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地球を取り囲んでいるのは反物質と暗黒物質 ( ダークマター ) であるのかを調べるために、巨大な分光器が国際宇宙ステーション ( ISS ) に搭載される予定だ。
ジュネーブ大学とスイス連邦工科大学チューリヒ校 (ETHZ) の科学者が共同で開発したアルファ磁気スペクトロメータ ( Alpha Magnetic Spectrometer: AMS-02 ) が、スペースシャトル「エンデバー」に搭載され、5月16日に打ち上げされる予定だ。
当初は4月29日に予定されていたが、発射直前に不具合が見つかり延期となり、5月16日に再度挑戦する。
もしこの打ち上げが実現したら、エンデバー( Endeavour ) の打ち上げは25回目となり、これを最後に引退する。一方、スペースシャトル「アトランティス( Atlantis )」は今夏、宇宙ステーションに補給物資を届けるのを最後に、初飛行の1981年から30年間という長い歴史に終止符を打つ。
「AMS」の原型である「AMS-01」は1998年、スペースシャトルと共に宇宙へ飛び立ち、ロシアの宇宙ステーション「ミール ( Mir ) 」に補給物資を運んだ。その際、宇宙間を常に行き交う放射線 ( 宇宙線 ) の素粒子を採取し、9日後、地球に戻ってきた。
当時の目的は、AMSのような分光器が、打ち上げや宇宙滞在といった厳しい条件下にも耐え得るか調べるものだった。
2代目となるAMS-02は、そうした環境でも10年間は耐えられるように設計されており、またアメリカではAMS-02は「宇宙線のハッブル望遠鏡」と呼ばれている。
宇宙線とは、太陽や星、超新星やビッグバンから放出される放射線のことだ。宇宙線は地球を取り巻く大気によってフィルターにかけられてしまうので、その測定は大気圏外で行われなければならない。地表から300キロメートルほど離れたところが測定には最適な地点だ。この位置には国際宇宙ステーション ( ISS ) が1日に15回以上、地球の周りを周航している。
AMSの中心部は、真ん中に穴の開いた巨大な円柱形の常伝導磁石でできていて、見た目は巨大なドーナツのようだ。この磁石は電荷量によって宇宙線を識別し、600台以上のコンピューターに接続された一連の検出器がその後解析する。
反陽子
「化学成分や空間変動、時間変動などを記した地球の放射線環境マップが、今回のAMS-02打ち上げで完成できそうだ」と、AMS-02プロジェクトリーダーの1人であるマルティン・ポール氏は言う。ポール氏はまた、AMS-02の考案や設計に中心となったジュネーブ大学の物理学科長を務めている。
「100年後には宇宙線のことがかなり解明されていると思うが、宇宙線そのものについてのデータを集めるのは今回が初めてだ」
ビッグバン直後は、すべての素粒子(陽子を構成するクォーク、電子など ) が質量を持たず光速で飛び、エネルギーだけが存在するような世界だった。こうした素粒子は宇宙が冷えるにつれ、互いに結びつき、物質および反物質が形成された。反物質を構成する反陽子と陽電子を検出できると期待されているのがAMS-02だ。実は先代の「AMS-01」もこの2種類の粒子を検知したが、その量がごく微量であったがために、それらは130億年の宇宙の歴史で衝突を繰り返してできたものに過ぎないと分かった。従って、これら粒子は一緒に集まり、原子を構成するような状態ではなかった。
反物質の集まり？
物理学者が興味を持っているのは、宇宙誕生時に出現した始原的な反物質だ。始原的な反物質はビッグバン直後に出来たと考えられている。
反物質の発見は難しいが、少なくとも、水素やヘリウムといった最も単純な化学元素の始原的な原子の形で発見されればと期待されている。
「AMS-01は100万個の原子を集めたが、ヘリウムの反原子は一つも見つからなかった。もしAMS-02が10億個の原子を集めても見つからない場合は、われわれはもう、それ以上探すことはしないだろう。だがもし反原子が見つかれば、ビッグバンで残った反物質の小さな集まりがあったと証明できる」とポール氏は言う。
さらにもし反炭素などの比較的重い原子を検出することが出来たならば、反物質からなる「反星」がどこかに存在したと言えるだろう。なぜかというと、星の中心にしかこうした要素は形成されないからだ。
ポール氏は、こうした仮定は「とても面白いが、まずあり得ないだろう」との考えを示した。
セルンも協力
暗黒物質に関してはほとんど未知だが、もし暗黒物質が素粒子であるならば、AMS-02ならなんとか発見できるかもしれない。発見されれば、何かさらに未知な物質も一緒に見つかる可能性もある。
セルン ( 欧州合同素粒子原子核研究機構/CERN ) には、スイスとフランスとの国境の地下に建設された大型ハドロン衝突型加速器 ( LHC ) があり、今回の分光器はLHCを完全に補うものだ。
