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都会では今年の夏も、素足にサンダル姿で涼しげに歩く女性の姿を見かけるのではないだろうか。一方スイスの夏は、素足よりさらに進んだ「裸足で歩くハイキング」が注目されそうだ。
裸足のハイキングコースがあるのは、スイス北西部トゥールガウ州の小村、ヴッペナウ ( Wuppenau ) 。人口1050人の村の村長を務めるハンスペーター・ガンテンバイン氏は、村人700人ぐらいの名前ならすぐ口に出てくるという。村人は30以上もあるというさまざまなクラブで交流を深め「みんなが知りあい」という。
入場無料
こうしたクラブの１つ、森を管理する「ヴッペナウ森林協会」は、50人の会員が村にある小高い山、「ノッレン ( Nollen ) 」の森の手入れをしている。寄付を募り、池を作ったり、木製の鳥かごを木にくくりつけたりするなどして、15年間かけて森を村人や周辺の市民の憩いの場に変えていった。見晴らしの良い場所からは、グラールス山脈などプレアルプスが見渡せ、バーベキューができる場所や、広い前庭があるレストランもある。
森林協会の活動の一環として昨年、3万5000フラン ( 約320万円 ) を投資して作ったのが、裸足で歩くハイキングコースだ。森をぐるりと周るコースは7キロメートル。短距離コースは4キロメートルある。スイスでもアッペンツェル州に1カ所あるだけの、ユニークなハイキングコースだ。
「入場料は取りません。村の外からも裸足のハイキングをしたいという家族連れなどが来れば、村にとって有意義ですから」
と森林協会の会長も兼任するガンテンバイン氏。
泥んこありガラスあり
森の入口で裸足になった著者はガンテンバイン氏の案内に従い、ひやりとする緑の芝生を踏みながら森の中に入っていった。森の中では、小石が敷き詰められている道から、木片の道になり、奥に行くにつれ松葉が覆う道と足の裏が受ける感触の変化も豊かだ。起伏の少ない山道はきれいに整備され、裸足でもけがはしないだろうという安心感を与えてくれる。
子どもたちにとって最も楽しいアトラクションは泥んこの道だという。傾斜が緩く段になっている。端は泥が乾いていて浅いが、中央は大人でも太ももあたりまで沈んでしまう深さだ。
「子どもの服が汚れたらしく、親からクレームが来たことがあります。しかし、危ないことはありません。私は今55歳ですが、小さいときは裸足で走りまわっていました」
とガンテンバイン氏は微笑 ( ほほえ ) む。
次の冒険は「目隠しの道」。目を閉じて、さまざまな素材の上を歩いてみる道だ。
コルク、砂利、小石、木と言い当てていく。足の感覚を鋭くできる道でもある。小石を踏んだと思った著者にガンテンバイン氏は
「それはガラスの破片です」
思わず目を開く著者。
「ほら、ガラスが赤いのはあなたの血…」
といたずらっぽく笑う。もちろん、足は切れてはいない。ちなみに今回は1時間歩いたが、足の裏にとげが刺さることも傷がつくこともなかった。
「現代人は、何かテーマを与えなければ屋外に出ません。小川の源流を捜しに行こうとか、裸足のハイキングをしてみようといった課題があれば、喜んでここに来ます。冒険はこんなに近くにあるのです」
と語りながらガンテンバイン氏は、足の裏が敏感になり歩くスピードが落ちる著者を置いて、靴を片手にどんどん歩き進んでいった。
家の中で裸足になることはあっても、屋外で裸足になることはめったにない現代人。この夏の「リフレマッサージ」は、スイスの森でいかがだろうか。洗い場で足をすっかりきれい洗った後も長時間にわたって、あなたの足はフレッシュな感覚に包まれるはずだ。
佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 、ヴッペナウにて、swissinfo.ch
ヴッペナウ 裸足のハイキングコース
連邦鉄道駅ヴィル ( Wil ) からバスで約10分。ヴッペナウ ( Wuppenau ) 、もしくはホーゼンルック ( Hosenruck ) 下車。4月から10月までは森林協会のチームが道を常に整備している。コースは4キロメートルと7キロメートルの2本。足を洗う場所は2カ所。コース上にレストランが3軒あり、バーベキューをする場所もある。
スイスにはこのほか、素足で歩くハイキングコースが、アッペンツェルのゴンテン ( Gonten ) や、トッケンブルクのヴァルツェンアルプ ( Walzenalp ) などにある。