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スイス初のマンガ学科外部リンクがジュネーブの専門大学でスタートした。キャンパスにジュネーブが選ばれたのは偶然ではない。「ジュネーブは近代的なマンガの生みの親、ロドルフ・テプフェールの故郷だ」と学科の設立に深く関わったジュネーブの漫画家、ティラボスコさんは言う。
トム・ティラボスコさん（５１）はフランス語圏のマンガ業界では有数の漫画家だ。ユーモアにあふれ、辛辣で人間味のあるタッチが特徴の彼は、児童書の挿絵や記事の風刺画、ポートレートや自画像などを、過度に美化することなく、一風変わったセンスで描く。
コミック・イラストレーション専門大学外部リンク
ジュネーブ州の教育省が管轄。教育課程は２年。学生はコミック（漫画・劇画）の他にも風刺画、アニメーション、脚本、視覚的物語やジャーナリスティックなドキュメンタリー漫画を学ぶ。教育課程は毎週開かれる講義（論理と実技）とワークショップから成る。
スイス漫画家協会（SCAA）及びジュネーブ造形芸術大学（HEAD）と連携してカリキュラムを決定する。
入学希望者は大学に入学願書を提出する。原則としてグラフィック、又はメディアデザインの分野における資格を取得（連邦能力取得証明書/EFZ）していることが前提。
コミック・イラストレーション専門大学修了後、学生はビジュアルコミュニケーションの分野でデザイナー専門単科大学の卒業証書が授与される。卒業後も更に学問を深めたい人は、ジュネーブ造形芸術大学（HEAD）で勉強を続けることができる。その場合、直接２年生に編入する。
イタリアにルーツを持つスイス人のティラボスコさんは、これまでに数々の賞を受賞してきた。中でも名声のある「ジュネーブ市ロドルフ・テプフェール賞」は２度の受賞経験がある。２０１３年の２度目の受賞では、彼の作品の中でも特に際立った存在の漫画「コンゴ」が高く評価された。物語では英国の小説家ジョゼフ・コンラッドが１８９０年に植民地時代のコンゴで繰り広げた旅が描かれている。この旅についてはコンラッド自身もまた、彼の代表作「闇の奥」で書いた。
漫画界を彩る奇抜なキャラクター
羽根の生えた創造物、狼男、目つきの悪い小さな化け物、大きな胸のエロチックな女性など、ティラボスコさんは奇抜なキャラクターを数多く生み出し、「９番目の芸術外部リンク」と呼ばれる漫画の世界を彩ってきた。この多才で野心的な芸術家である彼が、漫画家を志す人のために新しい学科の設立を思い立ったのも納得がいく。
仕事仲間で国際的にも評価が高い漫画家のツェップさん、シャパットさん、エクセムさんらやスイス漫画家協会（SCAA）のサポートを得ながら、ティラボスコさんはジュネーブ州当局と協力して、ビジュアルコミュニケーションの分野で新しい教育の場を設けるプロジェクトを推進してきた。
プロジェクトは徐々に具体化し、今年９月に晴れてコミック・イラストレーション専門大学がジュネーブでオープンした。本校はこの分野におけるスイス初の教育施設で、ティラボスコさんが１０年間教官を務めたジュネーブ芸術職業訓練センター外部リンクの分校だ。９月の開校以来、ティラボスコさんはこの新学科でコミックや商業イラストレーションに関するノウハウ伝授に専念している。
学生はヤル気満々
記念すべき初年度の履修者は１８人。フリブール出身の女子学生１人以外は全てジュネーブ地区出身者だ。「現時点では、スイス西部出身の学生が集まっている」とティラボスコさん。「だが今後は状況が変わるだろう。将来的にはスイス各地から申し込みがあると見ている。既にティチーノ出身のジャーナリストからも問い合わせがあった。本学科では記事に使われるイラストや風刺画も学べると聞きつけたためだ」
