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「低線量被曝でもDNAは損傷を受け、突然変異を起こす。その結果が現れるのは、さまざまな要因が絡み約１０世代も後のことだ。だが、それは人類にとって大きな問題になる」と、スイスの内科医マルティン・ヴァルター氏は話す。
突然変異した遺伝子を持つ者同士が遠い将来に偶然結婚して発現することは、しかし、どういったものなのかまったく分かっていない。ただそれは大局的に見ると、がんのわずかな増加より倫理的に問題だと危惧する。
ヴァルター氏は、１人の内科医として核兵器、核実験、原発など「核と人類は共存できない」と考え、医師の責任を強く訴える。核戦争防止国際医師会会議スイス支部（PSR/IPPNW Schweiz）の支部長を２年務め、脱原発を推進する側に立ってきた。チェルノブイリには政府からの派遣も含め５回行っている。
チェルノブイリでの甲状腺がんの子どもの検診や治療、またその後の放射線による遺伝子突然変異の研究などを通して蓄積された知識を、今福島で起こっている出来事を事例として引きながら語ってもらった。
swissinfo.ch ： 内部被曝が今後の課題かと思われますが、どういった問題がありますか。
ヴァルター ： まず外部被曝は放射性物質をシャワーなどで洗い落せるので今後それほど問題にならないと思うが、食品や呼吸で吸収する内部被曝は問題が多い。簡単な測定方法がないからだ。ホールボディカウンターがあるが、何百人も測れるようなものではなく経済的負担も大きい。
セシウムはまだそれでも測れるが、骨に吸収されるストロンチウム９０はベータ線を出すため、内部被曝の測定は不可能だ。唯一の方法は、子どもの抜けた乳歯を取って置き、それを測ることだ。乳歯を焼いて灰にすれば測定できる。日本の検査機関では簡単にできるだろう。
核戦争防止国際医師会会議のアメリカの仲間が１９６０年代にネバタでの核実験で被曝した子どもの乳歯からストロンチウムが検出されたことを挙げ「自国の子どもが犠牲になってもよいのか」と当時のジョン・F・ケネディ大統領に働きかけた。これが核実験停止条約の一つの要因になった。
swissinfo.ch ： ９月３０日に放射性プルトニウム２３９が福島原発から４５キロメートル離れた飯館村など、県内６カ所で検出されたと公表されました。プルトニウム２３９は半減期が２万３０００年と気の遠くなるようなもの。取り込むとどうなるのでしょうか。
ヴァルター ： プルトニウムは一度体内に入ると、セシウムとは違いほぼ体外に排出されることはない。アメリカが何とプルトニウムを使った人体実験を１９４８年に行っており、クリントン大統領のときに公にされたので、これは間違いない。
プルトニウムは骨や肺、肝臓などにとどまる。放射線を出し続けるので、がんを引き起こしやすい。
swissinfo.ch ： では放射性セシウムですが、福島の多くの子どもの尿からセシウムが検出されました。長くて７０日で体外に排出されますが、その間の内部被曝も問題でしょうか？
ヴァルター ： その間の被曝量はわずかだ。しかし、問題はその土地に住み続けると排出されてもまた吸収し内部被曝が続くということだ。セシウムは１０年間で６センチメートル地下に沈んでいくといわれている。従ってたとえ徐々に地表面から無くなっても畑で野菜が吸い上げ、それを食べればまた被曝する。すべての土地の表面を上下に掘り返す作業は膨大な労力と費用がかかるだろう。
さらに現在、安全だという被曝量はないというのが定説になっている。がんになるリスクを縦軸、放射線量を横軸にするとそれは正比例の直線になり、たとえ１、２ミリシーベルトでもがんのリスクはある。胸部や骨折のレントゲン撮影でもがんになるリスクはゼロではないといわれている。さらに慎重な医者は線量が少なければ少ないほどがんリスクは高く、正比例の直線が少量の値域では上向きにカーブするといっている。
