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日本に住んでいた頃はスイス人が普段何を食べているかよく知らなかった。住むようになって通うこととなったスーパーマーケットにあったのは、どうやって使うのかわからない食品ばかりで、興味津々になったものだ。今日は、私の住むグラウビュンデン州で人びとがどんなものを食べているのかについて、穀物に注目してほんの少しだけ紹介しよう。このコンテンツは 2016/02/18 08:00
ヨーロッパの他の地域と同じで、食事に欠かせないのは、やはりパンだ。子どもの頃に観た「アルプスの少女ハイジ」の影響で、私は「白パンは美味しくて、黒パンはまずい」と何となく思い込んでいたのだが、そんなことはなく、どちらも美味しい。
地方色が豊かなスイスでは、メインで食べるパンは言語圏や州によって違うのだが、私の住んでいるグラウビュンデン州では、バゲットなどのいわゆる白パンと、ルーフブロート（Ruchbrot）のようにふすまを多少残した小麦粉で作る茶色っぽいパンをたくさん食べる。
小麦粉以外の穀物、たとえばライ麦（Roggen）やソバ（Buchweizen）を使ったパンもあるが、小麦粉にそれらの穀物の粉を一定割合混ぜて作るようで、味わい深く日本人にも食べやすいパンが多い。ドイツのプンパーニッケル（Pumpernickel）のような色が黒に近くてて酸味の強いパンはあまり一般的ではない。
三つ編みパン（Zopf）は、日本人のバターロールに近い味わいの白パン。私は、これを夕食に出しても全く問題ないと思うのだが、そんなことをしたらスイス人の多くは眉をひそめるだろう。甘味を感じるこのパンは、主に日曜日の朝などに、バターとジャムをつけて食べるものだという。
ほとんど同じような味のものに「東方の三賢者のケーキ（Dreikönigskuchen）」がある。これは１月６日の公現祭（Dreikönigstag）に食べる縁起物だが、名前を見る限りケーキだからお菓子の扱いのようだ。
イタリアが近いせいか、このあたりの人びとは、パスタも日常的によく食べる。パン売場に劣らぬ広い売場に様々な形のパスタが売られている。普通の小麦から作られるものの他に、全粒粉を使ったもの、スペルト小麦を使ったもの、それにグルテンフリーのものなど、様々なタイプのパスタを買うことができる。乾麺の他に、ニョッキやトルテリーニの類いは生パスタとしても売られている。
さて、パンやパスタに使う小麦以外にも、穀物は様々な形で日常の食卓を飾っている。大麦（Gerste）、カラスムギ（Hafer）、トウモロコシ（Mais）などがそのままの形で、または挽いて加工される。グラウビュンデン州の伝統的なスープ、ビュンドナー・ゲルステンズッペ（Bündner Gerstensuppe）にも大麦は欠かせない。それに、イタリア語圏でよく食べられるポレンタも身近な存在だ。
ポレンタは、トウモロコシをごく細かい粒にしたセモリナを粥状に炊いたものだ。グラウビュンデン州の郷土料理には、ブラマタ（Bramata）というポレンタのバリエーションがある。こちらは通常のポレンタよりも少しだけ粒が大きい。同じような調理法でつくるものに小麦のセモリナであるブルグルやそれを原料としたクスクスなどがある。これらはアフリカや中近東の伝統食だが、移民の多いスイスでは需要が多いらしく、田舎のスーパーマーケットでも手に入る。
ドイツ語でセモリナをグライス（Griess）と言うが、この辺りの人たちは小麦のセモリナで作った甘いプディングのこともグライスと呼ぶ。わずかにつぶつぶの食感はあるがそれ以外はパンナ・コッタのような味わいで、イチゴなど赤い果実のソースと一緒に食べることが多いようだ。
先ほど書いたように、甘味のあるパンを塩けのある食事と一緒に出したら諌められることもあるのだが、現地の人たちはグライスのようにデザートにしか思えないものを食事にしてしまうこともある。
会社のお弁当として、グライスや米の牛乳粥であるミルヒライス（Milchreis）、またはシリアルと果実をヨーグルトで和えたビルヒャー・ミューズリー（Birchermüesli）だけを持ってくる人がいるのだ。日本だったら「ご飯も食べないで甘いものばかり食べるんじゃありません」と怒られてしまいそうな食生活だが、特に珍しいことではないようだ。
米も普通に入手できる。ただし、日本の「ご飯」にあたるジャポニカ種は、「Sushi Rice」ととして普通の米売場とは違うエスニック料理専用棚にある。ごく普通に手に入るのは、粘りがなくてパラパラのインディカ種の米と、リゾット用の米だ。こちらの人はどちらも付け合せの野菜のような感覚をもっているらしく、塩と一緒に炊いてお皿に盛り、「これだけじゃなくてパンも添えるんだよ」と言う。ジャポニカ種が手に入らないところで代用品を探すならば、ミルヒライス用米の粘りは日本のご飯のそれと近いと思う。
スイスに移住して１５年、少しずつ知らなかった食べ物をレパートリーに入れて、上に書いてきた様々な穀物を使うようになった。また、昨年の終わりぐらいから家庭で食べるパンを手作りするようになった。食べることと作ること、食へ両方のアプローチを通して、私にとって異文化であったスイスの食生活が、日に日に身近になってきているように思う。
ソリーヴァ江口葵
プロフィール：ソリーヴァ江口葵
東京都出身。2001年よりグラウビュンデン州ドムレシュク谷のシルス村に在住。夫と二人暮らしで、職業はプログラマー。趣味は旅行と音楽鑑賞。自然が好きで、静かな田舎の村暮らしを楽しんでいます。End of insertion
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