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この7月、アイガーから巨大な岩や石が落ち始めた。温室効果による温暖化で、氷河が溶けたせいだという。スイス連邦工科大学（ETH）の大村纂（おおむらあつむ）教授に話を聞いた。
教授は地球をグローバルな観点から捉える「気候学」の権威である。
大村教授は、ノーベル賞受賞者を輩出するスイス連邦工科大学環境学部大気気候学研究室の教授として、5人の助手、2人の技官から成るチームを率い、多忙な研究の日々を送る。今回、地球をグローバルに見る「気候学」の観点から、温室効果、氷河問題を分かりやすく解説してもらった。ちなみに「気候学」とは30年以上の長い目で見た気象現象を言う。
swissinfo ： 温度上昇に関しては、モデルの違いによって数値が異なりますが、まず、ETHとしては何年に何度、温度が上昇すると見ていますか？
大村 ： 温室効果ガス中、一番重要な二酸化炭素濃度が2050年頃にはで産業革命以前の濃度 (280ppm ) の2倍 ( 560ppm ) に達し、この時までに1.3〜1.4度上がり、残り50年はもっと濃度が加速され2度は上がるでしょう。従って、100年後3.3〜3.4度上がると見ています。
そうすると、スイスでは70~80%の山岳氷河面積が消え、高い所の氷河のみ多少残る。スイスの風景は変わりますよ。
swissinfo ： スイスでは、7月にアイガーから石や巨大な岩のかたまりが落ち始め、大騒ぎになりました。これも氷河が溶けたせいですか？
大村 ： そうです。岩壁は氷河が支えになって安定していますが、温暖化で氷河が溶けると支えがなくなり、それだけで岩が落ちます。さらに岩の中の温度が上がっていて、岩の割れ目にある氷が溶け出すと、本来この氷は岩の塊をひっつけるセメントの役割をしているので、それがなくなり、岩はぼろぼろと落ちていくわけです。
これからいろいろな山で、どんどん落ちていくでしょう。マッターホルン全体が崩れ落ちるんじゃないかと心配する人もいますよ。
Swissinfo ： えっ、本当ですか？
大村 ： やっぱり中の氷が溶けてしまえば、つなぎ止めておくものがないので、大きな岩が滑り落ち、まあ、マッターホルン全体はなくならなくても、山の形は変わるでしょう。そういうことがアルプスのあちこちで起こると思っております。
swissinfo ： スイスの氷河が消え、山の形も変わるのは悲しいことです。ところで、温室効果で人間が受ける一番の打撃はなんでしょうか？
大村 ： 問題は、温度が上昇するということだけではありません。上昇のスピードが問題です。過去100年で1度上昇した。これから100年で3度も上昇する予測ですね。だから、平均100年に1度上昇すると仮定しても、自然界ではすごいスピードです。
自然界の歴史で一番スピードの速い温暖化が起きたのは、氷河期最盛期の2万年前から最後までの1万年間です。この間、陸地では、平均10度上昇した。つまり、1000年で1度上昇した。今はこれの10倍、いやそれ以上の速さです。
そうすると、このスピードで植物界、動物界は北上したりして、適応していけるのか？恐らく適応していけないと思います。人間も含め。適応できないものは消滅していきますからね…
swissinfo ： もっと具体的には？
大村 ： 人間界では漁業、農業が自然界と直結しているので、一番打撃を受けるでしょう。水温が上がって、魚がいなくなる。農業では、降水量も温室効果で変化し、収穫量が変わってくる。
例えば、コーンベルトと呼ばれるアメリカ中部の大農業地帯で雨が降らなくなることは、気候モデルによって、もう確実です。すると孫の代は農業をやれない。カナダは反対に降水量が増え、暖かくなる。僕だったら、カナダに移住することを真剣に考えますよ。
しかし、人間は悲しいことに、長い目でものが見られない。皆がこのまま続くだろうと思っています。人間は変化を嫌いますからね。
日本でも行政改革なんて言っておきながら、いざ郵政省をなくすというと80%が反対 (笑い)。だから、指導者はリーダーシップをもってやり抜く必要がある。気候変化に対する政策も同じことです。
swissinfo ： 今人間が、国のレベル、個人のレベルで努力すれば、変わるのでしょうか？
