Document ID: /fineweb-2-swissfilter-quality_10-filterrobots/filtered/00459.jsonl.gz/21

外国人労働力への依存度が高いスイスで１年前、外国人移民の数を制限する「大量移民反対案」が国民投票で可決された。アルプス山脈を望むエメンタール地方の自治体では全国最高の賛成９４％を記録。一方、レマン湖近くの村では反対が全国最高の８１％だった。この違いはどこから出てくるのか？投票から１年後の両自治体を訪れた。
郵便局もなく、店も、診療所も、公共交通機関もない。谷の上の方にある唯一のレストランは休業中だ。自治体ホレンバッハ・ブーヒェンはエメンタール地方南東の端、ツルク谷の陰の部分に位置する。名前からも分かるように、この自治体は二つの村から成り立っており、村と村の間には別の自治体が横たわる。面積は２０平方キロ以上あり、標高２千メートルのところまで広がる。人口２６４人。そのほとんどが農家で、隣人宅までかなりの距離がある家が多い。
雪の積もった小道が二つの村を通っている。歩いている人はいない。自動車もめったに来ない。ホレンバッハの学校の校舎には大きな教室があるが、誰もいない。全校生徒は２００９年でたった６人。その後、閉校になった。そのため、児童は小型バスに乗って、近隣の村にある学校まで通っている。
だが、かつての校舎が村の中心部として残った。教室だった部屋には、児童用机の代わりに数列の長テーブルが並んでいる。これらは自治体の集会や公共の催しに使われる。校舎の４階には、ウルス・ヴァントフルーさんがいる。１６年間、この自治体の管理業務を一人で務めている人だ。
「固い決心で」賛成
ヴァントフルーさんはどの住人も個人的に知っている。「私たちは住民のためのサービス事業所だ。林業をしている人が無線を使えるよう契約を結ぶ手伝いをしたり、納税申告書などの書類の記入や保険会社を変える際の手伝いなども行ったりする」
谷の奥にあるシュレップ・スキーリフトが経営破綻になりかけていたとき、その会社の経営を一時的に行ったこともある。今は行政の業務に加え、教会区や墓地団体の業務もこなす。自治体の仕事とは直接関係のないような仕事を多く抱えるが、「ここではそれも任務の一つ」。
他の自治体からの助成金がなければ、ホレンバッハ・ブーヒェンの経営は大赤字になるかもしれない。税収２５万フラン（約３２００万円）では支出の４分の１しか賄えない。
この自治体の住民は１年前の移民規制案に「固い決心で」賛成したと、ヴァントフルーさんは語る。「毎年８万人の移民が流入し、新しい住宅が２万戸建てられる。『その必要はない』というのが、ここの人たちの意見だった」
ツルク谷には「大量移民」はほとんどみられない。ホレンバッハ・ブーヒェンには現在、外国籍の人が３人いる。皆、きちんと仕事に就いている。理学療法士のオランダ人、美容師のポルトガル人、電気工のドイツ人だ。ここには家賃の安い空き部屋がかなり多い。見渡す限り、自然と畑が広がる。移民規制案の推進派が批判していたような、「人口過密によるストレス」もない。
しかし、「自治体の向こう側では（移民増加の）傾向がみられる」と、ヴァントフルーさんは反論する。谷の端にある、比較的発展している自治体「シュッテッフィスブルク」には、ホレンバッハ・ブーヒェンの住民が買い物に行ったり、学校に通ったりしている。そこでは「誰も望んでいないのに、町は急速に成長している」。
５人から成る自治体行政府の唯一の女性、ローズマリー・ミュラーさんも同様の意見だ。成人した４人の子供の母であり、手芸の教師を２０年間務めてきた。現在は夫の酪農業を手伝う。「農業ではある程度の規模がなければ、十分な収入が得られない」
牛乳価格は低下を続け、環境・動物保護に関する義務が増えている。副業をしなければ、生活は立ち行かない。子供たち２人にはそれぞれ恋人がいるが、周辺で職を探しても、もう長い間見つかっていない。ミュラーさんは「外国からの安い労働力が増えると、国民が（職に就く）チャンスが減る」と嘆く。
心温かい住民
投票数１２５票のうち、反対はたったの８票だった。そのうちの２票を投じたのは、空き教室の上階に子供たちと暮らす芸術家ハインリッヒ・ガルテントールさんと、精神障害者支援に携わる妻クリスティーネ・クレアさん。「閉鎖的な」村社会は「グローバル政治」に高い関心を寄せるが、二人はそれほど興味を抱いていない。
