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スイスとイタリア間の氷河が過去数10年の間に後退したという確証のもと、両国は国境の一部変更に乗り出した。
スイス～イタリア間の約750キロメートルの国境線は1861年に制定された後、1940年のデータに基づき決定された。しかし、有名なマッターホルンを含むアルプス山脈の高地でも雪や氷河が急速に溶解しているため、国境の変更が必要となった。
機械的な手続き
スイスとイタリア間の国境の変更は、全体の約10%未満とほんの少しにすぎない。しかしこれは地球温暖化に伴う氷河後退の問題であると同時に、約150年前に両国がどのように国境を制定したかを問う問題でもある。
両国とも、これは機械的な手続きと述べており、どちらも論争に持ち込む意思はない。現在両国は新しい国境を交渉するのではなく、国境の目印が移動したかどうかを調査している。目印が移動している場合、国境線を変更することになる。
標高の低い地域では、国境は固定されている測定地点をもとに設定され、文字通り固定されたセメントの目印がある場所も数か所存在する、とスイストポ ( Swisstopo / 連邦地理局 ) のダニエル・グートクネヒト氏は語った。
まっすぐな国境線
「山の中腹地帯では、国境は各地点を結ぶ直線になります。しかし高地では両国ともそうした方法の使用を希望していませんし、必要もありません。昔は話し合いで国境を決めていました」
とベルン郊外の本部でグートクネヒト氏は言った。
「国境線が通る自然の目印が存在するというのが一番良い説明でしょう。そしてわれわれはただ国境線を自然がもたらした変化に合わせるだけです。川のある中腹部でも同様です」
とスイスと隣国を分ける国境の調整の責任者であるグートクネヒト氏は説明した。
標高の高い数か所の地点では、スイスとイタリアを分離する作業はさほど難しくない。
「ちょうどナイフの刃のようにはっきりと分かれており、簡単に認識できます」
ほかの地点では、特定の氷河における標高の最高地点や、川が分水している地点を国境として定めている。従って理論的には、地形変化に合わせて国境線も変化するべきだが、実際は現在まで変更はされなかった。
「もし変更をしなかったら、現実の状況に一致しない国境線が引かれていることになります」
とグートクネヒト氏は言った。
新しい地図
「以前あの岩の表面は氷でおおわれていました。もう昔のことになりましたが、あそこにはかつて氷河がありました。1940年の時点では、岩の上に氷河があったのです」
とグートクネヒト氏はマッターホルン近くの国境を越えたイタリア側のスポットを指し示した。
今日残存する氷河の標高が最も高い部分は、昔あった氷河の影になっていた場所だ。
「現在の最高地点はここです。そしてここと昔の氷河の最高地点の間には相当距離があります。100メートルはあるかもしれません」
グートクネヒト氏は新しい国境の地図を持っているが、公開はできない。スイスとイタリア両国の政府が承認するまで、変更は非公開だ。
イタリアでは、国境の変更には法の改正が必要で、いわゆる「可動国境」の概念を議会で論議しなければならない。政治的な手段を通して決定がなされる。
しかし、両国双方にとってこれが問題になる可能性は低い。
「両国の専門家は、決まった手順で行われる定期的な国境調査とメンテナンス活動の施行中に、過去4年間で氷河が後退したことに気付いていました」
とフィレンツェにあるイタリア軍地学研究所の責任者カルロ・コレッラ氏は語った。
「直接的な影響はなし」
国境紛争や、天然資源へのアクセスの問題がある国での事情は異なるかもしれない。イタリアとスイスは、国境の変更はごくわずかと発表している。
「新しい国境によって個人に直接的な影響がでることはありません。10メートル程度の変更はどちらの国にも影響を与えないでしょう。両国の関係は長い間の協力に支えられています」
とコレッラ氏は言う。
スイスとイタリアは国境を検証するための新しい方法を確立することに合意した。イタリアは隣国のフランスとオーストリアとも協定を結んだ。スイスもまたそれら2カ国と国土の東西で国境を接しているが、それらの国境は両方とも氷河後退の影響があるような高地に位置していない。
スイスの地形学者は、ハイキングをする人々や登山者のために、データ更新を確実にしなければならないと考えている。また、携帯電話にも搭載されている全地球測位システムの普及は、こうした地形変化に対する当局の反応のスピードに影響を及ぼしている。
スイス当局はイタリア当局と6年毎に徹底的な国境調査を実施しており、グートクネヒト氏は、現在の調査が行われている間に国境を変更する予定はないと言う。
「われわれにとって国境は調査の瞬間に設定され、そのまま決定されます。次の調査までの間に変化が起きてもかまいません」
次の調査は
「2年後、100年後、または2カ月後かもしれません。必要に応じて行われます」
swissinfo、ユスティン・ヘネ 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