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多くの観光客を呼び寄せる有名な景勝地、ダヴォスとサンモリッツの間にも、スイスには美しい自然に恵まれた村が沢山ある。今まであまり知られていなかったこのような地域が、最近は型にはまらない方法で観光客を呼び込もうとしている。
アルブラ渓谷は、特別な趣向を凝らした11の宿泊施設（と言っていいものやら）を指定し、「水とパン」プロジェクトと名づけて売り出した。中でも名前の由来となった「水とパン」をはじめ「牛舎」、「車椅子」、そして「お化け屋敷」などが手ぐすね引いて観光客を待っている。
ベラルーナ・レストランに一歩入ったとたんに、あなたは殺人現場に立つことになる。ドアを開けたその場所で、レストランのオーナーであり地元の名士であるポーラ・ルースさんが殺されたのだ。
お化け屋敷
ポーラさんが強盗の血塗られた手で殺されてから、もう20年近い年月が経つ。飛び散った血痕はとうの昔に拭き取られたが、彼女の魂は今でもここで漂っている（ビデオをご参照下さい）。ここをブラツェロル兄弟が買ったのは数年前だ。大掛かりな改築作業をして、この古びた建物を優雅な雰囲気のレストランとトレンディなナイトクラブに変身させた。亡くなったポーラさんのために祭壇を作ることも忘れなかった。
「彼女なしではベラルーナ・レストランはありえませんでした。そんな危険を冒すことは到底不可能です」とブルーノ・ブラツェロルさんは語る。ポーラさんは激しい気性と独特のユーモア、そして奇妙な習癖を持つことで有名だった。そんな相手を敵に回すのは賢明ではないのだろう。
ポーラさんが趣味で描いた油絵や紙で作った人形の頭、額縁に入った詩の数々が、このレストランの壁を飾っている。
ブルーノさんは続ける。「アルブラ渓谷は一筋縄ではいかない人々のための場所です。まあ、もっと別の言い方をすれば、一筋縄ではいかない休暇を楽しむための場所、ということでしょうか。ここを訪れる人々は、普通では考えられない場所や興味深い歴史を持った場所で休暇を過ごすことになります」
とうもろこし畑にパンと水
涼しいスイスは夏でも冷房のないホテルが多いが、ここではさわやかな冷房を用意している。「とうもろこし畑の中のベッド」もその一つだ。ここでは、自然の「冷房」が大地の香りをまとって泊り客に優しい風を送ってくれる。
ベルグン村が提供するベッドはもっと奇抜だ。「水とパン」と名づけられたこのコースではその名のとおり、泊り客が口にできるのは水とパンだけだ。けれども普通ではお目にかかれないパジャマに袖を通すことができる。中世時代に刑務所で使われた囚人服だ。
また他のコースも捨てがたい。ティーフェンカステル村が用意するのは、村よりも高い場所に位置する牛舎だ。牛舎の窓からは、壮観なアルプスの山々と、点在する渓谷の村が見える。まさに絶景を堪能しながら、日常から切り離された時間を持つことができる。
牛たちは夏の間、アルプスの放牧地で過ごす。彼らが２本の足で立つ新参者に自宅を明け渡してくれたおかげで、干草のマットレスと、暖かいウールの布団が運ばれ、清潔な部屋に生まれ変わった。
ジプシー・ワゴン
「何か他の観光地とは違ったことをしたかったのです」と「水とパン」協会会長のエリカ・ブレンさんは語る。エリカさんと夫は、牧歌的なシュティヴァ村で化学肥料などを一切使わない方法で牛の牧畜を営んでいる。
ブレン夫妻が彼らの牧場でベッドや朝食を用意するのなら、あまり奇抜だとは言えない。だから彼らは敢えて宿泊客にペンキで塗ったワゴンに泊まってもらうことにした。ジプシーやサーカスの一団が使うようなワゴンだ。
ここの宿泊料金に朝食は含まれていないが、肉やマッシュルームやシロップを牧場や近くの店から買うことができる。
「私たちは非常に人里離れた所に住んでいるので、こうやって外から来た人と接するのは大切なことです」とエリカさんは説明する。
確かにこのスイス東部のこの土地は、他の観光地に比べて特別風光明媚というわけではないかもしれない。しかし一つ、他より秀でた点がある：観光客向けのホテルやスキーリフトなどがまったく見当たらず、正真正銘の田舎が味わえることだ。
ここを村から村まで旅するのは足を使って、てくてく行くのが一番良い。村と村をつなぐ道はハイキングに最適なように整備されている。心地よい風に吹かれながら歩いて廻って、「水とパン」プログラムに参加している様々なコースを楽しんではいかがだろうか。
車椅子の方大歓迎
昔の民家を改造したその部屋は、電動ベッド、大きな音の出るプッシュホン式電話、広々としたお風呂。持ち味豊かな11のコースの中で「エンヴィアの家」(Envia home)が最高の宿泊施設を提供できるのは間違いない。少なくとも、車椅子を使う泊り客にとっては。
この地域には殺されたポーラ・ロースさんのほかにも、逸話を残した人物が少なからずいる。彼らの子孫が、こうやって一筋縄ではいかないプログラムを思いつくのも道理というわけだ。
「ポーラについては、一体なんといったらいいか」と87歳になるジョージ・ジャネットさんがポーラさんの思い出を話してくれた。「とんでもない女傑でしたよ。感情の起伏が激しくてね、レストランから気に入らない客を追い出すことも日常茶飯事でした。銃を持ってきて人を脅すことだってあったくらいですから」
記者はベラルーナで遅い食事を取りながら、事件に彩られたポーラさんの生涯をざっと読んでいた。すると、「あらあら記者さん、この有名な殺人事件をここに着いてから読んでいるんですか？」とウェイトレスがとびきり皮肉な笑みを浮かべた。さすがにどこまでも一筋縄ではいかない人たちだ。
swissinfo、 デイル・ベヒテル 遊佐弘美（ゆさひろみ）意訳
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宿泊料金は一泊20フラン（1740円）「とうもろこし畑」から95フラン（8300円）「車椅子の家」まで。
11のコースはアルブラ渓谷に点在している。
アルブラ渓谷はチューリヒから電車で２時間ほど。
同地域をバスで自由に乗り降りできフリーパスは３日間で40フラン（3500円）。