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JCRRAG_000501
医療
ダーモスコピーによる皮膚癌の早期診断 はじめに ダーモスコピーが各国で使われ始めたのは 1990年前後である.本邦では,信州大学,埼玉医科大学,山梨大学などでダーモスコピーの研究が開始された.著者は少し遅れて1996年にダーモスコピー使用を開始し,8か国10施設が参加したTeledermoscopyの共同研究に参加したことが大きなきっかけとなり,その後も継続的に国際的な共同研究を続けることとなった.1999年にローマで第1回のダーモスコピー国際会議が行われ,各国からダーモスコピーのエキスパートが参加した.日本からは著者と信州大学の斎田教授が参加した.その会議でダーモスコピーの診断基準と用語の整備が提唱され,2000年にConsensus Net Meeting of Dermoscopy が行われて,多くの基本的なダーモスコピー用語が定義され,世界中で共有されることとなり,診断基準に2段階診断法が有用であることも報告された.著者はその後も多数の国際的共同研究に参加すると同時に国内でのダーモスコピー普及と教育に力を注ぎ続け,ダーモスコピーは2006年に本邦で保険適用となった. 皮膚悪性腫瘍の早期診断 皮膚がん(皮膚悪性腫瘍)は,臨床的に疑われ,生検で診断が確定する.ただし,メラノーマは従来,生検は禁忌とされていたため,診断には予め大きな切除マージンで全摘術が施行されることが多かった.その後,1か月以内に全摘する前提で生検すれば予後に変わりはないとされるようになり,疑い例では積極的に生検が行われるようになった.ダーモスコピーを使う以前は,臨床診断で皮膚がんと考える段階ではすでに進行期になっていることも多く,転移を生じている症例もしばしばみられた.しかし,ダーモスコピーが使われるようになってからは,明らかに初期の段階で診断されるようになった.メラノーマや有棘細胞癌を上皮内癌で切除でき,基底細胞癌を整容的に問題のない大きさの段階で切除できる機会も増加した.また,メラノーマについては初期の病理診断が極めて困難であり,辺縁に見られる淡い色素斑のみのような初期段階で診断できず,生検されても悪性所見なしと判断されることもしばしばであった. 上皮内悪性黒色腫 メラノーマは分類上は肉腫に属する皮膚がんであるが,色素細胞は生理的に表皮内に存在し,上皮内がんという概念が使われる唯一の肉腫である.上皮内黒色腫の初期では病理診断が極めて困難であったが,ダーモスコピーでは不規則な皮丘平行パターンを示し,規則的な皮溝平行パターンを呈する色素細胞母斑との鑑別が容易となり,斎田らがこの診断基準を提唱してから,数多くの上皮内黒色腫が初期に診断できるようになった.
ダーモスコピーは本邦で何年に保険適用となりましたか。
ダーモスコピーは本邦で2006年に保険適用となりました。
JCRRAG_000502
医療
ダーモスコピーによる皮膚癌の早期診断 はじめに ダーモスコピーが各国で使われ始めたのは 1990年前後である.本邦では,信州大学,埼玉医科大学,山梨大学などでダーモスコピーの研究が開始された.著者は少し遅れて1996年にダーモスコピー使用を開始し,8か国10施設が参加したTeledermoscopyの共同研究に参加したことが大きなきっかけとなり,その後も継続的に国際的な共同研究を続けることとなった.1999年にローマで第1回のダーモスコピー国際会議が行われ,各国からダーモスコピーのエキスパートが参加した.日本からは著者と信州大学の斎田教授が参加した.その会議でダーモスコピーの診断基準と用語の整備が提唱され,2000年にConsensus Net Meeting of Dermoscopy が行われて,多くの基本的なダーモスコピー用語が定義され,世界中で共有されることとなり,診断基準に2段階診断法が有用であることも報告された.著者はその後も多数の国際的共同研究に参加すると同時に国内でのダーモスコピー普及と教育に力を注ぎ続け,ダーモスコピーは2006年に本邦で保険適用となった. 皮膚悪性腫瘍の早期診断 皮膚がん(皮膚悪性腫瘍)は,臨床的に疑われ,生検で診断が確定する.ただし,メラノーマは従来,生検は禁忌とされていたため,診断には予め大きな切除マージンで全摘術が施行されることが多かった.その後,1か月以内に全摘する前提で生検すれば予後に変わりはないとされるようになり,疑い例では積極的に生検が行われるようになった.ダーモスコピーを使う以前は,臨床診断で皮膚がんと考える段階ではすでに進行期になっていることも多く,転移を生じている症例もしばしばみられた.しかし,ダーモスコピーが使われるようになってからは,明らかに初期の段階で診断されるようになった.メラノーマや有棘細胞癌を上皮内癌で切除でき,基底細胞癌を整容的に問題のない大きさの段階で切除できる機会も増加した.また,メラノーマについては初期の病理診断が極めて困難であり,辺縁に見られる淡い色素斑のみのような初期段階で診断できず,生検されても悪性所見なしと判断されることもしばしばであった. 上皮内悪性黒色腫 メラノーマは分類上は肉腫に属する皮膚がんであるが,色素細胞は生理的に表皮内に存在し,上皮内がんという概念が使われる唯一の肉腫である.上皮内黒色腫の初期では病理診断が極めて困難であったが,ダーモスコピーでは不規則な皮丘平行パターンを示し,規則的な皮溝平行パターンを呈する色素細胞母斑との鑑別が容易となり,斎田らがこの診断基準を提唱してから,数多くの上皮内黒色腫が初期に診断できるようになった.
第1回ダーモスコピー国際会議はどこで行われましたか。
第1回ダーモスコピー国際会議はローマで行われました。
JCRRAG_000503
医療
はじめに  循環器疾患は発症率や病態,社会的背景を含む臨床像,またライフステージにより性差を認める.その重要性を考慮した性差医学(gender-specific medicine)が1980年代後半から米国NIH(National Institute of Health)を中心に始まり,2004年に米国心臓病協会(American Heart Association:AHA)より「女性のための心血管疾患予防ガイドライン」が発表された.わが国においても1990年代後半より性差医学の重要性が認識されて,2010年に日本循環器学会から「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」が発表され,世界一平均寿命の長い日本女性における心血管疾患の性差研究の重要性が認識された.  女性ホルモンであるエストロゲンには,心血管に対する様々な間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.閉経によりホルモン環境が激変すると,脂質異常症,高血圧症,肥満,糖尿病などの動脈硬化リスクが増加し,それを基盤に心血管イベントリスクが上昇する.また,最近では骨粗鬆症と動脈硬化や血管石灰化の関連である骨・血管相関(vascular bone disease)が明らかとなり,この点においてもエトロゲン欠乏による骨吸収亢進が二次的動脈硬化進展をもたらすことが示唆される.本稿では,エストロゲンの心血管に対する作用と閉経前・更年期・高齢女性における動脈硬化への影響や,性差の認められる代表的な虚血性疾患について概説する. 1.エストロゲンの心血管に対する作用  エストロゲンには様々な心血管系に対する間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.エストロゲンの間接的保護作用は,肝臓,小腸,末梢組織に作用し脂質代謝に影響を及ぼす.肝臓や末梢組織のlow-density lipoprotein(LDL)受容体数および活性を増加させ,肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase:HTGL)の活性を抑制することで血中LDLコレステロールを低下させる.また,肝臓,小腸におけるhighdensity lipoprotein cholesterol(HDL-C)の主要構成蛋白であるapolipoprotein fraction A-I(アポAI)の合成も促し,血中HDL-C増加をもたらす.さらに,リポ蛋白(a)(Lipoprotein(a))やsmall dense LDLを減少させる効果もある.  エストロゲンは,血管平滑筋細胞や血管内皮細胞,心臓に発現するエストロゲンレセプターα(estrogen receptor α:ERα)やエストロゲンレセプターβ(estrogen receptor β:ERβ)に結合し直接的保護作用を発揮する.血管内皮細胞では,内皮依存性血管拡張反応である血流依存性血管拡張反応(flowmediated diameter:FMD),内皮型NO合成酵素(endothelial NO synthase:eNOS)活性,プロスタサイクリン(prostacyclin:PI)産生,内皮由来過分極因子(endothelium-derived hyperpolarizing factor:EDHF)産生をそれぞれ増加させる.一方,エンドセリン-1(endothelin-1:ET-1)産生や内皮細胞のアポトーシス,接着分子発現を抑制する.また骨髄からの内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell:EPC)の増加も促す.血管平滑筋細胞に対する直接作用としては血管拡張作用を示し,また血管障害後の血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑え新生内膜肥厚を抑制する.最近ではエストロゲンが血管収縮,血管肥厚,動脈硬化促進,心筋肥大,心筋収縮力の増大作用のあるアンジオテンシンIIの受容体であるAT1受容体の血管平滑筋細胞における発現を抑制することが明らかとなった.これら内因性エストロゲンによる心血管保護作用により閉経前女性は心血管疾患の発症が少ないと考えられている.
「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」を発表したのは何学会ですか。
「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」を発表したのは日本循環器学会です。
JCRRAG_000504
医療
はじめに  循環器疾患は発症率や病態,社会的背景を含む臨床像,またライフステージにより性差を認める.その重要性を考慮した性差医学(gender-specific medicine)が1980年代後半から米国NIH(National Institute of Health)を中心に始まり,2004年に米国心臓病協会(American Heart Association:AHA)より「女性のための心血管疾患予防ガイドライン」が発表された.わが国においても1990年代後半より性差医学の重要性が認識されて,2010年に日本循環器学会から「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」が発表され,世界一平均寿命の長い日本女性における心血管疾患の性差研究の重要性が認識された.  女性ホルモンであるエストロゲンには,心血管に対する様々な間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.閉経によりホルモン環境が激変すると,脂質異常症,高血圧症,肥満,糖尿病などの動脈硬化リスクが増加し,それを基盤に心血管イベントリスクが上昇する.また,最近では骨粗鬆症と動脈硬化や血管石灰化の関連である骨・血管相関(vascular bone disease)が明らかとなり,この点においてもエトロゲン欠乏による骨吸収亢進が二次的動脈硬化進展をもたらすことが示唆される.本稿では,エストロゲンの心血管に対する作用と閉経前・更年期・高齢女性における動脈硬化への影響や,性差の認められる代表的な虚血性疾患について概説する. 1.エストロゲンの心血管に対する作用  エストロゲンには様々な心血管系に対する間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.エストロゲンの間接的保護作用は,肝臓,小腸,末梢組織に作用し脂質代謝に影響を及ぼす.肝臓や末梢組織のlow-density lipoprotein(LDL)受容体数および活性を増加させ,肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase:HTGL)の活性を抑制することで血中LDLコレステロールを低下させる.また,肝臓,小腸におけるhighdensity lipoprotein cholesterol(HDL-C)の主要構成蛋白であるapolipoprotein fraction A-I(アポAI)の合成も促し,血中HDL-C増加をもたらす.さらに,リポ蛋白(a)(Lipoprotein(a))やsmall dense LDLを減少させる効果もある.  エストロゲンは,血管平滑筋細胞や血管内皮細胞,心臓に発現するエストロゲンレセプターα(estrogen receptor α:ERα)やエストロゲンレセプターβ(estrogen receptor β:ERβ)に結合し直接的保護作用を発揮する.血管内皮細胞では,内皮依存性血管拡張反応である血流依存性血管拡張反応(flowmediated diameter:FMD),内皮型NO合成酵素(endothelial NO synthase:eNOS)活性,プロスタサイクリン(prostacyclin:PI)産生,内皮由来過分極因子(endothelium-derived hyperpolarizing factor:EDHF)産生をそれぞれ増加させる.一方,エンドセリン-1(endothelin-1:ET-1)産生や内皮細胞のアポトーシス,接着分子発現を抑制する.また骨髄からの内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell:EPC)の増加も促す.血管平滑筋細胞に対する直接作用としては血管拡張作用を示し,また血管障害後の血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑え新生内膜肥厚を抑制する.最近ではエストロゲンが血管収縮,血管肥厚,動脈硬化促進,心筋肥大,心筋収縮力の増大作用のあるアンジオテンシンIIの受容体であるAT1受容体の血管平滑筋細胞における発現を抑制することが明らかとなった.これら内因性エストロゲンによる心血管保護作用により閉経前女性は心血管疾患の発症が少ないと考えられている.
閉経によって、どのような動脈硬化リスクが増加しますか。
閉経によって、脂質異常症、高血圧症、肥満、糖尿病などの動脈硬化リスクが増加します。
JCRRAG_000505
医療
はじめに  循環器疾患は発症率や病態,社会的背景を含む臨床像,またライフステージにより性差を認める.その重要性を考慮した性差医学(gender-specific medicine)が1980年代後半から米国NIH(National Institute of Health)を中心に始まり,2004年に米国心臓病協会(American Heart Association:AHA)より「女性のための心血管疾患予防ガイドライン」が発表された.わが国においても1990年代後半より性差医学の重要性が認識されて,2010年に日本循環器学会から「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」が発表され,世界一平均寿命の長い日本女性における心血管疾患の性差研究の重要性が認識された.  女性ホルモンであるエストロゲンには,心血管に対する様々な間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.閉経によりホルモン環境が激変すると,脂質異常症,高血圧症,肥満,糖尿病などの動脈硬化リスクが増加し,それを基盤に心血管イベントリスクが上昇する.また,最近では骨粗鬆症と動脈硬化や血管石灰化の関連である骨・血管相関(vascular bone disease)が明らかとなり,この点においてもエトロゲン欠乏による骨吸収亢進が二次的動脈硬化進展をもたらすことが示唆される.本稿では,エストロゲンの心血管に対する作用と閉経前・更年期・高齢女性における動脈硬化への影響や,性差の認められる代表的な虚血性疾患について概説する. 1.エストロゲンの心血管に対する作用  エストロゲンには様々な心血管系に対する間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.エストロゲンの間接的保護作用は,肝臓,小腸,末梢組織に作用し脂質代謝に影響を及ぼす.肝臓や末梢組織のlow-density lipoprotein(LDL)受容体数および活性を増加させ,肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase:HTGL)の活性を抑制することで血中LDLコレステロールを低下させる.また,肝臓,小腸におけるhighdensity lipoprotein cholesterol(HDL-C)の主要構成蛋白であるapolipoprotein fraction A-I(アポAI)の合成も促し,血中HDL-C増加をもたらす.さらに,リポ蛋白(a)(Lipoprotein(a))やsmall dense LDLを減少させる効果もある.  エストロゲンは,血管平滑筋細胞や血管内皮細胞,心臓に発現するエストロゲンレセプターα(estrogen receptor α:ERα)やエストロゲンレセプターβ(estrogen receptor β:ERβ)に結合し直接的保護作用を発揮する.血管内皮細胞では,内皮依存性血管拡張反応である血流依存性血管拡張反応(flowmediated diameter:FMD),内皮型NO合成酵素(endothelial NO synthase:eNOS)活性,プロスタサイクリン(prostacyclin:PI)産生,内皮由来過分極因子(endothelium-derived hyperpolarizing factor:EDHF)産生をそれぞれ増加させる.一方,エンドセリン-1(endothelin-1:ET-1)産生や内皮細胞のアポトーシス,接着分子発現を抑制する.また骨髄からの内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell:EPC)の増加も促す.血管平滑筋細胞に対する直接作用としては血管拡張作用を示し,また血管障害後の血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑え新生内膜肥厚を抑制する.最近ではエストロゲンが血管収縮,血管肥厚,動脈硬化促進,心筋肥大,心筋収縮力の増大作用のあるアンジオテンシンIIの受容体であるAT1受容体の血管平滑筋細胞における発現を抑制することが明らかとなった.これら内因性エストロゲンによる心血管保護作用により閉経前女性は心血管疾患の発症が少ないと考えられている.
2004年に米国心臓病協会から何が発表されましたか。
2004年に米国心臓病協会から「女性のための心血管疾患予防ガイドライン」が発表されました。
JCRRAG_000506
医療
はじめに  循環器疾患は発症率や病態,社会的背景を含む臨床像,またライフステージにより性差を認める.その重要性を考慮した性差医学(gender-specific medicine)が1980年代後半から米国NIH(National Institute of Health)を中心に始まり,2004年に米国心臓病協会(American Heart Association:AHA)より「女性のための心血管疾患予防ガイドライン」が発表された.わが国においても1990年代後半より性差医学の重要性が認識されて,2010年に日本循環器学会から「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」が発表され,世界一平均寿命の長い日本女性における心血管疾患の性差研究の重要性が認識された.  女性ホルモンであるエストロゲンには,心血管に対する様々な間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.閉経によりホルモン環境が激変すると,脂質異常症,高血圧症,肥満,糖尿病などの動脈硬化リスクが増加し,それを基盤に心血管イベントリスクが上昇する.また,最近では骨粗鬆症と動脈硬化や血管石灰化の関連である骨・血管相関(vascular bone disease)が明らかとなり,この点においてもエトロゲン欠乏による骨吸収亢進が二次的動脈硬化進展をもたらすことが示唆される.本稿では,エストロゲンの心血管に対する作用と閉経前・更年期・高齢女性における動脈硬化への影響や,性差の認められる代表的な虚血性疾患について概説する. 1.エストロゲンの心血管に対する作用  エストロゲンには様々な心血管系に対する間接的保護作用と直接的保護作用があることが知られている.エストロゲンの間接的保護作用は,肝臓,小腸,末梢組織に作用し脂質代謝に影響を及ぼす.肝臓や末梢組織のlow-density lipoprotein(LDL)受容体数および活性を増加させ,肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase:HTGL)の活性を抑制することで血中LDLコレステロールを低下させる.また,肝臓,小腸におけるhighdensity lipoprotein cholesterol(HDL-C)の主要構成蛋白であるapolipoprotein fraction A-I(アポAI)の合成も促し,血中HDL-C増加をもたらす.さらに,リポ蛋白(a)(Lipoprotein(a))やsmall dense LDLを減少させる効果もある.  エストロゲンは,血管平滑筋細胞や血管内皮細胞,心臓に発現するエストロゲンレセプターα(estrogen receptor α:ERα)やエストロゲンレセプターβ(estrogen receptor β:ERβ)に結合し直接的保護作用を発揮する.血管内皮細胞では,内皮依存性血管拡張反応である血流依存性血管拡張反応(flowmediated diameter:FMD),内皮型NO合成酵素(endothelial NO synthase:eNOS)活性,プロスタサイクリン(prostacyclin:PI)産生,内皮由来過分極因子(endothelium-derived hyperpolarizing factor:EDHF)産生をそれぞれ増加させる.一方,エンドセリン-1(endothelin-1:ET-1)産生や内皮細胞のアポトーシス,接着分子発現を抑制する.また骨髄からの内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell:EPC)の増加も促す.血管平滑筋細胞に対する直接作用としては血管拡張作用を示し,また血管障害後の血管平滑筋細胞の遊走や増殖を抑え新生内膜肥厚を抑制する.最近ではエストロゲンが血管収縮,血管肥厚,動脈硬化促進,心筋肥大,心筋収縮力の増大作用のあるアンジオテンシンIIの受容体であるAT1受容体の血管平滑筋細胞における発現を抑制することが明らかとなった.これら内因性エストロゲンによる心血管保護作用により閉経前女性は心血管疾患の発症が少ないと考えられている.
エストロゲンは何に作用して脂質代謝に影響を及ぼしますか。
エストロゲンは、肝臓、小腸、末梢組織に作用して脂質代謝に影響を及ぼします。
JCRRAG_000507
医療
せん妄は,身体疾患や全身状態の悪化などにより惹起される意識レベルの変化と注意力の低下を特徴とする器質性の精神障害であり,急性期病院の一般診療科に入院する患者にもっとも多い精神障害である.せん妄は,患者や家族の苦痛はもとより,医療スタッフの対応の困難感や疲弊を引き起こす病態像でもある.また,せん妄はquality of life(QOL)の悪化や死亡率にも影響を及ぼすことが明らかにされており,その後の患者のQOLの保障の側面や生命維持の側面からも,せん妄を予防し,遷延化を防ぐ意義は極めて大きい. せん妄発症の要因については,直接因子・誘発因子・準備因子に分類され,脱水,感染,疼痛,肝・腎機能障害,低酸素血症,電解質や血糖値の代謝異常,アルコール離脱,薬物の副作用,身体拘束,環境変化,感覚遮断・過剰,精神的ストレスなどとの関連が,明らかにされている.せん妄は,これらの因子が複合的に関わって発症するとされているが,一般病棟か集中治療室かの治療環境の違いにより,関わる因子の特徴も異なり,行われる治療やケアも変わり得ることが考えられる.あらかじめ,治療環境の違いによるせん妄の発症因子について,明らかにすることができれば,それらの因子を除去することにより,せん妄発症を防ぎ,緩和する治療やケアも可能となると考える. せん妄発症のリスク因子が明らかになり,せん妄に対する予防や早期発見がなされれば,せん妄の発症や遷延化を防ぐことに繋がり,患者の身体状態の悪化,その後の認知機能低下やQOL低下の防止,家族の負担度や医療スタッフの困難度の軽減等に貢献することが期待される. しかしながら,これまでにわが国において,一般病棟か集中治療室という治療環境の違いに着目して,せん妄の発症リスク因子を検討した研究はほとんど見当たらない.そこで本研究では,大学附属病院の一般病棟と集中治療室に入院した患者におけるせん妄発症の有無と発症リスク因子との関連を分析し,一般病棟と集中治療室における,せん妄発症のリスク因子を明らかにすることを目的とする.
せん妄とは何を特徴とする精神障害ですか。
せん妄とは、身体疾患や全身状態の悪化などにより意識レベルの変化と注意力の低下を特徴とする器質性の精神障害です。
JCRRAG_000508
医療
せん妄は,身体疾患や全身状態の悪化などにより惹起される意識レベルの変化と注意力の低下を特徴とする器質性の精神障害であり,急性期病院の一般診療科に入院する患者にもっとも多い精神障害である.せん妄は,患者や家族の苦痛はもとより,医療スタッフの対応の困難感や疲弊を引き起こす病態像でもある.また,せん妄はquality of life(QOL)の悪化や死亡率にも影響を及ぼすことが明らかにされており,その後の患者のQOLの保障の側面や生命維持の側面からも,せん妄を予防し,遷延化を防ぐ意義は極めて大きい. せん妄発症の要因については,直接因子・誘発因子・準備因子に分類され,脱水,感染,疼痛,肝・腎機能障害,低酸素血症,電解質や血糖値の代謝異常,アルコール離脱,薬物の副作用,身体拘束,環境変化,感覚遮断・過剰,精神的ストレスなどとの関連が,明らかにされている.せん妄は,これらの因子が複合的に関わって発症するとされているが,一般病棟か集中治療室かの治療環境の違いにより,関わる因子の特徴も異なり,行われる治療やケアも変わり得ることが考えられる.あらかじめ,治療環境の違いによるせん妄の発症因子について,明らかにすることができれば,それらの因子を除去することにより,せん妄発症を防ぎ,緩和する治療やケアも可能となると考える. せん妄発症のリスク因子が明らかになり,せん妄に対する予防や早期発見がなされれば,せん妄の発症や遷延化を防ぐことに繋がり,患者の身体状態の悪化,その後の認知機能低下やQOL低下の防止,家族の負担度や医療スタッフの困難度の軽減等に貢献することが期待される. しかしながら,これまでにわが国において,一般病棟か集中治療室という治療環境の違いに着目して,せん妄の発症リスク因子を検討した研究はほとんど見当たらない.そこで本研究では,大学附属病院の一般病棟と集中治療室に入院した患者におけるせん妄発症の有無と発症リスク因子との関連を分析し,一般病棟と集中治療室における,せん妄発症のリスク因子を明らかにすることを目的とする.
