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スイスとドイツの電話ボックスが肩を並べる。郵便局のドアには郵便番号が2つ表示されている。スイスに囲まれたドイツの飛び地、ビュジンゲン ( Büsingen ) は、あらゆることが特別だ。このコンテンツは 2008/01/25 15:26
ライン川のほとり、ボーデン湖に近い絵になりそうなこの町は、ともかく特別なのだ。スイスに囲まれているが、政治的にはドイツに属す。一方、経済的にはスイスの影響を大きく受けている。
17年間、町長を務めるグンナー・ラング氏はここで生まれた。この町とその特殊性を誇りに思っているという。人口1450人で、その多くがスイスで働く町の町長に、いったいどんな仕事があるのだろうか。
2国の狭間で2重の負担
町の繁栄を象徴するようなモダンなガラス張りの町役場で、ラング町長は微笑んだ。
「この町の町長の良いことは、すべてに責任があるということです。大家族と同じようなものですね」
町役場に行けば、不動産の登録、婚姻届け、出生届けなどすべての町のサービスを受けることができる。
ラング氏ができないことといえば、住民の流出を阻止することだ。ラング氏は八方手を尽くしているが、「大きな問題」がこれを阻む。ドイツの比較的高い所得税のため、所得税の安い周りのスイスの自治体に対して太刀打ちできない。近くのスイスの都市、シャフハウゼン ( Schaffhausen ) で仕事をする人には、スイスの健康保険の加入が義務付けられている。スイスの健康保険の掛け金はドイツより高い。
「残念なことに、スイスの健康保険会社は欧州連合 ( EU ) の住民に対しては、高い掛け金を要求します。よって、多くの住民は二重に負担を強いられます。わたしが町長になってから、税金を軽減しようと努力しましたが、決定権はベルリンにあります。このような小さい町の町長の言うことなど、誰が聞いてくれるでしょうか」
利点といえば
不利な点もあるが、利点もある。退職すると、税金は多くの場合スイスより安くなる。それがスイスの退職者にとっても魅力的になる。農業に携わるアンドレアス・フォン・オヴさんが挙げる欠点は、簿記がスイスフランとユーロの二重になることだ。
「わたしはドイツに納税していますが、支出はすべてスイスフランになります。また、ドイツにユーロ建ての口座を持っていて、強制保険、税、電話料金などの支払いに使います」
愛らしく改築された町のホテル「アルテ・ラインミューレ」のマネージャー、アンドレアス･フィッシャーさんはドイツとスイスに納税している。従業員の社会保障も2つある。
「ここに来るお客様には、EU内のドイツなのにスイスフランで宿泊料を払うことに驚かれる方もいらっしゃいます」
ワイン醸造
町を散歩すると、この土地の特色をあちらこちらに見出すことができる。例えばワイン畑。最近まで細々と栽培されていた。フォン･オヴさんは無償でワイン畑の救済に取り組み、1990年代にワイン醸造業を起こすまでになった。しかしそれには、困難を伴った。
「ドイツ当局に申請したところ、関係無いと言われました。そこで、スイス当局から許可をもらいました。1993年からスイスに登録されたワイン畑です。おいしくないと言われたことはありません。本当にいいワインです。自信を持っています」
とオヴさん。
1997年から収穫し、いまや年間7000本のワインを醸造している。リースリング・シルヴァーナー 種 ( ミューラー・トゥルガウ ) とブルーブルグント種を合わせたワインは土地の売店やレストランで買うことができる。
レストランのメニューもスイスとドイツの両方の客に応じている。
「ドイツのお客様とスイスのお客様では食べるものも違います。日曜日の食事では、ドイツ人ならステーキにスペツリ ( 訳注 ： パスタの一種 ) 。スイス人なら魚料理、フランス料理を好みます。両方のお客様に満足してもらえるメニューでなければなりません。しかし、値段は南ドイツのほかのレストランより高くなってしまいます。材料を物価の高いスイスで買うためです」
とフォン･オヴさんは説明する。
新聞も2種類ある。
「スイスとドイツの新聞がなければ生活できません。2つの地方紙がありますが、2紙ともまったく違う新聞です。1つはシャフハウザー・ナハリヒト紙、もう1つはジュートクリエール紙で、ボーデン湖畔の住民向けです。両紙ともビュジンゲンのニュースを取り上げるので、2紙とも取っています」
特別に特別
ビュジンゲンは長年にわたり、特別な存在だ。付加価値税、タバコ・酒税など間接税をスイス政府に払い続けていることから、年間175万フラン ( 約1億6800万円 ) の還付を受けている。
「小さな町にとってこれは大金です。とはいえ、別のドイツの自治体が負担しない部分での出費もあります」
スイスの学校運営の助成金70万フラン ( 約6700万円 ) 、スイスのポストバスの運行に10万フラン ( 960万円 ) を負担するといった具合だ。
これならスイスに合併してしまったほうが楽ではないだろうか。ラング町長は、規則が明確であれば利点もあるだろうと認める。
「スイスとドイツ、両国の憲法を変えないと、われわれに利点はもたらされないでしょう。ですから非現実的です。夢のようなことです。政治で大きな夢を見ることはできません」
swissinfo、ロバート・ブルックス、ビュジンゲンにて 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳
ビュジンゲン ( Büsingen )
面積7.62平方キロメートル ( モナコ公国の4倍 ) 。
国境線1万7141キロメートル。
123個の国境表示石が置かれスイスとドイツの境界線を示す。
郵便番号はD-78266 ( ドイツ ) とCH-8238 ( スイス ) の2つ。
政治的にはコンスタンツに属すが、独自の車のナンバープレート「 BÜS 」を持つ。
ドイツからだと、スイスに一旦入国しないと行けない。スイスからは入国検査を受けずに入ることができる。
1967年のドイツとスイスの協定により、通関はスイスに属す。農業分野、食品検査、医薬品検査などはスイスの規定に従う。緊急事態が発生した場合、住民の食糧調達はスイス政府が責任を負う。
ビュジンゲンはオーストリアに属していたこともある。第1次、2次世界大戦中のシャフハウゼン市とドイツとの国境が微妙に移動したことが背景にある。第2次世界大戦後、96%の住民がスイスに属すことを希望した。スイスとドイツの両政府の同地方の国境に対する見解が異なり、現在ドイツの飛び地となっている。
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