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エベレストの山で働くシェルパが、ドキュメンタリー映画の製作中に山頂で行方不明になったスイス人登山家の遺体を先週発見した。
2008年5月、ティチーノ州出身のウヴェ・ジャンニ・ゴルツ氏が下山の途中で疲労のため死亡した。しかしその前にゴルツ氏は酸素補給無しで8848メートルの登頂に成功していた。
エクストリーム・エベレスト
エベレストの頂上付近から遺体を搬送することは非常な危険を伴うため、めったに行われない。スイス・アルパイン・クラブのロカルノ支部長エンリコ・ブリネール氏は
「彼はとても人気がありました。われわれのクラブのメンバーで、とてもオープンな善い人でした」
とゴルツ氏の人柄を語った。
約8人のシェルパのチームが、エベレストのサウス・コル ( 南麓 ) 付近でゴルツ氏の遺体を発見した。そこは登山家が頂上を目指して最後の一押しをかけるために拠点とする標高約8000メートルの鞍部だ。「エクストリーム・エベレスト・エクスペディション2010 」のコーディネーター、チャクラ・カーキ氏が、遺体を標高6,600メートル付近にあるキャンプまで運んできたことを5月11日にブログで報告した。
このシェルパたちは、20人から成る「エクストリーム・エベレスト・エクスペディション2010」のメンバーだ。彼らは、世界最高峰のエベレストで遺体を収容し、登山者が残した廃棄物を回収している。
今回彼らは、1996年にほかの登山家7人とともに遭難したアメリカ人登山家のスコット・フィッシャーと伝説のニュージーランド人登山ガイド、ロブ・ホールの遺体も収容した。この遭難事故は、ジョン・クラカワーのベストセラー『空へ――エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか ( Into Thin Air ) 』の題材となった。
清掃部隊のリーダー、ナムギャル氏によるとゴルツ氏の遺体がスイスへ送還されることはない。
「標高5,300メートルに位置するベースキャンプで火葬に付されます」
とドイツ語圏のタブロイド紙「ブリック・アム・アーベント紙 ( Blick am Abend ) 」に語り、さらに
「これにはご家族も同意しています」
と説明した。
経験豊かな登山家
ゴルツ氏の遭難事故は今から約2年前に起きた。当時44歳だったゴルツ氏は、ドキュメンタリー映画の製作のためにエベレストに登頂し、下山の途中で死亡した。この映画は2009年5月にスイス公共テレビ放送で3回に分けて放送された。
映画製作に携わったメンバーがゴルツ氏を最後に目撃したのは、彼が1人で頂上に向かっていったときだった。
「ジャンニは予備の酸素を持たずに登頂することを望んでいました。そのためわれわれよりも時間をかけて登る必要があったのです」
とゴルツ氏の登山隊のリーダーだったカリ・コブラー氏は映画が放映される少し前にブリック・アム・アーベント紙に語った。
「しかしジャンニは1人ではありませんでした。シェルパが1人ついていて、いつでも酸素を供給できるように準備していたのですが、彼はそれを望んでいなかったのです。もしそうしていたらもっと楽に下山できて、命も助かったと思います」
ゴルツ氏のドキュメンタリー映画「シェルパ：エベレストの真の英雄」は、ネパールのクンブ( Khumbu ) 地区 のシェルパが危険な仕事を担い、毎年多数の登山家をサポートしていることに焦点を当てている。
ゴルツ氏は、スイスの南マッジア ( Maggia ) 谷出身の経験豊かな登山家で、エベレストのほかにも8,000メートル級の高峰六つを制覇している。ゴルツ氏が遭難した春、頂上で死亡した登山家は彼1人だけとなった。
墓場エベレスト
イギリス隊による1953年の初登頂成功以来、約300人がエベレストで死亡した。それらの遭難死亡事故のうちの多くが標高8000メートル以上の「デス・ゾーン ( 死の領域 ) 」で起きている。そこでは1回の呼吸に含まれる酸素の量が、海水位での量の3分の1しかないため、人間は数日間以上生き続けることができない。
標高の低い地帯では、山の高地から落下した遺体の捜索と収容が一年中可能だ。しかしデス・ゾーンでの捜索と収容は大きな危険を伴うため、遺体は通常放置される。そして乾燥した身を切るような極寒の気候のもと、凍結して何十年も残されたままの遺体もある。
エベレスト登頂を試みる登山家の数は毎年約1000人にも上る。今回清掃隊は標高6000メートルの地帯にベースキャンプを設営した。これは、遺体や登山者がデス・ゾーンで遺棄することを余儀なくされた無数のテント、酸素ボンベ、バックパック、ロープ、食品などの回収の拠点だ。回収された廃棄物や遺留品は、エベレストのネパール側にあるキャンプに展示されることになっている。
清掃隊のリーダーのナムギャル氏は、約2000キログラムの廃棄物と登山者5人の遺体を頂上付近から運び下ろすことを計画している。死亡した登山家の家族の中からは、遺体をそのままに残しておいてほしいという声もあったが、ナムギャル氏はエベレストを墓場にしてはならないと言う。
「エベレストで亡くなった方々のご家族の気持ちは尊重します。しかし、エベレストは神聖な山です。われわれの政府は、遺体を山に一つも放置してはならないという明確な方針を持っています」
とナムギャル氏はBBC ( 英国放送協会 ) の取材で語った。
ティム・ネヴィル 、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、笠原浩美 )
デス・ゾーン ( 死の領域：The Death Zone )
登山者が標高8000メートル地帯に到達すると、そこは「デス・ゾーン ( 死の領域 ) 」となる。デス・ゾーンでは、生命を維持するために必要な空気中の酸素の密度が低い。
一般の人々はこのゾーンには酸素量が少ないと考えがちだが、実はそうではない。空気中に占める酸素の割合はエベレストであろうと海面位であろうと同じだ。ただこのゾーンでは空気の密度そのものが低いため、結果として肺に取りこむ酸素の分子量が不足する。そのため、人体が十分に機能できなくなる。
標高の高い場所では人体の機能が低下する。食物を消化する能力を失い、思考が混乱する。そして合理的に考えられなくなり、危険な状態をさらに悪化させることもある。エベレストでは、眠ろうとしていた登山家が夜中に突然直立し、窒息したかのようにあえぐことがある。
高地に長時間滞在するだけで疲労が蓄積し、倒れることもある。極度に高い標高では、安静時の心拍数が最大心拍数に近くなるため、ただ横たわるだけでもストレスのかかる運動をしているように感じる。