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スイス政府はこのほど、シリアに渡航し過激派組織「イスラム国」（IS）の戦闘に加わったとされる二重国籍の若者からスイス国籍を剥奪するための手続きを開始した。だが、国籍剥奪でテロに対抗できるのかという点では、大きな議論を呼んでいる。
過激派組織によるテロの脅威は、西欧諸国にかつてない難題を突きつけている。テロ対策としてこれまでに導入、または検討されている対策の中でも、特に国籍剥奪という措置が注目されている。フランスでは、２０１５年１１月パリで起きた同時多発テロを受け、フランソワ・オランド仏大統領がテロ犯罪者の仏国籍剥奪を可能にする改憲案を提出し、与党・社会党内で意見が分裂した。結果的には、議会で十分な支持が得られず、改憲は断念された。
国籍剥奪数
歴史的に、国籍剥奪は独裁政権や戦時下の特別法などに関連して適用されてきた。１９４０～５２年には、治安上の理由から８６人がスイス国籍を剥奪された。最後の例は、４５年ナチス・ドイツに加担したオプヴァルデン準州出身者からの国籍剥奪。
国籍法が制定された５３年以降、スイス生まれのスイス人から国籍が剥奪された例はない。だが、スイス国籍が不正に取得された場合の剥奪を定める国籍法４１条は適用されてきた。２００６～１５年の間に、二重国籍か否かにかかわらず５６７人が国籍を剥奪されている。
一方、今年７月にISが犯行声明を出した２件の襲撃事件が発生したドイツでは、トマス・デメジエール内相が国籍剥奪案を策定し、１７年秋の国民議会選挙前の可決を目指している。だが、アンゲラ・メルケル首相率いるキリスト教民主同盟は、議会ではまず連立を組む社会民主党の支持を取り付ける必要がある。そのことからも法案の先行きは不確かだ。
オランダのように、今年に入り二重国籍のテロ犯罪者からの国籍剥奪を法に盛り込んだ国もある。
スイスでは、国籍剥奪をめぐっては１年ほど前から連邦議会で討議されており、国外でイスラム過激派や戦闘に加わった二重国籍者から自動的にスイス国籍を剥奪するという右派・国民党の発議が、パリ同時多発テロの３週間後に下院を通過。だが上院は６月、これを否決した。
「極端な」措置
しかし連邦当局は、下院を通過した国籍剥奪案を完全に放棄したわけではないようだ。連邦移民事務局のレア・ヴェルトアイマー報道官は「限定的な形で、イスラム過激派組織に参加しようとする二重国籍者からスイス国籍を剥奪する可能性を検討している。国籍が剥奪されれば、連邦警察局はこのような人物のスイスへの再入国を拒否できるようになり、国内でのテロに直結する危険性を排除することができる」と述べている。
つまりスイスで検討中の措置は、自動的な国籍剥奪ではなくケース・バイ・ケースで適用される措置のようだ。「国籍剥奪は『極端な』措置だ。そのため、入念な審査を経た上で、例外的なケースにしか適用されない」（ヴェルトアイマー報道官）
国籍剥奪措置の法的根拠は、１９５３年に発効した、二重国籍を持つ国民が国の利益や名声を著しく傷つける行為をした場合はスイス国籍を剥奪できるとする国籍法だが、これまでに適用された例はない。連邦移民事務局は、実際には残虐行為や戦争犯罪などの極めて重大な状況において、また個人が国にとって真の脅威となりうる場合に限り国籍剥奪が想定されているという。
残忍な写真に登場
現在、チューリヒ州ヴィンタートゥール在住のクリスチャン・Iという若者から国籍を剥奪する手続きがすでに開始されている。国内メディアによると２０１５年２月にシリアでISに加わったとされ、イタリアとスイスの二重国籍を持つ１９歳のこの男性はイスラム教に改宗し、「アブ・マリク・ダウラ」または「アブ・アル・イタリ」という名で自分の写真を複数インターネットに投稿していた。その中には切断された頭部を手にしたものもある。
