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スイス連邦鉄道のトップが「電車の高速化」を口にすると、それは近い将来のことではない。
だが、「スイス・メトロ」となると話は別だ。スイスで日の目を見なかったこの超高速地下鉄は、15年後に韓国で実現される予定だ。今年3月に「鉄道2030計画」が発表されて以来さまざまな反響が起こっている。
ベルン・チューリヒ間の速度アップ
「120億 ( 約9500億円 ) から210億フラン( 約1兆6600億円 ) もかける『鉄道2030計画』なのだから、都市間の電車の高速化も政府は考慮すべきだ」
とスイス連邦鉄道 ( SBB/CFF ) の会長、ウルリッヒ・ギギ氏が日曜新聞「NZZ・アム・ゾンターク ( NZZ am Sonntag ) 」で5月9日述べた。
その際、記者がどの区間の速度アップなのかと問いただしたところ、ギギ氏は持っていた紙にベルン・チューリヒ間を素早くデッサンした。ここは地形的に最もスピードを出しやすい区間。すでに2004年以来、時速200キロでの運行が実施されているが、それが時速300キロにアップする可能性もあり、さらにもしTGVが走るとなると、現在56分間かかっているところが30分間に短縮されるという。
しかし、こういう計画を会長が口にすると、最も乗客数が多い区間の一つで第3番目の線路の拡張を訴えているローザンヌ・ジュネーブ間は、また無視されたのかと議員たちからも文句が出ることは必然だろう。さらにベルン・ローザンヌ間も今でも1時間6分かかっている。
一方、スイスの東部ザンクトガレン州の交通局長も黙ってはいない。現在59分間かかるザンクトガレン・チューリヒ間をさらに短縮する要求を何年間も出し続けているからだ。
ほかは2050年以降に速度アップ
もともと「鉄道2000計画」は、大都市に1時間ごと、もしくは30分間ごとの定時に列車が到着するようにし、乗換時間を節約し連絡をスムーズにする計画だった。しかし、これは完全には成功していない。
この間スイス連邦鉄道は新しい二つのトンネル計画に着手し、一方今年3月末に「鉄道2030計画」を立ち上げた。これはダイヤ数、車両の座席数、貨物の輸送量の増加を目指したものだ。
だが、こうした計画に高速化の案件は書き込まれていない。ギギ氏はいったいどこからこのアイデアを持ち出してきたのだろうか。いずれにせよ、モリッツ・ロイエンベルガー環境・運輸相はギギ氏の発言を緩和するかのように
「ギギ氏がスピードアップに関して、ベルン、チューリヒ間だけを紙に書き込んだのは、その紙が小さ過ぎたからだ。もし大きければ、ジュネーブやザンクトガレンの路線も書き込んだに違いない」
とスイスフラン氏語圏のラジオで語った。ただし、ジュネーブとザンクトガレンの両路線の高速化は2050年以降になるという。
時速500キロも可能
ところで新しい電車の開発においてスイスは完全に立ち遅れたのだろうか。逆に、あまりに進み過ぎていたのではないだろうか。フランスがTGV計画を着々と進めていた35年前、スイス連邦鉄道の技師ロドルフ・ニート氏は未来派的な地下鉄を構想していた。磁気平衡を基本にし、正常気圧のない地下トンネルを超スピードで走るこの地下鉄は、ほぼ12分間でスイスの主要都市間を繋ぐ計画だった。
「しかし、スイス連邦鉄道はこの計画に消極的で反発さえした。当時の『鉄道2000計画』やアルプストンネル計画を邪魔するものだという考えが根底にあったからだ」
と同計画の生みの親の1人で、連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL ) の名誉教授マルセル・ジュフェール氏はこう当時を振り返る。
「スイスメトロ社 ( Swissmetro SA ) 」は創設された翌年の1993年、「2010年には超高速地下鉄が開通する」と発表していた。だが、政府からの援助はあったものの資金は集まらずついに倒産。現在すべての技術的データは連邦工科大学ローザンヌ校の資料室に保管されている。
ところが、この時代を先取りしすぎた地下鉄計画に、再び光が当たり始めた。韓国が、ソウル・プサン間400キロメートルを走らせる地下鉄に、スイスの技術を選んだからだ。入札では、日本やドイツからの競合もあったが、結局スイスが残った。
スイス・メトロは世界で唯一、真空トンネルを時速500キロをも可能な速さで、まるで翼のない飛行機のように走る。さらにこの未来のスイス・韓国地下鉄では、空気抵抗を減少できるため、エネルギー消費もかなり少なくて済む。
「韓国がこの革新的技術を世界で初めて使ってくれることになった。スイスにとって、われわれの技術はあまりに先を行き過ぎていたようだ」
とニート氏は語り、韓国での計画に胸を躍らせている。
マルク・アンドレ・ミゼレ 、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、里信邦子 )
スイスの鉄道状況
スイスの鉄道の路線総距離は5000km。うち3000kmをスイス連邦鉄道 ( SBB/CFF ) が、残り2000kmを私鉄が管轄する。この二つを合わせ年間約4億人の乗客と7000万トンの貨物を輸送ししている。
3分の2が山に覆われている地形のため、スイスの鉄道にはカーブが多く、また鉄橋、トンネルなども多い。そのため、スピードを上げるのが難しく、2004年以降、ベルン・チューリヒ間の45kmだけが時速200kmで運行している。
1882年に第1ゴッタルド・トンネル、1906年にシンプロン・トンネルを開通させた後、スイスは20世紀終わりまでに２本のトンネルを完成させる計画を立てた。こうして2007年レッチュベルク・トンネルが開通し、2017年には第2ゴッタルド・トンネルが完成の予定。
1987年の国民投票で承認された「鉄道2000計画」は、現在完全には終了していない。しかし、列車ダイヤの充実を始め、2階建て電車の導入、主要都市間の走行時間の短縮などを実行した。「鉄道2030計画」は、ダイヤ数、車両の座席数、貨物の輸送量の増加を目指している。