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ジュネーブ州は9月1日から来年6月末まで、子宮頸がん予防ワクチンの無料接種キャンペーンを行っている。11歳から19歳の約2万2000人の少女を対象としており、これまですでに約5000人が接種を受けた。
キャンペーンのために開設されたジュネーブ大学病院の「HPVワクチンセンター」のほか、このプログラムに参加している小児科や産婦人科の医院でも接種希望者を無料で受け付けている。
予防は11歳から
ジュネーブに住むエリザベス・ベラージさん ( 50歳 ) の家に9月初旬、HPVワクチンの無料接種キャンペーンのパンフレットと接種時に提出するクーポン券が届いた。ベラージさんには17歳の娘がいる。
「私の娘時代には、性に関しては親と話すことさえ考えられませんでした。しかし今の時代はさまざまな性感染症の問題があります。感染症を避けるために利用できるものはすべて利用しなければなりません」
と、彼女が産婦人科の医者の予約を取り、娘を連れて行ったという。
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス ( HPV ) は性交渉で感染する。連邦保健局 ( BAG/OFSP ) の推計によると、スイスでは性交渉の経験がある70%の男女がHPVに感染している。年間5000人以上の女性が異形成と呼ばれる前がん病変 、そして約320人の女性が子宮頸がんを発症しており、約100人が子宮頸がんのため死亡している。
このため、HPVワクチンの無料接種に向けて、ジュネーブ、バーゼル、ヴァレー /ヴァリス( Valais/Wallis ) の3州は2007年にプログラムを立ち上げた。現在ではスイスの全州が同様のプログラムを持っており、チューリヒ州などでも無料予防接種を開始した。ジュネーブ州では来年6月末以降も引き続き、小児科と産婦人科の医院で予防接種を無料で受けることができる。
ハイリスク層対策
連邦保健局は、スイスの16歳の男女の約半分は性交渉の経験があると報告しており、ジュネーブ大学病院のクレール・アン・シグリスト医師は、HPVに感染する確率が高いハイリスク年齢層は、16歳から19歳と指摘する。HPVの感染、前がん病変および子宮頸がんの発見は、定期検診によってほぼ100%可能なため、性交渉があるなら10代でも定期検診を受けるべきだと唱える医師も多い。
シグリスト氏は16歳から19歳の女性たちがハイリスク層になっている理由として、必要な情報や定期検診の必要性を教える機会と場所がないことを挙げている。
「小児科医に行く年齢を過ぎた16歳以上のティーンエージャーの少数しか決まった家庭医をもっていません。産婦人科に行くのは問題があった時か、ピルをもらう時だけです」
また、中学校卒業後、専門学校への進学、就職、専門職の見習修行の開始などで義務教育から離れる子どもが多いことも、情報が十分に行き渡らない原因となっている。
シグリスト氏はそこで、HPVワクチンセンターのウェブサイトを立ち上げた。かわいいイラストと話しかけるような文章で予防接種の必要性を説明し、ウェブサイトからでも予約を取ることができる。結果は上々だった。現在1日に50人から100人が同センターを訪れるようになり、これまでに合計約1400人が接種を受けている。半年間に3度受けなければならない予防接種の予約日については、1週間前に電子メールを、そして前日に携帯電話にメールを送ると、至れり尽くせりだ。
「必要な情報と予防接種への公平なアクセスをすべての少女たちに与えるために、予防接種は無料でなければなりません。今回のキャンペーンのプログラムは最も有効で民主的な方法です。長期的なゴールは公立学校でHPVとB型肝炎の予防接種を行うことです」
とシグリスト氏は語った。
すべては公衆の健康のために
ジュネーブ州政府の経済・健康局のフィリップ・スードル医師は、このプログラムは同州にとって非常に大きなチャレンジだと述べる。
「まず、どういう種類であれ、がんという病気を防止するワクチンの接種に州政府が関わること自体はこれが初めてです。そして11歳から19歳と対象者の年齢の幅が広く、予防接種を受ける人数が多いという意味で大規模なプログラムです。また、プログラムの実施に伴う複雑な事務手続きをできるだけ簡略にする必要があるという意味でも大きなチャレンジです」
予防接種3回分で1人当たりの合計費用は465フラン( 約3万9000円 ) となるが、予防接種を受ける本人が支払う必要は全く無い。最終的には国民全員が加入している民間の健康保険が負担する。
しかしジュネーブ州には健康保険会社が40社以上あり、各社と手続きをする州政府の事務的負担は莫大だ。
「健康保険会社は負担をできるだけ少なくしたいと考えています。しかし、わたしたちは子宮頸がん防止のために、とにかくこのキャンペーンをできるだけ早く実施したかったので、妥協案として来年の6月末までと期限をつけざるを得ませんでした」
これまですでに約5000人が予防接種を受けたが、保険会社からの払い戻しは今のところ一銭もない。
しかしスードル氏はすでに将来に向けて、状況を前向きに見ている。
「今回の前例ができれば、これからまたプログラムの開発・実施を行いやすくなります。実施してみてはじめて、どこをどう改善すべきかわかります。それにこれから新しいワクチンが開発されるでしょう。そうすれば競争で値段が下がるはずです。まだまだ大きなチャレンジがたくさんありますが、すべては公衆の健康のためです」
swissinfo、笠原浩美 ( かさはら ひろみ )
子宮頸がん
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス ( HPV ) の感染で発症する。HPVに感染しても多くの場合は免疫力によって消滅するが、一部の長期感染者の細胞に前がん病変が生じ、そのまたごく一部が子宮頸がんに進行する。
HPVは100種類以上が発見されており、その中でも特に16型と18型が主要な原因であることが多い。
子宮頸がんはゆっくりと進行し、長期にわたって自覚できる症状が現れにくいため、定期検診に行かない限り発見が難しい。
定期検診による子宮頸部の細胞検診とHPV検査を併用した場合、前がん病変や子宮頸がんの発見率は100%近くなる。
子宮頸がんの治療法は、がん部位の切除、レーザー療法などがある。
出典：連邦保健局 ( BAG/OFSP ) 、ジュネーブ大学病院ウェブサイト
抗ヒトパピローマウイルス ( HPV ) ワクチン
ジュネーブ州のプログラムで使用されているワクチンの「ガーダジル ( Gardasil ) 」は、子宮頸がんを引き起こすウイルス全種のうち4分の3の種類に対して99%の予防効果がある。予防効果の有効期間は約5年間が証明されている。
HPVワクチンは、HPVに感染してからでは効果が無い。また、前がん病変や子宮頸がんの治療・再発予防にも効果が無いため、定期検診の代用にはならない。
連邦保健局とジュネーブ州経済・健康局の両方が、HPVワクチンの接種と同時に、やはり性交渉で感染するB型肝炎の予防接種を勧めている。
出典：連邦保健局 ( BAG/OFSP ) 、ジュネーブ大学病院ウェブサイト