2. ブラウズモード
2.1. ユーザーガイドを読んでみよう
Windows はもともとキーボードでいろいろな操作ができるようになっていますが、 NVDA は独自に「文字を読むための操作」を付け加えています。 これは「ブラウズモード」と呼ばれています。 ブラウズとは「閲覧」という意味です。 「Webブラウザー」という言葉はよくご存じと思いますが、 これは「Webを閲覧するためのもの」という意味です。 NVDAの「ブラウズ」はWebブラウザーだけでなくいろいろな場面で使えます。
NVDAメニューの「ユーザーガイド」を開くとブラウズモードの操作が使えます。
なお、現在のバージョンの NVDA 日本語版では「ユーザーガイド」を開くと、お使いの Windows 環境における既定の Web ブラウザー(例えば Microsoft Edge)を起動します。
以下では NVDA の「設定」→「日本語設定」→「ヘルプを独自のウィンドウで開く」をチェックした場合について説明します。 この設定を使うと Web ブラウザーを起動せずにブラウズモードを試すことができます。
NVDA 日本語版を起動して、NVDAメニューを開き「ヘルプ」「ユーザーガイド」を 選んでください。
アクセラレーターキーを使うと、以下のように操作できます:
NVDA+N を押す
アルファベット H を押す
アルファベット U を押す
開くとすぐに読み上げが始まりますが、Shift を押すと音声が止まります。 このユーザーガイドは Alt+Tab で他のアプリケーションから切り替えることが でき、Alt+F4 で終了できます。
まずテキスト(文字)を確認する操作です。 「キーボード設定」「キーボードレイアウト」の設定によって 操作が違うので、最初にまとめます。
ラップトップ配列:
NVDA+左矢印:前の文字に移動
NVDA+ピリオド:現在の文字を読み上げ
NVDA+右矢印:次の文字に移動
NVDA+上矢印:前の行に移動
NVDA+Shift+ピリオド:現在の行を読み上げ
NVDA+下矢印:次の行に移動
デスクトップ配列:
テンキー1:前の文字に移動
テンキー2:現在の文字を読み上げ
テンキー3:次の文字に移動
テンキー7:前の行に移動
テンキー8:現在の行を読み上げ
テンキー9:次の行に移動
操作を覚えるためには前後左右など位置関係をイメージするとよいでしょう。 以下で具体的に説明します。 NVDAキーは「無変換」または Insert キーでしたね。
ラップトップ配列
NVDA+左矢印:前の文字に移動
デスクトップ配列
テンキー1:前の文字に移動
これを押すと「左 大文字 エヌ」と読み上げます。 同じ操作を何度繰り返しても「左 大文字 エヌ」と読み上げます。 これはいま注目している文字がすでに行の左端にあり、これ以上左に移動できないからです。 また「大文字」はアルファベットのエヌが大文字であることを示します。 「音声設定」「大文字にビープ音を付ける」がチェックされている場合は 「大文字」と読むかわりにピッという音が鳴ります。
ラップトップ配列
NVDA+ピリオド:現在の文字を読み上げ
デスクトップ配列
テンキー2:現在の文字を読み上げ
これを押すとやはり「大文字 エヌ」と読み上げます。 NVDAキーを押したままピリオド(ラップトップ配列) またはテンキー2(デスクトップ配列)を「ポン、ポン」と2回押すと 「半角 英字 大文字 エヌ」と読み上げます。
ラップトップ配列
NVDA+右矢印:次の文字に移動
デスクトップ配列
テンキー3:次の文字に移動
これを押すと「大文字 ブイ」と読み上げます。 この操作を繰り返すと「大文字 デー、大文字 エー、スペース、に、ぜろ、いち、ご」のように 1文字ずつ表示されている情報が確認できます。
「注目している文字」を左右に移動する操作を覚えました。 このときに Windows のテキストカーソルやマウスカーソルは一切移動しません。 開いているウィンドウの内容を壊したり書き換えたりすることもありません。 この操作が NVDA の「レビューカーソル」の移動です。
今度はレビューカーソルを1行ずつ動かしてみます。
ラップトップ配列
NVDA+上矢印:前の行に移動
デスクトップ配列
テンキー7:前の行に移動
これを押すと 「トップ 見出し レベル1 NVDA 2022.1jp ユーザーガイド」 と読み上げます。 繰り返しても読み上げる内容は同じです。 これは、レビューカーソルが一番上の行にあって、 その行が「見出しレベル1」という種類の情報で、 内容が「NVDA 2022.1jp ユーザーガイド」であることを示しています。
