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欧州では2社しかないという絹紡績工場の一つがスイスにある。中央スイス、シュヴィーツ州(Schwyz)の湖畔の町、ゲルサウ(Gersau)に1730年から創業し続けているカンメンツィント(Camenzind)社だ。
中国から原料を輸入し、紡績加工をして欧州やアジアに輸出する。日本で作られる高級ランジェリーもスイスの山間の工場で紡がれた絹糸が使われる日も来るかもしれない。
絹はイタリアから13世紀半ば、スイスに入ってきた。いわゆるスイスの「シルクロード」上にあったのがシュヴィーツ州。地の利を見定め、チューリヒやバーゼルへ繭が輸送される前に繭を加工しようとする人が現れた。傭兵の経験から絹の重要性を知っていたヨゼフ・アウグスティン・レディングである。
町唯一の産業
州首都であるシュヴィーツ市はおよそ300年前には、すでに都市を形成していた。人口密度が高いことから、繭を煮る際出る匂いが嫌われ、この地では紡績の工場建設は断念せざるを得なかった。レディングは近くのゲルサウ共和国に話を持ちかけ、市民の同意を得ることができた。創業40年で経営はカンメンツィント家に移り、現在に至る。最盛期には3つの工場がフル回転した紡績産業が、この土地の経済の核となった。
2年半前に父親の後を引き継いで社長に就任したマティアス･カンメンツィント氏に案内されて歩くゲルサウは坂の町だ。この坂を利用し、小川の水力で工場は動いている。生産されるのは、スパン系といわれるもの。生糸を紡ぐ際に出る「くず絹」を中国から輸入し、加工するのがこの工場の役割だ。
スパン系の絹は手触りが柔らかく、オートクチュールの婦人服やストッキング、靴下などに適する。カンメンツィントは特に、ウールなどとの混紡が得意。2つの繊維をむらなくより合わせる技術が自慢。プライベートジェット機や高級ボートの床に敷かれるじゅうたんにも使われる。砂漠に思い入れがあるアラブ諸国の富豪の顧客には、らくだの子どもの毛との混紡がお勧め。カシミヤの混紡より安くてしかもより柔らかという。
ハイテクがすべてではない
高度な技術を施すことで商品価値を上げる。コスト高という短所をカバーする典型的なスイスの商品である。しかし、工場には最新マシーンがずらりと並んでいるというわけではない。「新しい機械は能率は良いものの、昔ながらの絹の良さが出ないのです」と語るカンメンツィント社長。前世紀から使っていた機械も動いている。
従業員は30人。先代の時代は120人だったが機械化が進み、技術者の数は激減した。しかし、カンメンツィント社長はこう語る。
「企業の財産は従業員だと思います。中国製の3〜4倍の値段になってしまうので、コストでは太刀打ちできません。従業員のコーポレートアイデンティティーがあればこそ、納期の厳守なども含めて商品の質を保つことができます」
2004年には初めて日本から、商品のサンプルを見たいという申し出があった。どうやら高級ランジェリーに使われるらしいという。中国への進出が決まったすぐ後だった。今後もアジア諸国との取り引きが拡大することを期待するカンメンツィント社長。これまで一般的に、原材料である絹糸を商品登録するという考えはなかったが、スイスブランドであることが分かるような名前で商品登録をすることが模索されている。
swissinfo、 佐藤夕美（さとうゆうみ） ゲルサウ（シュヴィーツ州）にて