急性期病院の一般診療科に入院する患者にもっとも多い精神障害は何ですか。
急性期病院の一般診療科に入院する患者にもっとも多い精神障害は、せん妄です。
JCRRAG_000509
医療
せん妄は,身体疾患や全身状態の悪化などにより惹起される意識レベルの変化と注意力の低下を特徴とする器質性の精神障害であり,急性期病院の一般診療科に入院する患者にもっとも多い精神障害である.せん妄は,患者や家族の苦痛はもとより,医療スタッフの対応の困難感や疲弊を引き起こす病態像でもある.また,せん妄はquality of life(QOL)の悪化や死亡率にも影響を及ぼすことが明らかにされており,その後の患者のQOLの保障の側面や生命維持の側面からも,せん妄を予防し,遷延化を防ぐ意義は極めて大きい. せん妄発症の要因については,直接因子・誘発因子・準備因子に分類され,脱水,感染,疼痛,肝・腎機能障害,低酸素血症,電解質や血糖値の代謝異常,アルコール離脱,薬物の副作用,身体拘束,環境変化,感覚遮断・過剰,精神的ストレスなどとの関連が,明らかにされている.せん妄は,これらの因子が複合的に関わって発症するとされているが,一般病棟か集中治療室かの治療環境の違いにより,関わる因子の特徴も異なり,行われる治療やケアも変わり得ることが考えられる.あらかじめ,治療環境の違いによるせん妄の発症因子について,明らかにすることができれば,それらの因子を除去することにより,せん妄発症を防ぎ,緩和する治療やケアも可能となると考える. せん妄発症のリスク因子が明らかになり,せん妄に対する予防や早期発見がなされれば,せん妄の発症や遷延化を防ぐことに繋がり,患者の身体状態の悪化,その後の認知機能低下やQOL低下の防止,家族の負担度や医療スタッフの困難度の軽減等に貢献することが期待される. しかしながら,これまでにわが国において,一般病棟か集中治療室という治療環境の違いに着目して,せん妄の発症リスク因子を検討した研究はほとんど見当たらない.そこで本研究では,大学附属病院の一般病棟と集中治療室に入院した患者におけるせん妄発症の有無と発症リスク因子との関連を分析し,一般病棟と集中治療室における,せん妄発症のリスク因子を明らかにすることを目的とする.
せん妄発症の要因はどのように分類されますか。
せん妄発症の要因は、直接因子、誘発因子、準備因子に分類されます。
JCRRAG_000510
医療
高齢者の薬物療法 5 ポリファーマシー ポリファーマシーとは、多剤併用のうち有害事象を生じたものを指すことが多い。その原因は、高齢化にともなう慢性疾患や症候群の増加によるものと、処方による有害事象が生じたことに対するさらなる処方の追加(処方カスケード)によるものが考えられる。一方で、患者の薬剤への依存、それに応えようとする医師側の想いなどもポリファーマシーに関与している。むやみに処方に頼らない医師が本当は名医なのだが、そこは医療のグレーゾーンが存在し、患者も処方によって満足度を得ることに流される。また、服用方法の複雑化も患者側の服用アドヒアランス低下につながり、薬剤が余ってしまう原因になる。潜在的に不適切な処方(PIMs)も薬物有害反応や事象を生む原因となり、処方カスケードにつながる。ポリファーマシーによる有害事象としては、副作用の発現、救急外来受診数の増加、合併症率の増加、入院期間の延長や医療費の増加などが挙げられる。 このようなポリファーマシーを改善するにはどうすれば良いであろうか。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」では以下の3つの点を挙げている。まず、(1)予防薬のエビデンスは高齢者でも妥当か、という点であるが、高齢者の薬物療法自体エビデンスが少ないのが現状であり、なかなかコンセンサスが得られていない。しかし最近、高齢者の高血圧や糖尿病管理におけるガイドラインが出ており、これらを参考に薬物治療を行うことが考えられる。次に、(2)対症療法は有効か、薬物療法以外の手段はないか、という点であるが、高齢者施設などの現場では、直接の介護が必要であり、早急な対応が必要な場合がある。たとえば、患者が認知症などで不穏状態になってしまった場合である。薬物療法はリスクもあることから、なるべく避けたいのだが、止むを得ず抗精神病薬を投与することがある。次に、(3)治療の優先順位に沿った治療方針か、という点であるが、これも複数の慢性疾患や症候群をもつ高齢者にとってはどれも順位をつけがたい現状があり、勢い処方数が増えてしまうことになる。医療費削減という問題もあるが、有害事象が考えられる場合は速やかに対応する必要があると考えている。具体的には、まずかかりつけ医ないしはわれわれのような在宅医が薬剤処方状況の把握をする必要がある。これは、退院や施設入所を契機に処方を見直すことである程度対応ができる。また、薬局による調剤と医薬品情報の一元管理も必要である。この点、紹介状などがない場合は「お薬手帳」が役立つことも多い。さらに踏み込んで、薬剤スクリーニングなども有用であろう。たとえば、STOPP/START criteriaなどを用いて薬剤数、潜在的不適切処方(PIMs)、本来使われるべき処方がない、同様の効果の薬剤の重複などがチェックできるとポリファーマシーの解決につながると考えられる。高齢者でとくに注意すべき薬剤としては、ベンゾジアゼピン系(非ベンゾ含む)薬、非ステロイド抗炎症薬NSAIDs、スルホニルウレア剤、抗コリン薬などがある。
ポリファーマシーによる有害事象には何が挙げられますか。
ポリファーマシーによる有害事象には、副作用の発現、救急外来受診数の増加、合併症率の増加、入院期間の延長や医療費の増加などが挙げられます。
JCRRAG_000511
医療
高齢者の薬物療法 5 ポリファーマシー ポリファーマシーとは、多剤併用のうち有害事象を生じたものを指すことが多い。その原因は、高齢化にともなう慢性疾患や症候群の増加によるものと、処方による有害事象が生じたことに対するさらなる処方の追加(処方カスケード)によるものが考えられる。一方で、患者の薬剤への依存、それに応えようとする医師側の想いなどもポリファーマシーに関与している。むやみに処方に頼らない医師が本当は名医なのだが、そこは医療のグレーゾーンが存在し、患者も処方によって満足度を得ることに流される。また、服用方法の複雑化も患者側の服用アドヒアランス低下につながり、薬剤が余ってしまう原因になる。潜在的に不適切な処方(PIMs)も薬物有害反応や事象を生む原因となり、処方カスケードにつながる。ポリファーマシーによる有害事象としては、副作用の発現、救急外来受診数の増加、合併症率の増加、入院期間の延長や医療費の増加などが挙げられる。 このようなポリファーマシーを改善するにはどうすれば良いであろうか。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」では以下の3つの点を挙げている。まず、(1)予防薬のエビデンスは高齢者でも妥当か、という点であるが、高齢者の薬物療法自体エビデンスが少ないのが現状であり、なかなかコンセンサスが得られていない。しかし最近、高齢者の高血圧や糖尿病管理におけるガイドラインが出ており、これらを参考に薬物治療を行うことが考えられる。次に、(2)対症療法は有効か、薬物療法以外の手段はないか、という点であるが、高齢者施設などの現場では、直接の介護が必要であり、早急な対応が必要な場合がある。たとえば、患者が認知症などで不穏状態になってしまった場合である。薬物療法はリスクもあることから、なるべく避けたいのだが、止むを得ず抗精神病薬を投与することがある。次に、(3)治療の優先順位に沿った治療方針か、という点であるが、これも複数の慢性疾患や症候群をもつ高齢者にとってはどれも順位をつけがたい現状があり、勢い処方数が増えてしまうことになる。医療費削減という問題もあるが、有害事象が考えられる場合は速やかに対応する必要があると考えている。具体的には、まずかかりつけ医ないしはわれわれのような在宅医が薬剤処方状況の把握をする必要がある。これは、退院や施設入所を契機に処方を見直すことである程度対応ができる。また、薬局による調剤と医薬品情報の一元管理も必要である。この点、紹介状などがない場合は「お薬手帳」が役立つことも多い。さらに踏み込んで、薬剤スクリーニングなども有用であろう。たとえば、STOPP/START criteriaなどを用いて薬剤数、潜在的不適切処方(PIMs)、本来使われるべき処方がない、同様の効果の薬剤の重複などがチェックできるとポリファーマシーの解決につながると考えられる。高齢者でとくに注意すべき薬剤としては、ベンゾジアゼピン系(非ベンゾ含む)薬、非ステロイド抗炎症薬NSAIDs、スルホニルウレア剤、抗コリン薬などがある。
処方カスケードとは何ですか。
処方カスケードとは、処方による有害事象が生じたことに対するさらなる処方を追加することです。
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医療
高齢者の薬物療法 5 ポリファーマシー ポリファーマシーとは、多剤併用のうち有害事象を生じたものを指すことが多い。その原因は、高齢化にともなう慢性疾患や症候群の増加によるものと、処方による有害事象が生じたことに対するさらなる処方の追加(処方カスケード)によるものが考えられる。一方で、患者の薬剤への依存、それに応えようとする医師側の想いなどもポリファーマシーに関与している。むやみに処方に頼らない医師が本当は名医なのだが、そこは医療のグレーゾーンが存在し、患者も処方によって満足度を得ることに流される。また、服用方法の複雑化も患者側の服用アドヒアランス低下につながり、薬剤が余ってしまう原因になる。潜在的に不適切な処方(PIMs)も薬物有害反応や事象を生む原因となり、処方カスケードにつながる。ポリファーマシーによる有害事象としては、副作用の発現、救急外来受診数の増加、合併症率の増加、入院期間の延長や医療費の増加などが挙げられる。 このようなポリファーマシーを改善するにはどうすれば良いであろうか。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」では以下の3つの点を挙げている。まず、(1)予防薬のエビデンスは高齢者でも妥当か、という点であるが、高齢者の薬物療法自体エビデンスが少ないのが現状であり、なかなかコンセンサスが得られていない。しかし最近、高齢者の高血圧や糖尿病管理におけるガイドラインが出ており、これらを参考に薬物治療を行うことが考えられる。次に、(2)対症療法は有効か、薬物療法以外の手段はないか、という点であるが、高齢者施設などの現場では、直接の介護が必要であり、早急な対応が必要な場合がある。たとえば、患者が認知症などで不穏状態になってしまった場合である。薬物療法はリスクもあることから、なるべく避けたいのだが、止むを得ず抗精神病薬を投与することがある。次に、(3)治療の優先順位に沿った治療方針か、という点であるが、これも複数の慢性疾患や症候群をもつ高齢者にとってはどれも順位をつけがたい現状があり、勢い処方数が増えてしまうことになる。医療費削減という問題もあるが、有害事象が考えられる場合は速やかに対応する必要があると考えている。具体的には、まずかかりつけ医ないしはわれわれのような在宅医が薬剤処方状況の把握をする必要がある。これは、退院や施設入所を契機に処方を見直すことである程度対応ができる。また、薬局による調剤と医薬品情報の一元管理も必要である。この点、紹介状などがない場合は「お薬手帳」が役立つことも多い。さらに踏み込んで、薬剤スクリーニングなども有用であろう。たとえば、STOPP/START criteriaなどを用いて薬剤数、潜在的不適切処方(PIMs)、本来使われるべき処方がない、同様の効果の薬剤の重複などがチェックできるとポリファーマシーの解決につながると考えられる。高齢者でとくに注意すべき薬剤としては、ベンゾジアゼピン系(非ベンゾ含む)薬、非ステロイド抗炎症薬NSAIDs、スルホニルウレア剤、抗コリン薬などがある。
高齢者が特に注意すべき薬剤は何ですか。
高齢者が特に注意すべき薬剤は、非ベンゾ含むベンゾジアゼピン系薬、非ステロイド抗炎症薬NSAIDs、スルホニルウレア剤、抗コリン薬などです。
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医療
 国内のみでなく先進国では高齢化が進んでおり,骨粗鬆症が世界的な問題の1つとなっている.日本でも2007年に65歳以上の人口が21%を超え超高齢社会となっており,骨粗鬆症やそれに伴う骨折が問題となっている.骨粗鬆症による脆弱性骨折はquality of life(QOL)の著明な低下をもたらすだけでなく,生命予後も悪く椎体骨折の6%~28%,大腿骨近位部骨折の15%~23%が1年以内に死亡すると報告されている.さらに骨折による医療費の拡大が,医療経済を圧迫する一因ともなっている.骨折による医療費の増大は世界共通の課題となっており,骨折予防による医療費削減が急務となっている.  かつての骨粗鬆症の治療薬はビスホスホネート製剤,選択的エストロゲン受容体製剤,ビタミンD製剤,ビタミンK製剤が主な選択肢であった.しかし現在は骨形成促進効果を持つテリパラチド,ロモソズマブ,アバロパラチド,強力な骨吸収抑制効果を持つデノスマブなど大きな効果が望める骨粗鬆症治療薬も登場した.これらの治療薬を使用,および組み合わせることにより脆弱性骨折の発生を50%~80%抑制することが出来ることが報告されている.
かつての骨粗鬆症治療薬にはどのようなものが主な選択肢でしたか。
かつての骨粗鬆症の治療薬はビスホスホネート製剤、選択的エストロゲン受容体製剤、ビタミンD製剤、ビタミンK製剤が主な選択肢でした。
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医療
咽頭は、鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位で、筋肉と粘膜でできた約13cmの管です。咽頭は上からそれぞれ、上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つの部位に分かれています。 上咽頭のある場所は、鼻腔の奥で、口蓋垂と口蓋扁桃の後ろの上のほうです。脳を支えている頭蓋骨の底にあたる頭蓋底のすぐ下で、左右には耳につながる穴があります。 なお、頭頸部とは、脳、目、首の骨(頸椎)を除いた頭と頸部(首)のことで、鼻や口、あご、のど、耳、またそれらの周囲の臓器を指します。 上咽頭がんは、上咽頭に発生するがんで、頭頸部がんの1つです。発生するがんの種類(組織型)は、ほとんどが扁平上皮がんですが、中でも低分化・未分化なものが大部分を占めます。 上咽頭がんの発生には、EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)と呼ばれるウイルスが関連するものと、喫煙や過度の飲酒が関連するものがあります。 咽頭の周りには多くのリンパ節があるため、頸部(首)のリンパ節に転移しやすいという特徴があります。がんの発見時に頸部リンパ節への転移が見つかることも珍しくありません。肺、肝臓、骨などの他の臓器に転移することもあります。 上咽頭がんは、初期のうちは自覚症状がみられないことがあります。 上咽頭がんが見つかったときに最も多くみられる症状は、頸部リンパ節に転移したことによる首のしこりです。そのほかには、鼻の症状(鼻づまり、鼻血、鼻水に血が混ざるなど)、耳の症状(耳がつまった感じ、聞こえにくいなど)、脳神経の症状(目が見えにくくなる、二重に見えるなど)があります。 このような症状がある場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
がんの発見時には、何への転移が見つかることが珍しくありませんか?
がんの発見時には、頸部リンパ節への転移が見つかることが珍しくありません。
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医療
ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などでは慢性炎症の結果、肝臓の線維化から肝硬変をきたす。これまでに、肝硬変に対するMSC治療が行われてきたが、投与経路としては肝動脈や末梢静脈などであった。また、幹細胞投与は安全に行われる事がわかったが、その効果はまちまちであり、線維化や肝機能が改善した、生存期間が延長したなどの報告がある一方で、明らかな効果はないという報告も見られた。ClinicalTrials.gov に登録されている臨床試験45例(2022年4月15日現在)を検討すると、国別では中国が24例と最も多かった。日本の臨床試験は2例あるが、そのうちNCT03254758(新潟大学と日本大学)を検討すると、対象は、非代償性肝硬変で、介入方法は、脂肪由来MSC (ADR-001, ロート製薬)を静脈注射するものである。症例数は27例で、単グループ、オープンラベルによる治療を行う。検討項目は、副反応頻度、Child-Pughスコアによる評価で、実施期間は2017年7月から2021年12月までであった。世界で最初に肝硬変に対してMSCによる治療を行った、新潟大学の寺井らによれば、末梢から投与された幹細胞は、肺に捕獲され、肝臓には到達しない。それにもかかわらず肝臓での治療効果が現れる機序として、幹細胞からエクソソームが分泌され、肝臓に存在するマクロファージや好中球が活性化される結果、肝線維化の改善や、肝再生がおこると考えられるという。
新潟大学の寺井らによれば、肝臓での治療効果が現れる機序は、どのようなものですか?
新潟大学の寺井らによれば、肝臓での治療効果が現れる機序は、幹細胞からエクソソームが分泌され、肝臓に存在するマクロファージや好中球が活性化される結果、肝線維化の改善や、肝再生がおこるというものです。
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医療
霧島市立医師会医療センターに勤務する,定期健康診断の参加者に調査を行った。霧島市立医師会医療センターはCOVID-19における診療・検査医療機関に指定されている。これまでに医師や看護師を中心に様々な医療職種がCOVID-19患者に対応している。本調査は自記式の質問票を用いた。質問票は健康診断案内の封筒に入れ配布し,健康診断会場に回収箱を設置し回収した。本研究は,事前に研究の目的・方法・個人情報の取り扱いについて明記した書面で説明を行い,調査の参加は任意とした。本研究の対象者として,2019年度定期健康診断の案内に質問票を同封した335名のうち,本研究に対して同意を得た者は113名であった。2年後の2021年度の定期健康診断において,何らかの理由で調査を継続できなかった者(27名)を除外し,継続して調査が可能であった者は86名であった。そのうち,一般性セルフ・エフィカシー尺度(General Self-Efficacy Scale, 以下GSES)が欠損している者,医療職種の調査結果に欠損がある者を除外し,最終的に77名(平均年齢38.8 ± 12.1 歳 , 女性68.8%)を解析対象とした。
どのような参加者に調査は行われましたか?
調査が行われたのは霧島市立医師会医療センターに勤務する、定期健康診断の参加者です。
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医療
高齢化が進み重症患者管理のニーズの増加が予測されるが,医療従事者の増加はそれに見合って充足することは困難である.そうした点を解決するべく遠隔ICUのニーズが日本でも注目されるようになっている.遠隔ICUは集中治療専門医が不在の被支援施設の集中治療室(ICU)に対して,集中治療専門医,看護師,医師事務作業補助者のチームが一体となって重症患者を遠隔から常時モニタリング,診療支援をするモデルである.複数患者を同時に管理するICUにおいて,現状では医療従事者がマニュアルでデータを取得しスコアリングの計算を行っているが,今後,テクノロジー,人工知能(AI)を活用して効率的に患者選定を行い,早期発見,早期治療に繋げていくことが求められる.遠隔ICUは新たなシステムを導入して現場の運用を変革する医療DXの診療モデルである.遠隔ICUによりICUにおける治療プロセスの標準化をすることで,退院後の患者の健康状態の改善につなげられれば医療の質は向上し,患者,医療従事者,医療機関,保険支払基金側のすべてのステークホルダーにメリットがある.今後,地域の医療機関同士が連携をする遠隔ICUモデルが全国に普及していくことが期待される.こうしたモデルが普及していくためにはデータの標準化と利活用が必須である.施設毎にデータの標準化が進んでいない現状において,複数施設のデータを共有して解析に活用することは難しいが,データの標準化をすることで,データ活用が進み現場での運用が改善することを示すことが出来れば,データ利活用の普及に繋がると考えている.新たなテクノロジーを用いて地域の医療機関同士を連携し,データを効率的に収集して活用することで医療の質向上と業務効率化の達成に繋がっていく.
遠隔ICUは、どのようなモデルですか?
遠隔ICUは、集中治療専門医が不在の被支援施設の集中治療室(ICU)に対して、集中治療専門医、看護師、医師事務作業補助者のチームが一体となって、重症患者を遠隔から常時モニタリング、診療支援をするモデルです。
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医療
マインドフルネスに基づく介入は,肥満および摂食障害の治療に効果を持つことが示唆されている。本研究では,健康な日本人の大学生を対象とし,食事前の短時間の呼吸瞑想による介入の食行動およびマインドフルネス傾向に対する効果を予備的に検討した。1名の参加者が毎回の食事前に5分間の呼吸瞑想を2週間実践し,別の2名は同じ期間中,瞑想を実践しなかった。介入を行った参加者では,介入期間終了時および終了2週間後のフォローアップ時点において,介入開始前よりも,食行動評価,抑制的摂食,マインドフルネスの各尺度の得点は増大し,情動的摂食,外発的摂食の得点およびBMIは減少していた。瞑想を行った参加者の内観報告からも,食事に対する気づきや抑制の増大が示唆された。これらの結果は,日本人の健常成人において,食事前の短時間の呼吸瞑想が食行動およびマインドフルネス傾向に望ましい効果をおよぼす可能性を示唆している。 キーワード:呼吸瞑想,食行動,マインドフルネス,BMI
介入を行った参加者は、介入開始前よりも、どの得点が増大していましたか?
介入を行った参加者は、介入開始前よりも、食行動評価、抑制的摂食、マインドフルネスの各尺度の得点が増大していました。
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医療
COVID-19 の45%は(無症候性感染者は含まない)症状が出る前の感染者から,40%は罹病期(有症状期)の患者から,5%は無症候性感染者から,10%は環境から伝播し感染すると考えられている2).SARS-CoV-2 は感染者の鼻腔咽頭粘膜,唾液,気管痰,便などから検出される.COVID-19の伝播経路は,飛沫伝播経路がメインで接触伝播経路がこれに次ぐと考えられている.咳嗽や患者の口・鼻を操作しエアロゾルを発生させる処置行為などにより発生する大量のエアロゾルによる伝播ルートがクローズアップされている.エアロゾルを介した空気伝播経路(air-borne transmission route)については,従来の伝播経路分類の範疇に関して論争が起こっており,科学的な検証を待つ必要がある.飛沫伝播経路(droplet-borne transmission route)は,会話や咳嗽の際に発生する飛沫中の病原体による伝播である.接触伝播経路には,ヒト―ヒト間の直接接触伝播経路(direct-contact transmission route)と介在物を介した二次接触伝播経路(indirect- or formite-mediated transmission route):感染者が触れた器物を間接的に触れることにより発症する(接触した手が口・鼻の粘膜におよび気道に侵入し感染が成立する)がある.
接触伝播経路のうち、感染者が触れた器物を間接的に触れることで発症するものは何ですか?
接触伝播経路のうち、感染者が触れた器物を間接的に触れることで発症するものは、二次接触伝播経路(indirect- or formite-mediated transmission route)です。
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医療
2019年12月に中国武漢より始まった新型コロナウイルス感染症(coronavirusdisease 2019:COVID-19)の流行は全世界に拡大した.感染症の世界的大流行(パンデミック)は人々の健康状態と日常生活に多大な影響を与え,メンタルヘルスに対しても様々な影響を与えている.感染症によって生じるメンタルヘルス上の問題や精神症状としては,感染症が感染者の中枢神経系に与える影響と,感染者が治療中に受ける様々なストレスの影響がある.ほかには,非感染者において,感染することに対する恐怖や不安,感染防御措置や隔離措置による心理的負担から生じる精神症状があり,なかでも医療従事者をはじめとする支援者の受ける心理的負担は甚大である.パンデミックは大規模広範囲の市民に対して影響を与えるという点で,化学・生物・放射線物質・核・高出力爆発物(chemical, biological, radiological, nuclear, high-yield explosives:CBRNE)に起因する緊急事態を総称する特殊災害に分類される.過去に日本で経験されたCBRNE災害としては,1945年の原子力弾,1995年のサリンガステロ,2009年のH1N1 インフルエンザの大流行,2011年の福島原子力発電所事故などがある.今回のCOVID-19パンデミックは日本全国に及んでおり,過去のCBRNE災害を超える規模となった.CBRNE災害とメンタルヘルスを考える際に注目すべき特徴は,目に見えない対象物に関するリスクと不安が,大規模に波及し,社会を覆っていくことである.これは時には差別的な対応を生じ,被差別者は身体症状を悪化させて,平均余命をも短縮させる.実際に,福島の原子力発電所事故被災者は,実際の放射線曝露とは無関係に,健康度を低下させ,さらには平均余命をも短縮させた.本稿においては,COVID-19のメンタルヘルスに与える影響について論じ,東京女子医科大学病院で行われているCOVID-19に対するメンタルヘルス支援(精神科リエゾンチーム・COVID-19こころのケアチーム活動)について紹介する.