ラップトップ配列
NVDA+Shift+ピリオド:現在の行を読み上げ
デスクトップ配列
テンキー8:現在の行を読み上げ
これを押すと 「見出し レベル1 NVDA 2022.1jp ユーザーガイド」 と読み上げます。
ラップトップ配列
NVDA+下矢印:次の行に移動
デスクトップ配列
テンキー9:次の行に移動
これを押すと 「見出し レベル2 目次」 と読み上げます。
現在の行の読み上げ (ラップトップ配列:NVDA+Shift+ピリオド、デスクトップ配列:テンキー8) を2回続けて押すと 「もく、じ」のように1文字ずつ区切って読み上げます。
また3回続けて押すと 「もく、めじるしのめ、つぎ、じかいのじ」 のように文字を詳しく説明します。
おまけですが NVDA+F を押すと 「Times New Roman 24pt 太字 ベースライン 中央揃え」 のように現在の行の書式を説明します。
これが「何かを読む操作」の基本です。 今回の例では、ただ矢印キーを押したときにも 似たような動きをするのですが、これはたまたま動いているアプリケーションが 矢印キーで操作できて、レビューカーソルも自動的に一緒に移動して いるからです。 アプリケーションの操作ではなくNVDAの機能で文字や文章を確認できる、 ということをご理解ください。
このブラウズモードにはもっとたくさんの操作方法があります。 アルファベットの H を押すと「次の見出し」つまり下に向かって移動します。 また Shift+H を押すと「前の見出し」つまり上に向かって移動します。 この「見出しジャンプ」機能と、行単位や文字単位の移動だけでも、 ひととおりユーザーガイドを読むことができるでしょう。
ここでご紹介した操作はユーザーガイド 5.5. テキストの確認 で 説明されています。
また、ブラウズモードになっているときに NVDA+1 で入力ヘルプモードに切り替えると、 ブラウズモードでのキーの機能を知ることができます。 例えば数字キー 1 を押すと「1 次の見出し1へ移動」のように説明されます。
2.2. ブラウズモードを使いこなす
ブラウズモードの操作は Microsoft Edge や Internet Explorer, Mozilla Firefox, Google Chrome などの ウェブブラウザ、Adobe Reader など、さまざまな場面で使えます。
現在の Microsoft Edge ブラウザは Google Chrome と同じ技術を使って開発されています。 NVDA では、これらをまとめて「Chromium ベースのブラウザ」と呼んでいます。
さきほどブラウズモードでの行や文字単位の移動、 H で「次の見出し」に移動、といった操作を説明しました。 アルファベット1文字などの入力による移動を 「1文字ナビゲーション」と呼んでいます。
例えば L でリスト、I でリスト項目、T でテーブル、 F でフォームフィールド(テキスト入力欄やチェックボックスなど)、 G で画像にジャンプします。
Shift と一緒に押すと逆方向に移動します。
利用できる操作の一覧はユーザーガイド 6.1. 1文字ナビゲーション を 参照してください。
テーブルの中では下矢印を押すと1行1列、1行2列、1行3列、のように移動し、 右端の列から折り返して2行1列、のように進みます。
列を移動せずに前後の行に移動したいときなどは、以下の操作が利用できます。
Ctrl+Alt+左矢印:前の列に移動
Ctrl+Alt+右矢印:次の列に移動
Ctrl+Alt+上矢印:前の行に移動
Ctrl+Alt+下矢印:次の行に移動
ブラウズモードに対応したドキュメントは、見出しによって階層構造を 作ることができ、その構造は「要素リスト」で確認できます。
要素リストは NVDA+F7 で開くダイアログです。
「ユーザーガイド」のブラウズ中に要素リストを開くと、ツリービューには リンクがはられた項目、例えば目次でページ内リンクがついた章や 節のタイトルが並びます。 上下の矢印キーで要素を移動して、左矢印で折りたたむ、 右矢印で展開する、といった操作ができます。
項目に移動してエンターキーを押すと、ドキュメントの対応する場所に ジャンプできます。
このツリービューから Shift+Tab で「種別」というグループに移動すると 「リンク」「見出し」「ランドマーク」のラジオボタンがあり、 切り替えるとツリービューの内容が更新されます。
