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ワインの産地として知られるヴァレー（ヴァリス）州の町マルティニに１０月１日、新しい三ツ星ホテルがオープンする。おしゃれなワインバーやペルー料理を提供するレストラン、最新のIT環境を備えたセミナールームを完備するこのホテルの目的の一つは、知的障害者の社会参加を促進することだ。ホテルで働く予定のスタッフ４４人のうち３０人が知的障害者という、スイスでも珍しい試みが実現する。
スイスにおける障害者の機会均等化の取り組みの中でも、就労支援と雇用促進は重要な位置を占めている。連邦統計局の２０１２年の統計によると、スイスでは就業可能な年齢（１６～６４歳）にある障害者の６８％が、さまざまな就労形態で仕事に就いている。
今秋ヴァレー州では、知的障害者を雇用するためにホテルを一から建設し、助成金なしで経営するという、世界的にも珍しいプロジェクトが実現する。「マルティニ・ブティック・ホテル（Martigny Boutique-Hôtel）他のサイトへ」と名付けられたホテルは、地元の知的障害者支援財団「フォヴァム（FOVAHM）他のサイトへ」が発起人となり、１５００万フラン（約１９億６千万円）をかけて２年前から計画・建設が進められてきた。このプロジェクトは、マルティニの誇る美術館「ピエール・ジアナダ財団」の支援を受けている。ホテルには、美術館から提供される美術品のレプリカやポスターが飾られ、テーマごとに装飾の異なる客室には、部屋番号の代わりにピカソ、ミロ、モネなどの芸術家の名前がつけられる予定だ。
このアートホテルで働く予定のスタッフはディレクターも含めて４４人。そのうちの３０人は、現在フォヴァムの施設で働いている知的障害者だ。６チームに分かれて、レストランでの接客、調理、客室のメンテナンスを担当する。各チームには、職業訓練指導員が１人ずつ付く。
無理なく働けるように
例えばレストランのサービスは、ホール責任者１人と職業訓練指導員２人、知的障害を持つスタッフ１０人が２チームに分かれて担当する。ランチタイムと夕食のサービスの間に長い休憩の入る通常のレストランの勤務時間と異なり、このホテルでは知的障害者の生活リズムに配慮して、早番（午前７時半～午後３時）と遅番（午後２時半～午後１０時）に分かれた勤務時間が組まれる。
また、スタッフはメニューを運ぶ係、注文を取る係、飲み物を準備する係などに分かれ、通常は１人のスタッフが行うような業務を分担する。「知的障害者は責任を持って一つの仕事をし、それをきちんとやり遂げることに喜びを感じる。そして社会の役に立っていると感じることで、やりがいと自分の価値を見い出す。彼らにとって働いているときが、一日のうちで最も自分の障害を忘れられるときでもある」と、ディレクターのベルトラン・グロスさんは話す。
ここで重要になってくるのが、職業訓練指導員の役割だ。知的障害者の能力・適性を判断しながら業務を配分しなければならない。レストランや調理場が忙しくなる昼のピーク時でも、そのストレスを彼らに感じさせないよう冷静に指示を出す必要がある。ストレスを受けるとパニックに陥る人もいるからだ。
通常、同規模のホテルの従業員数は１５人前後だが、このホテルはその約３倍。包丁などの調理器具や制服、毎日のまかないなどもスタッフの人数分用意する必要がある。また、客室に置かれる石けんは、業者から大量購入すれば一つ０．２５フランだが、フォヴァムの作業所から買い入れるため、一つ２フランかかる。しかも、国や自治体からの助成金は受け取らないという。「障害者が無理なく働ける環境を整えながら、どのように経費をカバーして経営を安定させていくか。経営を任された私にとっては、大きなチャレンジだ」（グロスさん）
施設からホテルへ
ホテルで働く予定の知的障害を持つ３０人のスタッフは現在、それぞれフォヴァムの施設で働いたり、職業訓練センターで研修を受けたりしている。皆、ある程度の職務経験があるが、１０月のオープンに先立って９月からはホテルで実習を受ける。
マルティニから車で約２０分のコロンベの授産施設「ラ・ムニエール」からも、５人がホテルに移る予定だ。その施設を訪ねた。敷地内には、入所者が寝泊まりするグループホーム、作業所のパン工房と調理場、それから地元の人も自由に利用できるティールームなどがある。知的障害者が孤立することなく、地域に根ざした生活を送れるよう、施設は町のほぼ中心地に位置している。
この施設の調理場で働くアレクサンドラ・アベさん（４４）は、ホテルではクリーニングを担当する。「以前は老人ホームで２０年間クリーニングをしていた。今働いている調理場はストレスが多いので、また前の仕事に戻れてうれしい」と話す。ホテルの調理場で働く予定のムニーズ・マセバンド・デアホジョさん（２９）は「今までパンを作ってきたが、将来に役立てるため、これからは新しく調理を学びたい」と意欲的だ。
レストランで接客に挑戦するのは、エミリアン・マークレさん（２４）とアナ・ロザ・カリナ・フェルナンデズさん（２４）だ。マークレさんは、満面の笑みで「ネクタイをつけて、きれいな制服が着られるからウェイターになりたい」と話す。トレイに乗せた飲み物をこぼさずに運べるかにも挑戦してみた。ただ、電車で通勤するのは初めてなので心配だという。一方アナさんは「新しいことに挑戦するチャンスが訪れたのでやってみようと思ったが、４週間の実習が終わったら、またこの施設に戻ってきてパンを作るかもしれない」と落ち着かない様子で話した。
ホテルでの仕事を打診された人の中には、新しい環境、変化に対する不安から断った人もいる。「自分は感受性が強く、パニックになりやすい」と言うデルフィン・ロデュイさん（３８）もその１人だった。だが、施設の職員から励まされ、家族と話をするうちに前向きな気持ちになった。「これまでつらいこともあったので、ホテルに働きにいけてとてもうれしい。でも、今一緒に働いている友達と別れるのが悲しいので、もしかしたら戻ってくるかもしれない。でもとにかくやってみる」と話す。
ホテルのクオリティーと障害者の社会参加
ディレクターのグロスさんが経営者として確立したいのは「知的障害者を雇用する良いホテル」というイメージではなく、「ホテルの質の高さ」だ。清潔でモダンな客室、郷土料理やペルー料理を提供する良質のレストラン、IT機器を完備した大小のセミナールーム、それから「誠意のあるサービス」をこのホテルの売りにしたいという。ターゲットは観光客や団体ビジネス客だ。そして知的障害者の雇用は、「その次に宣伝できるかもしれないもの」だ。
グロスさんはこれまでに、南米ペルーで旅行代理店やホテル、レストランなど五つの事業を立ち上げてきた。その目的はどれも、低所得者に雇用の場を提供することだった。自身を「社会問題に敏感なビジネスマン」と称し、「社会福祉と経済活動を融合すること」に、大きな熱意と意欲を持っている。
「人々がこのホテルを『障害者のホテル』と呼んでいるうちは、他のホテルと差があるということだ。そうではなく、『ホテルとしてのクオリティー』が最初に話されるようになったときに初めて、このホテルを通した障害者の社会参加が、真に達成できたと言えるだろう」とグロスさんは話す。
「それまでになるには、時間がかかるかもしれないが不可能ではない。社会福祉事業が、（助成金など無くても）経済的にうまく機能するならば、それを支えている私たちの社会は、希望あるものだと言えるだろう」
swissinfo.ch