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初めて誰かに出会う。その瞬間人はわずか数秒で、相手が信用できるか、または悪意がありそうなので逃げたほうがいいといった生存にかかわる感情的判断を下す。しかも、この判断は無意識のうちに脳内に記憶されるというメカニズムが今回新しく発表された。
これは、ジュネーブ大学医学部と「スイス感情科学研究所 ( CISA ) 」の共同研究としてパスカル・ブルティチカ氏が執筆中の博士論文の一部である。
社会的行動での感情
「出会いの瞬時の感情がどうのように形成され、記憶されるか否か。もし記憶されるとしたらそのメカニズムを解明するのがテーマだった」
とブルティチカ氏は説明する。
実は、出会いの瞬時の感情的判断は0.1秒から数秒のうちに行われ、信用できそうか、支配されることはないかといった、生存にかかわる「動物的で古代から人が持つ」判断を無意識のうちに行うことは、最近のアメリカの研究ですでに分かっていた。しかしこの感情がどのように記憶となって脳内に残るのかは分かっていなかった。
ブルティチカ氏は、被験者が人工的にこうした感情を抱ける装置を作った。しかも相手の肌の色や体臭など肉体的側面から引き起こされる感情的判断を排除し、あくまで社会的行動で呼び起こされる、相手が敵か味方かといった感情だけにフォーカスした。
まず、コンピューターの画面上で、黒いパネルに白い円が描かれたものを2枚並べどちらのパネル上に白円の数が多いかという単純な質問に答えてもらう。正しい答えを出した被験者に、「勝ち（won）」と書かれた文字とともに笑顔の顔写真と、しかめ面の顔写真の2枚を見せた。また、間違った答えを出した被験者にも「負け（lost）」の文字とともに、笑顔としかめ面の2枚の顔写真を見せた。
こうして、勝ったときに一緒に笑い、負けたときに残念がる「味方」の顔と、勝ったのにしかめ面を、または負けたのに喜ぶ「敵」の顔を見せることで、即座に出てくる感情的判断を形成させた。この第1段階でのテストでも、感情的判断に関係する脳内の部位はすでに活発化されていた。
無意識に大脳内に記憶
10分間の休憩後に第2段階として、1回目に見せたのと同じ顔だが、今回は表情のないニュートラルな顔と、一度も見せたことのない顔を混ぜて見せた。すると、7割の人が10分前に見た顔を「見たことがある」と答え、だがどのような表情をしていたかはまったく覚えていないと話した。
この時注目すべきことは、勝ちにしかめ面をし、負けに喜ぶ「敵」だった顔を再び見たときには、表情やそのメッセージを覚えていないと言っているにもかかわらず、大脳の機能を画像的にみせるfMRI ( 機能的磁気共鳴画像法 ) 上では、ジャングルで蛇を見たときなどに「危険があるから注意しろ」というシグナルを送る大脳辺縁系の側頭葉前部にある扁桃体 ( Amygdala) に色がつき第1段階と同じく活発になっていた。
同様の状況で、例えば動物では母が子を置き去りにし、従って食料が与えられない生命の危険性にかかわる苦しみ、現代の人間ではグループから排除される苦しみの際に働く前帯状回皮質 ( Anteior cingulate cortex, ACC ) も活発になっていた。
こうした実験の結果、「初めての出会いから生まれる、敵か味方かといった感情的判断は、感情に呼応する大脳内の部位が活発になることで、無意識のうちに記憶される。それは脳内にずっと残る。そのため2回目の出会いでも、感情をつかさどる脳内の部位が再び活発になることで、たとえその顔が同じ表情をしていなくとも顔そのものは思い出す」という結論が導き出された。
感情の修正機能もテーマ
この最初の印象は、動物的なもので人類の歴史において非常に古いもの。相手を信用していいか、それともすぐに逃げたほうがいいかといった判断は、生き残りにかかわっているからだ。そのため、無意識に脳内に記憶される。それはたとえ、その後その人の態度が初めとは変わっても残り続ける感情だ。
しかし、およそ1万年前はせいぜい20人ぐらいのグループで生活していた人類だが、今日の生活では１日でも何十人と新しい人に出会う生活を送る。たとえば電車の中で座ろうと思った席を取られ、いやな印象を持つといったことはしょっちゅう起こる。こうした環境では、この出会いの瞬時の感情を修正していかなくては生活できない。また、進化し続ける人間としては修正していく責任があるとブルティチカ氏は考える。
そして現在、脳のどの部分がこうした感情の修正にかかわるか、またそのメカニズムはどのようなものかをテーマに論文を執筆だという。
里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 、swissinfo.ch
出会いの感情の記憶メカニズム
パスカル・ブルティチカ氏の今回の研究は、脳内の扁桃体 ( Amygdala) 、前帯状回皮質 ( Anteior cingulate cortex, ACC ) 、尾状核 ( Caudate nucle ) の3部位の反応に焦点を当て、出会いの感情の記憶メカニズムを解明している。
脳内の扁桃体と前帯状回皮質は、勝ちにしかめ面をし、負けに喜ぶ「敵」だった顔から引き起こされた感情を記憶していた。前者は危険の感情を、後者はグループからの排除の感情だった。
一方、成功したときなどに褒められ「努力が報われた」と感じるときに活発となる尾状核は、勝ったのにしかめ面をした顔を、2回目にニュートラルな状態で見せられたときに、再び活発になり色がついた。これは勝ったので相手が残念がっており、自分は相手より優位に立ったとう感情が無意識のうちに記憶されていたせいだという。
パスカル・ブルティチカ氏略歴
1999～2005年、連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ/EPFZ ) で神経科学、生物化学、薬学、免疫学などを研究。
2003～2004年、韓国で認知症の薬学研究
2005年、チューリヒ大学精神医学科で神経精神医学研究
2006～2009年、ジュネーブ大学医学部神経学科とスイス感情科学研究所 ( CISA ) の共同研究に携わる。
CISAは、ジュネーブ、ローザンヌ、チューリヒの大学が共同で行っている感情科学研究組織。連邦基金で支援され2013年まで継続する。ジュネーブが本部。