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スイスが誇る科学研究の最先端、連邦素材研究機関 （ EMPA ） がまた画期的なプロジェクトを打ち出した。これによって航空機の開発は新しい時代に入ったかもしれない。
チューリヒ郊外に本部を持つEMPAが今回開発したのは、空気中をまるで水の中の魚のように自由に泳ぎまわる小型飛行船「ブリンプ ( blimp )」 だ。音もうるさくなく、環境にも優しいため、未来の交通手段にはぴったりだ。
10年以上前、ジョニー・デップ主演の『アリゾナ・ドリーム』という映画で、エミール・クストリッツァ監督は想像上の魚を印象的に描いた。当時は想像上の産物でしかなかった「魚」が、近い未来に現実のものになるかもしれない。
ヒントは自然界
記者が訪ねたのは、デューベンドルフ ( DÜbendorf ) にある研究所。科学者たちは、電気駆動型ポリマー ( EAP ) の実用化プロジェクトに取り組んでいた。EAPとは、薄い板のような物質で、電気を通すと自在に形を変化させることができる。そして電気を切ればまた元通りの形に戻る便利な素材だ。
このような素材が最も活きるのは、人工筋肉だといわれていた。しかしシルヴァン・ミシェル氏が率いる技術者チームはこのテクノロジーを「空気より軽い飛行船」に使えないか、と挑戦を挑んでいる。
飛行船は莫大な量のガソリンが必要で、騒音公害にもつながるということで、頻繁に使う交通手段としては発展しなかった。空気の抵抗を受けながらばたばた回るプロペラを操縦するのもなかなか難しい。
ヒントをくれたのは、自然界だった。最終的には、「魚」に似せて作るのが最善だという結論に達した。今まで「固くない物質」で飛行船を作るなんて誰も本気で考えたことはなかった。
商品化までのハードルはまだ高い
ミシェル氏によると、魚やイルカは動物の中で最も無駄のない動きをする。これを飛行船に使わない手はない。
EAPを人工筋肉に使うという発想は、小型飛行船の表面に使用された。これによって理論上はブリンプを空中に「泳がせる」ことが可能になった。
「計算の上では可能なのですが」とミシェル氏は言う。「問題は、技術的に本当にこれを実現できるか、できたとしても長期的に様々な構造的負担に耐えられるか、ということです」
地下の研究室で、ミシェル氏は手作りのEAPを手に取って見せてくれた。透明なアクリルの薄い板に黒い鉛をかぶせたものだ。
残された課題は多いらしい。EAPはまだ熱や持続的な負担にも弱い。一応、試作品はできているが、今のところ前に進む手段はプロペラだけだ。
試作品の大きさは6メートル。今はゆっくりとしか進まないが、ミシェル氏は、2年以内に魚のような滑らかな動きで飛び回るようになることを期待している。しかし、まず屋内で飛ばすにしても、空中の動きや機械の構造上の問題などをはじめとする様々なハードルを越えていかなくてはならない。
可能性は幅広く
「現在の技術では、商品化するまでに5年から10年かかるでしょう」とミシェル氏は認める。
しかし、長期的にみてこのプロジェクト自体は興味深いものだ。EAPが飛行船に使われれば現在のエンジンより2倍も効率が上がる。表層部分にはバッテリーを自動的にチャージできる太陽電池が装備されるため、給油も大幅に節約でき、環境に優しい上に非常に便利だ。
このプロジェクトが今後どうなるか、まだ先行きは不確定だが、飛行船でなくても通信サテライトや長い時間飛ばなくてはいけないヘリコプターなどに応用できる可能性も考えられている。
ミシェル氏が個人的に目指しているのは、野生動物の監視だ。「動物を驚かさないよう、静かに見守る必要があります」とミシェル氏は目を輝かせる。「私たちのブリンプほど、このミッションに適している乗り物はないと思います」
swissinfo, スコット・キャッパー 遊佐 弘美 ( ゆさ ひろみ ) 意訳
飛行船
飛行船とは、周りの空気より軽いガスを入れて、空に浮かべる交通手段。通常、かなり容量が大きい。
初めてエンジンを持ち、操縦も可能な航空機として、1900年から1930年代に頻繁に使われた。
飛行機の登場と度重なる事故が原因で、次第に使われなくなってしまった。最も有名なのは、ヒンデンブルク号の爆発事故。映画化もされた。
今日、飛行船は主に広告などの用途に使われている。
関連情報
連邦素材研究機関 （ EMPA ）は連邦工科大学傘下の機関。
素材科学技術の分野で研究開発やサービスを提供しているのは、デューベンドルフ ( Dübendorf ) 、ザンクトガレン ( St Gallen ) 、トゥーン ( Thun )、の3研究所。
研究は5つの分野に分かれている ： ナノテクノロジー、適合素材システム、健康パフォーマンス素材、エネルギーおよび空気技術素材
研究所では800人以上が働いている。このうち200人が学生。