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スイスに生息するオオヤマネコ、オオカミ、クマの数が増加しているというのは朗報だが、これら野生動物の今後の繁殖を保証するためには、さらなる資金と州間の協力が必要だ。
スイスでは野生動物の管理は各州に委ねられているが、この地方分権的なアプローチが野生動物の長期的な発展を脅かすことになると、WWFスイスが懸念を示した。
もっと全国的な視野で
「各州がかなり多くのことを独自に決定できてしまうため、スイスの連邦主義が時として障害になるようだ。もっと全体論的な見方、もっと全国的な視野が必要だが、うまくいかない」
と、「種の多様性プロジェクト」のリーダー、クルト・アイヒェンベルガー氏は言う。連邦政府が「構想」と名付け、野生動物保護に関する全国的なガイドラインを発行したが、問題を起こす動物を銃殺すべきかの判断は個々の州に任されている。
現時点で、今年は100頭の羊がオオカミの犠牲になり、そのほとんどがヴァレー州南部で起きた。世界自然保護基金 ( WWF ) によれば、1頭のメスのオオカミが羊40頭を食い殺したが、番犬の数が足りなかったか、または、羊用のシェルターがなかったために、羊の安全確保は十分ではなかったという。現在、ヴァレー州は政府のガイドラインを破ってオオカミを銃殺し、反対論者から非難を浴びるか、または、何も対策をとらずに農家の怒りを買うかというジレンマに陥っている。
スイスでは、オオカミの生息数が昨年1年間で5頭から9頭に増え、生息範囲は過去10年間で2州から8州に拡大した。また、オオヤマネコの数は100頭に上り、アルプス山脈一帯では最大規模だが、特定の地域で繁殖が進むとハンターとの問題も浮上してくる。
「ハンターからの圧力と、オオヤマネコの管理における州の自治性が、オオヤマネコの繁殖を妨げている」
とアイヒェンベルガー氏は言う。
州間の協力
しかし一方で、農家が家畜の安全を確保できるようにするには、これまで以上の資金が必要だが、全体的に見ればガイドラインはうまく機能しているというのが、政府の見解だ。
「3つの構想は全国規模のプログラムで、非常にうまくいっていると思う。もちろん時間はかかるが」
と、連邦環境局 ( BAFU/OFEV ) で野生動物管理責任者を務めるラインハルト・シュニドリヒ氏は言う。
「政府だけで行っているのではない。この3つの構想を実行に移すには全26州の協力が必要だ。ガイドラインに従って、オオカミ、オオヤマネコ、クマをアルプスに呼び戻すという大きな目標の下にすべての州をまとめたい」
また、家畜の保護を強化し、ハンターと農家の緊張関係を和らげるには、さらなる資金が必要だという点で、連邦環境局とWWFの双方が合意している。現在、国家予算から80万フラン ( 約6100万円 ) が対策費として割り当てられているが、シュニドリヒ氏の考えでは、この資金は野生動物の管理に当て、増資分は補助金という形で連邦経済農業局 ( BLW/OFAG ) から農家に対して出されるべきだという。
資金不足
農家から見れば、野生の捕食動物がもたらす脅威により、労働の負担と設備改善の必要性が増すため、農家を取り巻く状況は変わってしまった。そこで現在、農家をサポートするために必要な資金に関して、政府2局間で話し合いが行われている。
「オオカミの生息地域になっている州の数が増えれば、話し合いはもっと簡単になる」
とシュニドリヒ氏は言う。また、アイヒェンベルガー氏は予算を増やす必要性を強調する。
「もし野生動物を保護したいなら、もし現行の法律を守ろうと思うなら、厳密に実行に移すためにもっと資金が必要だ。野生動物が繁殖すれば、拡大する生息圏を保護するためにより多くの資金が必要になる」
しかし、WWFからは、全国規模のガイドラインを守り、協力関係を強めようとする州の存在が必要だという声が聞かれた。
「州は関係者全員と共に行動しなければいけない。野生動物の保護責任があるということを州が自覚することが重要だ。より広い視点に立たなければいけない」
とアイヒェンベルガー氏は言う。
「オオカミやクマがいつアルプスに戻ってくるかを州は予想するべきだ。将来に向け今から準備を進めておく方が賢明だ。早期に州が動けば、対立を避けることができる」
swissinfo、ジェシカ・ダシー 中村友紀 ( なかむら ゆき ) 訳
オオカミ
19世紀、狩猟と人間の居住区の拡大が主な原因となり、スイスのオオカミは絶滅状態に追いやられた。その後、国際的な合意の下、ヨーロッパでは「厳重な保護」が必要な動物に指定された。スイスには10年ほど前から隣国イタリアからオオカミが戻り始め、再定着している。
政府による「オオカミプロジェクト」は2001年に開始された。その後、内容が見直され、4カ月以内に少なくとも35頭の羊、または1カ月で25頭の羊を襲ったとされるオオカミに限り、銃殺が許可されている。
ローザンヌ大学が行ったDNA分析により、グラウビュンデン州で新たにオオカミ1頭の存在が確認された。これで、同州に3頭のオオカミが生息していることになり、スイス国内では合計9頭になる。11月にハンターがこのオオカミの足跡を見つけたが、今のところ、家畜への被害はない。
オオヤマネコ
スイスでは一番大型の野性のネコで、1971年に再びスイスに導入された。主にアルプス北部とジュラ地方に生息する。
1962年以降「狩猟に関する連邦法」により保護種に指定されている。1970年代から、スロバキアのカルパート山脈からアルプス西部とジュラ地方に再導入されている。
連邦環境局 ( BAFU/OFEV ) の「オオヤマネコ構想」では、オオヤマネコの再導入を計画的に行い、アルプス山脈に沿って生息地域を広げていこうとしている。
クマ
オオカミとオオヤマネコと同様、アルプス地域のクマは19世紀に絶滅した。
しかし、ここ数年間で、スイスに戻り始めている。最近ニュースになったクマ「JJ3」は、人間に危害を加える危険性が高いと地元当局が判断し、今年4月にグラウビュンデン州で銃殺された。
スイス国内でのクマの繁殖を予測し、連邦環境局は対策文書「クマ構想」を作成し、スイス国内のクマに関するガイドラインを定めた。