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2月8日に行なわれる国民投票では、スイス-EU2国間協定の中の「人の往来の自由」の継続が問われる。特に、2007年にEU加盟国となったルーマニアとブルガリアの受け入れが論議の焦点になっている。
EUとの2国間協定の「東方拡大」は、スイスの最も重要な経済パートナーであるEU諸国との関係をより深め、安定させるものなのか。それとも、スイスの雇用市場が脅かされ、社会福祉制度は悪用されることになるのか。有権者の意見は大きく2つに分かれている。
EU拡大がもたらした「不安」と「希望」
EUとの２国間第1協定により人の往来については、段階を経て自由化を進めることになった。まず2002年から、スイスとEU15カ国とキプロスおよびマルタとの自由化が行なわれ、2006年からはさらに8カ国が加わった。スイスは条約に7年間の暫定期間を設けたが、その後もEUとの関係を続けていくと政府と議会は決定した。しかし、これに対して国民党 ( SVP/UDC ) とスイス民主党 ( SD/DS ) が異議を申し立て、国民の審議を要求したため、今回の国民投票となった。
政府は、EUとの2国間協定にある人の往来の自由と、2007年にEUに新に加盟したルーマニアとブルガリアを自由域内に加えることについてを1つの項目にし、議会の承認を得た。国民投票でも1つの項目として問われるが、政府はその理由をEUとの協定はEU全体との取り決めであり、一部だけしか試行しないことはありえないからだと主張している。
国民投票で承認されれば、EUとの協定は期限を定めずに有効となり、ルーマニアとブルガリアとの人の往来が、ほかのEU諸国と同等に自由になるが、最初の7年間は入国人数が制限される。
拒否はEU関係の拒否
特にルーマニアとブルガリアからの人の流入によるスイス社会への影響が、有権者の注目するところだ。
政権党では国民党以外の全政党が賛成し、経済界、農業・労働組合も賛成を表明している。その主な理由は、これまでの人の往来の自由がもたらした成果が将来も生かされる。不足する専門家のスイスへの招聘 ( しょうへい ) が進んだことで、国内経済も伸びた。結果として労働市場も拡大し、国民生活のレベルも上がったという。この点について、スイス内政を調査する「理性のスイス ( Vernunft Schweiz ) 」は、自由化が始まった過去7年間のスイスの経済は上昇気流にあり、長期的な統計は出ないと指摘する。
一方、人の往来の自由が国民に否認されると、交通、農業、研究など7項目ある2国間協定そのものをEUが、6カ月で破棄する可能性があると不安を抱く意見もある。半年以内に新しい協定を結ぶことはきわめて困難で、スイスの経済に大きな悪影響を与えるというのだ。
国民党に代表される反対意見は、まず2つの事柄を1つにまとめて国民に問うのは民主主義的ではないと批判する。ルーマニアとブルガリアにまで自由地域を広げなければ、2国間協定が破棄されるというのは「脅し」だという主張で、国民がこれを拒否した場合でも、EUは協定を破棄しないだろうと見込んでいる。
さらに反対意見は、ルーマニアとブルガリアから安い労働力が大量に流入し、スイスの労働賃金が低下すると主張している。昨年末から国民党は、数羽のカラスがスイスを狙っているかのように取り囲んでいるポスターを全国に貼り、キャンペーンを繰り広げている。このポスターはルーマニアのマスコミに人種差別的だと非難され、在ブカレストのスイス大使に対しルーマニア政府は公式に謝罪を求めるという事態にまで至った。
swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
スイス-EU 2国間協定
1999年に調印された第1協定の項目は、陸路交通、空路交通、人の往来の自由、農業、貿易手続き、公共事業、研究の7項目。
2004年に調印された第2協定の項目は、警察・司法・難民 関連の協力 ( シェンゲン/ダブリン協定 )、利子課税、詐欺対策、加工農産物、環境、統計作成の協力、メディア、老齢年金、教育/職業教育/青少年関連の9項目。
1980年代スイス政府は、スイスのEU加盟を目標として掲げていたが、2国間協定を締結しこれが軌道に乗り始めたことを踏まえ、加盟は「長期的な選択肢の一つ」と方針を転換した。