しかし、村で孤立しているとは感じていない。「平地」からこの山岳地帯へと越してきたのは６年前だが、住民たちとはネットワークを築いている。ハインリッヒさんは村の消防隊に入隊しており、スクールバス委員会の委員を務める。「ここでの日常生活に関して言えば、私たちの生活もほかのみんなと同じリズムだ」
「住民たちは保守的。今の風景と社会構造を維持し、子供たちが職に就けることを願っている」。この自治体が全国最高の賛成率を記録した理由について、芸術家として世界的に成功を収めているハインリッヒさんは次のように説明する。「『外国人が私たちから職場を奪う』と脅すプロパガンダの影響があるのだろう。しかし、住民たちは心温かい人たちだ。つつましく、一生懸命に働いている。自治体で困っている人がいれば、助けを呼ばなくても誰かが助けてくれる」
繁栄する地域
一方、レマン湖近郊のルッシー・スル・モルジュでは、投票者の５人に４人が「大量移民反対案」に反対した。そのうちの一人が、ピエール・ヤベルクさんだ。「スイスだけでは移民問題を解決できないと思う。移民の出身国と協力しないと無理だ」。定年退職前は飛行機技術者で、１４年夏から人口６５０人のこの自治体の管理業務に就いている。「この国ではどのみち過剰な建設は防げない。移民は関係ない」
スイス西部、レマン湖近くの日当たりの良い面にあるこの自治体は、数十年前までは農業が盛んだった。現在、農業事業所は５カ所。ルッシーはベッドタウンになった。「職場のほとんどは自治体郊外にある」とヤベルクさんは言う。
裕福な住民が多いルッシーには税収が多く、他の自治体に助成金を支払う立場にある。ヤベルクさんによると、この自治体で生活保護を受けている住民はたった２人だけだが、「自治体は社会保障費に８５万フランも州に支払わなければならなかった」。
住民の５人に１人が外国籍だ。多くは、税率の低いスイス西部のラ・コート地域に近年所在を移した企業で働いている。その例が、ライフサイエンス分野に従事しているイリス・オーバーミュラーさんだ。夫婦ともども、ここでは「快く迎え入れられている」と感じる。役所の人でさえも親切に対応してくれ、「新しくここに越してきた人にはありがたい」。
オランダ人のフゴ・ファン・デン・ホンベルクさんは１２年前から家族とともに、レマン湖を望む風光明媚なこの自治体に暮らしている。仕事は不動産売買。「顧客は外国人だけではないけれど」。なぜ１４年２月９日の国民投票で、あのような投票結果が出たのかと、首をかしげる。スイスが国際競争力を保てるのは、高資格を持つ外国人が多く働く国際企業のおかげだと考える。
ルッシーでは農家も反対票を投じた。ブドウ栽培農家のミッシェル・ヴュイアミーさんは、収穫期にはポルトガルからの安い労働力に頼っている。「国別に移民数の枠を設ける大量移民反対案は、私たちには問題にしかならない」
全国最高の反対率だったこの自治体には、賛成票を投じた人が４８人しかいない。ロルフ・エッヒェルリさんはその一人。理由は「移民流入にブレーキをかけるためだ」と、カフェ「プチ・プレソワール」で昼食を食べながら話す。このカフェではポーランド人が料理を作り、ウエイトレスは若いポルトガル人女性だ。「この地域では新しい職場がたくさん創出されたが、私たちにとって何の意味があるのだろう？インフラ費用が増大するだけだ」。定年退職前はバイオ技術分野で技術者をしていたエッヒェルリさんは不満を漏らす。
「賛成した人たちの気持ちも分かる」と言うのは、投票では反対票に投じたアンヌ・エレン・フォンタナさん。レマン湖周辺の人口の多い都市で、無収入の移民が語学コースに通うための手伝いをしている。「こうした移民はルッシーには住めない。ここでは敷地１千平方メートル以上の豪邸が建てられているが、家賃が手ごろで５人家族が住めるような２LDKの物件は貸し出されていない。（そのため静かな環境が保たれ）住民のプライバシーが守られる。住民が（大量移民反対案に）反対するのはそうした理由からだ」
ただし、労働許可がなく、日中暇を持て余している移民をルッシーが受け入れることになれば「この自治体でも投票結果が違っていただろう」と、フォンタンナさんは考える。
スイスを分けた投票結果
スイスでは２０１４年２月９日、大量移民反対案の是非を問う国民投票が行われ、賛成５０．３％で可決。賛成率が高かったのはドイツ語圏と、イタリア語圏のティチーノ州。スイス西部のフランス語圏では反対が過半数を上回った。提案の内容は、国別に移民数を割り当て、移民規制を行うというもの。提案の可決により、欧州連合（EU）とスイスの間で取り決められた、労働力の自由な移動に関する合意が維持できなくなる可能性が出てきた。
（独語からの翻訳・編集 鹿島田芙美）, swissinfo.ch