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スイスでは多くの消費者が、地元産の農作物を買い、国内で自給自足ができるのが理想だと考えている。現実はしかし、スイスは農産物の約4割を輸入に頼っている上、頼りとなる生産者の農家はますます減少している。
このままでいけば、農産物は何千キロメートルも離れた場所から運ぶことになり環境にも悪い影響を与える。また、農業が工業化するにつれ、少数の農家しかその恩恵にあずかれなくなる。10月、農業労働者組合「ユニテレ( Uniterre ) 」がベルンで開いたシンポジウムには、食専門家、環境科学者、労働組合、政治家などが集まり、スイスの食事情について話し合った。
自給率が低いスイス
シンポジウムに参加したフリブール/フリブルク州議員でスイス農業組合 ( SBV/USP ) 会長を務める ジャック・ブルジョワ氏は、各国が自国内の食糧消費量に応じ、自国産の食物で需要に応じることが国の食糧政策の基本だと言う。
「遠い場所から調達すべきではない。環境への悪影響があるからだ。みんながみんなハンバーガーにケチャップを食べたいと思わないことも重要だ」
と語る。
また、北西スイス高等学校 ( Fachhochschule Nordwestschweiz/FHNW ) のエルンスト・ヴュートリヒ教授は、国内需給にさえ応じられないようなエジプトからのジャガイモが食卓に上がることは意味が無いと言う。
「地元産の農産物を買いなさい。唯一そうすることで、農家の生活が守られる」
ブルジョワ氏によると、スイスは食糧需要の4割を輸入に頼っているという。
「スイスは、多くを輸入に頼っている国の一つになっている。輸入品の消費額は１人当たり年600フラン ( 約5万3000円 ) 。EUの平均は65フラン ( 約5760円 ) 、アメリカ合衆国はたったの9フラン ( 約800円 ) だ」
ブルジョワ氏は、自給率を上げるために輸入制限をしたとしても、生産国である「南」諸国に不利になるとは考えていないという。
「スイス国内の市場が外国産農産物で満たされても、『南』諸国の助けにはならない。彼らも自国の農作物で自給するように援助することが大事だ」
と言う。例えばコロンビアやカメルーンの農家は、お互いが協力し、自作の農作物で生活が成り立つような政策をそれぞれの政府に対し要求すべきだという。
「南」諸国の問題
今回のシンポジウムに唯一「南」諸国から参加したブラジルのジョアン・パウロ・ロドリゲス氏は「自給率の問題は、ロジスティクと土地所有の民主化に深い関係がある」
との考えだ。ブラジルでは土地をめぐる犯罪が多く発生しているというロドリゲス氏は、南米全土にわたる農業改革を推し進めようとしている。
スイスのように豊かな国が自給率のことを問題にすることは立派だとロドリゲス氏は褒める。
「ブラジル人なら、自国の農業が工業化されることでブラジルで腹をすかせている人たちに食糧が行き渡るようにしたいと考えるが、すべての農作物がブラジルから輸出されてしまうことには反対はしないだろう」
と言う。一方で、ヨーロッパ諸国も自国内で農作物を栽培する必要があるとも指摘する。少なくとも「南」諸国が発展し工業化が完結するまで、ヨーロッパ諸国は食糧を外に求める必要はないとも語った。
農家に尊厳ある報酬を
「食糧の自給を語るなら、スイスの生活水準と照らし合わせた労働条件も配慮するべきである。農家の労働者がより良い生活ができるためには、1カ月の給料は最低3500フラン ( 約31万円 ) 、最低時給20フラン ( 約1770円 ) 必要だ」
とスイス労働組合 ( Unia ) のヴァニア・アレバ氏は主張する。そのほか、1カ月分のボーナスと労働時間週45時間は最低条件。現在の週60時間労働は過酷だという。
「残業のあり方などスイス全土に共通する農家の労働条件の統一が必要だ。農家は労働者と、最低条件を定める労働共同契約を結ぶべきだ」
アレバ氏によると、最近は農業も、特に「南」諸国は、多国籍企業が徐々に管理するようになったという。「国際機関と組んだ多国籍企業が『南』諸国でどんどん略奪している」のだ。
さらに、スイスで農業に携わる多くの労働者がスイスへ移民してきた外国人であり、中には違法滞在者もいる。
「世界的に見て移民してきた労働者は、どのような条件でも働こうとするため、労働条件の競争化につながる」
とも言う。
機械化が利潤を生む
「違法労働者はスイスで悲惨な立場にある。身を守る方法すら知らない」
と違法労働者を擁護するのはジュネーブの代替労働者組合のフィリップ・セヴァン氏だ。自国の食糧自給率が高ければ、スイスにまで来ずに自国にとどまって農業に従事し、移民になる必要はないと指摘する。
「しかし、わたしたちは競争の激しい世界に住んでいる。あちらこちらで農業の工業化が進み、機械化が進んだ農家だけが利益を上げ、小規模農家から土地を奪っていく」
セヴェラン氏はスイスの農家の抱える問題には理解を示すものの、もっとも困難な立場にあるのは、不利な法制度で、給料が非常に安く、長時間労働を強いられる外国人労働者だと言う。「違法労働者なら、最低限の権利さえない」
セヴェラン氏もアレバ氏も、世界の農業は情け容赦のない競争の中にあると認める。スイスの農家でさえも、労働者に生き延びるには不十分な給料しか、払いたくとも払えない状態にあるという意見で一致する。こうして農家が減少し、スイスの食糧の自給率も下がるばかりである。
ロサ・アメリア・フィエロ 、swissinfo.ch
( スペイン語からの翻訳、佐藤夕美 )