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アグロ燃料は代替エネルギーの奇跡的な解決策になるどころか、発展途上国に悲惨な状況をもたらし行き詰まりを見せていると、スイスのNGO「スイスエイド」は訴える。
スイスエイド事務局長のキャロライン・モレル氏は、何百万人もが飢餓に苦しむ途上国の農業用地が、車を走らせるために使用されているという事実は受け入れ難いと語る。
キャンペーン
「車に95リットルのエタノールを給油するのに、200キログラムのトウモロコシが必要だ。200キログラムのトウモロコシがあれば1人の人間が1年間十分に暮らせる」
と、アグロ燃料の使用を非難するスイスエイド ( Swissaid ) のキャンペーン開始に際しモレル氏は語った。
また、スイスエイド理事長のルドルフ・レヒシュタイナー氏も非難の声を上げる。
「エネルギーと環境政策の点からみてアグロ燃料は理にかなっていない。土地を破壊し、貧しい農民を食べられない状況に追いやっているアグロ燃料ははっきり言って間違っている」
レヒシュタイナー氏によれば、アグロ燃料がもたらしたものは、食料価格の上昇、貧困者の強制退去、森林破壊、水資源への負担だという。「グリーン燃料」に対する世界の需要は、アメリカと欧州連合 ( EU ) が設定した高い目標値により拍車が掛けられている。燃料となる農作物の大多数はアメリカとEU以外の国で作られることになる。
スイスのモラトリウム
スイス中道左派の社会民主党 ( SP/PS ) の連邦議会議員でもあるレヒシュタイナー氏は、スイスへのアグロ燃料輸入の5年間のモラトリアムを呼びかける連邦議会主導の取り組みを昨年10月に開始した。
「わたしたちは再生可能なエネルギー源に投資するべきだ。アグロ燃料は新たな問題を生むだけだ」
とレヒシュタイナー氏は指摘する。
今回ベルンで開かれたスイスエイドによるキャンペーンのオープニングに参加したインド人農学者デヴィンダー・シャルマ氏によれば、インドでは1100万ヘクタールの土地がバイオディーゼルの生産に使われる植物「ジャトロファ ( ナンヨウアブラギリ )」用に割り当てられているという。これはスイスの表面積の3倍の広さに当たる。
「貧しい人たちがおなかを空かせて寝床に着き、ますます多くの農民が失業に追い込まれている一方で、インドはアグロ燃料作物の主にジャトロファの大規模プランテーションを奨励する一連の影響をまともに受けている」
とシャルマ氏は言う。
こうした中でスイスのモラトリアムの立場は、食糧生産と燃料生産との間に矛盾がみられるインドのような輸出国に対して重要なメッセージを送ることになると、ニュー・デリーに本部を置く団体「バイオテクノロジーと食糧安全保障フォーラム ( Forum for Biotechnology and Food Security ) 」の会長も務めるシャルマ氏は言う。
「より多くの西欧諸国の人たちがアグロ燃料はエネルギー安全保障への正しい道ではないと考えているという、非常に明確な政治的メッセージを送ることになる。これは象徴的な意味合いだけでなく、インドの今後の燃料輸出に歯止めをかけることになるだろう」
と、シャルマ氏はスイスが与えるインパクトについて語る。
土地を失う
地球上には現在の燃料消費需要をまかなえるだけの耕作可能な土地が十分にないという 持続可能性の議論は別として、ほとんど法的権利を持たない小農家が土地を強奪されるという危険もスイスエイドは指摘する。同団体はコロンビアでの貧困削減活動を通し、アグロ燃料用作物の生産がもたらす影響力を直接経験した。コロンビア産パーム油の4分の1以上がスール・デ・ボリバール ( Sur de Bolívar ) 地方で生産されている。スイスエイドは同地域の農民団体を支援しているが、シミティ ( Simiti ) 村では以前は2600ヘクタールの土地を小農家が耕していたが、今では商業用油ヤシの耕作地に変えられてしまった。
この土地に対し、複数の大農家が30年間の所有権を取得した。その背景には、何世代にもわたり土地を耕し生計を立ててきた小農家は法的所有権を持っていなかったことが挙げられる。こうした小農家は生活に必要な食糧の生産ができなくなり、さらに新しいプランテーションでの仕事の可能性も限られており、スイスエイドによる法的助力があっても不安定な状況に立たされている。
「ヨーロッパ市場にバイオ燃料を売り込みたいコロンビア政府は補助金や報奨金を出すことでエネルギー作物の栽培を奨励している」
とモレル氏は現状を語る。
「経済協力開発機構 ( Organisation of Economic Cooperation and Development ) 」の報告によると、バイオ燃料の生産はコストがかかり効果が見られず、初めから食糧生産との激しい争いは始まっていたと結論付けた。
swissinfo、クレア・オデア 中村友紀 ( なかむら ゆき ) 訳
バイオ燃料とアグロ燃料
「バイオ燃料」は有機物や有機物から出る廃棄物から作られる。従来の自動車燃料よりも温室効果ガスの排出量が少ないとされる。
「アグロ燃料」とは廃棄処理やリサイクルからではなく特定の作物から作られたバイオ燃料を指す。
燃料の燃焼により二酸化炭素 ( CO2 ) は発生するが、同量程度のガスが植物を栽培することで大気から吸収される。
しかし、農作業や農作物の加工でエネルギーが使用されることから、栽培作物と加工方法によってはバイオ燃料は石油を基本とする燃料と同じくらい大気を汚染することもある。
世界的にみてエタノールの生産は2000年から2005年の間で2倍に増え、バイオディーゼルの生産量は4倍になった。バイオ燃料の生産と消費における世界第1位はブラジルで、サトウキビから年間約160億リットルのエタノールを生産している。
近年の数字によると、バイオ燃料は2003年の欧州連合 ( EU ) 諸国の全エネルギー消費量の0.3%を占め、2006年には2%増加した。
EUは2020年までに自動車燃料に占めるバイオ燃料の割合を1割まで高める方針だ。アメリカも同様の目標値を設定している。
スイスエイド ( SWISSAID )
スタッフ数は世界中に79人、ベルンとローザンヌの事務所に32人。
2008年には188のプロジェクト支援を行った。そのうち8件はスイス国内。
スイスエイドはインド、ミャンマー、ギニアビサウ、ニジェール、タンザニア、チャド、エクアドル、コロンビア、ニカラグアで開発援助を行っている。
スイスエイドへの寄付金が38%増したことから2008年の総予算は1910万フラン ( 約15億円 ) だった。 ( 前年比25%増 )
2008年、予算の約3分の1は連邦政府の資金援助で成り立っている。