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昨年9月10日に「セルン ( 欧州合同素粒子原子核研究機構/CERN ) 」で稼動を開始した「大型ハドロン衝突型加速器 ( LHC ) 」 ( 現在修理中 ) の生みの親、リン・エヴァンス氏は英科学雑誌ネイチャーで2008年の科学者に選ばれた。
ウェールズ出身の物理学者は人当たりが良く話好き。科学についてのほか、LHC の事故について語り、セルンに対する非難に答えた。
swissinfo ： あなたの子どもであるLHCはどんな具合でしょうか。
エヴァンス ： 子供は回復の途にあります ( 笑う ) 。壊れた部分を取り除くことに成功しましたし、現在われわれの仕事は再び軌道に乗っています。
swissinfo ： ネイチャーによると、今年の夏、再び稼動するとありました。
エヴァンス ： そうです。9月末までには。LHCの場合、何か1つが故障すると修理に長い時間を要するのです。 機械は絶対温度の摂氏マイナス271度にあります。室温にまで戻すためだけで5週間かかります。修理をして再び絶対温度まで冷却するには同じ時間がかかります。
swissinfo ： 何度も質問されたことだとは思いますが、LHCが捜し求めているものは何ですか。
エヴァンス ： その質問にはもう何千回も答えましたよ ( 笑う ) 。最大の課題は、物質の起源は何かということです。引力のある世界では物質には重さがあります。一方、無重力の空間では重さはなくなりますが、物質は存在し続けますね。 例えば極端な例ですが光量子といった粒子があります。光量子とは光の粒子です。光の粒子は太陽から来ますが、人間が物を見たり、情報を伝達するために不可欠な重要な粒子ですが、質量がありません！
swissinfo ： それで？
エヴァンス ： 1980年代にセルンで発見された「W」と「Z」という粒子もあります。これも非常に重要な粒子で、ノーベル賞を受賞しました。太陽が光り、燃えることを可能にする粒子です。私たちの身体を作っている陽子の80倍の、非常に重い粒子です。一方で光のように質量のない粒子があり、他方でWやZのように非常に質量のある粒子がなぜ存在するのかということは分かっていません。
このためわたしたちは、このほかに粒子があるという結論に至りました。これを「神の粒子」と呼んでいます。私個人としてはこの名前はまったく好きではありませんが。「ヒックス場」といわれるもので、これが質量のない粒子と重い粒子の違いを説明できるかもしれないものです。ヒックス場が存在するとなれば、これが物質の世界を構成する要素であるはずです。これを私たちは探し出そうとしているのです。
swissinfo ： あなたが科学に興味を持ったのはいつですか。
エヴァンス ： 若いころから常に科学には興味がありました。学校でも科学の授業がほかのどの授業より興味がありました。というわけで、何がきっかけになったのかということは分かりませんが、セルンで私たちが研究していることが将来の若者たちの科学へのインスピレーションに役立つことを期待しています。
swissinfo ： あなたにとって学校での科学の授業は簡単だったかもしれませんが、多くの人たちにとっては難しい学科です。学校の教え方が悪いのではありませんか。
エヴァンス ： そうは思いません。いろいろな人がいろいろな適性を持っているということです。とはいえ、私が本当に心配しているのは、ヨーロッパでもアメリカでも多くの若者が科学から疎遠になっているということです。科学を勉強した学生でさえ、別の分野に就職することを望んでいます。若者に科学に興味を持ってもらえるよう、科学は面白いのだと分かってもらえるよう、真剣に努力する必要があるでしょう。
swissinfo ： 科学分野の職業は労働条件が良くないのでしょうか。
エヴァンス ： 今の若者は司法関係や金融関係へ就職する傾向があります。もし、科学者として、もしくは技術者としての能力があれば、科学分野でもだいぶ先端を歩むことができます。ともかく工業国では科学の勉強をする人は減っています。こうした傾向は是正されなければなりません。LHCによる大反響で、若者が科学に魅力を持ってくれることを望みます。
swissinfo ： LHCの故障で経費が大幅に増加したということはありますか。
エヴァンス ： 修理にはおよそ1500万フラン ( 約12億4000万円 ) ほどかかりました。大きな負担です。とはいえこの計画の全費用は、機械や探知機を作る費用なども含めて40億フラン ( 約3300億円 ) です。
swissinfo ： LHCが再び故障する可能性はありますか。
エヴァンス ： あらゆる可能性があります。とはいえ、予期していなかったことが起こると、それからたくさんのことを学ぶことができます。今回の故障でわたしたちは、二度と故障を起こさないためのツールを開発し、将来の事故を防ごうとしています。事故の原因となった磁石の問題については、前もって感知することは不可能でした。今回、機械を開いてみたので、何が間違いだったか分かりました。
swissinfo ： LHCが作動しても、結果が得られないということもありうるわけですよね。
エヴァンス ： 予言はできません。私たちがやっていることは、科学研究です。しかし、正直に言えば答えは「ノー」です。ヒックス場がないということを発見することも魅力の一つです。つまり、私たちが予想しなかったものが見つかる可能性があるということです。また、私たちが何も理解していなかったということが分かるかもしれません。
swissinfo ： ご存知のとおり、セルンでの研究に批判的な人が多くいます。こういった人たちに対して、なにか意見はありますか。
エヴァンス ： 私たちは水爆を造っているわけではありません。とても小さいエネルギー、蚊が持つパワーで私たちは動いているのです ( 笑う ) 。
しかし、新しいものに対する恐怖を持ち続けるのであれば、石器時代を生きているようなものです。私たちに対する非難は、インターネットによって助長されたものです。インターネットはいわば、意見を伝えるための無限の機械です。例えば、ワクチンが開発された時代にインターネットがあったらどうでしょう。パスツールは仕事ができなかったはずです。彼の研究は非常に危険だったわけですから。ウイルスを人間に植え付けるですって！ ( 笑う) 。こうした世の終わりに対する恐れの一連はすべて、インターネットがあるために、問題ではないことが拡大されてしまった結果起きたものです。この地上でまじめな科学者は誰一人として私たちの研究に対し疑問を抱いている人はいません。
swissinfo ： 英科学雑誌ネイチャーによるとLHCは最後の加速器であると書いています。この見解は正しいでしょうか。
エヴァンス ： LHCに続く機械が決して作られないということはないと思います。別の機械を作るという提案はありますが、現在の実験の結果が出ない限りできません。LHCの完成には14年間かかりました。次世代の機械を建設するにはさらに時間がかかることでしょう。宇宙の秘密を明かすことはますます難しくなっていきます。
swissinfo、ロドリゴ・カリソ・コイト 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳
リン・エヴァンス氏略歴
1945年 ウェールズに生まれる。
父を11歳で亡くし、学校の食堂に務めていた母に育てられる。
1969年、ウェールズ、スワンシーの大学、物理学科卒業。
1967年 結婚。２児の父親
1970年代になってセルンとの共同研究が始まる。
1991年 素粒子物理学に貢献したことでアメリカ物理学協会の会員に認められる。
1994年 LHCの責任者に任命される。
2001年 大英帝国第３級勲位 ( CBE ) 受勲