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永世中立国スイスが世界に誇るスイス軍。その胃袋を守るコック兵は、スイス中央部トゥーンにある炊事教育専門施設「食糧訓練センター」で日夜腕を磨く。レシピ本を発行したり料理コンテストで優勝したりと、今でこそミリタリー料理は一般市民にも愛されているが、２００年前は「一掴みのパンと少量の小麦粉」しか与えられない粗末なものだった。
兵士の食事に関する最も古い記述は、スイスの連邦制の誕生よりも前の１８００年以前にさかのぼる。兵営生活の歴史をまとめた「Schlemmen, wie's die Soldaten taten他のサイトへ」（仮訳：美食と兵営生活、 Hanns U. Christen著、１９８４年）によると、２００年前の兵士の食事は「１人当たり１日に一掴みのパンと、スープ用の少量の小麦粉」のみで、他には野生のキノコなどを食材とし、高価な塩を使うことはほぼ無かった。もちろん兵士は自ら調理しなければならず、当時、兵士に配られたスープレシピの最後は、こんな言葉で締めくくられている ― 「空腹は最高の料理人」。
１９１４年には兵士１人につき１日パン７５０グラム、肉４００グラム、ペースト状にした野菜２００グラムに加え、油や塩、砂糖、コーヒー、牛乳、チョコレートが配給されるようになった。しかし、どんなに食糧配給を増やしても兵士の食事に関する悩みは解決されなかったという。
兵士の何よりの悩み ― それは、食糧を配給されても調理の仕方がわからないことだった。軍は調理規則を制定するなど試行錯誤したが、問題解決には至らなかった。軍がようやく重い腰を上げたのは１９３８年。調理を主な任務とするコック兵の役職を設け、スイス中央部ベルン州トゥーンに炊事教育に特化した中央訓練施設「糧食訓練センター（Ausb Zen Vpf）他のサイトへ」を設立。「美味しく、十分に、健康に」をモットーにコック兵の育成を続けてきた。
現在も年間に約８００～１千人がコック兵として約１週間に渡る集中訓練を受ける。他の兵士と同じように１８～１９歳と若いが、コック兵に限っては例外的に、既に民間のレストランでコックとして働いている調理のプロが炊事班に配属される。特に優秀な１５０～２００人は更に８週間の研修を受けた後に軍の調理部に配属され、一兵卒から大佐まであらゆる階層の体と心の栄養に責任をもつことになる。
同施設の設立とともに、軍隊料理は目覚しい飛躍を遂げた。その成果は日持ちのするビスケットの開発や栄養価の高いメニューの開発など、兵士の食事環境の改善にとどまらない。１９９９年に１５人の精鋭コックから成る「スイス軍コックチーム」を結成し、国内外の料理コンテストでスイス軍の「実力」を世界にアピール。今年１０月にもルツェルンで開催された国内コンクール「Battle of Zagg他のサイトへ」で優勝を飾った。
２０１６年には軍のレシピ本「Das Beste aus der Schweizer Militärküche他のサイトへ（仮訳：スイス軍のベストレシピ）」も出版された。
軍隊料理がここまでレベルを高めたのはなぜか。工夫したレシピや食材へのこだわりも大切だが、トゥーン駐屯地食糧班長のアンディー・ヴィドマーさんは「徹底したチームワークと管理能力、規律の遵守、そして何よりコック兵のモチベーションをいかにしてキープするかが大事だ」と強調する。
トゥーン駐屯地は年間約１００万食、１日に最大２３００人分の食事を限られた人数で用意しなければならない。「家のキッチンで家族４人分の食事を作るのとはわけが違う。徹底したチームワークと段取り力がなければ、美味しい食事は出来ない」
１５００人の食事を料理する場合を例に取ろう。パン１枚をスライスするのに掛かる時間を２０秒と考えると、１キロで６５分掛かる。デザートを１つ３秒で盛り付けても、１５００人分が完了するのは１時間１５分後。この離れ業を可能にしているのは、スイス軍に脈々と受け継がれる階層構造と規律への忠誠、一挙手一投足に至る無駄のない動きだ。
だが、兵士で構成されるチームだからこその弱点もある。最大の弱点。それは、入れ替わりの激しさだとヴィドマーさんは話す。コック兵が兵役を務める期間は最短で４時間、最長でも連続１８週間で、軍の統計によると炊事班メンバーの完全な入れ替わりは年に１１～１３回もある。人の移動が多い調理業界とはいえ、ここまでの頻度は民間のレストランにはない。
そして最も大変なのは「コック兵のモチベーションを保つこと」（ヴィドマーさん）。特に若い兵士は軍服を身に付けた途端、大多数の中の一人という気持ちが強くなり、個人としての責任感が薄れてしまうことがよくあるという。
「兵士たちから良いフィードバックをもらうことが一番のモチベーション」。現在兵舎で炊事を担当するコック兵のシュトライトさんはこう話す。朝４時半から午後１０時まで１日１２～１５時間の重労働だが、兵役の基礎訓練で鍛えた足腰はもちろん調理場でも役に立つ。生命線ともいえる軍の胃袋を守るコック兵。欠かせない存在だ。
スイスのミリめしキーワード
【地産地消】トゥーン駐屯地の食材の仕入れ先は２４業者で、８割方は半径２５キロ以内を拠点とする地元の業者。「経済的なことを考えれば大手業者と取引をしたほうが良いが、駐屯地のある地域により利益をもたらせるよう配慮している」（ヴィドマーさん）。また、リンゴ一つを仕入れるときも、４種類を入荷するなどして味に違いをつける工夫をしている。
【伝統料理】 ２０１８年２月の兵舎のメニューを例に取ると、ゲシュネッツェルテスやハワイアントースト、ミートローフ、ミネストローネなどが出された。スイスの地域色が強いメニューも多く、クリストフ・メルキ少佐は「自分の出身地域のメニューだと、やはり嬉しいものと話す。メルキ少佐によれば、スイス軍の定番メニューはポトフ。また、おやつにスイスチョコレートは絶対に忘れてならない存在だ。