講義スタートから数週間、最初の印象は「学生らは非常に意欲があって熱心」だとのこと。また、既に芸術の基礎的なスキルを身に付けている学生が大半だという。「現時点で洗練された完成度の高い作品を描く学生もいれば、インパクトの強いキャラクターを使ったマンガ・スタイルで描く学生もいる。しかし我々は、居心地の良いテリトリーから一歩踏み出すよう学生を促している。例えば私は『自伝的漫画』という手法を紹介している。これは約２０年前に確立されたジャンルだ。自分自身の物語をどうやって語るか？自分の姿をどう描写すべきか？それを理解するために、小説を読むことも学生たちに勧めている」
学科設立にあたりジュネーブを選んだ理由は？と聞くと「ジュネーブは近代的なマンガの生みの親、ロドルフ・テプフェール（１７９９～１８４６年）の故郷だ。他にもツェップさんを始め、有名な漫画家はジュネーブ出身が多い」とティラボスコさんは回答。ジュネーブのマンガ業界は活気があり、メッカでもある。また、ジュネーブは国際的な文化イベントが多く開催される場所だ。
映画祭と提携
その例に、本校は今年度のプロジェクトとして、２０１８年３月にジュネーブで開催される「人権に関する国際フォーラム・映画フェスティバル（FIFDH）外部リンク」との提携を企画している。毎年フェスティバルには名誉ゲストが招待されるが、１８年はケベック出身のガイ・デリスル氏が予定されている。氏は作品の題材に人権問題も取り上げる漫画家として知られている。
「この機会に、氏を交えたワークショップが予定されている」とパトリック・フックス学部長は言う。「本校の学生はデリスル氏と２週間、共同でジュネーブの自治体、メイランについてドキュメンタリー漫画を制作する。テーマとしては、この村の移民問題、民族の多様性や社会的混合などが考えられる」。完成した作品はFIFDHで展示される予定だ。
初年度にはまた、フランスの漫画家アルフレッドさんを交えた別のワークショップも予定されており、彼のこれまでの体験を学生に語ってもらう。「ジュネーブのマンガ文化と広告イラストレーションはスイスのリビングヘリテージ（生きている文化遺産）外部リンクに指定されている。レマン湖のほとりに本校が誕生したのも必然的なことだ」とフックス学部長は誇らしげに結んだ。
（独語からの翻訳・シュミット一恵）
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スイス人風刺漫画家「直接民主制は時にインターネット上の掲示板のよう」
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スイス国民は、すがすがしいほどの「熱意」を込めて投票に臨む。そう笑いながら話すのは、スイスの風刺漫画家パトリック・シャパットさん。しかし、この１５年ほどの間に直接民主制が世論操作をもくろむ人々やポピュリストに利用されるようになったと警鐘を鳴らす。
シャパットさんは２０年以上の間、ニューヨーク・タイムズ紙国際版、スイス・フランス語圏の日刊紙ル・タン、ドイツ語圏の日刊紙NZZに定期的に風刺漫画を寄稿し、大西洋の両側で読者を笑わせてきた。
最近、家族とともにジュネーブから米ロサンゼルスに移住。風刺画家としての活動を続ける傍ら、南カリフォルニア大学アネンバーグ校スクール・オブ・ジャーナリズムに研究員として在籍している。
swissinfo.ch： ロサンゼルスに暮らしていて、スイスが恋しくなりますか？
シャパット ： それは大げさかな（笑）。ただ、まともなスイスのグリュイエールチーズを買えるところをずっと探しているんだ。米国でその名で呼ばれているチーズはチューインガムみたいでね。それを除けば、スイスが恋しいということはない。私たち家族はスイスを非常に身近に感じている。自分がスイス人だと感じるのに、２４時間スイスにいる必要はない。
swissinfo.ch ： スイス関連の政治風刺漫画を外国で描くのは難しくありませんか？
シャパット ： 頭の体操が必要だ。今住んでいる西海岸はスイスの真逆のようにも感じられる場所だから。
スイスのローカルな問題に疎くなるから、長期的にはたぶん良くないだろう。例えば、一括税のイニシアチブ（国民発議）についての議論に四六時中どっぷり浸ったりすることがない。
