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2023年10月02日くいなちゃん
「くいなちゃん数学」第5話では、図形に関することを公理から考えていきます！
今回は第4話で説明した実数を拡張して、平面や立体が扱えるようにします。
まずは円や三角形などを扱うために、図形の公理について説明します。
図形に関する公理は「ヒルベルトの公理」と呼ばれるものが有名です。 長いですが、思い切ってすべてを網羅してしまうと図1-1の通りになります。 全部読む必要はありません。
抽象的で解りにくいと思いますが、試しにこれらを使って図1-2の問題を証明してみましょう。
証明は図1-3のようになります。
このようにヒルベルトの公理から図形の様々な性質を証明できますが、すべてをここから導き出すのは大変ですので、そこで以前にも説明した通り、その気になれば証明可能とした上で、本講座では既に証明された定理を紹介することにします。
ここでは重要な定理をいくつか紹介します。
2.1直線と角と三角形の性質
直線、角の基本的な性質は図2-1の通りです。
図のように、平行な2つの直線と交わる直線に対し、「対頂角」「同位角」「錯角」はそれぞれ等しいです。
また、三角形の基本的な性質は図2-2の通りです。
三角形の内部の角を「内角」といい、線分を延長してできる外部の角を「外角」といいます。
このとき、3つの内角の和は2つの直角の和に等しくなります。
また、外角はそれに隣り合わない2つの内角の和に等しくなります。 例えばの外角は、の内角との内角を足したものに等しいです。
2.2円の性質
「円」はヒルベルトの公理では直接定義されていませんが、図2-3のように定義することができます。
またこのとき、点を円の「中心」といい、線分の長さを円の「半径」といいます。 円のことを「円周」と呼ぶこともあります。
ヒルベルトの公理からどのように円の定理が導けるかは想像しにくいですが、例えば公理Ⅴ-2(順序や合同の関係を維持したまま、直線に新たな点を含めて拡張することはできない)を用いると、「線分において、点が円の内部にあり、点がの外部にあるとき、はと交わる」などの定理が証明できます。
円の基本的な性質は図2-4の通りです。
図のように、円周上の異なる2点によって切り取られた円の一部を「弧」といいます。 また、弧の2点と、弧の上に無い点とが作る角を「円周角」といい、弧の2点と、円の中心とが作る角を「中心角」といいます。 このとき、同じ弧に対する円周角はどれも等しく、また中心角は円周角の倍に等しくなります。
また図2-5のような、円の接線が作る角の大きさは、「接弦定理」と呼ばれる定理で求まります。 円周上の異なる2点が作る直線と、を通る円の接線があったとき、接線上の点と線分とが作る角は、直線に対しと同じ側にある弧の円周角に等しくなります。
さて、2つの三角形において、対応する辺の長さと角の大きさがそれぞれ等しいとき、これらの三角形は「合同」であるといいます。 言い換えると「合同」とは、2つの図形を移動・回転・反転させると形がぴったり重なることともいえます。 2つの三角形が合同であるための条件は、図2-6の通りです。
また、2つの三角形において、対応する辺の長さの比と角の大きさがそれぞれ等しいとき、これらの三角形は「相似」といいます。 「合同」がぴったり重なることだとすると、「相似」は拡大縮小するとぴったり重なることだといえます。 2つの三角形が相似であるための条件は、図2-7の通りです。
2.4図形の面積
図形の「面積」はヒルベルトの公理では直接定義されていませんが、三角形の面積を図2-8のようにおなじみの方法で定義することで、あらゆる図形の面積を相対的に考えることができます。
例えば多角形の面積は、三角形に分割してそれぞれの面積を足し合わせることで求まります。
2.5ピタゴラスの定理
そのほか、図形に関する重要な定理として、「ピタゴラスの定理」があります。 これは、直角三角形の斜辺の長さを、それ以外の2辺の長さをとしたとき、「」が成り立つというものです(図2-9)。
