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標高650メートルから1150メートルにわたるブドウ畑とブドウ品種「ハイダ」で、ヴァレー/ヴァリス州の村フィスパーテルミネンは世界中にその名が知れ渡っている。標高差500メートルの山の斜面の、高い石垣で区切られた急な段々畑に、ブドウの木が植えられている。このコンテンツは 2009/07/13 12:00
この村のワイン作りの歴史は古い。考古学的遺物からは、すでにケルト人がこの地でブドウの栽培を行っていたことが分かっている。ケルト人の存在を裏付けるさらなる証拠は、同州に古くからあるブドウ品種が現在のフランスの辺りから来ているということだ。
生活必需品から・・・
「この地域のブドウ栽培がいつごろ始まったのか、正確なことはもちろん誰も知りません」
とピルミン・ハインツマンさんは言う。
「いずれにせよ、わたしはその場に居合わせていません」
1945年にフィスパーテルミネン ( Visperterminen ) で生まれたハインツマンさんは、1980年からヨーロッパ一標高の高いワイン畑のワイナリー「ザンクト・ヨーデルン ( St. Jodern Kellerei ) 」でケラーマイスター ( ワイン作りの杜氏 ) を務めている。
昔は自分たちが飲むワインを作るためにブドウの栽培が行われていたと、ハインツマンさんは言う。
「村の人たちは農業で生計を立てていました。家族を養うために農作業をしなければならず、各家庭にはワイン、牛乳、チーズ、じゃがいもは欠かせませんでした」
また、眼下に広がる谷フィスパータールはスイスで最も乾燥した地域の1つに数えられる。そのため、ここの農民はほかのどこの農民よりもよくのどが渇き、水や牛乳のほかにワインを飲んでのどの渇きを潤したという。
・・・嗜好品へ
「わたしの父は村の外でれんが職人や工場労働者として働いていました」
とハインツマンさんは続けて言う。フィスパーテルミネンにとって、谷間の町フィスプ ( Visp ) にある化学工場「ロンツァ ( Lonza ) 」は重要だったという。
「しかし、村人は農作業の時のように仕事場にワインを持っていくことができなくなりました」
「昔はミネラルウォーターやビールは高すぎて買うことができず、ワインが日常的な飲み物でした。その後、ミネラルウォーターとビールが作業場で多く飲まれるようになり、ワインの消費はだんだんと減っていきました。このように生活習慣が変わり、世界大戦後はワインは嗜好品になっていきました」
とハインツマンさんは村とワインの歴史を語る。
協同組合から・・・
若い頃、ハインツマンさんは建設業に携わっていた。
「ただ、わたしの父は山で農作業をしていたこともあり、ブドウの木も植えていたので、ブドウ栽培にはいつも魅力を感じていました。そこで、山での農業や家畜の飼育をブドウ栽培一本にしようと思いつきました。つまり、転職です」
こうしてハインツマンさんのワイン作りは始まった。
フィスパーテルミネンでのワイン作りの伝統の継承は、1979年から協同組合が担っており、ハインツマンさんのザンクト・ヨーデルンは1980年に創業を開始した。
「初日からわたしはケラーマイスターになりました」
とハインツマンさんは言う。
・・・ツンフトへ
1979年以前、このヨーロッパ一標高の高いワイン畑では、多くの区画が手入れもされずに放って置かれた。特にほとんど誰も行かないような高い場所は荒れていた。
「もし、このヨーロッパ一標高の高いブドウ畑がなくなってしまったら、それはヴァレー/ヴァリス州にとってもスイスにとっても残念なことです。ですから、わたしたちは連邦景観基金の支援を受けて、1997年、崩れた石垣や荒れた区画を整備しました」
とハインツマンさんは言う。
しかし、一番高い所にある区画は所有者にはあまりにも遠すぎた。彼らはほかにもブドウ畑を持っており、山の上のブドウの木にはもう関心がなかった。そこで、ハインツマンさんはどうしたのか？
「わたしは6人の同志を集めました。観光業に精通した人、法律の専門家、銀行の人、そしてワイン製造者3人です。それから、わたしたちは山頂付近にあるブドウ畑を公用収用し、1999年に「ハイダ・ツンフト ( 職業組合 ) 」を創設しました。ハイダ・ツンフトという名前は、『アルペンワインの真珠』とも言われるフィスパーテルミネン産のブドウにちなんでつけられました」
とハインツマンさんはこれまでの取り組みを語り
「こうして、わたしたちは山の上の畑に再び息を吹き込みました。そして、組合の規定として、ワイン作りに参加したい人には組合に1000フラン ( 約8万7500円 ) の会費を納めてもらうようにしました。会員は自分の名前のついたブドウの木を1本持ち、毎年自分だけのオリジナルラベルがついたワインを1本受け取ります」
とハイダ・ツンフトについて説明する。
景観と文化の継承
ローランド・ツィンマーマンさんは2000年から8年間、フィスパーテルミネンの村長を務めた人物だ。
「村としては、ヨーロッパ一標高の高いワイン畑はこれからも残されるべきだと考えました。特にわたしにとってとても大切なことは文化と結びつきの深い耕地の継承です」
