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スイス素材科学技術研究所の「EMPA」は、「ストラディバリに近い音色を出すバイオリン」を、細菌で腐食させた木材で作ることに成功したと発表した。バーゼルで11月上旬に開催された「未来展2008」の「スイス革新フォーラム」でそのバイオリンが公開された。このコンテンツは 2008/11/13 15:25
フランシス・シュヴァルツェ教授の研究に協力したバイオリン職人のミヒャエル・ローンハイマー氏は「比較的手に入りやすい値段のバイオリンをより多くの音楽家に使ってもらいたい」と将来に期待を寄せている。
密度の均等化に細菌
天才楽器職人のアントニオ・ストラディバリが活躍した17世紀は、中央ヨーロッパでは小氷期に当り、寒い冬と冷夏が約50年間続いた。このため木も、ゆっくりだが規則正しく成長した。よって、木の密度が現在の木より平均化している。ストラディバリの作ったバイオリンに使われたトウヒとカエデの密度も同じように均等で、これが、その音色を大きく左右したと考えられている。
シュヴァルツェ氏は、今の木材でも質を均等化すればバイオリンなど楽器の音色が向上すると考え、20種類の細菌を木に繁殖させて試してみた。5年間の研究の末、世界中どこにでもあるシュラリア菌なら、冬季に成長が鈍化し密度が高くなる木の細胞を集中的に腐食し、夏に成長し密度が低くなっている部分の木の質に近づくことが分かった。
シュラリア菌で加工された木材を使い、スイスでも有数のバイオリン職人であるローンハイマー氏が作ったバイオリンの音色をEMPAが測定したところ、音色は数段美しくなったという。約30週間、シュラリア菌によって腐食された木は、熱と蒸気で殺菌されている。バイオリンに姿を変えた時点で
「匂いもしなければ、細菌の痕跡もなく、しなやかなバイオリンの肌をしています。これは非常に重要なことです」
とローハイマー氏は語った。さらに新しく作られたバイオリンでは特に難しいことだが
「出したいと思う音色が、美しく簡単に出せるバイオリンになりました。木を加工したことが大きい」
スピーカーにも応用
しかし、今回公表されたバイオリンは、シュヴァルツェ氏に言わせるとまだ完璧ではないという。バイオリンの表板は細菌での加工が施されていないからだ。
「裏板は広葉樹のカエデが使われており、シュラリア菌が良かった。表板のトウヒは針葉樹のため、別の菌が適している」
来年6月にならないと、表と裏の両方に細菌加工された板を使ったバイオリンはできあがらないという。
ローンハイマー氏は来年、2梃の細菌加工バイオリンを完成させる予定だ。そのもようは、ドイツのテレビ番組として公開される予定だという。その際には専門家に目隠しして、ストラディバリの音色と比較して言い当ててもらうことも計画中という。
「わたしの作るバイオリンの値段は2万5000フラン ( 約200万円 )。細菌加工のバイオリンも同じくらいの値段になります。もちろん、細菌加工した木のおかげもありますが、バイオリンは木材の質ほかに、ニスの調合やその塗り方など、いろいろな要素が絡んで美しい音色が出るのです」
今回公開されたバイオリンは、すでに某音楽家が所有している。発表後、音楽関係者からの問い合わせがローンハイマー氏の下に多く来たというが、来年できあがるバイオリンは今のところ、ローンハイマー氏自身に所属するとのことだ。
シュヴァルツェ氏は、同じ方法でステレオなどのスピーカーの質も向上できることから、日本の某電機メーカーにも接触した。しかし今のところは、連絡が途絶えているという。
swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
アントニオ･ストラディバリ
1644？～1737年
イタリアの楽器製作者。特に彼が製作したバイオリンは有名。
多くの弟子が働く工房で約1100梃の弦楽器が製作されたが、現存するのは約650梃。美しい音色を出すために、それまで不均等だった木の厚みを均等にし、濃いニスを塗ったが、詳しい制作技術は今日には伝えられていない。
値段も非常に高く、2006年にニューヨークのクリスティーズでの競売では、ストラディバリ作の「ハンメル」という名前のバイオリンが354万4000ドル ( 約3億5000万円 ) で落札され話題となった。
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