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国民の高齢化に伴う財政の圧迫を憂慮する連邦議会は、老齢・遺族年金制度 ( AHV/AVS ) の改正案を提出している。このコンテンツは 2008/03/19 16:56
新しい改正案は、女性の定年を男性と同様の65歳へ引き上げること、退職制度の柔軟化および低所得者の早期定年退職を含む。
スイスの社会保障制度の要である老齢・遺族年金制度は、高齢世代が貧困に陥らないよう支えることを目的としており、60年前に発足して以来、10数回も改正され、年金支払月額が徐々に引き上げられてきた。しかし、連邦議会と政府が前回2004年に提案した定年引き上げ案は、国民投票で否決された。それから4年を経た現在、中道左派、中道右派そして保守派の各党は、来週の連邦議会での新たな論争に備えている。
増加する負担
国民の高齢化と出生率の低下により、スイスを含む先進国の社会保障制度は、遅かれ早かれ破綻すると専門家は見ている。現在の制度は、主に雇用主と労働者の負担金で成り立っているが、そうした人口構成の変化によって労働者の負担額が増加し、重荷になりつつある。
統計では、1人の年金受給者をサポートに、2008年では労働者3.6人分の負担が必要だが、2040年までに2.2人に減らされるべきだという。
「老齢・遺族年金制度は、基本的には年金の再分配で、世代間の公正が原則です。若い世代が年長の世代の受給分を負担しなければなりませんが、年金受給者のために負担額を増やすよう若い世代に強いることはできません。彼ら自身も貧困に陥るリスクを冒すことになってはならないからです」
と中道右派の急進民主党 ( FDP/PRD ) のイグナジオ・カシス氏は述べる。
年金の受給を確実にするために、新たな財源を見つけるか、年金受給額を引き下げるか、または65歳上の人々の定年を延長して負担額の支払いを続けてもらうかなどで意見が分かれる。
「ほかのヨーロッパ諸国が採用した、唯一の現実的な解決策は、定年を引き下げるのではなく、引き上げることです。現代人は健康で長生きしています」
とカシス氏は付け加えた。
しかし多くのスイス人が、定年が67歳に引き上げられることはないと予測する。5年前にパスカル・クシュパン内務相が出した同様の提案は政界に大論争を巻き起こし、年金改正派は手痛い攻撃を受けた。
また2004年の前回の提案では、政府が約束した低所得者をサポートする政策が欠けており、それが国民投票での敗北につながったとする指摘もある。
退職制度の柔軟化
今回も改正案のポイントは、定年の柔軟な設定の導入だ。全党とも賛成のようだが、導入に必要な費用調達に関しては意見が分かれる。
保守派のスイス国民党 ( SVP/UDC ) および中道右派の急進民主党の多くは、この制度の導入費用として公金を使用することに強硬に反対している。また、早期定年退職の場合は、しかるべき計算基準にのっとって受給額を削減するべきだと主張する。
これに対し中道左派の社会民主党 ( SP/PS ) は、低所得者の早期退職を提唱しており、老齢・遺族年金制度の財政状況は十分健全で、余分のコストは経済の成長でカバーできると主張する。
同様の傾向にあるスイス労働組合 ( SGB/USS ) は、年収が12万フラン ( 約1千186万円 ) 以下で62歳以上の労働者に対して退職年齢の自由な選択を提唱しており、連邦議会へのPR運動を開始した。
キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) のテレーズ・メイェール氏の妥協案は、女性の定年の引き上げによって節約される年金と、ほかの政策によって早期退職を賄おうとするもので、現在の膠着 ( こうちゃく ) 状態の打破を可能にするかもしれない。
急進民主党とクシュパン内務相は、老齢・遺族年金改正にはもはや乗り気ではない。両者はこの提案を捨てて、62歳から70歳の間の柔軟な定年の設定を選択したいもようだ。
連邦議会が、改正案の否決を唱える急進民主党に傾いた場合、10年越しの大論争とつぎはぎだらけの改正案に終止符を打つことになる。このような事態を避け、老齢・遺族年金制度の将来を保証するためには、緊急かつ大胆な包括案が必要になるだろう。
swissinfo、アンドレア・アルチディアコノ 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳
スイスの年金制度、3本の柱のシステム
第1の柱は州による老齢・遺族年金で、老齢保険、障害者保険、収入補償を含み、定年後の基本的な生活費の保証を目的とし、加入は強制。
第2の柱は、企業年金で、定年退職後における退職前と同様の生活水準の維持を目的とし、労働者と企業が掛け金を折半。
第3の柱は個人貯蓄で、個人の老後のニーズに応えることを目的とするが、加入は任意。
老齢・遺族年金制度 ( AHV/AVS )
老齢・遺族年金制度 ( AHV/AVS ) は雇用主と労働者の両方の負担金によって成り立っている。
今回の主要改正案は、女性の定年を1歳引き上げて男性と同じく65歳にすること。
また、早期定年退職、定年延長の選択、およびインフレーションに対応した年金の資金繰りも含む。
ほかには、早期退職制度の資金繰りのために課税を設けるという提案もある。
2007年の年金受給者は約175万5000人で、2006年には約27億フラン ( 約2669億円 ) の黒字を計上した。
個人の年金受給額は1カ月1105フラン ( 約10万9000円 ) から2210フラン ( 約21万8000円 )。
夫婦単位では3315フラン ( 約32万7000円 ) 以下。
障害者保険
連邦議会では障害者保険 ( IV/AI ) の予算の増加案についても論議する。
2007年末には、障害者保険が110億フラン ( 約1兆874億円 ) の赤字となった。
昨年の投票で障害者保険の予算削減が可決され、多くの新受給者が影響を受けた。
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