だが、長い目で見れば、距離は面白いものだ。数年間ニューヨークに住んだ時にも同じような経験をした。ニューヨーク暮らしの結果、私はスイスの制度と和解し、ずっと身近に感じるようになった。
swissinfo.ch ： どういうことですか？
シャパット ： 合意の形成、妥協案の模索について理解を深めることができた。当時の私は２７歳で、スイスのマイペースな政治制度にいらいらしていた。しかし、距離を置いてみるとより良く理解できるようになった。
スイスを一つにまとめているのがスイスの政治制度だ。だから派手さはないし、何かと時間がかかり、合意も多く取りつけなければならない。スイスは努力によって維持されている国だ。いろいろな仕組みがあってこそ（スイスという国が）きちんと機能し、時には少し前進することもある。少なくとも後退することはない。
swissinfo.ch ： シモネッタ・ソマルガ連邦大統領兼司法警察相が最近、直接民主制を称えて次のように発言しました。「バスに乗っていて話しかけられると、いつもその話題になる。人々はこの制度に非常に愛着をもっている」と。あなたもそうですか？
シャパット ： ソマルガさんとバスで一緒になったことはないが、もし見かけたら自然と近づいていって、直接民主制の話をしてしまうだろうね（笑）。スイス国外ではよくその話をする。丸ごと説明する必要があるからだ。
外国人に１時間かけて直接民主制について話して、相手が納得したなら、それは説明が悪かったということだ。これは非常に特殊な、独特の制度だ。スイスというこの目立たない奇妙な多言語国家に合わせて作られた制度なのだ。
swissinfo.ch： アステリックスとオベリクス（訳注 フランスの人気漫画「アステリックス」の主人公たち）の秘密兵器は魔法の薬でした。スイス国民の秘密兵器は直接民主制なのでしょうか？
シャパット： 直接民主制は素晴らしい。外国ではそう言われている。特に近年、どこの国でも政府への信頼が揺らいでいるので、人々は直接民主制に魅了されている。
swissinfo.ch： しかし、最近の投票から見て、直接民主制は国を安定させる機能を失い、非合理的でポピュリズムに走っていると批判する声もあります。それについてはどう思いますか？
シャパット： 直接民主制とは、スイス国民が主導権を握る制度だ。政府が国民の指図を受け、時には国民を恐れる国は世界でもほぼスイスだけだ。この国の全権を握るのは、気まぐれで時に少し偏った「スイス国民」だ。スイス人はかなり地味な国民だが、信じられないほど馬鹿なことを言うこともある。直接民主制の問題は、この１５年ほどの間に世論操作をもくろむ人々やポピュリストに利用されるようになったことだ。例えば、外国人排斥についての投票など何度もあり過ぎて飽き飽きするほどだ。
swissinfo.ch： しかし、直接民主制やポピュリストといったテーマは、あなたのような政治風刺画家にとってはおいしい題材では？
シャパット： 牛、アルプスの風景、牛飼い、投票箱など、スイスにありがちなイメージは描いても飽きない。
私はポピュリストと同じように、こうしたイメージをあえて使っている。国民党と同党の有力政治家クリストフ・ブロッハー氏は、長年同じ神話を繰り返し語っている。「世界に対する責任から逃れ、常に反対の立場に身を置く一方、利益は全て享受するアルプスの主権国家スイス」という物語だ。
swissinfo.ch ： 政権を笑い者にする怖さは全くありませんか？
シャパット ： 自分が特に過激だとは思っていない。私よりずっと挑発的な風刺画家もいる。私が心がけているのは、的を射て効果的であること、そして切れ味だ。正直なところ、自分はお行儀が良すぎると思うこともあるくらいだ（笑）。
swissinfo.ch ： 多くの人にとって、直接民主制は神聖なものですが、個人的に改善すべきだと思う点はありますか？
シャパット ： （２００９年の）ミナレット（モスクの尖塔）建設についての国民投票の後、「スイスの有権者はいつも正しい」という考えを批判する漫画を描いた。ある男が、「直接民主制、国民発議権、レファレンダム（国民投票権）、ポグロム（大虐殺）はスイス国民にとって神聖だ」と言っている漫画だ。これはとても挑発的だった。