大村 ： とにかく今、努力して、取り返しがつかなくなる前に止めないと。残念ながら、二酸化炭素濃度が2倍になることはもう確実です。今の生活スタイルからこれは避けられないことが統計的に分かっています。
けれど3倍になるのはどうしても食い止めないと。もし、なにもしないと100年後3倍です。3倍になると南極大陸が溶け始め、海水面は上がるし、一度溶けると、不可逆反応で、取り返しがつかない。
国のレベルでは、「京都議定書」にサインした国々はきちんと努力することです。「アメリカやオーストリアが批准しないから効果がない」と言って、やらないのではなく、これらの国を無視して、常識ある国々が努力すれば、効果は大きい。
また個人レベルでは、暖房を熱くしすぎないとか、電気を節約するなどの細かい努力でも、各個人がやればすごい効果があがる。
自動車をなるべく使わないといった努力も大切。日本はあれだけ鉄道網が発達しているのに、車を使う人が多い。貧困の裏返しです。車を持っているとみせびらかせたい。スイスはもうそのレベルを20年前に通り越しました。皆、電車で通勤します。
swissinfo ： 話は変わりますが、ご専門は氷河と言っていいのですか？
大村 ： いいえ。氷河は僕の趣味みたいなもの。研究のごく一部です。専門は「気候学」で、特に「地球の熱収支」が僕の専門です。
地球が太陽から熱を吸収して、その熱で大気と海洋の循環をまかない、最終的には同じ熱エネルギーを宇宙に放射します。その過程で気温、降水、風 などの気象現象が起こる。それを「熱収支」の立場から理解しようとするものです。当然、氷河も関係しますね。
このように、ETHではグローバルなスケールでの「気候学」をやっている。他の大学では「スイスの気候学」などと局地的。「グローバルな気候学」、これは僕の貢献だと思っています。
swissinfo ： ETHはノーベル賞受賞者を何人も輩出する世界的に有名な大学ですが、ETHで研究されて良かったですか？
大村 ： 他国にいる友人の研究者に比べ、ETHで研究できて、とても恵まれていたと思っています。とにかくインフラの部分がすごいのです。
新しいことを発見するには新しい観測機がいります。ETHでは僕の研究室だけで2人の観測機を作るプロの技官がいます。僕がアイデアを出し、大雑把にデザインすると彼らが作ってくれるのです。
けれど観測機を作るのはリスクも大きい。アイデアは良かったけれど、うまくできないこともあり得る。リスクのあるものに、ETHはお金を出してくれるのです。実は、温室効果には赤外線の増加を測らないとだめですが、5年前に作った観測機で、新しい数値を発表し、僕と技官は来年、世界気象機関（WMO）で賞をもらうのです。
swissinfo ： 今後のご予定は？
大村 ： あと1年で退官ですが、英語で専門家用に「気候学」の教科書と、日本語と英語で学部学生用に「氷河学」の教科書を書いています。これらに数年かかります。また、国際雪氷学会（IGS）の会長をあと2年間やらないといけません。
でも、3人の子供の最後があと1年で大学を終えるので、これから旅行をしたい。学者としてではなく、世界のいろいろな所を旅してみたいと思っています。
swissinfo, 聞き手 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
補足情報
- 大村教授は東京大学理学部卒業後、カナダのマッキール大学で修士号を取得。
1970年からETHで研究。
1973年、ETHで博士号を取得。
その後、日本人としては初めて、ETHの教授となる。
-1970年来、スイスのチューリヒに、 カナダ人の夫人、3人の子供と住む。
- 温暖化で山が崩れる現象は、1万年前の氷河期最後にもあった。ヴァレー州シエール北側の美しいブドウ畑はローヌ氷河が後退してなくなり、そのせいで山が崩れた跡。
- 温室効果で降水量も変わる。それは大気の循環が変化するから。
- 「京都議定書」は1997年に地球温暖化防止京都会議で議決した議定書。温室効果ガスを先進国が2008〜2012年の間に各々、数パーセント（日本は6%）削減することを定めている。
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