またフィルター機能を使うと、特定の文字列を含む項目だけを表示できます。
2.3. ブラウズモードの設定
NVDA メニューの「設定」「ブラウズモード」の項目について すこし補足します。
まず「1行の最大文字数」です。 この値の初期値は100文字で、10から250までの数字が指定できます。 画面で横の幅に収まらないたくさんの文字を含む要素は、改行されて 複数の行として表示されます。 しかしブラウズモードで行の移動をするときには、 画面の幅とは関係なく、この「1行の文字数」で区切られます。
次に「サポートされている場合画面レイアウトを使用」という 設定について説明します。 例えば以下のようにチェックボックスが横に2個並んでいるとします。
興味のある国
アメリカ (チェックボックス) イギリス (チェックボックス)
「画面レイアウトを使用」の場合は下矢印キーを押すごとに
「興味のある国」
「アメリカ チェックボックス チェックなし
イギリス チェックボックス チェックなし」
のように区切られます。
「画面レイアウトを使わない」では、下矢印キーを押すごとに
「興味のある国」
「アメリカ」
「チェックボックス チェックなし」
「イギリス」
「チェックボックス チェックなし」
のように区切られます。 (どのようにサイトが制作されているかによって実際の動作は 異なる場合があります) 必要に応じて使い分けてください。
画面レイアウトの「使用」「使わない」は NVDA+V を押して 切り替えることもできます。
最後に「フォーカスの変化を追跡する自動フォーカスモード」 について説明します。
キーボードの H を押して見出しジャンプするのではなく、 エディットフィールドに h という文字を入力したいことがあります。 このような場合には「フォーカスモード」に切り替えて、キー入力を ウェブブラウザに対して行う必要があります。 必要に応じて自動的にこの切替をする機能が 「自動フォーカスモード」です。
フォーカスモードに切り替わるときには「ガシャ」という音が、 ブラウズモードに戻るときには「ポン」という音が鳴ります。 MSN, Yahoo, Google のような検索サイトを開いて Tab キーで移動していると、検索キーワードの入力欄でこのような 音を聞くことができます。
手動でのフォーカスモードの切り替えは NVDA+スペース で可能です。 エディットフィールドで NVDA+スペースを繰り返し押すと、 「ガシャ」「ポン」「ガシャ」「ポン」とモードが交互に切り替わります。
フォーカスモードは文字入力だけでなく、コンボボックスの操作などでも使われます。
例えばコンボボックスで下矢印キーを押しても、 ブラウズモードのままだとひとつ下の行や要素に移動してしまいます。
「コンボボックス 折りたたみ」のように読み上げられる場所で NVDA+スペースを押して「ガシャ」という音が聞こえてから 下矢印と上矢印を押せば、コンボボックスの選択を変えることができます。
変更が終わったらブラウズモードに戻すために、 もう一度 NVDA+スペースを押して「ポン」という音が鳴ることを 確認してください。
2.4. ブラウズモードに関係する設定
ブラウズモードに影響するその他の設定として、 まず「書式情報」の中には以下のような項目があります。
フォント名、フォントサイズ、フォント属性、配置、色、 校閲者による更新、スタイル、スペルエラー、 ページ番号、行番号、行インデント、 テーブル、テーブルの行/列見出し、テーブルのセル番地、リンク、 見出し、リスト、引用、ランドマーク、フレーム、クリック可能
チェックされた項目は移動するたびに読み上げるので、不要な項目は チェックなしにするとよいでしょう。 一部の項目はウェブブラウザではなく Adobe Reader, Word, Excel, メモ帳などで有効です。 無効にした項目の情報には NVDA+Tab や NVDA+F で 確認できるものもあります。
また Internet Explorer ではリンクされたファイルのURLが、 ツールチップという小さなウィンドウで表示され、 それが読み上げられることがあります。 「オブジェクト表示」「ツールチップの報告(T)」の設定で、 このような情報を読み上げさせたり無視させたりできます。
NVDA の操作や設定は、すべてのアプリケーションを通じて なるべく共通な方法で行うようになっているので、 最初は分かりにくいかも知れませんが、いろいろ試していただけると、 きっと便利な使い方が見つかると思います。