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スイスは小国だが、人道支援の伝統から、難民を比較的多く受け入れてきた。労働力強化のため、移民も受け入れてきた歴史がある。中には、国際養子縁組もいる。さらにバーゼルは国境付近に位置し、国際企業も多数ある。よって住民の３割を外国人が占めている。
家庭にドイツ語を話す人がいるなら、子どもは学校と家庭とで言葉を自然に覚える環境が整う。それに対し、ドイツ語を一切使用しない家庭の子どもたちには、サポートが不可欠だ。
こういった事情から、小学校ではドイツ語の補習授業「第二言語としてのドイツ語(Deutsch als Zweitsprache、以下『DaZ』)」を提供している。地域・学校によりシステムは異なるが、今回はバーゼル近郊のとある小学校内のDaZをご紹介したい。
水曜日の朝９時半、２時間目プリュス先生の教室に、アメリカ人の男の子、イギリス人の女の子、エリトリア人の男の子がやって来た。いずれも３年生、通常の授業を抜けてきて、このDaz の授業を受けている。
スイスに来て間もない児童は、このDaZに毎日出席するように言われる。その後は週に３回、２回と減っていき、通常の授業中も問題なくついていけると判断されるまで続く。
まずは単語カードを、男性・女性・中性名詞に分けていく。すぐに判断できるものもあるが、多くは不規則なので、暗記しなければならない。１人が男性、1人が女性、1人が中性名詞を拾っていき、色別のシートに並べていく。全部そろったら、ひとつひとつ読み上げて確認。Das Brett（板）、Das Fell（毛皮）などを先生が説明、子どもに説明させることも。先生は自然なスピードで話すが、子どもたちはしっかり聞き取っている様子。
ほかにも紙を切り離して正しい位置に貼るなど、手を動かして行う活動を多く取り入れている。途中で歌ったりもする。子どもたちはみんな集中していて、積極的に発言もする。少人数なので、先生の目は充分行き届いている。
教材は先生の手作りあり、購入したものあり。なんともカラフルに彩られた教室は、まるで幼稚園のようだ。
ここに来る子どもたちは、普段の教室で、多かれ少なかれストレスにさらされている。皆の言っていることが解からないというストレスだ。それでも彼らは先生に質問をしない。先生は外国人児童に常に注意を払ってはいるし、遠慮なく質問するように言うものの、彼らはいちいち皆の注目を浴び、授業を中断してまで質問する勇気はない。先生としても、ごく少数派である彼らのために、レベルを下げる訳にはいかない。彼らが黙っている間、授業は先へ進んでいく。
せめてDaZでは、リラックスした状態で学べるようにと、明るく楽しい環境を目指している。補習授業というと、開始前にジュースを飲んだり、歌を歌ったり、ストレッチ体操をしたりして、まずリラックスさせてから授業に入ることが多い。リラックスした状態なら、学んだこともより確実に頭に入るというわけだ。
先生は子どもの発言を、いつも根気よく聞く。ドイツ語以外の私語は注意されるが、ドイツ語ならかなり柔軟かつ寛大に応対している。授業の流れが中断されても叱らない。
このプリュス先生という方が、４カ国語の飛び交う家庭に生まれ育ったおかげで、現在は独・仏・西・伊・英語を難なく話す。児童が理解できない時、これらの言葉で説明がなされることも。
しかしアジア人・アフリカ人等もいるので、原則としてドイツ語で授業が行われている。
３時間目は、４年生の子どもたち。その日は推理小説をテキストに、朗読ＣＤを聞いて各自が文章を指で追った。知らない単語を書き出し、全部理解できたら、出てきた動詞を人称変化させる。滞在歴が短い子は、不規則動詞の変化が頭に入っていない。何度も練習をくり返す。
４時間目になると、６年生が２人来た。各自が文法ワークや作文などに取り組む。他の児童がドイツ語の授業を受けている場合、ここDaZでもできるだけ同じ内容を扱い、遅れをとらないようにという配慮だ。
