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曇りがちな冬空に暖炉の前でルネサンスの本を紐解く。そんなひそかな楽しみに似た展覧会が開催されている。
ジュネーブ州コロニー ( Cologny ) にあるボドメール古文書美術館での「イタリア・ルネサンス展」は、同美術館所蔵の手紙や本とジュネーブの個人所蔵の絵を展示し、小規模ながらイタリア・ルネサンスの多面性をみせてくれる。
イタリア・ルネサンス展は、ボッティチェルリ ( 1445 - 1510 ) の描いたダンテの横顔をテーマの象徴としている。ダンテは中世末期の詩人でルネサンス時代に再びもてはやされ、多くの画家が彼を主題にする。今回の肖像画は、画家ボッティチェルリと詩人ダンテの出会い、言い換えれば、絵画と文学の出会いを象徴的に表している。ルネサンスの特徴はこのように、絵画、文学、建築、数学、科学などに境界がなかったことだ。同展は小規模ながら、実はこの各分野の出会い、共存の様子を展示している。画家は文学者や数学者と交流し、また画家自らが、詩人、科学者、建築家、数学者などであった。
ミケランジェロの手紙
同展の展示室はとにかく暗い。その暗がりに目が慣れてくると、「ミケランジェロ自筆の手紙とソネット」という文字が目に飛び込んでくる。ミケランジェロ自筆の手紙などというものがさりげなく飾られているのが、ここボドメール古文書美術館のうれしいところ。
「ミケランジェロは彫刻家、画家、建築家と知られていますが、実は詩人でもあったのです。およそ400点のソネット ( 14行詩 ) を残しています」と同展の解説者のマルリーズ・ベルディさん。
女性と余り縁のなかったミケランジェロ ( 1475 - 1564 ) だが、晩年にヴィットリア・コロンナ ( 1492 - 1547 ) という未亡人と知り合う。彼女は、ローマ貴族コロナ家出身の作家であり、当時宗教改革に反対していたイタリアで、カトリック内部の改革を唱えた人物である。ヴィットリアが先に亡くなって、ミケランジェロは大いに嘆き悲しんだといわれる。展示されているソネットも、ヴィットリアに宛てた数多くのソネットのうちの一つである。
レネサンスの多様性
もう一つ興味深いのは、「造形芸術について書かれたもの」というタイトルの陳列棚。レオナルド・ダ・ヴィンチ ( 1452 - 1519 ) のように、芸術家自身が自らの造形芸術の技術、理論を書き始めるのもルネサンスの特徴。こうして、芸術家は中世の単なる工房の職人から、一人の芸術家として「格上げ」されるのである。
レオナルドと非常に仲のよかったルカ・パチオリ ( 1445 - 1514 ) は、「会計の父」と呼ばれる数学者である。彼の書いた簿記の手法は今でも各国の簿記の原型になっているという。今回は彼の著した幾何学書が展示されており、「当時、今は切り離されている美術と幾何学は数学という共通の根をもっていたのです」と解説されている。
その横に、アンドレア・パラディオ ( 1508 -1580 ) の著した本が展示されている。パラディオはいうまでもなく、ヴェニスから西60キロメートルに位置する町ヴィチェンツァ ( Vicenza ) に数多くの建造物を残した建築家である。特に有名な別荘「ラ・ロトンダ」に表現されたエレガントな調和はただ見事と言うしかなく、人を「幸いな気分」に導いてくれる偉大な作品である。
パラディオは若い頃、人文主義者ジャン・ジョルジョ・トリッシノと出会い、彼から数学、音楽、ラテン文学、古典主義の思想などを教わったという。レオナルドのように、彼もローマ建築を調査、論考した『ローマ建築』や建築理論の集大成『建築四書』を書いている。
展示は、こうしたルネサンスに活躍した人々のただ１冊の本であったりするのだが、それらを通して、彼らが同時に生きた時代のすごさ ( 相互に与え合ったエネルギー、相互性から生まれるインスピレーション ) や、主に活躍したフィレンツェの町などに思いをはせ、彼ら個々の業績を家で調べ直したりするのも楽しい。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) コロニーにて
キーワード
「イタリア・ルネサンス展」
ボドメール古文書美術館 ( Fondation Martin Bodmer )
開館日：2006年11月25日から2007年4月1日まで。毎日14時から18時まで。月曜休館
料金：大人16フラン、学生10フラン、子供無料。
交通：ジュネーブ市内のバス停リーブ ( Rive ) からバスA (Cologny-Temple下車 ) か33番 ( Croisée de Cologny 下車 ) 。