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「彼女は悪魔にとりつかれている」。2008年1月7日の無料日刊新聞「ツヴァンツィヒ・ミヌーテン ( 20Minuten ) 」のウェブサイトに踊った見出しだ。2007年11月26日には、ウェブ新聞「ブリック・ドッド・シーエイチ ( Blick.ch ) 」に「悪魔祓い 14歳の少女が盲目の危機に」と題した記事が載せられた。このコンテンツは 2009/08/14 15:25
悪魔は本当に存在し、悪魔祓いをすることはできるのだろうか。前出の記事はポーランドやニュージーランドで起こった事件を報道したものだ。スイスにも悪魔祓いを行うエクソシストがいる。カトリック教会の悪魔に対する理解を専門家と一緒に探ってみた。
精神病か、悪魔の仕業か
「わたしが務める司教区では、平均して1年に2、3人、電話をかけてくる人がいるのみ」
とエクソシズムに対して慎重に話すのは、クール司教座教会参事会会員で司教区裁判所首席判事を務めるジョゼフ・M・ボネメン氏 ( 61歳 ) だ。医師の資格も所有し、また30年来神父として司祭を務めるボネメン氏は、
「スイスで『マグヌス・エクソシズム ( Magnus Exorcism ) 』と呼ばれる最も大きな儀式を行わなければならなかったケースは知らない」
と語る。マグヌス・エクソシズムとは、映画「エクソシスト」などで知られるような大掛かりな悪魔祓いの儀式だ。
自分は悪魔にとりつかれている、あるいは自分の周りに悪魔が出て苦しんでいると訴え、教会に助けを求めてくる人には最初に必ず精神医学的な検査をする。この時点で、たいていの場合は精神の病を病んでいることが明らかになるという。しかし、
「精神分裂症などの精神的な病なのか、それともカトリックでいう『悪魔の仕業』なのかということをはっきりと一線で区切ることはできない」
とボネメン氏は言う。そして、検査の結果どこにも異状がなく、精神科医もお手上げとなるごくまれなケースでカトリックの信仰に基づいたエクソシストの出番がくる。
では、そのエクソシストとは一体どんな役割を担っているのか。
「神は人間と天使を創られた。天使は神のために祈り、また人間を守り導く精神のみの存在です。この天使の一部が神に逆らい、いわゆる『堕天使』、悪魔と呼ばれる存在になったのです」
とボネメン氏はまずカトリックの教えから説明を始める。
熱心なカトリック教徒の中には、精神的に不安定な状態をこのような悪魔のせいだと信じ、自分は「悪魔にとりつかれた」と思い込んでしまう信者がいる。その「とりつかれた」状態から人間を解放する儀式がエクソシズムであり、祈りなどを通じて「とりつかれた」人の精神を解放に導く人がエクソシストだとボネメン氏は説明する。西洋医学で治し切れなかった心の病を信仰によって治そうというわけだ。
だが、エクソシズムは必ずしも悪魔祓いだけを指すわけではない。たとえば「天にましますわれらの父よ」で始まり、「われらを悪より救い給え。アーメン」で終わる「主の祈り」もエクソシズムの1つだという。つまり、エクソシズムとは、人間が悪に導かれないようにする、あるいは人間を悪から解放する祈りの儀式なのだ。
エクソシストの育成
悪魔祓いを行えるのは、教育を受けたエクソシストのみ。2005年、ローマの教皇庁立レジーナ・アポストロールム大学 ( Regina Apostolorum ) の神学科には4カ月間のエクソシスト養成講座が組み込まれた。1998年に発行された書「エクソシストと祈願 ( De Exorcismis et Supplicationibus quibusdam ) 」には、悪魔祓いに関する規定が細かく決められているという。
「しかし、クール司教区では司教が悪魔祓いを行うことになっており、わたしはこの本を読んでいないのです」
とボネメン氏は告白する。そして、30年ほど前に1度、悪魔にとりつかれたと訴えている人をスイスのカトリックの総本山アインジーデルン ( Einsiedeln ) へ送ったことがあると記憶の糸をたどる。
スイスでは各司教区にエクソシストがいるわけではなく、代わりに司教がその任を負っているところも多い。スイスで悪魔祓いが実際にあまり行われない理由の1つとして、この儀式に対する各司教区の姿勢が非常に慎重なことが挙げられよう。
「ほとんどの場合、本人が精神科医とじっくり話をすれば落ち着きます。エクソシストを必要とするケースはほとんどゼロに近い。その場合も、ともに祈りを捧げれば解決します」
「わたしたちの仕事で悪魔祓いが占める割合はほんのわずか。わたしたちの仕事は喜びに満ちたものです。喜び、これが人間が本当に必要としていることなのです」
と、小柄なボネメン氏は大きくほほ笑んだ。
小山千早 ( こやまちはや ) 、swissinfo.ch
バーゼル司教の悪魔祓い
バーゼル司教区ではマルティン・ゲヒター補佐司教がエクソシズムを担当している。スイスおよびドイツの報道によると、ゲヒター補佐司教は2006年以降、ドイツに住む23歳の女性に対して合計25回に及ぶエクソシズムを行った。だが、その後もこの女性が完全に回復することはなかったという。End of insertion
スイスにもっとエクソシストを
クール司教座教会のクリストフ・カセッティ参事会会員は2008年3月、カトリック教会の通信社「キパ ( Kipa ) 」とのインタビューで、スイスの各司教区に最低1人のエクソシストを置くよう提案した。カセッティ氏は「信仰が失われ、キリスト教の環境が希薄になった今日、社会には悪魔にとりつかれた現象が頻繁に起こるようになった。また、サタニズムも増加している」と述べている。
同じ司教座教会参事会に属するジョゼフ・M・ボネメン会員はこの発言に対し、「各司教区に窓口を作れば、確かに各方面での対応はしやすくなる。だが一方で、エクソシストがいるのであればそういう現象が多いのだと解釈し、自分も悪魔にとりつかれているのではないかと思う人が増えるかもしれない」と反論した。
現在、スイスには3人のエクソシストがおり、全員ローザンヌ・ジュネーブ・フリブール司教区に属している。同司教区では、平均して1週間に6件から10件の問い合わせがある。フランスとスイスのフランス語圏を合わせると、エクソシストは100人近くになる。
エクソシストには守秘義務が課されている。
カブリエレ・アモルト神父
ローマ司教区のガブリエレ・アモルト神父は著名なエクソシストだ。ドイツの雑誌「バチカン ( Vatican ) 」によると、21世紀に入ってからすでに7万件のエクソシズムを行っており、問い合わせは増加の一方をたどっているという。アモルト神父は、儀式を受けた人の口から吐き出されたという金属を2キログラム保管していると語っている。End of insertion
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