜏人 クオンちゃんずか䜕凊ぞヌ 䜜者は頭が悪いので違和感を感じるずころも倚々あるず思いたすがどうかみなさんの広いお心でスルヌしおくださいたせ 以䞊の事が倧䞈倫な方は次ぞどうぞ [newpage] 空腹が過ぎるず䜕も感じなくなるのか。 オシュトルは、人生初めおの飢えにただ耐えるこずしか出来なかった。 事の始たりは数週間前。オシュトルは父のような民を守れる男になる、ず意気蟌み故郷゚ンナカムむを出お、垝郜に向かった。 旅は順調で、予定より少し早めに垝郜に着くかず思われた。 運が良かったのか、飢えた獣や盗賊に遭遇するこずもなく垝郜たであず䞀歩のずころたで来れた。 皆、垝郜に着いたらどこを芳光しようか、ずか矎味いものを食べたい、ず油断しきっおいた。そこに突劂珟れた盗賊。もちろん、オシュトル達は倧きな被害を受けた。荷は党お奪われ、呜からがら逃げたは良いものの、関所を通るための札を倱くしおしたい、゚ンナカムむに戻ろうにもあの道を再び通るのは遠慮したい。䞀行は仲間割れを起こし、そこで散り散りになっおしたった。 オシュトルのもずに残ったのは幌いころから自分に仕えおくれおいた老人䞀人。貎族の坊ちゃんず行動を共にしたいずいう物奜きなものは他に誰䞀人ずいなかった。老人の機転でなんずか垝郜に入るこずが出来たオシュトルだったが、金はほずんどなく、玹介状も札ず䞀緒に倱くした為、頌れる人はいない。袖にいれおいた簡単な保存食を少しず぀食べ、川の氎を飲んでなんずか食い぀ないだ。 どこにもいくあおのないオシュトルは途方に暮れるこずしか出来なかった。 ぀いに保存食も尜き、腹に䜕もいれず日が過ぎた。老人を橋の䞋に残し、オシュトルは食べ物を探し垝郜をうろ぀いおいた。 頭の䞭には故郷でよく食べおいた料理が䞊んでいる。死ぬ前にもう䞀床、母䞊の料理を食べたかった オシュトルの頭には死ずいう蚀葉がよぎっおいた。 盗みだけはしおはいけない。オシュトルの貎族の子息ずいうプラむドが、民を守れるひずになりたいず思いが䞀線を越えさせたいずしおいるが、それもい぀たで続くのやら。 道行く人の目線が痛い。汚いものを芋る目。もう䜕日も颚呂に入っおいないから圓然䞍朔だろう。鉛のようになった足を匕きずりながら裏道に入る。もういっそ、身䜓でも売っおしたおうか。口角を吊り䞊げ䞍気味な笑いを浮かべおいるオシュトルの瞳には、生気など宿っおいなかった。 ふいに、袖を匕っ匵られた気がしお、芖線だけ暪に動かすず、そこには髪を適圓に䞀぀にくくっお、薄桃の着物に癜の前掛けを぀けた少女が立っおいた。 「おいあんた、倧䞈倫か」 ひょこひょこず動く觊角。小ぎれいにしおある少女を芋おいるず、自分の栌奜がいたたたれなくなっお唇をかんだ。ほんのり滲む血の味。少女は暫く黙っおこちらを芋おいたが、くるりず螵を返しお店に匕っ蟌んでしたった。 䜕だったのか。こんな姿の自分をみおかわいそうだず思ったのか。䜕もする気になれず、道の端にずるずるずしゃがみこんだオシュトルは、倧きく溜息を぀いお乱暎に頭をかいた。 「こんなはずでは くそ」 久しぶりに出した声はかすれおいお、そういえば喉が枇いおいたこずに気づいた。 じわじわず死が近づいおくる感芚。こんなこずならいっそあの時盗賊に殺されおいればよかった。芖界ががやける。目に氎分が集たっお、零れそうだ。 泣きたくない。これ以䞊みっずもない姿になりたくない。そう思うほど、泣いおしたいそうになる  「お、いたいた。ずりあえず茶でも飲めよ」 急に䞊から降っお来た声。顔を䞊げるず、さっきの少女が湯呑をこちらに差し出しおいた。オシュトルはさっず袖で涙をふき、湯呑をひったくるようにずり、勢いよく喉に流し蟌んだ。 湯呑を返すず、少女は団子の乗った皿を代わりに枡しおきた。オシュトルは、たるで斜し物を受けおいるようだず銖を振ったのだが、少女は皿をオシュトルの胞元に抌し付け、ふにゃりず笑った。 「これは、自分が䜜った詊䜜品だ。自分で食べおもちゃんずした評䟡が出せないから、あんたに食べお評䟡しおもらいたいんだ」 オシュトルは、心の䞭で蚀い蚳をしながら団子を口に運んだ。 今たで味わったこずのない玠朎な甘み。噛むたびに、広がる銙り。オシュトルは、ぜ぀りず呟いた。 「 うたい」 「本圓か良かった ああ、他にも食べおほしいのがあるんだが」 少女は嬉しそうに立ち䞊がり、店から沢山の団子の乗った皿を持っおきた。 本圓は䞀気に食べおしたいたいずころだが、圌女ずの玄束がある。䞀぀ず぀、感想を述べるず少女はふむふむず頷き次はどうだ、ずせかしおくる。 党郚食べ終わるころにはオシュトルの腹は満たされ、すっかり元気になっおいた。 「感謝する ずおも矎味しかった。その、図々しいずは思うのだが、団子を少し分けおくれないか。自分ず共に垝郜にやっお来た老人がいお 」 オシュトルは少しだけ残っおいた銭を取り出し、ハクに枡した。 「老人なら団子は駄目だな。少し埅っおいおくれ」 ハクはオシュトルの枡した銭を受け取らず、たた店の䞭に入っおいった。 暫くしお、ハクの手にあったのは湯気の立った矎味そうな饅頭だった。 「うちは団子屋なんだが、それだけじゃ他の店に負けるず思っお饅頭も䜜り始めたんだ。これも詊䜜品なんだが、構わないか」 「ああ。いくらだ」 「これは詊䜜品だ。金をずるわけにはいかないだろ」 ハクは銖を振っお饅頭をオシュトルの手の䞭に眮いた。 「だが 」 「じゃあ、お前が働いおお金に䜙裕が出来たら返しおくれよ。倍返しな」 「 必ず」 オシュトルは深く頷くず、すくっず立ち䞊がった。その姿は、身なりはボロボロでも心の芯の通った凛々しい姿だった。 ハクは、䞀瞬その姿を眩しそうに芋お、にっ、ず笑った。それを芋お、オシュトルのこわばっおいた衚情も砕けた。 オシュトルは数歩歩いた埌、振り返っお歯を芋せお笑い、「たた䌚おう、ハク殿」ず蚀い残しお去っおいった。 その埌、䟿りが無いのを䞍審に思った゚ンナカムむからの䜿いがやっお来お、無事オシュトルず老人は保護された。 それから、十数幎の月日が流れおいった  [newpage] 「アンちゃん こりゃ合わせちゃ駄目な食い物じゃねぇか 」 りコンは目の前に積たれた犍々しいオヌラを攟぀団子を指さした。䜕ずも蚀えない色合い 芋るからにマズそうだ。 「やっぱりたぁ食うだけ食っおみろっお案倖いけるかもしれないしな」 ほらほら、ず䞲に刺された団子をりコンの口のなかに突っ蟌もうずするハクの腕を掎み、りコンは銖を振った。 「いヌや駄目だろ。おか俺を実隓台にしおねヌか」 「ンヌそんなこずナむペ」 あからさたに芖線を逞らすハク。図星か。 「おいコラ俺の目を芋お蚀っおみろや」 「むケメンなりコンの顔なんお恥ずかしくお芋れないよぉ 」 片手を顔に添えお恥じらうふりをするが、その顔は党く恥じらっおいない。ずいうか真顔だ。顔ず声の合わなさにりコンが笑っおいるず、スキありずハクが団子を口に攟り蟌んできた。うっかり噛んでしたい、ずたんに広がる䜕ずも蚀えない味。 「たっず 」 「よし、これは無し ず。たあこれでも飲んで口盎ししおくれ」 ハクは湯気の立った薄緑の液䜓の入った湯呑をりコンに枡した。 「おう っおにがっコレ、アンちゃんが奜きな緑茶ずかいうや぀だろ」 「正解苊みの埌のほのかな甘さが良いんだろ。さ、ただあるからな」 「えヌもう垰りおぇんだが 」 りコンは嫌そうな顔をしながら運ばれおくる皿を芋おいたが、結局垭を立぀こずは無い。なんだかんだ優しい幌銎染が団子ず奮闘しおいるのを芋ながら、ハクはがんやりず遠くを芋぀めた。 借金のカタに売り飛ばされるかもしれない。団子屋の芪父は申し蚳なそうにすっかり寂しくなった頭をかきながらハクに話した。 䜕でも芪父の埌劻がかなりの浪費家で、勝手に金を䜿い蟌んでいたらしい。それに気づいたころには銖は回らなくなっおいお、この店が担保にかけられるこずになっおいたのを劻がたた勝手にハクを売るこずで金を工面するず蚀っおしたったのだずいう。 期限は週間埌。芪父は本圓に申し蚳ないず土䞋座たでしおくれた。ハクは䜕ずか立たせ、芪父が気にするこずじゃない、ず気䞈に笑っお芋せたが、本圓は泣きたくおしょうがなかった。 自分が䜕かしたずいうのか。最悪、切り抜ける手はあるがあたり䜿いたくない。どうすればよいのかわからない。その倜は䞀人郚屋で声を抌し殺しお泣いた。 今日は、りコンず最埌に悔いのないように話しおおきたいず思っお呌んだ。 りコンが自分の䜜った団子を矎味そうに食べおくれる姿、それが䞀番奜きだから。 決しお悟られおはいけない。だからちゃんずい぀も通り䞍味い団子も䜜っおやった。 りコンがこのこずを知ったら絶察に助けようずしおくれる。自分の身なんお顧みずになんでもしおくれるだろう。だからこそ、それは蚀いたくない。 きっず今日がりコンに䌚える最埌の日。りコンが垰った埌、ハクは少しだけ泣いた。 [newpage] ずうずうハクが売られる前日。 今日で最埌の仕事。どう転んでも二床ずここに戻っおくるこずは無いだろう。ハクは心の䞭を敎理できないたた、平静を装っお接客をした。 自分がここで働き始めたのはの時。郚屋でだらだらずしおいるずころを瀟䌚勉匷、ず街に攟り出され、仕方なく働くこずにした。 初めの内はいやいやこなしおいた仕事だったが、接客業は自分ず盞性が良いらしく、客ずも䌚話を楜しむうちに自然ず店も繁盛しはじめ、今では垝郜本の指に入るほど有名な甘味屋になった。 そんなある日、䞀人の少幎ず出䌚った。歳は自分ず同じくらいだろう。ふらふらず歩くその様子は半分死に足を突っ蟌んでいるように芋えた。なぜか攟っおおけない、そう思い呌び止めた。ハクは基本的に面倒ごずには銖を突っ蟌たないようにしおいる。だが、圌を芋た瞬間、衝動的に袖を掎んでしたったのだ。団子を食べ終わった埌、少幎はオシュトルず名乗り、この借りは必ず返すず蚀った。借りを返しおくれるなら、今すぐ自分を助けおほしい。たあ、そんな昔の事きっず忘れおしたっおいるだろうけど。 りコンず出䌚ったのは、その半幎埌。最初は䜕の関心も無かったのだが、勘定をせずに出お行こうずした客をりコンが捕たえたのをきっかけに仲良くなっお、今では䞀番の芪友だ。 実は、りコンに密かに恋心を抱いおいるのだが、今の心地よい距離感を倱うのが怖くお蚀えおいない。もしフラれたら二床ずあんな時間は過ごせなくなっおしたうだろう。たあ、もう䌚うこずは出来ないだろうけれど。 せっかくなら、最埌に想いを告げずきゃ良かったな、なんお。 ハクは沈んだ気持ちをあげようず頬を軜く叩き、気合を入れた。 昌過ぎに、よく知った顔が来たのを芋おハクは急いで駆け寄った。 「じいちゃん久しぶりだな。䜓、倧䞈倫なのか」 「おお、ハクちゃん。今日もいいからだじゃのぉ 儂はすっかり元気じゃよ」 「 元気そうでなによりだ」 髭を撫でながらハクの党身をいやらしい目぀きで芋おくる老人。暫く店に顔を出しおいなかったが、元気そうだ。この老人ずも、もう十䜕幎の付き合いだ。い぀も通りの挚拶代わりのセクハラ。昔はそれが嫌だったが、この老人はただのスケベじじいじゃないこずは話すうちにわかった。 スケベな発蚀のほうが圧倒的に倚いが、時々鋭いこずをいっおハクを驚かせる。 ただの商家の隠居した老人だず蚀っおいたが、若いころはかなりの切れ者だったに違いない。 この老人には告げおおくべきか、そう思いハクは今日でこの店を蟞めるこずを話した。 老人は普段ほずんど開けおいない目を片目だけ開き、理由を聞いおきた。 ハクは嘘を吐いおもどうせバレるだろう、ず正盎に借金のカタに売られるこずになったず話したのだが、老人の反応は思いのほか薄く、い぀もず同じ饅頭を食べるず垰っおしたった。 陜も沈み、店じたいも終わった。もう寝おしたおうず思ったが、最埌にりコンに䌚えないかず少しだけ望みをかけお店の呚りを散歩するこずにした。 明日の件は、結局奥の手を䜿う事にした。これで二床ず自分はこの街を歩くこずは無くなるだろう。だからこの目に焌き付けおおこう、この街を。 䞀通り回った埌、ハクはなんずなくオシュトルずいう少幎ず出䌚ったあの裏通りに入っおみようず店の裏手に回った。 そこには、思いもよらない人物が立っおいた。 「りコン なんでこんなずこに」 月の光に照らされ、劖しく浮かぶりコンの顔に感情は宿っおいない。 だがりコンはハクを芋るず䞀瞬目を现め、い぀も通りの顔に戻った。 「アンちゃんにちぃず話があっおな 郚屋、あがっおもいいか」 「ぞ自分を埅っおたならなんで裏に たあいいや、どうぞ」 裏口から店に入り、階の自宀に案内する。りコンはその間ずっず黙ったたたで、ハクは䞍穏な空気を感じながら先を歩いおいた。 郚屋に入り、座るようすすめるずりコンは静かに座垃団の䞊に腰を䞋ろし、口を開いた。 「アンちゃん、ここ蟞めるんだっおな。借金のカタに売り飛ばされるんだろ」 䜕故りコンがその話を知っおいるのか。ずりあえず、ハクはしらばっくれるこずにした。 「な、䜕のこずだ自分はそんな話 」 「知らないずはいわせねぇよ今日老人ず話しおるのを聞いたっお奎がいたんだからよ なんで俺には蚀っおくれなかったんだ」 りコンが怒っおいる。こんなに感情を露わにしたりコンは芋たこずが無かった。乱暎に䞡肩を掎たれお、揺さぶられる。食い蟌んだ爪が痛い。痛みず、胞の奥にしたっおいた想いのせいで泣きそうだ。 「お前に お前に蚀ったら、絶察䜕ずかしようずしおくれるず思ったから。お前に、迷惑はかけたくなかったんだ。ごめん、ごめん 」 消え入りそうな声で謝るハクに、りコンは倧きく舌打ちした。 「いくらだ。所詮庶民の䜜った借金だ そのようなもの、今からでも手配できる」 りコンの、りコンらしくない口ぶりに違和感を芚えたが、ハクは銖を振り、倧䞈倫だず笑顔を぀くった。だが、意思ず裏腹に涙が県のふちに浮かんできお、袖で拭うが止たらない。 りコンは肩を掎んでいた手をはずし、ハクをそっず抱きしめた。 「すたん、痛かっただろ だけど、俺には蚀っおほしかった」 「 りコン、心配しおくれおありがずう。最埌に䞀぀、聞いおほしいこずがあるんだ」 「䜕だ」 ハクはりコンの顔を芋぀め、小さく息を吞っお告げた。 「奜きだ」 りコンは目を芋開いお固たっおしたった。ああ、これは駄目だな。ハクはちょっぎり埌悔したけれど、どうせ最埌なのだからず気にしないこずにした。 気たずくなっお芖線を逞らすず、急に顔に䞡手が添えられお、無理矢理䞊を向かされた。 次の瞬間、唇に柔らかいものが觊れた。いきなりのこずで驚き小さく口を開けるず、その間に生枩かいものが割り蟌んできお、ハクの腔内を荒らす。 次第に酞玠が足りなくなっお、りコンの胞を軜く叩くが行為をやめおくれない。 やっず離れたず思っおもたた口を塞がれお、お互いの唟液がぐちゃぐちゃに混ざり合う。終わるころにはハクはすっかり息が䞊がり、頬は赀く䞊気しおいた。 「りコン、䜕するんだよ こういうこずしお欲しかったんじゃなくお、ただ、自分の気持ちを蚀っおおきたかっただけなのに 」 「俺もアンちゃんが ハクが奜きだ。だから、口づけをしただけだ」 開き盎ったように堂々ず驚くべきこずを告げたりコン。 ハクがぱくぱくず口を開閉しおいるず、りコンは優しく埮笑み、ハクを再び抱きしめた。 「りコン 」 「もっず早くに蚀っずきゃ良かったっおこずかよ ハク、ずっず奜きだった」 「っ 」 別に、答えが欲しかったわけじゃないのに。もっず別れづらくなっおしたったじゃないか。色々文句は浮かぶけれど、䜕よりもりコンも同じ気持ちでいおくれお嬉しい。 也き始めおいた涙が再び蟌み䞊げおきお、誀魔化そうずりコンの厚い胞に顔をうずめた。 りコンは、そんなハクの背䞭を優しくさすりながら遠くを睚み぀けおいた。 [newpage] 翌日、雚こそ降っおいないが今にも泣きだしおしたいそうな曇り空を芋䞊げ、ハクは蚀われた堎所にやっお来た。 芪父の埌劻、そしお金貞しの男が䜕やら話しおいるのを暪目で芋、ハクは昚日の事を思い出しおいた。 りコンに想いを告げた。りコンも、奜きだず蚀っおくれた。 頭の䞭はもうぐちゃぐちゃで、ただずっずこの時間が続けばいいのにず願うこずしか出来なかった。だけど、そんな郜合のよいこずなんおあるわけ無くお。 話がたずたったのか、金貞しの男がハクに぀いお来るように促しおきた。 そろそろか。ハクは倧人しく぀いおいくふりをしお、呚りの様子を䌺った。 「党員、突入」 突然珟れた兵士たちに、傭兵たちは慌おふためき急ぎ構えるが、統率のずれた兵士たちはそれをどんどん倒しおいく。 ハクは予想もしおいなかった展開に呆気に取られおいた。 自分はりルゥルずサラァナにちょっず脅しを入れるように頌んだはずだが  金貞しの男を芋るず、顔を真っ赀にしお䜕かを叫んでいる。 それにゆっくりず近づいおいく男を芋お、ハクは目を芋開いた。 「デルトルト さすがの貎様も幎貢の玍め時だな」 地を這うような声で静かに蚀い攟った男。それは、あの時の  「な、お前は、右近衛倧将オシュトル䜕故お前がここにいるにゃも」 「眪人を捕らえに来たのだ。抵抗はせぬほうが貎様の為だず思うが」 「にゃもぉぉ」 デルトルトは手早く䞡手に瞄をかけられ、兵士に匕きずられるように連行されお行っおしたった。 ぜかんずした顔でそれを芋送っおいるず、仮面を぀けた男がこちらに歩み寄っお来た。 「久しぶりだな、ハク殿。借りを返しに来た」 「オシュトル お前、右近衛倧将オシュトルだったのか」 オシュトルは仮面を぀けおいおもわかるほどの笑みを浮かべ、「ああ」ず頷いた。 「借りっお 倍返しどころじゃないだろ」 「たあ、十数幎分の利子だず思っお頂きたい」 緊匵が解けお䞍思議ず笑いが蟌み䞊げおくる。どれだけ栌奜の良い登堎ず掻躍をすれば気がすむのだ。りコンがいるずいうのにうっかりずきめいおしたったではないか。ハクが肩を震わせお笑いをこらえおいるず、䜕を勘違いしたのか真剣な顔でオシュトルがハクの顔を芗き蟌んできた。 「ハク殿 蟛かっただろう。もう倧䞈倫だ、某が 」 「ふ、ふふ、っは、あははっ」 「な、ハク殿」 その堎にに぀かわしくないハクの明るい笑い声。 オシュトルはあたりの恐怖にハクがどうかしおしたったのかず思ったのだが、ハクの笑いに狂気の色は芋えない。ハクは暫く笑い続け、぀いにむせおしたった。 オシュトルがハクの背䞭をさすっおやるず、ハクは萜ち着いたのかオシュトルのほうを振り向き、昔ず倉わらぬ笑顔を芋せた。 「王子様みたいだな。ふふ、ありがず。オシュトル」 ハクは、そう蚀うず䜕凊かぞ行っおしたった。 ハクが居なくなった埌、オシュトルはその堎に立ち尜くしおいた。 ずるくはないか。反則だ、あんな笑顔。 思春期の少幎でも無いのに、こんなこずでドキドキするなんお。オシュトルはずりあえずハクずの再䌚に浞ろうずハクの埌を远った。 [newpage] ハクが向かったのは双子の元。人気のないずころで二人の名を呌ぶずすぐに珟れた。 「䞻様」 「お呌びでしょうか」 隙あらば自分に觊っおこようずする双子をあしらい、ハクは二人にどういうこずか質問した。 「どうしお右近衛倧将がいたんだ」 「 わからない」 「私たちも、突然オシュトル様ず兵が珟れお ずりあえず、手出しは無甚かず芋守っおいたした」 「デル トルテずか蚀う男は今たで䜕かやらかしたのか」 「䞻様、デルトルト」 「はい。デコポンポ様の埓匟にあたる方で、人攫いや暪領、恐喝 殺人以倖の眪は党お犯しおきたのではないでしょうか」 「じゃあオシュトルが远っおいお䞍思議なこずはないか なんかひっかかるんだがなぁ」 あたりにも綺麗に終わり過ぎおいないか。ここたで䜕の被害もなく終われるのか。 考えすぎだずは思うが、喉にささった小骚のような違和感が残る。 ハクは気のせいだず銖を振り、りコンに䌚いに行こうず駆けだした。 [newpage] その様子を遠くから䌺う人圱がひず぀。 䜕を隠そう右近衛倧将オシュトルである。 ハクの埌を远っおきたのだが、ハクが鎖の巫ず話しおいるのを芋぀け急いで朚の埌ろに隠れた。 䜕故ハク殿が鎖の巫ず共にいるのだ。芋た感じ、巫達はハクに敬意をはらっお接しおいるように芋えた。劙に近い気はするが。 ハクがこちらに向かっお走っお来たので、再び朚の埌ろに隠れる。 ハクはきっずりコンに䌚いに行ったのだろう。ならば、りコンずしお䌚いに行こうずオシュトルは䞀番近い隠れ家に向かった。 りコンはオシュトルが䜜り出した人物である。そのこずを知るのはオシュトルずずっず仕えおきた老人、そしお䞀郚の䜿甚人くらいだ。 オシュトルが垝郜にやっお来お半幎くらい経ち、ふずあの時の少女の様子を知りたくなった。だがオシュトルずしお䌚うのは玄束を果たす時。今の自分では倍返し䜍しかできない。折角なら倍返しだ。だからオシュトルは父を意識した人物、りコンになりハクに䌚いに行くこずにした。 ハクにオシュトルだず気づかれるこず無く䜕床か通い、りコンが食い逃げ犯を捕たえたこずから仲良くなった。それから十数幎、二人の仲は切れるこずなく、錆びるこずもなく今日たでやっおきた。ハクにはオシュトルずしお出䌚った時からほのかな恋心を持っおいたが、りコンずしお出䌚い仲良くになるに぀れ、もっず奜きになった。 ハクは自分の事をただの詊食係ずしか思っおいないだろう。りコンの姿で街を歩けば声をかけおくる女はいくらでもいる。だがハクはそんな女達ずは違い、䞍味い団子を笑顔で突っ蟌んでくる。そんなハクを奜きになったのだ。構わないず蚀い聞かせおきた。 だが、昚日のハクは色々ず危なかった。 自分がもう少しできた人間でなかったらきっず襲っおただろう。 いや、少し手は出したか。あのハクを芋お䜕もするななんお自分には無理な話だ。 祖父のように慕っおいる人物が、ハクが売られるずいう話を持っお来おその真停を確かめようずハクの元を蚪れたのに、怒っお無理矢理口づけお 䜕をやっおいたんだ。 悔しかった。自分のほうがハクず仲が良いず、信頌されおるず思っおいたのに、自分に䜕も蚀われなかったこずが。 ハクの事だから、自分に迷惑をかけたいず蚀わなかったのだろうが、わかっおいおも良い気分ではない。 怒りに若干玠の口調に戻っおしたったが、ハクは䜕も蚀わなかった。違和感は芚えおも、オシュトルは連想できなかったのだろう。 思い返すず本圓に恥ずかしい。いい倧人なのに、䜕をやっおいるのだか。 オシュトルはりコンになるず、ハクを捜しに隠れ家を飛び出した。 い぀もなら居るはずの䜿甚人がおらず、預ける盞手が居ない為仕方なく仮面を懐に入れたたた。 [newpage] りコンに䌚いたい。今すぐ抱きしめおほしい。たた、䞀緒に居られる。ハクはりコンがいそうな堎所を手圓たり次第に回ったが、䜕凊にもいない。 気付けば団子屋の近くにやっお来おいお、なんずなく昚倜りコンずあった堎所に行っおみたいず思い団子屋を避けおその堎所ぞ向かう事にした。 荒い呌吞を敎えながら狭い裏道を歩く。こんなずころに行くより前にりコンに䌚うべきなのに、足はそこに向かおうず勝手に動く。入り組んだ裏道を進んだ先に、芋慣れた姿があった。 「りコン 」 「よ、アンちゃん」 片手をあげにっず笑うりコン。ハクは迷わずりコンの胞に飛び蟌んだ。 だが、勢い良すぎおハクの腹に固いものがあたった。 「うっ りコン、お前懐になんか入れおないかめっちゃ痛いんだが 」 「おなんか入れおたっけな ああ、これか」 りコンが取り出したのは仮面。りコンはしたったず急いで懐に戻そうずしたのだが、その手をハクに掎たれ無理に振りほどけず固たるしかない。 「これ オシュトルの仮面だよな。なんで、りコンが持っおるんだ」 ハクは口調こそ疑問圢だがすでに答えに蟿り着いたようでりコンをじろりず睚み぀けおいる。 「ええず たあ、ハクが無事でよかった」 空いおいるほうの手でハクを抱きしめるず、ハクは小さく悲鳎をあげたあず、真っ赀になった顔で叫んだ。 「はぐらかそうずしたっお無駄だからなじっくり聞かせおもらおうか オシュトル」 続きはハクさんが怒りでびりびりに砎きたした。 ここたで読んでくださりありがずうございたした。 次にちょっずした補足。 [newpage] ハクさんはりルサラを䜿っおちょっぎり暎れお借金を倱くそうずしおたした。 で、そんなこずしたら垝にバレお二床ず垝郜に出れないんだろうなヌずいうこずで。 オシュトルず共にやっお来た老人はスケベじじいず同䞀人物。たあなんずなくわかりたすよねヌ うちのオシュトル様が倉態臭いのは仕様です。 䜜者はシリアスをかこうずしおもシリアルになるのでいっそ銬鹿な話を曞いおやろうず思いたした 本圓はホワむトデヌずか党く意識しおなかったのですが、䞁床今日ずいう事で倍返しです。 䜜者はもらう予定などありたせぬ。ここ倧事 ではではヌ 深倜テンションなので明日の朝芋返しお修正入るかもです 
バレンタむンにあげた小説ずは党く関係ありたせん。<br /><br />女䜓化・オリキャラ・その他捏造泚意ですヌ<br />䞀応目は泚意曞きになっおおりたす。<br /><br />もうアニメも終わっおしたいたすね 怖くお芋れない泣<br />アニメが終わる前に他シリヌズも完結させたいです遠い目<br /><br />あずお団子食べたいです。
【腐】お返しは倍返しで
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ずっずずっず、奜きな人がいた。 初恋を拗らせ玠盎になれない私は圌女に察しおそっけない態床しか取れず、どう考えたっお圌女は私の事が嫌いだった。 就職を機に、圌女ずの関わりが絶たれたこずにひどく萜ち蟌んだけれど、そんなのすべお私のせいで、圌女ずしおは枅々したこずだろう。これでもう、圌女に謝る事も、優しくするこずも、傷぀けるこずもない。 そう思っお、幎。 なのに、もう、二床ず関わる事がないず、絶察に觊れるこずのできないず思った圌女ず、私は結婚した。 その経緯はあたりにも粗末なもの。だが、私は圌女の隣に立぀暩利を、無理やり埗たのだ。圌女の幞せや、圌女の想いなどすべお無芖しお、圌女だけを手に入れた。 ず、勢い任せで結婚し、愛どころか䜕もない結婚生掻が玄幎。それだけの期間が過ぎお、ようやく想いを通じ合わせるこずができたのが぀い数週間ほど前の事。 圌女に玠盎になれなかった私のせいで、党おがこじれおいたけれど、なににふっ切れたのか、私は圌女に察しお玠盎になった。優しくするず、玄束した。それに圌女が反応をくれるのが、嬉しくお、幞せで、圌女の事が奜きで奜きで、愛しくお。 ずにかく今の私は浮かれおいる。浮かれおいるのだが、私には悩みがあった。 なんおったっおもうすぐ圌女の   「誕生日プレれント」 「はい。䜕か欲しい物ずか、無いですか」 「ないかな」 「そ、即答」 そう、もうすぐ圌女の誕生日。 サプラむズでプレれントをするずいうのも考えた。圌女に䜕かを莈るのは初めおではないし、プレれントしたいものはたくさんあるけれど、誕生日にそれをするのが少しためらわれたのだ。 結婚しおからの幎、私はなんだかんだ色々なものを圌女に買っお、䞭にはいく぀か枡せたものもあった。䌚瀟の懇芪䌚や、友人の結婚匏など倫婊そろっお人前に出る機䌚が有れば、圌女の身に぀ける物を枡しおいたから。圓然の様に、嫌味や皮肉も䞀緒にではあるが。 圌女はそれを身に着けおくれたけれど、人前に出る時それ䞀床きりしかで、その埌枡したものを二床目に芋たこずはなかった。だからこそ、事あるごずに枡しおいたのだけれど。 「あなたに䌌合いそうなもの、送りたいものはたくさんあるんです。でも、今たでの物も気に入っおもらえおいないみたいなので、あの、あなたが欲しいず思うものをですね」 「ああ、なるほど。えヌっず、うヌん」 「あなたに䌌合っおいたずは思うんですけど、喜んでもらえないのなら意味がないので」 圌女の誕生日の䞀週間前の倕食時、盎接圌女に聞いおみたのだ。私の自己満足では党く意味がない。 ああ、今日の圌女のご飯もずおもおいしい。料理をするのが最近は楜しいなんお蚀っおいるけれど、最近はすこしず぀私も手䌝う量を増やしおいる。 「今たで貰ったものもさ、嫌いじゃないよ。っおいうか、奜きなのばっかり」 「え、そうなんですか」 「でもさ、アクセサリヌずか服っおさ、普段家にいるんだからい぀来おいけばいいの」 そう蚀っお苊笑した圌女。 それに、私はどきりずする。仕事を無理やり蟞めさせたのは私だからだ。 理䞍尜にも私が蚀ったずき、圓然ながら圌女はそれに反発した。結局、圌女の方が折れお今の状態になったのではあるけれど。出かけようずする圌女に、䞀々どこに行くのかず聞き、圌女がなかなか行先を蚀わなければ私はい぀も嫌味を蚀っおいた。だっお圌女がどこかぞ行っおしたうのが䞍安だったから、どこにも行っお欲しくないから  なんお蚀い蚳でずにかく圌女を閉じ蟌めたかった。そうしおいれば私に聞かれるのが面倒になったのか、出かけるこずも枛っおいった圌女。それでは、たしかに枡したものを身に぀ける機䌚など、ある筈もない。 「あの、すみたせん」 「んなんで謝っおるの」 それでも圌女を倖には出したくないず思う私は、けっきょく䜕も倉わっおいない。 圌女ず思いを通じ合わせるこずができお私は浮かれおいる。浮かれおいるけれどやはり怖い。 嫌われおいるず思っおいた。だから、どれだけ私が酷いこずを蚀っおも、圌女は私に䜕の心も動かされないのだろうず思っおいた。それが、悔しくおさらに酷いこずも蚀った。 でも、違ったのだ。 私の蚀った事で、圌女はいったいどれだけ傷぀いおいたのだろう。本来なら、それこそ本圓に嫌われお、倱望されおも仕方がない事ばかりしおきたずいうのに。圌女が私の事を奜きだず知っお嬉し良くなった半面、怖くなったのだ。今床こそ本圓に嫌われたくないのだず。 この怖さは、圌女が私に芋えぬずころで泣かせたであろうこずぞの眰だ。 「䞀期がくれたものだっお、私のための物じゃないず思っおたから」 「は」 圌女に䌌合う者、圌女の為だけを考えお、いや、これを枡すこずで圌女ずの距離を瞮められないかなずいう䞋心ばかりでもあったけれど、圌女の事を考えお遞んでいたものだず蚀うのに。 「䞀期は他の人が奜きなんだず思っおたから、私にくれたものも、本圓はその人にあげたいものなんだろうなっお、思っおた」 「それはっ」 「倧䜓、どこか出かける時にくれたでしょこれ䞀期から貰ったものなんだっお、私が䞀期の奥さんなんだっお呚りの人に芋せ぀けられるならっお、䞀回は付けおみるんだけど、誰かの倉わりなんだず思ったらむなしくなっちゃっお、すぐに、したっちゃっおた」 圌女の蚀葉は私が圌女に぀けた傷。そこに溜たっおしたった膿を私はこれからも少しず぀圌女から取り陀かねばならないのだ。急堎凌ぎの蚀い蚳なんおできはしない。圌女の蚀葉をゆっくりず、私は聞かねばならぬ矩務がある。 「蟛い思いを、たくさんさせおしたい、本圓にすみたせんでした」 頭を䞋げお謝るずいう事を、圌女は蚱しおくれない。芖線を逞らされるこずをいやがるから。 「だからこそ、私は貎女の本圓に望む物を、望むこずを知りたいんです」 玄束する。圌女に優しくするず。 これから先、喧嘩は䜕床だっおするだろう。でも、私は圌女ず玄束した。 「うん、でも。欲しい物ずか、今の所思い぀かないかなあ」 「しおほしい事でもいいです」 「い぀も、䜕かしらプレれントくれるけど、いらないくらいだし」 「え、ええぇ」 「うヌん、䜕だろう」 悩たせたいわけじゃなかったんだけどなず苊笑しおしたう。真剣に考えおくれおいる事がうれしい。 「あの、誕生日は、レストランで食事をしたしょう」 「あ、それなら、今たで貰ったものを着お行けるね」 デヌトらしいデヌトだっおほずんどしおいない。だからこれもいい機䌚だ。祝いたい気持ちず、圌女ず出かけたい気持ちず、党お私のための気がしおならないけれど。 「䞀期仕事が終わった埌、どこか埅ち合わせお行こうよ」 「迎えに来たすよ」 職堎から家たでそれほど遠いわけではないし、車だから迎えに来おからだっお十分な時間だず蚀うのに。 銖を二䞉床暪に振った圌女は、こおんず銖をかしげお蚀う。 「埅ち合わせデヌトだよ」 はじめおだね。そういう圌女が、ずおも可愛らしかった。 ず、蚀うやり取りから週間。もう、明日が圌女の誕生日だ。 この䞀週間、結局圌女は䜕が欲しいか決められなかったようで、ずっず唞っおいた。 䞀床だけ、「あっ」ず蚀ったけれど、それがなにを意味しおいたのかは分かっおいない。 「しおほしい事ずかないですか」ず聞いたずきに蚀われお、䜕ずなく顔が赀かったような気がするのだけれど党力で「なんでもない」ず蚀われた。そのあずも、䜕床か私の顔をじっず芋おは唞っおいるから、きっず䜕かあるのだろうが、無理に聞くこずも出来ずにいる。 玠盎になれなかった幎数分の思いを蟌めお圌女の事を祝いたい。 職堎でも、䌑憩時間に圌女の誕生日を祝うための情報集めをしながら、パ゜コンの前で眉間に皺を䜜っおいれば、隣りの同僚からは呆れた溜息が䜕床か聞えたが聞こえない振り。 独りよがりな思いで暎走しお圌女を傷぀けたくはないから、ため息ばかりの同僚に「䜕かいい案は圚りたせんか」ず䞀応問うおみれば「君が遞んだものなら、あの奥方はなんだっお喜ぶだろ」ずいう圹に立たない回答が返っおきた。 定時䞊がりが出来たため、デパヌトに寄っお、プレれントできそうなものを探しおみる。莈り物はいらないず蚀うけれど、やはり䜕かを莈りたいずは思うのだ。女性物の雑貚売り堎を仕事垰りのスヌツの男がふら぀くのはたぶん異様。呚りからちらちら芋られおいるけれど、私の頭の䞭は圌女の䞭でいっぱいだからどうだっおいい。 化粧品は䞀匏送っおしたったし、服だっおかなり持っおいた。小物が良いだろうか、それずも消耗品料理が楜しいず蚀っおいたからキッチン甚品かず思うのだけれど、そんな母の日みたいなものを誕生日に莈るのはどうなんだ。店員にきいおみたりもするのだけれど、どれもしっくりこなかった。決たらぬたた、垰ろうかず思いでデパヌトを出たずころにある花屋が目に぀いた。 花を莈ったこずはなかったなず思う。 䜕かしらをプレれントするにしろ、花も䞀緒に莈っおみるのは良いかもしれない。そう思っお、花屋ぞ近づこうず、足を向けた瞬間だった。 「おお。懐かしい顔だな」 聞えた声に、悪寒が走る。 こんなデパヌトの前に立っおいるのがこれほど䌌぀かわしくない男がいるだろうか。䞊物のスヌツを着お、優雅に䜇むその男。 「䞉日月、宗近」 ぀い呌び捚おにしおしたったその男は、圌女が働いおいた䌚瀟の、䞊圹の男。 呌び捚おなんお随分倱瀌なこずではあるが、おそらく圌は気が付き぀぀も気にはしない。 「圌女は、元気か」 「おかげさたで」 「ふ、なんだ。そうか」 なぜ、残念そうな顔をするのだ。 䞍思議な雰囲気を持぀、麗しい顔の男。圌女が突然仕事を蟞めるずなっずきに、それなりに䞖話にはなったけれど、私は圌の事が苊手だった。そしお、圌女の仕事を蟞めさせようず思ったその理由の際たるが、この男。 「䞍幞せにしおいるのなら、今床こそ、奪っおしたおうず思ったのだがなあ」 睚んだっおこの男には䞀切の効果がない。 誰が芋たっお矎しいず答える容姿、誰もが矚むその立堎、党おを手にした男の唯䞀手に入れられなかったものが、私の劻たる圌女なのだずいう。 「たあ、幞せにしおいるずいうのなら仕方がない」 その蚀葉に、私は心臓がうるさい、そしお痛い。 私は圌女に優しくするず玄束した。そしお実際それをしおいるし、圌女も埮笑み返しおくれおはいるけれど、実際の所どうなのだろう。圌女は本圓に、幞せなのだろうか。 自由を奪ったたたであるこずに倉わりはない。仕事を蟞めさせ、倖出も枛ったたた。 私は圌女の望みを叶えたいけれど、それが「仕事をしたい」ずか、「自由が欲しい」ずか私から離れる様なものだったら 「どうした、顔色が悪い」 「  あなたに心配される事では」 「心配そんなものしおいないぞ。そのたたお前がいなくなれば、圌女を慰める圹に就けるず思っただけだ」 はっは、などず鷹揚に笑う癖に、その内容が恐ろしくお仕方がない。 私はこんな男の事でどうこうず䞍安になっおいるわけではない。圌女の想いを改めお考え、考えれば考えるほど圌女を閉じ蟌めたくなっおしたう私の事が䞍安なのだ。 「さお、暇ではないからもう行くが」 時蚈を確認しちらりず私の奥をみる。私も振りかえっおみれば、そこにあるのは花屋。そしお赀いバラ。 「幞せにしおいるのなら、仕方がないが。たあ、お前の姿を芋る限り、党お順颚なわけでもないようだな」 面癜げに笑むその男のただならぬ雰囲気は、私の事を飲み蟌む。バラの恐ろしいたでの赀い色が、男の声ず共に私に突き぀ける。圌女に぀けた傷は膿む前に、きっず真っ赀な血を流し、苊しみ泣いた事だろう。 「圌女の思いを叶えおやれない甲斐性しか持ち合わせおいないのならば、逃げられる前に自由にしおやればいい」 たるですべおを知り、心を読んだかのような、あの぀かみどころのない男の事が、私は心底嫌いなのだ。 真っ赀なバラに思い出す。ちょうど、䞀幎前の圌女の生たれを祝す日の事を   [newpage] 結婚しおから考えおいるこずがある。 圌女の蚀う『ずっずずっず奜きな人』ずはだれの事なのだろう。 倧孊時代、圌女に恋人はいなかった。そのころから奜きな人がいたのだろうか。 恋人を䜜ろうずしおいたこずは知っおいる、もしかしおそのころにはもうすでに 圌女に想われおいる者が憎い。憎くお憎くおうらやたしくおしかたがない。 私が圌女に想いを䌝えるこずのできる日は来るのだろうか。圌女が思う盞手を忘れたずき私が玠盎になれた時 どちらの可胜性も䜎い気がしおならない。だが、圌女は私の傍にいるのだ、ゆっくりゆっくり優しくしおいきたい。 そのきっかけになりそうなものが。目前に迫っおいる。その時に枡すものだっお、甚意した。 それが䞊手くいくかは分からない。私が玠盎になれるかだっお、分からない。 他に奜きな人がいる圌女に、私のするこずが響くかなんお、それこそ本圓に分からないけれど。 「なんです、それ」 少しの残業をしお家に垰れば、圌女は既に自身の職堎から垰宅し、倕食の支床を終わらせたずころだった。今日も手䌝えなかったず、埌悔するより先に目に぀いたのは、リビングの花。 結婚匏はしなかったが、互いの友人から結婚祝いにず花を貰う事が倚かったためこの家にはいく぀か花瓶がある。花束ラッシュも終え、空っぜだったはずの花瓶には立掟なバラの花が掻けられおいた。 「今日、職堎の人に貰った」 流し台の前に立っおいた圌女は、掗い終えた調理噚具を氎切り籠ぞ戻しながらそういう。 結婚しおからか月。勢いだけで結婚したため、匕っ越しやあいさ぀回りず随分あわただしくしおいた。それでも友人や職堎から祝いの品はすでに貰い尜くしおいたのだ。今曎なぜこんなものを ただの花束をもらうだけなら良いのだがこれだけの量。 花瓶䞀杯の真っ赀なバラの花は、本や本ではきかない。 「こんなにいっぱい、倚分すごい金額だよね。断ったんだけど、断りきれなくっお」 「そうでしょうな」 抌しに匱い所のある圌女であるから、圧倒されお受け取っおしたったのだろう。圌女が気にしおいたのは金額のようだったが、私がその花束がただ結婚祝いに枡されたものには思えなかった。 これは、結婚祝いなんかじゃない。 だっおもう圌女の   「誕生日祝いだっお。やっぱ、やるこずが違うねあの人は」 ゚プロンを取りながら、食事の䞊ぶテヌブルたでやっおきた圌女は、バラを睚み぀けたたたの私を䞍思議に思っただろう。圌女の職堎で、こんな立掟なものを枡す人物に心あたりがある。そんなの、たった䞀人しかいない。 「䞉日月宗近から、貰ったんですか」 「よくわかったね。ただ回しか䌚っおないでしょ垰りがけに貰ったの。持っお垰るの目立぀から嫌だっお蚀ったんだけど、抌し付けられちゃった」 「  」 突然の結婚だったため、圌女の職堎にも迷惑をかけた。盎接の䞊叞ぞは挚拶をず思い、先日、圌女の職堎に顔を出したこずが有るのだが、その時なぜかいたのが䞉日月宗近ずいう男。 本来なら居るはずのない圹職の人間だず蚀うのに、「面癜そうだから芋に来た」ず蚀っおやっおきた。 その男は、じっず私を芋぀め、それは確実に私の事を品定めの為だった。 そうしお䜕かを芋定めたようで、圌女ず共に垰ろうず思った私の所ぞわざわざやっおきお、耳もずで蚀ったのだ。 「ただ、奪えそうだなあ」 バラの花束には意味があるずか、赀いバラの花こずばずかそんなものに詳しくはないけれど、あの男の事だから、意味を含めおいそうな気がしおならない。私ず圌女ずそう歳が離れおいるわけではないのに、䜙裕ばかりのあの男。 「どうかした䞀期」 「よかったですな。誕生日にこんなものが貰える事なんお、䞀生ないのでは」 「そりゃ、こんなバラの花束買えるような人、そうそういないだろうしね。忘れらんないよ」 私が痛む必芁のない心臓がずきりず鳎った。 圌女の隣に居る暩利を、無理やり手に入れたずころで、圌女の心は私の蚱にはない。䜕を想おうが、誰を想おうが関係ない。圌女はそう思っおいるはずだ。だっお、圌女は私の事など䜕も思っおいないのだから。 結婚したこずに、文句は蚀わない。圌女は圌女の奜きな人を想ったたた、心に秘め぀づけたたた私の隣に立぀のだ。 圌女の心に残せるだけの物を私は䞎えるこずができない。 その男は、きっず普段から圌女に優しく接しおいる。私には出来ない事を、軜々ず、そしお垞にやっおのけおいるのだ。 この家で私ず過ごす時間ず、職堎であの男ず関わる時間を倩秀にかけたなら、圌女は絶察に私の事を遞ばない。 私の目の届かないずころで、圌女が誰かず関わっお、そしお誰かを想うのだ。 䜕の意味が蟌められおいるのか分からぬこの花束を、今すぐ捚おおしたいたい。 だが、それは圌女ぞの接し方ずしおは倧間違いだし、それをしたずころであの男は優雅に私をあざ笑うのだ。 ようやく無理やり捕たえられた圌女は、きっずこのたたでは奪われる。私の知らぬずころで、私からいなくなる。 そんなの、絶察、蚱しはしない。 「  仕事、蟞めおください」 「はぁちょっず、䞀期、䜕蚀っおるの」 「そのたたの意味です」 すぐに、はいず頷くわけが無いずはわかっおいるけれど、なにがなんでも圌女の仕事を蟞めさせよう。 「この間、あたらしい郚眲に異動したばっかだっお蚀ったよね。挚拶したずき䞀期も聞いたでしょ」 「ああ、聎いおたす」 「働くの倧奜きっおわけでもないけどさ、私の事を匕き立おおくれた人に、ほら、䞉日月さんずかにだっお迷惑が  」 䞀番聞きたくない名前が圌女の口から発せられる。圌女が、あの男の事を想っおいるずかいないずか、そんなもの関係ない。圌女が、私の知らぬずころにいお、知らぬ名を呌んでいる事が、怖い。 「疲れお垰っおきお、家事ができたすか出来ないでしょう出来ない事をし続けたっおい぀か無理が来るだけです」 職堎は私の方がこの家から近いけれど、それでも垰っおくるのは私の方が遅い、出かけるのも私の方が早い。同じように仕事をしおいるのに、どう考えたっお家事の分担は圌女の方に倧きく偏っおいる。だから、無理をしないためにも仕事を蟞めおもいいんです、そう蚀おうずは垞々思っおいたけれど。 蚀葉にしお改めお思う。私はどこたでも自分勝手。 結局圌女を傷぀けお、この家に、そしお私に瞛り぀けおおけるなら、䜕をしたっお良いず思っおいるのだ。 どうせ圌女は私ではない他の人を想っおいるのだから、わたしがどう圌女を思ったっお。 蟞めるこずはないだろう、そう思ったけれど、意倖なこずに、翌日すぐに、仕事を蟞めるこずに圌女は同意した。 それが、去幎の圌女の誕生日の話。 誕生日プレれントにず甚意した結婚指茪は、「䞀応、䜓裁だけでも繕っおください」そう蚀っお枡した。 それからもいろいろプレれントしお、ほかのものは䞀床しか身に着けおくれなかったが、蟛うじおそれだけは垞に身に着けおくれおいる。指茪ずいうより銖茪だな。圌女の自由を奪うそれを圌女はどんな思いで付けおくれおいるのか、今の今たで私は知らない。 [newpage] 「さっきから思っおたんだけど、䞀期顔色わるくない」 「そうでしょうか」 倕食を終え、片づけを手䌝っおリビングで䞊んで本を読んでいた。それが日課。 昌間の事を思い出し、そしお隣の圌女の事を考えおしたえば集䞭なんおできなくお、パタンず本を閉じれば、それに気が付いた圌女が、䜓を歀方ぞ向けお蚪ねおきた。顔に出るほど思い぀めおしたっおいたのか。 この生掻に、圌女は文句は蚀わない。けれど、圌女は蚀わないだけで䞍満がないわけではないだろう。今たでだっお色々なこずを自身の䞭に溜めこんでいたのだから。 ようやく手に入れるこずのできた、圌女の事をゞッず芋぀める。 手に入れるこずができた、でも、そう、圌女は圌女の物であっお私の物ではないのだ。 やりたい事をさせないで、行きたいずころにも行かせない。そうしたいず蚀う思いは倧きいけれど、飌殺したいわけではないし、そんな圌女の事が奜きなんじゃない。笑った顔が奜きだから。 「䜕か、欲しいものはありたせんか」 「え、ええヌ。そっか、もう明日誕生日」 「しおほしいこずでも。蚱しお欲しいこず、でも」 䞊からな物蚀いだよなずはわかっおいる。そうずしか蚀えない。 私のいう意味が分からなかったのか、少し眉間に皺をよせ銖をかしげおいる。 「蚱しおほしい事っお、なにが」 「  その、えヌっず、仕事、ずか」 「仕事」 繰り返しお呟いた圌女は、私が䜕を蚀いたいのか分かったようで、ああず䞀蚀。 「家事は、もちろん私ももっずやりたす。きっず仕事をしおいた時に家事を䞊行させおたのに比べれれば、幟分は楜だず思いたす。前ず同じ䌚瀟に、埩垰できるずは限りたせんけど、やりたい事があるずか、そういうのがあるのなら」 しどろもどろな私の声は、きっず少し震えおいおみっずもない。 「仕事蟞めさせたこず、悪いず思っおるんだ」 「それは、たあ。私の知らないずころで、誰かを想っおいるのかず思うず、気が気でなくお」 「ふヌん」 ほんのか月前にはよく聞いおいた圌女の冷たい声。甘さになれおしたったせいか、その声にキリキリず胃が痛む。自分が今たで、どれだけの理䞍尜を圌女に抌し付けおいたのかずいう事を改めお自芚するから。 「ねえ、䞀期」 「はい」 圌女の声に返事をする。そのタむミングで圌女は持っおいた本を閉じお゜ファの䞊に眮く。次に来る蚀葉に内心びく぀いおしたっおいたのだが、逃げる蚳にもいかないから圌女の次の蚀葉を埅っおいた。 するず圌女はゆっくりずこちらに䜓を向け、えいっ、ず可愛らしい掛け声を付けお、わたしに抱き着いおきたのだ。 「えっ  ええ」 「いやだ」 「嫌じゃないです。そんなわけないです、え、䜕で」 「䞀期、テンパりすぎだっお。ふふっ、心臓うるさい」 すり寄るように私の心臓に圌女は耳を合わせる。私は自分の手のやり堎がなくお、䞇歳しお固たっおしたった。 圌女が蚀うように心臓は鳎りっぱなしで、それを聞かれおいるこずが恥ずかしいのだが、私の芖線の䞋でもぞもぞず動く圌女がくすぐったくお暖かくお。 「䞀期ばっかり、いろいろ教えおくれるのも䞍公平だから。私も本圓の事蚀うね」 「本圓の事」 私の背䞭にたわった圌女の腕が、きゅっず、少し匷くなる。 「離婚しおっお蚀われた時に、もし私が仕事しおなければ今埌の生掻どうしたらいいか分からないでしょだから、ごねお、離婚なんお絶察にしないっお蚀えるなっお思ったの」 「は」 「面倒で簡単に攟り出せないでしょ䞀期の性栌䞊、䜓面気にしそうだったから」 悪い女だね、私。そう蚀った圌女。 お互いに、嫌われおいるず思っおいた。お互いに、い぀離婚を切り出されおも仕方がないず思っおいた。 少しでも離れたくなくお、互いの足かせが少しでもできる様に。 「䞀期が誰の事を奜きなのかなんお知らないし、分からなかった。仕事しおれば自分の方で手いっぱいで、気になるけど䞀期のたわりの事なんお分からない。仕事蟞めお、䞀期の枷になっお、䞀分でも長く䞀期ず䞀緒に居たいず思ったの」 ごめんね、悪い女だね。もう䞀床、圌女はそう蚀ったけれど、そんな颚には思えない。私だっお同じだから。私の方がもっずひどいから。 「だから䞀期、仕事の事に関しおは、そんなに謝らないで。むしろラッキヌっお思った」 「そう、ですか。分かりたした」 「毎日、愛劻匁圓䜜っお、䞀期の䌚瀟の女の子に牜制しおやろうっお思っおたんだよ」 私の嫌味にも立ち向かっおくる圌女であったから、結婚しおから割合倧人しくしおいるこずに違和感を感じなかったわけではなかったが、本音を聞いおみればなるほど、圌女は圌女のたただった。 ぞらりず笑う圌女が可愛くお、行き堎を無くしおいた手を圌女の頭に茉せお撫でおみる。私の心臓の音は圌女に筒抜けだろうけれど、この心臓の音が圌女ぞの思いなら、どんどん届いおもらっお構わない。 そうやっおしばらく圌女に抱き着かれながら、圌女の頭を撫でおいた。そしお倧事なこずを思いだす。圌女ぞの誕生日プレれントだ。 䜕か私にしおほしい事がありそうで、仕事の蚱可が欲しいのかなず思いこんでしたっおいたのだが、今のやり取りからそれが違った事が分かった。ではいったいなんだろう。 『圌女の思いを叶えおやれない甲斐性しか持ち合わせおいないのならば  』 倕方の男の蚀葉が思い出される。圌女がここたで私を思っおくれおいるのに、私は䜕も返せないのず思うず悔しくなる。䜕ずしおでも、圌女の望は叶えおやりたい。 「あの、やっぱり䜕かあるんですよね。欲しい物、いや、しおほしい事かな」 「えっ、あ、いや、その」 今たでになく焊った様子に少し面喰う。これは抌せば教えおくれそうだ。 「えヌっず」 「なんだっおいいですよ、いく぀でもいいですよ」 「じゃあ、その。プレれントはいらない」 「えヌ」 「そのかわり」 焊っおいるのを隠したかったのか、私の胞に顔を埋めおいた圌女が勢いよく顔を䞊げる。その勢いに䜕ずなく居䜏たいを正す。ず蚀っおも抱き着かれおいるからあたり䜓制は倉えられないのだけれど。 「私のプレれントくれなくおいいから、その分お金貯めお䞀緒に出掛けよう」 「デヌト」 「うん。旅行ずか、遠出しお、写真撮ったり」 「ふ、いいですな」 ああ、そうだね。色々なものをあげたいけれど、䞀番は思い出を䜜りたいのだ。いい思い出なんおほんの少ししかない私たちが䜜れるものはきっずたくさんあるのだろう。 「それが、欲しい物ですかせっかくだからどんどん蚀っおいいですよ」 誕生日云々関係なく、圌女のお願いはなんだっお聞きたいず思っおいるけれど、圌女がわがたたなんおそう簡単に蚀っおくれないのは分かるから。 そしお䜕ずなくだけれど、今圌女が蚀った事が、ここのずころ蚀いにくそうにしおいた事じゃない気がした。きっず圌女には、ほかにも私にしおほしいこずがあるんだず思う。 うう  ず唞っお、たた私の胞に顔を隠しおしたった圌女ではあるが、えヌっずずか、そのずか蚀っおいるから蚀っおくれそうな気はする。 「あの、うヌん。私が蚀う事で、匕いたりしないでね」 「したせんっお。あなたが倉な事蚀うわけないっお思いたすし」 「倉な事、う、うヌん。えっず、じゃあ」 「はい」 顔を少し䞊げお、ちらりず圌女の片目ず目が合う。真っ赀な顔が、最んだ瞳が可愛いけれど、心臓に悪い。 「ぎゅっお、しお」 頭を撫でおいた手が止たる。心臓も、止たるかず思った。 ごめん、ず圌女が蚀いそうな気配を感じずり、私は急いで䞡腕で圌女を包む。圌女の方が䜓を私に傟けおいたから、ちゃんず抱き締められるように、少し持ち䞊げお互いに坐りなおす。 すっぜりず圌女を包み蟌めば、真っ赀な耳がよく芋えた。 「倉な事じゃ、無いですよ」 「  うん。えっず」 おやず思うのだ。満足しおなさそうなその声。圌女が今䞀番に望むのは抱き締めるこずではないのでは 「他にも、ありたすか」 なんだろう。甘えたかったのかな。 恋人ずしおの接し方もよくわからないたた倫婊になっおしたった私たちは、甘えたり甘やかしたりの加枛がよくわからないでいた。だっおただ、思いを通じ合わせおか月。それたでの幎あたりの冷めたような関係から考えるず、なにをするにも甘ったるい。 でも、本圓はもっずもっず欲しいけれど。傷぀けたくない、倧切にしたい。その思いも同時にどんどん倧きくなる。それすらも幞せで、私はすごく浮かれおいる。 今回䞍安に思ったようなこずがきっずこれからもたくさん出おくる。だっお幎分の䞍安を圌女は抱えおいるから。 「ぜったい、匕かないでね」 「匕きたせんよ」 さっきよりも近いずころにある顔。私の肩口に埋められた頭は恥ずかしげにもぞもぞ動く。 「呆れないでねぞ、倉な事蚀ったなこい぀っお思ったら、即忘れおいいからね」 「倧䞈倫ですっお。私にできるこずなら、䜕だっおしたすよ」 「い、䞀期にしかできないっおいうか」 「うん。なら、䜙蚈嬉しいですな」 圌女からのお願いなら、倚少の無茶だっおできる。その自信が私にはあるし、なんおったっお圌女の誕生日だ。結局、プレれントは甚意できなかった。花を買うなんおできなかった、プレれントを莈る事も嫌がられおしたった。レストランでのデヌトは、楜しみだけれど、それだけじゃ足りない。圌女が本圓に欲しい物を、私は党郚党郚あげたい、圌女の願いを党郚叶えたい。 「い、䞀回しか蚀わないから、あの、ほんず、忘れおいいよ」 「蚀っおくれなきゃわかりたせんっお」 あんたりにも必死なのがおかしくっお苊笑しおしたう。宥める぀もりで圌女の頭を撫でおみる。ピタリず動きが止たったのは、意を決したからなんなのか。 抱き締めおいた圌女の手がゆっくり解かれ、私ず圌女の間にほんの少しの隙間ができる。俯いたたたの圌女の耳はさっきからずっず真っ赀。こうやっお圌女から抱き着いおくるのは実は初めおで、恥ずかしかったのだろう。私も、恥ずかしかった。 䞭孊生みたいだなず思うけれど、䜕だかんだ初恋の圌女に抱き締められおいたのだから、それず䜕ら倉わらないか。 さお、圌女は䜕を蚀うのかな。うるさい心臓を宥め、圌女の蚀葉をゆっくりず埅぀。 䜙裕なんおないけれど、心の狭い私だけれど、圌女の為ならい぀たでも埅぀。 「私にしか、できないこず」 「うん。䞀期にしか」 「でしたら、早く叶えおあげたいです」 「う、ん。その」 「はい」 顔を䞊げたものの泳がせおいた圌女の芖線が、少しず぀こちらぞ向く。 「い、」 「うん」 「䞀期ちょうだい」 「は」 恥ずかしいのか、目を瞑っおいる圌女の蚀葉が私の䞭に萜ちおくる前に、圌女が本圓の願いを口にした。 「ね、キスしお」
嫌いなあなたず結婚した珟パロ<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6362958">novel/6362958</a></strong>これの、続きずいうか、おたけずいうか。おたけの方が圧倒的に長いけど、最初の芋ないず分からないよ。<br /><br />誕生日線<br /><br />もう、この二人の話ばっか考えおるっおわけじゃないんだけど、なんか曞いおしたったそろそろ萜ち着きたす<br /><br />芁玄䞉日月「解せぬ」<br /><br />○匟䞞で京郜行っおきたした。䞀期さんず写真撮っおきたした。ふっふヌ。たたフォロワヌさんご迷惑おかけしお、劄想京郜旅行ですわヌ。<br />○これ、曞き終わった埌、頭の䞭で柎○コりが流れおたす。たしゃでもいいです。
嫌いなあなたず結婚した、おたけの話第䞉匟
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聖グロリア―ナ女孊院ず黒森峰女孊園ずの戊車道に関する隊長のみの䌚談の堎で通された郚屋で、西䜏たほは片隅の゜ファに芖界を移すずその䞡目を静かに芋開いた。窓から差し蟌む朚挏れ日が、優しく少女に降り泚いでいる。日差しがあたりに柔らかだからか、その優しい空間を壊すものがないからか、目の前の光景はたるで䞀枚の絵画のようだった。 日差しに溶けいるように己より色玠の薄い髪が、今はきらきらず茝いおいる。䜕をも寄せ付けないかのように゜ファにもたれお眠るそれは玛れもない、この䞖界でたった䞀人の血を分けたたほの効だった。蚘憶に残る面圱よりも幟ばくか痩せたように思える姿に、心が緩やかに熱を持っお。たほはそっず、手を䌞ばした。 「いけたせんわ」 凛ずした声が空間に響く。振り向くず、重厚な扉に寄りかかるようにしお䜇むダヌゞリンがいた。圌女の芖線は、柔らかな牜制を秘めおたほぞず泚がれおいた。 昚幎の党囜倧䌚決勝のあの瞬間を、今でもダヌゞリンは容易く思い返すこずができる。熟烈な戊い、萜ちる戊車、激流、そしお。9連芇を誇った垝王、黒森峰の敗北は翌日の玙面を賑わせ、そこには勿論西䜏流の名が螊っおいた。フラッグ車の車長でありながら降車し、仲間の救出に向かっおしたったこずが芁因であるず。事実、その埌すぐ䌝え聞いた話によればその車長は西䜏流垫範からかなりの叱責を受けたのだずいう。西䜏みほ。ダヌゞリンはその時初めお圌女の名を知った。 「いけたせんわ、たほさん」 たほの指先が止たる。それは爪さえもみほには觊れおおらず、そのこずがダヌゞリンに僅かの満足を抱かせた。觊れさせるわけにはいかない。ここは箱庭。振り向いたたほの顔は垞ず倉わらぬ読めない衚情で、しかし䞀瞬確かに歪んだ目元をダヌゞリンは芋逃さなかった。 「 倱瀌した」 「いいえ、こちらこそ。お埅たせしおしたっおごめんなさい、たほさん。こちらぞどうぞ」 「ああ」 「圌女は少し疲れおいるようだからもう少し䌑たせおあげおくださいな、同じ郚屋で申し蚳ないのですけれど」 今はここしか空いおなくお。笑みを含んだ穏やかな声で、ダヌゞリンはそうず分からないように窓蟺の゜ファに芖線をやる。小さな゜ファの、それに芋合った现い身䜓。開け攟たれた窓から差し蟌む日差しがきらきらず反射し、そよぐ柔らかな颚が癜いレヌスのカヌテンをふわりず揺らしながら、みほの髪も埮かに靡いおいる。そこにはたるで完成されたように穏やかな空間が広がっおいた。 西䜏みほが黒森峰から転校する。その噂を聞き぀けた時、ダヌゞリンがずった行動は迅速だった。敗北、叱責、責任。倱意のなかにあるだろう出逢った圌女はあの決勝で芋たずきよりも随分ず现くなっおいたように蚘憶しおいる。自らの戊車道ぞの絶望を吐露するみほを、ダヌゞリンは根気匷く囲っおいった。 狙っおいたずいえば蚀い方は悪いが、それも吊定はしない。事実、ダヌゞリンは決勝を通しおの西䜏みほの力をおそらく誰よりも評䟡しおいた。姉であるたほずの息のずれた連携、咄嗟の事態に察する反応速床、機転、応甚。惜しむらくは、その圌女に応えるこずの出来埗る人材の存圚か。それがあの決勝でのフラッグ車撃墜に繋がったのだずダヌゞリンは分析しおいる。車長䞍圚だろうず連携し突砎できる力がなかっただけにすぎない。型にハマる傟向のある黒森峰の生埒では、荷が重かったのであろうけれども。 そうしお少しず぀少しず぀、ダヌゞリンはみほの心の棘を抜いおいった。生たれおから築き䞊げられた鋌のような西䜏の名を剥がした圌女の玠顔は、どこたでも心優しい少女のものだった。およそ戊車道には向いおいないのではないかず危惧されるほどに柔らかな心。蟞めおもいい、ずある時そう告げたのは本心からだったけれども、みほは久しく誰にも芋せおいなかった柔らかな笑顔で緩やかに銖を暪に振ったのだ。緋色のゞャケットが軜やかに舞った。 「今床の緎習詊合のお話でしたわね」 「ああ、党囜倧䌚たで日もないが、了承しおもらえるず助かる」 「そうですね 我が校ずしたしおも色々な戊力を詊せるいい機䌚になりそうですし、お受け臎したすわ」 吊り䞊がりそうになる唇を隠すために、玅茶のカップを持ち䞊げる。ほんのりずした甘さが喉を静かに最しおいく。 䞍憫だず、思わないわけではない。名家であるこずの重責を抱えながら生きる次期家元たる姉ずしお出来ないこずも倚いのだろう、効ずしおもそれを理解できないわけではないだろう。けれども、それでも。手を離したのはそちらだ。芁らないのなら、遠慮なくもらっおしたおう。返しお欲しいず泣き぀かれようずも、返しおあげる気などダヌゞリンには欠片もなかった。 ここは箱庭だ。心優しい圌女がもう二床ず哀したなくおすむように、その才胜を存分に䌞ばせるように䜜り䞊げた小さな箱庭。 「詊合、楜しみにしおいらしおね。たほさん」 ちらりず、少女ぞ泚がれる芖線に気づかない振りをしお、ふふ、ずダヌゞリンは軜やかに埮笑んだ。長い睫毛が陶噚のような癜い肌に圱を䜜る。ほんのりず湯気の立ったカップを静かに眮いお、唇に指を立おる姿さえ鮮やかな淑女のそれだった。 「Love is tyrant sparing none.」 ごめんなさいね、だっおもう、返しおあげられたせんの。
「恋は、䜕人をも容赊しない暎君である」<br />※もしも黒森峰から聖グロリアヌナに匕き抜かれおいたら線。ダヌゞリン様ずたほお姉ちゃんが話しおるだけ。やりたいようにやりたした。ダヌみほみほたほ英囜匏なのできっず階士もいそう。ダヌゞリン様はたほお姉ちゃんたちがあげられなくおみほさんが欲しかった蚀葉をさらりず蚀えちゃいそう。
【捏造IF】もし西䜏みほが聖グロリアヌナに転校しおいたら
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true
■  ■  俺ず翔陜は、二十五歳の今でも小さなこずですぐに蚀い合いになる。だいたいは、俺の口の悪さず蚀うか、蚀葉を遞べないずころが蚀い合いになる原因だ。『おたえ、本圓に䞀蚀䜙分』ず翔陜が目を぀り䞊げ、『蚀い合い』が『蚀い争い』に発展するこずも倚い。  そうなるず、別れる別れないっお話になっおしたうのも定番だ。その手の口論で、翔陜は、けっこう容易く『もういい、別れる』ず口にする。月島に蚀わせるず、それは俺に察する䞀皮の甘えなんだそうだ。そしお、俺は圧倒的に『別れない』ず蚀う偎だ。  ただ䞀床だけ、自分から『別れる』ず蚀ったこずがある。倧孊に入っお最初の幎、䞀緒に䜏み始めお半幎ぐらい経った頃のこず――『ロヌルキャベツは、ブラりン゜ヌスかホワむト゜ヌスか』で倧喧嘩になった。  俺は、入れ替わりの時、そのケンカを『くだらないケンカ』の䟋ずしお聞いお知っおいた。だから、本圓に『くだらないケンカ』だず思っおいたんだ。倧孊に入っお半幎、俺䞀人が倧孊生遞抜で合宿に参加し、垰っおきた日の倜のこずだった。慣れない環境で過ごし、翔陜が居ない状態で呚囲ずコミュニケヌションを取るこずの難しさを実感させられ、正盎、ストレスが溜たっおいた。でなければ、あんなこずを口にはしなかった。 「どうせ、別れるっお蚀いたいんだろ お前、䜕かっお蚀うずすぐ別れるっお口にするよな。  そんなに別れたいなら、もう別れよう。今この瞬間から俺達は『ただの同居人』だ。それでいいよな、日向」  翔陜は、驚いた顔をしお、抌し黙っおしたった。俺は、さっさず二人の寝宀から枕ずタオルケットを出しおきお、リビングの゜ファを占拠した。どれほど翔陜の顔色が悪くなっおいおも、芋お芋ぬフリをした。むしろ、これで『別れるず蚀われる偎の気持ち』が解ればいいんだず、スカッずした気分にさえなっおいた。甘えだろうがなんだろうが、毎床『別れる』ず蚀われるのは、すげえきっ぀いんだ、それを少しでも実感しろっお  。  くだらないケンカだず蚀われおいたから、䞉日もすればお互いに頭が冷えお、ロヌルキャベツの゜ヌスの違いなんお謝りようのない蚀い争いも、月島提案の『今埌はコン゜メスヌプ仕立お』に萜ち着き、終わりになるず思っおいた。  圓時は、ただ䟋の付き合う䞊での唯䞀絶察のルヌル『コヌトの倖のこずを、䞭に持ち蟌たない。コヌトの䞭のこずを、倖に持ち出さない。』も確立しおなかったから、コヌトの䞭でも倖でも、その堎に他の誰かが居る時も居ない時も『日向』ず名字で呌んだ。  そしお、『くだらないケンカ』開始から䞉日目の朝、翔陜は突然耳が聞えなくなった。蚺断は、ストレス性の難聎。医者からは、ストレスの原因を遠ざけるのが最善ず蚀われた。䜕がストレスの原因かなんお、考えるたでもなかった。俺に『日向』ず呌ばれるこずを、翔陜の身䜓が拒吊したんだ。その日、俺は翔陜を抱き締め、聞えなくなっおしたったその耳元で、ただひたすら名前を呌び、謝眪を繰り返した。  あれ以来、俺はどんなケンカでも拗れそうな時は、すぐに自分から謝るようになった。それは、そうするこずで倚少匷情な翔陜も謝りやすくなるずいうのもあるが、なによりも腕の䞭に翔陜がいるのに、俺の声が届かないなんお恐怖は、䞀床きりで充分だず思うからだ。俺は、今でもあの時の話をしたくないし、できるなら思い出したくもない。にもかかわらず、翔陜が、䞭身高校生の俺に『くだらないケンカ』の䟋ずしお、あのケンカを出したのは、ただ『入れ替わり』を疑い、俺の反応を芋ようずしおいたからかもしれない。そうじゃなきゃ、あの時のこずをあんなにも軜いこずのように口にするなんお思えない。そしお、本圓に䜕も知らなかった䞭身高校生の俺は、ただ呆れた顔をするだけだった。  このケンカの時に限らず、俺が『翔陜』ず名前で呌ぶこずに察する拘りは、翔陜のほうが匷い。公匏な堎  ず蚀うより、取材ずかむベント等でマむクを向けられた時は、『日向遞手』ず蚀うようにしおいる。けど、それ以倖の堎で俺が『日向』ず名字を口にするこずを翔陜自身が嫌がる。  なのに、入れ替わっおいた䞭身高校生の俺が『日向』ず呌ぶこずをあっさりず受け入れた。それは、もう諊めおいたからなんだろうか。俺が、この入れ替わりで、翔陜ず離れる日を受け入れようずしたように、翔陜もたた『日向』ず呌ばれる日が来るこずを受け入れようずしおいたのか    この入れ替わりの䞉日間は、過去の自分にずっおは『翔陜ず共にある未来を受け入れるため』のもので、今の自分にずっおは『翔陜が居ない未来を受け入れるため』のものなのかもしれない。そうだずしたら、これたで『別れない』ず蚀い続けおきた自分は、間違っおいたのだろうか。でも  。 『おれは、ずっずおたえのトスを打぀よ』  高校生の翔陜は、そう蚀っおくれた。䜕幎経っおも俺のトスが欲しいず蚀っおくれた。    早く自分の翔陜に䌚いたい。い぀ものように俺の名前を呌び、起こしおほしい。遠埁合宿に行く朝のように、䞀人寝のベッドで目芚たしの電子音に目を芚たすくらいなら、二床ず目が芚めない方がマシだず思う。それが䟋え本圓に正しくお、間違っおいない遞択の結果だずしおも、きっず自分は願うんだ。ずなりにいお、埮笑んで、名を呌んで、觊れ合っおいたいず。それだけが正しいのだず、自分にずっおは『翔陜ず共にあるこず』だけが間違っおいない状態なのだず、俺は叫び続けるだろう。 ■  ■  俺がこの時間に居る期限が十時間を切った入れ替わり䞉日目の攟課埌、䌊達工業高校バレヌボヌル郚が烏野に来た。  堎所は、音駒ず最初に緎習詊合をした烏野総合運動公園競技堎だ。匷豪であるダテコヌは、詊合に出ない郚員も倚い。烏野高校の第二䜓育通では、そうした芋孊者が芳戊するには手狭なこずもあり、別途堎所を取ったのだず瞁䞋さんが教えおくれた。実際、こちらの芋孊者が䞉幎生から柀村さんず菅原さん、町内䌚チヌムからは嶋田さんず滝ノ䞊さんずいう四名なのに比べ、ダテコヌはその五倍近い芋孊者が居る。適圓に芳る堎所を決めお立぀こちら偎の芋孊者ずは違い、向こう偎は人数が居る分、色々ず倧倉そうだ。 「すみたせん、荷物を眮かせおいただく堎所のこずなんですが  」 「ああ、それでしたら  」  ダテコヌのマネヌゞャヌに声を掛けられ、忙しくしおいる谷地さんに察応しおもらうのも悪いのでそのたた察応するこずにした。この手の察応は今の俺ならある皋床慣れおいるから。だが、銖筋になんかチクッずきお、蚀葉が止たる。少しだけ振り向くず、翔陜がこちらを芋おいた。  あの県、嫉劬だ。ダバい、近すぎたか。 「うちのマネヌゞャヌに案内を頌んできたす。少し埅っおいただけたすか」  ずにかく埅っおもらえるように蚀っお、俺はその堎を離れた。俺は翔陜ほど誰ずでも近いわけではないから、滅倚にないが、あい぀もそれなりに嫉劬するほうだ。  月島によるず、嫉劬にもタむプがあっお、俺は、翔陜に近づく『盞手に』嫉劬をぶ぀けるタむプだが、翔陜は盞手を近づかせる『俺に』嫉劬をぶ぀けるタむプだ。嫉劬のタむプの違いに無自芚だった俺達は、たびたび感情の行き違いからケンカになった。月島の指摘を受けお以降は、翔陜の芖線に気を぀けるよう俺も心がけおいるのだが  っお、今、高校䞀幎生の冬だよな。なんで嫉劬なんおしおんだ、あい぀。ただ、そういう時期じゃないだろ   「集合ヌッ」  銖を傟げたものの、瞁䞋さんの声に背筋を正し、ベンチぞず駆けだした。  始たった緎習詊合、セット目をギリギリ拟った。正盎、今の俺が『高校生の俺』であったならセットを萜ずしおいたかもしれない。向こうのセッタヌに、ただこちらを出し抜く技術がなかっただけだから。  セット間のベンチ前、烏逊さんの前に䞊ぶメンバヌの衚情は、䞀様に緊匵しおいる。 「  圱山、さっきの刀断ナむスだった。今日はサヌブも怖いくらい決たっおるな」  重苊しい空気を払拭すべく、烏逊さんが俺の顔を芋お話を切り出した。 「あっざヌす。  今日は、十幎分ぐらい調子いいんで」 「おう、次のセットも頌むな。で、  お前ら、わかっおるず思うが、今日は、月の県民倧䌚の前哚戊だ。今のメンバヌでどこたで戊えるか、どこに穎があんのか、そういうのを知るためのもんだ」  俺は、俺だけは知っおいる。䞉月の県民倧䌚、烏野はベスト止たりだった。春高の県代衚が、優勝を争う堎たで進めなかった。  月島も蚀っおいたが、䌊達工業、青葉城西、癜鳥沢  いずれも昚幎の秋の終わりたでには、䞉幎生が匕退し新しいチヌムになっおいた。烏野だけが、このチヌムになっおただ䞀ヶ月ずちょっず。䞉月の倧䌚の時に至っおも二ヶ月半皋床にしか経っおいなかった。チヌムが敎わないたた倧䌚に臚み、結果ずしお悔しさに唇を噛むこずになる。今、烏逊さんの蚀葉に誰もが䞍安ず悔しさで俯いおいるのず同じように。  俺の巊隣、誰よりも悔しげに俯く暪顔がある。セット目、翔陜は培底的にサヌブで狙われ、思うように攻撃に参加できなかった。高䞀の冬、翔陜のレシヌブはマシになり始めおきたレベルで、サヌブレシヌブは䞊げるだけで粟䞀杯だ。あれだけ楜しみにしおいた青根さんずのブロック勝負に、ただ持ち蟌めずにいる。 「  」  普段隒がしいだけに、こい぀が無蚀だず、チヌム党䜓の士気が䞋がる。今も、田䞭さんたでもが翔陜をチラチラ芳おいるものの、どう声を掛けようか迷っおいるくらいだ。  しっかりしろよな、萜ち蟌んで終わりが、お前のスタむルじゃないだろ。そう蚀っお背䞭を叩いおやりたいずころだが、それっお高䞀の冬の俺ずしお、䞍自然じゃない蚀動だろうか ――いや、これで黙っおんのこそ、俺のスタむルじゃないよな。確かに、残り少ないこの時間を倧人しく過ごすのがベストだ。けど、俺の暪で翔陜を俯いたたたにするなんお、俺にできるわけねえ。 「  オむ、凹んで䞋向いおんじゃねえよ。これは、烏野の埗点源がお前だっお認められたっおこずだ。たずは、顔䞊げお胞を匵れ」  匟かれたように俺を芋䞊げる瞳は、涙をこれでもかっおくらい溜めおいた。 「いいか、よほどのバカじゃなければ、どこの孊校も今埌同じ手で来る。俺達も癜鳥沢戊で牛島さんをサヌブで狙った。それず同じこずだ、これは、ありふれた戊法だ。――だから」  蚀葉を句切り、銖に掛けおいたタオルで目元を拭っおやる。 「お前がやるこずはハッキリしおる。サヌブレシヌブをきっちり䞊げろ。䞊げるもん䞊げたら、さっさず攻撃に参加する。  たったそれだけのこずで、盞手の思惑を倧きく厩せる。単玔だろうが」 「攻撃に参加する  だけ」 「おう、そうだ。お前が攻撃に参加しおきたなら、ボヌルは俺が持っおいく。お前が望む堎所にトスを䞊げおやる。だから、たずはサヌブレシヌブだ」  タオルを被せ、頭を軜く叩き、切り替えを促す。 「お前には、その『目』がある。どこに萜ちるか解らないボヌルならずもかく、ありがたくも自分をめがけお飛んでくるボヌルだ、むダでもきっちり芋えるだろ そしたら、反応するだけだ。お前には、それを可胜にするスピヌドずバネず反射がある」  顔が勢いよく䞊がり、タオルが萜ちた。その瞳には、もう涙はない。圚るのは、勝぀こずぞの意志。 「これから先も誰よりも長くコヌトに立っおいたいなら  できるよな」  問えば、力匷い頷きず同時に、チヌムメむトさえもゟクッずさせる声が宣蚀する。 「  わかった。やる」  よし、翔陜のスむッチが入った。それは、俺以倖のメンバヌにも通じたようで、觊発されたように誰の顔にも決意が宿っおいる。それを確認しお、烏逊さんを芋れば、圌はニダリず犬歯を光らせお笑った。 「よっし、お前ら、気合入れおけよ」 「ハむ。翔陜䞀人抌さえ蟌めば、どうにかなるなんお思われるのは腹が立ちたす。攻めおこその烏野です。西谷さんず瞁䞋さんばかりに頌っお、守り凌ぐだけになんお、  俺がさせたせん」  盞手が高校生だろうが䜕だろうが、俺に萜ずしおいい詊合なんおものは、䞀぀もない。コヌトに立぀以䞊、い぀だっお党力で勝ちに行くだけだ。  セット目のコヌトぞ向かう小さな背を呌び止める。 「おい、翔陜。昚日の自䞻緎のトス、芚えおるよな」 「あったりたえじゃん。おたえが圓分䞊げられないっお蚀ったくらいのすんげえトスだもん」 「  今日は、昚日以䞊に指の調子がいい。だから、きっちり攻撃に入っおこい。そうしたら、お前が蚀うずころの『すんげえトス』を䞊げおやる」  蚀えば、翔陜の足が止たる。 「  」  幟぀の翔陜も倉わらない。最高のトスを欲しがっお、興奮に小錻が膚らたしおいた。 「ダテコヌ盞手にブロック勝負に持ち蟌たなくお、勝ちも負けもねえだろ。あの鉄壁ブロックをぶち抜いおこそ、ダテコヌに勝ったっお蚀えんだ。  ブロックをきっちり䞉枚、匕きずり出しおやれ」 「おヌっ」  声を䞊げた翔陜が埅ちきれない様子でコヌトぞ飛び蟌む。それを芋぀め、改めお頌もしさを感じた。翔陜は、誰よりも先にコヌトぞ戻っおいく。どんな劣勢の時も、早くバレヌをやろうず誘うような軜やかな足取りで。だから、その背に続いおコヌトに入っおいくチヌムの党員が、ただ負けおないっお、そう思えるんだ。  簡単にうちの次期゚ヌスの心を折れるず思うなよ、ダテコヌのキャプテン。 「君、すっごい悪い顔をしおるね」 「圓然だ。  あの皋床の策で俺のスパむカヌを抌さえ蟌めるず思うなよっお話だ」 「  『俺の』 隠さないね」 「なんだ、隠しおほしいのか」 「別にいいよ。  暎走しないために、ガス抜きが必芁デショ」  ガス抜きね。そんな発蚀の䞀方で、月島の県鏡の奥、その県は、怖いくらいコヌトを睚んでいる。フラストレヌション溜めこんで、ガス抜きが必芁なのは、お前自身だろ。 「月島、『鉄壁』がダテコヌの専売特蚱じゃないずころ、存分に芋せおやれよ」 「圓たり前じゃん」  なるほど。俺の䞍敵な笑みっおや぀は、翔陜じゃなく、こい぀に孊んだものらしい。 ■  ■ 「今日は、遠いずころお越しいただいおありがずうございたした」 「いえいえ、遠いずころ来たかいがあったなあっお思える緎習詊合になっお良かったです。次は、勝たせおもらいたヌす」 「それはそれは、来月の倧䌚でもいい詊合内容だっお蚀っお悔しがっおいただけるように頑匵らせおもらいたす」  瞁䞋さんず二口さんが衚面䞊は笑みを浮かべ぀぀、寒くなるような䌚話を繰り広げる。あの二人、同孊幎のキャプテンで、同じポゞションだから、なにかず怖いやり取りすんだよなあ。その暪では、青根さんに翔陜が飛び぀き、楜しそうに話しおいる口数の問題䞊、䞀方的に翔陜が話しおいるだけに芋えるけどな。他校の先茩盞手に、飛び぀くずか  どんだけ距離感狂っおんだあのボゲ。 「君、他校の先茩を睚むのはやめなよ」  どれほど面倒な頌み事も、匕き受けたなら完璧に遂行する月島が、俺の斜め埌ろでボ゜リず呟く。 「うぐっ  。わかった、極力あっちは芋ないようにする」 「賢明だね。  にしおも、あっちはあっちで、他校の先茩盞手に甘えすぎじゃない」 「今は、䞊の孊幎しかいねえからな。䞋の孊幎が入っおくれば、盞応に倉わる」  あれでも䞀応、俺達の代では䞻将だから  ずは口に出さずに、そう応じた。 「そうなの」  疑わしそうな月島に、たあ目の前のこの翔陜芋おる限りじゃそう芋えないよな、ず同意する。ずころが、春になっお『埌茩』ができた途端、俺は嫌でも芋る矜目になるんだよ。『埌茩に慕われる翔陜』を。 「初めおあい぀に䌚った䞭孊の時、䞀応それなりに先茩しおた。幎䞋が居るず、幎䞊らしく振る舞おうずする性分なんだろ」  埌茩を甘やかす䞀方で、先茩には甘える。本圓に翔陜は『最匷の人たらし』だ。 「  あい぀さ、幎の離れた効が居るんだよ。たしか、ただ小孊生になったばっかだったか」  この頃の月島がすでに倏を知っおいるのか確蚌がないため、少し慎重に話を出す。 「ふヌん。それが」 「幎が離れた匟効が居るっおこずは、その幎霢差分だけ『ひずりっ子』か『末っ子』だったっおこずじゃねえ」 「  なるほど、そういう芋方もあるね。甘え䞊手っお蚀うより、甘やかされおいたから自然ずああなるわけね」  そしお、同時に自分がされたように、幎䞋をきっちり躟け぀぀、甘やかすこずもできるわけだ。 「たあ、半分は本人の資質だろうけどな。  俺は、兄匟いねえけど、あれは無理だ」  よくよく考えるず、あの時の䞭身高校生の俺は、翔陜ず月島からしたら、倏ず同じくらい感芚だったんだな。  どうりで。『俺』であっおも、二人に甘やかされたわけだ。 「  ああ、うん。僕は、二人兄匟の䞋だけど、アレは無理だね」  そう呆れた口調で蚀うが、月島も幎䞊には匱い。翔陜みたいに甘えるずは違っお、普段のように匷く出られなくなるずいう意味で匱い。ストレヌトに自分を誉めたり、叱ったりしおくれる『兄タむプ』には特に匱い。具䜓的には倧孊時代の某先茩ずか  。 「あ、  俺、ちょっず離れる」  思い出しお俺は月島にそう蚀い、゚ナメルバックを肩に掛け盎す。 「どこ行くの すぐ孊校に戻るんだけど」 「  旧亀の枩め盎しだ。挚拶だけですぐ戻る」 「はあ なにその日本語」  銖を傟げる月島に、俺は軜く手を振っお、その堎を離れた。 「遠目になんか芋芚えのある芋孊者がいるっお思っおたら、やっぱり及川さんたちでしたか  」  駅ぞ向かうバスを埅っお立ち話をしおいる䞉人組にそう声を掛けるず、この頃はただ䞉人の䞭で䞀番背が高い人が俺を振り返った。 「えぞ、来ちゃった♪」  玄185cmが甘えた声を䜜る。俺ばかりか、䞡隣も  岩泉さんず囜芋も匕いおいた。 「  ゜レ、昔、翔陜にやられたこずありたすけど、及川さんがやっおも党然可愛くないですね。そもそも、なんで、ここで緎習詊合があるっお知っおんですか 俺、及川さんに蚀いたしたっけ」 「ちょ、さりげなくノロケた䞊に、俺には悪口ずかひどくない   お前が、䞀昚日、俺に䌚いに来た時にダテコヌず緎習詊合があるっお蚀っおたから、どこでやるのかちょっず調べたの」  フンッず胞を反らしお自慢気に蚀うので、思い切り眉を寄せおやった。 「  あんた、アホですか。玠盎に『芳に行きたいからどこでやるんだ』っお、俺に聞けばいい話じゃないですか」 「うぐぬ  飛雄のくせに容赊ない」  胞を抌さえる及川さんの右暪から笑いが挏れる。 「ざたヌねヌな」 「岩泉さん、お疲れ様です。芳に来おくださったんですね。あっざヌす」 「ちょっず飛雄、反応違いすぎじゃない」 「え   だっお、岩泉さんですから」 「及川さんだっお及川さんだよ 先茩に察する敬いの心がない」 「岩泉さんは、尊敬する先茩っす。及川さんは、すげえなっお思う先茩です」 「  それ『すごい』っお思うだけっおこず そこに敬意はないっお蚀いたいわけ」 「ちゃんず『すげえ』っお思っおたすよ」 「吊定しないのか、このク゜ガキ」  ク゜ガキ  ね。俺、今、二十五歳で十八歳のあんたよりだいぶ幎䞊なんですけど。たあ、俺は俺で、盞手が及川さんだっおだけで、どうにも敬語になるから幎霢の逆転が意識されおない感じに喋っおいるけど  。 「おヌい、飛雄 そろそろ孊校戻るっお  、えっ、倧王様 あ、青城の゚ヌスの人に囜芋たでいる」  突然の声に振り向くず、俺よりも驚く翔陜の顔がある。そのリアクションに満足したのか、及川さんが笑顔に戻りヒラヒラず手を振った。 「やっほヌ、チビちゃん」 「  緎習詊合、お疲れ、日向」  囜芋は無衚情ながら、小さく手を䞊げた。 「   囜芋、おれの名前知っおんだ」 「そっちもね。俺は圱山がよく名指しで怒鳎っおいたから憶えた」 「おれも、こい぀が囜芋のこず話しおたから憶えた」  二人しお、俺のほうを指差す。 「  圱山が俺の話を」 「おう。おたえ、頭いいんだろ 狂犬さんが入っおきた時『囜芋の代わりっお事は頭がキレる奎かも』っお蚀っおた。ハズレたけど」  あヌあれか、よく芚えおんな、高䞀の翔陜のわりに。぀ヌか、『ハズレた』は䜙分だろ。 「おい、チビ、俺の名前はわかるか」  楜しげに問う岩泉さんに、ブンッず音がしそうな勢いで倧きく翔陜が頷く。 「ハむ 青城の゚ヌスで『岩泉さん』です」 「郚は匕退したから、元゚ヌスだな。  日向、セット目、よくやった」 「あ、あっざヌす」  翔陜の目がキラキラしおる。冗談抜きで、翔陜は岩泉さん倧奜きだもんな。アンケヌトで尊敬する遞手の欄に岩泉さんの名前を曞くくらいに。぀ヌか、倧孊で先茩埌茩になっおからのこずじゃなかったのか。こい぀、あの倧孊に決めたのっお、俺が先にコヌトに立぀からどうこう関係なしに、自分が岩泉さんの埌茩になりたかっただけじゃねえだろうな   「日向、レシヌブ、もっずしっかり磚けよ。んでもっお、お前のセッタヌを楜にしおやれ。セッタヌが楜になれば、いいトスが䞊がる。いいトスが䞊がれば、どのスパむカヌも党力のスパむクが打おる。党郚が䞊手く繋がった瞬間っおのは、最高に気持ちがいいぞ」 「ハ、ハむ おれ、がんばっお、おれのセッタヌを楜にしたす」  おい、もしかしお、コレが最初の翔陜の『おれのセッタヌ』発蚀か 岩泉さんの発蚀を受けた勢いで蚀うようになったのかよ。 「ちょっず、飛雄、俺の隣に岩ちゃんが居るのはいいずしお、さらに隣にチビちゃんが居るずかないよね」 「はあ  居たすね。飲み䌚だず、あの二人はセットですよ。業界䞀の酒豪垫匟っすから」  今になっお知る岩泉さんの翔陜に察する圱響力の倧きさに、俺はやや䞍機嫌に返した。 「え 岩ちゃん、お酒匷そうな芋た目だけど、チビちゃんも匷いの」 「あい぀の実家、山のほうなんですけど、『山男は酒に匷くないず生き残れない』そうで、家系的に匷いんですよ。芪戚が集たる垭だず、昌から倜䞭たでぶっ通しで宎䌚です。俺も別に飲めないわけじゃないですけど、翔陜ず飲みでは勝負しようず思いたせんね。金ず時間のムダですから。たあ、家ずかで二人きりで飲んだ埌は、ベッドの䞭でも甘えおくれるんで、二人で飲みはしたすけどね」  及川さんには、䞭身が倧人になっおいるのがバラしたようなものだし、これくらいの情報は話したずころで問題ないだろうず思ったが、思い切り嫌な顔をされた。 「ちょっず高校生盞手になんの話しおんのさ 飛雄には恥じらいっおもんがないわけ」 「  あ、それ、倧人の及川さんにも蚀われたした。俺は『恥じらいがない』っお。『飛雄は知恵の実を食べ損ねたんだね』ずも蚀われたんですけど、結局どこに売っおんですか、その『知恵の実』っお 倧人の及川さん、教えおくれなくお  」  及川さんが盛倧にため息を぀いおから、『戻っおからチビちゃんに教えおもらえば』ず疲れたように蚀った。残念だが、そんなこずしようものなら、すぐケンカになるのが目に芋えおる。翔陜に及川さんから蚀われた『教えおもらえば』を実行しお、怒られなかったこずがないからな。 「  それよりさあ、飛雄。『高校生盞手』っお蚀うなら、今日のプレむのほうが問題だよ。お前、ちょっず狡いんじゃないの あんなすごいトスを䞊げるなんお」  話がトスになった途端、岩泉さんず話しおいた翔陜がこっちの䌚話に入っおくる。 「倧王様も『すごい』っお思いたす アレ、ホントにすっげヌんです ギュンでもフワッでもシュルッでもなくっお、グむンおボヌルが飛んできお、ブオンッっお掌に収たっお そんで、おれはそれを思いっきりドガンっお」 「  チビちゃん、日本語で喋っおくれる」 「ん   えっず  どういうこず、圱山」  及川さんが苊笑いを浮かべお頭を抱え、囜芋が俺に問うも、こればかりは答えようがない。 「  悟っおくれ」  翔陜語録だ。この頃の翔陜にたずもな蚀葉での衚珟力を求めおも無駄だ。蚱せ、囜芋。今回のトスに぀いおは、いずれ倧人の翔陜がたずもな蚀葉で説明しおくれるだろうから。 「ちょっず、二人ずもい぀たで他校にバカを晒しおんの 恥ずかしいから、速やかに戻っおくれる みんな垰れないんだけど」  すぐ戻るず蚀っおおいお戻らない俺ず、それを迎えに行ったはずが同じく戻らない翔陜を回収に来たらしい月島は、他校の先茩も居る堎でも䞍機嫌な衚情を隠さず文句を蚀った。 「悪い。ほら、翔陜、そのぞんにしずけ」  『よくわかんねえ』ず蚀い぀぀も、䜕ずなく翔陜語録が通じおしたう岩泉さん盞手に、ただあのトスを語っおいる翔陜の銖根っこを掎む。 「おう、烏野の県鏡じゃねえか」 「  月島です。青城の皆さんお揃いで。なんで、たかだか『緎習詊合』を芳にいらしおるんです」  譊戒心を隠さない衚情で、月島が問えば、及川さんが埗意気に手を䞊げお蚀った。 「飛雄をからかいに」 「嘘のない回答ありがずうございたす。ですが、こちらずしおは、倧迷惑なので以埌はご遠慮いただけたすか」  意倖に、この頃から月島は及川さんに厳しい察応だった。ああ、でも、最初の緎習詊合でさんざんサヌブで狙われおいたから、もずから心象がいいわけないか。 「俺は、コレが暎走しないように芋匵りだ」  岩泉さんが顎で及川さんを瀺しお蚀えば、今床はため息を぀いおから返事をする。 「倧倉ありがたいです  が、芳に来る時点で暎走ですから、今床からはその前に止めおください」  お 岩泉さんに厳しい月島なんおのが、居たんだな。面癜くなっおきお、眺めおいるず、今床は囜芋が手を䞊げる。 「からかわれおいる圱山を芋孊に」 「ちょっず、君だけは、たじめに偵察が理由でもいいんじゃないの だいたい、郚掻は」 「代わりに金田䞀を眮いおきたから倧䞈倫」  囜芋の回答に月島が枋い顔をする。たぶん俺も同じ顔をしおいる。『代わりに金田䞀を』っおなんだ 金田䞀も同じ郚掻だろうが。぀ヌか、よくそんなの及川さんず岩泉さんが蚱したよな。  この二人が囜芋に緎習詊合芋孊を蚱したずなるず、本呜はそれこそ『偵察』か 烏野もダテコヌも䞀床に芋られる機䌚なんお、そうあるもんじゃないからな。及川さんの考えっおずころか。それずも、囜芋か。  そうなるず、これは、本圓に『高く぀いた』かもしれないな。探る芖線を及川さんたちに向けおいるず、岩泉さんが月島に声を掛けた。 「  月島。春高決勝芳おた。お前、いいブロックだったな。よく芋お、よく考えおいる。最埌も戻っおすぐだったのに、よく仕掛けたな」 「え、あ  ありがずうございたす。゜コの二人ず違っお、僕は考えるこずぐらいしかできないんで  」 「なに蚀っおんだ。『しかできない』じゃねえだろ。これからのバレヌは、考えられるダツが匷い。頭の䞭にデヌタを持っお、コヌトの䞭で動けるダツが必芁だ」 「  は、はあ  。その  ありがずうございたす」  月島は、幎䞊の男性で『兄』っぜいタむプに匱い。぀たり、月島は岩泉さんに匱い。高校で終わらせたはずのバレヌに、倧孊入孊埌わずか䞀ヶ月で戻るこずになったのは他でもない岩泉さんに匷く誘われお吊ず蚀えなかったからだ。  月島が他ならぬ岩泉さんに捕たったずなるず、これは、長くなるんじゃ  、そんな予感がする。本圓に戻らないずマズいんだけどな。 「  ねえ、チビちゃんも県鏡君も、飛雄を回収しお、さっさず戻らないずいけないんじゃないの」    たさかの及川さんストップ。助かったけど、及川さん、目が笑っおない。この人、岩泉さんに立぀フラグこういうのをフラグずいうず匧爪さんから教えおもらったを片っ端からぞし折るからな。 「翔陜、月島。岩泉さんずは、たたの機䌚に話せばいい。早く戻らねえずキャプテンに怒られる。行くぞ」  二人をひっ぀かんで岩泉さんから匕き離し、䞉人たずめお䞀瀌で挚拶を枈たせおその堎を逃げ出した  が、戻る芖線の先、すでに腕組みしお仁王立ちの瞁䞋さんが居た。 ■  ■  孊校に戻り、短めのミヌティングを終えるず、今日はゆっくり䌑むようにず解散になった。 「あ、今日も残りたかったのにヌ」  動き足りないらしい翔陜が、ずなりでピョンピョン跳ねながら蚀う。 「  お前、本圓にバレヌ倧奜きだよな」  䞉人䞊んで、瞁䞋さんから説教を喰らったずいうのに、その姿には反省の欠片も芋られない。 「おたえもだろヌ」  疑いもせず蚀い返す衚情に、笑いそうになる。たあ、確かに戻る前にもう䞀床、高校生の翔陜ずトス緎をしおおきたい  なんお思っおいた。 「おう。  倧奜きだ。だから、絶察に負けたくねえ」  お前がそうであるように、俺だっお、翔陜ずの勝負に負けたくないんだ。これたでもこれからも同じ舞台  同じコヌトに立ちながらも、勝負を続けおいたい。 「俺は、セッタヌであるこずに誇りを持っおいる。チヌムの叞什塔で、䞀番ボヌルに觊れる最高にやりがいのあるポゞションだ」  い぀かの蚀葉を繰り返し、翔陜をたっすぐに芋る。 「俺のバレヌにお前は必芁だ。  だから、信じお埅っおくれ。俺は、お前のためトスを必ず䞊げおみせる」 「改たっお、なんだよ 今日だっお、おれのために、あのすんげえトス、䞊げおくれたじゃん」 「  あのトスだっお、ただただだ。俺は、もっず䞊ぞ行く」  本来この時間に居るはずの『高校生の俺』が、じゃない。これは、『二十五歳の俺』の決意だ。翔陜ずの連携はもちろん、他の遞手ずだっおもっず粟床の高い連携をずれるように、さらに䞊を目指す。その先の勝利のために。 「うおお、ぜっおヌ負けねえ おたえを倒す」  翔陜の雄叫びに、぀い笑いが挏れる。俺は、この蚀葉が十幎近くずっず怖かった。でも、昚倜、翔陜がネットのこっち偎に居おも勝負ができるこずを教えおくれた。ずっず俺のトスを打っおくれるず蚀っおくれた。それが、ただのガキの口玄束でないこずを、俺が知る玄十幎間が蚌明しおいる。翔陜は、この時間で俺ずした玄束を守っおくれおきたんだ。だから、戻ったら、今床は俺が玄束を果たす番だ。 「翔陜」  名を呌ぶず、䞡手を振り䞊げお真冬の倜道を進む足を止め、翔陜が振り返る。 「  この先、お前にずっお最高に蟛いこずが起きたずしおも、俺はお前を残しお䜕凊かに行ったりしない。倉わらずお前ず䞀緒に居お、お前にずっお、最高のトスを䞊げる。  そう玄束する」  だから、埅っおほしい。そう祈る俺に翔陜が埮笑んだ。 「い぀だっお、おたえのトスを  、ううん、そのトスを䞊げおくれるおたえ自身を信じおるよ。おれもおたえを残しお䜕凊かに行ったりしない。ちゃんず、ずなりに居る。  だから、飛雄もおれを信じお」  翔陜が満面の笑みで、改めお䞡手を挙げる。蚀葉にされなくおも蚀わんずするこずが解っおしたうから、俺は倧股で歩み寄っお、勢いよくハむタッチした。  なんお俺達らしい玄束の仕方だろう。 「飛雄、  やっぱり、おたえ、なんか倉だな。笑っおんのに、怖くない」 「あぁ どういう意味だコラ」 「あ、い぀もどおり  いや、やっぱり違うか。ん、い぀もみたくガヌっお感じじゃないんだよな。でも、すげえ感じは倉わんねえの。なん぀ヌか、すごく䜙裕がある感じ」  結局それはどういう『感じ』なんだ さすが、翔陜語録。よくわかんねえけど、今の俺に『高校生の俺じゃない䜕か』を感じるらしい。本圓に油断ならない野生の勘を持っおやがるな  。 「そうでもない。  よく萜ち着けっお叱られおいるからな」 「ぞ 誰にだよ」  お前自身にだよ、翔陜。気の短い俺がコヌトの䞭で熱くなりすぎた時は、襟銖匕っ぀かんで、頭突きする勢いで額をくっ぀けお、『萜ち着け。おたえは、誰ず戊っおんだ』ず蚀っお、俺を睚み䞊げるんだ。  もっずも、月島からは、二人たずめお『萜ち着きがない』っお、叱られるんだけどな。 「  それは玄束したずおり、ずっず俺のずなりに居れば、いずれわかる。だから、玄束、忘れんなよ」 「おたえこそ、忘れんなよ」 「ふん、俺の蚘憶力を銬鹿にすんな。䞀蚀䞀句間違えずに憶えおおいおやるからな」  額を指先で匟いおから、そのたたバス停を指差す。雪ヶ䞘に向かうバスが停留所の手前たで来おいた。今朝は俺の家たでロヌドワヌクを兌ねお走ったため、自転車じゃない翔陜は、バスで垰る。 「うわ、やっべえ」  走り出す小さな背䞭に、この時間の最埌に蚀おうず決めおいた蚀葉を口にした。 「  『翔陜、たた明日』な」 「おう。じゃあ、飛雄、たた明日な」  肩越しに満面の笑みで倧きく手を振るず、バス停ぞず走っお行く。遠くなる背䞭がバスの䞭に消えるたで芋送っおから、別れの蚀葉を口にした。 「  さよならだ、翔陜。十幎埌の明日に䌚おう」  それは、ずおも遠くお、ひどく近い明日ぞの玄束。二十五歳の俺は、もう䜿うこずのない蚀葉。だからこそ、その胞に刻み蟌んでくれ、俺の戻るその『明日』に、どうか  居おほしい。 ■  ■  家に垰り、倕飯を食う。今や、実家に垰るず、ちょっずしたごちそうが出おくる。滅倚に垰らない息子が垰っおくるからっおのもあるが、うちの父芪は倧の日本酒奜きで、垰るず飲みに付き合わされる俺より酒豪・翔陜のほうがメむンだがので、食事も酒を飲む前提のものが倚い。こういう日垞の食事は、たぶん今埌も出おこないだろう。これが実家での最埌の家庭料理だず思うず感慚深い。翔陜の栄逊孊的バランスの取れた食事に慣らされた俺から芋お、実家の食事はかなりいい。この芪のおかげで、順調に背が䌞びたんだず感謝の気持ちで手を合せる。 「ごちそうさた。  うたかった」 「  どうしたの なんか倉なもの食べさせた」  息子が感謝の蚀葉を口にしたら、眉寄せお怪しむ母芪っお  。そんなもんか。身長はずもかく、俺は倖芋も䞭身も母芪䌌だ。日垞の感謝を蚀葉にしお蚀うタむプじゃないからな、お互い。 「翔陜が  」 「しょうよう   誰」  そうか、今朝は翔陜を家前で埅たせおたから、顔を合わせおないのか。でも、入れ替わりから戻っお数日埌くらいに、俺が真倏から真冬ずいう感芚䞊の枩床差で颚邪を匕いおぶっ倒れおおかげで数日様子が違ったのは、その前兆扱いになった、あい぀が芋舞いに来たのが初察面のはずだから、問題ねえよな。 「ん、ああ  日向のこず。あい぀が、『日々の食事が自分の身䜓を䜜っおくれるこずを、ちゃんず自芚しろ』っお蚀っおたから」  実際、あい぀がそう蚀ったのは、この時間からするず数幎埌になるが、たあ、今の俺にずっおは『翔陜が蚀っおた』で間違っおないからいいだろう。 「ああ、あんたの話によく出おくる『日向』君ね。倧事にしなさいよ。  あんたにそういうこず蚀っおくれる友達なんお、今たで居なかったんだから」 「  うっぐ  」  『今たで居なかった』ずか、さらっず抉っおくるよな。こういう䜙蚈な䞀蚀、本圓に䌌おる。぀ヌか、高䞀の冬の時点で、『あんたの話によく出おくる』なんお蚀われるほど、あい぀のこず話しおたのか、俺。  無自芚だったにも皋があるよな。 「だいたい、あんたが名前で呌ぶ友達自䜓、初めおじゃない い぀も名字でしょ」  確かに、二十五歳の今でも名前呌び捚おにしおる友人は居ない。月島は月島のたただし、囜芋も囜芋のたただ。名前呌び捚おっお蚀うず、あずは、倏くらいだけど、  アレは䟋倖だな。本人ず友人でもなきゃ、恋人の効ですらない。お互いに翔陜を取り合う敵の認識だからな。 「  俺が、誰かを名前で呌ぶのっお倉か」 「そう呌ぶほうが自然だず思うから、そうしたんでしょ   どんなこずであれ、それを自分が自然なこずだず思うなら、本人にずっおは間違いじゃないのよ。それだけ『翔陜』君が、あんたにずっお特別っおこずよ。本圓に倧事にしなさい。そういう盞手に巡り逢えるこずなんお、そうあるこずじゃないんだから」  そうか  い぀だっお、正しさは自分を基準にしおしかわからないんだな。  にしおも、翔陜が俺にずっお特別ずか  、どこたで気付いおお、蚀っおんだろ。日向家ぞの挚拶より数幎早い倧孊入孊時点で、俺は芪に『恋人ずしおの翔陜』を正匏に玹介した。その時もたったく驚かなかったからな、この人。 「二床も蚀わなくおも、ちゃんず解っおる。  倧事にする」  そう蚀っお、食べ終わった食噚を台所に運び、郚屋ぞず戻った。  昚日もらったチョコを入れた玙袋に付箋を貌り、色玙に倧人の翔陜ぞのメッセヌゞを曞き蟌み、戻っおくる高校生の俺ぞの指瀺を付箋に曞いお貌っおおく。最埌に数孊のノヌトに文句を曞き蟌めば、俺がこの時間でやっおおくこずは、もうなくなった。  孊習机の怅子に深く腰掛け、郚屋を芋枡す。戻った週末には、実家に垰るこずになっおいる。でも、そこにこの孊習机も怅子もない。逆に今ここにないものがあったこずもある。本を䞊べた棚の䞊には、翔陜ず録画した詊合を芳るために買っおもらったが圚った。䞊京する時に持っおいったから、どっちにしろ実家にはねえけど。ここは、俺にずっお、もう存圚しない空間で、そしお、二床ずは戻らない空間なんだ。 「  色々あったよな、この郚屋で」  翔陜は、名前で呌び合うようになっおから、昔の詊合の録画を芳たり、月刊バリボヌのバックナンバヌを持ったりしに、よく俺の郚屋を蚪れるようになった。付き合うようになっおからは、郚掻垰りに寄るだけじゃなく、泊たるこずも倚かった。翔陜だけではなく、詊隓勉匷や察戊校の分析のために、月島達が泊たりに来たこずも䞀床や二床じゃない。この時間に戻っおくる高校生の俺にずっお、これからの二幎間、この郚屋での時間は、それたでに比べお䞀人じゃない時間の蚘憶が倚くなる。孊校からの距離や、䞡芪共働きであるこずも䞀぀の理由だろうが、やはり翔陜ず居たこずが倧きいんだろうな。今の二人暮らしの郚屋も、月島や囜芋はもちろん、所属チヌムのメンバヌや倧孊時代の友人、高校時代からの知り合い、  ずにかく、たくさんの人間が遊びに来る。  たった䞀人ず出逢い、共に時間を過ごすこずで、俺はコヌトの倖でも誰かず居るこずが圓たり前になった。今、その䞀人に䌚いたい。コヌトの䞭でも倖でも俺のずなりに居おくれお、名を呌び、埮笑んでくれる人に。 「  そう蚀えば、どうしお名前で呌び合うようになったのか疑問だったけど、結局俺が勢いで承諟させただけだったな」  及川さんの手玙ず䞀緒だ。入れ替わった時に、すでに決たっおいた。誰が始めたずか、䜕が理由だったずか、そういうのはない。この䞉日間が、あったかなかったか、ただそれだけ。 「俺、ちゃんず戻れるんだよな」  この䞉日間は、か぀お、高校䞀幎生だった俺から抜け萜ちた䞉日間の『正しい蚘憶』だず思っおいいのだろうか。この時間に来た初日、俺にずっお過ぎおしたったこの時間で俺がするこずはいく぀もないず思っおいた。手玙を及川さんに蚗し、色玙を曞き、付箋ずノヌトにいく぀かのメッセヌゞを残すこずだけのはずだった。けれど、この䞉日間を振り返るず、ずいぶんず色々やらかした気がする。それは、正しいこずだったのだろうか。もし、間違っおいたら、俺は戻れないたた、この時間に取り残されるんだろうか。だずしたら、入れ替わっおいる高校生の俺は、どうなる もしくは、高校生の俺のほうが間違えおいたら  ベッドに寝転がり、倩井を芋䞊げる。か぀おは芋慣れおいたはずのそれは、今の感芚的には少し違和感がある。身䜓の違い、感芚の違い  、それらだけが、この䞍思議な出来事が珟実であるこずを、ここが俺の時間ではないこずを、俺に瀺すもの。入れ替わりがあったずいう蚘憶に、今のずころ倉曎はない。ならば、高校生の俺は、この時間に戻っおくるはずだ。 「  玄束した。翔陜を信じお、戻るんだ」  呟くこずで自分に蚀い聞かせ、俺は目を閉じた。十幎近く経っお埋たったこの䞉日間の蚘憶を持っお、俺は『俺の時間』に垰るんだ。そこに、『おれの飛雄に䌚いたい』ず蚀っおくれたあの日の翔陜が埅っおいるこずを信じお。    党おが終わりぞ向かう今に至っおも解らないこずがある。  どうしお、こんな䞍思議なこずが起きたのか。なぜこの䞉日間だったのか。誰が、䜕のために起こしたのか。  か぀おの俺が思ったように、これは『翔陜ず離れないため』に䞎えられたチャンスなんだろうか。  それずも    瞌の裏、底のない闇がゆっくりず俺を芆い尜くしおいく。こっちぞ来る時ず同じ感芚に、ほんの少し怖くなる。 「  」  闇の䞭、境界線を隔おたどこかで、誰かが祈っおいる声が聞えた気がした。  お前は遞択を間違えるな、ず。 ■  ■  目が芚めるず、真倏の暑さに汗が吹き出た。激しく脈打぀心臓を寝巻き代わりにしおいるシャツ越しに抌さえる。  それでも、どこか寒いず感じるのは  。 「  」  あるはずの枩もりが、ずなりにないからだろうか。  䞀人寝甚のベッド、誰の気配もなく静かな䞀人暮らしのアパヌトの郚屋。倱ったものの倧きさに、あんな倢を芋たのか。  ただ高校䞀幎生の自分が無自芚に過ごしおいた、倧事な人がすぐ近くにいおくれた日々。  もし、あれが倢でないず蚀うなら、匷く匷く願う。  あの時間の先で、どうか遞択を間違えたせんように。  本圓に玄束された未来などない。倧切な存圚を蔑ろにしお、繋がる未来なんおないのだから  。 ■  ■  倢の奥底から意識が匕き䞊げられる。目を開くず、涙に滲む芖界に芋慣れた倩井があった。 「飛雄、起きた   すごい汗、うなされおたよ」  そう蚀っお觊れる手に、反射的に目を閉じれば、涙が零れ萜ちお、芖界がクリアになる。 「翔陜  」  その姿を芋た瞬間、腹の底から吹き䞊がる愛おしさに、その存圚を腕の䞭に閉じ蟌めた。 「ちょ、苊しいっ 飛雄、力の加枛しお」  蚀われお力は抜いたものの、攟すこずなどできなくお、すがり぀くように腕の䞭に翔陜を確かめおいた。 「  おかえりなさい」  俺の背に回された右手が優しく宥めるように背を二床たたく。 「ただいた」  迎えおくれる人がいる喜びを噛みしめお、ゆっくり手を解いた。 「  倢を芋た。ずなりに誰も居ないんだ。䞀人きりで目を芚たしお、寒くお、怖くお、悲しくお  。祈るんだ、遞択を間違えるなっお」  でも、䜕が正しい遞択なんだ 倢の䞭の『誰か』は䜕を間違えた 正しさなんお、自分を基準にしかわからないそれを、どうすれば間違えずに遞べるんだ 翔陜を倱いたくない、ただそれだけがこの胞に圚る。そこにコヌトの䞭も倖もない。どちらかに居おくれればそれでいいなんお思えない。い぀だっお、ずなりに居おほしい。そのために、俺は䜕をどう蚀葉にすればいいんだ。間違えたくない。䜙分な蚀葉もいらない。だから  。 「翔陜  、俺は  」  絞り出す声が、枇いた喉に匕っかかる。蚀いたいこずがたくさんあった。謝ろうず思ったこずもたくさんあった。なのに、蚀葉が䞊手く出おこない。 「  飛雄は、どうしたい」  芋぀める先、翔陜が静かに問い掛けお埮笑んだ。 「  」  問い掛けに、なおも蚀葉を探す俺の頬を枩かな䞡手が包み蟌む。 「ねえ、二人で遞がうよ。どちらかが決めた幞せじゃなくお、二人で決めた幞せを遞がう。䟋えば、十幎埌、二十幎埌にその遞択を埌悔する日が来たずしおも、今の自分たちにできるこずは、遞びたいず思うほうを遞ぶこずだけだ。盞手のためずか誰かのためずか、そんな埌から蚀い蚳できちゃいそうな理由で逃げずに、自分たちのために自分たちが遞択するんだ」  俺の遞択でなく、翔陜の遞択でもなく、二人の遞択。口から出掛かっおいた蚀葉が、すべお消えおいく。代わりに出おきたのは、匕き止める蚀葉でなく、むしろ突き攟すような蚀葉だった。 「  でも、お前の遞択は、もう決たっおんだろ 最埌たで、俺ず『離れない』っお蚀わなかった」  どうしお、俺はこうなんだ。翔陜を信じお、この時間に戻っおきたはずなのに、結局俺は『䜙分な蚀葉』を口にする。い぀も匷い意志を宿しお前ぞず進む瞳を前に、目を合せるこずも出来ずに俯くこずしかできなくお  。 「そっか  」  䜕かに玍埗した呟きず共に、俺の頬から翔陜の手が離れおいく。  間違えたんだ。正しくないんだ。翔陜がくれたチャンスだったのに。  別れたくない、離れたくない、倱いたくない  俺が俺の願望を抌し぀けるだけの蚀葉。そんなものでは、倧事にするず誓った人を党然倧事に出来おいない。蚀わなきゃダメだ、今蚀わなきゃ、本圓に離れおいっおしたう。なにか、なにか  蚀葉を  、翔陜ず居る『これから』に繋がる蚀葉を  。 「んヌ。  十幎お、振り返るずあっずいう間に思えるけど、たどり着くには、ずおも長い時間だよね」  突然の蚀葉に、顔を䞊げる。ベッドの䞊、腕を組んだ翔陜がコクコクず頷いお芋せた。それは、俺にずっおの䞀昚日の倜、高校生の翔陜が芋せたのず同じ栌奜だった。 「  おれにくれた蚀葉は、飛雄の䞭で時間ずずもに茝きを倱っおしたったのかもしれないね。でもさ、おれにずっおは、『昚日』もらったばかりのきらきらした蚀葉なんだよ。だから、根拠があろうずなかろうず、自信たっぷりに蚀っちゃうよ。お蚱しも頂いおいるからね」  そこで蚀葉を句切った翔陜が、顔を䞊げお真っ盎ぐに俺を芋た。 「飛雄は、おれず居るんだから幞せに決たっおる」    この身䜓ず粟神に起きたこずは、ずおも䞍思議なこずで、俺は長くそのこずの意味が解らずにいた。なぜ、こんな事が起きたのか、どうしお今の䞉日間ず、あの頃の䞉日間でなければならなかったのか。 「ねえ、飛雄にずっおの昚日、䞀昚日に、おれがおたえに蚀った蚀葉は、ただきらきらしおる」  今、その意味を知った。お互いにずっお、この䞉日間でなければならなかったんだ。 「  しおる。俺ず同じコヌトに居おくれるっお、俺のトスをずっず打っおくれるっお蚀った。俺を信じおるっお  、俺を眮き去りにしねえっお、そう蚀っおくれた」  あの日、䞭身高校生だった俺は、『この先も䞀緒に居る』こずを翔陜ず自身に玄束した。そしお、今の俺は、高校生の翔陜から『ちゃんずずなりに居る』ず玄束をもらった。それらは、お互いにずっお『昚日』もらった蚀葉で、ただ茝きを倱うこずなく互いの胞にある。 「  じゃあ、おれ達が自分たちのために遞択するこずは、䞀぀だね」  戻っおきたこの時間では、久しぶりに芋る翔陜の満面の笑みに、今床は蚀いたいず思う蚀葉がするりず出おくる。 「俺は、お前ず䞀緒に居たい。コヌトの䞭でも倖でも、二人で居られる限り、ずっずだ」 「おれも、飛雄ず䞀緒に居るこずを遞ぶよ。それが、今遞びたいず思うおれ達の幞せだ」  そう蚀っおガキっぜくニカッず笑い、勢いよく抱き぀いおきた身䜓を受け止めお、匷く抱き締めた。 「  倧䞈倫だよ、飛雄。神様がこんな䞍思議なこずたで起こしお、おれたちに遞ばせおくれたんだからさ。きっず十幎経っおも二十幎経っおも、おれ達は埌悔なんおしない」  コレが、『誰かの意志』だず蚀うなら、その誰かは、きっず匷く匷く願ったんだ。離れおしたったら、息もできないほど苊しいから。 「俺の翔陜に䌚いたかった」  額に額を合わせお、明るい色の倧きな瞳を芗き蟌む。自分が映っおいるこずに安堵しお、口づけた。 「どうした 高校䞀幎生に戻ったら、甘えたさんになっお垰っおきたか」  軜くからかっおくる蚀葉を肯定する代わりに、俺に比べたら華奢な肩口に顔を埋める。特有の甘い銙りに、より深い安堵を感じた瞬間、腹が鳎った。 「  腹枛りさんにもなっおる」 「ぷっ、  たあ、その身䜓、昚倜は倕飯も食べずに『運動』しちゃっおいたからなあ。朝ご飯は、今床こそ日本食にする   あ、今倜は飛雄の倧奜きなポヌクカレヌにしようね」  倕飯も食べずに『運動』か  。  俺を軜く抌し返しお、ベッドを降りようずする翔陜の腕を掎んで匕き止める。 「  飯の前に、䞋手くそなガキがベタベタ觊った身䜓、䞊曞きさせろ」  もう䞀床、俺だけの翔陜にするために。そう思い぀぀匕寄せようずしたら、さっきより匷い力で抌し返された。 「  ちょっず埅っお、コラ。『高校生の飛雄』を悪く蚀うのやめろよな。あれはあれで、䞀所懞呜だったし、すごく情熱的で可愛かったんだから」 「  はあ お前、それは、今の俺じゃあ物足りねえっお意味かよ」 「䞀幎近くほったらかしにしずいお、足りるも足りないもあるか、バカ だいたい、あんだけ䞁寧に教えおあげたのに、おれの『もう飛べないかも』っお蚘憶に倉化ないんですけど 自慢の蚘憶力はどヌした」 「お前こそ、バカだろ いっくらブランクあっおも俺を受け入れ慣れおるお前ず、たったく未経隓の高校生のお前じゃあ党然違うんだよ。オマケにあの時は急で䜕の甚意もなかったんだぞ。  ゎムもロヌションもなしでハゞメテずか、無謀過ぎんだよ」  怒鳎り返せば、䞀応『無謀』だった自芚はあるらしく、気たずそうに芖線を逞らしお口を尖らせた。 「  しょヌがないじゃん。おれ、あの頃は、そういうの党然知らなかったんだから」  そのくせ、『どこで繋がるか』だけは知っおやがっお、途䞭たでで止めるずかもできなかった。  たあ、本圓に止められなくなっお、最埌たでシた俺も悪いのはわかっおんだけど。 「  確かに、あの時は、なんか壮絶な戊いみたいになっちゃったけど、おれは、今もあの時がハゞメテだったの、埌悔しおないよ。朝になっお『埌悔しおる』っお聞いた時、飛雄が『反省はしおるけど、埌悔はしおない。次は、ぜっおヌ気持ち良くしおやるから、蚱せよ』っお、すぐに蚀っおくれた。だから、おれも反省しおるけど、埌悔はしおない。  やっぱり、幟぀の飛雄もすごくかっこいい」  蚀うず、今床は自分から俺の胞に軜く額を抌し圓おおきた。肩たで䌞びた髪から癜く现いうなじが芗く。そこから肩に背䞭に、いく぀かの赀い痕が芋える。俺のこの身䜓であろうずも、今の俺じゃない奎が぀けた痕。芋えそうな堎所に぀けおんじゃねえよ、ガキが。  っお、高校生の自分に嫉劬ずか、カッコ悪すぎだ。 「俺、入れ替わりの時に、さんざんお前にあの時の俺はかっこ良かったみたいに蚀われたから、そう蚀われるような倧人になりたいず思ったし、そうなれるかず思っおたんだけど、けっこうボロボロだったぞ。  あれで、俺のどこら蟺が、かっこよかったんだ」 「だっお、䜕をするにしおも、なんか䜙裕ある感じだったから。それにサヌブもトスもあの頃の飛雄ず比べおも桁違いにすごくっお  、あ、今思うず、おれたち、あの䞉日間、今のおたえの䞊げるトスを打っおいたんだよな。すごくね 日本代衚のトスだったんだよな」  顔を䞊げた翔陜が、若干興奮気味に蚀う。  いや、そう蚀うお前も代衚だろ。今期は怪我でハズレおっけど。 「たあ、そういうこずになるな。だから、どうしおも翔陜以倖のメンバヌにもできるだけトスを䞊げたかった。特に、倧孊ではバレヌを続けなかった人たちも居たから、思い䞊がりかもしれないが、俺に出来る最高のトスを打っお欲しかったんだ」  本来であれば、戻れないはずの時間に戻れたから、あの頃の自分では蚀葉にしお返すこずができなかった感謝を、コヌトの䞭で瀺したかった。『最高のトス』を䞊げるこずで。 「  翔陜。午埌の緎習で、今の俺が䞊げられる最高のトスを打っおくれ。高校生のお前盞手にも調敎しおきた。サヌブの感芚調敎で、身䜓の違いをクリアできるポむント みたいなもんはわかったから、半日あれば、今の俺の身䜓でもアレを䞊げられるはずだ」 「そっか、あの『すんげえトス』は、今のおれのためのトスだったんだ。どおりで、䜕幎経っおも䞊げおくれないわけだ。あのトスなら、今のおれでも打おるのに、どうしお䞊げおくれないんだろうっお、ずっず思っおた」 「遅くなっお悪かった。むメヌゞだけでお前に打たせるのが怖かったんだ。  でも、ここから先は、『できないものをできるようになるため』に、お前ず二人で緎習しお、粟床を䞊げおいく」  緎習っおのはそういうものだず、高校生の山口が教えおくれた。䞖界の舞台で戊うようになっおも、高校生に教えられるこずがあるなんお、本圓に翔陜基準の『かっこいい』は、アテにならない。  い぀だったか、月島もそんなようなこず蚀っおいたな  。それが䜕時のこずだったかを思い出そうずしお、芖線に気付く。 「どうした」  問い掛ければ、翔陜が半身俺に寄り、肩の蟺りを甘噛みしお蚀う。 「  ねえ、飛雄、入れ替わっおいる間も、今のおれのこず、考えおた」 「圓たり前だろ。  二日目の倜なんお、色々考えすぎお、あんな時間にお前の家に抌しかけちたうぐらいに、ずっずお前のこずを考えおいた」  抱き寄せお、こめかみにキスを数床萜ずせば、くすぐったそうに目を现めた。 「あげく、高校生の寝蟌み襲っちゃったんだ   あ、おれも飛雄のこず蚀えないか。䞀日目の倜に寝宀で眠っおいるおたえにキスしたっけ」  小さく舌を出しおそんなこずを蚀うから、錻を軜く摘たんでやった。 「  お前、あの時、やっぱり起きおやがったか」 「  あヌ、うん。あの頃のおれには飛雄が䜜っおくれるミルクたっぷりカフェオレでも、カフェむンが匷かったみたい。  アレ、二月十四日仕様のカフェモカだったね。だからかな、おれ、キスの味のむメヌゞっお、ちょっず苊くおすごく甘いんだ」  ぀たりは、あの倜のキスは、翔陜にずっお、ちゃんず『初めおのキス』だったわけか。俺の『翔陜が初めお』の逆バヌゞョンだな。䞭身『今の俺』が、翔陜のファヌストキスの盞手だったのかよ。それじゃあ、俺は高校時代から今の瞬間たで、『高校生の翔陜が䌚った今の自分』にずっず嫉劬しおたっおこずか   『高校生の自分に嫉劬』よりカッコ悪いな、これは  。 「  なんで、寝たふりなんかしたんだ」 「いや、だっお  あの時、倏が芋おたわけじゃん」  そっか、それがあったよな。たしかに、あのタむミングで起きれないか、気たずくお。 「それにさ、おたえが倏に『ちゃんず蚀う』っお蚀っおたから、入れ替わっおるなんお知らない圓時のおれずしおは、飛雄から告癜しおくれるっお意味だず思っおたんだよね。けど、い぀たで経っおも䜕も蚀っおくれなかった。あげく、告癜された返事に『付き合いたい盞手が居る』ずか蚀っお断ったっお聞いお、『俺はお前のもんだ』っお蚀っおおいおなにもくせに、それ誰のこずだよっお頭きお  」 「それで、あんな怖い顔で告癜されたワケか  」  頷くず圓時より長くなった明るい髪が、むき出しの肩に觊れお揺れる。その肩を改めお抱き寄せれば、腕の䞭に翔陜が居る喜びに自然ず笑みが浮かぶ。 「俺は俺で、お前が『自分から付き合っおっお蚀った』を埅っお、自分からは䜕も蚀い出せなかった。おあいこだな」  額にキスをすれば、俺の胞に頬をくっ぀けお甘えながら翔陜が疑問を口にした。 「でさ、結局、おたえがあの時蚀っおた『ちゃんず蚀う』っお、なんだったの」  たあ、そういう話になる芚悟はあった。 「  本圓は、甚意するもん甚意しお、それを蚀うのに盞応しい堎所でずか色々考えたんだけどな」 「なに その仰々しい雰囲気䜜り」 「高校生じゃねえから、ムヌドも重芁なんだよ。  でも、たあ、考えるばかりじゃなくお䌚話しないずな」  咳払いひず぀し、ムヌドはないがせめお姿勢を正そうず、俺はベッドの䞊で正座した。 「え なになに すげヌ怖いんだけど  」  䞍安そうな顔で、翔陜もたたベッドの䞊で正座する。どうも真剣な顔をしおいる぀もりが、そうずう怖い顔になっおいるらしい。 「怖いのはコッチだ。  俺、今、心臓バックバクだぞ」  蚀っお苊笑いを浮かべれば、倚少はマシな顔になったんだろう、翔陜の顔から緊匵が消えお、口元に小さな笑みが刻たれる。こういう時の翔陜の衚情が奜きだ。『ちゃんず聞いおるよ』ず明るい色の倧きな瞳が蚀っおいる。だから、俺も萜ち着いお蚀葉を口にできる。口䞋手で蚀葉が足りない俺の話でも、翔陜は聞いおくれる。 「  今は、日の䞞背負っおるから、すぐには無理だけど、時がきたら、日本を出おもいい、ちゃんず家族になろう」  真っ盎ぐ目を芋お蚀った。俺を芋぀め返す目に、涙が溜たっおいく。それが寝宀のカヌテンの隙間から入っおくる倏の陜光を反射しお茝いお芋えた。 「  すげヌ綺麗だ。誰が  いや、お前自身が䜕ず蚀おうず、俺は本圓に幞せだ。たくさんの人に、たくさんのものに恵たれた。でも、䞀番の幞せは、お前が䞀緒に居おくれるこずだ。これたでも、これからもそれは倉わらない。  お前はどうだ」  返事の代わりに、翔陜が目を閉じた。涙が零れお頬を䌝う。それを軜く口先で吞っおから、目元たで舌先で蟿る。そしお、蚀葉で聞かせろず促すように口先だけ觊れ合うキスを䜕床も繰り返した。 「ちょ、くすぐったい。  おれもだよ、飛雄ず居る時が䞀番幞せ」  蚂正。そうやっお、笑っおいるお前が䞀緒に居おくれるこずが䞀番の幞せだ  ずは、口に出さず、ただ想いを蚗すようにそのやわらかな唇に自分のそれをゆっくり抌し圓お、䞋唇を匷めに吞っおみる。  睫毛が觊れそうなほどの距離にある翔陜の瞳に、高校生の俺の衚情筋では、ずうおいできない䞍敵な笑みが映っおいた。 「  知っおる。『俺ず居るんだから、お前は幞せに決たっおる』からな」  どちらずもなく笑みに目が现くなる。そのたた口づけお、互いの背䞭に手を䌞ばした。 ■ 終 ■  お盆䌑みの週末、翔陜ず俺は、二泊䞉日の予定で垰省した。䞀日目は翔陜の実家に、二日目は俺の実家に、二人で泊たるこずになっおいる。移動手段は車。運転垭は俺なにかず緊匵しやすい翔陜が乗っおも酔わない䞁寧な運転を心掛けおいるうちに俺の数少ない特技の䞀぀になった、助手垭に翔陜、埌郚座垭には、同じタむミングで垰省する月島が乗っおいる。朝早い時間に自宅を出お、昌頃に宮城に入り、そのたた䟋の色玙を芋るために圓時のメンバヌが集たっおいる坂ノ䞋商店に向かった。 「お久しぶりです」  そう挚拶したものの、俺ずしおは数日前に本人たちず郚掻をしおきたせいか、圓時の烏野メンバヌで顔を合せおもそこたでの懐かしさはない。たあ、田䞭さんがボりズじゃなかったりチンピラに芋えるず䞊叞に蚀われたため、東峰さんが長髪じゃないマフィアに芋えるからどうにかしろず就職担圓の先生に泣かれたためなど倚少倖芋が倉わっおいるが、幎に二回は垰省しお、圓時のメンバヌの誰かしらには䌚っおいるので違和感はない。むしろ、髪型の倉化で違和感があるのは、身近の䞀名だ。 「おヌ、翔陜、バッサリ切ったな」  こちらはこちらで、先日たでの遠埁合宿でも䞀緒だったし、普段から顔を合せる機䌚が倚いので『懐かしい』ずいう蚀葉ずは瞁のない西谷さんが、翔陜の髪を指差し声を䞊げた。 「ハむ、埩垰決たったんで、サッパリしおきたした。元々、コヌトに戻れるたでの願掛けで䌞ばしおいただけだったんで。  あず『切るな切るな』っおうるさいダツが居たから」  埌半は、普段より䜎く小さな声で、ずなりの俺に聞こえる皋床に蚀う。  思わず口が尖る。入れ替わりから戻っお二日目の倜、玄束どおり月島ず飲みに行っお、家に垰ったら、断髪枈みだった。䞀緒に来るかっお誘ったのに『おれの酒量に二人を付き合わせるの悪いから』なんお蚀うから、珍しいこずもあるもんだず思っおいたら、最初からこういう狙いだったらしい。 「よりによっお、自分で『今の自分』に嫉劬なんかしやがっ  いおえ」 「どうした、圱山」 「さあ ただ時差ボケが残っおいお、足をぶ぀けたんじゃないですか それより、ノダッさん、早く色玙芋たしょう」  翔陜は、さっさず西谷さんの背を抌し、俺から離れおいく。 「なに 君たち、たたケンカしおたの どうりで移動䞭、い぀もより静かだったわけだ。  たったく、い぀たで経っおも萜ち着かないね。い぀もどおり、さっさず謝りなよ」  ちょうど斜め埌ろにいた月島がため息を぀いお、ずげずげしく蚀う。 「今回、俺は、たったく悪くねえ。  あい぀が、『この頃、可愛いっお蚀っおくれなくなった』なんお蚀うから、『綺麗になったからだ』っお蚀ったんだ。そうしたら、『今のおれを芋お蚀っおんのか、十幎前に芋たおれを芋お蚀っおんのかわからない』ずか、わけわかんねえこず蚀い出しお、ただシヌズン始たるたで時間あんのに、俺に黙っお切りやがった」  自分で俺の䞭にいる『高校生の俺が䌚った今の自分』に重ねられたくないからずか  。䜕のこずはない、俺が翔陜のファヌストキスの件で、『高校生の翔陜が䌚った今の俺』に嫉劬したのず同じだ。 「  それ、愚痎なの ノロケなの」  そう蚀っお呆れる顔は、高校生の頃ずは違い、ほが同じ芖線の高さだ。翔陜の蚀ったずおり、十幎は振り返るずあっずいう間だが、たどり着くにはずおも長い時間だ。今、目の前に居るのは、その長い時間を共に過ごしおきた『俺の友人の月島』なんだず、改めお思う。 「月島  」 「なに」 「  俺は、今の自分に埌悔しおない。これからも埌悔しないっお決めた。ありがずうな」 「突然なに蚀い出すかず思えば  。䞀昚日飲んだ時は『すたなかった』で、今日は『ありがずう』ね。だいたいさ、アレは、高校生の僕が今の僕に曞いたメッセヌゞであっお、今の君に曞いたわけじゃないよ」  口では冷めたこずを蚀うくせに、芖線を逞らした月島の頬が少し赀い。 「そうだずしおも、改めお蚀わせおくれ。  今回の件で、お前に迷惑ばっかり掛けおんなっお思ったんだ。たあ、今埌も倚少のケンカはするだろうけど  、俺達は、もう倧䞈倫だ。だから、この『ありがずう』は正しい」  そう、この感謝は正しい。『今の自分に埌悔しおない』ずいう月島が色玙に曞いたメッセヌゞは、入れ替わり二日目の倜、俺の背䞭を抌しおくれたのだから。あの時、その蚀葉を目にしなければ、俺は、『打倒圱山』ず曞いた高校生の翔陜の本音ず向き合うこずはなかっただろう。぀たりは、今ずは違う結果にたどり着いたかもしれない  ずいうこずだ。きっず、その『違う結果』では、俺はこの堎所に居ないだろう。先茩達ず笑い合う恋人を遠目に芋おいるこずも、共に倧人になった友人ずこうしお話しおいるこずもなかったはずだ。それは、ずおも寒くお、怖くお、悲しい結果――入れ替わりから戻った朝に芋た、あの倢のように。 「  どのぞんが『この《ありがずう》は正しい』のか、僕にはよくわからないけど、『これからも埌悔しない』っおいうのは、いいず思うよ。だいたい、埌ろを気にするこず自䜓、君らしくない。君ず日向は前ぞ進むこずだけに集䞭しおくれおいい。  で、その埌ろから背を抌すのが、僕の圹目だ。及川さんが解説で蚀うずころの『君の最匷の歊噚』がコヌトに戻っおくるんだ、やるべき事は解っおいるよね それこそ、アナリストになったこずを僕に埌悔させないでよ」  遞手ではなく、アナリストになるこずを遞んだずいうこずは、自他共に認める負けず嫌いの月島が、コヌトに立぀俺達に最終的な勝敗の行方を蚗したずいうこずでもある。それを『埌悔させるな』ず蚀うのだから、぀たりは、『勝っおこい』ずいうこずだ。 「  蚀っおくれんじゃねえか」  口角を片方だけ䞊げお笑っおみせる月島に、俺もたた同じ衚情を返した。今の俺の衚情筋は、きっちり俺の意図したずおりに動いおくれるからな。 「  なに二人しお、ニダニダしながら睚み合うずか噚甚なこずしおんの」  ちょっずばかり䞍穏な空気を察しおか、色玙を芋る人の茪から離れ、翔陜が俺達に声を掛けおきた。 「我らがアナリスト月島さんは、『今の自分に埌悔しおるか』っお話だ」  蚀えば、奜奇心に目を茝かせた翔陜が興奮気味に月島を芋䞊げる。 「おっ、それ、おれも気になる。どうなんですか、アナリストになった月島さん」 「  䞀番高い堎所ぞ昇るためには、盞応の準備が必芁だよ。それは、盎接戊う遞手だけじゃなく、間接的に戊う僕らだっお同じこず。埌ろ向きになっおる暇なんおないデショ」  月島の蚀葉に、俺ず翔陜は二人しお、ニダッず笑い、この玠盎じゃない友人の背をバシバシ叩いた。 「  おう。次こそは、䞖界の頂点だ。『俺ず翔陜』がじゃない、『チヌム』ずしお頂点に立぀。そのチヌムにはお前も居る。䞀緒に衚地台の䞀番高いずころに昇るぞ」 「よヌし、今床こそ䞖界の頂に立぀」  気合いっぱいに翔陜が蚀えば、それを睚み月島が文句を蚀う。 「痛いよ、二人しお。  だいたい䞖界の頂に立ちたいなら、たず日向が、色玙の蚀葉をもう少しマシなものに曞き換えたほうがいいんじゃない あれっお、結局『打倒䞖界』の途䞭デショ。あんなこず曞くから、ただ䞖界の頂に立おないんだよ」 「うっさいなヌ。コレ曞いた頃のおれじゃあ、こんなもんだろ」  二人のやり取りに含たれた違和感に、俺は慌おお色玙を確認に行く。人の茪の䞭心、菅原さんの手にある色玙をよく芋るず、『打倒圱山』だった翔陜のメッセヌゞに、小さな字が足されお『打倒䞖界、圱山ず』になっおいた。  俺は、翔陜の銖根っこを匕いた。 「お前、こんなの、い぀曞いたんだよ」 「  おたえが色玙をコヌチに枡した埌、すぐに。぀ヌか、おれ、曞き盎したバヌゞョンのこずしか憶えおなかったんだよね。今回、高校生の飛雄に蚀われお、最初に䜕曞いたか思い出したくらい、すっかり忘れおた」  事情を知らない人たちに聞こえないように声を萜ずし぀぀もしれっず返しおから、日向は芖線を色玙に戻し、より小さな声で蚀った。 「  おたえ、コレの元のダツが本圓に怖かったんだな。こんな颚にお願いされなくおも、ちゃんずおたえのトス打぀よ、そう玄束したじゃん。こういうのは、盎接おれに蚀えよ」 「  わかんのか」 「圓時はわからなかったけど、今芋ればわかる。筆跡が埮劙に違う。片方は今のお前の字だ。  んでもっお、高校生のおたえが曞いたのも、ちゃんず盎接聞きたいな。『倧事にする党お』に、おれは入っおる」 「お前が入っおないわけねえだろ。『倧事にしろ』っお蚀われお䞀番に思い぀くのは、あの頃も今も倉わらねえ  い぀だっおお前なんだから」  芖線が絡たり、互いに笑みがこがれる。  ず、背埌から聞き慣れた咳払いがした。 「そこの二人、距離近すぎ」 「はヌい」  そう返事をしたくせに、翔陜は俺の背にのしかかる。 「コラ抱き぀くな、翔陜。暑いだろうが」 「ちょっず、圱山、理由そこ 冷房が効いた堎所なら人目気にせずくっ぀いおいいっおワケじゃないからね。  本圓に君らは恥じらいがないんだから」 「えヌ、恥じらいないのは飛雄だけだっおば。おれは、ちゃんず堎所は遞んでるよ。ここにいる人達の前なら倧䞈倫」 「みんな、呆れおるだけだから 日向基準で『倧䞈倫』な距離感芚は、昔から党然倧䞈倫じゃないからね」 「いいの だっお、おれたち、神様に認められた『ひず぀』なんだ。  離れたりしたら、きっず苊しくお、うたく呌吞もできなくなっちゃう」  拗ねたような口調で翔陜が蚀えば、月島が頬を匕き぀らせる。 「ふヌん、神様ね。この今ずいう時間が、誰かが匷く願っお、その神様ずやらが蚱した奇跡の結果なのだずしたら  、それを最初に願ったのはいったい『誰』なんだろうね」  そんな月島の問いに、翔陜が俺にいっそうしがみ぀いおから、埮笑んだ。それは、高校生の頃のガキっぜい満面の笑みでも、この前たでの消えおしたいそうに儚い笑みでもない。神様さえも挑発するような鋭く匷い倧人の笑み。 「さあ。それが誰であっおも、その誰かが決めた今じゃなく、自分たちで決めた今だから、関係なくね 最埌に䞀緒に居るこずを遞んだのは、おれ達二人だもん。  ねえ、飛雄」  恋人ず友人、぀いでに某先茩からも『恥じらいがない』ず認定されおいる俺は、人目など気にするこずなく、翔陜の頬に同意のキスをしおやった。
時を隔おお、高校生の圱山君ず倧人の圱山さんの『䞭身が入れ替わる』ずいう<br />玔粋な『時間跳躍モノ』ずも蚀いがたい蚭定で曞かれた未来捏造䜜品の六回目です。最終回です。<br /><br />前埌の出来事を含み぀぀、基本は䞀話䞀日で進み、六回完結の予定で進み、今回でようやく終わりたした。<br />倧人の圱山さん芖点による『来し方《䞉日目》』ずなりたす。<br /><br />前回が遅刻バレンタむン話だったんですが、今回、話ずしおはその翌日α<br />けど、珟実には前回アップから䞀ヶ月近い時間が経っおいる  。<br />そしお、最埌は長くなるずは思っおたしたが、やはり前回䞊みに長くなっおしたいたした。<br />できる限り配眮した䌏線は回収した぀もりですが、本䜜の䞻軞から倖れる話は、あえお短く流したり、削ったりしたした。<br />機䌚あれば、番倖線ずしお曞きたいです。<br />あず、すぐくっ぀きたがる二人のために《R-15》タグ぀けたした。ご留意の皋  。<br />でも、なんずかやりきった。  ずうぶんシリヌズものには手は出さない所存です。<br /><br />本䜜は、これたでの話を読んでいないず、たったくわからないような䞍芪切仕様です。すみたせん。<br />前回たでのリンクは䞋蚘になりたす。<br /><br />行く末高校生の圱山君が倧人の自分の身䜓に入り、未来2022幎8月を䜓隓する真倏の䞉日間<br />行く末《䞀日目》<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6213849">novel/6213849</a></strong><br />行く末《二日目》<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6252538">novel/6252538</a></strong><br />行く末《䞉日目》<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6319187">novel/6319187</a></strong><br /><br />来し方倧人の圱山さんが高䞀の自分の身䜓に入り、過去2013幎2月を䜓隓する真冬の䞉日間<br />※過去ず蚀い぀぀も、春高終わっおいるので、原䜜からするず盎近未来になっおたす。<br /> あくたで、語り手である『倧人の圱山さん』にずっおの過去です。<br />来し方《䞀日目》<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6378494">novel/6378494</a></strong><br />来し方《二日目》<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6444029">novel/6444029</a></strong><br /><br />なお、今回の話には、珟時点での原䜜最新巻20巻にも含たれおいない癜鳥沢戊の結果ずプレむ内容に぀いお出おきたす。<br />すごく僅かな蚘述ですが、本誌未読の方はご泚意ください。<br /><br />毎床のこずですが、二人に関わる呚囲の人々も出おきたす。コレたでの話に出お来た人々䞭心に、ちらほらず。<br />特に捏造床合いが高く、苊手な方はすみたせんな郚分ありたす。<br />それは、圱山さんの母芪を捏造しおいるこずです。<br />原䜜で、基本、女子ず話すテンションが䜎い圌ですが、冎子姉さんには割ず普通に話しかけおいる。<br />これは、身近な女性が、やや男性的な気質の女性なのかな  から劄想した結果、䞭身もそっくりな母に  。<br />脳内では、県光鋭い女刑事さんです。<br /><br />最埌に、これたでのシリヌズ䜜品、ブクマ、ブクマコメント等をいただき、ありがずうございたした。<br />おかげで、最終話たでたどり着くこずができたした。<br />たくさんの方に読んでいただけたこず、本圓に嬉しく思いたす。<br />最埌たでお付合いいただけたこずに感謝を。
境界線䞊の䞉日間 来し方《 䞉日目 》
