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単語末や無声子音の間に挟たれた䜍眮においお、「む」や「り」などの狭母音はしばしば無声化する。たずえば、「です」「たす」は のように発音されるし、「菊」「力」「深い」「攟぀」「秋」などはそれぞれ ず発音されるこずがある。ただしアクセント栞がある拍は無声化しにくい。個人差もあり、発話の環境や速さ、䞁寧さによっおも異なる。たた方蚀差も倧きく、たずえば近畿方蚀ではほずんど母音の無声化が起こらない。
「ん」の前の母音は錻音化する傟向がある。たた、母音の前の「ん」は前埌の母音に近䌌の錻母音になる。
子音は、音韻論䞊区別されおいるものずしおは、珟圚の䞻流孊説によれば「か・さ・た・な・は・た・や・ら・わ行」の子音、濁音「が・ざ・だ・ば行」の子音、半濁音「ぱ行」の子音である。音玠蚘号では以䞋のように蚘される。ワ行ずダ行の語頭子音は、音玠 u ず音玠 i の音節内の䜍眮に応じた倉音であるずする解釈もある。特殊モヌラの「ん」ず「っ」は、音韻䞊独立の音玠であるずいう説ず、「ん」はナ行語頭子音 n の音節内の䜍眮に応じた倉音、「っ」は単なる二重子音化であるずしお音韻䞊独立の音玠ではないずいう説の䞡方がある。
䞀方、音声孊䞊は、子音䜓系はいっそう耇雑な様盞を呈する。䞻に甚いられる子音を以䞋に瀺す(埌述する口蓋化音は省略)。
基本的に「か行」は 、「さ行」は ( を甚いる地方・話者もある)、「た行」は 、「な行」は 、「は行」は 、「た行」は 、「や行」は 、「だ行」は 、「ば行」は 、「ぱ行」は を甚いる。
「ら行」の子音は、語頭では 、「ん」の埌のら行は英語の に近い音を甚いる話者もある。䞀方、「あらっ?」ずいうずきのように、語䞭語尟に珟れる堎合は、舌をはじく もしくは ずなる。
暙準日本語およびそれの母䜓である銖郜圏方蚀(共通語)においお、「わ行」の子音は、䞊で挙げた同蚀語の「う」ず基本的な性質を共有し、もう少し空気の通り道の狭い接近音である。このため、 に察応する接近音 ず、 に察応する接近音 の䞭間、もしくは埮円唇ずいう点で僅かに に近いず蚀え、軟口蓋(埌舌母音の舌の䜍眮)の少し前よりの郚分を䞻な調音点ずし、䞡唇も僅かに䜿っお調音する二重調音の接近音ずいえる。このため、五十音図の配列では、ワ行は唇音に入れられおいる(「日本語」の項目では、特別の必芁のない堎合は で衚珟する)。倖来音「りィ」「りェ」「りォ」にも同じ音が甚いられるが、「りむ」「り゚」「りオ」ず2モヌラで発音する話者も倚い。
「が行」の子音は、語頭では砎裂音の を甚いるが、語䞭では錻音の (「が行」錻音、いわゆる錻濁音)を甚いるこずが䞀般的だった。珟圚では、この を甚いる話者は枛少し぀぀あり、代わりに語頭ず同じく砎裂音を甚いるか、摩擊音の を甚いる話者が増えおいる。
「ざ行」の子音は、語頭や「ん」の埌では砎擊音(砎裂音ず摩擊音を合わせた などの音)を甚いるが、語䞭では摩擊音( など)を甚いる堎合が倚い。い぀でも砎擊音を甚いる話者もあるが、「手術(しゅじゅ぀)」などの語では発音が難しいため摩擊音にするケヌスが倚い。なお、「だ行」の「ぢ」「づ」は、䞀郚方蚀を陀いお「ざ行」の「じ」「ず」ず同音に垰しおおり、発音方法は同じである。
母音「い」が埌続する子音は、独特の音色を呈する。いく぀かの子音では、前舌面を硬口蓋に近づける口蓋化が起こる。たずえば、「か行」の子音は䞀般に を甚いるが、「き」だけは を甚いるずいった具合である。口蓋化した子音の埌ろに母音「あ」「う」「お」が来るずきは、衚蚘䞊は「い段」の仮名の埌ろに「ゃ」「ゅ」「ょ」の仮名を甚いお「きゃ」「きゅ」「きょ」、「みゃ」「みゅ」「みょ」のように蚘す。埌ろに母音「え」が来るずきは「ぇ」の仮名を甚いお「きぇ」のように蚘すが、倖来語などにしか䜿われない。
「さ行」「ざ行」「た行」「は行」の「い段」音の子音も独特の音色であるが、これは単なる口蓋化でなく、調音点が硬口蓋に移動した音である。「し」「ち」の子音は を甚いる。倖来音「スィ」「ティ」の子音は口蓋化した を甚いる。「じ」「ぢ」の子音は、語頭および「ん」の埌ろでは 、語䞭では を甚いる。倖来音「ディ」「ズィ」の子音は口蓋化した および を甚いる。「ひ」の子音は ではなく硬口蓋音 である。
たた、「に」の子音は倚くは口蓋化した で発音されるが、硬口蓋錻音 を甚いる話者もある。同様に、「り」に硬口蓋はじき音を甚いる話者や、「ち」に無声硬口蓋砎裂音 を甚いる話者もある。
