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世界保健機関（WHO）によれば、昨年、結核による死亡者数は１６０万人に上った。これは、エイズとマラリアによる死亡者数の合計よりも多い。スイスとブラジルの研究者たちは結核菌遺伝子の謎を解き明かし、主な抗結核薬に耐性を持つ多剤耐性結核と闘おうとしている。しかし、ブラジルにおける科学関連予算の大幅な削減が大きな障害となっているのが現状だ。
バーゼルにあるスイス熱帯公衆衛生研究所（TPH）外部リンクの一室で、セバスチャン・ガヌー教授がブラジル各地から、ブラジルの中心的な公衆衛生研究所であるオズワルド・クルス財団（Friocruz）外部リンクを通じて送られてきたサンプルを受け取っている。
「我々にはブラジルとの結核に関する重要な共同研究プロジェクトがある。目的は、リオデジャネイロの患者に見られる結核菌株を解明し、どれくらいの頻度で一人の患者が複数の型の結核菌を保菌することがあるのかを明らかにすることだ」とガヌー教授は説明する。それら結核菌の一つが投与された薬に対して多剤耐性である可能性もあるという。ガヌー教授は「今日の世界最大の問題は多剤耐性だ」と強調する。「多くの国に、もはや治すことのできない様々なタイプの結核が存在している」
WHOの最新データによれば、昨年、抗結核薬に耐性を示す結核患者の数は増加し、５５万８千人が最も一般的な抗結核薬であるリファンピシンに耐性のある結核に罹患した。さらに、これらの患者の８２％は多剤耐性結核だった。全体として、新規結核患者の３．５％、治療を受けている患者の１８％が結核治療で最も重要な薬に対して耐性があった。
都市化によって蔓延した病
スイスでの研究に、ブラジルで採取されたサンプルは不可欠だ。サンプルの一部は世界中から送られ、ガヌー教授の研究チームによって分析された結核菌群２５９株に組み込まれる。
ガヌー教授ら研究者が、１３年に遺伝学に関する国際学術誌「ネイチャージェネティクス」に発表した論文外部リンクは、結核菌の遺伝的多様性を示し、ヒト遺伝子の進化の推移と結核菌遺伝子のそれを比較することを可能にした。結核菌は７万年前にアフリカに出現し、人類と共に進化してきたと論文は締めくくった。「人類が都市で暮らすようになり、人口が増加するにつれて、結核はより有害な病気になった」とガヌー教授は指摘する。
論文の目的はただ結核菌の進化を解明することだけではなく、結核を引き起こす細菌は多種多様であるにもかかわらず、世界各地の結核患者が同じ症状を発するわけを理解することだった。これは結核と闘う方法を見つけるために非常に重要な点だ。「薬やワクチンの開発を目的とする研究の多くは単に結核菌の変異体を扱うだけだ。しかし、この論文が結核菌の進化の道筋を地図上に示したことで、地球上の様々な地域で薬が同じ効果を発揮するようにできるかもしれない」とガヌー教授は説明する。
経済危機のあおりを受けるブラジルの科学者たち
スイス熱帯公衆衛生研究所とブラジルのオズワルド・クルス財団の共同研究プロジェクトは、共同出資によって賄われている。ブラジル側は、Fiocruzのメンバーでもあるリオデジャネイロ連邦大学のアフラニオ・クリツキ教授が、リオデジャネイロ州の科学技術革新助成財団（FAPERJ外部リンク）の助成金を獲得した。スイス側は、目下、ブラジルとの１２の共同研究プロジェクトを支援外部リンクする連邦科学研究基金（SNF/FNS）外部リンクから助成金が出ている。これらの資金で、博士課程にいる両国の学生の交流事業も行われている。
ブラジルの経済危機がなければ、すべて上手く行っただろう。しかし、「残念なことに、ブラジル側の出資に問題が起きている」とガヌー教授は明らかにする。「スイス側はスイス分を出資しているが、しばしばブラジル側の出資が遅れ、研究の実施に支障をきたしている」
目下の経済危機はブラジルの研究者が直面する最大の試練だ。昨年だけで、ブラジル政府は科学関連予算を４４％削減した。今年はさらに１５％の削減が見込まれる。状況は非常に深刻であるため、昨年、様々な国の２３人の科学者たち（全員が過去４０年間にノーベル賞を受賞）は、ブラジルのミシェル・テメル大統領に科学事業予算の削減を批判する旨の書簡を送った。
「共同研究プロジェクトに出資するための資金はもとより、リオデジャネイロ州で結核に関する調査を行う資金にも事欠いている。奨学金の資金も不足しているため、研究に従事する学生をブラジルに引き留めることも困難だ。学生たちは他国へ移住していく」と、ブラジルの結核研究ネットワーク（Réseau TB外部リンク）国際協力部門のコーディネーターでもあるクリツキ教授は嘆息する。
長年の友
クリツキ教授はガヌー教授と共に共同研究プロジェクトの中心的な研究者だ。二人は結核根絶に取り組むラテンアメリカの研究者の国際交流事業で定期的に顔を合わせるなかで知り合った旧知の間柄だ。「ガヌー教授はRéseau TBの議論に、特に彼の専門分野である系統発生学、つまり、ヒト型結核菌の遺伝子型の分析に関する議論に積極的に参加している」とクリツキ教授は話す。
