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「少女たちよ、権利のために戦って」キルギスの誘拐婚が短編映画に
女の子を誘拐して花嫁にするーー。キルギスタンに今も残る「誘拐婚」を描いたマリア・ブレンドル監督の短編映画「ALA KACHUU-Take and Run」が、今年のアカデミー賞にノミネートされた。ブレンドルさんは、全ての少女たちに「自分たちの権利のために戦って」と呼び掛ける。
swissinfo.ch: 誘拐婚をテーマにした映画を作ろうと思ったきっかけは？
マリア・ブレンドル: 初めて誘拐婚のことを知ったのは2016年でした。キルギスを旅した友人が教えてくれたのがきっかけです。彼が撮った写真の中に悲しい顔をした女の子が映っていて、なぜ悲しい顔をしているのかと聞くと、彼は「この子は誘拐されたんだ」と。そして、キルギスでは男性が女性を誘拐して結婚するのが珍しいことではない、と教えてくれました。
信じられませんでした。調べてみると、キルギスや中央アジア、アフリカの一部で、多くの少女が誘拐婚の被害に遭っていることを知りました。でも、私の友人も家族も、誰もそのことを知らなかった。私は、自分が今まで誘拐婚のことを知らなかったのを恥ずかしく思ったんです。
映画監督として、誰も知らないという事実を映画を作ることによって変えたいと思いました。それがきっかけです。
swissinfo.ch: 取材でキルギスの首都ビシュケクにある女性のためのシェルターを訪れましたね。そこでどんな経験をしたのですか？
ブレンドル：シェルターでは、たくさんの少女や女性たちが自身の体験について話をしてくれました。ただ全員が誘拐婚の被害者ではありません。親に結婚を強制された女性など事情は様々です。
そこで、ある母親と話をしました。年は40歳くらいでしょうか。7歳くらいの小さな息子がいました。彼女は誘拐婚の被害者でした。夫が亡くなると、義理の両親から家を追い出されたのです。
また、ある女の子とも話をしました。年齢ははっきり聞きませんでしたが、とても若い女の子でした。彼女は親から、ほとんど面識のない相手と結婚させられそうになったそうです。でも結婚式当日に2人の友人が彼女を助け出し、シェルターに連れてきました。シェルターに来てからも、彼女はずっと怖かったそうです。誰かがこの場所を見つけて家に連れ戻されるのではないか、と。
swissinfo.ch: 映画の主人公セジムは誘拐された後も、逃げようと最後まで抗いました。この人物像は、そうした女性たちの体験がもとになっているのですか？
ブレンドル：自分の中で、人物像については色々なアイデアがありました。現実の世界では、誘拐された後に自殺を図るケースがたくさんあります。もちろんそれも頭の中にありました。
でも、シェルターにいる女性に、この映画で私にどんなことをしてほしいか聞いたんです。するとこう言われました。「強い女性、若い女の子たちのロールモデルになるような人物を描いてほしい」と。それが決定打になりました。若い女の子たちに「自分の権利を知り、強くなれ。ノーと言う勇気を持ち、自分で声を上げて」と伝えるために。
swissinfo.ch: 女性が男たちに拉致され、花婿の家に連れていかれる。そこでは既に結婚式の準備が済んでいて、女性は何時間も抵抗した後、諦めてしまう。それが誘拐婚というものなのでしょうか。
ブレンドル：私が映画で描いた流れが一般的ですが、もちろん場合によります。親にある男性と結婚させられそうになったので、自分のボーイフレンドに頼んで誘拐してもらうといったケースもあります。
swissinfo.ch: 誘拐婚の相手が見ず知らずの男性、というケースもあるのですか？
ブレンドル：キャスティングの中で、ある男性が「私は花嫁の誘拐を3回やったことがある」と得意げに言っていました。「最後にやったの場所はビシュケクです。次に角を曲がってきた女の子を誘拐しようと話し合って決めました」。彼らは実行しました。誘拐された女の子はただ運が悪かったのです。
私はそれを自分の脚本に反映させました。セジムは男たちのもともとのターゲットではありませんでした。当初誘拐するつもりだったセジムの同僚がそこにいなかったので、男たちはセジムを拉致したのです。
ビシュケクの学校に通っていたという女の子が話してくれたのですが、彼女は男の同級生と決して言葉を交わさなかったそうです。相手が自分に気があると勘違いしたら、誘拐されるかもしれない、と。女の子は14、15歳になると、恐怖の中で毎日を過ごすのです。家を出たら、男たちが乗った車がやってきて誘拐され、見知らぬ男かあるいは一度、二度会ったくらいの男と結婚させられる。そんなことが実際にありえるのです。
swissinfo.ch: この映画では、花婿の家族の女性たちがセジムに自分の運命を受け入れるよう説得します。同じ女性なのに、セジムを助けようとはしません。
ブレンドル：私は、これを女性同士の中で起こる、ある種のサイクルとして示したかったのです。年配の女性たちは昔同じように誘拐された。そして「私は乗り越えた。だからあなたもできる」と若い少女に言い聞かせる。女性も男性もそういう考え方になるのは、それが彼らの文化だから。誘拐婚は何世代にもわたり、当たり前のように起こってきた。ある意味、普通のことなんです。
swissinfo.ch: でも、キルギスタンでは誘拐婚は違法ですよね。
ブレンドル：その通りです。でも、伝統の方が重要なのです。誘拐されたある女の子の話では、警察に駆け込んだのに「うちには関係ない。帰って家族と話しなさい」と言われたそうです。想像してみてください。家から何キロメートルも離れたどこだか分からない場所に連れてこられて、警察にすら駆け込めない。警察署だって、何キロメートルも離れているかもしれない。だから誘拐された場所にとどまる以外に選択肢がないのです。
