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グルジア共和国のドマニシ近郊で発掘された「ドマニシ原人」はアフリカ大陸から初めて移動した人類の祖先と思われ、現代人のように歩き、走っていたとの研究が英科学誌ネイチャーに発表された。
同研究では発掘された個体の骨から、古代の化石からの復元を専門とするチューリヒ大学の研究チームが最新技術を用い、人類の祖先の姿をコンピュータで3D再現した。
グルジア共和国の西、ドマニシ近郊に世界で最も重要な考古学遺跡がある。ここグルジアは西アジア北端で推定170万年前の人類 ( ホモ・サピエンス ) の祖先が16年間にわたって発掘されてきた。これまで、保存状態のよい少なくとも6個体の骨が出土した。揺らぐ人類の進化論に今後、新たな光を当てるに違いない。
初期の原人
この発掘を受けて何人かの研究者は、「ドマニシ原人」をアフリカ以外では最古の化石人類で、これまで知られていたもっとも初期のホモ・エレクトス ( Homo erectus / 原人 ) であると判断している。
近年、ドマニシ遺跡で見つかった成人3個体と青年1個体に相当する骨が以前に発見された頭骨と結びついていた。この発見は国際研究チームが人類の祖先の姿と生活様式を考察する鍵となっている。
考古学者のツォリコファー教授は「ドマニシ原人の発掘は宝くじに4、5回も当たったようなものです。骨や人体1体を見つけたのではなく、集落の住民全員を見つけたのですから」と語る。ツォリコファー教授は共同研究者のマルシア・ポンセ・ド・レオン氏とともに革命的なコンピュータの復元技術を使って、1年間かけて骨のパズルを組み立ててきた。
これまでは頭骨しか発見されていなかったため、直立二足歩行の原人の「直立度」については多くは知られていなかった。この貴重な体の骨の発見で、今度は人類進化のパズルをまた1つはめることができた。
ドマニシ原人の脳は現代人の半分
ドマニシで発見された原人はこれまで知られていた、痩せて背が高く、脳の容量が比較的大きいホモ・エレクトスとは違う。「小さい人間は小さい脳を持っていますが、それでも体の大きさから比較すると非常に小さく、現代人の半分に当たります。これは、むしろ、ホモ・エレクトスよりもアフリカ初期 ( 200万年前 ) のホモ属の化石と類似しています」とツォリコファー教授。「身長は1.4～1.6メートルと小さかったが、我々と同じプロポーションの体を持っていました」と説明する。
「驚いたことに、彼らの脚は大変に現代的と言えます。脚は腕より長く、長距離を歩いたり走ったりすることができたのが食料調達に役立った」という。ドマニシ原人は肉食で、動物の死骸を探すのに長距離を歩いたと推定される。当時のグルジアは涼しい気候で、草原や森にはキリンやダチョウといったアフリカの動物とユーラシア種の狼やライオンといった動物が生息していた。
ドマニシ原人の肩と腕は現代人のそれとはかなり異なっていた。現代人が属する ホモサピエンスの特徴である上腕骨が曲がっていなかったため、手のひらが前方に向いている。それでも、初歩的な道具を作り、動物の骨を割り、骨髄を取り出したりしていた。
割れる研究者の意見
ドマニシ原人の発見はこれまでの人類の進化に関する定説を揺るがし、考古学界で物議を醸し出したことは確かだ。ドマニシ原人を分類学的・系統学的に位置づけるのが難しいからだ。
多くの専門家がドマニシ原人を初めてアフリカ大陸を出て、アジアに渡った「初期のホモ・エレクトス」とみなしていた。しかし、身体的にはアフリカのホモ・エレクトスよりもその前段階の種であるホモ・ハビリス ( Homo habilis ) に似ているとの意見もある。だが、ホモ・ハビリスはむしろ猿人に近く、アフリカを出たことがないと見られてきた。このため、ドマニシ原人をグルジア ( Georgia ) の地名にちなんで、新たに「ホモ・ジョルジキュス ( Homo georgicus ) 」と名付ける研究者もいる。
人類進化論の混乱が続いているなか、ツォリコファー教授は「現時点で決めるのは難しい。私は、人類の祖先は全てアフリカを起源としていると考えます。問題は、いつ初めてアフリカを出たかです。ドマニシ原人は最初の拡散とも考えられます」と教授。このツォリコファー考古学教授の問いに答えるべく、グルジアの遺跡では今も発掘作業が続けられている。
swissinfo、 サイモン・ブラッドリー、屋山 明乃 ( ややま あけの ) 意訳
補足情報
- 定説では現代人が属する種である現生人類は、初めてアフリカで120万年前に出現し、それまでのネアンデルタール人や原人などほかの種と入れ替わった。これは生殖機能が優れており、資源の活用が上手かったためと考えられている。
- その後、人類はアフリカから中東、アジアに渡り、ヨーロッパには4万年前に拡散した。
キーワード
ドマニシ ( Dmanisi ) はグルジア共和国の首都、トビリシから85キロメートル離れた中世の村である。
1983年、ドマニシの旧市街の考古学発掘が行われた際、更新世の地層から人骨が発見された。
研究者はその後、完全な頭骨や多くの骨、石の道具などを発見し、それが、6個体で推定170万年前のものと判定した。