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スイスのユングフラウ地方は、スキーやハイキングをするために、あるいはただ雄大な山並みを楽しむために、毎年大勢の人々が訪れる観光地だ。同地方の山岳リゾート、グリンデルワルトに住む英国人登山家のダン・ムーア氏は、大規模な開発計画によって、世界的に有名なアイガー北壁を取り巻く自然の景観が失われてしまうのではないかと危惧する。
グリンデルワルトを中心にユングフラウ地方では、Vバーン他のサイトへと呼ばれる新ロープウェーの建設が進んでいる（2020年12月全面開業予定）。完成すると、谷間の1つの駅から2本のロープウェーが別々の方向にある山に向かってV字型に架かる。1本は、老朽化したメンリッヒェンのロープウェーに取って代わるものだ（昨年12月、一部開業）。もう1本は、ユングフラウヨッホまでかつてない速さで観光客を運び上げる「アイガー・エクスプレス」だ。ヨーロッパの最高地点にある鉄道駅ユングフラウヨッホは、アルプス最長のアレッチ氷河を見下ろすことができる人気の観光スポットだ。
「Far away… from ordinary」だって？私は思わずVバーンの宣伝用ビデオを一時停止して、その文句を読み直した。
総工費約5億フラン（約560億円、当初計画）、もっぱら外国人観光客相手の開発計画なら、優秀な翻訳者を雇う余裕はあるはずだと思うだろう。
新しいアイガー・エクスプレスのゴンドラの側面に貼り付けられるこのキャッチフレーズは、2つの異なる概念を混同しているようだ。「away from the ordinary（名詞）」であれば、「日常から離れて」という意味になり、前向きな感じが出る。だが、「far from ordinary（形容詞）」であれば、「普通からかけ離れた」という意味になり、「ちょっと変な」と私には聞こえる。だが前者の意味だと捉えたとしても、それは本当だろうか？
2本のロープウェーの起点、新「グリンデルワルト・ターミナル」駅は実は終着駅でもなく、グリンデルワルトにあるわけでもない。実際のところ、全面開業すれば、（本当の終着駅である）グリンデルワルトを訪れる必要性を排除することになる。駅名は「グリンデルワルト・バイパス」の方が良かっただろう。
グリンデルワルト・ターミナル駅の建設は、まずサッカーグラウンドよりも大きい巨大な穴を掘ることから始まった。その穴に次から次へとコンクリートが注入された。コンクリートを運ぶトラックが、尽きることのない列をなして、順番を待っていた。グリンデルワルトに出入りするたびに、眼下の工事現場の規模は倍増しているように私には見えた。
同駅には暖房が完備され、ショッピングセンターと駐車場が併設される予定だ。利用者は将来、自宅またはホテルからユングフラウヨッホの密閉された観光施設に上がるまで、外界に触れる必要が全くないことになる。
アイガー・エクスプレスの山上駅となる新アイガーグレッチャー駅についても同じことだ。アイガーグレッチャー駅はスキーヤーにとっては最高地点であり、ユングフラウヨッホを目指す観光客にとっては、旅の最終段階として電車に乗り換えなければならない場所だ。これまでは、アイガーグレッチャー駅で下車し、レストランのバルコニーに出て、周囲の氷河の凍てつくような息づかいを感じることができた。そびえ立つ（ユングフラウ三山の1つである）メンヒの北壁を見上げれば、その岩と氷とのパワーを感じることができた。しかし、アイガー・エクスプレスが開通すれば、暖房の利いたゴンドラの窓ガラスからのぞくのがせいぜいだろう。少なくともユングフラウヨッホに向かう観光客は、高地の薄い空気を五感で感じることはできなくなる。真空管の中を移動するようなものかもしれない。
では、山々を眺めるだけではなく、実際に肌で感じたいハイカーやスキーヤー、登山家にはどんな変化が待ち受けているのだろうか？
アイガー北壁のふもとに、地元では「ホワイト・ヘア（White Hare）」と呼ばれるフリーライドスキーの穴場が1つある。整備されたゲレンデからスキーで10分ほど斜面を横断する。小山の周りにあるその場所は、ほとんど人気が無く、ひっそりとしている。秘密の場所なわけではないが、そこはいつも静かだ。
眼前にはアイガー北壁の大舞台が立ちはだかる。少し前進し、北壁のふもとまでほぼ一定の角度で登ると、白く輝くパウダースノーが広がっている。この場所は陽の光に当たることがない。フェーンの嵐やその結果起きる雪崩の際に、ごう音を立てて壁を下ってきた雪が堆積している。この斜面はいつでも自然のままだ。
しかし、新しいケーブルが架かり、ガラス張りのゴンドラが吊り下げられれば、アイガー・エクスプレスは、北壁にほぼ平行してホワイト・ヘアの上を横切りながら乗客を運ぶようになる。ホワイト・ヘアを上から見たスキーヤーは誰だって、雪に最初の跡を付けようとするだろうし、競って自分のシュプールを描こうとするだろう。
