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「原発事故後の情報不足はもう過去のこととして、今こそ関係当局は謙虚に原点に立ち戻り、多地域での放射線量と検出された放射性物質の種類の情報を開示する必要がある。フクシマの子どもたちの命がかかっているからだ」と、小児がん科医のアネット・リドルフィ氏は念を押す。
20年間ベルン州立大学病院小児がん科部長を務め、子どもや家族の苦しみに寄り添ってきて「小児白血病やがんを引き起こす放射能は、人間が手にすべきものではなかった」と確信する。そのため、すべての国の脱原発を真摯に訴える。
2007年の退職後、バーゼルでがんの子どもの家庭を訪問する看護師の特別教育基金「がんの子供・青少年のためのベルン基金 ( BSKKJ ) 」を立ち上げ、運営に多忙な毎日を送る。その合間にやっと作ったアルバムを開けながら「この子は今は元気で有名なサッカー選手。この子は可愛い子だったが亡くなった」と一人ひとりの思い出を語る。
科学者の目を持ちながら「患者はみな私の子ども」という母親の視線も併せ持つ。今でも昔の患者から結婚式などに招待される。上記のサッカー選手はブログに「リドルフィ先生は僕の守護天使」と書く。
被曝後に起こりうるがんの中でも、2、3年後に発生するといわれる小児白血病に焦点を当て、その病気の特性やメカニズムなどをリドルフィ氏に聞いた。
swissinfo.ch ： 小児白血病はほかのがんと同様、染色体の変異から起こると考えていいのでしょうか。
リドルフィ ： その通りだ。現在スイスでは、患者から20ミリリットルほどの骨髄液を採取して染色体を調べる。その結果、23組ある染色体のうち異常を起こしている染色体の番号によって白血病のタイプが判定できる。
ある番号の染色体が切断され、ほかの番号の染色体に転座し、融合してそこに異常融合遺伝子を形成する。その結果、がん細胞が異常に増殖したり、成熟細胞への分化が困難になりがんにかかる。どの染色体のどの遺伝子が細胞形成サイクルのどの段階で問題を起こすかも分かってきている。
もともと白血病と染色体異常には関係があると考えられていた。私の勤務先の病院でも白血病の子ども30人に3人の割合でダウン症の子がいたからだ。ダウン症は21番目の染色体が1本多いため起こるが、それはもともと染色体が不安定だからだ。このため染色体の転座などが起きやすく白血病にかかりやすいのではないかと推測された。
現在、いろいろなタイプの白血病があると言ったが、ある種のものは100％完治し、ある種のものは再発したり、初めから骨髄移植が必要だったりする。幸いにも完治するケースは現在約8割にも達している。
swissinfo.ch ： こうした染色体異常を起こすものに、ウイルスや発がん性物質もありますが、放射線は代表的な原因ですね。
リドルフィ ： 放射線が染色体を切断し損傷することは知られている。また放射線が、がんの原因であることは、広島・長崎の原爆投下数年後、白血病の子どもが増え、さらにその数年後固形がんの子どもが増えたことでも証明されている。
チェルノブイリでも白血病の子どもが増えた ( 右欄参照 ) 。実はベルンにも、ミンスクの小児がん科の医師が治療法を聞きに来た。私の同僚がミンスクまで応援に行ったが、その最悪な状況に愕然としていた。
白血病には化学療法 ( 抗がん剤) が使われるが、それは免疫力を極端に低下させるため患者である子どもは感染症にかかりやすい。白血病が直接の原因ではなく、細菌感染で亡くなったケースも多い。それなのにロシアには衛生概念がまったくなく、手を洗うことさえ励行していなかった。
直ちにスイスから多くの看護婦を派遣し、アルコール殺菌のような基本から教えていった。
swissinfo.ch ： ところで、染色体の損傷や切断は少量の放射線でも起こるのでしょうか？
リドルフィ ： 公式には、今の段階では分からないと言われ、年間50ミリシーベルトから100ミリシーベルト被曝すると、がんになる可能性が高まるが、それ以下では分からないと言われてきた。
ところが、ドイツでは原発周辺に住む5歳以下の子どもを対象に、小児がん及び白血病発生率と原発との因果関係についての調査が国の依頼で行われた。2007年に出た結果によれば「原発に近ければ近いほど小児がん及び白血病発生率が高い」。それは即ち少量の放射線が染色体に影響を与えるということの証明だ。
5歳以下の子どもは大人より、2、3倍も放射線の被害を受けやすく、胎児はなおさらだ。それは成長のために細胞分裂が絶えず行われており、染色体が不安定な状態にあるからだ。
このため、この調査にあたった研究機関の一つ「核戦争防止国際医師会議 ( IPPNW ) 」は、原発から出る放射線の基準量を胎児に則した値に改めるよう要求し、ドイツの全原発の稼動停止を当時すでに求めていた ( 右欄参照 ) 。
この発表は子どもを持つ家族や一般市民に衝撃を与え、今日ドイツが脱原発の道を選択した一要因になっているかもしれない。
ただ、この調査以外には、長期に少量の放射線量を浴びるケースの研究はわずかしか存在しない。長期間で経費もかかる非常に困難な調査だからだ。しかし、少ない調査結果とはいえ、現在多くの医学者、科学者が放射線は少量でも危険だ、特に子どもの場合は特別に危険度が高まると言っている。
swissinfo.ch ： 遺伝的な問題の質問です。イギリスにあるセラフィールド ( Sellafield ) の使用済核燃料の再処理工場に勤務する父親の子どもには白血病のリスクが高いという報告がありますが、それはなぜでしょう。