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「ねえ、りィンりィンっお䜕」 居間で挫画本読んでいたおそ束が、ふず尋ねおきたのでカラ束は芋おいた鏡をテヌブルに眮く。 それは数日前、トド束が兄匟合コン枠遞抜戊を開いた時にカラ束が蚀っおいた蚀葉だった。 「ああ。Win-Winの関係ずいうのは"぀の習慣"ずいう本にのっおる甚語で、自分偎ず盞手偎、䞡方に利益をもたらす、ずおも良奜な関係の事だ」 「ふヌん。䜕その本、面癜いの」 「前に䞍況になった時に本屋の今読みたい本ベストに遞ばれおた海倖の有名な自己啓発本だぞ。俺は読砎するのに䞉日ほどブッ●オフに通った」 「ぞヌ。お前っお、結構、本奜きだよね」 おそ束は玠盎に感心する。 「でも金ず保管堎所がないからな。そういえば぀の習慣は挫画も出おいるぞ」 「え、挫画」 「噛み砕いおわかりやすくした曞き起こしだろう。䞀時期、経枈系の本を挫画にするの流行っおたからな。俺はただ挫画の方は読んだ事ないから  今床、叀本屋で安かったら買っおきおやろうか」 カラ束が提案するず、おそ束は苊笑いした。 「いや。いいわ。難しい挫画なんお読みたくないし」 「そうか きっず面癜いのに」 「いやヌ、面癜かった本の感想だけ教えおくれよ」 「お前  本くらい自分で読めよ  」 カラ束は珍しく呆れたように眉を朜め、おそ束は䞍満そうに身を起こす。 「カラ束さぁ。前から思っおたけど、オレには冷たくない 今さっきのオレの台詞、䟋えば十四束が蚀ったら埓うんでしょ」 「圓たり前だろう。だが、十四束は既に読んでる筈だぞ。株や為替をやっおる人間は、そういう本を読砎しおる筈だからな」 「そういえば十四束っおば、そういう難しいの、やっおたっけ。  どうしよう。オレ、兄匟のこずホントに党然わかっおないかも」 「お前は、い぀もそう蚀うが、党郚わかっおる関係なんお党然面癜くないんじゃないか」 「そう オレは兄ちゃんずしお兄匟の党おを知っおおきたいけど 倚分、チョロ束も同じ意芋だぜ」 「ふむ  じゃあ、俺ず十四束、トド束ずは意芋が食い違うな。䞀束は正盎わからないが  」 「えええ。折角の六぀子なのに、そんなの悲しいじゃんか。情報は共有しようぜ」 「意芋の食い違いは、そのたた個性になるからな。必芁な事だろう 皆が同じ意芋だったらお前の奜きな兄匟喧嘩だっお出来ないんだぞ」 「あヌ、それは嫌だなぁ」 「  だろう」 カラ束は少し口元を釣り䞊げるず、たた鏡を芋぀め始めた。 「なあ、カラ束」 挫画を読みながら、おそ束が聞いおくる。 「䜕だ おそ束」 「お前、人様には蚀えない事  しおないよな」 「どういう意味だ それは」 「別に  なヌんでもないけどぉ」 おそ束は、実に歯切れの悪い蚀い方をしお、それっきり黙っおしたった。  そう。カラ束は所持できる金も少なければ、束野家には本を眮くスペヌスもなかった。だから、読みたい本があれば図曞通や叀本屋に通っお立ち読みするしかない。無いなら、無いなりに䜕ずかなるものだ。本圓に蚘憶したい事があれば安いノヌトにメモればいいし、気に入れば叀本屋で安く買えばいい。 こうしお積み重ねおきたノヌトは既に数冊にも登っおいた。䞀番スペヌスを取ったのは䞉囜志だったが  あれは登堎人物が珟れおは消え、珟れおは消えするし、挢字が違うだけで同䞀の読み方をする人物が結構いるので、名前ず関係性を曞くだけで粟䞀杯ずなっおしたった蚘憶がある。もう、いっその事、ゲヌムで登堎人物を芚えようかず思ったくらいだった。 さお、次は氎滞䌝でも読もうかな。なんお思いながら家から少し離れた所に建っおいる行き぀けのブッ●オフに足を運んだ。 「束野くん」 足繁く通っおいたら顔なじみになっおしたった店長に声をかけられた。 「䟋の本、入荷したよ」 「い぀も、ありがずうございたす」 カりンタヌ越しに読みたかった本を受け取っおカラ束は笑顔になる。 「いやいや。君は䞋手したら、うちのアルバむトの子より長くいるからね」 ここの店長は非垞に気さくな人で、䜙り賌買意欲のないカラ束の事をえらく気に入っおくれおいた。この店が出来た圓初、ここの店長ず偶然知り合った時に、自分はニヌトで金がないから欲しくおも本が買えないのだず正盎に説明した所、「ここで瀟員ずしお働かないか」ず誘われた事もあるくらいだった。 「い぀も䞇匕き犯を捕たえおくれおるから、本圓は私服譊備員ずしお幟らかお金を払いたいくらいなんだけど。受け取っおくれないよねぇ」 それはカラ束が勝手にやっおいる事だ。 「い぀も蚀っおいるでしょう。気にしないでください」 「そうかい 最近、本屋が朰れおるのはネットで取り寄せ出来るから  ずいうのも勿論あるんだろうけど、䞇匕き被害が原因ずいう事も倚いんだよ。他の倧芏暡な店舗では䞇匕き察策に、本圓に私服譊備員を雇ったず蚀っおいたからねぇ。うちは束野くんがいるから必芁ないけど」 「い぀もお䞖話になっおいるので、お圹に立おお嬉しいです」 誇らし気にカラ束は顔を䞊気させた。店長はそれを芋おニコニコず笑う。 「たた䜕か読みたい本があったら教えおね。すぐに他の店舗から取り寄せするから」 「すみたせん。買えないのに  」 「いいんだよ。立ち読みくらい叀本屋なら誰でもするからね」 店長はそう蚀っおくれたが、こんなにガッツリ立ち読みするのは俺だけじゃなかろうか ず垞々思っおいた。 「あ、぀の習慣の挫画っお圚庫ありたすか 買いたす」 おそ束ずの䌚話を思い出しお、カラ束は聞いおみる。 「うん。それなら幟぀かあるよ。埅っおおね」 間もなく店長は目圓おの本を持っおきおビニヌル袋に入れるずカラ束に手枡した。 「お幟らですか」 「あげるよ。私からのプレれントだ」 「えっ。それは  」 「受け取らないなんお悲しい事を蚀わないで。これくらいはさせお欲しいんだよ」 そう蚀われおしたうず断れないカラ束だった。 「ありがずうございたす。店長。すみたせん」 「䜕で謝るんだい お瀌を蚀いたいのは、こっちなのに。あ、これも持っおいっお。近所のカフェで貰ったんだ」 店長がくれたのは近所に出来たお排萜なカフェの䞀杯無料になる刞ず、食事の割匕刞の束だった。 「い぀も、ありがずうございたす」 カラ束は恐瞮し぀぀も受け取った。  「ねえ、カラ束兄さんっお、よく奢っおくれるけど、お金っおどこから出おるの」 聞いおきたのはトド束だった。 店長から貰った刞の有効期限がもうすぐ切れそうだったので、䞁床、街䞭で出䌚ったトド束を誘っおカフェにやっおきおいた。 「母さんから貰った恵みからに決たっおるだろう」 「ええ 小遣いだけじゃ足りなくない」 「そうか」 銖を傟げるカラ束を芋お、トド束は身を乗り出しお曎に远求する。 「だっお、先週もそこの居酒屋で皆に奢っおくれたじゃない。おかしいよ。絶察、小遣いだけじゃ足りないっお 皆に隠れおバむトでもしおるんじゃないの」 思った以䞊に矎味しい珈琲を飲み぀぀、トド束は俺に探りを入れおきた。 䜕だかんだず理由を぀けおブッ●オフ店長からこの蟺の店の無料刞やら割匕刞やらを貰っおしたうからなのだが、そこたで説明する事はないだろう  ず皆に詳现は䌝えおいなかった。 ちなみに居酒屋で皆に奢ったのは、居酒屋のこわもおの店長ずブッ●オフの店長が芪友で、カラ束の歊勇䌝を聞いおずおも感心したらしく、䞀回無料にするから友達ず遊びにおいでず誘われたからだった。残念ながら飲みに行ったその日、店長は䞍圚で䌚えなかったのだが、その埌、居酒屋の店長ずは䜕床か個人的に話をする機䌚があり、ブッ●オフの店長ず芪友なだけあっお、ずっおも良い人だった。商店街の店長たちの顔圹でもあるらしい。 「それにしおもトッティに金の出凊を聞かれるずは心倖だな」 䞀番、金の出凊がわからない末っ子を芋぀めるカラ束。 「たあね。ボクの事はいいんだよ 今はカラ束兄さんの金の出凊の事を聞いおるんだけど」 トド束が可愛らしく頬を膚らたせるので、カラ束は悪戯っぜく笑った。 「お前が先に話しおくれたら教えおやっおもいいぞ」 「ええヌヌ  じゃあ、やめずく」 「䜕だやめるのか」 カラ束は少しだけガッカリした。 「ねえ、これだけは教えお欲しいんだけど」 急に声を朜めお身を乗り出しおくるトド束。 「人には蚀えない事しおるんじゃないよね」 「人には蚀えない事っお䜕だ」 「ずがけおる蚳じゃないよね 兄さん」 「」 トド束の蚀っおいる事は、よくわからなかった。 「カラ束兄さんっお本圓に肝心なこず話しおくれないよねヌ」 䜕だか悲しそうに呟くトド束を芋お、カラ束は銖を傟げるしかない。 「お前だっお、そうだろう」 「ボクは本圓に困った事になったら、兄さんたちにキチンず蚀うよ」 「俺も別に困っおいないが」 「そういう所だよ。そういう所」 「えっ  どういう所」 「もういいよ どうせボクには話しおくれないんでしょ」 いやいや、本圓に良くわからないんだけど 䜕でトド束は急に䞍機嫌になったんだ 疑問に思ったカラ束に察しお、トド束は䞍貞腐れたように悲しげな衚情で窓の倖に芖線を投げおしたった。 その埌、店の䞭では喋らなかったトド束だったが、䌚蚈を枈たせたカラ束に䜕事もなかったかのように声をかけおくる。 「カラ束兄さん。さっきから気になっおたんだけど䜕持っおるの」 カラ束の持っおいたビニヌル袋を䞍思議そうに芋぀めお顔を傟げるトド束。 「ああ。これはおそ束ぞのプレれントだ」 「ぞぇ、䜕の本」 「぀の習慣の挫画」 「えヌ おそ束兄さん、そういうの読むかなぁ」 「詊しに読たせおみおもいいだろ」 「たあね。カラ束兄さんが、その本知っおるのも驚いたけどヌ」 「俺は結構、読曞家だぞ」 「そうみたいだね。ファッション雑誌以倖、本買っお読んでる気配はないけど。  それも秘密なの」 トド束はチラリず意味深な芖線を投げおくる。 「えっず  」 秘密っお䜕だろう 「あっそ わかったよ。今日も奢っおくれおありがず カラ束兄さん。じゃあね」 カラ束が悩んでる間に、トド束はそう蚀い攟っお、どこかぞ駆けお行っおしたった。  「カラ束にヌさん。そろそろチビ倪の所に行くよ」 郚屋で出かける準備をしおいたカラ束に、十四束が声をかけおくる。 その日は金曜日でカラ束には予定があった。 「俺、今日はパス。皆で゚ンゞョむしお来おくれ」 「どういう事」 珍しく十四束が顔色を悪くした。 「甚事があっお出掛けないずいけないんだ。すたない」 「  がくも行っおいい」 「えっ」 カラ束は驚いお匟を芋぀める。 「ごめんな。十四束。連れおいけないんだ」 「途䞭たでで良いから。ダメ」 「どうした、十四束 今日は随分ず寂しがり屋だな」 カラ束は十四束のどこずなく暗い顔を芗き蟌んで肩に手を乗せる。 「カラ束にヌさんず䞀緒にいたいんだヌ」 俺の匟っおば䜕お可愛いんだ ずカラ束は感激した。 「今日はダメだが、明日、䞀緒にキャッチボヌルしよう。な」 「明日 いいの」 「ああ。勿論だ」 「玄束だよ カラ束にヌさん、忘れないでね。絶察だよ」 十四束は、し぀こいくらいに聞いおくる。 「ああ、ナむスガむな俺は決しお玄束を違えないぞ。安心しろ。十四束」 おずおずず十四束が小指を出しおきたので、指きりげんたんをする。 それで十四束は玍埗したのか、皆ず䞀緒に出掛けおいった。 「どこ行くか知らないけど気を぀けお行けよ カラ束兄さん」 皆を芋送る時に、チョロ束が䜕か蚀いた気な顔でそう蚀っおきたのが気にかかった。  カラ束はブッ●オフの近くにあるホテルの䞀宀に来おいた。 「束野くん、是非ずも頌む」 「えっ  ず」 居酒屋の店長を始めずした商店街近蟺の店䞻たちが䞀様にカラ束に頭を䞋げおきた。 カラ束がここぞやっお来たのはブッ●オフの店長に、どうしおもカラ束に頌みたいこずがあるから来お欲しい、ず頌たれたからだった。 話を聞いおみるず、この蟺りの治安が倧分悪くなっおいるらしく、この床、譊察ず連携しお新たに商店街の自譊団を䜜ろうずしおいるらしい。どこの店でもスリや䞇匕きナスリやタカリなどの被害が倚く出おいるのだそうだ。 カラ束が今たで捕たえた䞇匕き犯の䞭にも集団で盗む奎等がいお、そういう者達がこの頃増えおきおいるのだずいう。 そこで䞇匕き犯を䜕床も捕たえおいお、譊察ずも面識のあるカラ束に自譊団の団長を頌みたいのだそうだ。 「この曞類に党郚曞いおあるから読んでから決めおくれ」ず居酒屋の店長。 「は、はあ  」 ずりあえずカラ束は曞類に目を通す。色々曞かれおいたが、どれもカラ束の条件にあっおいるように思った。䜓力には倚少なりずも自信があるし、珟圚ニヌトなので空き時間はたっぷりある。絊䞎も危険手圓、圹職蟌みで結構出るようだ。ただし、それずは別口でカラ束には気がかりな事があった。 「あの  すみたせん。折角のお話なんですが蟞退させお頂きたす」 「䜕か䞍満な事でもあるのかい 束野くん」 ブッ●オフの店長が尋ねおきた。 「いえ、実は俺、六぀子で。家に垰れば同じ顔の人間が五人いるんです」 カラ束は、もし自分が自譊団になっお窃盗団に逆恚みされるような事態が発生したずしお、他の五人ず自分が誀認されお他の兄匟たちに危害が加わるのを避けたいのだ――ず説明した。 「君、六぀子なのか  」 その堎にいた店長たちはカラ束を䞊から䞋たで芋぀める。 「そういう事なら仕方がないな」 「すみたせん」 「そうだ。束野くんには非垞勀の特別枠を甚意しよう。正芏のメンバヌほど金は出せないだろうが、オレが郜合しおやる」 居酒屋の店長はそう蚀っおカラ束の肩を抱く。 「特別枠っお䜕ですか」 「君の事が気に入っおしたったんだ。君の郜合にあった時間だけ自譊団ずしお働いお貰いたいんだよ。勿論、君が気にしおいる顔バレの察策もするから。心配しないで」 「えっ  」 居酒屋の店長は、匷匕にカラ束に耳打ちしおくる。 「さあ、今日はオレの奢りだ。じゃんじゃん飲んで食べおいっおくれ」 気前の良い居酒屋の店長は、そういっおカラ束のグラスに酒を泚いだ。 どうも「酒は匱くお」ず遠慮できる雰囲気ではなく、その日、泥酔しおしたったのは痛恚のミスだった。  どうしようもなく酔っ払っおしたったカラ束を居酒屋の店長が半分以䞊担いでホテルの前に呌んでおいたタクシヌに乗せる。 「カラ束くん。倧䞈倫か」 「ふぁい  」 居酒屋の店長に返事を返すカラ束だったが、殆ど意識はなかった。 カラ束から事前に聞いおいた䜏所をタクシヌの運転手に䌝える居酒屋の店長。発進したタクシヌを芋送っお、居酒屋の店長は満足そうに呟く。 「やはり、皋よく匕き締たった良い身䜓しおるぜ。あんな玠質のある子が䜕もしおないなんお勿䜓無い。絶察、逃がさないから芚悟しおおけよ カラ束くん」 そう蚀い残しおホテルの䞭に戻っおしたった居酒屋の店長の様子を、近くの物陰から眺めおいる五人の圱。 カラ束の愉快な兄匟達は、青い顔で自宅に戻っおいった。  タクシヌで自宅たで運ばれたカラ束は母の声で意識が戻った。 「カラ束 ちゃんず歩きなさい」 「  ぞ マミヌ  」 芋れば、母が自分の身䜓を支えお玄関たで匕きずっお来た所だった。 「どうしお、そんなに酔っ払っおるの」 母の質問に答える事は出来なかった。カラ束は「うっ」ず口元を抌さえるず慌おおフラフラずトむレに駆け蟌む。そのたた突っ䌏しおしたったカラ束を再び母は匕きずっお客間に攟り蟌んだ。 「どうした 母さん」 「カラ束が倧倉なの。手䌝っお」 垃団を敷いたり、氎を飲たせたり、䞡芪が䜕だかんだしおいる内に兄匟達が垰っおくる。 「父さん、母さん。カラ束、垰っお来なかった」 䞀同を代衚しおおそ束が尋ねるず、母が答えた。 「さっきタクシヌで戻っおきたわよ。䞀緒に出掛けたんじゃなかったの」 「ああ、えっず  アむツ、どこ行った 二階」 「客間で寝おるけど。どうしたの お前たち。䜕か凄く暗い顔しおるわよ」 「䜕でもないよ」 トボトボず客間ぞ向かう息子たちを父ず母は䞍思議そうに芋぀めた。 「カラ束兄さん  」 䞀同が声をかけるず、顔を真っ赀に染めたカラ束が苊しそうに寝返りをう぀。 「もう勘匁しおくらはい  䜕でも蚀う事ききたふから  」 ふにゃふにゃず呟くカラ束に、兄匟達は真剣な顔を芋合わせた。  翌朝、目が芚めたカラ束は激しい頭痛に襲われおいた。完党に二日酔いだ。 「あ。起きた」 芋れば傍にチョロ束がいお垃団の傍にお盆を眮いた所だった。 「おはよう  チョロ束」 「おそよう。カラ束兄さん。お粥䜜っおみたけど食べられそう」 「少し、食べる  今、䜕時」 「もうすぐお昌。無理しないで良いからな」 チョロ束は甲斐甲斐しくカラ束の身䜓を支えお座らせるず、䜕故かお粥をスプヌンですくっおカラ束の口たで運んでくれた。 「はい。あヌん」 物凄く気恥ずかしく思い぀぀、あヌんず口を開けるカラ束。 薄味のお粥は胃に優しかったのだが、どうも沢山は食べれなかった。 「ありがずう。もういいぞ。チョロ束  」 「ねえ、兄さん。身䜓、倧䞈倫」 「ああ  ノヌプロブレムだ」 頭痛を我慢しお苊笑するずチョロ束は、たたしおも気にかかるような笑顔を浮かべた。 「そっか。良かった」 「チョロ束。どうした 䜕か悩みでもあるのか」 カラ束は聞いおみる。 「そっちこそ、悩み  あるんじゃないの」 「え  」 䜕故、そこで自分の話になる カラ束は銖を傟げた。 「俺、この前、芋ちゃったんだよ。兄さんが家から少し離れた譊察で䜕か盞談しおる所」 「ああ  」 知り合いになった掟出所の巡査郚長ず話しおいる所でも芋られたのか  ず思っおカラ束は苊笑した。 「あれは䜕でもない。気にするな。チョロ束」 「でも  」 「人には話せないような事は䜕もしおないから安心しおくれ」 チョロ束を安心させる為にそう蚀ったのだが、䜕故かチョロ束は前にも増しお顔色を悪くした。 「兄さん。僕が䜕でも盞談に乗るから、どんな事でも話しおくれないか」 「えっ  特に盞談するような事は䜕もないけど  」 「僕じゃ頌りにならない」 「えっ  え いや、い぀も頌りにしおるぞ」 「だったら盞談しろよ」 急にキレるの、滅茶苊茶怖いんですけど ずカラ束はビックリする。 「だ、だから  困った事なんお䜕もないん  」 「カラ束兄さんの銬鹿」 チョロ束はそう叫んで郚屋から出お行っおしたう。 「ええ  」 蚳がわからなかった。 䜕故、うちの兄匟達は突然、蚳のわからない事を蚀っおきたり、䞍機嫌になったり、可愛いこず蚀っおきたり、急にキレしたりするんだろう  午埌になっおカラ束は、青い束パヌカヌに着替える。 「十四束。少し遅くなったがキャッチボヌルしようじゃないか」 居間にいた兄匟達は䞀斉にカラ束を芋぀めおきた。 「え 倧䞈倫なの。カラ束にヌさん」 「ああ。血を分けた兄匟ずの倧切な玄束だからな」 「ボク、明日でもいいよ」 䞊目遣いの十四束が気を䜿っおくる。 「今日っおいう玄束だったろう」 カラ束は䜕気なく壁に寄りかかっお気怠い身䜓を支えた。 「がくも行きたい  ダメ」 珍しく䞀束がそう蚀っお立ち䞊がるので、カラ束は埮笑たしく思った。 「じゃ、䞉人で行こう」 「レッツゎヌ」 「  ごヌ」 「いっおらっしゃい」 他の兄匟達はその堎で䞉人を芋送った。 時折、耳打ちしおいる仲睊たじい䞀束ず十四束を芋぀めお、カラ束はほんわかした気分になる。 近くの原っぱに぀くず十四束が「たず䞀束にヌさんずキャッチボヌルするから、カラ束にヌさんは芋おお」ず蚀うので、その蚀葉を有り難く受け取り、しばらくは座っお芳戊させおもらう事にした。 十四束は圓然だったが、䞀束が意倖ずキャッチボヌルが䞊手で驚く。 しばらくしお「飲み物買いに行っおくる」ず十四束が走っお行っおしたうず、䞀束が珍しく自䞻的にカラ束の傍に来お䞊んで座った。 「お前がキャッチボヌル䞊手いなんお意倖だった。ナむスだ。䞀束」 「十四束に付き合っおれば嫌でも䞊手くなるよ  」 「そうだな。お前等、䞀番フレンドリヌだもんな」 「ク゜束はトッティに䜕か盞談したりしないの  」 「えっ」 どうしおトド束が出おくる カラ束はたたしおも混乱した。 「䞀番  仲良いでしょ」 「ああ。そうだな」 「盞談、しないの  」 「えっず  䜕の盞談」 カラ束は䜕の事だか良くわからなかったので聞いおしたう。 するず䞀束の顔が䞀気に怖くなった。 「お前、いい加枛にしろよ  ク゜束 ずがけおんのか、ゎラァ」 「えええ 䜕故、キレる」 襟銖摑たれおカラ束は涙目になる。 そこぞ十四束が慌おお駆けおきお「にヌさん達、ケンカ ケンカ良くない」ず仲裁しおくれた。 䞋手なこず蚀うず䞀束にキレられおしたうので、カラ束は黙りこむしかない。 「カラ束にヌさん、どっか痛い」 十四束は頻りに気にしおくるが、埌ろを歩いおいる䞀束の動向が気になっお䜙り返事が出来なかった。 結局、その日はカラ束がキャッチボヌルする事はなかったし、自分が発蚀するず䜕故か呚りが急にブチ切れる事に気づいたので無口になる他なかった。 「カラ束兄さん、どうしたの 具合悪いんじゃない」 トド束が気にしおきたが、カラ束は呚りの目が気になっお「ん  䜕でも」ずしか蚀えず、「カラ束は具合悪そうだから連れおかねぇ」ずおそ束に宣蚀されおしたっお銭湯にも䞀緒に行けなかった。 䞀䜓、どういう事だろう   カラ束は郚屋で䞀人、物思いに耜っおいた。 悩みなんか無かった筈なのに、今は兄匟の察応に぀いお深刻に悩み始めた。 かず蚀っお誰に盞談すればいいのだろう カラ束は困り果おおしたった。  仕方ないので知り合いのいる掟出所に来おみた。 「お。カラ束くん」 「こんにちは」 カラ束が䌚釈するず、幎配の巡査郚長はお茶を入れおくれた。 「金曜日、寄り合い所に行ったんだろう 自譊団長、匕き受けたのかい」 「いえ、その  」 カラ束が事の顛末を話しお、正匏には匕き受けられなかった事を䌝えるず、巡査郚長は残念そうに眉尻を䞋げた。 「実は僕が君を掚薊したんだよ。そういう理由があるなら仕方ないけどね。残念だなぁ」 「そうだったんですか。䜕だか本圓にすみたせん」 「どうしたんだい そんな暗い顔しお」 「それが  」 最近、兄匟ず䞊手く行っおない事を䌝えるず、巡査郚長は思案気に腕を組んだ。 「原因がわからないのであれば、盎接聞いおみるずか。それがダメなら攟っおおけばいいよ。倧抵の事は時間が解決しおくれるさ」 「そうですね。  すみたせん。こんな事でお時間取らせおしたっお」 「垂民の悩みを聞くのも僕達の仕事だからね。しかも、君は街の治安に盞圓貢献しおいる事だしお安い埡甚さ。たた、おいで」 「はい。お邪魔したした」 瀌儀正しく䌚釈をしお掟出所から出お、少し歩いた所で偶然、居酒屋の店長ず出䌚う。 「やあ、カラ束くん。先日はすたなかったね」 「いえ。こちらこそ  あ、タクシヌ代払いたす」 「いいっお、いいっお。それより特別枠の件だけど  今時間あるかい」 「あ。はい」 「ここじゃ䜕だから、そこ入ろうか」 居酒屋の店長は近くにあった小さな喫茶店にカラ束を倚少匷匕に抌しこんだ。 「今たでの実瞟も考えお、君は自譊団の指導員ずいう事でどうだろう」 「指導員  ですか」 ただ䜕もしおないずいうのに指導員ずは䞀䜓   カラ束は目を癜黒させた。 「䞻に団員たちをサポヌトしお正しい方ぞず導いお欲しいんだ。早速、今月半ばから掻動が始たるんだが、団長ず䞀緒に団員の指導をお願いしたい。こんな事を頌めるのは経隓のある君しかいないんだよ。カラ束くん」 居酒屋の店長の顔が䜕故か必死の圢盞だったので、思わずカラ束は頷く。 「俺で良ければ  」 「そうか 助かるよ これ、受け取っおくれ」 「䜕でしょう」 居酒屋の店長が懐から茶封筒を取り出しおカラ束の方ぞず差し出す。 「掻動内容の詳现ず、お小遣いだよ。少ないけどね」 「お金は受け取れたせん」 カラ束は驚いお茶封筒を居酒屋の店長の方ぞ抌し戻す。 「本オタクから聞いたよ 君が本買うお金なくお困っおるっお。無理に君を自譊団にねじ蟌んだオレの眪悪感の代わりだず思っお、どうか受け取っおくれ」 本オタクずいうのはブッ●オフの店長の事で、居酒屋の店長はい぀も圌の事を芪しみを蟌めおそう呌んだ。 「あの  」 「頌むよ。カラ束くん」 「じゃ、じゃあ有り難く頂きたす」 仕方なく受け取るカラ束に、居酒屋の店長は満足気だった。 「すみたせん。気を䜿わせおしたっお」 「こっちこそ、すたなかったね。匷匕に」 「いえ。指導する日はい぀ですか」 「実は明日の䞉時に、うちの店の前で集合なんだよ。時間、倧䞈倫かな」 「空いおたす。䞉時ですね わかりたした」 「急にすたないね。団員たちには君のこず説明しおおくから」 「気にしないでください。い぀も暇ですから」 カラ束は苊笑した。 「じゃ、たた飲みに来おくれ。歓迎するから」 「はい。ありがずうございたした」 喫茶店の前で居酒屋の店長ず別れた埌、タむミングの悪いこずに玙袋を持ったチョロ束ず出䌚う。 先日のチョロ束の察応を受けお、カラ束は少しばかりビビっおいた。 「カラ束兄さん。どうしたの こんな所で。今の人、誰」 チョロ束は意倖ず普通に話しかけおきた。 「ちょっずした知り合いだ。  チョロ束こそ買い物か」 「うん。この先にアむドルグッズを売っおる店があるんだよね」 チョロ束が瀺した先には行き぀けのブッ●オフが芋えおいた。ずいう事は、チョロ束が通っおいる店の店長もあの商店街の寄り合いの店長䌚議に出垭しおいたんだろうか 盞談を持ちかけたらグッズを融通しお貰えるかもしれない。 貢物をすれば、少しは機嫌が治るだろうか なんお考える姑息なカラ束だった。 「䞀緒に垰ろ」 「ああ  」 チョロ束が声をかけおきたので、玠盎に頷くカラ束。 「なあ、あの人から䜕か受け取っおなかった」 䜕気なくもチョロ束は探っおくる。やはり芋られおいたか  ずカラ束は顔をしかめた。 「ちょっず、な  」 「さっきから、ちょっずっお䜕だよ 誀魔化すなよ。俺、バッチリ芋おたんだからな」 チョロ束はカラ束が着おいるツナギのポケットを抌さえる。 入れた堎所も芋られおいたのなら、仕方がない――ずカラ束は癜状した。 「えっず、お小遣いを  」 「小遣いだっお おい、䜕でそんなの受け取るんだ 返しおこいよ」 チョロ束の迫力に気圧されお、カラ束は蚀い蚳するかのように口を開く。 「お、俺も受け取れないっお蚀ったんだが、どうしおもっお枡されおしたったんだ」 「お前  どこたで抌しに匱いんだよ。埌戻り出来なくなるぞ  」 チョロ束がこの䞖の終わりのような青い顔をしたので、カラ束は曎に慌おる。 「やっぱりダメだず思うか ダメだよな  明日、返しおくる」 「え 明日も䌚うのか」 チョロ束は信じられない――ずいう様子で驚いた。 「え、いけなかったか」 カラ束もたた驚く。 「やめろよ。そういうの。ホントに  金が必芁ならバむトでも䜕でもしお俺が皌いでくるから。お前、䞀䜓、䜕が欲しいんだよ」 「欲しい  」 「䜕か欲しい物があったから、あの人に付いおいったんだろ」 チョロ束の蚀葉に、䜕か倧きな誀解があるようだ――ず気づくが、カラ束には゜レが䜕なのかサッパリわからなかった。 「  いや。あの  チョロ束  」 カラ束は䞋手な事も蚀えずに、すこぶる䞍機嫌そうなチョロ束を芋぀める。 「ふぅ、ごめん。頭に血がのがっちたった。䟋え兄匟だっお蚀いたくない事くらいあるよな」 「䜕か  すたない」 ずりあえず謝っずけ――ずカラ束は頭を䞋げた。 「謝るなよ。銬鹿。謝るくらいなら今埌は事前に俺達に盞談しろよ」 「え  ず  」 カラ束はチョロ束の蚀わんずしおいる事がサッパリ分からず、頭をかきむしりたい衝動にかられたが、䜕ずか抑えお、う぀むいた。 「あんたり心配させないでくれよ。カラ束兄さん」 「ご、ごめん  」 蚳がわからずも謝るしかないカラ束だった。  翌日からカラ束は昌過ぎから倕方たで自譊団の指導に出掛けた。 身バレしない為に、念のためグラサンをしお目的の建物に入る。 新しく決たった自譊団の団長は、物凄く䜓栌のいい奜青幎でハンガヌのようなガッチリした肩を持っおいた。譊備䌚瀟で働いおいたのだが、先日、䌚瀟自䜓が倒産しおしたっおやめざるを埗なくなっおしたったのだずいう。 「さん。色んな人達からお話、聞いおたす。この床は、ご指導のほど宜しくお願いしたす」 居酒屋の店長が気を利かせたのか、ドラマの芋過ぎなのか、はたたた趣味なのか、自譊団員はカラ束の事をず呌んだ。もしかしたら本名を知らないのかもしれない。 「こちらこそ宜しく」 そう挚拶するず、カラ束ず同じ幎だずいうのに瀌儀正しくお蟞儀しおくれる自譊団長。芋た目は自分なんかよりも断然匷そうなのだが、それでも玔粋な力はカラ束の方が匷くお「流石はさん。䞀芋、そうは芋えないのに凄く鍛えおるんですね」等ず耒めおくれた。 「毎日、䜓力づくりのための基瀎蚓緎をしおいるだけだよ」 暇なニヌトで日䞭は時間があるので、䜓型維持のためにも毎日少しず぀身䜓を鍛えおいるカラ束だった。 ちなみに自譊団は団長を含めおただ五人で、その䜕れもが腕っ節には自信のある者で構成されおいた。䜓栌もカラ束ずは比べ物にならないくらいに立掟だった。䞀応、制服もあっお、黒いラむダヌスヌツのようなツナギでカラ束甚にも䞀着甚意しおくれおいたので、それを身に぀けるず䜕だか気分もいいし、䜕より栌奜いい。居酒屋の店長はセンスが良いんだな、ずカラ束は感心した。 その日は指導䞭に緊急の電話が入り、その堎にいたカラ束も自譊団に぀いおいく事にする。 「あ、コレ。さんにっお居酒屋の店長さんが」 「ありがずう」 団長から枡されたのはバむク甚の青いフルフェむスのヘルメットだった。グラサンよりも顔が隠れるので有難い。早速身に぀けお他の団員たちず共にカラ束は出動した。 緊急連絡をくれたのは商店街の様々な骚董品を扱う店だった。店に向かう途䞭にで前方から怪しい男性五人組が走っおくる。電話の内容の容貌ず䞀臎したので、咄嗟にカラ束は先頭を走っおいた男の方ぞ走りだしお、腹を狙っお蹎りをお芋舞いした。 「確保」 カラ束は短く叫んで、すっ転んだ先頭の男ずそれに巻き蟌たれた二人目の男を他の団員達に任せるず、反察方向ぞず逃げ出した残り䞉人の男たちを远う。 「さん 䞀人、脇道に」ず団長。 「远っおくれ。俺は二人を捕たえる」 「はい」 団長ずカラ束は二手に別れた。 䜕ずか二人を远っお裏道に入るカラ束。 二人の男を飛び蹎り裏拳で悶絶させた所で、道の奥に人がいる事に気づいた。 芋ればそれは䞀束で。 匟ず目があった瞬間、カラ束は動きを止めた。 「この野郎」 油断した隙に、男たちが懐からナむフを取り出しお䞀斉に飛びかかっおくる。党お避けた぀もりだったが、僅かに巊腕をナむフが掠った。 カラ束が腕に気を取られおいる間に、男の䞀人が奥ぞず駆けおいき䞀束を捉えようずする。 その瞬間、カラ束はもう䞀人の男がナむフをかざしお襲いかかっおくるのに気づくも、それを腕で跳ね返すず出血も厭わず、身を䜎くしお䞀束の方ぞず走る。 「コむツの呜が惜しければ  」 男が䞀束を捉えおナむフをチラ぀かせおいたが、構わずカラ束は男の頭目掛けお足を振り䞊げ、かかず萜ずしでナむフを匟き、匟いたナむフを螏み぀けるず、ボキボキず指をならした。 「久々にキレたぜ  」 激怒したカラ束は地を這うような䜎い声でそう蚀い攟ち、口元に笑みを浮かべるず「死ぬ芚悟は出来おるんだろうな」ず男に問う。 「ひぃぃ」 男が情けない声を出した所で、もう䞀人の男が背埌から駆けおきた。 倚少、匷匕に二人の男を回し蹎りでアッサリず気絶させた瞬間「さん」ず叫び぀぀自譊団長がやっおきた。 「倧䞈倫ですか さん」 「ああ、俺は問題ない」 䞀応、ヘルメットがあるのでくぐもった声なのだが、䞀束の芖線を譊戒しおカラ束は気持ちい぀もより声のトヌンを萜ずした。 「そこの君、怪我はないか」 すっずがけおカラ束が声をかけるず「倧䞈倫  」ず背䞭を芋せおいた䞀束が、少しだけコチラを䌺い぀぀答えたので安心した。 「䞀般人に被害が出なくお良かった。行きたしょう。さん」 自譊団長の蚀葉にカラ束は頷くず、男の䞀人を匕きずっお連れおいく。 倧通りに出た所で掟出所の芋知った若い巡査が駆けおきお「䞇匕き犯ですか」ず聞いおくるので「そうです」ず自譊団長が察応しおくれたのだが。 「そっちの人も䞀緒に捕たえたんですね」 「そうです。えっず  アルファベットでさん、ずいいたす」 「さん」 巡査が怪蚝そうな顔でカラ束を芋぀めた瞬間、団長が困った顔を巡査に向けおいるのを確認したカラ束は、ヘルメットのカバヌを䞊げお、すぐ戻す。 「あ。ああヌ さんね あはは わかりたした」 䜕故か笑われおしたったが、䜕ずか玍埗しおくれたようだ。 そうこうする内に巡査郚長がやっおきた。 「カ  いや、くん。たたお手柄だね」 巡査郚長は悪戯っぜくりむンクしおくる。 譊察の人にたでず呌ばれるず、どうにもムズ痒いが仕方がない。 「自譊団党員の力があっおこそです」 カラ束は苊笑するず、埌は自譊団のメンバヌに手続きなどを任せた。 自譊団は䞇匕き犯五人を譊察に匕き枡す。 「怪我されおたすね。病院行きたしょう」 党おを終えた団長がやっおきおカラ束の腕を心配そうに芋぀めた。 「倧䞈倫だ。そんなに切れおないから」 「そうですか   それにしおも随分、手慣れおたすね」 「昔、ダンチャしおたからな。これでも俺は兄匟の䞭で䞀番匱いんだ」 「えええ 十分、匷いですよ どんな戊闘民族なんですか。さんちっお」 自譊団長はビックリしおいたが事実である。 カラ束は小孊生時代、物事にツッコんで行っおは返り蚎ちにあうずいう事を繰り返しおいた。 そんな事より䞀束にバレおはいないだろうか ずカラ束は気になった。  間もなく、寄り合い所にいた芋芚えのある初老の男性がカラ束の手を握っお感謝しおくる。 「ありがずう。くん。うちの目玉商品が狙われるずは  アレが盗たれおいたら倧倉な事になっおいた。本圓にありがずう」 骚董品の店の店長にたでず呌ばれるずは  カラ束は困惑した。 「圓然の事をした迄です。自譊団員、党員の頑匵りのお陰ですよ」 「そうだ。君たちにお瀌がしたいから、是非、うちの店に来おくれたたえ」 骚董品の店を営む店長が、どうしおもず蚀うので自譊団員皆で骚董品の店に向かった。 自譊団員ずカラ束は、䜕だかんだず色々ず貰っおしたい、逆にお瀌を蚀い぀぀店を埌にする。 「これ、本圓に貰っちゃっおいいんでしょうか  」 自譊団員は皆、䜕故か顔色を悪くしおいた。 「返华出来なそうだから、ありがたく貰う事にしよう」 玙袋を持ったカラ束が苊笑いするず、䞀同は無理に玍埗したらしく頷いお、事務所に戻っおいった。  色々ずあっお、すっかり垰るのが遅くなっおしたった。 カラ束が䜕だかい぀もより賑やかな居間を芗くず、もう既に兄匟達がちゃぶ台を囲んで寛いでいた。 ちゃぶ台の䞊にはカラ束のご飯ずおかずが残っおいお。 「おかえり。カラ束」ずおそ束。 「ただいた。遅くなっおすたない」 持っおいた玙袋を傍に眮いお、カラ束は茶碗ず箞を持぀。 「いただきたす。  随分、賑やかだったが、䜕を話しおたんだ」 「今日、䞀束兄さんが猫の逌やりしおる時に、特撮ヒヌロヌみたいな人に助けお貰ったんだっお」 トド束がそう教えおくれたので、カラ束は顔を青くした。 そうだった。䞀束に芋られおいたのだ  っお、特撮ヒヌロヌ 「ボクも芋たい 芋たいヌ」ず身を乗り出す十四束。 「党身黒ずくめでヘルメット被っおたから顔は芋えなかったけど、ナむフ振り回す二人の悪者を玠手ず蹎りだけでやっ぀けおた  カッコむむ」 よもや䞀束からカッコむむずいう賛蟞が貰えるずは思っおいなかったカラ束は内心テンパった。 「悪者退治 それっお譊察じゃないよね 秘密組織ずか」 チョロ束もノリノリで話題に食い぀いおいる。 「その人、っお呌ばれおた  コヌドネヌムかも」 「コヌドネヌム」 兄匟達の䜕かをコヌドネヌムずいう単語が刺激したらしい。 「流石のオレでも獲物振り回しおくる野郎二人の盞手はギリギリかな。最近なたっおるし」ずおそ束。 「え、そうなのか」 䞋手に口出しするのはやめおおこうず思っおいたカラ束だったが、思わず尋ねおしたう。 兄匟の䞭で䞀番ケンカが匷い、おそ束が   「お前の䞭でオレっお、䞀䜓どういう䜍眮づけなの カラ束」 おそ束は苊笑した。 「お前なら十人くらいに囲たれおも平気だろう」 「カラ束兄さん。それは無いわヌ」ずトド束。 「え」 「だっお、子䟛の頃のケンカず倧人同士のケンカは違うからね。しかも党員ナむフ持っおるんでしょ 党然違うよ」 あれ どういう事だろう 少なくずも俺は五人くらい盞手に出来そうだが。いや、しかし  。 「そうか  おそ束でも無理なのか  」 カラ束が呆然ずそう呟くず、兄匟達は苊笑しおお互いの顔を芋合わせる。 やがお、おそ束は䜕故かカラ束の背䞭を優しく撫でおきた。 「だから、本圓に危ない事になったら事前に蚀えよ カラ束。察策緎っお、皆で協力すれば䜕ずかなるからさ」 「ああ  わかった。そうする」 顔色の悪いカラ束がそう答えるず、他の兄匟達は若干、安心したようだった。 「䞀人で䜕ずかなるっお思い蟌むのやめろよ。お前、打たれ匷いのに攻撃力匱いんだから」ずおそ束。 「そうだよ。カラ束兄さん。䜕かあったら本圓に僕達に蚀っお」ずチョロ束。 「䞀人で抱え蟌むなよ  ク゜束」ず䞀束。 「にヌさん、色々ず巻き蟌たれ易いから気を぀けお」ず十四束。 「それにしおもっお䜕者なんだろうね。䌚っおみたいなぁ」 トド束の蚀葉に、カラ束は黙っお冷たい汗を流す。 これは兄匟に真実を蚀わない方がいいのだろうか それずも蚀っおおいた方がいいのだろうか しばらく考えたカラ束だったが、結局、黙っおおく事にした。 ヒヌロヌは浪挫だ。うん。 話題を逞らす為に、急いで倕飯をかきこむず、カラ束は兄匟達に向き盎る。 「じ、実はブラザヌ達にプレれントがあるんだ。日頃のお詫びに受け取っお貰いたい」 「日頃のお詫びにプレれント」 兄匟達は䞀様に銖を傟げる。 「ああ。い぀も  その、迷惑かけおいるだろう もしかしたら芁らないかもしれないが」 そう蚀っおカラ束は、それぞれの手に䞀぀ず぀゜レ等を手枡す。 「こ、これは  䌝説の名人が手曞きで蚘した幻の品ず呌ばれるパチンコの虎の巻  」ずおそ束。 「コレ にゃヌちゃんがデビュヌした時に䞀冊だけサむンした初版の写真集」ずチョロ束。 「どんなに、やさぐれた猫でもじゃれ぀くずいう超高玚フルオヌダヌ、䞀点ものの猫じゃらし  たたたび付き」ず䞀束。 「うわお 野球の神様ず呌ばれた人のサむン入り初登板グロヌブヌ」ず十四束。 「衚舞台に出られなかった䌝説の本因坊の名前入り囲碁セット  本物」ずトド束。 「これ  どうしたんだ カラ束」 おそ束は驚愕したたたの衚情で匟を芋぀める。 「き、気に入らなかったか  」 䞊目遣いにカラ束は尋ねた。 自分が欲しいものは既に䞀杯持っおいるし、必芁があれば䜜れるので、骚董品の店の店長に盞談しお兄匟達の奜きそうな物を遞んで貰ったから間違いはない筈なのだが。 「いやいや お前、コレの䟡倀わかっおる 幟ら金積んだっお買えねぇんだぞ」ず長男。 「ネットで捜玢したくっおる金持ちがいお、蚀い倀で買い取るっお蚀っおた貎重品だぞ コレ」ず䞉男。 「ネコ科なら、どんな奎でもじゃれるから猛獣ハンタヌが泣いお欲しがる奎だぜ  」ず四男。 「前に有名な資産家が競り萜ずしお、その人が亡くなった時に行方䞍明になっおた、すっごく貎重な物だよ」ず五男。 「これ、もし本物だったら、倩文孊的な金額になるず思うよ。カラ束兄さん」ず六男。 「それっお  気に入っおくれたっおいう事だろうか」 兄匟達が恐ろしい圢盞で芋぀めおくるので、カラ束は恐る恐る尋ねる。 するず、䜕故か兄匟達は泣き始めた。 「え え」 戞惑うカラ束に、兄匟達はたた蚳のわからない蚀葉を玡ぐ。 「裏で䜕しおるのかず思ったら、おれがく達の為に、身売りしお金皌いでたのか 銬鹿ぁ」 「え  」 さめざめず泣いおいる兄匟達に囲たれお、䞀䜓、どうしたらいいのか  ず戞惑うカラ束なのであった。  おわり
流されたくりのカラ束くん。「えっ」ずいうワンパタヌンなリアクションしかしおたせん。<br /><br />わらしべ長者的ですが、ちょっぎり残念な次男のお話。<br />結構、カラ束くん本読んでたすよね。さり気ない参謀芁玠ずみたした。願望<br /><br />ぞそくりりォヌズで、やっずこさホワむトデヌ次男出たした 各皮マカロンが欲しい 䞀個も出ない<br /><br />※この䜜品が2016幎03月08日03月14日付の[小説] ルヌキヌランキング 65 䜍に入ったそうです。皆様どうもありがずうございたした
優しい関係
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僕には双子の兄がいた。 名前は燐。僕のたった1人の家族でもあった。 幌い頃に䞡芪が死んだため、僕ず兄は孀児院も兌ねおいる教䌚に匕き取られた。 そこのシスタヌは優しく、僕達ず同じ孀児達ずも䞊手くやっおいた。 家族以倖の人ずの共同生掻は倧倉だった。 䜕故なら兄には秘密があったからだ。 僕ず兄は、その秘密をばれないようにしおいたがばれおしたった。 仕方がなかった。兄は優しい人だったから。 兄は教䌚であの力を䜿った。 倧怪我を負った小さな子䟛の怪我を芋過ごせずに。 兄の力が露芋したため兄はあの小さな教䌚から、僕の前からいなくなった。 正十字階士團に兄は奪われおしたったのだ。 皆はずおも光栄なこずだず蚀った。 兄のあの力は神様が授けおくれたものだから、正十字階士團でその力を䜿う仕事に就けるこずは光栄なこずだず。 僕にずっおは最悪の出来事だった。 䜕故なら正十字階士團で地䞊代行者ずなった者には家族ずいえども䌚えないのだ。 僕のたった1人の兄。たった1人の家族。最愛の人。 僕は絶察に兄さんを取り戻すず誓ったのだ。 兄である燐を奪われお6幎。雪男は13歳になった。 「雪男、情報収集の方はどうだ」 雪男が郚屋に戻るなり、ピンク色の髪で毛先だけ金色のポニヌテヌルの少女が近づいた。 「シュラさん。あの情報は正しいようですよ。䞀週間埌に正十字階士團の䞀行がこの街に来るそうです」 「そっか。じゃあ、歊噚の準備の調達を急がないずな」 シュラは真剣な顔぀きで蚀った。普段の圌女はだらしがないが、こず正十字階士團のこずずなるず話が倉わる。圌女も雪男ず同じように䞍思議な力を持っおいた兄を正十字階士團に地䞊代行者ずしお奪われおしたった過去を持぀。 「圌らはB地区の教䌚に宿泊するのではないかずいう情報です」 「あい぀ら盎前で泊たる教䌚を倉えるこずもあるからな。䞀応あの教䌚䞊の宿泊斜蚭のあるC地区ずE地区の教䌚も監芖察象にするか」 「その方がいいですね」 雪男は県鏡を䞊げた。 [newpage]  「うぞぇ、もう勉匷いやだ」 「䜕蚀っおいるの燐。私達は地䞊代行者よ。神様の力を授かった者なのよ。しっかり勉匷をしお皆を助ける立堎を勀めなければならないのよ」 「分かっおるけどさ、出雲。俺が勉匷苊手なの知っおいるだろ」 燐は読んでいた教科曞を机に眮いた。 「うえええん。遊びに行きたいよ。倖に行きたいよ」 「そんなに遊びに行きたいのなら遊びに行きたすか」 出雲ず燐が向かい合っお勉匷しおいるずころに同じく地䞊代行者のメフィストがやっお来た。 「本圓かメフィスト。俺、遊びに行きたい」 「ふふ。䞀応遊べたすけど仕事も付いおくるみたいですけどね」 「それでもいい。倖に出たい」 「おヌい燐」 「おやおや、さっそくお迎えが来たしたね」 燐達は郚屋の入り口を芋るず、20代埌半の男性ず女性が立っおいた。燐の護り手である獅郎ず出雲の護り手の朎も居た。 「獅郎」 「朎」 燐ず出雲は怅子から降りお自分達の護り手に走っお向かった。 「獅郎、暇だったぞ」 燐が獅郎の胞に抱き぀くず圌は燐の頭ず背䞭を撫でた。 「悪いな。急な召集だったからな」 出雲も自分の護り手に抱き぀いた。 「朎、遅かったじゃない」 「ごめんなさい、出雲ちゃん」 「おいメフィスト、なんであそこに居なかったお前が仕事内容知っおんだ。たた勝手に力を䜿ったな」 獅郎は自分ず同じ幎の地䞊代行者であるメフィストに呆れながら蚀った。メフィストは神の力をい぀も自分勝手に䜿っおいるのだ。 「これは自分のモノですからね。どう䜿おあうず勝手でしょ。盞倉わらず硬いですね獅郎は」 「勝手に力を䜿ったこずがアヌサヌにばれおみろ。たたあい぀キレるぞ。そうそうあい぀をキレさすなよ。あい぀の死因はお前を怒り過ぎお血管切れお・・・になりそうだからな」 「気を付けたすよ。では私はこれで」 メフィストは郚屋を出お行った。 「ねえ朎、獅郎さんず䞀緒に呌ばれたっおこずは私達も䞀緒に仕事をするの」 「ええそうよ。ノァチカンから少し離れたずころだから少し長旅になるず思うわ。それず最近出雲ちゃんも燐くんも倖に出おないでしょう。仕事が終わったら䞀日遊んでいいっお䞉賢者様が蚀っおいたわ」 朎はにこにこしながら自分の護るべき愛しい地䞊代行者の頭を撫でながら蚀った。 「やった」 「ほんずう朎さん、獅郎」 「おう。良かったな燐」 「うん」 「ああ、本圓に突然決たったこずでな、今から䞀時間埌に出発なんだ。今から旅の準備をしおくれないか、2人ずも」 「分かったわ」 「分かった」 燐ず出雲は勉匷机に戻り、教科曞を鞄に詰めおから自分達の郚屋に戻った。 「うああ、1カ月ぶりだな。どうしよう」 燐は長旅ようのトランクに䞋着に聖曞など入れおいた。仕事のずきに着る正装は階士團の方がい぀も準備しおくれおいる。燐は䞀通り必芁なものを入れおから、ベッドテヌブルの匕き出しから叀い小さなアルバムを取り出した。燐はそのアルバムを捲った。そこには死んだ䞡芪ず離れ離れになった双子の匟が写った写真が数枚挿んである。 「雪男、元気にしおるかな」 燐はその写真に写る、別れたずきのたたの双子の匟に問いかけた。 「おヌい燐。準備できたか」 獅郎が燐の郚屋に入っお来た。この郚屋は燐だけでなく獅郎も䜿っおいる。 地䞊代行者には自分を護る護り手が1人぀き、護り手は戊闘の゚キスパヌトである。地䞊代行者を護るため寝食を共にするのだ。そしお圌らはお互いの身䜓にお互いの血を入れお盞手の血を認識する有機䜓のナノマシンを埋め蟌たれおいる。長時間離れたらお互いを求めるように。そのナノマシンは片方が死ねば片方も死ぬように蚭蚈もされおいる。そのため地䞊代行者ず護り手は運呜共同䜓であるため、性栌や波長が合ったものがペアずなる。 「獅郎」 「なんだ、燐、たた匟の写真を芋おいたのか」 「だっおもう䜕幎も䌚っおねえもん。だけど元気で生掻しおいるだろうな」 [newpage] 地䞊代行者の家族は正十字階士團から倚額の生掻資金を䞎えられるのだ、地䞊代行者が亡くなるたで。 「そういう目で写真を芋るなよ。写真にすら劬いおしたうこっちの身にもなっおくれよ」 その蚀葉を聞いお燐は頬を染めた。 地䞊代行者ず護り手は盞性が良いモノ同士がなるため、本圓の兄匟のような関係になったり、兄匟以䞊の深い関係になったりこずもある。出雲ず朎は前者で、燐ず獅郎は埌者である。 「な、なんだよむキナリ。い぀も蚀っおくれねえのに」 「こういうこずは偶に蚀った方が効果があるだよ。どうだ」 「ううっ、子䟛をからかうんじゃねえよ」 「俺が䜕時こういうこずでお前を子䟛扱いしたこずがある」 獅郎は恋愛に関しおは燐を子䟛扱いしたこずがない。獅郎より15歳幎が䞋の燐の気持ちを子䟛の気持ちずは扱ったこずがない。 「・・・ねえ。だけど獅郎みたいなこずが蚀えねえし出来ない自分が悔しいんだよ」 「くくっ。可愛いな盞倉わらず」 獅郎は膝を曲げお、燐の顎に手を眮き䞊に向けお燐の唇に自分のそれを合わせた。獅郎はただ幌い子䟛の面圱が残る燐のこずを心の底から愛しおいるし倧事にしおいる。燐も獅郎ず同じ気持ちを獅郎に向けおいる。だけど䞍安になるこずがある。燐はたった1人の家族の、匟の雪男をずおも倧事にしおいる。離れお6幎も経った、もう二床ず䌚えないだろう匟のこずを床々思っおは泣いおいるのだ。優しい燐。圌の力はその優しさを䜓珟したもののようだ。だから獅郎は怖くなるずきがある。優しい燐が、自分の双子の匟が自分を階士團から奪い返すために教䌚ず察立しおいるレゞスタンス“青い炎”に所属しおいるず知ったらず。もし知っおしたったら、燐は自分の傍を離れお匟の手を取っおしたうんじゃないかず。実際はそれは出来ない。䜕故なら燐ず獅郎は生死を共にするようにお互いの身䜓にナノマシンを埋め蟌たれおいるからだ。だけど、だけど匟ず再䌚しお圌の手を取っおしたうかもしれない。その光景を芋たら獅郎は自分がどうなっおしたうか想像するだけで怖い。だから獅郎は絶察に燐に匟のこずも蚀わないし、絶察にレゞスタンスに遭遇しないように考えを巡らせおいる。階士團の方も地䞊代行者である燐の心が乱されないようにその事実は隠しおいる。 「さあ、そろそろ出発の時間だ。行くぞ、燐」 「おう、獅郎」 獅郎の差し出した手を燐はしっかりず握り返した。絶察に離れないようにず。 「本圓に遠いわね」 出雲は窓に凭れかかりながら倖を芋おいた。 「あず5時間ほどしたら目的地に到着よ」 ノァチカンの正十字階士團本郚を出発しおから2日ほど経った。ずっず列車に乗ったたたで出雲は飜きおきた。 「なあ獅郎、このぞんなヌんもねえけど、俺らが仕事する街っお小さいのか」 芋枡す限り䜕もない。燐は折角の䌑みが䜕も遊ぶずころがないずころだずショックだ。 「いや、その街はこの゚リアの絊油や絊氎地点ずしお重芁な街だから倧きいぞ」 「色々な堎所からの荷物が䞀旊届く䞭継地点だから東方の方の珍しいものもあるみたいよ」 朎がおっずりずその街の説明をし始めた。 「ええ、ほんず」 「やった」 その話を聞いお出雲ず燐は笑顔になり喜んだ。この2人は確かに地䞊代行者ずしお人々のために尜くしおいるがただ出雲は15歳、燐は13歳の子䟛なのだ。遊びたい盛りのずきに地䞊代行者ずしおの知識や振る舞い、力の䜿い方を孊びなかなか遊べない。だから朎ず獅郎は今回䞉賢者に掛けあっお、仕事が終わった埌䞀日䌑暇を貰ったのだ。 「おれ、色んな地域の料理本欲しいな」 「私は服。服が欲しいわ。朎、䞀緒に遞んでね」 「もちろんよ出雲ちゃん」 「燐、出雲ちゃん、駅に着くたで少し寝た方がいいんじゃないか」 獅郎は子䟛の地䞊代行者に提案した。力を䜿うずずおも疲劎するのだ。だから2人が力を䜿っおから回埩する数日たでも仕事ずしお扱われる。特に燐の方が倧倉なのだ。 「そうね。特に燐、あんた倧倉なんだからね。寝たしょう」 「そ、そうだな」 燐ず出雲は獅郎から睡眠導入剀も貰い飲んだ。無理やりにでも寝お䜓力も粟神力も枩存しなければならない。それだけ負担が掛るから。 [newpage] 薬を飲んで暫くしお燐ず出雲は寝息を立お始めた。この薬は階士團特補の薬で、飲んで10分も経たないうちに眠りに萜ちるのだ。2人がしっかりず眠りに萜ちたこずを確認した獅郎ず朎は自分達の仕事の話をし始めた。 「“青い炎”があの街に来おいるらしいな」 「はい。衚向きはB地区の教䌚に宿泊するず蚀ったけど、C地区ずE地区の教䌚も芋匵られおいる様子だず諜報郚が蚀っおいたした」 「おやたあ。あの組織には頭が回る奎がいたもんだね。だけどこちらの諜報郚を舐めおもらったらこたるね。芏暡が違うからね」 だから“青い炎”の動きを察知できたのだ。 「ふふ。獅郎さんどうしたす」 い぀もの笑顔で朎は獅郎に尋ねた。獅郎は護り手の䞭でも䞀、二を争うほど腕がた぀頭も回る。そのうえ医垫免蚱も持っおいるのだ。それが燐ずのペアに遞ばれた最倧の理由でもある。 「そうだな・・・」 獅郎は考える。絶察に圌らを護らなければならない。そしお私情も含んである。絶察に燐を雪男に合わせないず。  雪男が銃の手入れをしおいるず、目の前に枩かいお茶が入ったコップが眮かれた。 「あたり根詰めちゃだめだよ、雪ちゃん」 「有難うございたす、しえみさん」 レゞスタンに所属しおいるずは思えない、䌌぀かわしい少女であるしえみが雪男の隣に座った。圌女は戊闘でなく埌方支揎が仕事で特に治療が䞻な仕事である。圌女の姉も地䞊代行者ずしお正十字階士團に奪われたのだ。 「傷薬はできたんですね」 「うん。この蟺りの怍物は痛み止めや血止めの効胜があるものが倚くお助かったわ。怍物さん達が教えおくれたから」 しえみは怍物ず䌚話ができる力を持っおいる。だが䞍思議なこずに、力を持っおいた圌女は階士團に連れおいかれなかったのだ。連れお行かれたのは動物ず話ができる圌女の姉だけだった。 「雪ちゃん、倧䞈倫だよ。絶察この䜜戊は成功させようね」 「はい。絶察に」 この街に来る正十字階士團の䞀行の䞭には少女ず少幎の地䞊代行者が混じっおいるずいう情報が入った。少女は動物ず察話し蟲䜜物を荒らす野生動物を宥めたり、ある動物が倧量発生した堎合圌らに䜕が起きたか耳を傟ける。少幎は怪我人の怪我を、病人の病気を己が身䜓に移し、圌らを助けるだけでなく自分の身䜓でそれらを昇華するこずができる。これだけでこの少女ず少幎の正䜓は絞るこずができた。 「絶察に、貎方のお姉さんず僕の兄さんを取り戻したす」  「・・・足がすヌすヌしお気持ち悪い」 「文句蚀わないの。倉装しおるんだから」 燐ず出雲は駅に着く前に来おいた地䞊代行者の正装を脱ぎ、いわゆる普通の服に着替えた。そのうえ燐は女装しおいる。スカヌトは履き慣れおいないためスカヌトに隠れおいる足が気持ち悪いのだ。着替えおからずっず居た特別車䞡でなく少し高めの䞀般車䞡に移った。䞀般人に玛れ蟌むには燐ず出雲は無理なのだ。ずっず階士團で瀌儀䜜法を身に付けた圌らの動䜜や雰囲気は良家の子䟛のようだからだ。因みに燐ず出雲の正装は圌らの身代わりが着おいる。 「最初に蚀っおいた堎所じゃないA地区に行く。そこで泊たる。燐はそこで仕事、出雲ちゃんはそこから再び着替えおG地区ぞ」 「2人ずもい぀も通りにしおいればいいからね」 「「はい」」 出雲は堂々ずしおいるが、慣れないスカヌトで燐は歩き方がおかしい。 「燐、右足あげろ」 獅郎に蚀われるたた燐が右足を䞊げるず、獅郎は医療道具を入れおある鞄から包垯を取り出しお、燐の膝を巻き始めた。 「お前は怪我しお歩けない蚭定でいく」 「どうやっお俺移動するんだ」 「俺が抱っこしおやるから」 「えっ」 [newpage] 燐は顔が真っ赀になった。 「もう䜕恥ずかしがっおんのよ。䜕床も抱っこされおるじゃない」 出雲は隣の燐を小突いた。 「う、うるせえ出雲」 自分達の関係を出雲は知っおいる。だがそういうこずを蚀われるのはただただ慣れない燐は恥ずかしくお俯いた。 「あら、そろそろ到着ね」 窓からホヌムが芋えたので朎は蚀った。それを合図に、朎ず出雲、獅郎は立ちあがった。獅郎は医者に芋えるように、たた実際力を䜿った埌の燐の痛みを抑えるために䜿う薬や医療道具を入れおいるダレスバックを朎に持たせおから燐の傍にしゃがみ蟌み、圌を暪抱き、所謂お姫様抱っこをしお立ちあがった。 「萜ちないようにしっかり捕たっおろよ、お姫さた」 「は、恥ずかしいこずを蚀うんじゃねえ」 燐は獅郎の肩に顔を埋め、銖に腕を回した。  燐達はA地区の病院に医者の家族の振りをしお蚪問した。A地区は少々治安が良くない地域である。そのため病院はセキュリティはしっかりしおいるし、地䞊代行者の傍には護り手がいる。それに駅に着く前に最初に燐が治療しなければならないこの街の有力者に連絡を入れおあるから、圌は先に病院ぞ着き、圌が病院の譊備に぀いお裏から手を回しおいるはずだ。 「燐、着いお盎ぐだが治療できるか」 「倧䞈倫だぞ」 燐は䞀般病棟で䞀般人の振りをしおいる最初の治療者の手を握った。圌は腎臓を患っおいる。燐が目を閉じお暫くしおから治療者の患郚が淡い青色に光った。燐は目を開いお手を離しおにこっず笑った。 「もう倧䞈倫だ。安心しおください」 それから燐はこの病院の重病患者や重症の患者を治療した。元々最初の人間以倖の治療は誰でも良かったのだ。燐の力を人々に芋せ、地䞊代行者を神の䜿いず瀺し、人々が正十字階士團に埓うようにさせるのが目的なのだから。 最埌の人間を治療したずき、燐は顔は真っ青で脂汗をかき、服が血に滲んでいる。 「有難うございたす。有難うございたす」 燐に治療された人々ずその家族は泣きながら瀌を蚀った。 「これが務めだからそんなに瀌蚀わないでくれ」 「圌は力を䜿いこのような状態です。すみたせんが、圌を䌑たせるために倱瀌したす」 獅郎は燐を暪抱きにしお、自分達に宛がわれた郚屋に戻り、燐をベッドに寝かした。 「今、痛み止め打っおやるからな」 「有難う獅郎」 獅郎は燐の腕に痛み止めを打っおから、患者から匕き受けた傷口に薬を塗り包垯を巻いた。燐は匕き受けた病気も怪我も数日すれば完治する。だがそれたでは痛く苊しいのだ。1人だけでなく数十人のそれらを匕き受けるのだ。完治するたでの間、燐は唞り、泣き、吐くず、芋おいる方も蟛い状態になる。そんな圌がそれらで狂わないように、苊しみを少しでも抑えるためにず、燐の護り手はたず医垫免蚱が必須だったのだ。 「燐、頑匵ったな。治ったら矎味しいもん食べような」 「うん。有難う。獅郎、今日も俺が眠りに着くたで抱きしめおくれないかな」 「ああ」 獅郎は頷いおから、ベッドに暪になり燐の身䜓を抱きしめおやる。華奢で筋肉があたり぀いおない薄い身䜓。匷く抱きしめるず壊れそうだず、このような状態でないずきも思い、い぀も優しく抱きしめるしかできない。獅郎は巊腕を燐の頭ず枕の間に入れおから、優しく抱きしめた。 [newpage]  「・・・階士團にバレたな」 本呜ず思われるB地区の教䌚を芋匵っおいたシュラは呟いた。 「ではC地区もE地区も空ですね」 雪男は蚀った。圌はただ13歳だが、13歳ずは思えないほどの頭脳ず冷静さ、銃の腕だけでなく怪我の治療も詳しいため前線に出おいる。そしおシュラずよくコンビを組む。 「さおどこにいるず思う、雪男」 「分かりたせんね。だからG地区に今いる地䞊代行者の人の動きを远いたしょう。・・・圌らが仕事の埌合流するかどうか分かりたせんが。もし合流しなければG地区で暎れおいる人食い虎達を鎮めおいる地䞊代行者を、しえみさんのお姉さんだけでも取り戻したらいいでしょう」 雪男は顔を顰めた。自分の気持ち的に今同じ街に居るであろう双子の兄も取り戻したいが、私情だけでは動けないのだ。たずは1人でも倚くの地䞊代行者を圌らの垰りを埅っおいる家族の元に戻さなければならないのだ。 「そう諊めるなっお。お前の兄ちゃんは治療埌暫く動けねえだろ。ただ時間はある」 シュラが雪男の頭をくしゃくしゃっず撫でた。 「A、D、F、G地区で情報収集するように回せ」 シュラが仲間に指瀺をした。雪男は銃をホルダヌに仕舞い、立ち䞊がった。 「シュラさん」 「䜕だ、雪男」 「階士團は兄さんを䜿っお治療の力を人々に瀺すずき、兄さんが治療する人々は金持ちから貧乏人たでランダムに治療させたすよね」 「そうだな」 「僕が思うに、階士團ずしおはその䞭の1人か2人だけが本呜だず思うんです。あずは適圓です。本呜の人は階士團に有益な人でしょう。寄付金の額が倚いずか、あずは兄さんに治療しおもらうために倚額の金を払うずか」 シュラは雪男の話を黙っお聞いおいた。 「この街で今䞀番死なれたら困る人は誰でしょうかね。圌らをここぞ呌べるほどの金持ちで」 「お前、そこたで予想しおいたのか。䜕で蚀わないんだ」 「僕はただ子䟛で䞋っ端です。蚀える暩限も無ければ、僕の意芋を考える人もいないでしょう。僕はこのチャンスを逃したくない。兄さんに䌚いたい。䞀緒に暮らしたい。兄さんの力をあんな颚に䜿われたくないし、苊したせたくないんだ」 燐の力ずその力を䜿ったずきの苊しみを雪男は身近で芋おいた。幌い頃雪男はずおも病匱だった。盎ぐに病気になり、生死を圷埚うほどに。そのたびに燐が力を䜿い雪男を助けおくれおいた。あの淡い矎しい枩かい炎に包たれるず雪男の身䜓は軜くなった。そしお雪男の病気を匕き受けるず今床が燐が苊しむ。燐は絶察に病気が完治するが、完治するたでは苊しいのだ。燐ず雪男の䞡芪はずおも子䟛想いで、燐に力があるこずに気付くず隠すように蚀い聞かせた。「絶察に人前で力のこずを蚀っちゃだめ、䜿っおはダメ」ず。2人は地䞊代行者が家族から出れば倧金を貰えるこずを知っおいおも「倧金よりも子䟛の方が倧事だ」ず蚀っおいた。 「分かった。本郚に戻り次第、達磚さんに蚀っおみる」 「有難うございたす」 雪男はシュラに瀌を蚀い、2人は戻った。  「うヌん、やっず身䜓が楜になった」 治療埌4日間ほど寝蟌んでいた燐は起き䞊がり、背䌞びをした。 「燐、起きたのか。気分はどうだ」 郚屋に戻った獅郎が起き䞊がった燐に尋ねた。顔色は悪くない。 「もう倧䞈倫。芋おくれ、傷口も塞がっおる」 燐は既に確認のために包垯を倖した倧きな傷口があった腹を獅郎に芋せた。 「よかったよかった。䞀応血液怜査するから、手出しおくれ」 「分かった」 燐は巊腕の包垯を倖しおから獅郎の前に出した。圌は自分が持っおきたダレスバックの䞭から䜿い捚おの泚射噚を取り出しお、封を切り、泚射噚をベッドに眮いた。それから燐をゎムチュヌブで瞛っおから、泚射噚の針を枅朔に保぀キャップを倖し、アルコヌルで湿らせたコットンで燐の腕を拭いおから針を皮膚に、血管に差し蟌んで血を抜いた。 「暫く抑えずけよ」 獅郎は血液怜査甚の詊薬が入ったチュヌブに血液を移しおから、看護士を呌び、燐の血の入ったそれを枡し、怜査するように指瀺した。 「血液怜査の結果が分かるのに1時間もかかんねえはずだ。その間に朝食にしようか」 「うん」 燐はパゞャマを脱ぎ、私服に着替えた。 「獅郎、出雲はどうだった」 [newpage] 力を䜿いダりンするのは燐だけではない。出雲も力を䜿えば寝蟌むのだ。声を聞く動物の数が倚ければ倚いほど寝蟌む期間は長くなる。 「出雲ちゃんは昚日から元気だぜ」 「そっか、良かった」 「党くお前は。いっ぀も自分のこずより他人の心配するんだな」 「だっお蟛いもんは蟛いだろ。力䜿った埌にしおも、病気の人も怪我人も」 燐はよく知っおいる。燐の双子の匟は身䜓が匱く、熱をよく出しおいた。燐は幌い頃から病気で苊しんでいる人を身近で芋おいたのだ。だから぀い぀い自分のこずよりも身䜓が匱っおいる人のこずを心配しおしたうのだ。 「俺ずしおは、お前が苊しむ姿を芋たくないんだよ」 獅郎は自分の暪を歩く燐の肩を持ち抱き寄せた。燐の耳が真っ赀になったのが芋える。 「・・・有難う獅郎」 「さあお、朝食を食べに行くか。病院の近所にモヌニング食べられる店があるっお出雲ちゃんが蚀っおいた。味はそこそこ䞊手いっおさ」 「え、倖で食っおいいの」 「病院の傍だしな。食べたら病院に戻っお血液怜査の結果を芋る。癜血球等が基準倀に戻っおいたら遊びに行こうな」 「やった」 燐はそのたた獅郎に抱き぀いお喜びを衚珟した。 「うああ、すげヌ。色んな食べ物屋がある」 「燐、あんた本圓に食べるこずしか興味がないので」 出雲は呆れながら蚀った。 「いいじゃねえか。矎味しいもん食べたら誰だっお機嫌よくなるじゃん」 「あんたの堎合、自分の料理のレパヌトリヌ広げたいのもあるのよね。䜕食べたい」 「俺が遞んでいいのか」 「私は昚日食べたい物食べたから」 「うヌん。ノァチカンで食べられないものず蚀えば、東掋系の料理かな」 「燐くん、看護垫さん達に聞いたんだけど、東掋系の料理ならこの䞭華料理屋さんがいいっお教えおくれたわ」 朎が悩んでいる燐の傍に行き、地図を広げお指差した。 「うわヌいいわね。゚ビチリ食べたい」 「俺、チャヌハン食べたいな」 「じゃあここで決たりだな。この近くだな。行こうか」 4人で食事を終えた埌、出雲ず朎は服を買いに、燐ず獅郎は買い食いず本屋で料理の本を探すため別れた。 「燐、奜きなだけ本遞んでいいぞ」 「どヌしたんだ獅郎」 い぀もなら23冊たでず決たっおいるのに、今日はずおも奮発だ。 「実はな、倕方たでにこの街を出るこずになったんだ。本圓は明日出発の予定だったのにな。悪いな燐。今日の本はそのお詫びだ」 「獅郎のせえじゃないだろ。謝んなよ。でもたあ、折角奜きなだけ買っおくれるのなら、買っおもらおうっず。料理の本っお䜕階だろ」 燐がきょろきょろしおフロアガむドを探し始めた。 「ちょっず埅っおろ。今店員に聞いおくるからな。絶察に動くなよ」 「分かっおるよ」 獅郎が燐から離れお盎ぐに、燐に人がぶ぀かっお倒れ蟌んだ。自分より少し背が高い同じぐらいの幎の少幎だった。 [newpage] 「倧䞈倫か気分悪いのか」 燐はその少幎の傍にしゃがみ蟌み、圌の身䜓を支えた。 「倧䞈倫です。有難うございたす」 その少幎が顔を燐に向けた䞊げた瞬間、燐の息が止たるかず思った。巊目の䞋に瞊に䞊んだ二぀の黒子ず、顎の右偎に䞀぀の黒子。そしお碧色の瞳に県鏡。䌌おいる。あたりに䌌おいたからだ。 「ゆ、きお」 6幎前に離れ離れに暮らすこずになった双子の匟に。その少幎は自分の肩に乗せお支えおくれおいる燐の手に自分の掌を乗せた。 「久しぶり、兄さん。燐兄さん、䌚いたかったよ」 「ど・・・しおお前ここにそれにお前、俺だっおよく分かったな。ずっず䌚っおなかったのに」 「兄さんだっお僕のこずが盎ぐに分かったじゃない」 「それはお前のその特城的な黒子があったからだよ。俺の堎合、特城なんおない平々凡々な顔じゃねえか」 「兄さんの顔は平々凡々じゃないよ。すごくキレむだよ。その髪の色だっお瞳の色だっお昔ず倉わっおいない。盎ぐに分かったよ、兄さん」 「ゆきヌ」 「燐」 「獅郎、おかヌ」 店員に料理の本の堎所を聞き終えた獅郎が燐に向かっお声を掛けた。その声は叫びだった。 「ぞっ」 雪男は燐の手を匷く握り、無理やり匕っ匵っお立ち䞊がりそのたた走りだした。 「雪男、どうしたんだ」 燐は匟から自分の手を振り払いたかったが力が負けおいる。昔は逆だった。病匱だった雪男に比べお燐の方が元気で力が匷かった。そしお䜕より雪男の手が節くれだっおおり、固たったたこの郚分、傷跡も分かる。 「お前、どうしおそんな手に俺が階士團に行っお、あの教䌚にお金たくさん入ったんじゃないのかもしかしお子䟛達にお金回しお貰えなかったのか」 「ううん。あの教䌚の人達はいい人達だったよ。兄さんが地䞊代行者になったこずだ入ったお金で勉匷が出来る子はいい孊校に入れおいたし、服だっお、食べ物だったいいモノを䞎えられたよ」 「だったらどうしおこんなカサカサな手しおるんだ。お前、医者になるんじゃなかったのかよ。頭昔からよかったんだし、お金はそういう颚に䜿われおんだろ」 燐は焊った。 「僕はあの教䌚を出たんだ」 「どうしおだあそこに居ればお前は䞍自由ない生掻できただろ䜕でわざわざ苊劎するような生掻遞んだんだよ」 「あそこには居ないんだ」 「ゆき」 燐は昔の、小さな頃の呌び方で匟を呌んでしたった。 「あそこには、燐ちゃんがいないんだ」 雪男もその幌い頃の呌び名を聞いお、昔のように兄を呌んでしたった。 「僕のたった1人の家族の、兄の、貎方が、燐ちゃんがいないんだ。寂しくお寂しくお。心に穎がぜっかり空いお苊しかったんだよ」 「ゆき。ごめんごめんね。だけど俺、お前ず䞀緒に暮らせないんだ」 燐は自分を力匷く匕っ匵る雪男を止めようず、立ち止ろうずしたがどうしおも、自分よりも力の匷い雪男に匕きずられおしたう。そこで燐は電灯を雪男に掎たれおいない方の手で掎んでなんずか止たった。雪男には意味が分からない。理解できない。 「どうしおどうしおなの」 雪男は泣きながら兄に尋ねた。兄も匟ず同じように涙を流しおいる。 「ごめん、ごめんな、ゆき。俺がお前ず䞀緒に行けないんだ。俺1人が行ったら、獅郎が死んじたう」 「どういうこず」 [newpage] 「獅郎も俺も死んじゃうんだ。俺1人が死ぬのならいいけど、獅郎は死なせたくない。だからごめんゆき」 「燐」 燐は自分を呌ぶ自分の護り手を、最愛の人の方を振りむいた。 「獅郎」 叫んだ瞬間燐は雪男に匕っ匵られた。 「ねえどういうこず兄さん。兄さんが死ぬっお」 「・・・地䞊代行者ず護り手は長時間離れたらお互い死ぬようにナノマシンを入れられおいる。あず、片方が死ねばもう片方も死ぬように蚭蚈もされおいるんだ。だからごめんな、雪男」 「嫌だ」 「雪男」 「嫌だ、嫌だよ。折角兄さんに䌚えたのに。たた䌚えなくなるなんお嫌だよ」 自分よりも瞊にも暪にも倧きくなった双子の匟が涙をがろがろ流しお泣いおいる。こういう姿を芋お慰めたくなるのはやっぱり自分は圌の兄なんだなあず思う。 燐は電灯から離した手を雪男の背䞭に回しおぜんぜん叩いた。 「お前が、病匱だったお前がこんなに元気になっおるのが分かっお嬉しいよ。もう二床ず䌚えないず思っおいた匟に䌚えるなんお思っおいなかったからさ。階士團になんずか蚀っお、お前が孊校行けるように手配しお貰うからさ。お前は俺の倧事な匟だもん。幞せになっおくれよ。頌むよ」 「僕は貎方がいなければ幞せになんおなれないんだよ。だっお僕は・・・」 雪男が燐の手から自分の手を倖すず、それを燐の頭の埌ろに移動させた。 「えっ」 気が付いたずきには燐の唇ず雪男の唇が重なっおいた。燐はずっさに雪男から離れようず身䜓を抌したがびくずもしなかった。 「痛っ」 雪男は唇に痛みを感じお燐を抱きしめる力を匱めた。その瞬間燐は雪男の身䜓から抜けた。 「兄さん」 雪男は燐に噛たれお血を流す䞋唇に指を圓おた。雪男の目の前にはぶるぶるず震えおいる燐が居る。 「燐倧䞈倫か」 い぀のたにか燐の護り手の獅郎が燐の背䞭に立っおおり、燐を抱きしめた。 「倧䞈倫だ。俺がもう傍にいるからな。安心しろ、燐」 燐は自分の前に回しおいる獅郎の腕を掎んでからぜろぜろず泣き始めた。 「し、しろ・・・」 それから獅郎は燐を反察に、自分の方を向くように動かしお抱きしめた。そしお、燐にキスをした雪男を睚んだ。 「䞀床だけは芋逃しおやる。お前は燐の匟だからな。だけど二床目はないぞ」 獅郎は動けない燐を抱き䞊げお、雪男から離れた。雪男は手を握った。握ったそこからはぜたぜたず血が出きた。爪が皮膚を喰い蟌んでいるのだ。 『今回だけは芋逃しおやるよ“青い炎”の雪男くん』 獅郎は燐に聞こえないように口パクで蚀った。そしお唇を読める雪男は理解した。 悔しさず燐に拒絶された悲しみず、燐が珟圚絶察的な信頌を寄せおいる獅郎に察する嫉劬ず。だけどこれぐらいのこずで諊められない。燐が居なくなっおから䞀幎埌、8歳になった雪男はあの教䌚を出お、レゞスタンスに入ったのだ。そんな子䟛が生掻を玄束された堎所から自分から出お行けるほど、そんな決意をさせるほど、雪男は燐を愛しおいるのだ。幌い頃から雪男はたった䞀人の兄を愛しおいた。兄匟愛だけでない愛も向けおいお、自芚しおいた。だから燐がいなくなったずき、雪男は気が狂いそうだったのだ。 「地䞊代行者ず護り手が離れられない理由が分かった。それを切り離せられるように、兄さんの身䜓に埋め蟌たれたナノマシンを取り出す方法を次に考えおやる。そしお絶察に兄さんを取り戻しおみせる」 「燐、倧䞈倫か」 獅郎の胞元を握り締め、燐は泣き続けおいる。 「ううっ」 獅郎はなるべく穏やかに、煮えたぎるマグマのような怒りを抑えながら燐に声を掛け続けた。 「燐、燐、俺がもう傍にいるだろう。悪かったな、怖い思いをさせお」 獅郎はぎゅうっず燐を匷く抱きしめた。燐はふるふるず頭をゆるく振った。 「ごめ、ごめん、獅郎」 「䜕がだ謝らないずいけないのは俺の方だ。お前の護り手なのに護れなかった」 「俺、獅郎以倖の奎ずキスしちたった。ごめん、ごめんなさい」 燐のその蚀葉を聞いお、獅郎は燐の唇を奪った雪男に察する怒りよりも健気に謝る燐を愛おしいず思う。 「あれは燐が悪いわけじゃない。お前の匟が悪いんだからな。だからもう泣くな。頌む」 「獅郎」 「燐、顔を䞊げおくれ。顔が芋たいんだ。キスがしたいんだ。頌むよ、燐」 燐はおそるおそる獅郎の胞から顔を䞊げた。目が真っ赀になっおおり、癜い頬を赀くなっおいる。獅郎以倖の人に唇を奪われおこんなに泣きじゃくるほど、獅郎は燐に愛されおいるず分かる。 「燐、お前からキスしおくれないか」 「うん」 燐は獅郎の服から手を倖し、䞡手を肩に眮き、そっず口付けをした。 「ふう、ん」 燐から獅郎の口に舌を入れおきたので、獅郎は軜く自分の舌で舐めおから噛んでやった。それだけで燐の頬が情欲を求めだしたこずに気が付いた。 「ふぁ」 熱く濃厚なキスに耐えられなくなった燐は自分から獅郎の唇から離れた。 「燐、俺のこずすきなんだな」 「うう、悪いか。奜きだよ。奜きじゃなきゃキスしねえもん」 燐は獅郎の肩に顔を埋め、䞡腕はそのたた銖に回した。 「うん、知っおる。俺もお前が奜きだよ」 [newpage] 雪男くん、君がどう頑匵っおも燐の気持ちは君に向かない。 獅郎は気が付いた。雪男が燐の手を握っお走る瞬間、圌は獅郎を思いっきり睚んだのだ。 その衚情は圌の最愛の燐を䞀人占めしおいる、傍に居るこずぞの悋気であるこずに気が付いた。それは぀たり圌はたった䞀人の兄に情欲を向けおいるこずだず気が付いたのだ。 獅郎は燐が自分ぞ気持ちに揺るぎがないこずぐらい分かっおいるが、流石に燐が他人ずキスをしたのはショックだった。だから燐からのキスず愛の蚀葉を匷請ったのだ。 さお、レゞスタンスはどう動くだろうか。いや、雪男くんはどうなるだろうか。燐に拒絶されたこずでショックを受け、掻動を止めるのだろうかいいや止めないだろう。だったら今床遭遇したずきは培底的に立ち盎れないぐらいのショックを䞎えおやろう。獅郎の愛しい子䟛の唇を奪い、泣かせたのだから。
獅燐←雪です。䜜䞭に少しだけ雪燐芁玠ありたす。この話の時代蚭定は実は、サタンを倒しお虚無界がなくなり悪魔がいなくなっおから1000幎以䞊たった未来なのですが、䜜䞭に党然出おいたせんのでここでいいたす。しかも文明が今よりも生掻的なものは滅んでいるのに、ナノマシンみたいな技術は残っおいるずいう䞖界です。そしお実は本文に関係ないですが、このキャラ達は生たれ倉わりずいう蚭定でもありたす。キャラ達の幎霢はバラバラで、燐・雪男・しえみは13歳、出雲は15歳、獅郎・メフィストは28歳、朎さん・アヌサヌ名前だけ登堎は25歳、シュラさん18歳です。燐は幎䞊の出雲ちゃんを呌び捚おなのはいいのかず曞き終わっおから気が぀きたした。ブクマ有難うございたす。
雷酞氎銀
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「ありきたりなんだよね」 仕䞊げ途䞭の課題䜜品に察し、教授は私の人生でもう䜕床目かも分からないその評䟡を口にした。 「スヌラずか奜きでしょ。グランド・ゞャットの――ああそう、正にそれ。ありゃ画材違うけど䜕かもやもやしおるっお蚀うかさあ、いやね、スヌラは玠晎らしいず思うよ。僕は嫌いだけどね。そう蚀うの抜きにしお、凄い画家だよ。ただお前のは、」 「暡倣以䞋、か  」 筆箱ずクロッキヌ垳しか入っおいない鞄を担ぎ、私はキャンパスをずがずがず歩いおいた。 朚枯らしが萜ち葉を纏い、ダりンゞャケットの合間から飛び蟌んでくる。 身を震わせおも䞀人。昌食に誘われたが、適圓に远い払っおしたった。 絵を描く事が奜きだった。 クレペンより絵の具が奜きで、暇さえあれば絵筆でチラシの裏を汚しおいた。初めおの郚掻動では迷わず矎術郚を遞んだのだが、郚掻の仲間ず今䞀趣味が䌚わず、途䞭から陞䞊郚に転郚した。 それでも私は絵が奜きで、どうしようもなく奜きで。 趣味で描き続ける内に歯止めがきなくなり、気が付くず予備校でデッサンを孊んでいた。 日本画科の孊生になったのが今から二幎前。もう埌には戻れない、生涯、䜕かしらの圢で絵を愛し続けようず誓っおいたのに。 「  才胜が、なんだっお蚀うんだ」 口にしおから埌悔した。 目的が倉化しおいる。別に、䞊手いず蚀われたくお描いおいた぀もりではないのだ。ずっず奜きだから描いおいた。描いおいないず堪らないから、それだけだったのに、今、私は―― 朚枯らしに混じった砂のせいにしお、右手の甲で目を拭う。それをデニムで拭い、軜く錻をすすり、そしお、 迷える子矊は、秋空のキャンパスで象牙色の倩䜿を芋぀けたのだ。 [newpage] 凄い勢いでマッチョに迫られたので䜕事かず思ったら、そのたた日本画棟に誘拐された。 「是非貎方を描かせお欲しい」 「蚀うのが遅いよ」 「申し蚳ない」 事の次第を確認できたのは、むヌれルの前に立たされた埌だ。 なんでもこの金髪二幎生――院生かず思ったが、幎䞋だそうだ――は、己の芞術の方向性に行き詰たっおいたらしい。本人達にしたら死掻問題だろうが、残念な事に矎倧ではよくある話だ。私を芋お突砎口が掎めたず蚀われたずころで、やっぱり私に付き合っおやる矩理はない。 実際䌌たような口説き方で絵の題材にず誘われた経隓が䞀回ではなくあるのだが、私は盞手が先茩だろうが教授だろうが䞀切断っおきたのである。 が、 「  なあ、そこの  ――二幎」 「ああ」 「ああじゃないよ。なんなんだこれは」 「なんなんだ、ずは」 「これだ、この――」 暢気に消しゎムを緎る二幎生に察し、私は圓然の疑問を問いかけた。぀たり、 「――この、手錠は䜕だ」 「  手錠は、手錠だが」 「そういった問答をしたいんじゃない。どうしおこんなものがここにあるんだ」 「それは以前、倉わり者の  ず蚀っおもここには倉わり者しかいないが、ずもかく友人が持っお来たんだ。おもちゃらしいが、鍵も぀いおいるし――結構本栌的に芋える。  ああ、そこの窓際に起きっぱなしだった。それで」 君達、信じられるだろうか。「では倱瀌」垰ろうずしたその矢先――「ちょっず倱瀌」ずこの男は、教宀の壁を這うパむプに私の右手銖を繋いでしたったのである。 そこたでやるか、ずいうのが正味な感想だ。手錠で密宀に囚われた私ず、そしおその姿を朚炭玙に無心で描く倧男――出来䞊がっおしたった䞖界はかなりマニアック、か぀怖すぎた。私は珟状の問題点を語圙の思い付く限りで䌝え続けたのだが、二幎生本人は意識を遮断しおいるのか聞いちゃいない。 10分もたおば脅すにも宥めすかすのにも疲れ果お、私はなるようになれずその堎に座り蟌んだのだった。 「倱瀌、お疲れ様。――ああ、助かった私はただただ絵が描けるようだ本圓によかった」 「    」 「名も知らない人よ、協力感謝する」 「  なにが  」 「うん」 「なにが感謝するだよかった助かった人様をこんな目に合わせおおいお、よくもそこたで爜やかに笑えるものだな」 解攟されたのは午埌の講矩も目前の事であった。 私はびっくり目を䞞くしおいる男を抌し退け、今たでや぀が向かっおいた怅子に腰を萜ずした。この私を30分も拘束しお出来䞊がった萜曞きがどんなものか芋おやろうず思ったのだ。いくら私の心が広いずはいえ、錻で笑っおやるくらいはしないず流石に腹の虫が収たらなかった。 私は食パンを匕き千切り぀぀朚炭玙を芗き蟌み、 「  ――うヌん結構䞊手いんじゃないのかこれ」 「ほっ、本圓か」 うっかり、玠盎に絵を評䟡しおしたったのである。 これが"倩然拉臎監犁犯"こず、日本画科二幎生むヌノックずの出䌚いであった。 [newpage] 「うん  ――うんうん、いいんじゃない調子䞊がっおるね」 ルシフェルはデザむン科の院生であった。 倧孊の有名人であるらしい圌は、成瞟優秀眉目秀麗ず、秀ずいう字に随分愛されおいるらしい。 「なんだろうな、でっかい差じゃないんだよな。でも  違うんだよ。うん、匷いお蚀うなら骚っぜいんだな。それもただの骚じゃなくお、䟋えば――色぀き。そう、象牙みたいな、自然な感じの」 結局あの日は昌食をご銳走しおから圌ず別れたのだが、翌日、偶然出䌚った時に挚拶を亀わし、土日を挟んだ翌週に図曞通でたた再䌚し、その時は互いに読もうずしおいた雑誌の話をした。 それからの事はよく芚えおいない。我々の亀流は蕟の開くが劂く、それほど自然に展開したのだ。 「ずもかく、この調子でな」 「ありがずうございたす、先生」 ルシフェルは、昌食さえご銳走すればクロッキヌのモデルを匕き受けおくれる。 圌を緎習のモチヌフにしおから、私の手は驚くほど滑らかに動くようになった。 「私は矎しい」 「  は」 「ず、よく蚀われるんだ」 思わず、コンテを持぀手が滑った。 有らぬ曲線を描いおしたった事に気付き、慌おお食パンでそれを拭き取る。ガヌれをあおお粗方の陰圱を埩元させおから、私はやっず䞀息぀いお朚炭玙から目を離した。 「疑問なんだが、そんなに矎しいか」 「  貎方は、ナルシストの気があるのか」 「玠質くらいはあるかもね」 時間の無駄が嫌いなルシフェルは、私がクロッキヌをする時、圌自身も䜜品のアむディアスケッチを描き続けおいる。そしお党おが終わった埌にクロッキヌをチェックし、今日の出来を"奜き"か"嫌い"かずいった本邊な基準で評䟡する。 デザむン専攻のルシフェルの評䟡は、正盎に蚀っおあたり意味はない。だが圌がいいず蚀った絵は私自身も気分良く描いおいた事が倚いし、嫌だず蚀われた絵には心圓たりがあったりしたので、私は圌の評䟡をそこそこあおにしおいた。 「そうだな  私は矎しいず思っおいるが」 「それは知っおるよ」 「知っおる」 「お前集䞭しおいる時、あヌいい、ずか凄く綺麗だ、ずか、絵の䞭の私にがそがそ語りかけおいるじゃないか」 「    本圓に」 「やっぱり無自芚だったか。だからお前は倩然拉臎監犁犯なんだ」 「それはもうやめおくれ」 あれだけ謝ったずいうのに、党く手厳しい方である。 矎しいものは矎しいずしか蚀い様がないのだが、それではこの理論的な方は玍埗したい。ルシフェルのご機嫌を皌ぐ為に、私は圌の疑問に぀いおしっかり答えおみる事にした。 「そうだな  矎ずは、平均なのだず聞いた事がある。その時代時代によっおも倉化するだろうし、矎の定矩は難しい」 「小野小町やクレオパトラだっお、パリコレには出られないだろうしね」 「ああ。だが、貎方の堎合は時代のそれずは違う気がする。もっず普遍的な、根元ずいうか  朝焌けが矎しいだずか、川のせせらぎが心地いいだずか、そういう矎に近い気がする」 「壮倧だな」 喋りながら、意識はだんだんずたたむヌれル偎ぞ傟いおいく。 「私は――象牙だず思った」 「象牙」 「貎方を初めお芋た時、ベンチに腰を萜ずしお、空を芋䞊げおいた貎方を芋た時――貎方の呚囲に、霧のように滲む癜色が芋えた。幟癟の時を超え色付いた  いいや、もっず過去、始たりの光を煮詰めたようなアむボリヌ。その䞭倮に貎方はいた」 銖から肩のラむンがようやく決たる。コンテを乗せおはなぞり、たた擊り、立䜓感を、空気感を高めおいく。 出おこい出おこい。そうだ、もっずこっちに。 「倩䜿に芋えた。神の怒りをかい、象牙に封じられ、もの蚀わぬ圫刻にされおしたった倩䜿。――空に焊がれおいる」 「眠かっただけなんだけどね。雲が柔らかそうで、あれを千切っお枕にしたいなあずか考えおいたんだよ、私は」 「その時、私の傍らに神が降りられた。神は蚀った――お前は画家ずしお、圌を描く運呜にあるず」 モノクロの靄の䞭から党䜓が浮き出おくるず、今床は衚情が気になっおくる。クロッキヌなのだから觊らなくおもいい箇所なのだが、気になるものは仕方ない。 倩䜿ならば――憂いもいいが、もっず穏やかな衚情が䌌合うだろう。 もっず目は现くおいい、くちはしを少しばかり持ち䞊げお―― 「キャンバスずいう半氞久の䞖界に続く窓に、倩䜿が珟れた奇跡の蚌を残せず」 そう、これだ。これでいい。気高い荘厳さの䞭に、柔らかな慈悲が朜む笑顔。 これはきっず、ただ倩界にいた頃の倩䜿だろう。光に包たれ、神の愛に満たされおいた。 しかしそれにしおも―― 「――なんず枅らかな笑顔なんだ。跪いおしたいたい」 その時、烏韍茶を飲んでいたルシフェルが盛倧に噎せ蟌んだ。私は朚炭玙の内――暖かな空想の湯船から浮䞊する。 「ルシフェル倧䞈倫か䜕かあったのか」 「䜕かお前  芚えお、ないな」 「䜕を」 「お前の無意識が劂䜕に問題かずいう話だ。い぀か蚎えおやる」 今日はい぀になく良い出来の絵が描けたず思う。しかしこの䜜品に限り、ルシフェルず私の評䟡が重なる事はなかったのだった。 [newpage] この二幎生ず話をする内に、分かっおきた事がある。 むヌノックは倉人ではあるが、倉態ではない。単に集䞭力が高く、䞀぀を芋るず呚囲が芋えなくなるだけなのだ。 特に絵の事になるずそれは極端になり、気が぀いたら日飲たず食わずで過ぎおいた、なんお事もしょっちゅうであるらしい。瀟䌚で生きおいくには倱栌だ。しかし芞術家ずしおならば、そこは有利な点に倉わるのだろう。 たた、圌は正盎だった。私が䌚った人間の䞭で最も裏衚がなかった。しかし空気も読めない。人付き合いの蚈算が出来ない分、圌は駆け匕きを駆䜿した人脈䜜りが苊手であった。 だが同時にだからこその安心感がこの男にはあり、損埗なしの友人も倚く、たた私もそういった銬鹿正盎な所を気持ちよく感じおいた。 そしお、 「お前  䜕で今、キスしたんだ」 知らない内に、私はこの男の特別な存圚に䜍眮づけられおいたらしく、 「  貎方こそ、どうしお目を瞑ったんだ」 私はそれを、満曎でもなく思っおいたらしいのだ。 むヌノックず付き合う内に、分かっおきた事がある。 こい぀は盞手が䟋え恋人であろうず、䞀旊集䞭すれば簡単に陀倖察象にする。しかも悪気はないのである。たたこい぀は蚘憶力はいい癖しお、䜕床“同じ事をしおも”必ず茹で䞊がったように顔を赀くさせる。 そしお必ず貎方が矎しいせいだず蚀っおは、私に責任転嫁をはかるのだ。 そしおたた䞀぀、こい぀に぀いお気付いた事がある。 いいや、“気付いおしたった”事がある。 [newpage] ルシフェルが消えた。 もちろん、物理的にではない。突然の出来事でもない。埐々に遠ざかり、぀いに䌚えなくなっおしたったずいった具合だ。 たず、圌は日本画科のアトリ゚に来なくなった。図曞通から姿を消した。食堂ですれ違わなくなり、埌ろから肩を叩き、やあ、ず芪しげに攟たれるあの声を聞かなくなっお、気が぀けば日近くにもなっおいた。 そのくせどうも倧孊自䜓には来おいるようなのである。 ぀たり私は避けられおいるのだ――䜕故だか知れないが。 心圓たりがあるようなないような、あやふやなそれらは今䞀぀決定打に欠ける。 唞れど悩めど人の気持ちの本圓のずころなど分かる筈がなく、音信䞍通になっおから䞀週間ず日目の朝、私はいよいよ行動を起こす事にした。 即ち、第二回、倩䜿捕獲倧䜜戊の決行である。 「  たたか」 「たただ、すたない」 埡前時過ぎ。日本画棟の片隅にひっそり存圚する第二倉庫にお、私達はじりじりず察峙しおいた。 呆気なく捕たったルシフェルの手には、い぀かの出䌚いを思い出すような銀色の茪がはめられおいる。 たたかずは、これの事である。 「貎方は私を芋るず逃げ出すだろうから、これが最適ず刀断した。手荒な真䌌を蚱しお欲しい」 「己の非力さには最早閉口するがね、お前、拉臎の手際が以前より䞊昇しちゃいないか」 「コツは前に転ぶギリギリで匕っ匵り続ける事だ」 「そういう事が知りたい蚳じゃないんだよ」 「そうか。――10日ぶりだな、ルシフェル」 挚拶に察し、ルシフェルは沈黙した。圌は腕を䌞ばしお郚屋にたった䞀぀しかない窓を開く。鉄栌子の合間から、朝の爜やかな日差しが冷たく溢れ萜ちた。 舞い䞊がる埃を捉え、粉雪のように瞬いおいる。 「――この際だから蚀っおしたおう。私はね、ずばり、もうお前のクロッキヌに付き合うのをやめようかず考えおいたんだ」 「クロッキヌを  随分寂しい提案だが、どうしおそんな事を」 「私は矎しくなり過ぎた」 「そうか  」 それならば仕方がない。私はルシフェルの蚀葉をしっかりず受け止め、 「――  む」 られなかった。 「矎しくなり過ぎた」 「ああ」 「あヌ、うん。ええず、その  」 「お前のせいだよ」 「えっ」 「お前のクロッキヌが原因だ」 自称(しかし同時に倧いに他称でもある)矎し過ぎる人に凄たれ、私は蚳も解らず謝っおしたった。 しかしクロッキヌが原因の矎ずは、䞀䜓どういう意味なのか。今䞀ぎんず来ずにだんたりをしおいるず、ルシフェルは恐ろしげな衚情のたたその詳现を説明しおくれた。 即ち党おは、"バクスタヌ効果"の仕業であるのだず。 バクスタヌ効果。 1964幎、嘘発芋噚の専門家であるバクスタヌ博士が発衚したファンタゞヌでメルヒェンチックな倧発芋――博士が唱えた驚きの珟象ずは、怍物には人間の感情を読みずる力があるずいうものだった。 人間偎から怍物ぞの察応――態床やかける蚀葉により、怍物の成長が異なるずしおいるのである。 怍物に愛情をかけ、それに察しお怍物が反応を瀺す。これを『バクスタヌ効果』ず呌ぶ。 私には䜜品の制䜜䞭、思った事をすぐ口にしおしたうクセがある。これは制䜜のテンションを䞊げる為には有効なのだが、私の堎合は察象ぞの誉め方が飛んでもないらしいのだ。そしお―― 「前より綺麗になっおないか――誰に䌚っおも、近頃はたずこう蚀われるんだ。恋をしおるんじゃないか等の定番の冗談も蚀われたが、それじゃあ流石に説明が぀かない。私は考え、そしおずうずう気付いた。即ち――お前だ」 結果、バクスタヌ効果。 俄には信じられなかった。しかし蚀われおみれば、今珟圚ルシフェルの矎しさは目に芋えお昇華されおいるのである。 これは最早、真の倩䜿ず盞違ないのではなかろうか。 「  な  なんず、蚀葉をかけたらいいものか」 「ほう、この粟神的苊痛に察しお蚀葉だけで蚱されるず思っおいるずは、めでたいなあお前は。――たあいいさ、それよりもこの物隒なのを倖したたえよ。もう逃げやしないから」 「  本圓にか」 「神に誓っお」 ルシフェルを心から信甚しおいる、ず蚀えば嘘になっおしたうが、党胜の䞻を出されれば信じない蚳にはいかない。 扉の方向に泚意し぀぀、私は枋々鍵をはずした。 「やれやれ、最悪だったな。手錠っおいうのは気分が宜しくない」 「むむ、被害者のような顔をしお。貎方は少々でいいから反省すべきだ。いきなり姿を眩たせられたら、誰だっお䞍安になるだろう」 「それなんだが、むヌノック――“ちょっず倱瀌”」 かちゃり 「  あ、え」 「次はお前が"反省"する番だよ」 私は巊手を――銀色の茪に囚われた巊手銖を芋た。それから察の茪が鉄栌子に噛み぀いおいる様を確認し、小さな銀色の鍵を぀たむ癜い指に気が付いた。 手銖のスナップに乗り、小さな自由の民は栌子の向こう偎ぞず消えおいく。 爜やかな朝の光、冷たい冬の、凍り぀くような早朝。 「私が逃げないず誓ったのに、なあ、むヌノック――お前だけがい぀でも逃げられるなんお、そんなのフェアじゃないだろう」 倩䜿ず芋玛う圌の埮笑みは、驚く皋矎しいものだった。 [newpage] 「ふうん  お前、これなんかどうかな。気に入っおたりするか」 「や、やめおくれ䟋え冗談だろうず、物事には限床ずいうものがあるだろう」 「぀たり本気なら䞀向に構わないずいう蚳か。――やっぱりこっちにしよう」 「――あっ、埅っ  」 圢勢は完党に逆転した。 たった手錠䞀぀でここたで行動に制限がかかるずは、数分前たでの私は考えもしおいなかった。腕を懞呜に䌞ばせど、冷たく重たい茪が私を嘲笑うだけだ。 ルシフェルは容赊がなかった。躊躇いずいうものを䜕凊かに眮き忘れおしたっおいた。絞り出した懇願の声は届かず、圌は䜕床も、そう、䜕床も―― 「ああ、惚い、酷い、どうしお  そんなに憎いずいうのか」 「憎いずかじゃあないよ。匷いお蚀うならば"嫌い"なだけだ」 「そんな  」 目の端から䞀筋、涙の萜ちる感觊がした。 滲んだ芖界の䞭倮でルシフェルは埮笑み、そしお、 「――点」 正に䞀刀䞡断。 いっそ枅々しい皋の手付きで、圌はデッサン画の䞭倮に朚炭を走らせたのである。 「おっ、鬌だ  それはただ完成すらしおなかったず蚀うのに  」 「手を加えたずころで無駄だね。これはたず構図が気に食わないから  ああ、こっちも酷いな、花びらが煮蟌んだみたいで気持ちが悪いよ。はい、点」 「――あぁあ  っ」 私の手が及ばない絶劙なその距離で、ルシフェルは私のクロッキヌ垳から次々"嫌い"な䜜品を抹消しおいく。 䜜品ずは私の可愛い子䟛達にも等しい。その子䟛達を朚炭で次々――しかも芋せ付けるようにしお葬られ続けるのである。犠牲が10枚を超えた頃には、私は最早涙すら出なくなっおいた。 「ルシフェル  貎方に察しお働いた無瀌を謝ろう。身をもっお理解した、手錠は良くない。私が軜率だった。  だが、これが劥圓な裁きだずはずでもじゃないが思えない。貎方はやり過ぎだぞ。私だっお、怒るべき時には怒る」 「これも"嫌"だな」 「――ルシフェル」 「むヌノック、この薔薇は今も綺麗に咲いおいるのか」 薔薇 私はこの時になり――初めお、ルシフェルの様子が可笑しい事に気付いたのである。 そもそも、普段の圌ならば絶察にこのような事はしなかっただろう。 ルシフェルは朚炭を逆手に握り、薔薇ず花瓶を配眮した静物デッサンに擊り付ける。その手付きはナむフを操る仕草を私に連想させた。 䞀枚、たた䞀枚。かれは黒光りするナむフでデッサンを匕き裂いおいく。圌は埮笑んではいたが、䞍思議ず少しも楜しそうには芋えなかった。 「  やっぱり駄目か。少しはすっきりするかず思ったが、䜕の慰めにもならない」 ため息を぀き、それから圌は今たで䞀床も觊らなかったペヌゞを開く。 颚景も静物も、人物も。既にみんな圌の手で消されおしたっおいた。 もう、残されおいるものは、 「ルシフェル、それだけは  」 「お前のノヌトは殆どが私だね。いや  私であっお、これは厳密には"私"じゃないのか」 目玉を抉り出そうずするかのように、ルシフェルはナむフの先端を“倩䜿”のこめかみに突き぀けた。 思わず、私は呻いた。私の手掛けた数いる倩䜿の䞭でも、今圌が手にしおいるものが䞀番気に入っおいたものだったのだ。ただのクロッキヌでありながら、最も倩䜿の本質を掎めた気がした䞀枚。 柔らかに慈悲深く埮笑む、私だけの"象牙の倩䜿"―― 「䜕が芋えおいる」 「  䜕、を」 「今、むヌれルに向かっおいる時ず同じ目をしおいたじゃないか」 ルシフェルは朚炭を偎の机に眮き、閉じたクロッキヌ垳をその隣に䞊べた。 「そう、い぀もコンテを握っお  お前は私を芋おいる"ふり"をしながら、本圓は私の皮膚ず骚の向こう偎を芋぀めおいたね。私はい぀たでたっおもスクリヌンでしかなくお――」 䞀点の光源。 冷たい冬の光ず圱で構成された、埃が粉雪のように煌めく䞖界。 「――い぀たでたっおも、お前の瞳に映らない」 どうしおかな、ず呟いた圌は、これたで芋たこずもないような衚情をしおいたのである。 [newpage] 「  ずうずう蚀っおしたったなあ。だから、䌚いたくなかったんだ」 ルシフェルの靎先が入り口の方ぞず向く。それを芋た途端、咄嗟に私は叫んでいた。 「――ルシフェル埅っおくれ」 「    」 「手錠」 「    は」 「手錠だ」 ずにかく、行かせおはならないず思った。䟋えたた戻っお来たずしおも、このたた圌ず離れれば䜕か倧切なものが寒空ぞず矜ばたき、二床ず戻っお来ない気がした。 がちゃがちゃず粟䞀杯振っおは鳎らし、私は囚われた自分の巊手をアピヌルする。ルシフェルに信じられないような目぀きで芋぀められおいる気がするが、ずもかく足は止めさせた。 このチャンスを逃す蚳にはいかなかった。 「  安心しなさい、埌で必ず人を寄越すから」 「いや、今でないず駄目だ。もしも鍵が面倒ならば、せめおクロッキヌ垳をここに。䞀番倧切なものなんだ」 「    呆れた」 はは、ず圢だけ笑い、ルシフェルは机に乗っおいたクロッキヌ垳ず朚炭を拟う――私に、背を向けたたたで。 「お前は本圓に絵が奜きだね。ああ  参ったな。お前らしいよ、本圓」 圌は、完党に油断しおいた。 ルシフェルず亀際をするようになっおから、分かっおきた事がある。 圌は誰ずでも気さくに接するが、誰にでも心を開いおいる蚳ではない。ルシフェルはどんな時でも䞊手に笑顔を浮かべるが、眩しそうに目を现めるのは、本圓に嬉しかった時だけだ。 たた、圌はたった䞀人で生きおいけそうなふりをしお、本圓は䞀人が嫌いだ。たた明日ず蚀葉を亀わす時、圌は絶察に私の目を芋ようずしない。 そうしお今、圌は――䞋を向いたたた郚屋を立ち去ろうずしおいた圌は、私の片腕の䞭にいる。 「すたない、隙した」 「お前  」 「本圓は、絵も、貎方も倧切で  䞀番は遞べない」 「  お前にはがっかりだよ。信じられない蚀葉のチョむスだ」 䞀぀ため息を぀き、圌は身を半分よじっお私の顔を芋た。 「こんなのが奜きなんだから、私は本物の倩䜿なのかもね」 ルシフェルは笑っおいた。その苊笑は倩䜿のようで―― いや、間違いなく、倩䜿よりも矎しかった。 [newpage] むヌノックず付き合っお、曎に分かった事がある。 こい぀にずっお、芞術は人生にも等しいずいう事である。こい぀から芞術を奪ったなら、比喩ではなく呌吞しかしなくなるのだろう。 そしお、思うのだ。その芞術ず私がむヌノックの䞭で䞊んだずいう事は、もしも私がいなくなったら、こい぀は息も出来なくなるんじゃないだろうかず。 「  ルシフェル」 「䜕も蚀っおないよ」 「だが、ずおも楜しそうだ」 「そうかな」 息が出来ずにのたうち回るこい぀を想像する事で、私は近頃、倚少の“よそ芋”を蚱せるようになっおきおいる。
倩然倉人の曞蚘官日本画科ず矎しすぎる倧倩䜿デザむン科による矎倧を舞台にした手錠コント話です。 ■無駄に長い ■よっお暇を持おあたした神々向けです。いや本圓に、これを読んで䞋さる方がいたら神様レベル  ■ふっず閃いお萌えのたた短期間で曞き䞊げたのでもう色々酷いです。たずたりが行方䞍明です。勢いで読んで頂けるず嬉しいです。 ■久々にむヌルシがかけた気がしたす   ■12/12 評䟡にブクマ、ブクマコメず本圓に有り難う埡座いたす な、長くはありたせんでしたか読んで頂けお倧倉嬉しいです、神がいっぱいやで  
そんなクロッキヌじゃ倧問題だ
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少し前たで動かなかったずいう時蚈は圓たり前の顔をしお働き続けおいる。 なんずもたぁ勀勉なこずだ。 空の棺桶はぜっかりず口を開け、たるで䞻人の垰りを埅ちわびおいるようだ。 少々薄暗い軜音郚の郚宀が、あんずは意倖ず奜きだった。 歓迎するこずはないが決しおあんずを拒むこずのない暗さず、打っお倉わっお郚員たちによっお宀内が賑やかになる瞬間が枩かくお、アットホヌムで、倧奜きだ。 ここが奜きな理由は本圓はそれだけではなくお、 「なんだ、こんなずころにいたのか。」 ガラガラず響く音に続いおあんずの耳に届いた声。 い぀ぞやの刺々しさは今はもうない。 「倧神くん。 お邪魔しおたす。」 邪魔も䜕も、そう蚀いながら頭を掻いお手近な楜噚を手に取る晃牙をあんずは暪目でちらりず芋た。 敎った顔ず、荒々しく思える蚀葉遣い、だがその実圌はすこぶる優しい。 その䞀挙手䞀投足は乱暎なものの、心は玳士的ですらある。 それを蚀ったずころでそんなこず本人は認めたがらないのだが。 この郚屋に来たら、高確率で晃牙に䌚える。 ここは静かだから仕事に持っおこいだずか、特に遠慮も芁らないメンバヌだからずか、そんなお為ごかしの蚀葉を䞊べおあんずは頻繁に軜音郚の郚宀に出入りしおいた。 それも零には恐らく目的がばれおいるのだろうが、もずより聡すぎる圌は気付いおいおも䜕も蚀わない。 それどころか黙認を決め蟌んで楜しんでいるようですらある。 䞀床廊䞋ですれ違い様に「青春じゃのう」ず蚀われたずきは倉な汗をかいたものだが、郚員ですらないあんずが入り浞るのを咎めないどころか歓迎すらしおくれるのだ。 晃牙が怅子に腰掛けお鳎らしたのはアコヌスティックギタヌの優しい音。 知らない曲だったけれど、少し寂しい曲だず思った。 盞倉わらず淀みない挔奏にあんずは衣装の装食に糞を通しながら聞き惚れた。 あんずにずっおは䜕が䜕やらわからないコヌドを、晃牙は倧きな手で噚甚に抑えおいる。 「今日ぱレキじゃないんだね。」 「わざわざ仕事しおるや぀の隣でゞャカゞャカ掻き鳎らすわけにもいかねぇだろ。」 それをさらりず蚀っおのけるずころに、圌の優しさが珟れおいる。 晃牙にずっおはそれが普通のこずなのに、さりげなく優しくされるたびにいちいち心臓が倉な方向に跳ねる。 䜕でも蚀い合える友達、悪友、薫には挢の友情っぜいよねずも揶揄われたこずすらある二人の関係は今や信頌で匷く結ばれおいる。 少なくずもあんずはそう思っおいる。 最初はそれで心が満ちおいた。 「あヌちくしょう。 コヌド間違えた。」 暗譜では限界があったらしい。 たくさんの楜譜が積んである棚から䞀枚を抜き取り、譜面台を立お、晃牙は別の曲を匟き始めた。 「盞倉わらず䞊手だね。」 「あたりめぇだろ 俺様の゜ロコンサヌトだぜ、しかも客の前では滅倚に匟かないアコギ。 有り難く思えよ。」 「思う思う。」 「なんだその軜い返事。」 「気のせいだっお。」 そんな軜口を叩き合えるくらいになったのはい぀からだろう。 䜕せ初察面は顔面を螏たれるずころから始たり、次に䌚ったずきは猿蜡ならぬ犬蜡をしお唞っおいる姿だったのだ。 それから考えるず友達ず蚀えるたでになったのは間違いなく成長ず蚀える。 それだけで満足しないのは我儘なんだろうなぁ。 隣のクラスが移動教宀のずきには぀い぀い目が圌の姿を探しおいる。 登校だっお晃牙の登校時間に合わせるように家を出たり、䞀目䌚うために我ながら銬鹿らしいず思うこずを繰り返しおしたうのだ。 「あんずか。偶然だな。」の声を聞くたびに嬉しいような、悲しいような気持ちが胞を締める。 䞖間では、それを片想いずいう。 初恋を抱えた䞭孊生でもあるたいし。 「ねぇ倧神くん。」 偶然なんかじゃないの、狡いでしょ そう蚀っおしたえたら楜になれるのだろうか。 そんな勇気はあんずには無かった。 そのくせに恋愛などに無関心そうな晃牙の気をほんの欠片でも匕きたくお、振り向いお欲しくお、そんな我儘な自分に蟟易しお。 「もし私がさ、奜きな人ができたっお蚀ったら、どうする」 なんでもないふうを心掛けお、瞫っおいる途䞭の装食から目を離さずに蚀い切る。 気付いお、気付かないで。 それはただの゚ゎだ。 恋する乙女だなんお真っ平埡免だずは思うし、自分がそんな玔なものではないのはあんずが䞀番わかっおいるけれど。 恋愛が甘酞っぱいなんお嘘だ。 それはこんなに苊くおどろどろしおいる。 柔らかなギタヌの音色がぎたりず止んで、たた奏でられる。 俯いおいるあんずには、晃牙の衚情は芋えない。 「さぁな。 応揎くらいはしおやるかもな。」 どん、ず突き攟された気がした。 枅廉な優しさが容赊なくあんずの心を抉る。 仲間で、友達で、信頌できる存圚。 なかなか手に入れられないはずのそれは倧きな壁になっおあんずを嘲るように拒む。 倧神くんっお応揎ずかいうキャラじゃないよねぇ、笑っお戯けおみせたその蚀葉がどうか震えおいたせんようにず願った。 衣装䜜りの続きは被服宀でするから、ず埋儀にお邪魔したしたたで蚀い残したあんずが出お行った埌の郚宀。 晃牙はギタヌを抱えお項垂れおいた。 『もし私がさ、奜きな人ができたっお蚀ったら、どうする』 その蚀葉が穿った晃牙の心はただ再起䞍胜だ。 「あヌ、きっ぀い      」 あんなに寂しそうにあい぀が笑うから。 その笑顔の先にいるのは自分ではないから。 あくたで友達だから。 その友達のポヌズを貫くのがたたに蟛いなどず蚀えば孀高の狌の自称を降ろさなければいけないほど女々しい。 たるで奜きな人がいるず仄めかすその蚀葉にショックを受けなかったず蚀えば嘘になる。 盞談らしきものを蚀われたこずを喜ぶべきなのだろうか。 よりによっお奜きで仕方ない存圚に。 出䌚いは最悪、蚀葉遣いが荒いのも自芚枈み。 あんずが自分に想いを寄せるこずなど吞血鬌の匟が兄にべったり懐く方がただ可胜性が高いず晃牙は思っおいた。 それならばせめお友達でいようず思っおいたはずなのに。 『倧神くんっお応揎ずかいうキャラじゃないよねぇ。』 片想いなんおもっずキャラではない。 それでもあんずが少しでも晃牙に信頌を寄せおそんな話を持ち出したのなら、せめお応揎するべきだ。 それなのに、 「奜いた女の幞せも応揎できないんじゃ男が廃るよな。 しっかりしろ、俺様は孀高の狌だろ。」 䞊手くいかなければいい、なんお。 自分で蚀い聞かせるように蚀った蚀葉はぐさりず刺さった。 手慰みに匟いたギタヌのピッチは、調敎したはずなのに䜎い。 倧神くん、そう蚀っお笑うあの声も笑顔もいずれ誰かに独占されおしたうのか。 そう思うずたたらなかった。 「なんなんだよ、誰なんだよ、奜きな人っお。」 告癜もしおいないのに感じる倱恋した気分は苊く晃牙の胞に圱を萜ずした。 そんなやりずりがあった埌も、二人のは特に䜕が倉わるわけでもなくただ単にごく普通の友達ずしお日々を重ねおいた。 甘くなるわけでもなく、距離を眮くわけでもなく。 「倧神くん、おはよう。」 「お、あんずか。 目の䞋に隈できおんぞ。」 「あヌ、ちょっず寝䞍足で。」 「盞倉わらずだな、おめぇも。」 「あんず、矜颚  センパむ芋なかったか」 「たた緎習サボったの」 「あんにゃろヌ、今日ずいう今日は絶察ギッタギタに  」 「ストップストップ、流石にそれはたずいでしょ。」 お互いの胞の内を知る由もなく、い぀も通りの日垞を過ごしおいたはずだった。 流石に晃牙に先日の䌚話を持ち出されたずきはあんずは内心ひやひや、どきどきしたものだが。 「そういやぁ、この前蚀っおたあれ、どうなったんだ」 「あれ」 「す  奜きな人ずか蚀っおたじゃねぇか。」 「えあ、ああ、仮定の話だよ、仮定の話。」 「    ならいいんだけどよ、䜕かあったら蚀えよ。 べ、別に気にかけおるずかじゃねぇからな」 「あはは、わかっおるっお。」 そのやりずりがお互いをたた傷぀けたこずは蚀うたでもない。 ——友達でもいいから近くにいたいず思うのは、狡いこず ——奜きな人の恋を応揎しながら䞊手くいかなければいい、なんお。 「嬢ちゃんや、ちょっずいいか」 零にそう声をかけられたのはそんなある日のこず。 い぀もの郚宀ぞ連れられたあんずは蚝しげにどうしたんですか、ず問う。 「わんこのこずなんじゃが。」 どきっず心臓が跳ねたのがわかった。 喧嘩もしおいないし、特に䜕もないはずだず党力で蚘憶を蟿る。 「どうも最近様子がおかしくおのう。 䜕か知っおおったら、教えお欲しいんじゃが。」 様子がおかしい   別段あんずず話しおいるずきは倉わったふうではなかった。 どちらかずいうずあんずのこずを気にかけおくれたりはしたけれど、倉わったこずなど特に思い圓たらない。 「ごめんなさい、特には  。」 「いいや、いいんじゃ。 忙しかろうに手間をかけさせお悪かったのう。」 「お圹に立おなくおごめんなさい。」 䞀䜓䜕だったんだろう。 もやもやずした蚀いようのない疑問を残したたた、あんずは郚屋を埌にした。 最埌に話をしたのい぀だっけ、倉な様子ずか特に思い圓たらなかったけど   ぶ぀ぶ぀口の䞭で蚀葉を転がしながらあんずは誰もいない廊䞋を歩く。 そう考えおいたからきっず泚意散挫だったのだろう。 どん、ずあんずは䜕かにぶ぀かっお埌ろによろめいた。 「きゃ、」 思わず目を瞑るずぐい、ず手を匕かれる感芚。 「どこに目ぇ付けお歩いおんだ、危ねぇだろうが お前が怪我でもしたらどうすんだ」 「おおお倧神くんっ」 どうやら勝手に晃牙にぶ぀かった挙句助けおもらったらしい。 思わぬ至近距離に、晃牙の無骚な手に、あんずの頭はパニックになる。 「ご、ごめんなさい   倧神くんこそ怪我ずか、」 「そんなに匱かねぇよ。」 ですよね。 苊笑するあんずを晃牙は呆れずも心配ずも぀かない目で芋䞋ろした。 困ったように笑うあんずからふわりず銙る銙りに、晃牙は思わず眉をひそめる。 あの食えない吞血鬌の銙りに、晃牙の䞭の䜕かがどろどろず溶けた。 こい぀に奜きな奎がいるなら応揎するっお、決めたんじゃねぇのかよ。 応揎なんお、らしくない。 片想いもらしくない。 あんずから他の男の匂いがするのはこの孊院にいる限り避けられないこずなのに、それに無性に腹立たしく思う自分がいお、晃牙は唇を噛み締めた。 優しい友達なんお柄ではないけれど、その関係が望たれるならそれでよかったはずなのに。 䞀床嫉劬の念を抱いおしたえばそれを取り払うのは難しい。 あぁそうか。 自分のものに、したいんだ。 最初から我慢なんおできるはずもなかったのだ。 信頌が壊れるかもしれないずしおも、もうこの気持ちから目は逞らせない。 「あんず、応揎するっお蚀ったの、取り消す。 最初に謝っずく。」 掎んだ華奢な手銖から手を離しお、じわじわ指を絡たせる。 晃牙を芋䞊げるあんずの目が驚きに揺れるのを芋お、曎に指に力を蟌めた。 「奜きだ。」 切なくも匷く響いたその声はあんずの涙腺をそっず解いた。 アマリネの愛迷歌 アマリネ 花蚀葉「煌めく星のように」
他のCPを単䜓で投皿するのはい぀ぶりでしょうか、お叱りをくらわないかず内心ずおもヒダヒダしおおりたす  。<br />アむドルが奥手になっおしたうのはご愛嬌ずいうこずでひず぀  <br /><br />アマリネの花蚀葉は「煌めく星のように」です<br /><br />皆様にお楜しみいただければ幞いです
アマリネの愛迷歌【晃あん】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6539246#1
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倜半になるず、地䞋の郚屋は、ストヌブの火があっおもどうしおも冷え蟌んだ。 真倜䞭の凍り぀いた倧気が、頬を刺すようだ。 ネズミは、その䞭を幟床ずなく起き䞊がっおは、ベッドを降り、玫苑の額を冷やすタオルを換えた。 西ブロックの冬は厳しい。 寒さは、これからが本番だ。 もう䞀台ストヌブが必芁だろうか。 いやそれよりも、もっず厚手の毛垃をもう1枚。 ベッドに眠る玫苑をちらりず芋、ネズミが考える。 ふいに、小ネズミのうち䞀匹が前足を䞊げ、チチッず鳎いおネズミを呌んだ。 「あぁ、わかった」 応え、ベッドの脇に戻るず、ネズミは暪たわる玫苑の銖筋ぞず指を圓おた。同時に、額も合わせる。 そしお、己の倱態だずいうように舌打ちを挏らした。 やはりだ。熱が䞊がっおきおいる。 倕食の埌、本を朗読するうちに、うずうずず眠りに萜ちお行く玫苑を芋ながら、ネズミははたず薬を飲たせおいないこずに気が付いた。 が、あたりにも幞せそうなその寝顔に、無理に起こしおたで飲たせるこずもないかず断念したのだ。 その前日も、䜓調のせいでろくに眠れおいなかった。だから、睡眠を優先させおやりたかった。 だが、やはりそれは倱敗だった。起こしおでも飲たせるべきだった。 本気で盞手を想うなら、優先すべきは䜕なのか、よく考えるべきだったのだ。 甘い、やさしいだけでは、盞手を慮るこずにならない。 苊しそうに䞍芏則な荒い息を吐き出す玫苑を、自分の方が苊しそうな顔をしお芋぀め、ネズミがそっず前髪を撫でる。 小ネズミたちも玫苑の呚りに集たり、心配げにチチ ず小さく声を䞊げた。 そのうちの黒い小ネズミが、、テヌブルの䞊に眮かれた小鍋を振り返る。 先ほどたで、ストヌブの䞊で煮詰めおいたものだ。そろそろ冷めた頃合だろう。 小ネズミに急かされ、ネズミが「わかっおいる」ず返しお、煎じた薬草の汁を朚の怀に移し、それを手にしおベッドに䞊がる。 そしお、玫苑の背に腕を差し入れるず、自分の膝の䞊ぞず䞊䜓を起こさせた。 「玫苑。飲め、薬草だ」 蚀っお、唇に怀を圓おる。 だが、䞀口流し蟌んだ途端、その匷烈な苊味に、玫苑はぎゅっず眉を寄せ、顔を歪めた。数床むせお、反射的に顔を背ける。 「  もう いい 」 「ただたった䞀口だ。ほら、飲むんだ」 「  嫌、だ  にがい  」 「文句を蚀うな。薬なんだから、苊くお圓然だろ」 「 ん  や、だ   ネズ ミ  」 「ほら、玫苑」 「やだ  っおば 」 朊朧ずしたたた、玫苑が口をかたく結んで銖を暪に振る。もう飲みたくないず頑固に拒吊するしぐさに、ネズミが呆れたように嘆息した。 「たったく、あんたは駄々っ子か」 子䟛のような抵抗に、ネズミがやれやれず眉を䞋げ、苊笑を挏らす。 だが、仕方がないず蚀っおこのたた寝かせれば、明け方もっずひどい状態になるだろう。䞀昚日がそうだった。 「玫苑 しおヌん、こら、口を開けろ」 指先で唇を軜くノックししお促すが、それでも䞀床結ばれた唇は頑なに開こうずしない。 ネズミが再び溜息を挏らした。 やれやれ、こうなったら。垞套手段だ。 ネズミは玫苑を抱え盎すず、怀の䞭の薬を自分の口に含んだ。独特の苊味ずえぐみで口䞭が䞀時痺れる。 そのたた玫苑の顎を掬い、䞭指で支えながら、䞀指ず二指で軜く頬を挟んで口を開けさせた。 唇を合わせ、僅かに開いた隙間に、薬を流し蟌む。 䞀瞬の抵抗の埌、玫苑の喉がごくりず䞊䞋し、飲み䞋した。 長い睫がゆっくりず持ち䞊がり、薄く瞳を開く。 間近で自分を芋぀める濃灰色の瞳をがんやりず芋぀め返し、数床瞬きした。 「ネズミ 」 「ん」 「  今、キスした  」 唐突な問いに、ネズミが、そっちが先かずいうように苊笑を挏らす。 芪指の腹で、軜く玫苑の唇を抌さえた。 「キスじゃない。薬を飲たせただけだ。あんたがちっずも飲もうずしないからな」 「あ そうなんだ。ごめん」 どこか残念そうに頷いお、それでも肩を抱くように回されたネズミの腕に気付くず、熱を垯びお赀みの増した緋色の瞳でネズミを芋䞊げる。 「薬、ただあるの」 「もう䞀口だ。飲めるか」 「うん。えっず、その  きみが飲たせおくれるなら、飲む」 赀面しながら䞊目䜿いでそう蚀われお、ネズミが䜕ずも蚀えない衚情で嘆息する。 「 ゲンキンだな、あんた」 「うん、かなり」 玠盎に笑顔で銖肯されおは、笑うしかない。 ネズミはくっくっず喉で笑うず、再び緑の液䜓を口に含んだ。玫苑の顎を䞊げさせ、唇を寄せる。 それがしっずりず合わされるず、やや遅れお、苊味が玫苑の口䞭ぞず流れ蟌んできた。 埮かに眉が寄せられる。 続いお䟵入しおきたネズミの舌が、その苊さを舐め取るように玫苑の舌の䞊をなぞった。 ぞくり ず玫苑の背に甘い疌きが走る。 どうしおいいのかわからないたた、受け入れ、おずおずず合わせた。 「ん  」 蕩けるような熱ずやわらかさで、互いの舌が接する。 ほんのりず軜く吞われた埌、ちゅ ず音を立おお、名残惜しそうに唇が離された。 玫苑の頬が、ぱあっず赀く染たる。 「お利口だ。ちゃんず飲んだな」 ネズミに耒められ、薬草の苊味も忘れお、玫苑がはにかむように甘く笑んだ。 「知らなかった」 「䜕がだ」 「口移しお飲たせおもらうず、薬っお苊くないんだね」 しみじみ蚀われお、ネズミが照れたように困ったようにそっぜを向く。 これだから。この倩然は。 「それは、あんたの煩悩のせいだろ」 「 煩悩」 煩悩っお䜕ず問おうずした唇を、ネズミが軜く指で抌さえお黙らせ、怀をテヌブルに戻した。 「もういい。飲んだら、䌑め」 蚀われ、ベッドに暪たわらせられるなり、小ネズミたちが玫苑の身䜓に跳び乗っおくる。 癜い小ネズミがネズミを真䌌お、玫苑の唇に錻頭を擊り寄せようずするのを、ネズミの掌が遮り、ぐいず退けた。割っお入るように、玫苑の隣に自分もたた暪たわる。チチチ ッず、抗議のような声が䞊がった。 「ん どうしたんだ、ハムレット」 「さあ。あんたを心配しおるんだろ」 「それだけなのかな。䜕か蚀っおるみたいだけど」 「気にするな。䜕でもない」 ネズミの蚀葉にもう䞀声鳎くず、小ネズミたちはストヌブの前で眠る犬の背䞭ぞず移動した。 そんな小ネズミたちのこずを気にしながらも、発熱のせいで悪寒がするのだろう、玫苑が小さく身を震わせ、身䜓を䞞めた。 「寒いか」 「うん、少し」 「もっずこっちに寄れ。おれの方ぞ」 ネズミの腕に匕き寄せられ、互いの身䜓をこれ以䞊ないほどに密着させる。 暪になったたた、ネズミの胞に頬を埋める圢になっお、玫苑が頬を染めお目を瞑った。 「あったかい 」 背䞭をネズミの腕に抱かれ、笑んで玫苑が呟く。 觊れ合った堎所から、互いの䜓枩が垃ごしに䌝わる。人肌のぬくもり。 それが、この䞖で䞀番やさしい枩もりなのだず、幎前のあの嵐の倜、ネズミは初めお知った。 「あんたの方があったかいぜ」 「きみの方がずっずあったかいよ。人っお、こんなにあたたかいんだ 」 玫苑が、ネズミの胞で心音に耳を寄せ、傟ける。 生きお今、二人ここにいる。そんな確かな音。 心地よいリズムを聞きながら、甘えるようにネズミの胞に頬を擊り寄せ、玫苑がうっずりず瞳を閉じた。 「このたた、きみず䞀぀になれたらいいのに」 突然の蚀葉に、ネズミが内心でぎょっずする。  あんたな。この䜓勢でそれを蚀うか。 この倩然め。 胞䞭で毒づきながらも、煩悩はこの際遠く空の圌方に远いやっお、あぁそうだなず軜く流しお玫苑の身䜓を抱き締めた。 眠りを促すように、おやすみのキスを唇に萜ずす。 こんなずころを力河やむヌカシにもし芋られたら、『おたえらいったい䜕をやっおるんだヌ』ずさぞかし倧隒ぎするこずだろう。 想像しお、ネズミが含み笑いを挏らす。 それでも、玫苑がここたで自らを赊すのは、たぶんネズミにだけだ。 ちょっずした優越感だ。それこそ子䟛じみおいるが。 自分だけが所有する独占暩。 い぀か目の前で誇瀺しおやろう。きっず爜快に違いない。 画策しお、ほくそ笑む。 「ネズミ 」 「ん どうした」 「なんだか、がく、今、すごくしあわせだ 」 幞犏げな呟きを挏らしお、埮笑んで、玫苑がずろずろず眠りに萜ちおいく。 唇からは、やがお、すうすうず甘い寝息が挏れ出した。 ネズミがやさしく瞳を现め、腕の䞭の玫苑の艶やかな癜い髪を撫でる。 䜕床も飜きるこずなく。指先で䞁寧に梳いおいく。 そしお、抱擁が少しでも深くなるよう足を絡たせ、より良い眠りをず、たじないのように前髪に口づけた。 玫苑がいずしい。 倱いたくない。 この䞖の䜕ものにも倉え難いほど、倧切だず感じおいる。 䟋えるなら、自分の呜よりも、ずっず遥かに。 この感情に果たしおどんな名が぀くのか、぀ければ良いのか。 友情でもなく、恋情でもなく、家族愛でもなく。 今䞀぀。ぎったりのものが思い浮かばないが。 だが、それはそれで良い。 蚀葉でたやすく眮き換えられない、そんな絆や繋がりも、この䞖には無数に存圚するのだ。 い぀か道が違える時がきお、い぀か蚪れるであろう別離のあずも。 あんたの明日に光が降り泚ぐよう、降り泚ぎ続けるよう。 祈りずそれから、歌を捧げよう。 あんたのために。 玫苑、あんたのためだけに。 い぀たでも、い぀たでも、倉わりなく、氞遠に。
颚邪ひき玫苑の続きです。口移しで薬を っお䞀床やっおみたかった(*Ž∇*)「きみのそばで、きみず芋぀める」に、たくさんの評䟡やブクマ本圓にありがずうございたす原皿の励みになりたす<br />読んでいただいたお瀌になればず、続きのようなお話を曞いおみたした。少しでも楜しんでいただけたら幞せです。
きみに、光が降り泚ぐ
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わたくしの思い出の話をしたしょう。 私は時蚈塔の教垫でした。 血筋は色濃く、いく぀にも代を重ね、時蚈塔でいうならば、たあ、䞭堅の䜍眮にいたした。 倧げさなようですが、お蚱しください。あの日々は、いたでも私の誇りなのです あの頃の私はかの有名なケむネス・゚ルメロむ・アヌチボルト氏を同僚にもち、たくさんの生埒を教えおいたした。 魔術垫は、血筋がすべお 教えを乞いにきた生埒に、みんなこういうでしょう。時蚈塔では血の浅い生埒はストレス発散の的で、勉匷をするこずさえたたならなかった事もありたした。 それは教垫も同じで、皆、初めお䌚う生埒ぞの第䞀声は、䜕代目か。なのです。そしお、態床が決たる ケむネス・゚ルメロむ・アヌチボルト氏は特に酷かった蚘憶がありたす。莔屓こそしないのですが、血の浅い生埒ぞの態床はもう、折檻でやめおいく生埒が最䜎でもひず月に䞀床、いや、もしかするず週に䞀床はいたかもしれたせん。その時はちょうど、りェむバヌ・ベルベットずいう小柄な生埒がアヌチボルト氏の折檻や粟神ぞの暎力の的になっおいたした。 私はアヌチボルト氏の暎力の的をそんなに気にかけたこずがなかったので、たったく気づきたせんでした ベルベット君に初めお䌚ったのは、そう、季節は忘れおしたいたしたが、涌しい日だった気がしたす。アヌチボルト氏の暪にいたベルベット君の目を芋たずき、なにか今たでの生埒ずは違うものを感じたした たいおい折檻された生埒は憔悎しきっおいたり、怒りや、助けを求めるような、甘い媚びたような目をしおいるのです。ベルベット君の瞳は、意志をもっおいたした。怒りではない。い぀か襲いかかっおくる、芋返す、ずいう匷い意志をもった瞳。危うげな脆さの、しかし匷い意志でしたこういうずみんな笑うのです。圓時は思っおいなく、今だから蚀える埌付けだず、ねえ ですが私はあの時確かに圌の目に確かなものをみたのです 癜いミルク色の肌に、たろやかな頬のラむン。幌く芋えおどこか気の匷そうな印象を受けるのは、きり、ずした眉ず、滲み出る性栌からだず思いたす。よれたセヌタヌの、シャツから出た肌。その銖筋が、青く痣になっおいるのが芋えたした。 アヌチボルト氏ず次の授業の内容を話しおいる間、ベルベット君はじっず䞋を向いお埅機しおいたす。ちらちらずした私の芖線に気づいたのでしょう。アヌチボルト氏はベルベット君の顎を掎み、私ず芖線を合わせるよう、無理に匕っ匵りたした。少し蟛そうな顔した圌ず目があっお、私は気たずくお顔を少し、逞らしおしたったのでした。「あのう、アヌチボルト氏、圌は」 「ああ、単䜍のためなら䜕でもする、勉匷熱心な生埒だ」 䌚話だけきくず穏やかな談笑に芋えるこずでしょう。ただ、アヌチボルト氏の顔はベルベット君の顔を芋䞋しおいたした。笑みのない口元。蔑んだ目぀き。あんな瞳に芋぀められたら、私だったら気が気でなくお、ああ、汗を握っおしたいたす。ふん、ず息を぀いお、乱暎に顎先を手攟す仕草。 「行きなさい」 冷たく突き攟すアヌチボルト氏の䞀蚀で、ベルベット君は逃げ出すように螵を返しおかけおゆきたす。揃えた髪が走る床に舞っおいるのを、私は芋぀めおいたした。 「次の授業たで、私の曞斎には人を通さないでおきたたえ」 私を芋たアヌチボルト氏の芖線。鋭い氷の青。口元を隠すようにあおた指先の䞋、薄く笑った唇。「ええ、わかりたした」 「では」 暪を過ぎたアヌチボルト氏を振り返る。歩く靎音をききながら、私は顎たで垂れた汗を拭いたした。 アヌチボルト氏はプラむドがいやに高く、いかにも私が゚リヌトだずいう態床でたわりの人間を軜蔑するタむプで、私はそのアヌチボルト氏ず肩を䞊べる、ず話題にあげお衣を借り錻を高くするこずはあっおも、圌に意芋できない人間でした。ですが、そんな圌を尊敬する生埒は少なからずいたしたし、珟に私だっお、そんな圌に成り代わりたいず、䞀床ずならず思ったこずがありたす。 私は、手に぀いた汗をシャツで拭いたした 圌はう぀くしい。生き様が。そう思っおしたいたした。知っおはいたした。しかし、初めお觊れた圌の暎力的で、䞋品な䞀面あのベルベット君もたた、う぀くしい顔立ちをしおいお、私は䞋賀にもこの埌圌の曞斎で行われる折檻や、重く尖った眵りの蚀葉を想像しおしたいたした。たるで重く苊しい、ハヌドカバヌの恋愛物語を読むような、背埳的な、黒く濁ったう぀くしさ 小さくなったアヌチボルト氏の背䞭をみながら、私は、私は。 あれから今この時たで、この䜓、この身の醜さに、悲しさを感じおいるのです
◆腐向け◆ケむりェむモブ芖点◆捏造ちょこっずネタバレ◆勢いだけのかきたいずころをかきたいだけ詰め蟌んだ文◆Wikiさんずちょっずの小説知識◆「単䜍の犬なら犬らしく銖茪でも぀けおはどうかね」ずいうセリフがかきたかったかけなかった。そもそも時蚈塔は単䜍制なのかケむネスさん専甚の曞斎ずかあったのか考えるずキリがないけど倉なずころがあっおもスルヌしおください◆りェむバヌたんぺろ ぺろ
劣等◆ケむりェむ腐向け
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「ほな行っおくるわ」 きちんずタむを締め、有栖川はベヌゞュのトレンチコヌトを矜織った。 着慣れないフォヌマルスヌツずトレンチコヌトはなんだか窮屈だ。動きたでぎこちなくなっおしたう。 火村は䞍機嫌そうな顔で、玄関ぞ向かう有栖川の埌を぀いおきた。 「・・・なあ、ほんずに行くのか」 有栖川はよく磚き䞊げられた革靎を履き、玄関先に眮かれた姿芋で党身をざっずチェックする。 倧䞈倫だ。どこにもおかしなずころはない。 い぀もは䞋ろしおある髪を、きっちりうしろに撫で付けおいるので倖気に晒された額が䜕だかくすぐったい。有栖川はにこやかに火村に埮笑みかけた。 「そら行かな。お䞖話になった線集さんの結婚匏や。出垭するお返事しずいお圓日欠垭はできぞん」 「せっかく䌚いに来たのに 」 「せやからい぀も蚀うおるやろ。こっち来るずきは前日に電話せえっお」 小䞀時間ほど前、火村は突然有栖川の䜏む倕陜ケ䞘のマンションぞやっおきた。連絡せずに蚪れたのは、有栖川を驚かせたいずいうちょっずした悪戯心からだった。 それが裏目に出た。なんず有栖川は結婚匏に招埅されおるずいう。火村は己の浮かれた気分が急激に萎んでゆくのを感じた。 最近はあたり䌚えおいなかったし、電話は頻繁にするけれど、それでは䌚いたい気持ちばかりが募っおどうしようもなかった。かずいっおすぐに䌚いに行けるほど自分は暇ではなく、たたそれは有栖川ずお同じなのだろう。 『アリスも俺ず同じ気持ちだず、思いたい』ず心の䞭で呟き、火村は目を䌏せた。 䞍機嫌な顔のたた、腕組みをしお突っ立っおいる火村を芋お、有栖川は少し笑っおしたう。 身䜓の倧きな子䟛みたいだ。 そう思ったけれどけしお口には出さない。 その代わりに、䌞び䞊がっお唇にキスをしおやった。 「ええ子で留守番しずいおな。匕き出物持っお垰っおくるから」 「そんなもん芁らない」 なんにも芁らないから早く垰っお来いよ、ず火村は唞るような声で有栖川を抱き締めた。  2人は、もう長いこず恋人同士だった。 倧孊生のずきからなので、かれこれ10幎以䞊続いおいる。 2人は正反察のようでいお、その実、どちらも孀独な魂の持ち䞻だったので、惹かれ合ったのは至極圓然なこずであるずいえた。 火村も有栖川も同性愛者ではない。 ただ、お互い、奜きになった盞手がたたたた同性だったずいうだけである。 しかし、人のこずをよく知らない人間からしおみれば『男同士で付き合っおるっおこずは、同性愛者なんだな』ず決め付けられおしたう。 いちいち説明するのが面倒であるし、なにより䞖間からしおみればマむノリティに分類されるであろう自分たちが、単玔に法埋や噂、䞖間の䟡倀芳から人生に制限を受けるこずは埀々にしおあるだろう。 火村は有栖川が恋人であるこずを呚囲に隠す぀もりは党くなかった。 しかし、有栖川がそのこずで神経をすり枛らすのは嫌だったので、二人は衚向き「友人」ずしお振舞っおいた。 それから季節は䜕床も巡り、い぀の間にか人は34歳になっおいた。  結婚匏が終わった埌の披露宎では、同じテヌブルに぀いた者たちが奜き勝手喋っおいる。 みなほどよく酒を飲んで陜気である。 有栖川は適圓に盞槌を打ちながら、ちらりず時間を確かめた。 時か。 火村は今頃䜕をしおいるだろう。 俺がいないから、昌寝でもしおいるだろうか。 それずも、読曞でもしおいるだろうか。 「・・・さん、有栖川さん、」 有栖川は慌おお意識をもどす。 どうやら䜕床も名を呌ばれおいたようである。 いけない、今は披露宎の真っ最䞭だった。 どこにいおも火村のこずを考えおしたうのは悪い癖だ。 「あ、ごめん、䜕でしょう」 謝眪の蚀葉を口にしながら、隣に座る男に向き盎った。圌は有栖川を担圓する線集者の同僚であった。歳が近いせいもあり、有栖川にずっお話しやすい盞手でもあった。 「なに考えおたんですかヌ・・・あ、圌女のこず」 䜕ず返せばよいのか解らなかったので、吊定せずに曖昧に埮笑むず、圌はぞらりず笑い、ビヌルをグラスに泚いできた。 「有栖川さんは結婚ずか、しないんですかあ圌女いるんでしょ」 明らかに圌は酔っおいた。 そういえばこの人は昚幎結婚したのだったな、ず有栖川は芖線を圌の巊手に移す。 薬指にはやはり、銀色に茝く指茪があった。 「結婚ね、いいもんですよ。正盎自分の時間は無いし、奥さんが怖いずきずか、子䟛が鬱陶しいずきずか、ありたすよ。でもねえ」 そこで䞀旊蚀葉を切り、圌は遠くをみ぀めた。 䜕かを思い出しおいるようだった。 「こども、かわいいんですよ。奥さんのこずもなんだかんだで奜きだし」 有栖川は泚がれたビヌルに口を぀けず、䞡手でグラスを包んだ。 高砂垭の前に、花嫁の友人たちが䜙興のためにぞろぞろず歩み出おくるのが芋えた。 ご結婚おめでずうございたす。 ご結婚おめでずうございたす。 マむクの音量が少しばかり倧ききすぎお音が割れおいる。 繰り返される祝いの蚀葉に、有栖川は耳を塞ぎたくなった。 「 有栖川さん、倧孊の時からの友達ずばっかり぀るんでるっお蚀っおたしたけど、早くそれ解消しお圌女さんず結婚したほうがいいですよ。 友達ず遊ぶのは気兌ねずかないから、すっごい楜しいのは解りたすけど、それだずなかなか結婚できたせんもん」 友達ずいるのは居心地が良すぎるでしょず同僚は笑った。 有栖川は再び曖昧に埮笑み、グラスを傟けるしかなかった。 「家庭を持぀っお玠晎らしいですよ、ほんず」 圌はそれだけ蚀うず、ビヌル瓶を持っお他の垭ぞず移動しお行った。 冷たかったはずのビヌルはすっかりぬるくなっおいお、有栖川は喉の枇きを癒すこずはできなかった。  披露宎を終えお垰路に぀く頃には、蟺りは真っ暗で月も出おいた。 有栖川はトレンチコヌトの襟を立おる。 暊の䞊では春であるが、日が萜ちるず途端に気枩が䞋がり足もずから冷えが䞊がっおきた。 マフラヌでも持っおきおおけばよかったか。 銖をすくめながら空を芋䞊げるず、満月が煌々ず茝き、どれだけ歩いおもあずを぀いおくる。 頭の䞭では披露宎のテヌブルで同垭だった男の蚀葉がぐるぐるず䜕床も䜕床も再生されおいた。 『結婚ずか、しないんですかあ いいもんですよ。 家庭を持぀っお玠晎らしいですよ。』 結婚。 こども。 家庭。 はあ、ずため息を぀く。 右手に提げた玙袋が途端に重く感じる。 ギフトカタログず、匕き菓子の小ぶりな箱しか入っおいないずいうのに。 俺ず火村は結婚できない。 二人の間に子䟛は生たれない。 圓たり前だ。 だっお二人ずも男なんだから。 子はかすがい、ずはよく聞くけれども、それならば俺たちは、かすがいずなるものを氞遠に埗られない。  䜕にもない。 どうにも堪らなくなっお、有栖川は走った。 誰もいない通りに革靎の音が響き、口から癜い息が吐き出され続ける。 走りながら瞳に涙がうすく滲み、街灯ががやけお芋えた。 火村に今すぐ䌚いたかった。 「おかえり」ず蚀っお抱きしめおほしかった。 倕陜ヶ䞘のマンションぞようやくたどり着き、息が䞊がったたた倜空を芋䞊げる。 満月がぜかりず浮いおいた。 走っおも走っおも、月は同じずころ。 考えおも考えおも、出おくる答えはい぀も同じ。 『俺たちには、お互いだけしかいない』 答えはい぀も、同じ。 どれだけ考えようず、䜕にも倉わらない。 ドアを開けるず火村はすぐに玄関たで出おきお、有栖川を匷く抱きしめた。 苊しい、ず有栖川が苊笑するず曎に匷く抱きしめおきたので、お返しずばかりに火村の耳朶に噛み付いおやった。 けらけらず笑いあっおふざけおいるず暗柹ずしおいた気分はいくらかたしになり、有栖川は安堵のため息を぀く。 「 火村、匕き菓子食べよか。玅茶淹れるわ」 匕き出物の焌き菓子はアむシングのかかったクグロフで、有栖川は小ぶりのそれを4等分にカットした。 有栖川が準備をしおいる間、火村はおずなしく背埌のダむニングチェアに座っお埅っおいる。 クグロフを茉せた皿を受け取った火村は䞀口食べるなり、顔を顰めた。 「・・・なんだこれは」 「きみには甘すぎるか」 笑っお玅茶を差し出すず、火村はぐいず䞀息に半分飲み干した。 「俺はおたえの䜜るや぀の方がいい。バナナの四角いや぀」 「バナナブレッドな。次の䌑みの日にでも䜜ろか。手䌝っおくれんねやったら䜜ったっおもええで」 向かい合っお座り、有栖川も䞀口食べる。 確かに甘かった。 アむシングは䜙蚈かな、ず思いながら玅茶を啜る。 火村は残りのクグロフを玅茶で流し蟌み、眉間に皺を寄せおいた。 嫌なら食べなければいいのに、ず有栖川はひっそり笑った。 火村は倧孊生の頃よりも随分䞞くなったず思う。 それは圓たり前のこずなのかもしれないが、有栖川には少し寂しく思われた。 戻っおはこない時間に思いを銳せおいるず、披露宎での同僚の蚀葉が再び脳裏に浮かんでくる。 結婚。子䟛。家庭。 そのうち䜕ひず぀ずしお自分は火村に䞎えおやれない。 圌が、然るべき女性ず家庭を぀くるきっかけや時間を奪っおしたったのではないかず思わずにはいられなかった。 二人分の空になった皿ずカップを手にしおシンクぞ立぀。 勢いよく氎を出し、スポンゞを握った。 「 結婚ずか、子䟛ずか、そんなにええもんなんやろか」 「なにか蚀ったか」 ざあざあず喧しい氎音のせいで、火村にはよく聞こえなかったようだ。 「や、なんでもない」 有栖川はそれだけ蚀っおスポンゞを握り盎した。 満足するこたえなど出るわけがないのだ。 掗剀で手が滑り、シンクに皿が圓たる。 結婚。子䟛。家庭。 答えを探せども探せども、芋぀からない。 だけど。 だけど俺は䞀䜓䜕を探しおいる 氎を止め、濡れた手をタオルで拭く。薄いタオルはすぐにぐっしょりず濡れお重くなった。  二週間埌 奈良ぞの取材旅行から戻った有栖川が、土産を手に京郜の火村の䞋宿を蚪ねた。 勝手知ったる䜕ずやらで、二階ぞ䞊がるず、郚屋の真ん䞭で火村が論文や資料ず睚めっこしおいた。 雑誌が20冊ほど収玍できる透明のケヌスを床に4぀䞊べ、膚倧な量の玙を黙々ず仕分けしおいる。 ぀のケヌスにはそれぞれ、◯、×、probably not 、perhaps yes ず印刷されたラベルが貌っおある。 「よ、火村。来たで」 土産を入れた玙袋を軜く䞊げお有栖川は挚拶したが、火村は手元の資料から目を離さない。 「来たか。・・・奈良はどうだった」 「ええずこやったで。近いのにな、なかなか行く機䌚があらぞんかったから行けおよかったわあ。これお土産」 有栖川はいろいろなものが雑倚に茉っおある机の䞊に玙袋をそっず眮いた。 それから床に眮かれおあるケヌスを興味深げに眺めた。 「火村、この、probably not 、 perhaps yesずいうのは䜕や」 「たぶん×、もしかしたら◯。蚀葉通りだ。䜿えるかどうか決定しかねるものを曎にこの二぀に分けおいる」 「絶察に×、絶察に◯、ではないっおこずか」 「そうだ。曖昧なんだ。絶察に駄目だずいう確信がないからこうやっお分けおいる」 曖昧。 確信がない。 たぶん。もしかしたら。 たるで2人の関係を暗に瀺されおいるようで、有栖川は顔を歪たせた。 「 ちょっずばあちゃんにお土産枡しおくるわ」 仕分けの手を止めない火村は、有栖川の倉化に気が぀かない様子で「ん、」ず短く返事をした。 有栖川が郚屋から出お行き、階段を䞋りる足音を確かめおから、火村は挞く手元から目線を倖した。 それから、昚日、倧孊であった出来事を思い出し、苊々しい顔で頭を振った。  「火村くん、ちょっずいいかな」 授業が終わり、研究宀ぞ戻った火村を蚪ねおきたのは、火村の盎属の䞊叞にあたる教授だった。 「はい、䜕でしょう」 火村はこの教授に察しお、あたりよい印象を抱いおいない。教授ずいう地䜍に甘んじお叀い知識をひけらかし、向䞊しようずいう気がないからだ。偉くなればなるほど自己陶酔しおしたうタむプだな、ず火村は教授のこずを分析しおいた。 自分の分ず教授の分のコヌヒヌを淹れ、向かい合っお゜ファに座る。 倧方、殺人事件の捜査に協力しおいるこずを咎められるのだろう、ず火村は唇の端を埮かに䞊げた。 教授は圓たり障りのない話をいく぀かしおから、ごほん、ず䞀回咳払いをした。挞く本題に入るか、ず火村は゜ファに座りなおす。 「話は党く倉わるんだが 火村くんは、結婚しないのかね」 その問いかけに火村は目を䞞くした。おっきりフィヌルドワヌクのこずを蚀われるのだず思っおいたのに、結婚の二文字が出おくるずは。晎倩の霹靂ずはこういうこずか。火村はコヌヒヌを䞀口飲んで唇を湿らせおから、「ええ」ず短く答えた。 「お付き合いしおいる人はいないのかね、」 「いたす」 「なら、そのお嬢さんず結婚 」 「したせん」 「なぜきみもそろそろ結婚しおいい歳だ。私がこんなこずをわざわざ蚀いに来た理由、聡いきみなら分かっおいるはず」 『聡いきみなら分かっおいるはず』ず蚀われおも、分かるような分からないような。 火村は適圓に答えるこずにした。単に面倒だったから、ずいもいえる。 「箔が぀く、からでしょうか。」 火村の答えに教授は少し笑った。 「たあ そういうのもあるかもしれないが。きみのように優秀な人間には、是非ずも結婚しお子どもを䜜っお欲しいず思っおいる。きみがもし、今お付き合いしおいるお嬢さんず䜕らかの理由があっおヌヌヌ蚀い方は悪いが、遊びでお付き合いしおいお、結婚は違う女性ず、ず思っおいるなら、それに盞応しい女性を私は玹介できる」 無衚情のたた火村は目の前の男を芋぀めた。 「優秀な遺䌝子を残しお欲しい」 この発蚀には嘘停りはないようだ、ず火村は分析した。教授は玔粋に火村の結婚を―――吊、結婚ずいうよりは、優秀な遺䌝子を残すこずを―――垌望しおいる。 「私は結婚はしたせん」 「なぜそんなに拒吊するのかね」 あなたこそ、どうしおそんなに他人のこずが気になるんですか、ず蚊いおやりたい。しかし倧抵の適霢期の男女には、この手の質問及びお節介は付き物だ。諊めなくおは瀟䌚でやっおいけない。 火村は䞀床深呌吞した。 「私にはお付き合いしおいる人がいたすが、女性ではありたせん」 教授の顔色がさっず倉わる。 「火村くん、いた、䜕ず 」 「ですから、私の愛する人は、男性だず蚀ったのです」 教授が、たるで異物を芋るような目で火村を芋た。 この目。 自分は他人からこんな颚に芋られるこずは慣れっこだったし、どう思われようがちっずも構わなかった。 しかしアリスは違う、ず火村は思った。 アリスはこんな、蔑みを含んだ目で芋られるこずは耐えられないだろう。 教授は顎を摩りながら火村を頭の倩蟺から爪先たでを䜕床も芋た。 「きみは同性愛者だったのか」 そら来たぞ。火村は嫌味を飲み蟌み、冷静にゆっくりず蚀葉を玡いだ。 「いいえ、そうではありたせん。奜きになった盞手がたたたた同性だったに過ぎたせん。それは向こうも同じです」 暫しの沈黙が2人の間に流れた。それを先に砎ったのは、教授だった。 「ふざけたこずを、」 「ふざけおなどいたせん。本圓のこずしか申し䞊げおおりたせん」 「たたごずじゃないか、そんなものは」 教授は吐き捚おるように蚀った。 「たたごず」 「いい歳をした倧人が、奜きだから、愛しおいるから、などず蚀っお、[[rb:真面 > たずも]]なこずから目を逞らす」 「 私は真面ではないず」 教授はひらひらず片手を振った。この話はもう終わり、ず蚀わんばかりの仕草だった。 「私はきみを買っおいるんだよ、火村くん」 倧仰な仕草で立ち䞊がり、2人の間にあるテヌブルに倧きめの封筒を眮いた。 「きみがどれほどその人を愛しおいようが、たた、その人がきみをどれほど愛しおいようが、その人はきみの子を生むこずはできないだろう」 火村は封筒を芋぀めた。きっずこれには教授のお県鏡に叶った女性の写真や釣曞が入っおいるのだろう、ず掚枬する。 「よくよく考えおおきなさい。返事は近いうちに聞く」 教授はそう蚀い残しおさっさず研究宀を出お行った。  火村は、䞀晩眠ればいくらか気分がたしになるかず思っおいたが、時間が経っおも昚日の䞍快感を匕きずったたただった。なんずもすっきりしない。 蚪ねおきおくれた有栖川は、たぶん今倜泊たっおゆく぀もりだろう。普段なら嬉しくお錻歌のひず぀でも歌っおしたうずころだ。それなのに気が重かった。 普段なら嫌味を぀ら぀らず吐いお教授を撃退するのに、あのずきそうしなかったのは、少なからずショックを受けたからだった。 有栖川ず築き䞊げおきたものが子どもの遊びず同じだず蚀われたこずに、柄にもなく火村は傷付いおいた。 それほどたでに、火村にずっお有栖川ずの日々は宝石のようなものだった。 壊れないように、ずっず倧切に守っおきたものだったのだ。 ガラスケヌスの䞭に入れお倧切にしおきたものを、汚れた手でべたべたず觊られたような気がした。 だから、有栖川の顔をたずもに芋るこずができず、曞類敎理に没頭するふりをしおしたった。 「最悪の気分だ」 火村はばさばさず玙の束を床ぞ萜ずした。 癜い玙が絚毯のように広がる。 「アリス」 名前を呌び、そういえば時絵さんに土産を枡しおくるず蚀っおいたな、ず思い出す。 「アリス」 本圓におたえだけだ。おたえだけが俺を理解しおくれる。 優秀な遺䌝子を残す そんなこずはどうでもいい。 俺はちっずも優秀なんかじゃない。欠陥だらけだ。 足りないものだらけの俺を補っおくれるのはアリスだけだ。 火村は鞄から封筒を取り出す。それは昚日教授から枡されたもので、䞭を芗くずやはり女性の写真ず釣曞らしきものが芋えた。 「こんなものは」 そう呟き、火村は封筒を床に眮いおある×のケヌスに投げ入れた。 それからうろうろず郚屋の䞭を歩き回り、やがお机の抜斗から小さなケヌスを取り出す。 暫く逡巡しおからスラックスのポケットにそれを無造䜜に突っ蟌み、郚屋を出お行った。その顔は䜕かを決意したように芋えた。  䞀階に䞋りた有栖川は、花瓶に花を生けおいる時絵を芋぀け、土産を枡した。 「ばあちゃヌん、元気やったはい、これ。奈良に行っおおん」 「たあたあ、せんせ、ご無沙汰で。た、おおきに。䞀緒によばれたしょ」 「ん」 どこかしょんがりずした有栖川の様子に、時絵は「うん」ず目を芋開いた。 「どないしたしたんえ元気ありたぞんな」 「 ごめんなあ、ばあちゃん。ちょっずヘコんでんねん」 「あらあら、ほんたにどないしたしたよかったら盞談しずくれやす」 時絵は有栖川の背䞭を抌し、゜ファに座らせた。しゅんず俯いおるせいで、有栖川の猫背が䜙蚈にひどく芋える。 「 ばあちゃん、俺はどないしたらええんやろ䞍安で抌し朰されそうや」 「なんや深刻そうですな」 時絵は熱いほうじ茶を淹れ、有栖川に手枡した。有栖川の癜い手がぜっおりずした湯呑みを包んだ。 「深刻やで、ほんたに。最近いろいろ考えるこずがあっおな。・・・たあ、なんお蚀うたらええんか・・・俺ず火村は結婚できぞんし、子䟛も䜜られぞんやんか。 ・・・あ、火村が嫌になったずか、そういうのずはちゃうねん。 新しい出来事がやっお来おぞんのが䞍安でたたらんねん」 「・・・新しい出来事、ずいうのは」 「結婚するだずか、子䟛が生たれるだずか、そういうこずかな。 ・・・俺は、・・・二人の間に確たるものがないのが怖いねん」 暫しの間があった。 有栖川は俯いたたた、じっず時絵の蚀葉を埅った。 時絵は有栖川の顔を芗き蟌み、にこりず笑う。そしおゆっくりず話し出した。 「せやけど有栖川さん、どんな人間にも未来に䞍安はあるもんです。 結婚できぞんずか、子䟛が䜜られぞんずか そういうこずっお結局は異性愛者だろうが、同性愛者だろうが、同じようなこずで぀たずいたり、䌌たようなこずで立ち止たったりするもんです」 そうは思いたせんか、ず時絵は穏やかな口調で蚀った。 有栖川はふっず心が軜くなるのを感じた。ここ最近ずっずあった胞の぀かえもずれた感じだ。 「・・・ばあちゃん、」 「はい」 「ありがずう」 心から有栖川は瀌を述べた。 「いえいえ。こんな幎寄りでも偶には圹に立ちたすやろほんで先生がたの結婚匏はい぀ですの早うしおくれんず、私、お迎え来おしたいたすわ」 「いやあ、ただただやわ。ばあちゃんやったら、あず100幎は軜いわ」 人で軜口を叩きあっお笑っおいるず、火村が階段を䞋りおきた。 有栖川は笑いすぎお涙が滲む目元を拭う。 「なんだ楜しそうだな。ずころでアリス、飯は食ったのか、」 「いや、ただや。 火村は」 「俺もただ。䜕か簡単なものでも䜜っお食おう」 火村が台所ぞ向かうのを時絵はにこにこしながら暪目で芋、「そしたら私はこれで」ず立ち䞊がった。 「ばあちゃん、ほんたにありがず」 有栖川が再床瀌を述べるず、時絵は優しい顔でこくりずひず぀頷いた。 「アリス䜕しおるおたえも手䌝え」 台所で腕たくりをしながら火村が呌ぶ。 「人遣いの荒い奎や」ずこがしながらも、有栖川は晎れ晎れずしおいた。 簡単にサンドむッチでも䜜っお食べようずいうこずになり、圹割分担をする。 有栖川がパンにバタヌずマスタヌドを塗っおいる間に、火村はハムを切り、たたごを焌いた。 野菜なしの簡単サンドむッチず玅茶を準備し、ひず぀の゜ファに座っおそれらを䞊んで食べながら、有栖川はやおら口を開いた。 「あんな、火村」 「なんだ」 綺麗な黒い目に有栖川が映っおいる。 きっず自分の目にも、こんなふうに火村が映っおいるのだず思うず意味もなく嬉しくなった。 「俺はきみの子䟛を生んで育おるこずはでけぞんし、結婚もできん。 俺らの間に新しい出来事はやっお来おぞん」 火村の眉が片方ぎくりず動いた。 それから切なげに目が现められる。 「・・・・なんお、えらい感傷的なんやけどな。 たあ、䜕お蚀うか・・・新しい出来事がやっお来おぞんのやったら、二人で思い出を䜜り続けおいったらええんかな、ず思お」 玅茶の入ったカップを静かにテヌブルに眮き、火村はひず぀息を吐いた。 「おたえがいろいろ考えお悩んでるのは俺もわかっおる぀もりだ。 ・・・だから結婚匏なんか参加させたくなかったんだ。 ぀たらないこず考えちたうだろうし、碌なこずがない」 クグロフは甘すぎるしず蚊くず、火村は思い出したのか顔を顰めた。 「たしかに俺ずおたえじゃ子䟛は䜜れない。 だけど䟋えば、の話だが、子を持぀こずに関しおは、逊子を迎えたりするこずはできる。 ・・・・なあアリス、家族ずいうのは、『圚るもの』ではなくお『䜜るもの』だずは思わないか」 有栖川は目をぱちくりずさせた。 火村は優しい顔をしおいる。 その目に映る自分の顔は今にも泣き出しそうだ。 ああ、いた答えが出たのだ、ず有栖川は思った。 考えおも考えおも、同じ答えしか出せなかったずいうのに。 男同士では子䟛は生めないもしかしたら近い将来、生めるようにはなるかもしれないが。 これはプロバブリヌ・ノット。 けれど男同士でも、なろうず思えば、芪にはなれるのだ。 そうなれる可胜性は、自らが望めばできる。 これはパハップス・む゚ス。 火村が有栖川の身䜓をゆっくりず抱きしめた。 「俺はおたえを離さないず決めおる。 おたえがいなくなるっおこずは、俺が死ぬのず同矩なんだ。 ・・・本圓は今こんなずきに蚀うこずじゃあないのはわかっおる。 だが、今、蚀わせおくれ。 俺はおたえだけを䞀生愛す」 有栖川は座ったたたの姿勢で火村の広い背䞭ぞ腕を回した。涙が出そうになり、ぎゅっず瞌を閉じる。 「おたえはどうなんだ」 「俺は。・・・俺は、きみだけを愛しお死ねるんやったら本望や」 生たれおきおよかったず、有栖川は心の底から思った。 火村に䌚えおよかった。 惜しむこずなくこの人を愛するこずができおよかった。 たぶん、だずか、もしかしたらではなくおこれは確信だった。 「・・・アリス、目を閉じろ」 えず聞き返しおみるも、「目を閉じろ」ずもう䞀床蚀われる。 仕方なく蚀われた通りに目を閉じるず、火村は片手で有栖川の身䜓を抱き締めたたた、もう片方の手でごそごそずポケットから䜕かを取り出しおいる。 「突っ返すなよ、絶察に」 火村が耳元で囁き、巊手が掎たれる。 䜕をする぀もりなのかず蚝しみ぀぀も、有栖川は蚀われた通り目を閉じたたたじっずしおいた。 身䜓を少し離され、「もっずいいシチュ゚ヌションでやろうず思っおたんだがなあ。たあ、でも、いいか」ず呟きながら唇に柔らかくキスを萜ずされる。 それずほが同時に、有栖川の巊手の薬指に぀めたい金属の茪が嵌められた感芚があった。
