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ジョルジュ・ド・メストラルと言われてもほとんどの人はピンと来ないかもしれないが、スイス人の彼が発明した面ファスナー ( hook-and-loop festener ) は日本でも商品名「マジックテープ」として広く知られている。客席のヘッドレストカバー留めとして、また、スポーツ用品やカジュアルバックなどによく使われているワンタッチのファスナーだ。
ド・メストラルがジュネーブ湖畔にあるブドウ畑が広がるサン・サフォラン・スール・モルジュ城で生まれて今年でちょうど100年になる。ド・メストラルは子どもの頃から新しいものを発明するのが好きで、12歳ですでにモデル飛行機で特許を得たほどだった。その後、連邦工科大学ローザンヌ校で電気エンジニアリングを学んだ。
1941年、ド・メストラルの大発見の発端となったのは犬との散歩だった。散歩中に野生ゴボウの種が犬や自分のジャケットやソックスなどにたくさんくっついてきた。それを顕微鏡で観察すると、野生ゴボウの種を覆うとげは鉤 ( かぎ ) の形をしていた。
ワンタッチ
野生ゴボウの種の表面の構造を使って2枚の布を密着させると、ワンタッチで取り外しができるとド・メストラルは考えた。彼の発案は当初あまり注目されず、あからさまに笑い飛ばした人もいるという。
しかし、フランスのリヨンにある織物工場とバーゼルの織機メーカーの協力を得、最終的には面ファスナーを完成することができた。試行錯誤の中で、フック面になる、先が曲がったナイロンの糸をどのような位置に配置すれば付着力が強化するかということも分かり、機能的な問題は徐々に解決していった。しかし、面テープを織るには非常に時間がかかり、商品化されたのは1955年になってからだった。
ド・ミストラルが自分の発明のために創立した会社と特許は、その後現在のベロクロ・インターナショナルに売却された。ベロクロはフランス語のベルベットを意味するベルールと、鉤を意味するクロシェを合わせた造語である。
音が出ない新製品の開発へ
日本ではマジックテープ、フリーマジックとして知られているが、これは ( 株 ) クラレの登録商標だ。欧米では「ベルクロ」で知れ渡っている。ベルクロ・インターナショナルは、こう呼ばれることをあまり歓迎しない。「ベルクロは登録商標です。模造品もありますから、ホック・アンド・ループとか、タッチ・ファスナーと呼ぶのが適切」と言う。
面ファスナーをどのように呼ぶかはさておいて、2枚の布をワンタッチで密着できることから、オフィス用品、スポーツ、レジャー用品、バック、宇宙船など多方面で活躍している。ボタンなどと違って、子どもや障害者にとって使いやすい。また、はずすときに音がすることから、バックの開閉用にするとすりの防止にもなる。
一方で、布の繊維が付着しやすく、何度も付けたり外したりすると鉤の部分が疲弊し、付着力が低下するし、音が出るのも時と場合によっては困ることがある。例えば軍服のポケットの開閉でビリッと音が出ると戦場では「命にかかわる」問題だ。現在は、音の出ない面ファスナーを開発中だという。
ド・ミストラルは面ファスナーで成功した後、室温計器やアスパラガスの皮むき器で特許を取得した。また、他の発明家たちへの援助にも積極的で、若い発明家たちが特許を取得するため、協力を惜しまなかったという。
swissinfo、トマス・ステフェンス、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳
キーワード
ジョルジュ・ド・ミストラル
1907年6月19日ニヨン生まれ。
連邦工科大学ローザンヌ校卒業
1955年、ベルクロで特許取得
1990年2月8日、ニヨンで死去