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英金融大手HSBC銀行のスイス・プライベートバンキング部門が、違法な武器商人などから預かった数百万フラン規模の資産を運用し、また超富裕層に脱税を指南したことなどを示す同行の機密文書が流出した事件で、スイスのメディアは国の監督能力に大きく疑問を投げかけている。
HSBCのスイス・プライベートバンキング部門の顧客データを分析した国際調査報道ジャーナリスト連合（ICIJ）他のサイトへによると、顧客には脱税以外にも、麻薬売買やテロリストへの資金援助を行っていた人物が含まれる。政治家、有名歌手、有名スポーツ選手、ハリウッド俳優、王族、企業役員などもいるとされる。
HSBCでIT担当だったエルベ・ファルチアニ氏は２００７年に同行から顧客データを含んだファイルを盗み、仏税務当局に提出。ICIJは仏紙ル・モンドを通してそのファイルを入手し、８日にネット上でその内容を伝えた。英BBCなどもこの件を報じ、事件が世界中に広まることになった。
国の責任か
スイス・ベルン州の日刊紙ブントは、「盗んだ資料を評価するのは危険だ」と指摘する。顧客データは０７年のものと古く、顧客が皆、脱税をしていたと結論付けるのは早急だとした。
だが、違法に掘削されたダイアモンドの取り引きや、武器や麻薬売買、テロリストへの資金援助に関わる人たちからHSBCが巨額の資金を預かっていたとされる点に対し、同紙は驚きを隠せないでいる。スイスでは、資金洗浄やテロリズムへの資金援助を取り締まる法律（資金洗浄撲滅法）が１９９８年に施行され、金融機関にはそうした疑惑のある資金を当局に報告する義務を負っているからだ。だが「（国は）HSBCの監視は全くできていなかった」（ブント紙）。
世界的な問題
チューリヒ州の日刊紙ターゲス・アンツァイガーも同様に、「スイス当局は本当に効率的に資金洗浄撲滅法を運用しているのか、また銀行も真剣に規定を守ろうとしているのか」と疑問を投げかける。
西スイスの経済紙ビランは、「（HSBCは）スイスで独裁者、テロリスト、武器売買人の口座を管理していた疑惑がある」と語る。同紙はまた、HSBCが近年、麻薬売買で得た資金の洗浄に関わったことで米国から約２０億ドル（約２４００億円）の制裁金を課されたことにも触れている。
同紙はさらに、「スイスの検察は（今回の事件で流出した）顧客データを把握していたが、捜査に乗り出す必要はないと判断した」と書く。スイスでは資金洗浄の有罪判決は他国に比べ「馬鹿らしく少なく」、０９年の国連報告によれば世界では１兆６千億ドル規模の資金が洗浄され、そのほとんどが世界最大の金融地で行われている。「資金洗浄問題は拡大しつつあり、脱税問題同様、世界的な問題だ。調査報道を行うジャーナリズムがすることは山ほどある」
過去と決着？
楽観的なのはチューリヒ州の日刊紙NZZだ。HSBCは０７年にデータが盗まれた後、様々な対策を取ってきたとする。「HSBCはITインフラに１億フラン（約１３０億円）以上を投入し、顧客基盤を７割減らした。つまり、問題の顧客と手を切ったということだ」。そしてこう締めくくる。「HSBCは（こうした対策のおかげで）不名誉な過去に別れを告げたのだ」
「この事件について、司法はどう出るつもりだろうか」と疑問を投げかけるのは、西スイスの日刊紙ラ・リベルテ。検察は０８年に、データの窃盗容疑でファルチアニ氏の捜査を行ったことがあるが、「（結局は）何もしないだろう」と同紙はみる。
スイス連邦検察は今のところ、今回の事件に関しては違法性を裏付けるような具体的な根拠がなければ、捜査に乗り出さないとしている。
（独語からの翻訳・編集 鹿島田芙美）, swissinfo.ch