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マッターホルンを正面に仰ぐゴルナー氷河の上部、標高2883メートルの地点に未来派の建築ともいえる山小屋「モンテローザ」が誕生した。
モンテローザを訪れる登山客の宿泊施設だが、消費エネルギーの9割が太陽光エネルギーでまかなわれるという、連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ/EPFZ ) 建築学科のエネルギー研究の成果を結集した建築物でもある。
側面をそぎ落とされたオレンジ
上部をそぎ取られた多角形の山小屋は、外側をグレーのアルミで覆われている。しかし5階建の螺旋状構造の内部は全て木造。これは「スイスで最も複雑な木造建築だ」と連邦工科大学チューリヒ校のチーフ建築家、アンドレア・デプラゼス氏は話す。
山小屋は結果的に「素晴らしい子どもの誕生」となったが、当初のデザインコンセプトはさまざまな要素が絡み合う複雑なものだった。デプラゼス氏にとって、形は岩に囲まれた周囲の環境にマッチすべきだが、岩に完全に似せることは避けなくてはならなかった。また、エネルギー面で効率の良いものが要求された。
そこで考案されたのが、エネルギー効率の最も良い球形から幾つかの側面をそぎ取ったような形だった。
「いわばオレンジの幾つかの部分をナイフで切り取ったような形を選んだ。切り取られた側面には、ソーラーパネルなどが取り付けられた」
とデプラゼス氏は説明する。
太陽と水
「基本のアイデアはここにある資源、太陽と水を最大限に活用することだった」
とエコロジー面での開発に参加した「ラウバー・イヴィサ ( Lauber IWISA ) 」のチーフ研究員、マティアス・ズルツァー氏は説明する。
120人収容可能なモンテローザでは、消費エネルギーの9割 ( 16 キロワット) が太陽光エネルギーでまかなわれる。ベルトラン・ピカール氏のソーラー飛行機に使われているのと同じソーラーパネルが建物の南の側面に設置されている。
さらに暖房では、一連の窓から差し込む光によって暖められた空気が螺旋構造の内部を流動して建物全体を暖め、宿泊者の体温も、特に人数が多い場合は熱源として考えられている。
水に関しては、夏に溶けるゴルナール氷河からの水が小屋から40メートル上方にある貯水場に蓄えられる。
「溶けた氷河の水を冬の間に凍らせずにストックし、一年中使うことがプロジェクトの大きな計画の一つだった。結局、岩の内部の永久凍土層の中に貯水した」
とシュルツァー 氏は言う。
排水は、バクテリアを使ったマイクロフィルターで浄化され、トイレ、シャワー用水のみならず台所でも再利用される。こうして、登山で汗をかいた登山家たちは5フラン ( 約490円 ) 払えば、ソーラーエネルギーで温められた氷河の水のシャワーを浴びることができる。
コンピューターによる統御システム
以上のようなさまざまなエネルギー源からの熱効率を最高に保つために、連邦工科大学チューリヒ校はコンピューターによる統御システムを考案した。
天気予報、予定の宿泊者数、エネルギーレベルに関する情報がコンピューターに入力されると、それらは各エネルギーシステムが効率良く働くよう、数学的に設定されたモデルに照合され、結果が導き出される。
「明日は天気が良いと予想され、120人の宿泊客が来る。果たして十分なエネルギーがあるだろうか？その翌日は天候が崩れるため、小屋はほぼ空の状態になる。どうすればよいか」
といった状況に合わせ、コンピューターが自動的に判断するとデプラゼス氏は言う。
結局、需要に従い、コンピューターがソーラーパネル、空気調整システムなどの始動や停止を制御する。
「モンテローザがユニークなのは、さまざまなエネルギーシステムが組み合わされ、最大の効率を発揮するよう統御され、ダイナミックにそれらが機能することだ」
とデプラゼス氏は結論する。「必要なものは消費し、必要でないものはストックする」というシステムだ。
今年9月に公開セレモニーが行われたが、実際に使用されるのは来年の3月からだというモンテローザは、連邦工科大学チューリヒ校の学生にとっては、エネルギー資源とその効率的使用を遠隔操作で行う、一つの実験の場でもある。
「モンテローザは、生命体を含む特殊な密閉空間のようなもの。ある側面はこのプロジェクトにのみ固有だが、電気、水や配管などは、ほかの違う土地でのプロジェクトにも応用できる。従って、ここで活用されたノウ・ハウが、山だけではなく谷合の建築にも広く活用されることを望む」
とデプラゼス氏は話す。
サイモン・ブラッドレー、ツェルマットにて、swissinfo.ch、
( 英語からの翻訳、里信邦子 )
山小屋「モンテローザ」
連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ/EPFZ ) の150周年記念事業として建築学科が提案したプロジェクトをアルプス地域の開発と登山活動を援助する「スイスアルパイン・クラブ ( SAC )」が受け入れ、2003年に建設がスタートした。
総工費650万フラン ( 約5億8700万円 ) のうち、215万フラン ( 約1億9400万円 )をスイスアルパイン・クラブが、残りを連邦工科大学チューリヒ校とほかのスポンサーが負担した。
建設工事そのものも一つのチャレンジだった。ツェルマットまで鉄道で運ばれた、前もって製造されている建物部品と建設作業員35人が、ヘリコプターの3000回の往復でゴルナー氷河上まで輸送された。
基礎工事終了後、2008年8月から1年間かけて組み立てられた内部の木造構造は、3次元のはめ込みパズルのような例外的な作業で、「わたしが経験した最も狂気的な建設の一つだった」とある関係者は話している。
同山小屋は標高2883メートルのゴルナー氷河のすぐ上に位置する。ベッドルームは19室でベッド数は120床。一般公開は来年の3月。1泊30フラン ( 約2700円 ) 。