Document ID: /fineweb-2-swissfilter-quality_10-filterrobots/filtered/00636.jsonl.gz/10

”la soglia del paradiso”（楽園への入り口）。かの画家セガンティーニが形容した美しい村ソーリオ（Soglio）は、私の住むグラウビュンデン州の南の端にある。ヘルマン・ヘッセやリルケも愛したというこの村は、歩けば十分で回れるほど小さいが、訪れる人を惹き付ける不思議な魅力に満ちている。今日はソーリオとこの村を抱くブレガリア谷（Val Bregaglia）について書いてみよう。
ブレガリア谷はスイス、グラウビュンデン州の南、イタリア国境に近い場所にある。観光案内などでこの谷へのアクセスを調べると、多くには「マローヤ峠からイタリアのキアヴェンナへの方向に」と書いてあるが、私たち夫婦が行く場合は反対方向から、キアヴェンナ（Chiavenna）を通っていく事になる。つまり、同じ州の別の村に行くのに、まずはシュプリューゲン（Splügen）峠からイタリアに入り、しばらくイタリアを走ってからカスタセーニャ（Castasegna）で再びスイスに入国することになる。この地域をドライブしていると、一日に6回国境を越えるなどという事もある。
ブレガリア谷はイタリア語圏である。ソーリオを含め、この地域には平たい石を屋根にしたイタリア語圏村落部の伝統的な家屋が残っており、今でも普通に住居として使われている。
村の中心部にあるホテル『パラッツォ・サリス（Palazzo Salis）』は、かのセガンティーニが滞在したこともあり、スイスの歴史遺産にも指定されている建造物だ。外のテラスで村の人びとの生活を眺めながらコーヒーやアイスクリームを楽しむのもいいが、可能ならばぜひ中庭にも足を運んでみてほしい。17世紀に世界の植物を集めて造った植物園だが、それよりもはるかに長い時間を生きてきたと思われる二本の巨木に圧倒される。
サリス家はグラウビュンデンの歴史に何度も登場する名家だが、もともとはこの小さな村ソーリオの出身だそうだ。
小さい石の家がひしめいた小路にある土産物屋では、ソーリオで製造している自然製法の化粧品やバスソルトなどを販売している。スイスにはいくつものお肌に優しい化粧品があるが、その多くは全国展開で日本で購入できる事すらある。でも、このソーリオの製品は日本にはない上、ここがどんなところか知っている人には喜んでもらえるのでお土産に重宝している。
さて、ソーリオ、ブレガリア谷といったら忘れてはいけないのが栗。カスタセーニャとソーリオの間にあるのが、ヨーロッパ最大級と言われる栗の林で、ここに住む人びとはブレガリアの栗こそヨーロッパ一美味しいと自負している。栗の林は一見何でもない自然林のように見えるので、「ちょっと栗でも拾って帰るか」となりがちだが、どの木も所有者が決まっているので勝手に持ち帰ったりしてはいけないそうだ。カッシーネ（Cascine）という小屋で栗を燻製にする伝統も残っており、秋には栗の粉を使った料理や栗のケーキがあちこちで振る舞われる。
私の個人的なお気に入りは、エンガディン地方からバスに乗ってくる場合に乗り換える村プロモントーニョ（Promontogno）のホテル・ブレガリアのマロンケーキ。しっとりしていてでも栗の歯ごたえもあってとても美味しい。秋にブレガリアに来たら必ず注文する。
こうやって秋を楽しんだ後、私たちがバイクでグラウビュンデンを楽しむのは春までお預けになる。アルプスに初雪が降ると、スプリューゲン峠もマローヤ峠も閉鎖されるのだ。ブレガリア谷は観光客で賑わう夏が嘘のように、昔からあまり変わらぬ静かな冬を迎える事になる。
ソリーヴァ江口葵
プロフィール：ソリーヴァ江口葵
東京都出身。2001年よりグラウビュンデン州ドムレシュク谷のシルス村に在住。夫と二人暮らしで、職業はプログラマー。趣味は旅行と音楽鑑賞。自然が好きで、静かな田舎の村暮らしを楽しんでいます。インフォボックス終わり