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フランスのMDI社が発表した空気自動車エアポッドの生産が、ルコンヴィリエにあるスイスメタル社の旧ボワラ工場で開始される。
エンジンのピストンを動かすのに用いられるのは、圧縮空気のみというクリーンな設計でしかも低価格のこの自動車は、わたしたちに車に対する意識改革をも呼び起こそうとしている。
売りは｢究極のエコカー｣
ジュネーブでの「モーターショー ( Salon de l’Auto ) 」がすでに終わってしまった11月末、圧縮空気タンクの給気システム効率化の共同研究のため、「エアポッド( AIRPod )」がスイス連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL ) の広場に登場した。丸い窓がある、彩色された卵のような近未来的なデザインはまるで、｢コロンブスの卵｣のようだ。
この車が革新的なのは、スマート ( smart ) 車にも似た3人乗りの丸いフォームではない 。エンジンを動かす動力源は圧縮空気のみという、排ガスゼロの低公害車を実現したことだ。その発想は突然空から降ってきたのではなく、200年間の技術に基づいている。
「MDI (Motor Development International)社」の創始者であるギィ・ネーグル氏は、50年間におよぶ歳月をかけ、エンジンの開発に取り組んできた。その分野はフォーミュラ１ ( Formule 1 : F1 ) から航空機産業に至り、なかでもとりわけ神話となったルノー8ゴルディーニ ( Renault 8 Gordini ) のエンジン開発に従事した経験を持つ。
世界に向けて
ネーグル氏は1990年末、空気エンジンに興味を持ち、2003年から2004年にかけて、フランスの巨大自動車産業に話を持ち掛けたが、ことごとく断られてしまう。そんな中で、インドの「タタ ( Tata ) 社」が興味を示し、タタグループの技術者とフランスのニースを活動の拠点とするネーグル氏は2年間以上もの時間をかけ、評価、テスト、技術研究、改革を繰り返した。
2007年、インドのトップ企業であり、トラックとバス車両生産において世界市場でも最も巨大なメーカーの一つである、ムンバイに拠点を置くこの企業は、1000万ユーロ ( 約13億円 ) でMDI社のエンジンライセンスを取得、インドで開発を進める。
タタ社だけではない。現在世界市場において、50におよぶライセンスが取得されるに至っている。その一人、「ケイトカー ( Catecar ) 社」の創始者である ジュネーブの弁護士、アンリ・フィリップ・ソンブック氏は、スイスで空気自動車の生産を開始する。
手工業
｢この車が革新的なのは、技術面だけではありません。そのビジネスプランも革新的なのです。消費者の近くで生産され、在庫は抱えません。特約店もなければ、ロジスティクスもありません。注文を受け生産する、手工業のような形態なのです｣
とソンブック氏は語る。
MDIには巨大な工場はなく、車体の80%までを生産する小さな工場が世界各地に多数分散されており( 残り20%の部品は、外注となる) 、需要に応じて生産する。その場で販売することで、輸送の際に生じる公害までをも防ぐことができる。
MDIは自社サイトにて、誰もがMDIの特約店・製造業者・業務提携者となり、工場主になれると呼びかけている。工場は、普通車生産工場の4分の1の広さで済み、5分の1の投資額で済む。しかし、一般の工場より3割増の従業員が必要だ。
息を吹き返す旧ボワラ工場
これは、2006年に、近年のスイスでは最も長いストライキの舞台となった、ジュラ・ベルノワ地方のルコンヴィリエ ( Reconvilier ) にあるスイスメタルグループの旧工場にとって朗報だ。
ケイトカーは2010年春に、一貫した組立工場を稼動させる。あと1500万フラン ( 約13億円 ) が必要で、資金のある人たちに話を持ちかけている、とソンブック氏は自信たっぷりに話す。稼動が始まると、120人の従業員とロボットが、1時間に3台から4台の自動車を生産していく ( 普通車の生産は1分に1台 ) 。
