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くいなちゃんAug 22, 2017
「６さいからの心理学」では、関連する実験内容を示しながら、「科学としての心理学」を解説します。
かつての心理学
かつては心理学の有名な手法として、患者が見た夢を分析する「フロイトの夢分析」や、インクのしみが何に見えるかを尋ねる「ロールシャッハ・テスト」などが広く使われていましたが、現代では科学的根拠が乏しいとされています。
しかし、これらの説を正しいと信じる人は専門家を含め未だ少なくありません。 その理由の一つは、後述する「プラシーボ効果」と呼ばれる現象のために、「科学的な裏付けがなくても患者が治療できることが大切」と考える人が多いからかもしれません。
いずれにせよ今日心理学だと信じられているものには、科学的に行われたものとそうでないものが混在して混乱していますので、本講座では、科学的に検証されたものだけを切り離し、「科学としての心理学」を改めてまとめていきます。
人間は本当に誤りやすい
さて、人間は科学的な手法を慎重に行おうとしたとしても、実験や分析の方法が正しくなかったりして結論を誤ることが多々あります。 以下にその例をいくつか紹介します。
プラシーボ効果
砂糖のように、薬として効く成分が何も含まれていない偽薬を、薬だと偽って患者に投与したときに、患者の思い込みにより効果が出ることを「プラシーボ効果」といいます。 薬に限らず、偽の療法を正しい療法だと偽って施したときに効果が出た場合なども、プラシーボ効果に含めます(プラシーボ効果)。
Irving Kirschの実験によると、当時効果があるとされていた「抗うつ薬」を投与した患者グループと「偽薬」を投与した患者グループとでは、効果の差異がほとんどなかったそうです。 つまりこの実験により、当時の抗うつ薬の改善効果はプラシーボ効果によるものだったことが示されました。
このように、薬や療法を施して効果が出たときには、それが薬や療法自体によるものではなく、単にプラシーボ効果の可能性があります。 このため、ある薬の効果を検証するときには、患者の2つのグループの一方にこの薬を投与するだけでは不十分で、プラシーボ効果の影響を打ち消すためにもう一方のグループにも偽薬を投与して比較することが行われています。
患者に対してプラシーボ効果をどの程度活用して良いか議論の余地がありますが、いずれにせよ倫理的にも科学的にも、プラシーボ効果は排除してなるべくプラシーボ効果以外の効果があるような薬や療法を施すべきだという考えが主流になっています。 Asbjørn Hróbjartssonたちの研究では、プラシーボ効果によって、痛みが抑えられたり主観的な評価での効果は確認できたものの、それ以外の客観的な効果は確認されていないそうです。 プラシーボ効果で何でも改善するとは限らないようです。
ちなみに、Ted J. Kaptchukたちの研究によると、患者に偽薬であることを伝えて偽薬を投与したとしても、薬を全く投与しないより効果があったそうです。
また、R. L. Waberたちの研究によると、偽薬を「痛み止め」と称して2つのグループに渡し、一方のグループには「$2.50の定価の薬だ」と伝え、もう一方には「$0.10に割引された薬だ」と伝え、両グループに手首への電気ショックを与えたところ、高い価格に設定された偽薬のほうが痛みが和らいだそうです。
因果関係と相関関係の混同
さて、プラシーボ効果を排除した心理学的実験を行ったとしても、様々な要因により結論を誤ることがあります。 その一つは、「因果関係」と「相関関係」の混同です(因果関係と相関関係)。
2つの事象A、Bに「因果関係」があるとは、AとBが原因と結果の関係になっていることを意味します。 つまり、Aが起こればBが起こるという関係になっているとき、AとBには因果関係があるといいます。
2つの事象A、Bに「相関関係」があるとは、AとBの発生する割合が一次関数で表せる関係になっていることを意味します。 おおざっぱに言うと、Aがたくさん起こるほどBもたくさん起こる場合や、Aがたくさん起こるほどBが起こる割合が減少する場合に、AとBには相関関係があるといいます。
ただし、別の原因CによってAやBが引き起こされている場合にも、AとBに相関関係が発生することに注意してください。
ちなみに実際には、100%の相関関係があることは稀で、どの程度の相関関係があるかを強弱で表します。 そのときの強弱を、「相関係数」といい、-1～1の範囲の数で示します。 Aがたくさん起こるほどBもたくさん起こる場合は、「正の相関がある」といい、100%の正の相関がある場合は、相関係数が1になります。 Aがたくさん起こるほどBが起こる割合が減少する場合は、「負の相関がある」といい、100%の負の相関がある場合は、相関係数が-1になります。 AとBが起こる割合が無関係な場合には、相関係数は0になります。
