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ギリシャ語で「視線、光」を意味する「マティ」という言葉を社名にした照明専門の会社が、ベルリンのギャラリーやチューリヒの美術館などの照明を手掛けている。
照明の専門家は建築家の影で働くと言われているが、実際は建物を外部からより美的に照らし、建物内部に新しい価値を与える。具体的にどういった仕事なのだろうか。「マティ ( Mati ) 」社に光を当ててみた。
建築家たちに協力
照明の仕事そのものは新しいものではない。しかし、アングロサクソン系やゲルマン系諸国を中心にここ20年来、照明の仕事は洗練され目覚ましい発展を遂げてきた。スイスのドイツ語圏で今一番注目を集めているマティは、チューリヒ州アドリスヴィル ( Adliswil ) にある。
イギリスの有名な建築家デイビット・チッパーフィールド氏がドイツのマールバッハ ( Marbach ) にある近代文学館の建設を手掛けた際、照明はマティに任された。それ以来、マティはチッパーフィールド氏と多くの仕事で協力し、また、スイスの建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンとも仕事をしている。
チッパーフィールド氏はチューリヒ美術館の拡張工事も行い、マティが再び照明の仕事を請け負うことになった。
「美術館にとって照明は非常に大切だ。建築家たちは、美術館にはできるだけ自然光を取り入れようとしてきた。しかし、人工的な光の製作方法が発達し、かなり照明のやり方が変わってきた」
ハンスペーター・ケラー氏は言う。ケラー氏は1986年、クリ・ベルトッチ氏と共同でマティを立ち上げた。
さまざまな光を作り出す技術の発展は、快適さの提供はもちろん、オフィスでの生産性を上げる効果とも結びつき、照明家の仕事を増やしてきた。
幅広い活動
「わたしは、劇場や映画での照明の仕事からこの分野に入った。つまり、対象を照らし価値を与える仕事だ。この経験から、照明は対象に深みや意味を与えることを学んだ」
とケラー氏は話す。
その後1990年代には単なる照明の仕事から、シュヴィーツ州 ( Schwyz ) の歴史博物館の企画といった、グローバルなイベント事業へと仕事の内容が変化してきた。さらに今日では、「光のコンセプト」の実現者として、ハイレベルな大型建築のみならず、住宅の美的な光による空間構成から経済的、エコロジー的照明の在り方に至るまで、幅広い活動を行っている。
ジーンズの色が褪せる
照明家の仕事が発展しているにもかかわらず、「ライトデザイナー」は、資格を取得できる職業として確定していない。チューリヒで照明を教える「パブロ・リヒト ( Pablo Licht ) 」社のパブロ・パブスト氏は、照明と光のコンセプトを職業とする者の協会「ライトメーカーズ ( Lightmakers ) 」を創立したばかりだ。
「スイスではヴィンタートゥール ( Winterthur ) にある応用科学高等専門学校が唯一、照明家になる教育を行っている。それも照明家協会の支援によるものだ。ここしか教える所がない」
と嘆く。この学校では2年間の見習い期間も含め、最終的に「ライトデザイナー」の資格が与えられる。
しかし、照明が抱える課題は増す一方だ。照明技術が進歩し守るべき基準が増えている。さらに「人々は光をもっと必要としている」とケラー氏は言う。
「1920年代では、床から70センチメートルの高さに、70ルックスの光を設置するよう奨励されていた。それはテレビの明るさか、寝床の傍のランプの明るさ程度だ。ところが今日、部屋の照明には1000ルックスかそれ以上が必要だ」
「デパートの洋服売り場では、照明があまりに強すぎて、1週間後には商品のジーンズを入れ替えないといけない。そうしないと色があせるからだ。しかし光を強く当てることは大切。なぜなら、マーケティングの専門家もよく理解しているように『お客は光の当たるものに惹きつけられる』からだ」
とケラー氏は話す。
アリアンヌ・ジゴン、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、里信邦子 )
マティ ( MATI ) 社
劇場の照明係だったハンスペーター・ケラー氏がクリ・ベルトッチ氏と共に1986年、立ち上げた会社。展覧会、美術館、建築プロジェクトなどの照明を手掛ける新しいコンセプトの会社。
1992年に株式会社になる。
チューリヒ州のアドリスヴィル ( Adliswil ) にあり、社員は6人。
マティの主な照明の仕事は以下の建築物内で行われた。
1996年から2005年 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国のテサロニックのビザンチン文化博物館
1999年 ジュネーブの赤十字国際美術館
2005年 ジュネーブの国際宗教改革博物館
2008年 ベルリンのジェイムス・サイモン・ギャラリー
2008年 チューリヒ美術館のデイビット・チッパーフィールド氏の拡張プロジェクト
2008年 チッパーフィールド氏設計のバーゼルの大手医薬会社「ノバルティス ( Novartis ) ・キャンパス」
2009年 ルツェルンの交通博物館