国民がいつも正しいと思うなら、歴史をひもといてみるといい。それが時に悪い結果を生んだことがすぐにわかる。
投票にかけられるべきでなかった案件もあると思う。後になってそういう意見が出ることもある。このイニシアチブはあれやこれに適合しない、など。大きな問題だ。
直接民主制が、国民が鬱憤を晴らすための道具になってはいけないと思う。投票にかけられる案件については、私たちはもう少し厳密に考えるべきだ。
国民の過半数が賛成するからといって、差別や基本的人権の侵害ができるようであってはならない。そうしたことは起こりうるのだ。ミナレットの件では明らかに、国民はその論点や問題点についてではなく、感情を（表現するために）象徴的に投票した。
もう一つの衝撃的な例は、外国人の帰化を地元住民が決定することもある点だ。（ある自治体では、住民が、帰化を希望する外国人の）写真１枚、その人物についての１０行ほどの説明文を見て、その人物が好きかどうかを判断する。バルカン諸国系の名前の人は皆却下された。これは非常に暴力的で、馬鹿げている。直接民主制は時にインターネット上の掲示板のようになる。人々の怒りや気分が、ダイレクトに匿名で表現されるのだ。
swissinfo.ch ： 今挙げられた数例は大きな議論を呼んだ問題ですが、他にも何千という投票が全国や自治体レベルで定期的に行われており、それほど議論が分かれるようなことは起きていません。
シャパット ： フランスのような短いスローガンの連発ではなく、スイス・ドイツ語圏のような長い政治討論を伴う政治が行われているのは素晴らしいことだ。
スイス人が複雑で専門的な問題を熱心に議論するのも素晴らしい。お隣フランスのメディアは、大統領と愛人がどうした、政治集会で誰が何を言ったと騒いでいる一方、スイスでは政治的議論を一晩中戦わせることもある。
スイス人が長丁場の議論ができることは、間違いなく直接民主制の良い面だ。議論は情熱的とまではいかなくても、時に熱意がこもっている。スイス人は勉強熱心だ。
swissinfo.ch ： パリのシャルリー・エブド襲撃事件は、政治風刺漫画家の仕事にどのような影響を与えると思いますか？
シャパット ： 私たちは以前と変わらず描き続け、漫画を通じてこの世界の狂気に終止符を打とうと努力する。常に、議論と笑顔をもたらすことを目指す。しかし、今後はこの仕事をしながらも頭の片隅に暗い影が差し、心は重いだろう。以前よりずっと大きな不安を抱えた画家もいるだろう。無邪気でいられた時代は終わったのだ。
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スイス人風刺画家シャパットの新刊発売
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「欧州が私たちを包囲している！隣国からスイスに通勤してくる外国人が大勢いる！外国人のせいで満員電車だ！」。１９９２年から２０１４年までの作品１２０点以上を集めたシャパットの新刊の裏表紙にそう書かれている。テーマの中心はス…
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スイス人漫画家「直接民主制は宗教ではない」
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お手本とうたわれるスイスの直接民主制。しかし時に、ミナレット（イスラム教の尖塔）の新規建設禁止案が可決されてしまうような「事故」も起こる。それを回避できるような制度を整える必要性があると話すのは、ヴィンセント・クショールさんだ。スイス人漫画家でベストセラー作家の彼は、社会を風刺するお笑いコンビとしても活躍中だ。
ベストセラーとなった「Institutions Politiques Suisses（スイスの政治システム）」は、クショールさんがコミック作家のミックス＆リミックス（Mix & Remix）とタッグを組み、制作した本だ。今回その英訳版である「Swiss Democracy in a Nutshell（早わかりスイスの民主主義）」が出版された。