チェルノブイリでの研究の中に、学会では正式に承認されていないが、セシウムによって、子どもたちの心臓病が数年から１０年後に増えたという報告もある。心臓のリズムなどが不規則になる病気などだ。
また、すべての放射性物質の被曝で４、５年後に子どもの糖尿病が増えたという研究もある。
swissinfo.ch ： 日本の基準値、年間２０ミリシーベルトの上限をどう見ますか？
ヴァルター ： 短期なら分かるが長期的に年間２０ミリシーベルトは高すぎる。しかも子どもや妊婦を含んで２０ミリシーベルトは非常に高い値だ。たとえ原発に賛成する科学者にとっても高すぎる値だ。
スイスではたとえ事故が起きても放射線の限度を年間１ミリシーベルトに決められている。
１９９１年のチェルノブイリ原発から５０キロメートル離れたポルスコエ（Polesskoye）にスイス政府の派遣で行った。同行のジャーナリストと、子どもがかくれんぼをすると想定して建物の地下や低い茂みなどを測ったが、放射線量は事故から５年後なのに非常に高かった。また場所によって数値にかなりの差があった。
福島でも５年後同じことになるだろう。つまり、県内の多くの地点で今後とも線量はそう変わらないのではないだろうか。年間２０ミリシーベルト以下の地域から、避難するほうがよいと思う。もちろん故郷を捨てるといった社会的な問題は残るが。
swissinfo.ch ： 放射性ヨウ素について伺います。８月１８日付けの朝日新聞によれば３月２４～３０日にいわき市、川俣長、飯館村の１１５０人の子どもを対象に甲状腺被曝を調査した結果、その４５％が被曝していた。１４歳の男の子が「僕の体には放射性物質が入っているからゼロじゃないんですよね。本当に僕は大丈夫なのか教えてほしかった」と言っていました。実際のところ、被曝したこの子どもたちはどうなるのでしょうか。
ヴァルター ： ということは、子どもたちが原発の爆発直後にヨウ素剤を服用しなかったということか？信じられない・・・（顔を曇らせ、データを見るためコンピューターに向かう）。スイスでは原発から半径２０キロメートル以内の住人は、全員ヨウ素剤を持っている。それが原発を持つ国の安全対策の基本であり、国民に対する責任だ。たとえ持っていなかったとしてもすぐに子どもに配るべきだった。
甲状腺に被曝したということは、それがいくら低い値であろうと、この器官の細胞のDNAがダメージを受けてしまったということだ。従って、何人かは今後、甲状腺がんを引き起こす可能性があるということだ。そのため、毎年定期的に超音波でがんの発生を調べていく必要がある。
そもそも子どもの甲状腺がんは普通は存在しないものだ。以前ウクライナでは住民５０００万人に対し３人の甲状腺がん患者がいただけだ。それがチェルノブイリ以降、２０００～４０００人の子どもがこのがんにかかった。
しかし、早期に発見し、甲状腺を摘出すれば大丈夫だ。チェルノブイリで私もこの超音波の検査に何度も携わったが、ベラルーシでもウクライナでも子どもたちはみんな手術を受けた。しかも手術は９５％成功している。
ウクライナでは、ある経験豊かな７０歳の医師が７５０人もの甲状腺がんを手術した。わずか３人だけが術後の複雑な炎症が重なり亡くなっただけだ。
また、たとえ甲状腺が摘出されても、その後ずっとホルモン剤を飲み続ければ、それで元気に大人になり普通に一生を送れる。
swissinfo.ch ： 以上、放射性セシウム、プルトニウム、ヨウ素などの影響を見てきましたが、がんは増えるのでしょうか。
ヴァルター ： がんにかかるケースは増えるだろう。ただ、現在の工業国では死因の２５％はがんであり、また４０％の人ががんに一度はかかるが、回復して最終的にはほかの原因で亡くなると言われている。こうした中で、フクシマの事故は全体の２５％のがんでの死亡率に、わずかなパーセントを加えるということだ。
タバコや化学薬品などの害ですでにがんになるリスクが高くなっているところに、さらに放射線でのリスクが加算されるイメージだ。
