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新型コロナウイルスのパンデミック（世界的流行）が本格化したころ、ドイツの複数の省庁が、スイスの若い起業家らから法外な価格で個人用防護具を購入していた。購入総額は6億8400万ユーロ（約910億円）に上る。なぜこうした取引が行われ、ドイツでは誰が利益にあずかったのか。コロナ禍での対応を巡り、数々の疑問が浮上している。このコンテンツは 2021/06/12 08:30
一連の出来事は約15カ月前に始まった。すっかり片付くのはまだ先の話になりそうだ。新型コロナウイルスが欧州に上陸した2020年春、ヤシャ・ルドルフィとルカ・シュテッフェンという2人のスイス人青年が、中国とのパイプを利用して、当時品薄だったFFP2マスク数百万枚をはじめとする個人用防護具を買い付けた。
2人が経営する会社「エミックス」にはスイスとドイツから大量の注文が舞い込んだ。販売価格は高額だったが、危機下で迅速な対応を迫られていた政府にとって、金額は二の次だった。イェンス・シュパーン氏指揮下の独保健省が2020年春に同社から購入したサージカルマスク、使い捨て手袋、FFP2マスクといった個人用防護具は総額約6億7千万ユーロ分に上る。マスクの単価は5.58ユーロだった。その他、バイエルン州保健省が総額890万ユーロでマスク100万枚を、また、ノルトライン・ウェストファーレン州が1枚9.90ユーロで52万7千枚のマスクを同社から購入した（独ニュース番組tagesschau.de調べ）。シュパーン保健相が一番うまく交渉したと言えそうだ。
それでもエミックス価格は平均をはるかにしのいでいた。南ドイツ新聞と北ドイツ放送（NDR）及び西部ドイツ放送（WDR）が各州の担当省庁に問い合わせたところ、大部分の州はエミックス以外の業者から、2.85〜4.34ユーロという単価でマスクを調達していた。中間業者抜きで中国から直接買い付けたバーデン・ヴュルテンベルク州に至っては1枚1.20ユーロと、ノルトライン・ウェストファーレン州がエミックスに支払った額の8分の1にも満たない。
2億ユーロのもうけ
その分、エミックスにとっては良い商売だった。個人用防護具の売買を通じ、ルドルフィ、シュテッフェン両氏は、ドイツ国内への提供だけで2億ユーロを稼いだとされる。このことは危機の最中には耳目を集めなかった。当時はマスクが手に入りさえすれば御の字だったのだ。
しかし今年2月、800馬力の高価なフェラーリの前でポーズを取る2人の写真が公開されると、完全に風向きが変わった。ドイツの週刊誌シュピーゲルは「スイスの若き成り上がり」とこき下ろし、南ドイツ新聞は「スイスのマスク長者とフェラーリ」という見出しで2人が得た金額を暴露した。特にタブロイド系のメディアは、危機につけ込んだ2人への非難であふれた。
しかし、スイスの週刊紙ヴェルトヴォッへのように、むしろ彼らの商才や抜け目なさを評価することもできる。エミックスは2018年以来、化粧品、香水、アクセサリーなどの贅沢品をアジアに輸出して成功を収めた。2人は頻繁に中国に通い、人脈を築いた。欧州でウイルスへの不安が広がると素早くニーズを掴み、当時喉から手が出るほど求められていたマスクを、チャーター機で何百万枚と欧州に運んだのだ。つまり、彼らも経営者としてリスクを取っていた。
ドイツ側の仲介役
エミックスは価格こそ高かったが、納品は確実で不良品交換もスムーズだったとドイツの保健省からお墨付きをもらっている。同社は、マスクビジネスのポテンシャルを嗅ぎつけ利益を得た多くの業者の1つに過ぎない。ただし、パンデミックという状況で、品薄の医療用物資を元に個人の利潤をとことん追求すべきなのか。純粋に倫理上のこととはいえ、ここでこうした問いかけが生まれるのはもっともだろう。