とツィンマーマンさんは言う。
ツィンマーマンさんは村長になる前から連邦景観基金にコンタクトを取り、15万フラン ( 約1300万円 ) の援助金を得た。ブドウ畑は新たに測量され、石垣も新しく作られた。
「わたしにとって、これは持続可能なプロジェクトです。資金面でも、理念の上でも。この山はわたしたちの祖先の歴史を多く語っているからです」
とツィンマーマンさんは言う。
ハイダ・ツンフトは社会の縮図
ハイダ・ツンフトが生まれ
「ワインは好きだがワイン作りをまったく知らない人たちに呼びかけたかった」
という組合の希望を実現するには、ピルミン・ハインツマンさんが適役だ。
ハインツマンさんは、あらゆる社会背景を持った人たちがスイス中から集まり、ハイダ・ツンフトの会員になっていることを非常に喜ぶ。
「会員には神父が2人いるほか、老若男女、実にさまざまな人たちがいます。会員ひとりひとりが年に1度、この山で働かなければなりません。もしそれができない場合は100フランの罰金が生じます」
現在、会員数250人のハイダ・ツンフトは入会制限を行わなければならないほどだ。
「今、順番待ちのリストがあります。木が足りません」
とハインツマンさんはツンフトの人気ぶりを語る。
趣味的なツンフトから最高級ワイン
そうこうしているうちに、ハイダワインは最上級のワインへと成長した。
「ハイダワインは自分の力でここまできました。ハイダとは『異教徒』、『非キリスト教徒』という意味です。異文化がわたしたちの村にやって来ました。このハイダというブドウ品種はわたしたちの山、レープベルクにうまく根付き、フルーティな味わいで香りも良い、アルコール度と糖度の高いワインを生み出しました」
とハインツマンさんは言う。
また、品評会に出したところ、このワインがあまりにも高い評価を受けたことに驚いたという。
「こうしてメディアもハイダに出会ったのです」
と言って、ハインツマンさんは喜ぶ。
すでに100年前にも
ハイダワインはすでに100年前にも評判になっていた。1901年、その高いアルコール度数 ( 14 % ) から、チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) の講師G. F. シュテブラー博士が「足にくるきつい酒」と言った。
「ハイダは飲む人を饒舌にさせ、幸せな気分にさせる」
と、シュテブラー博士の研究論文「スイスアルプスからのモノグラフ」に記されている。
「地元の人はほかの土地の人よりもハイダには強いようです」
と村出身の女性は言う。この女性ももちろんハイダ・ツンフトの会員だ。ハイダの里フィスパーテルミネン村をあとにする際、筆者はもう一度ヨーロッパ一標高の高いワイン畑を、畏怖の念を持って仰ぎ見た。
ジャン・ミシェル・ベルトゥ、フィスパーテルミネンにて、swissinfo.ch
( 独語からの翻訳 中村友紀 )
ハイダ
実は小さく、収穫量の少ないブドウ品種「ハイダ」から作られる白ワインのハイダは、フィスパータール谷のワイン農家の自慢のワインだ。必要な条件のそろった良い年にはエクスレ度100ぐらい ( 糖度の表示法で、この場合1リットルに約100グラムの糖を含む ) までになる。
ブドウ畑は標高6５0メートルのフィスパ川の川岸から始まる。最高地点の標高11５0メートルまでの標高差500メートルの山の斜面、高い石垣で区切られた急な段々畑にブドウの木が植えられている。
このブドウ畑はスイスで最も乾燥している地域の山の南斜面にあり、また大きな石垣もあるため、晩秋まで暖かい。
ブドウ品種のソヴィニヨン・ブランまたはトラミネールから派生しているハイダは「アルペンワインの真珠」と言われている。この貴重なブドウはまさしくヨーロッパ一標高の高いブドウ畑で栽培され、フィスパーテルミネン ( Visperterminen ） のワイン農家の誇りだ。
ハイダの買い手
まず、地元のレストランやホテルに卸されるほか、ツェルマットとサースフェー ( Saas Fee ) も重要な市場だ。
大きな潜在市場はワイナリーでの直接販売。ワイナリーのザンクト・ヨーデルンには、試飲のできるワインバーがある。多くの人がワイナリーから直接ワインを買い求める。
大手取引先はスーパー「コープ ( COOP ) 」で、「プロ・モンターニュ ( Pro Montagna ) 」のブランド名でスイス山岳地帯の食品を販売促進している。また、地元の食料品店にも卸される。
バーベキュー祭
9月最初の土曜日、ハイダのふるさとであるフィスパーテルミネンでは、ヨーロッパ一の標高を誇るブドウ畑でのグルメツアー「バーベキュー祭」が開催される。
参加者は限定2000人で、さまざまな団体、企業、組合から集まる。
ふもと ( 標高650メートル ) から頂上 ( 標高1150メートル ) まで、ヨーロッパ一高いワイン畑の「歴史の小道」が作られ、中継ポイントではワインと地元の料理が振舞われる。
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