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印度洋上にて
一九二一年も押し詰まって、私は印度洋経由日本郵船会社の船で帰国した。この航海は世界でも有名な楽しみの多い旅であった。何人にとっても時問は余る程あり、世問からは隔絶した動く美しい孤島にも比すべき生活である。後年飛行機によって欧州を往復したが、この旅の楽しさは遥かな思い出となって消えたのを覚える。飛行機を喜ぶ人たちを見てこれが世代の相違というものであろうと思った。同船の田中館愛橘先生は、いつも甲板で読書をしておられ、四海を家として活躍の碩学の風格であった。印度洋を渡る頃、一夕船中で集りが催され、先生はメートルとローマ字について、私はアルプス登山の話をした。