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人里離れた「ビオコントロール」の工場に隣接したショップには、生きたマルハナバチ、テントウムシ繁殖キット、コウモリの巣といった奇妙な商品がある。訪れる客は菜園やガーデニングを趣味とする個人から農業経営者まで。マルハナバチはトマトの受粉に働く。テントウムシはアブラムシを食べ、コウモリは害虫の天敵だ。このコンテンツは 2009/09/03 15:25
しかし、ショップで扱うこうした商品はほとんど外国からの輸入品。ビオコントロールの本領は、害虫駆除のための生物農薬の製造。その世界ではリーダー的存在だ。
害虫駆除に生物を使う
生物農薬の代表格は、蚕を死に至らしめる病原細菌として20世紀早々に発見された「バチルス・チューリゲンシス」だ。日本で最初に発見されたものの、ドイツで新種の細菌として認められたため、発見されたチューリンゲンにちなんで命名された。蚕には有害な細菌だが、人体や環境に安全な害虫駆除の生物農薬「BT剤」として今では広く世界で使われている。
「クーリエ・ジャポン」8月号上で紹介されている英科学雑誌ニュー・サイエンティスト ( New Scientist ) の記事によると、最新の科学も生物農薬に注目しているらしい。マラリアやデング熱の原因となる蚊を早死にさせるバクテリア「ボルバキア」の研究がオーストラリアで進んでいるという。
スイスでは1987年、マルティン・アンデルマット氏とその夫人イザベルさんが、リンゴを食い荒らす害虫シンクイガの天敵を世界で初めてウイルスとして登録することに成功し、ビジネスを始めた。
日本のフェロモンで害虫が過労死
「アンデルマット・バイオコントロール ( Andermatt Biocontrol AG ) 」は、虫ならぬ益ウイルスや益線虫、益菌など15種を独自に製造し、約150品目の他の商品とともに販売する。創立20年後のいま、アンデルマット氏自ら、スイスの新聞紙上で「南アフリカから輸出されているリンゴにはすべてわが社の生物農薬が使われている」と言い放つほどの世界有数の企業にのし上がった。
シンクイガの天敵ウイルスやナメクジに効く線虫類は農作物に被害を与える虫を直接殺す。一方、日本から輸入したフェロモンを使った交信交錯法は、オスには辛い。例えば、シンクイガのメスが出すフェロモンを発散させるビニール紐を畑の木の枝などにくくりつけると
「畑の上にフェロモンの雲ができ、オスが寄って来ます 。しかし、そこでは繁殖相手のメスには遭遇しない。相手を探し、探し、探し疲れたオスは自然に死んでしまうのです。酷な話ですよね」
と輸出担当のダニエル・ツィンクさんは説明する。
化学農薬と同じく、生物農薬に対しても害虫は徐々に抵抗力をつけてしまうという。よって、天敵ウイルス剤と併用されるのがシンクイガを過労死させるフェロモンだ。
害虫と益虫のバランス
化学農薬を使った場合、害虫も益虫もすべてを殺し、水汚染やほかの動物への影響も否めない。残留農薬の心配もある。遺伝子組み換え工学を使い害虫に強い種類のトウモロコシも開発されているが、その環境に与える影響は未確認の上、消費者も遺伝子組み換え食品には懐疑的だ。
一方、生物農薬なら、殺す相手を選択できる上、人体には影響のないウイルスが使われるといった長所が挙げられる。ただ、生物農薬は化学薬品と比べ即効力がないため、効率よく使うための知識も必要だ。的確な生物農薬を使うと化学農薬より長期的な効果が得られるともいわれている。
また
「リンゴの栽培が世界各所に広まると同時に、シンクイガの天敵ウイルスも世界に広まりました」
よってシンクイガの天敵ウイルスは世界のどこでも外来生物とは言えず、自然環境を壊すということはない。しかも、シンクイガがいなければ、ウイルスも死ぬとツィンク氏は強調する。
「大昔なら、害虫による被害が発生すれば、人々が飢饉に陥るに任せていました。単一栽培が進んだ今、農作物は抵抗力が低下し害虫にとって理想の環境になっています。害虫をこのままのさばらすと、食糧難になります」
生物農薬を使うことは、害虫をこの世から1匹残らず駆除してしまうことではない。「害虫を許容範囲内に抑えることがわが社の哲学だ」とツィンク氏。
日本にはリンゴの害虫、シンクイガはいない。しかし、経済連携協定が結ばれた今、関税撤廃になれば、新しい市場として日本市場への進出も念頭にあるという。
佐藤夕美 ( さとうゆうみ ) 、グロースディートヴィル ( ルツェルン州 ) にて、swissinfo.ch
生物農薬
テントウムシなど天敵、ウイルス、線虫類、バクテリア、抗菌などを使って、農作物の害虫、病気を防ぐ。駆除対象生物が限定されるので、化学農薬と違って益虫を殺すことはない。有機農法や、低農薬農法に使われる。人畜無害で、環境保全面でも有益。End of insertion
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