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スイスのパスポートを持っている人は世界最強の参政権を享受している。しかしその割合はスイスに暮らす人の4分の3に過ぎない。つまり残りの4分の1の人たちは、スイスで生活し、スイスに税金を納めていても、政治に参加する権利がないのだ。これでは民主主義が損なわれる恐れがある。
スイスインフォの直接民主制の特集「#DearDemocracy（直接民主制へ向かう）」の記事です。この特集では外部の識者が様々な見解を述べますが、スイスインフォの見解とは必ずしも一致しません。インフォボックス終わり
スイスでは地方レベルでも外国人には参政権がほとんど認められていない。ドイツ語ではチーズはくだらないものの例えに使われるが、こうした現実はチーズのように軽視すべきではない。スイスは外国人の政治参加に消極的なために、民主主義の国際ランキングでトップを取れないでいるのだ。
帰化のしやすさをチーズに例えると、スウェーデンはさしずめ穴の開いたエメンタールチーズと言ったところだろう。北欧諸国の帰化制度は極めて透明性が高いからだ。デンマーク人、フィンランド人、アイスランド人、ノルウェー人は在留期間2年でスウェーデンに帰化申請できる。それ以外の国の出身者は最高5年は待たなければならない。
一方、エメンタールチーズ発祥の地スイスは硬いパルメザンチーズだ。世界クラスのスポーツ選手であれば帰化手続きはスムーズに進められるが、そうでない外国人には辛抱が強いられる。ただ、銀行口座の預金が円換算で少なくとも1億円以上あるとスイスの国籍取得にかなり有利だ。
パスポートがなければ政治に参加できない
国際的にみると、スイスは外国人にとって政治参加が極めて難しい国だ。ハードルが著しく高く、その数も非常に多いからだ。そのためスイスに長く暮らす外国人の中には帰化をあきらめ、政治参加を断念する人が相当数いる。
現在、スイスに暮らす成人の4人に1人が様々な理由からスイス国籍を持たず、政治に全く参加できていないか、地方レベルの参政権を持つだけだ。
各州によって異なる外国人政策
スイスでは実際、在住外国人が政治に参加できるかどうかは地域によって大幅に違う。連邦制度を取るスイスでは州によって外国人政策が異なるためだ。
ヌーシャテル大学は「nccr → on the move」というプロジェクトで、様々な要素からなるインデックスに基づき、各州の帰化制度、外国人参政権、在外スイス人の参政権についての調査および全国比較を行った。
リベラルな西スイス
その結果、帰化制度に関しては農村地方のドイツ語圏および南部の州と、都市部でプロテスタントの北部および西部の州とで大きな違いがあることが分かった。
外国人参政権ではさらに違いが大きかった。比較的寛大なのはフランス語圏の州で、特にリベラルなのがヌーシャテル州。他にもバーゼル・シュタット準州、グラウビュンデン州、アッペンツェル・アウサーローデン準州が外国人参政権を認めているが、他の州では認められていない。
もちろんここで言っているのは州レベルの参政権であって、連邦レベルではこれまで述べてきたようにスイス国籍保有者だけに参政権が認められている。
スイスとスウェーデンは似て非なる国
しかし上のグラフは事実の半分しか反映していない。外国人参政権が認められていても、それで何ができるかがあいまいなために、人々が実際にこの権利を行使するかどうかはまた別問題だからだ。
ルツェルン大学が開発した欧州各国の民主制を比較するためのインデックスでは、移民が実際に政治参加できているかどうかも考慮された。欧州で最も強い参政権を移民に認めているのは、あまり驚きに値しないがスウェーデンだ。一方スイスはその逆で、最下位のキプロスをわずかに上回り下から2番目の順位だった。
議論の続く外国人参政権問題
国民投票中心の民主制を敷くスイスでは長い間、外国人参政権を巡る政治的議論が行われている。連邦レベルで外国人参政権が実現する見込みはないが、州レベルでは導入に向けた動きが見られる。
最近の例だと、シャフハウゼン州で2014年、外国人参政権の導入の是非を問う住民投票が行われたが、反対85％の圧倒的大差で否決された。意外なことにリベラル派のシンクタンク「アヴニール・スイス」は15年、地方レベルで「活動的な外国人に被選挙権」を導入することに固い支持を表明。ベルン州でも州議会でそれと似た方向性を目指す動きがあったが、結果として白紙になった。ソロトゥルン州では外国人参政権が再び政治的議論の対象になっている。昨年、州議会が外国人参政権の導入を否決した同州では、左派の政党青年部連盟が住民投票を提起し、導入の実現を目指そうとしている。インフォボックス終わり
スイスは中欧に浮かぶ共和主義の島
もちろんこれは偶然ではない。スイスの移民政策は厳しいことで知られるが、それはこれまでの歴史と、国家の在り方への考え方によるところが大きい。スイスは共和国だが、おそらくすべての共和国の中で最も共和的だろう。
共和主義では「国民」が明確に規定され、国民とそうでない人がきっぱり線引きされる。国民であれば、国の在り方を決め、政治に関与できる権利を主権者として存分に享受できる。つまり共和国の国民は単なる国民ではなく、自らが国の一部であり、被支配者と共同支配者を兼ねる。このように「国民」が排他的なものであり、主導権を握るものと考えられてきたために、スイスで女性参政権が導入されたのは1971年と比較的遅かった。保守派の男性たちは導入以前、女性は「国民に属さない」と考えていたのだ。
納税は賛成、共同決定は反対
それはつまり言い換えると、国民に属さない人たちはほとんど政治に関われず、大半の地域では外国人の政治参加が全く認められていない。たとえ隣に住むスイス人と同様に税金を納めていても、だ。
公共に関する事柄を取り決める際、彼らの意見は聞かれない。しかしそれは民主主義を損ねることにつながる。税を納め、国の法律に従う人に政治の共同決定権を認めるのがリベラルな国の原則だからだ。
女性参政権が導入されるまでにかかった時間を外国人参政権の導入にかかる時間の目安とすれば、自動車が空を飛べ、夏の休暇先に火星が選べ、培養肉のカツレツが一般的になっている頃に外国人参政権が連邦レベルで実現されるだろう。引用終了
はっきりしていることが一つある。それは、女性参政権が導入されるまでにかかった時間、つまり123年を外国人参政権の導入にかかる時間の目安とすれば、自動車が空を飛べ、夏の休暇先に火星が選べ、培養肉のカツレツが一般的になっている頃に外国人参政権が連邦レベルで実現されるだろうということだ。しかしそもそも外国人参政権の導入には、国民投票で賛成が過半数を上回らなければならない。
そのため市民権と参政権を別々に考えるよりも、スイスの帰化手続きを緩和する方が実現性が高いだろう。だが、ここでも激しい反発が予想される。
スイスをリベラルの型にはめようとした最初で最後の人物が、他ならぬナポレオン・ボナパルトだった。しかし欧州最大の支配者でさえも白旗を挙げなくてはならなかった。絶望に陥ったナポレオンはこう言ったという。「幸運が重なった結果、私はフランス政府の頂点に立つことができた。だが私にはスイスの統治はできないようだ」
（独語からの翻訳・鹿島田芙美）, swissinfo.ch