クショールさんは、社会を風刺するラジオ番組「１２０秒（120 Secondes）」でお笑いコンビとしても活躍している。１年半前には相方のヴィンセント・フェイヨンさんとともに同番組のライブツアーをスタート。これまでにスイスやパリの舞台に立ち、チケットは完売の状態が続いている。２０１５年１月からはスイス国営放送（SRF）でもコメディーニュース番組を担当する人気者だ。
swissinfo.ch： クショールさんが執筆したスイスの直接民主制についての著書は、売り上げ２５万部を突破しベストセラーになりました。学校関係者やスイスに帰化しようと考える人たちが購入者の中心だそうです。また今回、英語版も新たに出版されました。スイスの直接民主制は人々の関心を引くテーマなのでしょうか。
クショール： 一見するとあまり面白そうなテーマには見えないが、実際のところ、（統計でも結果が出ているように）皆が興味を抱くテーマだということがわかった。物事の本質を簡潔に伝えるように努めれば、人は関心を持つようになり同時に多くの疑問を持つようになる。
swissinfo.ch： 前連邦大統領のディディエ・ブルカルテール氏いわく、スイス人には直接民主制の血が脈々と流れているそうですが、クショールさんにもその血は流れていると思われますか。
クショール： いいえ（笑）。スイスの政治システムはさまざまな要素が組み合わさって成り立っている。直接民主制はその構成要素の一つに過ぎない。
直接民主制は合意形成を促す。レファレンダムによって決議が覆されるのを避けるよう、連邦議会は妥協案を見つけようと努力する。ただしそれが足かせとなり物事の進度が遅れることもあるが。またスイスでは、連邦主義も多文化の共存もとても重要だ。このようにさまざまな要素が集まっていても、安定しているのがスイスの政治システムだ。
スイスの政治システムは他国のお手本になれるものだ。だからこのシステムがもっと世界に知られるようになって、他の国にインスピレーションを与えることができればよいのではと思う。私が自らその良さを広めていく気はないが。
swissinfo.ch： つまり、スイスの直接民主制は他国でも導入可能であると？
クショール： それは、わからない。ここには本当に独特の政治文化があるからだ。
スイスの政治文化には、その成熟ぶりがうかがえる。スイスではこれまでに多くのイニシアチブ（国民発議）が国民投票に掛けられたが、否決されたものの中には、他の国では可決されていたに違いないものもある。法定最低賃金の導入案や有給休暇を増やす提案などが良い例だ。たとえ個人的には支持したくとも、有権者は投票で「ノー」をつきつけるという独特の政治文化がスイスにはある。これは国外からは独特の現象として見られている。
直接民主制がポピュリストにいいように利用されてしまうのではと危惧する人々はいるが、そのようなことが起こったのは過去数回で、非常にまれなことだ。
swissinfo.ch： イニシアチブを提起し、国民投票にこぎ着けるまでの費用に５０万フラン（約５７９０万円）かかることもあるといいますが、それでもなお、スイスの直接民主制はお手本だといえるのでしょうか。
クショール： もちろんだ。スイスでも公的健康保険制度導入の反対キャンペーンに多くの資金が投入されるというような、びっくりするような例はいくつかある。そのようなキャンペーンには立役者がいることは明らかだ。（提案が可決されると）失うものが大きいため、彼らは大金を投じて現状を維持しようとしていたのだ。
この観点からいくと、この政治システムは少しゆがんでいる。だからこそキャンペーンに費やすことのできる資金の上限額を設置し、その透明性を確保する対策をとるべきだ。そうすれば、例えば経済連合エコノミースイスが各々の国民投票にいくら費やしているかを知ることも可能だ。
民主主義をお金で操作することは称賛されるべきではない。個人的には政党はお金の流れを明らかにすべきだ思う。民主主義がお金で買われてしまっては全く無意味だ。