ただし、フクシマの原発収束に働いている作業員のがんリスクは別物だ。チェルノブイリでもそうだったが、彼らのリスクは極めて高い。
swissinfo.ch ： 最後に、放射線による遺伝子の突然変異、それも低線量被曝の遺伝子突然変異について説明してください。
ヴァルター ： チェルノブイリの事故から１０年後の１９９６年にロシアのドゥブロバ（Dubrova ）医師が英科学誌ネイチャー（１９９６Nature ;３８０:６８３-６）に報告した例によると、チェルノブイリでセシウムなどに汚染された地域の人に遺伝子突然変異が多く見られた。
また、イスラエルのヴァインベルク（Weinberg ）医師の調査（Proc Biol Sci 2001;268 (1471) :1001-5）によれば、チェルノブイリの事故収束に働いた男性の２人の子どものうち、事故以前に生まれた子どもには遺伝子突然変異がまったくなかった。しかし、事故後イスラエルに移住して生まれた子どもにはある数の遺伝子突然変異が見られた。
放射能被曝によって父親の優先遺伝子が損傷されると子どもに病気が現れる。しかし、もし父親の劣性遺伝子が突然変異を起こした場合、子どもに受け継がれても、劣性遺伝子なので表面的には何の異常も起きない。これが、このイスラエルで生まれた子どもの場合だ。
しかし、もし遠い将来この子の子孫が偶然、同じ突然変異の劣性遺伝子を持った人と結婚し、劣性遺伝子同士が組み合わさるとさまざまな病気などが発現する可能性が考えられる。
ただ、何が発現するかは全く分かっていない上、こうしたことがチェルノブイリやフクシマで起こる可能性があるものの、さまざまな要因が絡むため約１０世代は先の話だ。
ところで、ドゥブロバ医師などの方法で長崎と広島の被爆者の遺伝子を調べたところ、突然変異はほとんどなかった。原爆は瞬間的なインパクトを与えたが、長期の低線量被曝を起こさなかったということなのだろう。
従って、私には、低線量被曝が遠い将来の世代に与える遺伝的な影響が大きな問題だ。これは人類にとっての倫理的問題でもある。
宗教家で科学者の友人がイメージとして、こう語った。かつて、宇宙からの放射線量が徐々に減少したとき地球上に人類が誕生した。しばらくの年月人類は放射線を生産せずに生活した。ところが今、核実験や原発事故などで、自らの手で地球上に放射線量を増やし地球を住みにくい場所に変えようとしていると 。
マルティン・ヴァルター氏（Martin Walter）略歴
１９４５年、ゾロトゥルン州シュトュッスリンゲン（Stüsslingen）に生まれる。
１９７２年、バーゼル大学医学部卒業。
１９７３年から８１年までバーゼルで内科医として働く。
１９８１年からグレンヒェン（Grenchen）で内科医として開業、現在も現役で働く。
１９８９年、以降９０年、９１年、９３年、９６年と合計５回チェルノブイリで医者として診察にあたった。９１年にはスイス政府が派遣した災害援助協力隊の一員として現地入りした。
１９８８年から９０年にかけ、核戦争防止国際医師会会議スイス支部（PSR/IPPNW Schweiz）の支部長を務めた。
３人の子どもの父親。初めの子どもが２歳のときの１９７５年、バーゼルに建設予定だった原発「カイザーアウグスト（Keiseraugst）」に反対してキャンプに泊まり込んだ経験から、原発や核兵器に反対する活動に入った。
スイス医師会会報（Schweizerische Arzte Zeitung/Bulletin des médecins suisse）に、
「国際放射線防護学会（IRPA）の不十分な基準に対する議論」（2005, 86, Nr26）、「チェルノブイリとフクシマ : 原子力政策における医師としての責任」（2011, 92 :21）などの記事を執筆している。
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