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大阪市ヘイト・スピーチ審議会答申を読む（３）
１ 朝日新聞社説
３月１日の朝日新聞社説が「ヘイト・スピーチ――包囲網を狭めよう」で、大阪市審議会答申を取り上げている。
まず「法規制がないなか、自治体が対策に乗り出す意義は大きい。効果に注目したい」と大阪市の姿勢を高く評価し、次に「条例化にあたって、指摘しておきたいことがある」として、表現の自由と思想・信条の自由を対置し、ヘイト集会の公共施設利用問題について「実効性を高めたいという思いはわかるが、公共施設は開かれた表現の場だ。過度な制約にならないよう、慎重に検討していくべきだろう」と注文を付ける。後段は立法や国による実態調査の必要性など、大阪市よりも国に対する注文でまとめている。
第１の点は、大阪市が初めて条例作りに動いたことを適切に評価している。その通りである。反省すべきは、例えば２００９年の京都朝鮮学校事件から５年もたって、ようやく一自治体が条例づくりと言い出したにとどまることだ。これまで政府もマスコミも憲法学者も何をやってきたのか、という問題である。
第２に、例によって「ヘイト・スピーチの規制か、表現の自由か」というナンセンスな二者択一を前提に、表現の自由を優位に置く発想である。これへの批判は随分やってきたのでここでは省略。公共施設利用問題につては後述する。
第３に、「議論を加速させるため、政府はまず被害の実態調査をしてはどうか」として、朝日新聞が政府による実態調査をようやく提唱したのは評価できる。遅すぎるが。人種差別撤廃委員会では、２００１年、２０１０年、２０１４年に日本政府に対して実態調査を呼びかける発言が繰り返された。日本政府は即座に断固として「調査しない」と答えていた。私たちは何度も日本政府を批判してきた。
２ 「ヘイト・スピーチに対してとるべき措置の内容」について
２－１ 「ヘイト・スピーチに対してとるべき措置の内容」の構成
「ヘイト・スピーチに対してとるべき措置の内容」の構成は次の通りである。
Ⅱ ヘイト・スピーチに対してとるべき措置の内容
１ 国の実施する措置との関係
２ 大阪市独自の措置
(1) 認識等の公表
(2) 訴訟費用等の支援
(3) その他の支援
(4) 本市施設等の利用制限について
３ 措置の対象
「国の実施する措置との関係」を整理したうえで、「大阪市独自の措置」について①「認識等の公表」、②「訴訟費用等の支援」、③「その他の支援」、④「本市施設等の利用制限について」を掲げている。検討部会報告で最初に置かれた「本市施設等の利用制限」が「本市施設等の利用制限について」として、「その他の支援」よりも後に置かれている。「その他」よりも後なので気になったが、「支援」を先にまとめて、それ以外の「本市施設等の利用制限」を後にしたのであろう。「本市施設等の利用制限について」の内容は、先にアジア・太平洋人権情報センターが指摘していたように、検討部会報告よりも一歩踏み込んだ内容となっている。
２－２ 「国の実施する措置との関係」について
答申は「地方自治体である大阪市としては、国の人権侵害救済制度の補完的な役割を果たすことを基本とするのが適当である」とする。「人権侵害一般に関しては、国において、法務省の人権擁護機関による人権侵犯事件調査処理の制度が設けられており、人権侵害救済手続の枠組みが確立されている」からであるという。
国の制度が存在するのだから、自治体は補完的な役割を果たすと言うのはいちおう理解できる。ただし、疑問がないわけではない。
第１に、住民の生命、暮らし、安全、人権に対して責任を有するのは、国である以上に、住民生活の現場である地方自治体ではないだろうか。国は刑法、民法をはじめとする基本法制を制定し、司法制度を用意し、その上で人権擁護機関を設置している。しかし、生活に密接な領域で発生する事態について常に国が責任を有するという訳にはいかない。住民生活に密着した地方自治体こそ住民の暮らしと安全を守るべき第一の公的機関である。財政的にも、人的資源という点でも、地方自治体に責任を押し付けられては困る点もあるであろうが、最初から「補完的な役割」と言い切るのは適切とはいいがたい。
