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凧 ( たこ ) が上昇するときに糸を引っ張る力で発電機を動かし、船舶内の冷蔵庫やエアコンなどの電気に利用するプロジェクトが進行中だ。
このプロジェクト「キットヴェス ( KitVes ) 」は、昨年スタートし、3年後の完成を目指す。技術開発には、ヨーロッパの8つの研究機関がかかわっているが、その1つにスイスの、ヌーシャテル州ル・ロックル ( Le Locle ) の「アルク工業大学」がある。
ヨーヨーの原理
「船に取り付けられた1000平方メートルの巨大な凧を上げ下げしながら発電機を動かすというもので、原理は非常に簡単だ」
とアルク・工業大学 ( Arc Engineering College ) のプロジェクトコーディネーター、ヴァレリー・ブリッケ氏は説明する。
基本的な仕組みは、風が十分にある海抜1キロメートルの上空にまで凧が上る際に、凧糸が引っ張る力で発電機のタービンが回る。その後、凧を風のない方向に移動させ船に下ろし、再び風のある方向に上昇させるという、いわばヨーヨーの原理を使った発電だ。
初めて凧での発電 を考案したのは、イタリアの会社「セクオイア・オートメーション ( Sequoia Automation ) 」。同社は、凧を土地にいくつも取り付け発電を行うプロジェクトも構想している。
地上800メートルから
「問題は凧が降りてくる際に失われる電力。これを最小限に抑えることが大切だが、凧が上昇する際に十分発電していれば、差引でかなりの発電量を生産することになり、船舶内の電気器具などに利用できる」
とブリッケ氏は説明する。
キットヴェス・プロジェクトのサイトによれば、60キロワットから30メガワットまでの発電が可能だというが、例えば、70キロワットを上昇時に発電し、下降時に10キロワット消費 ( 凧が下降する際、タービンを回し続けるための消費 ) した場合でも、 60キロワットの発電ができるという意味だ。
一般に 風は上空であればあるほど、スピードが高まるという。例えば地上80メートルの上空では秒速4.6メートルのスピードが、地上10メートルでは秒速3.3メートルに落ちる。専門家によれば、地上800メートル辺りでは常時秒速7.2メートルの風が吹き、凧の発電には最適だという。
キットヴェス・プロジェクトでは、凧の翼の部分に感知機が取り付けられており、凧の位置、上昇スピード、方向などのデータが船内のコントロール機に送られる。こうして、情報をキャッチした発電機は凧の上昇すべき位置を操作すると同時に、発電も行う。
凧と凧糸の動きのデータ
電子工学と機械工学を専門とするアルク工業大学がキットヴェス・プロジェクトで担当するのは3つの分野だ。
第1課題は、上空に上った凧に取り付けられている感知器に電気を送る方法の開発。ポリエチレン製の凧糸の耐久性の研究が第2課題。第3課題は、凧と凧糸の動きをデータとしてコンピューターに入れ、発電機に前もって可能な動きをインプットする技術の開発だ。
「非常に満足のいくプロジェクトだ。我が校が専門とする分野での向上が図れる上、学生たちも満足している。若い世代は、再生可能エネルギーにとても興味を持っている」
とブリッケ氏はプロジェクト参加を高く評価している。
プロジェクトのほかのパートナーたちは、材質、海上での安全性、上空での飛行規程、適したボートの開発などを行っている。来年には、2隻のモデル船が完成されテスト航海が行われる予定だ。
サイモン・ブラッドレー、
( 英語からの翻訳、里信邦子 )
ほかの凧発電プロジェクト
ドイツの「スカイセイル( SkySails ) 」社は、船の走行に、凧 ( たこ ) を使う技術を開発し、昨年1月に航海テストを行った。風などの条件がよければ、燃料消費を35% 抑えられるという。
また、凧を地上で飛ばして発電を行う実験が最近カリフォルニアの「マカニ・パワー ( Makani Power ) 」社と、イタリアの「セクオイア・オートメーション ( Sequoia Automation ) 」社で行われた。後者のプロジェクトは「キット・ジェン ( KitGen ) 」と呼ばれる。
海上航行と二酸化炭素 ( CO2 )
国際海事機関 ( IMO ) の2009 年4月のレポートによると、国際及び各国の全船舶が航海で排出するCO2は、地球上の全排出量の3.3%を占め、鉄道 ( 0.5% ) や航空 ( 1.9% ) 分野での排出量より多い。
海上航行と航空だけが京都議定書で規制を受けていない分野で、12月のコペンハーゲンでの会議に向け、この2分野へのプレッシャーは高まっている。
専門家によれば、海上航行がこのまま何の規制も受けない場合、2020年までに現在より30% CO2排出量が増える。