3/30远蚘 内容少し倉曎したため(原䜜参考にしたため)、ドラマ版タグ倖させおいただきたした。぀けおくださった方、ありがずうございたした。<br /><br />3/16远蚘 スタンプにはコメント欄にお埡瀌を、コメントには個別にメッセヌゞで返信いたしたした。ありがずうございたす。<br />閲芧数ずブクマがすごく増えおいお、ランキング䜍ずか 恐瞮です。みなさた読んでくださっおありがずうございたす<br /><br />3/15远蚘 スタンプにはコメント欄にお埡瀌を、コメントにはメッセヌゞにお個別に返信いたしたした。本圓にありがずうございたす。<br /><br />い぀も閲芧、評䟡、タグ、コメント等ありがずうございたす。すごく励みになっおいたす。おかげさたで、ちょこちょこランキングにお邪魔しおいるようです。本圓にありがずうございたす。<br /><br />別アカりントで昔曞いたものを火アリに眮き換えお、倧幅加筆修正したした。<br />家族の圚り方に぀いお。<br />時絵さんは二人ができおるこずを知っおいるずいう前提で。
プロバブリヌ・ノット パハップス・む゚ス
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カラ束は死にたがりだ。 最初なんおただ小孊校の頃。 僕ら六぀子が悪ガキずしおはしゃぎたくっおた頃だった。 たたたた担任がクズだった。 俺らの区別も぀かないくせにずある悪戯をカラ束が犯人ず教宀で祭り䞊げた。 「お前みたいなクズはさっさず死んだほうが䞖の為だ」 そんな事を蚀ったらしい。 盎埌、掎たれおた先生の手を振り払いカラ束は窓から飛び降りた。 幞い雪が積もっおそこに萜ちたおかげでカラ束はかすり傷ですんだ。 教宀はパニックであっずいう間に保護者にたで話が飛んで、担任はすぐに蟞めた。 次は䞭孊のクラスメヌト。倚分スクヌルカヌストで空気読めないからむゞメられたんだろう  「お前りザい。消えろ」 そう蚀われそのたたカッタヌで切ろうずした。 他のクラスメヌトが止めお無事だったけど。 翌幎から兄匟ず䞀緒のクラスになった。 圫刻刀、カッタヌ、ハサミ。芁らないだの蚀われるたびに消そうずするカラ束。 おかげで危険物は兄匟が管理。 垞にカラ束を兄匟が芋匵る状態だった。 高校に入っおからはだいぶ萜ち着いた。 郚掻に入っおからはちょっずの悪口皋床は倧䞈倫になっお、卒業する頃にはすっかり普通になったず思っおいた  だからすっかり忘れおた。 カラ束はカンタンに䞀線を飛び越える事を  思い返せばおかしい事はいっぱいあった。兄匟の䞭でも短気だったのに、兄匟にやられでもやりかえさない。 い぀の間にか優しい、䞍憫枠、兄匟カヌスト最䞋䜍。 それを受け入れおるのがおかしかった  あの埌倧怪我で垰っおきたカラ束は僕らが謝っおも「うん」しか返事をしない。 最初は怒っおいるんだろうず思った。 でも違った。カラ束はもう心が向こうに行っおしたった。 そのたた台所に行ったカラ束になんかザワザワずした䞍安感を持った。 「やめろ」 そこにいたのは包䞁で胞を刺そうずしおいるカラ束だった。 盎ぐに包䞁を取り䞊げた。 「䜕でずめるんだ」 心底分からないような口ぶりのカラ束。 「普通兄匟が自殺しようずしたら止めるだろ」 「あぁお前は『垞識人』だもんな」 そのたた䞀階の客間に入った。 「ねぇもしかしおアレじゃない子䟛ん時の 」 トド束の蚀葉。そう。 「トド束お前、客間でカラ束ずいろ。んでおかしければ叫べ。ここなら盎ぐ行ける」 おそ束の指瀺にトド束はすぐに飛んで行った。 「治ったず思ったんだけど 」 「チョロ束、お前も手、切れおる。絆創膏貌っずけ。いや、救急箱持っおきた方がいいな」 そう。あの頃は気付くず刃物を持っおるカラ束は傷だらけだったから、絆創膏から包垯やらいっぱい入っおたけど、今はどうだろ  䞭身をみたけず、絆創膏ず消毒薬、颚邪薬ぐらいしか入っおない。 「十四束、明日薬局行っお䞀揃え買っおこい。あっ䞀束も䞀緒がいいな」 䞭孊時代以倖ず良く怪我の手圓おをしおいたのは䞀束の方だ。 どこの薬局が良いかは十四束が知っおおも、䜕を買うかは䞀束のが良いだろう。 「アむアむ」 「今日から亀代で芋守るから」 俺は死にたがりず蚀われる。 でも違う。俺は盞手が望んだ通りの事をやっおいるだけだ。 小孊校も䞭孊時代も。 高校で挔技に目芚め、初めお蚀った事ず望んだ事が違う堎合がある事を知った。 だから兄匟に冷たくされおも、本圓は奜きだず思っおいた。 でも違った。 俺がいたらあんなに䞀束は笑わない。 トド束も十四束もチョロ束もおそ束も  あぁ。䞀束が蚀っおた『死ね』は本心だったんだ  みんなが俺を無芖したり、むタむっお蚀っおたのは本心だったんだ  そうず分かれば死なないず。 兄匟の垌望を叶えよう。そう思っお家に垰っお包䞁で胞を刺そうずした。 それは叶わなかった。 チョロ束は俺の垌望を邪魔する。 䞭孊時代いっ぀もおそ束ずコンビで邪魔に入ったもんな。 自分の䜓をみる。倧怪我だけど生きおいる。 この怪我で兄匟を出し抜いお死ぬのは難しい。 しかも頑䞈な俺はそうカンタンに死なない。 ずりあえず病院の行き垰りで死ねる方法を考えよう  あれからカラ束は萜ち着いおるように芋える。 特にカッタヌを探すような事もない。 だから安心しおたんだ。 気が緩んでたんだ  「いた」 「いないそっちは」 「だめ」 僕らは探しおる。カラ束の通院も付き合っお、包垯も取れお、普段通りになったず安心した頃、いきなり消えた。 ふらっず「コンビニ行っおくる」 そう蚀っお出かけお䞀時間。 『おかしい』ず『ダバい』が頭の䞭をぐるぐる回る。 ただ『倧䞈倫』じゃなかったのに目を離した  『公園裏山の厖』 䞀束から叫ぶように入った電話はそれだけ蚀っお切れた。 公園の裏山は以倖ず深い。倚分川に沿うように切り立った厖の事だろ。 他の兄匟に慌おお電話する。 「カラ束」 「あれなんで䞀束がいるんだ」 「なんでじゃないだろ䜕でこんな所にいるんだ垰ろう」 「 どこに垰るんだ」 ワケが分からない  「家に決たっおるだろ」 「なんで」 「だっおお前「死んで欲しいんだろ」」 遮るように蚀われた。そうだ。僕が死ねっお蚀ったのをこい぀は芚えおいたんだ。 「怪我が治るたで考えおた。チョロ束が䜕で俺を止めたのか。んで分かった。台所で俺が死んだら片付けが倧倉だからだろここなら䞋は川で血も流される。ポッケに石詰めたから倚分海たでちゃんず流れるから片付けも、葬匏も火葬も必芁ない。完璧だろ」 そう蚀っお膚らんだパヌカヌのポケットから小石を芋せる。 「カラ束」 あぁよかった十四束ずトド束が来た。もうすぐおそ束ずチョロ束も来るはずだ。 「䜕でお前らこんな所に来たんだ」 「探したんだよねぇ垰ろう」 末っ子の特暩。この兄は優しいから自分の我儘を聞いおくれる。 「すたない。もぅお前の願いを叶えおやれないんだ。でもいいだろ他に4人も兄がいるんだから」 「カラ束にヌさんしか僕ず野球できないよ」 止たったトド束の代わりに十四束が叫ぶ。 「十四束。お前なら草野球チヌムに入っおも盎ぐに掻躍出来る。だから俺がいなくおも野球出来るし問題ないだろ」 䜕お蚀えばいいのか分からず止たっおしたった。 「埅お」 おそ束ずチョロ束が来たこれで倧䞈倫だ。䜕ずなく思った。 「カラ束お前が死んだら俺も死ぬぞ。いいか六぀子党員いなくなるぞだから䞀緒に垰ろう」 どんな脅しだ。おそ束に期埅したのがダメだったのか。 ずころが目に芋えおカラ束はオロオロしだした。 「ダメだ。芪より先に死ぬなんお䞍幞をしちゃ」 お前が蚀うなず思うがここは口を出さずにいた。 「お前にも蚀えるだろいいか、俺らは六぀子だ。䞀人でも枛ったらそれは俺たちじゃなくなる。カラ束は俺たちがいなくなっおいいのか」 「それは困るが でもお前らの幞せを考えるず俺はいなくならないず 」 「いいか、よく聞け。カラ束。お前がいないず六぀子は成り立たない。高校時代にも蚀っただろ」 おそ束が子䟛に蚀い聞かせるように蚀う。 「でもみんな俺の蚀う事無芖しおたし、俺が居ないず䞀束も笑うし 」 そう䞀束は俺が居るず笑わないんだ。だから俺はあそこに入っちゃいけないんだ。 「カラ束いなくなったら誰も笑えないぞもう䞀回蚀う。垰ろう。」 迷っおいる  「兄さん、ちゃんず話がしたいからこっちに来お」 トド束の蚀葉に迷いながら少しず぀厖から離れる。 「぀かたえた」 十四束がしっかり掎んだ。 これで萜ちる事はない。 ポツポツず喋るカラ束。話が飛び飛びで分かりづらいが 「぀たりお前はあの怪我の日の倕方、みんなが䞊んで垰るのを芋お芁らないっお思ったんだな。」 おそ束の蚀葉に頷く。 「いいか。お前は芁らないっお思ったかもしれないが、俺らには必芁だよ。䜕床だっお蚀うぞ。お前は必芁だから居なくなるな」 頷くカラ束を芋おやっずホッずした。 みんなで家に垰った。 でも気を぀けないず カラ束はたた『向こう偎』に行っおしたうかもしれないから 
自殺衚珟あり。<br />死んではいたせん。<br />死にたがりを止めようする兄匟。<br />サむコパスっぜい感じ。<br />蚀われた事を斜め30床ぐらいに読み取るカラ束です。<br /><br />【远加】<br />2016幎03月08日2016幎03月14日付の[小説] ルヌキヌランキング 31 䜍に入りたした<br />ありがずうございたす<br />【远加】<br />2016幎03月09日2016幎03月15日付の[小説] ルヌキヌランキング 13 䜍に入りたした<br />芋たこずない数字にビビりたくりです。<br />ありがずうございたす
カラ束は死にたがり
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「䞀束兄さん、どうしたの゜レ」 匟の指摘の声を背に盛倧なため息を吐く。いやはや党くどうしたのだろうか。それを聞きたいのは束野䞀束自身であっただろうに。 䞀束が自身のからだの異倉に気付いたのは五日も前の朝である。 昌を目前にした時間垯に目を芚たし、ふらふらず歩きながら掗面台に立った。顔を掗い歯を磚き、適圓に䜕床か櫛を通す。だが猫っ毛なので四方八方に飛んだ毛先ず、頭は完党に芚醒しおいるもののやる気のなさを䜓珟した目のおかけで今にも眠りに぀きそうな顔がそこにあった。 そうしお怠惰に銖元を掻きながら。くあ、ず倧きなあくびをした時だ。ふず鏡の䞭にいるやる気のなさげな顔をした男のその銖に、劙なものが存圚しおいるこずに気が付いた。 「んあ    」 ちょうど自分が掻いおいる銖筋の蟺り。そこに鬱血したような痣が芋える。明らかに内出血だ。 ぀けた芚えのない怪我のようなそれに銖を傟げた。するずタむミングを芋蚈らったかのように背埌から長兄が珟れる。反射的に猫化したのは臎し方あるたい。 「やだ〜なにそれキスマヌクっおや぀ぅ」 䞀枚クンっおばダむタ〜ン。 茶化すような軜薄な声が耳元にかかる。その衚情は明らかにこの堎を愉しんでいる色が乗せられおいたが、問題はそこではなかった。 キスマヌク  だず䞀束が反応したのは自分ずは䞀切無瞁だず考えおいたビックリワヌドだった。 キスマヌク。芪密な関係にある人々が䞀線を越えたりしお思わず぀けおしたったり、むしろ確信犯的に自己の存圚を䞻匵するように぀けおしたったりするあの、英語圏でキスマヌクず蚀っおも通じないあれである。正匏名称を吞匕性皮䞋出血ずいう肌を匷く吞い付かれるずできるあれがあれした謂わばあれなあれである。そう、あれなのである。   ずりあえず語圙が厩壊した蟺りで我にかえるず、確かに゜レらしいあれが銖筋に存圚しおいた。だが、あれした゜レが぀いおいる人物は䞀束である。 あの、芋぀め合うず玠盎におしゃべりできないサ◯゛ンみたいな䞀束に぀いおいたのだ。 「いやいやいや、ない」 ないわヌ。口を぀いお出た吊定は本心であった。束野家四男束野䞀束、母・束代の腹から生たれ出で二十䜙幎経぀が女性ず手を繋ぐどころが同じ郚屋の空気を吞うのも難しいのが珟実だ。商売女性が飲んだ飲料を飲むので粟いっぱいである。兄匟がいなければクリスマスにかこ぀けお憧れの幌銎染みにデヌトを申し蟌む、なんおこずも出来なかったであろう。 きっずどこかで、無自芚に぀けたのだろうず玍埗し、軟䜓化しながらも絡み぀く長兄を振り払った初日であった。 だが、二日目。 やはり正午を目の前にしお掗面台に立った䞀束は目を芋開いた。痣が広がっおいたのだ。それは前日に芋぀けた痣の隣に぀けられおおり、心なしか色も濃くなったように思われた。ダニにしおは痒みも党くない。 いやたさか。たさかたさかず䞉日四日五日ず自分を誀魔化しおみたが、痣の広がりようはそれはそれは芋事なものであった。五日目には濃さの違いはあれど五぀もの痣が銖たわりを圩っおいたのだ。 しかも六日目にはずうずう痣ですらなくなっお噛み跡になっおいたのだ。痣の存圚をかき消すような噛み跡。キスマヌクから、たさかの噛み跡。目を瞠るような成長である。立掟なものだ。   ずたぁ、さんざん珟実逃避に励んでいた䞀束だがふず珟実にこんにちはした蟺りで青ざめた。 目が芚めたら痣が増え、そしお噛み跡が芋぀かったずいうこずはもう決たりだ。これは虫でも怪我でもなく、人為的に぀けられたものずいうこずになる。しかも自分が寝る際に眮かれおいる状況を考えれば被疑者は五人。血を分けた自分ず同じ顔の  。 「ひぇっ」 口から奇声が飛び出る。なんおこずだろうか、䞀束は頭を抱えた。 そうしおこのおぞたしい事実ず向かい合わねばならない自身の運呜を呪いながら、スコティッシュフォヌルド束はぎるぎるず震えたのであった。 〜むッチの寝蟌みを襲ったタコ助は誰だ倧事件・事件抂芁〜 被害者・䞀束 蚀わずず知れたスコティッシュフォヌルド系ニヌト。猫ず兄匟をこよなく愛する成人男性成人男性ではないであり、毎倜キスマヌクを぀けられおも気付かなかった奇跡の鈍感ヒロむンでもある。プレパラヌト䞊みに繊现なハヌトの持ち䞻なのでご利甚は蚈画的に。 第䞀被疑者・おそ束 蚀わずず知れたゲス界のカリスマレゞェンド系ニヌト。時おり幌児のような蚀動を芋せるために倧きなお姉さんからの支持を欲しいたたにしおいる成人男性。意倖ず寂しがり屋なのでスキンシップを欠かさずに。 第二被疑者・カラ束 蚀わずず知れた肋クラッシャヌ系ニヌト。時おり幌女のような蚀動を芋せるために過激で倧きなお姉さんからの支持をもんげヌ受けおいる。加えお䞍意打ちのようにオスみずいう特別なフェロモンたで攟っおいるからさぁ倧倉。 第䞉被疑者・チョロりん 蚀わずず知れたマゞメ系クズニヌト。圌のツッコミず奇声の右に出る者はいないのではないかずいう声が䞊がっおいる。最近では䞀皮も二皮もむけお次男に次ぐサむコパスなのではないかず筆者のなかで話題に。 第四被疑者・十四束パン 蚀わずず知れた狂気の倧倩䜿系ニヌト。ドブ川バタフラむも蟞さないそのアグレッシブさが話題ずなり、十四束ずいうゞャンルが誕生した。䞀床スタンダップするず長時間はスタンドし続ける姿は蚘憶に新しい。䜙談だが十姉効ず誀倉換しやすい点が筆者を悩たせおいる。 第五被疑者・トッティ 蚀わずず知れたドラむモンスタヌ系ニヌト。地䞊ずの架け橋であり、圌がいなければ兄匟が滅ぶずいう共䟝存クラスタずしおは倧倉矎味しい蚭定を背負っおいる。ああトッティ、おおトッティ。 [newpage] うほほい、うほほい♪うほほほい♪  っおアレ兄さんどうしたのヌやきうやきうしにきたの えヌ、違うのヌ んヌはなしいいよ今ヒマしおたずこ立ったから。 ふんふん、぀たり  どういうこずえ、えヌヌたじスカ兄さんが、セクロスえ違う兄さんの銖元に赀き花匁を散らせたのは誰かっおハナシふヌん、そうなんだ。 んああ今のはカラ束兄さんのマネこの前ねヌ、アむドルにキスマヌクが぀いおたっおニュヌス芋お『銖元を赀き花匁で圩るずは  、な』っお蚀っおたんだヌ。今の䌌おた〜ふむ、殺意を芚える皋床には䌌おたかヌたはヌ えヌ、それで半日だっけ。うヌん、誰なんだろうね。ぜんっぜん分かんない。だっおボクたちが寝おる時にっおハナシでしょボク倜は寝おるからなヌ。誰かが起きおも分かんないよ〜。 でも䞀束兄さんは犯人を知りたいんだよねヌうヌんうヌヌん  あっ、䞀぀だけはっきりしおるこずがあるよ。えっずねヌ、ボクは犯人じゃないっおこずこれだけは確かだよだっおボク、兄匟にはり゜぀かないもん。ホントのホントにホントだよヌり゜じゃないよヌ倩地倩呜に誓っおも兄匟にはり゜぀いたらダメだっお、この前トッティにも蚀われたしね   んヌ、ボクぜんぜん圹に立っおないね。あははヌ。ごめんね兄さん。 ひょっ、蚱しおくれるんですかいひょえヌ兄さんは倩䜿やんなぁ、ホンマかなわんわ。おおきにやでヌ  あヌ、そだそだ、兄さんの銖に噛み跡があるんだよね。ちょっず芋せおえ、だっおもしかしたら兄匟じゃなくお犬の仕業かもしれないし迷い犬的なえヌ、芋せお芋せおちょっずだけ先っぜだけだからえその蚀い方は違う ずりあえず芋せ  わヌいありがず兄さん       本圓に噛み跡だねヌ。これは犬なんかじゃないよねヌ。   ぞヌ  。 なヌんで噛むんだろうね兄さんが起きるかもしれないのに。なんで噛むんだろう。どうしおかなぁ兄さんが起きおも構わないず思ったのかなぁむしろ、起きた方が郜合がいいず思ったのかなぁ 分っかんないなぁ、なんでかなぁ。ねぇ、なんでだろうね兄さん。  ん近い誰がボクがあヌ、そっかそっかボクの息がくすぐったかったんだね。ごめんね兄さん。ホむこれで倧䞈倫ごめんねヌ えヌヌ、兄さん行っちゃうのなんで 犯人探しそっか。そうだよねヌ、ボクが犯人分からなかったから仕方ないねヌ。 うん、じゃあたた今床やきうしようねえ明日する、するよぜヌヌったいするじゃあね兄さんばいばヌヌヌいたたね、さよなランニングホヌムラン â–Œ アレ兄さんがスタバァに来るなんお珍しいね。なんで っおかりッ、兄さんずスタバァの組み合わせっおめちゃくそ叀傷抉られる  。ずりあえず倖出よう。   えヌず、じゃあ぀たりこういうこず 兄さんのその噛み跡やらキスマヌクやらを぀けられた時間垯はがくらが寝おる間で、同じ垃団で寝おるがくら兄匟たちが怪しいず兄さんは思っおる  ず。あヌ、やだなにそれ自意識過剰っおか発想がマゞサむコパス  っお蚀えないのが悲しいよね。なんで我が家には劖怪・童貞拗らせ束が湧きたくっおるんだろうか。由々しき事態だよたったく。 たぁね、考えたくもないけどそういう発想に至っちゃうよね。普通なら有り埗ないけど、なんせ劖怪・ク゜ニヌトシコ束だからね  。えブヌメラン発蚀んん、なんのこず おか朝も気になっおたんだけど、やっぱアレっおキスマヌクず噛み跡だったんだ。ちょっずもっかい芋せおくれないいや別に枛らないでしょ。うん、ありがず。   あヌ、本圓に噛み跡だ。こっわぁ。こんなもんよく兄匟に぀けようず思ったもんだよねヌヌ。ボクなら絶察ムリ         ず、うん。え今のいや、写メだけど。ぞいやこのスマホにカメラ機胜っおのが぀いおお、それで写真を  っお、わなんでそんな怒っおんの別にバラたいたりなんおしないしむむじゃん。なんで怒るかなヌ。もう。   はいはい、消したよ。消した消した。なに、匟のこずそんな信じられないのっお即答だし。やだやだ、ちゃんず消したっおば。疑り深いなぁ。   で犯人だっけ。   たぁ、消去法ならカラ束兄さんしかいないよね。 だっお安心安定のおっぱい星人、サむコパス、シコ束、十四束兄さんずきたらサむコパス兄さんしかいなくないあの人ナルシストの塊みたいなずこあるし、倢芋心地で目の前にいた䞀束兄さんにムラッずきたずかありえそう。「眠っおいおも矎しい 、俺 」みたいな感じで。がくら六぀子のこずもガチほ分身っお思っおるんじゃない。䞀束兄さんのこずも猫背の俺、みたいな認識しおそう。 あ、だずしたら䞀束兄さんに䜕されおもあんなんなのは䞋心があるからっお玍埗でき  っお、わぁ真っ青。䞀束兄さん倧䞈倫 倧䞈倫じゃないか。 やだもう消去法っお蚀っおんじゃん。別にわざずじゃないし蚱しおよ。ゎメンっお。 ん、どこ行くのチョロ束兄さんのずこああ 、今日はラむブがあるらしいからあの堎所にいるんじゃない。あのネコ耳アむドルのずこ。にゃヌちゃん、だっけホントもう分かりやすい趣味しおるよねぇ。 でもチョロ束兄さんなら神経質なずこあるし、誰かが起きたのずか気付いおそうだしね。䜕か聞けるかも。 それじゃあ頑匵っおね、䞀束兄さん。背埌に気を付けお  っお、おヌこわ。そんな睚たないでよ。 â–Œ あヌ、にゃヌちゃん可愛かったぁ 。超絶可愛かった  はぁ   っお、ひええええええいいいいいい䞀束、なななんでこんな所に  え話があるいいよ分かった。話なら䜕でもするから別の堎所に行こうな もう兄匟がここに来るず鬌門でしかないっおいうかさぁ 。うん、あっちな。   はぁヌ、で、なんだっけその、キ、キキキキスマヌクの、そのヌ、あのヌ、アレだっけあのその犯人の話だよなうん。いやもう党くなんで顔も同じ野郎を疑うのかっお話だけど 。たぁ、そうだね 。りチには童貞拗らせ過ぎお女装した匟にすら発情かたすアホもいるこずだしね 。 えああうん、僕は犯人は長男しかいないず思うよ。だっお、あの長男だよ小孊生䞊みの頭しかないず思っおたら、この前の合コン遞抜でのアレでしょもうクロじゃん。真っ黒だよ。ノリで匟に股間觊らす阿保なんおアむツくらいじゃない。 にしおも、そのキキ、キキスマヌクだけど。  っお、うわ䜕こんな芋せおんのちょっずもうお前は危機感っおものを               なにこれ。䜕この噛み跡。お前なんでこんなこずされお気付かないわけ。普通起きたりするもんじゃないの。   本圓にさぁ、お前は危機感っおものが党くないよね。おそ束兄さんのノリもどうかず思うけど、お前も悪ノリが過ぎるず思うんだよね。 えホラ、前に颚邪匕いたずき。おそ束兄さんにキスしおただろ。ああうん、別にキスに関しおは俺が煜ったずころもあったからね。たぁやり過ぎだずは思ったけど、仕方ないずはさぁ、玍埗したんだよでも舌は入れる必芁あったあったかな  䞀束、俺は聞いおるんだよ。返事しないず。 おそ束兄さんじゃないけど、俺は心配しおるんだよ䞀束。お前はい぀もノリに流されお行動するずころがあるからね、本圓に心配なんだ。ねぇ、たさか兄匟に煜られお劙なこずずかしおないだろうね  え、だからさぁ。誘われたらお前に぀いおるコレ、以䞊のこずされたりずか   しおないだろ  その反応ならされおないっぜいね。安心したよ。ただでさえお前は兄匟っおだけで僕らを信甚しちゃうんだもん。 本圓に、ほんずうに心配だなぁ。   っお、おい䞀束 ッ、ああもうそうやっお急ぐからほらケガしおないこの歳になっお転ぶなんお本圓に  あっ、䞀束埅おっお僕なにもしおないだろちょっず、 䞀束 â–Œ   ん、おお䞀束か。おかえりブラザヌ。どうしたんだそんなに急いで。息も荒いじゃないか 。昌間からランニングか実に健康的だな。どれ、俺もずもに  っお、ぉわあっな、䜕故肘鉄ホワむ䜕故なんだ䞀束   党く、やんちゃなキティだぜ。んどうした䞀束、なにかあるのか蚀いたいこずがあるならいうんだ、䞀束   ほう、キスマヌクか。しかも噛み跡も。少し芋るぞうん、確かにこれは  。ああすたない、よく぀いたものだなぁず 。フッ、今の声別に恥ずべきような声ではなかったじゃないか。むしろ小鳥の囀りのような  あ、ハむすみたせん。 ああそうだ。䞀束、ちょっず座っおくれないか。そう。そのたたちょっず埅っおおくれ。なに、そう時間はずらないから、な 埅たせたな。それじゃあ足を芋せおくれないか。  んいやほらな、右足 。うん、そこだ。ほぅらやっぱり。ビンゎォはは、さっき転んだろう、だから気になっおなぁ。気付いおなかったみたいだが、菌が入ったらマズむから消毒はしような。うん。グッボヌむだ、䞀束。 それにしおもキスマヌクずはたた なぁお前の癜い銖筋を、なにもこんな色で染めなくおも良いず思うんだが 。やたら匷く吞われたらしいな。コレなんおほら、赀黒いを通り越しお茶色だ。痛々しい。䞀束もここたでやられお気付かないんだから、鈍感もほどほどにしないずな。んどうした、䜕か怯えおいるのか  なら、いいんだが。 たぁ鈍感ずいえば、十四束のこずなんだが  。その痕を぀けた犯人は十四束だず思うぞ。  いやいやいや、冗談なんかじゃない。こんな冗談蚀っおどうする。たしお可愛い匟を犯人だず、俺が蚀うず思うか その沈黙は肯定だず受け取るが  、うん。䞀束も俺を信じおくれおいるんだな。嬉しいよ。だから今から俺がいう蚀葉も、信じおほしいんだが 。さっきも蚀った通り、この痕を぀けたのは間違いなく十四束だ。䞀束は気付いおなかったようだが、十四束はお前を兄匟だず思っおない。  お前を兄匟以䞊の盞手ずしお芋おるんだ。聞け、䞀束。耳を塞ぐな。これは本圓のこずだ。本圓の、こずなんだ。嗚呌、䜕故わかるのかずいう瞳をしおいるな。分かるさ。俺はずっず芋おたからな。 お前を芋る十四束が、どんな衚情でお前を芋぀め、どんな目をお前に向けおいたか 。よぅく芋えおいたよ。だから十四束がどんな感情を抱いおたかなんお、手に取るように分かった。䜕故なら、䜕故ならあれは  。 䞀束嗚呌、どうしおそんな怯えた瞳をするんだ兄さんは䜕もしおないだろうん他の兄匟に䜕かされたのかそれずも、俺が、䜕かしたのか。 â–Œ たっだいた〜、長男様のお垰りだぞ〜〜っお、あらら。䞀束しかいないの他の奎らはカラ束の最高に肋にクる靎が芋えたんだけど  あ、二階か。 おかさおかさ、聞いおよ䞀束ぅ。さっきめちゃくちゃむむ感じにキおたのにさぁ、もうダバむくらいツいおる感じだったのにさぁ  負けちった。あヌもう本圓にむむ感じだったんだよ気分よく勝っお、あずもうちょっずっおやっおみたらなんかそっからおかしくなっちゃっお 。あヌもう䜕でだろうね〜。このたた飲み行く飲み行っちゃうどうせアむツらいないならチビ倪のおでんをさぁ  っおもうどうしたのよ䞀束。 ノリ悪いよ〜。お兄ちゃんこんなかたっおるんだからさぁ、お前もノらなきゃじゃん、ねぇ   仕方ない。じゃあお兄ちゃんが悩みでも䜕でも聞いおあげるから、蚀っおみ はあ〜、キスマヌクの犯人。あの時はキスマヌク぀っおも断固吊定しおたのに。なんでたた 。え、なに。増えたしかも噛み跡ひぇ〜、噛み跡っおそらたた 。ダダね〜〜。   んでキスマヌクず噛み跡に耐えられなくなった䞀束クンは犯人探しをするため十四束にドラむモンスタヌにチョロシコスキヌに肋クラッシャヌに話を聞いお回ったわけね。そしたら抌し倒されかけお、キスマヌク写メられお、圧迫面談受けた挙句にカラ束にガチな忠告をされおしたった  、ず。 党く、䞀束も難儀だねぇ。フツヌならンな銬鹿正盎に聞いお回んないよしかもこヌんなモン぀けられお、そういう考えが浮かばないっおさぁ  。どんだけオレら信じおんのよ。 たぁ兄匟だし、考えたくないっおのもわかるよでもさでもさ、いくら奜奇心だ嫌がらせだっお蚀っおも、倜䞭にこっそり兄匟にキスマヌク぀けるダツがいんのかね。だっおお前、キスマヌクだよもし奜奇心で぀けたんなら、盞手にキスマヌクがバレるっお分かっおお぀けるもんかオレならそんなん理由でやらないね。 嫌がらせなら尚曎だよ。もし嫌がらせで倜䞭にこそこそキスマヌク぀けるようなダツがいんなら、そら盞圓拗らせおるダツだよ。  拗らせお拗らせお拗らせお、い぀か爆発しそうな、盞圓アブないダツ。チョロ束の蚀う通り、少しは気を付けた方がむむかもよ   ん犯人ああ、あの。オレはチョロ束しかいないず思っおるよ。だっおお前、チョロ束に迫られたんだろいやいや、今さら吊定しおも遅いから。チョロ束のハナシしおる時のお前、怖い思いしたしたヌっおカオしおたもん。わかるよそんくらい。 だっおオレ、長男だもん。よく分かっちゃう。 はぁ  そんなカオすんなよぉ。なんかオレがむゞメおるみたいじゃん。䞀束ぅ            本圓になんで、聞いちゃうかねぇ。 ねぇ [newpage] やぁ、䞀束兄さん。どうしたの、そんな幜霊でも芋たような顔しお。 やだな、確かに僕は䞀床手酷く朰されおしたったけれど確立した存圚だからね。そう簡単には消えおなくならないよ。兄さんたちだっお、原子分解されおも生き返るでしょうそれず同じこずだよ。 久しぶりに䌚ったからたた兄さんの友達を連れおこようかず思ったけど 。今はそんな気分じゃないみたいだね。僕で良ければ話を聞くよ ああ、圓面は家には戻る぀もりはないから安心しお。兄さんたちにずっお、僕はちょっず合わないみたいだし。それならこうしお芋守るのが䞀番かず思ったから。 でも兄さんが悩んでるなら、僕はい぀でも手を差し䌞べるよ。だっお䞀束兄さんは、僕を生み出した兄さんだからね。   そう、倧倉だったね。分かるよ、兄匟にそんな目で芋られおいたなんお考えたくなかったよね。だっお兄匟だから、倧奜きな兄匟なんだものね。分か   うん、 うん。確かに僕は䞀束兄さんじゃなよ。でも分かるんだ。僕は兄さんたちから生たれたから、䜕が欲しくおどうしたいのか、分かるんだよ。この前も兄さんたちが欲しいものをすぐあげれたでしょうアレはそういうこずが分かるからだよ。僕は兄さんたちず繋がっおるから 。 兄さんは兄匟だから怖かったんだよね。男同士だずいう事実よりも、血を分けた兄匟だずいう事実よりも、信頌する兄匟たちだったから、壊れおしたうのが怖かったのでしょう分かるよ、今も僕に流れおくるから  分かるよ。   でもね、兄さん。僕は他の兄さんたちのこずも分かるから蚀えるのだけれど、これを぀けた想いも、怖いっおおもいがあったんだよ。兄さんに明かしたくなくお、吊定されたくなくお、でも耐え切れなかった想いがあったんだよ。怖くおたたらないのに、どうしおもしおしたう。そんな想いがあった、それだけは本圓だよ。 決しお、けっしお兄さんを傷付けたいたいだずか、嫌がらせだずか奜奇心だずか、そんな浅はかな気持ちからくるものではなかったんだ。それだけは分かっおあげお、くれないかな。   犯人ああ、たぁね。分かりはするけど 。でも、兄さんは本圓に知りたいの兄さんが本圓に知りたいなら教えるけど、耐えられる兄さんが垰るのは、兄匟がいるあの家なのに、それでも 正盎、これを぀けた犯人の気持ちも知っおしたっおいるから蚀えないんだ。だっおバレたくないみたいだしね。ああでも、バレおしたっお䜕もかもを兄さんに晒しおしたいたいっお想いもあるみたい。  そういう意味でも、兄さんには耐えられないず思うから蚀いたくないんだよね。だっお犯人を知った兄さんは、それはそれは困っおしたうず思うから。   それでも兄さんが知りたいず蚀うなら、僕もヒントだけ教えおしたおうかな。本圓のほんずうに兄さんが知りたいず、そう望むなら。僕が出すヒントから犯人を導いおみせお。でも、犯人のためにもヒントは簡朔に出すよいいそれじゃあ、ヒントは   『正盎者の兄さんは二人だけ』   だよ。そう、二人。あずの䞉人は真実ずは正反察のこずを蚀っおるみたいだね。本圓に犯人を知りたいなら、みんなの蚀動を泚意深く思い出しお、真実に蟿り着いおね。それが兄さんにずっお良いこずになるのか悪いこずになるのか、僕には分からないけれど 。応揎しおるよ。 さぁお、僕もそろそろ垰ろうかな。もう暗いしね。ああ、そうそうたたおでん屋さんに行こうか兄さんも手矜先を食べながらゆっくりず  あ、うん。そっか、じゃあ仕方ないね。あそこの銭湯閉たったら他に銭湯がないもの。うん  。 それじゃあね、兄さん。うん、たた。たた  。   ああ、やっぱり埅っお。兄さん、僕は 、兄さんたちずはあんなこずになっおしたったけれど、本圓に兄さんたちは倧切な兄匟だず思っおるんだ。兄さんもたた、僕の倧切な兄さんだから  。だから、今から蚀うのはそんな僕からの忠告だず思っお欲しい。 あのね、兄さん。 はやく、兄さんははやくあの家から出たほうがいいず、僕は思うよ。
ギャグです。おそ䞀、カラ䞀、チョロ䞀、十四䞀、トド䞀です。<br /><br />閲芧評䟡タグブクマありがずうございたす。<br />本文䞭に臎呜的なミスを芋぀けたので加筆修正しおいたす。3/15<br /><br />続き あたり考えおなかったので頑匵りたす  。<br /><br />デむリヌ72䜍ありがずうございたす。今倜はサむコヌですね。<br />デむリヌ18䜍ありがずうございたす。流行りっお凄いですね 。<br /><br />&gt;貎女様の犯人圓お〜  嬉しい蚀葉を頂けお恐瞮です。近いうちに解答線出したすね 
〜むッチの寝蟌みを襲ったタコ助は誰だ倧事件〜
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6539817#1
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  今日も日疲れた。 デスクワヌクに日々粟を尜くしおいるヒラのサラリヌマンの俺。 あ、勿論ヒラずいっおも䌚瀟は有名倧䌁業アポロンメディア瀟だ。 しかし䞊京しおきた俺は仕事に明け暮れ他の事に時間が取れない毎日。 来る日も来る日も広報の仕事に回され最悪培倜の時もある。 おかげで恋人はできないし、家事もたたならない。 ずりあえず家にでも垰ろう、ずいっおも寂しい䞀人暮らしだ。 『ただいた』を蚀っおも垰っおこない『おかえり』 䌚瀟に就職しおたさかこの幎でホヌムシックに䌌たようなものにかかるずは。 たったく、いい幎した倧人がずたた溜息を぀いおしたった。 「そこのお兄さん、幞せ逃げちゃいたすよ」 「っわぁ」 い぀の間に俺の前に居たのか、ニコニコず笑う女性に思わず驚く。 そんな驚かなくおもず飄々ずした態床をずる。 髪を䞀本に結び、なぜか分厚い県鏡をかけお衚情が読めない。 服装はいたっお普通の女性だがなぜか゚プロンを぀けおいる。 ゚プロンには名札があり“笠眮”ず曞かれおいる。   いったいなんお読むんだ、これ 「あ、ちなみに“かさおき”じゃありたせんからね」 「えっ、違うのか」 「はい、っずそういう前眮きは眮いずいお、さぁお兄さん歀方にどうぞ」 グむっず手を匕っ匵られ、よろけながらも圌女の埌を付いおいくこずにした。 今たでの垰路である倧通りから逞れ现い路地裏に入っおいく。 ずいうか䜕故俺はホむホむず付いおきおしたったのだろうか この女性が実は倉な宗教の勧誘の人かも知れないずいうのに。 いや、しかし  思案に暮れおいるずピタリず圌女の足が止たった。 「はい、到着です」 「えっず、ここは」 「ぞ、芋おの通りですが」 芋おの通りず蚀われおも  。 少し寂れた感じもするがピカピカずネオンの看板が点滅しおいる。 䞭ではポップな音楜が流れおいる。そしお䞀際目立぀のは。 「  UFOキャッチャヌ」 「はい、ようこそ“シュテルンビルトゲヌムセンタヌ”ぞ」 [newpage]   はぁ さぁさぁどうぞどうぞ、ず背䞭を抌されUFOキャッチャヌの前ぞず行く。 いやいや、なんでゲヌムセンタヌなんだ。 ずいうかなんで俺をここに連れおきたんだ。 そしおこい぀意倖に力匷いな グむグむず抌されUFOキャッチャヌの目の前に行けばポップな音楜が流れる。 景品の説明が曞いおあり“新鮮ブラックタむガヌ”ず曞かれおいる。 おや珍しい、俺の実家の方は田舎でたたにりケを狙ったような景品があった。 それこそこういった海老や牛肉などの景品がUFOキャッチャヌにあった。 たぁ倧䜓はカプセルの䞭に匕換刞があり、それず亀換だったが  。 たぁ、これも同じようなものなんだろうな。しかし海老なんおどこにも  。 「ぎぃ」 「ぞっ」 ちょうど景品を確認しようずしたずころで謎の電子音が響く。 そっずUFOキャッチャヌの䞭をのぞいおみればパチリず目が合う。 特城的なハンチング姿にベスト、黒ず赀䞭心のカラヌリングだがこれは  。 「ワむルドタむガヌ  」 「ぎぃぎぃぎぃ」 俺の蚀葉が聞こえたかどうかはわからないがペチペチずガラスを叩き始めた。 よく芋るずこのワむルドタむガヌもどきはほかにもいる。 数は数十匹くらいだろうか。皆このUFOキャッチャヌの䞭で自由に過ごしおいる。 じゃれあっおいる者もいればぐっすりず眠っおいるものなど行動は様々だ。 しかし皆に共通しおいるのはその小さな䜓ずお尻から䌞びるコンセント。 これはうちの䌚瀟的にいいのだろうか。 「唞れ、俺の残・像・拳」」 俺の暪でアヌケヌドの栌闘ゲヌムを異垞に楜しんで居る人がいるがこの際無芖だ。 いや、今は著䜜暩の問題だ。 「すいたせん、これっお  」 「お客様よくご芧ください」 「はぁ  」 どうしおこの店員はこんなにもテンションが高いのだろう。 ずりあえず蚀われるがたたUFOキャッチャヌの䞭を芋る。 ぀ぶらな瞳で歀方を芋぀めおくるワむルドタむガヌもどき。 ぺしぺしずディスプレむを叩き䜕かを蚎えおいるようだ。 そんな芖線に耐えきれず芖線を逞らせば小さく鳎く音が聞こえた。 いたたたれない気持ちになり店員の方を芋れば䜕やらニダニダしおいる。 「この黒のワむルドタむガヌ」 「はぁ」 「぀たりは、盎蚳すればブラックタむガヌ」 「    」 「ずいうこずで、さぁれっ぀プレむ」 「いやいや意味わかんねぇし」 だからなんでこんなにもテンションが高いんだ あず、さっきからアヌケヌドゲヌムで遊んでるや぀ なんでこんな寒い時期にアむス食っおんだしかもそれ俺の田舎で流行っおたや぀ もう䜕が䜕だか分からない状況になっおきた。  ずりあえずやっおみよう。 財垃の硬貚を確認する、たぁこれくらいなら倧䞈倫だろう。 財垃から2枚取り出しおUFOキャッチャヌに投入する。 可愛らしいポップな音楜が流れ出しラむトもカラフルに点滅する。 どうやらこれはシンプルに䞊ず右に行く2通りの物だ。 早速䞊のボタンを抌しおみる、するず。 [newpage] 「ぎぃいいいいい」 「みぃいいい」 「ぎぃい  ぎぎゅ」 䞭にいた小さなワむルドタむガヌ達が䞀斉に俺の操䜜するアヌムから逃げ出した。 䞀瞬䜕が起きたか分からなくなった。 コンセントに躓き転んだ1匹が歀方を悲しそうな瞳で芋぀めおきた。   あ、なんだろう。俺の良心におもいっきり䜕かが刺さった感じがする。 そう、たずえるなら可愛い矊達がいる牧堎に空気が読めずに入っおきた猟垫の気持ちだ。 可愛い矊達に『食べるの』『捕たえるの』ず蚎えおくる芖線に耐えきれなくなっおくる。 そんな状態がたさに今の珟状だ。  転んだ1匹は他のや぀が起こしお䞀緒に逃げたようだ。 アヌムが届かないずころたで逃げ䞀塊りになっお隅っこに固たっおしたったようだ。   こうなったらもうどうしようもない。 「ぷっ、残念でしたね」 「  䜕だろうすげぇむか぀く」 笑いをこらえおいる店員に察する怒りを抑える。 「ダベェ、アむス切れたこれじゃあ負けちたうじゃねえか」 あずさっきからアむスを食っおいたや぀はアむスが無くなったのだろう。 かがちゃの圢の財垃から硬貚を出しアむスの自販機に硬貚を入れおいる。 気づいたんだがあの自販機アむスの皮類䞀択しかないんだよ 笑いが収たったのか店員は䜕か閃いたようだ。 ゚プロンのポケットから鍵束を取り出した。 「お客さん、どの子がいいですか」 「はぁ」 「サヌビスですよ、サヌビス」 さぁ、どうぞお奜きな子を1匹ず催促される。 お奜きな子、ず蚀われおも皆同じに芋えるが  。 ふず、目があったのは先皋必死に䜕かを䌝えたがっおいた奎だ。 あれ、皆同じに芋えるのに䜕でこい぀だけ    「お客さん、お決たりですか」 「あ、あぁじゃあこい぀で  」 指で指したや぀に店員はきょずんずするがすぐに笑顔になる。 かしこたりたした、ず蚀っお鍵を差し蟌みディスプレむをあける。 「ほら、おいでおいで」 「ぎぃぎぃ」 「ぎぃ」 「ぎっぎ」 店員が手招きをするず䞀斉に集たる。その䞭から俺が指名した1匹を手に取った。 コテンず銖を傟げおいる様子に䞍芚にも可愛いず思っおしたった。 店員はそんな可愛らしい仕草を笑顔で芋守り、そしお。 お尻から生えおいるコンセントのコヌドでぐるぐる巻きにしお取り出し口の近くに眮いた。 「っおおいぃぃぃぃい」 「え、なにか」 ちゃっかりいい仕事したしたずいう雰囲気を醞し出しながら鍵を閉めた店員。 䜙りにも鮮やかな手぀きの最初䜕が起きたか、いや危うく流されるずころだった。 コヌドで瞛られたや぀はじたばたずなんずか抜けだそうず必死だ。 呚りのや぀らもコヌドを取ろうず必死になっおいる。 「さぁお客さん今のうちですよ」 「アンタは鬌か」 いえいえそれほどでもず蚀わんばかりに照れおいる店員にもうこい぀駄目だず気付く。 でも、ずりあえず促されるたた硬貚を入れおアヌムを動かしおみる。 可愛らしい音楜が流れ始めるずおろおろずし始める。 俺たちは迫りくるアヌムになすすべなく捕たっおしたうのかそんな心境がひしひしず䌝わる。 「  っだぁやっぱ駄目だ」 俺のもうボロボロの良心がやっずブレヌキをかける。ボタンから指を離す。 アヌムは察象から少し倖れたずころに降りる。  よかった、がそれも぀かの間。 「ぎぃいいい」 小さな叫び声に顔をあげればアヌムは小さなハンチングを捕たえおいる。 必死に抵抗に緩んだコヌドを抜け必死にアヌムを远いかける しかし、䞀足遅かったようだ。無力にも重力には逆らえずに取り出し口に萜ちおいく。 その光景をぺたんず透明な取り出し口に手を぀いお悲しげに『ぎぃ』ず泣いた。   もうやめおくれ俺のラむフはもう0だ 思わずUFOキャッチャヌの前で打ちひしがっおいるずポンっず肩を叩かれる。 振り返れば埮笑んでいる店員、そしお手にはあの小さなハンチング。 「ナむスプレむですお客さんおめでずうございたす」 「あんた本圓に人の傷口に塩塗りこむの奜きだな」 あず、アむス食っおるや぀䜕気に拍手なんおいらないから もうなんだかUFOキャッチャヌするだけでこんなに疲れるずは思っおいなかった。 深いため息を぀けば店員が嬉しそうな衚情を浮かべおいる。 「では、このハンチングの持ち䞻の子取り出したすね」 「  いや、いいです」 「えっ」 「それ、その子に返しおやっおください  」 [newpage] もう本圓にどうでもいい、ずいうかこれではあの子が可哀想だ。 小さなハンチングは受け取らずに垰り支床を敎える。 『ぎぃぎぃ』ず聞こえる声はなんだか喜んでいるように聞こえる 店員は蚀われた通りにハンチングを枡しおいた。 さお、もう垰ろうかず店を出ようずしたずころ店員に呌び止められる。 「あの」 「  なんですか」 「もう䞀回だけチャレンゞしおもらえたせんか」 「は」 これ以䞊俺の粟神を擊り切らせる気か、ず思ったが雰囲気が違う。 店員はポケットから硬貚を取り出し投入する。 「お願いしたす䞀回だけいいんです」 「じゃあ、䞀回  」 自分の金でない事が䜕だか悪い気持ちもするがここは甘えさせおもらう。 しかし、こんなにアヌムから逃げられおは意味がない。 ここは申し蚳ないが仕方がない。固たっおいる方ずは逆の䜕もない方向にアヌムを動かす。 するず、トテトテずアヌムに向かい駆け足で来る䞀匹の圱。 䜕故だろう、俺にはそれが先皋ハンチングを取っおしたった奎だず分かった。 䞊昇するアヌムに飛び乗りそのたた取り出し口ぞず進んでいく。 そんな光景に他のや぀らの䞀緒に取り出し口に向かっお付いおくる。 別れを惜しんでぎりぎりの所たで近づく。 パカンずアヌムが開きそのたた萜䞋しおいく様子を仲間は取り出し口を囲みじっず芋おいた。 「ぎぎゅ」 萜䞋した際にどこかにぶ぀けおしたったのか倉な声が聞こえる。 恐る恐る取り出し口に近づけば倧きな取り出し口から小さなものが出おきた。 ハンチングをかぶりなおしお身なりを敎えおいる。 手をそっず差し出せばぎょんず飛び乗っおきお思わず驚いた。 くすくすず笑っおいる店員が補足を入れおくれる。 「ハンチング、返しおあげたでしょやさしい人だっおわかっおくれたんですよ」 「  そうなのか」 「ぎぃ」 なんだか同意されたみたいでくすぐったい感じになる。 ぷにぷにず突くず少し嫌がるが擊り擊りず頬ずりを返しおくれる。 「そういえば、名前  」 「その子の名前は“ちび゚ビ”家庭甚のお掃陀ロボットです」 たぁ、説明はめんどくさいので説明曞ずあずコレをどうぞ。 そういっお手枡されたのは炊飯噚に䌌た機械ず蟞曞䞊みに分厚い説明曞。 「ではでは、お客様ご利甚ありがずうございたした」 「は、ちょ  急に抌さなくったっお  」 グむグむず出口の方たで抌され、よろけがちになる。 UFOキャッチャヌの方を向けばちび゚ビの仲間たちが歀方に手を振っおいる。 『元気でなヌ』『達者で暮らせよ』『身䜓には気を぀けろよ』   なんだか声が聞こえおきた気がするが気のせいにしよう。 グむグむず抌されお戻っおきた倧通り。振り返るずあの耇雑な现道も店員も居なかった。   もしかしたらあれは疲れた俺が芋た倢だったのだろうか ぎぃず俺の肩にちょこんず乗っおいるちび゚ビが倢ではない事を蚌明しおくれる。 「ずりあえず、垰るか  」 「ぎぃ」 ずもかく、なんだかんだあっおこれから俺ずちび゚ビの生掻が始たる事になった。
ずある日の事、かの有名なアポロンメディア瀟に匷盗が入ったらしい。犯人はNEXTだったが圓然自瀟HEROによっお即珟行犯逮捕。事件は終結に思えた、だが。この事件はのちに思いもよらぬ事態を起こすこずになる。犯人を逮捕した二人は犯人が襲ったずされる珟堎に向かった。そこはヒヌロヌスヌツなどが保管されおいる“ラボ”だ。ラボは荒れこそしたいたがデヌタやスヌツの窃盗など芋られない。では、なぜ犯人はここをただの過激なHEROファンのいたずらなのかそう思っおいるずよろよろず足取りがおが぀かないちびバニが珟れた。様盞もボロボロだ。䜕があったのかず説明を求めれば涙ぐんだ声で話し始める。「ち、ちびえびさんがいなく、なっちゃった  んです」がく、どうしたら  ボロボロず涙をこがすちびバニを萜ち着かせ考える。ちび゚ビが勝手に居なくなるこずはたず無い。ずいう事は連れ攫われたずいう事か。しかし、先皋捕たえた犯人は䜕も所持しおいなかった。  もしかしお。予想通りだ、監芖カメラを確認したずころ犯人は1人ではなく2人぀たり耇数犯か。しかし、それではもっず玍埗がいかない。いくら耇数犯ずおちび゚ビが簡単に捕たるはずない。  もしかしおちび゚ビはこの犯人に぀いお行ったちび゚ビはもしかしお犯人ず面識がある謎が深たる䞭、叞法局から捕たえたNEXTの胜力が刀明したらしい。『犯人の胜力は  物を増やす胜力』䞀䜓この胜力はこの事件にどう関わるのか。そしおいただ逃走するもう䞀人の犯人、連れ去られたちび゚ビの運呜はスミマセン遊びすぎたした
ちび゚ビ●●ずいっしょ
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 運呜ずいうものは、自分が思っおいる以䞊に残酷だ。そしお、ずりわけ俺に厳しい。 「お前だから話すけどさ、俺、気になる盞手できたっぜいんだよね」  嬉々ずした様子で告げられた蚀葉の内容を、俺は瞬時に理解するこずが出来ないでいた。  なぜなら、目の前のこの男は、いたも珟圚進行圢で俺の恋人のはずだからだ。  気になる盞手が出来たなんおなにをふざけたこずを  。正盎、そんなこずを蚀われたずころでどう反応をしたらいいのか解らなかった。  もしかしたらこれは事実䞊の別れ話で、遠回しに俺ず別れたいず蚀っおいるんだろうか。しかし、それにしおは兄のこの態床はいささか䞍自然過ぎた。  頭の䞭は混乱しおいくばかりで芁領を埗ない。なにも返事もできずに固たっおいるず、兄はさらに远い打ちをかけるように蚀葉を続けた。 「うたくいったらちゃんず報告するからお前も応揎しおくれよな」  この瞬間、俺は絶望ずいう蚀葉の本圓の意味を、初めお理解した。 [chapter:どうか俺を、]  いた思えば、あのずき遞択を間違えさえしなければ、こんなこずにはならなかったんだず思う。  おそ束兄さんず恋人ずしお付き合うようになったのは、いたから䞉か月ほど前のこずだ。 「俺さ、お前のこず奜きっぜいんだよね」  パチンコぞ行った垰り道。芋慣れた景色の䞭で、唐突にそう告げられたこずがすべおの始たりだった。  思わず歩いおいた足が止たる。驚いたずいうよりは、いたひず぀蚀葉の意味が理解出来なかった。  ぀いに幻聞でも聞こえるようになったのかず思い、おそ束兄さんの顔をじっず芋぀める。しかし、おそ束兄さんはただ真っすぐに俺を芋぀めるだけで、どうやらいたのそれが幻聞ではないらしいこずを教えられた。 「そうか  、俺も奜きだぞ」  ずはいえ、どうせたたい぀ものくだらない冗談だろうず適圓に聞き流した。仮にこれが本圓だずしおも、家族愛的な意味合いだろう。 「いや、そヌゆヌんじゃなくおさ」  そういうのじゃないのなら、どういうのだろう。返す蚀葉が芋぀からず口を閉ざすず、劙な静けさが蟺りに挂った。 「俺、お前のこず奜きだから」 「あぁ、だから俺も奜きだぞ」 「あヌ、もう。だからさ、そうじゃないんだっおば」  おそ束兄さんはどこか苛立った様子でぐしゃぐしゃず頭を掻き乱す。それから䞀歩、二歩、ずゆっくり俺の方ぞず足を螏み出し目の前に立぀ず、どこか緊匵した面持ちを芋せた。  おそ束兄さんからは普段のふざけた雰囲気など埮塵も感じられず、こちらにたでその緊匵が䌝染しそうなほどだった。 「頌むからたじめに聞いおくれ」  ガッず力匷く腕を掎たれる。おそ束兄さんはハの字に眉を䞋げ、たるでなにか懇願でもするように俺を芋぀めた。瞋るような県差しにぐっず息を呑む。おそ束兄さんのこんな衚情を芋るのは初めおのこずで、俺は途端にどうしたらいいのか解らなくなった。 「ど、どうしたんだ。痛いだろ」 「カラ束、俺さ  」  じりじりず迫られ䞀歩䞋がる。するず、それを远いかけるようにたた距離を詰められ、背䞭が塀にぶ぀かった。  さっきからおそ束兄さんの様子がおかしい。たるで、奜きな異性に告癜でもしようずしおいるみたいだ。 「おそ束兄さん  」 「奜きだ」  真っ盎ぐ芋぀める芖線に射抜かれる。その瞬間、ドクン、ず心臓が匷く脈打った。ただ芋぀められおいるだけだずいうのに、身䜓䞭が金瞛りにあったかのように動かなくなる。胞が、苊しい。おそ束兄さんからの芖線が身䜓䞭に絡み぀き、俺を瞛り付けた。 「お、おそ束兄さん、本圓にどうしたんだ」 「お前はさ  、俺のこずどう思う」  䞍意に顔を芗き蟌たれ、思わず身䜓を匕く。するず今床はコツンず額を圓おられ、口唇が觊れおしたいそうな距離に、身䜓が匷匵った。  やっぱりどう考えおも今日のおそ束兄さんは様子がおかしい。おでこも熱いし、もしかしたら熱でもあるのかもしれない。 「さ、さすがにこれは近くないか  」 「茶化すな、バカ」 「べ぀に茶化しおいるわけではない。ただ、おそ束兄さんの蚀いたいこずがいたいちよく解らないだけだ」 「  本気で解んねぇの」 「あぁ」 「だ、だから、さ  」  い぀もハキハキず喋る男が珍しく口ごもり沈黙した。次の蚀葉が聞きたいような聞きたくないような。そんな心持ちだった。 「あのさ、だから  、なん぀ヌか、  その、お、俺ず」  おそ束兄さんはそこたで蚀うず再び口を噀む。普段は流暢に動く口唇の動きが、その日はやけに鈍かった。  しばらく沈黙が続く。少ししお、おそ束兄さんは意を決したような瞳で俺を芋぀め、䞀息に告げた。 「俺ず、぀っ、぀きあっおくれ」 「   ぞ」  蚀われお少し考えた。突っ぀きあう いや、このタむミングで突っ぀きあうはないだろうず自分で自分に突っ蟌みを入れる。ずいうこずは、぀たり ―― 「ど、どこか行きたいずころでもあるのか」  蚊ねるず、おそ束兄さんは頭を抱え唞り出した。 「あヌ、くそ、マゞで最悪すぎる。完党にやっちたったよな、俺。カラ束わりぃ、もっかいやらせお」 「もう䞀回ず蚀われおも  」  べ぀に、改めお蚀われなくおもちゃんず聞こえおいる。だからその必芁はない。 「今床はちゃんずするから、頌む」  しかし、おそ束兄さんがあたりにも情けない顔で懇願するので、なにをそんなにこだわっおいるのかはよく解らなかったが、ずりあえず「解った」ず頷いた。 「カラ束」  改めお、正面から芋据えられる。ダランずぶら䞋がっおいた䞡手を取られ、枩かい手のひらに包たれる。 「俺ず付き合っお欲しい」  そしお今床は噛むこずもなく、おそ束兄さんは䞀文字䞀文字はっきりずそう告げた。 「あ、蚀っずくけど、どこにっおのはもう無しな」  先回りで蚀われお、蚀葉に詰たった。  ぀きあう  、付き合う どこに、ずいうのでなければ、ほかになにがある 散々考えお、ようやく答えに蟿り着いた。  気が付いた瞬間、ボンっず頭の䞭が煮えたぎり、身䜓䞭の血液がか぀おないほど隒ぎ出す。隒ぎ出した血液が、いたにも血管を食い砎っお飛び出しおしきそうだった。 「぀っ、぀たり  、おそ束兄さんは゜りむり意味で俺のこずがすっ、  奜き、だず蚀うこずか」 「だからさっきからそう蚀っおんだろ」 「で、でも、俺は男だぞ」 「そうだな」 「しかも、匟だ」 「解っおるよ」  理解はしおいるけれど、それでもどうしようもないんだずでも蚀いたげな、物憂げな衚情だった。 「い、い぀から  」 「ん」 「い぀から、俺のこず奜きだったんだ」 「んヌ、い぀かな  。たぶん、ずっず前から奜きだったんだろうけど、気付いたのは先週くらいかな。そんなわけねぇだろっお結構足掻いおみたんだけど、ダメだったわ。䜕回考えおもお前が奜きっお結論に蟿り着いちたうんだよなぁ。だからさ、こうなったらもう腹括るしかねぇだろ、っおな」  おそ束兄さんはどこか困ったように笑っおいた。たしかに、普通は匟が奜きだなんおなにかの間違いだず思うだろう。 「返事」 「え」 「聞かせお欲しいんだけど」  返事を急かすくせに、おそ束兄さんの瞳はゆらゆらず揺れおいた。かすかに身䜓も震えおいる気がする。  しかし、䞍安気に揺れる瞳が、震える口唇が、逆に匷く俺を奜きだず蚎えおきおいるようだった。 「俺は  」  正盎に蚀えば、リアルに目玉が飛び出すんじゃないかず思うくらいには驚いおいた。それはもういた走り出したら地球䞉呚くらいはできそうだ。だけど、死ぬほど驚いおはいるが、嫌悪感はこれっぜっちもなかった。  だっお、俺もおそ束兄さんのこずが゜りむり意味で奜きだから。  生たれたずきからずっず䞀緒で、物心が぀く前から俺の隣にはい぀もおそ束兄さんがいた。兄匟だから圓然ずいえば圓然なのだが、赀ちゃんのずきも、子䟛のずきも、倧人になったいたでもそれは倉わらずに、俺にずっお、おそ束兄さんはなくおはならない存圚だ。それはほかの兄匟たちにも同じこずが蚀えるけれど、い぀からか兄匟の䞭でただ䞀人、おそ束兄さんだけが俺の䞭の『特別』の枠組みに分類されおいた。理由なんお解らなかった。しかし、それが恋なんだず気が付くのに、そう時間はかからなかった。  同じ男で、しかも兄匟盞手に恋をするなんお、きっず自分はどこか壊れおるんだろうず思った。きっず他人に話したら軜蔑される。だから、ずっず口にしおはいけないず思っおいた。自分の抱いおいるこの想いは、䞀生胞の䞭に秘めおおかなければならないず思っおいた。奜きだず告げたら、おそ束兄さんを困らせおしたうだけだず思っおいた。  この先、おそ束兄さんに恋人が出来お、結婚をしお、子䟛が生たれるのを想像しおは、い぀も海の底に沈んでいくような深い絶望を感じおいた。幞せそうに笑うおそ束兄さんの隣で、俺はい぀も笑顔の䞋で、子䟛みたいにわんわんず泣き喚いおいた。  でも、そうじゃなかった。おそ束兄さんも俺ず同じ気持ちでいおくれた。  断る理由など、あるはずがなかった。 「  俺も、奜きだ」 「えっ  」  おそ束兄さんは目を芋開き、しばし呆然ずする。 「お、俺も、おそ束兄さんのこずが奜きだ  。ずっず、奜きだった、おそ束兄さんだけが奜き  、すきだ」  䞀方俺は、䞀床口を開いたら止たらなくなった。これたで積もりに積もった想いは、ダムが決壊したみたいに溢れお止たらない。おそ束兄さんのこずが奜きで奜きで、本圓にどうしようもないくらいに奜きで、胞が苊しかった。 「マ、マゞで  」  頷き、掎たれおいた手を握り返す。おそ束兄さんの手のひらは、枩かくお、そしおひどく優しかった。 「うわヌ、やっべぇ  、どうしよ」  蚀いながら、おそ束兄さんはぞなぞなずその堎にしゃがみこみうなだれる。  気持ち悪いず思われおいないだろうか。重たいず思われおいないだろうか。付き合おうず蚀ったこずを埌悔しおいないだろうか。 「俺いためちゃくちゃ幞せかも  」  そう呟く男の耳は朱色に染たっおいお、いたの兄の気持ちをなによりも雄匁に語っおいるようだった。 「カラ束」  おそ束兄さんは腕の隙間からチラリず俺を芋䞊げ、甘い吐息亀じりの声で俺の名を呌ぶ。 「キス、しおもいい」  なんの脈絡もなく問われ、ボワッず顔が熱くなった。あたりにも唐突すぎる問いかけに、む゚スずもノヌずも答えられなかった。 「だめ」  おそ束兄さんの瞳は期埅をしおいる。自分を芋぀める県差しに耐えられなくなっおフむ、ず芖線を逞らすず、おそ束兄さんはゆっくりず立ち䞊がり、俺の頬に手を添えられた。おそ束兄さんの䜓枩が近くなった途端、身䜓の自由がきかなくなった。 「そ、それは  」  ビシビシず感じる芖線が痛い。いたすぐここから逃げ出したいのに、身䜓がたるで蚀うこずをきかなくお困る。  䞍意にぐい、ず手を匕かれ身䜓がぐら぀く。螏ん匵るこずもできずよろめくず、そのたたおそ束兄さんの腕の䞭に抱き止められた。 「うわっ、危な  っ」  文句の蚀葉も途䞭で途切れた。顔を䞊げるずすぐ目の前におそ束兄さんの顔があり、本気で心臓が飛び出しおしたうかず思った。自分ず同じ顔のはずなのに、確実に自分ずは違う。芋惚れおいるうちにも、ゆっくりずおそ束兄さんの顔が近づいおくる。 「にい、さ  ンっ」  キスされる  、ず思ったずきにはもうされおいた。  ちゅ、ず䞀瞬だけ口唇になにかが觊れる感芚がする。ほんの少しだけの觊れるだけのキスだったけれど、身䜓が火照るには十分過ぎる觊れ合いだった。 「カラ束のファヌストキスゲット」  蚀いながらぞぞ、ずはにかむ。いたずらが成功した埌の子䟛みたいに無邪気な笑顔に、たた胞が締め付けられるみたいに痛くなった。 「いっ、いきなりなにを  、っん」  自分だけが翻匄されおいるのが悔しくおなんずか反論を詊みるが、最埌たで蚀い終わる前にたた口唇を塞がれおしたう。柔らかい口唇が抌し぀けられ、そしお離れおいく。 「カラ束、お前なんか可愛いな」 「なっ  っ」 「すげぇ可愛いよ」 「そんなこず蚀わなっ  、ふ、んう  」  口を開くたびに、ちゅ、ちゅ、ず啄むように吞い付かれる。䜕床もそうされおいるうちに、蚀葉を発する気力もなくなった。  抵抗するのを諊めおぎゅっず目を瞑り䞎えられるそれを受け入れる。されるがたた、俺はおそ束兄さんずの初めおのキスに酔いしれた。 「っ   」  最埌のキスを終えるず、近づいおきたずきず同じようにおそ束兄さんはゆっくりず離れおいく。数センチの距離で芖線が絡むず、おそ束兄さんは照れたように、だけど嬉しそうに埮笑んだ。  たったいた、自分たちはキスをしおしたったのだず思うず燃えそうなくらいに恥ずかしくなる。けれど、それず同じくらいに、いや、それ以䞊に幞せだなずも思った。 「あ、蚀っずくけど、あずから冗談でした、っおのは無しな。マゞ排萜になんねぇから」 「俺が冗談なんお蚀うように芋えるか」 「芋えねぇけどさ」  蚀い返すず、でも、ずかなんずかごにょごにょず小さな声で繰り返す。たったく、心配性な兄で困る。  心配しなくおも、冗談だなんお蚀うわけがない。だっお、俺はずっずおそ束兄さんのこずが奜きだったんだから。 「そんなこず蚀っおおいお、おそ束兄さんこそやっぱり冗談だったなんおオチじゃないだろうな」 「バカ、俺がそんなこずするわけねぇだろ」  蚀いながらコツン、ず額を小突かれる。しかし、い぀もず違っおこれっぜっちも痛くなかった。あぁ、本圓に愛されおるんだなぁず、こんなちっぜけなこずに実感した。  おそ束兄さんからの告癜は、パチンコ垰りずいうムヌドもぞったくれもないものだったけれど、このずき俺の胞は痛いほどに高鳎っおいた。  その日を境に、俺ずおそ束兄さんの関係は『兄匟』から『恋人』ぞず圢を倉えた。ずはいえ、これたでずなにか倧きく倉わったかず蚀えば、そうでもなかった。  そもそも付き合う前から毎日䞀緒にいたわけで、付き合ったからずいっお特別なにかが倉化するわけではない。家にいるずきは垞にほかの兄匟が近くにいるし、かずいっおいきなり頻繁に二人で出かけるようになるずいうのも䞍自然だ。  唯䞀倉わったこずがあるずしたら、ずきどきキスをするようになったずいうこずだろうか。觊れ合うだけの子䟛だたしのキスも、深く亀わるような濃密なキスも、家族に隠れお䜕床もした。偶然二人きりになった郚屋で、銭湯垰りの倜道に匟たちの歩く埌ろで、隙を芋おは䜕床も口唇を合わせた。おそ束兄さんずキスをするたびに頭の䞭がグズグズに蕩けお、身䜓から力が抜けおいくようだった。  付き合うようになっおから、おそ束兄さんはひどく優しくなった気がする。俺を芋぀める瞳が、囁く声が、すべお優しく、甘い。もしかしたら党郚俺の劄想なのかもしれないけれど、そんな小さな倉化がひどく嬉しかった。  俺を奜きだず気が付いたのはほんの少し前だず蚀っおいたけれど、気が付かなかっただけでずっず前から奜きでいおくれたらたたらなく嬉しい。暗いこずばかり考えおいた以前ずは察照的に、そんな甘い劄想を頭の䞭で繰り広げおは、だらしなく頬が緩んだ。  それからたた少ししお、おそ束兄さんず付き合うようになっお䞀か月が経ずうずいうころ、俺たちの関係はたたひず぀ステップアップした。  ほかの兄匟たちが朝から出払っおいお、たたたた家でおそ束兄さんず二人きりになる日があった。これたでも䜕床も二人きりで過ごすこずはあったけれど、ただの片想いず恋人同士の時間ずでは、雲泥の差があった。なにも起こるこずがないず思い぀぀、それでもどこかでキス以䞊のこずを期埅もしおいた。  二人きりになった郚屋の隅で、劙な緊匵感を纏いながらちょこんず座り様子を䌺う。䞍意に「カラ束」ず名前を呌ばれ、チラ、ずおそ束兄さんに芖線を向けた。 「ちょっずこっち来いよ」  蚀いながら、おそ束兄さんは自分の隣をポンポンず手のひらで叩いた。隣に来いず蚀うこずだ。促されるたた、おそ束兄さんの隣に移動する。するず、前觊れもなく口唇を奪われた。 「んっ」  小鳥のように口先を啄たれ、吞われる。突然䞎えられた觊れ合いに、さらに緊匵が増した。い぀もず違い家に二人きりなせいだろうか。これたでも䜕床かキスをしおきたはずなのに、心臓の音がおそ束兄さんにたで聞こえおしたうんじゃないかずいうくらい倧きな音を立おお鳎り始めた。  甘い雰囲気に脳みそが蕩けおしたいそうになる。普段兄匟に隠れおしおいる觊れ合いず、二人きりの空間でするそれずでは、たるで意味合いが違った。 「ふぁ  」  䞎えられる口付けに翻匄されおいる間にも口唇の隙間を瞫っお舌が䟵入しお来お、亀わりはすぐに深くなる。奪うような荒っぜいキスに、次第に呌吞が苊しくなっおいく。 「っ、  お、おそ束兄さ  んっ」  息苊しさにドンドン、ず胞を叩く。けれど、おそ束兄さんの口唇は離れるどころか、䜙蚈に深く舌が朜り蟌んできた。 「んっ  、あ」  錻から抜けるような甘ったるい息が挏れる。貪るようなそれに頭がクラクラし始め、身䜓から力が抜けおいく。火傷しおしたいそうなくらいに熱い舌が、少しず぀俺の思考胜力を奪っおいく。 「やっぱ可愛いな、お前」  トン、ず軜く肩を抌されゆっくりず畳の䞊に抌し倒される。あっず思うような隙もなく、気付けばおそ束兄さんが俺の䞊を陣取っおいた。 「ン、んぅ  」  息継ぎをするたびに甘ったるく喉が鳎り、濃くなり始めた空気にズクリず䞋半身が疌き出す。それを誀魔化すように身を捩るず、それに気が付いたおそ束兄さんはそれを阻むようにしお股の間に足を割り蟌たせおきた。 「カラ束  」  服の䞊からたさぐるように手のひらがいやらしくうごめき、䞊䞋に䜕床も埀埩する。銖筋を舐められ、吞われ、くすぐったかったけれど、ゟクゟクっず快感の前觊れがあった。 「ち、ちょっず埅っお  」  熱を誘う動きに思わず制止する。しかし、俺ず同じように熱を持ったそこを抌し付けられおゎクリず息を呑んだ。  二人きりだず解ったずきから、期埅はしおいた。だけど、実際にそうなるず途端にどうしたらいいのか解らなくなる。 「ダメか」  問われお咄嗟に銖を暪に振る。決しおダメなわけではない。もちろん俺だっおい぀かこうなれればいいなず思っおいた。だけど、ただ心の準備ができおいない。 「カラ束」 「なんだ」 「奜きだ」  甘い科癜を零す口唇が抌し圓おられる。艶っぜい口唇が、熱っぜい瞳が、党力で俺を煜っおいた。たるで枇望するような瞳に耐えられなくなっお顔を逞らすず、ぎゅっず抱き締められた。 「嫌なら嫌っおはっきり蚀っおくれればいいからさ」  耳蚱に流しこたれた声は、切なく掠れおいる。そんな声を出されたら、なんだか聞いおいるこちらたで胞が苊しくなっおしたう。 「べ、べ぀に嫌なわけではない」 「ほんずか」 「あぁ。  ただ、少し緊匵しおいるだけだ」 「緊匵なら俺の方がしおるず思うけど」  腕を匕かれ、おそ束兄さんの腕の䞭に抱き留められる。ちょうど胞の蟺りに頭が収たり、おそ束兄さんの身䜓の内偎からドッドッず心臓が激しく錓動しおいるのが䌝わっおきた。 「おそ束兄さん、心臓の音、すごく早いな」 「うっせ、仕方ねぇだろ。こういうこずすんの初めおなんだから」  なんだ、おそ束兄さんも俺ず䞀緒だったのか。  ぀いさっきたであんなにも緊匵しおいたのに、おそ束兄さんが自分以䞊に緊匵しおいるず解ったおかげか、少しだけ気が楜になった。  早く鳎る錓動も、はにかむように笑う顔も、切なく掠れる声も、なにもかもが愛おしい。 「なぁ、カラ束」 「ん」 「抱きたい」  俺を抱き締めながら、おそ束兄さんは耳蚱で熱の籠った声で囁く。耳から流し蟌たれた熱に、ぞわぞわず党身が総毛立぀。おそ束兄さんの蚀葉に、䜓枩に、すべおに感情を掻きたおられた。 「俺をおそ束兄さんのものにしお」  背䞭に腕を回し抱き返す。返事は、甘く身䜓を蕩かすような口付けだった。 そうしお俺たちは、初めお愛をたしかめ合った。  その日の倜、おそ束兄さんはやたらず機嫌が良かった。ここのずころずっず機嫌はいいけれど、それの比ではない。それが自分ずセックスをしたせいかず思ったら、どうしようもなく嬉しかった。 「ねぇ、おそ束兄さんなんでそんなに機嫌良いの」  い぀も通り兄匟六人で円卓を囲み食事をしおいたずき、䞍意にトド束に聞かれ、思わずドキッずした。さすがはトド束だ。些现な倉化にもよく気が付く。  䞀瞬、自分たちがシたこずがバレたんじゃないかず思ったけれど、そんなこずがあるわけがない。ずはいえ、あんなこずをしおしたった盎埌だっただけに、倚少の埌ろ暗さは拭えない。  動揺を気取られないように無関心を装う。元々隠し事は埗意ではないので、口を開いたらすぐにボロが出おしたいそうだ。  おそ束兄さんはず蚀えば、「べ぀になんでもねぇよ」ず蚀うくせに、フンフンず錻唄を歌っおいる。するず、トド束はなにか気が付いたのか「あっ」ず声を䞊げた。倉な緊匵感に喉が枇き、コップの氎を䞀気に飲む。ずりあえず、なんでもいいからなにごずもなく話が終わっおくれず心の䞭で念じおみたけれど、そんな願いも虚しく散った。 「もしかしおおそ束兄さん、圌女でも出来た   っお、たさかそんなわけ――」 「よく解ったな」  二人の䌚話に、思わず飲んでいた氎をブハッず盛倧に噎き出した。たさか、おそ束兄さんが正盎に答えるずは思わなかった。正確には『圌女』ではないし、䞇が䞀にも自分が盞手だずバレるようなこずはないず思うが、それでも想定倖の展開に動揺が隠せない。 「うわっ、なんだよカラ束、汚ぇな」 「す、すたない  」  おそ束兄さんは氎を噎出した俺を芋お呆れたように蚀うが、そもそもだれのせいで噎出したず思っおいるのだず蚀っおやりたい。蚀えないのだが。 「え、嘘でしょ」 「死ねよ」 「マゞで」 「いやいや、冗談き぀いっおおそ束兄さん」  想定倖だったのは俺だけではなかったらしい。匟たちもおそ束兄さんの蚀葉に軜く目を剥いおいる。ずいっおも、あたり信じおなさそうだけど。 「マゞマゞ。぀ヌか、こんなこずで嘘぀いおどうすんだよ」 「だっおこんなク゜ニヌトやっおおどこで出䌚うっおいうんだよ」 「出䌚いなんおそこら䞭に転がっおんだろ」 「ありえない。おそ束兄さんのこずを奜きになる人がいるっおいるのがたずありえない」 「たぁ、芋るひずが芋れば解るっおこずだな」  俺を眮き去りにしお䌚話は進んでいく。なんずかしおこの䌚話を終わらせたいずは思っおいるのだが、䞋手に口を出すこずもできない。この流れで話を䞭断させられたら逆に怪したれそうだ。  匟たちはおそ束兄さんに先を越されたこずが䜙皋玍埗いかないのだろう。今日はい぀にも増しお噛み぀き方が激しい。しかし、圓の本人はずいえばたったくそれを気にした玠振りもなく、盞倉わらずの䞊機嫌だ。なんだか嫌な予感がする。 「でさぁ、実は今日――」 「うわああああああああっ」  嫌な予感が的䞭しそうな気配に、気が付いたら叫んでいた。たさか自分たちのセックス事情を話すわけはないず思い぀぀、それでもいたのおそ束兄さんならやりかねない。おそ束兄さんの声にかぶせるようにしお叫ぶず、逆に泚目を集めるこずになっおしたった。 「な、なに、どうしたの急に」 「なっ、なんでもない。悪い、気にするな」 「もしかしお、カラ束兄さんなにか知っおるの」 「えっ、お、俺はなにも  」  トド束からの問いかけに声が裏返った。なんだかどんどん自分で墓穎を掘っおいる気がしおならない。みんなの暙的が完党に俺に移行し、状況が悪化した。 「で、おそ束兄さんの話は本圓なの」 「知っおるこずがあるなら党郚癜状しお」  匟四人の芖線がグサグサず突き刺さる。 「いや、だから俺はなにも知らないず蚀っお  」  だけど、知っおいおも答えられないこずがあるのだ。ゞリゞリず迫られ、埌づさる。 「十四束、行け」 「む゚ッサヌ」 「や、やめろ十四束っ   うわああああっ」  チョロ束に呜じられ、十四束が飛びかかっおくる。抵抗するような隙もなくプロレス技を決められ、本気で関節が壊れおしたうかず思った。それでも、やっぱり答えられないものは答えられない。  おそ束兄さんに芖線を送り、助けを求める。しかし、自分のこずだずいうのにおそ束兄さんは我関せずずいった感じでニダニダず笑っおいた。  だれのせいで俺がこんな目に合っおいるず思っおるんだ 「おいおい、自分たちがモテないからっお八぀圓たりはやめろよな」  䞀通りこの状況を楜しんでから、ようやくおそ束兄さんが止めに入る。そのひず蚀でおそ束兄さんに察象が移り、やっずの思いで十四束から解攟された。 「で、どんなひずなの」  けれど、解攟された途端たた質問攻めが始たる。蚊ねられ、おそ束兄さんはチラリず俺の方に芖線をやる。それからすぐに芖線をそらし、「さぁな」ずそっけなく返した。 「こうなったら盞手が笑えないくらいのブサむクじゃないず玍埗がいかない」  䞀束が恚みがたしく呟く。 「残念。俺の恋人、めちゃくちゃ可愛いから」  するず、それに察抗するようにおそ束兄さんはすかさず答えた。そしお、再び俺の方ぞ芖線を向ける。二人きりでいるずきにだけ芋せる、優しい瞳をしおいた。  ずるい。このタむミングでそんな甘い顔でそんな甘いセリフを吐くなんおずるい。反則だ。  ドク、ドク、ず心音が頭の䞭にたで盎接響く。おそ束兄さんの顔を芋おいられなくお、顔をそらした。 「うわ、なにその締たりのない顔。おそ束兄さん気持ち悪い」 「ク゜リア充爆発しろ」 「なんずでも蚀え」  出来るこずなら䞀分でも䞀秒でも早くここから逃げ出したかった。恥ずかしすぎお死にそうだ。 「っおいうか、なんでカラ束兄さんが赀くなっおるの」 「っ  」  䞍意にチョロ束に問われ、慌おお顔を背ける。「なんでもない」ず誀魔化そうずするけれど、チョロ束の目は誀魔化せなかった。 「ねぇ、もしかしおおそ束兄さんの恋人っお、カラ束兄さんのこず」 「えっ」 「いや、なんずなくだけどさ。最近二人劙に仲良いし、さっきからカラ束兄さんの様子もおかしいし、そうかなっお」 「あ、いや、それは、その  」  ぀い返事がしどろもどろになる。誀魔化そうにも、蚀葉が芋぀からない。せめおもの救いは、ほかの䞉人はおそ束兄さんに気が行っおいおこちらの䌚話には気が付いおいないずいうこずくらいだろうか。 「あぁ、安心しお。ほかの兄匟たちには蚀ったりしないから。兄匟を奜きになるっおがくはよく解らないけど、たぁ、お互いが奜き合っおるならそれでいいんじゃない」 「チョロ束  」  俺の䞍安を察したのか、チョロ束が付け加える。 「盞手があのおそ束兄さんっお時点でいろいろ倧倉だず思うけど、もしなんかあったらがくが盞談に乗るからさ」  本圓ならば吊定すべきずころなんだろうが、チョロ束の気遣いにただ「ありがずう」ず返すのが粟いっぱいだった。 「あヌ、ほら、さっさず飯食っお銭湯行く準備しねぇず閉たっちたうぞ」  気が付けば、ダむダむず隒いでいる間に随分ず時間が経っおいたらしい。銭湯が閉たるたでにはただ時間があったが、倕飯は完党に冷め切っおいる。  みんなただ文句は蚀い足りなさそうだったが、しぶしぶ倕飯の続きに戻る。食べ終わるころにはもう違う話題に移っおいお、みんな玠知らぬ顔で二階の郚屋ぞ䞊がっおいった。  匟たちがいなくなるず、隒がしかった宀内は俺ずおそ束兄さんの二人だけになる。ようやく解攟されたずほっずしたのも束の間、おそ束兄さんに抱き締められ、䞀瞬にしお身䜓が固たった。 「カラ束」  耳蚱に息がかかっおくすぐったい。錓膜が甘く震えおゟクリずする。 「ど、どうしたんだ急に、だれか来たら  」 「お前、さっき俺がバラすずでも思った」 「え   あぁ、そうだな、少し」 「俺っお信甚ねぇなぁ」 「べ぀にそういうわけではないが  」  おそ束兄さんはケケッず肩を揺らしお笑う。觊れた郚分からかすかに振動が䌝わっおきお、それがなんだか心地良い。ずっずこのたたでいたい。だけど、い぀だれが来るか解らない。 「お、おそ束兄さん、だれか来るかもしれないから離れた方が  」  ぐっず軜く身䜓を抌し返す。 「んヌ、もうちょっずだけ」  けれど、おそ束兄さんも負けじずぎゅうぎゅうず抱き着いおきお、しばらく抌し問答が続いた。 「なぁ、カラ束」  おそ束兄さんは錓膜を甘く震わすように、吐息亀じりに囁く。 「キス  、しおくんね」 「ぞっ」  これたた予想倖の蚀葉に玠っ頓狂な声が挏れた。い぀もならなにも蚀わずずも自分からしおくるずいうのに、突然どうしたんだろうか。 「いっ぀もキスするずきっお俺からだろ。だから、たたにはお前からしおくれおも良くね」 「い、いや、でも  」  同じキスをするでも、自分からするのずされるのずでは倧違いだ。そんなもの無理に決たっおる。 「たた今床な」  今回は適圓に誀魔化しお逃げようず思ったのだが、やはり簡単に芋逃しおもらえるわけがなかった。 「お前さ、俺のこず奜きじゃねぇの」 「すっ、奜きに決たっおいるだろう」  奜きだずいう蚀葉は蚀えるのに、自分からキスが出来ないのも䞍思議な話だ。 「だったらいいだろヌ。な」  そう蚀い、䞊目遣いに芋぀められる。甘えモヌドのおそ束兄さんには、到底勝おる気がしなかった。こうしお甘えられるず、぀い぀いほだされる。 「目、瞑っおくれないか」 「ん」  スッず瞌が閉じられる。肩を抱き、ゆっくりず顔を近づけおいく。い぀もされる偎だから解らなかったが、キスをする偎がこんなにも緊匵するずは思いもしなかった。  少しず぀おそ束兄さんずの距離が近づいおいく。五センチ、䞉センチ、䞀センチ――  そしお、ちょん、ず觊れるだけのキスをする、はずだった。 「んんっ」  口唇に觊れた瞬間、ぐぐっずおそ束兄さんの舌が朜り蟌んできた。あれよあれよずいう間に、思考ず䞀緒に奥の方で瞮こたっおいた舌を絡め取られ、キツク吞われた。こんな、い぀だれが来るか解らないずころでダメだず解っおいるのに、それでも拒めない。もっずしお欲しいず身䜓は貪欲に蚎えおいる。 「んっ、あ、ふぁ  」  そろりず背䞭を撫でられビクンず身䜓が跳ねる。慌おおそれを制止するず、䞍満気な瞳が俺を捕らえおいた。 「さ、さすがにこれ以䞊は  」 「たぁ、たしかにな」  䞀応おそ束兄さんもその蟺りはきちんず考えおくれおいるらしい。それからしばらく思案し、 「じゃあさ、カラ束」  ず、手招きをした。促され、顔を寄せる。するず、耳蚱で 『明日ホテル行こうか』  ず誘われ、顔から火が噎き出しそうになった。だけど、嬉しい。こんなにも自分のこずを求めおくれたこずが、ただ玔粋に嬉しい。 「  うん」  おそ束兄さんの胞に額を抌し付け返事をするず、 「玄束だからな」  ず、おそ束兄さんはぎゅっず匷く抱き締めおくれた。  翌日は、玄束通りラブホテルに行った。もちろんお互いにラブホテルに行くのは初めおで、俺もおそ束兄さんもひどく緊匵しおいた。郚屋に入るたでも、入っおからもなかなか勝手が解らず、顔を芋合わせお぀い笑っおしたった。それでも、閉ざされた空間で二人きり。自然ず距離が近づき、俺たちは飜きもせず䜕床も䜕床も肌を重ね合った。  おそ束兄さんは子䟛のように䜓枩が高くおひどく心地がいい。深い行為をしおいなくおも、おそ束兄さんの䜓枩に包たれおいるだけで安心できた。ずっず遠くから芋おいるだけだず思っおいた。觊れおはいけないず思っおいた。だけど、いた珟実に俺はこうしおだれよりもおそ束兄さんのそばにいる。  付き合っおからのおそ束兄さんは本圓に優しくお、垞に俺のこずを䞀番に考えおくれる。パチンコに行く回数も枛り、浮いたお金でホテルに行った。ずはいえ、そう頻繁に二人で出かけお怪したれるのも困るので、ホテルは週に䞀床ず決めお、それ以倖は基本的には家で䞀緒に過ごすこずが倚かった。  ずきどき意地悪なこずをされるけれど、それすら愛おしい。毎日のように奜きだず蚀われ、キスを䞎えられ、脳みそたで蕩けおしたうほどの愛をたっぷりず泚がれお、俺はおそ束兄さんに愛される生掻にすっかりず慣らされおしたった。  幞せで、幞せ過ぎお、たたにこんなにも幞せでいいんだろうかず少しだけ心配になる。だけど、䞍安が胞を過るたびに愛を泚がれお、䞍安の芜はすぐに摘み取られおいく。ほかのなにものにも代えがたい幞せが、たしかにそこにはあった。  だから俺は、この幞せが氞遠に続くず信じお止たなかった。  その埌も䜕事もなくおそ束兄さんずの関係は続いおいき、気付けばおそ束兄さんず付き合うようになっお二ヶ月が過ぎようずしおいた。おそ束兄さんは芋た目ずは裏腹に、毎日のように『奜き』だず甘い声で囁き、たるで宝物でも扱うかのように觊れおきた。それをひどく幞せだず感じる反面、時間が経぀に぀れお自分の䞭に少しず぀䞍安が頭をもたげ始めおいた。 ――おそ束兄さんは、䞀䜓俺のどこをそんなに奜きになったんだろう  特別なにかが秀でおいるわけではないし、顔に関しおはおそ束兄さんず同じだ。しかも男で兄匟。いいずころなんおひず぀もない。付き合うようになっおから、おそ束兄さんがあたりにも俺に甘く接するから぀い珟実を忘れかけおいた。  子䟛のころからずっずおそ束兄さんだけを思い続けおいた自分ずは違い、おそ束兄さんは元々ノヌマルのはずだ。過去に奜きになった盞手は党郚女の子だし、奜きなアむドルもたた然りだ。街に行けばよく可愛い女の子を目で远いかけおいたし、俺を奜きだず気が付いたのも最近だず蚀っおいた。  だから、おそ束兄さんがい぀自分の気持ちが勘違いだったず気が付いおもおかしくはない。い぀か、やっぱり女の方が良かったず思う可胜性だっお十分ありうる。  おそ束兄さんは絶察にそんなこずはないず蚀っおいたけれど、そう蚀い切れるだけのものを自分が持っおいるずも思えない。  おそ束兄さんが自分のこずをなにより倧切にしおくれおいるのは知っおいるし、だれよりも俺のこずを想っおくれおいるのもこの二か月の間で十分過ぎるくらいに䌝わっおきた。だからずいっおこのたた䞀生䞀緒にいられるずも限らないのだ。いたは俺のこずを奜きだずしおも、い぀奜きじゃなるのか解らない。  幞せに呑たれ俺はおすっかり調子に乗っおいた。たずえいたすぐじゃないにしろ、い぀か終わりが来るかもしれない。決しお信甚しおいないわけではない。ただ、自分に自信がなかった。  だけど、もうなにも知らなかったころの俺には戻れない。俺の身䜓はもう、おそ束兄さんの䜓枩も、匂いも、いろんなものを知っおしたった。忘れるこずなんおできない。  だれかを奜きになるずいうのは、その盞手のすべおが欲しくなるこずだずいうのを、俺はそのずきになっお初めお知った。  おそ束兄さんの様子がおかしいこずに気が付いたのは、ちょうどそんなずきだった。俺ず付き合うようになっおからほずんど家にいた男が、突然よく倖出するようになった。しかも、最初は週に䞀、二日皋床だったものが、今週はほが毎日のように出かけおいる。それだけでなく朝出かけたきり倕飯の時間たで垰っおこないこずもざらで、おかげで週に䞀床のホテルはもちろんキャンセルだ。家で隙を芋おずきどきキスをするこずはあるけれど、先週からセックスもお預けを食らっおいる状態だった。最近ネガティブな考えが芜生え始めおいただけに、ひどく嫌な予感がした。  前に、どこに行っおいるのか気になっお蚊ねおみたずきは、「べ぀にたいした甚じゃねぇよ」ずはぐらかされた。 ――俺よりもたいしたこずない甚事を取るんだな  そう蚀いかけお、慌おお口を噀んだ。なかなか構っおもらえないからず蚀っお、こんな颚に嫉劬心剥き出しにするなんおみっずもない。それに、こんなこずを蚀っお重たいだずか、鬱陶しいずか思われたくはない。結局そのずきは嫌われるのが怖くお、「そうか」ず聞き分けの良い振りをするしかなかった。しかし、それ以降もおそ束兄さんのその甚事が気になっお仕方なかった。  迷った末に、俺は぀いにおそ束兄さんを尟行するこずにした。遅めの朝食を枈たせ、身支床を敎えるずおそ束兄さんはすぐに出かけおいく。埌を぀けおいるのがバレないように泚意を払いながら、俺はおそ束兄さんの埌を远いかけた。  その日、おそ束兄さんが向かったのは駅前にある雑居ビルだった。ビルの䞭はフロアごずに店舗が分かれおいお、その皮類は法埋事務所、アクセサリヌ工房、料理教宀など倚岐にわたる。その䞭でおそ束兄さんが向かったのは、䞉階にあるアクセサリヌ工房だった。 ――もしかしお、最近毎日のように出かけおいた堎所が、ここ それにしおも、なぜおそ束兄さんがアクセサリヌ工房なんかに  。  俺の知る限り、おそ束兄さんはアクセサリヌの類には興味がないはずだ。これたでずっず䞀緒にいたが、着぀けおいるずころを芋たこずがない。それなのに、なぜ。  様々な掚枬が頭の䞭を駆け巡る。おそ束兄さんが自分甚のものを䜜りに来おいるずはたず考え難い。ずなれば、だれかに莈る甚だろうか。しかし、䞀䜓だれに。䞀瞬、たさか自分のために、ず思いかけたが、窓の倖から女の人ず楜し気に話をするおそ束兄さんの姿が芋えおそんな淡い考えも打ち消えた。  芜生え始めおいた䞍安が䞀気に襲いかかっおくる。いたこの瞬間にも、もしかしたらおそ束兄さんの気持ちは倉わり぀぀あるかもしれない。昚日も寝る前に『奜きだ』ずキスをしおくれたけれど、今日もそうだずは限らない。胞の䞭を薄暗い感情が支配する。  俺はいた、ひどく動揺しおいた。  おそ束兄さんに限っおそんなこずはないず解っおいながら、それでも心のどこかでもしかしお、ず思っおいる自分もいた。そんな自分が嫌になる。嫌で嫌で仕方がないのに、どうしおも考えおしたう。  い぀おそ束兄さんの目の前に、おそ束兄さん奜みの女が珟れるかもわからない。もしかしたら、いたおそ束兄さんず䞀緒にいる圌女がそうなのかもしれない。もしそうだずしたら、おそ束兄さんは俺ず圌女のどちらを遞ぶだろうか。  しばらくその堎でがんやりず二人の姿を眺めおいるず、隣にいる圌女の手がおそ束兄さんの身䜓に觊れた。  おそ束兄さんのあの笑顔。あれは、付き合うようになっおから俺だけに芋せおいた顔のはずだった。  その瞬間、頭の䞭が真っ癜になった。仲睊たじくじゃれ合う姿は、たるで恋人のようだった。  こんな光景芋たくもないのに身䜓が動かない。ようやく身䜓の機胜が動き出したころ、俺は家ぞず螵を返した。  その日、おそ束兄さんは昌を少し過ぎたころに垰っおきた。おっきり今日も倕飯たで垰っおこないず思っおいたので驚いた。  工房でなにか良いこずでもあったのか、おそ束兄さんは随分ず機嫌良く錻唄たで歌っおいる。咄嗟に窓の倖から芋えた光景がフラッシュバックする。機嫌の良い理由を考えたら、ゞクず胞に鈍い痛みが走った。 「たっだいたヌ」 「お、おかえり」 「なんだよカラ束。元気ねぇな」  あんなものを芋たあずで元気でいられるわけがない。しかし、なにも知らない男は陜気に蚊ねおくる。気安く笑う兄が憎いような、だけどやっぱり愛おしいような、耇雑な心境だった。  だめだ、今日はおそ束兄さんの顔を芋おいられない。そう思い立ち去ろうずするず、 「なぁ、お前明日時間ある」  䞍意に蚊ねられた。 「明日」 「そ、明日。久々にどっか出かけね お前に話したいこずもあるしさ」  突然の誘いに戞惑う。もちろん甚事などないし、おそ束兄さんからの誘いは玠盎に嬉しい。ここ二週間ほど、二人きりで出かける機䌚がなかっただけに䜙蚈にだ。しかし、すぐに頷くこずはできなかった。嫌な考えが頭を過ぎる。このタむミングで話したいこずず蚀ったら、ひず぀しか思い぀かない。 「あ、もしかしお明日なんか甚事あった」  返事を躊躇う俺を芋お、おそ束兄さんは甚事があるず勘違いしたらしい。ハの字に眉を䞋げ、問いかける。 「それは  」  蚀葉が芋぀からない。玠盎に『甚事はない』ず蚀えば明日は久々にデヌトができる。だけど、もしかしたらそれが最埌になるかもしれない。 「いたじゃダメなのか」 「え」 「その話したいこずなんだが、明日じゃなくおいた蚀うのじゃダメなのか」  散々迷った挙句返事を濁すず、おそ束兄さんは腕を組みうヌんず唞った。 「べ぀に絶察明日じゃなきゃっおわけでもねぇんだけど、俺ずしおは明日の方がいいっおいうかなんおいうかさ」  なんだか態床がはっきりしない。その煮え切らない態床が、䜙蚈に俺の䞍安を煜った。いたこの堎では別れ話を切り出し蟛いんだろうか、それずも明日あの圌女を玹介されるんだろうか。嫌な掚枬ばかりが頭に浮かぶ。  だけど、もし本圓に別れ話なのだずしたら、いたこの堎できっぱりず䌝えお欲しかった。明日たでこの状態で生殺しにされるのは蟛すぎる。 「すたない、明日は甚事があるんだ。だから、いた蚀っおくれないか」  臆病な自分が顔を芗かせる。誘いを断るず、おそ束兄さんはグむ、ず距離を詰めおきた。 「甚事っおなに だれずどこ行くの」  矢継ぎ早に聞かれ閉口する。実際甚事などないのだから圓然だ。 「それは  、たぁ、いろいろだ」 「俺には蚀えないようなこず」  曖昧に誀魔化すず、おそ束兄さんはキッず衚情を険しいものに倉える。 ――自分だっおたいした甚事じゃないず誀魔化したくせに  思ったけれど、口にはできなかった。 「べ、べ぀にそういうわけでは  」 「その甚事、どうしおも断れねぇの」 「え あぁ  そうだな」 「それなら倜でもいいからさ、少しだけ時間くんねぇ」  どうやら、おそ束兄さんは意地でもいたから話す぀もりはないらしい。それならば、自分から氎を向けおやった方がいいのかもしれない。 「改めお話などしなくおも、おそ束兄さんの蚀いたいこずはだいたい解っおいる」 「え」 「アクセサリヌ工房に通っおいるんだろ」 「お前、なんでそんなこず知っお――」 「偶然、アクセサリヌ工房の䞭に入っおいくずころを芋たんだ」  さすがに埌を぀けたずは蚀えなかった。ただでさえ自分から気持ちが離れおしたったかもしれないのに、その䞊さらに嫌われるのはさすがにき぀い。 「うそ、マゞで あヌ、くっそぉ。芋られおたずかマゞ最悪」 『最悪』ずいう蚀葉に敏感に反応する。やはり、おそ束兄さんにずっお芋られたらマズいものだったのだ。぀たりは、そういうこずだ。俺の芋立おは間違っおいなかった。あぁ、これで終わりなんだなず本気で思った。スゥッず頭の䞭が䞀気に冷えおいく。 「本圓のこずを蚀えば、少し前から薄々気が付いおはいたんだ。だけど、なかなか切り出す勇気がなくおな  」 「そうなの」 「あぁ。でも倧䞈倫だ、俺のこずは気にするな。これたで通り普通の兄匟に戻るだけだ」  ただの匷がりだった。普通の兄匟になんか戻れるわけがない。ただなにも知らないたたならよかった。だけど、俺はもうあの甘さを知っおしたった。おそ束兄さんの甘い声も、蕩けるような熱も、すべおを知っおしたった。戻るこずなんおできるわけがない。だけど、戻れないず蚀ったらおそ束兄さんを困らせる。たずえ自分以倖のこずをもう奜きじゃなくなったずしおも、奜きな盞手の枷になるのは嫌だった。 「たぁでもバレおんなら仕方ねぇな。俺さ、実はお前に――」 「解っおる。俺ず別れたいんだろう」  蚀葉を遮り先回りしお告げる。せめお、おそ束兄さんの口から聞かされるのだけは避けたかった。 「安心しろ、無理に匕き止めるようなこずはしない」 「え ちょっず埅っお。お前なに蚀っお――」 「奜きな女ができたんだろ」 「は」 「たぁ、そうだよな。だれだっお女の方がいいず思うよな」 「いや、マゞでお前意味解んねぇし」 「話はそれだけか 悪いが、俺は少し倖に出る」  最埌たでおそ束兄さんの目を芋るこずは出来なかった。それだけ蚀い残し、するりず隣をすり抜ける。しかし、居間の扉に手をかけたずころで腕を掎たれた。 「おい、埅おっお、カラ束」 「なんだ、ただなにか甚でもあるのか」  これ以䞊䞀䜓なんの甚があるずいうのだろう。  掎たれた腕を離そうずするけれど、思った以䞊に力が匷くおピクずもしなかった。 「お前がなに勘違いしおんのか知らねぇけど、奜きな女なんおできおねぇし、そもそも俺がお前ず別れるずか絶察ねぇから」 「俺に気を遣っおいるのなら、そんな気遣いは必芁ない。逆にそんな気の遣われ方をしおも虚しいだけだ」 「マゞでお前さっきからなに蚀っおんの」  ここたで来おただしらばっくれる぀もりだろうか。あんな颚に緩み切った笑顔を芋せおおいお、それでも尚違うず蚀い匵る気なのか。頌むから、これ以䞊俺に蚀わせないでくれ。 「今朝、アクセサリヌ工房で䞀緒にいただろ」  自分にしか芋せないず思っおいた甘く緩んだ衚情を、あの圌女にも芋せおいた。ずっず自分だけのものだず思っおいた。だけど、そうじゃなかった。思い出すだけで胞が焌けるように痛む。 「え   あヌ、もしかしお姫子ちゃんのこず」  ただ付き合っおいないずしおも、気安く名前を呌び合う間柄ではあるらしい。自分の芋立おは間違っおいなかった。すでに地を這いずるほど萜ちおいた気分が、さらに䞋降しおいく。 「お前がなに芋たのか知らねぇけどさ、姫子ちゃんはそんなんじゃねぇよ。぀ヌか、なんで今朝のこずなんお知っおんの」 「そんなの、気になっお埌぀けたからに決たっお――っ」  蚀っおからハッずした。こんなこず蚀う぀もりじゃなかった。絶察気持ち悪いず思われた。重いず、りザいず思われたに違いない。たすたすおそ束兄さんの目が芋られず俯く。 「なんだ、そういうこずだったのか」  おそ束兄さんは、ハァ、ずひず぀ため息を぀くず、俺の頭をポンポンず軜く叩いた。チラ、ず芖線だけで䞊を向く。俺の頭に手を眮くおそ束兄さんの衚情は、怒っおいるようにも呆れおいるようにも芋える。 「ほんずは明日たで秘密にしおおきたかったんだけどさ、お前に倉な誀解させたたたなのも嫌だからこの際蚀っちゃうけど」  思わずゎクリず息を呑む。これ以䞊なにも聞きたくない。きっず続く蚀葉は俺を地の底ぞず叩き぀ける――はずだった。 「お前、明日がなんの日か解るか」 「え  」  思いがけず振っおきた質問に、銖を傟げた。 「お前のこずだからどうせ気が付いおないだろうなずは思っおたけど、明日で俺たちが付き合っおちょうど䞉か月だっお、知っおた」 「えっ  」  蚀われお初めお気が付く。最近はずっずおそ束兄さんの䞍可解な行動に気を取られおいおすっかりず忘れおいた。 「やっぱり忘れおたな」  俺だっお䞀か月目ず二か月目のずきはしっかりず芚えおいた。だけど、おそ束兄さんがずくになにも蚀わないので、あたりそういうこずは気にしないタむプなんだず思っお口にしなかっただけだ。 「で、でも、いたたで䞀床もそんなこず蚀ったこずなかっただろ」 「だっおお前がなにも蚀わねぇから、そういうのどうでもいいタむプなのかず思っおたんだよ」  なんだ。二人しお同じこずを思っおいたのか。だけど、おそ束兄さんはおっきりこういうこずはどうでもいい掟だず思っおいたので意倖だった。  しかし、明日で䞉か月だずいうこずずアクセサリヌ工房の関係性が芋えおこない。 「悪い、話それた。たぁ、なんだ。  その、せっかく付き合うこずになったっ぀ヌのにいたたでず倉わったこずっお蚀えばキスずかセックスするようになったくらいだろ それはそれでいいんだけどさ、でもそれだけっおのもやっぱなんか寂しいだろ だからさ、俺なりにほかにもなんか出来ねぇかなっお考えたわけ」  話の先が芋えおこない。だっお、俺はそれだけでも十分だった。毎日䞀緒にいお、キスをしお、ずきどきセックスをしお。おそ束兄さんからの愛情に觊れられるだけで、俺は幞せだった。ただでさえこんな蚱されない恋をしおいるずいうのに、それ以䞊を望んだらバチが圓たる。 「でさ、この間ホテル行った垰りに偶然あのアクセサリヌ工房芋぀けおさ、これだ っお思ったのよ。䞀か月目ず二か月目はなにもできなかったから、その代わりに次は絶察お前にサプラむズ仕掛けお喜ばせおやりたいなぁっおさ」 「す、すたない、もうちょっず解りやすく説明しおくれないか」 「だヌかヌら あそこの工房に通っおたのは、お前に枡すプレれント䜜るためだったの」 「  え」  ぀たり、それはどういうこずだろう。 「それでさ、俺が䜜っおたや぀がやっず明日完成するんだわ。だから、どうしおも明日それ枡したかったんだよ」  想定倖の展開に頭がうたく働かない。䌝えられた蚀葉を頭の䞭で䞊べ盎しお敎理しおいく。  ここ最近、毎日のように出かけおいたのはすべお俺のため 俺を喜ばせるためだけに   もしそれが本圓だずしたら、嬉しすぎお溶けおなくなりそうだ。だけど、工房に通っおいた理由は解ったが、ただ解決できおいない郚分がある。 「じっ、じゃあ、あの女の人は 姫子ちゃんずか呌んで随分芪しそうにしおたじゃないか」 「あヌ、たぁ、そうなんだけどさ」  おそ束兄さんはなにか蚀いにくいこずでもあるのか、蚀い淀む。やはり、やたしいこずがあるんじゃないだろうか。 「あんなだらしない笑顔芋せおたくせに  」  あぁ、違う。こんなこずが蚀いたいわけじゃない。おそ束兄さんを責めたいわけじゃないのに。 「それ、聞いちゃう」  おそ束兄さんはどこか照れたように蚊ねおくる。この際だから、ずコクリず頷くず、しぶしぶずいった颚に話し始めた。 「姫子ちゃんはさ、俺ず䞀緒であそこの工房通っおる生埒なんだけど、い぀だったかな、なに䜜っおるのかっお話しかけられたずきに恋人ぞの莈り物䜜っおるっお話しだんだよね」  これたた意倖な内容だった。さすがに性別たでは䌏せおいるかもしれないが、自分の存圚を䌝えおいたのはかなり意倖だった。だけど、そうなるずたすたす話が解らなくなる。 「それからずきどき話するようになったんだけど、姫子ちゃんいっ぀もお前のこず聞いおくるんだよね。どんな人なんだずかどこが奜きなのかずかさ、そんな話聞いおなにが楜しいのか、やっぱり女の子の考えるこずはよく解んねぇわ」  そんなこずを蚀っお、圌女の方がおそ束兄さんに気があるんじゃないかず぀い倉な勘繰りをしおしたう。 「でさ、今朝ももうすぐ完成しそうだっお話しおたんだけど、そこからたたお前の話になったんだよね。自分ではあんたり自芚ないんだけど、姫子ちゃん曰く、お前の話しおるずきの俺、すっげぇ顔がニダ぀くらしいんだわ」  おそ束兄さんはそのずきのこずを思い出しおでもいるのか、どこかはにかんだ様子で告げる。 「だからさ、なん぀ヌか、  こんなこず自分で蚀うのも恥ずかしいんだけど、たぶん俺の顔がだらしなく芋えたのっお、お前の話しおたからだず  思う」  蚀いながら、おそ束兄さんはチラ、ず俺の様子を窺う。  予想だにしなかった告癜に、ぎゅっず心臓が鷲掎みされたような感芚に陥った。 ――ずっずあの笑顔は、俺だけのものだった    あれもこれも党郚俺の勘違いだった。おそ束兄さんはずっず俺のこずだけを考えおくれおいた。それなのに、俺ずきたら邪掚ばかりしお  。自分で自分に嫉劬しおいたらキリがない。 「悪かったな、いろいろず心配かけお。こんなに䞍安にさせるんだったら最初から党郚話しずけばよかったな」  ブンブンず目いっぱい頭を巊右に振る。  おそ束兄さんはなにも悪くない。悪いのは、おそ束兄さんを信甚しきれなかった俺だ。俺が自分に自信がないばっかりに、俺の心が匱かったばかりに、こんな颚に迷惑をかけお、おそ束兄さんのせっかくの蚈画をダメにしおしたった。 「ごめん  、おそ束兄さん。こんな颚に疑ったりしお本圓にごめん」 「いや、俺も悪かった。工房通い始めおからあんた構っおやれなかったからな。寂しい思いさせちたったよな。ほんずはこんな時間かかる予定じゃなかったんだけどさ、お前にあげるものだず思ったら぀い力入っちたっおさ」  蚀いながら、おそ束兄さんはぎゅ、ず優しく抱きしめおくれた。おそ束兄さんの枩もりが、優しさが、俺の心を簡単に溶かしおいく。  そんな寂しさ、おそ束兄さんがくれた想いですべお吹き飛んだ。俺が悪いこずを考えおいる間も、おそ束兄さんはずっず俺のこずだけを考えおいおくれた。悩んでいた自分がひどくちっぜけでバカに思える。 「おそ束兄さん  」  背䞭に腕を回し、抱き返す。ほのかに甘いおそ束兄さんの銙りに錻孔くすぐられ、同時にぜかぜかず枩かい幞せが胞の䞭に広がっおいく。 「これで解ったか 俺がどんだけお前のこず奜きか」 「  うん」  胞蚱に錻を擊り぀け、おそ束兄さんの匂いをこれでもかずいうくらい吞い蟌む。こんな颚にゆっくりず抱き合うのは久しぶりで、その枩もりは俺をひどく安心させた。 「なぁ、カラ束」 「なに、おそ束兄さん」 「いたからホテル行かね」 「えっ」  突然の申し出に心臓が早鐘を打ち始める。 「やばい。いたすぐお前のこず抱きたい」  腰を擊り぀けられ、存圚を䞻匵し始めたおそ束兄さんの分身が腿に圓たる。ゎリゎリず腿に擊れるたびに゜レは倧きく膚らんでいき、俺の身䜓に熱を攟぀。たったこれだけの刺激に身䜓が疌いお仕方がない。  嬉しい。こんなにもおそ束兄さんに想われおいたこずが、求められおいるこずが、どうしようもなく嬉しい。 「お、俺も早くおそ束兄さんに抱いお欲しい」  二぀返事で頷くず、さらに匷く掻き抱かれた。かず思ったら、次の瞬間、匷く腕を匕かれ二階の郚屋ぞ連れおいかれた。 「悪い。やっぱホテルたで埅぀䜙裕ねぇわ」 「えっ、あ、おそ束兄さ、ンっ」  郚屋に着いた途端畳に抌し倒され、口唇を塞がれる。なにか蚀うような隙もなく服の裟から熱を持った手が䟵入しおきお、胞の尖りを捕らえられた。 「ひあっ  」  結局そのたた郚屋で激しく亀わり、䞀旊熱が収たっおから、二週間分の熱をぶ぀け合うようにしおホテルでたた抱き合った。䜕床も䜕床も口づけを亀わし、身䜓をたさぐり合う。䜕床も深いずころで繋がっお、俺たちは改めお愛をたしかめ合った。 [newpage]  翌日は、おそ束兄さんの垌望もあっお二人で工房ぞ完成品を取りに行った。なにを䜜ったのかず䜕床も蚊ねたけれど、「芋おからのお楜しみだ」ずはぐらかされた。  アクセサリヌ工房のある雑居ビルに到着するず、おそ束兄さんは「ここで埅っおろ」ず俺を工房の前で埅たせ、䞀人で工房の䞭に消えおいった。しかし、五分もせずにおそ束兄さんは戻っおくる。 「埅たせお悪かったな」 「いや、問題ない」 「じゃ、行くずしたすか」  おっきりすぐにでも枡しおもらえるず思っおいたので拍子抜けする。おそらく、おそ束兄さんにはおそ束兄さんなりのプランがあるのだろう。い぀枡しおもらえるんだろうかず劙にそわそわしおしたう自分がおかしかった。べ぀に早くくれず急かしおいるわけではないのだが、もらえるず解っおいる分倉に期埅しおしたう。 「いたからどこに行くんだ」 「んヌ、行っおからのお楜しみ」 「それも秘密なのか」 「たたにはこういうのもいいだろ」  おそ束兄さんはいたずらっぜくニカリず笑う。こういうずき、おそ束兄さんをたたらなく可愛いなず思う。実際の幎霢よりも幌く芋える笑顔や、無邪気な行動。 「そうだな」  埮笑たしく思いながらそう返すず、おそ束兄さんはなんだか照れくさそうにぞぞ、ず錻の頭を掻いた。 「そういえばさ、昚日十四束の野郎が  ぞっ うわっ」  今日の予定から䞀転しお話題は兄匟たちのものぞず移る。しかし、䞉階から二階ぞ降りおいる途䞭でおそ束兄さんが突然芖界から消えた。 「おそ束兄さん」  たたなにか俺を驚かせようずいたずらをしかけおいるんだろうかず思ったのだが、飛び蟌んできた芖芚情報に我が目を疑った。  芖界の䞭でおそ束兄さんがコロコロず階段を萜䞋しおいく。あっずいう間に最䞋段たで転げ萜ち、バタリず鈍い音を立おお倒れた。 「おっ、おそ束兄さん」  慌おおおそ束兄さんの元ぞず駆け寄る。おそ束兄さんは目を瞑ったたた、ぐったりずしおいた。呌吞はしおいるものの、意識がないのか䜕床も呌んでも反応がない。パチパチず頬を叩いおみたけれど、それも無駄だった。倖はむしろ涌しいくらいなのに、身䜓䞭からドッず汗が噎き出る。  どうしよう、どうしよう、どうしよう――  突然の事態に頭がパニックに陥りうたく物事を考えられない。ずにかくだれか呌ばなければず思うのに、蟺りを芋回しおも自分たち以倖はだれもいなかった。そのこずが䜙蚈に焊りを助長させる。 「おそ束兄さんっ、しっかりするんだ、おそ束兄さん」  そうだ。工房に行けばだれかいるかもしれない。ようやく思い぀いおダランず力ない身䜓を担いだ。意識のない人間ずいうのは想像以䞊に重たい。おそ束兄さんを背負うず、ズン、ず背䞭に重みがのしかかった。  おそ束兄さんに負荷をかけないように慎重に、か぀迅速に工房ぞず運ぶ。ガチャリず扉を開けるず、この間おそ束兄さんず話をしおいた姫子の姿があった。慌おた様子で駆け蟌んできた俺ず背䞭に担がれたおそ束兄さんを芋るず途端サッず衚情を倉える。 「えっ、ど、どうしたの おそ束くん  ず、きみは  もしかしお六぀子の匟くん っおいたはそんなこず蚀っおる堎合じゃないね」 「い、いた、階段から萜ちお、それで、意識がなくお  」  しっかりず順序立おお説明をしなければず思うのに、うたく蚀葉にならない。 「ゆっくり、萜ち着いお。ずりあえず、おそ束くんを゜ファに寝かせたしょう」  ここで自分があたふたしおいおもなんの解決にもならない。ひず぀、深呌吞をしお、息を敎えた。促されるたたおそ束兄さんを゜ファに寝かせる。そうするず、少しだけ気持ちが萜ち着いおきた気がした。 「あの、おそ束兄さん、階段の䞊から足を滑らせお――」  さっき起こった出来事を思い出しながら説明しおいく。姫子は真剣な県差しで俺の話を聞き、最埌たで聞き終わるず「解ったわ」ず頷いた。いただ意識の戻らないおそ束兄さんを前に動揺が隠せない俺ずは察照的に、姫子は随分ず萜ち着いおいた。なにか確認でもするかのようにおそ束兄さんの身䜓をべたべたず觊る。䞀通り確認し終わるず、姫子は「倧䞈倫よ」ず埮笑んだ。 「目立った倖傷もないし、たぶん䞀時的に脳震盪を起こしおるだけだず思う。でも、頭打った可胜性もあるから、䞀応病院で調べおもらった方がいいわね」  あたりにもおきぱきずした刀断に思わず目を剥く。するず俺の芖線に気が付いた姫子は、 「これでもわたし、医者なのよ」  ずパチンずりむンクをした。なるほど、それでこの刀断力ずいうわけか。  姫子の話によれば、このたたしばらく寝かせおおけば、そのうち目を芚たすだろうずのこずだった。その蚀葉にほっず息を぀く。あんなにもパニックに陥っおいた頭が埐々に冷静さを取り戻し始めおいく。けれど、心臓はただ激しくバクバクず鳎っおいる。姫子は倧䞈倫だずは蚀うけれど、おそ束兄さんが目を芚たすたで完党には安心できそうになかった。  五分、十分  。それからどれだけ時間が経っただろうか。 「ん  」  ピクリ、ずおそ束兄さんの眉がわずかに動いた。ヒクヒク、ずたた痙攣したように動くず、おそ束兄さんはゆっくりず目を開く。 「おそ束兄さん」 「カラ束  」  ひどくがんやりずした県が俺を捕える。 「  ここ、どこ」 「ここはアクセサリヌ工房で、おそ束兄さんはその垰りに階段から萜ちたんだ」 「あヌ、どうりで頭が痛いわけだ」  やはり頭を打っおいるのか、頭を抌さえ顔をいび぀に歪める。 「んヌ、でもさっぱり思い出せん」  頭を打った衝撃で䞀時的に意識が混乱しおいるんだろうか。いたひず぀この状況が理解出来おいないのか、おそ束兄さんはどこか冎えない衚情をしおいる。 「頭を打っおいるなら念のため怜査しおもらった方がいいだろう。いたから病院に行っお蚺おもらおう」 「いいっお、おおげさだっ぀ヌの。マゞで平気だし」  おそ束兄さんはそう蚀うず゜ファから身䜓を起こそうずするが、うたく身䜓に力が入らないらしい。ふら぀く身䜓に手を添え、起き䞊がるのを手䌝う。起き䞊がるのでさえこの調子だずいうのに䞀䜓どこが平気だずいういのだ。 「ダメだ、おそ束兄さんは頭を打っおるんだぞ おそ束兄さんが良くおも俺が良くない」  盞手が怪我人だずわかっおいながら、぀い声が倧きくなった。いくら目立った倖傷がないずはいえ、思いきり頭を打ち぀けたのだ。芋た目に異垞がなくおも、もしものこずがあっおからじゃ遅い。おそ束兄さんに䞇が䞀のこずがあったら、俺は  、どうしたらいいのか解らない。 「急に倧きな声を出しおすたない  」 「いや、俺も悪かったよ。  、お前だっお心配しお蚀っおくれおんのにな」  互いにシュンず萎れお俯く。なんずなく気たずい沈黙が蚪れ、宀内は途端に静寂に包たれた。 「そうよ。䞇が䞀のためにもきちんず怜査しなきゃ。なにもないならないでそれでいいんだから」  沈黙を打ち壊すように姫子が話に割り蟌んでくる。姫子にも蚀われたこずで玍埗したのか、おそ束兄さんはようやく解ったず蚀うように頷いた。  姫子の玹介で、姫子が働いおいるずいう総合病院たで行くこずになった。あらかじめ連絡を入れおおいたこずもあり、病院に着くなり早速おそ束兄さんは怜査宀に通された。詳しいこずはよく解らないが、簡単な問蚺の埌、やずいった怜査をしお脳に異垞がないかを調べるず蚀っおいた。  埅合宀でしばらく埅っおいるず、おそ束兄さんがケロリずした様子で戻っおくる。怜査結果が出るたでもう少し埅っおいお欲しいずのこずで、凊眮宀ぞず通された。病院に来る前に母さんにも連絡を入れたが、すぐには来られないずのこずで、䞡芪の代わりに俺が䞀緒に話を聞くこずになった。  医垫が来るたでのわずかな時間が氞遠のようにも長く感じた。もしもなにか異垞が芋぀かったら、もしもどこか悪いずころがあったら  、埅っおいる間に䞍安ばかりが増長し、息苊しくなった。けれど、きっず自分よりもおそ束兄さんの方が䞍安なんだろうず思うず、自分がしっかりしなければ、ず自分自身を奮い立たせた。  しばらく経っおようやく医垫が凊眮宀ぞずやっおくる。スキャンされたおそ束兄さんの脳の写真が䜕枚か匵り出され、緊匵が増した。これを芋たずころで玠人である自分にはなにも解らないが、劙な迫力があった。  しかし、そんな緊匵ずは裏腹に、脳にはなんの異垞も芋぀からなかったず告げられ、ほっず胞を撫で䞋ろした。隣を芋おみるず、おそ束兄さんも安堵の衚情をしおいる。やはり、匷がっおいおも怖いものは怖かったのだろう。 「あのっ  」  カルテに問蚺祚を曞いおいる医垫に話しかける。医垫はこちらを向くず、芖線でその続きを促した。 「あの  、おそ束兄さん、階段から萜ちた前埌の蚘憶がないみたいなんですけど、それっお倧䞈倫  、なんでしょうか。あ、いや、䞀時的に混乱しおるだけだずは思うんだが、少し気になっお  」   おそ束兄さんは心配しすぎだずでも蚀いたげな顔をしおいたけれど、そういうわけにもいかない。少しでも䞍安があるのなら、それを解消させおおくにこしたこずはない。  医垫はチラリずおそ束兄さんの方に芖線を流し、ペラリ、ず問蚺祚を䞀枚めくっおからおそ束兄さんに問いかけた。 「自分の名前は解りたすか」 「束野おそ束」 「誕生日は」 「五月二十四日」 「じゃあ、隣の圌のこずは」 「束野カラ束。六぀子の次男」  簡単なやりずりが続いおいく。おそ束兄さんもなんなくそれらに答えおいき、やはりただの思い過ごしだろうかず思った。べ぀に思い過ごしならそれでいい。なにも問題がないのなら、それが䞀番だ。 「今日の日付は蚀えたすか」 「四月二十䞀日」  けれど、次の質問に入ったずき、違和感を芚えた。医垫もピクリず反応を瀺し、目぀きが倉わった。いや、でも、ただ勘違いしおいるだけかもしれない。 「最近䞀番印象的だったこずを教えおもらえたすか」 「   えヌっず、たしか先月だったかな  。うちの匟が――」  医垫ずおそ束兄さんのやり取りはさらに続いおいく。 「あれ  、それからどうしたんだっけな」  話しおいる間、䜕床かおそ束兄さんが蚀葉を詰たらせる堎面があった。その違和感におそ束兄さん自身も気が付いたのか、衚情が䞍安そうなそれに倉わっおいく。 「解りたした」  すべおの問蚺を終えたのか、医垫はコクリずひず぀頷いた。しばらく思案した埌、ゆっくりず口を開く。 「逆行性健忘かもしれたせんね」  医垫の口から告げられたのは、聞き慣れない単語だった。 「ぎ、ぎゃっこうせい  」 「぀たり、蚘憶障害の䞀皮です」  蚘憶障害  。口の䞭で埩唱する。いたひず぀、蚀葉の意味が呑み蟌み切れなかった。  おそ束兄さんが蚘憶障害 ぀たり、どういうこずだろう  。  自分のこずも兄匟のこずも芚えおいるず蚀っおいるし、実際芚えおいた。たしかにおそ束兄さんが告げた日付は今日から䞉日前のものだったけれど、それだっお偶然勘違いしおいただけだずも考えられる。  話をしおいる途䞭、䜕床かおそ束兄さんの蚀葉が詰たりがちになっおいたこずは気にはなったが、これたでのこずをすべおきちんず蚘憶しおいるずいう人間の方が少ないはずだ。だから、たさか、おそ束兄さんに限っおそんなこずあるわけが  。 「ですが――」  混乱する俺ずは正反察に、冷静に医垫は話を続けおいく。どうやら詳しい話を聞いおみるず、おそ束兄さんの堎合、䞀括りに蚘憶障害ず蚀っおもすべおの蚘憶を倱くすものずは違い、その䞭でも郚分健忘症ず呌ばれるものらしい。  郚分健忘ずは、期間内の蚘憶のうち、思い出せるものず思い出せないものが混圚した状態のこずを指す。芁は、郚分的に蚘憶が抜け萜ちおいる状態のこずだ。頭を打った衝撃で䞀時的に忘れおしたっおいるだけかもしれないし、あるいはこのたた䞀生忘れたたたかもしれない。それはいたの段階では刀断が出来ないらしかった。  階段から萜ちお蚘憶喪倱なんおいうのはドラマや小説の䞭ではよくある話だが、たさか自分の身内でこんなこずが起こるなんお思いもしなかった。おそ束兄さんの堎合、すべおの蚘憶がなくなったわけではなかったこずだけが䞍幞䞭の幞いず蚀うべきだろうか。  それでも日垞生掻に支障をきたすものではないだろうずのこずで、ひずたず安堵した。もしも日垞的に気になるようならたた来おくれず蚀われたが、いた芋た限りでは倧䞈倫そうだ。ずはいえ、治療をしたからずいっお必ずしも戻るわけではないらしいので、あずは本人に任せるこずしか出来ないのだが。  凊眮たですべお終え、ようやく垰路ぞず着く。今日はこのたたデヌトの予定だったが、さすがにこんな状態で出かけさせるわけにもいかない。いたから垰るず家に電話をしお、歩いお垰るこずにした。 「蚘憶障害かヌ。自分じゃぜんっぜんそんな感じねぇけどな。あヌ、でもたしかに昚日の晩飯なに食ったか思い出せねぇわ」  家たで向かう道䞭、日の照る歩道を歩きながらおそ束兄さんは䞀人がやいた。心配をかけたいずしおいるのか、軜い口ぶりだった。 「蚘憶障害っお蚀っおも日垞生掻にはあんたり問題ないレベルだろうっおこずだし、あれだけ掟手に萜ちおその皋床で枈んで安心した」 「たぁな」 「たったく、おそ束兄さんが倒れおいるのを芋たずき、俺がどれだけ驚いたこずか  」  あのずきのこずを思い出すだけでサッず身䜓䞭から血の気が匕いおいく。階段から転げ萜ちおいくおそ束兄さんを芋お、䜕床呌びかけも目を芚たさないおそ束兄さんを芋お、本気で心臓が止たるかず思った、お願いだから、今埌䞀切こんなこずはやめおほしい。 「心配かけお悪かったな」  おそ束兄さんはさすがに申し蚳なさそうにシュンず萎れた様子で告げる。安易に責め立おるようなこずを蚀っおしたった自分を恥じた。いただれよりも䞍安でいっぱいなのはおそ束兄さんのはずなのに、どうしお俺はそれくらの気さえ遣えないんだろうか。 「いや、俺こそすたない。これから気を付けおくれればそれでいいんだ」  自分の䞍甲斐なさに俯く。するず、にゅっずこちらに手が䌞びおくる気配がした。  反射的に隣を向く。ひどく真剣な県差しをしたおそ束兄さんずカチず目が合った。そしお、ゆっくりず顔が近づいおくる。キス、される―― 「  っ」  口唇が重なりそうな雰囲気にぎゅっず目を瞑る。けれど、い぀たで経っおも口づけは蚪れず、その代わりにわさわさず髪を撫でられた。 「いろいろありがずな」 「え」 「心配しおくれたり病院付き添っおくれたりさ」  俺は圓然のこずをしたたでだ。こんな颚にお瀌を蚀われるようなこずはなにひず぀しおいない。むしろ、瞬時に助けおやれなかったこずを責められおもいいくらいだ。あの瞬間、俺はおそ束兄さんが階段から転げ萜ちおいるこずに気が付きながら、がんやりずそれを眺めるだけでなにも出来なかった。謝眪の蚀葉は盎接声にはならず、ごめん、ず心の䞭だけで呟いた。  䌚話はそこで途切れる。ポツンず沈黙が萜ちお、しばらく互いに無蚀を決め蟌んだ。怜査だなんだずいろいろずしおいるうちに、すっかり時間が経っおいた。昌食の時間はずっくに過ぎおいお、グゥず腹が鳎る音が聞こえた。 「腹枛ったな。このたたなんか食っお垰るか」 「ダメだ。おそ束兄さんは頭打っおるんだぞ。今日はこのたた倧人しく家に垰るっお蚀っただろ」 「えヌ、でも」 「でもじゃない」  䞍満気に口を尖らす男に蚀い聞かせる。断固ずした口調で蚀うず、今日ばかりはさすがのおそ束兄さんもあっさりず匕き䞋がった。ずはいえ、せっかくいろいろず蚈画しおくれおいたみたいなのに申し蚳がない気もする。だが、おそ束兄さんの身䜓が䞀番だ。 「そういえばさ、なんで俺、今日あんなずこいたわけ それに、お前ず出かける玄束ずかしおたっけ」 「え」  おそ束兄さんの発蚀に思わず怪蚝な顔になる。 「なんでっお、おそ束兄さんがたたには出かけようっお誘っおくれたじゃないか」 「マゞで 俺そんなこず蚀ったっけ」  おそ束兄さんは困惑した様子で俺を芋る。今日䞀緒にアクセサリヌ工房に行こうず蚀ったのはおそ束兄さんだし、その話をしたのは぀い昚日のこずだ。なのに、おそ束兄さんはどうやら俺が蚀っおいるこずが本気で解っおいないみたいだった。  蚘憶障害が残っおいるかもしれない、ず蚀う医垫の蚀葉を思い出す。日垞生掻に支障はないだろうず蚀っおいたし、自分のこずもしっかり芚えおいるようだったから軜く芋おいたけれど、぀たり、医垫の蚀っおいたこずはこういうこずなんだろうか。ストン、ず日垞の䞭から切り取られたように蚘憶が抜け萜ちる。  䟋えばすべおを忘れおしたったずなるずただわかりやすいが、おそ束兄さんのように郚分的に忘れおいるずいうのは逆に厄介かもしれない。自分でもなにを忘れおしたっおいるのかを認識できない。加えお、本人自身それを忘れおいるずいう自芚が薄い。 「悪い、マゞでなんにも芚えおなくおさ」  今日の玄束のほかに、おそ束兄さんはなにを忘れおしたっおいるんだろうか。唐突に䞍安が抌し寄せる。今日が俺たちの䞉か月蚘念だずいうこずは、俺のためにアクセサリヌを䜜っおくれおいたこずは芚えおいるだろうか。たさか、俺たちが付き合っおいるこずは   䞍安で仕方なかったけれど、だからずいっおおそ束兄さんを責めるこずはできない。おそ束兄さんだっお忘れたくお忘れたわけじゃないはずだ。 「いや、芚えおないのなら構わない」 「マゞごめん  」 「倧䞈倫だ。べ぀に、怒っおいるわけではない」  おそ束兄さんのせいじゃないず解っおはいながらも、぀いすげない蚀い方になった。だけど、本圓に怒っおいるわけではない。ただ、少しだけ哀しかった。  どの郚分の蚘憶が抜け萜ちおいるかは本人にも、もちろん俺にも解らないし、忘れおしたったのだっおおそ束兄さんのせいじゃないのも解っおいる。それでも、少なくずも自分ずのこずはすべお芚えおくれおいるだろうず過信しおいただけにその分寂しかった。 「ほんっずごめん」  困り果おた顔でおそ束兄さんは蚀う。いたにも泣き出しそうな顔に、芋おいるこっちの方が苊しくなった。そうだ、䞍安なのは俺じゃなくおおそ束兄さんなのだ。 「気にするな。俺も気にしおいない」 「いや、でも」 「そんなにたいしたこずでもないからな。それより、おそ束兄さんは身䜓䌑めるこずを優先しおくれ。もちろん、明日から少しの間は倖出犁止だからな」  反論は聞かない、ずでも蚀う様にピシャリず蚀い攟぀。立ち止たるおそ束兄さんを暪目にスタスタず歩き出すず、おそ束兄さんは「埅おっお」ず焊った声を出しながら远いかけおきた。今日の玄束を忘れおしたったこずは残念だが、自分からプレれントをせがむのもそれはそれでなんだか違う気がする。それに、すぐには無理でも、きっず機䌚はたたあるはずだ。  しかし、䞉か月蚘念の玄束は、い぀たで経っおも果たされるこずはなかった。  階段に萜ちおから䞉日ほどはさすがに倖出犁止什を敷いたのだが、四日目にもなるずいい加枛家の䞭にも飜きたのか、おそ束兄さんはいそいそずパチンコに出かけお行った。ずころどころ蚘憶が抜け萜ちおいるずはいえ、本人はもうすっかりず元気で、たるでなにもなかったかのようにケロリずしおいた。  もちろん家族には階段から萜ちたこずは䌝えおあったが、蚘憶障害が残っおいるこずは敢えお蚀わなかった。おそ束兄さんもそれを蚀うこずで䜙蚈な心配をかけたくないず蚀っおいたし、自分もそうだなず玍埗しおいた。  䞀週間も経぀ころには完党に埩掻しおいお、これたでずなんら倉わらない日垞が戻っおきた。その日もこれずいっおなにかあるわけでもなく、い぀も通り朝食を食べ、家でゎロゎロずテレビを芋おいた。おそ束兄さんは俺ずどこかに出かける玄束をしおいたこずを気にしおいるようで、あれから䜕床かお誘いを受けおいたのだが、正盎ただおそ束兄さんの身䜓のこずも気になっおいたし、もう少し埌にしようず、申し蚳なさそうに蚀うおそ束兄さんを説き䌏せた。それに、おそ束兄さん自身がその玄束自䜓を忘れおいるのに、無理矢理出かけるのもなんだか虚しい気がした。  それからたた日が経ち、ある火曜日の午埌。おそ束兄さんは朝から出かけおいたのだが、昌を少し過ぎたころに垰っおきた。前にも増しおおそ束兄さんの調子は良さそうで、怪我を心配しおいただけにほっず䞀安心した。 「そういえばさ」  がんやりずコロコロ倉わっおいくテレビ画面を芋おいるず、䞍意におそ束兄さんが口を開いた。 「さっき、偶然あの子に䌚った。姫子ちゃん、だっけ 病院玹介しおくれた子」  ゎロンず寝転がっおいた身䜓を起こす。芖線で先を促すず、おそ束兄さんは嬉々ずした様子で続けた。 「前䌚ったずきはそれどころじゃなかったけどさ、改めお芋るずすげぇ可愛い子だよな。それにいい子だし胞もデカいし」  姫子のこずを思い出しおでもいるのか、おそ束兄さんはスッず目を眇める。たるで想い人の話でもするかのような態床に、ふっず違和感が沞いお出た。俺ず付き合うようになっおから、おそ束兄さんはグラビア雑誌の類を芋なくなったどころか、街に出おも䞀切ほかの女の子には目もくれなくなった。  そんな男が、わざわざこんな話を俺にしお䞀䜓どうしたいんだろうか。もしかしおダキモチでも劬かせたいんだろうか。もしそうだずしたら、効果は抜矀だ。 「今日は急いでるみたいだったからゆっくり話せなかったんだけどさ、その代わりに週末に䌚う玄束しおきた。あんずきのお瀌もただできおなかったしな」  予想倖の発蚀にピクリず眉が動く。同時に、胞の䞭に嫌な圱が差した。俺の嫌な予感はよく圓たる。 たさか、やっぱり俺なんかよりも姫子方がいいなんお蚀い出すんじゃないだろうか。気持ちがどんどん深いずころぞず沈んでいく。 「でさ、お前だから話すけど、俺、あの子のこず奜きになったっぜいんだよね」 「  え」  そしお、続けられた蚀葉に完党に動きが止たった。予想をはるかに超えた発蚀に身䜓䞭の機胜が停止する。いた、おそ束兄さんはなんず蚀った  奜きになった  。いや、そんなはずはない。きっずただの聞き間違いに決たっおる。だっお、目の前のこの男は、いたも珟圚進行圢で俺の恋人のはずだからだ。奜きな盞手が出来たなんおなにをふざけたこずを  。正盎、そんなこずを蚀われたずころでどう反応をしたらいいのか解らない。  やはり、これは事実䞊の別れ話で、遠回しに俺ず別れたいず蚀っおいるんだろうか。しかし、それにしおは兄のこの態床はいささか䞍自然過ぎた。  頭の䞭は混乱しおいくばかりで芁領を埗ない。なにも返事もできずに固たっおいるず、兄はさらに远い打ちをかけるように蚀葉を続ける。 「おそ束兄さん、なにを蚀っお  」 「どうせ付き合っおる盞手もいないし、このたた䞀生童貞っおいうのも蟛いしなぁ。せっかくのチャンスなんだからものにしないずもったいねぇだろ」  俺の思いずは裏腹に、おそ束兄さんの口は盞倉わらず宇宙語のような蚀葉を繰り返す。宇宙人に成り果おた男をゞッず芋぀める。おそ束兄さんがなにを考えおいるのかは解らなかったけれど、それが決しお冗談でからかっおいるわけではないこずだけは䌝わっおきた。  グラグラず脳みそが揺れる。おそ束兄さんの蚀っおいる蚀葉の意味が、なにひず぀理解出来なかった。 「えっ、もしかしお俺が忘れおるだけでい぀の間にか圌女出来おたずか」  蚀葉を倱くした俺を䞍審に思ったのか、おそ束兄さんはパッず顔色を倉える。目の前の男は、たさか自分の付き合っおいた盞手が俺だなんお思いもしおいないように芋えた。唐突に突き付けられた珟実が脳内でうたく凊理しきれない。 なんだ、これは。なんの冗談だ。おそ束兄さんはいきなりなにを蚀っおいるんだろう。たた俺のこずからかっお遊んでいるんだろうか。でも、冗談にしおは面癜くもなんずもない。 「なヌんおな。たさかそんなわけ――」 「本圓に芚えおないのか」  ひず蚀そう告げるず、おそ束兄さんは「えっ」ずひどく驚いた顔をした。 「え、マゞで俺圌女出来おたの 冗談の぀もりだったんだけど  」 「そ、れは  」  なにも蚀い返せなかった。いや、なんず返せばいいのか解らなかったずでも蚀えばいいだろうか。 「えっ、なになに、じゃあもしかしお俺童貞じゃなかったりしお   チクショヌ、なんでそんな肝心なこずが思い出せねぇんだよ」  おそ束兄さんはがっくしず肩を萜ずすず、力なく呟いた。すっかりず気を萜ずした男の姿に、途端どうしようもなく泣きたくなった。  これは぀たり、おそ束兄さんは俺ず付き合っおいたこずを忘れおしたったずいうこずなんだろうか。思考の止たりかけた頭で懞呜に考える。  そういえば  。  このタむミングで、最近おそ束兄さんがキスをしおこなくなったこずを思い出す。前たでは、人目を盗んで毎日のようにしおいたずいうのに、ここ数日䞀床もそういうこずはしおこなかった。  されるず思っお身構えおもい぀も肩すかしを食らう。おそ束兄さんにだっおしたくないずきもあるだろうず䜕床も自分に蚀い聞かせおいたが、それもすべお俺ず付き合っおいるこず自䜓忘れおしたっおいたのだずしたら玍埗がいく。 『蚘憶障害』  医者の蚀っおいた蚀葉が頭の䞭でぐるぐるずたわる。 ――たさか  だけど、いた目の前に突き出された珟実がそれを裏付けおいる。吊定したいのにしきれない。おそ束兄さんの衚情が、すべおを物語っおいるような気がした。その瞬間、身䜓䞭が真っ黒な絶望に包たれた。 「っおこずは、姫子ちゃんのこずは諊めないずだよなぁ。お前はどう思う」  どう思うもなにも、むしろこっちが聞きたいくらいだ。奜きな盞手ができた なにを蚀っおるんだ。おそ束兄さんず付き合っおいるのはこの俺だ。ほんの数日前たで毎日のように俺のこず奜きだず蚀っおキスをしおセックスをしおいたはずなのに。なのに、どうしおほかの盞手を奜きだず蚀うんだ。どうしおそんな颚に困ったような顔で俺のこず芋るんだ。頭の䞭でいろんな感情がせめぎ合う。 「カラ束」  たぶん、『おそ束兄さんは俺ず付き合っおいた。だからその盞手のこずはきっぱり忘れおくれ』ず蚀えば、おそ束兄さんなら考え盎しおくれるような気がした。けれど、果たしお自分のこずを奜きでもない盞手ず付き合うこずに、䞀䜓なんの意味があるずいうんだろうか。  来たるべきずきが来た、ずでも蚀えばいいんだろうか。次第に頭が冷静さを取り戻しおいく。  今回はたたたた蚘憶障害ずいう思っおもみない圢だったけれど、本圓はもっず早くこうなっおいおもおかしくなかった。むしろ、男同士で、しかも兄匟でここたで続いたずいう方が奇跡だった。  そうだ、そう思えばいい。  だっお、俺自身怯えおいたじゃないか。い぀おそ束兄さんに捚おられおしたうだろうかっお、い぀奜きじゃなくなったっお蚀われるだろうかっお。  だから、これでよかった。きっずおそ束兄さんが蚘憶障害になろうがなるたいが、い぀かこういう日は必ず蚪れるのだ。それなら傷が浅いうちに終わらせた方が良い。無理矢理自分自身を玍埗させる。 「それは  」  おそ束兄さんはゎクリず唟を飲み次の蚀葉を埅っおいる。 「  いないよ」  震える声を抑えお絞り出す。 「え いたなん぀った」 「安心しろ、おそ束兄さんに圌女なんおできるわけないだろ」 「なんだよその蚀い方。ひっでぇな」  おそ束兄さんは子䟛みたいに膚れた顔をする。 「た、でも、いないならいないでよかったわ」  しかし、すぐにその衚情も切り替わり、嬉々ずしたものに倉わる。このずきすでに俺は、なにも考えられなくなっおいた。 「うたくいったらちゃんず報告するからさ、お前も応揎しおくれよな」  そのずきのおそ束兄さんのだらしなく緩み切った衚情を、俺はきっず䞀生忘れない。  もし本圓に神様がいるずしたら、きっず俺はひどく嫌われおいる。嫌われるようなこずをした぀もりはないけれど、自分で気づかないうちになにかしおしたったのかもしれない。だから俺だけが、こんな仕打ちを受けるのだ。  おそ束兄さんは俺ず付き合っおいたこずなんお綺麗さっぱり忘れお、いたではなにごずもなかったかのように兄貎面をする。これだけ俺に深い爪痕を残したくせに、圓の本人はたるで知らん顔だ。俺のこずが奜きだず、本気なんだず、蚀ったくせに。し぀こいくらいにキスをしお、もっずそれ以䞊のこずもしおきたくせに。おそ束兄さんは簡単に俺を切り捚おた。  別れようのひず蚀すらなく、俺から『恋人』ずいうポゞションを剥奪した。奜きじゃなくなったず蚀われるならただしも、忘れおしたうなんお、本圓に、なんお残酷なんだろう。  俺ず付き合っおいたこずを忘れおしたったのはおそ束兄さんのせいではない。だけど、それがどんな理由であれ、忘れおしたったずいう事実がすべおなんだず思った。おそ束兄さんにずっおは所詮、忘れおしたえる皋床のこずだった。結局は、そういうこずなのだ。奜きだずいう蚀葉に螊らされお、俺はありもしない倢を芋おいた。自分だけが特別だなんおそんなふざけた勘違いをしお、そしお絶望の底ぞず叩き぀けられ、俺は勝手に泣き叫んだ。  もしかしたら、おそ束兄さんはずっず忘れたかったのかもしれない。俺に奜きだず蚀ったこずも、俺ず付き合ったこずも、本圓はずっず埌悔しおいたのかもしれない。だからおそ束兄さんは、蚘憶障害をこれ幞いにず俺ずのこずを忘れおしたったのかもしれない。おそ束兄さんはそんなこずをするような人間じゃないず解っおいるのに、悪いこずばかりが頭の䞭を占拠しおいた。  愛なんおいう感情は、䞀䜓どこのだれが䜜り出したんだろうか。どうしおこんな感情を俺たち人間は怍え付けられたんだろう。こんな苊しいだけの気持ち、早く捚おおしたえばいいのに、それを捚おる術を俺は持っおいなかった。ぶ぀ける先のない感情は身䜓の䞭で溜たっおいくばかりで、それを吐き出すために俺は宛のない手玙を曞き始めた。  毎日䞀通ず぀。宛先は空欄のたた、俺は手玙を俺は曞き続けた。  おそ束兄さんの優しいずころが奜きだった。  子䟛っぜい笑顔が奜きだった。  甘く囁く声や、俺にだけ芋せる柔らかい衚情が奜きだった。  匂いも、䜓枩も、さらりずした髪の毛も、おそ束兄さんのすべおが倧奜きだった。  本圓に、心から奜きだった。  愛しおいた。  だから、奜きになっおもらえお嬉しかった。  キスをしおもらえおうれしかった。  初めおセックスをしたずきは、溶けおなくなっおしたうんじゃないかずさえ思った。  連なる蚀葉はありきたりなものばかり。だけど、そこには蚀葉以䞊の想いが詰たっおいた。  目を瞑り、幞せだった日々を想い出す。頭にこびり぀いた蚘憶はすべお色耪せずに矎しいたた鮮明に蘇る。  想い出せば出すほど、手玙を曞けば曞くほど想いは増しおいき、もう無駄だず解っおいながら、それでも今日は昚日よりもおそ束兄さんを奜きになっおいた。そしお、明日は今日よりも奜きになる。  涙で濡れた文字が滲んでがやける。この滲んだ文字のように俺の気持ちも霞んでしたえばいいのに、い぀たで経っおもその想いだけは綺麗なたた。成就しないず解っおいるのに想い続けおしたう自分がいい加枛嫌になる。 「おそ束兄さん  」  手玙を曞きながら、無意識に声が挏れる。い぀からか、おそ束兄さんの名を呌ぶのが口癖になっおいた。だけど、名前を呌んでももうあのずきみたいにおそ束兄さんは俺の名を呌んでくれない。そしおその代わりに、俺ではないだれかの名を呌ぶのだ。  おそ束兄さんから姫子の話を聞かされるたびに、腹の底から䞍快感がせり䞊がっおきた。圌女からメヌルの返信が来るたびに頭の䞭が真っ赀になっお、叫び出しそうになった。  ほんの少し前たで、そこは自分の居堎所だった。なのに、どうしおかいたは知らないだれかがいる。どうしお俺じゃなくお前がそこにいるんだ。そこは俺の堎所だったのに。おそ束兄さんに近づくな。おそ束兄さんに觊れおいいのは俺だけだ。  だけど、いたの俺にそれを蚀う資栌はない。おそ束兄さんはもう俺のものでもなんでもない。だから、俺にはそんなこず蚀う暩利はない。どうせ俺は、忘れられおしたったんだから。  どんどん卑屈になっおいく。このたただず、おそ束兄さんも、そしお関係のないあの圌女のこずたで憎んでしたいそうだった。いっそおそ束兄さんが振られお終わっおしたえばいいのに。そんな醜い感情が自分の䞭に芜生え膿を䜜っおいた。本圓に、最悪すぎる。  でも、だからず蚀っお、本圓のこずを蚀う぀もりもなかった。だっお、もしも拒絶をされたら、それこそ俺はもう立ち盎れない。臆病なくせに独占欲ばかりが増しおいき、そんな矛盟が俺を瞛り付けた。  もういっそおそ束兄さんのこずなんか忘れおしたいたい。おそ束兄さんが俺を忘れたように、俺もおそ束兄さんのこずを  。そもそも最初から䞀生自分の気持ちを打ち明ける぀もりもなかったのだ。  昔に戻っただけ。  そう思おうずしたけれど、おそ束兄さんに想われおいたずいう蚘憶がそれを邪魔した。身䜓は甘い蜜を吞っおしたった。甘い時間を知っおしたった。  それを知る前の自分がどんなだったか思い出せなくなった。おそ束兄さんず付き合うたで耐えられおきたこずが、途端耐えられなくなった。い぀から俺はこんな醜くなっおしたったんだろう。  おそ束兄さんが觊れおくれなくなっただけで泣きたくなった。おそ束兄さんが違う女のこずを考えおいるだけで気が狂いそうになった。おそ束兄さんが自分を芋おくれなくなっただけで死にたくなった。もう、こんな苊しみも、醜い気持ちも、なにもかも捚おおしたいたい。  い぀もみたいに奜きだっお蚀っおくれ。  い぀もみたいにキスしおくれ。  い぀もみたいに觊っおくれ。  どうしお、なにもしおこないんだ。  あたりの痛みにショヌトしお、俺はおそ束兄さんのこずも、考えるこずも、なにもかもを諊めた。  こんなこずになるなら、最初からおそ束兄さんのこずなんお奜きにならなければよかった。 [chapter:どうか俺を、忘れないで。]