ケイトカーは楽観的だ。この小型車は、買い物や都市間の電車移動のために駅まで出向くために最適なため、需要は膨大であり、さらに価格が手頃 ( 9000フランから / 約77万円から ) で、誰もが買えるだろうと見込んでいる。さらに、公共社会との共存を忘れてはならないとソンブック氏は強調する。
｢これは、特別な市場ではありません。ヨーロッパで最大の規模を誇るスイスのカーシェアリング協同組合モビリティ ( Mobility ) に加入した企業はすでに2500社に上ります。MDIフランス社の1号工場は、稼動前に4万台の受注を受けました。生産が追いつかないので、わたしたちも手助けすることになるでしょう｣
と氏は語る。
給気システム
当然考えるべき問題は、どうやって圧縮空気を給気するかだ。MDIは自動車とセットで、一晩で給気が可能となる小さな空気圧縮機を販売するが、これでは不十分で、給気スタンドが必要だ。ケイトカー社は手始めに、スイスの200件の自動車修理工場を当たり、約3万フラン ( 約250万円 ) の投資額での空気圧縮機の設置契約を持ちかけている。利用者は、1回3分間の給気で6フラン ( 約500円 ) から8フラン ( 約680円 ) の給気料金を支払うことになるだろう。
ソンブック氏にとって、まず個人経営の自動車修理工場に絞った200件の契約は非常に｢簡単｣。つまり、ガソリンスタンドに行かなくても、給気できるという。
走行距離150キロメートルから200キロメートル毎に給気しなくともよいように、MDIはエンジン用燃料 ( 約2リットルで100キロメートルの走行が可能 ) が走行中に空気の圧縮を可能にする大型車をすでに開発した。
ピストン式エンジンではなく、ガソリンの燃料室が空気を暖める。この際の可燃
効率は、普通車のエンジンでは5分の1なのに対し、MDIエンジンでは100％の効率で燃やすことができる。
酸化窒素も排出しなければ、ほんの少しの塵さえも排出しない。わずかな二酸化炭素 ( CO2 ) の排出だけで、800キロメートルもの走行距離を可能にした。
マルク・アンドレ・ミゼレ 、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、魵澤利美 )
二つの車種
エアポッド ( AIRPod )
圧縮空気のみを動力源とする。丸い窓に卵型のフォーム。3人乗り。220kg。走行距離220km。最高時速70km。約9000フラン ( 約77万円 )。
ワンフローエア ( OneFlowAIR )
圧縮空気とエンジン用燃料とのハイブリッドカー。多様性のあるバージョンが可能。3人から5人乗り。320kg。走行距離800km。最高時速130km。約1万2000フラン ( 約102万円 ) 。
200年の技術
石炭、石油、ガス、そして電気という、その時代ごとの主要なエネルギーの流れに押され、圧縮空気の研究はさほど飛躍しなかったが、その歴史は、ピストン式エンジンの発明と同時期にまで遡 ( さかのぼ ) る。
1812年 イギリスで、圧縮空気によるエネルギーのストックに、最初の特許がおりる。
1840年 パリに、最初の圧縮空気蒸気機関車が走る。
1876年 パリに空気地下鉄が走る。続いて、フランスのナント、スイスのベルン ( 1890年より、ラ・フォス・オ・ウルス / La Fosse aux ours からベルン駅間 )でも走行を始める。静かな上、煙や塵を排出しないクリーンなエンジンは、トンネル工事や炭鉱においても用いられた。1933年まで、パリのレ・アール ( les Halles ) 界隈を走っていた。
1896年 1930年までアメリカでは炭鉱や国営工場にて何千もの圧縮空気の蒸気機関車が走っていた。世界中の製造業者が、類似した機械を大量に生産しており、その傾向は1950年まで続いた。
たった数キロメートルの移動手段
12％が1km以内の移動にも車を使い、30％が3km以内、33％のみ10km以上の移動に車を使う。
スイスの自動車使用者は、都市居住者 ( 人口の3分の2 ) は1日平均30km、田舎に住んでいる人は1日平均53km、車を走らせる。
2005年の連邦統計局 ( BFS /OFS ) 資料による。