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７月２８日午前１１時、ベルナー・オーバーラントとヴァリスを結ぶ南北の交通の要所ゲミ峠[標高２３１４ｍ]の放牧地で夏を過ごしている何千匹もの羊の群れは、羊飼いの合図とともに湖めがけて一斉に山の斜面を駆け下りる。夏の観光名物となっている羊飼い祭りは、昔は争乱に明け暮れる峠の両側の牧人達の調停の場だった。
羊飼い祭りは、毎年７月最後の日曜日の朝、湖畔の教会のミサで始まる。羊レースの後は、ゲミ峠南側ヴァリスのロイカーバート代表と北のベルン州カンデルシュテーク代表の各種競技会が開かれる。中世末期まで、カンデルシュテークとロイカーバートの羊飼い達は、アルプスの放牧地の権利をめぐり、戦いに明け暮れていた。今日でもゲミ峠周辺からは古代や中世の武器が出土する。
ゲミ峠は、ベルナーオーバーラントとヴァリスを結ぶ古い南北縦貫アルプス峠の一つで、カンデルシュテークから切り立った岩壁に目が回るような山道を進むとスパで有名なロイカーバートに出る。独の文豪ゲーテは１７７９年、この峠を越えた時、その隔絶ぶりに言葉を失ったと記述している。また、モーパッサンは、この山容を目の当たりにして、短編小説「宿屋」の着想を得たという。今では峠道のどちら側からでも車で入れる。ハイキングコースもある。