誘拐された女性の8割は、恐怖心から夫のところにとどまるそうです。逃げたら、家族に恥をもたらすことにもなってしまうから。
swissinfo.ch: 長編ではなく短編にした理由は？
ブレンドル：長編を作ることは考えました。でも、キルギスタンで映画を撮るのはとても大変でした。電気すら通っていないところもあって…。撮影を始める前は、せめて2分くらいのビデオを作って、それで何かできればと考えていました。
スイスに帰ってきてから、もう一度長編の可能性について考えました。でも（新型コロナウイルス感染症の）パンデミック（世界的大流行）が起こってしまった。2020年中はずっと、撮影のために再びキルギスタンに向かうことはできなかったんです。
それに（誘拐婚の）認知度を上げるのであれば、短編映画の方が世界中の映画祭でもっと多くの人に見てもらえるんじゃないかと考えました。長編を作るのに十分な資金がなかったという理由もあります。
ALA KACHU-Take and Run
19歳のセジムは大学に通う夢をかなえるためキルギスタンの首都ビシュケクにやってくるが、そこで若い男たちに誘拐される。セジムは見知らぬ男と結婚させられるが、必死で逃れる方法を探す。
38分。第94回アカデミー賞の短編実写部門にノミネートされた。受賞作品は3月27日に発表される予定。End of insertion
swissinfo.ch: 若い世代は誘拐婚をどう受け止めているのでしょうか。キルギスの伝統の一部として受け入れているのでしょうか？
ブレンドル：若い世代は実際のところ「どこか別の場所で起こっていること。私には関係ない」と考えている。でも、これが問題なんです。万が一誘拐された場合、どうしたらいいのか分からないから。
聞いたところでは、誘拐婚への対策を学ぶアプリが出来たそうです。アプリでは、被害に遭った場合に助けを求める先などが分かる。誘拐婚はいつ自分の身に降りかかってくるか分からない。だから意識啓発がとても重要なんです。備えをしておくことが重要です。
swissinfo.ch: 誘拐婚はもっぱら田舎でしか起こらないんでしょうか？
ブレンドル：多くの人がそう考えていますが、都会でも起こっているんですよ。それほど頻繁ではありませんが。
swissinfo.ch: 異文化をテーマにした映画を作るというのは、正の面と負の面があります。新鮮な視点を吹き込める一方、自分の先入観がその文化本来の全体像をゆがめてしまうこともある。これにはどう対処したのですか？
ブレンドル：敬意を払うことが私にとってはとても重要でした。欧州からやってきた女の子が「あなたのやっていることは間違っている。私の方がものを良く知っている」などと言うようなことは絶対にしたくなかった。リサーチ、脚本、撮影の過程で、キルギスのスタッフや俳優たちに、いつも「これで合っているか」と常に聞きました。間違っていれば脚本を変えました。彼らが私に自分たちの文化はこうだよと教えてくれたんです。
swissinfo.ch: 強制結婚はアジアだけでなく、欧州でも起こっています。ドイツ、英国、スイスなどの国々では強制結婚の事例が報告されています。それに目を向けようとは思わなかったのですか？
ブレンドル：トルコやインドなどで（本人の意思に反する）お見合い婚や強制結婚が行われていることは知っていました。でも、キルギスタンは初耳でした。私たちにとって聞いたことのない話でした。だから、それについて知ってもらうことを目標にしたんです。
強制結婚と戦うスイスの団体から、多くのアフリカの少女たちの事例を聞きました。アフリカの多くの少女たちが、自分の意思に反して結婚させられているのです。この現代で、13歳そこそこの若い女の子が、そのような伝統の犠牲者になっているのです。自分を守ってくれるはずの家族が、年老いた男との結婚を強いてくるなんて信じられないことです。こんなことはやめなければなりません。
swissinfo.ch: この映画を通して、世界に一番伝えたかったメッセージは何ですか？
ブレンドル：学校などで、女の子にそれは間違ったことだと教えてくれる人が必要です。世界中のすべての女の子が教育を受けられる環境を作らなければなりません。少女を捕まえて、所有物として扱うなどあってはならないこと。それは正しくない。すべての若い女の子に伝えたい。「自分の権利のために戦って」と。
swissinfo.ch: 「ALA KACHUU-Take and Run」は国際的な賞を多数受賞しています。そして今回、アカデミー賞にもノミネートされました。これほど高い評価を受けていることを、どう感じていますか？
ブレンドル：素晴らしいことです。6年前はまだ1つのアイデアに過ぎませんでした。でも「よし、できるところまでやってみよう」と思いました。「何かが起こるかもしれない」と。
今、私はロサンゼルスにいて、アカデミー賞のイベントを控えています。世界中がこの映画のことを知ってくれている。ソーシャルメディアを通じて、世界中からたくさんのメッセージをもらいました。映画に関わったクルー全員、全ての俳優たち、そして私に話を打ち明けてくれた勇敢な女性たちに感謝しています。
swissinfo.ch: セジムの物語のラストはオープンエンドで、その後どうなったかは見る人の想像に委ねられています。その意図とは？
ブレンドル：私はこの物語にはっきりした終わりを与えたくなかった。それが誘拐された少女たちの現実だから。夫から逃げることはできても、どこに行ったらいいのか、どこに助けを求めればいいのか。彼女たちはその先、どうなってしまうのか。それを見る人に考えてもらいたいのです。
編集部注：このインタビューは一部編集しました。
マリア・ブレンドル
ドイツ生まれ。2008年よりチューリヒ在住。監督・脚本家。受賞歴多数。女性問題を中心に作品を発表。End of insertion
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