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スイス人裁判官ダニエル・キプファー氏（61）は3年間、国連のオンブズパーソンを務めた。テロリズムに関連した国連の制裁対象者リストを監視し、極めて政治色の強い環境下でも法の支配が行き渡るよう尽力した。このコンテンツは 2022/01/21 08:30
- Deutsch Aufseher der Terror-Bekämpfung (原文)
- Español Tres años supervisando la lucha contra el terrorismo
- Português Supervisionando a guerra ao terrorismo
- 中文 联合国恐怖分子名单上的人
- Français Trois ans comme superviseur de la lutte contre le terrorisme
- عربي دانيال كيبفر.. الرقيبُ على مكافحة الإرهاب
- English Refereeing the war on terror
- Pусский Швейцарский юрист, верховенство права и борьба с терроризмом
- Italiano Tre anni come supervisore della lotta al terrorismo
キプファー氏が最も苦心したのは、自身が担当した最後のケースだった。あるアラブ諸国出身の有力な政界関係者が、テロ組織アルカイダを支援したとして国連の制裁対象者リストに載せられた。この人物の銀行口座は凍結され、旅行もできなくなり、更にはテロリストの烙印（らくいん）を押された。
ほどなくして、この男性は国連のISIL（ダーイシュ）・アルカイダ制裁委員会のオンブズパーソン他のサイトへを務めていたキプファー氏に対し、リストからの除外を前提に自身のケースを検討してほしいと申し出た。このような状況に陥った人が救済を求めるための唯一の窓口が、オンブズパーソンだ。
「最初から、何かがおかしいと思った」。キプファー氏はそう振り返る。入手した情報の出どころは全てシークレットサービスのもので、出所も確認できず、質も疑わしかった。キプファー氏は調査を開始した。現地に飛び、本人に会った。政治、軍事の高官に話を聞き、ニューヨークの国連本部の専門家に助言を求め、公開されている情報を精査した。「結果は明らかだった。何もなかったのだ」
裁判官であり哲学者
キプファー氏は2018年に国連のオンブズパーソンに就任。前職はベリンツォーナにあるスイス連邦刑事裁判所の所長だ。哲学の博士号も持つ同氏にとって、ニューヨークの国連本部での仕事は未知の領域だった。制裁委員会は裁判所ではないし、オンブズパーソンは裁判官ではない。特定のケースで制裁対象者リストへの掲載が正当かどうかを調査する監督機関だ。
テロに関与したというおおもとの嫌疑が正当か否かという法的判断はされない――故に賠償請求もできない。問題となるのは、その人物にテロリストの危険性があるかどうか。そして調査時点で、その人物を制裁対象リストに載せる理由が残っているかどうか、という点だけだ。
アラブの政治家のケースは例外的だったと、キプファー氏は強調する。キプファー氏が調査したケースの大半は、テロ組織を支援したり、あるいはテロ組織に属したりしている人たちだった。ただキプファー氏は、制裁対象者リストは犯罪に対する罰ではなく、むしろ予防的措置である点に留意しなければならない、と指摘する。
「予防的措置は定義上、期限付きでなければならず、必要がなくなれば取り消される。刑罰とは違う」
だが残念ながら、制裁委員会のメンバー全員がそう考えているわけではない。「テロリストとしてリストに載った人間は、将来的にというより実際のところ一生、危険な存在であり続けるのだから、リストに載せたままにしておかなければならないと主張する者も中にはいる」という。
キプファー氏はこれを容認できないという。「そうなると、テロだと言いがかりをつけて国家のあらゆる行動が正当化されかねない」
「社会的な死」
過去20年間の世界的なテロとの戦いは、国の安全保障の要求と個人の権利の間の不安定なバランスに影響を与えた。この分野がいかに複雑かは、制裁リストの経緯にも表れている。
制裁リストの起源は、1990年代に世界でイスラム原理主義者によるテロが起こったことにさかのぼる。98年のケニアとタンザニアの米国大使館爆破事件をきっかけに、オサマ・ビンラディンやアルカイダが欧米の情報機関の特別な関心を集めるようになった。99年に出た国連安保理決議第1267号他のサイトへにより、アフガニスタンのタリバン政権はビンラディンや他のテロリストに安全な避難場所を提供したとして制裁を受けた。
この制裁リストは長い時を経て大きく変わったが、いわゆる「狙い撃ち制裁」の基礎となるものだ。つまり、国家（及びその国民全体）一律ではなく、テロ行為の責任を負う者に対象を絞って制裁を科す、という考え方だ。
