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スイスの金融大手チューリッヒ・インシュアランス・グループ（チューリッヒ保険）は苦しい数年間を経て、社のアイデンティティを再構築しつつある。オリヴァー・ラルフとラルフ・アトキンスが新しい最高経営責任者（CEO）にインタビューした。
湖畔に建つチューリッヒ保険の本社は形のみ。１９０１年に建設された建物は現在、全面改築中で内部はがらんどうだ。
昨年、同社のCEOに就任したマリオ・グレコ氏（５８）は、国際的な保険ビジネスでもまさしく同様の改築が始まると考えている。
「この業界は今まさに重大な変化を遂げようとしているところだ。５年後にはもうがらりと変わっているだろう。１０年後なら確実だ」
グレコ氏によれば、保険はこれまで最大の「プッシュ商品」だった。「プッシュ商品」とは、売り手が仕掛けて初めて消費者が購入する商品を指す。（そのため、業界は売り込みに力を入れてきたが）今後は顧客とより近い関係を築かなければ生き残りが難しくなるというのだ。
インタビューは、町の反対側にあるバックオフィス内の仮本社で行われた。グレコ氏の目標は、チューリッヒ保険を顧客とそのような関係を築ける企業に変えること。いわば、企業に「新しいアイデンティティ」を与えたいのだという。
イタリア出身のグレコ氏はローマ大学で経済を学び、その後ミラノの経営コンサル会社マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートさせた。チューリッヒ保険での勤務は初めてではない。０７年から５年間、同社の生命保険および損害保険部門を率いた。その後、イタリアのゼネラリ保険に移り、事業再生を指揮。不要な事業を売却し、負債を削減した。だが、契約は更新されず、昨年チューリッヒ保険に戻った。グレコ氏はその理由を語ろうとせず、ただマネジメントに関する株主の決定権を尊重するとだけ言う。
グレコ氏は時価総額ランク欧州第４位のチューリッヒ保険を一旦去る。その後、同社を待っていたのは苦難の道だった。米国部門で１５年に発生した引受業務問題やその他の一般的な保険損失により、チューリッヒ保険は推定５６億ポンド（約８４００億円）に上る英保険会社RSAの買収案を断念。これを受けて株価は急落した。当時のCEOマルティン・ゼン氏は１２月に辞任し、その半年後に自ら命を絶った。チューリッヒ保険はこのとき、「彼は極めて貴重なCEOであり社友であったばかりでなく、大切な友人でもあった」という声明を発表した。
グレコ氏がチューリッヒ保険に戻ったのは１６年３月。組織は１５年の経営問題で士気が低下していた。同氏は「社員は会社を高く評価していた。１５年は苦しい年だったが、みな苦境を乗り切り、会社の力量を示そうとしていた」と振り返る。
一方でグレコ氏は、チューリッヒ保険は１３年に「非常に重大な過ち」を犯したとも言う。成長戦略を遂行した結果、好調な引受業務に対する信用が損われ、コストも急増したのだ。
しかし、「チューリッヒ保険は事業再生のケースではない」。うだるような暑さの中、ネクタイをきちんと締め、終始謙虚な態度を崩さないグレコ氏はそう繰り返す。「私は、企業戦略、プライオリティ、スキル、行動様式の間に一貫性を取り戻そうとしているだけだ。今は成長するときではない。我が社のような企業が本来求めるべき利益を追求する」
事業再生でないにしろ、グレコ氏は救済措置を講じなければならなかった。その一つとして、複雑な「三重基盤」構造を廃止した。会社の組織が「地域」「製品」「機能」という三つの基盤に分かれていたため、責任の在りかが不明となり、社員の中に当惑が広がっていた。
「私たちは皆、シンプルな人間だ。地域というものは全員が理解できる。言葉が違い、ルールが違う。それを消すことはできない。チューリッヒ保険は今、地域のみで組織されている」とグレコ氏は説明する。
同氏はマネジメントの徹底的な見直しを図り、昨年１１月に発表した戦略をもとに、１７年から１９年の間に全体の１５％に当たる１５億ドル（約１７００億円）のコスト削減を目指している。人員削減の規模に関しては、会社側はまだ言及していない。
さらに根本的な対策として、同氏は顧客対応のあり方を再構築したいという。「私が会社に与えようとしているアイデンティとは、サービスで顧客の信頼を得る初めての保険会社だ。誰もが追いかける会社になるわけではない。チューリッヒ保険は……１年しか顧客と付き合わないような商事会社にはならない。長期の関係を構築したい」
これを業務に言い換えれば、年に一度保険料を徴収し、必要に応じて小切手を切るというよりもむしろ、問題の発生に応じてそれを解決していくという姿勢だ。
「（事故で車が破損したとき）私たちはバンパーを修理し、送迎車を提供し、顧客の仕事に支障が出ないようにする会社でありたい。現金での補償なら、我が社よりも対応のいい会社はある」
そんな動きの一つが、５億ドルをかけた今年の豪旅行保険「カバー・モア」の買収だ。同社の特別サービスでは、旅行中に病気になった場合、旅行先ではなく、自国に戻って治療を受けることができる。「カバー・モアは保険会社ではなく、サービス会社だ」とグレコ氏は言う。
収益の上がるサービスを社のポートフォリオに加えたいというグレコ氏の意図を考えると、類似の買収は今後もありえる。しかし、同氏は企業買収には慎重だ。「他の保険会社から得たいものはほとんどない。そういう会社を買収して得られるのは同じようなサービスと、その会社のサービスを漫然と購入している多くの顧客たちだからだ」
「現時点では、RSAは買収に値する資産ではないだろう」と、グレコ氏は懸念を示す。だが如才なく前任者は自分と異なる論理を持っていたのかもしれない、と付け加える。
グレコ氏がスイスに戻って満足しているのは明らかだ。昨年、チューリッヒ保険の営業利益は５５％増の４５億ドルを計上した。同氏は素早い展開を求めている。「業界にとって、今は大きな変革の時代であり、いずれ勝者と敗者が生まれる。真ん中に立つことはない」
チューリッヒ保険の新社屋（同社の広告によると「新旧の交錯」）は２０年までに完成する予定だ。その後について、グレコ氏は「このビルで営まれるのは、これまでのような保険業ではないだろう」と話す。
アナリストの「セカンドオピニオン」
英金融調査会社オートノマス・リサーチのアナリスト、アンドリュー・リッチー氏は、ゼネラリで業績を上げたグレコ氏の評価は高く、「ゼネラリのパフォーマンス管理を競合他社のレベルまで引き上げた」と語る。
投資家たちは、グレコ氏がチューリッヒ保険に戻ってきたことを歓迎した。「彼は非常に真面目な人物だと見なされているが、投資家たちは彼を心の温かい、抱きしめたくなるような人物とは言わないだろう。彼はナンセンスなことは決してしない」とリッチー氏は言うが「チューリッヒ保険をどの程度改善できるかはまだ判断できない」と話している。
Copyright The Financial Times Limited 2017
（英語からの翻訳・小山千早）