Document ID: /fineweb-2-swissfilter-quality_10-filterrobots/filtered/00351.jsonl.gz/18

序章
SICPA信頼の裏の謎多きビジネス
ヴォー州ピュリーアンリミトラスト・キャンパス
「信頼性ある経済を促進するテクノロジー・ソリューション」の発展を目指す、「アンリミトラスト・キャンパス（Unlimitrust campus）」だ。
ヴォー州と連邦工科大学ローザンヌ校（EPFL）の支援を受けるプロジェクトで、トレーサビリティー分野の研究・技術開発を促進する協力体制の構築を目的としている。
この「エコシステム」の生みの親が、20世紀初頭にこの地で誕生した家族経営企業「SICPA（シクパ）」だ。頭文字から成るこの社名は一般にはあまり知られていないが、世界中のほとんどの人は何らかの形で同社の主力製品に触れたことがあるはずだ。それはインクだ。
連邦検察庁は現在も捜査継続中であることを認めたが、詳細については明かさなかった。SICPAはブラジルで事業を継続するため、1億3500フラン（約201億1630万円）を支払って法的問題に決着をつけたが、スイス当局に対しては無実を主張し続けている。
フィリップ・アモン
乳牛から紙幣へ
乳牛から紙幣へ
モーリス・アモン
ローザンヌ近郊のマレー工業地帯にある小企業が、なぜ当局に通知する必要があったのか？歴史学者で古文書専門家のチボー・ギディは、当時は顧客から製造業者へ直接支払いが行われなかったと説明する。「まずスイス政府がSICPAの国内口座に金額を振り込み、政府がアルゼンチンから同額を回収するという仕組みで、国際貿易で広く使われていた精算システム」だという。
両親がアモン家の友人だったローザンヌの弁護士は、「アルベールは真の実業家としてセンスのある、並外れた人だった」と語る。「凄腕のビジネスマンで、膨大な仕事をこなす能力と紳士としての評判を持ち合わせていて、成功していった。厳格で、約束を守り、強く、公正であると同時に、とても寛大で、家族を大事にする人でもあった」
52年、アルベール・アモンは友人のイタリア人印刷工、グアルティエロ・ジオーリを説得し、ローザンヌに呼び寄せる。両者の工場は密接に連携して働いた。この時期の数年間でSICPAはブランド力を高め、新顧客を開拓し、品質向上に向けて研究室で試作を重ねていった。モーリス、そして特にアルベールは新インクを開発するたびに特許を登録し、ローザンヌ大学と共同で紙幣用インクの規格基準も作成した。今日SICPAは5千件以上の特許を所有しているという。
そんなSICPAはどのように多角化にも成功したのか？それは、紙幣偽造とは別の犯罪、つまり酒やたばこを偽造して密売する違法取引対策を通してだった。
国境のない市場
国境のない市場
だが、SICPAの納税印紙部門「SICPAトレース」の売上げは年々拡大している（総売上高に占める割合は明かされていない）。知る人は少ないが、印紙市場は巨大で、途上国にとっては重要な収入源だ。
過去20年間にSICPAは、22カ国で33件以上の契約を結んだ。同社によれば、現在もアフリカの6カ国を含む17カ国で同社のソリューションが使われている。
SICPA独自の印紙は、商品の合法性を保証し、納税を証明する。ボトルやパッケージにこの印紙を貼るだけで、酒やたばこの偽造・違法取引を防げるというわけだ。
私たちは例外的にピュリーの本社取材を認められた。窓に囲まれ、「S」と「A」のつながった同社ロゴがついた黒い長方形の普通の建物だ。通常、ジャーナリストの取材は断られることが多く、許可が出るのは極めてまれだ。今回の対応は、「透明性」というSICPAが現在目指す企業イメージにも沿っている。
同部長は、「好循環でしかない。製造者は、現地でもはや違法品を販売できなくなるとをすぐに理解する。市場が健全化され、闇取引が縮小する。当然の成り行きとして税収と国内総生産（GDP）は増える」と話す。
トーゴ何も明かさない模範生
トーゴの歳入は増加している。同国経済財務省の報告書によれば、SICPAトレース導入前の数年間と比べ、21年のビールとたばこの税収は35％増加した。トーゴ国税庁のこれまでの試算では、20年のGDP66億ユーロ（約9兆3200億円）のうち密売が約2200万ユーロを占めていた。
公契約に詳しいトーゴのジャーナリスト、ゴドサン・ ケトマニャンは、「製品印字システムが入札を経ずにSICPAと結ばれた」と非難する。「政府が競争入札制度を導入したのは、汚職や共謀を撲滅するためだったはずだ。直接交渉が賄賂や不正行為に門戸を開くのは分かりきったことだ」
汚職疑惑
汚職疑惑
