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「石油や天然ガスを利用した旧式の暖房設備は、持続可能な新設備と入れ替えるべきだ」。チューリヒ州では、名高いエネルギー研究者からこんな声が上がっている。この要求は単純かつ極めて民主的な国民の権利、個人イニシアチブ（個人発議）によって州議会に持ち込まれた。
「スイスの学者や研究者は基本的に目立たない」とは、もはや言えなそうだ。ジュネーブの欧州合同原子核研究機構（CERN）からは驚異的な発見が次々に届き、ロボット業界では重要な部品が開発され、ベルトラン・ピカールさんは先日ソーラー飛行機で世界一周を果たした。しかし、政治的な議論へと目を向けてみると、学者が積極的に参加している様子はあまり見受けられない。公の場での発言は、たいていが中立的立場に立つ専門家としてのものだ。
そんな中、博士号を持つ建築家ニクラウス・ハラーさんが、積極的に政治に参加していく団体をチューリヒで結成した。３６歳のハラーさんは、学問も社会の一部であり、専門家はその知識を社会のために積極的に役立てていくべきだと考える。
最高峰からの支援
ハラーさんを支援するのは４２人の専門家。さまざまな分野の著名教授が数多く名を連ねるほか、スイスの大学の最高峰、連邦工科大学チューリヒ校（ETHZ）のサラ・シュプリングマン学長の名前も見える。彼らの共通の要求は、チューリヒ州にあるガスや石油を使った暖房を、今世紀半ばまでに化石燃料を避けCO2を出さない設備へと段階的に替えていくことだ。メンバーの１人である気候学を専門とするレト・クヌッティ教授は、その理由を「気候変動対策はスイスでも十分に行われていないから」と語る。「建物の暖房などに化石燃料をまったく使わない技術はもうずっと以前から存在している」。ヴィリデン＋パートナー社（Viridén+Partner）が改築したチューリヒ市にある建物がその一例だ。この建物の外壁には一面、太陽光パネルが設置されている。
このようなアイデアを世に送り出す方法としてハラーさんが選んだのは、最も単純かつ民主的な方法、個人イニシアチブだ。チューリヒ州では、有権者は誰でも州議会に要望を届け出て、議会を納得させられれば、最終的に法律や憲法までも変えることができる。
スイスでは、チューリヒ州のほかアッペンツェル・インナーローデン準州とグラールス州の三つの州が個人イニシアチブを取り入れている（下記説明参照）。チューリヒ大学で政治学を研究しているトーマス・ヴィトマーさんの説明によると、チューリヒ州の個人イニシアチブは１９世紀中ごろ、当時盛り上がりを見せ出した民主運動の中で生まれた。人々は、権力を持つ少数の一族によるエリート的な支配に打ち勝つ方法の一つとして、直接民主制の革新とも言える個人イニシアチブを創り出したのだった。そして１８６９年、イニシアチブ（国民発議）と個人イニシアチブが憲法に記されることになった。
非常に直接的で迅速、だがチャンスはほぼゼロ
この個人イニシアチブを用いて州議会事務局に提出された発議は、内容を前審査することなく、直接、議会に持ち込まれる。１８０人いる議員の３分の１が賛成すると仮可決となり、次に州政府に送られる。
しかし州議会で仮可決に至らなければ、イニシアチブはここで終わりとなる。過去数十年に提出された個人イニシアチブの多くがたどった運命だ。年間約１０～２０件の発議が提出されるが、実際に州政府まで届くのは１～４件にしかならない。ハラーさんの発議は昨年秋、７３票の賛成を得て仮可決に至った。州政府は数カ月以内に、この案の内容を実現するためのモデルを作成する。それは再び州議会に送られ、そこで決議を待つ。
チューリヒ州の個人イニシアチブがなかなか結実しない主な理由の一つは、内容の多くが個人的な問題を扱っているからだ。また、連邦レベルですでに規定されていて、州議会に権限がないケースもある。チューリヒ州議会が昨年決議した個人イニシアチブは、教会の鐘を鳴らす時間帯と音量を大幅に制限する、あるいは国内外の銀行守秘義務を撤廃するという内容だった。
個人イニシアチブはまた、州政府や州議会の職務に負担をもたらすため、次のような疑問も浮び上がってくる。非常に迅速で直接的ではあるものの、最終的にほとんど可決されることのないこの民主的手段は、そもそも何らかの意味を持つのだろうか。
「持続的な」間接的効果
政治学者のヴィトマーさんは「直接的な結果だけを見ると、個人イニシアチブの成功率は確かにとても低い」と言う。最後に個人イニシアチブが州憲法を変えたのはほぼ１５年も前のことだ。
しかし、ヴィトマーさんはこの民主的手段が持つ間接的効果も強調する。このような発議は社会の底辺に潜む気づかれぬ問題を浮上させ、それを通じて議論を触発することもある。また、州議会がいったん否決した案件について、州議会議員がしばらくしてから間接的な対案といった形で反応することもある。つまり、政治家が同じテーマで自分の動議として議会に提出するのだ。そうなると、可決の可能性も高まる。
個人イニシアチブにはさらに「ガス抜き」としての役割もあると、ヴィトマーさんは言う。迅速で民主的なこの手段を用いれば、市民は容易に自分の要望を聞いてもらい、溜飲（りゅういん）を下げることができる。「それに、市民参加を可能にする手段があるというだけでもポジティブな影響を及ぼす」
このように、個人イニシアチブを利用すれば、議会にこれといったコネクションのない人でも自分の考えについて討議してもらうことが可能だ。建築家のハラーさんと彼のチームもそれを実行した。今は、州政府がこの個人イニシアチブの内容を練り直した後、議会がそれを可決してくれることを願うばかりだ。決議は９カ月以内に行われる予定だ。
しかしハラーさんは勝算は少ないと読む。「雲をつかむようなアイデアは何度も挑戦しないと実らない」。そして、何度も挑戦するつもりでいる。州議会で否決されても、最大の国民の権利であるイニシアチブ（国民発議）という手段もまだ残っている。「自分たちの未来は自分たちで築かねば。それも、今すぐに」
個人イニシアチブ（個人発議）
個人イニシアチブはスイスの直接民主制の中でも非常に特別な手段。個々の有権者が立法手続きに関与できる。
この手段を取り入れているのは、チューリヒ州、グラールス州、アッペンツェル・インナーローデン準州の３州のみ。
グラールス州とアッペンツェル・インナーローデン準州で市民が法律や州憲法の変更を要求する場合は、ランツゲマインデ（青空議会）に提議する。可決にはランツゲマインデの参加者の過半数が必要。end of infobox
皆さんの住む地域で個人イニシアチブ（個人発議）のシステムが導入された場合、どのような発議を行いますか？皆さんの意見をお寄せください。
（独語からの翻訳・小山千早 編集・スイスインフォ）, swissinfo.ch