リドルフィ ： それは、父親の睾丸に放射線があたり、精子の染色体が異常になり、たとえ母親の卵子が正常でも生まれてくる子どもは、いわば全身の細胞の染色体に父親の染色体の異常を受け継ぐため、白血病になる可能性があるからだ。
また、この２世代目がたとえ白血病などを起こさなくても、全身の細胞ということは、その子の卵子や精子まで染色体異常を受け継ぐため、第3世代、第4世代まで染色体異常は受け継がれる。
さらに、現在小児医学では、多くの脳や神経系の病気が染色体異常によって起こることも分かってきている。
このため、今フクシマの原発事故現場で働いている人たちのことを考えると胸が締め付けられる思いだ。
swissinfo.ch ： では、例えば被爆によって子どもが白血病にかかっても、その子が完治して大人になった場合、その子孫は大丈夫なのでしょうか。
リドルフィ ： 小児白血病が化学療法で完治した場合、白血病細胞はすべて死ぬため、その子が大人になり子孫を作っても、子孫が白血病になることはない。要するに異常染色体が受け継がれなければ大丈夫だ。
swissinfo.ch ： 例えば福島の子どもが白血病にかかったとしても、現在白血病はほぼ8割が完治しますね。
リドルフィ ： 確かに8割が進んだ化学療法などで完治する。しかし問題なのは完治に至るまでの長い苦しみの期間だ。白血病のタイプによって治療期間は異なり、短期で集中治療するか、もしくは、1週間に1回の治療を2年から2年半続けることになる。
また、治っても再発する恐れと戦わなくてはならない。さらに多くの母親が何もしてやれない無力感や、子どもの死と直面する苦しみに耐えなくてはならない。
ある母親は、3歳の息子が白血病だと分かると動揺し、治療を始める前にまず神父を訪ね「子どもの葬儀も大人のそれと同じか」と聞いた。同じだと分かったときようやく納得して「治療を始めてくれ」と言った。
家族の抱える苦悩は大きい。祖母や祖父など全員を巻き込む苦しみだ。30年間こうした子どもや家族と過ごしてきて、今、フクシマの子どもたちを思う。
だからこそ、日本政府など関係当局は、今すぐ放射線量と、検出された放射性物質は何なのかという詳細な情報をフクシマの県民や国民に開示し、対策を急がなくてはならない。なぜ放射性物質の詳細が大切かというと、例えばストロンチウム90は骨髄にたまり、白血病を引き起こしやすいからだ。
今、子どもたちの、特に5歳以下の子どもたちの命がかかっている。
アネット・リドルフィ・リュッティ( Annette Ridolfi Lüthy ) 氏略歴
1946年、バーゼルに生まれる。
1973年、バーセル大学医学部卒業。
1974～1981年、バーセル州立大学病院小児科小児がん科勤務。
1981～1983年、ベルン州立大学病院小児科小児がん科勤務。
1983～1987年、ティチーノ州ベリンゾーナの病院勤務。
1987～2006年、ベルン州立大学病院小児科部長と小児がん科部長兼任。
チェルノブイリ後の小児白血病の例
「核戦争防止国際医師会議 ( IPPNW ) 」と「放射線防護協会 ( Gesellschaft für Strahlenschutz e.V. ) 」が共同で行ったドイツの調査「チェルノブイリの健康への影響―原発大惨事から20年 ―( Gesunndheitliche Folgen von Tschernobyl-20 Jahre nach Reaktorkatastrophe ) 」によれば、最も放射線量が高かったウクライナ地方だけで、事故のあった1986年以前の5年間 ( 1980 ～1985年 ) の数から予想される小児白血病11種類の患者の合計は346人。1986年以降 ( 1986 ～1991年) の同様の実際の合計は519人。つまり173人の患者の増加がみられたとしている。
原発と小児がん及び白血病発生
原発からの距離と小児がん及び白血病発生の因果関係を「核戦争防止国際医師会議 ( IPPNW ) 」と「ドット・アウスゲシュトラールト ( .ausgestrahlt / 放つ ) 」が共同で行った調査結果「子どもを病気にする原発 ( Atomkraftwerke machen Kinder Krank ) 」がドイツ政府の連邦放射線保護庁から2007年に発表された。
調査は1980年から2003年までの24年間。ドイツにある原発の周辺16カ所に住む5歳以下のがんになった子ども1592人を選び出した。そのうち白血病患者は593人。比較の対象として、同年齢、同性別、同調査地域に住む健康な子ども4735人を選出した。
原発から住居までの距離を25ｍ、50ｍ、75ｍと25ｍ間隔の精度で調査した。
その結果、「原発から5km 以内で、原発に近ければ近いほど小児がん発生率が高いこと」が明らかになった。原発と住居の距離以外に小児がんを引き起こす要因は見当たらなかった。ただ、原発からの放射線量との直接の関連は調査されなかった。
これを受け、IPPNWは、現在の原発から出る放射線の基準値は健康な若い男性を基準に決められているため、胎児の基準値に改めるよう要求した。なぜなら胎児は、ほんのわずかな放射線量でも健康被害を受けるからだ。このため、IPPNWは稼働中の原発すべてをただちに停止すべきだと訴えた。
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