SICPAはフィリピン財務相への提案の中で、この技術を導入すればたばこメーカーで横行する脱税を阻止できると主張した。密造で国庫が被る損失は1日100万ドルにも上っていた。ハンス・シュワブは、年間5千万ドルの5年間契約で脱税を食い止められると約束した。
1箱ごとに目に見えないバーコードを印字し、製造ラインの最終工程と製品の入国地の税関ブースに設置する読取り機の研究・開発に、SICPAは何百万ドルも費やしていた。しかも、目標コストは1箱につきわずか0.01フランだった。
SICPAは経済発展中の東南アジアに目を向け始めた。
マレーシア停滞
契約に署名したのは現地企業のリベラル・テクノロジー（Liberal Technology）で、SICPAはその下請けだった。米イリノイ大学と南アフリカのケープタウン大学の研究者が執筆した15年の報告書によれば、この契約は公開入札が行われることなく「不透明な」プロセスで結ばれた。あるたばこ業界関係者は、この現地企業がマレーシア政府関係者とつながりがあったと証言している。
司法の透明性の原則にのっとってswissinfo.chが入手した資料から、07年のダボス会議で開かれた例の夕食会の裏が見えてきた。外国公務員に対する汚職疑惑でSICPAを捜査するスイス連邦検察庁の捜査資料だ。数カ国における同社の活動について14年に始まった捜査は、現在も進行中だ。
資料には、両氏がアロヨ大統領の夫であるホセ・ミゲル・アロヨの甥、アンソニー・アロヨと会合を持ったことが記されている。アンソニー・アロヨはマニラで特に人脈が広く、大統領の夫と縁故関係にある他に、イギー・アロヨという別のおじで有力な国会議員の後ろ盾もあった。
採用の目的はSICPAが「おじと大統領府と良い関係を維持する」ためのサポートとされる。資料には、「その手数料の一部がホセ・ミゲル・アロヨ氏に渡ることは当時明らかだった」とある。
連邦検察庁は、SICPAトレース以外にもアロヨ家との合意があったとしている。3年後の09年にはフィリピン中央銀行へのインク供給という新たな契約が結ばれた。今度の「成功報酬」はさらに高額で、入手した資料によれば、年間300万ドルの支払いがインク供給期間の6～7年に渡って約束されていた。
フィリピン政府に対し、SICPAの他に競合2社が独自のセキュリティー・マーキング・ソリューションを提案した。中国の完全無名の小企業と、強力なフィリップモリス・フォーチュン・タバコ（PMFTC）だ。後者はフィリップモリスが中国系フィリピン人の有力実業家、ルシオ・タンと設立した合弁会社で、フィリピンのたばこ市場の実に90％以上を支配している。
SICPAとアロヨ大統領の親族が合意した「成功報酬」が実際に支払われたかどうかは不明だ。この点については、連邦検察庁もSICPAもコメントを拒否している。
大金が動いたブラジル
大金が動いたブラジル
07年にたばこ製品のトレーサビリティーでSICPAと契約を結んだのはブラジルだった。政府はこのトレーシングシステムを、さらにアルコールや清涼飲料課税に適用することも検討していた。大きなチャンスだった。飲料品分野の密輸や違法取引で、国の税収に何十億ドルもの損失が出ていた。03年の脱税はノンアルコール飲料で総売上高の30％、ビールで15％に上ると推定されていた。
個人コンサルタントとして雇われたフィンケルは、申し分のない経歴を持っていた。ブラジルで長年の職務経験があり、この国を熟知していた。SICPAの仕事と並行して、自身が経営するCFCコンサルティング・グループでコンサルタントとしても働いていた。
SICPAのシステムは高価で複雑だった。飲料メーカーは工場で手作業でラベルを貼る代わりに、各ボトルに自動的に印字する機械を生産ラインに設置する必要があった。即興で手を加えられるような代物ではなかった。飲料業界ロビーの調査によれば、SICOBEシステム導入後ブラジルの税収は20％増加した。
「オペラソン・ビシオ」
フィンケルは並みのコンサルタントではなかった。ブラジル検察庁によれば、CFCは政府高官関係者への賄賂を「手数料」と偽装せず、フィンケルに自由に交渉させ、彼自身からフィッシュにキックバックの振り込みをさせていた。自分の会社を通して行動したことで、フィンケルは甚大なリスクを負うことになる。
16年、SICOBE契約は更新されなかった。SICPAが工場に設置した機械は稼働を停止し、飲料メーカーは急きょ従来の手作業システムの再導入を余儀なくされた。SICPAにとっては大打撃だった。17年6月、ピュリー本社で150人、ブラジルで850人の人員削減が発表された。
21年6月7日、SICPAはブラジルの汚職対策行政機関である連邦監査事務局と「リニエンシー・アグリーメント（制裁措置減免合意）」を交わし、「賠償金」として1億3500万フランを支払うことに同意した。ちなみにスイスの企業汚職に対する罰金は500万フラン以下だ。