swissinfo.ch： 若い世代の投票率が低下しています。若い有権者たちはその投票案件の多さと複雑さに不満を感じています。この状況はどうすれば改善されると思われますか。
クショール： 確かに案件の中にはときどき専門的なものもあるが、投票案件が多すぎるということはない。民主的でありすぎるために民主制が壊れてしまうということはない。
まずは公民教育が根底としてある。学校は政治や文化について議論する場であるべきだし、人々はもっと公共問題に関心を持たなければならない。社会の細かな仕組みを理解する前に、我々は皆、社会で役割を持って生活し、それは価値があることなのだと理解する必要がある。そうして初めて政治参加への意識が芽生える。
swissinfo.ch： ２０１４年２月の国民投票で移民規制案が可決されました。その後、ガウク独大統領はスイスの国民投票結果は尊重すると前置きした上で、「複雑な案件の場合、有権者がそこに含まれる意味合いを十分に理解できないまま投票してしまうという危険性が、直接民主制にはあるのだと感じた」とのコメントを残しました。スイスはヨーロッパ各国との関係や、移民、銃の規制や有給休暇の増減など、全ての問題において国民投票を実施する必要があるのでしょうか。
クショール： 移民規制案をめぐる国民投票では、有権者への情報が不足していた。また、全ての問題において国民投票は実施できない。だからこそ特定の対策をとる必要性がある。
移民の流入を規制するか否かはそれほど複雑ではない。「イエス」か「ノー」で答えられる。しかしその結果、複雑な影響が出てくる。そして、その影響の中のいくつかは法に関するものもある。今回はそのようなことが有権者にきちんと説明されていなかった。確信を持って言えるのは、もしこの国民投票が今行われるとしたら、恐らく前回とは違う結果になっていただろうということだ。国民投票が実施される前に十分な情報が有権者の手元まで届かず、欧州連合（EU）との関係にどのような副次的影響をもたらすかということについて、きちんとコミュニケーションが行われていなかったのだ。
swissinfo.ch： スイスにイニシアチブの憲法適合性を判断する憲法裁判所は必要でしょうか。
クショール： 必要だ。我々はイニシアチブの内容をもっと適切に考査する必要がある。その点で体制がまだきちんとされていないのが現状だ。２月９日の国民投票結果はかなり深刻だった。可決されてしまったのはまさに事故で、スイス国内でのモスクの尖塔建設禁止が可決された時と同様、他国との関係に（悪）影響をもたらした。
どの問題にも直接民主制を適応して良いというわけではない。個人的にはスイス憲法を国際法よりも優先すべきだという国民党の意見にも賛成しない。常に有権者が正しいとは限らないし、有権者がミスを犯すことだってある。２月の移民規制案の可決はまさにそれだ。
驚くべきことは、スイスの政治家のほぼ全員が「スイス国民の意見は正しい」と言っていることだ。これには同意できない。直接民主制は宗教ではないし、有権者は神ではないのだから。
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クショール： 考えとしては非常に興味深い。今世紀始めに国民発議権が導入された当初の目的は、政治家と国民との力のバランスをとるためだった。今日、提案されるイニシアチブの多くはスイスで最も大きな政党（国民党）によるものだ。国民発議権が導入された当初は、このように使われることを目指していたわけではないだろう。どちらにしろ、フーバー・ホッツ氏によるこのような挑発的な提案が取り入れられることはないと思う。
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もちろん時間は掛かると思うが是非実現させてほしい。スイス国籍を持っているのは、スイス人だけではないのだから。
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