ここまでは、無限に広がる平面の上に三角形や円を描いたりするような、わたしたちに馴染み深い幾何学を考えてきましたが、数学的にはそれ以外の幾何学を考えることもできます。 例えば、球や曲面の表面に図形を描いた場合の幾何学です。
ヒルベルトの公理Ⅳ-1(任意の直線aと、aが含まない任意の点Aがあるとき、aとAを含む平面上に、Aを含んでとa共通の点を含まない直線は複数存在しない)は「平行線の公理」と呼ばれますが、この公理を削除するとわたしたちに馴染み深い図形の体系とは異なる体系が生まれます。 わたしたちに馴染み深い体系では三角形の内角の和は2直角(2つの直角の和)と等しいですが、平行線の公理を削除した体系では2直角よりも小さくなることがあります。
平行線の公理を認めたわたしたちに馴染み深い体系は「ユークリッド幾何学」と呼ばれ、平行線の公理を削除した体系は「非ユークリッド幾何学」と呼ばれます。
また、平行線の公理以外の公理をいくつか削除することで、三角形の内角の和が2直角よりも大きくなる体系を作ることもできます。 この体系も、非ユークリッド幾何学に含められます。
4直積
さて、それでは実数を拡張して、平面や立体を扱えるようにしましょう。
を、からまで続く数直線だとイメージすると、の2つの元のペアを集めた集合は、無限に広がる2次元平面のイメージになります(図4-1)。
このように、2つの集合の元の組み合わせでできるペアをすべて集めた集合を、との「直積」といい「」と表します。 掛け算の記号と同じですが、意味は同じではありません。 例えば上の図では、との直積で「」になります。 また、のことはしばしば「」と表されます。
同様に、この「」と「」の元のペアを集めた集合「」は、無限に広がる3次元立体のイメージになります(図4-2)。
「」のことはしばしば「」と表されます。
同様に、4次元の「」、5次元の「」、…、とどこまでも考えることができます。 これらを一般化して「」と表します。
また、これらの集合の元のことを「点」といいます。 の点は実数が個で構成されますが、点を構成するそれらの実数「」の組を「座標」といい、お馴染みの「」で表します。 例えば、「」はの点の座標の一つです。
5距離
さて、このようなの中に、点と点の「距離」を定めます。
わたしたちは日常的に図5-1の左側のようなものを「距離」と呼びますが、図の右側のように縦か横にしか移動できないものが2点間を最短で進むときの長さも、数学では「距離」として扱えます。
この図の左側のような、わたしたちが日常的に使う距離は「ユークリッド距離」といいます。 の2点に対して座標をとすると、とのユークリッド距離「」は「」で計算できます。 例えば、点、点のとき、とのユークリッド距離は「」です。
の場合のユークリッド距離は、点、点に対し、「」で計算できます。
またの場合のユークリッド距離は、点、点に対し、「」となります。
また、図の右側のような距離は「マンハッタン距離」といい、点、点に対し、「」で計算できます。
5.2距離の定義
さて、ユークリッド距離もマンハッタン距離も数学では「距離」として扱えますが、他にどのようなものが距離として扱えるかといいますと、図5-2の条件を満たすものはすべて数学で「距離」といいます。
つまり、ユークリッド距離やマンハッタン距離はこの「距離の定義」を満たしているため、数学で「距離」として扱えるわけです。
5.3距離空間
このように数学では様々な距離を考えることができるため、などの集合に対して、どのような距離を使うのかが重要になってきます。
そこで、集合と距離とをセットにし、「(集合,距離)」と表されるようになりました。 これを「距離空間」といいます。 「空間」とは、集合と何かしらのルール(距離など)をセットにしたものです。
例えば、ユークリッド距離「」に対して、はそれぞれ距離空間です。 特にこれらの距離空間には名前が付けられており、それぞれ「1次元ユークリッド空間」、「2次元ユークリッド空間」、「3次元ユークリッド空間」、…、「n次元ユークリッド空間」と呼ばれます。
