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水はスイスの豊富な資源。この資源を大切に管理してきたスイス。上海万博２０１０のテーマ館では、バーゼル、ジュネーブ、チューリヒの３都市がこの水管理のサクセスストーリを紹介する。しかし、ホルモンなど下水浄化フィルターを通過するミクロ汚染物質は今後の課題として残っている。このコンテンツは 2010/04/30 15:28
優れた水管理が評価され、スイスのバーゼル、ジュネーブ、チューリヒ市は、万博の特別企画「ベスト・シティ実践区」に招待された。この「スイス３都市館」は、大阪館、パリ館の傍に建ち、５月２日オープンする。
３都市はそれぞれが得意とする水の管理方法を提示。バーゼル市はライン川の汚染の克服を紹介し、ジュネーブ市はレマン湖の汚染への社会的取り組みを紹介。チューリヒは給水システムと上水の浄化技術、特に塩素処理を行わない自然の殺菌方法を披露する。
バーゼル市、市民、多くの化学・医薬品会社が協力
上海と姉妹都市であるバーゼル市が万博で提示するのは、ライン川の汚染克服と管理だ。バーゼル市内を３キロメートル流れるライン川は 河川水運業者の利用で、船舶が行き来するにもかかわらず夏には市民が「プール」として使う、すべての市民に開かれた場所だ。
しかし２０世紀中頃の汚染はひどく、ライン川は死んだと言われていた。ところが、それが蘇ったとバーゼル市外務局局長サビーナ・ホルワット氏は言う。「何十年もの空白の時期を経て２００８年に再び鮭が釣れた。ライン川が蘇ったのは、何と言っても３０年前に州が制定した環境基準法が要になった。この法律のお陰で、公的機関、市民、多くの化学・医薬品会社が協力したからだ」
上海万博では、こうした化学・医薬品会社側からの努力を代表するものとして、大手医薬品企業「ノバルティス ( Novartis ) 」が廃水の浄化方法や汚染物質を川に流さない方法を紹介している。
また、ホルワット氏はライン川の水質改善に欠かせないもう一つの点は、ライン川周辺の国々が協力して創設した数カ所の水質検査場だという。ここでは水質の管理、検査を行っている。「ライン川はバーゼル市民のものであると同時に、それが通過するヨーロッパ５カ国のもの。また周辺住民５０００万人の飲料水の源でもある。従って、バーゼル市の責任も重いし、また協力関係も欠かせない」と話す。
ジュネーブ市、リンとの戦い
「３０年前レマン湖の動植物の生態調査を行った際、水質汚染にショックを受けた。研究発表だけに満足せず、環境改善の運動を起こす学者になる必要性を強く感じた」と語るジャン・ベルナール・ラシャバンヌ氏は、ジュネーブ大学の生物・環境実験室の教授であり「レマン湖救済協会 ( ASL ) 」の創始者の１人でもある。
ジュネーブ市は、特にレマン湖のリンの削減に成功した。リンのうち特に合成洗剤が含むリン酸塩は湖の海藻の豊栄養化を助長し、その結果酸素を激減させる。酸素不足は有機物の不完全分解に繋がり、アンモニアなどの悪臭や魚に有害な物質を発生させる。
「レマン湖救済協会 」はジュネーブ州や周辺の州、隣国フランスの政治家や住民に働きかけ、また市民運動も展開した。１９６０年代の廃水浄化装置の導入、１９７２年のリンの化学的処理導入も削減に効果を上げたが、特にリン削減を促したのは、洗濯用合成洗剤中のリン配合を禁止する１９８６年の法律だったという。この結果廃水中のリンは１９７０年末のピーク時の値１リットル中９０マイクログラムから激減して現在３０マイクログラムを記録し、目的とする値の２０マイクログラムに近づきつつある。
「恐らく３，４年でこの値に到達するだろう。しかし、その後も基準維持のため監視を続けなくてはならない。廃水の浄化装置が老朽化し機能しなくなる可能性など色々な要因がまだあるからだ」と、ラシャバンヌ氏は警告する。
チューリヒ市、塩素を使わずバクテリアで殺菌
チューリヒ市の上水は、チューリヒ湖 の水７０％、地下水１５％、湧水１５％からなる。地下水と湧水は自然の浄化作用のお陰で水質が高い。
「チューリヒ市の飲料水が美味しいのは、こうした自然水が３割含まれている上、チューリヒ湖の水の浄水処理技術が非常に優れているからだ」と外務局のイヴ・ビザン氏は言う。この浄水処理技術がチューリヒ市の成功例の一つだ。
