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スイス放送協会の新会長に、メディアでの経験が豊富なロジェー・ドゥ・ヴェク氏が5月18日選出された。
スイスのメディア界トップの座だが、受信者の要求に応える効率の高い経営が要求される上、傘下のインターネットサービスを行うスイスインフォ ( swissinfo.ch ) が経済的政治的に圧力を受けており、その解決もドゥ・ヴェク氏の肩にかかる、きわめて課題の多い任務だ。
連邦制の連帯を強化
「さまざまなメディアで仕事をした経験を生かせるこの新しい仕事に意欲を燃やしている」
とドゥ・ヴェク氏はスイス放送協会 ( SRG / SSR ) のプレスリリースで述べ、さらに
「4カ国語からなるスイス連邦にとって、スイス放送協会の役割は連邦制の連帯を強化し、また政治的社会的意見を国民が持てるように努めることだ。つまり公共機関のサービスであると同時に、公共に対するサービスを行う機関なのだ」
と話す。
56歳のドゥ・ヴェク氏は、フランス語とドイツ語のバイリンガルで、チューリヒに住む。ジュネーブやヴォー州の日刊紙の記者として活躍した後、チューリヒの日刊紙「ターゲス・アンツァイガー ( Tages Anzeiger ) 」、ドイツの日刊紙「ディ・ツァイト( Die Zeit ) 」の編集長などを歴任した人物だ。
「ドゥ・ヴェク氏は責任ある、ハイレベルのジャーナリズムを具現してくれる人物」とスイス放送協会の取締役会会長のジャン・ベルンール・ミュンヒュ氏も高く評価している。
今後ドゥ・ヴェク氏は、14年間務めたアルマン・ヴァルペン氏の後任として来年の1月から会長の任務に就く。
最大の仕事は内部改革
しかし、効率性を高めるための経費節減への圧力や再編成の只中で引き渡される職務は容易なものではない。これを「勝つ見込みの少ない闘いを強いられているようなものだ」とメディア雑誌「クラーテクスト ( Klartext ) 」の編集長ニック・リュッティ氏は表現する。
ドゥ・ヴェク氏は受信料の値上げや、現在制限のある広告の量の幅を特にインターネットサービス分野で拡大していく必要がある。また、市場競争の激しい環境の中で私企業のメディアからの絶えざる攻撃にも対処していかなくてはならない。
だが、「新会長の最大の仕事は実は内部改革にある」とリュッティ氏は言う。ラジオとテレビ部門の緊密な協力体制、及び一部の合弁化が必要とされているからだ。
「なぜなら今一番の目的は、放送サービスを受ける一般の人のニーズの変化に対応していくことだ。というのもスイス放送協会にとって最大の資金箱は、実はこれら受信者の払う受信料だからだ」
さらにリュッティ氏は、今こそ信頼できるインターネットサービスの方針を決定するべきだと指摘する。
「過去数年間、ラジオとテレビのオンラインプロジェクトに多くの時間を割いてきて、その間に元の国際放送で、現在9カ国語でマルチメディアのインターネットサービスを行うスイスインフォの将来を危うくさせてしまった」
と話す。
会長が指揮
メディア関係の専門家カール・リュウンット氏は、スイス放送協会会長のポストはスーパーマンだけがこなせるようなものだと表現し
「困難なことばかりが待ち受けている。すべてのチャンスをつかみ自分のものにしていくよう努力するしかない」
と激励する。
一方リュッティ氏は、このポストはほかの大企業の会長職などと大して変わらないと考える。ただ一般の企業と異なるのは、スイスの連邦制や4カ国語からなる特殊性に重きを置かなくてはならない点だ。連邦制を尊重し、一つのグループを特別に取り扱うことなくかつ少数派の視点を大切にする必要があるという。
「そのためには、ある謙遜さを持ったバランスの取れた性格で、透明性のある対話ができる人物が要求される」
と言う。
いずれにせよ、ドイツ語圏の日刊紙「ノイエ・ツルヒャー・ツァイトゥング( NZZ ) 」はスイスの文化的、政治的多様性を考慮するとき、軍隊のリーダーのような発想を持つ人物はまったくこの職務に合わないと警告を発する。
「スイス放送協会は、会長が指揮を執るのであり、将軍が指揮を執るのではない」
ウルス・ガイザー 、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子 )
スイス放送協会 ( SRG / SSR )
スイス放送協会 は8カ所のテレビ局と18カ所のラジオステーションから成り、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語、の四つの公用語そして英語でも放送を行っている
スイスインフォ ( swissinfo.ch ) は、元スイス国際放送としてラジオ放送を行っていたが、現在インターネット上での情報活動を9カ国語で行っている。
スイス放送協会は主に受信料と広告、スポンサー料で経営されている。6100人の従業員を抱え、うち4800人がフルタイムの仕事に就いている。
1931に創設され、1953年にヨーロッパ放送連合 ( EBU ) に加盟した。