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３月初旬に、スイスの人道支援組織がコンピュータメーカーの劣悪な作業環境を訴えるキャンペーンを開始した。その成果が現れ、企業は改善に乗り出した。
一方では政治も動き出し、ヴォー州はこの先、コンピュータを購入する際には社会的基準を顧慮する意向を発表。チューリヒ州でも同様の動きが起こっている。
「フェアなコンピュータ」は存在しない。有名なコンピュータ企業の下請けを行っているアジアの会社では、非人間的な労働条件が横行している。
劣悪な作業環境
これは、キリスト教で復活祭前までの「四旬節」の キャンペーン開始にちなんで、1カ月前に「全ての人にパンを ( Brot für alle ) 」と「四旬節の供物 ( Fastenopfer ) 」の2つの人道支援組織が発表した調査結果だ。「全ての人にパンを」の中央事務局長を務めるベアト・ディーチー氏は、「これほど包括的でポジティブな反響を得たキャンペーンは珍しい」と締めくくる。
大きく反応したのはマスコミだけではない。消費者サイドも5000人以上が行動を起こした。キャンペーン用に準備された郵便はがきをスイスに進出している大手コンピュータ企業に送って、中国やタイ、フィリピンにある下請け会社の現状に抗議したのだ。とりわけディーチー氏を歓喜させたのは、市場をリードする大手メーカーにも現実に目を向けてもらえたという事実だ。この調査の対象となったのは、アップル ( Apple ) 、HP、デル ( Dell ) 、エイサー ( Acer ) 、富士通ジーメンス ( Fujitsu Siemens ) の下請け会社で、これら5社を合わせたスイス市場占有率は約75%に上る。
これらの企業の製造チェーンでは、異常に長い勤務時間や無手当の超過勤務、低賃金、保護具などを着用させずに有害物質を扱わせるなど、いずれも劣悪な作業環境が確認されている。
対話の開始
キャンペーン中、デル、アップル、そしてHPの3社が人道支援組織との意見交換に乗り出した。HPはさらに倫理責任者をスイスに派遣、他の2社も各製造工場の管理強化に着手するほか、これら3社は劣悪な労働条件の撲滅によりいっそう力を入れることを約束している。
実際、デルやHPは数年前に行動基準を定め、労働法や倫理に基づいた最低基準を守るよう下請け会社を指導している。だが、その実現はそれほど容易ではない。
「全ての人にパンを」で開発政策を担当するシャンタル・ペイエ氏は「もちろん、これらの会社にとって今一番大切なのは業績を上げることです。しかし、このような大きな反響を見れば、製造環境を明らかにすることによってコンピュータメーカーの間にポジティブな競合が生まれることは明らかです」と語った。
キャンペーンの目的は、特定のメーカーをボイコットしたり、新しい「フェアネスレーベル」を作ったりすることではない。消費者の批判によって業界に圧力が加えられ、それを通じて供給チェーン全体がよりフェアになることを望んでいるのだ。
政界からも反応が
一方で、残る2社、富士通ジーメンスとエイサーの反応にペイエ氏は落胆を隠せない。富士通ジーメンスは下請け会社の劣悪労働条件を否定する手紙をスイスの消費者宛てに送り、エイサーからは何の反応もなかった。
ただし、エイサー・スイスを率いるシルヴィア・シュトイブリ氏は、スイスインフォの問い合わせに対して、「わが社も現地の責任者と話し合いを持ち、作業環境管理の改善に乗り出しています」と話している。
これらの企業のみでなく、この調査結果には政治家も反応を見せた。たとえばヴォー州参事官は、この先、コンピュータを購入する際には社会的基準を顧慮すると発表、チューリヒ州にも似たような動きが起こっている。
人道支援組織がてこ入れしたいのはまさにこのような動きだ。「すべての人にパンを」と「四旬節の供物」の両組織は、コンピュータ購入の際には労働法にのっとった基準を顧慮するよう行政に呼びかけるとともに、現地の関連会社の協力を得て各企業の確約が実際に実行されているかどうかを確認することも忘れていない。
swissinfo、カタリナ・シンドラー ( infosüd ) 、小山千早 ( こやま ちはや ) 意訳
補足情報
- スイスのNGOが行ったキャンペーンは、多国籍企業調査研究所 ( SOMO、center for research on multinational corporations ) がヨーロッパ各国の消費者団体とともに進めた調査を基盤としている。
- スイス市場では、HP、デル、エイサー、アップル、富士通ジーメンスの5大メーカーが対象となった。
- 同調査によると、国際労働機関 ( ILO ) の最低労働基準を無視しているのは、とりわけこれらの企業の下請け会社である。