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脳に異常をきたさせ、牛海綿状脳症やクロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こすと悪評高いプリオン。だが、チューリヒ大学でプリオンの研究を行っているアドリアノ・アグッツィ氏のチームがこのプリオンにも良い面があることを発見した。
牛海綿状脳症 ( BSE ) も、人間がかかるクロイツフェルト・ヤコブ病 ( CJD ) もプリオンがその元となっている。異常型のプリオンタンパク質が脳内に蓄積されることによって発病する。
絶縁物質を回復
アグッツィ氏が率いるチームは、正常なプリオンは脳内の神経細胞を健康に保つ、より正確には神経細胞の絶縁物質を健全に保つことを発見し、1月26日発売の科学雑誌「ネイチャー・ニューロサイエンス ( Nature Neuroscience ) 」誌上でその詳細を発表した。
チームが研究に使ったのはプリオンを持たないマウスだ。これらのマウスはBSEやヤコブ病に対する抵抗力は持つものの、別の問題を持っている。
末梢神経は腕や脚を脊髄と結んでいる神経だが、その神経突起を覆っているミエリン鞘が傷つくと、マウスは抹消神経疾患を発症する。絶縁物質が壊れると、神経の伝導速度が衰え、その結果マウスはつめに力を入れられなくなり、痛みもあまり感じなくなる。しかし、この傷ついた神経細胞にプリオンを与えてやると、絶縁物質が回復することがわかった。
この発見は、人間がかかる疾患に対する治療の新しい手がかりとなりうる。欧州研究会議 ( ERC ) から約400万フラン ( 約3億4000万円 ) の助成金の受給も決まり、プリオンの働きを調べる研究はこれからも続けられる。
swissinfo.ch、外電