パンデミックは、どのような点で、化学・生物・放射線物質・核・高出力爆発物(chemical, biological, radiological, nuclear, high-yield explosives:CBRNE)に起因する緊急事態を総称する特殊災害に分類されますか?
パンデミックは、大規模広範囲の市民に対して影響を与えるという点で、化学・生物・放射線物質・核・高出力爆発物(chemical, biological, radiological, nuclear, high-yield explosives:CBRNE)に起因する緊急事態を総称する特殊災害に分類されます。
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医療
 Kogisoらは肝生検を施行した365名のNALFDの平均7.1年予後調査の結果,44名(12.1%)が死亡し,そのうち63%が肝臓関連死亡で,残りは心血管系イベント・肝外悪性腫瘍死亡であり,心血管系イベントにも注意が必要であることを明らかにした.病態に関しては,生活習慣アンケートの結果,生活習慣に基づき20歳台よりの体重増加が重要であること,さらにそこに腫瘍壊死因子(TNF-α)プロモーター領域,adiponectin,PNPLA3,HSD17B13の遺伝子多型が発症・進行・発がんに複雑に関与することを明らかにした.  またNAFLDからの肝発がんを,C型肝炎由来,アルコール関連肝障害由来の肝細胞癌と比較し,その特徴を明らかにした.その結果,NAFLD由来HCCの特徴として,高齢,生活習慣病の合併が多いこと,さらに肝硬変の合併率が約50%と低率で,腫瘍マーカーではα-フェトプロテイン(AFP)よりもPIVKA-2が高率に陽性になることを明らかにした.さらにNAFLD由来HCCの一部にsteatohepatitic HCCといわれる病理学に特殊なHCCが存在することも見出した.具体的には,中分化型にも拘らず癌細胞に脂肪沈着・炎症細胞浸潤を認め,血性アミロイドA(SAA)・C反応蛋白(CRP)などの炎症シグナルが高発現していることより,その発癌機構が異なっていることを明らかにした.  しかし,生活習慣の改善を除くとNASH特異的な治療薬はなく,今後の開発が期待される.
NAFLDからの肝発がんは、何と何由来の肝細胞癌と比較することで、その特徴を明らかにされましたか。
NAFLDからの肝発がんは、C型肝炎とアルコール関連肝障害由来の肝細胞癌と比較することで、その特徴を明らかにされました。
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医療
国を挙げての取り組みとして、「21世紀における国民健康づくり運動」、いわゆる「健康日本21 (第二次)」が2013年4月からスタートしています。これは、厚生労働省による、健康寿命の延伸・健康格差の縮小を実現するために、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの非感染性疾患(Non-Communicable Diseases, NCDs)を対象にした発症・重症化予防の取り組みです。この中で、とくに生活習慣病であるメタボリック・シンドローム対策として、保険者は「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」に定められた、特定健康診査(特定健診)や特定保健指導を、40歳から75歳までの加入者に対して行わななければなりません。さらに、「健康日本 21」には、社会生活を営むために必要な機能の維持および向上のために「こころ」や「次世代」、「高齢者」を対象とした取り込みや、健康を支えそれを守るために必要な社会環境の整備も含まれています。さらに踏み込んで、栄養・食生活・身体活動や運動・休養・飲酒・喫煙や歯・口腔の健康に関する生活習慣や社会環境の改善目標も挙げられています。こういった取り組みの背景には、日本が超高齢化社会を迎えている現状があり、いわゆる健康寿命(日常生活に支障のない期間)を延ばす取り組みが喫緊の課題になっています。
「健康日本21(第二次)」の取り組みの背景には、どのようなものがありますか?
「健康日本21(第二次)」がスタートした背景として、日本が超高齢化社会を迎えている現状が挙げられます。
JCRRAG_000523
医療
感染性心内膜炎(Infectious endometritis:以下IE)は,弁膜や大血管内膜にvegetationを形成し,心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である。IEは敗血症による死亡率は15~30%と高く,リハビリテーションが可能であったとしても循環動態が不安定であり,関節可動域練習やベッド上での体位変換などの介入が限界であった。しかしながら,IEに対する外科的手術は従来での治療に比べ,入院6週間後以降の塞栓発生率および死亡率が減少することが示されている。この心臓外科術後の死亡率の低下に伴い,近年重症疾患に対する集中治療管理に伴い生じる左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群である集中治療室関連筋力低下(以下ICU-AW)がある。ICU-AWに対する介入方法は未だ報告は少ないものの,早期離床や軽負荷抵抗運動により日常生活動作(以下ADL)および基本動作の改善に至ることが近年報告されている。今回,我々はIEによる敗血症を呈し,長期臥床を認めた結果,ICU-AWを呈した症例を担当した。術後早期からの離床に難渋し,ICU-AWおよびADLの改善に難渋した症例を経験したのでここに報告する。なお,倫理的配慮としてヘルシンキ宣言に基づき,患者本人に本研究報告の意義について十分に説明したうえで,同意を得た上で実施した。
近年、重症疾患に対する集中治療管理に伴い生じる、左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群は何ですか?
近年、重症疾患に対する集中治療管理に伴い生じる、左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群は、集中治療室関連筋力低下(ICU-AW)です。
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医療
臨床現場では運動療法の指導率が低い.例えば,糖尿病患者を対象としたアンケート調査からも,運動療法の指導を受けたことが無い患者が全体の30%程度いることが明らかとなっている.近年では,新規の経口血糖降下薬が次々に発売されており,以前に比べると容易に血糖コントロールが付くようになってきた.そのため,今後,「血糖値が良好にコントロールされていれば,運動指導をあえて行わなくても良いだろう」,と判断される患者が増え,運動指導を受ける患者がさらに減少するかもしれない.実際に,2000年代に実施された糖尿病学会で行われた調査により,糖尿病患者の55%は運動指導をほぼ受けたことが無いことが明らかとなっている.しかしながら,現在までのエビデンスからは運動不足が様々な健康リスクを高めることがすでに明らかとなっており,血糖値が良好であった場合でも,身体活動を増加させることは極めて重要である.このように,運動指導を医師が行わない理由の一つとして,運動を行うことにより健康効果が高められる,という認識はあるものの,運動不足は喫煙と同じように,かなり危険なリスク因子である,という認識が薄いことが一因であるかもしれない.また,これ以外にも運動療法のアドヒアランスが低いこと,保険点数が付かないこと,など,積極的に指導しない理由は多く挙げられる.これらのギャップを特定し,解消する手段を見つけ出すことが,今後の重要な課題となる.1つのギャップは運動療法という言葉の持つハードルの高さであろう.運動と聞いただけで,医師,患者ともに身構えてしまう部分が多いように感じる.その一方で,現在のガイドラインは,生活活動と運動の和である身体活動を高めるように説明されているものがほとんどである.実際に米国糖尿病学会のStandards of Medical Care in Diabetesにおいても,ベースラインから,ウォーキング,ヨガ,水泳,ダンスだけではなく,家事,ガーデニングなどを例に挙げ,それにより身体活動を増やすことが提案されている.いかにして,身体活動に対するハードルを下げるか,ということが,医療機関の役割として重要と考えられる.そのような視点で「運動指導」や「運動療法」と言う言葉や,その内容が持つ負の側面についても注意を払うべきであろう.
医療機関の役割として、重要だと考えられていることは何ですか?
医療機関の役割として、重要だと考えられていることは、いかにして、身体活動に対するハードルを下げるか、ということです。
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医療
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)は「リハビリテーション(以下,リハビリ)前置主義」という理念を実践する場として2000年の介護保険制度の施行と同期して制度化された。これは介護保険を利用する前に徹底的なリハビリを行い,要介護状態の予防や軽減を図り,地域でできるだけ自立した生活が継続できることをめざすものである。すなわち,回復期病棟の使命は,1 発症早期に急性期病院から受け入れること,2 亜急性期としての十分な医学的管理を実施すること,3 集中的に必要かつ十分なリハサービスを提供すること,4 日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADL)を改善し可能な限り家庭復帰を可能にすること,5 在宅ケアへの移行に際して十分な連携をとること,に要約される。そのため病棟における「生活」を重視したリハビリ医療を提供すべく,多くの専門職が病棟に配属され,多職種連携によるチーム医療の展開が最大の特徴となる)。
回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)は、どのようなものですか?
回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)は、介護保険を利用する前に徹底的なリハビリを行い、要介護状態の予防や軽減を図り、地域でできるだけ自立した生活が継続できることをめざすものです。
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医療
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,11月になって第3波と呼ばれる感染者数の増加を示している.東京女子医科大学病院(本院)では,2020年1月末より総合外来センター入口でのトリアージに始まる様々なCOVID-19対策を実行してきた.その後の患者数増加傾向を早期に察知して2月末には第1回新型コロナウイルス感染症患者対応会議が開催され,病院全体としての取り組みが始まった.さらに総合診療科,感染制御部を中心として,多くの診療科・部門から招集した多職種実働部隊としての“チーム・コロナ”を発足し,COVID-19に関する様々な課題を検討して実行に移してきた.本院は感染症指定医療機関ではなかったが,3月以降に患者数が急増したことや東京都からの要請もあったことから,COVID-19患者診療を本格的にスタートすることとなり4月20日COVID-19Task Force(略称COVIDチーム)が結成された.COVID-19 の診断・治療そのものについては,他稿で詳しく述べられるので本稿では言及しない.本稿では,本院でのCOVID-19への病院としての取り組みを,1月末から11月まで時系列にそって概説する.
COVID-19Task Force(略称COVIDチーム)が結成されたのは、何月何日ですか?
COVID-19Task Force(略称COVIDチーム)が結成されたのは、4月20日です。
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医療
遺伝性腫瘍は、若くしてがんになったり、異なる臓器や同じ臓器に何度もがんができたり、家系内で同じ種類のがんを発症している人が多いなどの特徴があります。 自分や家族がこれまでにかかった病気(既往歴・家族歴)から遺伝ではないかと心配になり、遺伝カウンセリングや遺伝子検査を受けることを検討する人もいます。また近年は、がんの治療のために遺伝子検査を受けたときや、血縁者が遺伝性腫瘍と診断されたことがきっかけで遺伝性腫瘍と診断される人も増えてきています。がんの治療のための遺伝子検査については、関連情報をご覧ください。 がんの種類により異なりますが、がんになった人のおよそ5-10%は、がんの発症と関係する生まれつきの遺伝子の変化(「変異」や「病的バリアント」ともいいます)をもっていると言われています。 人の体の細胞の中では、さまざまながん遺伝子(細胞を増やす役割をもつ遺伝子)やがん抑制遺伝子(細胞が増えるのを抑える役割をもつ遺伝子など)が働いています。 遺伝性腫瘍の多くは、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の生まれつきの変化が原因となっています。がん抑制遺伝子を例に説明します。遺伝子は各細胞に2つずつ(父から1つ、母から1つ)あります。がん抑制遺伝子の片方が変化しても機能は失われません。しかし、残ったもう片方が変化するとその細胞のがん抑制遺伝子の機能が失われ、がん細胞になりやすくなります。がん抑制遺伝子の片方に生まれつき変化がある場合、ない人と比べてがんを発症しやすい体質であるといえます。 しかし、遺伝子に生まれつきの変化があるからといって必ずしもがんを発症するわけではありません。がんの発症には、遺伝子の変化だけでなく、環境的要因なども複合的に影響しています。
若くしてがんになったり、異なる臓器や同じ臓器に何度もがんができたり、家系内で同じ種類のがんを発症している人が多いなどの特徴があるものは何ですか?
若くしてがんになったり、異なる臓器や同じ臓器に何度もがんができたり、家系内で同じ種類のがんを発症している人が多いなどの特徴があるものは、遺伝性腫瘍です。
JCRRAG_000528
医療
 アレルギー性鼻炎は鼻粘膜のI型アレルギー疾患で,発作性反復性のくしゃみ,水様性鼻漏,鼻閉を3主徴とする.通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎に分けられ,季節性アレルギー性鼻炎の代表例が,スギ花粉によるいわゆる花粉症である.耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした全国調査によると,2019年時点での有病率は,通年性アレルギー性鼻炎は24.5%,季節性アレルギー性鼻炎は38.8%と非常に高く,小児の罹患率も急増している.  アレルギー性鼻炎は,スギ花粉や塵ダニなどの抗原に対して,アレルゲン特異的IgEを介して反応するI型アレルギー疾患である.鼻粘膜でアレルゲンを捉えた樹状細胞は局所リンパ節でナイーブT細胞に抗原提示する.抗原提示を受けたナイーブT細胞はアレルゲン特異的なTh2細胞へ分化誘導され,interleukin(IL)-4,IL-5,IL-13などのサイトカインを産生する.IL-4,IL-13により抗体のクラススイッチが誘導され,アレルゲン特異的免疫グロブリン(Ig)Eが産生される.このIgEが肥満細胞上のIgE受容体(FcεRI)に結合することで感作が成立する.
何という疾患が、鼻粘膜のI型アレルギー疾患で、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉を3主徴としますか?
アレルギー性鼻炎が、鼻粘膜のI型アレルギー疾患で、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉を3主徴とします。
JCRRAG_000529
医療
悪性リンパ腫は、白血球のうちリンパ球ががん化する病気です。悪性リンパ腫は、100種類以上の病型(病気のタイプ)があり、がん細胞の形態や性質によって、大きくB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫に分かれます。なお、B細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫を合わせて非ホジキンリンパ腫と呼ぶこともあります。 血液の中にある赤血球、白血球、血小板などを血液細胞といいます。血液細胞は、骨の中心部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞からつくられます。造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれて成長し、骨髄系幹細胞からは、赤血球、白血球(顆粒球、単球)、血小板などが、リンパ系幹細胞からは白血球の一種であるリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)がつくられます。 首や腋の下、足の付け根などリンパ節の多いところに、腫れやしこりがあらわれます。多くの場合、痛みを伴いませんが、急速に腫れやしこりが大きくなる場合は痛みを伴う場合があります。また、発熱、発疹、皮膚の腫瘤など、さまざまな症状があらわれることもあります。 悪性リンパ腫では、ほとんどの場合、診断や病型(病気のタイプ)を確定するための生検が行われます。生検では、腫れているリンパ節などの病変の組織をとって、顕微鏡で詳しく調べる検査や、細胞の性質(B細胞かT細胞・NK細胞かなど)を調べる検査、染色体検査や遺伝子検査などが行われます。その他、病気の広がりを調べるためにCTやPET-CTなどの画像検査、必要に応じて内視鏡検査や骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)などが行われます。 骨髄検査は、皮膚を消毒し局所麻酔をした後に、一般的には腸骨(腰の骨)に針を刺して、骨髄組織を採る検査です。
悪性リンパ腫は、何種類以上の病型(病気のタイプ)がありますか?
悪性リンパ腫は、100種類以上の病型(病気のタイプ)があります。
JCRRAG_000530
医療
悪性リンパ腫は、白血球のうちリンパ球ががん化する病気です。悪性リンパ腫は、100種類以上の病型(病気のタイプ)があり、がん細胞の形態や性質によって、大きくB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫に分かれます。なお、B細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫を合わせて非ホジキンリンパ腫と呼ぶこともあります。 血液の中にある赤血球、白血球、血小板などを血液細胞といいます。血液細胞は、骨の中心部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞からつくられます。造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれて成長し、骨髄系幹細胞からは、赤血球、白血球(顆粒球、単球)、血小板などが、リンパ系幹細胞からは白血球の一種であるリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)がつくられます。 首や腋の下、足の付け根などリンパ節の多いところに、腫れやしこりがあらわれます。多くの場合、痛みを伴いませんが、急速に腫れやしこりが大きくなる場合は痛みを伴う場合があります。また、発熱、発疹、皮膚の腫瘤など、さまざまな症状があらわれることもあります。 悪性リンパ腫では、ほとんどの場合、診断や病型(病気のタイプ)を確定するための生検が行われます。生検では、腫れているリンパ節などの病変の組織をとって、顕微鏡で詳しく調べる検査や、細胞の性質(B細胞かT細胞・NK細胞かなど)を調べる検査、染色体検査や遺伝子検査などが行われます。その他、病気の広がりを調べるためにCTやPET-CTなどの画像検査、必要に応じて内視鏡検査や骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)などが行われます。 骨髄検査は、皮膚を消毒し局所麻酔をした後に、一般的には腸骨(腰の骨)に針を刺して、骨髄組織を採る検査です。
B細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫を合わせて、何と呼ぶことがありますか?
B細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫を合わせて、非ホジキンリンパ腫と呼ぶことがあります。
JCRRAG_000531
医療
 Kogisoらは肝生検を施行した365名のNALFDの平均7.1年予後調査の結果,44名(12.1%)が死亡し,そのうち63%が肝臓関連死亡で,残りは心血管系イベント・肝外悪性腫瘍死亡であり,心血管系イベントにも注意が必要であることを明らかにした.病態に関しては,生活習慣アンケートの結果,生活習慣に基づき20歳台よりの体重増加が重要であること,さらにそこに腫瘍壊死因子(TNF-α)プロモーター領域,adiponectin,PNPLA3,HSD17B13の遺伝子多型が発症・進行・発がんに複雑に関与することを明らかにした.  またNAFLDからの肝発がんを,C型肝炎由来,アルコール関連肝障害由来の肝細胞癌と比較し,その特徴を明らかにした.その結果,NAFLD由来HCCの特徴として,高齢,生活習慣病の合併が多いこと,さらに肝硬変の合併率が約50%と低率で,腫瘍マーカーではα-フェトプロテイン(AFP)よりもPIVKA-2が高率に陽性になることを明らかにした.さらにNAFLD由来HCCの一部にsteatohepatitic HCCといわれる病理学に特殊なHCCが存在することも見出した.具体的には,中分化型にも拘らず癌細胞に脂肪沈着・炎症細胞浸潤を認め,血性アミロイドA(SAA)・C反応蛋白(CRP)などの炎症シグナルが高発現していることより,その発癌機構が異なっていることを明らかにした.  しかし,生活習慣の改善を除くとNASH特異的な治療薬はなく,今後の開発が期待される.
NAFLD由来HCCの特徴として、何と何が明らかにされましたか?
NAFLD由来HCCの特徴として、高齢、生活習慣病の合併が多いことと、肝硬変の合併率が約50%と低率で、腫瘍マーカーではα-フェトプロテイン(AFP)よりもPIVKA-2が高率に陽性になることが明らかにされました。
JCRRAG_000532
医療
 上述したようにHCVがほぼ消失されつつあり,B型肝炎ウイルス(HBV)も核酸アナログ製剤でコントロール可能となった.しかし,飽食の時代とともに,脂肪性肝疾患が急増した.また女性飲酒者の増加などもあり,アルコール関連脂肪性肝疾患も増え,現在本邦の肝細胞癌の基礎肝疾患は,脂肪肝由来およびアルコール関連肝障害由来の非ウイルス性肝疾患に置き換えられている.  特に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は現在日本に2,300万人おり,NAFLDからの肝発がんは今後約10年で10万人以上と推定されている.加えてNAFLDは糖尿病や,心血管系イベントの危険因子としても注目されている.さらに脂肪肝に炎症,特に風船様変性を認め,肝硬変・肝細胞がんに進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断・治療法の開発に関して多くの注目が集まっている.  日本消化器病学会および日本肝臓学会でもNAFLD/NASH診療ガイドラインを作成した.筆者は第2版の作成委員長として作成に従事した.その結果,NAFLDの定義,線維化群拾い上げのフローチャート,脂肪肝からの肝細胞がん(HCC)のスクリーニングに関する提言,治療のフローチャートを作成した.特に脂肪性肝疾患の定義・分類に関しては,2023年夏に世界的な改変が行われ,非常に注目を浴びている.
現在本邦の肝細胞癌の基礎肝疾患は、何由来および何由来の非ウイルス性肝疾患に置き換えられていますか?
現在本邦の肝細胞癌の基礎肝疾患は、脂肪肝由来およびアルコール関連肝障害由来の非ウイルス性肝疾患に置き換えられています。
JCRRAG_000533
医療
 国内のみでなく先進国では高齢化が進んでおり,骨粗鬆症が世界的な問題の1つとなっている.日本でも2007年に65歳以上の人口が21%を超え超高齢社会となっており,骨粗鬆症やそれに伴う骨折が問題となっている.骨粗鬆症による脆弱性骨折はquality of life(QOL)の著明な低下をもたらすだけでなく,生命予後も悪く椎体骨折の6%~28%,大腿骨近位部骨折の15%~23%が1年以内に死亡すると報告されている.さらに骨折による医療費の拡大が,医療経済を圧迫する一因ともなっている.骨折による医療費の増大は世界共通の課題となっており,骨折予防による医療費削減が急務となっている.  かつての骨粗鬆症の治療薬はビスホスホネート製剤,選択的エストロゲン受容体製剤,ビタミンD製剤,ビタミンK製剤が主な選択肢であった.しかし現在は骨形成促進効果を持つテリパラチド,ロモソズマブ,アバロパラチド,強力な骨吸収抑制効果を持つデノスマブなど大きな効果が望める骨粗鬆症治療薬も登場した.これらの治療薬を使用,および組み合わせることにより脆弱性骨折の発生を50%~80%抑制することが出来ることが報告されている.
骨粗鬆症による椎体骨折の6%~28%は何年以内に死亡しますか。
骨粗鬆症による椎体骨折の6%~28%は1年以内に死亡します。
JCRRAG_000534
医療
 上述したようにHCVがほぼ消失されつつあり,B型肝炎ウイルス(HBV)も核酸アナログ製剤でコントロール可能となった.しかし,飽食の時代とともに,脂肪性肝疾患が急増した.また女性飲酒者の増加などもあり,アルコール関連脂肪性肝疾患も増え,現在本邦の肝細胞癌の基礎肝疾患は,脂肪肝由来およびアルコール関連肝障害由来の非ウイルス性肝疾患に置き換えられている.  特に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は現在日本に2,300万人おり,NAFLDからの肝発がんは今後約10年で10万人以上と推定されている.加えてNAFLDは糖尿病や,心血管系イベントの危険因子としても注目されている.さらに脂肪肝に炎症,特に風船様変性を認め,肝硬変・肝細胞がんに進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断・治療法の開発に関して多くの注目が集まっている.  日本消化器病学会および日本肝臓学会でもNAFLD/NASH診療ガイドラインを作成した.筆者は第2版の作成委員長として作成に従事した.その結果,NAFLDの定義,線維化群拾い上げのフローチャート,脂肪肝からの肝細胞がん(HCC)のスクリーニングに関する提言,治療のフローチャートを作成した.特に脂肪性肝疾患の定義・分類に関しては,2023年夏に世界的な改変が行われ,非常に注目を浴びている.
NAFLDからの肝発がんは今後約何年で何人以上にのぼると推定されていますか?