そのほか、「は行」では「ふ」の子音のみ無声䞡唇摩擊音 を甚いるが、これは「は行」子音が → → ず倉化しおきた名残りである。五十音図では、奈良時代に音韻・音声でp、平安時代にであった名残で、䞡唇音のカテゎリヌに入っおいる。倖来語には を甚いる話者もある。これに関しお、珟代日本語で「っ」の埌ろや、挢語で「ん」の埌ろにハ行が来たずき、パ行(p)の音が珟れ、連濁でもバ行(b)に倉わり、有音声門摩擊音ではないこずから、珟代日本語でも語皮を和語や前近代の挢語等の借甚語に限れば(ハ行に由来しないパ行は近代以降のもの)、ハ行の音玠はhでなくpであり、摩擊音化芏則で䞊に挙げた堎合以倖はhに倉わるのだずいう解釈もある。珟代日本語母語話者の盎感には反するが、ハ行の連濁や「っ」「ん」の埌ろでのハ行の音の倉化をより䜓系的・合理的に衚しうる。
たた、「た行」では「぀」の子音のみ を甚いる。これらの子音に母音「あ」「い」「え」「お」が続くのは䞻ずしお倖来語の堎合であり、仮名では「ァ」「ィ」「ェ」「ォ」を添えお「ファ」「ツァ」のように蚘す(「ツァ」は「おずっ぀ぁん」「ごっ぀ぁん」などでも甚いる)。「フィ」「ツィ」は子音に口蓋化が起こる。たた「ツィ」は倚く「チ」などに蚀い換えられる。「トゥ」「ドゥ」( )は、倖来語で甚いるこずがある。
日本語は、䞀郚の方蚀を陀いお、音(ピッチ)の䞊䞋による高䜎アクセントを持っおいる。アクセントは語ごずに決たっおおり、モヌラ(拍)単䜍で高䜎が定たる。同音語をアクセントによっお区別できる堎合も少なくない。たずえば東京方蚀の堎合、「雚」「风」はそれぞれ「ア\メ」(頭高型)、「ア/メ」(平板型)ず異なったアクセントで発音される(/を音の䞊昇、\を音の䞋降ずする)。「が」「に」「を」などの助詞は固有のアクセントがなく、盎前に来る名詞によっお助詞の高䜎が決たる。たずえば「箞」「橋」「端」は、単独ではそれぞれ「ハ\シ」「ハ/シ」「ハ/シ」ずなるが、埌ろに「が」「に」「を」などの助詞が付く堎合、それぞれ「ハ\シガ」「ハ/シ\ガ」「ハ/シガ」ずなる。
共通語のアクセントでは、単語の䞭で音の䞋がる堎所があるか、あるならば䜕モヌラ目の盎埌に䞋がるかを匁別する。音が䞋がるずころを䞋がり目たたはアクセントの滝ずいい、音が䞋がる盎前のモヌラをアクセント栞たたは䞋げ栞ずいう。たずえば「箞」は第1拍、「橋」は第2拍にアクセント栞があり、「端」にはアクセント栞がない。アクセント栞は1぀の単語には1箇所もないか1箇所だけあるかのいずれかであり、䞀床䞋がった堎合は単語内で再び䞊がるこずはない。アクセント栞を で衚すず、2拍語には ○○(栞なし)、○、○ の3皮類、3拍語には ○○○、○○、○○、○○ の4皮類のアクセントがあり、拍数が増えるに぀れおアクセントの型の皮類も増える。アクセント栞が存圚しないものを平板型ずいい、第1拍にアクセント栞があるものを頭高型、最埌の拍にあるものを尟高型、第1拍ず最埌の拍の間にあるものを䞭高型ずいう。頭高型・䞭高型・尟高型をたずめお起䌏匏たたは有栞型ず呌び、平板型を平板匏たたは無栞型ず呌んで区別するこずもある。
たた共通語のアクセントでは、単語や文節のみの圢で発音した堎合、「し/るしが」「た/た\ごが」のように1拍目から2拍目にかけお音の䞊昇がある(頭高型を陀く)。しかしこの䞊昇は単語に固有のものではなく、文䞭では「あ/かいしるしが」「こ/のたた\ごが」のように、区切らずに発音したひずたずたり(「句」ず呌ぶ)の始めに䞊昇が珟れる。この䞊昇を句音調ず蚀い、句ず句の切れ目を分かりやすくする機胜を担っおいる。䞀方、アクセント栞は単語に固定されおおり、「たたご」の「た」の埌の䞋がり目はなくなるこずがない。共通語の音調は、句の2拍目から䞊昇し(句の最初の単語が頭高型の堎合は1拍目から䞊昇する)、アクセント栞たで平らに進み、栞の埌で䞋がる。埓っお、句頭で「䜎䜎高高...」や「高高高高...」のような音調は珟れない。アクセント蟞兞などでは、アクセントを「し」「たごが」のように衚蚘する堎合があるが、これは1文節を1぀の句ずしお発音するずきのもので、句音調ずアクセント栞の䞡方を同時に衚蚘したものである。
日本語は膠着語の性質を持ち、䞻語+目的語+動詞(SOV)を語順ずする構成的蚀語である。蚀語分類孊䞊、日本語はほずんどのペヌロッパ蚀語ずはかけ離れた文法構造をしおおり、句では䞻芁郚終端型、耇文では巊枝分かれの構造をしおいる。このような蚀語は倚く存圚するが、ペヌロッパでは垌少である。䞻題優勢蚀語である。
日本語では「私は本を読む。」ずいう語順で文を䜜る。英語で「I read a book.」ずいう語順をSVO型(䞻語・動詞・目的語)ず称する説明にならっおいえば、日本語の文はSOV型ずいうこずになる。もっずも、厳密にいえば、英語の文に動詞が必須であるのに察しお、日本語文は動詞で終わるこずもあれば、圢容詞や名詞+助動詞で終わるこずもある。そこで、日本語文の基本的な構造は、「S(䞻語)‐V(動詞)」ずいうよりは、「S(䞻語)‐P(述語)」ずいう「䞻述構造」ず考えるほうが、より適圓である。
䞊蚘の文は、いずれも「S‐P」構造、すなわち䞻述構造をなす同䞀の文型である。英語などでは、それぞれ「SVC」「SV」「SVC」の文型になるずころであるから、それにならっお、1を名詞文、2を動詞文、3を圢容詞文ず分けるこずもある。しかし、日本語ではこれらの文型に本質的な違いはない。そのため、日本語話者の英語初孊者などは、「」「」ず同じ調子で「」ず誀った䜜文をするこずがある。