このような個別的措置は、国家への制裁に比べれば進歩だと思われた。だがその一方で、対象者に司法の審査を受ける権利がないため、疑問視もされていた。9.11の米同時多発テロ後、対テロ戦争が本格的に始まるとリストは大幅に拡大され、明らかに掲載対象とすべきでない人々の名前が載るようになった。こうした人達の人生やキャリアは破壊された。スイスの元欧州評議会代表ディック・マーティ氏は、これを「社会的な死」と表現している。
2009年に国連のオンブズパーソンが創設されたことで、リストに掲載された人々に対する適正な手続きが、初めてある種保証されるようになった。キプファー氏の前任者2人はかなり問題のあるケースに対処し、制裁委員会の活動に更なる規律を導入した。その結果、質と透明性はかなり向上した。
とはいえ、キプファー氏は極めて政治的な環境に置かれている、と感じていた。国連においてテロ対策は主要な政治的関心事であり、巨額の資金が投じられている。オンブズパーソンはシステム全体の中の1つの小さな歯車に過ぎず、圧力にさらされる。キプファー氏は実質、弁護人と検察官、裁判官と外交官の役割を全てこなさなければならなかった。しかもスタッフは2人しかいなかった。
「この状況において、格差は歴然だ」と同氏は言う。しかも、オンブズパーソンは国連職員ですらない。しかし、5年という任期が与えられている。
法的な建前？
オンブズパーソンは、法の支配の観点から見て極めて疑問の多い機構に正当性を与えるための、イチジクの葉（不体裁なものを隠すもの、という意味）に過ぎないのだろうか。キプファー氏はそうではない、という。オンブズパーソンの決定を覆すには、制裁委員会のメンバー15人全員が反対票を投じなければならない。このような取り決めは国連でも制裁委員会だけだ。
「これまで、100件ほどは一部の国が強く反対したが、オンブズパーソンの勧告は必ず受け入れられてきた。この制度が持つ真の強さと力の表れだ」。制裁を解除された人々も同意見だろう、と同氏は言う。
その一方で、若干の二面性も認める。同氏にとっては制裁委員会という構想自体が問題を含むだけでなく、国連安保理が制裁を科すことが正当化されるか否かを法廷で検証できない、という。テロ対策となると、明らかに基本的人権よりも政治が優先される。
キプファー氏は、その代替策について考えを巡らせる。「最初の10年間は（権力相互間の）抑制と均衡が存在せず、人々は自身を守る機会もないままリストに載ってしまっていた。基本的人権の保護という点ではまだ改善が可能であり、またそうすべきであったとしても、現在の状況は間違いなく良くなっていると思う」
人的要因
制裁リストに載った人々向けの審査手続きは簡単ではない。3分の2のケースでキプファー氏はリストからの除外を勧告したが、それ以外のケースは断じてそうしなかった。驚くべきことに、彼は危険人物として分類し続けた人々から感謝されたこともある。
「オンブズパーソンは、しばしばカフカエスク的なシステムの中における人間の顔だ」。面談を受けること、自分の訴えの言述が許されること、合理的な調査手続きに参加していると感じること――対象者本人が高い確率で審査決定を受け入れるのは、こうした要素があるからだという。
キプファー氏によれば、自分の過去を否定しようとする人は少なからずいる。「しかし、彼らの多くは今、人生の異なる段階にいる。彼らはこのシステムから離れ、時として普通の仕事をし、家族を持っている」。こうしたケースにおいては、過激な狂信者や凶悪犯罪者の場合と異なり、制裁を科し続けるのは無意味だという。
キプファー氏は、例えば湾岸諸国の金融関係者で、疑わしい資金の流れを理由に注目を浴びる人たちのケースは最終判断が難しいと話す。現在、約400人の個人・法人が制裁対象者リストに含まれる。
昨年12月、キプファー氏はオンブズパーソンを辞任し、古巣のスイス連邦刑事裁判所に戻った。これには個人的、制度的な様々な要因があった。
同氏が問題だととらえたのは、国連内のオンブズパーソンの制度的位置づけだった。年金、保険、事務総長室へのオンブズパーソンの報告関係に折り合いがついていない、あるいは十分でない上、5年という任期が一度しか認められない点だという。同氏はこれらの問題の改善は急務だと言うが、制裁委員会や安保理では何の進展もない。「単に優先順位が低いからだ」。まだ決まっていない後任者がこれらの問題を引き継ぐことになる。
仕事で出会った人達との思い出は鮮明に残っている。キプファー氏は、テロやテロ対策に対する考え方の違いに驚かされたという。面談では決まって「国際法に違反するイラク戦争を（対象者が）自分の文化や宗教に対する個人的な攻撃であり、戦わなければならないものと解釈していた」。
また、ドローン戦における法的に認められない殺人行為が集団心理にもたらす深刻な影響について、欧米ではほとんど理解されていなかったという。「どこから見るかによって、世界の見え方がいかに違うか。それは決して過小評価してはならない」
（英語からの翻訳・宇田薫）
ムスリム同胞団メンバーのエジプト系イタリア人、ユセフ・ナダ氏は、アルカイダへの資金提供を行ったとして、9・11後に国連の制裁対象者リストに掲載された。嫌疑を立証するものが何も出なかったにも関わらず、制裁が解除されるまでには何年もかかった。ナダ氏の記事はこちらへ。
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