Document ID: /fineweb-2-swissfilter-quality_10-filterrobots/filtered/00710.jsonl.gz/4

新潮社から3月末に発売になった「黒いスイス」は、外国人にはあまり知られていないスイスの姿を紹介している。著者は1994年から6年間、毎日新聞のジュネーブ特派員だった福原直樹氏である。
福原氏はジュネーブ駐在中、スイスが国として大きく変化したと指摘。「スイス人は多様で、いろいろな意見の人がおり一概には言えないが、国民党出身のクリストフ・ブロッハーの入閣などに代表されるように、右派の台頭の傾向が目立っている。いまこそスイスについて語る良いタイミングと思った」と、出版の動機を語った。
「黒いスイス」は、ナチスドイツの手を逃れ、スイスに逃げてきたユダヤ人の入国を拒否するという非人道的なことが行われたことに始まり、国のお金をスイスの個人口座に預ける独裁者のマネーロンダリングをスイス銀行が手伝っているという問題にいたるまで、「日本人が『住んでみたい国』の筆頭に挙げるというスイスの知られざる『裏側』」（同書9ページ）に光を当てている。
次々と発覚するスキャンダル
「悪魔のスタンプ」と題された第２章では、スイスはユダヤ人がナチスドイツの迫害を受けて大量に入国することを恐れ、ドイツ人に対してスイス入国のためのビザは免除する代わりに、ドイツに住むユダヤ人のパスポートに「J」の赤いスタンプを押すことをドイツと申し合わせたことで、生死の狭間をさ迷った人たちが登場する。
第3章では、スペイン内戦（1936年から1939年）に参戦したスイス人の名誉が未だに回復していないことが取り上げられている。また、5章では、外国人がスイスの国籍の取得を希望した場合、住民の投票で受け入れを決めていた自治体のことが紹介されている。（本年5月4日に外国人の国籍取得委員会に決定権は移行した）
同書が８章にわたって取り上げているこれらの事柄の中には、人道的観点から行動を起こしても、「スイスの『国益』に反する」（同書52ページ）と判断され、時には犯罪者となってしまう。つまり、国益が人道より優先されるという同書の批判に対して、スイスが言い訳する余地はないだろう。
閣僚の失言は舌足らずのスイスの本音
トニー・ケルブナー氏は直接民主主義の原型である挙手による投票をいまでも行っているアッペンツェル・インナーローデンに住む、典型的なスイスの一市民。「批判本をスイスの鏡としてみることができるのがスイス人だ」と語る。
一方で、スイスへの批判を素直に受け取らない人もいる。ジャンパスカル・ドラミュラ経済相（当時）の「失言」が、こうした外部からの批判に対するスイス人の思いを代表する格好の例であろう。「あたかもスイスにもかつて強制収容所があり、ホロコーストの主犯であったかのような非難だ。賠償金の要求はまるで脅迫のようなもの」と1997年、スイス、フランス語の新聞のインタビューで語った。スイスは第二次世界対戦中にホロコーストで亡くなった人々がスイスの銀行に預けていたお金を、遺族の返済の要求に応じずそのまま預かり続け、結局はネコババしたと米国およびユダヤ人の団体から、厳しい指摘を受け、賠償金の支払いが要求されていた。
同件についてスイス政府は1962年にすでに、謝罪と賠償金の支払いを行っているのにいまさらという気持ちが、国民の中にもあったことは否めない。スイス人は人道的で、その国はハイジが住む夢のような国といったイメージを負った国の運命か。その国と国民のモラルが他国より厳しく評価されることに対する反発が、国民の一部あった。その後、ドラミュラ経済相は発言を撤回し、謝罪した。
なぜ「黒いスイス」が生まれるのかを、次回の「黒いスイス」への言い訳-下-で、直接民主制を700年間、貫いている国としての「特殊事情」を探ることで、理解してみようと思う。
スイス国際放送 佐藤夕美 （さとうゆうみ）
キーワード
「黒いスイス」
福原直樹著
新潮社 新潮新書
680円（税別）