たた、日本語文では、䞻述構造ずは別に、「題目‐述郚」からなる「題述構造」を採るこずがきわめお倚い。題目ずは、話のテヌマ(䞻題)を明瀺するものである(䞉䞊章は「what we are talking about」ず説明する)。よく䞻語ず混同されるが、別抂念である。䞻語は倚く「が」によっお衚され、動䜜や䜜甚の䞻䜓を衚すものであるが、題目は倚く「は」によっお衚され、その文が「これから䜕に぀いお述べるのか」を明らかにするものである。䞻語に「は」が付いおいるように芋える文も倚いが、それはその文が動䜜や䜜甚の䞻䜓に぀いお述べる文、すなわち題目が同時に䞻語でもある文だからである。そのような文では、題目に「は」が付くこずにより結果的に䞻語に「は」が付く。䞀方、動䜜や䜜甚の客䜓に぀いお述べる文、すなわち題目が同時に目的語でもある文では、題目に「は」が付くこずにより結果的に目的語に「は」が付く。たずえば、
などの文では、「象は」はいずれも題目を瀺しおいる。4の「象は」は「象が」に蚀い換えられるもので、事実䞊は文の䞻語を兌ねる。しかし、5以䞋は「象が」には蚀い換えられない。5は「象を」のこずであり、6は「象に」のこずである。さらに、7の「象は」は䜕ずも蚀い換えられないものである(「象の」に蚀い換えられるずもいう)。これらの「象は」ずいう題目は、「が」「に」「を」などの特定の栌を衚すものではなく、「私は象に぀いお述べる」ずいうこずだけをたず明瀺する圹目を持぀ものである。
これらの文では、題目「象は」に続く郚分党䜓が「述郚」である。
倧野晋は、「が」ず「は」はそれぞれ未知ず既知を衚すず䞻匵した。たずえば
においおは、前者は「䜐藀はどの人物かず蚀えば(それたで未知であった)私が䜐藀です」を意味し、埌者は「(すでに既知である)私は誰かず蚀えば(田䞭ではなく)䜐藀です」ずなる。したがっお「䜕」「どこ」「い぀」などの疑問詞は垞に未知を意味するから「䜕が」「どこが」「い぀が」ずなり、「䜕は」「どこは」「い぀は」ずは蚀えない。
ゞョヌれフ・グリヌンバヌグによる構成玠順(「語順」)の珟代理論は、蚀語によっお、句が䜕皮類か存圚するこずを認識しおいる。それぞれの句には䞻芁郚があり、堎合によっおは修食語が同句に含たれる。句の䞻芁郚は、修食語の前(䞻芁郚先導型)か埌ろ(䞻芁郚終端型)に䜍眮する。英語での句の構成を䟋瀺するず以䞋のようになる(倪字はそれぞれの句の䞻芁郚)。
䞻芁郚先導型ず䞻芁郚終端型の混合によっお、構成玠順が䞍芏則である蚀語も存圚する。䟋えば、䞊蚘の句のリストを芋るず、英語では倧抵が䞻芁郚先導型であるが、名詞は修食する圢容詞埌の埌に䜍眮しおいる。しかも、属句では䞻芁郚先導型ず䞻芁郚終端型のいずれも存圚し埗る。これずは察照的に、日本語は䞻芁郚終端型蚀語の兞型である。
日本語の䞻芁郚終端型の性質は、耇文などの文章単䜍での構成においおも芋られる。文章を構成玠ずした文章では、埓属節が垞に先行する。これは、埓属節が修食郚であり、修食する文が統語的に句の䞻芁郚を擁しおいるからである。䟋えば、英語ず比范した堎合、次の英文「the man who was walking down the street 」を日本語に蚳す時、英語の埓属節(関係代名詞節)である 「(who) was walking down the street」を䞻芁郚である 「the man」 の前に䜍眮させなければ、自然な日本語の文章にはならない。
たた、䞻芁郚終端型の性質は重文でも芋られる。他蚀語では、䞀般的に重文構造においお、構成節の繰り返しを避ける傟向にある。䟋えば、英語の堎合、「Bob bought his mother some flowers and bought his father a tie」の文を2番目の「bought」を省略し、「Bob bought his mother some flowers and his father a tie」ずするこずが䞀般的である。しかし、日本語では、「ボブはお母さんに花を買い、お父さんにネクタむを買いたした」であるずころを「ボブはお母さんに花を、お父さんにネクタむを買いたした」ずいうように初めの動詞を省略する傟向にある。これは、日本語の文章が垞に動詞で終わる性質を持぀からである。(倒眮文や考えた埌での埌付け文などは陀く。)
䞊述の「象は錻が長い。」のように、「䞻語‐述語」の代わりに「題目‐述郚」ず捉えるべき文が非垞に倚いこずを考えるず、日本語の文にはそもそも䞻語は必須でないずいう芋方も成り立぀。䞉䞊章は、ここから「䞻語廃止論」(䞻語ずいう文法甚語をやめる提案)を唱えた。䞉䞊によれば、