地元のクライマーである私にとっては、もっと厄介なことが起こるかもしれない。アイガー・エクスプレスが開通すれば、登攀中の背中にかつてないほど近くから視線を浴び、ズボンの裾をつかまれそうなくらい近い距離で手を振られることがあるだろう。この冬は、ヘックマイヤー・ルートなど、アイガー北壁を観光客に気を散らされることなく登れる最後の機会になるかもしれない。
また、春に雪が無くなれば、アイガー・トレイル（アイガー北壁直下の有名なハイキング・ルート）の前半が、ゴンドラに乗る大勢の乗客に丸見えになる。そうなれば、かつてのような畏怖を感じるハイキングにはならないだろう。
地元の山岳ガイドで石工のハンネス・シュテーリさんは10年余り前に、アイガーに焦点を当てたスイス山岳ガイド史を記録し、ハンマーとのみを使って、アイガー・トレイル沿いの岩にその歴史を刻むよう依頼された。アイガー・トレイルをグリンデルワルト側から出発して歩き通せば、山岳ガイド史の短いが興味深い抜粋を年代順に読むことができる。
シュテーリさんが刻んだ最後の短い文言は、アイガーグレッチャー鉄道駅に近いロートシュトックにあった。その文言とは「Den Eiger kümmerts nicht」。「アイガーは気にしない」という意味だ。
私が思うに、この文言は、自然界は人間の営みの多くに対し全くもって無関心であることを意味している。1つの雄大な山の前でさえ、我々人間はいかにちっぽけで取るに足りない存在であるかを私に思い起こさせてくれる言葉だ。ゆっくりと崩れているとはいえ、アイガーは我々が生まれる何千年も前からそこにあり、我々の死後何千年もそこに存在し続ける。
工事が始まる前の16年、この碑文について地元紙に短い記事が掲載された。Vバーンを巡る全ての議論－支柱は高くすべきか低くすべきか、アイガー北壁のすぐ近くを行き来するゴンドラが景観に与える影響を抑えるために、中間駅を設けて迂回させるべきか等― はアイガーが忌み嫌うものだという内容だった。
その後、18年から19年にかけての冬に、この碑文に起きたことの皮肉さは誰の目にも明らかだ。アイガー西麓に新アイガーグレッチャー駅を建設するため、2本の巨大なトンネルが掘られた。1つ目のトンネルを掘るために、岩を砕く、穴を開ける、爆破するなどの作業をした際、碑文が不注意で短くなってしまい、文言は数カ月の間、「Den Eiger kümmerts（アイガーは気にする）」になった。
昨年の冬に新トンネルを見つけた時、こんなにも「速く」出来たことが信じられなかった。アイガーに適応する時間を与えなかったという感じがその時私にはした。巨人の眠りを覚ましてしまったのだ。
ユングフラウヨッホに向かう鉄道を通すためのトンネルは100年以上前に、エアーハンマーやつるはしを手にした工夫が、14年以上の歳月を掛けて完成させた。草分け的な取り組みだった。当時の労働環境は劣悪で、命を落とした工夫もいた。しかし、この2本の新しいトンネルは数週間のうちに貫通してしまった。
作業員の命を懸けて、昔ながらの方法に立ち返るべきだと言っているのではない。大規模な土木工事を今では、このように迅速かつ効率的、安全に進められるということが信じられないだけだ。そして、現代の安全対策と安全装置のおかげで、作業員が辛い仕事の後に家族の元へ無事帰ることが多かれ少なかれ保証されるのは良いことだ。
その一方で、こんなにも迅速に物事を完了できることが恐ろしい。テクノロジーが競うように発展し、プロジェクトをますます速く完成させることができるようになれば、自然界の至る所を加速度的に舗装し、掘削してしまう危険性はないのだろうか？
その時、私はクライミング・パートナーと共に、16年にアイガー北壁で登攀したルートを再び登ろうと、アイガーグレッチャー・ホテルに泊まっていた。しかし、よく眠れなかった。機械が夜通し低くうなっているのだ。眠るのを諦めて、外に出ると、よく冷えた夜空に黄色い機械や岩粉を照らす投光器の光線が私を迎えた。
その週のアイガーはおかしかった。別のパーティーが数日前、アイガー北壁の中腹にある「氷の管（Ice Hose）」と呼ばれる場所で引き返してきた。天気予報は思わしくなかった。霧が立ち込め、冷たい風が北から吹いていた。3週間で天気が悪いのはこの日だけのはずだった。北壁の壁自体の状態も厳しかった。そこで我々は撤退することにした。悪天候の他にも、何か良くない感じがした。適切な時ではなかった。
