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スイス国家を根底からデジタル化する――。そんな野心を抱くダニエル・ガシュタイガー氏は、シビックテクノロジーの分野で第一線を走る元投資銀行家だ。自分を安直だと表現するが、その安直さこそが彼の目標を実現させるのに必要なのかもしれない。
「地元ラジオ局の記者が、なぜ私があえてこの小さなシャフハウゼン州と協働しているのかと聞いてきた。答えは簡単だ。同州が革新的だからだ」とガシュタイガー氏は言う。
同氏は「ファーストムーバー」と新しく呼ばれている先駆者たちに興味を引かれる。自身もその一人だと認識しているからだ。ブロックチェーン分野に特化した同氏のスタートアップ企業Procivisは先日、州民向けの電子証明書サービスのシステムをシャフハウゼン州と協働で構築していくことを発表した。
連邦レベルでこのような巨大プロジェクトの可否が判断されるのは、早くて４年後の見込み。現時点ではその根拠となる「電子証明書法案」について関係者からのヒアリングが終了している。「今こそスイスは前進しなくてはならない。さもなければ我々はじきに時代から取り残されるだろう」とガシュタイガー氏は語気を強める。
政治に関わるこの企業家の最大の目標は、スイスという国を根底からデジタル化することだ。具体的には、省庁への問い合わせや、あらゆる公共サービスをスマートフォンで利用できるようにしたいという。税申告、住民窓口で行われるサービス、投票など、幅広いサービスが利用できる電子証明書向けのアプリケーションをProcivisで開発し、ある種の「スイス国家のiTunes」を築こうとしている。
連邦制は理想的な環境
ガシュタイガー氏は元公務員でもなければ、テクノロジーに精通した典型的な企業家でもない。最近までは投資銀行という全く違う分野で働いていた。当時は人気の就職先が銀行だったといい、同氏も大手銀行クレディスイスで職業訓練を受けた。掲げた目標は「４０歳で上層部の地位につく」こと。最終的には大手銀行UBSのアクセル・ウェーバー会長のオフィス室長まで上り詰めた。
考えを改める最大の契機となったのは、プライベートで起きた不幸だった。仕事の分野を変えて独立しようと決意した。「常に５年ごとに自分のキャリアを計画している。次の目標は成長分野でスタートアップ企業を立ち上げることにした」
意気込みは十分だったが、これだというビジネスのアイデアはなかった。そこで着想を得るため、バンコクで開かれたスタートアップ企業家向けの会議に参加。若い人たちがアイデアにあふれていたことに感銘を受けた。次に向かったカリフォルニア州シリコンバレーで、ようやく考えがひらめいた。
同州パロアルトにある通信会社大手スイスコムの子会社の元イノベーション担当者と話す中で、これからは暗号およびセキュリティ技術である「ブロックチェーン」の時代がやって来ることを、当時４４歳だったガシュタイガー氏は確信した。そしてこの技術は銀行業界を根本的に変えるだけでなく、国家にも大きな変革をもたらすだろうと予想した。「スイスの行政は地方分権が強く、まさにブロックチェーンのように機能している。両者はぴったりマッチするはずだ」
焦点はセキュリティ
その後の展開は速かった。ブロックチェーンに取り組むスタートアップ企業向けのプラットフォームNexussquaredを２０１５年に設立。テクノロジーを追い求める同氏は様々な場所を転々とし、偶然、先進国のエストニアに行き着いた。
首都タリンを訪問後、他国に先駆け行政サービスのオンライン化を手がけたこのバルト海沿岸の小国が、デジタル化の必然性をいかに強く認識していたのかを知り、感銘を受けた。それ以降、エストニアのe-residencyと呼ばれる電子証明書制度の立役者だったカスパー・コリュス氏と協働。日頃から政治に関心があったガシュタイガー氏は、リベラルな経済を目指す急進民主党に短期間所属していたこともある。
同氏の目標を実現させるには忍耐と勇気、そしてかなりの安直さが必要だ。なぜならスイスが歩んだデジタル化の道には数々の障害があったからだ。