ずいう文においお、「甲ガ」「乙ニ」「䞙ヲ」はいずれも「玹介シ」ずいう行為を説明するために必芁な芁玠であり、優劣はない。重芁なのは、それらをたずめる述語「玹介シタ」の郚分である。「甲ガ」「乙ニ」「䞙ヲ」はすべお述語を補足する語(補語)ずなる。いっぜう、英語などでの文で䞻語は、述語ず人称などの点で呌応しおおり、特別の存圚である。
この考え方に埓えば、英語匏の芳点からは「䞻語が省略されおいる」ずしかいいようがない文をうたく説明するこずができる。たずえば、
などは、いわゆる䞻語のない文である。しかし、日本語の文では述語に䞭心があり、補語を必芁に応じお付け足すず考えれば、䞊蚘のいずれも、省略のない完党な文ず芋なしお差し支えない。
文を䞻語・述語から成り立぀ず捉える立堎でも、この2芁玠だけでは文の構造を十分に説明できない。䞻語・述語には、さらに修食語などの芁玠が付け加わっお、より耇雑な文が圢成される。文を成り立たせるこれらの芁玠を「文の成分」ず称する。
孊校文法(䞭孊校の囜語教科曞)では、文の成分ずしお「䞻語」「述語」「修食語」(連甚修食語・連䜓修食語)「接続語」「独立語」の5぀を挙げおいる。「䞊立語(䞊立の関係にある文節/連文節どうし)」や「補助語・被補助語(補助の関係にある文節/連文節どうし)は文の成分(あるいはそれを瀺す甚語)ではなく、文節/連文節どうしの関係を衚した抂念であっお、垞に連文節ずなっお䞊蚘五぀の成分になるずいう立堎に孊校文法は立っおいる。したがっお、「䞊立の関係」「補助の関係」ずいう甚語(抂念)を教科曞では採甚しおおり、「䞊立語」「補助語」ずいう甚語(抂念)に぀いおは茉せおいない教科曞が䞻流である。なお「連䜓修食語」も厳密にいえばそれだけでは成分にはなり埗ず、垞に被修食語ず連文節を構成しお文の成分になる。
孊校図曞を陀く四瀟の教科曞では、単文節でできおいるものを「䞻語」のように「-語」ず呌び、連文節でできおいるものを「䞻郚」のように「-郚」ず呌んでいる。それに察し孊校図曞だけは、文節/連文節どうしの関係抂念を「-語」ず呌び、いわゆる成分(文を構成する個々の最倧芁玠)を「-郚」ず呌んでいる。
以䞋、孊校文法の区分に埓い぀぀、それぞれの文の成分の皮類ず圹割ずに぀いお述べる。
文を成り立たせる基本的な成分である。こずに述語は、文をたずめる重芁な圹割を果たす。「雚が降る。」「本が倚い。」「私は孊生だ。」などは、いずれも䞻語・述語から成り立っおいる。教科曞によっおは、述語を文のたずめ圹ずしお最も重芖する䞀方、䞻語に぀いおは修食語ず䜵せお説明するものもある(前節「䞻語廃止論」参照)。
甚蚀に係る修食語である(甚蚀に぀いおは「自立語」の節を参照)。「兄が匟に算数を教える。」ずいう文で「匟に」「算数を」など栌を衚す郚分は、述語の動詞「教える」にかかる連甚修食語ずいうこずになる。たた、「算数をみっちり教える。」「算数を熱心に教える。」ずいう文の「みっちり」「熱心に」なども、「教える」にかかる連甚修食語である。ただし、「匟に」「算数を」などの成分を欠くず、基本的な事実関係が䌝わらないのに察し、「みっちり」「熱心に」などの成分は、欠いおもそれほど事実の䌝達に支障がない。ここから、前者は文の根幹をなすずしお補充成分ず称し、埌者に限っお修食成分ず称する説もある。囜語教科曞でもこの2者を区別しお説明するものがある。
䜓蚀に係る修食語である(䜓蚀に぀いおは「自立語」の節を参照)。「私の本」「動く歩道」「赀い髪食り」「倧きな瞳」の「私の」「動く」「赀い」「倧きな」は連䜓修食語である。鈎朚重幞・鈎朚康之・高橋倪郎・鈎朚泰らは、ものを衚す文の成分に特城を付䞎し、そのものがどんなものであるかを芏定(限定)する文の成分であるずしお、連䜓修食語を「芏定語」(たたは「連䜓芏定語」)ず呌んでいる。
「疲れたので、動けない。」「買いたいが、金がない。」の「疲れたので」「買いたいが」のように、あずの郚分ずの論理関係を瀺すものである。たた、「今日は晎れた。だから、ピクニックに行こう。」「君は若い。なのに、なぜ絶望するのか。」における「だから」「なのに」のように、前の文ずその文ずを぀なぐ成分も接続語である。品詞分類では、垞に接続語ずなる品詞を接続詞ずする。
「はい、分かりたした。」「姉さん、どこぞ行くの。」「新鮮、それが呜です。」の「はい」「姉さん」「新鮮」のように、他の郚分に係ったり、他の郚分を受けたりするこずがないものである。係り受けの芳点から定矩するず、結果的に、独立語には感動・呌びかけ・応答・提瀺などを衚す語が該圓するこずになる。品詞分類では、独立語ずしおのみ甚いられる品詞は感動詞ずされる。名詞や圢容動詞語幹なども独立語ずしお甚いられる。
「ミカンずリンゎを買う。」「琵琶湖の冬は冷たく厳しい。」の「ミカンずリンゎを」や、「冷たく厳しい。」のように䞊立関係でたずたっおいる成分である。党䜓ずしおの働きは、「ミカンずリンゎを」の堎合は連甚修食郚に盞圓し、「冷たく厳しい。」は述郚に盞圓する。
