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チューリヒ州の安楽死協会「ディグニタス ( Dignitas ) 」は主に外国からやってくる人々の自殺をほう助している団体だ。同協会はここ最近、毎日のように新聞の見出しを飾っている。
それは、この団体が新しいほう助場所を借りてはまたすぐに追い出されるということを繰り返しているためだ。
安楽死協会ディグニタスは、数日前からチューリヒ市内およびその近郊で安楽死を実行できる場所を探している。先週の初めもチューリヒ市近郊のある町から追い出されたばかり。
さまよえるディグニタス
ディグニタスとチューリヒ州の各町との冷えた関係は積年の問題だ。ディグニタスが「非商業目的で利用する」として1998年から借りていたチューリヒ市内の住居も、マスコミからずっと注目されていた。
そのアパートの住人は、この部屋から運び出される棺に何年間も眉をひそめ続けていた。しかし、賃貸契約が解約されたのは同協会の入居から8年が過ぎた昨年の夏だった。
その後、ディグニタスはチューリヒ市近郊の複数の町を転々とした。創立者ルートヴィヒ・A.・ミネリ氏が住む町でも活動を行ったが、当局はいずれも自殺をほう助するときには住居の利用目的が変わるため、特別許可が必要になるとしてこれを禁止。ディグニタスは異議を申し立てているが、まだ適した場所を見つけられないままだ。
昨年、同協会からペントバルビタールナトリウム ( 安楽死によく使用される麻酔剤 ) を受け取った人は合計195人。そのうち120人はドイツ人だ。ミネリ氏はドイツでも自殺ほう助が認められるよう力を注いでいる。
ドイツでは自殺のほう助が禁止されているため、スイスに「死のツーリズム」が生まれた。その発展を食い止めようと、チューリヒ市民はずいぶん前からスイス全国で有効な連邦法の発効を求めている。しかし、クリストフ・ブロッハー司法相は現行の法律で十分だと主張している。
国が場所を提供？
「ドアの販売には1枚ごとに許可が必要なのに、安楽死はいわば無規律のまま野放しにされている。そう考えると、ひどくショックなこと」と語るのは、チューリヒ州司法内務省事務総長のクリスティアン・チュント氏だ。「いつかこのような活動が認められる日がきたら、そのときには尊厳あるほう助を行うための条件を定めるべきです。国が墓地の近くにある場所を提供してもよいのでは」と彼は言う。
スイスにあるもう1つの安楽死組織「エグジット ( Exit ) 」はこのような問題とは無縁だ。エグジットは外国人ではなく、スイスに住む人々のほう助を行っている。自殺を望む彼らが死を迎えるのは自宅か老人ホーム。チューリヒ市はこのような活動を認めている。
防護策
チューリヒ州は検察官指導の下、厳正な運用に重点を置いた、死のほう助に関する規定を作成した。チュント氏によると、エグジットやディグニタスはこの原案を退けたが、3者の間で意見交換が続けられている。
チュント氏にしてみれば、連邦司法省で全国的な規定の必要性を再検討することが一番だ。この期待はまだ当分叶いそうにないが、連邦司法警察省司法局で死のほう助関係を担当しているベルナルド・シュターデルマン氏は、「私たちの推測が正しかったことはここ数日の出来事が示している」と確信する。「チューリヒ州の各町が今回あのような態度を取ることができたのは、死のほう助の悪用を取り締まる法的基盤ができていたからです」
医師にかかるリスク
連邦司法省の報告、そしてそれに続く連邦議会での討議を待つ間、ディグニタスはほう助の場所を持たぬまま過ごさなければならない。それだけではなく、同協会はまた、協力をしてくれる医師を探すために一生懸命だ。
「ペントバルビタールナトリウムの投与に関する追加報告が公表されて以来、ディグニタスはどうやら医師を探すのに苦労しているようなのです」とシュターデルマン氏は言う。現行の法律では投与の条件が制限されているからだ。このことについて、ディグニタスからのコメントはない。
swissinfo、アリアーヌ・ギゴン・ボルマン チューリヒにて 小山千早 ( こやま ちはや ) 訳
補足情報
- ディグニタスは昨年7月、8年間借りていたチューリヒ市内のアパートを解約された。
- その後、チューリヒ湖畔の町でアパートを借りたが、今年9月になって、同じ建物の住民から棺がしょっちゅう運び出されるとの苦情が寄せられるようになった。
- これを受け当局は、死のほう助は居住圏に適していない住居利用であり、特別許可が必要となるからという理由でディグニタスを強制退去させた。ディグニタスはこの決定に抗議している。
- それ以来、同協会はチューリヒ市近郊の工業地域やホテルなどで数人の患者の死を看取ってきた。
- しかし、これらの町でも当局が介入している。
ディグニタス ( Dignitas )
ディグニタスは1998年、ルートヴィヒ・A.・ミネリ氏によってチューリヒ市近郊で設立された。人生に終止符を打ちたいが、法律によって自国では不可能だという外国人の自殺をほう助している。
75歳のジャーナリストで外国語に秀でた法律家でもあるミネリ氏は人権の専門家。数十年前から死の自決権のために尽力している。この権利は2006年11月に連邦裁判所で認められた ( 間接的安楽死および消極的安楽死 ) 。
ミネリ氏はしかし、予防にも力を入れ、多くの人の自殺を思いとどまらせようとしている。ミネリ氏によると、安楽死組織は絶望に陥った人々を受け入れ、彼らの話に耳を傾ける組織でもある。
ミネリ氏は少人数のチームと共に活動しているが、2004年以降は「時間が足りない」として年次報告を発表していない。