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スイスの名門バレエスクール、チューリヒ・ダンス・アカデミーの教師によるハラスメントを告発する声が相次いでいる。今月初めに同校に対する調査が始まり、22日には経営者の校長と芸術監督が停職処分を受けた。元留学生の日本人2人が、学校での虐待が原因で2021年に退学を余儀なくされた自身の体験をswissinfo.chに語った。
事の発端は、今月上旬にドイツ紙「ディー・ツァイト」が報じたパワハラ疑惑だ。2007年から2021年にチューリヒ・ダンス・アカデミーに在学していた元学生13人の証言をもとに、校長オリバー・マッツ氏と芸術監督シュテフィ・シェルツァー氏をはじめとする教師らによる心理的虐待が報じられた。
人格否定、叱責や暴言のほか、すでに痩せているのにさらに痩せるようプレッシャーをかけられたとの証言もある。その厳しすぎる指導で拒食症やうつ病になる生徒もおり、成長期の学生の体と心に大きな傷を与えていたことが明るみに出た。
2019年から同校が属するチューリヒ芸術大学芸術・映画学部のマリイケ・ホーゲンボーム学部長はディー・ツァイトに対し、「教師が学生に対して言葉遣いや口調、教え方などで不適切な振る舞いをすることがあった」ことは就任前から認識していたとしている。だが、「（指導の）質を確保するための追加の対策や規則、透明性のあるプロセスが導入された」と返答している。
アカデミーは swissinfo.ch の問い合わせに対し、この件に関し「一切コメントできない」と答えた。声明他のサイトへによると、経営陣の停職は「現在進行中の調査と、それに伴いチューリヒ・ダンス・アカデミーの関係者全員にかかっている圧力への対応」と説明する。外部の専門家がヒアリングを通して事実関係を明らかにしつつ、生徒のために教育の運営を継続することを目的としている。独立した法律事務所が今月1日から調査を開始しており、2023年3月末までに結果がでる見込みだ。
声を上げにくい
swissinfo.chの取材に応じた元留学生のＡさん（18）は、「バレエ界は華やかなイメージがあり、チューリヒ・ダンス・アカデミーは日本では皆が憧れるバレエ学校。でも、虐待に苦しみ、金銭的にも身動きが取れず、このアカデミーでやるしかなくやっている子がいる」と話す。現在は、調査をしている法律事務所に提出する文書を作成中だ。
Ａさんによると、学校内での生徒たちは無力だ。世界に名を馳せ長くキャリアを積んできた経営陣に対して声を上げ、精神的な虐待を非難すれば、学校を辞めさせられ、プロになる前に夢を諦めることになりかねない。また、奨学金を受けてチューリヒ・ダンス・アカデミーに留学している学生は、退学するには奨学金の返済が必要なため、さらに声を上げにくい立場にいるという。
Ａさんの場合、教師の暴言を信じ込んでしまうなど、マインドコントロール状態に陥った。右足が疲労骨折を起こし、靭帯は切れる寸前だったが、大役を務める予定だったため、担任の教師からは痛み止めを服用してリハーサルで踊るよう強制された。「重要な役だから」という教師の言葉を信じてのことだったが、それにより症状は重症化した。学校を通して医者からの検査結果が伝えられたのは診察の1週間後で、教師からは結果が出るまでは役を踊り続けるよう指示されていた。
その後は、教師から、「けがをしたのは太っているからだ」と叱責されるなど、精神的な面からも虐待を受け続けたという。しかし、Ａさんの肥満度は、世界保健機関（WHO）の基準で「痩せすぎ」に当たる。
Ａさんは1カ月後に復帰したものの、更にハードなレッスンを受けたことにより、たった１週間で反対の左足も疲労骨折を起こし、ついに踊れなくなった。チューリヒ・ダンス・アカデミーへ留学してダンサーになることは、Ａさんにとって子供の頃からの憧れだった。しかし、けがに加えてうつ状態に陥りバレエが踊れなくなったことから、卒業を目前にしていた昨年末、3年半の留学生活を捨てて自ら退学した。今でもこの辛い経験を話すのにはためらいがある。足の痛みがなくなるまでには1年かかった。
