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3月19日、チューリヒ市当局は市内中心地で広域にわたる杭上家屋の集落を発見したと発表した。このコンテンツは 2010/03/22 16:25
杭上家屋は紀元前5000年頃からアルプスをまたぐ地域に見られる建築様式で、チューリヒ周辺には特にこうした集落が多くあることが知られ、これまでも各所で発見されていた。今回の発見は広範囲にわたり、今後の研究に大きく寄与すると期待されている。
駐車場建設遅れる
今年、スイス、ドイツ、フランス、スロベニアなどヨーロッパ6カ国がユネスコ世界遺産の登録を申請し、2011年にはその結果が分かる予定だ。こうした中での今回の発見は「( このままでは ) ユネスコ世界遺産への登録が見込まれる遺跡の記録が失われることにもなり、保護されるべきである」と連邦政府の遺跡保護委員会も評価する。
今回発見されたのは、チューリヒ市内の中心地、オペラハウスの前にある広場の地下。駐車場を地下に移動するための地盤調査のボーリングで、生活文化の跡を残す地層が出てきた。遺跡・遺産局のヤン・カポル局長によると、チューリヒ湖畔沿いにあり、付近では杭上家屋の集落が以前にも発掘されていることから、慎重な事前調査が行われたが、「オペラハウスの広場の地下にはないと判断されていた」。しかし、今回発見された集落は、広範囲にわたるもので、保護される必要が出てきたという。
現場は湖の近くにあることから遺跡発掘は、4メートルほど水面を下げて行われる。しかも、オペラハウスの建物にひび割れなど影響がないよう、慎重な作業が必要だ。市の中心地で、チューリヒの春の祭り「ゼクスロイテン ( Sechseläuten ) 」の催し物などがあるが、市当局はそれらへの影響も最小限に抑えたい意向にある。
この発見により地下駐車場の建築は1年遅れることになる。チューリヒ市の建築省のルート・ゲンナー担当相によると、発掘期間は6カ月間を見込み、600万フラン ( 約5億円 ) の予算を計上したという。その後も同額の予算が必要と予想される。実際の発掘作業には、大学の協力を得るなど、40人は必要というマンパワーを調達することなども考えられるという。
広域にわたる集落
カポル氏は紀元前5000年までさかのぼる杭上家屋について
「イタリアならローマ人、ギリシャなら古代ギリシャ人といったルーツがあるなか、スイスではそういったものがないと思われていた。1854年、チューリヒで初めて発見され、まさしくスイス人のルーツとされるものと評価された」
と説明する。さらに、こうした集落は湖に杭を立てて家屋を建設していることから、水の中に遺跡が守られたという特徴がある。研究者にとっては、当時の生活の様子が分かる貴重な遺跡だ。
現在発掘されたのは、土器の破片に過ぎないが
「チューリヒ市内では1981年に発掘されて以来の快挙。非常に広域にわたっていることから、多くの発掘品が出るはず。集落の役割を調べる上でも有益な発見」
とチューリヒ市水中遺跡課のウルスラ・ヒュギ氏はその重要性を語る。
もっとも、今回の発見はユネスコの世界遺産には登録される予定はない。すでに登録申請は終わっている上、この遺跡は地下駐車場の建設のため移動される運命にあるからだ。
ヒュギ氏は、重要な遺跡が多く出土するチューリヒだが、まとまって展示されていないため、展示の機会ができればと期待する。
佐藤夕美 ( さとうゆうみ ) 、swissinfo.ch
これまでにアルプス山脈の地域に発見された杭上家屋
アルプス山脈に広がる6カ国で発見された杭上家屋のうちの156カ所の集落跡が、ユネスコ世界遺産候補として選抜された。
そのうち5割以上の82カ所はスイスで発見された杭上家屋が対象となっている。
世界遺産の申請書類はスイスが主導となって作成され、2010年の1月にユネスコに提出された。決定は2011年の夏に下される見込み。
そのほかの国が申請する杭上家屋の数は以下の通り。
ドイツ、イタリア各25
フランス 15
オーストリア 8
スロベニア 1
JTI基準に準拠