その2日後、私の知る最も有能な登山家のうちの2人が、同じルートを登攀しに行った。そのうち1人が、理由は全く分からないが、北壁の高い場所で先頭に立っている時に滑落した。2人はロープでつないであったにもかかわらず、彼は長い距離を転落して負傷し、その場で亡くなった。我々は谷に降りてくるヘリコプターを見たが、とても信じられなかった。
後から振り返ると、この事故は悲劇的な「フィナーレ」だったと思った。そして、ある思いが私の中で膨らんだ。アイガーは今、人間に怒っていると。16年にそのルートを登攀した時は、山は完全に静まっていた。アイガー北壁を登攀する間、赤ちゃんをあやす母親の腕の中に包まれているように私は感じた。その時のアイガーは優しい面を見せていた。女性的な面だ。しかし今、民話に出てくる人食い鬼がふたたび目を覚ましたようだ。
不気味なことに、「アイガーは気にする」という短くなった文言が岩に残っていた時期と重なっていた。数週間後、トンネルが延伸され、残っていたそれらの文言も消えた。
私見の先に…
ここまで読んだあなたはきっとこう思うだろう。私はVバーンに全面的に反対していて、それには十分の理由があると。
だから、少し言い換えてみよう。ロープウェーを1本新しく建設することに、私はこれ以上反対しない。それが私のホームグラウンドに存在し、私にとって世界で一番大切な山の景観に影響を与えていても、だ。それは、これまで自然があった土地に、新しい高速道路や工業施設、発電所、スーパーを建設することに反対しないのと同じことだ。
アイガー・エクスプレスは短い区間とはいえ自然の景観の上を行き来するが、建設されるのは、すでに62基のスキーリフトやゴンドラ、チェアリフト、滑走式リフトがある地域だ。ハイシーズンにはスキーができなくなるほどのスキー客で混み合う。17年には100万人を超える観光客がユングフラウヨッホへ上がった。だから、新しい設備は必ずしも的外れではない。
ひとたび最新のロープウェーが建設されれば、最低50年は稼働できるはずだ。アイガー・エクスプレスの建設は環境へ大きな影響がある上、二酸化炭素排出量も多いが、建設期間はわずか2年ほどだ。その後は、一般的なメンテナンスは別にして、アイガー・エクスプレスの稼働に必要なのは電気だけだ。そのほとんどの電気は、この地域の歴史ある水力発電所から供給される。
長期的に見れば、新しいロープウェーシステムが野生動物に重大な影響を与えることは無いようだ。ゴンドラは比較的静かに、地上から離れた高い場所をゆっくりと一定の速さで移動する。さらに、ユングフラウヨッホの訪問客をのろのろと進む今の鉄道からアイガー・エクスプレスに移すという考えなのであれば、鉄道の運行数は減るだろう。そうなれば、谷の騒音公害は減り、電車も混まなくなるだろう。
ここ数十年の間に、地元住民は混雑を嫌って、ますます電車に乗らなくなっている。席が取れる可能性が低い今の状態では、もう一度ユングフラウヨッホやそのレストランに行ったり、ハイキングに出掛けたりする気に地元住民はならないのではないか？
観光客の二極化さえ起きるかもしれない。アイガー・エクスプレスを使ってユングフラウヨッホをできる限り早く往復する人々と、もっと時間に余裕を持ち、時間の掛かる電車を使って、山の牧草地を散策しに出掛ける人々だ。
Vバーン他のサイトへにどのような波及効果があるかは分からない。地元住民には怒り反対する人がたくさんいる。しかし、それで何も変わらない。
Vバーンのような開発計画は社会の産物だ。私達自身に責任がある。需要と供給のサイクルだ。需要があり、利益が十分に出るのであれば、供給するのが当然だ。
私個人の意見や山との深い関係を別にして、私は本当にこの計画に反対だと言えるだろうか？V字の右半分 ―アップグレードされたメンリッヒェンのロープウェー― は長い時間を経てようやく実現した。以前のゴンドラは耐え難いほど遅かった。だから、Vバーンの右半分には心が痛まない。
反対派が最も強く主張したのは、V字の左半分 ―アイガー・エクスプレス― がアイガーを取り巻く景観に与える影響だった。しかし、痛みは徐々に癒えないのだろうか？5年後、10年後、アイガー・エクスプレスも景観の一部にならないのだろうか？
アイガー・エクスプレスが頭上を通り過ぎるヴェルギスタールに住む10代の女の子に、Vバーンをどう思うかたずねると、彼女は「もう最悪」と答えた。次に、アイガー・エクスプレスを使ってスキーに行くかとたずねると、「もちろん」と躊躇なく答えた。私もそうすると思う…。
では、グリンデルワルトで育つ次の世代は？彼らの目には、アイガー・エクスプレスはいつもそこにあるものと映るだろう。彼らにとっては、「当たり前（quite ordinary）」のことになるのだ。
「私の視点」シリーズ
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（英語からの翻訳・江藤真理）, swissinfo.ch