しかし、スイスの方角に放たれた非難はブーメランさながらにドイツに返ってきた。今、ドイツ国民の怒りは、スイスの2人の図々しさに対して以上に、もうけの分け前にあずかったドイツ人仲介役に向かっている。焦点は2つある。第1に、シュパーン連邦保健相とバイエルン、ノルトライン・ウェストファーレン両州の保健相は、なぜエミックスの高価格を受け入れたのか。第2に、仲介によりドイツ側で利益を得たのは誰なのか。
特に注目されるのがバイエルン州だ。各省庁との契約は同州を起点に結ばれた。というのも、同州を拠点とするキリスト教社会同盟（CSU）の元トップ政治家ゲロルド・タンドラー氏の娘、アンドレア・タンドラー氏が仲介役を努めたからだ。
昨年3月9日、シュパーン氏にエミックスのオファーを取り次いだタンドラ―氏は、ベルリン、バイエルン、ノルトライン・ウェストファーレンの各責任者への仲介料として、総額3千万～5千万ユーロをエミックスから受け取った。
同氏は正確な金額については公表を拒む一方、商品の配送やフライト手配などロジスティクス関連で膨大な仕事をこなしたと主張している。
透明性ルールの導入
中でもシュパーン氏との取引は規模が大きい。タンドラー氏を保健省に紹介したのは、同氏の友人でCSU所属の政治家であるモニカ・ホールマイアー欧州議会議員だった。ホールマイアー氏はCSUのシンボル的存在だった故フランツ・ヨーゼフ・シュトラウス氏の娘で、政界トップに顔が効く。ただし今のところ、同氏がこの取引で報酬を得たという事実はない。
しかし、バイエルン州の社会民主党（SPD）は、この取引はCSU関係者間の縁故ビジネスだと判断している。ニュース専門テレビ局「n-tv」のウェブサイトには、フロリアン・フォン・ブルン同党党首の「ホールマイアー／タンドラー経由で成立した怪しげなスイス企業エミックスとの取引の信じがたい価格は、CSU得意のお友だちビジネスだった可能性が強まっている」という発言が掲載されている。
しかし、タンドラー氏は国会議員ではなくPR会社のオーナーであり、世間の怒りを除けば今のところ恐れるべきことはほとんどない。彼女は企業家として行動したに過ぎない。
仲介役の議員の場合、話は別だ。連邦議会のゲオルク・ニュスライン議員（CSU）とニコライ・レーベ議員（キリスト教民主同盟、CDU）は3月、エミックスとは無関係のマスク売買のあっせんで6桁の手数料を受け取ったとして離党に追い込まれた。このマスク疑惑で与党CDU／CSU連合の支持率は急落。これを受け、国会議員が行う副業の透明性を高めるための10項目の綱領が、急遽、採択された。
同月、与党CDU／CSU連合と野党SPDはベルリンで、国会議員を対象とする新ルール導入に合意した。今後、副業や企業の株式保有による収入は、月間1千ユーロ、あるいは年間3千ユーロから申告義務の対象となる。政治家が自らのコネを使って企業と省庁の間を仲介するのは何ら問題なく、むしろ奨励されるが、その際金銭的報酬を得てはならないという見解で一致した。
税金で私腹を肥やしたのか？
バイエルン州では目下、エミックスとの取引の詳細究明が進められている。5月中旬にはミュンヘン検察当局が、マスク購入で税金の浪費がなかったかどうかの調査に乗り出した。また、同州の社会民主党は、「マスク疑惑」調査委員会の設置を示唆してCSUを牽制（けんせい）し、取引に関する全記録の閲覧を要求している。南ドイツ新聞は「不利な条件を飲まざるを得ないような圧力が保健省の責任者らにかかっていたのか。エミックスはバイエルン州民の税金でひともうけしたのか」とCSUにただした。
ベルリンではどうか？「平均以上の品質」や「プロフェッショナルで迅速な仕事」といった発言でこれまでエミックスとの取引を擁護してきたイェンス・シュパーン氏も、今や守りの姿勢に転じたようだ。週刊誌シュピーゲルのデジタル版には「『一攫千金』を狙う業者らが政治の窮状につけ込んだ」「当時の多数の業者の『マージンと中間利益』はモラル的に『不適切』」といった同氏のコメントが紹介されている。この発言がエミックスだけを指したものでないのは明白だ。なお、2人のスイス人は、自分たちのやり方に何ら問題を感じていない。しかし、巨利を得た今、彼らは多くの疑問に答えなければならない。
（独語からの翻訳・フュレマン直美）