これまでに頓挫した計画は数知れない。電子政府においては、スイスは他国に常に遅れを取ってきた。連邦レベルの電子証明書導入計画「suisseID計画」は軌道に乗らなかった。国民発議やレファレンダムで電子署名を導入する計画もあったが、スイス政府が凍結した。近年には電子投票制度の導入計画が再び立ち上がったが、国は１５年、セキュリティの不備などの理由から計画を停止させた。
セキュリティのことになると、ガシュタイガー氏は感情的になる。「行政や大学の関係者は『安全性が確保できていない点がある』と言って相手の口を封じようとする。しかし、そんなことを言ったらインターネットバンキングも導入できなかったはずだ！」。そのように「無駄に恐怖をあおる主張」に憤りを感じるという同氏は、まずはやってみて問題があれば対処する姿勢が大事だと説く。「スイスに足りないのは有能な頭脳ではなく、政治的な意志と理解だ」
ガシュタイガー氏は、自分は安直かつ安易に新しいことに手を出してしまうと率直に打ち明ける。新しいことを始める際は、その分野に関する知識をかき集めなければならなかったという。同氏の口調は落ち着いてはいるが、とても早口だ。そのテンポの速さは彼のルーツが南欧にあるため。「私はスイスの品質への高い意識とイタリアの気質を融合させている」
政界ではまだ無名
スイスの民主主義をデジタル化していくには、企業家精神や異文化コミュニケーション能力以上に必要なものがある。例えば政界に人脈を築くこともその一つだ。ガシュタイガー氏はスイスの政界ではまだあまり名が知られていない。連邦議会の各種委員会のメンバーを務める下院議員の多くは彼の名前を聞いたことがあるが、同氏の野心について知っている人はほとんどいない。
政治を動かすには辛抱が必要だ。周知のように、スイスの立法過程には長い時間を要するからだ。さらに国のデジタル化に反対する勢力もいくつか存在する。
だがこの元投資銀行家は悠長にスイスの動きを待つことはしないだろう。自身の会社Procivisで一種のデジタル版評判スコアを開発し、それを国連に売り込むことをすでに検討しているからだ。評判スコアがあれば、例えば身分証明書のない難民が国籍を証明できるようになるとされる。SNS上にある様々なプロフィールを基に個人の身元が証明されれば、国の身分証明書はじきに必要なくなるだろうと同氏は考える。
ダニエル・ガシュタイガーという人物は反政府主義のアナーキストなのだろうか？同氏は一見、ディストピア（反理想郷）を目指しているかにみえたが、会話の中でその印象は払拭された。評判スコアがディストピアにつながるのは（国による悪用が懸念される）汚職大国の場合だと同氏は語る。そして、ブロックチェーンに基づく解決策があれば、（汚職大国でしばしば見られるような）土地登記簿の偽造や改ざんが防げるという。
ガシュタイガー氏の一番の関心は、他人や国家から悪用されないよう市民を守ることだが、その必要性はこの国ではほとんどないと、同氏は認める。「スイスでは国民は国に高い信頼を寄せている。なぜなら国がうまく機能しているからだ」。同氏にとっては残念なことだが、スイスの統治機構はあまりにもうまく機能しすぎているため、そこをすぐに変えることは難しいかもしれない。
筆者について
筆者のアドリエンヌ・フィヒターはスイスの有力紙NZZのソーシャルメディア編集部元編集長。現在はインターネットを専門とするフリージャーナリスト。
スイスインフォでは、インターネット上での直接民主制について、具体的にはデジタル技術が制度やプロセスに与える影響や結果について記事を執筆。
主なテーマはソーシャルメディアが選挙や投票に与える影響、インターネットを通しての市民の政治参加、電子政府、シビックテクノロジー、オープンデータ。
フェイクニュースが拡散され、ボットがネット上をはびこり、ドナルド・トランプ氏が過剰にツイッターを政治利用している昨今、デジタル化に関する政治議論の重要性は増している。
スイスインフォは#DearDemocracyで直接民主制に関する傾向、可能性、危険性、それに対する政治的反応について取り上げる。
著者のツイッターアカウント：@adfichter他のサイトへ
（独語からの翻訳・鹿島田芙美）