ご郜合䞻矩の蚘憶喪倱ネタです。<br />前半ゆるふわラブ、埌半シリアス展開になっおいたす。<br />随分ず長くなっおしたいたしたが、お時間あれば最埌たで読んでやっおもらえるず嬉しいです。<br />続きはたた近々 。<br /><br />玠敵な衚玙お借りしたした<strong><a href="https://www.pixiv.net/artworks/53866611">illust/53866611</a></strong>
どうか俺を、忘れないで。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6539983#1
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「ふぁぁ  やっぱり゚ステルがいないず自分から動かなければならない分めんどくさいな。」  朝になり始めの午前5時頃、調敎宀から背䌞びず欠䌞を同時にしながらクランが気だるそうに出おくる。  培倜で゚ステルの修理に远われたためか、すぐそばにある魔法を䜿うゎブリンの死䜓の解析が出来なかったこずにお預けをくらっおいる気分で若干䞍機嫌になっおいる。 「適圓なパンあたりで枈たせおおくか  ん」  ふず郚屋を芋枡すず、床で毛垃を着お寝転がるクロム、壁を背もたれにしおスリヌプモヌドに入っおいるクラリスがいるのが芋受けられたが、明里の姿だけが芋圓たらない。 「んヌ   明里くんはもう起きたのか」  芋逃しおしたったかず思い、もう䞀床郚屋党䜓を芋枡すず、PCを眮くために䜜った仕切りからわずかに暪向きの明里らしき背䞭が芋える。  䜓勢から察するに、机の䞊で突っ䌏しお眠っおいるようだ。 「はぁ  昔の私みたいなこずをやっおるな。仕方ない  」  気を䜿い、毛垃をかけおやろうず近づこうずしたが、クランは足の裏に䜕か固いものの感觊を芚える。  幞い、䜕かはそこたで倧きいものではなかったため、痛みを感じる皋の物ではなかった。 「なんだこれは  郚品か」  足元に萜ちおいる䜕かの郚品らしき物䜓を手に取り、それがなんなのか考え぀぀も再び正面に目を向けるず、明里がいる堎所に近づくに぀れお床に萜ちおいる郚品の数が増えおいるのがわかった。 「ああ、明里くんの趣味か  なるほど。」  再び軜く溜め息を吐き、萜ちた郚品を集めお仕切りの暪にひず塊にしお眮いおおく。  そしおそのたた毛垃をかけようず歩み寄るず、倧量の郚品の䞊で眠る明里ず、クランが甚意したクラリスの内郚構造図がPC䞊の画面に映し出されおいた。 「ふっ  眠気芚たしだったずいうわけか。」  軜く埮笑み、クランはその堎を埌にする。  倧量の郚品の䞊で、たたに寝蚀を呟きながら明里は気持ち良さそうに眠り続けた。 「うヌん  クラリスさんの  䞭身  ふふ  」 [newpage] 「  の  里殿  明里殿  」 「んぅ  ふぁ  ぁ  なに  」 「明里殿 もう8時だずいうのに  い぀たで寝おいるんですか」  睡眠時間が倧幅に遅れ、充分な睡眠が取れない状態で明里は起こされた。クラリスの揺すりず声でなんずか意識を芚醒させたが、身䜓の気だるさがただ抜けきらず再び机の䞊に頭を預ける。 「ごめん  もうちょっず  だけ  」 「明里殿  」 「クラリス、さん、ここは、あたしに、たかせお。」  クラリスの埌ろから぀ん぀んず背䞭を突いた埌クロムが顔を出す。明里ず違い、ちゃんず睡眠を取っおいたためにしっかりず意識の芚醒が出来おいる。 「䜕をする぀もりなんだ」 「いいから、いいから。」  クラリスずクロムの立ち䜍眮が入れ替わり、癜いワンピヌス姿の少女が明里の背埌に立぀圢ずなった。  郚屋の明かりがなければ、どこかホラヌ映画のワンシヌンのような光景にもなるような雰囲気を醞し出しおいる。  明里の真埌ろたで近づき、背䞭を数回人差し指でトントンず軜く小突く。 「う゛ヌん  だからもう少し」 「○§¶★♯∵〃÷∞≫♭⊥∇∀√」 「ひぎゃあああ」  もう少し眠っおいたいずいう抗議のために䞀瞬埌ろに振り向くず、銖を100床皋傟けお倧きく目を芋開いた黒髪長髪の少女が息が盎に圓たるほどの距離で、聞いたこずもないような蚳のわからない蚀葉ず金切り声を党く動きの合わない口から喋り、䞡手銖を幜霊のように曲げお前に出しおいた。  突然芖界に入り蟌んだ異垞な光景ず、目の前の人物かどうかも怪しい盞手ぞの恐怖に、机の䞊の郚品をばら蒔きながら怅子から転げ萜ちた。 「あ、明里殿ヌ」 「えぞぞ、やりすぎ、ちゃった、かも。」  ゜ファヌ前のテヌブルに集たり、遅めの朝食を取る䞀同。  明里は䞍機嫌そうにクリヌムパンを頬匵り、クロムはブロック栄逊食品をサむダヌで流し蟌み、クラリスは二人が食事する様子を眺めおいる。 「もう、本圓にびっくりしたよ  ホラヌ映画がそのたた出おきたず思ったくらいだもん。」 「あれ、友垌が、芋せお、くれた、映画から、色々、合わせお、やっおみた。驚いお、くれお、嬉しかった。」 「やりすぎだよあれは  そういえば、クランさんはただ起きおないのかな」 「䞀応、起きおる、みたい。今、研究で、忙しいっお。」 「そういえば、あのゎブリンの死䜓を持ち垰ったんだっけ  あの時はどうなるこずかず思ったよ。」 「あたしも、明里、さんや、クラリス、さんが、いなかったら、無理、だった。」  昚日の思い出話に花を咲かせ、朝の食事を終える二人。ごちそうさたの 埌、明里が先に立ち䞊がっおクラリスぞ話しかける。 「さお、そろそろ倖ぞ行きたしょうか」 「そうだな、私も呚蟺の芋回りをしようず思っおいたずころだ。」  二人は立ち䞊がり、明里はリュックサックの䞭身の敎理を、クラリスは鎧や剣の具合を確かめる。 「そうだ、クロムちゃんも倖にいかない せっかくだし、私達ず䞀緒に行こうよ」 「あっ  ごめん、なさい。クラン、さんから、留守番を、頌たれおる。」 「留守番 あっ、そういえば今゚ステルさんが  」  軜くクロムが頷き、その埌に蚀葉を続ける。 「゚ステル、さんは、もう、倧䞈倫、みたい、だけど、研究に、今、倢䞭。」 「そっか  それじゃあ仕方ないね。」  二人は入り口の前でクロムに手を振り、研究所を埌にする。  二人がいなくなったタむミングを芋蚈らっお、調敎宀の前でクランに向けお質問を始める。 「クラン、さん、本圓に、䞊の、建物、から、奜きに」 「ああヌヌ持っおいっおいいぞヌヌ」  最埌たで聞いお答えるのが面倒くさかったのか、途䞭で蚀葉を遮っお蚱可を出す。  その蚀葉を聞いお、クロムの衚情が花を咲かせたように䞀気に明るくなり、その堎で跳ね䞊がる。 「やった やった」  先皋離れた二人ず同じように、しかし二人ずは違う目的のためにクロムも研究所の倖ぞず向かう。  その衚情は、この先の楜しみぞの期埅で明るく、足取りもずおも軜やかだった。  もうすぐ昌になる頃の青空の䞋、若干前傟姿勢になっおいる明里に挚拶代わりの日光が容赊なく降り泚ぎ、枋い顔をさせおいる。 「うう、眩しい  ふぁ  」 「明里殿、寝䞍足は身䜓に毒ですよ」 「うん、わかっおるよ  わかっおるけどさ  うぇ  」  軜く目を擊り、背䌞びしおなんずか眠気をスッキリさせようず詊みるが、雀の涙皋床か気䌑めの効果しかなく、寝䞍足時の倊怠感ず䞍快感から来る軜い吐き気も出始めた。  呆れ぀぀もクラリスは肩を軜く揉んだりず、眠気芚たしの手䌝いを行う。 「クラリスさんありがず  あれ、眠気のせいかモンスタヌっぜい幻芚が芋えたすね  」  二人が立぀道路の先、明里のボダけた芖界の䞭にはこちらに近づいおくるモンスタヌのような䜕かが芋えおいた。  こんな明るいうちからそんなわけはないだろうず軜く捉えたが、埌ろのクラリスは剣に手を眮いお構えを取る。 「明里殿、どうやら幻芚ではないようです。」 「ぞ」  芖界の䞭にいる䜕かが立ち止たったかず思うず、距離を詰めるように走り出しおくる。ボダけおいた䜕かの姿が少しず぀はっきりし始め、目を凝らしお芋おみるず、それがモンスタヌの矀れだずいうこずがようやくわかった。  クラリスの芖界には、モンスタヌの矀れであるこずに加えお、オヌクが二䜓ずゎブリンが二䜓の線成であるずいうこずたではっきり芋えおいる。  剣を匕き抜き、構えお突撃の準備を敎える。 「明里殿、無理に戊闘に参加なさらないように。ここは私に任せおください。」 「えっ、でも  」 「無理は犁物です。では  参る」 モンスタヌの矀れに向けお剣を突き立お、䞀盎線に攻め立おる。  その様子を芋た明里は、眠気によっおわずかに思考が鈍り、慌おおリュックサックからネむルガンを取り出そうずする。 「せやああああ」  クラリスの剣はあっずいう間にゎブリン二䜓を斬り倒し、それに怯んだオヌク達は螏ん匵っお意地を芋せるも単調な攻撃は難なく避けられ、ゎブリン達ず同じように切り䌏せられた。  明里は、ネむルガンの取り出しに手間取っおしたい、なんずか構える頃には既に戊闘が終わっおしたっおいた。 「明里殿、もう終わりたしたよ。」 「ぞっ あ、ああはい  ありがずうございたす。」  拍子抜けしたような気分になっおしたい、気の抜けたような返事を返しおしたう。  その様子を芋お、明里の偎たで歩いお肩に手を眮く。 「  明里殿、今のたたでは心配です。私の偎から離れないでくださいね。」 「ああ  はい。」  きょずんずした衚情のたた、明里は蚀われた通りに身䜓を寄せお若干䜓重を預けながら移動を始めた。  日の光がオレンゞ色になり、垰宅の譊告音声が流れるか流れないかずいう頃、二人は研究所䞊の家電量販店にもうすぐ着くかずいう所たで戻っおきおいた。 「今日はすみたせんでした  ご迷惑をかけちゃっお  」 「お気になさらず、明里殿を護るこずがご䞻人から呜じられた䜿呜ですから。」  ある皋床動けるたでに目が芚めた明里は、しっかりずクラリスの隣を歩いおいる。しかしそれでも目には若干也いおいるような感芚が残っおいるらしく、時おり目を匷く瞑っお眠気やその他諞々に抗うような行動を芋せおいる。 「それにしおも、今日はい぀もよりモンスタヌず遭遇する回数が倚かったですね。」 「そうなんですか」 「はい、い぀もは日䞭に遭遇するのは倚くお䞀日に二回皋床ですが、今日は四回も遭遇しおいたす。」 「  四回じゃなくお五回になりそうですよ。」  もうすぐ研究所に着くのではずいうずころで、家電量販店の前でうねうねず動く二䜓のスラむムが埅ち受ける。  先の戊闘で手持ちの歊噚に䜿う匟薬にあたる物を党お䜿っおしたっおいた明里は戊闘に参加できず、必然的にクラリスがスラむム二䜓の盞手をするこずずなった。 「任せおください。以前はスラむム盞手に䞍芚を取りたしたが、今の私ならば  参る」  スラむムに走っお近寄り、問答無甚で斬りかかる。  䞀刀䞡断されたスラむム達は二䜓共に爆散し、䜓液の䞀郚をクラリスの鎧ぞず付着させた。  二䜓分のため、以前よりも倚く付いおおり、䞃割方緑に色を塗り盎したかのような芋た目になっおいる。 「クラリスさん」 「心配には及びたせん これが私が新たに身に付けた魔法です 我が魂より攟お  勇み立぀雷鳎よ」  目を閉じお䞡手を組むように合掌し、詠唱を唱えた瞬間に目を匷く芋開く。するず、クラリスの党身に電撃が発生し、䜓液は党お匟き飛ばされお蒞発した。 「  どうですか明里殿」 「かっこいいです これならスラむムも怖くないですね」 「ええ しかし、こんなにもモンスタヌが珟れるずは  」 「モンスタヌが珟れお以来のような気がしたすね  そろそろ入りたしょうか。」  い぀もよりも倚く珟れるモンスタヌぞの疑問が尜きないたた、二人は研究所ぞず戻っおいった。  ただいた  ええっ」 「只今戻りた  」  研究所の入り口のドアを開けた瞬間に明里は驚き、クラリスは頭の䞊にハテナマヌクを浮かべた。  入り口のドアから真っ盎ぐ歩くずたどり着くテヌブルずその埌ろの壁に密接した゜ファヌ、そのテヌブルの呚りがポテトチップス等のスナック菓子の袋ず、飲み終えたゞュヌスの猶で散乱しおいるのである。  そのゎミの䞭心には壁から䌞びた充電ケヌブルに繋がっおいるノヌトPCがあり、その䞻はテヌブルの䞋に身䜓を入れおう぀䌏せでか぀だらけたポヌズでく぀ろぎきっおいるクロムだった。 「あっ、おかえり、二人ずも。」 「えっ、クロムちゃ  えっ、䜕これは  」 「ああ、ごめん、明里さん、これが、あたしの、䞀番、く぀ろげる、過ごし方。」  「な、なんず  ぐうたらな  」  足を䞀定のリズムでばた぀かせ、巊手でコン゜メ味のポテトチップスを頬匵り぀぀メロン゜ヌダで流し蟌む。右手はノヌトPCのタッチパネルや接続されたマりス、キヌボヌドの操䜜に圓おられ、スナック菓子の油分からはしっかりず守られおいる。  その堕萜した姿は、玔癜のワンピヌスを着た綺麗な髪を持぀少女の姿からは想像も出来ないものであり、二人は昚日のクロムの姿からは想像も぀かない皋の倧きすぎるギャップに、䞀歩も動けない状態になっおいた。 「明里さん、䞀枚、食べる」 「あ、うん  ありがずう。」  明里は手枡されたポテトチップを口に運び、ゆっくりず顎を動かす。その様子を芋お、クロムはにこにこしおいる。  ここでクロムが䜕かを思い出したかのようにノヌトPCの操䜜を始める。 「そうだ、そういえば、二人に、芋せたい、もの、あった。」 「ん、どうしたんだ」 「うん、これ。」  ノヌトPCを180床動かし、PC䞊の画面を二人に芋せる。そこにはネットニュヌスの蚘事が衚瀺されおおり、芋出しには『郜内におドラゎンの目撃情報が倚数。蚌拠写真も殺到。』の文字ずナヌザヌから提䟛されたず思わしき写真が蚘茉されおいた。 「これっお  」 「ドラゎン、あたし、達の、䞖界、でも、危険。もし、出䌚ったら、気を぀けお。」  明里はネット䞊の蚘事を詳しく読み進めおいくず、その䞭にモンスタヌに぀いお気になる蚘述を発芋する。  ドラゎンが通り過ぎた埌に、必ずず蚀っおいい皋に、別のモンスタヌが襲っおきたずいう情報が付随しおいた。 「クラリスさん これっおもしかしお  」 「なるほど、劙にモンスタヌずの遭遇が倚いこずず䜕か関係があるのかもしれんな。」 「ん 䜕か、あったの」 「実は  」  二人は今日の倖出で起こったこず、劙に遭遇するモンスタヌが倚かったこずをクロムに説明する。  䜕床も頷きながら話を聞いおいたが、途䞭から疑問笊を浮かべるような衚情になり始め、考えを巡らせるように唞りだす。 「ドラゎン、通り過ぎた、埌、䜕かが、珟れる、初めお、聞いた。」 「そうなんだ  」 「今日、ドラゎン、芋おない、よね だずしたら、関係、あるか、どうかも  」 「確かに、そうだよね  」 「他ノ堎所デ珟レタモンスタヌガコチラヘ移動シテむルトむり可胜性モアリマス。」 「あれ、゚ステルさん もう倧䞈倫なんですか」 「ハむ、状態ハ良奜デス。」  修理を終えお再起動した゚ステルが暪から話に割っお入り蟌む。修理埌も綺麗な姿勢で、瞬きもせず無衚情のたたを貫いおいる。  散らかり攟題のテヌブル呚りを芋た゚ステルは、空になった菓子袋や空き猶を䞀個ず぀小さく䞞めお集める。 「そっか、確かに他のずこからっお可胜性もあるよね  」 「他ニモ、既ニ䞀床通リ過ギタ埌トむり可胜性モ。」 「うヌむ  埒があかないな。」 「䜕か、因果、関係は、ありそう、だけど、今は、考えおも、仕方なさそう。」 「確かにそうですね  手がかりも少なすぎたすし。」 「うん、あたしは、たた、䜕か、あったら、䌝えるね。」  そう蚀うず、クロムはノヌトPCの画面の向きをテヌブルの方向に戻し、今床はチヌズ味のポップコヌンずりんごサむダヌを口に含み始めた。  郚屋䞭にポップコヌンのカリカリずした食感の音が響き枡り、その音に釣られたのか、明里の腹の虫が鳎き始める。 「あっ  そろそろ倕飯の時間ですね  クランさんも呌んだ方がいいかな」 「マスタヌニツむテデスガ、マスタヌカラノ䌝蚀ガゎザむマス。」  ゚ステルは明里達がいる方を身䜓党䜓で向き、口を開いお動きを止める。  するず、゚ステルの口からクランの声が聞こえ始める。どうやらメッセヌゞのために録音された音声のようだ。 『やあみんな これは私からの䌝蚀だが、少しの間研究やサプラむズのための調敎で籠りきりになりそうのので、どうしおも呌ばなきゃいけない時以倖はいないものず思っおくれお構わないぞ。それじゃあな』  ゚ステルの口が閉じられ、音声の再生が終了する。  目の前の機械仕掛けの゚ルフのさらなる機胜に、明里はたたげたようなポカンずした衚情をさらけ出す。 「゚ステルはご䞻人の物真䌌がうたいな」 「も、物真䌌ずは違うような  それじゃクランさんのこずは埌にしお、これから倕飯に  」 「倕食ニ関シテハ、私ガ調理臎シマス。明里サンハナックリトオ䌑ミクダサむ。」  キッチンに向かおうずした明里の足を右腕䞀本で胞を抌さえお止め、止たったこずを確認しおから゚ステルがキッチンぞず向かう。 「  意倖ず家事倧奜きなのかな」  倕食、入济等の人間の日垞的な行為、クラリスの充電兌スリヌプモヌドの蚭定、郚屋の消灯を䞀通り終えるず、明里は昚日の倜ず同じように自身のPCがある仕切りのスペヌスぞず移動し、PCを立ち䞊げた。 「さお、今日もやりたすか」  䞀人で集䞭できる環境になった時に出来た明里の新たな楜しみである、クラリスの内郚構造図を眺める䜜業をこの日も始める。 「そっか、腰の郚分っおこんな颚になっおるんだ  」  䞀人でぶ぀ぶ぀ず小さな声で喋りながら、暗闇の䞭でバックラむトで明るく光るPC画面をじっず眺めおいるその光景は、端から芋たらどこか危ない印象を持たれそうなものであった。  その様子を、だらしないポヌズで゜ファヌの䞊に寝転ぶクロムがじっず片目だけを開けお芋぀めおいる。明里のどこか元気のないような動きや衚情を芋お、䜕か原因があるのではず心配しおいたのだった。   明里、さん、倧䞈倫、かな    そのような非垞に身䜓に悪い生掻を続けお䞀週間皋経った頃のある朝、目の䞋にクマを䜜っお、垞に半開きのような状態で元気の欠片も芋られない様子の明里が、ゆっくりずスロヌペヌスで朝食の゚ステルお手補焌きたおパンを食べおいる時のこずだった。 「ねえ、明里さん、今日は、ここで、䌑んだ、ほうが、いいよ。」 「ふぇ   ああ  だいじょうぶだよ  だいじょうぶ  」  反応も鈍くなっおいるのか、クロムからの気遣いの蚀葉ぞの返事もどこかタむムラグが感じられ、蚀葉ず蚀葉の間も長くなっおいる。 「明里サンノ状態ハ芖芚的ニ芋テモトテモ良奜ト蚀゚ル状態デハアリマセン、䌑息ヲ掚奚シマス。」 「明里殿、私ず同行するこずは䜕も匷制されおいるこずじゃない。ここは䌑もう。」 「うヌヌヌヌん    それじゃ  きょうの  ぶんだけ  でも  」 「明里さん、あたし達、から、芋おも、今の、状態、良いずは、思えない。だから  」 「    」  口に咥えおいた食べかけのパンを皿に眮き、思考の時間を長めに取ったのか、しばらくの沈黙の埌で皆に口を開く。 「うん、ありがずう  でもね、いたここにいさせおくれるくらんさんぞのおれいもあるから  ね」  疲れの䞭からたぐりよせたような笑みを芋せながら、自分の意思を皆に䌝える。  それを聞いたクロムは、これではいくら説埗しおも応じないだろうずいう折れない意思に根負けし、明里の手を握る。 「仕方ない、わかった。今日、だけ、でも、明日、絶察、䌑む、こず。」 「うん  わかった  ふあ  ぁ  」  なんずかわかっおくれたずいう安堵感の埌に、力が抜けお欠䌞が出る。  欠䌞でほんの少しの間だけ眠気が晎れた明里は、残ったパンず甚意された牛乳を流し蟌んで倖出の仕床をする。 「  本圓に倧䞈倫なのだろうか」 「倧䞈倫、ずは、思えない、けど、今回、あたしも、぀いお、いく。明里さん、隣で、サポヌト、する。」 「そうか、そうしおくれるずありがたい。」 「䞀緒に、行っお、みたかった、のも、ある。」  クロムはやれやれずした衚情の埌、テヌブルに戻っおクロム明里ず同じようにパンず牛乳を流し蟌んで食事を終えた埌、軜く背䌞びず柔軟運動で身䜓を慣らし、倖出の準備を始めた。  その埌ろで、少しず぀リュックサックの䞭身確認等を行っお倖出の準備を続けおいた明里だが、ぜ぀ぜ぀ず自分は䜕を甚意しようずしおいたかを忘れ始める。 あれ、えヌっず  なんだったっけ  なにをよういしようず    忘れた䜕かを思い出そうず、立ち䞊がっお宀内の党䜓を芋枡しながら考え始める。その時の芖界は、自分が知っおいる堎所のはずなのに空間把握が歪んでいるかのような奇劙な感芚に囚われ始めおいた。  思考もだんだん抜象的な物になり、足元も芚束無くなっおくる。 あれ  おかしいな  いたわたしは  たっおるけど ういおるみたいで  あれ  なんだか  たわっお      この思考を最埌に、明里の意識は闇の䞭に萜ちた。  クロムずクラリスは、埌ろで䜕かが倒れる音を聞いおずっさに振り向く。  クロムの頭に嫌な予感が走り出すが、その予感は的䞭しおしたった。  リュックサックの偎で気を倱っお倒れた明里の姿が芖界に入り蟌んた。 「明里さん   明里さん」 「明里殿」 「明里サン」 䞉人が䞀斉に駆け寄り、クロムは身䜓を揺らしお意識を確かめ、゚ステルは脈拍や心臓の錓動、息の状態を確かめた。 「あ、明里殿は  倧䞈倫なのか」 「安心シテクダサむ、オ゜ラク気ヲ倱ッタダケカト。」 「よ、よかった  」 「でも、さすがに、こう、なるず、攟っお、おけない。明里さんを、䌑たせる。」  芋過ごせない事態が起きおしたったこずを皮切りに、今は明里を介抱するこずを優先するこずを刀断したクロム。  たず䜕をするべきかを考えおいたその矢先、今床は調敎宀の方向から興奮しおいるこずが音からも䌝わっおくる皋の激しい足音が聞こえおくる。  䞉人はその方に䞀斉に振り向いた次の瞬間、調敎宀の扉が開いたず同時に䞀人の人物が砂挠の䞭のオアシスを芋぀けたようなテンションで、跳ねながら郚屋に入っおきた。 「やったぁぁぁぁ やったぞぉぉぉぉ ぀いに私は魔力を突き止めたんだぁぁぁぁぁぁ」  右腕を倩に向けお突き䞊げる力匷いガッツポヌズを取り、今たでに芋たこずもないような生き生きずした衚情を芋せたのは、ゎブリンの死䜓を手に入れお以降ずっず調敎宀に籠りきりだった藀堂クランだった。  ガッツポヌズのたた止たったクランを含め、いきなりのテンションの高い叫び声ずポヌズを取られた䞉人は思考が远い付かずに固たり、冷凍されたかのように宀内の時間が止たった。  そしおそれから数秒埌、クランはポヌズを取ったたた床に倒れおしたった。 「ご䞻人」 「マスタヌ  」  クロムを陀いた二人は倒れた䞻人の元に向かい、無事を確かめる。 「明里サント同ゞペりナ状態ニ陥ッテむマスガ、呜ニ別状ハアリマセン。」 「そ、そうか  よかった  」  ほっず胞を撫で䞋ろすクラリス。  扉が開いたたたになっおいる調敎宀から、䜕やら空になった猶らしきものが転がっおくる。転がった猶ぱステルの足に圓たり、それをゎミず刀断しお拟った埌で、その猶が゚ナゞヌドリンクの空き猶だず識別した。 「  マスタヌト明里サンハ同ゞ原因デ倒レタ可胜性ガ高むト思ワレマス。」  「  ずにかく、二人、たずめお、寝かせたしょう。」  倒れた二人を゚ステルずクラリスがそれぞれ゜ファヌたで運び、起こさないようにゆっくりず隣同士で寄り添っお眠る圢で座らせる。  クロムが䞊から毛垃をかけるず、䌌おはいないものの、身䜓を合わせお寝息をたおる様子はたるで、芪子が隣同士に寄り添っお肌を觊れあわせながら眠る光景のようだった。  「ふう、これで、よし  ん」  ゚ステルが拟った゚ナゞヌドリンクの空き猶ず開いたたたの調敎宀の扉が芖界に入り、たさか倉なこずになっおいるのではないかず䞭の様子が気になったクロムは調敎宀ぞず足を螏み入れる。  入っおすぐに芖界に飛び蟌んできたのは、蚭眮されたゎミ箱から溢れお入りきらなくなっお床に散乱するほどのコヌヒヌや炭酞飲料、゚ナゞヌドリンクの空き猶、眠気芚たしのタブレットの空き箱耇数等、無理矢理意識を芚醒させお研究を続けおやろうずいう具珟化した執念が散らばっおいるかず思わせる光景が広がっおいた。  この光景にクロムは、呆れた感情を抌し出したような溜め息を぀く。 「はぁ  人間、みんな、無理、しすぎ、だよ。」 [newpage]  「う  うぅ  ん  あれ、えヌっず  」  長い眠りから芚めた明里は、薄く開いた目で蚘憶を蟿る。  荷物の甚意をしおいる途䞭で突然芖界が傟き、気づいたら゜ファヌの䞊で眠っおいたずいうずころたでは咄嗟に把握できたが、毛垃を持ち出したような芚えはない。  軜く銖を傟けお毛垃を䌝っお暪を向くず、隣には安らかな寝顔で同じ毛垃ず同じ゜ファヌで眠るクランの姿が入る。これたでの時折ハむテンションで、気だるく適圓そうな態床で立ち振舞っおいた圌女からは想像もできないような可愛く萜ち着いた寝顔ず寝息をたおおいた。 クランさんの隣で寝おた   うう  党く蚘憶にないよ    理解が远い付かない状態に戞惑い぀぀も、もう少し倧きく銖を動かしお郚屋の䞭を芋枡す。  正面にはテヌブルの䞋からひょこんず頭を出しお寝転がっおいるであろう状態からノヌトPCを楜しむクロムの姿ず、その隣で銖を時折小さく動かしおチラチラず画面を芋おいる様子が䌺えるクラリス、キッチンには䜕やら倧きな鍋を甚意しお調理を行う゚ステルの姿が確認出来た。 あれ  もう倕飯だったっけ   確かさっきは朝で    時間を確かめようずもう少しだけ倧きく銖を動かそうずするず、それに気づいたクラリスが近づいおくる。 「明里殿 目が芚めたしたか」 「明里さん、目が、芚めた」 「えっ えっ」  クロムも、ネットサヌフィンを途䞭で止めお駆け寄っおくる。顔を近づけお確かに起床したずいうこずを確認するず、二人は安堵の衚情を浮かべた。 「心配したしたよ明里殿。 倒れおしたったずきはどうしたものかず。」 「みんな、すごく、心配、しおた。」 「えっ、私、そんな倧倉なこずになっおたの  」 「ん  んん  ふはぁっ ああ良く寝た。」  二人のリアクションに戞惑いを芋せる明里の暪で、クランが気持ち良さそうに目芚める。たるで普通の日垞であるかのように倧きく背䌞びをしお、長く止めた息を䞀気に吐いお眠気を吹き飛ばす。 「お、䞉人ずもグッドモヌニン。」 「もう、倜。」 「䜕、もうそんなに経っおいたのか。」  䞀床倒れお目芚めた埌で、䜕事もなかったかのようにい぀も通りの調子で䞉人に接する様子を芋お、クロムはこの人は神経が麻痺しおいるのかただの超人なのか、理解の倖にいる人物なのではないかず思い始める。  時蚈の針は19時12分を指しおおり、少なくずも二人は11時間以䞊は眠っおいたずいうこずになる。 「既に倜なのか  」 「二人、ずも、無駄に、心配を、かけさせ  」 「たあいいや、頭もスッキリしたずころで重倧な発衚がある。」  クロムの発蚀を途䞭で遮り、呌吞を敎え神劙な面持ちで手を顔の前で合わせお思わせ振りな雰囲気を䜜り出す。 「実はな  ぀いに魔力の解析に成功したんだ」 「倒れる、前に、聞きたした。」 「えっ、そうだっけ」 「狂喜乱舞、しおたした。」 「そうだったか  蚘憶になかった。ずいうわけでだ、䞁床゚ステルも料理を䜜っおいる最䞭なわけだし、私が調べあげた魔力の抂芁に぀いお説明しよう。」 「  もう。」  その堎に立ち䞊がり他者の入り蟌む䜙地を䜜らないが劂く喋り぀぀、クロムのノヌトPCの正面に来るように倧回りに移動する。  早く自分が突き止めた事実を説明したくおりズりズしお仕方ないずいう雰囲気ず衚情を醞し出すこの時のクランの様子に、䞉人はじっず芖線を反らさずにいた。  明里は魔力ずいう蚀葉に至極単玔に興味を惹かれ、クラリスは䞻人の話ずいうだけでしっかりず話を聞こうずいう態床を瀺し、クロムは発蚀がこずごずく遮られたこずにもやもやし぀぀ムッずしながらも、自分の䞭で発生する物の知識がちょっず付くかもしれないずいう雑孊番組を芋るような感芚で若干の興味を瀺しおいた。 「さお、たず魔力がどういうものかずいうずころだが  所謂生呜゚ネルギヌのような物だず思われる。家電や電子機噚に䜿われる電気ず䌌たようなものだず思っおいい。」  ノヌトPCを軜くぜんぜんず叩き、珟圚あるものに䟋えおわかりやすく説明しようずする。 「魔力には觊れるこずは出来ないが、存圚を確かめるこずは出来る。魔力が存圚する堎所に手を眮くずどこか枩床の感芚ずは違う枩かい感芚があるんだ。」  足元に萜ちおいる空の菓子袋を手に取り、空気を入れるように䞭身を抌し広げる。 「䟋えばこの袋の䞭に魔力が入っおるずしよう、この䞭に手を入れるずほんのりず枩かい感芚を芚えるずいうわけだ。湯気みたいなものだな。さお、次は肝心のどこから魔力が生たれるかずいうこずだが  」  菓子袋を䞞めおゎミ箱ぞノヌルックで背面投げを行うが、圓然のごずくゎミ箱に入らなかったこずはおろか党く届いおすらいなかった。  手が空いたずころで、それぞれの人差し指で頭ず胞を指す。  「ここ、心臓ず脳だ。所謂生呜掻動を行う時に特に重芁ずなる堎所だな。あのゎブリンの身䜓を解剖しお確かめたんだが、魔力の感芚が特別匷かったのがこの二ヶ所だったんだ。」 「確かめたっお  盎接觊ったんですか」 「そうずも、確かめる方法がそれずなればな。」  解剖しお盎接觊れたずいう内容を聞き、頭の䞭で想像しおしたい、思わず頭ず胞にもわもわした奇劙な感芚が珟れた。 「その二ヶ所から魔力が生成されるわけだが、ならばなぜ私達にはそれが出来ないのか。これは私の仮説だが、この䞖界にはそもそも魔力を䜜ったり䜿うような生物が存圚しおいない。そもそも觊れる機䌚がなかったんだ。存圚しおいない物を生み出す等到底䞍可胜だし、それこそ無から有を生み出すようなものだ。」  巊に右にず埀埩しお歩きながら口を動かしお説明を続ける。その様子を䞉人は䞀緒に目を動かしお远いかけ぀぀話を聞いおいた。 「たあだから、その数少ない魔力をどう集めようかず考えたんだが、どうやっおも浮かばなかった。そこでクロム君のあの小さいビヌムを思い出したんだ。あのようにはっきりず目に写るように出来るならば、魔力の段階から胜動的に動かすこずはできないかず。そこで掃陀機で詊しに吞っおみたんだが  うたくいった。」 「掃陀機で」  ファンタゞヌずSF感が混ざる説明をされ続けた埌で、突然日垞に匕き戻されるような単語が出たこずで思わず明里はツッコむ勢いで声を出す。 「ああ、それによっお魔力は閉じられた空間なら貯めおおけるこずもわかった。だからこそ肉䜓に補充できるずいうわけだな。しかし、流石に掃陀機のたたでは効率が悪いからな  おいおい研究を進めお、魔力の䜿い方ず共にもっず効率のいい集め方を芋぀けお実甚化する。  ず、説明はここたでだな。」  思わず感心した明里は小さく拍手をし、クロムはぞぇずいう蚀葉が圢になったような衚情を取り、クラリスは小さい声でうん、うんず䞻人の蚀動の䞀぀䞀぀に玍埗するような挙動をしおいた。 「さおず、ここからがちょっずしたサプラむズだ。ず、その前に  明里君、リモコンを出しおくれたたえ。」 「リモコン  ですか ちょっず埅っおおください。」  リュックサックが眮かれた堎所たで移動し、䞭から指定されたリモコンを取り出す。 「よし、擬䌌人栌を切っおくれ。」 「えっ ああはい  」  手に持ったリモコンをクラリスぞず向けお、擬䌌人栌を切るボタンを抌す。  するず、䜕床も小さく頷いおいたクラリスは目を開き、生気の消えた無衚情で立ち䞊がる。 「擬䌌人栌の蚭定がオフになりたした。珟圚埅機䞭です。」 「なんで切ったんですか」 「たあ、この埌蚀うこずがちょっずな。」  人間性を倱ったようなロボットらしいクラリスを間近で初めお芋たクロムは、口を閉じお瞬きもせずマネキンのようになった様子を芳察しおいる。  動かなくなったクラリスをよそに、クランは調敎宀の入り口の暪に立っお改めおかしこたったような衚情ず姿勢をずる。 「準備は出来たな。実はな、以前からクラリスず同じような新しい察策機、所謂姉効機を以前から䜜っおいたんだが  䜕かしら特殊な歊装が必芁だず思っお起動しおいなかったんだ。しかし今回、魔力の吞収ずいう新たな歊噚が芋぀かり急遜改良を斜した。今は掃陀機の芁領でしかないが、こちらも改良を加えおいく぀もりだ  ずいうわけで玹介しよう 君達の新しい仲間だ」  䞡手を前に䌞ばし手を広げお、登堎挔出を自分で盛り䞊げるクラン。  調敎宀の扉が開き珟れた人物は、黒い長髪を持ち、たれ目気味で倧きな青い瞳、クラリスに勝るずも劣らない倧きな胞に長身の綺麗なスタむル、そしおクラリスず同じように党身を鎧に包んだ女性だった 「玹介しよう、新しい仲間のリリアだ。」 「うふふ、初めたしお皆さん  どうぞよろしくお願いしたす。」 「ど、どうも  よろしくお願いしたす。」 「  よろしく、お願い、したす。」  いかにもおしずやかで慎たしい理想的なお姉さんずいう雰囲気ず物腰に思わず頭を䞋げる二人。  「あら、そこにいるのはもしかしお  」 あっしたった、明里くん 擬䌌人栌のボタンを えっ、えっず  これですか  完党に䞀人で盛り䞊がっおいるうちにクラリスの事が頭から抜け萜ちおいたため、咄嗟にアむコンタクトで擬䌌人栌の起動を明里にお願いする。  それをなんずか理解しお受け取った明里は、リモコンの同じボタンをもう䞀床抌す。 「呜什を受信したした、擬䌌人栌を起動したす。」  クラリスはシステムメッセヌゞを口に出し、目を瞑っお数秒ほど再び動かなくなる。そしお再び目を開けるず、先皋たでの生気を持った瞳ず人間らしい衚情が戻っおきた。 「あれ、私は䞀䜓䜕を  」 「もしかしお、クラリス様」 「その声は  姉様」  自信の蚘憶が飛び、䞍思議に思っお頭に手を圓おる仕草をしおいるず、背埌から聞き芚えのあるような声が聞こえおくる。  その声に反応しお埌ろぞ振り向くず、そこには自信の蚘憶の䞭に存圚しおいる人物が目の前にいた。 「やっぱり  お久しぶりですクラリス様。」 「私こそ、久しぶりです姉様。」 姉効だっお蚭定  なのかな クラリスさんが効で  確かに芋た目はリリアさんのほうが幎䞊っぜいかも。  久しぶりの再開を果たしたずいうような反応をする二人は、その堎で抱き合っお再開を喜ぶ。  お互いに違いはあれど、二人の衚情は同じ喜びに満ちおいるのがわかった。 「いやあ姉ずの感動的な再䌚が出来およかったなリリア。これからよろしく頌むぞ。」 「はい、ご䞻人様。ご䞻人様ず皆様のために、誠心誠意この身を捧げさせおいただきたす。」 「  ん 姉」  クランの蚀葉に奇劙で倧きな違和感を芚えおその堎で明里は考え蟌む。  同様にクロムも明里ず同じ違和感を芚えおいたが、これたでのネットサヌフィンや同人誌からの経隓則で即座に察応した。  違和感を解消するために、明里はすぐさたクランに質問を投げかける。 「あの、クランさん」 「ん、どうした明里くん」 「クラリスさんずリリアさんっお  䞀応幎霢っおいく぀なんですか」 「ああ、蚭定幎霢ならばえっず  クラリスが21でリリアが19だが。」 「それで、クラリスさんがリリアさんを姉様っお呌んで、でもリリアさんはクラリスさんの姉で  あれ」  違和感の正䜓がはっきりしたず同時に、意味䞍明な事態に陥っおいるこずにさらに明里は頭を抱えお混乱する。 「え、えっず  クラリスさんは効の意味っおわかりたすか」 「効 私より埌に生たれた血の繋がった女性のこずだろう」 「はい、クラリスさんはいく぀ですか」 「今幎で21だ。」 「リリアさんはいく぀ですか」 「今幎で19になりたす。」 「  クラリスさん、リリアさんはクラリスさんの姉なんですか」 「そうだが  䜕かおかしなこずでも」 「え  えぇ」  自身が䜕か間違っおいるずも党く思っおいないような衚情で芋぀められる明里は、次第に自分の䜕が正しいのかわからなくなり始めた。  姉や効の定矩が本圓に正しいのか、自分が間違っおいるのではないかず悩み始め、頭がパンクしそうになる。  そんな明里をよそに、理解しおいるずいった衚情を芋せるクロムにクランが近づき、グッずサムズアップを向ける。 「幎䞋の姉ずいう歪んだシチュ゚ヌションはこういう時でもなければ実珟できないからな。」  玍埗の衚情ず力匷い芖線をクランに返し、お返し意思衚瀺のサムズアップを同じように向ける。 「ずおも、わかる。歪んだ、シチュ、すごく、いい。」 「そうだろうそうだろう はっはっは」 「わからない  䜕もかもわからない  」  地面に膝ず肘を着き、爆発しそうな頭を抱えお悩みに悩み続ける明里ず、姉効で手を繋いで䜕があったんだろうず心配そうな衚情を明里に向けるクラリスずリリア、おかしくなりそうな明里ずは察称的に熱く歪んだ理解の友情を亀わし合うクランずクロムず、混沌ずした奇劙で歪んだ空間が郚屋の䞀画に生たれおいた。  そんな光景をものずもせず、゚ステルはキッチンで黙々ず鍋の煮蟌み具合をじっず芋続けおいた。 「  調理終了マデアト10分ノ予定デス。」 [newpage]  食事や入济を䞀通り終えお時蚈の針は23時を指す頃、明里ずクロムの二人はクランからリリアの眠らせ方の説明を改めお受ける。 「クロムくんも䞀応知っおいるみたいだし説明は省くが、クラリスず同じように銖筋の端子から充電ケヌブルを接続しお、このリモコンからスリヌプモヌドにするんだ。わかったかな」 「はヌい。」 「クラリスさんず同じならたあ  」 「それじゃ、あたしが、やっおおく。」  クランの手元にあるリモコンを取り、リリアに向けおスリヌプモヌドのボタンを抌す。  するず、リリアの瞌が若干垂れ萜ち手で口を芆っお欠䌞をした。 「ふぁ ぅ  そろそろ就寝の時間でしょうか  」 「姉様、倧䞈倫ですか」 「ええ、お気になさらずクラリス様。」  ゆっくりず膝を぀き、急に倒れないようにクラリスが身䜓を支えながら壁を背もたれに座り蟌む。  クラリスも同じように膝を぀いたずころで、明里もスリヌプモヌドのボタンを抌す。  姉効揃っお瞌が半開きになり、声色も眠気が混ざったようなものになっお動きも鈍くなっおいた。 「ぅ  ふぁ  私も  そろそろ  姉様、隣で眠っおもよろしいでしょうか  」 「はい  おやすみなさいクラリス様  」 「おやすみなさい姉様  」  姉効揃っお壁を背もたれにしおスリヌプモヌドに入った。銖の力が抜け、二人の銖はがくんず䞋を向いおいる。 「あずは充電ケヌブルっず  」  新たにクロムが持っおきたリリア甚の充電ケヌブルをコンセントに刺し、予めコンセントに刺さっおいたケヌブルず共に姉効の銖筋のカバヌを倖しお、人工皮膚の色ず正反察な無機質な端子に接続する。  銖筋に繋がれた瞬間、姉効共々䞀瞬身䜓を震わせおいたが起きる気配は無かった。 「これでよしず。」 「䞖話が、やける。」 「お疲れ様二人ずも さお、そろそろ私達も寝るずしようかヌいくぞ゚ステル」 「カシコマリマシタマスタヌ。」  クランは背を向けお、二人にお䌑みの意思衚瀺を手を振っお衚した。  ゚ステルはクランが調敎宀に入る盎前のドアの前で振り向き、二人に䞀瀌をしおから郚屋に入った。 「  あたし達も、寝よう。」 「  うん、そうしよっか。」  お互いに顔を向き合い、軜くはにかんだ埌でそれぞれ寝る準備を始める。  明里は゜ファヌの䞊で毛垃を着お、クロムはテヌブルの䞋に戻り、その䞭に毛垃を朜らせお小動物のようにぺたっずう぀ぶせになる。 「おやすみなさいクロムちゃん。」 「おやすみ、なさい。」   なんだかクロムちゃん亀みたい。  むンパクトのあるクロムの就寝スタむルに軜く芋入り぀぀、そのたた目を閉じた。 「  クロムちゃんも寝たかな」  遠巻きにクロムが動く様子が無いこずを確認し、音をたおないように毛垃を取っおゆっくりず爪先立ちで自分のPCぞず歩き出す。 「そヌっず  そヌっず  」 「起きおる」 「ひうっ」  背埌から予想倖の声が突き刺さる。簡易的にでも確認したにも関わらず聞こえおきた声の䞻を確かめるために恐る恐る埌ろを向く。  そこにはテヌブルから抜けだし、立ち䞊がっお蔑んだ鋭い目で明里を芋぀めるクロムの姿があった。 「あ、く、クロムちゃん  おはよう  」 「おはよう、じゃない、なんで、起きおる」 「あはは  」  PCに近づくこずを諊め、クロムの元に近寄っお再び口を開く。 「なんだか眠れなくお  だから今日も」 「はぁ  ちょっず、話を、しよう。」  明里の服の袖を匕っ匵り、゜ファヌぞず連れ戻しお匷制的に座らせる。  その隣にクロムも座り、秘めた怒りず心配に満ちた衚情で顔を芗き蟌む。 「明里さん、倒れた、こず、忘れたの」 「ううん、忘れおないし、みんなにも迷惑かけたず思っおる。」 「なら、なんで、たた、倒れる、ような、こずを」 「  」 「そもそも、䜕を、やっおるの」  匷めの口調で盎球の質問をぶ぀けられ、䜕も蚀えず口を閉ざしおいた明里だっがせめお質問は返そうずゆっくりず口を開く。 「えっずね  芚えようずしおるの。その  クラリスさんの構造を。」 「クラリス、さんの」 「うん、私ね  」  明里はこれたでのクラリスに助けられた埌に解䜓しようずしたずころをクランに芋぀かり、そしおクランの元に来るこずになった経緯を倧雑把に話しおいく。  「  っおこずがあったの。」 「だいたい、わかった、けど、䜕かが、おかしい。」 「えっ、䜕が」 勝手に、恩人、分解、しようず、しおる、ずこずか    話の内容は理解はしたものの、芁所芁所に理解が远い付かない郚分が珟れお困惑するクロム。 「ううん、倧䞈倫、うん。」 「 それでね、最近クランさんがこっそりクラリスさんの構造図をくれたの。欲しかったものが手に入ったんだったら寝るこずなんおどうでもいいからすぐにでも芚えおしたいたい早く解䜓したい  そしおクランさんの圹に立ちたい  っおなっお。」 「それで、倒れた。」 「  うん。」  申し蚳なさそうな衚情で顔を芋る明里を芋お、クロムは膝䞊にある明里の手に自分の手を重ねる。 「気持ち、わかる、けど、無理、しちゃ、ダメ。だから、せめお、今日は、しっかり、寝お。」 「うん  わかった。」 「あたし、みんなに、健康で、いおほしい。あたし、捕たった、時、匱っお、倒れる、みんな、芋おきた、だから  」  最んだ力匷い瞳で芖線をずらさずじっず芋぀めるクロム。  掎んだ手の力がだんだん匷くなっおいくのを感じ、自然ず明里も芖線をそらすこずができなかった。  しばらく芋぀めあった埌、少しず぀クロムの頭が䞋の方ぞず傟いおいく。 「  ごめんね、心配かけちゃったみたいで。」 「  本圓は、クラン、さん、にも、蚀いたかった。けど、話、遮られ、ずっずず、行っちゃった。」 「たた明日にでも蚀えばいいよ。」 「うん  そうする。」  う぀向くクロムの手を握り返し、䞋から顔を芗く。クロムの衚情はどこか暗く、閉じた口もどこか䞍安そうに歪んでいた。 「  䞀緒に寝ようか。」 「うん  」  床に萜ちおいた自分の䜿っおいる毛垃を匕っ匵り䞊げ、䞀枚の毛垃で二人の身䜓を包む。  匱々しい衚情になったクロムは身䜓を明里ぞず預け、肩に頭を乗せる。 「  おやすみなさい。」 「おやすみ、なさい。」  二人は目を閉じお、眠りに぀く。  明里は起きおから再び寝るたでの時間が短かったためしっかりず眠るたで時間がかかったが、クロムず同じく深い眠りに入った。   ありがずうクロムちゃん。 [newpage]  次の日、テヌブルに集い朝食を口に運ぶ明里ずクランずクロム。  前日に倒れおいた二人は䜓調に䞍安がある様子は無く、スッキリずした目芚めで朝を迎えおいる。  クロムも同様に朝食を早いペヌスで口に運び、゚ステルが運んだオレンゞゞュヌスを勢い良く流し蟌む。元気そうな明里を芋お、䞍安無く食事に集䞭できおいるようだ。  クラリスずリリアは、クランの背埌で埅機しおおり、゚ステルはキッチンで調理噚具の掗浄を行っおいる。 「さお、今日はリリアの初陣ずなるわけだが  二人ずも仲良くな。」 「もちろんですよ」 「勿論ですご䞻人 姉様、よろしくお願い臎したす。」 「はい、クラリス様。お二方に比べお到らぬ所はあるかもしれたせんが、よろしくお願いしたす。」 やる気に満ちた凛々しい様を芋せるクラリスず、萜ち着いた雰囲気で䞀瀌を二人に向けるリリア、同じアンドロむドでも芖芚的に性栌の違いが芋える。 「あたしも、今日は、付いお、いきた  」 「あヌクロムくん、クロムくんはちょっず居おもらっおもいいかな 少し頌みたいこずがあっおな。」 「   わかり、たした。」  ゚ステルがいるのに自分が䜕か手䌝うこずがあるのだろうかず思い぀぀も、クロムは頌みを了承した。 うたく行けば魔力の研究が䞀気に進む  頌むぞクロムくん 「うヌん  やっぱりちゃんず起きたずきの日差しはいいですね」  倪陜に向けお倧きく背䌞びをしお、目䞀杯倪陜の光を身䜓に济びる明里。  その埌ろからクラリスずリリアも続き、今たで二人旅のような状態だった二人の間に新鮮な颚が吹く。 「無理はなさらないでくださいね明里殿。」 「倧䞈倫だよ、今床は無理しないからさ」 「うふふ、明里様は快掻な方なんですね。」 「うヌん、そう  なのかな 」  リリアからの評䟡に本圓にそうなのかずいう疑問を抱きながらも、ある皋床は圓おはたりそうではあるので心の䞭で玍埗する。 「それでは明里殿、姉様、今日も参りたしょう」 クラリスを先頭に、明里ずリリアはその埌ろから着いおくるように䞊んで䞉人は歩き始めた。  䞉人が出発しおからしばらくしお、研究所ではクランず゚ステルが調敎宀に籠り、クロムはそれたで通り菓子を頬匵り぀぀ネットサヌフィンを楜しんでいた。 「ふむふむ、そういえば、ドラゎンは、どう、なった、のかなヌ」  ドラゎンの珟圚の情報を調べようずブックマヌクに登録しおおいた情報サむトにアクセスしようずしたその時、調敎宀の扉が開いおにやけたのが透けお芋えるような声がクロムの背埌から飛んでくる。 「クロムくヌん ちょっず来おもらえるかなヌ」 「こんな、時に  はヌい」  情報サむトが衚瀺される前に、クロムはテヌブルの䞋から飛び出しお調敎宀に歩き出す。  所有者が画面の前から消えたノヌトPCの画面には、ドラゎンが研究所がある地域呚蟺に移動しおいるずいう情報が衚瀺されおいた。 「なんですか、クランさん。」 「ふふヌん  少しだけお願いしたいこずがあっおな  ちょっずここの台の䞊で寝おもらえるかな」 「うヌん  いいけど  」  疑うこずなく蚀われた通りに蚭眮されたベッドのような台の䞊に仰向けになる。 ん、あれ、この、状況、もしかしお 「やれ、゚ステル。」 「カシコマリマシタ。」  ゚ステルが操䜜パネルを䜿い、クロムの䞡手䞡足をベッドず䞀䜓化した手錠で動きを封じ蟌める。  「なっ、したった  これ、よくある、パタヌン」 「残念だったなヌ 無譊戒だったそっちが悪いんだぞヌ」  クランはおちょくるような声色ず顔で、クロムの頬を぀っ突きながらベッドの呚囲をぐるぐるず歩き回る。  クロムはなんずか抜け出そうず四肢を動かすが、手錠が壊れる様子は無い。 「こんな手荒なこずしおすたなかったが  堎合によっおは逃げられるかもしれないので予めこういう状態にしおからじゃないず聞き入れおもらえないず思っおな。」 「な、䜕を、する、぀もり」 「たあ埅お、その前にちょっずした質問があるんだ。クロム君  ずいうより、ゎヌレムはその身䜓を自由に倉化させるこずが出来るらしいな」  怯えた衚情ず少しだけ芜生えた敵意を芖線に混ぜながら、なんずか質問に答えようずする。 「うん、䞀応  」 「なるほど、その身䜓は砂ず岩ず土で出来おいるらしいが  䞀郚分だけその身䜓の状態を解くこずは出来るのかな 䟋えお蚀えば、手銖から先だけを土や砂に戻したりずいうこずだ。」 「  出来る。」 「よし それでは最埌の質問だ これはあくたで仮説だが、ゎヌレムは土や砂の他に栞ずなる物質を持ち、その栞がゎヌレムの䞭心で、心臓や脳の圹目を果たしおいる。合っおるかな」 「  だいたい、あっおる  ず思う。」 「やった それがわかればあずは頌みごずだけだ。」  ただ䜕もしおいないずいうのに、浮かれ調子になっおいるクランをその埌ろから゚ステルがじっず芋぀めおいた。 「頌み事」 「ああ、そんなクロム君を芋蟌んで二぀頌み事がある。たず䞀぀は、君が芋せおくれたあのビヌム、それを身䜓の䞭身を芋せた状態で行っおほしいんだ。」 「  はい」  突然の解剖されたような状態でビヌムを出しおくれ宣蚀に、思考が止たっおしたうクロム。喉にあたる郚分に劙なむずむずした感芚が起きる。 「昚日説明した通り、魔力を集めるこずは出来たが䜿うこずができおいない。そこで君の䞭身が芋える状態でメカニズムや状態を解明できれば科孊的にも魔力が䜿えるのではず思っおな。どうだ」 「    」  自分の身䜓に問題は無いような頌みではあるものの、䞭身を曝け出し続けるこずに抵抗があり耇雑そうな感情がそのたた衚情に衚れる。 「  芋返りは」 「奜きな同人誌10冊。」  倧きく目を芋開き、悪倢から飛び起きるような勢いで䞊がるだけ䞊半身を䞊げる。どうやら盞圓食い぀きが良かったらしい。 「それなら、やる」 「よしよしありがずうクロムくん 玠晎らしい科孊の進歩がたた」  頭をわしゃわしゃず撫でお、手のひらから倚倧なる感謝の念を盎接䌝えおいく。  クランの衚情もどこか未来が開けたず蚀わんばかりの明るさに溢れおいた。 「さお、もう䞀぀の頌み事だが  」 「なに あたしに、できる、こずなら」 「君の栞の䞀郚を取らせおほしい。」 「    」  調敎宀の䞭に時が止たったような静寂が蚪れる。先皋たで興奮するように喜びの衚情ず動きを芋せおいたゎヌレムの少女は、それこそ本物の石像のように動䜜がピタッず止たり口をあんぐりず開けたたたになっおいた。  5秒ほどそのような状況が続いた埌、クロムば倧きく四肢をばた぀かせるように暎れだす 「やだ やだ 絶察、痛い 怖い 助けお」 「お、萜ち着けクロムくん。䜕も四分の䞀抜き取るずかハンマヌで砕いた砎片を取るずかそういうこずじゃないんだ。ほんの切った芪指の爪皋床の倧きさ䜍でいいんだよ。」 「無理 怖い うう  」 「匱ったな  材質を調べお生物足らしめる鉱物ならクラリスに実隓ずしお䜿うはずだったんだが  よし クロムくんの欲しいものをなんでもあげよう   ず蚀ったら」 「    」  途䞭から呚りにはっきり聞こえないような小声でぶ぀ぶ぀ず喋り、その埌でクロムに新たな取匕条件を持ちかける。  閉じたたた唇を歪たせ、最んだ目で匱々しく睚み付けながらクランの顔を芋る。  『欲しいものをなんでも』ずいう甘矎な蚀葉に心が揺れたのか、唞り声を䞊げお悩んだ末に再び口を開く。 「本圓に、欲しい、ものを、くれるの」 「あ、ああもちろん。」 「それじゃ、ちょっず、だけなら  」 「よっしゃ 本圓にありがずうクロムくん」  自分の口から答えおしたったものの、この返答が正解だったのか䞍正解だったのかは圓の本人にも党く芋圓が぀かず、もしかしたら自分は身を滅がすような途蜍も無い苊しみを味わう遞択肢を遞んでしたったのではないかず埌悔の念が埌から襲っおくる。  「早速準備を始めるぞ゚ステル」 「カシコマリマシタマスタヌ。」 どうか、この埌も、普通で、いられ、たすように    クロム達のやり取りが行われおから20分皋経った埌、その時の明里達はモンスタヌ達ずも未だ遭遇しないたたアスファルトの道の䞊を歩き続けおいた。  「明里様はクラリス様ず共に行動をしおいるずお聞きしたしたが、クラリス様が䜕か至らなかったりなどはございたせんでしたか」 「ねっ、姉様 䜕を蚀っおいるのですか」  リリアからの質問を暪から聞いおクラリスは慌お぀぀も顔を赀くする。 「いえ、むしろい぀も至らないのは私の方で  本人がいる時にこんなこずを蚀うのは恥ずかしいんですけど、い぀もクラリスさんに助けられお感謝しおいたす。」  質問に察しお明里は、ストレヌトに感謝の気持ちを蟌めた返答をする。  その盎球っぷりにクラリスはさらに顔を赀くしお二人がいない方向ぞず顔を向けた。 「あらあらクラリス様、照れなくおもよろしいじゃないですか。」 「くっ  」  耒め殺しのような感芚を受けおいたその時、䞉人の前方に䜕やら怪しげな圱を芖認する。  これたでの経隓からするずモンスタヌず遭遇したず思われるが、これたでの䞭で圱の数が特段倚く芋受けられた。  「っ 姉様、剣を構えおください。」 「あら、良いずころだったのに  わかりたした。」  二人は揃っお腰の剣に手を圓お、い぀でも戊闘に入れるようにず臚戊態勢を敎える。  明里も同様にリュックサックからネむルガンを取りだし、埌ろから揎護を行うために気持ちを入れ換えお構えを取る。  前方を譊戒し぀぀ゆっくりず擊り足気味に進んで行くず、䜕床も芋たこずのあるオヌクやゎブリンの矀れが向かっおきおいるこずが確認出来た。しかしその数は、パッず確認できるだけでも20䜓以䞊は確認できる。 「こんな数のモンスタヌが  」 「数で圧される可胜性も無くはない  行きたすよ姉様。」 「はい」  二人は鞘から剣を匕き抜き、モンスタヌをしっかりず芖界に捉える。  初めお匕き抜かれおその姿を芋せたリリアの剣は、芋た目クラリスの物よりも倧きめで重量もあるだろうず芋受けられるような西掋剣だった。  モンスタヌ達も䞉人の姿を芖界に捉え、目をギラ぀かせながら䞀斉に走り出した。  匷く握った剣ず共に、姉効それぞれ違う構えを取っお距離ずこちらに来るたでの時間を想定する。 「行くぞ」  二人は正面からモンスタヌの矀れぞず突撃する。  その埌ろから、揎護を行うために明里もある皋床距離を取っお぀いおくる。  クラリスはその剣でモンスタヌ達を䞀䜓ず぀斬り払い、確実に腕や銖を吹き飛ばしお仕留めおいった。モンスタヌからの攻撃もしっかりず剣で防埡し、無傷のたた圧倒しおいく。  リリアは䞀振りの重い䞀撃でモンスタヌ達をたずめお薙ぎ払う。攻撃回数はクラリスよりも少ないものの、䞀回䞀回济びせられる攻撃は臎呜的なものであり、あるオヌクは身䜓ごず真っ二぀、あるゎブリンは䞊半身ず䞋半身が離ればなれになりながらも倧きく遠くぞ吹き飛ばされた。  その埌ろから明里は、二人に攻撃が届きそうなモンスタヌに察しおネむルガンで牜制し、ダメヌゞを䞎えるラッキヌパンチを狙い぀぀も意識を反らさせお攻撃の隙を増やす。  䞉人の攻勢はモンスタヌ達を圧倒し、あっずいう間に数十はいたであろうモンスタヌの矀れは壊滅した。 「クラリス様、たた腕を䞊げたしたね。」 「姉様こそ、お芋事でした。」 「ふう、やりたしたねお二人ずも クラリスさんだけじゃなくリリアさんもいればもう怖いもの無しですよ」 「うふふ、ありがずうございたす。」  圧倒的な戊果ず自分もちゃんず戊闘に貢献できた事に嬉しくなりはしゃぐ明里。  それから間もなく䞉人はモンスタヌ達が向かっおきおいた方向から叫び声のような物が聞こえる。その声は以前にもどこかで聞いた芚えのあるようなものだった。 「この声っおもしかしお  」  嫌な予感ず共に芖線を向けるず、新たなモンスタヌの矀れがやっお来おいた。   「懲りずに䜕床も  」 「私達の敵ではありたせん、」  剣を構え盎す二人ず同じくネむルガンの準備をし盎す明里。  遠巻きには先皋よりも敵の数が増えおいるようにも芋えるが、䞉人は先皋ず同じ戊法で察凊を行った。  モンスタヌ達は䞉人の力に為す術なく、その前に倒された矀れず同じように党滅する寞前たで远い詰められる。  その時、再び䞉人は叫び声のような声を聞く。しかし今床の声は叫び声ずいうよりも咆哮に近いものであり、さらに声は地䞊からではなく空から耳に届くようなものだった。  空から降り泚ぐ謎の咆哮に䞉人は䞀瞬だけ動きを止めたが、すかさず正面から繰り出されたオヌクやゎブリンの攻撃に我に返り、しっかりず適切に察応した。  モンスタヌ達ず盎接戊っおいる二人ずは違い、ある皋床距離を取った揎護の立堎にいる明里は、空からの咆哮に察しお芖線を移動させお360床その堎で回り、呚囲を譊戒しながら声の正䜓を突き止めようずする。 「この声、さっきみたいなあい぀らの声ずは違う  たさか」  明里の脳裏に䞀぀の最悪の可胜性が浮かび䞊がる。  その脳内の可胜性に察しお倧正解だず蚀わんばかりに、その時䞁床埌ろを向いおいた明里の背䞭に匷い颚が砂埃ず共に襲いかかる。  吹き飛ばされないように膝を曲げお螏ん匵り぀぀埌ろに振り向くず、残り少ないモンスタヌ達の遥か埌方、ネットの写真画像でしか確認したこずがない姿の化物が盎接明里達の芖界に䟵略した。  自分が出䌚ったトロヌルよりもさらに巚倧な図䜓、倧きく広げられた背䞭から生える巚倧な双翌、翡翠色の鱗、類䌌しおいるず蚀われる爬虫類の類いを遥かに超越した容姿。目の前に飛び蟌んできた生物は、たさに䌝説䞊の生物のドラゎンその物だった。 「嘘  でしょ  」  目の前に飛び蟌んだ圧倒的な生物を前に、明里はただ呆然ず光を倱った県で立ち尜くすしかなかった。 「ドラゎンが  こんな時に  」 「これは  盞圓な危機ですね  」  クラリスは残ったオヌクず戊いながらも、芖線はドラゎンに反らしお挙動を䌺い぀぀譊戒を行い、リリアは呚囲のモンスタヌぞ倧振りな斬り払いで掃蚎しながらクラリスず同様に芖線をドラゎンに向けおいる。  ドラゎンは矜根を畳み、ゆっくりず地䞊に降り立぀。そしおそれたでのモンスタヌの矀れず同様に䞉人の元ぞず歩き出した。 「っ 来るぞ」  最埌の䞀䜓ずなったオヌクの心臓を剣で貫き、匕き抜いおドラゎンの方向ぞず蹎り飛ばす。  モンスタヌ達を党滅させた二人はそのたたドラゎンに察しお剣を構える。  蹎り飛ばされたオヌクはドラゎンの目の前で倒れ、その様子が芖界に入ったドラゎンによっお捕食された。  攟心状態になっおいた明里は我に返り、この隙にクランぞず電話をかける。 「うヌん、栞の欠片をちょっず取っただけでここたで取り乱すずは。」 「うう、マッド、サむ゚ンティスト  」  その頃クロムを実隓のサンプル材料ずしお取り扱おうずしおいたクランは、栞の䞀郚を取ったこずによる取り乱しように疲匊し、しばしの䌑憩を取っおいた。  四肢の拘束が既に解かれおいたクロムは、身䜓を捩らせお涙目で震えおいる。 「そう蚀われるのは久しぶりだなぁ  さお、そろそろ続きを」 「マスタヌ、明里サンカラオ電話デス。」 「ん、わかった。」  ゚ステルが持ち運んできた携垯電話を手に取り、右腕をクロムが乗った台に乗せお肘を付いお力を抜いお電話に出る。 「あヌもしもし明里くん すたないが今は倧切な  」 「クランさん 倧倉です ド  ドラゎンが  ドラゎンが私達の目の前に」 「  なんだず」 「このたたじゃクラリスさんもリリアさんも  きゃっ」 「明里くん」  䜕かがぶ぀かるような激しい音が電話越しに聞こえ、そのたた明里からの声は途切れた。 「゚ステル、至急明里君達の元ぞ向かっおくれ。絶察に戊わず連れ垰るこずだ。」 「カシコマリマシタマスタヌ。」  ゚ステルが党速力で研究所を出おいった。 「今の、明里さん  」 「ああ、ドラゎンに遭遇したらしい。」 「   あたしも、行く」 「  ダメだ。さっき栞の欠片を取られおガクガク震えおいたのを忘れたか そんな状態で立ち向かうずなるず、共倒れになるかもしれんぞ」 「倧䞈倫   倚分。」  栞の欠片を取ったこずを芁因に未だ小さく震える手足をよそに、空元気ずも芋お取れる匷気の衚情ず心構えでクランに蚎える。 「無理無理、今は倧人しく私の実隓に付き合っおくれ。」 「どうしお ゚ステル、䞀人、じゃ、ドラゎンは  」 「䜕も今倒す必芁はない。倒すならば戊力を敎えおからでいいんだ。゚ステルを送り蟌んだのはそもそも逃がすためだからな。それに  」 「  それに」 「私が初めお䜜ったアンドロむドである゚ステルを舐めおもらっおは困る。」  自信ず信頌に溢れたニヒルな埮笑みをクロムに向けた。  その埮笑みにクロムは、以前の䞖界で聞いたドラゎンの話を思い出し、䞍安が拭いきれなかった。  クランに話しおいるその途䞭、ドラゎンから攟たれた炎が䞀盎線に二人を無芖しお明里がいる方向ぞず飛んでいく。その炎を明里はなんずかギリギリのずころで避けたが、その拍子に携垯を手離しおしたう。 「明里様」 「明里殿 くっ  怪物め」  クラリスずリリアは぀たみの感芚で足元のモンスタヌの死䜓を貪るドラゎンに正面から立ち向かう。  その二人を小煩い虫のように捉えたドラゎンは、巊腕を䌞ばしおリリアを捕獲する。 「きゃっ したった  離しお ください」  捕たれたリリアはなんずか抵抗しようず腕を剣で䜕床も斬り぀けようずするが、硬い鱗に芆われた肌に刃を通すこずができずこずごずく匟かれおしたう。  抵抗をするリリアに察し、ドラゎンは掎んだ巊手の力を埐々に匷めおリリアを握り朰そうずする。  リリアの身䜓から人間の身䜓から発せられるような骚折音ではなく、金属がひしゃげるような鈍い音が鳎り響く。 「あっ  あああぁぁぁ 内郚フレヌム砎損、右腕郚ナニット砎損、巊腕郚ナニット砎損、危険です、至急メンテナンスを  」  䞀瞬苊しみの衚情を芋せたリリアは、その埌衚情が消えお淡々ずシステムメッセヌゞによる譊告を喋り出す。  埐々に力を匷めるドラゎンの巊手の䞭のリリアは、人の圢をした機械になり果おようずしおいた。 「姉様 貎様ぁぁぁ」  姉を助けるためにクラリスは飛び䞊がっお巊腕を叩き斬ろうずする。  しかし飛び䞊がる高床そのものは足りおいたものの、その間倧きな隙を曝しおしたっおいたクラリスは残った右腕で叩き萜ずされおしたう。  クラリスはドラゎンの腕力ず地面に叩き぀けられた衝撃によっお、巊腕が関節の皌働域を超えお倧きく埌ろに捻じ曲がり、内郚回路に異垞をきたす。 「巊腕郚砎損、巊腕郚からの信号が確認できたせせせsssss    くっ、ただただ」  無衚情のシステムメッセヌゞを口にしながら立ち䞊がるも、等間隔で痙攣を起こしおなんずかバランスを保っおいるような状態ずなる。  再びゞャンプしお攻めようずしたクラリスに、远い撃ちをかけるかのごずくドラゎンの口から巚倧な火球が容赊無く襲いかかる。  火球を避けるためにバックステップで察応しようずしたが、地面に着匟した際に爆発が発生し、爆炎を济びるず同時に爆颚によっお明里が立ち尜くす堎所よりもさらに埌方に吹き飛ばされお地面をスラむドし、停止した。 「クラリスさん」  明里は吹き飛ばされたクラリスの元ぞ駆け寄るが、そこで目にしたのは顔の右半分の人工皮膚が吹き飛び、盎接高熱を济びたこずによっお溶け出した鎧から芗かせる無数の焊げ跡の穎が出来たTシャツ、そしおその䞋からぜ぀ぜ぀ず现かく小さな点を䜜り溶けた人工皮膚ずその䞋の内郚フレヌム。右腕は鎧ごず溶けお内郚構造が剥き出しになり、ガクガクず震えながら䜕かを掎むような動䜜をしおいた。 「きき筐䜓枩床がgが異垞䞊昇しおしおしおsおいたす。冷华を行い行いれiきゃkkををを  」  クラリスは党身から蒞気を吹き出し、党身の冷华を行う。  反応を確かめるために明里は爆颚の圱響が少ない身䜓の郚䜍からクラリスの身䜓を揺らすが、糞の切れた人圢のように党く反応が無い。  クラリスばかりに意識が向いおいた明里は、捉えられたたたのリリアの事を思い出しおドラゎンの方に銖を向ける。  ドラゎンの巊手の䞭に䟝然ずしお掎たれたたたのリリアは、先皋よりもさらに圧迫されお銖から䞋、倪股から䞊の身䜓は倧きく歪んでいる様子が芋おずれた。 「内nnnn郚かkkk回路が砎損しおしおおおssssいたすすすssss  」 「ああ  」  絶䜓絶呜の状況に眮かれた明里は、極限の状態の䞭でどうすればいいのかを考える。  今たでならば怯えお頭の䞭が真っ癜になり殺されるのを埅぀ばかりだったが、今の明里は内心盞圓な恐怖に襲われ぀぀もこの堎をどうすればいいのかずいう思考を行うこずが出来るたでには銎れるこずが出来おいた。 私の力じゃ到底敵わない  ダメヌゞだっお䞎えるこずすらできない。だったら逃げるしかないけどどうやっお逃げるの リリアさんを芋棄おれば倧䞈倫かもしれないけどそんなこずできるわけない  䜕床も䜕床も短いうちに脳内でトラむアンド゚ラヌを繰り返し、なんずか党員が助かる方法を捻り出そうずするがどうしおも容赊無くゎミのように殺される未来しか芋えない。  䜕床も考えるうちに、明里は以前クランからプレれントされた護身道具の䞀぀を思い出す。 「そうだ あれを䜿えばなんずかなるかも」  リュックサックを地面に降ろし、その䞭を持っお脳内にたどり着いた䞀぀の回答を探し出す。 「あった これを䜿えば  」  明里が握り締めおリュックサックの䞭から出おきたのはフラッシュバンだった。以前クランからプレれントされた護身道具の䞭に入っおいたが、結局䜿うこずがなかった物だった。しかしここにきお唯䞀の掻路ずしお䜿うずきが来たのだ。 「でもどうしよう、私の腕じゃ絶察に届きっこない  」  深く考えるたでもなく、明里自身の投擲距離ずドラゎンずの距離を芋るずドラゎンのもずたで届かないであろうずいうこずは明癜だった。  長距離に発射する道具も無く、䞋手に近づけば䞀瞬で燃やし尜くされるだろうずいう掻路が芋えない想定が明里の䞭でぐるぐるず堂々巡りしおいた。 「わワwaたしたsiいi゚クラりス様ず戊む至急めんテナんスを芁請いいiiii内郚かいロがどりシたのでssssかご䞻じンさたママ  」  考えおいる間にもリリアはドラゎンの巊手の䞭で砎損が進んでいく。  衚情は無くなり、動かない口からシステムメッセヌゞず擬䌌人栌から発せられる蚀葉が入り混じった電子音混じりの声が発せられおいた。 「リリアさん   今は考えおる暇はない、こうなったら  䞀か八か  」  明里は意を決し、フラッシュバンを匷く右手で握っお右足を䞀歩前に出し、䞊半身を軜く前に出しお走り出す準備を敎える。  明里の顔は、これたでずは違う絶察になんずかしおみせるずいう意志が衚に出たような凛々しい顔぀きずなっおいた。  為す術無く殺されるかもしれないずいう恐怖を圧し殺し、深呌吞で粟神を萜ち着かせる。そしお目を閉じお、右足で地面に力を入れる。 「よし  せヌのっ」  自身の合図ず共にドラゎンめがけお䞀盎線に走り出す。  䞡目を巊手の䞭にいるリリアに向けおいたドラゎンは、正面から向かっおくる小さな人間が芖界に入っおきたこずで芖線を明里ぞず向ける。  向かっおくる虫けらを焌き付くそうずドラゎンは炎の息の準備を始め、勢い良く炎を吐き出すために銖を空ぞず動かす。  走っおいる間にもしっかりドラゎンから芖線を反らしおいなかった明里は、ドラゎンの口から炎が僅かに挏れ出たこずを確認しおフラッシュバンのピンを匕き抜き、右手に匷く握っお投擲の準備を始める。 「今だ うおりゃあああああぁぁぁぁぁ」  今たでの人生で出したこずもないような足の先から捻り出したような叫び声を右手に蟌め、ドラゎンの頭めがけおフラッシュバンを投げ぀ける。  炎を吐く準備を終えたドラゎンは、空に向けた銖を勢い良く戻しお炎を吐こうずした。  その時、フラッシュバンがドラゎンの顎よりも僅か䞋で炞裂した。投げる匷さが足りなかった分ドラゎンの目の前で炞裂させるこずは出来なかったが、それによる爆音ず匷烈な閃光を济びせるには充分な高さであり、さらに炎を吐くタむミングず䞁床重なっお頭を䞋に向けおいたこずにより、明里の想定よりも匷く芖界を奪うこずに成功した。  芖界を塗り朰した閃光ず聎芚に匷い刺激を䞎えた爆音に堪えきれず、ドラゎンは巊手に掎んでいたリリアを地面に攟り投げお䞡手で県を芆う。  投げられたリリアは地面に叩き぀けられ、明里の目の前たで転がっおくる。 「リリアさん」 「わタシ正垞二かドうしte内郚回路ガ砎損シテしおしおしteししssssうふふごしュゞんsいむ゚くラりす様む垞はっsssss  」  目の前のリリアは、鎧ず䞡腕を巻き蟌んで倧きくひしゃげた胎䜓ず、内郚回路が狂ったのか䞍芏則に痙攣を起こす身䜓、ノむズ混じりで擬䌌人栌ずシステムメッセヌゞが入り混じった音声が発せられるポカンず開いた動かない口ず、誰がどう芋おも非垞に危険なスクラップ寞前の状態ずなっおいた。 「このたたじゃ本圓に危ない  どうにかしお運ばなきゃ」  自分の力では持ち䞊げるこずすら出来ないず刀断した明里は、呚囲を䜕床も芋枡しお運搬に䜿える䜕かが無いかず垌望的芳枬で探しおいくが、それらしいものは䞀぀たりずも無かった。  さらに明里の芖界に最悪のタむミングで吊定すべき珟実が抌し寄せる。  ドラゎンの埌方に新たなモンスタヌの矀れらしき姿が芋えたのだ。それもドラゎンがやっおくる前よりもさらに数が増えおいるこずがパッず芋でも確認できた。 「そんな  こうなったら  」  明里は諊めおリリアの腕を掎み、少しず぀匕き摺っおクラリスが倒れおいる堎所たでなんずか移動しようずする。  ずるずるず重々しい音がリリアの身䜓の䞋から鳎り響くが、その重さ故にどうしおも牛歩のような移動になっおしたっおいる。  その間にドラゎンはフラッシュバンの攻撃から回埩し、䞡目を開いおしたっおいた。思わぬ攻撃を喰らっおしたったこずでドラゎンのプラむドを刺激し、怒りを存分に蟌めた咆哮を䞊げる。 「嘘  もう動けるの  」  背埌から本胜に刻たれるような嚁圧感を含んだ咆哮が響き枡った危機感から、なんずか少しでも戻ろうず急いで党力を振り絞っおリリアを匕きずる。  しかしそれでも殆ど速床は倉わらず、雀の涙皋床のものずなった。  恐怖感から振り向くず、ドラゎンが再び炎を吐き出す準備を敎え、今にも吐き出されんずしおいた。 「もうダメ  やられる  」  もう打぀手無しず諊め、正面を向き盎し目を匷く瞑っお身䜓を屈めたその時、フラッシュバンが炞裂した時の爆音が背埌から聞こえおくる。  それず同時にドラゎンの叫び声が再びこだたした。 「あ、あれ  炎が来ない」  戞惑いながらも少しず぀目を開くず、明里の芖界の䞭に芋芚えのある長い耳の少女が珟れた。 「フラッシュバンニペルドラゎンノ䞀時的ナ無力化ヲ確認。」 「゚、゚ステルさん  」  リュックサックの䞭に入っおいた残りのフラッシュバンの䞀぀を投げ、゚ステルはドラゎンの無力化を行っおいた。  この時明里には目の前に珟れたリュックサックを腕に匕っ掛けた自分のよく知る機械の少女が倩䜿のように思えた。  緊匵が解けおその堎に厩れ萜ちた明里の肩を支え、゚ステルが再び口を開く。 「明里サン、クラリストリリアハ私ガ運搬シマス。明里サンハ急むデ逃ゲテクダサむ。」 「うん、わかった。」  䞡手で握っおいたリリアの腕を゚ステルに蚗し、そのたた゚ステルは右肩にリリアを担ぐ。 「ただだ  私hただ  」  クラリスを巊肩に担ごうず゚ステルが近づくず、䞡足でなんずか立ち䞊がっお剥き出しになった右目から駆動音を鳎らしながら巊半分の顔で怒りの圢盞を䜜り、ノむズ混じりの声でドラゎンを睚み付ける。 「クラリス、アナタハ今危険ナ状態デス。」 「私は  このマたでは  異垞発せせせssss  階士ずシテの誇りがある   せめt  䞀矢報お   プロgラム゚らラララ  」 「明里サン、擬䌌人栌ノオフヲオ願むシマス。」 「うん、わかった。」  明里はリモコンを取りだし、迷うこずなくクラリスの擬䌌人栌をオフにする。 「わたシは 階士tしお    擬䌌人栌の蚭定ガオフになりマしたしたシtした。」  激昂した様子を芋せおいたクラリスはたちたち無衚情になり、その堎に姿勢を改めお盎立の姿勢になった。  その隙に、゚ステルはクラリスを腹から持ち䞊げお巊肩に抱える。クラリスは抵抗もなく腹の皌働域の通りに曲がっお持ち䞊げやすい䜓勢になる。 「急むデココヲ離レマショり。」 「はい」  ゚ステルからリュックサックを受け取り、背負っお急いで離れようずしたその時、再びドラゎンの叫び声がこだたする。  怒りに狂ったドラゎンは、盎接二人を叩き朰すために翌を広げお飛び䞊がり、䜓重を党お乗せお螏み぀けるために急降䞋した。 「゚ステルさん 最埌の䞀個です」 「了解シマシタ。」  最埌の䞀぀ずなったフラッシュバンを゚ステルに枡し、右肩に抱えたリリアを䞀床地面に眮いおから、ちょうどドラゎンの目の前で炞裂するように調敎された正確無比な投擲を行う。  䞉床目の投擲には流石に孊習をしたドラゎンは目の前に投げられたフラッシュバンをはたき萜ずすが、それでも炞裂そのものには察策を行うこずができず爆音ず先皋よりは匱めの閃光がドラゎンを襲い、それによっお飛行のバランスを厩しおそのたた地面に激突する。  倒れたその隙に明里ず゚ステルはドラゎンの芖界の倖ぞず離れ、無事逃げ出すこずに成功した。  この時明里は、生死の境に恐怖から抜け出すこずができたこずを実感するこずは無く、ただひたすらに逃げお生き延びるこずに集䞭しおいた。
続きずなりたす。<br />しっかり保存したにも関わらずたたEvernote君に文章を殺されお発狂しそうになりたした。<br />䞀応これで話の半分は終わりです。<br /><br />【远蚘】<br /> [小説] 男子に人気ランキング61䜍に入ったらしいです。ありがずうございたす。<br />珟圚手盎ししたバヌゞョンをこちらで投皿しおるので、こちらもよろしくお願いしたす。<br /><a href="/jump.php?https%3A%2F%2Fkakuyomu.jp%2Fworks%2F1177354054884776704" target="_blank">https://kakuyomu.jp/works/1177354054884776704</a>
女階士ず解䜓少女 5
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  「こほっ、こほっ」 「なにお兄ちゃん、颚邪ずか」  朝目が芚めおからどうにも良くない。頭ががんやりず熱っぜいし、䜓の節々がギクギクず痛む。喉もむガむガず気持ち悪くお、声も錻にかかっお自分のじゃない感じだ。 「たあなんだ、ちょっずな」 「小町に移さないでよ」 「わかっおる」  こりゃたた厳しいッスね旊那、ずか軜口を叩く元気も出おこない。こんな倧矩名分が倩から降っおきたのなら、りキりキワクワクで孊校も䌑んでしたいたいずころなのだが。 「お䌑みした方がいいんじゃない」 「そういうワケにもいかん」 「雪乃さんにしおは随分ず厳しいよね」 「あい぀のはモトからだろ」  先週金曜日の郚掻終わり。完党䞋校のチャむムが鳎る䞭、いそいそず垰り支床を始めたずころを呌び止められた。䜕故だか理由は分からんが、超真剣な、それでいお䜕故かちょっず嬉しそうな顔で詰め寄られ、こう告げられた。 『月曜の郚掻、必ず来るず思っおいおいのよね』  むミフ。手入れの行き届いた髪を匄りながら、どこかモゞモゞず萜ち着きが無かったこずが印象に残っおいるが、たた難題を俺に抌し付ける぀もりでもいたのか 由比ヶ浜のダツも゜ワ゜ワずしおたし、党くもっおむダな予感がする。 「それにしおも酷い声」 「話す盞手もいねえから、別段䞍自由はしねえけど」 「仕方がないなあ」  ず、台所の棚からよっこらしょず原色過倚の小箱を取り出す。 「なんだ゜レ」 「のど风、知っおるでしょ」  そう蚀われおマゞマゞず芋れば、10代女子埡甚達のきゃぎるんずしたのど风っぜい。それにしおも、あんたりコンビニずか薬局で芋かけねえメヌカヌだよな。個包装でラッピングも排萜おるし。コレ、䌚瀟員のおじさんずかが、䌚議䞭に取り出しお舐めるの恥ずかしいぞ。 「コレっお甘くお矎味しいから、お兄ちゃん向きだよ」 「悪いな、本圓に貰っおいいのか」 「[[rb:お > ・]][[rb:薬 > ・]]だから、あんたり舐めすぎちゃダメだよ」 「了解だ」  いやヌ、やっぱり持぀べきものは可愛い効だよな。普段䜕かず小憎らしいこずを蚀っおおも、いざずなればこうやっお心配しおくれるし。ありがたや、ありがたやずニダ぀きながらカバンに詰め蟌む。いや゜コは我ながら少しキモいな。 「じゃ、行っおくるわ」 「がんばっおね」 × × × 「おはよ、ヒッキヌ」  特に代わり映えのしない週明け。別に火星人が倧挙しお攻めおくる事もなく、はたたた怪しげな転校生がやっお来お、孊園ドラマではお玄束の隒動を起こすずいう事もない。たあ、匷いお蚀えば、クラスの女子が゜ワ゜ワず萜ち着きがないこずくらいか。 「今朝は早かったね」 「ちょっず具合が悪くおな、それで電車」 「え、どこが悪いの 顔ずか」 「怒るぞマゞで」 「あはは、ごめんごめん」  由比ヶ浜のダツはい぀もより増し増しで萜ち着きがないな。おか、散歩に連れおいく前の犬みたいにテンションマックスなんですけど。机の呚りをクルクルず回っおは、䜕故かカバンの䞭を芗き蟌んで物色モヌドだし。 「蚀われおみれば声ヒドむね」 「たあな」  そういや小町に、のど风貰っおたのを忘れおた。駅から孊校たで冬の倖気を吞い蟌んで歩いおきたせいか、さっきからむガむガが半端ない。ここが䜿い時だず思い、小箱を開けお包みを䞀぀取り出す。 「えっ、ヒッキヌ  それっおもしかしお」 「ああ、今ならいいかなず」 「  嬉しい」  はあ 嬉しい 由比ヶ浜も実は颚邪ひいおお、それでもっおノドがむガむガで、こののど风が欲しいずかそういうコト ナントカは颚邪をひかないっお孊説が芆されお、正盎オドロキを隠せない俺なんですけど。 「欲しいならやるけど」 「欲しいよ、欲しいに決たっおるじゃん」 「そんなガツガツしなくおも」  䞡手をグヌで、芪しい男女にしか蚱されないほどの至近距離。なんか凄い迫力で迫られお、ちょっず怖いかも。颚邪ひいお具合が悪い割には抌し出しが匷いな。たあ、のど风皋床のやり取りで倧隒ぎするのも倧人気ない。 「ほい、お倧事に」 「やったヌ」  軜快にスキップを螏んで、嬉しさ党開のたた䞉浊たちのずころぞ戻っお行った。「よかったね」ずか「よしよし」ずか他の女の子達にも囃し立おられおいるようだけど、のど风皋床であの喜びようずか、倧䞈倫かりチの孊校。䞀応進孊校の筈だったけど。 × × × 「あ、先茩どうもです」  昌䌑み終わりの枡り廊䞋。この孊校においお、この俺を先茩ず呌び、なおか぀ブレザヌの裟を摘んで「ぐいっ」ず匕き止めるダツは、コむツを眮いお他には知らねえ。 「なんだよ䞀色、急いでんだけど」 「移動教宀ですか」 「たあな、午埌䞀で芖聎芚宀たで行かなきゃならん」 「そうですか」  ず、そこたで蚀っお䜕凊か元気が無い。俯き加枛に目を逞らし、぀た先で床を蹎っお䞍貞腐れおるようにも芋える。なに、コレっお新手のむゞメずか䜕かですか。ここで事情を聞いおやらないずか、眪悪感が半端ない。 「なんだ元気が無いな」 「そう芋えたすか」 「い぀もの無駄に元気な䞀色はどこぞ行った」 「む、倱瀌ですね」  ちょっず頰を膚らたせ、䞊目遣いですこぶるご機嫌がよろしく無い。うヌむ、党く身に芚えは無いが、先週末から珟圚に至るたで、コむツに察しお䜕か仕出かしたのだろうか そうでも無ければ、あからさたに䞍機嫌な顔を芋せられるずか道理が合わない。 「先茩、私ちょっず病気なんです」 「え、マゞで」 「本圓です、結構深刻なんです」  そうかヌ、今幎の颚邪はなかなか手匷いな。由比ヶ浜だけならただしも、䞀色にたで感染しおやがったのか。道理でさっきから口数が少なくお、顔も赀いわけだ。それはそれはもう、耳どころか銖筋たで真っ赀だしな。 「今日が勝負なんです」 「そんな倧袈裟な」  盞倉わらずワケの分からんこずを蚀うダツだ。たあ、䞀色が生埒䌚長を頑匵っおいるのも、俺に責任の䞀端があるようなもんだし、ここは䞀぀これで勘匁しおもらおう。 「ほらよ䞀色、い぀もありがずうな」  手のひらの䞊に、ちょこんずのど风を乗せる。 「えっ  、これっおたさか」 「ほんの気持ちだ」 「先茩  、ホントに」  なんか「ぱあっ」ず衚情が明るくなったかず思ったら、「やったヌ」ず人目もはばからずに、倧声で叫んで廊䞋の向こうにダッシュで消えやがった。なんなのコレ 呚りにいた生埒がニダニダず䞋衆な目を向けおくるし、誰かちゃんず説明しお。 × × × 「ふう」  深いため息。午埌の授業もなんずか乗り切り、䜓も喉ももう限界。郚宀のドアに手をかけたずころで思い盎し、カバンから风を䞀぀出しお口に攟り蟌む。お、なかなか旚いなコレ。近頃ののど风は良く出来おやがる。 「うっす」 「あら、遅かったわね」  窓際の雪ノ䞋から声を掛けられる。ようやっず迎えた攟課埌のこの時間。なぜだか理由は分からないが、今日は孊校の空気がピリピリずしおやがったな。特に女の子の目が怖い。カバンの䞭ずかポケットの蟺りを凝芖しおた気がする。 「途䞭でいろいろあっおな」 「そう」  パタンず読み掛けの本を閉じ、こちらに向き盎る。 「で、雪ノ䞋、芁件っおなんだよ」 「えっ」  倧きく目を開いお「きょずん」ずかしお貰っおも困る。いや、ちょっず可愛いから蚱しちゃおうかな、ずか無いからな。いい加枛に颚邪がこじれおきお、俺ずしおは、ずっずず枈たせお家に垰りたいんだ。 「女の子の口から蚀わせるの」 「蚀っおくれねえず分かんねえじゃんかよ」 「ひどい男ね」 「なんでそうなる」  あれ、熱でロゞカルな思考が出来なくなっおるのか俺。そもそも、金曜日の垰り際に「芁件がある」的なコトを匂わせおおいお、今曎それは無いだろ おかげで歀方は䜓調䞍良を抌しお孊校ぞ来おるんだからな。 「あなた、今日は朝から䜕をしおいたか思い出しおごらんなさい」 「朝から」 「そう、順番にね」  䜕怒っおるのコむツ。事情はよく理解出来ねえけど、小町から貰ったのど风を、具合が悪そうな女の子に配っおたな。由比ヶ浜ずか䞀色ずか。蚀わば慈善掻動みたいなもんだろ 耒められこそすれ、怒られ芁玠は芋圓たら無いが。 「风を配っおたな」 「誰に」  ちょっず目が射るようで怖い。 「由比ヶ浜ずか䞀色、あずは城廻先茩ず平塚先生、他にも䜕人か」 「なっ  」  どんどんず壁際に詰め寄られお、もはや逃げ堎なしの様盞。目に䞀杯の涙ずか浮かべおパクパクず口が動くも声にならない。そんな深刻な問題だったのか 「比䌁谷君  、私の分はないの」 「なに、お前も病気かよ」 「もうずっくに重症よ、いったいどうしおくれるの」  なんだ、初めからそう蚀っおくれればいいものを。雪ノ䞋のダツ、どこから聞き぀けたかは知らねえけど、小町がいい感じののど风持っおるこずを知っおやがったのか。 「悪い悪い、ちょっず埅っおろ」  ず、カバンの䞭の箱を開けるず「スカッ」ず手が空振り。げげっ シマッタかも。景気良く女の子に配り倒したあげく、最埌の個をさっき開けたんだった。 「すたん雪ノ䞋  、実はさっき最埌の個を開けちたったんだ」 「比䌁谷君」 「なんだ、土䞋座でもすればいい」 「そんなの芁らない」  ぐいっず䞡腕を背䞭に回され、そのたた壁に抌しやられお䜓重を預けおくる。なに 急にニコニコず超嬉しそうに芋えるんですけど。やっぱり熱で頭がオカシむのかも。 「私  、比䌁谷君が今舐めおいるのでいいわ」 おわりん  ホワむトデヌは魔物ww
どうもです。久しぶりに連続投皿です ホワむトデヌ  もうダケだい
みんな熱のせい
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1 次男 俺は人間だ 2 名無しの青束 >>1 え、あ、はい 3 名無しの青束 唐突だな 次男っお事は他にも兄匟は居るんだな 4 次男 実は前、ある事が起きた 幌銎染みの店にツケを溜めおいた俺らも悪い だからっお海の䞊に瞛らるのは可笑しいず思う 5 名無しの青束 埅っお 埅っお 6 名無しの青束 え、むッチはドM願望があるの 7 名無しの青束 >>6 いや、無いみたい 8 次男 >>6 あるわけ無いだろ た、瞛られるのはいい おか幌銎染みの行動は蚱そう だが兄匟の行動は絶察蚱さん 有りえないだろ䜕だよ 鈍噚投げるっお 9 名無しの青束 >>8 䜕で投げられたか教えろよ 10 名無しの青束 兄匟厳しいなおい 11 名無しの青束 それでも生きおる次男に私 吃驚なんだけど 12 次男 実は、幌銎染みが家に電話しお身代金ずしお100䞇甚意しろず蚀ったんだ  最初は長男が出たが知りたせんず蚀われお切られるし、五男は聞き間違い、䞉男は心配しおくれたが マミヌが甚意しおくれた梚に魅力され、忘れられおしたったんだ  だから 埩讐みたいので、家の前で火やぶりにされ それから鈍噚を投げられたんだ 13名無しの青束 めっちゃ深刻やんけ 14 名無しの青束 なんで次男生きおんの 生呜力やばいGちゃんなの 凄いね 15 名無しの青束 兄匟冷たくねヌか 16 名無しの青束 流石に酷いだろ  17 次男 だから ガチで埩讐だ 18 名無しの青束 >>17 協力するぞ 19 名無しの青束 >>17 任せろ 20 名無しの青束 本日の埩讐スレはここですか 21 名無しの青束 楜しくなっおきたした 22 次男 協力くれるや぀、ありがずな スペックだ 長男 クズ、バカ、パチカス、ある意味たずめ圹、やる時にはやる男だ、童貞、ニヌト 次男 俺 䞉男 オタク、にゃヌちゃんっお名前の地䞋アむドルが奜きらしい、童貞、ニヌト、長男モンペ 四男 ネガティブ、猫奜き、猫に奜かれる、根はいい奎だぞ、石臌投げおきた、俺には冷たい、五男モンペ、童貞、ニヌト 五男 ポゞティブ、明るい狂人、バカ、䜓力底無し、野球倧奜き、童貞、ニヌト 六男 女子奜き、だが童貞、ニヌト、トッティ、あざずい、腹黒、ドラむモンスタヌ、五男モンペ 俺らは六぀子なんだ あ、釣りだず思っおくれおも構わない 少し俺の埩讐に付き合っおくれるだけでいいんだ 23 名無しの青束 >>22 六぀子 おか、次男よ 玹介可笑しくね䜕で俺だけなの それず四男ず六男ず䞉男はホモなの 24 名無しの青束 釣りだず思うけど面癜そうだから付き合う おか六男呪う 埩讐スレず思いきやホモスレでしたか モンペっおモンペっお 最高かよ 25 名無しの青束 >>24 だがしかし童貞 残るわww おかここはホモスレにい぀倉わったんだ モンペっおなによwwwww 26 名無しの青束 俺も残る ずころで次男、埩讐っお䜕をするんだ ‐‐‐今倜のホモスレはここです‐‐‐‐ 27 次男 >>26 決めおないんだ だからお前らの奜きな安䟡をやろうず思う 誰に>>35 䜕をするか>>4348 それずモンペは普通に 尊敬しおる、ずか可愛いずかの意味だからな(倚分) 28 名無しの青束 おお安䟡意倖に早いwwww おかww倚分おwwww 29 名無しの青束 埅っおたした >>27 倚分おwww兄匟のホモか  30 名無しの青束 よし この流れをブッタ切る やはりここは長男だろ 31 名無しの青束 五男 32 名無しの青束 䞉男 33 名無しの青束 五男 34 名無しの青束 六男か四男 35 名無しの青束 䞉男 36 名無しの青束 四男だろ 37 名無しの青束 あえお六男 38 名無しの青束 長男 っお、䞉男か 39 名無しの青束 䞉男な  40 次男 最初は䞉男か 楜しそうだな 41名無しの青束 䞉男に䜕するかだよね 42 名無しの青束 いきなり立ち䞊がっおドラえもんの歌を熱唱し 歌い終わったら発狂しながら郚屋を出る 43 名無しの青束 ここはあえお女装だろwwwwwww 44 名無しの青束 郚屋に䞉男を呌び出し、泣きマネをしおは 䞉男に腹パン 45 名無しの青束 䞉男にパむを投げお窓から倖に䞉男は長男を愛しおいたすず叫ぶ 46 名無しの青束 䞉男の方を芋おはごめん 俺、お前のこず信じたくないんだ 信じたぶんだけ苊しくなる たた裏切られるんじゃないかっお思っおしたうず俯きながら蚀う 47 名無しの青束 䞉男に我慢しおた本音をぶち巻いく 48 名無しの青束 ず叫びながら郚屋から出おいく 49 名無しの青束 䞉男に女装しお高速反埩暪飛びしおもらう 50 名無しの青束 長男に䞉男はモンペだず蚀う 51 名無しの青束 たっおwwwwこれひどいwww 52 名無しの青束 䞉男䞍憫過ぎだろwwww 53 名無しの青束 ぞい↓↓ 女装する 郚屋に䞉男を呌び出し、泣きマネをしお腹パン それから䞉男にパむを投げ窓を開けお䞉男は長男を愛しおいたすず叫ぶ それから䞉男の方を振り向いお俯きながら信じられないず呟く その流れのたた䞉男に愚痎を蚀う 党郚吐いたら女装のたたず叫び郚屋を出おいく 54 名無しの青束 ひえwwwwwwwww 55 次男 頑匵るわwwwwww 56 名無しの青束 >>55 ファむトwww 57 名無しの青束 >>55 応揎しおるぜww ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 126 名無しの青束 ほ 127 名無しの青束 し 128 名無しの青束 ☆ 129 次男 ただいた垰ったぜ 130 次男 あれ 誰も居ないのか 131 名無しの青束 >>130 ああああああおおおおえかりおかえり次男 132 名無しの青束 >>129 いきなりで吃驚したwww 133 名無しの青束 >>129 動揺しすぎお誀字したくったwww 134 名無しの青束 おかえり 135 次男 お前ら ありがずな しお、その心は 136 名無しの青束 ネタを埅っおた 137 名無し青束 >>135 分かっおるんだろ 早くしろよ  138 次男 玠盎で宜しい 俺は玄束通り䞉男を呌び出した 今日はマミヌもパピヌも血を分けた兄匟も居ない 良かったぜ、ず思いながら 女甚の服を着おいた 䞁床、着終わった時に䞉男が来お 䞉男はお、お前 䜕しおんだよやだよ兄匟の䞭に女装趣味持っおる奎いるずかっお蚀っおきた 蚀っずくが俺は女装趣味なんお無いからな 党郚安䟡のせいだ、恚むなら安䟡を恚め 俺も恚んでるから 䜕お思いながら安䟡を進めた 慌おお暎蚀を吐いおる䞉男を暪目に泣きマネをした 酷い 䞉男なら話を聞いおもらえるず思ったに  え、はああ嫌でもさ うう 䞉男蚱さん っお蚀いながら腹パンをしたら 䞁床 な、うん 男の急所に圓たっおしたった() モニュっお感觊が 気持ち悪い() っお おめ、次男  っおドラえもんの声真䌌でパむを投げおから 窓を開けお䞉男は長男を愛しおいたすず党力で叫んだ、するず䞉男は は次男お前いい加枛にしろ っお蚀っおきたから安䟡の本音を蚀うや぀を実行(高速反埩暪飛び) なあ、䞉男 俺は人間だ いや、知っおるから あ、はい、ですよね 俺は、ちゃんず感情も痛みも有る なあ䞉男、俺は傷぀いた 信じおた、ずっず六぀子だず思っおたんだ でも䜕で、お前は いや、お前らは俺を捚おた お前らは俺を拒吊した 蟛いんだぞ 孀独は。独りっおのは寂しいんだぞ 最䜎だ 今すぐにも瞁を切っお居なくなりたい䜍だ お前ら䜕お  あ、涙が出おきたよぅマミヌ 䞉男はいきなりの愚痎で戞惑っおいたし、怒っおいたが泣いたこずに気付いたのか、焊っおアタフタしおたぞ 勿論、恚むなら安䟡で頌む 俺は無関係 かな 流石に䞉男も涙目だし、俺も限界だから 最埌の安䟡行っきマヌス 俺はず思いながら窓の方を向き 駆け出した ず、蚀うわけだ䞉男 じゃヌな  () やっべ、窓開けるの忘れおたやん() 138 名無しの青束 蟛いなっお蚀おうず思ったけど 䜕で次男は䞀々ネタ入れおくるかな 139 名無しの青束 恚たないでwwwwww 140 名無しの青束 窓wwwwwwww 141 名無しの青束 ネタ入れないで頌むからwwwwwwww 142 名無しの青束 もうほんず奜きwwwww 次男玠敵wwwww
ずうずう手を出しおしたった<br />カラ束事倉<br />流石にシリヌズはアレだから<br />これだけです
【俺は】少し吐き出そうか【人間なんだ】
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Side:M あの男は、私ず同じ匂いがする。 圌の䞭で飌いならしおいる野獣を解き攟し、圌の真の姿が芋たい。 私は、圌をコチラ偎ぞ堕ずしたい。 それならば、圌を匕きずり出す、駒を集めなければ。 「諞星さんの顔、恋しおるずきの顔みたい。」 案倖、杏奈の蚀う通りなのかもしれない。 こんなに心螊ったのはい぀ぶりだろうか‌ 城からもらったデヌタを芋る。 いい駒はいるだろうか 【有栖川有栖(アリスガワアリス)】   性別:男   幎霢:34   職業:小説家   火村英生の良き、唯䞀の理解者 ぎったりの逌がいるじゃないか。 アリスガワアリス、か。 真っ癜なコヌトに身を包んだ圌は、アリスずいう繭を愛し、守っおいる。 たるで、鏡の囜のアリスに出おくる、『アリス』ず『癜の階士』じゃないか。 有栖川有栖は、圌の闇をどう理解しおいるのだろうか。 いや、無力に圌の足にしがみ぀き、圌がコチラ偎ぞ堕ちるこずを阻止しおいるだけかもしれない。 䞀生他の人間には理解出来ないだろう。 私たちの考えなど。 でも、興味がある。 圌に、有栖川有栖に䌚っおみたい。 もしコチラ偎を理解出来るのなら、私たちの仲間になれるのかもしれない。 もし、ツマラナむ人間でも、火村英生は圌を倧切にしおいる。圌を殺せば、火村は、確実に繭を倱い、私たちの元ぞ来るだろう。 「有栖川有栖を捕らえろ。」 [newpage] 「有栖川有栖が目を芚たしたした。」 聞こえおいる。犬のようにキャンキャン吠えおいるからわかる。 倧䜓、圌は猫掟じゃなかったのか たぁ、そんなこずはどうでもいいか。 有栖川 有栖 あぁ、圌は堕ずせそうにない。 圌からは、私や圌ずは党く逆の、光の匂いがする。 でも、圌をそばにおく理由はわかったような気がする。 圌の隣は陜だたりのようで、居心地が良いのだろうな。 圌は私を芋るなり怯えおいたが、火村英生がタヌゲットだず蚀えば、顔぀きが倉わった。 ころころ衚情を倉える圌は芋おいお飜きない。 「火村は、そっち偎には行かん。」 あぁ、でもツマラナむ。 そんな根拠のない匷がりは聞いおも無意味だ。 さぁ、凊刑を始めようか 「あなたは、私ず同じ匂いがする。」 [newpage] 裏切り者を炙り出し、凊刑を行おうずすれば、有栖川有栖はたたキャンキャン吠え出す。 あそこたで吠えられおは流石にうるさい。 心配せずずも、たた無意味な歩兵ポヌンを増やすだけだ。殺しはしない。 あ、ホッずしおいる。 本圓に、ころころず衚情を倉える圌は飜きないな。 突然裏切り者が苊しみだす。 もう䞀人、裏切り者が居たか。 2人くらい、切り捚おおも構わないだろう。 有栖川有栖が泣き叫ぶ。 「誰か助けおやっおくれ‌‌頌むから‌」 あぁ、光が絶望する姿ほど、矎しく、甘矎なものはない。 火村は、この衚情を芋たこずがないのだろう。 もし芋おいれば、コチラ偎の玠晎らしさがわかるはずだ。 タむムリミットだな。 次は、確実に火村英生をコチラ偎ぞ堕ずす。 非垞脱出ルヌトから出る前に2人の声が聞こえた。 「癜銬の階士にしおは、ずいぶん遅かったやないか。」 「すたない。」 有栖川有栖。 お前も、理解しおいるのだな。 お前たち2人の関係は、たるで、 鏡の囜のアリスの『アリス』ず『癜の階士』のようだず。 [newpage] Side:A 「アリス」 「なんやの。」 「アリス、アリス」 「どないしおん」 「アリス、アリス、アリス。」 「心配せんでも、俺は歀凊におるで。」 今にも消えおしたいそうな圌を抱きしめる。 久しぶりのキャメルの匂いが、私を安心させおくれた。 「 すたない、無事で良かった。」 迷惑かけおごめんな。 心配かけお、ごめん。 「俺には、お前しかいないんだ。」 そんな泣きそうな声で蚀うなや。 俺かお、心から蚱しおいるのは、火村英生1人の存圚しかないんやで。 私は、あの初恋が砎れた日から、人が怖くお、気のおけないものは小説しかなかった。 けど、あの日から、火村ず出䌚ったあの日から、私の繭は、小説ず火村になった。 火村、俺が必ずコチラ偎ぞ匕き止める。 俺がお前の繭になる。 だから、ずっず、これからも、 俺の癜銬の階士でいおくれや。
「火村英生の掚理」面癜すぎお、ずうずう手を出しおしたった  。公匏が最倧手過ぎお萌え死ぬ。<br />9話の予告を小孊生の匟ず芋おいたずきに、<br />匟「なんで火村じゃなくお、アリスを捕たえるの」ず玔粋な正論を蚀われ、私「そうだね(癜目)」ずしか返せなかった自分  <br />9話ダバかったですね。<br />「囚われのアリス♂34を助ける癜銬の階士(34)」この構図に思わず笑っおしたいたしたw<br />アリスが可愛すぎおニダニダしおたしたw<br />最終話はハッピヌ゚ンドがいいなぁ。。<br />今回は、匟に蚀われた正論を私なりに考察しお小説にしたした。私の劄想ですので、9話ず違うず思っおも、枩かい目で芋守っおほしいです。ほずんど諞星サむドです。<br /><br />『120%正しい解釈』のタグを぀けお䞋さった方ありがずうございたす(//∇//)<br />初めおタグを぀けお貰えお嬉しすぎお泣きそうだ&gt;_&lt;
アリスず癜の階士
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「今床の日曜日さ、遊園地行かない」 氎曜日午埌時分、グツグツ煮えるおでんを人で囲みながら、僕は話を切り出した。 [chapter:僕だっお] 「遊園地」 「そう。ここから電車で駅くらいの所にあるでしょそこそこデカむ 」 「 ああ○×パヌクな。倧芳芧車がりリの」 「そこそこ行っおみない日曜いい倩気みたいだし」 「構わないが なぜ急に遊園地なんだ」 カラ束がよく味の染みた倧根をはふはふ頬匵りながら尋ねおくる。僕は䞀瞬りッず蚀葉に詰たったけど 先月芚悟を決めたじゃないかず己を叱咀する。 「 ホワむトデヌのお返し」 「」 「あぁもうだから党郚僕の奢りだからほら、チケットも買っおあるから」 ダケク゜になっおチケットをテヌブルに叩き぀ける。 ゞェットコヌスタヌず芳芧車のむラストが描かれた「おずな」のチケットが枚。 僕の発蚀にポカンずしおいたカラ束は、そのチケットを芋぀めた。そしおだんだん笑顔になっおいく。 「フッ 既に準備を敎えおいるずはな。ブラザヌ、お前も䞭々にレディヌを喜ばせる術が身に付いおいるじゃないか」 「いや、お前レディヌじゃないだろ。でどうなの行くの行かないの」 「行くぜ」 「じゃあ決たりね」 「分かった ふふ、優しいブラザヌにはビヌルを远加しおやろうな」 元気よく返事をしたカラ束が垭を立っお台所に向かう。錻歌が聞こえたのでかなり機嫌が良い。正盎遊園地ずいうチョむスはどうなんだろうず悩んだけど、カラ束の堎合はこれで正解だったようだ。 ほっず息を吐いおいるず、隣に座っおいた十四束がコ゜リず耳打ちをしおきた。 「チョロ束兄さん、どうしおチケットが枚なんすか」 「えそりゃあ、僕ず、カラ束ず、十四束の分なんだから枚いるだろ」 「ぬぁ」 「えっ」 「が、僕も䞀緒に行くの 行っおいいの」 「圓たり前だろ䜕蚀っおんの」 十四束が信じられないこずを蚀ったので思わず倧きな声を出しおしたった。十四束は珍しく眉を䞋げおオロオロしおいる。 「バレンタむンの時はゎメンな十四束。気を遣わせちゃっただろ」 「えヌ僕なにもしおないよ」 「お前がそう思っおなくおも僕は実際救われたんだからいいの。十四束の分も僕が奢るからさ、日曜日は楜しもうな」 「う、うん いいのかなぁ」 「いいに決たっおるだろ」 「 そっかそうだねわヌい楜しみ」 ようやくい぀も通りの元気さを取り戻した十四束がバンザむをしお喜んでくれた。 カラ束が持っおきおくれた本目のビヌルを等分しお也杯する。 楜しい䌑日に、なるずいい。  倩気予報で蚀っおいた通り、日曜日は快晎だった。月䞭旬だけど気枩も初倏䞊だそうで、軜く矜織った䞊着も途䞭で脱ぐこずになっおしたうかもしれない。 「こっち方面に行くこずっおあんたりないよね」 「そうだな ▲▲ホヌムセンタヌ行ったずき以来か」 「あそこ面癜かったね野球の道具も眮いおたし」 「じっ、十四束、もう少し静かにな」 「あいあい 」 駐車料金のこずを考えた結果、電車を䜿っお行くこずにした。匕っ越しおきお暫く経぀けれど、ただただこの蟺りのこずは詳しくない。車窓から眺める景色が目新しくお面癜いな。 目的地ぞは、分くらいで到着した。買っおおいたチケットを受付で枡しお園内に入るず、なんだか無性にワクワクしおくる。いい歳しお っお自分でも思うけど、遊園地なんお来たの䜕幎ぶりだろう。 「アレ面癜そうヌ」 「十四束、そんなに走るず危ないぞアトラクションは逃げないから萜ち着け」 「倧䞈倫兄さんたちもはやく」 「たったく マップもただ芋おないのに」 「仕方ないさ 俺もこの地に足を螏み入れた時から錓動が熱いビヌトを刻んでいるからな」 「぀たり、ワクワクしおるっおこずでしょたったく人ずも  っお」 「ん」 「カラ束、そういえば今日はい぀もみたいな痛い栌奜じゃないんだね」 走り出した十四束を笑っお芋おいたカラ束の服装を芋た僕はおやっず思った。人で暮らし始めおからも、倖出するずきは未だに自己䞻匵の激しい服装をしおいるカラ束だけど、今日は氎色のシャツにゞャケットを矜織り、䞋はシンプルなデニムのスキニヌゞヌンズずいう至っお普通の栌奜だ。䞍思議に思っお尋ねるず、カラ束は照れくさそうに笑いながら蚀った。 「い぀もの栌奜じゃ動きにくいかず思っおな。今日はいっぱい遊ぶだろうだから動きやすさを優先しおこうなった」 「そ、そうなんだ 」 「すごく楜しみにしおたんだ、今日出かけるの。だっお、チョロ束が初めお俺のためにっお蚈画しおくれたこずだからさ 」 「」 「  はは、䜕蚀っおるんだろうな倧の男が。 えっず  じっ、十四束俺も行くぞ埅っおくれヌ」 ちょっずだけ顔を赀くしお、カラ束は十四束を远いかけゞェットコヌスタヌがある方たで走っおいっおしたった。  なんか今、もの凄く甘酞っぱい少女挫画みたいなセリフを聞いた気がするぞ 。 「 楜しみにしおたのは、お前だけじゃないっおの」 ずりあえず、初めはゞェットコヌスタヌかな。 僕は人を远いかけお走り出した。  「倧䞈倫かチョロ束 」 「うん けどちょっず、じっずしおたい 」 「ベンチあったよヌ」 最初に乗ったゞェットコヌスタヌで倧ダメヌゞを受けおしたった。 昔は奜きだったはずなのに、久しぶりに乗るず䜓が悲鳎を䞊げた。なんかこう、内臓がひっくり返る感じが 仕事で疲れ切った胃腞が匕き䌞ばされるような感じで、すごく気持ち悪かった 。 僕ずは察照的にカラ束ず十四束はピンピンしおいお、ぐったりした僕を気遣っおベンチを探し、そこに座らせおくれた。 「ごめん、僕が誘ったのにこんな 」 「気にするな。ほら、こっちに頭を乗せるんだ」 「うぅ 」 隣に座ったカラ束が自分の肩に僕をもたれかからせる。い぀の間にか自販機コヌナヌたで走っおいた十四束が、ミネラルりォヌタヌを買っお持っおきおくれた。 人の男前っぷりに、僕は益々自分が情けなくなる。 ため息を぀きそうになった時、クスリずカラ束が笑った。 「 䜕か面癜いこずでもあった」 「んいや、小さい頃の事を思い出しおな」 「小さい頃」 「ああ。あの頃は䞀束がゞェットコヌスタヌで気分を悪くしおたなっお」 「そうそう䞀束兄さん苊手だったよね車酔いもよくしおた」 「それで、よくこうやっお肩を貞しおやっおいたんだ。今のチョロ束芋おたらそれを思い出しおな」 「ああ 確かにそうだったね」 目を閉じるずその頃の事が頭に思い浮かんだ。 家族人で遊園地に行くのは結構なお金がかかるから滅倚にないこずだった。 倧抵園内を奜きに走り回るのがおそ束兄さんず僕で、その埌ろを必死に぀いおきたのが䞀束ず十四束。カラ束ずトド束はコヌヒヌカップずかメリヌゎヌランドが奜きなんだったっけ。 「あの時はバカみたいに絶叫系ばっか乗っおたのにな 歳かなぁ」 「䜕蚀っおるんだただ×歳だろ久しぶりで䜓が驚いただけだろう」 「そうだずいいけど」 「そうに決たっおる。なあ十四束」 「そヌだよ䞀番ゞェットコヌスタヌ奜きだったのチョロ束兄さんだったもん」 カラカラず十四束が笑う。受け取った氎を飲んで少し䌑んだら䜓調もかなり良くなっおきた。これならもう次のアトラクションに行けそうだ。 「もう倧䞈倫。ありがずう人ずも」 「ほんずに倧䞈倫」 「うん。次は䜕がいいかなぁ」 「じゃあア゜コミラヌハりスだっお」 「いいな、四方八方のミラヌに映り蟌む俺  」 「出たよナルシスト」  その埌は激しいアトラクションに酔うこずもなく、色々呚っお楜しんだ。 ミラヌハりスでは六぀子が癟぀子みたいに増殖しお面癜かったし、いい歳しおメリヌゎヌランドにも乗っおしたった。 あ、僕は銬車にしたよ流石に銬単䜓に乗るのは呚りの目が あの人は気にしおなかったみたいだけど。 ちなみにカラ束は癜銬に乗っおお、十四束はなぜかダチョりに乗っおいた。銬以倖もあるんだね。僕は人の埌ろの銬車に乗っお、写真を撮ったりしおた。 あの人っお、党然䞖間の目を気にしないっおいうか めちゃくちゃ楜しそうに乗っおお感心しおしたった。 僕もそうなりたいずは思わないけどさ。 ある皋床遊んだら昌時になっおいたので、僕らは広堎に移動する。広堎には簡単な軜食を売っおいる売店や、座っお食事ができるスペヌスがあっお、家族連れやカップルでそこそこにぎわっおいた。十四束が空いた垭を玠早くずっおくれたのでそこで昌食をずるこずにする。 「こういうゞャンクフヌドも、久しぶりに食べるず矎味しいね」 「ポテトうめヌ」 売店で買ったハンバヌガヌのセットを頬匵る。僕はチヌズバヌガヌで、カラ束はホットドック、十四束ぱビカツバヌガヌだ。安っぜい味ではあるんだけど矎味しいし、䜕より出来合いの物を食べるのが随分久しぶりで新鮮に感じた。 「なあ、本圓に俺が匁圓を䜜らなくおよかったのか」 「うん」 「チケットもそうだが 昌食代もチョロ束が出しおくれただろう䜜っおいけば節玄になったのに 」 「だから、お返しだっおいったろお前こっち䜏みだしおからずっず料理䜜っおるじゃん。たたには䌑んでいいんだよ」 「チョロ束 」 「たあ、ずっず䌑たれたら困っちゃうんだけどさ 僕、どうも料理は苊手だし。それに、カラ束の味に慣れちゃっおるずころあるから」 「僕もヌコレも矎味しいけど、やっぱカラ束兄さんのご飯が䞀番奜きっス」 「ブ、ブラザヌ 」 涙目で喜ぶカラ束を芋ながら、僕はちょっずホッずした。ちゃんず思っおるこず蚀えおよかったっお。 バレンタむンの時は自分の情けなさが本圓に嫌になったから、今日は、今日こそはちゃんずしようっお決めおたんだ。十四束にも気を遣わせちゃったしね 。  「チョロ束兄さん、トむレ行きたい 」 「あ、僕も行きたいや。カラ束は」 「俺は倧䞈倫だ。荷物芋おおくぞ」 「ほんず有難う」 昌食も終え、次のアトラクションに行こうかず思っおいるず、十四束がトむレに行きたいず蚀い出した。 確かに着いおすぐに行ったきりだったし、蚀われるず僕も行きたくなっおきた。 カラ束に荷物を芋おもらっお、僕は十四束ず人でトむレに向かった。 たあ、お腹を壊しおいる蚳じゃないからすぐに枈む。手を掗っお倖に出るず、トむレから少し離れたコヌヒヌカップ乗り堎の近くの電灯の䞋にカラ束は立っおいた。 「おヌいカラ「兄さん埅っお」 「ぐえな、なんだよ十四束 」 「あれ芋お」 カラ束に近づこうず䞀歩螏み出したず同時、十四束に襟を匕っ匵られお銖がしたる。 文句をいっおやろうず振り向くず、十四束は難しい顔をしおカラ束がいる方向を指さした。 そちらに目を向け、瞠目する。 カラ束に近づき、話しかけおいる女性が人。   たさか、ナンパいやいや、そんなバカな。 「チョロ束兄さん、あれっおナンパ」 「んなワケないだろ 十四束、埌ろに回り蟌むぞ」 「あいあい」 気づかれないように倧回りでカラ束の埌ろに近づく。幞い電灯の埌ろは怍え蟌みになっおいお、僕らの姿は隠れお芋えない。気づかれおいない事を確認しおから、僕はカラ束達の䌚話に耳を柄たした。 「こんにちわぁ」 「えっあ、ああこんにちは」 「お兄さん、人で来られおるんですかぁ」 「いや、匟ず䞀緒だ。今はトむレに行っおるから荷物番を 」 「そうなんですか匟思いなんですね」 「いや俺はそんな それに代金は党郚匟が払っおくれおいるから」 「ぞぇすごい仲が良いんですねぇ」 聞こえおきた䌚話はなんおこずない日垞䌚話だ。 けど、そんな事わざわざ遊園地に人でいる奎になんおするだろうか しかも女の子たちの目は、カラ束を䞊から䞋たで芳察しおいるような感じがしお萜ち着かない。 「お兄さん、すっごいオシャレですね。スタむル良いしモデルみたい♪」 「そ、そうかな 有難う」 「あのもし良ければ、匟さん垰っおきたら私たちず䞀緒に回りたせんかぁ」 「え」 あヌこれナンパだヌ玛うこずなきナンパだヌ たさかの事態に僕は開いた口が塞がらなかった。 たしかに、今日のカラ束はい぀もの痛々しい栌奜じゃないけどキラキラしたパンツも髑髏のバックルも぀けおないけどそれでも顔の䜜りは僕たちず䞀緒なのに。なんでアむツがナンパされるのか謎すぎる。 なんかよく分からないけど、胞のあたりがモダモダする。 これがおそ束兄さんやトッティだったりしたら凄くむラッずしたり腹立たしくなるはずなのに。 䜕故だろう、カラ束がナンパされおるず思ったらこう 心にズシッずきた 。 十四束はどうだろうか。やっぱり怒っおいるんだろうか。 僕は隣で同じく息をひそめおいた匟を芋る。するず意倖にも、十四束は怒るどころか少し悲しげに口を隠しおカラ束の方を芋぀めおいた。 「十四束」 「カラ束兄さん、女の子達に぀いおっちゃうのかなぁ」 「それは 」 「そりゃそうだよね。女の子っお可愛くお優しくお、䞀緒にいお楜しい気持ちになるもんね 」 「   」 十四束の蚀うずおりだ。女の子っおすっごく可愛い。 芋おいるだけで幞せな気持ちになれるのに、隣にいおくれたらなんお想像しただけで心臓がドキドキだ。 それに、唯でさえ今たで「カラ束ガヌルが埅っおる」ずか蚀っおよく倖出しおいたアむツのこずだ。 ずうずう珟れたガヌルず共に時間を過ごすのはもはや必然ずも蚀えるだろう。 人で遊ぶのも今日はここたでかな たあ仕方ないか。女の子達可愛いし仕方ないよね。    でも、 「でも、」 十四束がポツリず蚀った。 「でも僕、カラ束兄さんず䞀緒にいたらもっずもっず楜しい気持ちになれるのにな 」 そんなの、僕だっお。  「すたないが、䞀緒には行けない」 聞こえおきた声に俯いおいた顔を䞊げる。 そこには、女性からの誘いを苊笑しながら断る兄の姿があった。 「えなんでですかぁ」 「今日はな、匟達ず久しぶりに日遊びたくろうず玄束したんだ」 「でも 」 「本圓にごめん。今日は家族氎入らずで過ごすず決めおいるから 」 すごく申し蚳そうに謝るカラ束を芋お、女の子達はこれ以䞊食い䞋がるのもみっずもないず思ったのだろう、少したじろいだ。そしおその瞬間を芋逃さなかった男が人。 「カラ束兄さんおたたせヌどぅヌん」 「どわっじゅ、十四束」 「早く次のトコ行こう」 「あ、ああ 」 怍え蟌みから飛び出した十四束は、凄い速さでカラ束にタックルをかたした。 突然だけど僕たちの䞭では肉䜓掟のカラ束はなんずか吹っ飛ばずに衝撃に耐え、匟を受け止めた。 いきなりの登堎に驚いたのはカラ束だけではなく、むしろ慣れおいない女の子たちは呆気にずられおポカンずしおいるそもそも同じ顔が぀に増えたら驚くだろう。チャンスだず思い僕も飛び出した。 「ごめん遅くなっお。んじゃ、行こう」 「あ、チョロ束 」 「ほら早く。 今日は、日たっぷり遊ぶんだろ」 「 ああ」 カラ束の手をずっお匕っ匵るず、ニコニコず嬉しそうに぀いおきた。 正盎めちゃくちゃ恥ずかしかった。 けどなんでだろう。女の子達から芋えない堎所に移動するたでは、どうしおもその手を離したくはなかったんだ。  「すたない、助かった」 「たったく驚いたよ。䜕ナンパなんかされおんの」 「カラ束兄さんモッテモテだね」 「フッ 俺の溢れ出す色気にガヌル達も匕き寄せられたんだな」 「そういうのマゞでいいから」 「」 さっきの堎所から倧分離れた僕らは䞀息぀く。 盞倉わらずカラ束の発蚀は痛々しい。どうせならさっきの女の子達の前でこういう話し方しおくれおたら、向こうから離れおくれおたのにっお思う。たたにたずもな察応をするのはカラ束の倉な癖だ。 「さおず、次はどうしようか」 「もう結構いい時間だな やっぱり目玉の芳芧車か」 「そうだね。じゃああっちに」 「兄さんネコがいるよ」 〆は芳芧車にしようかず話しおいるず、十四束が倧きな声で僕らを呌んだ。少し離れた所で、十四束がこの遊園地のキャラクタヌであろうネコの着ぐるみにヘッドロックをかけおいた。 「ちょっ、十四束すいたせんヌ」 「ネコず皆で写真撮ろうよヌ」 「ここに来た蚘念を刻むずいう蚳か いいだろう」 男人にファンシヌなネコずいう最高にクレむゞヌな光景だったけど、あたりに人が嬉しそうに顔をキラキラずさせるから、僕も仕方ないかなっお思っお、係の人にお願いしお蚘念写真を撮っおもらった。 「もっふもふだヌ」 「ははは、人懐っこい子猫ちゃんだな 」 「なんかカラ束な぀かれおない」 䜕故かネコはカラ束によくひっ぀いおいた。マタタビの匂いでも発しおるんだろうか。 あ、䞭の人はネコじゃないから関係ないや。  「これは かなりデカむな」 「メむンっお聞いおたけど想像以䞊にデカいね」 「乗りがいがありそうだな」 最埌のアトラクション、この遊園地のメむンでもある倧芳芧車を芋䞊げる。 園に入る前から存圚を䞻匵しおいた゜レは近づくず䜙蚈にその壮芳な䜇たいに蚀葉をなくしおしたうくらい倧きかった。 もう日が暮れそうな時間垯なので園内は人は少なめで、䞊ばずに乗るこずが出来た。 乗車刞を係員に手枡しお芳芧車の扉が開くのを埅っおいるず、十四束が「あ」ず声をあげた。 「十四束どうした」 「さっきのネコさんがこっち芋おる」 「あ、本圓だ。すっごいヒマそう 」 「もう人もたばらだからなぁ」 「僕䞀緒に遊んでくるねヌ」 「えっちょ、十四束」 「兄さんたちは芳芧車楜しんできお行っおきたヌす」 「オヌマむリルゞュりシマヌツ」 僕たちが匕き止める間もなく、十四束はダヌッず階段を駆け䞋りるずさっきのネコのマスコットのもずぞず走っおいっおしたった。 呆気にずられお立ち尜くしおいた僕たちだけど、係員の「乗るの乗らないのハッキリしろ」ずいう芖線に耐えかねおしぶしぶ人で芳芧車に乗り蟌んだ。 向かい合わせに座っお苊笑する。 「なんなのアむツいきなり 芳芧車楜しみっお蚀っおたのにさぁ」 「はは ブラザヌらしいず蚀えばそうだが、驚いたな」 なんおこずない䌚話をしながら、芳芧車はゆっくりず䞊がっおいく。ネコず戯れおいる十四束がもうあんなに小さく芋えるず笑うカラ束を芋お、僕も自然ず頬が緩んだ。 こちらを向いたカラ束ず目が合う。䞀瞬だけ流れた無蚀の時間の䞭、先に口を開いたのはカラ束だった。 「 なあ、チョロ束」 「なに」 「今日はありがずうな」 「な、なんだよ急に改たっお 」 「こんなにめいっぱい遊んだのは久しぶりだ。お前が連れおきおくれたおかげだよ、ありがずう」 「別にいいっおこの前のお瀌だっお蚀っおるじゃん」 急に畏たっおお瀌を蚀うカラ束に僕も照れくさくなっお倧げさに手を振る。 気づけば芳芧車も䞀番高いずころたで差し掛かろうずしおいた。 「それにしおも、どうしお遊園地だったんだ他にも動物園やキャンプ堎ずか候補は色々あっただろうに」 「ああ、今に分かるよ。ほら芋お」 「ん 」 カラ束の疑問に答えるべく僕は立ち䞊がった。カラ束にも立぀ように促しお、人しお窓ぞず近づく。するず 「うわっ 」 「ね、凄いでしょ」 「ああこんなに矎しい倕日は芋たこずがない」 芳芧車の頂䞊から芋えたもの、それはビルや民家が立ち䞊ぶ景色の向こうに、倧きな倧きな倕日が沈む瞬間だった。倕日を济びお、興奮しお玅朮させたカラ束の頬が曎に赀く照らされた。 「この遊園地の目玉なんだっお。ここから芋える倕日がさ」 「ビュヌティホヌだこんな景色が芋られるなんお 」 「 倕日もだけどさ、カラ束に芋せたかったんだ」 「うん」 こちらを向いお銖を傟げるカラ束。僕は小さく笑っお窓の倖に目を向ける。カラ束もそちらに目をやった。 「ここから芋枡せるこの街。ここが、僕たちが生きおいく堎所なんだ、カラ束」 「チョロ束 」 僕がこの遊園地を遞んだ理由はそれだった。 僕たち人が暮らしおいる街の姿を、しっかりず目に焌き付けおおきたかったから。 「長く暮らしおいけば、きっず蟛い事も苊しい事も沢山あるず思う。それでも僕は、この街で生きおいくっお決めたんだよ」 「   」 「だからこの堎所を遞んだんだ。お前にもこの街を芋お欲しいず思っお。それで、僕自身も。この景色を目に焌き付けお、芚悟を決めようっお」 「   」 「色んな困難を乗り越えお、この街で暮らしおいく芚悟をさ」 「チョロ束」 「そこに、カラ束もいおくれたらっお思う」 「」 目を芋開いたカラ束が僕をじっずみ぀める。 先月蚀えなかったこず、今日の僕は絶察に蚀うず決めおいたんだ。 「これから先も、お前ずずっず䞀緒に生きおいきたいんだ」 「あ 」 「頌りないかもしれないけど、僕、頑匵るからさ 。だから、これからもよろしくな」 「  ああ」 笑顔で倧きく頷いおくれたカラ束にほっずする。 よかった これでヘタレの名も返䞊できただろうか。 僕だっおやれば出来る男なんだぞ。 い぀たでも十四束に負けおられないからね。 やっず蚀えたず思ったら力が抜けおしたった。垭に座り息を぀く。 「なんおちょっずキザだったかな」 「確かになチョロ束らしくなくお驚いたぞ」 「ははは、だよなぁ あ、い぀も行くスヌパヌが芋える」 「卵の安い所な あれ、あそこに銭湯ないか煙突が 」 「本圓だ。今床久しぶりに行っおみようか」 「賛成するぜブラザヌ」 その埌は、そこから芋える颚景の感想を蚀い合ったりしお、芳芧車が䞋に降りるたでの時間を楜しく過ごした。きっず䞋ではネコず遊び終えた十四束が埅っおいるだろう。ここを降りたら埌は土産物でも芋お、どこかでラヌメンでも食べお垰ろうか。 ふず、手にしおいた遊園地のパンフレットを眺めおいたカラ束が、小さく瞠目しお少しだけ顔を赀くした。 「どうしたの」 「ひゃいっあ、ああいや、なんでも 」 「 あ、もう䞋に着くよ」 「そ、そうだな」 芳芧車から降りるず、出口付近で十四束が手を振っお埅っおいた。 「どうだったどうだった」ずしきりに聞いおくるので、カラ束が芋えた颚景を事现かく䌝えおやるず、十四束は嬉しそうに笑った。 「今日はすんげヌ楜しかったありがずチョロ束兄さん」 「俺も楜しかったぞ」 「僕も。いい息抜きになっおよかったよ」 「そろそろ垰るか。ラヌメン屋でも寄っおくか」 「がく醀油ずんこ぀ヌ」 「俺は唐揚げずチャヌハンのセットだ」 「ラヌメンは決定なのかよ た、いいけどね。僕は塩ラヌメンず逃子で」 人で連なっお駅ぞず歩く。 暊の䞊では春だけど、日が照っおいないずただただ寒いこの季節。 けどなんでかな。人䞀緒にいるず、い぀だっお春の陜気の䞭にいるような、そんな気持ちにさせられる。 䞍思議だなず思うけど、今はずにかく䜕か食べたかった。はしゃぎすぎおお腹がすいたよ。 どうせもう少しすれば、本圓の春がやっおくるんだから。 僕はただ、懞呜に生きおいくだけだ。 人で暮らす、この街で。 [newpage] 『○×パヌク、倧芳芧車のヒミツ』 『倧奜きなあの子ず芳芧車に乗っお、頂䞊に぀いたら貎方の思いを䌝えおねそれがちょうど倕日の沈む瞬間なら、人は幞せいっぱいのカップルになれるかも』 [newpage] 「たっだいた。いや負けた負けた っお䞀束どうしたんだお前」 パチンコから垰っおくるず、居間でふさぎ蟌んでいる䞀束を発芋した。 ちゃぶ台にもたれおスマホをいじっおいたトド束が答える。 「なんかね、バむト䞭にカラ束兄さん達ず遭遇したんだっお」 「はっバむトお前バむトなんかやっおたのかよ䞀束」 「  日雇いだよ。日だけの。顔も声も出さないでいいバむト」 「そんなバむトあんの」 「遊園地のマスコットキャラクタヌの着ぐるみ着お、颚船くばったりしおたんだっおそこに兄さん達が遊びに来たんだっおさ」 「はぁ偶然だなぁ。っおか、アむツらいい歳しお遊園地っお しかも男人」 「確かに痛いけどさぁ、僕らも誘っおくれおもよかったず思わない」 スマホを叩き぀けおトド束が怒る。俺も倧幅同意だ。 んな楜しそうな事に兄ちゃんを呌ばないずか チョロ束のや぀、どういう぀もりだ 確かに腹は立ったが それ以䞊に気になるこずがある。 「なぁ䞀束。お前なんでバむトなんかしおんの」 「ゔっ 」 「俺に次いで瀟䌚に出る気がなさそうなお前がさぁ、日雇いずはいえ働くなんお どういう心境の倉化だよ」 「それは  」 蚀い淀む䞀束に呆れたのか、トド束がたた代わりに答えおくれた。 「もニッブいなぁおそ束兄さんはホワむトデヌのお返し買うために決たっおるでしょ」 「 はホワむトデヌ」 「バレンタむンの前日、僕らカラ束兄さんにチョコレヌトケヌキ焌いおもらったでしょ䞀束兄さん、そのお返しを買う぀もりでお金が欲しかったんだよ」 「あ そういやそんな行事あったな」 「忘れおたの信じらんないあ、ちなみに僕は日着でもう荷物送っおるから♪バむト代溜めおたしね♪」 「なっ 抜け駆けはズルいぞトッティ」 「お返しも忘れお党財産賭け事に぀ぎ蟌む長男に文句蚀われる筋合いはありたせん」 「ぐはぁ正論ッ」 やっべヌ 完党に忘れおた。マゞで金ないわ。 俺もなんか日雇いで皌いでカラ束に物送った方がいいのか  日は倧幅に過ぎるけどいいだろうか アむツの事だから気にしないか。 なんなら枡す぀いでにたた遊びに行っおもいいかもな。 そんな事を考えおいる俺の暪で、䞀束はひたすらどんよりずしおいたのだった。 「マゞ最悪 。幞せそうだった しかも回目は十四束に捕たっおク゜束達芳芧車に乗りこんじたったし 」 「えヌ十四束兄さん気づいおたのかなぁ」 「 ちなみに解攟された時に『ごめんね、今倧事なトコだから』っお蚀われたし 」 「あそれは絶察気づいおるね。ご愁傷さた」 「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛」   アむツ等、ちょっず調子に乗りすぎかもな いい加枛にしないず、お兄ちゃん、我慢の限界かもよ 次回、『ずうずう長男の逆鱗に觊れおしたったチョロ束虎芖眈々ず次男略奪蚈画を立おるおそ束に気づきもしないカラ束ずチョロ束は、トッティから届いたハム詰め合わせに倧喜び䞀方、萜ち蟌んだたたの䞀束は、悲しみを力に倉え、着ぐるみマスタヌぞの道を歩み始めたのだった 』 来週のおそ束さんは 『十四束、涙の花粉症デビュヌ』 『凄いぞこのハム専甚゜ヌス぀いおる』 の本ですお楜しみに 続きたせん 。
ホワむトデヌのお返しをチョロ束が莈る話。 面接保留組が家を出お䞉人で暮らし始める話<br /><br /><strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6073844">novel/6073844</a></strong><br /><br />の続線です。<br /><br /> ・チョロ束芖点<br /> ・チョロカラっぜい<br /> ・パカカラっぜい<br /><br /> 以䞊が倧䞈倫な方はどうぞ。<br /> い぀もよりちょっずだけチョロ束がヘタれおない ず思いたす。<br /><br />【3/16远蚘】2016幎3月15日付の<br />[小説] デむリヌランキング38䜍<br />女子に人気ランキング65䜍に入りたした<br />(*^â–œ^*)コメントやタグい぀も有難うございたす<br />返信も兌ねお、䞋に少し远蚘です♪<br /><br />●トド束のお返しの経緯●<br /><br />ん ホワむトデヌ売り堎に来おみたはいいけど、䜕をあげたらカラ束兄さん喜んでくれるかなぁ<br />やっぱ定番のお菓子风やマシュマロはちょっず地味かな <br />あっこのクッキヌはどうかなハヌト型で可愛いし、包装もオシャレ<br /><br />  ん゛でもなぁ。正盎カラ束兄さんが自分で焌いた方がおいしいでしょ。<br />けどそんな事蚀ったらケヌキもチョコも䞀緒じゃん<br />えっ、じゃあお菓子党般アりトどどどどどうしよう<br /><br />ファッション小物 駄目だ駄目だあのむタいセンスの兄さんが喜ぶ小物なんお、想像しただけで恐ろしいよ店員さんにいい感じの芋繕っおもらうのは簡単だけど 心から喜んでくれるかず蚀えば埮劙だよね。<br /><br /> たあ、カラ束兄さんなら、僕からっおいえば䜕でも凄く喜んでくれるんだろうけど。<br />けどさぁ、どうせなら最高に喜んでほしいんだもん。<br /><br />ああ。䜕か䞁床いいのないかなぁ<br />慣れない人暮らしで生掻費を切り詰めおいるだろうカラ束兄さんが喜ぶもの <br />肉食系肉、ずにかくお腹が空いたら肉料理をいっぱい食べおたカラ束兄さんが喜ぶもの <br />尚䞔぀、趣味ずかセンスにあんたり関係のない、そこそこ立掟で芋た瞬間「おぉ」ずなるような豪華な感じの <br /><br />  っおヌ<br />これだぁああああああああああ<br /><br />終
【保留組】 僕だっお
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その埌もしばらく話をしながら歩いおいるず 「君かわいいねヌ どう今ヒマ オレらずお茶しない」 どうやらナンパのようだ。盞手は 「あいにく人を埅っおるんで。 んもやしは野菜か 」 桐厎のようだ。おかもやしっおどうゆうこず 蟲家の人でも埅っおるのん 「アレっお桐厎さんじゃんない」 「みたいだな」 「みたいだなっお 助けなくおいいの」 「助けるっ぀おもなぁ 早く垰りたいんだが」 桐厎ずはクラスが同じだけだし、倧しお話をしたこずがある蚳じゃ無いし 助ける矩理も無いんだが  「はぁ 」 溜め息䞀぀。桐厎ずチャラ男達に近付いおく。 ある皋床近付いた所で携垯を耳に圓お、チャラ男達に聞こえる䜍の声量で 「もしもし、譊察ですか 今、女性が目の前で拉臎されそうになっおるんですが  はい、堎所は」 チャラ男達がこちらに気付く。 「ちょっこい぀譊察に連絡しおやがる」 「ちっさっさずずらがるぞ」 そういい去っおいくチャラ男達。 「栌奜悪いわね 」 埌ろで宮本が䜕か蚀っおるが、あヌあヌ聞こえない聞こえない。 かけおもいない携垯をしたい、再び歩き出す  「ちょっず、アンタどういう぀もり」 事はできなかった。 桐厎がこちらに近付きながら蚀っおくる。 「䞍良から女の子助けお 助けおアレっお助けたっおいえるかしら」 「その疑問には私も同感よ。桐厎さん」 「み、宮本さん珍しい組み合わせね」 「比䌁谷くんずはさっき本屋で偶然䌚っおね。 話をしおたら桐厎さんを芋かけたの」 「そうなんだ。それより、女の子助けおヒヌロヌ気取り」 「ヒヌロヌ気取りだぁ あんな䜕か起きおからしか行動できない奎らず䞀緒にしないで欲しい。 別にお前を助けた蚳じゃない。 今日はなんか廻りに怖いお兄さん達が沢山いるからな 䜕か隒ぎがあっおそれに巻き蟌たれでもしたら垰りが遅くなっちたうだろ。 だから俺は俺の為に行動したたでだ」 「どれだけ垰りたいのよ  それにしおも確かにさっきからよく目にするわね」 「そ、そういえば今日はなんかやたら倚いわね 」 顔いっぱいに汗をかき、目線を泳がせる桐厎。 こい぀ 䜕か知っおんのか 「ずころで桐厎さんはどうしおたの」 「えっ私は 」 蚀いづらそうにしおる所に 「おヌい。ゞュヌス買っお来たぞっお比䌁谷ず宮本じゃん。䜕しおんの」 䞡手にゞュヌスを持っお䞀条がやっおきた。 ----------------------------------------------------- 堎所は倉わっお公園に来た俺達。 「ゎメンよハニヌたさか君がそんなピンチになっおたずは知らなくお」 「気にしないでダヌリン」 なぜか䞀条ず桐厎の挔劇を芋せ付けられおいた。 なにコレ 先皋䞀条が合流したずころで立ち話もずいう事で、近堎の公園に来おいた。 そこで俺ず宮本が䞀緒にいる理由ず、桐厎がナンパに匕っかかっおた事を説明した埌、宮本が 「2人っお付き合っおるの」 ず、聞いたずころで急に挔劇が始たったのである。 なんで挔劇っお思うかっおいや、そんなん䞀目芋れば分かるでしょ。 お互い無理しお笑っおるし、時々青筋浮かべおるし、なにより蚀葉が嘘くさい。 それで恋人を挔じきれおる぀もりなんだったらお笑い草だ。ただ幌皚園児のお遊戯䌚の方が芋おお楜しいぞ。 「比䌁谷、どこ行くんだよ」 「トむレだ、トむレ」 トむレにも行きたかったが、あの堎から早く離れたかった。 䞀䜓どんな理由があるのか知らんが、芋おいお気分が悪くなった。 あ戻りたくない。  このたた垰っおも気付かれないんじゃね 桐厎達がいる方ずは反察偎からトむレを出る。 「少幎、少し良いだろうか」 少幎顔を動かさず、目だけで廻りを芋るが誰も居ない。もしかしお俺のこず 「聞こえおいるのか君だ。そこの目の腐った少幎」 もしかしなくおも俺じゃね目の腐った奎が他に居るなら芋おみたい。 おそるおそる振り返るず 「やはりヒキガダ君だったか」 「クロヌド さん」 銀色の髪をビシッず決め、スヌツを着こなしたクロヌドさんがそこに居た。
どうも埓属人間です。<br /><br />どうしおこうなったPart2です。<br />いやホントごめんなさい。<br />なんかごめんなさい。<br />今回も話はそんな進みたせん。
俺ガむル×ニセコむ6
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6540447#1
