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4月にはいっても寒い日が続き、スイスの春はなかなか暦通りにはやって来てくれないようである。特に今年は3月末になっても雪が降り、イースター休暇もあいにく天気が悪かった。去る3月17日も空はどんよりとした灰色で終日寒い一日だったが、この日にJCZ（チューリッヒ日本人会）の企画でオペラハウスのガイドツアーが行われた。
このツアーは当日14時からのオペラ「カルメン」の上演に先だって、舞台裏を1時間半ほど見学するというものだった。日本人会からの参加者は25名で、ガイドを引き受けて下さったのは、オペラ劇場専属歌手の竹下数雄さん。東京都出身の竹下さんは、武蔵野音楽大学を卒業後、オーストリアに留学されウィーン国立音楽大学声楽科を卒業。留学時代からプロとして数多くのオペラに出演した大ベテランである。2008年4月にはベルンでリサイタルを開催し、シューベルトの歌曲「白鳥の歌」全曲を歌う。今回はその魅力的なテノールの声で､とても丁寧でわかりやすいガイドをして下さった。
まずは、チューリッヒオペラハウスについて簡単にご紹介しよう。オペラハウスはチューリッヒ湖畔にある築180年ぐらいの由緒ある建物で、オペラを始めバレエやクラッシックコンサートも行われる。地下４階まであり、その深さはなんとチューリッヒ湖面下14mにもなるそうだ。周辺はトラム主要駅のベルビュー（Bellevue）や、高級デパートのグローブス（Globus）を始め老舗のホテルやレストランがひしめいているので、いつも沢山の人で賑わっている。晴れた日にはアルプスも一望でき、湖岸に遊歩道も整備されているので散歩に訪れる人はあとを絶たない。また、オペラハウス前にある広場では、4月に春祭りのゼクセロイテン（Sechselaeuten）、8月には建国記念日を祝う花火大会も開催され、各種イベントの中心地にもなっている。
オペラハウス右隣りの茶色の建物にはレストラン「ベルカント（BELCANTO）」があり、有名なオペラ歌手やバレエダンサーが仕事の合間によく利用するので、運が良ければ会えるそうだ。その他、建物内には劇場関係者のための食堂「アトリウム（ATRIUM）」やチケット売り場もある。チケットを買うには、まず整理券をとらなくてはならず、人気のある演目では整理券をとるために行列ができることもある。ちなみに今回のカルメンはすべて予約販売だったので、日本人会では一ヶ月前に代表者3名が朝6時半に並んで整理券を取り、その後11時のチケット販売開始にあわせて、数人の会員が分担して人数分のチケットを確保。チケット取りだけでもまさに半日仕事である。
さて、最初に見学したのは合唱団の部屋。専属の合唱団は総勢60名で、演目によっては外部から臨時でセミプロの合唱団員が招かれることもあるそうだ。部屋にはグランドピアノが置かれ、上方隅にテレビモニターがある。このモニターには、オーケストラの指揮者の姿が映るようになっており、モニターを見ながら練習ができるようになっている。モニターの下には合唱の音量がわかるデシベル計もついているので、音量をみながら練習できるそうだ。
次に通されたのは竹下さんが使っている楽屋。大きな鏡がついた8人分の席があり自分の席は決まっている。部屋の奥にはすでに今回のカルメンの衣装がハンガーに掛けられて出番を待っていた。ハンガーには役柄と出演者の名前が書かれていて、誰がどの衣装を着るのかすぐにわかるように整然と並べられている。
舞台裏には予想していた以上に沢山の音響機材、ケーブル、小道具等が置かれていて、どこも物でギッシリ。竹下さんの後について迷路のような細い通路を歩くうちに方向感覚が全くなくなってしまった。舞台袖からみたオペラの舞台は円盤状になっていて、客席から舞台後部の役者もよく見えるように前方が少し下がって傾斜している。客席からではあまり目立たないのだが、傾斜がかなりあるので役者は足元に十分気をつけているそうだ。ふと舞台の上方を見上げると、大道具のオリーブの木がつり下がっていた。舞台そのものはそんなに大きくないのだが、上方、下方、左右に様々な装置が隠されていて、まるで忍者屋敷のようだ。
最も興味深かったのが、舞台中央に位置するプロンプターボックス。これは舞台中央部にある高さ30cmぐらいの平べったい箱で、底面と舞台側が開口している。ここに「プロンプター」と呼ばれる“助っ人”が頭を出して舞台下に置かれた椅子に座り、役者に台詞や立ち位置、タイミングを密かに指示するそうだ。プロンプターボックスは客席からは目立たないように通常小道具でカモフラージュされていて、「カルメン」では、時々尻尾を動かして観客の笑いを誘うお茶目な犬や、荷物箱に化けていた。
また、オペラは様々な言語（伊・仏・独・露・チェコ語）で行われるため、プロンプターは語学達者でなければならないし、タイミング良く合図が出せるように指揮者としての資格も必要だそうである。狭い場所で椅子に座って長時間仕事をするのでかなりの重労働だが、ヨーロッパでは昔、台詞が上演直前に書き換えられることも多かったらしく、当時からプロンプターは重要な役目を果たしていた。しかし、一方では“カンニング行為”とも言えるため、役者を怠けさせるという見方もあり、完璧主義が強い日本ではプロンプターを使わないこともあるそうだ。
それから、バレエの3つ（大・中・小）の練習場や舞台衣装・小道具の保管場所を見学。オペラで使う衣装や靴はすべて、個々の役者のサイズに合わせて準備されていて、数年後にもし太ってしまった場合でも十分対応できるように作られている。衣装の保管にかなりのスペースが取られているのを見て驚いたのだが、チューリッヒ郊外に大きな倉庫があり、専用トラックが毎日何往復も行き来しているそうである。
最後に舞台メイクをしたり、カツラを製作したりしている部屋を見学。ここには、すべての役者の頭の型が置かれており、カツラは役者に合わせて丁寧に手作りされる。毛は一本一本手で植えられるため、一つのカツラ製作に40時間もかかることがあるそうだ。担当者は理髪師免許を保持しているプロばかり。
今回､舞台裏を見て特に感じたことは、オペラハウスで働く人達の素晴らしいチームワークである。館内のあちこちに張られている分刻みの綿密なスケジュール、一見無造作に置かれている様々なものが、実は秩序をもってきちんと保管され準備されている様子、そして観客の目につかないようなところまで細かい気配りがなされている事、どれ一つ欠けてもオペラは成功しないのだ。今回のガイドツアーに参加したお陰で、鑑賞中も色々な場所に目がいき、まさに2倍楽しめたように思う。
最後にガイドツアーの企画・運営に協力して頂いた、竹下数雄さん、日本人会の担当の方々に心よりお礼申し上げます。
森竹コットナウ由佳
プロフィール：森竹コットナウ由佳
2004年9月よりチューリヒ州に在住。静岡市出身の元高校英語教師。スイス人の夫と黒猫と共にエグリザウで暮らしている。チューリッヒの言語学校で日本語教師として働くかたわら、自宅を本拠に日本語学校（JPU Zürich) を運営し個人指導にあたる。趣味は旅行、ガーデニング、温泉、フィットネス。好物は赤ワインと柿の種せんべいで、スイスに来てからは家庭菜園で野菜作りに精をだしている。長所は明朗快活で前向きな点。短所はうっかりものでミスが多いこと。現在の夢は北欧をキャンピングカーで周遊することである。インフォボックス終わり