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アルプス最大を誇り、世界自然遺産にも登録されているスイス南部ヴァリス（ヴァレー）州のアレッチ氷河が危機に瀕している。地球温暖化により氷がかつてないスピードで解け続け、このままでは今世紀末までにほぼ消滅する可能性があるという。それだけでなく、周辺の景観や生態系にも大きな影響が及んでいる。
氷河の南端にあたる同州のリーダーアルプの村からゴンドラリフトで上がると、モースフルー展望台（２３３３メートル）に着く。展望台に立つと、アレッチ氷河の息をのむ美しさが眼前に広がる。グレーと白色が織り交ざった氷の河が、雄大なアルプスの山あいを縫うように流れる。
年配の日本人夫婦の観光客がベンチに座り、弁当を広げて景観を楽しんでいた。男性は「ここに来るのはこの１７年間で３回目になるが、来るたびに氷河の様子が少しずつ変わっている。以前より河の幅が狭くなったし、氷の厚さもずいぶん減った。それでもやはり美しいけれど」と話す。
欧州最大を誇るアレッチ氷河の全長は２３キロメートル、幅が平均１．５キロメートル、氷の厚さは最大９００メートルだ。源流は標高約３千５００メートルの山、ユングフラウで、ここから１年に最大２００メートルの速さで氷河が谷に流れ落ちる。その氷河が近年大きく後退している。
モースフルー展望台では氷が解ける音は聞こえない。だが、長い年月をかけて氷河は確実に後退している。
リーダーアルプの近くにある、環境保護団体「プロ・ナトゥーラ」が運営するアレッチ自然保護センターのラウド・アルブレヒト所長は「約４０年間で氷河は１３００メートル後退し、厚さは２００メートル減った」と指摘する。
同センターはアレッチ・ユングフラウ地域観光の玄関口として毎年１万７千人の観光客が訪れる。今年で開所４０周年を迎え、氷河を取り巻く環境がいかに変化したかを展示で紹介し、注意を呼びかけるという。
アルブレヒト氏は地元出身。同センターに３０年勤務し、氷河の変化を目の当たりにしてきた。同氏は「心苦しい思いだ。アレッチ氷河は地元の宝。とても仲良くなった友人に別れを告げられているような気分だ」と嘆く。
状況は今後も悪化の一途をたどるとみられる。連邦環境省環境局（BAFU）によれば、現在の速度で氷が解け続けた場合、今世紀末までにアレッチ氷河の表面は２０１０年時点の１１８平方キロメートルから３５平方キロメートルに縮小し、体積は現在の１割以下の１．７立方キロメートルまで減るという。
アルブレヒト氏は「完全に消滅する可能性すらある。今世紀末までに、スイス国内の氷河はすべてなくなる」と警告。スイスの名峰マッターホルンと、その拠点の町としてにぎわうツェルマットを引き合いに出し「この場所からアレッチ氷河がなくなるということは、（リーダーアルプが）マッターホルンのないツェルマットになるようなものだ」と危機感を示す。
氷河の後退に伴い、２つの地殻プレートが出会う地点で小規模の地滑りが観測された。景観の変化は開発業者にとって試練だ。１５年１２月に開通した、ふもとの駅とモースフルー展望台をつなぐゴンドラリフト「グレッチャーバーン・モースフルー」は環境の変化を見越して設計されている。今後２５年間で岩盤が水平、北西方向に１１メートル、垂直方向に９メートル移動すると試算し、それに対応できる構造だ。
スイスの研究者らは１４年、アレッチ氷河が解けると複数の小さな湖ができると予測。だが本当にそうなるのか。たとえそうなったとしても、洪水や地滑りのリスクが生じる。特に湖ができるエリアのふもとの集落にとっては切迫した問題だ。
今後５０～１００年間で、温暖化によりスイス国内の気温は摂氏３度上昇するとされる。研究者らは、アルプスの植物は気温上昇のみならず、外来種との生存競争にもさらされると懸念する。
アルブレヒト氏は、まだ目立った環境の変化はないとするが「だからと言って、何も起こっていないわけではない。環境の変化は時間を要する」とくぎを刺す。
同氏はまた「昆虫のツノトンボは通常、ヴァリス州の暑く乾燥した岩場に生息する。そのツノトンボを昨日、ここで初めて見た。生息地の気温が上昇し、新しい住みかを探しに来たのかもしれない」と話す。
温暖化が直接の原因ではないが、動物の生態系にも変化が起こっている。
アレッチ自然保護センターが設立された７６年、周辺にシカはほとんどいなかった。しかし４０年経った現在、夏期になると、アレッチの保護森林区域４００ヘクタールに生息するシカは２００～２５０頭に上る。これが問題だという。
アルブレヒト氏は「牛のエサになるカラマツやマツの若木をシカが食べつくしてしまい、木が全く育たない。シカは何でも食べてしまう」と困惑している。
別荘と観光
４０年前のアレッチ地域は牛とヤギが草をはむ、のんびりとした地域だったが、観光業の発展とともに、スキーリフトや別荘などが続々と建てられた。
リーダーアルプの宿泊施設のベッド数は４０年間で２２００床から約３倍の６千床に急増。しかし、宿泊者数は期待したほど伸びず、２０１５年に２６万１０７８人と緩やかな増加にとどまった。大半が冬期に集中し、夏期は閑散としている。リゾート施設のベッドの半分以上が使われておらず、別荘の空きが目立つ。
「持ち主が自分の別荘で過ごすのは年に大体５～６週間、それと週末に何回か来るくらい。だが、問題なのは休暇用アパートの借り手がいないこと」とアルブレヒト氏は指摘する。
リーダーアルプでは、２０１６年１月に施行された法律「ウェーバー法」により、一定の条件を満たさない限り新規の別荘建設ができなくなった。このためリゾートエリアの建設用地４０ヘクタールが遊休化し、農地転用するか観光行事目的で使用する選択肢しかない。ただ地元は、観光業に従事する人口が８６％に上るのに対し、農業はわずか１１％。農地転用は地元の需要と合致しない。
一方、行政側は、リーダーアルプにとって喫緊の課題は観光客の呼び込みではなく、過疎化を防ぐため定住人口を増加させることだとしている。インフォボックス終わり
（英語からの翻訳・宇田薫 編集・スイスインフォ）, swissinfo.ch