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２０１４年もヴァレー（ヴァリス）州産のアブリコ（杏子）がローヌ谷の道端に設置された露店やスイス全国のスーパーに並ぶ季節となりました。今年の実りは昨年よりは良かったとは言え、雨が多かったためかアブリコジャムを作るのに普段より砂糖が多く必要だったという話を耳にしました。今回はローヌ谷やエラン谷、そしてエレマンス谷にある意外な場所を紹介したいと思います。
サン・ゴッタルド山塊に発生したローヌ氷河を源泉とするローヌ川。この川沿いのヴァレー州シオン（Sion）とシエール（Sierre）の中間地点にグランジュ（Granges）という小さな村があります。ローヌ谷の平野にあるこの村やその近辺には、お椀を伏せたような形や半円弧形のちょっと奇妙な丘がいくつかあるのが目につきます。
これらの丘は先史時代に、ローヌ川の浸食によって大規模な地滑りが起こり形成された堆積です。グランジュでは半円弧形の丘となっていて、丘の地質は砂や砂利質で、生息している植物も麓とは異なります。丘の頂上からは東西に延びるローヌ谷の素晴らしい景色を見渡すことができます。
中世にはヴァレー州の主要道路を監視したり統制したりできるという地理的なメリットもあったため、グランジュの丘には見張り塔、城、教会などが建ちました。現在でもその廃墟を訪れて昔を偲ぶことができます。麓の民家は半円弧の形をした丘の窪んだ部分に抱かれるようにして建っています。
ローヌ氷河はかつてローヌ谷の平野部まで延びていた時代がありました。普段、この地方を車で通過しても、アルプスの地形形成に重要な影響を与えた氷河による浸食のことなど考えもしないのですが、堆積によって形成されたこのグランジュの丘に立ってみて、ローヌ谷の周辺には氷河が残していった跡がたくさん存在するのだと改めて思いました。
幅の広いローヌ谷からヴァレーのアルプスまでは、南に向けてたくさんの谷が枝分かれして延びています。シオンから延びるエラン谷（Val d’Hérens）もその一つです。この谷にはウゼーニュ（Euseigne、標高979m）という村があって、「ピラミッド」と名付けられた奇岩で有名なのです。
この奇岩も氷河の作用でできた堆石地帯の浸食作用によってできたもので、石柱の高さは１０～１５メートルを越すものでキノコのような形をしています。一見アンバランスで危なっかしくも見える頭部の岩の大きさと重さが、石柱の保護キャップとしての役目をしています。
１９４９年にこの奇岩の真下を通過するトンネルが開通して以来、この地を観光するにも便利になりました。この「ピラミッド」は数千年にわたって形成されたもので、現在でも浸食は進行しているそうです。まさに自然の驚異だと言えるでしょう。
「ピラミッド」のあるエラン谷の西側にはエレマンス谷（Val d' Hérémence）が延びています。エレマンス（Hérémence、標高1,237m）という村があって、そこから谷が２つに枝分かれするのですが、このエレマンスの村に大変印象深い建築物があるのです。
エレマンスの村そのものは、雄大な自然に囲まれた大変素朴な風情の村なのですが、その村の中央に突如として巨大なコンクリートの塊でできた建物が現れます。聖ニコラウス教会というカトリック教会で、周囲の木造シャレーとのコントラストが不思議さを増長させます。
１７７０年に建てられた旧教会は老朽化が進み、さらに１９４６年に起こった地震の結果危険な状態になってきたため、１９６１年、教会の建て替えが決定します。一般公募で設計を募集した結果、バーゼルの建築家、ヴァルター・フェルデラー（Walter M. Förderer）の設計が選ばれました。フェルデラーがデザインしたこの教会は、現代建築のマスターピースとして知られています。高さ３７ｍの新しい教会が完成したのは１９７１年で、工事に３年の歳月を要しました。
収容能力１５００人、着席可能数５００人の聖ニコラウス教会は、外観だけでなく建物の内部も非常に複雑な構造をしていますが、礼拝堂ではコンクリートの冷たさの中に木の温もりを感じることができます。また、天窓から入り込む自然光が聖壇に明るさを添えています。
教会のパンフレットには、「教会内にある芸術品を含めて、皆さんがこの教会を信仰の証しとして見ることを願っています。その信仰とは、現代を神と共に生きることを試みることで、その信仰のルーツは世代を先行したキリスト教徒たちに繋がっているものです。この教会を訪問するにあたって、皆さんが美術館を訪問するような感覚をお持ちでないことを願っています」と記載してあります。あまりに斬新なデザインのために、世界的にも有名になってしまった聖ニコラウス教会が、あくまでも教会は神聖な場所であって、観光の名所ではないということを言わんとしているのでしょう。
エレマンスにある聖ニコラウス教会が巨大なコンクリートの建築物となった理由は、エレマンス谷を登りつめたところにある、一層巨大なコンクリートの塊で、世界最大級の規模を誇るグランド・ディクサンス・ダム（Grande Dixence Dam）に調和することを意識したためだったそうです。ちなみにこのダム壁の高さ２８５メートルは世界最高、建設に要したコンクリートは５９０万立法メートルと想像を絶する規模なのでした。
小西なづな
プロフィール：小西なづな
１９９６年よりイギリス人、アイリス・ブレザー（Iris Blaser）師のもとで絵付けを学ぶ。個展を目標に作品創りに励んでいる。レザンで偶然販売した肉まん・野菜まんが好評で、機会ある毎にマルシェに出店。収益の多くはネパールやインド、カシミア地方の恵まれない環境にある子供たちのために寄付している。家族は夫、１女１男。スイス滞在１６年。