NAFLDからの肝発がんは、今後約10年で10万人以上にのぼると推定されています。
JCRRAG_000535
化学
過熱水蒸気は、水蒸気を沸点よりも高い温度にまで過熱したものである。真空(減圧)下では、水の沸点が下がるため、低い温度の過熱水蒸気(例えば10kPaでは沸点が約46℃のため50℃の過熱水蒸気も存在する)を作ることができる。したがって、このような低い温度の過熱水蒸気を低温度過熱水蒸気とよぶことがある。過熱水蒸気乾燥の利点としては、食品原料などでは酸化防止など製品品質面ですぐれること、排気過熱水蒸気の循環使用による省エネルギーが挙げられるが、真空乾燥と流動層乾燥との組み合わせでは、真空ポンプの手前で水蒸気を凝縮除去できるために熱風の場合に比べてポンプへの排気量を大幅に減らすことができることが特に大きな利点といえる。 以上の記述は、立元雄治氏による論文「低温度かつ高速度乾燥プロセスの基礎と応用-減圧過熱水蒸気流動層乾燥-(Basics and Application of Low-Temperature Drying Process with High Drying Rate -Superheated-Steam Fluidized Bed Drying under Reduced Pressure-)」からの抜粋による。
食品原料などでの過熱水蒸気乾燥の製品品質面での利点は何ですか。
酸化防止などが、食品原料などでの過熱水蒸気乾燥の製品品質面での利点です。
JCRRAG_000536
化学
乾燥操作では材料にいかにして熱を加えるかが重要である。伝熱の方式としては熱風などの流体の熱を材料に伝える対流伝熱方式、材料が接している棚や乾燥機の壁などを熱媒体で加熱し、棚や壁などを通して材料を加熱する伝導伝熱方式さらには、赤外線ヒーターなどを使用して乾燥する放射伝熱方式がある。またその他の方式としてマイクロ波加熱などがある。熱に弱い材料については材料温度を低く保ちつつ乾燥する必要があるが、このとき材料温度が乾燥時にどのように変化するかについて知っておく必要がある。もっとも一般的な乾燥方式である熱風乾燥を例に乾燥過程をみる。乾燥初期には材料温度が上昇し、ある一定温度に達する。この期間は材料予熱期間であり、乾燥速度は低い。その後、材料温度および乾燥速度が一定となる。この期間では、材料表面が十分に湿っており、材料表面から流入した熱量(対流伝熱)と水分蒸発に使われた熱量(蒸発潜熱)がつり合っている。この期間の材料温度は熱風乾燥の場合には湿球温度となる。すなわち、この期間では加熱温度よりも材料温度が低く保たれる。乾燥が進行すると、材料温度が表面から順に上昇し、乾燥速度も低くなる。この期間では、材料表面が乾いた状態となり、材料に流入した熱量は材料温度上昇と材料内部の水分蒸発に使われる。最終的には材料温度は熱風温度と等しくなる。以上から、定率乾燥時には加熱温度が高くても材料温度が低く保たれるが、減率乾燥時に温度が上昇するため、材料の熱変性を防ぐためには減率乾燥時に加熱温度を下げなければならない。
伝熱の方式で、赤外線ヒーターなどを使用して乾燥する方式は何という方式ですか。
伝熱の方式で、赤外線ヒーターなどを使用して乾燥する方式は、放射伝熱方式です。
JCRRAG_000537
化学
過熱水蒸気は、水蒸気を沸点よりも高い温度にまで過熱したものである。真空(減圧)下では、水の沸点が下がるため、低い温度の過熱水蒸気(例えば10kPaでは沸点が約46℃のため50℃の過熱水蒸気も存在する)を作ることができる。したがって、このような低い温度の過熱水蒸気を低温度過熱水蒸気とよぶことがある。過熱水蒸気乾燥の利点としては、食品原料などでは酸化防止など製品品質面ですぐれること、排気過熱水蒸気の循環使用による省エネルギーが挙げられるが、真空乾燥と流動層乾燥との組み合わせでは、真空ポンプの手前で水蒸気を凝縮除去できるために熱風の場合に比べてポンプへの排気量を大幅に減らすことができることが特に大きな利点といえる。 以上の記述は、立元雄治氏による論文「低温度かつ高速度乾燥プロセスの基礎と応用-減圧過熱水蒸気流動層乾燥-(Basics and Application of Low-Temperature Drying Process with High Drying Rate -Superheated-Steam Fluidized Bed Drying under Reduced Pressure-)」からの抜粋による。
真空乾燥と流動層乾燥との組み合わせでは、熱風の場合に比べて何が大きな利点ですか。
真空乾燥と流動層乾燥との組み合わせの大きな利点は、熱風の場合に比べてポンプへの排気量を大幅に減らすことができることです。
JCRRAG_000538
化学
乾燥試験結果の一例 試料には径20mmのB2レンガ球(イソライト工業製)を使用し、乾燥温度を150℃とした。乾燥開始直後に急激に試料中心温度が上昇し、水の沸点に達する。その後、一定温度を保ったのちに乾燥が終了すると、雰囲気温度(150℃)にまで試料中心温度が上昇する。雰囲気温度と試料中心温度が一致した点を乾燥終了時間と考える。流動層(流動媒体粒子:径0.12mmガラスビーズ)内に試料を挿入した場合と、容器内の粒子を除去して空塔内で乾燥した場合を比較すると、空塔かつ大気圧では、約80分の乾燥時間を要したものが、減圧(20kPa)とすることで40分程度に短縮される。またこの時の乾燥時の試料中心温度はそれぞれの圧力の水の沸点に等しい。一方で流動層を使用すると、大気圧であっても10分程度と乾燥時間が短く、減圧では、8分程度にまで短縮される。減圧とすることで乾燥時の試料中心温度が下がり乾燥時間も短縮されるが、乾燥時間短縮については流動層の適用が極めて効果的であることがわかる。以上は、レンガ球を用いたモデル実験であるが、このような乾燥方式の対象として食品原料が有力である。そこで、円盤状(高さ10mm、径15mm)に切り出したニンジンを乾燥した例を示す。流動化ガスには熱風および過熱水蒸気を使用しており、装置内圧力を12kPa、温度を60℃とした。流動層乾燥を併用しない場合に比べて流動層を併用した場合には乾燥時間が半分程度にまで短縮される。また、同一乾燥条件(流動層併用)では、熱風の方が過熱水蒸気よりも乾燥時間が短い。ただしその差は小さく、過熱水蒸気とした場合には真空ポンプの負荷を軽減できるという利点がある。結果として、減圧過熱水蒸気流動層乾燥によって低温度でありながら短時間乾燥が可能であることが確認できた。
試料には径何mmのB2レンガ球が使用されましたか。
試料には径20mmのB2レンガ球が使用されました。
JCRRAG_000539
化学
乾燥試験結果の一例 試料には径20mmのB2レンガ球(イソライト工業製)を使用し、乾燥温度を150℃とした。乾燥開始直後に急激に試料中心温度が上昇し、水の沸点に達する。その後、一定温度を保ったのちに乾燥が終了すると、雰囲気温度(150℃)にまで試料中心温度が上昇する。雰囲気温度と試料中心温度が一致した点を乾燥終了時間と考える。流動層(流動媒体粒子:径0.12mmガラスビーズ)内に試料を挿入した場合と、容器内の粒子を除去して空塔内で乾燥した場合を比較すると、空塔かつ大気圧では、約80分の乾燥時間を要したものが、減圧(20kPa)とすることで40分程度に短縮される。またこの時の乾燥時の試料中心温度はそれぞれの圧力の水の沸点に等しい。一方で流動層を使用すると、大気圧であっても10分程度と乾燥時間が短く、減圧では、8分程度にまで短縮される。減圧とすることで乾燥時の試料中心温度が下がり乾燥時間も短縮されるが、乾燥時間短縮については流動層の適用が極めて効果的であることがわかる。以上は、レンガ球を用いたモデル実験であるが、このような乾燥方式の対象として食品原料が有力である。そこで、円盤状(高さ10mm、径15mm)に切り出したニンジンを乾燥した例を示す。流動化ガスには熱風および過熱水蒸気を使用しており、装置内圧力を12kPa、温度を60℃とした。流動層乾燥を併用しない場合に比べて流動層を併用した場合には乾燥時間が半分程度にまで短縮される。また、同一乾燥条件(流動層併用)では、熱風の方が過熱水蒸気よりも乾燥時間が短い。ただしその差は小さく、過熱水蒸気とした場合には真空ポンプの負荷を軽減できるという利点がある。結果として、減圧過熱水蒸気流動層乾燥によって低温度でありながら短時間乾燥が可能であることが確認できた。
乾燥試験では、乾燥温度は何℃としましたか。
乾燥試験では、乾燥温度は150℃としました。
JCRRAG_000540
化学
以下は、立元雄治氏の論文「低温度かつ高速度乾燥プロセスの基礎と応用-減圧過熱水蒸気流動層乾燥-(Basics and Application of Low-Temperature Drying Process with High Drying Rate -Superheated-Steam Fluidized Bed Drying under Reduced Pressure-)より一部を抜粋したものです。 乾燥操作は、水や有機溶媒などの液体(本稿では液体として水を考える)で湿った材料に熱を加えて、液体を蒸発除去する操作である。乾燥するときの温度が高いほど短時間での乾燥が可能であるが、材料の特性によって乾燥操作条件は制限され、食品原料や医薬原料などの熱に弱い材料は、材料が熱変性しない比較的低い温度(本稿では60°C以下の温度での乾燥を低温度乾燥としている)で乾燥しなければならない。単に低温度で乾燥すると乾燥時間が長くなり、エネルギー消費量の増加や空気にさらされることによる酸化などの別の問題が生じる。そこで、低温度でありながらできるだけ高速度(短時間)で乾燥することが望まれる。本稿では、低温度でも高速度で乾燥する方法について解説する。
乾燥操作は、液体をどのようにする操作ですか。
乾燥操作は、液体を蒸発除去する操作です。
JCRRAG_000541
化学
以下は、立元雄治氏の論文「低温度かつ高速度乾燥プロセスの基礎と応用-減圧過熱水蒸気流動層乾燥-(Basics and Application of Low-Temperature Drying Process with High Drying Rate -Superheated-Steam Fluidized Bed Drying under Reduced Pressure-)より一部を抜粋したものです。 乾燥操作は、水や有機溶媒などの液体(本稿では液体として水を考える)で湿った材料に熱を加えて、液体を蒸発除去する操作である。乾燥するときの温度が高いほど短時間での乾燥が可能であるが、材料の特性によって乾燥操作条件は制限され、食品原料や医薬原料などの熱に弱い材料は、材料が熱変性しない比較的低い温度(本稿では60°C以下の温度での乾燥を低温度乾燥としている)で乾燥しなければならない。単に低温度で乾燥すると乾燥時間が長くなり、エネルギー消費量の増加や空気にさらされることによる酸化などの別の問題が生じる。そこで、低温度でありながらできるだけ高速度(短時間)で乾燥することが望まれる。本稿では、低温度でも高速度で乾燥する方法について解説する。
本稿では、何℃以下の温度での乾燥を低温度乾燥としていますか。
本稿では、60℃以下の温度での乾燥を低温度乾燥としています。
JCRRAG_000542
化学
乾燥操作では材料にいかにして熱を加えるかが重要である。伝熱の方式としては熱風などの流体の熱を材料に伝える対流伝熱方式、材料が接している棚や乾燥機の壁などを熱媒体で加熱し、棚や壁などを通して材料を加熱する伝導伝熱方式さらには、赤外線ヒーターなどを使用して乾燥する放射伝熱方式がある。またその他の方式としてマイクロ波加熱などがある。熱に弱い材料については材料温度を低く保ちつつ乾燥する必要があるが、このとき材料温度が乾燥時にどのように変化するかについて知っておく必要がある。もっとも一般的な乾燥方式である熱風乾燥を例に乾燥過程をみる。乾燥初期には材料温度が上昇し、ある一定温度に達する。この期間は材料予熱期間であり、乾燥速度は低い。その後、材料温度および乾燥速度が一定となる。この期間では、材料表面が十分に湿っており、材料表面から流入した熱量(対流伝熱)と水分蒸発に使われた熱量(蒸発潜熱)がつり合っている。この期間の材料温度は熱風乾燥の場合には湿球温度となる。すなわち、この期間では加熱温度よりも材料温度が低く保たれる。乾燥が進行すると、材料温度が表面から順に上昇し、乾燥速度も低くなる。この期間では、材料表面が乾いた状態となり、材料に流入した熱量は材料温度上昇と材料内部の水分蒸発に使われる。最終的には材料温度は熱風温度と等しくなる。以上から、定率乾燥時には加熱温度が高くても材料温度が低く保たれるが、減率乾燥時に温度が上昇するため、材料の熱変性を防ぐためには減率乾燥時に加熱温度を下げなければならない。
伝熱の方式で、棚や壁などを通して材料を加熱する方式は何ですか。
伝熱の方式で、棚や壁などを通して材料を加熱する方式は、伝導伝熱方式です。
JCRRAG_000543
化学
乾燥操作では材料にいかにして熱を加えるかが重要である。伝熱の方式としては熱風などの流体の熱を材料に伝える対流伝熱方式、材料が接している棚や乾燥機の壁などを熱媒体で加熱し、棚や壁などを通して材料を加熱する伝導伝熱方式さらには、赤外線ヒーターなどを使用して乾燥する放射伝熱方式がある。またその他の方式としてマイクロ波加熱などがある。熱に弱い材料については材料温度を低く保ちつつ乾燥する必要があるが、このとき材料温度が乾燥時にどのように変化するかについて知っておく必要がある。もっとも一般的な乾燥方式である熱風乾燥を例に乾燥過程をみる。乾燥初期には材料温度が上昇し、ある一定温度に達する。この期間は材料予熱期間であり、乾燥速度は低い。その後、材料温度および乾燥速度が一定となる。この期間では、材料表面が十分に湿っており、材料表面から流入した熱量(対流伝熱)と水分蒸発に使われた熱量(蒸発潜熱)がつり合っている。この期間の材料温度は熱風乾燥の場合には湿球温度となる。すなわち、この期間では加熱温度よりも材料温度が低く保たれる。乾燥が進行すると、材料温度が表面から順に上昇し、乾燥速度も低くなる。この期間では、材料表面が乾いた状態となり、材料に流入した熱量は材料温度上昇と材料内部の水分蒸発に使われる。最終的には材料温度は熱風温度と等しくなる。以上から、定率乾燥時には加熱温度が高くても材料温度が低く保たれるが、減率乾燥時に温度が上昇するため、材料の熱変性を防ぐためには減率乾燥時に加熱温度を下げなければならない。
熱風乾燥時の材料温度は、最終的にどのような温度になりますか。
熱風乾燥時の材料温度は、最終的に熱風温度と等しくなります。
JCRRAG_000544
化学
乾燥操作では材料にいかにして熱を加えるかが重要である。伝熱の方式としては熱風などの流体の熱を材料に伝える対流伝熱方式、材料が接している棚や乾燥機の壁などを熱媒体で加熱し、棚や壁などを通して材料を加熱する伝導伝熱方式さらには、赤外線ヒーターなどを使用して乾燥する放射伝熱方式がある。またその他の方式としてマイクロ波加熱などがある。熱に弱い材料については材料温度を低く保ちつつ乾燥する必要があるが、このとき材料温度が乾燥時にどのように変化するかについて知っておく必要がある。もっとも一般的な乾燥方式である熱風乾燥を例に乾燥過程をみる。乾燥初期には材料温度が上昇し、ある一定温度に達する。この期間は材料予熱期間であり、乾燥速度は低い。その後、材料温度および乾燥速度が一定となる。この期間では、材料表面が十分に湿っており、材料表面から流入した熱量(対流伝熱)と水分蒸発に使われた熱量(蒸発潜熱)がつり合っている。この期間の材料温度は熱風乾燥の場合には湿球温度となる。すなわち、この期間では加熱温度よりも材料温度が低く保たれる。乾燥が進行すると、材料温度が表面から順に上昇し、乾燥速度も低くなる。この期間では、材料表面が乾いた状態となり、材料に流入した熱量は材料温度上昇と材料内部の水分蒸発に使われる。最終的には材料温度は熱風温度と等しくなる。以上から、定率乾燥時には加熱温度が高くても材料温度が低く保たれるが、減率乾燥時に温度が上昇するため、材料の熱変性を防ぐためには減率乾燥時に加熱温度を下げなければならない。
熱に弱い材料は、どのような材料温度で乾燥する必要がありますか。
熱に弱い材料は、材料温度を低く保ちつつ乾燥する必要があります。
JCRRAG_000545
化学
乾燥操作では材料にいかにして熱を加えるかが重要である。伝熱の方式としては熱風などの流体の熱を材料に伝える対流伝熱方式、材料が接している棚や乾燥機の壁などを熱媒体で加熱し、棚や壁などを通して材料を加熱する伝導伝熱方式さらには、赤外線ヒーターなどを使用して乾燥する放射伝熱方式がある。またその他の方式としてマイクロ波加熱などがある。熱に弱い材料については材料温度を低く保ちつつ乾燥する必要があるが、このとき材料温度が乾燥時にどのように変化するかについて知っておく必要がある。もっとも一般的な乾燥方式である熱風乾燥を例に乾燥過程をみる。乾燥初期には材料温度が上昇し、ある一定温度に達する。この期間は材料予熱期間であり、乾燥速度は低い。その後、材料温度および乾燥速度が一定となる。この期間では、材料表面が十分に湿っており、材料表面から流入した熱量(対流伝熱)と水分蒸発に使われた熱量(蒸発潜熱)がつり合っている。この期間の材料温度は熱風乾燥の場合には湿球温度となる。すなわち、この期間では加熱温度よりも材料温度が低く保たれる。乾燥が進行すると、材料温度が表面から順に上昇し、乾燥速度も低くなる。この期間では、材料表面が乾いた状態となり、材料に流入した熱量は材料温度上昇と材料内部の水分蒸発に使われる。最終的には材料温度は熱風温度と等しくなる。以上から、定率乾燥時には加熱温度が高くても材料温度が低く保たれるが、減率乾燥時に温度が上昇するため、材料の熱変性を防ぐためには減率乾燥時に加熱温度を下げなければならない。
伝熱の方式で、流体の熱を材料に伝える方式は何ですか。
伝熱の方式で、流体の熱を材料に伝える方式は対流伝熱方式です。
JCRRAG_000546
化学
低温度熱風乾燥 低温度での乾燥方式として単純に低温度熱風を当てて乾燥する方法が考えられる。この方式は装置構造が単純であり、また材料の温度は熱風の温度以下に保たれるため、熱風温度を材料の熱変性が起こらない温度以下に設定すれば熱変性を確実に防ぐことができる。しかしながら低温度熱風を使用する際には、湿度の影響に注意する必要がある。関係湿度が増加するにつれて加熱温度によらず乾燥速度は低くなるが、水の沸点を超える温度では、ある関係湿度から乾燥速度が一定となる。このとき材料温度は水の沸点100℃に達しており、熱風温度120℃と水の沸点100℃の温度差によって熱が材料に流入し、その熱量に応じて水分が蒸発している。一方で温度40℃および80℃では、関係湿度の増加にともない、最終的に乾燥速度が0となる。このことからわかるように低温度熱風を使用する際には湿度を低く保たなければならず、外気を加熱して使用する場合あるいは乾燥機の排熱風を循環する場合、途中に除湿装置を設置しなければならない。また、乾燥速度自体は非常に低い。 噴霧乾燥 噴霧乾燥機は溶液あるいは微粒子懸濁液を微小液滴にして噴霧し、熱風と接触させて水分を除去し、乾燥微粒子を得る方法である。材料表面が十分に湿っているために、ほぼ定率乾燥にて乾燥が進む。このため熱風温度が比較的高くても材料温度を低く保つことができ、低温度乾燥操作となる。また、微小液滴とすることで蒸発面積が非常に大きくなるため短時間での乾燥が可能である。噴霧乾燥は、液状あるいは懸濁物状材料に適用される。
噴霧乾燥機は、溶液を何にして噴霧しますか。
噴霧乾燥機は、溶液を微小液滴にして噴霧します。
JCRRAG_000547
化学
真空乾燥 水の沸点は圧力が低くなるにつれて低くなる。ここで、湿った材料の温度は水分を含んでいれば沸点以上に上がらないので、沸点が下がれば低温度での乾燥となる。また、真空条件下では乾燥速度も高くなる。真空乾燥では材料の加熱に工夫が必要であり、よく使用される方法は伝導伝熱方式である。伝導伝熱方式では材料と熱源(加熱面)とを良好に接触させることが重要であり、フレーク状あるいは粉粒状の材料では撹拌によって材料と加熱面(乾燥室壁面)との接触を良好に保つことができる。塊状の材料では、伝導伝熱方式での加熱が困難であり、乾燥時間も長くなる。近年では熱源としてマイクロ波加熱を利用する方法も実用化されており、伝導伝熱で均一に加熱することが困難な材料に対して有効である。 真空凍結乾燥 凍結した材料を真空条件下で加熱し、氷の状態から水蒸気へと状態変化(昇華)させて取り除く操作が真空凍結乾燥である。昇華した水蒸気を直ちに冷却装置にて氷に戻すことで乾燥機内を低圧に保つ。氷の部分がそのまま空隙として残るため、材料の収縮が小さく多孔質な製品が得られる。また揮発性物質(アロマ成分など)が材料中に残りやすいという利点がある。乾燥速度は非常に低く、また氷から水蒸気、再び氷という形で状態変化し、そのたびに熱量を消費するため、使用エネルギー量が多い。製品品質面での利点を追求した乾燥方式である。
真空乾燥で、伝導伝熱で均一に加熱することが困難な材料に対して、近年利用されている熱源は何ですか。
真空乾燥で、伝導伝熱で均一に加熱することが困難な材料に対して、近年利用されている熱源はマイクロ波加熱です。
JCRRAG_000548
化学
真空乾燥 水の沸点は圧力が低くなるにつれて低くなる。ここで、湿った材料の温度は水分を含んでいれば沸点以上に上がらないので、沸点が下がれば低温度での乾燥となる。また、真空条件下では乾燥速度も高くなる。真空乾燥では材料の加熱に工夫が必要であり、よく使用される方法は伝導伝熱方式である。伝導伝熱方式では材料と熱源(加熱面)とを良好に接触させることが重要であり、フレーク状あるいは粉粒状の材料では撹拌によって材料と加熱面(乾燥室壁面)との接触を良好に保つことができる。塊状の材料では、伝導伝熱方式での加熱が困難であり、乾燥時間も長くなる。近年では熱源としてマイクロ波加熱を利用する方法も実用化されており、伝導伝熱で均一に加熱することが困難な材料に対して有効である。 真空凍結乾燥 凍結した材料を真空条件下で加熱し、氷の状態から水蒸気へと状態変化(昇華)させて取り除く操作が真空凍結乾燥である。昇華した水蒸気を直ちに冷却装置にて氷に戻すことで乾燥機内を低圧に保つ。氷の部分がそのまま空隙として残るため、材料の収縮が小さく多孔質な製品が得られる。また揮発性物質(アロマ成分など)が材料中に残りやすいという利点がある。乾燥速度は非常に低く、また氷から水蒸気、再び氷という形で状態変化し、そのたびに熱量を消費するため、使用エネルギー量が多い。製品品質面での利点を追求した乾燥方式である。
真空乾燥で、材料の加熱によく使用される方法は何方式ですか。
真空乾燥で、材料の加熱によく使用される方法は伝導伝熱方式です。
JCRRAG_000549
化学
乾燥試験結果の一例 試料には径20mmのB2レンガ球(イソライト工業製)を使用し、乾燥温度を150℃とした。乾燥開始直後に急激に試料中心温度が上昇し、水の沸点に達する。その後、一定温度を保ったのちに乾燥が終了すると、雰囲気温度(150℃)にまで試料中心温度が上昇する。雰囲気温度と試料中心温度が一致した点を乾燥終了時間と考える。流動層(流動媒体粒子:径0.12mmガラスビーズ)内に試料を挿入した場合と、容器内の粒子を除去して空塔内で乾燥した場合を比較すると、空塔かつ大気圧では、約80分の乾燥時間を要したものが、減圧(20kPa)とすることで40分程度に短縮される。またこの時の乾燥時の試料中心温度はそれぞれの圧力の水の沸点に等しい。一方で流動層を使用すると、大気圧であっても10分程度と乾燥時間が短く、減圧では、8分程度にまで短縮される。減圧とすることで乾燥時の試料中心温度が下がり乾燥時間も短縮されるが、乾燥時間短縮については流動層の適用が極めて効果的であることがわかる。以上は、レンガ球を用いたモデル実験であるが、このような乾燥方式の対象として食品原料が有力である。そこで、円盤状(高さ10mm、径15mm)に切り出したニンジンを乾燥した例を示す。流動化ガスには熱風および過熱水蒸気を使用しており、装置内圧力を12kPa、温度を60℃とした。流動層乾燥を併用しない場合に比べて流動層を併用した場合には乾燥時間が半分程度にまで短縮される。また、同一乾燥条件(流動層併用)では、熱風の方が過熱水蒸気よりも乾燥時間が短い。ただしその差は小さく、過熱水蒸気とした場合には真空ポンプの負荷を軽減できるという利点がある。結果として、減圧過熱水蒸気流動層乾燥によって低温度でありながら短時間乾燥が可能であることが確認できた。
乾燥終了時間は、何が一致した点だと考えられていますか。
乾燥終了時間は、雰囲気温度と試料中心温度が一致した点だと考えられています。
JCRRAG_000550
化学