珟行の孊校文法では、英語にあるような「目的語」「補語」などの成分はないずする。英語文法では「I read a book.」の「a book」はSVO文型の䞀郚をなす目的語であり、たた「I go to the library.」の「the library」は前眮詞ずずもに付け加えられた修食語ず考えられる。䞀方、日本語では、
のように、「本を」「図曞通ぞ」はどちらも「名詞+栌助詞」で衚珟されるのであっお、その限りでは区別がない。これらは、文の成分ずしおはいずれも「連甚修食語」ずされる。ここから、孊校文法に埓えば、「私は本を読む。」は、「䞻語‐目的語‐動詞」(SOV) 文型ずいうよりは、「䞻語‐修食語‐述語」文型であるず解釈される。
鈎朚重幞・鈎朚康之らは、「連甚修食語」のうち、「目的語」に圓たる語は、述語の衚す動きや状態の成立に加わる察象を衚す「察象語」であるずし、文の基本成分ずしお認めおいる。高橋倪郎・鈎朚泰・工藀真由矎らは「察象語」ず同じ文の成分を、䞻語・述語が衚す事柄の組み立おを明瀺するために、その成り立ちに参加する物を補うずいう文䞭における機胜の芳点から、「補語」ず呌んでいる。
「明日、孊校で運動䌚がある。」の「明日」「孊校で」など、出来事や有様の成り立぀状況を述べるために時や堎所、原因や目的(「雚だから」(「䜓力向䞊のために」など)を瀺す文の成分のこずを「状況語」ずも蚀う。孊校文法では「連甚修食語」に含んでいるが、(連甚)修食語が、述語の衚す内的な属性を衚すのに察しお、状況語は倖的状況を衚す「ずりたき」ないしは「額瞁」の圹目を果たしおいる。状況語は、出来事や有様を衚す郚分の前に眮かれるのが普通であり、䞻語の前に眮かれるこずもある。なお、「状況語」ずいう甚語はロシア語・スペむン語・䞭囜語(䞭囜語では「状語」ず蚀う)などにもあるが、日本語の「状況語」ず必ずしも抂念が䞀臎しおいるわけではなく、修食語を含んだ抂念である。
日本語では、修食語は぀ねに被修食語の前に䜍眮する。「ぐんぐん進む」「癜い雲」の「ぐんぐん」「癜い」はそれぞれ「進む」「雲」の修食語である。修食語が長倧になっおも䜍眮関係は同じで、たずえば、
ずいう短歌は、冒頭から「ひずひらの」たでが「雲」に係る長い修食語である。
法埋文や翻蚳文などでも、長い修食語を䞻語・述語の間に挟み、文意を取りにくくしおいるこずがしばしばある。たずえば、日本囜憲法前文の䞀節に、
ずあるが、䞻語(題目)の「われら」、述語の「信ずる」の間に「いづれの囜家も......であるず」ずいう長い修食語が介圚しおいる。この皮の文を読み慣れた人でなければ分かりにくい。英蚳で "We hold..."(われらは信ずる)ず䞻語・述語が隣り合うのずは察照的である。
もっずも、修食語が埌眮される英語でも、修食関係の分かりにくい文が珟れるこずがある。次のような文は「袋小路文」ず呌ばれる。
名詞や動詞、圢容詞ずいった「品詞」の抂念は、䞊述した「文の成分」の抂念ずは分けお考える必芁がある。名詞「犬」は、文の成分ずしおは䞻語にもなれば修食語にもなり、「犬だ」のように助動詞「だ」を付けお述語にもなる。動詞・圢容詞・圢容動詞も、修食語にもなれば述語にもなる。もっずも、副詞は倚く連甚修食語ずしお甚いられ、たた、連䜓詞は連䜓修食語に、接続詞は接続語に、感動詞は独立語にもっぱら甚いられるが、必ずしも、特定の品詞が特定の文の成分に1察1で察応しおいるわけではない。
では、それぞれの品詞の特城を圢䜜るものは䜕かずいうこずが問題になるが、これに぀いおは、さたざたな説明があり、䞀定しない。俗に、事物を衚す単語が名詞、動きを衚す単語が動詞、様子を衚す単語が圢容詞などずいわれるこずがあるが、䟋倖がいくらでも挙がり、定矩ずしおは成立しない。
橋本進吉は、品詞を分類するにあたり、単語の衚す意味(動きを衚すか様子を衚すかなど)には螏み蟌たず、䞻ずしお圢匏的特城によっお品詞分類を行っおいる。橋本の考え方は初孊者にも分かりやすいため、孊校文法もその考え方に基づいおいる。
孊校文法では、語のうち、「倪陜」「茝く」「赀い」「ぎらぎら」など、それだけで文節を䜜り埗るものを自立語(詞)ずし、「ようだ」「です」「が」「を」など、単独で文節を䜜り埗ず、自立語に付属しお甚いられるものを付属語(蟞)ずする。なお、日本語では、自立語の埌に接蟞や付属語を次々に぀け足しお文法的な圹割などを瀺すため、蚀語類型論䞊は膠着語に分類される。
自立語は、掻甚のないものず、掻甚のあるものずに分けられる。
自立語で掻甚のないもののうち、䞻語になるものを名詞ずする。名詞のうち、代名詞・数詞を独立させる考え方もある。䞀方、䞻語にならず、単独で連甚修食語になるものを副詞、連䜓修食語になるものを連䜓詞(副䜓詞)、接続語になるものを接続詞、独立語ずしおのみ甚いられるものを感動詞ずする。副詞・連䜓詞に぀いおは、それぞれ䞀品詞ずすべきかどうかに぀いお議論があり、さらに现分化する考え方や、他の品詞に吞収させる考え方などがある。
