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スイスとEUとの2国間協定「人の往来の自由」の有効期限が2008年末で切れ、その更新が問題になっている。
EU新加盟国であるルーマニアとブルガリアへの同協定の適用拡大問題も解決されないままだ。
連邦議会の全州議会 (上院 ) は特別総会で欧州連合 ( EU )との「人の往来の自由」協定の2009年更新と、ルーマニアとブルガリアへの同協定の適用拡大の2項目を1つのパッケージにすると決定した。一方、連邦内閣はこのパッケージ化には反対の意向だ。連邦議会の国民議会 ( 下院 ) は6月の定例総会で決定を下す。もし、パッケージ化が承認されれば、2009年以降の更新の是非を問うレファレンダムが起きても、2項目を切り離さず、国民に審議が問われることになる。
2項目を1つにすることが唯一の解決策
2002年にEU 15カ国との間に承認された「人の往来の自由」協定は、2005年にEU新メンバー10カ国に拡大され、現在EU 25カ国がスイスと自由に行き来できる。
しかし、労働市場での外国人労働者の増加を懸念したスイス国民は、同協定の有効期限を7年間に限定すること、EUの新加盟国への拡大も毎回検討することを、2000年の国民投票で決定していた。
主にルーマニアからのジプシー流入による犯罪を懸念し、ルーマニアとブルガリアへの同協定の適用拡大に反対していた右派の国民党 ( SVP/UDC ) は、今回の全州議会での決定を受け、
「このパッケージ化は2000年に国民が下した決定を無視するもので、1つの巧妙に練られた作戦だ」
と、強く批判した。
「しかし、2項目を1つにすることが唯一の解決策だ。人の往来の自由に関して、EU25カ国と協定するが、 ( ルーマニアとブルガリアを加えた) 27カ国とではないといったことはあり得ない」
と、右派の急進民主党 ( FDP/PRD ) の上院議員ディック・マルティ氏。EU 側は、もしルーマニアとブルガリアへの条約適用を承認しなければ、EU加盟国を「メニューをアラカルト風に選択するように」取り扱うスイスとは、今後協定を更新しないということになるだろうと説明した。
更新反対は、経済的に大きな痛手
「確かに、『人の往来の自由』を更新することと、EU 新メンバーに同法を適用することは、国民党が主張するようにまったく異なる2つの事項だ。しかし一方で、もしルーマニアとブルガリアへ適用しないと、協定自体が成立しなくなるどころか、『第1次スイスーEU協定』のほかの6つの協定も水の泡と化す可能性がある」
と懸念するのは、ベルン大学の政治学者クラウス・アルミンゲオン氏。新加盟国を拒否することは、ある種の侮辱とEU に受け取られ、経済関係なども含む両者の今までの良好な関係に暗い影を落としかねないと分析する。
一方、スイスの経済界は「人の往来の自由」協定更新に向け、すでに準備を進めている。スイスビジネス連合の「エコノミースイス ( economiesuisse ) 」が行った調査によれば、スイス企業の8割以上が、同協定更新は重要だと考えている。
また、調査対象になった企業中のおよそ6割が、同協定更新はスイスの労働者の給与に影響を与えないと答えた。しかし、組合側は懸念を隠さず、給与のダンピングを避けるための対策を強化すべきだと訴えた。政府はこうした労働者側の立場を考慮する必要があり、これを無視すれば組合が同協定更新をレファレンダムにかける可能性も出てくる。
「もし、スイス国民がレファレンダムで更新に反対すれば、経済的に大きな痛手を被ることになるだろう」
とアルミンゲオン氏は警告する。経済界のパートナーとしてEUの果たす役割は大きい。スイスの全収益のおよそ3割がEUとの関係でもたらされるものだからだ。
swissinfo、カロル・ヴェルティ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳
人の往来の自由
人の往来の自由は「第1次スイスーEU協定」の一部をなし、EU旧15カ国との間で承認され、2002年6月1日に発効した。
2005年9月、スイスは2004年5月新たにメンバーになったEU10カ国に適用を拡大した。
スイス－EU間の人の往来の自由は、2008年末で無効になる。EU側は自動的に更新できるが、スイス側は任意のレファレンダムで国民投票にかける可能性を残している。
つまり、5万人の国民がレファレンダムに署名すれば、2009年春に国民投票にかけられる。現在のところ、国民党 ( SVP/UDC ) も労働組合もレファレンダムを起こしていない。
一方、2007年1月1日EUに加盟したルーマニア、ブルガリアは、スイスに人の往来の自由の適用拡大を要求している。
スイスとEUの関係
1999年に結ばれた「第1次スイスーEU協定」は、人の往来、貿易、雇用、農業、空路、陸路、科学研究協力の7項目にわたる内容だった。
2004年に結ばれた「第２次スイスーEU協定」は、経済諸関係、シェンゲン･ダブリン協定、難民、環境、文化などにわたり、利子課税問題についても両者は合意した。