SICPAは同日に発表した声明で、「一部の支払いに関する不当性」について「客観的な責任」を認める一方で、「問題とされた一連の契約が不正に取得された」ことは否定した。「ブラジルでのこれらの支払いについて、当社側の関与、認識、意図があったとは一切証明されていない」と主張した。制裁減免合意により、SICPAはブラジルで入札参加資格を取り戻した。
フィンケルの弁護人バルセロ・ベッサは即座にブラジル報道機関に対し、「当判決は、具体的事件でいかなる犯罪もなかったことを証明するもの」として判決を歓迎するコメントを出した。
判決文と同時に公表された反対意見では、控訴審の3人の裁判官の1人が、「犯罪の実在性と所在」は「十分に証明されている」とし、「フィッシュは、数百万ドル相当の不当な報酬と引き換えに（中略）、造幣局がSICPAを採用するプロセスにおいて決定的な役割を果たした」と述べていた。
だが他の2人の裁判官はこの議論に耳を傾けることなく、フィッシュを無罪にした。収賄者がいなければ、贈賄者も存在しない。そのためフィンケルにも同様の無罪判決が下された。
SICPAは、「フィンケル氏とフィッシュ氏を贈収賄で無罪とした裁判所の判決を嬉しく思う。この判決は、元ブラジルコンサルタントの裁判における当社の起訴事由に、根拠がないことを示している。それは当社がこれまでにも主張してきたことだ」と述べた。
ブラジルの判決は、同社とその社長であるフィリップ・アモンを調査中のスイス連邦検察庁の捜査に影響を与える可能性がある。当初は14カ国での活動が捜査対象だったが、SICPAによれば、現在はコロンビアとブラジルを含む4カ国だけになっているという。この点について連邦検察庁はコメントを避けた。
スイスの捜査
スイスの捜査
14年末、スイス当局に米国司法省から捜査共助要請の「ドラフト」という奇妙な文書が届く。スイスに捜査協力を求める外国当局は通常、下書きではなく完成した要請書を直接送付してくる。後日さらに詳細な要請を追加することもある。だがこの時、米国司法省はそれ以上踏み込まず、SICPAの活動に関する情報をスイスに提供しただけだった。
スイス連邦検察庁は15年初め、米司法省の情報をもとに「外国公務員汚職」の容疑でSICPAの捜査を開始した。シュワブも捜査対象になった。
だが私たちの調査によると、意外なことに「ドラフト」のあとに正式な共助要請がなされた形跡はない。米国当局がSICPAとフィリピンの活動に関心を持った経緯も明らかにできなかった。この点を問い合わせると、連邦検察庁は捜査が「捜査共助要請の情報に基づいて」開始されたことだけを認めた。
2015年、最悪の年
だが連邦捜査員は、KBAの銀行データを精査する中でSICPAとの共通点を発見した。2社は、同じコンサルタントを使って数カ国で現地役人への賄賂交渉をしていた。
ブラジルとフィリピンに続き、スイスの捜査は新たにトーゴ、ガーナ、エジプト、インド、カザフスタン、コロンビア、ナイジェリア、パキスタン、セネガル、ベトナム、ベネズエラ、ウクライナの12カ国に拡大された。
20年9月、シュワブに関する捜査は終了し不起訴となった。だが連邦検察庁はその数カ月後に新たな爆弾を投下する。21年6月14日、経済犯罪専門オンラインメディアのGotham Cityに対し、捜査が「SICPAのオーナーで現CEOのフィリップ・アモン氏」に及んでいることを認めた。
SICPAとフィリップ・アモンに対する連邦検察庁の捜査は継続中だ。両者とも推定無罪の原則が適用される。
SICPAは今日、連邦捜査に「全面的に協力している」と断言する一方で、一切の責任を否定する。「当社は外部コンサルタントによる違法行為への関与も認識も否定する」とし、「捜査により当社および当社CEOに刑事責任がないことが立証されると確信している」と述べた。
swissinfo.chの取材に対し、シュワブはコメントを避けた。私たちが得た情報によれば、スイス検察庁がSICPA本社で押収した数千件のメールと文書からは、本稿で名を挙げた一部のコンサルタントへの支払いに、シュワブが反対していたことが示された。
一族の分裂
一族の分裂
なぜサルバドールが経営から外されているのかについては、誰も答えようとしなかった。いずれにせよSICPAは非上場企業であり、経営者は完全に自由裁量で社の決定を下せる。
娘はキャリアに興味がなかったと見られ、後継者の座は息子2人によって争われた。2人は5年間会社を共同経営したが、一家と親しい関係者は2人の間が複雑だったと語る。モーリスは旅行や友人とのパーティーを愛する、大らかな人物だった。3度の結婚を経験し、SICPAの仕事で世界中を旅したが、静かなジュネーブの湖畔よりもモナコの豪華さを好む傾向にあった。