真空乾燥 水の沸点は圧力が低くなるにつれて低くなる。ここで、湿った材料の温度は水分を含んでいれば沸点以上に上がらないので、沸点が下がれば低温度での乾燥となる。また、真空条件下では乾燥速度も高くなる。真空乾燥では材料の加熱に工夫が必要であり、よく使用される方法は伝導伝熱方式である。伝導伝熱方式では材料と熱源(加熱面)とを良好に接触させることが重要であり、フレーク状あるいは粉粒状の材料では撹拌によって材料と加熱面(乾燥室壁面)との接触を良好に保つことができる。塊状の材料では、伝導伝熱方式での加熱が困難であり、乾燥時間も長くなる。近年では熱源としてマイクロ波加熱を利用する方法も実用化されており、伝導伝熱で均一に加熱することが困難な材料に対して有効である。 真空凍結乾燥 凍結した材料を真空条件下で加熱し、氷の状態から水蒸気へと状態変化(昇華)させて取り除く操作が真空凍結乾燥である。昇華した水蒸気を直ちに冷却装置にて氷に戻すことで乾燥機内を低圧に保つ。氷の部分がそのまま空隙として残るため、材料の収縮が小さく多孔質な製品が得られる。また揮発性物質(アロマ成分など)が材料中に残りやすいという利点がある。乾燥速度は非常に低く、また氷から水蒸気、再び氷という形で状態変化し、そのたびに熱量を消費するため、使用エネルギー量が多い。製品品質面での利点を追求した乾燥方式である。
真空凍結乾燥では、氷の状態を何に状態変化させますか。
真空凍結乾燥では、氷の状態を水蒸気に状態変化させます。
JCRRAG_000551
化学
真空乾燥 水の沸点は圧力が低くなるにつれて低くなる。ここで、湿った材料の温度は水分を含んでいれば沸点以上に上がらないので、沸点が下がれば低温度での乾燥となる。また、真空条件下では乾燥速度も高くなる。真空乾燥では材料の加熱に工夫が必要であり、よく使用される方法は伝導伝熱方式である。伝導伝熱方式では材料と熱源(加熱面)とを良好に接触させることが重要であり、フレーク状あるいは粉粒状の材料では撹拌によって材料と加熱面(乾燥室壁面)との接触を良好に保つことができる。塊状の材料では、伝導伝熱方式での加熱が困難であり、乾燥時間も長くなる。近年では熱源としてマイクロ波加熱を利用する方法も実用化されており、伝導伝熱で均一に加熱することが困難な材料に対して有効である。 真空凍結乾燥 凍結した材料を真空条件下で加熱し、氷の状態から水蒸気へと状態変化(昇華)させて取り除く操作が真空凍結乾燥である。昇華した水蒸気を直ちに冷却装置にて氷に戻すことで乾燥機内を低圧に保つ。氷の部分がそのまま空隙として残るため、材料の収縮が小さく多孔質な製品が得られる。また揮発性物質(アロマ成分など)が材料中に残りやすいという利点がある。乾燥速度は非常に低く、また氷から水蒸気、再び氷という形で状態変化し、そのたびに熱量を消費するため、使用エネルギー量が多い。製品品質面での利点を追求した乾燥方式である。
水の沸点は、圧力が低くなるにつれてどうなりますか。
水の沸点は圧力が低くなるにつれて低くなります。
JCRRAG_000552
化学
流動層乾燥は、粉粒状の材料の層を形成させてその下部から流体(空気など)を流して材料を浮遊運動(流動化)させる装置である。一般的な流動層乾燥では、乾燥する材料は流動化可能な比較的低含水率の粉粒状材料である。流動層乾燥のもっとも重要な利点は、乾燥速度が極めて高いことである。しかしながら、適用できる材料の形状が限られる。そこで、さまざまな形状の材料にも適用ができるように流動化が容易な比較的小さな粒子(流動化粒子)の流動層を形成させ、そこに湿り材料を投入して乾燥する方法としている。この方法により、流動層乾燥の適用範囲が広がり、比較的大きな材料の流動層乾燥が可能となる。流動層乾燥では、流動層内の粒子が良好に流動化することが重要である。そこで、真空条件下での最小流動化速度を調べた。減圧下では、気体の状態が膨張することにより、線速度(体積速度)は増加するが、質量速度で考えると逆に低くなっており、10kPaで流動化に必要なガス量は、大気圧に比べて8分の1程度である。
減圧下では、気体の状態はどうなりますか。
減圧下では、気体の状態は膨張します。
JCRRAG_000553
化学
流動層乾燥は、粉粒状の材料の層を形成させてその下部から流体(空気など)を流して材料を浮遊運動(流動化)させる装置である。一般的な流動層乾燥では、乾燥する材料は流動化可能な比較的低含水率の粉粒状材料である。流動層乾燥のもっとも重要な利点は、乾燥速度が極めて高いことである。しかしながら、適用できる材料の形状が限られる。そこで、さまざまな形状の材料にも適用ができるように流動化が容易な比較的小さな粒子(流動化粒子)の流動層を形成させ、そこに湿り材料を投入して乾燥する方法としている。この方法により、流動層乾燥の適用範囲が広がり、比較的大きな材料の流動層乾燥が可能となる。流動層乾燥では、流動層内の粒子が良好に流動化することが重要である。そこで、真空条件下での最小流動化速度を調べた。減圧下では、気体の状態が膨張することにより、線速度(体積速度)は増加するが、質量速度で考えると逆に低くなっており、10kPaで流動化に必要なガス量は、大気圧に比べて8分の1程度である。
10kPaで流動化に必要なガス量は、大気圧に比べて何分の1程度ですか。
10kPaで流動化に必要なガス量は、大気圧に比べて8分の1程度です。
JCRRAG_000554
化学
流動層乾燥は、粉粒状の材料の層を形成させてその下部から流体(空気など)を流して材料を浮遊運動(流動化)させる装置である。一般的な流動層乾燥では、乾燥する材料は流動化可能な比較的低含水率の粉粒状材料である。流動層乾燥のもっとも重要な利点は、乾燥速度が極めて高いことである。しかしながら、適用できる材料の形状が限られる。そこで、さまざまな形状の材料にも適用ができるように流動化が容易な比較的小さな粒子(流動化粒子)の流動層を形成させ、そこに湿り材料を投入して乾燥する方法としている。この方法により、流動層乾燥の適用範囲が広がり、比較的大きな材料の流動層乾燥が可能となる。流動層乾燥では、流動層内の粒子が良好に流動化することが重要である。そこで、真空条件下での最小流動化速度を調べた。減圧下では、気体の状態が膨張することにより、線速度(体積速度)は増加するが、質量速度で考えると逆に低くなっており、10kPaで流動化に必要なガス量は、大気圧に比べて8分の1程度である。
流動層乾燥は、材料にどのような運動をさせる装置ですか。
流動層乾燥は、材料を浮遊運動させる装置です。
JCRRAG_000555
化学
流動層乾燥は、粉粒状の材料の層を形成させてその下部から流体(空気など)を流して材料を浮遊運動(流動化)させる装置である。一般的な流動層乾燥では、乾燥する材料は流動化可能な比較的低含水率の粉粒状材料である。流動層乾燥のもっとも重要な利点は、乾燥速度が極めて高いことである。しかしながら、適用できる材料の形状が限られる。そこで、さまざまな形状の材料にも適用ができるように流動化が容易な比較的小さな粒子(流動化粒子)の流動層を形成させ、そこに湿り材料を投入して乾燥する方法としている。この方法により、流動層乾燥の適用範囲が広がり、比較的大きな材料の流動層乾燥が可能となる。流動層乾燥では、流動層内の粒子が良好に流動化することが重要である。そこで、真空条件下での最小流動化速度を調べた。減圧下では、気体の状態が膨張することにより、線速度(体積速度)は増加するが、質量速度で考えると逆に低くなっており、10kPaで流動化に必要なガス量は、大気圧に比べて8分の1程度である。
流動層乾燥のもっとも重要な利点は何ですか。
流動層乾燥のもっとも重要な利点は、乾燥速度が極めて高いことです。
JCRRAG_000556
化学
過熱水蒸気は、水蒸気を沸点よりも高い温度にまで過熱したものである。真空(減圧)下では、水の沸点が下がるため、低い温度の過熱水蒸気(例えば10kPaでは沸点が約46℃のため50℃の過熱水蒸気も存在する)を作ることができる。したがって、このような低い温度の過熱水蒸気を低温度過熱水蒸気とよぶことがある。過熱水蒸気乾燥の利点としては、食品原料などでは酸化防止など製品品質面ですぐれること、排気過熱水蒸気の循環使用による省エネルギーが挙げられるが、真空乾燥と流動層乾燥との組み合わせでは、真空ポンプの手前で水蒸気を凝縮除去できるために熱風の場合に比べてポンプへの排気量を大幅に減らすことができることが特に大きな利点といえる。 以上の記述は、立元雄治氏による論文「低温度かつ高速度乾燥プロセスの基礎と応用-減圧過熱水蒸気流動層乾燥-(Basics and Application of Low-Temperature Drying Process with High Drying Rate -Superheated-Steam Fluidized Bed Drying under Reduced Pressure-)」からの抜粋による。
低い温度の過熱水蒸気は、何とよぶことがありますか。
低い温度の過熱水蒸気は、低温度過熱水蒸気とよぶことがあります。
JCRRAG_000557
化学
以下は、立元雄治氏の論文「低温度かつ高速度乾燥プロセスの基礎と応用-減圧過熱水蒸気流動層乾燥-(Basics and Application of Low-Temperature Drying Process with High Drying Rate -Superheated-Steam Fluidized Bed Drying under Reduced Pressure-)より一部を抜粋したものです。 乾燥操作は、水や有機溶媒などの液体(本稿では液体として水を考える)で湿った材料に熱を加えて、液体を蒸発除去する操作である。乾燥するときの温度が高いほど短時間での乾燥が可能であるが、材料の特性によって乾燥操作条件は制限され、食品原料や医薬原料などの熱に弱い材料は、材料が熱変性しない比較的低い温度(本稿では60°C以下の温度での乾燥を低温度乾燥としている)で乾燥しなければならない。単に低温度で乾燥すると乾燥時間が長くなり、エネルギー消費量の増加や空気にさらされることによる酸化などの別の問題が生じる。そこで、低温度でありながらできるだけ高速度(短時間)で乾燥することが望まれる。本稿では、低温度でも高速度で乾燥する方法について解説する。
食品原料や医薬原料などは熱に強い材料ですか。
いいえ、食品原料や医薬原料などは熱に弱い材料です。
JCRRAG_000558
化学
過熱水蒸気は、水蒸気を沸点よりも高い温度にまで過熱したものである。真空(減圧)下では、水の沸点が下がるため、低い温度の過熱水蒸気(例えば10kPaでは沸点が約46℃のため50℃の過熱水蒸気も存在する)を作ることができる。したがって、このような低い温度の過熱水蒸気を低温度過熱水蒸気とよぶことがある。過熱水蒸気乾燥の利点としては、食品原料などでは酸化防止など製品品質面ですぐれること、排気過熱水蒸気の循環使用による省エネルギーが挙げられるが、真空乾燥と流動層乾燥との組み合わせでは、真空ポンプの手前で水蒸気を凝縮除去できるために熱風の場合に比べてポンプへの排気量を大幅に減らすことができることが特に大きな利点といえる。 以上の記述は、立元雄治氏による論文「低温度かつ高速度乾燥プロセスの基礎と応用-減圧過熱水蒸気流動層乾燥-(Basics and Application of Low-Temperature Drying Process with High Drying Rate -Superheated-Steam Fluidized Bed Drying under Reduced Pressure-)」からの抜粋による。
水蒸気を沸点よりも高い温度にまで過熱したものは何ですか。
水蒸気を沸点よりも高い温度にまで過熱したものは、過熱水蒸気です。
JCRRAG_000559
化学
低温度熱風乾燥 低温度での乾燥方式として単純に低温度熱風を当てて乾燥する方法が考えられる。この方式は装置構造が単純であり、また材料の温度は熱風の温度以下に保たれるため、熱風温度を材料の熱変性が起こらない温度以下に設定すれば熱変性を確実に防ぐことができる。しかしながら低温度熱風を使用する際には、湿度の影響に注意する必要がある。関係湿度が増加するにつれて加熱温度によらず乾燥速度は低くなるが、水の沸点を超える温度では、ある関係湿度から乾燥速度が一定となる。このとき材料温度は水の沸点100℃に達しており、熱風温度120℃と水の沸点100℃の温度差によって熱が材料に流入し、その熱量に応じて水分が蒸発している。一方で温度40℃および80℃では、関係湿度の増加にともない、最終的に乾燥速度が0となる。このことからわかるように低温度熱風を使用する際には湿度を低く保たなければならず、外気を加熱して使用する場合あるいは乾燥機の排熱風を循環する場合、途中に除湿装置を設置しなければならない。また、乾燥速度自体は非常に低い。 噴霧乾燥 噴霧乾燥機は溶液あるいは微粒子懸濁液を微小液滴にして噴霧し、熱風と接触させて水分を除去し、乾燥微粒子を得る方法である。材料表面が十分に湿っているために、ほぼ定率乾燥にて乾燥が進む。このため熱風温度が比較的高くても材料温度を低く保つことができ、低温度乾燥操作となる。また、微小液滴とすることで蒸発面積が非常に大きくなるため短時間での乾燥が可能である。噴霧乾燥は、液状あるいは懸濁物状材料に適用される。
水の沸点は何℃ですか。
水の沸点は100℃です。
JCRRAG_000560
化学
流動層乾燥は、粉粒状の材料の層を形成させてその下部から流体(空気など)を流して材料を浮遊運動(流動化)させる装置である。一般的な流動層乾燥では、乾燥する材料は流動化可能な比較的低含水率の粉粒状材料である。流動層乾燥のもっとも重要な利点は、乾燥速度が極めて高いことである。しかしながら、適用できる材料の形状が限られる。そこで、さまざまな形状の材料にも適用ができるように流動化が容易な比較的小さな粒子(流動化粒子)の流動層を形成させ、そこに湿り材料を投入して乾燥する方法としている。この方法により、流動層乾燥の適用範囲が広がり、比較的大きな材料の流動層乾燥が可能となる。流動層乾燥では、流動層内の粒子が良好に流動化することが重要である。そこで、真空条件下での最小流動化速度を調べた。減圧下では、気体の状態が膨張することにより、線速度(体積速度)は増加するが、質量速度で考えると逆に低くなっており、10kPaで流動化に必要なガス量は、大気圧に比べて8分の1程度である。
流動層乾燥は、何状の材料の層を形成させますか。
流動層乾燥は、粉粒状の材料の層を形成させます。
JCRRAG_000561
化学
乾燥試験結果の一例 試料には径20mmのB2レンガ球(イソライト工業製)を使用し、乾燥温度を150℃とした。乾燥開始直後に急激に試料中心温度が上昇し、水の沸点に達する。その後、一定温度を保ったのちに乾燥が終了すると、雰囲気温度(150℃)にまで試料中心温度が上昇する。雰囲気温度と試料中心温度が一致した点を乾燥終了時間と考える。流動層(流動媒体粒子:径0.12mmガラスビーズ)内に試料を挿入した場合と、容器内の粒子を除去して空塔内で乾燥した場合を比較すると、空塔かつ大気圧では、約80分の乾燥時間を要したものが、減圧(20kPa)とすることで40分程度に短縮される。またこの時の乾燥時の試料中心温度はそれぞれの圧力の水の沸点に等しい。一方で流動層を使用すると、大気圧であっても10分程度と乾燥時間が短く、減圧では、8分程度にまで短縮される。減圧とすることで乾燥時の試料中心温度が下がり乾燥時間も短縮されるが、乾燥時間短縮については流動層の適用が極めて効果的であることがわかる。以上は、レンガ球を用いたモデル実験であるが、このような乾燥方式の対象として食品原料が有力である。そこで、円盤状(高さ10mm、径15mm)に切り出したニンジンを乾燥した例を示す。流動化ガスには熱風および過熱水蒸気を使用しており、装置内圧力を12kPa、温度を60℃とした。流動層乾燥を併用しない場合に比べて流動層を併用した場合には乾燥時間が半分程度にまで短縮される。また、同一乾燥条件(流動層併用)では、熱風の方が過熱水蒸気よりも乾燥時間が短い。ただしその差は小さく、過熱水蒸気とした場合には真空ポンプの負荷を軽減できるという利点がある。結果として、減圧過熱水蒸気流動層乾燥によって低温度でありながら短時間乾燥が可能であることが確認できた。
乾燥時間短縮については、何の適用が極めて効果的ですか。
乾燥時間短縮については、流動層の適用が極めて効果的です。
JCRRAG_000562
化学
低温度熱風乾燥 低温度での乾燥方式として単純に低温度熱風を当てて乾燥する方法が考えられる。この方式は装置構造が単純であり、また材料の温度は熱風の温度以下に保たれるため、熱風温度を材料の熱変性が起こらない温度以下に設定すれば熱変性を確実に防ぐことができる。しかしながら低温度熱風を使用する際には、湿度の影響に注意する必要がある。関係湿度が増加するにつれて加熱温度によらず乾燥速度は低くなるが、水の沸点を超える温度では、ある関係湿度から乾燥速度が一定となる。このとき材料温度は水の沸点100℃に達しており、熱風温度120℃と水の沸点100℃の温度差によって熱が材料に流入し、その熱量に応じて水分が蒸発している。一方で温度40℃および80℃では、関係湿度の増加にともない、最終的に乾燥速度が0となる。このことからわかるように低温度熱風を使用する際には湿度を低く保たなければならず、外気を加熱して使用する場合あるいは乾燥機の排熱風を循環する場合、途中に除湿装置を設置しなければならない。また、乾燥速度自体は非常に低い。 噴霧乾燥 噴霧乾燥機は溶液あるいは微粒子懸濁液を微小液滴にして噴霧し、熱風と接触させて水分を除去し、乾燥微粒子を得る方法である。材料表面が十分に湿っているために、ほぼ定率乾燥にて乾燥が進む。このため熱風温度が比較的高くても材料温度を低く保つことができ、低温度乾燥操作となる。また、微小液滴とすることで蒸発面積が非常に大きくなるため短時間での乾燥が可能である。噴霧乾燥は、液状あるいは懸濁物状材料に適用される。
噴霧乾燥は、何状の材料に適用されますか。
噴霧乾燥は、液状と懸濁物状材料に適用されます。
JCRRAG_000563
化学
低温度熱風乾燥 低温度での乾燥方式として単純に低温度熱風を当てて乾燥する方法が考えられる。この方式は装置構造が単純であり、また材料の温度は熱風の温度以下に保たれるため、熱風温度を材料の熱変性が起こらない温度以下に設定すれば熱変性を確実に防ぐことができる。しかしながら低温度熱風を使用する際には、湿度の影響に注意する必要がある。関係湿度が増加するにつれて加熱温度によらず乾燥速度は低くなるが、水の沸点を超える温度では、ある関係湿度から乾燥速度が一定となる。このとき材料温度は水の沸点100℃に達しており、熱風温度120℃と水の沸点100℃の温度差によって熱が材料に流入し、その熱量に応じて水分が蒸発している。一方で温度40℃および80℃では、関係湿度の増加にともない、最終的に乾燥速度が0となる。このことからわかるように低温度熱風を使用する際には湿度を低く保たなければならず、外気を加熱して使用する場合あるいは乾燥機の排熱風を循環する場合、途中に除湿装置を設置しなければならない。また、乾燥速度自体は非常に低い。 噴霧乾燥 噴霧乾燥機は溶液あるいは微粒子懸濁液を微小液滴にして噴霧し、熱風と接触させて水分を除去し、乾燥微粒子を得る方法である。材料表面が十分に湿っているために、ほぼ定率乾燥にて乾燥が進む。このため熱風温度が比較的高くても材料温度を低く保つことができ、低温度乾燥操作となる。また、微小液滴とすることで蒸発面積が非常に大きくなるため短時間での乾燥が可能である。噴霧乾燥は、液状あるいは懸濁物状材料に適用される。
乾燥機の排熱風を循環する低温度乾燥方式で、途中に設置が必要な装置は何ですか。
乾燥機の排熱風を循環する低温度乾燥方式で、途中に設置が必要な装置は除湿装置です。
JCRRAG_000564
化学
【ナノサイズ粒子を用いた電気化学的機能を有する多孔体の作製と応用】 ・キャパシタ電極への応用  三次元規則配列多孔体を電極活物質で作製することもできる。この場合には電子伝導性のマトリクス体となる。また、カーボン材料でもマトリクス体を作製することができる。カーボンは電極材料として使用されるが、キャパシタ材料としても応用される。キャパシタ用電極としての炭素は、その多孔構造が重要であり、三次元規則配列多孔体の利用は興味深い。まず、シリカナノ粒子とポリスチレン単分散球状粒子を混合し縣濁液を作製する。縣濁液を濾過することによりフィルター上に混合物を堆積させる。この際に、シリカナノ粒子がポリスチレンビーズに比較して十分に小さければ規則的な配列を保持しながら粒子の堆積が進行する。最終的には、オパール構造の配置をとるポリスチレンビーズの隙間をシリカナノ粒子が埋め尽くすような構造体が得られる。このコンポジット体を不活性雰囲気下において熱処理することにより炭化し、さらにシリカをHFにより除去することにより構造体を得ることができる。炭素は、大きなマクロ孔と小さなメソ孔を有しており、1000m²/g以上の大きな比表面積を有する。マクロ孔は、使用したポリスチレン由来のものであり、メソ孔は用いたシリカナノ粒子由来のものである。このような構造が生成するメカニズムは、ポリスチレンの溶融とシリカナノ粒子間へのポリマー融液の浸透によるものである。したがって、使用するシリカ粒子の大きさとポリスチレンビーズの大きさを調節すれば、いろいろなマクロ孔とメソ孔を有する炭素材料を作製することができる点で興味深い。優れた特性を示す炭素材料であり、100F/g以上の容量を示しており、実用可能な炭素材料となっている。また、この炭素材料の場合、その孔内にさらにキャパシタとして機能する材料を埋め込むことも可能であり、今後の発展が大いに期待できる材料である。
電極材料として使用されるカーボンは、何材料としても応用されますか。
カーボンは、キャパシタ材料としても応用されます。
JCRRAG_000565
化学
【ナノサイズ粒子を用いた電気化学的機能を有する多孔体の作製と応用】 ・燃料電池用電解質膜への三次元規則配列多孔体の応用  燃料電池にはいろいろな種類があるが、ここでは固体高分子電解質形の燃料電池への三次元規則配列多孔体の応用について紹介する。固体高分子形燃料電池の電解質膜にはプロトン伝導性に優れた高分子固体電解質膜が使用されている。Nafionは最も有名な電解質膜の一つである。燃料として水素を用いる場合にはNafionは優れた特性を示すがメタノールを燃料とした場合には、膜を介するメタノールの透過が問題となる。メタノールの透過は燃料電池の自己放電反応と同じであり、燃料電池の性能が大きく低下する要因となる。Nafionのような膜ではメタノールの透過を抑制することができず、大きな問題となっている。このために新規電解質膜の作製が行われている。メタノール透過はもともと高分子がメタノールを吸収し膨潤することにより、その透過が加速されることに問題がある。したがって、高分子の膨潤を抑制することができれば、メタノール透過を防止することができる。その方法として小さな孔に膨潤しやすいポリマーを充填した構造が提案されている。多孔質な基体膜にポリマーを充填することによりメタノール透過が抑制された膜を作製することができる。この基体膜として、三次元規則配列多孔体の応用が考えられる。多孔体は絶縁体であり、機械的な強度に優れる膜でなければならない。その候補としてセラミックス系の膜やエンジニアリングプラスチックなどが考えられる。ここでは、シリカ多孔体の作製と固体高分子電解質膜への応用について述べる。ポリスチレン単分散球状粒子とシリカナノ粒子を混合し、これを濾過することによりポリスチレンとシリカからなるコンポジット膜を作製する。この手順は炭素多孔体を作製した場合と同じである。次に、このコンポジット膜を熱処理することによりポリスチレンを焼成除去するとともに、シリカを融着させる。焼成条件を上手に調製することにより平滑な面を有するシリカ多孔体を得ることができる。得られた多孔体は多孔構造を有しており、マクロ孔同士は小さな連通孔により結合されており、高分子電解質を充填することが可能な膜となっている。この膜内に、種々の高分子電解質を充填することによりコンポジット電解質を作製することができる。AMPS(2-Acrylamido-2-methyl propanesulfonic acid)やNafionなどを充填した膜を作製し、メタノール透過性を測定すると、本来のポリマー膜の10分の1以下にメタノールの透過を抑制できていることが分かる。この結果は、作製したシリカ多孔体が内部に充填されたポリマーの膨潤を抑制したためである。同様に、ポリイミドなどのエンジニアリングプラスチックを用いて多孔体を作製し、コンポジット電解質膜を作製すれば、同じような効果を得ることができる。
固体高分子形燃料電池の電解質膜には、何が使用されていますか。
固体高分子形燃料電池の電解質膜には、プロトン伝導性に優れた高分子固体電解質膜が使用されています。
JCRRAG_000566
化学
