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「準備は整った。後は『オラクル』が法廷ではなく、水の上での戦いにやって来るのを待つだけだ」と「アリンギ号」のオーナー、エルネスト・ベルタレリ氏は話す。
132年もの間勝者の座に就いていたアメリカを負かしたニュージーランドを、2003年に海の無い国スイスが打破。次の2007年も「アメリカズカップ」の優勝杯を防衛したスイスだが、2010年の第33回大会はアメリカ側からの訴訟問題で開催がこの期に及んでも不透明だ。
アラブ首長国連邦内のラアス・アル・ハイマ首長国と同名の首都から少し離れたアル・ハムラ湾の人工島にアリンギの艇庫がある。一方オラクル側の艇庫予定地にはただ砂があるばかりだ。
それは、2010年2月に行われる第33回大会に挑戦したくないというアメリカ側の態度の象徴のようだ。この期に及んでも、世界で最も古いヨットレースの規約はアメリカ側の安全性を理由にした拒否権を正当化できるのだろうか。
スイス側は長く続いた訴訟に終止符を打ち、水の上でのスポーツマンシップに基づいた本当の戦いを繰り広げたいと望んでいる。アリンギ号のベルタレリ氏に聞いた。
swissinfo.ch ： ここラアス・アル・ハイマで、アリンギ側の戦いの準備は進んでいますか。
ベルタレリ ： アリンギ側の準備は万端です。およそ30日前にここへ到着し、スイス側の代表団や国際的なメディア関係者と一緒に水の上をすでに何回か走りました。
われわれはスイスの国旗と「アメリカズカップ」の優勝杯を防衛するためのレースに今すぐにでも挑戦できます。われわれと一騎打ちするためアメリカ側がやってくるのを今か今かと首を長くして待っています。
swissinfo.ch ： そのことですが、彼らの一番最近の返答はどのようなものですか。
ベルタレリ ： 少しがっかりしますが、まるで彼らはこの戦いを避けようとしているかのようです。あれほど望み、あれほど要求してきた戦いを避けようとしているのです。( 編集者註 : もともとアリンギはスペインのクラブを挑戦者に推薦していたが、オラクル側が反対し、オラクル自らが挑戦者になった )
今ここまでこぎつけ、素晴らしい水面と完璧なインフラが整っているというのに。もう一度言いますが、スイス側の準備は万端で、ただ待っているのです。
swissinfo.ch ： オラクルの態度をどう思いますか。
ベルタレリ ： 彼らの態度を理解するのは非常に難しいのです。恐らく彼らのヨットがアリンギに勝つのに十分なスピードを出せるかどうか自信が持てなくなったのではないかと想像します。そのため、改良に時間を稼いでいるのではないかと思います。
または、負けたくないので勝負に現れないのではという可能性もあります。しかし、スポーツをやる限り、負けるというリスクは必ずあり、もしそれを避けたいのであればほかのことをするべきです。というのもスポーツでは結果は決して予想がつかないからです。
そしてスポーツで勝つにはルールがあり、テニスではボールをネットに通過させなければならないように、ヨットでは水の上で決勝ラインを通過しないと勝てないのです。
swissinfo.ch ： アメリカ側は、アラブ首長国連邦は競技の場として、特に安全面からふさわしくないと言っていますが、これをどう思いますか。
ベルタレリ ： 世界の石油の4割を生産するアラブ首長国連邦が危険だというなら、世界の市民はある日、車に給油したとき、ガソリン代が2倍になっているのに驚くでしょう。
つまり、またこれも戦いに来ないようにするための口実なのです。しかし彼らの理性を示すためにも、また彼らの名誉のためにもぜひここに来て戦ってほしいと思います。戦いたいと主張したのは彼らです。訴訟の場で戦うのではなく、スポーツ競技の場で、スイスのテクノロジーに対して正々堂々と戦ってほしいと思います。
swissinfo.ch ： 最後にラアス・アル・ハイマでアラブ首長国連邦がアリンギに提供した艇庫のインフラについて一言コメントをお願いします。
ベルタレリ ： ただ驚いています。艇庫の広さだけでなく、その建設の早さに感嘆しました。第32回のスペインレースでは、スペイン人が用意してくれた艇庫に感動し、奇跡だと思いましたが、今回アラブ首長国連邦はスペインを負かしたと言わざるを得ません。
努力、我々に提供してくれた援助など非常に質の高いものです。従って全てが完璧に準備できています。後はアメリカ側が水の上での戦いにやって来て、どちらが勝つか一騎打ちをするのを待つだけです。
モハメット・シェリフ、ラアス・アル・ハイマにて、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳 里信邦子 )
第33回レースをめぐる争い
2007年7月、第32回レースで優勝した「アリンギ号」のオーナー、エルネスト・ベルタレリ氏は、第33回レースの挑戦者にスペインのクラブを選んだ。
これに対し、「BMWオラクル号 ( BMW Oracle ) 」は、スイスのアリンギチームは、オラクルに不利な判断を行ったと訴訟を起こした。さらにレースの規定書でもある優勝カップの「贈与証書 ( Deed of Gift ) 」に照合して、スペインのクラブは挑戦者の資格に値しないと訴えた。
複雑で長期にわたる裁判の結果、2009年4月2日ニューヨーク州控訴裁判所はオラクルを挑戦者に決定した。オラクル側はその後もアリンギチームに対し、レースの規則を一方的に決めたとして訴えを起こした。これに対し、スイス側もアメリカの裁判所に、オラクルを挑戦者として不適格にするよう訴えた。
2009年7月22日、担当裁判官は両者に対し和解調停を行うよう要請。両者はこれを承諾した。その後2010年2月に決戦が行われることに両者とも同意したが、オラクル側は、アラブ首長国連邦でのレース開催は、同国がアメリカと敵対するイランに近いため安全面で問題があると主張し始めた。
規定によると、2月の決戦は両者が開催地に同意したときにのみ行われる。そのためオラクル側は再度ニューヨーク州控訴裁判所に、アラブ首長国連邦での開催を取りやめ、ほかの場所を選ぶよう訴えている。こうして2007年以来続く訴訟問題は結局、解決を見ていない。
しかし、アリンギ側は8月初旬にスイスから地中海にヘリコプターでヨットを運び、アラブ首長国連邦でのレース開催の準備を完了した。
アメリカズカップ
1851年から現在まで続く、世界で最も古く、最も有名なヨットレース。優勝カップの保持者のヨットであるデファンダーと挑戦者のヨットであるチャレンジャーの間で争われる、1対1のマッチレース。
1851 年イギリスで開催された第1回のレースで、ニューヨーク・ヨットクラブのヨット「アメリカ号」が優勝。以後、1983年までの132年間、同クラブがカップを保持し続けた。
2003年、ニュージーランドのデファンダーを、スイスの「アリンギ号」が破り、ヨーロッパ大陸に初めてカップをもたらした。
第33回レースは2010年2月に開催が予定されている。