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「そもそも人権は現代において重要なのか？」。この問いに欧州人権裁判所 ( European Court of Human Rights ) 裁判官に選任された、チューリヒ大学国際法学部へレン・ケラー教授が答える。このコンテンツは 2011/04/25 15:00
ケラー氏は国際法の専門家として2008年より国連自由権規約人権委員会 ( UN Human Rights Committee ) の委員を務めている。先日、欧州人権裁判所の次期裁判官に任命され、10月から職務に就く。
swissinfo.ch ： 人権はわたしたちの日常生活においてどのような役割を果たしているのでしょうか。
ケラー ： 人権は日常生活に深く関わっている。福島で起きた事故を例に挙げてみよう。本来、原子力発電所自体は人権とは何の関わりもない。しかし、政府機関が然るべき対処をせず、人命が脅かされると人権問題が生じる。
ほかに挙げられる例は、アラブ諸国で起きた革命。フェイスブックやツイッターといった今日の通信形態なしでは表現の自由や報道の自由はあり得ない。
人権はもはや一定不変ではなく、常に新たな脅威的状況に応じて適用され得るものであり、またそうでなければならない。
swissinfo.ch ： あなたは10月から欧州人権裁判所で裁判官を務める47人のうちの1人になります。あなたの前任者ジョルジオ・マリンヴェルニ氏はかつて、この任務は大変骨の折れる仕事でほとんどが書類に目を通す作業だと表現しました。あなたはこの仕事のどの点に魅力を感じますか。
ケラー ： 難解な訴訟を扱う際に基本的人権の新しい局面を見い出す機会があること。手続きに時間のかかる通常の人権侵害について裁決することはあまり興味深い仕事ではないが、30件から40件の訴訟を扱う中で新たな発見があるかもしれない。ときに、新しい判決を下せることにこの仕事の魅力がある。
書類手続の最中に同僚と討論することも刺激になる。多くの人権問題は訴状を一目見てすぐに答えを出せないため、こういった話し合いを大切にしている。
swissinfo.ch ： 欧州人権裁判所裁判官の任務と同時に、現在の職務もこなせますか。
ケラー ： わたしの自由になる時間が制約される任務は全て諦めなければならない。法律専門家として以前と同じように活動することもできなくなるだろう。自由権規約人権委員会における任務は多くの時間を費やすため継続することは不可能だ。
さらに、人権に関する講義は、夏期休廷期間中のみに限られるだろう。
swissinfo.ch ： 欧州人権裁判所は偉業を達成したと賞賛されています。一方、パウル・ヴィトマーストラスブール駐在スイス大使は2年前、スイスインフォのインタビューで、裁判所の知名度が上がったゆえに持ち込まれる案件が増え、処理できずに、崩壊寸前だと語っていました。その状況は変化しましたか。
ケラー ： いいえ。残念ながら変化はない。裁判所は過去10年間、業務の効率を向上させたにもかかわらず、未だに約14万件の申し立てが累積している。処理される訴訟件数は増加したが、それ以上に新たな訴訟申請が増加している。
状況は劇的だ。しかし、スイスが欧州評議会 ( Council of Europe ) の議長国を務めた昨年に改革が推し進められた。閣僚委員会がインターラーケンで会議を開催し、分権化原則がインターラーケン宣言によって受け入れられたことは話題になった。
swissinfo.ch ： 分権化についてもう少し詳しく説明してください。
ケラー ： 欧州人権裁判所と欧州人権条約 ( European Convention on Human Rights /ECHR ) は個人が人権問題に対して判断を仰ぐ最終手段であるべきだ。そもそも原告が主張している人権侵害に関する訴訟は、まず初めに各加盟国の裁判所で審議されるべきなのだ。
そうなると当然、国家の人権制度が確立されていることが前提になる。しかし、それが全ての国に実現されているわけではなく、特にヨーロッパ東側諸国では制度が整っていないのが現状だ。そういった国の人たちは自国の裁判所に信頼を置けないため、まず欧州人権裁判所での裁判を考えてしまう。