1.はじめに 環境有機化学実験では試薬調製,抽出,精製,分析,洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒を使用する。各操作において物質・目的に応じた溶媒を用いることは実験成功の鍵である。新規物質を扱う際には,各操作に使用する溶媒を選択しなければならない。これは経験に基づく「エキスパートジャッジ」により行われることがほとんどであろう。しかし分析法検討の段階において,底質試料からの抽出効率が上がらない,固相抽出カートリッジからの回収率が低い,初期ストック溶液の作製で溶け残りが生じる,など溶媒選択に関連する問題に直面することがしばしばある。本稿では対象物質によりどの溶媒を選択すべきか,溶解性の観点から基本の考え方を提示する。 ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は,活量係数,分配係数,溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができる。これらの物性値は溶質分子―溶媒分子間,及び溶媒分子―溶媒分子間の相互作用により決まる自由エネルギーと関係している。本稿では溶解性に関する理論的な背景について,実験者が直感的に定性的な理解を得られ,活用できるような形に単純化して提示することを試みる。なお実際の溶媒選択においては溶解性だけでなく,前後の分析手順による制約,実験者に対する健康影響,環境への影響,溶媒の価格など考慮するべき点があるが,これらの情報は一般的な溶媒に関しては手に入りやすい。また本稿は中性有機化合物のみを対象とするものであり,酸,塩基,塩など溶液中でイオン種として存在しうる有機化合物や無機物質についてはここで提示する考え方は適用できないことを断っておく。 2.基本の考え方の背景 2.1キャビティモデル まず,中性有機化合物の溶解を理解する上で役に立つ,キャビティモデルについて紹介する。キャビティモデルでは溶質と溶媒の混合を,3つの状態に分けて考える。 (1)『純溶媒』溶媒分子は熱運動をしながらも,分子間相互作用により引力を及ぼしあっている。 (2)『キャビティ形成』溶媒中に,溶質のサイズに応じたキャビティ(cavity,空洞)が生じている。 (3)『溶液』キャビティに溶質分子が入り,溶質分子と溶媒分子が分子間相互作用により引力を及ぼしあっている。 1の状態とは溶質が溶媒に溶ける前の状態であり,3の状態とは溶けた後の状態である。溶媒の溶解性を考えるには,3の状態の総エネルギーと1の状態の総エネルギーの差を考えればよい。キャビティモデルでは1の状態から3の状態への変化を考えるために,仮定的な中間状態2を考えている。もちろん,実際の現象はこのように3つの段階に分かれているわけではない。しかし,熱力学的なエネルギー変化は経路によらず,始めの状態と終わりの状態のみにより決まるため,1→2のエネルギー変化と2→3のエネルギー変化がわかれば,1→3のエネルギー変化はそれらの和として求めることができる。 1から2の状態に変化する際,キャビティを作るために互いに引き合っている溶媒分子を一部,引き離さなければならない。そのためにはエネルギーが必要である。このエネルギーはキャビティ形成エネルギー cavity formation energy あるいは単にキャビティコスト cavity costとよばれる。溶媒分子同士の引力が強ければ強いほど,引き離すために必要なエネルギーは大きくなり,従ってキャビティコストは大きくなる。また溶質分子が大きければ大きいほど,大きなキャビティが必要となり,より大きなキャビティコストがかかる。つまり「溶媒分子同士の強い相互作用」と「溶質分子の大きなサイズ」は溶解性を下げる方向に作用する。 2から3の状態への変化では,新たに溶質分子と溶媒分子の分子間相互作用(引力)が生じる。この分子間相互作用には様々な種類があり,それぞれの強さは溶質分子と溶媒分子の組み合わせにより決まる。溶質分子と溶媒分子間の引力は溶質を溶媒内に留める方向に作用するため,その引力が強ければ強いほど,溶解性は高くなる。
環境有機化学実験では試薬調製、抽出、精製、分析、洗浄などほぼすべての操作において何が使用されますか。
環境有機化学実験では試薬調製、抽出、精製、分析、洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒が使用されます。
JCRRAG_000567
化学
1.はじめに 環境有機化学実験では試薬調製,抽出,精製,分析,洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒を使用する。各操作において物質・目的に応じた溶媒を用いることは実験成功の鍵である。新規物質を扱う際には,各操作に使用する溶媒を選択しなければならない。これは経験に基づく「エキスパートジャッジ」により行われることがほとんどであろう。しかし分析法検討の段階において,底質試料からの抽出効率が上がらない,固相抽出カートリッジからの回収率が低い,初期ストック溶液の作製で溶け残りが生じる,など溶媒選択に関連する問題に直面することがしばしばある。本稿では対象物質によりどの溶媒を選択すべきか,溶解性の観点から基本の考え方を提示する。 ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は,活量係数,分配係数,溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができる。これらの物性値は溶質分子―溶媒分子間,及び溶媒分子―溶媒分子間の相互作用により決まる自由エネルギーと関係している。本稿では溶解性に関する理論的な背景について,実験者が直感的に定性的な理解を得られ,活用できるような形に単純化して提示することを試みる。なお実際の溶媒選択においては溶解性だけでなく,前後の分析手順による制約,実験者に対する健康影響,環境への影響,溶媒の価格など考慮するべき点があるが,これらの情報は一般的な溶媒に関しては手に入りやすい。また本稿は中性有機化合物のみを対象とするものであり,酸,塩基,塩など溶液中でイオン種として存在しうる有機化合物や無機物質についてはここで提示する考え方は適用できないことを断っておく。 2.基本の考え方の背景 2.1キャビティモデル まず,中性有機化合物の溶解を理解する上で役に立つ,キャビティモデルについて紹介する。キャビティモデルでは溶質と溶媒の混合を,3つの状態に分けて考える。 (1)『純溶媒』溶媒分子は熱運動をしながらも,分子間相互作用により引力を及ぼしあっている。 (2)『キャビティ形成』溶媒中に,溶質のサイズに応じたキャビティ(cavity,空洞)が生じている。 (3)『溶液』キャビティに溶質分子が入り,溶質分子と溶媒分子が分子間相互作用により引力を及ぼしあっている。 1の状態とは溶質が溶媒に溶ける前の状態であり,3の状態とは溶けた後の状態である。溶媒の溶解性を考えるには,3の状態の総エネルギーと1の状態の総エネルギーの差を考えればよい。キャビティモデルでは1の状態から3の状態への変化を考えるために,仮定的な中間状態2を考えている。もちろん,実際の現象はこのように3つの段階に分かれているわけではない。しかし,熱力学的なエネルギー変化は経路によらず,始めの状態と終わりの状態のみにより決まるため,1→2のエネルギー変化と2→3のエネルギー変化がわかれば,1→3のエネルギー変化はそれらの和として求めることができる。 1から2の状態に変化する際,キャビティを作るために互いに引き合っている溶媒分子を一部,引き離さなければならない。そのためにはエネルギーが必要である。このエネルギーはキャビティ形成エネルギー cavity formation energy あるいは単にキャビティコスト cavity costとよばれる。溶媒分子同士の引力が強ければ強いほど,引き離すために必要なエネルギーは大きくなり,従ってキャビティコストは大きくなる。また溶質分子が大きければ大きいほど,大きなキャビティが必要となり,より大きなキャビティコストがかかる。つまり「溶媒分子同士の強い相互作用」と「溶質分子の大きなサイズ」は溶解性を下げる方向に作用する。 2から3の状態への変化では,新たに溶質分子と溶媒分子の分子間相互作用(引力)が生じる。この分子間相互作用には様々な種類があり,それぞれの強さは溶質分子と溶媒分子の組み合わせにより決まる。溶質分子と溶媒分子間の引力は溶質を溶媒内に留める方向に作用するため,その引力が強ければ強いほど,溶解性は高くなる。
1から2の状態に変化する際は、どんな力が強ければ強いほど、溶媒分子を引き離すために必要なエネルギーが大きくなりますか。
1から2の状態に変化する際は、溶媒分子同士の引力が強ければ強いほど、溶媒分子を引き離すために必要なエネルギーが大きくなります。
JCRRAG_000568
化学
1.はじめに 環境有機化学実験では試薬調製,抽出,精製,分析,洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒を使用する。各操作において物質・目的に応じた溶媒を用いることは実験成功の鍵である。新規物質を扱う際には,各操作に使用する溶媒を選択しなければならない。これは経験に基づく「エキスパートジャッジ」により行われることがほとんどであろう。しかし分析法検討の段階において,底質試料からの抽出効率が上がらない,固相抽出カートリッジからの回収率が低い,初期ストック溶液の作製で溶け残りが生じる,など溶媒選択に関連する問題に直面することがしばしばある。本稿では対象物質によりどの溶媒を選択すべきか,溶解性の観点から基本の考え方を提示する。 ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は,活量係数,分配係数,溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができる。これらの物性値は溶質分子―溶媒分子間,及び溶媒分子―溶媒分子間の相互作用により決まる自由エネルギーと関係している。本稿では溶解性に関する理論的な背景について,実験者が直感的に定性的な理解を得られ,活用できるような形に単純化して提示することを試みる。なお実際の溶媒選択においては溶解性だけでなく,前後の分析手順による制約,実験者に対する健康影響,環境への影響,溶媒の価格など考慮するべき点があるが,これらの情報は一般的な溶媒に関しては手に入りやすい。また本稿は中性有機化合物のみを対象とするものであり,酸,塩基,塩など溶液中でイオン種として存在しうる有機化合物や無機物質についてはここで提示する考え方は適用できないことを断っておく。 2.基本の考え方の背景 2.1キャビティモデル まず,中性有機化合物の溶解を理解する上で役に立つ,キャビティモデルについて紹介する。キャビティモデルでは溶質と溶媒の混合を,3つの状態に分けて考える。 (1)『純溶媒』溶媒分子は熱運動をしながらも,分子間相互作用により引力を及ぼしあっている。 (2)『キャビティ形成』溶媒中に,溶質のサイズに応じたキャビティ(cavity,空洞)が生じている。 (3)『溶液』キャビティに溶質分子が入り,溶質分子と溶媒分子が分子間相互作用により引力を及ぼしあっている。 1の状態とは溶質が溶媒に溶ける前の状態であり,3の状態とは溶けた後の状態である。溶媒の溶解性を考えるには,3の状態の総エネルギーと1の状態の総エネルギーの差を考えればよい。キャビティモデルでは1の状態から3の状態への変化を考えるために,仮定的な中間状態2を考えている。もちろん,実際の現象はこのように3つの段階に分かれているわけではない。しかし,熱力学的なエネルギー変化は経路によらず,始めの状態と終わりの状態のみにより決まるため,1→2のエネルギー変化と2→3のエネルギー変化がわかれば,1→3のエネルギー変化はそれらの和として求めることができる。 1から2の状態に変化する際,キャビティを作るために互いに引き合っている溶媒分子を一部,引き離さなければならない。そのためにはエネルギーが必要である。このエネルギーはキャビティ形成エネルギー cavity formation energy あるいは単にキャビティコスト cavity costとよばれる。溶媒分子同士の引力が強ければ強いほど,引き離すために必要なエネルギーは大きくなり,従ってキャビティコストは大きくなる。また溶質分子が大きければ大きいほど,大きなキャビティが必要となり,より大きなキャビティコストがかかる。つまり「溶媒分子同士の強い相互作用」と「溶質分子の大きなサイズ」は溶解性を下げる方向に作用する。 2から3の状態への変化では,新たに溶質分子と溶媒分子の分子間相互作用(引力)が生じる。この分子間相互作用には様々な種類があり,それぞれの強さは溶質分子と溶媒分子の組み合わせにより決まる。溶質分子と溶媒分子間の引力は溶質を溶媒内に留める方向に作用するため,その引力が強ければ強いほど,溶解性は高くなる。
1から2の状態に変化する際、「溶媒分子同士の強い相互作用」と「溶質分子の大きなサイズ」はどのように作用しますか。
1から2の状態に変化する際、「溶媒分子同士の強い相互作用」と「溶質分子の大きなサイズ」は溶解性を下げる方向に作用します。
JCRRAG_000569
化学
噴霧法を用いた粒子プロセスにおけるナノ材料の機能化BaTiO₃  蛍光体材料Y₃Al₅O₁₂:Ce³⁺(YAG:Ce)粒子や積層型セラミックスコンデンサー用材料BaTiO₃粒子のような多成分系酸化物材料は、固相反応法により合成される。次世代照明素子である白色LEDにYAG:Ce蛍光体粒子を応用する場合、理論的には粒径が数ミクロンのYAG:Ce粒子より100nm以下のナノ粒子の方が高い機能および性能を実現できると指摘されている。その理由は、可視光の波長が200から900nmオーダーであるため、素子中に数10nmの蛍光体粒子を用いた方が光散乱は非常に少なくなる。つまり、省エネルギー型照明素子の開発にはナノ粒子材料が鍵となる。BaTiO₃粒子の場合も、現在はBaCO₃とTiO₂を原料とした固相反応法で製造されている。このように従来の固相反応法ではナノ粒子の合成が難しいことから、新しいナノ粒子合成法の開発が現在でも重要な研究課題となっている。また、回分型よりワンステップで連続型合成プロセスにすると、高効率で、球状および凝集が少ない粒子を合成しやすいとされている。
何の開発が、重要な研究課題となっていますか。
新しいナノ粒子合成法の開発が、重要な研究課題となっています。
JCRRAG_000570
化学
噴霧法を用いた粒子プロセスにおけるナノ材料の機能化BaTiO₃  蛍光体材料Y₃Al₅O₁₂:Ce³⁺(YAG:Ce)粒子や積層型セラミックスコンデンサー用材料BaTiO₃粒子のような多成分系酸化物材料は、固相反応法により合成される。次世代照明素子である白色LEDにYAG:Ce蛍光体粒子を応用する場合、理論的には粒径が数ミクロンのYAG:Ce粒子より100nm以下のナノ粒子の方が高い機能および性能を実現できると指摘されている。その理由は、可視光の波長が200から900nmオーダーであるため、素子中に数10nmの蛍光体粒子を用いた方が光散乱は非常に少なくなる。つまり、省エネルギー型照明素子の開発にはナノ粒子材料が鍵となる。BaTiO₃粒子の場合も、現在はBaCO₃とTiO₂を原料とした固相反応法で製造されている。このように従来の固相反応法ではナノ粒子の合成が難しいことから、新しいナノ粒子合成法の開発が現在でも重要な研究課題となっている。また、回分型よりワンステップで連続型合成プロセスにすると、高効率で、球状および凝集が少ない粒子を合成しやすいとされている。
可視光の波長は、何nmオーダーですか。
可視光の波長は、200から900nmオーダーです。
JCRRAG_000571
化学
マーガリンやマヨネーズのような加工油脂食品の製造技術において、油脂と水溶液成分の乳化組織(エマルション)の分散状態の安定性は食感の制御や品質の安定性向上において重要な課題である。このエマルションの相分離の引き金となる油滴もしくは水滴の合一を制御・抑制する鍵となるのが、油脂結晶相の分布形態である。例を挙げると、冷凍食品においてお好み焼きのようなマヨネーズを用いた食品だと、解凍する過程においてマヨネーズのエマルションが壊れ相分離してしまうという問題があり、冷凍→解凍過程でもエマルションを安定化させる技術の確立が求められている。このような課題を解決するにはエマルションが不安定化する過程でどのように油滴もしくは水滴が壊れて合一し、相分離するのかを検証する必要がある。この検証において注目するべき点は、合一を防いでいる油脂結晶の分布(融点の違う相の分布、結晶配向分布、等)の変化である。この分布を評価するには油脂結晶相を同定する必要があるが、これは顕微鏡観察などの形態観察では難しく、結晶構造評価が可能な X 線回折測定を用いることが効果的である。そこで我々は、上述のような食品分野の新規放射光利用ニーズの開拓を行うことを目的として、産業利用IIIビームラインBL46XUにおいてエマルションの油滴サイズ(数10〜数100μm)程度の局所領域の顕微 X 線回折(XRD)測定を行う技術の開発を行った。2014A期には、フレネルゾーンプレート(FZP)を用いたX線マイクロビーム形成装置の立ち上げを行い、X線エネルギー12.4keVでビームサイズ約2μmのマイクロビーム形成に成功した[1]。
マーガリンやマヨネーズのような加工油脂食品の製造技術において、油脂と水溶液成分の何の安定性が課題となっていますか。
マーガリンやマヨネーズのような加工油脂食品の製造技術において、油脂と水溶液成分の乳化組織(エマルション)分散状態の安定性が課題となっています。
JCRRAG_000572
化学
マーガリンやマヨネーズのような加工油脂食品の製造技術において、油脂と水溶液成分の乳化組織(エマルション)の分散状態の安定性は食感の制御や品質の安定性向上において重要な課題である。このエマルションの相分離の引き金となる油滴もしくは水滴の合一を制御・抑制する鍵となるのが、油脂結晶相の分布形態である。例を挙げると、冷凍食品においてお好み焼きのようなマヨネーズを用いた食品だと、解凍する過程においてマヨネーズのエマルションが壊れ相分離してしまうという問題があり、冷凍→解凍過程でもエマルションを安定化させる技術の確立が求められている。このような課題を解決するにはエマルションが不安定化する過程でどのように油滴もしくは水滴が壊れて合一し、相分離するのかを検証する必要がある。この検証において注目するべき点は、合一を防いでいる油脂結晶の分布(融点の違う相の分布、結晶配向分布、等)の変化である。この分布を評価するには油脂結晶相を同定する必要があるが、これは顕微鏡観察などの形態観察では難しく、結晶構造評価が可能な X 線回折測定を用いることが効果的である。そこで我々は、上述のような食品分野の新規放射光利用ニーズの開拓を行うことを目的として、産業利用IIIビームラインBL46XUにおいてエマルションの油滴サイズ(数10〜数100μm)程度の局所領域の顕微 X 線回折(XRD)測定を行う技術の開発を行った。2014A期には、フレネルゾーンプレート(FZP)を用いたX線マイクロビーム形成装置の立ち上げを行い、X線エネルギー12.4keVでビームサイズ約2μmのマイクロビーム形成に成功した[1]。
お好み焼きのようなマヨネーズを用いた食品は、どのような過程においてマヨネーズのエマルションが壊れ相分離してしまうという問題がありますか。
お好み焼きのようなマヨネーズを用いた食品は、解凍する過程においてマヨネーズのエマルションが壊れ相分離してしまうという問題があります。
JCRRAG_000573
化学
マーガリンやマヨネーズのような加工油脂食品の製造技術において、油脂と水溶液成分の乳化組織(エマルション)の分散状態の安定性は食感の制御や品質の安定性向上において重要な課題である。このエマルションの相分離の引き金となる油滴もしくは水滴の合一を制御・抑制する鍵となるのが、油脂結晶相の分布形態である。例を挙げると、冷凍食品においてお好み焼きのようなマヨネーズを用いた食品だと、解凍する過程においてマヨネーズのエマルションが壊れ相分離してしまうという問題があり、冷凍→解凍過程でもエマルションを安定化させる技術の確立が求められている。このような課題を解決するにはエマルションが不安定化する過程でどのように油滴もしくは水滴が壊れて合一し、相分離するのかを検証する必要がある。この検証において注目するべき点は、合一を防いでいる油脂結晶の分布(融点の違う相の分布、結晶配向分布、等)の変化である。この分布を評価するには油脂結晶相を同定する必要があるが、これは顕微鏡観察などの形態観察では難しく、結晶構造評価が可能な X 線回折測定を用いることが効果的である。そこで我々は、上述のような食品分野の新規放射光利用ニーズの開拓を行うことを目的として、産業利用IIIビームラインBL46XUにおいてエマルションの油滴サイズ(数10〜数100μm)程度の局所領域の顕微 X 線回折(XRD)測定を行う技術の開発を行った。2014A期には、フレネルゾーンプレート(FZP)を用いたX線マイクロビーム形成装置の立ち上げを行い、X線エネルギー12.4keVでビームサイズ約2μmのマイクロビーム形成に成功した[1]。
エマルションの油滴サイズ(数10〜数100μm)程度の局所領域について、何を行う技術の開発が行われましたか。
エマルションの油滴サイズ(数10〜数100μm)程度の局所領域について、顕微X線回折(XRD)測定を行う技術の開発が行われました。
JCRRAG_000574
化学
マーガリンやマヨネーズのような加工油脂食品の製造技術において、油脂と水溶液成分の乳化組織(エマルション)の分散状態の安定性は食感の制御や品質の安定性向上において重要な課題である。このエマルションの相分離の引き金となる油滴もしくは水滴の合一を制御・抑制する鍵となるのが、油脂結晶相の分布形態である。例を挙げると、冷凍食品においてお好み焼きのようなマヨネーズを用いた食品だと、解凍する過程においてマヨネーズのエマルションが壊れ相分離してしまうという問題があり、冷凍→解凍過程でもエマルションを安定化させる技術の確立が求められている。このような課題を解決するにはエマルションが不安定化する過程でどのように油滴もしくは水滴が壊れて合一し、相分離するのかを検証する必要がある。この検証において注目するべき点は、合一を防いでいる油脂結晶の分布(融点の違う相の分布、結晶配向分布、等)の変化である。この分布を評価するには油脂結晶相を同定する必要があるが、これは顕微鏡観察などの形態観察では難しく、結晶構造評価が可能な X 線回折測定を用いることが効果的である。そこで我々は、上述のような食品分野の新規放射光利用ニーズの開拓を行うことを目的として、産業利用IIIビームラインBL46XUにおいてエマルションの油滴サイズ(数10〜数100μm)程度の局所領域の顕微 X 線回折(XRD)測定を行う技術の開発を行った。2014A期には、フレネルゾーンプレート(FZP)を用いたX線マイクロビーム形成装置の立ち上げを行い、X線エネルギー12.4keVでビームサイズ約2μmのマイクロビーム形成に成功した[1]。
分布を評価するには、何を同定する必要がありますか。
分布を評価するには、油脂結晶相を同定する必要があります。
JCRRAG_000575
化学
マーガリンやマヨネーズのような加工油脂食品の製造技術において、油脂と水溶液成分の乳化組織(エマルション)の分散状態の安定性は食感の制御や品質の安定性向上において重要な課題である。このエマルションの相分離の引き金となる油滴もしくは水滴の合一を制御・抑制する鍵となるのが、油脂結晶相の分布形態である。例を挙げると、冷凍食品においてお好み焼きのようなマヨネーズを用いた食品だと、解凍する過程においてマヨネーズのエマルションが壊れ相分離してしまうという問題があり、冷凍→解凍過程でもエマルションを安定化させる技術の確立が求められている。このような課題を解決するにはエマルションが不安定化する過程でどのように油滴もしくは水滴が壊れて合一し、相分離するのかを検証する必要がある。この検証において注目するべき点は、合一を防いでいる油脂結晶の分布(融点の違う相の分布、結晶配向分布、等)の変化である。この分布を評価するには油脂結晶相を同定する必要があるが、これは顕微鏡観察などの形態観察では難しく、結晶構造評価が可能な X 線回折測定を用いることが効果的である。そこで我々は、上述のような食品分野の新規放射光利用ニーズの開拓を行うことを目的として、産業利用IIIビームラインBL46XUにおいてエマルションの油滴サイズ(数10〜数100μm)程度の局所領域の顕微 X 線回折(XRD)測定を行う技術の開発を行った。2014A期には、フレネルゾーンプレート(FZP)を用いたX線マイクロビーム形成装置の立ち上げを行い、X線エネルギー12.4keVでビームサイズ約2μmのマイクロビーム形成に成功した[1]。
油滴もしくは水滴の合一は、エマルションの何の引き金となりますか。
油滴もしくは水滴の合一は、エマルションの相分離の引き金となります。
JCRRAG_000576
化学