チューリヒ湖 から浄水場に引かれた水は、まず高速フィルターにかけられ、最後に高速フィルターより１０倍遅い砂の層でできたフィルターにかけられる。また、この二つの処理の間にオゾンを使って細菌や有害な微生物を殺す処理が行われる。この段階でかなり高い水質が得られるが、使用後水中に残留する有害オゾンを酸素に変え、また石油などの汚染物を吸収する活性炭のフィルターも使う。
ところで、チューリヒ市が世界に誇る技術は、実はこの活性炭とサンドフィルターの上部に繁殖するバクテリアの活用だ。バクテリアは、新陳代謝の養分として有機物を分解するために水中の有機物量が激減する。そのため、その後の水は細菌などの繁殖が不可能になり、殺菌剤である塩素を一切使用しなくて済む。
「ほとんどの国で飲料水に塩素処理を行っている中で、チューリヒ市のこのバクテリアを使う方法は、世界でも例外的に優れた技術だ」とビザン氏は強調する。さらに、こうしたオゾンや活性炭を使ったチューリヒ市の浄水処理は、現在問題になっているホルモンなどのミクロ汚染物質も減少させるため、チューリヒ市の飲み水は非常にレベルが高い。
今後の問題、ミクロ汚染物質
ジュネーブ市、チューリヒ市、バーゼル市の例が示すように、スイスの水管理は成功し、スイスでは湖、河川や上水、下水においても水質は高いレベルを保っている。しかし、スイスの現在の問題は、浄化処理を通過した後の廃水や河川、湖などに含まれる、医薬品や化粧品などに由来するミクロ汚染物質との戦いだ。これはスイスに限らず世界中が直面する問題でもある。
２００６年に連邦環境局 ( BAFU/OFEV ) が着手した「ミクロ汚染物質研究プロジェクト( Strategie MicroPoll )」では、ミクロ汚染物質がオスの魚をメス化させる作用が確認されているが、人体への影響は証明されていない。
しかしラシャバンヌ氏は。次のように警告する。「例えばレマン湖ではさまざまなミクロ汚染物質がスープのように混ざっている状態だ。アメリカの研究によれば２００２年に１８００万個だったミクロ汚染物質の種類が現在４７００万個確認され日々増え続けている。人体にもすでに影響が出ているかもしれないが、問題は種類があまりに多く、これがこの病気の原因だと証明できないことだ」
連邦環境局はこうした状況から、２０２２年までに大規模な１００カ所の下水処理場を選び、オゾンや活性炭のフィルターを追加する計画を進めている。
「もちろんスイス人の健康のためだが、スイスはほかの国にとって水源のようなものだ。スイスの水がすでにミクロ物質で汚染されていればライン川が流れ着く先のオランダなどへの責任は大きい」と連邦環境局の広報官エリザベート・マレ氏は言う。
さらに、「スイスのノバルティスなど大手医薬品会社の責任は世界的にも大きい。もちろん人間の健康を願って製造される医薬品や薬用クリームだが、これらが今後人体及び環境に与える影響は計り知れない。リンなどと違い、ミクロ汚染物質はごく少量で驚くほどの作用を引き起こすからだ」とラシャバンヌ氏は科学者としての経験から、懸念の色を隠さなかった。
里信邦子( さとのぶ くにこ) 、swissinfo.ch
スイスの上水
スイスの上水は、8割が地下水や湧水など自然の浄化作用から産出される水で、2割が湖や川の水を浄化処理して使われている。
チューリヒ市は7割がチューリヒ湖から、残り3割が地下水、湧水から。ジュネーブ市では8割がレマン湖から、2割が地下水から来ている。
チューリヒ市、バーゼル市、ジュネーブ市とも高い浄化処理技術を使い上水の質は高い。また、そのほかの小都市も含め、スイス全体の上水の質は高い。
しかし現在の問題はミクロ汚染物質の削減だ。2022年までに、全国700ある下水処理場から、都市の大型のもの100カ所を選び特別なフィルターを取り付けていく計画を進めている。
このオゾンや活性炭を使った特別なフィルターで、約8割のミクロ汚染物質が廃水から除去されると考えられている。
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