研究資金問題に直面しているだけに、ブラジルにとって他国からの支援は貴重だ。「スイスとの共同プロジェクトのおかげで、我々はガヌー教授の充実した研究施設や遺伝子分野の進んだ技術を利用することができる。また、バーゼルのスイス熱帯公衆衛生研究所に派遣したブラジルの博士課程の学生たちは新しい知識を得ることができる」とクリツキ教授は称賛する。
もちろん、ブラジル側の貢献も忘れてはならない。「南米大陸という規模ゆえに、ブラジルのような国は、様々な細菌株が、特に多剤耐性結核に関連する細菌株やヒトの間で最も伝染する細菌株が進化する様子をより良く知ることができる」とクリツキ教授は説明する。
待たれる新薬の開発
９月初め、ブラジルのレシフェにあるRéseau TBの研究室には、ブラジル人医師のドラウリオ・バレイラさんの姿もあった。バレイラさんはUNITAIDの結核部門に従事している。UNITAIDは、エイズ・マラリア・結核の治療薬等の価格を引き下げ、途上国に広く提供する国際機関（本部・ジュネーブ）で、WHOとも連携している。バレイラさんは、スイスのような富裕国はその支援を学術的協力に限るべきではないと考えている。
「すべての富裕国は結核との闘いに非常に大きな社会的責任を負っている。結核は空気感染する病だ。ワクチンも予防法もない。安全な国などどこにもない」とバレイラさんは強調する。
バレイラさんの頭にあるのはスイスの輸出額の４０％を占める製薬産業だ。「スイスでは結核の治療に使われる数多くの薬が製造されているが、新薬はない。実のところ、４０年以上もの長きにわたって新薬は市場に出なかったが、２０１２年と１３年にそれぞれ米国と日本で２つの新薬が発売された」とバレイラさんは指摘する。
ロシュやノバルティスのようなスイス最大級の製薬会社が持つノウハウは、結核との闘いに役立てることができるかもしれない。「多剤耐性結核の治療には７種類もの薬が使われている」ことをバレイラさんは強調した上で、「スイスは新薬を開発できるのではないか」と付け加えた。
エイズやマラリアよりも
WHOの最新の調査報告書外部リンク「結核グローバルレポート」によれば、世界人口の２３％に当たる１７億人がすでに結核菌に感染しているという。しかし、実際に発症するのはそのごく一部だ。
昨年、１千万人が新たに発症し、１６０万人が命を落とした。結核は世界で９番目に死亡率の高い病気であり、結核による死亡者数はエイズとマラリアによる死亡者数の合計よりも多い。
今年９月２６日、結核との闘いに関する取り組みを促進するため、国連総会は初の結核に関するハイレベル会合をニューヨークで開催した。５０カ国の国家元首、研究者、医師、マイクロソフト社の創設者ビル・ゲイツ氏のような著名人などを含む各国の代表者が出席した。最終的に採択された政治宣言には、今後２０２２年までに３５０万人の子供を含む４千万人を治療すること、結核の予防、診断、治療に年間１３０億ドル（約１兆４６５０億円）以上、研究に２０億ドルを投じることが盛り込まれた。
結核の根絶は、国連加盟国１９３カ国が署名した「持続可能な開発のための２０３０アジェンダ外部リンク」の目標の一つでもある。世界で最も結核の脅威にさらされているインド、中国、ナイジェリア、パキスタン、南アフリカには結核患者の６０％が集中している。
（仏語からの翻訳・江藤真理）
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毎日元気に仕事に励んでいたH.K.さんはある日、抗生物質が効かないバクテリア「多剤耐性菌」にかかった。体調が悪化し仕事ができなくなり、回復するまで何週間もかかったという。こうした耐性菌は日増しに現代社会を脅かしており、世界中で対策が講じられている。
初めは軽いせきが出るだけだったが、一向に治る気配がなかった。せきは次第にひどくなり、ITエンジニアのH.K.さん*は、かかりつけの医者に診てもらうことにした。診断結果は「珍しい肺炎」。炎症反応を示す値がみるみるうちに上がったため、抗生物質が処方された。
「ところが５日経っても全く良くならず、かえって症状が悪化した」とH.K.さんは振り返る。何週間も高熱にうなされ、寝込んだ。「医者が別の抗生物質に変えた２日後、やっと症状が回復に向かい始めた」
残念ながら全ての人がこのように助かるわけではない。抗生物質が効かないバクテリアが原因で命を落とす患者は毎年増え続け、推定では欧州連合（EU）だけでも毎年２万５千人が耐性菌の引き起こす感染症で亡くなっている。これを受け、世界保健機関（WHO）やスイス政府は、抗生物質の使用状況を監視するシステムを考案中だ。
抗生物質は、人間や動物の治療や家畜の餌に大量に使われている。効果のないウイルス病の治療にも使用されることもある。投与の量が不適切なためにバクテリアが完全に死滅しないでいると、残ったバクテリアにはすぐに耐性が付き、抗生物質が効かなくなる。