LHCは人工的に素粒子を生成するが、宇宙では自然状態の素粒子を観察することができる。世界最大の素粒子加速器であるLHCは高エネルギーの素粒子衝突を実現できるものの、所詮、素粒子が宇宙で得られるエネルギー量には到底及ばない。
宇宙空間での素粒子観察を実現するために、セルンは今回のプロジェクトに深く関わっており、すでにAMS-02に関するさまざまなテストを実施している。今後宇宙から送られてくるデータもセルンで取り扱われる予定だ。
最後の旅
すべては、国際宇宙ステーションが順調に打ち上げられ、ドッキングに成功することにかかっている。
AMS-02もほかの貨物も、エンデバーの最終飛行を共にできる貴重な搭載品だ。エンデバーは1970年代に設計され、これまで133のミッションをこなしてきたが、14人もの宇宙飛行士が亡くなるという事故も起きた。そんなエンデバーも退役を迎える。
先代の「チャレンジャー ( Challenger ) 」は、1986年に大西洋沖での爆発で大破した。その際、7人の宇宙飛行士が犠牲となった。同機の代わりとなったエンデバーは、退役後、ロサンゼルスにあるカリフォルニア科学センターに展示される予定だ。
NASAには3機のスペースシャトルが残存しており、退役を迎えるのはエンデバーで2機目だ。姉妹船「ディスカバリー ( Discovery ) 」は2011年3月に最終飛行を終え、すでに引退している。同機は今後、スミソニアン航空宇宙博物館で展示される予定だ。「アトランティス ( Atlantis ) 」は2011年6月28日に最終飛行が計画されている。
NASAのスペースシャトルがすべて退役したあと、アメリカが新しいスペースシャトルを建設するまでは、ロシアの宇宙船「ソユーズ」だけが国際宇宙ステーションに残る人たちと地球を結ぶ唯一の交通手段となる。貨物輸送に関しては、欧州宇宙機関が開発した欧州補給機 ( ATV ) があり、2011年2月には2回目のドッキングを成功させている。
反物質
反物質は逆の電荷でできた物質を指す。原子は陽子(+)と電子(-)からできている。ところが、反原子は反陽子(-)と陽電子(+)からできている。粒子や反粒子が一緒になった場合、巨大なエネルギーを出しながら消滅する。
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ダークエネルギー
ダークエネルギーは宇宙のおよそ73%を構成し、真空のエネルギーではないかと見られている。均一的に宇宙全体に広がっている謎のエネルギーだ。空間と時間のなかにもダークエネルギーは存在していると考えられ、宇宙が膨張してもダークエネルギーの持つ影響は変化しないとされる。
均一的に広がっているということは、ダークエネルギーは局地的な重力効果を持たず、宇宙全体に影響を与えているということだ。ダークエネルギーの持つ負の圧力は、宇宙の膨張を加速するものと推測されている。
( 出典：Cern.org )インフォボックス終わり
暗黒物質
暗黒物質は宇宙の23%を構成している。その存在が最初に明らかとなったのは1933年のこと。天文学的観察と重力効果の計算の末、望遠鏡で見えるもの以外に宇宙に何かが存在することが突き止められた。
では、暗黒物質とは一体何だろう。ある理論では、暗黒物質は「超対称性粒子」と呼ばれる仮定上の粒子を含む物質であるとされている。超対称性粒子は、標準理論で既存の粒子と対応関係にあるものだ。大型ハドロン衝突型加速器 ( LHC ) を使い、その存在を確認することが期待されている。インフォボックス終わり
AMS-02
アルファ磁気スペクトロメータ ( Alpha Magnetic Spectrometer: AMS-02 ) は、最先端科学技術を駆使した、素粒子物理学の分光器で、国際宇宙ステーション (ISS) にドッキングする外部モジュールだ。「AMS-02」の目的は、宇宙とその起源を解明することで、その主な役割は、宇宙線の構成物質や流動を精密に検出し、反物質や暗黒物質の存在を解明することだ。
AMS-02の組み立て、実験、運転には16カ国から56カ所の研究所が携わっている。アメリカ航空宇宙局 ( NASA ) は、AMS-02を国際宇宙ステーションにドッキングさせる役目を担っており、AMSは国際宇宙ステーションが退役を迎えるまで運用される予定だ。
AMS-02は、地上から約300km離れたところにある地球周回軌道を国際宇宙ステーションと共に飛行し、100億個ある粒子の1個をも感知できる精度で宇宙放射線を調査する計画だ。その際、始原的な反物質を発見し、暗黒物質の性質を解明することが期待されている。
宇宙の見えざる物質は何からできていて、始原的な反物質に何が起こったのか。そうした疑問を解くカギは、今後のAMS-02の調査結果にあるのかもしれない。
( 出典：AMS-02.org )インフォボックス終わり
( 英語からの翻訳・編集、鹿島田芙美 ), swissinfo.ch