香港で結婚式を挙げ、その後は豪華なホテルを渡り歩く合間に名画や豪華なジュエリーを買い漁る。その豪遊ぶりは芸能雑誌の見出しを飾った。
15年9月、モーリスはモナコで離婚を申請する。だがトレーシーも引き下がらなかった。モナコの法律が自分に不利になるとの危惧から、モナコの裁判管轄権に異議を唱え離婚訴訟を自分の住むニューヨークに移管させようとした。世界のマスコミはこのスキャンダラスなメロドラマを我先にと報道した。代々謙虚な家柄を守ってきたアモン家にとって、耐えがたいことだった。
だがこの離別の裏には、別の事実が隠れている可能性がある。19年の連邦裁判所の判決文書では、15年初めにフィリップがモーリスを解雇していたことが明らかになっている。フィリップは、モーリスが取締役会への報告なしにSICPAの競合事業を展開していると非難していた。モーリスが投資していたのは、コンタクトレス決済（非接触型決済）会社のゴー・スウィフ（GoSwiff）だった。このデジタルソリューションは、SICPAの収入源である紙幣印刷と競合するものだ。
さらに、「SICPAグループは紙幣の大量流通とその維持・発展によって収入を得ている」と続け、「そのため、あらゆるキャッシュレス・ソリューションが、特に当社顧客がそれを採用する場合には、我々にとって直接的な不利益になる。これらの理由から、当社の従業員そして取締役としての貴殿の立場には、重大かつ否定できない利害の対立がある」と通告していた。
裁判所は、モーリスが社外で行っていた活動は会社への忠誠義務に明らかに反すると判断し、SICPAに解雇の正当性を認めた。だが、フィリップが14年に事実を把握しておきながら15年までモーリスを告発しなかった点において、その対応の遅れによりSICPAは「従業員」を即時解雇する権利を失ったと判断した。
SICPAは判決を不服として連邦裁判所に控訴した。だが最終判決が出る前の19年6月26日、モーリスは仏サントロペで心臓発作のため68歳で亡くなった。その1カ月後に出た最高裁判決は、モーリスに有利なものだった。
デジタルの矛盾
デジタルの矛盾
SICPAはこの脅威に対応するため、これまでの章で見てきたように他業種への多角化を迫られた。まずはブラジル（07年）、カナダ（08年）、米国カリフォルニア州（20年）でたばこと飲料のトレーサビリティー契約を獲得。アフリカでもモロッコ（10年）、ケニア（13年）、ウガンダ（18年）、そしてトーゴ（20年）と契約を結んで躍進した。
Sicpa's flagship products
Sicpa's flagship products
17年にはエストニアの「デジタルガバメント」を提供する現地企業「ガードタイム（Guardtime）」と提携。SICPAは22年にジュラ州からデジタル公文書のセキュリティー管理を受注した。「セルタス（Certus）」と呼ばれるこの技術を使えば、市民が請求した法的文書の抜粋をQRコードで保護できる。
このパラドックスに着目した21年の欧州中央銀行（ECB）の報告書によれば、20年末の流通ユーロ総額は1兆4350億ユーロで、19年の1兆2930億ユーロから11％増加した。新型コロナ危機でこの増加傾向はさらに強まった。
「高額紙幣では特に、看過できない量の買いだめが起きている」。この現象は「2000年代に入ってから、そして最近の金融・経済危機以降に著しくなった」と述べている。
豊かな国の人々はもはや、現金払いをしなくなった。それでも、タンス預金をしたい人もいるだろう。英誌エコノミストによると、高額紙幣の「買いだめ」の裏には、脱税やマネーロンダリング（資金洗浄）、麻薬取引などの犯罪経済が隠れている可能性がある。だがSICPAには理由など関係ない。紙幣が印刷されるたびに儲かり、印刷数が多ければ多いほど会社は繁栄するのだ。
終章
（敬称略）
製作
Credits
マルチメディア制作: Helen James & Carlo Pisani
編集: Dominique Soguel & Virginie Mangin
グラフィック: Kai Reusser
企画: Dominique Soguel
翻訳（英日）: 由比かおり
画像: Yanick Folly （トーゴ）, Pascal Staub （イラスト）, drone footage （著作権）, Reuters, SRG SSR / SWI swissinfo.ch, Keystone, swisscastles. chalamy.com, Getty Images, Sicpa, Wikimedia/commons, Agenzia, Fotogramma, Gotham City
英語原文はアンリミトラスト・キャンパスの目的を明確にし、会社が出願した特許の件数を明記するために2022年8月12日に更新されました。