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日本では、三保松原を含めた富士山の世界遺産登録が確定して話題になっています。これにより日本に存在するユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産は、文化遺産が１３カ所、自然遺産が４か所と全国１７カ所になりました。一方、スイスの国土面積は日本の約一割と小さな国ではありますが、現在スイスには世界遺産が１１カ所（文化遺産８カ所、自然遺産３カ所）登録されています。
私の住むヴォー州(Vaud)には、２００７年にユネスコ世界遺産に登録されたラヴォー地区の葡萄畑があります。ヴォー州には、この他にボンヴィラ－(Bonvillars)、シャブレ(Chablais)、コテ・ド・ロルプ(Côtes de l’Orbe)、ラ・コテ(La Côte)、ヴュリ(Vully)という葡萄栽培地区があり、どの地区もワインの名産地です。
世界遺産のラヴォー地区とは、ローザンヌ(Lausanne)からモントルー(Montreux)までのレマン湖畔の丘陵地帯にある９２０ヘクタールに及ぶ葡萄畑を指します。この地区のワイン製造の歴史は、１１世紀にカトリックの修道会であるベネディクト会及びシトー会の修道士たちの手により始まりました。ラヴォー地区がユネスコの文化遺産として登録されることなった理由の一つはこのワイン造りの長い歴史と伝統にあります。
ラヴォー地区にあるキュリ(Cully)からシェーブル(Chexbres)を結ぶコルニッシュ通りの途中に、デザレ(Dézaley)という小さな村があります。その東１００ｍ程の場所にこの地域を一望できる車寄せがあり、そこに設置された地図を見ながらラヴォー周辺の葡萄栽培地区を見渡すことができます。
四季を通じて美しいひな壇式の葡萄畑、目前に広がるレマン湖、そして視線を移すとアルプスの山々が見えます。ユネスコの世界遺産登録はラヴォー地区に多くの課題をもたらし、現在も懸案事項はたくさんありますが、環境保全政策と地元住民の協力は模範的であると言われています。この美しい地域を訪問して気づくのは、ここには日本のような「ユネスコ世界遺産」を強調する看板が見当たらないことです。唯一見かけるのは高速道路にある名所案内の看板(トップ写真)くらいでしょうか。
さて、２０１３年度の葡萄の出来はどうでしょう。ピュリ(Pully)のリサーチ・センター(l’Agroscope de Pully)の調べでは、ラヴォー及びシャブレの葡萄栽培地区の今年の葡萄の成長ぶりは例年に比べ１０日～１５日の遅れで、この現象は１９２５年以来だということです。それに降雨や湿った土壌からくる葡萄の病害がすでに発生しているという報告もあります。葡萄生産農家の中には葡萄の品質を心配する声もありますが、結局は収穫直前の成熟期の天候が決め手となるという見方がほとんどです。私にとっては１年ぶりのラヴォーの葡萄畑訪問でしたが、２０１２年７月に比べて葡萄の実が余りにも小さいのに驚きました。何はともあれ今年の葡萄収穫は、例年ならば１０月初めであるところ、１０月末と予想されています。
ところで、ヴヴェイ(Vevey)の隣町コルソー(Corseaux)のラヴォー通り２１番地には建築家ル・コルビュジエ(1887-1965)が１９２３年から１９２４年にかけて両親のために建てた家があります。ラヴォー地区の葡萄畑からもさほど遠くない所にのあるこの家に彼の両親が引っ越したのは１９２４年でした。残念ながら父親は１年後に亡くなりましたが、母親は９９歳の誕生日をここで迎えています。私がこの家のことを知ったのは５年前、『小さな家』（ル・コルビュジエ著、森田一敏訳）を読んでから。それ以来ずっと訪れてみたかったのですが、なかなか機会がありませんでした。
ル・コルビュジエはペンネームで本名はシャルル＝エドゥアール・ジャンヌレ＝グリ(Charles-Edouard Jeanneret-Gris)。彼の顔は１９９７年から発行されているスイスの１０フラン紙幣(約1000円)に描かれているので、スイスを旅した人やスイスで暮らす人にとっては馴染みのある顔です。ル・コルビュジエはヌーシャテル州(Neuchâtel)ラ・ショー・ド・フォン(La Chaux-de-Fonds)の生まれで、父は時計職人、母はピアノ教師でした。彼は近代建築の３代巨匠の一人と言われ、フランスのロンシャンにあるノアの箱舟の形をした「高きにいますマリア」教会や、彼の基本設計による東京の国立西洋美術館本館など多くの業績を残しています。
こじんまりした玄関から家に入ると素敵なお嬢さんが迎えてくれました。エミリー・ファエ(Emily Fayet)さんはローザンヌ大学で美術史を専攻する学生で、この夏ここでアルバイトをしています。入館料大人１２フラン（約1200円）を払ってお宅拝見です。家の大きさは１６ｍｘ４ｍ、床面積６０平方メートル。この家の居間の南側にある全長１１ｍの「りぼん窓」からレマン湖、ローヌ谷、アルプスの山々が見渡せます。窓際にある椅子に座っていると、まるでボートに乗っているような錯覚を覚えるでしょう。嵐の日には船酔いしてしまうかもしれません。よく晴れた日の午後に訪問しましたが、湖面に反射した太陽光線の眩しさは感じません。ル・コルビュジエは太陽光の入射角・反射角についても計算していたのでした。
エミリーさんは「この家は小さな空間を有効に活用できるようにありとあらゆることに配慮してあります。生きものに対しても同様で、例えば、外にある犬のための踏み台や猫のためのつたい壁まで」と説明してくれました。なるほど、客室や浴室、その他いろいろな場所に小粋な演出を発見しました。
限られたスペースで年老いた両親が自由快適に暮らせるように設計された家。ル・コルビュジエの両親が長方形の家の中や庭を行き来する様子が目に浮かびます。この「小さな家」は２０１２年から修復中で、現存の家は私のイメージとはかなり異なっていました。かつては心地よい木陰をもたらしたであろう桐の木や、他の庭樹も病気が原因で伐採され、替りに芝が敷き詰められています。桐については種子が保存されていて苗木を育て、将来はもとの場所に戻す計画があるそうです。築９０年という歳月が過ぎて家の老朽化は避けられませんが、レマン湖、ローヌ谷そしてアルプスの山々は今日も昔のままの姿を見せてくれました。
小西なづな
プロフィール：小西なづな
１９９６年よりイギリス人、アイリス・ブレザー（Iris Blaser）師のもとで絵付けを学ぶ。個展を目標に作品創りに励んでいる。レザンで偶然販売した肉まん・野菜まんが好評で、機会ある毎にマルシェに出店。収益の多くはネパールやインド、カシミア地方の恵まれない環境にある子供たちのために寄付している。家族は夫、１女１男。スイス滞在１６年。インフォボックス終わり