Document ID: /fineweb-2-swissfilter-quality_10-filterrobots/filtered/00357.jsonl.gz/32

日本で最も繁栄しているチョウ、ヤマトシジミ。福島第一原発事故のこのチョウへの影響を共同研究した琉球大学院生の野原千代さんが１１月２９日、ジュネーブで開催されたシンポジウム「放射線の遺伝子への影響」で講演し、大反響を呼んだ。この研究は２０１２年の発表当時にスイスのメディアでも大きく取り上げられている。野原さんに研究との関わりや今後など、自分史的な視点も交えながら語ってもらった。
「原発事故が起こったとき、それまで縁もゆかりもない福島なのに気になって仕方がなかった。まるで自分の娘たちがそこに住んでいるように思われ、飛んでいって何が起きているのか自分の目で確かめたかった」と野原さんは振り返る。結局、この想いがヤマトシジミにのめり込んだ理由なのだという。
事故後すぐに、ヤマトシジミで色模様の発生生理学的メカニズムなどを研究していた琉球大学の大瀧丈二准教授に「原発事故のチョウへの影響の研究」を提案し、他の院生とともに研究グループを結成して取り組んだ。
野原さんは、もともと理学畑の人ではない。それどころか、官庁の監査を行う「公監査」を愛知大学准教授として教えていた。その後、環境問題に方向転換して沖縄に移住。その矢先に３・１１が起こった。
最初の研究結果の概要は以下の点だ。まず原発事故後２カ月目の２０１１年５月、サンプリングで得た福島市と本宮市の被曝１世のオスの翅（はね）の大きさが、つくば市などのものより「矮小化」していると確認。次に被曝したチョウを沖縄で育てその子世代で、原発からの距離が近くなるにつれ卵からの蛹化（ようか）と羽化において多くの日数がかかる「成長遅延」と「形態異常率の増加」を見ている。さらに子世代の異常個体を親として孫世代を作り、そこでは、類似の異常が次世代遺伝しただけでなく、これまでにない（触覚が二股に分かれるなど）「異常形態の出現」も観察している。研究グループはまた、沖縄の個体に外部被曝と福島地方のカタバミ（食草）を与えて内部被曝を行い、この両方の被曝において「生存率の低下」、「矮小化」、「形態異常」を観察している。
swissinfo.ch : 最初にサンプリングのために福島県に行ったときは、事故後わずか２カ月目です。
野原 : 確かに余震などの危険性もありました。でもとにかく、幼虫で冬を越し被曝した１世をきちんと採集したかった。チェルノブイリでは５年後にしか生物のそうした研究ができていない。そうはしたくなかった。特にヤマトシジミは世代交代が約１カ月と早いので迅速な観察が望まれたのです。
東京や柏市などとの比較もあり、大瀧先生と私と２人の研究者の計４人で連休明けに各地を回りました。
swissinfo.ch : チョウの死亡数を数えたり異常形態を見つけたりと、以前の「公監査」とは全く異なる研究。ギャップを感じましたか？
野原 : 毎日が必死で、がけっぷちに立たされているような日々。そんなことを感じる余裕は正直なところなかった。内部被曝させるため、汚染したカタバミを採集に郡山や（原発から西へ約６０キロメートルの）本宮に１０日に一度通っていたからです。
沖縄から羽田に飛び、そこから車を走らせて福島県に着き、カタバミのあるところを探し、同時にそれを宅配便で一日３、４回沖縄に送ってくれる業者を探しました。
一度行くと３泊し、沖縄に戻ると私の不在中に草をやってくれていた研究者に負担をかけたくないので、到着の夜はそのまま研究室で徹夜し草をやる。そんな生活を１年半やりました。
swissinfo.ch : これまでの実験の中で、最も印象に残ったことは？
野原 : 福島県の福島市、飯舘村、広野町の汚染食草と山口県宇部市の食草を与えた内部被曝の実験です。
その実験で、羽化したチョウのうち、福島市と飯舘村２カ所のチョウの動きが山口県の葉を食べて育ったチョウに比べて、明らかにモタモタしている。毎朝、羽化するチョウがすべてそうなのです。大変な衝撃を受けました。これがいわゆる「原爆ぶらぶら病」なのかと感じました。
しかし残念ながら、こうした事態を想定していなかったので、そのような動きの違いを定量化することはできなかった。ですから、形態異常が見られなかったそれらのチョウは、「正常」なチョウとしてカウントしています。