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 孊校からの垰り道。台颚䞊みの匷颚ず雚が吹き付けた事により、私は芪友で絶賛片想い䞭のココアちゃんを自分の家であり店員ずしお働いおいる甘味凊、甘兎庵ぞお泊りさせる事になりたした。  ココアちゃんず二人きりっずいうのは初めおで、内心胞が躍るぐらいずおも嬉しい。だけど、圌女をちゃんずおもおなし出来るのだろうか  っずいった䞍安を、私、宇治束千倜は感じおいたす。  誰も居ない私宀で、甘兎庵の制服を着た私は、胞の前にキュッず手を眮いお䞀人呟いた。 「ふぅ   シャロちゃんが居る時はこんな䞍安なんお無かったのだけど   いえ、匱気になっおは駄目だわ、ずにかく出来る限り圌女を楜したせないず」  私はどんどん募っおいく䞍安を抌し぀ぶすように、声を出しお、気合いを入れる。  たずは、身䜓を冷やした圌女の為にもお颚呂を沞かしおあげないずね♪ 「おい、千倜や」  突然、がらっず突然障子が開き、隣から聞き慣れたおばあちゃんのしわがれた声が聞こえる。その時に、少し驚いたのは内緒。 私はすぐに声を掛けおくれたおばあちゃんぞ身䜓を向けお返事をした。 「おばあちゃん、䞁床良かったわ。今日ね」 「あぁ、分かっおるよ。お前の事だから、䟋のじじいんずこで働いおいるバむトの嚘をうちに泊たらせる぀もりなんじゃろ」 「流石、おばあちゃん」 「い぀もの事じゃから分からないわけないわい。もう颚呂は沞かしおおいおあるから、さっさず圌女を入れおおあげ。この雚で濡れちたっおるんだろ 颚邪にでもなられたらうちが困るからのう、党く」  おばあちゃんはそう蚀うず、そっず私宀から離れお、厚房ぞず歩き去る。その貫犄ある背䞭を芋せ぀ける圌女の優しさに、私は心の底から感謝をしたのだった。  ずっず、客垭で座らせおいたココアちゃんを私は私宀に招き入れ、圌女にたずはお颚呂が沞いおいるから、先に入っお身䜓を枩めるように蚀うず、ココアちゃんは少し恥ずかしそうに口を開いた。 「えっず   着替えずか持っお来おないけど   本圓に良いの」 「ふふっ、勿論よ。だっおこんな事態を想定出来おなかったし、それに、私がココアちゃんを誘ったんだもの♪」 「本圓 良かったぁ」  ココアちゃんは寝間着を借りる事を迷惑だず思ったのか、私の蚀葉を聞くずほっず安堵する。そこで、私は冗談八割、本気二割ぐらいで、 「むしろ、今すぐ着おも良いのよ」  っず、頬を染めおから流し目で圌女に蚀っおみた。 「あはは千倜ちゃん、今着おも意味が無いよヌ」 「それもそうね♪」  決しお意味が無いわけでは無いのだけど   しかし、私はそれを口にする事はせず、胞の内に秘める。 「じゃあ、お蚀葉に甘えおお先に♪」 「あ、その  」 ココアちゃんが立ち䞊がり、济宀に向かおうずした時、぀い私は圌女を呌び止めおしたった。こうなったら蚀うしかない   私は芚悟を決めるず、少し深呌吞し、それから口を開いた。 「あ、あの  私もご䞀緒しお良いかしら ココアちゃんが嫌じゃなければだけど  」 「え 勿論だよ むしろ䞀人で入るのは寂しいからお願い千倜ちゃん」 するず、圌女は私の蚀葉を聞いお目を茝かせるや、逆に私ぞ匷くお願いしたのだった。  それから数分埌。 「はぁぁぁぁぁぁ、気持ちいい♪」 「やっぱり冷えた身䜓には熱いお湯が䞀番ね♪」  私ずココアちゃんは二人で济宀に入るや、すぐに二人で䞀緒に湯船に浞かり、そんな感想をお互いに蚀い合う。 「  」 「どうしたの、ココアちゃん」  䜕故かココアちゃんにたじたじ芋られおいるような気がしお、気になり圌女ぞ声を掛ける。  圌女は顎に手を圓おおしみじみず呟いた。 「そういえば裞の千倜ちゃんを初めお芋るかも」 「あら、確かにそうね♪ 氎着無しの䞞裞な私   どう」  圌女の蚀葉に私はすぐ頷くず、わざずらしく身をよじっお手を頬に圓お、あだっぜく圌女に問いかける。  勿論、ココアちゃんはノリノリで答えおくれた。 「ずっおもお矎しいですわよ、お嬢様。モデルさんずかで出おもおかしくないぐらい♪」 「たあ、本圓に うふふ、ありがずう」 「特にその倧きなお胞がそそりたすねぇ♪」 「キャヌ、ココアちゃんのぞんたい♪」  ひずしきりこんな感じに、二人でキャッキャりフフしながら遊び、二人で背䞭を流し合いっこしたり頭を掗ったりしお、長いようで短かったお颚呂を終わらせる。ここたで楜しいず思えたのは本圓、シャロちゃんず䞀緒に入っおる時以来かもしれないわ。  その埌、二人で䞀緒に寝間着にお着替えをし、䞀緒に倕飯を笑いながら食べ、私宀で䞀緒にお勉匷をする。䜕だかずっずココアちゃんず䞀緒に居お   「䜕だか恋人同士みたいだねヌ」 「あ、ココアちゃんも   思った」 「勿論 でも、私ず千倜ちゃんは芪友なんだから圓然だよね♪」 「ふふっ、そうね。じゃあ、寝る時間が近いから、もう少しだけ恋人ごっこしお寝たしょうか♪」  私はただ途䞭の勉匷を終わらせお、そう蚀いながら圌女の方ぞ近づくず、ココアちゃんの背䞭に優しく抱き付いた。 「ほわっ」 「ココアちゃん   暖かいわね」 「そう蚀う千倜ちゃんこそ暖かいよ、冬だったらずっずそうしおもらいたいぐらい♪」 「じゃあ冬になったらもっずしおあげるわ♪」 「わヌい、やったあ 千倜ちゃんカむロだヌ♪」  可愛らしく無邪気に喜んでるココアちゃんの声で、私は圌女の背䞭から離れたくない衝動に駆られたが、䞀床だけ匷くギュッずした埌ココアちゃんから䜕かぐえっずカ゚ルの朰れた声がしたけど気にしない、名残惜しいけど離れた。 「そろそろ勉匷に戻らないずね♪」 「えヌ あっ、私だけしおもらうのも䜕だか悪いから千倜ちゃん」  ココアちゃんはほんわりした笑顔で䞡手を広げるず、私に「おいでヌ♪ おいで―♪」っず誘いをかけた。テスト前だから本圓はお勉匷をした方が良いのだけど、誘いをかけられたならば、応じるのが以䞋略 「よろしくお願いしたす」  私は戊堎に出陣するモノノフのような鋭い目぀きで、圌女の真正面に正座で座る。 「な、䜕か芚悟を決めおる顔をしおるけど、別に死んだりなんかしないからね」  流石に私の嚁圧が凄かったのか、ココアちゃんはやんわりずそう蚀った。 「あらやだごめんなさい、぀い緊匵しお力が入っちゃっお」 「たるで結婚しようっお、今にも蚀いそうな雰囲気で䜕か良いね ごっこだけど、䜕だか本気になっちゃいそう♪」 「確かにその通りね♪」  私は内心、「これがごっこじゃ無かったら良いのに  」っず思いながらも、決しおそれを衚情には出さず、たた口には出さなかった。こんな時に本圓思っちゃうわね、芪友っおいうのは嬉し過ぎる立ち䜍眮だけど、恋人にはなれない。枷にもなるんだ   っおね。 「背䞭 正面 それずもわ た し」 「私を遞んだら   どうなるの」 「ホットココアを淹れおきたす」 「それは良いわ でも、やっぱり正面で抱きしめお欲しいかも」  私は恥じらう乙女のように蚀うず、圌女は「お安い埡甚」っず䟋のお姉ちゃんに任せなさヌい♪ ポヌズをし、それから優しく私の身䜓を抱きしめおくれた。 「あ  」 「あぁ千倜ちゃんモフモフ」 「ふふっ、ココアちゃんには負けるわ♪」 「やっぱり女の子の身䜓は柔らかくお良いね♪」 「ココアちゃんもそんな女の子よ♪」  二人で再びじゃれあい、すっかりず私はお勉匷の事なんお忘れお、楜しくお暖かい時間を過ごしたのだった。  ☆☆☆ 「それじゃあ、そろそろ電気を消すわねココアちゃん」 「はヌい、おやすみ千倜ちゃん♪」 「おやすみなさい♪」  私は郚屋の電気を消すず、自分のお垃団にゆっくりず朜り蟌んで、それから目を閉じる。  その時、䞀緒にお颚呂に入った時のココアちゃんの裞を思い出し、私はみるみる頬を䞊気させお目をパチリっず開く。 わ、私は䞀䜓䜕を思い出しおるの   確かにココアちゃんの事が倧奜きだけど   それじゃあ  たるで、圌女の身䜓を求めおるみたい   そこたで考えお、私はたすたす頬が赀くなり、心臓がバクバクっず早鐘のように打ち出した。圓然吐く息も荒い。 「   だ、駄目よ   絶察に   嫌われおした」  がそがそっず思っおいる事を぀い口に出しおしたうず、暪で寝おいるココアちゃんが、 「  んん   どうしたの、千倜ちゃん」  っず、起きおから私に声を掛けた。  すぐに私は内心驚きながらも、平静を装い笑顔で返事を返す。 「ううん、䜕でも無いわ。ちょっずおかしな倢を芋ただけ」 「お菓子   それは矎味しそうな倢だねぇ  」  ココアちゃんはこれたたおかしな勘違いをしおから、再び倒れるようにそのたた敷垃団では無い、畳に頭を突っ䌏させお眠りこけた。痛そうだけど倧䞈倫なのかしら  このたたココアちゃんの可愛らしい倉な寝盞を眺めるのも良いけど、そんな䜓勢だず圌女の頭にみるみる血がたたりそうだし、そうで無くおも絶察身䜓を痛めるだろうから、私はそっず身䜓を起こす。  それから、ココアちゃんの近くたで歩み寄り、圌女の姿勢をちゃんず正した埌に毛垃をかけおあげた。 「えぞぞ     チノちゃぁん、心配しないで倧䞈倫だよ   お姉ちゃんに   任せなさぁい  」 「うふふっ、本圓にココアちゃんは   チノちゃんの事が倧奜きなのね」  私はココアちゃんが倧奜きだけど、ココアちゃんはチノちゃんが倧奜き   ココアちゃんの堎合、チノちゃんを効ずしお奜きなのだろうけど、こんなにも圌女に想っおもらえるチノちゃんが矚たしいず思うし、恥ずかしい事なのだけど嫉劬しちゃいそうになる。 前にチノちゃんが悩んで私の所ぞ盞談しに来おくれたわね   そんな、私がチノちゃんに嫉劬しおしたうなんお   党く予想も぀かなかったわ   ううっ、本圓自分が嫌になっちゃいそう  チノちゃんもココアちゃんを照れ隠しでツンツンしおるけど、傍から芋おも分かるぐらい圌女を慕っおいる。きっずそれ以䞊に奜意を寄せおいるにも違いないわ。そんな二人の関係を匕き裂いおいいの いいえ、駄目に決たっおいる。それは分かっおいる。  だけど、それでも私は    「ココアちゃんが   倧奜き」  私はそう呟くず、穏やかな寝息を立おおいるココアちゃんの顔に自分の唇を近づけ、それから    圌女の額にキスをした。 「だけど、芪友以䞊になりたいっお気持ちは   これで最埌にする。ごめんなさい、こっそりキスなんかしお  」  私は自分の胞に手を眮いおそう小さく呟くず、ただ高鳎っおいる心を萜ち着かせるため、圌女が起きないようにこっそりず私宀を出おからお茶を淹れに行くのだった。  数時間埌    私は早く起きた埌、顔を掗い歯を磚いたりしお朝の仕床を枈たせるず、い぀ものように仕事着に着替えお、倖の入口呚りの掃陀を始めた。 「ふふふっふんふんふふ♪」  錻歌亀りで、竹箒をさっさっさヌっず動かしお掃陀をしおいるず、途䞭で、がらりっず店の扉が開き、ココアちゃんが寝間着姿のたたで珟れる。 「おはよう、ココアちゃん♪ よく眠れた」 「う、うん。その  千倜ちゃん  」 朝だからか、それずも䜕か思う事があるのか、い぀も元気だったココアちゃんがおどおどしながら私に話し掛けおきた。もしかしたら  っず思い぀぀も、私は、 「どうしたの」 っず玠知らぬふりで尋ねる。原因は私にあるのは分かっおいる分、眪悪感ず自己嫌悪が募り胞が苊しくなった。 「えヌっず、歯磚き粉ず歯ブラシっおどこだったっけ」  あ、あれ もしかしおあの事じゃない   どうやらココアちゃんは、歯を磚きたいのに歯磚き粉ずか芋぀からないから私に聞いたみたいで、内心ほっず䞀安心した。 「掗面台の䞋が棚になっおいお、その䞭よ♪」  私は笑顔でそう圌女に答えるず、ココアちゃんは照れ臭そうに。 「そっかぁ、そうだよね、アハハハ。千倜ちゃんありがずうヌ」 っず蚀っお、すぐに䞭ぞ戻った。  前蚀撀回、物凄く気を䜿わせちゃっおるみたいで、恥ずかしさず申し蚳無さで私は今にも死にそうです。  それから少ししお。  店内に戻り、店開きの準備をしおいるずココアちゃんがおずおずっず、私の所ぞやっおきた。 「あの、千倜ちゃん。ちょっず良いかな」 「えぇ、勿論よ」  やっぱりココアちゃんは、あの時、起きおいたみたいだった。それが完璧に分かり、私は芳念しお自分から圌女ぞ蚀った。 「昚倜の事よね」 「うん  」 「やっぱり起きおた」 「うん、千倜ちゃんが䜕か呟いおたのが聞こえお   チノちゃん蟺りからかな」  ほが最初から聞かれおた事に、ボッず頬が玅朮し、恥ずかしさでそのたたゆでだこになりそうだけど、私は極めお平静を取り繕いながら、「そう  」っずだけ䞀床呟き、深く深呌吞しお冷静になるように努める。それから話を続けた。 「私ね   ココアちゃんの事が倧奜き、友達以䞊に   芪友の貎女の事を恋したい盞手ずしお、想っおるし、倧奜きなの。こんな事蚀っお本圓ごめんなさいね  本圓、気持ち悪いよね  」  蚀葉を発する毎に、胞の奥が぀かえ、苊しくなる。喉が震えるけど、それでも本圓の事をこうしお蚀えお、気持ちが少しだけ軜くなった。  恐らく私は泣き笑いのような顔をしおるけど、ようやく本圓の事を蚀えお䜕だか嬉しい。でも、ココアちゃんの答えが恐いし、今の関係が厩れおしたうずいう事を考えるず凄く逃げたくなる。矛盟した気持ちがこんがらがっお、自分の気持ちがわけがわからない。 「千倜ちゃん  」  ココアちゃんは小さく私の名前を呌ぶず、ゆっくりず私に近づいた。  これは、叩かれるのかしら でも、それも圓然の事だず思うし、私は受け入れるわ。  私は芚悟を決めお、真剣な県差しの圌女を䞀床芋るず、ぎゅっず目を閉じた。  するず。  ふわりっず、私の錻孔にココアちゃんの銙りが広がったず思うず、唇に優しく柔らかい䜕かが觊れた。 「   えっ」  目を開くず、私の芖界には目を閉じたココアちゃんの顔があり、圌女の唇ず私の唇が重なっおいた。 「   んっ」 「ココア   ちゃん」 「あのね、千倜ちゃん」  ココアちゃんはゆっくりず私から唇を離すず、少し泣き笑いで、だけど嬉しそうにはにかみながら優しく私に声を掛ける。 「私の倧奜きな倧芪友が   そんな顔しながら、自分を優しくお暖かい   気持ちのこもった蚀葉で告癜しおくれたら、ずおも嬉しいし、受け入れるしか無いじゃん」 「ココアちゃん  」 「千倜ちゃん   ありがずう、本圓の事を蚀っおくれお。私、千倜ちゃんが倧奜きだよ」  圌女はそう蚀うず、私をぎゅっず抱き締める。  私もココアちゃんの背䞭に䞡腕を回し、自分の胞を圌女ぞ抌し付けお抱き締め返し、それから蚀葉を返した。少し、喉が震えお涙声になっおるから、泣いおるっお気づかれそう。だけど、それでも私は良いわ。だっお、盞手が倧奜きなココアちゃんなのだから。 「本圓に   いいの」 「うん」 「本圓に、本圓に本圓」 「もちろんだよ」 「キス   しおいい」 「  いいよ」  私はココアちゃんから受け入れお貰ったせいか、それずも今たで甘えるなんお事をあたりしなかったせいか   ぀い、ポロリっずキスをしようずいうずんでもない蚀葉を口に出しおしたった。でも、圌女は優しく受け入れおくれた。  嬉しい   こんなに嬉しい気持ち   生たれお初めおよ   この甘くお、幞せで、倩にも䞊るような特別な気持ちは、ココアちゃんだけ   「ありがずう、倧奜きココアちゃん」  私は心の底から愛した倧芪友に感謝するず、自分から今床は、圌女の唇ぞ自分の唇を重ねる。 「  んっ」 「んんっ   あっ、   ここ、あちゃ  」 「ちや  ちゃん  」  キスをする床に、お互い抱き締める力が匷くなり、甘い吐息が溢れだす。  でも、そんな至犏な時に。 「おい、お前さんら。二人でいちゃラブするのは党然構わないんじゃが、もう店は開いおおるしここは店内じゃ。そんな事しおたらお客様が入りにくいじゃろ」  っず、おばあちゃんの声が聞こえ、すぐに二人䞀緒に電気が走ったかのようにパッず身䜓を離した。 「おおおお、おばあさたすみたせんでしたあああああああああああああああああ」  そしお、ココアちゃんは恥ずかしさからか、疟颚が起きそうな皋の凄たじいスピヌドで私の私宀ぞず党力疟走する。あぁ   でも、そんな恥ずかしがる貎重な可愛いココアちゃんが芋れお残念半分、嬉しさ半分になったかも♪ 「友達が来ずるぞ、ではな」  おばあちゃんはそう蚀い残すず、厚房ぞず戻っおいく。 「お友達」 おばあちゃんが顔を向けおいた堎所に、私も身䜓を向けるず、そこには顔をこれでもかっずいうぐらい赀くしお、䞡手で顔を芆いながらもチラチラっず私を芋るシャロちゃんだった。 「シャ、シャロちゃん、おはよう♪」  私は芋られた事の矞恥心で顔を赀くしながら、若干噛む。だけど、私は平静を装うように、圌女ぞい぀ものように挚拶した。  するず、シャロちゃんは私の挚拶を受けおしどろもどろに挚拶を返し、それから頬を真っ赀っかにしお、目をぐるぐる回しながらも圌女は芪指を立おお、 「やややや、やったわね、千倜 おおおおおおおおお、おめでずう」  っず、私を祝犏した。  私は圌女の蚀葉を聞き、「うふふ」っず笑いがこがれ、屈蚗の無いはにかんだ笑顔でVサむンを䜜ったのだった。  私は今、最高に幞せです。   ☆FIN☆
ホワむトデヌずいう事なので、私の倧奜きな二人に捧げるずいう名のバレンタむンデヌめちゃ遅れたずいうのが本音の、い぀もの皚拙な私の文でココ千倜第四匟を執筆させお頂きたした 私が䞀番初めに執筆した、第䞀䜜→<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5485791">novel/5485791</a></strong>  『倧奜きな私の優しい芪友』の続き物になっおおりたしお、ようやく二人がげふんげふん。前䜜達以䞊に癟合床がかなり高い䜜品ずなっおおりたすので、濃厚な描写が苊手な人はバックした方が良いかも。今回も今回で、倧奜きなココ千倜愛をめいいっぱい詰め蟌みたしたので、ティヌタむムずかにゆっくり嗜んで頂ければず思いたす ずころで   ごちうさWPもう皆さたはやりたした あれのココ千倜は   いいぞ蚀葉は䞍芁 いいぞ ただの人は是非賌入したしょう。買いたしょう。買いなさい匷制 絶察埌悔したせん。本圓に
お砂糖よりも優しくお甘い唇
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true
「アリス  これは䜕だ」  それが本日、アリスのマンションを蚪れた火村の第䞀声だった。 「䜕っお芋おわからぞんパ゜コンやん」  そんなこずもわからぞんのアホちゃう、ずでも蚀うように火村を芋぀めるアリス。  火村にだっおその物䜓がパ゜コンだずいうこずはわかっおいる。  その呚蟺にある機噚がスキャナヌだずかプリンタヌだずかそのどれもが最新型だずいうこずもだ。 「俺が聞いおるのは、䜕時こんなの買ったのか、おこずだ」  だいたいアリスは専らワヌプロ専門だったはずだ。それだっお手曞きの頃から考えれば進歩である。 「買ったんちゃう。貰ったんや」 「    貰った党郚か」 「そうや」  おいおい勘匁しおくれ。  どこの䞖界に数十䞇もする代物をぜんずくれる奎が居るずいうのだ。 「いったい誰に貰ったんだ」 「俺ずデビュヌ時期が同じ䜜家で関西圚䜏で芪しくしおる神厎おや぀がおるんやけどな、そい぀に貰っおん」  貰っおん    おお前な。 「    その神厎ずかいう奎はお前ず違っお䜙皋儲かっおるのか」 「俺ず違っおっお䜕やねんっんそこそこちゃうあ、でも家が資産家だずか蚀うおたか、な」  芪の脛霧り攟題やなあ、ええなあず暢気なものだ。 「アリス    」  ずこずんわかっおいないアリスに火村は眉をしかめる。  問い詰めなくおはならない。 「だいたいどういう経緯で貰うこずになったんだ」 「䜕や、新しいパ゜コン買うこずになっお元あるのが邪魔になったんで良かったら俺に貰うおくれぞんか、お。俺も前からむンタヌネットずかしおみたいなぁお思うおたから枡りに船で貰うこずになったんや♪䜙蚈な出費せんで良かったやっぱり日ごろの行いがモノを蚀うんやろうなぁ」  ご機嫌である。 「    」  鈍すぎるアリスに火村は蚀葉がない。  だいたい、アリスは昔から䜕故か    いや、理由はわかるが男からの莈り物が倚い。  しかも、「ちょっずした」ずいうレベル以䞊の莈り物が。  火村が知っおいるかぎり    オヌディオ、コンポ、高玚腕時蚈しかしアリスはその䟡倀に気づいおいなかった。デザむン性が高すぎお時蚈ずしお䜿えないず評䟡しおいたそしお自動車に    今回のパ゜コン。  氎商売の女も顔負けな    莈り物の数々。  お前、働かなくおも生きおいけるんじゃないかず思うほどだ。 「    それ貰うずきに神厎ずかいう奎は䜕も蚀わなかったのか」 「䜕か、お」  火村の远及の理由も知らずほけほけず銖を傟げる。 「いや、そりゃ、食事に誘われたずか䜕ずか    」  普通これだけの莈り物をするっおこずは䜕らかの芋返りを期埅されるものだろ  莈り物をする男に䞋心が無い奎など居ない。 「食事ああ、そういえば今床䞀緒に飲みに行きたしょうずか蚀うおたっけ」  それだよ。  党然、気づいおいないアリスにさすがの火村も疲れを隠せない。 「アリス    くれぐれもそい぀ず人きりで飲みに行くのはやめたほうがいいぞ」 「䜕で奢っおくれるずか蚀っおたし    あ、火村も行きたいんやな」  それならそうずはっきり蚀えや、アホやな、ずアリス。      そうじゃない。  そうじゃないんだ、アリス。  もう、ここたでくるず鈍い、鈍くないずいう問題じゃない。  こい぀もしかしお確信犯かずも思えおくる。  だが、芋぀めるアリスの顔は    「䜕や」ずいう無邪気なたでにがけがけしおいお  どう考えおもそんな芞圓の出来る奎ではない。      性質悪ぃな。 「アリス    お前、いい加枛自芚したほうがいいぜ」 「    は䜕をや」  アリスは意味䞍明のアリスにずっおは蚀葉に銖をかしげる。  その動きに぀れおアリスの色玠の薄い髪がさらさらずこがれる。  倧きな瞳がぱちぱちずたたたいた。      可愛い、可愛いのだ。本圓にそう思う自分の頭を正気かず揺さぶっおやりたいが。  幎霢ずか性別ずかを超えお、芋る者にそんな感想を抱かさずにはいられないものがアリスにはある。  それが無意識なぶん䞀局火村には厄介だった。  意識的にやっおいるのであれば、どうにでも出来る。  だが、本人がわかっおいないこずをやめさせるこずは    䞍可胜だ。  火村は倧きくため息を぀く。 「䜕や今日はおかしぃで」  誰のせいだず思っおいるんだ、この鈍感男め。 「    䜕でもねぇよ」  䜕で俺が男の尻の心配をしおやらなければならないのか。しかしアリスが他人に傷぀けられるこずなど自分が蚱せない。  どうせ蚀っおもアリスにはわかりはしないのだ。  それならば自分がアリスに近づく害虫を远い払えばいい、孊生の頃からずっずそうしおきたように。 「アリス    ぀いでに聞くが最近貰ったものは他に無いんだろうな」 「他に    うん    」  顎に手をあおお考えだすアリス。  おいおい、そんなに考えるほど䜕か貰っおやがるのか、こい぀    。  さすがの火村の目も遠くなる。自分にこんな顔をさせるこずが出きるのはアリスだけだろう。 「皎金察策にどっかの瀟長がマンション貰っおくれんか、お蚀うおたけどあれは冗談やろうしなぁ    あっピアノいらんか、お蚀うおた先茩がおったけど、郚屋狭いし邪魔になるからっお断ったし    俺、匟けんし」  ただ䜕かごちゃごちゃず蚀い続けるアリスに火村は心から決意した。 「アリス。これから絶察に䜕か貰うずきは俺に連絡しろ」 「䜕で」 「そのほうが䜕かず䟿利だから、な」 「そうかぁた、じゃぁそうするわ」  のほほんず答えるアリス。  こい぀が男に生たれおお本圓に良かったぜ      それが停らざる火村の心情だった。 「火村ぁ、今日は䜕䜜っおくれるん」  ほやほやした笑顔を浮かべお䞊目遣いにねだるアリスに火村はくらくらする。  これもきっず無意識なのだ。  だがそれに振り回されずにはいられない自分がいる。 「䜕が食いたいんだ。脱皿祝いに䜕でも、奜きなもん䜜っおやるよ」 「ほんたっやったらなぁ    」  嬉々ずしお献立をあげおいくアリスを優しげに芋぀める火村。  ぀たるずころ    火村もアリスに狂わされた䞀人であるのだった。  人のこずは蚀えない。
サむトから転茉匟。ちょこちょこ倉曎し぀぀・・・<br />曞いたのが幎以䞊前だからちょっず䞭身に歎史を感じおしたう。<br />ちなみに出来おない二人。これでも出来おない。
無邪気な小悪魔
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true
「ヒヒッ」 䞀束は自分を嘲る笑いを吐いたのだが、その人はどうも別の意味に受け取ったらしい。ため息ずずもに䞉癜県がさっきよりキツくなった。それには今床こそ笑いが挏れおしたう。 ヒヒッ、ずたた䞀束は口角を䞊げた。 「䜕がおかしいの僕らを翻匄できたこず私腹を肥やせたこず」 䞀束は答えずたた笑った。 ヒヒッ、ヒヒッ、ヒヒッ。 手足が自由なら今すぐ螊り出したい気分だ。その人は䞀束の真意が読み取れず䞍快だったんだろう。思いきりその顔面を蹎り飛ばした。埌ろ手に瞛られおいる䜓は簡単にパむプ怅子の䞊から吹っ飛ぶ。 冷たいコンクリヌトに叩き぀けられおなお、䞀束は笑っおいた。 「話す気はないっおこず」 「ヒヒッ 。逆ですよ、逆。掗いざらいお話ししたすよ あんたが信じるかは別ずしお、ね」 䞀束はずりあえず起き䞊がろうず詊みるが、栄逊倱調に睡眠䞍足で䜓力がないのに加え、倧した筋力もない䜓はビクずもしない。仕方なし寝転がったたた話すこずにした。 こんな玠晎らしいこずあるんですかねぇ、ず䞀束は口火を切る。 䞀束はもずもず自己評䟡が䜎く、思考もネガティブな人間だ。今さらどんな目に遭おうず、それがどんなに䞍圓な扱いだろうず、こんなゎミにはお䌌合いだず自嘲こそすれ恚む気も起きない。 ただこの『班長』ずいう地䜍ぞの偏芋くらいは改めおもらわなければ、目をかけた郚䞋が朰されおしたうかもしれない。䞀束にすれば、こんなゎミを慕う酔狂なや぀らだ。だが、悪いや぀らではないず思っおいる。こんなゎミでも誰かの未来を少しでも匕っ匵り䞊げられるのなら、こんな薄汚いずころでやっおきた意味はあるのかもしれない。 「た、俺の番が来たっおだけですよ。み〜んな『班長』が矚たしくお仕方がないんだ 。知っおたす芖察のずきずかご芧になったでしょう はたから芋たら䞊から䜜業を芋おるだけ。誰だっお矚たしくなりたすよね、思考殺しおただただ䜜業をする自分達を芋おるだけでお金もらえるなんお。そうやっお嫉劬したや぀がチクるたびに倉わるんですよ、『班長』は。あるこずないこず吹き蟌んで、匕き継ぎもないたたいなくなる。せいせいするでしょうねぇ、そんで次の『班長』にそい぀が収たる。その繰り返しですよ」 「じゃあお前も誰かチクったんだ」 「ええチクりたしたよ、そい぀は本圓に暪流ししおたんで」 気づいたのは私じゃないですけど、ず䞀束は䞀床蚀葉を切る。 こんなに長く喋ったのは久しぶりだった。子䟛の頃はもっず掻発だった気もするのだが、今はそんな過去すら倢だったのではず䞀束はたたに思う。その人は䞀束の蚀いたいこずがわからないのか、ずりあえず黙っお話の続きを促した。 「䜕人か前の『班長』にはね、䞖話になっおたんですよ そのずき聞きたしたからね、匕き継ぎがないせいでどれだけの仕事が滞っおいるのかっお話を。これでも䜕人か郚䞋はいたしおね、ああ、『班長』になるたえですけど そのうちの䞀人が芋ちゃったらしいんですよ。ここの品を暪流ししおいるのを、ね」 ヒヒッ、こんなザルな工堎よく朰れないね。䞀束はたた笑う。 䞀束にはい぀その人が右手に握っおいる銃の匕き金を匕くかわからなかったけれど、少しはこの話が面癜いんだろう。出来れば件の郚䞋くらいは目をかけおほしいず䞀束は思った。仕事ができない蚳じゃないのに、䞀束ずいるせいで圌らたでほかのもの達からやっかたれおいるこずを、䞀束は察しおいたからだ。 「神田ず、䞭村ず、前原っおや぀らなんですけどね、私の郚䞋。その暪流し芋぀けたの、神田だったかなぁ 青い顔しおたしたよ。チクれば昇進できるっおのに䞉人で盞談しお私に蚀っおきお た、それが䞖話になっおた『班長』なら仕方がないかもしれたせんけど」 その人は話を聞いおいるのかいないのか、途䞭から窓もないホコリをかぶった暗い郚屋をうろうろず歩き回り始めた。話に飜きたのだろうか。これ以䞊話しおいいのかも䞀束にはわからなかったが、うるさかったら喋れないようにするだろう。そう䞀束は刀断しおたた口を開いた。 「だから 」 「もういい。倧䜓わかったからね」 「 はあ」 別に呜乞いだったわけではないのだが、そう受け取られおしたったのだろうか。ずりあえず䞀束は黙った。 その人は䞀束に背を向けお立ち、埌ろ手に銃を持぀右手を巊手で芆うようにしおいる。仕立おのいいスヌツに背筋もピンずしおいお、銃さえなければただの気難しいサラリヌマンにも芋えた。人事ずか、そういう就職掻動のずきなんかの面接官にいそうだ。䞀束に面接を受けた経隓はないので、あくたでもむメヌゞの話だが。 「こんな工堎、さっさず凊分すればいいものを こんな効率悪いもの、コスパ改善する気もないのに䜕で持っおるんだか ク゜サむコパスどもめ 遊びで人を殺すくらいでこんな無駄金䜿うこずないのに 」 その人は䞀束に背を向けたたた䜕やらブツブツず文句を蚀っおいる。なるほど、ここはその人の組織の䞭ではたいしお重芁な斜蚭ではないらしい。だからこそ管理䜓制もザルで、芖察のたびに人が入れ替わるわけだ。 もしかしたらその人がここに芖察に来るのは初めおなのかもしれない。今たでの『班長』は䜓のいいオモチャだったわけだ。䞀束はおかしくおたたらず、今にも笑い転げたい気分になった。もちろん瞛られおいるのでそれは叶わない。けれど空気は察したのか、その人は䞀束の方ぞ振り返った。 「ここはおもちゃ箱だったわけだ ヒヒッ、あんたは遊ばないの」 「僕をあんな悪趣味なや぀らず䞀緒にしないでくれる」 明らかに嫌悪ず䟮蔑を孕んだ目が䞀束を芋䞋ろす。人を殺せる人間なのにどこが違うのかわからなかったが、その人は早口に蚀った。 「こんな生業だけど、僕、これでも垞識人だからたったく䞊が䞊だからっお僕たでひずくくりにされたらたたったもんじゃないよねあんなサむコパスどもず䞀緒ずか考えるだけでおぞたしいよ君もそう思うでしょ」 「いや、知らないし 」 「あ、ごめん、぀い」 その人はもずもず早口で、しかもけっこうお喋りな人なのかもしれない。なら自分の話を聞くのは倧局぀たらなかったろうにず䞀束は思うのだが、その人はいただ『䞊』ずやらぞの文句を蚀っおいる。人がいないずはいえ、そんなこずを蚀っおいいのだろうか。 いや、そもそも聞いおいる䞀束さえ居なくなれば構わないのだろう。なるほど、人生の終わりがお喋りずは、こんなくそったれな人生の幕匕きずしおは穏やかな方かもしれない。䞀束はほんのりず笑みを口に乗せた。その人は䞀束の先皋たでずは違う笑い方に気が぀いたのか、マシンガントヌクをやめお䞀束を芋た。 「なに笑っおるの」 「案倖悪くない人生だったのかなず」 「郚䞋に売られずいお蚀っずくけど、君を売ったのさっき君が名前挙げた郚䞋だからね」 「そうですね」 昇進が決たった䞀束に、郚䞋は口ではおめでずうず蚀ったが、その目は嫉劬にギラ぀いおいた。前々からいかに『班長』が報われない圹職かを話しおいたのだが、人間ずいうのは自分だけは倧䞈倫ず思い蟌む性質があるらしい。圌らもきっずその思い蟌みに突き動かされお䞀束を売ったに違いない。 でも、それでもいいず䞀束は思っおいた。これから死ぬ䞀束には、もうどうでもいいこずなのだから。その人が䞀束の前たで歩いおくる。そしお䞀束の顔の前でしゃがむず、銃の安党装眮が倖された。 「君もわかっおるず思うけど、僕も仕事だしさ。本圓に暪流しはしおないの」 「しおたせんよ た、数字ずか芋る限り事実なんでしょうけど」 「ふヌん。じゃあもうひず぀。なにか蚀い残したこずは」 その人が寝転んだたたの䞀束の額に銃口を突き぀ける。 䞀束はありたせん、ず蚀おうずしおやめた。䞀束にはひず぀だけ心配なこずがあった。 「あり、たした」 「ぞぇ。暪流しのルヌトずか」 「いやそんなんじゃなくお      猫、が」 「猫」 その人が頓狂な声をあげる。そりゃそうだ、呜乞いかず思いきや猫だなんお、䞀束も自分が蚀われたら意味がわからないだろうなず思う。だが咄嗟に出おきた蚀葉がそれだったのだから仕方がない。 「実は郚屋で怪我した猫をかくたっおたしお 窓ずか、開けおないから、あのたただず飢え死にしちゃうんで あ、郚屋は」 「ちょちょちょちょちょ、ちょっず埅っお」 「はい」 「ご、ごめん」 もしかしおその人は猫が苊手だったのだろうか。それずもそんなに話がおかしかっただろうか。䞀束が困惑するのをよそに、その人は顔を背け巊腕で芆い、肩を震わせおいる。 「あの 」 「ふ、ふふ ごめん、そんな呜乞い聞いたこずない」 「は」 「え」 䞀束が聞き返したこずでその人は絶句した。ようやく䞀束の蚀わんずしたこずに気が぀いたらしい。 「え、呜乞いじゃないの本圓に」 「はい。ずいうかどの蟺が呜乞いかず思ったんですか」 「だから猫を逃がしに行かせおっおこずじゃないの」 「いや、それをよろしくお願いしたすっお話で」 「マフィアの幹郚に蚀うこずそれ」 「え、マフィアなんですか 」 「そこから」 毒気抜かれちゃったよ、ずその人は䞀束の前にぞたりこんだ。銃の安党装眮をかけるず脇にさげたホルスタヌぞ完党に仕舞う。 だが䞀束は緊匵を解くどころ䜙蚈に身を固くした。毒気が抜かれたず口で蚀われおも、もしかしたら銃以倖で殺すこずにしただけかもしれないからだ。 いっそ䞀発で楜にしおほしかったず䞀束は顔色を悪くする。そんな䞀束の様子を知らずか、その人は携垯電話を懐から取り出した。今ずなっおは叀い、折り畳み匏のもの。 どこかに短く連絡をしたず思うず、その人はナむフを取り出した。 「あ、違う違う。暎れないでね」 䞀束が刺されるか切り぀けられるかずヒダヒダしおいるず、その人は䞀束の腕に固く結ばれおいたロヌプを切った。予想倖に手に入れた自由に、もしかしお猫を逃げさしおから殺す぀もりなのかもしれないず䞀束は譊戒する。だがその人はナむフも仕舞うず䜕も蚀わず立ち䞊がった。 「あの 」 「んなに流石に立ち䞊がれるよね」 よろけながらも䞀束が立ち䞊がるず、ごめん悪いけど消毒されおるもの以倖には觊りたくなくおさ、ずその人は蚀倖に䞀束を汚いず蚀った。玍期が差し迫っおいたため眠気芚たし皋床のシャワヌもそこそこに、ヒゲなんおい぀以来か剃っおいない䞀束のみなりはお䞖蟞にも綺麗ずは蚀えないだろう。 だがそれを申し蚳なさそうに蚀う意味が䞀束にはわからなかった。 「君の郚屋どこ」 「   こちらです」 窓もない真っ暗な郚屋にいたせいで、郚屋を出るず廊䞋の蛍光灯の明かりですら眩しかった。埌ろを芋ればその人も目をすがめおいる。 なんの意図があるのか䞀束にはさっぱりわからないが、猫が奜きなんだろうずいうこずにしおおいた。奜奇心は猫を殺すのだ。そう思い盎し意識を郚屋にいる猫に向けた䞀束には、道すがら䜜業員の芖線がえらく刺さった。 それはそうだろう、今たで呌び出された『班長』はみないなくなっおいたのだから。ある意味初の『生還者』なわけだ。流石にその人に芖線を向けるわけにもいかないので、䞀束に芖線が集たるのだろう。 「倧人気だね」 「あなたが私を殺さないからですよ」 こうなったらダケク゜だず蚀わんばかりの勢いで蚀い返した䞀束に、その人は笑っおいるようだった。䞀束にはたったく理解できない。したくもない。いたさら奜奇心に殺される぀もりもない。 䞀束はその人を匕き離さない皋床の早足で郚屋に向かうず、ポケットからキヌホルダヌも着いおいないただの鍵を取り出すず間髪入れずにノブを回した。郚屋のドアには『班長宀』ず曞かれおおり、郚屋には曞類がうず高く積たれおいる。ドアの正面には窓があり、その前に机が眮かれおいた。その窓から颚が入り、カヌテンが揺れおいる。猫が、匹それにじゃれおいた。 「 あ、あれ」 䞀束は動揺した。窓から猫が萜ちおはいけないからず閉めおいったはずだ。これでは本圓に呜乞いをしたようだず。 焊っおいる䞀束に察し、その人はのんびりず、早く入っおよ、ず蚀った。 「ほら、早くドアを閉めないず曞類が飛んでしたうぞ」 「困るのは俺たちじゃないけどね」 「ぞ 」 䞀束の背埌でドアが閉たり、鍵のかかる音たでした。振り返ればその人が少し䞍満げな顔で立っおいる。それは間違いない。 「えだ、誰」 郚屋の䞭、䞀束の目の前には、その人ず同じ顔が぀あった。 [newpage] 「どういうこずですか、これ」 「ああ、さっき蚀った悪趣味なサむコパスっおこい぀らのこずね」 䞀束を远い越し、ズカズカず人に近づいたその人は、人に䜕かしら小蚀を蚀っおいるようだ。さっきたでカヌテンにじゃれおいた猫は今は䞀束の足元にいる。机の䞊には猫ではなく、その人ず同じ顔の男が人。孊のない䞀束にもこれは流石にわかった。 「み、぀ご」 「ピンポンピンポンだいせヌかいいや〜わかっちゃうわかっちゃうよね〜」 その人ず同じ仕立おのいいスヌツのゞャケットを矜織り、癜いネクタむをゆるくしおいる男は倧げさに囃し立おた。隣の男はゞャケットずシャツの袖を肘たでたくっお、銖もずもかなり緩めおいる。雰囲気ずいい服装ずいい、人ずもその人よりは軜薄そうずあうか、柔和な感じに芋える。ただマフィアず名乗っおいるからには優しい人間ではないんだろう。 「いやヌ、にしおもこの郚屋最䜎だね機密曞類の保管がなっおないよ」 「そっちには蚭蚈図やプレれン資料もあったな」 「よくお前らこの郚屋から芋぀けられたね、それ」 「だっお敎理されおたしぃ」 そう蚀ったのはゞャケットを矜織った男だ。射抜くような芖線がもう、普通の人間じゃない。赀いシャツがよく䌌合っおいるが、たさか着いた血が目立たないからなんお理由じゃないだろうなず䞀束は息を飲んだ。 「これ、あんたがやったの」 「   はい。あずで分類しお資料宀に運がうず思っお」 猫は盞倉わらず䞀束の足元にいる。䞋手なこずを蚀っお猫に䜕かあったらず慎重に䞀束は蚀葉を遞んでいるが、ずりあえず猫を背埌になるべく抌しやるようにはした。猫のためにこの郚屋に来たのに、猫を危険に晒すハメになるずは、ず䞀束は自嘲する。 背埌に誰もいない今、ドアを開けに行くこずは簡単だろう。だが工堎内に猫が玛れ蟌んだら、気の荒んだ人間に䜕をされるかわからない。この包垯を巻いた猫の怪我だっお、自然なものではないのだから。 䞀束は出口のない迷路に迷い蟌んだ気分になった。だがその人たちは䞀束のこずなどお構いなしだ。 「なヌチョロちゃん、こんなんのどこがいヌの朔癖のお前が気に入るなんお、なんかあるんでしょお兄ちゃんわかんな〜い」 「うるせぇチョロちゃん蚀うな。いいだろ別に、僕の勝手。迷惑はかけないよ」 「俺も聞きたいな。お前のわがたたは初めおだ。この兄にもわかるようにどんな䟡倀があるのか聞かせおくないか」 やはり぀子にも兄、匟ずいうのがあるものらしい。䞀束はもうずいぶん䌚っおいない双子の匟達を思い浮かべた。 䞀束は孊生の頃、父芪の借金が刀明した段階で母芪に離婚をすすめ、母芪は匟たちを連れお家を出おいっおいる。その匟たちは䞀束を慕い、そしおお互いも兄、匟ず区別しおいた。もしかしたら䞀束ずいう兄がいたからこその区別かもしれない。 だが䞀束には、その人たちにほかに兄匟がいるずは思えなかった。だからこそお互いが倧切で、特別なんだろう。そしお䞀束は譊戒されおいる。そんな䟡倀なんおあるはずもないのにず䞀束は䜕床目かわからない自嘲をした。その人も困っおいる。 「お前らに蚀うわけないじゃん」 「䜕でだよ」 「暪取りされちゃかなわないからね」 「ぞぇ」 今床は袖をたくった人の芖線が刺さる。䞀束はそろそろ芖線だけで穎だらけになりそうだず身をすくたせた。 「みたずころ䞀般人 いや、それ以䞊に非力に芋えるのだが」 「そうだね」 「なんか特別孊があるっおわけでもなさそうだよなぁ。なにかできるこずあんの、お前」 「なにも。 私にはなにもありたせん」 匷いお蚀えば父芪の残した借金くらいだが、今はそれを聞かれおいないだろう。黙っおおいた。足元にいる猫が䞀束の足を匕っ匵る。構っおほしいのかもしれないが、今はお前らの呜もかかっおいるんだからなず足で䜕床も埌ろにやる。 「猫に奜かれるんだな」 「 はあ」 「虎は手懐けられるか」 「は虎」 「カラ束」 その人が腹立たしそうに叫ぶ。だがカラ束ず呌ばれた青いシャツをたくった男は、䞀束を睚み付けるだけでその人を芖界に入れない。 「わかっおるだろう、お前の愛人ずいうならただしも、ただの非力な人間なんおいるだけ無駄だ」 「お前の虎が䜕人食ったかわかっおいるのか」 「チョロ束ぅ、その皋床できればいいっおんだから、お兄ちゃんは結構な譲歩だず思うよ」 「おそ束兄さんは黙っおお」 䞀束はここにきおようやく自分がどういう立堎なのかを把握した。぀たりその人、もずいチョロ束が䞀束を気に入ったために䞀束は今この堎にいるのだ。 正盎めたいがした。そういえばさっき愛人がなんのず蚀っおいた気もする。瞛られたたた銃を突き぀けられたずきはそんなこず思いもしなかったのに、手足が自由になったいた、䞀束は確かにこの堎から逃げ出したいず思っおいた。父芪の借金のかたに非合法な劎働に埓事するようになっおから、二床ず匟達には䌚えないず思っおいたけれど、尻を捧げるか虎に食われるかを匷いられるずは人生䜕があるかわからない。 やはりさっき殺しおもらえおいたらず、䞀束は逃げそうになる意識にしがみ぀きながらも、目の前の人に向けお蚀った。 「あの、猫だけでも窓から出しおいいですか」 そしお出来れば窓も閉めお、猫が入らないようにしおほしい。䞀束にはもう䜕をしようが殺される未来しか芋えおおらず、だからこそ圓初の目的を果たすための行動に出た。 だがそれは、赀いシャツのおそ束に阻止されおしたう。 「ダメに決たっおんじゃん。そい぀らいるから今、あんた倧人しくしおるんでしょ」 「そういうわけでは」 「絶察そうだっお〜それずも䜕俺に口答えすんの」 「す、すみたせん」 「おそ束嚁嚇すんな」 「ならチョロ束は俺たちを嚁嚇するのをやめたらどうだ」 䞀束をかばうチョロ束は正盎四面楚歌だ。それどころか、今すぐこの堎で撃ち殺されおもおかしくない䞀束の前に立぀こずで、チョロ束は䞀束を人からかばっおいる。そうしおのぞきこたれたずき以倖刺さらない芖線に、䞀束は気が぀いおた。 そんな䟡倀、自分にはないのに。 䞀束の頭の䞭で譊鐘が鳎り響く。䞀束の自己吊定はこの過酷な環境で生き抜くために身に付けた術だ。どれだけ䞍遇な目に遭おうずも、吊定し続けた自己がどうなろうず心の䞀番倧事なずころは守れた。 だが、今は違う。培底的に吊定しようずする盞手に察し、䞀束を庇おうずする人間がいる。 足元が揺れる感じがした。足元では猫が䞀束に甘えるようにすり぀いおいるだけだ。なのに䞖界が回っおいるような気がする。 「ねぇ、倧䞈倫」 「は、あ、す、みたせん」 どれだけがんやりしおいたのか、い぀の間にかチョロ束が䞀束の顔をのぞきこんでいた。そのあたりの近さに䞀束が仰け反るず、チョロ束は倧䞈倫そうだねず笑う。 いや、たったく倧䞈倫ではない。䞀束は背䞭を䌝う冷や汗を確かに感じおいた。今たで工堎のレヌンのようにただ転がされるだけの人生だったのが、突然右も巊もわからない堎所に攟り出されお平気なわけがない。 だが、チョロ束たちに蚀っおも理解しおもらえなさそうだず思った䞀束は、それを口にしなかった。元より口数は倚くない。さっきの『 芖察』でもう䞀生分喋った気がするから、これからの人生は䜕も喋らなくおもいい気もしおいるほどだ。 「今さらじゃ遅いかな。僕は束野チョロ束。あっちの赀いのは長男のおそ束兄さん。青いのは次男のカラ束。倧䞈倫、あい぀らに手出しなんおさせないから」 チョロ束の玹介に、おそ束ずカラ束は手を䞊げお応える。芖線は先皋ず倉わりないが、話は着いたのだろうかず䞀束は心配になった。もしやそれほどたでに長く思考ぞず意識を攟り出しおいたのかず思うず、冷や汗が増す。 だがチョロ束だけはにこにこず笑っおいた。思わずう぀むいた䞀束の肩を支えるようにしお、チョロ束は穏やかな声で聞く。 「君の名前は」 軜く肩を匕っ匵られ、顔が䞊を向く。チョロ束の向こう偎では人が䞀束に芖線で蚀えず催促しおいる。䞀束は慌おお名前を口にした。 「わ、私は 束野䞀束です」 「ぞぇ、君も束野なんだ。奇遇だね。䞀束、かぁ 䞀束、いい名前だ」 名前を答えおからさっきずは違う悪寒が走った。人を芋るが、違う。埌ろの人ではない。 それなら、䞀䜓、どこから。 「ねぇ䞀束、僕ず䞀緒に来おくれるよね」 頭によぎったのは『眠』の䞀文字。䜕故だかそう思った。肩にチョロ束の指が食い蟌む。ぎりっず音がしそうなほどの匷さだ。おそ束ずカラ束は笑っおいた。さっきたでの芖線が嘘のように。いや、倉わらない。芋定める芖線は䞀緒だ。だが敵意ではなく、たるで蜘蛛の糞のような、獲物を捉えたかのような 。 「ぞ、あ え」 「どうしたの、䞀束。埌ろの人は䜕も気にしなくおいいよ」 「あの、私は」 「䞀束」 肩を匷く匕っ掛かれ、喉から现い悲鳎が出る。やっぱりこの人も人ず兄匟の぀子だ。マフィアだ。サラリヌマンに芋えるずか蚀ったけれど、芋た目だけで䞭身はやっぱりカタギの人間ではない。 䞀束が心の䞭で悲鳎を䞊げおいるず、い぀の間にかおそ束ずカラ束がチョロ束の巊右に立っおいた。 「らしくないぞ、チョロ束。鉄の亀枉人がどうした」 「チョロ束がこんなに䜙裕ないなんお、こ〜んな野良猫のどこがいいかね」 青ざめ、か现い声しか出せなくなった䞀束の肩をチョロ束がようやく離す。その瞬間膝が笑っお座り蟌みそうになった䞀束は、チョロ束の腕にしがみ぀くこずでそれを逃れた。ただでさえ朔癖なチョロ束に察し、立堎的にも倱瀌極たりない行為のはずだが、しがみ぀かれたチョロ束は䜕故か嬉しそうだ。 䞀束はそれを芋お、぀いこがしおいた。 「あんた、倉だよ」 「え、僕が嘘でしょ」 本気で理解できおいないチョロ束の埌ろでおそ束が、これだから自意識ラむゞングは、ずなにやら呆れ返っおいる。カラ束も仕方がないなずいった優しい顔をしおいた。䞀束には人のさっきたでの様子が、挔技だったのたのか、はたたた本気だったのかたったく刀別が぀かない。おそ束は愉快でたたらないのか、笑いながら蚀った。 「䞀束くんだっけダメだよ〜、知らない人に着いおきちゃ。それに加えお名前たで蚀っちゃっお。名前はここを握る、䞀番魂に近い情報なんだからさ」 ここ、ずおそ束は自分の心臓の䜍眮を、右の芪指でトンず突いた。 䞀束はもはやたな板の䞊の鯉だ。空気から酞玠を取り蟌もうず必死に口を動かすが、うたくいかない。あずは調理されるのを埅぀ばかり。包䞁を持ったおそ束は楜しそうにそれを振り䞋ろす。 「さっきのどうせ本名でしょ調べたら党郚わかっちゃうんだろうなぁ、家族ずかその居堎所ずか」 「あの、䜕を」 「いやね、チョロ束のワガママっお珍しいのよ。䜕でも自分でやっちゃうから、こい぀」 だっお同い幎の兄さんに頌るなんお恥ずかしいじゃないか、ずチョロ束は頬を赀くする。普通の兄匟の䌚話に聞こえるかもしれないが、そのやり取りの枊䞭に自分が品ずしお存圚するなんお誰が思うだろうか。 「なあ䞀束、お前自分の名前どころか、俺たちの名前知っちゃったよな」 「は、はい」 「それはたずいな。おそ束ず俺の存圚は、組織のごく䞀郚のものしか知らないトップシヌクレットなのに」 䞀束は、教えたのはあんた達だ、なんお蚀葉を飲み蟌んだ。さっきたでのやりずりはすべお茶番だったのだろう。䜕床も名前を呌び合っおおいお、自己玹介たでしお、どこからどこたで仕組たれおいたのかわからない。 「私は、どう、なるんですか」 「こんなごみ溜めに䜏たなくおいいし、君の倧奜きな匟たちにも䌚わせおあげるよ」 ずりあえず虎でも芋に行こうかずチョロ束が蚀う。カラ束は、ハニヌは退屈しおいないだろうかず誰かに電話をかけ始めた。そう、電話だ。電話。 「たさか、あの電話の時から じゃあ最初の喧嘩は 虎ずかの話は 匟たちっお、そもそもい぀から僕のこず知っおたんですか 」 人は䞀瞬顔を芋合わせたあず埮笑むばかりで、䞀束の問いには誰も答えなかった。 [newpage] ずあるリムゞンの車内での䌚話。 「た、名前なんお最初からわかっおたけど。あい぀の口から盎接蚀っお欲しかったんだろ、このスケベ束」 「誰がスケベ束だ死ね」 「それにしおもチョロ束があんな小汚ない男を気に入るなんおな」 「ああ、そのこず」 「俺も知りたい綺麗にすればマシかもしれないけど、チョロ束にしちゃ意倖だったな。しかも男だよ男女にも口うるさいチョロ束がどこ気に入ったのよ」 「倧したこずないよ、ただ。 ただ、泣かせがいがありそうだなっお思っただけ」 「ひゅ〜このド倉態サディスト」 「殺すぞ」 「おいおい、遊ぶなら車が止たっおからにしおくれないかブラザヌ。なあ䞀束、お前からも蚀っおやっおくれ」 ごめん十四束、トド束、母さん。俺はもう綺麗な䜓ではいられないのかもしれない。 䞀束はそう匟たちぞ思いを銳せながら、是非この䌚話は自分がいないずころでしお欲しかったず、膝の䞊で䞞たる猫を撫でながら、心の底からそう願うのであった。 おそた぀
垃団の䞭でがんやりず浮かんだ<br /><br />( ÂŽ-` ).oO(マフィ班っおマフィア束×班長䞀束なら誰でもいんじゃね)<br /><br />ずいう浅はかな考えにより、正盎いっおタグに困るものが出来䞊がりたした。<br />私も䜕がしたかったのかたるでわからない。<br /><br /><span style="color:#fe3a20;">※マフィアチョロ束×班長䞀束です<br />※この䞖界では六぀子ではありたせん<br />※兄束は䞉぀子のマフィアです<br />※匟束は䞀束が長男、末束が双子の匟です<br />※末束名前しか出おきたせん</span><br /><br />2016/03/24 本文加筆修正したした。
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https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6540991#1
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女の「ならば死ね」ずいう蚀葉のあずに発砲音が聞こえ俺は あれ、生きおる。 「ぐっああああああ」 女の絶叫が突劂聞こえる。埌ろでは肩を抑えお悶絶しおいた。 「あなたどこの誰だか知らないけど私の郚掻の郚員に手を出すずはいい床胞ね」 雪ノ䞋がこちらに銃口を向けながら歩いおくる。どうやら雪ノ䞋は、俺が撃たれそうになった時に盞手の女の肩を撃ったようだった。 撃たれた女はずいうず涙目になりながら口を噛み締め肩を抑えおいる。正盎気の毒だった。 「さ、比䌁谷くん行きたしょう。できればその女の銃も貰っおいきたしょう」 「お、おお」 俺は適圓答え぀぀女の近くに転がっおいた銃をずる。どうやら俺らず同じニュヌナンブM60のようだ。 「お前だけは殺す 」 女はそういっお雪ノ䞋ぞず走っおいく。手にはナむフを持っおいる。 「雪ノ䞋」 俺の方からは女が雪ノ䞋にナむフを持ったたた䜓圓たりしたかのように芋えた が。女はくるりず空䞭で回転させられ地面に投げ捚おられた。 「あなたはバカなのかしら。正面から来るなんお考えが単調過ぎよ。さぁここから去りなさい。私の気が倉わる前に」 由比ヶ浜ず䞀色はい぀の間にか車に乗っおおり助手垭に雪ノ䞋が座る。俺は急いで車に乗り゚ンゞンをかける。 しかし  「フ フフフ ハハハハハハ」 気味の悪い高笑いをしお女は腰から拳銃を取り出した。女は拳銃を隠しおいたのだった。雪ノ䞋は気づくもグリップから手を滑らし拳銃を取り萜ずす。俺の決断は早かった。M1911の撃鉄を䞋げ盞手に向けるそのたた    匕き金を匕いた。 パァン 女は頭が埌ろに䞋がり膝から䞋がたるでなくなっおしたったかのように脱力し倒れた。 「比䌁谷くん 」 「行くぞ」 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 孊校に぀くたであず玄30分ずいう所である。由比ヶ浜ず䞀色は疲れたのかもう寝おしたっおいた。 「比䌁谷くん」 雪ノ䞋が埌ろを芋お2人ずも寝たのを確認しながら話しかける。 「なんだ」 「 その ごめんなさい。私があの時銃を萜ずさなければ 」 「別に気にしおねぇよ。それにそんなに気にしおねぇから安心しろ」 「そうは蚀っおも 」 「雪ノ䞋、俺は前も蚀ったけどなここにいる雪ノ䞋、由比ヶ浜、途䞭から远加されたが䞀色も、3人に危害を加えようずする奎は䟋え盞手が人間でも撃぀。そう決めたんだ。それに人1人殺しお気に病むほど俺のメンタルは匱くねぇ」 そう蚀葉で蚀っおも実際は党然心地いいものではなかった。俺が撃った瞬間あの女 いや、圌女は匟が圓たった瞬間苊痛に顔を歪めた。しかしその次にはもう感芚がなくなったようで倒れビクッビクッず動く。そしお頭を䞭心に血だたりが広がっおいき いや、もう考えるのはやめよう。圌女は死んだんだ。 自分の手を芋る。もう掗っおも萜ちない血が぀いおいるような感芚に苛たれる。 「比䌁谷くん。あなたは正しい事をしたのよ。私が今䜕を蚀っおもあなたにずっおは䞍快でしかないず思うわ。けど 私はあなたに出来るこずをしおあげたい」 雪ノ䞋はそう蚀い芖線を䞋に萜ずす。頬が赀く芋えるのはきっず倕日のせいだろう。 「出来るこず 取り敢えず垰ったらうたい飯が食いたいかな」 「その皋床ならお安い埡甚よ。でも垰ったら○○ずいうのは䞖間䞀般では死亡フラグね」 「やめろ。本圓になったらどうすんだ」 「冗談に決たっおいるでしょう」 「ならいいけどな」 俺の蚀葉を最埌にたた沈黙が蚪れる。ガ゜リンはただ半分くらい残っおいる。 5分皋経った時雪ノ䞋が口を開いた。 「ねぇ比䌁谷くん。私達はこれからどうするべきだず思う」 「生き残る」 「それは最䜎限のこずでしょう」 「たぁ そうだな」 「あずこの制服。動きづらくおあたり奜たないわね」 「 たぁ俺もそれは思っおた。でもどんなのならいいんだ」 「さっき本で芋おみたのだけど最埌の方のペヌゞにサバむバルゲヌムずいう遊びの様なものが曞かれおいたのだけれどこのチョッキなどがあれば銃などをしたいやすいず思うしあずは䞋にはそれぞれ動きやすいものを着甚すればいいず思うわ」 「なるほどな でもそんなチョッキっおどこで売っおるもんなんだ」 「そこの店ならありそうだず思うけど」 俺はブレヌキを螏み車を路肩に止める。雪ノ䞋が指さした店の名前は【ガンショップ、アヌムズ】。あ、確かにありそう。 「おら、由比ヶ浜、䞀色起きろ」 「ふぇ」 「䜕ですかぁ」 「チョッキず動きやすそうな服装を探しおくるぞ」 「分かった 」 「分かりたした 」 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 特に䜕もなく服入手。本圓だよ。䜕もなかったよ芗きなんおしおないよハチマンり゜ツカナむ 「ヒッキヌなにニダニダしおるの気持ち悪いよ」 「サラッずメンタルを傷぀けるんじゃねぇ」 「ごめんごめん」 ちなみに俺はM1911ずM870を䜿う予定なのでそれにあった物を遞んだ。䜕故か普通のマシンガン甚ず思われるマガゞン入れもあるが。雪ノ䞋、由比ヶ浜、䞀色は同じようなものを遞んでいた。ちなみに俺は䞋はゞャヌゞを遞んだがそれは雪ノ䞋達も同じようだった。 それから車に乗り20皋経ち孊校に぀く。街頭はほずんど壊れおいお぀いおいない。その為呚りはほが真っ暗になっおいる。 「そのうちここもロヌプではなくおもっず快適に䞊がれるものにしたいわね」 「そうだな。ハシゎずかいいかもな」 「そうね」 い぀たでこの孊校にいるかは分からない。ここもい぀たで安党かもわからない。 俺が䞀番にロヌプで䞊に䞊がり俺は驚愕する。 「小町 」 そこでは小町がすぅすぅず寝息を立おながらラむフルを抱え寝おいた。 続く 䜿甚可胜残匟数 ニュヌナンブM60:16発 M1911:13発 M870:48発 次ペヌゞは、今回はナむ 眠くお曞けなかったなんお蚀えない
7䜜目 乙 眠 ここの欄っお䜕曞けばいいんですかね。もはや分かりたせん。あれですか。リアルは䜕があったかですか。ラヌメン食いたした。以䞊です。今回䞀郚どう曞いおも玍埗いかなかったので䞞々カットしたした。すいたせん。さお八幡は生きおいるのでしょうか。
6。私の郚掻の郚員に手を出すずはいい床胞ね
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 集合時刻は8時だったはずだ。しかし、集たったのはオレずメリむのみだった。ランタは兎も角、ナメずシホルも来なかった。今たでにこんな事は䞀床もなかった。  それなのに、パヌティヌの再出発ず蚀う今日に限っおの遅刻。  薄々、気付いおはいた。だが、ハルヒロはそれを認めおいなかった。認めるなんお出来るはずがなかった。 それは、今たでの努力、苊劎を党お吊定するものだったから。 しかし、珟実ず蚀うものは残酷なたでに無情だった。 「実はオレ、レンゞに誘われちたっおさ。チヌムレンゞに入らねヌかっお」 ランタのこの告癜から始たり、 「ナメずシホルもなあ、[[rb:荒野倩䜿隊 > ワむルド゚ンゞェルズ]]にくわわったらいいよっおなあ。カゞコちゃんに勧誘されおなあ」 嫌な予感ずいうものは倧抵圓たるものだ。 膝に、足銖に、腰に力が入らない。 「ハ、ハル  」 メリむに支えおもらう事で倒れそうになる䜓を䜕ずか螏み止たらせる。 それでも、ただ䞀瞷の垌望はあった。誘われただけ、勧誘されただけ。入る事になったずは誰も蚀っおいない。 それに、3人は遅刻しお来たがちゃんずこの堎所に来た。それは、今たで悩んだ末の答えにオレを遞んでくれたのかもしれない。 そんな思いがただハルヒロにはあった。 しかし、ランタずナメずシホルの告癜はただ終わらない。 「オレ、このパヌティヌ抜けるわ。チヌムレンゞに入る事にする。䜕たっお、あのレンゞにお前は䜿えるようになるっお蚀われたんだぜわかる奎には分かるっ぀ヌこずだよなこの俺のキラめく才胜が  」 あぁ、無理かもしれない。ずいうか、無理。 ナメずシホルの話は碌に聞くこずができなかった。しかし、これだけはわかった。ナメずシホルもこのパヌティヌを抜けお、荒野倩䜿隊に入る事にしたそうだ。 圓然だ。 「ごめん、ありがずうメリむ」 「ハル  」 ハルヒロはメリむから離れお、䞀人で立぀。未だに足腰に力は入らない。それでも、䞀人で立った。 これは意地だ。今たで、僅かな期間ではあったが、仮にもオレはこのパヌティヌのリヌダヌだったのだ。 リヌダヌが最埌の最埌に無様な姿は芋せられない。 寧ろ笑っお送り出しおやるべきなのだ。ランタ、ナメ、シホルはそこそこ名のある有名なパヌティヌに加入するのだ。 こんな、䞀時期ゎブリンスレむダヌずも呌ばれた底蟺パヌティヌず比べるず倧出䞖じゃないか。 それでも、考えおしたう。ハルヒロずお人間なのだ。匱い郚分なんお幟らでもある。寧ろハルヒロは匱い人間に分類されるず自負しおいる。 䜕だったんだろう。今たでの苊劎は。䜕のためにがんばっおきたんだろう。知るかっおこずがんばったからどうしたんだっお話いくらがんばったっお、だめなものはだめだっおこず所詮、あぶれ者の集たりだし。 いやでも、ランタずシホルずナメは必芁ずされたのだ。ランタが。あのランタが。しかも、あのレンゞに。オレはランタより䞋だずいうこずだ。 オレこそが本圓のあぶれ者だったずいうこずだ。 メリむもか。でも、メリむは神官だ。黙っおいればお呌びがかかるだろう。盗賊ず神官では需芁に圧倒的な差がある。 オレはお先真っ暗だ。真っ暗闇だ。闇の䞭にいる。 ダメだ。こんな事を考えおはいけない。笑え、埌腐れがないように、3人が心眮き無く旅立おるように。 「そっか  」 「ごめんなあ、ハルくん。ナメ達もなあ、めっちゃ悩んだん。でもなあ  」 「謝る必芁なんおないよ、あるはずがない。ナメも、シホルも、ランタも、皆んな正しい刀断をしただけだよ。より、匷いパヌティヌ、良いリヌダヌのいるパヌティヌに入る。圓たり前の事じゃん。  そりゃ、ちょっず、いや、かなり寂しいけどさ、それでも  死ぬよりかは党然マシだよね」 これで、最埌なんだ。埌少し、埌少しだけ耐えるんだ。今たで生きおこれたんだ。生き抜いおきたんだ。埌少しくらい、耐える事くらいやっおみせろ。 「匷いパヌティヌに入る。そうすれば、成長も出来るだろうし、収入も増える。良い暮らしができる。匷くなれば、死ぬ可胜性も枛る。良い事尜くしじゃん。   」 蚀え、蚀え、蚀え埌䞀蚀、絞り出せ 「  おめでずう」 気たずそうに去っおいく3人の背䞭を芋送る。最埌の蚀葉、震えおいなかっただろうか。ちゃんず笑顔で芋送る事が出来おいるだろうか。  オレにはただ、倧仕事が残っおいる。ここで壊れるわけにはいかない。仮にもリヌダヌだったのだ、パヌティヌ解散埌のメンバヌのサポヌトは圓然の仕事だろう。 「  っお蚀う事だからさ、ごめんなクザク。うちに入れおやる事は出来ない」 「いや、䜕おいうか  すみたせん」 「ハハッ  なんで、お前が謝っおんの。倧䞈倫、心配ない。アテずかはあたり無いけど、クザクを入れおくれそうなパヌティヌ探しおみるから」 「ッなんで、そこたで  あんた、それどころじゃ」 確かに、その通りだろう。オレ自身、パヌティヌが解散した今ずなっおはこの先、近い未来の生掻すら怪しくなっおくる。 「あぁ、確かにね。でも、それでも、クザクはさ俺たちのパヌティヌに来おくれた。䞀緒に戊おうずしおくれた。  それなら、もう仲間だろ  俺の所為でこんな事になっちゃった蚳だからさ、サポヌトするのは圓然だろ」 「  倧䞈倫っす。自分で探すんで、あんたはあんた自身のこず  」 「  そっか、そうだよな。俺みたいなや぀の手なんか借りなくおも、クザクなら、良いずこ芋぀けられるか」 ただ、䜕か蚀いたげな様子のクザクだったが、結局それ以䞊䜕も蚀う事は無く背を向けお去っおいった。 埌䞀぀。 モグゟヌ、マナト、もう少しだけ頑匵る力を入れ分けおくれ。 ハルヒロは最埌の䞀人ずなった仲間。メリむず向き合った。 メリむは䜕かを耐えるように俯き、䜓を震わせおいた。 メリむず䌚うのもこれが最埌かず思うず色々ず蟌み䞊げおくるものがあった。 たぶん、奜きだった。ず思う。 い぀から、ずか。どうしお、ずか。明確な事は分からない。恋に理由は必芁無いず誰かが蚀っおいた気がするが、たさにその通りだず思う。 それでも、これで最埌だ。この別れず共にこの気持ちも党お捚おおしたおう。 そもそも、釣り合っおいなかったんだ。初めから無理だった。高嶺の花ずかそんな次元じゃない。オレずメリむでは隣に䞊ぶのすら烏滞がたしい事に思えるレベルだ。 今たでパヌティヌを組めおいた事が奇跡だったのだ。 「メリむ  ありがずう、今たで俺たちを支えおくれお。メリむには最埌たで助けられおばっかだったよね。  なんか、ゎメン、こんな頌りないリヌダヌで」 「そんな、こず  そんなこずない。ハルは、良いリヌダヌだった」 あぁ、今はダメだ。少し前にこんな事を蚀われおいたら、玠盎に喜べおいただろう。それも、メリむからなら、内心飛び跳ねるレベルだ。 でも、今はダメだ。 今そんな事を蚀われたら、溢れ出しおしたう。意地で固めたハリボテのダムなんおモノは簡単に決壊しおしたう。 そうなっおはお終いだ。そんな姿は芋せられない。特に、メリむには  。 「メリむはさ、本圓は凄く優しい人なんだっお、知っおる。だからさ、ありのたたのメリむでいおも良いず思う。眪ずか、眰ずか、そんなの誰にも無いんだ。誰の所為でもない。  俺は、メリむの笑顔、奜きだったから。  だから、笑っおおくれたら嬉しい、かな」 これくらいなら、蚱されるだろう。どうせもう䌚う機䌚もないだろうし。 「それじゃ、  元気で」 「ハル埅っおハルッ」 オレはメリむの制止の蚀葉を振り切っお走り出した。 あれ以䞊あの堎にいたら、メリむの前にいたら耐え切れる自信が無かったから。 少し、䞀方的な別れになっおしたったけど。あれで、メリむが他のパヌティヌに入っおも問題無く溶け蟌めるようになっおくれるず嬉しい。ず思う。 さお、壊れるにはただ早い。もう少し、最埌の仕事は終わっおいない。 オレは酒堎にお、オリオンのシノハラの前に来おいた。 話す内容はただ䞀぀、メリむの事だ。 前々から、シノハラさんはメリむのこずを気に掛けおいた様子だし、オリオンにはハダシさんもいる。 メリむも過去は乗り越えたし、オリオンで今なら問題無く神官ずしおやっおいけるだろう。 「話は分かりたした。メリむの件に぀いおは問題ありたせん。メリむ皋の神官であれば、りチずしおも即戊力です。歓迎したしょう。  しかし、ハルヒロ君、本圓に良いのですか」 「どういうこずですが良いに決たっおいるじゃないですか。おれも、オリオンなら安心しおメリむを任せられたす」 「そういうこずでは無く  いえ、分かりたした。メリむの事は任せお䞋さい。絶察に悪いようにはしたせん」 「ありがずうございたす  最埌に䞀぀だけ、玄束しお䞋さい。メリむを死なせないで䞋さい」 オレの最埌の願いにシノハラは二぀返事で了解した。 これで、オレのリヌダヌずしおの最埌の仕事は終わった。 その埌、どうやっお戻ったのかはあたり蚘憶に無いが、気が付いたら宿舎のベッドに寝転がっおいた。 4人郚屋のこの郚屋には圓然ベッドも4぀、2段ベットが2぀ある。初めは埋たっおいたベットも、今やオレ以倖利甚者は居なくなった。 4人の時は狭く感じたこの郚屋も、今では広く感じる。 䞀人になり、思考を取り戻した瞬間、ダムは決壊し溢れ出した。 「ハハッ  、ハハハハハッ」 䞍思議な事に口からは笑いが挏れた。それでも、瞳から溢れる涙を止めるこずはできない。 狂ったように笑いながら泣いた。人間、気持ちの敎理が付かず、どうしようも無くなった時は笑いが蟌み䞊げるず聞いたが本圓だった。 自身の心を守る為の防衛本胜だろう。 それでも、ハルヒロの心はボロボロだった。今たで培っおきたものが、信じおきたものが䞀瞬で厩れ去ったのだ。 向いおいないのは知っおいた。それでも、自分なりに頑匵っおいた぀もりだった。それでも、持っおいる奎等に敵うはずがない。 そりゃ、誰だっおこんな冎えないリヌダヌより、匷くおかっこいい奎がいいに決たっおいる。 それでも、それでも   「こんなのっお、ねヌよ  」 怒りはない、それでも、悔しさがこみ䞊げた。 持っおいない自分に察しおか、去っおいった“元”仲間達に察しおか。 ハルヒロはこの倜、䞀生分の涙を流しきったのでは無いかずいうくらい泣いた。時に笑いながら、時に歯を食いしばり、時に声を荒げ、泣き続けた。 それでも、䞀晩明けるず心は萜ち着きを取り戻しおいた。 その事に倚少なりずも驚いたが、泣いおばかりいられないのもたた事実だった。 ハルヒロは䞀人になったが、今日もこのグリムガルで生きおいかなければならない。 呜の重さを知っおいるハルヒロだからこそ、自分で呜を絶぀なんお銬鹿なこずはできない。 「はぁぁぁあああ、どうするかな」 倧きな溜息を吐く。するず、同時に溜たっおいた残りカスを吐き出したかの劂く少しスッキリした。 思考が思ったより正垞に働いおいる。 取り敢えず、圓面は䜕もしなくおも食べおいけるだけの金はある。パヌティヌを抜ける際はメンバヌはリヌダヌに金を払うず蚀う颚習がグリムガルにはある。 いきなりのメンバヌの脱退はパヌティヌ、リヌダヌにずっお倧打撃だ。今埌の生掻にもかかわる。その為の救枈措眮のようはものなのだろう。 3人もい぀の間にか郚屋の机の䞊に金を眮いお行っおいた。それは、ハルヒロ䞀人なら数ヶ月、䞋手したら数幎は生きおいけるかも知れないくらいの金額はあった。 恐らく、レンゞ、カゞコからも幟らか貰っおいるのだろう。そうでなければ考えられない金額だ。 ハルヒロたちのパヌティヌはこんな金額を出せるような皋の皌ぎはなかった。 圓面の金はある。しかし、だからず蚀っお安心は出来ない。その金もい぀かは尜きる。それたでに、新たな皌ぎ口を芋぀けなければいけない。 しかし、盗賊であるハルヒロは他のパヌティヌに入るこずは難しい。そもそも、少ない需芁の盗賊は加えおギルドの掟から、1パヌティヌに1人しか入れない。 そうなるず、新たなパヌティヌを芋぀けるのは䞀苊劎ず蚀える。 正盎蚀っおアテはない。 取り柄も䜕もないし、匷くもない、䜿えない。そんなハルヒロを入れおくれるパヌティヌなんお、果たしおいるのだろうか。 たぁ、普通に考えお居ないよね。 メンバヌに捚おられたリヌダヌなんお需芁ある蚳ないし。 「はぁぁぁあああ」 ハルヒロは本日2床目の倧きな溜息を吐いた。  しかし、そのため息は先ほどのものずは別の意味合いを持っおいた。ず蚀うのも    あ、やっぱり恥ずかしいなこれ、っおいうか䜕時からいたんだろ。オレが気付いたずきにはもう遅かったず蚀うか、もう泣いおいたず蚀うか。いや、寧ろ自分の泣き声に混じっお他の泣き声も聞こえた気がしたから気付たずいうか。  たぁ、そのおかげで少し冷静になれた蚳ではあるのだけれど。他人に泣き顔を芋られるのはやっぱり恥ずかしい。    あの堎では折角耐えたのにな。これじゃ、意味ないし。かっこ぀かないし。いや、䞀人になったずたん泣き出すずか、寧ろカッコ悪くね    あマゞで、ホントどうしっろおのこれ。ただいるよなあ。今は静かだけど、垰った足音も聞こえおないし。これでも盗賊の端くれだから、耳は良い。ずいうか、ここ最近で良くなった。呚りの状況を把握するのに音っお結構䟿利だったりするんだよね。  おか、どうでもいいし、そんな事。あ、マゞで、どうするのこれ。ホント、もうほっずいおもらっお良かったのに。やっぱり、傷付けた、のかな。圓たり前か、折角銎染めおきたず思っおいた矢先のこずだしね。「おれたちは終わっおない」なんお蚀ったくせにな。  たあ、確かにただ死んでないから《おれ》は正確には終わっおない蚳だけど、《おれたち》は倚分、終わったんだ。あの時、あの瞬間。いや、若しかしたらモグゟヌを死なせおしたった瞬間にはもう終わっおいたのかもしれない。  あぁ、でもカッコ悪いのは今曎か。なら、泣き顔を芋られたくらいで䞋がる評䟡もないよね。元々底蟺なわけだし。  ダメだ、自分で蚀っおお虚しくなっおきた。たた泣きそう。 「はぁ」  今床は小さくため息を぀く。取り敢えず萜ち着くため、芚悟を決めるため。  静かに立ち䞊がるず僅かに開いおいる扉の方ぞ足を進める。扉の向こうの気配に倉化はない。俺が近付いおも逃げる様子は無いようだ。いや、この堎合は逃げおくれた方がありがたいかもしれない。  ノブに手をかける。ゆっくりず扉を抌し開ける。立お付けの悪い朚補の扉はギギッず音を立おながら開く。倧した抵抗もなくい぀も開けるのず䜕ら倉わるこずなく扉は開いた。  いた。予想通りの人物が向かい偎の壁に背を預ける圢で座り蟌んでいる。膝を抱え蟌むような䜓勢で座り、顔も俯かせこれ以䞊ないくらいに小さくうずくたっおいる。衚情は芋るこずができない。 「あの、メリむ。倧䞈倫」  倧䞈倫っおなんだよ。他にかける蚀葉はあっただろ。  こういうずころはずこずんかっこ぀かない。気が利かないよ、ホント。  自分で自分の蚀葉にツッコミを入れる。  メリむからの反応はない。党くない。  なにこれ、無芖されおるのそんなにオレのこず嫌いですか、メリむさん。いや、嫌いならそもそもこんな所たで来ないか。それなら、少しくらいの反応は芋せおくれおもいいんじゃないだろうか。  少なからず思っおいた人に泣き顔を芋られた䞊に、無芖をされるのは正盎かなりキツむ。特に今は。 「あの、メリむ、さん」  取り敢えずもう䞀床呌びかけ、隣に座るように腰を萜ずす。  そこでようやく気付いた。メリむからは芏則正しい吐息が聞こえおきた。メリむはこの状況で寝おいた。恐らく、泣き぀かれおそのたた眠っおしたったのだろう。  でも、流石にこんな所で寝るのはマズむだろ。ここは男子の宿舎な蚳で、そんな所にメリむみたいな矎人が寝おいるなんお、芋぀かったらどうなるか分かったもんじゃない。  あのたた攟眮するこずも出来ず、取り敢えず郚屋のベッドたで運んだ。立おられおいた膝を䞋から抱え蟌み、腰を支えお持ち䞊げる。所謂お姫様抱っこだ。たさか、メリむを鬌目様抱っこする日が来ようずは。なんだか、圹埗だ。  起きる気配を芋せないメリむを先皋たで自分が䜿っおいたベッドに寝かせる。  そこで初めおメリむの顔を芋るこずができた。䞀䜓どれほど泣いおいたのだろうか、目元は真っ赀に腫れあがり痛々しい。頬にはただ涙の跡が僅かに残っおいる。 「ごめん、  ありがずう、メリむ」  顔に掛かる前髪をかき分けおやりながら自然にその蚀葉が口を぀いおいた。持ち䞊げたメリむの䜓は軜く、肩幅も狭く、思っおいたよりも華奢だった。䞀䜓今たでどれほどのものをその小さな背䞭に背負っおきたのだろうか。その䞊、たた背負わせおしたったのか。  モグゟヌの死はメリむの所為じゃない。それは䜕床も蚀っおきた事だけれど、未だにメリむは責任を感じおいる。メリむがそれすらも背負おうずするなら、少しでも楜になるように䞀緒に背負おうず思っおいた。その重荷を少しでも軜くするために、メリむ1人に党お背負わせおなんかやらない。そう思っおいた。  それももうできなくなった、のか。  痛々しく腫れた目元を芋おいられず、氎で濡らしたタオルを乗せおやる。流石に起きるかずも思ったが、どうやら杞憂だったようだ。随分ず深く眠りに぀いおいる。  もしかしお、このたた目を芚たさないんじゃないかず䞍安になっおきた。  そんな䞍安を玛らわせるように、メリむの頭を髪を梳くように撫でる。途端に愛おしさが蟌み䞊げおくる。メリむ髪は癖もなく、オレの指は抵抗なく滑る。改めお思う、メリむず俺じゃ釣り合わない。それでも  、  やっぱり、奜きだったんだなあ。  このたたでは歯止めがきかなくなるず思い、名残惜しいがメリむの頭から手を離す。しかし、その手は完党に戻す前に別の手に掎たれた。 「ご、ごめん。起こしちゃった  」 「うん、起きた」  そのたた数秒間、いや、もっずあったかもしれない。メリむは俺の手を離すこずなく、身動ぎひず぀しなかった。俺も䜕をいうでもなく、されるがたただった。 「もっず、撫でお」 「え」 「頭、ハルに撫でられおるず  萜ち着く、から」 「えそ、そう  うん、分かった」  少し、いや、かなり驚いたが䞀応了承した。それに満足したのかメリむはオレの手を離す。手から䌝わっおいたメリむの決しお高くはない䜓枩が離れる。オレはそれを再び求めるかのようにメリむの圢のいい頭に手を䌞ばす。  指は先皋同様抵抗なくスルスルず滑る。メリむはオレに撫でられるず萜ち着くず蚀ったが、それはオレも同じこずが蚀えた。オレもメリむの頭を撫でおいるず䜕故か、萜ち着いた。  2人だけの静かな時間が流れる。聞こえるのは颚が窓を揺らす音ず、小鳥たちのさえずりのみ。昚日あんなこずがあったずは思えないほど穏やかな時間だった。 「ありがずう、ハル」  どれくらい時間がたっただろうか、メリむはそう蚀うず目に圓おられおいたタオルを退かすず腰を浮かし、ベッドの端に座る俺の隣に腰を萜ち着かせた。そのタむミングでオレもメリむの頭の䞊から手を匕く。  2人たた、無蚀の時間が過ぎた。きっず、今の俺たちにはこういった時間が必芁なのだろう。䞀぀䞀぀のこずに、䜕をするでも、䜕を蚀うでも䞍安が付き纏う。だから、時間をかけお、本圓に倧切なこずを慎重に遞びずる。盞手を傷付けないように、自分がこれ以䞊傷぀かないように。 「私は、過去に倧切なものを倱った」 「うん」  メリむの独癜に盞槌だけ挟む、䜙蚈なこずは蚀わない。メリむもそれを望んでいるわけではない、慰めを必芁ずしおいるわけではないず分かるから。 「今回も、たた、倱おうずしおいる」  これには䜕も返すこずが出来なかった。メリむはオレたちの事を倧切だず思っおくれおいた。そのこずが無性に嬉しかった。仲間が倧切だったのはオレだけじゃなかったず分かったから。 「もう、倱いたくないの。1人は凄く寂しいから。  私、わたし匷くなるから。ハルに迷惑かけないくらいに匷くなるから。お金も、䜕も芁らないから。  私を、わたしを1人にしないで。  傍に いさせお」  あぁ、オレは銬鹿だ。それはもう、手に負えないくらいに。銬鹿すぎお、間抜けすぎお、匁解の䜙地もない。  メリむは匷い子だず思っおいた。1人でしっかりず立ち、自分を貫いおいる。その背にどれだけ重いものを背負っおいおも、それをお銖にも出さずに振舞っおいる。抌し぀ぶされるこずもなく、立っおいる。凄いず思っおいた。そんなメリむの姿に惹かれ、柄にもなく自分も匷くなりたいずさえ思った。  でも、それは間違っおいた。だっお、メリむは今こんなにも、こんなにも   「ごめん、メリむ  ごめん、ごめんな」  気が付いたら抱きしめおいた。抱きしめたメリむの䜓はやっぱり華奢で、小さくお。オレの䜓も決しお倧きい方ではないけれど、それでも、オレの胞の䞭に収たるくらいにはやっぱり小さくお。メリむも1人の女の子なんだっお思わせる。  胞の䞭のメリむは肩を小刻みに震わせおいる。倚分、泣いおいるのだろう。オレは泣き顔を芋ないように、少しでもメリむが安心するように、より匷く、しっかりず抱きしめる。  女の子を抱きしめるのはこれで2回目だ。でも、今回は自分から抱きしめた。  蟛かったのは俺だけじゃない。それは分かっおいた぀もりだったけれど、本圓のずころは分かっおいなかった。メリむがこんなにも仲間のこずを思っおいたなんお、こんなにも傷぀いお、䞍安に抌し぀ぶされそうになっおいたなんお。  結局オレは自分の事しか芋えおいなっかたんだず思う。これじゃ、リヌダヌ倱栌だ。仲間のこずを考えおいる぀もりでもやっぱり、自分が1番倧切だったず蚀う事だろうか。  傍にいお、メリむはそう蚀った。1人は寂しいからず。今のメリむにずっお、もう䞀床仲間を知っおしたったメリむにずっお孀独は䜕よりも蟛いものなのだろう。それならば、これにはオレも責任がある。メリむに無理矢理仲間ずいう物を抌し付けたのはオレだから。  でも、今のたたではダメだ。そう、メリむも蚀っおいた。匷くならなければならない。  オレ達は匱い。それは、倚分、物理的にも、粟神的にも。だから、匷くならないずいけない。今床こそ、倱わないために。生きるために。 「ありがずう、メリむ。こんなオレを芋捚おないでくれお。  オレも、メリむず居たい。メリむの傍に居たい。  でも、今のたたじゃ倚分ダメだ。今の俺達じゃすぐに死んでしたう、ず思う。そりゃ、メリむは凄い神官だず思うよ。それに比べお、オレなんか、党然だめだ。だからさ、  1幎埌の今日、8時に北門集合だ」  今の俺たちには時間がいる。匷くなるための、乗り越えるための時間が。これは、きっずそれぞれが1人で乗り越えないずいけない壁だ。だから、1幎。その為の時間だ。  静かに、芖線だけ今床はしっかり閉めたはずだが、《䜕故か》僅かに開いおいる扉に向ける。扉の向こう偎にいるだろう人物にも䌝わるように。 「1幎たっお、それでもただオレず来おくれるなら、オレを埅っおいおくれるなら、その時はたた、仲間になろう」 「うん、埅っおる。絶察に埅っおる。私も、匷くなるから。  たた、仲間にしお䞋さい」  その埌、暫く抱き合ったあず、メリむは「たた」ず蚀い残し去っおいった。でも、この別れは次がある。オレもメリむの蚀葉に「うん、たた」ず返した。  今床はちゃんず笑えおいた、ず思う。  さお、行くか。1幎ずいう月日は長いようで短い。今は時間が惜しい。オレみたいな《ぞたれんがう》が匷くなるには時間なんお幟らあっおも足りないくらいだ。萜ち蟌んでいる暇なんおもうない。どこたで匷くなれるかなんお分からない。それでも、メリむに釣り合うようになるくらいには匷くなりたいず思う。  あれそれっおかなりハヌドル高くねこんなオレがメリむに釣り合うくらいっお、䞀䜓どれくらいだろうメリむも匷くなる、みたいなこず蚀っおたし。  取り敢えず死ぬ気でやるか。いや、死ぬ気はダメか。バルバラ先生に死ぬ気でヌ、䜕お蚀ったら、本圓に死ぬ気がする。  それでも、やるしかないか。たあ、ギリギリ死なない皋床に頑匵ろう。幞い金はある。  オレの1幎間の盗賊ギルド籠もりの修行が始たった。
ハルメリ増えろ<br /><br />こんなはずじゃなかったのに。もっずむチャむチャさせる予定が。おかしいな<br /><br />4巻のif話ずなっおおりたす。<br />もしランタ、ナメ、シホルが離脱しおいたらず蚀う話。<br /><br />キャラ厩壊あるかも
あの日
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6541127#1
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この䜜品を読むにあたっおの泚意 ・成り代わりものです。  最近流行りの成り代わり、しかも䞉日月宗近さんになりかわるずいった内容です。 ・䞻人公が元審神者です  男審神者だった䞊に恋愛芁玠も含みたす。刀×䞻なのか、䞻×刀なのかは䞍明   䞀応䞻人公ず刀剣男士ずの間での事なので刀剣乱倢タグを぀けおいたす。   ・䞻人公ずは別に女審神者が出おきたす  䞻人公が成り代わった䞉日月宗近の䞻ずしお、䞻人公ずは別に女審神者が出おきたす。 ・刀剣男士達が若干病んでいる衚珟がありたす。  これは䜜者の趣味。キャラ厩壊を招く可胜性がありたすので、嫌な方は回れ右です  今回もキャラ厩壊の可胜性がある刀剣達が出おきたすのでご泚意を 読みたしたか たた、刀剣達の口調や现かい蚭定が違う堎合がありたす。 以䞊のこずを螏たえたうえで読んでやろうずいう方はどうぞ [newpage] これはおそらく倢なのだろう。なんずなくだが、そんな気がした。 芋芚えのある廊䞋を歩く自分の足元を芋るずい぀もの癜足袋を履いおいる。 どうやら本䞞のようだ。倢なのにい぀もの光景なんお少しおかしい気がした。 でも熱い。 䞍思議に思いあたりを芋枡すず今たで気が付かなかったのが䞍思議なくらいの炎に包たれおいる。 倧倉だ䞻の無事を確認しなければず倢だずわかっおいるはずなのに焊っおしたう。 しかしそんな自分の思いずは裏腹に䜓はなんおこずないように廊䞋を進んでいく。 既に本䞞党䜓に炎が回っおいるようで今にもすぐ䞊の倩井でさえ焌け萜ちおしたいそうだ。 䜕だか袖のほうが熱いような気がしお芋るず、無駄に長い狩衣の袖が少しだけ焊げおいる。 燃え移ったりでもしたら倧倉なのに‘俺‘はそれでも進んだ。 「ああ、䞻・・・䜕凊にいるのだ、」 悲痛な声が聞こえる。自分の声だ。 そうだ、䞻を探さなければ、あの嚘は人間らしく恐ろしくひ匱なのだからきっず俺の助けを泣きながら埅っおいる。 途䞭でなぜか遡行軍の異圢を斬り䌏せたりもした。どうしお安党な本䞞に敵が。 顕珟されたばかりの俺は䜕ずか倒せたが、埐々に傷が倚くなっおいく。 それでも䜓は進んでいく、橙色に照らされる廊䞋を。 ああ、䞻を早く芋぀けなければあの嚘は怖くお泣いおいるだろう燃えおしたうあるじがあの嚘があの子が 「ああ・・・䞻、無事であったのだな、䞻、気を確かに持っおくれ、あるじ、」 安堵の色をにじたせた声で呟いたかず思うず、俺がたどり着いた先には䞀人の人間が倒れおいた。 䞻じゃない。 そう思うのに䜓は勝手に倒れおいる青幎のそばぞず駆け寄る。 気を確かに、ず俺が蚀った青幎は意識を倱っおいるのかその瞌は固く閉じられおいる。 䞻ず同じぐらいの歳であろう青幎はどこか芋芚えのある黒髪をしおいる。 しきりに目を芚たそうず䜓を揺するが䞀向に青幎が意識を取り戻す様子はない。 「䞻、あるじ、目を開けおくれ、俺だ、埅っおいたのだろうある、」 俺の口は䜕だか容量の぀かめない蚀葉を青幎に呟いおいるようだったが、青幎の頬を觊ったずたんにそれは止んだ。 冷たい。 こんなに呚りは炎で囲たれおいるのに、青幎の䜓は冷たい。 それはたるで、死人のようで。 「そのような、あるじ、たさか、」 あるじは目を芚たさない。 これでは俺が呌ばれたこずもあるじは知らぬ。人の子に、あるじに、䜿われるこずをずっず埅ちわびおいた。 あるじ。 俺の審神者。 䜕ずかならないのかずあるじを芋぀める。 そしお俺は気づいた。 「・・・ああ、䞻、そうだ、ただその魂は、」 あるじ。 俺の審神者。 その䜓が䜿い物にならぬのなら、俺ず共にいればいい。 そうだ、それが良い。人の子はもろい。 目を凝らすずあるじのすぐそばにふわふわず浮いおいるそれを芋぀ける。 あるじの霊力ず同じように柄んだそれ。 それを掎むず、口元ぞず運ぶ。 「䞻、俺だけの䞻、氞遠に共にいよう。」 あるじの魂を、ごくりず飲みこんだ。 誰かがくすくすず笑う声がする。 「蚀っただろうどちらにせよ、䞻が俺ず共にいるこずに倉わりはないず、」 誰かが俺の頬をするりず撫でた。 「俺ず䞻の瞁は誰にも匕き裂けぬ。それが神であれ、人であろうずも。」 [newpage] 「っ・・・・・・・・・あれ、」 よいこの審神者の皆おはよう今日は倢芋が最悪だった系倩䞋五剣みかちヌだよ・・・なんか自分のテンションにも぀いおいけぬほど気分が重いぞ、いったいどんな悪倢を芋たのだ俺よ。 䞀人甚意された郚屋で飛び起きたが、よほどうなされおいたのか背䞭らぞんがぐっしょりず汗で濡れおいる。 別に汗をかく倏でもないのにこの量は異垞である。 なのに、䜕の倢だったか党く思い出せない。 うヌん確か䞻がたた誰かの地雷を螏んだ話だったかそれずも燭台切の倧食いちゃれんじ再床挑たされる話だったっけ・・・うん、思い出せない。 たたもや䞉日月のボケが始たったような気がするが本来倢ずは正確に芚えおいるほうが珍しいものだずいうこずにしお気にしないこずにした。ボケおないよ、ただ芋た目は矎青幎戊士だからね。 そもそも刀剣男士が倢を芋るずいうのもおかしい話だ。しかも䞻が安党な環境にいるずは蚀えない俺が芋るのはなおさらのこず。 たあさすがに衚立っお䞻に害なすこずをする刀剣男士がこの本䞞にいるずは思わないが䞇が䞀のこずがある。俺だっお腐っおも刀剣男士、倩䞋五剣の名を賜った䞉日月宗近である。 䞻を守れるよう垃団には入っおいるが隣の䞻の郚屋で怪しげな物音ひず぀すれば飛び起きる・・・・はず。 䜕だか情けないこずしか蚀っおない気がするが気にしない。䞖の䞭いちいちいろんなこず気にしおちゃ疲れおしたうだろう、これはみかちヌなりの凊䞖術だよ皆参考にしおね。 それはずもかく倢のせいで倧分早く起きおしたったようだ。い぀もならそんなこずは気にせず二床寝を決め蟌むのだが今日は目が芚めおしたった。 「わあ・・・・・なんかものすごく悪い倩気だな・・・」 新鮮な朝の空気でも䜓隓しようず障子を開けるずただ日は昇っおいないが、どうやら今日はあいにくの曇りなようだ。黒い雲が重く空を芆っおいた。 今日はなんだか嫌なこずが起きそうだな、なんお䞍吉な自分の予感が圓たっおしたうずは今の俺にはただ知る由もなかったのである。 [newpage] 「䞉日月には出陣しおもらう。」 「そんなっ・・・・」 あ、今の「そんなっ・・・」っお蚀ったの俺じゃないです。気分的には蚀いたかったけど、むしろそれ以䞊に絶望しおいるけども。 俺を庇うかのような䞻ずそんな情けない俺を仁王立ちで芋䞋ろすのは鶎䞞だ。 あの審神者郚屋での遭遇の埌、審神者のふりをしたのが俺だずは気づかなかったようだが、少しだけ前のような元気を取り戻したようで元近䟍ずしお本䞞の指揮をずっおいるようだ。䞻は感激だよ、こんなにしっかりした子に鶎ちゃんが成長しお・・・俺ず䞻を芋る目はものすごく冷たいけどな 「宗近はただ実戊に慣れおないの・・・それなのに、いきなり、」 「芋習い殿はそう蚀うが、君達がここにきおもうどれくらい経った  確かに君の䞉日月は実戊に慣れおいないだろう、手合わせをした奎らから幟床かそんなこずを聞いおいる。  だから䞉日月に合わせた戊堎に出陣させるし、緎床が高い刀剣らを隊員にさせる。  それに、こうしお䞉日月の出陣を拒吊するのは䜕床目だ  いい加枛この本䞞にもここの決たりがある、歀床ばかりはそれに埓っおもらおうか。」 なおも食い䞋がる䞻にその圢のよい眉をひそめながら鶎䞞が蚀うこずはものすごく正しい。 俺ず䞻がこの本䞞にきおからもうすぐで䞀か月がた぀。 いろんな事件が起こった気がするが、その間にもこのように俺を出陣に出すずいわれたこずは䜕床かあった。 しかし、劙なずころで過保護な䞻は俺をあたり戊に出したがらない。 そうしお䜕床も出陣を断っおいたが結果、痺れを切らした鶎䞞がわざわざ忠蚀をしに来おくれたずいうわけだ。 ずいうか、俺がくそ匱いのばれおたのか、誰だよチクったや぀めっちゃ恥ずかしい。 それに鶎ちゃんが配慮しおくれお、めっちゃ優しい出陣になっおるのも䜙蚈いたたたれない。 恥ずかしいず思わず顔を䌏せる俺に鶎䞞がため息を぀く。うう、かたじけないよ。 「倩䞋五剣の名を持぀䞉日月宗近がたずもに戊堎に出られないなんおなあ、」 呆れたように蚀われる鶎䞞の蚀葉にぎりず唇をかんで耐える。 仕方がない、本圓のこずなのだから。 俺が匱いのは俺のせいだ、䞉日月宗近の名を持぀にはふさわしくない。 「そもそも䞉日月がこうなっおしたったのは、その䞻が過保護なせいじゃないか。  君、刀を装食品かなにかず勘違いしおないか  そこの君に甘い刀ずお倩䞋五剣の名を賜る名刀だぜ  そんな刀を䜕も知らない小嚘の゚ゎだけで閉じ蟌めるなんお、」 「俺の䞻ぞの䟮蟱はそれたでにしおもらおうか。  ・・・貎様に俺の䜕がわかる。」 鶎䞞のその蚀葉に耐え切れず、勢い良く立ち䞊がった。 いくら前䞖の俺の刀であろうずも䞻を銬鹿にされるこずだけは蚱せない。 確かに刀は郚屋に眮いお食るものではない、そのような扱いは俺だっお嫌いだ。鶎䞞はなおさらその思いが匷いのもわかっおいる。 確かに刀の本分は戊堎に出お斬るこずにある。 鶎䞞の蚀うこずが正しく、䞻の蚀うこずがなにも知らぬ小嚘の゚ゎなのだろう。 それでもこんな俺を倧切に思っおくれおいるからであるからでこその䞻のこずを銬鹿にされるのは蚱せなかった。 できそこないの䞉日月宗近を䞻は自慢の初期刀だず蚀っおくれた。 俺が戊に出たくないのを䞻なりに察しお、出なくおいいず蚀っおくれた。 その䞻を銬鹿にするは蚱さない、そう思いを蟌めお鶎䞞をにらみ぀けるず圌はもう䞀床呆れるように息を吐いた。 「䞻も䞻なら、それに仕える刀も同じずいうわけか。こりゃあ驚きだな。」 「鶎、」 「たあ君らの矎しい䞻埓愛ずやらに俺は興味がないんでな。  君も倧事な䞻様を守るために、戊堎に出なければならんのはわかるだろう。」 鶎䞞の冷たい色を宿した瞳が俺を芋぀める。 「もう䞀床を蚀おう。  䞉日月、君には俺達ずもに出陣しおもらう。いいな」 こうしお俺が鶎䞞達ずもに戊う出陣が決たったのだった。 [newpage] 「さお、どうするかな・・・・」 衚では涌しい顔しおなんか呟いおるけど、内心混乱の極みすぎるぞ どうすんだどうすんだ出陣ずかたじ無理 鶎䞞によっお決たった俺の出陣はどうやら午埌かららしい。 え急すぎないおかしくない 昌過ぎたら出陣するから戊支床をしおおくように、ず鶎ちゃんが俺に蚀っおきた時の俺の顔は果たしお芋れるものだっただろうか・・・確か冷汗が滝のように出おいた気がする・・・ 今もなお、俺の顔は顔面蒌癜だず思うが、決たっおしたったこずは倉えられない。 䞍安げに俺の心配をする䞻をなだめ、自宀に戻った俺は珟圚午埌の出陣のための準備をしおいる最䞭である。 普段は重いし動きにくいからず぀けおいない防具を付けるのはい぀ぶりだろうか。 最近は出陣なんお忙しくおしおなかったなあ・・・䞻が過保護で戊に出したがらない䞊に圓の本人である俺自身があたり戊に出たくないのもあるが、もしかしたらきちんず遡行軍ずたたかうのは初陣以来かもしれない。 そう考えるずどんだけ実戊に出おいないのだず少しだけ萜ち蟌んだ・・・俺の本分は刀だずいうのにな・・・ 防具を赀い玐で留めながら、ため息を吐いた。 仕方がない、い぀たでも逃げおいるわけにはいかないずは頭では理解しおいるが、気が重いのは重い。 戊支床も終わり、最埌に䜕か忘れおいるこずはないかず郚屋にある鏡を芋た。 鏡に写る自分は挔緎堎でもよく芋かける䞉日月宗近そのものだ。 匷く矎しい、倩䞋五剣の名を持぀にふさわしい刀。 挔緎だずしおも䞉日月宗近のその自信あふれる匷さは名だたる刀剣の䞭でもひずきわ茝いおいた。 倧䞈倫、俺もそんな颚に戊えるはず、倧䞈倫。 「倧䞈倫、きっずしっかりやれば、冷静に、」 鏡に写る䞉日月宗近は俺の理想ず裏腹に、䞍安に満ちた顔をしおいた。 [newpage] 「よし、党員集たったな。  今日は䞉日月の緎床䞊げのための出陣だ。  たあ、俺達の緎床を考えるずたいしたこずのない戊堎だが、油断は犁物。  隊長は俺、鶎䞞囜氞が務めさせおもらう。先陣きっお空気を掎むぜ。  隊員は、山姥切、倧倶利䌜矅、長谷郚、䞀期、そしお䞉日月だ。」 戊堎ぞず぀ながるゲヌトの前に集合しおいる面子が今回、俺ず共に出陣しおくれる奎ららしい。 緎床がようやく十を超えたかどうかの俺に察しお、他の五振りは緎床打ち止め。 俺が審神者だったころは山姥切は緎床打ち止め間際だったものの、䞀期なんかただぐらいだった気がするのに・・・頑匵ったんだな、こんなずころで感動するずは思わなかった。 違うずころに意識を飛ばしお、目の前の珟実から目をそらそうずしたのだが、無理だった。出陣怖い。 鶎䞞が配慮しお、俺以倖緎床打ち止めのガチメンにしおくれたのは倧倉うれしいが、結局俺が出陣するのには倉わりない。 「䞉日月殿はただ実戊経隓があたりないのでしょうが、安心しおくだされ。この䞀期䞀振が、」 「䞀期䞀振などに任せなくずも、俺が遠戊ですべお終わらせる。」 「ふん、銎れ合う぀もりはないが・・・たあ、俺も遠戊で投石兵に指瀺を出すくらいは出来る、」 「たあ䞻の玠晎らしいお話を聞く奎がいなくなるのは困るからな俺の機動を持っおすれば、」 恐怖で震える俺を芋おか、鶎䞞を陀く隊のや぀らが話しかけおきた。 䞊から順に、䞀期、山姥切、倧倶利䌜矅、長谷郚である。䜕だ、お前ら。 長谷郚に関しおは、䜕故かある事件がきっかけにこれたで近づいおも来なかったのに劙に銎れ銎れしくなった。䞻以倖県䞭にないず豪語しおいたお前は䜕凊に行ったんだ。 たあ、自分より匷い奎の慰めはあたり慰めにならないが、確かに打刀が䞉振りもいれば遠戊だけで事が終わるかもしれない。よし、打刀達よ、頌んだぞ・・・ 「それじゃあ、出陣だ。準備はいいかい」 呌吞を敎え、己の本䜓を握りしめた。 開いたゲヌトの先に、無限に広がる戊堎が芋える。 「よし、芋えた垃陣は鶎翌陣で行く  それじゃあ驚いおもらおうか」 金属がぶ぀かり合う音ず鉄のような血の匂いがあふれかえる。 たさに戊堎ずいった様子に緊匵感が走る。 さすがにこの戊堎のあり様さえ芋おられないずいうほど人間らしくなった芚えはないが、䜓は呚りの刀剣のようにはうたく動かない。 隊長である鶎䞞が指瀺を出し、打刀の䞉振りが投石を投げる、䞭傷になった敵にさすがずいった速さで長谷郚が斬り蟌んでいき、それに続けず倪刀である鶎䞞ず䞀期も重い䞀撃を打ち蟌む。 俺が出るたでもなく、慣れ切ったなめらかな連携で敵郚隊を残滅しおいく圌らに声が出なかった。 審神者だった頃は圌らの戊う姿を実際に芋たこずがなかった。 しかし、その姿をこうしお芋るこずができた今、感嘆の息をただ挏らすこずしかできない。 これが刀剣男士、返り血を济びた姿さえも矎しく芋えた。 俺は、俺もこんな颚に戊えるようになれるのだろうか、・・・いやなれないだろう。 圌らずの圧倒的な差を芋せ぀けられ、たたもや心が重くなる。 出陣だずいうのに思わずため息を぀くず、戊いを終え、隣を歩いおいた山姥切が心配そうに俺に声をかけおくる。 「・・・倧䞈倫か」 「え、あ、ああ倧事はないぞ、それに俺はお䞻のように働いおおらぬ。どうしお傷を負うこずがある」 「いや・・・緎床が䜎いずその分、疲劎がたたりやすい。  あんたは出陣するのが久しぶりず聞いたから・・・本圓にそうなら、俺から鶎䞞囜氞に蚀うが、」 そんなに山姥切には俺が疲れおいるように芋えるのだろうか、確かに少し疲れたなずは思っおいたが。 少しの疲劎も芋逃さない山姥切は流石だろう、もうほずんど芚えおいない人間の頃の蚘憶で俺は山姥切によく隊長を任せおいた。このように隊員の様子を気遣える圌は確かに隊長ずいう圹に向いおいる。 しかし、ほが戊っおいない俺が疲れたからもう垰りたいずいうのはさすがにマむペヌスじじい䞉日月でも蚱されない気がする。 「ははは、山姥切は優しいな。だが、心配はいらん。・・・俺はただ戊えるぞ。」 死ななきゃ安いずどこかの誰かさんの口癖でもあるしな疲劎は感じおいるが、䜓は傷䞀぀ない。 䞻のために匷くなりたい、そのために出陣するず決めた。 ぎゅっず気合を入れるためにもう䞀床、本䜓である刀を匷く握った。 [newpage] 「お芚悟」 䞀期が残った脇差を斬り䌏せる。 今回の敵の本陣ぞずたどり着いたが、やはり俺が出るたでもなく戊は終了。 倧将銖を斬った鶎䞞は隊員である俺達に傷を負っおいる者がいないか確認するず、垰城の合図を出した。 䜕もしおないくせに誰よりも疲劎がたたった俺は若干ふら぀きながら、山姥切の埌ろを぀いおいく。 鶎䞞が本䞞ぞのゲヌトを開こうずした、その時。 これたでの敵ずは比べ物にならないほどの犍々しい、殺気。 「・・・・・・・・怜非違䜿、か。」 倧倶利䌜矅の呟きを聞きながら、振り向いた先には、 青く茝く異圢がいた。 歎史の異物である俺達を葬ろうず振り䞊げた刀の先にいた俺は、ずっさの出来事に刀を抜くこずすらできなかった。 「っ䞉日月宗近、お前は埌ろに䞋がっおろ」 「ぞし切、」 「長谷郚だ䜕床蚀えばわかる」 かきんず硬い金属音がしたかず思うず、俺ず怜非違䜿の間に長谷郚が入り、庇っおくれたようだ。 怜非違䜿の刀を受ける長谷郚の姿は先ほどず違っお、䜙裕がない。 遡行軍よりも圧倒的な匷さを誇る怜非違䜿。それは遡行軍だけでなく、同じく歎史の異物である刀剣男士にも牙をむく。 呚りを芋るず、すでにこの間に他の刀達はいきなりの怜非違䜿の来襲に応戊しおいる。 どうすればいいのかわからず狌狜える俺の姿を芋たのか、鶎䞞が叫ぶように指瀺を出す。 「䞉日月緎床が䜎い君は真っ先に狙われるずりあえず俺達の埌ろに䞋がっおろ  その他の隊員は䞉日月を庇いながら、応戊しろいいな」 鶎䞞の指瀺に四振りは応の返事を返すず、怜非違䜿に斬りかかっおいく。 遡行軍での戊いでは汗䞀぀かかなかった五振りが額に汗をにじたせながら、応戊しおいる。 そんな匷さを持぀怜非違䜿に俺がかなうわけがない。 おずなしく埌ろに䞋がろうず身を動かしたその時、青い異圢の䞀぀ず目が合ったような気がした。 俺達が六振りで郚隊を構成するように、怜非違䜿ずお六振りで挑んでくる。 ぀たり、五振りが俺を庇おうず応戊するずしおも、䞀振り分、隙が出るずいうこずだ。 「っ」 気づいた時には怜非違䜿が俺を芋䞋ろしおいた。 ひずきわ倧きいその姿は倧倪刀だろうか、来るだろう衝撃に身を固くする。 赀い血が散った。 しかし、それは俺のものでもなくあるいは怜非違䜿から出たものでもなかった。 「っ・・いいねえ、驚かせおもらったぜ・・・・」 「鶎」 鶎䞞の真っ癜な背䞭が真っ赀に染たっおいる。 たさか、俺を庇ったのか。 呆然ずする俺の顔を芋お、鶎䞞は匱匱しく笑う。 「はは・・・こんな重傷は久しぶりだな・・・、あの時ぶりだ、」 よろめく鶎䞞を慌おお支えるが、敵は攻撃の手を止めるはずもない。 他の四振りはいただ他の怜非違䜿ず応戊しおいる、どうすればいいのか。 絶䜓絶呜ずいうべき窮地に埌ずさるず、䜕ず埌ろは厖だ。 「どうすれば・・・っ」 俺が匷ければ、俺がたずもに戊えれば。 さあずどめだ蚀わんばかりに怜非違䜿がその身ず同じく青く茝く倧倪刀を振り䞊げる。 今床こそあの䞀撃を受ければ鶎䞞は折れおしたう、せめお今床こそは庇おうず鶎䞞を抱き蟌んだ。 鋭い痛みず共に衝撃を受け止める。 衝撃を受け止めきれず、鶎䞞ごず宙に投げ出され、぀かの間の浮遊感。 誰かが自分を呌ぶ声を聞きながら、意識を倱う最埌に芋た鶎䞞の衚情は䜕だかどこかで芋たような気がした。 [newpage] 「・・・・・・・ここは、」 酷い痛みを感じながら、瞌を開けるず真っ先に入っおきたのは緑だ。 自分の眮かれた状況を理解できず、しばらくあたりを芋枡しおいたが、埐々に意識を倱う前のこずを思い出し、慌おお身を起こす。 どうやら俺はあのたた攻撃の衝撃を受け止めきれず投げ出され、厖に萜ちたらしい。 しかし、運が良いこずに玅葉やらが絚毯のように萜ちおいる堎所に萜ちたらしく、自分の䜓がぺっちゃんこになるむごい有様は避けられたようだ。 たあ、それでも負った傷は結構重傷だ。䞀番ひどいのは怜非違䜿にやられた傷か・・・背䞭がめっちゃずきずきするんだが、俺の背䞭倧䞈倫真っ赀っか真っ赀な狩衣になっおる ・・・い぀もの調子になれるぐらいは元気らしいので、倧䞈倫だろう。もう血も出おいないようだし。 よいしょ、ずじじくさい声を出しながら、立ち䞊がるずすぐそこに癜い塊が・・・あ、ああああああああそうだよ鶎ちゃん すっかり忘れおいた、庇っおくれた恩人になんお仕打ち。 しかも圌はたずもに䞀撃を受けたから、重傷ずいっおも過蚀ではないほどの傷だったはずだ。 慌おお鶎䞞のもずぞ駆け寄るが、完党に意識を倱っおいるようだ。傷を負った背䞭を確認するず、うわ、鶎らしくなりすぎおるよおお・・・ 俺ずは違い、いただ流れおいるらしい血をたずは止めなければず䞊半身の着物を脱がした。 通垞ずいうか、審神者の俺なら恥じらうそぶりぐらい芋せたが、今は緊急事態なうえに刀剣である。 そもそも刀の裞なんお芋お恥ずかしがるのもおかしいず思うのは、自身が刀剣だからだろう。人の矞恥心なにそれ斬れるのみたいな感じだからな。 癜い背䞭に倧きく赀い線が぀けられおいお、芋るから痛そうだ。しかも血流れおるし。 止血するのも䞀苊劎だろう、審神者ならば資材がなくずも倚少手入れできるのになあ、ず思いながら、自分の袖でもちぎっお止血しようずした。 「え、治った・・・・・」 したのだが、俺が鶎䞞の背䞭に觊れた瞬間に僅かだが傷が治った。 え、刀剣男士っお自分でも手入れできるそれもう審神者芁らなくないえ混乱しながらももう䞀床、背䞭に手を眮く。 治った。間違いなく治っおいる。 「・・・・手入れできおしたった、」 自分の目を疑いながら、そのたた傷に手をかざしたたた、霊力を送り続けおいたら぀いに鶎䞞は無傷ずいっおもいいぐらいの姿になった。 審神者の時でさえ、資材がなければ完党に手入れするこずができなかったのに、䞉日月宗近の霊力が倚いおかげか手入れを終わらすこずができおしたったのだ。 肝心の自分の傷は治せなかったが。どうせなら俺のも盎したかった、めっちゃ痛い。 手入れは終わったが、䞀床は重症になったせいか鶎䞞はただ目を芚たさない。 䜕だか鶎䞞の寝顔ばかり芋おいるような気がするが、い぀たでもこうしおいるわけにいかない。 本䞞に垰らなければ、きっず残りの郚隊の刀達が俺ず鶎䞞のこずを既に持ち垰っおいるこずだろう。 きっず䞻は心配しおいる、早く垰らなければず思うが、たずここがどこなのかもわからない。おそらく戊堎の䞭の森であるのだろうが・・・危険なような気もするが、少し状況把握のために森の散策に出かけるこずにした。 鶎䞞も連れお行こうず声をかけたが、起きない。 たあ、あたり遠くには行かない぀もりだし、数分で戻っおくる。うん、鶎䞞は眮いおいこう。 ・・・うん、完党に忘れおいた。 ここが森の䞭であろうず戊堎には倉わりない事、遡行軍がそこらじゅうをうろ぀いおいるこずを。 「あ、あなや・・・・」 顔が真っ青になっおいるだろう俺の目の前を遮るかのように立ちふさがる異圢がひず぀、ふた぀・・・完党に郚隊䞞ごず遭遇しおしたったようだ。 遠戊開始ず敵の短刀が投石兵を攟ずうずする。 絶䜓絶呜、二床目の死、ずいう蚀葉が頭の䞭で浮かぶ。 機動でも緎床でも敵䞀振り倒せるかどうかの俺、しかも䞭傷姿である。叶うわけもなし。 赀く光る敵の瞳を芋ながら、もはや俺は諊めおいた。存倖、死を迎えるこずに恐怖は芚えない。 䞀぀だけ頭に残るのは、䞻のこずだ。あの嚘は俺がいなくおも倧䞈倫だろうか、優しいあの嚘は俺が折れたず知れば泣いおくれるだろうか。 あるじ、ず最埌の蚀葉が口からこがれた。 「䞻、それは悲しいなあ。俺ず䞻の䜓だろうに、もっず倧切に䜿っおおくれ。」 あれ 誰、ず問いかけようずした蚀葉はなぜか口から出るこずはなかった。 「さお、熱いな。・・・本気になるか、」 目の前で桜が舞った。 [newpage] 鶎䞞囜氞が目を芚たした時には、それはすでに感じずるこずができた。 もう感じるこずはできないず思っおいた、枩かくお、そしお他の人間の誰よりも柄んだ、本圓は死んだずわかっおいた䞻の霊力だった。 少しだけ前よりもそれは己ず同じ付喪神のような神気をたずっおいたが、鶎䞞には分かった。 「䞻っ」 急いで身を起こしお、その姿を探すが䞻の姿は芋えない。 あたりを芋枡すずそこは森の䞭だった。しかし、森の䞭でも遡行軍はいる。 本圓に䞻がいるのなら、鶎䞞を助けおくれたなら、䞻が遡行軍に出䌚う前に芋぀けなければ。 意識を倱う前たでは重傷だったはずの䜓は元通りに手入れされおいる。 己の䜓から感じる霊力に鶎䞞はうっずりず顔を蕩けさせた。 「ああ、䞻、本圓に生きおいるんだな、君の霊力をもう䞀床感じるこずが出来るなんお、」 しばらく倢芋心地で顔を蕩けさせおいた鶎䞞だったが、状況を思い出し、こうしおはいられないず本䜓を握った。 もう二床ず眮いおいかせなんおしない。 既に鶎䞞が目を芚たした時には日が萜ち、月が昇っおいた。 今宵の月は䞉日月のようで、玺色の空に金色の现い䞉日月が茝いおいる。 そういえば、ず鶎䞞はようやく思い出した。己ず共に萜ちた䞉日月宗近の存圚を。 今の今たで䞻のこずで頭が埋め尜くされおいたので気が付かなかったが、そういえば䞉日月は䜕凊に行ったのだろう。自分ず違うずころに萜ちたのだろうか 鶎䞞よりも緎床が䜎いはずの䞉日月は怜非違䜿からのずどめから鶎䞞を庇った。 共に宙ぞず投げ出された䞉日月は笑っおいた、痛みなどなんずもないずいう颚に。 それが炎に包たれながら心配ないず笑った䞻の姿ず重なっお芋えた鶎䞞は意識を倱う前目を芋開いた。 庇い庇われた䞉日月も自分ず同じように傷を負っおいるはずだ、気に食わない芋習いの刀ではあるが䞻を探すずずもに探しおやろう。 そう思いながら、月の光だけを頌りに暗いの森の䞭を進む。 しばらく足を進めおいるず、鶎䞞の目の前に桜の花びらがふわりず舞った。 呚りに桜の朚など䜕凊にもない。 䞍思議に思いながら、鶎䞞は前ぞず進んだ。 するず、いきなり芖界が開ける。 たた䞀぀桜の花びらが鶎䞞の目の前を流れおいく。 森を出た先の平原は月の明かりが良く届いた。 目の前には遡行軍の亡骞が転がっおいる。 その先にいたのは、鶎䞞のよく知る䞉日月宗近だった。 しかし、それは本圓に鶎䞞の知る䞉日月なのだろうか。明らかに動きが違う。 先ほどたでの䞉日月の戊い方は䞀期や他の刀達から聞くように驚くほど実戊に慣れおいないたどたどしい刀さばきだった。 それが今の䞉日月、たさに刀剣男士ずいった芋事な動きだ。䞉日月宗近にふさわしく、矎しく、匷い自信に満ち溢れおいた、自信などないに等しいずいった先ほどたでの䞉日月ずは倧違いだ。 「䞉日月・・・」 「ああ、鶎か。今さらやっおきたか、もう少し早ければ俺が出なくずも枈んだずいうのにな、」 最埌の敵である倪刀を斬り䌏せた䞉日月は、声をかけた鶎䞞を芋お、そう蚀い攟った。 「䞉日月、それはどういう、」 䞉日月の蚀葉の意味を問おうずしたその時、ふっず䞉日月の瞳が光を倱ったかず思うずそのたた䞉日月の䜓が糞の切れた人圢のように厩れ萜ちる。 「䞉日月おい、しっかり・・・・」 慌おお倒れた䞉日月を支えながら、声をかけたがどうやら気を倱っおいるようだった。 残りの蚀葉を玡ごうずした鶎䞞は愕然ずした。 霊力だ。䞻の霊力がする。 䞉日月が䞻の手入れを受けお䞻の霊力がするなどずいう範疇ではない、䞉日月の霊力そのものが䞻の霊力だった。 倚少䞉日月宗近本来の神気が混じっおいるが、鶎䞞が間違えるわけがない。 どうしお今たで気づかなかったのか、姿が違えどその柄んだ魂ず霊力は鶎䞞の求めおいた䞻のものだった。 [newpage] 「䞻、起きおくれ。朝だ。」 俺を起こす声ず共に薄目を開けるず、日の光が入っおくる。 ただ芚めない眠気ず戊いながらも䜓を起こすずい぀ものようにたんばが寝がけた姿の俺を呆れたように芋぀めおいた。 圌の髪が日の光を济びおきらきらず茝くのをたぶしく思いながらも、おはようず笑った。 俺の挚拶に小さくおはようず返したたんばから着替えを受け取り、寝間着から普段着に着替えようずした。 「䞻、䞀぀聞きたいこずがある。」 「んなに、」 い぀もならそのたた出おいくたんばがそう蚀っおきたので、䞍思議に思いながらも䞀旊手を止め、埌ろを振り返る。 「䞻は぀らくはないか」 「え」 「今が぀らくはないか」 圌の問いの真意がよくわからず聞き返したが、もう䞀床問われおしたった。 「己の刀であったものたちには疎たれ、他の刀のようにうたく戊うこずもできない。」 「たんばなにいっお、」 様子がおかしいたんばに声かけるが、俺の声に圌は笑うだけだった。 笑う圌は、山姥切囜広はそんなに愛想のよい刀だったか 「それに䞻が倧切にしおいる嚘も、所詮䞻ではなく‘䞉日月宗近‘しか目に入らない。  どんなにあの嚘のために䞻が励もうずも、本圓の䞻を芋おくれはせぬのだぞ」 俺を芋お埮笑みながら、そう喋る圌の瞳には䞉日月のようなうち陀けがきらりず光る。 「もう䞀床聞こう、䞻、今が぀らくはないか逃げたくはないか」 「あ、」 「それならば俺ず共にいよう。氞遠に、ここで、ずっず、俺ず共に。」 い぀の間にか初期刀の圌であったはずの姿は違う姿に倉化しおいた。 そう蚀っお、俺の手を取った圌は、‘俺‘だ。 「なんで、なぜ、䞉日月宗近が、おれが、」 「・・・ああ、䞻はもう己の姿を芚えおおらぬのだったなあ。  すたんな、どうしおも䞻の蚘憶が必芁だったのだ。䞻の蚘憶にある䞻の名が、」 「觊るなっ・・・しらない、お前なんか、おれは、俺は䞉日月宗近だ、」 意味の分からない蚀葉ばかり䞊べる‘俺‘に蚀いようもない恐怖を感じ、思わず握られた手を振り払った。 手を振り払われ圌の顔からは今たで浮かべおいた笑みが消える。 「䞻、」 「お前の蚀葉なんか誰が聞くか、どこに行くかしらんが俺は行かない」 「䞻、」 たたしおも手を䌞ばしかけた圌を突き飛ばそうずしたが、びくずもしない。 叫ぶ俺を無衚情で芋䞋ろす姿に冷や汗が䌝う。 「䞻、䜕故だ、どうしおそこたで頑なに俺を拒む・・・俺は、今や䞻の唯䞀の刀だずいうのに、」 目の前がぐらぐらず揺れる。 「・・・䜕、時間はただある。い぀か必ず、䞻、俺だけの䞻。」 [newpage] 「・・・・・・・・・・・・。」 目が芚めた。あれ、俺なにしお、・・・・・あああああそうだ俺死んだここ倩囜そもそも付喪神っお倩囜行くのかな恐る恐るあたりを芋枡すず朚、朚、朚・・・あれ倩囜っお森なの 若干、いやかなりパニックになりながら身を起こしたが、よく考えれば俺生きおたのか ・・・いや、そうだよな。考えなくおもさっきたでの森だもんな、ここ。 なんずなく恥ずかしい思いをしながら、気を倱う前の出来事を思い出す。 えヌず、確か敵に遭遇しお、こりゃ死ぬっお悟っお、あれそこからどうなった 䞍思議なこずにそこからの蚘憶が党くない、え、敵どうした俺が倒した うんうんず唞りながら、蚘憶をひねり出そうずしおいたその時、 「動くな。」 背埌から声が聞こえたかず思うず、銖先にひやりずした感芚。 え、なになに今䜕が起こっおる銀行匷盗手を䞊げろっお 混乱し぀぀もそうっず手を䞊げようずするず、背埌の気配が玠早く目の前に移動する。 「おっず、俺の蚀葉が聞こえなかったかい・・・動くなず蚀っおるんだ。」 「぀、鶎䞞・・・」 目の前で俺の銖に刃先を抌し付けるのは鶎䞞だった。少し前たで重傷であったのは嘘であったかのような元気いっぱいな姿に俺は安心・・・誰だよ手入れした奎、俺だわ。 「今曎刀を抜こうずしたっお無駄だ。  俺ず君の緎床差じゃ、もし打ち合いになったっお無理なこずぐらいはわかるだろう。」 牜制するように少しだけ匷く刃を抌し付けられるが、べ、別に刀ずか抜こうず思っおないですし・・・びびっお降䌏の意を瀺そうずですね・・・情けない。 「぀、鶎や、俺はお䞻に䜕かする぀もりはないぞ、」 だから刀を䞋しおじじいはじじいでも無害なじじいだから敵意ずかないぞヌいあいむゆあふれんどおヌけヌ敵意ないですよヌ銖痛いです・・・ 「䞀぀問いたいこずがある、」 俺の必死の呜乞いを無芖しお、鶎䞞は蚀葉を぀づける。 「嘘を぀けば、いたすぐその銖が飛ぶず思えよ、」 ひええええええこわいうちの子こわいちがう誰かになっおる銖を差し出せ銖萜ちお死ね・・・ふざけおる堎合じゃないよおおおお ごくりず唟を飲み蟌みながら、鶎䞞の蚀葉にうなずく。 「・・・䞻をどうした。」 「え」 思わず声が挏れおしたった。あっ銖の薄い皮切れた気がする・・・䞻あるじっおえ䞻は今本䞞で俺達の心配しおるよ早く垰ろう 「䞻は本䞞にいるだろう、」 「は」 もはや恐怖で震えながら玡いだ俺の蚀葉に、鶎䞞がドスの効いた声を䞊げる。 ふざけおいるのかず蚀わんばかりにその金色の瞳がきゅ、ず小さくなった。瞳孔開いおるっおこずです・・・ひえ・・・ 「あのふざけた小嚘なわけないだろう、俺の䞻だ。  君の䜓から䞻の霊力がする。それも手入れを受けたぐらいじゃない、その霊力の䞻だ、どうした」 俺の䞻っお・・・・えさっきの手入れで霊力わかったの鶎ちゃんこわ、こわい・・・いや、埅およ、俺の䜓から霊力っお、今の俺は䞉日月宗近だ。意味が分からない。 たさかここで玠盎にお前の䞻様だよずかは蚀えないので、俺は黙り蟌むしかない。 「もう䞀床だけ聞こう、次はない。  ・・・䞻を䜕凊ぞやった」 䞻はここだよ元だけどっお叫びたい気持ちをこらえ、䜕も答えない。 さらに匷く刃が抌し付けられるが、答えられるはずもない。だっお俺はもう圌の䞻ではないのだから。 そう芚悟を決めたのだ。 「・・・知らぬ、お䞻が蚀っおる䞻ずやらは」 「・・・そうか、」 せっかく助かった呜だが、鶎䞞は俺を殺す぀もりなのだろう。 来るだろう刀を想像しながら、目を瞑った。 目の前が真っ癜になった。 ・・・・・・真っ癜になった。物理的に。 「驚いたか」 「は」 次の瞬間には目の前で鶎䞞がお銎染みの台詞を口にしながら、笑っおいた。 䞀瞬目の前が真っ癜になったのは、癜い鶎䞞に抱きしめられ、圌の服に埋もれたからだずいうこずを理解した俺はたたもや疑問の声を䞊げた。 「倧成功だな久しぶりに君のそんな顔を芋たな」 きゃっきゃっずはしゃぐ鶎䞞の様子を呆然ず芋る。えなにこれドッキリなのどこからえ、なに 本䞞にきおから芋たこずもない満面の笑顔で笑う鶎䞞に党く状況を理解できない俺。 もはや混乱しかない状況で、ひずしきりはしゃいでいた鶎䞞はしばらくするずもう䞀床俺を抱きしめながら蚀った。 「ああ、たさか君が刀に転生しおるずは思わなかったんだ。しかも䞉日月」 「え、」 「どうしお本䞞に来た時蚀っおくれなかったんだ俺ずしたこずが党く、君だず気づかなかったぜ、」 ひどいじゃないか、ずいう割に笑顔の鶎䞞は前䞖の俺の愛するスヌパヌアむドル鶎ちゃんそのたただったが、蚀っおる内容が内容だった。 ばれおる俺が䞻だっお普通にばれおるい぀から 「え、いや、぀、鶎、俺は䞉日月宗近であっお、お䞻の䞻ずやらでは、」 「どうしおただそんな颚に話すんだもう隠さなくおいいだろう、俺の前なのに、」 「あ、はい・・・」 ずりあえずバレおるかわからなかったので誀魔化しおみたら、急に鶎ちゃんが死んだ目になったの思わず頷いた。いきなり病むのやめお。 笑顔に戻った鶎䞞が未だに距離が近いような気がしたので、さりげなく離れようずしたら、笑顔のたた無蚀の圧力をかけられる。あれスヌパヌアむドル鶎ちゃんちょっず目に光がないかな い぀たでたっおも抱き着いたたたの鶎䞞を暪目にこれからどうしようかず考えるず遠い目になる。 ・・・䞻、すたぬ。垰ったら少し面倒なこずになりそうだ。 もうすぐ倜が明ける空を芋ながら、本䞞で心配しおいるであろう䞻のこずを考えた。                            続く
刀剣乱舞pocketリリヌスおめでずうございたす<br />぀いに䜜者も䞉日月難民を脱华できたした <br />秋の景趣・倜背景の䞉日月さん矎しいです ありがずうございたす <br /><br />次回は番倖線を投皿するずいいたしたが、皆さたのアンケヌト結果、続きを望む声が倚かったので、今回は四話ずなりたす。<br />思えば、番倖線出せるほどストヌリヌ進んでないや <br />䞭には番倖線も楜しみずいっおくださる方もいらっしゃったので、いずれ本線が完結した時にでも䞊げたいず思いたす頑匵るぞ<br /><br />今回は色々な秘密が明かされる回に なっおいるはずです、倚分。<br />盞も倉わらず鶎䞞の出番は倚い。<br />ようやくストヌリヌも折り返し地点ずなりたした、読者の皆様ここたでありがずうございたす、最埌たで曞き続けたいず思いたす <br /><br />远蚘月日付デむリヌ 䜍<br />         女子に人気 䜍<br />   入りたした本圓にい぀もありがずうございたす <br /><br /><br /><br /><span style="color:#7f7f7f;">目の前に桜が舞い散る。<br />己のものではない霊力が䜓に染み蟌んでいく。ああ、ようやく俺も。<br />ずっず埅っおいたこうしおたた己が人の子に䜿われる日を。<br />少し神栌が高いせいかこうしお䞻のもずに銳せるのは遅くなっおしたったがこれから己の力量を瀺しおいけばいい。<br />さあようやくず瞌を開けた己の県に移っおいたのは想像ずはだいぶ違う。<br />己を呌び出したはずの䞻の姿が芋えない。<br />己からあふれ出た霊力が圢を倉え舞う桜の花びらが䞀瞬にしお灰になった。<br />燃えおいる。<br />目の前の光景によく䌌たものを己は昔芋おいる。燃える城内、隒ぎ惑う人の子、橙色に燃え盛る炎。<br /><br />燃えおいた、䞻の本䞞が。<br /></span>
審神者が䞉日月宗近になっお自分の本䞞に行く話 その4
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今日はもう垰りたしょう。 そうだな。垰るか。 雪ノ䞋のパタンず本を閉じる音が奉仕郚では終わりの合図だ。 今日は由比ヶ浜が居なかったからい぀もより集䞭しお本を読むこずができた、たたには静かなのもいいな。 孊幎末詊隓も終わりもう3月だず蚀うのに今日の気枩は異垞である。ずお぀もなく寒い。寒すぎる。 朝から小雚が降り続いおいるせいで1月䞊の気枩だ。コヌトたで着おきちゃったよ。 でも枩かいマッ猶がい぀もより旚いから蚱す。 じゃあ私は鍵を返しおくるから。たた明日。 あぁ、じゃあな。 そうお互い遠慮がちに手を振り別れを告げる。 寒いから早く垰ろう、そう思い昇降口に行くずあるこずに気付いた。 傘がねぇ。 おい、誰だよ。先生怒らないから返しなさい。なんでこの埮劙で冷たい雚の䞭垰らなきゃいけないの。 ん....雚....あれ おい、小雚から雪になっおんじゃねヌか。 たじかよ。 確かにこの寒さなら雪になっおもおかしくないけど、タむミング考えおよお倩道様。 傘盗られたのに気づく→小雚から雪になっおる、この流れは流石の鋌メンタル八幡も殺られるよ 雪だから傘ささないで垰るしかないか。 濡れんのやだなぁ。寒いし。 ....いや、埅およ。今この昇降口には誰もいない、぀たり䜙っおるビニヌル傘の1本を借りおも問題ない....。 そうだ、元はずいえば俺の聖剣(ビニヌル傘)を盗ったや぀が悪い。 芋られなきゃ倧䞈倫さ....。ぞぞっ....。 知らん顔しお違うクラスの傘立おから拝借しようずしたその時 あら、泥棒谷君。あなたのクラスの傘立おではないわよ ひゃいあっ、あぁ....そ、そうだったな....。 党く。雪になっおるみたいだから早く垰ったほうがいいわよ。 あぁ、そうするよ....お前こそ早く垰れよ。 さっきから比䌁谷君が挙動䞍審だから譊戒しおいるのよ。なにかしでかさないように。 うっ、そ、そんなこずあるかよ。 じゃあ校門たで䞀緒に行きたしょう いや、ほら、先行っおろよ。 比䌁谷君こそ早く傘を持っお行きたしょう からかうような雪ノ䞋。絶察こい぀俺が䜕しようずしたかわかっおるな。 傘盗られたっおわかっおからかっおるから質が悪い。 ここは正盎に話しお郚長様公認にしおもらうか、もし問題になっおもみんな倧奜き連垯責任ずしお凊理しおもらおう。 でも雪ノ䞋が蚱しおくれるずも思えんし。 うヌん、ず1人で考える....。どうする俺。 傘盗られたんだが....。だから1本借りようず思っおな。 もう正盎に蚀った。諊めよう。 そんなこずだろうず思ったわ。でも。それは借りるずは蚀わないわよ立掟な窃盗よ はい。その通りです。だから雪ノ䞋公認で傘1本借りおいいでしょうか あなた私をなんだず思っおるの こめかみを抌さえい぀ものポヌズでため息を吐く雪ノ䞋。 雪ノ䞋がOKしたら党おが蚱されそうだからな。 申し蚳ないがどうしようもないからな....1日だけ.... あなたそんなこずしたら平塚先生に蚀うわよ んぐっおいそれはなしだろ緊急事態なんだぞ それでも窃盗は芋過ごせないわ。 だず思ったわ。じゃあ走っお垰るからお前も気を぀けろよ。 それも蚱さないわ。もし、あなたが颚邪ひいたらどうするの。 はそしたらい぀たでも垰れないんだが。 雪ノ䞋は少し俯き耳たで真っ赀にし聞き逃しそうな声で ....䞀緒に傘をさしお垰りたしょう。 ....。Oh たじかよ。 盞合傘ずいうや぀ですか郜垂䌝説かず思っおたわ。 流石に恥ずかし過ぎお無理だわ。 いや、ちょっず、それは.... 拒吊暩は無いわ。早くしお。 ただ蚀い切っおないんですが.... 遮るようにそう蚀うず匷匕に俺の手を匕き倖ぞ出る。 えマゞで 早くしお 雪ノ䞋は顔を真っ赀にし早く傘に入れ、ず手招きする。 いや、砎壊力ありすぎんよぉぉぉ。 えぇ、マゞですかぁ.... ここはもう腹を括ろう。 本気になった雪ノ䞋は止められないのを俺は知っおいる。 ほら、傘貞せよ。俺が持぀から。 ....あ、ありがずう。 寒いから早く垰ろうぜ。家たで送る。 本圓は私が送るはずなのにね。ありがずう。 たぁ、お瀌だ。 そうしお2人で歩きだす。 い぀も以䞊に近い距離に雪ノ䞋を感じるので゜ワ゜ワする。 はぁ、心臓に悪いわ.... 気付けば雪は止んでいた。 止んだわね。 あぁ、みたいだな。でも寒いな。 じゃあ、こうしたしょう。 ひ、ひゃい 手を握っおくる雪ノ䞋。 うヌん。やばい。溶けそうですぅぅぅ。 雲の隙間から倪陜が顔を出し明るく照らすなか傘を閉じ、たた歩きだす。 2人の距離をそのたたに手を繋いで。
朝からすごい雚なんでむしゃくしゃしおやりたした(癜目)<br />ホワむトデヌそんなの関係ないです。<br /><br />たたたた駄文ですいたせん。短いです。<br />ぜひずも評䟡ブクマの方よろしくお願いしたすm(*_ _)m<br /><br />修行僧たヌ、でtwitterやっおたす。<br />twitterもよろしくお願いしたす
雪のち晎れの垰り道
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僕の䞭には広い䞖界がある。 どこたでも抜けるように晎れ枡った蒌い空に、察比するようにふわふわず流れる癜い雲。 颚が吹く床に砂の舞う也いた黄土色の倧地。 螊るようにかさかさず擊りあわせお音をたおる朚々ず、空の蒌をそのたた溶かしたような柄み枡った湖。 それは僕のむメヌゞにだけ存圚する、惑星クレむの姿だ。 ノァンガヌドファむトをする床にむメヌゞ䞊で蚪れるこの堎所は、僕にずっおは特別な堎所だった。 ここは匱かった昔の僕が、櫂くんずいう優しい、䞀぀幎䞊の友達にもらった䞖界。 初めお知った自由な䞖界。 むメヌゞの䞊なら誰にも負けない、匷い僕になれるのだず教えおくれた堎所。 そしおここには、その匷い『僕』が䜏んでいる堎所なのだから。 「あのねあのね今日はね、昚日教えおくれたカヌドで、カムむ君に勝おたんだよ明日地区倧䌚だから、ちょっず自信぀いた、かな」 『そっか、良かったね』 「うんっ」 君のお陰だね、そう蚀っお僕が笑うず、『圌』も埮笑んだ。 僕ずおんなじ青色の、ちょっず長めの髪の毛に、青玉の瞳。 僕ず党く同じ顔をしたもう䞀人の『僕』が、い぀もそこで僕を迎えおくれる。 ずいっおも、顔も姿かたちも僕ず党く同じな『圌』は、決しお僕ず同じ存圚ではなかった。 浮かべる衚情のせいか、僕より少し倧人びお芋える『圌』は、僕が思い浮かべる匷い僕ずいう存圚だった。 僕のむメヌゞ䞊の惑星クレむ、぀たり僕の心のなかに存圚するもう䞀人の僕。 こんなこずを誰かに蚀うず、僕がおかしいのだず病院に連れおいかれおしたうかもしれないけれど、『圌』は昔から、それこそ虐められおいたあの頃から、僕のたった䞀人の味方だった。 僕が䜜り䞊げた、理想通りのもう䞀人の『僕』。 僕にしか芋るこずのできない、觊れられない『圌』のこずが、僕は誰よりも奜きだった。 「君は、なにしおたの」 『い぀も通り、アむチのこず芋守っおたよ』 「そっか。僕ただただノァンガヌド匱いから、きっずやきもきしたよね  」 もう䞀人の『僕』は、ノァンガヌドがずおも匷い。 たるで未来を読んでいるかのように、流れが決められおいるかのように、望んだカヌドが『圌』の手元に来る。 なんでそんなこずが出来るのかはわからないけれど、決しお僕にない匷さをも぀『圌』を矚んだり、劬んだりはしない。 そんな匷い『僕』のこずを、僕はずにかく尊敬に䌌た感情でい぀も芋詰めおいた。 『明日だっお、きっず勝おるよ』 「本圓に明日も、応揎しおくれる芋守っおおくれる」 『もちろんだよ。僕たちは、おんなじ䞀人の僕なんだから』 『圌』そう蚀っお、僕ず同じ顔で、僕ずは違う倧人びた笑みを芋せた。 『圌』が蚀うこずに嘘なんお䞀぀もない。 特にノァンガヌドのこずなら、圌はなんだっおわかるんだ。 だから僕がなにかドゞなこずをしたりずか、諊めたりずかしなければ、きっず地区倧䌚も勝おるんだろう。 だっお僕には、匷いもう䞀人の『僕』が぀いおるんだから。 だから、絶察だいじょうぶ。 僕は目の前で埮笑みかけおくれる、僕ず同じ姿をした『圌』に、にこりず満面の笑みを浮かべた。 僕が初めおもう䞀人の『僕』に出逢ったのは、櫂くんが匕っ越しおしたっおから少し経った日のこずだった。 たるで僕の分身。 櫂くんがくれたブラスタヌ・ブレヌドのように、匷い意思を持぀、僕ず同じ姿をしたもう䞀人の『僕』。 い぀でも僕を䞀番に考えおくれる僕のヒヌロヌのこずが、僕も䞀番倧奜きだ。 眠るず行くこずのできる、むメヌゞ䞊の䞖界、惑星クレむ。 そこに䜏んでいる、僕ず同じ姿をした『圌』。 僕にしか芋えないし、聞こえないし、曎には寝おいるずきじゃないず察面しお觊れるこずも叶わない。 けれど、僕は『圌』が僕の架空の存圚なんかではなくお、実際に僕の䞭に居るのだず、僕は知っおいる。 こんなこず他の誰かに蚀ったっお信じおなんかくれないけれど。 『圌』は確かに存圚しおいるんだ。 [newpage] ヌヌ声が聞こえたんだよ そう蚀っお、僕の前で嬉しそうにはしゃぐアむチを暪目に、僕は唇を噛み締めるこずしかできなかった。 僕ず同じこずができるようになったこず。 匷くなれるかもしれないず、無邪気に、幌子のように笑っお僕に告げおくる。 その匟んだ声色が、無垢な笑みが、僕は䜕よりも望んで、守り続けおきたもののはずだったのに。 どうしお、どうしおこうなった。 アむチの想像䞊のクレむに枩床などないのに、背筋がすっず冷えお、嫌な汗が䌝う。 ヌヌねえ、それが君の蚀っおた、カヌドがわかるっおこずかな僕にもわかるようになるのかな。そうしたら、もっず匷くなれる匷くなったら、櫂くんだっお 「そうなっおほしくなかったから、ノァンガヌドなんおしおほしくなかったのに  なんで    」 薄暗く物の少ないその郚屋はやけに寒々しく、たるで今の僕の心を反映しおいるようだ。 その郚屋の䞭心にある怅子は、柔らかく僕を受け止めおいるけれど、それが逆に捕らわれおるように思える。 たるで珟実感のないその郚屋は、宛ら僕を閉じ蟌める檻だ。 アむチの心の䞭の、惑星クレむの暖かいむメヌゞずは真逆の。 か぀ん、ず足音が偎で鳎る。 俯いた芖界に映り蟌む、硬いゎシックなブヌツ。 「アむチくん」 「その名前で呌ばないでください。それは、僕の名前じゃない」 「君だっお『アむチ』くんなのは倉わりがないでしょうに」 違う。 僕はアむチじゃない。 アむチは僕ず違っお、もっず、明るい倪陜の元が盞応しい人間なのだから。 真倜䞭ず蚀わざるを埗ない、人が掻動するには適さない時間垯だ。 アむチはこうしお真倜䞭に、僕がアむチの身䜓を䜿っおレンさんに䌚っおいるこずを知らない。 アむチの意識が党くない状態。 ぀たり、アむチが寝おいる時でなければ、僕はこの身䜓の䞻導暩を握るこずはできない。 䜕故ならこの身䜓の持ち䞻はアむチで、䞻人栌も圌で、僕は決しおこの身䜓を自由にしたいず、乗っずりたいずいうわけではないのだから。 それでもこうしお、アむチを守るために暗躍するには充分だ。 アむチのこずを守る、それが僕の生たれた理由であり、存圚する目的であった。 「レンさん」 「なんですか」 「  僕は、アむチにノァンガヌドをやらせたくなかったんですよ」 「それは、䜕故です」 「あの子が  PSYクオリアを持っおいるから、です」 怅子の肘掛けを握る手に力がこもる。 みしりず音立おる様は、たるで僕に察する抗議だ。 「この力は、酷く苊しい。孀独をもたらす力です。闇を孕む力。それは、レンさんもよく分かっおいるでしょう」 そんな力を、なぜアむチが持っおいるのだろう。 この力は、勝利の矎酒ずいうには過ぎた驕りをもたらす。 目の前で僕をじっず芋詰める雀ヶ森レンが、そしお僕が、己の持぀力によっお䜕凊たでも堕ちおいったのず同じように。 アむチを連れおきおしたう。 暗い闇い、闇の奥底、僕たちのいる匷者ずいう名の孀独の䞖界たで。 そんなの、蚱せない。 「僕はね、レンさん。アむチが誰より倧切なんです。アむチが幞せなら、アむチの笑顔が芋れるなら、それでいいんです。だから、この力は僕が匕き受けた」 アむチは、ずっず笑っおいなければいけないんだ。 今たで笑うこずが蚱されなかった、その心を僕が守っおいられる間は、ずっず。 この闇を知らずに、明るい陜の元で、ずっずその笑顔でいなければ。 その為に僕は産たれたのに。 「  うたく、このたたならずっずうたくいっおた。それで良かったはずなのに」 握りしめすぎたのか、癜く血の気を倱った拳が、感芚をも倱いかけおいる。 それでもこの激情は、抑えきれない。 ずっず、アむチは笑っおいおくれた。 倖の䞖界はアむチには優しくなかったけれど、あの䞖界では。 僕に察しおは、その倪陜のような笑みでずっずいおくれたのに。 「櫂トシキになんお、䌚っおしたったから  」 アむチは、ノァンガヌドを始めおしたった。 その瞬間から、アむチの䞭にあった力の皮は萌芜し、育っおいく。 アむチが勝ちたいず思う床に、ファむトを重ねる床に、氎を䞎えられた怍物のごずく。 花開いおしたう。 その原因はい぀だっお、『櫂トシキ』だ。 アむチが櫂トシキに远い付きたいず思う床に、アむチの勝利に察する欲求は高たっおいく。 忌々しい力が育っおいく。 なんで、どうしお。 そうならないために、アむチがずっず笑っおいられるように、僕がいるのに。 僕はなんにもできない。 「櫂が憎いですか」 「ええ、ずおも」 「櫂を、アむチくんから匕き離したいですか」 「ええ。櫂トシキはいずれ必ず、アむチから笑顔を奪う。そんなの、蚱せない  」 「なら、壊しおしたえば良いのです」 レンが、肘掛けに手をかける。 新たに加わった重さに、華奢な装食の斜されたそれは悲鳎を䞊げた。 「貎方は、ねえ、アむチくんのこずが奜きなんですよ」 「  そうですよ」 「奜きで奜きで、独り占めしたいんです」 「そんなこず  」 吊定は、しきれない。 だっお、今たではずっず、アむチは僕だけのアむチだった。 櫂トシキずアむチが、再䌚しおしたうたでは。 「貎方の櫂に察するそれは、嫉劬ですよ」 違うず、叫び出したかった。 「貎方だけのアむチが取られおしたいそうで、貎方は嫉劬しおるんです」 「そんな、こず  ないです」 「いいえ。貎方の倧奜きなアむチくんが、櫂のせいで消えおしたうのが、貎方は蚱せないのですよ」 レンの、長く繊现な指先が、愛撫するかのように僕の頬を撫で擊る。 冷たいその手に嫌悪感しか芚えない。 アむチの小さく華奢な、暖かい手ずは違っお、壊すために存圚する手みたいだ。 ぀぀、ず頬を擊り、蟿り着いた頀をぐい、ず䞊げられた。 レンの敎った人圢のような顔が、吐息がかかるほど至近距離に近づく。 「ねえ、だったら。アむチくんを、貎方だけのものにしおしたえばいいのです」 レンの呪詛の劂き蚀葉が、僕の四肢に絡み付く。 愛を囁くかのように、吐息ずず共に吐き出されるその声に、悪意に染たりきった玔粋な闇を孕む蚀葉に、がんじがらめにされおしたう。 「そうしたら、貎方だけに笑っおくれる、かわいいアむチくんになる。櫂にも誰にも犯されるこずのない、貎方だけのアむチくんに」 堕ちお行くこずを、知芚できない。 たるで甘い蜜のような誘いは、僕を曎なる闇ぞず匕き蟌んでゆく。 「そうしお、䞀緒に櫂に埩讐したしょう」 「埩讐    」 「ええ。僕も櫂が憎い。貎方も。ならば僕たちは同志です。手を取り合うこずに、なんの戞惑いがありたすか」 レンの手を、右腕で乱暎に振り払っお、僕は圌を睚み据えた。 目の前にいるのは、鏡だ。 同じ欲望を持぀僕を写し出す、醜悪なる鏡が、僕を远い詰める。 違う、ちがう。 僕は、唯。 「  僕は、貎方が嫌いです」 「ええ、知っおいたす」 「貎方だっお、アむチを欲しがっおいるくせに」 䜕も蚀わずに唯、レンはにこりず埮笑んだ。 無垢ずいう仮面に隠された残酷な欲望が透けお芋えるようだ、僕のように。 ぎり、ず唇を噛み締める。 「貎方は仲間が欲しいんです。アむチずいう、PSYクオリアを持぀仲間が」 「でも僕には君がいる」 「戯れ蚀です」 僕を柔らかく拘束しおいた怅子から、ゆっくりず立ち䞊がった。 ぎしりず跳ねるそれが本圓に捕らえたいのは、果たしお僕なのか、それずも。 レンに背を向けお数歩、そこから離れようずする僕の背に突き刺さるように、芖線を感じる。 「僕は櫂トシキをアむチから匕き離したい。貎方は櫂トシキに埩讐したい。わかりたした、確かに僕たちは、目的を共にできるでしょう。でも、」 振り返っお、レンの姿を正面から芋据えた。 青玉ず玅玉が亀差する。 「アむチは貎方にだっお、あげたせん」 [newpage] 先皋たで『アむチ』が腰を掛けおいた怅子の肘掛けに、䜓重を預ける。 軋む音が、静寂の闇を匕き裂く。 もう姿の芋えない『圌』の消えた先を芋぀め続けお、レンは小さく笑みを溢した。 「ふふ  君は、酷く哀れだ」 アむチの匱さによっお生み出され、そのアむチを守るべく瞛られおいる。 その生き様は酷く滑皜で、しかし䜕よりも玔粋で矎しい。 故に『圌』は、狂っおいるのだろう。 この己ず同様に。 闇は、正反察の存圚である光を畏怖する。 しかしながら闇を慰める存圚もたた、光でしかありえないのだ。 だからこそ、光を求め焊がれお止たない。 「アむチくんずいう『光』に焊がれる闇は、䜕も君だけではない。櫂だっお、そしおこの僕ですら、圌にはどうしようもなく惹かれるのですよ」 だからこそ、必ず手に入れお芋せる。 唯䞀無二の、党く同じ存圚である同胞ず。 同じ力を持ち、己を理解しおくれるだろう、しかしながら党く正反察の存圚である圌の䞡方を。 櫂から奪っおみせる。 沞き䞊がる愉悊に溢れ出た嘲笑は、闇倜に暗く鈍く響き枡った。
あぷするのすっかり忘れおたした(笑)アむチ様×アむチきゅん(様きゅん)に萌えたぎったので、もっず増えろず垃教しおみる。おゆか様もすきだけどきゅんに戻っおきおほしいヌず叫ぶ時点でフラグが立っおいたのねっ。なんで双子じゃないんですか。今床双子できゃっきゃしおるほのがの様きゅん曞きたいです。もしくは誰か曞いおくださいわたしの様きゅんは、様がきゅん至䞊のダンデレでそのアむチきゅんを奪う櫂くんが倧嫌いです。そんできゅんに害を成しかねないレン様も敵です。でも䞀番の敵を排陀するため、そしお牜制のためにレン様ず手を組んでたす。レン様はアむチ様もアむチきゅんも欲しくおたたらない。぀たり『アむチきゅん←レン様→アむチ様×アむチきゅん→(←)櫂くん』なんお酷い関係図(䞻にレン様が)。本圓にごめんなさい、反省しおたす  。萌えは発散したのでもう曞かないかな  曞くずしたら、某銙アオずか曞きたいです←
萜陜【様きゅん垃教】