ユークリッド距離はよく使われるため、単にの集合が示されて距離が示されていないときには、暗黙的にn次元ユークリッド空間だとされることが多いです。
それでは、この「n次元ユークリッド空間」の中で図形を扱うことを考えます。
先ほどの元を「点」と言うと説明しましたが、この「点」をそのままヒルベルトの公理における点とみなし、直線や平面などを「点の集合」だと考えることで、ヒルベルトの公理を満たすような体系がに構築できます。 つまり、に定義されていた「座標」や「ユークリッド距離」といった概念がヒルベルトの公理の図形に対して適用できます。
例えば、ある図形がの点で構成されていた場合、それらの点はそれぞれの座標を持ち、の値によっての値が決まりますので、その図形はという方程式によって表せることになります。 例えば、という方程式は、上の一つの直線になります。
における直線や円の方程式を図6-1にまとめました。
2点を通る直線の方程式は、「」と表せます。
中心、半径の円の方程式は、「」と表せます。
図形を方程式で扱えるようになったことで、例えば「直線と円が2点で交わっているときの線分の長さ」のような、ヒルベルトの公理からは導けないものが計算できるようになります。
図形が方程式で扱えるようになったということは、逆に方程式で表されるものを新たな図形として考えることもできます。 ここでは色々な「関数」の方程式が作り出す図形について紹介します。
「関数」とは基本的には写像と同じもので、2つの集合の元を対応付けるものです。 ただし、1つの元に対応付けられる元が複数あっても関数では許可されることがあります。
7.1指数関数
かつであるような実数に対し、「」と定義される関数を、「指数関数」といいます。 また、このときのを指数関数の「底」といいます。
例えば、指数関数が作り出す図形として「」と「」という方程式を考えると図7-1のようになります。
7.2対数関数
かつであるような実数および、である実数に対し、を満たす実数を、「」と表します。 例えば、「」ですので、「」です。 言い換えると「」とは、「を何乗するとになるか」という数を表します。
このとき、である実数に対し、「」と定義される関数を、「対数関数」といいます。 また、このときのを対数関数の「底」といいます。
例えば、対数関数が作り出す図形として「」と「」という方程式を考えると図7-2のようになります。
対数関数はこのように、指数関数の図形を回転させた形になっています。
7.3三角関数
このほか図形に関する重要な概念として「三角関数」があります。
さて、「三角関数」とは、図7-3のように定義される3つの関数「」「」「」のことを指します。
図の左側のように、半径1の円周上の点と、円の中心とを結ぶ線分の角度をとすると、点の座標は「」と定義されます。
また図の右側のように、円の中心から発して点を通る線分をまで伸ばしたときの座標は、「」と定義されます。 ただしの場合など、いくら線分を伸ばしてもに交わらないときはの値は定義されません。 ちなみに「」の関係が成り立ちます。
ところで、角の大きさは、1周を「」とする「度数法」に馴染みがありますが、数学では1周を「」とする「弧度法」がよく使われます。 「」は弧度法の単位で、しばしば表記からは省略されます。 例えば「」のことは単に「」と書かれます(図7-4)。
「」ですから、「」「」「」「」「」などとなります。
さて、やが具体的にどのような数になるかといいますと、ほとんどは複雑な数ですが、いくつかの値は分数や平方根で表すことができます。 例えば先ほどの、の定義から、表7-1の値が導けます。
|の値||の値|
また、が、、のときも、ピタゴラスの定理を駆使することでやの値が導けます(図7-5)。
これらの、の値は頻繁に使いますので、多くの人は暗記しています。
最後に、三角関数が作り出す図形「」「」「」という方程式を考えると図7-6のようになります。
角度はで1周するため、に対してごとに同じ形が繰り返されます。
今回は、ヒルベルトの公理から導かれる図形の性質や、それを次元ユークリッド空間で扱う方法、そして距離空間について説明しました。 次回は、「」について解説します！