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幻覚剤のLSDが治療薬として認められる日も近いようだ。連邦保険局はこのほど、LSDをガンの末期患者など死の床にある患者に臨床試験として投与することを認めた。
LSDの治療薬としての有効性は、35年前にすでに証明されていたが、保険局はこれを認めず今日に至っている。LSDは幻覚症状を起こすが、精神病患者には有効な治療薬として知られている。
LSDを治療薬として試験的に患者に投与することを認められた精神科医ペーター・ガッサー氏は「わたしは、精神治療薬としてLSDが有効だと確信しています」と言う。
白昼夢を呼び起こす麻薬
「死を間近にし死を怖がっている患者は、これまでの人生に精神的な意味を見出そうとします。このような状態にある患者にとってLSDの有効性は、知られています」
とガッサー氏は語る。試験は12人の患者を対象にし、1月から3カ月続く予定だ。投与されるのはLSDもしくはその擬似薬で、１回の投与量は200マイクログラムだ。
「LSDを服用した患者は、2日間にわたり医師の観察下に置かれます。この間は、深い眠りに着くようなものです。ゆったりとできますし、音楽を聴きます。LSDの効力はおよそ8時間続きます」
試験は「幻覚研究の多角専門協会 ( MAPS ) 」により支援されている。今回の経費は19万フラン ( 約1900万円 ) だ。
「個人的な希望ですが、LSDがいつの日か、モルヒネと同等に、その扱い方を知る医療関係者により患者に投与することができるようになればと思います」
とガッサー氏は意気込む。
治療薬としてLSDを選んだのは、意識、知覚、気分などを強化し変化させることにより、患者の精神状態を向上させることができるためだ。一方、LSDは恐怖心を呼び起こす可能性もあり、患者がパニック状態に陥り、強迫観念に悩むことになると、試験に批判的な意見もある。
一般の薬と同じく安全
LSDは徹底的に研究された物質のひとつとみなされている。これまでの研究で、精神病治療を目的とした場合、他の薬と同じように安全な薬であると実証されている。1966年に非合法となるまで、精神病の奇跡的な治療薬として医療関係者の中であがめられていた。しかし、治療に使えなくなったため、医師からも支持されなくなった。
ガッサー氏によると、今回の試験にいたるまで、多くの困難があったという。アールガウ州の倫理委員会、医薬品認可のスイスメディク ( Swissmedic ) 、治療薬管理機関、連邦保険局などの許可を取らなければならず、すべての許可が揃ったのは昨年の12月5日だったという。アールガウ州の倫理委員会のエリザベス・グリム・ベッティク会長は
「余命いくばくもないと分かっている患者に、LSDの効力とその危険性を説明するのは難しい。患者がプレッシャーを受けずに理解することを望みます」
と語る。
リベラルな思想が可能にした
試験にこぎつけるまで大変だったが、スイスを広く支配するリベラルな思想や先入観にとらわれない倫理委員会のおかげで許可が下りたのだとガッサー氏はみる。
「2、30年前には、このような試験をすることは考えられませんでした。ヒッピーやテクノなど、ドラックが単なる楽しみのために使われたため、LSDは否定的にみられていました。一昨年、パスカル・クシュパン内務大臣に手紙を書いたところ、倫理と科学上の基準をクリアすれば、試験は問題ないとの答えをもらいました」
と明かす。
LSDはスイスの科学者アルベルト・ホフマン氏によって1938年、偶然発見された。今回、臨床試験が認可されたことについてスイス公共放送のテレビ番組でホフマン氏は
「自分が開発した問題児の名誉回復を祝うことができて嬉しい。わたしの望みがかなった。わたしが生きている間に、LSDが医薬品としての地位を勝ち取ることができるとは思っていなかった」
と語った。ホフマン氏は今年、102歳になる。
swissinfo、サイモン・ブラドレー 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳
LSD
1938年、バーゼルの医薬品大手「サンド ( Sandoz ) 」の研究者、アルベルト・ホフマン氏により発見された。サンドは後に「チバ・ガイギー」と合併し「ノバルティス」となる。
ホフマン氏の研究は、植物の構成物質を分析し人工的に作り出すことにあった。サンドは1947年から、LSDの錠剤を主にアルコール依存症患者や精神病患者のために製造し販売するようになった。しかし、1960年代、ヒッピーにより麻薬として服用されるようになり汎用されたため非難を受け、1960年代後半には世界各国で禁止されるようになった。医薬品としても使われなくなり、サンドは1966年に製造を中止した。
LSDは非常に強い幻覚症状をもたらす。意識、知覚、気分などを強化し変化させ精神に問題がある場合は状態を複雑にする。しかし、常習性を持った麻薬ではない。トリップは12時間続くこともある。トリップの後半に経験したことをフラッシュバックすることもある。
swissinfo.ch