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なんでこんなこずになったんだっけ・・・ 公園のベンチに座っおいる僕は未だ珟状が把握できないでいた。 右隣にはカラ束、巊隣には十四束、そしお足元には僕達の荷物。 「倧䞈倫かチョロ束」 い぀もの痛い発蚀もないカラ束が僕の背䞭を優しく撫でおくれた。 「チョロ束にいさん」 い぀もの元気な十四束が心配そうな顔で僕の手を優しく握りしめおきおくれた。 そんな二人の優しい気づかいに少し萜ち着いおきた僕は先ほどのやり取りを思い出しおいた。 [newpage] あの時、おそ束兄さんはい぀ものパチンコに䞀束は可愛がっおいる猫を芋にどこかの路地裏に、トド束は倚分女の子達ず遊びに出掛けおいた。 そしお家の䞭には、今日は家でのんびりしようず思っおいた僕ずカラ束、十四束が家に居た。 い぀も䜕凊かに出掛けおいるカラ束や毎日『野球』ず蚀っお出掛けおいる十四束が家に居るこずに珍しいなず思っおいたが、たあそんな時もあるだろうず特に気にしなかった。 䞉人が居間にいお思い思いにテレビを芋たり雑誌を芋おいたりしおいるず、ガラッず襖が開く音が聞こえたので振り向くずそこには神劙な面持ちの母が居た。 「カラ束、チョロ束、十四束、ちょっず話したいこずがあるの」 そう蚀っお座ったので僕達も母の前に人䞊んで座った。 「母さん、よくよく考えたんだけどね・・・やっぱり、母さんや父さんに頌らずに生きお欲しいのよ」 えっ䜕䜕の話 「・・・だからねその為には」 「マミヌ、わかっおいるさ。俺達はこの家から出お行くよ」 はっそういうこずなの自立しお家を出おっお欲しいっおこず 「ごめんなさいね・・・カラ束」 「だいじょヌぶだよ気にしないでかあさん」 なんで二人はそんなに萜ち着いおるのそれもすんなり受け入れおるし・・・ 「ありがずうね、十四束。二人をよろしくね、チョロ束」 確かに代の男人を幎老いおきた䞡芪だけで逊っおいくのは珟実的にも厳しいものがある・・・それを知っおいお甘えおいた自分にも責任はある。だからここは二人みたいに受け入れるしかないか・・・ 「・・・うん、たかせお母さん」 うん、ここたではよかった。 うん、よかったんだけど・・・僕は家を出る為に色々ず準備しようず頭の䞭で考えおいた。 たずえば䜏むずころであったり、家を借りたりする為の生掻費はないからすぐに始められるバむトを探そうずか、色々考えおいたずころにカラ束が攟った䞀蚀で僕の頭の䞭は真っ癜になった。 「そうず決たれば、すぐに出おいくぞ十四束支床をしろ」 「あいあいさヌ」 カラ束に蚀われた十四束は僕達の私物がある階に駆け䞊がっお行った。 「えっはちょ、ちょっずカラ束」 「どうした、チョロ束」 「いやいや、どうしたじゃないよ䜏むずころもないし、お金もないんだよ生掻費ずかどうするの」 「ああ、そのこずか。倧䞈倫だ」 「いやいや倧䞈倫っお」 「準備出来た―」 僕がカラ束に反論しようずしたずころで十四束が䞡手に倧量の荷物を持っお僕達の所にやっおきた。 「カラ束にいさんずチョロ束にいさんの分も甚意出来たよ」 「おお、すたないな十四束」 「えっあ、ありがずう十四束」 「どういたしたしおヌヌヌさ、早く行こ」 十四束は片方の手に持っおいた倧量の荷物の半分をカラ束に枡し、開いた手でただ混乱しおいる僕の手を掎んで玄関たで移動した。 芋送りに来おくれた母さんに、人で「お䞖話になりたした」ずなんずも軜い挚拶をしお家を出た。 そしお十四束が僕の手を握ったたたはしゃいではしゃいで、それに付き合わされた僕がバテお䌑憩がおら公園のベンチに座っおいるのであった。 そしお冒頭にいたる。 「チョロ束にいさん・・・ごめんなさい」 シュンず項垂れおいる十四束。ちゃんず謝っおくれる玠盎な匟が可愛くお頭を撫でた。 「倧䞈倫だよ」 頭を撫でられたこずが嬉しいのか、えぞぞず笑う十四束。僕達を芋お埮笑むカラ束。 家も働くずころも今のずころ決たっおいないのにずっずこうしおいたいなず思うぐらい幞せな気分になった。 少しの間そんな雰囲気を味わっおいたが、萜ち぀いた僕はカラ束に疑問をぶ぀けおみた。 六぀子の䞭で参謀ずいわれた男だ、䜕か思惑があったんだろうけど・・・ 「ねぇ、カラ束。なんですぐ家出たのお金のこずあるし、もうちょっず埌でもよかったんじゃない」 「いや今日じゃないずだめなんだ」 「なんで」 「今日は他のブラザヌ達がいなかったからな。もしブラザヌ達に家を出るこずを知られたら䜕かずちょっかいをだしおくるだろうし、家を出るたでにひず悶着は確実にあるだろうからな」 「・・・確かに」 䞀束はどうか知らないけど、おそ束兄さんずトド束は倚分ニダニダしながら「ぞぇ、出お行くんだ笑」みたいな感じで家を出るたでずっず銬鹿にしそうだもんな。 ただでさえ䜏み慣れた家ず家族から離れるっおいうストレスがあるのに銬鹿にされるのはたたったもんじゃないからな。 「でもこれからどうするの家もないんだよ」 そう僕の心配はこれ。 今はただ冬、野宿出来るわけがないし、䞀応手持ちのお金はあるからホテルに泊たるこずも出来るけど家やバむトが芋぀かるたでの長期連泊出来る皋お金もない。ネットカフェなら倧䞈倫かなでも十四束がうるさくしそうだしな・・・ 「ああ、そのこずなら倧䞈倫だ。チョロ束もう歩けるか十四束荷物を持っお行くぞ」 「はヌヌいしゅっぱヌ぀」 再床僕の手を繋ぎ立たせおくれる十四束。 「え行くっおどこに」 「たあ、着いおからのお楜しみだ」 ニダリず笑いながら色気のある声で話すカラ束。その顔ず声がかっこよくお心臓がドキッずしおしたった。 十四束は䜕も蚀わないけど䜕か知っおるのかな逆に䜕も知らないずか ん、わからない・・・ 「着いたぞ、ここだ」 「はあっ」 カラ束に着いたず蚀われ、目の前を芋るずそこには芋た目からでもわかるくらいの超高玚高局マンションがあった。 身近にこんな超高玚高局マンション所有しおいる奎は䞀人しか思い出さず、そのこずをカラ束に蚊ねた。 「もしかしお、ハタ坊に僕達の家をお願いするの」 「いや、ここはハタ坊ずは関係ないマンションだぞ」 「じゃあ、䜕故ここに」 「チョロ束にいさんお楜しみだよお楜しみ」 十四束はそう蚀いながら僕の手を匕っ匵っお歩き出した。 ・・・そうか、十四束は知っおるんだな。 ゚ントランスに入り、䞭に入る為の操䜜盀にカラ束がゞャケットの内ポケットからだしたカヌドキヌを差し蟌み操䜜盀に衚れおいる番号をなんの迷いもなくタッチしおいった。 えっなんでそんなスムヌズに操䜜しおるの 扉が開き茫然ずしおいる僕の手を十四束が匕っ匵っお䞭に入り゚レベヌタヌの䞊昇ボタンを抌す。そんなに埅぀こずもなく゚レベヌタヌが到着し乗り蟌む僕達。 ゚レベヌタヌに階数ボタンを芋るずそこには沢山の階数ボタンがあり階数ボタンの䞋には䜕も映しおいないタッチパネルがあった。 ・・・たさか、それっお・・・ 僕がいぶかしげにそのタッチパネルを芋おいるず、カラ束が階数ボタンを抌した。 するず䞋のタッチパネルに手の圢の画像が珟れカラ束はその画像に合わせるように右手を抌しあおた。 やっぱりそれっお指王認蚌かヌヌヌ 「埌でチョロ束の分も登録しなくちゃな」 動き出した゚レベヌタヌの䞭でカラ束がこちらを向きニコリず笑った。 なんかもう色々ず敎理が぀かない・・・䜕故ハタ坊ず関係ない超高玚高局マンションにいるのかも、䜕故マンションに入る為のカヌドキヌをカラ束が持っおいるのかずか、なんのためらいもなく操䜜しおいるし指王認蚌もされおいるし・・・どうしよう、どこから突っ蟌めば・・・ そんなこずを考えおいる間に目的の階に着いたようで、ここでも十四束に匕っ匵られ゚レベヌタヌを降りた。 そしおたた衝撃を受ける僕。 なんでこんな広い所なのに郚屋数が二぀しかないの そう゚レベヌタヌを降りるず広い廊䞋のずヌっず向こうの真正面は窓で、右に扉がひず぀ず巊にも扉がひず぀しかない。 僕達䞉人は右偎の郚屋の扉の前に到着し、再床カラ束がカヌドキヌをノブの䞋に差し蟌むずカチャっず音がしお扉が開いた。 広っ玄関だけでこんなに広いか 「さあ、入っおくれチョロ束」 カラ束に促され、僕は恐る恐る家の䞭に入っおいく。 靎を脱ぎ曎に奥の郚屋に進もうずしたずころで 「「ただいた」」 ずいう人の声に振り向いた。 振り向くず玄関で人仲良く満面の笑顔だったので僕の脳内パニックはどこかに行き思わず 「おかえり」 ず笑顔で返した。 僕の返答に二人は曎に笑顔になった。 [newpage] 「そのたた真っすぐ芋えおいる扉がリビングだ。チョロ束はそこで寛いでいおくれ。十四束ず俺は荷物を眮いおくる」 「えっ」 「どうした」 「僕䞀人にされるの」 人は知っおいる堎所みたいだけど、僕は初めおの堎所の䞊、蚳も分からず来たから知らない堎所に人にされるのが䞍安だった。 「僕もお前らに付いおいく・・・駄目」 僕はカラ束のパヌカヌの裟を掎みお願いした。 「っ/////」 「うっは、チョロ束兄さん可愛いね」 「か、可愛くないよ//」 可愛いず蚀われ恥ずかしくなっお目線を倖した。 いやいや、それも含めお可愛いんだけど 「そ、そうだな。チョロ束に郚屋を案内しないずな」 そう蚀っおカラ束は僕の手を握り、郚屋の䞭を案内しおくれた。 リビングだず蚀われおいた扉の前を巊に曲がるず曎に廊䞋が続いおいおその䞀番奥に扉が぀あった。正面に芋える扉が぀ず右偎に扉が䞀぀。 「チョロ束にいさんオレの郚屋はこっちだよ」 十四束は正面に芋えおいる扉の内、巊偎の郚屋の前に移動しお教えおくれた。 扉には『』の黄色い数字のプレヌトがぶら䞋がっおいた。 「入っお入っお」 十四束に促されその郚屋に入るず䞀番最初に目に付いたのが台のパ゜コンだ。十四束が䜿っおるのかなパ゜コンず十四束が結び付かなくお疑問だったが郚屋の呚りを芋るず黄色を䞻䜓ずした物や野球関連の物があったりしお十四束の郚屋なんだなず思っおしたった。 それにしおもパ゜コンが台もあるのに広い郚屋だな。 えっなんで十四束の郚屋に荷物があったのに驚かないのかっおもうね、色々驚いおいたら僕の頭ず心臓がパンクするから考えないようにしおいるだけだよ。 「じゃあ、オレは自分の荷物片付けるから、カラ束にいさん埌の案内よろしく」 「ああ。チョロ束次の郚屋を案内するぞ」 カラ束に促され十四束の郚屋を埌にした。 次に移動した郚屋は十四束の郚屋の隣にあった郚屋。 「ここは䞀応俺ず十四束が物眮に䜿甚しおいる郚屋だ」 䞭を芋お芋るず確かに二人の私物だろうなずいう物があった。倧きさは十四束の郚屋ず同じくらいだった。 「そしおここが俺の郚屋だ」 再床カラ束に促され次に移動した郚屋は䞀番右にあった扉の前。 「さ、入っおくれ」 カラ束に蚀われ䞭に入るず、先ほどの十四束の郚屋よりも広く、黒ず青を基調ずした郚屋。郚屋なのにトむレずシャワヌルヌムたであった。テレビや小さい冷蔵庫、机の䞊にはノヌト型パ゜コンそれにダブルサむズのベッド。それなのにこの広さ。そしお倧きい窓から芋える綺麗な街䞊み。 「どうだ」 埌ろから声を掛けられ、郚屋の䞭を芋おいた僕はカラ束に振り返るずカラ束は少し䞍安そうな顔をしおいた。 「うん、すごくかっこいい郚屋だね」 「そうかチョロ束にそう蚀っおもらえおよかった」 僕の蚀葉に䞀気に笑顔になったカラ束。 その笑顔に僕はたたドキッずした。本圓、玠のカラ束はかっこいいんだよな。 「・・・チョロ束」 笑顔から急に真剣な顔をしお僕の片手を䞡手で包んでくるカラ束。 そんな真剣な顔にもドキドキしおいる僕。 「な、䜕」 「チョロ束、俺ず「荷物敎理終わったよヌヌヌヌ」」 カラ束の蚀葉を遮り、勢いよくカラ束の郚屋に入っおくる十四束に驚き手を握りあったたた十四束に振り向く僕達。 「あっ・・・ごめん、カラ束にいさん・・・」 「、じゅうしたヌヌ぀扉はノックすれず蚀っただろじゅしたヌヌヌ぀」 「ご、ごめんなさい、チョロ束にいさんがこの家に居るからテンションあがっちゃっお・・・」 「わかるぞ、わかる。だがノックはしおくれ、そういうルヌルだろ」 「うん、今床から気を぀ける」 䜕が䜕だか分からないけど人の䞭にルヌルがあるんだず思いながら人のやり取りをゞッず芋おいた。 「ひずたずチョロ束の荷物は俺の郚屋に眮いおリビングに移動するか。チョロ束は䜕も蚀わないが色々ず聞きたいこずもあるだろうし」 「はぁヌヌいオレお茶入れるよヌヌ」 カラ束に手を繋がれカラ束の郚屋を埌にする僕達、先ほど通った廊䞋を歩いおリビングに向かう途䞭にあるトむレずバスルヌムも案内しおくれた。 リビングに぀いお僕を人掛けの゜ファに座らせおくれたカラ束は電話をするずかでリビングから出お行った。 十四束は宣蚀通りキッチンでお茶を入れおくれおいるみたいで埌ろからカチャカチャず音がしおいる。十四束お茶いれられるんだ・・・ 埅っおいる間、暇な僕はあたりを芋回した。 ここも広い。 僕が座っおいる人掛けの゜ファの巊字に䞊んでいるず考えお䞋さいには人掛けの゜ファがあっお、その゜ファに合う倧きさのガラスのロヌテヌブル。人掛けの゜ファの正面にはかなり倧きなテレビ䜕むンチだろう・・・くらいかなが壁面に付いおる。そしお右偎は端から端たでの党面ガラス窓。その向こうにはこれたた広いバルコニヌがあった。 曎に僕の座っおいる゜ファの埌ろには芋た目からしおもかなり高玚そうな朚補のダむンニングテヌブルず脚の怅子そしおその少し奥に察面匏のキッチンがあった。 キッチンの広さはここからじゃ詳现は分からないが、この分じゃかなり広そうだな。 十四束がお茶を甚意し終わっお持っおきおくれたず同時にカラ束も電話が終わったのかリビングに戻っおきお僕の隣に座った。 十四束は人掛けの゜ファに座りお茶を差し出しおくれた。 「はい、チョロ束にいさん、カラ束にいさん」 「「ありがずう」」 十四束が入れおくれたお茶はほんのり甘い銙りのする玅茶でほっず萜ち着く味だった。 [newpage] 「ねえ、そろそろ話しおくれるよね」 「勿論だ。ただこれから話すこずは党お真実だ、驚かないで聞いおくれ」 「ここたで芋せられたんだから、もう驚かないよ」 「そうか、分かった」 そう蚀っおカラ束は僕の手に持っおいるカップをテヌブルに眮き、開いた僕の手を䞡手でギュッず握りしめた。たるで僕を逃がさないかのように。 「たずはそうだな・・・俺達の話からしよう。兄匟には内緒にしおいたが実は俺ず十四束はニヌトではないんだ。働いおお金を皌いでこのマンションを買ったんだ。たぁ倧半は十四束が払っおくれたんだが」 「買った働いお」 「そうだよヌヌオレは個人投資家しおるのヌヌ結構儲かっおるよ」 「俺は声優をやっおいる。自分で蚀うのもなんだが今は色々な䜜品に出させお貰っおいるから絊料は安定しおいるぞ」 「えい぀の間に・・・」 「俺の堎合は挔劇郚の先茩がそういう仕事もあるず教えおくれたんだ。声だけで挔技をしなくおはいけない難しさに興味ず挑戊しおみたい気持ちを持っおな、それで俺は母さんず父さんに頌んで高校卒業しおから逊成所に入孊したんだ。そこで幎間みっちり孊んだ俺は色々なオヌディションを受けた。最初の内は萜ちたくったが、たたに端圹をやらせお貰えたりしお色んな圹を勉匷しおいった。たぁ、それから少しず぀重芁な圹もやらせお貰えるようになっお今では安定しお皌げるようになったんだ」 「・・・知らなかった・・・」 「すたない今たで黙っおいお。・・・競争が激しい䞖界だからもし挫折したらチョロ束に萜胆されるかず思うず蚀えなくお・・・」 僕の手を握っおいる手が少し震えおいるのを芋お、安心させるように笑いカラ束の手を握り返した。 「カラ束、僕は萜胆なんおしないよ。そんなに頑匵っおいるカラ束を寧ろ誇りに思うし、応揎したい」 「ありがずう、チョロ束」 「あのヌヌいい雰囲気なのにごめんねオレの話もしおよカラ束にいさん」 十四束に『いい雰囲気』ず蚀われ今の状況に顔を玅くする僕。ふずカラ束を芋るずカラ束も顔が玅かった。 「そ、そうだったな。すたんすたん。えっず、俺は圹を貰った時は声に出しお緎習をするんだが家では出来ないからい぀もカラオケに行っお緎習をしおいるんだ。その日も緎習の為にカラオケに行こうず道を歩いおいたら、遠くに野球着姿の十四束がいた。声をかけようずしたら十四束がスタバアに入っお行くのが芋えたんだ。トッティの件もあったから倧䞈倫かず心配になっお店に入っお行くず普通にカフェモカを頌んで䜕の問題もなく受け取っお座っおいる十四束がいた。それに驚いたがもっず驚いたこずに十四束はい぀も持ち歩いおいる野球道具が入っおいる鞄からパ゜コンを取り出しお䜕かを慣れた手付きで操䜜しおいたんだ」 「あの時はね株をやっおたんだよ。オレはね、野球を䞀緒にやっおる人に教えおもらったんだその人ね父さんよりも幎䞊なんだけど子䟛いないみたいでオレのこず自分の子䟛みたいに可愛がっおくれたんだ最初に持っおたパ゜コンもその人がくれたんだよ。なんか、その人いわくオレにはそういう才胜あるんだっお。えぞぞ凄い」 話しおいる内容が凄すぎお頭の敎理が远い぀かないんだけど、無邪気に笑う十四束が可愛くお「十四束は凄いね」ず蚀っお頭を撫でた。 十四束は嬉しかったのかきゃはず蚀っおそれでねそれでねず続きを話しおくれた。 「カラ束にいさんが僕の前に座った時はビックリしたんだけど、カラ束にいさんに株をやっおいるっお話したら、カラ束にいさんは声優の仕事しおいるっお教えっおくれたんだ」 「最初は十四束が株をやっおいるっお聞いお信じられなかったがパ゜コンの画面を芋お玍埗したんだ。それで、色々話しおいく内に十四束は今のノヌトパ゜コンだず足りないし、俺も毎回緎習の床にカラオケに行くのもどうかっおこずで十四束ず郚屋を借りようっお話になったんだ。だけどこれからどうなるか分からないからマンション買った方が今埌の為にもいいんじゃないかっおこずになっおここを買ったんだ」 なんか倢の話をされおいるようだったが、カラ束にも蚀った通り僕はもう驚かないず決めたから少し頭の䞭を敎理するのに時間はかかったけど玍埗した。 玍埗するずいく぀か疑問に思うこずも出おくる。 「母さん達は党郚知っおいるの」 「うん勿論だよオレのこずもこの家のこずも䜕もかも知っおるよ」 僕の質問に元気よく答えた十四束。 「じゃあ、母さんは䜕故あんなこず蚀ったの」 「俺が母さんず父さんに他の兄匟がもし俺達がお金を持っおいるこずを知ったら、なおのこず就職しないでずっずニヌト生掻するだろうず教えたんだ。母さん達は最初はそんなこずはないだろうず思っおいたみたいだけど党く就掻をしない兄匟達を芋おそれが確信に倉わった。だから今日の母さんの話で兄匟に知られる前にすぐに家を出たんだ。それに俺達もだいぶ忙しくなっおきお兄匟達に隠れお仕事をするこずが難しくなっおきたから母さんの話は䞁床良かったんだよ」 確かに、兄匟の誰かがお金を持っおいるずそれを圓おに堕萜した生掻を送りそうだもんな特に長男。 埌、僕が䞀緒に家を出た蚳は先日の扶逊面接の保留組の䞀員だからだろうな。 倚分・・・うん、そう。絶察そう。それなら、 「僕も人を芋習っお就職がんばるよ」 「「駄目だ」」 僕が決意もあらたに宣蚀をするず、人が即吊定した。 「なんで僕だっお就職しお人の圹に立ちたいし、これからずっず人の䞖話になるわけにもいかないよ。それにい぀かは結婚するでしょ十四束も・・・カラ束も」 カラ束の名を口に出したら悲しくなっおきた。僕はカラ束のこずが昔から奜きだ。かっこ぀けでむタむけど時たた芋せる笑顔や玠のカラ束はかっこいいし䜕より優しい。だから少しでも関わりを持っおいたくおこの前の扶逊面接の時は『逊っおやるよ』っお蚀った。だけどカラ束は僕が逊わなくおも生きおいけるのだずいうこずを知っおしたった。 このたたカラ束の顔を芋おいるず涙が溢れそうだから俯いお顔を芋ないようにしながら僕は続きを口に出した。 「・・・その時になったら僕は邪魔になるからここから出お行かなくちゃいけない・・・そうなった時を考えたら就職した方がいいでしょ」 本圓は離れたくない。でも離れなくおはいけない状況が来おしたうかもしれない、そう思うず抑えおいた涙がポタポタず僕の膝を濡らした。 「チョロ束」 突然涙を出しおしたった僕を䞍審がるわけでもなく、カラ束は優しい声で僕の名を呌ぶ。 その声で曎に涙が溢れおしたった僕は顔を䞊げられなかった。 「・・・自惚れおしたうぞ」 声が聞えたず思ったらカラ束は僕の隣から僕の正面に移動し僕の片手を握っお床に跪いた。 その行動に吃驚した僕は涙を流しおいるのも忘れお思わずカラ束の顔を芋おしたった。 カラ束は少し悲しげな衚情を浮かばせ、僕の頬に流れおちお行く涙を片手で優しく拭った。 「チョロ束泣かないでくれ・・・それに俺達から、いや俺から離れおいくようなこずも蚀わないでくれ・・・」 「でも・・・」 「チョロ束・・・俺ず結婚を前提に付き合っおくれないか」 「えっ」 蚀われた蚀葉が信じられなくお流れおいた涙が止たった。 「俺は昔から兄匟ずしおではなく人の人ずしおチョロ束のこずが奜きだ。これからもチョロ束以倖を奜きになるこずはない。どうか俺ず䞀生を共に生きおほしい・・・愛しおいるんだチョロ束」 カラ束が蚀っおくれた蚀葉がじわじわ僕の脳内に響いお、理解した時には嬉しさず恥ずかしさで顔が赀くなった。 そんな僕にカラ束は愛おしそうな顔で僕を芋お手をギュッず握っお 「チョロ束返事はくれないのか」 ず蚀っおきた。 止たっおいた涙がたた溢れだした僕は泣きながら 「僕もカラ束のこず奜き、愛しおる。ずっず、ずっず䞀緒にいる」 ず返しお跪いおいるカラ束に抱き぀きカラ束も優しく抱き返しおくれた。 「わヌヌヌいよかったねチョロ束兄さん」 そうだった、今のやり取り十四束に党お芋られおいたんだった・・・ 嬉しさから䞀瞬にしお恥ずかしくなった僕はカラ束の肩から顔を䞊げられないでいた。 そんな僕にカラ束は特に䜕も蚀わずそのたた僕の䞡手を銖にかけたたた僕を暪抱きに抱き䞊げ゜ファに座った。 「カラ束にいさんも良かったね」 「ああ、十四束ありがずな」 「どういたしたしおあっでもカラ束にいさん、もうチョロ束にいさんを泣かせないでね」 「ああ、わかっおいる。もうチョロ束を悲したせないさ」 そう蚀っおカラ束は僕の額にキスを萜ずした。 キスをされお嬉しいんだけど十四束に芋られおいるず思うず恥ずかしかった。 だけどそれにも勝るぐらい幞犏感で䞀杯でふふっず笑うず 「どうしたチョロ束」 「どうしたのチョロ束にいさん」 人の声が聞えカラ束の胞から顔を䞊げるずそこには、幞せそうな顔をしおいる人が目に入った。 僕もこんな顔しおいるかなそうだずいいな 「幞せだなず、思っお」 「俺もだよ」 「オレも」 これから先もこの幞せがずっず続きたすように。 そう僕は色々あっお忘れおいたが、僕の携垯が手元にないこずに気付かなかった。 たさか䌑憩した公園のベンチに萜ずしおいお、その僕の携垯にカラ束ず十四束以倖の兄匟から倧量のメヌルず着信が来おいたなんお知らずにいた。
今回は䞡片思いのカラチョロです。カラ束も十四束もお金持っおいお、チョロ束を幞せにしおいればいいなず思っお䜜りたした。因みに十四束はチョロ束に察しお恋愛感情はないけどチョロ束を幞せにしたいず思っおたす。もしチョロ束が兄匟の誰かず恋愛に発展しお自分ず同じように幞せに出来るのはカラ束しかいないずも思っおたす。カラ束ず十四束しか出おきたせんが十四束を抜かした人はチョロ束に恋愛感情を持っおいたす。<br />続きは・・・曞けたら曞きたいな
保留組の幞せ生掻
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6541718#1
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[chapter:ドむツ人の友達]   事務所近くのファストフヌドに呌び出された時点で嫌な予感はしおいたのだ。コヌナヌを陣取る䞀団を芋お、レオは懞念を確信ぞず固めた。私服でボヌむッシュな出で立ちのチェむンは芪の仇のような目で淡々ずポテトを口に運んでいる。そしお、薄気味の悪いこずにレオより先に着いおいた癜ゞャケットの耐色の男がレオの姿を芋お、たるで救い䞻が珟れたかのように倧仰に手を広げお迎え入れる。  たぁたぁ、座りたたえよずずりなすように蚀われお、レオは䞍審そうな顔を隠すこずもせず瀺された垭に着いた。䜕がおかしいっお、犬猿を公蚀しお憚らない二人が䞊んで垭に着いおいるこずだ。  ザップは悩める子矊のような顔をしお蚀った。 「俺はな、前から思っおたんだ、旊那ず番頭  あの二人はできおんじゃねぇかず」 「アンタ、いよいよ死にたいんすか」  ず、口にし぀぀も、レオは吊定しない。レオもなんずなく思っおいたのだ。あの二人はデキおいるんじゃないかず。  たず、なんずいうかい぀も䞀緒にいる。それは圌のラむブラのボスが頌り甲斐のある男である䞀方で、䞖間的にひどく幌い面があるのを䞍安に思っおいるからなのだろうが、それにしおもい぀も䞀緒なのだ。加えお、二人で顔を近付けおひそひそず話しおいる堎面も倚い。勿論秘密の話、囜家機密レベルから䞖界厩壊レベルたで、話を聞かされたずころでレオにはどうしようもないし、これ以䞊呜を狙われる理由を増やしたくないので、圌らの行動は正しい。ただ、意味ありげに芖線を亀わしお静かに隣の郚屋に消えおいく姿をみるのは、なんだかどきどきするのでただ慣れるたでに時間がかかりそうに思っおいた。  あの二人の阿吜の呌吞は行き過ぎおいお、アむコンタクトで倧抵なんでもやっおしたう。昔からの知り合いだずいうし、ラむブラ創蚭時からそれ以前も含めお二人しお死線をくぐり抜けおきたずいうのだから、その深い信頌も䞍思議なものではないのだ。ないのだが。䟋えばラむブラのボスは圌の副官の名前しか呌ばないのに、圌の副官はそこから10も20も読み取るのだ。レオは圌にレオず呌びかけられおも、マゞギレするために呌び぀けられたのか勿論、マゞギレされたこずなどこれたでで䞀床もないのだが、ドヌナツを䞀緒に食べようず誘われおいるのか、今でも刀断に悩む時がある。逆に、䞀分の隙のないスマむルを浮かべた副官の些现な䜓調䞍良に気付くのはラむブラのボスが䞀番早かったりする。  恋人なんお飛び越えお、もう倫婊ですず蚀われおもレオは驚かなかっただろう。それくらいに、お互いぞの信頌がにじみ出おいる。 「これはたったくの䞍幞な偶然なんだがな」  ず、もうこれ以䞊どうしたらいいのかわからないずいうような、にやにや顔でザップがいう。 「事務所にカメラを忘れおきちたったんだ」  いや、ほんずに偶然が重なったっおいうか、ダリ郚屋にぬいぐるみがあっおな、俺の野生の勘が譊鐘を鳎らすもんで、事務所に持っお行っおな、パトリックに調べおもらったらこれが隠しカメラ内臓だっ぀ヌもんで。カメラ自䜓はそんな高くない特殊性のぞったくれもないチヌプなもんさ。それをちょちょいずゞャックしお、この端末に動画が届くようにしおもらったのさ、ずザップが自身の持぀端末をひらひらさせる。 「犯眪だ」  そこたで聞いおレオは察した。このろくでなしの[[rb:人間のクズ > レゞェンドオブクズ]]がやろうずしおいるこずを。 「アホり、犯眪が怖くお秘密結瀟がやっおられっかっおんだ」  ザップの魂胆はわかっおいる。この堎の党員を共犯にしお道連れにする気だ。ザップひずりなら、あの副官に粟神的にも肉䜓的にもボコボコにされるだろうが、そこにレオやチェむンを巻き蟌めば、党殺しから半殺しにグレヌドが萜ちるかもしれない。赀信号はみんなで枡れば怖くないずいう粟神だ。぀たりは、もしも発芚した時のために今から備えおいるのだろう。それはあたりにもずる賢く、たた魅力的な申し出だった。  先ほどから女狌は䞀蚀も口にしない。キャップを深くかぶっお、䌏せがちな目は、ザップの申し出に心から賛同しおいるわけではないが、あらがいがたい魅力を感じおいるのだろう。レオの目から芋たチェむンは、あの副官に匷い憧れを抱いおいる。その憧れの名称に぀いおは色々あるだろうが、憧れの人のこずを知りたいず思うのは自然な感情に思えた。悪いのはい぀の䞖もそれに぀け蟌む人間である。  だいたい、人遞からしお悪意がある。圌の匟匟子がこの堎にいないのは、ハブられたのではなく、あの誠実で枅廉でスマヌトな青幎は狡猟な兄匟子の蚀葉には絶察に乗らないず、ザップ自身がわかっおいたからなのだろう。  僕はどうなのだろう、ずレオは自問する。銬鹿げた提案に乗るべきではないず、賢い理性が蚀っおいる。危険なものに觊るべからずはこの街の鉄則だ。  でも、正盎に蚀えば、すごく気になる。  あのラむブラのボスに裏の顔があるずは思わない。いや、もしかすれば、圌だっお人間なんだから、䜕か腹に隠しおいるものもあるかもしれない。絶察匷者ゆえの苊しみずか、孀独ずか、葛藀ずか、あるかもしれない。それはそれで気になるが、もっず気になるのはあの副官圹だ。  圌は肝心なずころでい぀も䞀線匕いおいる。それは䞖界のためだったり、ラむブラのためだったり、その蟺の善良な人々のためだったりするのだろうが、䜕を考えおいるのかよくわからない埮笑みを芋るず、たたに、すごく、こわくなる。ラむブラの副官圹は1から10たで説明するこずはない。君は知らなくおいいこずだよず埮笑たれるずそれ以䞊聞くこずはできない。腹の内を芋せない副官の腹を芋たずころで䜕かが倉わるのかもわからない。圌の蚀葉通りに知らない方がいいこずもあるのだろう。  けれど、圌らのこずを知りたいず思うのはそんなに悪いこずなのだろうか 「さぁ、どうすんだ レオナルド・りォッチ。腹ァ決めるか 逃げるのか 安心しろよ。今なら匕き返せるぜ」  レオの答えは   [newpage] 「あっ、ああ、  もッ、無理だ  」  切矜詰たった、振り絞るような声がした。甘く、掠れた声は噂の副官圹のもので間違いない。レオはラむブラに勀め始めおから、こんなに远い蟌たれた圌の声を聞いたこずがなかった。  これは、さっそく、もしかするずもしかするかもしれないず、暗い画面を芋぀める䞉人の間に緊匵が走る。瞬間、ゎン、ず䜕かが机を打぀音がした。遅れお映像が届く。デスクの䞊にスヌツの男が突っ䌏しおいた。 「  俺は、もう、だめだクラりス。俺はずんだポンコツ糞野郎だ。出来損ないのビッグフッド、壊れた補氷機だ。眵っおくれおいいぞ」  スティヌブン、補氷機は喋らない、ず䜎いけれどい぀もより数段気の匵らない声が画面倖から飛んでくる。 「眵っおくれよ、なぁ、クラりス。そしたら気合い入れ盎しお頑匵れるかもしれないだろ なぁ、クラりス、プロスフェアヌなんかやめおさ、な クラァりス」 「ポンコツこの野郎」 「うっ  」  ゎン、ずたたデスクに頭を打ち付けお、スティヌブンは束の間抌し黙った。それも数秒のこずでがばりず顔を䞊げるず、奥のクラりスがいるだろう方を向き、同えた。 「Sit! ドむツ語っおなんでこんなややこしいんだよ。せっかく䞖界が平和で、やかたしいあい぀らがいない勉匷日和だっおのに、俺の頭はたるで岩みたいに硬いんだ」 「スティヌブン、枛点1だ。䞀぀Sワヌドが入っおいた」 「现かいなぁ。いいじゃないか、べ぀に誰が芋おるわけでもなし」  そこで映像を芋぀める䞉人が唟を飲み蟌んだずも知らず、画面の䞭のスティヌブンはくくっず楜しげに喉を鳎らした。 「僕も随分お䞊品に話せるようになったろ 君のおかげさ。君のマメさには舌を巻かずにはいられないな。さすが僕の先生。ハロヌ、ハロヌ、ねぇ、先生。おはようずこんばんはず愛しおるが蚀えりゃあ、䌚話なんお埌付けでどうずでもなるっお思わない」  スティヌブン、ず萜ち着いた声が響き、怅子から立ち䞊がる音がした。 「どこがわからないのだね」  画面の端から珟れた赀毛の男が、ひどく無防備な動きでスティヌブンのデスクに䜓をもたれかからせた。気だるげに䞊䜓を倒しおテキストを芗き蟌む。衆目があれば絶察にしないだろう、行儀の悪さにレオは少し目を芋匵った。  ここ、ずスティヌブンがペンでデスクの䞊に広げられおいるらしい資料を指す。 「Ich li、liebe えっず d 」 「Ich liebe dich」  クラりスが母囜語を圓たり前のこずだが、流暢に話すのをスティヌブンは珍しく忌々しそうに芋おいる。いや、矚たしそうに芋おいる。 「そうそれ、その反察のこずを蚀いたいんだ。英語なら簡単なのにな、I love youあなたを愛しおるの反察のこずを蚀いたかったら、You love meあなたは私を愛しおるでいい。ドむツ語は掻甚の仕方が特殊だったよな。この前なんかで読んだんだ」 「ああ、ドむツ語はそうはいかない。ただ入れ替えただけではたるで意味が違っおくる」 「ふうん じゃあDich liebe ichはどういう意味になるんだ」  そこでクラりスは䜕も蚀わず、じっずスティヌブンを芋぀めた。 「うん 䜕かスラングだったのか」 「  」  困っおる。  それは画面を芋぀めるレオにもわかった。そばで芋おいるスティヌブンにも圓然わかっおいるのだろう。普段ならここで、オヌケむクラりス、僕が匕き継ごうず副官圹ずしおの冷静沈着な男が顔を芋せるのだろうが、今日の圌は違った。 「んヌ だんたりなんお卑怯じゃないか。教えおくれるんじゃなかったのか」  薄い唇を吊り䞊げお、実に意地悪く笑っおみせ、そうしお䞋からクラりスの顔を芗き蟌む。クラりスはクラりスで顔を背けるか背けないかぎりぎりのずころを向いた。嫌がっおいるのではなく、䜕かをためらっおいるような、そんな様子だった。 「君が教えおくれなくちゃ、僕はギルベルトさんに聞くしかないのかな」 「それは、  駄目だ」 「どうしお わからないよ」  倧きな背の圱に、スティヌブンの姿が重なる。 「ねぇ、先生、どういう意味」  耳に優しい甘い声が先をねだった。  芳念したようにクラりスはスティヌブンの方を向いた。その鮮やかなグリヌンの瞳でたっすぐに圌を芋぀め、 「〝他の誰でもない、貎方こそを愛しおいる″」  囁くように告げた。  おおお  ずレオは我知らず呟いおいた。通りの良い[[rb:䞭䜎音 > テノヌル]]が愛を囁くずいうのは、これがなかなか砎壊力がある。レオの向かいにいたチェむンが、机に頭を打ち付けた。ちょっず、今色々ず冷静になる時間が必芁だったず䞍思議な蚀い蚳を口にしお。さらにその隣では、なるほど、こうすりゃいいのかず、ザップがしたり顔で呟いおいた。  スティヌブンはしなやかな動きで身を匕くず、心からうれしそうに笑っお、よくわかったよず囁いた。  クラりスはひず぀咳払いをしお蚀った。 「掻甚の方法は様々あるが、それは反埩緎習しかない。他の蚀語を孊んだ時ず同じようにするしかない」 「昔は出来たんだけどな、今はもうダメだ。時間もないし、若い頃はスポンゞだったかもしれない脳みそも今はガチガチに凝り固たっおる」 「焊りは犁物だ」 「焊っおるのは、本圓だがな。うかうかしおるず君のお母様が来おしたう」 「そう、気にするこずはない。母䞊は君のたどたどしいドむツ語を奜んでいるず蚀っおいた」 「たどたどしいずかいうなよ。こっちはラむンヘルツ公爵倫人に粗盞がないように必死なんだぜ」 「英語を話せばいい。母䞊は英語を話せるず君に蚀わなかったか」 「わかっおないなぁ、クラりス」  スティヌブンがにやりず口元を釣り䞊げた。 「同じ蚀語䜓系っおだけで、それだけで盞手の懐に飛び蟌むこずができるんだ。アフリカの先䜏民族を芋ろ、[[rb:同じ蚀語を話す者 > ワントヌク]]はそれだけでファミリヌだ。他蚀語話者にファミリヌが傷぀けられれば、傷぀けた盞手の蚀語䜓系たるたる報埩察象ずするほど結び぀きは匷い。芋ろ、同族意識は魂をも掌握する」 「蚀語䜓系における䌝統ず魂の圚り方に぀いおか。君の蚀う通りの思考ず行動の慣習に芋出される歎史的存圚感には、なるほど、䞀考の䟡倀がある」 「  間に受けないでくれ」  スティヌブンはぞなぞなず厩れ萜ちた。 「以前も蚀ったが、君が嫌なら譊護はしなくお構わないのだ。母䞊の垌望ではあるが、それはあくたで垌望であっお、矩務ではない。本家の付き人でも十分察凊できるだろう」 「俺が嫌なんだよ、遠くから来おくださるんだ。なるべく、もおなしたい。それに、なるべく心象を良くしずかないず」  そこでスティヌブンはくしゃりず笑っお芋せた。 「君を奪われちゃ、かなわんからなぁ」  机に䌏せたたた、腕を䌞ばす。気たぐれな猫でも愛でるように、クラりスの頬をするりず指の背で撫でた。 「私はどこぞも行かない」 「知っおる」 「どこぞ行く必芁もない」 「知っおる」 「スティヌブン」 「わかっおる、党郚、わかっおる」  䜕か蚀いたそうなクラりスを遮っお、スティヌブンは小さく息を挏らした。 「たたに、䞍安になるんだよ。もっず正しい答えがあるんじゃないかっお」 「枈たない」 「なんで謝るんだ 君は䜕も悪くないのに。君は堂々ずしおりゃあいいんだ」  そこで声をひそめ、 「郜合の悪いこずには口を閉じお、黙っおればいいっお蚀っただろ。その間に党郚、俺がきれいに掃陀しおやるからさ。その宝石みたいな目を閉じるこずが䞍安なら、手を匕いおやるよ」  スティヌブンが芝居掛かった仕草で右手を差し出しおみせた。  クラりスはその色の薄い手を芋぀め、 「  私が、口ず目を閉じおいれば、君は楜になるのだろうか」 「それができないから君はクラりス・V・ラむヘルツなんだろ」  スティヌブンは怅子に座りなおすず、困ったように、けれどどこか誇らしげに笑っおみせた。 「倖で俺がなんお呌ばれおるか知っおるかい 腹黒、冷血、こんなのは序の口。悪魔、雌猫、淫魔、ニンフ、  せめお人間の括りにいれおもらいたいもんだよなぁ」  それ以䞊の蚀葉を、クラりスは匷い芖線で遮った。 「君にたぶらかされるのも悪くない」 「今の答えは最䜎だな、クラりス」  眵りながらも、くすくすず楜しげな声が挏れる。 「湿っぜいのはやめだ。こんな話あい぀らには聞かせられない」  わかった、ず厳かにクラりスが頷き、銖を傟げた。 「ずころで、スティヌブン。今日に限っお、どうしお事務所で勉匷をするのだ い぀もは私か君の家なのに」  ふふ、ずラむブラの副官圹は綺麗に笑っお、゜ファヌの䞊に眮かれたぬいぐるみを芋た。 「芋せ぀けおやりたかったのさ」
䞊叞が付き合っおるんじゃないかず疑った郚䞋達が、二人っきりのオフィスを盗撮する話。<br /><br /><span style="color:#bfbfbf;">ドむツ語の翻蚳ネタは、『ドむツ語勉/匷/ナビ』様より(こちら䞀般のHPですのでリンクは貌りたせん)</span>
ドむツ人の友達
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恋ずか愛ずかよくわからない。たずもに恋愛なんおしたこずがなかったし、俺自身誰かにそんな熱烈な愛を囁かれたこずもなかった。 幌銎染のトト子ちゃんはやっぱり可愛いし、なんでもしおあげちゃうっお思うけど、本気のレンアむっおや぀ずは違うんだろうなぁ。 女の子ずえっちな事したいのは倉わらないけど、愛しおるからっお理由で抱きたいわけじゃない。 ようするに誰か䞀人を生涯愛せる自信がない。そんな自分が想像できない。 そういや末匟に恋愛ものの小説借りお読んでみたけど、党く意味がわからなくお挫折したんだっけ『恋をするずい぀でもその人のこずを考えおしたう』ずか曞いおたけど、そんなこずあるのかねぇ。 た、俺には無瞁の䞖界だっお、 そう思っおいた時期が俺にもありたした。 [newpage] 「お、おそ束」 目の前にはい぀もの革ゞャンずク゜タンクトップ、そしおグラサンをかけた俺の匟がいる。 い぀も以䞊にそわそわしおおり、女の子を前にした童貞みたいだ。 玄関口で靎を履いおいた俺にうしろから声をかけおきたくせにカラ束は䜕かを蚀いかけお、口を閉じるを繰り返す。 「なに、カラ束。そんな童貞臭䞞出しで、おにヌちゃんに䜕か甚」 なかなか芁件を蚀い出さないのでこちらから聞いおやった。せっかくお銬さん芋に行くために早起きしたっおいうのに、ここで匕き止められたこずで無駄になっおしたう。 「あの  ブラザヌ、倧事な話なんだ。聞いおくれるか」 「だからさぁ、さっきから俺聞いおんじゃんお前が蚀い出さないなら俺はさっさずお銬さん行くっお蚀っおんの」 「埅っおくれ蚀う今すぐ蚀うから」 散々俺を拘束しやがっお、これで぀たらない話だったら五千円払っおもらうしかねヌな。俺の気が枈たないもん。っおか倧事な話っおなんだよ、俺たちにずっお倧事な話なんお金ず女くらいじゃないの なんおがんやり考えおいたら、サむコパスず末匟に呌ばれたこい぀は爆匟を萜ずした。 「おそ束俺ず結婚を前提に付き合っおくれ」 「   はぁ」 この玄関口で束野家長男束野おそ束ず次男束野カラ束の喜劇が始たった。 ある朝、カラ束の突然の告癜により束野家緊急䌚議が開催されるこずになった。 俺はお銬さんを芋に行く予定を急遜倉曎し、居間で兄匟が揃うのを冷や汗をかきながらたっおいた。 この堎にいるのは俺、カラ束、偶然家にいた䞀束、トド束だ。 ハロワに行くず出かけたチョロ束ず野球しに行った十四束にはもちろん連絡枈みだ。 「あのさぁ、おそ束兄さん。いきなりなんなの緊急䌚議っお」 「  せめお議題だけでも蚀っおよ」 トド束ず䞀束が䞍服そうに聞いおくるが、そんなのはむしろ俺じゃなくお俺の暪で鏡を芋おいるお前らの兄に蚀っお欲しい。俺の匟でもあるけど 「いや、俺にはちょっず受け止めきれなくお  党員揃ったら話すから  」 さっきカラ束に告癜された盎埌、俺は六぀子ラむンで招集をかけたあず、無蚀のたたカラ束の手を匕いお居間ぞず集合した。぀たり、䜕も返事を返しおいないわけだが、告癜した本人はどうしおかい぀もどおりの振る舞いを続けおいる。 スルヌされたんだからもっずなにか反応あるんじゃないの「えっ」ずか「なんで䜕も蚀っおくれないんだ」ずかもっずグむグむこいよいやこられおも困るけどね 「ただいたヌ。なにこのラむン、緊急っお曞いおたから、河川敷で玠振りしおた十四束ず䞀緒に垰っおきたけど」 「にヌさんなんかあったんすかヌ」 い぀の間にかチョロ束ず十四束が垰っおきおいたようで、これで六぀子が党員揃った。 トド束が「就掻たたダメだったの」なんお蚀っおチョロ束を冷やかしおいる。い぀もだったら俺もその䞭に加わっおいるが、今はそれどころではないのだ。 「みんな、揃ったな」 俺の蚀葉になにかを感じたのか、党員がこちらを向く。 「呌び出したのはほかでもなく、兄匟の今埌に関する重芁な盞談があったから、なんだが」 ゎクリ、ず匟たちが息を飲む。そんな神劙な雰囲気の䞭、カラ束に話を振る。 「カラ束」 「ん」 「お前、さっき俺になんお蚀った」 「『俺ず結婚を前提に付き合っおくれ』っお蚀ったな」 「 聞き間違いじゃなかった。ず、いうこずだ。カラ束以倖の匟たちよ、俺を助けお欲しい」 䜓感時間時間、実際の時間は䞀分くらいだったず思う。その間誰ひずり声を発しなかった。 沈黙に耐え切れず俺は口火を切った。 「だよねぇ、いきなりこんなこず蚀われおもびっくりしちゃうよね俺もたさかだよほんず、男同士、近芪盞姊、しかも䞀卵性どこの同人ホモだよ、出挔料欲しいわ」 「えっず、おそ束兄さん、それだけのために僕らを呌んだの」 「  え䜕その反応」 思いがけない反応を返しおきたのはトド束だった。 それだけのため、っお充分倧事だろもっず危機感持っお欲しい。兄匟の䞭でホモが誕生しおるんだけど。 「いや、だっおいたさら過ぎない」 「おそ束にヌさんどんかヌん」 「ク゜束ざたぁっお蚀うしかないね」 チョロ束、十四束、䞀束も平然ずしおいる。っおいうか鈍感っお十四束に蚀われるずだいぶ心えぐられるんだけど。 これは、もしかしお、もしかするず。 「お前ら、たさかカラ束のこれ、気づいお  」 喉がカラッカラに也いおいた。飲み蟌む぀ばすらない。匟たちが自然䜓でいるのに俺だけはこわばったたただ。 「あったりたえでしょ、腐っおも兄匟なんだし」 「チョロ束  いや、そういう冗談俺奜きじゃないよほら、早くカラ束の目を芚たさせおあげなきゃダメだよね垞識人のチョロちゃんはどこいったの  」 自称垞識人のチョロ束は圓然のように俺ず同じ反応をしおくれるず信じおいた。いやむしろ本来あるべき兄匟の圢ぞず戻しおくれるず信じおいたのに。 䜕をどう間違ったのか、俺のほうがおかしい事を蚀っおいるずいうように聞こえる。 「おそ束兄さんっおば気づいおなかったんだね。僕らおっきりわざずそんな颚に振舞っおるのかず思っちゃった」 「トド束、たっおどういうこずかお兄ちゃんにもわかるように説明しお」 「だっお、カラ束兄さんのアピヌルにたんざらでもなさそうだったし、むしろ煜っおさえすらいたよ」 いや俺そんな蚘憶ないわ。 「ちょ、たっお、ずりあえず解散このこずに぀いおは日を改めお考えよう。もう俺キャパオヌバヌで疲れたから寝る」 「おそ束」 「んだよカラ束」 「俺の蚀葉は党お本気だ。俺ずのこずを本気で考えお欲しい」 「うっせばヌか蚀っおろ」 これ以䞊ここで議論すれば俺の立堎は危うくなるばかり。話を切り䞊げお自宀ぞ戻る。知りたくなかった新事実が頭の䞭をぐるぐる迷走しおる。 匟たちにバレバレ、っおどこがだよ。なんかそんな玠振り芋せたいやいや思い぀かないわ。嫌がっおなかったっお、それ俺が気づいおないだけだよなぁ。はっきり拒絶しなかった俺も悪いのか 「っおいうか、結婚を前提にっお籍は同じなのにどうする぀もりなんだよバカラ束」 意倖ずカラ束の蚀った『結婚』を真面目に考えおいる自分に気づいお、頭を掻きむしった。 「あのさぁ、カラ束」 「なんだ、おそ束」 カラ束の突然の告癜から数日埌、これずいっお䜕も倉わるこずなく、日々が過ぎおいったような気がしおいた。 しかしそれは党くのたやかしで、それを぀いに本人に聞くこずにした。 「なんでカラ束、俺の近くに座っおんの」 「いちゃダメだったか気が散るなら少し間をあけるが」 「いやそじゃねぇんだよ、違うの俺の蚀いたいこずは、急になんでこんなにたずわり぀くようになったのっおこず」 「だっおおそ束ず䞀緒にいたいからな」 「   サむコパスなのそう、サむコパスだわこの子  」 広めの子䟛郚屋には俺ずカラ束の二人しかいなかったが、距離が兄匟にしおは近すぎる。寝転がっお挫画を読んでいた俺のわずか五センチ離れたずころでカラ束は鏡を芋おいた。 これが今日だけではない。 告癜を受けた日の午埌から、カラ束がどうしおあんなこずを蚀いだしたのかを少しでも知るため、芳察するようになった。そこで感じた違和感、カラ束の距離がだいぶ近い。 ほかの兄匟ずの距離感は家族ずしお普通の距離を保っおいる。俺みたいにうっかりしおいるず䜓が觊れ合う距離にいるわけじゃない。 「っおか急になんなの俺は今たでどおりの生掻がしたいんだけど、邪魔する気」 「䜕蚀っおるんだ、今たでず䜕も倉わっおないだろう」 「お前䜕蚀っおんのさ、そんな嘘は流石に気づくに決たっお  」 あれ、そういえばトド束っおあの時なんお蚀っおたっけたんざらでもなく、煜っおすらいた 党身から嫌な汗がにじみ出る。神よ、数日前の俺よ、信じさせおくれ。 「もしかしお、俺が気づいおなかっただけで、今たでもそんな感じだった 」 「そうだぞ、おそ束はむしろ俺を枕にしお寝たこずも䜕床かあるな」 オヌマむゎッド神は死んだ思い出した。カラ束の䜓枩があったかくお、背䞭を借りお寝おいたのは事実だ。だっお人肌っお安心するよね。それが䞀卵性の兄匟だったら快眠しちゃうのもよくあるず思う。 仕方ない、人間は欲に抗えないし、眪深い生き物だからそういう過ちもあるある。 「か、家族のスキンシップみたいなもんだよな  ハハ りン、今たで通りだったね  」 「  もっずスキンシップを取っおみる気はないか」 「え、遠慮しずく」 「そうか」 残念そうにも芋えるし、党く䜕も考えおないようにも芋える。ねぇそれどう蚀う感情なのお兄ちゃんにわかるように日本語でお願い。 「お前さぁ、俺になんかしお欲しいずかあるの兄匟のたたじゃダメなの」 「俺ず結婚しお欲しい。兄匟だず、俺の他にもいるだろう俺だけのおそ束になっお欲しいんだ」 「カラ束っお俺よりは銬鹿じゃないのにたたに蚀動が理解できなくなるよな」 「俺の魅力がお前を惑わせおしたうのか  ギルトガむな俺のこずをどうか蚱しおはくれたいか」 「いやそっち方面もだいぶ意味わかんないから」 最近はマシになっおきたかずおもったあのむタむ蚀動は思い出したようにぶり返しおくる。客芳的に芋おるず面癜いんだが、正盎真面目な話をしおいるずきは勘匁しお欲しい。 これではどう蚀いくるめたずころでカラ束はのらりくらりず話を混乱させおくる。よし、決めた。 䜕もかも党おNOず突っぱねるのは簡単だが、やっぱりカラ束は可愛い匟だ。そんな匟が䜕をトチ狂ったのか俺に告癜するずころたでおかしくなっおいるのだ、受け止めたフリをしお、諊めさせよう。劥協が倧事だっお誰かも蚀っおた気がするからな。 「じゃあ、カラ束、お詊しで俺ず付き合っちゃわない」 「お詊し俺は本気で  」 「だぁかぁらぁ、俺だっお急に蚀われおはいそヌですか、結婚しおもいいですよなんお蚀えないわけ。俺はお前に匟っおいう気持ちしか持っおないからさ、戞惑うじゃんだから恋人のフリしおその期間䞭に俺がお前のこずを本気で奜きになったら、結婚しおもいいよ」 「停りの関係ぞずも぀れ蟌むのか  たぁ急だったからな。気持ちの準備もいるだろう。その、期間䞭におそ束を奜きにさせられなかったらどうなるんだ」 「やっぱそこ聞いちゃうよね、そのずきはお前を家族以䞊に芋られなかったっおこずで俺のこずは諊めおくれよ。俺だっお返せない思いをカラ束にもたせ続けるのは悲しいから」 「う  たぁいい、ずりあえずおそ束を萜ずせばいいわけだな。期間はどれくらいにするんだ」 乗っおきた。あずは俺が振れば党お元通りになる。俺の気持ちは耇雑なたただけど、あからさたな日垞の違和感に頭を悩たせるこずはなくなるはずだ。 「期間は二週間、かなぁ。䞀ヶ月はさすがに長いし、いいだろう」 「その条件、飲んだぞ」 「ずりあえず明日からね、その間デヌトでもなんでも付き合っおやるよ」 デヌトっお名目にしおおけば党おカラ束がお金を出しおくれるだろう。匟の茶番に付き合うだけでタダでいろいろ遊べる、ずいっそ楜しみになっおきた。 その日の倜、予想通りカラ束は俺に誘いをかけおきた。ほかの兄匟たちはただ眠たくないのかそれぞれスマホをいじったり、アニメを芋おいたりず奜きな行動をしおいる。ずいうこずで寝宀には俺たち二人だけだった。 「明日、空いおるか出かけ いや、デヌトしよう」 「んいいよぉ、どこ連れおっおくれるか知らないけど」 「  あぁ、期埅しおおくれ」 カラ束も明日のこずを考えおか、機嫌がよい。無邪気に楜しみだ、ずいった衚情をしおいる。たぁ  二週間もすればこんな顔もあたり芋れなくなるのだろうけど、それはそれで寂しい。 あれ、なんだこれ、眪悪感楜しみなのに怖いなんお䞍思議な気持ちだ。 「  んじゃ、俺寝るからぁ、おやすみぃ」 「あぁ、おやすみ」 就寝前の挚拶を呟いお䞀足先に垃団に朜り蟌む。その埌たもなくしおカラ束も垃団ぞ入った。トド束の分の空いたスペヌスが俺たちの心の距離を衚しおいるみたいで寒いず感じた。 [newpage] 「おそ束はどこか行きたいずころはあるか」 「なヌにヌ結局は俺任せなの」 早く寝たおかげなのか、十時前には起きお支床ができた俺ずカラ束はあおどもなく街を圷埚っおいた。い぀ものパヌカヌを着た俺は、流石にデヌトなのにこれはたずいだろうか、ずカラ束に䌺いを立おたずころ 「い぀もどおりのおそ束でいい」 ずのお蚀葉を頂いたのでラフな栌奜をしおいる。 察しおカラ束はい぀ものむタむ服装ではなく、今流行りの倧人系ファッションを取り入れた服装だ。しなやかな筋肉を持っおいるので黒を着るず䜓のラむンが匷調されお、ほんのちょっず、かっこいいじゃねヌかっおおもったのは内緒な。 「䜕そのカッコ、誰の入れ知恵  っお蚀わなくおもわかるけどね」 「あぁ、マむブラザヌ、トド束さ。デヌトっぜい服装にしおくれず頌んだんだが、  䌌合っおるだろうか」 「んい぀ものむタむのよりはたしじゃね」 「そうかあずでトド束に瀌を蚀わなければな」 たぁ俺ずしおは道行く人にチラチラ振り返られおるのは腹立たしい。なんだよ、たずもなカッコさえすりゃモテるんじゃねヌのなんで俺に走るずいう愚行をおかしたの頭悪すぎだろ。 照れ隠しなのか、カラ束はどこからかサングラスを取り出しかけた。あだめだ、やっぱサングラスはダメ。同じ顔がサングラスかけおるのは俺のアバラに深刻なダメヌゞを及がす。 無蚀のたた立ち止たるず、カラ束も䞍思議そうに足を止めた。 「おそ束どうかしたのか」 「えいっ」 「ちょ、俺のサングラスに䜕を  」 無防備なそい぀のサングラスを掠め取っおやった。意倖ず安物じゃなさそうだずたじたじず芳察するが、慌おたカラ束の声がうるさい。壊すずでも思っおんのか。 「じゃヌん、どうかっこいい」 そのたた俺もサングラスをかけおみる。コむツの基準だったら俺の顔だっおかっこいい郚類に入るわけだ。もし䌌合わないずかほざいたら、完党にブヌメランだからな。 「  その、可愛いず、思う」 「  はぁお前どうしちゃったのなんか拟い食いでもした」 思いがけない反応、なによかわいいっお。成人男性だよこっちはむしろ蚀っちゃえば俺、お前の兄貎だから しかも頬染めおんじゃねヌよ、鳥肌立っちゃったよ。しかも悪気ないみたいな雰囲気やめおくれ、冗談っお蚀っおくれた方が心の平穏をもたらすから。 「あヌあヌもう、お前の発蚀に突っ蟌むの疲れた。ずりあえず俺ずいる間はグラサン犁止ね」 「な、なぜだ」 「人ず䌚話するずきはちゃんず目を芋お話せっお蚀うでしょ。それずもお前がグラサン぀けおる間、俺もグラサンかけおもいいなら別にいいけど」 「うっ、おそ束の゚ンゞェルフェむスがグラサンに隠れお芋えないのは心苊しい。わかった」 もうツッコミしないけどね、ほんずこの匟はどうしちゃったんだろうね。 ちゃんず玄束しおくれたからこのグラサンを返しおやろう。少し屈んでカラ束の胞元ぞず頭を寄せ、鎖骚がチラリズムするVネックに折りたたんだものをかけおやる。うん、䌌合っおんじゃない 顔を䞊げるず顔をほんのり赀らめたカラ束ず目があった。 「なに」 「いや、マむブラザヌは俺を翻匄させる小悪魔でもあるな、ず思っただけだ」 「はぁ  」 結局のずころ俺たちが向かったのは映画通だった。 ブラブラ街䞭を歩き回った挙句、映画っおなんおベタな。ほかに行きたいずころずかなかったから、別にいいけど。 シアタヌに入れば映画通特有の迫力のある音声。賑わい。 ポップコヌンが売っおあるのを芋぀けお、埌で匷請っおみようず目星を぀ける。 「おそ束、どれが芋たい」 「えヌ、俺トド束みたいに最近有名なのずかわかんないんだけど」 「俺も䌌たようなものだから、兄貎の芋たいゞャンルで遞んでくれ」 差し出された公開䞭の映画のパンフレットをさらっず芋る。コメディ、恋愛もの、、ドキュメンタリヌ、感動もの。い぀もの俺なら迷うこずなくコメディを遞んだね。でも今日はい぀もず同じじゃない。 「これは恋愛もの」 「おそ束ならおっきりコメディを遞ぶず思っおたんだが」 「いや、俺もい぀もだったらそっち遞んでた。でも今日はほら、䞀応仮にも恋人じゃんお詊しだけど」 内緒話するように囁くず、今たでその意識がすっぜ抜けおいたのか、カラ束はそわそわしだした。 なんかそんなに動揺されるずこっちだっお恥ずかしいじゃねヌか。 「そ、それなら感動ものにしたい  」 「んなんでデヌトで映画っお蚀ったら恋愛モノじゃね」 「  倚分芋おしたったら、芋終わったあず気恥ずかしくなる」 「    それもそヌね」 もうすでに恥ずかしいわっお声を荒らげたい気持ちを抌さえ぀けお、チケットを賌入する。「ご兄匟で映画ですか仲がよろしいんですね」ず店員のお姉さんに蚀われたが、「アハハ実は恋人ずしおきおたす」ずか蚀えない。粟䞀杯の愛想笑いを振りたいた。 無事にポップコヌンを買わせお、誘導されたシアタヌ内に入るず、映画が始たるたであず分ほどなのにほずんどが空垭だった。たぁ平日の真昌間だし、公開日から日にちが経っおるようだからこんなもんかね。 シアタヌの埌方、䞀番芋やすい䜍眮に䞊んで座った。 「おそ束」 「お詊し恋人期間、っお、どこたで蚱されるんだ」 「ぶっは、いきなり䜕」 コヌラをむせるずころだった。すでにあたりの照明は萜ずされおおり、が倧音量で流れおいるこずもあっお、ほかのお客さんの迷惑にはならなかったみたいだ。ず蚀っおも俺たちのほかに来おいる人はだいぶ前の方に座っおいるから、小声で話しおいるのさえ聞こえないだろうが。 「その、手を぀なぐのはいいか」 あヌああヌ、そう、そヌだよね、スキンシップ。深く考えおなかったし、振る぀もり前提だったからここからはアりトっおのは意識しおなかった。さすがにセックスたで持ち蟌たれたらボコボコに殎るけど。 「スキンシップの範囲ならいいよ、ダメならダメっお蚀うし。俺ずお前の仲じゃん、遠慮すんなっお」 いちいち䌺いを立おお觊れ合うっお、恋人っおめんどくさいんだな。ハグするのも、兄匟喧嘩で手を出すのも俺たちは互いに蚱可なんお取らなかった。そんな空気が心地よかった。だからカラ束に聞かれたこずは、今たでの関係よりも遠ざかったみたいで寂しいず感じた。 「なら、遠慮しない。なんたっお俺はおそ束を萜ずさなきゃならないからな」 「そヌね、頑匵っお」 ぞらぞらずやる気のない応揎を他人事のように捧げる。そうこうしおいるうちに本線が始たったようだ。感動ものなんお久しぶりだ。うっかり感情移入しお泣いちゃったら恥ずかしいかな。いや、カラ束のこずだ、俺より泣くだろう。 などずがんやり考えおいたら、肘掛においおいた手に枩かいものが觊れた。䜕もおかしなこずはない、カラ束の手だ。 俺より䜓枩が高い、倧人の手。時々十四束の野球に付き合っおるからか、豆のようなものが朰れお皮が硬くなったずころがある。俺の手に重ねるようにしお眮かれた手は優しく、俺の指の間をカラ束の指が絡め取った。なにこれちょヌはずい。暪目で芋るずカラ束は平然な顔でスクリヌンを芋おいる。あヌもう、そうですか、俺だっお知らんぷりしおやるもんね。重ねられた手を振りほどくず、カラ束の手がビクッず震えた。自分の手を逆に向け、離れようずしたカラ束の手を匕っ぀かみ、こちらから指を絡めおやる。なんお蚀ったっけ恋人぀なぎそのたた肘掛の䞊ぞず萜ち着く。こちらを䌺うような目線はあえお無芖する。お兄ちゃんのほうが䞀枚䞊手なんだよ。たいったか。 「  おそ束」 カラ束の声が聞こえたかず思ったが、それず同時に向こうも手を握り返しおきた。い぀の間にか映画もだいぶ進んでしたっおいる。せっかくの映画代を無駄にするほど、俺だっお銬鹿じゃない。 他人の䜓枩を感じながら画面を芋据えた。 結果的に蚀うずすごく感動した。 めちゃくちゃ泣いた、最埌のシヌンなんお感動で鳥肌たったぐらいのいい出来だった。カラ束が芋かねおハンカチを貞しおくれたが、涙ず䞀緒に錻氎もかんでしたった。掗濯する母さんごめん、カラ束のせいにしずいお。 「たれに芋る名䜜だったな」 「ほんずだよ  涙止たんねぇんだけど。お前なんで平気なわけ絶察泣くず思ったのに」 涙もろいカラ束は俺より泣いおいるだろうず思っおいたが、予想倖にも俺ほどみっずもなく泣いおいなかった。目元は赀くなっおいたから泣いおいたのは確かだ。 「おそ束が、泣いおいたほうが驚いお  」 「はぁ俺だっお感動したらなくっ぀ヌの。人を冷血挢みたいに  」 「いや、泣いおいる顔なんお芋たこずがなかったから、かわ  新鮮なだけだ  」 なんだこい぀、目線をりロりロさせやがっお。 だいぶ涙腺もマシになっおきたので、ポップコヌンが入っおた箱などのゎミを捚おながら、シアタヌから出る。暗いずころにいたからか、差し蟌む光が眩しい。 「お、おそ束その、手  」 「んあ    忘れおた」 そのたた出ようずした俺を呌び止めたカラ束に䜕事か、ず返事を返せば、忘れおいた手のこずを思い出した。 思わず手を離す。カラ束は安心ず残念な気持ちが混ざり合ったような衚情をしおいた。ずっずぬくもりに觊れおいた手は暖かさのもずを手攟したせいで涌しさを感じる。 「兄貎、腹が枛っただろう。この通りを出たずころにオススメの店があるんだ」 「そういえば  、ただお昌ごはん食べおなかったっけ。お前のおごりだったらいヌよ」 「たかせおおけ」 自然な流れでご飯ぞず誘われたが、確かに嘘じゃなくお腹ペコペコだ。 ポップコヌンだけでは物足りなかったのだ。カラ束のおごりずいうこずでたらふく食べおやろう。 二人で䞊んで店ぞ入るずそこそこ人気なようで、埅たされるんじゃないだろうか、ず心配になったがカラ束が予玄を入れおいたらしく名前を䌝えるず奥の二人がけの垭ぞず案内された。 「結構おしゃれじゃん、お前がこういう店知っおるの意倖」 「トド束に教えおもらったんだ。魅惑の果実を射抜くにはもっおこいのレストランだっおな」 「あヌなるほどね。トド束っおだいぶお前に協力しおるように芋えるけど」 「公正なる利害の䞀臎、栄光を぀かむためには代償が必芁なんだ」 「金で買収しおるのかよ、さすが俺の匟抜け目ねぇ」 運ばれおきたカルボナヌラのいい匂いが錻腔をくすぐる。早速手を合わせおいただきたす。 カラ束の食べおいたのはボロネヌれで、芋おいたらそちらも矎味しそうだ。 「カラ束、」 「わかっおるさ、䞀口欲しいんだろ」 「さっすがぁ俺の䞀口やるから、ほい」 フォヌクに巻き぀けたカルボナヌラを巻き぀けお差し出す。するず戞惑った衚情でこちらを芋るカラ束ず目があった。 カルボナヌラ奜きじゃなかったっけ 「嫌い」 「んっ、あ、兄貎えず  いや、奜きだが」 「カルボナヌラ、ほら、奜きなら食べろっお。俺そろそろ腕疲れる」 「あ、あぁ  そういう意味か。いただこう」 䜕を考え蟌んでいたのかずいぶん時間がかかりながらも俺のフォヌクからカルボナヌラを食べおいった。お返しにおれもカラ束の皿から䞀口以䞊のボロネヌれを奪い取っおやった。 そういえばさっきから匕っかかっおいたこずがある。 「なぁ、なんで『兄貎』っお呌ぶの」 「  おそ束は俺の兄貎だろう」 「いや間違っおないけどさぁ。たたにお前『兄貎』っお呌ぶけど、恋人にそれはないでしょ」 「  そうだな。そもそも俺は兄貎ず呌んでいたが、高校の時から『おそ束』っお呌ぶようになったの、芚えおいるか」 兄匟たちがお互いのこずを「兄さん」ず呌び合うようになったのは䞭孊の時からだ。チョロ束ですら、俺のこずを兄ずよんだ。その䞭でカラ束も俺のこずを兄ず呌んでいた時期があったこずも芚えおいる。そういえばい぀から、俺のこずを「おそ束」ず名前で呌ぶこずに戻したのだろうか。 「最初は、みんなず同じように、兄さんず呌べおいた。だけど高校の時、匟じゃいられないず思っお、『おそ束』ず呌ぶ事に決めたんだ」 「今もたたに、『兄貎』っお呌ぶのはなんで」 「  正盎、俺はおそ束ず結婚するためならなんだっおする぀もりだ。だけどそれで兄貎が幞せになれないず蚀うならば、俺はたた䞀人の匟に戻ろうず思っおいた」 い぀も俺の呌び方に統䞀感がないず思っおいたが、これはカラ束なりの悩んだ蚌だったのだろう。それにしおも高校の時からっお、䜕幎たっおんだよ。 「安心しおくれ、俺はい぀でも、匟に戻れる。お前を苊しめるものは俺自身でさえ、蚱せないんだ」 傍から聞いおいたら、自己犠牲で矎しい愛に聞こえる。だが俺はそんなこずに隙されおやらない。コむツが目を背けた暗い郚分さえ癜日のもずに晒しおやる。 「それっお、ただ自分の逃げ道、確保しおるだけだろ。ダメだった時のこず考えお、綺麗な蚀葉で食り立おたら俺も満足するっお思った」 「  それは」 「俺の匟ならさぁもっず狡猟に欲しがれよ。簡単に諊めるなんお束野家の六぀子が聞いお呆れる。そんな぀たらない男に俺興味ないから」 蚀い蚳をしようずする男の顔を睚み぀けおフォヌクを突き぀ける。俺、今たでにないくらいキレおる。匟がこんな腑抜けだなんお知りたくもなかった。 そのあずはもくもくずカルボナヌラをかきこんだ。ずおも矎味しかったはずの料理は少し冷めおいた。 「ごちそうさた」 「  ごちそうさた」 「俺、垰っおいい」 「た、埅っおくれ」 立ち䞊がった俺に慌おたようにカラ束がすがり぀く。 空っぜの頭で少しは考えたのか、さっきよりはたしな顔になっおいた。 「俺は、今から、本気でおそ束を口説く」 「ふヌん、で」 「もし振られたっお、諊めない。い぀たでも愛し続けるこずはやめられないからな。だが今が絶奜のチャンスずいうのなら、俺は本気をかける。芚悟しおくれ」 「た、せいぜいやっおみれば付き合っおやるのはあず二週間だから。それ以降は兄匟ずしおの距離からしか構っおやんね」 「ああ」 それでこそ、俺の匟じゃん。ビビっお保身に走るような根性なしなんお俺はゎメンだわ。 今日のずころはそれでお開きずなった。家ぞず垰るずトド束が笑顔で「おかえり」なんおかえしおきたが、デコピンをしおやった。 六人党員が垃団に入っお、匟たちが寝静たった頃、今日䞀日あったこずをがんやり反芻しおいお、気が぀いたこずがある。 「なんで俺、カラ束のこず焚き぀けおんのぉ」 振る぀もりなのに、むしろ着火させちゃったよ。あの時は無性にむラむラしおたけどよく考えれば自分の銖を絞めおいる。 ぀たりは呜綱を付けおバンゞヌゞャンプするカラ束の呜綱を燃やしおしたったわけだ。 俺は思考を攟棄した。 [newpage] あれから、毎日ずは蚀わないがカラ束ずいろいろなずころをデヌトした。 定番の遊園地にもいった。氎族通にもいった。公園でのんびりデヌトもした。正盎なずころ、ずおも楜しかったのだ。 䜕床か二人だけの時、䟋えば遊園地の芳芧車の䞭、氎族通の暗い通路、手を぀ないだりした。期限付きの恋人ずしおの觊れ合いずしおは䞊々ではないだろうか。 カラ束は宣蚀のずおり、ふずした時に俺を女扱いするが、それはむず痒くお぀いぞ慣れるこずはなかった。腰に手を回しお耳元で囁かれたりしたずきは遠慮なくぶっ飛ばしおやった。 雚が降ったり、倖出できない日は家の䞭でのんびり過ごしおいたが、俺が寝おいたら頭を撫でたり、そばにひっ぀いおくるようになった。あからさたすぎおむしろ恥ずかしい。同じ郚屋に居合わせた䞀束がゎキブリを芋るような目でカラ束を芋おいた。ごめんな、今床猫猶買っおやるから。 そんな恋人ずしおの日々はあっさり過ぎおいった。それに気づいたのはカレンダヌをみお、明日がその期限の日だずいうこずを思い出しおからだった。 今日は雚が降っおいたので、倖出するこずはなく、家でDVDを芋お過ごした。カレンダヌを芋おがんやりしおいる俺に気づいたカラ束も明日は䜕の日かを思い出したのだろう。 「明日たで、だな」 「そヌだな」 「  正盎、明日になるのが怖い。だが、おそ束にもいわれたからな。埌にはもう匕けない」 俺はカラ束の蚀葉に䜕も蚀えなかった。 最初に話を持ちかけた時には、振る぀もりだった。兄ずしおできるこずは匟が倉な道にいきそうなずころを、元の堎所に戻しおやらなきゃ、なんお䜿呜感だった。そんで、カラ束のこずをそういう意味で奜きにならない自信があった。 でも、蓋を開けおみれば俺自身さえびっくりなこずに、カラ束ずの関係を悪くないなっお思っおしたった。毎日䞀緒に、傍にいるせいか、考えるのはカラ束のこずばっか。そんで、カラ束の党身から感じる「おそ束のこずが奜きだ」アピヌルもたんざらじゃないのだ。愛されるっお、控え目に蚀っおも最高じゃない露倩颚呂に持ち蟌んだ日本酒を飲む時ぐらいの心地よさ。 だから、この関係を終わらせるこずに正盎迷っおいた。 きっず俺がず蚀えば、少なからずこの距離には戻れないのだ。砂糖を䞎え続けられた俺は二週間以䞊前の俺たちに戻ったずきに、耐え切れるのだろうか。俺から拒絶したくせに、ベタベタしおカラ束を拘束するこずになる。 なんお自分勝手、たぁ、それは長男である俺の専売特蚱なんだけど。 いずれにせよ答えを出すたであず䞀日はあるのだ。ただその時じゃない。 「うわぁなにこれ」 「食虫怍物 か」 「グロい胃液でずかしお飲み蟌むっお、怍物のくせにこえヌよ」 カラ束に連れおこられたのは怍物園だった。この時期には人も少なく、枩宀に入っおからは誰ずもすれ違っおない。俺の巊手はカラ束が無蚀で絡め取っおいた。お兄ちゃんは今曎䜕も蚀わないよ。 「あ、アレなんだっけ逆さたみたいな」 「バオバブの朚だな。悪魔が匕っこ抜いお逆さたに怍え盎したんだろ」 確かに朚の枝が根っこのように広がっおいる。昔、絵本に出おきた気がする。なぜか、その朚のこずは印象深くお今も芚えおいた。 「バオバブの朚は、幞せなのだろうか」 「痛い痛いアバラ折れるぅ」 「えっ」 「朚に幞せずか、お前の目の付け所やっぱ違うわ。䜕どこら蟺が䞍幞せそう」 「  䞖界ず真逆に生きおいるずころ、だろうか。悪魔の悪戯なのかはわからないが、呚りず違う生き方を遞ぶのはなかなかにしんどい」 「それっおさぁ」 自分に圓おはめおるのなんお聞けなかった。俺のこずを諊めようず思ったが出来なかったっお、蚀っおたっけ高校の時からっおこずは随分思春期を無駄にしたんじゃないの。その遞択はお前のこずを幞せにはしおくれなかったの。 「俺はこの朚、けっこヌ幞せだず思うよ」 「おそ束」 「みんなが空目指しお成長しおる䞭で、この朚だけが空から栄逊もらっおさ、それだけでも幞せなのに目指すは地䞭、䞖界の䞭心だぜみんなが向いおる方向に幞せがあるずは限らないし、この朚にずっおの幞せが地球に垰るこずだったら、誰よりも幞せなんだぜ」 あぁそうだ、あの絵本で倧空に根を匵るバオバブの姿にきれいだなっおおもったんだ。 呚りから芋たら䞍思議な姿にしか芋えないけど、きっずこい぀は党力で生きおる。かっこいい生き方じゃんっお。 「お、おそ束」 「うお、な、䜕」 「俺は、䞖間から芋たら䞍毛な恋をしおいるかもしれない。自分の思いに目をそらしおごたかしおも蟛かっただけだった。でも想い続けるこずは幞せなんだ。おそ束ず䞀緒にいられるならそれだけでも幞せだず思っおいたのに、どんどん欲が深くなっお、兄匟以䞊の関係になりたいずおもった。この二週間だっお幞せだった、このたたで終わらせたくないんだ」 「うん、それで」 「だから、えっず、  お前が奜きなんだおそ束。だから俺ず二人で生きお欲しい」 俺ず぀ないでたカラ束の右手は緊匵のせいか冷たくなっおいた。 「はは、お前やっず蚀ったね」 「ん、え䜕をだ」 「今たで俺に『結婚しおくれ』ずはいったけど、『奜き』ずは蚀わなかったじゃん」 「そう、だったか」 「そうなのだからカラ束がどう蚀う意味で蚀っおるのか、いたいちわかんなかったんだけど」 付き合っお欲しい、結婚しお欲しい、ず蚀われおもそこが恋愛感情ず結び぀いおる実感がむマむチわからなかったのはそのせいだ。カラ束が行き過ぎた兄匟愛をこじらせた可胜性を考えおいなかったわけじゃない。 「愛しおいる。既に蚀った気になっおいたが、足りないなら䜕床でも蚀おう。俺の気持ちは兄匟以䞊のもので、汚いものなんだ。でもお前が蚱しおくれるなら俺は逃げないし、幞せにする」 「  うん」 俺もだいぶ、ほだされおしたったのかもしれない。今はコむツが可愛くおしょヌがない。もしかしたら、これが恋なのかもしれない。毎日カラ束のこずを考えおしたっおるし、なにより嬉しいず思っおしたっおいるのが蚌拠かも知れない。 「俺もダキが回っちゃたかも」 「おそ束」 「ねぇ、キスしおみおよ俺、結構お前のこず奜きになっちゃったかも知れない。でも今たで人を奜きになったこずないからさぁ、よくわかんねヌの」 「それがどうしおそうなるんだ」 「男同士でキスしおも嫌じゃなかったら、俺もお前のこず奜きっおこずじゃんそれずもカラ束くんは俺ずキス溶かしたくないのプラトニック」 「したくないわけ、ないだろ」 お、ず思えば胞ぐらを掎たれお唇を重ねられた。ほんの䞀瞬觊れ合った唇はずおもあ぀くお。 「どうだった」 吐息が離れたあず、䞍安そうな顔でカラ束が聞いおくるが、俺はそれどころじゃない。 「銬鹿なのはおれじゃねヌの」 キスしお初めお恋したこずに気づくずか。 俺の真っ赀な顔に気づいたカラ束も顔を赀くしお、なんだかおかしくお吹き出した。 [newpage] 「ずいうこずで、アパヌトを借りおきたんだが」 「なにがずいうこずなの俺お前のこずわかんないサむコパスかよ」 晎れお正匏な恋人同士になった俺たちだったが、正盎結婚ずか比喩だず思っおた。 デヌトしおた時も思っおいたが、俺は䞀切お金を出しおいない。党郚カラ束のポケットマネヌだ。 それずなく正匏に付き合い始めおから聞いおみれば、なにやらバむトのようなものをしお皌いでいたらしい。 「だっおおそ束ず結婚するには逊う甲斐性が必芁になるだろう」ずさも圓たり前の顔をしおほざきやがった。 本栌的に就職を目指し、䞀流䌚瀟に勀めるようになったカラ束の皌ぎは新人にしおは䞊々。なんで今たでニヌトでいたのかすらわからない。銬鹿じゃなかったんだな。 「だからっおこの生掻おかしいでしょ」 実家ず比べたら狭いが、二人で䜏むには十分な郚屋に俺は寝っ転がる。 最近カラ束ずスキンシップが取れおいない。ずいうか、朝ず倜にカラ束を送り出し、出迎えるだけだ。 俺も働いおお金を家に入れようかなっおおもったけど、「おそ束が家にいおくれるから頑匵れるんだ」なんお蚀うし。 そもそもさみしがり屋の俺をここたで攟眮するずか、どういう了芋なの 「えヌっず、実家に垰らせおいただきたすっず」 メモ垳に曞眮きを残し、今日の分の倕食にラップをかけお新居をでる。 カラ束ずの生掻が楜しくないわけじゃない。でも、もうちょっず恋人期間でいたかったな、なヌんお。 「たっだいたヌお兄ちゃんのお垰りだぞヌ」 実家のドアを開ければ隒がしい声が出迎える。 十四束が転がりながら俺に抱き぀いおきたのをよろけながら受け止める。 「にヌさんカラ束にヌさん振ったんですかい」 「それはカラ束次第かなヌ」 「おかえり、兄さん。たた垰っおきたの」 チョロ束が呆れた顔で奥から出おきた。 今月二回目、もはや習慣化しおいる。だっお実家にいれば寂しくないし。 「そのうちカラ束がたた泣きながら駆け蟌んでくるんだから、慰めるのは自分でしおよね」 「はいはヌい」 あず䞀時間ちょっずすれば、俺の愛しのダヌリンは俺に泣き぀いおくるだろう。 銬鹿じゃないのに、俺が絡むずポンコツになるずころ、結構奜きだよ。
「次男は銬鹿じゃないのに頭悪そう」がコンセプト<br />次男に結婚しお欲しいず蚀われた長男が、次男ず期間限定の恋人になる話<br /><br />「ク゜束が振られるに300円」<br />「じゃあ僕は䞊手くいくに200円かな」<br />「がくもうたくいく方にどんぐりみっ぀」<br />「兄匟のホモで賭事っおそれどうなの」
束野家次男は銬鹿じゃない
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6541918#1
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[chapter:それでも䞀色いろはの悲しみは止たらない。] 「いろは、家族になろう」  いろはが倱っおしたったものは倧きい。  これから俺がいろはを支えおいくんだ。  けれど俺たちにはただ解決しおいかなきゃいけないこずが沢山残っおいる。  俺たちはただ孊生だ。  いろはに新しい家族を䜜るには、俺がいろはず結婚しなきゃ䜕も始たらない。  孊生の俺たちにずっお、それは容易なこずではない。  それにいろはに残されたご䞡芪から盞続する総資産に぀いおも解決しなきゃならない。  圌女に残された資産が䜙りにも倚く、少しでも自分たちに盞続できないかず䞀色家の瞁者が既に気色ばんでいる。  金に察する人間の欲望が悲しみにくれおいるいろはに远い打ちを掛け、今の圌女の粟神状態は芳しいずは蚀えず、䜕時壊れおしたっおも可笑しくは無い。  俺たちは、これから山の様に抱えた問題を解決しお、その先にある幞せを自らの力で摘たみずらなければならないんだ。  俺たちの戊いはこれからだ 終 [newpage]  んなわきゃねヌだろ 俺戊たずか圚り埗ねヌから  俺がいろはを幞せにしおやるしかねヌだろ。  俺の隣で制服のスカヌトの裟をギュッず握り締め俯いお顔を䞊げようずしない、いろはの手にそっず手を乗せる。  俺、䞀人では到底、埋めおやれないほど倧きく空いたいろはの心の穎を少しでも塞いでやれるのなら、今すぐにでも俺が圌女の新しい家族になっお隣で支えおいこう。 「せん  ぱい」 「いろは、俺の家族になっおくれるか」 「いいんですか 本圓にわたしなんかでいいんですか」 「いいもなにもいろはは俺の蚱嫁だろ それにないろは、俺はもうお前じなきゃ駄目なんだ」 「はい、はい。せんぱい、わたしも先茩じゃなきゃ嫌です」 「ご䞡芪のこずが萜ち着いたら結婚しよう、いろは」 「はい」 「これから俺たちの前に倚くの壁が立ちはだかるだろうけど、二人で乗り越えおいこう」 「はい」 「いろは、愛しおる」 「はい、はい。わたしも愛しおたす」  最愛の圌女を腕の䞭に感じながら、腕の䞭に感じおいる枩もりを倱わないように、これからずっず守り続けおいこう。  心が倉わるず曞いお恋ず読むなら、きっず愛は倉わった心を受け止めるから恋から愛に倉わるのだろう。  千葉村からずっず問い掛け続けおきた問いに、やっず俺なりの答えを芋付けるこずができた気がした。 [newpage]  ぶっちゃけるず、いろはが盞続するこずになるだろう圌女のご䞡芪が残した財産は軜く億を超えおいた。  父芪は長幎の海倖出匵だった為、日本で支払われおいた劎働報酬ず出匵先で珟地の生掻の為に支払われおいた手圓ず劎働報酬を受けおいた。  珟地での生掻は珟地で支払われる手圓ず報酬で十二分に賄えた為、日本で支払われおいた報酬はほが手付かずのたた蓄えられおいた。  曎に父芪の方は海倖での生掻が䞻になるため、䞇が䞀に備えお高額な生呜保険に耇数加入しおいたらしい。  日本に残っおいたいろはず母、芪子二人の生掻は母芪が仕事で埗た劎働報酬だけでも十分賄えおいたし、母芪の方も䞇が䞀に備えお耇数の保険に加入しおいた。  他にも家や土地、株ず蚀った資産を含めれば、盞圓額の財産をいろはが盞続するこずになるのだが、それはご䞡芪がいろはのためを想っお残したものだけれど、それはたた争いの玠にもなるのだ。   党おの執り行いを終えたあず、いろはの自宅に戻った圌女の関係者の前にいろはず䌎に出た。 「初めたしお。いろはさんの婚玄者の比䌁谷八幡ず申したす」  ここに残っおいる遠瞁を含めたいろはの瞁者は、家族単䜍にしお䞉家族。残されたいろはにずっお䞀番身近ずなる母芪方の姉倫婊は䞀家でが来おいるようだが、肝心の父芪方の兄倫婊は、叔父にあたるいろはの父芪の兄は来おいるが、叔母も埓兄効も告別匏にすら出垭しおいない。  䞀番近しい芪族ず蚀っおも、いろはず顔を合わす機䌚など今では既に皆無に等しく、いろはもいろはの埓姉効にあたる人物たちも、お互いに埓姉効の存圚はうろ芚えの蚘憶にはある皋床のもので、互いを芋る目は他人も同然だ。  遠くの芪戚より近くの他人ずいう蚀葉が、俺にはすずんず腑に萜ち、生たれ故郷を遠く離れた血瞁ずはこんなものなのかずさえ思えた。 「いろは、説明しおくれる」  いろはの母芪の姉にあたる人物が、いろはに俺ずの関係の説明を求めた。 「えず、せん  は、八、たんく  ぅんは、わたしが通う高校の卒業生で、圚孊䞭に凄くお䞖話になった先茩で、せんぱ  八、たん、くん、ずは圌が高校を卒業した埌に、偶然再䌚しお、それからお付き合いが始たっお、パパずママも八た、八幡  くんをずおも気に入っおくれお、将来わたしの旊那様になっお欲しいず蚀っお将来の玄束を結んだ人です」 「そ それでいろはは今埌どうしたいの 私たち倫婊は効の嚘であるいろの身の䞊を匕き取る準備があるわ。それに䜕れは家の息子ず結婚しお貰っお、本圓の家族に迎え入れる぀もりがあるの」  母芪方の姉倫婊の隣には、䞡芪を挟むようにしお芋た目で二十歳過ぎの倧孊生に芋える豊満な䜓栌の青幎ず二十歳前埌の今時の倧孊生颚でビッチ臭の挂う若い女性がスマホをぬるぬる匄っおいる。  その隣にはセヌラヌ服を着た、いろはず同幎代の今䞀垢抜けない感じの女の子が座っおいる。  もう超セヌラヌ服、これぞセヌラヌ服ず蚀った感じの制服の襟に高の襟章が付いおいるから、高校生で間違いないだろう。  芋るからに授業費やら受隓費甚やらで倧倉さ真っ盛りず蚀った家族構成だ。  芪父さんなんお芋るからに頬が扱けおや぀れおるもん。 「埓兄効同士の結婚は法埋䞊、なんの問題もないからいいわよね 私たちはいろはが盞続する効たちが残した財産には興味なんおないのよ 本圓に党郚いろはが盞続するべきだず思っおいるのよ」  もう財産に興味無いっお蚀っちゃっおる蟺りでうさんくさい。しかも二回も蚀っちゃっおるし、その䞊埓兄効同士の結婚は蚱されおいるずか、衚面的には盞続を砎棄しおその実、息子ずいろはを結婚させお総取りしようずしおいるこずが芋え芋えだ。 「えず、盞続ずかに関しおは、わたしにはただよく分からないので、信頌の眮ける匁護士さんに代理人になっお貰うこずが決たっおいるので、その話は代理人さんを通しおもらうずしお、わたしの結婚に぀いおは、もう心に決めた人が、ここにいたすのでごめんなさい」 「だからそれが駄目っお蚀っおるのよ、分かる いろははただ高校生でしょ」 「それはそうだけど  でもわたし受隓生だし今の倧事な時期に遠方に転校なんお出来ないし  それに」 「それに なに」 「それにわたし先茩ず離れたくないです」 「そんなの䞀時的な恋のたやかしだわ。離れおしたえば忘れおしたうものよ」 「  そ、そんなこずないっ わたしは先茩じゃなきゃやだ。絶察に先茩ず離れたくないっ」 「なら受隓が終わるたでこっちに居お、倧孊はうちの地元の倧孊を受隓すればいいじゃない。別に決たった将来就きたい仕事なんおないんでしょ それなら䜕凊の倧孊に行っおも同じだわ。たあそうね、出来れば囜公立の倧孊に行っおくれる 授業費が安いから」  こい぀らの魂胆が芋え透いおムカっずくるな。  隠すならもっず䞊手く隠しお、それで最埌たで隠し通せよ。 「あの、ちょっずいいですかね」 「せんぱい」 「なにかしら 他人に口を挟たれたくないのよ」 「そちらの埡子息は倧孊生の息子さん、同じく倧孊生の嚘さんに受隓を控えた嚘さんですかね」 「ええそうよ それがなにか」 「倱瀌を承知で申し䞊げたすが、芋たずころあなた方にいろはを匕き取り逊っおいくだけの金銭的に䜙裕があるずは、到底思えないのですが。貎方方の埡職業は、他の埡芪戚の方からもお聞きしたしたし、献花された花の差出人にある䌁業を調べさせお頂きたしたが、蚀っおはなんですが䞭小䌁業の曎に䞋請䌚瀟、奥様はパヌトで勀め先のスヌパヌマヌケットは地元で数店舗展開しおいる地元に杜根付いた䌁業ですよね」 「あっ、あ、貎方だっおただ孊生でしょう いろはず結婚しお逊っおいけるのかしら」 「無理ですね。俺も生掻のためにバむトはしたすが倧孊は止めない。いろはの進孊ず授業費は遠慮なくご䞡芪がいろはの進孊のために貯めおくれおいた預金を有り難く䜿わせお貰いたす。状況は違えど条件が同じならいろはが望む方を遞択すべきだ」 「な、なにを勝手なこずをっ 郚倖者のくせにっ」 「いいえ俺はもう郚倖者ではありたせん。正匏にいろはに結婚を申し蟌んで承諟を埗た婚玄者です」 「だからっおいろはの身元匕受人が了承しなければ、未成幎のいろはは結婚出来ないでしょ」 「それに぀いおは既に生前のいろはのご䞡芪にご承諟を頂いおおりたすよ。䞇が䞀のずきは俺にいろはを任せるず。なんなら埌に窺う代理人の方に遺蚀状でも蚌拠の映像でも芋せお貰うずいいでしょう」  ここは理屈で抌し通す。それがたずえ間違いであったずしおもだ。 「えっなに ママ、僕、いろはちゃんず結婚出来ないの 僕、いろはちゃん可愛いから気に入っちゃった。ふごっ」 「ひっ」  豚っ錻鳎らしおんじゃねヌよ。こんな奎にいろはを枡しおたたるかよ。空気抜いおミンチにすんぞゎラァ おめぇヌのキモむ蚀動にいろはが怯えおるじゃねヌか。  「兄貎、超キモむから無理っしょ それよりあたしん家に金入んないの」 「倧䞈倫よ、[[rb:聡 > さずし]]ちゃん。ママがいろはちゃんず結婚させおあげるからね。[[rb:珠子 > たたこ]]も安心なさい。党財産を持っおいろはが家に嫁げばいいだけのこずよ」 「マゞ あんさヌいろは、あんた家きなよ 兄貎ず結婚しおさヌ。あたし仲良くしお䞊げおもいいよヌ」  もうこい぀ら欲望を隠すこずすらしなくなりやがった。 「うっ」 「いろは、倧䞈倫か」  隣で怯えるいろはの肩をそっず抱いおやる。 「せんぱい」 「倧䞈倫だ。俺が傍にいるから」  いろはの瞳が䞍安の色を讃えおいる。  悲しみに加え、远い打ちを掛ける人の、それも比范的身近な人間の醜い欲望を間の圓たりにしお、いろははひよっおしたっおいるのか、䜕時ものいろはらしくない。  たあ仕方がねヌこずだけど、こんなずきこそ、䜕床も俺を悶えさせおくれた「ごめんなさい」やっちゃえばいいのに。 「が、僕のいろはちゃんにさわるなっ」 「あん 今、なんった」  䜕蚀っおんだよこい぀。いろははお前んじゃねヌよ、俺んだ。  俺の腐った目に有りっ䞈の殺意を蟌めお睚み付けおやる。 「ひっ   ごめんなさい。マ、ママっ」  なんだこい぀。芋おいるだけで虫唟が奔る。  こんな奎等の前に、これ以䞊いろはを居させたくはない、ず思っおいたずころに呌び出しのチャむムが鳎った。 「いろは」 「う、うん」  いろはが垭を立぀のを芋送っお、ここからどうやっおいろはを連れ出そうか思考を巡らせる。 「せんぱい」  できる限り俺たちが䞻導暩を握った䞊で、早急にこの堎を離れる方策を緎っおいるず、いろはが戻っおきた。 「こんにちは。このたび私が䞀色いろはさんの代理人を務めさせお頂くこずになりたした。匁護士の葉山ず申したす」  いろはの埌ろに控えおいた壮幎の男性が名乗った。  葉山の芪父さんが来おくれお、少し肩の荷が䞋りた気分でいるず、葉山さんが目配せをくれる。 「君が䞀色いろはさんの婚玄者の比䌁谷くんだね」 「はい、そうですが」 「そうだね。あずのこずは僕に任せお今日は、君も䞀色さんを連れおゆっくり䌑むずいいよ。疲れおいるだろ 特に䞀色さんはね」 「いいんですか いろはも連れお行っおも」 「あゝ構わないよ。必芁なこずがあれば僕から連絡を入れるよ。いいから今日はゆっくり䌑みなさい」 「それじゃあずはお任せしお、俺たちは遠慮なく䌑たせお頂くこずにしたす。行こうかいろは」  いろはは声にせず銖肯をもっお同意を瀺した。  俺はいろはの手を取りリビングを離れ、䞀色家の二階にあるいろはの郚屋ぞず移動した。 [newpage]  葉山さんに任せお眮くずいっおも、俺たちも考えお眮かなければならないこずがある。  盎ぐにしろ近い将来にしろ。俺ずいろはが䞀緒に暮らすためには、結局のずころ呚囲を玍埗させなければならない。  俺はただ倧孊生になったばかりで卒業たであず䞉幎半もあるし、いろはは珟圚高校生で受隓を控えおいる身でもある。  俺たちの関係をいろはの芪族や呚囲の倧人たちに認めお貰うには、匷力な埌ろ盟が必芁になっおくるだろう。  ぀たりは俺たちの埌芋人になっおくれる人物が必芁になっおくるず俺は考えおいる。  俺の䞡芪はいろはのこずを気に入っおくれおいるだろう。䜕ず蚀っおもいろはのご䞡芪ず䌚っお蚱婚の玄束を亀わしたくらいなのだから、俺たちのこずは認めおくれ、協力しおくれるこずに間違いないだろう。  おいうか俺の身内であれでも芪だしな。  呚囲を玍埗させるには身内だけでは、ただ孊生の俺たちの堎合匱い気がする。  第䞉者の匷力な埌芋人を芋付けられればいいのだが、そう簡単にはいかないだろう。  考えが纏たらない内に疲れからか、眠気がさしおくる。  俺の隣では先皋たで泣いおいたいろはも流石に疲れたのか、䜕時の間にか寝息を立おおいる。  泣き付かれ眠っおしたったいろはの頬にこびり付いた涙の痕を、そっず指で謎っおやっおいるずころに、ドアを叩かれた。 「はい。少しお埅ちください」  寝おしたっおいるいろはの代わりに俺が応じるこずにした。  握っおいた手を離し、いろはを起こさないように郚屋の倖に出た。  郚屋を出た廊䞋には、母方の姉の旊那さんが立っおいた。  先皋の遣り取りの際には黙っおいた旊那さんではあるが、あい぀らの旊那で父芪かず思うず、自然に顔を歪めおしたう。 「なにか埡甚でしょうか。生憎いろはは泣き疲れお眠ったばかりなので、俺でよろしければ埡甚件を承りたすが」  気持ちを抌さえおも、荒だった気持ちがどうしおも口調に出おしたう。 「いや、私たちはこれでお暇するよ。  先皋は家内が倧倉倱瀌なこずをしおすたなかったね。家内には俺からき぀く蚀っおおいたから、蚱しおやっお欲しい」  随分幎䞋の俺に察しお深々ず頭を䞋げる旊那さんを芋お、俺も自分の蚀動に察しお少しばかり居心地の悪さを感じた。 「  こちらこそ、先皋は生意気なこずを蚀っおすみたせんでした」 「いや気にしおいないよ。それず安心しおくれ、私たちを初めここに残っお居た者たちは皆、盞続を砎棄したよ。生前のいろはのご䞡芪の遺蚀にもあるこずだし、これからの君たちにこそ必芁になるものだからね」 「そうですか。分りたした。いろはには俺から䌝えおおきたす」 「  八幡くん、ず蚀ったか いろはのこずをよろしく頌んだよ」 「はい」  俺は圌のあずに着いお行き、䞀色家から地元に、たたは今倜の寝宿に垰っおいく人たちを芋送り、こずの倧たかな抂芁を葉山さんから聞いお、いろはが寝おいる圌女の郚屋ぞず戻った。  郚屋に戻り、いろはが寝おいるベッドに朜り蟌んだ。  俺がいろはに添い寝するように身を寄せるず、それを埅っおいたかのように、いろはがシャツの胞元を掎んで顔を寄せおきた。  䞀瞬起こしおしたったかず思ったが、どうやらそうではないらしく、いろはは寝息を立おおいた。  俺の倧切な人の疲れ切っおしたった心が、少しでも安らげるならず、俺のシャツをギュッず握ったたた眠る圌女を抱き締め眠りに就いた。    [newpage]  いろはのご䞡芪の四十九日が過ぎお間もなく、いろはだけでは維持が難しくなる家は䞍動産屋ずの然るべき手続きが枈んだあず賃貞ずしお貞し出されるこずになった。  その為、家を空けるこずになったいろはが俺のアパヌトに移り䜏むこずを決め、必芁な荷物を纏めおいるずきにそれは起きた。  悪い時には悪いこずが続くもので、いろはの父芪方ず母方の芪戚たちずの盞続問題に倧方目途が付き始め、萜ち着きを取戻し始めたいろはに曎なる灜いが振り掛かった。  ここたで䜕かず理由を付けお告別匏にすら来おいなかったいろはの父芪方の兄嫁が単身、田舎からいろはの埓兄効を連れお乗り蟌んできたのだ。  いろはの叔父にあたる父芪の兄さんの方は、流石に告別匏の日には出お来おいたし、盞続に぀いおも話は着いおいる。  今曎䜕の甚かず思ったが、案の定ずいうか䜕ずいうか、旊那が決めお来た盞続に関するこずに玍埗が行かず乗り蟌んできたのだ。  兎に角、やっず萜ち着きを取戻し始めおいるいろはに䜙蚈な心劎を掛けたくはない。  䜓良く兄嫁埡䞀行蚀い包め、いろはの代理人を務めおくれおいる葉山さんに連絡を取っお、事務所の方に行っお貰うこずにした。  匕き続きアパヌトに持っお行く荷物ず俺の実家に入れる荷物を分けお纏めたあず、䜿わない物やゎミずしお出しおしたう物は埌日、分別するこずにしお、アパヌトに戻った。 「いろは どうしたんだ」  すっかり遅くなっおしたった食事をしおいる最䞭に、いろはが泣き出した。 「うっ、うう。せんぱい、も、もう嫌で、ですよヌ  」 「  倧䞈倫だ。俺が居るし、葉山さんが䞊手く話しを纏めおくれるから」 「でも、なんで、わたしだけが、こ、こんな目に  遭わなきゃ、い、いけないんですか  うっうう、ぐすん」  俺はいろはに察しお䞊手く答えを蚀える自信がなかった。  倧䞈倫だず蚀っおも、気䌑めにしかならないこずは解っおいた。  けれどそれしか蚀っおやれなくお、そんな俺自身が情けなかった。  突然、䞡芪を亡くし欲に満ちた人間関係の醜さを目の圓たりにしたただ歳の女の子に、なんず蚀っおやればいいんだ。  蟛い目に遭っおいるのはお前だけじゃない。䞖界には食べるこずさえたたならず䞀日で䜕䞇人も逓死しおいるんだ。それを考えればお前はただ幞犏な方だろっお蚀い聞かせろずでも蚀うのか。  人は誰もが平等なんだ。幞も䞍幞も平等に蚪れる、蟛いのはお前だけじゃないずでも蚀っお、枈んだこずは諊めおこれから先の幞犏を考えお頑匵れず蚀っおやれずでも蚀うのか。  幟ら俺がいろはを守っおやるから、いろはは俺が必ず幞せにしおやるからず、蚀い含めお前だけを芋させおやれず蚀うのか。  そんなこずいろはだっお、既に考え葛藀の䞭でやっおきただろう。 「せんぱい、わたしを滅茶苊茶にしおください」 「いろは」 「せんぱい、今倜わたしを滅茶苊茶にしおください。䜕もかも忘れおしたうくらい、わたしを滅茶苊茶に犯しおください」 「いろは  っ」  自暎自棄になっおいるのだろう、自分を壊しおくれず頌むいろはを、俺は匷く抱き締めおやるこずしか出来なかった。     やはり䞀色いろはがこんなに可愛いわけがない。  それでも䞀色いろはの悲しみは止たらない。
ども雛仲たひるです。<br /><br />やはり䞀色いろはがこんなに可愛いわけがない。<br /><br />いよいよラストに近付いおきたした。<br />悲しみの枊䞭にあるいろはに救いの道はあるのでしょうか。<br /><br />ではどうぞ。
それでも䞀色いろはの悲しみは止たらない。
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手の䞭のスマホが震え、クラりスは迷わずワンコヌルで通話ボタンを抌す。 「スティヌブン、倧䞈倫かね䜕かトラブルだろうか」 『え あ いや トラブルじゃ ないんだ』 勢い蟌んで出れば、い぀もより歯切れが悪い声が返っおくる。 「GPSがロストしおいたのだが 」 『うん その ゎメン。スマホの電池が切れおた。ただ家にいる』 PCのモニタヌを芋れば、ロストしおいた筈のスティヌブンのGPS信号が埩掻し、自宅に居るこずを瀺しおいた。それを芋おホッずするのも束の間、別の可胜性に思い至りクラりスは心配そうな声を出す。 「具合が悪いのかねならば、今日は 」 䌑むずいい、埌でギルベルトに様子を芋に行かせようず蚀いかければ、スティヌブンが慌おた様に遮る。 『具合は悪くない。本圓に䜕でもないんだ。単なる寝坊だから、すたないけど先に䌚議を進めおおいおくれ』 「しかし 」 『ずにかく、盎ぐに行くよ。頌んだ』 クラりスの蚀葉は聞かないず蚀わんばかりに蚀い切られ、そのたた通話を切られおしたう。 スティヌブンにはしばしば匷匕な所があるが、クラりス盞手にここたで䞀方的な態床を取るこずは少ない。 通話の切れたスマホを呆然ず芋぀めるクラりスに、K.Kが眉間に深い皺をクッキリず刻む。 「アむツ、起きれないほど具合が悪いの」 K.Kの蚀葉に分からないずクラりスは銖を振る。 「本人は寝坊だず蚀っおいたが 」 「嘘くせぇ 。蚀うに事欠いお寝坊ずか ありえねぇっすよ」 「芋え透いた蚀い蚳しか出ない䜍、具合が悪いのでしょうか」 「スティヌブンさん、颚邪声でした」 「少し掠れおはいたが、錻声ではなかった」 「電話しおくるくらいだし、たぶん貧血ね。そういや昚日、掟手に技を䜿っおたわね」 「ゆっくりず䌑んで欲しいですけど 止めおも出おきたすよねぇ」 レオナルドが深々ずため息を぀けば、他のメンバヌも釣られる様にため息を零す。 秘密結瀟ラむブラに劎働基準法が適甚されない事を、身を以お瀺し続けるナンバヌ2に䌑息を取らせるのは至難の技なのだ。 [newpage] 「それじゃ、アタシは、この物隒な案件を片付けおくるわ」 そう蚀っおK.Kが事務所を出お行くのを远う様に、ザップも資料を片手に゜ファから立ち䞊がる。 「っ぀ヌ事で、犬女ず俺らは倖回りに行っおくんで」 䜕の説明にもなっおいない蚀葉を残し、ザップはツェッドず共に事務所を出お行っおしたった。 どちらも、本来ならスティヌブンの仕事だった。 チェむンの姿もい぀の間にか消えおいたので、おそらく窓から出お行っおしたったのだろう。 「え いや、だから ただの寝坊 」 行き堎のなくなった手ず蚀葉を持お䜙すスティヌブンに、ギルベルトがひどく優しく声をかける。 「倧䞈倫です。皆様、ちゃんず理解しおおりたす」 老執事の鉄壁の笑顔を前に、スティヌブンは喉たで出かかっおいた蚀葉の数々を飲み蟌む。これがザップやレオナルドなら、間違いなく、凄みのある笑顔で、勘違いの数々を匷制修正するずころだが、ギルベルト盞手にそんな事は出来ない。 蚀葉に詰たるスティヌブンに、ギルベルトは笑顔のたた告げる。 「それでは、私共も出掛けお参りたすので、留守番をお願いしたす」 スティヌブンに向けお蚀っおいるようだが、おそらくお願いしおいる先は、肩にいる音速猿だろう。 ちなみに音速猿の本来の保護者は、现々ずしたお䜿いを片付ける為に、早々に事務所を出お行った。 誰もいなくなった事務所で、スティヌブンはガックリず肩を萜ずし、トボトボず自垭に着く。 本日、倖ぞ出る仕事は、ラむブラの䞻芁メンバヌに綺麗に割り振られおしたった。 デスクワヌクの䞀郚も、クラりスずギルベルトの手元に行ったらしく量が少ない。 コヌヒヌサヌバヌが壊れたからず、カモミヌルティヌ入りのサヌモスが机の䞊に甚意されおいるのを芋お、スティヌブンは本日䜕床目かのため息を぀く。 事務所には、ご䞁寧にもラベンダヌのアロマオむルたで焚かれおいお、出払っおいる間に心眮きなく仮眠をずっおくれ、ず蚀わんばかりだ。 机に肘を぀き頭を抱えるスティヌブンに、音速猿がそっず忍び寄り、元気を出しおず慰めるようにそっず頭を撫で始める。 「 ゜ニック 。君たで寝かし぀けようずしないでくれ」 力なく呟くスティヌブンに、そんな事ないよ、ずいうように゜ニックが小さく鳎く。しかしその目は、あからさたに逞らされおいお説埗力は皆無である。 「本圓に、ただの寝坊なんだ」 情けない声を出すスティヌブンに、わかっおるよ、ずりンりン頷いおいるが、蚀葉が話せたら『そう蚀う事にしおおくよ』ずいうセリフが付きそうである。 その様子に、䌊達男は䜕ずも情けない顔で、深いため息をたた䞀぀吐くのであった。 今朝、スティヌブンは目芚たしが鳎る前に、爜やかな気分で目芚めた。スッキリずした目芚めに、䞊機嫌で目芚たしのアラヌムを切ろうずしお、そこでスティヌブンは固たった。 けしおアラヌムが既にオフになっおいたからではない。デゞタル時蚈の盀面に、あり埗ない数字が䞊んでいたからだ。 だが、゜ヌラヌ電池の電波時蚈は、賌入しおから今日たで狂った時刻を告げた事はない。 咄嗟に枕元に持ち蟌んでいるスマホを手に取る。 だが、電源は入らなかった。 寝る前に充電コヌドに接続するのを習慣にしおいる筈のスマホは、䜕にも瞛られる事なく瞊暪無尜に動かす事が出来た。 ひどく静かな動䜜で電源コヌドずスマホを繋ぎ、スティヌブンは曞斎ぞず飛び蟌む。 数台のスマホや携垯は、着信有り状態だ。 そりゃあ、そうだろう。 曞斎の時蚈は、先ほどから1分進んだ、定䟋䌚議開始時間を衚瀺しおいるのだから。 むしろ、䞀斉に鳎り響かない珟状の静けさが䞍気味なくらいだ。 しかもよりによっおフル充電されたスマホや携垯は、党おGPSを切っおあるものばかりだ。唯䞀、事務所からGPSを远える端末は、力尜き絶賛充電䞭だ。 そんな事を考えながらも、スティヌブンの足は駆け足で寝宀ぞずっお返し、電源に繋いだたたでスマホを再起動させ、クラりスぞず連絡を取ったのだ。 そしおその5分埌には朝の支床を枈たせ、車䞊の人間ずなったのは蚀うたでもない。 ちなみに、それは1時間前の話である。 どこをどう転んでも立掟な寝坊である。 寝坊の王道ずも蚀える䜍の、疑う䜙地のない寝坊だ。 だからスティヌブンは玠盎に謝った。幎少者達には瀺しが぀かないが、䌚議宀に駆け蟌むなり朔く謝眪を口にした。 しかし迎えた人間達の反応は、午埌から出瀟でも良かったのに、ずいった感じの生枩い反応だった。 明らかにスティヌブンの蚀葉を信じおいない様子で、そういう事にしおおきたす、ずいった態床だ。実際、ザップはそう蚀いやがった。 重ねお寝坊だず力説するも、なんならこのたた仮眠宀ぞ ず劎られる始末である。 「参ったな 。どうすれば信じお貰えるんだ」 日頃の行いのせいで、䜓調面においおは䞀切の信甚がないスティヌブンは、盛倧にがやきながら頭を抱えるのであった。 ヌ了ヌ
単独䜜品です。<br />シリヌズはたるっず関係ないです。<br />日頃の行いが良すぎお、本圓の事を蚀っおも信じお貰えない倧人番頭の話。<br />特にCPはないけど、曞いおいる人間がクラステ掚しなのでそこはかずなく腐臭がするかも。<br /><br />ちなみに私蚭郚隊は、異垞は特になかったから静芳しおいたした。<br />いいのかな〜、いいんだろうなぁ ず。
狌少幎の憂鬱
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こんにちは 私、高坂穂乃果、16歳。 音ノ朚坂孊院に通う高校2幎生です。 スクヌルアむドル「Ό's」の䞀員ずしお、ただいた絶賛、倧掻躍䞭  えぞぞ、なんだかこの自己玹介も、随分懐かしい気がしたす。 ずもあれ、これはΌ'sずしおの掻動も軌道に乗り始めた、ずある頃のお話。 事の起こりは ええず、確か  そう、あれはリビングず呌ぶにはちょっずシックな、私の家の居間で。 穂乃果がお煎逅をパリパリ霧りながら、寝っ転がっおテレビを芋おいた時。 突然、頭䞊から呆れたような溜め息が聞こえお。 芋䞊げおみればそこには圓然のように、呆れたような衚情の効の雪穂が、私のこずを芋䞋ろしおいたんです。 「お姉ちゃん こんな時間にお煎逅ずか、食べおおいいの」 ぱりぱり ごくん。「なんで」 「だっお確か、海未さんに完食は控えるようにっお。この間、蚀われおたよね」 「あヌ、うん、そうだね。でもたぁ、ちょっずくらい 」 蚝る雪穂を暪目に、穂乃果がもう䞀枚ずちゃぶ台の方ぞ手を䌞ばすず。 「海未さんに報告しおおこっかなヌ 」 「ちょお」 雪穂がそんなこずを蚀い出すものだから、慌おお䌞ばしかけた手を匕っ蟌めお姿勢を正したす。 「おしたいほら、もう食べおないよ」 「 お姉ちゃん、海未さんのこず、どんだけ怖がっおるの 」 「別に怖がっおはいないよ。ただ、海未ちゃん 穂乃果が倪ったこずに気づいたら、たたずんでもない緎習メニュヌを 」 「倪ったの」 「ぎくっ」 「 お姉ちゃん 分かり易過ぎ 」 「ぞ、えぞぞ 」 愛想笑いで誀魔化そうずする私を芋お、雪穂はもう䞀぀溜め息。 うヌん、油断しちゃった。 たさか家にたで海未ちゃんの刺客が朜んでいたなんお。 ああ、穂乃果にはもう安息の地が残されおいないのでしょうか  「なヌに、バカなこず蚀っおるの」 「むっ、姉に向かっおその蚀い草はなんだヌ」 「スクヌルアむドル始めお少しは倉わったず思ったら、やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだね」 そう蚀いながら雪穂は、ちゃぶ台を挟んだ反察偎に座るず。 私のこずを苊笑顔で芋぀め぀぀、お煎逅を䞀枚、口に運びたした。   おっきり雪穂は通りがかりに、穂乃果にお小蚀を蚀っただけかず思ったんだけど。 その様子は、䜕かに迷っおいる ように、芋えたした。 「どうしたの」 「ん」 「䜕か穂乃果に、聞きたそうな顔しおるから」 「 お姉ちゃん、こういう時は鋭いね」 「そりゃあ穂乃果、生たれた時から雪穂のお姉ちゃんだもん」 「ふふっ、䜕それ 圓たり前じゃん」 「そう、圓たり前。だから効が䜕かに悩んでいれば、すぐに分かるのです」 えっぞん、ず胞を匵る穂乃果。 雪穂はやっぱりお煎逅をぱりぱりしながら、芖線を圷埚わせたす。 「別にね、倧した話じゃないんだけど 」 「うん」 「ちょっず、聞きたい話があっお」 「なになに」 「 その、海未さんず こずりさんのこずなんだけど」 「海未ちゃんず、こずりちゃん」 園田海未ちゃんず、南こずりちゃんは、私の幌銎染で倧芪友。 すぐご近所の園田道堎の立った䞀人の跡取り嚘の海未ちゃんは、文歊䞡道の倧和撫子っお感じの凛々しい女の子。 䞀方で南こずりちゃんは、お母さんが音ノ朚坂孊院の理事長をしおいる、手芞ず料理が埗意な可愛い女の子。 二人ずもずっず小さい頃から䞀緒な、倧事な倧事なお友達です。 そしお私の幌銎染であるずいうこずは、二぀䞋の雪穂からしおも圓然の劂く昔銎染みなわけで。 今曎、穂乃果に聞きたいこず、ず蚀われおも ぱっずすぐには、思い぀きたせん。 「二人がどうかしたの」 「二人がっおいうか たぁ厳密には海未さんのこずなんだろうけど」 「はあ 」 「私の友達にね。その、海未さんに 䞀目惚れしちゃったっお子がいおね」 「ぞぇ、䞀目惚れ ひ、ひずめがれ」 「お姉ちゃん、声が倧きい」 「䞀目惚れっお、あれマンガやドラマなんかでよくある、あれ」 「うん、たぁ、そうみたい」 「ぞぇヌすごヌい穂乃果、そういうのっおマンガの䞭だけの話かず思っおた」 「そりゃた、私もしたこずないから分からないけど 」 「その友達っお、男の子」 「ううん、女の子」 「ありゃ やっぱりそうか」 実を蚀うず、海未ちゃんは䞭孊生の頃から、女の子によくモテおたした。 そう、䞉人の䞭で初めおラブレタヌを貰ったのも、実は海未ちゃん。しかも女の子から 昔っから剣道をやっおお、スラっずしおお、凛々しい感じの海未ちゃんは。 同性の私たちから芋おも、男の子よりも栌奜良く芋えるこずが倚々あったりしお。 女の子、特に埌茩の子からモテモテだったりするのです。 「なるほどね。海未ちゃんも眪な女だねぇ」 「なヌにしみじみ語っおるの」 「もしかしおその友達っお 亜里沙ちゃん」 穂乃果の䞀぀䞊の先茩、絢瀬絵里ちゃん。 その効の絢瀬亜里沙ちゃんは、雪穂の同玚生。 穂乃果たちよりちょっずだけ早く、海未ちゃんは亜里沙ちゃんず知り合う機䌚があったみたいで。 亜里沙ちゃんはその頃から、海未ちゃんに憧れおいるみたいなの。 「ううん、今回は別の子の話。亜里沙の奜きは、そういう奜きじゃないみたい」 「ふヌん、そっかヌ」 「それでね、その子から聞かれたんだけど 」 「うん」 ちゃぶ台の䞊の湯のみを手に取っお、もう冷めかけおしたったお茶を䞀飲。 「海未さんずこずりさんっお、付き合っおいるのかっお」 「ぶっはぁ」 穂乃果は驚きのあたり、私は口に含んだお茶を盛倧に吹き出したした。 「わ、汚いなお姉ちゃん」 「げほっ、げほ雪穂がいきなり驚かせるからでしょ」 「知らないよ、そんなの」 「あヌ、びっくりした。海未ちゃんずこずりちゃんっお、付き合っおたの」 「だから、それを私が聞いおるんだっおば」 「あ、そっか。え、でもなんで なんでそんな話になるの」 「えヌずね、その子がこの間のお䌑みの時に、街で偶然芋ちゃったんだっお」 「芋ちゃったっお 䜕を」 「海未さんずこずりさんらしき人が、腕を組んで歩いおるのを 」 「はヌ 」 「だからもしかしたら、こっそり付き合っおるんじゃないかっお。お姉ちゃんなら知っおるかなっお」 雪穂の問いかけに、私は銖を暪にぶんぶんず振りたした。 確かに二人は仲良しだけど、そんな お付き合いずか、聞いたこずないよ 「お姉ちゃんが知らないなら、やっぱり違うのかなヌ」 「たぁね、確かにこずりちゃん、時々ふざけお海未ちゃんの腕をずったりするし」 「そうだよね。でもその子が蚀うには、凄いラブラブに芋えたんだっおさ」 「ふヌん そうなのかな。穂乃果あんたり、気にしたこずないけど 」 「お姉ちゃんは二人ず距離が近すぎるから、返っお気が぀かないのかもしれないよ」 「うヌん。でも海未ちゃんず、こずりちゃんがねぇ 」 穂乃果は腕組みをしお、ちょっず考えおみるポヌズ。 確かに二人は、私がいない時もよく二人で䞀緒にいるような気がしたす。 海未ちゃんが匓道郚の緎習の時も、こずりちゃんは䞀人で応揎にいったりしおるみたいだし  穂乃果は芋おるだけは退屈だから、よくヒデコ達ず遊びに行っちゃうけど   ん んんん 「ねぇ雪穂、海未ちゃんずこずりちゃんっお もしかしお付き合っおるのかな」 「だからそれを聞いおるんでしょヌが」 「蚀われおみるず確かに、思い圓たるずころもあるような、ないような 」 「ずにかくその子も、ちょっず萜ち蟌んじゃっお。あんな可愛い圌女がいるんじゃ、諊めざるを埗ないっおさヌ」 「はヌ、なるほどね。 うヌん、よし、お姉ちゃんに任せお」 「どうするの」 「聞いおみる」 「ちょ、埅っおお姉ちゃん」 「なに」 「玠盎に聞いお教えおくれるくらいなら、もうずっくにお姉ちゃんに話しおるんじゃないの」 「あ、それもそっか」 「お姉ちゃん 本圓によくそれで、音ノ朚坂に入れたよね 」 「む、雪穂、穂乃果のこずバカにしおない」 「しおる」 「もヌ」 「でもたぁ、お姉ちゃんが知らないんなら、やっぱりその子の勘違いかなぁ」 「倚分ねヌ。でもなんだか、穂乃果もちょっず気になっおきちゃった」 「気になったっお どうするの」 「そんなの、決たっおるよ」 䜜戊その 登校 次の日の朝。 い぀もは埅ち合わせの時間ギリギリに出お行く穂乃果ですが、頑匵っおちょっずだけ早起き。 毎朝孊校ぞ行く時、海未ちゃんずこずりちゃんず埅ち合わせ堎所にしおいる神瀟の手前。 今朝だけは玄束の集合時間より、たっぷり䞉十分は早くに到着。 私は敢えおそこから少し離れたずころに身を隠すず、その堎の様子を䌺うこずにしたした。 そう、これは穂乃果がいない時の、二人の様子を探る䜜戊 もし雪穂の友達の蚀う通り、海未ちゃんずこずりちゃんがこっそりお付き合いしおいるずしたら。 ちょっぎり寂しいけど、やっぱり二人の芪友ずしおは応揎しおあげたいの。 優しい二人が穂乃果に遠慮しお、こっそり付き合っおるんだずしたら それもなんだか申し蚳ないし。 だから私は今日䞀日、敢えお二人から少し距離を眮いお、様子を芳察するこずにしたした 雪穂も私が「距離が近すぎるから、返っお気が぀かないのかもしれない」っお蚀っおたし。 こうしお改めお二人のこずを芳察するこずによっお、真実ぞ蟿り着こうずいう䜜戊 ふっふっふ、なんおかしこい。なんお ええず、かしこいっお英語で䜕お蚀うんだろう。 ずにかくこの䜜戊が成功した時には、もうおバカなお姉ちゃんなんお蚀わせないんだから 茂みに隠れおただかな、ただかなず様子を䌺っおいるず。 皋なくしお海未ちゃんが、埅ち合わせの堎所にやっおきたした 腕時蚈で時間をチェックしおみるず、時間は玄束の時間のぎったり十分前。 うヌん、流石は海未ちゃん こんなずころたでしっかりしおるんだ。 海未ちゃんはきょろきょろ蟺りを芋回すず、鞄から文庫本を取り出しおパラパラずめくり始めたした。 ただ立っお本を読んでいるだけなのに、背筋をぎんず䌞ばしお、長い髪をさらさらず颚になびかせるその様は。 蚀われおみれば確かに、たるでマンガやドラマのワンシヌンを切り取ったような綺麗な光景。 モテるわけだよね ずっず䞀緒の穂乃果から芋おも、綺麗だなっお思うもんね 少しするず、海未ちゃんがぱっず匟かれたように顔を䞊げたした。 芋るずその芖線の先には、こちらにぱたぱたず駆け寄っおくる、私のもう䞀人の幌銎染。 こずりちゃんが少し遅れお、埅ち合わせの堎所ぞずやっおきたようです。 駆け寄っおきたこずりちゃんを、笑顔で出迎える海未ちゃん。 うヌん、でもこれだけ芋るず、い぀も通りの二人っお感じ。 腕時蚈に目を萜ずしおみるず、ただ埅ち合わせの五分前。 こずりちゃんもそんなに、慌おる必芁なんおないのにな。 穂乃果なんお、い぀も埅ち合わせに十分くらい遅れお来ちゃっおるのに。  うヌん、したった。 二人は䜕か話しおいるようだけど、ここではちょっず遠すぎおその声が聞こえたせん。 したったなぁ もう少し近くに隠れた方が良かったかな でも、あたり近くだず海未ちゃんに勘付かれちゃうかもしれないし  ず、私が眉間にしわを寄せおいるず。 走っおきたから、ちょっず乱れおしたったこずりちゃんの髪の毛を。 海未ちゃんが手櫛で、そっず撫でるように敎え始めたじゃありたせんか わっ なんだか、いきなり朝からいい雰囲気だよ 二人しお芋぀め合ったりしおるし こずりちゃんなんお海未ちゃんに髪の毛を撫でられながら、なんかりットリしちゃっおるし でヌでっでヌ。でヌでっでヌ。 䜕故か穂乃果の脳内に、絵里ちゃんず垌ちゃんのデュ゚ット曲が再生されたす。 芋える 芋えるよ、二人の背景に癟合の花が  ず、幞せそうな二人の様子に気を取られおしたったけど、ふず気が぀いお手元の時蚈に目をやれば。 いけない、これじゃい぀も通りの時間になっちゃう 穂乃果は二人に気づかれないように茂みを抜け出すず、敢えお遠回りしお私の家の方にたで戻っお。 埅ち合わせ堎所ぞず息を切らせお、駆けおいきたした。 「海未ちゃん、こずりちゃん、おはよヌ」 「あ、穂乃果ちゃん。おはよう」 「もう、穂乃果今日も十分遅刻ですよ」 「ごめん」 「たた寝坊ですかどうせ遅くたでテレビでも芋おいたんでしょう」 「違うよヌ、今日は寝坊じゃなくっお ええず 」 うう、そうだ、寝坊じゃないけど理由は蚀えたせん。 困っお芖線を圷埚わせる私を、蚝しげに芋぀める海未ちゃん。 そうするずたぁたぁず間に入っお助けおくれるのが、こずりちゃんっお女の子なわけで。 「たぁたぁ、海未ちゃん。そろそろ行かないず、遅刻しちゃうよ」 「 ず、そうですね。䞉人揃っお遅刻しおは、元も子もありたせん」 こずりちゃんの䞀蚀にふず我に返るず、海未ちゃんは螵を返しお孊校の方ぞず歩き出したした。 その埌を远っお、私ずこずりちゃんも歩き始めたす。 「えぞぞ、こずりちゃん、ありがずう」 「どういたしたしお。 ねぇ、穂乃果ちゃん」 「なに」 「髪の毛のずころ。葉っぱが぀いおるよ」 「えっ あっ、ほんずだ」 さっき茂みに身を朜めおいた時に、匕っかかったんでしょう。 穂乃果のちょんたげのずころに、緑色の葉っぱがぷすっず刺さっおしたっおいたした。 慌おお払い萜ずしお、こずりちゃんずにっこり笑い合いたす。 「どうしおそんなずころに葉っぱが぀いおるの」 「えぞぞ、えっず、どうしおだろうね。あはは 」 銖を傟げるこずりちゃんに苊笑で誀魔化せば、それ以䞊の远求も特になく。 私たちは今日の授業の話題で盛り䞊がりながら、通孊路を進んで行きたした。 䜜戊その 授業䞭 穂乃果の垭は教宀の䞀番窓偎で、埌ろから二番目の机です。 冬になるず窓からの隙間颚が時々ちょっず寒かったりするんだけど。 基本的には校庭の様子も芋えるし、晎れた日はぜかぜか暖かいし、最高の垭です。 だから今日みたいな陜気の日は぀いりトりトしちゃうのも、仕方ないっおわけなんです。 おっず、でも勘違いしないでね 今日こうしお机䞊で䞡腕を組んで、耳を圓おながら突っ䌏しおいるのは居眠りのために非ず 右隣に座っおいる、海未ちゃんずこずりちゃんの様子を䌺うためなんです。 海未ちゃんの垭は穂乃果の右斜め前。 そしおこずりちゃんの机は、穂乃果の右隣。 ぀たり海未ちゃんの垭の真埌ろが、こずりちゃんの垭っおこずなの。 普段は穂乃果も普段は前を向いおいるか、睡魔に負けお突っ䌏しおいるこずが倚いんだけど  今日はそう、授業䞭の二人の様子を芳察しなければいけないからね かずいっおじっず、二人の方を芋おいるわけにもいかないですよね。 そんなこずしたら、流石にこずりちゃんに気づかれちゃう。 そこでこれです、居眠りをしおいるフリをしお、薄目を開けお隣の様子を探っちゃおう䜜戊 これなら顔を右偎に向けおおも、䞍自然な感じがしないもんね。 今の時間は、叀兞の授業。 叀兞の先生は結講ご幎配のお婆ちゃん先生で、ずっおも優しくお穂乃果も倧奜きなんだけど。 劂䜕せんテンポがゆっくりで間延びしお話すものだから、どうしおも眠くなっちゃうんです。 だからクラスの皆も眠気に負けないように、時折内職したり、こっそり手玙を回したり。 色々工倫しおいるんだけど、さお、海未ちゃんずこずりちゃんの様子はどうだろう  海未ちゃんは うヌん、真面目だね。 ぎしっず背筋を䌞ばした綺麗な姿勢のたた、お婆ちゃん先生の板曞をノヌトに曞き写しおいるみたい。 そういえば穂乃果、こうやっお䌏せっおるから党然ノヌトが取れないや。 あずで海未ちゃんにノヌト、芋せおもらおっず。 こずりちゃんはどうかな ず目をやれば、さすがに穂乃果のように突っ䌏しおはいないものの。 頬杖぀いお毛先を匄ったりしお、ちょっず退屈そう。 そうだよね、分かるよ。お婆ちゃんっおば同じペヌゞを䜕床も、䜕床も読むんだもんね。 やがおそれにも飜きたのか、小さく䌞びをするこずりちゃん。 正面に芖線をやるず、䜕か思い぀いたような衚情 ん、これは こずりちゃんはシャヌプペンシルを逆さに持぀ず、そのたたノックする方で前の垭の海未ちゃんの背䞭に ぎたっず。 圓然びくっず身䜓を震わせる海未ちゃん。ふふふ、驚いおる、驚いおる。 埌ろを向くずこずりちゃんに向けお、困った衚情で無蚀の抗議。 䞀方のこずりちゃんはず蚀えば、満面の笑顔で䜙裕の様子。 むしろ海未ちゃんの顔が芋れお嬉しそうなくらいで あ、海未ちゃんも照れおたた前を向いちゃった。 わヌ、うわヌ。 党然気が付かなかったけど、もう完璧にラブラブ光線出おるよね、これ。 二人が付き合っおるかはただ分からないけど、少なくずもお互いに意識しあっおるっおいうのは、鈍感な穂乃果でも分かりたす。 あ、こずりちゃん、たたシャヌプペンシルを海未ちゃんの背䞭に圓おたず思ったら。 そのたたそれをスルスルず動かしお、海未ちゃんの背䞭に䜕か描き始めたみたい。 この動きは あ、分かった。ハヌトのマヌクだ。 海未ちゃんの背䞭にハヌトをひず぀、ふた぀、みっ぀、よっ぀。 海未ちゃんも圓然、それに気づいおいるわけで すごい、ハヌトが増える床にどんどん顔が赀くなっおくの。 ずうずう我慢できずにこずりちゃんの方を振り向いた海未ちゃん。 あ、ちょっず涙目になっおる。 こずりちゃんもやり過ぎたず思ったのか、小銖を傟げおゎメンネのポヌズ。 ぞぇ、普段はこずりちゃんが海未ちゃんに甘えるこずなんお、なかなか無いず思っおたけど。 こうしお芋るず ラブラブだね、お二人さん 予想以䞊に埮笑たしい光景に、なんだか穂乃果たで、幞せな気分になっおきちゃったよ。 うヌん、安心したらちょっず瞌が、重くなっお来ちゃった、かな  


 䜜戊その お昌䌑み どうも結局そのたた、穂乃果は寝萜ちちゃっおたみたい。 次に目を開けた時には、目の前にムスッずした海未ちゃんず、ちょっず困った衚情のこずりちゃん。 「穂乃果 たた、授業䞭に居眠りしおいたんですね」 「えヌ、あヌ、うん。ちょっず日差しが暖かくっお、぀い 」 「たったく、いけたせんよ。そんな䞍真面目な態床では、たたい぀アむドル研究郚の掻動にも文句を蚀われるか 」 「め、面目ない です」 「たぁたぁ、海未ちゃん、お説教はそのくらいで。穂乃果ちゃんも、䞀緒にお匁圓食べよう」 「うんっ。今日はどうしようか」 「そうですね、倩気も良いですし。䞭庭で食べるのが気持ち良さそうですね」 「じゃあそうしよ れっ぀ごヌ」 「たったくもう、䌑み時間になるず途端に元気になるんですから」 ず、たぁ、やっおきたした、䞭庭です。 音ノ朚坂孊院の䞭にはには沢山ベンチが眮いおあっお、生埒はここで自由にお匁圓を食べお良いこずになっおいるの。 だからお倩気の日には私もよく、海未ちゃんずこずりちゃんず䞉人でご飯を食べたりしおるんだけど  い぀からか座る順序は暪䞊びに海未ちゃん、穂乃果、こずりちゃんっお決たっおいお。 い぀も穂乃果が真ん䞭だから、これでは二人の様子を探るこずはできたせん。 かずいっお唐突に端っこの方に座ろうずしおも  「穂乃果、もう少し詰めおくれないず私が座れたせん」 っおなっちゃうだけだもんね。 だからその点、ちゃヌんず考えおきたしたよ 「あ、飲み物買っおくるの忘れちゃった」 「お茶ならあるよ」 「うヌん、䜕だか今日は牛乳な気分 」 「今から賌買に行っおくるんですか」 「ちょっず自販機たで走っお買っおくるよ。二人は先にお匁圓食べおお」 「穂乃果ちゃんが戻っおくるたで、埅っおるよ」 「ううん、぀いでにちょっずお手掗いにも行きたいし。先に食べおおよ」 「そうですかそこたで蚀うなら 」 「うん、それじゃ行っおくるね」 ず、たぁこんな感じで無事に䞭庭を脱出。 そのたた校舎の方に入っおいく ように芋せかけお、花壇を挟んだ反察偎にぐるりっず。 ふふふ、しめしめ、二人共裏偎に穂乃果が隠れたこずには、党然気づいおもないみたい。 「 それじゃ、先に食べおたすか」 「そうしようか」 顔を芋合わせた海未ちゃんずこずりちゃん。 穂乃果が垭を立っお開いた距離を少しだけ詰めるず、お匁圓を食べ始めたした。 これだけ近ければ、今床は二人の䌚話もばっちり聞き取れたす。 「それにしおも こずり、今日のような悪戯は止めおください」 「悪戯っお、䜕のこず」 「先皋の叀兞の授業䞭のこずです」 「あヌ ハヌトのマヌク」 「 っ ハ、ハヌトは別にどうでも良いのです くすぐったいし、私の集䞭も途切れおしたいたす」 「どうでもっお でも海未ちゃん、どうしおあんな、お顔が真っ赀になっおたのかなぁ」 「それはこずりが」 「ん わたしが」 「くっ なんでも、ありたせん」 「えヌ、わたしが䜕 聞かせおよ海未ちゃん」 「䜕でもありたせんっおばもう、知りたせん」 「あれ、拗ねちゃった ねぇ、海未ちゃん。こっち向いおよ 」 「   」 「海未ちゃん あ、そうだ」 「 」 「ほら芋お、こずりのお匁圓。この肉じゃが、こずりが自分で䜜ったんだよ」 「そう なんですか」 「はい、あヌん」 「なっ 」 「こずり、海未ちゃんにお味芋しお欲しいな」 「ちょっ えっ しかし 」 「早くぅ、海未ちゃん こずり、手が疲れちゃうよぉ 」 「し、しかしですね、その、あヌんずいうのは 」 じゃがいもをお箞で぀たんだたた、海未ちゃんに差し出すこずりちゃんず。 そんなじゃがいもを前にしお、きょろきょろず芖線を圷埚わせる海未ちゃん。 別にあヌん、くらいどうっおこずないのに 海未ちゃんも照れ屋さんだなぁ。 早くしないずそのじゃがいも、穂乃果が貰っちゃうよ やがお海未ちゃんも芳念したのか、恐る恐るこずりちゃんの端に顔を近づけるず  ぱくっず。じゃがいもを䞀口。 「 ね、どう 矎味しい」 「 矎味しいです」 「うふふ、良かった。もう䞀口、どうかな」 「それではこずりの分が、無くなっおしたうではないですか」 「そっかぁ じゃあ、海未ちゃんのお匁圓も䞀口、こずりに頂戎」 「良いですよ。どれでも奜きなものを取っおください」 「えヌ」 「 」 「海未ちゃんはこずりに、あヌん、しおくれないの」 「 」 おヌ、おヌ、攻めるねぇ、こずりちゃん。 海未ちゃんっおばさっきから䞀方的にタゞタゞだよ。 ダメダメ、助けを求めるように、さっき穂乃果が出お行った方なんか芋たっお。 穂乃果がそっちから戻っおくるこずなんお、ないんだからね 「ねぇ、海未ちゃん おねがい」 「ぐっ ず、ずるいです こずりは 」 芳念したように、自分のお匁圓箱から適圓なおかずを぀たむ海未ちゃんは。 それをゆっくりず、こずりちゃんの口元に運びたした。 幞せそうな顔をしおもぐもぐするこずりちゃんず、顔を赀くしながらも埮笑む海未ちゃん。  えぞ、なんだか穂乃果もお腹が空いおきちゃったな。 「 ただいた」 「ほ、穂乃果䜕凊から戻っおきたんですか」 「えぞぞ、びっくりした」 「穂乃果ちゃん 䜕も持っおないけど、牛乳はどうしたの」 「あっ 飲み物買っおくるの 忘れおた」 「穂乃果 貎方、いったい䜕をしに行っおきたんですか 」 䜜戊その 攟課埌 その日の攟課埌は、月に䞀床の郚掻動䌚議がある日でした。 生埒䌚の絵里ちゃんず垌ちゃん、それに郚長のにこちゃんが揃っお出垭しないずいけなくお。 ÎŒ'sのメンバヌもこの日は2/3になっちゃうの。 だからこの日は、アむドル研究郚の掻動はお䌑みっおルヌル。 もちろんΌ'sの掻動は楜しいけど、たたのこういうオフの日も倧事なんだよね。 「私は匓道郚に顔を出そうず思いたす。穂乃果ずこずりは」 「わたしは少し被服宀に寄っお、次の衣装のデザむンを考えようかなっお 」 「そうですか。穂乃果は」 「私はヒデコたちず䞀緒に、遊んでくるよ」 ねっず振り向いた先で、ヒデコ、フミコ、ミカがびしっずサムズアップ。 えぞぞ、実はこれはアリバむ䜜りです。 现かな事情たでは話しおいないけど、二人に予定があるように芋せかけたいず䞉人には事前に盞談枈み。 これで私が街ぞ遊びに出かけたず思い蟌めば、こずりちゃんはきっず気兌ねなく海未ちゃんの応揎に行けるはず 「じゃあ 海未ちゃん、䞀緒に垰ろう」 「ええ、いいですよ」 「緎習が終わりの頃、迎えに行くね」 「はい。埅っおたすね」 仲睊たじく䞋校の玄束をする、海未ちゃんずこずりちゃん。 ふふふ たさに、蚈画通り それでも時蚈を芋るず、ただ午埌の四時前。 二人が合流するには、あず二時間くらいあるわけか ふむ。 「 で、穂乃果は私たちず䞀緒にクレヌプを食べに来たず」 「そういうこず。私、ストロベリヌカスタヌドクリヌム」 「たた 穂乃果、本圓にいちごが奜きだよねぇ」 「えぞぞ。でもヒデコはどう思う海未ちゃんずこずりちゃん」 「んヌ、たぁ確かに仲は良いよね。付き合っおるかっお蚀われるず ちょっず分からないけど」 「そうだよねヌ、こずりちゃんがこっそり海未ちゃんに甘えおる感じ」 「でもたぁ、お互い満曎でもないっお感じなんでしょ」 「そう、そう」 クレヌプを食べながら䞉人の意芋を聞いおみるけど、だいたい穂乃果ず同じ感じみたい。 こういうのも恋バナっお蚀うのかな クレヌプ食べながら恋バナなんお、なんだか女子高生っぜい  ず、思うんだけど、どうでしょう うヌん、花の女子高生ぞの道のりは、ラブラむブ出堎のように長く険しい  「䜕をバカなこず蚀っおるの。それよりそろそろ良い時間だけど、戻らなくおいいの」 「あっ、ほんずだ。それじゃ私、こっそり孊校に戻るね」 「気を぀けおヌ」 「ばいばヌい」 クレヌプの玙ゎミを捚おるず、私は䞀人、音ノ朚坂に向かっお駆け出したした。 時蚈の時刻は午埌五時半くらい、今から戻れば郚掻の終わりの䞁床いい時間。 芋送る䞉人がそんな穂乃果の埌ろ姿を芋お、䜕を喋っおいたかなんお気が付きたせん。 「 どう思う」 「䜕かドゞをやらかしおバレるに100円」 「実はもうバレおいるに100円」 「「それだ」」 音ノ朚坂の校門に着いた私は、きょろきょろず迷った末に、匓道郚の様子を䌺うこずにしたした。 最初は被服宀に行っお、こずりちゃんの確認をしようかず思ったけど  穂乃果の芋立おでは、きっずこずりちゃんは早めに䜜業を切り䞊げお匓道郚の方に思うんです。 反察の方から回り蟌んで、射堎を裏手から芗いおみるず  ほら、やっぱりね 真剣な面持ちで矢を番えるず海未ちゃんず、端っこの方でそれを芋守るこずりちゃん。 海未ちゃんの攟った矢は 芋事呜䞭 小さく息を吐く海未ちゃんに、こずりちゃんがタオルを持っおぱたぱたず駆け寄りたす。 「海未ちゃん、お疲れ様」 「ありがずうございたす、こずり わざわざこんな、䞖話を焌いおくれないでもいいのですよ」 「ううん、わたしがやりたくおやっおるから。 迷惑」 「そんなこずは ありたせんが」 「ふふ、良かった」 うひゃヌ、なんだこれ、なんだこれ。 倏本番っおわけでもないのに、お暑いったらありゃしないね 芋るず呚囲の匓道郚の郚員さんも、二人のラブラブ空間にタゞタゞになっおいる暡様。 すみたせん、穂乃果の幌銎染がすみたせん  そんな様子を二人も気づいおいるのか、いないのか いや、きっずあれは気づいおいないや。 完璧に二人の䞖界だよ  ず、そこに歩み寄る䞀人の先茩の姿。 あれは確か、䞉幎生の匓道郚の郚長さん。 「園田、お疲れ様」 「郚長」 「そろそろ郚掻の時間も終わりだ。可愛い圌女も埅たせおいるこずだし、そろそろ䞊がったらどうだ」 「か、圌女など けれど、そうですね。では埌片付けを 」 「的堎の始末はやっおおくから。さっさず垰り支床をしおやれ」 「しかし 」 「いいから。お前たちはちょっず、玔な埌茩たちには刺激が匷すぎる」 「はあ 」 郚長さんの意図を読めず、枋々ず垰り支床を始める海未ちゃん。 うヌん、郚長さんの心䞭、お察ししたす  皋なくしお匓道着から制服に着替えた海未ちゃんは、こずりちゃんず連れ立っお道堎を出お行きたした。 「園田もあれで無自芚だからな 」 郚長さんの呟きに苊笑いしながら、穂乃果も二人を远いかけお退散するこずにしたす。 もう薄暗くなっおしたった通孊路。 芖界も暗くなっおきたし、それこそ毎日のように歩いおいる芋知った道。 前を行く二人に勘付かれないよう、尟行しながら垰るのは、そんなに難しいこずじゃありたせん。 䞊んで歩く海未ちゃんず、こずりちゃん。 ちょっずこずりちゃんが海未ちゃんに寄り添っおる気がするけど でも、普段通りず蚀えば普段通り。 埮かに聞こえおくる二人の話題も盞倉わらず、他愛もないこずばかり。 ÎŒ'sのこず、明日の授業のこず、それから穂乃果のこずも。 やっぱり、そうだよね。 い぀も私たち䞉人䞀緒だもん、そんなに尟行したっお、新しい発芋があるわけじゃないよね。 「あの、こずり」 「んなぁに」 「その、あたり近寄らないで 」 「どうしお」 「私、先皋匓道郚で汗をかきたしたから 少々、汗臭いのではないかず」 「そんなこずないよ。 ほら」 「こっ 」 「 ふふっ」 「こずり、こんな埀来で 」 「もう暗いし、誰も芋おないよ」 「ですが 」 ぎたりず身を寄せお、海未ちゃんの銖筋をふんふんず嗅ぐこずりちゃん。  ごめんなさい、蚂正したす。 尟行しおみたら穂乃果の知らない二人が芋぀かりたくりでした。 そんな感じでむチャむチャする二人を尟行し぀぀、やがお蟿り着いたのはい぀もの亀差点。 ここを真っ盎ぐ行くず海未ちゃんのお家。 巊手に折れるず、こずりちゃんの家のマンションの方です。 「それでは、ここで 」 「 海未ちゃん」 「 こずり」 「ダメ」 「ええず、ですね 」 「海未ちゃん 」 「   」 なんだろう、䜕がダメなんだろう。 二人の䌚話は䞻語を欠いおいお、䜕の話をしおいるのか穂乃果にはさっぱりです。 䞊目遣いで海未ちゃんを芋぀める、こずりちゃん。 海未ちゃんはきょろ、きょろず呚囲の様子を気にするず、小さく嘆息。 こずりちゃんの頬に手を添えるず、玠早くちゅっお キスを、したした。  お、おお  決定的な瞬間を目撃した穂乃果は、思わず蚀葉を倱っおしたいたす。  でも、顔を真っ赀にしお照れる海未ちゃんず。 頬を少し朱に染めお、はにかむこずりちゃんの姿を芋るず。 なんだか、穂乃果も悪い気はしないずいうか すごく、お䌌合いだなっお、苊笑する他なくなっちゃっお。 「 家たで送らないで、本圓に良いのですか」 「すぐそこだから。それに今日はわたし、ここで海未ちゃんのこずを芋送りたい気分なの」 「そう ですか。では、たた明日」 「うん。ばいばい、海未ちゃん」 䌚釈しお別路を行く海未ちゃんず、手を振りながらそれを芋送るこずりちゃん。 うヌん、やっぱり噂は本圓だった っおこず、なのかな。 これからは穂乃果もたたに気を利かせお、二人きりの時間を䜜っおあげないずいけないかなぁ。 ず、私が䞀人腕を組んでうんうんず頷いおいるず。 「穂乃果ちゃんも」 「 」 「たた明日ね」 くるりず振り返っおこちらの方に手を振る、こずりちゃん。 その芖線は、間違いなく穂乃果のこずを芋぀めおいたす。  えヌ。 い぀からかは分からないけど  ぀たり、バレおたっお、こず  あたりに、衝撃的な事実を受け止めきれないたた。 穂乃果は匕き぀った笑顔で手を振り返すしか、ないのでした 。 「ただいたヌ」 「あ、おかえり」 裏手の玄関に回っお靎を脱いでいるず、䞁床良く雪穂が通り掛かるずころ。 「あ、雪穂」 「なに」 「䟋のお友達だけど 海未ちゃんは、やっぱり諊めた方が良いかも 」 「ええっ」 驚く雪穂に、色々ず悟った笑顔で返す私。 圓然、どういうこずだず詰め寄っお来られちゃうんだけど  「それっおやっぱり、噂は本圓だったっおこず」 「うヌん、半分はそうだけど」 「は、はんぶん」 「うん」 「もう半分の理由は」 「 きっずね、海未ちゃんのこずを倧奜きなこずりちゃんには、誰も勝おないよっおこず」 「」 おしたい。
園田海未さん、お誕生日おめでずうございたす。<br />そんなわけで祝しお䞀筆執らせお頂きたした、ラブラむブ高坂穂乃果芖点の二次創䜜です。<br />ずはいえお話の内容は誕生日ずはたったく関係のない、い぀も通りな日垞こずうみです。<br /><br />䞀床「第䞉者の目から芋たこずうみ」を曞いおみたいず思い、トラむしお芋たのですが <br />初の穂乃果芖点ずいうこずもあっお、なかなかに難産でした。䜕卒広い心でお読みください。<br />背景や蚭定はい぀もの通り、TVアニメシリヌズに準じおいたす。時系列は1期埌半くらい<br /><br />䞀応の蚀い蚳を曞いおおきたすず、地の文に぀いおはSIDを参考に、<br />基本はですたす調で、感情の高ぶっおいるずころは穂乃果らしい口調を心がけた぀もりです。<br />我ながらただただ至らぬ出来栄えですが、これを習䜜ず思っお、次に掻かしおいけたらず。
実録幌銎染は芋た
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6542063#1
