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今年は暖冬のため、スキー場は雪不足。観光業への影響が心配される。その対策として、人工雪を降らせ何とかスキーができるコンディションにしようと全国のスキー場では躍起になっている。
1月中旬にベルナーオーバーラントのヴェンゲン ( Wengen ) で開催されたアルペンスキーの国際競技大会「ラウバーホルン ( Lauberhorn ) 」はその難易度からも有名なアルペンスキーコースだが、人口雪を作るために1.5トンの硝酸アンモニウムが使われたという。
観光か、環境か
一方、連邦環境局 ( UVEK/DETEC ) のエリザベート・マレット氏は「今回寒剤として使用されたという硝酸アンモニウム1.5トンの半分でも、農業に使う肥料の量を大幅に超える」と言う。そもそも、肥料の使用には規制があり、例えば雪の上に肥料を散布することは禁止されているのだ。スキー競技ではこうした規制はスイスにはない。マレット氏は、人工雪に関連する実態調査を開始することを明らかにした。「スキー場で硝酸アンモニウムが使われていることは知っているが、その量、回数のほかどこで使われているのかといったことを把握するのが目的」と言う。
スイスの環境保護団体「プロ・ナトゥーラ ( Pro Natura )」のロランド・シューラー氏は、硝酸アンモニウムなど人工雪を作るために使われる化学薬品の使用量が多すぎ「植物に与える影響は大きいだろう。植物の種類が減ってしまうのではないか」と懸念する。さらに「化学肥料は撒かれた土壌から川を通って湖水に流れ出す。魚への影響も見逃せない」と言う。
前出のネッフリン氏は、人工雪は環境に対して無責任であるという批判を否定し「わたしも環境問題には関心がある。ヴェンゲンの住民全員がわたしと同じように環境を大切にする心がある。だからこそ寒剤がもたらす影響について技術者に調査させた」と反論した。
ヴェンゲンのヨースト・ブルンナー市長は、スキー競技が地元の観光業にもたらす900万フラン ( 約8億7000万円 ) の利益を指し「ラウバーホルンの経済的重要性と環境に与えるかもしれない多少の影響を比較してみれば、人工雪に対する環境破壊という批判は過剰で信じがたい」と語った。
地球温暖化とスキー競技
連邦環境局と経済協力開発機構 ( OECD ) は、地球温暖化によるウィンタースポーツへの影響を調査したところ、標高1500メートル以下のスキーリゾート地は、売上を維持するのが難しくなるだろうという。
ヴェンゲンは標高1290メートル、クシュタート ( Gstaad ) は1050メートル、エンゲルベルク ( Engelberg ) は1000メートルと有名な観光地は軒並み標高1500メートル以下である。OECDは昨年12月、ヨーロッパ全体で低地のスキーリゾート地は10年間以内に荒廃し始めるだろうと報告している。スイスの銀行は標高1500メートル以下の低地にあるスキーリゾート地への融資を控えている。しかも、永久凍土が溶け始めていることから、スキーリフトや鉄道など、設備に与えうる被害も深刻になるという。
swissinfo、トマス・シュテファンス 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳
補足情報
ラウバーホルンのアルペンスキー競技の責任者、ウルス・ネッフリン氏は水の凍結温度を上げるため競技場全体に寒剤を散布したことを認めた。「良心の呵責はない。寒剤はだいぶ薄めてある。スキーヤーで牧草がそぎ取られるが、肥料にもなる寒剤を撒くので牧草の生育も良いと農家も喜んでいる」と反論した。インフォボックス終わり
キーワード
硝酸アンモニウム ( NH4NO3 )
白色の結晶。
硝酸をアンモニアで中和して得られる。
主に硝安という名前で肥料に使われるが、爆薬、寒剤にも使用される。