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夏になると牛は、山の牧草地に移動して夏越しをする。ベルナーオーバーラントにあるアデルボーデン（Adelboden）の牛追いは、狭い山道を400頭もの牛が登っていくのが見物だ。牛追いの前にある酪農家の「山の権利市」も、その変わった取り引きが面白い。
山の権利市とは、牛が夏に山で過ごすための権利を取り引きするのだ。現地の方言で「トゥーシェ（Tüüsche）」（交換の意味）と呼ばれる市は、アデルボーデンの伝統的なお祭りだ。
アデルボーデンにもやっと夏がやって来た。6月も末となると、羊やヤギ、牛がつけた鈴が平和にそれぞれの音を奏でる季節でもある。牛は、アルプスの牧草地を求め「徒歩」で坂道を登る。晴れて登り切ればそこには、おいしい牧草が待っているというわけだ。しかしその前に、飼い主にはやることがある。牛が山で夏を心地よく過ごすための山の権利の取り引きだ。
学術的な取り引き
酪農家のダニエル・ツィンメルマンさんには、計算された作戦がある。レッスン1。「1頭の牝牛の放牧の権利は8頭のヤギの権利に相当する」ツィンマーマンさんはちょうど6頭のヤギも山の牧草地に移動させるつもりだから、牝牛で換算すると4分の3頭分だ。レッスン２はもう少し複雑「牧草地の場所によってヤギと牛の割合は変化する。チェンテンだったらヤギ7頭で牛1頭、エングストリンゲンなら6対1だ」
村の中心地、クロイツとベーレンの２つのレストランがある広場に集まった酪農家たち。老人も若者もいる。アルプスの酪農家独特のひげを生やした人も見かける。多くの酪農家は当地の民族衣装、白いシャツに刺繍が施された黒い半そでのビロードの上着を着ている。みんなが顔見知りだ。
あいさつが終わると、勢いよく取り引きが始まる。クリスティアン・ゲルマンさんは取引相手とすぐに合意。小さな白い札を交換（Tüüsche）した。「ルルニング4つをシーレルン4つに交換した」とゲルマンさん。つまり、アルプスの牧草地でシーレルンと呼ばれているところでゲルマンさんの牛4頭が夏を過ごせる権利を取り引きできたというのだ。取り引きした相手は逆にルルニングの牧草地で4頭の牛を放牧できる権利を得た。取り引きが進み、牛の夏越しの場所が決まっていく。
ヤギが基本
「家畜何頭が山で夏越しをするのですか」とゲルマンさんに聞くと「山」という単位で答えが返ってきた。1山がヤギ1頭。「今年は85と6分の2山、必要なんだ」と言う。
ここでレッスン3。3頭の子牛が1頭の出産経験のない牝牛に相当するから、子牛1頭はヤギ2頭と6分の4ということになる。乳牛1頭でヤギ8頭であることは前述のとおり。具体的に数えると、ゲルマンさんは、7頭の乳牛、2頭の出産経験のない牝牛、8頭の子牛を夏越しに山に送るのだ。もちろんこの計算は、シーレルンの牧場での計算となる。
尊敬される山の管理人
午後は、レストランクロイツに宿泊している山の管理人の時間だ。山の管理人は地方の住人の集団であるゲノッセンシャフトが選んだ山の責任者で、尊敬されている。ヴェルナー・ライヒェンさんは太くて黒い髪に髭、濃い眉のボンデルアルプの管理人だ。まるでアルプスの神話にでも出てくる主人公のよう。ライヒェンさんはこの土地で、アルプスに住む人特有のもっとも荒削りな気性のスイス人との評判である。
アルプスに牛を送る酪農家は全員、午前中取り引きした権利を証明する白い札をライヒェンさんに差し出さなければならない。ライヒェンさんは、各人の権利を帳簿に記入する。山に放牧される牛の数を管理するためだ。未成立の取り引きについてもライヒェンさんが調整する。せいぜい6分の1山の差異の問題だと言う。ライヒェンさんでも仲介ができないような場合、牛は別の山に放牧されることになる。
あまりにもたくさんの権利所有者
アルプスで毎年行われる原始的な「山の権利市」のノウハウは、文明の風を反映するものでもある。「山はあまりにもいい加減に区分けされている」とライヒェンさん。多くの人が山の権利を持ちすぎているというのだ。ボデナーでは、140人のゲノッセンシャフトのメンバーがいるが、家畜小屋にはわずか35頭の家畜しかいない。遺産相続により財産が分割されたのが原因だ。子孫に土地を分割する代わりに、山の権利が譲渡された結果なのだ。「以前は山の権利と家が切り離されることはなかった」とライヒェンさんは言う。
ここでレッスン5。山に放牧する牡牛には山の権利は必ずしも必要としない。ほかの牝牛の交配に牡牛を提供すればいいのだ。なんだかどんどん複雑になるばかり。学校で習った算数はあまり役立たないのが山の権利市のようだ。
swissinfo、レナト・クンツィ アデルボーデンにて 佐藤夕美（さとうゆうみ）意訳
補足情報
- 山の権利の計算はアデルボーデンでしか通用しない伝統的な方法。1頭の乳牛を山に上げるのに100フラン（約8000円）かかる。チーズの生産量などにより、権利の値段は変わる。山から下りてくる秋に清算される。
- アデルボーデンの牧草地が狭く、よい牧草地に自分の牛を放牧したいという酪農家の望みが生んだ方法だ。ほかの地方には見られない。
- 一方、アルプスの放牧地は強制的に競売に出されたり、牧草地が荒れて森林になってしまったところも多い。
- 観光客の誘致面からの調査では、森林化し、牛のいない風景に観光客は魅力を感じないという結果も出ている。牛やヤギなどの家畜を山に放牧することは観光業界にとっても重要な要素だ。もちろん、アルプスの自然を守るためにも、動植物の多様性を保つことが重要な課題となっている。
キーワード
アデルボーデンはベルナーオーバーラントにある酪農家人口140人の村。
アルプスの牧草地はゲノッセンシャフトと個人が経営している。
山の管理人は放牧される家畜の数を制限するのが主な役目。