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スイスの科学者は、アルプスの気候変動から最も懸念される事態のうち、洪水、土砂崩れ、雪崩をより正確に予知する新しい方法に取り組んでいる。このコンテンツは 2008/04/17 15:26
「スイスエクスペリメント ( Swiss Experiment ) 」は最先端の無線センサーネットワーク技術を駆使し、アルプスの現状をより正確に把握するため、山中の最新データを集積している。
実験グループの1人、連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL ) のカール・アベラー教授は、プロジェクトの情報技術 ( IT ) 担当だ。そのほか、コンピュータ会社の最大手マイクロソフト ( Microsoft ) 、スイスの複数の研究機関から環境技術者も加わっている。
無線センサーネットワーク
アルプスの温暖化はすでに始まっていると、このたびチューリヒで開かれた「物のインターネット会議」で告げたアベラー氏は、スイスエクスペリメントに関する発表をおこなった。氷河は溶解し続け、洪水が壊滅的な被害をもたらしている。1987年には、スイス東部にあるポスキアーヴォ ( Poschiavo ) の村が洪水で破壊された。
現在、山地からの詳しいデータの集積・分析能力には限界がある。遠すぎたり、アクセスが困難な場所があるためだ。また、山の環境は非常に変わりやすい。これまでは観測所や人工衛星が利用されてきたが、スイスエクスペリメントは「無線センサーネットワーク」という、より利用価値の高い方法を考え出したと自信を持っている。
「 ( 無線センサーネットワークを ) 使うことで、環境技術者がさまざまな地点で同時に測定することがようやくできるようになります。より広範囲の地域で現在何が起こっているのかという、今まで以上に詳しい実態を把握することができます」
と、アベラー氏は言う。
センサーの設置
無線センサーは、例えばヴァレー州の山あいにあるル・ジェネピ ( Le Génépi ) のような岩石氷河に複数設置される ( 設置にはヘリコプターを使用することもある ) 。岩石氷河は、氷河の溶解が落石を引き起こしかねないため危険だ。
科学者は現在のところ、風、気温、氷、地形が岩石氷河上でどのように相互に作用するのかをまだ十分に把握していない。センサーは測定地域に関する情報を発信し、科学者は手元に届いた情報を環境モデルに組み入れ、分析する。
モバイル情報と通信システムに関するスイス国立コンペテンスセンター ( NCCR-MICS ) の主任でもあるアベラー氏は、この取り組みが始まってまだ10年ほどの新しい技術である無線センサーネットワークの開発に携わってきた。昨年11月に正式に始動したスイスエクスペリメントのプロジェクトは、現在のところ、無線センサー実用化の初期の例だ。
「センサー観測所は無線リンクを通して通信をおこないます。エネルギー消費が非常に少なく済むので、長期間の作動が可能です」
と、アベラー氏は言い、
「また、センサーは比較的簡単に取り付けられます。山という厳しい環境の中では、装置のテストをしたり、トラブルを解決するような時間もチャンスもありませんから」
と、説明する。
リアルタイムの情報
センサーの大きな利点は、情報がリアルタイムで送られてくることだ。以前は、実際に観測所に出向き、データを回収してから読み取った。リアルタイムで得られる情報は監視に役立ち、すぐに実験を適応できるため有用だ。また、結果的には落石や洪水のような災害の予知にも役立つだろう。
雪も課題の1つだ。
「私たちは、どのように雪が積もるのか、結果としてどのように雪崩が生じるのかということを解明しているダボス ( Davos ) の『雪崩研究所』と共同で作業をしています」
と、アベラー氏は言う。
いったん回収されと、データは分類される必要がある。集積された情報を管理し分析するためのIT基盤が構築され、科学者のアクセスがしやすくなっている。
「IT基盤の整備は大きな障害の1つです。現在多くの作業が孤立しておこなわれ、データやツールが科学者の間であまり共有されていないのです」
と、アベラー氏は言う。
ユニークなプロジェクト
スイスエクスペリメントのプロジェクトは、適用範囲の規模や、用いられる技術領域の点でユニークだと、アベラー氏は言う。また、このプロジェクトはマイクロソフト・リサーチ ( MSR ) のテクニカルコンピューティング部門からの支援を得た世界で数少ないプロジェクトの1つでもある。
マイクロソフトはグーグルアース ( Google Earth ) のようなインターネットを基盤とした3次元視覚化ツールの開発をおこなう意向だ。「センサーマップ」は、リアルタイムのセンサーデータを公開し、検索するために用いられる予定だ。「今日の世界が直面している最も過酷な環境問題の解決に取り組めるよう、研究者の力になる」ことを目指している。
気候変動がもたらす潜在的な経済的・社会的影響に関心を払っているスイスにとって、長い目で見てスイスエクスペリメントは非常に有益だろうと、アベラー氏は言う。
「スイスエクスペリメントのメリットが大きいことを期待していますが、もちろん、これを証明するのは未来です」
swissinfo、イソベル・レイボルド・ジョンソン チューリヒにて 中村友紀 ( なかむら ゆき ) 訳
プロジェクト
2007年11月23日、「スイスエクスペリメント ( Swiss Experiment )」が始動した。
参加団体：連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL ) 、連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) 、環境と持続性のコンペテンスセンター ( CCES ) 、モバイル情報と通信システムに関する国立コンペテンスセンター ( NCCR-MICS ) 、連邦水生科学技術研究所 ( EAWAG ) 。
連邦森林・雪・景観研究所 ( WSL/SLF )、スイス国立科学財団 ( SNF ) 、マイクロソフト ( Microsoft ) も関わっている。
教育プログラムや地方自治体との緊密な協力関係も含め、測定地付近の地元住民に情報を提供し、交流を持つことを目的とする。
物のインターネット会議
3月26～28日開催。連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) 、ザンクトガレン大学自動ID研究室、アメリカのマサチューセッツ工科大学 ( MIT ) の共催。
インターネットと機械を連結するなど、現実世界とバーチャル世界をつなぐプロジェクトの公開を目的とする。
スイスエクスペリメント ( Swiss Experiment ) では、インターネットが「環境」を相手に情報のやり取りをおこなう。環境は人工的な「物」ではないが、自然の「もの」だ。