材料や液体を効率的に輸送する技術は、様々な科学分野において重要な役割を担っている。特に、微細加工技術やバイオ分析、化学反応の局所制御においては、液体や微小物体を高精度に移動させる技術が求められる。 従来、表面における液体等の物質の輸送は物理的な勾配や機械的な力、化学的な表面修飾を用いて行われていたが、それらの方法には輸送距離や速度、安定性において制約があった。例えば、物理的な凹凸構造を持つ表面を利用して水滴を移動させる技術や、化学的不均衡を利用した水滴の移動技術が開発されてきたが、これらの方法は短距離の輸送には効果的であるが、長い距離や繰り返しの輸送が実現できず、輸送速度にも課題が残る。また、液体のみの輸送に限定されており、固体の輸送は困難である。 固体物質を動かす技術としては、これまでに電場や磁場、振動、超音波等の外部エネルギーを用いた研究が報告されているが、その中でも光を用いた技術は、物体に物理的な接触を必要とせず、また光の照射方向を変えることで操作方向を自在に制御できるため、多くの利点を有する技術として注目されている。代表的な技術としてはノーベル物理学賞を受賞した光ピンセットがあるが、我々の研究グループにおいても、アゾベンゼン結晶のトランス・シス光異性化を力学的な運動に変換することで、アメーバの様に基板上を這う現象[1][2]やその動く結晶を利用して表面上の微小な固体物質を回収する機能[3]を見出してきた。 しかし、従来の光駆動型システムには、レーザーが必要であったり、また操作対象の物質自体が光に応答する必要があったり、それらで輸送できる物質がマイクロメートルオーダーの極小物質であったりと、輸送効率が低く、輸送可能な物体の種類が限られるという課題を抱えていた。 そこで、これらの課題を解決する、表面上での物質輸送システムとして、アゾベンゼン系分子モーターを用いた光駆動型「Liquid-Conveyor:リキッドコンベヤ」を開発した[4]。このLiquid-Conveyorは、光の照射によって分子モーターが潤滑流体層に流れを生じさせ、その流れを利用して液体や微小固体を移動させるシステムである。これにより、従来技術では困難であったLEDレベルの光エネルギーによる輸送や長距離かつ高速な輸送が可能となり、さらに液体・固体・気体(気泡)といった輸送対象物質の形態を問わない輸送も実現することが可能である。
光ピンセットは何を受賞しましたか。
光ピンセットはノーベル物理学賞を受賞しました。
JCRRAG_000577
化学
材料や液体を効率的に輸送する技術は、様々な科学分野において重要な役割を担っている。特に、微細加工技術やバイオ分析、化学反応の局所制御においては、液体や微小物体を高精度に移動させる技術が求められる。 従来、表面における液体等の物質の輸送は物理的な勾配や機械的な力、化学的な表面修飾を用いて行われていたが、それらの方法には輸送距離や速度、安定性において制約があった。例えば、物理的な凹凸構造を持つ表面を利用して水滴を移動させる技術や、化学的不均衡を利用した水滴の移動技術が開発されてきたが、これらの方法は短距離の輸送には効果的であるが、長い距離や繰り返しの輸送が実現できず、輸送速度にも課題が残る。また、液体のみの輸送に限定されており、固体の輸送は困難である。 固体物質を動かす技術としては、これまでに電場や磁場、振動、超音波等の外部エネルギーを用いた研究が報告されているが、その中でも光を用いた技術は、物体に物理的な接触を必要とせず、また光の照射方向を変えることで操作方向を自在に制御できるため、多くの利点を有する技術として注目されている。代表的な技術としてはノーベル物理学賞を受賞した光ピンセットがあるが、我々の研究グループにおいても、アゾベンゼン結晶のトランス・シス光異性化を力学的な運動に変換することで、アメーバの様に基板上を這う現象[1][2]やその動く結晶を利用して表面上の微小な固体物質を回収する機能[3]を見出してきた。 しかし、従来の光駆動型システムには、レーザーが必要であったり、また操作対象の物質自体が光に応答する必要があったり、それらで輸送できる物質がマイクロメートルオーダーの極小物質であったりと、輸送効率が低く、輸送可能な物体の種類が限られるという課題を抱えていた。 そこで、これらの課題を解決する、表面上での物質輸送システムとして、アゾベンゼン系分子モーターを用いた光駆動型「Liquid-Conveyor:リキッドコンベヤ」を開発した[4]。このLiquid-Conveyorは、光の照射によって分子モーターが潤滑流体層に流れを生じさせ、その流れを利用して液体や微小固体を移動させるシステムである。これにより、従来技術では困難であったLEDレベルの光エネルギーによる輸送や長距離かつ高速な輸送が可能となり、さらに液体・固体・気体(気泡)といった輸送対象物質の形態を問わない輸送も実現することが可能である。
Liquid-Conveyorは、何によって分子モーターに潤滑流体層に流れを生じさせるシステムですか。
Liquid-Conveyorは、光の照射によって分子モーターに潤滑流体層に流れを生じさせるシステムです。
JCRRAG_000578
化学
材料や液体を効率的に輸送する技術は、様々な科学分野において重要な役割を担っている。特に、微細加工技術やバイオ分析、化学反応の局所制御においては、液体や微小物体を高精度に移動させる技術が求められる。 従来、表面における液体等の物質の輸送は物理的な勾配や機械的な力、化学的な表面修飾を用いて行われていたが、それらの方法には輸送距離や速度、安定性において制約があった。例えば、物理的な凹凸構造を持つ表面を利用して水滴を移動させる技術や、化学的不均衡を利用した水滴の移動技術が開発されてきたが、これらの方法は短距離の輸送には効果的であるが、長い距離や繰り返しの輸送が実現できず、輸送速度にも課題が残る。また、液体のみの輸送に限定されており、固体の輸送は困難である。 固体物質を動かす技術としては、これまでに電場や磁場、振動、超音波等の外部エネルギーを用いた研究が報告されているが、その中でも光を用いた技術は、物体に物理的な接触を必要とせず、また光の照射方向を変えることで操作方向を自在に制御できるため、多くの利点を有する技術として注目されている。代表的な技術としてはノーベル物理学賞を受賞した光ピンセットがあるが、我々の研究グループにおいても、アゾベンゼン結晶のトランス・シス光異性化を力学的な運動に変換することで、アメーバの様に基板上を這う現象[1][2]やその動く結晶を利用して表面上の微小な固体物質を回収する機能[3]を見出してきた。 しかし、従来の光駆動型システムには、レーザーが必要であったり、また操作対象の物質自体が光に応答する必要があったり、それらで輸送できる物質がマイクロメートルオーダーの極小物質であったりと、輸送効率が低く、輸送可能な物体の種類が限られるという課題を抱えていた。 そこで、これらの課題を解決する、表面上での物質輸送システムとして、アゾベンゼン系分子モーターを用いた光駆動型「Liquid-Conveyor:リキッドコンベヤ」を開発した[4]。このLiquid-Conveyorは、光の照射によって分子モーターが潤滑流体層に流れを生じさせ、その流れを利用して液体や微小固体を移動させるシステムである。これにより、従来技術では困難であったLEDレベルの光エネルギーによる輸送や長距離かつ高速な輸送が可能となり、さらに液体・固体・気体(気泡)といった輸送対象物質の形態を問わない輸送も実現することが可能である。
アメーバの様に基板上を這う現象は、何を力学的な運動に変換することによるものですか。
アメーバの様に基板上を這う現象は、アゾベンゼン結晶のトランス・シス光異性化を力学的な運動に変換することによるものです。
JCRRAG_000579
化学
 環境有機化学実験では試薬調製,抽出,精製,分析,洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒を使用する。各操作において物質・目的に応じた溶媒を用いることは実験成功の鍵である。新規物質を扱う際には,各操作に使用する溶媒を選択しなければならない。これは経験に基づく「エキスパートジャッジ」により行われることがほとんどであろう。しかし分析法検討の段階において,底質試料からの抽出効率が上がらない,固相抽出カートリッジからの回収率が低い,初期ストック溶液の作製で溶け残りが生じる,など溶媒選択に関連する問題に直面することがしばしばある。本稿では対象物質によりどの溶媒を選択すべきか,溶解性の観点から基本の考え方を提示する。  ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は,活量係数,分配係数,溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができる。これらの物性値は溶質分子―溶媒分子間,及び溶媒分子―溶媒分子間の相互作用により決まる自由エネルギーと関係している。本稿では溶解性に関する理論的な背景について,実験者が直感的に定性的な理解を得られ,活用できるような形に単純化して提示することを試みる。なお実際の溶媒選択においては溶解性だけでなく,前後の分析手順による制約,実験者に対する健康影響,環境への影響,溶媒の価格など考慮するべき点があるが,これらの情報は一般的な溶媒に関しては手に入りやすい。また本稿は中性有機化合物のみを対象とするものであり,酸,塩基,塩など溶液中でイオン種として存在しうる有機化合物や無機物質についてはここで提示する考え方は適用できないことを断っておく。
ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は、活量係数、分配係数、溶解度などの物理化学的物性値によりどのように比較することができますか。
ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は、活量係数、分配係数、溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができます。
JCRRAG_000580
化学
 環境有機化学実験では試薬調製,抽出,精製,分析,洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒を使用する。各操作において物質・目的に応じた溶媒を用いることは実験成功の鍵である。新規物質を扱う際には,各操作に使用する溶媒を選択しなければならない。これは経験に基づく「エキスパートジャッジ」により行われることがほとんどであろう。しかし分析法検討の段階において,底質試料からの抽出効率が上がらない,固相抽出カートリッジからの回収率が低い,初期ストック溶液の作製で溶け残りが生じる,など溶媒選択に関連する問題に直面することがしばしばある。本稿では対象物質によりどの溶媒を選択すべきか,溶解性の観点から基本の考え方を提示する。  ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は,活量係数,分配係数,溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができる。これらの物性値は溶質分子―溶媒分子間,及び溶媒分子―溶媒分子間の相互作用により決まる自由エネルギーと関係している。本稿では溶解性に関する理論的な背景について,実験者が直感的に定性的な理解を得られ,活用できるような形に単純化して提示することを試みる。なお実際の溶媒選択においては溶解性だけでなく,前後の分析手順による制約,実験者に対する健康影響,環境への影響,溶媒の価格など考慮するべき点があるが,これらの情報は一般的な溶媒に関しては手に入りやすい。また本稿は中性有機化合物のみを対象とするものであり,酸,塩基,塩など溶液中でイオン種として存在しうる有機化合物や無機物質についてはここで提示する考え方は適用できないことを断っておく。
環境有機化学実験ではほぼすべての操作において何を使用しますか。
環境有機化学実験ではほぼすべての操作において有機溶媒を使用します。
JCRRAG_000581
化学
 環境有機化学実験では試薬調製,抽出,精製,分析,洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒を使用する。各操作において物質・目的に応じた溶媒を用いることは実験成功の鍵である。新規物質を扱う際には,各操作に使用する溶媒を選択しなければならない。これは経験に基づく「エキスパートジャッジ」により行われることがほとんどであろう。しかし分析法検討の段階において,底質試料からの抽出効率が上がらない,固相抽出カートリッジからの回収率が低い,初期ストック溶液の作製で溶け残りが生じる,など溶媒選択に関連する問題に直面することがしばしばある。本稿では対象物質によりどの溶媒を選択すべきか,溶解性の観点から基本の考え方を提示する。  ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は,活量係数,分配係数,溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができる。これらの物性値は溶質分子―溶媒分子間,及び溶媒分子―溶媒分子間の相互作用により決まる自由エネルギーと関係している。本稿では溶解性に関する理論的な背景について,実験者が直感的に定性的な理解を得られ,活用できるような形に単純化して提示することを試みる。なお実際の溶媒選択においては溶解性だけでなく,前後の分析手順による制約,実験者に対する健康影響,環境への影響,溶媒の価格など考慮するべき点があるが,これらの情報は一般的な溶媒に関しては手に入りやすい。また本稿は中性有機化合物のみを対象とするものであり,酸,塩基,塩など溶液中でイオン種として存在しうる有機化合物や無機物質についてはここで提示する考え方は適用できないことを断っておく。
初期ストック溶液の作製で生じるものは何ですか。
初期ストック溶液の作製で生じるものは溶け残りです。
JCRRAG_000582
化学
 環境有機化学実験では試薬調製,抽出,精製,分析,洗浄などほぼすべての操作において有機溶媒を使用する。各操作において物質・目的に応じた溶媒を用いることは実験成功の鍵である。新規物質を扱う際には,各操作に使用する溶媒を選択しなければならない。これは経験に基づく「エキスパートジャッジ」により行われることがほとんどであろう。しかし分析法検討の段階において,底質試料からの抽出効率が上がらない,固相抽出カートリッジからの回収率が低い,初期ストック溶液の作製で溶け残りが生じる,など溶媒選択に関連する問題に直面することがしばしばある。本稿では対象物質によりどの溶媒を選択すべきか,溶解性の観点から基本の考え方を提示する。  ある物質に対する様々な溶媒の溶解性は,活量係数,分配係数,溶解度などの物理化学的物性値により定量的に比較することができる。これらの物性値は溶質分子―溶媒分子間,及び溶媒分子―溶媒分子間の相互作用により決まる自由エネルギーと関係している。本稿では溶解性に関する理論的な背景について,実験者が直感的に定性的な理解を得られ,活用できるような形に単純化して提示することを試みる。なお実際の溶媒選択においては溶解性だけでなく,前後の分析手順による制約,実験者に対する健康影響,環境への影響,溶媒の価格など考慮するべき点があるが,これらの情報は一般的な溶媒に関しては手に入りやすい。また本稿は中性有機化合物のみを対象とするものであり,酸,塩基,塩など溶液中でイオン種として存在しうる有機化合物や無機物質についてはここで提示する考え方は適用できないことを断っておく。
本稿では、何に関する理論的な背景について単純化して提示することを試みていますか。
本稿では、溶解性に関する理論的な背景について単純化して提示することを試みています。
JCRRAG_000583
化学
磁気近接効果は、目的の物質と磁性体を接合したヘテロ構造を作製することで、磁性体との相互作用によりその界面に磁気秩序状態が誘起される効果である。この効果を用いると、磁性元素をドーピングする場合と比較して、結晶構造の変化や乱れを生じることなく磁気秩序を誘起することができる。また、その温度依存性は接合する磁性体の磁気秩序温度に強く依存する。すなわち、高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することで、室温を遥かに超える温度において強磁性秩序を誘起し、その電気伝導を調べることができると期待される。 トポロジカル絶縁体に対しては、ガーネット等の高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することにより、量子異常ホール効果の高温化を狙った研究が精力的に行われており[1–5]、X線吸収分光(XAS)及びX線磁気円二色性(XMCD)の測定による電子状態・磁気状態の研究も進んでいる[2]。一方、ディラック半金属に強磁性秩序を誘起すると、時間反転対称性が破れることでワイル半金属へと相転移し、ワイル点間の距離に比例した異常ホール効果が現れると予測される。しかしながら、ディラック半金属に強磁性状態を誘起することは難しく、特に磁性元素ドーピングによる強磁性化は困難であることがわかってきた。 このような背景のもと、我々は、ディラック半金属Cd3As2の高品質薄膜を酸化物基板上に成長させる手法を開発し[6,7]、Cd3As2薄膜と強磁性絶縁体ガーネット(Bi,Tb)3Fe5O12基板のヘテロ接合を作製した[8]。Cd3As2薄膜はI41/acd構造をとっており、As原子が三角格子をなすCd3As2(112)面を(Bi,Tb)3Fe5O12(111)面上に成長させた。このヘテロ接合では室温を遥かに超える温度まで異常ホール効果が観測され、磁気近接効果によってディラック半金属に強磁性状態が誘起されていることが確認された[8]。そこで本研究では、このヘテロ界面における電子状態・磁気状態の変化を調べるべく、XAS及びXMCDの測定を行った。
磁気近接効果は、何が誘起される効果ですか。
磁気近接効果は、磁性体との相互作用によりその界面に磁気秩序状態が誘起される効果です。
JCRRAG_000584
化学
磁気近接効果は、目的の物質と磁性体を接合したヘテロ構造を作製することで、磁性体との相互作用によりその界面に磁気秩序状態が誘起される効果である。この効果を用いると、磁性元素をドーピングする場合と比較して、結晶構造の変化や乱れを生じることなく磁気秩序を誘起することができる。また、その温度依存性は接合する磁性体の磁気秩序温度に強く依存する。すなわち、高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することで、室温を遥かに超える温度において強磁性秩序を誘起し、その電気伝導を調べることができると期待される。 トポロジカル絶縁体に対しては、ガーネット等の高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することにより、量子異常ホール効果の高温化を狙った研究が精力的に行われており[1–5]、X線吸収分光(XAS)及びX線磁気円二色性(XMCD)の測定による電子状態・磁気状態の研究も進んでいる[2]。一方、ディラック半金属に強磁性秩序を誘起すると、時間反転対称性が破れることでワイル半金属へと相転移し、ワイル点間の距離に比例した異常ホール効果が現れると予測される。しかしながら、ディラック半金属に強磁性状態を誘起することは難しく、特に磁性元素ドーピングによる強磁性化は困難であることがわかってきた。 このような背景のもと、我々は、ディラック半金属Cd3As2の高品質薄膜を酸化物基板上に成長させる手法を開発し[6,7]、Cd3As2薄膜と強磁性絶縁体ガーネット(Bi,Tb)3Fe5O12基板のヘテロ接合を作製した[8]。Cd3As2薄膜はI41/acd構造をとっており、As原子が三角格子をなすCd3As2(112)面を(Bi,Tb)3Fe5O12(111)面上に成長させた。このヘテロ接合では室温を遥かに超える温度まで異常ホール効果が観測され、磁気近接効果によってディラック半金属に強磁性状態が誘起されていることが確認された[8]。そこで本研究では、このヘテロ界面における電子状態・磁気状態の変化を調べるべく、XAS及びXMCDの測定を行った。
何を酸化物基板上に成長させる手法が開発されましたか。
ディラック半金属Cd3As2の高品質薄膜を酸化物基板上に成長させる手法が開発されました。
JCRRAG_000585
化学
磁気近接効果は、目的の物質と磁性体を接合したヘテロ構造を作製することで、磁性体との相互作用によりその界面に磁気秩序状態が誘起される効果である。この効果を用いると、磁性元素をドーピングする場合と比較して、結晶構造の変化や乱れを生じることなく磁気秩序を誘起することができる。また、その温度依存性は接合する磁性体の磁気秩序温度に強く依存する。すなわち、高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することで、室温を遥かに超える温度において強磁性秩序を誘起し、その電気伝導を調べることができると期待される。 トポロジカル絶縁体に対しては、ガーネット等の高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することにより、量子異常ホール効果の高温化を狙った研究が精力的に行われており[1–5]、X線吸収分光(XAS)及びX線磁気円二色性(XMCD)の測定による電子状態・磁気状態の研究も進んでいる[2]。一方、ディラック半金属に強磁性秩序を誘起すると、時間反転対称性が破れることでワイル半金属へと相転移し、ワイル点間の距離に比例した異常ホール効果が現れると予測される。しかしながら、ディラック半金属に強磁性状態を誘起することは難しく、特に磁性元素ドーピングによる強磁性化は困難であることがわかってきた。 このような背景のもと、我々は、ディラック半金属Cd3As2の高品質薄膜を酸化物基板上に成長させる手法を開発し[6,7]、Cd3As2薄膜と強磁性絶縁体ガーネット(Bi,Tb)3Fe5O12基板のヘテロ接合を作製した[8]。Cd3As2薄膜はI41/acd構造をとっており、As原子が三角格子をなすCd3As2(112)面を(Bi,Tb)3Fe5O12(111)面上に成長させた。このヘテロ接合では室温を遥かに超える温度まで異常ホール効果が観測され、磁気近接効果によってディラック半金属に強磁性状態が誘起されていることが確認された[8]。そこで本研究では、このヘテロ界面における電子状態・磁気状態の変化を調べるべく、XAS及びXMCDの測定を行った。
何による強磁性化が特に困難であることがわかってきましたか。
磁性元素ドーピングによる強磁性化が特に困難であることがわかってきました。
JCRRAG_000586
化学
磁気近接効果は、目的の物質と磁性体を接合したヘテロ構造を作製することで、磁性体との相互作用によりその界面に磁気秩序状態が誘起される効果である。この効果を用いると、磁性元素をドーピングする場合と比較して、結晶構造の変化や乱れを生じることなく磁気秩序を誘起することができる。また、その温度依存性は接合する磁性体の磁気秩序温度に強く依存する。すなわち、高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することで、室温を遥かに超える温度において強磁性秩序を誘起し、その電気伝導を調べることができると期待される。 トポロジカル絶縁体に対しては、ガーネット等の高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することにより、量子異常ホール効果の高温化を狙った研究が精力的に行われており[1–5]、X線吸収分光(XAS)及びX線磁気円二色性(XMCD)の測定による電子状態・磁気状態の研究も進んでいる[2]。一方、ディラック半金属に強磁性秩序を誘起すると、時間反転対称性が破れることでワイル半金属へと相転移し、ワイル点間の距離に比例した異常ホール効果が現れると予測される。しかしながら、ディラック半金属に強磁性状態を誘起することは難しく、特に磁性元素ドーピングによる強磁性化は困難であることがわかってきた。 このような背景のもと、我々は、ディラック半金属Cd3As2の高品質薄膜を酸化物基板上に成長させる手法を開発し[6,7]、Cd3As2薄膜と強磁性絶縁体ガーネット(Bi,Tb)3Fe5O12基板のヘテロ接合を作製した[8]。Cd3As2薄膜はI41/acd構造をとっており、As原子が三角格子をなすCd3As2(112)面を(Bi,Tb)3Fe5O12(111)面上に成長させた。このヘテロ接合では室温を遥かに超える温度まで異常ホール効果が観測され、磁気近接効果によってディラック半金属に強磁性状態が誘起されていることが確認された[8]。そこで本研究では、このヘテロ界面における電子状態・磁気状態の変化を調べるべく、XAS及びXMCDの測定を行った。
Cd3As2薄膜はどのような構造をとっていますか。
Cd3As2薄膜はI41/acd構造をとっています。
JCRRAG_000587
化学