「因果関係」と「相関関係」の混同の例として、Graham E. Quinnたちの研究があります。 この研究では、明かりをつけたまま寝る子供は、明かりを消して寝る子供よりも、将来的に近視になる割合が高くなったことが判り、この結果から「明かりをつけたまま寝る子供は将来的に近視になるリスクが高まる」という結論が広まりました。 しかし、この因果関係は成り立たず、相関関係であるという実験結果がKarla Zadnikたちによって示されています。 Zadnikによると、近視の親は夜に子供部屋の明かりをつけやすい傾向が見られることや、また近視は子供に遺伝しやすいことから、間接的にこのような結果になったのではないかとのことです。
統計方法の問題
他にも、実験方法や統計方法によって間違いが引き起こされることがあります。
Fritz Strackたちの研究では、ドイツの学生を2つのグループに分け、片方には「(1)あなたは最近どのくらい幸せか？ (2)あなたは先月何回デートしたか？」という2つの質問を提示し、もう片方には「(1)あなたは先月何回デートしたか？ (2)あなたは最近どのくらい幸せか？」という2つの質問を提示したところ、質問内容は同じであるにもかかわらず、前者のグループは2つの答えの相関関係が0に近かったのに対し、後者のグループは2つの答えの相関関係が非常に高かったそうです。
このように、質問の仕方によって結果が大きく変わりうるため、実験者は質問の方法による影響が出ていないかを気を付ける必要があります。
サンプルサイズの不足
また、いくつかのグループを比較するときなどに、それぞれのグループから抽出したデータの個数のことを「サンプルサイズ」といいますが、このとき、このサンプルサイズが少ないと問題が起こりえます。
例えば、Howard Wainerたちの論文では、興味深い例が挙げられています。 アメリカの3141の郡で腎臓ガンの出現率を調べたところ、ガンの出現率が低い郡の大半は農村部にあったそうです。 その原因を推測すると、「空気や水が汚れておらず添加物のない新鮮な食べ物が得られるから」と言えそうです。 一方で、ガンの出現率が高い郡を調べると、こちらも大半は農村部にあったそうです。 その原因を推測すると「質の高い医療が受けられず高カロリーな食事や酒やタバコを摂取する人が多いから」と言えそうです。 しかしこれらの推測は明らかに矛盾しています。
これらの真の原因は、サンプルサイズの小ささにありました。 つまり、農村部は人口が少ないため、平均値が偏りやすくなるのです(サンプルサイズによる偏り)。
この例では、サイコロを2個しか振らないと平均は偏りやすくなりますが、たくさん振るほど理論的な平均値(期待値と呼ばれサイコロの場合は3.5)に近づくことが示されています。
この例のように1つのサンプルに対するサンプルサイズが少ない場合は結果が偏ることが解りやすいですが、サンプルサイズが異なるもの同士を比較する場合などには偏りによって誤った結論を導かないように注意が必要です。
後知恵バイアス
さて、科学的に判断することが大切である理由の一つに、「後知恵バイアス」と呼ばれるものがあります。
「後知恵バイアス」とは、事象が起こった後では「その事象が起こることが予測可能だった」と錯覚しやすくなる現象です。
例えば、Baruch Fischhoffたちの研究では、1972年のニクソン大統領の中国・ソ連訪問が実際に起こる前に、実験参加者にニクソン大統領が中国・ソ連を訪問する確率を推定してもらい、そして実際に起こった後で実験参加者にどのような確率を推定したかを思い出してもらったところ、約3/4の実験参加者が、事前に答えた確率よりも高い確率を答えたそうです。
このように起こった後では自分の予測は歪んでしまうため、ある説が正しいかどうかを考えるためには事象が起こった後で「やはりこの説は正しかった」と判断するのではなく、科学的な実験を行って客観的に評価することが大切になります。
統計的予測と臨床的予測
また、統計的な予測は、訓練を積んだ専門家が主観的な印象によって判断する臨床的な予測よりも良い結果が出ることが、多くの人々の実験により確認されています。
例えば、Paul E. Meehlの研究では、大学新入生たちの一年次終了時の成績を専門のカウンセラーと統計システムとが予測するという実験で、カウンセラーは新入生1人あたり45分間面談して高校時代の成績や4ページの自己申告書やいくつかのテストも行って判断するのに対し、統計システムほうは高校時代の成績と1種類のテストのみで判断しました。 その結果、14人のカウンセラーのうち11人は、統計的予測を下回ったそうです。
今まで同様の実験が、医学、経済、スポーツなど幅広い分野で行われましたが、統計的予測よりも臨床的予測のほうが上回ったケースはほとんどなく、Meehlによると「社会科学の分野において、これほど大量の質的に異なる研究から同様の結果が出た以上、もはや論争の余地はない」とのことです。
まとめ
以上の他にも様々な要因によって、人間の判断はしばしば誤ります。
しかしこれらを含め、人間がどういった状況でどう誤りやすいかという点も心理学の研究対象になるため、心理学を追究することでわたしたちの誤りを減らすことはできます。 そのときに役立つのは、「主観的な印象」ではなく、「科学的な手法」です。 次回から一緒に、科学的な心理学について学んでいきましょう！