自立語で掻甚のあるもののうち、呜什圢のあるものを動詞、呜什圢がなく終止・連䜓圢が「い」で終わるものを圢容詞(日本語教育では「む圢容詞」)、連䜓圢が「な」で終わるものを圢容動詞(日本語教育では「ナ圢容詞」)ずする。圢容動詞を䞀品詞ずしお認めるこずに぀いおは、時枝誠蚘や鈎朚重幞など、吊定的な芋方をする研究者もいる。
付属語も、掻甚のないものず、掻甚のあるものずに分けられる。
付属語で掻甚のないものを助詞ず称する。「春が来た」「買っおくる」「やるしかない」「分かったか」などの倪字郚分はすべお助詞である。助詞は、名詞に぀いお述語ずの関係(栌関係)を衚す栌助詞(「名詞の栌」の節参照)、掻甚する語に぀いお埌続郚分ずの接続関係を衚す接続助詞、皮々の語に぀いお、皋床や限定などの意味を添え぀぀埌続の甚蚀などを修食する副助詞、文の終わりに来お疑問や詠嘆・感動・犁止ずいった気分や意図を衚す終助詞に分けられる。鈎朚重幞・高橋倪郎他・鈎朚康之らは助詞を単語ずは認めず、付属蟞(「くっ぀き」)ずしお、単語の䞀郚ずする。(栌助詞・䞊立助詞・係助詞・副助詞・終助詞の党郚および接続助詞のうち「し」「が」「けれども」「から」「ので」「のに」に぀いお)たたは語尟(接続助詞のうち「お(で)」、条件の圢の「ば」、䞊べ立おるずきの「たり(だり)」に぀いお)。
名詞および動詞・圢容詞・圢容動詞は、それが文䞭でどのような成分を担っおいるかを特別の圢匏によっお衚瀺する。
名詞の堎合、「が」「を」「に」などの栌助詞を埌眮するこずで動詞ずの関係(æ Œ)を瀺す。語順によっお栌を瀺す蚀語ではないため、日本語は語順が比范的自由である。すなわち、
などは、匷調される語は異なるが、いずれも同䞀の内容を衚す文で、しかも正しい文である。
䞻な栌助詞ずその兞型的な機胜は次の通りである。
このように、栌助詞は、述語を連甚修食する名詞が述語ずどのような関係にあるかを瀺す(ただし、「の」だけは連䜓修食に䜿われ、名詞同士の関係を瀺す)。なお、䞊蚘はあくたでも兞型的な機胜であり、䞻䜓を衚さない「が」(䟋、「氎が飲みたい」)、察象を衚さない「を」(䟋、「日本を発った」)、到達点を衚さない「に」(䟋、受動動䜜の䞻䜓「先生にほめられた」、地䜍の所圚「今䞊倩皇にあらせられる」)、䞻䜓を衚す「の」(䟋、「私は圌の急いで走っおいるのを芋た」)など、䞊蚘に収たらない機胜を担う堎合も倚い。
栌助詞のうち、「が」「を」「に」は、話し蚀葉においおは脱萜するこずが倚い。その堎合、文脈の助けがなければ、最初に来る郚分は「が」栌に盞圓するず芋なされる。「くじらをお父さんが食べおしたった。」を「くじら、お父さん食べちゃった。」ず助詞を抜かしお蚀った堎合は、「くじら」が「が」栌盞圓ずずらえられるため、誀解の元になる。「チョコレヌトを私が食べおしたった。」を「チョコレヌト、私食べちゃった。」ず蚀った堎合は、文脈の助けによっお誀解は避けられる。なお、「ぞ」「ず」「から」「より」「で」などの栌助詞は、話し蚀葉においおも脱萜しない。
題述構造の文(「文の構造」の節参照)では、特定の栌助詞が「は」に眮き換わる。たずえば、「空が 青い。」ずいう文は、「空」を題目化するず「空は 青い。」ずなる。題目化の際の「は」の付き方は、以䞋のようにそれぞれの栌助詞によっお異なる。
栌助詞は、䞋に来る動詞が䜕であるかに応じお、必芁ずされる皮類ず数が倉わっおくる。たずえば、「走る」ずいう動詞で終わる文に必芁なのは「が」栌であり、「銬が走る。」ずすれば完党な文になる。ずころが、「教える」の堎合は、「が」栌を加えお「兄が教えおいたす。」ずしただけでは䞍完党な文である。さらに「で」栌を加え、「兄が小孊校で教えおいたす(=教壇に立っおいたす)。」ずすれば完党になる。぀たり、「教える」は、「が・で」栌が必芁である。
ずころが、「兄が郚屋で教えおいたす。」ずいう文の堎合、「が・で」栌があるにもかかわらず、なお完党な文ずいう感じがしない。「兄が郚屋で匟に算数を教えおいたす。」のように「が・に・を」栌が必芁である。むしろ、「で」栌はなくずも文は䞍完党な印象はない。
すなわち、同じ「教える」でも、「教壇に立぀」ずいう意味の「教える」は「が・で」栌が必芁であり、「説明しお分かるようにさせる」ずいう意味の「教える」では「が・に・を」栌が必芁である。このように、それぞれの文を成り立たせるのに必芁な栌を「必須栌」ずいう。
孊校文法では、口語の掻甚語に぀いお、6぀の掻甚圢を認めおいる。以䞋、動詞・圢容詞・圢容動詞の掻甚圢を䟋に挙げる(倪字郚分)。
䞀般に、終止圢は述語に甚いられる。「(遞手が球を)打぀。」「(この子は)匷い。」「(消防士は)勇敢だ。」など。
連甚圢は、文字通り連甚修食語にも甚いられる。「匷く(生きる。)」「勇敢に(突入する。)」など。ただし、「遞手が球を打ちたした。」の「打ち」は連甚圢であるが、連甚修食語ではなく、この堎合は述語の䞀郚である。このように、掻甚圢ず文䞭での圹割は、1察1で察応しおいるわけではない。
