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アルプス山脈によって分断されたヨーロッパ。北から南へと抜けるには、古来よりいくつかのルートがあった。私の住む地域は、そのうちのひとつ、石器時代から栄えていた交易路の途上にある。現在は、高速道路とサン・ベルナルディーノ（San Bernardino）トンネルのおかげで車でも簡単に通り抜けられるが、かつては狭い道をラバや馬を引いてやっと通っていたルートだった。今回はこの古来の道、ヴィア・スプルーガ（Via Spluga）について紹介しようと思う。
イタリアへ向かう道中、スイスには大きな峠がいくつかあるが、トゥージス（Thusis）、アンデール（Andeer）、シュプリューゲン（Splügen）を経由してイタリアのキアヴェンナ(Chiavenna)に至る道は、とても古くから好まれた。起伏が比較的少なかったからである。この辺りではまったく採れない火打石が大量に出土する事から、石器時代にはすでにこの地域で盛んな交易があったことも立証されている。
ヴィア・スプルーガの一番の難所、「悪路」を意味するヴィア・マーラ（Via Mala）はラバ一台通るのがやっとの通行困難の峡谷として有名だったが、1473年以降はトゥージス、マサイン（Masein）そしてCazis（カツィス）が共同で道を拡げ、荷車も通れるようになった。三村はその見返りとして通行権を独占した。つまりここを通る人たちは、馬車や荷車や人足を三村で調達する事を強いられた。この収入で豊かになった三村はほぼ同時期に各々の教会を建てる事ができた。
当時と同じようにトゥージスを出発し、車の入れない古来の道を通って、スプリューゲン峠を越えイタリアまで行くヴィア・スプルーガをたどる事は可能だ。茶色の標識を目印にこの道を進むのだが、6月から10月までは、5日間のハイキング・パッケージも用意されている。途中の11カ所の村や街の25ものホテルがこのパッケージに参加していて、荷物は予約したホテルからホテルへと運んでくれる。つまり、重い荷物を背負って歩く必要はないのだ。ハイキングと言っても、必ずしもすべてのルートを歩かなくても構わない。自転車で走ってもいいし、平坦な場所だけ歩いてあとは公共交通機関を使っても構わないのだ。
途中には、ヴィア・マーラの渓谷、13世紀の木製天井画で有名なツィリス（Zillis）の教会、温泉地アンデールのスパ、かつて一人の男がのみだけを使って掘ったトンネルを見学できるロフラの滝（Rofflaschlucht）、かつてスイス軍が使っていたが現在は一般に公開している洞穴の軍事施設などがあり、観光を楽しみながら歩く事も出来る。スプリューゲン峠ではスイスとイタリアの国境を越えるのでバスポートが必要だ。
私は自宅から車で10分程度の距離であるヴィア・マーラまで、日帰りのハイキングをした事がある。真夏でも涼しい木陰の道をひたすら歩いていくこと1時間ほど、のどかな牧草地やダイナミックなライン川の渓谷など飽きない景色の移り変わりを楽しんだ。
いずれは、その先、本当にアルプス山脈を超えてイタリアまで歩く休暇を楽しみたいと思っているが、まだまだ先の事になりそうである。
ソリーヴァ江口葵
プロフィール：ソリーヴァ江口葵
東京都出身。2001年よりグラウビュンデン州ドムレシュク谷のシルス村に在住。夫と二人暮らしで、職業はプログラマー。趣味は旅行と音楽鑑賞。自然が好きで、静かな田舎の村暮らしを楽しんでいます。インフォボックス終わり