だが、この男性に関しては情報が錯綜している。シリア到着後まもなく死亡したという情報もあるが、専門家は、ISによる欧州の治安当局を欺くための工作である可能性が高いとみており、連邦移民事務局は引き続き国籍剥奪手続きを進めている。
法的な落とし穴も多く存在するため、手続きには時間がかかる可能性もある。しかし今回のケースで国籍剥奪に至れば、それが前例となり他の剥奪例も出てくるだろう。今年７月までに戦闘地域への渡航が確認された７７人のうち、１７人が二重国籍者だ。
疑問視される効果
欧州各国と同様にスイスでも、国籍剥奪によるテロの抑止効果とその正当性に関しては賛否両論がある。「ISの旗の下に戦闘に参加し、言いようのない残虐な行為を犯すために渡航を決意するような人物は、事実上すでにスイスという国に属することを放棄している」というのは、右派･自由民主党副党首のフィリップ・ナンテルモ議員だ。
同氏は、国籍剥奪は形式的なものではなく、それ以上の意味があるという。国に対する潜在的な危険人物の入国を防ぐことができるからだ。「それに、スイス国民は忌まわしい行為を犯すものに対して生活保護などを払うつもりなどさらさらない」（ナンテルモ氏）
だが同党の議員全てがナンテルモ氏に同調しているわけではない。アンドレア・カローニ議員は、日刊紙ターゲス・アンツァイガーに対し、テロ対策として国籍を剥奪することの効果を疑問視していると回答した。戦闘目的の渡航者は偽造パスポートを使用することも多く、いずれにせよ自ら国籍を破棄することもあると指摘する。また、二重国籍者からの国籍剥奪は「先に行動を起こした国が、もう一つの国に負担をかけることになる」ので、利己主義的だとも言う。今回のケースでは負担をかけられるのはイタリアだ。
過激化は欧州の問題
一方、国籍剥奪に向けた連邦移民事務局の動きに関しては、この件を担当する閣僚が社会民主党のシモネッタ・ソマルガ氏であることから、左派内に不協和音が生じていることも事実だ。下院・政治制度検討委員会の委員長を務める社会民主党のセスラ・アマレル氏は、スイスインフォに対し、コメントを控えると回答した。
だが同党のセドリック・ヴェルムート下院議員は、国籍剥奪は無駄だと公言する。「宗教やイデオロギーのために死ぬ覚悟のできている人が、国籍を剥奪されるからといって行動を断念するはずがないことは明らかだ。国籍剥奪という措置は、イスラム過激派によるテロとの闘いにおいて、国際協力を余計に複雑にするだけだ」
また、国籍剥奪という措置は、とりわけ移民第二世代に対して間違った政治的メッセージを送りかねないとも指摘する。「第一に、イスラム過激派によるテロは欧州での傾向だ。過激化する人物は欧州で生まれ、育っている。その現実から目を背け、テロは我々の責任ではないというのではなく、反対に、スイスのような自由で民主的で開放された国で育ちながらも何が原因で個人が挫折してしまうのかということに目を向けるべきだ。そして、もし誰かが処罰されるべき行動をとったのならば、スイスの裁判所で裁かれるべきだ」
グアテマラのスペリセン元警察庁長官、スイス国籍剥奪か？
日刊紙ブントとターゲス・アンツァイガーが先ごろ明らかにしたところによると、連邦移民事務局は、スイスの二重国籍を持つグアテマラのエルウィン・スペリセン元警察庁長官のケースにも注目している。スペリセン氏は、グアテマラで犯した罪で、スイス在住時にスイスで有罪判決を受け拘留中。
スイス国籍が剥奪されれば、刑期終了後にスペリセン氏の身柄をグアテマラに引き渡すことが可能になる。だがスイスインフォが入手した、アルベルト・アシェーマン教授が連邦移民事務局に当てた意見書のコピーによれば、スペリセン氏はスイスに対する直接的な脅威ではないことから、国籍剥奪の要件を満たさないと思われる。
連邦移民事務局は、現時点でスペリセン氏に対する国籍剥奪手続きは開始されていないとしながらも、今後の動きについては言及を避けた。
イスラム国に加わる渡航者から国籍を剥奪する措置は、テロ対策として効果があると考えますか？ご意見をお寄せください。
（仏語からの翻訳＆編集・由比かおり）, swissinfo.ch