高学年はさすがに少人数である。中には、スイス在住歴が長いのに通い続けている子も。DaZでは他の子たちに気兼ねすることなく、分からない単語も質問できるし、先生も丁寧に説明してくれるから、というのだ。
とはいえ、中には５年生でスイスに来た子もいるので、レベルは多岐にわたっている。一人一人にそれぞれ違う課題を与えた上で、先生１人が同時に５人を個別指導することさえある。教室はかなり狭く、先生が他の子に説明する声も耳に入る。そのせいで、気が散ってしまう子もいるのが現状だ。
通常の授業を抜けて補習授業に出るというのは、スイスに来て間もない子にとっては大変効果的なシステムである。何もわからず教室に座っていても、時間が無駄に過ぎるだけだから。
しかし抜ける授業が、ドイツ語や算数など主要科目になることも多い。通常の授業中にテスト範囲について説明がなされ、DaZに出ていた子が聞き逃すなどのトラブルも実際はある。
ではスイス在住歴が長いにもかかわらず、DaZに来ている子はどうだろう。理科や歴史の授業は難しくても、日常会話は問題ない。文法を間違えるとはいえ、スイス人の子もまた間違える。語彙が少ないのなら、ネイティブスピーカーの中に混じって自然に覚えればいい。または親が家庭でサポートする。そうすれば、授業を抜けてまでDaZに行く必要もないのでは……？
と思ったが、DaZを放課後に行う地域もあるという。それなら、ドイツ語環境にいる時間が増えて良い。……しかし今度は授業時間が増え、子どもの負担も増えるという問題が生じる。
一方、初めから外国人だけのクラスを作り、常にDaZのような授業を行うところもあるそうだ。しかし担任１人が２０人クラスを教えるらしいから、それも少々疑問が残る……。
理想はもちろん、マンツーマン指導だ。けれども財政上、それは難しいのだろう。
とにかく、親たちの心配をよそに実際は、学年が上がるにつれ、彼らの多くがDaZを卒業していく。
エリトリア出身の３年生、べルック君とその家族に話を聞いた。お父さん、お母さん、べルック君とお兄ちゃんの４人家族である。５年前に難民としてスイスにやって来た。
べルック君はDaZの授業中、誰よりも活発に発言していた。ただし文法は苦手なようで、名詞の性別がまだ頭に入っていない。
彼らの母国語ティグリニア語は独自の表記法を持ち、ドイツ語とまったく異なる言語だ。べルック君も、家庭ではティグリニア語を話している。しかし最近は、５年生のお兄ちゃんナホア君とドイツ語で話すという。ナホア君は、「ドイツ語のほうが知っている言葉が多いから、いろんなことが言えるんです」と、はきはき答えてくれた。
そのナホア君、３年生になった時点ですでにDaZを卒業している。分からない時は、休み時間に質問するようにしていると言う。担任の先生が、授業中もまったく問題はないと断言していた。
プリュス先生によれば、スイスに来てすぐに友達を見つけ順応した子ほど、ドイツ語の上達が速いという。べルック君の両親は、スイスに来た事情が事情なので複雑な想いを抱いているが、子どもたちはすっかりスイスの生活になじんでいる様子が印象的だった。
たとえ子どものドイツ語が遅れていても、家庭では常に母国語を話すようにと、親は担任教師に言われる。抽象的な概念などは、何語であってもとにかく理解をしていることが大切。ひとつでも得意な言葉があれば、あとはつられて伸びていく。
親は子どもの可能性を信じつつ、辛抱強く支えていくしかない。これはどこに住んでいようと、共通のルールなのだろう。
平川 郁世
プロフィール：平川郁世
神奈川県出身。イタリアのペルージャ外国人大学にて、語学と文化を学ぶ。結婚後はスコットランド滞在を経て、２００６年末スイスに移住。バーゼル郊外でウォーキングに励み、風光明媚な風景を愛でつつ、この地に住む幸運を噛みしめている。一人娘に翻弄されながらも、日本語で文章を書くことはやめられず、フリーライターとして記事を執筆。２０１２年、ブログの一部を文芸社より「春香だより―父イタリア人、母日本人、イギリスで生まれ、スイスに育つ娘の【親バカ】育児記録」として出版。