「既にスイスでも死亡例が出始めている。耐性菌には薬が効かないので手の施しようがない」とベルン大学感染症研究所のアンドレアス・クローネンベルクさん（感染症学）は言う。クローネンベルクさんはスイス抗生物質耐性研究センター長も務める。
乱用される抗生物質
チューリヒ大学病院で感染症の治療にあたるアンネリース・ツィンカーナーゲル医師は、とりわけ複数の薬品に耐性を持つ「グラム陰性菌」が非常に危険だと言う。こういった耐性菌が増加する背景には、抗生物質が家畜の飼育に広く使用されていることや、多くの薬が医師の処方箋なしに手に入ること、医療現場で抗生物質が乱用されていることが挙げられる。
多剤耐性菌は病気に対する抵抗力が弱っている人には非常に危険だ。健康な人を媒介することもあり、「インド帰りの旅行者などは、グラム陰性菌を持ち帰ってくる」（ツィンカーナーゲルさん）。
そのため、抗生物質を適切に使用し、正しい衛生管理のもとで感染を防ぐことが重要となる。例えば手の殺菌消毒や、予防接種などは効果的だという。
スイスの危険度は「中」
スイス抗生物質耐性研究センターはホームページ上で、「バクテリアの抗生物質に対する耐性は世界的に『伝染病が広がるスピードで』増え続けている」と危機感を募らせる。「耐性菌に関する一般的な統計は存在しない。耐性菌といっても、病原菌と抗生物質を分けて考えなければならない」とクローネンベルクさんは言う。大腸菌を例にとると、「ESBL産生大腸菌」のグループではスイスで年間１％の割合で耐性菌が増えており、他の国ではもっと上昇率が高いという。
スイス政府は複数の省庁が協力し、耐性菌と戦うための政策を発表した。最大の目標は、人間や動物に使用する抗生物質の効き目をできる限り保つことだ。
政策では、院内感染の防止など、国内における耐性菌の拡散防止が重視されており、人間医学、獣医学、農業、自然環境など、多分野で抗生物質の使用状況を監視することが柱とされている。３月中、この分野に関わる団体などの間でこれらの内容を協議した後、政府は今年末までに具体策を発表する方針だ。
大切なのは「人間医学と獣医学を分けずに、関係者は皆、運命共同体と考えること。互いに相手に責任をなすりつけても意味がない」とクローネンベルクさんは言う。
WHOの計画
抗生物質が効かない耐性菌に立ち向かう努力は世界中で行われている。WHOは１４年に薬剤耐性に関する報告書を発表。これまでで最も総合的な内容になっている。それによると、ある種のバクテリアの耐性は既に世界各地で危険なレベルまで高まってしまったという。
１１４カ国のデータを基にまとめられた今回の報告書では、世界中の多数の地域で、いわゆる「切り札」とされる抗生物質が国民の大半に効き目がなかったことが述べられている。
本当に必要な場合にのみ抗生物質を処方・使用し、病気が少し回復した段階では決して中途半端に薬の使用を止めないようにWHOは勧めている。また、感染症を防ぐために衛生管理を徹底し、更に研究に取り組む重要性を訴えている。ところが研究を進めるあたり、実は問題があるようだ。
医薬品業界は興味を示さず
「近年、数多くの企業や医薬品メーカーが抗生物質の新薬の研究開発から手を引いた理由は様々だ」と業界団体「インターファーマ」のサラ・ケッヒ広報担当は言う。
「公益のためにも抗生物質の処方は限定されるべきだ。その結果、医薬品メーカーの収入は減るだろう。また、患者の数が比較的少ない割には、同じバクテリアに対して作用が異なる複数の抗生物質を開発するよう求められる」
多剤耐性菌との戦いは科学的にも難題だ。「しかし近年、企業や個人・団体が手を組んだ多数のプロジェクトが上がってきている」
例えば「New Drugs４Bag Bugs」というプロジェクトは、欧州委員会と企業が支援している。このプロジェクトによれば、新しい抗生物質は過去３０年間にわずか二つのグループしか開発されていない。他にも抗生物質全般についての研究を進めるプロジェクト「DRIVE-AB」が欧州で立ち上げられている。
今後、治療法が生まれると期待を持てるということか。１月初頭には、ドイツと米国の共同研究チームが画期的な新型抗生物質「テイクソバクチン（Teixobactin）」を発見したと発表している。ただ、薬剤としての実用化には、まだ５～１０年かかる見通しだ。
*（プライバシーなどの理由から匿名）
人間医学と獣医学の密接な関係
抗生物質が効かない耐性菌の問題は、人間医学と獣医学との間に関連するものだと見られている。だが、ベルン大学によると、その関係はまだ完全には解明されていない。
バクテリアは動物と人間が直接的／間接的（例：食物の中のサルモネラ菌）に接触することで伝達される。
家畜だけに見られる耐性菌が、人間医学で問題となっている耐性菌と同じだと分かっている。
「動物における微生物学の研究は、動物の健康のためだけではなく、結果的には人間の健康にも役立つ」と研究者は結論付けている。
（出典：ベルン大学）
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