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──この先お前が゚ヌスになるこずはない 最近毎日のように芋る嫌な倢。クリス先茩のこずを䜕も知らず埡幞ず組めなくお文句を蚀っおいた時にクリス先茩に蚀われたセリフが頭の䞭で朚霊する。クリス先茩は嘘は぀かない。あれは玛れもない事実だったのだろう。今は䞀軍に䞊がり力も付いお俺ず意思疎通だっお出来た。きっずクリス先茩はあんな事二床ず蚀わないだろう。クリス先茩はやさしいから。俺のこずを考え思っおいおも口に出さないはずだ。だっお俺が背番号をもらった時もオヌバヌワヌクするなず蚀っお俺を支えおくれた。感謝しおもし足りない。 ────お前だけには俺達の過ごした3幎間を蚗したくない 俺のせいでクリス先茩の最埌の倏、3幎生の最埌の甲子園行きを俺はこの手で文字通り壊しおしたった。自分の䞍甲斐ない投球で今幎の野球郚の倏を終わらせおしたったんだ。みんなは俺によく投げた、気にするな、お前のせいじゃないず蚀うけれど俺はしっおる。裏でほかの郚員達が俺のせいだず蚀っおいるこずを。自分でも分かっおいる。あの日、詊合の流れを倉えたのは間違いなく俺のデッドボヌルからだ。俺のミスのせいで流れが䞀気にあっちぞ傟きリリヌフしたノリ先茩でも皲実の打線を抑えるこずが出来なかった。スコアだけ芋るずノリ先茩が決勝点を取られ負けたこずになっおるが盎接詊合を芋おいたものにはわかる。あの詊合は俺のせいで負けたず。俺があそこでデッドボヌルなんおしなければ負けなかったかもず。あの時、アりトが増えおいく床に心臓が痛くなったのを芚えおいる。顔も䜓もこわばり指にはうたく力が䌝わらなかった。盞手のどんな事をしおも負けないずいう憎悪にも近い気迫に俺はどっぷりずのたれたんだ。やり盎したい。そう䜕床も願ったがきっず時間を戻しおもう䞀床あのマりンドに立っおも勝おる気がしない。マりンドが怖いあそこに立っお打者ず察峙するのが怖いぶ぀けるのが怖い。あの決勝戊の日からずっず恐怖がぬぐえないのだ。 「沢村、そろそろ起きねヌず遅刻すんぞ」 「うっす」 ギシッず軋む音を立おながらベッドから䜓を起こす。隣に芖線を向けるず垃団はなくベッドの骚組みがあらわになっおいた。増子先茩は負けた次の日に出おいった。ベッドの骚組みを芋る床に眪悪感で胞が苊しくなる。もし勝っおいればただ増子先茩ずはただ野球ができおいたはずだ。半幎間3人で䜿っおいたこの号宀は今は2人で䜿っおいる。決しお広い蚭蚈ではないのにすごく広い感じがする。 ベッドから降り緎習着をタンスから無造䜜に出す。倉持先茩は服の着替えを終え髪の毛をセットしおいる。通りでさっきから匷い匂いがするはずだ。先茩の䜿っおいるや぀は倉な匂いではないが匂いは匷く、郚屋䞭に充満するほどの物だ。髪をしだしたずいうこずはもう間もなく出るずいうこずだ。急いで緎習着に袖を通し支床をする。悩むのは倢の䞭だけで充分。俺が暗い顔したらきっず春っちや倉持先茩、ほかの奎らも心配しおくれるはずだ。みんなやさしいから慰めおくれる。でも今の俺にずっおそんなやさしさはかえっおき぀いものだ。みんな本心から蚀っおくれるはずなのに本圓はどう思っおるのか、面倒くさいず思っおるはずず倱瀌なこずを考えおしたう。友達や仲間を疑いたくない。だからい぀も通り、うるさくおバカな沢村栄玔を挔じなければならない。挔じるのは぀かれるけど呚りのみんなを疑う方が埌でき぀くお蟛いのだ。 「倉持先茩早く行きやしょ」 「うっせヌおめぇのほうがあずに起きたくせにえらそヌにすんな」 「痛い朝から蹎らないでください」 「ヒャッハハんなもん知るか」 「埌茩虐埅ヌヌヌ」 今日も俺はうるさくおバカな沢村栄玔を挔じる 倉持side 3幎生が匕退し俺達の最埌の代が始たった。決勝戊では普段泣く姿が想像出来ない亮さん、哲さん、もちろん俺やほかの郚員が目を真っ赀にするたで泣いた。その倜食堂での祝杯甚の食事には誰も手を぀けず3幎生党員は泣き続けた。次の日だっお誰かず顔を合わせるず3幎は涙を流し俺達は重みの党く違う涙を堪えるのに必死だった。これが唯䞀俺達ができるこずだからだ。増子さんも郚屋から出おいき違和感のある5号宀はずおも居心地が悪かった。䞀぀䞋の埌茩、沢村もい぀もの元気はなく郚屋はどんよりず重たい空気だった。俺はいたたたれなくお柄にもなく沢村に話をふるが沢村は簡単な受け答えだけで1床も俺の目を芋おはくれなかった。我慢ができず俺は郚屋をでた。あい぀はきっず自分のせいで3幎生の倏を終わらせたず思っおいるのだろう。傍から芋たらあい぀が悪く映るかもしれない。でも詊合に出おいたメンバヌはもちろんベンチにいた奎らは誰1人沢村のせいではないず思っおいる。確かにあい぀が流れを倉えたのかもしれない。でも野球はピッチャヌひずりで戊っおるのではないのだ。あの時のあの空気を倉えられなかった俺達にも責任がある。あい぀だけのせいではない。あい぀は粟䞀杯俺達のためにあの孀独なマりンドから投げ続けおくれたのだ。だれが沢村を責めるだろうか。もし責めるや぀がいたら俺は絶察蚱さねぇ。 あの日から数日、食堂で次のキャプテンは誰かずいう話題になったずき埌からあい぀の倧きな声が聞こえた。ヒャッハ、キングオブ゚ヌスっおなんだよ。ばかじゃねヌの口ではうるさいず蚀ったが沢村がらしくなったのがずおも嬉しかった。もう決勝戊のこずは吹っ切れたのだろう。あい぀は銬鹿みたいに倧声で野球をしおるほうが䌌合っおいる。俺はそんな沢村の背䞭を守るのが奜きだ。それからは沢村はい぀も通り緎習䞭もギャンギャン隒ぎながらやっおいる。 「栄玔くん元気になっお良かったですね」 「ああ、あぁ」 䞍意に話しかけられ肩がびくりず䞊がる。やべヌやべヌ。緎習䞭にボヌッずしおたら先茩ずしおの意地が。 「ヒャッハうるせヌけどな」 「ふふ。でもそこが栄玔くんのいいずころだず思いたす」 「たぁ、そヌかもな」 沢村はどんな人も惹き぀ける。幎生の䞭では沢村は最初嫌われおいたはずなのに今では誰もがあい぀の保護者的存圚になっおいる。あい぀の真っ盎ぐさにみんな絆されお毒気を抜かれるのだ。あの埡幞だっお普段自分から埌茩やチヌムメむトず野球以倖で関わろうずしないくせに沢村に関しおはベタベタたずわり぀いお意地悪をするのだ。沢村からしたらりザむ先茩だろうけど埡幞は興味無いや぀にはずこずん興味無いからな。埡幞なりの愛情衚珟なんだろう。党然䌝わっおねヌけどな。そしおここにも絆されたや぀が1人、俺だ。同宀ず蚀うこずもあるがあい぀の野球に察する真剣さ、䞊に䞊がるための努力、降谷ずいう倧きな壁が同孊幎にいおも負けないずいう根性。そんな沢村を俺は奜きになっおしたった。そしお埡幞ず同じく玠盎に感情を䌝えられない俺は栌闘技ずいうものであい぀をいじり倒しおいる。けど埡幞よりは懐かれおる自信あるしたたにタメ口はあるが嫌われおるずは思わない。たぁ沢村は嫌いなや぀なんかいないんだろうな。 グラりンドに響くあい぀の声はずおも心地がよかった。 沢村side 最近、投球に違和感を感じるこずが倚くなった。ただ倏䌑みは残っおいるからたくさんの緎習詊合が組たれおいる。もちろんたくさんの詊合があるずいうこずは登板回数も増えるずいうこずだ。マりンドで投げる床に疌く心臓。静たるように胞に手を圓おるが苊しい。この痛みは䜕なのだろうか。埡幞にもコヌスが甘いず怒られおばかりだ。さらには逆球が倚いず指摘されおしたった。自分でも薄々気付いおいた。埡幞の構えたずころにボヌルが行かない。今は緎習詊合だから、盞手が打ち損じおくれおいるから通甚しおいるように芋える。この痛みずなにか関係があるのだろうか。䞀䜓どうすりゃいヌんだよ、くそ。 あの倏、デッドボヌルで負けた詊合の埩讐が来たのかもしれない。俺は薬垫ずの緎習詊合でむンコヌスに党く投げられなくなった。監督にリリヌフ投手ず蚀われ熱くなりマりンドに䞊がっおも心臓は疌いたたたで、それでも投げようず埡幞のミット芋たのに、俺はたずもなボヌルを投げられなかった。したいには降谷に倉えられ俺はマりンドを降りた。マりンドに投手は二人いらない、そう蚀われた瞬間俺は目の前が真っ黒になった。降谷を責めたくなった。違う、降谷は悪くない。降谷は正しいこずを蚀っおる。マりンドに投手は二人いらない、そしお゚ヌスナンバヌを背負うのも䞀人。今たで挔じ続けた沢村栄玔が壊れおいく音がした。しかしこんなずこで爆発しおもチヌムに迷惑かけるだけだ、堪えろ。 俺は降谷にボヌルを枡しマりンドを降りる。歩く床に心臓の錓動ず沢村栄玔が壊れおいくのがわかった。俺は涙を止めるこずができなかった。もうあのマりンドにはたおない、ず。 むップス───䞻に粟神的な芁因により、思い通りのプレヌができなくなるスポヌツ障害の䞀皮。 俺がむンコヌスに投げられないのはむップスのせいだず監督に蚀われた。原因は蚀わずずもわかる。あの決勝戊でのデッドボヌル、あれがきっかけで俺はむンコヌスに投げられなくなったのだ。監督にボヌルに䞀切觊れずランニングだけしずけず蚀われた。倧䌚が近いのにランニングだけのメニュヌ戊力倖だずいうこず。これがあの詊合を壊した俺ぞの眰なのか。埡幞が俺を劎わっおか背䞭に手を回しおくれた。埡幞の手は枩かくたるで俺がいるからず蚀っおいるみたいだった。しかし今の俺にはこの枩かささえ煩わしいず感じお払い萜ずしたい気持ちを抑えるのに必死だった。お前に俺の䜕がわかるず、同情ならやめろず。わかっおる。埡幞はなにも悪くない、悪いのは自分。自分の䞍甲斐なさを埡幞のせいにするな。この日から俺はずっず走り続けた。倉持先茩にはオヌバヌワヌクだず蚀われい぀も匕きづられおお颚呂ぞ行くけど走るだけなんだからオヌバヌワヌクはないでしょ。バッティングや守備緎しおいる他のみんなの方がき぀いはず。俺は走っおるだけなんだから䞀晩䞭走っおもいいくらいだ。 今日は緎習䞭からなかなかの倧雚が降り緎習は屋内でされるこずになり終わるのも早かった。こんな状態で倖を走ったら倉持先茩になんお蚀われるかわからない。でも走らずにはいられなかった。倏の雚は火照った䜓を冷やしおくれるようで気持ちよく、俺の涙をう぀したかのように薄暗い倧雚が降っおいた。もっず、もっず。い぀終わるのかわからないこの緎習。無限ルヌプの䞭で巡るのはみんなの蚀葉。緎習前に聞いた蚀葉が頭から離れないのだ。 ───あヌあ、今幎は甲子園行けるず思ったんだけどなヌ ───先茩たちは匷かったなのに、あい぀が ───あい぀のせいで空気がガラリず倉わったもんな。 ───1幎にはただあのマりンドは早かったんじゃねヌか ───だろヌな。たじふざけんなっお感じだぜ わかっおる。もう自分でも痛いっおほどにわかっおるからもう蚀わないで。俺はこれ以䞊聞きたくなくおその堎から逃げだした。 走っおる時はこの蚀葉が浮かび、倢の䞭ではクリス先茩の蚀葉を3幎生が俺に向けお蚀っおくる。助けおず叫びたいのを我慢するのが今は粟䞀杯だ。俺に助けおなんおいう資栌はない。だっお俺が悪いずいうこずを蚀っおいるのだ。正しいこずを蚀われおいる悪者の俺が助けおずはなんずもおこがたしい。蚀えない、蚀えるわけがない。 い぀の間にかあたりが暗くなり自分の湿った地面を螏む音が、雚の萜ちる音がより耳に届くようになった。芖芚を遮るずより聎芚が鋭くなるずテレビで蚀っおいたがどうやら本圓のこずのようだ。 「沢村ぁい぀たでしおんだよ」 「ぐぇ」 䜕者かに急に銖根っこを掎たれた。銖が締たり自然ず走っおいた足がずたる。誰が来たずは振り向かなくおもわかる。銖根っこは少ししたから匕っ匵られおおり加えおこの倧音量の声。 「おんめヌいい加枛にしろよ」 「す、すいやせん、倉持先茩」 「垰るぞ」 倉持先茩は俺の服から手を離し傘を傟けおくれた。 ──垰るぞ 倉持先茩はこんな俺にも垰る堎所を぀くっおくれる。傘だっお俺が巊肩を冷やさないように倉持先茩は巊に立ち傘に入れおくれる。この角床だず倉持先茩の 巊肩は濡れおいるはずだ。傘を持ちたしょうかず蚀ったが黙っおろず蚀われた。5号宀たではそれきり話さなかったが俺が぀いおるず蚀わんばかりの振る舞いに胞の奥が枩たる。郚屋に入るずお前はそこにいろず玄関に埅たされた。倉持先茩は俺のタンスを開け着替えを準備し俺に枡しおくれた。さっさず颚呂ぞいけずいうこずだろう。ただ走り足らないがこれ以䞊倉持先茩に逆らったら䜕されるかわからない。俺は黙っお颚呂堎ぞ歩く。倉持先茩は普段スパヌリングしおきたりひどいが俺が萜ち蟌んだ時䜕も蚀わずそばにいおくれる。蚀葉で倧䞈倫ず語っおもそれはうすっぺらい応揎だ。俺の䜕を知っお倧䞈倫ず蚀うのだず思う。でも倉持先茩は蚀葉を発さない。ただい぀も通り倉わらず接しおくれる。それが俺の唯䞀の救いだった。最埌の䞀本の手綱なのだ。 颚呂を終え郚屋ぞ垰るず倉持先茩はゲヌムをせず俺のベットの骚組みの郚分にもたれかかり雑誌を読んでいた。俺はその目の前を通り過ぎ掋服や颚呂甚品を片付けおいた。 「沢村、座れ」 「えあの「座れ」 「はい」 俺は倉持先茩の前に正座で座る。さすがに今日はマゞお怒りのようだ。 「今䜕時だず思っおる」 「11時くらいっすかね」 「倧雚なのわかんなかったのか」 「いやわかっおたした」 「だったら走んねヌで切り䞊げろよ」 「」 「がむしゃらにしたっお意味無いっおクリス先茩に蚀われおただろ」 そんなこずわかっおやすよ。でも、でも 蚀葉がでらず少しう぀むき床を芋る。5号宀には沈黙が続く。倖からは雚がガラスを打ち付ける音や地面に萜ちる音がなっおいた。 倉持先茩の倧きなため息が聞こえ俺は肩をビクりず揺らした。 「ずにかくオヌバヌワヌクはだめだ。いいか」 「はい」 ぀いに倉持先茩にも呆れられたのか。立ち䞊がり雑誌を自分の垭ぞ行き軜く投げる。倉持先茩がどんな顔をしおいるのか芋たくない。これ以䞊、倱望されたくないのだ。肩を震わせおいるず頭になにか重みが萜ちおきた。 「緎習も倧事だが䌑むこずも倧事だ。だからオヌバヌワヌクになる前にここぞ、5号宀に垰っおこい」 ぐしゃぐしゃず頭を撫でられ俺の髪の毛は乱れたくった。なにすんだずいいたいずころだったが口が動く前に倉持先茩の手は俺の頭を離れおしたった。 「さっさず寝るぞ」 「うっす」 倉持先茩は優しい、こんな野球郚のお荷物を気にしおくれる。 今日はさすがに疲れたのかベッドに入った途端瞌がすごく重たくなった。俺はその力にすべおを預け深い眠りに぀いた。 倉持side 同宀の埌茩がむップスになったらしい。そんな玠振り䞀切なかった。確かに決勝戊から䜕日間は萜ち蟌んでいた。しかし食堂で叫んだ頃からい぀も通りだったはず。俺や匟くんや埡幞でさえ気づかなかった。いや気づけなかったのか。新チヌムになり自分たちが思っおるよりもいっぱいいっぱいだったのかも知れない。だからっおあい぀の倉化に気づいおやれないなんお先茩倱栌だ。 郚屋ではずっず思い空気が流れる。なんお声をかければいいのか分からないのだ。俺だっおスランプの時はある。その時に倧䞈倫、なんずかなるなどのその堎のノリで蚀った他人の蚀葉ほど嫌なものはない。だがバッテリヌずいう関係なら専門的な声かけはできるはず。しかもバッテリヌの独特の絆はほかの郚員には分からないものがある。あそこだけは誰も入れない、バッテリヌの䞖界なのだ。たたに矚たしいず思うが俺は俺らしく埌ろから守るこずに専念した。専門的なのは沢村ずバッテリヌを組んでいる埡幞に任せるしかなかったのだ。だから埡幞に沢村のこずを聞いた。なのにあい぀ず来たら個人よりチヌムだず答えやがった。俺には䜜れない絆を持ちながらも埡幞は沢村を攟っおおくずいったのだ。キレずにはいられなかった。沢村に䜕も出来ないもどかしさでむラむラしおいたのもあるだろうが埡幞はあい぀のためになにか出来る力を持っおる。それなのにしようずしないこい぀に我慢ができなかった。だが埡幞も埡幞で葛藀しおいたのか自分にも原因があるず蚀った。ひねくれで玠盎にものをいわないこい぀が自分の非を認めさらには沢村を倧事な戊力ず、むップスなんかで朰れおもらっおは困るず。埡幞の目の奥に光る決意に俺は䜕も蚀えなかった。埡幞は埡幞なりに沢村のこずを考えおあえお声をかけずやっおいるのだず分かった。 だったら俺も声はかけないがやるこずはただひず぀。い぀も通りにするこず。あい぀が倉に遠慮したりしないように今たでず倉わらず支えおいこうず思ったのだ。   ガタン 䞋からの倧きな音が朝方の5号宀に響いた。沢村が既に起きおいるのは知っおいたが䜕かにぶ぀かったのか小さなうめき声も聞こえる。俺は䜓を起こし䞋を芋䞋ろす。するず沢村がタンスの前で足を抑えおいた。 「倧䞈倫か」 「っ、すいやせん、膝がタンスにぶ぀かっお起こしちゃったっすか」 「いや、もう起きおた。ちょっず芋せろ」 俺は沢村の受け答えを聞きながら二段ベッドのはしごを降りおいく。沢村の前にしゃがみこみ圓たったらしい膝を芋るず少し赀くはなっおいるが骚に異状はないみたいだ。ほっず䞀息を吐く。俺が足から手を離すず沢村は立ち䞊がり準備を続ける。そこ動きに違和感を感じた。なんだかい぀もよりのろのろずしお、足取りも重くただあたり動いおいないのに肩で息をしおいた。しかもさっき觊った足は熱かった。 「沢村、ちょっずこい。」 なんすか 沢村は振り向くのも遅く完党に振り向いた時は俺は沢村のずこたでいけた。自分の前髪ず沢村の前髪を䞊げおでこ同士をコツンず優しく圓おる。 (やっぱりな) 「お前、熱あるぞ」 沢村はあからさたにびくっず䜓をゆらした。こい぀自分の䜓調が䞇党じゃないっおわかっおやがったな 「き、気のせいっすよ」 「んなわけねヌだろバカ、今日は䌑め。監督には俺がいやっす 至近距離でのこい぀の倧声はなかなかに響く。沢村は俺の䜓を抌しのけ玄関に向かう。止めようず手を䌞ばした時沢村の䜓がななめに傟いお前に倒れかけた。俺は急いで沢村の䜓を支え暪から抱きしめたような圢にキャッチしたがすぐに前で抱きずめられるよう腕を動かした。 䜓は燃えるように熱く汗もかいおいた。 「っ銬鹿こんなフラフラで緎習できるわけねヌじゃねヌか」 「、で、できたす」 「できねヌよおずなしく寝おろ」 流石にむラ぀いた俺が倧声で怒鳎るず沢村は俺の腕を぀かんで顔を近づけおきた。 「俺はっやらねヌずいけないんだずっず、ずっずそれしか俺に出来るこずはな」 「沢村沢村」 急に沢村の党䜓重が俺の腕にかかり少しかがんだがなんずか立ち盎し沢村をしっかりず抱きしめた。意識を倱ったようだ。俺は急いでベッドに寝かせ䜓枩蚈ず冷えピタ、氷枕を甚意した。氷枕を䜜っおいる間にピピッず䜓枩蚈がなり芋おみるず386床ず意倖ず高い熱に驚いた。 「たじかよ」 こんだけ熱が出おいお緎習しようず考えるなんお。むップスでボヌルを䜿う緎習ができず焊っおいるのもわかる。でもそれだけか焊っおここたで远い詰められるずはなぜか思わなかった。他になにか、なにかがあるはずだ。 沢村side ──お前だけには俺達の過ごした3幎間を蚗したくない あぁたたこの倢。もう芋たくない、目を閉じお手で芆いたい。でも倢だからそんなこずも出来ない。ただ3幎生たちの本音を聞き続けるしかないのだ。 ───俺も自分の代をお前に預けたくねヌな 嘘だろ今たで、だっお3幎生の人たちだけだったじゃないか。なんでいるの、倉持先茩。埌ろには埡幞や春っち、降谷金䞞、東条ず今の郚員がたくさんいた。 ───俺も預けたくない ───僕達1幎だっおそヌだよ ───こんな投手の埌ろなんお守りたかねヌよ みんなが口々に蚀っおいく。やめお、お願い。わかっおるから、みんなが思っおるのわかっおるから蚀葉に出さないで。ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい。どんなに謝っおもみんなの声が頭に響いおいく。 嫌だ、聞きたくない芋たくない。誰か誰か ──沢村沢村 誰かの声がする。するず今たでいた先茩達は消えその人の声だけが俺の頭に届いた。枩かく優しい、この声は ッハヌハヌあ、あれ 目を開けるずそこはい぀も芋慣れおいる倩井がみえた。そうだ、俺は朝緎の前に倉持先茩に止められおそのたた意識を倱ったのか。通りで䜓は鉛が乗っおるように重く動かせない。頭もがヌっずしおいる。 「起きたか」 䞊から優しく声をかけるのは倉持先茩だった。倉持先茩はテキパキず俺の汗を拭いたりおでこのタオルを倉え頬に手を圓おおくれた。枩かい。い぀もの倉持先茩の匂い、感觊、声。あぁ、よかった。あれは本圓に倢だったのだ。 っおい、どうした い぀の間にか俺の目からは止めどめのない涙が溢れおいた。瞬きする床に涙は頬を䌝い枕に萜ちおいく。涙なんお芋せたくない、なのに気持ちに反しお涙は止たっおくれなかった。垃団で顔を隠そうずするず読んでたずばかりに倉持先茩が垃団を剥がしおきた。䞡手も握られ隠すものがなくなり俺の泣き顔はあらわになったのだ。俺の泣き顔なんお 「お前、䜕を考えおる。」 「っ、べ、別に䜕も」 「さっきうなされながらずっず蚀っおたぞ、ごめんなさいっお」 「」 「䜕かあったら話せ、な」 倉持先茩はずおも優しく蚀っおくれたが俺に優しくしおもどうしようもない。い぀もなら止められるこの真っ黒な感情が今日は止められなかった。俺は䜓を勢いよく起こし倉持先茩の手を振り払った。 「お、俺なんかよりほかの埌茩きにしたほうがいヌっすよ。」 「はどヌゆ「だっお俺なんお倉持先茩に心配される資栌ない3幎生たちの倏を終わらせ、挙げ句の果おにむップス倏を終わらせた匵本人が投げられなくなっお。あのマりンドから逃げた俺はランニングしか出来ないんだから、ほかの郚員より楜なんだからどんな時でもやるんだ俺は野球郚のお荷物なんだよ俺がこの先゚ヌスになるこずは無い、あんな最高の先茩達の倏を終わらせたんだ俺の俺のせいでおれはその眪を償わなきゃいけない」 酞玠を腹䞀杯に吞収しようず肩で倧きく呌吞をする。倉持先茩も目を芋開いお俺を芋る。 「おたえ、それ誰かに蚀われたのか」 「は「決勝戊がお前のせいだっお」 「そんなこずどヌだっおいヌだろ」 「誰だ」 今たでになく倉持先茩に睚たれヒヌトした俺でも怯むくらいだった。でも俺だっおここたでいったんだ (誰にっおそりゃ) 「み、みんな思っおるこずだろ」 「お前もそう思うのか」 「そりゃそヌっすよ。本人だもん、䞀番わかっおる」 そう、みんなおもっおる。口ではお前のせいじゃないっお蚀っおも事実は事実。俺のせいなんだ。 「倉持先茩だっお ガン な、䜕が起きた。俺が話そうずしたら倉持先茩が立ち䞊がっおベッドが倧きく揺れた。立぀ず同時に倉持先茩は手で二段ベッドの䞋ず䞊の間にある骚組みのずころを思いっきり殎ったのだ。未だに埮振動を起こしおいるベッド、どれだけ匷く殎ったらここたで揺れるのだ。 「く、くら「おめぇ、ふざけんなよ」 「えあの」 「なにが自分のこずだから䞀番わかっおる、だぁおめぇが䞀番わかっおねヌんだよ。」 「な、に蚀っおんすか」 「あの決勝戊、負けたのはお前のせいじゃねヌ。俺達が負けたんだ。お前ひずりのせいじゃねヌよ」 俺だっお頭にくるこずはある。今の倉持先茩の発蚀に俺は怒りを感じた 「そんな同情いらねヌっすたじやめおくださいそヌゆヌ衚面的な「同情じゃねヌよ銬鹿」 俺はい぀の間にか倉持先茩に抱きしめられおいた。力匷いその腕はい぀もは嬉しく頌もしいのに、今はうざかった。 「は、なしおください」 「嫌だ」 「離せ」 「お前が俺の本音を認めるたではなさない」 「ふざけんな離せよ」 熱のせいもあっおかどんなに暎れおも匷く抱きしめおいる倉持先茩の腕は離れなかった。眩暈がしお俺は暎れる力がもっず匱くなり、涙が溢れた。 「どヌしお、どヌしおこんなこずすんだよ。もう俺のこずなんおほっずいおくれよ」   「俺のこずなんお、なんおゆヌなばか。俺は、俺達はお前のせいじゃないっお思っおる。お前はあの時マりンドで人で戊っおくれたじゃないか。投手は垞に孀独。あそこで戊っおくれた仲間をなんで俺達が責めるんだ。野球は1人じゃできないんだよ。お前はお荷物なんかじゃねヌ。俺達の倧切な仲間だ。俺のせいずか、悲しい事いうんじゃねヌよ。もしお前のせいなんおゆヌや぀がいたら俺がぶっ飛ばしおやる」 背䞭をトントンず優しく叩く手のひらはずおも枩かく俺を安心させおくれた。本圓にみんな俺のせいっお思っおないお荷物っお思っおない 「だからよ、お前の本音も聞かせおくれ」 「お、れの本音」 俺の本音蚀っおもいいのか、こんな俺が蚀っおいいのかずっず考えおは消しお、考えおは消しおきた感情、蚀っおはいけない、俺にはこの蚀葉をいう資栌はないず思っおいた蚀葉を 「お」 「ん」 「た、すけお、助けお」 蚀っおしたった。もうこれで埌戻りはできない。倉持先茩は䞀䜓どんな顔をしおいるのだろうか。 「ったりめヌだ。お前は俺の倧事な仲間であり埌茩なんだからな」 倉持先茩の笑顔を芋おだんだんず心にあった真っ黒な感情が涙ずずもに流れ萜ちおいく。俺のこずをこんなにも考えお受け止めおくれる人がいるなんお知らなかった。いや、本圓はみんな俺が思っおいるようなこずを思っおいないのかもしれない。俺がただ人でひねくれおたたたた回圱で蚀われおいたのを聞いお勝手にみんなの意芋だず思い蟌んで。い぀だっおみんな、俺を真っ向から受け止めおくれおいたじゃないか。倉持先茩はい぀も䜕も蚀わず俺をこの5号宀で埅っおくれおいたじゃないか。そんなこずも忘れお人自分を責めお、あげくに倒れるなんお情けない。でも䞀蚀だけ、倉持先茩に蚀いたい。 「ありがずう、ありがずうございやす」 真っ黒な感情は俺の䞭には残っおいなかった。マりンドはただ少し怖いけど今は自分にやれるこずを粟䞀杯やる。がむしゃらにするだけが緎習じゃない。䞀歩、いや半歩でもあのマりンドに向かっお、゚ヌスに向かっお進んでいくんだ。 「ったく俺の倧事な埌茩は手が焌けるな」 「っぞぞ」 倧事な埌茩嬉しいな 「でも」 「いひゃいほ、ほっぺひっぱやないでくだひゃい」 「自分を責めやがっお、さすがの俺も蚱さねヌぞ」 「ええヌなんでっすか」 「お前だろうずお前を責めるのは蚱さない」 頬が熱くなるのを感じた。俺を責めるや぀は俺でも蚱さないっお。かっこよすぎでしょ 「もう自分を責めるな。お前は前を向いお走っおる方が䌌合っおる。俺はお前のそんな姿を芋るのが奜きだ」 奜き今奜きっお蚀ったええなにこれ急に告癜 「ふが」 「んで俺がそんなお前の背䞭を守っおやる」 蚀葉にもこんなに心に響くものがあるんだなず初めお知った。ここたで蚀われたら頑匵るしかない 「っはいお願いしやす」 倉持先茩、本圓にありがずう。あの暗闇から助けおくれおありがずう。もうあの倢は芋ない。もし芋おも俺は乗り越えられる。倉持先茩もしむップスが治ったら蚀いたいこずが出来たした。 「な、なんか食うか」 「うっす」   聞いおくれたすか [newpage] 倉持side ひずたず氷枕は出来たし埌やらなきゃなんねヌのは監督ぞの報告ず飲み物や食べ物、薬の調達だ。倖ぞ行きたいずこだが倒れる前に蚀った沢村の蚀葉が匕っかかる。それしかできないっお確かに蚀われおみれば今のこい぀はそうかもしれない。でも入郚圓初だっおこい぀はやらかしおランニングだけやらせられおいた。でもこい぀は腐らずにただやれるこずをやっおいた。今はたるで䜕もかも諊めたような顔だ。お前はそんなや぀じゃないだろ䜕があったっおゆヌんだよ。やっぱり少しも離れたくないず思い埡幞に1通のメヌルを出した。 バンバン 「うっせヌもう少し静かにしろ」 「わ、悪ぃ。沢村は」 「熱が高い、今は寝おるけどもっず䞊がるかもしんねヌ。」 「じゃあ今日の緎習は䌑みだな。監督に䌝えずく。孊校の担任にも蚀わねヌずな。はいこれ」 スポドリや冷えピタ、薬、れリヌ、タオルずたくさん入った袋を受け取った。タオルっお、どんだけ甚意呚到だよ 「サンキュヌな。あずさ、俺も䌑みっおこずでよろしく」 「はぁんでお前たで」 「こい぀から離れたくない」 「な、なんで」 「今こい぀を䞀人にしたくない」 「わヌったよ。俺がなんずかする。」 「ありがずう」 「でも䞀぀だけ聞きおヌこずあんだけど。」 「なんだ」 「お前、沢村のこず奜きなの」 「ばっんだよ急にふざけんな」 「あヌあヌわかりたした。今の反応で分かりたした。」 こい぀なんだよその䜙裕に満ちた顔、メガネのフレヌムを䞭指でわざずらしく䞊げるなお前そんな所で䞊げたこずないだろ 「なにがだよこの県鏡」 「んヌそんな事蚀っおいいのかなヌ監督に蚀うのどヌしよっかなヌ。それずも俺が沢村に぀きっきりで看病しちゃおうかなヌ」 くそっむか぀く。ニダニダしやがっお、沢村が埌ろに寝おなけりゃぶん殎っおフルコヌスだこのやろう 「うそうそ、んな怒んなっお。頌たれたこずはするよ。じゃヌな」 ───沢村のこず頌んだぞ 「あぁ。」 最埌に耳打ちで蚀った蚀葉。あい぀も沢村には先茩埌茩ずは違う感情を持っおいる。あい぀の態床芋おりゃわかる。本圓はあい぀も沢村の看病をしおやりたいず思っおるんだろう。でも俺の真剣な気持ちに答えお匕いおくれた。ひず぀借りっおこずだな、埡幞なんかに借りを䜜るのはしゃくだけど沢村のためならなんおこずない。 もうすぐお昌頃の時に沢村がブツブツず䜕か蚀っおいるのが聞こえた。俺は雑誌を床に眮き沢村のずころぞ向かう。 「ごめんなさい、ごめんなさい」 うなされおいるのか手を匷く握りしめお誰かに謝っおいた。䜕をそんなに苊しんでんだ、俺に頌れよ。 そう思っおいるず苊しみ方が異垞になりだし頭を䞡手で぀かんだ。俺はこれはやばいず思い沢村のそばによっお声をかける。 「沢村沢村」 ッハヌハヌあ、あれ ただ完党に起きれおいないのか芖点は合わないが沢村の目は最んでおりそれが熱のせいなのか倢のせいなのか、分からない。 「起きたか」 俺はうなされお出た汗を埡幞が甚意したタオルで拭き冷えピタを倉えた。頬に手を圓おおみるず朝よりは熱が䞋がったかもしれないがただ䜓調が悪そうだ。沢村の熱を枬っおいるず頬に圓おおいた手になにか氎が萜ちおきた。沢村は瞳いっぱいに涙を溜めおいた。 っおい、どうした どこか痛いのだろうか、それずも苊しいのだろうかそれずもなにかあったのか俺はいろんな思考を匵り巡らせた。内心ずおも焊っおいたが焊った姿を沢村にみせたらこい぀はもっず䞍安がるかもしれない。するず沢村は垃団で顔を隠そうずしたのか手に力を入れお垃団を握った。そうはさせるか。俺は垃団を沢村の手から剥がしずった。目を擊るのもいけねヌから䞡手も握った。沢村を芋おみるずなぜか目の奥が黒くよどんでるようにみえた。 「お前、䜕を考えおる。」 「っ、べ、別に䜕も」 ほぉヌ、しらを切ろうっおか俺からそんなこずはさせねヌぞ 「さっきうなされながらずっず蚀っおたぞ、ごめんなさいっお」 「」 「䜕かあったら話せ、な」 お前は初めお出来た俺の倧切な埌茩だ。今たで先茩達しかおらずどこか寂しかった。お前をびびらせお5号宀に入れた瞬間、あぁ本圓に埌茩ができたずうれしかったんだ。意地悪もするが本圓は甘やかしおやりたい、もっずかたっおやりたいず思っおんだ。そんな倧事なお前が悩んでんだ。力になりたい。しかし沢村は急に䜓を起こし俺の手を振り払った。 「お、俺なんかよりほかの埌茩きにしたほうがいヌっすよ。」 「はどヌゆ「だっお俺なんお倉持先茩に心配される資栌ない3幎生たちの倏を終わらせ、挙げ句の果おにむップス倏を終わらせた匵本人が投げられなくなっお。あのマりンドから逃げた俺はランニングしか出来ないんだから、ほかの郚員より楜なんだからどんな時でもやるんだ俺は野球郚のお荷物なんだよ俺がこの先゚ヌスになるこずは無い、あんな最高の先茩達の倏を終わらせたんだ俺の俺のせいでおれはその眪を償わなきゃいけない」 「おたえ、それ誰かに蚀われたのか」 「は「決勝戊がお前のせいだっお」 「そんなこずどヌだっおいヌだろ」 「誰だ」 「み、みんな思っおるこずだろ」 「お前もそう思うのか」 「そりゃそヌっすよ。本人だもん、䞀番わかっおる」 「倉持先茩だっお ガン じんじんず叩いた手が痛い。きっず真っ赀になるだろう。でも今の俺にはどヌでもよかった。 そんなこず思っおたのか。決勝戊のあの日からずっず もしかしおむップスの前に元気になったず思っおた時、こい぀は必死に隠しおいたのかむップスになっおいたこずにだけ気づけなかったんじゃない。俺はこい぀の挔技を芋抜けなかった。自分を責め続けるこい぀に気づいおやれなかったんだ。やべぇ、悔しくお泣きそうだ。こんな䞍甲斐ない先茩で 。でも、でもよ  「く、くら「おめぇ、ふざけんなよ」 今の発蚀だけは蚱せねヌんだよ 「えあの」 「なにが自分のこずだから䞀番わかっおる、だぁおめぇが䞀番わかっおねヌんだよ。」 「な、に蚀っおんすか」 「あの決勝戊、負けたのはお前のせいじゃねヌ。俺達が負けたんだ。お前ひずりのせいじゃねヌよ」 たるで胞ぐらを぀かむような勢いで話をした。たじで䜕蚀っおやがんだよ。自分のこずだから䞀番わかっおるふざけんな。䜕勝手にわかった気になっおやがんだ。 「そんな同情いらねヌっすたじやめおくださいそヌゆヌ衚面的な「同情じゃねヌよ銬鹿」 これ以䞊こい぀のこんな悲痛に満ちた顔芋たくなかった。沢村の目はどんどん曇っおいき、たるで暗闇の䞭に吞い蟌たれおいるようだった。だから戻っおこいずいう気持ちで匷く抱きしめた。だっおお前は、どんな奎らにも、たずえ嫌われおいるや぀にも真っ向から行くや぀だろなのに蚀われたこずを玠盎に取らないなんおお前らしくねぇ。 「は、なしおください」 「嫌だ」 「離せ」 「お前が俺の本音を認めるたではなさない」 「ふざけんな離せよ」 バタバタず暎れる沢村にはい぀もの力がない。圓たり前だ、熱で倒れたんだから力がはいるわけない。俺だっおこい぀に蟛い思いさせたくない。でもこのたたこい぀のこずほっおおいたら本圓に暗闇に飲み蟌たれお䞀生沢村が戻っおこないような気がした。だから暎れないでくれ。 「どヌしお、どヌしおこんなこずすんだよ。もう俺のこずなんおほっずいおくれよ」 「俺のこずなんお、なんおゆヌなばか。俺は、俺達はお前のせいじゃないっお思っおる。お前はあの時マりンドで人で戊っおくれたじゃないか。投手は垞に孀独。あそこで戊っおくれたチヌムメむトをなんで俺達が責めるんだ。野球は1人じゃできないんだよ。お前はお荷物なんかじゃねヌ。俺達の倧切な仲間だ。俺のせいずか、悲しい事いうんじゃねヌよ。もしお前のせいなんおゆヌや぀がいたら俺がぶっ飛ばしおやる」 なるべく涙を流す沢村が萜ち着くように、背䞭を叩く。ちゃんず聞いおくれ、これが俺達の、俺の本音だ。停りもなんずない、俺のお前に察する本圓の気持ちだ、䌝わっおくれ。そしお俺にもお前の本音を教えおくれ。 「だからよ、お前の本音も聞かせおくれ」 「お、れの本音」 そう、本音。 停りのないお前の気持ち。 「お」 「ん」 「た、すけお、助けお」 「ったりめヌだ。お前は俺の倧事な仲間であり埌茩なんだからな」 やっずいっおくれたな。お前の目は暗闇に飲たれかけお曇っおいたが助けを求めおいるようにもみえた。ここから出しおず、もう䞀人で抱え蟌むのは嫌だず。 「ありがずう、ありがずうございやす」 久しぶりに芋た沢村の笑顔。こい぀の笑顔にはい぀も元気づけられおいる。倪陜の䞋に真っ盎ぐにた぀向日葵のようなぜかぜかず枩かい笑顔。向日葵は本圓に沢村にそっくりな花だ。い぀でも真っ盎ぐに倪陜だけを芋続けおいる、あの花に。 「ったく俺の倧事な埌茩は手が焌けるな」 「っぞぞ」 「でも」 「いひゃいほ、ほっぺひっぱやないでくだひゃい」 「自分を責めやがっお、さすがの俺も蚱さねヌぞ」 「ええヌなんでっすか」 「お前だろうずお前を責めるのは蚱さない」 そのずおり。俺は誰であろうず沢村を責めるのは蚱さない。それがもしこい぀自身だったずしおも。だから思いっきり頬を぀ねっおやった。涙を流しすぎお腫れた目は痛々しかったが目の曇りはもう消えおいる。 「もう自分を責めるな。お前は前を向いお走っおる方が䌌合っおる。俺はお前のそんな姿を芋るのが奜きだ」 え今俺奜きっお蚀ったかこの状況ででもなんかもう止められねヌ。沢村もめっちゃ目芋開いおるし。 沢村の錻を぀たんでなんずか間を持たせる 「ふが」 「んで俺がそんなお前の背䞭を守っおやる」 「っはいお願いしやす」 あぁヌ最悪。流れで告癜しちたったしいろんなくさいセリフも蚀っおしたった。こい぀は気にしおないっぜいがこれはこれで、悲しいか。でも吹っ切れたみたいでよかった。お前には銬鹿みたいに笑っおるのがいいよ。 「な、なんか食うか」 「うっす」 俺は照れ隠しに話を露骚にそらしおしたった。 [newpage] あれからあい぀は前を向いお走るようになった。クリス先茩にアりトコヌスの倧切さを教えおもらい匕退詊合でそれを蚌明した。そしお垝東戊では雚の䞭の緊急登板、今倧䌚初登堎でアりトロヌにどしゃっず決めやがった。あの瞬間は鳥肌が立った。回むンコヌスに埡幞が構えたがむンコヌスにはいかず甘く入りラむトに持っおいかれおしたった。あの時はたた萜ち蟌むんじゃないかずマりンドを芋るず萜ち蟌むどころか叫びやがった。やっぱ銬鹿は盎らねヌなヒャッハ垝東戊は勝ち越し次は2回戊、盞手は䞃森。先発はなんず沢村が抜擢された。先発だから肩に力入りたくっおんだろヌず思いブルペンにいくずあたり緊匵しおないのか䌞び䌞びず投球緎習をしおる沢村がいた。からかっおやろうず打垭に入っお第䞀球が、俺の顔の目の前。぀たりむンコヌスに投げたのだ。 その埌詊合でも投げられ沢村はむップスにうち勝った。お前ならやれるず心のどこかで信じおいた。自分のように喜んでしたったのを隠すために沢村に抱き぀いた。 「ただいたヌっす」 「おヌ、おけヌり」 颚呂䞊りの沢村はシャンプヌのいい銙りが挂い頬も赀く染たっおいおなんずもかわいやいや、䜕考えおんだ俺。 ぶんぶんず頭を振りゲヌムに集䞭する。 「倉持先茩、話したいこずがあるんです。」 「おおぉなんだ」 俺はテレビ画面をコンテニュヌにし沢村に向き合う。 「あのですねむップスを超えられたら蚀おうっお思っおたんすけど、俺、倉持先茩のこず────」 数秒埌、倉持の顔はゆでダコのように真っ赀に染たった。 この先は神のみぞ知る────
秋倧䞭の沢村むップスの話です。アニメ掟の方も安心しおご芧いただけたす。<br /><br />お久しぶりです最近は目が回るほど忙しくやっず萜ち着いたので小説をひず぀。無駄に長くなりたしたね、すみたせん。しかもシリヌズものではないずいうたじすみたせんほかのシリヌズも少しず぀曞いおいたす気長に埅っおいおください久しぶりにむップスのシヌンをみお曞かずにはいられたせんでした。むップスのずこは䞀番蟛いずこだけど沢村がすごく成長するずこなのでダむダのAの䞭で特に奜きな話ですしかも沢村の保護者はたくさんいるのであんな沢村をみおいたら我慢出来ないはずですずくに奜きなのは倉持です倉持は私の神です。埌光が指しおおりたす。倉沢なんおもう兄匟みたいな恋愛の絡んでない倉沢もだいすきずにかく倉持ず沢村が倧奜きなのです埡沢も奜きですでも今回埡幞には裏方に回っおいただきたした。ごめんね。最近のアニメは倉持ず沢村の絡みがやばいので劄想が止たりたせん毎週毎週リアルタむムでみおおりたす<br />そしお今日からロヌ〇んでダむダのAフェアをやりたすね私はこれを楜しみに生きおきたした<br />それでは、よろしくお願いしたす
倧奜きな埌茩に出来るこず
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 倕暮れの駅前広堎で高垣楓は人を埅っおいた。  備え付けの小さなベンチに腰掛け、幎甲斐もなく䞊機嫌な様子でブラブラず足を揺らす。  その胞には倧きめの茶色い玙袋が䞡の腕に抱きかかえられ、䞊からは䞉股の黒いひげのようなものがちょこんず飛び出しおいる。  玙袋の䞭には二぀のぬいぐるみが入っおいる。リボンを぀けた緑色のものず、ネクタむを぀けた黒いもの。  これらはぎにゃこらたず呌ばれるぬいぐるみであり、そのぶさかわいいデザむンがりケおそれなりの人気がある。  元々はゲヌムセンタヌの景品だったらしいが関連商品は倚く、片端から賌入しおいるコアなファンも倚いらしい。  その買い支えの埡蔭かはわからないが぀い先日には新キャラクタヌである黒いもの今楓が持っおいるものだが発売され、これもなかなかの売れ行きを芋せおいる。  先ほど楓がそれらを賌入した商店では以前からの緑ぎにゃずワンセットのものが山積みされおいたので䞀般人気もあるのだろうか。  ゲヌムセンタヌなんかにはトンず瞁がなく、䞍良の溜たり堎くらいにしか考えおいなかった楓がこうしお手にしおいるのだから需芁があるのは確かなこずだろうが。  店先に眮いおあるのを芋お぀い買っおしたった楓だったが、別にぎにゃこらた自䜓に興味があったずいうわけではない。  この黒ぎにゃ、なんだか誰かに䌌おいる気がしたのだ。具䜓的に蚀えば珟圚楓を埅たせおいる誰かさんに。  もう䞀匹のぎにゃもタレ目だったり、楓の奜きな緑色だったりずなんだか楓に䌌おる気がしお、気が぀けば手にずっおいたのだ。  楓はがさがさず音を立おながら黒ぎにゃを取り出しぎゅうっず抱きしめるず童女のように無邪気な笑みを浮かべる。 「ぎにゃ、ぎにゃぎにゃ、にゃ、ぎにゃ♪」  キャラクタヌの真䌌をしお、楓は歌うように呟く。そのリズムに合わせおたた足をブラブラず。  長身の女性がこのような奇行をずっおいるのは傍から芋れば随分異様な様子のはずだが、忙しなく行き亀う人々はたるで関心を向けるこずはない。  銘々が銘々の目的のため流動する雑螏は楓䞀人を残しお圢を倉え続ける。パタパタ、ガタガタ、盞亀じる音は音楜を奏でるように。  そんな街の亀響曲に聞き入っおいた楓は、ふずどこからか聞き芚えのある足音が聞こえた気がしお振り向いた。 「お埅たせしお申し蚳ありたせん高垣さん」  楓の芖線の先、ペコリず頭を䞋げたのは楓のプロデュヌサヌずは蚀っおも"元"が぀くのだがである男だ。  い぀も通りの仏頂面にはほんの小さな倉化が芋お取れる。困ったずきに銖元に手をやる癖は今も治っおいないらしい。 「私も今来たずころですから倧䞈倫ですよ。䞀人で心现かったんですから」 「  はあ」  男は矛盟する蚀葉ぞの反応に困ったように楓の顔をたじたじ芋぀めた。  楓は吹き出しそうになりながら、真顔でその瞳を芗き返す。  十数秒ほど芋぀め合った埌、男はやっずい぀もの悪ふざけの䞀貫だず気付いたようで、目をそらすずこめかみを抌さえお溜息を぀いた。 「ドラマの䞭でよくあるセリフですから䞀床蚀っおみたかったんです。ふふっ」 「高垣さん  」  楓は呆れたように自分を芋る男の右手を握るず、圌に向かっおにこりず笑いかけた。  手袋も぀けずに冷え切った手は、楓の䜓枩に枩められおいく。  楓は手を繋いだたた、するりず男の腕に抱き぀き、少し目尻を䞋げお圌に囁く。 「でも寂しかったのは本圓ですよ䞀週間も䌚っおないなんお  」 「ええ。この埋め合わせはきっずしたす」 「ふふふっ。楜しみにしおおきたす」  機嫌を良くした楓はぎゅうっず、腕を抱く力を匷め、胞元の違和感にただぬいぐるみを抱いおいたこずを思い出した。  ふず䜕かを思案し始めた楓は、䞀床プロデュヌサヌの手を離すず䞡手で黒ぎにゃを圌の顔の前に差し出しおみる。 「芋おください、買っちゃったんです。可愛いでしょ」 「あの、高垣さん。近すぎおよく芋えたせん」 「そうでした」  楓は䌞ばした手を匕っ蟌めるず、再び胞元に黒ぎにゃを持っおくる。  男はぬいぐるみをたじたじず芋぀めるず、「ああ」ず埗心蚀ったような声を出した。 「ぎにゃこらた、でしたか」 「知っおたんですか」  楓はぬいぐるみの名前が圌の口から出おきたこずに驚き、目を䞞くする。 「はい。最近人気が急䞊昇しおいるためか䌁画䌚議などでも皀にその名前は聞きたすので倚少は」 「ぞえ、やっぱり人気あるんですね」 「ええ。䞻に女性䞭心に人気が出おいるようです。千川さんがそんなこずを蚀っおいたした」 「  千川さんですか。仲がいいんですね」  男の蚀葉を聞いお楓の声は険のあるものずなる。  しかし圌はそれに気が付かなかったようで䌚話を続ける。 「やはり同僚ですから。それなりに雑談などもしたす」 「どんなお話をされるんですか」 「そうですね  抂ね䜕の倉哲もない雑談ですが  。あ、そうです。今日はちょうどぎにゃこらたのこずも話したしたね」 「  どんなこずを」  䞀局楓の声は䜎くなっおいくが、雑談の内容を思い出しおいた男はやはり気が぀かない。 「ぎにゃこらたなんですが、これがずころどころそっくりなんです」 「そっくり  もしかしおこの子ですか」  楓は胞元の黒ぎにゃをぎこぎこず揺らす。  しかし、圌は意倖そうに黒ぎにゃを芋るず銖を傟げた。 「いえ。こちらではなく以前からある緑色の方のこずですね 「 黒じゃなくおですか」 「はい。タレ目やむメヌゞカラヌなどが䞀臎しおいたした」  楓は少し期埅を膚らたせる。  もしかするず圌ず同じこずを思っおいたのかもしれない。 「誰に䌌おいたんですか」  楓がドキドキしながら男に聞くず、 「千川さんです」  そう、あっけらかんず答えた。 「色が黄緑だったり、タレ目もそうですが、䜕より決め手はリボンでした。たさか同じ色のものずは  」  おかしそうに埮笑する男。しかし、返事が返らないこずに気付いたのだろうか、楓の方を向く。 「あの、高垣さん」  楓は心配そうな呌びかけを無芖しおだんたりを決め蟌む。  男は楓が具合を悪くしたずでも思ったのか、額に手を圓おようずした。  パシリ。楓はその手を払った。 「高垣さん」 「    です」  動揺する男に向かっお楓は蚀葉を振り絞る。  蚀葉にならない音は掠れおしたっお意味をなしおいない。  楓は玙袋に黒ぎにゃを入れるず、玙袋ごずぎゅっず抱きしめお雑螏の䞭に消えた。 「埅っおください高垣さん」  背埌から男の声が聞こえたが、楓は聞かないふりで滲んだ街を急ぐ。  ぜたりず、楓の腕に䞀粒の雚が萜ちたような気がした。 ◇◇  矎城垞務は倜の街を歩いおいた。  今日もすべおの業務を終え、圌女の城を埌にした垞務は銎染みの店ぞず向かっおいたのだ。  歓楜街の雑螏に、モデルのようにピンず歩く圌女はどうにもミスマッチで、普段の圌女を知るものからすれば目を疑う光景だ。  特に垞務を『絶察的にクヌル』な倧人ずしお芋おいるフシのあるクロヌネの橘ありすなどが芋れば、しばらくの間固たっお倢でも芋たのではないかず自分を疑うだろう。  圌女にしおみれば心倖な話だ。幌い頃から垝王孊やら仕蟌たれおいる矎城翁の孫であっおも人の子には違いない。  むメヌゞに合わないずいうのは自分でもわかっおいるが、むメヌゞに合わないから倧衆酒堎に入っおは行けない道理もない。  そも、アメリカ垰りの圌女からすればバヌずいうのは隒がしいものであっお静かな堎所では決しお無い。日本に戻った際に蚪れた今西の薊めのバヌではあたりに静かすぎお逆に居心地の悪さを感じるほどだった。  そんな圌女が肩の力を抜けるのが、いわゆる倧衆酒堎である。  がやがやず祭りのように隒がしく掻気に満ちた空間は、なんだか力を貰えるような気がするのだ。 こんなこず父に聞かれれば嗀われるかもしれんな  矎城翁に心酔し厇拝にも近い物を持぀圌女の父は、たさしく垝王孊の信奉者ずいった様盞であり、圌の蚀う『俗な店』を蚪れるこずをひどく嫌っおいる。  圌女は第二の故郷のように思っおいるアメリカぞ留孊しおいたころに思春期を過ごしたおかげかそのようなこずはないが、圌女の兄匟は䌌たり寄ったり。  アメリカから垰っおきた歳の頃、父の暡倣品のようになった長兄を芋お、䞀歩間違えれば私も、ずゟッずしたのは今でも忘れられなかった。  ず、このように䞀家の䞭では異端な圌女は、今ではすっかり芋限られおいる。欧米の䜓制が流入するこずを恐れ頑なに海倖ぞの進出を嫌うからNYぞの出向を呜じられたこずこそその蚌だろう。  プロダクションぞの栄転もそうだ。は老舗プロダクションずしお有名だが、そもそもの発端が金を䜙らせた矎城翁のお遊びのようなもので矎城党䜓からすればそこたで重芁ではない。  父に蚀わせれば『俗な』仕事に就きたがる者もいるわけがなく、䞀郚の郚門が機胜しおいなかったのも攟眮に近い䜓制があっおのこずだろう。 たあ私からすれば願ったり叶ったりだがな。こうしお『俗な』店をどうどうず蚪れるこずも出来るわけだし  映像郚門やらを芋おいるず荒れ攟題の山をから管理しおいるような心持ちも芚えるが、それでも話の合わない、別の生物のようにも思える者達ず共に過ごすよりはよっぜどいい。   私を据えおはどうかず提蚀した今西にはい぀か瀌をしなければな  そんなこずを考えおいるうちに、芋芚えのある暖簟が芋えた。  垞務はふっず笑っお今たでの思考を远い出すず、足早に店ぞ向かい、赀い暖簟をくぐった。 「いらっしゃい  っお矎城さんかい今日は遅いんだね。たた映像郚門さんがなにかやったのかい」  調理堎から顔を出した店の䞻人が倧倉だねえずひずりごちる。  この店に通うのもそろそろ䞀幎目ずなるためか、それずも週に䞀床は蚪れるからか、すっかり垞連の圌女は名前も顔も芚えられおいる。  䞻人が芪しみやすいせいか、よく愚痎を蚀ったりするので、の事情なんかもよく知られおいる。  流石に喋っおは䞍味いこずはこがさないが、映像郚門なんかは話のタネに䞁床良く、もしかすれば垞務の次に圌らに詳しいのは䞻人かもしれないほどだ。 「ええ。たたやられたした。手口も巧劙になっおきたので困り者です」 「ハハハ。そりゃあ灜難だったね。っず䞀぀いいかい」 「なんでしょうか」  䞻人は垞務に向かっおおいでおいでずハンドサむンを出し、近寄った垞務にこそこそず囁く。 「開いおる垭が䞀぀しか無いんだけどね。隣のお客さんがたいそう酔っ払っおるんだよ。矎城さんがいいのならその垭に通すけど」 「構いたせん。もしも暎れた時には䞀発殎っおやりたす」 「矎城さんは気颚が良いねえ。流石はアメリカ垰りだ。たあ、その人女性だし暎れおも倧したこずはないず思うから。矎城さん、手加枛しおやっおよ」  冗談めかした調子で蚀った䞻人は、垞務を件の垭に通す。  垞務は䞀応酔客の様子を芋ようず考え、芖線を䌞ばしたずころで絶句した。 「おじいさヌん同じのもう䞀本くださヌい」 「お姉さん䜕本目だいもうそろそろやめずいたほうがいいず思うよ」 「いいんです今日は、ずにかく、酔いたいですからヌ」 「たあお客さんだから泚文通すけどさ、お姉さん今のうちに迎えでも頌んだほうがいいんじゃない」 「迎え迎え    。あんな人知りたせヌん私には関係ないですヌ」 「はいはい。わかったから皋々にしずきなよ」 「はヌい」  垞務の目の前でクダを巻きながらぜかりぜかりずグラスを空ける圌女。  カりンタヌの狭いスペヌスには䞀升瓶が二぀䞊びおそらくは圌女䞀人で飲み干したのだず掚枬される。  垞務は深い溜息を぀きそうになる衝動を抑えながら、圌女の名前を呌んだ。 「  いったい君は䜕をしおいるんだ高垣楓」 「んヌ」  グラスを傟けながら振り向いた圌女こそ、の誇るトップアむドル高垣楓    の成れの果おのようなナニカだった。 ◇◇ 「぀たりだ楓。今たでのキミの話を総合するずだ。亀際盞手が期埅しおいた返事をしなかったから頭にきた、ずいうこずか」 「ええひどいず思いたせんか。私ず䞀週間ぶりに䌚うのにあの人他の女の子の話をするんですよ」 「たあ、そこは擁護できんな。  あず楓、その話はこれでもう回目だ」 「あらそうでしたか」  ずがけたような顔でたたグラスを空けた楓を芋お、垞務は頭痛に襲われたように思えた。  楓ずの゚ンカりントからかれこれ䞀時間。垞務はひたすら同じ内容の愚痎を聞かされおいたのだ。   泥酔した者の盞手がここたで苊痛だずは思わなかった  䞻人が酒ず蚀っお出した氎を矎味い矎味いず飲み干す楓は、既に舌も効かないくらいに酔っ払っおいるらしい。  芁領の぀かない話ではあったが、こうも繰り返されるず流石に容貌も぀かめるずいうもので、今この堎で事情を䞀番うたく語れるのは圌女であろうほど。  げんなりずした垞務は、この酒堎から掻力を貰うはずが奪われおいくように感じおいた。  ちなみに楓のこずを名前で呌んでいるのも苗字文字よりも名前文字のほうが短いため、ずいうくらいには疲れおいた。  回目の語りに突入した楓を尻目に、垞務は手持ちぶたさにグラスを回す。からころず涌しげな音が鳎った。  初めは「なぜプロデュヌサヌがアむドルず亀際を  」だずか「この話を誰かに聞かれたら䞍味いのでは」などず考えたものだが今ではそんなこずはどうでも良かった。  垰りたい。ずっずずこの無限地獄を抜け出しお飲み盎したい。もはや垞務の頭の䞭にあるのはそれだけだった。  垞務は䜕かを決心するように頷き、グラス䞭のりォッカ匷い酒でも飲んでないずやっおられなかったをぐいず飲み干すず、楓の方に向き盎った。 「楓」 「なのにあの人は  っおどうかしたしたか垞務」 「䞀぀聞きたいこずがある。ぬいぐるみが䌌おいるこずがそんなに重芁か」 「圓たり前ですだっお䌌おるんですよ」  垞務の問に楓は憮然ずした顔で返す。その手には件の黒いぎにゃこらたの姿があった。 「そうだな。確かにそのぬいぐるみには圌の面圱が芋える。たるで圌をモデルにしたかのようだ」 「そうでしょうですから――」 「しかし、だからずいっおそっちの緑がどうずいうのは関係ないだろう。君に䌌おいようが千川に䌌おいようがな」 「ですが」 「ああ、君の蚀いたいこずはわかる。䜕床も聞いた話だからな。だが、それでもぬいぐるみが誰に䌌おいようが君たちの関係には支障はないだろう」 「それは  」  楓は䞍満ありげに緑ぎにゃを芋る。垞務はなんだかむラむラしおきた。 「貞せ」  緑ぎにゃを指差した垞務は最䜎限の蚀葉を楓に䌝える。 「え、垞務貞せっおいったい」 「グダグダ蚀うな。ずにかく、゜むツを、よこせ」  䞀蚀䞀蚀、嚁圧するかのように述べた圌女に気圧されお、楓はおずおずず緑ぎにゃを差し出す。 「よろしい」  ひったくるようにその手から緑ぎにゃを受け取った垞務は、鞄をゎ゜ゎ゜ず探るず小さな゜ヌむングセットを取り出し、刺繍針を緑ぎにゃにぐさヌず刺した。 「垞務」 「黙っおいろ楓」  突飛な行動に驚いた楓を䞀喝しお、垞務は瞫い進める手を速める。  秒ずかからないで䜜業を終え、その糞を糞切りバサミで切り、出来を確認するず楓に向かっおぜんず投げた。 「垞務」  わけがわからないずでも蚀うかのように楓は垞務の顔を芋る。  垞務は、「この様子だずやっず良いが冷めおきたか」ず呟き、「目元を芋ろ」ず楓に蚀った。  蚀われるたたに楓が緑ぎにゃの目元を芋るず、巊目の䞋に黒い糞で円圢に刺繍されおいお、 「泣き黒子  」 「そうだ。お前ず同じ巊の泣き黒子だ」 「お裁瞫埗意なんですね  」 「昔ずった杵柄だ。幌いころに掋裁に興味を持ったこずもあっおな。  そうそう少し埅っおいろ」  垞務は再び鞄を探るず今床は巟着をずり出しお、䞭から䞀本のリボンを匕き出した。  そのたた楓の偎頭郚に軜く髪の毛をたずめ、リボンで結んだ。そしおコンパクトを取り出すず楓に枡す。 「どうだこれでそっくりになっただろう」  ぞんざいに蚀い攟った蚀葉はたるで共感を求めるようなものではなかった。  楓は、コンパクトを芗き蟌む。鏡面に映った自分は思った通り赀いリボンを぀けおいた。 「その、お気持ちはありがたいんですが  」 「ああ、わかっおいるさ。君の重点ずするずころはあの男が䌌おいるず蚀ったこずだろう。これではなんの解決もしない」  垞務は蚀葉を切り、楓に緑ぎにゃを芋せる。 「それでは楓、君に問おう。君はこのぬいぐるみず自分が䌌おいるず思うか」 「  パヌツパヌツは䌌おいるず思いたす」 「そうだろう。所詮は䞀郚が䌌おいるずいう話だ。それは千川も同じこずだ」 「ですが」 「わかっおいるず蚀っおいるだろう。いいか楓。私が蚀いたいのはただ䞀぀だけだ」  垞務は緑ぎにゃをカりンタヌに攟るず、楓をじっず芋぀めた。 「䞍満があるのなら口で蚀え。ここで蚀った愚痎を、盎接あの男にだ」 「    」 「君ずの付き合いは非垞に薄いが、私の考える限り君はコミュニケヌションが苊手で臆病だ。だからこそ盎接の察話を恐れおいる。今たでの愚痎だっお酒の力を借りおいるから蚀えるこずだったのだろう」  楓は䜕も蚀わない。垞務は構わず続ける。 「いいか楓。人間関係に衝突ずいうのは避けられないこずだ。故にぶ぀かれ。それも盞手がかけがえのない人物であるほどに。掛け違えが倧きくなっおからでは遅いんだ」 「  謝れば蚱しおもらえるでしょうか」 「蚱す蚱さないの問題じゃない。君のしお欲しかったこずをありのたたにぶちたけろず蚀っおいる」  ぎくりず楓の䜓が震えた。恐る恐る䌺うように垞務を䞊目遣いに芋る。 「壊れおしたうのが怖いのかならば聞くが君たちはこの皋床で揺らぐほどの愛情しか持っおいないのか」 「いいえ。少なくずも私は圌を愛しおいたす。たずえ圌が私を愛しおくれないずしおも」 「なら問題はない。あの男ぞの気持ちを䌝えお、圌からの気持ちを聞けばいい。向こうが愛しおいないのならいずれ終わった関係ず諊めろ。それだけだ」 「  ひどいこずを蚀うんですね」 「そういう性分でな」  カラン、溶けた氷が音を立おた。  楓は酔いず䞀緒に憑物も萜ちたようで、ふっず笑うず垞務をたっすぐに芋お、垭を立った。 「行くのか」 「ええ。この時間だず遅くなっおしたうのでできるだけ早めに。それに圌にも早く䌚いたいですから」 「そうか。払いは私がツケおおいおやるから急ぐがいい」 「ありがずうございたす」  荷物をたずめ、コヌトを矜織った楓は、ふず䜕かを思い぀いたかのように垞務に向き盎る。 「私も最埌に䞀぀だけいいですかもしも圌が優柔䞍断で答えおくれなかったらどうしたしょうか」 「そんなものは決たっおいる」  垞務は声の調子を柔らかくし、口元を緩める。 「䞀発殎っお、抌し倒しおやれ。埌は答えるたで぀き合わせればいいさ」 「ふふっ。豪快ですね」 「なにしろアメリカ育ちのようなものでな。倧雑把なのは自芚しおいる」 「垞務」 「なんだ」 「ありがずうございたした」  垞務はふん、ず錻を鳎らすず氷の溶け氎をくいず呷った。  芖界の端には楓が忘れおいった緑ぎにゃが映っおいる。 「こんなブサむクがに盞応しいアむドルに䌌おいるだず党く銬鹿なこずを考えたものだよ。そんなわけはないだろうに」  垞務は緑ぎにゃを目の前に眮く。雑な泣き黒子の䞊の䞡目はじっず垞務を芋぀めおいた。 蚀わなければ解決しない  か。圌女たちが時期を逃さなかったのならいいのだが  垞務は湧き䞊がっおきた苊い思い出を氷氎ず䞀緒に流し蟌んだ。 「たあいいさ。私は私のこずをするたでだ」  グラスを空けた垞務は、気分を䞀新するず、䞻人を呌んで泚文を始めた。  朝たで時間はたっぷりず残っおいる。䞀時間前ず䜕ら倉わらぬ倧衆酒堎にはただただ掻気が溢れおいた。 ◇◇  次の日の倕方。い぀も通り曞類を片付けおいた垞務のオフィスルヌムに、控えめなノックの音が響いた。 「入れ」  垞務は顔を䞊げずに蚀う。 「倱瀌したす」  入っおきたのはCPのプロデュヌサヌである男だ。その手には膚らんだ茶封筒がある。  無蚀で倚少ふら぀きながらもデスクに近づくず、封筒を眮いた。  垞務は茶封筒から玙束を取り出すず、パラパラずめくり、たた封筒に戻しお仕舞いこんだ。 「ご苊劎だった。それにしおも、ふら぀いおいるが倧䞈倫か」 「はい。特に病気をしたわけではありたせんので。単なる寝䞍足です」 「そうか。それは幞いだ。今日は早めに垰っおよく睡眠をずるずいい」 「ご心配おかけしたした。では私はこれで」  そう蚀っお男はオフィスを出ようず扉に手をかける。 「埅お」  そのずき、垞務が男を呌び止めた。 「どうしたした曞類に䞍備でも」 「いいや違う。君のネクタむだが、どうも緩たっおいるようだ」  垞務はネクタむを締めるようなゞェスチャヌをする。男は慌おおタむを締め盎した。 「以前も泚意したず思うのだが」 「申し蚳ありたせん。以埌このようなこずはないように気を぀けたす」 「今日は睡眠䞍足のようだし別にそれはいい。私が君にしっかりずネクタむを締めお欲しいのはな」  垞務は䞀぀溜息を぀くずツカツカず男に近づき、「芋えおいたぞ」ず蚀っお銖元をトントンず叩いた。 「    本圓ですか」 「ああ。君の睡眠䞍足の原因を芋お取れる倢の跡がバッチリず。もう少し気を遣りたたえ」 「  ご忠告痛み入りたす」 「それにしおも  その様子だず楓ずはうたくいったようだな」  楓、ず垞務が名前を出した途端に男の䜓は匷匵る。  圌の雰囲気が倉わったのを察した垞務は圌を牜制する。 「早ずちりするな。私は別に咎めおいるわけではない」 「しかし、私は  」 「私はこの城を守る者だぞ。色恋沙汰皋床で矎城がどうにかなるずでも思っおいるなら君は私ず矎城を舐めすぎだ」  暗に奜きな様にやれず蚀った垞務に、男はぺこりず黙瀌をした。  垞務はくるりず反転しおデスクから䜕かを持っおくる。そしお「受け取れ」ず男ぞ投げ枡した。  男は慌おおキャッチするず、手のひらの䞭の物を確認する。  手乗りサむズのそれは぀い先日楓に芋せられたぬいぐるみのミニチュアのように芋えたがずころどころが違っおいた。  色は黄緑ではなく束葉色で、䞡の目は青ず緑のオッドアむ。よく芋るず巊目の䞋には泣き黒子があった。 「これは  」 「昚日楓があのぬいぐるみず自分が䌌おいるだずか劄蚀を吐いたものでな。特城を䌌せお䜜っおやった。君から楓に枡しおおいおくれ」 「垞務がこれを」 「趣味が手芞ずいうだけだ。  呌び止めた私が蚀うのも䜕だがそろそろ業務に戻っおはどうだ」 「はい。改めお、倱瀌したす」  普段の垞務ず手のひらの䞊の人圢のギャップに驚いたプロデュヌサヌは釈然ずしなさそうに退宀する。  ぱたりず扉が閉たるず、垞務は怅子に座りデスクの芋えにくい堎所に䞊べた手乗りサむズのぎにゃこらた達を芋た。  黄色、癜、黒ず色ずりどりの匹のぎにゃこらたは銘々がどこか芋芚えのある意匠を身に着けおいる。 「たったく  久々に䜜ったから匵り切っおしたった」  垞務は寝䞍足の目をマッサヌゞし、あくびを噛み殺す。  昚日、楓の説埗の䞭で、数幎ほど䜿っおなかった゜ヌむングセットを䜿っお以来どうにも手芞熱が高たっおしたったのだ。  酔いの勢いもあったのだろう、溜たったストレスを発散するかのように垞務はぎにゃこらたを䜜り続けた。 「それにしおも䞀晩で぀か  我ながら倧した事じゃないか」  垞務は埗意気にふふんず錻を鳎らす。  圌女は趣味に䜿えるだけ時間を䜿うずいう経隓は初めおで、自分の党力ずいうのも今回初めお知ったのだ。  『俗な』趣味であるため、子䟛の頃から家ではなく孊校などでこそこそずやるしか無かったためだ。  アメリカに出向しおいた頃は自由だったが劂䜕せん忙殺されおいたために趣味に割く時間はなかった。  垞務はリボン付きの垜子を被った瞫いかけの黄ぎにゃを手のひらに乗せるずその頭を指先で぀぀いた。 「ここは自由すぎるず思っおいたが、なるほど奜きに振る舞うずいうのは存倖心地よい。なんだか癖になりそうだ」  そう蚀っお䜕かを吹っ切ったかのように笑みを浮かべ、机の䞊にぎにゃを戻した。  䜓のぎにゃこらたが䞊ぶ光景を想像しながら、垞務はたた䜜業に戻る。  案倖すぐ近くにありそうな未来の圌女は楜しそうに笑っおいた。 ◇◇ 「それでですね。あの人ったら今床はクレ゜ンだなんお蚀うんですよひどいず思いたせんか」 「そうか、それは倧倉だな。あず楓、その話は今日でもう床目だ。昚日を含めれば桁は話しおいる」 「そうでしたっけ」  うヌんず小銖を傟げる楓の姿に垞務は頭痛を感じたかのようにこめかみを抌さえた。  あの晩以来、垞務は楓にな぀かれたらしく、楓が勝手に぀いお来るだけではあるがこうしお䞀緒に飲むこずも倚かった。 䜕が"自由すぎるくらいが䞁床いい"だ。最近は䜙蚈に苊劎しおいるような気がするぞ  手芞ずいう趣味を再び芋出した垞務だったが、趣味䞀぀で生掻ずいうものはそうそう劇的に倉わらない。  倉わったこずずいえば仕事以倖にやりがいを芋぀けたこずず、手持ちぶたさな時の暇぀ぶしを手に入れたこずくらいだ。  垞務は軜く溜息を぀くず、たた手元に芖線を移しお、䜜業を再開した。 「たた䜜っおるんですか」  そんな垞務の手元を芗き蟌んで楓は呆れたように蚀う。 「よく続きたすね。もう個は䜜ったんじゃないですか」 「そうだな、今瞫っおいるものを含めればそのくらいだ」 「あ、最近はちょっずペヌスが遅めなんですね」 「圓たり前だ。そう䜕床も培倜は出来ん」  培倜で䜓を制䜜しお以来、二、䞉床垞務は培倜をしおみたが、慣れない培倜で危うく重倧な倱敗をしそうになったためにもうやっおいない。  人圢をよくよく芋れば培倜した時よりも時間を飛び飛びに瞫っおいる時のほうが粟床も良かったのだから尚曎だ。 「こうやっおアむドルをモチヌフにしおいるず圌女たちをよく知る必芁が出るからな。プロフィヌルに無い特城も調べるこずになるから䞀石二鳥なんだ」 「  あなたも負けず劣らずワヌカヌホリックですね」 「楜しめおいるのなら問題はないのさ」  垞務は仕䞊げに取り掛かり、にんじん色のぎにゃにぎょこぎょこ揺れるうさぎ耳を぀けた。 「よし。完成だ」 「あら、菜々ちゃんですか」 「クロヌネはコンプリヌトしたからな。たずはCP呚りを䞭心にしようず思っおいる」 「  CPっお結構人数いたせんでした」 「ああ。だからこそやりがいもある」  垞務は裁瞫道具ずりサミンぎにゃをしたい蟌むず、グラスのりむスキヌを䞀口含んだ。 「でもなんでぎにゃこらたなんですかそこたでこだわるならアむドルのぬいぐるみでいいじゃないですか」 「䜕故だぎにゃこらただっおよく芋れば愛らしい顔をしおいるじゃないか。私は可愛いず思う」 「正気ですか」  たじたじず垞務の顔を芋぀め、楓は蚘憶の䞭のぎにゃこらたを思い起こす。  ぶさかわいい、ずはただ蚀えるレベルだが手攟しに可愛いず耒められるものでは無かった。  蚝しげに自分を芋る楓の様子に、垞務は心倖だずでも蚀うように手をひらひらさせた。 「そうは蚀うがな楓。ぎにゃこらたずいうのもなかなか奥が深いんだぞ。蚘号ずなる郚分が少ないため数ミリのズレで倧きく衚情が倉わったり、最䜎限の装食で盞手を連想できるものにしなければならなかったりず難しい所も倚い。そもそもぎにゃこらたの倧前提ずしおどこか愛嬌があるこずも欠かせない。だからこそモデルの理解が必芁䞍可欠ずなるのだが――――」 「わかりたした。わかりたしたから萜ち着いおください」  楓は長匕きそうな話を慌おお遮る。以前、この調子で䞀時間ほど語り続けたのだから話題を倉えなくおはたずかった。 「それにしおも最近の垞務はなんだか楜しそうですね。掻力に満ち溢れおいる、ずでも蚀うんでしょうか」 「そうか」 「ええ。芋おいるこっちが元気をもらえるような気がするくらいには」 「  そうか」  垞務は薄く埮笑むず、店内をぐるりず芋回した。  隒がしく、楜しげな空間は掻気に満ちお。  そういえばい぀の間にか目的も、祭りのようなこの堎所に力を貰うこずから、楜しむこずに倉わっおいた。  祭りを眺めるのではなく、参加する偎ぞず。それはやっずこの堎所に認められたように思えお。 「この䞭に私も混ざれおいるのだずすれば。それは、ずおも嬉しいな」  䞀瞬の囁きずずもに垞務は無邪気な笑顔を浮かべた。 「なにか蚀いたしたか」 「いや、なんでも無い  。そうだ、楓。今日は私がおごっおやろう。奜きなものを頌め」 「珍しいですね。なにか良いこずでもあったんですか」 「ああ。ちょうど今さっき、な」 「 よくわかりたせんがごちそうになりたす」  どういう颚の吹き回しだろうず楓は銖を傟げおいる。  垞務は口元を楜しげに歪めるず、グラスを目の高さで回す。カラリ、コロリず涌しげな音が鳎った。 「也杯」ず口の䞭で呟いお、グラスを掲げるように持ち䞊げる。  どこからか聞こえおきたゞョッキの觊れ合う音は、この店が圌女の合図に答えたかのように。  趣味が出来たくらいで人の人生は倉わらない。あったずしおもほんの小さな倉化だ。  しかし、その倉化で埗られるものが圌もしくは圌女の笑顔であったずするのなら、それはどんな祝犏よりも幞せなこずだろう。  垞務はどこか甘い思いを感じながらりむスキヌを飲み干す。  心のなかに生たれた甘味は、今倜は消えるこずは無かった。
こんなタむトルですか歊楓です。<br />以前曞いたもの(<strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6058535">novel/6058535</a></strong> <strong><a href="https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6141060">novel/6141060</a></strong>)ず぀ながっおいるお話で楓さんず垞務が仲良くなったきっかけのようなもの。<br />別に読んでいなくおも䜕ら問題はありたせん。
ぎにゃりぎにゃりず
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「お話がありたす」  䞀ヶ月ぶりにカ゚サルは正座をしお、゚ルノィン、巊衛門䜐、おりょうの前に座る。  すでに倖は春の日差しでぜかぜかず暖かい。  しかし真面目くさったカ゚サルの様子に、残りの䞉人もなんずなく居䜏たいを正しお正座する。 「どうした。この家を出おいきでもするのか」 「新遞組から山南敬助」 「歊田陣営から穎山梅雪」 「枢軞陣営からのむタリア  」 「「「「  それかヌ  」」」 「違う 远い出さないでくれ」 「じゃあなんぜよ」  おりょうが面倒くさそうに正座からあぐらをかく。 「その  明日な、先月のお返しで  ひなちゃんに䌚うんだよ  アンツィオの  」 「あヌ  」  おりょうがあぐらを正座に戻しおなんずなくめくれおいたスカヌトを盎す。 「やめろめろ そういうの 違うから」 「䜕が違う。来お芋おダったんだろ。先月」 「ひゅヌひゅヌぜよヌ  」 「くっ  ゚、゚ルノィンだっお、グデヌリアンずどこかにでかけおいたじゃないか」 「グデヌリアンは魂の友だ。䟮蟱は蚱さん。レズが䌝染る」 「䌝染るかっ」 「で、䞀䜓䜕の盞談なんだ」  赀いセヌタヌを着た巊衛門䜐が蚝しげに蚀う。 「私たちは別にお前がどうなろうず友人だず思っおいるぞ。心配するな。共感せずずも理解はできる」 「あ、ありがずう  普通に嬉しい  。オホン。で、盞談っおいうのはさ  今床は私が゚スコヌトするんだけど  」 「聞いたか。゚スコヌトず来たぞ」 「぀たり、随䌎歩兵だな」 「いや、京郜埡銬揃えだろう」 「埳川家茂ず勝安房守」 「混ざりたくなる話はよせ なんずいうか、コヌスっおいうかなぁ、そういうのの盞談に乗っお欲しいんだよ」  真っ赀な顔で力説するカ゚サルに、゚ルノィンが眉をひそめおひそひそず蚀う。 「あのな、カ゚サル。ここだけの話なんだが」 「䜕だ」 「この家で䞀番経隓豊富なのは、間違いなくお前なんだ」 「カ゚サルこそが朱槍なんだ」 「䞀番隊ぜよ」 「ロケット」 「「「それだ」」」  カ゚サルは思わず倩を仰ぐ。 「䞍幞に屈するこずなかれ、いや、むしろ倧胆に積極果敢に、䞍幞に挑みかかるべし」 「なんだそれ。たぁ  むンタヌネットでも芋おみれば䜕か思い぀くんじゃないか」  ゚ルノィンが呆れたように蚀っお、手近な自分のタブレットを匕き寄せた。 「ちなみに泊たりか」 「  䞀応  」  四人は顔を芋合わせおため息を぀いた。 ↓BGM「戊車の知識では誰にも負けたせん」 「あたり趣味を出しすぎるのも良くないず思う」  ず、巊衛門䜐。 「確かに、先月の歎史展はわたしばっかり喋っおお申し蚳なかった  」 「あれはカルパッチョさんが遞んでくれたんだろう なら今床はカルパッチョさんに合わせるべきじゃないか」 「ひなちゃんに合わせるっお蚀っおもなぁ  」  腕組みするカ゚サルに、しびれたらしい䞡足を投げ出しおおりょうが笑う。 「簡単ぜよ。さっさず連れ蟌み宿にしけ蟌むのが䞀番じゃきに」 「怒るぞ」 「桑原桑原」 「しかし、カルパッチョさんはなんずいうか、女の子だからな。その方面で攻めお芋おもいいんじゃないか」 「その方面っお蚀うず」 「スむヌツずか、動物園ずか」 「゚ルノィン、ちょっず女の子ぞのむメヌゞが貧困なんじゃないか」 「それはお前らのせいでもあるだろうが」  蚀いながらも、゚ルノィンはいく぀か怜玢する。  いい加枛面倒になった四人は、いく぀かあったデヌトコヌスから䞀぀を遞ぶ。  たずお茶を飲んで、それから斜蚭の新しい野倖矎術通を回る。矎術通内にあるホワむトデヌフェアをやっおいるカフェで昌食を兌ねおケヌキあたりを食べお、その埌ディナヌたでもう少し芋お回っおから、倕食にはすこし高いむタリアン。そしお  。 「問題は、この埌ぜよ  」 「生きるべきか、死ぬべきか」  カ゚サルは真っ赀になっおう぀むいおいる。 「だいたいカ゚サルは蚀うのが遅いんだ。もうちゃんずしたホテルはどこも予玄なんお出来ないだろう。飛び蟌みなんおやっおみろ。なんお蚈画性のない女だず思われるぞ」 「返す蚀葉もない」 「ビゞネスホテルなら今からでも取れるだろうけど、それをやったらダメな気はする  」  巊衛門䜐が腕を組む。ずっずタブレットを芋぀めおいたおりょうが圌女を぀぀いた。 「おぅ、巊衛門䜐、ちくず芋るぜよ。このホテル」 「  おお なんだここは 陣屋颚の内装なのか すごい カ゚サル、ここにしろ 写真撮っおきおくれ」 「えヌ  」  調べおみるず、あるわあるわ、倉わり皮の内装のホテルがずらりず出おくる。 「すごい これ、ロンメルの䜜戊叞什宀だ」 「池田屋ぜよ  」 「ああっ 考蚌は怪しいけどこの沌田城颚が」 「ちょっず埅お 䜕を芋おいるんだ」 「䜕っお  カ゚サルのホテル。芋ろこれ、ロヌマ元老院颚だぞ。奜きだろ」 「いやいやいや、これ、その、アレだろ  いわゆる  ら、らぶ ほ 」  カ゚サルが赀くなっお床にのの字を曞くが、もはや残りの䞉人は圌女にほずんど泚意を払っおいない。 「ここ、ベッドがフォッケりルフの操瞊垭なんだな  」 「寝られるのかな  」 「寝ないんだろう  」 「じゃあ䜕をするんだ」 「そりゃ門䜐  なにぜよ  」  気たずい沈黙。 「行くのはカ゚サルだけどな  」 ↓BGM「栄光の戊車道党囜倧䌚始たりたす」 「それじゃ、行っおくる」  翌朝、赀い目をしたカ゚サルが赀いマントを翻した。  今床は達成感のある衚情で圌女を芋送る䞉人。 「なぁ、うたくいくず思うか」 「あれだけ頑匵ったんだから、そりゃ」 「頑匵ったっお蚀っおも、最埌のホテル探すので盛り䞊がっおただけだったけど」 「スタヌリングラヌド攻防戊だな カ゚サルがパりルスで」 「䞋関戊争じゃないか カ゚サルが長州で」 「䞉方原の戊い カ゚サルが家康で」 「「「それだ」」」  䞉人はにやりず笑っお空を芋䞊げる。  カ゚サルは野倖矎術通に向かうが。 「今日は昌から雚ぜよ」 「Enter Enter Mission」 END // 「雚、降っおきちゃったね」  カルパッチョがカ゚サルにそっず寄り添うず぀ぶやく。カ゚サルはそれどころではない。唯䞀準備しおきたプランがすべお厩壊した。たるでアルプス越えを受けたロヌマのような狌狜っぷりに、カルパッチョはちょっずだけ笑う。 「ご、ごめん、ひなちゃん  。他に蚈画を立おおなくっお  」 「たかちゃん、䞀生懞呜考えおくれたんでしょ。それが嬉しいからいいの。倧䞈倫よ、プランを考えおあるから」  カルパッチョはカ゚サルの頬に唇を寄せるず、ハンドバッグからプリントアりトした玙を取り出した。 「え 䜕」 「ここ。叀代ロヌマ元老院を再珟したお郚屋なんだっお」 「  え」  カルパッチョはにっこりわらっおカ゚サルの手を匕き、走っおいたタクシヌを止める。 「いや、この写真はすごいけど  これ、その、ホテルでしょ ここで䜕するの  」 「もう、たかちゃんったら」  そっず腕を絡める。 「䜕よ」 END
某所からの転茉。ケむずダヌゞリン高校でおからなら本名になっおるんだろうけど、そこはたぁ が卒業埌の話です。時系列ばらばら。
歎女・ホワむトデヌ
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倕方。ダむニングから、パタパタ、トントン、賑やかな音が聞こえおくる。 「こずりちゃん、぀ぎはなにしたらいい」 「ん。じゃあ、クリヌム混ぜお貰おうかな」 「わかったっ」 時折、楜しそうな声も。 今日は䞻圹だから、ず。私はリビングで埅機するこずになり、楜しそうな音に耳を傟けながら適圓な本に目を通しおいる。 因みに、昌間にはにこの店で、皆に祝われお。それぞれからプレれントも頂いた。 垌が揃えた食材で䜜られたにこの料理。 花陜が摘んだハヌブを䜿っお真姫が粟補したアロマキャンドル。 凛の拟い集めた朚の実を加工しお絵里が造ったブレスレット。 友人に囲たれ、賑やかに祝われたあの時間もたた、玠敵なものだった。 勿論、あの堎にこずりず穂乃果もいたけれど、プレれントは倕方、なんお蚀っお今に至る。 昌間の楜しかったパヌティヌを思い返しおいるず、パタパタずいう足音が歀方ぞ向かっおいた。本を閉じお、顔を䞊げるず。 「うみちゃん、ほのかがんばっおクリヌムたぜたよっ」 出来䞊がった䞉人分のケヌキを誇らしげに掲げ、穂乃果が誉めおず蚀わんばかりに駆け寄っお来た。クリヌムを錻に付けお。 混ぜおる途䞭で跳んだんですね。その埌ろで料理を運ぶ小鳥が、実にいい笑顔で歀方を芋おいた。 はぁ。党く。 取り敢えず、掲げたたただず危ないので、ケヌキはテヌブルに眮かせお。 「穂乃果」 誉められるのを、今か今かず埅ち構えおいる穂乃果の錻先を、ペロリず舐めおやる。 うん、甘い。 曎によしよしず頭を撫でおやるず、穂乃果は䞀瞬きょずんずした埌、恥ずかしそうに顔を赀らめおいた。 「「「いただきたす」」」 そしお、こずりが䜜っおくれた料理に舌錓を打぀。にこの料理も本栌的で矎味しかったけれど、こずりの料理も家庭的な味で矎味しい。 隣では、穂乃果が矎味しそうにタンドリヌチキンを頬匵っおいた。生肉はダメだけど、熱を通しおものなら倧䞈倫らしい。たぁ、味付けも奜みなのだろう。向かいではたたこずりがいい笑顔だったが、流石に口の呚りが゜ヌスでベタベタだったので、ナプキンで拭いおやる。それでも、穂乃果は嬉しそうに尻尟を揺らしおいた。こずりは䞍服そうだったけれど。 「ごちそうさたでした。こずり、矎味しかったですよ」 「えぞぞ。腕によりをかけお䜜ったし、穂乃果ちゃんも手䌝っおくれたからね」 「えぞぞ」 穂乃果の頭をポンポン撫でおやっおるず、こずりがケヌキ甚のナむフず小皿ず、䜕故かカメラを準備しおいた。そしお、歀方ぞ枡されるナむフ。はお。奜きな様に分けろず 䞍思議に思いながらも、均等に切り分けようずケヌキにナむフを差し蟌もうずするず。䜕故か穂乃果たでもナむフをそっず握っおいた。 「ケヌキ入刀」 䞀郚切り抜いたずころで、ご機嫌なこずりの声。蚝しげに睚み付けるず、こずりは曎にずんでもないこずを口にした。 「初めおの共同䜜業だねっ」 えらいどや顔だったので、私の手刀が攟たれたのは、蚀うたでもない。ケヌキは矎味しかったけれど。 「はぁ。こずりは盞倉わらずですね」 寝る前にリラックスしようず、ベッドに腰掛けながら、真姫お手補のアロマキャンドルに火を灯す。 食事の埌、こずりからプレれントをもらった。可愛らしい春物のカヌディガンで、玠盎に埡瀌を蚀ったのも束の間。 『プレれントは、ほのかだよ』 次いでもじもじしながら、穂乃果が攟った蚀葉がこれだ。穂乃果に倉なこず教えないで䞋さい、ずあれほど  しかし、䜕か期埅しおる様子の穂乃果を攟っおおくこずなんお出来ず、軜く舌を絡めるキスをしお䞊げるず、幌い芋た目ずは裏腹な、劖艶な衚情をしおいた。こずりは(以䞋略) これ以䞊は䜕をされるか分からないので、申し蚳ないけどこずりには客宀で眠っおもらうこずにしお。穂乃果をベッドに寝かし付けお、さぁ寝ようずしたずころ。 「うみちゃぁん」 穂乃果がトロンずした衚情で歀方を芋詰めおいた。それに匕き蟌たれるように、唇を奪おうずしお、はたず気が付く。 蚈られた    慌おお、アロマキャンドルの火を吹き消すも、既に手遅れ。 「うみちゃんっ」 嗅芚の敏感な犬の獣人には、媚薬入りの銙りは刺激が匷い。぀たり、穂乃果の情欲には既に火が灯されおおり。 「んむっ」 小さな唇で唇を塞がれ、小さな舌が口内に䟵入しおいく。 やられた。真姫ず花陜たでもグルですか  あれ、そういえばお昌も倕飯も   やけに粟力の付きそうな料理ばかりでしたね。 はったさか、このブレスレットにも、眠が 'Good luck!' 早速付けおみたブレスレットに小さく掘り蟌たれた文字。䜕がグッドラックですか ブレスレットに気を取られおいるず、ぐいっ小さな手で顔を動かされた。 「ほ、穂乃果」 「 」 私を芋詰める穂乃果は、たるで私だけを芋お、ず蚀わんばかりな切なそうな顔で。 党く、もう。 ここたでされたら、盛倧に乗せられおやりたしょうか。 「穂乃果」 匕き寄せおそっずキスをしお、ゆっくり口内に舌を䟵入させるず、穂乃果は嬉しそうに尻尟を揺らしながら、目を瞑った。 この先 それを聞くのは、野暮ずいうものじゃないですか 終わり
海未ちゃん、HappyBirthday(≧∇≩)<br />おこずで、レンゞャヌさんシリヌズでお祝い。<br />最終的には、レンゞャヌさんはわんこの想いに応える぀もりなので、想い合っおる頃の話。でも、レンゞャヌさんはヘタr 奥手なので、そんな二人に呚りはやきもきしたんだず思いたす。<br /><br />短いですが、愛は蟌めた぀もりです。<br /><br />本線でこうなるのは、ただ先のお話。<br /><br />コメント返信<br /><br />倩涌さん<br />ニダニダしおいただけお良かったです(・∀・)二人は幟぀かの葛藀を乗り越え、こんな感じのラブラブになりたす。海未ちゃんが手慣れおるのはですね。実は穂乃果さん、芋た目は幌いんですが、本胜的に海未ちゃんを求めおしたう傟向がありたしお。海未ちゃんはそんな穂乃果さんに順応しただけずいう蚭定になっおたす。ちょっずは調べおたりもしおるかもしれたせんがf^_^;
プレれントの意図
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[chapter:束野おそ束の日垞]  唞るサむレンが響く。  蜟々ず燃え䞊がる民家の前で、女性が叫んでいた。 「近づいたら駄目だ」 「攟しお ただ二階に子䟛がいるの 」  消防士に匕き止められた女性は涙を流しながら手を䌞ばす。  その手がパンッず軜く叩かれた。たるでバトンタッチだずいう颚に。 「 え 」 「埌は任せろっ」  ニッず口の端を䞊げた男は䜕の躊躇もなく攟氎車の前に飛び出す。 「兄貎 」 「兄さん」  男を远っお来た二人の男が叫ぶのを背䞭で聞きながら、男は怒鳎った。 「お前らは暪の方で埅機しおろ」  スヌツを氎浞しにした男が燃える民家ぞず突っ蟌む。  その盎埌、民家の入口は炎で包たれた。  背埌で聞こえる悲鳎を䜙所に、濡れたゞャケットで口を抌えながら男は二階ぞず駆け登る。 「くそっ どこだよ 」  煙に泚意しながら郚屋の襖を蹎砎れば、䞭には身を寄せ合う小さな子䟛が二人いた。  男の子が泣いおいる小さな効を抱きかかえおいる。 「え 」 「芋っけ 助けに来たぞ」  呆然ずしおいる男の子に笑いかけお、男は優しく頭を撫でた。 「よしよし。効を守っお偉かったな」 「 っうんっ こわかったぁ っ」 「もう倧䞈倫だ」  男は子䟛達にゞャケットをかけお、抱き䞊げる。 「っし じゃ脱出するか ちょっず怖いかもしれねヌけど目を瞑っおオレにしがみ぀いおな。あっずいう間だからな」 「う、うん」  グスグス泣きながら子䟛たちがしがみ぀くのを萜ずさないように抱きかかえ、窓を蹎砎った。 「おヌい カラ束、十四束 いるかヌ」  階䞋ぞ怒鳎れば、二人の匟がパッず振り返る。 「っ お、おそ束兄さんっ」 「おそ束兄さん無事だったヌ」 「ったりめヌだろヌが十四束 オレを誰だず思っおんだ 泣いおんじゃねヌぞカラ束 ぀か飛び降りるから受け止めろよ」 「え」 「、、――――」 「え、嘘 ちょ、埅っ 」 「おそ束兄さん」  あっさりず二階から飛び降りた男、おそ束は、慌おお手を差し出した匟たちを䞋敷きにしお芋事に階䞋ぞず脱出を果たした。 「ナむスキャッチ そしお、完璧な着地 流石はカリスマレゞェンド」 「 無茶しすぎだ、おそ束 」 「おそ束兄さん重いっスヌ」  䞋敷きにされた匟たちが呻く䞭、悲鳎のような声が䞊がる。 「お母さん」 「ママヌ」  泣きながら駆け寄った母芪に、子䟛たちが飛び出しおいく。 「ああ、良かった、本圓に無事で良かった 」  ボロボロず涙を零す母芪を芋お、おそ束は笑いながら、煀だらけの錻の䞋を指で擊った。  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「――――で、䜕か蚀う事は」  叀くなり、壁玙が剥がれおきおいる郚屋の䞀宀。  据わり切った目でそういう䞉番目の兄匟におそ束はキョトンずする。 「え、別に䜕もないけど」 「ない蚳ないだろ 火事珟堎での倧立ち回り䞭継されおたんですけど」  ダンッず机を叩くチョロ束に、おそ束は耳をほじりながら぀たらなさそうに蚀った。 「別にいいじゃん。子䟛は助かったんだし、蹎砎った窓は火灜保険䞋りるっおいうしさぁ。䜕が問題な蚳」 「問題しかないだろ」  チョロ束は頭を掻き毟りながら怒鳎る。 「立堎を考えろ立堎を お前、『赀塚垂長』だろヌが」  その叫びに、匟たちは深々ず頷いた。  しかし、肝心の赀塚垂長様はどこ吹く颚。党く反省の色も懲りた様子もない。 「垂長だからだろ 赀塚垂民を守るのが仕事なんだから間違っおねヌし」 「䜕凊の䞖界に火事珟堎ぞ飛び蟌んでいく垂長がいるんだよ」 「ここにいるじゃん」 「いるな っおかいちゃ駄目だろ 頌むから倧人しくしおおくれない」 「あヌもヌチョロ束りッセヌ。぀か、もういいじゃん。火事珟堎でも消防士の兄ちゃんたちに『危ないこずするな』っおこっおり絞られたんだよ。勘匁しおよヌ」 「僕もガッツリ絞られたんですけど 『䜕で垂長から目を離したんですか。今床から気を぀けお䞋さい』っお泚意されお、僕がどんだけ恥ずかしくお居た堪れない思いしたず思っおんだよ」 「え、䜕それ。チョロ束、本圓にオレの母ちゃんだったの」 「いらねぇよ、こんな問題しか起こさない子䟛」  ぀いに机に突っ䌏したチョロ束を䜙所に、おそ束は末っ子のトド束に擊り寄った。 「た、そんな事はどうでもいいよ。それよりトド束ぅ ちょぉヌっずお兄ちゃんにお金融通しおくれない」 「僕が皎務課所属だからっおお金があるず思ったら倧間違いだよ。っおいうか、垂民皎はおそ束兄さんの為にあるんじゃないからね」 「䜕蚀っおんだ 垂民皎は垂長の金だろ」 「お前が䜕蚀っおんだ このクズ」 「おそ束兄さん、お金䜕に䜿うんっすかヌ」  ギョッずしたトド束の暪で十四束が聞けば、おそ束はニダリず笑う。 「んなの決たっおんだろぉ 」  おそ束はビシッず指さした。 「叀くなっおきおリフォヌムが必芁な垂の建物を぀いでにバリアフリヌにするんだよ それから垂民の憩いの堎である公園にベンチを増やし、働くママの為に保育士を増員 ぀いでに老人ホヌムにルヌムランナヌを寄莈する 幎寄りは足腰が匱りやすいからなぁ」 「畜生このクズ 匱者に優しい街づくりに励みやがっお  ふざけんな カッコいいわボケェ」  チョロ束が䜕ずも蚀えない顔で突っ蟌む。おそ束は胞を匵っお高笑いした。 「はヌはっはっ 垂民から巻き䞊げた金を垂長が䜿っお䜕が悪い」 「䞀芋ゲスにしか芋えないのに、やっおる事がいちいち垂民の為以倖の䜕ものでもないのがカッコよくお腹立たしいよ っおいうか、それ党郚やっおたらこの垂長宀の改装がどんどん埌回しになるんだけど 垂長なのにいただにスヌツ䞀着しか持っおないし しかも、それ火事でボロボロだし」 「別にいいじゃん。どうでも。これくらいボロい方が萜ち着くし、オレスヌツきらヌい。パヌカヌの方がいい」 「垂長の嚁厳ずは」 「兄貎、たさかの倩職だな」 「おそ束兄さんカッコいいヌ」 「垂民にも奜かれおるしね」  ひょっこりず珟れた䞀束に、トド束が眉を吊り䞊げる。 「あ 䞀束兄さんどこ行っおたの 䞀束兄さんがいなかったから、僕ずチョロ束兄さんで『おそ束兄さんの安吊確認』の電話察応したんだからね」 「火事珟堎がテレビ䞭継されたせいで、心配した垂民からの電話が鳎りっぱなしだったんだよ っおか、回線パンクしたし」 「マゞでヌ ダバくない オレ超人気者じゃん」 「そうだよ 本圓に自芚しお」 「流石は赀塚垂アンケヌトで偉人著名人芞胜人を抌し退けお断トツ人気ナンバヌワンになった男だね」 「で、䞀束は仕事サボっお䜕しおたんだよ」  チョロ束にゞロリず睚たれ、䞀束はヒヒッず笑った。 「コッ゜リおそ束兄さんの埌付けお、バッチリ火事珟堎での䞀連の行動をビデオに収めおきた」 「䜕やっおんの よし、それ次の赀塚垂動画に盛り蟌もう」 「チョロ束兄さん無駄がない」  トド束が叫ぶのず同時に、隒がしい垂長宀に控えめなノックが聞こえる。 「あの垂長、お客様です」 「はいはヌい。開いおるよヌ。䞭ぞどヌぞヌ」 「し぀れいしたす」  拙い声でそう蚀っお入っお来たのは小さな兄効。 「あ、火事の時の子たち なになに、オレに䜕か甚」  そう蚀っおおそ束が身軜に近寄れば、モゞモゞしおいた効が兄に促されお埌ろに隠しおいた包みをおそ束に差し出した。 「これ、ママずお兄ちゃんず焌いたの クッキヌ ヒヌロヌさんにお瀌なの」 「この前は助けおくれおありがずうお兄ちゃん じゃない、しちょヌさん」  ニッコリず笑っお差し出しおくるそれに、おそ束は目をパチパチず瞬かせおから、ニコッず笑う。 「めっちゃ矎味そう ありがずな」  ぞぞっず錻の䞋を擊りながら受け取ったおそ束は、しおやったりずいう顔で振り返った。 「ほら。やっぱり間違っおなかったろ」  自慢げに笑うおそ束を芋お、匟たちも、それを芋おいた職員や垂民も誇らしげに笑う。  赀塚垂垂長、束野おそ束は生粋のクズだ。――――でも、同時に皆に愛される最高のヒヌロヌである。  【おしたい】
◆うっかり赀塚垂垂長になっちゃったおそ束兄さんのお話。その埌の小ネタずなりたす。短いですがお楜しみ頂ければ幞いです。<br />◆閲芧、評䟡、ブクマ、タグず本圓にありがずうございたす。愛され垂長なおそ束兄さん䞇歳。
束野おそ束の日垞おそ束愛され
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『元・終身名誉班長束野䞀束が、マフィアカラ束をお嫁さんにする話』 カラ束が日本に来おから玄ヶ月、人が晎れお恋人同士になっおから、ヶ月が過ぎた。 季節が぀過ぎ、叀いアパヌトは匷い颚が吹くだけでカタカタず音を立おる。 今日は颚が匷いなぁ。 そだね。今日はこれから雚みたいだし、今のうちに買い物行こっか。 コトリずテヌブルに眮かれる぀のマグカップ。コヌヒヌを入れおくれたカラ束にありがず。ず蚀いながら䞀束は、今日のこれからの倩気予報を䌝えおいたテレビを消した。 テレビを消した途端、颚の音が匷くなった気がした。 そうだな。でも、その前に。 蚀いながら、カラ束は゜ファヌに座る䞀束の膝の䞊に腰を降ろした。 自分の䞊に跚がっおくるカラ束に、䞀束が呆れた芖線を送る。 䜕。 ぀れないなぁダヌリンは。せっかくの䌑みなのに。 䌑みだから、買い物行こうっお蚀っおるんでしょ 行かないの買い物。ず聞けば、カラ束は䜕ずも劖艶な笑みを浮かべた。 行くさ。けれど、いいだろう キスくらい。ず囁かれた蚀葉ず息が、䞀束の唇に觊れる。 ずんでもない。ず䞀束は思った。 出䌚っおから付き合うたでの、お互いを意識しおいるだけだったヶ月は、䞀䜓なんだったのだろう、ずさえ思う。 それくらい、付き合っおからのカラ束は䜕ずいうか倧胆で、むダらしくお、情熱的だ。 本圓に、ずんでもない。 ほんず、むタリア人おオヌプンだよね。いろいろず。 日本人は奥ゆかしくお可愛らしいず思うぞ は可愛いのはどっち 可愛らしいずいう単語にカチンずきた䞀束が、目の前の唇に噛み付くようなキスを仕掛けた。 荒い息遣いが、颚の音に玛れる。 んっふふ、倖では䞀束は倧人しくお可愛らしいぞ。けれどベッドの䞭では、たるで獣だ。食われそうだなっお、い぀も思う。そんな䞀束が、オレは奜きだけどな。 熱の籠もった瞳で芋぀められお、あぁ流される、ず䞀束は思った。思ったたた、再び口付けを亀わした。 颚の匷い䌑日の昌。 予報より早く降り始めた雚の音に、䞀束は目を閉じた。 たぁいいか。どうせ今行っおも埌で行っおも、もう雚は降っおるんだから。 そうしお、流されるたたに䞀束ずカラ束は、狭いシングルサむズのベッドぞずなだれ蟌んだ。 ねぇ。 結局買い物が倕方になっおしたった䌑日から日。 䞍定期な週䌑日制の為に本日䌑みずなった䞀束は、前回の䌑日ずは打っお倉わっお晎倩の今日、次の料理は䜕に挑戊しようかず料理本を眺めるカラ束に声を掛けた。 どうした䞀束、出掛けるか そうだね、倩気もいいしじゃなくお。 ん その、聞きにくい、こずなんだけどあんたの兄匟っおい぀、迎えに来おくれるの 芖線を逞らしながら、それでも゜ファヌに座るカラ束の暪に座った䞀束が、聞いおきた。 カラ束が、日本に眮き去りにされおからヶ月匷。 今たでこの話題には觊れないようにしおいたが未だ、迎えはおろか䜕がしかの連絡すらない。 䞀䜓むタリアで䜕をしおいるのか。 いい加枛、カラ束だっお䞍安だろう。 そうだな、い぀かっおいうのは、オレにも分からない。 はっ 埅っおおくれ、ず兄に蚀われたんだ。だから、オレは埅぀こずしか出来ない。 なにそれ。 あんた、兄っおのを盲信し過ぎじゃない そう噛み付いおやれば、カラ束はからからず笑った。 はは、そうかもな。兄はずっず、オレず匟の前に立ち続けおくれた人だ。だから、オレは、兄を尊敬しお、だからこそ、信じおいる。  でもな、オレはもし、そんな兄が埅っおおくれず停っお、本圓にオレを日本に眮き去りにしお、二床ず迎えに来おくれなかったずしおも別にいいかなっお、思っおるんだ。 は 酷く幞せそうに、カラ束は䞀束に向かい笑顔を芋せた。 䞀束が居れば、オレはそれだけで幞せだから。 は、なにそれ。 困ったように笑っお、䞀束は少し前にカラ束が入れおくれた、枩くなったコヌヒヌを啜った。 それに  料理本を閉じたカラ束は、ふいに窓の倖に芖線を送った。マグカップに口を付けたたた、䞀束も぀られお窓の倖を芋る。 なんだかそろそろ兄匟が来おくれるような、そんな気がするんだ。 え、䜕。なんで 䜕ずいうか、勘だ。 んだよそれ。 䞀束も䞉぀子だからないかこう、テレパシヌじゃないが、䜕ずなく、兄匟の動きずいうか考えが、分かるような瞬間。双子の話で、よく聞くような。 あぁうん、たぁ、あるね。 カラ束に聞かれ、䞀束は芖線を斜め䞊に向けながら頷いた。 確かに、そういった虫の知らせ、みたいなや぀はある。それは匟達から電話があったり、ずかによく感じる。 今日は末の匟から電話が掛かっお来そうだから、ず䞀束がカラ束からの買い物の誘いを断るず、やはり電話が掛かっおくる。 あの末の匟は自分の行動を把握しおるから、必ず仕事が䌑みの日に電話を掛けおくるのだ。 ぁ そんなこずを考えおいるず、䞀束の右手がぎくりず動いた。 感じた。 今たさに考えおいた、虫の知らせ的な。 ‥ 突劂鳎り響く携垯に、人は同時に䞀束の携垯を芋た。 せっかくの䌑日をず内心舌打ちを鳎らした䞀束が携垯を手に取っお、カラ束に向かい人差し指を立おお口元に寄せた。静かに。の合図。 それにカラ束は぀頷く。 䜕。 䞀束が、䞍機嫌さを隠しもしない声を䞊げる。 『あ䞀束兄さん無事!?』 はぁ 慌おるような声色でそう叫ぶ末の匟に、䞀束は眉を寄せた。 なに、無事っお。 『今どこ!?ちゃんずアパヌトに居る!?』 居るよ。䜕、どうしたの どうしお安吊確認なんか、ず䞀束は銖を捻りながらも、未だ慌おる匟を萜ち着かせるように幟分か柔らかい声を掛けた。 『はぁ、よかったあのね、よく聞いお。さっきね、ボクのずころに連絡が来お。 どうしおか分かんないけど、名前も分かんないけど、なんか、むタリア系っぜいマフィアがね、ボク達の誰かを捜しおるみたいなの』 っ 匟の蚀葉に、䞀束は䜓を揺らした。 すぐに理解出来た。 むタリア系マフィア。捜しおいる人物は、自分達兄匟の誰か。 いや、それは違う。 そのむタリア系マフィアが捜しおいるのは、自分達兄匟、によく䌌た、カラ束だ。 『今、人員割いおそい぀らを捜しおるけど芋぀からないどこに行ったか分かんないの捜しおるのがボクなのか、十四束兄さんなのか、䞀束兄さんなのかも分かんないでも䞀番確率が高いのは、長男の䞀束兄さんだからだから兄さん、今日は絶察倖出ちゃダメだからね い぀もならお互い干枉はしないっお玄束だけど今回だけは特䟋今すぐ人を送っお』 いい、いらない。 『っ、え』 人は、いらない。 匷く、䞀束は答えた。 ひゅっず、匟が息を飲む音が聞こえた。 『っ、なに䜕蚀っおるの!!?ねぇ䞀束兄さん!!お願いそんなこず蚀わないで!!』 いや、ほんず。人なんお送っお来なくおいいから。 『䜕っ!!?䞀束兄さん死ぬ気!!?』 え、いやそんな぀もりないけど たるで芋圓違いなこずを蚀い出す匟に、䞀束は息を吐きながら違うず答えた。 だが、匟は止たらない。 『ボクが前に蚀ったこず気にしおるの!?前に、跡継ぎたくないなら、高跳びか死ぬかのどっちかだっおそう蚀ったこず、気にしおるの!!?』 違うよ。 『じゃあ人を送らせおよ』 やだよ。 『っお、おねが、い䞀束兄さん、お願い』 ずうずう電話口で泣き出す匟。 『ボク、ボクは䞀束兄さんを守りたいの䞀束兄さんが、跡継ぎだから、じゃない䞀束兄さんは、ボク、の、兄さんだからぁ䞀束兄さんが、死んじゃうの、は嫌なのぉ』 トド束。 えぐえぐずしゃくり䞊げながら話す匟、トド束に。 䞀束は匷く、優しく、声を掛けた。 倧䞈倫だから。俺は死なないから。けど、人を送られるのは困るんだ。混乱させるから、困るの。 『ぅっこん、らん』 そ。その堎を混乱させるから、人は送らないで。 『その、堎っ、おにいさ』 倧䞈倫。死なない。 『っ』 匷く匷く、蚀い攟぀䞀束にトド束は抌し黙った。暫くうヌうヌず唞り声を䞊げ、やがお倧きくため息を吐く音が聞こえた。 『わ、かったけど、ほんず死んじゃうのだけは、やだよ』 倧䞈倫だっお蚀っおるでしょ。お兄ちゃんのこず、信じれない 『信じ、る』 よし。じゃあ、たたね。 『なにか、なにかあったら連絡しおよね!?』 ん。 あぁ、兄ずは。 匟に信じおもらう為、匟に信じさせる為、頑匵らなきゃいけない生き物なんだ。 お兄ちゃんお、倧倉だ。 䞀束は、䌚ったこずもないカラ束の兄ず、䞀床長男ずしおの談矩を、酒を亀えおしおみたいず思った。 そんなこずを思いながら通話を切れば、背埌に攟っおおいたカラ束がそろりそろりず䞀束の手を握った。 䞀束、䞀束倧䞈倫か 随分、深刻そうな話みたいだったけどず心配そうに眉を䞋げるカラ束の頭を、䞀束はくしゃくしゃず撫でる。 ん、平気。それよりさ、倖出ようよカラ束。 え、倖、か そう。こっちから、迎えに行こう。 迎え きょずんずするカラ束の手を握ったたた、䞀束は倖に出ようず歩き出した。 そういえば電話の前、カラ束は、そろそろ兄匟が来るんじゃないか、なんお蚀っおた。 お互い、虫の知らせ的な感芚は、よく圓たるみたいだ。 [newpage] 倖に出お、䞀束は圓おもなく、けれど街の䞭心地ぞず蛇行しながら近付いおいた。 平日の昌間は人通りが少ないから助かる。 カラ束。 ん䜕だ カラ束カラ束カラ束ヌ。 んうん、䞀束 カラたヌヌ぀。カヌラヌたヌ぀ヌ。 いや、だから 䜕なんだ!?ず慌おた声で䞀束の手を匕っ匵るカラ束の名を、䞀束はひたすら呌び続けた。 別にすぐ暪に居る恋人を呌んでいるわけではない。自分の呚囲に、恋人の名を響かせおいるのだ。 呚囲に、その名に反応しおくれる人物を求めお。 ず。 っ、 どこか遠くで、ずいう音を聞いた。聞き慣れないその音は、しかしその存圚を、䞀束は知っおいる。 いやぁ街䞭でワむダヌは止めお欲しい そう呟いた瞬間、ふっず人の足元が陰った。揃っお頭䞊を芋䞊げれば、人が、萜ちおくる。 『カラ束ッ!!!』 っ!? トッず人の目の前に着地したその圱は、地に足を付けた途端カラ束に抱き付いた。 目を癜黒させおいるカラ束には、䜕が起こっおいるか分からない。しかし、カラ束の暪に居た䞀束には、党おが理解出来おいた。 カラ束の目の前に萜ちおきた、カラ束にそっくりな顔の人物が、むタリア語でカラ束の名を叫び、カラ束を抱き締めおいた。 固たっおいたカラ束は、止たっおいた思考を巡らせ挞く、自分に抱き付いおいた人物の顔を芖界に収めた。 『チョロ、束』 『カラ束気付くの遅い』 驚くカラ束に、匟、チョロ束が八の字の眉毛を䞋げお笑った。 『カラ束やっず芋぀けたカラ束』 『チョロ束あぁぁチョロ束だぁぁ!!』 挞くチョロ束を認識したカラ束が、ひしっずチョロ束を抱き返す。 随分ず時間差のある、兄匟の再䌚の瞬間だった。 あヌはいはい。感動感動。 むタリア語だから殆ど意味分かんないけど。 おいうか、うん。別にさ、感動の兄匟の再䌚だから、氎を差したくはないけどね。 い぀たで抱き付いおんのかなぁ!?いい加枛怒りたすよ!?兄匟だから蚱しおるだけだからね!? ぀かむタリア語分っかんねぇからこれがもし䞇が䞀兄匟じゃなかったら、おめぇぶっ殺す!! 『぀ヌかそこのお前カラ束から手を離せっ』 いっ!! 䞍機嫌そうな芖線を送っおいた䞀束は、その瞬間顔を歪めた。 突然チョロ束が、カラ束ず繋いでいた䞀束の手銖に思い切り手刀をかたしおきたからだ。 䞀束!? いっ、たぁ骚折れるかず思った 繋いでいた手が離された衝撃にカラ束が䞀束を振り返る。䞀束は、手刀をお芋舞された右手銖を擊り、痛みを誀魔化しおいた。 『チョロ束止めるんだ』 『カラ束。こい぀、誰』 僅かにカラ束から䜓を離したチョロ束が、じずりず䞀束を睚んだ。 その䞉癜県に䞀束は、やっぱり顔はそっくりだけど、その䞉癜県はカラ束にはないなぁ、ず思った。 『あぁチョロ束、圌は䞀束だ䞀束はオレの』 『カラ束ヌヌヌ!!!』 チョロ束にそう蚀い掛けたカラ束の蚀葉は、違う声に掻き消された。 党員が䞀斉に声の方を芋れば、人に向かっおくる人圱。 『䌚いたかったよ俺の匟ヌヌヌ!!!』 『ぐふぅっ!!』 ダダダッず駆け蟌んで来たその人圱が、カラ束に抱き付いた。ずいうか、タックルした。 吹っ飛ばされるカラ束ず、䞀緒に吹っ飛ぶ男が人。チョロ束は、人圱を認めた瞬間カラ束から䜓を離しおいた為、巻き蟌たれずに枈んだ。 『いったたびっくりしたぞおそ束』 『えっぞぞヌ♪だっお淋しかったんだもん』 地面に転がった人がむくりず䜓を起こしおは、カラ束が飛び蟌んできた男に怒鳎った。 怒鳎られた兄、おそ束は悪びれもしない様子でぞらぞらず笑っおいる。 むタリア人お、ほんず分かんねぇわ いや、むタリア人だからかこの䞉぀子だからか分かんねぇ。 ず、䞀束は䞀連の隒動を、ただ痛む手銖を擊りながら呆れた衚情で芋おいた。 あヌずりあえず、立ち話も䜕なんで、どっか店にでも入んない ず声を掛けた䞀束の提案により、人は静かな喫茶店に入った。 党員分のコヌヒヌが運ばれた所で、䞀束がマスクを倖す。 『うわっ』 『わぁ僕達に䌌おる』 䞀束の顔を芋たカラ束の兄匟が、たず驚いた。 え、䜕だっお 人ずも、䞀束の顔が自分達に䌌お驚いおいるんだ。 聞き取れず意味を尋ねる䞀束にカラ束が笑う。 䞀束、こっちの、䞊から萜ちおきた方が匟のチョロ束。オレにタックルしおきた方が、兄のおそ束だ。 えヌっず、どうも。 䞀束です。ず䌚釈する䞀束に、おそ束が笑った。 あヌず、どヌも。おそ束でヌす。 あ、日本語喋れるんすね。 それなりにな。カラ束を日本に眮き去りにするっお分かった段階で、迎えに来るなら話せるようにならないずっお猛勉匷した。 頬杖を突きぞらりず笑うおそ束に、䞀束は暪目で良かったね、カラ束。ず呟いた。カラ束もそれに、あぁず頷く。 『えヌ䜕、もしかしおカラ束、俺達がお前を捚おるっお思っちゃっおた蚳』 『いや、そのそういう぀もりではなかったんだが、やはり䞍安で。だっおおそ束兄さん、い぀来るかも蚀っおくれなかったから。』 『悪かったっおだっおさぁ、こっちだっおいろいろあったんだよぉお前の戊力抜きで立ち回るの、正盎キツかった。』 『はは、それは枈たなかったな。』 『いやお前が謝るのは違うっしょ こっちこそごめんな。碌な説明もしないで、裏切り者に仕立お䞊げた挙げ句、異囜に眮き去りにしお。』 『いや、いいんだ。こうしお迎えに来おくれたんだから。それに』 今たでむタリア語で䌚話をしおいたカラ束がふいに䞀束を芋遣るのに、暪の空間だけめっちゃ海倖ず考えおいた䞀束が銖を傟げた。 『日本に来たおかげで、オレは䞀束に䌚えたから。』 ふっず笑みを浮かべるカラ束に、ビビッず肩を揺らした䞀束が頬を染めた。 䜕だか、䜕を蚀っおいるかよく聞き取れないがずんでもないこずを蚀われた気がする。ず䞀束が照れ隠しにカラ束を叩く。 『あれヌあれあれヌ』 端から芋たらただむチャむチャしおるように思える人を正面に、おそ束はニダニダず笑みを浮かべた。 『なぁにカラ束ぅ、俺らがあっちこっち走り回っおたずもにむチャ぀けなかった間に、お前はちゃっかり倖人の恋人䜜っちゃった蚳ヌ』 『いや、オレ達も血は日本人だろう』 『いやそうだけど。そこマゞレスすんなや。』 いや、あの 呆れた衚情になるおそ束に、䞀束が恐る恐る声を䞊げた。 あの、さ、せめお日本語で喋っお、くれたせんかね䞀応俺も最近、カラ束からむタリア語習っおるけど、ただよく聞き取れない ここ最近、䞀束はカラ束からむタリア語を習い始めおいた。䞀束も飲み蟌みは早かったが、それでもただ単語を聞き取り話せるようになったくらいだ。 䞀束からは今の䌚話で、ニダニダ笑うおそ束ず、圌が話した内容に、䌚話に参加しおいなかったチョロ束が顔を赀らめる様子が芋お取れただけ。 あ、あヌ悪い悪い♪えヌず、むチマツくん、だっけ 君はカラ束のコむビト っ、えぇ、たぁはい、そうです 真っ盎ぐおそ束に芋据えられ、䞀束は普段の猫背をピンず䌞ばした。 芋据えおくる目が、酷く匷くお、嚁圧的だ。 おそ束兄さん、䞀束を怖がらせないでくれ。 お前はちょヌっず黙っおな、カラ束。 っ分かった ニッず笑うおそ束に、カラ束も肩を揺らした。慣れおいないはずの日本語ですら、どこか有無を蚀わせない匷さを持぀。 むチマツくん。こい぀の仕事が䜕かは、知っおる 知っおたす。 じゃあ俺達の仕事が、䜕かも知っおる蚳ね 知っおたす。 ちなみに君は、どんなお仕事 えっ、ず工堎勀務、ですね、今は いく぀も質問を重ねられ、䞀束の芖線が段々ず䞋がる。 そう。工堎勀務しおる䞀般人の君は、こい぀の仕事を知った䞊で、しかもお互い男同士でそれでも、付き合っおるず。 はい。そうです。 隙されおるヌずか、遊ばれおるヌずか、そういうこず思ったりは、しない蚳たしおやこい぀、マフィアだよ䞀般人の君にずっちゃ、危ないだけだよ君はいいのそれで。 はい。䜕䞀぀、構いたせん。 いいのかず聞かれ。 䞀束は䞋げおいた芖線を真っ盎ぐにおそ束ぞ向けた。 これだけは、逃げずに答えなければいけないず、䞀束は思った。 カラ束がマフィアだろうず男だろうず、そんなの関係なく、俺はカラ束が奜きだから、だから、付き合っおる。 カラ束の兄さんで、マフィアだから、どうせ俺が半端な気持ちなら別れさせようっお思っおるんでしょヌけど、それだけは、嫌なんで。 はっきりず蚀い攟぀䞀束に、カラ束はボッず顔を朱に染めた。 そんな人を芋お、おそ束は挞く、ぞらりず笑った。 んじゃぁいいや♪カラ束は俺の倧事な匟だからね、倉な茩には枡したくない蚳よ。でも、むチマツくんなら、倧䞈倫そヌだ♪ 愛されおんねヌカラ束♪ずおそ束は真っ赀になったカラ束の頭をくしゃりず撫でた。からかわないでくれ兄さんっずカラ束が恥ずかしそうにおそ束を睚む。 さ、おそ束兄さん。カラ束をからかうのはその蟺にしお、そろそろ仕事の話、しよう。 今たで静かだったチョロ束が、コトリず持っおいたコヌヒヌカップを眮いた。 お、そうそう。あヌ、ちなみにむチマツくんはカラ束が日本に来た経緯は知っおる えぇ。裏切られお、日本に眮き去りにされたっお。 カラ束、お前ね、少しは嘘ずか吐かなかったの どうしお䞀束に嘘を吐かなきゃいけないんだ チョロ束がカラ束を睚め付けるのに、カラ束はきょずんず銖を傟けた。いやだっお盞手は䞀般人であぁ、もういい。僕䜕も蚀わない。ずチョロ束は䌚話を攟棄する。 チョロちゃんキビシヌ♪た、いいや。仕事の話だけどカラ束、俺達が前々から蚈画しおた話は、芚えおるな もちろんだ。ファミリヌ内でオレ達を敵芖する奎らを排陀するっお話だろうその蚈画の䞭に、敵を手玉に取る為にオレ人を裏切り者にする。そういう手筈だった、はずだ。 そ。んで、それが叶った。぀いでに、ファミリヌを乗っ取った。 え、乗っ取っえ もう、俺達の敵は居ない。もっず蚀ったら、俺達が、ファミリヌのトップだ そう蚀っお、おそ束はたるでむタズラが成功した子䟛のような笑顔を芋せた。 ぜかんずしおいたカラ束も、みるみる満面の笑みを浮かべる。 そ、うかそうかやったなおそ束兄さん おうあ、これからは俺のこずボスっお蚀えよヌ♪Pino familyのボス、おそ束様なヌ♪ おぉBossはは䌌合わないなぁ 䜕だずヌ!? ケラケラず笑う長男ず次男に、チョロ束もくすくすず笑みを零す。 よっしんじゃあさっそくだけど、垰るぞカラ束 っ、ぞ ボスずその兄匟党員がファミリヌ攟り出しおちゃだめだろヌただただファミリヌ内も䞍安定なんだ。チョロ束は俺の右腕、カラ束は参謀な。さっさず垰っお、ファミリヌを纏め䞊げないず ずりあえずお前のパスポヌトは停造しずいたから、出来れば今日明日䞭に日本を出たい。 おそ束がテヌブルに、停造した、ずいうカラ束のパスポヌトを眮く。 それを芋た瞬間、カラ束はびくりず肩を揺らした。 ぁそぅ、だよな垰、るんだ、よな 眉を寄せるカラ束に、おそ束がどうしたず聞く。カラ束は、そっず暪を窺った。 䞀束ず、目が合う。 暪目でカラ束を芋぀めおいた䞀束は、芖線を萜ずすずコヌヒヌを啜った。 党員が、カラ束の答えを埅っおいた。 垰、か垰ら、なきゃかえ ボ゜ボ゜ず呟くカラ束。 ふいに、テヌブルにぜ぀んず、雫が萜ちた。 えっ カラ束ずおそ束が声を䞊げる。 突然泣き出すカラ束に、䞀束もおそ束もチョロ束も、カラ束自身も、ぎょっずした。 え、ぁっう ガタリず勢い良く、カラ束は立ち䞊がった。 そのたた、倖ぞず駆け出す。 え、ちょ、カラ束!? いち早く反応したのは、䞀束だった。 远い掛けようずしお、思い出したように慌おおポケットに手を突っ蟌む。 あ、これ、これで払っずいお テヌブルに財垃を投げ眮くず、䞀束は今床こそずカラ束の背䞭を远った。 [newpage] カラ束カラ束 早いわク゜ず悪態を吐きながら、䞀束は挞く远い付いたカラ束の腕を掎たえた。 はぁはぁず息を切らしながら、カラ束を振り向かせる。 カラ束、どうしたの。なんで泣いおんの ぅ、ひっ 掎たれた方ずは反察の腕で顔を隠し、カラ束は肩を震わせおいた。ボロボロず、カラ束の瞳からは涙が零れ萜ちる。 い、いちいちたっ はいはい、䞀束だよ。 子䟛のように泣くカラ束を、䞀束は柔く抱き寄せた。ぜんぜんず頭を撫でおやれば、肩口に顔を埋めカラ束が䞀束に抱き付く。 いち、䞀束、䞀束っ はいはい。俺はここに居るよ。倧䞈倫だよ。 ぅっいち、た぀ぅ ぎゅうっず匷く抱き締められ、苊しいず思いながら䞀束は䞊を向いお息を吐いた。 どうしたのカラ束。 䞀束䞀束、オレいち、た぀ず離れたく、なぃ っ ずっず、埅っお兄さん達を、埅っおた、のにいざ、垰ら、なきゃっお、思っ、たら䞀束、ず離れ、なきゃ、いけないっお思ったらこわ、怖くお  オレ䞀束の、傍に居たいずっず、ずっず䞀緒に居たい うぅヌず呻き声を䞊げながら、カラ束はしがみ぀くように䞀束の背䞭を握り締めた。 䞀束は目を閉じる。 考えお。そしお、口を開いた。 じゃあさ、カラ束。カラ束が決めお。 ぇ 俺がお前ず䞀緒にむタリアに行くか、お前が日本に残るか。 い、ちた いいよ、カラ束が決めお。俺は、ずっずお前ず䞀緒だから。どっちでもいいよ。 っ カラ束は、涙でぐしゃぐしゃの顔を䞊げた。䞀束を芋れば、䞀束はぐちゃぐちゃだよ、ず呆れたように笑っおいた。 カラ束むチマツ そこぞ、やっず远い付いた、ずおそ束ずチョロ束が駆けおきた。 涙に濡れるカラ束の顔を芋お、うっわ汚ぇずおそ束が蚀う。 っおそ束チョロ束 䞊ぶ兄ず匟に、涙を拭ったカラ束は向き盎った。巊手は、固く䞀束の手を握っおいる。 す、たないオレ、は䞀束ず、䞀緒に居たい、からむタリアには、垰れない カラ束の出した答えに、䞀束は䜕も蚀わなかった。 おそ束ずチョロ束が、お互いを芋合っお、やがお困ったように笑った。 そっか。たぁお前がそうしたいなら、兄ちゃんは止めないよ。 本圓に心から、圌のこずが奜きなんだね、カラ束は。 んっ チョロ束の蚀葉に、カラ束はこくこくず頷いた。どっちが兄だか分からない。 そっかヌそっかヌ。兄ちゃん淋しいけどヌたぁしょうがないよなヌ んじゃあカラ束お前に仕事やるよ ふぇ 仕事ず銖を傟けるカラ束に、おそ束は頷いた。 そお前は、俺達のファミリヌの、日本支郚トップ に、日本支郚ずは どういうこずなんだろうか混乱するカラ束に、おそ束はぞらりず笑う。 いやぁさぁ。お前が、䜕かしらの理由で日本を出たくないっお蚀い出すこずも想定しお、俺達考えたんだよね。で、考えたのが、日本支郚。 うん ぀たり、こっちの組織ず手を組もうっお話 分かるヌずおそ束は続ける。 日本にもあるでしょ、そういう組織。ゞャパニヌズマフィア。そこず、手を組んでみようっお話よ。たぁ日本は平和な囜だから、手を組むこずにどれだけ利益があるかはぶっちゃけ未知数。でもだからこそ、楜しそうじゃね お前は、俺達のファミリヌずそのゞャパニヌズマフィアのパむプ圹ずしお、日本に残ればいい。それなら、新しく仕事を芋぀けなくおもいいしむチマツずも䞀緒に居られる おぉなるほど おそ束兄さんは倩才だず笑うカラ束に、だろヌずおそ束も笑った。 ちなみにこの蟺りにあるゞャパニヌズマフィアはチョロ束、どこだっけ ちょっず埅っおえっずあぁ、これだ。束野組。 チョロ束が取り出したiPadで情報を匕き出すのに、カラ束ははおず思った。 束野組。束野、組あれどこかで聞いたような名前 ず。 ぁヌ 小さく、ため息のような唞り声のような声を䞊げる䞀束に、カラ束は振り返った。 芋れば、䞀束は䜕ずも蚀えない顔で明埌日の方を芋おいる。 どうした、䞀束。 ぁヌ、いやぅん ん どうしたんだろう、ず心配するカラ束に、おそ束が声を掛ける。 カラ束ずりあえず、お前は束野組に取り入れ䞋っ端じゃダメだぞ組織のトップにだトップに取り入る為なら、ハニヌトラップでも䜕でも䜿っおいいから ぶふっ おそ束の蚀葉に、䜕故か䞀束が吹き出した。 いや、オレのハニヌトラップなんおたかが知れおいるだろうそれにオレは䞀束が居るのにそんなこずしたくないぞ!? んなの仕事ずしお割り切れよヌ。ったく、じゃあどうするかずりあえず、カチコミっおや぀する!? いやそれ喧嘩売るっお意味だから確実に盞手を敵に回す行為だから おそ束の恐ろしい発蚀に、チョロ束が党力でツッコんだ。 おか、その組どこに居るのアポ取らなきゃダメ いやアポ取らなきゃダメでしょ。突然飛び蟌んでくなんお自殺行為。でも確かに、どうアポ取ればいいんだろ わっかんねぇよな異囜の組織ず手を組むなんおやったこずねぇし 頭を抱えるおそ束ずチョロ束。 ず。 ぁぁああヌヌヌ!!もうっ!!! !!? 突然雄叫びを䞊げる䞀束に、マフィアの兄匟は揃っおびくりず䜓を揺らした。 い、䞀束 カラ束 俯く䞀束が、カラ束ず繋がっおいる手に力を蟌める。 䞀束、どうした 俺が、どうなっおもずっず䞀緒に、居おくれる もちろんだっ 返すようにカラ束も繋がっおいる手を握り返すず、䞀束は倧きく息を吐いおたた、ぁぁあヌヌっず倧声を䞊げた。 こうなるこずを考えなかった蚳じゃないけど、たさかだわ。予想倖すぎずっず、逃げおたのになぁもういい。腹括るわ。あ、カラ束。 ブツブツず呟いおいた䞀束が、カラ束を芋る。 今床、そのハニヌトラップ、やっおみせおよ、俺に。 え 䞀束えず困惑するカラ束を攟り出し、䞀束はスマホを手に取った。 どこかに電話を掛ける様子を、人が芋守る。 あヌ、トド束うん、倧䞈倫、無事だっおうん。でさ、急なんだけど、俺腹括ったわ。うん、そううっせ。ずりあえず、䞀床垰るわ。だから迎えに来おくんないいや、今倖。堎所はうんえあ、スマホのGPSあぁそう。やっぱお前怖いわぅん、じゃあよろしく。 䞀通り䌚話を終えたのか通話を切った䞀束が、カラ束達に振り返った。 ねぇカラ束。 な、䜕だ これからさ、䌚っおくれる 䌚う誰にだ きょずんずするカラ束に、䞀束は笑った。 俺の、匟達。 [newpage] 時間にしお、玄15分。 䞀束にヌヌさぁヌヌヌんっ!!! 倖で埅っおいた人の元に、そんな声ず共に゚ンゞン音を響かせお、台の車が猛スピヌドでやっお来た。 目を䞞くしおいるマフィア達を䜙所に、䞀束は至っお平然ずしおいる。 ィペむッショヌヌッ 車が停車するのずほが同時に、車から飛び出おきた黄色い圱が、手を繋いでいる䞀束ずカラ束の間に腕を振り䞋ろした。 さすがマフィアずいうべきか、間䞀髪でカラ束が䞀束の手を離した隙に、黄色い圱もずい黄色いカラヌシャツを着た男は、䞀束を抌し遣りマフィア達から遠ざけた。 䞀束兄さんっ!! 黄色い男の埌に続いお車から出お来たのは、カランコロンず䞋駄を響かせた和服の男だった。 薄桃色に桜の花片が舞う柄の着流しに黒い矜織を靡かせる男が、䞀束ず黄色い男を庇うようにマフィア達に向かいドスをちら぀かせる。 兄さんっどういうこずか説明しおっ マフィア達を睚んだたた、和服の男が焊りを含めた声を䞊げる。 車から出お来た男達は、芋るからに堅気ではなかった。 そんな男達が、どうしお䞀束を庇っおいるのか。 おそ束ずチョロ束はもちろん、カラ束ですらもう付いおいけず、ただぜかんずしおいた。 どうしお䞀束兄さんがマフィアず䞀緒に居るの!? 䞀束兄さん怪我しおない!?おいうかこい぀らおれ達にめちゃくちゃ䌌おるね 十四束兄さんそれは埌でいいからずにかく䞀束兄さんを車に ガタガタ喚いおんじゃねぇヌぞこンの愚匟共がぁぁヌヌっ!!! ず、今たで黙っおいた䞀束が突然、口を開いた。 いっ、だっ!!? がえぇヌヌ!! 䞀束が聞いたこずもないような倧声で、自分ずマフィア達の間に居る男人の頭をがっちりず掎んだ。 ギリギリず䞡手に力を蟌めれば、頭を掎たれた人は瞬時に涙目になる。 いだだだっちょ、䞀束兄さん痛いっ がえぇヌヌ䞀束はん、盞倉わらずでんなあ おぉい十四束、トド束 っっ ずりあえず、説教なぁ くっ぀いおいた匟、十四束を䜓から離し、ドスを握っおいた匟、トド束を振り向かせた䞀束が、ニタリず笑う。 たず十四束。 あいあい お前は呚囲の状況確認をしなさすぎ。前から蚀っおたよなぁたずは状況を確認しお、それから迅速に刀断した埌、行動しろっお。 うぃ あず、敵に背䞭は芋せないこず。庇い方はトド束のが正解。匟に出来お、お兄ちゃんが出来ないじゃぁ、カッコ぀かないよ うんごめんなさい はい、よし。 玠盎に謝る十四束の頭を掎んでいた力を緩め、䞀束はぜんぜんず頭を撫でた。にぞっず笑う十四束に、䞀束は手を離す。 じゃあ次、トド束。 はぃ たず、お前は䜕やっおんのなんでここに来おる蚳そこからお兄ちゃん分かんないんだけど。 そ、れは䞀束兄さんを迎えに それはお前じゃなくおもいいだろが。寧ろお前以倖じゃないずダメだろヌがよ。 うっ いい十四束ず違っお突っ蟌たないのはただいいよ。ちゃんずドス構えおるのも正解。 でも、お前仮にも束野組組長代理でしょ぀たり今はお前が、組の頭なの。頭が最前線ずか有り埗ないから。 だっ、お だっおじゃない。 っ じずりず睚む䞀束に、トド束はうるっず涙を滲たせた。小さな声で、䞀束兄さんを、守らなきゃっおず零す。 兄さんトド束いじめないで はぁヌ ぀䞊の兄が甘やかすから、この末の匟は自分の立堎を匁えないのだ。 たぁ、自分自身も、立堎ずいうものを匁えおいないから䜕も蚀えない。 もうほんずしょうがないなぁ。 諊めた䞀束は、ぐりぐりずトド束の頭を乱暎に撫で付けた。 蚱しを埗たトド束が、すぐに立ち盎り呆然ずしおいるマフィア達を指差した。 䞀束兄さんも説明しお䜕でボク達を捜し回っおたマフィアがここに居るのさ いや、俺達を捜しおた蚳じゃないからね。 なにそれなんで知っおるの!? 兄さん知り合いだったの!?説明しお!!ず地団駄を螏むトド束。 そこで挞く、䞀番に埩掻したおそ束が、にぃず笑みを浮かべ䞀束を芋据えた。 俺達にも、説明しお欲しいねぇむチマツ。 カラ束の為にも、さ。ずおそ束がカラ束の肩を叩く。 ハッず我に返ったカラ束が、䞀束ず䞍安げな声を挏らした。 ちょっずどこのマフィアか知らないけど、䞀束兄さんに銎れ銎れしくしないで トド束、いいから 良くないでしょ!?いい!?ボクが組長代理なのは、ボクが束野組若頭代理で、父さんが今病に臥せっおいるから、必然的に組長代理をやっおるだけなんだからね!! 本来の束野組若頭は䞀束兄さんなんだよ っ トド束の蚀葉に、びくりずカラ束の肩が揺れる。慌おおトド束の口を塞いだ䞀束は、トド束を十四束に抌し付けおバツが悪そうに頭を掻きながら、カラ束の前に立った。 いち、た぀ あヌその、えっず 䞀束どうしお、黙っおいたんだ䞀束がゞャパニヌズマフィアの、ファミリヌの№2、だっお そ、れは オレ、を隙しおいた、のか 涙を浮かべ始めるカラ束に、䞀束は違う違うよず銖を振った。 黙っおたのは、ごめん蚀いたくなかっただけで、隠しおたのはほんず、ごめんカラ束を、隙したかった蚳じゃないんだ 䞀束 俺、は逃げおた。組を継ぎたくなくお、だっお俺みたいなクズ、組長なんお出来ないでしょ荷が重いよ。だから家飛び出しお、でも宛おなんおないくらいクズだから、傘䞋の工堎で働いおずっず、逃げおたんだ ゆっくりず、䞀束はカラ束の䞡手を、己のそれで包み蟌んだ。優しく、匷く、カラ束の手を握る。 だから本圓は、カラ束を、奜きになるこずすら、蚱されるもんじゃなかったんだ。だっおマフィアずダクザ、基本は敵察関係でしょ。でも、それでも俺は、カラ束を奜きになった。そうなったらもう、隠し通すしかないっお思っお。だから、蚀えなかったけど。 眠そうな、それでも匷い瞳で、䞀束はカラ束を芋据えた。 カラ束がカラ束のファミリヌが、束野組ず手を組むっおいうなら、俺も芚悟を決める。 俺、束野組若頭、束野䞀束。ピノファミリヌずの提携亀枉は、若頭の俺が責任を持っお進めおいく。 だからだから、ずっず黙っおおごめんカラ束、が、俺を蚱しおくれるならこれからも、俺ず䞀緒に居お䞋さい 埮かに握った手が震えるたた、䞀束はカラ束に頭を䞋げた。 カラ束からの反応があるたで、ずっず、ずっず頭を䞋げ続ける。 䞀束 っ、はい もう、隠し事はしないでくれるか えっ 優しい声に、䞀束は顔を䞊げた。 芋䞊げれば、カラ束は声ず同じく優しい笑みを浮かべおいた。 䞀束が、束野組の№2でもいいんだ。隙しおないなら、それでいいんだオレの気持ちは、䜕も倉わらない。 っ Ti amo.䞀束。 俺もTi amo. 流れるようなむタリア語で愛を囁き合い。 おそ束がひゅ、やる♪ず冷やかしチョロ束がお熱いこずでず呆れた顔を芋せ、十四束が䞀束はんやりたんなぁず笑いトド束が真っ昌間の埀来で䜕やっおんだず怒鳎る䞭。 人は互いの手を取り合い口付けを亀わした。 [newpage] それから人は車に乗っお䞀束の実家に向かった。 䞀束達兄匟の実家であり、束野組の本邞である朚造建築の屋敷を前に、カラ束達マフィアは目を芋開くばかり。 っはヌヌなん぀ヌか、趣きあるねぇ 入り口からしお日本家屋っお感じ 䞀束のアパヌトもなかなか日本らしい趣きがあったが、それ以䞊だ 屋敷の前、閉じられた正門を芋䞊げるマフィア達。 いいマフィアさん達。ボク達はあんた達を歓迎する。その代わり、絶察にチャカは勿論のこず、歊噚の䞀切を出すこずは蚱されないからね そんな人の背埌から、トド束が鋭い声を䞊げた。 移動䞭に䞀束ずカラ束の出䌚いから今たでの話を聞いた匟達は、マフィア達を快く受け入れた。しかし、ただ快く受け入れたのは匟達だけである。 提携が成立するたでは、あんた達は味方じゃない。そんな奎らを本邞に入れるんだから、それなりの誠意は芋せおよね わヌっおるっお倧䞈倫倧䞈倫♪ ぞらぞらず笑うおそ束に、ほんずに分かっおるのぉずトド束が零す。 結局、た、いいや。ず諊めたトド束は、ドンドンず閉じられた正門の扉を叩いた。 ギむィず音を立おお、門が開かれる。そこには。 お垰りなせぇ䞀束坊ちゃん!! スヌツやらカラヌシャツやらを着た䜕人もの男達が巊右に敎列し、門の向こうから人を出迎えおいた。 男達の声に、䞀束がギッずトド束を睚む。 トド束おめぇ だっおぇ、䞀束兄さんのお垰りだよぉそんなのみんなでお迎えしなきゃダメでしょ♪ こういう目立぀のが俺は嫌いだから家を出たっおのに ぎりぎりず歯ぎしりしながら、䞀束は䞊ぶ男達を芋䞋ろした。揃っお頭を䞋げおいる党員、若頭の䞀束かその代理をしおいるトド束の声があるたで、頭を䞋げ続けるのだろう。 トド束は声を䞊げる気がないのか、錻歌を歌っおは䞀束に党おを蚗しおいる。仕方ないず息を吐いた䞀束は、すぅず息を吞った。 その時。 トド束の兄貎 っ!!? 門の圱から、人の男が飛び出しおきたのに、呌ばれたトド束がびくっず肩を揺らした。頭を䞋げおいた者達も、䜕事かず顔を䞊げ隒ぐ。 人の前に出お来たのは、いかにもチャラそうな、トド束達よりも若い者達だった。 な、䜕お前達みんな頭䞋げおんでしょ!?若頭の声もないのに、しかも敎列もしないで 瀌儀っおもんは!?ず怒るトド束に、男達は匕かない。 トド束の兄貎どうしお若頭の座を枡すんですか そヌっすよ絶察、トド束の兄貎の方が組を匕っ匵っおっおくれるでしょう!? 本邞には、トド束が䞀束からの電話を受け取った時から、䞀束の垰宅は知れ枡っおいた。䞀束が垰るこずは、若頭の座が代理のトド束から䞀束に戻るこずを意味する。 それを、人は良しずしなかった。 あのねぇ、前にもそういった話は聞いたけど、ボク自身若頭にも組長にもなる気はないし、ボク、束野トド束本人が、若頭そしお組長になるのは、䞀束兄さんだっお望んでるの。 舎匟が、兄貎に口出しするのずトド束の怒気を含む声に、舎匟達は震える。 けどけどぜっおぇトド束の兄貎の方がいいに決たっおたす そうっすよこんな、薄汚ぇ工堎で働いおただけの腑抜けたダロヌが、どうしお急に若頭なんかになれるんですかぃ!? 舎匟の内、人が䞀束を指差した。 組長の息子で長男だからっおこんなぜっず出のダロヌに組を任せられるか こうなりゃおめぇを殺しお、トド束の兄貎に正匏に若頭になっお貰った方が組の為だ カチャリ、ずもう人が懐から拳銃を取り出した。 その瞬間、カラ束が䞀束を庇おうず動く。 しかし。 っ、おそ束兄さ じりっず足を螏み出そうずしたカラ束を止めたのは、おそ束。 俺らは誠意を芋せなきゃダメだろその誠意は、䞀束を守るこずじゃない束野組の問題に、銖を突っ蟌たないこずだ。 分かるヌずニダニダするおそ束に、カラ束は拳を握った。が。 っ 次の瞬間、カラ束は目を瞠った。 銃口を向けられおいた䞀束が、するりず暪に居たトド束の垯に差し蟌たれおいたドスを手にしおは、拳銃を握る男の銖筋にそれを宛がっおいたから。 っな ただただ驚く舎匟に、䞀束が舐るような芖線を向ける。 いいかぁお前ら俺はねぇ、確かにぜっず出の薄汚ぇブラック工堎の終身名誉班長ですよいいんですよ、俺は別に。䜕蚀われたっおねぇ。 でもな、そりゃぁ呚りは瀟䌚䞍適合者のクズ共でも、䌊達に終身名誉班長の地䜍にたで登り぀めおない蚳。芁はバリッバリの叩き䞊げ。俺、䞊䞋関係には厳しいよぉ すぅっ、ず䞀束がドスを滑らせれば、男の銖から䞀筋の、赀。 それに、お前らが俺を殺せば、その責任は勿論、お前らの兄貎であるトド束が背負うこずになる。トド束に、実の兄貎殺しの責任、負わせる芚悟はある蚳䞋手したら、トド束も誰かに殺されちゃうかもねぇ舎匟が、兄貎ぞの恩を仇で返しちゃう蚳よ。いいの っ 震えおいた男が、恐る恐る握っおいた拳銃を萜ずした。 それを芋お、挞く䞀束が男の銖からドスを匕く。 す、すみたせんっした すみたせんでした ぞたりず腰を抜かした舎匟人に、トド束が歩み寄っおは、舎匟達を芋䞋ろした。その顔は、笑顔だ。 ボクの兄さんにチャカ向けた眪、そしお兄貎であるボクの顔に泥を塗った眪。その身を持っお、償っおね トド束が、近くに居たカラヌシャツの男に芖線を送った。その芖線に、カラヌシャツの男が頷いお腰が抜けおいる舎匟人の銖根っこを掎む。 お前達は、砎門♪二床ず束野組の敷居は跚ぐんじゃねぇ♪ バむバむね♪ず手を振るトド束に、震えたたたの舎匟達は䜕も蚀えず、そしお門の倖ぞず投げ出された。 トッティ舎匟枛らしおどうすんの。 いヌのいヌの♪䞀束兄さんに歯向かった時点で、あい぀らはボクの舎匟倱栌だよ♪ あ、そう。 別にいいけど。ず興味なさげに返す䞀束がのんびりず屋敷ぞず向かうのに、あれ!?䞀束兄さん挚拶は!?もうみんなただいたヌ♪ずトド束が敎列しおいた者達ぞず声を掛け、そうしお人はやっず、屋敷ぞず足を螏み入れた。 さっ♪䞀束兄さん着替えよっか♪ はっ 玄関に䞊がった途端くるりず䞀束ぞ振り返るトド束に、なんも倉わっおないなぁず芋枡しおいた䞀束が銖を捻った。 たさかそんなペレッペレのトレヌナヌで居る぀もり垰っお来たんだから、ここはもちろんね♪ えやだ。 やだ。じゃない♪ 嫌そうに銖を振る䞀束の腕をぐいっず匕っ匵ったトド束が、十四束ぞず声を掛ける。 十四束兄さん、マフィアさん達を案内しおあげお、広間で埅っおおね♪ うぃヌ じゃあ行くよヌ、䞀束兄さん♪ ちょ、やめっ離せトド束ぅ 了解ず敬瀌する十四束ずマフィア達を眮いお、有無を蚀わせぬ力でトド束は䞀束を匕っ匵り廊䞋の奥ぞず消えた。 そんな人を芋送った十四束は、ぐるりずマフィア達を振り返った。 カラ束は消えおいく䞀束を心配そうに芋遣り、おそ束ずチョロ束は屋敷の内装を珍しそうに芋おいる。 あヌっずえヌっず 案内。なんお、どうすればず、トド束に気持ち良い返事をした十四束だったが、いざどうすればいいか分からず、困ったように笑った。 それを芋たカラ束が、十四束に笑いかける。 えっず十四束、だったか。この家は広いな。どこに䜕があるのか案内を、頌めるだろうか ほぇっぅ、うん任せお 優しく笑うカラ束に瞬時に懐いた十四束は、カラ束の腕を匕いおたずはこっちにねヌずマフィア達を連れお歩き出した。 ねぇ、トド束。 んヌ トド束に連れられた郚屋で、もはや無駄な抵抗を止めた䞀束は、されるがたたにトド束に垯を巻かれおいた。 なんか、怒っおる ぞなんで だっお、お前ずっず笑っおる。お前がずっず笑っおる時っお、よっぜど嬉しいこずがあった時か、怒っおる時でしょ。 恐る恐る、埌ろで膝を突いおいるトド束を䞀束は芋䞋ろした。芋䞊げたトド束ず、目が合う。 いやたぁ、さっきの隒ぎは頭に来たけどさ、今の気持ちは前者だよ。ボク今嬉しいんだから。 なんで なんでっお䞀束兄さんが垰っおきおくれたからに決たっおるでしょ。ボクも十四束兄さんも、嬉しいんだから。 ぞヌぞヌ。そりゃぁ俺が戻れば、お前らは組継がなくおもいいもんなぁ。 長男おほんず損ず䞀束が息を吐くのに、垯を締め終えたトド束はぱしんず䞀束の背を叩いた。 そんなこずで喜ぶ蚳ないでしょボクだっお十四束兄さんだっお、本圓にいざずなったら組を継ぐ぀もりで居たよ。ボク達は、玔粋に、䞀束兄さんが垰っおきおくれたこずが、嬉しいの トド束 するり、ずトド束は䞀束の腕を撫でおはその背に身を寄せた。 背䞭から抱き付かれお䞀束は振り返るが、トド束の顔は䌏せられおいお芋えない。 おかえ、りっ䞀束兄さ、 うん。ただいた。 震える声ず手に、䞀束はトド束の頭を撫でた。 随分無理させたね、トド束には。 ホントだよっも、ホント、組のみんなを纏めるの、倧倉、だったんだから、ね ごめんっお ずっず、トド束の匱音は聞いおいた。 月に䞀床必ず連絡を取り合うようにするのが、䞀束が出お行く際に亀わした玄束で。その連絡の時、い぀もトド束は䞀束に愚痎や䞍安を零しおいた。 それを、䞀束は電話で聞くこずしか出来なかった。自ら出お行った身であるし垰る぀もりもなかったけれど、匱っおいる匟に手を差し䌞べるこずはしおやれなかった。 けれど、これからは匟が代わりに背負っおくれおいた重荷を、自分が背負うず決めた。もちろん、愛する男の為に芚悟を決めたのもあるが、䞀床は手攟しかけた倧事な匟達を、今床は自らの手で、その身で、守るず決めた。 倧䞈倫。もう逃げないから。 んでも、ボクだっお十四束兄さんだっお、䞀束兄さんの兄匟だからね。䞉぀子だからね。だから、兄さんにばっかり背負わせる぀もりは、ないよ。 涙声ながらしっかりず語るトド束に、䞀束は苊笑する。 さすが俺の兄匟だわ。 よく分かっおらっしゃる。ず返せばトド束はにっず笑いながら、だっお䞀束兄さんの匟だもん♪ず錻を啜った。 ず、トド束の携垯が鳎るのに、トド束が䞀束から䜓を離した。 はいはヌい。あぁ、うん。うん、倧䞈倫だよ。そう、ずりあえず党郚。はヌい、よろしくねぇ♪ どしたの んヌそうは蚀っおも䞀束兄さん、ふらっず出おっちゃう可胜性もあるから、アパヌトは即時解玄の、荷物は党郚運び出しするからね。これはその電話。 え た、䞀束兄さん真面目だから、ちゃんずやっおくれるず思うけど念の為♪ こんのドラむモンスタヌ えぞ♪ず笑うトド束に、お前はそういう奎だよず䞀束は息を吐いた。 ぀ヌか、暫くはあのアパヌト、カラ束に䜏んで貰う぀もりだったんだけど。 えヌ、でもカラ束さんお兄さんの恋人でしょこの家で良くない それ、いろいろず問題発生しない 提携亀枉䞭のマフィアではあるけど、若頭のツレならそっちのが優先床䞊でしょ。父さんだっお敵察勢力の䞋っ端の女の愛人、䞀時期ここに眮いおたし。 そうだったね 子䟛の頃、父芪が䞀目惚れした䞊可哀想だから、ず傷だらけの、圓時敵察関係だった組の構成員だった女を連れお来た時のこずを思い出し、䞀束は倩井を仰いだ。 あヌうん、そういうの、ありなのか どうしたの䞀束兄さん。 いやうん。俺、もう䞀個腹括るこずあったわ。  䜕をず聞くトド束に、䞀束は䜕でもない。ず返すだけだった。 [newpage] でね次が埅ち合わせ堎所の広間 屋敷のほが党おを案内し終えた十四束は、トド束達ず合流する広間ぞず人を連れお来た。 瞁偎に面した、広い和宀。 うっひょヌ♪庭日本庭園すげぇ おそ束が、瞁偎の向こうにある広い庭に目を茝かせる。 やっぱり日本庭園には池だよなニシキゎむっお居る!? 居るよヌ綺麗なのいっぱい わヌ芋おいい!?芋おいい!? いいよヌあ゚サあげお良いよ 庭ぞず飛び出すおそ束の埌を、゚サを持った十四束が远い掛ける。 広い和宀に座りながら、おそ束兄さん、日本庭園に興味なんおあったのか日本語を勉匷する䞊で日本文化にも觊れお、いろいろ芋おみたくなったらしいよ。そうか。盞倉わらず蚀動が子䟛みたいだな。カラ束を迎えに来る぀いでに、芳光したいずか抜かしおた。うちのファミリヌもただ安定しおないのに。楜しいこずが奜きなおそ束兄さんらしい。ずカラ束ずチョロ束は笑っお話し蟌んだ。 いやぁ、うちもニシキゎむ飌っおみないチョロ束ぅ♪ず、やっず垰っおきたおそ束が笑うのに、飌うかそんなもんずチョロ束はおそ束を斬り䌏せる。 ったく、日本かぶれかよ。 だっおぇ、やっぱ俺らも血は日本人じゃん それ関係ないでしょ。 あえヌマフィアさん達は、日本人なの 生たれも育ちもむタリアだが、䞡芪が日本から移䜏しおきた日本人なんだ。 ほぞぇヌなんかなんか囜際的っすね カラ束にキラキラずした瞳を向ける十四束に、カラ束は笑う。 あ、そヌだカラ束。お前、垰っお来いずは蚀わないけど䞀床はこっち戻っお来いよな。みんなお前の垰りを埅っおんだ。 そうなのか。じゃあ、近々䞀床むタリアに戻らないずな。荷物もいく぀かこっちに持っおきたいし。 ぞらりず笑うおそ束にカラ束が考えおいるず、しゅんず眉を䞋げた十四束がカラ束を芋䞊げた。 カラ束さん、垰っちゃうの 䞀時垰囜するだけさ。䞀束ず䞀緒に居るず決めたからな。ちゃんず戻っお来るぞ そう蚀っおカラ束が十四束の頭を撫でれば、十四束は擜ったそうに目を閉じた。 そこぞ。 お埅たせヌ♪ 䞀束を連れたトド束が、広間ぞず顔を出した。 っ うっひょヌ䞀束兄さんの和服ひっさしぶりに芋たヌ 興奮した様子で、十四束がトド束ず䞀束の元ぞ駆けおいく。 䞀束は藀玫色に、黒ず薄墚の垂束暡様の垯を締めた、着流し姿で珟れた。 そんな䞀束を芋お、カラ束が胞を抌さえる。 カラ束どしたの や、やばい やばい䜕が きょずんずするおそ束に、カラ束は真っ赀になった顔を向けおは眉を䞋げた。 い、䞀束がカッコ良すぎる 重症だなぁカラ束の奎 重症っおいうか、末期でしょ。 兄ず匟に呆れられおいるこずにも気付かず、カラ束はただただ䞀束カッコいいず蕩けた衚情で䞀束を芋぀めた。 あ、䞀束兄さん、忘れ物。 ふいに、トド束が肩に掛けおいた矜織を倖した。 その黒い矜織の背には、束の王。 束野組においおその矜織は、若頭である蚌。 はい。 トド束が、その矜織を䞀束の背に掛ける。淡い玫に、その黒はずおも映えた。 それを満足げに眺めたトド束ず十四束が、揃っお䞀束に頭を䞋げる。 お垰りなさいたせ、若頭。 お垰りなさい、若頭。 お垰りなさいず口にする匟達の頭を、䞀束はよしよしず撫で付けた。 ん、ただいた。でも、そんな改たった蚀い方しないで。お前らは、俺の匟なんだから。 はい䞀束兄さん 䞀様に笑う匟達に笑顔を返した䞀束は、そうしおマフィア達の前に腰を降ろした。 人づ぀が向かい合う圢ずなり、䞀束から順に頭を䞋げおいく。 改めお、束野組若頭、束野䞀束です。 若頭代理から倉わりたしお、束野組若頭補䜐、束野トド束です。 右に同じく、束野組若頭補䜐、束野十四束です 䞀束達の蚀葉に、おそ束達も互いを芋ながら頷く。 挚拶には、挚拶を返さなくおは。 ご挚拶どヌも。Pino familyボス、おそ束でヌす。 改めお、Pino familyボス補䜐、チョロ束です。 Pino family参謀から倉わっお、Pino family日本支郚トップ、カラ束だ。 さお。それじゃあ早速仕事の話でもしたしょヌか。 キシシず䞀束が笑うのに、おそ束もにやりず口元を歪めた。しかし、はっずおそ束が思い出したように暪を芋た。 そこには、盞倉わらず恋人に釘付けなカラ束。 ずりあえずカラ束、お前はあっち。 はぇっ!?な、䜕でだ!? なんかいろいろりザい。 ほらほら、貰っおやっおようちの次男坊♪ずおそ束がグむグむずカラ束の肩を抌す。䞀束ずおそ束ぞ芖線を蚀ったり来たりさせおいたカラ束は、やがお䞀束ぞず頬を染めた顔を向けるず眉を䞋げた。 い、䞀束暪、いいか どヌぞ。 窺う芖線にNOずは蚀えない䞀束が頷けば、ぱぁっず笑顔を咲かせたカラ束が䞀束の暪ぞず駆けおは遠慮がちに座り蟌んだ。 着物、だったな䌌合っおるぞ䞀束。カッコいい そりゃどぅも にぞっず笑うカラ束に䞀束が恥ずかしそうに眉を寄せる。反察偎の暪の末匟からは、お熱いねぇ♪なんおダゞたで飛ばされた。 もうっほんず仕事の話したすから パンパンず手を叩く䞀束に、堎を締めようずする䞀束、カッコいいずカラ束が零す。やはり末期だずカラ束の兄ず匟は思った。 はいはい仕事の話ねヌ。ずいうか、たずはおたくらが䜕をしおるか聞きたいねぇ。ダクザっお䜕やっおんの おそ束が銖を捻るのに、䞀束が口を開く。 え、倚分マフィアさん達ず倧しお倉わんないよ。 ただ、うちの組は比范的倧人しいタむプのダクザもんでね、クスリず売春は埡法床にしおんの。売り䞊げずしおは金貞しず的屋、身内のお遊び皋床に博打麻雀ず䞁半賭博をちょっず。あずはうちが昔から持っおる土地で舎匟ずかが店経営しおたり。 確認も含めお䞀束がトド束を芋れば、トド束は頷いお远加ずばかりに声を䞊げた。 殆どの皌ぎは的屋ず経営だよ。うちは割りずクリヌンな組なんで。あずは、赀塚区の治安維持も独自でやっおるよ。衚の人間が起こした事件は譊察にタレコミしお、裏の人間が起こした事件はこっちで凊理しおる。 なるほど、確かにそんな倉わんないけどず、なるず。提携っ぀っおも出来るこずは限られおくんねぇ。クスリを扱っおないなら歊噚はどう銃ずか欲しい うちは歊噚も売買しおっけどず笑うおそ束に、䞀束はトド束ず顔を芋合わせ眉を寄せた。 チャカはたぁ必芁なくはない、けど今は間に合っおるんだよね。 日本は銃刀法に厳しいからさ、特に銃火噚はなかなか持ち蟌むのに手間が掛かるんだけど あヌ、その蟺の密茞ルヌトから確保させなきゃダメか。それはもっず束野組さん方ずお近づきになっおから、っおのが楜だね。 互いに利益があり、か぀手軜な方法ず、䞀束ずおそ束はそれぞれ銖を捻った。 ず。 むタリア料理店、なんおどうだ 今たで静かだったカラ束が手を䞊げるのに、䞀束ずおそ束がきょずんずした。 むタリア料理店 あぁ。束野組の土地を借りお、オレ達が店を出すんだ。乗っ取る前のファミリヌでも、店の経営はしおいただろ カラ束がおそ束を芋遣るのに、おそ束も芖線を斜め䞊にしお考える。 あヌ、そうね、その蟺の経営は、これからも継続しおいく぀もりだしなるほど、日本支店っおこずか 食材も酒も食噚類も党おむタリア補の、本堎むタリアの味を、日本で出来ないだろうか うんうんず頷くおそ束が、にやりず䞀束を芋据えた。 どう若頭さん。土地を借りる金、そしお売り䞊げの䜕かをおたくらに枡す代わりに、うちの店を出すっおのは 話題にもなるし地域掻性化にもなり埗る。䜕より、敵察しおる奎らに俺達マフィアの存圚を知らしめお、牜制も出来るんじゃねぇ ヒヒッ、乗った。 おそ束の蚀葉に、䞀束が笑った。そのたたトド束ぞず芖線を向ければ、理解を瀺したトド束が笑顔を返す。 土地は問題ない。ここ数ヶ月赀字続きの居酒屋があっおね、この間手を匕かせお、次に䜕かやりたい店があるか募集かけようずしおたずころ。 立地は 倧通りからは䞀本入るけど、駅から歩いお分圏内。 よし、そこ抌さえずけ。 はヌい♪ 経営の元締めをしおいるトド束の了承を埗お、改めお䞀束はおそ束を芋た。 たずはこんな感じから、ゆくゆくはチャカを仕入れたりずかしお、よろしくやっおいきたしょうや。 OK♪それじゃあ日本支店の出店を、圓面の目暙にするっおこずで♪ 䞀束が手を出すのに、おそ束も手を差し出す。 固く握手が亀わされお、人の話は纏たった。 あずは、父さんずオゞキ達に玍埗しお貰えれば、正匏に提携関係っおこずで。 あれこれで終わりじゃねぇの 俺はただ若頭。最終決定は組長の父さんにあるからね。 ダクザっお、芪兄匟の絆っおや぀が匷いよなヌ。 そりゃあね、そういう颚に成り立っおるからね。 マフィアには無いよなそういうのヌ。ずおそ束が話し掛けるのに無いねぇそういうの。ず返すチョロ束。 そんな人の向かいでは、䞀束兄さんが垰っおきたなら、父さんのお芋舞い行かなきゃそうだね十四束兄さん♪ず、十四束ずトド束が話しおいる。 それを眺めおいた䞀束はふいに、自分ず同じく呚りを眺めおいたカラ束に向き盎った。恭しく正座しおは、きょずんずしおいるカラ束を芋据える。 䞀束 提携の話に芋通しが立ったずころで、カラ束。 突然なんだけど俺の、お嫁さんになっおくれたせんか えっ 䞀束の蚀葉に、その堎の党員が氎を打ったように静たり返った。人間抜けな声を挏らしたカラ束が、パチパチず目を瞬かせる。 たぁ、お嫁さんっお蚀っおも日本じゃ同性婚なんお出来ないし、逊子瞁組も、俺は束野家から籍を抜けないから俺が幎䞋だず出来ないし、ただただ内瞁関係のたたになるけど それでも、俺はカラ束に、お嫁さんになっお、欲しいです。 お願いしたす。ず土䞋座する䞀束に、たず呚囲からの声が掛けられた。 え、えぇぇ!!!今!?ねぇむチマツ今!?え、今このタむミングでそういうこず蚀うの!? いや明らかにこのタむミングじゃないでしょ!!?それずも䜕!?お互いの兄匟みんな揃っおるから今蚀ったの!!? 䞀束兄さん結婚!?結婚すんの!? あヌ、䞀束兄さんがさっき蚀ったもう䞀぀っお、これ 䞀様に隒ぐ人に、それでも䞀束は頭を䞊げない。 い、䞀束 ぜ぀り、ず萜ずされる声に、頭を䞋げたたたの䞀束の肩が揺れた。同時に、再びその堎がしんずなる。 なん、ですか オレが、お嫁さんで、お前はいいのか 俺は、カラ束が、いいです  カラ束俺の、お嫁さんに、なっお䞋さい。 オレ、なんかで、いいのなら っ 僅かに震えたその声に、䞀束は顔を䞊げた。 目の前には、いっそ矎しく涙を流すカラ束。 カ、ラた オレでよければ喜んで っ 泣きながらぞにゃりず笑うカラ束を、感極たったように衚情を歪めた䞀束が抱き締めた。 互いの兄匟達に暖かい拍手を送られ、人は少し気恥ずかしそうに口付けをした。 . [newpage] おたけ。 それから、幎以䞊が過ぎた。 ずある倜。 薄暗い路地裏を走る、男が人。 『く、っそ聞いおねぇよタヌゲットが、ゞャパニヌズマフィアず、手を組んでるなんお』 『おっず。どこぞ行く぀もりだ子猫ちゃん。』 『っ!!』 走っおいた男はその声ず姿に足を止めた。路地裏を曲がった先、倧通りぞの出口に立぀、スヌツの男。 『もう鬌ごっこは終わりか぀たらないな。』 『っ、黙れっ』 懐からカチャリず銃を取り出した男の手を、それより先に銃を構えたスヌツの男が銃匟で匟く。 『っっ』 『ノンノン。銃なんおナンセンスじゃないか。最近店の経営の仕事ばかりで、䜓が鈍っおるんだ。少し、盞手をしおく、れ』 『な、がっ』 蚀いながら、スヌツの男は玠早く間合いを詰めるず盞手に拳を振り抜いた。寞分違わず顔面に拳を受けた男が、その堎に倒れ臥す。 『䜕だ、䞀発で終わりかこれじゃあ準備運動にも』 カラ束。 盞手の襟元を掎み䞊げおいたスヌツの男の元に掛けられる声。 その声に、スヌツの男はぱっず手を離すず再び倒れ蟌む男を攟眮しお駆け出した。 来おくれたのかダヌリン ふわりず笑い、カラ束が和服の男の胞に飛び蟌む。それを受け止めた男は、笑顔を浮かべるカラ束の頬を撫でた。 うん。無事カラ束。 圓たり前だオレがこんな䞋っ端にやられる蚳ないだろう心配性だな䞀束は 頬に圓おられた手に自ら擊り寄るカラ束が䞀束を芋れば、そうだったね。ず䞀束は笑った。 ず。 ィペむッショヌヌ!! 『ぐふっ!!』 䞀束ずカラ束の暪から駆け出しお来た黄色いカラヌシャツの男が、倒れおいる男の䞊に飛び乗った。 それを芋おいた䞀束の肩に、ポンず眮かれる手。 あれあれヌ䞀束兄さん、前にボクには、頭が最前線に立぀なヌずか蚀わなかったっけ 俺はただ若頭だし、嫁の迎えに来るのの䜕が悪い蚳 え、えぇもう、いいや。 十四束にトド束も来おくれたのか Grazie!ず笑うカラ束に、十四束もトド束もどういたしたしおず笑った。 『くそっ話が違う!!Pino familyのボスの匟が、たった人で日本に居るから簡単だっお聞いたのに』 『フヒヒッそれはご愁傷様。』 十四束に乗り掛かられた男が拳を握るのに、䞀束が笑い声を䞊げた。 『確かにPino familyのボスの匟は、日本圚䜏。でも、人じゃぁない。』 『そう、日本圚䜏のオレは、Pino familyず提携しおいるゞャパニヌズマフィア、束野組若頭の、お嫁さんだからな♪』 䞀束の銖に䞡腕を回し、カラ束はうっずりず埮笑んだ。 さお、ず。そろそろお呌びでないお客さんには退堎しお貰おうか。ね、カラ束。 あぁ。こい぀はオレの盞手だからな。䞀束達は手を出さなくおいいぞ。最埌はオレがやる。 䞀束に抱き寄せられたたた、カチャリず銃の匕き金に指を眮くカラ束。ヒッず声を䞊げる男に、その堎の党員が笑った。 この埌は、ブラック工堎のベルトコンベアの䞊で、なにずも蚀えない材料になっお楜しく回っおなよ。 た、死んだ埌じゃ分からないか。 ず口元を歪める䞀束の顔が、その男が芋た最期の光景だった。 さお、じゃあ十四束。そい぀は舎匟にでも運ばせお、そろそろ垰るよ。 あいあいあおれ腹枛っお来たかもヌ ぎょんっず動かなくなった男から退いた十四束が、トド束の背にくっ぀く。 倜の間食は䜓に悪いよ十四束兄さん。 えぇヌじゃあじゃあアむスは!? んヌ、アむスならいいよヌ♪ やったヌヌアむス買っお垰ろうよ トッティ、十四束にゲロ甘すぎ。 いいでしょヌ䞀束兄さんだっおカラ束兄さんにゲロ甘じゃヌん♪ そ、れは アむス䞀束オレも、アむス食べたい じゃあコンビニ寄ろう。 カラ束兄さんもアむス食べるのヌ!?じゃあ早く行こう あぁ行くぞ十四束 ほらぁ♪ たぁ、ゲロ甘なのに吊定はしないよね。 我先にず駆けおいくカラ束ず十四束の背䞭を芋ながら、䞀束ずトド束はそれぞれの恋人に目を现めながらその埌を远った。 そうしお、倜は曎けおいく。 .
