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あるスイス人の高齢者が足の骨折で病院を3カ所も「たらい回し」に遭っていた。なぜそのような事態になったのか。そこにはスイスの医療制度が抱える問題が潜んでいた。
マルグリット・ズーターさん（仮名）が、ゆるやかな勾配の田舎道をゆっくりと上る。身に着けているのは上品なシルクスカーフとエレガントなローファー。あたりを漂う堆肥（たいひ）のにおいとは対照的だ。
眼前には雪景色のスイスアルプス、そして別の方角には雲がかったジュラ山脈。ズーターさんは「この景色が大好き」と話す。昨年の夏に足を骨折し、ここまで回復したのは長年続けている散歩のおかげかもしれない。
ズーターさんが足を骨折したとき、12日間の入院生活でベルン地域の病院を三つ転院した。なぜこんなことが起きたのか。そこにはスイスの病院の慢性的な人員不足とコスト削減のプレッシャーが大きく関係している。
「話を聞く時間が少ない」
ズーターさんは足の付け根を骨折し、リンデンホフ病院他のサイトへ（ベルン市）で翌日、手術を受けることになった。疲れと痛みの中、看護師がストレスを感じていることにすぐ気づいた。看護師一人で16人の患者を診ている ― そんな話も聞いた。同病院はこの件について、コメントできないと回答した。
ズーターさんは「（病院のスタッフは）話を聞く時間があまりないようだった」と振り返る。自身は心臓病も患い、1日に数回の投薬が必要だ。 「ベッドの端に座らされたとき、痛みで気を失いかけた。でもセラピストは、私の頑張りがまるで足りなかったかのように振る舞った」
さらに、手術が終わるか終わらないかのうちに、病院のスタッフが突然入ってきて、3日以内に郊外のシロア病院他のサイトへに移すと告げた。リンデンホフグループとシロア病院は2017年、「戦略的協力関係」を締結、シロア病院の「高齢者医療の地位拡大」を発表していた。
「廊下に車いすを止めて」
ところがシロア病院では、ズーターさんの受け入れ準備をしていなかった。ズーターさんが救急車で病院に到着すると、スタッフの一人が車いすに移るのを手伝い、その車いすを廊下の一角に「駐車した」。ズーターさんはそこで午前11時半から午後3時半まで延々と待たされた。空きベッドがなかったからだ。
「人生で初めて、私を気にかけてくれる人は誰一人としていないのではという気持ちになった」。ズーターさんは当時を思い出すと今も体が震えるという。ようやくベッドに案内されたが、睡眠安定剤が欲しい、トイレに行きたい、そう思って看護師を呼んでもなかなか来てくれなかったという。ナースコールを押してから10分待たされることもあった。それはズーターさんに限らず、看護師が来るのを待ちきれずに一人で起き上がろうとして、お尻の骨を折ってしまった男性がいたとも聞いた。
「誰も来てくれないのではないかという気分にさいなまれた。しかも誰に連絡していいのかわからない。完全に（病院側の）なすがままだ。それはとても恐ろしいこと。特に自分が動けないときは」
ズーターさんはたった一晩で、シロア病院を去りたいと訴えた。そして救急車で（再び）別の病院ヒルズランデンクリニック・ボーサイト他のサイトへに移送された。ズーターさんが飲んでいた高価な薬は、持ち主が分かるよう名前が書いてあったのに、新しい病院へは届けられなかった。シロア病院はスイスインフォの取材について回答していない。
3軒目の病院の状況はだいぶましだったとズーターさんは話す。スタッフ1人当たりの患者数は３～10人で、やはり過重労働だとの印象は受けたものの、勤務シフトに着いた看護師がきちんと自分のところに来て自己紹介してくれたと振り返った。
スイスではスタッフだけでなく、病院の数も減少している。 1998年の378軒が2017年までに281軒に減った。病院の閉鎖・合併でコスト削減を図った影響だ。
コスト削減
ズーターさんはその後、医者からこれまでの待遇について謝罪された。医者はコスト削減の圧力のせいだと釈明したという。
スイスの健康保険は世界的にみても非常に高額だ。経済学者によると、1人当たりのコストは年間1万フラン（約110万円、2018～19年）超。スイスの国内総生産（GDP）の13％はヘルスケア部門で、支出は給与の5倍の速さで増加している。
国はこのシステムの改善に向けた施策「Health2020他のサイトへ」を打ち出した。連邦政府は「現在利用可能なサービスは、品質を損なうことなく約20％価格を下げることができる」とする。 その達成のため、ジェネリック医薬品の使用促進や一律の料金体制を導入し、不必要なサービス、治療を削減するよう呼び掛ける。
ズーターさんはベルナーオーバーラント地方のリハビリテーションクリニックで2週間治療を受け、その後は自宅そばの理学療法士のところへリハビリに通った。今は昔と同じように自由に足を延ばすことができる。
ズーターさんは「今までと全く同じというわけではない。でもこれで満足」と話す。でも、病院で受けた嫌な思いは消えない。「病院の言うなりになっている患者のことを思うと、いまだに気分が悪くなる」
（英語からの翻訳・宇田薫）