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「人権は他国の戦地での拷問や、外交官が議論する問題ではなく、自国の刑務所での不当な取り扱いや、家庭内暴力、子どものポルノ問題など、毎日の生活に関わるものだという認識を高めたい」と「人権と人道国際アカデミー 」の所長アンドリュ・クラパム氏は言う。このコンテンツは 2008/12/09 15:31
クラパム氏は、今年の国際人権宣言60周年記念にスイス政府が提案した「人権アジェンダ」構想を支援してきた。12月10日の「世界人権デー」にクラパム氏に会い、過去60年間の人権の歩みについて聞き、また、スイス政府の新提案を探ってみた。
人権は身近な問題
「第2次大戦の反省から世界人権宣言が1948年に採択されて60年がたつ。この間、規範レベルでは、子どもと女性の人権が一番保護されるようになり、法的レベルでは、拷問、主にチリの独裁者ピノシェ下での政治的な失踪者や子どものポルノ犯罪が最も進展を見せた」
と、クラパム氏は人権の全体像を総括した。
女性の人権では、男女平等もさることながら、つい数カ月前、家庭内暴力を受けた女性は、国内の裁判所で取り扱われなかった場合、国連で訴えることができるという議定書が作成された。また子どものポルノ犯罪者は他国に逃亡しても、逃亡先の国が議定書に批准していれば、その国で告訴されるようになったという。
ただ、今でも人権はクーデターや戦地での拷問など、他国の特殊なケースを扱うものだと見られがちだが、実は日常で起こる、自国での逮捕や刑務所での不当な取り扱い、家庭内暴力、尊厳を欠いた老人の扱いなど、身近な問題だという認識を広めていくことが今後の課題だという。
こうした意味で、今回スイス政府が発表した「人権アジェンダ」の推薦文には、各国の国内人権関連機関、つまり警察、刑務所、裁判所、社会保障援助機関や人権の認識を広める機関などを支援するための基金、恐らく、さまざまな国の出資でまかなわれる基金の創設を緊急課題の1つに挙げている。
スイスの人権アジェンダ
「世界人権宣言60周年記念に、スイスはセミナーなどを行なうのではなく、現代の人権問題を前向きに取り扱うような、永続的なことをしたいと考えていた」
と、スイス外務省 ( EDA/DFAF ) 第4課課長トマス・グルミンガー大使は説明した。こうして生まれた「人権アジェンダ」は、8人の専門家が協議し、8つのテーマと推薦文、テーマに基づく10のプロジェクトを提案している。
「各個人に平等性を与えるような人間の尊厳を守る」、「人権を責任を持って保護する観点から各国の法廷、警察、刑務所などの機関の見直し」、「人口が減少する先進国と、貧困・人口過剰の途上国間のギャップに起因する移民問題と移民の人権保護」、「人権を守るための国際法廷の創設」など、8つのテーマは、当初45もあったさまざまな人権問題の中から、南北間の格差のない、世界が直面する最もグローバルで普遍的な問題として最終的に選択された。
第8項の「国際人権法廷の創設」が長期的計画だとすると、推薦文にある各国の国内人権機関を強化するための基金の創設は、来年にはスタートしたい短期の計画。しかも現時点ではスイス政府が中心に行なう予定だが、他国もコーディネーターとして参加することを希望する課題だ。
「このアジェンダはスイスのアジェンダとしてとどまるのではなく、多くのほかの国々が賛同して、参加してくれることを望むもの。これらを中心に話し合い、10年、20年かけて世界人権宣言を現代にあわせた形で進展させていくための指標にしてほしい。スイスはいわば種まき作業を行った」
とグルミンガー氏は結論する。
そのため、「人権アジェンダ」は来年1月にニューヨークの国連本部で発表され、年内には国連人権理事会 ( HRC ) でも発表される。ただ、
「しばしば人権が政治的問題に転化されやすい国連人権理事会の場に、この8つのテーマを持ち込むのは微妙な問題。これらの問題をなるべく早くスムーズに解決したいのなら、国連人権理事会からは独立させたほうがいいのではないだろうか」
というのが、クラパム氏の現在の見解だ。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
スイスの「人権アジェンダ」
スイス政府は、今年の世界人権宣言60周年を記念し、世界人権宣言と現実とのギャップを埋め、現代の危機に合った人権問題を選択するアジェンダを作成しようと計画。15カ月前から準備を始めた
「人権と人道国際アカデミー ( ADH ) 」の支援を仰ぎ、メアリー・ロビンソン前国連人権高等弁務官など8人の人権専門家を呼んでパネルディスカッションを開き、8つのテーマと推薦文、テーマに基づく10のプロジェクトを提案する「人権アジェンダ」を12月5日に発表した。
8つのテーマ
1．各個人に平等性を与えるような人間の尊厳を守る 2．人権を責任を持って保護する観点から各国の法廷、警察、刑務所などの機関の見直し 3．世界に900万人いる囚人の人権的取り扱い 4．人口が減少する先進国と、貧困や人口過剰の途上国間のギャップに起因する、移民と移民の人権保護 5．無国籍による選挙権や子どもの教育権がない人の人権 6．健康への権利。特に世界で多くの女性が不十分な食糧、過剰労働、低教育、健康管理不足の犠牲者になっている。 7．地球温暖化と人権。特に地球温暖化で一番犠牲になる途上国の人権問題 8．現存の国際法廷とは別に、人権を守るための国際法廷の創立
テーマは、グローバルで現代的なものが選ばれた。さらに推薦文にある、各国の国内人権関連機関を強化するための基金の創設や、人権を身近なもので、個々人の中にある偏見や差別にも言及したとらえ方は、新しい人権の視点として評価される。
これはスイスのアジェンダとしてとどまるのではなく、1つの指標として話し合われたり、他国の事情によって、ほかの人権テーマもアジェンダに付け加えられたり、賛同国は基金の創設に参加したりといった、開かれたアジェンダである。
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