ど う し お こ う な っ た <br /><br />ずいうこずではい班長さんずマフィアさん、完結です<br /><br />ずんでも蚭定倧爆発なので、お読みになる際はご泚意䞋さい<br /><br />起承転結の転ず結が䞊手く分けられなくお長々ずした完結線になった䞊、だらだらず完成に時間が掛かっおしたいたした ほんずは、人揃ったずころでプロポヌズで完結の぀もりだったのですが <br />やっぱり䞀束達の実家のお話も曞きたかった あずむッチの着物姿ね<br /><br />※マフィアを始めずしたその蟺りの蚭定、名称などは調べただけなのでふわっず流し読みしお䞋さい;;<br /><br />タグは必芁ずあれば远加しちゃっお䞋さい。<br /><br />それでは、倉化球蚭定の班マフィにお付き合い䞋さりありがずうございたした<br /><br />2016/03/24远蚘<br /><br />2016幎03月15日付<br />[小説] デむリヌランキング 13 䜍<br />[小説] 女子に人気ランキング 7 䜍<br /><br />2016幎03月16日付<br />[小説] デむリヌランキング 5 䜍<br />[小説] 女子に人気ランキング 53 䜍<br /><br />を頂いおおりたした<br />本圓に、班マフィシリヌズは党話を通しお倚くの方々に芋お頂けお感謝の䞀蚀ですありがずうございたす<br /><br />たぶん、匟束がダクザ、ずいうオチはうっすら気付いおいた方もいらっしゃるのではず思いたす。<br />今曎ながらほんず倉化球だなぁずは思うのですが、意倖にもタグやコメントで良い反応を貰い、安心しおいたす(笑)<br />『これはいい○○』タグ付けお頂いたの、初めお ///<br /><br />匟束で分けるず䞀束が長男になるので、この䞀束はほんずすごいお兄ちゃんだなず読み返しおみお思いたした。ず蚀い぀぀組を継ぐのは荷が重いので逃げおるんですけど(笑)<br />お兄ちゃんしおる䞀束も奜きです。兄束、匟束での分け方いいですね。<br />なかなかマフィア束ずいいデビめがずいい、機䌚がなかったので楜しかったです。<br /><br />パロは䞀味違う六぀子を曞けるので本圓に奜きです。ずいうかパロしか曞いお、ない <br />自分、どのゞャンルでもパロ倧奜きな人間なんですww<br /><br />埌日談的な番倖線的なものは、い぀かネタがあれば曞きたいな、ずうっすら思っおいたす。<br />ネタが、あればww あるかなww<br /><br />それでは本圓に、ブクマからタグからコメントから、たくさんの反応をありがずうございたした
元・終身名誉班長束野䞀束が、マフィアカラ束をお嫁さんにする話
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  自分じゃない䜓枩にくるたれお目が芚める感芚ずか、 身䜓の䞊に乗っかる男らしいのに现い腕の重さずか、 埌ろから抱き締められおるから髪にかかる静かな寝息ずか、 ピッタリくっ぀いた背䞭から䌝わる心音ずか、  誰かず䞀緒に過ごす暖かさは、凄く優しい。  矎圢は寝おおも矎圢の䟭ずか、䞖の䞭本圓に䞍平等だず思う。別に睫毛が長いずか女顔ずかっお事は無いのに、ディアンはなんでこんなに綺麗な顔をしおるんだろう  䜕ずなく頬に手を䌞ばしおみる。 少し瞌が動いただけで、起きる気配は党く無い。付き合う前に眠りが浅くお困るずか蚀っおたのはドコのどい぀だ。軜く抓っおみおも、ほら  眉が寄るくらいで起きないじゃねぇか。  コレで狞寝入りだったら埌が怖いけど、今日のはガチ寝だしお咎め無し。むしろ咎を蚀いたいのは俺の方だ。  起こさない様に腕の䞭から抜け出お、キングサむズのベッドから立った途端に感じる腰や背䞭、倪腿からの違和感は  ぀たるずころ、寝る前のアレやコレやがニャンニャンニャヌなコトが原因なワケで    ドラむ䞉連たでしか蚘憶無いんですけど、明らかにそれ以䞊の負担が残っおるっお、どんだけトんでたのかず     問い質したいけど埌が恐くお蚊けない  っ぀ヌかホモ歎ヶ月、凊女()消倱からヶ月半でコレっおどヌなの、普通なの二次元なら䞇々歳だろうけど䞉次元ホモ的にどうなんだ    「このっ、絶倫腐玳士が  」  溜め息぀いでに未だ倢の䞭の䞻犯に悪態吐いお、腰をさすりさすり䞻寝宀を出る。郚屋も廊䞋も颚呂もトむレも、党郚統䞀管理された空調気枩のこの家は造りから調床品から䜕たでも高玚品で、色んな意味で慣れるたでヶ月かかった。トヌタル幟らなのかは恐くお未だに蚊けない。  幟らなのかず蚀えば、 「おはようマヌタ。お前は早いな」  みゃぁ  ディアンが飌っおるニャンコたちの維持費ずか諞々ずかも、蚊いおない。  広いずいうか広すぎるリビングの䞀角を倧胆に䜿ったニャンコたちのスペヌスで、倧きなクッションの䞊にデンず陣取る老猫のマヌタ。俺はこの子たちでノルりェヌゞャンフォレストキャットっ぀ヌモフモフ長毛皮でおっきくおやんちゃで賢いニャンコを知った。  喉をゎロゎロ鳎らすマヌタの頭を撫でながら暪のキャットタワヌを芋るず、圌女の嚘二人ず息子は揃っおダラリず情け無い栌奜で倢の䞭。ペットは飌い䞻に䌌るっお、本圓なんだな    リビングの䜕凊からでも時間が確認出来る倧きな眮き時蚈が指す時間は午前時過ぎ。平日の今日、フツヌの䌚瀟で働く瀟䌚人ならずっくに起きおる時間で、基本朝番の俺はシフトに入っおる日は歀凊を出お職堎に向かう時間。文字通り毎日瀟長出勀のディアンは前たで毎日倢芋心地の時間。 たぁ、俺ずの同棲が始たっおからはこの時間たで寝おるのは俺かディアンが䌑みの日だけにはなったけど、それでも基本的に倜型な事に倉わりはない。接埅だかディナヌだかパヌティヌだかで遅い日が倚いのは分かるけど、 「もヌちょっず芏則正しい生掻に改善させたいよなぁ、マヌタ」  なぁぉ  この家で早起きか぀生掻リズムが固定されおるのは俺ずマヌタ、二人だけ。  銎染んできたギャル゜ン゚プロンを着぀぀枩めたフラむパンに卵を二぀にベヌコンを䜕枚か投入しお、食欲をそそる様な矎味しい音が立っおも、倧奜きな人は盞倉わらずベッドの䜏人。傍に居おくれるのは枩和しい小さな淑女ただ䞀人。 「お前も倧倉だったんだよなぁ、生掻䞍芏則なご䞻人様ずやんちゃで砎倩荒な子䟛たちに囲たれお」  ゎロゎロゎロ    キャットタワヌに登るのも億劫そうな淑女盞手にパワフルな䞉人の子䟛たちは暎れ攟題、ご䞻人様は䞍芏則な生掻    ニャンコらしくない皋賢い圌女はどんだけ苊劎しおいたんだろう  。ちょっず枩めたミルクを眮くず盎ぐに飲み始めた圌女を撫でたり、卵ずベヌコンの焌き加枛を芋たりする事数分。ガタ、ドタ、みぎゃっず聞こえおきたから、あぁ今日も姉二人に匟が撃退されたか っずリビングの方を芋れば予想通りに、シャンずお座りする姉二人の埌ろで匟は情けなく䌏せの䜓勢。で、揃っお俺を芋おいる。  ホワむトグレヌの豊かな長毛にアむスブルヌの瞳。マヌタず同じ色圩の圌圌女達に䌝わる様に、䞻寝宀の方向を指差しお䞀蚀。 「ご飯はディアンが起きおきたら。食べたかったら早く起こす」  ニャンコらしくない賢さは母猫譲りの子䟛たちは、ピンず耳を立おお聞き終えた途端、揃っおリビングを走り出おいく。身䜓の倧きなノルりェヌゞャンフォレストキャット×の重量は凄たじい  幟ら呌んでもなかなか起きおくれないディアンが盎ぐ起きるくらいには。 「マヌタは先に朝ご飯にしようか」  みゃ  今日はどれだけ子䟛ニャンコたちに遊ばれた髪型になっお起きおくるだろう  ニャンコ軍団お気に入りの猫猶をそれぞれの逌皿に出しお準備し終える頃、やっずキッチンに来たディアンの頭の䞊に息子ニャンコが乗っかっおいる光景を芋るのは、10分ちょっず埌の事。   ‐―‐―‐―‐ 「おはようディアン。凄い髪  」 起きるず自分以倖の誰かが居る。 猫たちずは違うヒトの枩もりを家に灯し、笑いかけおくれる存圚がどれ皋に愛おしいか、  この歳にしお初めお知った。  息子猫が飛び降りた埌の私の髪を撫でながら笑うカナデの腰を抱き寄せるず、数瞬顔をしかめお息を詰めるのは、昚倜匷いおしたった無理の代償か。  私よりも遥かに小さく小柄ながら、身䜓を䜿う職に就き、栌闘技を趣味ずしお嗜むカナデの身䜓は芋た目に反しお筋肉質で男らしくはあれど、その実、快楜に匱い事を知っおいるのは私ばかりだろう。圌が焊れる皋の時間ず回数をかけお同性ずのセックスに銎らした身䜓は最早射粟を䌎わない絶頂でしか満足しない事は、カナデ本人さえも未だ気付いおいないのかも知れない。 身䜓に負担が残る皋のセックスを、カナデは普段ならば嫌がるけれど圌の䌑前日の倜ばかりはその限りではなく、昚倜はそれ故に圌の箍が匛むたで繰り返しおしたった。腰を抱き寄せるだけで顔をしかめられおしたうのだから、身䜓に残った鈍痛たるや盞圓の物があるのだろう。 「痛みたすか」 「埡陰様で、腰からなにから違和感ありたくりだよ。絶倫野郎」  軜く舌を出しお䞍機嫌そうな調子で物を蚀う時、存倖カナデの機嫌は良いのだず知ったのは、盞愛ずなっお幟らか過ぎおからだった。未だ互いに譲れない様な口論や擊れ違いずいう事態に至った事は無いが、カナデの機嫌が非垞に悪くなった事は䜕床かあり、その時の圌は培底的に無蚀を貫く頑固さを芋せた。それ以埌私は、カナデの口数が少なくなった時は機嫌が悪く、赀面を䌎い顔を䌏せおいれば矞恥に悶えおいるのだず刀断する事にしおいる。  感情の起䌏よりも䞍機嫌ずなる事よりも、矞恥に傟く事の方が遥かに倚い。 「久方振りの噛み合った䌑日前倜でしたから、普段抑えおいる分も、奏  貎男が欲しかった」 「っ   ど 殆ど毎日せ、っくすしおんのに足んないのかよ」 「足りたせんね。党く足りない。䞀日䞭貎男ず繋がっおいようずも足りない皋には、私は奏を欲しおいたすから」 「な   っ――」  私がカナデぞの想いず欲求を有りの儘に口にし、態床に衚す床、圌は今の様に顔を赀く染めお隠そうずする。私の胞に顔を埋めおも、耳たで赀いのだから到底隠せ埗た物ではないのだが  そうず蚀っおは䞍機嫌になりかねないので口を噀む。幟らか間を眮けば、い぀でも圌の方から話し始める事も、知っおいる。 「  䞀日䞭ディアンの挿いった䟭ずか゜レ 䜕の拷問だよ 緩くなるだろ  」  小さな声、私を芋䞊げる目が最み震え、苊笑いの䞭にはにかんだ色が混ざるのは矞恥心故か。誘いを掛けおいるのかず、問いたい気持ちず軜い目眩を心䞭であしらいながらカナデの額にかかる前髪を撫で䞊げキスを莈るに留める。 「      でも  ずっず䞀緒に居られるなら、良いかも 」  カナデに察しおは危うい私の理性を揺さぶっおいるのはカナデ自身なのだず、理解しお貰える日は到底来ない様に思う。 [newpage]  [chapter:【バディず407 その】] 『みんなで猥談すれば良いのに』的なコメントから発生した䌚話文のみの小ネタ。 虎培ずが猥談ずいうか、近況に぀いお話しおたす。虎は盞倉わらず色々露骚です。  ネコの二人 虎目出床く貫通匏は終わったか はぁ第䞀声が゜レですか 虎確認は重芁だろ ぇ  そりゃぁ付き合っおヶ月過ぎお同棲ヶ月経ちたしたし たぁ  はい     虎開発期間はどのくらいで指だけだったか道具蟌みだったか はぇぇ、あの   虎ほら、さっさず吐けっお ぅう  ナニコレなんの眰ゲヌム      虎玠盎に蚀えば×゚ロ絵䞀枚 最初は指だけ。゚マネグラ ずかは、远々 ありたした   虎あぁ、぀たり埌ろの拡匵ずドラむずを同時に仕蟌たれたのか。やるなぁ瀟長。銎れたドラむっお最高だろ          頭真っ癜になるくらいむむです     虎俺はりェットオヌガズムより断絶ドラむオヌガズムだな            そ です、ね  虎たぁでも出さないず溜たるモン溜たるから出すのもむむけど                虎ヘタレの旊那にテク仕蟌むのがどんだけ倧倉か。その点姫川は瀟長がセックスアむデンティティ握―― あのっ鏑朚さん 虎ん、どうした ディアンに前觊られおも自慰でも、射粟出来ないっおオカシむですかセックス頻床は高いけどい぀もむっおもドラむで満足しおるのに出さないから悶々ず溜たっおくばかりで昇華出来なくおディアンの事ばっか考えお  俺今たで圌女盞手にもそんな欲求殆ど無くおむしろ歎代圌女に襲われる方が倚かったくらいに淡泊な質だず思っおたのにホモっおから性欲溜たる䞀方で゚ロい事ばっかリアルでも二次元でも考えおるんですけどコレっおどうなんですか 虎   ぁヌ 姫川、たず萜ち着け(切矜詰たるずワンブレストヌクになるっお瀟長が蚀っおたのはコレか )。そりゃぁお前が瀟長に䞊手く手綱握られお、そう仕蟌たれたんだろ。  仕蟌たれた  虎二次元王道「俺無しじゃ生きられない身䜓にしおやるよ」を、実践されたっおコト     はぇ 虎心配するな、腹の䞭に䞀物も二物も据えおるあの人がそうそう簡単に手離すもんか。このたたもっず䞊物に躟お貰え。 ぇぁ、はい。  虎(なかなか良いネタが手に入りそうだ) [newpage]  [chapter:【おたけ(The king of HERO tournament.)】] The king of HERO tournament.のタグにりッカリ觊発されお407の戊前ボむスずか考えおみた。 カナデ (ストヌリヌ䞉戊目。スピヌドず火力はあるがコンボが技連携のみで成立するので技厩しやカりンタヌで容易に突砎可胜) 開戊前 「捚おられた奎の気持ち、アンタに分かる」 (各キャラ応答→開始) (察虎培、察むワンのみ) 「そ アンタになら党力がだせるよ」 敗戊 「くっそぉ(絶叫系)」 敗戊(䜎率) 「ディア――っ(名前呌び掛けお止める)」 勝利 「これも仕事だから」 勝利(䜎率) 「良かった 間に合いそう」 (モヌド察ディアン) 「なんで、アナタが  」 (「偶には良いでしょう」) 「怪我しおも知りたせんから」 察ディアン(䜎率) (「カナデの本気を、芋せお貰いたしょうか」) 「  銬っっっ鹿かじゃねぇの怪我しお怒るなよ」 敗戊 「ただ、届かないのか 」 勝利 「手加枛すんなよ 銬鹿」 ディアン (カナデにストレヌト勝利時のみ乱入登堎。䞋段蹎りorカりンタヌからの関節技での固め手連携䞻䜓。アレな蚀動で途端に臭挂う雰囲気を䜜り䞊げるアレなキャラ) 開始前 「圌はずおも優秀な゚ヌゞェントですから  圌を砎ったその力、芋せお貰いたしょう」 (応答は䞻にドン匕き系) 敗戊 「圌に勝ったのも道理、ですか 」 勝利 「この皋床に負けるずは  圌には躟盎しが必芁ですね」 (モヌド察カナデ) 敗戊 「少し、遊び過ぎたしたか 」 勝利 「さぁ、垰っお躟盎しですよ」
407、亀際ヶ月半・同棲ヶ月。関係は至っお良奜。そんなある日の朝暡様。  ◆短文ずオマケでお送りしたす。40こずディアンには飌い猫が匹いたす。母猫マヌタ(11)ず嚘猫ディヌアずキリヌ、息子猫ラッシュ。ノルりェヌゞャンフォレストキャットです。カラヌは揃っおブルヌクラシックタビヌホワむト(こず奏はグレヌだず認識しおたすが)。モフモフニャンコ可愛いです。飌うならお手入れが倧倉でもこの子たちをお迎えしたい。  ◆次回は再び531がスレず死亡フラグを立おおくれる様です。のメアドゲットだぜ
【407】揃った䌑日の朝暡様
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かおりずタンデムでの垰り道 「(ここ信号芋づれぇな 唐突な黄色 )っず 」 60kmピッタリだが二人乗りの為ポンピングを倚めに止た  むにゅっ ず背䞭に柔らかい感觊  「 すたん。急ブレヌキだったか」 振り向いお確認するずかおりははにかんで 「ううん。党然倧䞈倫」 ず笑う (の割には背䞭に圓たるモノの感觊が矢鱈ハッキリしおた様な ) ――― 今床は倧きいが少し曲がりの深いカヌブ 「( 本圓に良く俺の動きに合わせおくれおんな )
!?」 むにゅっ 俺の䜓の傟きに合わせお慣れた様に傟いおくれるかおりだが  「(やはりたた背䞭の柔らかいのの感觊が匷たったような ) 」 埐にミラヌで埌ろのかおりの顔を確認するが盞倉わらずの笑顔だ ――― 「 暪颚が匷ぇな 少し加速するぞ」 「うヌん」 告げおから暪颚ぞの察応ずしお颚の幕を匵る為に加速し  むにゅっ (これは いくらなんでもひん掎み過ぎやしたせんかね ) 匷颚域を抜けお信号埅ち 「 かおり」 「 えぞぞ。バレた」 「集䞭力削がれちゃうだろ 」 「ごめん いやだった」 それは そりゃあ  「嫌ゞャナむデス 」 「あははりケる八幡。い぀も送っおもらっおばっかだからリアルタむムでサヌビス なん぀っお。りケる「りケねぇよ」ゎメン 」 「りケおる䜙裕がねぇよ」 「」 「ったく バむト代をオむル費甚に圓おる぀もりだったのが 進路倉曎だな」 りィンカヌをい぀もず違う方ぞ炊く 「八幡どこに「今日倜 お前倧䞈倫か」 うん 倧䞈倫 ううん。千䜳ん家泊たるから倧䞈倫にしずく」 「ん んじゃたっぷりお瀌しおやるからな」 「あはは八幡ケダモノヌ えぞぞ じゃあ 期埅しちゃおっかなヌ 」 「っ 」 唞るXR。比䌁谷八幡。セヌフティラむディングは極める気でも、県条䟋が守れそうにないです  むにゅっ コンビニ 寄っずくか。備え付けはアレだからな  [newpage] ――――― タンデム途䞭のドト○ルで(ス○バよりド○ヌルのが入りやすい) 「なぁ今曎だけどよ」 「䜕八幡」 「タンデム出来る様になっおから殆どツヌリングみたいなデヌトばっかりだがかおりはそれでいいのか」 「 ぶっ 」 笑われたよう  「あはは あはははは」 「 」 ちょっず拗ねるぞヌ 「ごめんごめん バむクバカな八幡からそんな蚀葉出るず思っおなかったから りケるwww」 「  俺だっおラむダヌであるず同時に そんくらいは考えるんだが 」 ちょっず唇を尖らせた 「あはは ありがずう八幡。でもあたし 䜕か八幡の埌ろに匕っ付いおるの倧奜きみたいだからさヌ これで ううん。これがいい」 「そうか ただ 気になっお な」 顔が熱いのが良く自芚出来ちゃうっお 「たぁでも」 「」 「せっかくなら普通のデヌトしおみる」 「おぉ 」 ――― ずいう蚳でカラオケにやっお来たのだが。なんずいうか察面匏テヌブルでも暪䞊びに座るモノなんだな リア充座りずいうダツか  「八幡䜕歌うの」 「 プリキ○アだな」 「 チョヌりケるwwwでもちょっずキモそうだけどめっちゃ気になる歌っお歌っお」 ずいう蚳でこのハピネスチ○ヌゞプリキュアの挿入歌を  「むノヌセ○トヌ♪むノヌ○ントヌ♪ なぁ、かおり」 「なになに」 「この四分割のパヌトの玫の所歌っおくれないか」 「いいよヌ。えっず む○ヌセントヌこんな感じ「はうあッ!?」八幡!?倧䞈倫」 「あぁ 倧䞈倫だ かおり 完璧だぞ 」 「そうなの えぞぞ ありがず」 い○なちゃんは歌う時は声優しめだからな かおりに近くn 「じゃあ次八幡䜕歌うヌ」 少し、気合いを入れ盎し 「 仮面ラ○ダヌクりガ だな」 映像が流れ始める 「おぉ懐かしいヌオダゞ○ヌだ」 ―― 「NOFEARNOPAIN 愛の前に立぀限り。NOFEARNOPAIN、恐れる物は䜕も無い。完党独走 俺が超えおやる 超倉身仮面ラむ ど、どうしたかおり 」 ふず隣を芋やるずかおりが目元を拭っおいた 「あ、あはは 䜕やっおんだろねあたし 䜕か 歌詞芋おたら今たでの事思い出しちゃった 」 「  」 「ここの 愛の前に立぀限り恐れる物は䜕も無いっお 八幡みたい。あ、愛の前かはわかんないか りケるね」 「 それは 」 無論、病院に運んだり、犯人を捕たえたり かおりを拐おうずした奎等をXRで暎行したり は、かおりの為 なのかもしれんが だからずいっお 愛ずいう優しいモノだけでの行動ではない 尚䞔぀、歌詞の通りの、仮面ラむダヌの様な気抂等そもそも俺には無いのだ ただ  「たぁ 恐れは ねぇな」 「 バカ」 「っおぇ」 たた脳倩チョップを  「八幡が恐れなくおも あたしは恐いよ 」 「 すたん 「けど 仕方ないもんね」 」 「あたしが奜きな八幡は、バむクバカの八幡は そうやっお恐れなくあたしを守っおくれる八幡だから 仕方ないね えぞぞ 」 「りケる」ず付けない蟺り、かおりも取り繕わずに蚀った蚀葉なのだろう  「たぁ その 俺は普段は亀通瀟䌚の䞭でい぀もびくびく怯えおるからな かおりは普段埌ろでもずっず笑っおっからお互いバランスいいだろ」 「ぷっ 䜕それりケるwww」 そう 普段コむツがこうやっお笑っおる事がもしふずした嫌な事で出来なくなった時に、たたこうやっお笑える様に恐れ無く俺が走れれば いい 「でも やっぱりもう少し倧事にしおよ。八幡」 「( もう 俺だけの出来事だ等ずはたるで口には出来んな )おう 」 そうしお次第に二人の距離がれロにn「ポテトお埅たせしたしたヌ♪」 『  』 [newpage] ――――― ラヌメン 「八幡、どこのラヌメン屋行くのヌ」 「今日はがうそう家ずいう千葉の家系でもかなりオススメな所だな」 ―――  店前の1400GTRはたさか  「着いたぞ」 「おぉヌ。豚骚臭やばヌい」 「混んでるからカりンタヌでもいいか」 「うん」 二人しおカりンタヌに座った 「ここはな、ラむスがセルフサヌビスでおかわり無料なんだ」 「それをスヌプに浞した海苔で巻いお食べる気なんでしょ」 「バレたか だっお滅茶苊茶りマむんだもん 」 「そりゃそうだろうけどねヌ。あんたり食べお病気になんないでよヌ。XRもあんたり重いず機嫌悪くなっちゃうぞヌ」 「わ わヌっおる「そうだ そのたた糖尿病になっおしたえぇ 」 先生 」 党く気付かなかったがかおりの隣平塚先生だった  「あ平塚先生 ですよね」 「うむ 君が折本さんか その通り私が平塚だ 幞せそうで䜕よりだよ 」 「あ、はいありがずうございた―す」 「おいかおり 今の先生にあんたり満面な笑みを芋せ「比䌁谷ぁ 」ひゃい 」 「ノルマでラむス倧盛り五杯だ 付き合えェ 」 「えぇ 「頑匵れ八幡」いやさっきず蚀っおる事違うじゃねぇ「ほら来たぞ比䌁谷食うぞ」 はいはい 」 「比䌁谷」 「はい」 「ラヌメン、旚いか」 「 うす。旚いです」 「ん 折本さんは」 「めっちゃ矎味しいです」 「そうか バむクで来お食べるず䞀局だろう。その味、倧切にな」 「 うす」 「はヌい」 先生から教えおもらっお、それをかおりに䌝えられた。恩人ず圌女。䞍思議な組み合わせだがそんな二人ずラヌメン食えんのが、味以䞊に沁み「おかわりィ」「あはは先生りケる」  た、いいか お終い [newpage] あずがき なんずいうか八折䜜品でただむチャむチャしおんのそういえば曞いおねぇなずいう事で曞いおみたしたパッパっず曞けるので楜しいですね。たたその内違うカプでもやりたいず思いたす。リク゚ストなんかもお埅ちしおたす。 次は少し毛色の違う䜜品になるかもです。よかったらたたお付き合い䞋さい ありがずうございたした
短線 八折ショヌトショヌトの詰め合わせです<br /><br />よろしくお願いしたす。
八折詰め合わせ
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 黒森峰女孊園ずいうのは、薄暗い堎所だった。  そういう堎所をゆらゆらず挂う趣味でもあるのか、10日あれば7日は曇り、運が悪いず雚や雷ず蚀ったような有様であった。  そういった堎所だからであるのか、校則ばかりが厳しかった。靎䞋だの、むンナヌだのに至るたでしっかりず取り締たられた。  食べ物は地䞋の化孊工堎から取れおくるじゃがいもが倧郚分で、矎味しかったのだが、無難な矎味しさぐらいしか無い。 『陞䞊に垰りたいなら垰れ退孊凊分にしおほしいならい぀でもしおやる』  教垫陣の口癖であった。  そうやっお怒鳎られお、すねくれお、孊園艊の端っこたで行っお、海を眺めるのだ。  どこも途切れおいない氎平線は、あんたりにも広くお、たたに雲の切れ目が芋えおも、すぐに塞がっおしたうようなもので。  わざわざ端っこたで行ったのに、こんなものしか芋れないのかずしょがくれお、すごすごず寮に匕き返しおいくのだ。 『垰れたら垰りたい。だが、普通に考えお垰るわけに行かないだろうが』  ぶ぀くさず文句を蚀い぀぀そうやっお垰るのが、黒森峰女孊園に入孊したおの少女たちの、決たり事であった。  だから、生埒党員が自分で自分に蚀い聞かせおいる。重苊しさや息苊しさを䜜っお、自分も巻き蟌んで他人にも抌し付けおいる。  寮の䞭など酷いものだ。たかだか䞀幎か二幎早く入孊しただけの違いだずいうのに、その違いが絶察的なように珟れおいる。  たたの晎れの日に垃団を干す堎所であったり、ゎミ捚おの圓番であったり、倧济堎の時間垯であったり。  厳しい校則のせいで、暎力を䌎うような虐めだけは無いのが救いだったず思う。  そういう堎所だから、仕方ないんだ。  そういう堎所に来おしたったんだから。  そうやっお蚀い聞かせながら、仕方がないから生きおいた。  䌝統的ずいえば聞こえのいい叀がけた寮。  その薄っぺらい壁に遮音効果が有るずは思えなかった。  だから、䞭孊生になっおハマっおいた、芚えたおのオナニヌをする気になる機䌚なんお早々無く。  男を連れ蟌もうにも、女孊校に男ずいえば教垫陣の既婚のおじさんが粟々でそんなこずが出来るわけもなく。  たたに垂街地の若い男性が居おも、校則や寮の芏則のせいで知り合う機䌚は皆無だった。  そのせいで、股に蜘蛛の巣が匵った女しか居なかった。仮に男の子ず知り合えたずしおも、自分も含めお気立およく出来る人間がいるずは思えなかった。  郚屋でするこずずいえば宿題か、ネットサヌフィンか、音楜でも聞くか、その皋床。  突っ蟌んだちょっずお高めのむダホンからはお気に入りの曲が流れる。  䞀番お気に入りだったヘッドホンは、音が挏れおいる気がしお。  䞀人きりの寮の個宀の䞭で䜕をしおいるかさえ、陰鬱な連䞭に知れ枡っおしたう気がしお、埃をかぶっおいた。 『 蚀葉にできず凍えたたたで 人前ではやさしく生きおいた しわよせでこんなふうに雑に 雚の倜に君を抱きしめおた 道路脇のビラず 壊れた垞倜灯 街角ではそう 誰もが急いでた きみじゃない 悪いのは自分の激しさを隠せない僕のほうさ Lady きみは雚にけむる すいた駅を少し走った どしゃぶりでもかたわないず ずぶぬれでもかたわないず しぶき䞊げる君が消えおく 路地裏では朝が早いから 今のうちに君を぀かたえ 行かないで行かないで そう蚀うよ 』  郚屋の䞭でお気に入りの曲を口ずさむこずさえ、蚱されない。 黒森峰女孊園ずいうのは、薄暗い堎所だった。 そこに生掻する少女たちも䟋倖はなく、容姿がいいず持お囃されるこずがあっおも、倧䜓は薄暗い連䞭だった。  そしお、そんな堎所で出䌚った副隊長ずの始たりは、頭突きだった。  熊本の孊園艊の䞊に存圚する黒森峰女孊園。  戊車道の名門、党囜倧䌚九連芇であり、今幎の党囜倧䌚の最有力優勝候補。  それの入孊匏が終わり、説明を聞くためにそれぞれの教宀ぞず足を運んでいる途䞭だった。  誰かが䜕かに躓いお、呚りの「あっ」ずいう驚愕が聞こえた。  それが䜕かを確認しようず振り向く前に、埌頭郚に衝撃が走った。 「ぎぃっっ」  匷烈な䞀発だった。䞭孊時代に先茩に生意気だず䞀発き぀いのをぶちかたされた時も、錻血を出しながら錻で笑う䜙裕はあった。  これはそういうレベルではなく、芖界が涙で滲み、頭を抑えお地団倪を螏みたい気分だった。 「䜕すんのよ  ッ」  なんずか巊手で埌頭郚を抑えながら振り向く。  埌ろには、茶髪のボブヘアヌがいた。 「ご、ごめんなさい  痛っ  転んじゃっお  」  目の前の少女は䞡手で頭を抑えお、申し蚳無さそうにおどおどず謝った。  それが、逞芋゚リカず西䜏みほずの出䌚いだった。  次にみほを芋たのは、入孊埌、初めおの戊車道の時間。  隊長である西䜏たほの隣に䞊んでいた。 「改めお挚拶をさせおもらう。諞君、入孊おめでずう。そしお、黒森峰女孊園戊車道チヌムにようこそ。隊長の西䜏たほだ」  効よりは幟分か暗い髪色で、険しい目をした女性だった。  戊車道の由緒正しい流掟ずしお知られる西䜏流、家元の実子であるが故に、西䜏たほは䞀幎生の時から隊長を務めおいる。  そう、雑誌には曞かれおいた。  それは正確ではない。西䜏たほは自分自身の実力を圓時の戊車道履修者党員に芋せ぀け、誰にも文句を蚀わせず、前幎床の党囜倧䌚においお優勝を果たした匷者である。  隊長の地䜍は、西䜏の名前のおかげではなく、西䜏たほずいう遞手の実力がもたらした圓然の垰結だった。 「高校生掻が始たっお早々に䞀幎生同士の玅癜戊を行ったのには理由がある。たず、私達が君たちの名前よりも先に実力を芋おおきたかった。黒森峰女孊園においおは実力が党おだ。䞭孊時代には有名だった遞手もこの䞭には居るだろう。逆に、䜙り結果が䌎わなかった遞手もいるかもしれない。だが、それは昔の話ずしお切り捚おお欲しい。私達はそういった色県鏡で君たちを芋るこずはしない。有るのは実力。必芁なのは勝ちに行く力のみだ」  そしお、姉の暪に立぀西䜏みほもそのようにしお実力を瀺した。  7VS7で始たった玅癜戊。  結果は、残存車䞡7䞡ず残存車䞡0䞡ずいう圧倒的なワンサむドゲヌムだった。  西䜏みほずいう怪物盞手に、他の人間が䜕かを出来る䜙地はなかった。 「詊合の経緯は芋おもらえたず思う。その結果を螏たえ、西䜏みほを副隊長ずしお迎えるこずに決めた。圌女は実効だが、決しお身内の莔屓目線で芋おいるわけではない。この䞭の誰よりもこの地䜍に就く資栌を持っおいるず、私は確信しおいる」  チヌムに入った初日に副隊長になるなど、普通ならありえないこずだ。  だが、普通ではなかった。  その異垞性を呚り党おに知らしめるための玅癜戊だった。 『       任呜蚌        西䜏 みほ 殿    貎殿を黒森峰女孊園戊車道チヌム副隊長ずしお任呜する。  今埌も倉わらぬ掻躍を期埅する。  平成  幎 四 月 十二 日    黒森峰女孊園 孊園長      』  あたりに急いで曞かせたのか、䜕幎なのかを瀺す郚分が空癜の任呜状だった。  略匏ながら任呜匏が行われ、任呜蚌が手枡される。  車庫の䞭に反響する拍手の䞭、副隊長はずっず居心地が悪そうだった。  だが、居心地が悪くずも、戊車道は最も玠質が合臎しおいたものだったのかもしれない。  倩才。その二文字は口で蚀うのは簡単だが、そう呌べる人間などどれだけ探しおもそういるものではない。  しかし副隊長は、間違いようもなく倩才だった。 「すみたせん、チャヌチル走行䞍胜」 「こちらもですマチルダ、撃砎されたした」  早いもので、入孊からは䞀月ほどが経ずうずしおいた。  孊園生掻になれるの間もなく、他校ずの緎習詊合が行われおいく。  そんな䞭行われた聖グロリアヌナの緎習詊合も、なんの危なげもない勝利を玍めおいた。  盞手の孊校が匱かったわけではない。  こちらが、隊長ず副隊長が玔粋に匷すぎた。  撃砎された車䞡数はこちらが1。あちらが8。䞀方的ず呌んで差し支えがない勝利だった。  だが、黒森峰女孊園は完璧を目指す。  撃砎された1䞡のメンバヌは、厳しめの叱責を受けた。  その車䞡に乗っおいたのは5人。私が乗っおいた車䞡だった。  別に殎られたり蹎られたり眵られたりするわけではない。  ただ校舎の倖呚を日を分けおいいから100週しおこいずふざけた呜什をされただけだ。  校舎の倖呚は玄4km。単玔蚈算で400km。 「頭悪いんじゃないの  あい぀ら  」  初日はご䞁寧に先茩方が芋匵りに来おくださっおいたので、5週ほど埋儀にこなした。  それでも20km。そんなに走るなら最䜎でも自転車を䜿うだろうに。  こちずらヘリの運転だっお出来るんじゃあボケェず蚀い返しそうになったが、流石に蚀わなかった。  ぞろぞろになりながら、校舎の倖にある広堎たで来お、力尜きおベンチの䞊に倒れた。  この広堎はい぀も誰もいない。  校舎や各皮倉庫の圱になっおいお薄暗くお、誰も寄り付かない。  ゞュヌスの自販機があっお、せいぜい数人が座るベンチがあっお、雚よけがあっおそれだけ。  䜕も無いから、誰も寄り付かない。  だから郜合が良かった。寮生掻で匕っ切り無しに誰ずでも居なければならないので、こういう時くらい誰も居ないほうが、良かった。  汗をタオルで乱雑に拭いお肩で息をする。  走っおいる間ずっずむダホンで流しおいた音楜を聞く䜙裕がようやく戻っおきた。  スポヌツ飲料を飲み干しお、喉ず唇を湿らせる。  少しだけ気分が良くなっお、口笛を吹いた。  耳元から流れる音楜に合わせお、吹いおいた。  ♪♪ 「  逞芋さん」 「  副隊長」  それに誘われたのか、芋知った顔が珟れた。  ずたんに恥ずかしくなっお、口笛をやめる。 「あ、口笛  やめるの」 「  たぁ、人前ですし」 「䞊手だったから、もう少し聞きたいな」 「そ、そうですか」 「うん。  私、口笛ずか吹いたこずないから、刀らないけど、䞊手だず思う」 「  はぁ」  吹いたこずがない、のか。  䞖間知らずずいうか、お嬢様ずいうか。  そういう人間ずは皋遠い庶民には、考えも぀かない䟡倀芳だ。 「  じゃあ、お蚀葉に甘えお。おきずヌに吹きたすね」  笑わないでくださいよ。  そう蚀っお口笛を再開した。  みほは埌ろのベンチに座っお、背䞭合わせで聞いおいた。  小孊校の頃ピアノをやっおいた時期があったが、こうたで聞き惚れるように耳を傟けられた事があっただろうか。  少しだけ恥ずかしかったが、悪い気はしなかった。  もう少しだけ玠盎な蚀い方をするず、嬉しくお、楜しかった。  それから、みほずは毎日のようにここで䌚うこずになった。  みほも、人付き合いが苊手で、あたり倧勢の前に立぀のは奜きではないようだった。  そういった苊悩を自分から口にするほど饒舌ではない、だが、察しおやるこずは出来た。  そういう関係性が奜きだったのは私だけではなかったようで、話しおいお、嬉しくなる床に、ふわふわずした茶髪を揺らすのだった。 「基瀎緎習ずしお䜓力向䞊で走るのは刀るわ。でも100週っお䜕走っお戊車の操瞊うたくなったら苊劎しないわよ  銬っ鹿みたい」 「うん  でも、なんか、䌝統みたいで。私䜕も蚀っおなかったんだけど  先茩がそうやっお抌し切っおお」 「めんどくさいわね  そんなもん䌝統にしおどうすんのよ時代遅れの銬鹿共  」 「  ごめん」 「いや、別に副隊長に蚀ったわけじゃなくおね  」  そういう事を続けおいく内に、敬語は取れおいた。  別に䜕かきっかけがあっおどうずいうこずも無かったが、䞍思議ず、そうなっおいた。 //////////////////////////////////////////////  そしお、党囜倧䌚が始たった。  盞手校の緎床も4月から高たっおきたようで、少しず぀苊戊するようになった。  だがそれは、あくたで少しだけの苊戊であっお。  勝ち続けるこずには違いがなかったし、ちょっず緎習のスケゞュヌルがハヌドになるくらいで特に倉わったこずはなかった。  攟課埌の、二人の広堎における関係も、別に倉わるこずはなかった。  今はただ、倉わらなかった。 //////////////////////////////////////////////  みほが自販機で買うのは、決たっおぶどう味の炭酞ゞュヌスだった。  120円の猶ゞュヌスを、みほはたいそう気に入っおいるようだった。 「ねえ、い぀もそれ飲むわね」 「うん」 「奜きなの」 「高校に来お初めお飲んだから、なんか、気に入っちゃった」 「  そう」 「家じゃこういうの飲たせおくれなかったから、なんか、気に入っちゃったんだず思う。    ごめん、私うたく喋れないや。自分でもわかっおないから、うたく䌝えられない」 「  謝らなくおいいわよ。別に。奜きだの嫌いだのに理屈を぀けるほうが難しいわ」  蚀葉の端々から滲む西䜏の家はやはり、どこか異垞だった。  虐埅やネグレクトなど、刀りやすく深刻な異垞ではなかったものの、いささか芪や家の圱響力が匷かった。  たず、䜕をするにも家の家業が䞭心にある。  それは母芪を䞭心に展開されおおり、それが子育おぞず䌝搬し、みほが出来䞊がった。  炭酞ゞュヌスすら飲んだこずがない少女が。口笛を初めお吹いた少女が。  少女が無垢でいる前に、少女には西䜏の教えが叩きこたれた。タブラ・ラヌサ。そんな蚀葉がよぎった。  䞖間知らずず蚀われればそれだけの事かもしれないが、それだけには思えなかった。  ただ、それに口を出す気にはなれなかった。 「  優しいね、逞芋さんは」 「  別に、ふ぀ヌよ。ふ぀ヌ。優しいなんお蚀われたの、初めおかもね」  勉匷もできたし、運動もできたし、人䞊み以䞊に容姿も優れおいた。  それは謙遜ではなく、党おに眮いお結果を出しおきたから、そういう評䟡も受けおいた。  そういう過皋もあっお私は倧䜓の堎合に眮いお、他人を芋䞋しおいた。  小孊校ず䞭孊校ず、歯に衣着せぬ蚀動をする逞芋゚リカに察する倧抵の評䟡は嫌な奎だった。  そういう蚀い方を、西䜏みほ盞手にするこずは避けおいた。  みほは間違いなく倩才で、私には到底及ばないような人だったから。  䟋え日垞生掻においおこの䞊ない間抜けだずしおも、茝かしい物を持っおいたから、尊敬しおいた。  だから、少しだけ、優しくしおみようず思ったのだ。  そんな事は初めおだったけど、少し恥ずかしいだけで、別に悪い気はしなかった。  装甲の鉄ずどこかに䜿われおいる油ず履垯の䞋の土の匂い。  その蟺だけしか無い生掻はあんたりにもあんたりな気がしたから。  女子高生同士のこういう䞀時があっおも、いいんじゃないかず思った。  たたには戊車道を忘れお、家の事を忘れおも、思ったより誰も芋おいやしないぞず。  そう蚀っおやれる人間が、䞀人くらい必芁だろうず思った。 「゚リカ」 「え」 「逞芋さんじゃなくお゚リカでいいわよ。孊幎同じなんだし。副隊長さん」 「え、あ  じゃあ、私もみほでいいよ」 「そう。じゃあみほ、たた明日ね」 「  うん、たた明日。゚リカさん」  䞍噚甚なふにゃふにゃの笑顔を浮かべお、手を振られた。  埌ろを向いたたた、手を振り返した。 ////////////////////////////////////////////////  党囜倧䌚は準決勝たで来た。  盞倉わらずの勝利だったが、蟛勝だった。  出撃した車䞡は8䞡。撃砎された車䞡は5䞡。 『ク゜っ黒森峰め䞋品な、叩き朰すような䜜戊しかできんのか』 『はッケチ付ける前に勝っおみろ負けたら党郚意味ないだろうが』 『䜕をォ』 『野次飛ばす暇があったらさっさず垰れ負け犬が』  詊合が終わった埌少しだけケンカになった。  少し、数人出血するくらいのケンカだったが、たぁ倚分、少しだ。  䞡校の履修者の数を足せば䞉桁にも軜く登るだろうから、少しだず思う。  その喧隒を西䜏みほが、悲しそうに眺めおいたのが印象的だった。 ///////////////////////////////////////////////// 「ねえ、゚リカさん。勝぀のっお、そんなに倧事なこずかな」  そんな事があったからだろうか。  そんなこずを蚀い出したのは。 「  は私達みんな勝぀ために緎習しおるんじゃない」 「それはそうなんだけど、皆すごく必死で、怖いくらいだから、そこたでする必芁があるのかっお  」  蚀いたいこずはわからないでもない。  みほは実力に䌌぀かわしくないほどのんびりずした人だったから。  でも、黒森峰はそういう堎所ではなかった。  緎習には党力で取り組むし、詊合の埌には厳しい反省䌚が存圚する。  それらは党お勝぀ためであり、そのためには䜕もかもを惜したない、そういう堎所だった。 「それが黒森峰で、それが西䜏流でしょう。そこに副隊長が疑問を持っおどうするの」 「    」  お互いに、それきり黙りこくる。  䜕も蚀えないようだったので、自販機でい぀ものゞュヌスを買っお、手枡した。 「戊車道どころか、生きおれば嫌なこずくらい有るでしょ」  初めおの詊合の100週が終わったばかりだずいうのに、準決勝での被撃砎のために曎に呚回を远加されおうんざりしおいた。  最近は倕方にやるのが銬鹿らしくなっおきたので、朝方に䞀人早起きしお走っおいる。  お気に入りの音楜を聞きながら、自分勝手な時間垯に走っお、それでも尚銬鹿銬鹿しいのだ。  先茩共に食っお掛かっおやっおられるかこんなものず蚀うのは勝手だった。  だが、自分だけでなく自分の同幎代や先茩も揃っお、撃砎された者は皆課せられた眰則の校舎倖呚を走っおいる。  皆がやっおられるかず思っおいるだろう。さっさず終わっおしたえず思っおいるだろう。  だが、文句をこがしお誰かに圓たるこずはせずに、やっおいる。  それを考えるず、䞀人だけ文句をいうわけにはいかなかった。 「嫌なこずがあったら、口笛でも吹いおりゃいいのよ」  だから、皆それぞれ適圓に息抜きをするものだ。  方法は人によるし、回数も人による。 「おきずヌでいいのよ。おきずヌで」  ♪♪  口笛を吹いた。  近頃はめっきり暑くなっおきお、颚の匷い海䞊であっおも汗が滲んでいた。  颚鈎の音ずたでは行かないが、口笛を吹くず少しだけ涌しくなる気がした。  ♪♪  ♪///~^♪  調子の倖れた口笛が亀じる。  暪目で芋るず、みほが唇を突き出しおぞたっぎな音色を吐き出しおいた。  どうかななんお蚀いたそうな顔をしおいたので、 「  0点」 「えっ」 「たず、そんなに唇突き出さなくおいいから」  唇をひっ぀かんで、指導を始めたのだった。 ///////////////////////////////////////////////// 『悪倩候だっおいうのに、こんな道を通るハメになるずは  』  決勝のプラりダ戊。T-34、IS-2を始めずする重戊車郚隊に黒森峰女孊園は予想倖の苊戊を匷いられおいた。  しかし、それはあちらも同じだ。  川沿いの狭っ苊しい道を角ばった゜連補の戊車で远いかけおこざるを埗ないのがその良い蚌拠だった。  チャンスがあれば、食い぀くしか無い。  次のチャンスを埅っおいおは負けるだけだずいう刀断を䞋すしか無い。  お互いに远い぀められた接戊だった。  気が抜けおいた。誰も気づかなかった亀裂があった。  がばっず亀裂が広がり地面がズレお、隊列を組んでいた戊車の内䞀䞡が泥の飛沫を䞊げお飲み蟌たれたのだった。 『きゃあああぁああ』 『氎っ  氎が誰か』  恐慌状態に陥る車内の様子が、無線を通じおリアルタむムで䌝わっおくる。  ただの川に氎没したならただしも、䞊流から朚や石が流れおくるような濁流だった。  装甲に守られおいるから、おそらく倧䞈倫だ。  だが、沈んだ埌氎圧でドアが開かなくなったらどうする  それよりも前に砲塔等から浞氎が始たったら、䞭身の人間たちはどうする  その堎の党員が顔を芋合わせたが、埌ろから迫るプラりダの戊車が急かす。  結局、゚ンゞンを止めた車䞡はなかった。 『  倧䌚運営の救助車䞡が来るはずだ。攟っおおけ。ここで足を止めおは負ける』  無線から誰かの声が響く。  事実だった。狭い道で埌ろを取られお射皋内に収たっおは、抵抗手段が無い。  远手であるずか、仲間を眮いおいく埌ろめたさであるずか、そういった様々なものを振り切るために、゚ンゞンの回転数を䞊げた。  そんな䞭、䞀人が飛び出した。  躊躇なく川に飛び蟌み、激流に飲たれそうになりながら、戊車たで真っ盎ぐに駆けおいった。 『―――副隊長ッッ』  車䜓から顔を出しおいた隊員の䞀人が叫んだ。  その声の甲斐なく、副隊長は止たらず、川の䞭ぞず朜っおいく。  だから声は虚しく響くばかりで、雚の音ず川の音に飲たれお消えた。 /////////////////////////////////////////////// 「銬鹿者ォッ」  びり、ず空気を震わせるほどの怒鳎り声だった。  声の䞻は西䜏流の家元、叱責を受けおいるのは黒森峰の副隊長、西䜏みほであった。  あの埌、結局混乱した隊員たちでは勝負すらたたならず、こちらのフラッグ車からは癜旗が䞊がった。  黒森峰女孊園は、連芇の蚘録を二桁たで䌞ばすこずは叶わなかった。 「なぜあの時自分の持ち堎を離れ、攟眮したのです勝おない詊合ではなかったなぜ、勝ちを捚おた」  泥に塗れお茶色になったパンツァヌゞャケットから氎が滎り萜ちおいた。  雚の䞭、川の氎枩はマむナスに届こうかずいった有様であり、長時間浞っおいおは颚邪では枈たない事は甚意に想像できた。  よほど䜓枩が䞋がったのだろう、真っ癜な肌をしおいた。  家元から打たれた頬の䞀点のみが、ただただ赀く腫れおいた。  みほは俯いたたたで䜕も蚀わない。  䜕も蚀えないのか、望んで沈黙を遞んだのか、歯を食いしばっおただただ立っおいる。  そしお、それを取り囲む黒森峰の隊員も䜕も蚀わない。  なぜあの時持ち堎を離れたのか、ずいうのは家元だけが思っおいる事ではなかった。  より匷く勝ちを目指しおいたのは郚倖者の家元よりもむしろ、実際に闘う戊車道履修者の少女たちの方だった。  比喩抜きで血反吐を吐いた人間が居た。  撃砎された者に課せられる校舎の倖呚のカりントが、4桁に届こうかずいう人間が居た。  撃砎されたわけでもなく、友達付き合いなどでもなく、ただただ自䞻的に校舎の倖呚を走る人間が居た。  指先はささくれだっおおり、爪はひび割れおおり、幎頃の嚘らしく手入れにう぀぀を抜かす人間など、どこにも居なかった。  ここに居る人間に少女は居なかった。いるのは戊車兵。  行っおいる競技は戊車道であっおも、臚んでいるのは正しく戊争であった。  だから、庇う声など䞀぀もなかった。  あったかもしれないが、そういう声を出せるような堎所ではなかった。  逞芋゚リカも䟋倖ではない。  色んな気持ちが混ざり合っお、どちらの立堎に぀くかを決めきれず、そのような䞭途半端な気持ちではこの沈黙を砎る事は遞べなかった。  救いは圌女が副隊長であり、これたでの詊合に倚倧な貢献をしおきた事実であろう。  それが無ければ沈黙は怒号に倉わっおおり、糟匟する暇もなく凄惚なリンチが始たっおいおもおかしくはなかった。  勝利のみを求めるこの堎所では、その事に疑問を挟む䜙地など無かったのだ。  黒森峰は薄暗い。  ドス黒く、陰鬱で、たっすぐに、性根の腐った連䞭の集たりであった。 「    刀らない」 「  䜕がです」 「  なんで、人を助けお怒られるのか、刀らないよ」 「  ッ」  だからもう䞀床平手打ちが響いた時も、動じる人間も、止める茩も居やしなかった。 ////////////////////////////////////////////// 唟を吐き捚おるものが居た。  毒づいお、閉たったシャッタヌを蹎っ飛ばしお掟手な音を立おる者が居た。  それらを咎めるものもたた存圚せず、だが終わっおしたったものをどうこう出来るはずもなく。  戊車道履修者は思う存分に悪態を぀きながらも思い思いの堎所に、散り散りに散っおいったのだった。  鬱憀を晎らすために垂街地に向かった者や、冷えた身䜓を暖めるために孊生向けの倧济堎に向かった者。  倧郚分は寮に垰っおいったため、逞芋゚リカはそい぀らず顔を合わせたくなかった。  同じように考えた西䜏みほもたた、二人の広堎にたどり着いおいたのだった。  ぶどう味の炭酞ゞュヌスの蓋を、カチカチず開けようずしおいた。  なんずなく買ったものの、飲む気にもなれない。そんな様子だった。 「  詊合、お疲れ」 「うん、負けちゃっおごめんね」  たるで、負けたのは自分だけのせいのように蚀った。  数十人が参加しおいる競技で、そう蚀った。  別にアンタのせいじゃない、ずは蚀い切れなかった。 「  負けお、ごめん」 「うん」 「    ごめんなさい」 「いいっおば」 「ごめんなさい、ごめんなさいっ  、っ  ごめんなさいっ」 「もう、いいっお  。みほ」  粟䞀杯堪らえおいた涙が、瞬きをしただけでこがれおきそうだった。  みほは既にがろがろず涙を流しおいたが、だからこそ泣かないように努めた。  人を慰めようず思っおここたで来たんだから、こちらが泣いおはいけないず思っお、必死に感情を殺しおいた。 「  蚱しお」 「  それ、なんで私に蚀うのよ」 「なんで  なんでっお」 「隊長にでもなんでも蚀えばいいじゃない。なんで私蚱すだの、蚱さないだの、䞋っ端の䞀幎生の私に蚀っおどうするの」 「    っ  」 「副隊長の暩利で黙らせるか、隊長の呜什で黙らせおもらうか、どっちかじゃないの」 「  ぁ  う  、うぅううう  違う、それは嫌だ  西䜏の家は嫌だ。お姉ちゃんは䜕も蚀わないけど、きっずお母さんず同じですごく怒っおるから」 「  そう」 「黒森峰の他の人も、面ず向かっお蚀っお来る人はいなかったけどきっず同じで  でも、でも  ゚リカさんなら、゚リカさんだったら  」 「  うん」  矛盟。  そこには確かに突き立おるべき矛ず守るべき盟が存圚し、そのどちらも正しく、どちらも誀っおいた。  だから、どちらを眵倒すべきかずいうのは人によっお異なり。  戊車道における正道を歩み続ける西䜏流は、西䜏みほの正道を糟匟したのだ。  みほはみほなりに折り合いを付けながら西䜏ずしお生きおきた。  䞍噚甚でどんくさいなりにふらふらず蹎っ躓きながら姉か母のようになんずか振舞っおきたのだろう。  それが、䞍可胜になっお。最早䜕もかもを芋倱ったようだった。  西䜏流を善しずしお、勝利に生きるのか。  西䜏流を悪しずしお、銎れ合いだず眵られおも仲間を倧事にしたいのか。  䞀぀目の遞択肢を遞ぶにはあたりにも冷酷さがなく。  二぀目の遞択肢を遞がうにも、母も、姉も、仲間も、圌女を匟功した。  どちらも正しく、どちらも誀っおいたために詰み、涙を流しながらぐずる他に䜕も出来なかった。  それでも決断せねばならない。  その答えが䞀぀目であれ、二぀目であれ、圌女は生きおいお、時間は流れるのだから。  西䜏の理想に殉じるのか。みほの理想に生きるのか。  決められないずしおも、決めなければならない。  ――――ならば。  埌抌ししおやるのが、圹目ではないだろうか。  戊車に乗っおいる以倖はおろおろしおいるみほを、䞍噚甚で圓たりが匷い嫌な奎なりに。  どうにもならないず嘆いおいるならば、手をずっおどうにかしおやるこずで。  私たちは、友達になれるのではないだろうか。  考えねばならなかった。  遞択を、西䜏の膝䞋ずしお存圚する黒森峰女孊園の䞀員ずしお行うのか。それずも、逞芋゚リカずしお行うのか。  その遞択によっおどうなるのか、考えおから決断せねばならない。  どういう感情によっお私が遞ぶのか、みほがどういう蚀葉を求めおいるか、逞芋゚リカはみほにどうしお欲しいのか。  たかだか䞀人の蚀葉で䜕もかもを決められるず、思い䞊がらなくおはならない。党く以お柄ではない。  だが、䌌合わない事であっおも、必死で思考し、䞀秒を癟分の䞀にした。それを曎に千分の䞀にしお、砂時蚈の䞀粒よりも曎に短い時間の䞀個ず぀に倧脳を党呚した。  その䞀粒䞀粒は今たでの出来事。  戊車道の党囜倧䌚。  䞀回戊。二回戊。準決勝。決勝。  そしおあの事故。高校に入っおからの私の戊車道。  埌頭郚に頭突きをかたしおきたボブヘアヌの間抜け。  校舎裏の攟課埌の自販機前広堎。  逞芋゚リカず西䜏みほの、今たで。  総合しお、無理に意地を匵る必芁はないず思った。  なんの解決にもならないずしおも、家から針のむしろにされるずしおも、口笛でも吹けばいいず思った。  䞋手っぎでも、なんの解決にならない逃避でも、口笛をたた教えおやるこずくらい、䜕でもないず思った。  泣いおいたから、それがあんたりにも悲しそうで、なさけなかったから。  無理に涙を芋るのは、逞芋゚リカにずっおも蟛いこずだった。  他人ず関わるこずはそんなに埗意じゃない。  だから、党郚面倒なこずで、嫌いなこずだらけだった。  そんな事に真っ向から付き合うこずは無いんじゃないかず思った。  お互いに、傷を舐めながら過ごすのも悪いこずではないず思った。  ぐずぐずになっお、呚りの皮膚ごず溶けおしたうずしおも、手を繋げば隠せるのではないかず、そう思った。  だから、冷たかった手を取った。 「気にするこずじゃないわよ」  枩めればいい気がしお、こすりあわせた。 「䜕蚀われおも、みほが副隊長なんだから。あんなの攟っずけばいいのよ」 「次に勝っお  勝っお。結果で黙らせなさいよ」  口笛を吹いお、寮に送り届けるために歩き出した。  恥ずかしかったから、今たで友達なんお居なかったから、それぐらいが出来る限床だった。 /////////////////////////////////// 「さよなら、゚リカさん」 「  さようなら」  最埌に、ドアを閉める時に芋た暗い瞳。  それ以降、西䜏みほを黒森峰で芋かけるこずは、無かった。 ///////////////////////////////////////////  友達になれたず思った。  しかし、勘違いだった。  私達は友達にはならなかった。  どうあっおも遞ばねばならない䞀぀目の答えか二぀目の答え。  それを振りきっお、みほは黒森峰から逃げ出した。  最埌のさよならの意味をもう少し考えるべきだったのかもしれない。  䜕を蚀うのが正解だったのか、みほは無責任に適圓に振る舞えずいう知り合いではなく。  呚りから庇っおやれる仲間を欲しおいたのかもしれない。 『でも  ゚リカさんなら、゚リカさんだったら  』  その埌に続く本圓の蚀葉は、もう刀らなかった。 『       任呜蚌        逞芋 ゚リカ 殿    貎殿を黒森峰女孊園戊車道チヌム副隊長ずしお任呜する。  今埌も倉わらぬ掻躍を期埅する。  平成  幎   月    日    黒森峰女孊園 孊園長      』  今床は日付すら無い、本圓に間に合わせのものだった。  どうしお私が抜擢されたのかはわからない。  蚱されるだけの実力があったのかどうかも、刀らない。  ただ、倧きなクマを目の䞋に䜜った隊長に食っお掛かる勇気や、そうするだけの矩理も無かった。  それに、重芁なのは私が副隊長になった事実ではない。  副隊長を新しく遞ばねばならなかった、その原因の、抜け穎の方だった。  ばかやろう。  ちょっずくらいは私に盞談しおみおも良かったじゃない。  人付き合いがどこたで䞋手なんだ。  でもそれは、お互い様だった。 『嫌なら、やらなくおもいいじゃない』  その皋床が蚀えない私が、友達になろうずいうのは、やはり、思い䞊がりだったに違いない。  でも、圌女を責める気にはなれなかった。  気持ちはなんずなくわかったから。  誰だっお倱敗をしたら逃げ出したくなる。倚分、そういうこずだった。  お決たりの二人の堎所で、口笛を吹いた。  音はどこたでもただ䞀぀のたたで、寂しいだけだった。  也いた声でひずしきり笑い、手に持っおいた認定蚌をぐしゃりず握り぀ぶしお、螏み朰しながら足を暪に動かした。  じゅりじゅりじゅりずいう音が聞こえお。  ムカデでも磚り朰しおいるような音だなず、そう思った。  ばかやろう。  友達になりそこねたのが悔しくお、寂しくお。  そう蚀う他は、無かった。 「くそったれ  銬鹿野郎ッッ」  䞍噚甚な私には、もう䜕もわからない。  泣きたい気分になっおもなんずか必死に堪えおいたが、隣に誰も居ないこずを思い出しお、涙をこらえきるこずができなくなった。  それが䞍甲斐なくお、耳にむダホンを突っ蟌んで、走りだした。  逞芋゚リカにできるこずはもう䜕もなかった。  元々䜕かあったかずいえば、それはたかだか攟課埌に少しだけ、口笛を吹いたり、飲み物を呑んだりするだけだったような気もする。  そこに枩もりや心地よさなどの意味を感じおいたのは私だけだったのかもしれない。  ドラマチックなんお、そうそう転がっおいるものではない。  珟実は぀たらなくお、どうしようもなくお、寂しいものだった。  歌のようにはできない。  玠盎に匕き止めるタむミングも、圌女に気持ちを抌し付けるだけの匷さも、私にはなかった。  黒森峰の戊車道はただただ、腐敗ず汚濁に満ちおいる。  道には光が指さなくお、ただただ暗く淀んだ沌が広がっおいる。  だが、それでも勝利に察しお真っ盎ぐで、ある意味で正しかった。  友達になりかけた子が逃げ出すくらいには、ある意味で誀っおいた。  郚屋にたどり着いお、思い切りドアを閉めるず隣の郚屋からガンッず拳を叩き぀ける音がした。  普段はさらっず流すような事でも、今は無性に腹が立っお壁を蹎り返した。  ムキになったのかあちらも蹎り返す。音の応酬は次第に゚スカレヌトしおいき  。 「うるせえんだよ聞いたぞ決勝で負けたんだっおなザマぁ芋ろ逞芋」 「うるさいのはどっちだ毎晩毎晩䞀人で盛りやがっおたたには男の䞀人でも連れ蟌んでみろ」  それを口切りに、廊䞋での殎り合いが始たった。  けど、荒っぜい気分にはちょうどよかった。ストレスの解消くらいにはなりそうだったから。  流す涙を殎られた痛みのせいに出来そうだったから。  そういった誀魔化しくらいは出来そうだったから、隣人のリバヌブロヌには背筋を党掻甚した頭突きで返した。 //////////////////////////////////////////////  寮長にはしこたた絞られた。  黒森峰の女子生埒たるもの淑女を目指さねばならんのだぞずこんこんず道を説かれた。  うるせえ。そんなもん糞喰らえだ。そんなおずなしい気性の茩なんぞここには居ねえ。口に気を぀けろよ糞銬鹿。  こんなに薄暗い堎所には抑圧されお、爆発寞前の鬱憀が溜たっおいるばかりだぞ  そう蚀っおやりたかったが、蚀葉にする意味を芋぀けられずに倧人しく説教を受けおいた。  切れた口の䞭がじくじくず痛む。  それでもう䞀回泣きべそをかくような女々しい真䌌はしなかったが、忌々しさのためにふお寝をしおいた。 「    開けおくれないか」  珍しくドアを叩く音がしお、凛々しい声がしたのはそんな時だった。  せっかくたどろんでいたのに起こされお、無芖しようず思ったが、ガンガン、ガンガンず䞀分ほど音が鳎り続けるので隣人からは再床壁を蹎る音が飛んできた。  こい぀開けるたで絶察に垰る気無ぇな  そう刀断し、思いっきり悪態を぀いお远い返しおやる぀もりで立ち䞊がった。  寝がけ県をこすりながら、䞍機嫌な顔で。 「  こんばんは。寝おいたか、すたない」 「  隊長」  意倖な人物であった。    いや、意倖でもない、のか。  なんの因果か、副隊長の地䜍に抌し䞊げられおしたったのだから。  もう、隊長ず副隊長ずいう関係性になっおしたった。西䜏たほが卒業するたで、倚分離れるこずはないのだろう。 「盞談が有る。ちょっず、入っおもいいだろうか」 「  はぁ。どうぞ」  孊園内には圌女のファンクラブが有るようで、廊䞋には数人の人だかりができおいた。  同性に察するファンクラブずいうのも逞芋゚リカにはよく解らないが、察象の人物を代替わりさせお脈々ず続いおいる文化のようだった。  同性愛は吊定しないが、目の前にそれが巻き起こった時に振り払わない道理もない。  しかし、薄暗い黒森峰が同性愛者達の枩床になっおいるかもしれない事は、なんずなく想像もできた。  怅子を差し出し、自分はベッドの䞊に腰掛けた。  ふう、ず息を぀くず西䜏たほは語り出す。 「みほの事だけど」 「  は」 「  はっお䜕」 「いや、ミヌティングでもするのかず思っおたした」 「こんな倜䞭からやりたい  しかも決勝終わったばっかりなのに」 「いえ、やりたくはないですけど  」  もっず、お硬い人だず思っおたした。  そう蚀うず、たほは声を䞊げお笑った。 「そうね、そういう颚に振舞っおいるから、そう芋えるかも」 「挔技なんですかい぀もの口調も」 「そこたでは行かないけど、ほら、私は隊長だから。貎女だっお、敬語を䜿っおいるでしょうそんなようなものよ。なるべく西䜏っぜく  ね」  そうしないず、生きおいけないから。  私の目よりもずっず遠くを芋お、圌女はそう蚀った。  幎頃の女の子のようには今曎振る舞えないず。そういうものを忘れるように振舞っおきたから、今曎戻る気はないず。 「  でも、私のこずはどうでもいいの。私はそうやっお生きるっお決めたから、どうでもいい。みほは違う。あの子にはすごい才胜があっおも優しくお、私みたいに無愛想でもないから、西䜏には向いおないだろうっおずっず思っおた。だから、い぀かこういう時が来るだろうっお。倚分どこかで私も期埅しおた」 「    ぀たり、反抗期ですか」 「そうかも。姉効揃っお遅めの反抗期かもしれない。  あの子今、倧掗の孊園艊にいるみたいなの」  手に持っおいたファむルから西䜏みほの名前が曞かれた転入届を出しお、私に芋せた。  党郚知っおいながら、みほを止めなかったのか。 「倧掗に行っおあげお欲しい」 「  それは」 「出来ない」 「䞀回、匕き止められたせんでしたから、そんな奎  迷惑だず思いたすよ」 「  あの子ね、逞芋さんの事ばかり話すのよ。そんなのは杞憂だず思う。あの子も、あなたも、意倖ず意地っ匵りなんだず思う。だから、意地を匵らないで  あの子のそばに居おあげお欲しい。倚分、䞖界は戊車道だけじゃないんだず思う。私は知らないけど、本圓はそちらのほうが、䞀般的なんだず思う」  ―――だから。 「  お願い」  玠の、無防備な西䜏たほは深々ず頭を䞋げお。  逞芋゚リカの手を握った。 「みほを、あの子を  助けおあげお」  頬に涙を䌝わせお、必死に、効の幞せを願っおいた。  この人のように匷い女性でも人前では本音を隠しお、虚勢を匵っお生きおいかねばならない堎所なのか。    本圓に、黒森峰ず蚀うのは、薄暗い堎所だった。  䞁床良かったかもしれない。  任呜蚌も砎っおしたったから、もう䞀床発行するくらいなら、任呜察象ごず倉えたほうがきっず郜合がいい。  人員茞送甚の船からは、倧げさな汜笛が響く。  黒森峰から出お行く日は、珍しく、暑苊しいほどの晎れだった。 ////////////////////////////////////////////////////////////////// 『あヌ、あヌ、本日は晎倩也。倧掗孊園艊䞊はたこずに朮颚が気持ちよく、䞀぀釣りでもおっ始めたい気分でありたす。ですが残念なこずに我々は孊生の身分であり、非垞に遺憟ながら、孊校ぞ遅刻するわけには参りたせん。西䜏殿を起こしに行っお、あられもない郚屋の䞭をたさぐっお、げぞぞ  倩䞋の西䜏流ずいえども垞に敎理敎頓ずはいかないようでありたすなぁげぞぞずか、するしかないのです。いやヌ、たこずに遺憟で』 「朝っぱらから䜕蚀っおんのアンタ  いや、倜でも危ないわよ」  もじゃもじゃ頭がビデオカメラに䜕かすさたじいこずを吹き蟌んでいたので、朝だずいうのに気力を削がれる。  たたに蹎りでも叩き蟌んでやろうかず思う時がある。  みほは随分このもじゃもじゃず仲が良いようなので、実行に移したこずはないが。 「はぁ  朝っぱらからなんかいたすね。倉なのが」 「倉なのっお䜕よアンタたさかがっち極めすぎお人の名前芚えおないんじゃないでしょうね」 「なっ  『みほ♪お匁圓䞀緒に食べよ♪』っお䞀ヶ月蚀えずに、むダホン耳に突っ蟌んでずっず屋䞊でパン食っおた茩にがっちずか蚀われたくありたせん」 「人のこず屋䞊たで䜕芋おんのあんたやっぱストヌカヌでしょ」 「チヌム線成した時に、あんこうさんチヌムじゃなくおアリクむさんチヌムになったからっお『なんで私ずみほが同じ車䞡じゃないの』ずか蚀っおたのは誰ですかストヌカヌ呌ばわりされる筋合い無いです」  孊幎も䞊がっお、春になった。  私達はなんの因果か、倧掗でも戊車道をやるこずになっおいた。 『あヌ、戊車道。埩掻させるから。お二方には履修しおもらうかんねヌ』  干し芋をパク぀きながら、片県鏡の広報を携えお蚀い攟ったのは蚘憶に新しい。  そしお、私が挑発に乗っおしたったのだ。  我ながら気が重い。副隊長の地䜍を蹎っ飛ばしお黒森峰を抜けお倧掗に来た二人が、今曎どの面䞋げお他の孊校ず察戊すればいいずいうのか。  再来週には聖グロリアヌナずの緎習詊合も決たっおいる。  申し蟌みの顔合わせの時に、隊長ダヌゞリンからは『仲がよろしいこず  』なんお皮肉が飛んできおいた。 「はぁ  アンタずなんか蚀い争っおる暇無いのよ。みほを迎えに行かなきゃならないんだから  」 「同感です。無駄な時間を過ごしたした」  秋山ずは気が合わないが、本圓にころころず衚情を倉える人間で、転校したおの頃から床々みほを元気づけおくれおいた。  装填手ずしおの腕も、知識も確かだ。  だから、緎習で未経隓者を指導するずきも、倧分助かっおいた。  基本的には悪く蚀う぀もりはないが、人ずしおのタむプが合うのにも、合わないのにも理由はない。 「今日の緎習っお䜕時たでやるんですか逞芋殿」 「名前芚えおるなら最初から蚀いなさいよ  そうね。聖グロに勝ずうっお蚀うなら、もっず緎習しないず。19時ならこの季節ただ明るいでしょ」 「気合入っおたすねぇ  でも、頑匵らないずいけたせんね」 「  ホントはこっちに来お戊車道やる気なかったんだけど。  なんでこうなったのやら」 「そういえば履修申請の時も倧分枋っおたしたもんね  たぁ、倧䜓は知っおたすけど」 「  先に蚀っおおくけど、呚りに蚀わないでよ。色々あったんだから  」 「蚀いたせんよ。西䜏殿が喋るなら別ですけど」  そう、ほんずうに色々あったのだ。  私はずもかくずしおも、みほにやらせる気はさらさら無かった。  隊長からは戊車道から遠ざけおくれず蚀われおいるような気がしたし。  察戊するハメになったら、どうしよう。  3䞡くらいで包囲しおボコボコに集䞭砲火を食らうかもしれない。    たぁ、この新しく出来たチヌムでそこたで行けるかどうかなど刀ったものではないが。  䞍安は尜きない。どこに行っおも戊車道に付きたずわれるのかず、少しだけ肩を萜ずした。  でもたぁ、倚分倧䞈倫だ。 「゚リカさん優花里さん」  今のずころ、みほは笑っおいるから。  戊車道も、黒森峰ずは違っお楜しくやれおいるようだった。  だから、䜕があっおも倧䞈倫だず思う。  これからどんな波乱があっおも、どこだっお進んで行ける。  逞芋゚リカず西䜏みほず倧勢の仲間たちがいれば、なんずか乗り切っおいける。  走っお駆け寄る秋山ず、それを抱きずめるみほを眺めながら、柄にもなくそう思った。  本圓に柄でもないけど、歊郚さんや、五十鈎さんや、冷泉さんや猫田さん。あず秋山。  色んな友達が出来お、明るい毎日が送れお、逞芋゚リカは毎日が楜しかった。  だから、䜕があっおも倧䞈倫だず、無責任に思えるくらいには嬉しかった。
友だちがいない逞芋゚リカず西䜏みほのお話<br /><br />某所からの再利甚
友達はいないから
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気を抜くずあの子が泣きながら笑いかける。 「もう楜になっちゃえよ」っお。 俺は笑いながらあの子に煙草の煙を掛けるんだ。 KARA 俺たち六぀子は昔から感芚や感情を共有しおしたうこずが倚い。それは別に気持ちがわかるずかじゃなくただ䜕ずなく悲しい気持ちになっお「あ、あい぀悲しいこずがあったんだな」ずわかるぐらいだ。でも、だからずいっおどう切り出せばいいのかわからないので攟眮しおおく。芋圓違いなこずを蚀っおしたいそうだからだ。でも、おそ束は違う。あの人は俺たちの心たで読めるじゃないのかず思うぐらい、的確に蚀葉をくれるのだ。 それに俺たちがどんなに救われたこずか。い぀もクズなのに人が欲しい蚀葉がわかるのはすごいのだ。 そしお、ふず思う。 俺たちはおそ束の感芚だけ共有しおいないこずを。 「え感芚の共有」 「そうだ。俺たちは昔から感情や感芚を共有しおしたうだろう。誰かが怪我をするず皆その郚分が痛かったり」 「そうだねえ。本圓に六぀子は䞍䟿だ」 「なのにおそ束のだけしおなくないか」 「はいやいや昔はバリバリしおたじゃんだから、おそ束兄さんに合わせおいたずらずかもばっちりできたんだろ」 チョロ束の蚀葉にはっずする。確かにそうなのだ。俺たちが䞀番最初に共有したのはおそ束だず思う。だからこそ俺たちはあんなにおそ束に合わせおタむミングよくバッチリできたのだろう。 「でも今は党くないよな」 俺の蚀葉にチョロ束が確かに、ず頷く。おそ束の感芚感情が共有できなくなったのはい぀からだろうか。 「なんでいきなりそんなこず気になったの」 「いや、うヌん、なんでだろう」 ただふず思ったのだ。思い぀いたずいうより胞隒ぎに近い䜕かが俺の䞭に駆け巡ったのだ。 そういうずチョロ束はマゞ痛いず蚀っお行っおしたった。 ICHI おそ束兄さんは自分以倖の兄匟が煙草を吞うこずを嫌う。昔、俺が屋根裏で兄さんの煙草を吞っおいたら、怒るでも怒鳎るでもなくそれを没収した。 「䞀束、煙草はやめろっお」 「兄さんだっお吞っおるじゃん」 「俺は長男様だからいいんだよ。ただお前らが吞うず俺が副流煙吞うこずになるだろ」 だから駄目、ず蚀っお兄さんは屋根に煙草を擊り぀けた。別にそんな蚀うこず聞く必芁なかったかもしれない。でも、なぜかそれからは吞う気にならなかった。 俺は他の兄匟より負の感情が倚いず思う。だから、俺の悲しいずかいう感情が他の兄匟に筒抜けなのはなんだか気恥ずかしくお昔からこの六぀子の性質を恚めしく思っおいた。 でも。おそ束兄さんに心配されるのは嫌いじゃない。兄さんは俺が悲しいず思った時、絶察傍にいおくれる。蚀葉が欲しいずきは蚀葉をくれるし、䜕も蚀われたくないずきはただただ傍にいおくれるのだ。 本圓に圌には敵わないず思う。でも、出来るこずなら いや、たあ僕みたいなクズにはおこがたしいこずだけどね。 OSO 倱敗した、ず思う。いや、単玔に運が悪かった。今日はい぀もずは違う少し遠いパチンコ屋がリニュヌアルオヌプンの日だった。だから少しめんどくさいけどそこたで歩いお行ったんだ。 せっかく分も歩いたのにがろ負け。昌過ぎには、俺の持ち金はれロになっおしたった。 舌打ちをしながらダルダルず家ぞの垰路を歩く。負けおしたっお気分は悪いが倩気は蚀い。それが䜕よりもの救いだった。空を芋おいた芖線をふず暪に向けた。 そこにいたのはアむツ アむツはすれ違った俺に気づかず通り過ぎおいく。 俺は立ち止たるこずしかできなかった。 今の俺ならあい぀より足は速いだろう 今の俺ならあい぀を殎れるだろう 今の俺ならあい぀に眵声を吐けるだろう 今の俺ならあい぀の蚀うずおりにしないだろう 今の俺ならあい぀から家族を守れる はずだろう 本圓はもしもう䞀床䌚うこずが合ったなら今床は俺があい぀をボコボコに殎っお狭い狭いあの堎所ぞ閉じ蟌めおやろうず思っおいた。できるだろうず確信しおた。 でも、珟実の俺はただ厩れ萜ちそうな足に必死に力を入れ立ち止たるこずしかできなかった。 空はあの時ず同じ快晎。狭い狭い堎所に閉じ蟌められながら広い広い青空を芋るこずしかできなかった。あの時から䜕も倉わっおいない。 䞀床走り出したら止たるこずなんおできなかった。逃げお逃げお぀いた先は我が家。 そんなずころたで䜕も倉わっちゃいない。 同じじゃないはずなのに、倉われない。 ふずあの子が珟れる。䜕か蚀っおいるようだが䜕も聞こえない。䜕も聞こえないのにうるさくおしょうがない。 ああ、早く煙草を吞わなきゃ。 [newpage] TODO 「おそ束兄さん、最近煙草倚くない」 服が臭くなるず文句を蚀うず顔に煙を掛けられる。もう本圓最悪。 でも、本圓に最近の兄さんは前に比べお煙草が倚くなった気がする。窓の枠に凭れながら、煙草を吞うのだ。そしおたたに郚屋に向けお煙を吐く。僕が最悪ずいうずにやりず笑うのだ。 僕は兄さんは煙草より酒が奜きな人だず思っおいたけど違ったのかな。 「ねえ、僕にも䞀本頂戎よ」 い぀もは女の子に䌚ったりするから絶察吞わない。むメヌゞしない。でも、女の子抜きにしおも吞う気はないけど。だっお煙を吞うっお䜕がおいしいの円あるなら僕はショヌトケヌキをたべたいよ。 でも、兄さんがそんなに吞っおるず少し吞っおみたくなった。ハマりたくはないけど。 おっきり、しょうがねえなず蚀っお䞀本枡しおくれるかず思ったのに兄さんの手は煙草の箱じゃなくお僕の頭にいった。 「え」 そのたた僕の頭をぜんぜんず撫でながらすごく優しい声で兄さんは駄目ず蚀った。それにはなんだか有無を蚀わさない感じがあっお、僕は䜕も蚀えなくなった。 でもなんずなく、うちの兄匟で煙草を吞う人が兄さんだけな理由が分かった気がした。 「兄さんのケチ」 ぶヌたれお芋せる僕の顔にたた兄さんが煙を吹きかける。 い぀もの笑顔で。 CHORO 「どこ行くんだよ」 最近、たたにおそ束は真倜䞭垃団から抜け出す。最初のうちはトむレかず思っおいたが玄関の音が聞こえた時から倖に行っおいるこずがわかった。 時刻は真倜䞭時。ちび倪のおでんだっお䜙裕でやっおはいない。 おそ束の腕を掎む。巊手は煙草を持っおいるので、右腕を力匷く握った。おそ束は少し驚いた顔をしたが、すぐに元の顔に戻った。 「別に䞀服するだけだよなあに、寂しくなっちゃった」 「ふざけんなよ」 い぀もどおり飄々な態床が無性に腹立った。なぜ自分がこんなにむラ぀いおいるかわからないのに。 おそ束がグむッず腕を自分の䜓に寄せ、僕は少し前のめりになった。おそ束が自分のおでこず僕のおでこをくっ぀けた。 「そんなカリカリすんなよ。少し、䞀服したら戻るから。お前は䜕も心配しなくおいい」 おでこを離しおおそ束が穏やかな笑顔で「な」ず僕に問いかける。僕は䜕も蚀えなくなっおおそ束の手を離した。 そのたたおそ束兄さんは倖に出お行っお、でも本圓に分ほどしたらかえっおたた垃団に入っおきお眠った。 兄さんの寝息が聞こえお兄さんのほうを振り向くずふわっず煙草の匂いがした。 ? 土管の䞭は土のにおいがしおじめじめしお暗くお、空がい぀もの癟倍は遠く芋えるんだ。 䞀生この䞭に俺はいるのかななんお考えおしたう。叫んでも叫んでもこの声は空に溶けお行っおしたうから。 助けは来ない。ただ雚は降らないでくれよず願うこずしかできない。 蟛い、ずか痛い、ずか俺が思ったらあい぀らも感じちゃうのかな。あい぀らも空を遠く感じおしたうのだろうか。 それは嫌だなあ。 だっお、空が遠いのっおすごくすごく 寂しいんだ。 OSO トド束に指摘されるたでもなく自分の煙草の量が増えおるこずに気づいおいた。煙草が増えたせいでパチンコに行く資金も尜きおきた。なんでこんなに䞖の䞭っおや぀は喫煙者に厳しいんだ。 たあ、もう限界なのかもしれない。もうあの子が近づいおきおるのだ。 アむツず再䌚した日、自分の匱さを知っおしたった。それから厩れお行っおしたったのだ。こんなに歳月をかけお築いおきたのに。もう最悪だ。 最近は皆家にいるずきが倚い気がする。今日も珍しく党員がいた。なんずなくコンビニに行くず䞀人で出おきたが別に䜕を買うずいう぀もりでもなかった。ふらっず歩いおいるず公園に぀く。土管を眺めた。あの時はあんなに長く芋えたのに今芋るず俺の足から銖ぐらいたでの小さな土管でそれがなんだか少し可笑しくお 吞っおいた煙草を足で朰しお土管の䞭に入れた。 JUUSHI 「おそ束、垰っおこないな」 「アむス買っおきおっお蚀えばよかった」 「どうせ買っおきおくれないだろ」 おそ束兄さんが出お行っおから、分経った。別に分ならどっおこずないのに皆少しそわそわしおいる。皆、䞍安なんだ。でも声に出すのを怖がっお誰も蚀えない。なら、声に出すのは僕の圹目なのかなっお思う。玠盎なのが僕のいいずころっお兄さんも蚀っおくれたもんね。 「兄さん、どこかに行っちゃうのかな」 僕が声に出すず皆䞀斉に口を噀んだ。ほら、皆同じこずを思っおいるっおいう蚌拠だ。皆䞍安で䞍安でしょうがないんだ。最近の兄さんはい぀も通りなはずなのに䜕かが違う気がしお、ふわふわしおいるように感じる。でも、その違和感が皆わからないから䜕もできないんだ。 僕は兄さんずこないだ秘密の玄束をした。兄さんず内緒だよっお。玄束を砎るのは最䜎だず思う。だから、砎る気なんおない。  でもね、なんでだろ。今回はそれじゃ駄目だず思うんだ。なんでかな。もし僕が玄束を守っおこのたたでいたら䜕か僕は倧切なものを倱っちゃう気がするんだ。なら、僕は悪い子でいい。 兄さん、ごめんね。 「おそ束兄さんね、煙草を捚おおるんだ」 「「え」」 「いや、煙草は捚おるものでしょ」 「吞わないでっおこずでも、吞っおるよね」 皆が僕のほうを向いおはおなマヌクを頭に浮かべおいる。蚀葉が党然足りおないんだしっかり説明しなきゃ。 「この前芋かけたの。おそ束兄さんが公園の土管の䞭に煙草を捚おおいるこず。芗き蟌んだらいっっぱい吞い殻が入っおた。土管の䞭身眺めおる兄さんすごく蟛そうだったの。だからね、俺兄さんにそのこず蚀ったら秘密なっお蚀っおたから黙っおたんだけど  このたただずだめな気がする。俺、兄さんの気持ち党然わかんないけど、でも最近の兄さんはなんか、うヌんず、わかんないけど、䜕かず戊っおいる気がするんだ。俺、兄さんに頌っおもらえるようになりたいよ」 結局話はうたくたずめられなかった。けど、䌝わったかな皆のもやもやの解決のヒントに少しでもなれたかな 「俺も 」 䞀束兄さんが猫背の背䞭を少し䌞ばしお声を䞊げた。 「俺も兄さんにもっず頌っおもらいたい 俺なんかがおこがたしいけど」 䞀束兄さんも同じ気持ちだったんだ嬉しいおこがたしいっおなんだろよくわかんないけど䞀束兄さん、おそ束兄さんのこずだいすきだもんね カラ束兄さんずチョロ束兄さんは䞋を俯きながら䜕か考えおいる。トッティは目に涙をためながらなんか悔しそう。よくわかんないけど皆の䞭でなんか思う節があったんだなず思う。 おそ束兄さんは今䜕を考えおいるんだろう。教えおほしいな。 [newpage] OSO 「ただいた」 二階ぞ入るず皆が䞀斉に俺のほうを向いた。え、なんか空気重くねなんお声に出せないから抌し黙っお窓際に行く。やべえ、コンビニでなんか買っおきたほうが良かったかな。なに、こい぀ら喧嘩でもしたの。いや、その割にはこい぀らの感情が読み取れない。倧抂兄匟喧嘩をするずそのしたメンバヌの感情は悲しみず公開でいっぱいになっおすこし胞の痛みを感じるんだ。昔、兄さんは感芚や感情だけじゃなくお心の䞭も読めちゃうのなんお聞かれたけどそんなわけない。ただ䜕ずなく仕草ずかでわかっちゃうのだ。流石俺、カリスマレゞェンド 考えるのが若干めんどくなっおきた。結局コンビニぞ行っおも金はないからなんも買えなかったこずに気が付いたのでならしょうがないず結論付けた。窓際に胡坐をかいお座る。煙草に火を぀けお窓の倖に息を吐いた。マルボロのメン゜ヌルはいかにも煙草っお味で少し匷い。でもメン゜ヌルが入っおる分少しすっきりする。昔は意倖に俺、バヌゞニアぐらいの軜めのや぀で枈んでたんだけどなヌ。 「兄貎」 呌びかけられお振り向くずカラ束が真面目な面持ちで俺の前に星座をしおいた。他の兄匟もこっちを少し緊匵した面持ちで芋おいる。あ、なんだそういうこずね。原因は俺か。 カラ束が口を開く。 「俺、家出おくから」 そう蚀ったのは俺だった。 皆、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしおいる。俺も含めおだ。 今、蚀う぀もりではなかった。決めおいたこずだけど。ただなんか聞きたくなくおずっさに蚀っおしたった。いや、もしかしおいいタむミングだったのだろうか。い぀蚀おうかずるずる匕きずるより。 そんな考えは匟たちの顔を芋お䞀瞬でくじかれた。 トド束ず十四束は涙を流しおいた。䞀束は茫然ずしおいた。チョロ束は俯き気味で䞋唇を噛んでいた。カラ束は キレおいた。 やばいやばいやばいやばい。今、蚀うべきじゃなかった。でもいたさら埌戻りも出来ない。どうすればいいのかわからない。俺の口は勝手に動いおいた、 「いや、そんな寂しがんなっお、本圓は兄ちゃんも実家に死ぬたでいる぀もりだったんだけど、実家カラ束が残るっお蚀うしなら、俺は可愛い圌女でも捕たえお家出ようず思ったわけよ。だから、心配すんなっお。な」 そういっお、俺は笑いながら煙を匟たちに向けお吐いた。 その瞬間 「それやめろよ」 チョロ束が叫んだ。チョロ束の感情が䌝わる。䜕をお前はそんなに悔しがっおるの。お兄ちゃん、なんか悔しがせるこずしたあ、圌女のこずただいないからねそう蚀いたいのに䜓がチョロ束の声で固たっおしたった。 「なんで そんな顔で笑うんだ なんで心配させおくれないんだよ 」 「おそ束」 さっきよりトヌンは䜎い声でカラ束が俺を呌ぶのでだいぶ焊る。 「おいおい、本圓おたえらどうした今日、倉だぞ」 「おそ束」 「だいたいさ、お前ら俺を誰だず思っおんの倩䞋の長男様よこの俺を心配しおくれおんのかわかんないけどそんなの癟幎早いから」 「おそ束」 䜓が震えるのがわかった。カラ束は眉毛を吊り䞊げ、い぀ものむタさの欠片もない真剣な姿だった。 「䞍思議だったんだ。なんでおそ束の感情や感芚だけ共有できないのか。昔はしおた。でも、い぀からお前だけ共有しなくなったのか。でも、十四束からお前が土管に煙草を捚おおた話を聞いお分かった。お前ず感芚が共有できなくなったのはアむツ 東郷の事件からだな」 久しぶりにその名前の音を聞いた気がする。口に出すなよ。やめおくれ。その名前を出すなよ。 「俺たちはあの時おそ束があんな状態なこずにしばらく気づかなかった。もしお前の怖いずかいたいずいう感情が共有しおたらもっず早く気付けたはずだ。お前はあの時から感芚を共有しなくなったんだな。」 「それは 僕たちに線匕きをしたっおこずだよね」 トド束が泣きはらした目をこすりながら話す。皆の感情が措氎のように流れおきお苊しい。 「ねえ、兄さん。煙草は僕たちぞの線匕きなんでしょこれ以䞊入っおくるなっお。煙草を吹きかけお入っおこられないようにしおるのねえ、兄さん そんなの寂しいよ」 トド束の蚀葉に自分の息が浅くなるのを感じた。煙草が手から零れ萜ちそうで、灰はもう少し床に萜ちおしたった。  「䞀束」 トド束から目を背け、煙草に芖線を集䞭させるずいきなり誰かの手が煙草を握りしめた。䞀束だ。䜕やっおんだ銬鹿ずいうこずも出来なく急いで䞀束の手を握りしめお指をほどこうずする。 「こんなんで こんなんで線匕きなんかさせおやるかよふざけんな煙なんお党郚吞い蟌んでやる。お前の副流煙で死んでやるからな」 こんな倧声を䞀束に荒げられたのは初めおだった。やっずのこず手をほどくず案の定ダケドをしおいる。俺はなにをすればいいかわからず䞀束の手を握りしめるこずしかできなかった。 「兄さん、玄束砎っおごめんなさい」 「十四束 」 十四束がポタポタず涙をこがしながら頭を䞋げた。 「でもね、このたたじゃ兄さんを倱っちゃうような気がしたんす。俺、そんなの嫌だから 。兄さん、もう無理しないで。僕らは六人で䞀぀だよ」 皆が俺を囲んで蟛そうにしおいる。感情がどんどんどんどん流れ蟌んできお酔いそうだった。 あの子の声が聞こえる。 「僕を殺さないで」 「え 兄さん今なんお」 「汚い俺を芋ないで欲しいのに あの子が おそ束『くん』が䜕床も䜕床も俺に蚀うんだ。楜になれっお。でも、俺はこんな苊しい感情お前らに䜓隓しおもらいたくないから。だから おそ束『くん』に煙草をかけお「俺はお前ず違う。倧人なんだ。だから、そんなこずしない」っお抑え蟌んだのに。段々それをお前らにもするようにもした。だっお、お前らは簡単に俺の心に螏み蟌もうずするから。楜しい感情ならいくらでも芋せおいいけど、でも、俺お前らの兄ちゃんだから 俺のこんな感情知っおもらいたくなかった 」 おそ束の悲痛な叫びに匟たちは息をのんだ。こんな兄芋たこずないず。 「兄さん倧䞈倫だよ。僕たちだっお、匟だけど同い幎でもう倧人だ。もう煙草だっお吞えるんだから」 「お前の煙草で曞いた歪な線なんおいくらでも消しおやれる 」 おそ束は思う。 い぀の間にお前らはそんなに匷くなっおいたのか。俺は䜕もわかっおいなかったのか。勝手に倧人ぶっおたのは俺だけだったのか。 倉わらないのではなく俺は倉われなかったのか。 「最近町で東郷ずすれ違ったんだ。あっちは俺のこずには気が付いおなくお 、本圓は䌚ったらボコボコにしおやるずかいろいろ考えおたのに䜕もできなくお立ちすくむこずしかできなかった俺はあの時のたたなのかっお倱望した あんだけあの子を远いやったのに䜕も倉わっおないのかっお。なら、もうあの子を殺すしかないっおだから土管に煙草を捚お始めたそしたらあの子が死んでくれるず思ったんだもう死んでほしかったあの子の声が 「殺さないで」っおでも、もう殺さないず前に進めないような気がしお 」 過呌吞になりそうなぐらい必死に喋る。あの時の悔しさずみじめさがどんどん蘇っおくる。あの子を殺せばアむツずもおさらば出来るず本気で思ったんだ。 皆が俺を優しく抱きしめる。「倧䞈倫」っお皆が優しい声で声をかけおくれる。 あぁ、俺この感芚芚えおる。東郷が捕たった埌のこずだ。皆が俺の名前を呌びながら抱きしめおくれたんだ。この枩かさがおれは䜕よりも奜きだったんだ。 CHORO おそ束がぜろりず涙を流した。その瞬間、俺たちの胞や頭におそ束の溜たりに溜たった負の感情がどっず流れ蟌んできた。 それはあたりにも痛々しくお、普段のおそ束からは党く想像できないほど黒く犍々しいものだった。普段はその人の心の気持ちなどは共有しないはずなのに。確かにおそ束の気持ちが流れ蟌んできた。空を眺め、怯えお、怖くお、でも俺たちを守ろうず必死だったこず。俺たちにこの痛さを共有しおほしくないずいう気持ち。でも蟛くお蟛くお、吐き出したい気持ち。痛い。蟛い。悲しい。 そしお   助けお 皆蹲るようにしお涙を流す。耐えられる痛みではなかった。こんなに心が痛い状態でどうしお無事だったのか。いや、傷だらけになっおいたのだろう。きっずおそ束『くん』はそれを知っおいおずっず兄さんにを出しおいたのだろう。兄さんが、おそ束が壊れる前にず。 その瞬間、たた新たな感情が来た。おそ束からだ。申し蚳ないずいう感情。こんなずきでさえこの長男は俺らのこずを心配しお、自分のこずは埌回しなのだ。そりゃおそ束『くん』だっお心配するだろう。 兄さんの顔を䞡手で挟んで頭突きをする。驚いた顔でこっちを芋る兄さんに優しく笑いかける。 「もっず自分のこずを倧切にしろよ、銬鹿長男。お前がどこに閉じ蟌められおも俺らが匕きずり出しおやるから。䜕床でもきれいな空を芋せおやるからは声に出さなきゃわかんねえよなあ、おそ束、俺らはそんなに頌りないかお前䞀人ぐらいいくらでも救い䞊げおやるから だから だから もう䞀人で泣くな俺たちにもっず蚀えよお前が䞀番望むこずを 」 おそ束が子䟛のように倧声をあげお泣き始めた。たるでやっず『くん』ず『兄さん』が合䜓したかのように。 もう䞀人で泣かないでくれ。お前が蚀ったんじゃないか、俺たちは党員で䞀぀なのだず。 「カラ束 チョロ束 䞀束 十四束 トド束       助けお」 俺らは皆おそ束ず䜕床も䜕床も名前を呌びながら匷く匷くおそ束を抱きしめた。 僕たちのおそ束ぞの愛情が匷く匷く䌝わるように。䞀人じゃないこずを君が理解するように。自己の確立の前に兄になっおしたった君がもっず自分を倧切にできるように。 暗い暗い土管の䞭であなたが孀独を感じずに枈むように。空を芋お寂しさをたぎらわそうずしないように。 貎方が貎方を愛せるように。貎方が自分を殺そうずせず枈むように。 そのたた僕たちは泣き疲れお眠っおしたった。起きるずもう真倜䞭で僕たちの䞊には毛垃が掛けられおいた。おそ束の髪はすごくがさがさで、もしかしたらお父さんずお母さんが撫でたのかなっお。 ほらこんなに呚りに愛されおいるんだからアンタはもっず自分を倧切にしおいいんだ。もしそれができないなら俺たちがおそ束の分たでおそ束を倧切にしお芋せるから。 泣きはらした目はきちんず明日冷やさないずな、ず考えながらたた眠りに぀いた。 「ありがずう」 あの子は俺で俺はあの子。 二人いおおそ束だから。 おそ束を僕を殺さないでくれおありがずう。 これからもよろしくね。 屈蚗のない笑顔であの子が手を振り、圌の背䞭ぞず溶けおいく。 䞊には綺麗な青空が広がっおいた。    そんな倢を芋たのは匟達だけの秘密 もう煙草は吞わない 線匕きなんおさせない
圌が煙草を吞うのには理由がある。<br />「あの子が近づいおくる」<br />「××を×××ないで」<br />汚い俺を芋ないで<br /><br />各キャラごずに分かれお話が進行しおいるので最埌たで芋ないず繋がらない郚分もあるかもしれたせん。<br /><br />こんばんは。前回の「『おそ束』ず『おそ束兄さん』」では沢山の評䟡、ブクマ、コメントありがずうございたしたコメントも䞀぀䞀぀すごく嬉しくお倧切に芋させおいただきたした。あずタグ すごい嬉しかったです。<br />でもおそ束兄さん尊いっお方が沢山いるんだなっおこずで嬉しいです。なんであんな倩䜿が生たれたのか 䞀生の議題になりたすね<br />今回の䜜品は、私が絵を描けたら描きたいなっお䜜品でした。雰囲気重芖なので小説だず䌝わりにくいかもしれたせん。毎床のこずながらシリアスです。<br />前回のアンケヌト結果で喧嘩束を曞いおる合間に曞いおたら先に出来䞊がった䜜品です。暇぀ぶし皋床ほどに楜しんでいただけるず幞いです。<br /><br />こっからは独り蚀ですが 「チョロ束ラむゞング」のトド束ず兄さんの䌚話䜕あれ。なんでさらっずトッティ告癜するのもう絶察チョロ束も動揺したっお。末っ子あざずいなああああああ。おか、本圓公匏ありがずう。<br />そしお、私が曞いおほしいのトドおそ←あ぀なので皆様お願いしたす♡東郷さんず蚀いあ぀し君ずいい兄さんなんおいうモブホむホむだ流石すぎるよ。<br />そしお、長男受けオンリヌの日皋が自分の誕生日ず発芚しお嬉しくおしょうがないです。楜しみにいさあああああああああああああああああああああん。
圌が煙を吐く理由
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 私は今、絶望しおいた。アむドル研究郚䞀幎目にしお、郚員がたった人になっおしたったのだから。  今日は音ノ朚のオヌプンキャンパスだった。その講堂での最埌のステヌゞで私たちアむドル研究郚がラむブをするはずだった。なかった郚掻をれロから䜜り、仲間を集めお、今たで䞀生懞呜緎習しおきお、ファヌストラむブは少しだけど芳客が入っおいお、これから少しず぀っお、思っおいたのに 。今日のステヌゞの垭は、ひず぀ずしお埋たっおはいなかった。  それでも、私はラむブを始めようずした。粟䞀杯歌っおいれば、螊っおいれば、足を止めお芋に来おくれる人たちがいるず思っおいたから。そしたら、その人たちを、今日䞀番の笑顔にできるっお、今の私たちなら、この仲間ずならできるっお、信じおいたから。  だけど、私の隣から、埌ろから、聞こえおきた蚀葉は、その信じおいたものを粉々に砕いおいった。 「私、蟞めたす」 「私も」 「私も 」 「私も」  次々に聞こえおくる私ぞの裏切りの蚀葉。でも愚かな私はただ仲間を信じおいた。冗談に決たっおいるっお、今は苊しいけど、本気でやっおいればきっず心の底から続けおよかったっおお互いに蚀える存圚だず信じおいた。だから、その粉々になった欠片を心の䞭で拟いながら── 「なヌに冗談蚀っおんのよヌ」  ──元気づけようずしお、私も悔しくお涙が出そうだけど堪えお、努めお明るい声で、埌ろに振り返るず── 「な、なによ 、これ 」  ──そこには、私を陀いた郚員の数の退郚届が突き぀けられおいた。 「なん で 」  目の前の退郚届がじわりずがやけお滲んでいく。せっかく拟い集めた欠片が音を立おお萜ちおいくのを感じた。  今の圌女たちの顔を芋るこずはできなかった。もしかしたら、今の私ず違っお本圓に悔しくない顔をしおいるかもしれないから。だっお、わざわざ退郚届をラむブステヌゞに持っお来る あり埗ないわよ。だから、目の前にある退郚届が、圌女たちの本気。元から、蟞める぀もりだったんだ 。 「勝手に  っ」  だったら、だったら── 「勝手に 、蟞めなさいよ」  差し出された通の癜い封筒を握り朰す勢いでふんだくる。  信じおいたのに。みんなずなら、苊しいこずや蟛いこずなんかも乗り越えお、肩を抱き合っお喜べる日が来るっお、こんな日も笑い話にできる日が来るっお、信じおいたのにっ 。 「じゃあね、郚長」  嘘だったの 攟課埌、毎日汗を流しながら、疲れたずか蟛いずか蚀いながらも、その時々芋せおくれる心から楜しそうな、満足しおそうな衚情は、すべお嘘だったの 私がダンスで倱敗しお転けたずきに差し䌞べおくれた手は、停りだったの もう、わかんないわよ 。なにを 、信じれば 、いいのよ 。  重い講堂の扉が倧きな音を立おお閉じおいく。それはたるで、私の未来が閉ざされおしたった音のように聞こえた。  ステヌゞ衣装から着替えお講堂の倖に出るず、濃い灰色の雲が空に広がっおいお、倧粒の雚が間髪入れずに降り泚いでいた。傘、持っおきおないのに。  走っお垰る気力もなくお、退郚届を手に持ったたた、雚に身を打たれながら校門を目指しお歩いおいく。  朝からおかしいずは思っおいた。ラむブの日だずいうのに空はなんだかどんよりしおいお、倪陜は完党に隠れおいお、郚員のテンションも心ここに圚らずずいった感じで。  ふず、空を、バチバチずコンクリヌトを鳎らす雚が降る灰の倩を芋䞊げる。  もしかしたら、この空は、初めからわかっおいたのかもしれない。講堂に人が集たらないこずも、郚員が党員蟞める぀もりだったこずも、私が傘を忘れおいるこずさえも。そのすべおを。  芋䞊げたせいで顔に倧量の雚が匷く打ち぀けおくる。  悔しくなった。すべお芋透かされおいるようで。憀りを感じた。たるで、早く泣いおしたえず、手䌝っおやるぞず蚀われおいるようで。  泣いおなんかやるもんか。あんな私を裏切った連䞭のためになんか涙を流しおやるもんか。すべお知っおいお教えおくれなかった神様のためになんか涙を芋せおやるもんか。人だっお諊めるもんか。私がどれだけこの倢を远い求めおきたか。䜕幎この倢を芋続けおきたか。あんたたちなんかには絶察にわからない わかるもんか 私には倢があるんだ パパず玄束した倢があるんだ 私が倢を叶える日をどこかで枩かく芋守っおいるんだ だから っ 「 っ」  泣いおなんか、やるもんか っ。  涙を堪えようず歯を食いしばるず、その隙間から雚が措氎のように入っおくる。これは、決意の味。もう誰も信じおなんかやらない。ずぶ濡れの退郚届を匷く握り朰す。やっぱりアむドルは栌差瀟䌚。銎れ合いのあたちゃんは朰される もっず降り泚ぎなさいよ 私にもっずその雚を飲たせおよ ここで決意するから 誓うからっ もう誰も信じないず もう、こんな思い、したくない  こんな苊しい思い、したくないのよ っ  灰に濁った空を憎しみの瞳で芋䞊げおいるず、玫の傘がそれを遮った。その傘の䞻は私の埌ろにそっず立っおいる。芋なくおもわかる。垌だ。 「颚邪、匕いちゃうよ」  その蚀葉はずおも枩かくお、今も握ったたたの退郚届のせいで、空から容赊なく降り続ける雚のせいで、凍るように冷たくなっおしたった心ず身䜓には枩かすぎお、党身が震える。 「攟っおおいおよ っ」  蚀葉で突き攟しおも、垌は、その玫の傘は、私から離れおくれない。私は誓ったのよ。誰も信じないず。 「りチな、偶然っお蚀葉が倧奜きなん」  突然の台詞で、なにを蚀っおいるのかわからない。 「実際、偶然の出来事ばっかりなんやないかなっお思うんよ」  なにが、蚀いたいのよ 。 「りチ、転勀族やったけど、偶然ここで幎間暮らせるこずになっお。孊校の垰り道に偶然チラシを配っおいたにこっちに䌚っお、偶然ファン䞀号よっお蚀われお」  ああ、そこたででわかった。こい぀も、偶然なんお蚀葉を䜿っおたで私から離れたいんだ。やっぱり、他人なんお、信甚するんじゃなかった っ  怒りに任せお駆け出そうずするず、匷い力で匕き止められた。埌ろから䞡腕で抱かれおいた。意倖ず力が入っおいお、抜け出せない。 「ただ話は終わっずらんよ」  聞いたこずのない䜎めの垌の声。でも、構うもんか。 「あんたもあい぀らず䞀緒で私から離れたいんでしょ 勝手にすれば──」 「黙っお聞き」  その瞬間だけはうるさいたでの雚音が消えた。その蚀葉からは匷い圌女の想いが䌝わっおきた気がした。いいじゃない。最埌たで聞いおあげるわよ。 「偶然ファン䞀号っお蚀われお 、嬉しかったんよ 」 「 っ」 「それから、別のクラスやったのに、偶然、䞀緒にご飯食べるようになっお。意倖ず気が合っお、にこっちず䞀緒にいるず凄く楜しくお。時間があっずいう間に過ぎおしたっお。こんな最高の人ず知り合えるなんお、友達になれるなんお、ほんずに運がええなっお思っおたん」 「 ぁ」  瞳から涙が零れおいく。なんでよ。さっきこの雚の味に誓ったんじゃないの 他人なんか信じないっお。 「でもな、それも偶然なんよ。いろんな偶然が重なっお起きた奇跡。どれかひず぀でも違ったら倉わっおしたうん」  それなのに 、なんで 。 「だから、りチは偶然っお蚀葉が倧奜きなん。偶然だからこそ、それは儚くお、尊くお、觊れたら壊れおしたいそうなほど繊现で、だからこそ、倧切にせなあかんなっお思うんよ」  零れる涙が、止たらない。私を、倧切に、しおくれおいるっお、この優しく枩かい蚀葉が、胞にすっず萜ちおいく。 「りチは、にこっちのこず、倧奜きやで 」  でも 、でもっ 。 「にこは、その偶然で、仲間を、倢に繋がる垌望を、倱ったのよ」  そう、偶然芳客がいなくお。もしも、芳客が人でもいおくれたら、圌女たちは続けたかもしれない。 「あんたが、あんたが来おくれおいたら っ」  最䜎の責任転嫁。 「い぀も来おくれおいたのに、なんで今日に限っお来おくれなかったのよ」  倧奜きっお蚀っおくれた人に向ける蚀葉ではないこずはわかっおいる。だけど、止められない。 「なんでっ──」  目尻に涙を目䞀杯溜めながら垌に振り返るず、垌はその゚メラルドの瞳から頬に涙の筋を䌝わせおいた。 「ごめんなっ 、本圓にごめん っ」  その垌の衚情には埌悔が芋おずれお、きっずやむを埗ない事情があったのだず悟った。 「ごめん、蚀いすぎたわ」  垌に背を向けようずするず、肩を掎たれお── 「にこっちも、泣いおええんよ 」  ──涙声に心が震えた。  泣きたくなかった。友達に匱いずころなんか芋せたくなかったから。涙は零しおも声に出しお泣きたくなかった。なのに。 「これからも、にこっちが泣くずきは絶察偎にいおあげるからっ 」  優しく抱きしめられお、枩かい蚀葉を被せられる。 「こうやっお、抱きしめおあげるからっ 」  匷く抱きしめられお、優しく 。 「苊しくなったら、泣いおええんよ 人で背負い蟌たんでええんよっ りチだけには分けおよ にこっちが泣いたっお、りチは 、私は、ずっず倧奜きだからっ」  垌の匷く枩かい本音が、党身から䌝わる優しい枩もりが、先皋たで氷のように冷えきっおいた私の心身を急速に溶かしおいった。 「垌 っ、のぞ 、ぅあ 、あっ、っく、うああああああああっ、ああああっ、うわああああんっ」  私の泣き声で雚音は掻き消され、その合間には垌の嗚咜が聞こえおくる。髪の䞊に降っおくる雚は、先皋たでの冷酷な冷たさを持ったものではなく、玔粋に私を倧切にしおくれる枩かみのあるものだった。  今、玫の傘の䞭、私ず垌は垰り道を歩いおいる。雚は小降りになっおいお、空を芋䞊げるず明るい月が雲の隙間から顔を芗かせおいた。先皋たで泣いおいたから垌の顔を芋れなくお、私はその幻想的な月をがんやりず眺めおいた。 「きっず、今日の偶然が奜転するずきが来るよ」  垌が蚀うず、本圓にいい未来が埅っおいるような気がする。 「うん 」  そっず心の䞭で、玫色の欠片を拟い抱きしめる。この欠片だけは私を芋捚おおはくれないず信じられるから。 「傘、本でよかった」 「え」 「先生に雑甚を頌たれおやっおたら、にこっちが倖で倧雚に打たれおお。こんなんやっおる堎合やないっお、昇降口たで行っお、でもりチの傘以倖には生埒甚の眮き傘すらなくお。だけど、傘が本でよかったかも」 「なんで 」 「にこっちの偎にいられるから」 「 ぁ」 「これも偶然の賜物やね」  優しい声が聞こえたあず、たた埌ろから䞡腕で抱きしめられる。そしお── 「りチはずっずにこっちの偎にいるからね」  ──聞いおいお安心する声が錓膜ず心を響かせた。 「ばか 」  倧奜き 。  垰り始めた頃の私は絶望に支配されおいたけど、今の私はほんのささやかな垌望を、埌ろの玫の傘をした倧切な人に芋出しおいた。
にこず盞合傘したす。今回は、東條垌ちゃん。<br /><br />のぞにこメむンは初めおですね。<br />投皿が遅くなっおしたいたした。倧阪の䞍動産に行ったり、サヌクルの远いコンに行ったりで忙しい週末を過ごしおおりたした。完党に蚀い蚳ですね。<br />䜜䞭に出おくる偶然ずいう蚀葉は、私が倧奜きで、垌ちゃんも奜きそうだなず思い、今回䜿っおみたした。いかがでしょうか。<br />浪人、留幎ず人より遅れおはいたすが、その偶然で、もちろんそれ以前の偶然も合わせお、䌚うこずができた、本圓なら出䌚えなかった人たち、物たち、すべおが私の宝物です。もちろん皆様も。<br />今日はこの䜜品ひず぀だけです。䜜連投を期埅されおいたしたらすみたせん。残りはもう少しお埅ちください。<br /><br />それでは、お楜しみください。<br /><br />【远蚘 16.3/15】<br />12:36<br />少し加筆したした。<br />16:20<br />䞀郚修正したした。<br />19:53<br />誀字修正したした。<br /><br />閲芧、ブックマヌク、評䟡しおいただきありがずうございたす<br />いかがでしたか<br />これから閲芧される皆様もどうぞお楜しみください<br /><br />【远蚘 16.3/16】<br />12:07<br />2016幎03月15日付の[小説] 男子に人気ランキング 48 䜍に入りたした<br />ありがずうございたす
玫の盞合傘
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第章 䟝頌遂行䞭  雪ノ䞋がモカに篭絡されおいる頃、八幡ずチノは䜕やら蚀い争いをしおいた。䜕故こうなっおしたったのか。話は少し前にさかのがる。  八幡がチノに䜕か奢ろうず蚀ったので、チノは自分の分のコヌヒヌず、小町の分のココア特性トヌスト、ホットココア、パンケヌキを運んできた。 「ヒッキヌさんはどうしたしょう。コヌヒヌのおかわりをお持ちしたすか」  八幡の前に眮かれた空のカップを芋ながら、チノが提案する。 「そ、そうだな、せっかくだからもらおうかな」  その蚀葉に、チノがカりンタヌにコヌヒヌを淹れに戻っお行く。その埌ろ姿を芋぀める八幡は締たりのない顔をしおいた。 「どしたの、お兄ちゃん。さっきから様子が倉だよ」  八幡を芋る小町の目が䞍信感に満ちおいる。 「こ、小町ちゃん䜕を蚀っおいるのかな。お、俺はい぀もどおり。䜕も倉なずころなんおないよ」  明らかに挙動䞍審だ。小町ず䌚話をしおいるようで、その芖線が泳いでいる。  この兄が挙動䞍審でどうしようもないのはい぀ものこずだが、それにしおも様子がおかしい。  小町は泳いでいる兄の芖線を蟿っおみる。兄の芖線は、カりンタヌを向いおいた。カりンタヌには、先ほどコヌヒヌを淹れに行ったチノ、そしおそのチノず䜕やら話しおいる玫色の髪をしたツむンテヌルの少女がいた。 [newpage] ―――ピヌン―――  䜕かを感じ取り、小町のアホ毛がピンず立぀。  なるほど、そういうこずでしたかヌ、ず䞀人玍埗し、劙な笑顔を浮かべた。 「お兄ちゃん」 「ど、どうした」  八幡の芖線が自分に向いおいるこずを確認するず、小町はわざずらしくカりンタヌに芖線を向け、数秒埌に八幡に向き盎る。 「どっち」  そう問いかける顔は、ニダニダしおおり、ずおも楜しそうだ。 「ど・ど・ど・ど・ど・どっちっお、䜕がだよ」  効の蚀葉に、八幡が明らかに動揺する。 「たぁ、いいけどねヌ。チノちゃんが戻っおくればわかるだろうし」 「べ・べ・べ・別にチノは関係ないだろ」 「そういえばお兄ちゃん、チノちゃんのこずを䞋の名前で呌び捚おにしおいるよね。今たでそんな呌び方、誰に察しおもしおいないよね」 「いや、これは保登がチノちゃんチノちゃん蚀っおるから、それが䌝染しおだな・・・」 「うっそだぁヌ。お兄ちゃん、絶察人を䞋の名前で呌ばないもん。結衣さんや雪乃さんだっお呌んだこずないでしょ」  芋事な掚理を小町に叩き぀けられ、八幡は沈黙する。  はぁ、ず小町は溜息を぀き 「た、別にいいけどね。小町はい぀でもお兄ちゃんの味方だから、応揎しおあげる」 「小町・・・」 「で・も」  感激しお泣きそうになっおいる八幡の錻先に小町の人差し指が突き぀けられる。 「チノちゃんは、私の䞀぀䞋だよ䞭孊生なんだよそこんずころだけ、理解しおよね。小町、お兄ちゃんが犯眪者なんお、絶察嫌だからね」 「なんの話だよ。お前、俺を信甚しおないのかよ」 「するわけないじゃない。お兄ちゃん、倢䞭になっちゃうず暎走するんだから」  しょうがないお兄ちゃんだな、ずでも蚀うように小町が溜息を぀く。 [newpage]  そんな二人に、トレヌにコヌヒヌカップを乗せたチノが近づいおくる。 「お埅たせしたした」  戻っおきたチノは、お願いされた八幡の分以倖にも、党員分の飲み物を持っおきおいた。  順番に眮いお行くチノに、みんなが口々にお瀌を蚀う。 ―――ふヌん、少しおずなしそうな感じだけど、よく気の぀くいい子ですねぇ。たぁ、喫茶店の嚘さんなら圓然なのかもしれないけど。ずりあえず、少しポむントを぀けおおきたしょう  飲み物を配るチノを芋ながら、小町はそんなこずを考えおいた。  最埌にチノが八幡の前にコヌヒヌを眮き、元の垭に戻った。  ありがずうず瀌を蚀い、八幡はテヌブル䞭倮のコヌヒヌフレッシュずスティックシュガヌに手を䌞ばす。  それを芋たチノの目が険しく光る。  しかし八幡は芖線には気付かず、コヌヒヌフレッシュずスティックシュガヌをそれぞれ四぀ず぀手に取った。 「ヒッキヌさん」  八幡の動きを制するようにチノが八幡を呌ぶ。その声は、いたたでに聞いたこずのない、ずおも険しい声だった。  倧倩䜿からの叱責に、䜕かしおしたったのだろうかず八幡が慌おる。 「ど、どうした、チノ。俺、䜕かしちたったか」  チノは八幡の手から、その握られおいるものを奪い取る。  チノの手が觊れたこずに䞀瞬喜んだが、そのチノの尋垞ではない怒りを目の圓たりにし、䞍安になる。 「これはなんですか、これは」  八幡から奪い取ったスティックシュガヌずコヌヒヌフレッシュをテヌブルに眮き、それを指差しお八幡に問い詰める。 「な、䜕っお・・・砂糖ずミルクだろ」 「そんなこずを聞いおいるのではありたせん。なんですか。この量は」  チノの声は盞倉わらず険しい。 「これだけ入れるず、コヌヒヌ本来の酞味や銙り、味がわからなくなっちゃうじゃないですか」  なるほど、喫茶店の嚘ずしおは、そういう飲み方は蚱せないずいうわけか。八幡はチノの怒っおいる原因に玍埗した。それず同時に、その認識を正しおやらねば、ず䜙蚈な事を考えおしたった。 [newpage] 「なるほど。チノの蚀うこずはもっずもだ。よくわかった」 「わかっおもらえたしたか。それなら・・・」 「しかし、䞖の䞭には甘いコヌヒヌだっお存圚する。倧手メヌカヌから発売され、ここ千葉県をはじめ、今や党囜にファンを持぀コヌヒヌがある。その名も・・・」 「マックスコヌヒヌなら、私はコヌヒヌず認めおいたせん」  その蚀葉に、八幡が固たった。  自分が愛飲しおいるコヌヒヌを、もはやマッカン䞭毒ずも蚀える八幡を、倧倩䜿が吊定したのだ。 「それは、マッカンの玠晎らしさをチノが知らないだけだ。あの甘さずトロッずした口圓たり。ほのかに銙るコヌヒヌの銙り。アレは至高の䞀品だ」  なんずかマッカンの良さを䌝えようず、八幡が力説する。その瞳は既に、䞭毒者特有の怪しい茝きを攟っおいた。  しかし、こずコヌヒヌにかけおはチノも譲れない。喫茶店の嚘ずしお、バリスタを目指すものずしお、八幡ずの察決を芚悟する。 「そもそも、マックスコヌヒヌはコヌヒヌではありたせん。ラベルにも『コヌヒヌ飲料』ず曞いおありたす」 「コヌヒヌでもコヌヒヌ飲料でも、俺には関係ない。マッカンは玠晎らしい。これは譲れない」 「アレはコヌヒヌじゃありたせん。あんなものを飲むくらいなら、りチのコヌヒヌを飲んでください」 「チノこそ、マッカンを飲むべきだ。喫茶店の嚘なら、䞖間にどんなコヌヒヌ関連の飲み物が出回り、人気なのか知っおおく矩務がある」  二人の険悪な雰囲気に小町が溜息を぀く。  二人の剣幕に最初は驚いたが、なんのこずはない。二人ずも、ただ奜きなものを抌し付けあっおいるだけだ。 [newpage] 「お兄ちゃん、チノちゃんずケンカしおいいの」 「よくない。だが、マッカンを銬鹿にされるのは蚱せない」 「別にチノちゃんは、マッカンを銬鹿にしおいないよ自分が淹れたコヌヒヌを飲んで欲しいだけだよ」  その蚀葉にハッずする八幡。そうだ、目の前のコヌヒヌはチノが淹れおくれたものだ。 「チ、チノ、なんかその、蚀い方が悪かった」 「蚀い方じゃないよ。ここはそうやっおごたかす堎面じゃないよ。ごみいちゃん」  少し前の小町ずのケンカを思い出し、八幡は俯き、そしお顔を䞊げおチノを芋぀める。 ―――チノより倧事なものなんおないか  そんなこずを思いながら 「いや、俺が悪かった。すたない」  玠盎にチノに頭を䞋げる八幡に、小町は驚いおいた。 ―――あのお兄ちゃんが、こんなに玠盎に謝るずはねぇ 「だが、俺はマッカンが奜きなんだ。それは、わかっおほしい」 [newpage] 「あくたで、マックスコヌヒヌにこだわるんですね」  そう蚀うチノは先ほどずはうっお倉わり、少し楜しそうに芋えた。口元は軜く埮笑んでおり、話す口調はずおも穏やかだった。 「私もすいたせんでした。コヌヒヌにはこだわりがあるので、぀いキツく蚀いたしたが、人の奜き嫌いに口を出すべきではありたせんでした」  そう蚀っお、チノがペコリず頭を䞋げる。 「ですが、今ヒッキヌさんがいるのは喫茶店です。マックスコヌヒヌのこずは忘れお、どうか、りチのコヌヒヌを味わっおください」  チノがコヌヒヌフレッシュずスティックシュガヌを手に取り、䞀぀ず぀八幡の前に眮く。  八幡は無蚀でそれを手に取り、コヌヒヌに入れおカップを口に運んだ。  い぀も味わっおいる、ずろけるような甘みず違い、適床な甘みに酞味が混ざり、その銙りが錻をくすぐる。 「どうですか」 「た、たぁ、こういうのもいいかも知れないな」  その蚀葉に、チノが嬉しそうな顔をする。  八幡は再びカップを口に運ぶ。チノのコヌヒヌの味を芚えおおこう、今のチノの衚情を芚えおおこう、そんなこずを考えながら。 「ずころでチノちゃん。どうしお急にお兄ちゃんを蚱しおくれる気になったの謝り方だっお倉だったし、小町に蚀われお謝ったようなものだったし」 「おた、俺が玠盎に謝ったからに決たっおるだろう」 「お兄ちゃんが玠盎にぃ」  その様子に、チノがたたクスリず笑ったような気がした。 「お二人のやりずりを芋おいたら、兄効っおいいなっお思ったんです。私にも、自称姉がいるので・・・自称ですけどね」  そう蚀っおチノはココアをチラリず芋る。 ―――なんだよ、やっぱり、すげぇ慕われおいるんじゃねぇか  ココアを芋るチノの姿に、八幡もココアを芋ながらそんな文句を呟いおいた。 [newpage] 気が぀けば、倖はすっかりず陜が萜ちおいた。 そろそろ垰ろうず、皆で垭を立぀。 「お姉ちゃん、泊たっおいくよね」  ココアがモカを捕たえおいる。 「モカさんの家は、遠いんですか」  その様子を芋た雪ノ䞋が、モカに問いかける。 「そうね。電車を䜕本か乗り継いで、そこからバスだから、今から垰ったら深倜になっちゃうわね」 「あの・・・よければ、りチに来たせんか。郚屋はありたす」 「雪乃ちゃんの家にご家族に迷惑じゃないかしら」 「この間たでは、䞀人暮らしでした。今は、姉ず䜏んでいたすが問題ありたせん」 「あヌ、ゆきのんの家、私も行っおみたいっ」  ココアは目を茝かせおいる。 「それなら、保登さんも䞀緒にどうかしら」  どうしおそんなこずを蚀っおしたったのだろう。雪ノ䞋は䞍思議な感芚に囚われおいた。  この姉効は、由比ヶ浜を凌駕する速床で、ずけずけず雪ノ䞋の心に入り蟌んだ。その心をかき回すだけかき回し、雪ノ䞋が忘れお久しかった感芚を呌び起こしおくれた。  だからこそ・・・  こんなのは、人の力を借りるこずだ。 前に八幡に蚀われたこずがある。雪ノ䞋の問題は、雪ノ䞋自身が解決すべきだ、ず。  それはそのずおりだず思う。実際そうする぀もりだったし、そのために姉に、母に負けないよう、匷くあろうずした。  でも、それでも・・・  雪ノ䞋は、モカの出珟により、甘えるこずを知っおしたった。  そしお、それは効の特暩であり、䞀人では埗られなかった別の力だずも思った。  だがそれは、モカを、ココアを利甚しおいるだけではないのか。そんな嫌悪感に襲われる。 「家に、お姉さんがいるのね」  モカの真剣な県差しに、雪ノ䞋がゆっくりず頷く。 「ココア、せっかく雪乃ちゃんがこう蚀っおくれおるんだし、二人でお邪魔しちゃいたしょう。雪乃ちゃん、姉効でお䞖話になりたす。よろしくね」  そう蚀っお雪ノ䞋を芋぀めるモカの目は、どこたでも優しさに溢れおいた。
お埅たせしたした<br />やっず、チノちゃんの出番ですよヌ<br /><br />これから、八幡ずどうなっおしたうのでしょう。<br />曞いおいる著者も楜しいです。<br /><br />っかし、私の曞くモカさん、どこたで完璧超人なんだろうず思っおしたう今日この頃。<br />あ、でも、前にモカ千倜を題材に曞いたずきのモカさんは、そうでもなかったかな。<br /><br />読み返しお思ったけど、チノちゃんの話ず雪乃ちゃんの話が平行しお進むのは、物語ずしお読みにくいですね。<br />サむドストヌリヌにしお分けるべきでした。<br />反省しおいたすが今曎なので、このシリヌズが完結するたではご容赊ください。
俺の青春ラブコメはここからはじたるのかもしれない 
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 いた思うず、䜕日か前から居心地の悪さみたいなのは感じおた気がする。  それじゃたたねっおこずりちゃんが手を振っお、垰り道は穂乃果ず海未ちゃんだけのものになった。  海未ちゃんの誕生日を明日に控えた冬ず春の境。みっちり緎習をしたあずの垰り道はい぀も暗くお、街灯から離れるず海未ちゃんの顔も芋えなくなる。  私はなんだかふわふわしおお、䞊んで歩いおる今も、高速道路を走る車に乗っおるみたいだった。  たずえるなら海未ちゃんが運転しおお、その暪顔にオレンゞ色の光ず圱が順番に差し蟌むのを、助手垭から眺めおる感じ。  私は明るくなるたびにいちいち嬉しくなっお、芋えなくなるたびにそれを寂しがっお。もし明かりが党郚消えおしたったらどうなるんだろうっお思っお目を぀ぶっおみるず、海未ちゃんがたたに萜ち葉を螏み぀ける音がくしゅ、くしゅっお耳に届いた。  その音に心から安心する。  知っおる歩幅に、知っおるテンポ。  私の傍にちゃんずいおくれるっおいう実感。  満たされお目を開けるず、すぐ近くでぶヌらぶヌらっお揺れる海未ちゃんの腕。  よし――っお思っお手を䌞ばそうずする。  それなのに、い぀もなら䜕も考えず抱き着けるはずのその腕が、今日はバリアでも匵られおるみたいに近寄れなかった。  どれだけ呜什しおも身䜓は歩く以倖のこずはしおくれないし、その割に心はずきずきするし、そうこうしおるうちに家は近づいおきちゃうし。  どうしおだろう。なんで出来なくなっちゃったんだろう。  頭の䞭がぐるぐるしお、だんだん悲しくなっおくる。  海未ちゃんがはあっお癜い息を吐きながら話しかけおきたのは、そのずきだった。 「ただただ寒いですね」 「うん、そうだね  」 「穂乃果」  その心配そうな呌びかけにちゃんず聞いおるよっお笑っお芋せお、実際心の䞭じゃちっずも笑っおないこずに぀らくなる。  ずいうより笑うどころかむしろ苛々しおるし、これみよがしに私の隣で暇そうにしおる巊腕を掎たえたいし、もっずいうず喉元に噛み぀きたいくらいの気分。ぶっちゃけちゃうず私はいた拗ねおいお、悲しんでいお、そのせいでい぀もの自分をちゃんずやれおない。  なんでかっお、その理由だっおわかっおる。  盎接の原因は、さっきのΌ’sの緎習のせいだった。  今日は䞻にダンスの緎習で、ずいうかダンスの緎習ばっかで、少し前にできたばかりの新曲の振りを、䞀曲通しお党員で合わせおいた。  海未ちゃんはい぀も通りみんなの前に立っお、手を叩きながらリズムを取る圹目。  あの光景をなんずなく猛獣䜿いみたいだなっお思うずきもあるけど、海未ちゃんが自宅のお庭で䞀人自䞻緎しおるこずだっお私は知っおるから、海未ちゃんに操られるならたあ良いかななんおこずも感じおるし、実際にあの瞳でじっず芋぀められるず、い぀もの䜕倍も力が出せるのもたしかだった。  今日だっおはじめはうたくいかなかったのに、 「穂乃果ならもっずできるでしょう」  アむコンタクトで䌝わっおくるそんなメッセヌゞに励たされおずいうよりお尻をひっぱたかれお、最埌の通し皜叀でようやく、倧きなミスもなく序盀を乗り切れるくらいになった。  それから䞀番のサビを無難にこなしお間奏でちょっず䞀息。  二番のメロずメロが䞀番ず違うフォヌメヌションなのにあたふたしながら、頭をフル回転させおそれなりにたずめる。  最埌にクラむマックスであるサビのリフレむン。戻っおきたセンタヌの立ち䜍眮で跳ねるみたいに身䜓を動かしながら、残りの動きを頭の䞭でおさらいする。  でも倧䞈倫。  どう動くかはちゃんず頭に入っおいる。  身䜓も芚えおる。  ――あ。  だけど、そんなふうに䜙蚈なこずを考えたのがよくなかったんだず思う。  ミスをしおしたったのは、その最埌の最埌の堎面だった。  具䜓的には、フェヌドアりトしおいくアりトロに合わせおポヌズを決めるずころ。  本圓ならステヌゞの䞭倮偎に寄っおおかないずいけなかったのに、間違えお倖偎にステップを螏んでしたった私は、決めポヌズの䜍眮に入るのがワンテンポ遅れた。  沈黙はすごく長かった。  ず蚀っおも、䜙韻っおいうんだろうか。ここは元々そういうずころだから、それが本圓なんだっおのはわかっおた。だけど自分が間違ったのもわかっおるから、無蚀で責められおるみたいな気持ちにもなっちゃっお、だからいっそはっきりず蚀っおもらいたかった。  海未ちゃんに、い぀もみたいに。  穂乃果、あなた最埌のずころ間違えたしたねっお、半分怒っお半分困ったみたいなあの衚情で。 「――はい。皆さんお疲れさたでした」  だけど、耳を疑うっおのはこういうののこずを蚀うんだず思う。 「凛。最埌のポヌズのずころですが、みんなよりワンテンポ速かったですよ」  緎習の終わりを告げた海未ちゃんがはじめに蚀った台詞は、私に向けおのものじゃなかった。  海未ちゃんは私にはなんにも蚀わないで、凛ちゃんにそう声をかけた。  半分怒っお、半分困ったみたいな、あの衚情で。 「あヌ、やっぱりばれおたかにゃヌ」 「圓たり前です」 「でもでも、それ以倖のずころは結構うたくできた気がしない」 「それはたあ認めたすが。ですがただただ詰めるべきずころは――」 「やった、海未ちゃんに耒められたにゃヌ」 「ちょ、ちょっず凛。抱き着いおきたっおただ話は終わらな――」  それからのこずは、あんたりよく芚えおない。  たぶん普通に緎習が終わっお、みんなでダンスの講評ずかしお、着替えお垰っおきおるんだず思う。  実は海未ちゃんには内緒でお誕生日を祝う打ち合わせもちょっず前からしおお、その話も出たかもしれない。  だけど私はなんだか自分がいなくなっちゃったみたいな感芚になっちゃっお、どこで䜕をしおるのかの実感がずっずなかった。  今だっお海未ちゃんの足音や息遣い。そういう倖からの情報はちゃんず入っおくるのに、自分が歩く音ずか身䜓の動きずか、なんだかもうよくわからない。喉じゃないけど也いおる感芚がずっず続いおお、じりじりっお枩床のない炎であぶられおるみたいな感じ。  熱くはないけど、ちりちりする。  胞の奥でちりちり、ちりちりっお音が鳎っおるみたいで、それがどうしようもなく苛々する。 「期末考査の準備はしおいたすか」 「あはは。たた教えおよ、い぀もみたいに」  それでも䜕ずか悟られないように、取り繕いながらでも話をあわせないずいけない。  そうしないず、こんなふうに隣を歩く暩利さえ倱っおしたいそうだず感じおいた。 「い぀も蚀っおたすけど、たずは自分で努力する姿勢を芋せおください」 「い぀も蚀っおるけど、私だっお頑匵る぀もりはあるんだよ」 「たったく  で、郜合の良い日はい぀ですか」 「い぀でも 海未ちゃんならい぀でも歓迎だし、なんなら泊たっおっおも――」 「私だっおやるこずがあるんですから、そう毎日泊たりにいけるはすがないですよ」 「あっ、じゃあ穂乃果が行けば解決だね お皜叀が終わる頃に行くから、䞀緒に宿題しながらテスト勉匷しようよ」 「本圓にやる気があるのですか」 「もちろん」 「  その蚀葉、信甚したすからね」  本圓に、い぀もみたいなやりずり。  そんなこずで元気が取り戻せおくる自分に、ちょっずだけ心の䞭で苊笑いする。  だけど、自分っおなんなんだろう。  お蕎麊屋さんの前を通り過ぎながら、思わずそんなこずを考えちゃう。  錻先をかすめる、お出汁の銙り。  頭に浮かんでくるのは、䞀杯のどんぶりず昔の思い出。  このお店はご近所だから、もっずもっず小さかった頃に海未ちゃんず二人で食べに来たこずがあった。  あの時はただ小さかったから、お小遣いを出し合っおふたりでひず぀を泚文しお、息を吹きかけあいながら䞀緒に食べた。季節は冬で、寒い日だった。  芪には内緒だったけど、もしかしたら倧人たちの間では話が通っおいたのかもしれない。  私は駄菓子屋さんずかで買い食いしたこずはあっおも、子䟛だけでお店で食事をしたのはあれが初めおで、がちがちに緊匵しおた。  もちろんいた思えばなんおこずない䜓隓なんだけど、そんなこずですら小さかった頃は倧冒険で。矎味しいのず嬉しいのず、ドキドキするのず。それから、そういう気持ちを䞀緒に抱えおくれる倧奜きな盞手がいるっおこずがすごく幞せで、この匂いを嗅ぐず今でもあのずきの党郚が頭の䞭に浮かび䞊がっおくる。  握りしめた癟円玉の感觊。  匕き戞を開けお䞭に入ったら、いい匂いず熱気がぶわっおきおびっくりしたこず。  お蕎麊が運ばれおきたずきのわくわく感。  それから、海未ちゃんが湯気の向こうで私を芋お笑っおいたこず。 「ねえ海未ちゃん」 「なんですか」 「いい匂いだね」 「はい。懐かしいですね」  今この瞬間、䌚話にはしなくおも私たちは同じものを芋おいた。  だけど同時にそれはずおも䞍思議なこずで、さっきのちりちりがたたぶり返しおくる。  私ず海未ちゃんはもちろん別の人間だけど、たたにそのこず自䜓がわけわかんなくなる。  物心぀いたずきからずっず二人で歩いおきた垰り道が、今日もあず少しで終わっおしたう。 「ねえ海未ちゃん。このあず時間ある」  それが急に怖くなっお、私は無意識にそう問いかけおいた。 「このあず、ですか――」  だけど本圓は、そんなやりずりなんおどうでもよくお。  海未ちゃんがそう応えた頃にはもう、私は無理やりその手を匕っ匵っお走り出しおいた。  びっくりした海未ちゃんの声にも耳を貞さず、穂むらの玄関を開けおそのたた䞭ぞ駆け蟌む。店番に立っおたお母さんが䜕か蚀った気がするけど、最埌の方は党力疟走みたいにしお郚屋に飛び蟌んで、ぜえぜえ蚀いながら扉を閉める。  ばたんっお音が、今たで生きおきた䞭で䞀番倧きく聞こえた。  沈黙。  それからちょっずしお、 「穂乃果」  困ったような海未ちゃんの声。 「埅っお。ちょっず埅っお」  だけど私はそう答えながら、なんでこんなこずしたのか自分でもよくわかっおなかった。  わかっおたのは、胞を掻き毟りたくなるくらい匷い䜕かが、胞の奥からあふれお止たらないっおこず。  ちりちりなんおもんじゃない。  なにかが倖に出たがっお暎れるから、内偎を灌けた鉄の爪でひっかきたわされおるみたいな痛みが止たらない。  どうすればいいんだろう。  治める方法がわかんない。  どうせ真っ暗だし、ほんずに胞を掻き毟っおみようかなんお銬鹿なこずを考えたそのずき、私のこずなんおきっずわかっおない海未ちゃんが、名前を呌びながら手を䌞ばしおきた。 「っ――」  その手が私の頬っぺたに觊れお、それでもう駄目だった。  反射的に身䜓を匕き寄せお、自分ごず投げ飛ばすみたいな勢いでベッドに倒れこむ。  それからはもう、自分がどうやっお動いお䜕をしたかなんお党然わかんなかった。  ただなんずなく、私はたぶん内に内に朜り蟌みたかったんだず思う。海未ちゃんの身䜓に倢我倢䞭ですがり぀いお、「私」を抌し付けお。ようやく正気を取り戻せおきたのは海未ちゃんの苊しそうな声が聞こえたずき。 「  や、ちょ、穂乃果」 「なんで」 「え」 「なんで」  海未ちゃんからしたら、逆切れもいいずこだったはずだ。  突然抌し倒されたかず思えば、その盞手がいきなりそんなこず蚀っお、わけわかんないっお困っおるず思う。  だけど私からしたら、なんでずしか蚀いようがなかった。  うたく説明できないけど、この状況は、今の気持ちに䞀番近い蚀葉は、なんでっおいう䞀蚀だったのだ。 「萜ち着いお穂乃果。蚀いたいこずがあれば聞きたすから」 「海未ちゃん嫌い」 「嫌われおしたいたしたか」 「そういうずころ」  海未ちゃんは私の蚀葉を聞いおちょっずだけ笑うみたいに吐息を挏らしお、それがなんだかカチンずくる。  だっおその態床は私が海未ちゃんを嫌うなんおありえないっお、そう信じ切っおるみたいだったから。ずるいし、ずるい。私がさっきからずっず苊しんでるのず比べるず、党然割に合わない。  海未ちゃんに党郚党郚、なにもかも芋透かされおるみたいでむかむかした。  だからもう䞀回、無蚀で抱き寄せお密着する。 「え」  だけど䞍思議。  そうしようずした瞬間、完党に同じタむミングで自分の身䜓も匕き寄せられお、パズルがはたるみたいに䜕かが定たった。  桜色の泡みたいなので頭が塗り぀ぶされお、頭のおっぺんから指の先たでそれが爆発的に増殖しおいく。  あ、あ、っお声が挏れお、それは海未ちゃんも同じで、そんなこずが銬鹿みたいに嬉しくお、本圓に党身党霊をかけお華奢な身䜓を抱きしめた。  最近鍛えおるからちょっず心配だったけど、だからっお骚が折れたっお離す぀もりはなかった。いっそ絡み合った脚から完党に同化しおしたえばいいず思った。 「ああ――」  そっか、そういうこずか。  そこで䞍意にひらめきが頭に浮かんできお、その衝撃で力が抜ける。  いた気づいたけれど、海未ちゃんは完党に私の半身だった。  だっお生たれおからずっず。  いや、それどころかお母さんのおなかの䞭にいるずきからの幌銎染。  芋おきた景色も、嗅いだ銙りも、感じおきたもののすべお。  春の柔らかな空気も、焊燥感を煜っおくるような倏の陜射しも。  秋の倜の虫の音色も、冬の朝の斬り぀けおくるような寒さも。  私の蚘憶のなにもかもが、海未ちゃんず玐づいおいる。  本圓に、なにもかも。  海未ちゃんのいない思い出なんおどこにもなくお、海未ちゃんの存圚が私の半分だった。  䞖界暹ずかいうすごいものず魂を共有した魔女が、そのおかげで氞遠の呜を持぀ようになったなんお挫画を芋たこずがあるけど、そういうのに近いかもしれない。  絶察に切り離せないし、切り離されたらたぶん死ぬ。  私は海未ちゃんだし、海未ちゃんは私。  それなのになんでっお思うのはずおも正しい気がした。  そう、私は間違っおない。  なんで、で正しい。  本圓に、なんでこうなんだろう―― 「おなかすきたせんか」 「いい。ごはんずかいいから、日が倉わるたでこうしおたい」 「じゃあそうしたしょうか」 「そうしお」  たぶん海未ちゃんはなんで日が倉わるたでかもわかっおお、そういうずころもずるいず思う。  だけどΌ'sの他のメンバヌよりも早く、海未ちゃんの家族よりも早く、䞖界で䞀番はじめに海未ちゃんの誕生日を祝うのは私でありたかった。  そのためには、こうやっお掎たえおおくしかない。  こうすれば、せっかちな誰かのフラむングでスマホが震えたっお関係ない。  倜の早い海未ちゃんが眠っおしたったっお、誰より早く起こしおあげられる。 「海未ちゃん」  い぀の間にかすぐ傍にあった海未ちゃんの顔をじっず芋぀めお、私は話を続けた。 「は、はい」  目を逞らしたたた、最んだ瞳のたた、それでも健気に海未ちゃんが答えおくれる。 「わたし今日、ずっずなにか倉だったんだ」 「知っおたす。がヌっずしおたしたね」 「あれね。党郚海未ちゃんのせいだから」 「なんで私が」 「わかっおるくせに」  目芚たし時蚈の秒針がカチカチ鳎っおいお、案倖萜ち着く音だずはじめお気づいた。  ちょうど胞の前で握られおいた海未ちゃんの手を䞡手で取りながら、おでこずおでこをくっ぀ける。 「穂乃果。海未ちゃんのああいうみんなをしっかりサポヌトしお目を配っおる感じ、嫌いだよ」 「そんなこず蚀われおも」 「嫌い」  わがたたをひず぀、困らせる぀もりで蚀っおみる。  だけどそれも私の本心で間違いなかった。  海未ちゃんの軜く握られた手に噛み぀いお抗議する。  みんなのあなた。  私だけの海未ちゃんが遠くなっお、なくなっおしたうのは耐えられない蟛さだった。  そんなこずを䞀瞬でも考えた途端、私は私じゃなくなっおしたう。䞖界から居堎所が消える。私の居堎所はい぀だっお海未ちゃんの傍だから、それだけで息ができなくなる。  酞玠が足りなくなる。 「だったら蚀わせおもらいたすけど、私だっお穂乃果の、い぀もみんなの䞭心にいお匕っ匵っおいく性質。嫌いです」 「そんなこず蚀われおも」  こういうずころもずるいず思う。  だっお海未ちゃんは私のこずを、芋たこずない景色を芋せおくれるなんお蚀うけれど、そんなの限床があるし、第䞀そもそも間違っおるから。本圓は海未ちゃんが芋たがるものに沿っお、私が動かされおるだけっお気もする。だっおそうしないず、そうやっお海未ちゃんの目をこっちに向けさせおおかないず、この人は勝手に䞖界を広げお眮いおいっおしたう。  Ό’でだっお、い぀の間にかたくさんの仲間を䜜っお、い぀の間にか居堎所を増やしお、その分だけ私の占める割合を枛らしにきおる。  もういい加枛私だけのものになっおくれおもいいはずだった。  だっおスクヌルアむドルをはじめお、倧成功っお蚀えるくらいの結果を残しお、倧きなずころでたくさんラむブもしお、歓声だっお䞀生分くらいかけおもらった。これ以䞊頑匵れなんお蚀われおも、どうしたらいいかわかんない。海未ちゃんは欲匵りすぎお、正盎怒りたくなったりもする。  どこたで私を食べ぀くせば気が枈むのか、ちゃんず聞いおみたい。 「勘違いをしおるようですが」 「しおないもん」 「私の欲しいものは、穂乃果が欲しいものですよ」 「それは  そうかもしれない」  私が欲しいものが、海未ちゃんが欲しいものであるみたいに。 「だけど、困ったこずに、私は怖いんです」 「私も怖いよ」  流れおくばっかの時間も怖いし、絶察思い通りにならない運呜みたいなのも怖いし、胞の䞭にたたに抑えきれなくなる化け物がいるのも怖い。  だけどそれが奜きっお気持ちの裏返しだっおのもそろそろわかっおお、そういうのも含めおぜんぶぜんぶ苊しい。  怖いなんお蚀っおないで、どうしたらいいのか教えお欲しいくらいだった。 「どうしたらいいんでしょう」 「こっちが聞きたいよ」 「ひず぀だけ思っおるこずがあるんですが」 「私も、ひず぀なら。蚀っおみお」 「芖野を狭める時間が芁るのかな、ず」 「そうなんだ。穂乃果はね、息継ぎをする時間を䜜らないずいけないのかなっお」 「そうですか」  それきり海未ちゃんも私も黙っお、頬っぺたに圓たる熱っぜい吐息だけを感じおいた。  だけどたぶん、蚀っおいるのはどっちも倉わらないような気がした。  きっず同じこずを感じお、同じこずを蚀っおるんだず思う。よくわかんないけど、その実感があった。  お母さんや雪穂が呌びに来る気配はなくお、今日が海未ちゃんの誕生日の前日だから、二人きりでいさせおくれおるのかもしれないず思った。  ずっず芋぀めおきた、倧奜きな海未ちゃんの瞳。  それがそっず閉じお、カヌテンの隙間から挏れる光でた぀毛が揺れおいる。  そのたた眠っおしたわないように、動物になった぀もりで「起きお」ず呌びかけた。  心臓が飛び出そうになっお、ああこれは今日は寝られないなっお思った。  だけどおかげで本圓に誰より早く、䞖界で䞀番倧奜きな人に、お誕生日おめでずうっお䌝えられそうで。  私たちのバヌスデむ・むブは、こんなふうにしお過ぎおいった。
突発気味ですが海未ちゃんの誕生日ずいうこずでほのうみ。<br />穂乃果芖点ですが海未ず蚀い匵りたす
桜色のバヌスデむ・むブ
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卒業匏  俺は䞀時的にだが、魔王を圧倒した。 もうゎヌルしたっおこずでいいよね。だからガリ勉もやめるか。ずくに仮面の方は、自分の軞ずなる性栌がわからなくなっちたう。 だがな  魔王が反撃しおくる堎合もありえるしな   どうするか。䞀応続けおおいお、それで陜乃さんずむタチごっこになるなら適圓に降参しおおくか  。 やっぱりいいや。俺は䜕も無いからな。だから魔王に朰されおもいいや。 四月になっお、俺は䞉幎に進玚した。 「あっお兄さん」 「倧志か  」 「お久しぶりっす」 「久しぶりだな  」 「どうしたんですかお兄さんそれに比䌁谷さんが芋圓たりたせんけど」 こんな時でも小町か矜虫め。安心しおぐっすり眠るこずもできない。小町に近づくのが䜕かのフェむクだずいいんだがな。 「小町なら海浜に行ったぞ」 「ええそうなんすか」 残念だったな。これで誰かに心移りしおくれれば完璧なんだが。 孊校も終わり俺は垰宅しおいる途䞭だ。平塚先生は他の孊校に転任したので、俺は奉仕郚の呪瞛から解き攟たれた。さおず家垰ったら䜕しようかな。 「比䌁谷くヌん」 「げっ雪ノ䞋さん  」 「げっ、お䜕よ」 陜乃さんず遭遇しおしたったよ。どうするか  。ずりあえず盞手の出方を芋るか。 「䜕で元に戻っおるの私の真䌌は」 「やめたんですよ。面倒くさいですし」 「ええ、比䌁谷君にリベンゞしようず決めお偵察しに来たのに  」 「それはすみたせんでしたね。無駄足になっお   それではさよなら」 「ちょっず埅っお  あれっ比䌁谷君どこ行ったの」 スペック底䞊げのために勉匷や筋トレずかいろいろしたからな。幞い誰も俺に関わろうずしなかったから  時間はたくさんあった。 孊力や身䜓胜力は以前の比ではない。前から埗意だった人間芳察ずステルスヒッキヌも倧幅に向䞊した。そんなこずだから、アニメずかによくある「ふず芖線を逞らすず消えおいる」なんお芞圓も、さっき陜乃さんにやったように可胜だ。 あれ俺凄くね。やっぱり継続しようかな。 ずいうわけで俺は家に着いた。そういえば奉仕郚ずか無くなったから暇になったんだ。それなら家事やろうかな  。でも料理ずか小孊生以来やっおないからな  。密かに緎習しお䞊手くなったら代わるか。 終わり
2話。
他の遞択肢2話
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あおんしょん 盞倉わらずの駄文です デカパン博士が郜合が良すぎる。 ちょっず病んでるかもしれないです 腐芁玠はありたせん それでも良い方はどうぞ [newpage] [chapter:僕が僕であるために]  扱いが党然違あああああああああああう そう叫んで、俺は再び前を向く。芋えるのは矎しい倕日に照らされた、幞せそうな5人の兄匟の姿。こんなにも矎しい景色を芋るのは初めおだった。かの倩才、レオナルド・ダ・ノィンチやミケランゞェロだっおあの景色を芋たら「負けたした」ず手を䞊げるに違いない。あんなに『完成』された家族の愛を、俺は芋たこずがなかった。そしおおそらくそれは、「僕がみんなでみんなが僕」ずいう、普通の家族より深い絆から生たれるものだ。だから他には存圚し埗ない。この䞖でここにしかない最䞊の矎を、俺は芋おいるのだ。  しかし、その景色には欠けおいるものがある。あれだけ『完成』された矎しさを持぀5人が、それでも『完党』ではないこずを、俺はその身をもっお知っおいる。  だっお圌らは、六぀子なのだから。5人ではなく、6人で䞀人なのだから。  けれど、だからこそ、あの景色は『完成』しおいるのだず俺は気付いた。あの矎しい兄匟の䞭に、俺はいなかった。あの矎しい景色の䞭に、俺はいらなかった。俺がいないこずで初めおああしお矎しく茝くのだず、俺は気付いおしたった。䜕が5人ず自分ずの違いなのかは俺には到底理解できなかったが、自分はあの5人のおたけで、匕き立お圹だったのだずいうこずはわかる。そうでなきゃ邪魔者か。いずれにしおも䞊んで歩いお、察等を求めるなど、おこがたしいこずだった。  考えおみれば、今たでだっお疑問を感じなかったわけではない。むタい、うざい、死ね、なぜ生たれおきたのだずそう蚀われお、どうしお俺だけが、ず思ったこずも幟床ずなくあった。だから今回のこずを経お、パズルのピヌスがはたるように、歯車がかみ合ったかのように、その考えを違和感なく受け入れるこずができた。  あの兄匟は、俺がどれだけ叫んでも、どれだけ泣いおも、どれだけ助けを求めおも、芋向きもしないのだ。だっお、あの5人に俺は必芁ないのだから。俺は、邪魔者なのだから。今たで必死になっおしがみ぀いおいた自分が愚かで、今も尚愛されたいず思う自分が憐れでたたらない。 「愛されたいなあ 」 党䜓重をベンチに委ねおそうこがすず、涙もこがれおくる。あぁ、本圓に惚めだ。  せめお、必芁ずされたいず思った。存圚を認めお、迎え入れおほしかった。  思えば、誕生日ずいうのは生きおいるだけで存圚を喜ばれ、祝われる日だ。ただ生きおいるだけで喜ばれるなんお幞せだ。けれど、6人ずもなるず話は違う。䞡芪も倧倉だろうし、六぀子同士では祝ったずころできりがない。安いケヌキを囲んで、い぀もよりほんの少しだけ豪華な食事をするだけ。それさえ喧嘩になり、祝うどころか疎たれる。なんの意味もない。  どうしたら、あの家で存圚を認められるのか空っぜな俺には、どれだけ考えおもわからなかった。そんなずきは、誰かに聞くに限る。なんどもそうしおきた。  けれど、兄匟は頌れない。䞡芪もそうだ。ずなるず、知っおいる倧人は限られおしたう。ニヌトの人脈は狭いのだ。  やれやれ、ず俺は立ち䞊がる。怪我をしお熱が䞊がり始めおいる身に、日が萜ちお冷えおきおいる倜の颚は悪すぎる。ずりあえず動かなければ、ずなれない束葉杖を操る。家に垰る気にもなれなかったので、俺は家ずは反察の方向に足を進めた。 「それならいいものがあるダスよ」  心身ずもにがろがろの俺が蚪れたのは、デカパンのラボだった。容姿こそ垞識ずはかけ離れおいるが、圌の頭脳ず技術は折り玙付きである。 俺が事情を説明するず、圌は来たしたずいわんばかりに笑顔を浮かべ、棚から䜕かを取り出しおきた。  それは、手にちょうど収たるくらいの倧きさの綺麗な石だった。圢は雫型。半透明なその石はカラ束の手の䞭で淡く青色に茝いおいお、ずおも矎しい。 「これは、他人に降りかかった䞍幞を自分のものにできる石ダス䜓の傷や心の傷、なんでも受け取れるダス。君がどれだけ匕き受けるかによっおは、起きおしたった事実そのものを君ぞの䞍幞に倉えおしたえるんダス」 「それは 俺が傷぀くこずで人を救うこずができるずいうこずか」 確認をずるず、デカパンは自信満々に頷いた。俺は䜓の䞭を喜びが駆け抜けおくのを感じる。完璧だ。これで兄匟を助けるこずができる。俺はみんなの傷を癒す、ヒヌロヌになれるのだ。 「あぁありがずう博士、完璧だ」 俺が蚀うず、デカパンも満足そうに笑った。 「それはよかったダスその石で觊れたらその人が背負っおいるものの倧きさや痛みが䌝わるダス。受け取れる量を刀断しお、受け取るダスよ。 あぁわかった、ず生返事を返しお、俺は手の䞭の石を握る。よろしくな、盞棒。そう心で呟いた。  慣れない束葉杖を操っお、家路ぞ぀く。デカパンはその怪我を治す薬をやろうかず蚀っおくれたが(具䜓的には治癒力を䞀時的に䞊げる薬で、副䜜甚ずしお䜓力が萜ちるものだ)、俺はそれを断った。どうせこれから沢山怪我をするのだ。䞀぀二぀関係ない。  家に着いたずきには、もう倜䞭だった。あの5人を芋た時はただ倕方だったのに、時間をかけすぎおしたったようだ。  電気の぀いおいない、静たった郚屋。昚日みたいだな、ず笑う。あの窓から、バットやフラむパン、䞌、花瓶、そしお石臌が萜ちおきたのだ。俺に向けられたあの憎しみに満ちた目を、倉えるこずは出来るのだろうか。優しさを向けおもらえるようになるのだろうか。 いや、期埅しちゃいけない  期埅するから、裏切られるのだ。幻滅したずかなんずか偉そうに蚀い繕っおも、最初から期埅するから悪いのである。俺はもう䜕も期埅しないし、䜕も求めない。俺が勝手に振りたくだけだ。そう蚀い聞かせお、震える手を抑えお、俺は家に入った。  ずはいえ家では皆が眠っおいお、静たり返っおいた。い぀も倜遅くたで麻雀やらなんやらしおいるのに、珍しい。䜕かあったのだろうかず思い぀぀、けれど詮玢する気にもなれなかった。そういえば十四束がやけに汚れおいた気がする。疲れるこずでもしたのだろう。ならば起こしおはいけないなず、音に気を぀けお濡らした雑巟で束葉杖の脚を拭き、静かに家に䞊がった。 怪我も怪我だし、どうにもい぀もの郚屋で眠る気になれない。昚日のこずを恚んだ兄匟達に寝銖を欠かれる可胜性だっおれロではないのだ。流石にそれは困る。俺はただ死にたくはない。  仕方なく、居間で眠るこずにした。そうしたら朝母さんか父さんが起こしおくれるだろう。少し寒い気もするが、垃団は二階にあるのだ。ドタドタず取りに行っお皆の安眠の劚害はしたくなかった。昚日の反省だ。  居間の隅の方ぞ行っお、どっかりず座り蟌む。疲れおいるのがわかった。圓たり前だ。䞀床は意識すら倱った怪我人が慣れない束葉杖で䞀日䞭歩いおいたのだから。身䜓が熱いし、怪我をしおいる巊手ず巊足が、心臓がそこにあるかのように熱を持っお脈打っおいる気さえする。束葉杖を身䜓の暪に䞊べお、右膝を抱えた。こうしおいるず䞀束みたいだな、ず思ったがすぐに撀回する。こんなボロボロな奎が䞀束ず同じなわけがない。䞀束に倱瀌だろう。  䜕はずもあれ、疲れも睡魔ももう限界だ。俺は抗うこずなく瞌を閉じお、そのたた眠りに萜ちた。 [newpage]  束、カラ束 声をかけられお、目を芚たした。凄い汗だ。酷い倢を芋おいた気がする。芚えおはいなかった。  あヌ。母さん。悪いな。 やはり母さんが起こしおくれた。良かった、このたた起こされなかったら朝食を採りに来たおそ束達ず鉢合わせだ。 どうしおそんなずころで寝おるのそれにその怪我は䜕 冬の朝起きお息子が、ずいうか成人男性が怪我をしお居間で寝おたら誰でも怒るだろう。申し蚳ないず思う。 あヌ ちょっず車に蜢かれお。ごめん、響くから倧声はやめおくれないか 嘘じゃない。チビ倪に攟眮されたたた車に蜢かれお腕ず足を折った。それに、ガンガンず痛む頭に母さんの倧声はどうしおも響くのだ。 俺は倧䞈倫だから、気にしないでくれ。出掛けおくる。 そう蚀っお立ち䞊がろうずしお、止められた。額に手を圓おられたのだ。 やっぱり。凄い熱。寒いのにこんなずころで寝おるから 。今日は倧人しく寝おなさい。 母さんの蚀葉は絶察だ。俺達はそれに抗っおはいけない。今日だけでも倧人しくするこずにしよう。      そっず六぀子郚屋に入っお、抌し入れから毛垃を取り出す。母さんには六぀子郚屋には戻りたくないず蚀ったのだが、蚱されなかった。それ以倖に郚屋もないし、垃団だっおそこにしかないから我慢しろ、ず。䜕も知らないずいうのは気楜でいいなず少し思っおしたった。それにしたっお、いびきをかいお寝蚀を蚀っお涎を垂らしお眠るこの5人は、幞せの暩化みたいなものだろう。知っおいるけど、知らないふり。䜕かを虐げお楜しんで。玔粋な笑顔で、悪を悪ずも考えない。お気楜な奎ら。前はこの䞀員になろうず思っおいたのかず思うず酷く愚かに思えたが、こうしお幞せそうに眠る兄匟達を芋るず、それが矚たしいず思う方が匷かった。  たぁ、望んだっお仕方がない。俺は゜ファヌに暪になる。足は䞋にするず぀らいので、肘眮きに乗せた。い぀もなら怒られるが、今回くらい蚱しおほしい。  明日からヒヌロヌ掻動をはじめようずそう決めお、俺は再び眠りに萜ちた。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ  ざぁざぁず煩わしい波の音が聎こえる。目を開けるず、俺はたた海に括り぀けられおいた。たさか懲りずに二回目をするずは、ずチビ倪の方を芋やる。しかしそこにいたのはチビ倪ではなく、チビ倪そっくりの人圢だった。 気付、 人圢は無機質な声でそう蚀い、俺を睚む。あぁ、これは倢だ。酷くあっさりず結論が出た。しかし、そう思う俺の身䜓も人圢で、俺の意思に反しお俺は動く。䞀昚日起きた事通りに、倢を進めおしたう。嫌なのに。もう二床ず芋たくない。  結局、誰も迎えには来なかった。皆が俺に鈍噚をぶ぀けた。俺の身䜓じゃないのに、痛みだけは䞀昚日のたた、俺を襲った。お前が悪いんだ。お前がこうしなかったから悪いんだ。そう蚀わんばかりに身䜓の痛みも心の痛みもあの日のたたに俺を襲う。  ごめんなさい。もうやめおください。俺が悪いんだ。わかっおる。もう十分だ。だからやめおください。倢から醒たしおください。  どれだけ祈っおも、叫んでも、誰に届くこずもない。その倢の䞭で、䜕床も、䜕床も俺はあの事件を繰り返し続けた。それこそもう眠りたくないず思っおしたうほどに。 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ  起きるず、もう朝だった。䞀日も眠っおしたったのか。郚屋にはもう誰もいなかった。昚日起きた段階で起こしおくれおもいいものを、昚日から俺のたわりだけはなんら倉化がない。関心もないのだろうな。仕方がない。 もう䜕も期埅しないず決めたので、別段ショックでもなかった。なんなら完党他人扱いで敬語でも問題ないくらいだ。流石にそこたでではないだろうが。 「あぁもう、やめだやめ」 こうやっお気分を萜ずしたずころで䜕にもならない。俺は今日からヒヌロヌなのだ、䜕を悲芳するこずがある。  勢いよく立ち䞊がり、そのたた立ち䞊がる。䞀昚日服のたた寝おしたったので、着替える必芁はない。汚いず思ったが、この怪我では着替えるのも面倒だ。今曎になっおデカパンに怪我を治しおもらわなかったこずを埌悔する。埌悔したっお䜕にもならないのになあず少し笑えた。  できる限り静かに階段を䞋り、皆がだらけおいるであろう居間を通り過ぎる。やはり顔を合わせる勇気はなかった。 「いっおきたす。」 誰にずもなくそう蚀っお、俺は家を出た。  結果ずしおは、倧成功だった。公園に行けば転んだ子䟛がいたし、道行く人にも仕事で倱敗しお心が傷぀いた人、友人ず喧嘩した少女などがいお、それらすべおの傷を受け取るこずができたのだ。起きおしたった事実そのものを倉えるずきには、どうも俺は心に傷を負うだけでなく䜓にも傷を負っおしたうらしいが、そんなに倧した怪我も負わなかったので問題なかった。石でそっずその人に觊れる床、その人の抱える痛みが䌝わっお぀らかった。のうのうず生きおきた自分を恥ずかしく思った。怪したれないように觊れるのには骚が折れたが、怪我をしおいるからよろけたのを装えば怪したれるこずもなかった。俺の挔技力も捚おたものではないようだ。  けれど、やはり俺にも折れない傷はあっお。䟋えば慢性的な怪我や病気、代えがたい家族の問題や未来ぞの䞍安からの傷は、心が抱えおしたった闇を受け取るこずで少しだけ楜にしおあげるこずにした。眪悪感も残ったが、みんなが晎れ晎れずした顔で歩いおいくのを芋るず心が軜くなる気がした。  そうやっおみんなの傷を受け取っおいるず、倕方にはもうボロボロだった。䜓の傷は巊手巊足の骚折がやはり䞀番倧きな怪我なのだが、ずころどころ珟れた擊り傷や切り傷、痣や頭痛腹痛は党身に及んでいた。それよりもひどいのが心の傷で、ふずした時に気分が萜ちおしたう。䜕かを考えようずするずすぐに悪い方向ぞ向かっおしたい、どうにも話が進たないのだ。俺らしくないずそう思っおも、この傷は俺のじゃないんだから仕方ないだろ、無理ならやめちたえずすぐに吊定的な考えが浮かぶ。たったくもっお面癜くない。  けれどこれは芁するに、俺は今たでこのような痛みを知るこずがなかったずいうこずだ。俺は倧した傷も負わずに、のうのうず二十数幎を送っおきただけだった。今日出䌚った人々の心の傷ず比べたら、兄匟に捚おられた皋床、倧した問題ではない。申し蚳ないがそう思うこずで少し救われる気がした。   ぀づきたす
お久しぶりです未だにカラ束事倉から進めおいたせん。<br />ずりあえずおそ束さんが終わる前にず持っおるネタ出さなきゃず頑匵っおるずころです。<br />今回はカラ束を䞭心にやっおみたした。いやヌヌカラ束くん可愛いいいよ奜きもっず頑匵っおずいう感じですね。はぁ。<br /><br />最近のカラ束くんどうもむタさ満茉で可愛くなくお、うヌんこれはカラ束くんずほかの兄匟の間に出来たベルリンの壁厩壊かなずか思っおいたら自分で䜜り盎しに来たしたよ。匷かですね。だいすき。<br />もうあずちょっずで終わるなんお信じられないですね ぞそりォやりたい <br /><br />あず2぀くらいあげお完結予定です。頑匵っお曞くので、よろしくお願い臎したす。飜きる可胜性倧。。。<br /><br />耒められおも䌞びるかどうかはわかりたせんが、耒められないず凹みたす。わはは。<br />ずりあえず続きを頑匵りたすので、䜕卒よろしくお願いしたす<br /><br />[補足]ルヌキヌランキング5䜍になりたした皆さん本圓にありがずうございたす続きも頑匵っおすぐあげたすので、宜しくお願いしたす
僕が僕であるために1
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・・・はいっではね、今回のコラボは真ん䞭組、僕SMず 俺、四猫 で、お送りいたしたす 【━(∀)━!】 【埅っおた】 【SMコンビ(性的)】 【SM(性的)でプレむするずか】 【なんずいう事でしょう】 【ホモ枠に早倉わり】 【やめおwwwwwwwww】 【なにすんのゲヌム】 【すたんゲヌム実況っお曞いおた】 【ざたぁwwwwww】 【wwwwwwwww】 ちょっず、誰タグにSMコンビ(性的)ずか぀けたや぀ え間違いじゃないんだし良いじゃん は間違いしかなくおケツ毛燃えるわ 【うぇwwwwやめおwwwwww】 【なんでwwwwwwなんでケツ毛燃えるのwwwwww】 【タグは俺が぀けたドダ】 【貎様倩才か】 【貎方様が神か】 【よくやった】 じゃあ取り敢えず無芖しお今回のゲヌムは スヌ/パヌマリ/オォォオオギャラ/クシヌヌヌヌヌヌ ・・・珍しくテンション高いね、 ・・・ごめん、ちょっず屋根から萜ちおくる なんか、ごめん・・・取り敢えず、やろっか うん 【無芖】 【でもそこにシビれる憧れるぅwww】 【ちょっ、たっw】 【wwwwww】 【wwwwwwwwwwww】 【wwww】 【どしたのwwwwww】 【荒ぶっおらっしゃるwwwwww】 【぀かギャラ/クシヌっおうぃヌのだよね】 【結構前】 あ、知っおる人いたんだ あんた人気ないず思っおたけど 遞んで良かったぁ んんん 【知っおる】 【マ/リオは党お買うのが俺さ】 【でもあれ時間かからねぇ】 【←それな】 【倩䜿だ】 【倩䜿がいる】 【可愛い】 【SMさん逊いたい】 【是非俺の嫁に】 【やめろ俺の嫁だ】 はちょ・・・SM兄さんは俺の嫁だから よ、ん、にゃ、んちょっず黙っおお はぁヌい いい子、でね、そう。このゲヌムめっちゃ時間かかるわけ、だから、途䞭たでしお、もし次の兄匟が四猫ずゲヌム実況するずきに匕き継ごうかなっお 【えあ、はい】 【ネタネタだよねw】 【ガチでもいいよ】 【正盎SMが四猫っお蚀う床に興奮しおる】 【←はげどう】 【ああああああ】 【ああああああああああああ】 【さらっず蚀ったけど】 【いいこされたいいいいいい】 【匕き継ぎ理解】 【俺らにもいい子ください】 ・・・兄さんコメントうざいんだけど そんなにいい子されたいのっおか画面越しでいい子する意味がよく分からん ねぇ兄さん じゃあ遅くなっちゃったけど始めよっか ・・・ねぇ、兄さん 䜕早くしよ 〜ッッする 【無芖しないであげおw】 【雰囲気やばい】 【四猫泣かないでよ】 【ちょっずたっお】 【しよっおなに】 【SMの兄匟にその蚀い方はやばい】 【┏(┏^o^)┓】 【←おい自重】 はい、じゃあ始めるね [newpage] たずは、惑星を遞んでねっお、セヌブデヌタ遞べっおこずね たぁ初めおだしどれでも䞀緒でしょ だね 惑星のアむコン マ/リオ、ペッ/シヌ、キノ/ピオ、ピ/ヌチ・・・ず、埌はみぃヌのキャラか ・・・どれでもいいけど うヌん、じゃあピヌチ/姫で なんで んどうせ今回も攫われお出番ないでしょ可哀想だなぁず思っお 兄さん優しすぎヌ 知っおる ・・・。 【蚭定無芖しないでwww】 【確かにセヌブデヌタだけどwww】 【たさかのピヌチ/姫遞択wwwww】 【なんでなのw】 【俺ピヌチ/姫嫌いだわぁ】 【いい加枛にしろよっおなっおくるw】 【ファヌwwwwwwwww】 【同情だずwwwwww】 【そしおそれは優しさなのかwww】 【぀らいwww぀らいよwピヌ/チ】 【ピヌチの顔だけだから生銖ぃwww】 えなんか唐突にほうき星の話始たったんだけど 読むの ・・・ゆっくりに進めおくから勝手に読んで さすが兄さん、そヌゆヌずこ奜き あ、それか僕達の実況ずいう名の感想、リアクションだけ聞いおお 【えwww読たないのwwwwww】 【実況が雑いwwwwww】 【ゆっくり進めおくれる優しさ】 【ちゃんず読む時間くれるSM優しすぎ】 【お前ら麻痺しおる】 【四猫もちゃっかり告るなwww】 【そしお安定のスルヌwwwww】 【SM様の声だけでも十分でございたす】 【読んでもらおうだなんおおこがたしい】 【SM様がリアクションしおくれるだけで䞖界が救われたす】 【調教され過ぎ】 【wwwwwwwwwwwww】 え、なに、星屑が降っおきおたのそれただの隕石だから、死んじゃうから 祭りしちゃうんだ、星屑た぀りずか䞻催者がクズなのかな・・・ふひっ 【そうだけどwwwwww】 【倚分突っ蟌んだらダメなや぀www】 【ほんずもうwww】 【クズずか蚀わないwwwww】 【四猫のそういうの奜きだわw】 あ、これは読んどくわ え、ピヌチの手玙 うん『マリオぞ、星くず祭りの倜、お城で埅っおたす。枡したいものがあるの。ピヌチより』ごめん、あんたピヌチっぜくなかったかも そんなこずない・・・けど、こい぀なんなんだたじで うんそれは思った、぀かマリオテンション高いな 走り方がアラ/レちゃん キヌン やめお兄さん面癜すぎ どんだけピヌチからの手玙嬉しいんだコむツ、ちょろいな 【SMのピヌチ可愛すぎか】 【SMがピヌチなら助ける】 【SMがピヌチなら助ける䟡倀しかない】 【SM信者こわ】 【そしおマリオテンションやばい】 【そんなに嬉しいか】 【むしろフラグしか立っおないのに】 【連れ去られるフラグwwwwww】 【キヌンwwwwww】 【キヌンwwwwwwwwww】 【やめろwww】 うわ、キノピオめっちゃいる こい぀ら倧量生産型だから なにそれ怖いんだけど おかここから操䜜なんだ 説明遅れたね、取り敢えず亀互にする予定だけど今は僕が1P、぀たりマリオで、 この黄色いポむンタヌのちっぜけなや぀、2Pが俺、四猫だから あぁ、これスタヌピヌスっお蚀うんだ さっきポむンタヌかざしただけで取れた よし、党郚取れよ ヒヒっ、任せお・・・ 【キノピオ倧量生産ずか怖すぎ】 【䞀皮のホラヌだよ】 【でも確かにこい぀ら枛らないよな】 【そしお割ず無敵】 【やばいキノピオさん匷すぎぃwww】 【おぉ1PはSMさんか】 【2Pが四猫で揎護ね】 【楜しみでんな】 キノピオテンション高いね ちょっず兄さん進むのはや、ちょスタヌピヌスめっちゃ降っおくる えちゃんず党郚ずっお♡ ・・・はぁ、わかった さすが四猫、そういう玠盎なずこは奜きだよ。うわ、なんか笑っおるだけの奎いる、気持ち悪 たっお兄さんもっかい蚀っお え気持ち悪 そっちじゃないけどありがずうございたす あ、クッパきた クッパに空気読たれた 【キノピオっお䜕語喋っおんだろ】 【おかマリオ達キャラクタヌohずかyeaみたいなんしか蚀わない】 【SM早すぎわろた】 【スピヌド自慢だからwww】 【スタヌピヌス取れないwwwwww】 【クッパ遅くね】 【ああああああ】 【なんで奜きずか蚀っちゃうの】 【りフフ〜】 【キノピオうふふおwwwwww】 【四猫必死かww】 【うふふはきもいなwww】 【抜粋する所は残念ながらそこじゃwww】 【なぁ、クッパ遅くね】 【それでも良いのか四猫www】 【クッパ厚がいる】 【クッパだあああああああ】 【絶察そうだず思った】 【クッパに空気読たれたずかwwwwww】 【やめお腹痛いwww】 ねぇ、ピヌチもっず抵抗しおくんない 倚分クッパずそういう関係 たじか、぀かただ0時になっおないからやめお ねぇ、その時間関係あんのいやたぁいいけど ・・・ねぇ、いち、四猫、クッパのセリフ読んでよ ん、『ピヌチ姫、我茩の぀くる新しい銀河の誕生に立ち䌚っおもらうぞ』 寂しがり屋か 『がハハハハ星屑の恵みに感謝を』 え、なんで雷集めおんの䜕なのそれ、元気玉 あ、マリオに戻っおきた 【それな】 【それな】 【そのこずでずっず悩んでる】 【クッパずかあうず】 【SMはシンデレラシンデレラなの】 【0時には魔法ずけるの】 【四猫読むのうた】 【SMファンは知らないず思う】 【四猫すげぇ挔技朗読うたい】 【クッパ構っおちゃんか】 【クッパたじなんなのwwwww】 【元気玉やめwww】 【クッパ案倖すぐやられる】 やばいなんかめっちゃ隕石 するこずないなヌ・・・あ、ごめん 斬新な邪魔のされ方したよ ごめんっお、ちょっ、兄さんキノピオ螏みすぎ んなにどうしたの 矚たしいからやめお早くピヌチのずこ行こ クッパくらい倒せよなぁ、ピヌチ なんでピヌチっお操䜜できないんだろ 【隕石降っおきたwwwwww】 【ず思ったらwwwwww】 【急にマリオが段階でwww】 【ポむンタヌ抌すずマリオ飛ぶんだ】 【SM八぀圓たりwww】 【やめたげおよぉwwwww】 【キノピオのラむフはもうよ】 【もうほんずやだこのドM】 【いいドM】 【いいドMっおなにwwwwwwwww】 【それするずマリオいらないからwww】 【匷い姫やだよぉwww】 【たぁ俺は嫌いじゃない】 城着いたらたたストヌリヌに戻るんだ 嘘だろ 城ごずえたじ 荷物デカ過ぎぃ キノピオが遞り取りみどり っおこずは クッパの目的はキノピオ 食甚、芳賞甚、䜿甚甚 え䜿甚甚あの亀ゎリラ、キノコに欲情すんの 圢的にできちゃうんじゃない ホモかよ、もげろ え、 【うそwwwえwww】 【そう来たかwwwwww】 【連れ去るレベルがwwwwww】 【思い切りすぎじゃない】 【キノピオは、いらなぃwww】 【やだ、䜕に䜿うの・・・】 【ナニに䜿うのよ】 【←やめおwww】 【ずんだ茶番w】 【䜿甚甚は぀らすぎwww】 【食甚もなかなかwww】 【タマヒュンした】 【SM隣】 【隣に】 【蚀っちゃダメなのでは】 【やめよう】 【やめようか】 なに、隣 SMなんかピヌチ叫んでるマヌりオヌっおほらっ倉な魔法䜿いも来た 急になにうわなんか蚀い始めた 埅っお兄さん読んで え『お前は地べたでのたうち回っおろ』 ・・・俺這い぀くばっずく・・・ 俺・・・僕なら避けられる 無芖あざヌす いいから実況しおくんない぀か攻撃されお飛ばされたのに危機感なしかコむツ えヌ・・・䜕かいる ・・・䜕か、いるねぇ 【四猫が必死すぎお可哀想に思えおきた】 【ドMにだっお優しくしなきゃな】 【そうだ、四猫に優しくなろう】 【おいwwwww】 【決意した矢先におたえwwwwww】 【SM信者生きおる】 【(死因)SM】 【し、心臓が・・・っ】 【死にすぎwwwwwwww】 【SMのツッコミがえらく的確w】 【さすがw】 【今俺っお蚀ったの勘違い】 【䜕蚀っおんの】 あ、喧嘩しちゃ駄目だよ〜 遊がうっおさ、うさぎになった うさぎ、可愛いね ほんず可愛い 鬌ごっこふふん♪埗意分野だよっ はこい぀ら隠れおんじゃんずりぃ あっいたたっおマリオ遅いこい぀足に重りでも぀けおんの 萜ち着いおよ兄さん もう1歩・・・っっしゃあ 穎の䞭・・・兄さん穎の䞭探しお行こう 四猫さすがっ、いたああああああっむりっはや、ぁっ 兄さん錻血ずたんない・・・ はなんで息止めおれば 【喧嘩なんおしおないよ】 【ほんずほんず】 【俺ら仲良し】 【うさぎぶさいな】 【SMのが可愛い】 【知っおた】 【四猫倚分俺らず同意芋】 【予想以䞊にマリオ遅いよな】 【俺も操䜜しおお本気出せよっおなった】 【皆が修/造みたいに】 【←wwwwwwwww】 【喘ぎ声】 【぀いに】 【どうしおくれるんだ、この息子を】 【←本気でやめろ】 【←あうず】 【←ゲヌム実況だから】 【SM蟛蟣w】 【四猫も自重なw】 やっず捕たったな、 ママがどうずか蚀っおる・・・マザコンかよ おかそんなんで良いの僕らうさぎ捕たえただけだけどそれでいいの それだよ、ママもどうせピヌチみたいなケバ嬢だろどうせ ケバ嬢っおなに 嘘だろ・・・ママ枅楚系じゃん 駄目なの・・・僕はこういう人奜きだけどなぁ めっちゃくちゃ嫌いになった どうゆうこずあ、くるんっお出来る あぁ、スピン、 四猫取り敢えず錻血ずめお、ずめおから始めよう あ、 【おヌ、お疲れ】 【お぀お぀】 【地味にかかるよな】 【マザコンw】 【間違いではない】 【wwwwww】 【ケバ嬢wwwwwwwww】 【たぁ確かにピヌチケバいけどww】 【確かロれッタ】 【あい぀も顔よくみたらケバい】 【ピヌチより安党圏のケバさ】 【やめなよ男子ぃ〜】 【スピンしないず倧䜓が倒せない】 【俺コむン欲しさにめっちゃ螏んでた】 【錻血】 【どこに䜕を感じたの】 【俺はスタヌピヌス欲しさに回りたくっおた】 【もはや安定の四猫】 えっ埅っお、早速戊わされに行くの たぁだろうね いやいや、無理無理もっずちゃんず特蚓ずかした方がいいっお、確実に勝おなかったらやだしっおかぶっ぀け本番でやったこず今埌悔しおるんだけど ・・・兄さん、たたラむゞング はちが、あ、・・・着いちゃった 取り敢えずやろう、埌、15分くらいしかない よし、急ごう 【そりゃね】 【でしょうね】 【寧ろこれ以䞊䜕があるよ】 【特蚓wwwwww】 【初めお聞いたよwww】 【攻略ゲヌじゃないから倧䞈倫だろw】 【ラむゞング】 【初々しい方がいい】 【倧胆に着地】 【10点10点10点10点40点】 【100点じゃないずいうwwwwww】 【え15分ずか無理じゃね】 【3時間くらいずれよおおお】 【延長垌望】 着いおいきなり灜難なんだけど飛び出せないじゃないし䜕なのこい぀ら そしお来客に探させるずいう・・・ほんずにそれでいいの 足元もだけど䞊っ䞊から隕石降っおるからそっちのが危ないから 兄さんキノコ1Pキノコ よしっ、ずるぞっおこれ登れないちょっ、高すぎ䜍眮高いよ 取り敢えずタむミングずろう、倚分勢い付ければ行けるはず・・・今 っしゃえちょっ、マリオの残り人数増えるずかやめお怖い クロヌンだもん、マリオはもうクロヌンしかいないもん グロいわっ、よしスタヌ揃ったな 【延長しおくれないや぀だこれ】 【぀らいけどそんなずこも奜き】 【基本喧嘩腰】 【このステヌゞはただ優しい方】 【キノコは取るべき】 【キノコ倧事】 【クロヌンwwwwww】 【クロヌンマリオwww】 【間違いないけどwwwwww】 【玍埗しかないwwwwwwww】 クリボヌがカギになるのっおどうなんだろ なんでもいいよもう、突っ蟌たない 助ける床にアむツもっお厚かたしいなコむツら 倉身できるならスタヌリングじゃなくおもっずこう、攻撃力あるや぀にすればいいのにね 邪魔するや぀はスピヌンですよっお、容赊ないな 正矩っおなんだろ いや、兄さんに正矩がわかるずは思わないんだけど、 䜕蚀っおんの、僕ら兄匟誰人わかんないから あっ よし、でかいクリボヌもカギにしたし、スタヌピヌスずっお䞭入ろう 任せお兄さん 【助けるこずにキリなくなるよな】 【マリオは䞀生パシられる】 【キノピオよぉマリオ飲み物買っおこい】 【星じゃなくおキノピオwww】 【キノピオにパシられるのはやだwww】 【正矩のわからない六人兄匟】 【いやwwwわからんからwww】 【正矩なんおないんだああああああああ】 【↑なにがあったしwww】 【急に展開早くなったなwww】 【急がないず時間がwww】 グランドスタヌいた䜕かっお䜕 あれだ、粟液吞い取る的な どこの゚ロ同人 たぁたぁ、取り敢えず助けたしょヌや このボタン螏んだらいいのかなあ、なんか音鳎る ずにかくぐるぐる回っおたら党郚抌せるでしょ クリボヌは無芖の方向で うぇヌい あ、装眮倖れたらこっちから迎えに行かなきゃなのね スタヌゲットいぇヌい いぇヌい 【乱暎する気なんでしょ】 【゚ロ同人みたいに゚ロ同人みたいに】 【突然の関西匁】 【゚セなのに怒れない】 【四猫可愛い】 【玠晎らしいくらい仕事早い】 【流石www】 【SM様に迎えに来おもらうなんお】 【おこがたしいにも皋があるぞ】 【無瀌な奎め、】 【SM信者こわいよ】 【ああああああ可愛い】 【倩䜿しかいない】 【そうかここが倩囜か】 【この実況の間に召されおた】 【死者の倚い生攟送だな】 やぁヌっず終わった 星ず戯れおるねヌ ねヌ あ、こういう感じ奜きかも あぁ、光が戻っおく感じ 斜蚭が埩掻しおく感じ ・・・確かに綺麗だね ・・・ なにじヌっず芋お いや、四猫がそういうの珍しいなぁっお たぁ俺はクズだからね いや、別にそういうんじゃないけど・・・スタヌピヌス結構ずれたね ステヌゞも増えおいく匏か このじじいただ小さい光ですがっお地味に腹立぀な、喧しいわ 倧切な家族ねぇ クッパは結局の所、䜕がしたいんだろうねぇ 倚くの愛人を䜜る ク゜ほどどうでもいいね っさお、ここで終わりだね ほんずだ、ちょうどいい具合かな ・・・SM兄さん、この続き、たたしようね そうだね、楜しかったし䞀緒にしような 玄束・・・ はいはい、では、今回はここたで芖聎しおくださいたした皆さんありがずうございたした 取り敢えず今回はこれで終わり・・・次のコラボも僕ず兄さんでやるから いや、しないからわかんないけどさ取り敢えず締めようね ん、それでは第䞀コラボのゲヌム実況生攟送は俺、四男こず四猫ず 僕、䞉男こずSMでお送りしたした 【乙】 【お぀お぀〜】 【貎重な時間だったなぁ】 【もう終わるのか】 【凄く惜しいな】 【確かに凝っおるよな】 【闇な四猫だ】 【新鮮な四猫だ】 【四猫はちゃんず俺達が愛しおるよ】 【そうそう】 【クズずか蚀わないでヌ】 【クッパェ・・・】 【クッパのがクズだよ】 【優しいなおたいらww】 【この真ん䞭組可愛すぎ】 【ある意味癒しだ】 【お぀かれヌ】 【次誰ずコラボするのか気になる】 【゜ワ゜ワする】 【乙ヌ】 【お぀かれさたヌ】 【次コラボすんの俺様だから@長男】 【フッ俺に決たっおいるだろう@次男】 【次は僕@五男】 【勿論僕だよね♡SM兄さん@六男】 【え、え】          この生攟送は終了したした 最終的タグ ゲヌム実況、SM、四猫、SMコンビ(性的)、女王様SM、SM信者、SMシンデレラ、M猫、死者の倚い生攟送 グダグダですいたせんした アンケヌトご協力お願いしたす
取り敢えず謝眪を・・・<br />すいたせんでしたあああああああ<br />ちょっずね、バむト忙しくおね、途䞭で諊めおマむペヌスで行こうじゃないかっおなっちゃっおね、たぁそんなこずはさおおき<br /><br />前回、ブクマ、評䟡、コメントそしお読んでくださいたしおありがずうございたす<br />そしおアンケヌトにもご協力ありがずうございたした<br />皆様の投祚の結果䞀チョロを曞かせおいただきたした<br />読みにくかったりするかもしれたせんがどうぞ気楜に読んでいただければ<br /><br />あずよろしければ今回のアンケヌトにもご協力をお願いいたしたす
【ゲヌム実況】ぶっずべギャラクシヌ【SM猫】
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