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スイス連邦政府は、企業が外国で科された巨額の罰金を税額控除の対象とする新たな法律の施行を発表した。一方で、不正行為の呼び水になるという批判も出ている。このコンテンツは 2021/03/14 06:00
2022年1月1日に施行される「財政的制裁の税務処理に関する連邦法」の趣旨は、政府間の政治的報復に企業がスケープゴートとして利用される事態を防ぐ点にある。しかし、例えば貧困国で罰金を科されても企業の痛手にならないのであれば、責任ある企業行動の推進に弾みがつかないとして、論議を呼んでいる。
スイスは、こうした罰金の税額控除が認められる数少ない国の1つだ。
限定的な免罪符
法律事務所CMSの税法専門家でジュネーブ大学銀行金融法センターのメンバーでもあるファビアン・リエジョワ氏によると、昨年議会で可決されたこの法律他のサイトへに従い企業が外国で科された罰金の税額控除を受けるには▽罰則がスイスの公序良俗と相容れないものであること▽企業が相手国の法律を守るため全ての合理的措置を講じたと証明できること――の2要件を満たさなければならない。
スイス政府は、この両方を満たすのは容易ではないと強調する。ジョエル・ヴァイベル連邦税務局報道官は「企業はスイス民法第3条の誠実の原則に基づき、法律を順守するためあらゆる手を尽くしてもなお制裁を受けた、と信じるに足る証拠を提出しなければならない」と述べる。
加えて、関係当局のコンプライアンス監査報告書など、文書による証拠も必要だ。またスイスの裁判所は、税控除が承認・却下されたケースに介入調査できる。
例えば、企業がある国で所定のライセンスを持たずに事業を行ったために罰金支払いを命じられた場合、法律順守に手を尽くしたという証拠を示せれば控除が認められる。しかし、罰金の理由が賄賂だった場合は不可だ。
「議会の意図は、企業が恣意的な、あるいは政治的動機から罰金を科された場合に税の面で不利を被る事態を防ぐことであって、法律違反者に報いることではない」（ヴァイベル報道官）
不正行為にメリット
社会党は、不正を行った企業を税制上優遇することにいかなる正当性も無いと主張する。同党のニコラス・ヘスラー広報担当は「納税者がその肩代わりをさせられる場合はなおさらだ」と言う。
「企業は他国の法律を守らねばならず、リスクも自己責任において負うべきだ。利益は貯め込むが損失は納税者に転嫁するというのはおかしい」
また、罰金の税額控除を外国で活動する企業にだけ認め、国内で事業を行う企業に認めないというのはダブルスタンダードだとも指摘する。
「欧州の法制は企業責任を強化する方向に向かっている。スイスも足並みを揃えるべきだ」（ヘスラー氏）
開発系6団体の共同政策シンクタンク「アリアンス・シュド」の国際金融・財政政策専門家ドミニク・グロス氏も同意見だ。「罰金の控除を認める決定によって、銀行など企業の違法行為に報いることになる。昨年の（『責任ある企業イニシアチブ（国民発議）』の）国民投票で鮮明となったように、我々がスイスの市民社会として求めているもの、そして長年戦ってきたことと相反する」
同氏はまた、新法が市民と企業の待遇に不平等を生む点にも注意を促す。前者は税額控除の権利を享受できないからだ。
市民の意志に反して
「責任ある企業イニシアチブ」は、昨年11月の国民投票で有権者の過半数が賛成票を投じたにもかかわらず、州の3分の2が反対に回ったため最終的には否決された。しかし、世論は明確だ。「不正な企業が得をしても構わないという空気は薄れてきている」（ヘスラー氏）
英非政府組織（NGO）「タックス・ジャスティス・ネットワーク（TJN）」のアレックス・コブハム代表は新法について、「まさかの内容で、国民感情に反する。他の国が罰則対象とする不正行為を容認することになり、スイスの国際的評価を台無しにしてしまう」と語った。
コブハム氏は、この法律の下では企業活動によって低所得国のコミュニティーに鉛中毒が引き起こされても、「企業が（相手国の法律を順守するために）あらゆる合理的措置を講じた」と証明できれば、いかなる罰金も税額控除の対象となってしまうと指摘する。
前出のリエジョワ氏は「企業が外国で受けた罰金が税金から差し引くことができるようになれば、その代償を支払うのはスイス国民だ」と強調。「道義上の配慮を国境で線引きすべき理由がない」と付け加える。
世界でも異端
スイスのようにこの種の控除を認める国は例外的であるため、こうした政策が及ぼす影響についての予測も難しい。
主要7カ国（G7）、BRICS（ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ）およびオーストリアを対象とした調査（2017年）では、いずれの国も罰金の控除を認めていなかった。連邦税務局のヴァイベル氏は「その他の国の実情には曖昧な点もある。しかし、大多数の法制度に罰金の控除を不可とする原則が存在する」と説明する。
経済協力開発機構（OECD）加盟国中では、過去には外国で科された罰金や制裁金の控除を認める国があったが、今ではほぼ見られない。
パスカル・サンタマンOECD租税政策・税務行政センター局長は「特にOECDが『外国公務員への賄賂の課税控除に関する勧告（1996年）』を採択して加盟国に対しこうした慣行を改めるよう求めて以来、法制度が大きく変わった」と述べる。
同氏は、新法の導入はスイスの税制の透明性向上につながると考える。賄賂の税額控除を明確に禁止したことで、その点における曖昧さが取り除かれた。
OECDはあらゆる形態の金融犯罪の防止に積極的に取り組んでおり、スイスについては2018年、政府間における税の自動的情報交換制度を受け入れたことで一歩前進したとの認識を持つ。18年から20年にかけ、スイスは73カ国・地域との間で情報を共有した。
新法についてサンタマン氏は「誤った解釈を避けるため、控除を認める範囲を大幅に限定し、明確なガイドラインを確立する」ことが不可欠と言う。
裁判所の役割
新法の懐疑派からは、とりわけ大手銀行が恩恵を受けるのではとの懸念が出ている。スイス銀行協会のセルジュ・シュタイナー広報担当はこの点について、新法は金融機関だけでなくあらゆる企業が対象だと指摘し「罰金の控除が認められるのは明らかに特殊なケースに限られており、その場合も個別に判断される」と慎重な回答を寄せた。
スイスの大手銀UBSは2019年、大規模な脱税スキームに関わったとしてフランスで45億ユーロ（約5800億円）の罰金処分を受けた。今後こうした罰金も控除対象になるのだろうか。
理論上は、否だ。この処分は2004〜12年に同行が関わった脱税・マネーロンダリング（資金洗浄）犯罪に対するもので、こうした行為はスイスでも違法だ。また、2016年以降、顧客がスイス内外で脱税を犯している疑いがある場合、スイスの銀行はこれを把握し当局に通報することが義務付けられている。
いずれにしても、リエジョワ氏は「新法の適正な運用の確立には、裁判所の果たす役割が大きい」と強調する。