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EUとの人の行き来の自由化が国民投票で承認されたいま、各地の警察は東欧から女性が売春婦としてスイスに大勢に流れ込むことを見込んで、体制を整えている。一方、売春婦からの相談を受けている組織の関係者は、警察とは別の見方をしている。
スイスでは売春は合法。最寄りの自治体へ登録すれば「営業」を始めることができる。一方、売春の斡旋は非合法なため、彼女たちは顧客が直接、携帯電話に連絡してくるのを待っている。
ジュネーブ市に登録されている売春婦の人数は、昨年７月は700人だったのが現在、1000人まで増加した。バーゼルでは昨年500人だったが、今年は750人に増えた。スイス全国ではおよそ3500人が「世界で最も古い職業」といわれる売春を生業としているという。
需要と供給
去年チューリヒでは新しく399人が売春業を始めたが、このうち109人は旧EU諸国出身の女性で、特にドイツ人が多かった。チューリヒ市警察のユルク・ライブントグット担当官は、拡大したEUとの人の行き来の自由化が国民投票で承認されたため、売春婦の数は今後も増えると予想する。自由化によりEU諸国の出身者は、滞在しはじめの90日間以内であれば労働許可が下りなくとも労働できるようになるからだ。
99年、EUとの第１次二国間協定が国民に批准され、拡大前のEUとの人の行き来が自由になった際、フランスから多くの女性がジュネーブの風俗業界に流入してきた。ジュネーブ市のクリストフ・ブージョル警察官によると、以前は1日に申請件数は3件ほどだったのが、いまは30件から40件に上るという。それまでスイス国籍を持つ女性のみ許可が下りたのが、規制が撤廃され「パリやリヨンからジュネーブに来て、簡単に労働許可が取れるようになった」とブージョル警察官。「女性も儲からないのにスイスまで来るわけはないだろうが、売春婦の数が急激に増加し、価格はすでに下がってきている」と語る。
過剰供給
ジュネーブで売春婦の相談に乗ったり世話をしている組織、アスパシー(Aspasie)で働くマリアン･シュヴァイツァー氏は「相場も下落しており、過剰供給気味にあるため、東欧から女性がいまになって大量に押し寄せては来ない」と見ている。
「登録件数が多くなったというが、外国人売春婦は、拡大前のEUとの人の行き来が自由化された時点で、正式な許可を申請したまで。以前から非合法にジュネーブで働いていた人がほとんどだ」という。さらに同氏は「スイスは売春婦にとって、天国などではない。生活費が他国より高いためきつい労働を強いられる」と指摘する。「仕事がなければスイスまで来ない。風俗業も景気に左右される。仕事がなければ失業するだけ。この業界においては女性は最初の犠牲者となる」と語る。
いまはロシア人やウクライナ人
連邦移民局も、スイスの風俗業界にこれまで以上に多くの女性が、東欧から仕事を求めてくるとは見ていないようだ。現在ダンスホールなどで働いている女性の多くはウクライナ、ロシア、ルーマニアの出身であり、いずれもEUには加盟していない国だ。
今年6月時点の統計では、欧州出身の女性1134人がダンサーとしてスイスで働いている。そのうちウクライナ出身者が504人、ロシアからが222人。一方、EUに新たに加盟した諸国のうち、スロバキア出身者は7人、ポーランドからは2人、ハンガリーからは14人と非常に少ない。
実は、東欧諸国の女性が風俗業界に職を求めてスイスに入国した件数が急増したのは、ベルリンの壁が崩壊した1989年だった。移民局のドロ・ヴィンカー広報担当によると15年前はあらゆる国の女性が風俗業で働いていた。しかし現在、たとえばチューリヒで働く売春婦の半数が東欧や旧ソ連の出身者で占められるという。「この10年間、スイスの風俗業は拡大し続けている。しかし、人の行き来の自由化に伴い、東欧からの売春婦の数がどれほど増加するかは予想できない」と見る。
国境が開放されたか閉鎖されたままかといった問題以前の、市場の需要と供給の問題なのだ。需要がなければ、女性も来ない。
swissinfo、マシュー･エイレン 佐藤夕美（さとうゆうみ）意訳