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ナノテク・シリーズの最終回はスイスが世界に誇る、IBMチューリヒ研究所を紹介する。同研究所は、この20年間で２回もノーベル賞を受賞した。
最初に受賞したのが、世界のナノテク・ブームの先駆けとなった走査トンネル顕微鏡（Scanning Tunneling Microscopy 以下、STM）の開発だった。
研究所の才能豊かな科学者たちを率いるのはポール・サイドラー科学技術部長だ。米国人で、1988年にIBMに入った。ニューヨークからチューリヒの研究所にやってきたのは1995年だ。
swissinfo ： この科学技術部ではナノテクのみを扱っているのですか。
サイドラー ： ナノテクの定義は難しいですが、一般的の定義では、100ナノメートル（原子レベル）以下の構造を扱うことを言うのではないでしょうか。私たちはそれよりもっと小さい、１ナノメートル以下のレベルのものを扱っています。私たちはエレクトロニクスの会社ですが、現代ではエレクトロニクスをやろうと思えば必然的にナノレベルになりますね。
具体的には、このような技術開発が、コンピュータの容量をさらに大きくしたり、画面のディスプレイをより鮮明にしたりすることにつながるわけです。
実際ナノレベルで何が起きているか説明しましょう。電子は半導体の中にいくつかあるトランジスタの間を飛び回っていますが、最先端の技術ではこの間はたった65ナノメートルほどになっています。この距離は、10年前までは不可能ではないかと思うほど、非常に遠いものでしたが、今では当たり前のことです。この距離が近くなればなるほど、コンピュータの働きは早く、また消費者にとっても価格が安くなります。
swissinfo ： 人類はどれほど前からこのような小さい物質を作れるようになったのでしょうか。
サイドラー ： 2000年前の古代ギリシャから200年前まで小さな物質を作る技術は基本的には変わりませんでした。ちなみに、200年前の限界は0.1ミリメートルのレベルのものでした。ところがこの50年間で小さなものを作る技術は飛躍的に発展しました。
このおかげでコンピュータの計算能力（ギガバイド）の値段もこの60年で100億分の１になりました。言い換えれば、同じ値段で１００億倍の性能のコンピュータが買えるようになったということです。
つまり、物を小さくする技術が発達すればナノテクになっていくのは自然なことであって、何か新しい世界に人間が飛び込んだわけではないのです。
swissinfo ： IBMチューリヒ研究所がSTMの開発でノーベル賞を取って今年は20周年になります。この間、STMはどれほどの影響を人類に与えたと思われますか。
サイドラー ： ノーベル賞を取ったのは20年前ですが、STMを開発したのは25年前です。この間、STMは確かに科学の発展に大きく貢献しました。
例えば、STMによって、人類は初めて原子のイメージを見ることができるようになったのです。しかもその一つ一つを操作することさえ可能にしたのです。この時、実質的にナノテクノロジーが誕生したといえますね。
swissinfo ： では、IBMチューリヒ研究所はナノテクの父ということですか。
サイドラー ： まあ、ここが誕生の地、とは言えるのではないでしょうか。STMによって科学の研究のための新しい道具を作り出し、今までできなかったことができるようになったのです。分子構造の中まで実際に見え、人々の認識を大きく変えました。
swissinfo ： 250人の科学者を抱えるIBMチューリヒ研究所は、２回もノーベル賞を取っています。何か秘訣でもあるのでしょうか。
サイドラー ： ノーベル賞を取る秘訣はよく分かりませんが、新しいアイデアを生み出すのに非常に重要だと思うのは、隅々まで自由な雰囲気が満ちているという事です。人々がやりたいことができ、違ったことをしても認められ、皆が良いチームワークで協力しあう環境が重要です。科学の既成概念にぎゅうぎゅう締め付けられていると、人間は新しいアイデアなんて生み出せないと思います。
また、朝のコーヒータイムはスイスで良くある習慣なのですが、これはこのラボで最も重要かもしれません！このようなカジュアルな雰囲気の中で良いアイデアが浮かぶものなのです。
swissinfo ： ナノテクが進んで、どんな良いことと悪いことが起きると思いますか。地球上に今まで存在しなかった技術、物質を生み出すのは危険ではないですか。原子を操作するなんて、ちょっと怖い気もするのですが。
サイドラー ： ナノテクにまったく危険がないとはいえません。他の新技術と同じくらいの注意が必要だと思います。規制する政府機関が、どれくらいの頻度でチェックするか、ということが重要でしょう。なぜなら、現在、この分野はすごい勢いで変化しているからです。でも、これはナノテクに限ったことではありません。
ナノテクが進んで良いことは、コンピュータが小さく、安く、性能が良くなることです。どんな新しい技術もリスクを伴います。新しい化学製品が出るたびに、化粧品などに使用される前に肌への反応テストが繰り返し行われます。ナノテクでも同じようなことが必要でしょう。
swissinfo ： IBMチューリヒ研究所は、今後どんなことに挑戦していくのですか。
サイドラー ： 現在、科学者にとって将来は希望に満ちています。ナノテクによってあらゆる可能性が生まれたのです。現在、未来の世代のコンピュータのために新しい技術を探しています。
現在研究しているのは、シリコンで作るナノ電線です。これは人間の髪の毛の幅の５万分の１の細さなのですよ。これで未来のコンピュータを作るのです。最近、私たちの研究者がシリコンでできたナノ電線を使った初めてのトランジスタを実演してみせました。
また、電子自身の回転を利用できないかとも考えています。つまり、電子は磁石のようにプラスとマイナスの極があってくるくる回転していますが、これを利用できないかと思っているのです。つまり電子回路ではなく、スピン回路ということですね。これをエレクトロニクスではなく、スピントロニクスといいます。
これらが、私達が現在活用しているナノテクノロジーです。これが未来のコンピュータシステムの開発につながっていくと思っています。
swissinfo、聞き手 遊佐弘美（ゆさひろみ）
補足情報
-IBMチューリヒ研究所は今年50周年を迎えて様々な行事を開催している。
-6月10日は「オープンハウス」と称して研究所を一般公開し、研究所の日常生活を実際に見て回れる。
キーワード
ナノテクとは「ナノテクノロジー」の略
１ナノメートルは、１０億分の１メートルスケール、１ナノメートル（nm）は、髪の毛の太さの約十万分の一。