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スイスは欧州連合に正式に加盟すべきだという声が続いているが、スイスはそれに反撃しなくてはならないと主張するレポートをスイスの企業連盟が発表した。
しかし現在スイスの銀行界は、欧州連合 ( EU ) との関係の進展を探ろうとしている。これはますます保護主義へ近づくEUの規制によって、スイスの金融業がユーロ圏から締め出されるのを避けるためだ。
正式な加盟国に
5月18日にチューリヒで発表されたスイス企業連盟「エコノミースイス (economiesuisse ) 」の報告書は、スイスはEUの正式な加盟国になる可能性を排除するか、ユーロ圏から完全に脱退するべきだと主張する。
1992年に欧州経済領域 ( EEA ) への加盟が国民投票で否決されて以来、スイスはEUと一連の協定を結んできた。それらの二者間協定は、両者間における労働者の自由な往来と、シェンゲン域内での入国審査の廃止を含む。
2001年にEU加盟の是非を問う国民投票が再び行われたが、これはスイスとEUの二者間協定に対する支持の強化に終わった。しかしその後、ユーロ圏が拡大したこと、そしてスイスの金融界と税制に対する批判が起きたことによって、スイスはEUの正式な加盟国になるべきだというプレッシャーが高まった。
失われた影響
在スイスEU大使のミヒャエル・ライタラー氏は、最近の演説でスイスの若者の将来は「ヨーロッパにある」と語った。イギリスの国会議員で「イギリス・スイス超党派議員連盟 ( The All Party British-Swiss Parliamentary Group) 」のメンバー、デニス・マクシェーン氏は今年、EUの加盟国にならなければスイスは影響力を失うことになると警告した。
しかし、ユーロの急落やEU加盟国の債務問題などが発生した後、それらの債務国を支えるためにEUは救済融資を行ったという事実を知っても、スイス国民の決意はほとんど揺るがなかった。さらに過去数ヶ月の間、孤立したスイス経済はユーロ圏のどの国よりもはるかに良い成績を納めた。
エコノミースイスは、スイスとヨーロッパで起きた最近の問題の存在にかかわらず、スイス経済はEUとの二者間関係の継続によって良好な状態を維持していくことができると確信している。またスイスがEUに加盟した場合、EUの規制や加盟に伴うコストの増加に加え、政治・経済的な自律性の喪失を被ることになると警告する。
また、ヨーロッパ諸国の企業をスイス国内に誘致するために、かなりの数の州が法人税を引き下げている。EUはこれに対し、競合できない政策だと明確に批判している。従ってスイスがEUに正式に加盟した場合、これも危うくなる可能性がある。
さらにエコノミースイスのレポートは、スイスの産業構造や生産性の弱体化を指摘し、スイスはEUとの関係を断ち切り、完全に一人立ちするべきだと主張する。
「いいとこ取り」
エコノミースイスの代表パスカル・ジェンティネッタ 氏は、スイスがEUの「いいとこ取り」だけをしているという批判を否定する。
「スイスとEUの関係は両者の共通の利害に基づくものです。貿易収支はEUにとって有利な状況になっています ( 2008年のEUの対スイス貿易収支は176億ユーロ/ 約 2兆円の黒字 ) 」
とジェンティネッタ氏は指摘し、さらに
「特定の分野ではヨーロッパのルールに従い、金融や財政政策のような経済分野での決定に関しては自国の自律性を維持する方が、スイスにとっては理にかなったことです」
と分析する。
エコノミースイスは、エネルギー、農業、サービスの貿易、化学・製薬業界の規制などの分野における二者間の関係を強化するよう繰り返し呼びかけてきた。しかし、スイスはEUと金融サービスの貿易について調整を行うという困難な問題に取り組む用意ができているように見える。この問題は、銀行の守秘義務や税金関連の情報交換についての妥協が困難と考えられていたため、以前は立ち入り禁止区域と見なされていた。
依然として立ちはだかる障害
しかし、現在EUは非加盟国を競争から締め出すための新法、特にスイスが興味を持っているヨーロッパでのオルタナティブ投資 ( 訳者注；従来からある株式や債券などの運用対象に代替して金融派生商品、不動産、ベンチャーキャピタルなどに投資する運用手法 ) の分野における法律の制定を考えている。
「スイス経済は、金融サービスの新市場の開拓に興味を持っています」
とスイス銀行家協会の副会長クロード・アラン・マルゲリッシュ氏は言った。
「スイスの金融セクターをヨーロッパに統合することによって、ヨーロッパの競争力が強化され、アメリカやアジアの大規模でダイナミックな金融セクターと並ぶようになるでしょう」
とマルゲリッシュ氏は言い添えた。
金融サービス分野におけるEUの協力を探るという新たな目標はあるものの、交渉の難しい問題が待ち受けているとジェンティネッタ氏は明言する。
「 ( 脱税についての捜査に関する ) 情報の自動的な交換には応じないこと、そして規制については自国の自律性を保持するというこちらの要望を尊重してもらうことが重要です。絶対にとまでは言えませんが、共通の利害を見つけることができさえすればうまくいくでしょう」
マシュー・アレン 、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、笠原浩美 )
スイスと欧州連合 ( EU )
スイスはEUの加盟国ではないが、EUとの間で20以上の協定に調印している。EU加盟への「道半ば」ともいえる欧州経済領域 ( EEA ) への加盟は、1992年の国民投票で否決された。そしてその9年後にもEUへの正式加盟を求めたイニシアチブが否決された。
スイスはブリュッセルのEU事務局へ加盟の申請を提出してあるが、棚上げになっている。
スイスとEU加盟国との間の人の自由な往来や貿易と交通についての諸問題を協議した最初のスイス・EU二者間協定は2002年に施行された。
2番目の協定、シェンゲン・ダブリン協定は2004年に調印され、翌年民投票で可決された。
また2005年にEUの新加盟国10カ国への労働協定の適用拡大、そして2009年にブルガリアとルーマニアへの適用拡大も国民投票で承認された。
しかし、スイスとEUは常に順調な関係を維持してきたわけではない。他国の親会社や地域本部を誘致するために、スイス政府がかなりの数の州に許可を与えている低率の法人税に対してEUは批判をしている。