第２に、「大阪市人権尊重の社会づくり条例」前文は、「大阪市は、『国際人権都市大阪』の実現を目指し、『大阪市人権行政基本方針』に基づき、市政のあらゆる分野において人権尊重の視点から施策を推進していかなければならない」としている。そして、条例第２条は「本市は、すべての人の人権が尊重される社会を実現するため、国及び大阪府との連携を図りながら、市政のあらゆる分野において必要な施策を積極的に推進するものとする」としている。「国際人権都市大阪」をめざし、「市政のあらゆる分野において人権尊重の視点から施策を推進していかなければならない」ので「国及び大阪府との連携を図りながら、市政のあらゆる分野において必要な施策を積極的に推進するものとする」ことになっている。にもかかわらず、重大な人権侵害であるヘイト・スピーチ対策になったとたんに「地方自治体である大阪市としては、国の人権侵害救済制度の補完的な役割を果たすことを基本とするのが適当である」と言うのでは、条例の精神にそぐわないのではないだろうか。「国との連携を図る」のは当然だが、それが「補完的な役割」に限られる理由はないはずだ。
第３に、それでは答申は「国の人権侵害救済制度」についてどのように見ているのだろうか。答申は、「国が講じている措置」として、援助〔関係機関への紹介、法律上の助言等〕、調整〔当事者間の関係調整〕、説示･勧告〔改善勧告〕、要請〔実効的対応ができる者に対し、必要な措置を要請〕、通告〔関係機関に情報提供し、措置の発動を要請〕、告発〔犯罪に該当すると考えられる場合には刑事訴訟法による告発〕、啓発〔人権尊重に対する理解を深めるための働きかけ〕列挙している。そして、「国の人権侵犯事件調査処理手続に強制力を伴う措置がない中で、大阪市が措置を講じるにあたり関係者に対して協力義務や罰則等を課すことを条例で定めることは困難である」と述べている。なるほど国においても強制力を伴うのは司法作用に限られるのが通例である。しかし、人種差別撤廃条約第２条は、人種差別を止めさせることを義務付けている。強制力を伴うか否かは別として、実質的に人種差別を止めさせる政策や措置が講じられているだろうか。「国の人権侵害救済制度」として掲げられた措置は、刑事告発を除けば、実質的に人種差別を止めさせる措置として不十分ではないだろうか。だからこそヘイト・スピーチさえ制止できずにいるのではないだろか。
第４に、以上のことは、国が人種差別禁止法の制定を明白に拒否してきたこととも関連する。２００１年、２０１０年、２０１４年の人種差別撤廃委員会における日本政府報告書審査の結果、委員会は日本政府に対して、人種差別撤廃条約第２条に基づいた人種差別禁止法の制定を勧告した。ところが、日本政府は委員会の席上でも、委員会終了後の国内においても、「人種差別禁止法の制定は必要ない」と明言し、法制定を拒否し続けている。これは国の方針であるから、大阪市とは関係ないのではない。人種差別撤廃条約第２条に基づいて「人種差別の行為又は慣行に従事しないこと並びに国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保すること」が求められ、「すべての適当な方法により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる」ことが求められている。「大阪市人権尊重の社会づくり条例」によれば「市政のあらゆる分野において人権尊重の視点から施策を推進していかなければならない」ので「国及び大阪府との連携を図りながら、市政のあらゆる分野において必要な施策を積極的に推進するものとする」のであるから、大阪市は、重大人権侵害であるヘイト・スピーチを抑止するための措置について、国と連携を図る必要がある。ヘイト・スピーチ以前に、人種差別についてもやるべきことはたくさんある。例えば次のことが考えられる。
①人種差別撤廃条約に基づいて人種差別禁止法を制定するべしとの勧告が人種差別撤廃委員会から出ていることに関連して、国として人種差別禁止法を制定しないことについて、大阪市の意見を述べ、国に人種差別禁止法の制定を要請することができる。
②国が人種差別禁止法を制定しない現状で、大阪市として独自に人種差別撤廃条約第２条の内容を盛り込んだ条例を制定したとして、それが日本の国内法令に違反することがないか否かを国に問い合わせることもできる。
③人種差別撤廃条約第７条の「人種差別につながる偏見との闘い」の解釈として、地方自治体がとるべき措置には何があるかについて、国に質問することもできる。