磁気近接効果は、目的の物質と磁性体を接合したヘテロ構造を作製することで、磁性体との相互作用によりその界面に磁気秩序状態が誘起される効果である。この効果を用いると、磁性元素をドーピングする場合と比較して、結晶構造の変化や乱れを生じることなく磁気秩序を誘起することができる。また、その温度依存性は接合する磁性体の磁気秩序温度に強く依存する。すなわち、高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することで、室温を遥かに超える温度において強磁性秩序を誘起し、その電気伝導を調べることができると期待される。 トポロジカル絶縁体に対しては、ガーネット等の高いキュリー温度を持つ強磁性絶縁体とのヘテロ接合を作製することにより、量子異常ホール効果の高温化を狙った研究が精力的に行われており[1–5]、X線吸収分光(XAS)及びX線磁気円二色性(XMCD)の測定による電子状態・磁気状態の研究も進んでいる[2]。一方、ディラック半金属に強磁性秩序を誘起すると、時間反転対称性が破れることでワイル半金属へと相転移し、ワイル点間の距離に比例した異常ホール効果が現れると予測される。しかしながら、ディラック半金属に強磁性状態を誘起することは難しく、特に磁性元素ドーピングによる強磁性化は困難であることがわかってきた。 このような背景のもと、我々は、ディラック半金属Cd3As2の高品質薄膜を酸化物基板上に成長させる手法を開発し[6,7]、Cd3As2薄膜と強磁性絶縁体ガーネット(Bi,Tb)3Fe5O12基板のヘテロ接合を作製した[8]。Cd3As2薄膜はI41/acd構造をとっており、As原子が三角格子をなすCd3As2(112)面を(Bi,Tb)3Fe5O12(111)面上に成長させた。このヘテロ接合では室温を遥かに超える温度まで異常ホール効果が観測され、磁気近接効果によってディラック半金属に強磁性状態が誘起されていることが確認された[8]。そこで本研究では、このヘテロ界面における電子状態・磁気状態の変化を調べるべく、XAS及びXMCDの測定を行った。
何の高温化を狙った研究が精力的に行われていますか。
量子異常ホール効果の高温化を狙った研究が精力的に行われています。
JCRRAG_000588
化学
表面処理は溶射やめっきなど基材と異なる層をコーティングする際に不可欠なプロセスである。表面処理の中でもグリットブラストは,アルミナ,炭化ケイ素,SiO2,ZrO2,B4C,ダイヤモンドなどのグリットを,高速で基材表面に衝突させる技法であり基材表面のスケールや付着物を除去する事に用いられる。グリットブラストには表面付着物を除去する以外に基材の疲労寿命やコーティングの接着性を向上させる効果もある。Cattoniらはブラスト処理されたTi-6Al-7NbおよびAISI 316LVM基材の表面で圧縮残留応力が発生し,疲労亀裂の発生と成長が抑制されると報告している。また,Staiaらは,グリットブラストで表面を粗くするほどWC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告している。また,Maruyama and Hirohataはグリットブラストされた炭素鋼基材のビッカース硬さ測定を行い,ブラスト時間が長いほど基材の表面硬さは増し亜鉛溶射被膜の密着度も上がると報告している。Gharaらは,グリットブラストされた様々な材料(low carbon steel,C45 steel,SS316,Ti-6Al-4V,Inconel 718,Hastelloy X)に対しビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定している。 鋭利なグリットを使用するグリットブラストに対し,丸い球を使用するショットピーニングについても加工後に転位密度が増加する事が知られており,Fuらは,ショットピーニングを施したSUS304の転位密度が2桁増加したことを報告している。また,Wu and Jiangは,ショットピーニングを施したInconel 625について,ビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定し,表面に生じた高い圧縮残留応力と高い転位密度が疲労強度と降伏強度の向上につながると報告している。
溶射やめっきなど基材と異なる層をコーティングする際に不可欠なプロセスは何ですか。
溶射やめっきなど基材と異なる層をコーティングする際に不可欠なプロセスは表面処理です。
JCRRAG_000589
化学
表面処理は溶射やめっきなど基材と異なる層をコーティングする際に不可欠なプロセスである。表面処理の中でもグリットブラストは,アルミナ,炭化ケイ素,SiO2,ZrO2,B4C,ダイヤモンドなどのグリットを,高速で基材表面に衝突させる技法であり基材表面のスケールや付着物を除去する事に用いられる。グリットブラストには表面付着物を除去する以外に基材の疲労寿命やコーティングの接着性を向上させる効果もある。Cattoniらはブラスト処理されたTi-6Al-7NbおよびAISI 316LVM基材の表面で圧縮残留応力が発生し,疲労亀裂の発生と成長が抑制されると報告している。また,Staiaらは,グリットブラストで表面を粗くするほどWC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告している。また,Maruyama and Hirohataはグリットブラストされた炭素鋼基材のビッカース硬さ測定を行い,ブラスト時間が長いほど基材の表面硬さは増し亜鉛溶射被膜の密着度も上がると報告している。Gharaらは,グリットブラストされた様々な材料(low carbon steel,C45 steel,SS316,Ti-6Al-4V,Inconel 718,Hastelloy X)に対しビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定している。 鋭利なグリットを使用するグリットブラストに対し,丸い球を使用するショットピーニングについても加工後に転位密度が増加する事が知られており,Fuらは,ショットピーニングを施したSUS304の転位密度が2桁増加したことを報告している。また,Wu and Jiangは,ショットピーニングを施したInconel 625について,ビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定し,表面に生じた高い圧縮残留応力と高い転位密度が疲労強度と降伏強度の向上につながると報告している。
グリットブラストは、何を除去する事に用いられますか。
グリットブラストは、基材表面のスケールや付着物を除去する事に用いられます。
JCRRAG_000590
化学
表面処理は溶射やめっきなど基材と異なる層をコーティングする際に不可欠なプロセスである。表面処理の中でもグリットブラストは,アルミナ,炭化ケイ素,SiO2,ZrO2,B4C,ダイヤモンドなどのグリットを,高速で基材表面に衝突させる技法であり基材表面のスケールや付着物を除去する事に用いられる。グリットブラストには表面付着物を除去する以外に基材の疲労寿命やコーティングの接着性を向上させる効果もある。Cattoniらはブラスト処理されたTi-6Al-7NbおよびAISI 316LVM基材の表面で圧縮残留応力が発生し,疲労亀裂の発生と成長が抑制されると報告している。また,Staiaらは,グリットブラストで表面を粗くするほどWC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告している。また,Maruyama and Hirohataはグリットブラストされた炭素鋼基材のビッカース硬さ測定を行い,ブラスト時間が長いほど基材の表面硬さは増し亜鉛溶射被膜の密着度も上がると報告している。Gharaらは,グリットブラストされた様々な材料(low carbon steel,C45 steel,SS316,Ti-6Al-4V,Inconel 718,Hastelloy X)に対しビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定している。 鋭利なグリットを使用するグリットブラストに対し,丸い球を使用するショットピーニングについても加工後に転位密度が増加する事が知られており,Fuらは,ショットピーニングを施したSUS304の転位密度が2桁増加したことを報告している。また,Wu and Jiangは,ショットピーニングを施したInconel 625について,ビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定し,表面に生じた高い圧縮残留応力と高い転位密度が疲労強度と降伏強度の向上につながると報告している。
Staiaらは、何の密着性が上がる事を報告していますか。
Staiaらは、WC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告しています。
JCRRAG_000591
化学
表面処理は溶射やめっきなど基材と異なる層をコーティングする際に不可欠なプロセスである。表面処理の中でもグリットブラストは,アルミナ,炭化ケイ素,SiO2,ZrO2,B4C,ダイヤモンドなどのグリットを,高速で基材表面に衝突させる技法であり基材表面のスケールや付着物を除去する事に用いられる。グリットブラストには表面付着物を除去する以外に基材の疲労寿命やコーティングの接着性を向上させる効果もある。Cattoniらはブラスト処理されたTi-6Al-7NbおよびAISI 316LVM基材の表面で圧縮残留応力が発生し,疲労亀裂の発生と成長が抑制されると報告している。また,Staiaらは,グリットブラストで表面を粗くするほどWC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告している。また,Maruyama and Hirohataはグリットブラストされた炭素鋼基材のビッカース硬さ測定を行い,ブラスト時間が長いほど基材の表面硬さは増し亜鉛溶射被膜の密着度も上がると報告している。Gharaらは,グリットブラストされた様々な材料(low carbon steel,C45 steel,SS316,Ti-6Al-4V,Inconel 718,Hastelloy X)に対しビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定している。 鋭利なグリットを使用するグリットブラストに対し,丸い球を使用するショットピーニングについても加工後に転位密度が増加する事が知られており,Fuらは,ショットピーニングを施したSUS304の転位密度が2桁増加したことを報告している。また,Wu and Jiangは,ショットピーニングを施したInconel 625について,ビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定し,表面に生じた高い圧縮残留応力と高い転位密度が疲労強度と降伏強度の向上につながると報告している。
誰がWC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告していますか。
StaiaらがWC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告しています。
JCRRAG_000592
化学
表面処理は溶射やめっきなど基材と異なる層をコーティングする際に不可欠なプロセスである。表面処理の中でもグリットブラストは,アルミナ,炭化ケイ素,SiO2,ZrO2,B4C,ダイヤモンドなどのグリットを,高速で基材表面に衝突させる技法であり基材表面のスケールや付着物を除去する事に用いられる。グリットブラストには表面付着物を除去する以外に基材の疲労寿命やコーティングの接着性を向上させる効果もある。Cattoniらはブラスト処理されたTi-6Al-7NbおよびAISI 316LVM基材の表面で圧縮残留応力が発生し,疲労亀裂の発生と成長が抑制されると報告している。また,Staiaらは,グリットブラストで表面を粗くするほどWC-Coコーティングの密着性が上がる事を報告している。また,Maruyama and Hirohataはグリットブラストされた炭素鋼基材のビッカース硬さ測定を行い,ブラスト時間が長いほど基材の表面硬さは増し亜鉛溶射被膜の密着度も上がると報告している。Gharaらは,グリットブラストされた様々な材料(low carbon steel,C45 steel,SS316,Ti-6Al-4V,Inconel 718,Hastelloy X)に対しビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定している。 鋭利なグリットを使用するグリットブラストに対し,丸い球を使用するショットピーニングについても加工後に転位密度が増加する事が知られており,Fuらは,ショットピーニングを施したSUS304の転位密度が2桁増加したことを報告している。また,Wu and Jiangは,ショットピーニングを施したInconel 625について,ビッカース硬さ,残留応力,転位密度の深さ方向分布を測定し,表面に生じた高い圧縮残留応力と高い転位密度が疲労強度と降伏強度の向上につながると報告している。
グリットブラストされた様々な材料に対し、何の深さ方向分布が測定されますか。
グリットブラストされた様々な材料に対し、ビッカース硬さ、残留応力、転位密度の深さ方向分布が測定されます。
JCRRAG_000593
化学
新興国を中心に急速に拡大したモータリゼーション化は今後も年率 4–6%で着実・継続的な進展が予想される。自動車台数の増加に伴い消費されるタイヤの総量も増加を続けるため、生産原材料の持続的確保や省エネルギーの観点から長寿命・低損失なタイヤのニーズは益々高まるものと予想される。こうしたニーズにタイヤ材料面から応えるためには、これまで見過ごされてきたゴム中の各種配合物の不分散や不均一構造、意図しない反応生成物(異物粒子)などを、放射光を用いてより正確かつ定量的に把握することが重要となる。 特に有機系の異物粒子についてはこれまで汎用の顕微赤外分光装置による検出が中心だったが、一般的な透過法の測定配置では空間分解能として10μm程度が限界で、直径が平均で7μmと小さい有機系異物については正確な分布状況の把握が困難だった。一方全反射法(ATR法)の測定配置ではより高分解能(5μm程度)の測定が可能だが、測定子をゴム表面に接触させる必要があるため、ゴム中からのブリードが生じて測定を妨害し検出できないケースが多かった。 先行課題(2017B1583)では高強度の放射光を用いることでこうした小径粒状物の透過法によるマッピング検出を初めて試みた。その結果、透過法によりゴム表面に非接触な状態で測定できることが確認でき、油分やワックス量などの配合詳細に制限されずに広くゴム一般を評価できる可能性が示された[1]。そこで今回の課題では小径粒状物の昇温による変化の有無を確認することで成因推定を試みた。今回観察している微小粒状物については、先行課題以外に同種のものが知られていたか文献等も調査中だが、今後粒状物種の同異を確定する根拠データとしても今回の測定結果が有用なものと期待される。
新興国を中心に急速に拡大したことは何ですか。
新興国を中心に急速に拡大したことはモータリゼーション化です。
JCRRAG_000594
化学
新興国を中心に急速に拡大したモータリゼーション化は今後も年率 4–6%で着実・継続的な進展が予想される。自動車台数の増加に伴い消費されるタイヤの総量も増加を続けるため、生産原材料の持続的確保や省エネルギーの観点から長寿命・低損失なタイヤのニーズは益々高まるものと予想される。こうしたニーズにタイヤ材料面から応えるためには、これまで見過ごされてきたゴム中の各種配合物の不分散や不均一構造、意図しない反応生成物(異物粒子)などを、放射光を用いてより正確かつ定量的に把握することが重要となる。 特に有機系の異物粒子についてはこれまで汎用の顕微赤外分光装置による検出が中心だったが、一般的な透過法の測定配置では空間分解能として10μm程度が限界で、直径が平均で7μmと小さい有機系異物については正確な分布状況の把握が困難だった。一方全反射法(ATR法)の測定配置ではより高分解能(5μm程度)の測定が可能だが、測定子をゴム表面に接触させる必要があるため、ゴム中からのブリードが生じて測定を妨害し検出できないケースが多かった。 先行課題(2017B1583)では高強度の放射光を用いることでこうした小径粒状物の透過法によるマッピング検出を初めて試みた。その結果、透過法によりゴム表面に非接触な状態で測定できることが確認でき、油分やワックス量などの配合詳細に制限されずに広くゴム一般を評価できる可能性が示された[1]。そこで今回の課題では小径粒状物の昇温による変化の有無を確認することで成因推定を試みた。今回観察している微小粒状物については、先行課題以外に同種のものが知られていたか文献等も調査中だが、今後粒状物種の同異を確定する根拠データとしても今回の測定結果が有用なものと期待される。
モータリゼーション化は、どこを中心に急速に拡大しましたか。
モータリゼーション化は、新興国を中心に急速に拡大しました。
JCRRAG_000595
化学
新興国を中心に急速に拡大したモータリゼーション化は今後も年率 4–6%で着実・継続的な進展が予想される。自動車台数の増加に伴い消費されるタイヤの総量も増加を続けるため、生産原材料の持続的確保や省エネルギーの観点から長寿命・低損失なタイヤのニーズは益々高まるものと予想される。こうしたニーズにタイヤ材料面から応えるためには、これまで見過ごされてきたゴム中の各種配合物の不分散や不均一構造、意図しない反応生成物(異物粒子)などを、放射光を用いてより正確かつ定量的に把握することが重要となる。 特に有機系の異物粒子についてはこれまで汎用の顕微赤外分光装置による検出が中心だったが、一般的な透過法の測定配置では空間分解能として10μm程度が限界で、直径が平均で7μmと小さい有機系異物については正確な分布状況の把握が困難だった。一方全反射法(ATR法)の測定配置ではより高分解能(5μm程度)の測定が可能だが、測定子をゴム表面に接触させる必要があるため、ゴム中からのブリードが生じて測定を妨害し検出できないケースが多かった。 先行課題(2017B1583)では高強度の放射光を用いることでこうした小径粒状物の透過法によるマッピング検出を初めて試みた。その結果、透過法によりゴム表面に非接触な状態で測定できることが確認でき、油分やワックス量などの配合詳細に制限されずに広くゴム一般を評価できる可能性が示された[1]。そこで今回の課題では小径粒状物の昇温による変化の有無を確認することで成因推定を試みた。今回観察している微小粒状物については、先行課題以外に同種のものが知られていたか文献等も調査中だが、今後粒状物種の同異を確定する根拠データとしても今回の測定結果が有用なものと期待される。
特に有機系の異物粒子については、何による検出がこれまで中心でしたか。
特に有機系の異物粒子については、汎用の顕微赤外分光装置による検出がこれまで中心でした。
JCRRAG_000596
化学
新興国を中心に急速に拡大したモータリゼーション化は今後も年率 4–6%で着実・継続的な進展が予想される。自動車台数の増加に伴い消費されるタイヤの総量も増加を続けるため、生産原材料の持続的確保や省エネルギーの観点から長寿命・低損失なタイヤのニーズは益々高まるものと予想される。こうしたニーズにタイヤ材料面から応えるためには、これまで見過ごされてきたゴム中の各種配合物の不分散や不均一構造、意図しない反応生成物(異物粒子)などを、放射光を用いてより正確かつ定量的に把握することが重要となる。 特に有機系の異物粒子についてはこれまで汎用の顕微赤外分光装置による検出が中心だったが、一般的な透過法の測定配置では空間分解能として10μm程度が限界で、直径が平均で7μmと小さい有機系異物については正確な分布状況の把握が困難だった。一方全反射法(ATR法)の測定配置ではより高分解能(5μm程度)の測定が可能だが、測定子をゴム表面に接触させる必要があるため、ゴム中からのブリードが生じて測定を妨害し検出できないケースが多かった。 先行課題(2017B1583)では高強度の放射光を用いることでこうした小径粒状物の透過法によるマッピング検出を初めて試みた。その結果、透過法によりゴム表面に非接触な状態で測定できることが確認でき、油分やワックス量などの配合詳細に制限されずに広くゴム一般を評価できる可能性が示された[1]。そこで今回の課題では小径粒状物の昇温による変化の有無を確認することで成因推定を試みた。今回観察している微小粒状物については、先行課題以外に同種のものが知られていたか文献等も調査中だが、今後粒状物種の同異を確定する根拠データとしても今回の測定結果が有用なものと期待される。
先行課題(2017B1583)では何を用いましたか。
先行課題(2017B1583)では高強度の放射光を用いました。
JCRRAG_000597
化学
セラミックスの湿式成形ではスラリーの乾燥過程における割れや変形が問題であった.これらの根本的解決のためには,乾燥中にスラリー内部で生じる現象の理解に基づく制御が不可欠である.そこで私は,不透明な物体の内部構造をリアルタイム観察可能なOCTを用いたその観察に基づいて,スラリーの乾燥挙動を解明することを目的として研究を行ってきた.その結果,乾燥過程におけるスラリーの不均質な流動や局所的な乾燥の進行が,割れや変形の原因であることを明らかにした. 今後は,分散剤等の添加量を制御したスラリーを用いて同様の観察を行い,粒子間相互作用力が乾燥中の内部構造変化に及ぼす影響を明らかにする.また,環境制御型ナノインデンターにより,割れや変形に大きな影響を及ぼす乾燥中のスラリーの力学特性をOCT観察と同一視野で評価することで,局所的な力学特性と内部構造の関係を解明する. 本研究で用いるスラリー調製のために,まず,イオン交換水にシリカ粉体(KE-S-30,株式会社日本触媒)を 45vol% になるように投入した.
不透明な物体の内部構造のリアルタイム観察には何を用いますか。
不透明な物体の内部構造のリアルタイム観察にはOCTを用います。
JCRRAG_000598
化学
セラミックスの湿式成形ではスラリーの乾燥過程における割れや変形が問題であった.これらの根本的解決のためには,乾燥中にスラリー内部で生じる現象の理解に基づく制御が不可欠である.そこで私は,不透明な物体の内部構造をリアルタイム観察可能なOCTを用いたその観察に基づいて,スラリーの乾燥挙動を解明することを目的として研究を行ってきた.その結果,乾燥過程におけるスラリーの不均質な流動や局所的な乾燥の進行が,割れや変形の原因であることを明らかにした. 今後は,分散剤等の添加量を制御したスラリーを用いて同様の観察を行い,粒子間相互作用力が乾燥中の内部構造変化に及ぼす影響を明らかにする.また,環境制御型ナノインデンターにより,割れや変形に大きな影響を及ぼす乾燥中のスラリーの力学特性をOCT観察と同一視野で評価することで,局所的な力学特性と内部構造の関係を解明する. 本研究で用いるスラリー調製のために,まず,イオン交換水にシリカ粉体(KE-S-30,株式会社日本触媒)を 45vol% になるように投入した.
今後は、何の添加量が制御されますか。
今後は、分散剤等の添加量が制御されます。
JCRRAG_000599
化学
セラミックスの湿式成形ではスラリーの乾燥過程における割れや変形が問題であった.これらの根本的解決のためには,乾燥中にスラリー内部で生じる現象の理解に基づく制御が不可欠である.そこで私は,不透明な物体の内部構造をリアルタイム観察可能なOCTを用いたその観察に基づいて,スラリーの乾燥挙動を解明することを目的として研究を行ってきた.その結果,乾燥過程におけるスラリーの不均質な流動や局所的な乾燥の進行が,割れや変形の原因であることを明らかにした. 今後は,分散剤等の添加量を制御したスラリーを用いて同様の観察を行い,粒子間相互作用力が乾燥中の内部構造変化に及ぼす影響を明らかにする.また,環境制御型ナノインデンターにより,割れや変形に大きな影響を及ぼす乾燥中のスラリーの力学特性をOCT観察と同一視野で評価することで,局所的な力学特性と内部構造の関係を解明する. 本研究で用いるスラリー調製のために,まず,イオン交換水にシリカ粉体(KE-S-30,株式会社日本触媒)を 45vol% になるように投入した.
局所的な力学特性と何の関係が解明されますか。
局所的な力学特性と内部構造の関係が解明されます。
JCRRAG_000600
化学
セラミックスの湿式成形ではスラリーの乾燥過程における割れや変形が問題であった.これらの根本的解決のためには,乾燥中にスラリー内部で生じる現象の理解に基づく制御が不可欠である.そこで私は,不透明な物体の内部構造をリアルタイム観察可能なOCTを用いたその観察に基づいて,スラリーの乾燥挙動を解明することを目的として研究を行ってきた.その結果,乾燥過程におけるスラリーの不均質な流動や局所的な乾燥の進行が,割れや変形の原因であることを明らかにした. 今後は,分散剤等の添加量を制御したスラリーを用いて同様の観察を行い,粒子間相互作用力が乾燥中の内部構造変化に及ぼす影響を明らかにする.また,環境制御型ナノインデンターにより,割れや変形に大きな影響を及ぼす乾燥中のスラリーの力学特性をOCT観察と同一視野で評価することで,局所的な力学特性と内部構造の関係を解明する. 本研究で用いるスラリー調製のために,まず,イオン交換水にシリカ粉体(KE-S-30,株式会社日本触媒)を 45vol% になるように投入した.
シリカ粉体は何に投入されましたか。
シリカ粉体はイオン交換水に投入されました。