このことから、私は、確実に福島で何かが起こっていると感じました。
swissinfo.ch : 今進行中の研究や最近の研究の成果を教えてください。
野原 : つい最近まで、研究者の１人の平良渉さんと一緒にゲノム解析のためのDNA抽出をやっていました。鹿児島のヤマトシジミのDNA配列は読めたので、今後は彼が中心となって福島地方のチョウのゲノムとの比較をやっていきます。ゲノム変異解析研究は、異常形態がゲノムレベルで起こったのかを知る上で、とても大切なのです。
また、つい最近発表した内部被曝の観察結果は興味深い上、私にとっては光が一筋さしたような研究になりました。まず、沖縄の第１世代（F１）の幼虫に、一方には沖縄の草を、他方には本宮や郡山の草を与えた。するとやはり後者のグループの死亡率・異常率は沖縄グループより高かったのです。ところが、第２世代（F２）で、たとえ親のF１に本宮・郡山の草を与えても、F２に沖縄の草を与えたグループ（F１本宮―F２沖縄、F１郡山―F２沖縄）は生存率が高く、２世代とも沖縄の草を与えたグループ（F１沖縄―F２沖縄）とほほ同じ生存率を示しました。
つまり、これを人間に適応して考えた場合、第２世代に汚染されていない食品を与えれば、生存率において問題がなくなる可能性が示唆され、そういう意味で私には希望が感じられたのです。
swissinfo.ch : 物理学者や生物学者、そして医者などが多く集まった今回のシンポジウムでも、このF２に沖縄の草を与えた場合の生存率の高さは、大きな反響を引き起こしました。
野原 : 確かにF２で生存率・正常率が回復したので反響は大きかった。しかし次の二つはきちんと確認したい点です。一つは、F１で本宮や郡山の草を与えた場合の死亡率・異常率は相変わらず高いということです。そしてもう一つは、沖縄の草のお陰で生存率や正常率は回復したF２でも、ゲノムのレベルで損傷が起こっていないとは言えない点です。
ところで、聴衆の１人が独自にこうした結果を人間に当てはめ、チェルノブイリの第２世代の子供たちが同じ場所にとどまり、今でも汚染された食品を食べ続けていることは問題だと発言しました。
実際、チェルノブイリ事故後に身体的・精神的問題を抱えた第２世代が苦しみ、時に自殺したり、またはこうした状態に耐えられない父親たちが家出したりといった話はよく耳にします。福島から沖縄に避難した、いわば第１世代の人々もさまざまな症状を抱え苦しんでおられる。
私は、そうした被曝者が社会に受け入れられることと、彼らがそれぞれの症状に応じた治療相談にのってもらえる拠点が、日本には必要だと思っています。そこで得られる治療法や情報は、まだ確立していないものや極端な場合はプラセボ（偽薬）でもいい。とにかく、ベラルーシなどでの経験を学びつつ、孤立しないでお互いに情報を交換できる場所が必要なのです。
実は今、ヤマトシジミチョウの研究を続けながら、福島から沖縄への避難者の方々とその実現に向けて模索している最中です。
野原千代さん略歴
琉球大学大学院理工学研究科・海洋自然科学専攻・博士課程前期終了。
元愛知大学准教授、元早稲田大学パブリックサービス研究所客員研究員。国土交通省独立行政法人評価委員、名古屋市、東海市、三重県行政評価委員等歴任。所属学会：日本地方自治研究学会、日本監査学会等。
インディペンデントWHO
今回シンポジウムを開催したのは世界保健機構（WHO）の独立性を求めるNGO、インディペンデントWHO（Independent WHO）。「原子力を推進する国際原子力機関（IAEA）からの圧力により、WHOは低線量被曝に関して世界に正しい情報を与える任務を放棄している」と批判する団体。
低線量被曝が生物や人間に与えるさまざまな影響を研究する世界の専門家によるシンポジウムを２０１２年に引き続き今年も開催した。
今回のテーマは「放射線の遺伝子への影響」。発表者の中には、ドイツ・クリュンメル原発周辺で白血病にかかる子供の数の増加を明らかにした研究で有名なドイツの物理学者、インゲ・シュミッツ・フォイエルハーケ氏も含まれている。
なお、今年のシンポジウムはジュネーブ市、緑の党などが支援している。
swissinfo.ch