swissinfo.ch ： しかし改革後も未処理の訴訟は14万件もあります。これでは判決が下される前に亡くなってしまう原告もいるのではないですか。何か手立てはないのでしょうか。
ケラー ： わたしたちは前回の制度改革でさらに厳しい規定を定めた。そのため訴状内容に深刻な人権侵害が認められない場合や自国内の裁判所が訴訟案件を徹底的に審議した場合は、欧州人権裁判所で再度調査する必要がなくなった。
これ以上規定を厳しくすることは問題だ。裁判所で審議される部分は案件のわずか5%から10%。残りの90%から95%は業務が組織化されているため、既に法律事務所で審議されているからだ。
swissinfo.ch ： 欧州人権裁判所はヨーロッパの国民と国家にどのような利点をもたらしたのでしょうか。
ケラー ： スイス国民に限定して判例を語ると、裁判所はこれまでスイスにおける人権問題について繰り返し判決を下してきている。まずは婚姻後の姓についてだ。スイスの法律では女性は婚姻の際、自分の姓を保持することができず、男女同権でなかったため、裁判所が男女差別だと判決した訴訟が2件ある。
次に同性カップルと異性カップルの同権が認められた判例。この異議申し立てに対する判決は画期的だった。これはスイスだけでなく、ヨーロッパ全体にとって重要な判決になった。
三つ目の判例は拘留条件。この判決もスイスだけでなく、ヨーロッパ全体に影響を与えた。例えば被収容者にその宗教を拘留中に実践する権利があるのか。郵便物を受け取る権利があるのか。メディアから情報を得る権利があるのかといった案件だが、この申し立てに裁判所は重要な判決を下し、拘留条件が改善されるようになった。
swissinfo.ch ： 直接民主主義を反映するスイスの国民投票制度は近年、疑問視されています。国民は常に法の枠を越えて権利があるのでしょうか。
ケラー ： 人権と連邦憲法から判断すれば、答えは明白。国民は常に権利があるわけではない。
全ての国家機関、国民投票制度、各州当局は基本的人権を保護するべきで、憲法でもそう謳 ( うた ) われている。国民は自らの多数決によって基本的人権を侵害するべきではない。
こういった難解な訴訟に関してもこの先、欧州人権裁判所で議論することになるだろう。多くの訴訟が未処理のままだが、ミナレット建設禁止の異議申し立てもその一つ。わたしはまだ任務に就いていないが、この裁判にかかわる可能性は大きい。裁判官の独立性を保つためにも、今この訴訟に関する意見は控えたい。
ヘレン・ケラー ( Helen Keller ) 教授略歴
1964年生まれ
チューリヒ大学法律学専攻
ベルギー、ブリュージュにあるヨーロッパ大学で法学修士を取得
1995年、ハーバード大学法科大学院のヨーロッパ法研究センターで研究活動を行う
1996年、チューリヒにある法律事務所で弁護士として勤務
2002年、チューリヒ大学法学部教授資格取得
2002～2004年、ルツェルン大学にて公法の正教授に就任
その後チューリヒ大学で公法、ヨーロッパ法、国際法を専門に教鞭を執る
2008年、国連自由権規約人権委員会 ( UN Human Rights Committee ) の委員に選任される
2009年、欧州人権裁判所 ( European Court of Human Rights ) に勤務。法廷における平和的和解研究を行う。
2010年、再び、国連自由権規約人権委員会に任期4年の委員に選任される
2011年、ストラスブールの欧州人権裁判所裁判官に任命されるEnd of insertion
欧州人権裁判所 ( European Court of Human Rights )
1959年、フランスのストラスブールに設立。欧州人権条約 ( ECHR /European Convention on Human Rights ) が定める人権を保護することを目的とする。
欧州評議会 ( Council of Europe ) に加盟する47カ国、国民約8億人の人権訴訟を採決する最終決定機関。
加盟国から各1名の裁判官が任命される。
公用語は英語とフランス語。訴状は加盟国の言語であれば受理される。
現在、約14万9000件の未処理案件が累積している。End of insertion
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