「授業中に椅子や鍵を投げつけられるのは日常茶飯事だった」と、Ａさんは当時を振り返る。「表向きはシステムが完璧に揃っている。学生の生活のケアを支援する寮母、医師や理学療法士、心理カウンセラー、栄養士もいる。だが、それは全く無意味に感じられる。おかしいと声を上げた寮母は、経営陣と喧嘩をして辞めさせられていったという話を聞いた」と語る。
精神的苦痛
もう1人の日本人留学生、Ｂさんの母親もまた、Ｂさんが受けたハラスメントを訴えるため、証拠の文書を時系列に沿って作成中だ。当時17歳だったのＢさんの母親は2021年5月、突然、アカデミーの校長から「Ｂが退学した」との事後報告を受けた。
それは、学校でのリハーサル中に肉離れを起こして踊れなくなり、Ｂさんが見学せざるを得ず焦っていた時のことだ。校長から「1カ月後の公演までに痩せるのは無理だと思う。体重を減らすことにストレスを感じるなら、今辞めるのはどうか。楽になる」と言われ、即退学を促された。精神的に追い詰められていたＢさんは、やるせない思いで退学を承諾した。しかしＢさんは当時、体重減少の必要はないほど痩せていた。その前日、Ｂさんから母親に、「1カ月後に公演ができる」と喜び溢れる報告が届いた矢先のことだった。
ローザンヌ国際バレエコンクールへの出場を目指していたＢさんは、12歳の時にオーディションに合格し、14歳でチューリヒ・ダンス・アカデミーに入学した。同校は近年、ローザンヌコンクールに毎年のように入賞者を輩出する学校として名を馳せる。Ｂさんにとって転機となったのは、コンクールに向けて本格的なトレーニングが始まった留学3年目の2020年11月頃。教師は思った通りに踊れない生徒に対し、冷罵を浴びせるようになった。
「Ｂは頭が悪い」、「Ｂは何も考えていない」、「Ｂの頭には脳みそが入っているのか」と、教師はレッスンのたびに暴言を吐いた。また、「上手くなりたくないのであれば、家に帰ったらどうか」とも言われた。その一方で、具体的に何が悪いのか説明を求めても、踊りの技術的な面に関する指導はなかった。プレッシャーと共に精神的に落ち込む日々が続いた。
Ｂさんの母親は、「バレエ界では厳しいからこそ成長するという意見もあるため、本人から『きつい』と聞いても、最初はＢがそこまで精神的に追い詰められているとは考えにくかった」と言う。そこで、担任とオンラインで面会し、「酷い言葉ではないか」と尋ねたところ、「頑張って欲しいと思っているから言っている」との返答があった。
ある日、Ｂさんがトーシューズを脱ぐと、右足の親指が内出血していた。すぐに担任に助言を求めたが通院の指示はなく、「痛み止めクリームを友人に借りて塗るように」と言われたので、それに従った。ところがその後、足が麻痺して動かなり、踊ることができなくなった。それを伝えると、叱責されたのはＢさんだった。担任はＢさんがダメな人間だと言い、繰り返し人格否定をしたという。Ｂさんは、担任からのあいまいな指示でけがが悪化したことや、教師の厳しい口調について母親にメールで報告した。しかしメールは、それでも前向きな「頑張る」という言葉で締めくくられていた。
教師から受けた心的外傷は深く、Ｂさんは今でも医者に通う。Ｂさんはこう話す。「もう2度とバレエを踊る気はない」
ＡさんとＢさんによると、校内ではパワハラが黙認・容認されており、被害を受けたのは日本人に限った話ではない。元クラスメートから聞いた話によると、4年前に12人いた生徒は徐々に減り、来月7月に卒業する見込みがあるのはたったの3人だ。退学した9人は、ハラスメントによる摂食障害や不安障害、またはけがを理由にしているという。
＊プライバシーに配慮し、取材対象者の名前は匿名で記載しています
編集：大野瑠衣子
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