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和歌山県の高野山は、標高1,000メートルの寺院の町だ。1200年前に弘法大師によって開かれた。真言宗の総本山であり、８世紀から参詣の人々でにぎわう町である。世界遺産にもなっている。
この高野山を心休まる家とするスイス人僧侶がいる。悟りを求めて30年以上も前に祖国を旅立ったクルト・キュブリさんだ。
高野山は真言宗の総本山として1200年前に開かれた。この町の通りには、古い木造の寺院が沢山並んでいる。何百人もの僧侶がここに住み、修行を積んでいるのだ。しかし、ここで唯一のスイス人僧侶を訪ねて行くことは難しいことではない。なんといっても、彼は町１番の有名人なのだ。
「クルトさんに会いたいんですか？」と高野山の旅行案内係が聞いた。「それは簡単ですよ。彼はここではアーノルド・シュワルツネッガーより有名なんですからね」ここでの彼の名前はクルト厳蔵（げんぞう）。町の中心部に位置する無量光院の僧侶の１人だ。
スイス人の僧侶に会いに
無量光院を訪ねた。ギーギー音を立てる木の廊下を歩き、塵１つない日本庭園に面した大きな部屋に通される。ここに外国人が住んでいるような気配は皆無だ。私に夕食を持ってきてくれた僧侶によると（寺院が用意した精進料理だ）クルトさんは観光客に町を案内する仕事が忙しく、暗くなってからでないと戻ってこないという。
私が畳の床に布団を敷いて休もうかとした頃になって、クルトさんは帰ってきた。トントンと板敷きの廊下の床をノックする音がして、障子が静かに開いた。私は、この人に会うために6,000マイルも旅してやってきたのだ。彼は私に英語と、スイス・ドイツ語と、日本語で挨拶した。
「町に出てバーで一杯やろうじゃないか」と彼は言った。「私の人生について興味があるのなら、そこで話そう」これは、私が彼について想像していたイメージとはかけ離れた姿だった。まさか彼と高野山唯一のバーで一杯やることになるなんて！
何本かのビールと熱燗を空けた後、彼は高野山の僧侶は孤高の隠遁生活を義務づけられていないばかりか、そんなことは期待されてもいない、と説明した。「我々は寺の中に１日こもっているわけではないんだ。お酒も酔うためのものではなく、リラックスして人と話すためのものとして飲んでいる」彼は母国スイスでワインの会社にも勤めていたのだ。
「このバーは、町で一体何が起きているのか知るのにもってこいの場所なのさ。熱燗でちょっとやれば、話も弾むというものだ」
この道に入るまで
ほろ酔い気分の会話の中で、クルトさんは高野山に来るまでの職業について触れた。それは銀行家、ビジネスマン、現代芸術のアーティスト、写真家、そしてヨガやフラメンコの生徒と、誠に多岐に渡ったものだった。
彼は、祖国スイスでは本当の意味で自分の気持ちが休まることがなかったので、日本に居を決めたのは正しい選択だったと話した。
「スイスに対しては特別な愛情を持っていないんだ。無理やり食べてたけど、チーズもあまり好きじゃないし。もちろん、まだスイスのパスポートも持っている。スイス国籍を証明するものを持っているという事は、世界のどこででも非常に役に立つからね。でも、心の中のことで言えば、国籍など大した意味はないと思っている。私は、世界市民なんだ」
彼のスイスでの生活を詳しく聞くには、時間がなさ過ぎた。彼は朝が早い明日のためにもう帰って休まなければならないのだ。「毎朝午前４時に起きる。一番最初にする事は、一杯の熱い緑茶を飲むことさ。朝の静けさの中だと、お茶を淹れる時のとっても小さな音も音楽のように聞こえるんだ」と、彼は言った。
「何百、何千もの種類の読経が聞こえてくる。それが本堂の朝の勤行で歌のように１つになるんだ」
有名人が通る
クルトさんは、高野山を訪れる外国人を案内したり、高野山の主要寺院を紹介する本の出版準備をしたりすることに、日々の多くの時間を割いている（この本は今年中に３ヶ国語で出版される）。しかし、この町の国際親善大使にならないかという申し出については断り続けている。
「私はそんな肩書きなんか要らないんだ。ほら、スイス人ってやっぱり謙虚じゃないか。クレイジー坊主とでも呼んでくれれば十分だよ」
クルトさんの知名度は高野山の町に留まらない。日本のテレビ局のみならず、外国のテレビ局まで彼のドキュメンタリーを制作した事があるのだ。このため、彼は日本のあちこちでしょっちゅう「あ、クルトさんだ」と声をかけられるらしい。
たたき起こされた朝
次の日の朝、無量光院の鐘が私の耳元でごーん、と鳴った。６時少し前だ。クルトさんが少々パニックになりながら障子を開けた。「君、20分以内に用意しないと電車に乗り遅れるよ！」
彼は急いで２、３人の僧侶を集めてくれ、私の荷物をかき集めて出発の準備をしてくれた。エンジンが吹かされたが、高野山の夜は寒い。一夜にして厚い雪が地面を覆い、車のフロントガラスには到底割れそうにもないような氷が張り付いて視界を塞いでいる。
クルトさんに「列車に乗り遅れるんじゃないか」と聞いたところ、彼は脱兎のごとく寺の台所に飛んでいって銅のやかんを引っつかんで来た。そして煮立ったお湯をフロントガラスに勢いよくぶっかけると、氷はあっという間に溶けた。そこで下駄と袈裟姿のクルトさんは、その姿に似合わない身軽さで運転席に飛び込み、ドアをバッタンと閉じた。
「ちょっと余裕がないけれど、絶対間に合うよ」彼は真剣に言った。
彼はスイスを脱出して地球の反対側にたどり着いた。時間を超越したパラダイスを求めて。しかし、厳格に時間を守ることとなると、やっぱりれっきとしたスイス人のままだ。
swissinfo ラムシー・ザリフェ 遊佐弘美（ゆさひろみ）意訳
キーワード
クルト・キュブリさんは僧侶として高野山に住んで８年になる。
彼は無量光院に日本人の妻と一緒に住んでいる。現在本を執筆中。
無量光院は観光客の宿泊も受け付けている（精進料理２食付きで１泊9,500円）