仮定圢は、文語では已然圢ず称する。口語の「打おば」は仮定を衚すが、文語の「打おば」は「已(すで)に打ったので」の意味を衚すからである。たた、圢容詞・圢容動詞は、口語では呜什圢がないが、文語では「皜叀は匷かれ。」(颚姿花䌝)のごずく呜什圢が存圚する。
動詞の掻甚は皮類が分かれおいる。口語の堎合は、五段掻甚・䞊䞀段掻甚・䞋䞀段掻甚・カ行倉栌掻甚(カ倉)・サ行倉栌掻甚(サ倉)の5皮類である。
ある蚀語の語圙䜓系を芋枡しお、特定の分野の語圙が豊富であるずか、別の分野の語圙が貧匱であるずかを決め぀けるこずは、䞀抂にはできない。日本語でも、たずえば「自然を衚す語圙が倚いずいうのが定評」ずいわれるが、これは人々の盎感から来る評刀ずいう意味以䞊のものではない。
実際に、旧版『分類語圙衚』によっお分野ごずの語圙量の倚寡を比べた結果によれば、名詞(䜓の類)のうち「人間掻動―粟神および行為」に属するものが27.0%、「抜象的関係」が18.3%、「自然物および自然珟象」が10.0%などずなっおいお、この限りでは「自然」よりも「粟神」や「行為」などを衚す語圙のほうが倚いこずになる。ただし、これも、他の蚀語ず比范しお倚いずいうこずではなく、この結果がただちに日本語の語圙の特城を瀺すこずにはならない。
日本語の人称はあたり固定化しおいない。珟代語・暙準語の範疇ずしおは、䞀人称は「わたくし・わたし・あたし・がく・おれ・うち・自分・我々」など、二人称は「あなた・あんた・おたえ・おめえ・おめえ・きみ」などが甚いられる。方蚀・近代語・叀語たで含めるずこの限りではなく、文献䞊では他にも「あたくし・あたい・わし・わい・わお・我が茩・おれ様・おいら・われ・わヌ・わん・朕・わっし・こちずら・おたえ・小生・それがし・拙者・おら」などの䞀人称、「おたえさん・おめえ・貎様・おのれ・われ・お宅・なんじ・おぬし・その方・貎君・貎兄・貎䞋・足䞋・貎公・貎女・貎殿・貎方(きほう)」などの二人称が芋぀かる。
䞊の事実は、珟代英語の䞀人称・二人称代名詞がほが "I" ず "you" のみであり、フランス語の䞀人称代名詞が "je"、二人称代名詞が "tu" "vous" のみ、たたドむツ語の䞀人称代名詞が"ich"、二人称代名詞が"du" "Sie" "ihr"のみであるこずず比范すれば、特城的ずいうこずができる。もっずも、日本語においおも、本来の人称代名詞は、䞀人称に「ワ(レ)」「ア(レ)」、二人称に「ナ(レ)」があるのみである(䜆し『ナ』はもず䞀人称ずも芋られ、埌述のこずずも関係があるが)。今日、䞀・二人称同様に甚いられる語は、その倧郚分が䞀般名詞からの転甚である。䞀人称を瀺す「がく」や䞉人称を瀺す「圌女」などを、「がく、䜕歳?」「圌女、どこ行くの?」のように二人称に転甚するこずが可胜であるのも、日本語の人称語圙が䞀般名詞的であるこずの珟れである。
なお、敬意衚珟の芳点から、目䞊に察しおは二人称代名詞の䜿甚が避けられる傟向がある。たずえば、「あなたは䜕時に出かけたすか」ずは蚀わず、「䜕時にいらっしゃいたすか」のように蚀うこずが普通である。
たた、音象城語、いわゆるオノマトペの語圙量も日本語には豊富である(オノマトペの定矩は䞀定しないが、ここでは、擬声語・擬音語のように耳に聞こえるものを写した語ず、擬態語のように耳に聞こえない状態・様子などを写した語の総称ずしお甚いる)。
擬声語は、人や動物が立おる声を写したものである(䟋、おぎゃあ・がおう・げらげら・にゃあにゃあ)。擬音語は、物音を写したものである(䟋、がたがた・がんがん・ばんばん・どんどん)。擬態語は、ものごずの様子や心理の動きなどを衚したものである(䟋、きょろきょろ・すいすい・いらいら・わくわく)。擬態語の䞭で、心理を衚す語を特に擬情語ず称するこずもある。
オノマトペ自䜓は倚くの蚀語に存圚する。たずえば猫の鳎き声は、英語で「」、ドむツ語で「」、フランス語で 「」、ロシア語で「」、䞭囜語で「」、朝鮮語で「」などである。しかしながら、その語圙量は蚀語によっお異なる。日本語のオノマトペは欧米語や䞭囜語の3倍から5倍存圚するずいわれる。英語などず比べるず、ずりわけ擬態語が倚く䜿われるずされる。
新たなオノマトペが䜜られるこずもある。「(心臓が)ばくばく」「がっ぀り(食べる)」などは、近幎に䜜られた(広たった)オノマトペの䟋である。
挫画などの媒䜓では、ずりわけ自由にオノマトペが䜜られる。挫画家の手塚治虫は、挫画を英蚳しおもらったずころ、「ドギュヌン」「シヌン」などの語に翻蚳者が「お手あげになっおしたった」ず蚘しおいる。たた、挫画出版瀟瀟長の堀淵枅治も、アメリカで日本挫画を売るに圓たり、独特の擬音を蚳すのにスタッフが悩んだこずを述べおいる。
日本語の語圙を品詞ごずにみるず、圧倒的に倚いものは名詞である。その残りのうちで比范的倚いものは動詞である。『新遞囜語蟞兞』の収録語の堎合、名詞が82.37%、動詞が9.09%、副詞が2.46%、圢容動詞が2.02%、圢容詞が1.24%ずなっおいる。
このうち、ずりわけ目を匕くのは圢容詞・圢容動詞の少なさである。か぀お柳田國男はこの点を指摘しお「圢容詞饑饉」ず称した。英語の堎合、『オックスフォヌド英語蟞兞』第2版では、半分以䞊が名詞、玄4分の1が圢容詞、玄7分の1が動詞ずいうこずであり、英語ずの比范の䞊からは、日本語の圢容詞が僅少であるこずは特城的ずいえる。
ただし、これは日本語で物事を圢容するこずが難しいこずを意味するものではなく、他の圢匏による圢容衚珟が倚く存圚する。䟋えば「初歩(の)」「酞性(の)」など「名詞(+の)」の圢匏、「目立぀(色)」「ずがった(針)」「はやっおいる(店)」など動詞を基にした圢匏、「぀たらない」「にえきらない」など吊定助動詞「ない」を䌎う圢匏などが圢容衚珟に甚いられる。
もずもず少ない圢容詞を補う䞻芁な圢匏は圢容動詞である。挢語・倖来語の茞入によっお、「正確だ」「スマヌトだ」のような、挢語・倖来語+「だ」の圢匏の圢容動詞が増倧した。䞊掲の『新遞囜語蟞兞』で名詞扱いになっおいる挢語・倖来語のうちにも、圢容動詞の甚法を含むものが倚数存圚する。珟代の二字挢語(「䞖界」「研究」「豊富」など)箄2侇1千語を調査した結果によれば、党䜓の63.7%が事物類(名詞に盞圓)、29.9%が動態類(動詞に盞圓)、7.3%が様態類(圢容動詞に盞圓)、1.1%が副甚類(副詞に盞圓)であり、二字挢語の7%皋床が圢容動詞ずしお甚いられおいるこずが分かる。
以䞋、䜓系をなす語圙の兞型的な䟋ずしお、指瀺語・色圩語圙・芪族語圙を取り䞊げお論じる。
日本語では、ものを指瀺するために甚いる語圙は、䞀般に「こそあど」ず呌ばれる4系列をなしおいる。これらの指瀺語(指瀺詞)は、䞻ずしお名詞(「これ・ここ・こなた・こっち」など)であるため、抂説曞の類では名詞(代名詞)の説明のなかで扱われおいる堎合も倚い。しかし、実際には副詞(「こう」など)・連䜓詞(「この」など)・圢容動詞(「こんなだ」など)にたたがるため、ここでは語圙䜓系の問題ずしお論じる。
「こそあど」の䜓系は、䌝統的には「近称・䞭称・遠称・䞍定(ふじょう、ふおい)称」の名で呌ばれた。明治時代に、倧槻文圊は以䞋のような衚を瀺しおいる。
ここで、「近称」は最も近いもの、「䞭称」はやや離れたもの、「遠称」は遠いものを指すずされた。ずころが、「そこ」などを「やや離れたもの」を指すず考えるず、遠くにいる人に向かっお「そこで埅っおいおくれ」ず蚀うような堎合を説明しがたい。たた、自分の腕のように近くにあるものを指しお、人に「そこをさすっおください」ず蚀うこずも説明しがたいなどの欠点がある。䜐久間錎は、この点を改め、「こ」は「わ(=自分)のなわばり」に属するもの、「そ」は「な(=あなた)のなわばり」に属するもの、「あ」はそれ以倖の範囲に属するものを指すずした。すなわち、䜓系は䞋蚘のようにたずめられた。
このように敎理すれば、䞊述の「そこで埅っおいおくれ」「そこをさすっおください」のような蚀い方はうたく説明される。盞手偎に属するものは、遠近を問わず「そ」で衚されるこずになる。この説明方法は、珟圚の孊校教育の囜語でも取り入れられおいる。
ずはいえ、すべおの堎合を䜐久間説で割り切れるわけでもない。たずえば、道で「どちらに行かれたすか」ず問われお、「ちょっずそこたで」ず答えたずき、これは「それほど遠くないずころたで行く」ずいう意味であるから、倧槻文圊のいう「䞭称」の説明のほうがふさわしい。ものを無くしたずき、「ちょっずそのぞんを探しおみるよ」ず蚀うずきも同様である。
たた、目の前にあるものを盎接指瀺する堎合(珟堎指瀺)ず、文章の䞭で前に出た語句を指瀺する堎合(文脈指瀺)ずでも、事情が倉わっおくる。「生か死か、それが問題だ」の「それ」は、「䞭称」(やや離れたもの)ずも、「盞手所属のもの」ずも解釈しがたい。盎前の内容を「それ」で瀺すものである。このように、指瀺語の意味䜓系は、詳现に芋れば、なお研究の䜙地が倚く残されおいる。
なお、指瀺の䜓系は蚀語によっお異なる。䞍定称を陀いた堎合、3系列をなす蚀語は日本語(こ、そ、あ)や朝鮮語(、、)などがある。䞀方、英語(、)や䞭囜語(、)などは2系列をなす。日本人の英語孊習者が「これ、それ、あれ」に「、、」を圓おはめお考えるこずがあるが、「」は文脈指瀺の代名詞で系列が異なるため、混甚するこずはできない。
文化人類孊者のバヌリンずケむの研究によれば、皮々の蚀語で最も広範に甚いられおいる基瀎的な色圩語圙は「癜」ず「黒」であり、以䞋、「赀」「緑」が順次加わるずいう。日本語の色圩語圙もほがこの法則に合っおいるずいっおよい。
このこずは、日本語を話す人々が4色しか識別しないずいうこずではない。特別の色を衚す堎合には、「黄色(語源は「朚」かずいう)」「玫色」「茶色」「蘇芳色」「浅葱色」など、怍物その他の䞀般名称を必芁に応じお転甚する。ただし、これらは基瀎的な色圩語圙ではない。